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エルフ「もう、共には生きられない」 -
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1 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/27(月) 22:38:21.05 ID:E5msa0ko0
ーー「そうだ、オレの名は…」中断
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1358102077/
吸血鬼「俺はお前の血を飲みたくない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367385153/
青年「ああ、認めるよ……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368626296/
と言うのを書きました。
よろしくお願いします。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1369661900
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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空を自由に飛びたいな @ 2024/11/22(金) 15:47:22.22 ID:UV495csLo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732258041/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:20:24.33 ID:WpWM+xYMo
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:18:35.89 ID:Vr506SRJo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227515/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:49.87 ID:t6dKBjAuo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227469/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:17.71 ID:/UbTl3Hgo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227436/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:16:22.54 ID:Un8tNByuo
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ミア「歩夢・・・辛かったな・・・」ナデナデ歩夢「ミアちゃん・・・うぅ・・・」 @ 2024/11/22(金) 00:59:47.53 ID:w7bhdEV4O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1732204787/
ちんぽいぬ @ 2024/11/21(木) 22:13:45.60 ID:BuRqeSctO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732194825/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 22:47:52.78 ID:E5msa0ko0
魔者と赤国の戦争は、魔者側の勝利で幕を閉じた。
戦後、武器、技術は失われ、全ての者達に新たな時が訪れた。
赤国の研究所によって造られた種族を含めた
人間・魔者・獣人・エルフ・ドワーフ。
これら五つの種族は悲劇を繰り返さぬ為、
目を逸らさず、互いを認め、共に歩み出した。
しかし七十年後、大陸全土を未曾有の大災害が襲う。
大陸に住む者半数以上が、大災害によって命を落とした。
生き残った者達の中には、
それは穢れを浄化するべく起こった。
これは神の意思なのだと、そう信じる者も居た。
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 22:50:31.85 ID:E5msa0ko0
こうして、
それまでの諸々が消え去り、本当の意味で、新たな時が動き出した。
荒廃した土地で生きる事を余儀無くされた者達。
彼等は種族関係無く、生きる為、生き残る為に手を取り合った。
だが二十年、四十年…徐々に生活が安定して行き、
人口は増え、遂に一つの集落では収まりが付かなくなる。
百数十年が経つ頃、人間と他四種族は居住地域を分けた。
この頃は種族関係は良好、
交易も盛んで、多くの者が互いの住む地域を行き来していた。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/27(月) 22:52:22.51 ID:E5msa0ko0
………それから数百年………
皆は、
犯した罪を忘れ、
先人が築き上げた絆を忘れ、
気高く、誇り高く戦った、彼等の意志も忘れ去られた。
……過ちは、再び繰り返されようとしていた。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:03:46.16 ID:E5msa0ko0
【魔の者】
「あぁ眠い…何匹斬りゃあ良いんだよ」
コイツ等、殺しても食えねえんだよな。
魔物、大災害後に現れた罪の証し。
俺達にとっちゃあ本当に迷惑な奴等だ。口に出したら区別が付かねえ。
……ったく、ご先祖サマは人の為に戦って、人として戦って、戦争に勝ったってのに、
何で未だに蔑称で呼ばれなきゃなれねえんだよ。
魔人って呼ぶ奴も少しは居るけどよ、でも元は人間なんだよな?
まあ、いいや。
周りから見れば確かにヒトじゃねえだろう、瞳は紅いし、滅茶滅茶強い……
けど、だから何だってんだよ。
あぁダメだ…うるせぇ、アタマん中がうるせぇ。そんでもって面倒臭い。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:07:04.82 ID:E5msa0ko0
何が、
我々より貴方達は優れている、魔物討伐は頼みますぅ……だよ。
ふざけんなボケが、お前等ヒトは変わらねえな。
ジジイに聞いた昔話じゃ、多くの人間は魔者に協力したとかって聞いたのに。
「つまんねえよなぁ」
早く帰って寝たい、別にこの森で寝ても良い。
けど寝てる間に魔物に噛まれたら痛いからな、
さっさと…ん? 誰だアイツ?
初めて見る奴だな。ヒトか? 人間か?
ココに魔物が出る事ぐらい知ってる筈だ。しかも武器も持たずに…馬鹿かアイツ?
「……っ、オイ!! 逃げろ!!」
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:09:37.61 ID:E5msa0ko0
【恥】
「はぁ…」
本当に情けない。
人間には力が無いからと、魔人に魔物を押し付けて……
たかが数百年で、ヒトの罪が消えたとでも思っているのだろうか?
