【一部キャラ安価コンマ】村長「勇者よ、必ずや優勝して参れ」勇者「へいへーい」

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139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 10:30:21.39 ID:PJ5gLEhj0
キャラ名:ディーター(役柄や容姿など:格闘家、背が高く筋骨隆々で仮面で顔が見えない)
性別:男
年齢:30
得意戦型:体術・魔法(土)
備考・希望:
修行で様々な場所を転々とする山岳民族の格闘家
口はすこぶる悪いが竹を割ったような性格の好青年
仮面を付けているのは後ろめたい理由はなくただ単に地元の風習なだけ
洗練された格闘術と地面を操る魔法で闘う実力派
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 11:36:47.47 ID:jecW2vhiO
キャラ名:マオ
元魔王 銀髪ロング幼女
性別:女
年齢:9
得意戦型:魔術
備考・希望:転生した魔王 転生前から弱くなってるけど人間と比べたら強い
やたらとやかましくトラブルメーカー
人間に倒されたがとくに恨みの感情はない
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 17:03:48.15 ID:4vzedyrs0
キャラ名:タイタス(役柄や容姿など 白髭を蓄えた老人・片方の腕は無くなっている)
性別:男
年齢:自称80
得意戦型:剣術
備考・希望:数百年前に魔王を倒した際の勇者一行のメンバーの一人 最後の決戦の時に不死の呪いをかけられた(不老の呪いは掛けられなかったため老人の姿になっている)
142 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/04(木) 17:35:27.83 ID:VFinfM5d0
候補が出そろったため、>>143のコンマで決定します。

00〜24:グローバ
25〜49:ディーター
50〜74:マオ
75〜99:タイタス
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 17:42:53.00 ID:jecW2vhiO
144 : ◆YBa9bwlj/c [sage saga]:2020/06/04(木) 17:50:03.42 ID:VFinfM5d0
コンマ00で登場キャラ三人目は

キャラ名:グローバ(役柄や容姿など:小柄だが筋肉質な体つきをしたスキンヘッドのじいさん。)
性別:男
年齢:65
得意戦型:体術
備考・希望:
幼女相手でもセクハラする絵に書いたようなエロジジイ。
各地を観光しながら旅をする楽隠居。
体術以外に回復と強化の魔法に優れるが使用目的もエロのため。(しかしR板じゃないし出番はないだろう)
実は家督を息子に譲り現役を退いた位の高い貴族で、本名はグロスハルト・バーランドというが気楽な隠居生活のために隠している。

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。

キャラ募集を安価でやると面白いキャラのアイデアがいっぱい出てくるなーと感動してます。
145 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:16:08.32 ID:fTPqAKyp0
4章投下していきます。
146 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:16:59.61 ID:fTPqAKyp0
ーーー娯楽街ーーー

勇者「おー!すっげ、どこもかしこもキラキラしてんなー!」

魔法使い「ここは国内でも屈指の遊技場らしいわよ。夜中でも電気を点けてるから暗くならないとか。別名眠らない町」

リア「……!」キラキラ

アッシュ「以前よりも施設が増えてますね。悪事の温床になってなければいいのですが」チラッ

盗賊「な、なんでオレを見んだよ」

魔法使い「アッシュさんは来たことがあるんだ?」

アッシュ「えぇ。遊技に勤しんでいたのではないですけどね」

魔法使い(昔仕えてた人の付き添い?)

アッシュ「ともかく、ここまで来れば王都も近いですよ」

魔法使い「そうなの?まだ徒歩で2日はかかりそうな距離じゃなかったかしら」

アッシュ「この町からは王都への往来を盛んにするための輸送馬車が通ってるんですよ。それを使えば半日もかかりません」

魔法使い「ならさっさと向かっちゃいましょ。今行けば深夜になる前には着くでしょ」

勇者「何言ってんだ、遊ぶぜ。こんな楽しそうな場所見過ごす理由がねーよなぁ」

魔法使い「却下よ」

勇者「なんでだよ。こんなん絶対おもしれーじゃん。これも一つの観光だって」

魔法使い「アッシュさんも言ってたでしょ、どんな悪事が潜んでるか分かんないわ」

勇者「王都のお膝元だろ?そうそうねーっしょ」

魔法使い「それはまぁ…」

魔法使い(…苦手なのよ、こういうところ)
147 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:17:30.03 ID:fTPqAKyp0

魔法使い「…り、リアちゃんだって嫌よね?こんな不健全な」

リア「」キラキラ

魔法使い(あ、ものすごい乗り気)

勇者「しゃーない。魔法使いは行きたくないみたいだし、リア、俺らだけで行くか」

リア「行きたいです!…けど」

魔法使い「分かった分かったわよ。私も付いてくわ」

魔法使い「言っとくけど私は遊ばないからね?勇者だけじゃ心配だから行くだけで…」

アッシュ「では私はこの者と今日の宿を探して参りますよ」

盗賊「は?宿探しだ?」

アッシュ「何か不服でも?」ニコッ

盗賊「ねぇっす…」

勇者「よーし!レッツゴーついてこいリア!」タッタッタッ

リア「はいっ」テテテッ

魔法使い「あ!待ちなさいよ!」タッタッタッ




148 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:18:02.93 ID:fTPqAKyp0
ーーースロットエリアーーー

勇者「これが世に聞く金量産マシンか!」

リア「ぐるぐる回ってます…!」

魔法使い「どこの世よ。金食いマシンの間違いでしょ」

勇者「絵柄揃えてやるだけで金が出てくんだろ?負ける要素がねーぜ」

魔法使い「簡単に勝てるならみんなやってるわよ」

勇者「ま、見てろって」チャリン

グルグルグル

勇者「……」ジー

勇者「てい、よ、はっ」ビシ、ビシ、ビシッ

スロット『チェリー チェリー チェリー』

勇者「どんなもんよ」ドヤ

リア「すごいです勇者さん!」パチパチ

勇者「俺っちの動体視力舐めてもらっちゃあ困るぜぃ」

魔法使い「…ひどい有効活用を見たわ」

リア「あれ見てください。数字の7を揃えるのが一番いいらしいですよ…!」

勇者「7だな?任しとけ」チャリン

グルグルグル

勇者(7は一列に一つしかないから難易度たけーってことか)

勇者(俺っちにゃ関係ねーけどな!)

勇者「ふっ、はっ」ビシ、ビシ

勇者「とりゃ!」ビシッ

ヒョイッ

スロット『7 7 BAR』

勇者「あ!?今こいつ明らかに押した後にずれやがった!」

リア「私にも見えました…誰かの魔法でしょうか…?」

勇者「どこのどいつだ!俺っちの当たりを邪魔したんは!?」

魔法使い「あんたたちねぇ…」




149 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:18:52.78 ID:fTPqAKyp0
ーーーテーブルゲームエリアーーー

客「それだ!そのカードだよ、表にしてくれ」

女ディーラー「…ふふ、勘がいいですねお客さん」

スッ...

客「なぁにぃ!?」

女ディーラー「また私の勝ちです」ニコッ

ガヤガヤ



勇者「あいつら何してるんだ?」

魔法使い「カードを使った賭けゲームね。テーブルごとにやってるゲームは違うみたいだけど」

勇者「店員を倒せばいいんか。機械よりは楽そうじゃん」

リア「スロットさんはずるばっかりでしたもんね…」

魔法使い(そういう仕組みなんでしょうに)

勇者「そっちの席空いてるみたいだぜ」



.........





ディーラー「ではルール説明に入ります」

ディーラー「今私の手元にあるのは1から13までの数字が4種類の絵柄ごとに書かれた計52枚のカードです。このゲームで使用するのはここからランダムに選ばれた26枚。それを私と対戦者で13枚ずつ手札とします」

ディーラー「ゲームが始まったら1枚ずつ交互に手札の中からカードを裏向きにして置いていきます。最初は1のカードを、その後は2、3と順番に置いていく必要があります。また、自分が何の数字を出したか声に出してください」

ディーラー「相手の出した数字が嘘だと思えばダウトと宣言してください。当たれば勝利となります。ダウト宣言をしてもはずれれば相手の勝利です。置くカードがない時、パスは3回まで可能です」

ディーラー「ご理解出来ましたか?」

勇者「つまり、相手の嘘を見破ればいいんだよな?」

魔法使い「出せるカードがない場合どうするかが大事なんじゃない?」

勇者「うーむ…いまいちピンとこない」

勇者「リア!先鋒は任せた!」

リア「はい」

リア「………え!?」




150 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:19:29.03 ID:fTPqAKyp0

(vs リア)

ディーラー「先手は私ですね。では、1」スッ

リア「えっと…2、です」スッ

ディーラー「3」

リア「4です」

勇者「なんだ簡単じゃんか」

魔法使い「…そうかしら」

勇者「カード運がよけりゃ勝ちだろ?」

魔法使い「運だけじゃないわよ」

魔法使い「特にリアちゃんみたいな子にとっては…」

ディーラー「7」

リア(あ…どうしよう、8がない)

リア(パスしようかな…でも3回しか出来ないんだよね…)

リア「……8」スッ

ディーラー「ダウトです」

リア「!?」

勇者「あー」

魔法使い(素直過ぎるものね)




151 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:19:57.50 ID:fTPqAKyp0

(vs 勇者)

勇者「安心しな、リアの仇はとってやんよ」

リア「うぅ…お願いします」

魔法使い「このゲーム心理戦よ?脳筋のあんたに出来るの?」

勇者「相手の攻撃を先読みすんのは俺っちの得意技よ!」

魔法使い「それは闘技の話でしょ…」

ディーラー「では再び先手はこちらから」

ディーラー「……パスです」

勇者(初っ端からパスとはツイてんぜ。これで俺っちの方が有利に――)

勇者「お…?」

勇者(と思ったらこっちにも1がねー!パスすっか?でもなー)

勇者(ん?待てよ、二人とも1を持ってないんだとしたら、ここでパスをし続ければ順番的に俺っちが…)

勇者(よっし!先手じゃなくてよかったぜ!)

