魔王「リインカーネーション」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 07:39:36.15 ID:VP+l2tcRO

ザワザワ…

盗賊「ん? 何だか騒がしいな」

王女「泥棒さん!あ、あそこを見て下さい!」

盗賊「……煙、ありゃあ厩舎のある辺りだな。こっからじゃ分からねえ。急ごう」

王女「は、白馬さんは大丈夫でしょうか?」

盗賊「姫様。今は彼女の心配より自分の心配をした方がいい。もしかすると追っ手が来たのかもしれない」

王女「だからってあんなことを…」

盗賊「まだそうと決まったわけじゃない。でも、もしそうなら。あれは狼煙かもな」

王女「複数で来たと? 王宮から騎士が来たのなら街が騒ぎになると思いますが……」

盗賊「騎士じゃねえのかもしれない。とにかく、行ってなけりゃ分からない」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 07:43:31.33 ID:VP+l2tcRO
また夜
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 12:15:18.51 ID:CqMs2SY0O
白馬さん…
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 20:08:38.41 ID:Z6mKXuU6O

ザワザワ…

盗賊「ん? 何だか騒がしいな」

王女「人集りが出来ていますね。何があったのでしょ…ど、泥棒さん。あれ……」

盗賊「……煙? ありゃあ厩舎のある辺りだな。こっからじゃよく分からねえな。急ごう」

王女「は、白馬さんは大丈夫でしょうか?」

盗賊「姫様。今は彼女の心配より自分の心配をした方がいい。もしかすると追っ手が来たのかもしれない」

王女「だからって火を付けるなんて…延焼して大火になったら街の人がーー」

盗賊「そうと決まったわけじゃない。追っ手の連中が上げた狼煙の可能性もある」

王女「王宮から大勢の騎士が来たのなら街が騒ぎになると思いますが……」

盗賊「騎士じゃないのかもしれない。とにかく行こう。直接見なけりゃ分からない」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 20:11:53.06 ID:Z6mKXuU6O

王女「そ、そうですよね……」

盗賊「(とは言ってみたものの…すっげー嫌な予感がする。妙な感覚だ。気持ち悪りぃ)」

王女「(……もしこれが追っ手の仕業なら、わたしが外に出たせいだ)」

王女「(外に出ても輪転器であることは変わらない。大人しくあの部屋にいるべきだったんだ)」

盗賊「姫様、背中に乗れ。俺が姫様をおぶって走った方が早い。はぐれる心配もないしな」

王女「でも、背中の傷がーー」

盗賊「いいから早く乗ってくれ。離れられちゃ困るんだ。姫様だって迷子になりたくないだろ?」

王女「……分かりました」ギュッ

盗賊「ッ…よし、行こうか。それから、あんまり考えるな。自分を責めたって何も変わらない」ダッ
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 20:14:37.07 ID:Z6mKXuU6O

王女「わたしは何も言ってません……」

盗賊「言わなくても顔見りゃ分かるよ。姫様は顔に出やすいから」

王女「…………」

盗賊「(落ち着いたら話してみるか。でも、今はこっち優先だ。追っ手の仕業かどうか確かめねえと)」

ーーー
ーー


盗賊「はぁっ、はぁっ…厩舎は無事みたいだな」

王女「ええ、煙は既に収まっているようですね。火事ではなくて良かった……」

『なあ、何があったんだ?』

『ついさっき兵士の会話を聞いちまったんだが、厩舎の主が焼け死んでたって話だ……』
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 20:17:40.06 ID:Z6mKXuU6O

『ってことは、さっきの煙…おぇっ…』

『……そういうことだろうな。気の良い人だったのに…本当に残念だよ』

王女「えっ…そんな……」

盗賊「…………」

『し、焼身自殺ってやつか?』

『そこまでは分からんよ。ただ、壁に妙な落書きがあったとか何とか言ってたような……』

盗賊「……悪い。ちょっと通してくれ」ザッ

王女「ど、泥棒さん。わ、わたしっ……」

盗賊「さっきも言ったろ。まだ、そうと決まったわけじゃない」

盗賊「仮に追っ手の仕業だとして、騎士団の連中が無関係の奴を手に掛けるとは思えない」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 20:23:30.87 ID:Z6mKXuU6O

王女「で、でもっ…」ガタガタ

盗賊「(駄目だ。完全に怯えちまってる。あんな話を聞いたんだ。落ち着けって方が無理か)」

警備兵「此処は今立ち入り禁止…お前、ニンゲンか?」

盗賊「ああ、見ての通りニンゲンだ。此処に馬を預けてたんだけど……」

警備兵「入れ。俺もお前に聞きたいことがある。背中にいる女性は?」

盗賊「連れの修道女さんだ。事情は聞かないでくれると助かる」

警備兵「……まあいいだろう。付いて来い」

盗賊「(妙だな。ニンゲン嫌いが滲み出てんのにすんなり現場に入れるなんて…)」

王女「泥棒さん、辛いでしょう? もう下ろしてください。自分で歩けますから……」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 20:29:04.08 ID:Z6mKXuU6O

盗賊「……分かった」トサッ

盗賊「なあ姫様。かなり気分が悪いだろうけど、俺の傍から離れないでくれ」

王女「……はい。あのっ、腕に掴まっていてもよろしいでしょうか?」

盗賊「ああ。でも無理に見る必要はない。近くにさえいてくれればーー」

王女「いえ、行きます。わたしなら大丈夫です。大丈夫ですから……」キュッ

盗賊「……分かったよ。じゃあ、行こうか」

ザッ…ザッ…

王女「あれ、馬がいない。預けに来た時は沢山いたのに。白馬さんはーー」

警備兵「馬なら裏手の牧場にいる。この厩舎の主の焼死体と一緒にな」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 21:29:08.20 ID:Z6mKXuU6O

盗賊「どういう意味だ」

警備兵「見て貰った方が早いんだがな。そちらの女性には刺激が強すぎるだろうから説明しよう」

盗賊「……助かるよ」

警備兵「主人は首を斬られて殺害。馬も同様の手口で殺害されていた。預けられていたものも含めてだ」

警備兵「何の理由があって馬を殺害したのかは分からないが、奇妙なのはここからだ」

盗賊「野次馬の話だと燃やされてたらしいな」

警備兵「それだけじゃない。主人の遺体は山積みされた首無し馬の上にあった」

警備兵「両手を頭上より高い位置まで伸ばし、自分の頭部を掲げるようにしてな」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 21:31:26.08 ID:Z6mKXuU6O

王女「うっ…」フラッ

ガシッ…

盗賊「……大丈夫か?」

王女「ご、ごめんなさい。大丈夫です」

警備兵「ああ、これは済まない。火に当てられたせいか説明に熱が入りすぎたようだ」ニコリ

盗賊「随分と悪趣味な男だな」

警備兵「その台詞は是非とも犯人に言ってやってくれ。一番迷惑しているのはこっちなんだ」

盗賊「……で、俺みたいなニンゲンを現場に入れた理由は?」

警備兵「どうやら一頭が逃げ出したようなんだ。その馬は青ざめたような毛色だったらしい」

警備兵「門番の話によれば、その馬は門を抜けて街の外へと逃げ出したそうだ」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 21:33:57.69 ID:Z6mKXuU6O

盗賊「それは俺が預けた馬だ」

警備兵「ほう、意外に正直だな。ニンゲンにしては」

盗賊「あんたは一言余計なんだよ。それで?」

警備兵「犯人は馬が怯えて逃げ出す前に殺害出来るような奴だ。首を一太刀で両断してる」

警備兵「手際が良いと言うか、そのままの意味で手が早いんだろう。凄まじくな」

警備兵「そんな奴が一頭だけ見逃したんだ。何か意味があると思うだろう?」

盗賊「ああ、俺もそう思うよ」

警備兵「気が合うな。それから、外壁には次のような殴り書きがあった。血文字でな」ニコリ

王女「………」カクンッ

盗賊「ッ、あんたには呆れたよ。余計なことは言わずにさっさと話してくれ」
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 22:12:11.40 ID:Z6mKXuU6O

