【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:18:31.53 ID:voPzULVm0
皆様こんばんは
こっそりと更新に来ました
今回の更新部分は艦これ二次SSではあんまり語られない?世界情勢というかその辺りが少し
エリア88ベースである以上触れずにいる事が出来ないわけで……
読み飛ばしていただいてもそれ程問題はないかな?
では、お時間よろしければ本日の更新にお付き合いいただきますようお願い申し上げます
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:21:23.49 ID:voPzULVm0

悲痛な叫び声が響く。

今まで彼女と同行した者がいたとすれば

恐らく初めてと言えるかもしれない叫び声。



雪風「あぅぅぅ!」



とっさで重巡棲姫とポーラの間に割って入った雪風が

その体に全ての衝撃を受け吹き飛ぶ。

いかに改装を重ね装甲を増しているとは言えその装甲はあくまで駆逐艦。

ポーラを守った事により雪風はあっさりと大破した。


雪風「……、涼しくなってしまいました。」イテテ

ポーラ「雪風!?」

雪風「雪風はいいワインを所望します。」ニマァ



大破ながらにまだ余裕の有り気な雪風。



ポーラ「……、Si、戻ったらバローロの当たり年を開けましょう!」



明るく応じるポーラを確認し。



雪風「第一分遣隊総員傾注!」



一匹の獣として敵拠点を屠りつつあった部隊の全員に聴こえるように連絡。



雪風「旗艦雪風大破の為、旗艦権限を戦艦ウォースパイトへ移譲します!」

スパ「うぇぇぇ!?」

雪風「ウォースパイトさん、あとは任せましたよ。」

雪風「雪風は後方へ下がります。」

北上「やー、これは責任重大だねぇ。まぁ、私は二人を曳航して下がるからー。」

北上「がんばってね。」ニヤニヤ



そして、ウォースパイトへの個人無線へ雪風が一言。



雪風「島風さんの無念晴らしてきて下さい。」

雪風「雪風は一旦後方へ下がります。」

スパ「えっ、でも雪姉さん!?自分でいいんですか?!」

雪風「雛が巣立って鷲になるのを見せて下さいな。」

雪風「しれぇから説明を受けた作戦、Operation Woodpecker (きつつき作戦) 」

雪風「成功に導いてくださいよ?」



プレッシャーとも期待の一言ともとれる言葉をつげ雪風達は海域を離脱した。
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:22:43.82 ID:voPzULVm0

強襲揚陸艦内



不知火「司令。雪風からの連絡で大破の為後方へ下がるとの事です。」

不知火「旗艦はウォースパイトさんへ引き継ぐと。」

提督「珍しいな。雪風が大破するとは。」

不知火「此方に向け同じく大破されたポーラさんと向って来ています。」

提督「ポーラも大破か。」

不知火「はい。大破については2名だけだそうです。」

提督「第一分遣隊の状況は?」

不知火「敵拠点の破壊、旗艦の排除に成功、ウォースパイトさんの指示の元、

    第二分遣隊との集合地点めざし艦隊の再編成を行っています。」

不知火「また、残敵追討についてはリスク考慮の上で不要判断をウォースパイトさんが下しています。」

提督「うん。及第点だ。状況完了までの時間は?」

不知火「完了まで後2時間程を予定と報告がありました。」

提督「そうか。長門達の方の状況も確認してくれ。タイミングが大事だからな。」



さも当然、想定内といわんばかりに淡々と確認作業を行う提督。

そして、それに従う不知火。

艦橋内の海図を再度見つめなおし、ふんと鼻をならした所に大佐が話しかけてきた。

506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:29:41.89 ID:voPzULVm0

大佐「少将、その?」

提督「どうなさいました?」



その顔は大丈夫なの?とでも言いたげ。



大佐「そちらの鎮守府に所属の雪風といいますと

    Queen of Heartsだったと思うのですが?」

提督「ハートの女王ですか。随分なコードネームが割り振られているもんですな。」

大佐「そちらの登録名は死神や生還者だったと思うのですが。」

提督「えぇ、それなら間違いなくそうですが。」



それがどうした?



大佐「そちらの鎮守府において相当な戦力と認識しているのですが。」

提督「英雄を頼みとして作戦立てをする程おろかじゃないですよ。」

提督「戦力としてみた時に一人ひとりの能力が高いという事は実に重要ではありますが。」

大佐「英雄頼みになるような戦場は既に劣勢であるという基本ですね。」

提督「おっしゃる通りです。

   一人の英雄が戦況を左右するような事というのは正直いいとは言いがたいですね。」

提督「戦争というのはいかに標準規格の兵士と物資を

   いかに効率よく消費と配置で勝つかが重要ですので。」

大佐「確かに英雄は所謂『 規格外 』になってしまいますね。」

提督「私が率いている連中が一般鎮守府の理の外にある事は自覚しています。」

提督「ですが、それを頼みとしての作戦の立案は後に繋がらない。」

大佐「少将はその後の事もお考えと。」

提督「そうです。我々は此処に常駐する軍ではないですからね。」

提督「今いる連中で後の対処も出来るように見本を見せないといけないわけです。」

提督「持てる力全てで相手を叩き潰しますが、

   一般兵レベルでも倒せるというやり方を覚えてもらわにゃならんのです。」ハァ



言外に出さぬ現上層部、そして味方である正規軍連中への不満。

まさしく自分の部下達を独楽鼠の如く北へ南へと

動かざるを得ない状況を溜息と共に吐き出したのだった。

そして、それは同盟軍であり本来の太平洋の盟主である米国。

目の前の相手への不満でもある。

だけに大佐が述べた質問はある種のカウンターパンチであり不意打ちだった。

507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:31:58.34 ID:voPzULVm0

大佐「時に話は変わりますが、

   そちらに英国王室の血を引かれる方がいらっしゃいませんか?」

提督「!?」

大佐「そのお方は次期国王陛下としても家柄、血筋、序列が申し分ない。」

大佐「実に次期国王として相応しいと思いませんか?」



少しばかりの沈黙。



提督「……。」

提督「その様な高貴な出自の艦娘がいるかどうかは分かりかねます。」



正しく後頭部をハンマーで殴られた衝撃。

普段の提督であれば質問の意図を考える為に思考を巡らせられたであろう。

だが、内容がまったくの不意打ちだっただけに

考えるのが一瞬遅れ動揺したのが顔に出てしまった。



大佐「初めに御紹介いただいたように表情を隠せない方のようだ。」

大佐「 『 艦娘 』とは私は一言も言ってはいませんよ?」

提督「!!」



動揺したが故の失言。



大佐「我が国は大西洋戦線における現英国政府を見捨てる選択をとろうとしています。」



あっさりと質問をした理由を述べ、人懐っこくニコニコとした顔で提督の顔を覗きこむ大佐。

508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:33:37.84 ID:voPzULVm0

提督「……、その、どうしてそのような?」



鏡があれば映る顔は引き攣った顔なのは間違いないだろう。



大佐「お教えしたいのはやまやまですが宜しいのですか?」

提督「…………。」



先ほどから我が国を強調する大佐。これはつまり個人で国を代表できる人物。

米国大統領が関わっている、それもアフリカや中南米の後進国の国家転覆等ではなく。

先進国、それも国連での五大常任理事国の一国を紐付きにしようという謀略。

その話しを聞くのは正しくパンドラの箱を開けるが如しであり底に希望は残らない。

だが、提督は既に、そう、うっかりと決定がされた理由を尋ねてしまった。

これは見ようによっては協力はしないが容認はすると言っている様なものである。

さらに提督の失態が有るとすれば

初めに英国王室関係者、王族がいる事を強く否定しなかった事。

そればかりかうっかりと艦娘にそれがいると言ってしまった事。

これは以前に明石との会話でも漏らしたように何某かの切り札になるかもしれないと、

面倒ではあるが使い方によっては強力な毒にも薬にもなる代物と判断していたという背景がある。

その所為で大佐に匿っているという情報を与え、

その出自を把握している事を自白したも同然なのである。

そして、続いた衝撃の計画。

初めに鍵を握っている人物が自分の手元にいる事を仄めかしてしまった為にその計画を阻止すればどうなるか。

そして、阻止できない事を提督程の人物ともなれば理解が出来ない訳ではない。

ゆえに、積極的に協力は出来ないとなれば消極的に何もしないという選択肢しか残らないのだ。

つまりは沈黙と黙認、ということである。それを理解し、大佐が言葉を続ける。


509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:35:45.02 ID:voPzULVm0

大佐「考えられているほどに最悪の事態ではありません。」

大佐「我が国はあくまで現英国政府が

   信用の置ける友好的政府へ交代していただきたいだけですよ。」



それは、つまり、現政府は信用に値しないという事。それも政権交代を考えるほどに。

でも、どうやって?



大佐「現女王陛下は高齢で公務を全て代理の方が行われている状況です。」

大佐「新国王の即位は英国民が望んでいる状態でもあります。」



話が見えてきた。国王が変われば国璽も変わる。

英国政府の公文書に押される印は殆どが当代国王の戴冠する姿を表した国璽である。

つまりは現女王から印を預かる大法官を含めて英国政府の一部、

或いは全部が勝手に印を押し国家を正しく我が物としている。

大法官の任務は庶民院からの議員が選ばれなくはないが

慣習として貴族の有力者が選ばれ、そして大臣としての権能は法務に関わる。

地味ではあるがその役割は意外と大きく、なにより英国を体現する貴族社会の有力者のみがなりえる仕事。



大佐「新国王への忠誠を盾に英国貴族達を割る予定です。」



それは今までの国璽が変わるという事実をつきつけ

敵か味方かの踏み絵を貴族たちへ迫るという事でも有る。

議会と貴族社会に睨みの利く要職が変わる。

それはそのコミュニティに所属する者からすれば正しく青天の霹靂であろう。



大佐「これから先の話は世界の趨勢にも関わりますので

   少将にも覚悟いただきたいのと、一つ条件を飲んでいただきたい。

   我が国からの駐在武官をそちらの鎮守府で引き受けていただけないでしょうか。」



それは同盟国全ての政治について話が大きくなっているという意味。

旧き友人から託されたバスクリン缶の中身に、先の保険の引受人の一覧。

時雨やウォースパイトが88鎮守府に流れ着いた理由。

一見関係ないように見える、一つ一つの点と点がつながり線になる。

510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:38:18.65 ID:voPzULVm0


現英国政府は深海棲艦と何某かの

それも同盟国に対し隠すほどの密約を結んでいるという事。

大方、カリブに浮かぶバージン諸島がそれらの裏取引の舞台になったのであろう。

考えてみれば当然とも言える。

日本のように自国で艦娘を独自開発という事無く、まして、島国。

大陸諸国であるドイツ、フランス、イタリアといった国と比べ

海上封鎖ともなれば圧倒的な不利が出る。

加えて多くの海外領、それらの安全の保証は盟主であるイギリス本国の責任でもあるのだ。

深海棲艦達と取引せざるを得ないだけの事情はある。だがしかし。

世界はそれをどう判断するであろうか?

ましてや現状として世界の海で船の航行の安全が保たれていない状況において。

英国が島国であり自国周辺に欧州棲姫や水姫といった強個体がいるにも関わらず国を保てている。

ドイツ、フランスが軍港等の軍事的重要拠点を奪われ、

イタリアが地中海の制海権を完全に掌握していない状況から見ればどうであるか?

