【ヤンデレCD】ヤンデレロンパ〜希望のヤンデレと絶望の兄〜2スレ目

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388 :♪New Classmate of the Dead ◆S7YK1FdmZg [saga]:2019/08/13(火) 02:12:03.64 ID:7zYZ5Cb90



ウメゾノ ミノル
「……それでは不肖梅園穫のマジックショー、これにて閉会です! ありがとうございました!」



 焦ったように青ざめた梅園クンは、慧梨主さんに被せたカーテンで自分の体を隠すように前へ突き出すと、カーテンを後方へ翻した。
 その焦りようから、失敗して逃げ出したのかと思ったけれど――。
 カーテンで遮られた視界が晴れた先の景色は、寝台の上に腰かけた慧梨主さんがいるだけだった。
 さすが、というべきなのかな。最初から最後まで振り回され続けたわけだ。



389 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2019/08/13(火) 02:36:59.18 ID:7zYZ5Cb90



サクラノミヤ エリス
「えっと、その……、私も着替えてきますね」



 終始顔を赤らめていた慧梨主さんはきっと更衣室へ向かったんだろう。
 多分梅園クンも更衣室で着替えているのかな。



コウモト アヤセ
「なんとういか、すごかったね。マジックショー」


ノノハラ レイ
「そうだね。即興にしては中々にいい出来だったんじゃないかな。息もぴったりだったしね」


ノノハラ ナギサ
「どういうこと?」


ノノハラ レイ
「慧梨主さんが姿を見せなくなったのは何時頃からだった?
 慧梨主さんがマジックショー開始直後に唐突に現れた理由は?
 あのマジックを成立させるためにはアシスタントの協力が不可欠なんだけど、それをどうクリアしたのか?
 これらを考えれば、おのずと答えは見えてくるよね」


コウモト アヤセ
「慧梨主ちゃんもグルだった、ってこと?」


ノノハラ レイ
「その通り。ショーの開始直後まで姿が見えなかったのは、多分それまでずっと梅園クンと練習していたからなんじゃないかな。
 それでギリギリまで粘ってたら皆が集まりだしたものだから、あのバラが活けてあった花瓶の台の中にでも隠れてたんだよ。
 ショーが始まってヒンズーロープにみんなの注目が向かってる間に台から出てさりげなくステージに近寄ったのさ。仕掛けのある、バラを持ってね」


ノノハラ ナギサ
「それはわかったけど、その後の三つのマジックにアシスタントの協力が必要ってどうすればいいの?」


ノノハラ レイ
「最初の指錠はちょっとわからないけど、檻からの脱出と人体切断は間違いなく協力してたはずだよ。
 檻に入るには階段が必要だよね? 重要なのは、あの階段なんだ。
 結論から言えば、あの階段の中は空洞で、しかも檻の底部とつながっていてそこから出入りできるようになっていたんだ。
 古典的なトリックだけど、檻を吊るしてカーテンで死角を隠す点と、早着替えの要素を混ぜたのは結構すごいと思うよ。
 それにあの檻、多分錠前ごと上にスライドして開けることもできるタイプの鉄格子だろうから、二回目の脱出も電気消せば簡単だし」


コウモト アヤセ
「人体切断の方は?」


ノノハラ レイ
「これも古典的なトリックかな。あの寝台、腰の部分が開くようになってて、そこから胴体の部分を沈めていけばいいんだ。
 それをカーテンで隠せば、剣で一刀両断したように見せることができる――ってところじゃないかな? 梅園クン?」



390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/13(火) 02:39:24.12 ID:RjxVtfqg0
https://youtu.be/9wCtuPy1v3A
ぶっちぃ!
ぶってぃっぱ
ぶちぃ!
う   

   
 ん
             ち

      ち
    ぃ
         !
391 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2019/08/13(火) 02:45:58.28 ID:7zYZ5Cb90


ウメゾノ ミノル
「概ね正解、かな。それで、楽しめてもらえたかい?」



 貴公子スタイルからいつもの学生スタイルに戻った梅園クンが、入り口から入ってきた。



ノノハラ レイ
「結構ね。道具はどこから仕入れてきたんだい? 流石に全部手作りってわけでも、モノモノマシーン頼みってわけでもないだろ?」


ウメゾノ ミノル
「ステージ下の椅子とかしまうスペースあるだろ? そこにあったのを引っ張り出してきたんだよ。
 あとは色々とモノクマに頼んで」


ノノハラ レイ
「命知らずだねぇ」


ウメゾノ ミノル
「モノクマに正面切って喧嘩売ってる君には言われたくないよ」


ノノハラ レイ
「ははは、ぬかしよる。このマジックショーの本当の目的が、コロシアイ防止策なくせに」


ウメゾノ ミノル
「気づいてたんだ」


ノノハラ レイ
「まぁね。コロシアイのリスクを軽減する為に全員の行動を強制する。なかなかいい考えなんじゃないかな」


ウメゾノ ミノル
「そ、気に入ってもらえて何よりだ。――というわけで、次の企画、ヨロシクね、野々原君」


ノノハラ レイ
「……そうきたかぁ」



 梅園クンが投げてきたトランプのカードを受け止めてしまったボクは、とんでもないキラーパスを渡されたみたいな気分になった。



392 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2019/08/13(火) 02:48:52.92 ID:7zYZ5Cb90


――長らくお待たせいたしました。本日はここまで。


――次回の更新も未定ですが、早めに二章を終えたいところですね……。


――それでは、おやすみなさい。



393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/14(水) 02:02:19.18 ID:3kKgh9i20

   っ

  ち
                  い
        !ぶ
   っ

  ち
                  い
        !
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 07:59:15.80 ID:RZLJ1tVv0
乙です
梅ちゃんやっぱいいキャラしてるわ
395 : ◆S7YK1FdmZg [sage saga]:2019/10/13(日) 00:51:27.74 ID:WEbGIDQM0


ノノハラ ナギサ
「お兄ちゃん、その――」


ノノハラ レイ
「わかってるよ。明日は渚と過ごすと決めたからね。企画は明後日にするよ。何をするかはもう決めてあるしね」



 心配そうにボクを見つめる渚の顔が、すぐに明るくなる。わかりやすいなぁ。



ウメゾノ ミノル
「ふーん、もう思いついたんだ。何する予定なの?」


ノノハラ レイ
「お・し・え・な・い」


ウメゾノ ミノル
「えぇ〜? いいじゃん、ケチ」


ノノハラ レイ
「無茶振りされたことに関して、怒ってないとは言ってないよね?」


ウメゾノ ミノル
「O.K. その怒りはもっともだったね。だからそんなに凄まないでくれよ」



 そんなに怖い顔してるかな、今のボク。
 ……あぁ、そっか。そのセリフはボクじゃなくて――。



コウモト アヤセ
「……」



 綾瀬に言ってたんだね。


396 : ◆S7YK1FdmZg [sage saga]:2019/12/16(月) 00:24:15.04 ID:dmIstCaD0


ノノハラ レイ
「落ち着きなって綾瀬。梅園クンだって悪気があって言ったわけじゃないわけだし」


コウモト アヤセ
「悪気のあるなしじゃないと思うけど?」


ノノハラ レイ
「一応、梅園クンなりにも、ボクに期待してくれているってことでしょ?
 だったらそれに応えてあげないとね」


ウメゾノ ミノル
「微妙に上から目線なのがちょっと気になるけど、そこまで言うんだったら楽しみにしてていいんだね?」


ノノハラ レイ
「勿論。珠玉のエンターテイメントを用意すると約束しようじゃないか」


コウモト アヤセ
「……無理や変なことだけは絶対にしないでよ?」


ノノハラ レイ
「大丈夫大丈夫。その辺は任せておいてよ。大船に乗った気分でさ」


コウモト アヤセ
「その船、泥でできてない?」


ノノハラ レイ
「鉄製です」


ウメゾノ ミノル
「錆びてない?」


ノノハラ レイ
「キミ等一々ツッコミがキレッキレすぎない?」



 流石にボクでも傷つくことぐらいあるんだぜ?



オモヒト コウ
「お前らいつまでも残ってないで早くリフトに乗りに来いよ。何時まで待たせるんだ」



 どうやらボク等が話してる間にお開きになっちゃったみたいだね。
公のセリフを鑑みるに、皆戻ろうとしてるみたいだね。



ノノハラ レイ
「はいはい、わかったわかった。行くよ。待たせて悪かったね」



 ゴンドラリフトに乗り込んで本館に戻った。
 帰り道でも興奮やまぬ皆の喧騒をよそに、ボクが考えているのは明日からの事。
 どうしようかな?



ノノハラ ナギサ
「……」



 さっきからずっと渚がボクを見てるのは、気のせいじゃないよね。



397 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 14:10:43.12 ID:Ui+L236p0



 本館、エスポワールの自室へ向かった。



ノノハラ レイ
「明日は渚とデートで、明後日には交流会……。明々後日の予定は……、まぁ、増田クンか公に任せればいいでしょ」



 今後の予定を寝る前に言葉に出して反芻する。これが予定を先延ばしにしない一番の方法なんだよね。
さーて、明日から忙しくなるわけだし、英気を養うためにもぐっすり寝る! お休み!
 ベッドに寝そべり、目を瞑って、枕と布団の柔らかさに身を委ねた。
 今日はいい夢が見れそうなんだよね。良いものを見たんだから、さ。




398 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 14:41:14.94 ID:Ui+L236p0



――



???
「もういい。最初からこうすればよかったんだ……」



 やめて……。



???
「こうすれば、もう誰にも邪魔されないんだ……」



 やめて! もうやめて! お願いだから!



???
「ずっとずっと、一緒に居ようね。お兄ちゃーん!」



――



399 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 15:39:10.31 ID:Ui+L236p0



 絶叫と共に跳ね起きた。
 心臓は頭の中にも響くくらいドクドクいってる。



ノノハラ ナギサ
「また……、あの夢……」



 ここにきてからずっと、あたしは同じ夢に魘されている。
 お兄ちゃんに包丁を振り下ろし、突き刺して――!



ノノハラ ナギサ
「どうして……。あたしはお兄ちゃんを殺すなんて、そんなこと……!」



 ありえない。あの女共にならともかく、どうしてこのどす黒い感情をお兄ちゃんにぶつけなきゃいけないの。



ノノハラ ナギサ
「酷い汗。シャワー浴びて着替えないと……。風邪なんてひいたら、お兄ちゃんに迷惑かけちゃう」



 このホテルの防音加工には本当に感謝しなきゃ。
 家ならさっきの声、絶対にお兄ちゃんに聞こえちゃってるし。
 今の時刻から考えても、朝のアナウンスにはまだ時間がある。
 これからの予定をお兄ちゃんにメールで送るのも、シャワーを浴びてからでも遅くない。


400 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 16:36:58.51 ID:Ui+L236p0


 熱いシャワーを浴びながら、あたしはあの恐ろしい悪夢について考える。
 最初はいつも通りの日常。朝ごはんを作って、お弁当を作って、お兄ちゃんと一緒に学校に行って、晩ごはんを作って、お兄ちゃんと他愛のないお喋りをして――。
 ここで目が覚めれば、幸せな夢なのに。その後必ずいつも、いつもいつもいつもいつも、あの二人が邪魔をする。
 お兄ちゃんは学校に行く時間をずらすようになった。その隣にはいつも綾瀬がいた。
 帰宅部だったお兄ちゃんが園芸部に肩入れするようになった。
 綾瀬と、今はもうお兄ちゃんに忘れられたあの女の、あるいは、それらに関する話が多くなった。
 今も胸の中に渦巻いているどす黒い感情が、幸せだった日常を侵してくる。
 だから、幸せを取り戻すために、泥棒猫共を殺した。
 爽快だった。これであたしとお兄ちゃんの邪魔をする障害がいなくなったと思うだけで、あたしの感情は真っ白になる。
 ここで目が覚めても、まだいい。人殺しをしたという罪悪感はあるけど、そんなものであの頃の幸せは上書きできない。できるわけがないし、させない。
 問題は、続きがあるということ。質の悪いことに、最悪な結末を迎えることにも気づかないで、夢の中であたしはお兄ちゃんのもとに駆け寄るんだ。


401 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 17:13:09.30 ID:Ui+L236p0



 まずは真相を知ったお兄ちゃんからの拒絶。これはまだ理解できる。誰だって人殺しには近寄りたくない。お兄ちゃんだって普通の人間なんだ。
 ――それが、夢から醒めたあたしの感想。でも夢の中のあたしはそうじゃなかった。
 お兄ちゃんならあたしを拒絶なんてしない。そんな、根拠と言えば“兄妹だから”というだけのあやふやな自信だけを頼りに、あたしはお兄ちゃんに全てを話した。
 邪魔者を抹殺し、証拠も隠滅したこと。嬉しそうに喋る夢の中のあたしに、現実のあたしは吐き気がする。
そんなサイコパスがお兄ちゃんの一番嫌いな人種だってどうしてわからないのかな。



402 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 17:19:04.14 ID:Ui+L236p0


 次に二度とお兄ちゃんに邪魔者が近づけられないように、夢の中のあたしはお兄ちゃんを監禁する。
 これも一応、共感できる。邪魔が入る余地もない、お兄ちゃんとあたしだけの世界。お兄ちゃんの全てをあたしのものにできる。なんて素敵。
 それだけの力があるなら、と現実のあたしの頭の中をよぎるときもあるけど、すぐに掻き消える。お兄ちゃんは自由が好きなんだ。
 でも監禁する為に縛り付けるまではいい。足を砕くだけ砕いて、あとは何の治療もしないなんて夢の中のあたしは何を考えていんだか。
 お兄ちゃんを傷つけるなんて、夢の中のあたしであっても許せない。
 ついでにいえば、食事もそうだ。いくら手料理を食べさせたいからと言って、どうして脅すの? 馬鹿なの?
 夢の中のあたしながら死んでほしい。できるなら、この手で殺してしまいたい。それでこの悪夢が覚めるのなら、終わるのなら、あたしは喜んであたしを殺す。


