【安価】 ガンダムビルドファイターズトライ・アズールU【艦これ×GBF-T】

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722 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/03/26(火) 04:09:17.86 ID:bdDXg47H0
《秘密基地 トレーニングルーム》


萩風「麒麟・極!」

神通「くっ…!天剣、絶っ… …!?」

萩風「勝負、有りです」

神通「…やるようになりましたね。分身をの完全に実体化させて囮に使い、自身は気配を完全に消して私の背後に回り込むなんて…

しかも極まで覚えて、大鯨さんと近づきつつある。いつの間にここまで?」

萩風「見よう見真似で使ってみただけです。制御はまだまだ出来そうにないし…

それより姉さんの方が問題です。前ならまだ私に喰らい付いてスタミナ切れまでもつれ込まそうとした筈、なのにそれをしない」

神通「いえ、私は…」

萩風「正確にはしない、のではなく出来ないんですか。貴女の中の迷いが刃から伝わりますよ。

戦いに集中できていない、このままでは貴女は戦いを終わらせるどころか私達のお荷物でしかないです」

神通「っ…!」

萩風「私は手段を選ばない。お母様を救うためなら、破滅へ向かう未来を変える為なら、大事な人を護るためなら私はもう迷わない。

朝雲さんと霞さんも戦おうとしてる。宮城の二人だってもう戦ってる。それなのに年長で5人を束ねるべき立場の人間が迷っていて恥ずかしいとは?」

神通「それは…」

萩風「姉さん、どうして何も頼ろうとしないんですか」

神通「え…?」

萩風「自分が消えるのが怖かったのは私も同じ。先に私はそれを乗り越えてた、なら私を頼っても良かった筈…

自分一人で抱え込んで、解決できることなんて何も無い。どれだけ肉体を鍛えたところで心の弱さは拭えない、なら他の人を頼っても良いんです」

神通「萩風…」

萩風「今の段階で私から言えるのはこれだけ… あとは姉さん次第です。これからどうなるかは」



萩風「全く… 私、こう言うのは柄じゃないのに」

朝雲「馴れない役お疲れ様」

萩風「朝雲さんが言えば良かったじゃ無いんですか?」

朝雲「こう言うのは自分の身内からガツンと言ってやった方が効くのよ。まぁ、これでようやく先輩も問題点に気付けたかな」

萩風「『誰かを頼ろうとしないで一人で抱え込む』、お母様そっくりです」

朝雲「何と言うか、先輩と瑞鳳さんは似てるけどここまで似なくても良かったのに。 …ん?」

萩風「どうかしました?」

朝雲「もしかしてだけど… 改変前の未来の瑞鳳さんって、誰にも頼らないで深海棲艦と戦ったのよね?」

萩風「ええ、単身でですけど…」

朝雲「そしてこの前も単身で決着の場に乗り込んで… 多分改変前も、誰にも頼らないで戦って阻止に失敗して…」

萩風「一体それが…」

朝雲「…もしかしたら、歴史の分岐点が分かったかも」

萩風「え…!? どう言う事!?」

朝雲「多分分岐の鍵は瑞鳳さん… 瑞鳳さんが、歴史のターニングポイントなんだと思う」
723 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/03/26(火) 04:51:29.84 ID:bdDXg47H0
《ブリーフィングルーム》


霞「先輩? どこに行ってたんですか?」

神通「トレーニングルームの方に。ちょっと萩風に怒られてしまいまして…」

霞「珍しい… ま、大方朝雲差し金だろうけど」

神通「それでも流石に堪えました… 自分の欠点を突かれたみたいで」



霞「誰かを頼れ、か… だけど今の萩風なら言う資格はあるかもしれないわね」

神通「正直、私は今のあの子が羨ましいです。そうやって重荷を分かち合ってくれるパートナーが居るのは」

霞「先輩…」

神通「私、人付合いとか苦手で… だけどようやく、私の剣を預けても良い人が現れて…」

霞「海風、ですね」

神通「剣を教えるって約束までしたのに… 私が怖いのはただ消えることじゃない…

彼女の記憶から『今の私』が、約束を守れなくなることでもなく約束を交わしたことすら消えてしまうのが怖いんです」

霞「先輩が消えることは先輩が居た未来が消えることを意味して、その未来が消えれば『先輩が過去に転移した』事象自体が消えてそこに矛盾が起きる。

そこで世界の『辻褄あわせ』が起きれば、『今の先輩』と言う存在が私達からも消える… それが怖いんですね」

神通「はい…」

霞「確かに、誰かの記憶にすら残らないのは辛いし嫌ね… 私の家族も、あんな事故があったのに記録から殆ど消されて誰の記憶にも留まってない…

だけど先輩は今ここに居ます。ここに居て、未来を変えるために戦おうとしてる」

神通「霞さん…」

霞「きっとまだ方法はある筈です。先輩を消させない手段が」


蒼龍『あーあー、霞ちゃん居る? 至急医務室に来て欲しいんだけど』


霞「呼び出し?」

神通「検査、でしょうか」

霞「もう感応波のテストは終わらせたのに… ちょっと行って来ます」
724 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/03/29(金) 03:31:38.77 ID:sxfFl5AQ0
《医務室》


「あ、来た」

霞「誰…?」

「貴女なら分かるでしょう?感応の使い方は前に教えたから」

霞「まさか、リタ!?」

リタ「正解」ポチッ

霞「あ、普通に戻った…」

リタ「どう、このヒュウガ特製ナノマテリアルを利用した変装アイテムは?」ポチッ

霞「あ、また見た目変わった」

リタ(Ver.NT)「今はこの姿にしかなれないんだけどね、システムの都合上。だから現状私専用なの」ポチッ

霞「なる程ね… で、その見た目は何」

リタ「『もう一つの世界の私』の姿、って言えばいいのかな… 宇宙世紀の平行世界の一つの私の姿、ってところ」

霞「? 元の姿、じゃないの?」

リタ「元の私の目は黒で髪の色は覚えてないけど… 少なくとも目はエメラルドグリーンじゃないし髪型も違ってる。

私が存在したのは『ネオ・ジオングがフロンタルに届かなかった世界』で、この容姿は『フロンタルがネオ・ジオングを手に入れた世界』の私のものってこと」

霞「小説版とアニメ版のキャラの違いってこと?」

リタ「要するにそう言う事。細かい差異はもうちょっとあるけど、割愛するね」

霞「で、用件は何?」

リタ「せっかちだね。良いけどさ。 要件は二つ、医務室に呼び出したのはその一つ… 向こう側で保護してたこの子をこっちに返しに来たの」

霞「女の子?」

リタ「貴女は初めてなんだ、この子を見るの」

霞「そうだけど… もしかして、マリオン?」

リタ「うん。 私達の世界がちょっとヤバめでね、何かあったら危ないからこっちに戻すことになったの」

霞「ヤバイって…」

リタ「いや、もう危機は脱したんだけどハシラジマの設備にも被害が出て一部機能が停止してる状態に陥ってるから…

今度は疲弊したハシラジマを私達の世界の人類が攻撃しないとも限らないし、念のためってことで」

霞「世界を敵にまわしたの!?」

リタ「そう言う訳じゃないんだけど… ハシラジマって未知のテクノロジーとか兵器とか満載だから、狙ってくるのが多いの。

防御フィールドに擬装用光学迷彩とかはあるけど、一部機能が止まってるからもし襲撃されたら完全に安全とは言い難いし」

霞「そう言うことね… で、もう一つの用件は?」

リタ「貴女に託さなきゃいけないものがある」

霞「何それ?」

リタ「『ガンダム』」

霞「『ガンダム』…!?」

リタ「私達ですら存在を把握してなかった、誰も知らない『ガンダム』… それを貴女に引渡しに来た」
725 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/03/30(土) 00:33:51.47 ID:k3IB2gxF0
《格納庫》


リタ「これが貴女に引き渡すために持って来た機体、未知の『ガンダム』」

霞「なんかひ弱そうな見た目ね。華奢と言うか、痩せっぽちって言うか」

リタ「試作機らしいからね。戦闘用に設計されてない試験機、技術系譜としては『ヤクト・ドーガ』に近いかな」

霞「ヤクト、ってファンネル搭載型の機体よね。この機体、サイコミュがあるの?」

リタ「サイコフレーム積んでるだけ。内蔵武器もバルカンだけだしスペックだってヤクトにすら及ばない。

コックピットだって全天周囲モニターですらないしリニアシートすら無い、本当に試験するためだけの機体だよ」

霞「えぇ…」

リタ「ただこの機体、製造はU.C.0090前後、少なくとも0093前に製造された機体なのにOSに『NT-D』が搭載されてた」

霞「『NT-D』が!?」

リタ「多分後天的に搭載された可能性が高い、って言うのがこっちの見解。一応ハシラジマで近代化改修とオプション装備の追加製造はしたけど性能は並、って考えてくれて構わないよ」

霞「何でそんな機体を私に預けるのよ…」

リタ「敵はEXAM、対NTに特化しているならこっちも対抗出来るシステムは要るでしょ? それに少なくとも敵はモビルスーツの頭を稼動状態で保有してる、ってことはMSそのものを保有している可能性だってゼロじゃないし」

霞「だからこっちもシステムとMSへの対抗策にこのガンダムを用意した、ってことね」

リタ「そう言う事。一応貴女用に『ZZガンダム』系統の用意をしてたんだけど、戦力不足で私達の側での運用が決まっちゃったから…」

霞「MS戦の可能性がどれだけあるのか分からないけど、やってみせるわよ。少なくとも私は戦うし、生き残ってみせる」

リタ「流石、健闘を祈ってるよ。 あとこれ仕様書とマニュアル、それと向こうにシュミレータも搬入しておいたから」

霞「分かった。で、この機体はなんてガンダムなの?」

リタ「『RX-9 ナラティブガンダム』、それがこの機体の名前らしいよ」

霞「『ナラティブガンダム』…」

リタ「あと海風用にちょっとしたデバイスと、ベースジャバーも1機搬入しておいたから」

霞「デバイス?」

リタ「あの子の能力を拡張させるためのデバイス、ってところかな」


イベント選択 直下
1.霞『ニュータイプ』
2.神通『決意の剣』
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/30(土) 09:38:41.30 ID:ymvmVoJo0
1で
727 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/03/31(日) 00:53:19.81 ID:sSR3sEed0
side-霞-『ニュータイプ』

《医務室》


「頭いた…」


ナラティブのサイコミュ調整のために少し負担をかけすぎたらしい。元々サイコミュに触れるのも、それを使って戦うのも初めてだから仕方無い。

結果、頭痛に襲われて医務室のベッドを借りることになってしまったのは仕方が無いと思う。


(でも、私がニュータイプ機に乗るなんてね)


最近までニュータイプと呼ばれることに否定的だったのに受け入れつつある自分の変わりぶりにちょっとだけ驚いている。

でも私は変わってない。どれだけ力を持とうと、絶対に心は変わらない。人は人の心を失った時点でもうそれは人じゃないから。


(だから私は人であり続ける。人として戦う、大事な人を護るために。そしてアンタも救う、マリオン)


カプセルに横たわり、管を繋がれている彼女を見る。私には分かる、この身体の器には『魂』と呼べるものが残っていない。

彼女の魂をこの肉体に取り戻す、そうしないと誰も救えないのだ。マリオンも、そしてニムバスも。


「ねぇ、マリオン。私ね、誰も救えなかったの」


意識の無い身体へと私は語りかける。私の忌まわしい記憶の一端、最近まで魘されていた悪夢の話を。

なは号爆沈事件として世間から消されてしまった悲劇、そして今の私を創り上げた要因である事件だ。


「まだ何の力も無くて、沈んでいく船から投げ出されて、逆に私だけ誰かに助けられた。

ううん、ここまで生きてくるまで私はずっと誰かに助けられて、救われてきたんだと思う」


今なら分かる。私を引き取ったお婆ちゃん、お婆ちゃんが亡くなった後も後見人になってくれた大鯨さん、そして海風を始めとした仲間達が側に居た。

だから私は今の私になった。ニュータイプであることを受け入れ、ちょっとでも前に進みたいと思ってる。


「だから今度は私が誰かを救う。 貴女と一緒に、ニムバスだって救ってやるわ」


そう告げた時、基地の警報が鳴り響いた。恐らく敵が何らかのアクションを起こしたに違いない、そう直感が告げる。

ならするべき事は唯一つ、戦うことだ。世界を蝕む悪意を壊して、皆の未来を護るために。


「じゃあ行って来る。戦いを全て終わらせに」


そして私は頭痛すらも忘れてブリーフィングルームへと駆け足で進むのだった。
728 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/03/31(日) 01:36:09.06 ID:sSR3sEed0
《ブリーフィングルーム》


古鷹「…これが、現場の状況です」

萩風「まさか彼が防衛庁、市ヶ谷に仕掛けに行くなんて…」

朝雲「都心、ってことは相当な被害になるわよこれ」

衣笠「現場の青葉が可能な限り避難と救護にあたってるみたいだけど人手が足りないって」

飛龍「私達も行かなきゃ… 皆はここで待ってて…」

神通「いいえ、私達も同行します」

蒼龍「本気で言ってるの? 子供だけで何が出来るの」

霞「かと言って大人だけで対処出来る問題ですか? 瑞鳳さんも榛名さんも居ない、蒼龍さんと飛龍さんだけで何が出来ると思ってるんですか…!」

朝雲「霞の言う通りです。ここから瑞鳳さんや榛名さんを呼ぼうにも、少なくとも2時間はかかる。その間に二人だけで戦うんですか?

