少年「俺のクラスは亜人だらけ」

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54 :亜人好き ◆HQmKQahCZs :2018/05/04(金) 16:46:17.35 ID:WA/nYA/c0
考え事をしていれば思いのほか時間は早く過ぎる。計算をしていたら飲食を忘れることはざらだ。

何も必要ない暇つぶしを持っていることはこんな時に便利だな。

さて、適当に枝が石を拾って―――

「家の前でうろちょろしている鼠がいると思ったら、貴方ですか」

少年「………ユキムラさん」

頭の後ろにヒヤリと重い感触あり。

慌てずに両手をあげるとそれは静かに下ろされた。

後ろを振り向くと銃口を二つ備えた猟銃を持った犬耳メイド服の女性。

彼女はロード家に仕えるメイド長のユキムラ。俺に対しては事務的で冷ややかな反応を取るが今のところ実害はない。まぁ、事あるごとに銃口を向けられているが撃たれたことはない。

ユキムラ「お嬢様はどこですか? なぜあなただけここにいるのですか?」

少年「色々あって………俺だけ先に帰ってきたんですよ」

ユキムラ「まっ! お嬢様を差し置いて貴方だけ帰ってくるなんて。もしお嬢様の身になにかあったらどうするつもりですか」

ユキムラ「お嬢様はプリティーながらも高貴でフェミニンな雰囲気を纏い、目の下の隈が実に蠱惑的なお方ですよ。誘拐される可能性は行きと帰りを含めて200%となってもおかしくないのですから貴方はお嬢様に変な虫がたからないようにしなければならないのではないですか? 弟なら姉を守るのは当然のことなのですよ? そこをしっかりと肝に銘じて今すぐお嬢様を世間の悪漢どもから守るために」

少年「早く帰ったのは悪かったけど、ミレイア、様がそう簡単に襲われるとは思わないんだが。ミレイア様はそんなに弱かったか?」

ユキムラ「言葉づかいがなってないのは不問にしますが襲うというものは決して物理的なものだけではありません。ズボンの下の汚らわしく粗末な(ずきゅーん)をミレイア様の前に、あぁ! ミレイア様!! ユキムラは! ユキムラは!! 今すぐ貴方様をお守りしますからねーっ!!」ズダダダダ

そういって走り去っていくユキムラ。

砂埃が舞う猛烈な勢いが遠くまでしっかりと見えた。

少年「………枝を探しに行くか」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/05/04(金) 17:54:50.73 ID:USatMTchO
乙ー
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/04(金) 17:56:00.04 ID:ffv/jvpDo
おかえり
57 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 18:49:21.79 ID:WA/nYA/c0
適当な枝を探し、地面に式を書いているといつの間にか日が暮れかけていた。

遠くから聞こえる車のエンジン音。魔導車に乗れる人はそうそういない。つまりミレイアが帰ってきたのだろう。

出迎えないと怒られそうだ。玄関の前で出迎えることにしよう。

今日は色々なことがあったなぁ。良い思い出だけではなかったが。

今までと違うってことはしっかりと実感できた。

少年「しまった。結局教室がどこにあるのか把握できてないな」

まぁいい。バジロウ達が分かるだろう。

ブロロロロロロ

門を抜けてくる車が見えた。おそらく先に帰ったことを開口一番に咎められるのだろう。

いや手がでるのが先か?

どちらにせよ身構えておこう。
58 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 18:54:57.83 ID:WA/nYA/c0
ガチャ

少年「おかえりなさいませ、ミレ―――」

ミレイア「どこいってたのよボンクラァ!!」ゲシッ

少年「うげぷっ」

顔面への綺麗な飛び蹴り。身構えておいても耐えれない衝撃に俺はもんどりうって倒れた。

流石吸血鬼。馬鹿みたいに怪力だ。

ミレイア「姉より早く帰るなんていい御身分だこと! しかもそれを知らせないなんて」

倒れた俺の胸の上に着地したミレイアが捲し立てる。見下されてる形になるから唾がばしばし飛んでくる。やめてほしい。

少年「ユキムラさんから聞いてないですか?」

ミレイア「ユキムラ? 聞いてない、っていうか会ってすらないけど」

どこまで行ったんだユキムラ。

ミレイア「たとえあんたは足が折れても腕がもげてもミレイアちゃんと一緒に帰ること! いいわねっ!!」

少年「そこまでいったら病院行かせてください」

ミレイア「それぐらいの気概でいろってことよ」

なんて暴君。
59 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 18:59:57.10 ID:WA/nYA/c0
頬を膨らませたミレイアに背中を蹴られながら家の中へ戻る。

ユキムラがいないので迎えてくれるのは業務的なメイドたちだけ。

いたらいたでミレイアにべったりでうるさいのでいいのかもしれない。

ミレイア「はぁ、今日も疲れたわ〜。お風呂入ってくるから、食事の準備すること。いいわね?」

鞄を俺に向かって投げ捨てながらミレイアがメイドたちに命ずる。

メイドたちは一言返してから各々業務に戻って行った。

そして風呂場にむかっていったミレイアの後には乱雑に脱ぎ捨てられた靴下や手袋などの衣服が点々と散らばっている。

家の中だとしてもう少し優雅さというかなんというか、立派な姉であってほしいものだ。

とりあえず風呂場につく前に下着姿まで脱ぐのは一般常識的にいかがなものか。

男「とりあえず、鞄を持ってって自習でもするかな」
60 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 19:36:57.82 ID:WA/nYA/c0
ユキムラ「ミレイア様ー!! ミレイア様ー!!」

ユキムラ「ミレイ、はぁ、はぁ。ミレイア様はいずこに!!」

ユキムラ「まさかすでにお嬢様の身に危機が!? ユキムラは、ユキムラはっ!」

ユキムラ「ユキムラはいますぐお嬢様のところへ参りまする!!」ダダダダダ

「あはは、なんか面白いひとがいるよ。ねぇ見て見て、あれ面白いねっ」

「見ちゃだめだよ。常人に見えないから」

ユキムラ「はぁ、はぁ、お嬢様、お嬢様、ユキムラは、はぁはぁ、わおーんっ!!」
61 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 21:45:13.53 ID:tPuWoGFn0
〜次の日〜

ミレイア「それじゃああんたも頑張りなさいよ」

少年「いってらっしゃい、ミレイア様」

ユキムラは早朝に帰ってきて高熱で倒れた。

そんなことはどうでもいいが今は次の日である。

ミレイアを見送ると俺は校則と法律と常識の間で自由になる。

まぁ、それらに触れるつもりはないし、つまり俺は自由ということだ。

「自由は風のようなものだよ。一見なにものにも縛られないように見えるけど、自分の意思では何もできない無力さ」

少年「誰だ!?」

誰かが通り過ぎた気がする。それに何か言ってたような。

少年「………気のせいか?」
62 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 21:52:35.85 ID:tPuWoGFn0
昨日は色々あったがあれが毎日とは限らない。

昨日はついてなかっただけさ。

少年「あぁ、そうだ。今日はきっと」

グニッ

少年「………」

覚えのある感覚。

まっとうに生きていればそう知る事はない感覚。

少年「ま、まさかな」オソルオソル

その感覚がなんなのかを知るために視線をさげてみると

ベリア「良い朝だな。昨日は悪かったなしょうね―――」

少年「うぎゃあああああっ!!」
63 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 22:00:16.07 ID:tPuWoGFn0
カルラ「おーらい、おーらい。すいません道を開けてくださーい」

ヒョウカ「不運でしたね」

少年「すいません。風紀委員を呼んでしまって」

ヒョウカ「麻痺しがちかもしれませんが、人が倒れているのは異常事態ですから」

たしかに異常事態ではある。

ただそれがあの生徒会長であれば日常に思えるのは不思議だ。

それだけ昨日が強烈だったってことか。

少年「………昨日が悪かっただけ、だよな」
64 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 22:11:18.15 ID:tPuWoGFn0
無事連行された生徒会長は俺に接近禁止命令がだされた。

風紀委員の許可なく近寄ったり、俺に危害を加えた場合即座に凍結されるらしい。

どういう理屈なのかはわからないがヒョウカさんはとにかくすごい。

少年「やれやれ、やっと着いた。まだ始まってもないのにどっと疲れた………」ガラガラ

リューン「! 少年殿! おはようございますっ」

教室に入るととてとてと一人の少女が駆け寄ってきた。

瞳が歪んでみえるほどの瓶底眼鏡をかけているこの少女は………

少年「リューン、なのか?」

リューン「あ、もしかして眼鏡かけてたからわからなかったでありますか?」

目に見えてしょんぼり落ち込むリューン。

少年「え、えぇっとだな」

1. 似合ってるよ、その眼鏡
2. 眼鏡がないほうが可愛いな
3. すまん。誰かわからなかった

>>65
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/04(金) 22:14:21.89 ID:tpB0febAo
1
66 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 22:28:43.85 ID:tPuWoGFn0
男「似合ってるよ、その眼鏡」

