一ノ瀬晴「黒組reverse」

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1 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/05(月) 19:43:05.68 ID:W5cWuoHl0

悪魔のリドルSS

原作キャラだけでなく、ソーシャルゲーム「悪魔のリドルAK」のキャラも扱います。
なので、AKキャラクターの方は資料が少なく部分的に設定等オリジナル要素が加わるかと思います。
後者は話の展開で入る事がありますが、この要素目当てで本編を書く訳ではありません。


私立ミョウジョウ学園、某日


 鳰「あ〜、えっとッスね。今回はまぁ、色々と訳アリな黒組でして」


それは東兎角含む、一ノ瀬晴以外が集められた夜間ミーティングでの事。

パッド型の情報端末を弄る走り鳰は、どこか困ったような顔を浮かべながら主である百合目一の方を見やった。

本当にこの内容でいいのか、という目配せには無言の笑みが返ってきた為、小さくため息をつきながらも黒組全員へと向き直る。


 鳰「今回の黒組は通常のモノとは大きく違うッス」

 香子「具体的にどう違う」

 鳰「今回はターゲットの暗殺じゃないってことッスかね」

 伊介「はぁ〜?♥ ふざけてんの?♥」

 乙哉「ピンクの子にどうかーん♪」

 涼「これまでの"黒組"の例に漏れずターゲットの暗殺……ではない。では、如何様にして勝者を決めるんじゃろうか」

 鳰「まぁ、勿体ぶるような内容でもないッスから言っちゃうッスけど」


端末を通して空中に浮かび上がる映像に映し出されたのは、とある女子高生達の顔写真の一覧。

その横には、この場に居るメンバーの同様の写真が並び、そして一ノ瀬晴だけが中央に配置される。


 鳰「 今回の黒組は、ウチ達十年黒組ともう一方十一年黒組との"奪い合い"ッス 」

 兎角「………」

 春紀「こっちとあっち、って事は、アタシらは仲間同士って事になるのか?」

 鳰「ウチとしてもこんな暗殺者集団と組まされるの何てホントは嫌ッスけどォ。開催者が決めた事ッスから文句は言えねーッス!」

 伊介「伊介一抜けた♥ 何が好きでこんな連中と組まなきゃいけないのよ♥」

 純恋子「事前説明では、この様な内容ではなかった筈ですけれど、何故急にこの様な変則的な事に?」

 鳰「あー、えー、色々あるッスよ色々」

 千足「色々、で千載一遇の好機を不意にしろと急に言われてもこちらは納得しかねるな。叶えて貰う側であるとはいえ」

 柩「ボクもそう思います。迷子になってまで来たのに……」
 
 しえな「そ、そうだ。僕たちが協力できると思うか!?」

 真昼「……慣れ合いは、いや、ます。目的を、達したいだけ、ですから」

 目一「不満は色々あるでしょう。急な変更になってごめんなさいね。ただ、それ相応の対応はするつもりよ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1520246585
2 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/05(月) 19:45:35.67 ID:W5cWuoHl0
※すみません、また「エログロ要素の前者は殆どありません。」が抜けておりました。度重なるミス申し訳ございませんが、それぞれ補完して頂きたく思います



誤魔化す様にたじろいでいる鳰に代わり、それまで無言を貫いていた目一が椅子から立ち上がる。

鳰の持つ端末を掴み、操作を行いながら


 目一「ここに映されている"十一年"黒組の子たちにもつい先ほどまで"候補"が居たわ。もう、この世にはいないけれどね。

    出席番号1番××さん。名前は伏せましょう。まだ待機中にも拘わらず彼女は暗殺され、十一年黒組は始まる事も無く閉校。

    流石に報酬は無効にさせてもらったけれど、他の子達の気が済まない。つまり」

 純恋子「わたくし達に白羽の矢が立った、という訳ですの」

 目一「私自身も気になってはいました。殺す事に長けた"暗殺者"の"反対側(reverse)"、つまり何かを守護する力も。」


変わらない、だが変化しないからこそ薄気味の悪い笑みをたたえたままの目一の様子に、黒組の面々は訝しげな表情を浮かべたり困惑の表情を浮かべたりと様々な反応を見せていた。

そんな中、それまで一切の沈黙を貫いていた人物が声を上げる。目一すら意に介さない様子の犬飼伊介とは対照的に、明確な敵意を目一に見せつけながら、


 兎角「さっさとこの茶番を終わらせろ。私はターゲットの暗殺さえ達成できればそれでいい。」


全員(とは限らないかもしれないが)が思っている事を面と向かって口にした兎角に、目一はしかし笑みを崩さずに鳰へと目配せをする。

先ほどからややこしい事になっている状況にうんざりした様子の鳰だったが、すぐに端末を操作し、


 鳰「いくつか誤解を解いておくッス。今回は特殊な暗殺条件が複数あり、その内どれかを達成できれば願いは叶えられるッス。

   よって、願いを叶えられる条件を得られるのは"二人"。」


十年黒組から一名、十一年黒組から一名。と考えれば妥当ではあるが、しかし、同学年から二人達成者が出るのも有効であると伝えられた。

当然ざわつくが、その特殊条件についての催促の声が上がる。


 鳰「一つ目は、ターゲット"一ノ瀬晴の暗殺もしくは他学年生徒による暗殺の阻止"。二つ目は、"十一年黒組の『候補』殺害の犯人の特定"」

 兎角「……特定だと?」

 目一「ミョウジョウ内にはいくつもの監視カメラが張り巡らされている筈ですが、肝心の死体がどこにも見当たらないんですよ。」


この犯人の特定は十一年黒組側からすると、"秘匿しきれば勝利"となる。

複雑そうに見えて、案外単純明快なルールだ。


 鳰「移動可能地域はミョウジョウ学園から半径五キロメートル。場外に一歩でも踏み入れた時点で失格とみなし、黒組としての資格は剥奪されるッス。
 
   期間は無制限。二つの特殊条件が達成された時点で終了ッス。暗殺手段は制限無いッスけど、あくまでも部外者を殺しちゃダメッスよ。"殺しては"、ッスけどね」


主に、この圏内に身内や仲間が存在する人物らはピクりと反応する。

しかし、それでも尚黒組から降りる人間はおらず、全員が無言の肯定の意思を示した。


 鳰「それじゃ、"特別学級"スタートッスよ」


こうして、暗殺者達による己の願いを叶える為の闘争が始まった。

女王を失った蜂達は新たな女王を追い求め、片や女王の死の真相を求める為の。

3 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/07(水) 00:36:32.44 ID:ZEUzPPx40



夜のホームルームが終わった帰りのエレベーターでは、それぞれが騒ぎ立てる中、兎角だけは静かにガラスの向こうに映る街並みを眺めていた。

一ノ瀬晴の暗殺もしくは他学年生徒による暗殺の阻止。暗殺するとなれば容易い事で、始まって即座に殺しに掛かれば良いだけだ。

しかし、他の暗殺者も同じことを考えているとすれば、あのきな臭い理事長が言っていた事はおかしい事になる。

暗殺のreverse。つまり、他人を殺す事に意義を見出している暗殺者が、誰かを守れという事。

深読みかもしれないが、この特別学級とやらは一ノ瀬晴暗殺で決着が着くモノではないのだろう。

……まぁ、確かに。あの時教室で出会った後、兎角自身の意志で一ノ瀬のストラップを一瞬だが大切な物として"守った"のだ。


 兎角「(………誰かを守る、か)」


かつて、自分の叔母が身を捨ててまで自身の命を守り抜いた姿を思い出しながらも、エレベーターを後にした。




4 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/07(水) 00:41:10.99 ID:ZEUzPPx40