警備兵「冠を戴くのは勝利者」

警備兵「我が王冠は貴様の手に在り。貴様の王冠は我が手に在る。さあ、戴冠の戦を始めよう」

盗賊「いや、まるで意味が分からねえ。思いっ切りイカレてんじゃねえか」

警備兵「追伸」

盗賊「は?」

警備兵「嘘吐きは嫌いだ。嘘を吐かせのは貴様だな。実に良い馬だ。生かしておこう」

盗賊「………」

警備兵「生きているのはお前の馬だけだ。これはお前に向けられたメッセージで間違いない」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 23:39:04.14 ID:Z6mKXuU6O

警備兵「嘘を吐かせたというのは何だ?」

盗賊「馬を預けた時、誰に何を聞かれても一人だったと言ってくれって主人に頼んだ」

盗賊「嘘を吐かせたと言われて思い浮かぶのはそれだけだ。他に思い当たる節はない」

警備兵「何故そんなことを言った」

盗賊「さっきも言っただろ。理由は聞かないでくれると助かるってな」

警備兵「今、それが通用すると思うのか?」

盗賊「分かった分かった。怖い顔すんな、ちゃんと答えるよ」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 23:41:03.58 ID:Z6mKXuU6O

警備兵「さっさと言え」

盗賊「道ならぬ恋ってやつさ。見ての通り彼女は修道女でね。一緒に逃げて来たんだ」

警備兵「修道女である前に、ニンゲンと恋に落ちる女がいるとは思えないがな」

盗賊「なんなら彼女に聞けばいい。あんたのせいで気を失っちまったけどな」

警備兵「…チッ…心当たりは?」

盗賊「こんなに素敵な女性をニンゲンが奪ったんだ。恨んでる男なんて山ほどいるだろうさ」

警備兵「……だろうな。彼女を抱えていなければ叩き斬ってるところだ」

盗賊「あんた、意外と素直なんだな。もっと冷静で嫌味な奴かと思ってたよ」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/06(火) 23:45:53.47 ID:Z6mKXuU6O

警備兵「口の減らない奴だ」

盗賊「それはお互い様だろ?」

盗賊「それより、俺なんかに構ってる暇があるなら犯人を捜した方が良いと思うぜ?」

警備兵「………」

盗賊「……もう用がないなら行かせてもらうけど、いいかな?」

警備兵「……いいだろう。今のところは見逃してやる。ただ、犯人が見付かるまで街から出ることは許さない」

盗賊「……そんなつもりはねえさ」ボソッ

警備兵「何?」

盗賊「いや、何でもない。色々教えてくれて助かったよ。じゃあな」ザッ

警備兵「(狂人に狙われていると知っても冷静さを保っていられるとはな。奴は何者だ?)」

警備兵「(奴の正体はともかく、この事件に関わる重要人物であることは間違いない。監視を付けるか)」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 01:15:05.90 ID:KuT/zeXNO

トコトコ…

盗賊「(どう考えても普通じゃねえ)」

盗賊「(俺を狙うってんなら分かる。無関係の奴まで平気で殺すのがどうかしてる)」

盗賊「(あんなに残忍な方法で殺す意味が分からねえ。犯人の目的なんなんだ?)」

盗賊「(王冠ってのが姫様のことを指してんなら、やっぱり輪転器絡みだよな……)」

盗賊「(王宮から遣わされた奴か?)」

盗賊「(いや、王宮から遣わされた奴が殺しをする理由がねえ。狙うなら俺にするはずだ)」

盗賊「(ましてあの爺さんが指示したとは考えらんねえ。なら爺さんとは無関係の、独自で動いてる暗殺者?)」

盗賊「(……輪転器を暗殺せんとする者がいるとか言ってたけど、暗殺者にしては過激だ)」

盗賊「(恨みっつーか怨念めいたもんを感じる。あの爺さん、やっぱり何か隠してやがるな)」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 01:34:21.46 ID:KuT/zeXNO


盗賊「(……駄目だ。幾ら考えても分かりゃしねえ)」

盗賊「(ただ確かなことは、死人が出ちまったってことだ。気の優しいオッサンだったのに……)」

盗賊「…………」ギリッ

盗賊「(もし死人が出るとしても、それは俺だと思ってた。それが間違いだったんだ)」

盗賊「(俺の考えが甘かったせいでオッサンを巻き込んじまった。俺が死なせちまったんだ)」

王女「…んっ…うぅ…」

盗賊「(……魘されてるのか)」

盗賊「(姫様もかなり参ってる。目が覚めたら泣くだろう。きっと自分を責めるだろう)」

盗賊「(……くそっ!何が輪転器だ。何が魔王だ。何でこの娘じゃなきゃならねえんだよ)」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/07(水) 01:38:51.71 ID:KuT/zeXNO

盗賊「(何で、こんな娘一人に押っ被せんだよ)」

盗賊「(普通の娘じゃねえか。自由になりてえと思って何が悪りぃんだよ)」

盗賊「(外を見たかっただけなんだぜ? ただそれだけなのに、何でこんなことになっちまうんだ)」

盗賊「(……姫様を守ると約束した。いや、今はもうそんなことはどうでもいい)」

盗賊「(約束がなくても絶対に守る。でもな、狙うなら俺を狙えよ糞野郎……)」

盗賊「(戴冠式だか何だか知らねえが、俺とお前の戦だろうが。他の奴に手を出すんじゃねえ)」


『あれが輪転器。ふむ、あれならば申し分ないだろう。あれこそ私に相応しい』


盗賊「…………」ピクッ


『勘の良い奴だ』

『少々手こずるかもしれないな。だが、それは必ずやこの私が貰い受ける』
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 01:39:56.26 ID:KuT/zeXNO
また明日
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/07(水) 13:38:29.58 ID:QY4AFE940
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 21:31:10.22 ID:X9kGqpLKO

【詰所】

警備兵「……有り得ない」

警備兵「(犯人を目撃したという情報は数多く寄せられた。そこまでは順調だった)」

警備兵「(だが何故だ。あれだけの目撃情報がありながら何故見付からない……)」

警備兵「(白銀の甲冑を身に付けた騎士)」

警備兵「(そんな目立つ格好をした奴が、どうやったら姿を消せるというんだ)」

警備兵「(甲冑などそう簡単に脱ぎ捨てられるものではない。かといって持ち歩けるわけもない)」

警備兵「(派手な現場。多くの目撃情報。俺も含め警備隊の皆は早期解決すると思っていた)」

警備兵「(だが、一向に進展は見られない。一切の手掛かりも掴めていない)」

警備兵「(確かなことは、犯人はあのニンゲンに対して並々ならぬ感情を抱いているということだ)」

警備兵「(そこで、一度犯人から離れ、あのニンゲンについて調べてみることにした)」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 22:39:07.56 ID:X9kGqpLKO

警備兵「(だが、それも空振りに終わりそうだ)」

警備兵「(ニンゲンの犯罪者名簿。これを見始めてから何時間が経っただろうか……)」

警備兵「(幾らページをめくっても、出てくるのは人相書きに処刑済みの判が押されている者のみ)」

警備兵「(まあそうだろう。こちら側で犯罪を犯すということはそういうことだ)」

警備兵「(だからこそ、これは犯罪者名簿ではなく死亡者名簿と呼ばれている。故に、これを見る者などいない)」

警備兵「(ニンゲンの前科者など存在しない。何故なら既に処刑されているから。これが我々の常識になっている)」

警備兵「(しかし奴の落ち着きようから見て、まず真っ当な生き方はしていないだろうということは分かる)」

警備兵「(そう思ってリストを見てみたものの、やはり処刑済みの判で埋め尽くされている)」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/08(木) 23:16:00.09 ID:X9kGqpLKO

警備兵「……ふ〜っ。もう、夜か…」

バサッ…

警備兵「チッ…事務員の奴め」ガタッ

スタスタ…

警備兵「(書類整理くらいしっかりしろ。茶を啜りに来るのが仕事だとでも思ってるのか。まったく……?)」

警備兵「これは中央から届いた犯罪者名簿? 届いたのは、今朝か……」ペラッ

警備兵「……!!?」

警備兵「(罪状は王宮への侵入。暗殺未遂。現行犯逮捕。特別独房行き。処刑確定……)」

警備兵「これは、これは一体どういうことだ?」

警備兵「(この人相書きは間違いなく奴だ。それはいい。問題は既に処刑済みの判が押されているということだ)」

警備兵「(こんな大罪人を生かす理由がない。が、奴は確かに生きている)」

警備兵「(まるで意味が分からない。死亡者扱いにしてまで生かしている理由は何だ?)」

警備兵「(……どうやら、もう一度話をする必要がありそうだな…)」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 00:29:36.99 ID:qg9BFOksO

