【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/18(月) 12:07:14.35 ID:HjXIVpU6O
やっぱり面白い! 時間があったら最初の話から何度も読み直してる。
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 13:43:10.93 ID:YRAJ7cSBO
強右衛門って誰だっけ?

って思ったら長篠の戦いの人か。

戦国史も嗜む>>1は凄いな
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 12:42:02.01 ID:orDGxRGHO
続きが気になって仕方がない。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 13:08:10.40 ID:ig4QiBhw0
長篠近隣には強右衛門の功績を讃えてJR鳥居駅があります(マジ)
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:01:46.50 ID:HSNWcwmZ0

_(:3」∠)_ 

これ結構長引く奴だ……
1です、久しぶりの更新となります、お時間宜しければお付き合いいただけますと幸いです
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:02:58.74 ID:HSNWcwmZ0


第十二話 天国への扉 後編

340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:04:16.18 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦艦橋

提督「それにしても艦番88とは…。」

大佐「どうされました?」

提督「あぁ、いえ、この艦の艦番なんですがね。

   私が普段指揮を執る鎮守府の管理番号と同じでしてね。」

提督「なんの因果かと思いましてね。」

大佐「あぁ、それでコールサインが88なのですね。」

提督「えぇ。こういうのは普段どおりの方がいい。」ニッコリ



提督と大佐がにこやかに談笑している所に開演のブザーが鳴る。



「ワイルドギース01から入電!

 敵の偵察機がエリア3 −A―01からこっちに来てるかも!」(無線)

提督「こちら88コントロール。伯爵、聞こえているか?」(無線)

グラ「こちら伯爵。加減は?」(無線)

提督「1〜2機は帰してやってくれ。

   こっちの居場所を知ってもらわない事には始らない。」(無線)

グラ「こちら伯爵了解した。」(無線)

大佐「こちらの位置をわざとにばらすのですか?」

提督「えぇ、そうですよ。あくまでメインステージは此方ですから。」

提督「踊るならこちらで踊ってもらわないと色々と折角の舞台演出が無駄になりますからね。」

提督「スポットライトの舞台装置に大道具。全て重要ですよ。」

341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:06:00.56 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦から救援予定鎮守府方向20海里地点 水深70m



ゴポリ

伊58「海底に岩だらけでち。」



提督から渡されたドラム缶を面倒くさそうに海底にアンカーで固定しながらゴーヤが言葉を紡ぐ。



伊8「米軍の海底データが役立ちますね。」

伊13「その…、海水がねっとりとしてて……。温度も……。」

伊58「提督はなかなか潜水艦ってのを良く理解しているでち。」

伊58「米軍のデーターが無いとこんな大胆な作戦は考えられないでち。」

伊8「私達が一番槍……、ですね。」

伊58「敵さんの探信儀に聴音機じゃここに潜むゴーヤ達は見つけられないでち。」

伊8「先駆けからの大物食い、ですね。」

伊13「ですが…、そのタイミングが。」

伊58「その通りでち。でち達からも敵の音は拾いにくくなるでち。」

伊58「だけど、敵は大艦隊でち。

   拾う為の努力をせずとも大音量が聞こえるはず。」

伊8「提督が言っていました。

   敵は提督へのカンツォーネを謳いながら来るだろうから煩いだろうって。」

伊13「……、あの、敵はセイレーンか何かなのでしょうか……。」

伊58「魅了されたら海に引き摺り込まれるという意味ではそうかもしれないでち。」

伊8「後は急速浮上後の目標の推進音を間違えないようにしないと。」

伊13「…提督は間違えても周辺護衛を仕留めれれば御の字って言っていましたが。」

伊58「大物食いは刑期大幅短縮、それに提督の話を信じるなら。」

伊8「大物食いに成功すれば解放されます。」



海上での戦闘というのは陸の平原戦と似ているが

海中という不可視の要素が加わるのが厄介である。

何故なら、海中に潜む潜水艦というのは

時として局面を引っくり返すワイルドカードに成り得るからだ。

適切な位置とタイミング。

テーブルに並べられたコミュニティカードに自分の手札。

当たり前だがカジノでの勝負と同じようにお互いの手札は見えず伏せられたまま。

戦場というテーブルに敵、味方、加えて地理的要因という場札。

そして、手札には自軍の戦力。賭けるチップは自軍部下達の命。

提督と深海棲艦のポーカー勝負は既に始っている。

342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:07:28.14 ID:HSNWcwmZ0


強襲揚陸艦内



提督「初手からチェックなんぞしていちゃ心理戦に持ち込む以前の話ですぜ。」

大佐「だからと言って初手からベットして行きますか。」

提督「ホールデムは相手をいかにフォール。下りさせるかの勝負ですぜ。」

提督「特にプレイヤーが2人なら下りさせれば勝ちだ。」

大佐「ですが初手、

   まだゲームが開始されたばかりだとコールやレイズをしてくるのでは?」

提督「それが狙いですよ。大佐。」

大佐「賭け金を吊り上げさせるだけ吊り上げますか。」

提督「ラストターンまで待つ気はないですがね。」

提督「今回は私も頭に来てましてね。

   フォールの声を聞くつもりはないんですよ。」

大佐「既に役が出来ているという事ですか?」



ここで提督はさぁてねと意味ありげに手をひらひら。



提督「敵についてですが今回は姫の上の格。鬼級が出張ってきている。」

大佐「あぁ、先程のお互いの自己紹介でそう言っていましたね。」

提督「深海棲艦の指揮官個体は艦種での違いは無く同格だそうですよ。」

大佐「指揮系統が複雑そうですね。」

提督「と思いきや鬼号個体が指揮を執ればそれに従う。

   鬼同士では指揮系統の順位があると海軍の研究が出ています。」

大佐「敵の総指揮官は戦艦水鬼でしたですか?」

提督「えぇ、今回の敵の総指揮官は戦艦水鬼です。なかなか厄介な手合いですよ。」

大佐「油断ならぬ相手、という事ですか。」

提督「えぇ、救援を呼ぶ艦娘が出られないように包囲網を適切に構築しているようです。」

提督「島風が這い出てこられたのも島風だからと言って過言じゃないでしょう。」

大佐「随分と強個体だったようですね。」

提督「えぇ、死なせるには惜しすぎる艦娘でしたよ……。」



艦橋内にある各種モニターに映る光の明滅を見ながら提督がぽつり。



提督「時に大佐は博打の必勝法を御存知ですかな?」

大佐「はて?」

提督「賭けない事ですよ。」

大佐「違いない。」

提督「まぁ、相手が目の前に居なくてよかったですよ。」

大佐「?」

提督「私はポーカーフェイスってのが苦手でして。顔に出やすいんですよ。」ニタァ

大佐「成程、良い笑顔ですね。」


343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:09:40.03 ID:HSNWcwmZ0


敵にも居るはずの潜水艦。

しかし、提督はこれが自分達救援部隊への迎撃に向ってこないと計算していた。

そして、仮に向ってきても脅威足りえないと。



コーン


          シャッシャッシャ


     コーン


シャッシャッシャ
         コーン



空鬼「敵の潜水艦は居ないようね。」

駆逐「えぇ。外周に配置したナ級の報告では探信儀に敵の反応は無いわ。」

空鬼「敵救援艦隊は随分大きな的を備えている様ね。」



グラーフがトニー賞俳優顔負けの迫真の演技で逃した偵察機からの情報で

深海迎撃艦隊は提督達のいる方向へと進路を向けていた。

ソナーには2種類あるのは皆さんも御存知だと思うが探信儀と聴音機。

この2種類の違いについては今更説明する必要性はないと思う。

潜水艦の探知については探信儀の方が性能が高いのだが

自軍に潜水艦が随伴している場合は現代艦で構成される機動艦隊は控える事が多い。

では、何故深海棲艦は探信儀を気兼ねなく使っているのか?

単純明快、自軍の潜水艦が随伴していないからである。

艦隊行動をする上で潜水艦の随伴というのは良くあるのだが。

潜水艦の基本の戦い方は待ち伏せ。

現代では機関や形状等が進化した事により潜行したまま艦隊についていけるが

第二次世界大戦時は浮上航行した上で会敵予想海域に潜むというのが専らの戦い方なのだ。

であるからこそ、既に防御線を構築している状態から潜水艦を引き抜き

艦隊に随伴させるというのは少々戦い方として無駄がある事になる。


344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:11:16.61 ID:HSNWcwmZ0


駆逐「敵の包囲網に使っている艦を回すわけには行かない……。」

空鬼「ここが難しいところよね迎撃側になる此方は速力重視になってしまうから

   速力に不足がある潜水艦は艦隊行動について来れない。」



現代艦艇の潜水艦と比べればその速力は浮上航行時でも当然遅く更に。



空鬼「敵潜水艦が待ち伏せて襲撃をかけて来ると予想される中で

   爆雷対処を行った場合に味方の潜水艦を巻き込む恐れが有るのよねぇ。」

空鬼「音を立てずに海中に潜んでいると見つけにくいのよね。」

駆逐「無闇にソ級達を沈めると潜水棲姫に怒られる…。」

空鬼「今回の作戦にあの娘の軍勢借りてるから無駄に沈めると後が煩いのよね…。」



現代兵器であればキャビテーションノイズ等で艦事の区別は付くのだが……。



空鬼「敵味方の潜水艦入り乱れての混戦になると却って困るのよね。」

空鬼「浮上航行の潜水艦なんて鈍亀もいい所だし。」

駆逐「浮上航行している潜水艦は敵にとっていい的でしかない。」

駆逐「私達の爆雷は潜水艦を[ピーーー]。敵も味方も無い…。」

空鬼「であるならば対潜に力を入れて探信儀で

   広範囲に捜索をかけて敵を先に見つける事に重点を置いた方がいいわ。」

空鬼「陣形の外周を探信儀持ちで固めて広範囲の捜索。

   発見した場合は同じく駆逐、軽巡で処理。これが一番現実的かつ合理的よね。」

駆逐「そう…ね…。」



深海側が採っている陣形は空母機動艦隊、米軍が海上航行をする際にとる輪形陣である。

単純にかつざっくりと陣容を説明するなら

外周の的がやられても内側の空母等の重要艦を沈めさせないという陣形である。

だけに。


345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:12:31.12 ID:HSNWcwmZ0


伊58「内側に完全に入り込まれると対処がしにくくなるでち。」ニタリ



提督から事前に話された敵がとってくるであろう陣形。

それは輪形陣の一陣形、

アイロン型の陣形で内側に深海側にとって重要艦を固めて来るであろう事。

そして、提督から艦内で改めて聞かされた

今まで色々な鎮守府が撮り貯めてきた深海棲艦達の各艦種、姫、鬼級達の推進音。

それを思い出し。



伊58「海のスナイパー。潜水艦の真骨頂を見せ付けてやるでち。」ニタリ



ゴポリ



伊8(そろそろです……。)



10……9……8……7……6……



5………4………3………2………………1



0 !



一秒が一時間にも感じられる程の張り詰めた雰囲気の中、

頭上を通り過ぎていく敵艦隊の推進音は

音が拾いにくい所にいるはずのゴーヤ達の所にもしっかりと届いていた。



伊58「今でち!」



70mの海底から一気に急速浮上。目標とする敵の後ろを取る。

その完璧なタイミングを推し量り、潜水艦達は急速浮上をかけた!



駆逐「潜水艦の浮上音!?」



敵輪形陣中央に浮上。


346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:13:21.23 ID:HSNWcwmZ0


伊58「海の中からこんにちは〜!」ザバン!



シャコーン

冷たい立体反響音が当たりに響く。その正体は魚雷発射管が開く音。



伊58「そして、[ピーーー]ぇ!!」



敵の真後ろ、提督達のいる方向へ向けて航行中のため急に後ろを振り向く事など出来るわけも無く。



シャ ――――――――― !



ズドン!



ゴーヤ達3人の放った魚雷が一斉に扇形に広がり輪形陣の中心にいた深海棲艦達に命中!