現在、大災害前の歴史は、伝説やお伽話の様に扱われている。
まるで過去など存在しなかったかの様に…
人間は、時の流れと共に、過去の過ちから目を背けた。
今や人間と他四種族の絆など形だけで、交流も少ない。
大陸は大災害で隆起した山脈により、南北に分断されている。
南側に人間を含めた五つの種族が暮らしているのだが、
近頃は北側に移住する案も出始ているらしい。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:13:02.49 ID:E5msa0ko0
人間は他種族の意思を無視して開拓、発展を目指している。
発展を目指す、それは良いだろう。
でも、他四種族に断りもなく開拓を始めるのは無礼にも程がある。
彼等は自然を愛し、自然と共に生きている。
それを無視して自分達の未来だけを考えてるなんて、
同じ人間として恥ずかしい。
だから僕は変えたい、証明したい。
別段、腕が立つ訳でも何でも無いけど、どうにかしたい。
「種族は違っても共に歩めると、彼の英雄は証明した…なのに、今はこの有り様か」
いや、諦めるな。祖父も父も、種族は違えど共に歩めると説いてきた。
その為か、僕は変わり者扱いされているけど、そんなのは一切気にしてない。
僕は、一人の人間として、現在を変えたい。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:14:41.46 ID:E5msa0ko0
【不注意】
「あれ? 森……」
考え事をしている内に森に着いてしまった。この森には魔物が出るから近付くなと言われているのに…
「ん? あれは…」
赤い制服…大戦の最中、魔の者達が着用していたと言われる物に似ている。
随分着崩してはいるけど間違い無い、彼は魔人だ。
この森の魔物は彼が一人刈っているのか…魔人の中でもかなりの強者に違いないだろう。
何やらだらけているけど、あんな大剣を振り回したのだから疲れて当然か。
まるで分厚い板の様だ。僕一人くらいなら、少し屈めば隠れる事も出来るだろう。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:16:50.17 ID:E5msa0ko0
此処に来て彼を見つけたのも何かの縁、人間としてきちんと御礼を言わないと…
『オイ!! 逃げろ!!』
彼は振り向き様に叫んだ。明らかに僕に向けた言葉だ。
瞬時に状況を理解した僕は振り返らず走った。
「はぁっ…はぁっ…危なかった」
……何かが、後頭部を掠めた。
この、独特の重圧、そして背筋が凍る様な感覚、これは間違い無く、
「「 ググ…ヴルル 」」
「魔物……」
どの生物にも該当しない異形の獣、怪物。
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:24:37.49 ID:E5msa0ko0
「「 ハッハッ…ググルゥ 」」
動けない、足が竦む、彼はこんな怪物と……
魔物は凶悪な爪を掲げ、僕に振り下ろそうとしたが、
「くたばれ、バケモノ」
僕の横を、正に、目に追えぬ速度ですり抜けた彼の一振りで、
「「 ギェアぁ!! 」」
一撃で絶命した。
「この、クソ馬鹿野郎!! 何でココに来た!! 近付くなって言われてんだろうが!!」
歳は僕と同じ位かな?
うなじまで伸びた癖の無い黒髪、そして赤い瞳、
端正な顔立ちだが気怠げで、目の下には隈がある。
見るからに不健康そうだ。きちんと食べているのだろうか?
「オイ!! 聞いてんのか? あ?」
「え? ああ、ごめん。少し考え事をしてた」
まるでチンピラの様な話し方だ。でも悪い人では、無い。
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:27:25.54 ID:E5msa0ko0
【自己紹介】
「なる程な……で、考え事しながら歩いてたらココに来たのか? この森には魔物が出るって知ってんだろうが、バカじゃねえの?」
「それは……ごめん。でも助かったよ。ありがとう」
悪態に反論する事も無く、童顔の青年は柔和に微笑み手を握った。
その所作に違和感は全く無く、馴れ馴れしさや厭らしさも無い、純粋なものだった。
避ける間も無く手を掴まれた魔者の青年は、
「いいのか? 怖い魔者に手を握り潰されちまうぞ?」
と、脅かすが
「種族が違うから怖い? そんなのは怖れる理由にはならない」
間を置かずに告げられたその言葉を聞き、満更でもなさそうな顔で、頭をぼりぼりと掻いた。
「なあ…お前の名前は? ああ、オレはブラッズな」
「僕はリナト。よろしく、ブラッズ」
こうして、種族の違う、二人の青年は出会った。
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/27(月) 23:32:33.07 ID:gDfTQ9bCO
行間あけすぎ?
