【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:26:20.39 ID:UVTnURzf0

提督「大方、欲に目のくらんだ海軍の誰かの仕業だろ。」

秋津洲「武器業者さんかも?」

提督「武器業者の実際はイメージ程儲からないのが実情だなぁ。」

提督「武器だけ作る重工業より化学や総合商社、

   戦費調達に関連する銀行、証券とかの金融屋だろうな。」

提督「武器開発に関連しての技術の方が民生転用して大きく儲けれるのよ。」

提督「枯葉剤なんかの土壌汚染は食料問題に直結するから

   化学兵器を使用された国は土壌汚染を無視して作物を作るとかで無い限り食料輸入国になっちまう。」

提督「コングロマリットなんかだと武器製造の重工業、食料調達の総合商社、あるいは穀物商社、

   戦費調達に関わる国債の販売引き受けで銀行、証券会社。全てにおいて金を稼げる。」

提督「戦争ってのは物と金を大量に消費してまったく生産性がない。」

提督「門外漢だからあまり詳しくないが軍事ケインズ主義っていう、

   まぁ、経済の調整目的で戦争をやる、あるいは強力な軍隊を持ち大量の軍事費を投入すべき、

   なんていう学説もあったりする。」

秋津洲「めちゃくちゃかも…。」

提督「学説が出る前だが成功例としてナチスドイツやら同時期のルーズベルトが有名かな。」

提督「ただ、こいつらはちょっと頭の螺子がなぁ。」

提督「とりあえず、ざっくり言うと巨額の軍事費が経済を好転させると考える経済学だ。」

提督「第二次世界大戦の例で言うなら週間護衛空母なんてやれたのは

   当時の不況により余っていた労働力の解消と

   金をばら撒く公共事業への大義名分を手に入れる為だったという見方も出来る。」

秋津洲「工業力があればこそのような気がするかも。」

提督「まぁな。んでだ、折角、戦争が起こってくれているなら

   なるべく長引かせて金を儲け様と考える輩が出てきてもおかしくはないさ。」

提督「長引く程にばら撒かれる金は多くなるからな。」

秋津洲「救いようの無い馬鹿かも…。」

提督「確かにな。」

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:27:46.17 ID:UVTnURzf0

明石 グゥ

提督「と、薬が効いたな。」

秋津洲「やっぱり睡眠薬いれていたかも。」

提督「サラミは香辛料やら塩を多く使う分、味覚を鈍くしてくれる。」

提督「継ぎ足した酒に入れた薬の味を悟られずに済むって寸法さ。」

提督「惚れた女が一緒に死のうと言ってくれたとしても男は黙って拒否しねえとな。」

提督「死ぬのは一人でいい。」

提督「それと、誓いの言葉だが。死が二人を別つまで。って続くのを忘れてやがる。」

提督「まったく忘れっぽい奴だよ。」

秋津洲「提督。」

提督「秋津洲。すまねぇがお前の気持ちに応えてやることは出来ない。そして、明石の事、頼まれてくれないか。」

秋津洲「提督。」グシッ

提督「泣くな。化粧が崩れるぞ?」

秋津洲「ていとく〜。」ブワッ

提督「苦手なんだよ。女の涙ってのは。」

提督「まったく……。」

秋津洲 ウワァ―――――ン



抱きつく秋津洲の頭を撫でながら提督は一つ、深く溜息をついた。

一頻り泣いた秋津洲が良く眠る明石を抱え拠点から離れたのはその日の深夜。

不肖にして優秀と相反する評価が付けられた弟子への手紙とともに。

これはタイミングとしてギリギリだった。

なぜなら、空母棲姫達主力部隊侵攻の開始は払暁と同時だったから。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:29:37.56 ID:UVTnURzf0

夜明けの時間にも関わらず空がいつまでも暗いままだった。

敵が多すぎて空の色、海の色が見えなかった。

辛うじて命を拾った艦娘の証言である。

飛行機が八分に空が二分。

船が八分に海が二分。

いかに敵の航空兵力と艦艇が多かったかが分かるだろう。

払暁と共に始まった深海の一大攻勢作戦は翌日の黄昏時には終わり

黄昏と類義語である落日を南太平洋に展開する海軍に齎す事となった。



日本海軍南太平洋重要拠点



南方「この敵後方拠点をこうもあっさりと落すことが出来るだなんて思いもよらなかった。」

南方「人間達にとって要衝のはずなんだけどな。」



空母棲姫率いる主力C部隊が陥落させた敵拠点で合流した南方棲姫が最初に交わした言葉。



空母「そうそう、ここの指揮官達の首は浜辺に並べて置いたので一応見ておいて?」

空母「皺だらけの爺だの脂で弛みきったデブの首ばかりで華がないけれど。」



苦笑しながらその要請に了解したと返す南方棲姫。



空母「まぁ、攻められるはずが無いとの思い込みが防衛に割く人員を少なくしていたのでしょう。」

空母「実際あっさりとしたものだったわよ?」

南方「我々の拠点からここまでの距離を考えればそう思うのも無理は無い。」

空母「もっとも割いていた所で応戦出来ていたかどうかは分からないけれどね。」

南方「そうね。これだけの数を動かす作戦はそうそう実行できないものね。」



圧倒的物量で押す作戦というのは立案出来てもなかなか実行出来る物ではない。

RTS等のゲームをプレイした事がある方は分かると思うが大量の軍勢を一度に整えるのは

それだけで資源が底をつきかねない行為である。

だけに数を頼みとする深海勢力でも今回の作戦に用意した軍勢は前例の無い規模だった。

この時の作戦に使用された深海の主攻部隊C郡参加戦力は以下の数である。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:31:11.42 ID:UVTnURzf0

戦略爆撃機1500機

護衛参加戦闘機800機

参加した艦艇

駆逐艦(級種階級別省略) 423

軽巡洋艦(同省略) 45

重巡洋艦(同省略) 33

戦艦(同省略) 36

空母(同省略) 51

軽母(同省略) 54

補助艦艇(兵站等輸送用補給艦) 1500

これだけの艦艇数が一度に作戦参加して正しく蹂躪をしたのである。



南方「ここを落したことで兵站輸送関連の情報を精査すれば

   敵の拠点も全て所在が明らかになるだろうな。」

空母「ここの要衝を私達の拠点化に成功すれば敵の本土侵攻への拠点としても使用可能ね。」

空母「さてと、後の事は任せてもいいかしら?」

南方「?」

空母「私がこれだけの作戦指揮をとった理由ぐらい察しなさいよ。」

南方(まだ諦めてなかったのか。)

南方「……、爆撃機に私の部下も出そうか?」

空母「いらないわ。黒こげの剥製なんて面白くないでしょ?」

空母「剥製にするなら生身のままでないと。少数の手勢で充分よ。」

空母「あなたには此処の足場固めと残敵掃討の残業をお願いしてもいいかしら?」



笑顔で要求してくる空母棲姫。

勝利した後の個人的な楽しみ。

いや、寧ろ其方が主目的で敵の後方重要拠点を落すことは前座。

彼女は自分を虚仮にしてくれた提督を確実に殺す為、動き始めた。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:32:37.08 ID:UVTnURzf0

補給所8番近海



空母「日も暮れて来たわね。」

ヲ級「空母棲姫様、近くにどんちゃん騒ぎというか賑やかというか。」

空母「?」

ヲ級「尋常ならざるおかしな状況の鎮守府があります。」

ヲ級が言いにくそうに伝える変な様子の鎮守府の状況。

空母「なにそれ、あからさまに罠じゃない。」



どうしましょうという顔で空母棲姫を見るヲ級。



空母「実に面白いわね。本当、敵の指揮官の中で狂おしい程に会いたいと思った相手は初めてよ?」

空母「出来れば生きたまま味方に引き込みたいわね。」アハハハハ

ヲ級「敵の指揮官をですか?」

空母「私達に足りないものは何だと思う?」

ヲ級「?」

空母「全体を見通して総合的に戦略を立てる戦略参謀よ。」

空母「一部にそれをやれる姫、鬼の娘達も出てきているけど圧倒的に足りないわ。」

空母「さらに南方棲姫の様に兵站管理の出来る戦務参謀なんてもっと足りない。」

空母「私達が現状勝っているのは量だけよ。質を上げなければ勝利は無いわ?」

空母「さて、どうしようかしら?」



一般的な話をすればあからさまな罠にのる相手は居ない。

だが、現状、この戦闘域でまともな戦力を残している相手は居ない。

そして、自分が連れている部下達は選りすぐりの精鋭。



空母「ちょっと挨拶くらいしてみるべきかしら?」

空母「あなた達は万一に備えて戦闘体勢のまま待機しておいて。ちょっと顔を見てくるわ。」



空母棲姫はまんまと敵の思惑に乗った、好奇心が勝ってしまったのだ。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:34:18.47 ID:UVTnURzf0


その鎮守府は煌々と灯りに照らされ、腰に太刀を佩き正装をした人間が一人酒盛りをしていた。


提督「ようこそお嬢さん、我が鎮守府へ。」ニヤリ

空母「随分と面白い事を言うわね。」

提督「あんたは空母棲姫か?深海棲艦の図録で確認した事があるだけだが。」

提督「へぇ、写真よりずっとハクイ女じゃねぇか。」

空母「世辞の言葉として受け取っておくわ。」

空母「あなたが?」



尋ねる言葉はこれで充分。



提督「あぁ。」

空母「答えは分かっているけど一応聞くわ。あなた、私達の所に来る気はないかしら?」

提督「分かっているなら聞くだけ無駄だろ?」

提督「俺からもいいか?」

空母「どうぞ。」

提督「お前か?」

空母「分かっているんでしょ?無駄な質問よ。」

お互いの力量を知っている敵同士が出会えば。

提督「俺の首を獲るかい。」

空母「厄介な指揮官は生きていて貰うと困るのよ。」

空母「死んで貰えるかしら?」

提督「まぁ待て。最近の若い奴はせっかちでいけねぇや。酒でも飲もうじゃないか。」

提督「月が綺麗だぜ?」

空母「文学的なお誘いという訳ではなさそうね。」

提督「妻帯者なんでな。悪いが深い意味は無い。

   敵の優秀な指揮官という事なら話の一つくらいしてみたいとも思うものだろ?」

提督「それとも、その程度の心の余裕すらないのかい?」



ふんと鼻を鳴らし。



空母「いいわ、その酒瓶が空くまでは付き合ってあげる。」

提督「高級酒なんでな、時間を掛けてゆっくりと味わってくれ。」ニヤリ



それからゆっくりと2時間程、敵同士という形でありながら不思議な酒盛りは続いた。

そして、最後は訪れる。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/06(金) 00:36:55.77 ID:UVTnURzf0

