貴方「僕がヒロインを攻略するまどか☆マギカ…オカルト?」マミ「それは終わったわ」

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342 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/15(月) 23:31:25.66 ID:P7l2FiYU0


 他のことに意識は向いたが半分は耳を傾けていたはずだった。でも気が逸れてたように思われちゃったかな。

 みんなが立ってるのに一人だけ座ってるのも落ち着かない。

 席を立ちあがると、少し暁美さんの席のほうに近づいて聞こえるように呼んだ。


貴方「今の話面白かったからさ、暁美さんも一緒に聞こうよ」

さやか「ちょっと……」

ほむら「…………」

仁美「話はあれでおしまい、なのですが、暁美さんを笑わせるとなるとハードルが上がりますわね……」

まどか「えぇと……。あ――」


 居心地の悪さを感じたのか、暁美さんは席を立ってその場を去ってしまった。

 たしかにこっちを見ていたはずなのに。


さやか「さすがに感じ悪いでしょ?あれ!」

仁美「まあ……気難しい方、ですわよね」

さやか「一人でいたいなら一人でいさせてあげればいいじゃない」

貴方「でも……俺には少しずつ心開いてくれるようになったし、いつかみんなとも……」


 ……そう言う俺を見るみんなの目は厳しかった。


 会話に誘ってみて仲良くなるきっかけになればと思ったけど、やっぱり空気がギスギスとしている。

 さやかだって人に差別や意地悪をするような子じゃない。ただ、ハッキリさせたいのだと思う。

 だが暁美さんには今はその気はないようだ。それは当分は変わらないのだろう。


――――
――――
343 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/15(月) 23:45:13.12 ID:P7l2FiYU0


 朝のHRが始まり、授業が始まってからも――――

 ――あれからもまた視線を感じることがあった。暁美さんからも、ほかの三人からもだ。


 両方から見られているからといって、両方を突き合わせればいいわけじゃないのは朝分かった。

 でも、どうすればいいんだろう。前と違う空気の悪さが動きにくくて重苦しい。


 昼。いつもなら外へいくところだけど、今日はどうしよう?



1いつも通り四人で外へ
2暁美さんと二人で空き教室へ
3巴さんにテレパシー
4久しぶりに屋上に行ってみようか?
5自由安価

 下1レス
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/15(月) 23:57:24.41 ID:Rz4CkByY0
1
345 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/16(火) 00:29:09.69 ID:bE2pL62D0


貴方(いや……みんなと行くか)


 一瞬違う考えが浮かんだが、ソレと暁美さんの視線を振り切っていつも通り四人で外に出た。

 みんなとは仲が良いし居心地が良い場所だとは思う。でも、前とは何かが変わっちゃったような。


 いつか……暁美さんも入れて仲良くなれるのかな。


 そう考えながら、学校での一日を過ごした。



――――
――――
放課後



ほむら「【貴方】くん、帰りましょう」


 放課後になると、すぐに暁美さんがこっちの席まで来た。

 まるでこの時を待っていたようだ。……別に他の時間にも話しかけてきてもいいんだけどな。


貴方「あぁ、うん」

ほむら「今日は真っ直ぐ帰る? それともパトロールでも行く?」

貴方「そうだな……」




1まっすぐ帰る
2パトロールに行く
3寄り道
 aカフェ
 b買い物
 cその他(安価内容)
4帰る前に他の人と話す
5自由安価

 下1レス
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 00:53:48.61 ID:eXh6Fvk80
3b
347 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/16(火) 22:32:16.80 ID:bE2pL62D0


貴方「帰りに買い物でも行こうか。ちょっと見たいものがあるんだ」

ほむら「ええ。……【貴方】くんって、そういうの好きなの?」

貴方「ショッピングは大好きってわけじゃないけど好きなほうかな」


 暁美さんは……そういうタイプじゃないか。

 前に連れ回した時も、自分の欲しいものを探すとなるとずっと興味なさそうだった。



 校舎の外に出ると、すぐのところに見慣れたパーカー姿の――佐倉さんが立っていた。



杏子「あー……、もしかして一緒に帰るとこか?」

貴方「うん。今日はこれから買い物でもして帰ろうかと」

杏子「遊びに誘おうかと思ったんだけど、予定があるなら今度でいいや。またな」


 佐倉さんはそう言うとどこかへ行ってしまった。俺たちも帰り道を歩いていく。

 ここ数日程からだけど、佐倉さんがこうしてこっちに寄ることも増えた。待ってたんだろう。


ほむら「佐倉さんとも随分仲がいいのね。前はそんな感じしなかったと思ったけれど」

貴方「そうだね、打ち解けたのは最近かな。でも話してみたら気が合って」

貴方「佐倉さんって思い切りのいい性格してるし。一緒に居ると楽しいっていうか」

ほむら「……そうね。私とは違って」

貴方「そ、そんなつもりで言ったんじゃないよ!?」

ほむら「ええ、わかってる。事実を言っただけだから」


 ……そう言われてしまうと否定はできなかった。

 もちろん悪い意味じゃないけど、考えてみれば佐倉さんと暁美さんって……真逆、なタイプだとは思う。



買い物 どこのコーナーを見る?
1お菓子や食べ物
2服飾
3機械や家電
4自由安価

 下1レス
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/16(火) 22:34:20.22 ID:Aoj5M2k00
2
349 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/16(火) 23:26:45.36 ID:bE2pL62D0