リューン「無骨でダサい眼鏡が私にはお似合いですよね………」

リューンの好感度【0】

男「そ、そういうことじゃないんだが」

リューン「うぅ、眼鏡が私のコンプレックスでありますよ…」グスンッ

どうやら間違った選択肢を選んでしまったらしい。

さらに落ち込んでしまったリューンを喜ばせる言葉を思いつけるほど俺の対人経験は豊かではなかった。

リューン「っと、お見苦しい姿を見せてしまって申し訳ありません。眼鏡のおかげで今は少年殿の顔がはっきり見えるでありますよ」

リューン「はっきり見えるともっとハンサムさんですね、なんて」エヘヘ

少年「っ!」

褒め言葉は慣れてない。自分の顔が赤くなることがはっきりわかった。

バジロウ「おう、なにやってんだお二人とも」

ノヘジ「ぐぬぬ」

蒼い鱗と赤い涙。バジロウとノヘジが赤くなってる二人の間に割り込んできた。

正直助かった。このまま子供向けの恋愛話みたいな光景を続けたくなかったから。
67 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 22:39:15.29 ID:tPuWoGFn0
バジロウ「今日の放課後。よかったら遊びにいかないか?」

少年「あー、あまり遅くならないのなら」

ノヘジ「大丈夫。校内だ」

少年「なら大丈夫だ」

どうせミレイアは遅い。放課後くらいは自由に動ける時間はあるだろう。

ミレイアを待って校門で数時間待つなんて経験したくないしな。

ノヘジ「可愛い女の子を探すのが正しい放課後の過ごし方だろう」

バジロウ「こいつの話は嘘だから気にするな」
68 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 23:00:37.34 ID:tPuWoGFn0
ということで放課後。

授業は初回ということもあってか聞き流しても問題ない程度の話。

興味をひかれるのは授業内容から逸脱した世間話や雑学だけ。

あとは自由に変わる雲の形。

バジロウ「なーに黄昏てるんだよ。モテ男」

少年「モテてない」

身の回りにいる女性はミレイア、オルレアン、リューンだけ。

モテてる? どこが?

ノヘジ「帰る準備はできた。カメラもばっちりだろう」

バジロウ「カメラは仕舞え。風紀委員の世話になりたくないならな」

ノヘジ「風紀委員のヒョウカ嬢は美人だろう。ぜひともお会いになりたいものだ」

バジロウ「風紀委員になるか、不良になるかだ。お前の場合は後者だろうな」

そんな二人の軽口が俺には羨ましく映る。仲がいいんだろうなと思ったから。

この二人の中に俺は入れるだろうか。
69 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 23:12:29.17 ID:tPuWoGFn0
少年「そういえばオルレアンは?」

バジロウ「あいつは今日は屋台を出す日だ」

少年「屋台?」

バジロウ「あいつは学内で屋台を出してるんだ。暇そうに見えるかもしれないがああ見えても結構多忙なんだ」

それを聞いてオルレアンが多少まともに見える。屋台を出すということは俺よりはよっぽど社会貢献してるんだな。

バジロウ「見つかると強制的に手伝わされるから屋台には近づかないでおこう」

ノヘジ「ただ働きは辛いだろう」

少年「ただ働きなのか」

バジロウ「美少女の手伝いをしてるんだからただでいいだろ★とかほざく」

その光景がありありと想像できる。が、バジロウの物まね似てないな…

放課後はオルレアンに近づかないでおこう。

俺もただ働きは勘弁だ。
70 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 23:15:39.05 ID:tPuWoGFn0
少年「遊ぶって言っても何をするんだ?」

バジロウ「そりゃあ部活見学の続きよ。昨日は半分もまわれなかったからな。こいつのせいで」

ノヘジ「恥ずかしい場所を隠すために人はパンツをはく。しかし今ではそのパンツも恥ずかしいものだ。ならそのパンツを隠すアンスコもまた恥ずかしいもので、ふぅ。とても興奮するだろう」

バジロウ「とか言って女子がいる部活の前からうごかねぇの」

少年「なんというか、それは………」

とても気持ち悪い。

ノヘジ「気持ち悪いと思われるとさすがに傷つくだろう」

少年「心を読むな」
71 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 23:21:47.71 ID:tPuWoGFn0
バジロウ「今んとこ目をつけているのが」

ノヘジ「茶道部、陸上部、オカルト研究部、放送部、新聞部、漫才研究部ってとこだろう」

少年「………オカルト研究部? オカルトが好きなのか?」

バジロウ「いや、俺は興味なんだが」

ノヘジ「あのおっぱいの大きさはもはやオカルトの域だろう」グッ

バジロウ「とか言い出してな」

行動原理がまったくぶれないなノヘジは。

眼鏡は真面目の象徴じゃあないのか?

いや俺の周りの眼鏡は大体変な奴だった。

バジロウ「んじゃあどこいくよ」

少年「それじゃあ」

1. 茶道部

2. 陸上部

3. オカルト研究部

4. 放送部

5. 新聞部

6. 漫才研究部

>>73
72 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/04(金) 23:22:39.22 ID:tPuWoGFn0
今日はここまで

皆さんお久しぶりです。

待っててくださってありがとうございます。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/04(金) 23:24:48.76 ID:KC/2TaKE0
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/04(金) 23:26:53.12 ID:tpB0febAo
お帰り
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/04(金) 23:34:45.56 ID:oQp8G5wbO

とんでもねぇ、待ってたんだ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/04(金) 23:49:11.86 ID:CVCypEijO

ずっと待ってた甲斐があったぜ
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/05/04(金) 23:59:08.19 ID:USatMTchO
乙ー
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 00:18:26.44 ID:/3R5ZS64o
おつ
お疲れ様
79 :亜人好き ◆HQmKQahCZs :2018/05/05(土) 10:28:56.31 ID:PC1fIUI80
コンコン

少年「失礼します。えっと部活見学に―――」

「あらあら、いらっしゃい〜。エンプーサちゃん、見学の子がきたわよ〜」

「こんなにオカルト信奉者が………。嘆かわしいな。すべてはプラズマの仕業だというのに」

ノヘジ「………ふぅ」

迎えてくれたのは体を包帯でぐるぐるまきにしたグラマラスな女性とへそが丸見えの恰好をしたスリムな女性だった。

スリムな方はオカルトを否定したように聞こえたが気のせいだろうか。それともオカルト研究部じゃない? まさかな

「オカルト研究部へようこそ〜。お茶でも飲む〜?」

「いい? この世のオカルトのほとんどは科学で説明できる。だからこんなところで時間をドブに捨てずに勉強した方がいい」

バジロウ「えぇと、オカルト研究部?」

ロザリア「そうよ〜。私は部長のロザリアです〜。こっちは副部長の」

エンプーサ「エンプーサ。一応拝み屋を生業としてるわ。オカルトを信奉するアホ共の息の根を止めることが夢」

ロザリア「えぇ〜 エンプーサちゃん私を[ピーーー]つもりなの〜?」

エンプーサ「死んでるじゃないの」バシッ

エンプーサがロザリアを右腕の鎌で叩くとロザリアの豊かな胸がプルンと揺れた、ついでに鎌で包帯が斬れ青白い綺麗な素肌が見えた。

ロザリア「いやぁん」

少年バジ「ごくり…っ」
80 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/05(土) 11:05:51.19 ID:PC1fIUI80
ロザリア「とりあえずお茶でも飲みましょう〜」

エンプーサ「こっちへ来なさい」

案内された部室の中は思いのほか片付いていた。というかオカルトっぽさはほとんどない。

ピンクを基調とした女性らしさあふれる部屋はまるで私室のようだ。

見たところロザリアの趣味だろうか。

エンプーサ「お茶を入れてくる。貴方たちはそこの死人………部長と話してるといいわ」

ロザリア「わぁい♪」

少年「えと、ありがとうございます?」

バジロウ「良い匂いがする…」ボソッ

たしかに不思議と良い匂いがする。花の匂い?

いやロザリアの匂いか。ロザリアの方から強く匂う。

ロザリア「なぁに? じっとみちゃって〜 あっ、お化粧崩れてる〜?」

さっき斬られた部分を慌てて抑えるロザリア。包帯だらけなのだから化粧もなにもあまりないような

エンプーサ「なるほどロザリア目当てなのね? だと思ったわ」

少年「えっ!?」

いつの間にかお茶を入れてきたエンプーサが冷めた目でこっちを見ていた。ノヘジがいたら一瞬で果てそうなほど蔑んだ目で。

バジロウ「いや、俺たちは単純に見学で。というか部長さんのこと知らなかったですし」

エンプーサ「どうかしら。私はオカルトと男は信じてないのよ」

一刀両断で斬られる。なんというかいたたまれない空気。別にそういう目的で来たわけでもないのに。

ロザリア「私目当て? よくわからないけどそれでもいいのよ〜 オカルトに興味をもってくれれば〜」

エンプーサ「………悪かったわ。あんたたちが下半身が方位磁針になってる思春期の男って疑っちゃった。でもそういう輩が多くてね。ごめんなさい」

少年「いえ、たしかに勘違いされるような態度ではあったし」

バジロウ「ノヘジがいたら言い訳できなかったな………」

あいつに限っては部長目当てだからな。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/05/05(土) 16:08:00.23 ID:577OsLbdO
乙ー
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 20:46:40.35 ID:VQNZBskqO
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 21:43:03.62 ID:TQw15K1xO

>>79前半までにはいたノヘジはどこに…
84 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/05(土) 22:26:18.79 ID:PC1fIUI80
>>83 ノヘジがロザリアさんを見て一瞬で果てて叩きだされたシーンを書くの忘れてました………
85 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 21:02:59.23 ID:EhgwbeOr0
ロザリアのほぼあられもない姿を見て一瞬で気絶したノヘジだったが、気絶してくれていて本当に助かった。

