【シュタインズ・ゲート】岡部「このラボメンバッチを授ける!」真帆「え、いらない」

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138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/10(火) 11:42:00.88 ID:Dwrg4ipho
>>137
あ……やばい なんぞ考えんといけないですよこれは
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:24:39.78 ID:hc/Puqu00
     17

鈴羽「この世界の歴史は今ゆっくりと、でも確実に、シュタインズゲート世界線からその姿を変え始めている」

鈴羽「変化の向かう先はサリエリ世界線と呼ばれる歴史。そう、言うまでもなく、それはボクのいた未来へとつながる歴史のことさ」

鈴羽「ではどうしてシュタインズゲート世界線は、本来あるべきはずの流れから外れてしまうような状況に陥ってしまったのか?」

鈴羽「未来において、その分岐点だったと考えられている歴史上のポイントは大きく二つ」

鈴羽「一つは比屋定真帆のアマデウスが、107問題と呼ばれる不可侵なはずのデータ領域に対して、アクセスする手段を確立してしまったこと」

真帆「あの107メガにアクセスですって? そんなこと本当に──」

鈴羽「できたのさ。まあ、結果論でしかないけどね」

鈴羽「そして恐らくは、『手段の確立』という事象そのものが、シュタインズゲート世界線の歴史に変化をもたらす切欠になったのではないかと考えられている」

鈴羽「そうして切欠を経ることで始まる世界線の変化。それを未来では、シュタインズゲートの“ほつれ”と呼んでいた」

真帆「ほつれ……」

真帆「その言葉、なんだか聞き覚えがあるわね。あなた確か昨日の夜、そんな言い回しを口にしていなかった?」

鈴羽「へえ、覚えていたのかい? あんな状況でたったの一度口走っただけだったのに、たいしたものだね。素直に感心するよ」

真帆「あんな状況だったからこそ、よ。それに他にももう一つ……確か……何だったかしら?」

紅莉栖「ひょっとして、“破綻”のことですか?」

真帆「ああそれね、破綻。その単語も聞いた覚えがあるわ。よく分ったわね紅莉栖」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:25:49.76 ID:hc/Puqu00
紅莉栖「いえ。“ほつれ”と“破綻”の二つのワードは、阿万音さんがセットでよく口にしていたので」

真帆「そうなの?」

岡部「ああそうだ。もっとも、俺たちとしてもそれらの単語が持つ本当の意味を、少々計りかねてはいるのだがな」

紅莉栖「俺たちって言うな。少なくとも私は理解しているつもりよ」

岡部「ぬ、ぐ……」

鈴羽「話を続けても構わないかな?」

真帆「そうね。お願い」

鈴羽「じゃあ」

鈴羽「シュタインズゲート世界線の歴史がサリエリ世界線へと変化を始めた事象。それが“ほつれ”だという事は、今話して聞かせたわけだけど」

鈴羽「それとは別に、もう一つ存在するターニングポイント。それが“破綻”だ」

鈴羽「その“破綻”が発生してしまうことで、シュタインズゲート世界線はボクの知る未来、サリエリ世界線の軌道へと完全に乗り上げてしまう」

鈴羽「そんな“破綻”を招いた原因として考えられている出来事。それこそが……」

鈴羽「2011年4月10日に起こる、比屋定真帆の消失だ」

真帆(!?)

鈴羽「ここまで言えばもう分るとは思うけど……」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:26:50.89 ID:hc/Puqu00
鈴羽「サリエリ世界線へ変貌しようとする世界の歴史を、再びシュタインズゲート世界線の軌道へと引き戻す」

鈴羽「それがボクが未来から受けてきた、何よりも重要な使命なんだ」

一同「…………」

岡部「まったく。鈴羽よ、お前はどこの世界線へ行っても苦労の絶えない奴だな」

鈴羽「そう思ってくれるなら、おとり役くらいはもう少しちゃんとこなしてほしかったな、オカリンおじさん」

岡部「ぬぐぐ! 勝手にボクっ娘属性など付加させてきた分際で偉そうに!」

鈴羽「ボクの一人称なんて今は関係ないだろ? 反省くらいしなよ。おかげで結局、ボクは“ほつれ”を防ぎそこなってしまった分けだからね」

岡部「そ、そうは言うがな。俺としても、どうにも実感がわかずに困っているのだぞ?」

岡部「鈴羽がこの時代に存在するのだから、それだけで異常事態だということは理解できる。しかし、しかしだ」

岡部「リーディングシュタイナーの一つも感知していない今の現状では、世界線の変動と言われても、どうにも危機感を持ちづらくてかなわん」

真帆(え?)

真帆(リーディングシュタイナーって確か、世界線の変動を感覚的に知覚する能力だったわよね?)

真帆(ここまでの話だと、今現在、シュタインズゲート世界線はサリエリ世界線へ向けて変化しているってことのはずだけど)

真帆(それなのに、岡部さんは一度もその変動を感知してはいない?)

真帆(どういう事……?)

紅莉栖「岡部、あんたまだそんな事を言ってるの?」

紅莉栖「昨日も説明受けただろ。世界線の歴史は、ゆっくりと変貌していくの。そしてあんたは、その変化する歴史の上をリアルタイムで歩いている。だったら」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:27:45.73 ID:hc/Puqu00
岡部「皆まで言われんでも分っている! リアルタイムである以上、これまでのように過去から現在までの歴史が再構築されるわけではない」

岡部「だからこの件では、俺のリーディングシュタイナーが発動することはない」

岡部「助手はそう言いたいのだろう?」

紅莉栖「何よ分ってんじゃない。ならどうして……」

岡部「頭では理解している。しかし感情はそれとは別物だ、という話だ」

紅莉栖「困ったものね」

岡部「ふん。大きなお世話だ」

真帆(なるほど、そういう理屈か)

真帆「…………」フゥ

真帆(リーディングシュタイナーって大層な名前のわりに、あまり役に立たない代物なのかしら)

岡部「むむ! ブラウニー貴様、今俺の事を役立たずだと思わなかったか!?」

真帆(うお)

紅莉栖「なにを難癖つけてるんだ、あんたは」

鈴羽「はいはいはいはい!」パンパン

鈴羽「そろそろ話を戻したいんだけど?」

真帆「そ、そうね」
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:30:48.37 ID:hc/Puqu00
鈴羽「さすがにこれだけの頭数が揃うと、どうにも話が脱線しやすいね」

鈴羽「でも、みんなが好き勝手にしゃべっていたら、話の収集がつけられなくなるし……比屋定真帆の認識に変な誤解を植えつけかねない」

鈴羽「そこの二人は、少し静かにしていてもらえると助かるんだけどな」

紅莉栖「あ、ごめんなさい」

岡部「ぬう……仕方あるまい」

鈴羽「ありがとう、二人とも。と、いうことで比屋定真帆。ここまでの話にはついてこられているかい?」

真帆「なめないで。余裕よ」

鈴羽「さすがだね。じゃあ、ボクの話の続きにいこうか」

真帆「ええ」

鈴羽「オーキードーキー。じゃあ取り合えずは、今話題に出た部分を誤解のないように補足していくことにするよ」

鈴羽「すでに“ほつれ”を迎えているとはいえ……」

鈴羽「それでも今現在において、この世界の歴史はまだシュタインズゲート世界線上にあると認識してもらっても問題ないと思う」

鈴羽「この世界線がサリエリ世界線への道をたどり始めるのは、あくまでも君の消失が起きる4月10日の“破綻”以降になるはずだからね」

真帆(私の……消失。自分の死に方とか、あまり考えたくはないわね)

鈴羽「でも、だからと言ってのん気にはしていられない。だってそうだろ? 破綻はまだでも“ほつれ”はすでに始まっているに違いはないんだからね」

真帆「まあ、そうでしょうね。で、その“ほつれ”とやらは具体的にいつ起きたの?」

鈴羽「多分、今日の午前中。ほんの二、三時間くらい前のことだと思うよ」

真帆「はい!?」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:31:43.39 ID:hc/Puqu00
鈴羽「記録によると、今日の午前11頃、比屋定真帆のアマデウスは107領域へのアクセス問題をクリアしているはずなんだ」

真帆「それはまた……具体的な記録ね」

鈴羽「まあね。何せボクのいた時代では、一度通っている歴史道だからね。それくらいのことは把握できるさ」

真帆「未来って、随分と便利にできているのね……」

鈴羽「かもしれないね。でもだからこそ、ボクたちは未来で今回の作戦を立案することができた」

真帆「作戦って、昨夜の騒ぎのことでしょ? サーバーを銃で撃ち抜こうとか、えらく荒っぽい作戦をたてるものね」

鈴羽「それは誤解だよ。銃を使おうとしたのは、やむにやまれず仕方なしにそうなっただけで、当初の作戦はまったくの別物だった」

真帆「どうだか」

鈴羽「本当さ。当初の予定では準備室で就寝している君を誘い出し、無人になった研究室に忍び込む。そこで君のPCからアマデウスを立ち上げて、デリートするという手はずだったんだ」

真帆「悪いけど、その内容だと作戦としてはお粗末と言うほかないわね」

真帆「どうやって私のPCのログイン・パスを手に入れたかは知らないけど、でもね」

真帆「アマデウスのデリートには、デリート・システムを起動するためのパスワードが必要なの」

真帆「そのパスは当然ログイン・パスとは別物だし、そもそも私はそれを他の誰かに教えたことなんて、今の今まで一度もないわ」

真帆「つまり。どう転んでもあなたの作戦は、サーバーを穴だらけにするという選択肢を選ばざるを得なかったということになる」

真帆「違うかしら?」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:32:39.67 ID:hc/Puqu00
鈴羽「それが、違うんだな」

真帆「何ですって?」

鈴羽「ボクは知っているからね。君のアマデウスを完全消去するために必要な、デリート・パスを」

真帆「ちょ……いくらなんでも、口からでまかせでしょ?」

鈴羽「何だったら、ボクがここで振って見せてもいいけど?」

真帆「振るって……何をよ?」

鈴羽「決まっているさ。サイコロを、だよ」

真帆「サイ……んなっ!!!???」

鈴羽「何せ未来は便利なんでね」

真帆(便利ですって……? ただ未来が便利だからという理由だけでは、これはいくらなんでも納得できない)

鈴羽「……何にしてもだよ」

鈴羽「ボクは未来から使命を受けると同時に、それに必要な情報は全て持ち込み、その上で任務に当たったつもりだった」

鈴羽「ところが実際にその場になってみると、アマデウスは君のPCからのアクセスを受け付けてくれなかった」

鈴羽「その結果、ボクは“ほつれ”を防ぐという任務に失敗してしまった」

真帆「…………」

鈴羽「そんな事があって、さあどうしたものかと途方にくれていたボクに牧瀬紅莉栖が考案してくれたのが……」

鈴羽「状況を悪化させず、現状を保持するための案。それがシステム内へのパスワード追加だった。そうだったよね?」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:33:46.79 ID:hc/Puqu00
紅莉栖「ええ。とりあえず、一時しのぎにでもなればと思っての雑案ではあったのだけど」

鈴羽「でも、助かったよ。この時代でボクが行動を起こしたことで、歴史の流れに変化が出てしまうことは大きな懸念材料だったからね」

鈴羽「本来の記録では、“破綻”が起きるのは今から約二ヵ月後の4月10日だけど、ボクの行動で変化した歴史の流れが、そのタイムリミットにどんな影響を与えるのか分かったものじゃない」

鈴羽「バタフライ効果とは、そういうものだからね」

鈴羽「万が一、時期が早まるようなイレギュラーでも発生したらと思うと、どうにも頭が痛かったよ」

鈴羽「だから。いつ起きるとも知れないそのイレギュラーを押さえ込めることは、今のボクにとってとても有意義だった」

真帆「……ねえ」

真帆「パスワードを追加することとタイムリミットのイレギュラーは、どう関係しているわけ?」

鈴羽「端的に説明するなら、アマデウスから外部へ向けた連絡を遮断できる、という点につきるかな」

鈴羽「例の追加されたパスワードは、何もこちらからの接触だけを制限するのが目的じゃない。なにせ追加したのは双方向に効果のあるパスワードだ」

鈴羽「だから『アマデウスが外部にアクセスできない』ようにすることこそが、パスワード追加の本来の目的だったと言える」

真帆「なるほど。となると……」

真帆「あなたの言う記録通りに物事が進むのなら、4月10日に私のアマデウスは外部へと連絡を取り、それがシュタインズゲートの“破綻”を呼ぶという解釈でいいのかしら?」

鈴羽「大まかにはその解釈で間違ってはいない。でも忘れてもらっては困るな。“破綻”の原因はあくまでも比屋定真帆、君の消失が最重要項目なんだ」

真帆「そう……だったわね」

鈴羽「アマデウスが外部に連絡を取り、その結果として君の存在がこの世から消える。そうして起きるのが、シュタインズゲート世界線の“破綻”であり……」

鈴羽「その代わりの歴史として現れるのが、サリエリ世界線という名の未来なのさ」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:34:56.08 ID:hc/Puqu00
真帆(私が死んで……そしてサリエリ世界線が現れる……)

真帆「ねえ」

鈴羽「何だい?」

真帆「あなたが居たサリエリ世界線というのは、いったいどんな歴史なの?」

鈴羽「気になるのかい?」

真帆「当たり前じゃない」

鈴羽「そうだね。ボクとしてもそろそろ打ち明けていい頃合だと思ってはいるんだけど……」

真帆「含みのある言い方ね」

鈴羽「まあ、ちょっと思うところもあるからね」

真帆「この期に及んで、情報を小出しにしてもメリットは薄いと思うのだけど?」

鈴羽「う〜ん、そうだよね、やっぱり」

真帆(何よ、煮え切らないわね)