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:37:17.84 ID:E5msa0ko0
【名を継ぐ者】
「ブラッドリーよ、お主は最近、頻繁に人間と会っているそうだな?」
「わりぃのかよ?」
「いや、儂とて人間は皆愚かな者だとは思っておらんよ。じゃが、次代のロイと呼ばれるお主には、少し考えて貰わねば困る」
「ロイ、ね。そりゃあ俺だって尊敬してるさ」
「うむ、我々魔の者の中で白髪なのはお主だけ、そして一族の中で最も優れた力を持っている」
「それだけで英雄の名を押し付けられるのは、確かに気持ちの良いものでは無いだろう」
「だからお主は髪を染めた。じゃがな、皆は信じて止まぬのだ。英雄の再来を」
「よく俺みてえな奴に期待出来るな、まして英雄なんざ、なろうと思ってなれるもんじゃねえだろうが」
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:38:24.49 ID:E5msa0ko0
「いくらお主が愚か者を演じようと、分かる者には分かる」
「そう思いたきゃ思ってりゃいいさ。でも俺はロイじゃない、俺は俺だ」
「いずれ問われる時が来る……儂もそう長くない。出来るなら、全ての者が幸せに生きて欲しい」
「じゃが儂は、お主の祖父として、一族の希望などと言う荷を背負わせたのは、済まないと思っとるよ」
「いいさ、ジジイは良くやっ
「馬鹿者!! お爺ちゃんと呼べ!! 孫に蔑ろにされる爺や婆の気持ちを少しは考えんか!!」
「ああ、悪かったよ。爺ちゃん」
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/27(月) 23:43:45.24 ID:E5msa0ko0
「良し。ならば行くが良い。友が待っておるのだろう?」
「……ありがとな、爺ちゃん。じゃあ、行ってくる」
儂等は大戦の遺物、人間の中に嫌う者が居るのは厳然たる事実。
彼等にとっては、犯した罪を突き付けられている様に感じるじゃろう。
なんと身勝手極まりない理屈だ。
魔獣を刈り、平和を齎した我等が祖に武器を向けた時と、何ら変わらんではないか。
だが、未来は在る。
新しい世代、新しい時代、新しい絆…
この鬱々とした今を変える者は、必ず現れる。
17 :
◆B/NHzKmv/c
[saga]:2013/05/28(火) 00:10:14.36 ID:AM/9kKvY0
【同い年】
「なんだリネット、また来たのか。アタシ以外に友達いないのか?」
そう言ったのは、ドワーフの女性。
すらりとした長身で浅黒い肌、
背中に届く赤茶の長髪を後ろで結び、袖無しの作業着を着用、手には鉄槌。
男勝りで気の強い感が顔に出ていて、溌剌とした女性だ。
「カティアだって、私以外に友達居ないくせに」
此方は白いローブを着たエルフの女性。
白い肌、肩にかかるふわりとした金髪、
背は標準なのだろうが、身体の一部は標準以上に発達している。
子犬のような人懐っこい顔立ちで、男女問わず否応無く庇護欲をそそられるだろう。
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 00:11:38.54 ID:AM/9kKvY0
「うっ…友達と言うか、何人かに友達以上の感情を持たれている気がするんだが」
どうやら、女性には人気らしい。
「女の子なのに鍛冶してるし、格好いいし、仕方ないよ」
「男がしっかりしないから、こんな事に…」
何やらぶつぶつと言っている。時折、友人の一部を見ながら。
「だ、大丈夫だよ!! カティアだってまだ成長期だから!!」
「もうすぐ二十歳だ…諦めてるよ。何故なんだ…お前も同い年なのに」
その言葉は、ある一点に向けられている。
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/28(火) 00:13:34.94 ID:AM/9kKvY0
「し、仕方ないでしょ? それに、私はそこまで大きい方じゃないよ?」
「なら私はどうなるんだよ!!」
「それは、えっと……祈る、とか」
「お前をか!! お前の胸を拝めばいいのか!?」
「あうっ、ち、ちょっと、そんなに揺、らさ、な、いでよぉ」
肩を掴んで揺さぶれば、それは弾むように上下に揺れた。
「はぁ…アタシだって、女性らしくありたいのに」
「えぇ、格好いい女の子がいても良いと思うけど?」
「……ありがとな。で? 今日は何があったんだ?」
20 :
ZX
:2013/05/28(火) 00:13:48.45 ID:0qC7ema80
うーんこの
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 00:15:18.88 ID:AM/9kKvY0
【唯一】
「今日、近所のお婆さんが熱を出して、いつもの感じで治したら」
『神様が遣わした天使様じゃあ!!』
「なんて言われて、何だかいずらくなっちゃって…」
「巫女に救世主、今度は天使様か…直に見たら確かにそう思うかも知れないな」
アタシの友達、リネットには不思議な力が在る。
傷を治したり、枯れた樹を元に戻したり色々だ。
拾われた子だと言うこともあって、神の子、何て言われてる。
「気味悪がられるよりは良いんじゃないか? みんな慕っているみたいだし」
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 00:17:58.40 ID:AM/9kKvY0
「慕れてる、と言うより……なんか怖くて」
アタシは女で鍛冶をやっているから変わり者扱いされて、あまり人付き合いが無い。
仲良くなったのは、互いに共通する部分があったからだと思う。
でも、こいつが独りになった理由はアタシとは違う。
今、人間との関係がぎくしゃくして来て、四種族はぴりぴりした感じになっている。
戦になる可能性も視野に入れているらしい。
その所為か、こいつは救世主などと崇められる存在になってしまった。