日本からの救援部隊が幾度か送り込まれたのが敵深海棲姫達を容易に撃退出来たのも実は出来レース。

疑われない為の猿芝居。更に言えば戦後の事まで考えた二枚舌外交。

英国は深海達と手を組み人類側を裏切っている可能性まで有り得ると言う事である。

そして、考えたくは無いが最初に艦娘を作り出した日本もまた島国なのである……。

自国の利益を最大限にするのが外交ではあるが

世界のリーダーを自負するアメリカからすれば英国のそれは容認できるわけがない。

また、似た地理的状況の日本に疑念の目が向くのも納得のいく理由では有る。

511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:39:51.57 ID:voPzULVm0


提督「……、条件ですが、駐在武官の派遣という事でしたら

   駆逐艦娘をお願いします。」

提督「この一線は越えられませんな。」



提督が黙ること数分。考えられる限りの可能性を考え出した結論。



大佐「この一件はお分かりかと思いますが貴国政府にも無関係ではないです。」



そう、今回の一件、現在、救援に向っている所が

襲撃を受けているという情報が故意に握りつぶされた。

恐らく、遅れていたという表現に置き換わるのだろうが。

それを自分が察知し撃退したとなれば。



大佐「そちらの国内の敵対勢力。そうですね。

   そちらに少将提督は皮手袋を投げつけたようなものでしょうか?」



ニコニコと満面の笑みを浮かべる大佐。

救援を遅らせることが予め密約として成り立っていたのであれば

それを壊した提督は当然の如く敵となる。

提督の階級が責任と仕事を増やし動きを鈍くする事を

狙ったかの様に作戦前に上がった事を考えると敵は自ずと見えてくる。

それは間違いなく軍上層部。人事を自在に出来る立ち位置に居る。

そして、時雨をここに叩き込んだ相手に繋がっているだろう。

512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:41:34.28 ID:voPzULVm0


大佐「駐在武官で駆逐艦ならば受け入れていただけるという事でしたら……。」

大佐「そうですね。サミュエル・B・ロバーツを派遣いたしましょう。」

大佐「駆逐艦でなければ少将提督も安心出来ないでしょう?」



想定内、いや予めその答えを予定していたと言わんばかりに艦娘名を挙げる大佐。

戦艦や空母といった艦娘の派遣はすなわち派遣先を

武力制圧する可能性も見据えているという意思が見えなくも無い選択。

また、逆の見方、提督と敵対する相手からみれば

米軍から戦力の支援を受ける事が容易であるという誤ったメッセージを送ることになる。

敵がはっきりとしていない状態で緊張をより深めるのは賢いとは言いがたい。

それらを抑えつつでのギリギリの妥協点が駆逐艦なのである。

さらに言えばそれらを配慮する必要が有るという事は

米国側も日本国内の敵をはっきりと特定しきれていないということでもある。



大佐「財閥系の企業、軍上層部。我が国の諜報機関の全力で調べても解明は難しいですな。」

大佐「何せ人種そのものが違いますから。」



欧米の顔つきとアジア人の顔つき。当たり前といえば当たり前。

直接動けば人種の違いは枷となる。



大佐「我が国は戦後もリーダーであり続けることを自認しています。」

大佐「少将の協力、感謝いたします。」

この一言に含まれる意味。

それは日本が戦後に艦娘を利用しての海洋権益の拡大は元より、

現在の提督にとっての不明な敵が英国とも繋がっている可能性、いや繋がっているという事。

そして、米国は決してそれを許さないという強い決意表明であり

敵対勢力は容赦なく制裁するという事。


513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:43:12.62 ID:voPzULVm0


大佐「太平洋の盟主は今後も中国などでは無く我が国です。」



中国をわざわざ挟むという事は国内の敵は中国とも通じているという明示。



提督「……。軍人の私が政治に嘴を挟むわけにはいきませんので……。」

提督「とりあえずは目の前に集中しましょうか。」



自分の手には余る話し。関わりたくないというのが本音。

そして、それは望むと望まざると今後に関わってくるといううんざりするほどの現実。



提督(目の前の深海連中を叩きつぶすだけの方がどんなに楽か。)



目の前でニコニコと笑う相手の顔が

これほど憎らしく見える事はこれからもまずはないだろう。

頭を切り替え、やるべき事。再び海図に目を落す提督だった。

時を遡り雪風達が重巡棲姫達と事を始める頃と同じ時。

長門達もまた敵の部隊と事を構えようとしていた。

514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:44:43.43 ID:voPzULVm0


深海陣営 後方集積所守備隊 泊地

戦艦棲姫は一人、思考を巡らせる。



戦艦「……、あの指揮官が出てきていたら負けねぇ。」



脳裏によぎるは北方水姫が鮮やかに負け、沈んだ先の一戦。



戦艦「それに、あの時の、あの場所に居た戦艦の艦娘達。」



そして、自身の目の前で行われた鮮やか退き口。



戦艦「英雄に頼らなければいけない戦場は駄目だけれど

   英雄というのは時として全ての事象を引っくり返すトリックスター。」

戦艦「世の理を無視する事の出来る者。」

戦艦「この泊地の位置は本隊への補給拠点、

   そして、周辺敵鎮守府への睨みを効かす意味でも重要な場所。」

戦艦「巧妙に隠してはあるけれど。

   それを理解できる相手、そして、こちらを先に排除する事を目的としてくる相手ならば。」



本隊の後ろを取るつもりであるという意思は明確。

さらには重巡棲姫が守る泊地へまで敵が部隊をまわしている可能性は充分にある。

そしてその二つを襲撃、壊滅された場合は。本隊の退路が絶たれる事になる。

515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:46:21.97 ID:voPzULVm0

戦艦「敵が優秀だと、相手が打つ手を予想しやすいからいいことだけれど。」



最悪の結果になる事はいただけない。いや。そこまで出来る相手ならば。



戦艦(部下の兵の質も当然良いでしょうね。)

戦艦(敵が羨ましい。)



将として上に立つ者であれば

配られた手札で戦わねばならないのは兵家の常だが。

無いものねだりをしたくなるのも性である。



戦艦「タ級ちゃん、頼まれごとをお願いできるかしら?」



迎撃に出たはずの駆逐棲姫が既に水底に沈んだ事は把握済み。

敵が愚かしい事を願うは無策の極み。



タ級「戦艦棲姫様。用事と言うのは一体?」

戦艦「駆逐古姫様に意見具申を。」

タ級「駆逐古姫様にですか。」



姫級は艦種の違いはあれど対等。

これは基本原則ではあるが何事にも例外という物はある。

名前に古(いにしえ)とわざわざつけられる様に

その個体は極初期から確認されていた。

艦娘システムがある程度制度化し同盟国と国際コードネームで

情報の共有を行っていく中で割り振られた名前が古姫。

それは姫達の中でも古(いにしえ)とあえてつけられる古参兵である。

駆逐艦というその艦種も先駆けを誉れとする艦種という事も考えれば、

生き残り、そこに存在する事の意味は自ずと分かるというものである。

なればこそ姫級であれば敬意を払わないものはおらず、

水鬼級指揮官も参謀職として重用したりしている。

そして、この戦場の深海側総旗艦である戦艦水姫もまた、

彼女を参謀として用いていた。

516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:49:09.78 ID:voPzULVm0

戦艦「私達のいるこの泊地、もしくは重巡棲姫が守っている泊地。

   どちらかが落ちるような場合があれば即時撤退をと、駆逐古姫様に伝えて頂戴。」

タ級「無線での連絡ではなくですか。」

戦艦「今は無線封鎖中よ。それに戦う前から撤退の話しを無線でしてみなさい。」



誰が聞いているか分からないのに、いらぬ動揺を招くでしょと察しの悪い自身の部下を叱責。



戦艦「あの方ならば私からの言葉を聞いてくださるわ。」



既に損切の期限は過ぎている。戦艦棲姫は確実に理解していた。

そして、自分たちの将である戦艦水鬼に思いを馳せる。優秀ゆえに負け知らず。

百戦百勝、全戦全勝、常勝無敗。

で、あるが故に。部下からの意見を聞き入れたがらない一面もある。



戦艦(今回の負け戦を負けと認めるまでには時間が掛かるでしょうね。)



タ級が駆逐古姫へのメッセージを持ち泊地を出て行くのを見送る戦艦棲姫。



戦艦「今度の戦で戦艦水鬼様は一回り大きく、より強き将へなられるはず。」

戦艦「将は大敗をして真の名将になる。」

戦艦(なればこそ。命惜しむ訳にはいかないわね。)



駆逐棲姫への意見具申が仮に通ったとしても

いままで掛けた損害をそうやすやすと損切出来るとも思えず。

ましてや敵の拠点は後一歩で陥落寸前まで来ている。



戦艦(ゴール目前での撤退なんて考えないわよね。)



総旗艦ではなくあくまで艦隊の一員であるがため

思考に余裕があるからこそ見えてくる現状。

総旗艦であれば恐らくは自身も損切のラインを見誤っているであろう事。

駆逐古姫へ意見具申した撤退を考えるラインも実は遅いのではないかと少し思っている事。
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:54:55.21 ID:voPzULVm0

戦艦「全てに時遅し。」

戦艦「なれど…、なれど退くは恥。死して時を稼ぐもまた配下の将の勤め。」



惜しむらくは。



戦艦「深海棲艦としての今後の行く末を見届けられない事かしらね。」



戦艦水鬼がこの方面の指揮官として移動をしてきて共に巡った戦場の思いに浸る。

今まで上官が無能であったが故に放置されてきた敵の突出部への侵攻作戦。

先任へ幾度かその重要性について意見具申をしたことはあったが無視されてきたもの。

ゆえに戦艦棲姫も放置を決め込んだ突出部。

新しい総旗艦は幾度かの戦役を過ごした後、自身の才能でその重要性に気付き

敵拠点の奪取を計画、立案、実行。

それは戦略的勝利に今一歩のところまで迫ってはいた。

戦艦棲姫に己の命を掛けてもよいと思わせるほどの才能の片鱗。



戦艦(敵の指揮官が有能であったという事ね。)

戦艦(あの世があるならば。)

戦艦(敵の指揮官が死んだ後にでもあの世で教えを請いたいものね。)



戦艦棲姫は指揮官として優秀な将である為、

現状、自分の命が助からない事を悟っている。

敵の偵察機などは来ていないが間違いなくまもなく接触するはず。

願わくばその命、燃え尽きるまで、立ったままで死ぬることを願い。

彼女は配下の深海棲艦へ即時戦闘態勢を取る事を命じたのだった。

518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:02:30.77 ID:voPzULVm0
本日の更新これにて終了です

どうにかこのスレ内で救援の話は終われそうな感じです

88メンバーでのスピンオフ?的番外編は多分、別スレになる予感

それまでにはスレ建てバグがなおっているといいなぁと思います

Rに建てられるとか困りますね本当、アゲ荒しがいるのか特定のスレがあげられているのが目に付きますし

管理人さん管理して……の現状こまりました、愚痴的な部分が多く申訳ありません

本日も、長々とした本作品をお読み頂きありがとうござました

こういったシリアス系SSが増えない中ニッチなのを読んでくださっている方がいるのは本当に感謝です

応援レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています

どうぞ、お気軽にレスいただきますようお願い申し上げます
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:12:06.90 ID:GRb6sIzI0
乙です
何やらきな臭くなってきましたが次回以降の更新も楽しみです
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:18:29.50 ID:NwSxQws40
あれだけ自分が政治的に危険な状態にあり尚且つ目の前にいる人物が危険だとわかっていながらこの大失態
このままじゃ新設された日本州から移動鎮守府でも用意してトンズラこくしか生きる道がなくなりそうだ
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 08:42:22.26 ID:ZRuABN9GO
乙!
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:12:04.54 ID:VuM8kfT60
久しぶりにケルベロスよんでてふと思いついた一発ネタ
よろしければ御笑納ください
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:13:02.78 ID:VuM8kfT60

鹿児島県 海軍 岩川基地



大淀「提督、救援要請です。」

提督「救援依頼を受理した。」

提督「至急、救援を送る。」

大淀「相手先へは?」

提督「30分程我慢してくれと連絡を。」



太平洋某所



陽炎「後、30分我慢しろですって!?」

陽炎「30分も持つわけが無いわ!」

陽炎「だいたいこの近くの鎮守府から救援に来るっていったって30分でなんて無理でしょう!!」

叢雲「……。」

叢雲「救援を30分で届けるっていったのね?」

陽炎「えぇ、そうだけど。」

叢雲「もしかして『 明王 』が来るのじゃないかしら?」

陽炎「明王ってあの特殊作戦群の?」
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:14:00.41 ID:VuM8kfT60



キィィィィィ



機長「高度維持。」

副機長「了解。」

機長「これより1分後、荷物を投下する。」

副機長「了解。」

機長「こちらB1輸送隊、近隣の友軍へ連絡。まもなく部隊の輸送が完了する。」



ガポン



「こちら不動隊。降下準備良し。」

機長「了解。爆弾庫の扉を開ける。Good luck!」



バシュッ



陽炎「ウィングスーツが6人!?」

叢雲「来た!戦場の死神!軍神!」



シュー!