晴「……あ、東さんおかえり」

兎角「まだ寝てなかったのか」

 晴「うん、新しいベッドだからなかなか寝つけなくて」


割り当てられた寮へと戻ってきた兎角は、相変わらずニコニコと愛想を振りまく一ノ瀬晴の顔を見て肩の力が抜けていった。

活動範囲はミョウジョウだけではない今回の暗殺は、とにもかくにもこの周辺の地理をいかに把握するかで成否が決まると言っていい。

早速、走り鳰によって全員に渡された軍用(らしく頑丈な)スマートフォンを取り出し、地図アプリを開く。


 晴「あれ、東さんってガラケーだったよね?」

 兎角「学園に渡された。使い方がいまいち分からないから、地図位しか使わない」

 
乱立する建物をじっくりと記憶しようと集中する中、不思議そうな目で眺めてくる晴に兎角は、


 兎角「……一之瀬。この辺りの地理には詳しい方か?」

 晴「え?う〜ん、まぁまぁかなぁ。ほとんど病院にいたし」

 兎角「私よりは知ってそうだな。少し、話を聞いてもいいか」

 晴「うん、いいよ! 東さんから誘ってくれるなんて嬉しい!」


パタパタと赤みがかった髪を揺らしながらも、スマホを覗き込む彼女の姿を見て、自分の立つべき場所はどこか、少し考えていた。



 














 



 

 






5 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/07(水) 02:16:58.59 ID:ZEUzPPx40
※改行ミスです。申し訳ございません



兎角が自室へと戻った頃、二号室でもまた同じように翌日の特別学級に備えて寒河江春紀と犬飼伊介がそれぞれ道具をそろえていた。

とはいっても、伊介は暢気にマニキュアを塗り直し、春紀はスティック菓子を口に咥えながらソファに寝そべっているだけだが。

暫く春紀の雑誌を開く音だけが響き渡っていた室内に、


 伊介「……やっと終わった♥」

 春紀「お、良いじゃんその色」

 伊介「そういえばアンタが塗ってるそれ、何でそんな安物使ってんの♥」

 春紀「あー、これな。妹がくれたんだよ、誕生日に。ウチ、姉弟多いから何かと金がね」

 伊介「ふーん……」


爪を乾かす様に伸ばして開いたまま、伊介は幼少期の自分の姿を思い出す。

ゴミ溜めの中、死体と共に過ごす日々は地獄のようだと思っていた。しかし、伊介には救いがあったからこそここまで這い上がる事が出来た。


 春紀「ま、その金の為に色々とやるべき"仕事"はあるって訳だ。そういや伊介様は何で暗殺者何てやってんの?」

 伊介「伊介はママとパパの為♥」

 春紀「親孝行だな」


ハハ、と乾いた様に笑いながらも、内心(普通の親なら子供が人を殺す事を喜んだりしねーか)と自嘲しつつも雑誌を被って腕を組む。

適当に返された伊介は、ムッとしたように頬を膨らませつつも、"金"と"殺し"の話題を出した途端に春紀が眉を顰めたのを見逃してはいなかった。

飄々としたように立ち振る舞っているように見えるが、その実暗殺者としてはほぼ経験は無いのだろう。

互いに自分の家族の為に暗殺を行っている。故に今回の特別学級、伊介は、


 伊介「(……守る、ねぇ。伊介にとって守るモノはママとパパだけよ)」


一ノ瀬晴を"家族"の為に殺すだろう。
 


6 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/07(水) 19:55:41.40 ID:ZEUzPPx40


涼「……無理にターゲットを暗殺せずとも、報酬が得られると来たか」

香子「首藤、お前はどうするんだ」

涼「ふむ。まぁ、そうじゃなぁ……」


三号室では、比較的落ち着いている様子の香子と涼が備え付けの机に掛けて話し合っていた。

片や暗殺者として育てられた施設からの脱却、片や悠久の時に決着をつける為。

互いに、確かに得られる報酬目当てではあるものの、暗殺はあくまでもソレを得る為の経過に過ぎない。

であれば、今回の特別学級では必ずターゲットを殺す必要はない。

誰かを殺す事の恐ろしさは、過去の一件から香子も、長い年月の中で遭遇した命の奪い合いから涼も理解していた。

  
 涼「晴ちゃんを殺さずに済むのなら、それはそれでいいじゃないかのう」

 香子「……あぁ。もし、一之瀬を殺さずにこの戦いを終える事が出来れば、私は真の意味で暗殺者から足を洗えるかもしれない」

 涼「ふふ。随分、安堵してるようじゃな、香子ちゃん」

 香子「正直に言えば、かなりな。不殺で終えられるようなら、それが一番良い終わり方だ」


香子自身は至って冷静な様相を取り繕っているようだが、随分と目が輝いている様子を見て涼は思わず笑みを浮かべる。

7 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/08(木) 22:20:48.79 ID:LnZtK21S0


 柩「……」

 千足「桐ケ谷は、今回の特別学級についてどう思う?」

 柩「千足さんは、暗殺者が誰かを守る事が本当に出来ると思いますか?」

 千足「……出来る、かもしれない」

 柩「誰かを殺して、何かを奪って。そういう風にしか生きていけないぼく達が、本当に?」

 千足「桐ケ谷、それは違う。生き方は、その道半ばでだって変わる事はある」

 柩「そうですか?」

 千足「ああ。元はただの一般人だった私がこうして殺しの仕事を請け負えるのも、自分の正義を信じているからだよ。

    信じている正義があるからこそ、自分の尺度で計った悪人を成敗する道を進んだんだ」

 柩「悪人……」

 千足「まさか自分が殺し屋の業を背負う事になる何て、子供の頃は思ってもいなかった。それでも、自分の意思を貫き生きる今に後悔などないよ」

 柩「………千足さん、ぼくは」


一つのベッドに横並びに座っている二人の距離は、とてもではないが出会ったばかりとは思えない程に近く、それでいて遠い。

片や素性をひた隠し、片や叶わないかもしれない愛情を抱いた二人は静かにお互いの顔を見つめ合う。

柩が口にしようとした言葉を、千足は首を小さく振って遮ると、


 千足「話が長くなった、すまない。明日は早いだろうから、今日は休もう。"殺す"か"守る"か、その選択は相談事で決める事ではなかったね」

 柩「はい。また、明日」

 千足「おやすみ、桐ケ谷」


組織の為か、愛の為か。柩の中で、激しい葛藤が生まれた。


8 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/09(金) 00:57:35.15 ID:PRdTh56M0


