【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:12:37.76 ID:ZkrAgJQR0

そして、提督が煙草に火をつけ一服。



「叢雲?いるんだろ?」



建物の物陰に一言。



「あんたは…。」



気付いてたのと言いたそうに出てくる叢雲。



「やっぱりいた。」



煙草を手に持ち替え、笑い声を上げる提督。



「ちょっと、かまかけたっていうの!?」

「その通りだ。まんまと引っかかったな。」



はーっと溜息を一つつく叢雲。



「凡そは聞いていたんだろ?」

「えぇ、まぁ。」

「響に手の内を全部教えてやれ。どうせ使わん。」

「あんたって本当に性質が悪いわね。」

「なに、相手が勝手に踊ってくれるんだ。

 こっちは踊りを鑑賞すればいいのさ。」

「それにこっちが流した情報を馬鹿正直に信じるアホなら、

 はなから提督業なんぞ務まらんよ。」

「あっきれた。」



そして、提督は脳裏に思い出す。

叢雲が今まで秘書艦を務めその能力に問題有りとした提督連中の

所属する派閥の長が今度対戦する演習相手の血縁である事を。


「叢雲。」

「なによぉ。」

「勝つぞ。」

「当たり前よ!」

「いい返事だ。」


この演習が後に卑劣上等、型破りな演習で

敵を圧倒したとして記録に残ったのはまた別の話しである。

そして、一人の提督とその秘書艦が、

悪名でその後有名になる切欠となる最初でもあった。
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 01:19:27.86 ID:ZkrAgJQR0
次回オシオキデース!
試験の採点はナルトの中忍試験をイメージいただければいいでしょうか?
勝ち負けで提督の資質を判断してるわけじゃないよという奴ですね
レスで篩にかける&落さないといけないやつをつぶすために来たとのレス
良くお読みいただいた上での考察ありがたいと思っております
お読みいただいている皆様のレスはこの先の展開を色々推察していただいていてというのが前から多く
本当に感謝です、とはいっても次回はうわ、これは卑劣だわという戦い方になります
屑を相手どる以上仕方無いね!
ここまでお読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レスいつもありがとうございます
励みになっております、他のも頑張って更新するべく頑張っておりますので更新の際は呼んでいただけるとありがたいです
では次回の更新もよろしくお願いいたします
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 02:40:33.80 ID:BfU/kMLOo
乙しか言えなくて悪いがいつも楽しみにしてますよ
乙!
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 06:35:00.52 ID:1+v62k180
乙。
もっと早くに続きが読みたいわ
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 10:07:35.70 ID:Ju8Z49gj0
乙!
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 11:49:24.17 ID:a16hG/ur0
完全に叩き潰し将器がないとレッテル貼るとなると艦娘へ調略仕掛けておいて演習中に次々と離反させるくらいしか思い付かないがそれだと群狼戦術のフリが勿体無いなあ、展開が楽しみだ

この提督適性は軍学者に見えるがやってることは軍師の仕事なんだよな
この歪みがいつか大きな失敗招きそうで怖い
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:23:44.38 ID:1e9/xGBr0
暖かいレス、ありがとうございます
更新速度をあげれるよう頑張りたいものの相変わらずの亀更新
本当に申訳ありません、という訳で今回の更新です
お時間宜しければお付き合いくださいますと嬉しいです
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:25:36.24 ID:1e9/xGBr0

そして、決勝戦の時が来た。

その日はいつになく軍令部や艦隊司令部から、

所謂お偉いさんの方々が養成学校へと集まってきていた。



「これはこれは元帥まで……。」

「軍令部参謀総長に誘われてな。」



養成学校の校長が摩擦から火を起こせるのではないかという勢いで揉み手し迎える。



「養成学校はいくつかあるが此処の決勝戦はレベルが高いと元帥と話しをしていてね。」



元帥と気さくに会話をするのは

軍令部参謀総長にして戦略参謀長の大将。



「将来有望な艦娘候補生がいれば横須賀にいただきたいものですな。」

「君の所は充分だろう。なかなか欲張りだな。」



元帥と参謀長の会話に加わるのは

横須賀連合艦隊司令部長官にしてこれもまた同じく大将。

そして。



「決勝進出の提督候補生だが三重尾(みえお)中将の息子が出ているそうですね。」



司令長官が水を向ければ。



「ええ、息子の春蔵(はるぞう)が出ます。」

「これはなかなか優秀なんでしょうな。さすがですね。」

「卒業後は南方方面軍で中将の右腕として活躍してくれそうですな。」



中将と階級で呼ばれた相手は

今だ戦線整理を進めている南方方面を指揮する司令長官である。

806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:27:05.75 ID:1e9/xGBr0

「えぇ、いずれその様にはと考えています。

 それにしても対戦相手はなんとも……。」



お茶を濁すがその言葉にはいかにも見下した印象が伺える。

一番下から勝ち上がってきているとはいえ

一見すれば運がいいだけのような勝ちあがり方。



「息子の対戦相手には力不足ですな。」

「これはしかり。

 中将の息子殿にとってこの様な未熟者の相手は役不足でしょうなぁ。」



中将が息子を褒めればその腰巾着の大佐が言葉を重ねる。



「はは。まぁ、ここまで頑張ってきたんだ。

 それなりには実力もあるのだろう。」



参謀長がその中将の言葉に理解を示しつつも嗜め。



「運も実力のうちといいますからな。」



司令長官がそれにつづけば。



「圧倒的格上に当れば今までのメッキも剥げるだろう。

 我らはそれを見ていればいい。」



元帥が会話を纏めた。

そして、演習の開始時間が迫る中。

二人の候補生はそれぞれが選んだ出撃地点近くに移動を完了していた。

807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:28:18.10 ID:1e9/xGBr0

「随分と上層部の方々がいらしていたな。」

「勝てば上層部への覚えも目出度くなる事間違いなし。」



自分の父親以外にも上層部の重鎮達が集まっていたことを思い出し。



「おい、電。演習相手が使う戦術とかすべて間違いないんだろうな?」

「はっはい。間違いないのです。」

「もし間違えていたら『 罰 』を覚悟していろよ?」



下卑た顔とそしてねちっこい視線を電へと向ける。

彼が言う罰とは精神的、性的な苦痛。

彼はそれを自己の親、

寅の威を借るなんとやらでそれを外へ漏らさないようにしている。



「雑魚の三下が生意気なマネをしやがって。思い出すだけで腹が立つ。」



提督が俺が勝つと挑発したこともありこの三重尾候補生は

成績上位者が先に選ぶ演習海域、もしくは勝利条件で勝利条件を選択していた。

その選択した勝利条件とは敵艦隊の殲滅である。

そして提督が後から選んだ演習海域は

国際海峡であるマラッカ、シンガポール海峡を想定した多島海海域。

島がそれなりに点在する形の演習海域である。


808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:29:27.49 ID:1e9/xGBr0

「小型艦に旧式のポンコツ戦艦を抱えている連中だけあって頭が回るな。」

「だが、連中の潜水艦に気をつけていればこっちの艦隊の敵じゃない。」



自身が率いる艦娘は大和型に翔鶴型。最新鋭の艦娘達に駆逐にしても島風。

軽巡は球磨、長良と火力重視、おまけに重巡は摩耶、鳥海と

成績優秀な娘達を自分の親の立場を利用して選んでいる。

対潜、火力、制空。全てにおいて、万に一つも負ける理由がない。



「そろそろ演習開始です。」



不正が無いかの監視役として来ている教官の鹿島が開始時刻の到来を告げた。

そして。

演習は午前9時きっかりに始まった。



「全艦娘、出撃!」



出撃地点に設けられた出撃ドックから

次々と艦娘達が出撃していくのを見送り始めた次の瞬間だった。

海面に雷跡が走り、最初に出撃していった駆逐、軽巡の艦娘達に魚雷が命中。

複数本の魚雷による水柱が派手にあがる。



「馬鹿な!?相手は出撃地点をどうやって!?」



双方の出撃地点は幾つかある中から

公平性を期すために養成学校側がランダムで選ぶ。

だからそれを知る事ができる訳が無い。まさか。

809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:31:50.65 ID:1e9/xGBr0

「買収して出撃地点を事前に知っていただと!?」


狼狽し、とんでもない独り言をつい口走る候補生。


「言葉には気をつけていただけますか?

その様な工作は受け付けていませんよ。」

「それとも御自分がされている事の自己紹介ですか?」



冷ややかな笑顔で候補生の独り言を即座に否定する鹿島。



「駆逐艦 電、大破、軽巡 球磨、長良、大破、重巡 鳥海、中破。」

「駆逐艦島風 小破、重巡 摩耶 小破。被害判定は以上ですね。」



淡々と被害を確認し告げる鹿島。



「こっ、こんなの無効だ!無効試合だ!!」



演習開始と同時の潜水艦による攻撃。

相手の準備が終ってないところを攻撃する卑劣な一手。

無効な攻撃であると言いたくなるのも分からないではないが

鹿島が次に口を開け述べた言葉は呆れだった。

810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:33:05.87 ID:1e9/xGBr0

「随分とよく喋る無能さんですね?」

「なっ!?貴様!誰に口を聞いていると……。」

「思っているか?ですか?

 当然、目の前にいる状況を把握していないお馬鹿さんですよ?」



銀色のふんわりとウエーブの掛かった髪が、

その腹のそこから来る笑いを抑えているのが分かる程に揺れる。



「いいでしょう、理解出来ていないようなので特別に教えて差し上げます。」

「私達がお知らせしている演習日時、

 演習の開始時刻はあくまで開始時刻に過ぎません。」



蟲惑的笑みを浮かべ、口の前に指を一本立てて鹿島は解説を始める。



「開始時刻は開始する時刻であって出撃する事を表す時間ではありません。」



鹿島のこの言葉にいまだに要領を得ないという顔を見せる候補生。

その候補生の顔をみて、

やれやれとでもいいたげに眉根を寄せてさらに説明を続ける。
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:35:02.93 ID:1e9/xGBr0

「演習の開始時刻はあくまで作戦開始時刻に過ぎないという事です。」

「今まで皆が皆、開始時刻に出撃を律儀に守ってきた事もあってか

 開始時刻=出撃時間と勘違いが進んでいたようですがね。」

「開始時刻前に攻撃をしたりしなければ

 演習海域の何処に潜んでいても

 それはルール違反にはならないという事です。」

「じゃっ、じゃぁ、何故それを全員に言わない!?」



鹿島の言葉に反駁しようとする候補生。

しかし、それを遮り言葉を続ける鹿島。



「私達学校側になんら不都合もありませんので

 それをいちいち訂正、説明する必要性が無かったという事です。」



つまりは勝手にやれという事。

そして、目を細く、獲物を見つけこれから嬲る心算の捕食動物の顔をして鹿島は続ける。



「その程度の事を気付けない、

 見抜けない方が実戦でものになるとでも?」

「改めてお伝えします、この演習開始と同時の攻撃には

 なんらルール違反はありません。」



鹿島はこの事態を予感していた。

対戦相手の候補生に最初に会った時に戦場帰りの香りを感じていた為。

実戦の現場に立った経験があるかどうかは別として

その相手からは実戦を知っている人間が纏う独特の香りがしていた。

だからこそ。

この演習時刻が作戦開始時刻に過ぎないことを踏まえ演習をぶつけてくる事を見抜いていた。
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:36:17.16 ID:1e9/xGBr0

(とはいえ、最後の最後で見せて来るというのは

 他に真似をされて自分に使われる事を防ぐ目的もあるという事でしょうね。)



だけに。



(提督に任官されている方であれば

 ここで冷静に作戦中止の判断を下されるのでしょうか?)

