勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編

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154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 00:28:35.06 ID:UUFJL7Z1O
次で三十章か。数字的にも展開的にもキリが良さそう……終わらないでほしいが。
待ちに待った月末です。みんな待機
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/31(木) 02:57:58.14 ID:cPo0pqpDO
もうずっと待機しっぱなしだから風邪ひいちゃったよ…
156 :1です [sage]:2016/04/06(水) 20:36:57.74 ID:lWuQiZoQ0
年度末・年度初めの忙しさに忙殺されております

休日も何かとイベントがあって書く時間が取れず……

17日の日曜には必ず投下しますんで、しばしお待ちを
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/06(水) 20:45:47.64 ID:bKpZSsZbO

〃∩ ∧__∧
⊂⌒ ( ・ω・)  あー>>1きた>>1
  `ヽ_つ  ,.ヘ_ヘ
      (   )
       u,__っ) ))))

   〃∩ ∧__∧
   ⊂⌒ (・ω・ )  あー。>>1いっちゃう>>1
  .ヘ_ヘ, `ヽ_つ_〜つ
 (   )
 u,__っ) )))))  
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/06(水) 21:21:07.46 ID:ugRn/48yo
生存報告さえあれば余裕で待てる
楽しみに待ってるから焦らずにいつもどおり書いてくれ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/07(木) 00:25:04.40 ID:BtIjWPbSO
きたーーー!
まってる!
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/07(木) 00:59:11.96 ID:PwMVIMDM0
>>156
うおおおおおまってます!
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/07(木) 03:37:53.85 ID:V7oEv30y0
まってる!
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/09(土) 07:00:30.34 ID:Ha5Tqn5YO
皮剥いだ!待ってる!
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/10(日) 14:31:29.08 ID:VdM9x2baO
今週と思ったが来週の日曜日か
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 00:08:49.83 ID:3vfx7njmo
くるでえ…
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 11:19:10.79 ID:GzXa1Wz40
 魔王討伐から二日後の夜、武の国では盛大な祝勝パーティーが行われていた。
 武の国はその位置が魔大陸に最も近いということもあって、諸国の中でも魔王軍との戦闘回数が抜きんでており、それ故に兵の保養、士気の維持を重んじていた。
 その方針が顕著に表れているのが、現在パーティーが催されているこの豪華絢爛な迎賓館だ。
 会場の広さは1000人以上の収容が可能で、その壁や柱は至る所に緻密で華麗な模様が彫刻され、飾り付けられている。
 魔王討伐戦に参加した兵士や神官、出資した諸国の貴族、またその親類等のパーティー参加者は、迎賓館の雰囲気に負けじと華美な衣装に身を包んでおり、会場内の雰囲気をどこまでも煌びやかに高めていた。
 会場内には豪華な食事が並べられた円卓がいくつも設置してあり、参加者はその料理を食み、手に持ったグラスを傾けて大いに歓談している。
 喧騒に包まれる会場の端にはらせん階段が設けられており、そこを上がると会場全体を見下ろせる二階席となっていて、諸国の王など最重要人物達はこちらに列席してパーティーを楽しんでいた。

勇者「ふいぃ〜〜……」

 魔王討伐の成功に最も寄与した人物としてパーティーの当初に皆の前で紹介され、ちやほやの嵐に巻き込まれた勇者は、這う這うの体で喧騒の中を抜け出してようやく一息ついていた。

勇者「ちやほやされるのは嫌いじゃないはずなんだけど、やっぱり今はどうしてもそんな気分になれないなぁ……」

 会場の壁に背を預け、やや沈んだ印象の声を漏らす勇者。
 そんな勇者の様子の要因として挙げられるのは、まず単純に大きな疲れだ。
 『あの男』との死闘で何度も生死の際を彷徨ってから、僅かに二日しか経っていない。
 体の傷自体は回復呪文によりほぼ完治してはいる。だが肉体的・精神的な疲労はまだまだずっしりと勇者にのしかかっていた。
 また、最後に『あの男』と交わした幾ばくかの会話。
 その内容が、勇者の頭の中をぐるぐると回り続けている。
 勇者はふとした瞬間にその内容に思いを馳せ、黙考してしまうため、気持ちが盛り上がり切らずにいるのであった。

166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 11:20:07.72 ID:GzXa1Wz40
 勇者は頭を振って思考を中断し、会場内の様子を眺める。

勇者「みんな笑顔で、楽しそうだ。良かったよ、本当に……」

 勇者は一人そう呟いて、グラスを傾けた。
 本来であれば魔王討伐の立役者である勇者がこのように一人で落ち着ける時間など取れるはずもない。
 共に戦っていた兵士達、英雄に顔を売ろうとする貴族たち、何とか寵愛を受けようと躍起になる娘たち、そんな輩がひっきりなしに勇者の元を訪れるはずだ。
 先ほどまで勇者はそんな連中の相手をしていたことはしていた。だが、その数は魔王討伐を成し遂げた英雄に対するものとしては明らかに少なかった。
 疲れを残す勇者にとっては幸いであったのだが―――『魔王を倒した英雄』としての名声は、実際に魔王の首を持ち帰った武の国兵士長を始めとした魔王城突入班に贈られたのだ。
 勇者の立場は、あくまで最終作戦立案者。つまりは軍師のような立ち位置だ。
 安全地帯で作戦指揮を執っていたとなれば、実際に命を賭し、魔王と対決した英雄に比べ、民衆から贈られる賛美の声も雲泥の差というわけだ。
 作戦決行のあの日―――勇者が実際に何を為したのかを知る者は少ない。
 だけど勇者に不満は無かった。むしろそれで良かったとすら思っていた。

勇者(どうせ、俺に対する賛辞の声は全部「流石、『伝説の勇者』の息子だ」になる……そんなん言われても何か微妙な気持ちになるし、これで良かったんだ)

勇者(ただ、まあ……母さんはその「流石、『伝説の勇者』の息子だ」が欲しかったわけで……この結果に納得してくれないかもしれないけど…それ考えるとちょっとめんどくさいけど……でも、しょうがねえよな……)

 勇者の視線の先では今も人の群れに揉みくちゃにされている武の国兵士長達の姿がある。
 しばしぼんやりとその様子を眺めていた勇者だったが、くいくいと袖を引っ張られる感覚に我に返った。
 引っ張られた方を振り向くと、金髪の美女が勇者の袖をつまんでいた。
 勇者はぼぅとして思わず女性の姿をまじまじと観察してしまう。
 女性は純白のドレスを身に纏っていた。
 ドレスは肩から胸元まで露出している形状で、胸の下から腰元まで布地がぎゅっと絞られてからふわりとスカートが広がっている。
 そのため上半身の美しい体のラインが露わになっているのだが、純白のドレスの所々に散りばめられた薄桃色の花模様によって、下品さよりむしろ清純さが演出されている。
 肩甲骨の辺りまで伸びた金髪は思わず指を通したくなってしまうほどサラリと流れていて、女性の鎖骨の間では穏やかな光を放つ宝石がネックレスに吊られて揺れていた。

戦士「……なんだその鳩が豆鉄砲を食ったような顔は」

 金髪の女性の正体は戦士であった。

戦士「……退屈なら一緒にここを抜け出さないか? 正直、言い寄ってくる男が多すぎて、辟易しているんだ」


167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:21:35.92 ID:GzXa1Wz40
 勇者と戦士は迎賓館を抜け出し、王宮内のテラスにやって来ていた。
 ここはかつて勇者が善の国の神官長と語らった場所で、武の国の町並みを一望できる。
 魔王討伐に沸く町はいつまでも祭りの如き喧騒に包まれていて、絶えることなく揺れる町の灯が何とも幻想的な風景を造り出していた。

戦士「綺麗……」

 ぽつりと呟いた戦士の、思わぬ艶やかさに勇者はどきりとしてしまう。

戦士「……ふん。なんだ、先ほどから呆気にとられた顔をして」

勇者「……いや、いつもと雰囲気が違い過ぎて、その」

戦士「似合わないのは自覚しているよ。武の国の侍女から是非にと勧められて着てみたが、こういうのはもっと淑やかな女性が着るべきだ。こんなに筋肉がついた肩を晒して、みっともないったらありゃしない」

勇者「き、筋肉…? ええ…? そりゃ確かに普通の女の子に比べれば筋肉あるとは思うけど、逆に戦士細すぎるでしょ。何で俺より細いの。そんなんでどうやってあの剣振ってんの」

戦士「私の筋力の高さはあくまで地の精霊の加護によるものだからな。素の腕力ならおそらくお前とそんなに変わらないさ」

勇者(あ、でも素の腕力ちょっと鍛えた男並みにはあるんっすね。コワイ!)