 乙哉「ハァ〜、なんかめんどくさい事になっちゃったね〜しえなちゃん」

 しえな「あぁ。現在進行形でお前に絡まれて更に面倒臭い事になってるけどな!」


チョキチョキ〜と口ずさみながら、指で作ったハサミでしえなのおさげを弄る乙哉にイラついた様子のしえなが声を張り上げる。

ケラケラと笑いながらも、しえながうっとおしそうにする様を見て、内心では既に欲望が抑えきれなくなりそうだった。


 乙哉「(本当におさげ切らせてくれたらなぁ……ついでにザクッと首筋も)」

 しえな「おい、またボクを切ろうとか考えてるだろ!」

 乙哉「すごーい、しえなちゃんってエスパー?」

 しえな「恐ろしいからハサミは出すな!」


今度は本物のハサミを器用にホルダーから引き抜きくるくると回す乙哉に、本当に悪寒と身の危険を感じたしえなは強引にベッドから立ち上がる。

そしてテーブルに着くと、ノートPCを取り出して弄り始める。


 乙哉「結局、しえなちゃんはどうするの。あたしは晴っちを殺る以外無いけど♪」

 しえな「さぁな。まぁ、どちらのリスクが高いかは、明日になってみないと分からない。誰がどっちにつくかで、一ノ瀬を殺すか守るか、その難度が変わる」

 乙哉「ふ〜ん……じゃあ、しえなちゃんが晴っちを守る側についたら、あたしが"絶対に"切り刻んであげるね♪」

 しえな「………ボクは虐げられる方の味方だ。心底下らない陰湿な嫌がらせはもうウンザリだ」

 乙哉「? 何言ってんのしえなちゃん」

 しえな「お前と敵対したら、その時はその時だ。殺人鬼のお前は恐ろしいけど、"武智乙哉"としてなら……ボクはあながち嫌いじゃなかったぞ」

 乙哉「そういうセリフは、今生の別れとかで言ってよ」


それまで、乙哉に対してどこか怯えた様な様子だったしえなが、至って真面目な表情で話すのを見た乙哉は。

ますます、刻みたい気持ちが昂っていった。


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/10(土) 03:44:54.69 ID:cLGSP3Cp0
貴重なリドルSS期待
10 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/11(日) 20:05:07.53 ID:4f1nuPBh0


 純恋子「……さて、どうしましょう」

 真夜「護衛の仕事なんざやったことねぇからよぉ。結局、オレは一ノ瀬晴を殺すぜ?」


テーブルに向かい合い、静かにティーカップに口をつける純恋子に対し、真夜はニヤニヤと笑みを浮かべる。

純恋子にとっては、この黒組はあくまでも自分の力を示しつけるモノであり、その対象が倍に増えた所で特に問題は無い。

どちらにせよ、最後の最後まで生き残った強い者としか戦う気は無く、寧ろこの戦いは選定する人間が増えたと言っても良いので好都合とも言える。

対して真夜は、一ノ瀬晴自体に興味がある為、その後の報酬などはどうでも良い。彼女を殺して、出会った時に貰った"聖遺物(ストラップ)"の価値を高めるだけで良い。


 純恋子「そうですわね、番場さん……いや、真夜さんの目的は」

 真夜「別にルールが変わろうが関係ない」


そんなこんなで、真昼にダイエットを強いるが故に目の前で茶菓子を口にする純恋子を横目に、ベッドに飛び込むと静かに目を閉じる。

殺し、殺し、また殺し。そんな世界に身を置き続けている二人にとっては、今回の特別学級は特に思う事は無い。

11 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/12(月) 02:09:07.46 ID:z/EMY0fl0


鳰「……あーあ、まためんどくせー事になったッスねぇ」


七号室、オリエンテーションの後様々な準備を終えた鳰は、本当に疲れた様な様子でソファに寝そべっていた。

期日までの待期期間として、別棟で一部の人間のみが生活していた十一年黒組だったが、まさか先走り人間が現れるとは。

それ以上に、その違反者を止められなかったミョウジョウの監視体制の甘さにイラつきを隠せない。

表示された情報端末に映し出された黒組メンバーを一瞥し、その中でも気になる人間を数名ピックアップする。

詳細な情報が表示されている人間は殆ど居ないが、何人かはそこそこ踏み込んだ情報もあった。

 
 鳰「京夢紫、黒栖麗亜、零咲薫子、日月氷影……まぁ、この辺ッスかねぇ。"ヤバそう"なのは。」


ヤバそう、の意味は、戦闘力・人格・生い立ち色んな意味合いであるモノの、実力者でありそうなのは確か。

加え、女王候補殺しの凶行を行った容疑者とも言える。

ただ、十年黒組で言う東兎角と犬飼伊介の様な既にマークしていた実力者すら超えてしまいそうな存在が一人。


 鳰「……瑪瑙椿姫。九州出身の極道一族、その娘」


公開されている限りの情報を見る限り、この女は場数も多く、また暗殺者としての実力も堅実だ。

東のアズマ、西のクズノハとある様に、代々伝わってきた殺しの技術を継承する者は不可思議な技術と実力を持っている。

それは、走り鳰本人も違わない所だが、しかしこの瑪瑙椿姫の"噂"を、鳰は個人的に聴取していた。

東のアズマすらも超える実力を持つ、と。


 鳰「あぁ、まぁでも、"コイツ"と殺し合えるのなら―――――悪くないッスねぇ。特別学級も」


それまで感じていた疲れも吹き飛ぶような衝撃に、鳰の口元は自然に緩んでいく。

さて、どっちに着くべきか。


12 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/12(月) 02:15:29.73 ID:z/EMY0fl0

※名前が出たAKメンバーは五人ですが、殺されたAK主人公(仮)を抜いた残り七人のAKキャラクターを募集したいと思います。

物語としてはまだ登場まで期間がありますので、二日間か三日間程募集期間を設けたいと思いますので、ぜひご希望をお願いいたします。

お一人につき二キャラまで希望を受け付けます。もし数が集まらなかった場合はこちらで決めますので、ご安心ください



13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/12(月) 21:17:35.04 ID:FVy95lzP0
粟津志麻と天邉光お願いします
14 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/13(火) 01:58:16.94 ID:AnZevz2o0

 
 鳰「つー訳で、ルール説明は昨日やった通りなんで、よろしくッス」

 晴「???」


翌朝、溝呂木が居た筈の教壇には鳰が立っており、黒板には昨日のオリエンテーションで説明されたルールがもう一度記されている。

唯一あの場には居なかった晴だけがポカーンとした顔を浮かべながらも、周りのメンバーはそれぞれ難しい顔をしている者も居れば気楽そうな顔をしている者も居る。


 晴「鳰、ルールってなに?」

 鳰「あれ、兎角サンに説明してくださいってお願いしたッスよ」

 兎角「知るか、お前の頼みなんて何も聞いていない」

 鳰「酷いッスよ!?」
 
 晴「あれ、そうだったんだ」

 伊介「ていうか、何でその子は呼ばなかったわけ♥」

 鳰「隠す事でも無いッスけど、本当に急に黒組の主旨が変わってしまったからぶっちゃけ晴も呼んで良かったッスけどね」

 香子「それより、追加の説明があると聞いてきたんだが、何の話をするんだ?」

 鳰「簡潔に言えば今から6時間後の午後15:00から特別学級を始めるって事ッス」

 純恋子「あら、随分と待機時間がありますのね」

 鳰「そりゃまぁ、多少のインターバル置かないと速攻で殺っちゃう人が出てくるッスよぉ」


あそこ辺りとか、と伊介や真昼、乙哉が偶然にも集まっている辺りを指さす。

珍しくクスクスと小さく笑った純恋子を横目に、鳰は続けて、


 鳰「という訳で、こっから六時間は手出ししちゃダメッスよ。やっちゃった時点で失格なんで、それは十一年黒組のメンバーにも伝えてあるッス。

   後はそれぞれ、晴を"守るか"、片やその反対か。考えてもいいんじゃないッスかねぇ」


守り切るか、あるいは殺すか。それぞれの技量や考え方によって、どちらに着くのが効率的か。

その判断もまた一つの嗜好でもある。全く、理事長はつくづく暗殺者という生物に興味がおありのようだ。


15 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/13(火) 01:59:55.66 ID:AnZevz2o0