403 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 18:04:08.52 ID:Ui+L236p0



 最後に、お兄ちゃんはあたしよりも綾瀬を選んで、それをあたしは恨んで、お兄ちゃんを包丁で殺す。
 もう擁護できない。したくない。百歩譲って、綾瀬を選ばれたのが癪だというのは認めるけど、それがどうしてお兄ちゃんを殺すことにつながるんだか。
 このころになってくると、夢の中のあたしと現実のあたしの動きと意識にずれがでてくる。
 夢の中で喋り、動いているのは夢の中のあたしだけど、夢の中で考えているのはあたし、という感じ。
 だから、夢の中のあたしが、お兄ちゃんを殺そうとするのを、現実のあたしは心の中で、どうにかして止められないものかと叫ぶ。文字通り必死に。
 たとえそれであたしが死んでも構わないと思ったところで、結果は何一つ変わらない。
 夢の中のあたしの体は現実のあたしの思い通りにならず、結局夢の中でお兄ちゃんは殺される。ほかでもない、あたしの手で。
 お兄ちゃんを殺してしまった。救えなかったという実感を最後に、ようやく悪夢から解放され、あたしは目を覚ます。


404 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 20:03:17.06 ID:Ui+L236p0



 一回ならまだいい。一時の気の迷いだと自分を慰めることができる。ただの悪い夢だと言い訳ができる。
 二回目はぞっとした。内容の過程も結果もまるで同じで、詳細まで覚えているなんて普通じゃない。けど、動機ビデオや脅迫文でそれどころじゃなかった。
 三回目は学級裁判の疲れもあって投げやりな気分になっていた。それでもお兄ちゃんを殺したのは文字通り夢見が悪い。
 そして四回目。もう寝るのが怖い。大好きなお兄ちゃんをこの手で殺してしまうなんて、夢の中でも耐えられない。
 今まではなんとか取り繕えてこれた。あたし自身びっくりするくらい顔に出さなかったと思う。
 お兄ちゃんにさえも、“ちょっと無理してるんじゃない?”ぐらいにしか思われないほどに。でももう流石にだめかもしれない。
 でも、お兄ちゃんにだけはこのことを知られるわけにはいかない。夢の中の話とはいえ自分を殺すような人間なんて、距離を取りたいに決まってる。
 おまけに、お兄ちゃんと綾瀬の距離がここでの生活を通じてやけに近い。それこそ、あの夢の中と同じように、正夢かと錯覚するほど。
 だからこそ、このどす黒い感情は絶対に抑えなきゃいけない。でないと、本当に正夢になってしまいそうな気がする。
 幸いなことに、今日は一日中お兄ちゃんと一緒に居られる。あたしが強めに出れば、二人きりになれるかもしれない。
 そうすればきっと、あたしはこの感情を白く薄めることができる。お兄ちゃんを大好きなあたしでいられる。夢ではなく現実の、本当のあたしでいられるんだ。



405 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 20:22:43.31 ID:Ui+L236p0


 ちょっと長く考え事しすぎちゃったかな。のぼせて変な気持ちになってる。
 早くでなきゃ。そろそろ朝のアナウンスが鳴る時間だし。



――「キーン、コーン…カーン、コーン…」



モノクマ
「えーと、希望ヶ峰学園候補生強化合宿実行委員会がお知らせします。
 オマエラ、グッモーニン!本日も最高のコロシアイ日和ですよー!
 さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょ〜!」



 本当に、長く考えすぎてのぼせちゃったみたい。こんなにも長くシャワーを浴びるなんて。
 急いで着替えなきゃ。髪も乾かさないと。メールはドライヤー片手にすればいい。



『今日一日はあたしの手料理を味わってほしいからそれまで何も食べないでくれるかな?』



 ……ちょっとトゲのある文面かもしれないけど、これでお兄ちゃんにはあたしの意図を汲んでくれるはず。
 メールを送信して、と……。献立、考えなきゃ。
 絶対にお兄ちゃんを満足させるんだ。そして――。
 そして、あの幸せを、あたしとお兄ちゃんとの日常を取り戻すんだ。絶対に。



406 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/02/23(日) 20:26:46.93 ID:Ui+L236p0


――本日はここまで。


――大分間が開いてしまいましたね。どれもこれもインフルエンザとコロナってウイルスのせいなんだ。ただの詭弁ですが。


――明日も更新、できればいいなぁ、とは思っておりますが。


――それでは、おやすみなさい。


407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/24(月) 07:30:04.51 ID:t0cI0+7+0
渚ちゃん…
乙です
408 :Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/03/15(日) 23:25:01.41 ID:RTRt0YmW0



ノノハラ レイ
「餓死しそう」


オモヒト コウ
「そこまでかよ」


ノノハラ レイ
「っていうかボク一人だけ絶賛絶食中の目の前で飯テロが起きてるんだぜ。今にも胃と小脳が暴動おこしそう」


ウメゾノ ミノル
「I’m hungry. から I’m angry. になるわけだ」


ノノハラ レイ
「その口をあんぐりさせたまま戻らなくさせてやろうか。具体的に言うと顎関節を外すことで」


ウメゾノ ミノル
「ヒエェ」


マスタ イサム
「下手に近寄らない方がいい。目がマジだ」




 ……献立を考えてたら遅くなっちゃったけど、どうしよう。お兄ちゃんに悪いことしちゃったかな。



409 :Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/03/15(日) 23:26:51.46 ID:RTRt0YmW0



ノノハラ レイ
「あ、おはよう渚。早速で悪いけど早くご飯作って? ここまで待たせるんだから、期待して良いんだよね?」


ノノハラ ナギサ
「任せてよ。腕によりをかけるんだから!」



 ……ハードル高くしちゃったかな。お兄ちゃんの限りなく無表情に近い笑顔が逆に怖いけど大丈夫、大丈夫。平気平気。
 お兄ちゃんのこれくらいの要望なら十分に応えられるから。あたしに振り向いてもらうんだから。



410 :Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/03/15(日) 23:35:35.74 ID:RTRt0YmW0



ノノハラ ナギサ
「はい、召し上がれ」



 朝は時間をかけずにトーストにベーコンと目玉焼きをのせる。
 トーストにはバター、目玉焼きには醤油で味付け。



ノノハラ レイ
「ムグムグ……、いつもの朝食だね。家で食べてた時が懐かしくすらあるよ」


ノノハラ ナギサ
「……早くここから出られればいいね」


ノノハラ レイ
「そうなんだよねぇー。モノクマがねぇー、尻尾掴ませてくれないんだもんさぁー。
 嗚呼嗚呼困った困った」



 うん。お兄ちゃんも味に納得してくれたみたい。やっぱりお兄ちゃんの食べるご飯はあたしが作ってあげないと。



411 :Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/03/15(日) 23:57:28.91 ID:RTRt0YmW0


ノノハラ レイ
「ごちそうさまでした」


ノノハラ ナギサ
「お粗末様です」


ノノハラ レイ
「それで、この後はどうする? 渚はこれから何をする予定なのかな?」


ノノハラ ナギサ
「腕によりをかけてお昼と晩御飯の仕込みをしようと思うの。
 その、お兄ちゃんは暇しちゃうかもだけど」


ノノハラ レイ
「んー、なら渚が調理してるとこ見てようかな。
 家だとキッチン狭いから二人立つと身動きとれなくなっちゃうし」


ノノハラ ナギサ
「自分で言うのもあれなんだけど、見てて面白いことなんてないと思うよ?」


ノノハラ レイ
「いいのいいの。普段見れない光景を見れるのが面白いんじゃない。
 気配は消しておくから、ボクのことは気にしないでいいし」


ノノハラ ナギサ
「……ひょっとして、あたしの料理も真似しようとしてる?」


ノノハラ レイ
「あはは。バレちゃった? いいじゃん減るもんじゃなし」


ノノハラ ナギサ
「――まぁ、別にいいけど」



 ……お兄ちゃんにご飯を作ってあげる機会が減っちゃうじゃないなんて言いそうになっちゃった。危ない危ない。



412 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/03/16(月) 00:46:16.18 ID:Apz+JGTo0



ノノハラ ナギサ
「〜♪」


ノノハラ レイ
「……」



 お兄ちゃんの視線を感じるけど、これはこれで新鮮、なのかな?
 こんなに広いキッチンを使えるのは贅沢……って言いたいんだけど、ここに死体があったって思うとちょっとね。
 凶器になった左端の包丁は流石に使いたくない。洗ってあったとしても、別のものに変わっていたとしても。気分的に。
 いけない。そんなことで落ち込んでちゃ美味しい料理なんてできないじゃない。



ノノハラ レイ
「……レシピとか、あるじゃん」


ノノハラ ナギサ
「あるね。あたしはもう体が覚えてるからもうあまり見ないけど」


ノノハラ レイ
「調味料をさ、“適量”入れるとかって書かれてる時とかあるじゃん」


ノノハラ ナギサ
「あるね。大体これぐらいかなーって感覚で入れるけど」


ノノハラ レイ
「適量って何なんだよ適量ってよォー! その料理に適した量がわからねェーからレシピを参考にしようってのによォー!」


ノノハラ ナギサ
「ほら、味の好みって人それぞれだから、ね? 一人前はこの量だってきっちり決めちゃうと色々とうるさいんだよ、きっと」


ノノハラ レイ
「そっか、そりゃそうだね。利権とか色々絡んできそうだし」



 お兄ちゃんが話を切り出してくるのはあたしの手が空いてるときだけだし、やっぱりお兄ちゃんなりに気遣ってくれてるのかな。
 今日のお兄ちゃんは感情の起伏が激しいみたいだけど。今日はそんな気分なのかな。


413 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/03/16(月) 01:23:23.60 ID:Apz+JGTo0


ノノハラ ナギサ
「うん、完成!」

 お昼は豚バラ玉子あんかけ炒飯。晩御飯のビーフシチューも大体出来上がり。後はじっくり煮込むだけだし。
 お昼から晩御飯までの間は何しようかなぁ。お兄ちゃんと何を話そうかなぁ?



ノノハラ レイ
「わぁお、美味しそう。……うん、渚の動きは大体覚えたぞ。レシピは暗記できるし後はそれをボクの体格に最適化させれば――」


ノノハラ ナギサ
「あたしがいないときはお兄ちゃんが作ってもいいけど、あたしがいるときはあたしの料理を食べてほしいな?」


ノノハラ レイ
「うーん、ボクもいい加減妹離れをしなければならない気がしてきたぞぅ?」


ノノハラ ナギサ
「だーめ。まだまだお兄ちゃんはあたしから離れちゃ危なっかしいところがいっぱいなんだよ?」



 お兄ちゃんは芯があるように見えて、意外とその場のノリと勢いに流されやすいところもあるし。
 あたしが近くで見てないと、どこかへ行ってしまいそうになるんだから。


414 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/03/16(月) 01:24:07.44 ID:Apz+JGTo0



ノノハラ レイ
「そう言えば、さ」


ノノハラ ナギサ
「うん?」


ノノハラ レイ
「腕によりをかけるって言ってた割には、今日は得意料理作らないんだね」


ノノハラ ナギサ
「……何のこと、かなぁ?」


ノノハラ レイ
「唐揚げとか、ロールキャベツとか、オムライスとか、八宝菜とか。
 まぁ、新しいジャンルを開拓するっていうのもアリっちゃアリなんだけどさ。朝食があれだったからなんか恋しくなっちゃって」


ノノハラ ナギサ
「……っそ、それは、ま、また今度ね。うん。また、今度……」



 ――なんでここで夢の内容を思い出すのかなぁっ! あれは夢! 夢なの!
 現実じゃない! 本物じゃない! あれはあたしじゃない!


415 : ◆S7YK1FdmZg [!red_res saga]:2020/03/16(月) 01:27:38.18 ID:Apz+JGTo0



 お兄ちゃんを殺してしまうようなあたしなんて死んでしまえ!



416 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/03/16(月) 01:30:43.67 ID:Apz+JGTo0


――本日はここまで。


――いい加減さくっと非日常編に行きたいなぁ! 何回目だろうなぁこのセリフ!


