他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
SS速報VIP 過去ログ倉庫
検索
すべて
本文
タイトル
投稿者
ID
このスレッドは
SS速報VIPの過去ログ倉庫
に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は
管理人までご一報
ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。
春香「ドジな私とドジなプロデューサーさん」 -
SS速報VIP 過去ログ倉庫
Check
Tweet
1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 18:41:55.65 ID:HDKFMiKS0
ぽつりぽつりと投稿していきます。
拙い文章ですがよろしくお願いします。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1368178915
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
Twitter
]: ID:???
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】
ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。
空を自由に飛びたいな @ 2024/11/22(金) 15:47:22.22 ID:UV495csLo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732258041/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:20:24.33 ID:WpWM+xYMo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227623/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:18:35.89 ID:Vr506SRJo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227515/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:49.87 ID:t6dKBjAuo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227469/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:17.71 ID:/UbTl3Hgo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227436/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:16:22.54 ID:Un8tNByuo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227381/
ミア「歩夢・・・辛かったな・・・」ナデナデ歩夢「ミアちゃん・・・うぅ・・・」 @ 2024/11/22(金) 00:59:47.53 ID:w7bhdEV4O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1732204787/
ちんぽいぬ @ 2024/11/21(木) 22:13:45.60 ID:BuRqeSctO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732194825/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 18:42:42.83 ID:HDKFMiKS0
朝早く、まだ日も出ていない頃、私は自転車に乗っていた。
もう桜が咲く季節だと言っても、この時間帯は風が冷たく肌寒い。
それでも私はこの時間が好きだった。
なんだか意識が安らいで、穏やかな気分になれるからだ。
暫くすると駅に辿り着いた。
自転車を停め、小走りで改札を通る。
どうやら少しばかりゆっくりし過ぎたようだ。
このままでは電車に乗り遅れてしまう。
「――って、きゃあ!」
何もないところでこけてしまった。
はぁ……またやっちゃった。み、見られてないよね?
膝を地面に着けたまま辺りを見回してみるが、駅の中には私以外姿がない
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 18:43:37.26 ID:HDKFMiKS0
よかったぁ、ほっと息をついて立ち上がる。
ぶつけた膝を見てみるが、何ともない。
怪我をしたら律子さんに怒られてしまうので、また安心。
春香さんは、一日一回以上こけちゃいますけど、怪我だけはしないのです!
そんな風なことを思っていると、電車の発車を知らせる音が鳴り響く。
わわわっ、待ってくださーい!
全力で走ってなんとか間に合い、座席に座る。
「よ、よかったぁ……」
三度目の安心。
ああもう、私のドジの所為で朝から疲れちゃったじゃない。
私のというより、私が、なんだけどね。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 18:44:10.91 ID:HDKFMiKS0
「……ふー」
深呼吸して息を整えると、バッグの中から音楽プレイヤーを取り出す。
電車の中では欠かせない、重要なアイテムだ。
流れてくるのは同じ765プロの皆の曲。
皆上手で、楽しそうで、輝いていて。
私の顔は自然に綻んでいた。
私ももっと、頑張らないとね。
早く皆に追いつきたいから。
私が乗ったときはまだ数人だった電車内は、徐々にざわつき始める。
人で溢れかえった電車の中は少し窮屈だ。
それでも私はこの時間が大好きだった。
なんだか意識がはっきりして、一日の始まりを感じるからだ。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 18:45:54.59 ID:HDKFMiKS0
目的の駅で降りる頃には、眩しい朝日が辺りを照らしていた。
私はその爽やかな日差しを浴びながら、ゆっくりと歩き始める。
今日も一日頑張るぞー、そんなことを考えながら。
……途中で一回転んじゃったけど。
■ ■ ■ ■
「早速だが天海君、君に専属のプロデューサーがつくことになったよ」
社長室に呼び出された私へと、そんな言葉が投げかけられた。
本当ですか!? 私は前のめりになりながら社長に訊く。
「はっはっはっ、本当さ。待たせて済まなかったね」
「い、いえ! そんなことないです!」
本当は少しだけプロデューサーがいないことが不満で不安だったけど、今はそれよりずっと嬉しかった。
漸く私にもプロデューサーが……なんだか、よりアイドルらしくなってきたかも。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 18:54:25.33 ID:HDKFMiKS0
「では早速紹介するよ。君、入りたまえ」
そう言うと、一人の男性が社長室へと入ってきた。
眼鏡をかけた優しげな好青年だ。
一目見た瞬間、なんとなくだけど。
あ、この人となら一緒にやっていけそう、なんて思っちゃった。
あずささん風に言うと、運命、だったのかもしれない。
別の言い方をすると……一目惚れ?