そして上がる命中の水柱。



伊8「全弾、命中確認、ですね!」

伊13「敵被害確認、カメラでの撮影完了!」

伊58「長居は無用でち!急速潜行で海域から離脱でち!」



その存在を検知出来なかった場所からの敵。

ゴーヤ達の奇襲は完璧なまでに決まり、成功した。



347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:15:25.92 ID:HSNWcwmZ0

空鬼「駆逐ちゃん。」

駆逐「何?」

空鬼「あなたに指揮権を移譲するわ。機関をやられたわ…。」

空鬼「艦載機の発着艦は出来るけど後方からやられた所為で

   このまま敵本隊にぶつかればいい的にしかならないわ。」

空鬼「自力航行不可能よ……。」

駆逐「離脱するのね……。」

空鬼「えぇ、後は宜しくね……。」


ゴーヤ達の魚雷は艦隊の中心部に居た空母水鬼に見事命中。

他にも多数の重巡達に大破や中破といったダメージを与える事に成功していた。


駆逐「ナ級達。敵潜水艦を沈めて頂戴。」


艦隊外周の駆逐艦達に冷静に見える様でありながらも腹立たしい表情で指示を出すが。


駆逐「敵の反応が無い?」

駆逐「馬鹿な!敵にそんな高速潜水艦等居るはずがない!」


だが、返ってくる言葉は不明(ロスト)の返答。


駆逐「忌々しい!」


駆逐棲姫が毒づく言葉を吐き周囲への爆雷攻撃を命じる。

ゴーヤ達を探知出来ている訳では無い。

だが、潜水艦の脅威を放っておくわけにはいかない為周囲全体に爆雷を大量に撒く。

そして。


駆逐「敵艦からの浮翌遊物を確認。」


撃沈したと思しき大量の油と敵艦娘特有の制服を確認。

ナ級からの報告に溜飲を下げる駆逐棲姫。

進軍速度を落とし被害の確認。

空母水鬼が大破撤退したものの空母全体でみれば被害は軽微。

そして、重巡や軽巡、戦艦といった者達にも撃沈が出てはいるがこれもそれ程数が減った訳では無い。

まして、奇襲という手を食らって敵と一合も刃を交えず退くという事など。


駆逐「選択肢としてない!」


事前の偵察機からの情報では艦隊の数、そして空母艦載機数で圧倒できる。


駆逐「地獄を見せてやる!」


激昂し普段あまり表に出さない感情を顕わにし。


駆逐「絶対[ピーーー]!」


怒りのままに進軍速度を早めたのだった。


348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:16:42.34 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦内艦橋


不知火「司令、ゴーヤさん達から入電です。」

提督「読み上げてくれ。」

不知火「トラ!トラ!トラ!我、奇襲に成功せり! です。」



不知火の読み上げる電文に苦笑する士官二人。



提督「大佐、これは申訳ありませんな。」

大佐「いえいえ。お気になさらず。」



そして、不知火から敵に与えた被害を聞き満足そうに頷く提督。



大佐「あまり敵に与えた被害が大きくは無いようですが。」

提督「とんでもない。連中は値千金の仕事をしてくれてますぜ?」



提督の言葉に疑問を持ったのか腑に落ちなさそうな顔をする大佐。



提督「大佐、指揮官を一人、

   それも空母水鬼を行動不能に出来たというのはこっちの防衛戦は勝ったも同然です。」

提督「空母水鬼とその他の指揮官では艦載機の管制が雲泥の差。」

提督「制空争いに余裕がかなり出来ることになるんですよ。」

提督「敵の数が勝っていたとしても質で此方は拮抗に持ってはいけますがね。」

提督「あくまで拮抗。勝つための決定打が足りない。」

提督「その決定打を今、潜水艦の娘達が敵に与えたって事ですぜ?」

大佐「それなりに策は用意されているかと思っていたのですが?」

提督「えぇ、おっしゃるように勝つための策は用意していましたがね。」

提督「使う必要性が無いなら使わない方がいい。

   私の所はそちらほど台所事情がよくないのでね。」


349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:18:29.89 ID:HSNWcwmZ0


大佐「それにしてもそちらの潜水艦の娘達は実に大胆な手法を取られましたね。」

提督「もともと其方がこの辺りを縄張りにしていた御かげで

   蓄積されていた海底データが役に立ちましたよ。」

大佐「やはり温度躍層に、ですか?」

提督「手品のタネを明かすならそうですね。

   曳航式ソナーなんて敵は持っていませんしな。」

提督「攻めてきた側の連中が周辺海域の詳細海底データーを持っているとは思えませんし。」

提督「知っているなら対策もとっていたでしょうや。」

大佐「成程。なかなか面白い事を考え付かれますね。」

提督「簡単に真似出来ると思ってはいただきたくないですね。」ニィッ

提督「今回海中に潜んでいた連中は何百、何千と深海連中を沈めてきた歴戦ですからな。」

提督「御存知とは思いますがうちの特性上沈めた艦種によって報酬は大きく変わる。」

提督「だからこそ、狙う前に敵の機関の推進音を一瞬で聞き分け、

   より報酬がでかくなる対象を狙う。」

提督「急速浮上から奇襲、そして急速潜行、戦域離脱。

   普段から死線をギリギリでさまよっているうちの連中だからこそ出来る芸当ですぜ?」

提督「まちがっても余所の錬度でやっちゃ駄目ですな。

   急速浮上後に目標を見つけられずに沈められるのが関の山ですからな。」

大佐「精鋭揃いなのですね。」

提督「えぇ、精鋭も精鋭。気を抜くと自分の首に大鎌が押し当てられますので。」

提督「最初に敵に与えたこの攻撃で敵の先手は取った形になります。」

大佐「切り札を最初に切ったと?」

提督「えぇ、切り札なんてもんは温存しといて

   切るタイミングを失うよりさっさと切ってしまった方がいいんですよ。」

大佐「成程、どこかの国の戦艦がそんな最期でしたな。」

提督「……、皮肉がすぎますな。」ハハッ



始めの電文に対しての軽い応酬。


350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:20:01.45 ID:HSNWcwmZ0


大佐「これは失礼しました。ですが、今後の展開も楽しみですね。」

提督「楽しむ余裕があるというのは重要ですよ。」

提督「余裕があるうちは頭も動いている証拠ですからね。」

提督「さてと、不知火。」

不知火「はい。」

提督「この艦の周りに配置についている連中に連絡だ。」

提督「幕は上がったとな。」

不知火「了解です。」

提督「さてと、大佐にはプロデューサとしての私の腕前を見ていただきますか。」

大佐「地方公演なしにいきなりのブロードウェー。素晴らしい大作なのでしょうな。」

大佐からの皮肉に、にこやかな笑顔を返し。

提督「勿論ですよ。まぁ、I dreamed a dream になる訳にはいきませんので。」

大佐「レ・ミゼラブルですか。」

提督「御名答。」



艦橋内で提督からの指示を

強襲揚陸艦外周辺海域に展開する各艦娘と連絡を伝え全員が意気軒昂なのを確認。



提督「さぁ、舞台は整った。」



後は敵をいかに潰すか。手札の役は既に敵にとって致命傷。

敵の積み上げたチップを全て残らず奪い取る。



秋津洲「ワイルドギース02から88コントロールへ!」(無線)

秋津洲「敵艦載機編隊がエリア2−A―03より襲来!」(無線)

提督「了解!全員褌締めて掛かってくれ!

   前哨戦だがここから先は全て息を切らさぬクライマックスの連続だ!」



提督の呼び掛けに全ての無線は応とかえってくる。



提督「気を抜くと尻の毛全て毟られるぞ。」



提督の台詞に笑う無線の返事多数。



提督「さぁて、いつも通り。行こうか。」



ぽんと手を一つ叩き、艦橋内の各種モニターを見つめ

どう敵を料理しようかと提督は不敵な笑みを浮かべるのだった。

351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 00:28:19.57 ID:HSNWcwmZ0
本日の更新はこれにて終了です、次回へ続きます

次回嘘予告

追うものと追われるもの。そのおこぼれを狙うもの。
牙を持たぬ者は生きて行かれぬ暴力の海。あらゆる悪意が武装する、赤い海。
ここは深海との戦いが生み出した死の戦場。
時雨の体に染み付いた硝煙の香りに引かれて危険な奴らが集まってくる。
次回、『 出会い 』。時雨が飲む、鎮守府のコーヒーは苦い。

337様、本当に駅あるんですねググってびっくりしました
333様、本当に数レス上げたボツネタ供養からここまで続くとは思っていなかったです
ボツネタに対して続きは?と多くのレスをいただき背中を押していただいた部分も多いかと思っています
実際、ボツにした理由も需要ないだろうなぁと思っていた部分が大きかったですので
ですので更新の度に多くのレスをいただいている現状は1としてありがたいやら恐縮するやらで……
このお話の後に砂の薔薇をベースにした番外編をやれるようそちらも筆を少しずつ進めていますので
これからもお時間よろしければお付き合いの程宜しくお願いいたします
感想レス、乙レス、いつも励みになっています、本当にありがとうございます
変態仮面のSSも書いてます、方向性が180度違いますが間違いなくどちらも同一人物が作者です、はい
では、また次回の更新で!!
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2018/07/03(火) 00:31:58.09 ID:HSNWcwmZ0
あっ sagasageを打ち込まなかった所為でピーが発生してる…
>>346は死ね
>>347は殺す
ですね、締まらないなぁ…、御迷惑お掛けします……
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 21:21:02.34 ID:vD/ykc1n0
読み返して気付いた。

ちゃんと、島風が強右衛門ポジになる下ごしらえが>>285 でされていたんだなぁ。

そして、学のない人間にすねえもんなんて初見で読めるわけがないw
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/04(水) 13:16:59.91 ID:UnA7/8nW0
後世強右衛門の献身が無ければ徳川の世は来なかったとまで言われ、あの恩知らずな家康が一族を幕末まで手厚く遇した程のターニングポイントになった一件だから島風の死は戦争の趨勢を激変させるかもしれない
島風好きとしては期待しちゃう
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 21:25:05.61 ID:NNlPl4c30
賢い相手ならこの被害で一旦艦隊を下げるんだろうけど
実は相手は勝負から降りれない状況に追い込まれているのですか

嫌な博打打ちだな(褒め言葉)
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:09:14.23 ID:NNCuyt2G0
前回は他の作者様のとこに書き込みしてsageになっていたのを直さず投稿してご迷惑をお掛けしました
良く忘れてやらかす…、駄目駄目ですね……
少しまた期間が空きます事のご連絡とおまけネタで読んでみたいとレスいただいていました
ガングートのお話を少し、宜しければお読み下さい
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:10:14.40 ID:NNCuyt2G0

おまけ話  ガングートは底辺から脱出したい

358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:12:27.25 ID:NNCuyt2G0

ガングート着任初日

その日、不知火は提督からのお使いで艦隊司令部に行っており

既に帰途に付いていたものの帰ってくるまでにはまだ時間が掛かるはずだった。



ポンポンポン



いつもの様に軽快なエンジン音を立て艀に接岸するボートが一艘。



提督「お疲れー。今回の荷物は外交問題だって?」

水兵「ははは。私からはあまり詳しくは。」

提督「うちに厄介ごとの丸投げ止めて欲しいもんだよ。まったく。」



そしていつもの通りにお互いの認識票を端末に翳して受領手続き。

その後、水兵が去った後に荷物の拘束を解いていた所に不知火が帰ってきた。



不知火「司令!不知火、帰投しました!」



みえない尻尾がぶんぶんと。

振り切れそうな勢いで振れているなぁと提督はぼんやり。



提督「うん。お疲れ。予定より早いようだが。」

不知火「途中で船を降り艤装で全力航行してきました。」



頭を撫でろと差し出しくる不知火の頭を撫でていると罵声が飛んできた。



「貴様!駆逐艦の相手などせずにさっさと外せ!この馬鹿者が!」



猿轡を先に外し、足の拘束を外そうとしていた提督に偉そうな口を利く艦娘。

ブチッ



不知火「2割殺しで許してやる。」



たった一言。余分は不要。

メキャァ



提督「あっ。」



提督は後に時雨に語った、艦娘って戦艦でもあんなに吹っ飛ぶもんなんだなぁと。



時雨「あれで2割なんだ……。」



とは時雨の返答。

359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:15:08.69 ID:NNCuyt2G0

そして、1週間程、意識が三途の向こう側へ行きかけた後。

栄養を取る為に彼女が食堂を利用した時の事だった。

昼食をとりに提督が食堂へ顔を出せば揉めている声がする。


ガン「なんだと!?ボルシチが出せないだと!?」

「いや、予め言ってくれれば用意はするけど。」

「普段からメニューにないのを急に作れって言われても無理だよ。」

提督「まぁまぁ、落ち着いて。」



提督がなだめようと間に入るが……。



ガン「何が落ち着けだと!?貴様!銃……「露助、司令官を敬え。」



一閃、綺麗な兎飛びアッパーが決まる。

ボゴォ゛



提督「あっ。」



提督は雪風に語る。天井に人が突き刺さるって事があるんだねぇと。



雪風「装甲は腐っても戦艦ですから。」



とは雪風の言葉。
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:18:46.94 ID:NNCuyt2G0


そして、三途の渡し守から追い返されてから三日後。



秋津洲「今日は二式大艇ちゃんの整備日和かも!」

提督「二式大艇ってこう、なんか愛嬌あるデザインだよなぁ。」



執務室が禁煙にされてしまっている為、煙草を吸いに埠頭まで来ていた提督が秋津洲に語りかける。



秋津洲「さっすが提督!よく分かってるかも!」

秋津洲「でも煙草に火をつけたまま近づくのは危険だから駄目かも!」



ジュッ

咥えた煙草を奪われ火を消される。



ガン「頼もう!」

秋津洲「はーい、いらっしゃいませかもー!」

ガン「すまないが燃料と弾薬を売ってくれ。支払いはこれで。」

つ ルーブル

秋津洲「げぇぇ。まじもんの紙屑かもぉ!」(1ルーブル≒1.78円)

ガン「なにぃ!?貴様!我が祖国を愚弄するか!?」

秋津洲「ここでの使用可能通貨はドルかも。」

ガン「その様な物等ない!」

提督「ルーブルは流石に両替を受けてないな。」

秋津洲「お金が無いならお帰りはあちらかも!」指差し

ガン「金は無いが武器はある。」チャキッ

秋津洲「きゃぁ――、強盗かも ――(笑)。提督を守らないとかも――(笑)。」


役得とばかりに提督に抱きつき、えいっと可愛らしくパンチを一つ。


ドゴ!



