【艦これ】龍驤「たりないもの」外伝

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301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/12(金) 10:27:04.87 ID:ty9mx+PIo

すぐにアンダーラインでの話を上げてくれるのは感心する
本編でも思ったけど富士にも成長フラグきてるよな
302 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:13:59.12 ID:t/ppvMKDO
>>299から
 
 
それからというもの鎮守府皆は龍驤さんを元気付けようとあの手この手と全力を尽くしていた


だけど霞の案ははっきり言って良くない。まさかドラッグで苦しみを取り除こうなんて


『使ったら間違い無く霞だけでは済まない事になるだろうねぇ』


「そうですね…副作用も酷いと言っていた辺り隠し通すのも難しいと思います」


そしてそうなったら間違い無く龍驤さんは施設行き。司令官も何らかの責任を取らされ提督を首になる可能性が高い


霞は逮捕され、証拠品として必要な薬や材料さえ押収、鎮守府は崩壊。よほど上手く隠しでもしない限り全て持っていかれるだろう


霞はその辺り大雑把で金庫も設置していなかった。聞いた話では最初は部屋に鍵すら無かったらしい


そして警察に鎮守府の皆に必要な物だと説明した所であまり期待は出来ないだろうと私は思う


当然ながら霞は他の皆に止められていたが、これも追い詰められた人間の視野狭窄なのだろう


「それにしてもまさか無理矢理注射しようとするなんて…もし間に合わなかったらと思うと…」


ダメ、ぜったい
303 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:15:24.62 ID:t/ppvMKDO
 
 
鎮守府の皆が集まって龍驤さんを励まし、説得する。しかし龍驤さんも頑固なものであくまで自分が悪いのだと言い張る


それでもそうして吐き出す事で少しは楽になれたのか僅かに元気を取り戻していた


「この調子なら…」


この調子なら龍驤さんもいずれ元気になるだろう。そう私も思っていた


しかしある日鎮守府に侵入者があったらしいと騒ぎになっていた


それはよりにもよって深海提督その人で、龍驤さんをまたもや追い詰めようとわざわざ鎮守府にまで来るなんて徹底している


そして龍驤さんは持ち直した分を全て失い今は薬によって眠らされている


「こうなってしまうともう戦うしか無いのかもしれませんね…」


『そうだねぇ。あくまで敵視してくる相手なら説得は難しいよねぇ』


「それにしても…」


と、私は奥の部屋の方を振り向いてみる
304 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:16:46.11 ID:t/ppvMKDO
 
 
ピシャ


慌てて襖を閉める音


「気になる事は気になるんですね…岩戸か何かでしょうか」


『また呼ぼうか?あたしが』


「いえ、そっとしておきましょう。無理強いしても仕方ありません」


今や奥の部屋は漣さんのテリトリーのようになっていた


私達も敢えて踏み込んだりはしないようにしている。彼女が自分の意志で来ない事には始まらないのだ


たまに泣き声が聞こえたりうなされる声がしたり、暴れる音がしたりとまだまだ彼女は不安定なようで


考えてみたらあの頃の私によく似ているような気がする。司令官達もこんな気持ちだったのだろうか…


司令官のように上手く慰める自信の無い私は下手に声もかけられずにいた。そもそも慰めの言葉が果たして彼女に有効なのかも判らない


無力感。どうしてあげる事も出来ない。せめてこの先何かしら上手く転んでくれる偶然に期待するしかないのだろうか
305 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:18:14.19 ID:t/ppvMKDO
 
 
龍驤さんを精神の病院に入れるという話が出ていた


深海提督が鎮守府に侵入し揺さぶりをかけてくる事も含めての対策らしい


「どうなんでしょうね…仮にも軍施設と病院でセキュリティにそれほど差は無い気もしますが」


『身分を偽って入ってくるか、それも飛ばして誘拐されちゃうかも』


仮に強引に拐おうとされたらむしろ対抗出来ない病院の方が危険な気がする


『かといってこのままだと違法薬物に頼らざるを得ないかなぁ』


「今すぐ施設に入れるか発覚して施設に入れられるか…もうこれは詰んでいるのでしょうか…」


そんな中例の富士さんを停止させる胞子の対抗策が見付かったと秋津洲さんが執務室に飛び込んでくる


そんな方法をまさか科学者という訳でもない秋津洲さんが?


しかし内容を聞いた所研究を重ねた結果発見したというよりは偶然見付かっただけだったらしい

306 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:19:51.96 ID:t/ppvMKDO
 
 
『ぷっ…ふふ…まさか激辛焼きそばとか…想像付かないよ普通。多分あの海月姫ですらそんなの知らなかったんじゃないかなぁ…ふっ』


「でもその…対抗策が見付かったのは良いのですが…使った後の絵面がちょっと…」


『お食事中の方は閲覧注意だねぇ』


胞子は強い刺激物に弱いらしく、激辛の食べ物でなんと体外に排出されるという話だった


…口から


半泣きになりながら超激辛焼きそばを食べ、そして胞子ごと食べた物吐き出す事になる


出た物体も含めモザイク必須である


「うっ…ちょっと気分が…」


しかし私達が見ているのは、見てしまったのは当然ながらモロである


『いったんテレビ消して…朝ちゃん…うぇ…』


その後改良され、成分だけを抽出したカプセルになり少しだけ楽になっていくのだが上からが下からになり全国の艦娘が排出の苦しみに阿鼻叫喚するのはまた別の話である
307 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:21:39.82 ID:t/ppvMKDO
 
 
「龍驤さんが拐われた!?」


どうやらあの女幹部さんが深海提督を誘き出す餌として連れていったという話らしい


いくら何でもあんな状態の龍驤さんを連れ出すなんて…いやそれよりも龍驤さんを恨んでいる人物の前に連れていくなんて危険過ぎる


『殺しはしないとは言ってもいつ気が変わるか判らないしねぇ…』

あの女幹部さんにとって深海提督は何よりも大切な存在だったらしい。司令官に涙ながらに訴えていたあの姿に偽りは無かった


前の世界がどうとか私にはさっぱり理解出来なかったが要点は深海提督と女幹部さんはかつて恋人同士で今は記憶を失い深海海月姫と夫婦のようになっていて子供まで作ったという所か


女幹部さんの立場からすれば平静ではいられないのは解らないでも無いけれど


「形振り構わないにしても協力をお願いした司令官まで裏切るような事をするなんて…」


しかし最悪の結果は免れていたようだった。誰にとっての最悪か、女幹部さんにとってはむしろこれが最悪だったのかもしれない


記憶を取り戻した深海提督は女幹部さんを拒絶。あろう事か銃弾を撃ち込まれ倒れていた所を発見された
308 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:23:24.46 ID:t/ppvMKDO
 
 
銃弾は急所を意図的に外されていたようで命に別状は無いらしい。それでも女幹部さんの仲間の一人が不思議な力で治療していた


「すごいですね…撃たれた傷がもう跡形も無く…」


傷は治ったがショックで泣いているばかりの女幹部さんを彼女の仲間が連れていく


それからその中の一人、アケボノさん?が龍驤さんを危険に曝した事を司令官に謝罪していた


償いに彼女達の持つ不思議な力で龍驤さんの精神状態を改善させる事に挑戦するという


そんな事が可能ならもっと早くと思わなくも無いが色々事情があるらしい


実際それは効果があったようで龍驤さんは少し元気を取り戻したようで私も少し安心する


「これで施設送りもドラッグ使用も無くなりそうで良かったですね…」


『また何かしらで精神状態が悪くならなければいいけどねぇ』


「さすがにもう何も出て来たりはしないと思いますが…しないですよね?」


過去から無くともこれから起きる事次第ではまだどうなるか判らない。果たしてそれは内部からか外部からか
309 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:24:42.46 ID:t/ppvMKDO
 
 
驚くべき事が発覚した


先日の深海提督の鎮守府侵入を手引きしたのはあの川内さんだったらしい


『力が欲しいか』


「秘伝書とかいうのに釣られてよりにもよって深海提督に情報を渡していた…これ、かなりまずいですね…」


『ならば、くれてやる』


「今や深海提督と深海海月姫は完全に敵という認識をされています。これがバレたら下手をしたらこの鎮守府全体が裏切り者と見なされてしまう可能性が…」


『…欲しいか』


私はよく解らない事を言うY子さんをスルーしてモニターを見ている。そこには由良さんにボコボコにされている川内さんの姿


結局その秘伝書の技を持ってしても由良さんには勝てなかったらしい。私には完全に裏切り損としか思えなかった


そして司令官は川内さんの事を由良さんに丸投げして処分保留。それを雲龍さん達に詰め寄られやむ無く川内さんを鎮守府から追放という形を取る事にしたようだ


『…多分彼女達も解ってるみたいだね。発覚した場合に形だけでも処分したという事実が無いのはかなりまずいって』


何事も無かったように話に加わるY子さん。スルーされて若干落ち込んでいる。いや…どう絡めと


『裏切り者は処分しました、だからうちは裏切ってはいない、この鎮守府は関係が無いと、少なくともそう言える状態にしておかないと後が怖いねぇ』


それが何処まで通用するのかは判らないがこのまま川内さんをここに置いておくのは危険だと皆は考えたのかもしれない


結局川内さんは忍者提督の鎮守府に異動という事になったようだ


司令官は間違い無くそこまで考えはいない。解っていたとしたら他人の鎮守府に迷惑をかけるかもしれない川内さんを預けたりしないだろう
310 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:26:00.30 ID:t/ppvMKDO
 
 
アケボノさん達の治療が効いているのか龍驤さんの調子が少しずつ戻っていっている


何より大きいのは少しだけ考え方が変わった事だ


あくまで自分に原因があるとはしつつそれでも深海提督と深海海月姫がした事は許されない事だとようやく認めたのだ


当然と言えば当然だ。恨みがあれば何をしてもいいなど誰一人認めはしない


彼らは越えてはいけない一線を越えてしまった。今後は彼ら自身が憎まれる番になるだろう


そうして憎しみは連鎖していくのだろうか。私は結局殺さずに済んで本当に良かったと思う。自らの命と引き換えに憎しみを断ち切れたのだとすれば少しは意味があったのだと。そんな事は結局慰めにもならないのだけど


「少しだけ鎮守府の雰囲気も明るくなりましたかね。まだまだ以前には程遠いですが…」


『鎮守府が暗くなった発端は朝ちゃんだけどねぇ』


「ぐっ…それを言われると…」


『それでも繰り返すんだから人ってやつは…』


Y子さんがぼそりと呟く。おそらくは似たような場面をそれこそ飽きる程見てきたのかもしれない


そしてそれは富士さんも同じで彼女は行動に移した。Y子さんはただ見続ける事を選んだ。その違いは何なのだろう
311 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:27:44.52 ID:t/ppvMKDO
 
 
珍しく司令官が一人で執務をしていると何故か机の下から白露さんが這い出して来て司令官を襲おうとしている


「何なんですかあの女!というかいつからそこに!?」


『おーさーえーてー』


「寝取り趣味ってここにとっては致命的じゃないですか!本当の敵はそこに居たんだ!」


『あーさーちゃーんー』


「そう思いませんか漣さん!」


ピシャ


「…チッ。おや?朝霜さんが止めましたね。ちょっと意外です。てっきり一緒になって襲うのかと思いましたが」


『それをしたらどうなるか解っててやるならバカとしか思えないよーお姉ちゃんよりアホだよー』


「根に持っていますね…」


他の白露型の皆さんに連行されそれはもうお仕置きに次ぐお仕置きが行われていた


私は生きている間に彼女達に会わなくて良かったと心の底から思う。きっとあの中の誰か…主にピンクの誰かの毒牙にかかっていたかもしれないと思うと震えが走る
312 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:29:26.25 ID:t/ppvMKDO
 
 
私がいつものように鎮守府の様子を見ていると蒼白な顔をした天城さんが走って行くのを見付けた


どうやら天城さんの旦那さんである天提督の癌が再発したらしい


今度はリンパに転移していて余命一月と宣告されたと話していた


「せっかく手術したのにこれでは…」


『癌ってそういうものだからね…一度出来てしまえば常に再発の危険性がある』


天城さんは天提督の側に居る為に向こうの鎮守府に戻る事になったらしい


それから一月が経ち、病院の屋上で大分やつれてしまった天提督に寄り添う天城さんの姿があった


実際天城さんが側に居たおかげか医師の宣告よりも長く天提督は生きていた。しかしそれももう限界が近いのだと素人の私でも判る程に痩せ細ってしまっていた

313 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:30:54.62 ID:t/ppvMKDO
 
 
本当はこんな場面、部外者の私達が見るべきでは無いと解ってはいた。だけど私は目が離せなかった


こんな…こんな穏やかな顔を死を前にして出来る人間が居るのだと私は知らなかった


「私とは違うんですねきっと…私が彼の立場ならどうせ死ぬからと自暴自棄になって何をするか…」


そうして二人は屋上から海を眺めながら最後の時間を過ごしている。穏やかに思い出話をしながらそれはそれは幸せそうに、これから死が二人を別つとは思えない程に


そして彼は天城さんにこの綺麗な海を守ってほしいと言い、眠るように静かに息を引き取った。苦しみなど欠片も感じていないかのように微笑みを浮かべたままで


残された天城さんは叫ぶでもなくただ静かに泣いていた。眠っている彼を起こさないように。私にはそう見えた


そして彼女はポケットから2つの錠剤を取り出し握り潰し捨てる


「あれは…もしかして…」


『うん…』


やはり用意していたのだ。後を追う為の薬を。しかし彼女はそれを捨てた。生きていく為に、約束を果たす為に
314 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:33:14.51 ID:t/ppvMKDO
 