(最も実戦であればそもそもの対潜哨戒網が抜かれているという時点で

 間抜けどころではないでしょう。)



ここでの演習終了は鹿島にとって面白くない。

鹿島はもっと、もっと、この面白い状況を見たいのだ。

人の不幸は蜜の味。

それも、親の権力、権威を傘に着て

好き勝手してきた相手が不幸に墜ちるさまを見るのは………。

至極。愉悦である。

813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:37:25.43 ID:1e9/xGBr0

(で、あれば。私が演じるべき役割も自然と決まるものですね。)

「それで、候補生さんは演習を続行されますか?」



この手の無駄に自己評価が高い相手を引けなくさせるためには煽る事が一番。



「ここで演習の終了を選択する事も良いと思いますよ。」

「御来賓の皆様がどう思われるかは分からないですけれど……。」



海軍上層部がこの演習を見ているという事実を思い出させてやる。

そうすればこの手の無能は頭に血が上り冷静な判断は下せなくなるだろう。



「続行に決まっているだろうが!!

 まだ、大和型戦艦の2人に空母の五航戦の2人も無傷。」

「重巡の2人にしたところで中破と小破だ!

 対潜にしても島風が残っている!

 演習を続けるのに支障なんぞない!」

「了解いたしました。では、演習続行という事ですね。」

「大破判定を出した子達については規定どおりに

 演習海域から離脱させ学校の方へ向わせます。」



所謂ゾンビ行為を防ぐ為である。

そして、鹿島は目の前の候補生が安い挑発に乗せルビコンを渡らせる。

その返答を聞いた鹿島の笑顔は実に恍惚であった。

814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:42:36.63 ID:1e9/xGBr0
鹿島がS女王
お馬鹿島もいいですしエロ女王なのもいいです
実際他の作者様での鹿島は割とそんな感じの役どころが多いですし…
ですが、こういう知恵が回り尚且つサドっ気のある鹿島もいいなぁって思うんです
物語の進みが遅くて本当に申訳ありません、香港のなんか現実がやばい事なっててあれれ?な状況
中国そこまで馬鹿じゃないと思っていたんですが現実は小説よりも奇なり……
いつも乙レス、感想レス本当にありがとうございます
前回の更新の後にいただいたいくつかの暖かいレス、固定で読んでくださっている事のありがたみを
改めて実感いたしました、なるべく更新を早めに行えるよう頑張っていきますのでこれからもお付き合いの程
どうぞ、宜しくお願いいたします
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 01:30:47.21 ID:t9cxth530
回りこみやすい島だらけの地形を選んだか
これは似たもの艦隊が生きるね
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 06:09:55.11 ID:TrT726nr0

固定観念にとらわれると現場に出てから困ることはよくある。
欺いてかわして隙きを突かねばこの先生き残れないね。
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 08:11:47.34 ID:usIqfFKPO
携帯からですが1です
相手側の人数足りていないことに今更気付きました
長門、陸奥がいる事にしてください
申し訳ありません
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 20:33:43.02 ID:4j9W/cXN0
乙乙
立ち絵だけ見た時の鹿島のイメージが完全にこれだ
サド鹿島いいよね
でもやはり本家のゆるふわ鹿島を二次創作で見ない
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:14:41.08 ID:xNtdGOdc0
このスレを使い切る勢いで提督の過去編を頑張るぞ…
暑い毎日が辛い、少しだけ更新いたします
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:16:14.07 ID:xNtdGOdc0

私、今回の演習の監視員である練習巡洋艦香取は考える。

目の前の候補生という人物について。

今まで見てきた候補生と比べ明らかにそれは異質だった。

そして、それが異質であると気付く相手がいるかどうかを

本人は観察して楽しんでいるようでもある。

さらに言えば。



「あっ、香取先生。そろそろ移動しますので無線機もっていきますね?」


開始時刻を過ぎて僅か10分ほどで

艦娘達への指示を出すのに使用する無線機のみもち移動を開始しようとするありさま。



「どちらへ移動されるおつもりですか?」



「はぁ。演習におけるルールブックを読む限り演習開始後は

 開始地点にいなくてもよいようですので

 司令部としての機能を他所へ移動しようかと思ったしだいです。」



演習開始時、候補生は所定の開始地点にいる事。

この一文の解釈をそうとるかと腹の中で笑う。

確かに妹として一緒に教官を務める鹿島が気に入る訳だ。

この候補生はルールの穴を解釈の仕方でいかようにも取れるというやり方を心得ている。

この手の人物は相当な曲者なのだ。

821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:17:36.06 ID:xNtdGOdc0

「いずれ敵がここを直接殴りに来るでしょう。敵司令部の破壊は基本ですからね。」

「はて。そう思われる根拠は?」



あれ?という顔で此方を見てくる。

しまったかしら?どうやら相手はこちらを高く評価してくれていたらしい。

これは下手をうったかしら?



「教官はなかなか点数を与えるおつもりが無いようですな。

 さすがに手厳しい方と評判なだけある。」



あっ、黙っていたら何か勝手に解釈してもらえてみたい。

これはいい兆候ね。



「成程。今までの演習の記録を見る程度の注意力のある候補生であれば

 同じ演習海域の使いまわしくらいには気が付きます。」

「出撃ドックにしても帰還ドックにしても設備を一朝一夕で設ける事はできません。」

「簡易的、その時だけ使えればいいやという事で作る事も可能でしょうが

 学校として卒業試験以外の様々な訓練での使用を考えると

 固定で作ってしまう方が楽なのは自明の理。」

「どうぞ。続けてください。」



ここはもう少し喋らせた方がよさそうね。存外饒舌に語る人物の様ね。
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:18:50.44 ID:xNtdGOdc0

「演習時のドックの選び方にあえての法則性を作っているように見ました。」

「お答えしかねますね。」

「気付くものが気付けば勝手に利用してくれというやり方ですね。

 まさしく事前にどれだけの情報を仕入れ、

 それを分析し己の優位性を確保できるかどうか。」



候補生の情報収集、分析能力についても

裏での採点ポイントなのを気付いているみたいね。

この候補生さんはやるわね……。



「過去のデーターにアクセスできるようにしているのも、

 やってみろと言っている様で。なかなか楽しめました。」

「あらあら、これは、なかなか。」

「私程度の者が考え付くのであれば相手も考え付くというのはまた真理かと思います。」



そんなわけないだろと突っ込みを入れたくもある。

よっぽど丹念に複数年分の演習記録を見ないと

法則性など分からないだろうに。



「演習開始時点での開始位置。

 司令部を置いている位置が分かれば、私なら殴りに行きます。」



確かに敵司令部を殴ってはいけないというルールには書いていないけれど。

清々しい笑顔で爽やかにルールに違反していませんよねと

言外に含むのは悪党だなと思わずにはいられないわね。

823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:20:34.89 ID:xNtdGOdc0

「コロンブスの卵とは言いますが自分が一番であるかどうかはまた別ですから。」

「となれば敵にやられる前に尻に帆をかけて三十六計逃げるになんとかですよ。」

「部下にやることは伝えていますから面倒がやってくる前に雲隠れです。」



なんとまぁ、この候補生は指揮をとる気が無いらしい。呆れた。

いえ、これはあれね。戦が始まった時には既に終っている。

ここまで丹念に情報を分析しそれに対処すべく細工を終らせているという事。

開始直後の相手被害状況も考えれば後はやる事が無いという事ね。

準備段階での差が勝敗を決めるとはよく言ったものね。



「了解いたしました。候補生さんとご一緒しましょう。何が手伝えますか?」

「あっ、お手伝いいただくようなことはなにも……。」


恐縮したような態度を見せるがこれは絶対にそう思ってないやつね。

なんて油断の置けない相手であろうか。

本当に恐ろしい相手だわ。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:22:22.25 ID:xNtdGOdc0

香取が提督と会話をして提督の人となりを改めて分析していた時。

提督もまた、候補生として考えていた。

目の前にいるこの練習巡洋艦香取という女性は恐ろしく侮れない相手だと。

なんせ、あの雰囲気だけで人を殺せそうなものを漂わせていた鹿島の姉妹艦娘だ。

そのおっとりとした雰囲気は紛れも無い欺瞞という奴だ。

見た目だけの妹と違いその雰囲気までもおっとりとかつ言葉は悪いが凡庸に見せかける。

並大抵のものじゃ出来ない。

先程の質問への答えに対してもそうだ。

移動を開始すると告げる前のやり取りに対してもそうだ。

何故かと問うて来た。

その質問の意図が分からずに間抜けな顔を見せてしまったに違いない。

これは恐ろしく減点をされているかもしれない。

825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:23:43.78 ID:xNtdGOdc0

なぜなら試験の答案用紙に

その答えに至った課程を一切書かずに答えのみを書くようなものだからだ。

論理的にその答えに至った過程も見るのがこういった演習型の試験にも関わらず

答えのみしか答えない生徒というのは非常にまずいだろう。

その答えに至った理由を説明できないというのは

理解が悪い自分の部下に対して何も説明できないという事。

早い話指揮官能力に問題ありと言える。

自分の指示を部下に納得の行く形で説明が出来ないというのは実に不味い。

命令の一言で済ませることが出来るというのが軍人ではあるが

部下へ嚙んで含んで理解、納得した上で動いてもらわないと

その成果は芳しくないのが当たり前。

さらに言えば人徳、人望など望むべく無く、

戦場の露となるべく後ろ弾を拝領するという事になりかねない。

だが、提督はまた、香取教官は以外に慈悲深い相手なのやもしれないと思った。

826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:25:01.00 ID:xNtdGOdc0

というのも質問の後に敢えて沈黙という間を作ってくれたからだ。

これがこちらをとがめる心算であれば

即時に何故その考えに至った事を説明しないなどととがめられただろう。

間を作って敢えてこちらに答えを促したという事は

こちらに多少なりとも好意的であるということ。

となればやることは一つ。

説明の不足を一気に語り、減点されることのなきようにというやつだな。

身分を校長以外知らない以上、流石に上の面子を潰すわけには行かない

饒舌に喋りすぎていないかが心配だ。

なんせ下から這い上がる演出の為にわざとに成績を落とした状態である。

これ以上減点を貰おうものなら幾ら自分の実力を上が把握しているといっても

渋顔の一つくらい覚悟しなければならないだろう。

無能に座らせる椅子は無いというのが上の立場だからだ。

説明は終ったが……、どうだ?満足してくれたかな?