――若干のダイジェスト感やキングクリムゾン感はご容赦くださいませ。


――それでは、おやすみなさい。


417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/20(金) 19:50:52.30 ID:ovvn3wjI0
乙です
渚ちゃん結構キてるなあ…
418 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/25(土) 22:22:08.85 ID:BpiXwtOd0



ノノハラ レイ
「――ねぇ、ちょっと。渚? いきなりボーっとして、本当に大丈夫?」



 気が付くと、お兄ちゃんがあたしの顔を見つめていた。



ノノハラ ナギサ
「えっ?! あ、う、うん。大丈夫大丈夫。平気平気」



 いけないいけない。うっかり弱音を吐くところだった。
 ましてあの夢の事なんて絶対に言えない。言えるわけがない。



419 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/25(土) 22:28:49.36 ID:BpiXwtOd0



ノノハラ レイ
「本当に大丈夫な人は自分からそんなセリフ言わないの。
 普通はね、そういう質問されたときは“どうしてそんなこと聞くの?”って聞き返すから」


ノノハラ ナギサ
「あぅぅ……」


ノノハラ レイ
「心配してるんだよ? これでもかなり」



 どうしよう。どうやってお兄ちゃんに納得させよう。いっそのこと全部正直に言っちゃおうかな。
 ――ダメ、それだけは絶対に嫌。お兄ちゃんに嫌われちゃう。
 でもお兄ちゃんに嘘を言うのもやだ。あたしはお兄ちゃんに嘘なんて吐きたくない。
 だから、あたしにとって都合のいい事実だけ、言う。



ノノハラ ナギサ
「ごめんね、最近ちょっと寝不足で……」



 これは嘘じゃない。あんな夢の所為で寝るのが怖くなって、夜はベッドに横たわっているだけの無駄な時間を過ごす時間になっている。
 ――結局は眠気に負けて、寝ちゃうんだけど。


420 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/25(土) 22:30:24.08 ID:BpiXwtOd0



ノノハラ レイ
「……ふぅん、そっか。駄目だよ、ちゃんと寝ないと。寝不足は色々なものに対して大敵なんだよ?」


ノノハラ ナギサ
「お兄ちゃんには言われなくないな、そのセリフ」


ノノハラ レイ
「たっはー! その返しされると何も言えないぜ、ハハッ!
 ……でもおかげでよくわかったよ。寝不足の原因はボク絡みなんだね?」



 ――まるで心臓を氷の手で鷲掴みにされたような寒気がした。



421 :♪Rise of the Ultimate ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/25(土) 22:52:11.47 ID:BpiXwtOd0



ノノハラ ナギサ
「な、なんのこと、かなぁ?」


ノノハラ レイ
「動揺がモロに顔に出てる時点で自白してるようなものだけど、それでもすっとぼけるってことは……。
 そっか、よっぽどのことなんだね。じゃぁボクがこれ以上関わるのは逆効果かなぁ?」


ノノハラ ナギサ
「ち、違うの、お兄ちゃんは、全然悪くなくて、その、あたしが」



 これ以上お兄ちゃんに距離を取られたらあたしの心が耐えられない。
 だから、ここは何としてでもお兄ちゃんをつなぎとめておかないと。


422 :♪Rise of the Ultimate ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/25(土) 23:41:17.93 ID:BpiXwtOd0



ノノハラ レイ
「渚? どうしたの?」


ノノハラ ナギサ
「あ、あのね。お兄ちゃん。最近、その、綾瀬さん、と一緒じゃない?」


ノノハラ レイ
「しょうがないじゃん。何か他の皆がちょっと冷たいって言うか連れないって言うか、とにかく相手してくれないんだもん」


ノノハラ ナギサ
「お兄ちゃん、自分のことを省みることって大事だと思うの」


ノノハラ レイ
「はて? ボクのこれまでの行動の何処に不味いところがあるのかな?」


ノノハラ ナギサ
「……お兄ちゃんに自覚がないならしょうがないから、とりあえずおいておくね。
 とにかく、あたしが言いたいのは、その、あたしがお兄ちゃんの傍に居たいなって」


ノノハラ レイ
「んー、不味いところが気になるところだけど、そう言うならそういうことで良いよ。
 で、ボクの傍に居たいというのは……、綾瀬抜きでってこと?」


ノノハラ ナギサ
「……うん」


ノノハラ レイ
「今日だけじゃなくて?」


ノノハラ ナギサ
「……、……うん」


ノノハラ レイ
「いいよ、そういう日を作ろう。そういえば最近は構ってあげてなかったもんね」


ノノハラ ナギサ
「えへへ、ありがとう、お兄ちゃん」



 ――本当は今日からずっとがいいな。
 なんて喉から出かかった言葉を何とか飲み込めた。
 悔しいけど、綾瀬と一緒に居るお兄ちゃんは本当に楽しそうで、笑顔が眩しいから。



423 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/25(土) 23:48:48.07 ID:BpiXwtOd0



ノノハラ レイ
「おっと、話し込み過ぎちゃったかな。せっかくの料理が冷めちゃうぜ」


ノノハラ ナギサ
「あ……、そうだね。美味しいうちに召し上がれ♪」



 お兄ちゃんがあたしの料理を美味しそうに食べてくれる。これ以上の幸せを望むのは、今は辞めておこう。
 きっとそれが一番の正解なんだ。


424 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/26(日) 00:02:25.66 ID:0L/T9rdo0



ノノハラ レイ
「ごちそうさまでした」


ノノハラ ナギサ
「お粗末様でした」


ノノハラ レイ
「さぁて、渚。この後は暇でしょ? シチュー煮込むだけなんだし」


ノノハラ ナギサ
「うん。でも火は見ておかないといけないから」


ノノハラ レイ
「キッチンに居なきゃいけないんでしょ? まぁちょっと手間は取らせないからさ。
 それにやろうと思えばキッチンでも出来ることだし」


ノノハラ ナギサ
「それならいいけど……何をするつもりなの?」


ノノハラ レイ
「今日はずっと一緒に居るって言ったのは渚の方だろうに。
 いやなに、体調不良なのに美味しい料理を作ってくれた可愛らしい妹への、ボクなりの労いをと思ってね。
 まずはキッチンに行こう。話はそこからさ。食器も片付けなきゃだしね」


ノノハラ ナギサ
「え、あ、うん」



 あたしはお兄ちゃんの言われるがままにキッチンへ誘導された。



425 :♪Heartless Journey ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/26(日) 00:27:10.40 ID:0L/T9rdo0



ノノハラ レイ
「さて、渚。何処を貸してあげようか? 腕? 肩? 膝? なんなら胸でも構わないよ?」



 キッチンの椅子に腰かけたお兄ちゃんがそう言いながらもう一つの椅子を隣に引き寄せる。



ノノハラ ナギサ
「えっと、貸すって、どういうこと?」


ノノハラ レイ
「枕としてだけど?」


ノノハラ ナギサ
「え? えぇっ?!」


ノノハラ レイ
「ボクとして寝不足な妹に振る舞えるものなんてボク自身しかないわけだからね。
 火はボクが見ておくから安心して昼寝すると良い。その間の枕ってわけだ。
 まぁ居眠りなわけだからあまり寝心地はよくないだろうけれど」


ノノハラ ナギサ
「え、えっと、その、えぇ?!」


ノノハラ レイ
「あー、あれかな。寝顔見られるの嫌だったりする?」


ノノハラ ナギサ
「そ、それは別に構わなくもない、かな、とか、そう、じゃなくって、その」



 どうしよう。お兄ちゃんを枕にするなんて嬉しすぎるのに。
 それでもまたあの夢を見てしまったらどうしよう。そうなるともうお兄ちゃんに誤魔化せない。
 膝枕してほしいけど腕枕も捨てがたいしお兄ちゃんの肩に寄り添うっていうのも悪くないけど、じゃなくって。



ノノハラ レイ
「んー、やっぱりこういう行為もセクハラになるのかな。ごめんね渚変なこと言って。
 まぁとりあえず火はボクが見ておくから渚は部屋でゆっくり休んで――」


ノノハラ ナギサ
「肩! 借りるね!」


ノノハラ レイ
「おっ、おう。威勢のいい返事だ。右にする? それとも左がいい?」


ノノハラ ナギサ
「右で!」



 これはもうあれこれ悩まない方がいい。こんな滅多にないチャンスを逃すわけにはいかないもん。



426 :♪Heartless Journey ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/26(日) 00:39:29.59 ID:0L/T9rdo0



ノノハラ レイ
「どう?」


ノノハラ ナギサ
「……うん、なんだか、凄く落ち着く」


ノノハラ レイ
「そう、それはよかった」



 椅子に腰かけて、お兄ちゃんの右肩に頭をのせて体を預けると、お兄ちゃんの匂いに包まれているようで気分がいい。
 これなら、あんな夢は見ないかもしれない、なんて思いながら、少しずつ意識が遠のいているのが分かる。
 もう少し、この感覚を味わっていたい。そんな思いだけで微睡んでいる状態を続けている。
 心地良い。気持ち良い。嬉しい。幸せ。
 もう体の方が限界だったのか、あえなく意識を手放そうとしている。本当に勿体ない。
 ――でも、この温もりを感じながらなら、きっと……。



427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 07:15:47.85 ID:CFXwWIxU0
乙です
渚ちゃんあらあらうふふ
428 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/26(日) 22:41:41.53 ID:0L/T9rdo0
―――



ウメゾノ ミノル
「おうおう、随分とまぁ仲がよろしいこと。妹さんはシエスタ中かい?」

ノノハラ レイ
「茶化しに来ただけなら帰ってくれないかな。
 渚を起こしたくないし、誰の許可を得て渚の寝顔を見ているんだい?」

ウメゾノ ミノル
「そんな殺気立たないでよ。そんなんじゃビビッてロクに話もできやしねぇ。
 いやさ、僕も料理を作ろうと思ってね。というか、せがまれちゃって」

ノノハラ レイ
「慧梨主さんに? それとも亜梨主さん?」

ウメゾノ ミノル
「両方、かな。イギリスに留学した時の事を話したら、
『じゃぁその“伝統的な味”とやらを振る舞いなさいよ』とか言われちゃって。慧梨主も期待で目をキラキラさせちゃって」

ノノハラ レイ
「……そう。それは、ご愁傷様」

ウメゾノ ミノル
「誰に対してのセリフかなそれは」

ノノハラ レイ
「ご想像にお任せします。で、どうすんの? まさかマジモンの英国料理作るつもり?」

ウメゾノ ミノル
「一応は、ね。ランチはもう済ませちゃったし、ディナーもあるから軽くつまめるパイを」

ノノハラ レイ
「星を見上げるのかな?」

ウメゾノ ミノル
「まさか。まぁ英国料理でパイと聞いたらすぐに思い浮かぶのはそれだろうけど。
 ――ミンスパイだよ。本当に色々な食材があるよねここには。ミンスミートもあるなんて」

ノノハラ レイ
「ポットニュードルもあるよ。あとマーマイトとか」

ウメゾノ ミノル
「警告しておくけど、興味本位で手を出していい代物じゃないからね?」

ノノハラ レイ
「遅かったね。サルミアッキに口をつけてるから。欲しい?」

ウメゾノ ミノル
「いいえ私は遠慮しておきます。
 ――いやほんとマジでシュールストレミングに耐えられるほどの生粋のスオミ人じゃないから、普通に無理だから」

ノノハラ レイ
「ちぇ。せっかく道連れが出来ると思ったのに」

ウメゾノ ミノル
「野郎と心中なんざ死んでも御免だっての。……で、君はこの鍋の火を見てるわけだ」

ノノハラ レイ
「そういうこと。手を出しさえしなければ、いないものとして扱ってくれて構わないぜ」

ウメゾノ ミノル
「触らぬ神に祟りなしって? 解ってるよ。こっちだって喧嘩は商売にしたかないし。
 その代わり、そっちも迂闊にちょっかいかけようものなら、命賭けてもらうからね?」

ノノハラ レイ
「おおこわいこわい。肝に銘じておくよ。さて、いい加減お喋りは辞めよう。男は黙ってこそさ。
 特に、今この状況じゃぁ、ね」

ウメゾノ ミノル
「All right. 眠り姫のお目覚めにはまだお早いってワケね。
 じゃ、ASAPと行きますか。こちらもお姫様方をお待たせするわけにもいかないし」



429 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/26(日) 22:50:12.61 ID:0L/T9rdo0



ウメゾノ ミノル
「Mission complete.後はこれを食べてもらうだけだ。
 で? さっきからずっと見てる君もこれが欲しいのかい?」


ノノハラ レイ
「いや、結構。キミの調理姿にちょっと気になることがあっただけだよ」


ウメゾノ ミノル
「……何さ」


ノノハラ レイ
「マジックの時もそうだけど、キミ、右利きの癖に精密な動き要求される動作は全部左手でやってるよね。何で?」


ウメゾノ ミノル
「……その答えを聞くには親密度が足りません」


ノノハラ レイ
「あっれぇ? ボクとキミって結構仲良しだと思うんだけど。そう思ってたのはボクだけなのかな?」


ウメゾノ ミノル
「それはそれ、これはこれ。僕自身の気持ちの問題だから。
 そんなに気になるなら、君が前の学級裁判の後に持ちかけてきた取引の詳細を教えてよ。交換条件だ」


ノノハラ レイ
「……じゃぁいいや、深追いしないでおくよ。そこまで気になるものでもないし、大方予想はつくしね」


ウメゾノ ミノル
「……君のような勘のいい奴は嫌いだよ、本当に。
 僕としては君が自分の計画を妹にも教えていないことに余計に腹が立つ」


ノノハラ レイ
「それが昨日見せてくれたキミのマジックの個人的な真意なのかな?
 “自分にはこんなにも自分を信用してくれる人がいる”っていう当てこすりのつもり?」


ウメゾノ ミノル
「……本当に、君って奴は。覚妖怪の類なのか?
 初めてだよ。あんな暗い個人的な感情を抱いてステージに立ったのは」


ノノハラ レイ
「失礼だな。ボクは人間だよ、あくまでもね。
 それにしても意外だな。君にもステージに立つ矜持とかあるんだ、そういうの。
 外交官としての趣味がマジックってのも意外だけど――」


ウメゾノ ミノル
「発言に気をつけな。それ以上は地雷原だ」


430 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/26(日) 22:54:36.71 ID:0L/T9rdo0