 
「どうして…」


ふと背後から声がした


私が振り向くといつの間にか漣さんがすぐ後ろに立っていた


漣「どうして…」


ただそれだけを繰り返す。つまり何より大切な存在を失ってどうして生きていこうと思えるのだと。そう彼女は言っているのだ


「約束…したから…?でもそれだけではありませんね…。きっとあの彼の顔があまりにも幸せそうだったからでしょうか…」


漣「幸せ…?だって好きな人と居られなくなって…死んでしまうのに何が幸せだと…」


「短い間でも精一杯に後悔しないようにすごせた証だと思います。全く無いのかはさすがに判りませんが、少なくとも彼は幸せを感じながら逝ったのだと私は思います」


漣「…」


「何よりも彼は後を追う事を望んでいない。大切だからこそ生きてほしいと、そう願っての約束なのだと思います」


漣「………あの子も」


「ええ…きっと同じように願っている筈です」


大切だからこそ


自分の後を追ってほしいなどと願うようなら本当の意味で相手を思いやってなどいない。そんな事は私でも解る
315 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:35:27.14 ID:t/ppvMKDO
 
 
「…ねぇ漣さん、貴女には私と同じ過ちを繰り返してほしくはないんです。貴女はまだ戻る事が出来ます、私とは違って」


彼女は俯いたまま何も言わない。聞いているのかも解らない。だけど私はこれだけは伝えなければならない


「私は…今更ですが、後悔しています。一時の苦しみから逃れる為にああした事を、未来の可能性を信じる事が出来なかった…」


「実際楽にはなりました、自分の過去について苦しまなくてよくなったのは確かです。でもそれだけです。たったのそれだけ」


漣「それだけ?あれだけ苦しんでいたのにそれだけですか…?」


「そうする事で私が失ったものに比べたらたったのそれだけです。全く釣り合いが取れないくらいに私は全て無くした」


漣「…それは…どういう…」


「漣さん、私はね…もう何も出来ないしもう何処へも行く事が出来ないんです。どれだけ大切な人や仲間が苦しんでいようが声のひとつもかけられないし側に行って元気付ける事も出来ない」


後悔してもしきれない。もし私が生きていたとして刑務所で数年。真面目にしていればいずれは出られた筈。そうしたらまた司令官達に会えたのにと今更ながらそう思う


そしてもしかしたら司令官以外に私が幸せになれる誰か、何かに巡り会えていたのかもしれない


「…私はそうして一時の憎悪や苦しみから逃れる為に全てを自ら棄ててしまった!そしてその事で司令官や皆に傷を負わせてしまった!」
316 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:38:49.67 ID:t/ppvMKDO
 
 
「解りますか!?そんな自分と同じ過ちを繰り返そうとしている貴女を私がとんな気持ちで見ていたか!」


漣「だって…漣にはもう何も…」


「何も無い?私の前でそれを言いますか?」


漣「なら大切な人を失う気持ちがあんたに解るのか!」


「そうやって自分の事ばかりだから彼女が被曝している事にも、死を覚悟していた事にも気付けなかった!因果なんて大層なものは関係無い!単に貴女の気配りが足りなかっただけです!」


漣「お前…!」


言い過ぎたかもしれないと口に出してから気付くが後の祭。彼女は激昂し私に掴みかかろうとする


ズズン!


『二人共…少しうるさいよ』


Y子さんの圧力が私達を襲う。漣さんは顔面蒼白になり反射的に土下座していた。そして私は


「すみません…少しヒートアップしてしまいました。ごめんなさい漣さん、言い過ぎました…」


漣「…」


漣さんは何も言わずに奥の部屋に戻ろうとする。私はその背中に向かって言う


「貴女はまだ戻れる、そして貴女を待っている人達が居る。このままだとまた後を追って来る人が出るかもしれませんよ。貴女はそれを望みますか?」
317 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:41:08.27 ID:t/ppvMKDO
 
 
漣「そんなの居る訳…」


「例えば黒潮さん、彼女は漣さんを半ばライバルのように見ています。それこそ死んでも決着を付けに来るかも」


漣「決着ならもう…」


「それに重巡棲姫さん、彼女は貴女が戻って来るかもしれないと希望を持ちその先の事を見据えて頑張っています。貴女が戻らないと知ればどうなるかは判りません」

漣「…」


「そして司令官もそれを知って希望を持てた事で落ち込む事が少なくなりました。結局無理なのだと知ればどれだけの負担になるか」

漣「…ご主人様には龍驤さんがいます。私が居なくとも」


「逆ですよ。司令官が龍驤さんを支える助けが必要なんです。それがかつては貴女だった」


漣「霞とか…」


「私から見れば霞も危ういですけどね。大抵薬に頼ろうとするし…」


漣「だって…もう私には生き甲斐が…」


「私の話聞いてましたか?生きていれば新しい生き甲斐くらいまた見付かります。それを信じるのが希望というものです」


漣「そんなもの…いらない…私にはあの子さえ居ればよかった!」

そう吐き捨てて彼女はまた部屋に閉じ籠もってしまう

318 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:42:51.33 ID:t/ppvMKDO
 
 
「はあ…本当に頑固で意地っ張りでわからず屋…」


『お疲れ朝ちゃん』


「とりあえずは今伝えたい事は伝えたつもりですが…」


『まだまだ判らないね、どうなるかは』


彼女には私のように後悔してほしくは無い。だけど受けた傷が深すぎてその痛みが彼女の目も心も曇らせてしまっている


「私に言われて怒れるくらいの元気はあるみたいなので少しは望みがありそうな気はしますが…」


『さっきのわざとだったんだ』


「いえ、思った事をそのまま」


『まだ治らないんだねその癖…』

呆れたように言うY子さん。そしてまた私は鎮守府の様子を見守る


自らを棄てて、皆に傷を残してしまった私自身への罰はこの無力感をひたすらに呑み込む事しか無いのだと私は知っている


そしてこれ以上ここに来てしまう懐かしい顔が増えない事を私は願うばかりだった
319 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/16(火) 05:43:55.09 ID:t/ppvMKDO
ここまで
表現がマンネリ
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 12:26:59.42 ID:dvhLqQLyo
乙乙
こう見ると似てたね朝潮と漣


よし漣大神のために裸踊りしようやしm
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/16(火) 19:21:42.91 ID:cQ8jtxAJo
死んでもなお責められる漣が哀れすぎる…
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 23:48:11.31 ID:pl6VmzD+O
ーー幼女塾とは


「提督さんに秘書艦さん、調子はどうですか?」


阿武提督「ここの装備と施設に恥じない結果を出していくつもりです」


「そうですか。何回も説明させて頂きましたが、決してあの子達に無理だけはさせないで下さい」


阿武隈「各艦娘のノルマもその子達に合ったものを採用していますぅ!」


「ええ、そのようですね。あの子達の活躍は塾長を始め先生方も喜んでいます」


阿武提督「それは良かったです」


阿武隈「……」


阿武提督「どうしたの阿武隈?」


阿武隈「いえ…やっぱりスカートの長さが気になるなぁって…」


「そこは譲れない所です。少しでも動けば下着がチラ見…いやぁ神風型は元の服も良かったですが、我が塾のユニフォームもよく似合ってますよ」


阿武隈「海防艦の子なんておヘソまで見えてるじゃないですかぁ!」


「ええそうですけど…?」キョトン


阿武隈「なんであたしがおかしいみたいな言い方されるんですかぁ!」
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 23:51:05.19 ID:pl6VmzD+O
「提督さん、ひょっとして彼女は我が塾出身では無いんですか?」


阿武提督「そうなんです。阿武隈はまだこの塾のことがわかって無いんです」


「成る程…合点が行きました」


「阿武隈さん、我々は幼女が大好きです。所属している人は全員ロリコンです」


阿武隈「それくらいわかりますぅ!」


「残念なことにこの世界では幼女が毎日のように酷い目に合っています。心無い大人に売られたり、謂れのない暴力を振るわれたりと被害は様々です」


「そんな幼女を救いたい。そういった理念で我々は動いているんですよ」


阿武隈「それは知ってますけどぉ!こんな短いスカートを履かせて…!」


「幼女の下着を見る以上の幸福がこの世に存在するのでしょうか?」


阿武隈「ひぃぃぃ…!」ゾクッ


「安心して下さい。我々は幼女に手を出しすことは絶対にしません」


阿武隈「そんなの信用できません!!」


「これはこれは…この様子だと御殿の事も知りませんね?」


阿武提督「ここの準備でバタバタして…一度くらい連れて行こうとはしてたんです」


阿武隈「なんなんですか御殿ってぇ…?」
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 23:53:10.59 ID:pl6VmzD+O
「では簡単に説明させていただきます。幼女塾の本部である幼女御殿。ここには我が塾に所属している幼女の服が祀られているんです」


阿武隈「ひ……!!」


「阿武隈さん始めここの艦娘さんにはユニフォームから下着まで配布しましたね?それを回収して御殿に祀ります」


阿武隈「半年ごとに回収っていうのはそういう目的が!!」


「はい。そこで回収した神聖な神衣は洗わずに御殿へ祀られます」


阿武隈「この団体……思ってた以上にヤバい……!」ガタガタ


「勘違いしていただきたくないのは艦娘だからということではないのです。全ての塾生の服を祀ってあるのです」


「塾に来て一か月記念、半年、一年…幼女から少女になった日の記念など……それはもう様々ですよ」


阿武隈「ひぃぃぃぃぃぃぃ〜〜!」
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 23:56:06.93 ID:pl6VmzD+O
「我々はボランティアではありません、塾の運営費は必要になります。そこで我が塾に入塾して体力のある塾生はスポーツをやってもらっているんです」


阿武提督「この間テニスで世界一になったハーフの日本人選手いるでしょ?あの子ってこの塾所属なのよ」


阿武隈「ええええぇぇ〜〜!!」


「我が塾では国籍も人種も思想も宗教も関係ありません。幼女であれば全て良しなのです」


阿武隈「でも…女の子でお金を稼ぐなんて……」


「そこも大丈夫です。我が塾では所属している塾生が稼いだお金は99パーセントが本人の物になります」


阿武隈「女の子はそれで大丈夫だとしてもぉ…塾はそんなのでやっていけるんですかぁ…?」


「そこで寄付です。日本…いえ、世界の方々からの寄付金で我が塾は成り立っています」


阿武提督「幼女塾は凄いの。寄付金の100パーセントが塾の為に使われてるのよ」
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 00:02:16.65 ID:cI+AjelcO
「我々はお金を稼ぐのが目的ではありません。よく名前を聞く団体が駅前で寄付を募っていますが、それが実際使われているかは分かりませんよね?」


「我が塾ではそんなことはありません。1円も余す所なく塾生の為に使われているんです」


阿武隈「でも…証拠が無いじゃないですかぁ」


「あるんですよ。例えば阿武隈さんが100円寄付していただいたとしますね?すると貴女のお金がどう使われたか冊子が届くんです」


「希望されるなら冊子では無くデータでお配りしております。そうだ、実際に見た方が早いですよね。提督さん、見せてくれませんか?」


阿武隈「提督……?」


阿武提督「……」プイッ


阿武隈「あの…なんで目を逸らすんですかぁ……」



「提督さんは我が塾に熱心に何度も寄付していただいているんですよ」


阿武隈「提督…………?」


阿武提督「……」


「それがある日突然寄付が途絶えてしまったんです。我々や塾生が心配しましてね、提督さんの所を訪ねた所、提督を辞めていたと知ったんです」


阿武隈「……ロリコン提督」


阿武提督「だって…小さい女の子って可愛いんだもの…」


「…これも言ってなかったんですか?」


阿武提督「……はい」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 00:05:26.70 ID:cI+AjelcO
「まあそれは今度にしましょう。それより冊子を出していただけますか?」


阿武提督「……」スッ


阿武隈「うわぁ…ボロボロになるまで読んでるんだぁ……」


「ほら…見て下さい。このような内容なんです」


阿武隈「提督のお金はコートの一部として使われました…新しいユニフォームの一部になりました…」


「基本的に寄付金の使い道はこちらが決めています。特定の子だけを贔屓することは許されません」


「我が塾は全ての幼女を平等に愛しています。アスリートになれなかったからと言って見捨てるなんてことはいたしません」


阿武隈「でもぉ…」


阿武提督「一度幼女御殿に行ってみれば考えも変わると思うわ」


「それは私もおススメします。御殿に入った瞬間に感じる幼女スメル…あれは最高です」


阿武隈「……」ゾゾゾ
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 00:07:46.36 ID:cI+AjelcO
阿武提督「私が寄付したお金がこの子の為に使われたんだって確認できるだけでも気持ち良いのよ」