「大丈夫だ。アタシがいるだろう?」
「ふふっ、やっぱりカティアは格好いいよ。ありがとう」
アタシは、こいつが居ればそれでいい。力なんて関係無いし、勿論利用もさせない。
リネットは、アタシの大事な友達だから。
23 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/28(火) 00:21:05.08 ID:AM/9kKvY0
>>13
見やすいかな、と思って…自分はこんな感じで書いてます。
今日は終了します。ありがとうございました。
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/28(火) 00:22:00.57 ID:vt0o4Uoao
乙です
自分はこの書き方好きですよ
25 :
◆B/NHzKmv/c
[sage]:2013/05/28(火) 00:39:23.42 ID:AM/9kKvY0
>>24
ありがとうございます、嬉しいです。
前に書いた物より時間がかかりそうですが、
一日に一話二話は書いて行こうと思ってます。ありがとうございました。
26 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/28(火) 08:37:35.33 ID:RZUUnUUJ0
【描く者】
「わりぃ、遅れた。ちょっと爺ちゃんと話してた」
「いいよ、僕もさっき着いたばかりだし平気」
あれから俺達は、森の入り口付近ににある大岩に座りながら話す様になった。
コイツと話すのは楽しい。
俺には難しい事は分かんねえけど、コイツは何かをやり遂げる…そう思った。
「僕は今を変えたいんだ」
開拓やら何やらで、人間と他四種族の間はピリピリしてんのに、
こんな事を、真っ直ぐに言えるヤツだからな。
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/28(火) 08:40:01.13 ID:RZUUnUUJ0
「やっぱ変わってんな、お前」
「それでも、だよ。今は間違ってる」
へぇ…ん? 確か爺ちゃんも前にそんな事言ってたっけな。
「でもよ、一人じゃ無理だろ? どうする気だよ」
「伝えるんだよ」
「はあぁ…随分地道だな、オイ」
「いや、中々馬鹿には出来ないよ?
確かに最初は無視したり、馬鹿にする人も居たけど、今は僕の考えに共感してくれる人間も居る」
「そりゃあすげえな、でも俺にゃ無理だな」
「あははっ、いや、そんな事は無いよ。ブラッズ、君は剣術を使えるよね?」
「それだって地道な鍛錬の繰り返し、僕がしている事と何も変わらない」
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/28(火) 08:43:15.42 ID:RZUUnUUJ0
コイツの言葉には不思議な力がある。
そして真っ直ぐな意志がある。なら、俺は?
まあ、今はいいや。
「まっ、頑張れ」
「ああ、必ず変えてみせるよ」
コイツは俺に、協力してくれ、なんて言った事は一度も無い。
会話の中で、こんな事を言った。
『考え、悩み、決断し、自分の意志で行動するんだ』
『大衆の意見に流される者は信用出来ないから…』
『だから僕は、一人一人と向き合って話すんだ』
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/28(火) 08:48:54.00 ID:RZUUnUUJ0
クソ真面目で、言った事は曲げない頑固者。
コイツは語るだけじゃない、大抵理想を口に出すヤツは、何も行動しない。
でもコイツならやるだろう、どんな困難に直面しても、必ず。
だから、俺みたいな面倒臭がりで、ずぼらなヤツと付き合ってるのが不思議だった。
始めの頃に聞いたら、
『僕は、同志では無く、友達が欲しかったのかも知れないね…』
なんて言いやがった。
………友達、か。
なあ、リナトよ。もう少し、付き合うヤツは選んだ方がいいぜ?
まあ、なんだ…お前と居るのはおもしれぇから良いけどよ。
30 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/28(火) 08:51:17.94 ID:RZUUnUUJ0
また夜に更新します。ありがとうございました。
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/28(火) 11:24:59.19 ID:c/968HIfo
毎度の事だが、今回も楽しみに読ませてもらう
32 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/28(火) 20:09:25.56 ID:g7iz0ett0
【年頃】
「ねえカティア、最近ブラッズ見ないね?」
「ん? ああ…あいつは人間と会ってるらしいぞ?」
「に、人間かあ…怖いなぁ。昔怖い目に遭ったし」
「助けてくれたのも人間なんだろ?」
「それは、そうだけど…怖いよ」
私に乱暴しようとした人達……あの目は、未だに忘れられない。
「ブラッズは元々人間が嫌いだったしな…何かがあったんだろうな」
「可愛い女の人を助けた、とか?」
「そうかもな」
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/28(火) 20:10:53.25 ID:g7iz0ett0
まずい、これはまずい。
「……どうしよう」
好きになった理由は些細な事だけど、私は彼が好きだ。
いつもだらしないけど、本当は優しくて、本当は格好いい。
「私に聞くな、少しは自分で考えろ。試しに誘惑でもしてみたらどうだ? あいつ免疫無いだろう」
誘惑。誘い、惑わすと書いて誘惑。
……そんな事はどうでもいい。
同い年なのに年下扱い、妹扱いされている私に、そんな事が出来るのだろうか?
ううん。出来る出来ないじゃない、やるんだ!!