提督「あっ。」



秋津洲の右ストレートが炸裂。

二式大艇は自重だけで約18t、爆装等込で最大重量約35t。

それを片手で担ぎ上げる秋津洲のパンチが決まったのだ。

提督は後に長門に語る。反跳爆撃で飛んでいく爆弾の様に水を切りながら飛んでいったと。



長門「学ばない奴だな。」



とは長門の言葉。


361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:19:52.32 ID:NNCuyt2G0


そして。



明石「金を稼ぐ前から修理代ばかり嵩ませて、

   払うあてが無いなら艤装ばらしてあんたの部品を担保にして貰おうか?」

明石「人体ってのは綺麗にばらせば300万にはなるんだ。腎臓の一つでも売ってみるかい?」



鬼より怖い明石に睨まれ。

艦娘が入れる生命保険等ある訳も無く。



ガン「身の程を弁えず申訳ありませんでした ――――――― !」



提督に地面で額を摺りきらんばかりの勢いで土下座をかまし。



ガン「助けてください〜。」



全力で泣きを入れた。



提督「あー、まぁ、うん。気をつけろよ。」

不知火「2度は無い気をつけるんだな。」ヌイ!

ガン ヒィィ!



提督が明石に上手く取り計らい、ガングートは内臓を売る事無く着任する事が出来たのである。

マイナスからのスタートなのは言うまでも無い。

362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 00:23:24.97 ID:NNCuyt2G0
以上超短編
お読みいただきありがとうございました、最近板自体が管理人さん不在の所為かスレ建て荒しなどの放置が目立ちますね…
そろそろ移住を考えた方がいいのやらやら……
では、ここまでお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます!励みとして続きを書くエネルギーに変換しています!
では!また次回の更新でお会いいたしましょう!
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 00:31:59.94 ID:u9XalqOB0
同志不甲斐ないの
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 00:38:48.52 ID:s0soUc7zo
いくらなんでも可哀想過ぎて草生える
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 02:59:57.68 ID:tzXzQ8Xk0
乙です
ガングートには申し訳ないけど爆笑してしまった
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 07:40:19.84 ID:cWuepcgo0
前回の続きと言うか前日談って感じかな?

それにしても…

笑うわこんなんw
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 20:33:20.79 ID:FkzLrHbpO
乙です。 続きは時間かかるみたいですが、楽しみに待ってます。
ガングート可哀想ではあるけど、ほぼ自業自得なのが笑いを誘います。
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 22:14:28.76 ID:cWuepcgo0
秘書艦に食堂のおねーちゃんに海の遊撃手と殴られてなおかつ、裏ボスにドヤされてようやっと理解したのね…

てゆーか、約1名現役じゃない方がいらっしゃるんですが
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/10(火) 09:53:44.57 ID:hhl0TaDXO

ここのうーちゃん大好きだわw
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:05:05.06 ID:4HB+eitj0
8月に入る前になんとか更新出来そうなので更新に来ました
久しぶりにフライトシミュやったけどコクピットモードで3D酔い、ゲーム自体は好きなんだけどなぁ…
少し長めの更新となりますが宜しければお付き合いいただけますと幸いです
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:07:01.24 ID:4HB+eitj0

グラ「Falke(隼)02は01と協力して3―B―01だ。」



自己管制下にある最新鋭機Ta152艦載型の編隊を敵の襲来している空域へ差し向ける。

ポン!



グラ「と、お次はAdler(鷲)01と02、3−A―01だな。」



ポン!ポン!



グラ「正面と右翼からの浸透か。」

グラ「まずはお手並み拝見と言ったところか?」



高高度作戦機が豪とエンジンの唸りを、

咆哮をあげ提督が乗る強襲揚陸艦へ襲撃を掛けてくる敵機を落とす。



グラ「高高度における機体性能は私の機材の方が上の様だな。」



ポ―ン!



グラ「と、このエリアはサラトガだったな。」



ポ―ン!



グラ「ふむ。Conder(コンドル)を援護に回そう。」



先程からグラーフの目に映っているのは周辺戦闘空域に飛来している敵機編隊数。

グラーフはウェラブル端末の透過式グラスの表面に表示される

敵飛来方向等から自艦載機部隊に戦闘指示を出している。

そのグラスはポーンポーンと軽快に音を立てては戦況を随時更新。



グラ「外周のピケットが食われないようにしないとだが…。」

グラ「フム、初月達が動いたか。電探持ちがやられるときつくなるからな。」

グラ「Conder(コンドル)02、03はそのまま上空で二式大艇の護衛を続けてくれ。」

グラ「敵増援が来れば護衛機は追加しよう。艦隊の目だ。くれぐれも落とされないでくれ。」



グラーフは一体何をしているのか?


372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:09:22.95 ID:4HB+eitj0


強襲揚陸艦 艦橋



不知火「大艇からのデーターだと、敵艦隊はこちらの方角です。」



不知火が二式大艇に積まれた機上電探からの情報を

提督が机代わりにしているタブレットを大きくしたような大型モニターに

データとして表示させながら説明する。



提督「そろそろグラーフだけでの管制は厳しくなってくるだろうな。」

提督「俺が管制の指示を出そう。」

大佐「航空管制の経験がおありですか?」

提督「うちの国は人材がつねに不足していましてね。なんでも出来ないと提督は務まらんのですよ。」

提督「もっとも、なんでも出来た所為で辺境の指揮官なんてものをやっていますがね。」


373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:10:02.71 ID:4HB+eitj0

大型モニターに数字と襲来方向の矢印、

そして、敵機を表す光点が徐々に増え始めるのを見て提督が頭にレシーバーを嵌める。



提督「うち所属の空母艦娘ども、敵の数が借金取り並だ。」

提督「ここからは俺が管制をする。

   指示は各々がつけてるウェラブルグラスに迎撃に向わせる空域と編隊名が出るからその指示に従ってくれ。」

提督「後、米国からのお客様、サラトガ嬢は未通女(おとめ)なんでな。」

提督「悪い虫が付かないように守ってやってくれ。以上だ。」



提督からのいつもの軽口付きの指示。

どうやらいつも通りやれているようだ。いつも通り、普段の様に頭が動いているなら。



グラ「Admiralの勝ちだな。」



にしても。



グラ「カバー範囲が広いものよな。」



だが。



グラ「私になら出来るというAdmiralからの信頼。それに応えぬ訳にはいくまいよ。」



上官への尊崇。それ以外もあるが。口には決して出せない秘めた思い。



グラ「火事と喧嘩は江戸の華だったか。」



なれば鉄火場こそ己の魅せ場。

纏う火の粉を紅に変え、硝煙の香りを上等のフレグランスへ。

堅牢な城門を壊し城を陥落させるようにあの朴念仁を堕とそうではないか。



グラ「独逸撫子もいいもんだとあの男に言わせねばならんのでな!」

グラ「必勝と行かせてもらうか!」

374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:11:20.09 ID:4HB+eitj0


高度1万メートル

高高度作戦機の縄張りであり空気は薄く、

大馬力エンジンが支配する絶対空域。

馬力の無いエンジンを積んだ飛行機では辿り着けても

敵に追いすがる事など出来ない性能こそが神として君臨する空域。

その高度をグラーフの管制下にあるTa152の各編隊は悠々と飛行していた。



大隊長「編隊長から各機へ。ターキーショットと思って手を抜くなよ。」

大隊長「グラーフ嬢が想い人にいい所を見せようとしているようだ。」

副長「それは気合いれて掛からないといけないですね。」

隊員A「でも、告白するんですかね?」

隊員B「いつも寸前で止まってますからねぇ。」

大隊長「相手は昔の女に捕らわれているらしい。」

副長「男としては憧れますが。」

隊員A「好きになった女にとっては迷惑極まりないですね。」

大隊長「なればこそ我らが戦果をあげていい女として認めて貰えるように頑張らねばな!」

一同「「「 Ja!」」」



軽口を叩く妖精一同。

そして、グラーフの指示に従い眼下に見える敵機編隊へ襲いかかりる。

ドイツ空軍、ルフトバッフェの基本戦術2機1小隊を2つにして4機で1編成のケッテとよばれる編成単位。

ドイツ空軍が採用の後、実戦に投入しその有用性に目をつけた英国空軍も取り入れ4本指、

フォースフィンガーという名称でこの編成方法は知られている。

彼らは定石通りに高空から一気に眼下の敵編隊へ襲い掛かった!


375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:13:19.53 ID:4HB+eitj0


ドドドドドド!

機銃の音が空間へ響き渡り深海棲艦の機体を撃墜!



隊長「Falke(隼)大隊長01より各小隊長へ!被害報告をされたし!」



突入してのそのままの勢いで急降下をしている状況で余裕の被害確認。

Falke隊からの急襲を散開させることによりなんとか逃れた深海棲艦の艦載機は急降下で追撃!



「02小隊被害なし。」

「03小隊同じく被害なし。」

「01了解。Adler(鷲)編隊!準備は!?」

「こちらAdler大隊長01。いつでもどうぞ。」



各編隊からの報告に満足したように頷くと

急降下していた状態から一気に操縦桿を引き機首を上方へ向ける。



大隊長「馬力のある機体が逃げる時は下じゃなく上が定石だからな。」



攻撃を仕掛けた編隊が急に機首を上に上げたのに合わせ急降下で追撃していた敵機も追いすがる!



大隊長「まったく、japanの言葉でダボハゼだったか?」

大隊長「ちったぁ罠を疑えってな。」

大隊長「Falke大隊長01よりAdlerへ。お客さんをお連れした!盛大に歓迎してやってくれ!」



ドドドドドドドン!



Adler大隊長01「Willkommen(いらっしゃい)コーヒーは如何かな?」



上空へと逃れるFalke隊を追いかけてきた敵機は次の瞬間全機撃墜される!



大隊長「待ち伏せお疲れ。」

Adler大隊長01「どういたしまして。敵は余裕が無い様だ、コーヒーの誘いを断られたよ。」

大隊長「紅茶好きだったんだろ。」

Adler大隊長01「成程、それは粗相したな。」



何のことはない。

急降下突撃した部隊が敵の生き残り編隊を急上昇で吊り上げ

高空で待機していた別の編隊へ上がってきたところを叩かせる。

上昇力に明確な差があるからこそ出来る戦術であり。

二式大艇からの電探情報、提督からの敵機位置情報、

各編隊との無線機でのやり取りがばっちりと嵌ればこその戦術である。


376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:15:11.24 ID:4HB+eitj0


大隊長「釣り野伏せだったか?」

副長「japanでの名称ですか?」

大隊長「あぁ、瑞鳳嬢の旗下連中から聞いたんだが

   japanの戦闘民族が得意とした戦法なんだそうだ。」

副長「我らゲルマン民族の様に勇猛果敢な民族もいたもんですな。」

大隊長「そうだな。Falke大隊長から大隊全機へ!

