【バンドリ安価】湊友希那「ロゼリアのレベルアップを計る」

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160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:30:17.63 ID:OMi8DRIw0

日菜「へー。美咲ちゃんと何してたの?」ニュッ

紗夜「っ!?」ビクッ

あこ「わっ、ひなちん!」

紗夜「……気配を消して後ろから近付いてこないの。びっくりするじゃない」

日菜「あははー、ごめんごめん。それで?」

紗夜「それでって?」

日菜「美咲ちゃんと何してたのか気になるなぁ〜って」

紗夜「別に特別なことは何もしてないわよ。ただ一緒にお茶をしただけで」

彩「え? でも紗夜ちゃん、美咲ちゃんに『おねーちゃん』って呼ばれてたよね?」

日菜「は?」

紗夜「丸山さん、いつからそこに……」

彩「あ、ごめんね? 日菜ちゃんに用があって。ねぇ、日菜ちゃ――」

日菜「ちょっとおねーちゃん! どーいうことなのそれ!」

彩「え、あの、日菜ちゃん……?」

紗夜「どういうこともなにも、挑戦だったのよ」

日菜「意味わかんない! やだー! おねーちゃんはあたしだけのおねーちゃんなの!!」

紗夜「別に奥沢さんを本当に妹にするとかそういう話じゃないわよ」

日菜「そういう問題じゃないの! あたしとも一緒にお茶しよーよぉおねーちゃーん! ねぇねぇ〜!」

紗夜「もう、そんなに駄々をこねないの」

日菜「やだ! やだやだやだ〜!!」

紗夜「はぁ……まったくこの子は……」

彩「……なんていうか、ごめんね?」

紗夜「いえ……やったのは私の方ですから……」

日菜「おねーちゃんから姉萌えプレイしてたの!? あたしのことは全然構ってくれないのに!? あたしじゃおねーちゃんのこと満足させられないの!?」

紗夜「言葉はキチンと選びなさいとこの前も言ったでしょう」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:31:00.14 ID:OMi8DRIw0

友希那「……姉妹喧嘩っていうのかしらね、これは」

リサ「ヒナが紗夜に構ってもらいたいだけじゃないかなぁ……」

あこ「りんりーん、どうしてさっきからあこの耳塞いでるの?」

燐子「うん……色々あるんだ……ごめんね、あこちゃん」

あこ「わー、何喋ってるのか全然分かんないやー」

友希那「紗夜は置いておくとして……あこはどうかしら」

あこ「はい? なんですか、友希那さん?」

友希那「……丸山さん。申し訳ないんだけど、紗夜と日菜をあっちに連れて行ってもらえるかしら」

彩「あ、うん。元からそのつもりだったから平気だよ。……日菜ちゃん、イヴちゃんが呼んでるよ。紗夜ちゃんと一緒でいいからちょっといい?」

日菜「分かった、あっちでゆっくり話そうおねーちゃんっ!」

紗夜「ちょ、どうして私まで……」

友希那「もういいわよ、燐子」

燐子「はい……」スッ

あこ「おお……風の音が聞こえる……黒い風が、また泣き始めた……」

燐子「……〜♪」ハナウタ

あこ「よかろう、かかって来い……。死のかくごが出来たのならな!」

燐子「テーテーテテーテレレレー♪」ハミング

友希那「……なんの話なの?」

燐子「あ……ごめんなさい……つい……」

あこ「魔王さまとカエルがカッコいい〜って話です!」

燐子「戦闘に入るまでの……一連のセリフとBGMがいいんです……」

友希那「…………」

友希那「……そう」

リサ(あ、理解を諦めた時の顔だ)
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:31:55.45 ID:OMi8DRIw0

あこ「それでどうしたんですか、友希那さん?」

友希那「あこの挑戦の方はどうかしら?」

あこ「はい! ばっちりクッキー作ってます!」

あこ「それでおねーちゃんに味見してもらって、あ、そうだ! いっぱい作り過ぎちゃったから持ってきてるんですよ! えーっと……」ゴソゴソ

あこ「あったあった! じゃーん、コレです!」

リサ「おー、綺麗に作れてるじゃん!」

燐子「お店に売ってるクッキーみたいだね……」

あこ「でしょでしょ! えへへ〜、あこの闇の魔力をスティックに込めて、いっぱい叩いたからね〜!」

リサ「スティック?」

あこ「そう! めん棒がお家になくて、新しいドラムスティックで作ったんだ!」

リサ「へ〜」

友希那「…………」

あこ「あ、やっぱりスティックでお菓子作りはダメでした……?」

友希那「いえ、いいと思うわよ」

あこ「よ、よかったぁ……友希那さんと紗夜さんには怒られるんじゃないかなってちょっとだけ思ってた……」

友希那(昔の私なら確実に怒ってたわね)

リサ(昔の友希那なら絶対怒ってたろうなぁ)

友希那「何が音楽にいい影響を与えるかはやってみないと分からないもの。あこがそれで何か得るものがあったのなら、それでいいのよ」

あこ「はい! リサ姉と紗夜さんがお菓子作って来てくれる気持ちが分かって、それに生地を叩いてたらなんだかリズム感が良くなった気がしてます!」

友希那「そう。なら、その経験は無駄ではないわ。よく頑張ったわね、あこ」

あこ「えへへ、ありがとうございます!」

燐子「よかったね、あこちゃん……」

あこ「うん!」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:32:33.09 ID:OMi8DRIw0

友希那「それじゃあ次は燐子ね」

燐子「は、はい……!」

友希那「……でも、燐子はもうこの場でやってることを見せてもらったし、それでいいかしらね」

燐子「そう……ですか?」

友希那「ええ。人見知りのあなたがこういう教室に参加して……それに山へ竹を採りに行ったんでしょう?」

友希那「加えて私たちをこういう場所に誘ってくれたし、積極的に挑戦しようっていう気持ちが十分に見てとれるわ」

友希那「よく頑張ったわね、燐子」

燐子「はい……ありがとうございます……」

燐子「最初はちょっと……怖かったですけど……一歩を踏み出してみたら……素晴らしい体験が出来て……」

燐子「やっぱり……挑戦って大事なんだなって、すごく思いました……」

友希那「ふふ、流石ね」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:34:02.17 ID:OMi8DRIw0

リサ「そういう友希那はどうだったの?」

友希那「私も貴重な体験が出来たわ。最初こそ接客業なんて勝手が全然分からなかったけど、色々と調べて経験して、自分の世界を広げることが出来たわ」

友希那「今までは食わず嫌いというか、知りもしないで避けていたこと(猫カフェ)もちゃんと調べてみれば素敵なものだったし、働くということの責任を(猫たちに)教えてもらったわ」

友希那「アルバイトは社会経験とはよく言うけれど、その言葉の意味を(猫カフェで)身を持って知ることが出来た」

友希那「これは間違いなく人生においてプラスだったし、この(猫カフェでの)経験を作曲や歌の表現にも生かせるハズよ」キリッ

リサ「おー」

燐子「流石ですね……友希那さん……」

あこ「あこもバイトしてみたいなぁ」

燐子「あこちゃんは……もうちょっと待たないとね……」

リサ「高校生になったらアタシと一緒にコンビニでやる?」

あこ「リサ姉と一緒も捨てがたいけど……やっぱりおねーちゃんと一緒がいいな」

リサ「あはは、振られちゃった」

あこ「ごめんね、リサ姉」

リサ「いやいや。流石に巴には敵わないよ」

燐子「わたしも羽沢さんのお家で……うう、でもやっぱり接客業はまだ……」

友希那「燐子もあこもしっかりやっているし、紗夜もやることはやっているでしょう」

友希那「リサは明日が本番だから、頑張ってね。この前話した通り、応援に行くわ」

あこ「あこもリサ姉応援しに行くよ!」

燐子「わたしも……行きます……」


<ソレジャアライシュウハアタシトデートダヨデート! ジャナキャユルサナインダカラネ!