戦士「お前は細いというが、やはり一般的な女性に比べれば段違いに太い。今日パーティーに来ていた貴族の娘たちを見て思い知った……似合わんことはするもんじゃないな」

勇者「そんなことねえって!!」

 少し悲しそうに目を伏せた戦士に、勇者は思わず大声を上げていた。
 戦士が目をぱちくりとして勇者を見る。

勇者「あ、やー、その……」

 勇者はしどろもどろになりながら言った。

勇者「さ、さっきも言ったとおり、俺は全然太いなんて思わないし、むしろ細いと思ってるし、めちゃ綺麗だよ、戦士。俺、戦士見てぼけっとしてただろ? 正直、見惚れてた」

戦士「な、な、」

勇者「戦士カワイイ! 可愛いよホント! カワイイ! カワイイ!」

戦士「ふあ…!?」

 戦士へのフォローのつもりで喋っていた勇者だったが、喋っているうちに恥ずかしくなって、それを誤魔化すために妙にテンションが上がって、何だかどストレートに戦士を褒めちぎりだした。
 戦士の顔が真っ赤に染まる。
 戦士は自分の心臓の音が高まり、全身が一気に熱くなったのを自覚した。

勇者「それに戦士さっき言ってたじゃん! 男に言い寄られまくってるって! モテモテやん! モッテモテやんキミ!! ヒュウー! 僕も惚れてまうわこんなん!!」

 羞恥心を誤魔化すための暴走で謎のチャラ男と化した勇者の言葉に、戦士が敏感に反応した。

戦士「ほ、惚れ…!? お、おまえぇ!! 本気か!? それ本気で言ってるのかオマエ!!」

勇者「本気も本気!! ちょーマジホンキっすよパイセン!!」

戦士「いいのか!? 私も(お前が私に惚れたという事を)本気にするからな!?」

勇者「しちゃいなYO! YOU(自分が魅力的な女の子だっていうのを)本気にしちゃいなYO!!」

 ぷすぷすと戦士の頭から湯気が上がり出す。
 勇者は戦士が女としての自信を取り戻したものだと確信し、自分の仕事に満足感を覚え拳をぐっと握った。

戦士「で、でも……」

 もじもじとしていた戦士は、おずおずと口を開いた。




戦士「お前……エ、エルフ少女のことは、どうするんだ?」


勇者(何故ここで突然エルフ少女の名前が……?)キョトンヌ



168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:24:03.69 ID:GzXa1Wz40
 戦士の問いにキョトンとする勇者だったが、何とか戦士の意図を汲み取ろうと頭をフル回転させた。

勇者(なるほどつまり、戦士はエルフ少女と比べて自分の魅力に劣等感を抱いてしまってるというわけだ。同じ金髪だしね。仕方ないね)

勇者(ならば俺の次なるミッションは戦士がエルフ少女に抱く劣等感を払拭してやる事!!)

 自身の導き出した結論に何ら疑いを持たず、勇者は口を開く。

勇者「エルフ少女? あー、エルフ少女ね。彼女も確かに綺麗だ。まさしく人間離れしていると言っていい。だけどね、僕は君の魅力が決して彼女に劣っているとは思わない。いや、僕個人の好みの話で言えば、むしろ君の方が魅力的だよ。だから、君は(自分が魅力的な女の子だと)自信を持っていいんだ」

戦士(『俺がお前のことを好きだという事に自信を持っていい』だとぉ…!? 何だこいつ、言ってることがまるでスケコマシじゃないか! 自信満々にこんな事……コイツ、本当はすごく女慣れしてるのか!?)

 勇者は己の任務として一度こうすると定めたなら、迷いなくそのための最善手を選択するプロフェッショナルである。
 そこには躊躇いも衒いも無い。

戦士(くそぉ…!! こんなチャラチャラした言い回しは私の大っ嫌いなもののはずだ……なのに何でこんなに嬉しいと思ってしまうんだぁ…!!)

 ぼん! と戦士の頭から蒸気が噴き出し、戦士は思わず勇者から顔を背けて両手で自分の顔を覆った。
 その様子を見て、勇者は己の任務達成を確信し、ぐっとガッツポーズをする。

勇者(エルフ少女……そういえば、彼女は戦いの後に『自分の矮小さを思い知った。私は君の傍にいるには相応しくないようだ』と言い残し、姿を消してしまった)

勇者(彼女には本当に世話になって、まだまだ何の恩返しも出来ていないのに……)

勇者「会いに行かなきゃな、エルフ少女に」

戦士「 な ん で だ キ サ マ ! ! ! ! 」

勇者「ひええ!?」

 ぐわっ! と牙を剥かんばかりに勇者に食って掛かった戦士だったが、すんでの所で思いとどまり、頭痛をこらえるように頭を抱えた。

戦士(わ、わからん…! 何のつもりなんだコイツは…! もしかして私は弄ばれているのか? マジでコイツはプレイボーイのスケコマシで、私はその術中に陥ってしまっているのか…!?)

勇者「…!? …!?」ドキドキ…!

 煩悶する戦士の様子を勇者は恐る恐る伺っている。
 やがて戦士はふぅー、と大きく息をついて、勇者の方に向き直った。

戦士「まあ、いい。どうせ、私の取るべき道はひとつだ」

 戦士は決意に満ちた瞳で勇者を見つめている。
 その表情に、先ほどまでの狼狽は欠片も無い。

戦士「勇者。私はもう、先日のような無様な姿を晒しはしない。お前一人に全てを押し付けずにすむよう、私は強くなる。そして私はお前の傍に立ち続け、お前の為に剣を振り、お前の負担を分かち合う。そのことを今ここで誓おう」

 凛とした瞳に射抜かれ、勇者は面映ゆくなってぽりぽりと頭を掻いた。

勇者「……ありがとう戦士。戦士がそう言ってくれることは凄く嬉しい」

 勇者の顔に笑みが浮かぶ。

勇者「……だけどもう、必要ないんだ」

戦士「必要ない? どういうことだ? むしろ必要なのはこれからだろう。魔界にはまだ、大魔王が控えている。私達の戦いはこれからが本番のはずだ」

 戦士の言葉に、勇者は首を横に振って、はっきりと口にした。

勇者「魔界には行かない。大魔王を倒さずとも世界を平和にすることは出来る。俺達はもう、戦わなくていいんだ」


169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:24:47.79 ID:GzXa1Wz40






     第三十章   勇者、______




170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:25:37.14 ID:GzXa1Wz40
 パーティーも終わって、翌日。
 武の国の会議室には各国の代表とその護衛が再び集められていた。
 勇者は会議室に集まった皆の顔をゆっくりと見回し、言った。

勇者「今回皆様にこうしてお集まりいただいたのは今後の方針について提案をさせていただくためです」

武王「今後の方針……ふむ、魔王を倒したとはいえ、魔界には大魔王が控えている。その大魔王打倒の為の対策をここで練るという訳だな?」

勇者「……いえ、少し違います」

 勇者は首を横に振って武王の言葉を否定した。
 俄かに会議室がざわめき始める。

勇者「大魔王に対する対策、という意味では間違っておりません。しかし、必ずしも大魔王を打倒しなくともこの世界に平和をもたらすことが出来るというのが私の考えです」

善王「具体的には?」

 秩序を重んじる若き王、善王が勇者の話の先を促した。
 勇者は頷く。

勇者「魔物達は魔界というこの世界とは異なる別の世界から来ているということは既に皆さんご承知の通りかと思います。ならば今後魔物の侵略を防ぐのは簡単な話で、要はその通り道に蓋をしてしまえばいいわけです」

勇者「その通り道というのが、魔王城です。魔物達は皆、魔王城を通じてこの世界に現れていました。魔王城の容量からは有り得ない数の魔物が次々と魔王城から現れたのも、これが理由です」