い、いや、そういう意味じゃなくて! プロデューサーとしてだから!
……一体私は誰に言い訳しているのだろう。
それくらいに舞い上がってしまったのだ。
プロデューサーさんは私の前に立つと、ぺこりと一礼してみせた。
慌てて私もお辞儀で応える。
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 18:56:39.95 ID:HDKFMiKS0
「君の専属プロデューサーをちゅとめさせていただきましゅ!」
「ひゃ、ひゃい! よろしくお願いしまひゅ!」
あうぅ……緊張して噛んじゃったよう――ってあれ?
今、プロデューサーさんも……。
「君ぃ……少し落ち着いたらどうだい?」
「す、すみません! 緊張しちゃって……噛んじゃいまひた」
ぷっ、と私は吹き出してしまった。
プロデューサーさんを見ていると、なんだか可笑しくなってきたのだ。
「わ、笑わなくてもいいだろう!」
「あはははは、ごめんなさいっ。でも可笑しくって」
「君も噛んだじゃないか!」
「ええ。だから可笑しかったんです」
なんだか息がぴったりだなぁ、って。
ううむ、そうなのか……? プロデューサーさんは首を捻っているけれど。
私たち、きっと相性がいいですよ。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/10(金) 19:01:04.70 ID:+50X4J5DO
2828
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 19:08:21.52 ID:HDKFMiKS0
「改めまして、天海春香です。趣味はお菓子作りと長電話、一日一回転びます、いぇい!」
「おいおい、自信満々に言うことじゃあないだろう、えーと、春香……でいい?」
少し慎重になりながらも名前で呼んでくれたことが、なんだかとても嬉しい。
うんうん、やっぱり私たちは最高のパートナーになれそうですね!
だったらいいけどな……うん、きっとなれるさ。
そうして二人で笑い合う。
丁度その時、小鳥さんが社長室へとお茶を運んできた。
「あ、音無さん、手伝います――って、うわぁ!」
どんがらがっしゃーん!
足をもつれさせたプロデューサーさんが倒れこんだ。
慌てて駆け寄る私、だったけど。
「大丈夫ですか――ってきゃあ!」
どんがらがっしゃーん!
足をもつれさせてしまいプロデューサーさんの上に倒れこんでしまった。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 19:10:16.82 ID:HDKFMiKS0
うう、今日三回目だよ……。
こんなペースで転んだのは久しぶりだ。
「ドジなアイドルとドジなプロデューサー、か。不安だが、良いパートナーかもしれないね」
社長と小鳥さんが苦笑いしている。
良い日なのか、悪い日なのか、よくわからない日だなぁ。
お互いの顔が近くにあることに気づくまで、私はプロデューサーさんの上でそんなことを思っていた。
■ ■ ■ ■
プロデューサーさんと行動することになった私。
独りきりじゃない、それだけでこんなにもやる気が溢れてくるなんて思わなかった。
レッスンもなんだかうまくいっている気がするし、トレーナーさんにも褒められちゃった。
あまり大きなものではないけどお仕事も増えてきたし、ようやくアイドルを始められたんだなぁ、なんてちょっぴり感動してみたり。
ドジは、相変わらずなんだけどね。もちろん、プロデューサーさんも。
「おはようございまーっす!」
今日も元気に765の扉を開く。
春香! と待ち構えていたようにプロデューサーさんが傍に寄ってきた。
どうしたんだろう? 何だか嬉しそうだけど……。
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/10(金) 19:15:20.34 ID:YR8MzplXo
このP…まさかユウキ・リト病にかかってるんじゃあ…
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 20:30:55.43 ID:HDKFMiKS0
「テレビ出演が決まったぞ!」
その言葉を聞いて、私はバッグから手を放してしまった。
頭が真っ白になるけれど、ドサリとバッグが床に落ちる音で我に返る。
「て、てれびしゅつえん……本当ですか!?」
「ああ、本当だ!」
やったーーっ! 嬉しくなってついプロデューサーさんに抱き付いてしまう。
いきなりの行動にも関わらず、プロデューサーさんは優しく抱き留めてくれた。
「嬉しいです! 私……本当に、嬉しいです!」
「地方の小さな番組だけどな」
「それでもですよぉ!」
まさかテレビに出れるようになるなんて……!
