【バンドリ安価】戸山香澄「たられば」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 04:01:42.25 ID:TejnHRCr0

戸山香澄「もしも私が↓1だったら」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1534273301
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 04:08:12.96 ID:uTs5BY8io
着ぐるみ
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:44:42.33 ID:TejnHRCr0

もしも戸山香澄が着ぐるみだったら


香澄(もうすぐ憧れの高校生活!)

香澄(やっぱり最初のインパクトが大事だよね……何か変わった格好で学校に行ってみようかな?)

香澄(うーん、変わった格好……そうだ、昨日アニメで星形のマスクをかぶった人がいたし、それを真似してみよう!)


――時は流れ花咲川女子学園入学式、校庭にて


ザワザワ...ナニアレ...ホシ?

香澄(ふふふ……みんなの視線が私に集まっているのが分かる)

香澄(あっちゃんとお母さんには必死で止められたけど、押し切ってよかった!)

香澄(髪型も星をイメージしたものにするっていう隙を生じぬ二段構えだし!)

香澄「さってと、私のクラスはー、っと……わっ」ドン

山吹沙綾「あ、ごめ――えっ」

香澄「ううん、こっちもぶつかってごめんね。あれ、何かいい匂いが……」

沙綾「あー……うん……」

沙綾(なんだろうこの子、星形のマスク被ってる……関わらない方がいいかも)

香澄「そういえば朝ごはん食べてなかったなぁ」

沙綾「あ、ちょっと急ぐから……ぶつかってごめんね、それじゃ!」

香澄「……行っちゃった。人見知りする人なのかな? っと、それより私のクラスは……」

氷川紗夜「ちょっと、そこの新入生の方」

香澄「んーっと」

紗夜「そこの変なもの被った新入生!」ガシッ

香澄「……え、私?」

紗夜「あなた以外にいないわよ、被り物なんてしてる人は。それより、その被り物は?」

香澄「はい、星です!」

紗夜「質問が悪かったかしらね。どうしてそれを被っているのかしら」

香澄「私は星だからです!」

紗夜「…………」

紗夜「…………」

紗夜「……そう。詳しい話は生徒指導室で聞きます。ついてきてください」

香澄「え、ちょ、私これから入学式が……」

紗夜「そんな格好で参加させるとでも? いいからついてきなさい」

香澄「うわー」ズルズル


……………………
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:45:32.74 ID:TejnHRCr0

香澄「結局マスクは没収されちゃったし、入学式にも出れなかった」

香澄「マスクの下、星の髪型しといて良かった〜。備えあれば憂いなし、だね!」

香澄「ところで、どうしてかクラスのみんなの距離が遠いような気がする」

香澄「もしかして自己紹介で変なこと言っちゃったかなぁ」

沙綾「…………」

香澄「あ、朝の……おーい!」

沙綾「え?」

香澄「えっと、確か山吹沙綾ちゃん! だよね?」

沙綾「あ、ああ、うん」

香澄「私、戸山香澄! よろしくね!」

沙綾「うん、よろしく……」

沙綾(……朝は関わっちゃダメな人だと思ったけど……普通の子、なのかな?)

沙綾「朝の……えーっと、マスク? はどうしたの?」

香澄「いやぁ、あれね? 風紀委員の先輩に見つかって没収されちゃった」

香澄「それでそのままお説教されて、入学式に間に合わなかったんだ……」

沙綾「へぇ、それは災難……だったね?」

香澄「うん……でもほら、この髪見て! ちゃーんとマスクの下も星だし、隙を生じない二段構えだよ!」

沙綾「ネコミミじゃなかったんだ、それ」

香澄「えー? どこからどう見ても星だよ〜」

沙綾「なんで、えーっと、香澄ちゃんはそんなに星にこだわるの?」

香澄「呼び捨てでいいよ!」

沙綾「あ、うん」

香澄「それで、星にこだわる理由はね、小さな頃に星の鼓動を聞いたから!」

香澄「あの時に確信したんだ。私は星だって。夜空に輝く星になる運命があるんだって!」

沙綾「……へぇー」

――キーンコーンカーンコーン...

香澄「あ、もうチャイム。それじゃあね、さーや!」

沙綾「うん……」

沙綾(やっぱりちょっと変な子だ……悪い子じゃなさそうだけど……)

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:46:05.02 ID:TejnHRCr0

――放課後――

香澄「はぁー、やっぱりこのマスク、被り心地がいいなぁ」

香澄「でもこれ被ってるとみーんな目を逸らすんだよね。どうしてだろ?」

香澄「あれ、なんだろうこれ……星のシール?」

香澄「あ、あっちにも……」

香澄「……なるほど、これは星の導きだ!」

香澄「ふふふ、私の隠しきれない星力がきっとキラキラドキドキしているものに導いてくれてるんだ」

香澄「よーっし、この先に何があるのか確かめよう!」

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:46:38.73 ID:TejnHRCr0

――流星堂――

香澄「星の終着点はここ……蔵?」

香澄「とりあえず入ってみよう!」

香澄「おっじゃましまーす!」

香澄「ん、なんだろうあれ、大きな星のシールが貼ってあるケース?」

市ヶ谷有咲「そこまでだ、両手を挙げ――うわぁ!?」

香澄「きゃあ!?」

有咲「な、な、なんだよお前!?」

香澄「えっ!? え、なに!?」

有咲「星形のマスク!? 手慣れた窃盗犯か!? だ、だとしても……負けねーからな!!」

香澄「ちょ、危ない! ハサミこっちに向けないで! お気に入りのマスクなのこれ!」

有咲「う、うるせー! そうやって惑わす気だろこの泥棒め!」

香澄「違うよ、違うって! 星を辿ったらここに着いただけなの!」

有咲「ど、ど、泥棒はみんなそう言うんだ!」

香澄「待って待って! あなたのハサミ持ってる手、すっごい震えてるから! 危ない危ない!」

有咲「べ、べべ別に怖がってなんかねーからな! つ、つ、通報するぞこのやろー!」

香澄「ちょ、警察は勘弁してー!!」

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:47:16.62 ID:TejnHRCr0

―しばらくして―

有咲「えーっと、それじゃあお前は花女の生徒で、星のシールを辿ったらここに着いた、と」

香澄「うん。その、蔵に勝手に入っちゃってごめんね?」

有咲「あーいや……まぁここは質屋だからいいんだけどさ……」

有咲(なんだよコイツ……見た目は通報待ったなしのヤベー奴なんだけど、話してみると普通だし……)

香澄「ねぇねぇ、このケース開けてみてもいい?」

有咲「あー……まぁいいよ」

有咲(でも話してみると普通な奴ほどヤベーってこともあるしな。ここはあんま刺激しない方がいいか……)

香澄「わーい、ありがと! それじゃあ……わー! 星のギターだ!」

有咲「…………」

ランダムスター<シャラーン

香澄「すごい、音が鳴ったよ!」

有咲「……そうだな」

香澄「これも売り物なの?」

有咲「……まぁ、多分」

香澄「へぇ〜! 星のギターかぁ、いいなぁ!」

有咲「……そんなにギターが気になるなら、ライブハウスにでも行ってみればいいんじゃねーの?」

香澄「ライブハウス! そういうのもあるんだ! どこにあるの?」

有咲「……いや、知らねーけど」

香澄「そっかぁ。あ、じゃあ今から一緒に探して行ってみない?」

有咲「…………」

有咲(これ、断っていいのかな……。断った瞬間豹変して、『じゃあしょうがないし、あなたを貰ってくね?』とか言われて人身売買の道具にされたりしねーよな……?)