バッ!



ドン!



叢雲「空中からの砲撃が敵に命中したわ!」



「ガァァァ!」



叢雲「艤装にペイントされている部隊マークは不動明王!間違いないわ!」

叢雲「あれは、四菱重工製 重火力強化型外部追加艤装 紅朱雀 試製甲型!」

叢雲「他の戦場で一度だけ見たこと有るわ!」

叢雲「あれは戦場の伝説!不動明王隊よ!」

525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:14:57.25 ID:VuM8kfT60

超音速の爆撃機をただ前線に兵士を送るためのタクシー代わりに利用。

音速の世界には深海棲艦の持つ艦載機がどんなに優秀であろうと。

追いつける者などいやしない。

海軍岩川基地は海に面していない代わりに特殊部隊が配属されたいた。

特殊機動降下猟兵、不動明王隊。

深海棲艦を圧倒的戦力で打ちのめす姿が仏敵を容赦なく討ち滅ぼす

その姿に似ていたことからいつしか戦場の伝説と呼ばれるようになった。

彼らは先行試製追加艤装を使用し危機的状況に陥った部隊の救援活動を行っていた。

また、超音速爆撃機を利用した強襲作戦も行い戦果をあげていた。

その追加艤装を用いた艦娘は駆逐艦娘でも戦艦の火力を優に超える。



「岩川海軍基地所属 特殊作戦群 不動明王隊所属 夕雲型 19番艦 」



「 清霜!救援に推参! 」



彼女達が通った後には敵の骸が転がっていたという。

この物語は一人の駆逐艦娘が軍神へと至るまでの物語である。

526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:16:41.34 ID:VuM8kfT60
本編すすめず何やってんだ
岩川基地所属の提督の方いらしたらごめんなさい
海が無い基地の岩川って実はこういった感じで艦娘を出撃させてるんじゃない?という
なんとなーくな妄想からの一発ネタでした、お読み頂きありがとうございました
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:27:34.84 ID:nQK9sJXH0
軍神(戦艦にはなれず)
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/11(日) 00:21:03.68 ID:gduTkyzB0
戦艦通り越して軍神になったかぁ…
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/11(日) 00:30:11.01 ID:0SQgp8xMo
駆逐艦は一応狭義の軍艦ではないからなぁ
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:44:14.14 ID:N7yw9PNn0
少しだけ本編更新
体調が優れない日が多い…
お時間よろしければお読みいただけると幸いです
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:45:18.58 ID:N7yw9PNn0

戦艦「敵偵察機に逃げられたのね。」

戦艦「そう、随分と愉快な敵みたいね。」



哨戒に出ていた部隊からの報告に微笑む。

敵の偵察機は戦艦棲姫達のいる泊地を確認後、全力でこちらの迎撃機を振り切り離脱。

離脱時に平文で『 我ニ追イツク敵機ナシ 』と挑発して消えていった。



戦艦「来るのね。」



偵察機が敵泊地を発見し強襲。

各所で戦端が開かれそこかしこに砲煙があがり火蓋は切られた。

532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:46:25.21 ID:N7yw9PNn0

長門「………。」

時雨「どうしたの?」

長門「瑞鶴!」

瑞鶴「何?」

長門「すまないが旗艦を任せてもいいか?」

瑞鶴「ずっとはやらないわよ?」

長門「何、直ぐに済ませるさ。」

長門「時雨。川内と二人で瑞鶴の護衛を頼む。」

時雨「任されたよ。長門はどうするの?」

長門「一仕事だ。」

時雨「そっか。」

時雨「……。Good Luck!」b サムズアップ

長門「あぁ、行って来る。」フッ



そこかしこで戦闘が行われる中、

長門は一人、一番激しく戦闘が行われている所へ向った。
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:48:02.45 ID:N7yw9PNn0


深海泊地 守備隊本隊



戦艦「この首、あなた達雑兵にくれてやるほど安くはないわよ!」ドンドン!

戦艦「さぁ!どうしたの艦娘というのはその程度のものなの!?」



その激戦区では戦艦棲姫が部下を従えず一人で複数の艦娘達を相手していた。

普通に考えれば1対複数となれば多勢に無勢で負ける。

だが、これはあくまで一般論。

相手との力量差が明らかに大きければ大きいほど

複数で戦うほうが不利になる。



戦艦「それを狙っていたのは分かっていたわよ?」



巨大な人型艤装を軽々と移動させ自身の正面に居た艦娘を

背後から他の艦娘が自分へ向けて撃った魚雷で仕留める。

戦艦棲姫は自分を狙った軽巡艦娘の魚雷を自分の艤装を影にして射線を見せず

その背後からの攻撃をさらに利用して正面に相手どっていた重巡艦娘に当てたのだ。

そう、1対複数での戦いは敵が老練であればあるほどこちらの攻撃が味方への攻撃として利用される。

そして、乱戦ともなれば空母艦載機による爆撃も味方への誤爆もある為、ほぼ不可能。



戦艦「あら、足を止めちゃ駄目でしょう?」



陣形を整え一丸となって戦おうと

態勢を立て直し始めた艦娘達の集団に戦艦棲姫は一気に突っ込んだ。



戦艦「他愛の無い物ねぇ。」



陣形の中に突っ込まれると味方同士の距離が近い為

魚雷等の射線が制限されてしまう。

そして、近接距離での砲撃戦になると当然。

534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:49:35.28 ID:N7yw9PNn0

戦艦「私の勝ちよ?」



立て直しつつあった陣形の中に突っ込まれ

中から切り崩された結果、艦娘部隊は全員死亡した。



戦艦「思った程、強くない相手だったかしら?」



闇夜を切り取ったかの様な

漆黒のロングドレスに付いた敵の肉片を手で軽く払う。



戦艦(駆逐古姫様への進言は杞憂だったかしら?)



上空を睨み、敵攻撃機への牽制の対空射撃をしつつ

益体もない事を考えていた時だった。



戦艦「!」ゾクッ

戦艦「この感覚は……。」

戦艦「恐怖!?」



背中に一筋ながれる冷や汗。

敵の姿は見えていない、それでも感じる威圧感。

姫級としていくつもの戦場を渡り歩いてきたが。

とうの昔に忘れたはずの感覚。であるにもかかわらず。



戦艦「再び恐怖を感じる事があるなんて。」



その身に感じるは高揚感。

ドン!

敵の砲弾は自身の目前に着弾した。



戦艦「挨拶代わりというわけね。」



面白い、間違いなく、あの時のあの戦艦が来たのだ。

535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:52:02.23 ID:N7yw9PNn0

ザリザリザリ



戦艦「あなたが砲撃をしたのかしら?」



無線での呼び出しがあり、それに応答する。

恐らくは総旗艦と会話をした際に使われた無線と同じ周波数。



長門「そうだ。」



やはりか。



戦艦「何のようかしら?降伏勧告かしら?」

戦艦「悪いけれどキャッチセールスなら間に合っているわよ?」

長門「ふん。なかなか冗談の出来る相手のようだ。」

長門「お前か?」

戦艦「そうよ。」

戦艦「貴方が?」

戦艦「そうだ。」



なれば。



戦艦 長門「「言葉は不要!!」」



オレンジの砲火に大量の砲煙、砲撃の轟音が周囲に響き渡る。



戦艦(反応の速さは流石ね)



戦艦棲姫の人型艤装についた砲塔が回転し終わる前に舵を切り回避。



長門「私を仕留める心算なら目で追っているようでは無理だぞ?」

戦艦「厄介な相手ねぇ。」ニヤリ

長門(あれだけの巨体を細やかに動かすか。)



高火力、高出力、大きい事はいいことだを地でいく艤装でありながら

長門の攻撃を目で確認した後で回避をする。



長門「戦い難い相手だなぁ。」ニィッ



空母艦載機による攻撃が艦艇に対して有効ともなれば航空主兵論が台頭するは当たり前。

そんな中での戦艦ともいえば時として時代遅れとも揶揄される。

一人の艦娘と一人の深海棲艦。

戦艦という同じ艦種の二人は今、その生まれ持っての役割を大いに楽しんでいた。
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:53:18.94 ID:N7yw9PNn0

砲撃して離脱。艦砲射撃の基本、同航戦を避け、ジグザグ航行。



長門「その程度の基本を守った所で。」

戦艦「倒せるような相手ではない事は分かっているわよ?」



ガコガコガコ

長門の艤装の第一砲塔、第二砲塔がクロスショットを狙い仰角を修正。



戦艦(第三砲塔はあえて外すわけね)



第一、第二砲塔は散布界を重ねる様に砲撃。

そして、戦艦棲姫の進路を制限する為に第三砲塔は回避行動の先へと砲撃。

戦艦棲姫はその意図を読んでか長門の狙う方向以外へと回避。



長門(流石に見え透いた罠にはかからんか。)



何度かの反航戦の後、先に仕掛けたのは戦艦棲姫だった。

537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:55:15.23 ID:N7yw9PNn0

巨大な人型艤装の腕が海面に向って打ち込まれる。

どどん!

その深海の姫級の全力で打ち込まれた海面からは巨大な水柱があがる!

そして!海水の壁が出来、長門と戦艦棲姫の間の視界を塞いだ!



長門「目くらましか!」



直前の戦艦棲姫の位置、そして自分の位置。

それから敵が砲撃を仕掛けてくるであろうポイントを即座に判断し、

それに備え防御態勢をとる。

しかし、次の瞬間に長門を襲ったのは砲弾では無かった!



長門「これは!」



水壁を突きぬけ飛んできたのは砲弾でも戦艦棲姫でもなく。

視界に飛び込んできたのは先ほどまで周囲で戦艦棲姫と戦っていた仲間達の骸だった。

長門だからこそ、戦闘中もそれが視認出来る程の余裕があった訳だが。

その余裕が長門に一瞬の躊躇をさせた。

ドン!