「御殿では全ての神衣を着ていた時そのままの形で祀らせてもらっています」


阿武提督「当然下着もよ」


阿武隈「それこそ問題ありですぅ!」


「何も問題ありません。我々は祀られた神衣の匂いを嗅ぐだけです。例え神衣でも触ったりはしません」


「神衣の新作が来た時の匂い…いいですよねぇ…」


阿武提督「ええ、凄くいいわ…」


阿武隈「……あたし…とんでもない所に入っちゃったかも…」
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 00:08:22.67 ID:cI+AjelcO
酷い内容
それではまた…
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 00:47:14.31 ID:57ERTwW5o
変態かな?
変態かな
でもこれでも世に蔓延るカルトよりマシだよなああー俺も寄付してーなー本当になー
乙乙
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 07:40:17.20 ID:08loZBQDO
おつです
御殿は何処かのモスクみたいなのをイメージした
巡礼しなきゃ
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/04/21(日) 15:31:23.00 ID:H5a88qZDO
>>317から
 
 
「こんどは龍田さん」


私は朝潮です。自分の事は棚どころか屋根の上にまで上げて言います


「復讐なんて良くないと思います!不幸になる人が増えるだけです!」


龍田さんに昔酷い事をしてトラウマまで植え付けた元提督が出所してくるのを知った龍田さんは鎮守府を無断で抜け出し復讐に向かったらしい


もう私みたいにはさせないと言う司令官…素敵です。そして嬉しくもあり、申し訳無くもある。何かにつけて私の名前が出るのはやはり引きずっているのもあるだろうと思えてしまう


『この鎮守府は過去に酷い目にあった子が多いから、心に余裕が生まれれば次は自分をそんな目に合わせた奴をどうにかしたい、そんな考えが出るのかな』


「自分の未来の為にここに居るのに結局まだ過去に縛られているんですね」


普段は忘れていてもふとしたきっかけで思い出し、負の感情を募らせていったのだろう。私と同じように


そして龍田さんを止める為に司令官達、そして天龍さんが向かい、警部のまるゆさんが元提督の出所時間を送らせてくれる


「何だか最近よく見かけますね、この人」


『それだけ警察沙汰になる案件が増えてきたって事かな』


でもとてもいい人なのは見ていて判った。常に皆を気にかけて今回もすぐに動いてくれた

333 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:32:58.73 ID:H5a88qZDO
 
 
しかし今回は天龍さんの説得により龍田さんは自らの手を汚す事無く皆の元に帰って行った


「本当に良かったです、きっとそれだけ龍田さんにとって天龍さんや皆の存在は大きかったんですね」


自身の行動で失うものと復讐が釣り合わなかった。だから止まれた


私の場合は司令官達に出会った時には既に手は汚れていて一人も二人も同じという思いがあった


決して大切で無かった訳では無かったが既に一線を越えてしまっていた違いは大きかったのかもしれない


その後元提督が恨みを買っていた他の誰かに刺されてしまったらしい。これこそ正しい因果応報というものだと思う


過去に過ちを犯しても変われた人や悔い改めた人には因果も少しはお目こぼしをしてくれたっていいのにと私は思う


「刺した人もやっぱり艦娘なんでしょうか」


『その可能性は高いかもねぇ。提督という立場上何かしらするのには一番手近な相手だし』


「私達の知らない人か…もしかしたら会った事がある人だったり」


『そうしたら世間は狭すぎるねー』

334 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:36:15.93 ID:H5a88qZDO
 
 
天城さんから始まり次に自らの道へ踏み出す番になったのはこの鎮守府ではあまり目立たなかった阿武隈さんだった


話で聞く限りは阿武隈という艦種はかなり強いらしかったけれどやはり個人差というものはあるようで


そうでなければ課せられていたノルマというのが想像以上にきついものだった可能性もあるけれど


「幼女塾って名前からして怖いんですけど…。よくそんな所に行く気になりましたね…」


『ロリコンを公言してはいるけど欲望から集めているというより何だか崇拝の対象にしてるみたいだね…』


「やっぱり怖いんですけど」


言ってみれば女の子だけの児童擁護施設なんだろうか。そして阿武隈さんが行くのは新たに作られる民間の鎮守府のような所らしい


「大本営はよくそれを了承しましたね、軍に対しての引き抜きなんて」


『そりゃあこれでしょー』


と、Y子さんは指でお金のサインをして見せる。…大本営の欲深い重役達は軒並み消えたはずだけどある程度まともだとしても人間はやはりそれには弱いのだろう


もうひとつの可能性として大本営の上層部もロリコン揃いで支援しているとか…もしそうだとしたらこの国は…


考えてみれば軍の貴重な戦力である私を売り飛ばしたのはあの島風提督の独断だったけれど、大本営に対してもお金さえ積めば売ってしまったりしていたのかもしれない


今でこそ大分マシになったけれどかつての艦娘の扱いは兵器…つまりはモノだったのだから

335 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:39:58.01 ID:H5a88qZDO
 
 
「阿武隈さんを引き抜くのもあの阿武提督さんだけの力では無さそうですね」


『そもそも首になってたんだしねぇ』


「推薦はしたんだと思いますが、動いた幼女塾はおそらく相当な影響力を持っていそうです」


そしてノルマを達成出来ずに心を病んでしまったという経歴を持つ阿武隈さんを引き抜くのを了承して動いてくれた?


「何かしら裏があるんでしょうか…」


『さぁねぇ…変態の考える事は解らないなぁ』


阿武隈さんと話す文月さんを見る限り確かに幸せになってはいるようだ。私の考えすぎか、どうもそういう特殊な方々を私は懐疑的な目で見てしまう


おそるおそる話を切り出す阿武隈さんに司令官達は暖かく背中を押した


進みたい道があるのならこの場所に縛り付けたりはしない。何より自由意志を重んじるこの鎮守府らしいと思う


「にしても民間の鎮守府っていうのはもしかしたらこれから増えていったりするんでしょうか」


『戦争が終わったら行き場が無くなる艦娘の受け皿として作るのはいいんじゃないかな、もしくは退役した子とか。それで何をするかはまた問題だけど』


私もそうだけど戦う以外にどうやって生活していくのか想像がつかない。イメージ出来るのは傭兵のような仕事くらいだ。訓練でも戦闘以外の事は教えられなかった


もしかするとこの一見怪しさ大爆発なこの団体が艦娘の未来の光明になるのかもしれない…

336 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:42:24.35 ID:H5a88qZDO
 
 
『朝ちゃんは痛いの好き?』


「何ですかいきなり…好きな訳無いじゃないですか」


『痛いのが気持ちいいとか愛情表現に感じるとか』


「あり得ませんね。私が殺した彼も私に殴る蹴るしましたけどあれに一片でも愛情のようなものがあればあの結果にはならなかったはずです」


そして私は不器用だった。自分を守る為に苦痛を快楽に変換するという事も出来ずに真正面から受け続けるしか無かった


むしろあの男は私に快楽を教えるというつもりも無くただ私を捌け口にするだけだった。もう少しだけでも思いやりがあったなら例え監禁されていてもさすがに頭は狙わなかったと今では思う


『中にはそういうのも歪んだ愛情として受け入れる人も居るみたいだから』


「そこに気持ちが入っているならまだ多少は…マシと言えるかもしれませんけど…歪んでますよ本当に」


痛みを痛みとしてちゃんと感じるにも関わらずそれを受け入れる…もしも司令官がそういう性癖の持ち主だったら…?


私を殴って喜ぶ司令官…上手くイメージ出来ない…。でもそうなったら多分私は受け入れる事は出来ないと思う。裏切られたと感じるかもしれない

337 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:46:27.96 ID:H5a88qZDO
 
 
そんな話になったきっかけの叢雲さんと弥生さんの一件は複雑だった


かつて沈んだ卯月さんの替わりに卯月さんを演じていた弥生さん。そのストレスの捌け口として暴行を受け子供を産めない身体にされた叢雲さん


普通なら加害者として捕まるかされていたはずだが何故か叢雲さんはそれを愛情として受け入れてしまった


しかし実はそれをしたのが愛する卯月さんではなく弥生さんだったと叢雲さんは知る


その上卯月さんは弥生さんの中で生きていて同じ身体を共有している


ならもう三人で幸せになろうと提案する卯月さんだったが叢雲さんと弥生さんの関係は今や暴力ありきになってしまっていた


叢雲さんは今は弥生さんも好きらしいがやはり騙されていたという気持ちはあったようだ、だけど好き、でも許せない、とかなりの葛藤があったのか不安定になってしまっていた


そこに来て叢雲さんは弥生さんがもう暴力は振るわないとの言葉に怒り狂って逆に殴りかかっていく


自らの身体の傷も全て愛情の証だと思っていた叢雲さんにとってはそれが単なるストレス解消だとは認められなかったのだろう
338 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:49:51.40 ID:H5a88qZDO
 
 
「そもそもの間違いは叢雲さんがそれを受け入れてしまった事ですね。そこで矯正出来ていればこうはならなかった」


私の叢雲さんへのイメージでは一番最初の暴力の時点でやり返したりしていそうだと思っていたけど、そういう所で包み込む優しさなんかが発揮されてしまったのだろうか


『そういえば遊び程度の叩いたりは卯月の時からあったみたいだからその流れで受け入れてしまったんだろうねぇ』


「そこから間違いです。限度を超えたらちゃんと叱らないと。だからここまで拗れたんですよ」


『なかなか辛辣だねぇ朝ちゃん』

「好きな相手を傷付ける…そんな関係は間違っているに決まっています。エスカレートするのを止めもしないなら最後に待つのは破滅ですよ」


『相手がSかMだったら?』


「専門外です。痛いのも痛め付けるのも御免です」


…私はそんなの知らないはずだけど、この世のものとは思えない激痛を味わった事があるような気がしてそれを愛情表現などとはとても思えなかった
339 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:52:07.52 ID:H5a88qZDO
 
 
そして弥生さんをボコボコにしようとする叢雲さんは止めに入った神通さんに取り押さえられそのまま病院送りになった


片や弥生さんも自分を責めるあまりとんでもない事をしようとする


「ちょっと…また…自殺…?」


後ろでガタンと何か音が聞こえた気がしたが敢えてそちらは見ないようにする


「はっきり言って安易過ぎますね。まだ二人共生きていてやり直しが出来るのにすぐに諦めて逃げようとしている」


確かに叢雲さんの身体については取り返しは効かないだろう。だからと言って自殺するにはまだまだ軽いと私には見える。まあ自殺しても許される理由など無い方がいいに決まっているけど


そして弥生さんはおそらく漣さんの真似をして精神の自殺を図るが失敗していた


『まぁそれも当然だよねぇ。毎日死にたい死にたい思ってても死ねないのと一緒で本来勝手に生きようとするのが生き物というやつだからね』


「私から言わせれば絶望が足りませんね。失敗するのも当然です」


彼女に比べたら…


そしていつも通り目覚めた弥生さんに重巡さんが怒っていた。心がそう簡単壊せてたまるかと、何故立ち向かわないのかと、そして


≪もうあんな思いはしたくないんだ…≫


怒りながらも哀しげそう言っている重巡棲姫さん


…貴女にも聞こえた筈ですよね


私は背後の部屋に意識を向ける。すると微かに啜り泣く声が聞こえた。何かは伝わったのだろうか…
340 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:55:01.10 ID:H5a88qZDO
 
 
叢雲さんの病室で卯月さんのビデオレターを観ている叢雲さん弥生さん、そして司令官と龍驤さん


それはもう必死なものだった。一人ぼっちにされるのは嫌だと泣きそうになりながら、最後には我慢出来ずに涙ながらに訴えていた


それを見た弥生さんは泣き始め、叢雲さんも反省したかのように項垂れる。結局この二人には卯月さんが必要なのだと解った


『実際大した子だよね卯月って』


「そうですね…彼女は何が起きても最後まで絶望はしないような気がします」


それから叢雲さんと弥生さんは返信のビデオレターを撮り始めている。そしてお返しにと卯月さんの大好きなイタズラを仕込んでいる


これも愛情表現なのだろう


痛みを与えなくとも、痛みを受け入れなくとも愛情を伝える事は出来る。二人は気付いているだろうか


暴力によって繋がっていた時よりも楽しそうな笑顔を自分達が浮かべている事に


きっと卯月さんが居る限り二人は大丈夫なのかもしれない。私は楽観的だとは思いつつもそう信じるのだった
341 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/21(日) 15:57:27.44 ID:H5a88qZDO
ここまで
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/21(日) 16:26:49.16 ID:bz1VCgNro
おつ毎回楽しみ
>大本営の上層部もロリコン
一見ディストピアだがある意味一番平和に見える悪夢
343 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:34:04.30 ID:ewPdNPWDO
>>340から
 