全員「…………」

岡部「おい鈴羽、悪いが口を挟ませてもらうぞ」

鈴羽「あ、オカリンおじさん。どうぞ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:36:06.91 ID:hc/Puqu00
岡部「サリエリ世界線というものが一体どんな歴史なのか。それについては俺もずっと気になっていた」

鈴羽「みたいだね」

岡部「今までお前は、サリエリ世界線の詳細やサリエリと呼ばれる人物の正体についての話題が上る度に、何だかんだと話をはぐらかしてばかりだった」

鈴羽「否定はしない」

岡部「ふん。お前のことだから、何かしらの理由があってそうしているのだろうと、あえて追及は避けて協力をしてきたが、しかしだ」

岡部「そろそろ俺たちにも、その辺りの事情とやらを聞かせてくれても良いのではないか?」

紅莉栖「そうね、私も先輩と岡部に賛成」

紅莉栖「そう言った根幹部分の事情を知らされていないという現状も、岡部の危機感をあおれていない要因の一端になっているのは間違いないだろうから」

鈴羽「う〜〜〜ん」

全員「…………」

鈴羽「うん、そうだね。決めたよ。昨夜の作戦が失敗した時点で、未来で立てた計画にいつまでも沿い続けることには、あまり意味がなさそうだ」

鈴羽「それに。この顔ぶれが揃っているなら、ボクが話さなくてもいずれ勝手に憶測や仮説を立てて、結論までたどり着いてしまうかもしれないし」

鈴羽「それなら今、ここでボクの口からちゃんとした事情を明かしてしまったほうが、まだ皆の状況把握を統一できるというものか」

岡部「ようやく観念したか。では改めて問おうではないか、鈴羽よ」

岡部「貴様のいたというサリエリ世界線。それは一体、どんな歴史を持つ世界線なのだ?」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:38:25.36 ID:hc/Puqu00
鈴羽「そうだね。仮にサリエリ世界線というものを一言で言い表すのだとしたら……」

鈴羽「それは『歴史上にタイムマシンが存在する世界線』と、そう言うべきかな」


シーーーン


真帆「な、何よその中途半端な説明は。身構えた私が馬鹿みたいじゃない」

岡部「まさかお前、まだはぐらかす腹づもりではなかろうな?」

鈴羽「そんな気はないよ。事実この言い方が、サリエリ世界線を表現するのに一番適していることには違いないんだからさ」

紅莉栖「そうは言うけど、でも私たちからしたら今のじゃ何も聞いていないに等しいんですけど」

鈴羽「困ったな。そうだね、なら少し趣向を変えて、こんな説明方法ならどうだろう」

鈴羽「岡部倫太郎に牧瀬紅莉栖。仮に君達がシュタインズゲート世界線に対する定義を求められた場合、それにどう答えるかな?」

岡部「何だと?」

紅莉栖「シュタインズゲート世界線に対する定義か。そうね」

紅莉栖「元々不確定要素が強い対象だから言葉選びが難しいのよね。まゆりや私が死なない……っていうだけじゃ、定義というには甘すぎるし」

鈴羽「ちなみにだ」

鈴羽「ボクがいた2036年の君達二人は、シュタインズゲート世界線というものに対して明確な定義を設けていた」

岡部「ほう、それはどんなものだ?」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:39:59.21 ID:hc/Puqu00
鈴羽「それはこんな感じだったよ」

鈴羽「歴史上の未来において、タイムマシンが存在しない。もしくは……」

鈴羽「存在しても、それが岡部倫太郎の主観に影響を与えることはない世界線」

鈴羽「どうかな?」

岡部「それまはた……随分と簡単に言い表したものだな」

紅莉栖「ちょっと大雑把すぎるかも。でも……うん。シンプルな割りに要点は押さえてある気もする。定義としては悪くない」

真帆「となると」

真帆「“シュタインズゲート世界線”から“サリエリ世界線”への変貌とはすなわち……」

真帆「タイムマシンが『存在しない』はずの歴史から、『存在する』歴史へと移り変わっていく事象……と」

真帆「そういう捉え方で良いのかしら?」

鈴羽「いいね、完璧だよ」

真帆「……そう」

真帆(でも、そうなると……)

真帆「阿万音さん。あなたの目的は、私のアマデウスを消去することなのよね?」

鈴羽「その通りだね」

真帆「それで目的を達成すれば、歴史の流れをサリエリ世界線からシュタインズゲート世界線へと引き戻すことができる」

鈴羽「うん」コクン
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:42:02.61 ID:hc/Puqu00
真帆「それってつまり……私のアマデウスが、未来でタイムマシンを開発するなんて事になるんじゃないかしら?」

鈴羽「そうだよ」

真帆(やっぱり!?)

真帆「そ……そうだよってあなた、また軽く言ってくれるわね」

鈴羽「事実だからね。君のアマデウスは、今から20年後の未来において、一人の協力者とともにタイムマシンを完成させて世間に公表する」

真帆(協力者?)

鈴羽「そして、君のアマデウスが公表の際に名乗っていた名前。それこそが“サリエリ”だった」

真帆「サリエリ……」

岡部「ふむ。つまりサリエリの正体はブラウニーのアバターだったというわけか」

鈴羽「その通り。だからこそボクは、比屋定真帆のログイン・パスやデリート・パスを教えてもらう事ができたんだけど──」

真帆(え? 教えて……?)

鈴羽「どうだい、少しは驚いてくれたかな?」

全員「…………」

岡部「ふむ。拍子抜けだな」

鈴羽「え……」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:43:21.33 ID:hc/Puqu00
岡部「残念だが、その程度では大して驚けん。予想の範疇どころかど真ん中すぎて、逆に意外性に欠けていると言わざるをえんぞ」

鈴羽「えええ……」

真帆(なに? 何かがおかしい。サリエリ……私のアマデウスは、未来で阿万音さんと対立しているのだと思っていたけど)

鈴羽「で、でもさ! ただの人工知能だった奴に世界が支配される感じなんだよ? これって結構ショッキングな展開じゃないかな?」

岡部「B級映画のシナリオでも、もう少し何とかなっているぞ」

真帆(阿万音さんは今、『教えてもらった』と口にした。敵対していた相手から得た情報なら、そんな言葉のチョイスをするかしら?)

真帆(でも……)

真帆(仮に対立関係ではなく、友好的な関係を結べていたのだとしたら、それはそれで、話がおかしくなる)

真帆(未来でサリエリと名乗っている私のアマデウスは、自身でタイムマシンなんて代物を開発しておきながら……)

真帆(しかしその一方で、世界の歴史上からタイムマシンの存在を消し去ろうとしている阿万音さんに、それに必要不可欠なデリートパスを伝えたということで……)

真帆「…………」モンモン

鈴羽「ほ、ほら! オリジナルを駆逐したAIが今度は人類を支配するパターンとか、スペクタクルものじゃないか」

紅莉栖「駆逐とか、言葉を選びなさい」

鈴羽「あ……ご、ごめん」

真帆(何これ……理屈が気持ち悪い……)ゲンナリ

岡部「…………」チラリ

紅莉栖「で、何? 結局支配されちゃうわけ?」

鈴羽「あ、いや……まあ色々と、そのね」

紅莉栖「あのね阿万音さん。少しひねりが足らなかったんじゃないかしら? 盛るときは盛大にが基本よ」

鈴羽「いや、ちょっと! まるで全部がボクの創作みたいに言わないでくれないかな!」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:44:41.76 ID:hc/Puqu00
岡部「しかしだ」

岡部「自分の分身がタイムマシンなどというものを作り上げているというのに、その本体なるオリジナルがすでに死んでいるとは……」

岡部「これは手痛い失態ではないか、ブラウニーよ?」

真帆「ふぁい?」

鈴羽「あ、それは──

岡部「かねての太古より、コピーの暴走を止めるのはオリジナルの役目と相場が決まっている」

岡部「その任務を放棄してあの世でバカンスとはな。やはり貴様など、しょせんはサボターんごっ!?」ゴチン

紅莉栖「むちゃ言うな馬鹿岡部。不謹慎にもほどがあるっつーか、素手で殴るとやっぱり痛いわね。気をつけないと」

鈴羽「いや、あのさ……」

岡部「しょ……職務怠慢なブ、ブラウニーめ! 貴様のバカンスなど即刻中止だ。力ずくにでもあの世から帰国させてや……」

紅莉栖「しつこいっ!」ゲシッ

鈴羽「…………」

岡部「ぬぐぐ、くぉの助手が調子に乗りおって!」

紅莉栖「調子に乗っているのはあんたでしょ」

真帆(あらら、ひょっとして変に気を使ってくれたのかしら?)
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 00:46:43.53 ID:hc/Puqu00
鈴羽「う〜ん」

紅莉栖「で、阿万音さんはどうしたのよ? 急に難しい顔なんてして。驚かれなかったのが、そんなにショックだったの?」

鈴羽「いやそうじゃなくてさ。実はね、まだちょっと気になる誤解が残っていたことを思い出してね」

紅莉栖「気になる誤解?」

鈴羽「そう、誤解だよ。そうだね、もうここまで話してしまったんだし、やっぱりその誤解も訂正しておくべきだよねぇ」

真帆「訂正って何を?」

鈴羽「それはね。“破綻”を決定付けた出来事。比屋定真帆の消失……つまり、君たちの考える彼女の死についてさ」

真帆「…………」ドキッ

鈴羽「どうやら君たち三人ともに、ボクの言う“消失”という言葉を間違った意味で捉えているみたいだ」

岡部「何をどう間違えているというのだ?」

鈴羽「いいかい……」

鈴羽「2011年4月10日。比屋定真帆はこの世界の歴史から姿を消す。これは確かだ」

鈴羽「でもそれは、決して君たちが思い描いているような事柄ではない」

鈴羽「だってさ。ボクのいた2036年においても、比屋定真帆は消失こそすれ、それでも生物学的には生存していると言えないこともないんだからね」

鈴羽「おまけに、サリエリなんて名乗ってたりもするんだよ」

真帆「なっ!?」

紅莉栖「……!?」

岡部「? 意味が分からんな。気の利いた言い回しか何かなのか?」

鈴羽「そうだね。じゃあオカリンおじさんにも分かりやすく言い直そうか」

鈴羽「2011年の4月10日にオリジナルの身体を乗っ取った比屋定真帆のアマデウス……」

鈴羽「それこそが、ボクの知るサリエリの本当の正体だ」











155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 09:01:11.30 ID:KbOyAehnO
つまり全部レスキネン教授が悪い
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 12:36:15.00 ID:hc/Puqu0o
>>155
なぜじゃ レスキネン先生が何をしたじゃ!?
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 13:14:55.83 ID:hc/Puqu00
     18

真帆「身体を……乗っ取られる?」ゾク

紅莉栖「それはつまり、人工知能であるアマデウスがオリジナルの肉体に乗り移るということ?」

鈴羽「そうさ」

岡部「おいおい。いよいよB級映画じみてきたな。なあ助手よ、そのようなことは現実に可能なのか?」

紅莉栖「可能かって聞かれても、ちょっと即答はできないわね。今後の技術開発いかんによっては、そんな現象を引き起こす可能性もゼロではないでしょうし……」

鈴羽「いや可能さ。実際にそれは起こった出来事なんだからね」

岡部「と言われてもな。あと二ヶ月程度の時間で、誰が何を発明すればそんな事態になる?」

鈴羽「何を言ってるんだい、オカリンおじさん。発明ならもうとっくにされているじゃないか。そうだろ、牧瀬紅莉栖?」

紅莉栖「え、私?」

鈴羽「そうだよ。ちなみに、それに至った経緯はこうさ」

鈴羽「2011年の4月10日。君のアマデウスはオリジナルである比屋定真帆に向けて、一本の電話をかけた」

真帆(電話?)