戦艦棲姫の砲撃音が響き長門の位置へ全弾着弾。



戦艦「水柱を抜けて威力が多少は落ちているでしょうけど。」

戦艦「当れば只ではすまないでしょう?」ニマァ



その笑顔は命中を確信してのものであり。



戦艦「あなたの仲間の死体を目くらましに使ったことを卑怯だなんて。」

戦艦「まさか言うようなタマじゃないわよね。」



水柱が納まるのを待ちつつ、戦艦棲姫は備える。

なぜなら自身の砲撃を一、二発受けた程度では沈む訳がない事を確信しているから。



戦艦「まだ、終わりじゃないでしょ?」



戦艦棲姫は戦闘態勢のまま、正面を睨みつけた。
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 01:01:05.70 ID:N7yw9PNn0
今日はここまでの更新です、ホント少しだけ
現実的な話、艦娘同士の一騎打ちとかは条件がかなり限られると思います
話の盛り上がりの為にポーラや長門において採用していますが笑って許していただけると感謝です
バトル部分も擬音だけですませると味気ないしなぁとかとか色々悩みますね……
感想、乙レス、いつもありがたく拝読しています
本当に感謝です、レスが付かないのは書いていて色々心配になる性格なので本当……
では、こんな感じではありますが次回もお読みいただけると感謝です
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 07:51:52.00 ID:mw7/nX+CO
乙!
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 16:22:51.56 ID:PKDINovE0
どっちも戦士ではなく将だからちょっとやそっとの奇手は鼻歌交じりでかわしそうだがなりふり構わないラフファイトはどっちが上手かな
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:19:33.65 ID:of9urzBn0
だいぶ間が空きましたが年内に終わらせれるように頑張ります
多分、このスレ内で第二部?的な形でのある程度キリがいい所まで話しを進める事は出来ると思っています
艦これSS書いていた人達で定期的に挙げていた人達がやめちゃったのか数が少なくなりましたね……
どこに移動したのやら、それでは本日も長めで申し訳ないですがお時間よろしければお付き合いください
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:21:17.63 ID:of9urzBn0

ドン!

砲声に構え人型艤装の左腕が守るように戦艦棲姫の前に被さる。

戦艦(やはり生きていたわね。)ニヤリ

顔が緩むのが自分でも分かる。

そして、その一瞬を突かれた。

シャーッ!



戦艦「ばかな!」



そう、それは敵が自分と同じ戦艦であれば本来は使えないはずの兵装。



長門「なに、私は人から艦娘になったのでな。」

長門「最初の、艦娘としての初等訓練で駆逐艦種の訓練も受けていたに過ぎんよ。」

長門「ほんのお遊び程度だがな。」



長門が放った魚雷は周囲で兵装をつけたまま死んだ艦娘の魚雷である。

戦艦棲姫の水柱を目隠しにしての攻撃を長門も利用し

周囲に漂っていた駆逐艦娘の魚雷発射装置を利用したのだ。

そして、その魚雷は見事に戦艦棲姫に命中した。

543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:22:38.37 ID:of9urzBn0


戦艦「やるじゃない。」



被雷直前に人型艤装の右手が海面に刺さり

魚雷が重要機関へと当るのを防いだ事もあり。

戦艦棲姫には見た目にさほどダメージは入っていないようである。

だが、後方の人型艤装の右手は指が吹き飛び

ダメージを与える事に成功しているのは間違いない。



長門「お前さんほどではないさ。」



水柱による視界の制限、味方艦娘の死体を利用しての不意打ち。

長門はこれに対応する為に一時的に姿勢制御システムを手動でダウン。

これにより砲撃の反動の衝撃が長門の体へ直接伝わる事になる。

砲撃の反動を緊急回避に使用した形である。

しかし、体への負担はどれだけの物か。



戦艦「大丈夫かしら?」

長門「心配してもらうほどではないさ。」

長門「それよりお前の方こそ大丈夫なのか?」

戦艦「それこそそっくりそのまま返すわ?」



お互いの状況をじっくりと眺め、互いのダメージを推し量る二人。



戦艦「ふっふっふっふ。」

長門「くっくっくっく。」



二人はお互いの状況を確認して笑い出した。

そして、ひとしきり大声で笑った後。どちらからともなく。

544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:23:43.62 ID:of9urzBn0


戦艦「名前を聞いてもいいかしら?」

長門「名前?」

戦艦「えぇ、戦艦長門ではなく。

   そうね、貴方ほどの将なら二つ名の一つや二つあるんでしょ?」

長門 フン

長門「名乗る程の名ではないが……。」

長門「そうだな。火車曳兎が一番古い名か。」



長門の言葉に驚くような顔をする戦艦棲姫。



戦艦「あなたが……、そう。

   あなた、私達の間で名の知れた賞金首(アイドル)よ?」

長門「そうか。それならサインに握手でもしてやろうか?」

戦艦「冗談。」

長門「それで、随分と我々人間側の事情に明るいようだが?」

戦艦「今こうして貴方と会話をしている。お互いの言葉を理解出来ている。」

戦艦「あなた達が私達を研究しているように。

   私達もあなた達の事を研究していない道理が無いわよね?」



言われてみればそれは至極最も。

つまりは占領した地域に残った鎮守府施設などから

可能な限りの機密情報などを拾い上げこちらを研究しているという事であり。

場合によっては人間側と何某かのやり取りを行っているという事。

人類側は決して一枚岩では無いと言う事である。

545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:25:26.31 ID:of9urzBn0

長門「で、私だけ名乗るというのは不公平なのではないかな?」

戦艦「あぁ、これは失礼したわね。」

戦艦「そうね。私の名前ね。」

戦艦「私達の間での呼び名はあなた達の言葉では発音できないわね…。」



そして、思い出したかの様に言葉を繋ぐ。



戦艦「あなた達が私につけた名前は……、そうね。

   確か。グレモリーだったかしら?」

長門「………。貴様が。貴様がグレモリーか。」



瞬間、空気が震えた。



戦艦「えぇ、そうよ。お互いに、面白い縁だとは思わない?」

長門「成程、ソロモン……、アイアンボトムサウンド以来という事か…。」



お互いに因縁浅からずという奴である。

そして、将として、名乗りを挙げれば

その戦い方は自ずと決まる。



戦艦「小細工無しなんてどうかしら?」

長門「部隊を率いる指揮官のする戦い方ではないな。」

戦艦「あら?いやだったかしら?」

長門「いや?久しく一騎打ちなどしていなかったのでな。」



三次元での戦いを仕掛けることの出来る空母艦載機が主兵力となる戦場へ移行する中で、

戦艦である彼女達がその活躍をする機会と言うのは実際には少なくなってきている。

その活躍の場といえば艦隊の主力となる空母の護衛であったり、

味方が敵艦隊の航空戦力を屠った後での殲滅、止めの一撃。

更に言えば連合艦隊の旗艦として、

指揮艦として全体の流れを見て指示を出すという責任ある立場になれば

一騎打ちは元より最前線で戦うなどという機会はまずない。

だけに二人にとってのそれは一軍を率いる将ではなく一戦士としての決闘。

546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:26:41.66 ID:of9urzBn0

戦艦「戦いの合図は任せても?」

長門「随分と信用して貰ったもんだ。」

戦艦「こういう時の戦い方の相場はあれでしょ?

   あなた達の映画でみたわ?」

長門「西部劇か?」ニヤリ

戦艦「そうねぇ。

   『 賢い者程、最後まで銃を手に取らない 』だったかしら?」ニヤリ

長門「それであれば、銃を、いや、初めから砲で語り合う我らはなんであろうなぁ?」ニタリ

戦艦「そうねぇ、少なくとも賢者ではないわよね。」ニタリ

長門 フフン



そして、上着のポケットの中から一枚のコインを取り出す長門。



長門「クオーターか……。」(25¢硬貨)

長門「こいつでどうだ?」

戦艦「実に雰囲気がらしくていいじゃない。」



そして、長門が手に乗せたコインを指で上空に弾いた。

チィ ――――――― ン

コインが上空へと飛び上がった瞬間から

長門の艤装が黒煙を大量に吐き出す。

そして、戦艦棲姫の人型艤装もまたその瞬間に備え

大きく振動を始め口から大きく息を吐いた。

一秒が一分にも、一時間にも、あるいは一日。

スローモーションでコインが上空から二人の間に落ち。

チャプン

海に沈んだ。

547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:28:08.62 ID:of9urzBn0


その瞬間からの全ての支配者は砲声と砲煙だった。

仰俯角、共に零でお互いに回避が出来ても

間に合わない距離からの砲撃が開始された。

砲煙は周囲に黒々と広がり視界を封じる。

お互いに回避行動をとりつつ砲撃を続ける、

相手の姿は煙の中で見えないはずだが。



長門(回避行動での動きで空気が動けば。)

戦艦(煙も動く。その始まりに相手はいる!)



砲撃を行えばその衝撃で煙は晴れるがまたその砲撃で発生した砲煙で周囲が煙る。

間断なく激しい砲声が続き周囲を黒々と染め上げ時折なかで火花が明滅。



戦艦(砲撃の最適距離の確保を!)



戦艦棲姫は砲撃の為に距離をとる。

お互いの息遣いが聞こえそうな距離での砲撃戦は

被害が甚大になりやすく通常選択するべきではない選択肢。

そして、戦艦棲姫は小細工なしとはいったが彼女自身の目的は時間稼ぎ。

自分が長門をこの場に引き止めていれば

それだけ本隊の逃げる時間を稼げると算盤を弾く。

そして、敵の長門にしても自分と戦った後がある。

だから被害が大きくなるのは避ける筈。

指揮官として戦艦棲姫は冷静判断し距離をとった後、

砲弾の雨で長門を倒す選択をした。
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:29:38.54 ID:of9urzBn0


長門「最後まで将であるか。」

煙の中から眼前に突きつけられたのは長門の第一主砲塔。

そう、長門は被害無視で戦艦棲姫が後退したのに対し、

真逆で前に!前に出たのだ!

ガオン!



戦艦(チィイイィィィ!)



盛大な舌打ちをし人型艤装の手で砲身を殴りつけ砲撃を逸らす。

ズァッ!



戦艦(蹴り!?)



その蹴り自体に自分を撃沈できるだけの威力は無い。

しかし、戦艦の艦娘の全力が乗った蹴りである。

当たれば無事である訳がない。

眼前に迫る長門の蹴りをギリギリで見切り交す。



戦艦「次はどこから!?」



それは驚喜。自分の予想を超えてくる敵がいた事に対して。



戦艦「そっちかぁ!」



空気が動く、ちりちりと肌が焼ける気配。

砲塔の回転が間に合わない。

長門が人型艤装の脇を蹴りを交された勢いを利用してすり抜ける!



長門「背後をとったぁ!」



腰を低く落とし戦艦棲姫の背後をとった長門が砲撃の構えに入る!

ドォン!

長門の砲撃と同時に人型艤装の左手が長門の横っ腹に直撃した。

横へ大きく吹き飛ぶ長門、

だが、その視界には敵の艤装の右腕が彼方へ吹き飛ぶのを捉ええていた!

549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:30:54.57 ID:of9urzBn0


長門「こいつは効くなぁ。」



長門は掬い上げるように殴られた為に

艤装左側、第三砲塔と副砲が破損。



戦艦「やられたわね。」



片や戦艦棲姫は艤装の右腕を犠牲に重要機関が砲撃されるのを防いだ。



戦艦(全ての砲撃を防ぎ損ねたわね。)

戦艦(艤装の背骨をやられたみたい…。神経伝達が上手く行かないわね…。)

長門(第三砲塔と副砲であれば火力は落ちるが致命傷ではない。)

長門(こちらより向うの方が受けたダメージは大きいようだな。)ニヤリ



ぐいと口から垂れる血を拭い。



長門「死ぬ前のお祈りは済ませたか?」

戦艦「月並みな台詞ねぇ。気の利いた台詞を考えなさいな。」

長門「お前さんを倒した後にでもゆっくり考えるさ!」

戦艦「簡単には逝かないわよ!」



再びの砲撃戦。長門の主砲弾は戦艦棲姫の艤装砲塔を直撃した。



戦艦「主砲が死んでも、まだ!まだやられないわ!」

戦艦(敵の右側の砲塔の動きにだけ集中すれば弾道を読める!)