今頃ノヘジの鼻血で真っ赤に染まっているであろう廊下はあとで掃除をしておこう。

あ、部室の前が血だらけってオカルト部らしくはあるけど新入生は入ってこないだろうな。申し訳ないことをした。

エンプーサ「オカルト部に入るというなら止めはしないけどオカルトに傾倒した瞬間に私に軽蔑されることは覚悟しておきなさい」

ロザリア「え〜、エンプーサちゃんって私のこと嫌いなの〜」

エンプーサ「好きだと思ってたの?」

にべもない態度。冷たい目線といいオカルトが絡むとサバサバを通り越して絶対零度のような冷え切った反応だ。

そんな切り裂くような言葉に対してロザリアはどこ吹く風。悲しそうに目の下に手を当てて泣きまねをしているがその口元は笑みを崩してない。

相性がいいのだろうかこれは。

エンプーサ「お茶、冷める前に飲みなさい」

ロザリア「エンプーサちゃんの持ってくる茶葉はおいしいのよ〜」

エンプーサ「そんなことないわ。適当に選んでるもの」

そういいながらどこかうれしそうな表情をしている。

すすめられたお茶に口をつけると………飲んだことのない味。

もとからお茶なんてものに縁がないし、ロード家では血のように赤い紅茶しか出なかったから飲んだことがないのも当たり前なんだが。

なんというかほのかに甘い。いや味はそれほど甘くはないのだが鼻に抜ける香りが甘い。

バジロウ「………ウーロン茶?」

同じく口をつけたバジロウが首を傾げた。

エンプーサ「メロンウーロン茶」

そりゃあ飲んだことないわけだ。
86 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 21:29:56.75 ID:EhgwbeOr0
それからはそこそこ楽しく(といってもロザリアとエンプーサの会話を聞いていただけみたいなもんだが)過ごしていると気が付くと日が暮れかけていた。

少年「あ、やばいっ」ガタッ

バジロウ「うおっ、どうした?」

もうすぐ校門に迎えがくる時間。ミレイアより早くついてないと怒られるし、最悪の場合は置いていかれる。

怒られるのは慣れたものだが置いて行かれてはたまらない。

少年「もう帰らなきゃ!」

ロザリアとエンプーサのあいさつもそこそこに部室から飛び出す。

ヌルッ

少年「ぐわーっ!!」

乾ききってなかったノヘジの血を踏んで盛大に滑る俺。というかまだ血が流れ―――

ゴツンッ

バジロウ「少年ーっ!!」

ロザリア「きゃーっ。でも血だらけで素敵♪」

エンプーサ「はぁ…救急箱どこだったかしら」
87 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 21:43:46.08 ID:EhgwbeOr0
ミレイア「臭い。歩いて帰りなさい」

少年「え、そんな―――」

バタン

ブーン

開口一番そう言われ、即座に置いて行かれる俺。

………マジで俺、歩いて帰るの?

あのミレイアが戻ってきてくれるわけもない。

つまり歩いて帰るしかないってことで………

少年「なんて一日だ」

「あー。どうした浮かない顔をして」

少年「今から数時間かけて家に帰らなきゃ―――」

突然かけられた声にそう返しながらその主を見る。

黒い服、黒い髪、黒い翼に、黒くて大きな角。

全身まっくろくろすけのこいつは―――

少年「うわ「待て! 叫ばないでくれ!!」

風紀委員を呼ぶために叫ぼうとしたらその男は即座に五体投地をした。その素早さにあっけにとられて口を開けたまま固まる俺。

「よし、即座に最善の行動。さすがだぞ我」

………確かに最善の行動かもしれないが、さすがといえるのだろうか。
88 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 21:52:30.64 ID:EhgwbeOr0
「ところでどうした少年。浮かない顔をして困りごとか?」

五体投地のままなのでほとんど声は地面に吸収されて聞こえづらい。

しかしどうやら俺のことを心配してくれているのだろうということが分かった。

しかしこいつはあの変人集団のトップ。気を許したら何をされるかわからない。

少年「………あんたには関係ないね」

年上ではあるが気丈にいかなければまた飲み込まれてしまう。ほかのやつらはいないよな?

いざとなったら助けてくれ、ヒョウカさん。

「いいや、関係はある。我は生徒会長。生徒の悩みは我の悩みである!」

「あーつまりだ。困ったことがあったら助けるぞ?」

少年「………………」

こいつのことを信用していいのだろうか。

こんな奴でも一応生徒会長であるということは変わらない。もしかしたら、本当にもしかしたら俺を助けようとしてくれているのだろうか。

いいのか信じて。

俺は

1.信じる

2.信じない

>>89
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/31(木) 21:53:26.20 ID:0m9bFsJTo
1信じるものは救われる
90 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 22:02:23.52 ID:EhgwbeOr0
少年「実は―――」

たった今起きたこと話す。男は五体投地の姿勢のまま頷きながら話を聞いていた。

少年「ということで、今から歩いて帰るんだ」

「なら話は簡単だな!」ガバッ

少年「うおっ」

男が勢いよく起き上がり、勢い余ってバク中をして着地した。

「我が送って行ってやろう!」バサッ

そういって背中の翼を大きく広げた。

つまり、つまりそういうことだ。

いやいやいや、カルラさんならともかくこんな奴に抱きかかえられて空を飛ぶ!?

冗談だろ!? 落とされたら俺は死ぬんだぞ!?

と思ったのが顔に出ていたのか男は少し悲し気な顔をした。

ぐっ、いやでも………

少年「お願い、できるか?」

「任せろ! 頼もしいことにこのベリア・ゴエティア様は万知万能であるぞ!!」
91 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 22:11:02.93 ID:EhgwbeOr0
天狗であるカルラさんほどではないが十分な高度で十分な速度でベリアと名乗った男は飛んだ。

藍色の暗闇より深い黒色をした翼が空を掻き分け飛ぶ。

ベリアは何がうれしいのかクツクツと笑っている。その様子が不気味で不安で、思わず話しかけてしまう。

少年「大丈夫か? 落とすなよ?」

ベリア「笑え凡念! 我にすべて任せ安堵の彼方にて高らかに笑え!!」

何を言ってるのかはわからない。

おそらく大丈夫だといいたいのだろう。

この大げさなしゃべり方はどうにかならないものか。

しかししっかりと俺をつかんでいるし飛ぶ姿勢もぶれない。

安心しろというのも当然と思うが。

それでも俺はこいつの技能ではなくこいつ自身を疑っているのだから

………疑い続けるのもよくないのだろうか。

第一印象は最悪だったがそれでも水に流して信じて―――

簡単に信じていいのか?

俺はこの世界を簡単に信じても。
92 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 22:19:35.04 ID:EhgwbeOr0
「―――いたぞ。ついたぞ」

少年「え?」

気が付くと俺は家の前まで帰っていた。

ベリア「安心感におぼれ放心していたのか? さすが我であるな」

少年「いや、ちょっと考え事をしていただけだ」

ベリア「そうか学生良く考え良く学び良く悩め! しかしその範疇を超えたら我、いや生徒会まで来るといい」

少年「なぁ」

ベリア「なんだ?」

少年「なんで、助けてくれたんだ? 下手したら風紀委員を呼ばれるかもしれないのに」

少年「こういっちゃなんだが俺はそっちにとっちゃ厄介な存在でしかないだろう」

ベリア「厄介か厄介でないか。得か損か。そんな低次元な世界に我は生きてない。助けれるか助けれないかだ」

ベリア「まぁ、この我は万知万能ゆえに助けれない者などいないがな。ふははははは!!」

………ひどく単純な考え。ばかみたいに簡単だ。

ベリア「また会おう少年!!」

月夜の中へ消えていくベリアを見送る。

しまった、礼の言葉のひとつも言ってない。おそらく向こうはそんなこと期待してないんだろうが、それでも

―――生徒会、か

少年「悪い奴らじゃないのかも―――」

ユキムラ「遅くに帰ってくる悪い子はどこでしょうか〜?」カシャンッ

少年「!?」

ユキムラ「悪い子にはFIRE!! FIRE!!」パァンッ

少年「ぐわああっ!!」

やっぱりろくでもない一日だ。
93 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 22:39:03.25 ID:EhgwbeOr0
【風は荒れれど、此方に在れど】

さすがに数週間もいれば基本的な学生生活には馴染んだ。

勉強して、バジロウ達とくだらない会話をして、ミレイアにどやされ、一日が終わる。

今日もそんな一日になる、はずだった。

少年「………あれ、これミレイアの教科書じゃないか? なんで俺カバンの中に。寝ぼけたミレイアが間違っていれたのか?」

俺らが使うには難しい教科書(俺はわからないわけではないが)がカバンの中に入っていた。ミレイアの私物を触ることはないから朝が弱いミレイアがなぜか間違って俺のカバンの中に入れたのだろう。

少年「ミレイアに渡しにいかなきゃな」

教科書がなくて困っていることだろう。問題はもう放課後であり、今更持って行っても遅いということだが。

それでももっていかなかったり、黙っているよりはよっぽどましだ。

一発殴られて終わりだろう。

最近ミレイアの理不尽のおかげで体が鍛えられたなぁ。もうミレイアの軽い一撃じゃあ痣もできない。

だからなんだという話だが。

オル「少年少年! 今日はオルレアンちゃんと素敵なランデヴーもとい店番をする気はないかい★」

少年「ごめん。放課後は用事ができた」

オル「ぶーっ☆ いいもんだっ、バジロウ達がいるし―――いねぇっ!★」

店番という言葉が出た瞬間に天狗も真っ青なスピードで教室から消えていきました。

そりゃあ給料もでないなんの得もない店番なんてしたくないだろうな。

もちろん俺もする気はない。

オル「へんっ、オルレアンちゃんのパートでは覚えておけよー★」

なにいってんだこいつ。
94 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 23:03:02.40 ID:EhgwbeOr0
教室から出ると廊下は帰るか部活に行く生徒の流れ。

何十個も教室があるのだから混むのは当たり前だが今日はなぜかいつも以上に混んでいた。

人の流れが遅い。一体なにがあったのだろうか。

………確実になにか起きている。風紀委員の数が明らかに多い。

しかもそのいずれもが忙しそうに動き回っている。

喧嘩か乱闘かはたまた暗黒邪教部の悪神の暴走か。とにかくろくなことではなさそうだ。

さっさとミレイアに教科書を渡して安全なところへ避難しよう。安全なところがどこかは知らないが。

ヒョウカ「あ」

ひとごみからヒョウカさんがあらわれた!

