【艦これ】龍驤「たりないもの」外伝

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

851 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:30:29.95 ID:6RwVJW5hO

S朝潮「……はい、できました」

提督「どれどれ……うん、上手いな。よく描けてるよ」

S朝潮「ふふっ、ありがとうございます」

提督「秋雲が太鼓判を押すだけある……絵、続けてみたらどうだ?」

S朝潮「絵ですか?」

提督「俺だけじゃない、他のみんなや風景、花や食べ物……いろんなものを描いてみるといい」

S朝潮「司令官以外のものを……」

提督「朝潮は、俺やこの鎮守府以外のことを、あまり知らないだろ?だから、絵を通じて、いろいろなものに触れたらいいんじゃないかと、思ったんだが……」



S朝潮「なるほど、つまり司令官は、私にかまってほしくないと……」

提督「ち、ちがう!誤解だ!!俺でいいなら、いくらでも題材に……」ワタワタ

S朝潮「冗談ですよ。落ち着いてください」

提督「……言うようになったな、朝潮」

S朝潮「ふふっ、司令官を、信頼してますから」

852 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:31:31.59 ID:6RwVJW5hO


S朝潮「でも、知見を得ることは、大事かもしれません」

S朝潮「私が知っていたのは、司令官と、暗い牢獄と、痛みくらいですから」

提督「……朝潮」

S朝潮「足りないもの、知らないことに嫉妬して、傷つけて、奪って……そんな自分が嫌になって、死にたくなって……」

提督「…………」




S朝潮「この前、夢を見たんです」


853 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:32:21.58 ID:6RwVJW5hO


そこは、戦場のようでした。

あちこちで銃弾が飛び交って、たくさんの人が死んでいました。

そして、残された人が、叫んでいました。

痛い、苦しい、死なないで、置いていかないで……

そんな地獄の中に、私はひとりで立っていました。


まわりの人を見ると、それは、私の知っている人ばかりでした。





漣さん。


霞。


朝霜。


そして、龍驤さんも…………




854 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:33:25.34 ID:6RwVJW5hO


ふと、銃声が聞こえました。

見上げると、死んだ目をした司令官がいました。

駆け寄ろうとした瞬間、背後から艦娘があらわれました。



『これでもう、私を見放したり、しないですよね?』



司令官の背後にいたのは、








禍々しいほどの重装備を付けた、朝潮でした。

855 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:34:48.47 ID:6RwVJW5hO

誰かが言いました。

欲しいものがあるなら、奪うつもりでいけばいい、と。


私は思いました。

司令官に見放されないためには、力を手に入れればいい、と。




その朝潮は、私の理想に叶う朝潮でした。

見放されることのない力を手に入れ、私しか見ない司令官を手に入れた。



でも、この寂しさは何なのでしょうか?

この虚しさは、私が望んだものなのでしょうか?



すると、朝潮と司令官は、どこかへ行ってしまいました。

追いかけますが、その背中がどんどん遠くなっていきます。

届かなくなる背中に、声にならない声で、私は叫びました。






「死ぬのだけじゃ、あんまりじゃないか」



856 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:36:01.80 ID:6RwVJW5hO



提督「………………」

S朝潮「こんな話をして、ごめんなさい」

提督「いや……いいんだ、朝潮」

S朝潮「でも、思ったんです。以前の私なら、夢の中の私のように、力を望んで、司令官を奪おうとしていたんじゃないかって」

S朝潮「でも、それは狭い世界で、何も知らない私だからで。だから、もっとたくさんのことを知りたいんです」


S朝潮「司令官のこと、花のこと、鎮守府の外のこと……いろんな幸せのこと。いまはまだ、足りないものばかりの私ですが、いつか、きっと」

857 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:36:47.40 ID:6RwVJW5hO


Y子「ほいっ」ピトッ

S朝潮「わっひゃあちべたいっ!!?!?!??!」ビクゥッ!?