………、よし、了解してくれた!

まったく。この教官は何を考えているか分からないから恐ろしい相手だ。

827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:25:40.88 ID:xNtdGOdc0

そして、提督が香取の底知れなさについて畏怖の念を覚えている時。

この候補生さんの思考の柔軟さはなんとも恐ろしいわね。

香取もまた、候補生である提督に畏怖の念を覚えていた。

結果、お互いの考えは同じであるがため、抱く感想はまた同じ。



((まったく、油断の出来ない相手だ(ね)、苦笑しかでない))



提督と香取はお互いの顔を見てひきった笑顔で笑い合うのであった。

828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:26:54.98 ID:xNtdGOdc0

提督達が笑い合っていた丁度その頃、

山城は腕時計で作戦開始時刻になったことを確認し動き出す。

彼女が立つのは海面………。

ではなく、演習海域のとある丘の茂みの中である。



「虫が多くて気持ち悪い……、はぁ−、不幸だわ……。」



と、いつもの愚痴をいい。

事前に提督から伝えられた作戦内容を思い出しつつ。



「ほんと、相手が不幸だわ……。」



彼女はにんまりとその口唇を吊り上げたのだった。
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:30:21.62 ID:xNtdGOdc0
ここまでお読み頂きありがとうございました
皆様、熱中症にはお気をつけください、経口保水液がおいしいとか感じられるような状況はアウトです
いつも感想レス、乙レス、ありがとうございます
周りこめる地形条件、ウルフパック作戦、そして色々
卑怯だろ!というやつです、まさしく勝てばよかろうなのだ!を時で行く糞野郎を提督はやります
ではでは、次回の更新もお読みいただけると幸いです、ここまでお読み頂きありがとうございました
夏イベント、ほんとどこいくんでしょうね?バケツが不安だわ…
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 07:52:51.12 ID:6nwtO7WdO
乙!
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 09:45:32.06 ID:33TPt9nPo
香取からそこはかとないポンコツ臭がして笑った
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 11:31:04.13 ID:f1uEgEbX0
乙乙
別にポンコツではないんだろうけど比較対象がずば抜けてるせいでポンコツに見える
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 12:11:39.44 ID:ONkDfwo2O
乙です。
猛暑でおかしくなりそうですが
続きをはやくはやく希望します
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 13:07:59.41 ID:PVnQXPBi0
このお互いに先の先まで読みすぎて結局普通の結論に落ち着くところが好き
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 13:09:54.60 ID:gAoWBJj30
提督賢しすぎて回りこみすぎた挙句一周回ってお互いいいところに落ち着いとるw

孫子をしっかり修めてなお将たる素養のうち五分の二が片鱗も現れないとこ見るとこの時点では響に言った通り腰落ち着けて艦隊指揮する気なかったんだろうなあ
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:27:28.30 ID:pvOQ4SiX0
毎週何曜日に更新とか出来る程に筆が早いといいんでしょうけれど…
などなど思いつつちまちました更新速度です
お時間宜しければお読みいただけると幸いです
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:29:47.98 ID:pvOQ4SiX0
扶桑、山城達が別行動をとっている際、

叢雲たちもまた行動を開始していた。



「それにしてもこう、ばらばらでいいのかねぇ」



猫かぶりの口調から普段の口調に戻り隼鷹が分隊の旗艦を務める叢雲に聞く。



「戦力の分散、逐次投入は無能と言いたいのは分かるわよ。」

「実際私も馬鹿じゃないのって具申したわよ。」



そして叢雲へ提督が返した言葉は。



「あいつったらこう言うのよ?

 まともに敵を圧倒的暴力で殴れるなら策を練ったりする必要なんかねぇ。」



提督の口調を真似しつつ。



「圧倒的な暴力の前には戦術、戦略なんか意味がねぇんだ。

 って開きなおるのよ?!」

「あー、確かにあの提督なら言いそうだわ。」



艦隊内では既に候補生という呼び方ではなく提督、

司令官呼びで通っているらしく隼鷹が叢雲の物まねに相槌を入れる。



「俺達みたいな弱小戦力の寄せ集めじゃ奇手奇策。相手を出しぬかねぇと勝てねぇ。」

「なら相手を徹底的に虚仮にしつつ怒らせるのが重要だ。怒りは最も我を忘れさせるからな。」

「怒りに我を忘れた相手を潰すのは簡単だ。」

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。だそうよ。」



提督の口調を真似しつつ隼鷹に話す叢雲。



「負けない要素をがっつりつくって相手のミスをまつか……。」

「負けた相手の精神を食い破るえげつなさ。惚れるねぇ。」

「千年殺しでもするつもりかね。」


相手にトラウマでも与える心算かという隼鷹の指摘。


「さてと、出番はそろそろかしらね。」


叢雲が片手をあげ近くにいる暁に出番が近いことを教える。


「待ちに待った出番ね!」

「えぇ、そうよレディ。幕はあがったわよ。」


そして、叢雲達が待ち構えるなかまた演習相手も動き出した。
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:30:50.18 ID:pvOQ4SiX0

「この演習は既に負け戦なのではなかろうか?」



最初の不意打ちを受けて艦隊の被害甚大にあるにも関わらず

指揮官の候補生が演習続行を選択した事に疑義を唱える長門。



「行けといわれた以上は行かねばなるまいよ。」



長門の疑義を命令であるがゆえに仕方なしと答える武蔵。



「翔鶴さんに瑞鶴さん。偵察機の索敵状況はどうですか?」



空母の二人に敵艦を見つけたかどうかを尋ねる大和。



「偵察機が敵を見つけたわ!駆逐2の軽空母1よ!」



瑞鶴が報告を上げる。



「敵の部隊として随分と細かく戦力を分けているな……。」



長門がいぶかしむのも無理ない。

初手で潜水艦娘達による奇襲を受けたのだ。

戦力的に見て劣勢である叢雲達がその戦力を更に細切れにさせて行動しているという事は

何某かの策、伏兵なりが存在していると考えるに難くない。

839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:32:39.94 ID:pvOQ4SiX0

「潜水艦を何処かに潜ませておいて伏せ撃でしょうね。」



敵の今までの演習内容をみれば

俗に言う郡狼戦術を好んで利用している事が分かる。

ましてや自分達の対潜能力のある艦娘達が

最初にそのほとんどを退場させられている事を考えればその意図は明らか。



「でしたら空母艦載機での遠距離攻撃のみで、艦砲射撃は止めますか?」

「今回のMVPも私達姉妹が貰う事になりそうですね。」



含みのある笑みと共に翔鶴が言う。

演習大会については当たり前だが提督候補生の指揮能力だけではなく、

その指揮下にある艦娘の能力も当然、考査の対象となる。

成績最優秀で卒業するには当たり前だが

優勝したチーム内で当然の様に戦績を重ねる事が重要。

候補生の調整能力が長けていればチームとなる艦隊内での役割分担や

演習後の報告書での手心などで不満が出ないようする事も出来るであろう。

そういったマネジメントが上に立つものには欠かせないのである。

それを疎かにすれば鎮守府ないで戦果を争う者達で派閥が出来たあげくの

足のひっぱりあい等が起こるというもの。

だが、この艦隊を率いる候補生はその辺が実にお粗末だったようで

空母の姉妹は戦艦の砲撃よりも長射程である艦載機の攻撃を生かし

常に戦果をほしいままにしていた。

島風や大破判定で退場した娘達はまだ対潜での活躍の場もあったが

長門や陸奥、大和や武蔵。

そして重巡の二人からすれば空母の姉妹に

活躍の場の殆どを取られている状況が大会中ずっと続いている。

その胸奥に渦巻く感情は一体どれほどのものかといえよう。

840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:34:25.88 ID:pvOQ4SiX0

一方その頃、提督と香取は既に移動した先でポーカーに興じていた。



「これは随分ブラフを効かせていたのですね。」



香取が降りた後に提督が出した手札はただのワンペア。

それに対して香取の手札はスリーカード。

何試合目かの感想戦。香取は提督が口八丁、手八丁。

そして顔の表情を目まぐるしく変えて

その表情を読むことを難しくさせていたことへ驚嘆を込め言葉を語る。


「そうですね。私は顔に出やすいですから。」

「とはいえ、これでやっと五分ですか。」


香取と提督のポーカーは勝敗がやっと同じになった。



「続けますか?」



香取の問いに対して提督は答える。



「止めときましょう。

 どうも勝ちを譲っていただいているような節もありますし。」

「五分に持ち込めて気持ちよく終れる間に終るのがマナーというものでしょう。」

「遊びは禍根を残さないようにという事ですか。」

「えぇ、今後も気持ちよく付き合いたいのであればですね。」



香取は提督の言葉の含みを捉える。


「成程、足るを知る者は富む、ですか。」


香取が中国の故事で応じれば。


「和を持って尊しを為すでもあります。」



提督は日本の故事で応じる。
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:35:59.67 ID:pvOQ4SiX0