それなら私達も同行して、迎撃と避難誘導を手伝った方が遥かに犠牲者を少なくする事が出来る。それが最善だと思います」

古鷹「この場合、この子達の言うほうが現実的だと思いますよ、二人共」

飛龍「…癪だけど、認めるしかないわね」

衣笠「だけど気を付けて。特にニュータイプちゃんは」

霞「分かってます」

リタ「じゃあ私も行くよ」

霞「リタ?」

リタ「私が元凶の身体を探し出す。それに感応波を持ってるから囮にもなれる」

蒼龍「これで決まり、か。飛龍、一応救援要請を宮城と瑞鳳、あと夕張ちゃん達にも打診して」

飛龍「分かった。じゃあ行くわよ」
729 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/04/03(水) 03:38:50.21 ID:DytNu1j/0
《市ヶ谷 防衛省前》


青葉「ああ、もう!いくらこの機体が重火力仕様だからって!」


自身の駆る『RX-0[Gr]グリンカムビ』のエネルギー残量を見ながらぼやく青葉。かれこれ20分以上、この場に留まりその全身に内蔵された武装をフルで使用しながら単機で防衛線を構築し戦っていた。

逃げる人々を護りながら無人機を相手に立ち回っていたが機体のエネルギー残量がほぼ限界に近付いており内心焦りが生じており、そこを突くかのようにまた無人機が20機ほど青葉へと襲い掛かる。


青葉「これは、ちょっとキツイかな…!」

「退いて!デカいのいくから!」

青葉「!」


射線から逸れた次の瞬間、大出力のビームが放たれ無人機を薙ぎ払っていく。そして足並みを崩した無人機に2機のMSが突撃して、鎌と刀を使って残存の敵機を切り刻む。

全ての無人機を破壊した2機、『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』と『カラドリウスルベルム』が『グリンカムビ』の前に護るように立ち塞がった。


萩風「無事ですね、青葉さん」

神通「機体状況は… あまり良いとは言えませんね」

青葉「もうエネルギーもカツカツでして… 後退して良いですか?」

蒼龍「駄目に決まってるでしょ」


そこに少し遅れた『ガンダムDXクロイツ』が到着し、さらに4機『ブラストアクロスZZ』『シームルグ』『ダブルオーガンダムクロイツ』『ストライク・エインヘリヤル』も並ぶ。

蒼龍の言葉に思わず青葉は『うげぇ』と言ってしまい、元々心象が悪い蒼龍の癪に障ったらしく怒鳴られた。


蒼龍「あのね、現時点でもう防衛省の施設が半壊してんのよ!? しかも駐留の部隊も壊滅して、どうしてそう後退とか言えるのよ!」

青葉「こっちだってエネルギーがないんですよ! 被害が大きいのは分かりますがねぇ、こっちだって遊んでたんじゃなくて防衛ライン一人で作ってたんですよ!?」

蒼龍「分かってるわよ!ならサーベルでも使って戦いなさいよ!」

青葉「無いんですよそんな装備!」

蒼龍「え」

青葉「『グリンカムビ』は近接戦を一切想定してなくて、近接用装備が一切ないんです!寧ろここまで耐えたの褒めて欲しいくらいなのに!」

飛龍「どうしてそんな機体作ったかな… リタちゃん、お願い」

リタ「はーい。補給用のケーブル刺す穴どこ?」


朝雲から借りた『ストライク・エインヘリヤル』が『グリンカムビ』に近付き、補給ケーブルでエネルギーを供給する。

リタ自身は生身で活動する予定であったが危険と判断した朝雲によって機体を貸し与えられており、馴れない操縦に四苦八苦しながらも何とか他の機体に追随しているのだった。


朝雲「丁寧に扱ってよ。私の機体なんだから」

リタ「分かってる。支援機だから私好みじゃないけど」

霞「と言うかストライクがその補助機能使ってるの初めて見たんだけど」

朝雲「仕方ないでしょ。いつも使う前にストライカー外しちゃうんだもの」

萩風「それより霞さん、今回の装備はFをベースにNを組み合わせた急造のものです。扱いには注意を」

霞「互換性があるのは知ってたけど、まさかこんな装備で出るとはね… やってみせるしかないけど」



イベント 直下
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/07(日) 16:36:15.61 ID:/uN6XQpHO
ニムバス急襲
731 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/04/09(火) 23:08:48.47 ID:AfuNDMeo0
朝雲「蒼龍さん!エネルギー残量は!」

蒼龍「78%!まだまだ撃てるわよ!」

飛龍「よし、ここを強行突破して一気に…」

霞「待って!何か、悪意が… 皆下がって!」


突如地面から生える粒子結晶。 咄嗟に全員回避行動を取るが、それは『彼等』の意図通りであり霞もまたそれに気付く。

今のは霞を狙った攻撃であり、最大脅威である霞を孤立させるための罠であると。


朝雲「何よコレ!壁で覆われて…!」

萩風「霞さん、後退を!このままでは…」

霞「後退、なんて出来そうにないわね… そこに居るのは分かってるわよ、ニムバス!」


建物の陰から現れたのは『陸戦型ガンダム』、しかし胸部の違いやバックパックの形状からその改修機である『ブルーディスティニー』であることを悟る。

そしてシールドは『ジムコマンド』のものと同型であることから『2号機』であると霞は判断した。


霞(我ながら、ガンダムに詳しくなってきたわね)


以前の自分なら全部一括りにして『ガンダム』と呼んでいたであろうものを具体的に判断できるようになってしまった。

頭を抱えたくなったが、思考を切り替え戦う体勢を整える。


ニムバス「単機で戦うつもりか、我等相手に」

霞「逃げ道が無い以上、そうするしか無いでしょ」

トリスタン「だが、貴様はたった一人だ」

セルジュ「愚かなことを。貴様に万が一の勝ち目など…」

「それはどうでしょうね」

セルジュ「何っ!?」


気配を殺し、壁の中に潜んでいた『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』が現れセルジュの操る『ギャン』の左腕をビームの矢が射抜く。

即座に腕を再生させたセルジュは神通を睨むが彼女は一瞥し、ニムバスを睨む。


神通「霞さん、退いてください。私が纏めて倒します」

霞「いえ、退けません。私にもやることがあるから。 先輩はニムバス以外をお願いします」

神通「…分かりました。 インフィノットジャスティス・ロンギフローラム、神通…!」

霞「ブラストアクロスZZ、霞! ここで、戦いを終わらせる!」
732 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/04/11(木) 04:34:28.24 ID:GIwAsBnN0
BD02と鍔競り合いになるブラストアクロスZZ。EXAMを発動したBD02を相手にしても霞は一歩も退かない。

例え機体の相性が劣悪かつ、さらに対NT用のEXAMシステムによる強化すらも意に介さず、霞は喰らい付く。


ニムバス「何故こちらの動きに対応出来る…!」

霞「EXAMの紛い物なんかに、私が負けるか!」


霞のZZがBD02をパワーで押し切り、吹き飛ばす。そして地面へと叩きつけられたBD02へと両肩・両膝に装備されたビームキャノンが火を噴いた。

ニムバスは咄嗟に体勢を整えビームを回避し、再度距離を詰めようとするが、霞はそれを許すはずもなくファンネルによる攻撃を仕掛け足を止めさせる。


ニムバス「紛い物だと!?」

霞「この世界の『マリオン・ウェルチ』はニュータイプじゃない!意識を組み込んでも、フルで性能は発揮できないのよ!」


霞はEXAMシステムはNTの意識を取り込む事で初めて完成と言える、と結論に至った。あくまで『この世界』のマリオンはあくまで『少しだけ神経が発達しているだけの少女』でしかないのを霞は彼女のカルテで確認している。

故に性能は宇宙世紀で使われた『EXAM』には劣り、宇宙世紀の産物に触れたことでNTへと至った霞には及ばない。


霞(だから彼女は私の『声』に応えられなかった。叫ぶだけの力があっても、応えるだけの力が無いから)


まるで一方的に叫び声だけを垂れ流すスピーカーと同じ、それも垂れ流してるのは特定の人にしか聞こえないモスキート音みたいなもの、だと霞は思う。

故に霞には届いた。彼女の悲痛な叫びが、悲しみが、懇願が。だからこそ霞は今ここに立っている。


霞「もう止めなさい! EXAMに繋がってるなら聞こえるでしょ、マリオンの叫びが!」

ニムバス「声?…だと? 戯言を言うな! 彼女が貴様に語りかける筈などあるものか!」

霞「じゃあアンタは何で戦ってるの!マリオンを救いたいんじゃなかったの!」

ニムバス「私はEXAMで人類を導く! それが彼女の、EXAMの望み!」

霞「そんな誰かを犠牲にするシステムで、誰かを導けるわけがない!」


BD02がファンネルをサーベルとライフルを使って一つ一つ破壊していき、ZZへと肉薄し再度サーベルがぶつかり合う。

二刀流から繰り出される一撃を防ぐ霞だが、腕に蹴りを放たれ、サーベルを手放してしまう。だが腕部に内蔵されたモーター・ブレードを展開し、BD02と再度激突する。


ニムバス「黙れ!戦う意義すら見出せぬ子供が!」

霞「戦う理由ならある!私は生きる為に戦ってるのよ!」


一瞬の隙を突いて、左腕のモーター・ブレードをBD02の右肩の関節へと突き立て両断する霞。そして今度は逆に胴を蹴り返し、BD02を弾き飛ばす。

ニムバスは霞を睨み、殺気を意に介さず霞は己が出した答えをニムバスへと放つ。


霞「私は死ぬのが怖い、だから一生懸命生きてるのよ!生きる為に戦ってるのよ!

大事なものを奪われる苦しみを、もう誰にも味わって欲しく無い!だから戦う、それの何がいけないの!」


頭を過ぎる悪夢。 目の前で命が消える瞬間、熱い炎と冷たい水の記憶が霞の脳裏を埋め尽くす。

理不尽に命を奪われる苦しみは人一倍知っている。だからこそ、それを止めたいと言う想いは人の数倍強い。


ニムバス「所詮は子供の理想、戯言に過ぎん!」

霞「理想で結構!戯言でも構わない! 私は、この想いを貫く! そのための力を、今此処に!」


彼女の腰のベルトに附属するサイコフレームが輝き、『ブラストアクロスZZ』の内部からも紫色の光が溢れ出す。

霞は意識を研ぎ澄まし、その名を叫ぶ。 自らに定められた力であり、悲しい戦いを終わらせるための圧倒的な力の名を。


霞「迸れ! アクロスバーストッ!」
733 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/04/14(日) 02:25:34.52 ID:TSYovTFe0
『ゲルググ』と『ギャン』を相手に神通と『インフィニットジャスティスロンギフローラム』は立ち回る。

ギャンの刺撃を片手の剣でいないし、残った片手でライフルを使いゲルググを牽制し寄せ付けさせない。


トリスタン「ただの人間が、EXAMを使う我々と互角だと…!」

神通「いくら強力な武器だろうと、使う人間が駄目なら無意味です」

セルジュ「何者なんだ、貴様は…!」

神通「私は『真紅の戦乙女』の娘、貴方達の起こす悲劇を終わらせる者です!」


そう言い放ち、神通はギャンの腹部へと刀を突き刺し、ゲルググへとギャンを放り投げる。放られたギャンがゲルググにぶつかり、バランスを崩す2機。

すかさず神通はライフルを投棄して2本目の刀を抜き、2刀流の構えで技を放とうとするが…


セルジュ「我々を倒せば、人類には破滅しか残されていないんだぞ!」

神通「え…?」

トリスタン「今だっ!」

神通「ッ…!」


神通が驚いた瞬間ゲルググがビームライフルを放ち、その一撃がシールドを掠める。神通は構えを攻撃から防御へと移行して様子見へと移った。

神通が知る未来とこの二人が知る未来は決定的に違う、その事実に混乱してしまい攻勢を崩された結果だ。


神通「どう言う、事ですか…!」

セルジュ「『このままの世界』で在り続ければ遠くない未来、進化した人類によって今の人類は滅ぼされるのだぞ…!

そしてそれが原因で世界に『化け物』が現れて破滅を齎す!それを容認するのか貴様は!」

神通「まさか、深海棲艦…!?」


深海棲艦、数多の世界を渡り歩き滅ぼした異形の存在。神通が本来生きていた時代にも現出し、瑞鳳の死の遠因を作った憎むべき敵だ。

自分の知る未来以外でも深海棲艦は現出した、その事実は神通の脳裏にあった『ある疑念』の答えにも繋がっていた。


神通「なら… ここで貴方達は絶対に止めなければならなくなりました…!」

セルジュ「正気か貴様!?」

神通「遠くない未来、と言いましたがそれはどのぐらい後ですか? 30年?それとも50年? 少なくともまだまだ先の事…

だけど貴方達が引き起こす悲劇を止めない限り、その災厄が訪れるのは15年後になる! そして大きな犠牲を生む!」

トリスタン「馬鹿な、そんな話が…!」

神通「貴方達の出した犠牲のせいで、もっと大きな犠牲が生まれる可能性を何故考えない! 貴方達の起こす怨嗟がより多くの怨嗟に繋がると何故想像しない!

それにまだ未来は決まった訳じゃない!私達のように、ニュータイプとオールドタイプが共存していける未来だって創れる筈です!」


体の底から力が溢れ出す。迷いを全て振り切ったから、それとも絶対に止めなければならない理由が出来たからか、だがそんな事はどうでも良かった。

ここで彼等を止めなければどんな未来も訪れない。だから戦う、それだけのことなのだから。


神通「我が剣は守護の剣。破滅を齎す悪意を断ち切り、創造される新たな未来を護る剣なり…

我が名は神通、『人の守護』を担う者として新たな世界を護るための切っ先とならん!」


自らを『定義』する。自分が今何をすべき存在なのか、そして自分に出来ることが何なのかを定め、自らの力の行く先を決める。

それに呼応し海風と交換したネックレスに装飾された『アリスタ』が輝き、肉体からは金色を帯びた、そして機体からは橙色の光が溢れ出す。


神通「明鏡止水――― 咲き誇れ、フルブルームバーストッ!」
734 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/04/25(木) 01:18:59.90 ID:ajKiRYjY0
霞「失せなさい、雑魚共が!」


マグマの鞭で複数の無人機を拘束、さらにマグマごと凍結させて無人機軍団を砕く霞。所詮は無人機、霞には手も足も出無い。

しかしニムバスが生成する無人機がさらに『ブラストアクロスZZ』へと襲い掛かり、霞は苛立つ。


霞「消耗戦を強いてくるなんて…!」

ニムバス「貴様の力は厄介だ。しかし、どこまで耐え切れるかな?」

神通「霞さん!」

セルジュ「余所見を!」


神通にギャンとゲルググが他方向から同時に挟撃、そしてギャンの刺突攻撃によって貞宗の刀身が折れてしまい神通の中に焦りが生じた。

このまま神通を倒そうと迫るゲルググとギャン、しかし2機の動作が止まり震え上がるように身を捩じらせる。


トリスタン「な、何だ!?」

セルジュ「操縦が…!この殺気は…」

「二人共退避! このまま、吹き飛ばします!」

霞「この感じ、まさか…!」


怒り気味だった霞の声が歓喜を帯びる。その声こそ自分が求めていた声であり、唯一『自分を使って良い』と認めたその人のものだった。

そして霞と神通は頷き合い、『ブラストアクロスZZ』と『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』は近場の瓦礫へと身を隠す。


海風「―――っ! フェイクアズールブレイカァァァァァッ!」


次の瞬間、形成された巨大な宝石の剣による斬撃が奔り周囲を覆う結晶の籠が砕け散る。その直後に放たれた蒼いエネルギーの奔流が周囲の無人機を消し飛ばす。

ニムバスは忌々しげにその方角を睨みつける。自分に辛酸を舐めさせ、さらには仲間の一人を打ち倒した『蒼い悪魔』がそこに居るのだから。


海風「使い方はなんとなく分かった… あとは、どこまで制御しきれるか…!」

霞「海風!アンタ仙台に居るんじゃ…」

海風「すっ飛んできましたよ、物理的に」

神通「え…」

天津風「いや、私が『飛んで』海風がそれを引っつかんだって言うほうが正しいんだろうけど…」


海風の『ウイングガンダム・アズライト』の隣には先日の戦闘でも使われた『アルコアルガンダム』が居り、海風の機体へと背負った荷物とケーブルを繋いでいた。

天津風は今回海風のサポートに徹している。それはただのサポートではなく、エネルギータンクとしてだが。


神通「…一体『何』使ったんですか?」

海風「詳しい事情は後程… さて、反撃開始と…」

霞「海風、ここは私達に任せて。露払いをお願い」

海風「分かりました。 皆さん、聞いての通りです!無人機はこちらで、敵の有人機は二人に任せましょう!