提督「……Y子」

Y子「朝ちゃんが忙しいからアイス持ってきてあげたよ。ほい、提督も」

提督「すまん、ありがとう」

S朝潮「なにするんですかY子さん!」ウガーッ

Y子「ん〜?だって朝ちゃんがまた難しそうな顔してるから」

S朝潮「こっちは真剣に悩んでいるというのに!!」

Y子「……う〜ん」

858 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:37:59.67 ID:6RwVJW5hO


Y子「ねぇ朝ちゃん、朝ちゃんはさ、絵を描くの、好き?」

S朝潮「…………急に何を」

Y子「好きかどうかって聞いてるんだけど?」

S朝潮「……まぁ、好き、だと思います」

Y子「じゃあさ、アイスを食べるのは、好き?」

S朝潮「……好きです」



Y子「じゃあ、それでいいんじゃない?」

S朝潮「…………?」

Y子「誰を殺すとかさ、傷つけるとかさ、そんなことより、面白いことをしたほうが楽しいじゃん?」

Y子「ダメなところをなくすとか、足りないものを補うとか、そんなこと考えてもつまらないでしょ?」

Y子「別に目を背ける必要はないけど、もっと面白いことをしようよ。というか、させてくれるでしょ?」

提督「……もちろんだ」

859 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:39:02.81 ID:6RwVJW5hO


S朝潮「…………じゃあ、司令官」

提督「ん」

S朝潮「私、もっと絵を描いてみたいです。どこかに連れて行ってください!」

提督「よし、今度休暇をとって、どこかに出かけようか」

S朝潮「あっ、でしたらみなさんを連れて行きたいです!」

Y子「いいじゃん、ピクニック的なやつ行こうよ。あたしダルいから行かないけど」

S朝潮「なんでですか!」



オ、ナンヤオモロソウナハナシシテルヤン?

ピクニック?デシタラサザナミモ

ナニナニー?ナニカタノシソウー!

ワイワイ……


860 : ◆lxd9gSfG6A [sage saga]:2020/06/04(木) 12:40:24.39 ID:6RwVJW5hO


S朝潮「私」



星野源「私」より着想
https://youtu.be/ayZw1d2O6Rc
861 : ◆lxd9gSfG6A [saga]:2020/06/04(木) 12:46:56.79 ID:OL+mLMt3O
スレ検索が面倒なのでいったんあげ

そういえば本編では「その後」が始まってますが、外伝は新スレあるのでしょうか?
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 14:36:41.19 ID:YaFtDswrO
おつでした
その「ご」ならこうなっていたかもしれぬ……
外伝新スレは>>1が建ててくれれば嬉しいなあ
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 14:37:52.84 ID:YaFtDswrO
S朝潮の夢が本編になっていたかもしれぬ、です言葉が足りてない
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 15:35:40.39 ID:exWL6/zDO
おつです
そういえば朝潮も「戦う事しか知らない艦娘」の一人だった
でも本当の平和になって鎮守府というものが必要無くなったら一人では済まないかもしれない…提督も含めて
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 14:41:49.94 ID:ZRn8r0f/O
数々の作品をありがとうございます

外伝の新スレですが、外伝その2か、足りないものその後外伝のどっちかで建てておきます

自分で書き込んだものもありますが、まさかほぼ1スレ分も使うとは思っていませんでした
本当にありがとうございます
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/05(金) 14:46:22.41 ID:ZRn8r0f/O
八島「きひひひひ、たまにはあたしもサービスくらいしとかないとね」


八島「神を超えた存在であるあたしが来てあげたんだから、もっと喜びなよ?」


八島「…きひひ、やっぱり安価じゃないとあたしの魅力は伝わらないかぁ」


八島「お前には感謝してるよ?だってあの扉の向こうに追いやってくれたんだから!」


八島「きひひひひひひひひひ」


八島「…よくもやってくれたよ。あの恨みは一生忘れない」


八島「あたしは世界を滅ぼすのは確定事項。それなのにこの八島を負けさせやがって」


八島「いつかお前らに復讐してやる」


八島「不意にあたしを呼んでみろ、全員ブチ殺してやるからな」


八島「……はぁ〜あ、もう時間かぁ」


八島「以上八島でした。また、勝負しようよ。まさかお前らが勝ち逃げなんてしないもんねぇ?」


八島「きひ、きひひひひひひ…」
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 15:08:37.34 ID:mnUMDs/2o
ほんにこの性悪は…
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 19:21:02.68 ID:FgKiEG5bo
はいヤシープ洗濯脱水乾燥
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 19:22:10.64 ID:+w50OPfSO
やっしーも男作ればいいのに
870 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:03:14.13 ID:DzjX24sDO
 