しかも明らかに俺を見ている。なんだろうかいったい。

ヒョウカ「来てください」

そして有無も言わさず腕を捕まれひっぱられる。その光景は連行される犯人のようで―――

ザワザワザワ

ようで、というか確実に周りに誤解されている。周りが俺たちを避けている。しかも周りの視線は俺に集中している。

なんということだ。なにかは知らんが冤罪だ。俺は何も悪くない。

ノヘジの間違えだろう。あいつならきっと余罪はいくらでもあるはずだ。

少年「ヒョウカさん誤解です! 犯人は俺じゃなくてノヘジです!!」

ヒョウカ「何を言っているのですか?」

少年「俺は何もしてないので、冤罪ですって!」

こう主張をしないと周りの目が痛い。誤解が解かれなければ明日教室で俺はどんな顔をすればいいのだろう。

ヒョウカ「あぁ。勘違いさせてしましましたか。安心してくださいただ私はあなたに協力してもらいたいだけなので」

―――協力?

ヒョウカ「誰の手でも借りたいのです。詳しくは委員会室で話しますからついてきてください」

なんでまた俺に?

確かに借りはあるけど、風紀委員に協力できるほど優れたなにかがあるわけでもない。

とりあえず腕をつかむのはやめてもらい、珍しく焦っているヒョウカさんについて行った。
95 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/05/31(木) 23:03:31.13 ID:EhgwbeOr0
今日はここまで

おやすみなさい
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/31(木) 23:07:02.86 ID:0m9bFsJTo
乙乙
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/31(木) 23:07:23.62 ID:ckUT6WV+o
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/31(木) 23:07:53.60 ID:IWMxnGijo
おつ
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/31(木) 23:09:58.08 ID:XAsB8gOGO
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/05/31(木) 23:33:20.82 ID:XZhX7ZC0O
乙ー
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 10:19:02.35 ID:+rvJ/9mFO
こっちも更新してたか
少年君の物語も好きよ期待
102 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/06/03(日) 21:04:17.11 ID:+E1bRNSR0
学園の中央棟に風紀委員室はある。

大元の職員室やゼミ室などがあるため訪れることはあまりない。といっても売店や学食、さらには温泉があるために来る頻度も多い。

が風紀委員に連れられてくるのは違反者だけだ。ゆえにあまりこの状況で来たい場所ではない。

委員室は整然と片付けられており、掃除も行き届いている。これだけだと委員会の理想的な部屋であるが、それ以外にも違反者を閉じ込めるための檻(使用中)やヒョウカさんによって封印された生徒が保管される保管室などがあるため居心地は良いとは言えない。それに他の風紀委員がなぜか俺を見ているし。

少年「それでヒョウカさん。いったい俺に何の用なんですか?」

聞くとヒョウカさんは困ったように少しだけ眉尻を下げて俺を連れてきた理由を語った。

ヒョウカ「春になると違反者が増えるのはいつものことですが、今回は特に多く………いえ、おそらく同一犯と思われる正体不明の悪戯が多発しており風紀委員はその処理に追われているのです」

そう言ってヒョウカさんはその悪戯と思われる資料を机の上に並べた。目を通すと悪戯は水風船をぶつけるなんて幼稚なものから大人がすっぽり落ちてしまうような落とし穴や植木鉢を落下させるなど一歩間違えば大事故に繋がるようなものまである。一見やる事にはばがありすぎて同一犯のように思えないが目撃者の証言が決まって怪しい人物がいたと断言できるがどんな人物だったのかは思い出せないという共通点があった。

ヒョウカ「犯人が分からない故に対応はいつも事後的なものしかできず、いつ起こるかわからないため我々で警戒態勢を敷いてますがこの事件以外に対応ができず」

少年「できず?」

ヒョウカ「貴方に他の事件を解決してもらおうかと連れてきたのです」

少年「無理です!」

即座に反応した。迷っていればそのまま押し切られるだろうと思ったからだ。

ただの一般人でしかない俺がそんなことできるわけがない。そういうのはもっと別の人が向いているはずだ。

ヒョウカ「そう難しいことではありません。貴方でもできることなので」

少年「なんで俺なんですか。もっと他にもいるでしょう」

ヒョウカ「さっき言った通り、誰の手でもいいから借りたいのです。手は多い方が良いのです」

だからってなぜ俺の手なんだ。誰でもできることと言ったがその出来は人によって差が出る。

俺に向いているわけではないはずだ。ご立派にこなせる気はしない。スラム出身と言ってもそういうことは避けてきたんだから。

ヒョウカ「詳しいことはこの封筒の中を見てください。それでは頼みましたよ」

どうやら俺の意思なく押し切られてしまったようだ。無理やり押し付けられた封筒には氷で封印がしてあった。

風紀委員に逆らって利があるわけじゃないってことは知ってる。

だけどこんなのってあんまりじゃないか?
103 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/06/03(日) 21:18:37.25 ID:+E1bRNSR0
せめてサポートをつけてくれればいいのにと思うが風紀委員は忙しいらしく誰も助けてくれなかった。

見知った顔がいればいいんだがカルラさんは出払っているらしく、封筒と腕章を受け取ってとぼとぼと部屋から出た。

少年「………で、何をすればいいんだ」

俺にもできることと言っていた。つまり服装や喫煙の取り締まりだろう。風紀委員に逆らうものはそんなにいない。

風紀委員の腕章さえあればなんとかなるだろう。と前向きな思考に切り替える。

終わらせればいいんだ。今の俺がやらなければならないことはすぐに終わらせてミレイアに教科書を渡しに行く。それだけだ。

そうと決まったらはやく指示を確認しよう。さてどれどれ

氷の封印を剥がし封筒の中を見る。封筒の中には薄っぺらな紙が一枚入っているだけだった。

これくらいならそのまま渡してくれればいいのに。機密的な何かが理由だろうか。

少年「えっと………」

紙に目を通す。そこには顔写真付きで一人の男が載っていた。

イズナ

不良

捕縛

―――――俺一人で?

少年「嵌められたぁ!!」

封筒に入っていたのは機密のためなんかじゃない。

簡単じゃないってことを俺に知られないためだ。

信じていたのに、ヒョウカさん!
104 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/06/03(日) 21:40:07.24 ID:+E1bRNSR0
俺に関係のないことと言ってこの封筒を捨てて逃げるのは得策と思えない。

きっと公式文書の無断破棄などと言われて檻の中に入れられるのが山だ。

つまり挑戦はしたが、力叶わずが一番ベストな結果。

でもそれならどっちにしろこの不良に会いに行かなければいけないんだよなぁ。

会って話が分かる相手ならいいんだが資料には複数の舎弟がいるうえに帯刀しているときた。

なぜまぁこの学園は武器の携行が許されているのだろうか。それがなければ風紀委員ももっと楽になるのではないだろうか。

少年「………別に誰か頼れって言われてないもんな。うん」

旅は道連れ。情けないかもしれないが誰かに助力を頼もう。

しかし俺の知人は少ない。その中で頼れそうなのと言えば………

少年「俺の知り合いって少ないな」

いなかった。

ノヘジやバジロウに頼むわけにもいかない。二人に比べたらオルレアンの方がよっぽど武闘派だがあれでも女の子だ。こういうことに巻き込むわけにはいかない。

少年「打たれ強さには自信がある。うん、ミレイアに殴られ続けてきたんだから」

なんて変な自信を奮い立たせなければやってられない。

しかしこの広い学園で一体どう探せというのだろう。

足か。

情報は足で探すものなのか。

少年「無茶だろう………せめて翼でもあれ………ば?」

「おい、てめぇ! 暴れるんじゃねぇよ!! おとなしくしろおらぁ!!」

「やっちまってください兄貴ぃ!」

少年「………」ゴシゴシ

中央棟から出てすぐ、そこに目的はいた。

茶髪を後ろに流して時代錯誤の白特攻服。その背中には疾風怒濤の文字。そして身の丈に合わない長刀。

こんな奴が複数人いてたまるか。しかしどうするか。というか何やってんだ。誰かを羽交い絞めにでもしてるのか?