<ハァ...ワカッタワヨ、ツキアウワ


友希那「……きっと紗夜も来てくれるわ」

リサ「みんな、ありがと。みっともないとこ見せないように、しっかり頑張るね」


――――――――――――
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:34:50.97 ID:OMi8DRIw0

【日曜日】


――商店街――

リサ「ふぅー……今日もいい天気だなぁ」

はぐみ「おーい、リサさーん!」

リサ「おっ、おはよーはぐみ」

はぐみ「おはよー! 今日は晴れてよかったね!」

リサ「んー、でもあんまり晴れてると暑くて大変そうだなぁ……まぁー雨が降るよりはいいけどさ」

はぐみ「あ、そうそう! これがリサさんの分のマラソンポーチだよ!」

リサ「お、ありがとう。オレンジ色でけっこう可愛いデザインだね」

はぐみ「えへへ、昔使ってたお気に入りなんだ」

リサ「そんなに大切なやつ、借りちゃっていいの?」

はぐみ「うん! 押し入れにずっと入ってるより、リサさんと一緒に走れる方がポーチも嬉しいと思うから!」

リサ「……そっか。それじゃあありがたく使わせてもらうね」

はぐみ「どうぞ!」

リサ「えーっと、普通にウェストポーチみたいにつければいいのかな?」

はぐみ「うん。マジックテープでしっかり止めてね!」

リサ「ん、りょーかい」

はぐみ「持ってきたジェルは一番大きなとこに入れて……それと、秘密兵器を小さなポケットに入れといたよ」

リサ「え、秘密兵器?」

はぐみ「うん! 秘密だからね。今は見ないで、もうダメだって時かゴールしてから使ってね!」

リサ「よく分かんないけど分かったよ。何から何までありがとね、はぐみ」

はぐみ「ううん!」

リサ「さってと、スタートまではまだ時間があるね」

はぐみ「うん。そしたらまず……」

リサ「準備体操だね」

はぐみ「うん!」


……………………
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:35:19.89 ID:OMi8DRIw0

――スタート地点――

リサ「うひゃー、意外と参加者多いんだね」

はぐみ「夏はあんまりマラソン大会がないからね。色んなところから参加者が来るんだ」

リサ「へー……ん? あれは……」

はぐみ「あ、ロゼリアのみんなだね!」

友希那「リサ、応援に来たわよ」

紗夜「今井さんなら完走くらい余裕でしょう。怪我だけは気を付けてくださいね」

あこ「頑張れ、リサ姉!」

燐子「頑張ってください……」

リサ「うん、ありがと! 精一杯やってくるよ!」

はぐみ「いいなぁ、リサさん……」

リサ「はぐみだって、ほらあそこ」

はぐみ「え?」

花音「は、はぐみちゃーん!」

美咲「こんな暑い中マラソンって大丈夫なのかな……」

薫「ふふ……はぐみならきっと大丈夫さ」

はぐみ「わっ、みんな応援に来てくれたの!?」

花音「うん。流石に一緒には走れないけど、応援くらいならって思って……」

美咲「釈迦に説法かもだけど、今日も暑いし気をつけてね」

薫「来れなかったこころとミッシェルの分まで私たちが応援するよ」

はぐみ「うん、ありがと! よーしっ、一番目指して頑張るぞー!」

リサ「アタシも完走目指して頑張るぞー!」

『間もなくスタートです。出場者の方は集まって下さい』

はぐみ「もう始まるね。それじゃあ、はぐみは前の方に行ってくる!」

リサ「アタシは後ろの方で、ペースを崩さないように行くよ」

はぐみ「一緒に頑張ろうね!」

リサ「うん!」


……………………
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:36:18.77 ID:OMi8DRIw0

リサ(はぐみは列の前の方に行っちゃったし、ここからはアタシひとりで頑張んないとね)

リサ(えーっと、スタートしたらまずは焦らずに走ること、それと給水所の場所はスタート地点のこことちょうど街を半周したあたり……)

リサ(あーヤバい、ちょっと緊張してきた)

『スタートの時刻になりました』

はぐみ父「準備はいいですかー! それでは位置について、よーい……」

――パァン!

リサ(スターターピストルの音と一緒に周りの人たちが「わっ」と一斉に走り出す)

リサ(みんな、思ったよりも早いペースで走り出してるな……)

リサ「けど、慌てない慌てない……」タッタッタ...

リサ(確かに周りのペースに釣られそうになるけど、はぐみとの練習で教わった「最初はゆっくり、あとからバビューン!」だね)

リサ(昨日は練習しないで休んでたから身体も軽いし、ベースを弾く時みたいに、ペースを崩さず行かなくちゃ)

リサ「はぐみは……わっ、すごい。もうあんな遠くに」

リサ(先頭集団の方へ視線を巡らせると、はぐみの姿はその中でも前の方にあって、明るい色のショートヘアーが軽やかに揺れていた)

リサ(やっぱ走るのが好きなだけあって速いなぁ)

リサ「すー……ふー……」

リサ(どことなく置いてけぼりにされてる気がしちゃうけど、はぐみははぐみでアタシはアタシ)

リサ(ゆっくり呼吸をして気持ちを落ち着かせて、完走目指して行こう!)
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:37:20.88 ID:OMi8DRIw0


燐子「今井さん……結構後ろの方ですね……」

あこ「大丈夫かな……」

紗夜「目標は上位入賞ではなく完走ですからね。ペース配分を考えているんでしょう」

友希那「ええ、きっとそうよ」


美咲「うわー、はぐみすごい速い……」

花音「体力、持つのかな……大丈夫かな……」

薫「案ずることはないさ、花音。はぐみはマラソンのスペシャリストだからね」


……………………
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:38:00.16 ID:OMi8DRIw0

――タッタッタ...