 
こんちには、朝潮霊です。今日も司令官達の様子を見ていきます


最近の司令官と龍驤さんは少しずつ以前の状態に戻りつつあるようだ。ようやく乗り越えたのだと思えるようになってきている


これこそ許し合える関係というのだろうか


「龍驤さんの過去にこれ以上のものはさすがに無いだろうけど、そういえば司令官の過去ってどんなのだろう」


『昔は悪党だったとかだったらどうする?』


「それは無いんじゃないでしょうか。昔って提督になる前になるだろうし」


『学生時代は金髪ヤンキーと組んで髪の毛を思いっきり立てて喧嘩三昧だったとか』


「それこの前読んでた漫画の話ですよね、明日から本気出すとかなんとか」


『まあ多少悪かったとしても血の気の多い艦娘に比べたらかわいいね!』


確かに私達艦娘から見たら不良程度は文字通り子供の喧嘩にしか見えないだろう


むしろ極道とかマフィアの方が近い。切った張ったに違法薬物、警察沙汰は日常茶飯事。場所によっては人身売買と考えれば考える程やばい世界だ


深海棲艦との縄張り争いにケジメをつけられる日はいつになるだろうか

344 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:36:23.54 ID:ewPdNPWDO
 
 
今この鎮守府に居る中でも血の気の多い筆頭の一人である夕立さんが再会した最上さんに食ってかかっている


時雨さんが身体を失う羽目になったのはあくまで最上さんのせいだと聞く耳を持たない


「何だか解っていて意固地になっている印象を受けますね」


『前に自分で言っていたね。まともになったら耐えられないって、常に誰かを責めていないと駄目な状態なんだろうね』


「それでも他の姉妹と居る時は少し柔らかな顔になっているみたいですけどね」


『夕立っていうのは元々そんなに思い詰める性格じゃない艦種だし。人格に合わない事がいつまで持つかな…』


「夕立さんがあの性格になったのは一度壊れたからかもしれません…。再統合した結果ああなったというか」


どんな負荷でも歪まずに元のままという強靭な精神が持てるのなら…しかしそれはもう人ではないのかもしれない


その後最上さんは悪くないのだと朝霜さんに言い負かされてしまう夕立さん


この辺りはやはり夕立という艦娘の本質なのだろう。難しい事はあまり考えず、感情と直感で動いている


そして子供の仕返しのように朝霜さんにとっての禁句を連呼する。すると朝霜さんは途端に怯え始め普段の強気な彼女とはかけ離れた状態になって龍驤さんに介抱されていた


やっぱり子供だ


そして噂をすれば影とも言うようにその禁句の張本人、早霜が唐突に現れる

345 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:37:45.09 ID:ewPdNPWDO
 
 
「ちょっとしたホラーですね彼女は…」


ずっと見ていた私ですら早霜が笑い声を上げるまでそこに居るのに気付かなかった


これまでも前触れ無く突然現れたりする事があったがそれも能力なのだろうか


そして早霜は夕立さんを始めとした特務艦や元特務艦に囲まれているにも関わらず余裕の笑みを浮かべている


何かが光ったように見えた、糸のような…


そして夕立さんの身体から血が噴き出す


「え…一体何が…?」


『どうやら鋼線みたいなもので切り刻んだようだね。とてつもなく細く鋭い』


それでも夕立さんはかなりの重傷にも構わす早霜に襲い掛かろうとする。それを必死に止める時雨さんと春雨さん。そして三人を庇うように白露さんが前に立ちはだかっている


その時、一喝するような声と共に何処からともなく飛来した魚雷により早霜の上半身が吹き飛び、程なく残った下半身も消えていく


「あれがりすぽんですか…」


『リスポーンね。何だか朝ちゃんのは栗鼠のキャラクターか何かみたい』


「…いいじゃないですか別に」


若干赤面しつつそんな事を言っていると突然夕立さんが最上さんに噛み付き血を吸い始める

346 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:42:03.50 ID:ewPdNPWDO
 
 
「ちょ…彼女は一体何を…」


『へぇ…そんな能力?持ってたんだねぇ…』


Y子さんが指し示すと夕立さんの出血が止まり始めていた。あまりの光景にそれには気付かず龍驤さんや白露さん達は二人を地下隔離室に担ぎ込んでいく


隔離室の一角には新たに設置された医療器具やベッドがあるが以前より手狭になってしまっている


重傷だった夕立さんは血を吸った事によるのか手術の必要が無い程に回復していた。そして最上さんは血の吸われ過ぎで貧血気味にはなっていたが大事には至らなかったようだ


「夕立さんは吸血鬼だった…?そういえば目も赤いし…」


『相手を喰らったり血を吸ったりして自らの一部に変換し回復かな』


「そういえば以前にも夕立さんと早霜がやり合った時も夕立さんは重傷だったのに生きてました」


『早霜の身体を食べて回復したおかげで…いや、もしかするとその時からかな?』


「仮に食べれば特殊能力を得られるのだとすれば早霜ってなんなんでしょう…」


『確かあの早霜はドロップ艦だったね。見た目こそ艦娘早霜だけどもしかしたら』


「深海棲艦?」


『さぁねぇ、だけど深海棲艦は海から生まれる。ならドロップ艦娘は元々は何なのか…。そしてあの海にはイレギュラーな存在まである。何があっても不思議じゃないよ』


そしてベッドで悔し泣きをする夕立さん。負けず嫌いなのも彼女の本質なのだろう、いつかは嬉し泣きの顔を見られたらいいのにと私は思う

347 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:43:51.64 ID:ewPdNPWDO
 
 
例の白露型淫乱集団が改めて鎮守府に着任するという話が出ていた


「現役特務艦に元特務艦…戦力的には申し分無いんですけど…どうなるんでしょうね…」


この鎮守府は割と性にオープンという側面もあったのだが上には上が居るという事か


そして特にやばいのが淫乱ピンクこと元特務艦の春雨さん。本当に誰彼構わず涎を垂らしている


「本当に…会わなくて良かったとこれほど…」


『朝ちゃんの場合手錠付けてたし間違い無くロックオンされるね…』


「やめてくださいやめてください」


耳を塞ぐポーズでいやいやをする私。仮に春雨さんに襲われたら手錠が有ろうと無かろうと抵抗は出来ないだろう


そして仕返ししようにもあっさり返り討ちに遭いまた…という事になりかねない


いつだったかもう一人のピンクさんも文句を言ったり蒸し返したりしなかったのはそれを恐れての事だったのかもしれない


そして何故か同じ顔をしている駆逐棲姫さんとにらめっこをしている春雨さん。はっきりした理由は不明だが春雨さんは彼女には欲情しないらしい


元々は同一の魂の可能性があるようだがそれも定かでは無いようだ


そして春雨さんの話からどうやら彼女の脳内ピンクは一度沈みかけた事がきっかけになっていたのではと駆逐棲姫さんは司令官に話していた

348 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:45:44.08 ID:ewPdNPWDO
 
 
「生命の危機に瀕した生き物は種の保存に走るという話ですね」


『それがずっと続いていたとはねぇ…。脳内麻薬垂れ流しで廃人になっていてもおかしく無かったとは思うけど』


「そこはさすが元特務艦という所なのでしょうか」


簡単には壊れたりはしないというか、上手く馴染んでいた状態だったのかは判らないが


「それに春雨さんはこれまでも結構艦娘を襲っていたようですけど、変わらず自由にしているのは…」


『多分白露や村雨がどうにかしていたんじゃないかな。示談にしたのか特務艦権限で泣き寝入りさせたのかは知らないけどね』


「後者なら最悪ですね…。あ、また警察沙汰ですかねこれ」


そして春雨さんは薬での治療に入り、正気を取り戻していった


あれが素の春雨さん…どことなく儚げで駆逐棲姫さんと完全に被る。これまでは常に発情したような顔をしていて今とはまるで違っていた


『正気になったらなったでまた大変そうだねぇ…』


「そうですね…」


これまでの被害者というのがどれだけ居てどう思っているのか、今現在訴えられても逮捕されてもいないからといってこれからもそうだとは限らないのだ
349 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:46:53.45 ID:ewPdNPWDO
 
 
今日は私の月命日らしい


日進さんが定期的に鎮守府に来るようになってしばらく経つ


私自身は自分の死んだ日などはあまり意識はしないがやはりそれは今生きている者にこそ必要な事なのだろう


「そういえば彼岸に居ないと降ろせないらしいですけど私の時は確か…」


『朝ちゃんがこの狭間に来る前だからねー。あの頃の朝ちゃんの業の重さは相当で、あのままだと地獄に落ちてたから無理矢理引っ張ってきちゃった。重かったよー』


「今は…そうか…もうひとりの私が…」


『うん…だいぶ軽くはなったよ。全部じゃないけど本当に肩代わりして持って行った』


「どうしているんでしょうか…もうひとりの私は…」


『…聞く必要は無いよ。朝ちゃんがしなければいけないのは忘れない事と感謝する事だけ』


Y子さんはきっぱりと言い切った。おそらくは良くない状況なのだろう。だとしても私に出来る事は他には無いと彼女は断じたのだ


『そうそう、悔やんで自分を責めて謝り続けるよりありがとうって言う方が言われた方も気持ちがいいでしょ。それを未だにあの男はねぇ…』


呆れたようにY子さんはモニターに映る司令官の姿を見ている

350 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:48:15.47 ID:ewPdNPWDO
 
 
司令官は未だに私の事で自分を責め続けていた


挙げ句の果てに居もしない私の亡霊が夢に出て責めるのだという


「…何だか腹が立ってきました」

『あはは…』


「さっきの言葉がよく解りました。確かに延々謝られ続けると逆にムカつきますね」


私がいつ私に詫び続けろ司令官!とでも言ったのか、冗談じゃない


「司令官…私が死んだのは司令官のせいだと私がいつ言いましたか…私が死んだのは私が弱かったから…!」


「自ら幸せを掴もうとはせずに誰かに幸せにしてもらおうとして、それなのに差し伸べられた手を取る事すらしなかったのは私!」


「自分自身の未来を信じきれなかった私の弱さのせいだった!」


「こんな事になるなら…私は…司令官には出会わず…独りのままで…」


≪バチィン!≫


何かを強く叩く音がモニターからこの部屋にも響き渡る


いつの間にか顔を伏せていた私がそちらを見れば日進さんが司令官に思い切り平手打ちをしていた


それはもう凄い剣幕だった。そして悲しそうだった。まるで私の言葉を代弁するかのように彼女はまくし立てている


そして呆然とする司令官を残し部屋を出ていってしまった。そんな司令官を気遣う龍驤さんと朝霜さん


これも私の罪…その形だ。だけど前を向く為にはそれを悔やんでばかりでは駄目なのだ。いつか司令官にもそれに気付いてほしいと思う

351 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:50:07.95 ID:ewPdNPWDO
 
 
『大丈夫?朝ちゃん』


「ええ、私もまだまだですね…すぐに揺らぎそうになってしまう…」


何とかは死んでもと言うけれど、少なくとも悔やむのは止めたつもりでいた筈なのに


「もう後悔しても仕方が無いですからね…。当事者である内には間違いにも気付けない。ようやく解るのは全てが終わった後」


だからこそ後悔しないように生きなければならない、なんて言うのは簡単だけれど


部屋を出た日進さんが漣さんの姿の重巡棲姫さんと話している


「漣さんと直接は話させてあげられないんですかね…」


『向こうからしたら何処に居るかなんて知りようが無いしねぇ…。また降ろすのに挑戦でもしたなら手を加えてみたりは出来なくも無いけど』


Y子さんが言うには口寄せというのはあくまで彼岸の向こうに念を飛ばし、該当の人物が近くに居て尚且つそれに応じればやっと話せるくらいのものらしい


『その念のポインタをここに引っ張って来て繋げる事は可能ではあるけどね。何処から繋いでるかはあっちからは確かめようが無いし』


どちらにせよ術者の負担は大きい。ちょっと話したいなどと乱用すればあっという間に力尽きてしまうのだと言う

352 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:51:52.97 ID:ewPdNPWDO
 
 
日進さんのアドバイスを受け重巡棲姫さんは富士さんを通して伝言を伝えるらしい


『また見てみる?』


「いえ…ただでさえこんな覗き見をしているのにしかも精神世界までというのはちょっと…」


『今更だと思うけど?まあどんな内容かはお姉ちゃんに聞けばわかるか』


「ほどほどにしましょうよ…」


精神世界に潜っている重巡棲姫さんは傍目からは今どんな状態なのかは判らない。だけど…


「泣いていますね…」


『前向きなように見えてもやっぱり苦しいものは苦しいんだろうね』


どんな会話が為されているのかまるでうなされているような、そんな顔をしていた


それからしばらくして富士さんがやってくると


【漣の様子はどう?】


と聞いてきた


『今は眠ってるよ。正直まだ起きるには早かったんじゃないかなと思ってる』


【そう…丁度良いわ、直接伝えてくる、その情景も含めあの子の心に】


そう言って富士さんは漣さんが眠る部屋へと入って行った


私は二人の邪魔をしないよう静かにして考える


漣さんには帰りを待つ人が居る。そして彼女を何より大切に思っている。おそらく想いの強さはあの小さな深海棲艦にも負けてはいないように思える

353 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:54:01.67 ID:ewPdNPWDO
 
 
あまりにも近すぎて、それこそ同じ身体を共有しているくらいに近すぎて、その想いはこれまで上手く伝わってはいなかったのかもしれない


いつか重巡棲姫さんの想いが正しく伝わった時、彼女は…漣さんはどうするのだろうか


あくまで拒絶するなら最悪の結果になるだろうか


もしも…それすら乗り越えられたならきっと彼女は私には想像も付かない本当の強さというものを得られるのかもしれない


どれだけ傷付こうと、何を失おうとも、前に進む事を止めない、本当の強さを


それはきっとあの鎮守府にとって大きな力となるだろう。失い尽した存在がそれでも進もうと言うのならきっともう誰も崩れたりはしないのだと
354 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/25(木) 05:56:23.66 ID:ewPdNPWDO
ここまで
こじつけ
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 12:08:59.54 ID:2VTBjWEjo
乙乙
開幕朝潮霊挨拶は卑怯、笑うわ
けどストレイボウ朝潮はNG
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/25(木) 12:30:21.56 ID:snM0wZHTO
ぽいぬの能力は早霜の前からあったと思う。元ネタ通りだと一回目食らったのは内臓系にダメージ入る技だし
覚醒すると生命力激増して死亡率低減、吸血とか捕食で回復がセットのビーストモードだと思われる
357 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:17:05.04 ID:X5txiLSDO
>>353から
 