蒼龍さんと飛龍さんは遊撃!朝雲さんと萩風さんも! 残る二人と大鳳さん達は避難誘導! 海風たちは二人の援護! あと先輩、これを!」


アズライトが手を翳すと同時に宝石の薙刀が形成され、ロンギフローラムの下へと海風は放る。

それを掴み、神通は刀と薙刀を構え、再び敵のゲルググとギャンを見据える。


神通「感謝します。 では、行きましょう…!」

霞「アンタ達に未来は渡さない! アンタ達が奪ってきた未来は、私達が奪い返す!」


イベント選択 直下
1.霞『シンカ』
2.神通『乱舞』
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 09:44:41.71 ID:5SV90PzU0
1で
736 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/04/29(月) 02:04:12.38 ID:VVHzX2FJ0
side-霞-『シンカ』


霞は右手にマグマの剣、氷の剣を左腕に形成しBD02へと左手で斬撃を放つ。その斬撃をBD02はサーベルで防ぐが、刀身が触れた瞬間ビームサーベルの刀身が凍て付く。

そしてマグマの剣を鞭へと変容させてBD02の両腕を拘束、そのまま凍結させてマニュピレータを封じた。


ニムバス「ビームが凍る!?」

霞「これはガンプラバトル、粒子を利用して『再現』してるだけ!ならその粒子を凍らせれば!」


ガンプラバトルにおいてビームなどは本物のビーム、例えば宇宙世紀ならミノフスキー粒子を縮退させることでビームを発射する、と言う原理とは違いあくまでもエフェクトとしてプラフスキー粒子が再現しているに過ぎない。

だから霞はそのプラフスキー粒子を凍結させた。サイコフレームによって増幅された霞の感応波が『ブラストアクロスZZ』を介し、空間内に存在する『人造のプラフスキー粒子』へと干渉した結果だ。


ニムバス「そのような小細工で、私とEXAMが負けるか!」

霞「ッ…!」

霞(この殺気、まさか… 私や海風と『同じ力』を…! なら私も『アレ』をやるしか…!)

霞「力を貸して!『ブラストアクロスZZ』!」


次の瞬間、地面から粒子の結晶が隆起し大量の結晶片が『ブラストアクロスZZ』へと襲い掛かる。ニムバスは必殺を確信し、不敵に笑う。

そして降り注いだ結晶が地面を抉り、砂埃を巻き上げるのだった。


ニムバス「フハハハ…!口ほどにも無いな、所詮は…」

霞「どっちがよ」

ニムバス「何!?」


背後からの殺気に気付いて振り返るニムバスだが、腹部にモーターブレードを突き立てられ機体が機能を停止する。

さらに霞は自身の能力でBD02の全身を凍結、一切の抵抗や逃げ道を封じてしまう。


ニムバス「馬鹿な、一体何をした…!?」

霞「アンタが粒子を撒いた空間全体の時間の流れを『凍結』させたのよ」

ニムバス「あ、在り得ない… まさか、そんな事が…!?」

霞「私も出来るとは思わなかったけど… で、『終わる』覚悟はOKかしら?」


距離を取った『ブラストアクロスZZ』の機体からマグマが溢れ出し、その拳を地面へと突き立てる霞。


霞「まずは一発目! ヴォルカニック、ブレイク!」


次の瞬間、地面から噴出したマグマが凍り付いて動けなくなったBD02へと殺到し、地上高くへと打ち上げられる。

そして霞は再度時間の流れを凍結、BD02が吹き飛ばされてくる予定位置へと瞬時に移動し、今度は極大の氷のハンマーを形成した。


霞「もう一発持って行きなさい! グレイシャルインパクトッ!」


ハンマーを振り下ろし、抵抗できなくなったBD02をさらに吹き飛ばして地面へと叩き付ける。最早抵抗すら出来ない相手だが霞は一切容赦しない。

そして霞は頭部と腹部のハイ・メガ・キャノンにエネルギーを充填、さらに両腕から氷とマグマで『銃口』のようなものを形成し、その照準をBD02へと向ける。


霞「これで、終わりよ! デュアルアクロスッ、フルブラストッ!」


放たれる超極大の粒子ビーム、海風の『フェイクアズールブレイカー』に匹敵しうるその一撃がBD02を呑み込もうとしていた。
737 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/01(水) 01:24:28.78 ID:Dq5ICjfd0
side-神通-『乱舞』


神通「ふっ…!」


まるで舞うような一回転の斬撃を放ちゲルググとギャンを吹き飛ばす神通。その勢いのままブーメランのように海風の生成した薙刀を放り投げ、群がる無人機を一掃する。

戦う直前まで抱いていた体のへの違和感、自分がもう一人居るかのような違和感は既になく、100%自身のポテンシャルを引き出せている。


トリスタン「動きが、急に…!」

神通「もう迷わない… 明日をこの手で拓くためなら!」

セルジュ「2対1で、押されて…!?」

神通「天剣、絶刀!」


右腕の刀で振るわれる神速の刃、それが衝撃波となり音速より早くゲルググの両脚を切り裂く。機体各部から舞い散る花弁、それが神通の激しい動きによってより一層美しさを増していた。

その後ろからコピー体のザクUがヒート・ホークを振るおうとするが、殺気に気付いた神通は背を向けた状態で両腕に持った武器をザクへと突き立てた。


セルジュ「頂くッ!」

神通「…」


ギャンが『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』に向け刺突を放つ。無防備の状態の神通には対処できない、そう踏んだからこその攻撃。

しかし彼女にその一撃は通らない。何故ならビームの剣を、ジャスティスが両腕で白刃取りの状態で受け止めてしまっているのだから。


セルジュ「ビームを掴んだ!?」

神通「アンリミテッドフィンガー… まず、1機」

トリスタン「マズイ!離れ…」

神通「もう、遅い!」


高熱を帯びたジャスティスの腕から放たれる拳の乱打。それがギャンの各部、特に関節部を重点的に原型を留めぬ勢いで破壊していく。

そして留めに腹を左の拳で貫き、必殺の一撃を放つ。


神通「アンリミテッドォ… フィンガァァァァッ!」

セルジュ「あ、りえ…」


擱座するギャン。そのギャンをゲルググへと放り、受け止め損なったゲルググはバランスを崩し倒れてしまう。

態勢を立て直そうとするゲルググだが神通の殺気にトリスタンは戦慄し、硬直したまま動けなくなる。


トリスタン「なんだ、この殺気…!」

神通「今なら、アレが出来るかも…!」


右の拳に気を練り、気の純度を上げていく。全身が黄金色へと変化し、零れた気がオーラとなって迸る。

その技は母が生前至る事が出来なかった技、しかし平行世界においての彼女は辿り着いていた境地。


セルジュ「逃げろ、トリス…」

神通「私のこの手が真っ赤に燃える、明日を創れと轟き叫ぶ!」

トリスタン「ひっ…」

神通「石破天驚っ、アンリミテッドフィンガァァァァァァァッ!」


己の必殺技『アンリミテッドフィンガー』と自分が継承した流派・東方不敗の最終奥義『石破天驚拳』を重ねた最終奥義『石破天驚アンリミテッドフィンガー』。

その一撃は周囲の空間を巻き込みながらゲルググへと一直線に、拳の形となって駆けていく…
738 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/01(水) 02:13:45.57 ID:Dq5ICjfd0
神通の放った『石破天驚アンリミテッドフィンガー』が炸裂し、大爆発を引き起こして周囲の空間が土煙に覆われる。

その煙が晴れたあとに残っていたのはギリギリのところで原型を留めていたが、スパークし今にも爆発しそうなギャンだけだった。


神通「嘘っ、まだ動いて…」

セルジュ「貴様は何故、戦える…!」

神通「もう1機はどこに…!」

セルジュ「答えてくれ、私はもう限界なのだ…」

神通「私は… 母を死なせたくなかった。貴方達の起こした悲劇で、お母様はどこか心に悲しみを抱えたまま旅立ってしまったから。

だけど今は、『彼女』の創る明日の先が見てみたい。いがみ合うだけじゃない、人と人とが手を取り合って生きていける未来を。その未来を示してくれた人が居たから。その明日を護るために、私は戦います」

セルジュ「そう、か… 貴様達ならきっと、ニムバス様を…」


次の瞬間、ギャンが爆散する。彼が最後に何を言おうとしたのかは神通には分からない。 そして彼の起こした災禍を決して許そうとも思わない。

だが神通は冥福を祈る。 魂が地獄に墜ち、報いを受けるとしても、少しだけでも安らかであれば良いと。


神通「ゲルググは一体どこに… まさか…!」



『ブラストアクロスZZ』の一撃は凄まじい威力だった。 無事だった建物の一部すらも破壊し、着弾した周囲も大きなクレーターとなって地面が抉れている。

霞はニムバスを確実に殺ったと感じた。しかし煙が晴れると未だに凍りついたBD02と、崩れかけたゲルググの姿だ。


霞「仕留め損なった!?」

トリスタン「ニムバス、様…!」

ニムバス「トリスタン!?貴様、何故…」

トリスタン「大義のため… 生き、て…」

霞「庇ったの、ニムバスを…?」

ニムバス「ぐっ…! この屈辱、忘れん!」


次の瞬間、目の前にある凍結したBD02が崩れ落ちると同時に霞が感じていた殺意が消える。そして粒子の結合が解けて、フィールド化が解除されるのに霞は気付いた。


霞「待ちなさい、ニムバス!」


その叫びはニムバス・シュターゼンに届く事は無い。 そして粒子が大気へと溶けて、完全に周囲から消え失せてしまうのだった。



蒼龍「二人共、大丈夫!?」

霞「む、胸がいた…」ドサッ

萩風「霞さん!? これは、不整脈…!?」

朝雲「なんか先輩もフラついて…」

神通「眩暈が…」ドサッ

飛龍「青葉、後任せたから!ともかく二人、運ぶわよ!」

青葉「ちょっ!?待ってくださいよ!」
739 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/01(水) 03:11:55.57 ID:Dq5ICjfd0
《基地 医務室》


海風「大事無くて良かったですね、二人共。特に霞」

霞「死ぬかと思った…」

海風「実際、萩風さんの処置が的確でなければ死んでましたね。霞がやらかしたことがどれだけ重大なのか分かりましたか?」

霞「時間の流れを止めるのって、こんなに負荷があるもんなの…?」

海風「別に止まった状態で霞も止まるなら特に問題はない、と思います。だけど霞だけは『氷の力』を『マグマの力』で溶かして凍結した時間の中でも動けてしまう。

恐らく修正力の影響、止まった時間とズレた時間お辻褄を合わせるために止めた時間の分だけ心臓に負担がかかる、と言うものだと思われます。それに加えて時間を凍結した領域の分の負荷もかかった、とすれば…」

霞「この不整脈も納得か…」

海風「なので以後、使用は禁止。間違えて使わないように極力『氷の力』も使用は控えるように」

霞「分かってるわよ。死にたくないし。でも必要なら…」

海風「二度と使わないで下さい。 使う必要がないように、海風が頑張ります。 百歩譲って氷を使っても、時止めだけは絶対に…!」

霞「…ごめん」

海風「分かってくれれば構いません。 あまりお説教とか好きじゃないですし、これ以上言うとヒートアップしそうなので霞はこの位に。

先輩は… 瑞鳳さんが出来ないようなことをすれば、ぶっ倒れるくらい想像できたでしょうに」

神通「ええ… 実はこの技、平行世界のお母様でも使用の度にダウンするレベルだと… なんせ大技二つを同時に撃つのと同じなもので」

海風「はぁ… それを分かってるなら最初から片方だけにしてください。体力の消耗だけなので霞よりはマシですが、先輩も大概です」

神通「分かりました… だけど海風さんの技だって大概でしょう」

海風「確かに『フェイクアズールブレイカー』もそれなりに消耗はします。しかし二人程でもないし、威力と消耗の調整も出来る分遥かにマシかと。

…実際、制御できるようになるまで結構大変でしたけど。いや、かなり大変でしたね」

霞「あの技、何なの? 粒子結晶を一撃で壊した上に無人機も一掃して…」

海風「実は二段階の技なんです。 最初に剣の斬撃での切断、その後にエネルギーを放射して吹き飛ばす、って感じで」

霞「エゲつない技ね… 二段構えとか、オーバーキルにも程があるでしょ」

海風「使わせる相手が悪いんです」

神通「酷い責任転嫁を見ました…」

霞「もう技の話は良いわ… で、用があって医務室に来たんでしょ」

海風「ええ。事態の報告に。 まずニムバス・シュターゼンは逃亡、残る二人は… ナノマシンの自殺機能で、死亡が確認されました」

神通「そう、ですか…」

海風「…辛い、ですか?」

霞「覚悟の上よ。アイツらも、自分が殺されるかもしれないことは覚悟してたでしょうし」

神通「元より私もその覚悟の上です。とは言っても、少し嫌な気分ですが…」

海風「…続けます。 防衛省が襲撃を受けたことで自衛隊は一時的に機能が麻痺、今は復旧したそうです。

自衛隊の上層部や防衛省の職員にも少なからず犠牲が出たことで、本格的な対テロ行動に移ると」

霞「今更ね」

海風「ええ。本気で腹が立ちますよ。 この後大鯨さんが全員ブン殴りに行くと言ってました」

神通「…止める必要はありませんね」

海風「勿論。 一人残らずはっ倒してくれることを祈りましょうか。

そしてここが本題… リタから聞いておきました。先輩の想像が正しいかどうか」

神通「…」

海風「先輩の疑念は当たりでした。『深海棲艦は負念に引き寄せられる』、世界に一定以上の負念が満ちた時に深海棲艦の現出の可能性が高くなる、と。

『滅んだ世界』とリタ達が呼んでいる世界で見つけた資料、ハシラジマによる研究、『深海棲艦に関わった人間』の証言などの要素から得られた結論なので信憑性は高いかと」
740 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/01(水) 03:48:21.00 ID:Dq5ICjfd0
霞「じゃあ15年後の出来事は…」