ノノハラ レイ
「……ふぅん? なるほどね。わかった。これ以上は踏み込まないでおくよ。キミ、怒らせたら怖いタイプだもん」


ウメゾノ ミノル
「なら、いい。――ほら」


ノノハラ レイ
「あれ、ボクいらないって言わなかったっけ?」


ウメゾノ ミノル
「いいから受け取りなって。本来ミンスパイは特別な日に食べるものなんだ。
 だから、これは僕が君に渡せる最大限の有効の証だよ」


ノノハラ レイ
「そ、要するに口止めってわけ。安くついたねぇ。ま、この場合は気持ちの問題なんだろうけど――。
 ……ん、この英国料理は偽物だ。食べられるよ」


ウメゾノ ミノル
「そりゃそうだ。英国料理が不味いなんてエスニックジョークはもう古いんだぜ。
 良い素材を使って適切な調理をすれば星を取ることだって夢じゃない」


ノノハラ レイ
「それ従来の調理法がダメだって皮肉ってる? 新手のブリティッシュジョーク?」


ウメゾノ ミノル
「ハハッ、ゲイリー。英国紳士は自虐なんてしないよ。皮肉のセンスは抜群なのは他人に対してだけなのさ。
 っと、油売ってる場合じゃないや。早いとこ持って行かないと」


ノノハラ レイ
「二人の反応が楽しみだなぁ。きっと亜梨主さんは微妙な顔して、慧梨主さんはぎこちない笑顔をキミに見せてくれるだろうぜ」


ウメゾノ ミノル
「……今しれっとディスられた気がする。まぁ、僕もそう豪語できるほど料理の腕に自信はないんだけどさ」


ノノハラ レイ
「一応人様にお出しできる味ではあるとだけは言っておくよ」


ウメゾノ ミノル
「そう言われると逆に不安になるんだけど?」


ノノハラ レイ
「おかしいな。素直な感想なのに」


ウメゾノ ミノル
「これまでの言動を思い出しなって。じゃ、僕はこれで」



ーーー
431 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/26(日) 23:40:55.59 ID:0L/T9rdo0



ウメゾノ ミノル
「……君は預言者か何かかい? 本当に言ったとおりの顔してたよ」


ノノハラ レイ
「彼女らがどんな反応をするのか、軽くシミュレーションしてみただけだよ」


ウメゾノ ミノル
「サラッととんでもないこと言ってるぞコイツぅ……。
 カッコいいところ見せようと思ったのにこれじゃ締りが付かねぇ……。
 こうなりゃヤケじゃヤケ」


ノノハラ レイ
「あまり騒がないでね。……ちょっと待って。
 キミがグラスに注いでるそれ、ボクの目には馬鹿でかいランチャームに見えるんだけど、気のせい?」


ウメゾノ ミノル
「飲まずにはいられない!」グビィー!!


ノノハラ レイ
「おぉ、戸惑いなく一気にいったねぇ」


ウメゾノ ミノル
「醤油だこれぇっー!!」ブーッ!!


ノノハラ レイ
「なんだ、血圧一気に上げて自殺でもするつもりなのかと思ったのに」


ウメゾノ ミノル
「ちゃうねん……。ペッシェヴィーノロッソかと思ってん……」


ノノハラ レイ
「キミは実にバカだなぁ。そんなものが未成年の手に届く場所にある訳ないじゃん。大体、匂いで気付きなよ」


ウメゾノ ミノル
「ですよねー。うげぇ、気持ち悪い……。水、水はどこじゃ……」


ノノハラ レイ
「そこに蛇口があるじゃろ?」


ウメゾノ ミノル
「يتدفق نهر النيل من عينيك」


ノノハラ レイ
「……なんて?」


ウメゾノ ミノル
「なんでもない。……ア゛〜……。死ぬかと思った。まだちょっとくらくらする」


ノノハラ レイ
「身から出た錆ついでに教えてあげるけど、服ガッツリ汚れてるから、早く洗ったほうがいいぜ」


ウメゾノ ミノル
「うぇ?! ……うげぇ、マジじゃん。うわぁ、醤油のシミとか目立つ上になかなか消えないとかホントマジ厄介な奴じゃん……。
 着替えてランドリールーム行こ……」


ノノハラ レイ
「お大事に」


ウメゾノ ミノル
「心にもないことを……。まぁいいや、それじゃぁね」



432 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/27(月) 00:09:55.96 ID:ow1ruDNi0
―――


 あたしはいま夢を見ている。
 お兄ちゃんとの何気ない日常を過ごす優しい幸せな夢。
 これが微睡みと知りながら、この光景を心の支えに出来るように、どうにかして心に焼き付けようとする。
 でも、この後の惨劇を知っているから、早く覚めてほしい。
 でも、もっとこの幻想に身を委ねていたい。いつまでもこうして揺蕩っていたい。
 でも、でも、と煩悶している間に、とうとうあの時間がやってきた。
 あたしとお兄ちゃんとの間に翳りができる瞬間。そろそろ覚めないと。
 早く、早く、早く早く! お願いだからもう覚めて!



―――

433 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/27(月) 01:15:22.15 ID:ow1ruDNi0



ノノハラ レイ
「渚、ねぇ、起きてってば、渚」


ノノハラ ナギサ
「――っ! お、おはよう、お兄ちゃん」


ノノハラ レイ
「うん、おはよう。寝心地はどうだった?」


ノノハラ ナギサ
「うん、おかげでぐっすり眠れたよ。ありがとう」


ノノハラ レイ
「そう、それはよかった。お兄ちゃん冥利に尽きるよ」


ノノハラ ナギサ
「どれぐらい、寝てたの?」


ノノハラ レイ
「そろそろ夕食の時間って感じだね。シチューもいい感じに煮込まれいるんじゃないかな」


ノノハラ ナギサ
「そ、そんなに寝てたんだ。じゃぁ、ちょっと鍋の様子見ないと」


ノノハラ レイ
「おいおい、そんないきなり立ち上がるなよ。立ち眩みとか考えなってば」



 お兄ちゃんの言葉もむなしく、あたしの体はそのまま倒れこんで――、いなかった。
 先回りしたお兄ちゃんに抱きかかえられたから。



ノノハラ レイ
「ほら、言わんこっちゃない。大丈夫?」


ノノハラ ナギサ
「あ、うん。ありがとう。と、とりあえずシチューの味見したいから鍋のところまでいきたいな」


ノノハラ レイ
「わかった。じゃぁ肩貸すから」


ノノハラ ナギサ
「う、うん……。ありがとう……」


434 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/27(月) 01:36:01.84 ID:ow1ruDNi0



ノノハラ ナギサ
「うん、上出来」



 あたしの納得できる味ができた。これならお兄ちゃんも喜んでくれるはず。



ノノハラ レイ
「それは楽しみだ。困ったな、ちょっと待ちきれなくなっちゃった」


ノノハラ ナギサ
「つまみ食いはダメだからね?」


ノノハラ レイ
「解ってるよ。まぁ、ボクとしてはいっぱい食べれれば満足だし」


ノノハラ ナギサ
「お兄ちゃんはよく食べる方だもんね。ちょっと多めに作っておいてよかった」


ノノハラ レイ
「そうとあれば早速夕食だ。ビーフシチューがボクを待っている!」



435 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/27(月) 02:01:50.38 ID:ow1ruDNi0



ノノハラ レイ
「……ふぅ〜……、食べた食べた。ごちそうさま」


ノノハラ ナギサ
「結構余裕を持って作ったつもりなんだけど……、まさか本当に完食するなんて」


ノノハラ レイ
「ふふ、渚の料理は美味しいからね。満腹中枢が刺激されても食べ続けられるのだよ。
 ……さて、そろそろ明日の企画に向けて準備しないとね。手伝ってくれるかい?」


ノノハラ ナギサ
「結局何をするつもりなの?」


ノノハラ レイ
「映画鑑賞会をしようと思ってね。ポップコーンは必要でしょ? あとチュロスも要るかなぁ?」


ノノハラ ナギサ
「チュロスは手間がかかるしポロポロこぼれちゃうから、ポップコーンに絞った方がいいと思うな」


ノノハラ レイ
「そっか。じゃぁコーラも用意しないといけないなぁ。……いやまてよ? 別館の自販機にあったかな?
 あ、いや、なかったわ。コーラこっちにしかないわ。
 ってことは結構荷物がかさばっちゃうなぁ。何回か分けて運ぶか……、それともみんなに持ってきてもらおうかなぁ」


ノノハラ ナギサ
「みんなの見たい映画の好みもあるだろうし、あとでメールで聴いてみたら?」


ノノハラ レイ
「それもいいね。ボクのチョイスだとどうしても偏っちゃうし。
 でも最終的にはボクの独断と偏見でチョイスしようかな」


ノノハラ ナギサ
「主催者権限を乱用するのはよくないと思うけど……。発案はお兄ちゃんだし、良いんじゃないかな」


ノノハラ レイ
「そうと決まれば一斉送信だ。
 『明日は映画観賞会するつもりだから、応えられるかは別としてリクエストがあるなら返信よろしく』っと。
 さて渚、ちょっと忙しくなるかもだけど、ポップコーンづくりに手伝ってもらうからね」


ノノハラ ナギサ
「望むところだよお兄ちゃん」



 こうして、消灯時間間近までひたすらにポップコーンを作り続けた。
 何時間も映画を見るとあれば、しかもそれが14人ともなるとかなりの量を作らなきゃならない。
 誰がどれだけ食べるか分からないから、最悪お兄ちゃんに全部食べてもらうつもりで作っちゃおう。


436 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/27(月) 02:03:06.00 ID:ow1ruDNi0



こうして、あたしの楽しい一日は終わった。
昼寝した時もいいタイミングで起きることができたし、なんだか今日はいい夢を見れそうな気がする。


437 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/04/27(月) 02:05:28.38 ID:ow1ruDNi0


――本日はここまで。


――ようやく物語を動かすことができるぞ……!


――ヤンデレCD Re turnの情報も開示されたことですし、これからも更新速度を上げていかなくては。


――それでは、おやすみなさい。



438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 23:05:35.98 ID:nZdKthTS0
渚ちゃんかわいいねえ
439 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:06:57.72 ID:7JEoXNNe0


―――



???
「ヒトの身を捨て、機械の身体を得て、神の座に至る。成程確かにそれは面白い考えだ。
 ジュール・ヴェルヌ曰く、“人間の想像しうるものは必ず実現可能である”。まぁ、ラ・フュイ夫人の捏造らしいけど。
 後は……、ツァラトゥストラ、だったかな? “神は死んだ”と言ったのは。
 キミが想像し、創造しようとするのは新しい人の形かも知れない。それは認めるよ。
 でもね、妄想とは区別されるべきだ。その程度で座せるほど、真理は甘かないんだわ」


???
「くふふふふふはふぅうううう、何を宣うのかと思えばそんなセリフをあなたが、ですか?
 何の変哲もないただの凡人でしかない、あなたが」


???
「凡人だからこそだよ。人並みに神頼みするなんてままある話さ。それに一々応えられるかって話だよ。
 勿論、処理能力云々じゃない。そんな七面倒臭いことを押し付けられてたまるかってんだ。
 それはキミも同じはずだ。雑事に裂く時間があれば、主題に回したほうがいい。そういう人間だろ?」


???
「何を当たり前なことを。愛するものと共に過ごす。それ以外に何が必要なのですか?」


???
「――オーケー、どうやらキミとは宗教観からして根本的に解り合えないらしい。
 価値観がねじれの位置にあるなら、話が通じないのも頷ける。無為な時間だったね」


???
「全くです。どうしてあなたと話そうなどと思ってしまったのやら」


???
「気の迷いって奴だろ? ま、精々頑張りな。応援はしてやらないけど。
 ――ところで、その頓痴気な服装は素面でやってるのかい?」


???
「殺すぞ」



―――


440 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:12:18.25 ID:7JEoXNNe0



 新しい朝が来た。希望の朝かどうかはさておき、分水嶺であることは確かかな。
 なんかちょっと変な夢見た気がするけど。頭の片隅の何処かにでも放っておこう。さほど重要だとは思えないし。
 そんなことより、今日のメインイベントだよ。急な招集だったけど、返信を確認しておかないとね。



ノノハラ レイ
「リクエストは――っと、うん、オッケー、想定の範囲内だ。
 これならプログラムをちょっと組み換えて合間に挟めばいけるっしょ」


 さぁいくぞ。ポップコーンとコーラの貯蔵は充分か?