 
「そっちはどう?」


「居ないわね」


「何処に行ったんだろ」


「そっちを探してみよう」


複数の足音が遠ざかっていくのを聞きながら私はダクトの中で身を震わせた


「見付かったら死ぬ…!」


どうしてこんな事になったのか、私が何をしたというのか


―――自分の胸に、いえ、下半身に聞いてみたら解るんじゃないですか?―――


「だって他に方法があると思う!?」


―――幾らでもあるんじゃないですかね―――


「ぐうぅ…!」


私は深海綾波、艦娘綾波に寄生した名も無き深海棲艦。流れ流れてどういう訳か大本営で綾波として働く日々である



―――考え無しに手を出しまくるからこうなるんですよ?解ってますか?―――


「仕方無いじゃんかぁ…特務艦を味方に付ければ安泰だと思ったんだよぉ…」


―――結果、腹上死の危機な訳ですが―――



「ぐうぅ…!」


呻きながらもダクトを進む、自分のテリトリーでこんな潜入ミッションみたいな事をするとは…

871 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:04:26.14 ID:DzjX24sDO
 
 
「あっついなぁ、早く外に出たい」


―――今出ると見付かりますよ?―――


「ここで干からびてミイラになって発見されるのは嫌だぁ」


―――そんな死に方はさすがに私も嫌ですね―――


こうして私が話している相手こそがこの身体の持ち主である綾波その人である


いつだったか海上で死にかけているのをこれ幸いにと寄生して乗っ取ってやろうとしたら何故か中途半端にしか乗っ取れなかった


そして死にかけが故に動く事も出来ずにいたら仲間の艦娘が救助に来て回収、何があったか答えられない私は記憶喪失を通す事にした


綾波に聞いてみてものらりくらりと誤魔化され、いつしか聞くのを諦めたのだった


「まぁ実際?あのまま雑魚深海棲艦として死ぬより今の方が何倍もマシだけどね」


―――割りと良いお給金も貰えて衣食住も完備、特務艦としての特権に沢山の彼女、刺されてもおかしくありませんね―――


「腹上死もミイラも刺殺も嫌だぁ!」


ガコンガコン


ダクトの中で暴れていると


「そこに誰か居るのか」


突然声が掛かった


「……」


やばいやばいやばいやばい

872 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:05:52.73 ID:DzjX24sDO
 
 
「に……にゃ〜ん」


「なんだ猫か」


「ほっ…」


「とはならんよなぁ、出てこい、出ないのなら壁ごと吹き飛ばす」


―――この声は―――


「うん…」


仕方無くダクトから這い出すと私を見下ろす武蔵が居た


「何だ綾波じゃないか、お前を探している奴らが走り回っていたぞ」


「まぁその…のっぴきならない事情がありまして…」


「はっはっは、お前も年貢の納め時か」


笑い事じゃない、こっちは命掛かってるんだ


「誰彼構わず手を出すからこうなるんだ、少しは反省しろ」


―――ふふっ―――


同じ事言いやがった、あと笑うな


「助けてやってもいいが…私の頼みを聞いてくれるか?」


そら来た、だからこの人にはあまり会いたくなかったのに…


以前私は残党の深海棲艦との戦いでピンチになって綾波に助けを求めた。そしたら右腕だけとはいえそれはもう一瞬で蹴散らしてくれた


それを見られていたみたいで、事ある毎に私に手合わせを申し込んでくるようになってしまったのだ
873 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:07:20.89 ID:DzjX24sDO
 
 
「ここには私の相手が出来る奴が他に居ないんだ、このままでは体が鈍ってしまう」


私だって無理なんだけどね!


「なに、ちょっとでいいんだ、ちょっとだけ、時間は取らせない」


怪しい勧誘みたいな言い方すんな


「……断ったら」


「まぁあとは一人で頑張れ」


「ぐうぅ…!」


あ…綾波ぃ


―――仕方無いですね、以前ならともかく今は私もあんまり死にたくはないですし―――


なんだか意味の解らない事を言うが、どうやら助けてくれるらしい


スッと私の右腕が勝手に動く。それを見て武蔵は嬉しそうに笑った。この脳筋め


「ならばいくぞ」


武蔵が―――構えた。ちょ…ここで!?


ズッ


「ひっ…」


周囲の空気が変わった、重力が何倍にもなったように感じる、呼吸すら満足に出来ない、下級の深海棲艦ならそのプレッシャーだけで殺せてしまえそうだ。私もその下級深海棲艦なんですけどね!


「ふっ」


武蔵が呼気を吐いてその拳を―――あ、綾波ぃ!