 
「姉妹っていいですよねー」


『あーうん、そーだねー』


伊19さんや伊26さんのやり取りを見ながらY子さんにそう振ってみた


彼女はお姉さんの事をどう思っているのだろうか。姉である富士さんはY子さんにおっかなびっくり接している印象を受けた


それでも心配してか富士さんは時々顔を出してはY子さんに冷たくあしらわれて寂しそうに帰って行く


反抗期というやつだろうか


『今反抗期とか思ったでしょ』


「思っていませんよ」


やばい、読まれている


『別にいいけどさー。言っとくけど嫌いとかじゃないから、下手に甘やかすと調子に乗っちゃうからお姉ちゃんは』


「はあ」


何だか愚痴り始めたY子さん。やれ考え無しだの、余裕綽々な割に予想外の事態になると真っ白になるとか、結構流されやすいとか、いつか騙されて酷い目に遭いそうだとかだんだんその内容がどれだけ心配かにシフトしていく


『あと口下手で言い負かされやすい。朝霜なんかに好き放題言われて何も言い返せないとか不甲斐ない姉だよまったく…』


「好きなんですね、富士さんの事」


『…嫌いじゃない』


私が端的に感想を言うと何だか素直じゃない返答が帰って来た


私から見たら二人は結構似ている。顔立ちだけでは無く性格も。立ち居振舞いは逆だけれど


358 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:18:39.53 ID:X5txiLSDO
 
 
『…お姉ちゃんもあの伊19みたいに心配性な部分あるから。むしろ心配なのはこっちだっての』


「うふふ」


『なにさー。朝ちゃん、最近ちょっと生意気!』


「ちょっと羨ましいなって思っただけです。艦種的には私にも妹は沢山居ますが…それを実感する暇はありませんでしたから」


これでも私も朝潮型の長女だ。だけど妹達に出会う前にああなった。感覚的には一人っ子みたいなものだ


『…ずるいなあ、もう。そんな風に言われたら怒れないじゃん』


「ごめんなさい、でも正直な気持ちです」


Y子さんは拗ねたようにそっぽを向いて呟く


『…ほんとは、理想郷なんて…』


その先の言葉は私の耳には届かない。だけど何を言おうとしたのか何となく解ってしまう


本当は理想郷なんてどうでもいいから富士さんには一緒に居てほしい


そんな風に言いたかったのかもしれない


私がここに来るまで彼女はここでずっと一人で、富士さんは艦娘を救おうと世界中を駆け回っていて、彼女はそんなお姉さんをどんな気持ちで見ていたのだろう


もちろん富士さんが救おうとしている中に妹である彼女が一番に含まれているのは確実なのだろうが…


救うとは何なのだろう。その為に今寂しい思いをさせている。気付いた時には距離が開いてしまっていて昔のように話せない。想いは届かない


私に出来る事は何か無いだろうか…ここに来てまた新たな悩みが生まれてしまったようだった

359 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:20:07.22 ID:X5txiLSDO
 
 
村雨さんが朝霜さんと朧さんに責められていた


私だってエリートを鼻にかけたようなのは好きではないし皮肉のひとつも出るかもしれない。けれど少なくとも歩み寄ろうとしている人間にあの言い方は無いと思う


『あの鎮守府に居るための資格とか必要なのは初めて知ったけどねー』


「目に入らなかった。そういう意識を持っていないのが問題なんじゃないですかね。一般人の意識というか」


例えば介護経験がある人と、それまでそういう経験の無い人とはまったく視点が違うのだ


だけどそれは別に悪い事では無い。ただ村雨さんにはまだその視点が無いだけなのだ


「普通の鎮守府ならそれでもよかったんでしょうけど。敢えてそこに居たいというのなら今までのやり方では駄目なんです」


実際村雨さんは悪い人では無いと思う。春雨さんを押し付けようとしたのも悩んだ末の苦渋の選択なのだろう


そうで無かったらさっさと出て行ってあとは知らんぷりでも不思議では無い


『それと朝霜は何でか上から目線でお前要らないとか言ってるのかな』


「逆なんじゃないですかね…牙を剥いて威嚇して、それでも怖れずに手を差し伸べられる人間か測っている…そんな感じに見えます」

司令官や龍驤さんはどちらかと言えば来るもの拒まずだ。だけどそうやって誰彼構わず受け入れて、その相手に何か裏があったら…


ましてや鎮守府の誰かを傷付ける事態になるかもしれないと考えているのだろうか

360 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:21:27.93 ID:X5txiLSDO
 
 
『気持ちは解らないでも無いけどねぇ…。あれはあれで敵を作る結果になりかねないような』


「そうですね…あそこでもし村雨さんの怒りを買って権限でどうとかという話になったら…」


『村雨を殺す?』


「それは危険過ぎますね。白露型全員の怒りを買ってそれこそ鎮守府が血の海になります」


守るというのなら時には頭を下げる事も覚えるべきだとは私も思う。牙を剥いてばかりではいずれ危険と判断され駆除対象になってしまうかもしれない


朝霜さんがプライドを捨て頭を下げる姿は私には想像が出来なかったけれど


それから村雨さんは鎮守府を出て行くと言い出し白露さんに止められていた。何でも知らせてくれたのはあの朝霜さんらしい


『フォローを入れるくらいならあんな言い方しなければいいのに』

「不器用なんですよきっと」


不器用なりに鎮守府を守ろうと自ら嫌われ役を演じているのだろうか。素の部分もありそうではあるが


気配りを諭しておきながら自分はそれが出来ないなどという事は無かったのだ。私も彼女の事を少し誤解していたのかもしれない

361 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:23:12.48 ID:X5txiLSDO
 
 
「命の価値とは何なんでしょうね…」


飛鷹さんはかつて大切な友達を亡くしている。そして最近それは他者の、手術を受け持った病院に責任があるらしい


当時手術を受けていたのは二人、飛鷹さんの友人ともう一人、その際深海棲艦の攻撃により電力がストップ、非常電源で手術を続けられるのは一人だけだったらしい


病院側はそれを隠していた。それは何故か


「大物の政治家が娘を助ける為にお金を積んで優先させた…」


『口止め料も入ってるんだろうねぇ』


他人の命をお金で左右させたなどと知られたらとんでもないスキャンダルだ。そしてそれを承諾した病院側にとっても明るみには出せない


飛鷹さんと清霜さんがその友人の家を訪ねるとその政治家がご両親に土下座して謝罪していた。それを聞いて激昂する飛鷹さんを必死に押し止める清霜さん


「この場合誰が悪いんでしょうね…。誰だって赤の他人より身近な誰かを優先するのは当たり前です…けど…」


『まあ病院側だろうね、悪いのは。お金に目が眩んだのか知らないけど。比較的持ちそうな方を後回しにするくらいがまあ正しい判断だったんじゃないかな』


「後回しにされた方が間に合わなかったら…?」


『その時はそれまでだね。結果助からなかった方の親がどちらにせよ助かった方を恨んでいたよ』


そうなるのだろう。今回はお金で傾いたに過ぎず、他の要因なら許せていたという話でも無いのかもしれない

362 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:24:50.14 ID:X5txiLSDO
 
 
政治家さんはその一連を公表し改めて謝罪すると約束して帰って行った


飛鷹さんは一時危うい状態になっていたがさすが清霜さんというか見事に引き戻して見せていた


それから少ししてその事がニュースになりあの人は約束を守っていたと解る


「結局はあの政治家の娘さんも亡くなってしまって誰も救われなかった…。どちらかが生きていればその子の分までなんて言えていたんでしょうけど…」


『そんなものだよ…悲劇の後にまた悲劇なんてよくある話だよ』


「やりきれないですね…」


もしも飛鷹さんの友人の両親が更にお金を積んでいたら、相手が政治家ではなかったら、そんな無意味なもしもは単に立場が逆になるだけ


何故自分の子供が。何故そっちだけが助かったのだと、何故。と

363 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:26:30.24 ID:X5txiLSDO
 
 
「それにしても…」


私はモニターを見る。鎮守府の食堂でご飯を食べている龍驤さんの姿があった。しかし手足がしっかりと生えていた


「また食べに来ていたんですね。しかもタッパーまで持参して」


リュウジョウさん。例の謎の集団、アケボノさん達の仲間


私は詳しい事はほとんど知らない。だけど味方ではあるようで司令官も信頼していた


龍驤さんとリュウジョウさん。こうして見ると手足以外にも雰囲気や表情、微妙な話し方、何もかも別人だというのが私でも判る


何だか自爆して口を滑らせているのもまた龍驤さんではあり得ない事だ


彼女達は何やら不思議な能力を備えていてリュウジョウさんは変身能力があるらしい。なんと那智さんに変身して愛宕さんと会話をしていた


愛宕さんは若干の違和感を感じてはいたようだが偽物だとはさすがに思わなかったようで、そこは演技力もあるのだろう。相手が同じ龍驤さんでなければその違いは判らない


そして今度は龍驤さんに変身してなんと司令官を相手に試そうとしていた。しかも手足までそっくりになっている


『元々ある部分まで消して変われるんだねー。普通なら気付かないよこれは』


「ですね…私も多分判らないかも」


しかし司令官は一目で見抜いてしまう。さすがは司令官。誰よりも身近な相手を間違える筈は無かったのだ。匂いとまで言ったのはちょっと変態っぽいけれど


誰かの恋人とか家族とか身近過ぎる相手では騙し通すのはやはり難しいらしい

364 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:28:32.95 ID:X5txiLSDO
 
 
「そういえばリュウジョウさん、組織に潜入する為に変身して練習してたと言っていましたね」


そのリュウジョウさんは間宮さんのお弁当を沢山持ってホクホク顔で帰って行った。あれはきっと必ずまた来るだろう


『あんなでは多分すぐバレそうだけどね』


「変装して何処かに潜入するスパイにしてもバレた時の為の保険は用意するものですから大丈夫なのでは」


『だといいけどねー』


大本営にしろ組織にしろスパイやら諜報員やらを沢山使っているのだろう。私達艦娘が深海棲艦と戦っている間に人間も決して表には出ない戦いをしているのだと思う


そして同時に艦娘が深海棲艦だけでは無く人間同士の争いにまで駆り出されるようになって久しい


「ただ平和な海を守りたい、そんなシンプルな時期は本当に僅かでしたね」


力のある者は放っては置かれない。深海棲艦との戦争が終わっても艦娘の戦いは終わらないのだろう


これからも海の上ではなく陸上で死んでいく艦娘は増える一方なのかもしれない
365 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/04/30(火) 06:29:30.07 ID:X5txiLSDO
ここまで
会話が少ない
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/30(火) 12:03:38.61 ID:r3jloD6Mo
まいどおつおつ
朝霜に関しては早霜の出自やかけられまくってるらしい暗示と見えてる地雷が怖いんだ…
八島さんの名表示本編登場が成ったがこちらでどう言うのか楽しみです
367 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:20:56.97 ID:TcHKAzrDO
>>364から
 
 
「今のところ変わり無し…か」


私は朝潮。うん、いいわ。特に問題は無いみたい


眠り続ける漣さんのお世話を…と言っても今は魂だけの状態なので例えば身体を拭いたり排泄物の処理などの必要は無いので手間という手間はまったく無い


この間富士さんが重巡棲姫さんの伝言を伝えに来てから少しだけ表情が楽になったように見える


今度目覚めた時には以前より良くなっていればいいのだけど


彼女の布団を軽く掛け直し部屋から戻る


『様子はどう?』


「変わりありませんね…もう少し何かしら良い刺激があれば…」


『難しいねぇ…何が良く働いて何が地雷になるのか』


「そうですね…下手をしたらずっとこのままという可能性も…」


また司令官達から何かしらの訴えかけがあればとは思うけど窓口になる富士さんの気分次第でもある


まあなんだかんだ優しい富士さんなので受けてくれる気はするが

368 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:22:36.04 ID:TcHKAzrDO
 
 
「大本営の新兵器ですか…」


いつになく司令官と幹部さんが真剣な顔で話している。深海提督に対して核エネルギーを動力とした新しい兵器を使うらしい。しかもゆくゆくはその射程は地球全てをカバーするのだと