「ですが、やろうとしていることは風林火山ですね。」



提督の行動がその実、間逆である事を香取は指摘。



「敵と味方の区別は大事ですですから。」



そして提督はその理由を述べる。



「気持ちは分かりますが……。」



しかし、と指を一本立て香取は語る。



「組織の中に敵を作りすぎるのはよくないと思いますよ?」

「この演習の結果は既に見えている通りでしょう。」

「ですが相手の候補生は提督として着任する事は間違いないと思います。」



香取が語る。


「………、それを私に語っても大丈夫なのですか?」


提督が疑問をぶつける。



「話せる範囲内で、機密漏洩に当たらない

 ぎりぎりのサービスではありますが心配はご無用です。」



香取が語る内容は提督にとっては既知の事。

そして提督はそれを阻止する為に動いているわけだが

香取がそれを知ることは無い。

重要なのは香取が語ったという事にこそある。



「意味の分かる方と見込んだ上ですので。」



こともなげに言うと思うが。



842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:36:46.39 ID:pvOQ4SiX0

「………。そこまで私を買っていただく理由はなんでしょうか?」

「そうですね。

 妹ほど私は戦闘能力が高いわけでは有りませんので

 観察能力を高めた結果といった所でしょうか?」

「教師という職務上、人を見る目がないと勤まらないのは当然ですが

 それを更にどう選別、育成するかというのは経験以外の部分も必要です。」



香取がメガネをくいと持ち上げる。



「文字通りにお眼鏡にかなったと?」

「そうですね、個人的に応援をさせていただきたくなる程度には、です。」

「………。今後も精進いたします。」



提督が香取と友誼を結ぶ。

それはあくまで個人としてだが、

後々を考えればお互いの利を見据えてでもあった。

843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:38:52.99 ID:pvOQ4SiX0


「じゃぁ、まっ、私と翔鶴姉ぇがさくっと倒すのを見てて貰いましょうか。」



悪気を感じさせはしないのだが…、

だけに性質が悪く、聞くものによっては癪に障る。

びんと音を立て放たれた矢が艦爆、

艦攻へと変化するのを長門達は見届け動き出す。



「隼鷹、そろそろお客さんが来る頃よ。」

「任せときなって。陰陽型の取り得はねぇ……。」



ばざりと巻物を一気に広げ祝詞を言祝ぐ。



「迎撃が早いってことさねぇ。」



彼女の巻物から召喚されたそれは戦闘機のみであった。

しかし、その数は。



「あたしの扱う艦載機は全て戦闘機だ。

 腹に魚雷、爆弾抱えた鈍重どもには遅れをとらないよぉ!」



まして提督がその操作の癖を見、

悪い所を相手へ付け入る隙に見せかける騙しを教え、

長所を徹底して伸ばさせた騙しの出来る艦載機妖精達。

そしてそれでいて本流は外れない。

あくまで応用は基礎の上に成り立つ。


「へへへ。さぁてぇ、性能に胡坐をかいたお嬢さん方にどれだけ通用する事かねぇ。」


ひゃっはぁ!と特大の感嘆詞をあげ全機無事発艦させたのだった。

程なくして演習相手の偵察機が自分達の方へ再度やってくるのを見届け

叢雲は自分達の艦隊内で使われている周波数で無線を飛ばした。


「こちらチェックメイト、ホワイトルーク!」

「キング!クイーン!ビショップ!ナイト!応答願うわ!」


チームとしての呼称、小隊、

といっても少ない戦力を更に細かくしているだけなのだが。

それを呼びかけ、叢雲の呼び出しに艦娘達が応ずる。


「虎は檻に入った!繰り返す!虎は檻に入った!」


提督が最初の奇襲で演習を相手がリタイアしなかった場合の、

もっとも続行するだろうがと付け加えた上で叢雲へ語った作戦を実行に移す。

その上で思い出すのは。
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:40:20.86 ID:pvOQ4SiX0

「俺の艦隊指揮での仕事は作戦立案の参謀職だ。

 現場で即応して人員を動かす上での指揮官はお前さんだな。」

「指揮官とはいってもだ、現実その場にいるわけじゃないからな。

 お前さん達には独断専行してもらった方がいい。

 責は俺が負うから好きにしろ。」

「臨機応変、場合によっちゃ勝ちをくれてやれ。

 お前達を何かで失う方がおしい。」



勝つつもりではあるがその中心にすえる価値観の天秤はつねにぶれない。

そういう提督の真摯な態度が好ましいなと改めて思い、

できない事は出来る相手に投げるというなんとも鷹揚な態度を思い出す。

相手が任せると投げてくるなら、こっちはやる事をやるだけと

今まで司令官と仰いだ連中との違いに少し頬が緩むのを感じる。



「さて、みんな!締めて掛かるわよ!」



叢雲が掛け声を掛ければそれに応と一同が答えるのだった。

猛獣とて檻に入れば逃げられない。敵は既に術中にある。

最初に異変を感じたのは当然ながら空母姉妹だった。



「あれ?攻撃隊が全部おとされちゃった。」

「軽空母の搭載機数にしちゃ数が多い気がする。」



瑞鶴が攻撃隊の第一陣があっさりと撃墜された事に感想を漏らす。



「こちらへの攻撃は考えずに全艦載機を戦闘機にしているようですね。」



冷静に自己の艦載機を動かしながら翔鶴が分析する。



「あたしらが一方的にスコアで負けてるもんなぁ。」



摩耶のこの一言は余計だった。

現状の認識として実に正しいのだが、余計な一言だった。



「確かに負けていますね。」


大和が言えば。
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:42:18.72 ID:pvOQ4SiX0

「流石に何日も演習に時間を割くことは無いだろうしな。」

「艦隊殲滅が勝利条件として設定されてはいるが

 せいぜい掛けて一昼夜といった所か。」



と大和の言葉をひきとり武蔵が言う。



「まさかとは思いますが敵はこちらを適当にあしらい

 時間が来るまで逃げる気でしょうか?」



大和が懸念を述べれば。



「夜戦となれば向うに分がある。

 ましてや潜水艦が残っている事を考えれば日が落ちれば此方は分が悪い。」



冷静に分析するのは長門。

ちっと盛大に舌打ちするのは誰であったか。



「敵は戦力を分散して逃げ回る事で

 此方を戦果で上回させることなく判定勝ちを狙う心算ですか。」

「随分と腰抜けで卑怯な作戦ねぇ。」



大和が叢雲達はそうと目論んでいる物と断定し

翔鶴がそれを軟弱者となじる。

もっとも時間切れによる判定勝ちを狙う心算なのであれば

叢雲達が戦闘に消極的であり戦力を細かく分散させて

ひたすら逃げるというのは一見、理に適っている。

(だが、果たしてそうであろうか?

 初手でこちらに潜水艦がいるという事を特に印象づけた相手が

 その様な単純な考えで動くのであろうか?)

(確かに初手のあれは卑怯ではあるが実に有効であり

 こちらの耳を奪うという意味でも重要であったし。)

(何より、戦力でみれば潰した方がいい戦艦である私達ではなく

 対潜艦を先に狙うという明確な意思が見られた。)

(しかし、それほどの相手がその様な稚拙な策をとるのであろうか?)

(こちらが既成概念に捕らわれているのを馬鹿にしたような戦術だが……)



勘という奴だろうか、長門は大和と翔鶴の考えに疑問を感じた。

艦隊の旗艦は大和である。なので、長門が出来たのはあくまで助言。

846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:43:19.50 ID:pvOQ4SiX0

「敵の意図が分かりかねる。

 一旦どうするか指揮官の候補生殿に指示を仰いではどうだろうか?」

「そうね、長門の言う事ももっともだと思うわ。

 慎重に進めるべきではないかしら?」



陸奥の援護射撃。そして。



「私も摩耶もここは慎重に行くべきだと意見は一致しています。」

「潜水艦に対する備えは今の私達には薄いです。」



鳥海が懸念を述べた。

叢雲達であればわざわざ提督に指示を仰がずとも意思決定が出来ただろう、

また、提督に判断を仰いだとして提督ならば相手の企みを看破、

或いは単純に乗らないという選択をしたのだろうが……。

提督との、その指揮官の差がここでも運命を分けた。



「小細工があったところでお前達の戦力なら蹂躪できるだろうが!」

「いいから敵をぶっつぶしてこい!

 戦力を分散しているなら各個撃破しやすいだろうが!」

「これ以上俺に恥をかかせるな!」



候補生からの怒気と苛立ち交じりの無線が返ってくる。

そしてそれを聞いた大和が長門へよこす視線は余計な事を聞いた所為で

いらぬ叱責を受けたといわんばかりのそれである。

結果、彼女達は指揮官である候補生が命じるまま叢雲達に対峙することとなったのだった。

847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:48:15.29 ID:pvOQ4SiX0
ここまでお読み頂きありがとうございました、本日の更新終了です
欧州3海域かぁ…、有用艦娘掘り放題!(尚掘れるとは)だといいのですが
前回みたいなうぇぇ…、じゃない事を祈るばかりです
作品中で少し鶴姉妹の性格が感じ悪いのは申訳ありません、
あくまで作中の演出的な部分なので嫁にされてる方には本当に申訳ありません
お分かりかと思いますが既に内部分裂の兆しがががが……
いつも乙レス、感想レスありがとうございます、お読みくださっている皆さんからの暖かいレス本当に感謝しております
次回の更新もお時間よろしければお読みいただけると幸いです
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 02:29:08.04 ID:uVpe+Wos0
社会学者が講演会でいってた「3人集まれば文殊の知恵というが馬鹿は何人集まろうが烏合の衆です」が実に刺さる未来が見える
そして聞きたかった作戦時間がかなり長いことがわかって楽しみが増えた
霧などの気象確率もリサーチ済みだろうしまだまだブッ込んできそう
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 03:34:26.60 ID:jeokajMT0
おつです
候補生のうちにいやらしい相手との戦闘を経験できている大和たちは
運が良いのかもしれませんね。
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 23:46:59.62 ID:GNzJAKyY0
乙乙
ゲームだとMVPだけだけど実際妬み僻みとかありそうだよなあ
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:47:46.46 ID:sON5tDsC0
皆様こんばんは
イベントにつっこんでおりますいっちです
サブ欧州艦が豊富だったためさっそくリシュリューのサブでE1やってます
今回は楽に全てが終るといいなぁと、終りよければ全て良しでいきたいですね
今回の分の更新となります、お時間宜しければお読みいただきますようお願いいたします
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:49:09.32 ID:sON5tDsC0

「敵、攻撃機部隊第一陣撤収を確認!」

「了解!私達ホワイトルーク小隊は

 手はずどおりに水道を抜ける形に進路を取るわよ!」



隼鷹が翔鶴達正規空母の攻撃隊に自己の全艦載機を

戦闘機に振り分けた上での迎撃に成功した旨を旗艦の叢雲に報告。

それを受けて叢雲達は島と島の間、彼女達中小型艦艇が小回りを利かせやすい水路、

一般に言う水道を通る進路を選択する。



「隼鷹!艦載機の収容は!?」

「完了!」

「レディ!目標は!?」



叢雲の呼びかけに少し先を先行する暁が応える。



「偽装ブイを発見したわ!」

「了解!さぁ、かくれんぼの時間よ!」



叢雲達はある意味で大和達を相手する心算はなかった。

先にも述べたが横綱相手に幕下がまともに戦って勝てるか?という奴である。

番狂わせなんてものはそうそう起こるものではない、

起こり得ないからこそ番狂わせなのだ。

そして、それを起こす為の下準備はきっちりとしてきていた。



「偽装ブイ確認、各員無線、電探使用は敵艦隊をやり過ごすまで禁止よ!」



枝、葉をこんもりと生やし、一見すれば島の一部のように見せかけたただのブイ。

よっ、と、そのブイの枝を掻き分け中にある空間の中に身を潜ませる一同。

853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:50:08.48 ID:sON5tDsC0

「第二次攻撃隊、目標ロスト。」



第一次攻撃隊が全滅したため改めて発艦させた

二次攻撃隊から目標とする相手の失跡報告。



(どこへ雲隠れした?)