【宿屋】

王女「んっ…暗…」

盗賊「あ、起きたのか。おはよう姫様。よく眠れた?」

王女「あの、此処は……」

盗賊「あぁ、此処は宿屋だよ。姫様の部屋みたいに立派なもんじゃないけどね」ニコッ

王女「……ごめんなさい」

盗賊「?」

王女「昨晩からというもの、わたしは泥棒さんには迷惑ばかり掛けてしまっています」

王女「此処までも泥棒さんが運んでくれたのでしょう? 今更ですけど、何だか情けなくて……」

盗賊「そんなことねえよ。それに、姫様は軽いから運ぶのは楽だったしさ」ウン
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 01:03:27.21 ID:qg9BFOksO

王女「何故ですか…」

盗賊「何故って何が?」

王女「何故そんな風に出来るのですか? わたしと一緒にいても碌なことにならないのに……」

盗賊「何だよ急に。どうしたんだ?」

王女「人が殺されたんですよ!? わたしが外に出なければこんなことにはならなかった!!」

盗賊「…………」

王女「泥棒さんに傷を負わせたのも厩舎の主さんを死なせてしまったのも、元はと言えばわたしの我が儘のせいです」

王女「……あまりにも軽く考えていました。何処へ行こうと、わたしは輪転器なんです」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 01:37:26.99 ID:qg9BFOksO

王女「………戻ります」

盗賊「それは駄目だ。俺がさせない」

王女「何故ですか!? だってこのままじゃ、また関係のない方がーー」

盗賊「姫様、少し落ち着いてくれ。それから、今から俺が話すことを良く聞いて欲しい」

王女「………はい」

盗賊「……俺は、きみを外へ連れ出すように頼まれた。きみの父親、魔王からね」

王女「えっ…」

盗賊「俺に依頼した理由は内部に輪転器を暗殺しようとする奴がいるからだと言ってた」

盗賊「だから、王の力が受け継がれるまできみを守って欲しい。そう依頼されたんだ」

盗賊「そして、俺はその依頼を受けた。きみを連れ出し、きみを守る為に」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 02:11:15.86 ID:qg9BFOksO

王女「……そう…だったのですか……」

盗賊「それから、厩舎の主を殺害した犯人は俺にメッセージを残してた」

盗賊「どうやら俺と王冠を賭けた戦をしたいらしい。その王冠ってのは、おそらくきみだ」

王女「………」

盗賊「酷なことを言うけど、きみが王宮に戻ろうが外にいようが命を狙われることに変わりはない」

王女「……依頼されたから…ですか?」

盗賊「?」

王女「連れ出してくれた時の言葉も、高所で励ましてくれたことも……」

王女「これまでの優しい言葉や笑顔…」

王女「昨晩から今に至るまでの全ては、父に依頼されたからしたことなのですか?」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 02:50:16.76 ID:qg9BFOksO

王女「泥棒さん。答えて下さい……」

王女「あなたがわたしに向けてくれたもの。あれらは全て偽りだったの?」

盗賊「違う」

王女「あなたがわたしに見せてくれたものは何? 何もかも依頼されたからやっていたことなの?」

盗賊「違う」

王女「あなたは何の為にわたしを連れ出したの? 報酬を得たいから?」

盗賊「……違うよ」

王女「なら何故です?」

王女「何故そこまでしてくれるのですか? わたしには、あなたが見えません」ポロポロ
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 03:09:23.09 ID:qg9BFOksO

盗賊「一目惚れしたから」

王女「えっ…」

盗賊「あの時、きみに一目惚れした。今まで見た何よりも綺麗で、誰よりも輝いて見えた」

王女「……それは…わたし?」ポロポロ

盗賊「そう、きみだよ。輪転器なんかじゃない。きみを盗みに行ったんだ」

王女「ほんとう?」

盗賊「本当さ。まあ、当初は輪転機を盗もうとしてたけどさ……」

盗賊「俺はきみを連れ出して、色々なものを見せたくなった。勿論、きみの同意を得てからね」ニコッ

王女「……グスッ…うぅ〜…」

盗賊「え〜っと…大丈夫?」

王女「ぜんぜん大丈夫じゃないです。泣きすぎて頭が痛いです。うれしくて、はずかしいです」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 03:35:32.20 ID:zFPvQqIIO

盗賊「そっか。盗んで良かったよ」

王女「……わたしも、ぬすまれてよかったです」

盗賊「はははっ、やっぱり変わってんなぁ」

王女「泥棒さんはひどいです。ひとの気持ちをもてあそんで…グスッ…」

盗賊「……あのさ」

王女「はぃ?」

盗賊「守るから。きみを傷付けないように、傷付けるものから守るよ……」

王女「……泥棒さん…」

盗賊「だからさ、嬉しいなら笑ってくれよ。泣いてる顔は、あんまり見たくないんだ」

王女「……グスッ…いまは、むりです。それどころじゃないです。うれしすぎて…ダメです……」

盗賊「……そっか」

王女「(泥棒さん…ありがとう。わたしを見てくれて…そんな風に言ってくれて、ありがとうございます……)」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 11:37:50.44 ID:mq/ikPRzO
C
お姫から不穏なオーラを感じなくもないね
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 14:18:40.02 ID:bhFvH77MO
なんだスイーツか
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 19:41:38.63 ID:VveZrm8XO
スイーツってまだ使われてたんだ
久しぶりに見た気がする
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/09(金) 23:57:18.98 ID:DnhtZz7aO

王女「…グスッ…」

盗賊「あんまり泣きすぎると枯れちまうぞ?」

王女「……大丈夫です。こんなに泣いたのは初めてなのでまだまだ泣けます。今までずっと泣き溜めしてましたから」

盗賊「寝溜め食い溜めは聞いたことあるけど、泣き溜めは初めて聞いたな……」

王女「わたしも初めて言いました。でも、泣くっていいですね。すっきりしました」

盗賊「落ち着いた?」

王女「……油断してるとまた泣きそうです」

盗賊「あ〜、それは困るな。そうだ、準備するから手伝ってくれないかな」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 23:59:41.57 ID:DnhtZz7aO

王女「準備ですか? 一体何の?」

盗賊「傷付けないとか言っといてなんだけどさ、犯人と戦うことになると思うんだ」

王女「戦うって…まさか犯人とですか!?そんなの危険過ぎますよ!!」

盗賊「分かってる。けど、そうするしかない。あんなことをする奴だ。避けることは出来ない」

盗賊「宿屋の周りには街の警備隊がいる。俺を監視してるんだ。だから、街から出ることも出来ない」

王女「そんなっ…まだ傷も癒えていないんですよ? そんな体で戦ったらどうなるかーー」

盗賊「ああ、どうなるか分からない」

盗賊「ただ、そうしなきゃ終わらないってことは確かだ。奴が諦めるとは到底思えない」

盗賊「俺の後を付けて背後から刺す。そんな奴ならまだマシだった。奴は違うんだよ」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 00:03:01.61 ID:55cdPeiLO

王女「違う?」

盗賊「狙ってる奴に対して自分の存在を知らせるなんてことはしない。普通ならね」

盗賊「奴の執着心はそれだけ異常なんだよ。それを示す為に殺した可能性は充分にある」

盗賊「ただ、俺を狙っているのか姫様を狙っているのか。それが読めないんだ」

王女「……泥棒さんは先ほど王冠という表現をしていましたよね? あれも犯人の?」

盗賊「ああ。我が王冠は貴様の手に、貴様の王冠は我が手に在り。そんな文面だった」

盗賊「俺か姫様か。どっちが狙われてようと危険だってことは変わらない」

王女「……泥棒さんが考えている通り犯人の王冠がわたしを指しているとしたら…」

王女「泥棒さんの王冠とは何なのでしょう? 文面通りに捉えれば犯人が持っているんですよね?」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 00:28:30.36 ID:55cdPeiLO