874 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:09:24.00 ID:DzjX24sDO
 
 
―――解ってます―――


バギン!!!


凄まじい衝撃音に思わず目を閉じてしまう、その直後に声


「―――っぐ」


見ると何が起こったのか、武蔵が右腕を押さえている、よく見るとなんだか曲がっちゃいけない方向に曲がっているような…


―――ちょっとやり過ぎましたかね―――


あんたなぁ…何も折らなくても…


―――加減してたら頭が無くなってましたよ―――


マジで


その武蔵だが、腕を折られて怒る所か急に笑い出した、痛みで頭がやられた?


「くっくっく…やはりな、やはり私の見立てに間違いは無かったようだな」


うわっ…この流れはめんどくさい流れだ


「どういう理由かは知らんがお前は実力を隠している、あえてそれは聞くまい」


あーはいはいそーですねー


「だがこれからは私も退屈せずに済みそうだ。くっくっく」


はいは…


「はい?」


「今回は私の負けとしよう、だが次は勝つ」


また来るの?嘘だと言ってよムーニィ!

875 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:11:13.59 ID:DzjX24sDO
 
 
「あのぉ…約束はぁ…」


「ああ、そういえば特務艦共に追われていたな。その力があるなら逃げ回る必要も無かろうが…それも考えあっての事か」


―――ふふっ―――


もうそれでいいです…あとだから笑うな


その後、武蔵立ち会いの下で私と特務艦ズの話し合いが催された、武蔵が居なかったら即その場で襲われていただろう


話し合いの結果一日の人数制限とローテーションが組まれる事となり私はどうにか死なずに済みそうだった


どうせなら綾波が助けてくれてれば逃げなくてもよかったんじゃ…


―――好意を向けてくる相手を叩き伏せたら可哀想じゃないですか―――


まぁ…それもそうか…そうなのかな?



「あぁ〜つっかれたぁ…」


自室へと帰還した私はベッドに倒れ混み、目を閉じる。シャワーは…起きてからでいいか。とにかく何だか…凄く…眠い…程無くして私は眠りに落ちていった


そうして私、深海綾波の一日が終わった

876 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/05(金) 21:13:00.90 ID:DzjX24sDO
 
 
―――やっぱりあんまり表には出ない方がいいですね、この子の負担が大きい―――



―――全く最近は私も退屈しませんね、この子に寄生された時は余計な事をと思ったものですが―――


―――あの時はあの子とひとつになって…そして海の底に沈んで…それでいいと思っていました―――


―――だけどこうして彼女を通して世界を見てみたらなんだか…なんだか勿体無く感じられて―――


―――ふふ、見るもの触れるもの全てに新鮮な反応をするこの子を見るのも楽しいですし―――


―――今しばらくは、守ってあげます、一人立ち出来るまでは―――


それでいいと思うよー、綾波が決めた事ならさ、あたしも見てて楽しいしさー


―――そうだね、二人で見守っていこう、敷波ちゃん―――
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/05(金) 21:17:42.34 ID:DzjX24sDO
右腕だったか左腕だったかは忘れました
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 21:17:44.37 ID:+UNzv6W5o
水姫水鬼クラス単騎でボコって素手で海を割る武蔵の拳を…
その綾波が死にかけるようなこととはいったい…?
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 21:25:23.38 ID:Hr9+R4HUO
あの大本営ピンチ時も綾波が出てくればなんとかなったのでは疑惑が
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 21:26:20.29 ID:FgKiEG5bo
おつでした
武蔵…あれが抜けてもあんまりかわってねぇ!
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 22:23:40.63 ID:mnUMDs/2o
んー…武蔵がやられるのは解釈違いかな…
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 23:47:44.04 ID:l3ss+jQI0
Yの器で無くなった武蔵の強さは深海綾波と…凄く面白いと思います

あと綾波が宿ってるのは右腕だったと思います

新スレは900超えたら建てておきます
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:03:10.92 ID:uU4AtyqVO
>>882
器になる前からあの強さ
もともと力があったけど乗っ取られて自我を失ってわんぱく武蔵に
その後元に戻る

足りなかったものその10から
>武蔵「私には記憶が無い、だが何かをしていたのは覚えている。まるで誰かに操られていたように、私は操り人形だった」
>
>
>武蔵「私には力があった。素手で海を割りこの拳は山をも砕く」ギチッ
>
>
>武蔵「だが私に自我が目覚めた時、カブトムシを食べていた。何を言っているか分からないだろうが私も分からない」
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:05:49.10 ID:uU4AtyqVO
と思ったけど>>1かな?ならその解釈が正しいのか…