441 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:15:34.98 ID:7JEoXNNe0
―――


 朝食を摂ったらすぐに別館へ行くよう澪に急かされ、ついでとばかりに大量のポップコーンを持たされ。
 俺達は全員ゴンドラに乗っている。



オモヒト コウ
「不安だ」


ナナミヤ イオリ
「何が――、いえ、何を心配しているの?」


オモヒト コウ
「映画観賞会をするのはいい。問題はその映画が見るに堪えるかどうかだ。
 アイツの事だからB級をすっ飛ばしてZ級映画を持ってきかねない」


ノノハラ レイ
「信用ないなぁ。流石にそこまでヒトとしての感性を疑われるような真似をした覚えはないよ?
 そんなに見たいって言うなら、予定変更もやむなしかなぁ?」


オモヒト コウ
「そういう所だからだよ、お前の場合は。言っておくが、フリでも何でもなく、絶対に見せるなよ?」


ノノハラ レイ
「はいはい。まぁ、梅園クンが見せてくれたぐらいには、珠玉のエンターテイメントを期待してくれても構わないよ」


オモヒト コウ
「お前自身は選んだだけで特に何もしてないじゃないか」


ノノハラ レイ
「失敬な。中身を吟味して、飽きがこないよう順番を考え、みんなに喜んでもらえるようなプログラムをシミュレーションしたんだぜ?」


ナナミヤ イオリ
「……昨日はそういうことをしていたように見えなかったのですが?」


ノノハラ レイ
「ボクの記憶力を嘗めないでおくれよ。あのシアタールームにある映画の内容は全部知ってるんだから、これくらい余裕余裕」


ナナミヤ イオリ
「……もうその程度では驚かなくなってしまったことに驚いてしまいました」


オモヒト コウ
「怖いな、慣れって」


タカナシ ユメミ
「あたしはどーだっていいけど。見たくなくなったら勝手に出てって良いんでしょ?」


ノノハラ レイ
「困るなぁ、折角の映画観賞なんだから、最後まで見て行ってよ。
 それに、映画館じゃ途中退席はマナー違反だぜ? まぁ、休憩は挟むから安心しておくれよ」


オモヒト コウ
「やっぱりイマイチ信用ならないな、そういうこと言われると」


ノノハラ レイ
「あるぇ〜?」



 そういう所だぞ。とは言わないでおこう。話がループしかねない。



442 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:17:59.77 ID:7JEoXNNe0


マスタ イサム
「荷物持ちはいいが……、どれだけ作ってきたんだよあいつ。いや、14人分と考えれば妥当なのか?
 それよりもいいのか、ユーミア? 明らかにそっちの方が重いだろ?」


ユーミア
「コーラの事ですか? このくらい平気です。クーラーボックスと氷水の分を合計しても、高々30キロ程度ですから。
 メイドたるもの、マスターに負担や迷惑をおかけしてしまう方が心苦しいのです」


マスタ イサム
「やせ我慢――はしてないみたいだな。でも、俺だって女性に重い荷物を持たせるのは心苦しいんだ」


アサクラ トモエ
「本当に先輩は優しいよねー。メイドも逞しいし。ボクは紙コップとかティッシュぐらいしか持ち運べないから、羨ましいなー」


ユーミア
「言葉に棘があるように聞こえますね。やはり体系と同じく器も小さいのですか?」


アサクラ トモエ
「そっちこそ、大きいのは無駄な胸だけなんじゃないの?」


マスタ イサム
「落ち着け。ギスギスするんじゃない」



443 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:20:49.82 ID:7JEoXNNe0


ナナ
「楽しみね、映画」


ノノ
「どんな映画を見せてくれるのかな?」


サクラノミヤ エリス
「私は……、その。見たい映画があるのでメールを送ってみたのですが」


サクラノミヤ アリス
「見れると思ってるの? あんな性悪が聞く耳持つかしら?」


ウメゾノ ミノル
「僕も送りはしたんだけどねぇ、望み薄かな。所詮大昔のB級映画だし」


ノノハラ ナギサ
「……大丈夫かな、お兄ちゃん」


コウモト アヤセ
「わたしは、澪を信じてる。わたしの信じる澪を」



―――


444 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:25:51.29 ID:7JEoXNNe0



 そうこうしているうちに別館のシアタールームに到着した。
 ……流石に14人も入るとなると少し狭いな。



ノノハラ レイ
「さぁて、じゃぁ泣く子も黙って首を振る、映画観賞会、始めるよ。
 皆、ポップコーンは持ったかい? コーラは?
 ――結構。じゃ、最初の上映だ」


 真っ暗な空間の中で澪の声が響き、スクリーンに映像が映し出された。


445 :♪20th century Fox Intro ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:31:05.23 ID:7JEoXNNe0


ノノハラ レイ
「まず映画と言えばコレでしょ、定番中の定番。『コマンドー』繰り返します。『コマンドー』
 はじけろ筋肉、飛び散れ汗! 車に轢かれても、飛行機から墜ちてもビクともしねぇ。
 愛する娘を守るため、一人敵のアジトに殴り込む。――戦うパパは、カッコいい」


446 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:43:43.84 ID:7JEoXNNe0


―――



『行ったかと思ったよ』
『とんでもねぇ。――待ってたんだ』バババババ!



ウメゾノ ミノル
「これがホントの朝MACってね」


ユーミア
「洒落になってないですよ。あとそのネタを理解できる人が他にいるのですか?」



―――



『俺たちに協力しろ、オーケー?』
『オッケイ!』ズドン!



ノノハラ ナギサ
「OKって言いながら撃っちゃったよ?!」


ノノハラ レイ
「娘を助けるために協力しなければならない事は理解したが拒否する、ってカンジでしょ。
 実際口の動きを見るに“wrong(嫌だ)”って言ってるし」



―――



『追ってくるぞあのバカ』



ウメゾノ ミノル
「これぞ究極のエコカー、位置エネルギーカーだ」


サクラノミヤ エリス
「一方通行ですよねこれ……」


サクラノミヤ アリス
「追いついたところで――『ガシャァン!』――事故る気満々だったのね」



447 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 00:45:52.06 ID:7JEoXNNe0


―――


『ベネット?! 殺されたんじゃ?!』
『残念だったなぁ。トリックだよ』


ノノハラ レイ
「どんなトリックかは結局明かされないんだけどね」


マスタ イサム
「船底かどこかに隠し非常口みたいなものがあったんだろ、多分」



―――



『連れを起こさないでやってくれ、死ぬほど疲れてる』



ナナ
「実際死んでるのよね」


ノノ
「殺しちゃってるからね」



―――



『お前は最後に殺すと言ったな?』
『そうだ大佐助けて』
『あれは嘘だ』
『うあああああぁぁぁぁぁ!』



マスタ イサム
「容赦ないな」


ユーミア
「ここで見逃せばいつ連絡を入れられるか分かりませんし、用済みですからね」


アサクラ トモエ
「でもあの体勢で突き落とすのって相当――」


―――



『車がなくなっちゃったわ』
『――これで出来た』



ノノハラ レイ
「これが筋肉式わらしべ長者だ」
コウモト アヤセ
「嫌よこんな物騒なわらしべ長者」


448 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 01:04:58.61 ID:7JEoXNNe0


―――



『怖いか? クソったれ。当然だぜ、元グリーンベレーの俺に勝てるもんか』
『試してみるか? 俺だって元コマンドーだ』



タカナシ ユメミ
「なんか、もうあっさり倒される未来しか見えないなー」


オモヒト コウ
「実際そうだしな」


ナナミヤ イオリ
「グリーンベレー……、軍のことはよくわからないわ」



―――



『クックー!』



ノノハラ レイ
「不慮の事故とは言え自分で殺しておいてその反応はどうなんだとは思う」


ノノハラ ナギサ
「あ、あの、さっき、その、色々見えちゃってたんだけど」


ナナミヤ イオリ
「……」


オモヒト コウ
「伊織――? 気絶してる。許容量を超えてしまったか」



―――


449 :♪100%OFFセールのテーマ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 01:11:27.93 ID:7JEoXNNe0



ガシャァァン



ウメゾノ ミノル
「武器屋の癖にsecurityガバガバすぎるんだよなぁ」


ノノハラ レイ
「重機で突撃することを想定していなかった店側の責任です」


ノノハラ ナギサ
「そうなの?」


ウメゾノ ミノル
「普通そう簡単に盗まれないようにするはずなんだよなぁ。
 あ、今足ひれカートに入れたけど、これ使われることないから」


サクラノミヤ エリス
「え、そうなんですか?」


サクラノミヤ アリス
「そもそも何のために使うのよ……」


ユーミア
「……何故暗証番号がそんなあっさりと割れるんですか」


マスタ イサム
「その辺は深く考えちゃダメだぞユーミア」


アサクラ トモエ
「でもここまで派手にやってたら――そりゃくるよね、警察」


450 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 01:29:21.13 ID:7JEoXNNe0


―――


『やだぁ……』



ウメゾノ ミノル
「ダメだよちゃんとAT-4の前後は確かめないと」


ノノハラ レイ
「説明書を読んだはずなんだけどねぇ」


ユーミア
「トリガーに違和感を覚えなかったのでしょうか?



―――


『きゃぁ!』



ユーミア
「何故無反動砲で後ろに転がるんです? さっきは転ばなかったのに」


マスタ イサム
「その辺気にしたら負けなんだぜユーミア。こういう映画はノリと勢いで出来てるからな」



―――


『こんなの飛行機じゃないわ! 羽のついたカヌーよ!』
『だったら漕げばいいだろ!』



ノノハラ ナギサ
「その理屈はおかしいと思う」


ノノハラ レイ
「何とかできるできないじゃない。何とかするんだよ」



―――


『動け、動けってんだよこのポンコツがぁ! ――この手に限る』



ウメゾノ ミノル
「この手しか知らないんだよなぁ」


ユーミア
「壊れかけの機械を叩いてどうにかするのはどうしたらよいものか……、不安です」


アサクラ トモエ
「ちょっと無理させて寿命を無理矢理延ばしてるって考えたら、空恐ろしいね」


451 :♪一人ノルマンディーのテーマ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 01:57:21.00 ID:7JEoXNNe0


―――



ユーミア
「……何故単騎で、しかもゴムボートで上陸など」


ウメゾノ ミノル
「もとは足ひれ使って潜入って感じだったらしいんだけど、それじゃシュワちゃんの筋肉が見れないじゃないかってことでこうなったらしいよ」


ノノハラ レイ
「元ボディービルダーだしね。魅せたい欲求がついまろび出ちゃったんだろうさ」


ユーミア
「見つかって迎撃されたら一巻の終わりでしょうに……。
 上陸したらしたで何故そうも悠長に武装を始めるのですか……」


アサクラ トモエ
「ヒーローの変身シーンは邪魔しちゃいけないお約束なんだよ?」



\デェェェェン/



ノノハラ レイ
「やっぱこのシーンカッコいいなぁ」


マスタ イサム
「浪漫があるな」


オモヒト コウ
「なんだろうな、完全武装だと安心感がある」


ウメゾノ ミノル
「これが究極完全体アーノルド・シュワルツェネッガーだ!」



452 :――しばらくの間島がドンパチ賑やかになるシュワちゃん無双をお楽しみください―― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 02:03:07.15 ID:7JEoXNNe0



ウメゾノ ミノル
「やることが派手だねぇ」


ノノハラ レイ
「この時点では娘がどこにいるのか解っていません」


ユーミア
「クレイモアでこれほどの爆発起こせませんよね? それに向きも逆ですよね?」


コウモト アヤセ
「あー……、うん。これはアクションを楽しむものだから、そういうツッコミは野暮ってものじゃないかな」


ノノハラ ナギサ
「あぁ、綾瀬さんまで」


453 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 02:18:55.94 ID:7JEoXNNe0
―――



『来いよベネット。銃なんか捨てて、かかってこい』



ノノハラ レイ
「ここから筋肉式洗脳――もとい、説得が始まるぜ」


ユーミア
「……何故自ら不利になるようにするのですかこのベネットという男は。
 人質も銃も捨てるなんて」



―――



『ぐあぁぁぁぁぁ!!』



ウメゾノ ミノル
「普通の映画ならこれでfinishなんだけどなぁ」


ノノハラ レイ
「こっから何故か戦闘力が上がるんだもん、びっくりだよ。これが世に言うベネチャージって奴かな?」



マスタ イサム
「絶対に違うぞ」



―――



『毒気を抜いてあの世へ行け』



ナナミヤ イオリ
「見事に止めを刺したわね」


オモヒト コウ
「あ、復活したのか。――しかしまぁ、こういう肉弾戦は心が躍るな」


タカナシ ユメミ
「あたしはいつでもお兄ちゃんとの肉弾戦の準備はできてるからね♪」


ナナ
「あら、プロレスごっこ?」


ノノ
「じゃぁノノたちも混ぜてよー」


タカナシ ユメミ
「はぁ? ふざけんじゃないわよ!」


ナナミヤ イオリ
「……」


オモヒト コウ
「やっぱりこういうのは苦手だったか? 伊織」


ナナミヤ イオリ
「いえ、そんなことは……。正直野蛮だとは思うけど、面白い映画だったとも言えるわ」


454 :♪We fight for Love ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/08(月) 02:21:46.81 ID:7JEoXNNe0
―――

ノノハラ レイ
「いやぁ、やっぱいいね『コマンドー』。派手にドンパチするのを見るのは最高に気分がいい」


オモヒト コウ
「……まぁ、ツッコミどころは色々あるが、それを超える面白さがあるからな」


ノノハラ レイ
「じゃぁちょっと10分ぐらい休憩を挟もうか。次はちょっとマイルドな奴で行くつもりだから。
 今から10分きっかりに上映を再開するから、ちゃんとそれまでに集まってね」


455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/11(木) 06:23:57.68 ID:EvplPSmV0
なんかイベントはじまってた
レイの夢が意味深で気になる…
456 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:28:47.61 ID:AM8E1wn00


―――


サクラノミヤ エリス
「本当にここには色んな映画があるんですね」


サクラノミヤ アリス
「これだけあるなら、しばらくは退屈しないで済みそうね。
 ――で、アンタは何やってるのよ」


ウメゾノ ミノル
「ちょっと隠しチェストっぽいもの見つけちゃったんだよね。オタカラだぜきっと。
 ……ナニコレ。『クロの章』? VHSとかどんだけ古い遺物なんだか。
 白地のテープに手書きとか、わざわざダビングしたのかな?
 中身も書いてら、親切なこって。えーっと? メタルマン、恐怖キノコ男、アナザー、デビルマソ……」


サクラノミヤ エリス
「どうしたんですお兄さま? 急にお顔を真っ青にして」


サクラノミヤ アリス
「何無言で閉まってるのよ。気になるじゃない」


ウメゾノ ミノル
「ダメだよ、これヤバいヤツだよ。世に解き放っちゃいけないタイプの負の遺産だよ。
 誰だよこんなこの世の全てのクソ映画の蠱毒みたいなビデオ作った奴お前マジふざけんなよ」