勇者「パース」

ディーラー「む……1」スッ

勇者「ダウトォ!」

勇者「なはは!早まったねぇ!このままパス合戦したら負けが確定するからって――」ペラ

置かれたカード『1』

ディーラー「こちらの勝ちですね」ニコニコ

勇者「なんでだよ!?」

魔法使い「言わんこっちゃない」




152 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:20:24.94 ID:fTPqAKyp0
ーーーーーーー

勇者「いやーおもしれーなここ!人が集まんのも分かるぜ!」

リア「はい!どれもみんな新鮮でした…!」

リア「…けど、お店の人たちが儲かる理由も、分かった気がします…」

魔法使い「そういう商売だからね」

魔法使い「勇者、そろそろ終わりにしないとお金が危ないんじゃないの?」

勇者「んー、あとこんだけ残ってる」

魔法使い「少なっ!使い過ぎよバカ!どうすんのよこれじゃあと半月以上なんてとても…」

勇者「そう慌てなさんな。眉間にシワが寄ってんよ?」

魔法使い「誰のせいだと思ってるのよ…!」

勇者「どうどう。俺っちが考え無しに浪費してるだけだと思ったか?」

勇者「ほれ」ユビサシ



案内板『闘技場エリア』



魔法使い「……あ」

勇者「へへっ、一儲けといきましょーか」




153 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:21:11.62 ID:fTPqAKyp0
ーーー町中ーーー

アッシュ「んー」テクテク

盗賊「……」テクテク

アッシュ「こちらの宿など、いかがでしょうかね?」

盗賊「…いいんじゃねぇの」

アッシュ「困りますね、真面目に見ていただかないと。野盗に狙われやすい場所だったらどうするのです」

盗賊「オレなんぞに訊かずともお前だけで決められんだろーが」

アッシュ「餅は餅屋に。盗みのことなら盗み屋に、です」ニコッ

盗賊「……オレらの仲間は、こんなあからさまな場所に潜んではねぇよ。よそは知らねぇけどな」

アッシュ「嘘…ではないようですね」

盗賊「つけるかよ、嘘なんて」

盗賊(冗談抜きで半殺しにされそうだかんな…)

アッシュ「それではいい機会なのでお訊きしますが」

アッシュ「何故貴方はあの村の盗人をやっていたのですか?」

盗賊「んなの、金で雇われたからだよ」

アッシュ「失敬、言葉不足でしたね」

アッシュ「あそこの村は規模も小さく、かつて目立った事件は起きていませんでした。それが何故盗賊などを雇い旅人を狙っていたのでしょう?」
154 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:21:37.89 ID:fTPqAKyp0

盗賊「はんっ、そんなのが分かんねぇってか。さすが名家に仕えてたボンボン様は違うな」

アッシュ「どういう意味です?」

盗賊「文句はおたくらの王様に言ってくれ」

盗賊「知ってんだろ?ここ数年王が闘技の大会に傾倒してんの。そこで自分の娘を優勝させて金をたんまり貰ってるらしいけどよ、オレたち下々の人間にゃほとんど恩恵がねぇときてやがる」

盗賊「おかげで国はどんどんでかくなってくが貧民も増えてくばかり。そりゃオレみたいな連中も出てくるってもんよ」

アッシュ「……」

盗賊「馬鹿みてぇに私腹を肥やしてるだけなら革命でもなんでも起こせるんだがな」

アッシュ「…そうですか」

アッシュ「今日はこの宿にしましょう」

盗賊「けっ、都合の悪いことは聞こえねぇフリかい」

アッシュ「聞こえていますよ、バッチリとね」

アッシュ「今の発言、捉えようによっては国家転覆の策謀とみなされ得るのですが…私が聞いたことにしてしまってよいのですか?」

盗賊「お前っ……」

アッシュ「都合が悪いのはどちらですかね」フフッ

アッシュ「それでは私は彼らを迎えに行って参りますので、貴方はリア様が作った石檻に入っていてくださいな」




155 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:22:26.26 ID:fTPqAKyp0
ーーー闘技場エリアーーー

勇者「」ビュンッ!

「ひっ…!参りました!」

審判「勝者、勇者殿!」

勇者「いぇーい!」

勇者「じゃ、賭け金はありがたく頂戴していくぜー」

「くそぅ…」

勇者「よっと」ピョン

タッタッタッ

勇者「ほい、また増やしてきたぜ」ジャラ

魔法使い「あ、うん」

魔法使い(…明らかにこの町に着いた時より増えてる)

リア「勇者さんこれで10連勝です…!」

勇者「むっはっは!ちょろいもんだなーまったく」

勇者「どいつもこいつもへぼっちいくせにそこそこの額で挑戦者求むとか言ってんの。100年鍛えてから出直してこいってんだ」

勇者「まあそのおかげでこんなおいしい思いが出来んだから感謝しとかねーとな!」

勇者「魔法使いさんもこれだけあれば満足っすよね〜?」

魔法使い「…これ、出禁とかにならないかしら…?」

勇者「なるわけねーって。正当に戦って正当に報酬貰ってるだけだぜ」

魔法使い「なんか手放しには喜べないけど…」

魔法使い「ご苦労様」フゥ

勇者「おう」ピース
156 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:22:52.63 ID:fTPqAKyp0



「おい聞いたか?向こうに鬼のように強ぇおっさんがいるんだとよ」

「しかも女が負けるとエロいことされるんだってな…!」



勇者「」ピクッ



「俺らも見に行くか!」

「それしかねぇな!」

タッタッタッ...



勇者「……ゴホン」

勇者「うし、次は少し場所を変えるとしよう。ここいらの連中じゃ退屈だしな」

魔法使い「?いいけど、まだ戦ってない相手ならここにも残ってるわよ?」

勇者「強敵が俺っちを呼んでるんさ」

魔法使い「そう…?」




157 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:23:18.26 ID:fTPqAKyp0
ーーー闘技場エリア 人集りーーー

ザワザワ

「賭け金の額おかしいだろ…」

ガヤガヤ

「次はあの女が挑むらしい」

魔法使い「すごい人混みね…有名人でもいるのかしら」

リア「ここだけで私の村よりも多い気がします…」

勇者(人の頭ばっかでよく見えん)

勇者「すんませーん、通してください、通してくださーい」グイグイ

「おい、割り込むなよ」

勇者「へへ、まぁそう目くじら立てずに」

スルスル

勇者(よし!一番前)



スキンヘッドの男「こいつはまた、えらい別嬪さんが出てきたなぁ」

妖艶な女「ここいらでふざけた真似してるおじいさんが居るって聞いてきたんだけど……へぇ、なかなかどうして」

スキンヘッド「俺のような美丈夫で驚いたかい?」

女「んふ…」


158 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:23:48.27 ID:fTPqAKyp0

「あの爺さん、男の挑戦者に対してはとんでもない賭け金ふっかけんのに女に対しては金を賭けさせないんだ」

「通りで。なら女は挑み放題ってことか?」

「いや、負けるとスキンシップを要求される」

「ひゅー、とんだセクハラじじいだぜ」

「実力は本物ときてるからタチが悪い。まだ爺さんに勝った奴はいないんだとよ」

「そんで、俺たちの"タチ"は良くなるってわけだ」

「「ギャハハ!」」

魔法使い「な、なんなのこいつら…」

リア「魔法使いさん、あの人たちは何を言ってるんでしょう?」

魔法使い「気にしなくていいのよ。というかリアちゃんは聞いちゃダメ」

魔法使い「ちょっと勇者、こんなとこ早く離れるわよ!」

勇者「そう急くな。せめてあの試合だけでも」ニヘヘ

魔法使い(こいつ…火球でもぶつけてやろうか)


159 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:24:17.99 ID:fTPqAKyp0

女「おじいさん、歳はいくつ?」

スキンヘッド「65。だが、まだまだ若いもんにも負けないぜ?」

女「そう。この辺じゃ見ない顔ね」

スキンヘッド「がははっ!観光が趣味でなぁ。俺もあんたみたいな美人に出会ったら絶対忘れねえよ!」

女「元気がいいのねぇ」

スキンヘッド「俺はグローバってんだ。姉ちゃん、あんたの名は?」(以降、グローバ)

女「あたしに勝てたら教えてあげる」ニィ

グローバ「んひひ、そうかいそうかい。んなら早速やろうじゃねえの」

グローバ「おう、掛け声!」

審判「はっ」

審判「両者前へ。……始め!」

グローバ「俺のモットーはレディーファーストだ。お先にどうぞ」

女「紳士なのね。そういうの嫌いじゃないわぁ」

女「"分身"」

スゥ...

分身「……」



「幻惑魔法だ」

「幻惑っつーことは片方は触れない偽物ってことか」

魔法使い(…普通ならそうね)

魔法使い(でも多分あれは)


160 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:24:45.22 ID:fTPqAKyp0

女「この子を単なる幻覚と思わないでちょうだい?ちゃあんとあなたを懲らしめることが出来る良い子なんだから」

グローバ「ほほお、一人で二人分楽しめるんだな?最高じやねえか」

女「…んふふ」

ババッ



「動いた!」

「挟み撃ちにする気か!?」

「あれじゃ避けらんねぇぜ」

勇者「どうかねー」

勇者(上手い初動だけど、俺っちには丸分かりよ。あれは挟み撃ちなんかじゃない)

勇者(はてさて、爺さんにそれが見破れるんかな?)



分身「……」スタタッ!

グローバ「まずは分身ちゃんのお相手かい?」

分身「」シュッ

ガシィ!



「おぉ…あの正拳突きを受け止めたぜ」

「すげぇ音がしたな」

勇者(そんなのは想定済みだろうよ)


161 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:25:13.35 ID:fTPqAKyp0

グローバ「ん〜、めんこい手だなぁ!なら本物はさぞや――」

女「」ダッ

グローバ「お…!」



「あの娘正面にいるぞ!?」

勇者(ま、普通の奴にゃそう見えるわな。あれも幻惑魔法?とかの一種かね)

勇者(本当の狙いは挟撃なんじゃなく、分身を死角にした不意打ち。視線の動きをよく見てりゃ分かんぜ)



女「お覚悟を!」スッ――

グローバ「……」ニヤリ

ビュオッ

グローバ「」サッ

女(…!)

グローバ「そぉら!」ギュン

ピタッ

女「……」

グローバ「……」

(眼前で寸止めにした拳)

女「……んふ、お強いのね」

グローバ「弱い雄はモテねえだろ?」

女「降参するわ、審判」

審判「勝者、グローバ殿!」


162 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:25:42.38 ID:fTPqAKyp0

ドヨドヨ...

「たまげたなぁ、なんだ今の動き」

「還暦迎えた爺さんとは思えねぇ」

リア「魔法ってあんな風に使うことも出来るんですね…」

魔法使い「あの人が使ったのは本来目眩しくらいしか役に立たないはずだけど、魔法は使い手次第ね」

勇者(…へぇー)



グローバ「さーてさて!熱い勝負の後はお待ちかねのお楽しみタイムといこうじゃないか」

女「せっかちねぇ…痛いのは禁止よ?」

グローバ「大丈夫!何も考えずに身を委ねてくれ」

グローバ「良くしてやっからよ」ニヤ

サワ...