    最初の突撃で担当空域内に侵入している敵は3割しか落せていない!敵が多すぎるな!」



大隊長の言葉に笑いが漏れる楽しい職場。



大隊長「ここから先は各個撃破となる!各小隊の奮闘期待する!以上!散開!」

Adler編隊長「同じくAdler隊も散開!各個撃破だ!以上!」



高空からの奇襲は一度限りの先手必勝。それを使えば後は一撃離脱の回数を重ね敵を落すしかない。

こうして狼達は野に放たれた。

ギュオォォォォォオオオォン!

機体性能を十分に活かし再度の急降下突撃。



大隊長「逃すか!」



一気に敵を3機程屠った後、僚機を従え他の敵機が飛ぶ高度で水平飛行へ!

そして機体性能を活かし速度を上げ敵の背後を取り敵機を更に撃墜!



大隊長「これが生身の人間なら体に掛かるGが激しいんだろうなぁ。」

副長「妖精に転生してその辺りの負荷があまり感じなくなりましたからねぇ。」

大隊長「先の大戦時でもそうだが、ますます人間を辞めた感があるな。」

副長「元々人間でしたっけ?」

大隊長「そういわれるとそうだな。」



ドドドドドド!

鼻先僅か10m。敵機が艶やかな華を咲かせ、ばらばらに散っていった。



副長「撃墜のコツは。」ニカッ

大隊長「自分の機体を当てる心算で近づけ。」ニヤリ



Ta152量産型の20mm機関砲、2機分、合計6門が火を噴けば並大抵の装甲では耐える事など出来やしない。


377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:16:57.34 ID:4HB+eitj0


ダダダダダダ!

大隊長「早漏だねぇ。」

副長「そういえば、深海棲艦の艦載機は男が乗ってるんですかね?」

大隊長「女なのか?あれ?」

副長「そもそも操縦士が乗っているのかどうか?」

大隊長「……、機械に落とされるのは癪だな。」



水平飛行を続ける二人の機体に敵が仲間の敵とばかりに攻撃を仕掛けてくる!

が!その銃撃はあまりにも遠すぎる為か当たらない!

なにより数多の修羅場を潜った末に妖精に転生している二人は

殺気を感じた時点で機体を次の行動へ移すべくタイミングを計っていたのだ。

二機の機体のエンジンが更に唸りを上げ速度がどんどん上昇。



大隊長「重力なんてもんを感じなくてよかったよ。」

大隊長「感じてたら奥歯の一本は覚悟しねぇとならなかったかもしれないからな。」



ふわり。

それは一瞬の出来事である。

機首を上げ機体を右方向へ捻りこみながら縦方向へ180度のループ。

ループをしながら機体を捻るためループ終了後の機体は水平に。



戦技 インメルマンターンの炸裂である!



敵の上方へ進行方向を逆にする形でターンする為、隊長達の機体の下を敵機がすり抜ける!

その結果、互いの速度差で距離が一気に離れていく!



大隊長「お疲れさん。」



水平飛行へ移行後少しばかりの距離を飛んだ後、2機は再度、下方向へのループを行った!

インメルマンターンの逆バージョン。



戦技 スプリットS である!



両方の技は共に少しの操縦ミスで機体の失速を招く高難度空中格闘戦技であり

それを間髪入れずに行うのは耐Gスーツを着ていたとしても

その体はもとより機体そのものに掛かる重力は凄まじいものとなる。

エアショーで機体が地面とフレンチキスをやらかして

大事故になる事が多いのもだいたいどちらかの戦技の失敗だったりする。


378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:19:07.13 ID:4HB+eitj0

副長「まぁ、敵の技量はうちの飛行隊だとワンデイですな。」


ピタリと追撃してきた敵機の後ろに付け2機の銃撃により敵機小隊は撃墜された。


大隊長「まったく、インメルマンの後にスプリットなんぞやってたら普通死ぬわ。」

大隊長「体への重力のかかり方が死ねる。」

副長「敵との距離が離れていましたからねぇ。」

副長「ビタ付けしている状態だったらそのままループだけでよかったんですけどね。」

隊長「敵がどん亀なのが悪い。」

副長「そーですそーです。」

大隊長「さぁて、敵の残りをいただきますか。」

大隊長 副長「「我らがグラーフ嬢の為に!」」



そして、2機は再度、敵編隊へと襲い掛かかっていくのだった。



グラーフ「 /// 。」



穴があったら入りたいとはまさに今のグラーフの為にある言葉だろう。

各妖精隊に指示を出す為に無線を繋ぎっぱなしのグラーフには

先ほどからのやり取りは全て筒抜けだった。



初月「やぁ、伯爵。そんなに赤面してどうしたんだい?」

グラ「あぁ、初月か。初月が来たという事は。」

初月「うん。そろそろ敵が抜けてくるだろうからって提督からの指示だ。」



現実的な話上空で空戦を行っている戦闘機だけで敵の攻撃機全てを落せる訳がない。



提督「時に大佐。この船の喫水線防御なんですが。」

大佐「強度としては大戦時の大和級準拠ですよ。」

提督「流石に色々と資料を残されている国は違いますな。」

大佐「大和級の固さは我が国にとって悪夢でしたからね。」

大佐「深海棲艦達の使う魚雷が大戦時の物と同じという情報を信用するなら

   単純に喫水線下の防御を固めるのが対策として至極簡単です。」

大佐「おかげで基準排水量がかなり増える事になってしまいましたがね。」

提督「さてと、接触と磁気、どちらの信管か。」

大佐「接触だと思いますよ。」

提督「ですかね。」



誘導装置が魚雷に搭載されたのは先の大戦も終戦間近、今までの深海棲艦達からの攻撃データーからの判断でも。



提督「敵の魚雷は接触式信菅とみて動きますか。」



そして、針路変更の指示を出す。

379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:20:56.88 ID:4HB+eitj0


提督「面舵20度」

大佐「艦の進行方向を変えますか。」

提督「魚雷からの回避行動といえばジグザグ航行が一般的ではあります。」

提督「ですが、うちの防空艦連中の腕を信用するならばこの程度の針路変更で問題ないですよ。」



強襲揚陸艦が針路を変える少し前。

初月率いる対空兵装を満載した防空駆逐艦隊は提督の指示に従い

上空の防空網を抜けてくる敵機を探す為空を睨んでいた。



初月「そこだぁ!!」



初月の長10cm砲、対空機銃が豪快な音を立て上空の網を抜けてきた敵艦攻隊を撃ち落とす。

ドドドドンドンドンドン!      

キンキンキンキン!



ボフォースからの薬莢が海中へ綺麗な放物線を描きながら消え

傾き始めた西日を受けきらきらと戦場に不釣合いな美しさを描き出し海中へ消えていく。



初月「ここは通さない!」



初月達防空艦達の対空砲火を浴び敵機が次々と火達磨になり消えていく。

だが、艦攻の役割は魚雷を投下し敵艦へぶつける事がその主目的である。

撃墜されたとしても魚雷を落せれば勝ちなのだ。

初月の対空砲火を浴びた敵機が、当たれば儲け、鼬のなんとやらとばかりに魚雷を投下した。



グラ「初月!魚雷が!」

初月「くそぅ!この方向はまずい!」



雷跡が提督達が乗る強襲揚陸艦へと走る。

が!



提督「当たらんよ。」



敵機から放たれた魚雷は強襲揚陸艦の左舷艦首先を駆け抜けていく。



提督「面舵30度。」



淡々と操舵指示を出す提督。

380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:22:36.62 ID:4HB+eitj0


大佐「魚雷が来る事も予想されていた……、

   というより射線を制限しているという方が正しそうですね。」

提督「あぁ、やはり分かりますか。」

大佐「自分の部下を完全に信用しているから出来る芸当とは思いますがそこまで部下に命を預けれますか。」

提督「流石に配られた手札で勝負せにゃならんですからね。

   いかさま無しの一発勝負となれば手前の手札をいかに有効活用するかですよ。」

大佐「成程。」



そして、机代わりのモニターに広がる数字を見て。



提督「敵の数がこちらの3.5倍は居るようですからね。打ち漏らしも出て当然と考えないといけませんよ。」

大佐「という事はこの艦が被雷、被弾することもあると言われる。」

提督「出来れば無いと願いたいですがね。まぁ、そこの所は神に祈りましょうや。」

大佐「神に祈るですか。」



これまでの用意周到振りを考えれば似つかわしくない言葉。



提督「たまには神様に仕事をしてもらわないと、

   いざという時に仕事の仕方を忘れていたじゃこちらが困りますからね。」

大佐「ははは。」

381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:25:11.77 ID:4HB+eitj0


再び海上



グラ「流石Admiral 魚雷が抜けることも考えて予め回避行動をとっていたか。」



そう、提督は上空の防空網にわざとに穴を開けていた。

全ては敵の攻撃機がそこの穴から攻撃を仕掛けてくる様に仕組む為に。

それは城にわざとに攻めやすい弱点を設けることで

敵の攻撃をそこへ集中させ守りやすくする篭城戦の基本戦術のようである。

だが。



初月「まるで僕が失敗をするのを見越していたようで癪にさわるな。」イラッ



決してそうではないのだが。



初月「これより全ての敵機は通さない!」

初月「全防空担当駆逐艦に編隊長初月の名において命ずる!」

初月「これより我ら修羅になる!敵機は一機残らず血祭りだ!」


382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:25:53.49 ID:4HB+eitj0


提督が艦を動かしたのは万一に備えての事であり決して初月達の能力を侮ったからではない。

しかし、この行動は初月のプライドを著しく傷つけた。

更に避けていなければ被雷していたという事実もその初月のプライドを傷つけるのに拍車をかけ、

より闘志を燃え上がらせる燃料となる。

だけに。



初月「そ こ だ ぁぁぁぁあぁあぁぁ !!!!!!」



ワルツを踊るように滑らかに駆け抜け機銃弾の薬莢、長10cm砲から上がる砲煙。

そして秋月型特有の白を基調とした制服は日が傾き橙色に染まる海上へ彩を添えた。



グラ「ほう、なかなかこれは。」



美しいものだなと声がでかかるが戦場という美と程遠い世界に居るものが

語るべきではないなと思い続く言葉を噤むグラーフ。

ポーン!