海風「昏睡病による犠牲者やその副次的に発生した災害の被害者の負念が世界に満ちた結果、深海棲艦を招いたという結論になります」

神通「では、ここで昏睡病を止めれば深海棲艦の侵攻は無くなる…!」

海風「ええ。 だけどそれは問題を先送りにしているだけです。 彼等の話が本当であれば、15年後でなくともいつかは深海棲艦が現出する、と。

旧人類と進化に至った人類とが引き起こす戦争によって生じる負念の影響で… 多分彼等も改変をしたかったのでしょう。深海棲艦の災禍が起きない未来へと」

霞「だけど結果的にそれは間違いだった… じゃあ私達はどうすれば…」

海風「海風達が目指すのは『第3の未来』です。 新しい可能性、誰も到達してない未知の未来…

人と人とが手を取り合っていける未来、おおよそ辿り着くのは不可能かもしれない未来です」

神通「それでも、やるのでしょう?」

海風「勿論。 どれだけ困難で、海風の一生を使い果たすことになったとしても… この手で創ってみせると、決めました」

霞「じゃあ私もそれにベットさせてもらう。それに私達がそうだったように、意外と不可能じゃない気がするのよね」

神通「私も、その未来に懸けてみたいです。貴女の信じる明日を私に見せてください、海風さん」



天津風「最後の分岐が瑞鳳さん!?」

朝雲「まだ確証が得られた訳じゃないんだけど… 多分、瑞鳳さんが最後の分岐点になってる可能性があるの」

萩風「お母様が事態を止められたか止められなかったか云々の前に、ですか?」

朝雲「そう… 平行世界の瑞鳳さんの話を聞いたのを思い出してハッってなったの。 瑞鳳さん、誰も頼りにしてない。

全部一人で解決しようとして、誰も巻き添えにしたくなくて、結果的に周囲が犠牲になったんじゃないかって」

天津風「…確かに、その傾向は否めないかも。 思い当たる節はいくらでもあるし」

萩風「やっぱり、お母様が最後の分岐点…」

朝雲「この事は私達の内に伏せておいて。仮説の段階を出ない以上、悪戯に混乱させたくない。

…ううん、海風たちには話しておかないと駄目ね。海風に演算して貰わないと駄目な気がする」
741 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/02(木) 01:01:18.26 ID:KeojfUdu0
海風「成る程、話は理解できました。 ハンズフリー電話の先の人も意見をどうぞ」

浜風『言い方が酷い… まぁ良いでしょう。朝雲さん、貴女の言う通りです。この一件、昏睡病絡みの戦いの当初から瑞鳳さんは一人で解決を試みています。

しかし当初の想定より大きな事態へと発展したことによって最初は難色を示していた私達の参画を仕方なく認めた、と言うべきでしょうね』

朝雲「やっぱり… 平行世界とこっちの違いはそこみたいね」

海風「瑞鳳さんにとって犠牲になる筈だった4人や春雨さん達は『日常の象徴』であり護るべき者だった。

手を取り合う仲間としてではなく、庇護の対象でしかなかった、と」

浜風『そう直接言われるのは結構心にくるわね… 私達が本当の意味であの人にとっての『仲間』じゃなかった、って言われるのは…』

海風「恐らくどこかで一線を引いていたのでしょう。 傷付くのは自分だけで良かった、戦うのも自分だけで良かった、と。

正直に聞きます。誰か一人でも、瑞鳳さんを殴ってでも諌めた人間は貴女達の中に居ますか?」

浜風『居ない、でしょうね』

朝雲「多分あの人に必要だったのはそう言う人間だったんじゃないかな、って思います。多分未来で浜風さん達が倒れたことも自分が護りきれなかったせいだ、ってずっと思い込んで…」

海風「なのでさっさとこっちに戻ってきて一発ぶん殴ってください」

浜風『出来る訳ないでしょう!? 多分間合いに入るのすら無理じゃ…』

海風「腰抜け」

浜風『挑発には乗りませんよ』

海風「チッ…」

浜風『それに、相応しい人間が居るでしょう。 瑞鳳さんの後を継ぎ、私達の遺伝子を受け継ぎ、あの人の生涯に携わってきた二人が』



海風「勝利への道筋、か…」


海風(事態が加速していく中、ふと思った。 どこまでいけば勝利なのか、どこまでが敗北なのかと。

理想の未来ではなく現状最善の未来に辿り着けばそれで勝利と言えるのか、または敗北なのだろうか)


海風「違う、辿り着かなきゃいけないんだ」


海風(理想の未来に、誰も傷付かない未来に。 その為に海風に何が出来るのだろうか…

いや、違う。例え出来る事がなくても、海風は戦わなきゃいけないんだ。 皆の未来を護るために、そして…)


海風「信じた明日を、この手で創るために」


第23話『過去と未来』 終
742 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/04(土) 02:20:56.22 ID:wyLDeKFH0
第24話『Path of Victory』


《8月27日 霞の家》

海風「ふぁ… おはようございます…」

霞「おはよ。今日もトレーニング?」

海風「はい。日課ですから。先輩、行きましょうか」

神通「いえ、今日は止めておきましょう。今日から学校ですし」

海風「あぁ… そう言えば、今日からですね」

霞「忘れてたの?」

海風「寝ぼけて記憶から飛んでました。昨日の夜準備してたのに…」


海風(松島や市ヶ谷の戦いから数日が経過した。何も起きず、平穏な日々… しかし徐々に近付くタイムリミットに少しずつ焦りが見え始めていた。

ニムバス、そして首謀であるクルスト・モーゼスには何の動きもない。青葉さん達でも掴みかねていて、情報は得られていない)


《学校 部室》

霞「で、朝礼前に呼び出しって…」

海風「先生、何かご存知で?」

愛宕「ううん。私も理事長に部室へ皆を集めて欲しい、って言われただけだもの」

神通「理事長が…」

萩風「一体私達に何を…」

朝雲「今日の集会での表彰じゃないの?」

天津風「そうだろうけど、私達には『他の事』があるでしょう」

ガラッ

瑞鳳「あれ、皆…」

神通「お母様!?もう復帰して…」

瑞鳳「うん、もう体は大丈夫。 ちょっと過労でぶっ倒れてただけだし」

萩風「…気の乱れなどは無いようですね。病気の心配もないでしょう」

瑞鳳「いや、大丈夫だって。ところで雁首揃えて何事?」

海風「理事長に呼び出されて… 瑞鳳さんも?」

瑞鳳「うん。電話で。 箱根から車すっ飛ばして来た」

朝雲「今朝まで箱根に居たんですね…」
743 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/04(土) 02:58:29.20 ID:wyLDeKFH0
瑞鳳「皆の事は報告は一通り聞いてる。残るのはニムバスとクルストだけになったんだよね。

あと海風ちゃんと浜風ちゃんの例の件についても。 お母さんがまさか本気だったとはね…」

神通「例の件?」

海風「海風達、大鯨さんの偽装戸籍に養子入りすることになってしまって…」

霞「あ、本籍じゃないのね」

海風「ええ。一応元軍人とかでもない完全な民間人なのであまり『家の事』には関わらないように、と配慮を」

萩風「とは言っても結局は私達と同じものを背負わなくちゃいけなくなるのに…」

瑞鳳「そこはお母さんがなんとかしてくれるでしょ。 もうすぐ戦いも…」

ガラッ

カーディアス「ふむ、予定した時間よりも早いとは」

天津風「び、ビスト理事長…」

カーディアス「これで、全員かね」

愛宕「はい。ガンプラバトル部全員及び顧問、並びに特別顧問全員揃いました」

カーディアス「全員、肩の力を抜いてくれて構わない。理事長としてではなく、個人としての話だからな」

海風「個人として、ですか?」

カーディアス「キミ達が全国で優勝したことはとても素晴らしいことだと思う。だが同時に、過酷な運命に巻き込んでしまったことを謝罪したい。

特にキミ、霞くんには大変申し訳なく思う。かつて妹がキミの両親の命を奪ったのに、こちらのせいでキミを危険に晒してしまった」

霞「いえ… アナハイムやマーサ・カーバインに恨み辛みはあっても理事長や財団を恨むのは筋違い、それにこの一件だって偶然巻き込まれて自分で戦うと決断しました。

なので理事長に対して、怒りなんかは特にありません。それに私には仲間が居てくれたから… だから彼等とも戦えました」

カーディアス「そうか… 今私に出来る事はそう多くないだろう。だが可能な限りの便宜は図る。 情報もそちらに逐一送ろう」




瑞鳳「…呼び出し、ってこれだけ?」

愛宕「…みたいね」

瑞鳳「時間は… 微妙だねぇ。…ねぇ、神通ちゃんに萩風ちゃん。『これから起きること』は分かる?」

神通「いえ… 未来のお母様が話してくれたこと、8月31日のことしか知りません」

萩風「私もです。お母様、口を割らなかったので。ただ個人的に手に入れた情報が」

瑞鳳「何?」

萩風「静岡の陸上自衛隊基地の一部駐屯地から車両数台と部隊員が消えた、とか… 未確定情報ですので信憑性はありませんが」

瑞鳳「陸自が…?」

天津風「陸自、なんか不穏なのよね。市ヶ谷の初動の遅れと言い、アッサリ通信を無力化された多賀城と言い…」

瑞鳳「…分かった。そっちの線もあたってみる」

朝雲(海風、例の件瑞鳳さんに話さなきゃ…)

海風(そうですね… 話さなきゃ、何も始まらないですし)

海風「瑞鳳さん、折り入って…」

キンコンカンコーン

霞「うわ、もう朝のHRの予鈴!?」

愛宕「ほら、皆教室に戻りましょ」

瑞鳳「私も撤収するか… じゃ、あと放課後にもう一度来るから」
744 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/05(日) 02:21:06.22 ID:14voXQqy0
《海風と霞の教室》


愛宕「進路希望調査票の提出は来週の金曜日までだから、忘れないように。では今日のホームルームは終了です」

霞「進路希望調査票か… 海風、どうしたの?」

海風「いや、よく考えたら進路とか全く考えてなかったんですよね。大学まで進学して、その後どうしようかとか何も」

霞「大体そんなもんでしょ。やりたいことが明確な中学一年生なんて少ないわよ」

海風「いえ、『未来を創る』なんて大口叩いた人間が自分の未来すらまともに考えてないのは笑い種でしょう」

霞「夢とか無いの? こう、何でも良いから」

海風「良い所に進学して、良い所に就職なり企業なりして、親をギャフンと言わせて破滅させたいとしか」

霞「…呆れた。アンタ、恨み辛みで主席級まで登りつめたのね…」

海風「じゃあ霞の進路はどうするんですか?」

霞「進学して、大鯨さんの所で修業して、お婆ちゃんの残した会社を継ぐつもり」

海風「…それまで会社残ってます?」

霞「大鯨さんが居るなら大丈夫よ。それに業界的にも余程のことが無いと潰れる心配もない、って」

海風「どこなんです、業界って」

霞「医療機器の開発メーカーよ。独自の製品が一定の需要があるらしくてね」

海風「なら安泰しますね。供給断たれたらキツイでしょうし」

霞「で、私の事は良いのよ。他の4人はどうなのかしらね」

海風「確か先輩はもう進路を決めている、とか。 あと天津風さんは自衛隊に入ると」

霞「パイロットでもやる気?」

海風「それも戦闘機だそうです。F-35でも乗る気でしょうかね」

霞「本当にパイロット志望なのね… 朝雲と萩風はどうなのかしら?」

海風「まず確実に言えるのは、将来もセットでしょうね」

霞「うん、それは間違い無いわ」

海風「まだ出会って2ヶ月足らずなのに仲良すぎでは?」

霞「きっと相棒なのよ、魂で決まった…」

キーンコーンカーンコーン

海風「あ、予鈴… 確か次は集会ですよね」

霞「ええ。表彰式も兼ねるんだって」

海風「目立ちたくないんですけど…」

霞「最終戦の延長戦まで出て勝ちをもぎ取った責任よ」

海風「偶然に偶然が重なっての勝利なのに…」

霞「阿武隈さん、そんなに強いの?」

海風「硬い・速い・馬鹿力の3拍子が揃ったヤバイ機体に、普段の阿武隈さんからは信じられないくらいの猛攻、さらにはUC-Dのオマケ付き…

海風の『未来予測演算』を使ってもあの勝ち筋以外に勝ち筋をマトモに見出せませんでしたからね」

霞「私ならやりあいたくないわ… あ、もう並んでる。行くわよ」
745 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/11(土) 03:02:35.18 ID:GFcZjOXj0
《体育館》


「我が校代表として、ガンプラバトル部『フリューゲル・ヴェント』は輝かしい成績を修めたことを表彰いたします」

パチパチパチパチパチ

海風(そしてこのあからさまなプロジェクター… 間違いなく試合を流す気ですね)

朝雲(いくら空調完備の体育館だからって、馬鹿じゃないの?熱中症で死ぬわ)

天津風(と言うかどの試合を流す気よ。出来れば映りたくないんだけど)

神通(3人共、静かに。 霞さんと萩風は静かなんですから)

海風(…霞? どうかしましたか?)

霞(なんかピリピリした感じがするの… この感じ、何かに似て…)

朝雲(萩風、なんか外を確認するもの無い?)

萩風(スマホが使えればハッキングした学内の監視カメラから映像を手に入れられるのですが…)

「ではこれより、彼女達の試合の上映会を…」

霞「…ッ!?来る、40人!キャリアーよ!」

5人「!」

「き、キミは何を…」

ガシャァァァァン!

ナ、ナンダ!? ヒ、ヒト…!?

海風「先輩、萩風さん!」

神通・萩風「了解!」ダッ

ニゲロ!テロリストダ!