女「」ピクッ

女「……んっ……」

グローバ「へへ」

女「はぁ……っ…」



「「「おおぉ…」」」

勇者「おほぉ…!」

魔法使い「……」(リアの目を覆い隠す)

リア「??何が起きてるんです?」


163 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:26:11.86 ID:fTPqAKyp0

女「あっ…!」ビクン

グローバ「おっと…ここまでだな」

グローバ「どうだったよ、俺のワザは」ニカッ

女「はぁ…はぁ……んふふ、癖になりそう…」

グローバ「わっはっは、そうだろう?俺の相手をした女性は皆そう言うんだよ!」

グローバ「なぁどうだい、暇してんなら今夜…」

女「ごめんなさいねぇ。あたしこれでも一途な女だから」

グローバ「あちゃー振られちまったか!残念だなあ、こーんな美人と過ごせる夜なんざなかなかないってのに」

女「口もお上手」

女「それと、約束だったわねぇ。あたしの名前は…」

(そっと耳打ち)

グローバ「ほぉ、よく似合っとる名だ」

女「あんまりおイタをしちゃだめよ?グローバおじ様」

女「また何処かで会いましょう」

女「"花吹雪"」

ブワァァ...!



「花びら…!?」

「み、見えねぇ」



ヒラ...


164 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:27:00.43 ID:fTPqAKyp0

「…あ、居ねぇぜ」

「にしてもよ、――」

「あぁ!色気が半端でなく――」

ザワザワ

勇者「俺っちも名前くらい聞きたかったなぁ…」

魔法使い(…なによ、鼻の下伸ばしちゃって)

魔法使い「もう終わったんだからさっさと移動するわよ。あとリアちゃんに謝って」

リア「謝る…んですか?一体なんで…?」

勇者「リアもいずれ知るんだからいい社会勉強になったろ」

勇者「それにあんな面白そうな爺さんを無視はできねーよなぁ?」

魔法使い「は?ちょっ、冗談でしょ!?」



グローバ「んん?」

グローバ(これはこれは。かなりの上玉が、しかも二人!今日はツイてるなあ)

グローバ「ぬへへ」ザッザッ



魔法使い「断固却下!こんな下品な空間から早くおさらばしたいのよ!」

勇者「あの大金が手に入んだぜ?もうひと月遊んで暮らせんじゃんか」

魔法使い「お金は十分あるんだからあんな人を相手する必要ないじゃないの」

グローバ「やあお嬢さん方」

魔法使い「!」

勇者「お」
165 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:27:48.26 ID:fTPqAKyp0

グローバ「おじさんと闘技しないかね?」

魔法使い「…お断りします」

グローバ「そう言わんと、物は試しにさあ」

グローバ「金を倍にしてやろう!」

魔法使い「お金の問題じゃありませんから」

グローバ「ん?がはは!そうかさてはスキンシップがネックだな?」

グローバ「あい分かった!ならお嬢さん二人には試合後のスキンシップは無しだ。ただ闘技をするだけ!」

魔法使い「……どうせ闘技中にセクハラしてくる気ですよね?」

グローバ「ノンノン。そんな気は毛頭ないぜ。仮にぶつかっちまったとしてもそいつは事故だよ、事故」ニカッ

魔法使い「……」

グローバ「そっちの嬢ちゃんはどうかな?お手合わせしてくれるかなあ?」

リア「え…」

魔法使い「ぜっったい駄目です!」

グローバ「へへ、やっぱり先にお嬢さんを――」

勇者「はいはいはい!俺っちがやる!」

グローバ「あぁん?なんだ小僧に用はないぞ」

勇者「そう寂しいこと言うなよー。賭ける金ならここにある」ジャラ...

勇者「これで男でも相手してくれんだよな?」

魔法使い「また勝手にお金使って…!」

グローバ「粋がるだけあってそれなりのもんは持ってるってかい。さっきの姉ちゃんが化けてるんだってなら喜んでやってやんだがなあ」

勇者「いいんかなー?俺っちってば、今年の闘技大会優勝候補者なんだぜ?」

勇者「滅多にお目にかかれない本物の強さってのを味わえんのに」

グローバ「ほーぉ?」
166 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:28:32.24 ID:fTPqAKyp0

グローバ(闘技大会ね。そういやあれが毎年優勝しとるっつーのがその大会だって話だったな)

グローバ(ふぅむ)

グローバ「お前さん、どっちの彼氏だい?」

勇者「へ?」

魔法使い「!?」

グローバ「恋人の勇姿を存分に見せてやんだろ?」

勇者「そんなんじゃねーの。この二人はただの連れよ」

リア「勇者さん…!」

魔法使い「……」

グローバ「なんだ勿体ねえなあ。若いうちは遊んでなんぼ、恋してなんぼだぞ?」

勇者「遊びならいつもやってんぜ?闘技ってぇ遊びな!」

グローバ「…フッ、位置に着こうじゃねえの」ザッザッザッ

勇者「そうこなくっちゃ」タッタッタッ

魔法使い「結局こうなる…」

リア「大丈夫ですよ、勇者さんですもん」

魔法使い「…セクハラ目的で闘技しようとするよりはいいけどさ…」

アッシュ「こちらにいっしゃいましたか」

魔法使い「あら。探しに来てくれたの?」

アッシュ「えぇ。本日の宿を見繕うことが出来たのでお迎えにと」

アッシュ「勇者様は、まだ闘技をなさるようですね」

魔法使い「ごめんねこれだけ待ってちょうだい」


167 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:28:59.30 ID:fTPqAKyp0

勇者「楽しくやろーぜ爺さん」

グローバ「小僧、お前さんがいくつなのかなんてのはまるで興味はねえが、俺はその3、4倍は長く生きてる」

グローバ「年季の違いってやつを教えてやるよ」

勇者「張り切っちゃってんね〜」



「今度は男が挑戦するみたいだな」

「おぅ!つまんねぇ試合見せんじゃねぇぞ!」

アッシュ「む?」

アッシュ(あの御仁、どこかで見た覚えがあるような)



審判「両者前へ!」

勇者「うっし」カタマワシ

グローバ「……」ザッザッ

審判「始め!」

勇者「レディーじゃねーけど先制はいただくぜ!」ダッ!



「速いっ…!」

魔法使い(見慣れた反応ね)

アッシュ「………」


168 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:29:25.76 ID:fTPqAKyp0

スタタタッ

グローバ「……」フッ

グローバ「"硬化"」

勇者「」ブンッ

バキッ!

勇者「…!」

グローバ「どうした?随分と優しい蹴りだな」

勇者「っら!」

ドン

グローバ「痒いねえ」



「爺さん微動だにしてないな」

「あの筋肉だし、凄まじく頑丈な体なんだろ」

アッシュ(いえ、彼が施したのは肉体強化の魔法)

アッシュ(あの相貌に魔法の使い方……やはり……)



勇者「変な小細工しやがって」

勇者(だったら顔面にぶち当てるまでよ)

グローバ「焦んなや小僧。俺にも攻撃さしてくれよ」

...ドシ、ドシ

勇者「…ぷはっ!爺さんあんたイノシシかよ!」

勇者「いいぜー、待ってやる」クク


169 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:29:56.85 ID:fTPqAKyp0

アッシュ「いけない!」

アッシュ「勇者様、気を緩めてはなりません!」



グローバ「…"敏捷"」ボソッ

バシュンッ

勇者「なっ!」

グローバ「ほれっ」

勇者「っ」スッ

グローバ「いい動体視力してるな!」シュッ

勇者「く…」サッ

グローバ「だがそれだけよ!」

ドゴッ

勇者「がっ…!?」

ヨロ..ヨロ..

勇者「」ドサッ


170 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:30:27.84 ID:fTPqAKyp0

リア「……え……」

魔法使い「は…?」

魔法使い(嘘でしょ?どうせあいつのことだからやられたフリでもしてんのよ…ね?)



グローバ「おーいどうした?そのまま地面とキスしてたら終わっちゃうぞ?」

勇者「……ぐ……この……」

グローバ「だからといって立たれんのも面倒なんでな」

グローバ「ママのところへお帰り」ゲシッ!

ゴロン、ゴロゴロ...

勇者「ぅ……」

審判「場外」

審判「勝者、グローバ殿!」



魔法使い「勇者!」タッタッタッ

リア「勇者さんっ」テテテッ

「なーんだあっさり負けたな」

「喧嘩売る相手間違えたんだろうよ」


171 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:31:52.59 ID:fTPqAKyp0

グローバ「お前さんの直球な戦い方、師は悪くないみたいだがなあ。そんなんで大会優勝だの宣ってたとは笑止千万」

グローバ「本番で恥かかなくてよかったな!がはは!」

勇者「……」

魔法使い「立てる?勇者」

グローバ「嬢ちゃんらも出んのかね、闘技の大会」

魔法使い「…私たちは出ません」

グローバ「なんでえ出てくれよお。俺も寄り道ついでにちょっかい出してやろうと思ってんだ」

グローバ「大舞台で気持ち良く戦おうじゃねえの」

魔法使い「………」

グローバ「賭け金はありがたく貰ってくぜ。俺はそろそろ腹が減ったからな!」

アッシュ「アディオス、お嬢さん方」

アッシュ「…グロスハルト卿」

グローバ「!」

アッシュ「やはりそうでしたか。その頭で判りにくかったですが、貴方はバーランド家の当主、グロスハルト・バーランド様ですね?」

グローバ「その面、姫んとこの執事か」

アッシュ「はい。覚えていていただいたようで何よりです」

グローバ「その名前はもう返上したのさ。バーランドは愚息に渡した。俺は何の変哲もないジジイだぜ」

アッシュ「…豪快な口調になられましたね」

グローバ「貴族なんてよお、あんな息苦しいもん死ぬまで続けられるかってんだい」
172 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:32:25.98 ID:fTPqAKyp0

グローバ「おめえも執事の仕事はどうした?暇でも貰ったか?」

アッシュ「辞めましたよ」

グローバ「おぉ?わはは!なんだあれだけおめえにべったりだったのになあ!何があった?リビドーに耐え切れなくなったか?」

アッシュ「……何もありませんよ」

グローバ「へっ、そうかい」

グローバ「なぁまさかおめえよ、このポンコツをぶつけようってんじゃねえだろうな?」

勇者「……」

グローバ「やめとけ。焼け石に水だ」

アッシュ「どうでしょうね」ニコッ

グローバ「相変わらず食えない男だなあ」

グローバ「藁に縋るのは勝手だが、こうやって現実も見せてやらねえとかわいそうだぜ」

勇者「………」

アッシュ「………」

グローバ「まああんま悲観すんなや。お前さんはまだ若え」

グローバ「もっと男を磨くこった。がははは!」ザッザッザッ...