グラ「流石に数を頼みとする深海連中だけある。」



身に着けるウェラブルグラスには敵の編隊がまだまだ相当数いる事が表示されている。



グラ「とっ、2―D―02からのお客さんか……、これは瑞鳳のエリアだな。」



格闘王瑞鳳。



グラ「相手が哀れと言うかなんというか。」



狂気王瑞鳳。



グラ「Admiralが艦後方に位置する所に配置しているのはそういう事なのだろうな。」



瑞鳳の配置場所は米軍からの借り物でありゲストのサラトガの近く。



グラ「味方であれば心強いのではあるのだがいかんともなぁ。」



383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:27:36.32 ID:4HB+eitj0


瑞鳳常識無知也。



瑞鳳「んふふふん。」ヌチヌチヌチ



その少女はポールダンスを踊るストリッパーの様に体をくねらせ全身から歓喜の声を上げていた。



瑞鳳「あっ、駄目、溢れてきちゃう。」



戦場に長く身を置く事で常識感覚が欠如して戦闘狂になる兵士というのはよく居る。



瑞鳳「あっ、んっ、あっ。」



戦闘狂であれば御する事は容易い。

しかし本当に危険なのは狂っていながらも冷静さを併せ持つ相手。

88所属の瑞鳳はネームド制度が終った後に艦娘になった為二つ名持ちではない。

彼女は敵を殺すことに快楽を求め、

性的要求を満たす為に敵をさながら蟻を潰すかのごとく嬲り殺すことが好きだった。

その残虐性に一緒に出撃していた艦娘がPTSDを発症する事も珍しくなく、

敵を時間を掛け嬲り殺す事を最大の快感とし、

それを止めようとした味方艦娘を殺しかけた事が原因で此処に流されてきた。

そして、提督はそれを受け入れた、曰く。



「敵を確実に殺すんなら何も言わんよ。結果を出し続ける限りはお前の味方だ。」



今まで瑞鳳を狂っているとした鎮守府の無能達と違い彼は結果を出せばどうでもいいと、

瑞鳳に道端へ転がる石を見るような無関心とも言える冷たい視線をくれるだけだった。

それが瑞鳳にどういう印象を与えたのかは不明なのだが。


384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:28:51.66 ID:4HB+eitj0


瑞鳳「んっ、あっ、提督ぅ〜。」ビクビクッ



絶頂を向え暫しの余韻の後、改めて自己担当空域に迫る敵の数を確認する瑞鳳。



瑞鳳「んっ、さて、私の場所を守るためにも頑張らなきゃ。」ホウッ



お漏らしをした様に濡れた袴。

愛液が滴る指を振りその雫を飛ばした後、

彼女は意識を既に上空へ展開済みの自己艦載機群へと向ける。



瑞鳳「さぁてと……、徹底的に嬲り殺そうかぁ。」ニタリ



グロロロロロ

零戦のエンジン音が甲高くなり増速を始める。

敵機が進入してきている高度はやや低め。

高度にして6000m。

瑞鳳が使う、否、帝国海軍が様々な悲しい事情も含めて

終戦時まで主力として使用した零戦シリーズが得意とする高度である。

じゅるり。

待ちきれない。そして、来た。

敵機を見つけ、瑞鳳は今か今かと待ちわびる自己艦載機編隊に迎撃の指示を下した。

385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:30:47.59 ID:4HB+eitj0



「全機突撃じゃぁ  ―――――――― !!!」

「おはんら深海の蛸どは鬼ころ飯じゃぁ !!!」

「ちぇすとぉぉぉぉぉ ――――――― !!!」

「命(たま)置いてけやぁ ――――― !!!」



機体に色とりどりのペイントアート。

戦闘機の塗装は空に溶け込むもの、

あるいは海上の色に溶け込むものを使用するのが主なのだが。

その零戦の一団は機体全体に派手派手しく極彩色の塗装がされていた。

それら機体に乗る妖精達は使用者の瑞鳳が頭一つ跳び抜けて狂気を持っている影響もあってか狂気の塊。

しかし。

その空戦格闘技術はまぎれもない本物。



「貴様(きさん)しんどけやぁ ―――― !」



槍合わせの形になる正面からの突撃!

方向桿を操作し操縦桿を逆方向へ入れ機体を横滑りさせる!



「奪ったどぉ ――――― !」



横滑りしながら正面敵機を撃墜!

正面突撃を全力ですれ違った零戦の後ろをまた別の敵機が取った!

速度は悲しいかな零戦の方が遅くエンジン馬力も深海棲艦の最新鋭機と比べれば非力。

だが、瑞鳳航空隊の狂人妖精達には誰一人としてそれを不利とするものは居ない!

後ろを取られた瑞鳳隊の零戦が敵機から逃れるべく上昇を始めるがその後ろを敵機が猛追!

そして、上昇を続ける零戦は暫くすると急に失速し機体が左右に振れ始めた!

これは決して操縦を誤ったものではない、狙って行っている操縦である。

そう!零戦の運動性能だからこそ可能とされる戦技!



木の葉落とし である!



木の枝から葉っぱが地面へ落ちるように左右に大きく揺れながら動く為

その名が付けられた空戦機動戦技である!

失速した零戦を追い越した敵機の背後に付き直す零戦!



「ちぇすとおぉぉぉ ―――――――― !」



気合一声、敵機撃墜!

零戦の性能で垂直上昇時の失速は零戦の機体性能では起こり得ないともされるが

彼らはそれを無理やり、そう、道理を力で捻じ伏せる事で可能にしていた。

386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:32:00.32 ID:4HB+eitj0


「そこんお前(はん)!命置いてけやぁ ―――――― !」



視界の端に見えた敵機へ急降下をかけ撃墜。

敵機が撃墜され搭載燃料や弾薬に火がつき方々であがる艶やかな華。



「ここが戦場(いくさば)、命捨てがまるは今ぞ!」



狂人戦闘機集団。

搭乗員妖精は使用者である空母艦娘が撃沈されない限りは熟練度が落ちこそすれ同じ存在として黄泉還る。

だからこそ。



「はぁっはっはっは!共に黄泉路を逝きたもっそ!」



ぼうぼうと別の敵からの銃撃により機体から火の手があがる零戦。

建て直しが出来ないと判断するや手近の敵機へと突っ込み戦果を積みあげ、逝った。

彼らの思想はいたって単純明快。



「瑞鳳の姫御さえ残れば俺達が勝ちじゃぁ!」



そう、軽空母艦娘瑞鳳さえ残れば勝ち、大将さえ生き残れば勝ちなのだ。

であるからこそ、戦闘不能となれば敵機へ突っ込む事になんら躊躇いはない。



387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:33:32.40 ID:4HB+eitj0


深海空母機動艦隊



ヲ級F「あっ頭が狂ってやがる!」



気配、殺気や狂気に色があり目に見えるとしたらきっと丹とか真紅とか鈍錆とかだろう。

瑞鳳の艦戦部隊がとる狂人の戦い方は相手取る深海棲艦達を震撼させた。

まともな相手なら、武人として相手とれるなら戦う事も誉れになるだろうが。



ヲ級F「ひぃっ!笑いながら突っ込んで来る!」



自己管制下の艦載機に意識を乗せていれば特攻をかけてくる瑞鳳隊妖精の顔も見え、

その搭乗員妖精はひとり残らず狂喜の笑顔。

死ぬ事を喜びとする狂人のそれ。

自分の命を路傍の石程度にしか考えていない狂気のそれ。



ヲ級F「来るな来るな来るなぁ!!」



一機一機を細かく操縦している深海棲艦は艦載機から受ける情報は艦娘より多い。

その為、瑞鳳の艦戦隊から伝わってくる狂気は空母深海棲艦を恐慌へ駆り立てた。



「ん?ぼかっと動きが鈍なった?」(急に動きが鈍くなった?)



耐え切れなくなったヲ級が自己艦載機との意識の接続を切ったのだ。

先ほどまでの精細を欠けば精鋭狂人達の相手ではなく結果、

瑞鳳の受け持つエリアに侵入した敵艦載機は一機残らず撃墜された。



瑞鳳「ねーねー、グラたーん。瑞鳳の応援いりゅ?」エヘヘ

グラ「申し出はありがたいがそろそろ完全に日も落ちる。敵も一旦引き上げるだろう。」

グラ「となれば私達の艦載機も一旦収容する必要があるかと思う。」

瑞鳳「あっ、うん!そうだね!そうだよね!じゃぁ、夜間ハラスメントいきゅぅ?」

グラ「あぁ、エスコートさせていただこうか。」

瑞鳳「グラたんのそういう優しい所好きぃ〜!」



無線での可愛らしい(?)やり取り。

388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:34:42.43 ID:4HB+eitj0


強襲揚陸艦 艦橋内作戦司令室



提督「秋津洲。二式大艇は全部降ろしてくれ。」

秋津洲「いいの?」

提督「夜間警戒を考えれば欲しいところだが替えが効かない。」

提督「夜間の敵が見えない状況で落とされるほうが痛い。」

提督「夜間の警戒は外周のピケット連中とグラーフの夜間機に任せる。」

提督「明日に備え休んでくれ。」

秋津洲「了解かも!」



インカムを通してやり取りをする提督。



提督「不知火。ちょっと眠気覚ましに顔を洗ってくる。

   その間に被害状況を纏めておいてくれ。」

不知火「了解です。」

389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:35:45.95 ID:4HB+eitj0


艦内 士官用 個室



びちゃびちゃと吐瀉物を吐く音が室内に響く。



提督「なかなか。きついなぁ……。」フィ

「ねー。」

提督「なに勝手に入ってきてるんだ?」

「そろそろご飯の時間だからリクエストをと思ったっぴょーん。」

提督「何か見たか?」

「げーげー吐いてる汚いおっさんを見た。」

提督「見てたか。」

「うん。」

提督「他の連中には黙っていろよ?」

「指揮官が体調崩してるなんて吹聴して回るほど野暮じゃないよ。」

提督「…………、ちげぇよ。プレッシャーに弱いだけさ……。」

「プレッシャー?」

提督「あぁ、毎度の事だが鎮守府総勢を動かすとなるとな。敵もやはり強力だからな。」

提督「被害0なんて事はまず無理だ。」

「そんなものかなぁ?」

提督「誰も死なずに勝つなんてのは物語の中だけだ。」

提督「昨日まで一緒に飯食ってた間柄の奴が今日死ぬとかがざらだ。」

「繊細なのねぇ。」

提督「毎度毎度、胃がきりきりと痛むのさ。」

提督「俺の指示が一つ間違えば全員死ぬなんてのが有り得る。」

提督「傲岸不遜で通して行きたいがな。やはり不安なのさ……。」

「じゃぁ、夕飯は胃に優しいもの作ってあげるぴょん!」

提督「あぁ、頼む。」



吐いた物を洗い流し、口元を含め綺麗に顔を洗い、改めて気合を一つ。

そして、提督は艦橋へ再び戻ってきた。


390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:36:13.24 ID:4HB+eitj0


艦内 士官用 個室



びちゃびちゃと吐瀉物を吐く音が室内に響く。



提督「なかなか。きついなぁ……。」フィ

「ねー。」

提督「なに勝手に入ってきてるんだ?」

「そろそろご飯の時間だからリクエストをと思ったっぴょーん。」

提督「何か見たか?」

「げーげー吐いてる汚いおっさんを見た。」

提督「見てたか。」

「うん。」

提督「他の連中には黙っていろよ?」

「指揮官が体調崩してるなんて吹聴して回るほど野暮じゃないよ。」

提督「…………、ちげぇよ。プレッシャーに弱いだけさ……。」

「プレッシャー?」

提督「あぁ、毎度の事だが鎮守府総勢を動かすとなるとな。敵もやはり強力だからな。」

提督「被害0なんて事はまず無理だ。」

「そんなものかなぁ?」

提督「誰も死なずに勝つなんてのは物語の中だけだ。」

提督「昨日まで一緒に飯食ってた間柄の奴が今日死ぬとかがざらだ。」

「繊細なのねぇ。」

提督「毎度毎度、胃がきりきりと痛むのさ。」

提督「俺の指示が一つ間違えば全員死ぬなんてのが有り得る。」

提督「傲岸不遜で通して行きたいがな。やはり不安なのさ……。」

「じゃぁ、夕飯は胃に優しいもの作ってあげるぴょん!」

提督「あぁ、頼む。」



吐いた物を洗い流し、口元を含め綺麗に顔を洗い、改めて気合を一つ。

そして、提督は艦橋へ再び戻ってきた。


391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 00:37:21.36 ID:4HB+eitj0
また二重投稿やってしまった……
>>390は見なかった事にしてください
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:41:21.40 ID:4HB+eitj0

艦橋内 作戦司令室


提督「前半戦は終了だ。こっから先はブラフをいかに効かせるか勝負だ。」

提督「配られた手札は変えれねぇ。不知火。被害報告を頼む。」



気合を入れるかのような独り言を一つした後、不知火からの報告を受ける。



不知火「撃沈ですが外周ピケット担当艦の駆逐艦娘が4名。

防空担当艦に2名。空母艦載機艦戦隊の損耗が搭載機数の5割です。」

提督「グラーフ達以外が結構落とされた感じか。」



精鋭揃いといえど規格外はほんの一握り。



提督「存外、被害が少なく済んでいるな。」

大佐「流石ですね。」

提督「えぇ、ここまで少ないのは後の作戦も有利に運べますからね。」



「General!」



大佐と会話をしている所に指揮官としてのジェネラル呼びで提督を呼び出す声がする。

提督「指揮官の少将提督だ。サラトガか?どうした?緊急事態か?」



所属はあくまで米軍。

その為指揮権を一時的に借り受けている形の為階級での呼び出しをしてくるとしたら

サラトガかアイオワのどちらかだろう。

そして、タイミングがグラーフ達へ夜間ハラスメントを指示しようかとしてのタイミングだった為

サラトガかと推測したのだが、それは間違いではなかったようである。



「サラの子も参加させていただいて良いでしょうか?」

提督「?」

提督「夜間攻撃機を所持しているなら是非お願いしたいが……?」



F6F-5Nといった機材は米軍から日本海軍へも供与されている。

わざわざ使用許可を取るような物ではないはずと頭で考えれば目の前の大佐がやっちまったの表情。

ははぁ、成程。



提督「大佐、新鋭機をお持ちですか。」


しかも夜間攻撃へ移ろうかというタイミングでの申し出。となれば夜間攻撃機で間違いない。


大佐「すみませんね、隠す心算ではなかったのですが。」


新鋭機ともなれば同盟相手でも出来れば秘匿しておきたい物だ。

この狸め、と思いながらどんな新鋭機が出てくるのやらとはやる気持ちを押さえ訊ねる。
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:42:47.50 ID:4HB+eitj0