勇者「今回我々は魔王城の制圧に成功し、魔物の出現を防ぐことが出来ている。あとはこの状況を継続していけばいい」

勇者「具体的には現在魔大陸を覆っている『宝術』の結界を維持するために堅牢な結界陣を魔王城周りに敷設する。そして魔王城の奥に発見された『魔界への出入り口と思しき泉』には常に見張りを置く。見張りと軍との通信手段を整備し、有事の際には即座に戦力をそこに投入できるようにする」

勇者「要点を挙げるなら、こんな所でしょうか。折角ですので、今回大まかな役割の分担と費用負担の割合まで決めてしまいたいのですが」

武王「待て待て待て。勇者、ちょっと待て」

 淡々と議事を進行しようとする勇者に待ったをかけたのは武王だ。

武王「何故そんな面倒なことをしなくちゃならん。魔界への入口が判明しているのならやることはひとつだろう。すなわち、魔界への突貫! これまでただひたすらに受け身になって耐え凌いだ我々が攻勢に転じる、今がまさに好機であろう!!」

兵士長「然り。魔王を討伐したことで兵の士気もこの上なく高まっております。大魔王討伐を掲げれば、この勢いは決して衰えることは無いでしょう」

 やはり魔王討伐の中心的役割を担ったためか、武の国の面々には自信が漲っている。
 しかし勇者は二人の熱意を受けてなお、首を横に振った。

勇者「いえ、いいえ。確かに兵達の士気はこの上なく軒昂でありましょう。しかしそれでも人類の力は大魔王には及ばない」

武王「そんなことはやってみなくてはわからん。勇者たるお主がそんなに臆病でなんとする」

勇者「いいえ、わかります。何故なら―――魔界では『宝術』が使えない」

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:26:14.84 ID:GzXa1Wz40
勇者「我々の精霊加護を底上げし、相対的に魔物の力を押さえつける宝術。この宝術無くしてこの度の我々の勝利は有り得なかった。そうでしょう?」

勇者「しかし宝術はあくまで土地の精霊に働きかけ、その力を強めるもの。魔界にはその土地の精霊が存在しない。もしかしたらそれに類する存在はいるかもしれないが、それらがこちらの宝術に反応してくれるわけがない」

勇者「宝術が使えない以上、こちらの勝利は絶望的だ。なんせ、『光の精霊』の加護を得ていた我が父、『伝説の勇者』ですら大魔王討伐を成すことが出来なかったのだから」

勇者「いや、それ以前にそもそも、我々の持つ精霊加護が魔界でも維持できるのかすら疑問だ。もし精霊加護が消失してしまうとしたら、我々は一般の民とそれほど変わらぬ動きしか出来なくなる。勝てる道理が無い」

勇者「だから―――次善の策しかないのです。私の提案では確かに、根本的な解決には至らない。常に魔界の出入り口を監視しなくてはならないという負担も生じる。しかしそれでも――――確かに世界に平和をもたらすことは出来るのです」

 ―――沈黙があった。
 誰も彼もが苦虫を噛み潰したような顔になって、勇者の言葉を飲み込んでいた。
 再び手を挙げて発言したのは善王だった。

善王「魔王城の出入り口を塞いだところで、また別の所に出入り口を造られたら意味がないのではないか?」

勇者「その可能性はほとんどないとみています。理由は、この十年余りの間、魔王城以外の出入り口が造られていないからです。異界への出入り口を簡単に造れるのならば、世界中の至る所に造っていたでしょう。その方が、この世界を侵略する上で遥かに効率がいい」

勇者「それをしなかったということは、大魔王にとっても異界への出入り口を造るということはそう軽々には出来ることではないと、そう推測できます」

 勇者の説明に、善王は納得したようだった。
 勇者は参列した諸国の王の顔を見回す。

勇者「他に質問は…? ……無いようでしたら具体的な段取りの話に入らせていただきたいと思います」


172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:26:46.08 ID:GzXa1Wz40






 ―――こうして、世界には平和が訪れた。





173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:27:44.72 ID:GzXa1Wz40
 抜けるような青空の下、とある教会で二人の男女が多くの人々の祝福を受けていた。
 教会の入口から出てきた男女に、周囲の人々から色とりどりの花びらが散りばめられる。
 男女は幸せそうに笑みを浮かべながら、人々の列の真ん中を歩んでいく。
 女性が身に纏っているのは、純白のウェディングドレスだ。
 つまり、結婚式である。
 新郎の名は武道家。
 新婦の名は僧侶であった。

戦士「おめでとう僧侶!! 本当におめでとう!!」

僧侶「ありがとう! 本当にありがとう戦士!!」

勇者「くわぁーー!!!! ちくしょうがこの野郎うまい事やりやがって!! そういや祝勝パーティーの時もお前らシレっといなくなってたもんな!! この野郎が!! コンチクショウが!!」

武道家「えーいやめろひっぱるな!! 高いんだぞこの衣装!!」

勇者「パーティーの仲間に涼しい顔して手を出すヤリチン野郎め!! おめでとう!!」

武道家「凄まじく人聞きが悪い!! ありがとよ!!」

竜神「うおろろろ〜〜ん!!!! クッソーーー!! 諦めんぞーー!! こら僧侶!! お前武道家を不満にさせたら私がすぐ寝取りにいくからな!!」

僧侶「ま、負けません!! 私、武道家さんの望むことなら何だってしてみせますから!!」

勇者「ファック!! ファァァァァァック!!!! クソが!! 爆発しろ幸せ新婚きゃっきゃうふふ野郎が!!!!」

武道家「痛い痛い痛い揺らすな揺らすな」ガックンガックン!

黒髪の少女(うう…! 来るのだろうとは思っていたけれど、やはり勇者が来ている…! どうしよう、いざとなると緊張するわ……二次会よ、二次会が勝負よ私!!)

戦士(あの娘、確か港町ポルトの……何かすっごく勇者の方見てない?)


 沢山の祝福を受け、最後に新婦はその手に持ったブーケを天高く放り投げた。

 次に幸せを掴む者として、そのブーケを受け取ったのは――――――

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:29:32.80 ID:GzXa1Wz40


 それから、勇者は魔王軍残党の討伐隊として世界各地を転々とした。

 魔物の残党の中で今の勇者を苦しめられるものなど存在せず、勇者は危なげなく魔物を討伐していった。

 世界を回る中で、勇者は多くの事を知った。

 たとえば、倭の国にて、『鉄火』の娘の健在を。

 たとえば、極北の地にて、とある孤児院の存在を。


 更に月日が経過し、魔物の残党もほぼほぼいなくなって、世界はいよいよ平穏を取り戻し――――




 ―――――勇者は、魔王城に立っていた。



175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:30:51.75 ID:GzXa1Wz40


騎士『魔王城の奥にな、底を覗き込んだ時に何故か空が見える変な泉がある。それが魔界への入口だ』

騎士『魔界で精霊加護が維持できるか? ああ、それは大丈夫だ。ただ、魔界には精霊なんてものが存在しねえから、新たに精霊加護を得ることが不可能だ。つまり、魔界ではレベルアップが出来ない』

騎士『魔界って名前のイメージ通り、何ともおどろおどろしい環境で最初は面食らうだろうけどな。食糧さえちゃんと持って行きゃ、生きていく上で問題は無い』

騎士『入口も一方通行って訳じゃないぜ。行ってから、食糧が尽きたりしてやっぱ無理だと思ったら向こうの泉に飛びこみゃいい。それでこっちに帰ってこれる』

騎士『……ここでお前にスーパーサプライズをくれてやろう。実はな、「伝説の勇者」……お前の親父は、魔界で生きているんだぜ』

騎士『なに? 知ってた? 何だよマジかよ。ここでのお前のリアクションに期待してたのによ〜』

騎士『でもまあ、ってことは、さっきの俺の説明を聞いて、お前ならもう気付くよな?』

騎士『そうだ。お前の親父は生きている。なのに、帰ってこない。入口を通りさえすりゃ、こっちの世界には簡単に帰ってこれるのに。つまり、そこには何かしらの理由があるんだ』

騎士『……そして俺はその理由を知っている。「伝説の勇者」の結末を知っている。だが、こればかりは教えてやらない。お前が自分で確認しなきゃ、意味がないからな』

騎士『こんだけ根掘り葉掘り聞いたんだ……行くつもりなんだろ? ……魔界に』



176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:32:54.80 ID:GzXa1Wz40
 勇者の脳裏に浮かぶのは、『あの時』騎士と交わした最後の会話。
 ずっと忘れようと思っていた。
 ずっと、気にしないように努めていた。
 だけど、駄目だった。
 父の墓の前で今でも涙を流し、ふとした時に深いため息をつく母の姿を見るたびに、胸が締め付けられる思いだった。
 だから勇者は決心した。