「終わりらしいぜ」

「別の試合見に行くかー」

魔法使い「……勇者」

勇者「……」

魔法使い「行こう?」

勇者「……」




173 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:43:40.80 ID:fTPqAKyp0
ーーー翌日 輸送馬車内ーーー

アッシュ「あの方は本名グロスハルト・バーランドという、東国を代表する貴族の当主だったのです」

アッシュ「当時は髪も整えて、立派な髭を蓄えていたのです。ご隠居なされていたとは驚きました」

魔法使い「あんな節操の欠片もない人が貴族…」

アッシュ「私の知るバーランド卿はとても厳めしい方でしたが、あれが本来の彼の気質なのでしょう」

アッシュ「しかし、あの並外れた身体強化魔法だけは変わっていませんね。なればこそ、数多居る貴族の中で頂点に君臨していたのですから」

魔法使い「隠居おじいさんといい、あいつと戦ってた女といい、世の中広いわね。とんでもないのがわんさか居る」

魔法使い「闇雲に突っ込んでいくだけが闘技じゃないってことね。ちゃんと相手の戦術を見切らないと」

勇者「……」

魔法使い「…聞いてる?勇者」

勇者「んー…?」

魔法使い「あいつも大会に出るんだって。今度は対策していかないと同じ轍を踏むわよ?」

勇者「んー…」

魔法使い「もう、優勝しに行くんでしょ!」

勇者「うん…」

魔法使い「……」

魔法使い(なによ…いつもなら自信満々に言い返してくるくせに…)

リア「…勇者さん…」

盗賊(空気が重ぇ…)

アッシュ「………」




174 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:44:11.90 ID:fTPqAKyp0
ーーーーーーー

勇者母「あら困りましたね」

勇者母「ここはどこなのでしょう?」

(どこかの森の中)

勇者母「真っ直ぐに進んでいたつもりだったのですけど…」

小鳥「」バサバサ

勇者母「まあ小鳥さん!いいところに来てくれました」

勇者母「勇者という少年がどちらに向かったかご存知でしょうか?」

小鳥「チュン、チュンチュン」

勇者母「えぇ、はい」

勇者母「そうなの。ありがとう、可愛い小鳥さん」ニコッ

小鳥「チュン♪」


勇者母「待っててくださいね勇者。あなたの忘れ物はしっかり届けてあげますからね」

勇者母「〜♪」テクテク




175 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:46:44.89 ID:fTPqAKyp0
4章は以上となります。

次回5章から舞台は王都に移ります。
この物語は6章で予定です。
176 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/09(火) 22:47:20.99 ID:fTPqAKyp0
四人目のキャラ決めを行います。
前回同様、安価で4つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5〜100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>177>>180
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/09(火) 23:12:49.58 ID:3QQq6vN+O
キャラ名:リリ 踊り子(黒髪褐色肌のグラマラスな体型で露出が多めな衣装)
性別:女
年齢:30
得意戦型:剣術と体術
備考・希望:人を揶揄うのが好き 我流の舞のような剣術で対戦相手を惑わせる 妖精と人間のハーフ 衣装でなかなか見えない部分に人を魅了する黒子があるらしい
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 01:32:05.71 ID:p1KI8D9s0
名前:ツバキ (剣士 茶髪ポニーテール、着物のような服を着て、日本刀の形をした木剣を腰にさしている。巨乳。)
性別:女
年齢:25
得意戦術:剣術・体術
備考・希望:遥か東にある国の出身。明るい性格だが少し天然なところがある。武士のような口調で一人称は「拙者」、相手の名前を呼ぶ時は「(名前)殿」と呼んでいる。剣術は家から代々続く流派を使い相手を高速で切ることできる。体術は合気道や柔道、空手を得意とし、身体能力も高い。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 07:39:48.50 ID:gQ/NqdCE0
キャラ名:テイシロ 神官 (白髪の短髪で白いローブを着た少年)
性別:男
年齢:12
得意戦型:魔法
備考・希望:天外孤独の身であり自分の出生について知るために旅をしている 扱う魔法は光や雷系

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 07:48:21.16 ID:TV7CYEvDO
キャラ名 メリー 吟遊詩人 (青髪のロングストレートの華奢な美女で竪琴を持っている)
性別女
年齢 24
得意戦術 魔法と体術
尾行・希望 特製の竪琴を奏でながら歌うことで魔翌力を消費せずに、様々な魔法を使うことができる(歌の種類によって魔法の効果が違う)
性格はおっとりして物静かだが、性格と容姿に反して身体能力も高い
181 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/10(水) 08:29:34.55 ID:CjYIfkGDO
候補が出揃ったため、>>182のコンマで決定します。

00〜24:リリ
25〜49:ツバキ
50〜74:テイシロ
75〜99:メリー

>>175 誤字ってますね。正しくは
「この物語6章で完結する予定です。」
です。

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 08:34:40.65 ID:gQ/NqdCE0
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 08:35:08.93 ID:TV7CYEvDO
はい
184 : ◆YBa9bwlj/c [sage saga]:2020/06/10(水) 08:52:28.04 ID:CjYIfkGDO
コンマ65で登場キャラ四人目は

キャラ名:テイシロ 神官 (白髪の短髪で白いローブを着た少年)
性別:男
年齢:12
得意戦型:魔法
備考・希望:天外孤独の身であり自分の出生について知るために旅をしている 扱う魔法は光や雷系

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 09:53:50.71 ID:imbL3IYe0
186 : ◆YBa9bwlj/c [sage saga]:2020/06/11(木) 00:24:28.57 ID:6ovQVFQC0
>>171の台詞

アッシュ「アディオス、お嬢さん方」

は、本当は

グローバ「アディオス、お嬢さん方」

です。こういうミスはなくしたいですね…
187 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:19:21.51 ID:GZ1lpObE0
5章前半投下します。
188 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:20:01.37 ID:GZ1lpObE0
ーーー王都城 中庭ーーー

侍女「……」トットットッ

侍女「……」トッ...

姫騎士「はっ」ビュン

姫騎士「せあっ!」ビュオッ

姫騎士「まだまだ甘いな…」

侍女「…姫騎士様」

姫騎士「!侍女か」

姫騎士「どうした、私に何か伝言か?」

侍女「いえ、偶々通りかかったので」

侍女「…自主訓練ですか?」

姫騎士「あぁ。こうして体を動かしていないと鈍ってしまいそうでな」

侍女(日々あれだけの時間を鍛錬に費やしているのだから、鈍るなんてことあるはずがないのに)

姫騎士「侍女。今ここには二人しかいないんだ、畏まらなくていいんだぞ?」

侍女「そういうわけにはいきません。私は貴女のお付きですので」

姫騎士「ははっ、真面目だな侍女は」

侍女(……)

姫騎士「そうだ、せっかく来たんだ付き合ってくれないか?」

侍女「はい。剣のお相手をすればよろしいですか?」

姫騎士「そうではない」

姫騎士「少し外へな」

侍女「…いつもの場所ですか」

姫騎士「うむ」




189 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:20:36.39 ID:GZ1lpObE0
ーーー王都ーーー

リア「ここが王都……」

リア「驚きです、道が土じゃないですよ魔法使いさん…!」

魔法使い「そうねー。これ敷き詰めてあるのはレンガかしら」

アッシュ「似ていますが、少々異なります。これは石畳と呼ばれるもので、職人が一つ一つ切り出した石をこのように秩序立てて並べ、固めるのです。レンガが使用されるのは家屋の屋根などですね」

魔法使い「雨が降っても泥濘まなくていいわね」

盗賊(石畳も見たことねぇって、こいつらどんな田舎に住んでたんだ)

アッシュ「さすがに闘技場の地面は土ですがね。これはどこの国でも共通のはずです」

魔法使い「石の上でやれって言われても勝手が違うものね」

勇者「……」

魔法使い「ほら勇者、大会も村で稽古してた環境とそう変わらないみたいよ」

勇者「ん」

魔法使い(気のない返事…)

魔法使い「…もうっ、シャキッと歩く!さっきから見てて危なっかしいわ」

勇者「別に、どう歩こうが勝手だろ」

魔法使い「こっちが嫌なのよ。目の前でちんたら歩かれる方の身にもなって」

勇者「そんなん知らん」

魔法使い「あんたね…!」

リア「勇者さん、前っ」
190 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:21:19.01 ID:GZ1lpObE0



ドン



勇者「」ドサッ

姫騎士「すまない。余所見をしていた」

姫騎士「立てるか?」スッ

「ん?ありゃ姫騎士様でねーか?」

「おぉ本当だ!我らが英雄姫騎士様じゃ!」

勇者「……」スクッ

「なんじゃあの男、姫騎士様の手を無視しおった」

「礼儀知らずなやつめ」

姫騎士「怪我をしていないなら、良かった」

姫騎士「ん?」

アッシュ「……」

姫騎士「アッシュ?アッシュじゃないか?」

アッシュ「はい。お久しぶりです」

姫騎士「どこへ行っていたんだ!急に辞めて出て行くものだから心配したんだぞ。王都を離れていたらしいではないか」

アッシュ「少し旅に出ておりました。そういう気分だったのです」

姫騎士「旅か。アッシュにはいつも苦労をかけていたからな。すまなかった」

アッシュ「謝らないでください。貴女様のせいではございませんから」

姫騎士「だが、元気そうで安心したよ」
191 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:21:44.74 ID:GZ1lpObE0

姫騎士「しばらくここに留まるのか?」

アッシュ「そのつもりです」

姫騎士「なら丁度いい。今度の闘技大会是非見に来てくれ。アッシュから教わった技をいつも磨いてきたんだ」

姫騎士「優勝を勝ち取る私の姿を君に見せたい」

アッシュ「…楽しみにしております」ニコッ

侍女「……」

アッシュ(……)

侍女「行きましょう姫騎士様」

姫騎士「いいのか?侍女もアッシュと積もる話があるのでは――」

侍女「次の訓練まであまりお時間がありません」

姫騎士「そうか、急がないとな」

姫騎士「私はもう行く。機会があれば腰を落ち着けて話そう」

アッシュ「はい」

侍女「」ペコリ



スタスタスタ...