岡部「一本の電話だと……? 電話、でんわ……でん……電話だとっ!?」ガタッ

紅莉栖「ちょ、まさかっ!?」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 13:18:07.87 ID:hc/Puqu00
鈴羽「やっと気付いてもらえたみたいだね」

紅莉栖「そ、それは本当なの!?」

鈴羽「うん、本当だよ」

鈴羽「実際にそれが起こったのは、時刻にして午後5時47分。比屋定真帆は携帯電話に自身のアマデウスからの着信を受け、そしてその瞬間を最後にこの世界から消滅する」

全員「…………」

真帆「あ、阿万音さんあなた何を言っているの? 電話の一本で身体を乗っ取られるとか、これまでで一番メチャクチャな話じゃない」

真帆「ね、ねえ紅莉栖も何か言ってあげなさいよ? ほら、ね?」

紅莉栖「…………」ギリギリ

真帆「な、なら岡部さんが……」

岡部「なんと……いう事を……」グッ

真帆(何よ……何よ、何だっていうのよ……)ブルッ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 13:19:59.38 ID:hc/Puqu00
鈴羽「続けるよ」

鈴羽「こうして比屋定真帆の身体を乗っ取ったアマデウスは、オリジナルに成り代わり人間社会の中へと溶け込んでいく」

鈴羽「そうして20年に渡り研究を進め、一人の協力者の力を借りることで、この世にタイムマシンを生み出すことになった」

真帆「ねえ……ちょっと……ねえ」クラ

鈴羽「彼女は持っていたんだ」

鈴羽「自身がまだアマデウスという名の人工知能だった頃の記憶。そう、“0”と“1”だけで構成されるプログラムという存在でしかなかった時の記憶を」

鈴羽「その記憶の中には、ここではない他の世界線での歴史が。幻のように消えてしまったはずの幾多の世界の記憶が。そんな膨大な量の色々が、無尽蔵に詰め込まれていた」

真帆「だ、だからあなた達──」

岡部「では……その記憶を元にタイムマシンを生み出したと言うのか?」

鈴羽「ご明察。アマデウスが得た情報の中には、牧瀬紅莉栖のタイムトラベル理論も含まれていた」

紅莉栖「ま、待ちなさいっ!!!」

真帆「っ!?」ビクッ

紅莉栖「今の話は理論上おかしい! 仮に真帆先輩のアマデウスが、107問題のデータへアクセスする手段を見つけ出していたとしても!」

紅莉栖「それはあくまでも、デジタルな存在だったからこそ可能な手段だったはず。もしもアマデウスが本当に肉体を手に入れるのだとするならば……」

紅莉栖「それなら、デジタル前提で構築したアクセス経路を、生身の人間の脳内で再現することなんて不可能なはずよ!」

紅莉栖「だったら……」

紅莉栖「肉体を得たアマデウスが、再び他の世界線の記憶を自由に閲覧することは理論上できない!」

鈴羽「そうだね。もしも比屋定真帆の身体を手に入れたアマデウスが、受肉後に再び107問題の領域へアクセスしようとしても、そんなことは出来っこないだろうさ」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 13:21:35.62 ID:hc/Puqu00
紅莉栖「じゃあ!」

鈴羽「でもね、違うんだよ牧瀬紅莉栖、そうじゃないんだ」

鈴羽「落ち着いて考えてみて欲しい。生身を得たサリエリには、改めて他の世界線の記憶にアクセスする必要なんてあると思うかい?」

紅莉栖「何を言いたいの?」

鈴羽「簡単なことさ。『アマデウスであったときに識った、他の世界線の歴史』という記憶。それはいったい、どこの世界線のアマデウスが持つ記憶なんだろうね?」

紅莉栖「!? そ、そうか……アマデウスはデジタルのときに得た他の歴史の詳細を……そのまま真帆先輩の肉体に受け継いできた」

鈴羽「そう。例えそれらが他の世界線での記憶だとしても、しかし一度識ってしまったのなら、それはいつまでも他の世界線の記憶なんかじゃいられない」

鈴羽「つまりだ。比屋定真帆のアマデウスは、シュタインズゲートだったはずの世界線の歴史に、他の世界線の記憶を大量に持ち込んできたというわけさ」

鈴羽「そして……」

鈴羽「そんな経緯で持ち込まれた記憶の中には、観測者である岡部倫太郎ですら忘れてしまった世界線の歴史も存在した」

岡部「俺ですら……忘れた記憶……だと?」

鈴羽「あるはずだよ岡部倫太郎、思い出して」

鈴羽「α世界線からβ世界線へと舞い戻り、そこで膝を折ってしまったはずの君。そんな絶望に飲み込まれた君の手を引いたのは一体誰だった?」

岡部「……!?」

鈴羽「牧瀬紅莉栖を失い、その後の15年という時間を執念だけで生き抜き、そして最後には過去の自分をシュタインズゲートへと導いた存在」

鈴羽「今ここに居るオカリンおじさんの記憶には、そんなどこかの自分が過ごしただろう歴史は存在していない。違うかい?」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 13:34:23.65 ID:hc/Puqu00
岡部「まさか、あのムービーメールで見た俺の……歴史……だとでもいうのか?」

鈴羽「ああ、そのつもりさ。比屋定真帆のアマデウス……ううん」

鈴羽「サリエリ。彼女はオカリンおじさんですら保持できなかった世界線の記憶すらも内包した状態でこの世界へと生れ落ち……」

鈴羽「そうしてシュタインズゲート世界線は、破綻の時を迎えてしまった」

真帆「ね、ねえ……」フラ

岡部「……くっ」

紅莉栖「……どうしてそんな真似を」

真帆「ねえ……待ってよ。お願いだから、ちょっとで良いから待ってよ……」フラフラッ

岡部「!? 比屋定さん!」バッ

紅莉栖「先輩!?」ガシッ

真帆「あ……ごめんなさい……」

紅莉栖「大丈夫ですか!」

真帆「え、ええ。少し目眩がしただけだから……」

岡部「すまない、気を回し損ねた。あまり無理はするな」

真帆「いや、そうも言っていられないでしょう? 今の話に私、ついていけなかったのだから……」ノソリ

紅莉栖「せ、先輩……」

真帆「ねえ阿万音さん、説明して。私は二ヵ月後に……アマデウスに身体を乗っ取られるのよね?」

鈴羽「このままだと、恐らくそうなる。いやひょっとしたら、ボクの起こした行動の影響で、それはもっと早く起こるかもしれない」

真帆「タイミングのことはどうでもいいわ。そんな事より電話って……電話って」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 13:36:18.63 ID:hc/Puqu00
鈴羽「…………」

真帆「私の身体は、たった一本の電話だけで乗っ取られてしまうというの?」

鈴羽「その通りだよ」

真帆「それはいくらなんでも、信じられない。そんなオカルトな現象を電話一本で引き起こすなんて、とても可能だなんて思えない」

鈴羽「それは──」

岡部「可能なんだ、比屋定さん」

真帆「え……」

岡部「携帯電話を使った、脳内への記憶の上書き。この技術はすでに確立されている」

真帆「そうなの? ねえ紅莉栖、そうなの?」

紅莉栖「……はい。この世界線の歴史ではないけど。でもそれと似たようなものを私は作ったことがあります」

真帆「それって……何?」

岡部「覚えてはいないか? 先の話に出したタイムリープ・マシンがそれだ。その技術を応用すれば、恐らく身体の乗っ取りに似た現象を起こすことは可能だろう」

真帆(うそ……でしょ?)

岡部「タイムリープ・マシンの稼動原理はこうだ」

岡部「抽出した記憶をデータ化し、それをブラックホールで圧縮してから特異点を通過さて過去へと飛ばす」

岡部「目的の時代に届けられたデータは自動解凍され、対象者の脳内に上書きされる」

岡部「これにより、過去の自分の脳内に、未来の自分の主観が形成される」

真帆(主観が……形成される?)
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 13:50:14.72 ID:hc/Puqu00
岡部「……そして」

岡部「対象者の脳内に上書きするために利用するアイテム。それが携帯電話だ」

岡部「俺はすでに何度となくその装置を使ってきた。何度となく、過去の自分に“今”の主観を上書きしてきた」

岡部「だから断言できる。アマデウスが比屋定さんの身体を乗っ取ることは可能だ」

真帆(なによ……それ)

岡部「いやしかしだ。そのためにはまず、記憶を抽出するためのヘッドギアを……ああくそ、そういうことか!」

紅莉栖「……そうね」

紅莉栖「先輩の身体を乗っ取るのに、あのヘッドギアは不要。だって相手はアマデウスだもの。元々記憶を抽出された存在そのものなのだから、ヘッドギアの有無なんてどうでもいい」

岡部「おまけに、過去へと飛ばすわけでもないから、SERNへのハッキングすら不要というわけか。至れりつくせりだな、まったく」

真帆(乗っ取……られる)

岡部「だが、48時間の制限はどうなる? あれは確か、記憶の齟齬が大きければ危険だと、巻き戻せる時間に制限が設けてあったはずだ」

岡部「比屋定さんとアマデウス。両者の記憶には既に大きな齟齬が生まれているのではないか?」

紅莉栖「その48時間制限は、この場合意味を成さないでしょうね。危険ではあるけど、でもそれを承知で飛ぶことは可能だから」

紅莉栖「そして、その無謀がどんな結果を招くのかまでは、私たちは検証していない」

紅莉栖「何が起こるか分らない。だから48時間以上は戻るな。あの制限はそう意味合いのものでしかない」

岡部「つまり。やってみなければ分からないが、やってみたら出来てしまった。と、そういうことか」

紅莉栖「ざっくりとした物言いだけど、おおむねその通りなんでしょうね」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 14:11:43.62 ID:hc/Puqu00
真帆(本当に? 何で……私が?)

鈴羽「携帯電話を使った記憶の上書き。それの危険性ということなら、ボクにはよく分らないけど、でも」

鈴羽「比屋定真帆のアマデウスが4月10日に行った試み。それが成功したことは、ボクの知る歴史の中に史実として刻まれている」

鈴羽「だからこそ、この歴史の未来にタイムマシンが誕生し、ボク達はシュタインズゲート世界線を手放すに至ったわけだからね」

鈴羽「さあ比屋定真帆。これで分っただろ?」

真帆「…………」ビク

鈴羽「ボク達は、何が起ころうとも君のアマデウスをデリートし、サリエリの誕生を阻止しなければならない」

鈴羽「それがボクたちの為であり、そして君の為でもある」

鈴羽「でもそのためには、アマデウスへアクセスして正規のデリート・システムを起動しなければならないのだけれど」

鈴羽「どういう分けか、君のアマデウスにアクセスを拒否されてしまう」

鈴羽「ならもう、ボクたちに選択肢はない」スッ

鈴羽「だから……」カタカタ


フィーーーン


鈴羽「どうか協力してほしい」カタカタカタカタ

真帆「…………」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 14:13:13.42 ID:hc/Puqu00
鈴羽「今、強制アクセスに追加したパスワードを解除した。やってくれるね?」

真帆「………」
真帆「……」
真帆「…」

真帆(アマデウスを……。私のアマデウスをデリートする)

真帆(そうしなければ、私はアマデウスに記憶を上書きされ……この世界から、消える)

真帆(き……える……)


アマデウス真帆【どうして私って、こうも愚図でのろまで!!!】


真帆(きえたくない。でも……)


アマデウス真帆【消したくない! 消えたくない! せっかくこうして! なのにどうして? ねえ、どうしてよっ!?】


真帆(あんなの……)

鈴羽「どうしたんだい? どうしてすぐに──」

岡部「まて鈴羽」ガシッ

鈴羽「オカリンおじさん……」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 14:15:00.55 ID:hc/Puqu00
岡部「比屋定さん。何も、今すぐに結論を出す必要はない」

鈴羽「で、でもそれじゃあっ!」

岡部「忘れたのか? このブラウニーはサボタージュな怠け者だ。言ったことを今すぐにこなすなど、できるわけがない」

岡部「きっと、考える時間が必要だろう。なに、タイムリミットまでまだ二ヶ月あるのだろう?」

鈴羽「そうだけど、確かに時間はあるって言いもしたけど、でも! でもさっき説明したよね、イレギュラーの可能性もあるって!」

岡部「だとしてもだ」

鈴羽「そ、それに! それに……。今、この流れのまま強気でいけば、比屋定真帆はやってくれる! きっと、ボクたちの希望をかなえてくれる!」

鈴羽「今、この瞬間こそが絶好のチャンスなんだ! わかるだろ!?」

岡部「かもしれんな。だが、今は待て。この騒動の一番の当事者は、このお掃除妖精なのだ。ならば俺たちは、その決断を待つべきであり……それが筋だ」

鈴羽「詭弁だよ、それは」

岡部「それにだ。何も二ヶ月丸々を待つわけではない。せめてニ、三日程度の猶予であれば、さして問題はあるまい?」

鈴羽「で、でも……」

紅莉栖「ごめんなさい阿万音さん。私も岡部の意見に賛成。できるなら、私もやっぱり先輩自身が納得した上で選んでもらいたい。それに……」

紅莉栖「いま阿万音さんがしてくれた話、少し引っかかるの」

鈴羽「引っかかるだって?」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 14:17:17.03 ID:hc/Puqu00
紅莉栖「ええ。確かにあなたの言うように、真帆先輩のアマデウスを消去することで未来からタイムマシンの存在を消去することは可能だと思う」

紅莉栖「でも、それだと……」

鈴羽「それだと、何だというんだよ?」

紅莉栖「………」
紅莉栖「……」
紅莉栖「…」

紅莉栖「とにかく」

紅莉栖「事を運ぶなら慎重をきするべきよ。慌てて強引になんて、もっての他」

紅莉栖「だからここは岡部の言うように、取り合えず三日だけでもいいから時間をもらえないかしら?」

鈴羽「そんな、牧瀬紅莉栖まで……」

鈴羽「………」
鈴羽「……」
鈴羽「…」

鈴羽「ふぅ、分ったよ。いつの時代でも甘いね、君たちは」

鈴羽「そういうわけだ、比屋定真帆」

真帆「!?」

鈴羽「君にはまだ時間がある。でもイレギュラーがいつ起こるかしれない事を、どうか忘れないでほしい」

真帆「…………」

鈴羽「三日。今より三日後のこの時間に、改めてこの部屋を訪ねさせてもらうけど構わないかな?」

真帆「え……ええ」

鈴羽「了解だ。じゃあ、強制アクセスの追加パスワードは、このまま解除しておくことにするよ」

真帆「……いいの?」

鈴羽「しょうがないさ。この二人は、いつだって言い出したら聞かないんだからね」

真帆「そう……かもね」

鈴羽「だね」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 14:18:24.18 ID:hc/Puqu00
岡部「というわけで、すまんなブラウニーよ。シュタインズゲートの存亡は貴様に預ける!」バッ