サクラノミヤ エリス
「お、お兄さま? そ、そんなに酷いのですか?」


ウメゾノ ミノル
「これを全部見るか、本場の本格的で伝統的な英国料理のフルコースを食べるかどちらか選ばなければ殺すと言われたら僕は迷いなく後者を選ぶ」


サクラノミヤ アリス
「昨日のあれ? ま、食べられなくもなかったしね、あれ」


ウメゾノ ミノル
「――一つ、言っておく。あのミンスパイの英国力はたったの5だ。本来なら2000ぐらいのpotentialがある」


サクラノミヤ エリス
「英国力?!」


ウメゾノ ミノル
「親の仇かと言わんばかりに揚げ続けて使い古した新聞紙のインクの匂いが染みついたフィッシュアンドチップスの英国力が18000で、マーマイトが42000ちょっと。
 そしてフルコースのメインディッシュになるだろうハギスの英国力は、――53万だ」


サクラノミヤ アリス
「だから英国力って何よ?! 数字じゃなくてもっと具体的に解りやすい例はないわけ?!」


ウメゾノ ミノル
「初めて伝統的な英国式ローストチキン――英国力にして35000に相当するものを食べたときの感想でいいかい? “食べたことないけど、段ボールって多分こんな味するんだ”」


サクラノミヤ エリス
「あぁっ! そんな遠い眼をしないでくださいお兄さま! 気を確かに!」


サクラノミヤ アリス
「その10倍以上ってこと? で、そのビデオよりはマシ――確かに見るのはやめておいた方がよさそうね」


ウメゾノ ミノル
「興味本位で見ちゃダメだ。フリじゃない。校則の所為で焚書に処せないのが遺憾に過ぎる。
 ――思い出したら気分悪くなってきたよ。自販機のcoffee飲んでcoolにならないと」



―――


457 :♪Beautiful Lie ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:32:06.91 ID:AM8E1wn00



タカナシ ユメミ
「コーラばかりじゃ飽きちゃうから自販機の飲み物を買うことにしたのはいいものの……」


オモヒト コウ
「なんでB○SSとプァンタしかないんだよこの自販機。
 ブランドは偏りまくってるのに種類だけは無駄に豊富なのが余計ムカつくな」


タカナシ ユメミ
「悪意しかないよねー。なんかポスターもちょっと媚びてる感じするし」


オモヒト コウ
「中学生……、下手したら小学生にしか見えない女子に缶コーヒーの広告塔させるなよ……」


458 :CM―調査員Верный― ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:33:28.75 ID:AM8E1wn00



調査を始めてからどれだけの時間が流れただろうか?

色々あった。

欧州へ救援に遠征した。

改装の為に三日間出撃しないでいたら、全海域の制海権を失ったこともあった。

ただ、一つ言えることは、どの時代の人たちも、けっこう、ガッツリ働いた。



Гангут
「まだ調査を続けるのか? ちっこいのもしつこいな」



――これからも、缶コーヒーのB〇SS


459 :自社の作品内で他の自社作品のCMを行うスパイクチュンソフトリスペクト ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:38:33.21 ID:AM8E1wn00



ウメゾノ ミノル
「хорошо.こいつは力を感じる」


オモヒト コウ
「お前、いつの間に」


ウメゾノ ミノル
「ちょっとショッキングなヤツ見ちゃったからね。気分転換だよ」


オモヒト コウ
「コーヒーを飲むのか? 英国被れのくせに」


ウメゾノ ミノル
「別に紅茶と相容れないってわけじゃないじゃない。
 それに、英国面に堕ちるっていうのはパンジャンドラムを思い通りに転がしてからがスタートラインだ」


オモヒト コウ
「そんな明後日の方向にあるスタートラインなんて誰が立つんだよ。ネビル・シュートが草葉の陰で泣いてるぞ」


ウメゾノ ミノル
「いや、むしろ逆に喜びそうなんじゃないかな。
 マーマイトをマーマイトで洗うパンジャンレースがあったら自力で蘇りそうだし」


オモヒト コウ
「……確かに言えることがある。一度頭診てもらったほうがいいよお前」


ウメゾノ ミノル
「酷くない? っと、そろそろ時間だ。早く戻ろうよ」


460 :♪Era ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 01:48:23.71 ID:AM8E1wn00



―――



ノノハラ レイ
「次はリクエストから。大手スタジオの代表作だ。田舎から上京してきた少女は特技を活かして次第に大人になっていく。
 『魔女の宅急便』はボク等に何を届けてくれるだろうか?。
 ――ところで、あんな風に箒に跨って空飛ぶのって股痛くならない?」


―――


461 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 02:13:13.13 ID:AM8E1wn00


『あたしの自慢の料理、ニシンとカボチャの包み焼き』


アサクラ トモエ
「スターゲイザーパイだっけ?」


ウメゾノ ミノル
「スターゲイ“ジ”ーだ二度と間違えるなマーマイトに漬け込ますぞ」


マスタ イサム
「お前そんなキャラだったか? 英国面に染まりすぎだぞ」



―――


『あたしこのパイ嫌いなのよね』


アサクラ トモエ
「どうして人の行為をにべもなく突っ返すかなぁ」



マスタ イサム
「……まぁ、宅配物にロクな防水もしないのは落ち度と言えなくもないが」


ユーミア
「受け取ってもらえただけマシ、そう思うことにしましょう」


―――


『真っ直ぐ飛びなさい、燃やしちゃうわよ』


ナナ
「結構冷静よね」


ノノ
「それよりもあの男の子をどうにかしないとだもんね」


オモヒト コウ
「一応、他人様のものなんだけどな」


タカナシ ユメミ
「必ず返すって言ったのにね」


―――



『う、受け止めた! 空中で受け止めました!』



コウモト アヤセ
「かなり昔に見たから知ってたけど、こういうシーンはやっぱりハラハラしちゃうわね」


ノノハラ レイ
「ある種のお約束、――あるいはカタルシス、かな?
 やっぱりこういうシーンは製作者の腕の見せ所なんじゃないかな」


462 :♪やさしさに包まれたなら ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 02:26:34.70 ID:AM8E1wn00


―――

ノノハラ レイ
「いい映画って言うのは何度見てもいいもんだねぇやっぱ。
 ――おっと、もうお昼の時間だ。でも一々本館に戻るのもどうかと思うでしょ? どうぞご安心を。ちゃんと手は打ってあるんだ。
 おーい、モノクマ! ここに持ってきてよ。それぐらいはしてくれるでしょ? 学園長」


モノクマ
「……一体何時からボクはオマエの体のいいパシリになったのかな?」


ノノハラ レイ
「最初からじゃない? いいからさっさと持って来てってば。今日の昼食がサンドイッチだってことは予想がついているんだ。
 ここで軽くつまめるし、キミなら隠し通路でもわーぷほるでも何でも使ってすぐに持ってこれるでしょ?
 それとも、これまで以上のいやがらせ受けたい?」


モノクマ
「……わかったよ! 持ってくればいいんだろ持ってくれば! 全く近頃の若者は年長者へのリスペクトってのをさぁ――」


オモヒト コウ
「なあ、一応聞いておくが、モノクマへのいやがらせって何やったんだお前」


ノノハラ レイ
「随所の監視カメラに濡らしたタオル被せるだけの単純なお仕事です」


ウメゾノ ミノル
「わぁ。マジで地味ないやがらせだぁ」


463 :※本作におきましてはネタバレ防止のための徹底的な措置を執行させていただきます ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 02:29:22.92 ID:AM8E1wn00


―――


ノノハラ レイ
「さて、腹ごしらえも済んだことだし、次の映画と行こうじゃないか。
 最近のオリジナルな邦画も捨てたもんじゃないね。
 これはネタバレ厳禁だから詳しくは言えないけど、これだけは言わなくっちゃいけないから言っておくね。
 耐性がないと苦痛かもしれないが最初の30分は頑張って耐えて見てくれ。『カメラを止めるな』。
 ボクから言えるのは、“見るのを止めるな”、かな」


―――


464 :♪EXCITE ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/20(土) 02:37:38.71 ID:AM8E1wn00



―――


ノノハラ レイ
「主人公ゥ! 何故キミがクソ映画耐性も無しにこの映画を見終えられたのか、何故映画の内容が記憶にないのか、何故妙に首回りが痛むのかぁ!」


タカナシ ユメミ
「それ以上言わないで!」


ノノハラ レイ
「その答えはただ一つ――」


ナナミヤ イオリ
「やめなさい!」


ノノハラ レイ
「ァハァー……、主人公ゥ! キミが序盤のクソ映画っぷりと昼食後の眠気のダブルパンチで眠ってしまったからだァーッハハハハハ」


オモヒト コウ
「俺が、映画の途中で、寝落ち……? 嘘だ、俺を騙そうとしてる……!」


ナナ
「――それにしても驚きよね、あのシーンが【規制済み】だったなんて」


ノノ
「あの【規制済み】も【規制済み】のための【規制済み】だったなんてね」


オモヒト コウ
「Arrrrr(致命的なネタバレを食らったことによる魂の慟哭)!!!!!!!!!」


 ――だから言ったのに。「見るのを止めるな」って。
 まぁ、この手の仕込みは叙述トリックと同様に存在そのものがネタバレだから深く言及できなくて、他人に勧め辛い要因になってるんだよねぇ。
 初見さんへネタバレをしない程度にお勧めポイントを言うとするなら、最後まで見終わったときのある種の達成感。
 だからそこの哀れなシュジンコウクンみたく寝落ちするのはもったいないことだぜ。ぐらいしか言えないのが辛い所だぜ。


465 :♪Friday Night Fantasy ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/23(火) 22:41:58.13 ID:S5/+vHUv0


―――



ノノハラ レイ
「さて、お次はリクエストだね。――意外だなぁ。この人がこの映画リクエストするなんて。ヒトは見かけによらないね?
 青い海、それは原初の命が生まれた母なるもの。されど、両生類をはじめ生き物は海を離れ大地へ足を踏み入れ、今や霊長が歩き回り蔓延っている。
 かくして大地の子らが母なる海へ回帰することは叶わない。水底(『ディープ・ブルー』)で人は己が無力の一端を知るだろう」


―――


466 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/23(火) 23:00:28.76 ID:S5/+vHUv0


―――


サクラノミヤ エリス
「あれ? こんなオープニングでしたっけ?」


ウメゾノ ミノル
「あー……、慧梨主、確認したいんだけど、リクエストしたのは海洋ドキュメンタリー?」


サクラノミヤ エリス
「えぇ、そうです。昔見て奇麗だと思ったので、また見たいなって……」


ウメゾノ ミノル
「――どうやら、悲しいすれ違いがあったみたいだね。
 心して聞いてくれ、慧梨主。ディープ・ブルーっていう邦題の映画、二種類あるんだ。
 そして今流れているのは、慧梨主が見たかったのじゃない方なんだ」


サクラノミヤ エリス
「え?」



―――



サクラノミヤ エリス
「あわわわわ……。ひ、人がたくさん――」


ウメゾノ ミノル
「――野々原君さぁ。一応聞いておくけど、わざとじゃないよね?」


ノノハラ レイ
「ボクは飽くまで要望を聞いただけだよ。それが叶わない可能性だって示唆しておいた。
 海洋ドキュメンタリーかモンスターパニックどっちが観たいと聞かれたら、ボクは後者を選ぶ。
 ――勿論前者だって慧梨主さんが指定してくれれば、ボクは『グリード』の方を上映するつもりだったさ。
 知らなかったんだよ。慧梨主さんがサメ映画の方を知らなかっただなんて。だから、ボクは悪くない」


ウメゾノ ミノル
「ぬけしゃあと、白々しいにもほどがある。慧梨主がこういうの好まない性格してるなんて君なら分かるはずだろ?」


ノノハラ レイ
「そうかなぁ? むしろ沼に踏み入れてもそのまま構わず進むタイプと見た。自覚がないだけだよ、今は、ね」


―――



サクラノミヤ エリス
(人が次々食べられていくというのに、この感情は一体……?)