香澄「どしたの?」

有咲「ああ、いや、えーっと……」

香澄「あ、そういえば名乗ってなかったね! 私、戸山香澄! あなたは?」

有咲「え? えっと、私は市ヶ谷……有咲」

香澄「有咲だね! ねーねー、一緒にライブハウス行ってみよーよ!」

有咲「……分かったよ」

有咲(断ると後がこえーし、ここは素直に頷いとこ……)

有咲「つか、お前ライブハウスの場所知ってんの?」

香澄「知らない! 調べてみるね!」

有咲「ああ……って、お前、そのギターは置いてけよ?」

香澄「うん!」

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:48:23.42 ID:TejnHRCr0

――翌日 朝の教室――

沙綾「へぇ、それでバンドをやろうって思ったんだ」

香澄「うん! すごかったなぁ、昨日のライブハウス! すごくキラキラしててカッコよかったんだ!」

沙綾「へぇ……。ところで、香澄。今日は星のマスクは?」

香澄「校門で紗夜先輩にとられちゃった」

沙綾「……そう」

沙綾(今日も被ってきてたんだ)

香澄「私も星のバンド、組みたいなぁ」

沙綾「星のバンドって?」

香澄「みーんなでキラキラしたお星さまになるバンド!」

沙綾(全員がマスク被った香澄みたいになるのかな……)

香澄「あ、そうだ、沙綾もそういうの、興味な」

沙綾「ごめん興味ないかな」

香澄「そっかぁ。有咲にも同じこと言われちゃったなぁ」

沙綾(普通は断るよ……)

――ガラッ

牛込りみ「…………」

香澄「あ、あの子……」

沙綾「え?」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:48:50.41 ID:TejnHRCr0

香澄「おーい!」

りみ「……え? きゃっ」

香澄「牛込さん、だよね? 昨日ライブハウスにいたよね!」

りみ「え、う、うん……」

香澄「バンドに興味あるの? そしたら星のバンド、一緒に組まない!?」

りみ「ほ、星のバンド……?」

香澄「うん! キラキラしてて最高のバンド!」

りみ「え、えっと……」

沙綾「こらこら、香澄。困ってるから離してあげなさいって」

香澄「あ、うん。牛込さん、ごめんね?」

りみ「う、ううん……」

香澄「それで、どうかな?」

りみ「……その、ごめんなさい」

香澄「そっかぁ。まぁ仕方ないよね!」

香澄「ねぇねぇ、よくライブハウスに行くの?」

りみ「う、うん、まぁ……」

香澄「へーそうなんだ! そしたらバンドのこととかにも詳しい? 私に色々教えて欲しいな!」

りみ「え、えっと……」

沙綾「こーら。そんなグイグイ来られると困るって」

香澄「あ、ごめん」

りみ「う、ううん。その、私でよければ……お話するよ?」

香澄「ほんと!? ありがと、りみりん!」

りみ「りみりん?」

香澄「りみだからりみりん! 私のことは香澄でもなんでもいいよ!」

りみ「えっと、じゃあ香澄、ちゃん?」

香澄「うん!」

沙綾(……やっぱり悪い子じゃないんだなぁ。変ではあるけど)

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:49:17.76 ID:TejnHRCr0

――2週間後――

香澄(ライブハウスに行った次の日にランダムスターを見に行くと、有咲が私に税込み1080円でランダムスターを譲ってくれることになった)

香澄(そんなに安くていいの? って聞いたら、代わりに学校でお昼ご飯を一緒に食べて欲しいと言われた)

香澄(ライブハウスがなんだかんだ楽しかったし、そういう友達付き合いに憧れていたらしい。可愛いなぁ有咲)

香澄(じゃあ一緒に星のバンドを、と持ちかけたら食い気味に断られちゃったけど)

香澄(なんだかんだで沙綾とりみりんと有咲でお昼ご飯を食べることが日常になって、私はギターの練習も日課になった)

香澄(りみりんのお姉ちゃんがバンドをやっていて、りみりんも音楽関係のことに詳しいから色んなことを教えてもらった)

香澄(日課と言えば、校門で紗夜先輩にマスクを取られないようにするのも日課だ)

香澄(最近は紗夜先輩の目をかいくぐることも出来るようになってきた。でもそのあとついうっかり廊下ですれ違ったりして没収されちゃうんだけど)

香澄(被り心地いいですよ、と無理矢理紗夜先輩に被せたこともあったなぁ)

香澄(確かに悪くないかもしれないわね、って呟いてたのになぁ、紗夜先輩)

香澄(でも最近は紗夜先輩の攻略法を見つけた)

香澄(ランダムスターを背負っていくと、なんだかんだで見逃して貰える)

香澄(『まぁ……もうギターくらいでとやかく言いませんし、私の根負けです』とこの前ため息交じりに言われた)

香澄(だけどそれはそれでなんだか寂しいから、今日は全身星の着ぐるみで登校してみた)

香澄(そしたら紗夜先輩にキレられちゃって着ぐるみとギターを没収されちゃった)

香澄「もう、紗夜先輩ってば、ああ言えばこう言うんだから」

香澄(……って、生徒指導室で言ったらいつもよりも長いお説教が始まった)

香澄(ようやく解放されたのが午後5時過ぎ。気付けば2時間もお説教されていた)

香澄(私は取り戻したマスクを被ってギターを背負い、着ぐるみは学校に置いておこうと教室を目指すのだった)

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:49:56.99 ID:TejnHRCr0

――花女 1−A教室――

香澄「……あれ、ギターの音が聞こえる」

香澄「こんな時間に誰か残ってるのかな……」

――ガラ

花園たえ「銀河を砕くせんーりつー♪」シャラーン

香澄「わっ……」

たえ「ひびかせーたー……ん?」

香澄「あ、邪魔しちゃってごめ――」

たえ「あ、ヘンタイさんだ」

香澄「ヘンタイ!?」

たえ「うん。氷の冷笑、鬼の風紀委員氷川紗夜の天敵、星のヘンタイ戸山香澄」

香澄「ヘンタイじゃないよ!」

たえ「え、そうなの? 星の人じゃないの?」

香澄「私が星だってことは否定しないけど!」

たえ「やっぱりヘンタイさんだ」

香澄「違うってばー!」

たえ「でも、その背負ってるギター……」

香澄「ランダムスタ子がどうしたの?」

たえ「やっぱり変態だ」

香澄「えぇ? ギターには名前を付けるものだって有咲が言ってたよ?」

たえ「ううん、名前を付けるのは私もやってるよ。ただ、ランダムスター持ってる人は大抵変わり者だから」

香澄「あ、そうなんだ」

たえ「うん」

香澄「えっと、花園さんだよね? 花園さんもギター弾くの?」

たえ「うん。私とギターは一緒だから」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:50:26.16 ID:TejnHRCr0

香澄「へぇ〜! すごく上手だったけど、結構前からやってるの?」

たえ「子供のころから弾いてるよ。でもまだまだ全然」

香澄「わ、それでまだまだ全然なら私はもっとダメダメだよー!」

たえ「戸山さんはまだ始めたばっかりなの?」

香澄「香澄でいいよ!」

たえ「あ、うん。じゃあ私もおたえでいいよ」

香澄「うん! それでね、おたえ。私は始めてから2週間なんだ〜。最近はようやくメジャーコードが半分くらい押さえられるようになったばっかり」

たえ「そうなんだ」

香澄「そうなんだ〜。ねぇねぇおたえ、良かったらギター、教えて欲しいな」

たえ「ん、いいよ」

香澄「ほんと!?」

たえ「うん。ヘンタイさんの言うことを断ると何されるか分かったもんじゃない、って聞いたし」

香澄「えーなにそれ! 私なにもしないし、そもそもヘンタイじゃないってば〜!」

たえ「でも山吹さんと牛込さんに『星のバンドやらない?』って聞いてるよね?」

香澄「あ、おたえも一緒に星のバンドやりたい?」

たえ「私は……うーん、悩みどころだ」

香澄「おお……即答で断られなかったの初めて……」

たえ「楽しそうだけど、そうだね、他のバンドメンバーが集まって、ギターが足りなかったらまた誘って」

香澄「うん! あ、おたえもこういう星のマスク、欲しい?」

たえ「ウサギのなら欲しい」

香澄「ウサギかぁ。ちょっと探してみるね!」

たえ「楽しみにしてるよ」

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:51:01.08 ID:TejnHRCr0

――1ヵ月後――

香澄(ひょんなことでおたえと話すようになってから、ギターのことを色々教えてもらった)

香澄(そのままなし崩しに沙綾と有咲とりみりんとのお昼ご飯におたえも加わることになった)

香澄(ついでに2週間かけて作ったウサギのマスクをおたえにプレゼントしたらすごく喜ばれた。それからライブハウスで使ってるっていう良いシールドを貰った)

香澄(『これが噂に聞くプレゼント交換……憧れの行動だ』と感慨深げだったのが印象に残っている)

香澄(それからおたえはウサギのマスク、私は星のマスクを被って登校してみた)