リサ(真夏の太陽光がアスファルトを照りつけて、道路に陽炎が揺らめいている)

リサ(その揺らぎを踏みしめては蹴りだして、アタシはただ前へ進む)

リサ(スタートしてからどのくらい経ったろうか。どのくらい走っただろうか)

リサ(時間は分からないけれど、見慣れた街の景色からなら大体どのくらい走ったか分かりそうだ)

リサ(いつものんびり歩く商店街を抜けて、花咲川女子学園に続く道)

リサ(確かここまで歩くと20分くらいだったはずだから、距離にすると……あー、どのくらいだろ。やっぱ分かんないや)

リサ(そんなことを考えながら、ペースを乱さないように足を動かす)

リサ(最初は大きく固まって走っていた参加者たちも、段々とバラけていった)

リサ(アタシの近くには4人。それぞれが規則正しく腕を振って走っている)

リサ(アタシもそれに倣って、はぐみに教えてもらったことを頭で反芻しながら走る)

リサ(目線は5メートルくらい先にして猫背にならないように、まだ序盤だから抑えめに走る、それから休憩所では慌てずゆっくりする……)

リサ(駆けるリズムに合わせて頭の中で何度も繰り返す)

リサ(そうしているうちに、近くを走っていた4人のうちの2人を段々と後方に離していった)

リサ(あの人たちがペースを落としたのか、それとも、今もまだ近くを走る2人のペースが上がったのか)

リサ(分からないけど、とにかくアタシはアタシの思うリズムで走れば平気のはず)

リサ(ああ、それにしても暑い。真夏の太陽は本当に容赦がない)

リサ(額から噴き出る汗が眉にかかって、アタシはそれをピッと指で払った)

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:38:38.68 ID:OMi8DRIw0

― 一方その頃 ―

はぐみ「うりゃー!」タタタタ...

お師匠「……!」ダッダッダッダ!

はぐみ(竹屋さん、今日も速いなー! あんなにおっきな身体なのに!)

お師匠(北沢さんの娘さん……やはり今回も速い……)

はぐみ(この前は負けちゃったけど、今日は絶対に勝つ!)

お師匠(大人げないとは思うけれど……今回も負けません……!)

はぐみ「負けないぞー!」

お師匠「私もです……!」

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:39:30.51 ID:OMi8DRIw0

リサ(暑い。暑い。喉が渇いた)

リサ(足元からせり上がってくる照り返しの熱気が身体中にまとわりつく)

リサ(ペースは崩していない、はず)

リサ(近くを走っている2人とは全然はぐれないし、大丈夫なはず)

リサ(でもあっついものは暑い!!)

リサ「はぁ、はぁ……!」

リサ(ちょっと前までは頭の中でベースを奏でてリズムを取る余裕があったけど、今はそんなものはない)

リサ(肩で呼吸をする、とまではいかないけど、徐々に徐々に息遣いが早く荒くなってきてる)

リサ「はぁ……っと!」

リサ(顔がかなり下を向いていたのに気付いて、ハッとして身体を起こす)

リサ(少しだけ腰のあたりが楽になったような気がした。気がしただけかもだけど)

リサ(スタートからどれくらい経ったんだろう)

リサ(ペースを乱さないことばっかり考えてて、時間に関しては皆目見当もつかない)

リサ(せめて給水所が見えてくれば分かるのに……)

リサ「はぁ、はぁ……?」

リサ(そんなことを思ったところで、左前方に商店街の名前が書かれた組み立て式の白テントと、人がたくさん集まっているのが見えた)

リサ(給水所だ、と一拍おいてから理解すると、深い息が一度漏れた)

リサ(給水所は5キロに1回。ということは、これで4分の1を走り終えたということだ)
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:40:25.27 ID:OMi8DRIw0

リサ「はぁ……はぁー……」

リサ(ペースをゆっくり落としていく)

リサ(はぐみの言葉が頭の中に蘇る。給水所では慌てずに、ゆっくり休憩するくらいの気持ちでいた方がいい……って)

リサ「慌てる……余裕も……ない……ってば……」

リサ(早歩きとほとんど変わらない速度までペースを落としたところで給水所の前に辿り着く)

リサ(ここまで一緒に走ってきた2人はアタシよりかは速い足並みで紙コップを受け取って、それをすぐに口にしていた)

リサ(アタシもそれに倣って、白テントの真下に設けられた長方形のテーブルから紙コップを手にする)

リサ「っ、っ……ふはぁ……」

リサ(アンダンテのリズムで足を進めながら、紙コップに入った水をゆっくりと飲み干した)

リサ(キンキンに冷えてる、とは言えない温度の水だったけれど、身体が内側からゆっくり冷やされた)

リサ(太陽の光に茹だった思考も少しだけ冷静になった)

リサ「すー、はー……」

リサ(深呼吸しつつ、腿を少し大きく上げて歩く。はぐみとの練習を頭に呼び起こす)

リサ「……釣られてたなぁー」

リサ(1週間という短い期間の練習だったけれど、それでもなんとなく身体が「ゆっくり走る」ペースを覚えていた)

リサ(そのペースは、スタート地点からここまで走ったものと比べるとずっとゆっくりで、アタシが合わせるべきはあの時離れた2人だったんだと今さら気付く)

リサ(完走が目標だ、とは言っているけれど、それでもやっぱり順位が上がると嬉しいものだ。一緒に走ってた人を引き離して、知らない間にテンションが上がって、もっとイケるって足を動かしていたらしい)

リサ「……よっし、頑張ろっ」

リサ(空になった紙コップを備えられた大きなゴミ袋に捨てて、アタシはもう一度ペース配分を頭に入れて、再び地面を蹴った)

173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:41:28.35 ID:OMi8DRIw0

― 一方その頃 ―

紗夜「奥沢さんたちも北沢さんの応援に来ていたんですね」

美咲「ええ、はい」

あこ「それにしても暑い……」

燐子「こんな中マラソンなんて……わたしがコレを引いていたら……死んでたかも……」

友希那「あら、先頭集団が戻ってきたみたいね」

花音「あ、本当だ。はぐみちゃん、いるかな?」

薫「きっといるさ。はぐみはスピードスターだからね」

美咲「あ、はぐみ見つけ――」

はぐみ「おおー!」タタタタタタ

お師匠「……っ!」ドドドドド

美咲「――た……って、もう通り過ぎた!?」

燐子「あれ……北沢さんと競り合ってたの……お師匠さんじゃ……」

友希那「…………」

紗夜「湊さん? どうかしましたか?」

友希那「……いえ」

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:42:14.74 ID:OMi8DRIw0

リサ(ペース配分)

リサ(ペース配分)

リサ(リズム。アダージョ、アレグロ・モデラート、ア・テンポ)

リサ(このテンポで走って、ダ・カーポ、繰り返す、初めから繰り返す)

リサ(季節は巡る、春はあけぼの、ソメイヨシノ、さくら、懐かしい夢)

リサ(……何考えてんだろ)

リサ(頭の中に浮かぶ言葉は単調なものばかりで、あちらこちらへフラフラと、まるでサーカスの曲芸師が渡る綱のように寄る辺なく揺れ惑う)

リサ(走るペースは再確認したけれど、それでも足を動かし続けることで身体にかかる負担はどんどん積み重なる)

リサ(綱渡りといえば友希那が落っこちた時の悲鳴ちょっと可愛かったなー……なんて)

リサ(身体にかかった負担はだんだんと正常な思考能力も削いでいって、考える内容をあらぬ方向へ捻じ曲げる)

リサ(それでも足は止めない。そういう風にプログラムされた機械のようにただ前へ進み続ける)