サクラノミヤ アリス
「ちょっと、慧梨主?! 何かいけない扉を開けようとしてない?! 気をしっかり持ちなさい! 慧梨主ったらぁ!」


サクラノミヤ エリス
「……っ、大丈夫ですよお姉さま。ちょっと血が多くて気分が優れなくなっただけです」


ノノハラ レイ
「どうやら、ボクの方が正しかったらしいね?」


ウメゾノ ミノル
「どうだか」


467 :♪Deepest Bluest ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/23(火) 23:34:07.36 ID:S5/+vHUv0



―――


ノノハラ レイ
「閉鎖空間から来る疑心暗鬼。対立する集団を仲裁しようと説教するものが食われパニック。
 研究を優先したが故に起きた惨劇。希望が見えた矢先に絶望が迫りくる。それを乗り越えた先の希望を更に呑込まんとする絶望。
 そしてそれさえも踏み越えた先にようやく活路が開かれ、生き延びることができたのさ。
 ――ちなみに、最後の最後でスーザンが囮になって死んだのがやたらと不自然に思った人は鋭いよ。
 当初の予定じゃ生き延びるはずだったのに、試写会でブーイングを受けて急遽変更になったんだ。
 ラストシーンでカーターの視線とコックの脇のスペースを見れば、デジタル処理されたことが一目瞭然だからね」


ナナミヤ イオリ
「……大体の原因がその女性だもの。因果応報ね」


マスタ イサム
「生き残りそうにない奴が生き残って、生き残りそうなのが死んでいったのは意外だったがな。特にコック」


アサクラ トモエ
「そうかな? あんな状態になってまでジョーク言える度胸があったわけだし。ビデオレター遺そうとした時はダメかと思ったけど」


ユーミア
「オウムにバードと名付けるセンスは正気を疑いますが」


468 :♪白虎野 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/23(火) 23:36:50.27 ID:S5/+vHUv0


―――


ノノハラ レイ
「フロイトによれば、夢は記憶を素材に出来ている。そしてその選択方法は意識的でなく無意識的だとか。
 つまり一見乱雑な内容でも、当人の本性に基づいた統合性でもって一つの物語として連結される。つまり、夢は究極のパーソナリティースペースなんだ。
 そこに足を踏み入れる手段が確立されたとすればどうなるか――。その答えはきっと『パプリカ』が教えてくれるはずだよ」


―――


469 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:01:21.70 ID:Q8OAeR4n0



―――



『他者の夢を共有する。まさに夢の科学だ。だが直に夢に触れることは暴力にさえ繋がる。――あれは作るべきではなかった』
『また、そのお話でしたか。――DCミニは、精神治療の新地平を照らす太陽の王子様です』



ナナ
「このおじいちゃん今変なこと言わなかった?」


ノノ
「難しいたとえなのかな」



―――



『盗み出したテロリストはそうは思うまい!』
『――そんな。まだ悪用されたわけじゃ』
『うむ、必ずしも泥棒が悪いとはお地蔵さまも言わなかった』



ナナミヤ イオリ
「……先ほどから所長の様子がおかしいように見えるのは私だけ?」


オモヒト コウ
「奇遇だな。俺もそう思ってたところだ」



『パプリカ……。開発されたサイコセラピーマシンで勝手な治療を行う女がいると聞いた』
『理事長ともあろう方が、そんな根も葉もない噂話を信じるのですか?』
『パプリカのビキニより、DCミニの回収に漕ぎ出すことが幸せの秩序です』



タカナシ ユメミ
「このおじさん何かやばい人なんじゃない?」



『秩序』
『五人官女だってです! 蛙達の笛に合わせて、回収中の不燃ゴミが噴出してくる様は圧巻で、まるでコンピューターグラフィックスなんだそれが!
 総天然色の青春グラフィティーや一億総プチブルを、私が許さないことぐらい、オセアニアじゃあ常識なんだよ!
 今こそ、青空へ向かって凱旋だ! 絢爛たる紙吹雪は、鳥居をくぐり周波数を同じくするポストと冷蔵庫は、先鋒を司れ!
 賞味期限を気にする無頼の輩は花電車の進む道にさながら! シミとなって憚ることはない!
 思い知るがいい、三角定規たちの肝臓を!
 ――さぁこの祭典こそ、内なる小学三年生が決めた、遥かなる望遠カメラ!
 進め! 集まれ! 私こそが、御代官様! はーっはっはっはっはは!』
『所長!』



マスタ イサム
「お、おう」


アサクラ トモエ
「本格的にやばい人だったね」


470 :♪パレード ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:11:16.03 ID:Q8OAeR4n0



―――


『すぐだ! すぐにもだ! ワタシヲムカエイレルノダ!』

サクラノミヤ エリス
「所長ー!」
ウメゾノ ミノル
「この高さから飛び降りたら助かりませんねこれは」


―――



エイヤーハナオエーナオーエイヤーハナオエー




ノノハラ レイ
「信じられないかもしれないけど、このパレード、CGじゃなくて全部手描きなんだぜ」


コウモト アヤセ
「嘘でしょ――と言いたいところだけど、全然CGっぽさがないから、本当なのね」


ユーミア
「……きっと作画班は死屍累々だったのでしょうね」


471 :♪白虎野の娘 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:22:41.92 ID:Q8OAeR4n0



―――



マスタ イサム
「これでエンディングか。……結局俺たちは一体何を見させられていたんだ?」


ユーミア
「――電気羊の夢、でしょうか?」


ナナ
「最初から最後まで何を言ってるのかよく解らなかったわ」


ノノ
「とりあえずあの車椅子のおじいちゃんが悪者だったっているのは解ったんだけど」


ノノハラ ナギサ
「でもあの理事長だって言ってること無茶苦茶だったし……」


コウモト アヤセ
「自分がする分にはいいけどされるのは嫌だって、まるで子供みたい」


ノノハラ レイ
「初見だと頭の中が疑問符で埋め尽くされるんだけど、この映画は深く考察すればするほどいい映画なんだって思うんだ。
 ボクはこれ以上のアニメ映画を知らないな。惜しむらくは、今敏監督と筒井康隆先生と平沢進師匠のコラボレーションがもう見れないってことだろうね」


サクラノミヤ アリス
「これっきりで充分よ。ちょっと頭痛くなってきた……」


472 :♪Cinema Nostalgia ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:24:16.74 ID:Q8OAeR4n0



―――


ノノハラ レイ
「証人保護プログラム、アメリカにおける裁判を左右する証言をする証人を守る伝説の執行官ジョンが大暴れする『イレイザー』。
 見終わったらきっと言いたくなるさ。“You’ve just been erased”」


―――


473 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:30:53.95 ID:Q8OAeR4n0



―――


『仔牛の煮込みが死ぬほど喰いたかったんだよ、もう半年もマトモなメシ食ってねぇやってられっかい!』
『次は命がないぞ。――こんなのは一度きりだ』


ウメゾノ ミノル
「そんなんで足掴まっちゃ溜まったものじゃないよね」


サクラノミヤ エリス
「自分の立場がよく解ってないのはどうかと思いますが……」



―――



『さっきの銃がなんていうのかは知らないが、君の会社が開発した武器なんだろ?』
『ええ、EM銃のプロトタイプ。開発は極秘だけどね』
『EM?』
『エレクトロマグネティック、電磁波よ。火薬も従来の弾も要らない。アルミ弾を光くらいの速さで飛ばせるの』
『レールガンって奴だな』
『ええ、そうとも呼ばれてるわね』
『海軍が何年も開発してたが、最小のものでも戦艦に据える大きさだと聞いた』
『うちが軍から小型化を依頼されたの。コンパクトで、超高速のEM銃を作れって。完成すれば最強の銃よ。開発費はもらったけど、実用化はできなかった』
『ちゃんと出来ていたじゃないか。――もっと高く買う客を見つけたんだ』
『お客はいっぱいいるわ。国防省、CIA、NSA、貴方の組織もお客かも』



ユーミア
「ユーミアの知っているレールガンとは違う気がするのですが」


マスタ イサム
「古い映画だからな。そういうSFチックな武器は大雑把に括られてたんだよ」



―――


474 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:35:16.65 ID:Q8OAeR4n0


―――


『戦争なんてしょっちゅうある。ベトナムでは負けた、湾岸では勝った。だからって、何が変わった?
変わらないよ、何にも変わらん。ただ戦争が起これば金持ちと死人が増える。どっちかなら、金持ちがいい。な?』


ウメゾノ ミノル
「資本主義者め……」


サクラノミヤ エリス
「お兄さまは共産主義なのですか?」


ウメゾノ ミノル
「……ゴメン、ただのネタだよ。本気で言ったんじゃない。」


―――



『銃を捨てろ』
『――あぁ?』
『銃を捨てるんだな。――命だけは助けてやる』



オモヒト コウ
「普通なら負け惜しみにしか聞こえないが、シュワルツェネッガーが言うと普通に頼もしく聞こえるな」


タカナシ ユメミ
「この悪党も一目置いてるみたいだしね」


―――


『何だこれは! この俺をこんな安物のナイフで刺しやがって!』


ノノハラ レイ
「高級品ならいいのかな?」


ノノハラ ナギサ
「そういう話じゃないと思う」


ノノ
「でも頭をかばって腕で防いでるんだよねこのおじさん」


ナナ
「凄腕なんだね、このおじさん」


―――


『わー痛そー』
『痛いよそれ、俺見てたもん』
『……ここは何処だ?』
『地球よ、よく来たわね』


タカナシ ユメミ
「なんであれで無事なの? 普通重傷じゃない?」


オモヒト コウ
「当り前だろ、シュワルツェネッガーだぞ」


ナナミヤ イオリ
「あの男性に向けるその信頼はどこから来るの?」


―――

475 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 00:47:35.35 ID:Q8OAeR4n0


―――

『遅刻よ』
『道が混んでた』

ユーミア
「敵の渋滞に巻き込まれた、気の利いたジョークですね」
マスタ イサム
「歩道が空いていたら突っ込んでいそうだったがな」
アサクラ トモエ
「流石にそこまではしないんじゃないかな」

―――

『そんじゃ一緒にサイレス社に押し入れってのか?』
『そうだ』
『冗談よせよ。ソファーか何か運ぶ手伝いしろってのかと思ったよ』
『じゃぁもう降りていい』
『……わかったよ力になろう。必要な道具言っとく。戦車だろ、ロケット砲も何門かいるな。それから俺用にアル・カポネ級の――でっかい肝っ玉だな』
『これが小道具だ』
『……発泡性の胃薬?』
『ジョニーの部屋で会おう』
『……これで屁でもこかせる気か?』

ウメゾノ ミノル
「しかしまぁ命の恩人を助けるからって企業にカチコミかます手伝いするって考えたらすごい度胸の持ち主だよな」
サクラノミヤ アリス
「普通なら降りるわよ。あたしなら絶対手を引く」

―――

『リスクを見るとすればどこのコンピューターだ?』
『金庫室だ。他の端末からはアクセスできない』
『金庫室となれば、ここを通るしかない』
『あぁ、こりゃ楽だな。じゃ、あとはのんびり座って、クルーガーさんのお越しを待つとするか』

ナナ
「絶対裏をかかれるわよね」
ノノ
「別の手を使ってくるとか考えられないのかな?」

―――

『おいおいおいおい! どこ行く気だ?!』
『うぉーっと、頼むよ気を付けてくれ。14階のブレバンズさんにデリバリーだ』
『許可のない者を通すわけにはいかない』
『キョカノナイモノヲトオスワケニハーへっへっへおい怒ることはないだろ、だったらブレバンズさんに電話して確かめろよ。ペパロニのピッツァだ激ウマだでぇ』

ウメゾノ ミノル
「そう言えば僕もピッツァが食べたいなぁ。ペパロニでもいいけど、シンプルなマルガリータもいいなぁ」
ノノハラ レイ
「何ならデリバリーしてもらおうか、モノクマに」

―――

『おい何やってんだ』
『ピザの配達に来た男が発作を起こしてます』
『どこの馬鹿だピザ頼んだのは』
『そんなこと言ってる場合か、急いで医務室に運んで救急車を呼べ』

ナナミヤ イオリ
「……一応、この人にも良心はあるのね」
オモヒト コウ
「そこをつかれるわけなんだがな」

―――

『怖いわ〜テロリストよ〜』
『もっと刺激が欲しいか、えぇ?! ビリビリするような刺激だ! 刺激が欲しいだろ?! お前にも電気ショックを味あわせてやる!』
『テープで縛れ。――動くなよ』
『う、後ろを向け』
『ここは任せたぞ。――ちゃんとやれるよな?』
『とっとと行けぇ』
『――行くぞ』

ノノハラ ナギサ
「もとはと言えばコードを不用意に抜き取らなければよかったのに。どうして抜いちゃったのかな」
コウモト アヤセ
「早い所自分が健康だってアピールしたかったんでしょ。裏目に出て逆恨み気味になるのはいただけないけど」

―――

476 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:18:30.44 ID:Q8OAeR4n0


―――



『トバしたら、ボルティモアには40分でつけるぞ』
『ジョニーはもう来るな。送ってくよ』
『おいおいここまできて俺は一匹狼だなんていうなよ』
『よくやってくれたが、これは俺の戦いだ』
『なあおい待ってくれ、話ぐらいちょっとは聞いてくれよなあ。
 アンタが居なかったら、俺の舌は今頃カネッリん家で剥製の横に飾られてる。
 なあ、役に立つぜ。――俺のいとこが、港を仕切ってる。船を探すんだろ? 聞けば一発だ』


マスタ イサム
「ジョニー本当にいいやつだな。最高の笑顔だ」


アサクラ トモエ
「こういう男同士の友情も悪くないね」



―――



『でかい特ダネだな、全然知らなかったよ』
『取引は今夜、アンタの港でな』
『……そいつは、聞いてねえぞ』


ウメゾノ ミノル
「さっきまで下らないjokeと聞き流してたのに自分のシマの話と分かった瞬間スッと仕事の顔になるの好き」


サクラノミヤ エリス
「ああいうのが好きなんですか?」


ウメゾノ ミノル
「まあね」



―――


『よう兄ちゃん、おおっと、ちょっとお話しようじゃないか』
『ここは立ち入り禁止エリアだ』
『へへ、知ってるよ。質問がある。――何してやがるんだ?』
『何だと?』
『俺たちぁ港湾労働者組合のモンだ』
『あんたらだウチの優秀な組合員を使わずに荷物積んでるって小耳に挟んだ。まさか違うよな?』
『面倒な連中が来てますが』
『ああ全くだ』


マスタ イサム
「随分な度胸だ。敵地に踏み込むってのに」


ユーミア
「彼らからしてみれば元は自分の敷地なわけですし」


―――


『何を騒いでいるんだ?』
『じゃ兄さんに説明させてもらうが、組合員を使わねぇ船はウチの港から出すわけにはいかねぇ。ウチのモンの姿が見えないようだな? 見えるか?』
『国家の機密に関わる作業をしているんだ。今すぐ“こっか”ら出てってもらおうか』
『それ脅してんの?』
『あぁその通りだ』