提督「……、これで最後か。」

空母「そのようね。この酒盛りは貴方にとって何か意味はあったのかしら?」

提督「あぁ、大有りだ。俺の部下達を逃がす時間稼ぎに必要だったのさ。」



やられたという顔をする空母棲姫。



空母「何かの罠を仕掛けてくるのかと思っていたけど

   何も仕掛けてこない事が罠だったなんて。呆れたわ。」クスクス

空母「貴方みたいな指揮官は本当に厄介ね。心の底からここで殺せて良かったと思うわ。」

空母「さぁ、死になさい。」

提督「待て待てどうせ死ぬならそのでっけえ胸に挟まれて死にたい。」

空母「随分と肝の据わった願いね。いいわよ、いらっしゃい。」フフフ



ぎゅっ。



提督「ほほう。なかなかこれはボリュームあるじゃねぇか……。」ポムンポムン



スラッ。


ズンッ。



空母「!?」

提督「悪いな、俺も敵の優秀な指揮官を生かしとくわけにはいかねぇんだ。」



空母棲姫に抱きつきその背中から自分を貫くような形で刀を串刺しにて逃げられないように固定。



提督「一緒にあの世に逝ってくれや。」ニヤリ



カチリ。



提督が隠し持っていたスイッチを入れると大爆発が起き全てがその炎の中に飲み込まれる。

その爆発の炎は遠く離れた場所でも観測出来たそうである。

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:37:40.17 ID:UVTnURzf0
旧海軍後方集積地(現深海棲艦新拠点)



南方「空母棲姫が殺られた!?」

南方「……、了解した。一旦拠点に戻ってくれ。」



空母棲姫が死んだことを連絡する無線を受け空母棲姫に付き従っていた部下に撤収の指示を出す。



南方「くそっ!これからの深海棲艦を支える貴重な人材が!」

南方「ここの拠点化と平行しての残敵狩りは私だけでは厳しいというのに!」

南方「実におしい人材を失くした。」クソッ



空母棲姫が提督の自爆による相打ちにより南方棲姫の残敵狩り包囲網構築は遅れ、

結果として多くの艦娘がその包囲網から逃げ延びたのである。

これが、後に海軍最大の汚点とも言われる『 南太平洋の悲劇 』の全貌である。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:39:12.59 ID:UVTnURzf0

現在

提督「明石。探したぞ。」

明石「提督ですか。私に何か用ですか?」

提督「こいつもお前に渡しておこうと思って探していた。」

明石「バスクリンの缶ですか。」

提督「中身が強烈でな。疲れも吹き飛ぶ。」

提督「くれぐれも取り扱いには気をつけてくれ。」



カロカロコロ



明石「中身はなんですか……?」

提督「献金絡みの金の流れと積荷証券関連の金の流れ等色々だ。」

提督「俺の同期が時雨のやらかした事の裏取りしていて

   手に余るって事で俺に保険を掛けて来たんだ。」

提督「なんせ本土は魑魅魍魎の類が多いんでな。」

提督「表向きには時雨が主導してやった事になってそれ以外の関与を示す証拠が一切ない。」

明石「怪しいこと限りないですね。」

提督「あぁ、言葉は悪いが一介の艦娘風情に出来る山じゃねぇ。」

提督「中身を見ていたら明石が昔に勤めていた研究所の名前も出てきた。」

提督「それで、俺も再保険を掛けておこうと思っただけだ。」

明石「ありがとうございます。」

提督「礼には及ばん。世話になった師匠への手向けだ。

   お前ならこの情報の生かし方が分かるだろ。存分に役立ててくれ。」



提督はそう言い、同期から託されたUSBメモリのコピーを明石に渡したのだった。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:39:46.60 ID:UVTnURzf0

おまけ短編ギャグ 傭兵って個人事業主?
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:41:31.69 ID:UVTnURzf0

不知火「川内さんから確定申告の書類が提出されました。」

提督「もうそんな時期か。」

不知火「川内さんの場合は契約上個人事業主になりますから。」

提督「そうだな。」

不知火「他の個人事業主。傭兵扱いの方の提出書類の確認もお願いします。」

提督「懲役のある連中は海軍の方で面倒見てくれるが自由契約だと確認が入るのが面倒だな。」

不知火「国税局が査察に来ることがあるのでしょうか?」

提督「………、不知火。あいつらを舐めない方がいいぞ。」

不知火 ぬい!?

提督「居酒屋の所得隠しを見つける為にゴミを漁って

   使用された割り箸の本数や納品されたおしぼりの数を確認したり。」

提督「一ヶ月以上張込みをして店舗の来店客数を調べたり。」

提督「コミケの壁サークルに貼り付いて来訪者はもちろん売り上げた冊数のカウント。」

提督「印刷所での発行部数、書店委託同人誌の売り上げからのサークル売り上げ予測。」

提督「そして自宅やレンタル倉庫等へ捜査に入り在庫の誤魔化しを見破る。」

提督「あの手、この手で税金を取ろうと脱税を見逃さない。」

不知火「恐ろしい人達なんですね。」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:43:05.59 ID:UVTnURzf0

提督「まぁ、ここの場合、ほとんどが経費で落せるから川内には俺が色々指南しているがな。」

提督「後、調査に来ようとする連中の乗る船には

   護衛が出せませんと丁重にお伝えしているから、来る間に殉職する嵌めになる。」

提督「軍事施設に税金取立てというのが平和ボケした日本らしくもあるがね。」

提督「戦闘を艦娘に押し付けて自分らは平和を謳歌するというのは馬鹿げているとは思わないか?」

不知火「……。不知火の立場では返答致しかねます。」

提督「ん。にしてもあいつはもう少し上手くやれといわないとだな。」

不知火「おかしな点が?」

提督「これだよ。」



提督が指差す項目を見つめる不知火。



不知火「成る程。」

提督「これは艤装の一部になるから減価償却の方に廻せる。」

不知火「こちらは使い切り扱い出来ますので消耗品で経費に廻せますね。」

提督「あいつ向けに簿記の本でも買ってやるか…。」

不知火「経費で落しておきましょうか?鎮守府内図書館の貸し出し用とすれば可能かと。」

提督「頼む。」



外地鎮守府管理番号88。

傭兵だって個人事業主。

魚雷の一発、砲弾の一発で失う安い命。

地獄の沙汰もなんとやら、明日の命の遣り取りに、使うお金はTax Free

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:43:42.13 ID:UVTnURzf0

第四話 We Will Lock you 前編

※タイトルのLockがRockでは無いのは意図的にしています。御了承下さい。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:44:41.85 ID:UVTnURzf0

時雨「あっ、雪風。今日は休みかい?」

雪風「えぇ。今日はお休みです。」

雪風「時雨さんは?」

時雨「僕もだよ。これから明石さんの所へ注文していた商品を取りに行く所だよ。」

雪風「ご一緒してもいいですか?雪風も注文していた商品があったのを思い出しました。」



そして、明石の工廠兼酒保に着いた時そこには先客が居た。



スパ「だから高いですってぇ。」

明石「そう言われましてもねぇ。あなたの艤装特殊なんですよ。」

スパ「戦艦の艤装として普通でしょ!?」

明石「インチ。」

スパ「うっ。」

明石「だいたい艤装に使う部品くらいメートル法で作ってから文句たれろや。」アァン?

明石「整備に使う工具を揃える手間賃も入ってんだ。大まけにまけてその値段なんだよ。」

雪風「お取り込み中でしたか?」

明石「いえいえお客様。大丈夫ですよ。」



その光景はいつかみた光景。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:45:49.21 ID:UVTnURzf0

時雨「艤装の清掃用特殊洗剤が届いているって秋津洲から連絡を貰ったから取りに来たよ。」

明石「あっ、あれですか。タンパク質が綺麗に落ちる魔法の洗剤。」

時雨「うん。艤装の熱でこびり付いたのもあっという間に落ちるから重宝してるよ。」

雪風「雪風はTONEのレンチセットです。」

明石「そういえば時雨さんはエビのセットを先日購入いただきましたけど?」

時雨「使い勝手はいいよ。流石ロブスター製品だ。」



ウォースパイトが居ないかのように接客を続ける明石。



雪風「ウォースパイトさんはどうしたんですか?」

スパ「!」

スパ「聞いてくださいよぉ〜。」



半泣きのウォースパイトが語りだす。

曰く修理を頼んだらぼったくりにあったと。



雪風「ぼったくり。」

スパ「見てくださいよこれ!」



明石からの見積書を見せられる二人。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:47:55.66 ID:UVTnURzf0

時雨「うーん、これは仕方ない気がするかなぁ。」

雪風「そうですね。これは少し壊しすぎですね。」

スパ「え。」

時雨「戦艦は装甲が厚いから敵からの攻撃をかわすより

   装甲で受け止めるって考えになってしまうのが悪いね。」

雪風「長門さんも同じ戦艦ですが避け切れず被弾する時は壊すところを考えていますよ?」

時雨「だね、壊すにしても修理が安くなるところを考えている。」

雪風「見たところ修理箇所は重要機関に近いところばかりですし…、

   回避行動の基礎が疎かの様ですね。」

時雨「被弾原因は魚雷が多いみたいだ。」

雪風「それもよくないですね。」

スパ「えっ。」

時雨「戦艦を沈める威力が出せる砲撃は同じ戦艦くらいだけだものね。」

雪風「その通りです。重巡でもラッキーパンチが出ればそれなりにダメージを与えられますが

   戦艦を沈めようと思ったら普通は魚雷です。」

雪風「大本営が格好良い艦娘の広報映画を作って

   駆逐艦が戦艦を砲撃で沈めたりなんかしているシーンがあったりしますけど馬鹿の極みですよ。」

雪風「現場を知らない。」

時雨「深海棲艦も人型だから人間と同じ弱点をピンポイントで狙えば可能かな?」

時雨「それが出来るとしても最新の兵装を使えるここの娘達くらいだけだろうけど……。」

雪風「戦艦という艦種を沈めようと思うなら空母艦載機による飽和攻撃が一番効果的です。」

雪風「しかるに魚雷を避けきれずに当たっているこの被弾の仕方は地獄の鍋底を覗いているようなもの。」

雪風「あなたは明日にでも死ぬおつもりですか?」



雪風の質問に首をぶんぶんと振り否定するウォースパイト。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/06(金) 00:49:33.35 ID:UVTnURzf0