※ご希望ありがとうございます。粟津志麻と天邉光は参加決定しました。

 お一人様二人と言いましたが、24時間後他の方々からの要望が特になければ、他のメンバーも提案して頂けると嬉しいです

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/14(水) 18:51:31.98 ID:X2ArHLJh0
紫雷イオ
沖田京子
17 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/15(木) 03:39:32.82 ID:HD2DDFbe0


 乙哉「えぇ〜、六時間? あたし今すぐチョッキン出来ると思って張り切ってたのに〜」


机に突っ伏したまま、わざとらしく頬を膨らませて不満そうに口を尖らせる乙哉に、鳰は目を細めて


 鳰「ダメッスよ、乙哉さん」

 伊介「それで、この後どうすんのよ♥」
 
 春紀「これで解散か?」

 涼「であれば、ワシはもうゆくぞ。のう、香子ちゃん」

 香子「ちゃんはやめろちゃんは。ただ、これで話は終わりなら出て行かせて貰うが」

 鳰「あぁ、最後に一応聞いておくッスけど」


そう言いつつ、黒板に二つの丸を描き、


 鳰「ここで宣言してもらってもいいッスよ。"どっちに着くのか"」


全員が一斉に静まり、そうして誰がどちらの側に着くかを探り合う。

静まり返った教室内に、今回の特別学級の内容を少しずつ察していた晴は、


 晴「……えっと、取りあえず皆解散、なんだよね?じゃあ―――――」

 鳰「ウチは、"殺す側"ッスよ?」


黒板の円の片方に、走り鳰と名前を書いた。

無理やり笑って明るくしようとしていた晴の視線が鳰に注がれ、鳰もまたその目を赤い瞳で睨み返す。

お互い、そういう世界でしか生きられなかった"働き蜂"と"女王蜂"。

相容れる事は、果たしてあるのだろうか。


18 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/19(月) 00:52:27.64 ID:7UrqrN5l0
 

 伊介「……伊介は秘密♥」

 春紀「アタシもまぁ、保留かな」

 香子「隠すつもりもない、私と首藤は"守る"側だ」

 涼 「はは、香子ちゃんは真面目じゃのう」

 千足「私は守る側に着く」

 柩 「秘密です」

 純恋子「……」

 真昼「え、えと、私、も秘密、で……」

 乙哉「あたしは勿論チョッキンする方♪」

 しえな「(……これは、随分難しい選択になったな)」


口々にどちらに着くか反応する面々に、晴は険しい視線を向けていた鳰から、無意識に隣に座る兎角の方へと向けていた。

殺すか守るか。目の前に座っている黒組メンバーの内、何人かは明確な敵として殺しにやってくる事実に、思わず冷や汗が流れる。

しかし、隣に居た兎角は腕組みしたまま至って表情を変えずに無言を貫いている。


 鳰 「殆ど保留じゃないッスか〜、ま、普通ここでバラす訳が無いッスけどね」


やれやれと大げさにジェスチャーを見せながらも、黒板に乙哉の名前を書き入れ、他はまとめて保留とした。

そして、チョークで指し示しつつも、最後に残った一人を見やり、


 鳰 「"兎角サン"は、どうするッスか?」

 兎角「………」

 晴 「兎角さん……」

 兎角「保留だ」


それだけを口にした兎角は、黙って立ち上がるとそのまま一足先に教室を後にした。

一度クラスメイトを見渡した晴もまた、追いかける様に教室を後にする。
 
19 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/21(水) 04:35:45.25 ID:uPFtBtRW0

 晴 「……さん、兎角さん!!」

 兎角「……」


教室から飛び出した晴は、先に出て行った兎角を追いかけて必死に呼び止めようと声を掛けた。

何度呼ばれても無視を決める兎角に、晴は不安げな表情を浮かべながらも、


 晴 「晴を、殺すんですか?」

 兎角「……」

 晴 「晴、兎角さんと会ったばかりだから、少しも、えっと、全然兎角さんの事知らないけどっ!
  
   兎角さん、ハッキリ晴に言って欲しいよ。兎角さんは、どうするの?」


変わらず無表情で晴をスルーしながらも廊下を歩む兎角だったが、最後の言葉に、不意にエレベーターの前で立ち止まる。

そして、


 兎角「あの場でどちらにつくか答えろ、という規則は無かった。だから私はまだ決まっていないと伝えただけだ。

    一ノ瀬、そのまま返すが、私もお前の事を詳しく知らない。でも、知らないままの方が良いのかもな」

 晴 「えっ……?」

 兎角「別に理由はない、けど。知らないままの方が、多分、殺しやすいから」


晴は、それまで無表情だと思い込んでいた兎角の表情には酷く何か悩み続けている様な、そんな苦悩の色が浮かんでいる事を知る。

プライマー。自身もまたその血を継ぐ一族の末裔であり、そしてこれまでも、その血のせいで色んな人が自分を守る盾となって死んでいった。

その自分でも制御し難い特異体質が、兎角にもまた影響を及ぼしているのだろうか。一ノ瀬晴を、守護せねばならないと。


 晴 「兎角さん、晴は、」

 兎角「……お前と居ると、これまでの人生で感じなかった何かを感じる。それは寒気とかじゃなくて、何か、こう、

    埃っぽい」

 晴 「埃っぽい!? は、晴そんなに臭う……?」

 兎角「いや、なんていうか、その……とにかく、今は保留だ。少し一人にしてくれ」


会話するにしても、どこか不器用な兎角はそんな風に無理やり話を切り上げ、一人エレベーターに乗って最上階を目指す。

そんな兎角の後ろ姿を見つめながらも、晴は一人静かに胸元をギュっと握り締める。

また、血が流れる。誰かの、誰かによる血が。ハッキリしているのは、その流れる血の理由こそが、"一ノ瀬晴"にあること。


 晴「(……どうすれば、いいんだろ)」


体中に刻まれた傷痕が、少しだけ痛んだ気がした。
20 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/23(金) 01:20:42.48 ID:Pxv2jvDf0