アイドルだったら当たり前なことだけど、私にはたまらなく嬉しかった。
いつも皆がテレビの中で輝いているのが羨ましくて。
私も頑張らないとって、いつも思っていたけれどなかなか上手くいかなくて。
それでもようやくチャンスを掴めたんだ。
プロデューサーさんのおかげで。
プロデューサーさんと二人で。
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 20:33:50.08 ID:HDKFMiKS0
それからしばらくして、少し落ち着きを取り戻した途端顔が熱くなる。
わ、私……プロデューサーさんに抱き付いてる……!?
今更恥ずかしさを感じて体を離す。
少しだけ、名残惜しかったけれど。
「喜ぶのもいいけど、春香? 大変なのはこれからだぞ?」
「わ、わかってまひゅ」
あうぅ……恥ずかしくて、まともに顔が見れないよう!
どうしてプロデューサーさんは普通に話ができるのだろう。
少しも動揺していない辺り、ひょっとすると私は女の子としての魅力が欠けているのだろうか。
……お、落ち込んでも仕方ないよね! 今は仕事の話に集中しないと!
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/10(金) 20:34:53.70 ID:SgdQRs4x0
しえんしえん。
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 20:36:30.52 ID:HDKFMiKS0
「それで、どんなテレビなんですか?」
「ああ、料理番組だよ。作るものはアイドル自身で決めていいそうだ」
お料理、かぁ。
たまにお母さんの手伝いはしているけれど、本格的にとなるとちょっぴり不安だ。
うーん、学校の調理実習で作ったのじゃあ物足りないし……あっ。
ふと、私の頭にひとつのアイデアが浮かぶ。
「お菓子じゃ駄目ですか?」
お菓子作りは私の趣味で、それなりに自信があったりする。
たまに事務所の皆に食べて貰っていて、好評なのだ。
プロデューサーさんはなるほど、と言った風に手を叩いた。
「それは春香にぴったりだな。ああ、問題ないよ」
やった。お菓子作りなら手馴れているのできっとドジもしないだろう。
何を作ろうかな、頭に色々なお菓子を浮かべていると。
「そういえば俺、まだ春香のお菓子食べたことないな」
プロデューサーさんがポツリと呟いて、私は驚く。
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 20:38:10.72 ID:HDKFMiKS0
「そうでしたっけ!?」
「あ、ああ」
「ごごごごめんなさい!」
そういえば最後に作ったのはプロデューサーさんが765プロに来る前だったような……。
さ、最近忙しくて作る暇がなかったんだもん!
プロデューサーさんだけにあげてない訳じゃないですから!
必死に弁明すると、プロデューサーさんは苦笑いで応える。
わかってるよ、今度作った時によろしくな?
そう言うプロデューサーさんの顔を見ると、すぐに食べて欲しい、なんて思った私は、
「じゃ、じゃあ今から作りましょう!」
そんなことを声高々に言った。
事務所に調理器具はあるし近くで材料は買えますし、今日はスケジュールに余裕がありますから!