戦艦(少しでも!少しでも時間を!)

長門(敵の艤装の損傷は予想以上!ここは一気呵成に!)



時間を稼ぐ為の守りへ入る戦艦棲姫、そして、一気に畳み掛ける長門!

550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:32:43.11 ID:of9urzBn0


戦艦「あなたは、あなたは何の為に戦っているの!?」



長門の砲撃の直撃を交しながら長門へと問いかける。



長門「そうだな。貴様に私の話しを少ししてやろう。」

長門「私には守るべき故郷といえるものはない。」

戦艦「国を守っているのではなくて!?」ブン!



人型艤装の残った左腕が長門へと振り下ろされる。

そして、頭の上でそれを両手で受け止める長門。



長門「ぐぅ!なぁ、戦艦棲姫よ…。

   指揮官として幾つもの海戦を戦えばいつの間にか感情。」

長門「そうだな。

   部下をいつしかただの駒としてしか見なくなっていてな。」

それは戦場を俯瞰的に考える事が多くなれば成程、

そして立場が上になればなるほど。

そうあれかしとして求められる視点。



戦艦「それがどうしたというの?普通じゃない!」



勝つためには犠牲が必要。当たり前の話。



長門「あぁ、お前にとっては普通なんだろうな。」

長門「嘗ての私にとってもそれは普通だった…。」



艤装のフルパワーで耐えるが戦艦棲姫の艤装の力の方が勝るのか

徐々に海中へと押し込まれ始め少しずつ体が沈んでいく。



戦艦「それなら!ここで納得して沈みなさい!」

長門「私はな…、とある事が切欠で変わることが出来たのでな……。」



ガコガコガコ



戦艦「はん!変わったからといって何になるというの!?」

戦艦「結局はここで血みどろの戦いに明け暮れているだけじゃない!」



戦艦棲姫本人がなかなか沈まない長門に痺れを切らし長門の首を直接絞め始めた!
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:34:14.83 ID:of9urzBn0

長門「確かにな。結局は戦いに明け暮れるだけの毎日だ。」

長門「だがな。

   ここで、今の鎮守府に移動して得た物がたった一つだけある…。」

戦艦「一体なにって言うの!!」

長門「絆だ。」ニヤリ

戦艦「なんですって!?」



なおも長門の首を絞める手に力が入り続け、

長門を押さえつける腕にも力が込められる。



長門「戦場を生き抜いて、

   仲間と今日も生き残ったとお互いに馬鹿を言う。」

長門「息の根が止まるその時まで一戦士として生き。」

長門「そして、戦場で互いの為に命を張る。」

長門「例え最後に燃え尽き、灰になったとしてもだ……。」

長門「仲間との絆ってのはそんなもんだ……。」

戦艦「取るに足らないわ!」



ドゴォン!



長門の艤装右側、第一砲塔、第二砲塔が火を噴いた。

避けようのない必中距離からの砲撃は戦艦棲姫の体を貫通。

これが致命傷となり二人の戦いを終わらせる幕引きとなった。



戦艦「絆…、絆ね…。」

戦艦「そんなものを持っていると……、重くて疲れるわね……。」グラリ



死す時は前のめり。

戦艦棲姫は前向きに倒れ、その体が海中に没した。

552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:35:17.22 ID:of9urzBn0


分遣隊本隊



時雨「瑞鶴、長門は大丈夫かな?」

瑞鶴「大丈夫よ。長門だもの。」

時雨「………。」

瑞鶴「私はね。長門を知っているから。」

時雨「そっか。」



二人がなかなか帰ってこない長門について会話をしていた時、無線が入る。



長門「瑞鶴。」

瑞鶴「分かってるわ。

   護衛を出してあげるから後方へ下がりなさい。」

長門「すまない。」

瑞鶴「いいわよ。そうなるだろうと分かってたわ。」

瑞鶴「それより。満足した?」

長門「あぁ。」

瑞鶴「そう、じゃぁ、後は任せなさい。」

長門「頼む。」



戦艦棲姫との戦いを終えた長門はその損傷が激しい為、戦線を離脱した。

553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:37:07.88 ID:of9urzBn0


川内「大まかに敵拠点の破壊終了といったところかね。」

瑞鶴「そう、分かったわ。ありがとう。」

川内「なんというか、試合に勝って勝負に負けたといったところかねぇ。」

瑞鶴「そうね。

   敵の目的が本隊撤退の為の時間稼ぎだとすれば目標達成でしょうね。」

瑞鶴「よく分かったわね。」

川内「敵の動きが拠点から出て迎撃というより遅滞防衛、

   早い話が死守をする形だった。」

瑞鶴「『 かわうち 』は時に鋭いわね。」

川内「どーも。」

川内「で、時間の遅れと今後の行動はどうする?『 旗艦 』様。」

瑞鶴「どうもしないわ。いつも通りよ。」

川内「了解。」



そして、とんと拳を付き合い交す二人。



川内「時雨。これからきつくなるよ。」

時雨「分かってるさ。」



そして、こちらも同じく拳を交し気合一声。



川内「さて、散歩いきますか。」

時雨「気楽に言うね。」

川内「こういうのはいつも通りが大事なの。」

時雨「了解。」



時雨と川内は残敵掃討へと向ったのであった。

554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:39:55.26 ID:of9urzBn0
以上終了です、お読み頂きありがとう御座いました
いつも、乙レス、感想レス本当にありがとうございます
何度も読み返し、書く気力をいただいています、本当にありがとうございます
冒頭でも触れましたが艦これSS、落ちる前に比べて数が減りましたね……
燃え系のSSは今後望めないのだろうかと少し不安です、増えて欲しいのですが……
では、お読み頂き本当にありがとうございました!
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 01:26:24.17 ID:71PjXoN7o
乙乙
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 02:35:28.31 ID:woVZz3J10
鯖の長期故障という前代未聞の事態で焼け野原状態からの再起だしな
新しい作者が生まれたり復帰者が出るには時間がかかるかるし気長に待つしかない
燃え系の旗振りとして頑張っておくれ

勝ったようで勝ってない日本は対米政策込みで苦しい立場になりそうだなあ
大鉈振るわないと提督ジリ貧
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/30(金) 06:40:13.93 ID:fNa+BlyVO
SSで何日後、来週、今月中に投稿または終らせるといって其が守られた事など皆無に等しい
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 08:48:52.76 ID:N3Ed6B31O
乙です
軍上層部は白兵戦用の武器の携帯をみとめるべき
せめて錨ぐらいはね
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 13:00:22.61 ID:UmwWb0HC0
錨が猫に見えた

戦力物量に劣る側が近接兵装持つと大体万歳アタックフラグ
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:03:22.06 ID:g2Ml+n1F0
少しだけ更新です
お時間宜しければお読みいただけると幸いです
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:05:14.50 ID:g2Ml+n1F0

救援部隊本隊 強襲揚陸艦艦内指揮管制室



提督「長門は修理の為に帰還か。」

不知火「はい、その様に連絡が入りました。」

提督「長門が戦線離脱か。」



正しく予想外。

いつだってこちらの想定通りには事が運ばないと心の中で一人ごちる。



提督「……、遅れはどのくらいだ?」

不知火「凡そ1時間程の遅れが出ていますが想定の範囲内だと思われます。」



主力である雪風、北上、ポーラに長門。

88鎮守府の看板役者が戦線を離脱。

彼女達の実力は88以外の鎮守府であればどこででも即で一軍。

それも主力中の主力をやれる実力の持ち主である。

並みの鎮守府であれば作戦続行を諦めるほどの物である。

であるにも関わらず、想定の範囲内と言うかと。

不知火の見解に頼もしさを感じると共に、

自軍がいかに規格外かを改めて実感。

そして。

562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:06:22.06 ID:g2Ml+n1F0

不知火「現在、ウォースパイトさんが旗艦を勤められる第一分遣隊と

    瑞鶴さんが旗艦を勤める第二分遣隊との合流、部隊の再編成は後30分程で完了との連絡。

    総旗艦は瑞鶴さんでよろしいですか?」

提督「あぁ、その様に進めてくれ。」



そして、少しだけ黙考。



提督「細工は終わったな。」

大佐「いよいよですか。」

提督「えぇ、グランドフィナーレ。最終幕の開幕です。」

提督「不知火。無線の全回線オープンだ。」

不知火「了解です。」

提督「周辺全鎮守府へ通信!」

提督「進軍命令!Operation Woodpecker (きつつき作戦)発動!」



提督の指示に従い強襲揚陸艦から海域にある全鎮守府へ

進軍命令の符丁が打電される。


563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:07:45.11 ID:g2Ml+n1F0



『 真鐡(まがね)の城達よ!皇国(みくに)の四方を守るべし! 』



『 汝らの弾撃つ響きは雷(いかづち)なり! 』



念をいれ、複数回の打電が行われる。
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:09:26.84 ID:g2Ml+n1F0