翔鶴が第一次攻撃隊が居た海域周辺を探る。

程なくして、駆逐2、軽空母1の敵編成を見つけた。



「居たわね……、雑魚は大人しくやられるといいわ。」



敵の小隊へ向け艦隊全体を移動させている最中で

翔鶴の下卑た笑顔に長門は嫌気する。

味方であるはずの仲間に対して嫌気がさすとはな、

と、やや自嘲気味に今の境遇を考えれば。



(最初に負けが確定しているのに続けるこの演習になんの意味があろうものか。)



今やっているのは負けを認められずに悪戯に時間を引き延ばすだけの行動。

実戦であれば撤退戦に移るべき局面なのだ。



(忌々しい。)



戦局を見極められない軍隊の結末は相場が決まっている。
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:51:33.64 ID:sON5tDsC0

そもそも。



(第一次攻撃隊が向って全滅の後、第二次攻撃隊が見つけた敵の位置は

 敵が移動していると考えたとしても距離が離れすぎている。)

(連中の編成をみれば軽空母は低速に分類される飛鷹型。移動速度があり得ん。)

(となれば、この小隊は先のとは別物と考えるが妥当。)



と考えを纏めるも先の意見具申の結果を思えば。



(せん無きことか。)



「長門さん、この先は島と島の間の狭くなっている水路をゆく事になります。」

「複縦陣で中央に翔鶴さん達を配置する形で進軍しようと思います。」



大和の声に意識を戻し意図を理解する。



「島風に先陣を切らせ対潜哨戒に当たらせ

 我ら長門型が先頭警戒、前衛という事か。」

「えぇ。摩耶さんと鳥海さんのお二人は中央側へ回し、

 私達姉妹は後方警戒、後衛を行います。」



妥当。狭い水路を通るのであれば最も脅威となるのは潜水艦での待ち伏せ。

こちらの対潜能力を初手で削っている状態であればそれを狙わない訳は無い。

だが、こちらとしては最も長距離攻撃に長ける空母が生きていれば良い為、逆転を期待する事は出来る。

演習相手の艦娘は自分達砲撃に長ける戦艦達とまともに組み合える戦力ではない。

敵艦隊直掩航空隊を奪う、あるいは戦艦の射程内にとらえてしまえばこちらが蹂躪できるのだ。



(だが、それをさせてくれる相手ではないだろうな。)

(そして付け加えるなら潜水艦娘達の逃げ道が無くなるような場所で伏撃は行わないだろう。)

(だろう、だろうの推論ばかりか……。まったく。)



負けと悟り自身の指揮官の無能さをしればこそ

第三者的視点で客観的に現状を分析できるだけに

敵の愚に期待するのは無能だろうと思う。
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:52:41.09 ID:sON5tDsC0

「了解した、陸奥との二人で前衛を任された。」



隊列を組みなおし改めての進撃。



「ホワイトビショップよりキング、クイーンへどうぞ!」

「敵の釣り上げに成功!といっても食べても鉄と脂でしょうけどね!」

「こちらキング。了解。配置についているわ。」

「釣り上げお疲れ様。戦域離脱を確認次第砲撃へ移行するわ。」



飛鷹の呼び出しに扶桑が答える。



「同じくクイーン。

 これからは私達がおもてなしの時間という事ね。」



飛鷹が翔鶴達空母の第二次攻撃隊からの攻撃をかわしながら

扶桑と山城へ無線を飛ばす。



「前方に敵潜水艦の脅威は今の所見当たらないよ!」



島風が聴音機、探信儀それぞれの反応で潜水艦がいない事を連絡。

艦隊が警戒しながら水道へと進んでゆく。

攻撃隊が見つけた敵目掛けてわき目も振らずに……。

そして、その時は来た。



「ようこそ、お客様。お客様をお迎えできた事は実に無上の喜び……。」

「さぁ、貴方達を歓待するために私達姉妹がお贈り致しますは、素晴らしき。」

「あなた方の為の……、極上のランチ。」



まさにこれから敵を蹂躙する事への喜びからか山城がうきうきと歌いだす。

856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:54:21.67 ID:sON5tDsC0

「Be our guest 」



熱い、鉄の、それも砲弾という名のプレゼントによるおもてなし。

時刻は丁度昼時に差し掛かる。



「Be our guest 」



扶桑、山城、両名が歌う歌が無線から聞こえてくる。



「あらら、ご機嫌ね。」



とは大和達を釣りあげた飛鷹。



「うちの砲火力の女神達がご機嫌だと相手にとってご愁傷さまね。」

「そうだね、戦場の女神といえばいつだって勝利の女神。」



飛鷹が相手を気遣う台詞をいうのを引き取り響が更に続ける。



「敵にとっては死神かもしれないね。」

「戦士をあの世へと連れて行く戦乙女(ヴァルキリー)には

 人数が足りないのじゃないかしら?」



戦乙女は9人、対して扶桑達は2人。



「飛鷹さん。だからこそ私達にとっては勝利の女神なんじゃないかしら?」



飛鷹と響が扶桑達を勝利の女神か死神かと話している所に雷が結論づける。



「確かに雷の言うとおりだね。」



大和達がもしも、島へ注意を向けていれば違和感に気付いたかもしれない。

偵察機たちが飛鷹達を追うだけではなく周囲の島の地形を

注意深く見ていれば気付けたかもしれない。

だが、彼女達の注意は潜水艦へのそれと、駆逐艦が有する長距離射程武器である魚雷、

自分達が現在負けているスコアを逆転させる為に飛鷹達を叩き潰す事へ向けられていたため

その注意が左右の島へ向けられる事はなかった。

結果、彼女達は再び一方的に殴りつけられることとなった。

857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:55:38.50 ID:sON5tDsC0

雷鳴の如き砲声が海峡に響く。



「あ゛ぁ゛!?」



それは実にタイミングをきっかりと合わせた砲撃。

右の島の山の山頂付近と左の島の丘陵地帯のやはり頂上付近からの砲撃。

初弾は翔鶴の眼前に着弾。



「初弾から本射だと!?」



目標物への観測用の砲撃もなくいきなり当ててくる本射、

効力射に驚愕する長門。

砲撃の一発目が撃たれたという事は続く運命は……。



「総員、耐砲撃態勢!各員左右の敵砲撃に応戦!」



前衛の長門が指示を出すが。



「当たり前といえば当たり前だけど……、敵の位置には当てずらいわね……。」



陸奥が扶桑達が居るであろう場所を睨みながら呻く。

海上から陸上にある目標物への砲撃は

戦艦同士での砲撃と比べ当たり前だが当てづらくなる。

沿岸要塞に設置される沿岸砲の攻略には艦船での攻撃は向いておらず

真珠湾攻撃が航空機による奇襲作戦になったのもオアフ島に揚陸できる場所が見つけられなかった結果、

要塞の無数の沿岸砲の前に艦船での攻撃は全滅と判断された経緯がある程である。

それほど陸に固定された、特に高所に設置された砲というは厄介なのである。


858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:57:00.30 ID:sON5tDsC0

「上から下を狙うのと、下から上を狙うのではまた威力が違うものよね。」



くすりと笑い砲を撃ち続ける扶桑。



「欠陥だ、時代遅れだ、色々口さがない事を言う人達も多いけれど

 戦艦の主砲の威力は本物よ?」



山城の主砲が火を噴き、砲声が雷鳴の如く響く。



「散布界が狭いだと!?」



当ててくるその砲撃に長門が驚愕する。

戦艦の主砲の命中は良くて撃った弾の2〜3%と言われる。

これをカバーする為に数を撃つのが本来の戦艦同士での砲撃戦である。

そして、目標に対して最も遠い着弾点と

最も近い着弾点の距離を表したものが散布界と呼ばれる物だが。

それが狭いという事は当然ながら目標物に対して集弾されているという事であり。



「左舷に被弾!」



瑞鶴が悲鳴をあげ、被弾の報告。



「みなさん!左右の島の砲撃地点へ向けて砲撃を行ってください!」



旗艦の大和が指示をだす。



「ちぃ!」



武蔵が苛立ち舌打ちをする。

左右の島からの砲撃は丁度、その散布界が重なるように砲撃をされており

特に砲弾が集約するように狙われている。

その狙いは明確。そう、空母の鶴姉妹である。

艦隊で目となる高空からの視野を持つ二人。

散布界が重なれば命中弾も増える。まして左右からの挟み撃ちによる砲撃。

当てないほうが難しい状況である。

859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:58:18.10 ID:sON5tDsC0

「させるかよ!」



武蔵が砲弾の雨の中、左の島の丘陵地を狙うが目立った効果を挙げることはない。

先程から続く島からの艦砲射撃は海面を揺らし照準が揺れる大和達は正確な砲撃が出来ない。

火力がいかにあろうと狙いが悪ければ効果は望めない。



「砲撃を休む事無く行い弾幕をはり敵からこちらを見えなくするんだ!」

「敵の位置を把握できない以上は手数を稼ぐ形で敵の反撃を防ぐんだ!」

「皆!この海峡を早く抜けるぞ!」



大和が指示を出しきれていない事をみてとった長門が矢継ぎ早に指示をだす。



「島風、水道の出口が一番危険になる!