香澄(校門で服装チェックをしていた紗夜先輩の目が今までに見たことないくらい冷え切っていたのが印象的だった)

香澄(『最近胃が痛い』と呟いているのを聞いたから、そこで胃薬をプレゼントしたらなんとも言えない表情をされた)

香澄(そしてその日の放課後はおたえと一緒に3時間ほどお説教されて楽しかった)

香澄(どうしてだろう。何故か紗夜先輩を見ると無茶なことを目の前でやって叱られてみたい衝動に駆られてしまう)

香澄(おたえにその気持ちを話してみたら『ちょっと分かる』って言ってくれたのが嬉しかった)

香澄(おたえと一緒に着ぐるみで登校したらどうなるんだろう、ってちょっと興味があるけど、流石にそれはやり過ぎだと思うからやめておくことにした)

香澄(ともあれ、私の高校生活はそんな風に続いていく)

香澄(そしてゴールデンウィークも明けたある日の放課後のことだった)

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:51:34.16 ID:TejnHRCr0

――花女 中庭――

香澄「いやぁ、今日も紗夜先輩に怒られちゃった」

有咲「お前、全然反省してねーよな」

香澄「紗夜先輩に叱られるのってなんだか楽しいんだ」

たえ「うん、楽しい。紗夜先輩、言われてるほど怖い人じゃないしね」

りみ「氷川先輩……大丈夫かな……」

沙綾「うーん……」

弦巻こころ「見つけたわ!」

香澄「ん?」

こころ「あなたがトヤマカスミね!」

香澄「うん、そうだよ〜」

有咲「げ、弦巻こころ……」

沙綾「知ってるの、有咲?」

有咲「花咲川の異空間って呼ばれてるやべー奴だよ」

りみ「……星のマスク被ってる香澄ちゃんとどっちが、その、大変かな?」

有咲「…………」

有咲「そんな変わんねーかも」

たえ「じゃあ案外普通の人かもね」

沙綾「だね」

りみ「よかったぁ」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:52:05.10 ID:TejnHRCr0

こころ「あたし、楽しいことを探しているの!」

こころ「聞いた話によると、あなたっていつも楽しそうなことをしているみたいじゃない!」

香澄「楽しい、って言うより、キラキラドキドキしてることをやってるんだよ!」

こころ「キラキラドキドキ! それは素敵な響きね! その話、あたしにも聞かせてくれないかしら?」

香澄「うん、いいよ!」

こころ「それじゃあ早速、あたしの家に行きましょう!」

香澄「うん! あ、みんなはどうす」

有咲「遠慮しとく」

沙綾「家の手伝いあるから」

りみ「ごめんね?」

たえ「私はいいよ」

香澄「そっかぁ。じゃあおたえと私だけだね」

こころ「分かったわ! それじゃあ案内するわね!」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:52:36.12 ID:TejnHRCr0

――弦巻邸――

こころ「それじゃあ香澄は星のバンドを目指してるのね!」

香澄「うん! 無敵で最強の夢だよ!」

たえ「私は人がいないならそれを手伝うよ、っていう感じかな」

こころ「いいわね、バンド! すごく楽しそうだわ!」

香澄「でしょでしょ! こころんは話が分かるな〜!」

こころ「あたしも一緒に楽しみたいわ!」

香澄「それじゃあ星のバンド、組もうよ!」

こころ「ええ!」

たえ「こころは何か楽器が弾けるの?」

こころ「楽器は弾いたことないわ。でも、やろうと思えばなんだって出来るわ!」

香澄「だね! 情熱があればなんでも出来るよ!」

たえ「そうだね。それじゃあギターは2人いて、こころは何でも出来るとして……あとはドラムとベースがいればいいかな」

香澄「よーし、それじゃあ」

こころ「早速街に探しに行きましょう!」

たえ「そうだね」

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:53:47.78 ID:TejnHRCr0

――駅前――

こころ「どこかにいい人がいないかしら?」

たえ「ドラムとか持ち歩いてる人がいればいいんだけど」

香澄「ドラムかぁ……大きいし、そうそう持ち歩けるものじゃ……」

松原花音「ふえぇ……楽器屋さんどこぉ……?」

香澄&こころ&たえ「いた!」

花音「ふぇ!?」

香澄「確保〜!」

こころ「それ〜!」

たえ「お〜」

花音「な、なに……!? 星形のマスク被った人とウサギのマスク被った人と……!?」

こころ「あたし、花咲川女子学園高等部1年生の弦巻こころ!」

香澄「同じく戸山香澄です!」

たえ「花園たえだよ」

こころ「あなたは?」

花音「え、あ、花咲川の制服……」

花音(もしかしてこの子たち……最近噂になってる1年生の問題児さんたち……?)

花音「わ、わた、私は松原花音……花咲川の2年生……です」

香澄「先輩! 松原先輩!」

こころ「花音ね!」

たえ「松原先輩ですね」

香澄「それ、ドラムですよね? 松原先輩、ドラムやるんですか!?」

花音「え、や、やってるけど、これはもう売るつもりで……」

こころ「売ってしまうの? それはもったいないわ! せっかくだからここで一緒に演奏してみましょうよ!」

花音「え、えっ!?」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:54:13.92 ID:TejnHRCr0

たえ「ギター持ってきておいて良かったね」

香澄「うん!」

こころ「じゃああたしが歌うわね!」

香澄「よろしく、こころん!」

花音「そ、そんなめちゃくちゃな……」

たえ「ロックってきっとそういうものだと思う」

こころ「そうよ! それじゃあ花音、よろしくお願いするわ!」

花音「だ、だめです……私にはそんな……人前でやるほど上手じゃないし……」

香澄「大丈夫です! 私なんてギター初めてから1ヵ月ちょっとですから!」

香澄「誰かからこう見られるからとか、そういうんじゃなくて、自分自身が楽しむことを考えましょうよ!」

たえ「流石星のヘンタイ。言葉の重みが違うね」

香澄「えへへ、そんなに褒められると照れちゃうよ」

花音「え、えっと、でも、そんな勇気は私……」

こころ「勇気がないならあたしがあげるわ! えい!」ギュ

たえ「私もあげますよ、松原先輩」ギュ

香澄「あ、私も私も〜!」ギュ

花音「ふぇ、わ、分かりましたから、そんなに抱き着かないでください〜!」

こころ「これで花音の勇気もまんたんね! それじゃあみんな、行くわよー!」

香澄「おー!」

たえ「おー」

花音「ふえぇ……」

19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:54:47.61 ID:TejnHRCr0

―ちょっと離れたところ―

奥沢美咲「はぁ……バイトの面接遅れるって……ちゃんと段取り組んどいてよ」

美咲「ん? なんか騒がしい……」

こころ「ららららー♪ らららーららら〜♪」

香澄「いぇーい!」ジャーン♪

たえ「しゃらーん」ジャジャーン♪

花音「ふぇぇぇ……」ツッタンタタタン

美咲「うわぁ、花咲川の異空間と星のヘンタイのコンボ……」

美咲「ヤバイ人の寄せ鍋状態だよ……見ないでおこう……」

「遅れてごめんなさい、バイトに応募された方ですよね」

美咲「あ、はい。奥沢美咲と――」


……………………
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:55:14.22 ID:TejnHRCr0

こころ「楽しかったわね!」

香澄「うん!」

たえ「ふふ、少し震えたね」

花音「あ、あの……」

こころ「花音、あなたってとっても演奏が上手なのね!」

花音「え?」

香澄「ね! 花音先輩すごい!」

たえ「震えるぞビート、燃え尽きるほどヒート、っていう感じだったね」

花音「え、あの……」

こころ「これなら素敵なバンドになりそうね!」

香澄「そうだね! あとはベースを探せばオッケーだよ!」

たえ「花音先輩、これからよろしくお願いします」

花音「え?」

こころ「それじゃあ次は商店街でやりましょうか!」

香澄「了解!」

たえ「オッケー」

花音「ええ!?」

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:56:17.15 ID:TejnHRCr0

――商店街――

ミッシェルin美咲「え、これで?」

「はい、それで。頑張って下さい」

ミッシェル「……マジかぁ。着ぐるみでティッシュ配りかぁ……」

ミッシェル(道理で内容の割に時給がいい訳だよ……)

こころ「それじゃあ次はこのあたりで……」

香澄「はっ! あれは!」

たえ「どうしたの、香澄?」

ミッシェル「ん……げっ!?」

ミッシェル(弦巻こころと戸山香澄のご一行……なんでこっちにまで)

香澄「アレだ……私が目指すべきものはアレなんだ!」

こころ「アレ? わー、クマさんね!」

香澄「そう、あのクマのような星の着ぐるみ……それを着てライブをすることが私の使命!」

こころ「キグルミ?」

たえ「じゃあ私はウサギで」

花音「え、あの……」

こころ「よく分からないけど、あのクマさんが必要なのね! それじゃあベースとしてスカウトしましょう!」

香澄「うん!」

こころ「おーい、クマさーん! あたしたちと一緒に遊びましょー!」

ミッシェル(うわこっち来た! お願いだから来ないでよ! 巻き込まないで!)