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/28(火) 20:14:08.98 ID:g7iz0ett0
「いやいや、無理無理!!」
「なら諦めるんだな。初恋は実らないらしいぞ?」
「いじわる」
「なあ、リネット」
「は? なに?」
「ふてくされた顔をするな。安心しろ、相手は男だ」
……私は、時々からかわれる。
こうして狼狽える私の姿を見て笑う彼女の顔は、正に外道。
私には、復讐する権利がある。
「ぺったんこ」
「今日は泊めてやろうかと思っていたが、気が変わった。帰れ」
「ごめんなさい」
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 20:23:40.50 ID:g7iz0ett0
【急襲】
「それで、同志はどれくらい集まったんだ?」
「まだ始めたばかりだし、少ないよ? でも…」
「なんだよ? なんかあんのか?」
「えっ!? いや、決してそう言う訳じゃないんだ」
なんだよ、急にあたふたしやがってコイツらしくねえな。
ろくでもない連中でも仲間に…いや、それはありえねえな。
殴られようが何されようが、コイツに限ってそんな奴を仲間にするとは思えない。
気になるな……ん?
「「随分捜したぜ? リナト様よぉ」」
なんだアイツ等? 見るからにチンピラじゃねえか。
斧、槍、剣、リナトを殺す気か?
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 20:27:58.76 ID:g7iz0ett0
「なあ、アイツ等は?」
「僕を邪魔に思うヒトの手下か何か、だと思う」
なるほど…コイツは弱いからな、狙いは間違ってない。
オレがアイツ等をぶちのめせば良い話しだが……
「貴方達は、何故こんな事を?」
「「ギャハハ!! 金と女と酒の為に決まってんだろうが!!」」
「「テメエをやればたんまり貰えるぜ!!」」
アイツ等は素直に生きてんなぁ…どうする? 話しは通じねえぞ?
「「…ッ!? 痛っ!! な、何だ!?」」
……ったく、何が『まだ始めたばかりで少ないよ?』だ。
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 20:34:17.32 ID:g7iz0ett0
茂みから出て来たのは一人だが、放たれた矢はかなりの数だ。
「あの方を殺すと言うなら容赦はしない。どうだ? まだやるか?」
あの赤髪の姉ちゃんすげぇな、速いし、巧い。
「「わ、分かった。もう…いい」」
だろうな、首筋に短剣を突き付けられて、
更に、腕と尻を弓で射られて戦う馬鹿は流石にいねえだろう。
「リナト殿、ご無事ですか!?」
それにしても驚いたな…この赤髪姉ちゃんも相当だが、
「助かったよ、皆ありがとう。でも、着いて来ないでって言った筈だよ?」
『……申し訳有りません』
ざっと二・三十か? 殆ど女、男も多少居るが、どいつもこいつも顔付きが良い奴等ばかりだ。
短期間でよく此処までの奴等を集めたもんだ。
「分かっているだろうけど、君達が見つかると色々拙い。皆、町に戻ってくれ。僕も直ぐに戻る」
『はっ!!』
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 20:37:08.29 ID:g7iz0ett0
【秘密】
「随分と洗練された戦闘集団だな? 言い辛かったのはその所為か?」
「彼女達、彼等達は…その、特殊な職業だったんだ」
あの動きは暗殺、隠密の類だろうな。
「国に、捨てられたのか?」
「ああ。でも、獣人族の人に助けて貰って、暫く世話になったらしいんだ」
「その後は、僕が色々と世話…と言うか、何と言うか」
綺麗事を通す奴だと思ってたが、助ける為には手段は選ばねえ質だな、コイツ。
「今の国を変える事が、その人への恩返しになる、そう言ってたよ」
「それに、僕の綺麗事に賛同してくれたから共に居る」
よく言うぜ、綺麗事も真っ直ぐ通せば綺麗事じゃねえ、正義だ。
コイツのそういう所に、アイツ等は惚れたんだろうな。
つーか獣人? あんな頭の堅い連中が助けたのか? 不思議でならねえ。
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/28(火) 20:42:52.00 ID:g7iz0ett0
「へぇ、獣人が助けた、か。そんな話し聞いたことねえな」
「確か、名前は……」
ーーーーーー
「ゼノ、お前はどう見る?」
「人間の出方次第で変わるでしょうね。此方が歩み寄る必要などありません」
長老、これが貴方の望む言葉だろう?
幾らオレが人間に歩み寄れと言った所で、獣人の誇りだ何だと言うに決まってる。
「ふむ、そうじゃな。下がって良いぞ、誇り高き狼よ」
「では、失礼します」
「ああ、待て」
「何でしょう?」
「夕刻、人間の探索隊が北側へ向かうらしい」
これで三度目か、懲りない奴等だ。
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 20:50:39.36 ID:g7iz0ett0
「……分かりました」
「うむ、頼むぞ」
誇り高い狼は、魔物を装って暗殺などしない。
オレは物心付いた頃から、そう言う類の訓練を受けてきた。
特殊な体質も含まれるだろうが、随分大事にされた。
この様な時に使う、暗殺道具として。
オレ自身には確固たる意志、信念なんて物は無い。
だから、あんな爺様に従って居るんだろうな。獣人の長老、歳を取れば長か? オレが考えた所で何も変わりはしないな…
もしこれから何かが起こるとして、オレは何を求める?