 駅の近くのデパートにつくと、適当に服を見ていた。

 横には暁美さんが立っているが、いつも通りの無表情だ。

 男物見てても興味を持てないのは仕方ないとも思えるが、さやかたちと一緒にいた頃もいつもこんな表情だった。


貴方「……暁美さん、こっちとこっち、どっちがいいと思う?」

ほむら「…………そっち」

貴方「こっちか。たしかにいいね。ありがとう」


 ……なんとなくこのやりとりって、男女が逆転してると思う。


貴方「暁美さんって明るい色が好きなんだね。こっちって言うかと思ってた」

ほむら「そうかしら。あなただったらそっちのほうが似合うと思っただけよ。自分用に選ぶなら別だわ」

貴方「暁美さんなら色んなの似合うと思うけどな。元がいいんだから」

ほむら「……」

貴方「暁美さんってもしかして……そういうふうに言われるのあんまり好きじゃなかったりする?」


 言われ慣れてるんだろうな、とは想像がつく。

 外見ばっかり見てるって思われちゃったりするんだろうか。


ほむら「……自分のことを言われている実感が沸かないのよ。そんなの自分で決められることじゃないもの」

ほむら「いつのまにか知らない器に間違えて入れられちゃったみたい」

貴方「俺みたいな凡人にはなかなか思いつけない表現だね……。外見って自分で決められないから価値があるんだろうけどね」


 大多数の人からすれば嫉妬すらされそうな言い方だと思う。

 でも、暁美さんの自信を持てないところは知ってる。暁美さんは本気でそんなふうに考えてるんだろう。



 暁美さんに買い物に付き合ってもらってから帰った。



五回目【貴方】 13日目終了

[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・友達…
・佐倉杏子・・・親友
・巴マミ・・・親友

[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
350 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/17(水) 00:05:13.62 ID:VI68777A0
――――
14日目 教室



さやか「【貴方】、おはよう!」

仁美「おはようございます、【貴方】くん」

まどか「おはよう、【貴方】くん」


 自分の席につくと、朝からさやかたち三人が机に来て囲んだ。


貴方「ああ。おはよう」


 同時に、今朝も暁美さんがこっちを見ていることに気づく。

 ……キュゥべえからの視線も感じた。そっちはどうでもいい。


貴方「なんか俺だけ座ってて悪いな」

さやか「なんの。あたしは足腰強いから大丈夫よ」

仁美「私たちの席の近くで話していた時は【貴方】くんが立っていましたし」

まどか「この椅子動かせないからちょっと不便なんだよね。でもわたしも大丈夫」


 そのうちキュゥべえは暁美さんと話しに行ったようだ。

 キュゥべえは俺にばっかり話しかけたけど、暁美さんと話してるとこもたまに見かける。


 それでもふと暁美さんがこっちを見ていることがあって、たまに目が合うと、さやかがキッとした視線を送り返してた。

 他の二人は複雑そうな視線だ。でも、あまり良い感情ではないのだろうと思う。――二人まで?

 距離は離れているのに冷たい空気が漂っているのを感じた。……いや、むしろこれは、熱いバチバチにも近いかもしれない。


――――
――――
351 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/17(水) 00:14:28.19 ID:VI68777A0
放課後



ほむら「【貴方】くん、帰りましょう」


 帰りのHRが終わると、今日も暁美さんが席に来る。

 朝や昼休みは三人と、放課後は暁美さんと過ごすことが昨日から固まってきていた。

 もちろん断る理由はないのだけど。


ほむら「今日は予定は?」

貴方「特に考えてはいなかったかな……」

ほむら「そう。じゃあ、真っ直ぐ帰る?」



放課後行動
1まっすぐ帰る
2パトロールに行く
3寄り道
 aカフェ
 b買い物
 cその他(安価内容)
4帰る前に他の人と話す
5自由安価

 下1レス
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 00:15:57.27 ID:oCCCtJB80
1
353 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/17(水) 00:53:51.53 ID:VI68777A0

貴方「今日はまっすぐ帰るか」


 暁美さんが頷いて、二人で廊下へと歩き出す。

 ……教室の中からまだ残ってるさやかたちの視線を感じたが、振り切って行くしかない。


 校舎の外に出ると、今日も佐倉さんが立ってた。


杏子「今日はどうだ?」


 これからはもう帰るだけだから、予定はない。

 でも今は暁美さんと一緒なんだよな。


貴方「少し待っててくれるなら。えーっと……後であの訓練場所で会おうよ」

杏子「訓練場所? いーよ、わかった。じゃあ遊ぶ前にちょっと鍛えてやるよ」

ほむら「……」


 駅のほうで待ち合わせるとなると、佐倉さんも結局帰り道を一緒に来ることになるし。

 予定はしてなかったけど、久しぶりに訓練で鍛えるのも悪くはない。訓練場所も佐倉さんと思い出のある場所だった。


貴方「暁美さん、行こうか。また後でね、佐倉さん」

ほむら「……ええ」


――――
――――
354 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/17(水) 21:56:50.88 ID:VI68777A0


 暁美さんと駅前で分かれた後、家に帰って着替えてから訓練場所に行った。

 街の端っこに近いここは、都会らしく混み合った駅前とはかけ離れた雰囲気の場所だ。


貴方「佐倉さん、おまたせ」

杏子「さっぱりした格好になったじゃん?」

貴方「まあ、制服よりかなり動きやすいよ」

杏子「そりゃよかった。じゃあウォーミングアップでもするか」


 佐倉さんは一足先にはじめてたらしい。

 一人でもたまに訓練してることがあるのを知っている。ここで会った時は意外だった。



 ――――彼女の槍は近距離だけじゃなく中距離まで届く。

 戦闘スタイルはもちろん違うが、動きや戦い方自体は応用できることも多かった。佐倉さんの動きは参考になる。



 訓練が一息つくと、草原に寝っ転がる。

 日差しは温かいし、透き通った風が適度に吹いていて心地よい。


杏子「なんだよ、もう疲れちゃったか? 今日はこれからだろ?」

貴方「もうちょっとここにいてもいいなあって」
355 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/17(水) 22:11:02.92 ID:VI68777A0