 鳰「……さ〜て、どう準備するッスかねぇ」




兎角と晴が立ち去った後、静寂の教室をぶち破ったのは十年黒組で担任(仮)を務める予定であった溝呂木辺が現れたからだ。

元気な挨拶と共に部屋に入ってきた彼は、しかし教室内の何とも言えない険悪さと凍てつく様な生徒の視線を受けてすっかり出鼻を挫かれる。

それでも一先ず教壇に立とうと進んだところで、


 『溝呂木ちゃんは、さっさと今回の事は忘れて通常業務に戻った方が良いんじゃないッスかねぇ?』


既に教壇に立っていた鳰の赤い瞳を見た途端に、生気を失くしたかのように立ち止まり、踵を返すとそのまま一言も口にすることなく廊下へと立ち去って行った。

鳰が言葉を口にした途端、教室中に走った悪寒の様なモノに、少なくとも経験値と意識の構え方によって純恋子と涼は動じなかったモノの、他のメンバーは全員が肩を震わせる。

その感覚はまるで、全身を蛇が這いずり回るかのような、脊髄を刺激する気持ち悪さ。

力の片鱗を見せた鳰は、その後黒板の文字を全て消すとそのまま教室から姿を消し、今に至る。


 鳰「(一ノ瀬晴と東兎角に関しては、まぁ、それなりに関係性は進んでるみたいッスねぇ。"最新版人間の盾"として、良い具合に機能してくれると良いッスけど)」


本来の黒組では、東のアズマとの戦いで百合への忠誠と力を示すのが一つの目的ではあったモノの、こうなってしまえば一先ずは東だけにこだわる必要は無くなった。

瑪瑙椿姫。彼女の動向に気を付けるべきだろう。さて、少し十一年の方も――――――――


 ???「あら、随分と察しがいいのね」


瞬間的に突き出されたナイフに、鳰は咄嗟に顎を全力で引く。ギリギリで切り裂かれずに済んだ下顎を摩りながらも、懐から取り出したワルサーPPKの銃口を襲撃者に向ける。

廊下の角から現れた、ピエロ面をゆっくりと外す長身の女に、鳰は思わず引き攣った笑みを浮かべ、


 鳰 「なぁに先走ってるんスか、"日月さァん"」

 氷影「ふふ、ごめんなさい、あまりにも暇を持て余しすぎて。ついつい、ね」

 鳰 「アンタら十一年黒組は全員が"容疑者"ッスよ。このまま表社会に売り出して、法で裁かれたいのならこれ以上の事を殺り合いたいなら続けるッスけど?」

 氷影「少し貴女に興味が湧いただけよ。あの得体の知れない学園の長に付き従う小さな可愛い侍女さんに」

 鳰 「ほざけ快楽殺人者。甘ったるい臭いをこっちまで撒き散らされるのはゴメンッスよ」


21 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/26(月) 02:40:40.18 ID:Sr1gH5hd0
※キャラクター希望ありがとうございました。また、進行速度が遅くて申し訳ございません。見て下さる方が居る以上、完結まではなんとか持っていきたいと思っております


 氷影「甘ったるい臭い? あぁ、さっき焼いてたパイの匂いかしら。ごめんなさい、そんなに強い香料じゃなかったはずなのに」

 鳰 「お前は嫌いッス」

 氷影「あら、嫌われちゃった」

 鳰 「チッ、こんな茶番に付き合ってるほど暇じゃねッスよ」


相手に戦意が無い事を確認した鳰は、いつでも幻術を扱えるように右袖を捲り、突きつけていた拳銃を懐に仕舞う。

そして、踵を返し十一年黒組が待機する寮とは反対側へと去って行く。

氷影はその後ろ姿を見つめながらも、仮面に隠れた半面の下で口元がにやけていた。

日月氷影。危険人物リストには入っていたが、五時間半後のスタート前に行動してくるとは少し予想外だった。

こういう事態を引き起こすのは、大概頭のネジがどこか飛んでいそうな輩かと思っていたが、


 鳰「(……いや、アレが飛んでない訳が無いッスねぇ)」


情報端末の中にある氷影の経歴を眺めつつ、改めて今回の容疑者一覧を引っ張りだす。

京夢紫、黒栖麗亜、零咲薫子、日月氷影、瑪瑙椿姫、粟津志麻、天邉光、紫雷イオ、沖田京子、中山歪、百地牡丹、山崎千代。

こうして見つめ直すと、先刻上げた危険人物以外にも"ヤバそう"なのは何人か居るモノだ。


 鳰「あ〜、面倒な事になりそッスね」


本命である瑪瑙椿姫と東兎角には、中々遠い道のりになりそうだ。


22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/27(火) 02:34:57.07 ID:wBitOEZL0

更新は気長に待つよ
23 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/28(水) 03:25:05.69 ID:c4DCHsDN0


 伊介「ん〜」


二号室。教室から戻り、色気を纏った声で伸びをする伊介を横目に、春紀は机で頬杖をついて考えていた。

仮に自分が晴ちゃんを守る側についたとして。それでもし、伊介様と敵対するとしたら。

その時、自分は本当に家族の為に彼女を殺せるのか。多分……いや、確実に殺せない。

それは互いの実力差もあるが、根の部分にあるのは、短い間ながらも彼女に少なからず好意を抱いてしまったから。

一目惚れ、何て、同性である伊介に言うのもおかしいかもしれないけど。


 伊介「なにアンタ。じっとこっち見つめて♥」

 春紀「あ、あはは、いや、あと五時間近く何やろっかなって」

 伊介「……暗殺に準備をかけるヤツは好都合ね♥ 伊介はそんな面倒な準備なんてしないしヒ・マ♥」

 春紀「じゃあさ、良かったらウチに来ないか? 決められたエリアの中にあるんだ、時間潰しも兼ねてさ」

 伊介「なぁにぃ、出会って二日で家に誘うとか中々やり手ね♥」

 春紀「いやいや、そんなつもりはないってば」


伊介に興味があると同時に、運悪くエリア内に存在する自分の家族について色々と考える為、彼女を自宅に誘う。

もし、彼女を味方につけられればこれほど心強い味方は居ない。


24 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/03/31(土) 05:37:37.43 ID:NImumlsb0



 晴「兎角さん……」


一人残された晴は、兎角の登って行ったエレベーターを見つめながら立ち尽くしていた。

そうして、何も出来ずに立ち去ろうと振り向いた先に、


 涼 「のう、晴ちゃん。辛気臭い顔は、似合わんからやめておけよ」

 香子「一ノ瀬、話したいことがいくつかある。時間を取らせる事になるが、場所を移して良いか?」

 晴 「首藤さんと、神長さん?」


一ノ瀬晴の"守護者"を選んだ二人は、晴と共に圏内にある物静かな喫茶店へと誘った。



 
 涼 「さて、まず最初にワシと香子ちゃんは晴ちゃんを守る側につく」

 香子「おい、だから香子ちゃんは止めろと」

 晴 「……うん、ありがとう」

 
正直な所、晴自身にとってはこれまで何度も刺客に追われ、殺されそうになった時に助けてくれたのはそのたびに親しくなった人間が盾になってきた。

今回の黒組自体、"そういった類のモノ"だと理解した上でやってきたし、特殊学級ではどうあがいても殺し合いが発生する。

その時犠牲になるのは、目の前の二人かもしれない。


 晴 「二人は何で晴を守る事を選んだの?」

 香子「私の目的は元々暗殺者を辞める事。仮に一ノ瀬を殺さずに目的を達する事が出来るとすれば、そちらの方が当然良い。」

 涼 「ワシは香子ちゃんについてきただけ。ワシの望みは『普通に老いて普通に死ぬ事』。まぁ、晴ちゃんを殺してワシが普通に生きても後味が悪すぎるしの」

 晴 「晴は、黒組でやり直したかったんです。憧れてた学園生活を。普通の、女の子みたいな」

 涼 「まぁ、百合目一と言ったか。奴はかなり名の知れた支配者じゃからのう。晴ちゃんにどういう事情があるかはあまり聞かないようにするが、逃げ切るのは難しいじゃろう」

 香子「ミョウジョウの与える影響力は計り知れないからな。私の居たクローバーホームでも、度々役員がやってきていた。かくいう私もその繋がりでここに来た訳だが」

 晴 「百合さんは……多分、晴の親戚だと思うんだ。」

25 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/01(日) 02:16:22.32 ID:uc2sb5Pu0