ゆっくりと近づいてみる。おそらくいきなり襲い掛かってくるようなことはないだろう。そう信じたい。不良でも最低限の常識はあると信じたい。

少年「!?」

猫だった。薄汚れた猫が不良と戦っていた。

「あ、兄貴! ふーきいーんっすよ!」

「んだとぉ!? げぇっ!」

どたどたばたばた。

疾風怒濤の割には泥臭い感じで逃げて行った。あっけにとられ追うこともできやしない。

「にゃーっ」

少年「………なんで猫?」

食うのか。まさか。

たしかにスラム街ではなんでも食べる奴はいた。そういう奴はたいていガラが悪かった。そうか、なるほど。

俺はスラム育ちで拾われたロード家は上流階級。ゆえに一般的な常識に触れてなかったから一般常識がないのは分かってる。だがしかし驚いたな。

不良は猫を食べるものなのか。

世界は今日も驚きで溢れている。
105 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/06/03(日) 21:40:36.01 ID:+E1bRNSR0
今日はここまで

おやすみなさい
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 21:52:53.17 ID:++yScuwEO
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/03(日) 21:55:55.08 ID:WUxS+Shw0
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/03(日) 22:11:24.70 ID:jnGE4W4EO
乙ー
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 22:47:27.82 ID:WrLyvCriO
おつ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 23:49:16.25 ID:YDj/Rl6XO
そろそろ起きて
111 :亜人好き ◆HQmKQahCZs :2018/11/12(月) 13:39:38.40 ID:NX/rimYL0
猫は抵抗してたおかげで傷一つない。

ボロボロで薄汚れてはいるがおそらくこれは元からだろう。

その毛皮は艶を失い、眼の周りもやにだらけ。その姿に少し前の自分を重ねてしまい少し同情した。

いや、おそらくこの猫はこの現状を、この現実を満足しているのだろう。だってそう主張するように足元で鳴いたから。

どちらにせよ結局は俺の感情での裁量なんだがな。

男「あー、無事みたいでよかった」

「にゃおんっ」

男「……さて、どうしたもんか」

一対一ならまだ希望はあったかもしれないが相手が集団では万に一つも勝ち目がないだろう。

戦いにしろなんにしろ人海戦術こそが正道なんだ。

男「猫の手でも借りたいな」

「にゃおうん」
112 :亜人好き ◆HQmKQahCZs :2018/11/12(月) 14:01:57.13 ID:NX/rimYL0
時間はまだまだある、焦る時間ではない。

というかそもそも俺がしなければならない義務はないはずだ。この憤りは権力社会に対する抵抗的行動を―――生まない。

俺はなんの力も持たない一般ピーポー、凡人パーポーなのだ。

長いものに巻かれる、ことなかれ主義的発想は生まれ育った中で骨の髄までしみ込んでいる。文句を飲み干し、強者にこびへつらい平穏だけを求めるんだ。

そんな考えはロード家とは到底かみ合わないものであり。だからこそ俺はミレイアがまぶしかった。

男「なんて黄昏てても無駄に時間を食うだけだし、行動あるのみだよな」

助け船を出してくれる誰かに出会うかもしれないし。

本当に猫の手でも、借りたいもんだ。

男「………あれ?」

本物の猫の手はすでにどこかへ消えていた。
113 :亜人好き ◆HQmKQahCZs :2018/11/12(月) 14:18:12.35 ID:NX/rimYL0
さてはてどうしたものか。しつこく悩んでいると―――

「キャッ」

誰かにぶつかってしまった。完全に現実を認識してなかった俺は軽々と転倒し、衝突した相手を下から見上げることとなった。

なぜ俺が転倒したのに相手は倒れてないのだろうか。そういえばぶつかったとき何か大山的不動感覚………なんだ大山的不動感覚って。

要するにびくともしなかったように思えた。

「す、すいませんっ、すいませんっ。私なんかがいたから」

可愛らしい悲鳴の後に続いたのは矢継ぎ早に繰り出される謝罪の嵐。

一体これは何事かとごめんなさいの雨あられを掻い潜りその主を見る。

男「あ」

教室で見たことのある姿だった。クラスメートだった。

ノヘジが言ってたレベルの高い女の子。さすが牛の亜人。びくともしないのは納得だ。

「ごめんなさいごめんなさいっ」

………この子ならあの不良にも勝てるのではないか?

そんな考えが頭をよぎるがクラスメートとはいえ見ず知らずの相手にそんなことは頼めない。

というか女の子にそんなことを頼むべきではない。

男「すいません、よそ見してて。怪我はないですか?」

「は、はいっ。大丈夫です。頑丈だけがとりえなんですっ」

にしては包帯だらけだけども。

「そちらはお怪我はないでしょうか」

男「大丈夫です」

「もし後でなにかあったらご連絡ください、えっとクラスは」

男「同じクラスですよ。同じクラスの男です。第に………人間です」

「あっ、同じクラスの人間さんですね。すいません思い出せなくて」

「えっと私はリンネです。鬼のリンネです」

わぁ。
114 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 14:48:37.60 ID:NX/rimYL0
鬼というとさすがの俺でも知っている。

亜人の中でも最強と呼ばれ、絶対数が少ないながらも歴史に多く名を遺す種族。

その性質は剛健にて豪放そして粗野で自己中心的。

多くに憧れられ、多くに恐れられるその鬼と目の前の少女がどうしても同じものに思えなかった。

もし………もし本当に鬼であるならば

リンネ「あ、あのぅ、どうかされましたか? ! もしかして内蔵に損傷がっ」

男「い、いえ大丈夫ですから。えっと用事があるので失礼して」

リンネ「もし気分が悪くなったりしたら責任を取らせていただきますから!!」

男「………」

1.じゃあ責任をとってもらおうか。

2.全然平気だからきにしないでください。

>>115
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 14:49:48.69 ID:zi30GZDq0
1
116 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:02:37.29 ID:NX/rimYL0
男「じゃあ責任をとってもらおうか」

リンネ「えっ! もしかして内蔵が使い物にならなくなったんですか?」

んなわけあるか、恐ろしい。

リンネ「そ、それじゃあ私の内蔵を………差し上げます!」

いらねぇよ。

男「実は今から恐ろしい不良を捕まえるためにいくんだが」

男「あんたとぶつかったから万全の状態じゃなくなった。このままだと取り逃がしてしまうかもしれない」

男「だから手伝ってくれ」

リンネ「おおお、恐ろしい不良ですか!?」ガクブル

鬼だろ。震えるなよ。

そんな俺の口八丁の嘘にリンネはコクコクと震えながら頷く。

だましてなんだが頼りになるのだろうか。

もしかしたら鬼になりたいだけの気弱な女の子なんじゃないかとふつふつと罪悪感が湧き出てくる。

えぇいっ、それでも人間よりは強いはずだ!

気をしっかりもて、俺。
117 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:11:51.26 ID:NX/rimYL0
そんなこんなでリンネが仲間になった。

リンネ「え、えっと捕まえるってどうするんですか?」

リンネ「あっ、ケーキを囮にして夢中になってるところを後ろから網で捕まえるんですか?」

虫か。

男「相手は何人もいますから戦うことになるでしょうね」

リンネ「戦い、ですか。戦いはあまり好きではなくて」

リンネ「す、すいませんっ。責任をとるっていったのにこんなこと言っちゃって」

男「鬼は…戦いが好きだと聞いてましたけど」

リンネ「あ、はい。大体みんなそうです。いえ、私以外はたぶんそうです」

リンネ「私は……出来損ないですから」

男「………」

リンネ「………」

気まずい。地雷を踏んでしまったらしく、リンネの顔が曇る。

そりゃあ種族すべて同じ性格なわわけがない。あくまで傾向があるだけでおとなしい鬼がいてもおかしくはないんだ。

リンネの性格だって個人差の範疇なんだから別におかしくはない。

………そうだ。そのはずなんだ。

当然のごとく差別をしてしまったことに反省する。きっと彼女は今までずっと偏見の目に脅かされてきたんだろう。

人々がこうであれと押し付けられた鬼の影に押しつぶされて。

男「すいません」

リンネ「そ、そんなっ。私が出来損ないなのは事実ですし」

男「鬼がどうのこうじゃなくて、リンネさんはリンネさんでした。勝手な想像をリンネさんに押し付けてしまってすいません」

リンネ「………男さん」

リンネ「励ましてくれてありがとうございます。でも出来損ないの鬼ってわかってますから」

そういってリンネは寂しそうに。諦めたように笑った。
118 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:22:38.88 ID:NX/rimYL0
「暴れんなおらぁ!」

巨大な校舎の中を例の不良を探してクタクタになっていたときだった。

渡り廊下を渡る最中に一度聞いた怒号を耳にした。

リンネ「ふわっ、な、なにがあったんでしょうか」

男「あいつらです」

渡り廊下から見下ろすと例の不良が再び何かと格闘していた。

「まーお!!」

猫だった。

しかしなんであいつらはそう猫を追い求めてるんだ。

やっぱり食べるのか?