海風「霞、詳細な数は?」

霞「駄目、知覚しきれない… サイコフレームがあれば、どうにかなるけど…」

愛宕「皆! 急いで逃げて!」

海風「先生! 敵は霞が知覚しきれない数です! 多分、学校は包囲されてます!」

愛宕「何ですって!?」

天津風「あれ、陸自の装備品の銃よ… と言う事は街中に輸送車かヘリか、戦車あたりも来てる…

海風、確かアレは部室にあったわよね? 戦って戦力を削ぐにはアレしかない!」

海風「使うな、と大鯨さんに厳命されていますが… やるしか無いでしょう」

霞「アレって何?」

海風「仙台から東京まですっ飛んで来れるもの、とでも言いましょう。でも部室まで突破しないと…」

朝雲「こんな事もあろうかと、萩風から預かった学校の設計図の予備があるわ。これで隠れながら行きましょう」

愛宕「仕方ないわね… 今の混乱に乗じれば、逃げ出すくらいは出来るかしら…」


《部室》

海風「よし、無事に着けました…!」

朝雲「えっと確か此処に… あった、麻酔用スナイパーライフル!」

霞「使い方分かるの?」

朝雲「萩風に仕込まれた」

天津風「物騒なもの部室に持ち込んで…!私達も言えた立場じゃないけど…」


海風&天津風の持ち込んだもの 直下
1.呪術のお札
2.ヤバイベルト2本
3.その他(サイズ的に部室に持ち込めるもの)
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/11(土) 09:18:38.45 ID:FqwCYEiZ0
3、洞爺湖って書かれた木刀
747 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/14(火) 22:29:30.31 ID:/Mwx9JE/0
霞「何それ…」

海風「木刀ですよ。お土産屋の」

朝雲「洞爺湖って書いてあるんだけど…」

天津風「洞爺湖のなんでしょうね」

朝雲「それでどうやってここまで飛んできたのよ!?」

天津風「誰も『飛行した』なんて言ってないし。こうするのよ」スパァン

愛宕「…何斬ったの、今?」

海風「空間です。海風達の木刀にはそれぞれにある呪術がかけてあります。海風のには身体強化、天津風さんのには空間干渉の。

で、天津風さんが斬った場所には空間の裂け目が出来て、裂け目を通って空間転移を行うことができます」

朝雲「えぇ…」

天津風「霞、アンタはこの穴からとっとと逃げなさい。多分最大のターゲットはアンタよ。

今、裂け目は仙台の大鯨さんの家の前に繋がってる。あっちなら一番安全だから」

霞「…残るわ。確かに今の私には戦う力は無いけど、でも出来る事はやりたい…!」

海風「ですが…」

大鯨「あら〜?あんまり使うな、って言った筈だけど?」ニョキッ

朝雲「た、大鯨さん!?」

天津風「家の前に繋げたら出てくるわよね、普通…!」

大鯨「…と言ってもなんか訳有りみたいだから不問に伏すけど。 どう言う事情?」



大鯨「…中学生の妄想って、現実になるものなのね」

海風「全くですよ、もう…! 学内に侵入した敵は先輩と萩風さんが排除に向かってますが、包囲されてるみたいです」

霞「敵の数は数え切れないけど、学校の外にも居るみたい… 多分200人近いかも」

大鯨「事情は理解したわ。迎撃するわよ。 海風ちゃんは私と、残りの3人は脱出経路の確保をお願い」

朝雲「霞は戦力外として、私と愛宕先生で…?」

愛宕「これでも瑞鳳や瑞鶴とは同門なのよ。護りきるのは造作もないわ」
748 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/15(水) 00:35:28.74 ID:JcmXo4jZ0
神通「せやぁぁぁっ!」ブォン

萩風「っ! これで、全部!」


二人はそれぞれ刀とナイフで操られた自衛隊員を倒す。 殺してはいないがナノマシンを投与された以上二度とは目覚めないだろう、それでも彼女達は躊躇わない。

二度とバビロニアの悲劇は繰り返さないと誓ったから。例え自分達の『居場所』を失くすことになっても、未来を切り拓くために。


「え、神通さん…?」

神通「あ…」

「確か貴女も、バトル部の… 一体、これって…」


一人の生徒と出会う。確か『花田』と言う女子生徒で自分のクラスメイト、恐らく逃げ遅れてここに隠れていたのだろう。

見られた、これで自分達の『居場所』は無くなった、神通の頭にふと言葉が過ぎった。


萩風「姉さん…」

神通「…行きましょう。貴女も、早く逃げて。この上の階に、皆避難してる筈ですから」

「待って…! 戻って、くるの…?」

神通「どうでしょうね… だけど、今戦わないともっと大勢が傷付くから。 生きていれば、戻ってくるかもしれません」

萩風「姉さん!敵増援! 校門から雪崩れ込むつもりです!」

神通「分かりました。 …さようなら」


そう呟き神通と萩風は窓から飛び降り、着地し校門から侵入してくる大勢の自衛隊員へと駆けて行く。その姿は恐らく大勢の生徒に見られているだろう。

しかし躊躇いも迷いもない。今はただ誰も傷つけさせない、そのためだけに彼女達は戦う。 来る悲劇を止めるために、ただ一心不乱に。



二人が校門に着いたころ、もう既に何者かが戦っていた。一人は見慣れた青みを帯びた銀色の髪をした少女、そしてもう一人は自分の祖母にあたる人物。

海風は手に持った木刀で自衛隊員の首筋を殴りつけ地面へと叩き付ける。そして大鯨は分身しながら群がる自衛隊員を薙ぎ払っていく。


神通「海風さん!?」

海風「先輩! 二人は後方の輸送車を叩いてください!ここは受け持ちます!」

萩風「何で大鯨さんまで…」

大鯨「ここは良いから!事情はあとで!」



朝雲「あ、居た!理事長!」

カーディアス「キミ達は… 無事だったのか…」

天津風「なんとか… それより理事長、折り入ってお願いが」

霞「さっき言いましたよね、可能な限り便宜を図るって!」

カーディアス「あ、ああ」

愛宕「じゃあ、車お借りしても?」
749 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/15(水) 01:04:10.64 ID:JcmXo4jZ0
海風「これで、片付きました! 撤退します!」

神通「学内、には戻れませんよね…」

海風「はい。基地に行って、瑞鳳さん達に報告を…」

萩風「分かりました。でもどうやって行きます?距離は結構あると…」

ブロロロロ

愛宕「やっほー♪確保してきたわよー」

海風「…よりによってマイクロバスですか」

大鯨「…愛宕ちゃん、中型以上の免許あったっけ?」

愛宕「無免許です♪」

大鯨「はぁ… 私が運転するわ。 怖いし、色々と」




神通「で、天津風さんがその木刀で大鯨さんを召喚して…」

天津風「まさか来るとは思わなかったんですけど…」

霞「海風、連絡ついた?」

海風「駄目です。電源切られて…」

愛宕「瑞鳳が電源切るなんて…」

プルルルル

海風「チッ…」

朝雲「舌打ちした、ってことは… 浜風さん?」

海風「もしもし? 今忙しいんで…」

浜風『海風! 緊急事態です! 台場が占拠されて、瑞鳳さんが私達を基地に閉じ込めました!』

海風「…は?」

浜風『先程、台場が占拠されたって報が私達の下に届いて瑞鳳さんから基地に集合しろって号令があったんです!

それで基地に集合したら、基地の扉全てをロックされて…! 転移装置も封じされて、打つ手が…!』

海風「ロックぐらい解除できるでしょう!? 何年基地使ってるんですか!」

浜風『駄目です!瑞鳳さんしか持ってないマスターコードを使われて…!』

朝雲「最悪だ…! 瑞鳳さん、一人で全部終わらせようとする気よ!」

萩風「つまりそれって… 朝雲さんの想定通りだとすれば…」

霞「分岐点が変動する…」

朝雲「それどころじゃない!『瑞鳳さんが斃れる未来』の可能性も出てくるのよ!?」

天津風「そうなったら… 今度こそ歴史が変えられなくなる…!」

神通「何をしてるんですか、お母様は…!」

海風「大鯨さん!台場に行き先を変更してください! あとそっちの!集合に応じてない人はどのくらい居ますか!」

浜風『可能な限りこちらから集められるだけ集めます! 頼みました!』
750 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/18(土) 02:36:18.39 ID:gSFC/8/a0
大鯨「…皆、ごめんなさい」

天津風「大鯨さん…?」

大鯨「あの子をそう言う風になるように育てたのは私… 一人で何でも出来るようにさせてしまった私の」

愛宕「だってあの頃は…」

大鯨「言い訳はしないわ。 私は仕事で、シュウジさんは何かにつけて行方を眩まして… 修業の時以外、殆どあの子に時間を割くことができなかったの。

だけどその分、どんな敵とも戦えるよう、何でも出来るように、修業を積ませた。 でも、あの子は本心を隠すようになった。きっとそれは…」

神通「…『家の責務なんてどうでも良かった。ただ家族の温もりがあればそれで良い』。あの人が、生前言っていた言葉です」

大鯨「私はあの子に、力は与えたのに、あの子が本当に望んでいた温もりを与える事が出来なかったの。いつの間にかあの子は寂しい、って言えなくなってて…」

霞「だから自分の周りに飛龍さん達を置いてたの…? 寂しくないようにするために」

朝雲「それが近いうちに消えるかもしれない、って思ったから一人で戦いに行って…」

萩風「私達には『そう』ならないようにチームでの戦い、仲間との関わりを重視させるようにした…」

海風「なら… 見せ付けてやれば良いんですよ」

霞「海風…?」

海風「育てた教え子が、育て上げた『チーム』が最高のチームだってことを。

その上で叱ってやりましょうよ。寂しいときくらい寂しいって、辛いときくらい辛いって言えって」

神通「そんな事…」

天津風(そうだった… 海風は誰よりも温もりに飢えて、居場所を欲しがってたのよね。だから瑞鳳さんの気持ちが…)

朝雲「その意見に賛成。 8月31日まで4日しかない、だからこそ今言わなきゃきっと駄目なんじゃないかって思うから」

萩風「私も、独断行動を取るなって何度も言われたのに言った本人が独断行動するとか、一度くらいギャフンと言わせないと…!」

愛宕「貴女達…」

大鯨(たった4ヶ月、しかも萩風ちゃんは2ヶ月も居なかったのに… それなのにこの子達は、ちゃんと本音も何もかもを言い合えるような関係にちゃんとなってる…)

大鯨「…本当、あの子も良い教え子を持ったわね」



海風「結局呼べたのは…」

大鳳「私達とこの子だけ、みたいね」

瑞鶴「ったく。瑞鳳もとんでもないことやらかしてくれたわね」

夕張「さすがに飛龍さん達抜きってのは… と言うか貴女誰?」

リタ「なーんか嫌な予感して基地の外に逃げてたら案の定だったのよね」

青葉「榛名さん達は急行しているそうですが… さすがに仙台からとなると時間もかかりますよねぇ…」

霞「12人、この戦力で封鎖されたお台場に突入して瑞鳳さんを救出、そしてニムバスをはっ倒す…」

神通「厳しい作戦になるかもしれません」

萩風「だとしても、やるしかないでしょう」

朝雲「ここに未来が掛かってる。やるしか道はない」

天津風「どうする気、海風?」

海風「もう『勝利への道筋』は完成してます。あとは、踏み出すだけです」
751 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/05/27(月) 01:35:19.71 ID:TtRvrnyZ0
《台場 有明コロシアム付近》


瑞鳳「つぁぁぁぁぁっ!」


瑞鳳の『ガンダムエピオンクロイツ』が剣を振るい無人機を薙ぎ払う。これで15回目の襲撃であり疲弊していたが彼女は止まれない。

台場に取り残されている人は沢山居る。しかもここで終わらせなければもっと多くの人が死ぬ可能性がある、その可能性を見過ごす訳にはいかないから。


瑞鳳「エネルギーの消耗が少ないのが救いね…」


エピオンには余計な火器は積んでいない。故にエネルギーを補充する手段がなくとも戦い続けることが出来る、だからこそここまで到達できた。

しかし神経や体力の磨耗は避けられず、既に休み無く15回も戦った体は疲弊し、判断力も少しずつ鈍ってきてはいる。それでも足を止めることは許されない。


瑞鳳(ここで戦いを… ってまずっ!?)


16度目の増援、今まで以上の大群かつ今度はのぞみ橋とゆりかもめ線の路線から溢れ出してきた。それでも彼女は剣を握り、突撃を敢行しようとする。

しかしその前に、大群を拡散ビームによる砲撃が薙ぎ払い、その後二条のビーム砲撃が大群を消し飛ばした。


瑞鳳「え…?」

「アズール02と04、06に通達。目標を視認、04は確保に移行し残る二人は残存機の足止めを。 02と05はこちらと共に砲撃支援を続行、二人の撃ち漏らした敵を撃破してください」

「「「「「了解!」」」」」


ピンクの燐光を纏った機体と橙色の花弁を撒き散らす機体が敵の部隊へと突撃し、悉くを薙ぎ払う。『インフィニットジャスティスロンギフローラム』と『カラドリウスルベルム』、2機の一閃が同時に放たれ無数の機体を斬り刻んだ。

そして呆気にとられる瑞鳳の下に1機の可変機、『ガンダムハルート・ボーライド』の赤い機体が現れエピオンの腕を掴み離脱を図る。


瑞鳳「ハルート!? 何で…」

天津風「暴れないでくださいよ! アズール04よりアズールリード! 目標確保、離脱援護を!」

海風「アズールリード、了解! 二人共ここで『荷物』を使い捨てる勢いでお願いします!」


『メッサーツバーグ』と『ツインバスターライフル』を連結した『ウイングガンダム・アズライト』が極大のビームを放ち、射線上の敵機を纏めて消し飛ばす。

次いで『ブラストアクロスZZ』が手に持った『ハイパー・メガ・カノン』を、『シームルグ』がビームを拡散モードで放ち多数の敵を屠った。


霞「確かに威力は良いけど重いのよね、これ!使い切って捨てた方が軽いわ!」

朝雲「萩風の作ったヤツなんだから大事にしてよね!? 私の追加ジェネレーターも焼き切れそうだけどね…!」


『ブラストアクロスZZ』は京都、『シームルグ』は東京に戻ってから萩風が念を入れて調整を加え、一部改修を加えている。

霞の場合は『アクロスバースト』の調整と今使っている『ハイパー・メガ・カノン』だけだが、朝雲は拡散ビームモードを始めとした『シェーバティール』の機能追加に本体の改修も行われており、以前より性能が向上していた。


神通「萩風、離脱します。深追いはしないで」

萩風「分かっています。ステルスシステム起動、掴まって」


ジャスティスがカラドリウスに掴まり、ステルスにより透明化し、それを見届けた海風と朝雲もシームルグの両肩を抱えて、戦域から脱した。




天津風「機体に異常は、特になし… 磨耗はあるけど、大丈夫そうね」

瑞鳳「なんで… どうして、ここに来たの!?」

海風「どこかの馬鹿が勝手に突っ込んだからですよ。萩風さんに散々一人で動くな、って言ってたくせに自分で突っ込んで…」

霞「ちょ、海風!?」

海風「瑞鳳さん貴女が何を考えているのか知らないし、どうでも良い。だけど… 自分の言ったことくらい、自分で守ってください。

世界なんか一人で背負えるものじゃない。 それを背負いたければ誰かと手を繋がなきゃ、何も出来ないんです」


イベント 直下
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 16:25:26.49 ID:aVY9XYG6O
瑞鳳逆ギレ
753 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/06/27(木) 00:29:03.24 ID:Je99v5gQ0
瑞鳳「分かってるよ、そんな事!私は世界を救いたいんじゃない、私は…!」