 魔界へ向かう。
 ただしそれは、大魔王を討伐するためではなく、父を救出するために。
 いつだって帰ってこれると騎士は言った。
 なのに父が帰ってこないという事は、帰ってこれないという事だ。
 なにかのっぴきならない状況に、父は陥ってしまっているという事だ。
 だから、助けに向かう。
 死んだはずの『伝説の勇者』を連れて帰って来て、この物語はようやくハッピーエンドを迎えることが出来るのだ。

勇者「よし…!」

 決意を新たに、勇者は魔王城の奥へと進む。
 見張りの者には既に話をつけてある。勇者を止めようとする者は誰も居ない。
 そのはずだった。

「待て」

 勇者の前に立ち塞がる者があった。
 燃え盛る火炎の如き紅蓮の大剣を背負った金髪の美女。
 勇者の前に立ち塞がったのは、戦士だった。

戦士「……どこに行くつもりだ?」

勇者「……少しだけ、魔界へ」

 逡巡の末、勇者は正直に答えることにした。
 元より、この場所にあってはどう言いつくろっても誤魔化しはきくまい。

戦士「そうか」

勇者「驚かないんだな」

戦士「お前の様子を見て、何か考え込んでるのは分かってたからな」

 戦士もまた、勇者と共に魔物の残党の討伐を行っていた。
 必然、勇者と行動を共にする機会は多かったのだ。

戦士「お前、黒髪の少女の告白を断ったろう」

勇者「……何で知ってるんだ?」

戦士「気になってな。後をつけてしまった」

勇者「プライバシーの侵害だ」

戦士「ごめん。でも、その時に聞いてしまったんだ。お前が『まだ自分の命がどうなるかわからないから』と言って断るのを」

戦士「その時に、色々考えた。正直、お前も私も、もはやこの世界に敵はいない。それほど、突出した強さを私達は得てしまっている。そんなお前が、命を危ぶむほどの状況……考えるほどに、答えはひとつしか思い浮かばなかった」

戦士「だから、お前の様子を注意深く伺っていた。そうしたらこの二、三日で、大荷物の準備を始めたから、ピンときたんだ」

勇者「いよいよもって、プライバシーの侵害だな」

戦士「ごめん。本当にごめん」

勇者「いいよ。それで、何しに来たんだ? お前も、そんな大荷物を持って」

戦士「わかっているんだろう? 私も一緒に連れていけ」


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/17(日) 11:33:55.30 ID:GzXa1Wz40


勇者「駄目だ、って言っても聞かないんだろうな」

戦士「そうだな。流石に付き合いが長い。私の事をよくわかってるじゃないか」

勇者「よくよく考えてみれば、お前も俺の親父―――『伝説の勇者』のことが、大好きだったな。一緒に行きたいと言い出すのも、当然のことだった」

戦士「だ、大好…!? オイ、変な言い方をするな!! 私が『伝説の勇者』様に抱く感情は、あくまで師弟としての敬愛だ!!」

勇者「さあ、行こう。ここから先は命の保障は出来ないぞ。――――俺も、そんな風に誰かに、命を賭す程に想われてみたいもんだ」

戦士「おい待て!! お前! 何か盛大な勘違いをしてないか!!?」




 こうして勇者は新たな旅への一歩を踏み出した。


 この先、どれ程の苦難が待ち受けているのか――――――勇者はまだ、何も知らない。








第三十章   勇者、魔界へ       完






178 : [saga]:2016/04/17(日) 11:36:05.24 ID:GzXa1Wz40
今回はここまで

お待たせして申し訳ない

本当に遅筆じゃが、必ず完結するんで思い出した頃にひょいと覗いてほしいんじゃー


……待ってると行ってくれる皆様のおかげでモチベを保っていられます

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 11:37:53.22 ID:BwAMC0Uco
乙乙
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 11:40:07.66 ID:Z+5vsdO2O

完結までいつまでも待てるぜ
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 11:48:51.92 ID:tSC2oNvBo

これからは二人旅?
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 11:49:54.92 ID:K3/SD62S0

勇者の勘違いは続く…
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 12:12:48.94 ID:bxhkGV5Ao
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 12:27:15.81 ID:hTaIauVho
乙!

勇者はなぁ……もう人格の根底に「自分は『伝説の勇者の息子』でしかない」と刷り込まれちゃってるからなぁ……。
自分に向けられる感情は全て『伝説の勇者の息子』に対するもので、自分に向けられた物じゃないと思いこんじゃってるからなぁ……。

頑張れ、戦士!!
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 12:28:05.92 ID:dF/jgoBCo

まだまだ続きそうで安心した
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 12:33:40.54 ID:l+oSLSFW0
乙!
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 13:07:34.50 ID:FiyxzMw7O
末永く待ってる、完結するまで待ち続ける
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 14:59:14.27 ID:aVIP91pAO
本編の武道家のハーレムルートはいつ頃になるのだろうか?
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 16:46:43.47 ID:gBnkm49bO
おつ!
まだまだ期待!本当にキャラクターの微妙な葛藤描くのが上手いな
過去の作品あるなら教えてほしい
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 17:10:20.24 ID:VNmb5pLbO
おつうううううううう
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 22:16:38.80 ID:p+fyyf5Zo
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 22:34:53.13 ID:3vfx7njmo
うああああああ不完全燃焼卯卯卯卯卯卯卯、
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 23:09:49.01 ID:OJsgyrgxO
乙!
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 23:57:33.34 ID:FPqFEynVO
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/19(火) 07:53:08.71 ID:b54gQEJ0O
エルフ少女はこれでサヨナラではないよな…?
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 04:10:14.04 ID:gb0EChCV0
主人公の武道家はハッピーエンドかぁ…
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/01(日) 01:31:57.76 ID:cdmUlN8Po
GW中に燃料の投下あるかなー
198 :ザコ ◆yCN5hS2KDdU/ [saga]:2016/05/04(水) 14:23:29.90 ID:pr9Q79bJ0
俺の周りを包む緑色のバリアが水の剣の攻撃を防ぐ。

賢者「何!?」

ザコ「そのままタックル!」

賢者「グハッ!」

完全防御を纏ったまま突撃してやった。ダメージはでかいはずだ。
と言っても回復魔法陣の上なので回復するのだが・・・

ザコ(参ったって言わせるの面倒臭すぎるだろ!)

正直このままじゃ終わりそうにない。

ザコ(そうだ!良い事思いついた)ニタァ

ザコ「竜王、今から言うことを勇者に伝えに行ってほしい」

竜王「むぅ・・・この竜王を雑用に使うとは」

ザコ「頼むよ」

竜王「仕方ない、行ってやろう」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 14:23:57.70 ID:pr9Q79bJ0
やばい別スレご送信。恥ずかしいとごめんなさい!
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 15:55:03.22 ID:o8YpcGa40
>>199
お前さんのスレも面白いから安心しなww
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 18:07:05.89 ID:jJrs85cnO
ワロタw
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 19:01:40.43 ID:yduRDv4w0
今年一番にわらったかも
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 21:32:45.90 ID:+OyWE3PCO
これは……わらったww
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/07(土) 20:16:16.49 ID:5Q5/7FLGO
>>199
お陰で面白いスレに出会えたから感謝だわ
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/07(土) 20:17:04.30 ID:Hqx2egrFo
あのさあ……
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:10:25.49 ID:niX7BoNT0
 勇者が魔界行きを決意した、その夜――――とある別れの記憶。