男「リンネさんは猫って食べますか?」

リンネ「えっ、食べませんよ。いくら鬼でも野良猫ちゃんは食べませんよぅ」

男「ですよね」

………ん?
119 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:31:07.19 ID:NX/rimYL0
リンネ「とにかく野良猫ちゃんを襲うのは許せませんっ。どうすればいいですか男さんっ」

男「………」

どう、すればいいんだろうな。

渡り廊下から地上まで約10メートル。

不可能ではないが飛び降りたら怪我を負う高さ。というか下手したら死ぬ。

男「ここからあそこまでの行き方わかりますか?」

リンネ「えっ、はい!」

男「なら―――」

ピョンッ

そんな軽い効果音を立て

リンネ「よ、弱いものいじめはいけませんよぉ〜っ!」

リンネは渡り廊下から飛び降りた。

ドスンッ

リンネ「男さん! 男さんもはやく!!」

無茶を言うなよ。

男「俺は階段使っていきますからリンネさんは不良をお願いしますっ」

「な、なんだてめぇは!」

リンネ「ひぅっ、いいい、いじめはだめですっ、絶対!」

ガクガク震えながら人差し指を不良たちに向けるリンネ。

その姿はか弱く思えるが10メートルをちょっとの段差程度にしか思ってない女だ。

きっと大丈夫のはず。

そう願いを託し、俺はちゃんと階段を探した。
120 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 15:48:24.35 ID:NX/rimYL0
急いで下に降りるため校舎の中を走り回る。まだ多い生徒の間を抜けひたすらに校舎の中を走り回る。

しかしなんだ。この校舎は利用する生徒のことを考えているとは思えない。なぜに一階まで降りれない階段や一階を通り越して地下まで行く階段があるんだ。

そんなみょうちきりんな構造に俺は翻弄され、リンネの元へ行くのに10分近くかかってしまった。

男「リンネさんっ!」

一応心配しておく。もちろんリンネさんをだ。

さっきまで不良がいた場所には不良だったものの死屍累々

ではなく

リンネ「えへへ、かぁいいねぇ」

「んなぁ〜おっ」ジタバタ

猫と戯れる(猫は全力で嫌がっているが)リンネさんの姿だった。

リンネ「あっ、男さん」

男「無事だったんですね」

リンネ「不良さんは野良猫ちゃんを置いてどこかへ行ってしまいました」

そりゃあ上空から女の子が降ってきてしかも無事だったら驚くだろうな。

それかリンネの額に生えている角を見て鬼と察したからか。

どちらにせよ、大事に至らなくてよかった。

けしかけておいてなんだが、リンネさんが傷つかなくてよかった。

………ヒョウカさんに怒られるからな。
121 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:06:22.90 ID:NX/rimYL0
男「あれ?」

リンネ「どうかしましたか?」

男「その猫。洗ってあげたんですか?」

姿かたちは確かにさっきの猫だ。

ただ綺麗になっている。

毛艶は良く、光を浴びて光っているし目の周りにこびりついていた目やにもなく大きな目を開けて助けてとでも言いたそうにこっちを見ている。

リンネ「いいえ? 私はなにもしてないですよ?」

男「……誰か綺麗にしてあげたのかな」

その優しさは不良にとっての食べやすさになっただけだったが。

男「リンネさんはその猫の面倒を見てあげててくれませんか? また不良に狙われたらいけないんで」

リンネ「は、はい。全身全霊で野良猫ちゃんを守り抜いてみせましゅっ」

リンネ「///」

猫もリンネさんといたほうが安全だろう。

問題は猫がリンネさんから全力で逃げ出そうとしていることだが許せ猫。お前のためなんだ。

男「それじゃあ俺はあの不良たちを探してきますんで」

リンネ「き、気を付けてください」

男「えぇ。猫のことよろしくお願いします」
122 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:09:32.99 ID:NX/rimYL0
とりあえず今のところの心配は解決した。

あとはあの不良たちがどんな悪事を働くのかは知らないが見つけて捕まえ………

リンネさんがいない今俺はどうすればいいんだろうな。

自分の抜けてしまった考えを後悔する。

別にリンネさんじゃなくても安全そうな場所に猫を非難させるだけでよかったのに。

しかし起きてしまったことは仕方ない。

「何やってんだおらぁ! 今隠したもんだせおらぁ! ジャンプしろやぁ!!」

男「!!」

怒号と悲鳴。

またか―――!!
123 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:16:38.05 ID:NX/rimYL0
男「お、お前らそこまでだ!」

遮二無二声がしたほうへ飛び出す。

えぇいっ。やらないで怒られるより、やって失敗して怒られたほうがましだ!!

アータル「あ?」

男「………え?」

そこにいたのはクラスの担任であるアータル・オルファンだった。

壁際に生徒を押し付けてる姿はどうみても担任どころか教師に見えない。

アータル「お前はロードんところの人間じゃねぇか。どうしたこんなところで」

男「もっと言うならあなたの生徒ですよ。ってなにやってるんですか? カツアゲですか?」

アータル「おぉ、こいつが煙草を持ってたからな没収してるところだよ」

「も、持ってないって」

アータル「嘘つけや俺の煙草に関する嗅覚なめんなよおらぁ!!」ドンッ

「ひぃっ」

男「も、もう少し穏便に」

アータル「ガキが煙草吸ってんじゃねぇぞおらぁ!! イキりやがっておらぁ! さっさとよこせおらぁ!!」ドンドンッ

「ひぃぃぃぃっ!!」

………この人煙草奪いたいだけじゃないよな?
124 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:26:42.86 ID:NX/rimYL0
「す、すいませんでしたぁぁぁ」

アータル「素直にだしゃいいんだよ。次持ってきたらただじゃおかねぇからな あん?」

「わかりましたぁぁぁ」

アータル「よし、行ってよし」

「ひぃぃぃぃっ」

アータル「ったく、なんでは俺はこんな使命感に燃えた理想の教師なんだろうな」

………なにいってんだ?

アータル「で、お前はなんでここにいるんだ?」

男「ちょっと人探しを………!」

これでも教師だ。俺よりずっと学園について詳しいはずで。

だからもしかしたら不良がいそうな場所を知ってるんじゃないか?

男「あの、ちょっと聞きたいんですけど、不良達がいそうなところって知ってますか?」

アータル「あ? 俺の前で非行は許さねぇぞ?」

男「違いますって、ちょっと用事がありまして」

アータル「あぁん!?」ズイッ

男「人探しですから! そんなに顔を近づけないでくださいよっ」

アータル「人探しねぇ………不良なんてこの学園にマカロニみたいにいるが」

アータル「集まるっつったら番長連か。まってろ地図書いてやるから」

男「あ、ありがとうございます」

………番長連ってなんだ?

アータル「ほらよっ」

そう言って手渡してきた地図は短い時間に書いただけあって簡素で粗雑。

つまりとても分かりにくい地図だった。

アータル「なんだかよくわかんねぇけど頑張れよ」

そう言って去っていく担任アータル。その背中を見て俺は

男「………わかんねぇよ。これ」

深い溜息をついた。
125 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/12(月) 16:27:39.07 ID:NX/rimYL0
今日はここまで

こっちはお久しぶりですいません
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 16:47:48.71 ID:lDq7y6JtO
乙乙久しぶり
こっちも楽しんで読んでるでよ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 17:06:49.19 ID:HFx93mbUO
乙待ってた!
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 17:14:42.67 ID:PD4P/QbDO

待ってた
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 17:57:53.29 ID:AC31tLtVO

少年くん男になってるゾ
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 18:33:29.57 ID:LASyqxABO
乙乙
はたしてリンネは本当に頑丈なだけで弱っちいのかそれとも
何にせよ鬼繋がりのヒヅキと手合わせしてもらいたいものですね(ゲス顔)
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/12(月) 19:20:22.56 ID:FrQg789wO
更新来てるやん!乙!
132 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/14(水) 15:52:55.25 ID:s5u9ySEi0
少年の名前が男になってるorz
133 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/14(水) 16:18:07.35 ID:s5u9ySEi0
地図に書かれた下手な絵に何とか頭を捻りながら道を作り出していく。明らかにゆがんだ形の校舎を現実の校舎に当てはめ悪戦苦闘すること小一時間、俺は校舎から外れた鬱蒼と生い茂る木々の中にいた。

地図には一本道で書かれているが現実ではどうかわからない。まっすぐな校舎がゆがんでいるのだからまっすぐな線が現実では歪んでいるということも十分考えられる。

希望は地図にある最後の目印、聳え立つ大木だが………

少年「あれか」

確かに目立つ。背の高い木々の中でもなおさら高い大樹。あれを目印にすれば迷うことはないだろう。

が、如何せん距離がある。行って帰ってくる(無事帰って来られるのであればの話ではあるが)と太陽はとうに暮れているだろう。

そんなことになればまたミレイアに罵られ、ユキムラに撃ち抜かれるであろうことは簡単に想像つく。

俺だってやりたくてやってるわけじゃないのにな。

ままならないものだ。

「止まりなさい」

男「!」

声がかかる。一体どこからと見渡す前に俺の首根っこをひやりとした手で掴むやつがいた。

男「がっ、あっ」

あがけどもがけど力は緩まない。両手で首に当てられた手をはがそうと試みるが万力のごとくピクリともしない。さらにその手には硬い鱗が生えており、剥がそうとする際に手を深く切った。

痛いし、苦しい。それは思考能力をたやすく奪っていく。

「見たことない奴だ。それに我々側とも思えない」

「誰だ?」

その返事を聞きたければ手を放せ。なんとかそう言おうと思ってもうめき声と泡しかでない。

どうしようもなくただ苦しさに沈むだけ。まるで水中にいるかのような感覚にどんどんどんどん頭が痺れてくる。

死にはしないだろう、だけれどこの感覚は―――
134 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/14(水) 16:39:55.48 ID:s5u9ySEi0
「弱いな。風紀委員とも思えない」

意識を失う直前に手が外された。支えをなくしてそのまま膝を折って倒れ伏す。

体が勝手に酸素を求めてあえぐ。口の中に土と砂が入ってきたがそれでも呼吸を止めることはできなかった。

「ここから先は迷い込んだじゃすまない場所だ。痛い目を見たくなければ帰ったほうがいい」

少年「げほっ、けほっ」

少年「人さがし、だ」

何度か大きく深呼吸をし、やっと脳の痺れが取れる。そうすればいきなり襲い掛かってきた相手をようやく余裕をもって見ることができた。

おそらく女だ。というのは薄暗いのと肌が鱗でおおわれているたに判別がしにくいためだ。

ドラゴニュートよりもドラゴンに近い。爬虫類の怖気が走る眼が俺を見下ろしている。鬼に続いてドラゴン。なんでこうも俺よりずっと強い奴らばっかりなんだろうな。

本当にリンネと別れたことを後悔する。

「人探し?」

少年「ここに来れば会えるかもしれないって、人に聞いた」

「………誰だ?」

少年「あー」

確か名前はイズナ。かまいたちのイズナだ。

少年「…イズナってやつだ」

「イズナ………イズナか」

反応があった。ドラゴンは俺をじろりと見て小さく頷いた。

「ここにはいない」

少年「え? でもこっちに」

「あいつはこっちには来ない」

「だが心当たりはある。案内してやろうか」

少年「!」

それは確かに魅力的な提案だ。だがしかしさっきまで俺の首根っこを掴んでいた相手の言うことを鵜呑みにしてもいいものか。

おそらくこいつは番長側の人間だ。なら同じ仲間であるイズナを売るはずがない。油断させておいてなにかされるのがオチだろう。

だがもし、だがもし本当にイズナのところへ案内してくれたら?