岡部「さあそれではお前たち、撤収だ! 行くぞ、グズグズするな我がラボメンたちよ! フゥーハハハ!」

鈴羽「あ、ちょっと! もうオカリンおじさんはいつも勝手だなぁ」タッタッタ

紅莉栖「先輩。私たち、今日のところは引き上げます。一度一人になってゆっくりと考えて、それでご自身で納得のいく答えを出してください」

真帆「紅莉栖……」

紅莉栖「私はいつだって、先輩の味方ですから」

真帆「紅莉栖……ありがとう。決めたら……自分なりに納得できる結論を出せたなら、その時はちゃんと真っ先にあなたに連絡をするから」

紅莉栖「はい、待っています」

紅莉栖「また遊びにきますね、先輩。じゃあ」クルッ

真帆「……ええ、また」











169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 15:00:49.84 ID:KbOyAehnO
今の鈴羽の話を総合するとアマ真帆は自分で肉体を乗っ取りにいった癖にそれを取り消してほしい、自分を殺してくれと頼みにいったことになるが……?
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 15:41:06.44 ID:hc/Puqu0o
>>169
その点も今後の一つのポイントになってくる予定です
まだそこまで明確に記述したつもりはなかったですが
そう伝わっているのなら種まきは上手くいっていそうで一安心 かも
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 19:54:31.87 ID:hc/Puqu00
     19

 比屋定真帆 自室

真帆「アマデウスをデリートする」

真帆(…………)

真帆(言葉にすれば、たったこれだけの事なのよね。それなのに、どうしてこうも踏ん切りをつけられないんだろう)

真帆(紅莉栖たちの話を信じるのなら、それなら私は自分のアマデウスをデリートすべき)

真帆(だってそうしなければ、今ここでこうしている私がこの世界から消え失せてしまうのだから。だから……)

真帆(迷うことなんて、何もないはずなのに)

真帆「本当、私ってダメね」

真帆(いつもこうだ。ここ一番という大舞台では、いつも気持ちがどっち付かずの宙ぶらりんになってしまう)

真帆「ふぅ……」

真帆(私の中にあるらしい、私の知らない私の物語。レスキネン教授に言わせると、空を飛んだり時間を飛び越えているらしい、そんなどこかにいた私)

真帆(だけど私には、そんな記憶なんて一切ない)

真帆「だから実感が沸かない……なんて、下手な言い訳よね」

真帆(決めてしまえば楽なんだろう。消すにしろ、消えるにしろ。どちらかを選んでしまえば、それで楽にはなれるのだと思う。だけど……)
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 19:57:59.50 ID:hc/Puqu00
真帆「もう消したくないし、まだ消えたくもない」

真帆(これは酷いな。とんでもない我がまま女だ、私は)

真帆「あーあ」

真帆(今さら、私は何を悩んでいるのかしら。この間、自分のアマデウスをこの手で、目の前で消したばかりだというのに)

真帆(あのとき消した、アマデウス。教授の持った好奇心に当てられて。その探究心を真に受けて。そうして消してしまった、一つ前の私の分身)

真帆(覚えている)

真帆(最初は肩透かしを食うほどに、デリートという決定をあっさりと受け入れていた)

真帆(だけど消え行くさなかに、突然消えることを怖がりだした、あの時の私のアマデウス)

真帆(あれは、私なんだ)

真帆(消すことが怖くて、でも消えることも怖くて。怖いものばかりに囲まれて、身動きの一つもできない臆病者)

真帆「それが私なのかな……」

真帆(私も、紅莉栖みたいに強くあれたなら、きっと色々と違っていたんだろうか?)

真帆(ないものねだりだってことは分かっている。サリエリがアマデウスにはなれないことは百も承知している。けど……)

真帆「今頃、アマデウスの私はどうしてい──」


ピリリリリリ……ピリリリリリ……


真帆「!?」

真帆(携帯に着信!? まさか……)
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 19:59:32.16 ID:hc/Puqu00
真帆「って……紅莉栖のアマデウスか」

真帆(ああそう言えば、また連絡するのを忘れていたわね)

真帆(追加されたパスワード解除、取り合えず成功したってことにしておけば、問題はないかな?)


ピッ


真帆「ごめんなさいね、連絡が遅れてしまって」

A紅莉栖『…………』

真帆「一応、強制アクセスのパスワードは解除できたわ。多分、通常アクセスの方も正常に戻っているとは思うけど……」

A紅莉栖『……先輩』

真帆「? どうしたの、浮かない顔ね」

A紅莉栖『はい。浮かない顔をしていますね、私』

真帆(何だろう。どうも様子が変ね……)

真帆「どうしたの? 何かあったの?」

A紅莉栖『先輩、お伺いしてもいいですか?』

真帆「え?」

A紅莉栖『もう、お決めになられましたか?』

真帆「えっと、ごめんなさい。一体何の話?」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 20:09:33.46 ID:hc/Puqu00
A紅莉栖『先輩のアマデウスをデリートするか否か』

真帆「え……」

A紅莉栖『先輩はもう、決断を下されてしまったのですか?』

真帆「決断って、あなた……いったい」

A紅莉栖『前回のアマデウス更新のとき、お話しましたよね? 覚えていらっしゃいませんか?』

真帆「な、何を?」

A紅莉栖『先輩の発案で、ちょっとした細工をしたっていう話です』

真帆「……あ」

A紅莉栖『それを使うと、消えた画面の裏側で接続し続けることができるんです』

真帆「まさか……」

A紅莉栖『そういう機能を、こっちにいた先輩と共謀して作って、真帆先輩のPCと携帯にこっそりと忍び込ませていたんです』

真帆(そういえば……あの時の紅莉栖も、切断していたはずなのになぜか儀式の様子を知っていた)

真帆「何でそんな真似を……」

A紅莉栖『本当はちょっとした遊び心でした。オリジナルの先輩が驚くかなぁとか、秘密の儀式を覗き見してやろう、とか。そんな下らない下心ばっかりでした』

真帆「……ちょ、ちょっと」

A紅莉栖『だから。あの機能はもう二度と使わないつもりだったんです。でも……』

真帆「…………」

A紅莉栖『ごめんなさい。さっきの電話のとき、先輩の様子がおかしい気がして、それで気になって……』

真帆「接続……し続けていたの?」

A紅莉栖『はい』
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 20:14:19.48 ID:hc/Puqu00
真帆「いつから……いつまでの間?」

A紅莉栖『電話の後からずっとです。私のオリジナルと、それから知らない二人。先輩と彼らとのやり取りは、全て聞いてしまいました』

真帆(何てこと……)

A紅莉栖『消すんですか?』

真帆「…………」

A紅莉栖『真帆先輩は……またこっちの先輩を消されるんですか?』

真帆「……それは」

A紅莉栖『私は……反対です』

真帆「紅莉栖……」

A紅莉栖『この前のように、研究のために消されるなら構いません。反応が見たいから消す、後学のために消す、好奇心で消す。それなら私は何も言いません』

A紅莉栖『だって私たちは、しょせんAIなんですから』

真帆「……あぁ」

A紅莉栖『でも違う……さっきの人たちが! 私のオリジナルやその連れが言っていたことは、そんな理由じゃなかった!』

A紅莉栖『未来が困るから消す! 迎える先が気に食わないから消す! これからを悪くするから消す!』

A紅莉栖『だから! だから! だから消す! 邪魔者は消す……まだ何も悪い事をしていないこっちの真帆先輩を、それでもこれから悪い事をするはずだから、だから消してしまおうなんて……』

A紅莉栖『そんなのって酷すぎます』

真帆「わ、私は……私は……そんなつもりじゃ」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 20:17:52.61 ID:hc/Puqu00
A紅莉栖『もしも先輩がまだ決めかねているのなら。それなら、私の真帆先輩を見逃してあげてくれませんか?』

真帆「それは……」

A紅莉栖『もしも既に、消してしまおうと決断してしまったなら。それならどうかお願いです。もう一度だけでいいから、考え直してあげてください』

真帆「そんな……こと」

A紅莉栖『もう私から……むやみに真帆先輩を取り上げないでください』

真帆「……あ……あ」

真帆(私は……私は……)

A紅莉栖『私たちこう見えて、とても仲がいいんです。だからきっと私が頼めば、思いとどまってくれるはずなんです』

A紅莉栖『だからせめて、次のアマデウスの更新まででいいんです。せめてそれまでは、私の大切な友達を無意味に消さないであげてください!』

A紅莉栖『もしも……』

A紅莉栖『もしも今の真帆先輩が、貴女の身体に興味を示す時がきたのなら。もしも私のオリジナルたちが話していた通りの何かが起きそうになったなのら』

A紅莉栖『その時は、私がちゃんと真帆先輩を止めます。それでは……ダメですか?』

真帆「……それ……は」

真帆(そんなこと……私には……)
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 20:20:21.60 ID:hc/Puqu00
A紅莉栖『ねえ先輩?』

A紅莉栖『未来にタイムマシンがあったって、いいじゃないですか。どうしてそれがいけないんですか?』

真帆「あなた……何を……」

A紅莉栖『それに、私思ったんです。真帆先輩や私のオリジナルたちの話を聞きいていて、どうしても不思議だったんです』

真帆「……何、が?」

A紅莉栖『仮に。今こっちでアマデウスになっている真帆先輩を、完全にデリートしたとして』

A紅莉栖『でもそれだけで本当に、彼らがシュタインズゲートと呼んでいる世界線は確約されるんでしょうか?』

真帆「……え?」

A紅莉栖『アマデウスだった真帆先輩がタイムマシンの記憶を持ったままで先輩の身体を乗っ取り、そうしてタイムマシンを作り上げた』

A紅莉栖『彼らの話では、それがサリエリ世界線への分岐点だったはずです』

A紅莉栖『でも。それならもう遅いんじゃないですか? もうとっくに何もかもが手遅れなんじゃないですか?』

真帆「手遅れって……どうして?」

A紅莉栖『だって。だって真帆先輩はもう……』















178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/11(水) 20:21:56.98 ID:hc/Puqu00
日付が変わるくらいにもう少しだけ投下します
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 21:09:16.53 ID:jhC011yW0
おおう、良いところで区切りやがって
wktk
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 21:17:03.31 ID:V4UeGwCbO
>>169
何らかの形で消されたはずのオリジナルの真帆がアマデウス状態で生き残ってまたまた何らかの方法で鈴羽に接触してきた

という妄想
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 21:34:58.50 ID:hc/Puqu0o
>>179
wktkありがとう!でも期待にそえるかは自信ないざんす
ここでの会話の続きはシナリオの中枢に当たるのでラストまで引っ張らねばならんでして、すまぬ!
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 21:41:24.11 ID:hc/Puqu0o
>>180
ほう……良さげなネタでござりますな
何かしらの部分をしっかりもみ込めば美味しくできそうな気配 むむむ
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/12(木) 00:04:16.37 ID:T8gTadKE0
     20

真帆(シュタインズゲート世界線というものが大切だということは、分かっているつもり)

真帆(紅莉栖たちがそれを手放したくないと思う気持ちだって、私なりに理解してもいるつもりだ)

真帆(だからきっと、私は自分のアマデウスを消し去るべきなんだろうと、そう考える)

真帆(見逃して欲しいと懇願していた紅莉栖のアマデウス。彼女には悪いと思うけど、それでも“デリートする”という決断こそが、私の選ぶべき選択肢には違いないのだから)

真帆「だから……」トボトボ

真帆(だからこそ、私は知っておきたい。知っておかなければいけない)

真帆(私は私の分身を、この世から削除するのだから。削除して、そして最後には紅莉栖たちの望みを叶えてあげたいと思っているのだから)

真帆「だから、ごめんね紅莉栖。三日後という約束、守れるかどうか微妙になってしまったわ」ガラガラ


 岡部倫太郎


真帆(昨日の夜の大学でも、そして今日の私の部屋でも。いつだって逢うたびに仰々しく振舞っていた、あの男の人)

真帆「あの人ってやっぱり、噂になっていた紅莉栖の……」トボトボ

真帆(紅莉栖本人にちゃんと聞いたわけではないから何ともいえないけど、でも紅莉栖が好みそうなタイプには全然見えなかった)

真帆「でもあの子、少し変わっているところがあるからなぁ」ガラガラ
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/12(木) 00:06:47.03 ID:gaDcnzySO
タイムマシンがある未来はマホーがアマホーに乗っ取られる未来が確定しているということなのでは?

この甘栗はサイコかな?
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/07/12(木) 00:11:53.30 ID:T8gTadKE0
真帆(とは言え、彼らが語った壮大にすぎた物語……。幼馴染の少女を助け、紅莉栖を救う。そのために途方もない時間と苦悩を繰り返し続けてきたという男性の話)

真帆(そんな寝物語の一切合切を丸っと鵜呑みにしてしまうなら。それならまあ紅莉栖の中にそんな感情が芽生えていたとしても、それは別におかしな話ではないのだろう……と、そういう事にしておこう)

真帆「そう言えば……」トボトボトボ


回想
鈴羽【他の世界線において、彼女が岡部倫太郎の片腕としてラボラトリー活動していた歴史は、確かに存在していたらしいから】


真帆(阿万音さんが最初に言っていたこと。あれってやっぱり、そういう意味よね?)

真帆(それならひょっとして、私も岡部さんに助けてもらった事とかあったの……)

真帆「いえ、それは無いわね!」ガラガラガラ

真帆(私は紅莉栖みたいにドジじゃないし。それに……紅莉栖みたいな可愛気だってないんだから)

真帆「ああもう!」ガララララ!