香子も涼も、それぞれの目的はいずれも誰かを殺す事を目指すモノではなかった。

涼の言葉は気になったが、意志を伝えてくれた二人に、晴もまた自身の経緯を口にする。


 涼 「……親戚。具体的にはどういう繋がりがある?」

 晴 「晴は昔から色んな裏の組織に追われてて、その理由が、プライマーっていう無意識に他人を支配するフェロモンを振りまく能力」

 香子「プライマー、確かその話は私がまだホームに居た頃に先輩から聞いたことがある。まるで女王蜂の如き振る舞いで働き蜂を使役する、強力な力だと」

 涼 「又聞き程度にはなるが、ワシも聞いた事がある。しかし、そのプライマーの力を晴ちゃんが受け継いでいたとはの。してその能力が、百合目一にもあると?」

 晴 「うん。走り鳰って子が居たでしょ? 鳰は多分、プライマーの影響を少なからず受けてるって……思う。ごめんね、断定はできないけど、晴が感じただけで」

 涼 「ワシらにはその感覚は分からんからのう。ま、一先ずはその話を信じても良いとワシは考えている」

 香子「ここで一ノ瀬を疑っても何も始まらないからな。私も同感だ」

 晴 「ありがとう。だから、晴が黒組に呼ばれたのも、百合さんが晴達の事を試してるところもあるのかな」


プライマー。晴自身にとっては、もはや呪いと言っても良い程に苦しめられてきた力。

親しい人間すらも、自身を守る為の兵隊へと変えてしまう。


 涼 「なるほどのう。……それは、さぞ苦しかったろうな」

 晴 「大変な事もいっぱいあったけど、でも、晴は生きてる。晴を庇ってくれた家族も、友達の為にも。だから、晴はこの力を恨んだりしません」

 香子「大切な誰かを失う衝撃は凄まじい。私もそれを経験したが……そうだな。一ノ瀬、私はお前を守る理由が出来た。」


無茶苦茶な位に明るいその笑顔は、理不尽で凄惨な人生を生き抜いてきた人間とは到底思えない程に輝いていた。

その姿に、涼はどこか寂しげな感情を瞳に乗せ、隣で意を決したように言葉を紡ぐ香子を見やった。

殆ど手付かずのままテーブルにあったアイスコーヒーに口を付けながら、香子は眼鏡を押し上げ、


 香子「イレーナ先輩が死んだあの時に置き去りにしてきた私の弱い心を鍛え直す為だ」

 涼 「心の強さとやらは、そう簡単に手に入れられるモノではないぞ?」

 香子「あぁ。だが、こうして乗りかかった舟だ。私にとっても、大きな意味のある戦いにしたい」

 涼 「……ふふ。(これは、純粋に晴ちゃんの信念に影響されたか)」

 晴 「なんだかうれしそうだね、首藤さん」

 涼 「そうか? まぁ、ワシの楽しみは若人の行き先を眺める位なモノじゃからな」



26 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/01(日) 03:33:19.34 ID:uc2sb5Pu0

 
柩 「……千足さん」

 千足「どうした桐ケ谷」


あれから、一度部屋に戻り諸々の荷物を回収していた千足に、それまで愛用の熊のぬいぐるみを抱えて静かに椅子に座っていた柩が声を掛ける。

自分の中で生まれた愛と、しかしこれまで組織に忠誠を尽くし生きて来た暗殺者の自分と。

どちらかを選ぶには、あまりにも時間が足りなかった選択を、柩は決める事にした。


熊のぬいぐるみに隠していた特殊な形状の注射器を取り出すと、千足に向けて、


 柩 「エンゼルトランペットは、ぼくですよ。千足さん」

 千足「………」


自らの正体を明かし、千足と敵対する。

それは、明確に組織への忠誠を選び、一瞬ながら生まれた愛を踏みにじる行為に他ならない。

しかし、千足は動揺した様子を見せず、静かに柩の元へと歩み寄る。


 千足「桐ケ谷、すまないがお前が眠っている間に、そのぬいぐるみの中身を見たんだ。その毒物の中身は、殺された恩師の娘さんから検出されたモノと同じという事も知っている」

 柩 「………そう、ですか。」

 千足「知った上で、私自身はお前を一度手にかけようとした。だが……お前を殺す事は出来なかった。それは、決して規則で縛られているからという理由じゃない」

 柩 「じゃあ、どうして?」

 千足「私は、桐ケ谷柩を愛してしまったからだ。どうしても、私はこの自分から湧き上がる愛情には勝てなかったんだ」

 柩 「ぼくは、今、その愛を踏みにじりました」

 千足「お前が選択した事なんだ、私がとやかく言う事ではない。………だからこそ、私はこう返すべきだろう」


肩に掛けていたレザーケースから愛用しているレイピアを引き抜いた千足は、注射器を向ける柩へと切っ先を向けて、


 千足「私は一ノ瀬晴を守る側につく。次に会う時、必ずお前を打倒してみせるぞ、"エンゼルトランペット"」

 柩 「ぼくは必ずターゲットを殺す。邪魔をするなら、お前も同じだ」


向き合い、柩が最後に見たのはあまりにも痛々しく表情でレイピアを突きつけてくる千足の顔だった。


27 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/02(月) 05:51:28.30 ID:eIyDqZ8K0

※最後の文章、痛々しくではなく、「痛々しい」に訂正します。


 純恋子「……さて、番場さん。私(ワタクシ)はホテルに向かいますわ。貴女はいかがなさって?」

 真昼「わ、私は、後で、出る、ます」

 純恋子「健闘をお祈り致しますわ。願わくば、貴女が私の前に現れることを」


元々、荷物という荷物はほぼ持ち込んでいない純恋子は、手提げ鞄を手に、真昼へと別れを告げた。

真昼は、相も変わらずビクビクと震えながらも、小さく手を振って彼女を見送る。

部屋を出てすぐの廊下で、武智乙哉と遭遇した。


 乙哉 「あ、純恋子さんだ」

 純恋子「あら、武智さん。貴女もここを発たれますの?」

 乙哉 「たつ? あ〜、アタシは別に準備とか無いからまだ此処に居るよ♪」

 純恋子「……貴女は、確か無差別殺人を引き起こしていましたわね」
 
 乙哉 「無差別ってさ、酷いよね〜。アタシ綺麗なお姉さんしかチョッキンしないのに〜」


純恋子にとって、自分を殺しに来る刺客というモノは明確な目的があってこその暗殺者であり、意義や意味がある殺しを迎え撃っていた。

しかし、目の前の女はただの快楽殺人鬼。その殺しに、何の意味も無い。

目を細める純恋子に、乙哉はニヤニヤと口元を歪めながら純恋子を壁に押し付ける。


 乙哉「純恋子さんの目、アタシ好きだなぁ……意志が強そうな、精悍な目」


艶やかな薄い亜麻色の髪を触りながら、至近距離で純恋子の瞳を覗き込む。

抵抗せず、静かに無表情を貫く純恋子を、興奮を抑えきれず懐から取り出したハサミで切り刻もうと腕を振り上げた乙哉に、


 純恋子「光栄ですわ。でも、私は貴女の事、少し苦手ですわね」


振り下ろされる腕を、その細腕で掴んだ純恋子は、見た目とはかけ離れた力で乙哉の腕を握りしめた。

ギリギリと、骨が軋むような音が響く。


 乙哉 「ぎ、ぁっ……!?」

 純恋子「でも、わたくしはひ弱な女性ではありませんので。貴女の様な賊に乱暴されたりしませんわ」


28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/02(月) 18:11:21.88 ID:TbDO5P/mO
リドルssがあったなんて
見逃してたッス
29 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/04(水) 00:11:32.12 ID:9hQJ8RMn0