ミッシェル(商店街広報の人、どうにかして!)

「え、ちょっとお嬢さん……」

黒服「商店街の広報の方ですか? ちょっとこちらへ……」

―黒服さん誠心誠意お話し中―

「……分かりました、そういうことであれば、ミッシェルはお譲りしましょう」

ミッシェル「ちょっ……」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:56:53.36 ID:TejnHRCr0

こころ「あなた、ミッシェルって言うのね! 今日からあなたは私たちのバンドのベースよ!」

香澄「よろしくね、ミッシェル! それと負けないよ!」

ミッシェル(いや、訳が分からないんだけど!?)

たえ「ふふ、これでバンド結成だね」

花音「えっと、あの……」

たえ「大丈夫です、花音先輩。ギターが私と香澄で、ドラムが花音先輩、ベースにクマさん、ボーカルがこころ」

たえ「これで5人揃いました」

花音「そ、そういうことじゃ……」

こころ「たえの言う通りね! それじゃあ早速バンドの名前を決めましょうか!」

香澄「だね! ポップでスターな名前がいいな!」

たえ「ウサギがいいな」

こころ「世界を笑顔にするバンドがいいわ!」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:57:42.83 ID:TejnHRCr0

ミッシェル(あー……なんかこれもう何やってもダメなやつかも……)

花音「…………」

ミッシェル(あの子もなんか放心してるし――)

花音「……でも、確かに楽しかったし……勇気を出して変わるチャンス、なのかな……」

ミッシェル(あれぇー? なんだか前向きなこと呟いてますねー?)

こころ「よーし、それじゃああたしの家で、みんなで考えましょう!」

香澄「そうだね!」

たえ「うん」

花音「わ、分かりました……!」

香澄「とりあえずみんなで着ぐるみ着ようよ!」

こころ「キグルミ? って何かしら?」

たえ「……なりたい自分になれるもの、かな?」

こころ「それは素敵なものね!」

ミッシェル「…………」

ミッシェル(……なにこれ)



その後、星のヘンタイ戸山香澄と花女の異空間弦巻こころが率いるキグルミバンドが色んなところで色々な意味で話題になるのでしたとさ


もしも戸山香澄が着ぐるみだったら おわり
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 07:59:40.86 ID:TejnHRCro
星のキグルミ参考画像です

マスク
https://i.imgur.com/qkE90ep.jpg

着ぐるみ
https://i.imgur.com/2ULTPyX.jpg

着ぐるみってなんだよ
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/15(水) 08:00:26.63 ID:TejnHRCr0

美竹蘭「もしもあたしが↓1だったら」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 08:10:40.04 ID:ZDj1J/rC0
小動物、例えば猫…とか?
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/15(水) 12:13:49.89 ID:TejnHRCr0

もしも美竹蘭が猫だったら


蘭(朝起きると猫になっていた)

蘭(いや、ほんと、びっくりするくらい猫になっていた。夢かと思って自分を引っかいてみたらすごく痛かった)

蘭(喋ろうとしてもニャーンとしか言えないし、どうしたらいいんだろう)

蘭「…………」

蘭(……まぁ、いっか)

蘭(確かに痛いは痛い、けれどこれは夢だろう)

蘭(どうせ今日は夏休みで学校もバンド練習もない1日だ)

蘭(そのうちこの夢も醒めるだろう)

蘭(そう思えばなんだか気持ちが随分と軽くなった)

蘭(どうせ夢だし、猫ならいつもみたいに気張る必要なんてない。気ままに1日を過ごしてやろう)

蘭(そう思って、あたしは開け放してあった窓から部屋を出るのだった)

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:15:37.62 ID:TejnHRCr0


蘭(屋根から屋根、塀を伝って見慣れた街を歩く)

蘭(いつもよりもずっと高く、あるいは低い目線はとても新鮮な景色だった)

蘭(そうして宛てもなく気ままに歩を進めていると、幼馴染2人の姿が見えた)

蘭(あたしはそれに近寄っていく)

羽沢つぐみ「ごめんね、モカちゃん。ウチの買い出しに付き合って貰って」

青葉モカ「いいっていいって〜。あたしもそんなにやることなかったし〜?」

つぐみ「そっか。ありがとね」

モカ「はいはーい」

蘭(つぐみとモカが並んで歩いている)

蘭(2人の会話を聞いた感じ、羽沢珈琲店の買い出しにたまたま居合わせたモカが付き添っているんだろう)

蘭(あたしはなんとはなしにその2人が歩く姿を塀の上に座って眺める)

モカ「ん〜?」

つぐみ「どうかしたの、モカちゃん?」

モカ「いや、あれー」

蘭(モカがあたしを指さす。それに釣られてつぐみもこっちに視線を動かす)

つぐみ「……猫、だね。なんだか珍しい毛色の」

モカ「なーんか、蘭に似てない?」

つぐみ「あ、確かに」

蘭「にゃ?」

蘭(あたしに似てるって、どういうことだろうか。いや、確かにモカが指さす猫はあたしなんだけど)

モカ「だよねー。あのふてぶてしい眼差しなんかクリソツだよね〜」

蘭「……にゃ」

つぐみ「そ、そうかな? 私は黒色の毛並みに一か所だけ赤い部分があるのが蘭ちゃんっぽいなって思うけど」

蘭(そうか、モカはあたしの目をふてぶてしいと思ってたんだ。今度何か仕返しをしよう)

蘭「にゃー……」

蘭(そう思いながら、あたしは2人に対して鳴きかけてみる)
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:16:15.95 ID:TejnHRCr0

つぐみ「あ、鳴き声もちょっと蘭ちゃんっぽい……」

モカ「だねぇ」

つぐみ「構ってほしいけどそれを察してほしくない時の蘭ちゃんの声に似てる気がするね」

蘭「…………」

蘭(つぐみまであたしのことをそんな風に思っていたんだ)

蘭(……いや、心当たりがない訳じゃないんだけど)

モカ「じゃあ呼べば来てくれるかな? おーい、蘭ー、こっちおいで〜」

つぐみ「さ、流石に蘭ちゃんの名前呼ぶのは……」

蘭「にゃ……」

蘭(色々と思うところはある。けれど、まぁ、いいや)

蘭(なんとなくだけど、2人が一緒にいてあたしがこうして1人でいるのにはそこはかとない寂しさを感じていた)

蘭(いつも通りならそんな風に呼ばれたって近寄ることなんてしないけど、今のあたしは猫だ)

蘭(たまには思うように、気ままに動いたっていいだろう)

蘭(塀からサッとアスファルトに降り、あたしは2人の足元まで歩いて行く)

つぐみ「わ、本当に来ちゃった」

モカ「おー蘭よ、そんなに寂しかったんだねぇ……」

蘭「……うにゃ」

蘭(別に、という意味で短く鳴いてみる)

つぐみ「……今の、すごく蘭ちゃんっぽいね」

モカ「蘭だったら絶対に『別に』って言ってたよね、今」

蘭「…………」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:16:57.71 ID:TejnHRCr0

つぐみ「撫でても逃げないかな?」

モカ「だいじょーぶじゃない? 猫ちゃんの方からこっちに来たんだし〜?」

つぐみ「じゃあ……ちょっとごめんね、猫ちゃん」

蘭(つぐみはそう言って、身を屈めてゆっくりとあたしに手を伸ばしてくる)

蘭(普段は小さな女の子という印象だけど、今の猫の状態だとそれはとても大きなものに感じられた)