 先に抜けて周囲に敵潜水艦が居ないか確認を頼む!」



長門が島風に指示をだす。島風は既に扶桑達の砲撃の範囲外にある。

潜水艦を伏せるなら一番効果が認められる位置が水道の出口。

その付近に潜水艦が居ない事を唯一残っている対潜艦の島風に

急ぎ確認させている間に砲撃は止んだ。

860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:00:12.15 ID:sON5tDsC0

「敵に砲撃をさせないためこのまま砲撃を行いつつ離脱だ!」



長門が陸奥達へと指示。



「大和!水路を抜けた後一旦全体の被害の確認を行う事を進言する!」

「……、わかりました。」



砲撃が途中で止んだのは長門達の砲撃が

扶桑達に当たり黙らせる事に成功した訳では無いことを長門は理解している。



「戦艦の私達を移動砲台として機動的砲撃、

 機動火力として陸上戦力として組み込むやり方。」

「提督は柔軟な思考をされる方と思わない?」



大和や長門達の砲撃が本格化して被害を出す前に悠々と離脱せしめ、

海上を移動する扶桑が近くを並走する山城に言葉をかける。



「そうですね。私達姉妹の能力を考えた上で

 これが最も適切と言ってきたのには少々腹が立ちますが。」


姉の扶桑へ返す言葉には含みがある。



「ですが、姉さまもそうだと思いますが。

 私達よりずっと性能が上とされる娘達を一方的に砲撃して蹂躪できたというのは

 実に楽しく気分が高揚しました。」

「貴方は正直ね。でも、私もそうよ。」

「それに、随分と無駄に弾薬の消費もさせる事ができたわ。」



その表情は実に晴れやかかつ誇らしく堂々としたものである。



「はい。私達が退いた後も無人の場所への砲撃で無駄に弾薬を消費してくれていましたね。」

「えぇ、そうね。山城。これは実に大きなアドバンテージになると思わない?」

「はい、姉さまの言うとおりです。」



そして、無事役割を果たした事を叢雲達仲間へと無線にて連絡したのだった。

861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:01:08.93 ID:sON5tDsC0

「翔鶴は大破か……。」

「電探に敵艦影は反応なしよ…。」



長門が被害を確認している間に陸奥が周囲の状況確認。



「あたしと鳥海も大破だな。敵さんの砲撃は恐ろしく精度が高かったかんな。」

「多島海での演習ですから敵の方々がまた同じような作戦をとる可能性はあると思います。」

「まっ、あたし達は大破だからここで演習終了だ。」

「茶番劇を終れると思うと清々するね。じゃ鳥海いこうぜ。」

「そうですね……、皆様。御疲れ様です。」



そういい、摩耶と鳥海は艦隊を離れていった。



「翔鶴姉。」

「瑞鶴?貴方をとっさに庇ったおかげで貴方は発着艦が出来る程度の損害で済んでるわね。」

「大破で抜ける私達の仇、しっかりとって頂戴。」



がしっと瑞鶴の肩をつかみ気合を入れる翔鶴。

その目は自分を大破に追い込んだ敵を許すなと物語る。

そして、潜水艦への周囲警戒を行いつつ

大和達は自分達の被害確認を行い再度指揮官の候補生へ連絡を行った。

862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:03:02.03 ID:sON5tDsC0

「………、お前達から相手はみえなかったんだろ?」

「なら、どうせ誰が大破したかなんか見えてないだろ。」

「違反行為だ?監視の教官をどうするか?……、お前達が考える事じゃない!」

「翔鶴は中破だ。改二改装相当の艤装を持たせてるんだぞ!?」

「あっさりやられてるんじゃない!敵は周囲にまだいるだろ!?」

「待ち伏せしてこそこそやっている様な卑怯な連中だ!実弾つかってでも倒して来い!」



鹿島が席を外す…、花を詰みに行っている間に

大和達から来た無線での連絡に違反行為をしろと指示を下す候補生。



(なぜ傍受されていないと思うのでしょうか?理解に苦しみます。)

(それに艤装の被害状況も逐一モニターされているというのに馬鹿極まってますね。)

(しかし、このままの放置したほうが楽しいのでしょうが、

 放置しておくと今後の問題になりますし。)

(さて、いかにしたものでしょうか……。)



鹿島はこの状況に一人頭を悩ませるのであった。

863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 01:20:00.31 ID:sON5tDsC0
鹿島が頭を抱えるくらいのお馬鹿!という事で本日の更新はここまでです
戦略爆撃機なんか実装される事ないやろーとか冗談で2部の頭で敵に使ったら運営さんが実装してきたよ…
やめて?と本気で思いましたです、基地というか資源にどれ程の被害が出ることやらやら
今回の更新の途中で触れています艦砲射撃ですが対地で狙う時は要塞なんかの目標物がでかければまぁまぁあたりますが
多くは牽制とか戦艦などをずらーっと並べて下手な鉄砲なんとやらで数で圧倒して陸上の敵を潰すやり方になります
ノルマンディーの時はウォースパイトもその前の海戦で船底に大穴が開いていたにも関わらずコンクリートで穴を塞ぎ
艦砲射撃の為の数として無理やり参加させられていました、それ程に数が足りなかったともいえますが……
一般的には迎え撃つ陸上側は、数的劣勢の場合はさっさと海岸線を放棄して内陸へ誘引し個別に撃破
あるいはもっとも無防備になりやすい敵上陸部隊の上陸時を狙うようなやり方で対抗する事になります
ノルマンディーがブラッディービーチになったのはこういう事情、艦砲射撃他でしっかり敵の陣地をつぶせなかったり
上陸に対しての敵障害物をしっかり排除できてなかった、また、E2甲報酬の風呂桶がかなりの数、沈んだなどなど
兵士を裸で敵地に放り出すみたいな事をやらかしていたからああなったわけですね、兵士の命が紙切れ一枚より軽い
真珠湾は作中でも触れましたが上陸させる事が不可なのと砲の数でも上回ることが出来なかった為航空機での奇襲となりました
毎度、更新がまちまちかつ不定期ですがお読みくださりありあとうございます
感想レス、乙レス、お気軽に残していただけるといっちが喜びます、是非お願いいたします
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 02:55:59.09 ID:CJjHi2JM0
チャーチルが駄々こねて嫌がるアメさんにシングル作戦主導してもらった手前、イギリスはノルマンディを意地でも成功させないといかんかったしね
手柄立てないと戦後のケーキの奪い合いに参加できない
しかしまあ不甲斐ない五航戦だわw
俯瞰視点で戦場を見ることのアドバンテージを全く活かすことができないどころか理解すら出来てないな
攻撃機の道中とか全く見てないまである
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 04:28:17.83 ID:MymPi0qMo
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 06:20:07.49 ID:M4DjwyLv0
おつです
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 12:53:16.01 ID:rtkQe4OMo

まあ一応養成校の新米艦娘だし若きハゲ提督とその手解きを受けた娘達の相手をしろって方が酷だって話だよね
全てが終わった後に受け入れるかどうかよな、楽しみ
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/02(月) 20:49:34.48 ID:sfVbGD7w0
何となく思ったが扶桑姉妹は人間だった時一卵性双生児だった気がする
他の姉妹艦娘となんか雰囲気が違う、何というかお互いの精神的な距離が近いというか限りなく類似な印象
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/06(日) 19:59:24.33 ID:jv7eHjiXO
続きまだなのか
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/10(木) 15:48:14.43 ID:InPKVz0go
気付いたらもう一月以上か
わたしまつわ
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/10/25(金) 00:03:22.49 ID:Tz4B+Khy0
色々やる気の問題でまったく書き進められず書き貯めを作る事もできず…
残念っぷりが爆発しておりましたが生きていました
お時間宜しければどうぞ、読んでやってください
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:05:54.99 ID:Tz4B+Khy0

鹿島が頭を悩ませていた頃、提督達は何をしているかというと。



「香取先生、コーヒーが入りましたよ。」

「色々準備されているんですね。」



香取がちらりと見やるのは濃い緑色のコーヒーメーカー。

電動工具で有名な会社の現場作業向カラーの製品。



「ポータブルバッテリー式ですか。」



なかなか事前に準備をして物を持ち込んでいると考える香取。

演習海域に点在する島々に色々と物資を持ち込んでいるのだろう。



「いつの間にご準備を?」

「さぁて、そいつは内緒です。」



直接に聞いて答えるわけは無いか……。

演習時、艦娘は出撃後は燃料、弾薬の補給は補給艦を随伴させていない限り、

帰還して補給するのはルール上は禁止されている。

これは実戦的演習を行う為の一環であり出撃後に

補給が受けれない場合を想定の元でのルール。

しかし、物資を海上に隠す、つまり点在する島などの拠点に

あらかじめ置いておきそれを演習中にこっそりと利用する事は禁止されていない。

というよりもする人が居る事を想定していない為ルール上、

それを裁くため基準が無い。



「コーヒーはブラックがお好きですか?

 それともミルクを入れてカプチーノにされますか?」

にこにこと笑顔で聞いてくる相手のその言葉はまるで。

(黒じゃなければ白であると言っているようね。グレーは限りなく黒であっても黒ではないか……。)



つまりは。


(グレーは白。つまりルールになにも違反はしていない。彼を減点したり裁く事は出来ない。)

873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:06:51.53 ID:Tz4B+Khy0

裁く法がなければ合法という屁理屈、

しかしそれを罰するには法がなければ罰する事が出来ないのもまた事実なのだ。



(どこでこんなずるを覚えたものか…、

 この候補生は本当に何者なのだろうかしら?)



受取ったコーヒーを飲みながら相手を見れば

演習海域が映るタブレットに表示される駒をせわしなく動かしている様子。

だが、部下である艦娘達へ指示を飛ばすことは無く、

受ける連絡は位置と戦果の報告のみである。

そしてたまに、報告の確認を監督の為についている自分へとするのみである。

タブレットへ入力している時以外はカードゲームや読書、

或いは飲食で暇つぶしを優雅に行っており指揮を見せることが無い。

その所為も有り香取は提督の実力を今だ把握できずにいた。

そんな中、提督の手が大駒、おそらく空母を相手艦隊から除外入力をした所で

香取からの視線に気付いたのか手を止めた。
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:08:24.38 ID:Tz4B+Khy0

「部下達からの連絡で相手の空母に大破判定を与えたとありましたので

 戦果の確認をしていただけますか?」



恐らくは間違いないのだろうが本部側に連絡されているであろう

相手側の被害とのつき合わせ。

最初の潜水艦たちによる奇襲を含めてどこでどの艦娘を落すのかを

計算ずくと思われることを考えれば目の前でのけた空母の駒は既に大破判定と思われる。



(テストの答案の答え合わせをしているような感覚を覚えるわね……。)



奇妙な感覚を覚えつつ香取は提督の催促に促され監督官として戦果の問い合わせを行った。



(えっ!?)



提督が目の前で除外した空母が健在。つまりは。



(鹿島ぁぁぁ ―――――― !!!!!!)



報告を行わなかったのかと妹に怒りの無線カットインを行う。

もちろん提督の前で行う事は出来ない為、

少し離れた位置で、である。
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:10:47.73 ID:Tz4B+Khy0

「どういうことなの!?」

「あっ、あのですねぇ?