大佐「勇ましい符丁ですね。」

提督「うちの連中が全力で後顧の憂いを断つべく

   敵の後方拠点をつぶしましたのでこの周辺の臆病者(チキン)連中に

   仕事をしてもらわにゃならんという訳です。」

大佐「臆病者(鶏)が突撃兵(きつつき)ですか。」フフッ



きつつきが連続して木を叩く音は時として銃声の様に形容される事を意識して

突撃小銃を持ち敵を掃討する突撃兵ときつつきを掛ける大佐。

また、余談ではあるが、きつつきの一種ウッドスパイトに掛けて

敵の船に穴を開けるとして戦艦ウォースパイトの艦船紋章に一時期使用されていた事もある。


565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:11:24.34 ID:g2Ml+n1F0


提督「私が今回の一件を知る事になった島風なんですが。」

大佐「はぁ。」

提督「この周辺鎮守府全てに立ち寄り救援を求めていた

   その航行記録はきっちり艤装に残っていたんですよ。」

提督「そしてですね。私の鎮守府での島風との会話は全て録音済みなんです。」

大佐「成程……。」

大佐「更迭、収監、懲役のお買い得3点セットを選ぶか救援の。

   救国の英雄になるかの簡単な二択を選ばせたという事ですか。」

提督「えぇ。とはいえ選択肢のない選択にはなります。」

大佐「一般的に前者を選ぶ人間はいませんかね。」フフッ

提督「おっしゃる通りです。」

提督「私が事前に本土の主管に問い合わせて

   救援を断った連中がどうなるかというのを教えたやりましたからね。」

提督「私が連中の説得に使ったのは

   お買い得3点セットの書類を先に作っておいたくらいですかね。」

提督「ここへ救援に向かっている間に幾人か

   周辺鎮守府へ連絡に向かわせていましてね。」

提督「もちろんきっちりと公式に記録に残る形で、です。」

大佐「不測の事態で連絡が来ていなかったとの言い訳を封じられますか。」

提督「椅子磨きに長けている連中は磨くのに長けておりますからな。

   よく滑りを良くするワックスを持っています。」

大佐「成程、口の滑りはいいでしょうなぁ。」

提督「ワックスの製造業者をお聞きしたいと囁くように部下には申し伝えてもいます。」

大佐「随分と人が悪い方だ。」



つまりは無能でありながらその地位にいるというのは口八丁、話術に長けるという事。

言い逃れをされては敵わないという奴である。

そして、そのワックスとは人と人の関係をよくする麗しきかな潤滑剤(賄賂)でもある。

小人なんとやら本土から離れた鎮守府ともなれば不正が横行するのもままあるわけで。

提督がその交友関係にある旧き友人にそれとなく連絡をとっていたというのは言うまでも無い。

566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:13:41.07 ID:g2Ml+n1F0


もっともその友人曰く。



「肥え太らせた後に出荷するつもりだったけどまぁ、どうぞ。」



と、軍人としての才ではなく商人としての才能は評価していたようである。

最も事態を説明した後、早く言えと慌てて証拠を送ってきたり

何処で情報が止められていたのか調べておくと言ってきたりとなかなかな友人でもある。

それらの合わせ技ともなれば麻雀ではないが数え役満で収監後、銃殺。

なんて結果になってもおかしくは無いわけである。



提督「願わくば尻に火が付いたアホ指揮官が部下を浪費しない事ですかね。」

大佐「消費ではなく浪費は困りますね。」

提督「おっしゃる通りです。」

大佐「しかしてこの作戦ですが……、Battle of Kawanaka?」

提督「よくご存知で。

   正しくは何度かあった川中島の戦いで特に有名な第四次の戦いで用いられた戦法です。」



武田の名軍師。

山本勘助がきつつきが木の表皮を叩き虫を中から叩き出し

その食べる姿から構想を得たと言われる作戦である。

この作戦自体は敵の上杉に見破られ成功はしなかったのだが

その作戦内容としては単純かつ有効な作戦である。


567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:15:58.21 ID:g2Ml+n1F0


基本的な流れとしては鉄床戦術そのものであり敵の背後を急襲。

そして正面に布陣した本隊とで挟み撃ちで叩くという物である。

しかし、違いも勿論有り通常の鉄床作戦は

前線で歩兵部隊が囮となりひきつけている間に敵後方を襲撃するのに対し。

今回のきつつき作戦は敵後方を急襲させ

敢えて作っている逃げ道へ敵を誘導するというやり方である。

当然ながらその逃げ道には本隊による待ち伏せつきな訳である。

総旗艦として無線機能の充実、経験の申し分ない瑞鶴がこれに当るのは当然といえる。



提督「周辺鎮守府の全力で当たらせれば後方急襲部隊の数は。」

提督「そうですね、数だけは我々が減らしたぶん敵を上回るでしょう。」

大佐「そして逃げ道に殺到したところを叩くわけですな。」

提督「航空戦力については艦載機の扱いに長けている連中を此方に残していますからね。」

提督「本音を言えば瑞鶴についてもこちらにまわしておきたかったくらいです。」



三次元機動可能な航空機による攻撃というのは直線軌道で飛んでくる大砲の弾より厄介な物である。



大佐「なかなかに見ものなようですね。」

提督「最後の仕上げですからね。画竜点睛とならぬよう締めてかかりましょう。」

568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:17:48.47 ID:g2Ml+n1F0


分遣隊集合地点

部隊を分け敵後方拠点を叩いていた部隊が合流する。

その集合地点に時雨の姿はない。



スパ「総旗艦に敬礼!」ガッ

瑞鶴「あー、そういうの良いから。」

スパ「礼を欠くと雪姉さんに後で怒られちゃう……。」

瑞鶴「よく教育が行き届いている事ね。」

瑞鶴「雪風は、確かに異質だけどねぇ。」

スパ「やっぱりそうなんですか?」

瑞鶴「あの娘が本気だすと電探でないと存在を追えないわよ?」

瑞鶴「存在が完全に周囲と同化しちゃうから。」

瑞鶴「居る、しかし、存在はしない。

   矛盾を含んでるけどそう表現するしかないもの。」

川内「だねー。だてにうちの駆逐No1じゃないよ。」

川内「提督がどこから拾ってきたか割りと謎だけどね。」

川内「瑞鶴。周辺鎮守府連中の木っ端どうする?」

瑞鶴「私達との艦隊行動は練度が段違いに低いから望めない。

   個別に戦闘目標を設定してつぶして貰ったほうがいいでしょうね。」

川内「了解。」

瑞鶴「ウォースパイト、私と、あなたが積んでる通信機の出力が大きいから

   そっちでも語りかけて貰えるかしら?」

瑞鶴「複数チャンネルで聞こえて居ませんでしたってのは勘弁願いたいからね。」

スパ「了解です!」ビシッ

瑞鶴「この作戦の肝は全軍の動きを合わせないといけない事なのよね。」

瑞鶴「たたき出す方向を間違えるとこっちが面倒な事になる。」

スパ「瑞鶴さん!各部隊への指示命令は何と打電しましょうか?」



川内との打ち合わせ中に88鎮守府以外の艦娘達へ何と指示を出すかとウォースパイトが訊ねてくる。



瑞鶴「………そうね。」

瑞鶴「あなたの国の有名な提督が言った名言でいいんじゃない?」

スパ「おぉ。あの名言ですか。」

瑞鶴「個別の標的を指示するよりいいでしょう。

   最優先事項だけはっきりさせて頂戴。」

瑞鶴「何をすべきかの作戦の概要はきっちりと理解しているでしょうからね。」



こうしてウォースパイトから各鎮守府の艦娘へ指示が出された。

その内容は。

569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:18:40.28 ID:g2Ml+n1F0



『 我が国は各員がその義務を果たすことを期待す! 』



570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:20:50.45 ID:g2Ml+n1F0

すこしだけ変えられた名言ではあったが。

簡潔なその電文は勇ましい文言ではないからこその

飾り気のない言葉が参加している艦娘達を奮いたたせた。

島風が周辺に助けを求めて回っていたことを

中央に報告していなかったとしても現場。

その現場に居た艦娘達が目撃をしていない訳がなく、

また人の口に戸は立てられないもの。

ともなれば今回の救出作戦を待ち望んでいた者の方が多いのは当然でもある。

88メンバー達と比べ練度低かれど、その意気軒昂也。

窮地に陥った仲間を救出せんと鬨の声をあげる。



瑞鶴「いいじゃない。」

川内「だね。時雨は別働?」

瑞鶴「えぇ。時雨クラスになれば考えて動いてもらった方が楽よ。」

瑞鶴「何人か下つけて自由にさせてるわ。」

川内「まー、将来の指揮官だよねー。」

瑞鶴「なんでうちに流れて来たのやら。」

川内「じゃ、ま。仕事をしますか。」

瑞鶴「あんたはいいの?」

川内「そうだねー。いつもの面子と以外だとね……。」

川内「一人の方が気楽かな?」

川内「まぁ、瑞鶴のお守りをしますかね?」

瑞鶴「へーへー。それでは背中宜しくお願いしますだよぉ。」

川内「任された。」

瑞鶴「よろしく。」


訳知り合った頂上同士のコンビ。

猟犬は野に放たれ、狩りは始まった。

571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 00:27:43.63 ID:g2Ml+n1F0
近接兵装はロマンですよね…、一部艦娘は所持したイラストになってますが使うことあるのでしょうか?
ボツネタにしたので近接で戦う川内姉妹のネタはあるんですがね
そういうのも書く人少ないなぁでそれなりに量は書いたものの筆がとまっている
イチャコラ読んでりゃ他のも読みたくなるというやつで…、自分で需要を満たすのもなんか違うと思うのです
他のSS作者様で書いてくださらないものかねぇと思うこと最近、増えませんね
愚痴が多くてすみません、皆様からの乙レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています
本当にありがとうございます、宜しければお気軽にレスいただけると感謝です
今日はこれにて終了です、本当に少しで申し訳ないです、またの次回も御待ちいただけると幸いです
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 01:51:17.77 ID:GTH0gUlO0
瑞鶴最後の通信である機動部隊の誘引に成功が栗田艦隊に届くことはなかったことを思い出すと通信設備が充実しているというくだりが悲しみを誘う
島風を見捨てた周辺海域の提督への報復はいずれ元締め潰した後にシレッと蒸し返して完遂したいもんだ
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 13:56:47.31 ID:333pmtaK0
乙乙
近接と言うと雷と天龍がまず浮かぶが他にいたっけ
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 19:24:20.85 ID:ru7CQCFs0
乙乙乙です
近接といえばヤバレカバレでになって手持ちの魚雷で殴りかかるなんてのも
有り得そうで怖い
二水戦の逆落としはすれ違いざまに相手に直接魚雷を叩き込むなんて話も
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 21:27:36.65 ID:tDnlfRh70
速報に拘らなきゃ、割と熱い艦これはあると思うけどね
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 22:19:12.07 ID:GTH0gUlO0
>>573
叢雲 伊勢型 ゴトさん 皐月 多分文月など
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/07(金) 02:05:02.75 ID:HnBEtA56O
文月は持ってないぞ
武功抜群は皐月艦長に贈られたから皐月だけのもの
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:22:28.82 ID:FWWFZVbA0
お世話になります、更新に参りました
いよいよ大詰めへ、何とかこのスレ内に納めるぞ…
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:24:46.26 ID:FWWFZVbA0

瑞鶴達88鎮守府救援部隊分遣隊の合流2時間前



敵 深海側包囲軍 駆逐古姫隊



古姫「連絡…、遅かったわね…。」



タ級からの伝言を苦悶の表情で受ける駆逐古姫。



タ級「………。」

古姫「みなさい。あれを。」



駆逐古姫が指差す方角、水平線の向こう側からは黒々とした煙が上がるのが見えた。



タ級「あの方角は!」

古姫「えぇ、貴方の主である戦艦棲姫が

守将として守備に付いていた後方拠点のある方角。」



その煙の量をみれば拠点が陥落した事は察しが付く。



古姫「戦艦棲姫は覚悟を決めていたのでしょうね……。」

タ級「………。」

古姫「仇討ちや後追いはやめなさい。」

古姫「戦艦棲姫が貴方を此方に遣した意味を考えなさい。」

タ級「意味ですか?」



はるか遠くの煙を睨み付ける表情をしていたタ級へ嗜めるように言う駆逐古姫。



古姫「あの娘が撤退の進言に貴方を遣したという事は

貴方にしか出来ない役割が此方であるという事よ。」



タ級は戦艦である。そして、その装甲は厚い。

何かに思い至ったかはっとする表情を見せるタ級。

580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:28:13.04 ID:FWWFZVbA0


古姫「そういう事よ。

戦艦棲姫は貴方に戦艦水鬼様を逃がす際の殿を託したのよ。」



戦艦棲姫の覚悟とその託された想い、

それを知ったタ級はがっくりと項垂れる。

重巡棲姫との連絡も付かなくなっている。

これから導き出される敵の行動は……。

駆逐古姫は考える。考える為の時間は少ない。

自身の経験、そして、敵が設定しているであろう勝利目標。

自分達の現状を考えれば撤退しか道はないのだが

どうすれば安全に総旗艦の戦艦水鬼を逃がす事ができるか。

敵の目的は何であろうか?

至上命題なのはこの地に残る味方戦力の救出なのは間違いない。

では、こちらの殲滅についてはどうであろうか?