盗賊「何か、そうみたいだな」

盗賊「でも、どれだけ考えたって誰かに何かを預けた憶えはないんだ。混乱させるつもりなのかもしれない」

盗賊「そもそも白銀の甲冑を身に着けた騎士の知り合いなんていねえしさ」

王女「……白銀の騎士?」

盗賊「目撃者は口を揃えてそう言ってた。すぐに見付かりそうなもんだけどーー」

王女「泥棒さん。目撃者の方達は本当に白銀の騎士と言っていたんですか?」

盗賊「ああ、目撃者は大勢いるみたいなんだ。宿屋に来るまでに何度か耳にしたよ」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 01:02:12.84 ID:55cdPeiLO

王女「白銀の騎士。白い騎士…」

王女「あのっ、壁に書かれていた文面のことをもう少し詳しく教えて下さいませんか?」

盗賊「え〜っと、王冠を戴くのは勝利者。戴冠の戦を始めよう。とかだったかな」

王女「!!」

盗賊「何か心当たりでもあるのか?」

王女「その…でもこれは…」

盗賊「些細なことでもいいんだ。知ってることがあるなら教えてくれないか」

王女「……全面戦争にはならなかったものの、我々とニンゲンは過去に三度の戦をしています」

盗賊「今の線引きが出来上がる前の時代だろ?最後の戦は三百年も前だっけ? それがどうかしたのか?」

王女「その戦の度に、歴史に名を残すような騎士が現れて戦を収束させているのです」

王女「一度目の戦に現れたのが白い騎士。攻め入ったニンゲンを退けた後、すかさず侵攻を開始」

王女「そこからは勝利に次ぐ勝利。当時の境界線を塗り替え領土を拡大したという話です」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 01:26:24.77 ID:55cdPeiLO

盗賊「勝利に次ぐ勝利、ね」

王女「ええ。更にはその時代の王から王冠を力を受け継ぎました。つまりは戴冠です」

王女「ですが、幾ら活躍したとはいえ騎士が王になるなど余りに荒唐無稽な話……」

盗賊「まあ、確かにそうだな」

盗賊「その頃には既に輪転器はあるわけだし、次期王も決まってるはずだ」

王女「その通りです。だからこそ白い騎士には様々な憶測があります」

王女「わたしが読んだ文献の中では、白い騎士は自分が王となるべく王にさえも戦を挑んだ。とありました」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 01:33:43.16 ID:55cdPeiLO

盗賊「勝利に次ぐ勝利、ね」

王女「ええ。更にはその時代の王から王冠と力を受け継ぎました。つまりは戴冠です」

王女「ですが、幾ら活躍したとはいえ騎士が王になるなど余りに荒唐無稽な話……」

盗賊「まあ、確かにそうだよな」

盗賊「その頃には既に輪転器はあるわけだし次期王も決まってるはずだ」

王女「その通りです。だからこそ白い騎士には様々な憶測があります」

王女「わたしが読んだ文献の中では、白い騎士は自分が王となるべく王にさえも戦を挑んだ。とありました」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 08:57:56.69 ID:GbC1UfhZO

盗賊「戴冠の戦か……」

王女「はい。事実かどうか確かめる術はありませんが、似通った部分があると思ったのでお話ししました」

盗賊「……姫様。その白い騎士はどうなったんだ?」

王女「数多くの勝利を積み上げた彼も、死に勝利することだけは叶いませんでした」

王女「彼は共に戦を駆けた甲冑を身に着けたまま亡くなった。と記されていました」

盗賊「一応聞いておくけどさ、そいつは死んだんだよな?」

王女「勿論です。一度目の戦は千年近くも前ですから。でも、やっていることも似ているので何だか怖ろしくて……」
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 16:26:16.19 ID:XZo31lO7O

盗賊「似てる?」

王女「彼の逸話と事件の内容です」

王女「彼は積み上げた遺体の上に立つと、これこそが勝利の証であるとした。ともありました」

盗賊「勝利と功績か。そういったもんを誇示すんのが大好きな奴だったんだな」

王女「ええ。挿し絵では積み上げた屍の上に城を築く姿が描かれていましたから……」

盗賊「う〜ん。聞けば聞くほど似てるな。犯人はそいつを真似てんのかもな」

王女「わたしもそう思います」

王女「自分を他人だと思い込み、あたかも本人であるかのように振る舞う」

王女「度を超した憧れや崇拝が心蝕み。遂には塗り潰してしまう。それはとても怖ろしいことです」

盗賊「……もしかしたら、生まれ変わりたかったのかもしれないな」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 16:28:17.27 ID:XZo31lO7O

王女「えっ…」

盗賊「自分に嫌気が指して、違う誰かになりたかったのかもしれない」

盗賊「まあ、本当のところは本人に聞いてみなきゃ分かんねえけどさ」

王女「(わたしもそうなってしまうのでしょうか。力を受け継いだ時、まったくの別人に…)」

盗賊「まっ、幾ら考えても仕方ねえか。でも勉強なったよ。ありがとう」

王女「いえ、そんな…でも、警備隊の方達は知らないのでしょうか?」

盗賊「何を?」

王女「白い騎士のお話です。捜査の役に立つかは別ですけれど……」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 16:29:25.98 ID:XZo31lO7O

盗賊「有名な話なのか?」

王女「そう言われると…どうなのでしょうか。外ではあまり知られていないのかも……」

盗賊「(そうか。知識の一つを取っても比較する相手がいねえから分からねえんだ)」

盗賊「(姫様の世界と外の世界じゃ知識の常識ってやつが違うんだろうな……)」

王女「あっ、そうでした」

盗賊「?」

王女「準備を手伝って欲しいと言っていましたが、わたしは何をすればよろしいのですか?」

盗賊「あ、そういやそうだった。まあ、準備って言ってもこれを渡すだけだけどね」
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 16:32:06.57 ID:XZo31lO7O

盗賊「とりあえず、はい」スッ

王女「……これは、泥棒さんが投げていた煙玉ですよね?」

盗賊「煙玉っつーか目潰しみてえなもんだな。舞い上がった粉が目に入れば涙が止まらなくなる」

盗賊「何かあったら、それを相手の足下に投げて逃げるんだ。強風や雨の場合は使えないけどな」

王女「……なるほど。分かりました」

盗賊「ああ、これは革鞄ごと姫様にやるよ。腰に巻いといてくれ」

王女「えっ? それでは泥棒さんがーー」

盗賊「いいっていいって遠慮すんな。それに、姫様に渡せるものはそれくらいしかないんだよ」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:16:47.43 ID:A3PWqiuHO

王女「?」

盗賊「だってさ、そういうもんならともかく爆弾なんか渡されても姫様は使わないだろ?」

王女「……はい。多分使えないと思います」

盗賊「だろ? だから、それはあくまでも護身用ってやつだ。それなら使えると思ってさ」

王女「泥棒さんはどうするのですか?」

盗賊「俺? 俺はまあ、手持ちの物を色々使って何とかするよ。でも、向いてねえんだよなぁ」

王女「向いていない?」

盗賊「うん。基本、盗む時って戦う必要はないんだ。見付かったら終わりだからな」

盗賊「この爆弾だって爆発音で見張りを追っ払ったりするのに使ってるんだ」

盗賊「服装だってこの通り。動き易いもん着てるだろ? だから真正面の戦いには向いてない」

王女「で、ではどうやって戦うのですか? 何か有効な策が?」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:19:59.12 ID:A3PWqiuHO

盗賊「あ〜、出たとこ勝負?」

王女「出たとこ勝負ってそんな…自分のことなんですよ!?」

盗賊「そりゃあ分かってるさ」

盗賊「でも、どんな戦い方をしてくるかなんて分からないだろ? 臨機応変にやるしかない」

王女「……無茶ですよ。背中の傷だって全然治ってないのに……」

盗賊「大丈夫。自分で何とかするから」

王女「……っ、服を脱いで下さい。包帯を取り替えます」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:21:49.94 ID:A3PWqiuHO