武道家「魔界に行く、だと……!?」

勇者「ああ」

武道家「馬鹿な…! お前は行くつもりは無いと前に散々…!」

勇者「気が変わったんだよ」

武道家「ならば、俺も一緒に…!」

勇者「駄目だ。あんな状態の僧侶ちゃんをほっぽり出していくっつうのか? そんなもん許さねえぜ、俺は」

武道家「く…! どうして、隠していた……お前が最初からそのつもりだったと知っていたら、俺は……」

勇者「だからだよ。今回魔界に行くのは世界の為とか、誰かの為とか、そんなんじゃない。完全に俺のわがままなんだ。それに、誰かを付き合わせるわけにはいかなかった」

武道家「友達だろうが、俺達は…! くそ…! 余計な気を使いやがって…! 友が死地に向かうのに何もできない歯がゆさがわかるか!? そちらの方が、余程酷だ…!!」

勇者「……悪いな。ただまあ、そんなに心配するほどの事はないさ。目的はあくまで親父の安否の確認だ。何も命を賭して大魔王と決戦しようってんじゃない」

武道家「……必ず帰って来いよ。帰ってこなかったら、ぶん殴ってやるからな」

勇者「またベタな矛盾を……予定日、二か月後だっけ? それまでには必ず帰ってくるよ」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:11:24.37 ID:niX7BoNT0
 話を終え、武道家と連れ立って玄関に向かう勇者の背中にかけられる声があった。

僧侶「あら? 勇者様、もうお帰りになってしまうのですか?」

 声をかけてきたのは武道家と晴れて夫婦の関係となった僧侶だ。
 僧侶のお腹はもうエプロン越しにも分かるくらいに大きく膨らんでいる。

勇者「ああ、色々と準備を進めなきゃいけなくてさ。また今度時間見つけてゆっくりしに来るよ」

僧侶「世界が平和になっても、勇者様はお忙しいのですね。何のお手伝いも出来ないこの身が歯がゆいですわ」

武道家「………」

僧侶「どうしたの、あなた? 何だかとても不機嫌な表情」

武道家「……なんでもない。少し部屋で頭を冷やしてくる」

 そう言って武道家は自室に戻っていった。

僧侶「…? 一体何の話をしていたんです?」

勇者「な〜に、くだらない話さ。なあ、僧侶ちゃん」

僧侶「はい、なんでしょう?」

 小首を傾げる僧侶に、勇者はにっこりと笑ってみせる。

勇者「元気な赤ちゃんを産んで、絶対に幸せになってくれよな。君はさっき俺の手伝いが出来なくて歯がゆいと言ってくれたけど、そんな事は全然思わなくていいんだ」

勇者「そんな事より、俺達が頑張って平和にしたこの世界で、君や、武道家や、勿論戦士も…みんなが幸せになってくれた方が、俺は百倍嬉しいんだからさ」

208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:11:51.34 ID:niX7BoNT0






第三十一章  そして彼女は彼の言葉の意味を知る





209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:13:15.11 ID:niX7BoNT0
勇者「……なんて言ってたのに、俺が幸せを祈っていたはずの彼女は俺の傍で一緒に魔界に挑もうとしているのでした。まる」

戦士「何を一人でぶつくさ言ってるんだ」

 しみじみと思いを馳せていた勇者に戦士から呆れ気味の声が飛ぶ。
 勇者と戦士の二人は魔王城の最深部、騎士の話にもあった泉の前にやってきていた。
 二人は共に泉を覗き込む。

勇者「……騎士の言ってた通りだ。水の底に空が見える」

戦士「この場所は魔王城の中だから、水面に空が反射しているという訳ではない。それならば石造りの天井が映るはず」

勇者「うわ〜、何コレすっごい気持ち悪い。水底がないなら何であっちに水が落ちていかないの? 感覚的にすっごい気持ち悪い」

戦士「向こう側に見えているのが魔界の空ということか…? なんだ? 潜ってあっち側に向かえばいいのか?」

勇者「騎士は単純に飛び込んでしまえばいいと言っていたけど……まあ剣とか装備品持ったまま飛び込めば、重さで勝手に沈むわな」

勇者「でも俺が怖いのはそのまま向こう側の空に落ちていっちゃうことなんだよね。空に落ちるとか何それ怖い。どこまで落ちて行っちゃうの? 空の果てはどこにあるの?」

戦士「そんなものは学者にでも考えさせておけ……行くぞ勇者。覚悟を決めろ」

勇者「相変わらずの即断即決……オットコ前やでえ……」

戦士「それは褒めてるのか? 貶してるのか? それともからかってるのか?」

勇者「ほ、褒めてますです、はい」

戦士「そういう褒め方は今後控えろ……私だって女なんだ」

勇者「ア、ハイ、スンマセンッス」

 唇を尖らせてぷい、とそっぽを向いてしまった戦士の反応が予想外過ぎて、勇者は咄嗟に小声で小者のような返事をしてしまった。
 気を取り直して、勇者は自分の荷物の中からロープを取り出した。

勇者「念の為に、俺と戦士の体をロープで繋いでおこう。万が一分断された状態で魔界に放り出されたら危険だからな」

戦士「いらん」

勇者「ほえ?」

戦士「手を繋げばよかろう。分断を危惧するなら、いつ千切れるか分からんロープを使うよりそっちの方が確実だ」

 そう言って戦士は水面から視線を外さぬまま後ろにいる勇者に手を差し出してくる。

勇者(お、オットコ前やでえ……)

 先ほどの一幕で学習した勇者は、今度は感想を口に出さずに心の中に留めておくことに成功した。
 戦士の手を握り、その隣に並び立った勇者は気づかない。
 勇者が男前と評した戦士は、頬を桃色に染めて口をもにょもにょさせていた。

210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:14:35.37 ID:niX7BoNT0
勇者「さあ、行こう」

 勇者と戦士は覚悟を決めて泉の中に飛び込んだ。
 身に纏う装備品や剣の重量に引かれてどんどん自分の体が沈んでいくのが分かる。
 勇者と戦士は固く閉じていた目を開いて水底に視線を向けた。
 水底に見える空は、まだ遠い。
 息もそれ程長く止められるものではない。勇者と戦士は頭を下に向け、水を蹴ることで潜る速度を上げようと試みた。

 ―――瞬間、凄まじい勢いの水流が二人の体を襲った。

 横合いから突如襲ってきた水圧に為すすべなく巻かれ、ぐるぐると回転した二人はあっさりと平衡感覚を手放し、上下左右も分からなくなった。
 それでも繋ぎ合った手だけは離さぬよう必死で握りしめ、二人は互いに無我夢中で水流からの脱出を試みる。
 水圧に耐えて目を見開くと、そう遠くない所に水面があるのが分かった。
 勇者と戦士は頷き合い、二人で必死に水を蹴って水面を目指す。

勇者「ぷあっ!!!!」

戦士「ぷはっ!!!!」

 勇者と戦士は二人同時に水面から顔を出した。
 そして二人とも大きく息を吸って肺の中一杯に空気を取り込む。

勇者「はぁ〜〜びびった!! 死ぬかと思った!!」

戦士「おい、勇者……周り……」

 勇者は戦士に促されて周囲の景色に目を向ける。
 辺りの景色は、泉に飛び込む前の魔王城のものとは一変していた。
 空が見える。赤い空に、黒い雲。
 見渡す限りの、灰色の荒野。

勇者「ここが……魔界……」

 勇者と戦士は泉から這い上がり、息を整えてから改めて周りを見渡した。
 空が赤いのは、既に今が夕焼けの時間帯だからか。それとも、元々空の色が赤いのか。
 見渡す限りの灰色の荒野は、遠く霞む地平線まで続いていて、永遠に広がっているかのように錯覚させる。
 見える範囲においては、生物のようなものは見受けられなかった。
 それは、そう、植物さえも。

勇者「……いや、植物の色も緑とは限らないからな……植物は緑っていう先入観のせいで、見逃しているだけかも……」

戦士「勇者、あれはなんだろう?」

 戦士が指差す先に視線を向けてみれば、地面に一部黒い部分があることに気付いた。

勇者「なんだろう…パッと見、沼っぽく見えるけど……」

戦士「行ってみるか?」

勇者「そだね。他に指標もないし、俺の火炎呪文で濡れたもん乾かしたら行ってみよう。薪がないから呪文出しっぱにせにゃならんくて辛いぜ!」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:15:59.41 ID:niX7BoNT0
 勇者と戦士は黒く見えていた場所に辿り着いた。
 向かっている途中で薄々分かってはいたが、勇者が予測した通り、それは沼だった。