雪風「であればやるべき事は一つです!」ニタァ

時雨「演習あるのみだね。」ニコニコ

雪風「最近はこの辺りの敵も落ち着いてきているので

   1週間程は仕事をしなくても大丈夫だと思います。」ウキウキ

時雨「そうだね。暫くはいい訓練日和だね。」ニコニコ

スパ「えぇっ。」



うきうきした気持ちを隠しきれない様子の二人。



雪風「明石さん!」

明石「なんざんしょ?」

雪風「すみませんがウォースパイトさんの修理代金、貸しにしていただけませんか?」

明石「……、めったに無理を言わない雪風さんの頼みとあっちゃ応じない訳にはいきませんね。

   よござんす、貸しにしときましょう。」

雪風「すみません。」

明石「いいぇ、これは損して得取れって奴ですよ。

   ウォースパイトさんが長生きしていっぱい稼いでくれればうちも将来的に上客が増えるってもんです。」



雪風の要請に快く応える明石。そしてウォースパイトの肩に手を回し耳元で囁く。



明石「ビッグになってくださいよ?」ニタァ

スパ「はぃぃい!」ビシッ



その様子に笑いを堪える時雨に雪風。

この日から雪風と時雨によるウォースパイトへのしご……、もとい訓練が始ったのだった。

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 00:56:21.05 ID:UVTnURzf0
以上で本日分の更新終了です
深海棲艦の採ったブリッツはドイツのパリ侵攻作戦とイラク戦争時の砂漠の嵐作戦を参考にしています
現代においては武器の高価格化が進んでいるため開発費も高騰し武器業者は儲からないようですね
銃器メーカーで有名なレミントンが会社更正法を申請していたのは記憶に新しいかと思います
航空機メーカーではミグとスホーイが合併しますし業界の再編はかなり進んでいっています
船舶関連は米国内はかなり再編が進んでおり空母、潜水艦なんかはそれぞれ実質1社しか製造ノウハウを持ってないです
ダイオキシン公害で有名になった枯葉剤を作っていたダウケミカルはフロンガスやテフロンで有名なデュポンとくっ付きましたし
かつて戦争で儲かっていた企業も平和だと……、これ以上はいけないですね
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 01:33:26.19 ID:JUzIg4pA0
おつおつ
敵の本気具合にひくけど、そんな手練れを一本釣りする方も天晴れか
…あとオチ担当が悲惨過ぎるw
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/07(土) 16:23:40.82 ID:fjwbpxyA0
阿賀野のドライさに草
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 18:27:58.75 ID:RWmREyVeo
ヤード・ポンド法は死すべきだからね
仕方ないね
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:06:42.37 ID:itCBXKBv0
ノリノリ不知火からウォースパイトは逃げられるのか!?
そんなお話、更新させていただきます
お時間宜しければお付き合い下さい
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:07:34.91 ID:itCBXKBv0

第五話 We Will Lock you 中編
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:09:47.34 ID:itCBXKBv0

執務室

不知火「司令、こちらの申請書ですが。」

提督「あぁ、それか。雪風に頼まれた奴だ。

   1週間ほど鎮守府近海に訓練海域を設定したいんだそうだ。」

不知火「そうですか……。」

提督「ウォースパイトに回避行動等の基礎訓練を叩き込むそうだ。」

提督「お前も手伝ってやってくれ。」

不知火 ぬい!?

不知火「ですが。」

提督「しばらく敵に動きがない。

   何か企んでいるのだろうが、いざ動く時は手駒が多いほうがいい。」

提督「ウォースパイトはまぁまぁだがうちの1軍連中にはかなり劣る。」

提督「うちの看板背負わせるにはまだまだ未熟だな。」フフン

提督「横須賀で海の銀狐の異名で呼ばれ教導隊の教官をやっていた頃の腕を見せてもらおうか。」

不知火「ですが、司令の秘書をする者が……。」

提督「ここ最近の仕事量だと秘書は無くてもなんとかなるさ。」

提督「寧ろ、今後に備え秘書業務で錆び付いた感を取り戻してきてくれ。」

ガチャ。

明石「提督、頼まれていた不知火さんの艤装の整備と動作チェック、

   後、燃料と弾薬。補給終わりましたよー。」

明石「それとファンネルマークの銀狐もペイントし直しておきました。」

提督「あぁ、ありがとう。」

提督「不知火、そういう事だ。行って来い。」ニヤリ

不知火「でっ、では。早速。」ウキウキ



こうして不知火も訓練に教官として参加する事となった。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:11:38.28 ID:itCBXKBv0

明石「不知火さんも訓練教官として参加するんですか?」

明石「豪華ですねぇ。」

提督「うちの駆逐艦で稼ぎ頭の2人と

   切れた雪風に命令を実力で聞かせられる不知火の参加だからな。」

提督「ある種の悪夢だ。」

明石「Walking Nightmareでしたっけ?

   長門さん並に複数の異名持ちだったと思いますけど。」

明石「Invisible Destroyer だの Imperial Ghost だの言われていませんでしたっけ?」

提督「あぁ、それは米軍連中がつけた渾名だな。」

提督「演習時に適当に揉んでやれと指示をだしたのが悪かった。」

提督「その時はお陰で始末書を書く嵌めになったな。」

明石「滅私奉公がそのまま生きているような娘ですからね。提督が悪い。」

提督「俺としては戦略参謀の経験を積ませるつもりだったんだがなぁ。」

提督「演習相手の駆逐艦を防御盾として手に持ちアイオワへ接近、格闘戦を挑み関節等に砲撃。」

提督「艤装のシステムダウンではなく使用者の戦闘不能を狙うからな。笑ったよ。」

提督「相手の戦闘意欲をポッキリ折りに行っているからな。性質が悪い。」ハハハ

提督「そして止めが米軍側の指揮官へ砲撃の諸元データー入力完了の勧告だからな。」

明石「演習の指示を出している頭を刈ろうとしたんですか……。」

提督「実戦なら正しいのだが、演習だとやり過ぎだ。」ハハハ

提督「米軍関係者はまさしく悪夢を見るような顔をしていたがな。」クックック

明石「ままなりませんねぇ。」

提督「あぁ、そうだな。あいつのそういう所は褒めるべきところだから始末書も喜んで書いたぞ?」

明石「演習相手の弱点や指揮管制の問題点等の意見書を30cmの厚みで合わせて提出されたんでしたっけ?」

提督「よく知ってるな。」

明石「そんな事やっているから上から煙たがられるんですよ。」

明石「とりあえず、ウォースパイトさん訓練で死ななきゃいいですけど。」

提督「大丈夫だろ。」

提督「……、たぶん。」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:13:20.70 ID:itCBXKBv0

鎮守府近海 臨時設定訓練海域

訓練1日目

雪風「この隠そうとしない殺気は!」ゾワッ

時雨「機関始動!全力回避!」ゾゾゾ

スパ「えっえっえっ!?」



これから訓練を始めようかといった話をしていた所にいきなり緊急事態宣言。

ドン!

雪風が今まで立っていた位置に着弾。



不知火「見事な回避です。」(無線)

不知火「司令から遊んでやれと命令を頂きましたので、一緒に遊びませんか?」(無線)

雪風「やはり不知火さんでしたか……。」

時雨「わざとに殺気を漏らしっぱなしって事は。」

雪風「本気ではないようです。」

スパ「あの、何が起きているのですか?」オズオズ



二人に対して敬語で質問するウォースパイト。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/11(水) 01:16:37.96 ID:itCBXKBv0

雪風「しれぇの横で殺し屋みたいな鋭い目付きをした駆逐艦の方を御存知ですよね。」



脳裏に浮かぶは着任時のトラウマと警告。



スパ ガクガクガク

雪風「カタログスペックという常識の外に存在する方です。」

雪風「演習と気を抜いて掛かっていると死にますよ。」

言うが早いか上半身を後ろに捻る雪風。

そしてその鼻先を不知火が放った砲撃の弾が掠めて行きウォースパイトの真横に着弾した。

雪風「機関をガスタービンに変えていたお蔭ですね。危ない所でした。」

時雨「でも、本命はこっちの魚雷!」



シャ――――――

遠距離すぎる為、普通は当てることが望めない魚雷だが

その魚雷は回避した位置を先読みしたかの様に走ってきた。



不知火「実に素晴らしい。」(無線)



無線を使わずハンドサインで時雨と打ち合わせを始める雪風



雪風 私達を教導隊の新人か何かと勘違いしているようです

時雨 裏をかいて襲撃することは出来るかな?