盗賊「え?」

王女「昨晩から取り替えてないですからね。どんな状態なのか確認しておきたいですし」

盗賊「そ、そう? じゃあ、お願いします」パサッ

王女「………」クルクル

盗賊「何か悪いな。嫌なもん見せちまってさ」

王女「そんなことないです。やはり、まだ出血がありますね。血止めの草を張っておきます」

盗賊「そんなの持ってたっけ?」

王女「昨晩、念の為に数枚採って泥棒さんの革鞄に入れておきました」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:24:08.62 ID:A3PWqiuHO

盗賊「(凄えな姫様…)」

王女「ごめんなさい、ちょっと染みます。じっとしていて下さいね」プチッ

ポタポタッ…

盗賊「ッ、ビリッてきた。今のは?」

王女「今のは痛み止めです」

王女「小さな果実なんですが、潰して液体を傷口に垂らせば麻痺させる効果があります」

盗賊「へ〜、そんなのがあんのか……」

王女「それから血止めの草を張って」ペタッ

王女「後は包帯で固定すれば終わりです。矢傷の方も同様のやり方で……」クルクル
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:26:37.74 ID:A3PWqiuHO

盗賊「姫様って物知りなんだな」

王女「そんなことは…これら全ては本で得た知識。古い古い民間療法です」

王女「きっと今なら、こんなことをせずとも傷薬を買えば済むのでしょうね……」

盗賊「でも、森や草原に薬屋はいないからなぁ」

王女「?」

盗賊「姫様の言う通り、今の薬の方が効くかもな。でもさ、いざという時に役立つのはそういう知識だと思うんだ」

盗賊「もし姫様にそういった知識がなかったら、俺は昨日の晩にお星様になってた」

王女「………」クルクル

盗賊「だからさ、誇っていいと思うぜ? 今時そういうことを出来る人はいないだろうし」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 22:53:33.74 ID:A3PWqiuHO

王女「そう…なのでしょうか……」

盗賊「うん。それに、普通は傷を縫ったり出来ない。多分逃げ出すんじゃないかな? 怖くてさ」

王女「怖い?」

盗賊「怖いっていうか嫌だろ? 血を流して死ぬ姿を見るなんて誰だって嫌なもんだよ」

王女「……わたしは死を見るより、あなたがいなくなることの方が怖かったです」

王女「もしかしたら、一人になることが怖かったのかもしれません。自分の為だったのかも…」

盗賊「それでもいいさ。生きてんだから」

王女「……生きて下さい。そして今度こそ、一緒に星を見ましょう」

盗賊「いつの夜なるか分かんねえけど、それでもいいなら……」
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 23:42:23.10 ID:A3PWqiuHO

王女「構いません。いつまでも待ちます」

盗賊「(こういうことをさらっと言うのがズルいんだよ。分かってなさそうだけど…)」

王女「(わたしに共に戦うことは出来ない。けれど少しくらい、あなたの役に立たせて下さい)」

クルクル…キュッ…

盗賊「………」

王女「終わりました。効果は短いでしょうが多少は痛みも和らぐと思います」

盗賊「ん、ありがとう」バサッ

王女「……お役に立てるか分かりませんが、白い騎士について思い出したことがあるのでお話しします」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 23:44:04.54 ID:A3PWqiuHO

王女「彼は特殊な武器を扱っていたそうです」

王女「それは籠手と剣が一体化したようなもので、彼の技量も相まって凄まじい威力を誇ったとされています」

盗賊「籠手の先に短剣をくっ付けた。みたいな感じ?」

王女「いえ、刃は長剣です。近接ではなく中距離で戦うことになると思います」

王女「籠手も泥棒さんのものとは違い、拳から肘辺りまで完全に覆うものでした」

盗賊「(パタとかいうやつか? やりにくそうだな……)」

王女「もし犯人が白い騎士に成り切っているとしたら、同じ武器を扱っているかもしれません」

王女「それからもう一つ。その姿はあたかも舞うようであった。とのことです」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/10(土) 23:58:02.56 ID:A3PWqiuHO

盗賊「(隙は無さそうだな……)」

盗賊「(つーか甲冑着ながら舞うんじゃねえよ。面倒くせえ奴だな)」

盗賊「(甲冑着てるってだけでも面倒なのに。でもまあ、近付けば何とかなるか)」

王女「……お役に立てましたか?」

盗賊「ああ、イメージは出来た。その武器なら腕の振りが早いのも頷ける」

盗賊「厩にいた馬を手早く捌けたのも、それがあったから出来たのかもな……」

王女「白馬さん、今頃何処にいるのでしょう。心配です」

盗賊「帰ったのかもな。幾ら肝が据わってても、そんな危ない奴がいたら逃げるに決まってる」

王女「……泥棒さんは、逃げようとは思わないのですか?」

盗賊「逃げられない。ってこともないけど、向こうが逃がしてくれそうにないからな」

盗賊「出来ることなら此処で終わらせたいんだ。追われるのって疲れるしさ」
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 00:09:28.73 ID:e+UqcoFdO

王女「……犯人。この街にいるんですよね」

盗賊「だろうな。何処に隠れてんのか見当も付かねえけどさ」

コンコンッ…

盗賊「盗み聞きにしちゃあ長かったな。厩にいた警備隊だろ? さっさと入れよ」

王女「えっ?」

ガチャッ…パタンッ…

警備兵「…………」

王女「(あっ、本当に昼間の警備隊の人だ。この人、苦手だなぁ…)」

警備兵「何だ、分かっていて話していたのか?」

盗賊「理解を深めて欲しくてね。俺のこと調べてたんだろ?」
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 00:49:58.55 ID:e+UqcoFdO

警備兵「その前に、何故俺だと分かった」

盗賊「歩き方。つーか、そんなことが聞きたくて来たのか?」

警備兵「気味の悪い奴だな。まあいい、早速本題に入ろうじゃないか」

王女「(嫌な予感しかしない。何だか蛇のような眼をしている。何を考えているのでしょう……)」

警備兵「王宮への侵入及び暗殺未遂。特別独房行き。これに間違いはないな」

盗賊「侵入は認めるけど目的は暗殺じゃない。盗みに入っただけだ」

盗賊「それ以外は大体合ってる。つーか特別独房だったのか。にしてはお喋りな看守だったな」
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 00:54:39.15 ID:e+UqcoFdO

警備兵「何を盗むつもりだった?」

盗賊「王の秘宝。輪廻転生機」

警備兵「……次の質問だ。何故、お前は生きている」

盗賊「何か難しい質問だな。哲学?」

警備兵「そのままの意味で、だ」

盗賊「心臓が動いてるからじゃねえの? そこに関しちゃ俺もあんたも変わらねえと思うけどな」

警備兵「はぐらかすな。此処には処刑済みの判が押されてある」ガサッ

盗賊「あ、本当だ。つーか人相書き下手だな。もっと上手く書いて欲しいもんだ」

警備兵「答えろッ!!」

王女「きゃっ…」ビクッ

盗賊「分かった分かった。話すから大きい声出すな。『姫様』が怖がってんじゃねえか」
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 01:04:03.56 ID:e+UqcoFdO

警備兵「……姫様だと」

盗賊「ああそうさ。偉大なる王の娘にして次の魔王。ついでに言うなら輪廻転生機の正体だ」

警備兵「何を馬鹿なーー」

盗賊「俺は王から直々に彼女を攫うよう依頼された。内部に暗殺者がいる可能性があるらしい」

盗賊「俺は依頼を受けて彼女を攫った。それに関しては彼女の同意も得てある」

警備兵「………」

盗賊「疑うなら王宮に手紙でも出せばいい。応答があるかは分かんねえけどな」

盗賊「とにかく、これが全てだ。用が済んだら帰ってくれ。あんまり関わるとあんたも殺されちまうぜ」
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 01:09:51.54 ID:e+UqcoFdO

警備兵「白い騎士にか?」

盗賊「聞いてたんなら分かるだろ?」

警備兵「お前が語ったこと全てが嘘なのか? それとも全てが本当なのか?」

盗賊「それはあんたが決めることだ」

盗賊「俺が何を言っても所詮はニンゲンの言うことだからな。どうせ信じやしないだろ?」

警備兵「……作り話にしては話が大きすぎる」

警備兵「それだけ口が回るなら、もっと控え目な嘘を吐くはずだ。納得の行く程度の嘘をな」

盗賊「だろうな。普通なら」

警備兵「信用されたい奴が吐くような嘘ではい。が、俄には信じ難い」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 01:16:27.94 ID:e+UqcoFdO