その答えを導く鍵は敵が先に後方拠点をつぶしに掛かったという点。



古姫「一般的な鉄床戦術を取るのであれば

   本隊となる部隊で前線を押さえる陽動を図るはず。」



そう、一般的な鉄床戦術は装甲に勝る兵科で前線の敵をひきつけ

機動力に勝る兵科で敵の後ろを奇襲し前後で挟み撃ちを行う包囲殲滅戦。



古姫「挟み撃ちをするのであれば

   先に行動を起こすのは後方拠点の襲撃ではないはず。」



正しく行うなら、先に本隊を叩き、本隊側に後方拠点から援軍を送らせるなどをして

後方への注意が逸れた時に機動力を持った精鋭で突き後方を陥落させるのが定石。

だが、敵は順番が違う。



古姫「理由は?そうせざるを得ない理由があるという事?」



一般的?そう、一般的ではない。

一般的な鉄床作戦は前方で釘点けにする本隊と

後方襲撃の部隊とは連携が密に出来ないと無理なのだ。

それは作戦の決行において双方の部隊の練度が同程度

或いは後方側担当が精鋭である事が望ましい。

581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:30:01.64 ID:FWWFZVbA0


古姫「なるほど。」



一つの推論。いや、それこそが理由であり結論だろう。



古姫「後方部隊は数が多いけれど存外錬度の低い兵の方が多い?」

古姫「連携に不安要素がある。」



敵に囲まれ後方を、

退路を絶たれ逃げ道を指定されている中での一筋の光明。



古姫「艦隊参謀長駆逐古姫麾下の全軍へ告ぐ!」

古姫「我が部隊は敵拠点攻略を停止!別命あるまで待機!」



自分の指揮権下にある部隊へ敵攻略の手を止め待機命令を下す 。

これは臆病風に吹かれてのものではなく。

総旗艦からの撤退命令が出れば即応させる為の物であり

その後の目的については。



古姫(突破口を切り開く為の捨て駒に……。)

古姫(麾下の皆。すまない……。)



ここからは時間との戦い。

敵が後方拠点を潰したのであれば現在包囲している敵

目の前の敵救援対象が呼応して反攻してくる可能性もある。

その事態は避けたい。



古姫「戦艦水姫様の下へ行かないと!」



自分の麾下部隊へ撤退の為の方角と指示を飛ばし

撤退時は先頭を切れるような状態にして駆逐古姫は本陣へと急いだのだった。

582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:31:40.39 ID:FWWFZVbA0


深海敵地攻略部隊 本隊 戦艦水鬼部隊 本陣



戦水「状況は分かったわ。」

戦水「正面の敵拠点攻略は諦めましょう。」

空鬼「私が最初に負傷し敵本隊の迎撃に失敗したばかりに…。

   申訳ありません。」

戦水「あなたに問題はなかったわ。あれについては敵を褒めるべきかしらね。」

空姫「正面を攻略し我々が拠点とするのはいかがでしょうか?」

戦水「愚作。それこそ無能の極みよ。

   これだけの相手に篭城戦を戦える自信は私は無いわね。

   それよりも敵の包囲網が完成する前に

   撤退をすべきと言う駆逐古姫の進言が正しいわ。」

戦水「今なら損害は多いけれど全滅は避けられる段階。

   全軍に撤退命令を出して頂戴。」

古姫「進言を受け入れてくださりありがとうございます。」



予想以上にあっさりと進言を受け入れ撤退の決意をする戦艦水鬼。

状況が不利と判断すれば撤退する事に迷いが無い辺りは

他の水鬼級と比べ秀でているであろう。

だけにもっと早く、そう、空母水鬼が負傷し戻ってきた時点で撤退を決めていれば。

駆逐棲姫達の部隊は元より重巡棲姫、

そしてなにより戦艦棲姫を失わずに済んだであろう。

583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:33:01.46 ID:FWWFZVbA0


戦鬼「嘆いても時は戻らないわ。

   古姫、どの方向へ逃げるのが最適解と思うのかしら?」

古姫「はい。私が考えるにこの方角に敵の包囲網の穴があると思われます。」



そして、駆逐古姫の指揮下で深海の撤退戦が、提督の指揮下で艦娘の追撃戦が始まった。



強襲揚陸艦 艦橋 指揮司令室



提督「大佐。始まりましたよ。」



司令室内のモニターに明滅する光を見ながら提督が語りかける。



大佐「見事に前方へ叩きだす事に成功したようですね。」



それは敵が見事に策に嵌ったとの証の明滅。



不知火「司令。こちらを。」

提督「減った戦闘機、艦攻、艦爆も到着予定か。」



不知火が渡してきたメモ紙に目を通す。



大佐「あぁ、初めの戦闘で減った機材の補充ですか……。」



強襲揚陸艦には艦娘用の艦載機の予備は

それ程積んできては居なかったはずだがと思う大佐。

最初の防衛戦時に当てはあると言っていたそれが着くのであろう。

だが、この光点の数は……。まさか?!

584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:34:53.88 ID:FWWFZVbA0

提督「お気づきになられましたか。」ニヤリ

大佐「確かに船で輸送するより直接飛ばした方が早いですね。」



船で運ぶより飛行機を飛ばしたほうが運搬という点では早いのは当たり前。

ただ、人でやろうと思えばパイロットの疲労問題や

人員の都合などでとてもではないがやれたものではない。

更に言えば長距離、長時間飛行した後にさぁ、戦え、根性だ。

となればいかな熟練パイロットであろうと最高の結果を出す事は困難だろう。

だが、艦娘の使う艦載機のパイロットは疲労しらずの妖精さん達である。

妖精達の疲労は使用者の艦娘に移るとの話でもあるが……。

その頃の海上では栄養補給にいそしむ姿があった。



グラ「疲労回復の為に甘味を採るか。」ゴソゴソ

瑞鳳「あっ、そろそろ?」

グラ「あぁ、瑞鳳も食べるといい。」

瑞鳳「じゃぁ、お茶にすりゅ――?」

グラ「いただこうか。」



そう、艦娘には疲労回復専用の戦闘糧食。甘味間宮羊羹がある。


585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:36:55.44 ID:FWWFZVbA0

大佐「成程。成程。実に合理的だ。」

大佐「ですが。航続距離については?

   空中給油機など無いはずでは?」

提督「それについてはそちらの同盟国の

   フォークランド時の対応を参考にさせていただいています。」

大佐「Operation Black Buck ?」(ブラックバック作戦?)

提督「その通りです。爆撃機と戦闘機や艦爆といった違いはありますが

   無理やり航続距離を伸ばすやり方は参考にさせてもらっています。」

大佐「成程。敵の尻を蹴りだせばこちらに向ってくる敵の方角は

   分かりきってますから早期警戒機の幾つかを誘導に回せるという事ですか。」

提督「我々の鎮守府からこの海域までのあいだに補給艦と護衛隊をつけた空母を配置。」

提督「燃料を補給後離陸。それの繰り返しで艦載機を飛ばし続けている形です。」

大佐「なるほど補給艦をリレーで回すことで

   空母艦娘とその護衛艦隊へ燃料、弾薬を切らさない形ですね。」

大佐「空母へは燃料だけの補給で良い訳ですから

   補給艦娘に積む燃料も弾薬を減らして多く積めますね。」

大佐「艦載機については収容可能数以上であったとしても救出先に地面はありますしね。」

提督「そうです。仮に我々の空母娘達で収容出来なくても

   周囲に島が幾つもありますからね。そこへ降ろせばいいわけです。」

提督「奇策で理屈は分かっても普通はやらないという奴です。」

大佐「かの国はそれをやりますからね。」

提督「かの国の柔軟な発想は当り外れありますが様々な戦訓を与えてくれます。」



提督の言葉に頷く大佐。

586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:38:16.14 ID:FWWFZVbA0


「You have control 」(無線)

グラ「I have control 」モチモチ(無線)



グラーフが艦載機の管制を中継した艦娘から無線を通し受け継ぐ。



グラ「零52型が中心か。」

グラ「フム。さてと、艤装を無理やり拡張しているからな。」

グラ「どれだけ余分に動かせるかといった所か。」

瑞鳳「リミッター外す感じ?」

グラ「うむ。

   艤装の寿命を縮めるから好ましくはないが贅沢も言ってられまい。」

グラ「我々が始めて、我々が終わらせる。」

グラ「ともなれば主人公は我々であろう?」

瑞鳳「やだ、グラたん口説いてる?」

グラ「Shall we dance ?」ニヤリ

瑞鳳「きゃぁ ――――― ///」

587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:39:20.22 ID:FWWFZVbA0


秋津洲「ワイルドギース01より管制へ!」

不知火「こちら88コントロール。どうされました?」

秋津洲「敵艦隊発見!艦影のライブラリへの照会よろしくかも!」

不知火「確認しました。照合します……。」



二式大艇から送られてきたデータの照合。



不知火「照合完了、艦影、空母水鬼です!」



にわかに色めき立つ司令室内。



提督「敵の将官か。優先して狩ってくれ。」



提督の指示が排除への優先順位を告げる。



グラ「艦載機の数で押せるのであれば我らが有利!」

瑞鳳「艦攻隊に艦爆隊のみんな!やっちゃぇ!」



正面、提督達本隊の空母艦娘が管制する艦載機部隊が一斉に哀れな獲物。

空母水鬼へと襲いかかる!


588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:43:02.11 ID:FWWFZVbA0

空鬼(来たわね!これでいい!これで!)



空母水鬼の随伴は対空に定評のあるツ級ではなく駆逐ナ級。

もっともナ級自体が最新鋭である為それもなかなかの対空ではあるのだが。



グラ「ふむ。なにやら覚悟を決めた様子だな。」

瑞鳳「負けを悟った感じ ――― ?」

空鬼「そういうことよ!さぁ!かかって来なさい!」



覚悟を決めた空母水鬼。

最後の足掻きと自身の艦載機を全て出しグラーフ達の部隊に抗う。

だが、最初の接触時と違いその戦闘機や艦爆、艦攻の数は決定的に違う。

空母水鬼の随伴は徐々に数を減らし、その直援機もついには零となる。

飛行機達の攻撃が集中すれば制空の取られた状況では為すすべなどある訳が無く。

空母水鬼は集中攻撃を浴び、大破炎上、そして轟沈へ。



グラ「なかなか頑張った。いい、戦争だった。」フム



お互い顔の見える距離ではない。

グラーフははるか遠くの距離で炎上、

ゆっくりと沈降して轟沈してゆく相手へ最大限の賛辞を贈った。



空鬼「これで、これでいい。」

空鬼「私は役割を果たした………。」

空鬼「戦艦水鬼様……。後は。後は、宜しくお願いいたします……。」



そして、空母水鬼は役割を果たし、

満足した顔で水底へと逝った。



589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 00:46:50.23 ID:FWWFZVbA0
今日はこれにて終了
お読みいただいている皆様には展開が遅いよ!と怒られそうですがもう少しでなんとか…
今まで何も動いていなかった娘達がようやく出番です!(雪風達負傷組みは……)
後少しで終われそうですので今しばらくお付き合いいただけると幸いです
乙レス、感想レスありがとうございます、いつもありがたく拝読しています
どうぞ、お気軽にレス残していただけると幸いです
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 06:18:30.33 ID:kKA6vi+u0
更新乙です
深海側の描写も多いので肩入れしたくなってしまいますね
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 06:47:12.55 ID:2pwfk3YdO
乙!
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 13:28:43.73 ID:Xmrg0bnv0
ブラックバックまで持ち出すとは…

あとは袁術殲滅戦よろしく十面埋伏の中ですり潰されるのか金ヶ崎の退き口となりトップは逐電しおおせるか
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/17(月) 16:08:51.68 ID:CRptWKzG0

艦娘だからできる戦術ってええなあ
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:32:01.15 ID:O5Yg9HcV0
私事でばたばたしてきておりますが更新にきました
お時間よろしければお付き合いいただけますと幸い
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:33:42.88 ID:O5Yg9HcV0
提督達救援対象鎮守府



その鎮守府の指揮は提督が嘆いたように少佐が執っていた。

階級としてそれは余りにも低く提督として新米と言えた。

しかし、彼は踏ん張り救援が来るまで耐えきった。



少佐「敵が。敵が撤退していく?!」



目の前の包囲網が解かれ、敵が撤退していくのが見える。



少佐「ここは敵の追撃を!」



今まで篭城戦を戦ってきていた全員に命令を下す少佐提督。



「島風の仇!」

「仲間の恨みを!」



目の前で惨殺された島風、

そして、幾度にも及ぶ攻撃で散っていった仲間達の仇を討つ。

その強い意志が極限まで追い詰められ疲労しているはずの彼女達に力を与えた!