杏子「……それ、スマホ?」


 寝っ転がったままスマホをいじっていると、佐倉さんが覗きこんできた。

 ……やましいものは見てなかったからよかった。ただのポータルサイトのトップページだ。


貴方「うん。佐倉さんは携帯持ってないんだよね」

杏子「ちょっと見せてよ」


 スマホを渡すと、佐倉さんは同じように隣に寝っ転がって、見慣れないものを見るような目でスマホを見ていた。

 その様子がなんかおかしい。みんな当たり前のようにスマホやら携帯やらいじってるから、こんな反応はなかなか見られない。


杏子「『パンダの赤ちゃんがやってきた』……へー」

貴方「あ、トップに表示されてたニュースか」

杏子「…………」


 それからしばらく静かに画面を見つめていた。

 何見てるんだろう? 覗いてみると、その内容が意外で思わず口に出してしまった。


貴方「『男子が甘やかしたくなる女子の特徴』……? そういうの見るんだね」

杏子「ぱ、パンダの下にあったからちょっと押してみただけだって! ていうか覗くなよ!……あっ」


 さっきは佐倉さんは何にも気にしない様子でこっち覗いてきたけどなぁ……。

 その気持ちがわかったらしく、佐倉さんは何かに思い当たったような声を出す。

 しかし、今度は慌てた声に変わった。


杏子「あっ!? 何が起きた?」

貴方「ホームボタン押しただけだよ。すぐ戻せるよ」

杏子「なんか変なとこいじって壊したかと思った。もういい」

貴方「そんなに簡単に壊れないよ。俺たちの腕力で握りつぶしたりしなきゃね」


 ……やろうと思えばこのくらいならやれるだろう。まあ、言いたいのは物理的に壊さない限りそうそう壊れないってことだ。

 でもなんで急にこんなこと言い出したんだろう。ずっと興味なさそうにしてたのに。

356 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/18(木) 00:35:39.04 ID:g3zLJO4k0

貴方「……スマホほしくなった?」

杏子「連絡取りづらいとは思ってきたな。なんか言いたいことある度に出向かなきゃなんないし」

貴方「でも直接会いに来てくれるのは嬉しいよ。文字や電話だとちょっと感覚違うし……便利だけどね」

杏子「ガッコーじゃ今どんなことしてんの?」

貴方「朝から誰かと話して、HRで先生の話聞いて、授業受けて……毎日同じことしてるって思うかもしれないけどまあ楽しいよ」

貴方「授業も面白いのあるし、友達とも毎日会えるし」


 授業や勉強のほうはともかく、暁美さんのことがあってからは最近教室内の空気が重くなってきた。

 ……さすがにそれは佐倉さんには言えなかった。


杏子「ふうん」


 佐倉さんはそう軽く短い相槌を打つと、芝生から起き上がる。


杏子「そろそろ行かない? 今は日が出てるけど、もう夏じゃないんだしいつまでもこんなとこで寝てるとカゼ引くぞ」

貴方「そうだね。行こうか」

杏子「ん。つーか腹減った」

貴方「俺も。何か食べようか」

杏子「駅前のクレープ! クリーム200%だ!」


 ここは今は二人だけの空間。ここから出るのも少し名残惜しく感じるが、こっちの空腹も限界だ。

 たまにはこんなふうにゆっくりと話せてよかった。

357 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/18(木) 01:04:00.35 ID:g3zLJO4k0


 街の端っこから中心、繁華街のほうに戻っていくと、さっそくクレープを買って食べていた。

 こっちも佐倉さんと同じ200%。ていうかそんなオプション頼めるなんてさっき知った。

 手に持った感じも単純に二倍の存在感。



貴方「さすがに普通の二倍入ってるだけあってボリュームが違うね」

杏子「腹減ってんだからこのくらいはないと」

貴方「それもそうだ」


 甘いものが特別好きってわけじゃないけど、動いた後だけあってペロリと食えてしまう。

 二人してあっという間に食べ終わってしまった。それに、佐倉さんの豪快な食べっぷりは見ていて気持ちいい。


貴方「でもがっつきすぎだよ。佐倉さん、クリームついてるよ」

杏子「どこ?」

貴方「右の頬。手鏡とか……――持ってたら見てるか」

杏子「持ってないなー。あたし見ての通りガサツだから割りそうだし、なくても生きていけるから」


 佐倉さんはいつも鞄とかも持ってないし、今言った通り、生きていくのに最低限のものしか持ち歩いていないんだろう。

 とはいえ、自分も鏡は持ってない。


貴方「仕方ない、ちょっといい?」

杏子「えっ!?」


 少し近づいて頬に指で触れる。クリームを拭い取って見せた。


貴方「よし、取れた」

杏子「わざわざ見せるなよ。……クリーム少しもったいないな」

貴方「え……えーと。これ舐めたほうがいい?」

杏子「それやったら引くぞ」


 もちろん半分冗談だったけど、佐倉さん食べ物を粗末にするとすごく怒りそうだから。

 でも、もったいないとは本気で思ってたようだった。そんなところは、らしいなと思う。

358 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/19(金) 22:41:03.86 ID:yFOckWQq0