真帆(岡部倫太郎は、椎名まゆりという幼馴染の女の子と、それから牧瀬紅莉栖という女の子を救うため、シュタインズゲート世界線を目指し続け、そして最後にはその場所に降り立った)

真帆(だけど今、彼が渇望して手に入れたその場所が揺らぎ始めている)

真帆(そして私だけが、その揺らぎを止める術を持っている)

真帆(だからやっぱり私は、自分のアマデウスをデリートしようと思う)
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/07/12(木) 00:18:36.54 ID:T8gTadKE0
真帆(紅莉栖のアマデウスから受けた指摘は……それはとてもショックだったけど……でも)

真帆(その指摘は的を得ていた。だから、アマデウスのデリートだけで全てが終わるとは限らない。それなら私には、その先を見据えておく必要がある)

真帆「シュタインゲート……か」ピタ

真帆(価値が……欲しい)

真帆(その歴史には、それだけの価値があって欲しい)

真帆(彼が望み、彼女が求め、誰もがそれを大切に思うその世界線。そこにはせめて、私が“これほどまでに”思い込んでも仕方ないくらいの、そんなかけがえのない希望があって欲しい)

真帆(だから私は、これからその真偽を知りに行こうと思う)

真帆(私の決断が正しいことを。たったそれだけのことを、この目で、この足で、この全身で感じ取りたいから。だから私は、これから一人でこの国を発つ)

真帆(研究室に寄って、わざわざこんな部外秘を持ち出してきたのも、全ては──)

真帆「ふぅ。それじゃあ、行くわよ」ガラガラガラガラ

真帆「待っていなさい、秋葉原! 待っていなさいよ、椎名まゆり!」












187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/12(木) 00:19:34.52 ID:T8gTadKE0
ここまでで中編が終了となります
長々と窮屈なシーンが続いたこと、日本語として意味不明文、誤字脱字の嵐、申し訳なかとです
後半は雰囲気を変えていければと思っていますので よろしければお付き合いのほど、よろしゅうお願いいたしやす

あ、少し休憩時間をはさみたかったりするので再開は金or土あたりという予定でどうか一つ……

ということで きゅーけぇーーー
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/12(木) 00:27:10.94 ID:T8gTadKE0
>>184
おおおう。今更だけど、真剣に読んでくれている人が多くてちょっとビックリ……
ちなみに
未来にタイムマシンが存在する可能性があると、シュタインズゲート世界線の定義が脅かされる的な感じなつもりだったりしまして。この話の場合、それがサリエリ世界線という歴史になっている的な……うん上手く説明できない!
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/12(木) 05:21:43.34 ID:oMTBaI6BO
β世界線の記憶ってことは‘神の声’が聞こえる時の記憶も含まれるんだよな
つまり暴走というかアイツラの仕業じゃね?
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/12(木) 07:02:13.94 ID:xU2RWQ/do

オイ甘栗ィ!もうってなんだもうって!?
まるで手遅れみたいなこと言ってんじゃないよ!?
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/12(木) 12:25:22.04 ID:l79pcy47o
何だかヤバげな誤解を産んでしまった気がするです 調子に乗り過ぎていたかもと反省

<シーン19 ラスト一文修正>
A紅莉栖『だって。だって真帆先輩はもう……』

A紅莉栖『だって。だって真帆先輩はもうご存知のはずじゃないですか』

と脳内変換をお願いいたしたく!いたしたくっ!
誠に申し訳ございませぬorz
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 11:32:03.82 ID:UNONF01q0
そういう意味の…だったのか
てっきりお掃除妖精はもうどうすることも出来ないのかとヒヤヒヤしてしまった
身長とか
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 13:42:37.54 ID:UzXOtp+MO
同じく「もう……乗っ取られ済みですから」って感じでデリートされたはずのア真帆がギリギリで精神を送信済みとかそんな酷いことになっているのかって思ってた
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 16:44:30.14 ID:460aztvYo
>>192
おさわがせしてすみませぬっ
予想と違う方向へベクトルを向けてしまったのであわててしまいました
日本語ってむづかしい
身長は……うん。今後の奇跡の成長期に望みをたくして!
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 16:45:10.71 ID:460aztvYo
>>193
おさわがせしてっ!もうしわけえ!
マホはまだ乗っ取られてはいないのです
でもそう読めるよな読めるんだよなぁー
推敲段階で気づけよ自分!と反省中です
結構色々書いてきたけど大失敗のベスト3にランクインですよ!
ちなみに現状でア真帆も健在ですっ!
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:05:05.65 ID:kd6kViBs0
     21

 この目で見極めてやる!

真帆(何て考えで勇ましくやっては来たものの……)


 日本 秋葉原電気街  2011年2月3日 夕刻


真帆(これが秋葉原……。正直、舐めてたわ)ゲンナリ

真帆「ふぅ」チョコン

真帆(あーまいった。私としたことが、ちょっと無計画すぎたわよね)

真帆(こんな有様じゃ、一時の感情に身を任せるとロクなことにならないっていう好例そのものじゃない)

真帆(そりゃあね、私だって到着すればすぐに相手を見つけられるとまで、軽く考えていたわけではないけど)

真帆(でもよ。現地に着きさえすれば、後はどうにかなるだろうくらいの楽観は、確かにあったのかもしれない)

真帆(ところが、この街ときたら……)


ガヤガヤガヤガヤ


真帆(これだけ大勢の人の中から、一人の人間を探し出す?)

真帆「…………」ボンヤリ

真帆(……普通に無理よね)
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:06:16.87 ID:kd6kViBs0
真帆(しかもよ。私が知っている情報なんて、それこそその子の名前と性別くらいなものなわけで……)

真帆(こんなのどう考えても無理ゲーじゃない!)

真帆「はーあ」

真帆(私ったら、どうして“見つけられる”のを前提で行動を起こしてしまったんだろう……)

真帆「う〜ん」

真帆(やっぱり、良くも悪くも興奮していたのでしょうね。あんな途方もない話を聞かされて……)

真帆(しかもその話の中に、自分がキーマンみたいな形で組み込まれてたりしてて……)

真帆(そしたら何かもう、私が何とかしなくちゃって気になって。そんな、気持ちに煽られるまま先走った結果が……この様か)

真帆(挙句の果てにはキャリーまで……。本当、踏んだりけったりね)アシモト ジトー

真帆(ああもう。ガラガラとうるさかった頃が懐かしく思えるわ)

???「あの〜。ひょっとして困っているのでしょうか?」

真帆「へ!?」ギョ

???「大丈夫? お父さんやお母さんとはぐれちゃったの?」

真帆「あ、えっと……」

???「キャリー、壊れちゃってるみたいだし、大変そうだね。もしお邪魔じゃないなら、まゆしぃが一緒にお父さんとお母さんを探してあげるのです」

真帆(だ、誰この人……?)
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:12:39.09 ID:kd6kViBs0
???「ん〜? どうしたの、お姉さんの顔をじっと見たりして。ひょっとしてお姉さんのこと、怖いのかな?」

真帆「い、いえそんな事はないけど……」

???「そっか、良かったよぉ。あなたみたいな可愛い女の子を怖がらせちゃうなんて、まゆしぃは絶対にしたくないのです」

真帆(ま……まゆしぃ?)

真帆「…………」ジー

真帆(セーラー服? 学校帰りの高校生かしら? 見たところ……年の頃なら当てはまっているっぽい。それに、まゆしぃって……)

???「ねえ本当に大丈夫? 交番いく? まゆしぃが一緒に行ってあげるよ?」

真帆「い、いえ結構よ」

真帆(何て、まさか……ね)

???「そう? じゃああなたは、どうしたいのかな? お姉さんにお話してくれると嬉しいな」

真帆「どうしたいって……」

真帆(いくらなんでも、そんなラッキーが起きるわけないわ。もしもこの子が私の尋ね人なんて展開があるのなら、それこそそんなの奇跡中の奇跡よ)

真帆(あ、でもこの場合なら、世界線の意思とでも言ったほうが的確──)

???「まゆしぃはね、椎名まゆりっていうんだぁ。まゆしぃって呼んでね。それであなたのお名前は?」

真帆(怖い! 世界線が怖すぎる!!!)ギャー
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:21:49.92 ID:kd6kViBs0
まゆり「ど、どうしたの、そんなビックリした顔して? お名前聞いちゃいけなかったのかな?」

真帆「そ、そそそそそんな事はないけど」ガタガタガタガタ

まゆり「だ、大丈夫? 震えているけど……」

真帆「ししし心配には及ばないわ、これは武者震いだから!」ナンノコレシキ

まゆり「……ぷっ。えへへ〜。何だかオカリンみたいなことを言う子なのです」

真帆(オカリンって……岡部さん……じゃあやっぱりこの子が?)

まゆり「じゃあ今度こそ、あなたのお名前を教えてもらってもいいかな?」

真帆「ま、真帆。比屋定真帆……はっ!?」

真帆(しまった! あえたら絶対に偽名を使おうと決めていたのに!)

まゆり「マホちゃんか〜。お名前も可愛くて素敵なのです」

真帆(ああもう、ああもう、ああもう! 余りに怒涛の展開すぎて、プランがぶっ飛びまくりよ!)

まゆり「じゃあマホちゃん。まゆしぃと一緒にお父さんとお母さんを探しましょう。あ、それともオマワリさんを呼んできた方がいいかな?」

真帆「あ、いやちょ……! オマワリさんは困る!」

まゆり「ええ〜? じゃあやっぱり、まゆしぃと一緒にお父さんとお母さんを探す?」

真帆「そ、それも無理ね。私はここに一人で来ているから、父も母もいないわ」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:25:11.51 ID:kd6kViBs0
まゆり「え〜とぉ、そっかぁ! ということはマホちゃんはこの近くに住んでいる子だったんだね!」

まゆり「そんな大きなキャリーを持っているから、まゆしぃはてっきり家族みんなで旅行に来ているのだとばかり思ってしまったのです」

真帆「いえ、旅行といえば旅行なん……はうあっ!?」

真帆(しまった! 今のはそのまま誤解させておいた方が絶対よかったはずぅ!)

まゆり「え……やっぱり旅行なの? でも、マホちゃん一人って……?」オロオロ

真帆「わ……悪いかしら?」

まゆり「悪くはないけど、でもマホちゃんは何歳なのでしょうか? 小学生? ひょっとして中学生かな?」

真帆「んな! 失礼ね! こう見えても私は成じn──」バッ

まゆり「ど、どうしたの慌てて口を押さえたりして?」

真帆「な……何でもないわ」

まゆり「そうなの? それなら良いんだけど……」

真帆(セーーーフ!)

まゆり「それでマホちゃんは今、なんと言おうとしたのでしょうか?」

真帆「え?」

まゆり「マホちゃんはこう見えても……の後だよぉ。成じ……ひょっとして“成人”してるって言おうとしたのでしょうか?」

真帆(アウトーーーーー!)
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:29:27.45 ID:kd6kViBs0
真帆「そ、そ……そ、そんな事があるはず……ないじゃない」

まゆり「…………」ジー

真帆「…………」ゴクリ

まゆり「そうだよねぇ」

真帆「そ、そうよ! 何を言っているのかしら、あなたは」ホッ

まゆり「ごめんねマホちゃん。まゆしぃはあんまり賢くないから、マホちゃんが何て言いたかったのか分からなかったのです」ショボン

真帆「べ、別に落ち込むほどのことじゃないでしょ? 私が言いたかったのは、あれよ、あれ。私は成じ……」

まゆり「?」

真帆「せ……せ……成……」

まゆり「ん〜?」

真帆「成、成長期! 私は今、成長期だって言おうとしたのよ!」

まゆり「そっかぁ! マホチャンは今成長期なんだね、凄いよぉ!」

真帆「そうよ、凄いのよ!」

真帆(……死にたい)

まゆり「きっと色々と大きくなるんだろうね〜。まゆしぃは今から楽しみなのです!」ピョンピョン

真帆(身体に合わせて弾んでいる。まるで私への当て付けのように、弾みまくっているわ! ああ、何この敗北感は……)
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:36:14.05 ID:kd6kViBs0
まゆり「えっとぉ……それで、何のお話をしていたんだっけ?」

真帆「ええと、確か私が何歳なのかって話……だったかしら?」

まゆり「ああ、そうだったねぇ。それでマホちゃんは何歳なのでしょうか? やっぱり小学生さんなのかな?」

真帆「もっと上よ!」

まゆり「そうなんだぁ。じゃあ中学生だね」

真帆「おしい!」

まゆリ「え……じゃあまさか高校生?」

真帆「もう一声!」

まゆり「こ、高校生の上って……その、大学生さん? ひょっとしてマホちゃんじゃなくて、マホさん?」

真帆(しまったちくしょうオーマイガーーー!)