神通「誰よりも仲間を、仲間が生きている未来を守りたい… でもお母様、貴女のやり方は間違ってます。

だってそれで、貴女は一度失敗したんです。結果私と萩風が生まれたのですから」

瑞鳳「ッ…!?」

萩風「自分だけ傷付けば良いなんて考えだからこそ、他の人の手を握れなくなって独りよがりに走った。そして無理にでも貴女に付いて行こうとした人たちは皆倒れて…

善意が生んだ悲劇、これを繰り返させ無いためにも… 相手を受け止めて、自分の想いを受け止めて貰って、手を繋げばきっと未来に届く。私達は今までの戦いでそう学んできました」

海風「ハッキリ言います、瑞鳳さん。貴女は飛龍さん達を『仲間』ではなく守護の対象としか見ていない。このままでは、未来には届かない。

同じ未来を繰り返させない為にも、ここは海風達に任せてくださいませんか?」

瑞鳳「それ、は…」

海風「大丈夫、未来ならもう視ました。 勝利へのルートも、分岐点も全部。 世界が悲しみの『青』に塗りつぶされる前に、新しい色で塗り替えます。

だから、ここで待っててください。 とりあえず目先の『要救護者』を救ってきますから」

朝雲「センサーに反応、数30。結構大規模な敵よ」

海風「行きましょう。 瑞鳳さんはここでこちらの増援を待っててください、予定ではもうすぐ着くので」




瑞鳳(私は… 私には、何も救えない…)

大鯨「違うわ、瑞鳳。海風ちゃんは貴女が『誰かと手を繋ぐ』ことが未来への分岐点だって考えてるの」

瑞鳳「お母さん…?」

大鯨「少しは信じてみなさいな、貴女が育てた教え子や娘達を。 一歩一歩、着々と前に進んで大きな分岐に立とうとしてる。

あの子達ならきっと運命だって塗り替えれるわ。悲劇の『青』から、理想の『蒼』へ…」



海風「アズールリードより、全機へ。もうすぐ『目的地』です、覚悟は大丈夫ですか?」

霞「完了してるわよ、とっくに」

神通「はい。その為に此処にいます」

天津風「ここまで来たら、やってやるわよ…!」

朝雲「どこまでいけるかなんて解らないけど…」

萩風「きっと明日に、この手を届かせましょう」

海風「では全機、目標エリアへと進軍します! 先陣は02と04に任せます!」
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/28(金) 20:23:27.62 ID:r0PHZ5qjo
755 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/07/02(火) 00:13:54.47 ID:IfdYJ9Q/0
《ダイバーシティ東京 広場》


「くっくっくっく… 『進化』の到達者を二人も連れて、わざわざこんな所まで追ってきてくれるとはな。感謝の言葉もない、真紅の戦乙女の愛弟子達よ」

天津風「ニムバス・シュターゼン…!」

ニムバス「さぁ、どちらが真に未来に選ばれし者か、ここで決着をつけるぞ!」

朝雲「その前に答え合わせの時間よ。 聞かせてもらうわ、『真実』を。 何も知らないまま死ぬのはゴメンだもの」

ニムバス「良いだろう。 冥土の土産だ」

朝雲「1つ目、『誰が未来を見た』のか。アンタ達は遠い未来、ニュータイプとオールドタイプの戦争が起きて深海棲艦の侵攻を招いたと言った。

その事象はアンタ達3人が見たのか、それともクルストの言っていたことなの?」

ニムバス「その様な話など… そんな下らないことを知りたいのか、貴様は」

朝雲「…もう必要ないわ。答えは大体分かったから。じゃあ2つ目、最初のアジトを瑞鳳さん達が襲撃した時マリオンを残したのは貴方?」

ニムバス「邪魔、だったからな。逃走するのにあのような荷物、抱えてはおけん」

朝雲「これももう分かった。じゃあ最後の質問。 クルストはどこで、何をしでかすつもりなの?」

ニムバス「知らんな!ヤツの考えていることなどどうでも良い、ただ私は私の大義を果たすだけだ!」

朝雲「だってさ」

海風「ありがとう、朝雲さん。知りたい事は全部知る事ができました。

…ニムバス、これが最後の警告です。投降してください。まだ引き返せる、だけどこれから貴方がしようとすることはその道を閉ざしてしまう」

ニムバス「ほざくな。既に私に引き返せる道など…」

萩風「引き返せなくとも、新たな道はある。 分岐点から逸れる道はまだ残ってます」

ニムバス「黙れ! 私は、EXAMを止める事など不可能だ!」

神通「それでは誰も救えない。これからの悲劇で消える人々も、被害者達も、マリオン・ウェルチも、そして貴方自身すらも…!」

ニムバス「それがどうした! 最早もう何も誰も救えん! 止まれないのだよ、世界は!」

霞「…分かった。じゃあ私達が止める、そしてアンタを地獄から救い出してやるわ!」

ニムバス「やってみろ、貴様等に出来るものならばな!」


ゴゴゴゴゴゴ


海風「何故貴方が台場を選んだ理由は既に分かっています。台場にあるもの、『最大のガンプラ』…」

ニムバス「動き出せ、我が最強の力よ!EXAMの力で奴等を滅ぼせ、『ユニコーンガンダム』!」

天津風「1/1立像はあくまでも『ガンプラ』扱い、しかもプラフスキー粒子が対応可能な材質が使われてる… しかもこの特殊粒子環境下なら動かせ無い道理は無い、か」

朝雲「ホント、海風の予測は最悪の状況をはじき出すわよね…」

萩風「だからこそ、心構えも出来るというものです。それにまだ余裕そうですよ」

朝雲「だってもう知ってたことだから。 それに海風はもう未来を視てる、私達の『先』の未来を」

霞「なら勝てるわね。 いくわよ、海風!」

神通「私達に指示を! 彼を倒して、未来を拓けと!」

海風「はい! フリューゲル・ヴェント全員へ! ここが正念場です! 全力を以って、最大の壁を打ち砕きます!」
756 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/07/02(火) 00:38:06.38 ID:IfdYJ9Q/0
天津風「トランザム!」


『ガンダムハルート・ボーライド』の機体が輝き、真紅の光を帯びる。

もう既に憎しみに囚われていた少女は居ない、そこに居るのは仲間を信じることを覚えた天津風と言う一人の少女だ。


朝雲・萩風「アンチェインド・ドライヴッ!」


朝雲と萩風が同時に叫び、『シームルグ』と『カラドリウスルベルム』の装甲が裂けて機体が燐光を纏う。

さらに装甲が展開し、強い光を帯びる2機。最早二人を隔てるものは無く、心を繋いだ比翼の鳥は眼前の巨大な同型機を睨む。


霞「迸れ、アクロスバーストッ!」


クリアパーツが紫色に煌き、マグマと氷が溢れ出す。霞の心と同調した『ブラストアクロスZZ』がユニコーンへ敵意を向ける。

ニュータイプやオールドタイプは関係ない。ただ『救う』ためだけに、彼女の想いは迸った。


神通「咲き誇れ、フルブルームバースト!」


花弁が機体から零れ、各部が橙色に輝く『インフィニットジャスティスロンギフローラム』。何度傷付いても立ち上がってきた少女は今最大の壁の前に立つ。

例え命が尽きようと、己が消えようと、それでも訪れる未来を諦めない。そんな少女の想いが今、満開の花となって咲き誇る。


海風「解き放て!アズライトバーストッ!」


蒼い光の柱が形成され、光が消えると同時に『ウイングガンダムアズライト』の機体各部を『宝石の鎧』が覆い尽くす。特に彼女は何かを背負っていた訳でもない、どこにでも居る少しコンプレックスを抱えていただけの少女だった。

しかし彼女の歩みは世界の命運を握るところまで進んでしまった。それでも彼女は進み続ける、皆で笑っていける未来を創りたくて、空虚な自分を変えたいと願って。そして今、彼女は想いも願いも込めて、全てを解き放つ。


海風「フォーメーション・ブルーリコート! ここで、悲しい未来を断ち切る!」
757 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/07/07(日) 21:40:12.43 ID:trd0OERy0
動き出す原寸大の『ユニコーンガンダム』、元々は『立像』であるため武器は無い。しかしEXAMの機能か、ニムバスが生成したのかは不明だが腕に『ビームマグナム』の銃身が形成され、その銃口が『フリューゲル・ヴェント』の6機へと向けられた。

放たれる大出力のビーム、本来ならばガンプラどころか現行兵器すらも一撃で消し飛ばすことができる。それどころか生じた熱でガンプラなどドロドロに溶けてしまうだろう。


海風「霞!」

霞「わかってるわよ!」


海風と霞の駆る『ウイングガンダムアズライト』と『ブラストアクロスZZ』が咄嗟に前に出た。そして海風が『宝石の鎧』を構築するのと同じ様に巨大な盾を形成、さらに霞が6機を包む『氷の繭』を形成する。

盾に直撃するビーム、そのビームは宝石の盾を焼き尽くさんとするが海風の『決して砕けない意志』によって生み出された盾はそのビームを悉く弾き、拡散させた。そして余波で生じる熱を絶対零度の繭で防ぐ霞、『未来予測演算』で海風が視た未来を霞が感応波で受け取ったことで出来た連携であり、二人でなければ成しえなかっただろう。


ニムバス「防ぐとは… しかし!」

海風「今!」


『ビームマグナム』はEパックカートリッジを1射で1つ使う性質があり、故に2射目までには数秒のラグが生じる。海風はその隙を狙って掛け声を放ち、その声と同時に海風と霞以外が操る4機が繭から飛び出しユニコーンとの距離を詰める。

最初は神通だった。呼吸を整え居合いの構えを取り、全ての意識と気を剣へと集中させて一閃と同時に剣を抜き放つ。


神通「天剣絶刀!」


奔る不可視の刃、神速の一撃がビームを放つ前の『ビームマグナム』を両断して爆散させた。爆発の衝撃でよろけるユニコーンガンダム、態勢を立てなおすその前にさらに3機が距離を詰め、攻撃を開始する。

ハルートがブースターに内蔵されたミサイルをありったけ放つ。狙うはユニコーンガンダムの顔の目、そのセンサー部を司るツインアイ。全弾を直撃させる天津風、しかし損傷は無い。対して威力が足りていない、ハルートの攻撃などユニコーンにとっては虫刺され程度の威力でしかないのだ。


天津風「だけど、これで目は見えないわよね!」


彼女の狙いは爆炎で一瞬だけ目を潰すこと、次の瞬間2機のユニコーンタイプ、『シームルグ』『カラドリウスルベルム』が一気に接近し粒子結晶の刃を精製してユニコーンガンダムのカメラアイへと突き立て破壊する。

2機は結晶を切り離して離脱、シームルグにカラドリウスが抱きつく事で重なり、そのままカラドリウスがステルスシステムを起動して2機は透明化した。


ニムバス「だが再生はでき… 何!?」

朝雲「確かに再生自体はできる。そこに『異物』がなければの話だけど」

萩風「そこに再生を阻害するもの、『元の形』に戻るのを邪魔をするものがあれば別…!」


だからこそ朝雲と萩風は粒子結晶の刃を切り離しツインアイへと突き刺したままにした、再生を阻害して完全に目を潰すために。これで彼は目視を頼ることはできなくなってしまう。

しかし通常ならば勝ち目がなくなるこの手もEXAMに対しては致命的な一手にはならない。敵対者の敵意がある以上、EXAMはそれを検知し攻撃することができるのだから。だが海風はそれも織り込み済み、そして海風の思考を読める霞にも。


ニムバス「馬鹿な、敵意が… EXAMが正常に動作しない!?」

霞「どうやらEXAMってのは本当にポンコツみたいね。最優先目標をニュータイプに設定してるから、私の増幅させた感応波しか検知できない」

海風「加えて、プラフスキー粒子の特性である『人の意思』に反応する特性を利用して感応波を空間中に撒き散らして感応フィールドを形成すれば…

あら不思議、霞の感応波自体を検出できても霞の位置を検出はできない。しかも先輩達の居所は解らない、だから対処は『攻撃を受けた後』になる」
758 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/07/08(月) 00:44:11.74 ID:GMkpV7yZ0
ニムバス「味な真似を… だが、易々とはやられるか!」

海風「ッ! 来ます、回避運動! 下地は塗った、あとは!」

ニムバス「全て、吹き飛ぶが良い!」


粒子結晶が地面から大量に隆起して浮遊、あたり一面にまるでクラスター弾が如くその結晶を撒き散らして周囲を薙ぎ払う。しかしニムバスは気を抜かない、何故なら霞の感応フィールドはまだ消えていないのだから。

意識を凝らし周囲を警戒するニムバス。目視も出来ず敵意を察知すら出来なくなっている今、こうやって気を配ることでしか身を守る術は無い。だがそんな警戒も、一瞬で無駄となった。


神通「もう、遅い! 密天烈風!」


神通が振るった刃が暴風を巻き起こし、それに巻き込まれて転倒するユニコーンガンダム。彼女の剣による暴風は自身の150倍近い体格差や質量を持った敵すらも転倒させてしまう。

そして次の瞬間、地面が大きく揺れて地割れが起きた。その地割れから噴出するのは大量のマグマ、霞の『心象』を力へと転換したもの。


霞「こいつを持っていきなさい! ヴォルカニックブレイク!」


『ブラストアクロスZZ』が地面へ拳を叩き付けると同時にまるで火山が噴火したかのようにマグマが爆発的に噴出され、それに巻き込まれたユニコーンガンダムは上空へと吹き飛ばされる。

ニムバスには直感的に分かっていた、この後何が来るのか。そう、彼等に幾度となく辛酸を飲ませた『蒼い悪魔』、その一撃であると。


ニムバス「やられる、か!」


ユニコーンガンダムが3枚のシールドを形成、さらに粒子結晶を盾のように形成して防御へ徹する。ここで消える訳にはいかない、と。

しかし海風は止まらない。 『ウイングアズライトブレイド』を連結してバスターソードモード、しかも両腕に持った二本へと『宝石』を纏わせて巨大な剣二本を形成する。


海風「だとしても… 切り拓く! 二刀流っ、フェイクアズールブレイカァァァァァァァッ!」


二本同時に振り下ろされる極大の宝石剣。その刃が奔り粒子結晶、そして盾をも両断しユニコーンの両腕を切り落とす。さらに膨大なエネルギーが放出され、ユニコーンの機体を焼き尽くす。