盗賊「どうする?」

警備兵「………」チラッ

王女「全て本当のことです。彼は嘘など吐いていません。投獄するというなら、わたしも行きます」

警備兵「…チッ…どうにも面倒なことになったな」

盗賊「思いっ切り関わるか、この場で手を引くか。今の内に決めといた方がいい」

盗賊「俺と彼女が狙われてるのは事実なんだ。関われば確実に巻き添えを食う」

警備兵「……お前は一体何なんだ」

盗賊「俺か?」

盗賊「俺は監視がいると分かっていながら逃げもせずに彼女の寝顔を眺めてた間抜けな泥棒さんだよ」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:20:35.37 ID:e+UqcoFdO

警備兵「……質問がある」

王女「はい。何でしょう」

警備兵「君は何故このニンゲンと共にいる。いや、何故共にいられる?」

王女「……わたしは長らく一つの部屋で生きてきました。彼は、わたしが会った初めてのニンゲンなのです」

警備兵「………」

王女「あらゆる文献を読みました。知識の中にあるニンゲンは狡猾で怖ろしい種族……」

王女「ですが、彼はそうではありません。わたしにとっては、そうではないのです」

警備兵「君にとってはそうかもしれないが、このニンゲンは犯罪者だ」

王女「ええ、分かっています。本来であれば怖れるべき人物なのでしょう」
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:22:54.54 ID:e+UqcoFdO

警備兵「なら何故?」

王女「彼のことは、不思議と怖ろしいとは思わないのです」

王女「彼は傷を負い、血を流しました。けれど、それでもわたしを王宮から連れ出してくれた」

王女「閉ざされていた世界の扉を開き、わたしに外の世界を見せてくれたのです」

警備兵「恩人というわけか」

王女「いえ、失いたくない人です」

警備兵「………分かった。二人共に詰め所に連行する」

王女「そんなっ、彼を裁くのですか!?」

警備兵「いや、死んだニンゲンは裁けない。そのニンゲンは世界から抹消された存在だ」

王女「ならば何故連行するのです!?」

警備兵「関わるか否か。その答えが出たからだ。これより君を保護する。宿屋よりは安全だ」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:25:04.35 ID:e+UqcoFdO

盗賊「俺は?」

警備兵「勝手にしろ。逃げたければ逃げるがいい。彼女の傍にいないのなら、そうしろ」

盗賊「あ、そう。じゃあ、お言葉に甘えてご同行しまーー」

ガチャンッ…

盗賊「……おいおい、そりゃないだろ」

警備兵「黙れ。こうでもしないと示しが付かないんだよ。仲良しこよしで歩けるか」

盗賊「何だよ。素直じゃねえなぁ」ニヤニヤ

警備兵「お前には手錠より轡が必要のようだな。耳障りなことばかり口にする」

盗賊「舌の根が乾いたことがないのが自慢でね。罪にはならないだろ?」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:27:13.74 ID:e+UqcoFdO

盗賊「俺は?」

警備兵「勝手にしろ。逃げたければ逃げるがいい。彼女の傍にいたいのなら、そうしろ」

盗賊「あ、そう。じゃあ、お言葉に甘えてご同行しまーー」

ガチャンッ…

盗賊「……おいおい、そりゃないだろ」

警備兵「黙れ。こうでもしないと示しが付かないんだよ。仲良しこよしで歩けるか」

盗賊「何だよ。素直じゃねえなぁ」ニヤニヤ

警備兵「お前には手錠より猿轡が必要だな。耳障りなことばかり口にする」

盗賊「舌の根が乾いたことがないのが自慢でね。罪にはならないだろ?」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 02:33:34.43 ID:e+UqcoFdO

警備兵「行くぞ、猿」グイッ

盗賊「痛い!痛いから!」

警備兵「さあ、君も来るんだ。詰め所までは警備隊が護衛する」

王女「あ、ありがとうございます!」ペコッ

警備隊「………」ザッ

ガチャッ…パタンッ…

警備兵「ほら、歩け」グイッ

盗賊「んなことしなくても歩くって!! ったく、乱暴な男は嫌われるぜ?」

警備兵「お前に好かれるくらいなら舌を噛み切って死んだ方がマシだ」

トコトコ…

王女「本当にいいのですか? 狙われるかもしれないのですよ?」

警備兵「こう見えて仕事熱心なんだ。職務放棄はしたくない。それから、昼間は済まなかったな」ザッ

トコトコ…

王女「(何だか不思議。泥棒さんといると色んな人が変わっていくような気がする。わたしも変わったのかな……)」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 02:34:44.34 ID:e+UqcoFdO
また明日
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 09:27:51.93 ID:oUPebYb80
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 16:08:59.00 ID:LZdsXNJDo
続きが愉しみ
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 22:18:46.17 ID:3SZ+PfozO

【詰所】

盗賊「男ばっかだな。きちんと掃除しろよ」

警備兵「少し黙ってろ」

盗賊「ハイハイ。分かったから睨むなよ」

警備兵「…チッ…着いて早々で悪いが、君は何故狙われているんだ?」

王女「……あの、今更言うのも何ですが兵士さんはわたしが王女であると信じるのですか?」

警備兵「信じたわけではない。ただ、君とそこにいる猿が狙われてることは確かだ」

警備兵「君が宿屋で話していた白い騎士とやらに関しても同様の見解だ」

警備兵「千年も前のことはともかくとして、犯人が白銀の甲冑を身に着けていたことは疑いようのない事実だからな」

王女「……なる程、あくまで事件解決の為ということですか」

警備兵「その通りだ。その為に、君が王女だと仮定して話を進めようというわけだ」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 22:35:21.21 ID:3SZ+PfozO

盗賊「何だそりゃ?」

盗賊「そんなの信じてんのと変わんねえじゃねえか。あんたって本当に素直じゃないんだな」

警備兵「黙ってろ。次に口を開いたら自慢の二枚舌を三枚に下ろすからな」

盗賊「ハイ」

警備兵「……さて、お聞かせ願おうか」

王女「先ほど話した通り、わたしは長らく一つの部屋で生きてきました」

王女「ですので、王宮の内情については詳しくありません。それでもよろしければお話しします」

警備兵「それでも構わない。思い当たることがあれば話してくれ」

王女「……明確な意思を持って狙うとするなら、兄以外には考えられません」

王女「輪転器とは王の力を継ぐ器。本来であれば実子である兄が次期の王になるはずでした」

警備兵「実子である兄? ちょっと待ってくれ。ということは、君はまさか…」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 23:03:24.93 ID:3SZ+PfozO

王女「ええ、お考えの通りです」

王女「魔王である父とわたしに血の繋がりなど一切ありません」

警備兵「……これはまた、とんでもない話だな」

盗賊「そうなのか?」

警備兵「王の血は途切れることなく今日に至る。純血であり神聖なる存在。それが常識だ」

警備兵「彼女の話が本当なら、俺はとんでもない秘密を聞いてしまったことになる……」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/11(日) 23:07:13.17 ID:3SZ+PfozO

盗賊「ビビってんのか?」ニヤニヤ

警備兵「お前はニンゲンだから笑っていられるだろうが、国を揺るがす事態に発展する可能性も十分に有り得る」

警備兵「民は王を神の如く崇め、唯一無二の存在としている。魔王とは、そういう存在なのだ」

盗賊「へ〜、そうなんだ。それよりさ、姫様って姫様になる前はどうしてたんだ?」

王女「遊牧民の子だったような気がするのですが、王宮に入る前後の記憶が曖昧なのであまり…」

盗賊「……そっか。あっ、悪い。続けてくれ」

警備兵「では、兄が暗殺者を差し向けていると? 白い騎士も彼が?」

王女「断言は出来ませんが、その可能性は高いと思います」

王女「他所から連れて来た見ず知らずの娘に力を継がせるなど許せないでしょう?」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:03:16.36 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「確かに…」