リサ(どれくらい走っただろう、どれくらい時間が経っただろう)

リサ(それを考えることさえ今は出来そうにない)
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:42:54.68 ID:OMi8DRIw0

リサ「はっ、はっ、はっ……」

リサ(浅い呼吸を忙しなく繰り返す)

リサ(そうしていると、スタート地点の給水所が見えてきた)

あこ「リサ姉〜!」

リサ(その近くにいたあこがアタシにぶんぶんと両手を振った)

燐子「い、今井さん、頑張って下さい……!」

紗夜「ここで折り返しよ。もう半分、頑張って」

リサ(隣に並ぶ紗夜と燐子も声援をくれた)

リサ(それらに笑顔を浮かべようとしたけど、あんまり上手くいかなかったような気がしたから、アタシはヒラヒラと右手を振り返した)

リサ(2回目の給水所。折り返し。1度目のダ・カーポ)

リサ(もう1度ここからだ)

リサ(ペースを落として、アタシはテーブルに置かれた紙コップを手にした)

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:43:26.35 ID:OMi8DRIw0

燐子「今井さん……すごく苦しそうでしたね……」

あこ「リサ姉……大丈夫かな……」

紗夜「……大丈夫よ。今井さんは強いもの」

紗夜(自分の挑戦内容にかまけて少しキツく当たり過ぎたわね……反省しないと……)

燐子「…………」キョロキョロ

あこ「どうしたの、りんりん?」

燐子「友希那さん……まだ戻ってこないなって……」

紗夜「そういえば……飲み物を買いに行くって言ったっきりね」

177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:43:56.91 ID:OMi8DRIw0

― 一方その頃 ―

はぐみ「はぁ、はぁ……」タタタタ

お師匠「ふっ……ふっ……」ダダダダ

はぐみ「はぁ、息が、上がってるよ? ちゃんとそこで給水、した方がいいと思うよ?」

お師匠「ふぅ、そちらこそ……少し休んで……いかれては……?」

はぐみ「はぐみは、まだ、ヘーキだよっ!」

お師匠「私も……まだ、まだっ……!」

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:45:11.71 ID:OMi8DRIw0

リサ(給水して、ただ足を動かす)

リサ(アスファルトを踏みつけて前へ前へ)

リサ(今日2回目の景色が通り過ぎる)

リサ「はぁ、はぁ、はぁ……!」

リサ(息が苦しい。苦しくて苦しくてしょうがない)

リサ(頭も回らない。脳裏に浮かぶのは変な自問自答だけ)

リサ(アタシは何のために走ってるのか、どうして走ってるのか)

リサ(なんでこんなキツイ思いしてんのかって、ただそれだけ)

リサ(足を止めたい。疲れた)

リサ(ゴールはどこなのか、って、さっき通り過ぎたばっかだ)

リサ(遠い。遠すぎる。もう一度、もう一度って、この距離を走らなくちゃいけないのか)

リサ(途方もない。頭の中に浮かぶゴールは蜃気楼だ)

リサ(アスファルトに伸びるアタシの影さえ蒸発しそうな炎天下に揺らめく、触れることの出来ない蜃気楼だ)
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:45:42.01 ID:OMi8DRIw0

リサ「ああ、もう、何考えて、んのさ……」

リサ(頭を振った。頬にしたる汗が飛び散った)

リサ(もう一度背筋を伸ばす。腰のあたりで衣擦れがあって、はぐみに借りたポーチの存在を今さら思い出した)

リサ(そうだ、エネルギーを補給しないと)

リサ(走るペースを緩めて、ポーチをお腹の方へ回す。そして入れておいたジェルを取り出して、口をつける)

リサ(息が詰まって上手に飲めないけど、少しずつ、少しずつ飲み下していく)

リサ(そもそもこれってこういう風に飲むんだろうか、給水の時に飲めばよかったんじゃないだろうか……と今になって思うけれど、もう遅い)

リサ(四苦八苦しながら飲み切って、空になった容器をポーチにしまう)

リサ(少しだけ元気が出たような気がした)
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:46:23.34 ID:OMi8DRIw0

リサ(けれど少し走っているうちに、その元気も全部、汗と一緒に流れ出てしまったような気がした)

リサ(もうゴールしたい。ここをゴールにしてしまいたい)

リサ(そう思ってやまない)

リサ(ほとんど惰性のように足を動かし続けていると、前方に給水所が見えた)

リサ(距離にすれば300メートルとかそんなものだろうか)

リサ(だけどその距離すら遥か彼方に思えてしまう)

リサ(それならばスタート地点は、ゴールとなる場所へはあとどれだけ足を動かせばいいんだ)

リサ(思い浮かべた距離は途方もなくて、アタシから気力を奪っていく)

リサ(アタシはひとりで何をやってるんだ)

リサ(もうダメだ、もうダメだ……と、ネガティブなことばかりを胸中で繰り返した)

リサ(そうしているうちに給水所へ辿り着いた)

リサ(ペースが落ちていく。重たい足がますます重たくなっていく)

リサ(もう諦めてしまえばいい)

リサ(とうとう思い浮かんだのはそんなギブアップの言葉で、どんどん気持ちが萎んでいく。頭が重くて俯いてしまう)
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:47:50.28 ID:OMi8DRIw0

友希那「リサ」

リサ「えっ……?」

リサ(けど、その声を聞いて、ふっと顔が持ちあがった)

友希那「あともう少しよ。頑張って」

リサ(視線の先、白テントの下。スタート地点にいるはずの友希那が、紙コップを持って立っていた)

リサ「え、え……なんで、友希那がここに……」

友希那「この辺りが一番大変だと思ったからよ」

リサ(言いつつ、もうほとんど歩く速さと変わらないアタシに友希那は歩調を合わせる)

友希那「あっちにはみんながいるわ。だから私はこっちへ来たの。運営の人に『友達に飲み物を渡したい』って言ったら快く了承してもらえたわ」

リサ(「はい、これ」……と友希那が差し出す紙コップを受け取る)

友希那「さっき買ってきたばかりのスポーツドリンクが入っているわ。さぁ、飲んで」

リサ「……うん」

リサ(乱れた息を整えながら頷いて、コップに口をつける。口の中に冷たさとほのかな甘さが広がって、それを一息に飲み込んだ)

リサ「っはぁ……」

友希那「大丈夫? ……いえ、リサなら大丈夫よね」

リサ「……うん。友希那のおかげで元気出た」

友希那「それならよかった。さぁ、あともうちょっとよ。最後まで頑張って」

リサ「うんっ!」

リサ(不思議だった。さっきまではあんなに萎れていた気力が、友希那の応援だけで一気に大きくなった)

リサ(アタシは友希那に頷きかえして、大きく息を吸ってから吐き出す)

リサ(そしてアスファルトを強く蹴りだした)

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:48:37.02 ID:OMi8DRIw0

友希那「……こっちに来ておいてよかった。あんなに苦しそうなリサ、初めて見たわ」

友希那(でも、しっかり元気になってくれてよかった)

友希那(人に頼らず自分の力で挑戦すること……なんて先週言ったけれど、これくらいなら紗夜も大目に見てくれるでしょう)