だが、それでもユニコーンガンダムは生きていた。『フェイクアズールブレイカー』の一撃は機体表面を焼いただけで倒しきることは出来なかったのだ。


ニムバス「万策、尽きたな!」

海風「海風は切り拓くだけ… 全機、塗りつぶせ!」


海風には分かっていた。『フェイクアズールブレイカー』の一撃を以ってしてもユニコーンガンダムを倒しきる可能性は低い事を。だからこそ、一撃を『守りを崩す』ことに重点において一撃を放った。

地面には『ブラストアクロスZZ』と『インフィニットジャスティスロンギフローラム』が、そして上空には『ガンダムハルートボーライド』が運んだ『シームルグ』と『カラドリウスルベルム』が展開していた。


天津風「決めて、皆!」

萩風「麒麟・極…!ブレイヴ・インフィニティ…」

朝雲「いくわよ!プラフスキー・ステラッ!」

神通「流派・東方不敗が最終奥義! 石破天驚っ!」

霞「最大集束! デュアルアクロス!」


『カラドリウスルベルム』が大量の分身を形成し、さらにその全てが胸部装甲を展開してエネルギーを集束させる。シームルグも周囲のエネルギーを取り込みながら『シェーバティール』へとエネルギーを集めていく。

神通も『インフィニットジャスティロンギフローラム』の拳にエネルギーと気を集め巨大な拳を形成、『ブラストアクロスZZ』も氷とマグマで銃身を形成し狙いを定めた。そして4機の一撃が、解き放たれる。


萩風「シリンダー!デッドエンドッ!」

朝雲「ストレイターレット、フルバーストッ!」

神通「アンリミテッドフィンガァァァァッ!」

霞「フルブラスト!いっけぇぇぇぇぇぇっ!」


容赦なく放たれた4つの極大の一撃。その破壊力は『フェイクアズールブレイカー』を凌ぎ、ユニコーンガンダムをこの世から消滅させるには充分すぎる熱力だった。

そして5機が一足先に地面に降りていた『ウイングガンダムアズライト』の下へと降り立つ。ユニコーンガンダムがあった場所へと背を向けて、海風は言い放つ。様々な想いを込めて、その言葉を。


海風「何度傷付いても、何度塗り替えられたとしても… その度に何度だって塗り返してみせる。海風達の、想いの、願いの、未来の色で」
759 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/07/13(土) 22:52:58.27 ID:PD9M2w6s0
《ダイバーシティ 屋上》


海風「やはり生身の体はここでしたか、ニムバス・シュターゼン」

ニムバス「…貴様等、何故…」

神通「何故勝てたのか、何故ここが分かったのか、それとも何故ここに居るのか、ですか?

学校を襲撃して私達を始末したか釘付けに出来たと思って、お母様をここに誘導して仕留めようとして」

朝雲「先輩、その答えは違います。ニムバスの行動は独自のもの、学校を襲撃したのはクルストの側。だってニムバスは何も知らなかったんだから」

天津風「朝雲、まさかニムバスを…」

朝雲「信じるもなにも、嘘なら一発で見抜ける霞が居てダンマリしてる以上それは信じざるを得ない。本当にクルストについて何も知らないのよ」

ニムバス「クルストは、奴は…」

霞「『未来を救う為』、だって欺いてた。本当なら人々を救う為のナノマシンを悪用して突然変異者を抹殺しようとした。

『何か』に取り憑かれたか狂ったかどうかは知らないけど、アナハイムを騙して『ブルーディスティニー2号機』の頭を手に入れて、そこマリオンの意識を取り込ませて悪魔のナノマシンを完成させたのね」

ニムバス「どうして、それを…」

霞「私は今、この世界で唯一マリオンの声を拾うことが出来る。聞き取れたのは少しで、あとは憶測だけどね」

海風「このままでは誰も救われない。犠牲になった人たちも、騙されて貴方に付き従った二人も、利用されたスドウ・シュンスケも…

ここで止めなきゃ『いつか目覚める』マリオンだって救われない。罪を抱えたまま生きていくことになる」

ニムバス「マリオンが目覚める…?」

萩風「彼女の体はこちらで確保しました。あとはEXAMの中枢部さえ破壊すれば、戦いは終わります」

ニムバス「駄目だ、破壊しては…!」

天津風「え…? EXAMを載せたデバイス全て壊せば、意識は戻るんじゃ… まさかEXAMのデバイスが他に…?」

海風「…まさか! 多分EXAMは罹患者の意識を取り込んで、それを破壊すれば行き場の無い意識は…」

霞「そうか、ニュータイプだったから宇宙世紀のマリオンは自分の体に戻れた。だけどこっちの世界は違う、そしてニュータイプは私だけ…」

朝雲「だからそのまま壊したんじゃ罹患者に意識を戻せない。二度と醒めない眠りに落ちたままになる…!」

天津風「そんなの…! じゃあどうすれば良いのよ!?」

ニムバス「人の意識に、意思に反応… ぐっ…!?がぁぁぁぁぁっ!?」

海風「自殺機能の起動は確認されてないのに…!?」

萩風「皆離れて!もう彼は、彼じゃない!」

霞「見える、ドス黒いなにかが… ニムバスの意識は、残ってない…!」
760 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/07/13(土) 23:31:20.46 ID:PD9M2w6s0
ニムバス?「くくくっ… まさか、子供にやられるとはな、コイツも」

天津風「一体誰なの…?」

朝雲「答えは簡単に弾き出せるわ… だってEXAMに精通してる、残った主犯格は一人しか居ない…!」

神通「クルスト、クルスト・モーゼス…!」

クルスト「結局はコイツも3人と同じで役立たず…」

海風「黙れ」

クルスト「ん?」

海風「お前に、人を侮辱する権利はない…!自分で何一つ出来ないポンコツテロリストが!」

霞「う、海風…?」

海風「自分で何一つ作った訳じゃない、前に出て何かした訳でもない、略奪しただけの物を使い潰したポンコツが誰かを笑う権利なんてない…!

お前に命を笑う権利は無い! ただの妄想で世界を終わらせる引き金を引く、後世の笑いものが…!」

クルスト「貴様っ…!」

海風「もう未来は視た… 貴方に万が一、億が一にも勝ち目なんか与えない…! 首を洗って待ってろ、クルスト・モーゼス…

子供に計画をズタズタにされて、狼狽しながら歴史の笑いものにされるのを楽しみにしてください…!」

クルスト「覚えていろ、貴様等は必ず消してやる…!」

萩風「3流の台詞ですね。格が知れるわ」

朝雲「必ず追い詰めて、こっちがアンタをはっ倒してやるわ」

天津風「あと辞世の句も考えておきなさいよ」

神通「必ず、貴方に惨めな『終わり』を与えましょう」

霞「私達を敵にまわしたこと、地獄で後悔してもらうから」

海風「だ、そうです。これは海風の視た未来より、惨たらしい末路が期待できそうですよ」

クルスト「子供の分際で…!」バッ

天津風「あ、逃げた」

海風「放っておいてください。深追いすれば何が起きるか分からないです」

萩風「だけどニムバスの体が…」

海風「だから必ず、クルストを倒します。そして8月31日の先に…」



イベント選択 直下
1.海風・天津風『結んだ絆は』
2.海風・神通『契約の先へ』
3.海風・霞『同じ道を』
4.朝雲・萩風『絆の先へ』
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/14(日) 01:21:35.09 ID:owP131j3O
1
762 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/08/24(土) 01:17:25.11 ID:VZovhX0J0
海風&天津風編『結んだ絆は』

《基地 仮眠室》


海風「気だるい…」

天津風「当たり前じゃない。慣れない生身での戦闘やって、ニムバスを完封するための未来予測演算、しかも『アズライトバースト』と『フェイクアズールブレイカー』まで使って…

それで気だるいだけで済んでる海風は何なのよ。先輩なんて海風のと同じくらいの威力の技でまた倒れてるのよ?」

海風「霞なんて海風以上の無茶してるのに?」

天津風「プラフスキー粒子に干渉する力は感応波を持った霞のが上よ? 今もピンピンしながらあのガンダム、『ナラティブ』だったかの調整してる」

海風「…他の二人は?」

天津風「朝雲は瑞鳳さん達のお話合いに参加、萩風は霞の調整手伝いしながら余ってたパーツでMS整備中」

海風「MSを?」

天津風「動ける機体は多い方が良いって。私にもシュミレーター受けるように、って言われたわ」

海風「そうですか… 確かにまだ『立像』は残ってるし、アナハイムが回収したMSもある可能性が残っている以上は…」

天津風「だから海風、少し休んでおきなさい。この戦いの要は、海風の『予測』に懸かってる」

海風「何が起きるか分からないし情報が少ない以上、今の海風は動きようがないし…」

天津風「海風は海風に出来る事をやりなさい。私も、私にしか出来ない事をやる」

海風「天津風さん…」

天津風「私には力なんてない。海風みたいに未来を視ることも、霞みたいに感応波もない、先輩や萩風みたいに武術の達人でもないし、朝雲みたいな推理力だって無い。

だけど、こんな私でも『フリューゲル・ヴェント』の中に居る。だからこそ、私が出来ることを全力でやりたいの」

海風「自分にしか出来ない事を、ですか」

天津風「そうよ。それが何なのかは分からないけど。 何かを失くすのは、もう御免だから」

海風「それは誰だって同じです。大事なものを失くしたくないから、皆戦ってる」

天津風「そうよね。 私、色々失くしっぱなしだったから、ちょっと視野が狭くなってたのね…」

海風「だけど、何かを失くして得たものだってあるでしょう?」

天津風「ええ。 だからこそ、これ以上失くしたくないのよ。 …これ以上、信じられる仲間だけは」

海風「仲間…」

天津風「それが私に残った『最後』。隣に居てくれる誰か、それだけが私に残ったものだから」 

海風「…橘さん?」

天津風「なんだか物凄い失礼なこと言われてる気がするんだけど。具体的には肝心なときにしか役に立たないとか」

海風「気のせいです。ただ騙したら死にそうだな、とか思ってません」

天津風「やっぱり何か思ってるじゃない!?」

海風「最近霞に特撮ばっか観させられた影響です」

天津風「人のせいにしないの、全く… 私、何でこんなのに憧れちゃったのかしら」

海風「え?」

天津風「別に、普通よ普通。 目の前に居る、強い人に憧れるのは。並びたいとも、超えたいとも思ったりするのは当然じゃ無い」

海風「まぁ、それは確かに…」

天津風(ま、それだけじゃないんだけどね… 私の『憧れ』は)

天津風「…生き残るわよ、必ず。 アイツ等残らず倒して、ここで全部終わりにしましょ」


イベント選択 直下
1.海風・神通『契約の先へ』
2.海風・霞『同じ道を』
3.朝雲・萩風『絆の先へ』
4.海風・浜風『蒼翼と銀翼』
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/24(土) 09:47:16.60 ID:/1q0s0HW0
1で
764 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/08/27(火) 02:12:25.08 ID:2eWunpXc0
海風・神通編 『契約の先へ』

《基地 医務室》


海風「…言いましたよね? 他の3機も連携で技を放つから、先輩は無理に『石破天驚アンリミテッドフィンガー』を使わないで欲しいと」

神通「はい… だけど再生を上回る出力が必要であった以上、確実に倒すにはアレが最適解でした」

海風「だから『フェイクアズールブレイカー』で表面を焼いて再生を阻害しておいたのに…」

神通「阻害だって完全じゃないでしょう」

海風「それもそうですが… 先輩だって本調子とは言い難い今、迂闊にあの技を使えば…」

神通「…いえ、今は本調子ですよ。 もう、覚悟は決まったので」

海風「え…?」

神通「きっと私、心の中でどこか迷ってたんです。この時代に私が居る事で未来が確定するかもしれないとか、借り物の体でここに居て良いのか、とか…

そして何より貴女達を戦いに巻き込んでしまって、こんな私なんか消えれば良いとまで思っていましたから。だから不安定で、本調子にはなれなかった」

海風「その迷いを、振り切れたんですね」

神通「はい。 深海棲艦の侵攻が、その原因である8月31日のパンデミックが起きなかった先の未来を海風さんと一緒に見たいと思ったから」

海風「海風と…?」

神通「私はずっと、貴女に助けられて立ち上がって来れたんです。 …私の『繰り返し』の中に貴女と霞さんは居なかった。朝雲さんや天津風さんも、萩風だって居なかった。

貴女に出会った事で、繰り返しに終わりを告げられる手前まで来れました。そしてここまで折れそうだった私を何度だって立ち上がらせてくれたのは、海風さんです」

海風「海風はそんな事…!」

神通「いいえ。 貴女がどこまでも立ち上がれる人だからこそ、私も立って来れたんですから」

海風「先輩…」

神通「…海風さん。私は貴女と『契約』した身です。その『契約』を果たすまでは消えない、と以前言いましたが訂正させてください」

海風「『契約』を…?」

神通「勿論『契約』は有効です。貴女に剣術を教える、それが『契約』ですから。 訂正するのは剣術を教えるまで、と言う期間です。

私は消えない、絶対に貴女の下から。 この命尽きぬ限り貴女の剣で在り続ける、それが私の新たなる『誓い』です」

海風「誓い…」

神通「だから、私に見せてください。貴女が『ソウゾウ』する未来を、悲劇を終わらせた先にある世界を。

それが私の望んだ世界であり、そしてみんなの希望となるのですから」



イベント選択 直下
1.海風・霞『求めた温もり』
2.朝雲・萩風『結んだ力の果て』
3.海風・浜風『悲しみの終わる場所』
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/28(水) 22:32:20.91 ID:/gFaWJ0AO
766 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/09/09(月) 00:00:41.89 ID:j7NwFh7p0
朝雲・萩風編『結んだ力の果て』