貴方「手鏡とかも持ってたほうが便利かもね」

貴方「なくても生きてはいけるけど、佐倉さん食べかすとか気づかずにつけて歩いてることありそうだし」

杏子「お、おい。やめろよな……さっきのは偶然、ともいえねーけど」


 茶化して言ってみた後、ちょっと思い出した。


貴方「そういえばさっき通りがかった時見た店でも売ってたな。結構キレイなの」

杏子「ホントに見んの?」

貴方「まあ、さっきのは冗談にしても無駄にはなんないと思うよ」


 少しだけ来た道を戻って店を覗きにいく。

 値段も高すぎないくらい。


杏子「……手鏡っていうか、コンパクトミラーってやつか」

貴方「これならカバーもついてるから割れにくいし、ポケットに入れて持ち歩けるんじゃない?」

杏子「いやでもさ、こんなキラキラしたのあたしのガラでもないだろ」

貴方「そうかな?」


 なにしろ、ソウルジェムは通常の状態だと指輪だ。佐倉さんも含め魔法少女全員、キラキラとしたものが似合わないと思ったことはなかった。

 見た目だって、明るい髪色も相まって飾り立ててなくても華やかなイメージも強い。


貴方「そんなふうに思ったことないよ。こういうのだって似合うと思うよ」

貴方「ここまで勧めちゃったんだし、これはプレゼントにするから。本当にいらないっていうんだったら無理にとは言わないけど」

杏子「まあ……くれるんならいいか。無駄にはなんないだろうしな」


 一応受け取ってくれるらしい。

 ……普段ラフなイメージはあるけど、飾ったらもっと綺麗になるんじゃないかな。なんて佐倉さんのほうを見ながら少し考える。


杏子「? どうした?」

貴方「た、大したことじゃないよ! 今日はまたゲーセン行く? 俺は制限の時間までだけど……」

杏子「ああ。そうだな」

359 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/19(金) 23:43:32.44 ID:yFOckWQq0


 買い物をした後、ゲーセンに向かう途中で佐倉さんが話し始める。 少し真面目な雰囲気で。


杏子「……こういう生活って、いつまで続けられるんだろうな」

貴方「え?」

杏子「あたしもさ、アンタやみんなを見てるとずっとこのままでいいのかなって、すっげーたまにだけど思うんだよね」

杏子「やりたいようにやってて楽しいには楽しいけど、それだけだし」

杏子「マミはもう三年生だし、優等生だから進路のこととかもちゃんと考えてるんだ」

杏子「みんなも高校生になって、いつか大人になっちまうんだろ? ……あたしにはそのイメージが全然なくてさ」


 学校のことはともかく、今まで興味なかったスマホに興味を持ったりしたのは、普段考えないようなことを考えてたからなのかもしれない。

 世間とは離れて刹那的に生きていた佐倉さんが、ついに“未来”のことを考えてくれたんだ。

 でもそれはきっと、佐倉さんからしたら簡単なことではない。


杏子「てか、前も言ったけどそんなに生きる気なかったから。でも今は本当に楽しいんだよ」

杏子「こうやって一緒に遊び歩く仲間もいるし、背中を任せられる仲間もいる」

杏子「こんな日がずっと続けばいいなって思うんだよ。……でも、そういうわけにはいかないんだもんな」

貴方「……たしかに俺らはピーターパンじゃないしな。俺も佐倉さんも、自分の意思とは関係なく年が経てば大人になるんだろうな」

貴方「でもみんな今から将来のイメージなんてないと思うよ」

杏子「いろいろと桁が違うだろ?」

貴方「それでも。多分、生きてさえいれば、ものすごい人にはなれなくてもなるようにはなるんじゃないかな」

貴方「ずっと子供ではいられなくたって一緒には居られる……居たいと思う。だから、一緒に考えていこうよ。これからの未来ってやつを」


 これから数年後、進路のこともそうだけど魔法の力や魔女の事情がどうなっているのかもわからない。

 とりあえず今の最大の目標は魔女を根絶させることだ。佐倉さんも、俺も、みんな。できれば民間の人も。誰一人犠牲を出さずに。


 ――案外、佐倉さんだったらものすごい人にもなれるかもしれないじゃないか。

 なにせ、自慢の親友なんだから。


貴方「今から悲観したって仕方ないよ。思ってるよりも希望でいっぱいだって。未来はいくらでも創っていけるんだからさ!」

杏子「相変わらずうぜーくらい前向きなやつ」

貴方「えぇ、ひどくない!? 渾身の励ましだったのに」

杏子「……でも、ありがと」



 ちょっと素直じゃない笑顔が印象的だった。

360 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/20(土) 00:27:28.82 ID:ucngeEQf0

――――
――――


 ゲーセンを出たのはあれからきっかりと1時間後。年齢制限のかかる時間の前だった。

 悪いことをしたがるのはストレス発散のためなんじゃないかって巴さんが言ってたっけ。

 少し将来への不安が解消されたおかげかもしれない。


 ゲーセンも楽しいが、ほどほどが一番だ。


杏子「まあ一人で残ってまでやるほど楽しくもないしな」

貴方「佐倉さんはこのあとどうするの?」

杏子「そのへんのホテル行くかな。マミんとこでもいいけど」


 彼女の生活を考えたら一切悪事を働かないことは難しい。それはわかってはいた。

 ……いや、そのへんも将来には変わることもあるのかな。


貴方(……)