蘭(だけど怖さはなかった。つぐみなら優しくしてくれそうだし、まぁいいか、なんて気持ちであたしは少し頭を下げる)

つぐみ「わー、すっごいモフモフしてる」

蘭(優しさを感じられる声が頭上から降り注いでくる)

蘭(つぐみの手はその声の調子に似て、とても優しかった)

蘭(私の耳と耳と間、頭のてっぺんを軽く撫でた後に、柔らかな動きで背筋全体を撫でる)

蘭(その心地いい感触に思わず喉が鳴ってしまった)

つぐみ「あはは、ゴロゴロ言ってる。可愛いなぁ」

モカ「人懐っこい猫だねぇ」

つぐみ「ね。モカちゃんも撫でてみれば?」

モカ「んー、モカちゃんは遠慮しとくよ〜。猫さんだってそんなにたくさん撫でられたらいやだろーし」

つぐみ「あ、そうかもね。首輪してないし、ノラ猫だろうし」

蘭(別に遠慮することないのに)

蘭(たまに変なところで義理堅いというか、遠慮するんだよね、モカ)

蘭(……あたしの方から身を寄せてみようかな)

つぐみ「うん? どうしたの、猫ちゃん?」

モカ「おやぁ?」

蘭(つぐみの手から離れ、立ち上がったままのモカの足に身をすり寄せる)

蘭(モカのすべすべした足首の感触がちょっと気持ちいい)
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:17:27.92 ID:TejnHRCr0

モカ「はっはっは〜、どうやらこの猫さんは蘭に似て甘えん坊さんみたいだね〜」

蘭(あたしに似て、というところには少し遺憾ではあるけれど、つぐみと同じように屈んだモカの掌があたしを撫でてくれたので気にしないことにした)

モカ「うりうり〜」

蘭「にゃぁん」

蘭(ひたすら優しかったつぐみの手と違い、モカの手は変幻自在に力の強弱を変えてあたしを撫でる)

蘭(毛並みと逆に手を動かして毛を逆立てさせたかと思えば、すぐにそれを優しく梳かすように撫でる向きを変える)

蘭(掴みどころのないその動きがとても気持ちよかった)

つぐみ「ふふ、こんなに喉鳴らして……可愛い」

モカ「ねー。蘭も普段からこの猫さんくらい素直ならいいのに」

蘭(それは無理な話だ。これは、猫になるだなんていうおかしな夢の中でしか出来ない行動だ)

蘭(でもこういう時にしか出来ないからこそ、あたしは今は開き直ろうと思う)

蘭(優しいつぐみの手も、不思議なモカの手も、温かくてとても心地が良い)

蘭(2人にこうやって甘えるのがすごく楽しかった)
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:18:17.42 ID:TejnHRCr0

つぐみ「……あっ!」

モカ「ん、どったのつぐ?」

つぐみ「そういえば買い出しの途中だったんだ……」

モカ「あー、そういえば。しかもそこそこ急ぎじゃなかったっけ〜?」

つぐみ「う、うん。でも……」

蘭(チラリとつぐみの目があたしへ向く)

蘭(……多分、あたしを引き剥がして買い出しに行くのに罪悪感があるのだろう)

蘭(それなら仕方がない。名残惜しいけど、あたしの方から離れなくちゃ)

モカ「おや、猫さん?」

蘭「なー」

つぐみ「……買い出しに行きなさい、ってことなのかな?」

モカ「かもね〜。気の遣い方まで本当に蘭に似てるね〜」

つぐみ「うん、そうかも……」

蘭「にゃーん」

蘭(それはもういいから、早く買い出し行きなって)

つぐみ「……うん、分かった。それじゃあね、猫ちゃん」

蘭(少し身を離して、手を振る代わりに尻尾を軽く左右に振る。それを見て、つぐみは軽く微笑みながら別れの言葉をくれた)

モカ「またね〜、蘭に似た猫さーん」

蘭(モカも同じように手を振りながらそんな言葉をくれた)

蘭(あたしはそれを見てから、再び塀の上へ身を躍らせるのだった)

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:18:51.77 ID:TejnHRCr0


蘭(2人と別れてから、またしばらく色々なところへ気の向くままに足を運ぶ)

蘭(道中、あたしと似た猫に……いや、今のあたしは猫だから同じ存在か)

蘭(ともかく、猫とすれ違ってはなんとなく挨拶を交わしたりしつつ、歩を進める)

蘭(そうしていると、ある公園に見知った人影を見つけた)

上原ひまり「はぁぁ〜……」

蘭(公園のベンチに座り、ため息を吐きながらうなだれているのはひまりだった)

蘭(どうしたんだろう。不思議に思い、あたしはひまりに近付く)

ひまり「ダイエットの為にウォーキング始めたけど……やっぱり大変だなぁ……」

蘭「……にゃ」

蘭(なんだ、いつも通りな悩みか)

ひまり「やっぱり1人だとどーにもヤル気が起きないし……誰かが付き添ってくれればなぁ」

蘭(ひまりはそう言ってまたため息を吐き出した)

蘭(まぁ……ダイエットがしたいって気持ちは分かる)

蘭(でも流石に意志薄弱過ぎやしないだろうか)

蘭(この前は『縄跳びが痩せる!』って言って、あたしもそれに付き添ったけど、結局三日坊主で止めたのはひまりだった)

蘭(何故か巴の方が縄跳びにハマってよく分からないけどすごい飛び方が出来るようになってたし……)

蘭「…………」

蘭(まぁ、でも、たまにはあたしの方から手伝うのもいいかもしれない)

蘭(なんだかんだ、色んなことを提案してくれるひまりと一緒にいるのは楽しいし、コロコロと変わる明るい表情にかつてのあたしが救われた部分があるのも確かだ)

蘭(よし、そうと決まればウォーキングの手伝いをしてあげよう)
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:19:37.46 ID:TejnHRCr0

蘭「にゃーん」

ひまり「ん? わ、猫だ〜!」

蘭(鳴きかけると、うなだれていたひまりがパッと顔を起こし、輝いた瞳であたしを見据える)

ひまり「可愛いなぁ〜! 猫ちゃーん、こっちおいで〜」

蘭(そしてちょいちょいと手招きをしてくる。もともとひまりの傍に寄るつもりだったけど、その手の動きに意図せず身体が動く)

蘭「にゃ」

ひまり「あははっ、なんかキミって蘭みたいな目してるね」

蘭(また言われた……)

蘭(そう思いつつ、あたしはひまりの座るベンチに目をやる)

蘭(下からだと見辛いけど、ひまりの傍らに小さな小銭入れが無造作に置かれているのが目についた)

蘭(無用心な、という思いと、少しの申し訳なさを感じながら、あたしはベンチの上に身を乗せる)

蘭(そしてその小銭入れを口にくわえた)

ひまり「え?」

蘭(身を翻し、ベンチを降りて肩越しにひまりを見やる)

蘭(ひまりはしばらくポカンとしていたけど、あたしの行動を理解すると慌てたように立ち上がる)

ひまり「ちょ、猫ちゃん、それ私の小銭入れ!」

蘭(その言葉を聞いて、あたしは軽く走り出す)

ひまり「ま、待ってぇ〜!!」

蘭(情けない声を上げながら、ひまりがあたしを追ってくる)
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:20:14.98 ID:TejnHRCr0

蘭(……それからしばらく、時折り後ろを振り向きつつ、ひまりがついてこれる速さであたしは街を走り回る)

蘭(ひまりはぜぇぜぇ言いながらそれを追いかけてくる)

蘭(これならキチンとした運動になることだろう)

蘭(でも、なんだろう)

蘭(ひまりの為に心を鬼にして、という気持ちだったけど、なんだか段々と楽しくなってきた)

蘭(もう息も絶え絶えなひまりの声を聞きながら、逃げる。幼い頃の遊びにそっくりな状況だ)

蘭(セミの声と夏の香りに懐かしさがこみ上げてくる)

蘭(そうして色々なところを走り回り、商店街の近くに差し掛かった時)

蘭(またも目の前に見知った顔が映った)
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:21:04.30 ID:TejnHRCr0

ひまり「あっ、と、ともえ〜!」

宇田川巴「うん? ひまり?」

ひまり「そ、その、その猫ちゃん、捕まえてぇ〜!」

巴「猫って……ん、こいつか」

蘭(もうほとんど歩く速度と変わらなかったひまりに合わせ、トコトコと歩いていたあたしの身体を巴が両手で持ち上げる)