192 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:22:15.91 ID:GZ1lpObE0

魔法使い「……ねぇアッシュさん、今の人って」

アッシュ「分かってしまいますよね、さすがに」

アッシュ「そうです。あのお方が、私が元仕えていたお人、姫騎士様です」

アッシュ「国王様が大切になされている一人娘であると同時に」

アッシュ「――この国最強の騎士でもある」

魔法使い「そうだったのね、あの人が…」

リア「だから王都の事情に詳しかったのですね」

魔法使い「けどあの人アッシュさんのこと探していたみたいよ?私たちが初めて会った時、執事を辞めさせられたって言ってなかった?」

アッシュ「えぇ」

アッシュ「私を辞めさせたのは彼女ではありませんから」

魔法使い(…感じる。この人の中で燻っているなにか)

魔法使い(きっとアッシュさんもアッシュさんなりに目的があってここに居るんだ)

アッシュ「ひとまず移動しましょう。ここでボーッとしていては目立ってしまいます」

魔法使い「そう、ね」




193 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:22:59.26 ID:GZ1lpObE0
ーーー受付所ーーー

ガヤガヤ

受付嬢「はーい!皆さん押さないで下さい!順番に!順番にですよ!」

「おいてめぇ今割り込みしただろ?」

「おや、気付かなかったよ。気配が弱小過ぎて」

「んだと!?」

受付嬢「そこ!問題を起こしたら出場資格剥奪ですからね!」

ザワザワ

勇者母「あらあら」

勇者母「人がたくさん……これじゃ勇者がどこに居るのか見えませんね」

勇者母「でも!」

勇者母「大会の受付場所で待ってればいずれ会えますよね」ニコニコ

「なぁあんた、受付済ませるなら早くしておくれ」

「そうだよ後がつかえてんだ!」

勇者母「まあごめんなさいね」

「そんなのええから早よう」グイ

勇者母「あら?」

グイグイグイ

勇者母「あらあらあら…」




194 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:23:59.85 ID:GZ1lpObE0
ーーー宿 勇者の部屋ーーー

勇者「……」ボー

勇者「………」

勇者「」ゴロ...

勇者「……」ボー



ーーーーー

グローバ「藁に縋るのは勝手だが、こうやって現実も見せてやらねえとかわいそうだぜ」

ーーーーー



勇者(はっ、これが現実ってか)



コンコン



魔法使い「入っていい?」

勇者「入りたきゃ入れば」

ガチャ

魔法使い「ごめん寝てたかしら」

勇者「眠くない」

勇者「で、みんなそろってどうしたよ?ここ部屋広いけど四人で寝るのはさすがにキツくねーんか?」

アッシュ「私とリア様は付き添いですよ」

リア「……」

勇者「?」
195 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:24:30.22 ID:GZ1lpObE0

魔法使い「勇者、大会のエントリーに行くわよ」

勇者「おう、そのうちな」

魔法使い「そのうちっていつよ」

勇者「そのうちはそのうち」

魔法使い「それで結局出ない気なんだ」

勇者「んなこと言ってねーし」

魔法使い「だったら今から行くの!遅かれ早かれ受付はしてこないといけないんだから」

勇者「……明日な」

魔法使い(……)ギリ...

魔法使い「いい加減にしなさいよ」

魔法使い「いつまでそうやってうじうじしてるつもり?あのセクハラじいさんに負けてからずっとそうじゃない!私たちに見せびらかすみたいに落ち込んでさ!」

魔法使い「同情すればいいのかしら?よしよし、あんなの気にしなくていいですよーって?」

アッシュ「魔法使い様、少し抑えた方が…」

魔法使い「一回負けたからってなに!?あんたの言う最強はたかがそれっぽっちで終わるものなの!?」

勇者「っ」
196 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:25:02.74 ID:GZ1lpObE0

勇者「…言ってくれんじゃん」

勇者「一回でも負けたらそれもう最強じゃないっしょ。それに俺っち気付いたんよ」

勇者「上には上がいる」

勇者「グローバ爺さんが教えてくれた。俺っち一つ賢くなったんだぜ。身の丈を知ったっての?」

魔法使い「…なに、それ」

勇者「出来もしねー優勝とかほざいてるよかよっぽど利口だろー」

魔法使い「じゃあ…あんた何のためにここまで来たの…?」

勇者「んー、記念?」

勇者「参加賞くらい持ち帰ってやんねーとなー。なはは」

魔法使い(……なんなの。なんなのよ)

魔法使い(私は、そんな言葉あんたの口から――)

魔法使い「もういい!」ダッ

タッタッタッ

リア「あ…」

勇者「……」

アッシュ「……」

アッシュ「今の言葉、本心でございますか?」

勇者「モチのロンよ。これが大人になるってこったろ?ちゃんと現実を見れてる」

勇者「最強だのなんだのが許されんのはケツの青いガキか、世界のてっぺん取ってるやつだけさ」




197 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:25:37.20 ID:GZ1lpObE0
ーーー夜 魔法使いの部屋ーーー

魔法使い「……」

魔法使い(…眠れない。早く寝て忘れちゃいたいのに)

魔法使い「………」



ーーーーー

勇者「一回でも負けたらそれもう最強じゃないっしょ」

勇者「出来もしねー優勝とかほざいてるよかよっぽど利口だろー」

ーーーーー



魔法使い「………バカ」

魔法使い(違うでしょ…)



ーーーーー

幼勇者「いいかげん泣きやめって。魔法の一つ失敗したくらいなんだってんだい」

ーーーーー



魔法使い(私がずっと追いかけて来たのは、ずっと見てきたあんたは……)

魔法使い「…嫌いよ…」



「魔法使いさん、起きてますか?」



魔法使い「…リアちゃん?」

リア「はい。ちょっとお話したくて、来ちゃいました」

魔法使い「……ふふ、いいわよ入ってきて」

カチャリ

リア「お言葉に甘えますね」エヘヘ




198 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:26:28.73 ID:GZ1lpObE0
ーーー宿 屋根ーーー

勇者「……」

勇者「空はでけーなー」

勇者「このまま俺っちのこと、吸い込んでくれねーかなー…」



ーーーーー

魔法使い「一回負けたからってなに!?あんたの言う最強はたかがそれっぽっちで終わるものなの!?」

ーーーーー



勇者「………」

勇者(みっともねぇ)

アッシュ「ここにおられましたか」

勇者「……」チラッ

アッシュ「危ないですよ、屋根の上など。落ちたら大怪我です」

勇者「それ鏡見て言ってみ」

アッシュ「隣、失礼致します」

スッ...

アッシュ「綺麗な空ですね」

勇者「………」

アッシュ「勇者様、闘技大会での優勝、本当に諦めてしまわれたのですか?」

勇者「諦めるも何も、最初から無理難題だって判明したしな」

勇者「俺っち、グローバのおっさんに手も足も出なかった。なのにそれより強ぇのがまだいるんよな?」

勇者「小さな村の間抜けが一匹、大口叩いてたってだけよ」

アッシュ「前にも言いましたが、貴方はまだ強くなれます」

勇者「大会まであと二週間ちょいしかないのに?」

勇者「たった二週間じゃ小手先のみみっちい技身につけるくらいしか出来ねーぜ」

アッシュ「では魔法使い様をあのままにしておくのですね」

勇者「……なんでそこで魔法使いなんだよ」

アッシュ「これでも長年女性の傍に付き添ってきたものですから、その手の機微には敏感なのです」ニコッ

勇者「…関係ねーよ、別に」




199 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:26:59.31 ID:GZ1lpObE0

魔法使い「今日は何の話をしよっか?魔法のことはいっぱいお話してきたものね。思い切ってお互いのちょっと恥ずかしい失敗談とかいってみる?」

リア「えっとですね、今日はあの……恋の話……とか…」

魔法使い「え?なーに?」

リア「…魔法使いさんて、勇者さんのこと好きですよね?」

魔法使い「!?」

魔法使い「そ…えぇ!?ななな何言ってるのかしら!?そんなことあるわけ…!」

リア「見てたら分かりますよ。魔法使いさん真っ直ぐですもん」

魔法使い「うぐっ」

魔法使い「……うん、好きよ」

魔法使い「けどもう違うの。私が好きだったあいつはどっかに行っちゃった」

リア「好きな勇者さん…?」

魔法使い「そ」

リア「それって、いつも明るくて、楽しそうで、前向きな勇者さん?」

魔法使い「大分美化されてるわね」フフッ

魔法使い「…まぁそんな感じかな」

二人「……」

リア「お二人は確か…同じ村の幼馴染みさんなんでしたよね。魔法使いさんはいつから勇者さんのこと、好きだったんですか?」

魔法使い「ま、まだこの話続ける…?」

リア「……」ジッ

魔法使い「…いつからだろうね」

魔法使い「気が付いたら、いつもあいつのことを追いかけてた」

魔法使い「ちっちゃい頃の私ってね、すごく泣き虫だったの。魔法を一度失敗したくらいでえんえん泣いてたわ」




200 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:27:30.94 ID:GZ1lpObE0

勇者「――で、その度に俺っちが慰めてやってたんよ。なーんかほっとけなくってさー」

アッシュ「意外ですね。今の魔法使い様の凛々しさからはとても…」

勇者「本当になー。口うるさくて暴力まで振るってくるし。リアくらいおしとやかでいりゃあまだかわいいんだがね」

アッシュ(私には、そう変わった理由も、なんとなく勇者様にあるような気がしますよ)

勇者「…でも、一つ言えんのは」



ーーーーー

幼勇者「めそめそしてんな!おれっちがいてやっから!」

幼勇者「おっきくなったらおれっちがお前のこと」

幼勇者「一生守ってやっからよ!」

ーーーーー




201 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:27:57.49 ID:GZ1lpObE0

魔法使い「そんな子供の時の言葉、ずっと忘れられなくてさ」

魔法使い「馬鹿みたいよね、あいつはもうそんなのとっくに頭に残ってないのに」

リア「…待ってるんですね、勇者さんのこと」

魔法使い「……」

魔法使い「あいつね、闘技大会に出るからって一人で村を出て行こうとしたのよ。我慢ならなくてあいつを闘技で負かして無理矢理付いてきてやったわ」

リア「え、勝ったんですか…!?」

魔法使い「もちろんハンデ有りでね」

魔法使い「でも、あんな勇者見せられることになるなら、大会自体に反対した方が良かったわ…」

魔法使い「別に私は、あいつが世界で一番強くなくたって……私の中で一番でいてくれれば……」




202 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:28:23.07 ID:GZ1lpObE0

アッシュ「迎えに行ってあげないのですか?覚えていらっしゃるのなら尚の事」

勇者「冗談っ。俺っちもっとグラマラスな女の人の方が好みだし、あんなべったり付いてきて文句ばっか言うようなやつなんざ」

アッシュ「そこまで想っていただけるとはなんとも素敵な方です」

勇者「へ、代わってやろうかい?」

アッシュ「私は勇者様にはなれませんよ」ニコッ

勇者「……」

勇者「…今更遅いんよ」

勇者「弱っちい勇者くんじゃああいつは見てくんねーさ。今頃失望してんだろ」

勇者「最強じゃなきゃ意味ねーんだ」

勇者(……え?なんで?)