勇者「生き物が生息しているようには見えねーなあ……」

 勇者はしばらく沼の表面を目で伺っていたが、やがて思い切って指を突っ込んでみた。
 ボジュウ!と音を立て、突っ込んだ人差し指に激痛が走る。

勇者「ぐぁっち!!!!」

戦士「大丈夫か勇者!!」

 勇者は慌てて指を抜き、状態を確認する。
 指の表面の、皮膚が焼けただれたようになっていた。

勇者「毒の沼だこれ……それもかなり強い毒性の」

戦士「魔物の肉は悉く毒を持ち、打ち捨てられた魔物の死体はやがて溶けてその周囲の土を腐らせる。その死体の量が大量になると、毒の沼が出来るのだったな」

勇者「ああ、周りを良く見るとそこかしこに毒の沼が見えるな……ってゆーか毒の沼だらけだ。流石は魔物の本拠地、魔界ってところか」

 勇者は自分の指を呪文で回復させると、今度は荷物からあるアイテムを取り出した。

勇者「さて、今度はこれを試そう。戦士、俺の体に触れてくれ」

 勇者にそう言われて、戦士は勇者の肩に手を置いた。
 それを確認して、勇者は手に持ったアイテムを発動させる。
 勇者と戦士の体が空に向かって飛びあがった。
 そして二人は先ほどの泉のほとりに着地する。
 過去に行ったことがある所なら、その場所をイメージするだけで使用者をそこまで飛翔させることが出来る魔法のアイテム、『翼竜の羽』の効果だ。

勇者「よし、使えた。翼竜の羽を使ってここまで戻ってこれるなら、ある程度大胆に探索を進めていって大丈夫だな」

戦士「今回持ってきた食糧の量なら、とりあえず五日間の探索といったところか」

勇者「何もトラブルが無ければ、そんなところだろう。それにしても戦士、そういう計算するの上手くなったよな。前は全然だったのに」

戦士「……勉強したんだよ」

 素直に褒めた勇者の言葉に、戦士はぷいっとそっぽを向いてしまった。

212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:17:14.99 ID:niX7BoNT0
 勇者と戦士はこれから探索に向かう先を、泉のほとりにあった独特な形をした岩を背にして真っ直ぐ進んだ方と定めた。

勇者「北も東も分からんから、とりあえずま〜っすぐ進んでみよう」

戦士「今が昼なのか夜なのかも分からんな……私達の世界を基準にするなら、まだまだ昼前のはずだが」

勇者「そもそも昼とか夜の概念があるのかね」

戦士「それにしても静かだ。魔界というからには、もっと魔物がうじゃうじゃいるものだと思っていたが」

勇者「そうだね。でも、そういうことを言ってると大抵……」

 何気なく周りをくるりと見渡した勇者は、ある一点で視線を止めた。
 土煙を上げながら、何やら巨大な生物がこちらに向かって駆けてきている。

恐竜型魔物「ギャオオオオアッ!!!!」

 その魔物は二足歩行で歩く蜥蜴といったような出で立ちだった。
 ただ、その体がとても大きい。体高は5mを軽く超えていた。
 口には鋭い牙が並び、太い手には頑丈そうな爪が生えている。
 どうみてもその魔物は肉食だった。

勇者「こんな風になっちゃうよねー。すっごい勢いでこっち来てるよ。どう見ても友好的じゃねえなありゃ」

 そう言って勇者が構えたのはそれ自体が青く輝く不思議な金属で造られた神秘の塊、精霊剣・湖月だ。

戦士「涎をだらだら流している。どうも、私達を捕食対象と捉えているのは間違いなさそうだ」

 戦士もまた、赤く輝く精霊剣・炎天を構えた。
 未知の敵を相手にしても、二人に焦りは無い。
 既に二人は歴戦の強者。迫る敵が自分達に及ばないことは剣を交えずとも感じ取れている。
 しかし、油断なく。
 されど、慢心せず。
 散開した勇者と戦士は二人で挟み撃ちする形で恐竜型魔物を迎え撃った。

213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:19:09.77 ID:niX7BoNT0
 さしたる傷も負わず、勇者と戦士は恐竜型魔物を打ち倒した。
 かつては報奨金を得るために魔物を倒せば必ず戦利品を持ち帰っていたものだが、もう今はそんなことをする必要はない。
 魔王討伐に多大に寄与した勇者一行は、各国から手厚い補償を受けている。
 勇者も戦士も、武具の更新や旅に必要な物資についてはほぼ無償で提供を受けることが出来た。

勇者「さて……」

 しかし勇者は倒した魔物の死体の傍に屈みこみ、検分を始めた。
 先ほどの戦闘を通して、少しばかり魔物の様子に違和感を覚えたためである。

勇者「この魔物、途中で明らかに俺達の方が強いってことに気が付いていたはずだ。なのに、逃げずに最後までこちらに向かってきた。言うなれば、そう、必死だった」

 勇者は魔物の腹を湖月を使って斬り開いた。

勇者「内臓の構造はそれ程変わった点は見られない……とすると、これが恐らく胃だな」

 それまでは内臓を傷つけないように腹内から引っ張り出していた勇者だったが、胃と思しき部位を見つけるとそれを躊躇なく切り開いた。
 どろりと胃液らしき粘性を持った黄色の液体が零れだすが、そこには固形物の類は何ら見当たらなかった。

勇者「やっぱり、胃の中がからっぽだ。それに、腹の下に全然脂肪分が無い。余程飢えていたんだな、この魔物」

 あらかた魔物の体を調べ終えた勇者は、風の呪文を地面にぶつけて土を吹き飛ばし、巨大な穴を掘った。
 そこに魔物の残さを放り込み、土を被せて埋める。
 作業を終えた勇者に、戦士が水で濡らしたタオルを差し出した。

勇者「ありがとう」

 勇者はそれを受けとり、血で汚れた体を拭く。

戦士「まだ汚れているぞ」

 戦士はもうひとつタオルを準備し、それで勇者の顔を拭った。

勇者「あ、あり、ありがとう?」

戦士「どういたしまして」

 咄嗟の事にどぎまぎして勇者は戦士に礼を言った。

勇者「さて、ちょっと分かったことがある」

 気を取り直して勇者はそう切り出した。

勇者「魔界ってことで身構えていたけど、魔物の強さは俺達の世界に居た奴と比べても大した違いは無い。むしろ、もっと弱いんじゃないかってとこまである」

戦士「考えてみれば、私達の世界に居たのは異世界を侵略するための尖兵ということだものな。より強い魔物を送るのが当たり前か」

勇者「騎士との戦いを経て、今の俺達はもはや万全の獣王にすら独力で勝ち得る程に加護レベルが上がっている。これからの戦いで魔物相手に後れを取ることはそうそうないだろう」

 戦士が頷くのを確認して、勇者は言葉を続けた。

勇者「ただし、どうもこの辺りの魔物は飢えて気が立っている様子だ。そういう奴は何をしてくるかわからんので、くれぐれも油断しないこと」

戦士「ああ、わかっている」

勇者「それじゃ、行こう。この砂漠みたいに何もないエリアがどれだけ続いてるか分からないけど、ここはさっさと抜け出したいな」

214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:20:43.17 ID:niX7BoNT0
 しかしそんな勇者の願い空しく、いつまでたっても荒野を抜けることが出来ないまま夜を迎えてしまった。
 勇者と戦士は荒野にテントを立てて野営の準備を進める。

勇者「魔界にも夜ってあるんだな」

戦士「星も瞬いているぞ。そしてあれが……多分、私達の世界で言う月なのだろうな」

 漆黒の空、戦士が指差す先には、青く輝く月のような円があった。

戦士「最初は不気味だと思ったが、見慣れると美しくすら思える。何とも幻想的な光景だ」

勇者「辺りが薄青く照らされてる。結構強い光が出てるんだな。わりと辺りを見通せるから先に進めなくもないけど、ま、やめとこう。念の為な」

 テントを組み立ててから、勇者は戦士に中に入るように促した。

勇者「魔界の夜がどれくらいの時間続くのか分からないけど、とりあえず三時間を目処に見張りを交代しよう。まずは戦士が先に寝てくれ」

戦士「わかった」

 そう言って戦士はもぞもぞとテントの中に入っていった。

勇者「う〜、若干肌寒いな…火種になるようなものが無いから火も焚けないし…次に来るときは薪もある程度準備してきた方がいいな」

戦士「な、なあ……」

 勇者がごしごしと手のひらで体を擦って暖を取ろうとしていると、テントの中から戦士の妙に弱弱しい声がした。

勇者「どうした?」

戦士「そ、その……体を拭きたいから、ちょっと中で服を脱ぐけど……」

勇者「ファッ!?」

戦士「覗くなよ!? ぜ、絶対に覗いちゃ駄目だからな!!」

勇者「ファ、ふぁい!!」

 しばらくの沈黙の後、ごそごそと衣擦れの音がテントの中から聞こえてきた。

勇者(あばばばば! まずい! よく考えたら戦士と二人きりで夜を過ごすなんて初めてやんけ!!)