友希那(あとはゴール地点でリサを待って……)

友希那「…………」

友希那「あ」

友希那(……マズイ、いま気付いたけれど……どうやってリサより先にあっちへ戻ればいいのかしら……)

友希那(ゴールの瞬間にリーダーかつ発案者の私がいないって、絶対に締まらないわよね……)

友希那(走って? いや、リサより早く戻れる自信がないわ。行きはリサよりも早く出たから歩いてでも間に合ったけれど……)

友希那「……どうしよう」

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:49:23.05 ID:OMi8DRIw0

リサ(友希那に応援してもらってからしばらく走って、ふと思い出したことがあった)

リサ(ポーチの小さなポケットに入った、はぐみ曰く『秘密兵器』)

リサ(もうダメだって時は過ぎちゃったけど……ちょっとだけ、見てみよう)

リサ(そう思って、ポーチの小さなポケットを開ける。そこにはトランプくらいの大きさの厚紙が2枚入っていた)

リサ(それに付箋が貼ってあって、『もうダメ用』『ゴール用』とそれぞれ書いてあった)

リサ(アタシは『もうダメ用』の付箋を引っ張って、厚紙を取り出す。そして紙面に目を通す)

『リサさん、ファイトー!!』

リサ(そこには元気一杯の大きな文字で、そう書かれていた)

リサ「ふっ、ふふ……」

リサ(それを見て、相変わらず息が苦しいけれど、思わずアタシは笑ってしまった)

リサ(あーそうだ。そういえばみんなで曲作って歌ったっけな。その張本人がそれを忘れてるんだから世話ないなぁ)

リサ(『ひとりで何やってるんだ』って、本当にバカなことを考えていたものだ)

リサ(友希那が応援してくれて、あこと燐子と紗夜も応援してくれて、はぐみがこんなにもアタシをサポートしてくれる。それならアタシは全然……)

リサ「……ひとりじゃないんだから」

リサ(呟いた言葉がアタシの背中を押す。気力はもうゲージを振り切るレベルで満タンだ)

リサ(あこが、燐子が、紗夜が、そしてなにより友希那が絶対に待ってくれているゴールを想像する)

リサ(それは決して蜃気楼や幻なんかじゃなくて、確かな輪郭を持った現実として、何があったって絶対に辿り着ける目的地として、明確に思い描ける)

リサ(もう少しで、あと少しでそこへ辿り着けるんだ。やってやる、最後まで頑張り抜いてやるんだ)

リサ(アタシの足は、ただその風景を目指してまっすぐに突き進んでいった)

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:50:49.70 ID:OMi8DRIw0

――ゴール地点――

紗夜「ハーフマラソンに参加してる人たちが着々とゴールしてるわね……」

燐子「はい……今井さんももうそろそろでしょうか……」

あこ「んー……あっ!」

リサ「はぁ、はぁ、はぁ……!」

リサ(見えた……あそこがゴールだ……)

あこ「リサ姉来た! リサ姉〜!!」ブンブン

燐子「やっぱり苦しそう……が、頑張って下さい……!」

紗夜「今井さん! もう少しです、頑張って!」

リサ(あこが大きく手を振って、燐子がキュッと祈るように両手を組んで、紗夜が珍しく大声を出して……)

リサ(ああ、やっぱりだ。アタシが思った通りの風景だ)

リサ(『もう少し、あと少し』で、やっとここまで来れた)

リサ(『もうダメだ』を乗り切れたんだ)

リサ(アスファルトから立ち上る陽炎がゴールを揺らす)

リサ(けどあれは蜃気楼なんかじゃない。しっかり触れられる現実だ)

リサ(あんなに遠かったのに足を踏み出すたび近づけるんだ)

リサ「はぁ、はぁ……!」

リサ(足が重たい。身体が重たい。それでも前へ進む)

リサ(もうすぐそこなんだ)

リサ(一歩、二歩、三歩……交互に足を踏み出して、挫けそうになったけど、これでやっと……)

リサ「はぁ、ゴール……だっ!」

リサ(アタシは最後の一歩をしっかり踏みしめた)

リサ(ゴールしたんだ。完走できたんだ)

リサ(そう思うと身体から力が抜けた。ペースを歩くくらいのものに落とした足がふらついた、けど)

友希那「完走おめでとう、リサ」

リサ「はぁ、はぁ……うん……超、頑張った……」

リサ(タオルを手にした友希那が出迎えてくれたから、アタシは笑顔を浮かべることが出来るのだった)


……………………
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:51:37.47 ID:OMi8DRIw0

リサ(花咲川マラソン大会は、その後も滞りなく進行していき、参加者全員がゴールした)

リサ(ハーフマラソンに参加した人数は58人いて、アタシはその中で29位だった)

はぐみ「初めてなのに真ん中なんてすごいよ!」

リサ(……と、大会後にはぐみが嬉しそうに褒めてくれて、アタシも嬉しかった)

リサ(はぐみといえば、『ゴール用』と書かれた厚紙には、こう書かれてあった)

『おめでとう、リサさん! はぐみも頑張るよ!』

リサ(「はぐみはフルだから、リサさんにすぐにおめでとうって伝えるために用意したんだ」と、これまた嬉しそうに言う姿に、アタシもやっぱり嬉しくなった)

リサ(そのはぐみはフルマラソン参加者71人中、9位だったらしい)

リサ(アタシの2倍走ってその順位って凄すぎると素直に思った。あと、その後ろで燐子のお師匠さんが「負けた……」と落ち込んでいたのがやたら印象に残っている)

リサ(そして今は帰り道。西に傾き出した太陽を背に、ロゼリアの5人で並んで、アタシは友希那に少し肩を貸してもらって歩いている)

あこ「そういえば友希那さん、途中からどこに行ってたんですか?」

リサ(そんな中、ふと思い出したようにあこが友希那にそう尋ねた)
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:52:33.23 ID:OMi8DRIw0

友希那「ああ、ちょっとリサの応援に行っていたのよ」

燐子「応援……?」

あこ「応援って、あこたちもしてましたよ?」

友希那「あのマラソン大会にはもう1ヶ所給水所があるって聞いたから、私はそっちの方でリサを応援したの」

友希那「半分を過ぎてあともう少しという時が一番辛い思ったし、スタート地点の方にはみんながいたもの」

あこ「そうだったんですね!」

リサ「あの時は本当に助かったよ」

リサ「正直、あそこで友希那に応援してもらえなかったらギブアップしてたかも、ってくらいキツかったんだよね」

友希那「それなら何よりだわ」

友希那(ゴール地点に戻る手段をまったく考えていなかった時は私もどうなることかと思ったけれど……給水所のテントに羽沢さんのお父さんがいて助かったわ)

友希那(車で送ってもらえなかったら確実に間に合っていなかったわね)
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:53:18.60 ID:OMi8DRIw0