提督「サラトガは一体何を持ってきているのですかね?」

大佐「F7Fですよ。」



こいつぁ驚いたと提督が驚いた顔をして見せればしてやったりの大佐。

双発艦上戦闘機、それも夜間用とくれば3Nのレーダー強化型に違いない。

しかし、指揮権を借り受けているとは言え

秘匿しておきたい新鋭機をわざわざ自分に使用許可を求めてくる辺り……。

どうやら大佐も苦労してそうだと、なんとはなしに同情を禁じえない。



提督「うちにも是非、融通していただきたいものですな。」



明石のルートに出回ってないという事は完全に試作も試作。少数生産も良いとこの物。

何とは無しに明石の悔しがる顔が思い浮かぶ様である。




大佐「それは……、少将次第でしょうか?」



含むような言い方に言外の意図を悟る。



提督「休憩がてら甲板に出ますか。夜間攻撃はあくまで嫌がらせですからね。」

提督「グラーフ。」



レシーバーのスイッチを入れグラーフを呼び出す。


394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:43:55.02 ID:4HB+eitj0


グラ「Admiral、何か用かな?」

提督「夜間攻撃の指揮はお前に任せる。編隊の数が少ないから任せても大丈夫だろ?」

グラ「承知した。」

提督「頼む。」



提督から頼むといわれグラーフは瑞鳳隊の援護の為、自己艦戦隊の夜間攻撃機を上げる。



グラ「Adler隊は上空援護、Falke隊が下りてUhu(鷲ミミズク)隊があがってからだ。」



Uhu隊、その愛称を部隊名にそのままに艦載型へ無理やり改造した部隊。

He219改艦上型 双発夜間攻撃機であり機上レーダーを積んだ夜の愛し子。



グラ「さてと瑞鳳の方はどうであろうか?」

瑞鳳「大丈夫、彗星艦爆隊は準備万端なんだから!」



頭がおかしい狂人集団の中でも一際いっちゃってる搭乗員妖精が乗る艦爆隊。

彼らは夜間攻撃隊でありながら急降下爆撃もやるいかれ。



瑞鳳「がんがん殺っちゃうんだから!」

サラ「Hi ! Generalから許可をいただきました!サラの子も護衛しますね!」



といってもその武装は胴下パイロンに魚雷を一発抱える艦攻仕様でこちらも同じく殺る気まんまん。

血の気の多い姫達だとやれやれ感のグラーフ。

期せずしてここに独、日、米の夜間攻撃隊が揃い踏みとなった。

395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:45:29.28 ID:4HB+eitj0


強襲揚陸艦 甲板



提督「煙草を吸ってもいいですかね?」



相手からの承諾を得て手持ちの紙巻に火を点ける。

ふいと一息。



「それで 「まずはお話したいことが。」」



二人同時に話始め。どうぞどうぞと譲りあった後、提督から話が始った。



提督「米軍は私達からの応援要請がなくても自分達だけで出撃される心算だったんではないですかね?」



無言の肯定。



提督「うちの不知火がそちらに救援への援助打診をした後が早すぎたのが気になりましてな。」

提督「あらかじめ準備済みだったという気がしてならんのですよ。」

提督「それが悪いとか言うつもりは一切ありませんし

   寧ろ大助かりな現状をみれば何ゆえにそれを備えていたのかを伺えないですかね?」



暫しの間が空き。



大佐「成程、ペンタゴンの分析通りのお方のようですね。」



CIAではなくペンタゴンね。と心の中でごちる提督。



大佐「我々は現在救援に向っている拠点が敵に襲撃を受けていた事は事前に把握していました。」

大佐「ですが、そこはそちらの海軍の拠点であり我が国が同盟国であったとしても。」

提督「勝手に救援を派遣するのは侵略行為と他の国にとられかねないでしょうね。」



そう、仮に同盟相手が攻撃を受けていたとしても救援の要請が無い限り

勝手に動けばそれは内政干渉であり侵略行為の烙印を押されかねない。



大佐「我が国が攻撃を察知した時点でそちらの上層部、軍、政府双方へ

   外交ルート等を用いて救援の必要性を説いていたのですよ。」



はて?ならば何故軍令部が把握していなかった?

単純な疑問が思い浮かぶがそれの答えは提督が口に出す前に大佐が答えてくれる。

396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:46:44.52 ID:4HB+eitj0


大佐「我が国は少将提督の国の上層部に強い懸念を抱いています。」



成程、つまりはそういう事か。



提督「情報を止めた連中が居ると。それも思いもかけないような上の方に。」

提督「それでは、独自に私が救援に出ると言う話を持ちかけたのは渡りに船だったという事ですか。」

大佐「その通りです。因みに我々の方でも救援に向う上で日米合同の形を取りたかったですからね。

   その上で少将提督の鎮守府に出撃していただきたかったと言うのはあります。」

大佐「そして、今後を見据えて我が国の利益を守る為にも少将提督には協力者であって戴きたい。」



本題が来たかと思う提督。

そして、成程なと得心。

言葉の端々に大佐が同じ軍人でもエスタブリッシュの出身臭い教養を感じては居た。

米軍人としての出世コースの一つである潜水艦乗りとしての知識、

かと思えばミュージカル等の文化教養も備えている。

加えて自分より随分と若そうでありながら中将の補佐として観戦武官も勤め上げる。

397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:49:42.12 ID:4HB+eitj0


提督「質問ばかりでなんですが大佐はTIMEの表紙を飾られるおつもりですか?」

大佐「今ではなく4年後に。」

提督「州知事?上院議員?どちらの道を進まれるおつもりですか?」

大佐「はははは。少将提督は実に聡いお方だ。」

大佐「今後とも、どうぞ良しなに。」



質問への答えをはぐらかすように握手を求める手。だが、答えは既に出ている。


398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 00:50:46.99 ID:Cs8Z4y0/O
乙です。
更新されてないか毎日確認するのが日課になる程楽しみにしてました。 良かった〜

人間なんだからミス位しますよ、気にしない気にしない。


399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:51:52.17 ID:4HB+eitj0


提督「えぇ、今後とも宜しく。

それで今後も仲良くする為に教えていただきたいのですが

この船の乗員は海兵隊の者が多いようですが拠点救出後は制圧作戦でもするつもりなのですかね?」

大佐「必要とあらば。体つきで分かられましたか。」



同じ軍人でも特殊部隊員と一般機関員とではやはり色々違い、ろくでもねぇと思うが。



提督「何ゆえにかの理由をお教えいただけないですか?

まさか星を1つ増やす目的ではないでしょう?」

大佐「この救援作戦は南太平洋での潮目を変えるのは間違いないでしょう。」

大佐「南太平洋一の大国との航路が復活すれば資源や食料、その他色々の輸出入が活発化します。」

提督「パワーバランス、軍事ではなく経済の方での問題ですか。」

大佐「えぇ、我が国がこれからも優位を保ち続ける為に。」



えげつない。敵からの監禁が味方からの監視付監禁に変わるだけか。

とはいえ解放した後の海上航路の護衛を向こうが引き受けてくれると言うのなら利用しない手は無いだろう。

日本に余分を裂くだけの国力は無い。



提督「我が国の担当をきちんと同席させてケーキの配分にありつけさせていただけるんでしょうか?」

大佐「もちろんですよ。」

提督「公文書館に残る形でお願いしたいもんですね。」



口約束では困る。



大佐「決定権のある上に上申しておきましょう。」


ここまで準備出きる権限を与えら得ている人物の上。

恐らくはアメリカという国を一人称で語れる人物。

大佐の後ろ盾を垣間見たようで少し背筋に冷たいものを感じる。



大佐「余計な詮索はおよしくださいな。お互いの為にも。」



そういい残し大佐は艦内へと帰って行った。

深く、ちりちりと煙草が一気に燃え尽きるまで肺に煙を送り深く深く吐き出す。

そして、兎型の携帯灰皿で火を消す。



提督「予想以上にこっちの尻に火が付いている状況か。」

提督「ろくでもねぇ。」



吐き捨てるように呟くと提督もまた艦内へと戻っていった。


400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:59:58.55 ID:4HB+eitj0
レス数を抑える為に1レスに詰め込もうとすると改行のしすぎって怒られますのん……
今回の更新はこれにて終了です、当初の予定が大幅に狂っています、ごめんなさい、まだ結構続きそうです
計画性の無さが露呈していますが宜しければ今後もお付き合いいただけると幸いです。



次回嘘予告他

どこかの鎮守府

大淀「提督が死んでいる!」

明石「……、頭を鈍器で殴られたようですね。」

明石「これは…、南瓜?」

大淀「まさか!?」

涼月「てっ提督がわるいんですよ…。」

涼月「南瓜はもう飽きたって言われた提督が……。」

88鎮守府

提督「上官を撲殺。」

不知火「ですが対空に関しての戦績はなかなかのようです。」

提督「何が原因なんだ?」

不知火「痴情のもつれと書いてありますが。」

提督「困ったもんだ、まったく。」

こうしてまた問題児が一人地獄へ着任した。


Q1 グラーフの艦載機は最新鋭なのに何故瑞鳳の機体は零戦なんですか?

A  敵に体当たりして壊す事が多いのでその度に買い換えていたらお高くなる為コスパ優先だからです

Q2 サラトガの機体はどうしてF7Fなの?もっといい機体あるじゃん!

A 双発機のロマン優先です。
  またF8Fの夜間攻撃機もありますが調べている上で武装がロケット弾等になっていた為採用を見送りました


感想、応援レスいつもありがとうございます!いつも楽しみにしています!よかったら気軽にレス下さい!(レス乞食)
以上で本当に更新終了です、ではまた次回の更新でお会いしましょう!
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 01:04:54.18 ID:4HB+eitj0
エリア88モチーフなので空戦描写をどこかで入れたいと思ってやりました後悔はしてないです
燃え系のSS増えないですね、追っかけてた方のまた止まっているし……
増やす為にはまず自分からの意思もあり書き始めたものの別のところでやったほうがいいのかしら……
萌え系SSは多いのだけど、なぜでしょうねぇ……、ぐぬぬ
需要が少ないであろうSSにお付き合いいただいている皆様に改めての感謝です
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 11:43:01.59 ID:C719rEF5O
確かに燃え系は少ないねぇ
だからこそここを楽しみにしてるのもあるんだけど
あとうーちゃんに出番あって嬉しかったw

おつ!
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 11:58:55.93 ID:Cs8Z4y0/O
乙です。
萌え系が多いからこそ、この燃え系が際立ってます。

更新されてるのが嬉しくて、作者殿が投下してる時にコメ打ってしまい作者殿、読者の方々申し訳ありません。
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 16:50:15.79 ID:eFB3GoitO
グラーフの妖精さん達は、あの姿でこの会話をしているのだろうかw

ずほの妖精さん達は薩人マッシーンじゃないですかーやだー

戦場にいるシェフとかもうアレじゃん!
勝ち確じゃない!


とツッコミ満載で楽しかったです。
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 18:36:17.82 ID:QVQRpYBUO
だが待ってほしい。沈黙の戦艦だった場合乗ってる船が……
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 19:11:31.66 ID:Cs8Z4y0/O
405>>
あれはマズイ料理作るコックのおっちゃんだったからヘーキヘーキ
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 20:34:11.71 ID:q8mFYEtB0
空戦中エクスクラメーションマーク山盛りだったけどちょっと多すぎで熱くなるより軽くなってしまった感w

大佐の取り扱いは至難を極めそうだなあ、提督が目を離したらあっという間に内地に食い込んでいそう
乗りたくもない御輿に乗せられんように気をつけないと
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 22:07:28.93 ID:S7i/OmjHO
番外編でうーちゃんの1日が見たくなった
仕込み終わったら何してんだろね
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/31(火) 20:58:08.72 ID:i9bYQBct0
新谷世界にはファントムで木の葉落としやるイカレ自衛官がいたなそういや
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 09:59:36.89 ID:aKOmevrqO
薩人マッシーンが居るってことはだ。

筋肉モリモリマッチョマンの変態な妖精さんも居る可能性が?