戦士(お、落ち着かない……! 今まではこうやって着替えたりする時は僧侶と交代でしていたから、安心していたけれど……今勇者が破廉恥な行動に出たとしたら、私にはそれを止める術がない……!)

勇者(あかん! 落ち着け! 意識するな!! 心頭滅却すれば火もまた涼し!! うおおおおおおお!!)

戦士(あ、いや……こんな傷だらけの女の体なんて、誰も見たいなんて思わないか……)シュン…

勇者(あかん!! よこしまな気持ちよどっかいけ!! 緊張感を保つんだ!! ああ、もう、敵の本拠地である魔界での初夜でなーにをこんな浮かれポンチな思考に陥っとるのだ!!)

勇者(しょ、初夜ッ!!!?)ボムッ! ←自爆

 結局、勇者も戦士もまんじりともせず翌朝を迎えたのであった。

215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:21:41.82 ID:niX7BoNT0
 翌日―――

勇者「おお、山だ……あれ多分山だよな…?」

戦士「おそらく…な」

 荒野をひたすら進んでいた勇者達は、地平線に浮かぶ山の影をその目に捉えた。

勇者「いや、山なんだけどね…ただの山なんだけどね……それでも、景色に変化が出てきたことがこんなに嬉しいとは……」

戦士「今までまっっったく景色に変化が無かったからな……」

勇者「ずーーーっと無言の時間あったよね……今更だけどあの時間帯何考えてた?」

戦士「何か…色々……お前は?」

勇者「俺も……何か色々……」

戦士「そうか……」

勇者「うん…」

 やがてはっきりと山の姿が目に入ると、心なしか二人とも声が弾み、足取りも軽くなった。

勇者「あの山を越えた先にはさ、一体どんな景色が広がっているんだろう?」

戦士「きっと、私達の知らない、素敵な世界が待っているんだ!」

勇者「どうする? 山の頂上から見た景色がずーーーっと荒野だったら」

戦士「一回帰る。いくらなんでもちょっと心折れる」

 疲れからか、かように妙なテンションのまま、勇者と戦士は謎の山脈に突入していった。

216 :ID加速中 ◆V9LlgfWZs2 :2016/05/08(日) 17:22:24.82 ID:+rzjddhI0
という>>1の妄想でした
これから>>1は回線で首吊って自殺をするそうです
皆さんこのゴミSSを書いた>>1を供養しましょう^^
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:23:16.64 ID:niX7BoNT0
 山の中で勇者を少なからず驚かせるものがあった。
 それは植物らしきものの存在である。
 山の中にはごく僅かではあるが、植物らしきものが群生していたのだ。
 植物だと断言できなかったのは、それが紫や赤など、あまり元の世界では見られないような色のものばかりだったからである。
 しかも、先に進むにつれてその植物らしきものの量はどんどんと増えているように思えた。

戦士「勇者! あれ!!」

 戦士が指差した方を見て、勇者は目を見開いた。
 山の中腹に、果樹園があった。
 どのような実がなっているのかは遠くて確認できない。
 だが、あまりに整然と並ぶその木々の様子からして、明らかにそれは誰かの手によって管理されているものだった。
 逸る気持ちを押さえ、勇者達は慎重に山を登る。
 やがて頂上に出て、景色が急に開けた。
 勇者も戦士も、息を呑む。


 眼下には、町並みが広がっていた。


勇者(町……町だ。本当にあった)

勇者(『魔界』なんて名前から、勝手におどろおどろしい世界を想像していたけど、よく考えたら魔物の中にも人間みたいな奴がいたから、当然そいつらの町とかがあってもおかしくはないんだ)

勇者(予想はしていたけれど、やっぱり衝撃が大きい……それはきっと、天敵だと決めつけていた奴らが、理解し得ないものとして忌避してきた奴らが俺達と同じ『営み』をしているんだってことを見せつけられたから)

勇者(人間と魔物にも、共通する部分があるのだということを、直視せざるをえなくなったからだ)


 勇者と戦士は山を下りる前に、変化の杖で自分達の姿を変えた。
 山の方まで何者かの手が入っている以上、その何者かと下山中に鉢合わせる可能性は少なくなく、その際人間の姿だと何かと問題が生じる可能性があると危惧したからだ。
 顔の造形などは特にいじらず、肌の色を浅黒く変え、そして背中から翼を生やした。
 これは今まで何度か遭遇した魔族の姿を参考にしたものである。

勇者「それじゃ、行こう」

 勇者と戦士は頷き合って、眼下に広がる町へと歩を進めた。

勇者(魔界に生きる者達の町……魔界を統治するという『大魔王』の情報はきっと集まるだろう。だけど果たして、親父の、『伝説の勇者』のことを知っている奴はどれくらいいるだろうか……)
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:24:58.80 ID:niX7BoNT0
 そして、勇者と戦士は無事に下山を終え、遂に町の中へと足を踏み入れた。
 緊張でからからになった喉にごくりと唾液を通して、勇者はきょろきょろと周りを見渡す。
 建造物は色合いこそ人間が作る物と異なるものの、木造建築やレンガ造りに近いものではないかと推測されるものばかりで、魔界特有の何かしらというものを特別感じることは無かった。
 道行く者が実に様々な種族の魔物であることを除けば、そこまで大きくない普通の人間の町と―――それこそ、勇者と戦士の故郷の町と、それほど変わらぬ雰囲気であった。

魔族A「××××××、×××××××?」

勇者「はぅ…!」

 町の住人らしき魔族の男に話しかけられて、勇者の息が一瞬止まる。

勇者「ええと、その、何というか、その……」

魔族A『なんだ、言葉がわからねえのか? おいおい、あんたら何処から来たんだよ』

勇者(え〜っと、なんだろ。多分何処から来たのか聞いてるっぽい?)

勇者「え〜っと、向こう。ず〜と、ず〜〜っと向こう。オーケー?」

魔族A『俺達の言葉がわからねえ程遠くってことは、もしかして西の果てから来たのか? あっちの方は特に荒廃が酷いって聞くぜ。よく生きてここまで来られたな!』

 町の住民らしき魔族の男は豪快に笑うと勇者の背中をばんばんと叩いた。
 勇者の背中から生えている翼は、変化の杖でそこにある様に見せかけているだけなので、変化がばれないか冷や冷やしながら勇者は男の言葉を必死で考察する。

勇者(何か歓迎されてるっぽい? 敵意がないなら、もう少し関わって反応を伺ってみるか…?)

勇者「なあ、この町は何なんだ? 魔界にはこんな町が他にもいっぱいあるのか?」

魔族A『この町を見て驚いているようだな。無理もねえ。今の魔界でこんな豊かな場所なんて、もうここぐらいだからな。それもこれも、みんな大魔王様のおかげだ』

勇者(ん? 今なんか魔王みたいな発音が聞こえたような気が……)

魔族A『ここは試験都市フィルスト。大魔王様が魔界を救う第一歩として始めなさった実験的生活都市さ』

 勇者には魔族の言葉はほとんど理解できなかった。
 ただ何となく、この町の名前がフィルストであることと、この町に大魔王が関わっていることだけは、ニュアンスで掴んだのだった。
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:27:31.44 ID:niX7BoNT0
魔族A『ここまでの道中大変だったろう。俺ん家に来な。ちょうど今日はご近所さん集めてパーティーするところだったんだ。余所じゃ絶対食えないような旨いものを食わせてやるぜ』

 魔族に手招きされ、勇者は考える。
 どうやら魔族はついてこいと言っているようだが……

戦士「勇者…ついて行って大丈夫なのか?」

勇者「わからん……でも、どうやら変化がばれてる様子もないし、友好的っぽいから、大丈夫だとは思うけど……いざとなれば、『翼竜の羽』での緊急離脱も出来るし、行ってみよう。虎穴に入らずんばってやつだ」

 迷った末に、勇者と戦士は取りあえず魔族についていくことにした。
 勇者も戦士も、少しでも何か情報は無いかと目を皿にして町の様子を観察する。
 そのうち、どうにも違和感があることに気付いた。
 どこもかしこも、何か見たことがある気がする。
 物の本によると、初めて見たはずの光景が、かつてどこかで見たことがある様に感じられる現象をデジャヴと呼ぶらしい。
 その類の現象かと思い、勇者がふと戦士の顔を見ると、戦士も何やら難しい顔をしていた。

勇者「もしかして、戦士も何か変な感じしてる?」

戦士「ああ……何なんだコレは。この町は、まるで……」

 戦士は勇者よりも違和感の正体に思い至っている様子だった。
 勇者もまた、戦士の言葉を受けて違和感の正体について考察する。

勇者(まるで…? 戦士は今、まるで、と言ったな。まるで何の様だと、戦士は感じているんだ?)