《MS格納庫》

萩風「ふぅ…」

朝雲「ちょっとくらい休みなさいよ。いくらMSを仕上げた所で萩風が倒れちゃ意味無いわよ」

萩風「ええ… 擬似GNドライヴの接続作業は完了して、稼動状態のMSは確保できたので休むところです」

朝雲「これで動ける機体が3機増えたのね。霞の『ナラティブ』、それに『ケルディムサーガ』『アリオスアスカロン』だったっけ」

萩風「4機ですよ。 『ネブラブリッツ』も1機、稼動状態にしたので」

朝雲「…で、誰が操縦するの?」

萩風「それはお母様達次第、です。ナラティブの専属は霞さんと決まっていますが」

朝雲「ま、操縦は私には出来そうにないから良いや。 …ねぇ、この先ってどうなると思う?」

萩風「どうでしょうね。 8月31日を越えないと未来は無いけど、越えたところでそれが良い未来なのか…」

朝雲「人と人とが手を取り合える世界を創る… ハッキリ言って絵空事、少なくとも奇跡でも起きない限り私達の命が尽きる時間をかけても無理だと思う」

萩風「どうしてそう思うんです?」

朝雲「だって人は理解じゃなく誤解を選んじゃうもの。同じ景色を、同じ夢を見ていても、すれ違うのが人間でしょ。

より良い未来を創ろうとした私達も、結局ニムバスとぶつかりあってた。目的は同じ『深海棲艦の現出しない平和な世界』だったのに…」

萩風「だけど彼等は結局口車に踊らされただけです。それに仮に絵空事だったとしたら、ここで逃げますか?」

朝雲「そんな訳無いでしょ。絵空事だから現実にしたい、そう思ったからここに居る。 今更逃げるなんてしないわ」

萩風「でしょうね。 それに一つだけ、可能性がありますよ。人と人とが手を取り合える可能性を生み出す方法が」

朝雲「GN粒子でもばら撒く?」

萩風「ばら撒くのはプラフスキー粒子ですよ。あれは人の意思に反応する、しかもその影響力はサイコフレームやGN粒子を上回る…

世界中に粒子を散布して、その中心点で『プラフスキーバースト』を起して人類全ての意識をバーストの基点となった人物の想いを伝播、無意識下に刷り込めば可能性は無くはないでしょう」

朝雲「簡単に言うけど、それ歴とした洗脳だからね。人の意思に無理矢理刷り込むなんて」

萩風「ええ。それは私も反対です。 あくまでも可能性の話、ですよ」

朝雲「だけど、それが出来る可能性があるなら… もしかしたら昏睡病の人達を、元に戻すことができるかも…」

萩風「…プラフスキー粒子をサイコミュの代わりに使って、解放された意識を元の体に戻す。確かに人と人の意識を繋げることの出来る粒子なら可能、かもしれない…

だけどそれには『バースト』を引き起こせる精神力と人の意識を繋げる持った人間が必要…」

朝雲「じゃあ居るじゃない、適役が」

萩風「海風さんと霞さんに、負担を強いるのは… え、まさか…!」

朝雲「そう言う事。それを担うのは私と萩風。私は『共鳴』を引き起こせるし何より今も萩風との『パス』がある。それは萩風も同じでしょ?」

萩風「危険です! 私はまだしも、貴女が耐え切れる保証はどこにも…!」

朝雲「分かってる。だけど、救える可能性があるな…」

バッ

萩風「…お願い、私に貴女を傷付けさせないで」

朝雲「ナイフまで出して…」

萩風「私は、貴女を失いたく無い… 朝雲さんが居たからこそ私は戦えた、何より道を誤らずに済んだ…!

朝雲さんが居なくなったら私達や、御両親や五月雨さんが笑って生きていけると思ってるんですか! もし本気で命を捨てるつもりなら、ここで貴女を止めます…!「もう大事な人を失うのは嫌だから… だから、私は…!」

朝雲「…分かってる。私だって無策でこんな発案したんじゃない。今のはちょっとした確認だから」

萩風「え…?」

朝雲「言ったでしょ。『共鳴』を起せるのは萩風も同じ… これも一種の賭けだったけど、萩風のその『想い』があれば、きっと出来る『秘策』があるのよ」


イベント 直下
1.海風・霞『求めた温もり』
2.海風・浜風『蒼翼と銀翼』
3.海風・瑞鳳『真紅と蒼』
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/09(月) 09:39:17.69 ID:irDjJY6g0
2で
768 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2020/01/19(日) 00:57:38.57 ID:BfCfymuZ0
お久し振りです。>>1です。最近リアルが忙しく書けずに申し訳ございません。
少なくともアズール編は完結させます(KBFイノセンス編も頑張りたい)。
なのでもう少しだけ、お付き合いください。


海風・浜風編『蒼翼と銀翼』


《基地 廊下》

浜風「海風、少し良いですか?」

海風「こっちは戦いあがりで疲れてるんですけど」

浜風「知ってます。未来予測演算を限界まで行使した上に『フェイクアズールブレイカー』を使った事も」

海風「その上で、今しか出来ない話なんですか」

浜風「ええ。そうじゃなきゃ、呼び止めたりしません」

海風「…なら聞きます」

浜風「貴女はどこまで『視た』んですか、未来を」

海風「ニムバスを倒すまで、です。それ以降は情報の欠落や不安定要素の多さ、それに確証を得られるだけの『何か』が無かったので」

浜風「やっぱり、そこ止まりですか…」

海風「残念ですがご期待には沿えないようで。そもそも今のEXAMナノマシンの状況では1億虐殺なんて到底不可能、対処が早かった影響でせいぜい行って1000万が関の山です。オンラインバトルシステムが使用不可になった今、可能性は費えたに等しいのに」

浜風「元々1億の虐殺じゃなくて、進化の可能性を持った人間の抹消が目的だった以上、100万の虐殺でも充分達成可能では?」

海風「世界の人口は約77億人、進化の可能性をもった人間なんて各国政府が把握していない以上数を推察することは不可能ですが、海風の予測では最低でも数千万単位で居る筈です。現に海風や霞、榛名さん達みたいに多数確認されてる時点で100万なんて超えてるでしょうし。

それにピンポイントで100万なんて人間を殺すことは不可能、恐らく犠牲になる8割が普通の、現状では進化の可能性を持っていない人間です」

浜風「それが海風の現状での予測…」

海風「仮に自衛隊の一部部隊を掌握しているとしても、100万の数字に届かせることはできても目標の達成は絶対に不可能、無駄な犠牲を出すだけです」

浜風「じゃあ彼等はどうやって…」

海風「そこが、海風の『行き止まり』なんです。その方法を想像しきれない以上未来予測演算は答えを出せない、情報が圧倒的に足りないのが致命的で…」

浜風「世界を標的にできるもの、例えば米軍や各国の保有する核兵器とか…」

海風「それは軍や各国首脳部が厳重なセキュリティロックをかけている筈です。そうなった場合、軍事兵器を利用するとなれば『軍に引き渡されていない大量破壊兵器』になるでしょう」

浜風「そんなものが都合よくある訳が…」

海風「あったとしてもEXAMで制御出来るのはUAVの類か、ドローンの類となるでしょう。いっそ、そんな兵器がないか米軍の知り合いにでも聞いてみたらどうです?」

浜風「飛龍さん経由でなら答えてくれるかな… カタギリさんの方が答えてくれるか…? いや、エイフマン教授に当たったほうが…」

海風「…居るんですね、米軍関係者に知り合い」

浜風「ええ、グラハム少佐経由で。しかも教授は大鯨さん達の恩師に当たる人だとか」

海風「世間って狭い」

浜風「ええ、全くです。 教授に尋ねてみましょう。アイリス社なら、軍事関係の情報だって握っているかもしれないし」

海風「リニア系のメーカーなら、それこそ可能性大じゃないですか。レールガンだって使い方次第では戦略兵器に成り得る可能性もあるし」

浜風「だからこそ、アイリスの人間に聞いてみるのが手っ取り早いでしょう」

海風「そうですか。 では海風は行きます。何か分かったら教えてください」

浜風「ええ。 …海風、ありがとう」

海風「何ですか、藪から棒に」

浜風「瑞鳳さんを助けてくれて、そして私達にあの人と向き合う機会をくれて」

海風「…そうですか。 一筋縄じゃいかないでしょうが、頑張ってください。あとで海風も参戦しますので」

浜風「お手柔らかに、ね…?」

海風「慈悲も容赦も与えませんよ。今回の一件、海風もちょっと腹に据えかねてますから」
769 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2020/01/19(日) 02:13:10.19 ID:BfCfymuZ0
海風・霞編『求めた温もり』


《格納庫》

海風「どうです、謎ガンダムは」

霞「正直言って、もうちょっとマシな機体は無かったのかしら。細すぎて私に合わない」

海風「当初はZZ系を予定してたのに今ではこの『ナラティブガンダム』ですからね」

霞「D装備、他の機体だとフルアーマーに相当する新造装備らしいけど元が軽いからどこまで役に立つか微妙ね…

ま、そのフルアーマーの下にサイコフレーム積んでるのが唯一の救いかしら。これなら多分、粒子に干渉できる」

海風「恐らく敵は大規模な行動を起す時、必ず大規模なフィールドを張り巡らせる筈です。その時に霞がナラティブで干渉して、粒子の動きを阻害する…

そうすれば敵の動きを一時的に妨害することが可能になります。しかし霞の負担は…」

霞「大丈夫よ、その程度。 時間止めるより楽だから」

海風「そ、そうですか…」

霞「でも、戦いもあと何日かすれば終わる、のよね」

海風「ええ。あと4日、8月31日が決戦です」

霞「その後、私達ってどうなるのかしら…」

海風「…きっと、今までの日常には帰れ無いかもしれません。海風達は力をつけ過ぎた、それに学校での乱戦を見られていますから…」

霞「そう、よね… この手も、血で汚れた以上は…」

海風「…だけど、戻れるのなら戻りたいです。皆で笑っていける、そんな日常に。だって海風、その為に戦ってきたから」

霞「海風…」

海風「だからきっと、戻りましょう。戦いを終わらせて、皆で笑っていける世界のために」

霞「ええ。私だって誰にも私みたいに、悲しい想いを味わって欲しくないから戦ってる… だから、悲しみばっか増やすEXAMは絶対止める」

海風「その意気です。一番の切り札が、弱気になっちゃ駄目ですよ」

霞「その切り札を『使う』人間もね。アンタも、諦めないでよ」

海風「勿論。覚悟はとうに出来て居ますから」

霞「なら良いわ。 ところでアンタ、戦いが終わったらウチどうするの?」

海風「ウチ…?」

霞「ええ。だってもうウチに留まる理由も無くなるし、寮に戻れるでしょ」

海風「…大家さん的には?」

霞「…そうね。もうアンタは家族みたいなものだし… あ、ごめん。浜風さんだって居るのに…」

海風「いいんです。姉ではあっても、別に他の家族が居たって」

霞「あ、そう…?」

海風「では、引き続きお世話になります。 チームメイトとして、友ととして、パートナーとして、そして家族として」
770 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2020/01/19(日) 02:25:36.36 ID:BfCfymuZ0
お久し振りでなんですが、ここで機体案の募集を行います

募集するのは『フリューゲル・ヴェント全機の最終決戦仕様強化案』です。

募集対象機は以下の通り

・ウイングガンダムアズライト(近接寄りオールラウンダー型指揮官機)
・ブラストアクロスZZ(重装型NT専用機)
・インフィニットジャスティスロンギフローラム(超近接格闘機)
・ガンダムハルートボーライド(航空戦闘爆撃機)
・アルコアルガンダム(高機動航空戦特化機)
・シームルグ(高機動射撃特化機)
・ストライクエインヘリヤル(バックパック換装型支援機)
・カラドリウスルベルム(高機動強襲特化機)
・ガンダムエクシアルベルム(ステルス特化機)

の9機です

新造、は不可能なのでベース機体の変更は不可能です
また()内に併記してある機体コンセプトは極力崩さないで欲しいです
機体名などは変えたいのであれば、新たな機体名も併記してください
ただアズライトは既に内定している機体名があるので、そこはご留意ください


期間は第24話終了時までです

よろしくお願い致します
771 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2020/02/05(水) 23:56:32.08 ID:yiJoxBGv0
海風・瑞鳳編『真紅と蒼と』


《ブリーフィングルーム》

海風「…真紅の戦乙女も形無しですね、瑞鳳さん」

瑞鳳「海風ちゃん…」

海風「こうなることくらい、貴女なら予測出来てた筈です。海風よりも大人な貴女が、こう独善的な行動を取れば全員に責められる事くらい」

瑞鳳「…皮肉でも言いに来たの?」

海風「ええ。なんならこれから追い討ちかけようかと」

瑞鳳「言う様になったね。あんまりこう言うことを言わない子だったのに」

海風「ええ、変わりましたよ。 貴女の下で戦って、皆とチームを組んで全日本を制覇して、挙句テロ犯と戦って…

人を殺して、世界の命運を握るまでの場所まで来てしまったから。ここまで半年も満たない間に起きて、強気にならない人間なんて居ません」

瑞鳳「…ごめん。私が、止められなかったから…」

海風「それは貴女の責じゃない。戦うと決めたのも、スドウをこの手で討ったのも全部自分で決めた事です。

その件で誰も貴女を恨んだりはしていません。霞達も、海風も。 個人的には数点ありますが」

瑞鳳「あ、あるんだね…」

海風「ええ。主にウチの姉の件で。霞と朝雲さん以外にわざわざ緘口令まで敷いてたそうじゃないですか」

瑞鳳「それに関してはもう弁解の余地が…」

海風「ええ。弁解なんてさせるつもり、微塵も無いので。 …まぁ、今更この件で怒ったところでなんにもなりませんけど。

海風が今一番怒りたいのは、どうして誰も頼ろうとしないのかということです」

瑞鳳「…」

海風「守りたかった、その気持ちは痛い程分かります。だけど頼りにされ無い、って言うのは相手を最も傷つける行為なんです。

人は一人で生きていかないために誰もが弱さを抱えてる。それを補う為に周囲には『誰か』が居る… 海風はそれを、貴女に教えて貰った」

瑞鳳「そんな事、教えたことは…」

海風「ええ。直接は教えて貰ってはいません。 だけど戦いを通して、この身で学んできたことです。

誰かに信じて貰ってようやく海風は『アズライトバースト』や『アシムレイト』、そして『フェクアズールブレイカー』を使えるようになった。そこに至るまでに、瑞鳳さんを始めとしたいろんな人に支えて貰ったからこそです」

瑞鳳(たった4ヶ月、そんな短い時間の中でこの子はこんな域にまで…)

海風「だから、言わせてください。先輩と萩風さんの代わりに、姉や飛龍さん達の分まで…

辛いときくらい意地を張らないで、きちんと言って下さい! そんな事じゃ、本当に辛いときに何も言えないと人の痛みですら分からなくなって、誰も彼もが貴女から離れてしまいますよ!」

瑞鳳「…まるで、お母さんみたい。昔、叱られたときの…」

海風「これでも、未来の義理の親子です。それに大鯨さんには、一度お叱りを受けている身ですし」

瑞鳳「そうだったね…」

瑞鳳(この子だって、きちんと言われたことを受け止められてる… だからこそ、私にも…)

海風「海風からは以上です。 あと、皆心配してたんですから謝っておいてください。 海風はこれから、作戦プランの立案があるので」

瑞鳳「作戦…?」

海風「ええ。分かった事があるので」

瑞鳳「分かったって、何が?」

海風「なんとなく、ですが敵の本拠地がです」

瑞鳳「っ!?」

海風「覚悟してください。もうクヨクヨも一人でウジウジもしてる時間はありません。 ここから先は総力戦、全員の全霊で戦う時ですから」
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