 私にも流石にどうしようもない事ってのはある訳ですよ。」



無線の向うからは普段の様子とは180度真逆のおたおたした声が聞こえる。



「だからといって戦果、被害報告を誤魔化して良い訳ないでしょう!?」

「でっ、でもですね?あちらの親は……」



演習相手の親は中将。

確かにもっている権力で言えば黒を白に出来る相手。

更に言えば今日の演習最終戦は海軍の首脳陣が観覧しているのだ。

忖度したくなるのも判る。



「それでも審判である私達が不正を黙認して良い訳がないでしょう!?」



まったくもってその通り。ぐうの音も出ない正論である。



「まさか、あなた…。」



面白さを優先して不正を黙認したんじゃないわよねと

言い掛けた辺りで香取は背後から突き刺すような視線に気が付いた。



「香取先生、いかがなさいました?」



その声の主は、笑顔で、ゆっくり、はっきりと聞こえる声で語りかける。



「確認に時間がかかっていらっしゃるようですが?」



願いが叶う物なら振り向か無くていいでしょうか?と何かに縋りたくなるような

そんな思いで香取が振り向けば其処には満面の笑顔を浮かべた提督がいた。

大きく息を吸い酸素を脳に送る、

これは笑顔に見えるが絶対に笑っていない奴であると

香取の自己防衛本能が最大限の危機を知らせているためである。

その危険を知らせるというのは、この危険を目の前にしては

まったく意味の無いものであるが……。

そう、目の前の手を振り上げて今にも振り下ろす寸前の羆を指差して、

これ危険ですよね?と訊ねるくらいに無意味である。

876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:12:13.41 ID:Tz4B+Khy0

「香取先生……、煙草をいただいてもいいですかねぇ?」



先程までの無駄に畏まった口調がとれ、

やもすればこちらを馬鹿にするかのような

野卑た笑顔の口元から発せられた言葉は意外にも喫煙の許可だった。

どうぞと相手の落ち着き払った笑顔に引き攣った笑顔で返せば、

慣れた手つきでオイルライターの火をつける提督。

提督がポケットから取り出した煙草は

現在流通している中では高級品に分類されるもである。

それを口に咥え、火をつけ、フィルターの限界まで燃え尽きるように一気に息を吸い、

肺へとそのバニラのアロマを含んだ煙を無理やり流し込む。



「…………、やぁ、随分と不味い煙草だ………。」



一言、煙草の感想を述べ吐き出した煙が周囲に燻り、その煙を提督が纏う。

その佇まいは此の世に悪魔というものが顕現したのであれば

そうだと信じてしまえそうな程に禍々しい雰囲気と気配を纏っていた。

そしてゆっくりとした動作で眉間に出来た皺を揉み解すようにもんだ後に一言。



「馬鹿の相手も疲れるな……。」



ポツリと漏らしたその言葉は間違いなく本音から来るものであろう事は間違いない。

香取が恐怖そのものへと視線を向けている中、その恐怖は無線機のスイッチを入れた。



「あの……、その……。」

「あぁ、えぇ、それ以上は不用ですよ。何が起きたかは理解しました。」



香取が言葉を紡ぐ前にそれを手と冷ややかな笑顔で制す。

877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:15:44.03 ID:Tz4B+Khy0

「それを言えば知らなかったが『 お互いに 』成り立ちません。」



にかりと歯を見せて笑う提督、

その笑顔はとても直視できるものではない。

憤怒であろうか、いや、失望とも幻滅とも。

それら様々な感情が提督を支配しているように見えた。



「やれやれ、仕事といきますか……。」



こきこきと首を動かし、ぐるりと肩を回し無線機の送信スイッチを押す。



「ホワイトルーク他全小隊、CPの提督だ。応答してくれ。」

「ホワイトルーク、旗艦叢雲よ。」



提督からの呼びかけに各小隊の旗艦達が応じる。



「今からCPの俺が全体指揮を執る。各員死ぬ気で動け。

 マップコードは聞き漏らすな。」

「俺がお前達を最適な射線、射角が取れるように誘導する。敵は一人も逃さん。」



そう言うとタブレットに映る海図に配置された駒を一気に動かし

矢継ぎばやに移動先の指示を出し始める提督。



「両舷全速で動かしてくるわね……。」



提督から次々と出される移動指示に艤装の主機が唸りを上げている状態。



「叢雲、索敵情報は全部提督へ先に送るのかい?」

「えぇ、指示前は私に送ってもらっていたけど今からはあいつへ先に送って頂戴。」

「今の所、此方の経路指定が主だけれど先程までの双子(ジェミニ)作戦から

変更されたのは間違いないわ。となると索敵情報は今まで以上に重要になる。

だからあいつは今必死に頭を回転させて敵を潰す方法を幾通りも考えている所だと思うの。」

「まぁ、既に答えが出ているような気もしなくもないんだけれどね。」

「だからその答えを早く出す為にも敵の位置は間違いなく重要よ。」



叢雲が隼鷹に索敵機の増数も含めて指示をだす。
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:16:16.84 ID:Tz4B+Khy0
「まぁ、敵さんの位置は大まかにつかめてっからそれはいいんだけどさ。」



叢雲の言葉に隼鷹が先程まで有利に展開を進めていた作戦を

何故捨てるのか提督の意図が分かりかねると疑問を述べる。



「あぁ、あいつの意図が分からないってことかしら?

 そうね作戦名から察するに大まかには変更はないと思うわ。

 それから、そうね…、うーん、あいつの考えが私の考え通りなら

 そろそろ索敵機の帰還に関して欺瞞行動をやめて

 こちらの位置をばらす方向の指示がくるはずよ。」



叢雲が言い終えると同じくして提督からホワイトルーク小隊の隼鷹へその通りの指示が来る。
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:17:24.22 ID:Tz4B+Khy0

「へぇ〜。言った通りだよ。」

「そう、それならそろそろ扶桑か山城と合流になるんじゃないかしらね。」

「えぇ、その通りよ。私が貴方達と合流よ。お世話になるわ。」



声のする方向をみやれば海上迷彩仕様の

ブルージャケットを被った扶桑がその姿を見せた。



「扶桑がこちらに来てくれたのね。となると山城は単艦移動かしら?」

「えぇ、提督からの指示を個別に受けていたからあの娘は単艦で指定位置へ移動でしょう。」

「妹を危険な目に合わせてごめんなさいね。」



戦艦を単艦で移動させる。それは囮にするという使い捨てとしか言えない行動。



「いいぇ、提督の指示を聞けば一番重要な役割のようですし。」

「ただ、単艦行動中に敵に見つからないといいなとは思っているわ。」



叢雲の言葉に首を振りつつその言を否定する。

つまり役割としては囮ではない事を理解しているという事。



「そうね、囮の役割は恐らく飛鷹達かしらね。」

「そう上手く食いついてくれるかねぇ?」



叢雲と扶桑は山城の役割を理解しており

敵を釣り上げる役割の囮は叢雲達か飛鷹達という事になる。

880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:20:02.17 ID:Tz4B+Khy0

「山城の移動が航跡等で見つからないといいのだけれど……。」



不安の声を漏らす扶桑。その心配は姉として当たり前である。



「扶桑。短期間ではあるけれどあいつの下で

 一緒に演習を勝ち上がってきたのなら分かるでしょう?」

「今回の双子作戦について海上迷彩仕様のジャケットを渡してまで

 移動が分からなくしておきたかった貴方を

 わざわざ分かるようにして此方に寄越したのよ?」

「こちらかあっち、まぁ、あっちなんだろうけれど。

 とりあえず山城に注意が行かないように細工をしているに決まっている。」

「万一、敵に見つかったとしても、それを計算に入れていないわけは無いでしょうね……。」



叢雲が提督の計算高さを知っているでしょうと扶桑に同意を促せば。



「そうね、司令官が私達の自主性に任せた作戦行動から

 自らの禁を破ってまで指揮を執るっていうんだもの。」

「何も考えていないわけはないわ!」



どやっと暁が言葉を返す。



「でも……。」

「あら?どうしたの?」



暁が少し不安そうに顔を曇らすのに扶桑が何事かと訊ねれば。



「司令官にそれだけの決断をさせたって事は

 よっぽど腹に据えかねる事態が起きたって事でしょう?」

「相手がかわいそうだなぁって思ったの。」

「そういえば貴方の妹が相手方に居たわね。提督に任せておけば多分大丈夫よ。」



妹の心配をする暁に同じく姉として妹を思う気持ちは同じと扶桑が応じる。


「妹の電は大丈夫かしら……。」


ふと思い出すのは暁の妹が相手方の秘書艦であるという事。


(寧ろ、問題があるとするなら響かしらね………。

 と私が考えるくらいの事ならあいつが思いつかないわけないし。)

(双子作戦なんて事を考えてもそうなのだろうし…、

 飛鷹には私に話がされていない指示が出て居そうね。)

「まぁ、あいつの事だから何も考えていないという事は無いでしょ。」


そう答えると、叢雲はさんと房状になったお下げを揺らし無線で出された移動目標へ向きなおすのだった。
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:24:27.43 ID:Tz4B+Khy0
少ないですが今回更新分終了です、秋刀魚、鰯漁の間にまた頑張って書き溜めれるように気合を入れなおします
提督お怒りモード!そして残り1000に行くまでに終れるか!?のチキンレースの模様、まぁ大丈夫でしょう
では、また次回の更新もお付き合いいただけると大変ありがたく思います、1ヶ月以上も音沙汰無しで申訳ありませんでした
ご心配のレス、ありがとうございます、お読みいただいた貴方に感謝しつつ、本日もこれにて!
ではでは!ここまでお読み頂きありがとうございました!
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/25(金) 06:05:44.08 ID:qjuzyHLk0
乙です
鹿島さんも中間管理職なんですねぇ
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/25(金) 09:37:24.98 ID:V2dXL6DLo
おつ
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/30(水) 03:55:53.03 ID:pNhlXE5C0
乙乙
提督は勿論だけど叢雲達もすげぇ優秀なのでは
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:48:41.44 ID:ADblsM4a0
秋イベやるんか…
秋、冬合同とおもってたんだけどなぁ…
ねじ稼ぎがとまんないのに…
少しばかり更新です
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:50:27.78 ID:ADblsM4a0