自由か? 友か?
無理だ。オレは何かを求める事が許される立場じゃない、死ぬまで此のままだ。
……奴等は、今頃どうしているだろう?
国に追われた暗殺者、一時的に助けたが、自由は手に入れたのだろうか?
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 21:27:12.18 ID:g7iz0ett0
【夕刻・逢魔】
「よう、ゼノ。相変わらず目つきわりぃな」
此の道を知っているのは、情報を掴んだ獣人と、人間だけの筈。
最近人間と頻繁に会っていると聞く、まさか人間側に付いたのか?
「ブラッドリー、何故此処に居る」
返答次第によっては戦闘も避けられない、勝ち目は無いだろうが。
「お前が行く必要は無いって、伝えに来たんだよ」
「どういう事だ?」
「北側への探索は中止になる。人間の手でな」
出鱈目だ。我々獣人でさえそんな情報は掴んでいない。
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 21:30:09.68 ID:g7iz0ett0
「証拠は在るのか?」
「いや、止めてる最中なんじゃねえの? 多分」
「詳細を言え、聞かずして退く訳には行かない」
「いいぜ。まずは…」
『種族間の対話も無く北の地を探索するなど、してはならない行為だ』
「これは俺の友達からな?」
「後はお前に伝言、ん…ああ、これだ」
『ゼノさん、貴方が手を汚す必要は在りません』
『人間の問題は人間が解決します。貴方の心を縛っているのは貴方自身。自由に生きて下さい』
『あの時の恩、我々は決して忘れはしません』
「だってよ? お前なら、分かるよな」
「ああ、分かる」
奴等を助けたのはオレだ。それに、他の者には一切口外していない。
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 21:34:56.96 ID:g7iz0ett0
「その言葉は、有り難く受け取ろう」
「だが、オレに自由など無い。やれと言われれば、やらねばならない……奴等も同じだった」
「へぇ、それで?」
「人間は信用出来ない。オレは行く」
「なら、アイツ等を助けたのは何でだよ?」
「オレと同じ暗殺、隠密を生業とする者達。自由への憧れも、情が湧いたのも事実だ」
「ゼノ…お前が助けたアイツ等は、国と人間を変えようとしてる馬鹿に味方してる」
「勿論、自分の意志でな。お前の意志は、其処に在るのか?」
「黙れ…幼い頃からそうやって育てられた。オレの意志など、初めから無い」
英雄として扱われたお前とは、違う。
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 21:38:59.58 ID:g7iz0ett0
【狼】
「やんのか?」
「命令だからな。それに…」
逆立った銀髪、体毛、尻尾がざわざわと揺れ、
身体は、ごきごき…と不気味な音を鳴らしている。
「あ? なんだよ?」
変貌していく、最早目つきが悪いなどと言う表現では済まない。
その瞳は正に、野獣、猛獣のそれ。
犬歯が目立つ痩せぎすの青年は、筋骨隆々の人狼へと変貌した。
「以前から、お前が気に入らなかった」
「俺も、お前みてえな奴が大嫌いだ」
「……参る」
発した言葉は人狼の後方へ置き去りにされる……それ程に速い。
45 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 21:44:02.40 ID:g7iz0ett0
「その剣は、飾りか? 抜け」
風を切り裂く音と共に振り下ろされた豪腕、
「はっ、お前みたいなアホは素手で十分なんだよ」
それを容易く、片腕で受け止める。
「オレが暗殺していた事を、知っていたのか?」
「いや、さっき聞いた」
あっけらかんと答え、人狼の腹に拳を放つ。
「がハッ!!」
「けどよ、今からでも遅くねえだろ? 別に、お前の事なんざどうでもいいけどな」
「そう言う所が、気に入らない。お前は自由だった。オレに
「うっせえ!! お前は自分から何かしたのかよ!?」
「ゼノ!! お前は今の自分を認められるか!? あ!? 言ってみろ!!」
「黙れ!! 選べる自由など無かった!!」
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/28(火) 21:55:44.34 ID:g7iz0ett0
叫びと共に突き出された爪は、腹を貫いた…
「いってえな……あと一つ、獣人としての誇りとか何とか、そんなもんはな……」
腹に突き刺さる腕を掴みぐいと引き寄せる、
「なっ…!?」
この間、凄まじい脚力で何度となく蹴れてはいるが、魔は離さない。
「腐った奴等が、犯した罪から逃げる為に作った、綺麗事だ!!」
「ぐぶッ!!…ぁぐ……」
「暫く寝てろボケが……あぁ、いってえな。まあいいや、後でもう一発殴ってやる」
魔者の青年は、
気を失い、徐々にヒト型に戻っていく彼の側で膝を突き、
「悪かったな、気付いてやれなくて……」
「爺ちゃん、だから言ったんだよ。俺は、英雄になんざなれねえって」
そう、呟いた。
47 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/28(火) 21:59:51.13 ID:g7iz0ett0
>>31
ありがとうございます。
今日はこの辺で終了します。ありがとうございました。
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/29(水) 08:36:34.80 ID:eDR7Za4ao