杏子「じゃ、またな! ……鏡、大事にするよ」

貴方「うん。またね」


 そう言ってくれるならよかった。

 佐倉さんと別れると、帰りの方向へ歩きはじめる。今日はまだギリギリ暗くない。


 すると、後ろから呼び止められた。


「……【貴方】くん」


 この声は、暁美さんだ。

 お互いに近所なんだから会っても不思議ではない。

361 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/20(土) 00:44:34.99 ID:ucngeEQf0


貴方「あれ? 暁美さん。また会うなんて奇遇だね。買い物?」

ほむら「……訓練なら私も役に立てるわ」

貴方「……訓練?」

ほむら「射撃はもちろん、格闘だってあなたに教えられるくらいには出来る。【貴方】くんの戦い方には向いていると思うわ」


 もう帰ろうかと思ってたところだったが、だが暁美さんはやる気っぽい。

 このままだと連行されそうだ。……今からやると帰るのはやっぱり暗くなるなあ。


貴方「でもどうして今になって? 放課後別れる前に言ってくれればよかったのに」

ほむら「……」


 暁美さんはたしかに色々な戦い方ができるし、学べることは多いだろう。バランス型の俺とは合ってるかもしれないけど……。

 ――『佐倉さんと比べて』とでも言いたげな?


 多分暁美さんが本当にやりたいことは『訓練』じゃない。



特訓第二ラウンド!?
1特訓に付き合う
2遅くなるからやめよう
3自由安価

 下1レス
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/02/20(土) 01:51:40.08 ID:2jTGn4sy0
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 03:03:34.79 ID:BxmlES1b0
(悲しみの向こうが)見える見える...
(修羅場の可能性が)太いぜ。
364 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/20(土) 20:12:02.21 ID:ucngeEQf0



 繁華街から再び訓練場所に戻ってきた。

 一回ここから離れて駅の方に来たのに一日のうちに二度もここに来るとは思わなかった。


 さすがにここは暁美さんにとっては文句なしに自信のある分野だ。

 いきなり誘われて戸惑ったが、特訓となるといつも通りだった。

 まずは主に近接のほうを見てもらっていた。バランス型であるものの魔力の消費の少ない近接が基本になるとはいえ、意外だ。


ほむら「……さすがに前に見た時より基本的な動きはよくなってるのね。でも、違う。無駄が多すぎる」

ほむら「教えられたからか知らないけれど、上手くやろうと意識しすぎてるんじゃないかしら」


 いや、いつも以上に厳しいかもしれない。


ほむら「経験が足りてないのよ」

貴方「それは仕方ないんじゃ……」


 実際に活動歴はみんなと比べると短いし、これまで魔女狩りばかりに時間を費やせてこれたわけでもない。

 むしろ、そこはベテランではないらしいのに異様なまでに手慣れてる暁美さんのほうが気になるくらいだ。

 そういえば暁美さんって、結構謎めいたとこある人なんだっけ。最近はすっかり忘れていた。


貴方「経験はこれから頑張るからさ」

ほむら「……ええ」


 ああ、でもこれだけはわかる。

 暁美さんっていつも無表情に見えるけど、よく見ると感情はわかりやすいほうなんだ。


 ……今は少し、不満そうな顔をしていた。



1放課後誘わなかったこと根に持ってる…?
2放課後はこれまで何してた?
3自由安価

 下1レス
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 20:44:40.35 ID:W0Nj5jL4O
1
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 20:48:28.54 ID:BxmlES1b0
1
367 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/20(土) 22:25:06.15 ID:ucngeEQf0


貴方「放課後誘わなかったこと根に持ってる……?」

ほむら「……」


 暁美さんは肯定はしなかったけど否定もしなかった。

 そういえば前にもこんなやりとりには覚えがある――気がする。


貴方「暁美さんって……答えたくない話になると黙り込むこと多い?」

ほむら「……」

貴方「……」


 暁美さんはまだ無言で、張りつめた空気が漂ってる。……なんだか、こうしてるとちょっと子供っぽい行動にも思えてしまう。


 多分、俺も含めてみんな勝手に暁美さんをクールで完璧な人に見すぎていた。

 けど、そもそも完璧な人間なんているはずないじゃないか。

 最初はただただミステリアスに見えていた暁美さんだけど、理解はできるようになってきた。



 長い沈黙をやめると、暁美さんは意味深なことを言う。



ほむら「【貴方】くんも……そろそろはっきり伝えたほうがいいわよ」

貴方「ど、どういうこと?」

ほむら「誰が一番か。 全員同じように好き――じゃあ、納得できないところまで来ているの」




▼暁美さんと二度目の訓練をしてから帰った。そろそろ修羅場を避けるには選ばないといけない時がやって来ました。



五回目【貴方】 14日目終了

[知り合い]
・鹿目まどか・・・親友
・美樹さやか・・・親友
・志筑仁美・・・親友
・暁美ほむら・・・友達……
・佐倉杏子・・・親友↑
・巴マミ・・・親友

[攻略済]
美樹さやか
暁美ほむら1
巴マミ
志筑仁美
鹿目まどか
368 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/20(土) 22:45:04.28 ID:ucngeEQf0
――――
15日目


 朝は昨日と同じだ。さやかたちが席に来て、一緒に話す。

 そしてそういう時には決まって嫌な空気が漂ってた。


 ……暁美さんに昨日の夜言われたことを思い出す。


貴方(正直、一番って表現はあまり良くないと思う……)

貴方(でも、『特別な気持ち』なら伝えるのは今だ)