雪風 ウォースパイトさんが厳しいかも、後、出来ても返り討ちにあう危険性が……

スパ「レーダーの範囲外からなんでこんなに精密射撃できるんですか!?」ウワーン



その砲撃は某殺し屋を彷彿とさせる精密射撃という名の狙撃。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:17:40.93 ID:itCBXKBv0

不知火「そこに存在するという気配ですね。言っても分からないと思いますが。」(無線)

雪風「無線で泣き言を言っていると全て向こうへ筒抜けですよ。」

時雨「戦艦の装甲だと当たっても痛くはないと思うけどさっきも言った様にこれは牽制だからね。」

時雨「動きを誘導させられている形になるから気をつけて動きなよ。」



シャ―――――

ドン。



雪風「あらら……。」

時雨「言った傍から……。」

時雨が注意をしたと同時に魚雷を避けそこない被弾した。

不知火「手応え有り。」(無線)

雪風「なんで見えてないのに命中が分かるのでしょうか。」

時雨「化け物だ。」



その日の訓練はウォースパイトが撃沈判定103回という前代未聞の記録を打ち立てた。


時雨「酷い記録だよ。」

雪風「下手したら1ヶ月程訓練しないといけませんね。」

不知火 ♪〜

スパ「死、死んだ方がましかも……。」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:19:04.53 ID:itCBXKBv0

2日目


長門「不知火に頼まれて来たが教導は久しぶりだな。」ウキウキ

不知火「やはり戦艦の動きは同じ戦艦の方に指導いただくのが良いと思いましたので。」

長門「遠慮なくやっていいんだな?」ウキウキ

不知火「はい。司令からもその様に。」

長門「楽しめそうだなぁ。」ニタァ

不知火「えぇ、勿論です。」ニタァ

スパ「悪魔達の食事会会場はこちらでしょうか……。」バタン

雪風「気絶している暇なんてありませんよ?」

時雨「おーい、戻ってきなよ。」ペチペチ



この日、ウォースパイトの撃沈判定は87回に少し減った。



雪風「日々訓練あるのみです!」

不知火「2日目にして減らすことが出来るとは見込みがありますね。」フンス

長門「明日からは本気で行こうか。」ウキウキ

スパ「誰か殺して……。」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:19:52.79 ID:itCBXKBv0

3日目

不知火「海の遊撃手と異名をとった秋津洲先生にお越しいただきました。」

秋津洲「かも!水母、秋津洲、ここに推参かも!」

雪風「ドリフトターンや波を利用してのバレルロール。」

時雨「艤装をまるでジェットスキーをするかの様に扱うトリックスター。」

不知火「人呼んで『 海の遊撃手 』」

秋津洲「秋津洲流航海術の開祖とは私の事かも!」

スパ「かも?ええっと、開祖?」

秋津洲「うん!」

秋津洲「ただの水母と甘くみないことかも!!」ニカッ

不知火「秋津洲さんは本日ハンデとして大艇を置いて来てくださっています。」

不知火「良かったですね。」ニコニコ

雪風「大艇つきですと雪風もてこずりますから良かったですね。」ニコニコ

時雨「本当だよ。」マッタク

スパ「えっ。」

不知火「見た目の可愛さに騙されると地獄の最下層を覗く事になりますので御注意ください。」ヌイ!

不知火「だてに明石商会の運び屋をされている訳ではありませんので。」

秋津洲「いっくよー!」

スパ(といっても水母だし……。)
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:20:37.11 ID:itCBXKBv0

ヒュッ

秋津洲「はい!死んだかも!」

スパ「えっ、いつの間に背後に!?」

不知火「ウォースパイトさん撃沈ですね。」ヤレヤレ

雪風「艤装のパワーコントロールが苦手みたいですね。」



この日、ウォースパイトの撃沈判定は85回だった。



不知火「秋津洲さん、手を抜きましたね。」ヌイ!

秋津洲「ばれたかも!!」ニゲロー

スパ「死んだ……。」バタッ


109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:21:20.18 ID:itCBXKBv0

4日目


グラ「ふっふっふ。実に面白そうな事をやっていると聞いたぞ。」ンフー

スパ「」(卒倒)

不知火「対空戦闘も重要です。」



4日目、ウォースパイトの撃沈判定は101回に増えた……。



時雨「おぉ。ウォースパイトよ、撃沈判定が増えるとは情けない。」

時雨「空母艦載機からの攻撃が一番危険なんだから回避が疎かになると危険だよ?」

雪風「ですが、少しずつ洗練されてきつつあるとは思います!」

スパ「復活の呪文は不要です…。このまま眠らせて……。」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:22:11.58 ID:itCBXKBv0

5日目

川内「今日は不知火が参加できないから私が来たよー。」ウシシシ

雪風「出ましたね。」

時雨「来ましたね。」

長門「ほほう。」

グラ「サイレントマスター。」

川内「私の訓練は夜中まで続くよー。休憩入れながら今日は完徹だよ!」

スパ「」

川内「やっ、せっ、んー!すっすめー!やっ、せっ、んー!いってみましょー!」

時雨「それ、別の娘の台詞だよ。」



5日目、ウォースパイトの撃沈判定は前日とほぼかわらず100回を記録した。



スパ「空が白い……。」ウヘヘヘ

時雨「徹夜の作戦もあるから一日二日寝ないなんて普通だよ?」

雪風「慣れれば航行しながら眠るなんても高等技術も身につけられます。」

スパ「地獄はここにあった……。」

川内「動きはまぁまぁましになってきたんじゃない?」

雪風「そうですね。」

スパ「もうやだ!なんで私ばっかりこんなしごきにあうんですか!?」

スパ「死んだほうがましだわ!」

時雨「何でか分からないのかい?」

雪風「……、じっくり考えて下さい。結論が出るまではずっと訓練です。」

不知火「今日の訓練はここまでとします。」

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:22:49.66 ID:itCBXKBv0

執務室


コンコン

提督「開いてるぞ。入ってくれてかまわん。」

雪風「しれぇ、まだ、お仕事中でしたか。」

提督「まぁな。どうした?」
雪風「訓練海域の設定延長をお願いします。」

提督「あぁ、分かった。どのくらい……。」

雪風 スースー

提督「毛布を掛けてやるか……。」

112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:23:25.43 ID:itCBXKBv0

6日目

スパ「死にそう……。」

7日目

スパ「死んだ方がまし……。」

8日目

スパ「死ねばいい……。」

9日目

スパ「死んだ……。」


113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:24:54.37 ID:itCBXKBv0

10日目


摩耶「よっ、だいぶ揉まれてるみたいだね。」

摩耶「今日は何回死ぬ予定だい?」

スパ「今日は、えーっと50回は切りたいです。」

雪風「大きく出ましたね。」クスッ

不知火「では、今日も始めましょう。」



夕方



雪風「今日の訓練終了です。」

スパ「ちかれた……。」

時雨「ウォースパイト。」

スパ「はい。」

時雨「まだ、死んだ方がましかい?」

スパ「いいえ、苦しいですけど生きていた方がずっと楽しいですね。」ゼハー

雪風「これで全ての訓練終了です!」ニコ

雪風「良く覚えておいてください。

   艤装の性能や、本人の資質なんて生き残る上での要素として重要ではありますがほんの小さなものです。」

雪風「訓練の教官を一緒に務めたみなさんが今日まで生き残ってきたのは生きて明日を迎える。」

雪風「絶対に生き残るという強い意思がその全てを引き寄せているんです。」

雪風「これから先、修羅場なんて掃いて捨てるほど経験する事になるでしょう。」

雪風「死なずに生き残ってくださいね!」

スパ「雪姉さん。」ウルウル

時雨「姉さん。」クスクス

長門「姉さん。」フフッ

不知火「大きな妹が出来たようですね。」ニコニコ

スパ「一生ついてきます!」ウワーン



雪風の小さな体に感極まったかウォースパイトが抱きつく。



雪風「あぅ。」

スパ うぇぇぇーーー

時雨「さっ、今日も終わりだね。」フフフ

摩耶「長門の姐さん達誘って飲み会でもしますかねぇ。」

不知火「不知火も参加します。」

雪風「助けてください!」

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:25:51.16 ID:itCBXKBv0

その日の夜

執務室

ガチャリ。

不知火「司令、お疲れ様です。」

提督「おぉ、お疲れ。長門達との宴会は終わったのか?」

不知火「抜けてきました。仕事がそろそろ溜まっているかと思いましたので。」

提督「たまには羽目を外していいんだぞ?」



ジリリリリンジリリリリン



提督 ……。



シリリリリンジリリリリン



提督「まったく、あれが鳴る時はだいたいが良くない連絡だ。」

不知火「出ましょうか?」

提督「いや、俺が出よう。明石に不幸の電話と書いた札でも付けさせようか。」



愚痴を言いながら電話に出る提督。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:29:10.15 ID:itCBXKBv0

提督「製油所が敵の襲撃に遭い壊滅?ならびに備蓄基地も壊滅。」

提督「警備に当たっていた連中は寝ていたんですかね?」

提督「機能回復までに2ヶ月。はははっ。実に悠長な話で。」

提督「話しになりませんな。えぇ、責任はしっかりと取らせてください。」

提督「連絡だけいただけたのは感謝します。」



チン。



提督「不知火。ブルネイの石油施設が敵後方浸透作戦で壊滅した。」

不知火「間抜けばかりですね。」

提督「海軍全体の質が落ちているのは否めんが愚痴を言っても仕方ない。」

提督「うちの備蓄だと全員で全力出撃した場合1ヶ月持つかどうかだ。

   節約しても2ヶ月は持たん。」

不知火「明石さんのルートを使っても厳しいですね。」

提督「あぁ、どうしたもんかなぁ……。」

不知火「意見具申宜しいですか?」

提督「ほう。珍しいな。」

提督「聞こうか。」

不知火「敵の物資をかっぱらうというの如何でしょう?」

提督「海の銀狐と渾名をとったお前だ、何か面白い策があるんだろうな?」ニヤリ

不知火「えぇ、とっておきで、至極痛快なのが。」ニヤリ



この後、執務室での作戦の打ち合わせは翌朝まで続いたのだった。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/11(水) 01:29:57.17 ID:itCBXKBv0

おまけ 提督と長10cm砲



鎮守府 荷揚げ用埠頭



チョコン



提督「ん…?」

提督「お前は初月のか。」

長10cm砲 ……



ヒョィ。



提督「右側のか?」シゲシゲ

長10cm砲 !

提督「初月の傍を離れちゃ駄目だろ。」ナデナデ

提督「あいつは誰かがこっちに繋ぎとめておいてやらないと。」オナカコショコショ

提督「すてがまりやらかす様な奴なんだから。」アゴシタコショコショ
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/11(水) 01:34:09.21 ID:itCBXKBv0

長10cm砲 シュン

提督「ん?」

提督「なんだ、新しい防錆塗装が嫌だったのか?」

提督「それで逃げてきたと。」

長10cm砲 キュコキュコ

提督「前の塗料と比べて匂いがきつい?」

長10cm砲 キュコキュコ

提督「明石に前の塗料と同じのを使うように伝えておこう。」

長10cm砲 !