乙
49 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/29(水) 13:58:33.41 ID:WQtzLxj90
【探索隊】
下山中の探索隊、その中の二人が何やら言い合っている。
「隊長、本当に良いのですか!? この事が王に知れれば!!」
「がははっ、安心しろ!! 失うのはオレの首だけだ。まあバレたら、の話しだけどな」
顎髭を伸ばした熊のような大男、豪快に笑う彼が探索隊の隊長。
「しかし、あんな青臭い理想を聞いて引き下がるなんて、隊長らしくありません」
恐らく隊内で最年少であろう隊員は、納得出来ない様だ。
「そんな事は無いぞ? あの小僧は面を外したな?」
「ええ、外しました。まして名を名乗るなど馬鹿としか……我々が王に告げればどうなるか、分からない筈は無いのに」
当然、反乱分子と見なされるだろう。だが、その青年はそれを承知で面を外した。
「其処だ。あの小僧は理想の為に命を懸ける男」
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/29(水) 14:02:56.24 ID:WQtzLxj90
「王から勅命を受けた我々探索隊に顔を晒し、名を名乗る。こんな事、並みの奴には出来ん」
「それは、側に腕の立つ仲間が居たから出来た事では?」
その青年には二、三十の仲間が居た。彼がその気であれば戦闘になっていてもおかしくは無い。
「だったらオレが小僧の腕を刺した時点で、お前等全員の首が跳んでるよ」
隊長と話す彼以外の隊員は、理解し、認めている様だ。
一切口を開かず、隊長の言葉に耳を傾けている。
「と言うか、本来なら生かす筈がない。お前の言う通り、王に告げれば奴は終いだからな」
「それは…確かに」
そう、本来なら生かす筈が無い。
隊の誰かが告げれば、即座に身元が割れ、捕らわれる。
死罪になってもおかしい話しでは無い。
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/29(水) 14:06:42.48 ID:WQtzLxj90
「あれは虚勢じゃない、理想を語るだけの愚か者でもない」
「ならば隊長はどう見たのですか?」
「王になる男、人を導く者。欲や争い、それらを正当化する為の大義名分など、あの小僧には無い」
「馬鹿な、二、三十の仲間で国を変えられる訳が…」
鼻で笑っているが、顔には焦りや困惑が見て取れる。
「侮るな。認めたくないだろうが、お前も見ただろう?
奴の瞳を、奴の覚悟を、あの歳で同じ事が出来る奴は…まあ居ないだろうな」
「……随分、高い評価ですね」
彼は、先程出会った童顔の青年を思い出していた。
腕を刺され血を流しても一切敵意を見せず、仲間の力も借りず、
己の言葉のみで隊を退かせた青年の姿。
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/29(水) 14:09:22.81 ID:WQtzLxj90
「惚れちまったんだろうな。遣える身で言いたくはないが、今の国の在り方は間違ってる」
彼は遂に黙ってしまった。
「否定しないのか? でもな、求めてるのさ」
「オレもお前も、あの場で奴を見た隊員全員、きっと民衆も、皆が変化を求めてる」
彼等が真実を語る事は無いだろう。
彼等は見たのだから。
青年の言葉と行動に、未来を、希望を、そして決して揺るがないであろう信念を。
53 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/29(水) 14:11:36.39 ID:WQtzLxj90
>>48
ありがとうございます。
また夜に更新すると思います。ありがとうございました。
54 :
◆B/NHzKmv/c
:2013/05/29(水) 19:39:38.86 ID:WQtzLxj90
【芯】
戦闘は何とか避ける事が出来た。
探索隊の人達は、それ程忠義がある風でも無かったし。
それに、今の国に疑問を持っているのも見て分かった。
彼等の心は、揺れている筈だ。
「……いっ!? 痛い痛い!!」
「我慢して下さい。消毒と止血をきちんとしなければ、後に酷い事になります」
「怒ってるの?」
「当たり前です!! それにリナト殿、貴方は甘過ぎます!! 今からでも遅くはありません、彼等は始末すべきです!!」
本来ならそうすべきだろう。でも、それじゃあ駄目なんだ。
「大丈夫だよ。彼等は僕の名を出したりはしない」
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/29(水) 19:41:23.34 ID:WQtzLxj90
「はぁ…何故言い切れるのですか?」
呆れられた。
でも、これから言う言葉を聞けば、怒るかも知れないな…
「彼等の目を見て、そう思ったから」
「分かりました」
あれ? 意外だな、凄く怒るかと思っていたのに。
「戦闘を避けた理由を、聞いても宜しいですか?」
「それは簡単な話だよ。過去二回の探索隊は魔物によって殺害された事になっている」
「でも実際は君達の恩人、ゼノさんが魔物を装って殺害していた。
彼は、敢えて一人逃がす事で、魔物の仕業だと認識させたんだ」
「もし僕達が戦っていたら、それは成り立たなくなる。
それどころか他種族の妨害によって命を落とした…何て事になりかねない」