盗賊「で、どうすんだ?」ニヤニヤ

警備兵「…チッ…お前は王家の跡継ぎ問題を街の警備隊がどうにか出来ると思うのか?」

盗賊「出来ねえだろうな。おまけに犯人の目星も付いてねえ、正に八方塞がりってやつだ」ウン

警備兵「随分と能天気な奴だな。事の重大さを分かっての台詞なら尚更だ」

盗賊「まあまあ。跡継ぎ問題とかは置いといて、罪のないうら若き女性が狙われてるんだぜ?」

盗賊「だったら警備隊としてやるべきことは決まってるんじゃねえの?」

警備兵「守るしかない、か? 確かにその通りだ。だが、お前に言われると無償に腹が立つな」
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:04:36.94 ID:Xz0S6i1pO

盗賊「ニンゲンだから?」

警備兵「口の減らない小僧だからだよ」

盗賊「そうかい。ところで、俺と姫様の後に街に入った奴は調査したのか?」

警備兵「当たり前だ。既に調べてある」

盗賊「あ、そうなんだ。でも、その様子じゃ進展なしみたいだな」

警備兵「お前が厩に馬を預けた直後に入った男がいてな。そいつで確定かと思ったんだが証拠は出なかった」

盗賊「参考までに聞いとくけど、その男はどんな奴だった? 右手に火傷してなかったか?」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:06:35.95 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「何故それを…」

盗賊「決まりだな。そいつが犯人だ」

警備兵「何を言ってる? その男は甲冑はおろか武器の類も一切所持していなかったんだぞ?」

盗賊「白い騎士が使ってた武器の話は聞いてたか?」

警備兵「籠手と剣が一体化したようなもの。だったか? それがどかしたのか?」

盗賊「犯人は馬の死体と厩の主の死体を運ぶ時、その武器を外したんだ」

盗賊「パタってのは籠手の中に握りのある武器だ。籠手ごと外すしかない。つまりは素手」

盗賊「で、火を放った。その時に火傷したんじゃねえかと思ってさ」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:19:20.95 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「面白いが決定打に欠けるな」

盗賊「でも、疑わしいのはそいつしかいない。いっそ正面切って行ってみるか?」

ガチャ…ガチャ……ザッ…

警備兵「!!」

王女「ま、まさか……」

盗賊「姫様、奥に隠れててくれ」

王女「は、はいっ」サッ

コンコンッ…

警備兵「何故俺だと分かったのかと聞いた時、お前は足音で分かったと言ったな」

盗賊「あ?」

警備兵「甲冑の音に気付かなかったのか? 全く、肝心な時に役に立たない耳だな」

盗賊「あのなぁ、扉の前に来て初めて聞こえたんだぜ? それまでは馬の足音しか聞こえなかった」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:38:02.37 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「…チッ…まあいい。用意はいいか?」ザッ

盗賊「どうする気だ?」

警備兵「扉ごと奴をぶっ飛ばす。その間に彼女を連れて逃げーー」

『夜分に申し訳ない。少しばかり訊ねたいことがあるのだが宜しいか?』

盗賊・王女「あっ…」

警備兵「どうした?」

盗賊「え〜っと。なんつーか…知り合い? 出来ることなら二度と会いたくなかったけどさ」

警備兵「……お前の仲間じゃないだろうな?」

盗賊「違う違う。俺とは真反対の正義の味方だよ。かなり暑苦しいけどね……」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 00:52:14.42 ID:Xz0S6i1pO

警備兵「いいんだな?」

盗賊「まあ、問題はあるけど今の状況なら何とかなる。大丈夫だ」

警備兵「……今開ける」

『おお、有難い。では、失礼する』

ガチャ…

騎士団長「ん?」

警備兵「……王宮騎士か?」

盗賊「よっ!」

騎士団長「なっ…き、貴様ァ!姫様は!姫様は何処だ!! まさかーー」

盗賊「姫様、呼んでるぜ? 出てこいよ」

ガタガタッ…

王女「お、お久しぶりです」ヒョコッ

騎士団長「ひ、姫様!? よ、良かった。本当に良かった。ご無事で何よりです……」
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 01:08:14.17 ID:Xz0S6i1pO

盗賊「あのさ、頼みがあるんだけど」

騎士団長「誰が貴様の頼みなど聞くか!この場で引っ捕らえてーー」

王女「き、聞いて下さいっ!!」

騎士団長「ひ、姫様?」

騎士団長「(あの大人しい姫様が声を張り上げた? 顔付きもどこか頼もしくなられたような…)」

盗賊「手短に話すから良く聞いてくれ。この街で殺人事件が起きた。犯人は姫様を狙ってる」

盗賊「犯人の目星は付いたけど姫様を一人にするわけにはいかない。守ってくれる奴が必要なんだ」

盗賊「犯人は手練れだ。おそらく警備隊だけじゃ足りない。あんたの力が必要なんだ。力を貸して欲しい」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 01:22:52.33 ID:Xz0S6i1pO

騎士団長「………」チラッ

王女「事実です。どうか、信じて下さい」

騎士団長「……分かりました。姫様の頼みとあらば断るわけには行きません」

盗賊「いや〜、助かったよ」

騎士団長「貴様に礼を言われる筋合いはない。姫様に感謝するんだな」

王女「あの、先ほどから気になっていたのですが、どうやってこの街に来たのですか?」

騎士団長「それが、何と言ったらよいのか。馬の導きとでも言いますか……」
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/12(月) 01:27:16.50 ID:Xz0S6i1pO

王女「馬の導き?」

騎士団長「ええ、そこの賊が逃走する際に乗っていた馬です」

騎士団長「いきなり帰って来たかと思えば、付いてこいと言わんばかりに走り出しましてな」

騎士団長「これは何かある。そう思って追い掛けてきた次第であります」

カカッ…カカッ…

白馬「………」

盗賊「(やっぱりそうか。賢い馬だとは思ってたけど、まさかここまでとは思わなかったな)」

王女「は、白馬さんっ!」タタッ

白馬「………」カカッ

ゴチンッ…

王女「あたっ…でも良かった。無事だったのですね。本当に心配したんですよ?」

白馬「(別にあなたの為じゃないわ。彼の役に立ちたくて走っただけよ)」フンッ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 01:28:25.36 ID:Xz0S6i1pO
また明日
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 07:22:35.03 ID:35T3vRLMo
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 10:04:09.02 ID:e2KMnnIMo
しろうまさんかっこいい
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/12(月) 22:44:06.00 ID:kf1lpa/w0
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 00:05:51.42 ID:CqWIlVceO

【玉座の間】

将軍「宜しいのですか父上」

老人「何がだ?」

将軍「騎士団長が独断で輪転器を追った件についてです。支障が出るかも分かりません」

老人「それならばそれでよい。あの男ならば遅かれ早かれそうするであろうと思っていたからな」

将軍「これも予定通りですか」

老人「予定通りとは言えぬが想定していた通りの動きだ。その程度で計画が狂うことはあるまい」

将軍「………」

老人「焦るな。誰もが思惑に沿って動くわけではない。して、白騎士は?」

将軍「街に入りましたが接触はまだのようです。結果は明日までに出ることでしょう」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/14(水) 00:10:55.95 ID:CqWIlVceO

老人「フッ、そうか……」

老人「どのような結果が出るか楽しみだな。これ程まで朝を待ち遠しく思うのは久方ぶりだ」

将軍「……父上はあのニンゲンを随分と買っているようですね。期待するに値する男でしたか?」

老人「それを確かめる為に白騎士を遣わした。場合に寄っては今夜で終わってしまうだろう」

将軍「……それにしては落ち着いていますね。父上には既に見えているのですか」

老人「見えてなどおらんよ。ただ、確信めいたものを感じるのだ。奴は必ず蘇るとな」

将軍「それは、中にいる者がそう言っているのですか。それとも父上個人が?」

老人「どうなのだろうな。王の力を継いでから随分と経つ。最早どちらがどうであるかなど分からんよ……」

将軍「……父上、これが王の悲願であることは重々承知しております。ですが、無理はしないで下さい」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 00:41:50.96 ID:CqWIlVceO