提督「あぁ、俺が保障する。」

提督「だから頼むぞ。初月をしっかり守ってやってくれ。」

提督「約束だ。」

長10cm砲 !

提督「短い手足で何処が肩か分からんが

   その双肩に俺は色々役割を乗っけてしまっている。」

提督「色々すまんな。」

長10cm砲 !

提督「そうか。そうだな。」

長10cm砲 !

提督「俺も一緒に謝ってやるから心配するな。」

長10cm砲 !

提督「そうか、大変だな。」



この後、提督は初月に長10cm砲を勝手に持ち出したと怒られたそうだが

牛缶3個で許して貰ったそうである。
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 01:44:24.17 ID:itCBXKBv0
本日の更新終了です
海の遊撃手でいすゞのジェミニを思い出された方はいらっしゃいますでしょうか?
CGを使わずカースタントのみであれだけの撮影は今じゃ無理でしょうね、いいCMでした
カースタントは007シリーズのカースタントを担当されていた所が請け負っていたそうです
ウォースパイトの立ち位置(?)が明確になったところで次回でウォースパイトのお話は終了です
乙レス、コメントレスはやる気に繋がりますのでいつも感謝しています
宜しければ次回もお読みいただけると幸いです
最後にですが姉妹艦の呼び方ですがここではあくまで書類形式上という物に過ぎない為
それぞれの呼び方が艦娘名になっていると解釈いただけると幸いです
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 10:37:58.80 ID:PPc5MTdS0
スパさん、第三王子枠か。
……生存確定だなww

見せ場はひばり退治かな。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 19:17:12.38 ID:VEEd36e+0
追いついてしまった。

初登場のスパ子の映像を今のスパ子に見せてあげたい
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 22:20:28.28 ID:g0u7Ckk/0
撫で肩10センチ砲さんw
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 22:55:28.32 ID:0CsWJ48y0
王子枠かぁ……
ベトナムの人食い虎枠さんいたっけ?
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 16:08:33.16 ID:m4dUEraiO
ところで前作のリンクは貼らねぇのかい?
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 16:27:45.85 ID:gS1ddzBD0
>>123
貴様…… 貼りたいのかッ!?





ちょうど読んでたので
【艦これ】 外地鎮守府管理番号 88
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510926855/
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 17:48:09.40 ID:MhUlnDET0
>>124

へっ、冗談だよ。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 18:12:12.36 ID:bPLe1RGK0
これって空母とか南方の時に提督生き残ったって展開ですか?
逝ってくれやとか相打ちとか書いてあるんで、いまいちよくわからなくて…
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 20:59:16.23 ID:cU4RPP9A0
相討ち=共に逝ったってことだろ
だから明石とかもかもはここに流れ着いたんだぞ
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 22:20:49.60 ID:MhUlnDET0
同一人物説を唱えるには、共通点が禿ってだけだしなぁ。
喫煙者ではあるが、紙巻とパイプの違いもあるし
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 22:24:28.67 ID:7mBRS+SL0
全部提督提督だしな、ちょっと紛らわしいのかも
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/13(金) 08:50:26.88 ID:gqT2e+thO
街の遊撃手って89-91位の車じゃなかったっけ?
ガキの頃見たことあるやうな?
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/13(金) 19:12:11.17 ID:GoSxTROH0
要するに88番鎮守府の現在の時の提督は新しく着任した提督と、そうゆうことですか?
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/14(土) 20:57:36.52 ID:N6hd7vfhO
そも、明石の旦那提督と88の看守提督との関係性も作中じゃあ書かれてないからなぁ

推察できそうなキーワードちらほらあるけど。
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:35:39.96 ID:XgRREifrO
あーでも88提督は「先生」とか「師匠」って言ってるから、明石旦那提督の教え子になるか。
馴染みが現長官ってところか。

そして明石は未亡人。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:14:16.50 ID:ANDDdQ3d0
色々説明をはしょってしまった所為もあり誤解を招くような事態となっており御迷惑をお掛けしております

88提督と明石編で出てきた提督は別人物です、133様が言われるように88提督の師匠、大学での恩師に当たる方という設定です

グラーフ編でも少し触れましたが故人ですので死亡しております、階級で表記していれば良かったと今更ながらに後悔

御迷惑をお掛けしました

色々ぐだぐだな所もあり申訳ありません、そんな1ではございますがお時間宜しければ本日もお付き合いいただけると幸いです
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:15:17.92 ID:ANDDdQ3d0

第五話 We Will Lock you 後編
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:16:59.80 ID:ANDDdQ3d0

提督が電話を貰った翌日夜。



大会議室前 廊下



時雨「あっ初月、君もかい?」

初月「あぁ、僕も呼ばれたんだ。」コンバンハ

時雨「つなぎを着ているけど艤装の整備をしていたの?」

初月「うん。明石に全てをお願いすると結構な金額になるからね。」

初月「ただ、防錆塗装だけは取り寄せていた奴の塗布を明石に頼んできた。」

初月「それに自分の命を預けるんだ。やはり細部まで見ておきたいものさ。」

時雨「あぁ、分かるよ。その気持ち。」

初月「雪風は?」

時雨「今朝から艤装の完全分解整備に入っていたと思うけど。工廠で合わなかった?」

初月「あぁ、そういえば秋津洲と何か打ち合わせをやっていたな。」

雪風「こんばんは。」フキフキ

時雨「あぁ、雪風。丁度雪風の話をしていた所だよ。」

雪風「GEの新型ガスタービンに積み替えしていた所なんです。」

雪風「積み替えた奴は慣らし済み扱いで横須賀の試験用艦隊に売り払うとかで。」

雪風「明石さんもちゃっかりしてますよ。まぁ、その分だけ代金から割り引いて貰いましたけど。」

時雨「明石さんらしいね。」フフフ

雪風「今頃、秋津洲さんが再整備と梱包しているんじゃないですかね?」

雪風「それにしてもいったい何の用でしょう?」
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:18:03.68 ID:ANDDdQ3d0


大会議室



時雨「あっ、北上も来てたの?」

北上「ポーちゃんと一杯やってたんだけど呼びだしとあっちゃねー。」

ポーラ「酒の追加を要求します〜。」エヘエヘ

ポンと注目を集める為の手拍子一つ。

提督「みんな集まったな。最初に言うと緊急事態だ。」

提督「緊急事態宣言時は特約に従い抗命権は一時的に停止される。命令拒否は無しだ。」

摩耶「そういえばそんな規約あったねぇ。……、ここが緊急事態になるって何が起きたっていうんだい?」

提督「ブルネイの石油関連施設が全てやられた。うちの燃料等が1ヶ月もすれば干上がる。」

雪風「あらら…。」

提督「そんな訳でな、うちも飯を食わにゃならん。敵の物資をかっぱらう。」

提督「詳しくは不知火が説明する。不知火。」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:19:45.31 ID:ANDDdQ3d0

不知火「ここからは不知火が説明させていただきます。」

不知火「まずはこちらの海図をご覧下さい。」



正面の壁にプロジェクターで周辺海図が映し出される。



不知火「私達の88鎮守府からこちらの方向へ60海里。敵の大規模集積地があります。」

摩耶「あぁ、知ってるよ。あそこは警備が無茶苦茶きっちいんだよぉ。」

瑞鶴「そうね。まぁ、あっちはわざわざちょっかいかけに行くような所じゃないわね。」

川内「そうそう。美味しくない。」

不知火「えぇ、そうです。皆さんが認識されている通りここの集積所は難攻不落です。」

不知火「今まで正規軍、表の連中や米軍と合同で攻略を目指して襲撃をかけた事もあるようですが

    そのこと如くが失敗しています。」

不知火「作戦の説明の前にここを落すことのメリット、デメリットを改めてお話させていただきます。」

不知火「ここを落せば私達は燃料他、十分な物資を得る事が出来ます。」

不知火「また、敵の補給線を絶つ事になる為おおよそ3ヶ月程は敵を黙らせる事が出来ます。」

不知火「アメリカからの協力金、早い話、代わりに攻略してやるから金をよこせで

    取り付けた報酬金が500万ドルです。」

一同「おぉぉぉ――――。」ドヨ
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:20:46.99 ID:ANDDdQ3d0

不知火「ですが、金額に見合っただけのリスク、

    つまりデメリットがある事を理解してください。」

不知火「作戦の説明に移りますが守将が2姫、防空埋護姫と集積地棲姫がここの指揮官です。」

長門「艦種詐欺と陸上タイプか……。」

不知火「そうです。どちらにも対応出来る様な装備を選ばなくてはなりません。」

不知火「続いてここが難攻不落となっている理由を説明します。」

不知火「敵の拠点はこちらの島にありますがその左右を山のある島に挟まれています。」

不知火「この為、山を越えないと空爆が出来ずこの山には砲台子鬼が多数配置されています。」

不知火「更に後方は開けた状態の為、機雷の設置、潜水艦による哨戒等でごり押しでの攻略も難しくなっている状況です。」

不知火「加えてこの辺り一帯の海域は深度が浅いこと、岩礁などが多いこと、

    そして、海流の流れが速いという事でまさに天然の要塞。」

川内「そんな所をどうやって落すってのさ―――。」

不知火「それをこれから説明します。」ヌイ!
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:23:02.26 ID:ANDDdQ3d0

不知火「まず、こちらの基地の正面ですが大小様々な島があります。」

雪風「島が多すぎて艦隊で行動するには向いてないようですが。」

長門「海路としてみても曲がりくねっていて速度が出せないな……。」

不知火「その通りです。

    正規軍の連中がこちら正面から攻めようと作戦を立てた事はあるようですが

    シミュレートするまでも無く全滅と判断しました。」

雪風「でしょうねぇ。」

提督「だが、島が多い所為で電探を置いても島同士が干渉してまともに機能しないんだ。」

提督「そして、島と島の間が狭い所為で潮の流れが速い所為で機雷もまともに設置出来ない。」

不知火「この島と島の間の間隔は航行可能な水深部分だけを考えて最大でおおよそ10m。」

グラ「実に無茶だな。」

不知火「難所は全部で5箇所。更に途中で浅瀬になっている所もあります。」



不知火が5箇所の難所のスライドを一枚ずつ見せていく。



瑞鶴「これ、航行なんて出来るの?」

初月「幾らなんでも死にに行っているような気しかしないな。」

不知火「まぁこれを見て下さい。」



不知火がプロジェクターを操作すると先程説明の難所のスライドが全て重なり合わされて映し出される。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:24:23.09 ID:ANDDdQ3d0