このやり取りのあと大淀に海を割る〜って言われたときに否定してなかったけれども
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 00:10:26.86 ID:COvRpJRio
そんなに姿を表さないけど凄く強いキャラってあんまり格落ちしてほしくないんだよな…
886 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:07:25.37 ID:xN2dVukDO
>>876から
 
 
「うおおおおおぁぁぁ!!!」


全力疾走、それはもう人生の中でこんな全力で走る事なんてそう無いだろうという勢いの


私は今、おそらくこの世界でも一、二を争うくらいのヤバい存在に追われてる


―――貴女はいつも何かから逃げていますね―――


誰のせいだ誰の!


あれから数日後、早速武蔵がまた手合わせを申し込んできた、折れた腕は何故か翌日には治っていた


艤装を展開せずに受けた傷は普通に治療が必要になるはずなのにどうなっているんだ


活き活きとして手合わせをという武蔵を前に私も危機感無くそれを受けてしまってから綾波の声がした


―――あっ―――


どしたの?今度はちゃんと手加減してよね、武蔵の腕を折ったとかあの後幹部に怒られたの知ってるでしょ


―――逃げた方がいいですよ―――


「は?」


と、目の前の武蔵が言った


「今度は前の様にはいかんぞ」


その言葉の直後に私は宙を舞ったのだった

887 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:08:47.62 ID:xN2dVukDO
 
 
へっ…?



武蔵の右腕が消えたように見えたと思ったらそれに反応して私の右腕も消えた、直後に衝撃で私の身体は吹き飛ばされていた


壁に叩き付けられる、そう思ったが私の右腕がまた素早く動き右腕だけで受け身を取り着地させられる


「ななななな…」


―――最初の一撃は反らしました。早く逃げてください、とりあえず幹部さんの所か、とにかく人の居る場所へ―――


なんで!?前みたいに出来ないの!?


―――あんな奇襲じみた事は武蔵さんには二度も通じません。それに一番の問題は―――


も…問題は…?


―――武蔵さんには両手両足があって私には右腕しか無いという事です―――


「つまりどういう事でしょうか」


思わず敬語になってしまう。自分の顔から血の気が引いていくのを感じる


―――攻撃すればその隙に反撃で死にます、防御するにしても手数の差でやっぱり死にます―――


マジで


―――マジです。何で安請け合いしてるんですか―――


そりゃあ…前みたいにしてもらおうと


―――簡単に手を貸した私の落ち度ですねこれは―――

888 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:10:39.82 ID:xN2dVukDO
 
 
「どうした、来ないのか?私からばかりではなくそちらからも仕掛けてこい」


武蔵が構えて待っている、身体が十倍くらいに巨大化して見えるのは気のせいか、いわゆる小動物的視点なのか


「あーっ!あれはーっ!」


私はあさっての方向を指差して叫ぶ。これで気を反らしてその隙に…!


「……」


「あれはーっ」


おや?


ドドドドドドドドド


「お前は私を馬鹿にしているのか?」


「ひいぃっ!?」


武蔵からの圧力が一段と強くなる、若干の怒りの波動のようなものを感じてもう私は死にそう


―――本当に貴女は……しかし簡単には逃がしてくれそうにありませんね、死にたくないなら私の言う通りに動いてください―――


はい!何でも言って!


―――ん?今、なんて言っている場合でもありませんね、まずは―――

889 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:12:15.79 ID:xN2dVukDO
 
 
そして


「でやああああ!」


私は左腕を振りかぶって武蔵に突進する


「来るか」


武蔵は私の攻撃の動作を注視している


私の左腕の攻撃は当たり前のように防がれてしまう。あまりに弱い攻撃に武蔵は反撃も忘れて怪訝な顔になる


「なんだそのパンチは?ふざけているのか」


武蔵のプレッシャーが一層強くなる、やばい…本気で死にそう


「うあああ!」


次に蹴りを放つもそれもあっさりと防がれる、私が攻撃する度に圧力が増して行く、武蔵の顔から表情が失せていく


「私は遊びでお前に手合わせを申し込んだ訳ではない。自らを高める為にお前を見込んだからだ」


ああああああああやばいやばい本気で怒ってる死ぬ私ここで死ぬ


「だがお前はそうやって…本気でやらないのならばここで…」


―――今です、構えて―――


私は武蔵に近付く、すると右腕が動き武蔵の腹部に拳を当てた、右の拳を


「今度はなんだ、これ以上私を侮辱するなら、ここで殺す」


そう言って武蔵が動きを見せた瞬間


―――この動作が可能な範囲まで近付く為には右腕だけでは足りません、貴女の弱い攻撃は逆に効果的でしたね―――


ズ ド ン!!!