私も大本営が何か兵器を作っているという話は聞いた事はあるけど正直あまり信じてはいなかった。今の人類にそこまでのものは作れやしないと思っていた


しかし実際にそれは完成していて、いよいよ使われる時が来ていたらしい


「弾頭に使われないだけまだマシと考えるしか無いでしょうか…」


また核かと私は思う。被曝してあれだけの犠牲者が出たにも関わらずまだその力を使おうとしている。一度持ってしまった力は手放せないのが人間なのだろうか


「いつか司令官も言っていましたね、その力がこちらに向く可能性があるかもしれないと。味方なのに…」


『和平派の鎮守府を邪魔者として粛清するくらいの事はしそうだけどね』


「そんな事をしたら世界中から避難を…まさか…」


『恐怖による支配』


世界中の何処にでも攻撃出来るとなれば下手に刺激して自分達の国が撃たれたら…とY子さんは言う。そしてその力で持って軍事クーデター、そんな最悪な歴史のifが現実のものになってしまうかもしれない


「でも国内の世論はそんなの認めませんよね」


『まあ…下手をしたら自国内にその兵器を、しかも一般市民に向けて…なんて可能性もゼロでは無いのかもね』


「まさか…」


信じられない…とは言い切れない。例え味方だろうと不都合なら消してきた大本営なら或いは…と考えてしまう

369 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:24:15.80 ID:TcHKAzrDO
 
 
「どんな兵器か気になりますね…」


『じゃあちょっと見てみようか』


モニターの映像を鎮守府から切り替える。普段私はあの鎮守府の様子しか見ないし他は興味もあまり無い。だけど事が事だけに司令官達も無関係ではいられない


という訳で大本営の件の兵器がある施設を…


「…え?」


血の海だった


施設の廊下だろうか、床も壁も一面真っ赤に染まっている。その血溜まりには人間の身体の一部らしきものが沈んでいる


鋭利な刃物で切られたかのような綺麗な断面が見えた


「あれは…人間…?」


『艦娘もいるね…皆殺しかな…』


何者かの襲撃があったのは一目瞭然だ。そして廊下の奥には一人の女性が佇んでいた


「あれは…大和…ですね」


大和。艦娘の中でも最強の一角でありこの国にとって最も信頼されている存在の一人


その大和が一振りの刀を持ち血の海に立っている。考えるまでも無くこの惨状をもたらした張本人だ


「裏切り…?乱心して暴走した?」


『そういう訳では無いみたいだね。ほらあれ』


Y子さんが指し示した方から複数の人影が現れ、それに大和が指示を出している。あれは…確か


「…傀儡」

370 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:26:32.04 ID:TcHKAzrDO
 
 
傀儡…例の組織が擁する兵隊とも言うべき人形。人形と言ってもその戦闘能力は私などでは手も足も出ないくらいに強い。聞いた話ではあの朝霜さんですら相討ちに近いくらいの結果になった事もあるという


以前龍驤さん達が遭遇した頃はそこまでの強さではなかったらしいが、今ではもう出会ったら逃げる事を考えなければならない程に改良されているらしい


しかもそれが何体も、大和の指示に大人しく従っている。つまりあの大和は組織の…


その傀儡達が何やら見慣れない巨大な艤装を抱えて持ってきた。話の内容からあれが例の新兵器らしい


『なるほどね、組織は大本営の新兵器を奪いに来たか、もしくは使用不能にするのが目的みたいだね』


「組織も同じ情報を掴みいち早く動いた訳ですか…にしてもここまでするなんて…」


そして大和が何処かに通信をしていると突然窓ガラスが割れ、人影が凄まじい速さで飛び込んできた


窓ガラスと言っても軍施設のもの、間違いなく強化ガラスのはず。それをいとも簡単に砕いたのだ


そして飛び込んできた人影は一瞬で傀儡達を倒してしまう。しかも武器らしきものは持っていない、素手であの傀儡を…尋常では無い


駆け付けた大和と人影は対峙する。動きを止めた事でようやくはっきりとその姿を見る事が出来た


「見た事の無い艦娘ですね…確か大本営が新型艦娘を作ったとか何とか話は聞いた事があるような…」


いつだったか大演習の際にお披露目されたらしい新型艦娘、信濃、話に聞いた特徴と一致している


あの頃私は精神状態が最悪で暴走しかけて気絶させられていたので直接は見ていなかった

371 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:29:07.37 ID:TcHKAzrDO
 
 
その信濃と大和が睨み合っている。私でも解る…二人は強い。いや、強いなんてものじゃない、次元が違う


信濃が徐に手を翳すと何処からともなく一本の槍?が飛んできてその手に収まった。変わった刃の付いた槍だ。しかも飛ぶとはどういう原理なんだろう


『大和の持つ刀も、あの槍もただの武器じゃないよ。使い手を自ら選ぶ伝説級の武器』


「そんなのがあるんですね…もしかして他にも色々あったりして」


『どうだろうねぇ、巡り合わせ次第では選ばれる誰かがまた現れるかもね』


そうこう言っている間に信濃と大和が構えを取り―――


その姿が掻き消えたと思った瞬間、凄まじい轟音と共に映像が乱れる


「わっ!?わわっ!何ですかあれ!?」


『ひゅー、なかなかやるねぇ二人共』


その場に居ないはずの私にもその衝撃が伝わる。二人の姿は速すぎて私には捉えられない。おそらくはもう既に何十合も切り結んでいる


その度に映像は乱れ、はっきりとは見えないが周囲の施設がどんどん崩壊していくのが判った


「何なんですかあれ…何処の死神ですか…」


仮に私があの場に居たら最初の激突で吹き飛ばされて壁にでも赤い華を咲かせていただろう。もはや艦娘の範疇を遥かに超えている。艤装だとか砲だとか彼女達には必要無いのではないだろうか


二人はほぼ互角のように思える。これはいつまでも決着が付かないのではと考え始めたところで横槍が入る、あれは…

372 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:31:49.27 ID:TcHKAzrDO
 
 
「早霜…?あの大和を援護した?つまり…」


『組織の仲間だったか、最近仲間になったか…だねぇ』


新兵器の艤装を回収したと伝え、大和と共に姿を消す早霜


「瞬間移動?…あの早霜も大概化け物ですね…」


『強さ的には大した事無いんだけどねぇ、能力とか糸とか文字通り搦め手でいくタイプみたいだよねぇ』


残された信濃と共に施設が崩壊していく。逃げられたと悟ったのか僅かに顔を歪め、そして遺体に手を合わせていた


やがて彼女は脱出し、施設は完全に瓦礫の山となってしまった


「組織はまんまと大本営の新兵器を強奪。…これで破滅は回避されたという事ですかね」


『…』


「?どうかしましたか?」


『大本営が次の一手を打たなければ確かにこれで安心とも言えるけどね…』


「まさか…あれ以上の兵器をまだ隠し持っていると?」


『…』


何だかY子さんの様子がちょっとおかしい。こんな時富士さんが居てくれたら…
373 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:33:36.25 ID:TcHKAzrDO
 
 
それから少ししてY子さんの言葉は現実のものとなった


大本営は用意していたのだ、次の一手を


Y子さんがいつもとは違う様子で語り出す


『あははっ!組織はやっちゃったねぇ!あの信濃の艤装を強奪したせいであたしにお鉢が回ってきちゃったんだ!』


『とうとう起動してしまった!世界を終わらせる最悪の兵器が!』


映像に映るのは今まで見た事も無いような異様な兵器の姿。その砲口は組織の本拠地があるであろう地域へと向けられているという


そしてあれは言わば生まれたばかりの自分なのだと彼女は言う


「…つまり今ここに居るY子さんは未来から来た?」


『正しくは違う世界の未来から、いや、過去かもしれない。扉が開かれる前の、変わってしまう前の世界の未来から。ねぇ朝ちゃん、ターミネーターって知ってる?』


「ええと…確か暴走したAIが人類を滅ぼす為に過去にロボットを送り込んで人類の希望となる子供を生まれる前に殺そうとする…でしたっけ」


『まあそんな感じだね。人間が自分達の為に創り出した存在に滅ぼされかけている。そんな部分は似ているかな』


彼女はその未来で殺戮兵器として破壊の限りを尽くしたのだという。まさにあの映画のように人類は滅びかけ、艦娘達も敵味方の区別も曖昧に殺し合い、混沌とした世界になってしまっているのだと


『そんな未来を変えようとお姉ちゃんは過去に戻り理想郷の扉を開いた。結果未来は変わったかのように見えた。だけどあたしが生まれお姉ちゃんの妹になっていた。この世界にもあたしが存在する可能性が出来てしまっていた』

374 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:35:26.88 ID:TcHKAzrDO
 
 
このまま行けばかつての世界の未来のようになってしまうだろうと彼女は言う


『今まであたしの名前を呼ばせなかったのはこの世界であたしの存在を確定させたくなかったから…だけど結局は無駄だったね』


よく解らない事を言う。頭を捻る私にY子さんは


『つまり名も無き兵器ならあたしの因果は影響せず、破壊も容易だった。だけどよりにもよってあたしの名前を付けた事で存在はより強固なものとなってしまった』


数百万の命を奪った存在の因果があの兵器へと集まり始めているのだと


『だけどもう遅い。名前は呼ばれてしまった。存在は確定され、これからもその砲口は何処に向くか解らない』


「そんな…」


『まあそういう訳だから朝ちゃんももうあたしの事を仮名で呼ばなくてもいいよ。せっかくだから呼んでみたら?バリバリはしないから』


「はあ…」


いきなり普段の様子に戻った彼女がそんな事を言ってきた。名前…


「…」


『…』


「…」


『ん…?』


「わ…」


『はいダウト!どういう事!?あたしの名前知らなかったの!?』
375 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:38:30.23 ID:TcHKAzrDO
 
 
「だって最初に呼ぶなって言われてからずっとY子さんでしたし…そのうち忘れちゃいました」


『…』


怒ったのか、彼女は黙り込んでしまう。名前を忘れたなんて言ったのはまずかっただろうか。バリバリが来るかと身構える私


『…ぷっ、あはっ…あははははっ!』


「あ…あのう?Y子さん?」


珍しく爆笑する彼女に私は戸惑うばかりだった


『そっかー、あはは…。朝ちゃんの中ではあたしの名前はあれじゃないんだね』


「あの…差し支え無ければ、改めて教えてくれたらそう呼びますけど…」


『ううん、いい。ここではあたしはY子さんでいい。…ここだけでもあたしはあれじゃない』


嬉しそうに、悲しそうに彼女はそう言って笑う


『今の世界にはまだ希望がある。もしかしたらあれを破壊出来る誰かが居るかもしれない』


そうしたらあたしは…


そこまで言ったY子さんの顔を見た私は凍り付く。見覚えのある表情だったからだ


私が生前鏡で見ていた自分の表情と同じ


自殺志願者のような顔をしていた
376 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 06:39:56.73 ID:TcHKAzrDO
ここまで
解釈が合っているのか解りません
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/04(土) 14:56:43.81 ID:lqh+3YXXo

人格も無いただの殺戮兵器八島とおちゃめバリバリ世話焼きY子さんは別人
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/04(土) 16:46:52.63 ID:ZTasXaCJO
おつおつ
富士が過去に戻ったっていうのはどういうことだろ
379 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/04(土) 17:01:12.94 ID:TcHKAzrDO
>富士が過去に戻った

以前そういう描写があったような気がしましたが如月と混同していたかもしれません
元々富士は八島を知らなかったとするならここはやらかしですね
380 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/09(木) 05:46:20.61 ID:P2dcfLCDO
>>375から
 
 
はい朝潮です。Y子さんのカミングアウトから少し経ったけれど隕石が落ちたというニュース以外は特に変わり無く日々は進んでいる


彼女の物言いだとあの兵器が起動したら即世紀末みたいな想像をしていた私は少し肩透かしを食らった気分だ


『そりゃそうだよ、言ったじゃん、生まれたてだって』


「じゃあそこまで世界の危機という訳ではないんですかね」


『今は、ね。いつか誰かが言った、あれは兵器としては完璧過ぎるって』


今のあの兵器は単に核を撃ち出すだけのものに過ぎないらしい。だけど改良されてどんどん進化していくという


『今は人間の手で目標の座標を打ち込んで着弾までの演算をAIが担うだけの形だけどね』


「AIって…そんなの付いてるんですか?」


『当たり前じゃん。遠く離れた場所に核を撃ち込むなんてのを手動でやってるとでも思った?』


「それはそうですけど…それってY子さん?」


『ああ、違うよ。このあたしじゃなくてあくまであの兵器に搭載された人工知能。感情なんて存在しない、ただどれだけ効率的に敵を殺せるか考えるだけの』


「え…」


『いずれそのAIは改良され、敵を設定するだけで自動的に滅ぼしてくれるようになる』


今は発射コードのみで制御されてはいるがそれを知れば誰でも撃てるというのは完璧な兵器には程遠い、後々には兵器自らが考えその資格がある人間を判別するようになるという

381 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/09(木) 05:47:51.46 ID:P2dcfLCDO
 