時雨「へぇ。」

グラ「ほう。」

瑞鶴「へへぇ。」

北上「随分と狭い範囲だけど入り口から一直線に抜けられる箇所があるじゃない。」

ポーラ「一歩間違えれば浅瀬に乗り上げ島に激突ですね。」

不知火「これは綱渡りです。Operation Tightrope 実行していただきます。」

不知火「敵電探に引っかからないと言っても昼間は敵の警戒機、哨戒艦に見つかる恐れがあります。」

不知火「なので、実行時間は明後日深夜。新月の夜に実行します。」

雪風「正気ですか!?」

ポーラ「流石に昼でもいけるかどうか分かりませんよぉ?!」

川内「無茶振りが過ぎない!?」

時雨「流石に無茶だ!」



ガン。

不知火の拳が机を叩き一喝。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:25:29.34 ID:ANDDdQ3d0

不知火「何もせずにいれば黙って敵にここいら一帯をくれてやる事になる。」

不知火「ここら一帯の戦線を押し上げるのに数年がかりなんですよ。」

不知火「この程度の作戦難易度でぎゃあぎゃあ騒いで貰っちゃ困りますね。」フフン

不知火「作戦は明後日夜決行します。それまではしっかりと英気を養っていてください。」



こうして高難易度作戦は実行される運びとなった。



雪風「とまれ明後日でよかったです。」

時雨「そうだね。雪風は機関の入れ替えしていたんでしょ?

   慣らし、付き合うよ。」

雪風「御迷惑をお掛けします。」

初月「僕も付き合ってもらっていいかな?」

初月「射撃管制システムを新規に入れ替えたんだけど

   艤装の再塗装もしていたからまだ試せていないんだ。」

時雨「いいよ。じゃ、明日、また改めて。」

雪風 初月「「また明日。」」

時雨「うん。また、明日。」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:26:41.37 ID:ANDDdQ3d0

翌日


提督「艤装をメンテに出していた連中は動作チェックに余念無しか。」

明石「えぇ、最近の機関の流行はやはりガスタービンですね。」

提督「不知火のも換装していたよな。」

明石「えぇ、不知火さんのはRRのですね。」

提督「国内メーカーじゃないのか。」

明石「航空機エンジンと同じで海外メーカーの方が軍用品については一日の長がありますから。」

提督「P&Wとかも作っているのか?」

明石「F-14なんかのエンジン作っていましたねぇ。ですが、P&Wは航空機用だけですね。」

提督「軍事関連技術は海外の方が優れているのは今も昔も変わらずか。」

明石「艦娘に使用する兵装開発も海外の方が盛んではありますね。」

提督「初月の右の長10cm砲、右手が赤色だが、何かあったのか?」

明石「塗料が微妙に足りなかったのでとりあえず。」

提督「そうか。初月の機銃はBoforsの6連装?」

明石「えぇ、イギリス最後の戦艦ヴァンガードの兵装をですね。」

明石「機銃以外は不要といわれてしまいましたが、いい取引にはなりました。」ホクホク

提督「射撃管制のOSはどうした?」

明石「さて?」スットボケ

提督「……、ライセンス料くらいは払ってやれよ?」

明石「うっ。」



そういい残し提督は執務室へと去っていった。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:27:33.82 ID:ANDDdQ3d0

スパ「明石さん、雪姉さん達は演習ですか?」

明石「あぁ、ウォースパイトさん。今の話、聞こえていました?」

スパ「いいえ?」

明石「それは良かった。時雨さん達は明日の高難度作戦に向けての演習ですね。」

スパ「えっ、私、そんな作戦聞いてない。」

明石「そりゃそうでしょ。うちのトップエースの連中しか知らされていない作戦ですもん。」

スパ「トップエース。」

明石「おっ、興味持ちましたね。普段はお教えしないんですけどね?」

明石「ちょっと此方の出す条件を飲んでいただければお教えしようじゃないですか。」ウエッヘッヘ

スパ「あら、条件って何かしら?」

明石「まぁまぁ、ちょちょいとサイン頂ければ後はこちらで……。」ヘッヘッヘ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:29:21.18 ID:ANDDdQ3d0


作戦決行日

提督「それじゃ改めて説明するぞ。」

提督「今から3時間後、深夜12時丁度に攻撃を開始。

   その後、5時間後、払暁と共に米軍の制圧部隊がやってくる。

   物資は米軍が熨斗つけてここへ宅配してくれる手筈だ。」

雪風「米軍が来るんですか?」

提督「戦争に弱腰の大統領は嫌われる。あの国は中間選挙が間近に迫っている。」

提督「深海棲艦の大規模集積地を落したと喧伝出来れば次の選挙での支持率もうなぎ登りって寸法だ。」

提督「500万にしても自分の所で攻め落とすよりかなり安くあがるから出すって話だ。」

提督「向こうに華を持たせて俺達は実を貰う、いい役割分担だろ。」

川内「流石だ。」ウンウン

提督「そういう訳だから敵の2姫を排除し、

   尚且つ米軍の歓迎パーティを開かないといけないから

   此処を出発して合計8時間以内に全てを済ませないといけない。」

長門「とんだハイキングだな。」

ポーラ「米軍のお出迎え〜なら〜、ピザでも焼きますかぁ〜?」ピッツァ!

摩耶「有名なフレディさん家から出前を頼むか。なぁ!」ハハハ

不知火「お喋りはその辺にしていただいていいですか?」

提督「こちらから呼び出す事は無いと思うがコールサインはどうする?」

不知火「Foxyでお願いします。」

提督「分かった。吉報を待ってるぞ。」

不知火「旗艦はこの私不知火が努めます。それでは行きましょうか……。」



ザァッ。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:30:17.02 ID:ANDDdQ3d0


敵集積地近く



不知火「先頭、旗艦フォクシーから全艦へ!そろそろ入り口に入ります。」

不知火「綱渡りを開始します。続いて下さい!」

雪風「相当に狭いですねぇ。」

時雨「まったくこんなスピードで航行するなんて。」

初月「月が無いな。」

北上「右に左にとまるでフラメンコだねぇ。」

ポーラ「踊りそこなうと死にますよぉ〜♪」エヘエヘ



左右の間隔がほぼ無い中を両舷全速、最大船速ですり抜けていく不知火一行。



長門(流石に戦艦である私と駆逐艦の不知火では運動性能が違いすぎるな。)

長門(ついて行くので精一杯か、なかなかきついな。)

不知火「なかなか皆さん上手ですね。ポイントCを抜けた時点で脱落者がいないのは何よりです。」ヌイ!
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:31:16.11 ID:ANDDdQ3d0


鎮守府埠頭 不知火達出発から30分後



スパ「雪姉さん達は大丈夫かなぁ……。」

スパ「訓練の成果を見せる為に行っても大丈夫よね。」ウン!

明石「無断出撃ですかぁ?」ニタァ

スパ「あー、えーっと、そう!散歩です!散歩ですよ!」

明石「散歩ですか……。散歩に行くなら燃料、弾薬を忘れちゃだめですよ。」ニヤニヤ

明石「後、これをサービスしときましょう。」ニヤニヤ

スパ「なんですか?これ?」

明石「三式弾っていう、ちょいと楽しいクラッカーですよ。」

明石「陸上型とのパーティには欠かせない。」ヒヒヒヒ

スパ「へぇ、これはいい兵装ね。Thank you very much indeed.」



そして、ウォースパイトもこっそりと出撃していた。
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:32:05.09 ID:ANDDdQ3d0


敵大規模集積地



集積地「10海里地点に敵の反応ありだと!?」

集積地「なんでそんなに近くに来るまで放っておいた!!」

ヌ級「もっ、申訳ありません!単艦でうろついていたのでてっきり敵の落伍者かと……。」

埋護「単艦でここに殴り込み。随分と舐めたものですね。」

埋護「集積地さん、私が出て片付けて来ましょう。

   ここへは誰も近づけるなとの中枢様からの指示が出ています。」

集積地「いや、お前が出る程ではないだろ。部下に向かわせるさ。」

埋護「ここが落されると私達の活動に支障が出ます。」

埋護「万全を期す為ですよ。」

集積地(慎重な性格だな。……、頼もしい相棒だ。)

集積地「すまない、頼む。」

埋護「えぇ、行って来ます。」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:33:27.42 ID:ANDDdQ3d0


難所ポイントE



不知火「ここを抜ければ敵の集積地は目の前です!

    最後のポイントEは最も狭く、浅いです!気を付けて下さい!」

不知火「鎮守府を出てから補足されるのを避けるために

    進路の欺瞞行動しながら来た所為で時間が押してます。急いでください!」

北上「あー、しんどーい。ヤニ吸いたい。」ゴソゴソ

瑞鶴「北上、一本貰える?」

北上「んー?あれ、瑞鶴、習慣あったっけ?」

瑞鶴「違うわよ。風を…、風を迎えに行きたいのよ。」

北上「あぁ、強引に捕まえる気ね。」シパー

瑞鶴「島と島の間を抜ける所為で風目がめまぐるしく変化していてね。」

瑞鶴「流石の私でも風の目を読むのが難しいわ。」

瑞鶴「加賀さんなら……、と、関係なかったわね。」

北上「……、私は何も聞いてないよ。後は自分でやんな。」ポイッ

瑞鶴 シュボッ

瑞鶴「ありがとう。」ポイッ

北上「あいよー。」フカー

不知火「Eポイント通過です!空母の方々は発艦をお願いします!」



一方、ウォースパイトは敵拠点左の島付近に接近していた。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:34:55.55 ID:ANDDdQ3d0

スパ「と、そろそろ追いつく頃かしら?」ウキウキ


ドンドン! ダン!