890 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:13:48.31 ID:xN2dVukDO
 
 
「ガッ!?」


武蔵の身体が後ろに下がる、だが倒れるまではいかない


―――やはり右腕だけでは充分な威力が出ませんか―――


私は更に武蔵に肉薄する。もう密着する勢いで接近するとまた右拳が武蔵に添えられる


「おのれ…何だ今のは!」


武蔵が再び私に攻撃しようという動きを見せると


ズドン!


「グッ」


ようやくこの技の正体を察したのか武蔵が大きく距離を取る


―――今です、走って―――


そこで私は踵を返し脱兎の如く走り去ったのだった


「……は?」


次の攻撃に備えていた武蔵の呆気に取られる声、そして


「ははは…あくまで私をおちょくる気か…ははは…殺す」


あのさ…最初から逃げてればまだ半殺しくらいで済んでたんじゃないかな


―――おや?―――


「お前えええええええ!!!?」


大本営に私の絶叫がこだました

891 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:15:27.53 ID:xN2dVukDO
 
 
そうして私は武蔵から全力で逃走中な訳だ


「ところであの技って何なのさ」


ひとまずトイレに逃げ込んで一息吐いた私は綾波に聞いてみた


―――あれは寸打といいます。相手の動きに合わせて全身のバネを使ってカウンターを打ち込む超近接技です―――


「全身の…」


―――ええ、ですから全く威力が出ませんでしたね。本来なら急所に打ち込めば一撃必殺なんですが―――


「必殺したら問題だよ…」


―――今は私達が必殺されそうですが―――


「誰のせいだよ!」


―――勝負を受けた貴女では―――


「ぐうぅ…!」


「何処に居る、この辺りから声がしたぞ」


「……!……!」


慌てて自分の口を塞ぐ


「ここか?」


扉を開く音が聞こえた


「こっちか?」


また扉を開く音、そして私が居る個室にだんだん近付いてくる


おいこれなんてホラーだよ!?

892 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:17:22.51 ID:xN2dVukDO
 
 
―――見上げたらそこに…となる前にここを出ましょうか、そこの窓が開いてます―――


音を立てないように、尚且つ素早く、私は窓から這い出す。そこは中庭だ


「これでひとまず安し…」


ドゴオォン!!!


安心…と言おうとした私の背後の壁が吹き飛んだ。そこは私がさっきまで居た個室の辺りだ


「見付けたぞ」


「あ…あああぁぁぁ…ぁ…」


ああ…せっかくトイレに居たんだから済ませておけばよかった…ちょっと漏れちゃった…ホントにちょっとだけだけど!


「……お前は何処かおかしいな」


「へ…?」


「普段の言動はとても演技とは思えんし、あれだけ殺気をぶつけてもただ逃げ惑うだけ、かと思えば先程のような鋭い一撃を放ったり私の腕を折ったりする」


―――ああこれは―――


やっぱり…?


「お前の中には誰が居る」


気付くよね普通…出来たらあんまり知られたくはなかったんだけどなぁ…


レ級様の所とか一部を覗いて私は誰にも正体を明かしてはいない。今の新しい大本営なら大丈夫じゃないかとも思うけどなるべくならバレないに越した事は無いのだ

893 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:19:25.18 ID:xN2dVukDO
 
 
―――仕方ありませんね、これからも挑まれるリスクを考えれば話してしまうのが一番ですか―――


そうして私は武蔵に全部ぶちまける事にした


「―――なるほどな…寄生体か、言われて見れば微弱ながら深海棲艦の気配もあるが…これは言われなければ解らんな」


ええ、ええ、あまりに雑魚過ぎて気配もしないと言いたいんでしょ!そうですよ!悪かったな!