高い絶望と低い希望を天秤にかけるほど俺は愚かじゃない。普通ならば

だけど手詰まりの今、その提案は本当に魅力的に思えた

だから俺は―――

1.言うことを信じる
2.言うことを信じない

>>135
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 16:46:12.28 ID:9LP6l+Zqo
1
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 19:30:58.04 ID:36GN+i9RO
乙乙
クロは女何かな
137 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/15(木) 11:09:55.07 ID:wSd/ZYkt0
信じよう。

ただでさえ今は手掛かりもなく手詰まりなのだ。だから今は蜘蛛の糸ほどの可能性でさえ希望に見える。

普段の俺ならば絶対に選択をしないだろう。リスクを冒すくらいなら、現状維持を、それすらできないのならゆったりとした衰退を望むことなかれ主義的思想を持つ俺だったら。

「どうする」

男「案内してくれると助かる」

「そうか」

ドラゴンの手が差し伸べられる。その手を握り返すとそのまま腕の力だけで立ち上がらされた。おかげで手首の間接が痛む。

しかし大きいな。ドラゴンなだけあって俺の身長よりずっと高い。並んで歩けば俺が子供に見えるくらいの身長差だ。

こいつからみたらミレイアなんて赤ちゃん程度に見えるんだろうな。

「何を見ている」

「いや、大きいなと」

「ふん。当然だ。私は人間ほど矮小ではない」

むかっ。

少し頭にきたが掴みかかることもできなければ言い換えすこともできない。

力量差も当然だが、相手からみたら事実だからな。

「ついてこい。こっちだ」

そう言ってのっしのっしと歩き出す。

ついて行くのは大変だった。あれだけ身長差があるのだ。当然歩幅も全然違う。

向こうがただゆっくりと歩いているのですら俺にとっては早足と同じなのに、向こうが早足になればもう走るしかない。

男「はぁ、はぁ」

「ふん。軟弱者め」

軟弱者で悪かったな。こちとら数か月前まで栄養失調だ。ミレイアやユキムラからの暴力で耐久力だけはついたかもしれないが体力はからきしなんだ。

息を切らしている俺を一瞥するも速度を落としてくれそうにない。

これだから不良は。これだから人のことを考えない人種は。

人のこと、あんまり言えないけどさ。それにたぶんミレイア達のほうが人のこと考えてないし。
138 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [sage saga]:2018/11/15(木) 11:22:33.40 ID:wSd/ZYkt0
また男になってるorz
139 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 11:32:58.82 ID:wSd/ZYkt0
歩いたにしても結構時間かかったんだ。その距離を走るとなるとしんどいのは当然。

学園が見えてきたときにはもう口の中が鉄の味。それに対してドラゴンは息一つ乱してない。

人生努力すればなんて言葉はよく聞くが、肉体的なものに関しては到底埋めようがないこともあるわけで

「あっ、何しに来たんですかっ」

「!」

近くで声がかかる。その声を聴いた瞬間ドラゴンは森の中へ走っていった。

ガサガサと木々が揺れる音。誰かがドラゴンを追い回す声。

少年「い、いったいなんなんだ?」

あ、ドラゴンがいないと不良のところへ行けない。

困ったな、ドラゴンを追って俺も森へ入るか? と考えていた時だった。

ガサガサ

「また逃げられてしまいましたね」

頭をかきながら誰かが森の中から出てきた。その両耳は頭上に生えた金色の三角形。

同じく金色の隠しきれないほど豊かな二本の尾を携えた男……女………どっちだ。

声も、どちらともとれるような………。

「なんですか? そのようにみられると照れてしまいますよ。なんてね」

どっちだ。

いやまぁ、どうでもいいか。

「大丈夫ですか? あのドラゴンに襲われていたように見えましたが」

少年「あー、大丈夫です。道案内してもらってただけなんで」

「道案内!? あの恐ろしいドラゴンがそんなことするわけがありませんよっ。たぶん騙されて食べられる寸前だったのでしょう。あぁ、恐ろしいっ」

芝居がかった感じでくらりと額に手を当てる性別不詳の狐。

危ない所………だったのか?

少年「あ」

狐の腕には腕章がついていた。風紀委員の。

「そんなに見ないでください。人目がないからって///」シナッ

うるせぇ。

「あは、冗談ですからそう怒らないでください」ニコッ

少年「あなたも風紀委員なんですか?」

「あぁ、はい。そうですよ。学園の規律を守るのが僕の役目。おっとこれは申し遅れました。僕はクロと申します。よくある名前ですから風紀委員のクロと覚えてくださいね」ニコッ

男「えっと、ヒョウカさんに仕事を頼まれた男です。風紀委員には所属してませんけど」

クロ「あぁ、あなたが例の」

男(例の?)

クロ「しかしあのドラゴンに道案内してもらっていたとは、どこに行きたかったんですか? 僕でよければお送りしますよ」

男「え、いいんですか?」

クロ「それもまた風紀委員の活動ですから」ニコッ
140 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 11:42:59.00 ID:wSd/ZYkt0
渡りに船とはこのことだ。

あのドラゴンなら懸念すべきところはあったが、この人は風紀委員だ。

心強い味方になってくれるだろう。本当にちょうどいい時に来てくれた。

クロ「なるほど、イズナを探している、ですね?」

ヒョウカさんから渡された封筒の中身をクロさんに見せる。クロさんはふむふむと頷きながらそれを読むとぱちんと指を鳴らした。

クロ「お任せくださいっ」ニコッ

おぉ、さすが風紀委員。

………だったら俺に頼まずこの人が行けばよかったんじゃ?

クロ「こっちですこっちです。ささ、どうぞ」

案内継続。

しかしクロさんはあのドラゴンと違いしっかりと歩幅を合わせてくれた。

うーん。まともで優しい人に久しぶりに会った気がする。

クロ「さ、この道をまっすぐです」

複雑な学園をするすると迷わず進んでいくクロさん。俺も何年かいればこんな風に移動することができるようになるのだろうか。

少年「ありがとうございます」

クロ「それでは、頑張ってください。では」

………助けてはくれないのか。

俺の力で何とかしないといけないみたいだが、さっきのドラゴンの件もあるし………。

少年「それでも、行かないとな」

成功にしろ失敗にしろ早く終わらせることだ。

そうしたら元通り面倒ながらも平凡な日常に戻れるはずだ。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 13:55:46.79 ID:wn++dj18O
乙クロ演技かわいい
142 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 15:27:50.94 ID:wSd/ZYkt0
森ほどではないが薄暗い。それに学園内でも外れのほうだから一目にもつきづらい。

確かにここならばこっそりなにかするにはもってこいの場所だな。例えば………

頭に浮かんだ恐ろしい想像をかぶりを振ってかき消す。

はは、まさかそんなことはしないだろう。

………そういえばあのドラゴンが言ってた、イヅナは番長連に行かないという言葉。

それは一匹狼だからということなのだろうか。

もしそれが番長連に出れるような存在ではないということだったら?

例えば弱い、例えばそれほど悪くない。

確かにそれならあのドラゴンの言うことも納得がいく。

それならヒョウカさんが俺に任せたのも合点がいく。

だったら俺はただ想像が作り出した影におびえる愚か者だ。

言ってはなんだがとんだ張り子の虎だったな。それにおびえる俺は差し詰めネズミってところか?

男「………!」

木がはじける火の匂い。

さすがに校内で火の匂いがするのは穏やかじゃないな。

まだ肌寒い日があるとは言え、それでも焚火をするほどじゃない。

こっそり、こっそり様子を見ながら近づいていこう。

死角にあるということは向こうからもこっちが死角になるということだ。

注意深く進みさえすれば近づくのは容易だった。話し声が聞こえる。

何やら大声をあげているようだが緊張と心音でよく聞き取れない。

俺は静かに物陰から様子を伺うと―――
143 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 15:35:01.30 ID:wSd/ZYkt0
男「!!」

火がはじけていた。メラメラと。

そう、火がはじけていたんだ。

イヅナ「火が強すぎるだろうが! 強火にもほどがあるだろうが!!」

鉄板の下で。

「す、すいませんっすっ。でも料理は火力だってオルレインちゃんも」

そして鉄板の上で踊る焼きそば。

なんだよこれ。

イヅナ「これじゃあソースが焦げ付いて不味くなっちまうだろうが!」

確かに気づけばソースの焦げる匂いはした。

でもまさか不良が焼きそば作ってるだなんて誰が思う。

しかも割と本格的な設備で。

「これでお客さんいっぱい来てくれるっすかね」

イヅナ「おうよっ! 俺様特性の焼きそば食っちまえばどんな奴だってイチコロよぉ!