悲鳴を上げながらも締め上げてくる腕から逃れようと、反対側の手でハサミを握り締め、純恋子の腕に振り下ろす。

しかし、突き立てられた純恋子の腕からはガギッという鈍い金属音が響き、刃先がへし折れてしまった。


 乙哉 「はは、なにこれ……」

 純恋子「"これ以上"やるとルール違反になってしまいますので、ここで止めておきますわ」


欝血し、青くなりかけていた乙哉の腕を離すと、何事も無かったかのような顔で微笑む。

その向こう側に立っていた鳰に対し、アイコンタクトを送ると、


 鳰  「……」

 純恋子「それではごきげんよう」


蹲って腕を抑える乙哉を後目に、立ち去って行った。

一通りの情報は得ている為、特に衝撃を受ける事は無かった鳰だったが、やはり目の前で鉄の刃が生身にへし折られる光景は驚いた。

鳰もまた、道端に転がっているゴミでも見るような目で乙哉を見下ろすと、隣を通過して理事長室へのエレベーターへと消えていく。

残された乙哉は一人、骨が折れていない腕を払いつつも


 乙哉「あ〜痛かった。ただの綺麗な女の子じゃなかったんだねぇ……」


内側から込み上げる熱に促され、予備のハサミで通路に置いてある調度品の壷を叩き割る。

ハサミの刃すら通らぬ鋼鉄の皮膚を、どう切り刻んでやろうか。

驚愕もあったが、それ以上にそんな考えが頭を駆け巡った。






30 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/04(水) 04:00:14.58 ID:9hQJ8RMn0



 兎角「……何だ、用事って」

 目一「ごめんなさいね、お忙しい所に呼び出して」


晴から逃げるように立ち去った後、兎角は最上階にある理事長室へとやってきていた。

それも、先ほどのホームルーム中に届いた一件のメールのせいであり、晴を避けていたのもコレのせいであった。


 目一「今回の特別学級。確かに原因は待機中だった十一年黒組のメンバーが、"候補"を殺めてしまったのも一つあるのよ?」

 兎角「候補?」

 目一「しかし、本当の意図は違います。それは、『新たな女王蜂候補』の選定」

 兎角「女王蜂……」

 目一「分かりやすく言うと、一ノ瀬さんは私と同じ血族の一人、他者を誘惑する特殊なフェロモンを無意識に発するプライマーという存在よ。

    貴女は、この二日程で彼女と共に過ごす間、何を感じたのかしら?」

 兎角「……自分でも、おかしいとは思っていた。異常な程に、アイツと話すほどに引き込まれた」

 目一「ただの暗殺対象であった筈の彼女を、普段からクールな貴女がなぜそこまでに好意を抱いたのか。その理由は、理解してもらえたかしら」

 兎角「……」


会って間もない人間の印象など、よくわからないとしか言いようがない。

しかし、他人に興味を抱かない兎角ですら、一ノ瀬晴という人間から感じたモノはあまりにも多く、言葉が湧き上がってくる。

その理由が、特殊な能力によるモノだった、と言われれば確かに納得がいく。


 目一「彼女がこれまで幾人もの刺客に襲われ、その度に命を繋いでいるのも大きな要因としてはプライマーとしての力があります。

    惹き込まれた人間は刺客からの盾……文字通り人間の盾となり、果てていった」

 兎角「お前の話が全て本当だとして、つまり私に何を言いたい?」


31 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/05(木) 06:29:52.04 ID:TFASBBen0


 兎角「……何だ、用事って」

 目一「ごめんなさいね、お忙しい所に呼び出して」


晴から逃げるように立ち去った後、兎角は最上階にある理事長室へとやってきていた。

それも、先ほどのホームルーム中に届いた一件のメールのせいであり、晴を避けていたのもコレのせいであった。


 目一「今回の特別学級。確かに原因は待機中だった十一年黒組のメンバーが、"候補"を殺めてしまったのも一つあるのよ?」

 兎角「候補?」

 目一「しかし、本当の意図は違います。それは、『新たな女王蜂候補』の選定」

 兎角「女王蜂……」

 目一「分かりやすく言うと、一ノ瀬さんは私と同じ血族の一人、他者を誘惑する特殊なフェロモンを無意識に発するプライマーという存在よ。

    貴女は、この二日程で彼女と共に過ごす間、何を感じたのかしら?」

 兎角「……自分でも、おかしいとは思っていた。異常な程に、アイツと話すほどに引き込まれた」

 目一「ただの暗殺対象であった筈の彼女を、普段からクールな貴女がなぜそこまでに好意を抱いたのか。その理由は、理解してもらえたかしら」

 兎角「……」


会って間もない人間の印象など、よくわからないとしか言いようがない。

しかし、他人に興味を抱かない兎角ですら、一ノ瀬晴という人間から感じたモノはあまりにも多く、言葉が湧き上がってくる。

その理由が、特殊な能力によるモノだった、と言われれば確かに納得がいく。


 目一「彼女がこれまで幾人もの刺客に襲われ、その度に命を繋いでいるのも大きな要因としてはプライマーとしての力があります。

    惹き込まれた人間は刺客からの盾……文字通り人間の盾となり、果てていった」

 兎角「お前の話が全て本当だとして、つまり私に何を言いたい?」



 目一「貴女達十年黒組を見届けるのも良かったけれど。今回は、貴女に"直接"依頼したいと思っています」


椅子に座っていた目一は立ち上がると、困惑した表情で入口に立つ兎角の元へと歩み寄り、


 目一「一ノ瀬晴の暗殺。受けてくださるかしら?」

 兎角「……この感情の理由を知る為だ」


差し出された手を払いのけながらも、兎角はその"依頼"を受ける事にした。

それは、今伝えられた晴の経緯や、それまでひっきりなしに届いていたカイバからのメールが途絶えている事も理由にあったが、東兎角として晴の敵側につくことを意味していた。

振り返り、立ち去るためにエレベーターへと向かう兎角に、ちょうど上がってきていた鳰が目の前に現れる。

気色の悪い、張り付けたような笑顔をニコニコと浮かべながら、


 鳰 「あ、兎角さんは晴ちゃん殺す側につくんスねぇ。てっきり守る側につくのかと」

 兎角「依頼は依頼として遂行するまでだ。お前達の都合で変わった特殊学級に興味は無い」


すれ違う鳰に対し、変わらず無表情のまますれ違い、消えていく兎角を眺め、


 鳰 「(……ま、いずれ決着は着けるッスよ)」

 目一「鳰さん、お疲れ様。日月さんの件は見ていたわ」

 鳰 「も〜、理事長も人が悪いッスよぉ。あの人、ウチを本気で獲ろうとしてたッスから」

 目一「あら、私の守護者様がそんなに簡単にやられるとは思っていないわ」

 鳰 「当たり前ッスよ。百合さんより先に死ぬなんてウチはごめんッス」


32 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/05(木) 06:31:03.99 ID:TFASBBen0
※ミスで前回投稿した分を纏めて書き込んでしまったので、>>30のレスは無視して頂けると助かります

33 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/16(月) 09:09:59.70 ID:Qmf+elFI0