スパ「あら、砲台子鬼達からの歓迎の祝砲ね。」


ヒョイヒョイ


スパ「時雨さんの魚雷ノック100連発から比べればこの程度の砲撃。」フン


ドン!ドン! ダン!


スパ「当たる方が難しいかしら?」

スパ「ENGAGE!(接敵!)」



時雨、雪風に鍛えられた回避行動により敵の砲撃を回避していくウォースパイト。



スパ「砲撃音を奏でて我が物顔している深海棲艦達。」Fuck!


ガガココン


スパ「自分達が強者と信じて疑わない自己満足。決して勝者になんてなれはしない。」


ガガコン


ウォースパイトの艤装に付いた3本の砲塔が獲物を捕らえたのか動き始める。



スパ「泥の中に沈みなさい。」Go Hell!


ドン


砲台子鬼 シャー! ×10


スパ「情けないわね。まったく持って歯応えが無い。」

スパ「いいわ、やりたい放題にやらせて貰うわ。さぁ、行くわよ……。」

ウォースパイトの砲塔が敵を捉え確実に屠っていく。

スパ「砲塔よ!葬送曲を奏でなさい!」

スパ「あっと驚かせてやるわ!」

スパ「Fire! Fire! Fire! 」

スパ「どんどん行くわよ!かかってらっしゃい!」

151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:36:37.05 ID:ANDDdQ3d0


不知火達本隊



不知火「 ! 」

時雨「あれ?誰か僕ら以外の誰かが攻撃を始めてる?」

川内「花火が左の島から上がってるねぇ。」



そして埋護姫には運悪く、不知火達にとっては運良く不期遭遇戦の火蓋が切って落される。



埋護「艦娘!?」

埋護「こんな所に!?どうやって!?」



それはウォースパイトを倒す為に出撃してきていた埋護姫だった。



不知火「Contact!(接触!)」

時雨「 ! 」

雪風「 ! 」

長門「ENGAGE! 諸元入力完了! 全砲門、正面敵防空埋護姫へ集中!」

長門「撃てぇ―――――――――!」



本来であればその装甲は強固で定評がある防空埋護姫だが目視、

いや、相手の息遣いが聞こえるほどの距離から防御体勢も取れない状況。

そう、本当にうっかりと遭遇してしまった状況から防御体勢も取れるわけも無く、実にあっけなく撃沈した。
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:37:38.87 ID:ANDDdQ3d0

埋護「嘘……、私が戻れないなんて……。」ズブズブズブ

北上「すごい出オチだねぇ。」ゲラゲラ

ポーラ「かなりの強ボスキャラの筈が、これは酷いです〜。」ゲラゲラ

不知火「残すは後、一姫!皆さん、全力で行きますよ!」

雪風「勿論です!」

グラ「全機発艦済みだ!いけ!」ハッハッ

ポーラ「手当たり次第、動くものは撃っていきますよぉ〜。」



ボーン!



左側面からの山超えで砲撃が周囲で迎撃体勢を取りつつあった敵集団へ着弾。




長門「はっはっは!誰だか知らんが愉快な真似をしてくれる!」

初月「後は集積地棲姫だけだね。」

瑞鶴「さぁて、燻りだしてあげようじゃないの。」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:38:14.56 ID:ANDDdQ3d0


スパ「Tally Ho ―――――!」

スパ「と言っても単艦だけど。」フフッ



ズガン!


ウォースパイトの砲撃が深海棲艦の陸上陣地を次々と吹き飛ばす。


スパ「神経を研ぎ澄まし……。」

スパ「狙うは大物……。」


154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:39:29.90 ID:ANDDdQ3d0


集積「敵の襲撃がなんだ!さっさと迎撃機を上げろ!」

ヲ級「埋護姫様と連絡が途絶しています!」

集積「やられたのか!?」

ヲ級「不明です!」



情報は錯綜し混迷を極めていく。



不知火「今宵の不知火は一味違います。久しぶりの実戦です。」

不知火「血に酔わせていただきます。」ニコォ

雪風「あらら……。」

雪風「時雨さん、戸締りはしてきましたか?危険ですよー、あれは。」

時雨「やっぱりそうなの?」

雪風「型番の上で雪風の姉ですよ?並である訳がないじゃないですか。」

時雨「それもそっか。」



通称ロケランを集められた物資を避けながら打ち込んでいく時雨に雪風。

迎撃の為に出て来た雑魚、三一連中は吹き荒れる暴風に勝てる訳も無くやられて行く。



摩耶「雑魚ばっかりだねぇ。歯ごたえないや。」

集積地「畜生!何してくれやがる!」



怒りに狂った集積地棲姫が迎撃の為に前線に出てくるが

この後、それは悲しいかな無意味な結果となってしまう。


155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:40:09.63 ID:ANDDdQ3d0



                  『 23,400m 』


156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:41:34.81 ID:ANDDdQ3d0

キロに直して約23km

この数字が何かというと戦艦ウォースパイトがカラブリア沖海戦にて

移動中のイタリア戦艦に砲撃を命中させた記録である。

砲撃に関して少しでも知識のある方ならお分かりいただけると思うが

砲弾が仮に音速で飛んだとしても20km先に到達するには1分以上の時間がかかる。

ましてや敵は軍艦、移動目標なのだ、今、見えている位置ではなく

1分後の位置を予測して撃ち込まなければならないのである。

戦艦の主砲でいかに20kmも先の相手に当てる事が難しいかという事である。



スパ「私は戦艦ウォースパイト。その魂をこの身に受け艦娘になりし者。」

スパ「雪姉さんや時雨さん、不知火教官にグラーフさん、そして同じ戦艦の長門さん。」

スパ「皆さんが私に艦娘としての基礎を改めて教えてくれた。」

スパ「皆さんのおかげで今ならやれる。」

スパ「今の私なら視える!」

スパ「We will (私達はやれる)」



ガコガコガコン

可視範囲外の位置にいる集積地棲姫を討つべく仰角を修正し始める各砲塔。

ガッコン

そして、その動きを止めた。

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:42:17.03 ID:ANDDdQ3d0




                「LOCK YOU !(捉えた!)」



158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:43:15.24 ID:ANDDdQ3d0

ガオン!

その砲声は一際大きい獅子の咆哮。



集積「えぇぇっ!?」ドン!

スパ「手応えあり!」

不知火「敵、指揮官発見!総員、敵指揮官から周辺から退避!」



本来なら排除が命令されるはずなのだが。

ドン!ドン!ドン!



集積地「ぐわぁぁ―――――!」



何処からかの砲撃が集積地に全弾命中。

この攻撃により集積地棲姫を失い深海棲艦陣営の敗北が決定づけられた。
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:44:33.65 ID:ANDDdQ3d0


一夜明けて



不知火「ぬい―――……。」

提督 クックック

提督「褒めるか怒るかで悩んでいるんだろ?」

提督「怒るのは最高責任者の俺の仕事だ。お前は素直に褒めてやっておけ。」クックック

雪風「大戦果です!」

時雨「左の島の護衛を黙らせたばかりか集積地棲姫をスナイプだなんて、びっくりだよ。」

提督「とはいえ作戦内容を聞かずに無断出撃。脱走行為と言われても仕方ないからな。」

不知火「ぬ―――――い……。」

提督「流石にいつぞやみたいに散歩に出て海上で

   『 たまたま 』敵に出会ったなんて言い訳がたたない。」

提督「武装を担いで明確に敵の施設へ襲撃をかけているからな。」

長門「だが、敵に動揺を与え此方への対応を間違えさせたのも事実だ。」

提督「その通り。」

提督「ここは懲罰部隊的な意味合いもあるから軍規を疎かにするわけにはいかんしな。」クックック

提督「ウォースパイトには謹慎1週間でいいだろ。」

提督「不知火、それでいいか?」

不知火「私に異論は無いです。」

提督「腕が立つやつらを正規軍と同じ型に嵌めるのが無理というもんさ。

   これがうちの特質だ。」フフフ
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:46:02.21 ID:ANDDdQ3d0

謹慎の為、普段使用している自室から提督の先導により別室へ向かうウォースパイト。

ガチャガチャ。



提督「謹慎中はこの部屋に居てくれ、ここが作られてから使われたことの無い貴賓室でな。」

提督「早い話、偉い人の接待というか宿泊用の部屋だ。

   調度品とかは良い物を使用しているから好きに使ってくれ。」

提督「後、謹慎とは言うが部屋の鍵は掛けないから勝手に出入りしていいぞ。」



バタバタ。ガシャガシャ。



川内「あっ、提督。長机持って来たよ!後、鉄板にガスコンロも!」

摩耶「明石さんの所に食材が米軍から色々来てたから貰ってきたぜ!」

スパ「あの、何を?」

提督「ん?」

提督「お前、あれだよ。勝っただろ?」

スパ「はい。」

提督「んで、お前がMVPだろ?ならするこたぁ一つだろ。」

グラ「Admiral、ビールサーバーを持ってきたぞ。」

長門「提督よ、宴会会場はここか?」

初月「提督、ただ飯が食えると聞いたから来たよ。」

雪風「色々食材を持ってきました。」

提督「食べられるもんなんだろうな。」

時雨「それは大丈夫だよ。」



作戦に参加していた艦娘達が集まってくる。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:47:00.71 ID:ANDDdQ3d0

雪風「先日は素晴らしい狙撃でした。謹慎中のティータイムにどうぞ。」



つH.Rヒギンス 紅茶セット詰め合わせ ウエッジウッド製テイーセット



時雨「僕からは紅茶のお供に欠かせないこれと、お湯を沸かすのに便利な道具の差し入れだ。」



つ 像印 瞬間湯沸かし器 F&Mジンジャークッキー



スパ「あっ、ありがとうございます!」グス

瑞鶴「一週間謹慎だって〜?」

瑞鶴「暇を潰す為にこれ、あんたにあげるわ。」



つ PS4本体 ソフト MHW 



初月「僕はこれをあげよう。」



つ Game of Thrones第1〜6シーズン全DVDBox



スパ「ありがとうございます!」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:47:56.58 ID:ANDDdQ3d0