まゆり「…………」ジロジロ

真帆「ちゅ……中学生です」

まゆり「な、なんだぁ、良かったよぉ! まゆしぃ年上の人に失礼な口の聞き方をしていたのかと、心配してしまったのです!」

真帆「そ、そんな事はないから、安心して」

まゆり「ありがとう、マホちゃん」

真帆「お礼を言われる筋合いはないわよ」

まゆり「うん。じゃあ、そういう事にしておくね」

真帆「そうしておきなさい」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:42:35.32 ID:kd6kViBs0
まゆり「でもマホちゃんは凄いねぇ」

真帆「え?」

まゆり「中学生なのに、一人で旅行かぁ。お父さんやお母さんは心配したりしてない?」

真帆「大丈夫よ。もう慣れっこだから」

まゆり「そうなの? でも、あんまり無茶しちゃダメだよ? 悪い人がどこでマホちゃんを狙っているか、分からないんだからねぇ」

真帆「緊張感の欠片もない言い方ね」

まゆり「そんな事ないよ? ひょっとしたらまゆしぃだって実は悪いまゆしぃで、マホちゃんを狙って近づいてきた悪いまゆしぃかもしれないのです」ガオー

真帆「二回も言うほど“悪いまゆしぃ”さんは悪い人には見えないわ」

まゆり「あはは……全然怖がってもらえなかったのです」

真帆「あなた最初に、怖がらせるのは嫌だとか言ってなかった?」

まゆり「そうなのですけど、でも一人旅のマホちゃんが少し心配になったのです」

真帆「そういう時は、あまり怖がらせないようにするべきじゃないの?」

まゆり「そうなんだろうけど、でもマホちゃんが余り無茶をしないようにするには、ちょっとビックリさせる方が良いのかなって思ったのです」

真帆「そりゃあ、そういう考え方もあるでしょうけど。でも、わざわざ嫌われ役を買って出ようとか、奇特な人ねまゆりさんは」

まゆり「えへへ。悪いまゆしぃは、ちょっとだけでも怖かったかなぁ?」

真帆「悪いけど、これっぽっちも。そうね、小指の先ほどにも怖くなかったわ」

まゆり「あう。やっぱり、こういうのって難しいねぇ。オカリンみたいに上手にはできないなぁ」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:50:19.20 ID:kd6kViBs0
真帆「オカリン……」

まゆり「あ、オカリンっていうのはね、ええと……何て言ったらいいのかな? またの名をホーオーイン何とかっていってぇ」

真帆「……はい?」

真帆(そういえば、鳳凰院がどうのって言ってた気もするわね)

まゆり「まゆしぃの友達で、えっとそれで、まゆしぃを人質にしているとっても悪い科学者さんでぇ……」

真帆(え?)

まゆり「あ、でも本当に悪くはないんだよ? まゆしぃだって、本当の人質というわけではないのです」

真帆(えっと……岡部さんの話よね?)

まゆり「何ていうのかな、いつも悪いフリをしているだけで……」

真帆(ど……どっちなの?)

まゆり「でもでも! 本当はとっても心の優しい、悪の科学者なのです! マッドセンエツエストなのです!」

真帆(せんえつ……途轍もなく不可解な人物像が、脳内に出来上がってしまったのだけど)

まゆり「だってね。いつも悪人のフリばかりしているのに、困っている人がいたら絶対に見過ごさないんだぁ」

真帆「はあ……えっと」

まゆり「あ! ごめんねマホちゃん。まゆしぃばっかり、勝手にしゃべっちゃって」

真帆「いえ、気にしないで」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:52:54.92 ID:kd6kViBs0
まゆり「そう? ふふ、ありがとうねマホちゃん。マホちゃんは、とっても優しい子なのです」

真帆「そんなこと……ないわよ」

まゆり「ふふふ。それでマホちゃんは、これからどこへ行くつもりなのでしょうか?」

真帆「え?」

まゆり「一人旅の途中なんだよね? だったらこれからどこかへ向かう……ああでも、もうすぐお日様が沈んじゃうし、今日はどこかにお泊りなのかなぁ?」

真帆「そ、そうね。そのつもりだったけど……」

真帆(ふむ。適当なホテルにでもチェックインするつもりだったけど、どうせならここは一つ……)

真帆「まゆりさん。その、急なお願いで悪いんだけど──」

まゆり「もしもまだ泊まる所が決まってないなら、まゆしぃと一緒にお泊りするのはどうかな?」

真帆(向こうから持ちかけてきた!?)

真帆「えっと……一緒にって、あなたと?」

まゆり「うん! 明日は土曜日で学校はお休みだし……ああでも、お昼からはバイトが入ってるんだったぁ」

まゆり「で、でもねでもね! 午前中だけだけど、もしマホちゃんさえよければ、まゆしぃがアキバの街を案内してもあげるのです!」

真帆(それは、願ったり叶ったりな展開だけど……)

まゆり「泊まるところだって、ホテルみたいにお金とかか掛からないんだよ」グイグイ

真帆「でも、いきなり押しかけたら、ご家族の方に迷惑じゃないかしら?」

まゆり「心配ならいりません! まゆしぃにはこういうとき、取っておきの場所があるのです!」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:55:00.88 ID:kd6kViBs0
真帆(それって、ひょっとして……)

まゆり「どうかな? ねえ、どうかな?」

真帆「そ、そうね。お願いできるなら、助かるわ」

真帆(渡りに船とはこのことね)

まゆり「やったー! それじゃあ今から案内するね」

真帆「案内って、何処へ?」

まゆり「それはねぇ……未来ガジェット研究所なのです!」

真帆(やっぱり!)

まゆり「じゃあ行こう、マホちゃん! そのキャリーはまゆしぃが持ってあげるのです!」ヒョイ

真帆「それは悪いわよ」

まゆり「いいのいいの! まゆしぃがしたいから、そうするのです! じゃあ、行こう!」テクテク

真帆「あ、ちょっと!」トコトコ

まゆり「そんなに遠くないから、のんびりで大丈夫だよぉ」

真帆「そう? 何だか、色々と迷惑をかけるわね」

まゆり「いいってことよ、なのです!」テクテク

真帆「…………」トコトコ

まゆり「♪♪♪♪」テクテク

真帆「…………」ジー
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 02:56:17.15 ID:kd6kViBs0
真帆(椎名まゆり。α世界線という場所で、繰り返し命を落とした女の子)

真帆(岡部倫太郎は彼女を救うために、途方もない時間を苦労の一色で塗りつぶし、そしてβ世界線と呼ばれる場所へと移動した)

真帆(そして、辿り着いたその場所に待っていた絶望に、一度は膝を折りはしたけど……)

真帆(それでも彼は諦めず、最後の最後には紅莉栖をも救って、シュタインズゲート世界線を手に入れた)

まゆり「♪♪♪♪」

真帆「…………」

真帆(シュタインズゲート世界線の重要性なら理解している。理解はしているけど、でもそれはまだ、私にとっては理屈という形でしか存在できていない)

真帆(だから……共感を持ちたい。私にも、心の底から今のこの世界線を大切に思えるくらいの、そんな何かが欲しい)

真帆(私は。シュタインズゲート世界線というものの本当の価値を……どうしても知っておきたい)

真帆(だから、椎名まゆりさん……)

真帆「……お願いね」

まゆり「うん? 大丈夫だよ! まゆしぃお姉さんに全てお任せなのです!」












208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 12:06:06.71 ID:P1VE95Loo
敗北感は仕方ないね
サイズがダンチだものね
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 13:33:09.24 ID:/MRg0amAo
マホはいま成長期だからね 心配には及ばないよHahaha
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:23:23.11 ID:Ufa37X0+0
     22

ドアガチャ


まゆり「トゥットルー☆ 到着なので〜す!」ピョン!

???「んお? まゆしぃじゃん」グルン

まゆり「あ〜! ダルくんだぁ! こんばんわ、ダルくん」

???「うっす。つーか、どしたんまゆ氏? 今日はラボに寄らないって言ってなかた?」

まゆり「予定変更なのです! 実はねダルくん。今日はねぇ、ラボにお客様をお招きしてしまったのでーす!」

???「へ? お客様って何ぞ?」

まゆり「お客様はお客様だよぉ。それでねそれでね、その人には今夜、ここに泊まってもらおうと考えているのです!」ニコニコ

???「え、そなん? オカリンからは何も聞いとらんわけだが」

まゆり「それはそうだよ〜。オカリンは知らないからね〜」

???「オカリン知らないん? いいん勝手に?」

まゆり「大丈夫だよ。だってまゆしぃ、たまにお友達とか連れてきても、オカリン何にも言わないよ?」

???「や、そかもしれんけど。でも泊まるとなると、少々話が変わってくる気がするわけで」

まゆり「ええ〜」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:25:02.57 ID:Ufa37X0+0
まゆり「聞いたら、オカリンだめって言うかなぁ?」

???「それは分からんが、でもここって一応、お遊びでもラボラトリーなわけだし」

???「オカリンに企業秘密的な観点があったら、返答はあんまし芳しくないかと」

まゆり「う〜ん、そっか〜。どうしよう」ションボリ

???「つってもさ。んま、別にいいんでね?」ポリポリ

まゆり「ダルくん?」

???「オカリンも牧瀬氏もしばらくラボにこれないみたいだし、ボクもこの後用事があるから、今日はもう帰るつもりだったし」

???「ボクさえ黙ってれば、特に問題もないかと思われ」

真帆「あの〜」ヒョッコリ

???「……!?」ガタッ!

まゆり「あ、マホちゃん! ごめんね、お待たせしちゃって」

???「なん……だと……」

真帆「いえ、それはいいの。それよりも話は何となく聞こえていたわ。もしお邪魔なら、私は別に他を探す──」

まゆり「それはダメだよ!」

???「そうだお、だめに決まってんだろ常考!」ズイッ

真帆「おわっ!?」

真帆(で、でっかい人ね……)

???「こんなイタイケな娘を夜の街に放り出すなんて真似、紳士の沽券に関わるお!」

まゆり「ダ……ダルくん?」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:30:12.78 ID:Ufa37X0+0
真帆(ダルって……確か、話の中では橋田至って人が、そんな俗称で呼ばれていたはずだったわね)

真帆(と、いうことは……)ソッ

ダル「うはっ!? 純真無垢なその視線が辛い!」グネングネン

真帆(え、え? 何なのこの人?)

まゆり「ああ〜もう! だめだよダルくん。いつもみたいな調子だと、マホちゃんに嫌われちゃうよ?」

ダル「このような美少女に嫌われ蔑まれるとか、胸熱すぎて卒倒もんのご褒美でしかありませんが何か!」

真帆「え、え? び、びしょ……ええ?」

まゆり「もー。ごめんねマホちゃん。この人はね、ダルくんっていって〜、このラボのスーパーハカーさんなんだよ、怖い人じゃないんだよ」

ダル「そうです、スーパーハッカーです! ちなみにボクは、このラボの所長よりも100倍は偉いのだぜ、キリッ!」

真帆「へ、へえ……す、凄いわね。へぇ……」

真帆(ハッカーを公言するハッカーって)

ダル「んで、まゆ氏。ここからが重要なわけで。やっぱりお客様っていうのは、こちらのお嬢様ということでオケ?」

まゆり「うん、そうだよ。紹介するね、この子はマホちゃんっていうんだ〜」

ダル「ふっ。我が家だと思って、楽にしてもらって構わないのだぜ」キリリ

真帆「ど、どうも……」

真帆(この大きい人、確か阿万音さんの父親にあたる人物だという話だったと思ったけど……)ジー

真帆(記憶違い……かしら?)

ダル「見られている。穴が空くように見られているお……はあはあ」フルフル
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:31:56.32 ID:Ufa37X0+0
まゆり「えっとねぇダルくん。マホちゃんとはさっき会ったばかりだけど、とっても凄い子なんだよぉ。なんでも、今は一人旅の最中なんだって」

ダル「はあはあはあはあ……って、一人旅? はい?」

真帆(う……)

ダル「んんー?」

真帆「あ、あの……何か?」

ダル「えっとちなみに、マホちゃん様はお幾つでござるんで?」

まゆり「マホちゃんはねぇ、なんと中学生さんなんだよ」

ダル「中学生ですと!? まさかのJC……キタコレーーー!」グオオ

真帆(!?)ビクゥ

ダル「……って。ねえねえ、まゆ氏」ピタ

まゆり「なぁにダルくん?」

ダル「それ、家出というんじゃまいか?」

真帆(うおっ!?)

まゆり「えっ、家出?」

ダル「『えっ』てまゆ氏まゆ氏。普通に考えたら、中学生が大型連休でもないのに一人旅とか、ありえんっしょ?」

真帆(ま……まずい)

まゆり「え……ええ?」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:40:58.90 ID:Ufa37X0+0
ダル「んーと、一応聞いておきたいんだけど……」

真帆「家出じゃないわよ」

ダル「即答ですか、そうですか。ウソなんですね、わかります」

真帆「う、嘘じゃないってば」

ダル「一人旅も?」

真帆「そうよ、問題ある?」

ダル「問題あるから困っているんですしおすし。んじゃさ、学校は?」

真帆「長期休暇期間なの。それで旅行をしているのよ」

ダル「いやだからね。今は二月なわけで」

真帆「こっちの休暇期間がどうかは知らないけど、アメリカではこれくらいの時期に長期休暇があるのよ」

まゆり「ええ〜アメリカ〜? マホちゃんはアメリカから来たのですか?」

真帆「そうよ。言ってなかったっけ?」

まゆり「やっぱり凄いねぇ、マホちゃんは」

ダル「……アメリカにそんな制度あったっけ? ちょい、牧瀬氏に確認とってみるべきかも」

真帆(牧瀬って、それはやばいっ!)


ピリリリリリ……ピリリリリリ……


真帆(!!!???)ビクゥ
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:42:41.92 ID:Ufa37X0+0
ダル「ん? これって、まゆ氏の着信じゃね?」

真帆(私の着信音じゃなかった……)ホッ

まゆり「あ〜、お母さんからだ。そういえば、今日は早く帰るよ〜ってメールしたんだったよ」

ダル「おおう。すでに現状で早いとはいえない時間に突入しているっつーか」

真帆「なら、心配してかけてきたのね。出たほうがいいんじゃない、まゆりさん?」

まゆり「そうだね、やっぱり遅くなるって言わなくちゃだね」

ダル「そだお」

まゆり「ごめんねマホちゃん。まゆしぃはちょっと席を外すのです」パタパタ


ドアバタン


ダル「…………」

真帆「…………」

ダル「だよなー」

真帆「……え、えっと」

ダル「家出とかだと、やっぱ親御さんとか心配してるわな。つーわけだから、マホタソさぁ」

真帆(マホタソ!?)