・(杏子/ほむら/さやか/まどか/仁美/マミ)
※条件は全員満たしてるので、未攻略キャラの攻略が完了するまではこの分岐に戻ります
※一応攻略済みキャラも入れてるのは、攻略上意味はないけど分岐後の展開が気になる人向け

 下2レス
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/02/20(土) 22:50:10.12 ID:hyKdi3nt0
加速
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:54:30.80 ID:+ZzlxagC0
ここからやり直しできたりする?
出来るなら杏子、できないならほむら
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 23:29:18.18 ID:BxmlES1b0
正直、修羅場ルート見たい...見たくない?
372 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/20(土) 23:56:38.01 ID:ucngeEQf0


 最近、佐倉さんは一日のうちどこかで学校に来てくれていた。

 今日は授業中だった。授業中には話せないけど……放課後、会う約束をとりつけた。


 ――――放課後、今日は暁美さんとの下校も断って、昨日と同じ訓練場所の土手へと向かった。

 暁美さんは何かを悟った表情だった。



 人の立ち入らない穏やかな場所だ。風が草木を撫でる音が静かに響いている。



杏子「で? 話ってなにさ? 改まって」

貴方「俺……考えたんだ。佐倉さんがこの先安心して、悪い事もしないで生きていけるようになる方法ってやつを」

杏子「色々考えてくれんのは嬉しいけどさ……そんな方法」

貴方「俺と結婚してくれないか」

杏子「……え!?」

貴方「表向きに無理なら、二人の間の約束だけでいいから。さすがに今すぐってわけにはいかないから、まだ婚約になるけど……」

貴方「佐倉さんの未来を良い方向に変えるなら、それは他の何かに任せておきたくない。自分でありたいって」


 佐倉さんは驚いた表情だ。

 それもそうか。いきなりこんなこと言われたら。……『結婚』なんて俺もずっと先のことだと思ってたもんな。

 でも、未来を約束した佐倉さんとなら。


杏子「ほ、本気で言ってんの……?」

貴方「もちろん本気だよ。好きな人を幸せにしたいと思うのは当然、だろ? その気持ちに気付いたんだ」

杏子「そんなこと言われるなんて思ってなかったよ。これからもずっとないと思ってた。……自分が人を好きになることすら、な」

貴方「!」

杏子「でもなんかすっごい嬉しいわ。……ありがと、【貴方】! やっぱり、人生って何が起きるかわかんないもんだな!」


 佐倉さんは本当に可愛らしい笑顔を浮かべていた。見てるとこっちも笑顔になる。

 彼女とだったら、これから先もきっとたくさん笑顔を作っていけるだろうな。



 ――――こうして俺らは、二人で未来を誓った。



―――――――――――――――
分岐1 ☆杏子と恋人ルート☆
―――――――――――――――
373 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/20(土) 23:58:53.64 ID:ucngeEQf0
>修羅場ルート
まずはシナリオクリア優先ということで、おまけに期待しててくれるとやる可能性アリ
さすがに刺すほど過激な恨みもないのでこのままだと長い事地味なギスギス継続になりそうで
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――――
15日目


 朝は昨日と同じだ。さやかたちが席に来て、一緒に話す。

 そしてそういう時には決まって嫌な空気が漂ってた。


 ……暁美さんに昨日の夜言われたことを思い出す。


貴方(正直、一番って表現はあまり良くないと思う……)

貴方(でも、『特別な気持ち』なら伝えるのは今だ)



・(ほむら/さやか/まどか/仁美/マミ)
※条件は全員満たしてるので、未攻略キャラの攻略が完了するまではこの分岐に戻ります
※一応攻略済みキャラも入れてるのはこの話での展開が気になる人向け

 下2レス
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/02/21(日) 00:11:40.39 ID:R98iikLf0
もう全員分みよう
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:15:55.61 ID:FKup9l3G0
はむら
全員は最後で
376 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 01:08:54.22 ID:JiCsVdQ+0
未攻略キャラの攻略が完了するまでは戻る、ということで、
ほむらを選ぶともう戻らないつもりだったんですが…

もういいか、全員いっちゃうか! わりとあっさりのもあるけど
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――――
――――


 放課後になると、今日も暁美さんが席に来た。


ほむら「……【貴方】くん」

貴方「うん。一緒に帰ろう」



 断る理由はない。……昨日、暁美さんに言われたから俺は決心したんだ。



貴方「暁美さん、昨日誰が一番かって言ってたけどさ」

貴方「みんなは友達なんだ。友情に順番なんてつけられないよ。俺はみんな大事だと思ってる」

ほむら「……そう」

貴方「でも……暁美さんのことは特別なんだよ。みんなとは違う気持ちで暁美さんのことが好きだ」

貴方「暁美さんにはただの友達じゃなくて、恋人になってほしい」

ほむら「!」

貴方「これが俺の伝えたい素直な気持ちだ。それじゃ納得できないかな?」

ほむら「いえ……いいわ。わかったわよ。私は思ってたよりも恵まれていたのね」


 暁美さんの表情は今までにないほど穏やかに見えた。


ほむら「考えてみれば、今まで周りを妬んでばかりで私は本当に未熟だった。あなたにも当たってしまったわね」

ほむら「でも、【貴方】くんはそんな私にも優しくしてくれた。そんなあなたが……最初は嫌いだった」

貴方「えっ!」

ほむら「今は違うわよ」
377 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 01:29:07.89 ID:JiCsVdQ+0