蘭(目線の高さもグッと上がる。巴の顔がすごく近くにあった)

ひまり「はぁ、はぁ……やーっと捕まってくれた……」

巴「どうしたんだ、ひまり? そんな肩で息して」

ひまり「その猫ちゃんが……はぁ、はぁ……私の小銭入れ持ってっちゃって……」

巴「小銭入れ……あ、確かにコイツ、くわえてんな」

ひまり「そうなの……はぁ、もうずっと追いかけてて疲れちゃった……」

巴「ははっ、いい運動になったんじゃないか?」

ひまり「うー、それはそうかもだけどぉ……」

巴「お前もダメだぞー? 人のもの勝手に持ってっちゃー?」

蘭(巴はいつもあこに接するような優しい声であたしを叱る)

巴「ほら、それ、巴に返してやりな」

蘭「んにゃ」

巴「よーしよし、いい子だなぁーお前」

ひまり「はぁ、ありがとー巴……」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:22:25.25 ID:TejnHRCr0

巴「しっかし、この猫……」

蘭「にゃ?」

巴「なんか蘭に似てんな」

蘭(……また?)

ひまり「あ、それ私も思った! 目とかそっくりだよね!」

巴「ああ。ふてぶてしい目は蘭そのものだな」

ひまり「ねー!」

蘭「にゃー……」

蘭(モカもしていたその表現が納得いかず、抗議してみる)

巴「あっはっは、この不服そうな顔なんてもう蘭にしか見えねー!」

ひまり「どれどれ……あ、ほんとだ。ふふふ、かーわいい」

蘭(2人してあたしの顔を覗き込んで笑っている)

蘭(まったく……どうして不服そうな顔があたしそのものなのか)

ひまり「ねぇねぇ巴、私にも抱っこさせてよ〜」

巴「ん、アタシはいいけど……お前はいいか?」

蘭「……にゃ」

ひまり「ふ、ふふ……蘭だったらこれ、『別に』って言ってそう……」

巴「っくく、そうだな。こいつの許可も得たし、ほら」

ひまり「はーい、おいでー猫ちゃーん」

蘭(巴は笑いを押し殺しながら、あたしをひまりに手渡す)

蘭(そしてさっきの疲れた顔と打って変わって輝かんばかりの笑顔を浮かべたひまりは胸にあたしを抱く)

ひまり「うわー、もっふもふだね〜」

巴「な。こんだけ毛並みが良いってことは飼い猫か?」

ひまり「首輪はしてないみたいだけど……でもお利口さんみたいだし、そうかもね」

ひまり「でもダメだぞー? 人のものを勝手に持っていったら。まぁ今日はいい運動になったし許してあげるけど!」

蘭「……なー」

ひまり「あはは、やっぱり猫って可愛いなぁ」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:23:10.30 ID:TejnHRCr0

蘭(ひまりはそう言ってギュッとあたしを抱え込む)

蘭(ものすごく柔らかい感触がした)

蘭(……ひまり、太ってるとか言うけど、これ胸が大きいだけじゃないの?)

巴「本当はコイツがひまりを気遣ってくれたんじゃないか?」

巴「キチンとダイエットできるように運動させようって」

ひまり「そうかなぁ? そうだったら……えへへ、ありがとね、猫ちゃん」

巴「なんかこういう不器用な気の遣い方も蘭にそっくりだな」

ひまり「ね! ありがと、蘭」

蘭(ひまりはあたしの顔を覗き込み、朗らかな笑顔でお礼を言ってくる)

蘭(本来であれば微笑ましいやり取り……なんだろうけど、流石にこれはあたし自身に直接言われてるみたいでものすごく気恥しい)

ひまり「わ、きゃっ」

蘭(あたしは身をよじってひまりの胸から逃げ出す)

巴「……照れ隠しか?」

蘭「……にゃ」

蘭(2人から少し距離を置きつつ、別に、と鳴く)

ひまり「あーあ、嫌われちゃった」

巴「ま、猫なんて気まぐれだしな」

ひまり「だよね〜。それじゃあね、猫ちゃん」

蘭「にゃー」

巴「律儀に鳴き返してら。じゃーなー」

蘭(手を振る2人に対して、あたしは尻尾を左右に振る)

蘭(……まぁ、気恥しいは気恥しいけど、ひまりの胸に抱かれるのも、巴に力強く持ち上げられるのも、悪くはなかったかな)

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:24:31.42 ID:TejnHRCr0


蘭(ひまりと巴と別れてから、またあたしは公園にまで戻ってきた)

蘭(そして木陰に座り込んでこれからどうしようかと考える)

蘭(お腹が減っていた)

蘭(起きてから何も食べていなかったし、ひまりと運動をしたせいだろうか)

「あら……見ない顔ね」

蘭(夢の中でもお腹って減るんだな、とぼんやり考えていると、聞いたことのある声があたしの耳に届く)

蘭「にゃっ!?」

蘭(そちらへ首を巡らせると、手にビニール袋を下げた湊さんがいた)

湊友希那「ふふ、流れの猫ちゃんかしら。素敵な毛並みをしているわね」

蘭「にゃ……」

蘭(どうしよう。幼馴染のみんななら何となくこの姿を見られても、という思いがあったけど、湊さん相手だとどうにも気恥しい)

友希那「あら、警戒しているのかしら。可愛いわね」

蘭(あたしの様子を見て、湊さんはとても優しい笑顔を浮かべる)

蘭(それから地面に屈み、目線を低くしてこちらに手を差し出してくる)

友希那「にゃーんちゃん。おいでおいで」

蘭「…………」

蘭(普段の様子とは180度違うその姿になんだかおかしな気分になる)

蘭(まぁ、夢の中だし、こんな湊さんも猫になったあたしもいるか)

蘭(そう思って、あたしは湊さんの方へ足を進める)

友希那「ふふ、いい子いい子」

蘭(相変わらず優しい声色をした湊さんの綺麗な指がスルリと顎を撫でてくる)

蘭(それがとても心地よかった)
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:25:21.84 ID:TejnHRCr0

友希那「そうだ。おやつを持ってきたの。食べるかしら?」

蘭「にゃー」

友希那「そう。それじゃあどうぞ」

蘭(言葉は通じてないだろうに、湊さんは頷いてあたしにチューブのような袋をこちらに差し出してくる)

蘭(人として猫の食べ物を食べるのはどうなんだろう、という気持ちがなくもないけど、今のあたしは猫であってこれは夢の中だ)

蘭(些細な悩みは捨てて、大人しくそれを頂くことにした)

友希那「食べ方、分かるかしら? ここから中身が出てくるから、口をこう、ね?」

蘭(湊さんは身振り手振りで食べ方を教えてくれる。それに鳴き返すと、『伝わって良かった』と笑顔を浮かべた)

蘭(そして湊さんの見よう見まねで差し出された猫のおやつを口にする)

蘭「にゃっ」

蘭(正直なことを言うと、ものすごく美味しかった)

蘭(思わず差し出されたそれにがっついてしまう)

蘭(ふと湊さんを見上げると、ものすごく慈愛に満ちた表情であたしのことを見つめていた)

蘭(……なんていうか、湊さんもこんな顔するんだ)

友希那「ふふ、お腹が減っていたのかしらね。美味しかった?」

蘭「……にゃ」

友希那「あまり素直じゃない猫ちゃんなのね。可愛いわ」

友希那「ほら、こっちに来なさい」

蘭(促されるままに湊さんに近付くと、あたしは膝の上に抱かれることになった)

蘭(そして湊さんの手が、スラリとした指が、あたしの全身を撫でまわす)

蘭「にゃっ、にゃぁ……」

蘭(それがなんとも表現できない快感をあたしに与えてくる)
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:26:04.37 ID:TejnHRCr0

蘭(モカともつぐみとも、巴ともひまりとも全く違う)

蘭(慣れた手つき、というか……)

蘭(これはもうプロの手つきだ)

蘭(猫のキモチイイところを知り尽くし、ただただ快楽を与えることに特化した、経験と技術の重なった技だ)

蘭(そう考えるうちにも、湊さんの手が容赦なくあたしを愛撫する)