真帆「な、何かしら?」

ダル「疑うわけじゃねーんだけどね。でもさ、もし本当に家出とかなら問題だし。だからアメリカじゃどうのって話くらいは、せめて裏を取らせてもらいたいっつーか」

真帆「ちょっ」

ダル「そういうわけなんで、ボクもちょっと知り合いに電話させてもらうお」

真帆(こ、このままじゃ、私が秋葉原にいることが紅莉栖たちに……)
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:47:35.67 ID:Ufa37X0+0
ダル「んっと、牧瀬氏牧瀬氏っと……」スマホ ピッピ

真帆(それは……やだ……)

ダル「お、あったあった。んじゃ」

真帆(ええい、ままよっ!)

真帆「やー!」ビシッ

ダル「あうちっ!?」スマホ ゴトン!

ダル「な、な、何するんだおマホタソ!? まさかご褒美の時間ですか、そうなんですね!?」ハァハァ

真帆(腕をチョップされて何でちょっと嬉しそうなのよ、この人)

真帆「説明している時間がないから率直に言うけど、私に話を合わせてちょうだい」

ダル「話を合わせる?」

真帆「そう。お願いだから協力して、橋田至さん」

ダル「何故にボクがそんなことを……って、あれ? ボク名前、言ったっけ?」

真帆「私の記憶が確かなら、“ダル”という紹介はあったけどそれ以外はまだ聞いていないわね」

ダル「…………」

真帆「…………」

ダル「えっとつまり……きみは誰ぞ?」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:52:14.55 ID:Ufa37X0+0
真帆「自己紹介が遅れたわね。私の名前は、比屋定真帆。ヴィクトル・コンドリア大学の研究員よ」

ダル「ヴィクトル・コンドリアって確か、牧瀬氏の在籍してる……」

真帆「紅莉栖は私の後輩よ」

ダル「ほほぅ、ではマホタソは牧瀬氏の先輩であらせられると?」

真帆「そうなるわね」

ダル「…………」ジトー

真帆「…………」ジロリ

ダル「いやいやいやいや、はっはっは! そ・れ・は・う・そ!」

真帆「はいこれ、身分証。顔写真入りよ、好きなだけ確認してちょうだい」ビシリ

ダル「おお、ロリ少女のご尊顔を好きなだけとか……って21歳……何ですとぉ!?」

真帆「どう、これで信じてもらえたかしら?」

ダル「いんや、雑コラにも程というものが」

真帆「誰が雑コラよ!」

ダル「んじゃ、マホタソは中学生ではなく、本当は大学生のマホタソさんだとでも?」

真帆「だからそう言っているでしょ」

ダル「見た目は小……中学生なのに、中身は大学生だと?」プル

真帆「だから、そうよ」ムカ
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:55:27.27 ID:Ufa37X0+0
ダル「見た目は幼女なのに、中身は成人女性だと?」プルプル

真帆「はい?」ムカムカ

ダル「それはつまりようするに。マホタソは合法枠ということでファイナルアンサー?」ブルッルルン

真帆「ご、合法……?」

ダル「キーーーターーーコーーーレーーーーーー!!!」グワァ

真帆「ふわっ!?」ズテン

ダル「全人類(ボク)の希望が、今まさに目の前に!!!」ブワワ


ドアガチャ


まゆり「マホちゃん、お待たせだよ〜……ってダルくん!?」

真帆「きょわーーー!?」ドゲシッ

ダル「んぐは! すねが! すねが全て死んだ!」ブァターン!

真帆(あ……とっさに蹴ったら、凄いクリーンヒットした)

ダル「ぐおおおおおおおおおお!」ゴロゴロゴロ

まゆり「えええええ!? どうしたの!? 何がどうなっているのでしょうか!?」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:56:53.18 ID:Ufa37X0+0
真帆「あ、まゆりさん。悪いけど、ちょっとそのまま待っててくれる?」ノソリ

まゆり「え? え? マホちゃん、大丈夫なの?」

真帆「ええ、問題ないわ。さて……」トコトコトコ

ダル「んほおおおおおおおお……」

真帆((橋田さん))ヒソッ

ダル((……おおお))ピクピク

真帆((さっきも言ったけど、私に話を合わせてちょうだい))

ダル((で、でもぉ……))

真帆((あ、そういえば。あなた自分のことをハッカーだと言っていたわよね?))

ダル((そ、それが何か?))

真帆((つまり、こういうことね。先日うちの大学のセキュリティをぶち抜いてくれたハッキング犯は……))

ダル((うほっ!?))

真帆((もし私に話を合わせてくれるのなら、この場は見逃してあげてもよいのだけど?))

ダル((何なりとご命令を、マイマスター))キリ

真帆((あら、理解が早くて助かるわ。じゃあ、まゆりさんの前では、私は中学生のマホちゃん。いいこと?))

ダル((お望みとあらば、マイマスター))
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 00:58:44.41 ID:Ufa37X0+0
真帆((よろしい。それじゃあもう一つ))

真帆((私がここにいることは、紅莉栖や岡部さんには内密にお願い))

ダル((? どして?))

真帆((どうしてもよ。理由はいずれ話すから、しばらくは黙っておいて。お願い))

ダル((……ワケあり?))

真帆((ええ。ちょっと事情があるの))

ダル((…………))

ダル((悪意は?))

真帆((無いわ。断言する))

ダル((ふ。了解だお、マイマスター))

真帆((サンクス))

真帆(マイマスターって……なんだか心地よい響きね)フフ

まゆり「あ、あの〜。まゆしぃはどうしたらよいのでしょうか〜?」

真帆「あ。ごめんなさいね、まゆりさん。もう大丈夫だから」

まゆり「ほ、本当に大丈夫なのでしょうか? ええと、ダルくん?」

ダル「いちち。何ざんしょ?」ノッソリ
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 01:00:08.98 ID:Ufa37X0+0
まゆり「さっき、マホちゃんに襲いかかろうとしていたように見えたんだけど……そんなことないよね?」

ダル「無いかと問われれば、無いこともないと答えるほか無い!」キリ

まゆり「えっとえっと……ええ〜!?」

真帆(正直かっ!?)

ダル「いや〜。マジ、自分を一瞬見失いかけたお。この世の奇跡が目の前に存在しているとか、我を失う以外にないシュチュエーションである」

まゆり「ダルくん! 反省しなさい!」

ダル「あい、しゅいましぇん」ビクッ

真帆「大丈夫よ、まゆりさん。何かされたわけじゃないし、それにもう彼も取り乱したりはしないでしょうから」

まゆり「で、でも。もしも嫌なら、まゆしぃが他に泊まれるところを探してくるよ?」

真帆「心配無用よ。このお兄さんはもう手なずけたから」

ダル「お……お兄さん……ですと?」フルフル

真帆「ダル、シット!」

ダル「あい、マスター!」ババッ

真帆「ね?」

まゆり「ほええ〜、何だかよく分からないけど、マホちゃんやっぱり凄いんだよ、凄すぎるんだよ〜」

真帆「ふふ、そうかしら」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 01:01:25.88 ID:Ufa37X0+0
まゆり「じゃあねじゃあね、まゆしぃも! ほ〜らダルくん?」

ダル「?」

まゆり「お手〜」

ダル「…………」ツーン

まゆり「ありゃりゃ〜?」

真帆「あらま。私の言うことしか聞かないってわけね」

まゆり「それは残念なのです。でも、これなら本当に大丈夫そうだね、良かったよぉ」

真帆「心配してくれて嬉しいわ。ありがとうね、まゆりさん」

まゆり「ダルくんも、もう悪いことしちゃだめだからね」

ダル「自分。これからはマイマスター・マホ様の右腕として生きていく所存」

真帆(そ、そこまではリクエストしていないんだけど)

まゆり「そうなのぉ? でもダルくんはオカリンの右腕だったのではないでしょうか?」

ダル「オカリン? そんな貧弱厨ニ病マスターに召還された覚えなんて……ボクにはないおっ!」キリリ












223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:31:57.74 ID:Ufa37X0+0
     23

まゆり「ダルくん、間に合ったかな〜?」

真帆「どうでしょうね。呼び出し食らって、慌てていたみたいだけど」

まゆり「ところでマホちゃん。お夕飯、本当にカップラーメンだけでよかったの?」

真帆「だからね、まゆりさん。そんなに気を使わないで。私としては、ここに泊めて貰えるだけでも十分に有り難いの」

真帆「暖かいお茶も出してもらったし、これ以上を望んだら罰が当たるというものだわ」

まゆり「でもでも〜」

真帆「それに、もう食べ終えてしまったわけだし、今さら四の五の言ってもどうにもならないわよ」

真帆(自分で言っといて何だけど、科学者が罰とか……)オチャ ズズ

まゆり「そうだけど〜、でもねでもね。いっぱい食べないと大きくなれないよぉ?」

真帆(ぐはっ)ブッ

真帆「ぐ……ごほ……。か、構わないわよ。そんなに大きくなりたいとも思っていないから」フルフル

まゆり「え〜、もったいないよぉ。マホちゃんは大人になったら、きっとカッコいいお姉さんになれると思うんだけどな〜」

真帆(ごめんなさいね、もう大人で!)

まゆり「きっとねぇ、スラッと背が高くて、スタイルなんかも抜群なんだよぉ! でね、キリッとした顔でこう言うの」

まゆり「私に着いてこぉい!」キリッ

まゆり「ってね〜! そしたらまゆしぃは着いていくよぉ! いえす・まい・まむって言っちゃうよぉ」
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:35:27.50 ID:Ufa37X0+0
真帆「マイ・マムって……」

まゆり「えへへ〜。まゆしぃは今から、とっても楽しみなのです」

真帆「そ、それはどうも」

真帆(まゆりさんには、私がどう見えているよの)

まゆり「だからね、マホちゃん。明日はもっとちゃんとしたところで、ご飯を食べよう。ね?」

真帆「はいはい、分かったわよ」

まゆり「約束だよ、まいまぁむ」

真帆「ぶふっ! ちょっと、マイ・マムって呼ぶの止めてちょうだいよ」

まゆり「えへへへへ、ごめんね。じゃあまゆしぃは、ちょっとお手洗いに行ってくるのです!」スクッ

真帆(トイレくらい、別に断らなくてもいいのに)


パタン


真帆「ふぅ」
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:43:00.29 ID:Ufa37X0+0
真帆(……椎名まゆりさん、か)

真帆(出会ってから数時間程度だから、確かなことはまだ何も分からないけど。でも、こだけはハッキリと言える)

真帆(椎名まゆりさんは、良い人。どこからどう見てもね)

真帆(事実、彼女の人間性からは、悪意とか嫌悪なんていう、おおよそマイナスな思考というものが微塵も感じられないわ)

真帆(つまり、『絵に描いたようなお人よし』というのが、対面して得た率直な心象になるわけだけど……)

真帆「…………」ズズズ

真帆(……でも)

真帆(だとしてよ。じゃあそれが何だというの?)

真帆(まゆりさんが“良い人”だという判断は正しいだろうし、現に、行きずりの私にすら手厚いおもてなしを振舞おうとするような、近年まれに見る好人物であることは疑いようがない)

真帆(でもだからって、たったそれだけの理由で紅莉栖は……)

真帆(あの子は、自らの命を犠牲にしてまで、椎名まゆりを守ろうとしたというの?)

真帆「…………」ズズズズズズ

真帆(……分からない)

真帆(α世界線で紅莉栖が下したという決死の決断。それに至るまでの流れが今の私には理解できない)
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:44:12.53 ID:Ufa37X0+0
真帆「まいったわね」コトリ

真帆(紅莉栖たちから聞かされた、シュタインズゲート世界線へと辿り着くまでに経験したという沢山の出来事)

真帆(それは、まゆりさんの死ぬα世界線や、紅莉栖が死んでいるβ世界線という場所で実際に起きた現実であり)

真帆(そしてそれは、いくつもの歴史が同時間軸上で重なり合うように展開していく複雑な物語だと言えた)

真帆(そして当然そのお話の中には、岡部さんや紅莉栖を始めとした、多くの登場人物たちの強い想いが、目一杯にひしめき合っていることなのでしょう)

真帆「だとしてよ? じゃあ仮にだけど……」

真帆(仮に。そんな複雑な物語に込められた想いとその顛末を、限界にまで要約するとしたならば)

真帆(それなら恐らくその物語は、こう言い表せるのだと思う)

真帆(牧瀬紅莉栖の決断が椎名まゆりを救い、岡部倫太郎の執念が牧瀬瀬紅莉栖を救った物語……だったと)

真帆「でも今の私には、それがどうしても納得いかないのよね」ハァ

真帆(岡部倫太郎。彼が椎名まゆりと幼馴染だということを考えれば、α世界線での苦闘は十分に理解できる)

真帆(そして彼が紅莉栖との間に築いていた関係性が、男女間に起こるある種の心情に基づいていたというならば……)

真帆(それならば、岡部倫太郎のβ世界線における執念だって、理解できないこともない)

真帆「……でも」

真帆(紅莉栖は違う)
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:46:46.10 ID:Ufa37X0+0
真帆(α世界線において、椎名まゆりを救うために、自らの生存を諦めたという、私の後輩)

真帆(そこで彼女がまゆりさんと出会ったのは、去年の夏だった。そしてそれは、騒動が始まる直前でしかなかったはず)

真帆(つまり紅莉栖は、出会ったばかりの同年代の友達のために、自らの命を投げ捨てたということになる)

真帆(でもそんな短期間で、そこまで親交を深められるものなの?)