 
『仮にその人間が殺されたりした場合も自らの判断で報復攻撃が出来る。そして破壊されないよう防衛機能も追加されて手が付けられなくなっていくんだ』


何とかするなら本当に今のうちしか無いんだよと彼女は言う


まるで他人事のように言っているがそれはつまり自分を…


私がそう考えていると点けっぱなしにしたモニターから慌ただしい声が流れた


それは突然行方不明になっていた、そして突然帰って来た呂500さんの話


「無事だったんですね…良かった」


数日前突然姿が見えなくなり必死に捜索していた司令官達。その安否が絶望視され始めた頃呂500さんは前触れ無く鎮守府に帰って来た


しかし自分が行方不明だったという自覚は無く、その間の記憶も無いらしい


念の為検査をしたところ…彼女は


「殺されていた…?そんな…今そうして生きているじゃないですか…」


『あの時雨と同じなんだね、生存の定義を何処に置くかは人それぞれだけど。少なくとも呂500は一度は死んだという事かな』


私とY子さんでは感情移入度が違うとはいえドライな事を言う彼女にちょっとムッとしてしまう


「…ああして生きているんです。だったら死んでいないんです」


我ながら子供っぽい理屈だとは思いつつそう言ってY子さんを睨む私に彼女は


『あー、ごめんね…別にそんなつもりじゃ無いから。帰って来た事は良かったとは思うよ』

382 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/09(木) 05:49:10.38 ID:P2dcfLCDO
 
 
「私こそごめんなさい…別に責めたい訳じゃなくて…その…」


お互いにバツの悪い空気になってしまう。すぐ感情的になってしまうのはまだまだ修行が足りないなと反省する


傀儡となってしまったという呂500さんに組み込まれている情報漏洩の装置。下手に除去する事も出来ず、結局はゴーヤさんに押し付けるような形で鎮守府から遠ざけるしか無いようだった


そもそもこの鎮守府で除去は可能なのかも判らない、下手をしたら今度こそ死んでしまうかもしれない


危ない橋を渡るよりは、問題の先伸ばしだとしても有効な手段が無い現状では無難な選択なのだろう


『遠ざけるにしても解体するにしても露骨過ぎると結局勘づかれるとは思うけどねぇ』


「じゃあ詰んでるという事じゃないですか…」


『ダミーの情報を送るとか器用な事が出来たらいいんだけどねぇ』


「その装置を除去したのがバレたらどうなるんでしょうか」


『さあ…それでいきなり攻めてくるっていうのも考えにくいけど…変わりの傀儡にまた誰かが差し替えられたりするんじゃないかな』


あの組織の事だ、また誰かを拐って傀儡にして送り込む。それを繰り返し気付いたら艦娘は誰も居なくなっていて完全に掌握されてしまう、他の鎮守府ではもしかしたら既にそういう所もあるのかもしれない


かつて漣さんが身を寄せていた鎮守府が正にそうだったらしいが、それがひとつとは限らないのだ

383 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/09(木) 05:51:19.32 ID:P2dcfLCDO
 
 
「ところでその整備士さんってどんな人なんでしょうね」


『おやぁ?珍しいねぇ、朝ちゃんがあの鎮守府以外に興味を持つなんて』


「別に興味なんて…ただちょっと気になっただけです」


とんでもない技術をただ人を救う為だけに使っているらしい。司令官以外にそんな人間が存在するとは正直信じられなかった。何度か助けてもらったというのも何か下心があっての事だと思っていた


『まあたまには別の所を見るのもいいんじゃないかな。ポチっとな』


Y子さんが映像を切り替えるとそこは深海棲艦の基地跡のようだった。所々修理の跡が見えるが深海棲艦の姿は見当たらない


その基地の手前に見覚えのある人影があった


「あれは早霜?どうしてこんな所に…」


『当然だけど帰って来たという訳じゃ無さそうだね。潜入かな』


「たった一人で…とは言っても彼女は不死身に近い身体でしたね…」


周囲を警戒しながら進む早霜、しかしその背後に音も無く現れたのは深海海月姫だった


「あいつが居るという事はここは深海提督の…?」


そして深海海月姫は早霜を羽交い締めにして動きを封じた。それからどうするのかと思っていると一瞬何かが光ったように見えた


「スタンガン?早霜は…気絶していますね」


『あの深海棲艦が何か使ったか、周囲に罠を仕掛けていたってとこだろうね』


そして深海海月姫は昏倒した早霜を抱えて基地の中へと入っていく
384 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/09(木) 05:53:08.66 ID:P2dcfLCDO
 
 
それから早霜は処置室のような部屋へと運ばれていく。そこにはまるで特徴の無い一人の男性…これが噂の整備士さんなのだろう…と別の深海棲艦と艦娘がスタンバイしていた


「この設備の揃い様は…もしかしてここは深海提督のアジトではなくあの整備士さんの隠れ家だったみたいですね」


整備士さんの側に控える深海棲艦の風貌は駆逐艦吹雪に似ている。整備士さんを司令官と呼ぶ彼女はおそらく秘書艦なのだろう


整備士さんは用途の解らない機械を幾つか用意してこれから早霜に何かをするらしい


そこからは私には何が行われていたのかまったく理解は出来なかった。何かの機械を使い検査をし、その後は…思い出したくない


「あ…頭をひら…うっぷ」


『大丈夫朝ちゃん?はいビニール袋』


あれだけ身体を弄くり回しておいて、今カプセルに入れられている早霜の身体には傷ひとつ残ってはいなかった。技術とかそういうレベルではない、まるで魔法だ


ようやく目覚めた早霜は自らの能力を全て消された事実を告げられショックを隠せないようだった


そしてこれまでのふてぶてしさがまったく消えてしまった早霜は朝霜に会いたいと懇願している


「艦娘の持つ特殊能力を消すとかとんでもないですね…。というかもう別人ですねあれ…」


『能力を手に入れた事で歪んでいたのか、歪んでいたからあんな能力を持てたのか…少なくとも今の早霜が素なんだろうねぇ』


必死に頼むその姿にほだされたのか早霜をカプセルから解放する整備士さん。全裸なのにはまるで無反応。まあさっきまで身体の内部まで見ていたのだから今更なのかも


そして整備士さんの側に控えていたもう一人の艦娘が更に誰かを呼びつけて―――

385 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/09(木) 05:55:07.02 ID:P2dcfLCDO
 
 
ブツン


「はぁっ…はぁ…」


私は後ろを振り向いた。僅かに開いた襖の向こうは暗い部屋。たぶん…おそらく…変わりは無いように思える


いや…そもそも彼女は眠っているのだ、見られたはずは無い、聞かれたはずは無い。呼ばれた声に返事をする慌てた声、その顔は…


「あいつは死んだはずじゃ…いやそもそも別人だったのかも…」


『別人ではないみたいだよ』


モニターは今さっき私が慌てて消したが、Y子さんは目を細めて何か別のものを視ているようだった


『あたし自身はそのテレビが無くても色々視られるからね。まあ疲れるから普段あんまりしないけど』


「なんであいつが整備士さんと一緒に居るんですか…」


間違ってもその名前はここでは出せない。話自体も出来たら避けたいくらいだ。…だけど知っておくべきは多分私だ。だって仲間なのだから


『出来損ないとして処分されたものをあの整備士が拾ってそこに復活したらしいよ。どうやら早霜みたいに色々弄られているようだね。ずいぶんまあ…これまた別人だねぇ…』


Y子さんの話ではあいつはもうほとんど無力化されて性格も善良なものになっているらしい。今までした事を後悔している旨の発言までしていたのだという


「…は、ははっ…」


渇いた笑いが出た。ついつい生前の事を思い出してしまう


後悔している?それで?あいつが私にした仕打ちで私の人生はめちゃくちゃになった。反省している?だから?それで私に何を返してくれる?


何も出来ないくせに

386 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/09(木) 05:59:11.72 ID:P2dcfLCDO
 
 
『――朝潮――』


ハッとして我に返る。しまった…まさかまたぶり返しそうになるなんて自分でも思ってもみなかった…


「ごめんなさい…たぶん私は今、自分に重ねてしまっていました…」


自分と彼女、どちらがより不幸かなどとむなしい比較なんてする気は無いけれど。取り返しが付かないという意味では共通しているのかもしれない


「奪われた側がここに居て、奪った側が生きている、なんなんでしょうねこれは…」


『…珍しい話じゃないよそんなのは』


「ええ解っています。この世は理不尽に溢れている事くらい身を持って知ってますしね…」


いつかの2000人の犠牲者もそうだ。彼等彼女等は何もしていない、それでも死ぬ羽目になった。それをした者達もまた生きている


それぞれにそうするに足る理由はあったのだろう。だけどそれに見合う結果を残せているとはとても思えない、つまりは無駄死にだ


「命までも代償にしておいて後悔してますは都合が良すぎますが…かといって死んで償えるものでもない」


『背負い続けるしか無い、いつか天から罰が下るまで、自ら終わらせる事は償いにはならない』


ああ…そうだ、彼女もそうだった。彼女も償い方を探しているんだ


この世界には加害者と、被害者と、傍観者しか居ないのかもしれない。それを変えようとする人間すらもそこに巻き込まれて苦しむ


この世は苦しみに満ちている。司令官…誰か…


私には何も出来ない、何処へも行けない。だったらせめて祈ろう、何の意味も無いのだとしても。私の大好きだった人に、大切な仲間に、お世話になった人達に、そして…私の事で罪に苦しむ人達にも


救いがありますようにと
387 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/09(木) 06:01:32.03 ID:P2dcfLCDO
ここまで
苦しくなってきました
自分で書いて解りましたがやはり本編作者はとんでもないですね…
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/09(木) 12:21:23.83 ID:+qFeWh7Go
おつでした
タシュケントの一時退場も伏線だったと考えると恐ろしい
389 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 05:56:48.10 ID:ksNFMuDDO
>>386から
 
 
「オッスオラ朝潮!…ちょっとY子さん!こういうの私のキャラじゃないんですけど!」


『いいじゃんいいじゃん、たまにははっちゃけてみなよー』


という訳で朝潮です。何だかY子さんがたまには変わった挨拶をしてみたらどうかと私にモノマネをさせてきた。…挨拶って言ったってここには私達しか居ないのに意味はあるのか


漣「もうだめだぁ…おしまいだぁ…」


私の隣では漣さんがハイライトの消えた目で最初のセリフのライバルキャラのモノマネをさせられていた。迫真というか何というか…それ演技ですよね?そうですよね?


あの後少ししてからまた目覚めた漣さんだったが以前よりは落ち着いている。どんな事にしろ時間というものはそれをある程度癒してくれるのだろう


あれから鎮守府では暴走した陽炎さんが霞のママ力に陥落したりその霞の負担を減らす為に雲龍さんが新しいママ役になったりしていた


「不思議ですねぇ…母親なんて居ない艦娘があんなにものめり込むなんて」


『逆に居ないからこその未知の体験だったからかもねぇ』


「みんなしっかりしなきゃといつも神経を張っているからああいう癒しは必要なのかもしれませんね」

390 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 05:58:05.05 ID:ksNFMuDDO
 
 
「球磨さん…まだやってたんですね…」


大井さんと球磨さんと北上さんが何やら話していた。その話の流れで球磨さんがいまだに下着泥棒をしているらしい


「さすがに食べるのは無理でも匂いとかぬくもりを…ひえぇ…」


わからない…文化が違う。というか怖い。いつだったか私の下着を食べていた球磨さんを見た時のトラウマが蘇りそうだ


「は…そうだ…そういえばあの鎮守府では私の部屋はそのままでしたね…ま、まさか…」


漣「…漣の部屋も…まぁ別にもうどうでもいいか…」


漣さんは何だかキャラが変わっている。まるで某中二キャラのようになげやりになっている。そのうち「そう、関係ないね」とか言いそうだ


北上さんは球磨さんに自分の下着を盗まれていたと知っても気にしていないようだった。それどころか自分達の情事を見られる事にすら無頓着なようで


「いやいやいや…いくら自分の失態を晒していてもそれとこれとは話が別ですよ…」


漣「…同意する」


どうやら北上さんは露出調教されていてそういう感覚を忘れつつあるようだ。憲兵さん…貴方はいったい何をしているのだ…

391 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 05:59:26.54 ID:ksNFMuDDO
 