ほむら「今になって気づけたの。そんな自分の気持ちに。……それもあなたのおかげよ」

ほむら「じゃないとずっと、私は自分のことしか考えられなかった」

貴方「ということは……?」

ほむら「……こんな私でもいいなら。恋人同士になるのなら、もう少しくらいは優先しなさい」

貴方「うん! 約束するから」


 暁美さんはいつもよりすっきりとした顔をしていた。

 ……実際に、なにか心の中にあった重いものを一つ消せたのかもしれない。


―――――――――――――――
分岐2 ☆ほむらと恋人ルート☆
―――――――――――――――
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 17:28:53.15 ID:0nnTsiPS0
早く女同士の醜い争いが見たい
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 17:36:25.47 ID:FKup9l3G0
このほむらはループしていなかったの?
380 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 18:27:26.89 ID:JiCsVdQ+0
(さやか)



さやか「本当に? 本当にあたしでいいの?」

貴方「ああ。俺が好きなのはさやかだよ」

さやか「じ、じつはね……あたしもずっと好きだったの!」

貴方「!」


 思いたち、すぐに決心をした。

 いつもは三人で話してるけど、その中から一人だけ呼び出して思いを伝えた。

 ……こんなにあっさりと両想いになれるんなら、もっと早くに伝えておけばよかった。


さやか「最近【貴方】はほむらのほうにばっかり行っちゃうしさ」

貴方「……もしかして、嫉妬してたとか?」

さやか「……うん。その余計に悪者だって思ってたとこはあるかもしんない。なんであいつなんかに、って」

貴方「……」


――――
――――
381 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 18:28:07.15 ID:JiCsVdQ+0


 ――――それから放課後、暁美さんが席に来て、帰る途中にこんな話をした。



貴方「俺、暁美さんに言われたから決心できたんだ。俺……さやかと付き合うことになった」

ほむら「……そんなこと、なぜわざわざ私に言いに来たの?」

貴方「でも、俺にとってはみんなは友達なんだ。暁美さんは誰が一番かって言ったけど……友情に順番なんてつけられない」

貴方「暁美さんのこともみんな大事だと思ってるから。それだけ、ちゃんと伝えたくてさ」

ほむら「!」

貴方「これが俺の素直な気持ちだ。それじゃ、納得できないかな?」

ほむら「いえ……いいわ。わかったわよ。私は思ってたよりも恵まれていたのね」


 暁美さんは、祝福するでもなく、逆に落ち込むでもなく……ただ穏やかな表情をしていた。

 この反応は正直意外だった。


ほむら「私、最初はあなたが嫌いだったの。それは妬みだった。あなたにも当たってしまったわね」

ほむら「そんな私にもあなたは優しくしてくれた。話しかけてくれた。……そんなのあなたと、キュゥべえくらいよ」

貴方「ああ、あいつ……」


 あいつもなんだかんだで暁美さんのことを気にかけていた。

 朝俺がさやかたちと話すようになってからはキュゥべえは暁美さんとよく話していたようだし、少しは仲良くなったのかな。


ほむら「ずっと嫌いだったけど、嬉しかった。甘えてたの。それで今度はやっとできた友達が取られるって、周りまで妬みはじめて……」

ほむら「自分から動きはしないけど一人は嫌、だなんて。自分勝手もいいところだわ」

ほむら「今になって気づけたの。そんな自分の気持ちに。……それもあなたのおかげよ。じゃないとずっと、私は自分のことしか考えられなかった」

貴方「一人が嫌なのなんて、そんなのみんな当たり前だよ。暁美さんも普通の人だったってだけだ」

ほむら「……ええ。やっぱりあなたは私の友達よ」



 やっと暁美さんと、本当の友達に――親友になれた。


 暁美さんはいつもよりすっきりとした顔をしていた。

 心の中にあった重いものを一つ消すことができたんだ。



―――――――――――――――
分岐3 ☆さやかと恋人ルート☆
―――――――――――――――
382 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 18:32:58.65 ID:JiCsVdQ+0
(まどか)



まどか「【貴方】くん、そ、それって……!」

貴方「ああ。俺が好きなのは鹿目さんだよ」

まどか「は、はわわわ……」

貴方「ごめん、あの……困らせちゃった?」

まどか「う、ううん! 逆! ……とっても嬉しいの。わたしも【貴方】くんのこと、好きだったから」

貴方「!」


 思いたち、すぐに決心をした。

 いつもは三人で話してるけど、その中から一人だけ呼び出して思いを伝えた。

 ……こんなにあっさりと両想いになれるんなら、もっと早くに伝えておけばよかった。


まどか「……でも、本当はほむらちゃんのことももっと気にしなきゃいけなかったのに」

まどか「ほむらちゃんのことを見ると……今までに感じたことのないような、複雑な気持ちがして。行かないでほしいなって思っちゃってた」

貴方「……」


――――
――――

(略)>>381

―――――――――――――――
分岐4 ☆まどかと恋人ルート☆
―――――――――――――――

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ほむらに告白しなかったルート>>381は名前だけ変えて他は共通

こっちのが心情がより詳細に語られるまである感じなんですが、
実のところ今回友情と恋愛の境界が曖昧な感じで恋愛感薄めなのが理由
(一人は嫌だという負の感情強めの独占、だから一見ヤンデレ臭くなってる)
…もう少し甘みのあるのを見るには選択肢を完全正解しないといけないかも
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383 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 18:34:11.09 ID:JiCsVdQ+0
(仁美)