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/29(水) 19:42:23.97 ID:WQtzLxj90
「人間と他種族の間はとても不安定だ。
他種族の仕業だとでっち上げる事も、有り得ない話しじゃない」
「考え過ぎでは?」
「可能性が在る以上、考慮すべきだよ」
「それは…確かに」
「それに、ゼノさんは此処に来なかった。君達の願いは叶ったんだよ?」
「はい。ブラッズ殿には感謝しています」
……ブラッズ、済まない。
友達だなんて言いながら、利用する様な真似をしてしまった。
「彼が、心配ですか?」
「……心配と言うより、申し訳無いんだ。結局、力を借りてしまったから」
57 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/29(水) 19:44:01.25 ID:WQtzLxj90
「彼が何と言っていたか、お忘れですか?」
『そうか、ゼノが……分かった。コレは俺等の問題でもある。気に病む必要はねえ』
「覚えているよ。でも
「彼が考え、悩み、決断した事では?」
「……っ、そうだね。彼には彼の想いがある。君の言う通りだよ」
「……さあ、戻りましょう」
「うん。あれ、他の皆は?」
「えっ!? いや、これは…気を利かせてくれたと言いますか……」
顔が真っ赤だ…可愛い所もあるんだ。
凄く綺麗な人なんだけど、何時も表情が硬いからなあ、凄く新鮮に感じる。
58 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/05/29(水) 19:45:21.81 ID:WQtzLxj90
「あぁ…僕達を二人っきりにする為に?」
「あっ…は、はい」
「そっか……」
こんな時、何と言えば良いんだろうか?
「あのっ、リナト殿」
「えっ? な、なに?」
「我々は穢れていると、お思いですか?」
「……!! 穢れているのは、この国だ!! 君達の心は、決して穢れてなど無い!!」
「有り難う、御座いますっ…」
……人が人を殺す。そんな事をさせるのは絶対に間違ってる。
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/29(水) 19:47:35.54 ID:WQtzLxj90
彼女達に出会えた事で、僕の想いは更に強くなった。
「さあ、行こう? 皆が待ってる」
「……はいっ」
国に作られた暗殺集団、
彼女達は利用され、挙げ句捨てられた。
何だそれは? 人間のする事か? ふざけるな。
そんな事は、決して許す訳には行かない。
それに、
こんな辛い思いをする人を、これ以上増やす訳には行かない。
60 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/05/29(水) 20:26:30.80 ID:WQtzLxj90
【帰宅・就寝】
「で、獣人族の長老は?」
「死罪じゃろうな」
まあ、そうだろうな。裏で色々やってたみたいだし。
「ゼノはどうなる?」
「お主の従者に決まったぞ」
「はぁ!? 何でだよ!?」
「話しの流れを強引に変え、英雄には従者が必要だと言ったら一発じゃった」
「まあ、生きてんなら、いいか」
「ほう…一日で随分変わったのぉ。友の影響か?」
「そうかもな」
人を変える…そんな力が在るなら。それは、アイツが持ってんだろうな。
「爺ちゃん、今日は疲れた。寝る」
「うむ、ゆっくり休め」
61 :
◆B/NHzKmv/c
[sage]:2013/05/29(水) 21:48:57.74 ID:WQtzLxj90
すいません、急に浮かばなくなりました。
依頼を出して、時間をかけて初めから書き直します。
読んでくれた方、本当に申し訳ありません。
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/29(水) 21:59:47.54 ID:Ud9gH6eQo
マジか…
話に詰まるのこれで2回目だし、あんまり凝った設定にしない方がいいんじゃね?
吸血鬼位のノリが良い気がするよ
63 :
◆B/NHzKmv/c
[sage]:2013/05/29(水) 22:23:39.77 ID:WQtzLxj90
>>62
本当にその方が良いみたいです。書き始めはそうでも無かったんですが、途中から急に考え過ぎてしまいました。
64 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/29(水) 22:24:12.73 ID:ARvdp/0Qo
設定は良いと思ったんだがなぁ…残念だ。
ま、仕方ないな。次に期待してるわ
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/29(水) 22:44:37.71 ID:+cUaMcx6o
期待してます
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/05/29(水) 23:42:33.28 ID:4iSIu9Kro
見つけたと思ったら終わっていた
なにをいってるかry
67 :
◆B/NHzKmv/c
[sage]:2013/05/31(金) 09:56:01.47 ID:2N9Iz5EI0
ありがとうございます。
多少時間がかかると思いますが、最後まで書き終えたら同じタイトルでスレたてて投下します。
ありがとうございました。
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