 
その後一人になった球磨さんはまたも脱衣場で下着漁りを始めている。さすがに主不在とはいえ他人の部屋に侵入したりはしないようだ。そうだと思いたい


「まあそもそも洗濯済みならターゲットにはなりませんよね…」


漣「…あの球磨さんなら一度でも使用した物なら例え洗っていても匂いを嗅ぎ分けますよ…どうでもいいけど…」


漣さんが不吉な事を言う。司令官…ちゃんと鍵をかけてくれているだろうか。本当にお願い


そして雲龍さんと千歳さんの下着を脱衣かごから拝借した球磨さんはご満悦な顔で戻って行った


その後お風呂から上がった二人はちょっと困った顔をして仕方なく下着無しのままで部屋へと替わりを取りに行った。あの落ち着き様は初めてではないのだろう


「個人の趣味は自由ですけど…人に迷惑をかけるようなのはちょっとどうなんですかね…」


漣「…あの鎮守府は…そういう部分も許容する場所なんです。本当なら軍規に反します。他なら厳罰か、最悪解体されます…どうでもいいけど…」


「ああ…そうでしたね…。他では受け入れられない趣味や、せ…性癖の為に追いやられて来た艦娘も居ましたね」


自分の場合はそんな段階ではなかったから失念していた


「と言ってもやっぱり黙って持って行くのは良くないと思います。…聞かれても困りますが」


貴女の下着を堪能したいので貸してください、洗って返しますから。そう言われて貸す女が居るかどうか


食べられて消滅するよりはマシと考えるべきだろうか…わからない…

392 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:00:55.44 ID:ksNFMuDDO
 
 
漣「…前にも思ったけど、ずいぶん気楽にしているようですね…朝潮…」


暗い目で私を見詰めてくる漣さん。もう売り言葉に買い言葉にならないよう気を付けないと…


「前にも言いましたが…私はもう関わりたくても関われないんです。だからといって幽霊らしく暗くしていても仕方がないので…気に障ったなら謝ります」


漣「別に…怒ってる訳じゃ…。私の知ってるイメージとちょっと違うから…」


『まあこれが本来の朝ちゃんなんだよきっと。色々なしがらみから解き放たれた』


漣「しがらみ…」


今や私よりもむしろ幽霊らしい雰囲気で漣さんは何かを考え込んでいる。今の彼女が考える事はろくな事じゃない気がする


「何度でも言いますが…死んで楽になる事なんてありませんよ。一時の苦しみから逃れた先に待っているのは永遠の苦しみと後悔です」


『その苦しみからも逃れたいならもう成仏して生まれ変わるしかない。けどね、未練や執着、恨みがある魂はそう簡単には成仏すら出来ないよ』


漣「生きてても苦しい…死んでも苦しい…。じゃあこの世界って何なんですか…」


すがるような目を向け私達に問いかける。彼女は答えを求めている、進むか止まるか判断しかねている


『あたしにもそれはわからない。存在してしまった以上腹を括るしかない。だって最後の最後には自分を救えるのは自分しか居ないんだ。どれだけ手を引いてもらっても歩き出すのは自分なんだから』


漣「…」


漣さんはそれを聞いてまた何かを考え込んでいる。私達の言葉はどこまで届いているのだろうか…

393 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:03:10.29 ID:ksNFMuDDO
 
 
ある日の鎮守府に突然早霜が現れた。朝霜に掛けた暗示を解きたいのだと必死に訴えかけている


「早霜って確か…どうしてここに…」


『ふむ、どうやら早霜が頼み込んで送ってもらったみたいだよ』


内容をぼやかして話す私とY子さん。もう既に知っているのか、まだなのか、どちらにせよなるべく避けようというのが私達の結論だ


Y子さんが私に教えてくれた話では整備士さんは呂500さんが傀儡化された事に勘づいたらしくこの鎮守府を警戒し始めたらしい


下手をすればもう協力を仰ぐ事は出来なくなるのかもしれない。それどころか敵視までされたらどうなるのだろう


鎮守府の皆やアケボノさん達に囲まれたまま朝霜を説得する早霜


しかしやはりこれまでの行いが悪すぎたのだ。受け入られる事はなかった。そしてアケボノさん達は早霜を捕まえ姿を消した


『…早霜はアケボノ達の仲間まで手にかけてる…あれはもう殺されるね』


「…えっ」


私は龍驤さんに抱き締められ泣きじゃくる朝霜さんの姿を見ながらその映像を切り替えた


そこが何処かはわからない。早霜はあの女幹部――菊月やアケボノさんリュウジョウさん、その他見た事が無い艦娘達に囲まれ、詰問されていた


彼女達が聞くのは自分達の司令官である深海提督の安否と居場所


しかし

394 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:04:58.78 ID:ksNFMuDDO
 
 
整備士さんが自分達の安全の為に居場所に関する記憶を消していて…今同じ場所に居るらしい深海提督の居場所も当然記憶が無かった


それでも朝霜さんに会わせてほしいと懇願する早霜に菊月さんは手を触れ、そして――


菊月さんから錆びのようなものが早霜の身体に移り凄まじい速さで侵食していく


「あれが彼女の能力…?」


瞬く間に全身が錆びに覆われ顔半分まで錆びが登っていく。早霜は涙を一筋流し朝霜さんの名前を呼びながら、そして――


「っ!」


『朝ちゃん!?ちょっと待って!漣!朝ちゃん止めて!』


漣「え…え?」


私は部屋を飛び出し三途の川へと向かう。特に何か考えがあった訳でもなかったがとにかく我慢が出来なかった


私は別に早霜と知り合いでもなんでもないし思い入れなんて無い。司令官達にとって敵なら私にとっても敵だ


だけど


朝霜姉さん――


あの最期の姿を見て私はいても立っても居られなくなっていた


川沿いに辿り着いた私は辺りを見回す。相変わらず死者の魂は途切れる事が無い。そうしているうちに漣さんが私に追い付いてきた

395 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:07:29.50 ID:ksNFMuDDO
 
 
漣「…いきなり飛び出してどうしたんですか?まさかあの早霜まで連れてくるつもりですか?そんな事が出来るくらいなら…」


そこで言葉を切る漣さん。言いたい事は判る。あの小さな深海棲艦の魂の事だろう


実際あれからちょくちょく見に行ったりもしているが彼女の魂は見付かる事はなかった。そもそも来ているかもわからないのだ


もし見付かれば彼女にとってこれ以上無い救いとなるだろうが…


その場合、現世に帰ろうとする意志すら完全に捨て去りここで永遠に過ごすと言い出す可能性は高いように思う


そうしていると突然辺りの空気が変わった


川を渡る死者の群が怯え始める。空から何かが聞こえる。何かが落ちてくる


ああああああああああああああああああああああああああああああ朝霜姉さあああああん嫌あああああああああああああああ!!!


無数の死者にまとわり憑かれた早霜が川へと落下していく


あああああゴボッあああああ嫌ごめんなさい朝霜姉さんごめんなさいあああああ嫌あああああゴボッ助け――


落下した水面からも更に死者の腕が伸び、早霜はあっという間に水底へと引きずり込まれてしまった


連れて来るとか、話すとか、そんな暇すらありはしなかった

396 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:11:10.76 ID:ksNFMuDDO
 
 
『まったく…いきなり何をしようとするの…朝ちゃんは』


ゴンッ!!!


ようやく追い付いてきたY子さんが私にゲンコツを…お…


「お…おおおおお…!」


漣「うわ…下手したら死にますよあれ…」


「も…もう死んでますけどね…おおおおおお…」


うずくまりながらも突っ込んでしまうのは私の性格がそうさせるのだろうか


『早霜自身が言ってたでしょ、殺し過ぎたって。そんな魂に下手に近付いたら一緒に引きずり込まれるよ、助けようにも重くなり過ぎて引っ張り上げるのだって難しいのに』


「でも私は…ごめんなさい!」


再び拳を振り上げて見せたY子さんに反射的に謝る私


『やれやれ…あれは正しく自業自得だから同情の余地は無いのにさ…殺したのも自身の快楽の為だし』


「それはそうですけど…」


漣「生まれつきそうなら…それは誰の責任なんでしょうね…」


『それは…まあ、ね…』


彼女を、早霜をそういう風に生み出した世界が悪いのだろうか、止められなかった人間が悪いのだろうか


『そういうのもやっぱり自分を救う自分なんだよ。あんな事してろくな死に方しないと土壇場まで気付けなかった…。それに気付かせてあげられる人間が居なかったのが早霜の不幸かな…』
397 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:12:41.74 ID:ksNFMuDDO
 
 
早霜の一件から朝霜さんはやっと安心して過ごせるようになったのかみるみる元気を取り戻していった


結局早霜が固執していた暗示とは何だったのか謎は残った


朝霜さんを助ける為に暗示を解く、では解かなければどうなるのか…何にせよ早霜はもう居ない。それを聞く事はもう出来ない


そしてつかの間の平穏が戻った鎮守府にアケボノさんが現れ整備士さんの居場所を聞いてきた


「ずいぶん急いでいる様子ですね、何か緊急事態でしょうか」


『あの子達の緊急といえばあの子達の提督の話しか無いよね』


司令官達は整備士さんの居場所を知らないと答えるとさっさと姿を消してしまう


「ちょっと気になりますが…整備士さんかあ…」


漣「…?」


下手に整備士さんの所を見て漣さんがあれを見たらどうなるか、それが解らない程私は鈍くはないつもりだ


『…大丈夫、今は居ないみたいだよ。というかアケボノ達は辿り着けそうにないみたいだね』


「そうなんですか…?」


映像を切り替えてみると、アケボノさん達は整備士さんの秘書艦である吹雪さんに追い払われようとしていた


「嘘…たった一人であの人数を完全に圧倒していますね…。アケボノさん達は決して弱くはないのに…」


むしろ私よりもよほど強い。チームワークでなら朝霜さんにも負けないと豪語していたらしい


それを一人で圧倒出来るあの吹雪さんはつまり朝霜さんよりも強いという事になるのだろうか

398 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:14:43.38 ID:ksNFMuDDO
 
 
アケボノさん達は何でか早霜の名前を連呼していた。まさかあれで警戒心を解こうとしているのか


「えぇ…もうちょっと他に何かあるでしょうに…」


『予想外にあの吹雪が強くて完全に浮き足立っちゃってるねあれは』


結局更に警戒を強めた吹雪さんに押される形でアケボノさん達は退散せざるを得なかったようだ


その後整備士さんの潜伏場所らしき地点は爆破され完全に見失ってしまい消沈するアケボノさん達


『ふむ…どうやらあの鎮守府込みで警戒されちゃったみたいだよ。呂500の傀儡化の件のせいだね』


漣「そんな…あれだけ協力的だったのに今更…?傀儡なら潮だって居たじゃないですか」


『潮の場合はこちらから保護した形だけど呂500は送り込まれてきた、しかもそれを把握していてなおかつ処分もしない…。理由はどうあれ外から見たら疑われても仕方ないよこれは』


「これからは何かあっても彼等の協力は仰げませんね…下手をすれば敵対してしまう可能性も…」


問題はその事を司令官達はまだ把握していないという事だ。自分達の知らない間に敵視され、無警戒に接近し、味方だと思っている相手に問答無用で攻撃を受ける


あの吹雪さんの攻撃力をまともに食らったら無事では済まないだろう

399 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:16:02.73 ID:ksNFMuDDO
 
 
そうしている間にY子さんが何かに反応した


『使ったか…来るよ』


「え…?」


私が聞き返そうとするとモニターから轟音が響く。爆破されいまだ燃えている基地施設に突然光が降り注いだのだ


「うっ…!」


漣「く…!」


遥か彼方から巨大な光の帯が基地のあった島に突き刺さり飲み込んでいく。その眩しさから目を閉じる私達


少しして再び映像を見ると基地のあった場所には何も残ってはいなかった。それどころか島の形も少し変わってしまっているように思える


「これは…いったい…」


何処からかの砲撃があったのは確実だろう。そしてこの威力…思い当たるものはひとつしか無かった


『そう、あれが使われた。アケボノ達が焦る訳だね、でも結果的には脱出させられたから結果オーライなのかな』


「アケボノさん達は…」


『察知していち早く帰っていったよ』


「そうですか…よかった…。それにしても結構頻繁に使いますね…」


『今の大本営の最大の武器はあれだけだからね。使うしかないといったところかな』


あんなのをポンポン使って大丈夫なのだろうか。一発撃つだけでも鎮守府なら資源が吹き飛びそうだ
400 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2019/05/18(土) 06:20:28.31 ID:ksNFMuDDO
 
 
所変わって映像は大本営の茶室。菊月さんがあれの情報を集める為に大本営に戻ったところ信濃さんと出会い


そしてどういう訳か組織の大和がそこに現れた


「菊月さんと信濃さんは解りますがこうまで堂々と大本営に現れるなんてどういう神経をしてるんでしょう…」


『例え見咎められても自分なら問題無いと思ってるんじゃないかな』


実際あの大和を止められる戦力は大本営にも多くはないのだろう。仮に戦闘になったらどれだけの犠牲が出るのか想像もつかない


その大和は今回は話し合いに来たと言ってお茶なんて立てているが信濃さんは警戒して手を付けようとはしなかった


「戦争を続けて均衡を保ち、武器を売りそれが平和と…。確かに戦争が終われば私達艦娘は必要無くなって数は減らされるでしょうが…」


『どうかな…深海棲艦との争いの次はまた別の争いに移行するだけだと思うよ。その際貴重な戦力である艦娘は今以上に必要とされる』


「そうなったら艦娘の敵は人間と、そして同じ艦娘になりますね…」


『大本営にはあれがあるけどそれだけじゃやっぱり足りない。どうしたって兵隊は必要になるからね』


そうして武器を売って国が潤ってもその武器が向けられるのが誰になるのか、また沢山の人や艦娘が死んでいくのだ。平和などとはお世辞にも呼べない


話を聞いた信濃さんが激昂して大和に斬りかかる


「艦娘になったからなのか元々なのか…血の気が多いですね」

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