勇者(最強……なんで最強じゃないとダメなんだっけ)



ーーーーー

「――だれにも――、――さいきょう――だい――!」

ーーーーー



勇者(なんだ、今の…?)




203 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:29:00.22 ID:GZ1lpObE0
ーーー翌朝 食堂ーーー

魔法使い「……」パク、パク

勇者「」カチャカチャ

アッシュ「……」スッ

リア「……」モムモム

魔法使い「ごちそうさま」

魔法使い「私、外散歩してくる」

スタスタ...

リア「わ、私も行きます…!」テッテッテッ

勇者「……」カチャ...

勇者「俺っちも腹いっぱいだわ。残りはアッくんに任した」ガタッ

(部屋に戻っていく勇者)

アッシュ「朝食は重要ですが、この量は些か…」

アッシュ「貴方も要りますか?こちらの料理などはまだどなたも手を付けていませんよ」

盗賊「……欲しけりゃ仲間の居場所を吐けってんだろ?」

アッシュ「無論です」ニコッ

盗賊「無理な相談だぜ。同胞を裏切る行為は絶対しねぇ」

アッシュ「そうですか。ともすればこれが最後の晩餐になったかもしれませんのに」

盗賊「…あん?」




204 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:29:28.63 ID:GZ1lpObE0
ーーー王都 大通りーーー

リア「ふわぁ…!改めて見てみると、どの建物も全部大きいんですね…!」テクテク

魔法使い「そうねぇ。前寄った町にもお店とかはいっぱいあったけど、ここまで立派に構えてはなかったものね」テクテク

魔法使い「…リアちゃん、無理して私と出てくることなかったのよ?」

リア「無理なんかしてませんよ。魔法使いさんと一緒にいるの好きですから」ニコリ

リア「どっちかと言えば、魔法使いさんの方が無理してるんじゃないですか…?」

魔法使い「……」

魔法使い「いいのいいの。もう気にしないことにしたからあんなやつ」

魔法使い「私たちは私たちでせっかくの王都を目一杯楽しんじゃいましょ」

リア「……はい」

リア(気にしてないなら、そんな寂しそうに笑ったりしないですよ…)

魔法使い「リアちゃん見て!」

リア「?」

魔法使い「あれ、王都の大聖堂よ!」

魔法使い「ここに来てからもやもやすることばっかりだったし、一度吐き出してすっきりさせとこっか」




205 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:29:59.33 ID:GZ1lpObE0
ーーー大聖堂ーーー

魔法使い「王都一の教会って聞いてたけど、あんまり人はいないのね」

リア「そうですね……もしかしたら世の中が平和なおかげかもしれませんね」



「すぴー……zzZ」

「だめよダーリン、こんなところでキスなんて…」

「大丈夫少しくらい罰は当たらないさ」



魔法使い「…平和以前の問題な気が…」

リア「あはは…」

白髪の少年「……」(手を祈り合わせる)

魔法使い「あの子のお祈りが終わったら私たちね」

少年「主よ、どうかお願いいたします。この声が届いているのならば、どうか僕についてお教えください」

少年「僕は一体どこから来たのか、どこへ向かうべきなのか……」

少年「それだけで、いいのです…」

魔法使い(随分熱心なお願い事ね。お祈りって声に出すものだっけ…?)

少年「……行くか」スクッ

少年「…っ!!」

リア「…?」

少年「あ……あぁ…!」

タッタッタッ

ガシッ!

リア「えっ!?」

少年「きみは僕の兄妹か!?僕を探しに来てくれたのかっ!?」ユサユサ

リア「ひあぁ…」

魔法使い「ちょっと何してるの!?手離して!落ち着きなさい!」



.........




206 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:31:21.03 ID:GZ1lpObE0

少年「僕はテイシロ…って、名乗ってる」(以降、テイシロ)

魔法使い「名乗ってる?」

テイシロ「……」

魔法使い「…そのテイシロくんが、なんでリアちゃんに掴みかかったりしたのかしら?リアちゃんの知り合い?」

リア「いえ…初めてお会いします…」

テイシロ「掴みかかったんじゃ…!さっきは衝動的に動いてしまっただけで!」

魔法使い「……あのね、いくら子供でも女の子にひどいことは絶対にやっちゃいけないの。分かるでしょ?」

テイシロ「そんなつもりはないんだって…!」

テイシロ「…家族かと思ったんだよ」

リア「家族…ですか?」

テイシロ「うん…」

テイシロ「僕、孤児院で育てられたんだ。西国の」

テイシロ「物心ついたときから周りには僕を育ててくれた神父様と、僕と同じような子供ばかり……両親の顔どころか自分の本当の名前さえ知らない」

テイシロ「だから、自分の生まれがどうしても知りたくて飛び出してきた」

魔法使い「飛び出してきたって…一人で?」

テイシロ「僕はもう12だ。それなりの分別はつくし、常識だってある。変な輩が来ても魔法で退治出来る!」

魔法使い「そう言っても、危険なことに変わりはないわよ。こんな幼い子を一人で……大丈夫なの?その孤児院…」

テイシロ「神父様を悪くいうな!」ダン

リア「」ビクッ

テイシロ「あ…ごめん」
207 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:32:05.13 ID:GZ1lpObE0

テイシロ「身寄りのない子を何人も育ててくれて、僕らにとっては親も同然の人なんだ。何かあっても平気なようにって神官としての魔法も教えてくれた」

テイシロ「…でもお優しい神父様だからこそ、僕が旅に出るのには反対した。真実は時に、君たちを傷つけるからって」

テイシロ「神父様には手紙だけ置いて、黙って出てきたんだ」

リア(……)

テイシロ「それでこの国の王都まで来たのはよかったんだけど、広いしまともに取り合ってもらえないしで困っててさ」

テイシロ「唯一の手がかりと言えばこの白い髪だけ。情けないけど、神様に頼めば道を示してくれるかもなんて、ここでお祈りしてたら」

魔法使い「リアちゃんが来たってことね」

テイシロ「うん」

リア(…この子、ずっと孤独の中で生きてきたんだ)

リア(少し前までの私と同じ…)

テイシロ「けどごめんなさい。全然関係なかった」

テイシロ「僕のことなんかこれっぽっちも知らないみたいだ」

テイシロ「迷惑かけた。それじゃ」

魔法使い「待――」

リア「待って!」

テイシロ「!」

リア「私にも、協力させて」

リア「私もあなたのご両親を探すの、手伝います」

テイシロ「え…いやいいよ、同情してもらいたくて話をしたわけじゃ…」

リア「強がらないで」

テイシロ「つ、強がってなんか…!」

ギュ(手を握る)
208 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:33:22.97 ID:GZ1lpObE0

リア「…それでも、だよ」

リア「さっき途方に暮れたって言ってたばかりでしょう?」

リア「それに、一人よりは絶対に良いよ」ニコッ

テイシロ「」ドキッ

魔法使い(強くなったわね、リアちゃん)

リア「魔法使いさん、お願いです。この子の――」

魔法使い「いいわよ。私も同じこと言おうとしてたから」

リア「ありがとうございますっ」

テイシロ「…そ、それじゃ、よろしく…えっと…」

リア「リアンノン。でも長いからみんなリアって呼んでくれるの」

魔法使い「魔法使いよ」

テイシロ「魔法使いさんに…リア」

リア「うん♪」

リア「私もシローって呼ぶね」エヘヘ

テイシロ「っ…お、おう…」

魔法使い(ふふっ)

リア「でも、闇雲に動き回るだけじゃ意味ないですよね……資料館みたいなものがあれば、情報収集が出来るんですけど…」

魔法使い「んー……ん!」

魔法使い「アッシュさんなら何か知ってるかもしれないわ。彼、色んなお国事情を見てきたでしょうから」




209 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:34:41.96 ID:GZ1lpObE0
ーーー宿ーーー

魔法使い「戻ったわよ……あら?」

リア「アッシュさん、いませんね…」

テイシロ「……」キョロ、キョロ

魔法使い「……」

テクテク

魔法使い「」コンコン



勇者「あー?なんだよー?」ガチャ



魔法使い「アッシュさんは?」

勇者「なんか盗賊引き渡しに行くっつって出かけてった」

魔法使い「あぁ、治安維持所に行ったのね」

リア「どうしましょう…私たちも向かいましょうか…?」

魔法使い「すぐに帰ってくるはずよ。ここで待ってましょ」

魔法使い「シローくんもそれでいい?」

テイシロ「!うん、平気」

勇者「……」

バタン

テイシロ「…今の人」

魔法使い「あー、あれは勇者っていうんだけど、いないものと思っていいわよ」

テイシロ「……」

テイシロ(生気がまるで感じられない人だった。何があったんだろう…?)



.........