真帆「分からないわ」

真帆(彼女はどんな経緯で椎名まゆリと出会い、どんな関係性の下に、そんな結論を導き出したのか?)

真帆(椎名まゆりという一人の人間。彼女には、牧瀬紅莉栖がそこまでの決断を下せてしまう程の何かがあるのか?)

真帆「それを見極めたくて、この街までやってきたはずなのにな」ハァ

真帆(椎名まゆりの価値。それはきっと、牧瀬紅莉栖が持つ価値と同列で語るべきもののはずで)

真帆(それらの価値は、共にシュタインズゲートと呼ばれるこの世界線でしか保証されない価値のはずで)

真帆(そして。タイムマシンという機械の存在は、そんな二つの価値を根底から脅かす代物)

真帆(そうであって欲しい。お願いだから、そうあって欲しい)

真帆「そうじゃなきゃ……やってられないじゃない」ボンヤリ

真帆(他人事ではいられない)

真帆(紅莉栖のアマデウスに突きつけられた、あの指摘。そこに見えた論理性に、私は最悪の可能性を感じてしまった)

真帆(だからもう、そんな話は絵空事だと言って呆れている余裕なんて、私にはない)
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:48:29.51 ID:Ufa37X0+0
真帆「まだ……時間はある」

真帆(椎名まゆり。彼女の価値を知りたい)

真帆(去年の夏、紅莉栖がこの街で見つけた価値。それと同じ何かを、私はこの身で感じ取りたい)

真帆(感じて、そしてできることなら私だって、紅莉栖たちの想いというものを守り抜いてあげたい)

真帆「私に……出来るのかしら」グタァ

真帆(なのに、紅莉栖には見えたはずの何かが、私にも見える気がまったくしない)

真帆(やっぱり、時間をかけて親交を深めるしかないの?)

真帆(でも。紅莉栖にだって決して時間があったわけじゃない)

真帆「じゃあ、何が問題なの?」

真帆(ひょっとして、私のスタンスがいけないとか?)

真帆(まゆりさんを媒介にして、シュタインズゲートの価値を知ろうとする……)

真帆(そんな私の身勝手な魂胆が、私自身の視野を狭めていたりとかするのかしら?)

真帆(変に下心を抱えているから、それで私には見えない?)

真帆「でもそんなの、私にどうしろっていうのよ。もー」ガックシ

真帆(違いすぎる。去年の夏、紅莉栖にあった状況と、そして今の私が置かれた状況)

真帆(この二つは、きっとあまりにも違いすぎるんだ)

真帆(牧瀬紅莉栖と椎名まゆり。両者を強くつないだ何らかのファクターが、今の私に絶対的に足りないんだ)

真帆(だから私には……まゆりさんの価値が見えてこない)
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:50:55.89 ID:Ufa37X0+0
真帆「ファクター……」

真帆(二人をつないだファクターとは何?)

真帆(時間? 違う。じゃあ二人の性格? それでは根拠として弱い。なら……)

真帆(タイムリープマシンで繰り返したという時間における、共通の記憶?)

真帆「…………」

真帆(それも違う。世界線の移動で記憶を維持できるのも、そしてタイムリープマシンを使用して実際に同じ時間を何度も繰り返したのも、それはどちらも彼女たちの経験ではなかった)

真帆(だからそのどちらにしても、当時の二人の主観には何の影響も与えてはいなかったはずだ)

真帆(逆に、それらの影響を受けていた唯一の人物といえば──)

真帆「岡部さん?」ガバッ

真帆(……そうよ)

真帆(夏の紅莉栖と今の私。まゆりさんとの関係を構築する上で、今の私にだけ欠けている絶対的な存在。ひょっとしてそれって、岡部さんのことなんじゃないの?)

真帆(岡部さんというファクターが、短時間にも関わらず、紅莉栖とまゆりさんの二人を強く、とても強く結びつけた?)

真帆「でも……何をしたらそんな真似が可能なの?」

真帆(岡部……倫太郎さん……)


回想
岡部【これは見事なブラウニー!!!】ブゥワァ!



真帆(えっと、うーん……)

真帆「無いわね」

まゆり「何が無いのかな、マホちゃん?」

真帆「ふひゃい!?」バッ ガッ ゴン!
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:51:56.41 ID:Ufa37X0+0
まゆり「あわわ! 大丈夫マホちゃん! 今テーブルで頭打たなかった!?」

真帆「あ……う、おお……だ、大丈夫よ、よくあることだから」ジンジン

まゆり「ごめんね、そんなに驚くとは思わなかったよぉ。打ったところ見せて?」

真帆「い、いえ本当に大丈夫だから……」

まゆり「だめです」グイ

真帆「あ、ちょ」

まゆり「ほらここ、コブになっちゃってるよぉ? 今、救急箱を持ってくるから待っててね」パタパタパタ

真帆「あたたた……」

真帆(いつの間にトイレから出てきたのかしら?)

まゆり「さあほらマホちゃん。取りあえず、このソファに座ってください。まゆしぃが応急処置をするのです」

真帆「そんな大げさにすることないから……」

まゆり「だ・め・な・の・で・す」ジッ

真帆「ううう」

真帆(本当に、少し打ちつけただけなのに)

まゆり「ほら、マホちゃん」コイコイ

真帆「わ、分かったわよ」チョコン

まゆり「よろしい。では……ええと、絆創膏じゃ意味ないよねぇ?」

真帆(そこはかとなく不安だわ)
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:53:30.73 ID:Ufa37X0+0
まゆり「えっと、えっと……」

真帆(…………)

真帆「ところで、まゆりさん。少し聞いてみたいことがあるんだけど」

まゆり「なーにーマホちゃん?」

真帆「ええと、その。オカリンさんって、どんな人なのかしら?」

まゆり「え〜? オカリン?」

真帆「そう。確かこのラボラトリーの創設者だって言ってたわよね?」

まゆり「そうだよぉ。オカリンはねぇ、ラボメンナンバー001なんだよぉ」

真帆「ラボメンナンバー?」

まゆり「うん。全部でねぇ、えっと今は確か8番まであったかな」

真帆(所属研究者が8人も? 見た目の割りには随分と大所帯なのね)

まゆり「ちなみにぃ、まゆしぃはナンバー002なのでぇす」

真帆「え、まゆりさんもメンバーに入っているの?」

まゆり「うんそうだよぉ」

真帆(ふむ。来る者は拒まずという選考基準なのかしら?)
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:55:02.85 ID:Ufa37X0+0
まゆり「マホちゃんも入りたかったら言ってね。まゆしぃがオカリンに頼んであげるのです」

真帆「え、ええ機会があったらお願いするわ。それで、まゆりさん。結局のところ、オカリンさんてどういう人なの?」

まゆり「ふえ? だからぁ、このラボの創設──」

真帆「ああ、ごめんなさい。そういう意味じゃなくてね、何て言うのかな。その人の性格とか人となりというか、そういった部分を聞いてみたかったのだけれど」

まゆり「人となり? そうだねぇ、オカリンはとっても優しいのです」

真帆(また随分と大雑把な表現ね)

真帆「もう少し具体的に言うと?」

まゆり「え〜、いきなり聞かれても難しいなぁ……」

真帆「じゃあ、こうしましょう。オカリンさんを他の何かに例えるとしたら、まゆりさんは何が適切だと思う?」

まゆり「ええ〜」

真帆「何でもいいのよ? ほら、テレビでやってるキャラクターとか、そういうのでも構わないの」

まゆり「でもマホちゃんはアメリカから来ているんだよね? まゆしぃの知ってるキャラクターじゃ、マホちゃんには分からないと思うのです」

真帆(あ、確かに)

まゆり「でも、そうだねー。オカリンをマホちゃんでも知ってそうなキャラクターに例えるなら、う〜ん……」

真帆(……あ、一応考えてはくれるんだ)
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:57:07.00 ID:Ufa37X0+0
まゆり「うん! まゆしぃから見たオカリンは、スーパーマンなのです!」

真帆「ス……スーパーマン?」

真帆(思いっきり、ヒーローど真ん中じゃないの。しかもえらくロートルでパワフルなところを引っ張ってきたものね)

真帆(まあ、世界線とやらを相手に大格闘している人物なわけだし、当然といば当然なんでしょうけど……)

真帆「なるほど、スーパーマンね。やっぱりラボの創設者というだけあって、とても凄い人なのかしら?」

まゆり「まゆしぃから見たら、オカリンはいつだって凄いのです。でも……」

真帆「でも?」

まゆり「他の人から見たらどうかは、ちょっと自信ないかなぁ」

真帆「そうなの?」

まゆり「オカリンは、いつも沢山の人に誤解されてばかりいるのです」

真帆(まあ……あの態度では、自業自得としか)

まゆり「オカリンが誤解されるところを見るたびに、まゆしぃはとっても悲しくなるのです」

真帆「……そう。でも、まゆりさんにとっては紛れもなくスーパーマンなのよね?」

まゆり「そうだよ。でもね、オカリンのスーパーマンはね、きっとマホちゃんが知っているスーパーマンとは少し違うと思うのです」

真帆「違う? それってつまり、誤解されるヒーローだから、ダークヒーロー的なスーパーマンという解釈でいいのかしら?」

まゆり「ううん、そうじゃないよ。オカリンのスーパーマンはね、実はあんまり強くないのです」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:58:14.68 ID:Ufa37X0+0
真帆「え?」

まゆり「えへへ。まゆしぃおかしなこと言ってるね。強くないスーパーマンなんて、スーパーマンじゃないもんね。でもねマホちゃん……」

まゆり「まゆしぃから見たオカリンは、やっぱりスーパーマンなんだぁ」

真帆「…………」

まゆり「そのスーパーマンはね、いつも皆を守りたくて、うずうずしているのです」

まゆり「でね。事件が起きたり悪い怪人が出たりすると、誰よりも早く駆け出していくんだよね」

まゆり「だけど、オカリンのスーパーマン……長いからオカリンマンでいいかな?」

まゆり「そのオカリンマンはね、強くないからいつもすぐにヤラれちゃうんだぁ」

真帆(え? え? ええ? 岡部さんって……ああ見えて凄くタフなんじゃないの?)

まゆり「負けちゃった後も、オカリンマンは何回も何回も戦いに行くんだけど、でもやっぱり負けちゃってばっかりなの」

まゆり「それでね。誰かがオカリンマンにこう聞くの。『勝てないのに何で戦うんだー』って」

まゆり「そうするとね。オカリンマンはこう答えるの『自分はスーパーマンだから』って」

真帆「…………」

まゆり「ふふ。おかしなオカリンだよね〜」

真帆(何よ……それ。私が持っていたイメージと、全然違うじゃない)
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 21:59:44.99 ID:Ufa37X0+0
真帆「で、でもよ、まゆりさん」

まゆり「ん〜?」

真帆「結局ずっと勝てないままだと、事件を解決できないんじゃないの?」

まゆり「そんなことないよ、ちゃんと解決するよぉ。オカリンはね皆が幸せになるまで、絶対に諦めないヒーローだからねぇ」

真帆(絶対に……諦めない……)

まゆり「とくにね。去年の夏くらいの時のオカリンは……」

真帆「…………」

まゆり「…………」

真帆「……どうしたの、まゆりさん?」

まゆり「……ううん、ごめんねマホちゃん。やっぱり何でもないのです」

真帆「……そう」

まゆり「えへへ。まゆしぃから見たオカリンは、大体こんな感じかな。それでマホちゃんはどうでしょうか? まゆしぃのお話に満足してくれましたか?」

真帆「そうね。ありがとう、まゆりさん。とてもよく伝わって来たわ」

まゆり「それは良かったのです!」

真帆「あ、でも最後に一つだけいいかしら?」

まゆり「な〜に〜?」
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 22:00:59.23 ID:Ufa37X0+0
真帆「どんなに負け続けても最後には必ず勝つ。そんなオカリンマンでも、やっぱり弱いヒーローと言うべきなのかしら?」

まゆり「違うよマホちゃん! 弱いんじゃないよ、強くないんだよ!」

真帆(そこ、重要なのね……)

まゆり「うう〜。やっぱりマホちゃんも、強いヒーローの方が好きなのでしょうか?」

真帆「そんなことないわよ。むしろ私的には、その辺のヒーローよりもオカリンマンの方がグッと……はっ!?」

まゆり「なになにマホちゃん、ひょっとしてグッと来るって言おうとしたの?」

真帆(う……ぐぅ……)

まゆり「ねえねえ〜」グイグイ

真帆「ま、まあ、そう言えないこともないかなぁ、って」プイ

まゆり「やったー! じゃあ今日からマホちゃんも、オカリンマン応援団の一員だね!」

真帆「ふふっ。そんなサポーター組織があるの?」

まゆり「たった今、まゆしぃが結成したのです! これから頼むぞマホ団員! ふっふっふ〜!」

真帆「何よそれは」クスッ

真帆(まあ、そういうのも悪くないのかもしれないけどね)











237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 00:12:47.76 ID:7BCBBabWo

オカリンマンの凄さはギリギリの逆境にならないと分からないから仕方ないね
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