紗夜「…………」

燐子「あの……氷川さん……?」

紗夜「え? あ、何かしら?」

燐子「いえ……さっきからずっと黙っていたので……どこか具合でも悪いんじゃないかなって……」

リサ「そういえばそうだね。大丈夫?」

紗夜「……いえ、身体の具合はどこも悪くありません」

リサ「ほんと? 今日は暑かったし、調子がおかしいならすぐに言ってね?」

紗夜「それはどちらかというと私の台詞だと思うけれど……いえ、そうではなくて、その、今井さん」

リサ「ん?」

紗夜「……ごめんなさい」

リサ「え? えーっと……それ、何に対しての謝罪?」

紗夜「先週に挑戦することを決めた時から、私は自分の挑戦に不満を抱いて、あなたにも少しキツく当たってしまっていたわ」

紗夜「それで……この猛暑の中、すごく苦しそうに走っている今井さんを見て、自分の狭量さを実感したのよ」

紗夜「だから、軽々しくフルマラソンで走るべきだとか、そういうことを言ってしまってごめんなさい」

リサ「…………」

紗夜「…………」
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:53:55.74 ID:OMi8DRIw0

リサ「え、もしかしてさっきからずっとそんなこと考えてたの?」

紗夜「……ええ。自分の小ささが不甲斐なくて、今井さんに申し訳がなくて」

リサ「ふっ、はは!」

紗夜「なっ、どうして笑うのよ?」

リサ「あーごめんごめん。やっぱり紗夜は真面目だなーって思って」

リサ「そんなこと、アタシは全然気にしてないよ。むしろこんな暑い中応援に来てくれて嬉しかったし……それに」

紗夜「……それに?」

リサ「走りながら、ゴールする時のことをずっと考えてたんだ。みんなが待っててくれるんだって」

リサ「きっとあこはぶんぶん両手を振って、燐子は祈るみたいにしてて、紗夜はまっすぐに応援してくれて、友希那が出迎えてくれるだろうなー……っていう感じにさ」

リサ「そう思ったからアタシは最後まで頑張れたし、実際にそうだった」

リサ「アタシが頑張れたのはみんなの応援と、この1週間ずっと練習に付き合ってくれたはぐみのおかげだよ。だから、今日は本当にありがとうね、紗夜」

紗夜「今井さん……」

リサ「もちろん紗夜だけじゃなくって、あこも燐子も、友希那も」

燐子「はい……」

あこ「えへへ、リサ姉に元気があげられたならよかったよ!」

友希那「……そうね」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:54:47.88 ID:OMi8DRIw0

友希那(よかった……本当に、あそこに羽沢さんのお父さんがいてよかった……)

友希那(リサのゴールに間に合わなかったら締まらないとかそういうレベルじゃないくらいに私の立つ瀬がなかったわ……)

あこ「友希那さん、なんかいっぱい汗かいてません?」

リサ「わ、ホントだ。大丈夫、友希那?」

友希那「え、ええ、大丈夫よ、万事滞りなく平常よ」

友希那「それより、私のことはともかくとして、これでみんなの挑戦が終わったわね」

紗夜「そうですね。最初はどうなることかと思いましたけど」

友希那「そうしたら、明日も練習は休みにしてこの1週間の反省会にしましょう」

友希那「体験して学んだことを振り返ることで、その経験は確かなものとなって自分の中に蓄積されるのだから」

あこ「わっかりましたー! 場所はどこにするんですか? いつものファミレスですか?」

友希那「……いえ、場所は――」


――――――――――――
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:55:58.08 ID:OMi8DRIw0

【翌日】

――今井家 リサの部屋――

リサ「うぅ……身体中痛い……」

友希那「やっぱりこうなったわね」

リサ「大丈夫だと思ったんだけどねー……イタタ……」

紗夜「あれだけ走ったのだから、筋肉痛になって当然でしょう」

あこ「大丈夫? 湿布貼ったりお薬塗ろっか?」

リサ「それはさっき友希那にやってもらったから大丈夫だよ。それよりお茶出さなくっちゃ……」

燐子「今井さんは……大人しく寝ててください……」

あこ「そうだよー、今日は絶対安静だよ!」

友希那「あこの言う通りよ。そもそも反省会をここでやるのは、リサが無理しないか見張るためでもあるんだから」

友希那「お茶は私が用意してくるわ。リサの家なら勝手は分かっているし」

リサ「……友希那に任せるの、ちょっと不安なんだけどなー」

友希那「何か言ったかしら」

リサ「ううん、何も。えーっと、それじゃあお願いしていい? 今日はお母さん出掛けてるから……」

友希那「ええ、任せて」

燐子「あ……それじゃあわたしが……一緒に行きますね……」

リサ「うん。お願いね、燐子」

友希那「リサ? 燐子? どういうつもりかしら?」

リサ「あー……ほら、5人分の用意だと友希那だけじゃ大変じゃん?」

燐子「そうです……2人でやった方が早く終わりますから……」

友希那「……それもそうね。それじゃあリサ、少しキッチンを借りるわよ」

リサ「うん、お願いね」

燐子「じゃあ……行きましょうか、友希那さん……」

友希那「ええ」

――ガチャ、パタン

紗夜「……日頃の行いって大事ね」

リサ「あはは……」


……………………
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:56:38.02 ID:OMi8DRIw0

友希那「さて、お茶も用意したし、そろそろ反省会を始めましょうか」

リサ「はーい」

あこ「はーい!」

紗夜「はい」

燐子「はい……」

友希那「じゃあ……くじを引いた順でいいかしらね。まずはあこから」

あこ「はい! クッキー作り、すごく楽しかったです!」

友希那「……まぁ、予想していた通りの答えね。他には何かあったかしら?」

あこ「あとは流しそうめんの時に話した通りです!」

あこ「クッキーを作ってる時にね、ロゼリアのみんなが美味しいって言ってくれるかなーとか、あこのクッキーでみんなが笑顔になってくれたら嬉しいなって思うとすごく楽しくて、きっとリサ姉と紗夜さんもこういう気持ちなんだなって思いました!」

リサ「うんうん、分かるよその気持ち」

紗夜「私は別に……いえ、そうね。宇田川さんの言う通りかしらね」

あこ「えへへ、これからはあこもクッキーとか作ってくるね!」

リサ「よーし、それじゃあ今度一緒に作ろっか」

あこ「うん!」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:58:06.02 ID:OMi8DRIw0

友希那「なるほど。あこはクッキー作りを通して、みんなに対する気持ちを再確認できた、というところかしら」

あこ「そんな感じです! あ、そうだ、今日もクッキー持ってきたんだ! みんなで食べましょう!」

燐子「あ……あこちゃん、クッキーを出すなら……これに……」サッ

友希那「それは……」

燐子「お師匠さんに教えてもらって……若宮さんと一緒に作った……竹で編んだお皿、です……」

あこ「え、これりんりんが作ったの!?」

燐子「うん……少し形が歪んじゃったけど……」

リサ(え、歪んでるかな、これ?)