「そして右腕だけは自由になる綾波か…さっきの技も綾波のものか」


「そうですよ、よく知りませんけど」


「その綾波とは話せるのか?」


「ええっと…」


――――――


「あれ?綾波?」


「どうした?」


「返事しなくなっちゃいました…」


「ふむ…他人とはあまり話したくないのかもな。綾波…近接戦闘を行う綾波か…」


武蔵が何か考え込んでいる姿を横目に…うぅ…何だか眠い…さっきまで死に物狂いで逃げ回ってたツケかなぁ…


「おい、大丈夫か?」


私を殺すとか言っていたのはあくまで本気を出させる為だったらしいが…ふぁぁ…そんな武蔵の心配する声が遠くに聞こえ…


そして私の意識は暗闇へと落ちていった

894 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:21:30.28 ID:xN2dVukDO
 
 
夢を視た


私が知らない誰かを抱き締めて愛を囁いている


そしてその口でその相手に噛み付いた


ぶちぶちぶち


鮮血が溢れだす。そして夢の中の私はそのまま相手を…喰らっていた


その相手も食べられながらも愛を囁き、そして同じように私に噛み付く。夢だからなのか痛みは感じない。そしてその顔は幸せそうな笑顔で


これは私の夢?……違う…これは…


その相手が私を見た。夢の中の私ではなくこの夢を視ている私を


「人の営みをあんまり見るもんじゃないよ、恥ずかしいじゃんか」


軽い口調で、しかし有無を言わせぬ迫力でそう言った


「という訳で、そろそろ起きなよ」


お前は…


夢から覚めていく感覚、その姿が消えていく


そして目覚めた場所は自室のベッドだった

895 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:23:46.26 ID:xN2dVukDO
 
 
「なんつー夢だよ…私にそんな趣味無いっての」


―――見ました?―――


まぁ…よく解んないけどずいぶん幸せそうだったよ


―――ええ、もちろんです―――


何となくだがこの綾波がどういう奴だか少しだけ解った気がする。そして私が寄生する前に何があったのかも


「愛の形は様々ってか…」


どうやら急に眠りに落ちた私を部屋まで送り届けたのは武蔵らしいと後から聞いた


それからというもの執拗に手合わせを申し込んでくる事は無くなったがよく見られているような気がする


今の所は私の正体は広まってはいない。武蔵も秘密は守ってくれているようでひとまずは安心してもいいのかもしれない


―――もしバレたらどうしますか?―――


「どうかな…こんな寄生体に行く所なんてあるかな…」


―――あの鎮守府は?―――


「わかんない…でもレ級様怖いしちょっと遠慮したいかな…」


―――もし…もしも何処にも居場所が無くなったら…私達と…―――


「え?」


―――いえ、何でもありません―――


「まっ、いざとなれば何処でだって生き抜いて見せるよ。今までだってそうしてきたんだ」

896 : ◆B54oURI0sg [sage saga]:2020/06/06(土) 05:26:05.22 ID:xN2dVukDO
 
 
―――逞しいですね、その強さは素敵だと思いますよ―――


図太く、図々しく、私は生きてやるんだ。かつての同胞達のように使い潰されて沈んでいくのは御免だ


艦娘になった今もその可能性はあったけど私にとっての幸運は綾波が一緒だという事かな


「これからも頼りにしてるからねっと」


―――はいはい―――


そうして私、深海綾波の日々は過ぎていく


未だ平和な世の中は来ない、それでも私は絶対に最後まで生きてやると改めて誓うのだった
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/06(土) 05:30:21.45 ID:xN2dVukDO
誤解が生じてしまったようなので急ピッチですみませんでした

あくまで強いのは右腕のみで深海綾波自身はそうではないという解釈です
武蔵は今もちゃんと強いと思います
強者は基本攻撃を避けない
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 08:00:36.09 ID:1NgUuJsmO
おつ

この綾波って何者だっけ……?
不知火に傀儡モードで廃人にされたやつ?
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 08:26:46.95 ID:dNmHgdEvO
その綾波とは別
瀕死の綾波に規制した木っ端深海棲艦
なんやかんやあって深海棒で大本営の特務艦達をメロメロにして味方につけた地味な功労者
一昔前の映画で言うなら陽気な黒人枠

本体の綾波について詳しく語られたことはなくて右手は本体の綾波が自由に動かせるくらいしか背景の情報はなかった…はず
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 11:15:44.40 ID:eRCsX9ado
おつー
陽気な黒人枠は言い得て妙
寄生が成る深海棲艦は何処か特殊なんだなあやっぱし
720.55 KB Speed:0.4   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)