蘭(背筋を、頬を、顎を、尻尾の付け根を、絶妙の力加減で撫でまわす)

蘭(足に力が入らない。姿勢を維持できない)

蘭(だるんと、湊さんの膝に全身を投げ出してしまう)

友希那「ふふふ……」

蘭(湊さんは変わらず優しい笑顔を浮かべていた。そしてその手があたしのお腹にまで伸びる)

蘭(そして自分では触れられない場所を優しくこねくり回される)

蘭「うにゃぁ……にゃぁん……」

友希那「ここが気持ちいいのかしら? ふふ」

蘭(とめどなく押し寄せる快楽の波に身体がどんどん重くなっていくような感覚がした)

蘭(このまま全てを投げ捨てて、湊さんのされるがままに任せるのも悪くない)

蘭(頭の中にそんな考えがもたげだしたところで、あたしは必死になって首を振った)

蘭(いくら夢の中とはいえど、越えていい一線と越えちゃいけない一線がある)

蘭(これは間違いなく後者だ)

蘭(後ろ髪を容赦なく引いてくる快楽の波に抗い、あたしはなんとか立ち上がる)

友希那「あら……あまり気持ちよくなかったかしら」

蘭「にゃー」

蘭(気持ちよすぎてダメなんです)

蘭(伝わらないであろう気持ちを鳴き声に込めて、あたしは湊さんに尻尾を振る)

友希那「そう。帰るのね。またどこかで会いましょう」

蘭(湊さんは微笑み、手を振ってきた)

蘭(それに一瞥をくれてから、背を向けて家路を辿るのだった)

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:26:53.15 ID:TejnHRCr0


蘭(塀の上をつたい、屋根を歩いて自分の部屋に戻ってくると、どっと疲れが出てきた)

蘭(あたしはあくびをしてから、自分のベッドの上で丸くなる)

蘭(猫。寝子とも書かれるように、1日のほとんどを眠って過ごす生き物)

蘭(ならこれは本能なんだろう)

蘭(日はまだまだ高かったし、湊さんに撫でられた感覚が残っていないこともないけれど、それよりも睡眠欲の方がずっと強くあった)

蘭(だから眠ってしまおう。そもそもこれは夢なんだから)

蘭(きっと夢の中で眠ることが、夢から醒める方法なんだろう)

蘭(そんなことを考えながら、あたしの意識は闇の中に落ちていくのだった)


……………………
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:28:13.86 ID:TejnHRCr0


蘭「……はっ」

蘭(パッと目を開けると、見慣れた天井が見えた)

蘭「…………」

蘭「あたしの部屋だ……」

蘭(寝ぼけた目で部屋の中を見回す)

蘭(壁に掛けられた時計は午後6時を指していた)

蘭(開けっ放しにしていた窓から柔らかい夏の風が吹き込んできていた)

蘭「……やっぱり、あれは夢だったんだ」

蘭「ま、そうだよね。人間が猫になるだなんてこと、ある訳ないし」

蘭(と、枕元でスマートフォンの通知ランプが点滅しているのに気付いた)

蘭(いつから昼寝をしていたのか覚えていないけど、幼馴染の誰かから連絡が来ているのかもしれなかった)

蘭(スマートフォンを手に持ち、通知を見る)

蘭(アフターグロウのグループメッセージの通知が来ていた)

蘭(それを開いて、しばしあたしは固まる)

蘭(一番上に写真があった。送り主はひまりで、その下にトークが続く)
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:28:49.39 ID:TejnHRCr0

ひまり『見て見て! この猫、蘭に似てない??』

モカ『あ、その猫モカちゃんも見たよ〜』

巴『なんだ、2人もか? 実はアタシもなんだ』

つぐみ『あ、その子、私も今日見たよ!』
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:30:18.26 ID:TejnHRCr0

蘭「…………」

蘭「……いや、違うでしょ、これはあたしじゃないはず……」

蘭「そもそもひまりに写真なんて撮られなかったし……」

蘭「いや、でも……まさか本当に……ええ……?」



それからしばらくの間、色々と悶々とした悩みを抱えた蘭ちゃんは友希那さんに強く当たるようになるのでしたとさ


もしも美竹蘭が猫だったら おわり

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/15(水) 12:32:43.28 ID:TejnHRCr0

丸山彩「もしも私が↓1だったら」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 12:35:05.42 ID:rEGnE0p40
天才画家
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 13:44:15.63 ID:BeB8nE3fO
猫蘭ちゃんかわいい
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/16(木) 03:17:40.01 ID:1RkWeFQA0

もしも丸山彩が天才画家だったら

※ちょっとだけホラーっぽい描写があります。


――芸能事務所――

丸山彩「趣味……うーん、趣味かぁ」

白鷺千聖「どうしたの、彩ちゃん?」

大和麻弥「さっきから何かずっと考えごとしてますね」

彩「あ、うん。あのね、今度雑誌の取材で、趣味についてのインタビューを受けることになったんだ」

彩「でもさ、私の趣味ってみんなと比べるとちょっと女の子っぽくないなーって思って」

氷川日菜「彩ちゃんの趣味って言うと……エゴサ?」

若宮イヴ「自撮りの研究も、ですよね!」

彩「うん。でもさ、それってこう、なんていうか、ちょっと可愛げがないかなって」

麻弥「そうでしょうか? ジブンなんて、趣味は機材イジりですよ?」

彩「でもそれって麻弥ちゃんらしいし、すごく頼りになりそうなイメージがあるし……」

イヴ「私は時代劇鑑賞ですが……これもあまり可愛らしくはありませんよ?」

彩「いや、イヴちゃんが時代劇を見てる姿ってすっごく可愛いからね? ズルいくらいだからね?」

日菜「んー、確かにそうかも」

彩「日菜ちゃんはアロマオイル作りが趣味だよね」

日菜「うん! 『るんっ♪』ってする匂いがたくさん作れて楽しいよ〜」

彩「うーん、難しそうなこと平然とやってる感じが日菜ちゃんっぽくていいなぁ」

彩「千聖ちゃんはカフェでお茶したり、ショッピングが趣味だし」

千聖「ちょっとありきたりなことだけどね」

彩「そんなことないよ。普段しっかりしてる分、普通の女の子な趣味がファンの心を離さないんだよ」

千聖「……そういうものなのかしらね」

彩「この前事務所のスタッフさんがそう言ってたから、そういうものなんだよ、多分」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/16(木) 03:18:42.90 ID:1RkWeFQA0

彩「はぁ……いいなぁ、私も何か可愛い趣味、見つけようかなぁ」

千聖「趣味ってそんな無理して見つけるようなことじゃないと思うわよ」

彩「やっぱりそうだよねぇ……でもなぁ、エゴサと自撮りが趣味っていうのも……」

日菜「でもそれ、すごく彩ちゃんらしくて面白いと思うけどなぁ」

イヴ「私もそう思います! アヤさん、研究熱心ですごいです!」

彩「そ、そう? えへへ、2人とも、ありがと」

千聖「でも、言われてみるとそうね。今の彩ちゃんも素敵だけど、何か女の子らしい趣味があればもっとファンの方にも素敵に思ってもらえるかもしれないわね」

彩「やっぱりそう思う?」

日菜「じゃあじゃあ、みんなで彩ちゃんの新しい趣味、考えてあげようよ!」

イヴ「そうですね! イチレンタクショウ、困ったときはお互い様です!」

麻弥「ですね」

彩「みんな……えへ、ありがとう!」

麻弥「いえいえ。それで、彩さん。普段の休日で、よくやることとかって何かないですか?」

彩「普段の休日……うーん、エゴサしたり、新しいポーズの研究したり、お買い物したり……」

千聖「イメージ通りの彩ちゃんの休日ね」

彩「あとは……あっ」

イヴ「どうかしましたか、アヤさん?」

彩「あー、うん、そういえば1つ好きなことあったなぁって」

日菜「えー? なになに、教えて?」

彩「えっと……でもこれ、ちょっと恥ずかしいっていうか、なんていうか……」

日菜「ダイジョーブだよ! エゴサと自撮りより恥ずかしい趣味ってそんなにないって!」

麻弥「日菜さん、気持ちは分かりますけどもう少し言葉を……」

彩「そ、そう? それじゃあ言うけど……その、私、お絵かきするのが好きなんだ」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/16(木) 03:19:43.44 ID:1RkWeFQA0