紗夜(綺麗な円のお皿になっていると思うけれど……)

友希那「すごいわね、お店に並んでても不思議じゃないわよ」

燐子「そんなこと……ないです……。お師匠さんに比べたら全然で……」

リサ「いやいや、本職の人と比べられる時点で十分すごいって」

紗夜「ええ、その通りよ」

燐子「そう、ですか……? ありがとうございます……」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 19:59:13.85 ID:OMi8DRIw0

友希那「燐子が作ったのは流しそうめんの竹だけじゃなかったのね」

燐子「はい……あの竹は……わたしと若宮さんが枝打ちに失敗したものを利用したので……」

燐子「失敗してしまったものでも……ああやって……みんなを楽しませることが出来たのが不思議で……なんだか嬉しかったです……」

友希那「燐子もこの1週間で得るものがあった、という訳ね」

燐子「はい……貴重な体験が出来ました……。ロゼリアの衣装も……たまには和風にするのもいいなって思えましたし……勇気を出してよかったです……」

あこ「りんりん、直接クッキーのせていいの?」

燐子「あ……そのままだと衛生的にダメだから……クッキングシート、敷くね……」

リサ「それも持ってきたんだ?」

燐子「はい……あこちゃんならきっとクッキーを作って……持ってくるだろうなって思ったので……」

あこ「えへへ、りんりんとあこの協力奥義だね!」

燐子「そうだね……。はい、敷き終わったから……出していいよ、あこちゃん……」

あこ「りょうかーい! よいしょーっと」

友希那「ありがとう、あこ。せっかくだし食べながら話をしましょうか」

紗夜「ええ。頂きます、宇田川さん」

あこ「はーいっ、どうぞ召し上がれ!」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:00:39.17 ID:OMi8DRIw0

友希那「それで紗夜はどうだった? ナンパをしてみて」

紗夜「……ナンパをしてみて、なんていう風に言われると少し言い辛いのですが、もう少し素直になろうと思いましたね」

友希那「素直に?」

紗夜「はい。奥沢さんと話をしている時に、あることが心に引っかかりまして……」

紗夜「私はこういう性分だから、つい言い方がキツくなってしまって、それで誰かを傷付けているんじゃないか……と。自分を見つめ直してみると、そういう場面がいくつも思い浮かびました」

リサ「ああ、だから昨日あんな風に謝ってきたんだ」

紗夜「ええ。自分で発した言葉には責任が伴うということ改めて実感したわ」

紗夜「だからもう少し素直に、相手のことを慮れるようになろうと思いました。……音楽にはあまり関係ないことかもしれませんが」

友希那「そんなことはないわよ、紗夜」

友希那「私たちの演奏は確かな技術を主体にしたものだけど、だからといってただ正確に音を奏でるだけじゃ、機械と何も変わらないわ」

友希那「内面の充実は音楽の表現の幅を広げることに繋がると、私はそう信じている」

友希那「だからあなたがナンパで培ったその経験は決して無駄ではないわ」

紗夜「……そう言って頂けると私の苦労も浮かばれます。ありがとうございます、湊さん」

リサ(ナンパで培った経験って字面も結構アレだなぁ……)

燐子(本当に……わたしが氷川さんのくじを引かなくてよかった……)

あこ(1つだけ混ぜた闇の魔力マックスの大きいクッキー、誰が食べるかなぁ)
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:02:03.01 ID:OMi8DRIw0

友希那「次はリサね」

リサ「はーい……って言っても、アタシはほとんど昨日に言った通りなんだよね」

リサ「走ってる時はひとりぼっちの気がして挫けそうだったけどさ、はぐみがすごいサポートしてくれたし、みんなも応援してくれて、『アタシはひとりじゃないんだな』ってすごい実感出来たよ」

リサ「だからこれからも何か困難があってもめげずに頑張れそうだなって思ったし、誰かが挫けそうなら真っ先に駆け寄って助けてあげたいって思った……かな」

あこ「あこはいつもリサ姉に助けられてるよ! 寝ぐせ直してくれたり、宿題の分かんないとこ教えてくれたり、お菓子作って来てくれたり!」

リサ「あはは、ありがと、あこ」

あこ「あこの方こそ! いつもありがとね、リサ姉!」

紗夜(……素直になるってこういうことよね。宇田川さんがとてもいいお手本だわ)

燐子「わたしも……今井さんにはいつも……お世話になってばかりです……」

紗夜「私も同感です」

友希那「そうね。リサはもう少し自分勝手でもいいと思うわよ」

リサ「いやいや、自分勝手って」

友希那「あなたはいつも私たちを気遣ってくれるから、それくらいでちょうどいいってことよ」

リサ「……そっか」

リサ(でもそう言われると、アタシがみんなの助けになってるってことだから……うーん、もっと助けてあげたいし何かしてあげたいって思っちゃうんだよなぁ……)

友希那(ああ、あの顔……絶対に『そう言われるともっと助けたくなる』みたいなこと考えてるわね)ジトー

リサ(あ、考えてること友希那にバレたな、これ)

友希那「はぁ……まったく、リサはしょうがないわね」

リサ「あー……まぁ、アタシもそういう性分だからさ」

紗夜(今、確実に2人の間でしか伝わらないアイコンタクトがあったわね)

燐子(幼馴染って……みんな目と目で会話が出来るのかな……)

あこ(あ、友希那さんが闇のクッキー取った)
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:03:58.06 ID:OMi8DRIw0

友希那「リサのことは置いておくとして……最後は私ね」

紗夜「どうでしたか、羽沢珈琲店でのバイトは」

友希那「そうね、とても貴重な経験だったわ」

友希那「私は今までアルバイトもしたことがないし、文化祭とかでもあまりクラスの出し物に参加していなかった。だから接客業なんて勝手が分からなかったけれど、実際にやってみると色々な発見があったわ」

あこ(なかなか食べないなぁ、友希那さん)

友希那「紗夜は来なかったけれど、私がバイトの日にはみんなが来てくれた。そこで見たあなたたちの顔は、ロゼリアで見るものと違っていた」

友希那「従業員とお客さんという立場であなたたちを見て、みんなへの理解がより深まったような感覚がしたわ」

友希那「さっき紗夜に言った通り、私は内面の充実は音楽の表現の幅を広げることに繋がると思っている」

友希那「今後の作曲にも、私の歌にも、この経験は十分に生かせるはずよ」

紗夜「流石湊さんですね。つぐみさんもとても良くしてもらったと言っていたし、やることをしっかりやったみたいですね」

友希那「リーダーとして当然よ。それに、羽沢さんのお父さんには……いえ、この話はいいわね」

紗夜「……言いかけてやめるのはあまり感心しませんが」

友希那「他愛のない話よ。気にしないでちょうだい」

紗夜(……気になる。つぐみさんのお父さんと何があったのだろうか)

友希那(危ないわ。マラソンの時のことを言ってしまったら私のリーダーとしての威厳があっという間に崩壊してしまうところだった)

紗夜(まさか『羽沢珈琲店に永久就職しないか?』という提案を受けたとか……いえ、流石にそれはないはず……でももしかしたら……そうだとしたら私はどうすれば……?)