 冬香「あ、お姉ちゃんおかえり!……え、と、その人は誰?」

 春紀「ただいま。こっちは伊介様。アタシの知り合いだよ」

 伊介「……どうも♥」


春紀は、伊介を連れて実家へとやってきていた。

奥から出て来た黒髪の少女を見下ろす伊介に、かつて弟の亡骸と共に数か月もの間過ごした日々が浮かび上がる。

あんな風に純粋な笑顔を浮かべる事は無かったが、背丈や髪型、声音がどこか近しいモノがあった。


 伊介「(……)」

 春紀「妹の冬香と、あと妹弟が結構居るんだ」


そう言いつつも、居間へと上がった伊介を待っていたのは、想像以上の人数。

それぞれが伊介を見て違った反応を返しながらも、春紀が促すと全員が行儀よく挨拶してきた。

生活感のある散らかった部屋を横目に、春紀は後ろ髪を掻きながらも伊介を自身の部屋へと案内する。

流石に、これから話す事は弟たちに聞かせられない。横にスライドさせた扉の鍵を閉める。


 春紀「汚くてごめんな」

 伊介「ま、こんだけ子供が居ればこうもなるわよ♥……それより、アンタの親は?」

 春紀「あー……親父は蒸発して、母親は今入院中なんだ」

 伊介「……なるほどね♥ アンタがどうして殺しをやっているのか、理由が良く分かった♥」

 春紀「……なぁ、伊介様。お前はどっちに着くんだ?殺す側か、守る側か。」

34 : ◆y/UloXui6w [saga]:2018/04/16(月) 09:10:35.56 ID:Qmf+elFI0


今回の核心となる話に踏み出した途端に、伊介は静かに春紀の至近距離に歩み寄る。

そして、いつの間に取り出したダガーナイフを春紀の首元に当て、

 
 伊介「殺すに決まってるでしょ♥ 何、アンタの家庭事情を見せれば伊介が協力するとでも?♥」

 春紀「……はは、やっぱりダメか?」

 伊介「アンタが例え一ノ瀬晴を殺す側に着いたとしても、伊介はアンタの身内の面倒なんて見る気はないから♥」


寸止めてはいるものの、春紀が余計な事を口走れば本当に切り裂く事が出来るというようにナイフを持つ手に力を込める。

自然と壁際に追い詰めるような体制になり、春紀は僅かに冷や汗を浮かべ、


 伊介「弱者は食われて当然。伊介はね、そんなゴミクズみたいな弱者から這い上がってきた。簡単に甘えてんじゃねぇよ?♥」

 春紀「確かにそうかもしれないな。だけど、アタシにはアイツらみたいに守るべき人間が居るから"生きて"るんだ。伊介様には、そんな人は居ないのか?」


思い浮かべるのは、愛するパパとママ。両方男だけど、命と愛をくれた大切な人。

しかし、伊介は手を緩めることなく、寧ろ侮蔑するような笑みをこぼして


 春紀「っ、ぐ、かはっ」

 伊介「パパとママはアンタの家族とは違う。そして、伊介も。アンタに依存して、アンタに縋り続けてるような―――――」

 
グッと力が更に込められ、ギリギリで抑え込んでいた春紀が押されると同時に首元へとナイフが食い込み、血の筋が浮かび上がる。

ぐりぐりと膝で春紀の腹を圧迫し、無理やりに息を吐き出させて力を緩める伊介の元へ、閉め切られていた筈の扉がこじ開けられ、黒い影が飛び出してきた。

反射的に蹴り飛ばそうと足を伸ばした所で、力をとりもどした春紀がなんとか伊介を跳ねのけた。


 冬香「お姉ちゃん!! 大丈夫!?」

 春紀「っ、冬香、どうして」

 冬香「……話、全部聞いてた。ねぇ、殺すって、どういう事? お姉ちゃんが言ってた仕事って、そんな危ないことなの!?」

 春紀「それ、は」

 伊介「春紀以外ならアンタが一番年上っぽいから言っとくわ♥」


受身を取って起き上がっていた伊介は、ナイフから滴る春紀の血を取り出したスカーフで拭い取りつつも、冬香へと視線を向ける。

じわじわと痛む鳩尾を抑えながらも、首元の傷も構わずに冬香の前に立つ春紀が構える。


 伊介「本当に春紀の事を思っているのなら、この家から離れた方がいいわよ♥ いずれ悲惨な事になる前に」


伊介なりの忠告を残して、彼女は春紀と冬香の横を当たり前の様に通り過ぎ、そして家を後にした。

それまで身構えていた春紀は、ようやく自分の喉から零れる血が床に染みを作っている事に気付く。

……これまで守り続けて来たこの家を、手放さなければならない時が来た。

それ以上に、隠し続けていた事が冬香に全て明かされてしまった事が何より辛い。




35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/16(水) 09:30:11.12 ID:cf3puTIk0
待ってるぞ
36 : ◆EtDBNAuDt. [saga]:2018/07/20(金) 07:19:25.95 ID:nn2rqiNX0
【トリップ変わりましたが本人です。何とか落ち着いてきたので、これから更新再開していきたいと思います】


京夢紫、黒栖麗亜、零咲薫子、日月氷影、粟津志麻、天邉光、紫雷イオ、沖田京子……そして瑪瑙椿姫。

名簿上は更に三名の生徒が居る筈だったが、彼女達は学園に入学する手続きを終える前に十一年黒組に問題が発生したため、ここに表記は無かった。

此処は待機室と称された、金星寮の対面に存在する寮の休憩所。


 麗亜「あっづ〜……ねぇ、志麻ァ。アタシ達いつまでここに居ればいいの」

 志麻「さぁね。長いこと軟禁されてるけど、アタシにとってはここは結構過ごしやすいからな」

 麗亜「なに適応しちゃってんの。色々漫画も読み漁ったけど、流石にそればっかりじゃ飽きちゃった〜」

 京子「……」

 薫子「……」

 志麻「あそこの二人、おっかないもん取り出して涼しい顔してるけど、アレに相手してもらったらどうよ」

 
ヴァンパイアの血族である黒須麗亜は、ガラス張りの休憩所に差し込む陽射しに目を細め、うめき声をあげていた。

寝そべるソファの隣にはサブカルチャー仲間の粟津志麻が様々なジャンルの漫画を読み漁っており。

騒がしい麗亜達とは少し離れた場所に複数設置されているソファにはそれぞれ本物の日本刀を、本物の銃火器を前のテーブルに広げている二人の姿があった。

沖田京子は、厳しい本家本元に仕込まれた剣術の為に刀を磨き、零咲薫子は軍隊上がりの傭兵として火器の整備は欠かさない。

黙々と作業する二人は見えない殺気の様なものを放っており、


 麗亜「いやァ〜、今行ったらアタシバッサリ切られて撃ち殺されそう」

 志麻「にしても、凄い集中力だな。あの二人もう一時間はあの体勢だぜ」
 
 麗亜「職業柄道具は大切だけどねぇ」


じゃ志麻の漫画見せて〜、とうっとおしく絡みつく麗亜に、志麻はもう慣れてしまった様にへいへいと漫画雑誌を大きく広げる。

一見平和そうにも見えるこの風景。一つ、異様な点と言えば。






この休憩場の中央、其処にはおびただしい量の血液が飛沫していたと思われるドス黒い染みが天井と床に出来ている事か


37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/12(日) 15:12:33.12 ID:kE0HAYcJ0
もう落ちてるかと思った
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