本部観覧用テント内



元帥が状況の説明を受けながらふむと口を開く。



「なかなか、中、小型艦艇の強みを生かした戦い方をしているな。」

「表示されている艦艇の位置関係をみれば相手に対峙しているのは

 二つに分かれた小隊のうちの一つになるように誘導しているようだな。」

「多島海という地理的優位性を実によく利用している。」



元帥が海域選択を褒めれば、軍令部戦略参謀長の大将が続く。



「それもですが初手で王手を掛けるに等しい

 潜水艦隊での奇襲というのもなかなかですな。」

「校長に聞けば演習相手の出撃地点はお互いには知らされることが無いそうですよ。」



ほうと元帥が続きを促すように口元を緩める。



「つまり何某かの諜報活動、分析なりで

 相手の出撃地点を割り出し事前に潜ませていたという事か。」

「相手の戦力を最初に最大限削る。実に実戦的なやり方だな。」



元帥が提督を褒める。



「とはいえ、あまりにも卑劣なやり方ではないでしょうか?」

「禁止をされていないからやっても罰を受けることが無いという

 確信犯的行動はいただけないかと思います。」



否定的言を述べるのは現状いいとこなしの候補生の父親である中将。

彼からすれば息子の肩をもたねばというより

息子の評価が地を這うことになれば自分の評価も下がるのは必定。

少しでも自分への被害を抑える為に相手である提督を扱き下ろさねばならないのだ。



「中将、君は深海棲艦達との戦争で負けたとして

 相手が卑怯であるという言い訳が立つと思っていたりするのかね?」



提督の評価を下げようとする意見に眉間に皺を寄せ、

睨付ける視線を中将へ向け咎める様な強い口調で訊ねる司令長官。

887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:51:29.83 ID:ADblsM4a0

「まさかと思うが人外連中相手に君は交戦規定が必要とでも言い出すつもりかね?」

「確かに演習は艦娘同士で行うがその想定はあくまで対深海棲艦だ。」

「我ら人類の不倶戴天の敵である奴らから

 勝利を得る為に卑怯だのといっていられる現状かね?」



鬼気迫る、いや、無能な部下への呆れと叱責、

その双方ない交ぜの感情が中将へと向けられる。



「司令長官の仰る通り、やはり決勝戦まで勝ちあがってきただけありますな。」

「決勝戦だけありましてどちらの提督候補生も優秀なようです。」



上官の発言が司令長官の不興を買ったのを察知し、

司令長官の覚えが目出度い候補生を褒めつつ

それに張り合える相手もなかなかだとその双方を褒める大佐。

ようは自分の上司の息子の肩をもちつつ、

さらに上が褒める相手もよいしょというなかなか計算が効いた世辞というやつである。



「……、そうではあるか。」



ふむんと考え込むように手を顎に当てる司令長官。

そして。



「校長、それぞれの候補生が率いている艦娘候補生達の総評を聞いてもよいかね?」



司令長官が横に控えていた校長へと水を向けた。

888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:52:54.24 ID:ADblsM4a0


「はい!ええっとそうですね。

 こちらの、重量艦を多用されている中将殿の息子様が率いている艦隊に

 所属する候補生達は個人としての成績は実に優秀です。」

「特に大和型の二人の命中率は成績優秀でして……。」



長々と続く説明を冷ややかな目で眺めつつ参謀長が分かった分かったと口を開く。



「成程、今現状負けている側の艦娘達が成績優秀なのはわかった。」

「そして、勝っている側の艦娘が平均的、

 いや、一部においては評価が良くない事もわかった。」



そして、校長を黙らせる一言が出る。



「ならば何故、勝負の勝敗が逆ではないのかね?」



しんとテント内が静まり返る。

この問いに答えられる者がいるとすれば……。



「参謀長もなかなか答えにくい質問を投げかけるじゃないか。」



やれやれと笑い声を押し殺したような顔で元帥が口を開く。


889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:54:17.27 ID:ADblsM4a0

「単純に指揮官の差が出たといった所だろう。

 そして、その指揮官がいかに艦娘本来のポテンシャルを引き出せているかと言った所だな。」



明朗快活、実にはきはきと、面白くてたまらないといった声音で元帥が語る。



「指揮官と部下の関係が良好である事、問題における意識の共有、

 つまりはパーフェクトコミニケーションがなされねば

 命令以上の事はこなそうとしないだろう。」

「軍人として命じられた事以外をしないというのは有る意味正しい。」

「命令以外の行動をとった結果の作戦失敗という事もあるからな。」



元帥の言葉はテント内にいる全員に語りかけるかのように続く。



「だがだ、命令を実行し戦果、

 そう、我らにとって重要な勝利という目標の達成には

 時として与えられた命令について出来る事を考える必要性が有るのだよ。」

「命令の範囲内で出来る事を拡大解釈というのは時として

 独断専行という言葉で悪く言われる事もあるがね、

 それを自己で考えて実行できる者程逆境に強い。」

「そして、好機においては時として猪突猛進を行い赫赫たる戦果をあげる。」

「これが成せるのは普段から考える事を訓練付けられているからだ。」

「考えるという事は常に事態打開の為に動く為に足を止めることをしない。」

「そういった底の、地の部分を勝っている側の艦娘候補生は鍛えられているのだろう。」

「扶桑型といった艦種として旧型に分類される彼女達を

 陸上砲台として利用する等の柔軟性。実に良く考えられているではないか。」



元帥が戦術、艦娘の素質について褒めれば戦略参謀長も続く。

890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:55:42.29 ID:ADblsM4a0

「負傷して砲のみ稼動可能な艦娘を砲台代わりに使った事例は

 最前線で何例か報告がある。」

「そういった戦訓も良く情報として収集し

 自己の艦隊の作戦に落としこんでいるのは工夫だな。」

「そして、ここ一番という所で、初手の潜水艦での攻撃にしても、

 この砲台としての利用にしても最大かつ最適なタイミングだ。」

「この最終戦に至るまではその手札を見せなかった事により

 相手に使われるかもしれないという警戒心を抱かせる事を防いだのは実に見事。」

「知る者は言わず、言う者は知らず。情報の重要性という事も実によく心得ていると言える。」

「結果として艦娘の成績が優秀であった側が負けている。」

「もっとも、成績に関してはここまで相手がしてやられているのを考えれば

 能ある鷹は爪隠すの可能性がないとも言い切れんがな。」



参謀長の言葉に司令長官が畳み掛けるように続く。



「付け加えるなら部下として運用している艦娘達それぞれに、

 大局、情勢を見て自由に動けるだけの権限を投げているであろう事も分かりますな。」



目を細め面白そうに司令長官に続きを促す元帥。



「通信記録を見る限り勝っている側の候補生は位置情報、

 戦果報告程度しか受取っていないようですからな。」

「作戦内容を事前に話した後は現場の裁量で内容の変更等を認めているのでしょう。」

「最終目標が達成されれば問題ないという大胆な割り切りですな。」



ちらと参謀長の方をみる司令長官。

891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:56:44.06 ID:ADblsM4a0


「耳が痛いな。

 確かに作戦を我々軍令部が立案しそれを各鎮守府に作戦大綱として伝達した後は

 各鎮守府に歯車として動く事を強要している部分はある。」

「そうせねば軍という一つの群、全体を動かすのに綻びが生じるからだ。」

「時として一つの作戦を実行するのに緻密にいくつもの作戦が絡み合う。」

「それこそ精密機械の様にだ。一つの破綻が全体の破綻につながりかねんのだよ。」



現状の再確認とばかりに参謀長が答える。



「といっても現場で状況に応じて修正が効かぬのでは時として死ねと言うのに等しいだろう。」

「もう少し作戦に柔軟性を持たせるべきだろう。

 現状では我々前線で指揮をとる提督達はただの繰り人形に過ぎん。人材が育たんぞ?」



それぞれの立場での危機感から軍が抱える問題点へと話が逸れていき始めるが……。



「まぁまぁ、二人ともそこまでにしときたまえよ。」

「君達二人のいう事はどちらも正しい、ゆえにいつまでたっても結論はでぬだろう。」

「その議論についてはまた別の機会を設けようではないか。」

「それに今はそれを論ずる為にここに来ている訳では無いという事を思い出したまえよ。」



元帥が大将の二人を諌めて場を納める。

892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:58:08.63 ID:ADblsM4a0

そして。



「存外それについての一つの答えがこの演習に詰まっているとも言えるとは思えんかね?」



元帥が大将の二人に問いかける。



「君達はこの演習の勝敗をどう考える?」

「そうですな。このまま順当に終るでしょう。」


司令長官が述べる。



「私もそう思いますな。盤面を引っくり返すとすれば関が原における小早川。」

「あるいはハンニバルに対するカルタゴ政府。

 強烈な裏切り者でも用意出来ない限りは無理でしょう。」



参謀長もまた同意する。



「成程、現場と作戦畑の長それぞれの意見は同じか。」

「まぁ、私もその様に思うが何があるか分からんのが戦場だからな。

 最後まで楽しませてくれるといいとは思っている。」

「中将。君はどう思うね?」



元帥、大将二名の意見に反論を述べる事が出来るわけも無く。



「私も御三方のおっしゃる通りの結果になるかと思います……。」



消え入るような声で賛同を示すしかない中将だった。

893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 01:02:53.85 ID:ADblsM4a0
以上更新此処まです
艦これSSでは提督と艦娘が主人公なの為そのバックボーンというか背景というか
偉い人達が現状を語るみたいなのあんまり無い印象を受けますね、
退屈ととられかねないので書かないという部分もタタあるのかもしれませんがその辺り良くわかんないですね…
難しいです…、自分の作品内ではくどくならない程度には触れていきたくもあります
そうしないと提督の立場とか世界情勢が分かりにくいので、お読みいただいている方にはご迷惑をおかけします
ではでは、お読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レスいつも励みになっております
お気軽に残していただけるといちが喜びます、では、次回もお読みいただけると幸いです
ここまでお読み頂きありがとうございました!
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 01:11:52.57 ID:VSMiXmnP0
乙です
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 10:46:34.25 ID:jkjSOFCMO
乙です。
元帥以下の高級将校に艦娘を率いた経験がるか。その辺りはどうなんでしょうか。
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 11:18:01.20 ID:HGZqT1Ovo

最後に不穏な雰囲気を感じさせてきたな
もし裏切り者が出るとしたらまあ誰かは想像つくけど……よく考えれば無能提督にそんな甲斐性があるわけもないか
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/07(木) 00:54:03.94 ID:WJ/zw5AN0
将、軍に在りては君命をも受けざる所あり
孫子の九変は確かに中々難しい所だ
馬謖然り、これを引用して大敗を喫した将は数知れず
大勝を収めたものはあまり語らない
海軍が提督に求めている待命は兵卒の美徳だし海軍は艦娘の運用体系がまだ定まってないと見た
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