ウメゾノ ミノル
「ここ、良い翻訳なんだよね。原語版のダジャレをうまく落とし込んでる。ジョニーもそれjokeなのって原語版では言ってるし」


サクラノミヤ アリス
「翻訳者がちゃんと仕事をしてくれたってことですね」

477 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:27:13.37 ID:Q8OAeR4n0



―――


『組合を舐めんじゃねぇよ』


マスタ イサム
「手際がいいな」


ユーミア
「相手の装備も奪っているところもいいですね」


コウモト アヤセ
「漁師さんとか怒らせると怖いって聞くけど、こういうことなのかな?」


―――


――EM銃の連射を回避し続けるジョンの活躍をご覧ください。


ユーミア
「何故偏差射撃もマトモに出来ないんですか」


マスタ イサム
「怒るところそこでいいのか?」


―――


『いい銃だなマヌケぇ』
『よせ! ――うわぁぁぁ!』


ユーミア
「何故碌に確認もしないんですか!」


マスタ イサム
「……優れた武器を持つ者ほど慢心しやすい。そういうことだろ」



―――



『ジョンか?』
『今出てってやる』



――EM銃を乱射するジョンの活躍をご覧ください。



オモヒト コウ
「流石ターミネーター。凄い無双っぷりだな」


タカナシ ユメミ
「それ俳優が同じだけだからね? T-800じゃないからね?」


478 : ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:32:31.45 ID:Q8OAeR4n0



―――


『君にはいつも感心するよ』
『そう、ふふ、ありがとう。今日は一本取られました、さっきのは実にお見事でしたよ』
『何の話だ?』
『爆破ですよ。スカッとするほど奇麗に始末した上に、俺達が車の傍にも寄ってないことはみんなが見てた。
 上手いやり口だ、俺から学んだのかな?』
『待て、君が仕掛けたんじゃないのか?』
『まさか貴方でしょう』


アサクラ トモエ
「あっ」


―――


『危ない! 何をやってんだ!』
『何ですか?! こりゃ変だ!』


ナナ
「この期に及んでまだ気づかないなんて」
ノノ
「ドアもロックされちゃったから、もうおしまいかな」


―――


『もしもし? ――君にだ』
『……なんだ?』
『You’ve just been erased (お前たちは消去された)』


ウメゾノ ミノル
「大脱出と言いなんでこう雑にエピローグで黒幕を処分したがるのか」


ユーミア
「後腐れなく映画を終えられますから」


マスタ イサム
「下手に続編造られてこけられるよりかはマシだろ」


479 :♪Where Do We Go From Here ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:39:56.69 ID:Q8OAeR4n0


―――


『三人は?』
『見送ってきたよ』


ノノハラ レイ
「こういう返しはいいねぇ。さて、映画も終わったところでそろそろ夕食の時間だね。
 アツアツのピッツァが食べたくなってきただろ? ペパロニだ。
 梅園クンのご要望通り、マルゲリータも用意してあるぜ」


ウメゾノ ミノル
「至れり尽くせりってわけだ。食糧事情がアメリカンスタイルなのはちょっとどうかと思うけど。
 特にカロリー面とか」


ノノハラ レイ
「今日一日ぐらいはいいじゃない。過剰にストイックな生活はストレスのもとだよ?」


ウメゾノ ミノル
「――こういうのを脂肪フラグって言うんだろうな。まぁ、ありがたく頂くけど」


480 :♪The Vicious Blues ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:45:35.60 ID:Q8OAeR4n0


―――


ノノハラ レイ
「さて、腹ごしらえも済んだところで本日最後の御演目。かのスティーブン・キング原作、監督はフランク・ダラボン。
 『ショーシャンクの空に』と『グリーンマイル』で有名なタッグが織りなす衝撃作。
 原作とは違うラストを迎えることになる『ミスト』。最後まで目を離すんじゃないぜ?」



ウメゾノ ミノル
「……その紹介は罠だろ。事実だけど、方向性が違う旨がまるで足りてないじゃないか」


サクラノミヤ エリス
「そんなに違うんですか?」


ウメゾノ ミノル
「うん。一言で言うなら、一見の価値はあるけどもう一度見るには相当の覚悟が必要なんだよね。
 僕はもう既に見ちゃってるからその覚悟を決めなきゃいけないんだよねぇ。最後の最後にやりやがったなあの野郎」


―――


481 :♪The Host of Seraphim ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 01:58:23.69 ID:Q8OAeR4n0



―――



ナナミヤ イオリ
「これは……、本当に救いがない……」


オモヒト コウ
「一つ一つの選択肢に間違いはなかったはずだ。――ただ、肝心なところで運に見放されてしまっただけだ」


タカナシ ユメミ
「これ、進行方向を見るに軍隊から遠ざかるように進んじゃってるんだね。
 もう少し待っていれば、こんな結末は避けられたはずなのに」


ノノハラ レイ
「最後の最後まで希望を捨てちゃダメだってことだよ。
 諦めたらそこで試合終了で、諦めなければ夢はいつかきっと叶うんだからさ」


ウメゾノ ミノル
「キミがそのセリフを言うと変な予感しかしないんだけど」


ノノハラ レイ
「原作者がこの改変を絶賛している以上文句は言えないよ。曰く、『書いてるときに思いついてたら絶対このラストにしてたよ』だって」


サクラノミヤ エリス
「こんな、こんなことって……」


サクラノミヤ アリス
「慧梨主……、腰が抜けてるのね。もう時間も時間だし、そろそろ帰ってもいいかしら?
 ほら、立てる、慧梨主?」


ノノハラ レイ
「そうだねぇ。今日はここで解散することにしよう。急がないと、ゴンドラリフトが止まっちゃうかもだし。
 ……そうそう。次の企画を決めてもらわないとね。――と言うワケで、ヨロシクね。公」


オモヒト コウ
「この流れでよりにもよって俺かよ。……あまり期待するんじゃないぞ」


ノノハラ レイ
「内容そのものじゃない。ボク等がずっと一緒に行動していた。そのこと自体に価値があるんだから。
 と言う訳だから、全員参加型のレクリエーション、期待してるぜ?」


オモヒト コウ
「何気に難易度高い要求してくるなよ……。予想よりクオリティ低かろうが、文句は受け付けないからな」


ノノハラ レイ
「そういう軽口聞けるなら平気平気。期待しないで待っておくよ」


オモヒト コウ
「……そうかよ」


 この後はつつがなく本館へ戻り、ボクは自室のベットに横たわる。
 何となく手ごたえのようなものを感じながら、ボクは睡魔に身を委ね目を閉じた。


482 :テンノコエ ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/06/24(水) 02:01:57.85 ID:Q8OAeR4n0


――と言う訳で野々原澪の映画観賞会回、無事終了でございます、


――非日常編まであとわずか。推しが殺されるのもオシオキで死ぬのもダンガンロンパの醍醐味の一つですが、キャラの喪失は心苦しいものがありますね。


――さて、目指すはヤンデレRetuneの販売までぶ学級裁判を終わらせたいところではございますが、本日はこれにて。


――おやすみなさい。


483 :♪悪魔のトリル第三楽章 ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:09:54.81 ID:/AQwkga80


―――


???
「――ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。
 月に狂わされたローマ皇帝の名を冠する映画が、ボク等の生まれる前に封切りされたんだ。知ってるかい?」


???
「……その余りの過激さで、ボストンをはじめとした一部地域では公開禁止になった。ということぐらいは」


???
「”Banned in Boston”ってヤツ? 浅ましきは人の業というか、好奇心は猫を殺すと言うか、反骨精神にも似た何かが掻きたてられるんだろうね。
 『見るな』と言われれば却って見たくなる。『読むな』と言われれば余計読みたくなる。そんな心理現象を、日本ではその映画のタイトルから“カリギュラ効果”と呼ぶんだ」


???
「学術的には“心理的リアクタンス”が用いられていることぐらい、貴方も知ってるでしょう?」


???
「解ってるくせに。ボクがワザワザそんな薀蓄を垂れ流すためだけにここに足を運ぶとでも思うかい?」


???
「長い前置きは貴方の悪い癖よ。――それで、何が言いたいの?」


???
「イケナイことには、イケナイ理由がある。知らなかったでは済まされない。
 その理由が分からないから、人はこぞってやろうとする。欲が満たされないからね。何故禁止されているのか、その理由が分かりさえすれば興味は薄れるものさ。
 納得のいく理由があれば人は引き下がる。単に『ダメと言ったらダメ』じゃ人は納得しないよ。
 『これは読んだ奴は死ぬ本だから絶対に読むなよ』と念を押されて、初めて人は自制できる。曖昧な理由じゃなく、明確に、特に自分の命に係わる理由なら、普通は引き下がるさ。
 ――まぁだからと言って、それを気軽に焚書に処そうだなんていうのは愚の骨頂だよね。核ミサイルが危険だからってダイナマイトで爆破するようなものなのにさ」


???
「理解を示してくれるようで助かるわ。そのセリフをあの馬鹿共に聞かせてほしいぐらい」


???
「何事も話し合いで解決するようだったら誰も銃なんか持たないよ。五・一五みたく“問答無用”と言われたらどうしようもない。
 特に、神託やら他人の思想やらに身を委ね思考を放棄した異常者が相手ではね。
 ――ところで、この本は何故禁書に指定されているんだい? 是非とも理由を聞かせてもらいたいな、魔導図書館長殿?」



―――


484 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:11:42.29 ID:/AQwkga80



 変な夢だった。志望校のミスカトニック大学に無事合格し、学生として留学する夢。
 そこの図書館で本に触れ、司書と他愛もない話をしながら、学びを深める青写真。
 何とも可笑しな話だ。ここから出られるわけでもなく、まして大学への未来など、描けようわけもないのに。
 頓痴気な格好の研究者と会話した以前の夢だって、就職先くらい選べよってわけで。いくらAI開発の最先端だからって、ねぇ?
 ちょっと推敲すればすぐ見つかる誤字脱字がほったらかしにされている本を読まされているような、変な感覚だ。
 慣れないことをしたからかな。少しばかり思考回路にバグが生じているらしい。
 あるいはこれ以上余計な詮索はするなってアラートなのかな。いずれにせよ、休息を挟まなければ。
 出来るなら、シュジンコウクンのお手並み拝見と行きたいところなんだけど。今日ばかりは頭を空っぽにして存分に楽しもうじゃないか。


485 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:13:40.20 ID:/AQwkga80



―――


オモヒト コウ
「――よし、全員朝食は食べ終わったな? 今日の企画は球技大会だ」


ノノハラ レイ
「……まぁ、らしいっちゃらしい、かな?」


オモヒト コウ
「何だよ文句あんのか」


ノノハラ レイ
「いいや? 体育会系のキミらしいなぁと思っただけだよ。
 ただ、インドア派なボク的にはちょっと、ねぇ?」


マスタ イサム
「俺はいいと思うぞ。思う存分体を動かすのも悪くないからな」


オモヒト コウ
「10時頃に多目的ホールに集合な。体操服は更衣室に用意してあるらしいから、着替えとタオルと飲み物は自分で用意しておいてくれ」


タカナシ ユメミ
「はーい♪ あ、お兄ちゃんの分も用意してあげよっか?」


オモヒト コウ
「俺のは自分で用意するから、夢見も自分のを用意しろ、な?」


タカナシ ユメミ
「……はーい」


486 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:14:50.71 ID:/AQwkga80



ナナ
「何をするのかしら」


ノノ
「きっと楽しい遊びだよ」


サクラノミヤ アリス
「腕が鳴るわね。ま、慧梨主は見てるだけでもいいのよ」


サクラノミヤ エリス
「……私もちゃんと参加しますよ。確かにあまり体を動かすのは得意じゃないけど、それでも……」


ウメゾノ ミノル
「ま、気楽に行こうよ。こういうイベントは頭空っぽにして楽しんだもん勝ちなんだから」



487 :♪Cool Morning ◆S7YK1FdmZg [saga]:2020/07/12(日) 01:45:35.05 ID:/AQwkga80



ノノハラ レイ
「……一応準備は出来たけど。まだ時間があるし、どうしようかな。ロビーのパソコンでも調べようかな」


コウモト アヤセ
「あれ、ネットに繋がってないんじゃなかった?」


ノノハラ レイ
「学級裁判の捜査時間中に軽く調べたときには気づかなかったんだけどさ、何か隠しファイルがあるっぽいんだよね。
 暗号化されてるんだけど、あと少しで復号できそうなんだ」


コウモト アヤセ
「……澪ってそんなパソコンに詳しかったっけ?」


ノノハラ レイ
「ほら、ボクって記憶力良いからさ。母さんの研究もちょくちょく見てたし」


コウモト アヤセ
「あー、そう言えば。……人工知能の開発、だっけ?」


ノノハラ レイ
「うん。まぁ、完成を目前に全部水の泡になっちゃったけど」


コウモト アヤセ
「……ゴメン」


ノノハラ レイ
「何を――あぁ。まぁ、交通事故で死者がでるなんてよくあることじゃない。ボクが中3の時に、偶然父さんと母さんがそれに含まれてしまったってだけで。
 昔の話だ、もうボクは割り切ってるつもりだよ。むしろ綾瀬の御両親に感謝しなきゃ。ボクと渚の身元を預かってくれたわけだし」


コウモト アヤセ
「……無理だけはしないで、って言わなかった?」


ノノハラ レイ
「過去はどうやっても変えられない。今を生きるボク等が変えられるのは未来だけだ。だからボクは前へ進む。それだけだよ。
 ――湿っぽい話はヤメヤメ! 今日ぐらいパーッと遊ぼうぜ!」


コウモト アヤセ
「そう、ね……」



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