210 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:35:15.60 ID:GZ1lpObE0

アッシュ「なるほど、テイシロ様のご両親を…」

魔法使い「そうなの。アッシュさん聞いたことないかしら?どんなに小さなことでもいいのよ」

アッシュ「……申し訳ありません。残念ながら私にはそのようなお噂を聞いた記憶はないですね…」

テイシロ「…そうだよな。そう都合よく見つけられるなんて…」

リア「……」

アッシュ「いいえ。諦めるのはまだ早いですよ」

リア「!あるんですね…!なにか糸口になるものが…!」

アッシュ「私にはありませんが、王都に住んでいらっしゃる賢者様なら、ご存知かもしれません」

テイシロ「賢者…」

アッシュ「はい。ご案内致しましょう」




211 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:36:44.99 ID:GZ1lpObE0
5章前半はここまでです。
212 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:38:03.42 ID:GZ1lpObE0
賢者のキャラ決め安価を行います。
前回同様、安価で4つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5〜100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>213>>216
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 08:36:18.35 ID:stPt1+Lu0
キャラ名:賢者 レラ 茶髪の髪をしたかなりのナイスバディの女性であるが普段は酒を飲んで常に酔っ払っている
性別:女
年齢:33
得意戦型:剣術 魔法
備考・希望:かつては貴族の血筋の天才少女として名をはせていたが、今はなんだかんだで勘当状態であり、王都で占い師としてひっそり生きている
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 13:49:55.67 ID:BZEfVpoU0
キャラ名:名前ガルヴァ・容姿小柄で禿げ頭な老人 
性別:男
年齢:90
得意戦型:魔法 体術
備考・希望:飄々とした気のいい老人
戦闘スタイルは魔法使いで戦う通常モードと魔翌力のほとんどを身体強化に充てるマッチョモードを使い分けて戦う
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 14:15:31.71 ID:Q5+4V5U30
キャラ名:ルーファ 賢者(金髪で右目が髪で隠れている。ローブを着ている。結構な美人。)
性別:女
年齢:35
得意戦術:魔法 剣術
備考・希望:クールな性格。聞き上手で色んな人の悩みなどを聞いてきている。様々な魔法が使うことができ戦闘では魔法を中心に戦う。長めの木剣を所持しており魔法だけではなく剣術も得意でかなりの腕前である。幼い頃に両親が事故で亡くなり施設で暮らしていた過去がある。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 14:50:43.43 ID:lsb1jqGDO
キャラ名:シュナ・賢者・黒いブカブカのローブを着た幼児体型の女性。前髪で目が隠れている
性別:女
年齢:???歳(自称永遠の10代)
もし年齢をはっきり決めなければ駄目なら35歳で
得意戦型:魔法 体術
備考 希望 天然ボケで捉えどころのない部分もあるが基本的には物静かで大人しい性格
体術は柔術やコマンドサンボなどのような間接技中心
217 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 15:06:19.76 ID:GZ1lpObE0
候補が出揃ったため、>>218のコンマで決定します。

00〜24:レラ
25〜49:ガルヴァ
50〜74:ルーファ
75〜99:シュナ

>>216 年齢をはっきりなどの制約は特にないので大丈夫ですよ
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 15:08:32.14 ID:kpQWqz9/0
219 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 15:11:04.34 ID:GZ1lpObE0
コンマ14で賢者は

キャラ名:賢者 レラ 茶髪の髪をしたかなりのナイスバディの女性であるが普段は酒を飲んで常に酔っ払っている
性別:女
年齢:33
得意戦型:剣術 魔法
備考・希望:かつては貴族の血筋の天才少女として名をはせていたが、今はなんだかんだで勘当状態であり、王都で占い師としてひっそり生きている

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 18:23:02.41 ID:lsb1jqGDO
乙です
次の更新期待してます
221 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:45:53.38 ID:d2dAFaLW0
5章後半投下していきます。
222 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:46:52.36 ID:d2dAFaLW0
ーーー王都 裏路地ーーー

ザッザッザッ

リア「ほ、本当にこのような場所に賢者様がいらっしゃるのでしょうか…?」

アッシュ「最後に訪れたのは2年ほど前ですが、その間に居住を変えたという話は聞いておりません」

魔法使い「アッシュさん旅に出ていたんじゃなかったの?」

アッシュ「賢者様は様々な意味で有名人ですから、お噂くらいは耳に入ってきますよ」

勇者「……アッくん、本当なんだろーな?例の賢者、めっちゃ美人のナイスバディって」ボソッ

アッシュ「ここにきて嘘は吐きませんよ」ボソッ

勇者「っし」

魔法使い「なによ?」

勇者「なんでもー」

リア「…あっ…!」ツルッ

テイシロ「っ!」グイ

テイシロ「気を付けてな。ここ足元急だから」

リア「うん…ありがと」ニコリ

テイシロ「…し、心配だからこのまま手つないで――」

アッシュ「見えましたよ、あれです」



(占い処 八卦)

掛け札『臨時休業中』



魔法使い「占い…?」

アッシュ「今は占い師として暮らしているのですよ」

トントン

全員「………」

リア「…留守にされてるのでしょうか」

アッシュ「いいえ、この札を掛けている時は大抵」

トントントン

ガチャ キィ...

テイシロ「ドアが勝手に…」
223 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:47:32.87 ID:d2dAFaLW0



「入っておいで」



アッシュ「失礼致します」

ゾロゾロ

妙齢の女性「これはまた、賑やかそうな子達じゃないの」

勇者(おぉ…で、でけー!)

アッシュ「突然の訪問をお許しください、レラ様」

妙齢の女性(以降、レラ)「アシュ坊は変わらないねぇ。以前と一言一句同じ挨拶だ。あの子のお付き辞めて、今度はその子らの執事になったってわけかい?」グビッ

アッシュ「また明るいうちから酒など…お体に悪いですよ」

レラ「くはは、余計なお世話よ」ヒック

魔法使い(この人が賢者。…イメージと全然違うけど…)

魔法使い(この小屋の中を見る限り、間違いないんでしょうね)

アッシュ「今の私は執事ではなく、ただの夢追人です」

レラ「ふ〜ん…ご苦労なこったい」

レラ「んで、あたしに何の用だい。表の札は見たろ?占い稼業はお休みだよ」

リア「…あの!賢者様、お願いがあってここに来ました…!」

リア「シローの…テイシロさんのご両親について、教えていただけませんか…!」ペコッ

テイシロ(リア…)

テイシロ「お願いします!」ペコリ

レラ「そう来たか」チラッ

勇者(?今こっち見た?)
224 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:48:49.86 ID:d2dAFaLW0

レラ「……」グビッ

レラ「偶にいるのよ。ここを何でも屋か何かと勘違いしてる輩がさ。あたしは神様じゃないんだ、この世の全てを把握なんてしちゃあいない」

リア「……」

アッシュ「レラ様でも分からないとなりますと、これはもうテイシロ様の孤児院から手がかりを見つけ出す他ないかもしれませんね」

レラ「はやるなよアシュ坊。誰も分からないとは言ってないよ?」

テイシロ「え…!」

レラ「見えるのさ、あたしには。その水晶玉にバッチリとねぇ」

(机上に鎮座する水晶玉)

魔法使い「…何が映ってるんです?」

レラ「知りたいかい?教えてやってもいいけど、ただじゃ面白くない」ククッ

レラ「そうだね、そのテイ坊とやらがあたしと闘技をして勝ったら、教えてやろう」

リア「…何故ですかっ。彼は生まれてからずっと、自分のことを何も知らずに生きてきたのです…!」

リア「せっかく届きかけたのに、その道を塞ぐようなこと…!」

レラ「欲しければ勝ち取るんだよ」

レラ「何もしないで答えが寄ってくるほど、世界は甘くないよ」

リア「そんな…」

テイシロ「…僕、やるよ」

テイシロ「賢者様はチャンスをくれた。断る理由はない」

テイシロ「それにもしかしたら、賢者様が精通してるのは知識だけで、闘技はからっきしかもしれないしさ」

レラ「くふ…よく言った。手加減はしてやるさね」

レラ「じゃ、場所整えるから脇に退いててくれ」

テイシロ「え?は、はい」
225 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:49:16.09 ID:d2dAFaLW0

レラ「"拡張"」

グイン!

勇者たち「!?」

リア「一瞬で…」

テイシロ「部屋が…」

魔法使い(広くなった…)

魔法使い(元々この小屋、外から見た大きさと中の広さが違ってた。この人が使用している魔法、信じられないけど――)

レラ「"生成"」

ズズズ...

勇者「あ、これ闘技場か」

魔法使い(空間操作魔法)

魔法使い(すごいなんてもんじゃない。こんなの現代に扱える人が残ってるなんて…)

レラ「興味あるかい?使えると何かと便利よ」

レラ「あんたなら、修行を積めばあるいは」

魔法使い「私…ですか?」

レラ「」グビ、グビ

レラ「ヒック、火魔法が得意で胸の控えめな女の子1名、募集しておこうか」クスッ

魔法使い「っ!?」

勇者「ぷっ」

魔法使い「」ジロッ

レラ「アシュ坊、審判頼めるかい?」

アッシュ「畏まりました」



.........




226 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:49:49.35 ID:d2dAFaLW0

テイシロ「……」

レラ「そう硬くなりなさんな。勝てるものも勝てなくなっちゃうよ?」

(宙に浮く木剣)



勇者「剣、浮かしながら戦う気かね」

アッシュ「完全に遊んでますね、あれは。レラ様は魔法の腕は言うまでもありませんが、元々剣術にも長けているのですよ」

アッシュ(私もかつてはレラ様のようにと)

魔法使い「いくら何でも無茶よ。あの人の魔法は文字通り次元が違う」

勇者「あぁ確かに、異次元だよな」

(レラのふくよかな胸)

魔法使い「…なんであんたまで来たの?」

勇者「駄目か?俺っちも賢者さんつーの見ときたかったのよ」

勇者(優勝賞品の美女が手に入んないんだ。尚更王都のお色気さんたちを見逃す手はない!)

魔法使い「余計な茶々いれんじゃないわよ」

勇者「うぃーす」

リア「……」

リア(シロー…)ギュ...


227 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:50:55.71 ID:d2dAFaLW0

レラ「ぼちぼち始めようかねぇ」

テイシロ「…っ」

アッシュ「それでは、両者前へ」

テイシロ(気圧されるな…僕には神父様から教わった魔法がある…!)

テイシロ(子供だからって甘く見てると)

アッシュ「始め!」

テイシロ(足元をすくわれるんだ!)

テイシロ「"通雷"!」

レラ「"通雷"」

バチンッ!

テイシロ「は…?」



魔法使い「打ち消した…全く同じ威力の同じ魔法で…」

勇者「そんな驚くことなん?」

アッシュ「魔法の強さには個人差がありますからね。寸分の狂いもなく打ち合わせることは普通出来ません」



レラ「やるねぇテイ坊。綺麗な花火じゃないか」

テイシロ「くっ…」

テイシロ「"射光"!」

レラ「"集光"」

ピカッ!

シュルルル...

レラ「これだけあれば夜は電気要らずで過ごせそうね」ククッ



魔法使い「集光なんて魔法あったかしら?」

アッシュ「適当に名前を口にしてるだけです。あれくらいの芸当であれば詠唱などせずに為せるはず」

リア「……」


228 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:51:26.28 ID:d2dAFaLW0

テイシロ(今のはほとんど全力だったのに)

テイシロ(駄目だ…単純な魔法じゃ絶対に勝てない)

テイシロ(けどまだ終わりじゃない)

テイシロ「…"光速"」

シュンッ

レラ「!」

テイシロ「喰らえっ!」

スカッ

レラ「」スー...

テイシロ(透過した…!?)