長門「一週間の間は暇だろう。これは私からの差し入れだ。」



つ ノートPC(ゲーマー仕様)



長門「色々有名所はインストールしておいた。一週間はあっという間だ。」

長門「お勧めのゲームはCivilazationだ。ほどほどにな。」

グラ「あぁ、今回の活躍。実に素晴らしかった。」

グラ「謹慎期間中は何かと暇だろう。私からこれを差し入れしよう。」

グラ「いい暇潰しになると思う。」



つ 青島文化教材社 1/700 雪風



グラ「こちらに塗装、工作に一通り使うものを入れておいた。役立てくれ。」

グラ「それが組みあがったら少し難易度が上がったものを差し入れに持って来よう。」

スパ「ありがとうございます!」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:49:07.22 ID:ANDDdQ3d0


北上「おー、なんか店開けそうなくらいにいっぱい貰ってんねー。」

北上「あたしからはこれね。」



つ 新谷かおる著 エリア88全巻



北上「面白いから全部読んでね〜。」

ポーラ「うぇへへへ〜。ポーラからはこれで〜ス。」ダン



つ スコッチウィスキー 1ケース



ポーラ「全部飲んで、肝臓壊しやがれ〜でース〜。」エヘエヘエヘ

川内「私からはこれ!室内トレーニングマシーン!」

川内「出撃できないと色々体がなまるからね!」

摩耶「あたしからはこれだ。」



つ 人を駄目にするクッション



摩耶「やっぱりリラックスタイムってのは重要だと思うんだよ。」ウンウン

不知火「不知火からはこれです。同じくリラックスタイムに使用してください。」



つ バスクリン1ケース



提督「色々多いな。」フフフ

提督「後、これは俺からだ。紅茶を飲む時に食べるといい。」



つ ハーシーズチョコ 330個入り 5袋

164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:49:58.45 ID:ANDDdQ3d0

提督「さてと、それじゃぁ、宴会を始めるとするか。」

提督「と、お前。何、泣いてるんだ?」

スパ「こんなに優しくされたの初めてで……。」ウェッウエーン

提督「うちの連中はこんな感じだ。常に生きるか死ぬかで綱渡りやっている様な連中だ。」

提督「正規軍より仲間意識が強い、後、楽しめる時は楽しむのが長生きのこつだ。」

提督「お前も楽しんどけ。」

スパ「はい!」ズビー



宴会は翌日朝近くまで行われたそうである。

165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:50:39.74 ID:ANDDdQ3d0

おまけ的番外編のような話  世界は革命を待っている!
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:53:32.99 ID:ANDDdQ3d0
♪ Совет марш

ドンダンパンパカパン

力強い太鼓とラッパの軽快な音が響き、居並ぶ軍服姿の男達が口々に謳い始める。


Наш Советский Союз покарает

カツンカツン

Весь мир от Европы к Неве на восток


一人の女性がトレンチコートを肩に掛けたまま港をゆっくりと進む。


Над землёй везде будут петь

カツンーカツーン

Столица, водка, Советский медведь наш!


口に咥えたパイプからは煙がたなびく。


Все народы здесь стоят того,


女性は前のみを見てただまっすぐと進む。その左目の下には抉られた様な戦傷。


Что мы все воплотили на свет,


その周囲を多くの軍人達がデモンストレーションをするように駆け足で走る。


Благодарный низкий поклон


いくつもの陣形を見せそれは女性の進路左右に通路を作るように整列。


От самой могущественной в мире!

ガツーンカツーン

Наш Coветский Союз покоряет весь мир


軍人達が左右に居並ぶ通路の真ん中をなおも女性は進んでいく。


Как огромный медведь на Востоке.

ジャコン!ジャキッ シャキキン!

Овцы бродят бесцельно, без всяких забот


軍人達が肩に下げたAKMのコッキングを引き弾丸を薬室へ送り込む。


Наш советский медведь на охоте.


歩いていた女性が列の出口に立ち男達の方へ振り返った。


「諸君!世界革命が達成される時は近い!」

「我らソヴィエトの威光はこの世界を余す事無く照らすだろう!」


Ураaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:55:55.74 ID:ANDDdQ3d0

スパ「おぅ。とっとと起きろや。」ペチペチ

ガン「あっ、あれ……。」ショボン

雪風「そこの露助。寝ぼけてないで起きて下さい。」イライラ

時雨「ガングート、仕事だよ。」ユサユサ

スパ「おぅ、熊公。動けや。」イライラ

スパ「まったく新入りがたるんでやがる。雪姉さん〆ときますか?」

明石(自分の過去を棚にあげちゃってまぁ。)フホッ

ガン「あっ、夢かぁ……。」ホロリ

ガン「いい夢だったなぁ。」ベソベソ



ガングートが食堂での転寝から目覚めればそこは栄光ある祖国ではなく地獄の如き現実。

ちょいと気を抜けば前からだけでなく後ろからも『 うっかり 』『 流れ弾 』が飛んでくる楽しい職場。



秋津洲「カッカッカ!残念だったかも!これが現実かも!」

長門「スパイ行為がばれて解体(銃殺)されなかっただけでも良しとすべきだろ。」

長門「まっ、仕事を頑張るといい。ここは初めての人にも優しいアットホームな職場だからな。」ポン

ガン「うわーん。」(泣)

不知火「司令、彼女は何を?」

提督「あぁ、内通者を炙り出す為に仕掛けてた

   どうでもいいネタに食いついたアホというか残念さんだ……。」

不知火「どうでもいいネタ。」

提督「あぁ、元帥がかつらというジョークネタだ。」

不知火「かつら……。」

提督「仕掛ける方も仕掛ける方だが掛かる方も掛かる方だよ。まったく。」

提督「スパイを地位ある人間と入れ替えるのに身体的特徴は重要だと言ってもな。」

不知火「間抜けですね。」

提督「まったくだ。」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 01:03:44.24 ID:ANDDdQ3d0
以上で本日分の更新終了です
時代劇ネタなんてやってるから更新が遅くなるんだよ!と怒られそうですが
遅くなりお待ちいただいていた読者の方へはお待たせして申訳ありませんでした
オリジナルエピソードが多かったので今回のウォースパイトの話は元ネタに即した感じで作成しました
OVAにもなっていたと思います
そういえば、エリア88みたいにキャラがポンポン死ぬ漫画は最近少なめですね
1自身は艦これ2次で色々書いてますがキャラクターの死については
きちんと意味有る死なせ方をするのであればオッケーとする感じです、死なせるなら格好よく役割を持って死なせたいですね
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました
また、前回の更新以降レスをたくさんいただき本当にありがとうございました
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 01:26:28.37 ID:TtjPLA8A0
おつおつ
それにしてもやりやがったが、その前に明石が仕込んでたのって保険?もっとえぐいの?
…あと海外勢は派手にやらかす宿命なのかw
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 21:39:19.14 ID:RijcMmnQO
イギリスのヴァンガードが使ってたボフォースの転用ならそのライセンス関係で口利きしてもらったとかじゃないの?
スパ子さんそこそこの身分の出身だし
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 02:05:35.77 ID:rmPTD1ZgO

Freddy Fazbear's Pizza出前始めたのか
配達員はFoxy以外でお願いします
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 12:17:56.34 ID:1qMkjndu0
海外勢で88鎮守府に来た理由が判明してるのってスパ子とガン子だけっしょ。

それにスパ子は味方殺しだし、ガン子の内容が残念なスパイ行為と比べるのは流石にスパ子が可愛そうだと思うの
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/02(水) 12:14:49.67 ID:oh37T7z4O
>>172
グラーフ「視聴者に忘れられた…泣きっ面に蜂とはこの事か」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:17:38.64 ID:SaFztU7r0
>135 第五話×→第六話○ の間違えです
誤字が誤変換が無くならない相変わらずの残念クオリティ……
今回のエピソードは時代劇の短編でボツネタを追加した際に告知しておりました
鎮守府創設初期のお話です、ボツネタって何?という方は 必殺! 仕事人! の艦これSSをお読みいただけると幸いです
では、本日の更新をさせていただきます
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:18:09.75 ID:SaFztU7r0

第七話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦 前編
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:19:03.15 ID:SaFztU7r0

それは88鎮守府が出来てすぐのお話し。

鎮守府に所属している人数がまだ少なかった頃の話。



雪風「しれぇ!雪風、帰って来ました!」

提督「お疲れ。戦果報告は不要だ。

   お前はいつも最善手で最高の結果を出してくれる。」

雪風「信頼してくださりありがとうございます!」

提督「お前になにかある様じゃここも終わりだ。尻に帆をかけて逃げるさ。」ナデナデ

雪風 エヘヘ

提督「にしても、お前も俺について来なくても良かったんだぞ?」

雪風「しれぇは雪風を幸運艦雪風ではなく駆逐艦雪風として見てくれました。」

雪風「雪風を雪風の能力のみで評価してくれたしれぇはしれぇが初めてです。」

雪風「実力で公平に評価してくれる限り雪風はしれぇに付いていきます!」

提督「面と向かって言われるとなかなかおもはゆいな。」フフフ

提督「食事にするか……。」

雪風「はい!」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:19:55.94 ID:SaFztU7r0


食堂



不知火「司令、お疲れ様です。リストが届きました。」

提督「ありがとう。不知火も食事にするか?長門は一緒か?」

長門「あぁ、提督。ここに居たか今度の補充兵なんだが。」

提督「まぁ、食事を先にしようや。飯だけはいいぞ。」

不知火「司令、次回の補給と共にくる補充兵ですが志願兵も幾人かいます。」

長門「後は死刑、服役免れの懲役兵だな。いずれにしろはみ出し者だ。」

提督「解体で死ぬより此処に来て少しでも長生きする事を選ぶ連中だ。」

提督「多少なりとも灰汁が強くないと面白くないだろ。」

雪風 モグモグモグ

提督「にしても雪風はよく食うな。これも食べるといい。」

不知火「司令、食事はしっかりと食べないといけませんよ。」

提督「俺は食が細いんだよ。勘弁してくれ。」



不知火から受け取った書類をペラペラとめくりながら

88鎮守府へ送られてくる囚人達を確認する提督。
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