燐子(氷川さんが……ものすごい真面目な顔で何か考え事してる……)

あこ(まだ食べないなー友希那さん)
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:04:45.62 ID:OMi8DRIw0

友希那「さて、これでみんなの報告も終わりね」

リサ「だね。もう真面目な話はいいんじゃない?」

友希那「……そうね。みんな、改めて……1週間お疲れさま」

燐子「はい……」

あこ「はーい!」

紗夜「…………」

友希那「この1週間でロゼリアは間違いなくレベルアップしたはずよ。今回学んだことを、次のライブで見せてちょうだい」

友希那「……だけど、今日のところはそんな話は抜きね。リサが無理しないよう見張りながら、こうしてあこが作って来てくれたクッキーを食べて、」サクッ

あこ(あ、とうとう食べた!)

友希那「たまにはのんびり――けふっ!?」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:06:01.72 ID:OMi8DRIw0

リサ「えっ、急にどうしたの友希那!?」

友希那「な、ごほっ、ごほっ! に、にが、にが……けほっ!」

リサ「ちょ、お茶飲んでお茶!」

友希那「っ、っ……!!」ゴクゴク

リサ「うわぁ、友希那がメチャクチャ涙目に……」

リサ(……普段とギャップがあってちょっと可愛い)

紗夜「…………」

あこ「ふっふっふ……そのクッキーは聖堕天使あこの全ての闇の魔力を込めた逸品……魔界より生まれし暗黒の力を味わうがいい!」

燐子「あ、あこちゃん……」

あこ「えへへ〜、その1個だけ、インスタントコーヒーを大量に入れた苦々クッキーにしてたんだよ! どう、りんりん? あこのセリフカッコよかった?」

燐子「そ、それどころじゃないと……思うよ……?」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:06:58.35 ID:OMi8DRIw0

友希那「……あこ」ユラリ...

あこ「……あ、あれ? 友希那さん、顔がとーっても怖くなってますよ……?」

友希那「よくも、よくもやってくれたわね……覚悟しなさい!」ダッ

あこ「わー!? ご、ごめんなさーい!!」

リサ「ちょ、友希那! 苦いの嫌いなのは知ってるけど部屋の中で暴れないでって!」

紗夜「…………」

燐子「そんなに……苦いのかな……」サクッ

燐子「っ……!?」

リサ「え、え? 燐子、友希那の食べかけ食べたの!?」

燐子「に、にが……」

リサ「燐子まで両手で口押さえて涙目……そんなにヤバいの、これ……!?」

紗夜「…………」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:07:55.98 ID:OMi8DRIw0

友希那「待ちなさい、あこっ!」

あこ「ひぇ〜!」

リサ「アタシもちょっと食べてみよ……」サクッ

リサ「…………」

リサ「え? そんなに苦いかな、これ?」

紗夜「…………」

あこ「紗夜さーん、助けてー!」サッ

紗夜「……え?」

友希那「紗夜……大人しくあこをこっちに渡しなさい……」

紗夜「え……!?」

紗夜(……宇田川さんが私の背に隠れていて、湊さんが涙目で目の前に立っていて、白金さんが両手で口を押さえて俯いていて、今井さんが首を傾げながらクッキーを食べている……)

紗夜(私がつぐみさんのことを考えているうちに一体何が……?)
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:09:19.07 ID:OMi8DRIw0

友希那「そう……紗夜もそちら側なのね……」

あこ「紗夜さん、あこは信じてました!」

紗夜「え、あの、状況がよく分からないのですが……」

友希那「そっちがその気なら……リサ、そのクッキーをこっちに」

リサ「あ、うん」

友希那「さぁ紗夜、これを食べなさい」

紗夜「食べかけのクッキーじゃないですか。これがなにか……」サクッ

紗夜「……うぇっ!?」

友希那「苦い? 苦いわよね? その悪魔のクッキーを作ったのがあなたの後ろにいる困ったさんなのよ」

紗夜「の、飲みものを……」

友希那「あこと交換よ」

紗夜「どうぞ……」サッ

あこ「まさかの裏切りですか!?」

友希那「リサがお茶を出してくれるわ。私はちょっとあこと個人的な話をするわね」

紗夜「ごゆっくり……」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:10:19.93 ID:OMi8DRIw0

友希那「さぁ……覚悟はいいかしら、聖堕天使さん?」

あこ「……い、痛くしないでくださいね?」

友希那「無理ね」

紗夜「今井さん……私にも、お茶を……」

リサ「はーい、どーぞ。……そんな苦いかなぁ、あのクッキー」

紗夜「ありがとう……」ゴクゴク

燐子「…………」フルフル

リサ「あ、燐子もお茶?」

燐子「…………」コクコク

リサ「はい、お茶」

燐子「…………」ペコペコ

リサ「……苦いなら口に入れたままにしないで、すぐに飲み込んじゃえばいいのに」

燐子「……っ、はぁ……無理、です……苦すぎて……咀嚼することを……脳が拒みました……」

紗夜「本当よ……。あれが苦くないって、今井さんの舌は一体どうなっているの……」

リサ「どうもなってないと思うけどなぁ」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:11:46.97 ID:OMi8DRIw0

あこ「い、いたたたた!! 友希那さんっ、それ以上グリグリされるとあこの頭が割れちゃいますよ!?」

友希那「大丈夫よ、人間の身体は丈夫に出来ているもの。それにあの苦みに比べれば……うっ、思い出すだけで……」グリグリ

あこ「ごめんなさい、もうしませんっ、もうしませんからぁ!!」

紗夜「……さっきまで真面目な話をしていたのに、すごい賑やかになったわね」

燐子「あのクッキーのせいですね……間違いなく……」

リサ「まー、なんていうか……これもロゼリアらしい……のかな?」

204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:13:00.39 ID:OMi8DRIw0

◇ロゼリアのレベルアップを計った結果◇


宇田川あこ

ロゼリアのメンバーに対する理解度があがった

リズム感がなんとなくあがった

お菓子作り【レベル1】をおぼえた

イタズラをおぼえた


白金燐子

手先の器用さがあがった

勇気があがった

服飾の幅が広がった

マッチョな男性への免疫力があがった


氷川紗夜

素直さがあがった

ナンパをおぼえた

無自覚ジゴロ【レベル1】をおぼえた

日菜に弱みを握られた


今井リサ

体力が大きくあがった

精神力が大きくあがった

優しさがあがった

苦味無効をおぼえた


湊友希那

猫への理解度があがった

猫カフェへの理解度が大きくあがった

ロゼリアのメンバーに弱点(苦いの嫌い)がバレた

カリスマが崩壊した



おわり
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/02/26(火) 20:13:32.53 ID:OMi8DRIw0

前に書いたバンドリ安価SSが全然安価SSしてなかったのでリベンジのつもりで書き始めた結果がごらんの有様です。土曜日以降の話で矛盾などがあったら本当にごめんなさい。

そんな話でしたが、最後までお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。


HTML化依頼出してきます。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 20:14:17.67 ID:73iWwwyTo
おつ。楽しかったよ
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/27(水) 17:36:05.65 ID:hMuLKeKh0
ありがとう面白かった
次回作も楽しみにしてます
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/27(水) 21:00:21.63 ID:rwpSYe/Ro
俺このSSでさよみさに目覚めた!
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/16(月) 16:49:27.37 ID:zhTrSQyR0
今更かもしれないが、このssでみささよに目覚めた
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