 勇者は再び町の様子を観察した。
 よく分からない看板が出ている建物があった。おそらくは何かを販売している店だろう。
 看板の文字はまるで読めないが、あの位置なら恐らく道具屋だ。
 あっちの店は、多分宿屋だ。あの位置にあるのなら、多分そうだ。

勇者(――――どうしてそんなことが俺にわかるんだ?)

 ぞくり、と寒気が走るのが分かった。
 空は赤くて、建物は緑で、草の絨毯は紫色で、色彩感覚が狂ってしまっていたから気付くのが遅れたけれど。
 最初にこの町を訪れた時に抱いた感想。
 似ている、と、そう思った。
 自分達の故郷に。『始まりの国』に。
 だけど、気付いてみれば、これは――――似ているどころではない。
 同じだ。
 使われている材料が異なるだけで、この町は自分達の故郷と同じ形をしているのだ。

勇者(そうだ……あの家なんて、まるで俺ん家、そのものじゃないか……)

 ぼうと足を止めてしまった勇者の見ている前で、その家の玄関の扉が開いた。
 じわりと勇者の手のひらに嫌な汗がにじむ。

魔族娘「パパー!! 早く早くーー!!」

 しかしその玄関のドアから飛び出してきたのは、勇者の全く知らない少女だった。
 少女はその肌こそ浅黒くあるものの、魔族特有の翼を持っておらず、人間だと言い張っても通じるような姿かたちをしていたが、ともかく。
 知らない少女であることには変わりない。
 ほっと息をつき、歩みを再開しようとして。
 再び、勇者の息が止まった。

220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:28:10.31 ID:niX7BoNT0









勇者(どうして――――あの少女は俺たちの世界の言葉で喋っている?)









221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:29:27.66 ID:niX7BoNT0
魔族娘「もう、パパ! 早く行かないと××君に料理全部取られちゃうでしょ!!」

父「ははは。慌てなくても大丈夫だよ。ちゃんと料理をとっておくようにAさんには言っておいたから」

魔族娘「だからって遅刻していい理由にはならないでしょ! 急ぎなさーい!!」

父「こらこら待ちなさい。母さんがまだ来てないだろう」

魔族娘「もう! 夫婦そろってのんびり屋なんだから! マーマ! 早くしなさい!」

魔族母「はーい……ごめんなさいね。お待たせしてしまって」

父「気にしていないさ。さ、行こう」

 仲睦まじい様子の家族が、玄関を出て、こちらに向かって歩いてくる。
 少女を真ん中に、父と母と手を繋いで。

魔族A「×××××××××!!」

 目の前の魔族がその家族に声をかけている。
 相変わらず何を言っているのかわからない。

父「×××××! ×××、×××××」

 よく知っている顔をしたそいつは、だけどよくわからない言葉で喋り出した。
 なーんだ、じゃああいつもやっぱり魔族なんだ。
 よかったよかった。
 そうだよ、そんなはずねえじゃん。
 そんな、そんなはず、あんな、あんなアレが――――――





 アイツのはず、ねえじゃんか――――――




222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:30:23.87 ID:niX7BoNT0
戦士「あ、ああ……」

 その光景を見て、わなわなと震えていたのは、戦士だ。
 見間違いではない。
 見間違いであるはずがない。
 だって、その男は、余りに自身の記憶にある姿のままだったから。
 ずっとずっと、忘れることなく胸に思い描いていた姿のままだったから。

戦士「『伝説の勇者』、様……!」

 戦士の前に居た勇者は、歩みを止めてしまっていた。
 見えていないはずはない。
 勇者もまた、同じ光景をその目に収めているはずだ。

戦士「う、あ…! あ、あぁ……!!」

 胸がぎゅうぅ、と締め付けられる思いがした。
 ぼろぼろと、勝手に涙が零れてくる。










 ずっと前を向いたままの勇者の表情は、未だ見えない―――――――――














第三十一章  そして彼女は彼の言葉の意味を知る  完



223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/08(日) 17:30:50.22 ID:niX7BoNT0
今回はここまで
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 17:31:43.71 ID:fCxHLGL/o
はぁ戦士ちゃん可愛い
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 17:34:17.23 ID:1qgRBpU+o
不倫だと…!?

乙乙
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 18:31:50.66 ID:o54mx/eX0
おつ!思ったより早く来てくれてうれしい!
なんか全く想像していなかった展開だ…
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 19:15:33.37 ID:MHtmEjaYo
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 19:19:13.00 ID:GVCWIyb5O
これは凄い展開・・・
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 19:26:16.52 ID:AXIXu4mro
親父が魔界で異種姦して現地妻作ってました

こりゃ、勇者壊れちゃうね
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 19:55:06.98 ID:48kzoR780
魔界がただただ荒廃しきった化物蔓延る世界だったら良かったのにな……
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 20:45:51.17 ID:n9oplx1po
乙乙
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 21:37:17.38 ID:BbYVhHdjO
今回のタイトルは…戦士が騎士のあの言葉の意味ってことか??
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 21:58:10.93 ID:7en5xiNAO
おt
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 22:29:21.97 ID:azC5IDUjo
これどうなってるんだろうな…
正直大魔王が勇者父だと思ってた
先が読めない
続きが気になる
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 00:26:38.53 ID:sDDKimEI0
光の加護ってまだ親父が持ってるんだよね
親族を[ピーーー]とその加護がまるっと手に入る……ふーん
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 00:40:15.44 ID:dy/5eNDL0
魔界で殺しても継承できなかったような…
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 06:59:21.97 ID:8oXFtioTO
おとん記憶失くしたんか
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 16:28:20.65 ID:y2NatuabO
気になるところで切りやがって…
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 19:32:24.00 ID:4xQlZAV5o
しっかし、加護の一部を六分割だけ継承したのにも関わらず猫ちゃん独力で勝てるようになるとか騎士の総加護どんだけあるんだよ
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 19:57:47.02 ID:oZzeymt/o
>>239
配下の四天王目の前で半殺しにされた魔王が泣いて土下座した挙句、配下に加わったらどんだけ
勝手気ままにしてても怒られないくらい。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/09(月) 20:53:33.69 ID:WxUK/Cjq0
お父ちゃんは魔界の精霊(?)の加護とか受けてたりするのだろうか…
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/10(火) 06:47:51.61 ID:heNoNMX0o
>>241
魔界には精霊居ないですよ?
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/10(火) 08:40:25.99 ID:IED6HROBO
人間界の精霊はいないと言ってたけど、「それに類する存在はいるかもしれないが」と勇者が言ってるな
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 21:34:55.70 ID:OkbeLcEJ0
今週も来なかったかー残念
ゆっくり待ってるよ
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/25(水) 11:22:41.18 ID:0lA12qEiO
続き期待
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 22:06:59.85 ID:lUtc63xsO
まだかあああああああああああ
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/05(日) 13:05:45.82 ID:/3YGLIowo
そろそろ一ヶ月か
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 15:37:17.72 ID:JvBq+V4bo
ゆっくり待つべきだろうけど
そろそろ続きを期待しちゃう
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 16:42:47.79 ID:zUP+dKvYO
追いついた
今の人生の楽しみだから頑張ってくれ
250 :1です [sage]:2016/06/19(日) 15:02:34.29 ID:Lk3da4300
ちょこちょこ書き溜めてはおりますが、中々書く時間が取れず、まだちょっと投下できません

来週日曜には何とか……すんませんが、もう少しお待ちください
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 15:03:27.30 ID:C4D+iiUWo
りょ
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 16:29:13.06 ID:ZztksYvVO
待ってた

待ってる
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 17:38:13.85 ID:PFq81vKh0
やったぜ
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