セガールは鎮守府にいたし
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 12:51:41.83 ID:q/J8+Z29o
ちょっとエリアが違うと変態仮面もいるからなぁ
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/12(日) 09:09:35.72 ID:Rhs3aauG0
空母の夜戦のダメージだと夜間ハラスメントって良い表現かも
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/12(日) 23:56:04.74 ID:G/dalB0W0
夜になっても気温が落ちない……
毎日暑いですね、頭に話は浮かんでもなかなかアウトプットにまで時間が掛かる……
本日の更新に参りました、お時間宜しければお付き合い下さい
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/12(日) 23:57:54.04 ID:G/dalB0W0


強襲揚陸艦付近 海上



グラ「夜間攻撃に出ている部隊が敵と接触するまで少し時間があるか。」

グラ「サラトガに瑞鳳、よかったら珈琲はどうかな?」



無線での珈琲ブレイクのお誘いに二人がグラーフの元に集まる。



瑞鳳「流石グラたん。珈琲美味しいね!」

サラ「うぅ〜ん。実にperfectな味です。」



夜間攻撃隊を出しているのは3人だけであり

その管制を行う者が一箇所に固まるのは良くないのだが。



瑞鳳「南の海でも夜は少し冷えるね。」

グラ「ならば私のマントを貸そう。」

瑞鳳「やだ、グラたん。天然スケコマシなんだから…… /// 」

瑞鳳「そういう所愛してるぅ〜 /// 」ダキツキ



ポーン!



グラ「あぁ、ありがとう。さてと、とりあえず、

   此方の部隊が敵に届け物をするより先にお客さんがお越しのようだ。」

サラ「確かに、電探に機影が幾つか反応しているようですね。」



ウェラブルグラスに新たに表示される敵編隊襲来の報。

先遣隊と接触することなくどうやら上手くすれ違ったようである。

抱きついてきた瑞鳳を体から剥がしながらサラトガのほうに向き直る。



グラ「こちらに夜間攻撃機があるなら当然相手にもあると考えて当然であるな。」

サラ「でしたらサラにお任せいただけますか?」



ふわりとスカートの裾をたくし上げる。

415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:01:21.03 ID:tMhG3Ubb0


サラ「サラはお茶会を邪魔する不埒な深海棲艦を許しましょう。」



あら大胆と瑞鳳が感想を漏らす間に

スカートのドラムマガジンをトミーガンに模した射出装置に嵌める。



グラ(ほう、心が広いのだな。)



思ったよりまともなのかなとグラーフが感想を抱いて直ぐ後。



サラ「だが!このトミーガンが許すかなぁ!?」



憤怒の相をしたサラトガがサブマシンガンをぶっぱなし始める。



グラ  ブフォー 

瑞鳳  ブハー



サブマシンガン特有の弾のばら撒きが始まり強烈な音が

けたたましく空間に響き渡り艦載機が顕現し夜空へと消えていった。



サラトガ「ふぅ〜、快感 /// 」



一仕事やりとげた。そんな晴れやかな顔を見せるサラトガ。

夜の闇にF6F-5Nが舞い上がり溶け込み消えていく。

暫くすれば仕事をきちんとこなしているのか方々で火の手が上がるのが見える。



グラ「ふむ、私の部隊とスコア勝負をしようというのか。面白い。」

グラ「見せてもらおうか。合衆国の夜間攻撃機の性能とやらを!」



どうやら艦隊の上空警戒として先に上がっていたグラーフの夜間戦闘機と

サラトガの夜間戦闘機の搭乗員同士無線での会話で撃墜数勝負をする事が決まった様である。

しかして30分もすれば勝敗が決まる。



サラ「Oh My God …… 」

グラ ンフ― (ドヤッ)

416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:01:46.76 ID:tMhG3Ubb0


このドイツ人!新人への容赦なし!



グラ「さてと、勝負であったからな。」



ずいと差し出すのは手袋を嵌めた両手。



サラ「これを差し上げたのは内緒にしてくださいね。」

グラ「勿論だ。」ンフー



勝負に勝ったグラーフはサラトガから夜間戦闘機F6F-5Nをカツアゲ、

ではなく善意で1機、コレクション目的で受取っていた。

417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:05:58.72 ID:tMhG3Ubb0


グラーフ達が迎撃に当たっていたその頃、

提督は艦内でせわしなく作業をしている明石を見つけ色々打ち合わせを小声で行っていた。



明石「流石アメリカ級ですね。

   艦内に手術室やらまぁ、まぁ、色々充実してますよ。」

提督「ワスプ級の拡大発展型だからな。その辺も数は増えているだろうさ。」

明石「キッチンがちょっとしょぼいと感想も聞きましたけどね。」

提督「あいつは料理……、そうだな料理が生きがいだからな。」

明石「たまに料理に違う意味も混じってきますがそれは置いておきましょう。」

明石「ところで提督はどういった御用ですか?」

提督「分かっているんだろ?俺はこいつの簡易ドックのシステムが欲しい。」

提督「データとして持って帰れそうか?」

明石「流石に提督は悪ですねぇ。御参考にどう使うか教えていただけます?」

提督「コンテナモジュール化できないかなと思っているんだ。」

明石「ははぁ、成程。」



提督の考えはこうだ。簡易入渠施設を海上輸送に使用される

12フィートコンテナに納まるように改造、

ひとつのユニットとして独立させるという物である。

コンテナという規格の中に押し込めることで簡単に運搬、展開が出来るようになる。

こうする事で貨物タンカーや鉄道貨物、あるいはトラックに載せて海上、陸上。

場合によっては貨物輸送機からの現地への投下。

すばやく艦娘を展開する為に必要不可欠な修理施設を設置可能になるという考えなのだ。



提督「コンテナでモジュール化しておけば

   貨物タンカーが移動鎮守府として使えなくもないだろ?」ニヤリ

明石「提督の考えはどちらかというと見た目の偽装に重きが置かれているようですがね。」ニヤ

提督「お前には敵わねぇな。」

明石「付き合いが長いですからね。」

提督「じゃぁ、まぁ、そういう訳だ。頼むよ、あぁ、それから飯について何か聞かれたら

   あいつには艦橋に持ってきてくれと伝えておいてくれ。」

提督「あとな、他にもぶっこ抜いてるデータ、ばれない様にしとけよ?」

明石「勿論ですとも。」



去り行き際に小声で注意する提督に同じく小声で返す明石。

悪巧みは計画的かつ内密にという奴なのである。


418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:09:02.64 ID:tMhG3Ubb0
艦内をぐるりと色々見て回って後。

提督は艦橋にある作戦司令室へと帰って来た。



提督「いやぁ、休憩ついでに物見遊山とばかりに
   
   艦内を散歩してきたのでお待たせしました。」

大佐「いえいえ。私のほうは先に夕餉をいただいていますよ。」

大佐「実に腕前のいいコックをお持ちですね。」

提督「料理の質は士気に直結しますからね。」

不知火「司令。グラーフさんから此方に襲撃をかけてきていた

    敵夜間攻撃隊の迎撃を完了したとの報告が来ています。」

提督「敵に追加を出す余裕は無いだろうが一応第二陣、第三陣の可能性もあるから

   気を引き締めて引き続き警戒に当たるよう指示を出してくれ。」

提督「防空担当連中はどうだ?」

不知火「現時点での追加の撃沈は出ていません。

    また、長門さんを始めとする別働隊には出撃をしていただきました。」

不知火「他にも再度の補給が必要だった娘達には補給をすませ

    夜間のうちに交代で休憩に入らせています。」

提督「敵の機動部隊との接触は?」

不知火「現在の速度のままですと明朝、夜明けと同時くらいです。」

提督「払暁戦か。」



日の出、日の入りの時間というのは敵味方双方の判別がしにくくなる為本来は避けるのが定石。

当然ながら提督達所属の艦娘や使用艦載機に敵味方判別装置を積んではいるものの

空母艦載機は発着艦はしにくくなったり艦娘は視認性が落ちるなど積極的に仕掛けるべき時間帯ではないのだ。



提督「グラーフ達の夜間攻撃隊がどれくらい嫌がらせを出来るかが重要そうだな。」

大佐「夜間ハラスメントですか。」

提督「その重要性についてはお国でしたらお心辺りがあるのでは?」



ベトナム戦争時、ベトナム兵狙撃手による連日の夜間襲撃に業を煮やした米軍が

山一つを大量の軽機関砲に対空砲で禿げ山にしたのは軍事界隈では有名なお話。



大佐「眠らさせてもらえないというのは判断能力が落ちますから。」



苦笑しながら返事を返す大佐。



大佐「私どものサラトガも仕事をしてくれるでしょう。」

大佐「それに期待する事にしましょう。」

提督「ですな。」

提督「で、敵の機動部隊を叩いた後の話なのですが、敵の物資集積所。」

提督「デポを叩く方を優先します。」

大佐「敵の糧道を断つのは戦争を行う上での初歩ですしね。」


419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:11:20.23 ID:tMhG3Ubb0


再び強襲揚陸艦付近 海上



グラ「さてと、そろそろか……。」



機上レーダーが敵の艦隊郡を捉え巡航高度から

一気に敵艦隊に向け高度を下げ始める夜間攻撃隊。



グラ「サラトガ、一番槍は譲ろう。盛大に花火をあげてくれ。」



3人の夜間攻撃隊は艦攻、艦爆、艦戦の役割分担。

蝿叩きがグラーフの仕事ならば。



サラ「Okey−dokey  まずは、定石どおり外周から、ですね!」



野戦攻城、蟻の一穴。

艦隊布陣を城に見立てるのであれば

城の本丸に陣取る大将とその護衛を引き吊りださねばならず。

城に籠もられていては倒せない。

その為にも外堀、石垣に相当する外側を突き崩し。

野戦に持ち込まないといけないのだ。



グラ「敵に祈る神が居るとすれば祈る時間が来たようだな。」



敵艦隊上空に展開する夜間警戒機を叩き落しながらグラーフがポツリ。



サラ「No、深海棲艦達の神は留守です!」

グラ「?」

瑞鳳「?」

サラ「休暇を取ってベガスに行っていますから。」フフン

得意げにドヤ顔をするサラトガ。

グラ「成程、それは痛快だな!」

瑞鳳「うふふ。瑞鳳艦爆隊、がんばっちゃうんだから!」



グラーフ達の夜間攻撃は徹底して外側のみに集中して行われた。

陣形内側にまで浸透攻撃をする必要性は零だから。

嫌がらせ、ハラスメントは敵の神経を逆撫でする事に意味がある。


420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:17:07.85 ID:tMhG3Ubb0


深海機動艦隊



駆逐「くそう!陣形外側の駆逐ばかり!」

駆逐「いや、駆逐だけを狙って?」

駆逐「そんな!いや、これは明らかに駆逐のみを狙っている!」



駆逐艦という艦種は一番使い捨てになりやすいが実の所、

一番数が居ないと駄目な艦種でもある。

数が多いが故に多少の損害も甘く見られがちだが……。

補充が利きにくい状態での損害は致命傷となり易い。



駆逐「敵の攻撃は一方向に集中されている…。」



輪形陣内の空母達で夜間攻撃可能な者達に迎撃に向わせるも。



駆逐「逃げられた!?」



蝶のように舞い、蜂のように刺す。

その嫌がらせはヒットアンドアウェーの徹底。



瑞鳳「盆の迎えに、ちょいと早いが、迎え火一つ、点けましょう〜♪」



軽い鼻歌、それこそ近所のコンビニへ買い物にでも行くような気楽さで指示を出す瑞鳳。

この瑞鳳が敵にとって最悪なのは

サラトガ隊の魚雷が当り火が灯れば損害無視の艦爆隊を突っ込ませる事。



駆逐「外周のナ級達が……!」



そして。



駆逐「うっ、眩しい!」



嫌がらせとばかりに落とされる照明弾。

夜の暗さに慣れてきている所に照明弾の強烈な光は目に刺さり、

同じくついでで音響爆弾も落としていく周到さ。



駆逐「味方同士での砲撃は止めろ!」



どんどんと響く音をすわ敵からの砲撃かと

勘違いした愚か者が音のするほうへと砲撃を開始する始末。
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:17:35.31 ID:tMhG3Ubb0


駆逐「おのれ!おのれぇ!!」



波状攻撃での嫌がらせは自分達への物理的被害は少ないが。



駆逐「艦隊全艦は敵の再度の夜間襲撃に備えろ!」



残存艦全てに指示を飛ばし緊張を持って夜間警戒に当らせる駆逐棲姫。

夜間攻撃に対して予め備えており警戒はさせるものの交代で休憩をさせる事の出来た提督達と

艦隊全艦で休憩を入れる事無く敵からの再襲撃に備えた深海棲艦達。

その差が出るのはもう、間もなくである。
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:19:12.76 ID:tMhG3Ubb0