老人「無理などしておらん」

老人「儂とて出来ることならば早く手放したいところだが夜が明けるまでは何とも言えん」

老人「確信はある。だが、奴がそうでなかった場合は次を待つことになるだろうな……」

将軍「………」

老人「転生に次ぐ転生。幾人もの魂を渡り歩いて千と余年が経ち、遂に相応しい器が現れたのだ」

老人「儂はただ、此度の転生が長く苦しい旅路の末であることを切に願う。王からの解放をな」

将軍「力は? そうなった時、王の力はどうなるのです?」

老人「分からん。相応しき者へと渡るか、或いは願いを叶えて消えるか。そのどちらかだろう」
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/14(水) 01:10:22.79 ID:CqWIlVceO

将軍「っ、失礼します」ザッ

老人「待て」

将軍「何でしょうか」

老人「それ程までに王の力を欲するのならば奪ってみせよ。お前が何を目論んでいようと止めはせん」

将軍「有り難う御座います」

老人「但し、此度の輪転器は一つではないことを忘れるな。野望を叶えたいのなら、焦らぬことだ」

将軍「……はい。分かっております」

ーーー
ーー


王女「えっと。というわけで今に至ります」

騎士団長「何と、そのような残忍な事件が起きていたとは…しかも将軍が関与しているなど……」

王女「まだそうと決まったわけではありません。あくまでも、そうする可能性が高い人物を述べただけです」
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/15(木) 00:45:17.19 ID:2R8Uw+FOO

騎士団長「………」

王女「……あの、申し訳ありません。急にこんな話をされては混乱しますよね…」

騎士団長「……謝ることなどありません。ただ、整理するには時間が掛かるかと思います」

警備兵「(それはそうだろう。街の警備隊である俺ですら動揺を隠せないでいるんだ)」

警備兵「(極めて近しい立場。王宮にいた者にとってその衝撃は計り知れないものだろう)」

警備兵「(血縁ではないという事実。輪廻転生機の正体。王位継承の裏で蠢く策謀)」

警備兵「(王に仕える騎士団)」

警備兵「(その団長である彼にとって、これらを一辺に理解しろと言うのはあまりに酷な話だ)」
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/15(木) 01:15:34.80 ID:2R8Uw+FOO

騎士団長「姫様は…」

王女「?」

騎士団長「姫様は姫様です。血縁がどうだと言われても、私にとって姫様は姫様なのです」

騎士団長「輪転器であったことも王位継承の件についても私にしては…その、何と言いますか…」

騎士団長「それら全ては些細な事。と言ってしまうと語弊がありますが、何も変わりません」

王女「何も…変わらない?」

騎士団長「先程も申し上げた通り、姫様は姫様です。私が姫様に抱くものは幾らかも変わってはおりません」

盗賊「へ〜。気の利いたこと言えるんだな。もっと不器用かと思ってたよ」

警備兵「話の腰を折るな。猿は黙っていろ」

盗賊「……あのさ、その猿って呼び方はニンゲン呼びから昇格したの? それとも見下してんの?」
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/15(木) 01:36:59.77 ID:2R8Uw+FOO

警備兵「それくらい自分で考えろ。猿」

盗賊「猿と話せるってことはあんたも猿ってことになるわけだけど、それについてはどう考えーー」

警備兵「黙ってろ」

盗賊「はぁ〜、話にならねえな」

警備兵「何故だか分かるか? それは俺が猿ではないからだ。そもそも話になるわけがない」

盗賊「あんた友達いないだろ」

警備兵「うるさい」

王女「フフッ…」

盗賊「えっ?」

王女「あっ、ごめんなさい。何だかんだ言いながら楽しそうにお話していたので、つい笑ってしまいました」
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 19:27:05.40 ID:qg/nRbuLO

警備兵「良かったな。笑われて」

盗賊「あんたも笑われてんだよ!」

王女「フフッ…」

騎士団長「……姫様、一つ聞いておきたいことがあります」

王女「は、はい。何でしょう?」

騎士団長「……昨晩、その男に連れ去られた時のことです。私は二人の会話を聞いていました」

王女「!!」

騎士団長「気を失う直前のことでしたから聞き間違いではないかと思っていました。いや、そう思いたかった……」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/16(金) 19:53:30.79 ID:qg/nRbuLO

騎士団長「姫様、どうかお答え下さい」

騎士団長「外へ出たのはご自分の意思ですか。それとも、その男に誑かされーー」

王女「違います」

騎士団長「!?」

王女「外へ出たのは、わたし自身の意思です。わたしが決めたことです」

騎士団長「っ、やはり…そうでしたか。何とはなしに、そんな気はしておりました」

王女「えっ?」

騎士団長「ご自分ではお気付きにならないでしょうが、とても晴れやかな顔をしています」

騎士団長「私はそのような顔を…何の屈託もなく笑う姫様を見たことがありません。感情を露わにするお姿も……」

騎士団長「そんな姫様を見て嬉しく思う反面。何も知らなかった自分を情けなく思います」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 20:48:53.23 ID:qg/nRbuLO

騎士団長「姫様、申し訳ありませんでした」ザッ

王女「そんなっ…頭を上げて下さい。迷惑を掛けているのはわたしなのに……」

騎士団長「謝らなければならない理由はそれだけではありません。実はその…」ガサゴソ

王女「?」

騎士団長「何かしらの手掛かりになるかも知れないかと思い…姫様の部屋からこれを……」スッ

王女「そ、それは…か、返して下さい!!」バッ

騎士団長「申し訳ありませんでした!!」

王女「……見ましたか?」

騎士団長「そんなまさか! 婦女子の日記を盗み見るなどするわけがありせん!!」
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 20:52:03.18 ID:qg/nRbuLO

盗賊「本当かぁ?」

騎士団長「貴様のような盗人に言われたくはないわ!! その日記は姫様の為に隠していたのだ」

盗賊「姫様の為?」

騎士団長「そうだ。中に重大な機密情報が書かれていたとしたら大変だからな。何者かに持ち出される前に私が守っていたのだ」

盗賊「言ってることはともかく、やってることは盗人そのものじゃねえか」

騎士団長「喧しい!!」

王女「あのぅ、本当に見てないですよね?」

騎士団長「勿論です!誓って見ておりません!!」
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 22:58:02.40 ID:qg/nRbuLO

王女「(はぁ、良かった……)」

警備兵「諸々の状況整理は終わったな。で、お前はどうする。行くのか?」

盗賊「場所さえ教えてくれればな。あんたと団長さんは此処に残って姫様の警護をしてて欲しい」

警備兵「一人でやる気か?」

盗賊「ああ、俺の戦だからな。当然、向こうもそのつもりでいる。だから、俺が終わらせる」

警備兵「………」

盗賊「それとも何か? ニンゲンの俺に手を貸してくれる奇特な奴がいんのか?」

警備兵「……場所はお前がいた宿とは真逆。街の西側にある宿だ。さっさと行け」

盗賊「分かった。そいつが当たりかどうか分かんねえけど、とりあえず行ってみるよ」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 22:59:55.98 ID:qg/nRbuLO

盗賊「……姫様を頼む」ボソッ

警備兵「ああ、任せろ。彼女は我々警備隊が責任を持って警護する」

王女「ま、待って下さい!!」タッ

ガシッ…

王女「!?」

騎士団長「……姫様、なりません」

王女「一人で行くなんて危険過ぎます!! 彼は怪我をしているのですよ!?」

盗賊「大丈夫。すぐに帰って来るよ。それまでは此処で待っててくれ。んじゃ、行ってくる」ザッ

王女「泥棒さーー」

ガチャ…バタンッ…
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/06/16(金) 23:02:03.36 ID:qg/nRbuLO

王女「……何故ですか」

警備兵「何故とは?」

王女「先程はわたし達を保護すると言ったではありませんか。それなのに何故……」

警備兵「君を保護するとは言った。だが、二人を保護するとは言っていない。協力するともな」

王女「そんなっ…」

警備兵「外を知らないから仕方がないかもしれないが、我々とニンゲンには埋められない溝がある」

警備兵「加えて言うなら奴は大罪人だ。罪人同士が殺し合おうが知ったことではない」

警備兵「どちらが死のうと結果的に罪人一人が消えてくれるなら安いものだ。違いますか?」

騎士団長「………」

王女「っ、そんなの間違っています。姿形は違えど我々もニンゲンも同じーー」
393.88 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)