ポンポン(木剣に肩を叩かれる)

レラ「くふふっ。あたし実は幽霊だからさ、物理攻撃は効かないのよ」



勇者「え、マジで」

アッシュ「ジョークですよ。生身の人間です」

リア(光速は確か、魔力で作った道の上を瞬間的に移動する魔法…)

リア(じゃあ賢者様が行った瞬間移動は何…?)

魔法使い「厳しいわね…。大の大人が赤ちゃんの相手をしてるようなものよ」



レラ「さて、お次は何を見せてくれるのかな?」

テイシロ「ちきしょう…」

テイシロ(だったら、全部の魔力使い切るつもりでやってやる!)



.........




229 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:51:59.45 ID:d2dAFaLW0

テイシロ「"落雷"!」

パキン

レラ「ふぅ、酔いも覚めてきそうね」

テイシロ「はぁ…はぁ…」

テイシロ(これも駄目)

レラ「どうしたの?あれからあたしを一歩も動かせてないよ」

テイシロ(こっちは常に全力で打ってるのに、詠唱も無しに全て無効化される)

テイシロ(光速を仕掛けようにもその度にあの木剣が進路上に先置きされてて突っ込めない)

テイシロ(僕が何をしようとしているか、全て読まれてる…)

レラ「まさかこれで終いなんて言わないよねぇ。こんなんじゃ君、いつまで経っても親のことなんか分かりゃしないよ」

レラ「それともその程度の覚悟だったってことかい?」

テイシロ「……」

レラ「まぁいいさね。知らない方が幸せなことだってある。今の生活が苦痛じゃないんなら元に戻ってあげた方が、いいんじゃないかな」

テイシロ「っ」



ーーーーー

神父「テイシロ、お前は私達の家族だ」

神父「何も遠慮することはない。これからも共に暮らし、共に泣き、共に笑おう」

ーーーーー



テイシロ(そう言って手を差し伸べてくれた神父様を置いて、僕はここに来たんだ)

テイシロ(真実を知ったその上で、神父様たちと一緒に生きたいと言うために!)
230 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:53:40.84 ID:d2dAFaLW0

テイシロ「僕は…絶対に諦めない!」

レラ「じゃあ、どうする?」

テイシロ(効くか効かないかとか、疲れる疲れないだとかもういい)

テイシロ(全身全霊ありったけを込める!)

テイシロ「僕の本気の本気の本気だっ!」

レラ「……」ニッ

テイシロ・レラ「「"光子"!」」

ブワァア!

――ズシャンッ!



魔法使い「うっ…すごい余波ね…」

アッシュ「あれだけのエネルギーがぶつかっていますからね…!」

勇者(…あいつ)



テイシロ「うぉおおお!」ゴォォ!



勇者(なんであんなに必死になってんだ。どうせ負けるって分かってる試合だろうに)

勇者(ガキだからか?死ぬ気になれば何とでもなると思ってんのか…?)

勇者(んな無駄な労力使ってまで勝ち取る必要があるもんなのかよ)



ーーーーー

「――だれにも負けない、さいきょうの――」

ーーーーー



勇者(……?)


231 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:54:20.25 ID:d2dAFaLW0

レラ「くははは!いいじゃない!子供にしては大した魔力だよ」

テイシロ「おおおおぉ…ゲホッ…!」



リア「あ…!」

リア(あんなに急速に魔力を放出して、とても苦しいはずなのに…)

リア(やめて、って言ってあげたい。私もあなたの旅に付き合うよって)

リア(でも――あなた自身が、あなたの目がまだ戦っているから)

リア「負けないで、シロー…!」



テイシロ(…!)

テイシロ「ぉ……らぁああああああ!!!」

ゴウッ!

レラ(んっ!?)

レラ「この子は…!」ジリ

アッシュ「!」

レラ「"封魔"」

ブシュー

テイシロ「わ…」フラ

トサッ...

レラ「ドクターストップ」

レラ「勝ち取れとは言ったさ。でもね、命を落としちゃ本末転倒だよ」

テイシロ「」グッタリ
232 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:54:51.23 ID:d2dAFaLW0

テイシロ「」グッタリ

アッシュ「レラ様」

レラ「分かってる。今回は無効試合としておくよ。あたしはここで待ってるから、いつでも――」

アッシュ「そうではなく、足元が」

レラ「ん?」チラッ

アッシュ「場外、ですね」ニコッ

レラ「……」

レラ「なんだい、あたしの負けか」ククッ

リア「シロー!」テテテッ

リア「ねぇ…!聞こえるっ?私が誰だか分かる…!?」

テイシロ「……リア……」

リア「よかった…」ギュ



.........




233 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:55:40.57 ID:d2dAFaLW0

レラ「」スッ

――ヒラ(宙空に現れる紙)

テイシロ「っと、と」パシッ

テイシロ「…地図?」

レラ「王都の一画さね」

レラ「印の付いた家がある。そこが、さっき水晶に映ってた場所だよ」グビッ

レラ「ぷはっ、運動後の酒は格別だねぇ!」

テイシロ「ここに行けば、僕の生まれが…」

レラ「今から行くもよし。一晩寝てから行くもよし。…行かないという選択肢もある」

レラ「後はテイ坊のしたいようにしな」

テイシロ「行きます」

レラ「ふっ」

ポスッ

レラ「まったく、無茶な坊やだよ。自分の身を省みずに魔力を酷使しようだなんて」

レラ「まさに捨て身ってやつかい!」ワシャワシャ

テイシロ「おぅ…おぉ…」ナデラレ

レラ「まぁ、心意気は伝わったよ」

レラ「あんた立派な男になれる」

テイシロ「…うん!」

リア「賢者様、ありがとうございます」

レラ「お礼を言われるようなことはしてないさ」

レラ「労いならテイ坊にかけておやり?その方が嬉しかろうよ」

リア「ふふ、そうですね」

リア「頑張ったね、シロー」ナデナデ

テイシロ「っ…ね、労いってこれかよ」

リア「嫌だった?」

テイシロ「嫌じゃないけど、同い年にいい子いい子って、なんかさ…」

リア「………シロー?」

リア「私ね、多分あなたより5つくらい歳上だと思うなぁ」ニコニコ

テイシロ「…え!?!?」
234 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:56:08.58 ID:d2dAFaLW0

アッシュ「レラ様、私からもお礼を言わせてください」

レラ「よしてくれよ。お人好しばかりかいあんた達は」

レラ「用が済んだならお帰り。あたしは敗北の慰め酒をやらなくちゃならないんだからさ」グビッ

魔法使い「…いつか、その…」

魔法使い「魔法、教わりに来てもいいですか?」

レラ「…くふっ」

レラ「気が向いた時に来なよ」ニッ

勇者「……」

アッシュ「今度上質の酒を持って参ります。ではこれにて」

ゾロゾロゾロ

レラ「待った」

レラ「そこの、一番後ろのだけちょいと残りな」

勇者「…え」

勇者「俺っち!?」




235 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:57:22.33 ID:d2dAFaLW0

レラ「んく、んく…」グビ、グビ...

勇者(こんなお姉さんに呼び止められるなんて、俺っちってもしかしてスーパーウルトラツイてる?)

勇者(何してくれるんかな。まさか、まさかまさかの…!?)

勇者「うへへ…」

レラ「酒、飲むかい?」

勇者「いえっ、お酒よりも既に貴女の美しさに酔ってますので」キリッ

レラ「くっは!あたしを口説く気かい!」

レラ「安くないよ?遊びならやめとくれ」

勇者「遊びなんてとんでもない!」

レラ「ま、それはいいさね」

勇者(流された…)

レラ「あんたを呼び止めたのは、簡単なことさ。悩みがあるんだろう?」

勇者「へ……大会のこと?」

勇者「それなら平気だぜ。もうとっくに解決したかんよ」

レラ「――どうしても思い出せないことがある」

勇者「!!」

レラ「差し詰めそんなところだろうね」

勇者「………」



ーーーーー

「――さいきょうの――」

ーーーーー



勇者(……)

レラ「特別サービスだよ。水晶玉をよーく見ておきな」

勇者「え…?」

勇者(水晶玉?綺麗だけどただそれだけ…)

勇者(!…なにか、映ってる…?)
236 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:57:51.72 ID:d2dAFaLW0



ーーーーー

幼魔法使い「グスン…ヒック…」

幼勇者「魔法使いよーまた泣いてんのかー?」

幼魔法使い「だってぇ…かんたんな魔法もできなくて…」

幼勇者「めそめそしてんな!おれっちがいてやっから!」

幼魔法使い「…こんなだめなわたしでも、いてくれるの…?」

幼勇者「あたぼうよ!心配すな、おっきくなったらおれっちがお前のこと一生守ってやっからよ!」

幼魔法使い「…えへっ…うん…!」

幼魔法使い「勇者わたしね、いっつも楽しそうに闘技をしてる勇者がすき」

幼魔法使い「だれにも負けない、さいきょうの勇者がね、だいすき!」

幼勇者「へへっ、任しとけ!」

幼勇者「おれっちこそ、未来えーごーさいきょうの男だかんな!」

ーーーーー


237 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:58:21.45 ID:d2dAFaLW0

勇者「………あ」

勇者(さいきょう………最、強………)

勇者「………そっか………」

レラ「……」グビッ

勇者(……………)

勇者「」ダッ!

ガチャッ バタン!

レラ「…ドアはもう少し静かに閉めて欲しかったかな」

レラ「若いって、いいねぇ」

レラ「……くふ」

レラ「頑張れ、英雄の息子よ」

グビッ...




238 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:58:51.07 ID:d2dAFaLW0
ーーーーーーー

タッタッタッ!

リア「あ、戻ってきましたよ…!」

勇者「」タッタッ...

勇者「ふぅ…ふぅ…」

魔法使い「賢者様何ておっしゃってたの?というかなんであんたそんなに急いでんのよ」

勇者「アッシュ!いやアッシュ先生!」

アッシュ「…!」

勇者「お願いだ!大会までの残り時間目一杯、俺っちに稽古をつけてくれ!」

勇者「俺っち、勝ちたい!勝って勝ってそんで――」

勇者「最強になりてーんだ!」

魔法使い「勇者…?」

テイシロ(さっきまでとは、別人みたいな顔付きになってる)

アッシュ「小手先の技しか身につかないかもしれませんよ?」

勇者「それでもいい!強くなんならなんでもするさ!」

アッシュ「……分かりました」

アッシュ「生半可な修行では優勝など到底無理です。弱音吐いて逃げ出さないようにしてくださいね」ニコッ




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