提督達が駆逐棲姫達の機動艦隊へ向け針路を取っていた丁度その頃。

また幾つかの部隊が海上を夜陰に紛れ移動をしていた。



時雨「ねぇ長門。」

長門「どうした?」

時雨「ゴーヤ達の報告を考慮して

   敵の機動艦隊指揮官は何人くらい残っているかな?」

長門「そうさな提督達が向っている機動艦隊については少なくとも1名。」

長門「多く見積もっても2名ほどだろうさ。」

川内「そんなものなの?意外に少ないんだね。」

長門「あぁ、敵の攻撃パターンからいって

   あまり機動艦隊に置ける艦載機の扱いになれていない節がみてとれたからな。」

長門「敵が指揮艦へ攻撃を仕掛ける際の攻撃が3方向からだった。」

長門「外周配置のレーダピケット艦……、本来のレーダーピケット戦術とは違うんだがな。」

長門「まぁ、とりあえずでの問題ではない、電探での早期警戒艦と思ってくれ。」

長門「艦隊の頭脳をやるつもりなら処理負担を増大させ

   処理落ちさせるのが教本通りでの攻め方になる。」

時雨「そうなんだ。」

長門「あぁ、戦術的な話をするのであれば艦隊の目を潰すのが最優先だ。」

摩耶「確かに敵の偵察機やら電探持ちを落すのは重要だもんな!」

423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:21:10.44 ID:tMhG3Ubb0


長門「それを考慮すれば敵がとるべき攻撃は一方向に飽和攻撃をしかけ

   一点突破を目指すやり方が正解だったんだ。」

時雨「でも、それを取らなかったんだね。」

瑞鶴「だから機動艦隊の指揮に慣れていないものが指揮官であると判断できたわけね。」

長門「そういうことだ。」

瑞鶴「じゃぁさ、なんで最大で2名なの?」

長門「それはこの周辺海域の状況からの話から説明しないといけないな。」

川内「結構面倒そうだね。」

長門「まぁ、聞いてくれ。

   今回敵が割ける指揮官クラスの人員としては前線から後方支援まで考えても最大10名ほどだ。」

長門「これ以上を割くと他の戦線の支障が出るギリギリだな。」

長門「その中で前線に遅滞なく物資を送る補給線の構築を考えると

   最低で2名以上は集積地の拠点守備に回さなければならない事、

   前線での攻撃と攻撃地点以外の各鎮守府への牽制に必要な人数を考えていけばだ。」

長門「機動艦隊にまわせる指揮官クラスは2名から3名。

   その内の1人についてはゴーヤ達が仕留めている為、

   最大2名と結論づける事が可能という訳だ。」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:22:57.84 ID:tMhG3Ubb0


時雨「流石だね。」

時雨「それで、今、僕らが向っているのは?」

長門「大小幾つかあるなかで

   敵にとってやられると痛いであろう集積所だ。」

摩耶「でもまぁ、本当にあるのかねぇ。」

長門「この周辺の海域図と以前から掴んでいる敵泊地に拠点。」

長門「それらから割り出した凡そこの辺りにあるだろうでの位置だからな。」

長門「我々の部隊かウォースパイト達の部隊のどちらかが壊滅させればいいさ。」

摩耶「まっ、私としちゃ出番があればそれでいいけどさ。」

瑞鶴「島風の死を無駄にしないためにも派手に暴れてやろうじゃない!」

長門「提督曰く、敵の退き口を潰す為の布陣だそうだ。」

時雨「相変わらず提督の考えはえぐいや。」

川内「まぁ、敗軍の将っていうのは必ず討ち取るべきだからね。」

時雨「そうだね。」

川内「負けた相手を逃がせば相手は臥薪嘗胆の思いで復讐に帰ってくる。」

川内「それも前回の負けを己の糧として一回り強くなって帰ってくる。」

摩耶「あぁ、そうだね。そいつだけはいただけない。」

瑞鶴「負けは人を強くするもんね。負けを知らない奴はここぞという時が弱い。」

瑞鶴「ぎりぎりの戦いをする上でそういう心が弱い娘とは組みたくないわ。」

長門「同感だ。まぁ、ここに居る者達には心配はないと思うがな。」

長門「我らを送り出した提督はなんと言ったって人生の負け組みだからな。」

時雨「それは本当かい?」

長門「あぁ、勿論だ。でなければ88鎮守府の提督なんかやっていないだろうさ。」

川内「じゃぁ、敗北の味を知っている提督が指揮を執る私達が勝つというの当然かー。」

摩耶「まっ、そうだろうさ。」



ここで一同大笑い。



長門「天国の扉は開いた。」

長門「後は我々が階段を上らせてやるだけだ。」

瑞鶴「ふふふ。良いわね。それ実にいいわ!」

長門「全員、気を引き締めて掛かるぞ!」



応とその場に居た者達が全員が応じる。

この戦いにおける天王山の訪れはもう間もなくである。


425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 00:29:07.01 ID:tMhG3Ubb0
本日の更新はここまで
次回から話のタイトルが変わります、といっても単なる続きに繋がるだけですが…
後編が長く無計画に続いちゃっているので仕切りなおすべくタイトルだけ変更
次回から天国の階段編へとつながります、尚、雪風はウォースパイト、北上、ポーラ組みと行動しております
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、色々勉強になるレスも頂く事があり感謝です
空中格闘戦の部分が空回っていたとのレス、申訳ありませんでした
量を減らすべきだったかと頂いたレスを見直して反省です
関係ないですが、点滴を受けている間の時間って何も出来ないで暇ですね
皆様、体調にお気をつけください、以下、もう少しだけ瑞鳳を採用するか隼鷹を採用するかで迷っていた際に書いた
隼鷹の艦載機発艦シーンのみを投稿させていただきます、ここまでお読み頂きありがとうございました
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 00:34:51.11 ID:tMhG3Ubb0

酒瓶に口をつけ、くぴりと一口。

肺活量を活かし全開噴射。

あたりに酒精の香りが漂う中。

軽空母隼鷹はばさりと音を立て一巻の巻物を豪快かつ手荒に広げた。



隼鷹「剛気詔(ごうきみことのり)!」

隼鷹「黄泉の国の国主、洗鼻神、建速須佐之男命の名において召還す!」

隼鷹「黄泉より英霊、今、舞い戻り我が兵となり敵をニライカナイへ案内(あない)せよ!」

隼鷹「一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部、布留部 由良由良止 布留部」

隼鷹「勅命! 英霊召還 急急如律令!」



死者蘇生の詔。

酒で場を簡易的に清め召還術式の発動。

陰陽師型軽空母の発艦儀式。

ぽうと巻物に挟まれていた人型に切られた式神が光り始める。

詔をあげる必要性から少し発艦に時間は掛かるが。

読み終えてしまえば一度に全機発艦が可能となる。



隼鷹「全機! 発艦!」



轟と一度に全機が上がる様は正しく圧巻。



隼鷹「何度やってもこの瞬間はたまんないねぇ。ヒャッハァー!」



彼女もまた、88鎮守府の特色ある一人なのである。



※途中の言上は布瑠の言(ふるのこと)をそのまま使用しています
 読みとしては ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ
 中二漫画で巫女さんが割とよく使う詔でお馴染みでしょうか?

格好いい隼鷹さんを演出したかった形になります、以上ボツネタでした。
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 01:52:01.05 ID:/FA5Tqqu0
陰陽道寄りの古神道か
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/16(木) 20:16:17.79 ID:eBmgxYMsO
続きを待ち焦がれるss です。
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/17(金) 10:32:11.95 ID:4/sjaTWnO
九字で召喚する艦娘も居るんだろうか
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:33:31.85 ID:5tYPiHSO0
Html化で海域リセット!皆様、どこまで再解放されていますでしょうか?
やっとさ6-4まで辿り着きましたが相変わらずの糞さ加減にストレスマッハでございます
秋津洲は鬼回避するのになにお前さん達はなに大破してるんですかねぇ……、とイライラしだしたら止め時……
左ルートはCマスが鬼門かつお祈りポイント、仕方ないです
では、久しぶりの更新をさせていただきます
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:37:08.94 ID:5tYPiHSO0


おまけ日常編  とある料理長のお品書き




「うし、夜間の人達への引継ぎ分の仕込みも終了。」

「さぁてと、今日は露助リクエストの食材を買いに市場へいきますかねぇ。」



パンと糊の利いたエプロンを叩き、着替えを終えると明石達の工廠へ。



明石「あっ、こんにちは。今からですか?」

「うん、司令に許可貰ってるからね。市場に買出し。」

秋津洲「預かっていた包丁の研ぎなおしも終わってるかも!」

「自分で研いでいてもやっぱり何回かに一回は研ぎなおしにださないと切れ味が落ちるからね。」

「見せてもらっても?」

秋津洲が店の奥からいかにも業務用といった包丁を数本抱えてやってくる。

秋津洲「切れ味はこんなだよ!」



ぷつりと自分の銀髪を一本抜いた後、ふっと風に乗せる秋津洲。

その髪は風にのり包丁の刃先に当った髪は抵抗なくさっくりと二つに切れた。



「いい仕上がりだね。」

明石「この包丁で斬られた人は斬られた事に気付かない事を保障しますよ。」



その切れ味、名刀級。



「市場で持ち歩くわけには行かないからね。買出しからの帰りに受取るよ。」

秋津洲「よろしくかも!」



そして、分かれた後、拠点から少し離れた所にある巨大な市場のある島へ。

432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:39:24.73 ID:5tYPiHSO0

雪風「護衛、いります?」

「まー、司令官が付けとけって言うからさ。」



脱走を危惧という訳ではなく行方不明を危惧してである。

脱走は無い訳では無いが脱走は確定と同時に高額賞金首へ変貌。

それもあり、艦娘によっては作戦中にわざと隙を見せ

懲役組みの脱走を誘発する者もいたりとなかなか闇が深い。

そして、行方不明というのも作戦中に脱走ではない原因で消える事もあるという事なのだ。



「まー、艦娘やめているとはいえ私ってば、か弱い乙女だからさ。」

雪風「よくいいますよ。」



見た目こそ少し成長した中学生くらいの少女とその妹らしき雪風。

ただ、危険度は歩く核弾頭。



「雪風はこういうのどうなの?」



雑多とした市場ならではの衣類のまとめ売りダンボール箱の中からぴらりと見せる女性物下着。



雪風 ブフォォォーッ



なんだ、その反応、乙女か。



雪風「ゆっ、ゆきかぜにはまだ、早いと思います……。」



顔を真っ赤にし手で顔を覆いちらちらとこっちを見る雪風。

ちくせう、萌え死にさせる気か。



「でも、司令官ってこういうの好きそうだよね。なんかむっつり系なエロ?」

店主A「それなら箱1つで10ドルだよ?」



超安値。



雪風「10……、10ドルですか……。」ムムッ



鎮守府の定期便で足りない物を買いに来ることもあれば。

休暇中の艦娘が複数人数で相互監視のもと、市場に訪れる事もある。

あるいは、作戦が終わっての帰りに市場の露店で一杯と割と自由でもある。

ついでに言えば周辺海域の治安維持も88鎮守府が担っているといった

様々な事情も有り市場の人達とは大体が顔見知りでもある。

その為か気さくに声をかけられることも多い。


433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:40:03.36 ID:5tYPiHSO0

「結構安いのね。」



セクシーランジェリーの部類になるのだが予想外の安さ。

10ドルという言葉を呪文のようにぶつぶつと繰り返す雪風。



「これは童貞殺し。」



いわゆるタンキニという奴が箱から覗いていたので引っ張り出し雪風の眼前にちらり。



雪風 ブフォ ――― ッ



なるほど、戦場の鬼神と言われる雪風にも弱点はあるようだ。

少し意地悪をしてみたくなるのも性という奴である。



「こんなのどうよ?」

雪風「あっ、それは天津風さんが着用しているのを見たことあります。」



Vストリングなのだが、まじか、あの痴女。



雪風「随分前に所属していた所での話ですが。

   上官であるしれぇが強要していたんですよ。」

「あぁ……。」

雪風「当時の雪風に今ほどの力があれば事故死して貰っていたんでしょうけれどね。」



ちょっと嫌なことを思い出させてしまったらしい。

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