「確かにそうだけど……いいのか? なんだか催促したみたいで……」
「いいんですよ。ほら、撮影に向けての練習にもなりますし」
プロデューサーさんに作るところを見てもらいたいというのも、理由のひとつだ。
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 20:43:17.42 ID:HDKFMiKS0
私の勢いに気圧されたのかぎこちなく頷くプロデューサーさん。
「じゃあ、お願いするよ」
「任せてくださいっ」
というわけで。
始まりました、はるるんクッキング!
今日のゲストはプロデューサーさん。頑張って作っちゃうぞー!
……なんて、張り切ってみたものの。
「あれ?」
卵を割るのに失敗してしまった。
「あれれ?」
分量を量り間違えてしまった。
「あれれれ?」
ボウルから零してしまった。
「あれれれれ?」
な、なんで!? いつもは上手くいくはずなのにぃ!
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 20:48:20.93 ID:HDKFMiKS0
プロデューサーさんも心なしかそわそわしてるし……うう。
なんだかプロデューサーさんに見られてると思うと緊張しちゃってドジばかり。
おかしいなぁ、私、どうしちゃったんだろう?
「よし、俺も手伝うよ」
見ていられなくなったのか、プロデューサーさんが腕まくりをして手を洗った。
お菓子作り、できるんですか?
そんな疑問に誇らしげに頷いて見せる。
「独り暮らしだと時間が余ってな。学生時代、よく作ってたよ」
おお、それは頼もしい。
最初の予定と違うけど、一緒に作るのも楽しいし、いいか。
それに、なんだかこうやって二人並んでキッチンに立っているとふ、夫婦みたいだなぁ――とか思っていると。
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 20:58:49.98 ID:HDKFMiKS0
「あれ?」
プロデューサーさんが卵を割るのに失敗していた。
「あれれ?」
分量を量り間違えていた。
「あれれれ?」
ボウルから零していた。
「あれれれれ?」
「あ、あの、プロデューサーさん?」
「な、なんでだ!? いつもは上手くいくはずなのにぃ!」
さっきまでの私と全く同じ反応のプロデューサーさんを見て、つい噴き出してしまう。
あはははっ、全然駄目じゃないですか!
「は、春香だって同じだろう! ああ、もう! 笑わないでくれよ!」
そんな風に顔を赤くして反論するのが余計に面白くて、また声をあげて笑ってしまった。
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/10(金) 20:59:17.55 ID:/dC6O2vAO
はるるんが恋する乙女過ぎて可愛い
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 21:13:17.99 ID:HDKFMiKS0
本当、私とプロデューサーさんは似てるなぁ。
特に、ドジなところとか。
私、自分のドジなところが嫌で、なんとか直したいって思っていたけれど。
プロデューサーさんと二人でコケるのなら、それも悪くないかな、なんて。
結局出来上がったクッキーは、どこで間違えたのかしょっぱくなってしまったけれど。
それでも私は、苦笑しながらしょっぱいクッキーを口に運ぶプロデューサーさんを見るだけで、心がいっぱいになる。
こうしてリハーサルは散々な結果だったけど、私の初めてのテレビ出演は上手くいったのだった。
撮影直後嬉しくなって、プロデューサーさんに抱き付いた所為で二人して転んで笑われたのは、いい思い出……かな?
■ ■ ■ ■
料理番組の出演以来、私はすっかり忙しくなっていた。
あの番組がどうやら好評だったらしく、テレビや雑誌、ラジオなどのオファーが増えたのだ。
今日も、雑誌のインタビューのお仕事。
記者さんの質問ににこやかに答える。
「天海さんのの特技のひとつに、よく転ぶ、とあるのですが……」
「あ、はいっ。私、昔からおっちょこちょいでよく転ぶんです。だから特技ですかね、生まれた時からの」
ちらりと背後に視線を向けるとプロデューサーさんが苦笑していた。
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 21:28:34.56 ID:HDKFMiKS0
誇らしげに言うなよな、なんてことを伝えおうとしているのだろう。
そんな顔したって、これはプロデューサーさんの所為なんですからね?