ウォォォォォォオオオ!


596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:34:51.56 ID:O5Yg9HcV0


古姫「包囲していた敵が追ってきたわね…。」



予想の範疇。

既に深海勢は撤退戦に切り替えて部隊を素早く退いている。



タ級「空母水鬼様撃沈の報!」

戦鬼「空母水鬼が撃沈?!」



彼女程の豪の者であれば

包囲網を抜けられると思っていたのにも関わらず轟沈したと?

包囲網の穴と思われる所へ斬り込みを掛けていた自分の部下、

指揮官級がやられた事は戦艦水鬼に更なる衝撃を与えた。



古姫「戦艦水鬼様!立ち止まられてはいけません!」

古姫「空母水鬼様が何の為に沈んだと思っているのです!」

戦水「駆逐古姫……。ここを攻めたのは間違いだったのかしら?」

戦水「戦艦棲姫を始めとした優秀な部下を失ってまで獲るべき場所だったのかしら?」



自身の部下が次々と為すすべなくやられていく戦況というのは

今まで負けなしできていた戦艦水鬼には実に耐えられない物の様であった。


597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:36:15.40 ID:O5Yg9HcV0

空姫「戦艦水鬼様?」

戦鬼「敵は強いわねぇ、私達、皆、死ぬのかしら……。」

戦鬼「ねぇ、どうせ皆死ぬのなら敵の旗艦を潰して…「この痴れ者!」パァン!



自暴自棄になりかけた戦艦水鬼に駆逐古姫の張り手が決まる。



古姫「貴方という方は何を考えているんですか!!」



戦艦水鬼の発言に怒り心頭に発した駆逐古姫が戦艦水鬼の服の襟首を掴む。



古姫「戦艦棲姫や空母水鬼様が何故に死んだと思っているのです!?」

古姫「皆、貴方に次の、深海棲艦の未来を託し、

   生き延びて欲しいが為に死んでいったのですよ!?」

古姫「この世界の支配者の器たる才を貴方に視たからこそ

   彼女達は命を賭して貴方が逃げる為の時間を稼ぎ敵を防いだんです!」

古姫「ここで貴方が折れてどうするんですか!」

古姫「死んでいった者達にすまないと思うなら

   生きて敵を滅ぼす為に再起を誓うべきではありませんか!」



激昂し、その怒りのままに戦艦水鬼を叱り飛ばす駆逐古姫。

そして、戦艦水鬼のドレスの襟首を掴む手は怒りに震えていた。



戦鬼「手を……。手を服からどけてもらえるかしら。」

古姫「これは…、無礼いたしました…。」

戦鬼「いえ、私が愚かだったわ。」



その顔からは迷いが消えた。



戦鬼「私は全力で逃げるわ!」

戦鬼「駆逐古姫!空母棲姫!二人とも殿は頼んだわ!」



そして、戦艦水鬼は護衛を連れ全力で海域を離脱していった。


598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:37:41.07 ID:O5Yg9HcV0


古姫「ふ ―――― …。

   戦艦水鬼様が全力で逃げるなら追いつけないでしょうや。」

空姫「流石に戦艦水鬼様ほどの方になると逃げっぷりもさまになるわねぇ。」

古姫「あれくらい豪快に逃げてもらわないと困るわ?」

空姫「そうね。戦艦水鬼様には逃げて深海棲艦の戦力を立て直していただかないと。」

空姫「それにしても、始めに敵の本隊の力量を見誤っていなければ

   犠牲は少なかったかもしれないと思うのだけれど。」

古姫「やめときましょう。戦の『たら』『れば』なんて言い出したらきりがない。」

古姫「今回は敵がたまたま一枚上手だっただけよ。」

古姫「私達はここで私達がなすべきことをしましょう。」

空姫「えぇ。そうしましょう。」

空姫「エンドロールが流れ始めたからといってまだ完全に終わった訳ではないですもの。」



二人の姫が敵へ向き直り咆哮を挙げた。

599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:40:48.40 ID:O5Yg9HcV0


強襲揚陸艦内 艦橋司令室

不知火「秋津洲さんから入電です!」

提督「どうした?」

不知火「撤退中敵旗艦艦隊と思しき艦隊を発見するも

    敵艦隊の攻勢激しく警戒機の護衛が落とされたので

    撤収するとの事です。」

提督「敵さんも必死こいて逃げているようだな。」

提督「位置は?」

不知火「此方です。」



机代わりにしている大型モニターにタップして敵を表示させていく不知火。



大佐「ははぁ。これは敵に天晴れな才を持った者が居たようですね。」

提督「確かに。これは上手い事こちらの隙間を突いて来ています。」



駆逐古姫が戦艦水鬼を逃がす為に戦闘を行っている場所は

丁度、提督達88鎮守府組み本隊と周辺鎮守府連中の合わせ目だった。

三角形をイメージしていただけるだろうか。

包囲網が三角形で構成された場合、一辺を瑞鶴達遊撃隊、

もう一辺が周辺鎮守府部隊。

そして、底辺が提督達本隊。

ただ弱いところを突くというのであれば周辺鎮守府部隊を潰せばいいのだろう。

だが、思い出していただきたい。

深海棲艦達が攻め立てた場所の特徴を。

そう、この場所は敵、深海棲艦の陣地へと食い込む形に突出した場所である。

だけに周辺鎮守府で構成された部隊の方向を突き抜ければ

そこは深海棲艦達にとって敵である艦娘側勢力下なのだ。

寡兵でもって敵の支配地域を追撃を交しながら逃げるというはとても困難である。

たまたま上手くいった狂人集団達が歴史にその名を残してはいるが普通は行わないもの。

失敗した者の方が多いのは当たり前でそれが語られる事が無いのは歴史が雄弁に物語る。

で、あればという事で駆逐古姫が目をつけたのが包囲網端である。

中心部分からの面の構成ははどうしても端の部分の展開が遅れる。

駆逐古姫はそれを巧みに見抜き一番脱出できる可能性がある方向を目指していた。

600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:42:03.15 ID:O5Yg9HcV0


提督(……、救援の目的は達したと言えなくは無いか。)

提督(敵の指揮官をどうみるか……。)



後顧の憂いを断つのは基本なれど。



提督(手札が足りない。大役は狙うべきではないか。)

提督(現状で目的は達して後はボーナスを狙うかどうか。)

提督(ポーカーにしてもなんにしても賭け事ってのは引き際が肝心だ。)

提督(伏せ札で一枚とっておきがあるとは言え、

   今時点で幕を下ろすのもありか。)

提督(周辺鎮守府連中には期待できんしな……。)



88鎮守府の主力に負傷者が出ている現状で最優先の目的は達成済み。

となれば逃げる敵は追うべきではないか?

死に物狂いで逃げる敵と言うのは時として予想以上の力を発揮する事がままある。

その必死の力に盆を返されてはたまらない。

提督がそう考えた時だった。

601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:44:02.54 ID:O5Yg9HcV0


不知火「司令。瑞鶴さんから無線通信が入っています。」

提督「繋いでくれ。」

瑞鶴「提督。空母棲姫が頑張っているって?」(無線)

提督「あぁ。」(無線)

瑞鶴「私がやるわ。」(無線)

提督「そうか。頼んだ。」(無線)



そして、瑞鶴からの無線通信を終えたくらいに

また一人の艦娘からの通信が入る。



不知火「司令。時雨さんからも通信が入っています。」

時雨「提督。」(無線)

提督「瑞鶴の護衛ではなく移動していたんだな?」(無線)

時雨「うん。察しが良くて助かるよ。僕も行くよ。」(無線)

提督「頼んだ。」(無線)



瑞鶴からの許可を得て、

手勢を連れ遊撃隊として行動していた時雨は

予め包囲網の穴となりそうな場所を予測して動いていた。



提督(敵の殲滅……、いけるか?)

提督(総大将を逃がす為に敵は必死になるだろうが。)

提督(瑞鶴に時雨…。自分で考え動く事が出来る、

   更に有効打を打てる兵というのは実に得難い。)

提督(指揮官として将として。次代を担える存在だ。)

提督(追撃戦は大事だが。二人を失う愚は避けないといけないな…。)


602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:47:34.02 ID:O5Yg9HcV0
88鎮守府敵後方襲撃部隊


瑞鶴「川内!私の体の護衛頼まれてくれない?!」

川内「……。全力でいくの?」

瑞鶴「敵の艦隊を追っかけるのに

   私が向っていちゃ間に合わないしね。」

瑞鶴「今飛んでるのを直接向わせるしかないでしょ。」

川内「そっか。」

瑞鶴「魂降ろし(フルダイブ)をやるわ。」

川内「了解。お姫様の体には指一本触れさせないよう頑張るよ。」

瑞鶴「宜しく。」



そして瑞鶴は意識を集中させ両手を顔前で合掌した。

嘗て、深海棲艦への対抗策として艦娘が出始めた頃の事。

まだ二つ名持ち(ネームド)制度が始まる前の事。

比類なき強さを誇った、

その種類の艦娘として艤装の製造番号が初期の艦娘が居た。

一人は呑波の赤鬼と呼ばれもう一人は呑舟の青鬼と呼ばれた。

呑波、呑舟、どちらも意味は同じで舟を喰らう程の大魚。

二人はその名の通りに多くの舟、深海棲艦を喰らい沈めた。

そしていつしか、二人を合わせて呑波呑舟、大喰らいの一航戦と呼ぶようになる。

その強さ比肩する者なし、時として国士無双と賞されるほどだった。

強すぎた艦娘。

強すぎた為に敵深海棲艦に徹底的に狙われ

最優先排除対象とされ最期は水底へと消えていった。

その半ば伝説として語られる二人が得意とした、

いや二人だけが使えた特殊な艦載機操縦方法がある。

それは艦載機に自己の意識を載せるやり方『 魂降し 』と呼ばれ、

それは艦載機の搭乗員妖精と自己を完全に同化する手法だった。

同化した艦載機達は一個の群体として動き敵を屠っていった。

ある程度の指示を与えた後は搭乗員妖精に任せる通常の操縦方法と違い

艦載機全てを操り自己の視界とするするその操縦方法は

艦載機妖精同士の連携が不要となり最強を誇った。

しかし、それを行う艦娘への負担は計り知れないほど大きく、

結局、この二人以外行えた者は居ないとされる。



瑞鶴「加賀さんみたいに降ろした後にお握り摘むような余裕は無いけどね。」



パンと改めて一拍。


瑞鶴「88鎮守府筆頭空母、瑞鶴!相手仕る!戦技!魂降し!」


その瞬間、瑞鶴が繰る艦載機達の纏う気配が変わった。

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