千聖「お絵かき?」

彩「う、うん。小さな頃ね、私が描いた絵をみんなが褒めてくれて……だから絵を描くのが好きなの」

彩「お休みの日も、天気がいい日は公園とかにスケッチブックと色鉛筆持っていってね? のんびり絵を描いたりするんだ」

イヴ「とても可愛らしい趣味じゃないですか!」

彩「そ、そうかな? 子供っぽくて恥ずかしいなって思うんだけど」

麻弥「そんなことないですよ。とても女の子らしくて素敵だと思います」

千聖「ええ、イヴちゃんと麻弥ちゃんの言う通りよ」

日菜「ねー。少なくともエゴサと自撮りなんかより数百倍可愛いよ〜」

彩「そ、それはちょっと言い過ぎじゃ……」

イヴ「私、彩さんの描いた絵、見てみたいです!」

日菜「あ、あたしもあたしもー!」

千聖「彩ちゃんが描く絵……確かに興味深いわね」

麻弥「ジブンも差し支えがなければ見てみたいです」

彩「うーん、そこまで言われたら……それじゃあ明日、スケッチブック持ってくるね?」

彩「でも本当に子供のお絵かきみたいなものだから……笑わないでね?」

日菜「大丈夫だよ、笑ったりしないって!」

麻弥「……日菜さんが一番笑いそうですけど……」

千聖「言わないであげて」

イヴ「アヤさんの絵、楽しみにしてますね!」

彩「う、うん」

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/16(木) 03:20:51.90 ID:1RkWeFQA0

――翌日 芸能事務所――

彩「おはようございまーす」

日菜「あ、おはよう、彩ちゃん!」

千聖「おはよう」

麻弥「おはようございます」

イヴ「おはようございます! あ、その手にあるのは……」

彩「う、うん。その、やっぱりちょっと恥ずかしいけど、スケッチブックだよ」

日菜「わー! 結構大きいんだね〜!」

彩「もっと小さいスケッチブックもあるんだけどね? 私は大きな方が好きだからF8のを使ってるんだ」

千聖「F8?」

彩「スケッチブックの規格だよ。A3よりちょっと大きいサイズのことをF8っていうんだ」

麻弥「へぇ〜、そうなんですね」

日菜「ねぇねぇ、早く見せてよ、彩ちゃん!」

彩「うん。その、笑わないでね?」

千聖「日菜ちゃんはちょっとアレだけど、私たちは大丈夫よ」

彩「……不安だなぁ。それじゃあ、はい」

千聖「ええ、ちょっと失礼するわね」

麻弥「机の上に広げましょうか」

千聖「そうね」

千聖(彩ちゃんからスケッチブックを受け取って、それを机の上に置く)

千聖(最前列が日菜ちゃんとイヴちゃん、その後ろに私、さらにその後ろに麻弥ちゃんというような恰好で机を覗き込む形になった)

千聖「それじゃあ、開くわね」

彩「う、うん……!」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/16(木) 03:22:27.60 ID:1RkWeFQA0

イヴ「まずは最初のページ……わぁ〜!」

日菜「おー!」

千聖「えっ……」

麻弥「え?」

千聖(最初のページに描かれていたのは、小さな公園の絵だった)

千聖(……いえ、これは絵なのかしら。本当は写真を撮ったんじゃないのかしら)

千聖(小さなブランコ、少し赤さびの生えた鉄棒、申し訳程度の小さな花壇……)

千聖(そういった公園の情景が恐ろしいほど正確に、スケッチブックの上に切り取られていた)

彩「うぅ、やっぱり恥ずかしいな……」

千聖「あ、彩ちゃん……これ、本当にあなたが描いたの?」

彩「うん……こう、ね? 写実主義を齧った中途半端な絵かもしれないけど……」

千聖「これで中途半端って……」

麻弥「…………」

イヴ「とても上手な絵ですね!」

日菜「うん! あたしでもこんなに綺麗に描けないよ!」

彩「そ、そうかな? それはあんまり自信がなかったんだけど……気に入ってもらえたならよかった」

麻弥「……いや、彩さん、これ正直お金取れるレベルだと思いますよ……?」

彩「それは褒め過ぎじゃないかな……? その絵は子供の頃に描いたのとあんまり変わってないし……」

千聖「子供の頃からこんな絵をって……ピカソの生まれ変わり……?」

麻弥「確実にお絵かきって言葉で済ましていいレベルじゃないですよね……」

千聖「ええ……美術館に飾ってあってもいいくらいの絵ね……」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/16(木) 03:23:18.23 ID:1RkWeFQA0

イヴ「次のページは……わぁ、これも素敵な絵です!」

日菜「さっきと作風が違うね!」

千聖(イヴちゃんと日菜ちゃんの言葉を聞いて、私も再びスケッチブックへ視線を落とす)

千聖(今度の絵は先ほどとは違う趣向のようだった。風景画と聞いて最初に思い浮かべるような絵だった)

千聖(湖……いや、大きな池かしら。それがスケッチブックの下半分に描かれている)

千聖(そして真向かいには赤い小さな夕陽がこれから沈みゆこうかというところだった)

千聖(池の真ん中には一艘の小さなボートがポツンと描写されている)

千聖(全体的に暗めの色が使われているけど、空の色に使われている橙色と赤色が妙に映えて、温かみのある絵だった)

彩「あ、それは印象主義の絵で……公園の池を見ながら、『日の出』っていう絵を真似してみたんだ」

千聖「真似……出来るの?」

彩「え、うん。絵の描き真似くらいなら簡単でしょ?」

千聖「これを本当に簡単だ、って言えるのはごく一部の限られた人間だけだと思うけど……」

麻弥「これが本当の天才肌ってものなんでしょうか……」

彩「そ、そんな褒められるものじゃないよ。これは私のオリジナルじゃないわけだし……何かの、もしくは誰かの真似をしただけのレプリカだよ」

彩「もっと深い本当のことは」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/16(木) 03:23:59.46 ID:1RkWeFQA0

――ガチャ

芸能スタッフ「すみません、丸山さん。ちょっと今度の仕事の打ち合わせがしたいと先方から連絡がありまして」

彩「あ、はーい!」

彩「ごめんね、ちょっと呼ばれちゃったから行ってくるね。スケッチブックはそのまま見てていいよ」

イヴ「分かりました!」

日菜「行ってらっしゃーい!」

彩「うん、じゃあちょっと行ってきます」

千聖「ええ」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/16(木) 03:25:04.00 ID:1RkWeFQA0

麻弥「……行っちゃいましたね」

千聖「……ええ。なんだか本人がいないところでスケッチブックを見てるのってちょっと覗き見をしているみたいね」

麻弥「まぁ……でも彩さんが見てていいよって言ってくれたんですし」

千聖「……そうね」

千聖(でも、なんだろう。何かがすごく心に引っかかっている)

千聖(普段見ている彩ちゃんと、このスケッチブックに色鉛筆を走らせる彩ちゃん)

千聖(その姿が私の中で一向に合致しない。それどころか、考えれば考えるほど、どんどん離れていっているような気さえする)

イヴ「……あれ?」

麻弥「どうかしましたか、イヴさん?」

イヴ「いえ……このスケッチブック、最後の方のページが綴じられてしまっていますね」

日菜「あ、ほんとだ。ホチキスで止めてある。変なの」

千聖(2人の言う通り、最後の10ページくらいはホチキスで無造作に綴じられてしまっていた)

千聖(丁寧に、几帳面に、紙面の縁に沿うようにして、12個のホチキスの芯が見える)

千聖「まぁ……彩ちゃんのことだから、失敗した絵は見れないようにしてあるんじゃないかしら」

千聖(口にしながら、その言葉の違和感を強く感じる)

千聖(彩ちゃんのことだから)

千聖(彩ちゃんのことだから?)

千聖(彩ちゃんのことだから……失敗した絵は、どうするだろう)

千聖(そのままにしておいて、『えへへ、失敗しちゃったんだ』と照れ笑いを浮かべる)

千聖(あるいはそのページだけ破いて、『これはなかったことにしよう!』と明るく言う)

千聖(その姿は考えられるけど、だけど、ホチキスで止めてそのまま放置するなんて……彩ちゃんはするだろうか)
161.37 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)