一緒に転んでくれるプロデューサーさんのおかげなんですからね?
ドジな自分を、好きになれたのは。
インタビューが終わった後、そう伝えると。
「……そうか」
プロデューサーさんはよくわからない表情を浮かべた。
どうしてそんな顔をするんだろ?
その時の私はそれ以上何も言わなかったけれど、でも。
私はもっと考えるべきだったのだ。
どうしてプロデューサーさんがそんな顔をしたのかを。
どうして私がドジな自分を好きになったのかを。
数日後、私はオーディションに落ちてしまった。
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/10(金) 21:40:28.72 ID:HDKFMiKS0
絶対勝てるオーディションだったはずなのに、負けてしまった。
いや、この世に絶対なんかないってことはわかってるし、負けた理由もわかっている。
ダンスの途中で転んでしまったのだ。
油断、慢心、そして何よりも。
甘え。
「……春香」
「ごめんな、さい……」
何か言いたげなプロデューサーさんを遮って、謝罪。
私は一体何のことで謝っているのだろう。
オーディションに落ちてごめんなさい?
期待に応えられなくてごめんなさい?
違う、そうじゃない。
そんなことを謝りたいんじゃない。
「私が……」
私がドジな所為でごめんなさい。
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/10(金) 21:48:28.91 ID:eUPIRzjxo
>>1
は不器用な私と~の人?
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/11(土) 07:46:10.64 ID:hz6SwQJC0
「やっぱり私、ドジな自分が大嫌いです」
好きだと思っていたのは、勘違い。
ただ私は甘えていたのだ。
私と同じ、ドジなプロデューサーさんに。
私が転んでも、きっとプロデューサーさんも一緒に転んでくれるから。
何かドジをしても、それは二人のドジだから。
私ひとりだけの、ドジじゃないから。
そんな風に、甘えていた。
独り言のように口を開いても、プロデューサーさんは何も言わなかった。
どうして怒ってくれないのだろう。
ひょっとして、もう見捨てられちゃったのかな。
ひょっとして、失望されちゃったのかな。
ひょっとして、ひょっとして――
もう、プロデュース……してくれないのかな……。
「俺も同じだからな」
真っ白になった私の頭に、プロデューサーさんの声がするりと入り込んだ。
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/11(土) 07:48:26.26 ID:hz6SwQJC0
>>24
いえ、それは違う方の作品ですね。
でもまともにSSを書くのは二回目です。
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/11(土) 07:55:10.39 ID:hz6SwQJC0
「俺もドジな自分が嫌いだったけど、春香のおかげで好きになれたんだ」
だから春香と同じなんだよ、そう言うプロデューサーさんの声は震えていて。
顔を上げると、彼は悔しそうに歯を食い縛っていた。
「でも、それじゃ駄目だったんだ。アイドルと一緒に転ぶんじゃなくて、転んだアイドルに手を差し伸べるのがプロデューサーだからな」
俺はプロデューサー失格だ。
胸がズキリと痛む。
「……あ」
なんだかプロデューサーさんがどこかに消えて行ってしまうような気がして。
もう一緒に笑ってはくれないような気がして。
それが堪らなく嫌で、嫌で。
「プロデューサーさん……!」
プロデューサーさんの体にしがみついて、胸に顔を埋める。
駄々っ子のように、離すまいと力を込める。
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/11(土) 07:58:27.08 ID:hz6SwQJC0
「私が悪いんです……私が、甘えちゃったから……だから!」
「いや、春香は悪くない。俺がもっと春香をしっかり導かなかったから……」
「だったら!」
私の瞳から流れた涙がプロデューサーさんのシャツに染み込んでいく。
それがじわりじわりと広がるとともに、私の言葉は弱々しくなっていった。
「だったら……これからもプロデュースしてください……!」
プロデューサーさんが導いてくれる道を一生懸命進みますから。
途中で転んでも自力で立ち上がりますから。
私には、プロデューサーさんが必要なんです……!