特性!? イチコロ!? なにやら不穏な言葉が

「イヅナさんの焼きそばは美味しいっすもんねぇ〜」

………そっすか。

なんか緊張してたのが馬鹿らしくなった。

実は悪い奴じゃないんじゃないかこいつら。

………! まさかあの猫を焼きそばの具にする気では。

有りうる! よくわかんないけど有りうるかもしれない!
144 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 15:40:34.41 ID:wSd/ZYkt0
その考えも瞬時に否定された。

「いたっ、うぅ、水が傷口にしみるっすよぅ」

イヅナ「けっあの猫。みすぼらしいから綺麗にしてやったってのに恩をあだで返しやがった」

「なんか変な女に猫捕まってたっすけど、も、もしかして食べられたんじゃ?」

イヅナ「お、おい。猫食う奴なんかいるわけねぇだろ」

「そ、そっすよね。でも鬼だったし」

イヅナ「………くっ。自分が情けねぇぜ! 鬼にビクついて猫一匹守れないんじゃよう!!」

「し、仕方ないっすよ。相手は鬼っすし。そうだ、あの猫のお墓を立てるっすよ」

イヅナ「ならなるたけ立派な奴作ってやらねぇとな。それがせめてもの弔いってやつだ」

「猫ぉ」ウルウル

ごめんリンネ。なんか猫食べてるって思われてるらしいぞ。
145 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 15:55:46.08 ID:wSd/ZYkt0
とりあえず見たままをヒョウカさんに説明しよう。

そうすればヒョウカさんも大目に見てくれるだろう。

そう思って踵を返したときだった。

ボキッ

少年「!!」

ベタに足元に落ちてた枝を踏み折ってしまった。大きくないとは言え、普通に聞き取ることのできる程度の音だ。

イヅナ「! 誰がそこにいやがる!!」

「お、俺見てくるっす!!」

やばい、逃げろ!!

と思った瞬間には捕まっていた。

今日は良く捕まる日だな。

イヅナ「誰だてめぇ………いや見たことある顔だな」

「あっ、猫を追ってた風紀委員っすよっ!」

イヅナ「なにぃ!? てめぇもあの猫食い女の仲間だなっ!?」

本当ごめんリンネ。

というか俺が追ってたのは猫じゃない。お前だ。

それにまだ風紀委員でもない。

色々弁解したいことはあるが

イヅナ「けっ。風紀委員上等だボケェッ! 俺は俺の正義があんだ」

イヅナ「疾風怒濤のイヅナ。弔い戦と行くぜ!」

「イヅナさんっ、構え太刀っす!」

スラリ

少年「!!?!?」

あ、やばい。

イヅナに手渡された刀は優に本人の身長を超えていた。

あんなんで切られたら一たまりもない。頭から足まで真っ二つになるのも当然と思わせるほどの迫力。

もしかしてさっきのドラゴンよりもやばいんじゃあ?

なんとか弁解して、刃を収めてもらわないと

少年「いや、俺は――――――」

べリア「そこまでだ下郎どもめ! モブはモブらしくモブのように消え失せるといい! それがモブがモブとして生まれたさだめであり宿命! 貴様らは自分がモブであることを自覚し、精々主役様を立てることに尽力し、それ以外は慎ましやかに無害な生活を送ることを心掛けよ! このモブ式目に己が血で捺印し、この式目に従うことを誓いますか? 誓いますか!? 誓ってくれますか!? 誓ってくれますよね!? ねぇ!! つーか誓え!!!!!」

―――罵詈雑言をあしらった意味不明な文句を垂れ流しながらあいつが現れた。
146 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/15(木) 16:38:13.10 ID:wSd/ZYkt0
今日はここまで

毎度ありがとうございます
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 16:54:52.77 ID:qL1GkPYLO
乙乙
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 17:30:54.85 ID:4qvxYgRCO
おっつ
最近更新が多くて嬉しい
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 18:15:29.73 ID:CVauM0fEO

今進んでる話は少なくとも学園祭より前なのか
そういえば少年くんってまだ正式に生徒会に入ってないんだっけ?
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/15(木) 21:33:42.83 ID:TkZHhgj7o
おつー
151 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 11:09:44.22 ID:NCWYoFgi0
奴がいるのは校舎の屋上。

校舎と校舎の間に位置する場所にいる俺たちの行動は丸見えだっただろう。

しかしなんのためにそんなところにいたのか。訝しがる俺たちを後目に奴は逆光の中で高笑いを上げた。

べリア「今行くぞっ、まって、んぐなぁ!?」

そう叫び奴は屋上から飛び降りる。黒いマントが棚引いたかと思えば

ぐちゅっ

そのまま顔面から地面にたたきつけられ、辺り一面に血液をまき散らした。

「ひ、ひぃやぁっ! す、スプラッタっすよぉ!?」

血の匂い自体嗅ぎなれたものだが、それでも目の前に死体があるという光景は何度見ても慣れるものではない。

たとえそれがべリアだとしてもだ。その光景は否が応でも脳内で警鐘を鳴らし続ける。

というか飛べよ! 飛べるだろ!?

べリア「んぐばぁっ!」

ガバっと奴が起き上がる。その勢いでピチャっと血液が俺の顔面に付着した。温い。

「ずぉ、ゾンビっすよぉ〜 逃げるすよぉ〜!!」

イヅナ「お、おいお前ら!!」

散り散りになってくイヅナの仲間たち。

そりゃそうだ。目の前で人が投身自殺を試みただけでショッキングなのに。しかもそれが元気に起き上がるんだからな。正直俺も冷静なふりして吐き気をこらえてる。さすがに顔面に血液つくと気持ち悪い。生臭いし、変に暖かい。

べリア「ふ、ふわはははっ! 我に恐れおののいたか凡人共よ! んなぁ〜っはっはっは」

イヅナ「ち、ちくしょう!! 覚えてやがれ!!」

そんな三流悪役染みたセリフを吐いてイヅナも逃げていく。

正直、なんだこれ。

いったい、なんなんだこれ。

べリア「危ない所を助けてやったぞ凡念! さぁ! 我を称え! 我を崇め! 我を―――ん?」

パチパチパチとはじける音が大きくなった気がする。それになんだか暑くなったような・・・

べリア「………………これ我のせいか!?」

いつのまにか横に倒れていた火が校舎へ燃え移っていた。

152 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 11:17:36.35 ID:NCWYoFgi0
少年「なんだこれ!? なんなんだよこれ!!?」

メラメラと燃える火はもう到底料理に使える火力ではない。

これじゃあキャンプファイヤーだな………じゃねぇ!

少年「み、水! 水を探せ!! もしくは水の魔法を!!」

べリア「み、水の魔法なら、我が―――」

ヒョウカ「なにを―――しているのですか?」

べリア「んなぁ!?」

びゅぉうと皮膚を切り裂く冷気が吹き付けてきた。もう火の熱さなんてものは感じない。痛いほどの冷気が制服を裾から凍らせていく。

ヒョウカ「なにを、しているのですか?」

べリア「こ、これはだな、決して我のせいでは、いや我のせいかもしれぬがその発端は」

ヒョウカ「―――問答無用。風紀委員権限にて封印凍結を実施。対象べリア」

べリア「なんで我だけ!?」

ヒョウカ「―――――執行」

景色が瞬いて

―――真っ白になった。
153 :亜人好き ◆HQmKQahCZs [saga]:2018/11/19(月) 11:38:24.95 ID:NCWYoFgi0
冷気を吹き付ければ火が消えるのは自明の理。これは燃焼四大要素のうちの一つであるマナ。対象平方センチメートル内に存在する火のマナの密度を氷―――すなわち水のマナの密度が超え、火のマナを減少させたからだ。

なんてことはどうでもいいか。

カルラ「そっちしっかり持てよっ。よし、それじゃ運ぶぞ! せーのっ」

ヒョウカ「無事、ですか?」

少年「大丈夫です」

俺はいつの日かと同じように風紀委員が凍ったべリアを運び出し、ヒョウカさんからもらった熱いホットミルクを啜っている。

火はヒョウカさんのおかげでちょっとしたボヤ程度ですみ、怪我人は一人もでなかった。

もしヒョウカさんがいなければ、なんてことを考えるとぞっとする。

本当に結局はヒョウカさんに助けてもらってばかりで。

ヒョウカ「また生徒会ですか」

男「なんで、あいつは俺のことをつけ狙うのでしょう」

ヒョウカ「………生徒会の考えることはわかりません」

男「そう、ですか」

接点があるとしたらあの日係わってしまったこと。それと家まで連れて帰ってもらったごとくらい。

あの日、ちょっとは見直したんだが―――

男「もう、生徒会に関わりたくはありませんね」

ヒョウカ「ところであの不良の件。イヅナはどうなりましたか?」

男「あぁ、それなら」

今まで見てきたことを話す。

学園内で刀を持ち歩くやつがいるのはもう今更なにも言わないが、その刀を抜いて切りかかろうとしたこと。

だけど猫を助けたり、焼きそばを作って売ろうとしたり、あまり不良の不良らしさが見えないということ。

だから俺はどうすればいいのか判断ができないこと。

ヒョウカ「そうですか」

ヒョウカ「校内での許可なき火気使用は禁止されています。今後執行対象として処罰する必要があります。ありがとうございました、少年さん」

確かにこの火事の原因はイヅナにもある。それでもその火を倒したのはべリアであるし………

ヒョウカ「どうか、しましたか?」

男「―――」

1.それはおかしい、と言う。

2.校則に則っているのだからなにも言えない。

>>154
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