「……あれ? でもこれも甘えてるってこと、なのかなぁ……」
「そんなことない」
ぎゅっと温かく包み込まれる。
プロデューサーさんが抱きしめてくれていた。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/11(土) 10:10:18.41 ID:hz6SwQJC0
「ありがとう。担当アイドルを泣かせるような、ドジなプロデューサーを必要としてくれて」
「こちらこそ、こんなドジなアイドルでいいんですか……?」
お互い様だからな、そう言ってプロデューサーは笑った。
つられて私も笑う。
落ち着いたか? はい。
なあ春香。 なんでしょう?
「春香はドジな自分が嫌いかもだけど、俺は好きだからな」
ボンッ、と頭が沸騰したように熱くなる。
す、すすす、好きって……ええ!?
それってそれってプロデューサーさんが私のことを……あうぅ!
「だ、駄目ですよ! 私はアイドルで……プロデューサーさんはプロデューサーなんですから!」
で、でも嫌じゃないっていうか、プロデューサーさんがそれを望むんだったら寧ろ私は――ってあれ?
プロデューサーさんの顔を見ると、きょとんと首を傾げていた。
まるで、言っていることが理解できない、とでも言うようなその表情に。
「〜〜〜〜っ!?」
ようやく自分のドジに気づいたのだった。
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/11(土) 10:20:43.81 ID:hz6SwQJC0
私ひとりで勘違いして舞い上がっちゃったよぉ!
プロデューサーさんはきっと、アイドルとしてって意味で言ったのにぃ!
顔が熱いよう……ああう!
「な、なんだかよくわからないけど大丈夫か?」
「ひゃう!」
プロデューサーさんの手が肩に触れ、びくりと体を震わせてしまう。
そのまま飛び退って距離を空けてしまった。
――って、こんなことしたらプロデューサーさんに誤解されちゃうよぉ!
「え、ええと別に触られたのが嫌という訳じゃなくて……あーもう! 私のバカバカぁ!」
「お、落ち着け春香! そんなに慌てたら……」
「きゃあ!」
プロデューサーさんの制止むなしく、私は足をもつれさせてしまう。
でも、それでもなんとか。
「……おっとっと」
踏みとどまることができたのだった。
ふぅ、なんとか転ばずに済んだ。
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/11(土) 10:28:59.25 ID:hz6SwQJC0
今までは踏みとどまることなんてしてこなかったけれど。
プロデューサーさんの隣を歩いていく為に、頑張っていこう。
「大丈夫か?」
それでも、私が転びそうになったその時は。
その時は、こんな風に私に手を差し伸べてください。
「プロデューサーさん、私、頑張りますね」
差し伸べられた手にゆっくりと触れると。
「だから、これからもプロデュース、よろしくお願いします!」
私の胸に温かな光が灯るのだった。
この光はきっと、私にとって大切なものだから。
いつまでも大切にしていこう。
「ああ! ドジなプロデューサーだけど、よろしくな」
笑顔で頷くプロデューサーさんの顔を見ながら、そんなことを考えたのだった。
おわり
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/11(土) 10:32:29.81 ID:hz6SwQJC0
というわけで終わりです。
ちょっと短いかもですが、あんまり長すぎるのもだらけそうなので……。
前に書いたSSも読んで頂けると嬉しいです。
雪歩「一緒に歩く道」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365343598/
次も何か書きたいけれど、ネタがなぁ……。
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/11(土) 11:49:58.11 ID:umLumZrRo
乙
読み易くて良かったよ
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/11(土) 13:22:13.37 ID:AfGPc2Y80
乙、ちょうどいい長さではるるんの魅力いっぱいで良かった
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/11(土) 20:48:20.98 ID:SO1fMcQJo
おつー
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/11(土) 21:12:52.51 ID:f6uKRI35o
乙乙!
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/12(日) 00:03:14.75 ID:n7Pq4Anw0
おつなの
この2人の関係がすごくあったかくて好き
22.51 KB
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
専用ブラウザ
検索
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)