仁美「【貴方】くん、本当に私でよろしいんですの……?」

貴方「ああ。俺が好きなのは仁美だよ」

仁美「ありがとうございます! 実は……私もなんです。お慕いしておりました。あの時からずっと!」

貴方「!」


 思いたち、すぐに決心をした。

 いつもは三人で話してるけど、その中から一人だけ呼び出して思いを伝えた。

 ……こんなにあっさりと両想いになれるんなら、もっと早くに伝えておけばよかった。


仁美「……最近、教室内の空気がよくありませんわよね。といってもわたしたちだけですが。まるで敵を見ているかのようで」

貴方「さやかか……」

仁美「お二人の間に何があったのかよくわかってませんが、さやかさんがあんな目を向けることは普通はないはずなんです」

仁美「でも私も【貴方】くんが暁美さんのほうに行ってしまうのは嫌で、蔑ろにしてしまってました」

仁美「【貴方】くんの特別はこれからも譲る気はないですが、変わらず気にかけてくださいませんか?」

仁美「私もそんな【貴方】くんを好きになってしまったのですから」

貴方「……」


――――
――――

(略)>>381


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分岐5 ☆仁美と恋人ルート☆
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384 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 18:34:39.17 ID:JiCsVdQ+0
(マミ)
特に個別に話も進んでなかったのでいちばんあっさり。

――――
――――
数日後



さやか「――にしても、【貴方】がまさかマミさんと付き合うなんてね」

貴方「まさかって何だよ」

まどか「変な意味じゃないんだけど、いきなりだったから驚いたかな……」


 朝、三人で話してた。

 暁美さんのこちらを見る視線も険しさが前よりなくなった気がする。

 さやかはまだ暁美さんのことを怪しんでいるし、まだ仲直りとはいかないけど……。


貴方「今日の昼、マミさんが弁当作ってくれたからそっちで一緒に食べられないけど、いい?」

さやか「あたりまえでしょ。行ってこい!マミさんのこと悲しませるなよ!」


 気恥ずかしい思いをしつつも、応援してくれる人がいるのはうれしいことだ。


――――
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(略)>>381

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分岐6 ☆マミと恋人ルート☆
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385 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 18:54:25.72 ID:JiCsVdQ+0

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―――――――――――――――


五回目【貴方】 15日目終了


[攻略済]
Compelete!!


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貴方(明日は休みか……)

貴方(今日は良い一日だった。早めに寝よう)



どのルートで続ける?
・(杏子/ほむら/さやか/まどか/仁美/マミ)

 下3レス中多数決
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:56:39.32 ID:FKup9l3G0
ほむら
このメンバーでは一番その後が想像できない
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 19:29:49.27 ID:qq+IPZDa0
ほむほむ
それより、はようソウルジェムを濁りまくらせようや(ゲス顔)
388 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 20:03:30.41 ID:JiCsVdQ+0
―――――――――――――――
分岐2 ☆ほむらと恋人ルート☆
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――――
三週目 週末


 休日になると、暁美さんを誘ってパトロールに出ていた。

 どうせ予定もない日だ。魔法少年として精を出す一日があったっていいだろう。

 朝からはじめてもう夕方になろうとしていた。


ほむら「今日は頑張るわね」

貴方「あ、長いこと付き合ってもらっちゃってごめんね。暁美さんは疲れてない?」

ほむら「私は全然。やることがない時に魔女を探しに行くことはよくあるもの」

貴方「それはすごいね……」


 暁美さんはそういう時一人で行ってたんだろう。でも、あまり無茶なことはしないでほしいと思う。

 実力不足とはまったく思えないけど、今は俺の恋人でもあるんだから。


貴方「……」

ほむら「次の場所に回る?」

貴方「あ、うん。回るけど。……ちょっと気になって」

ほむら「なにを……?」

貴方「闇雲に魔女を倒していくだけじゃ、魔女を倒しつくすことが出来ないのかもしれないって」

ほむら「魔女を倒しつくすこと……。それが【貴方】くんの目標だったわね」

貴方「弱音を吐くわけじゃないんだ。次の場所いこっか」


――――
――――
389 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 20:24:58.66 ID:JiCsVdQ+0
――――
16日目 教室



 ――――パトロールの時から気にかかっていた。

 昨日だってかなり回った。これまでも、みんながこんなに色んな場所を回って、それでもまた魔女は現れる。

 それはなぜなんだろうか?


 魔女の生んだ使い魔が魔女になるという話は聞かされている。

 狩り尽くしたつもりでもどこかに芽が残っていて、そこから魔女に成長するケースはあるだろうけど……。


貴方(魔女は人の負の感情を好む……らしい)

貴方(もし、魔女が人々の感情の闇からも自然に生まれるんだとしたら……狩り尽くすことは不可能になる)


 悪い想像をしてしまったが、根拠はない。――――そうだ。考えてみれば俺たちは魔女を倒してるだけで、敵の実態を何も知らないじゃないか。

 こんな状態で魔女を倒しつくして真の平和を手に入れるなんて夢物語だ。


 たとえばこういうものにありがちな悪の組織だとか。元凶を潰さない限りはこの戦いは一生続くんだろう。


貴方(でもどうやって魔女のことを知れば?)


 魔女のことを聞くならキュゥべえだ。あいつなら俺たちよりは詳しいかもしれない。


貴方『おい、キュゥべえ。話があるんだけど』


 テレパシーで呼んでみる。キュゥべえは相変わらず日の当たる場所で寝ていた。

 呼びかけてみると、眼が開いたと思ったが、またすぐに瞼が下がっていった。


貴方『キュゥべえったら、起きてよ。サポートは?』

QB「眠いんだ……寝かせてよ」

貴方『…………』


――――
――――
390 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 22:09:59.65 ID:JiCsVdQ+0
放課後



ほむら「【貴方】くん、今日は?」

貴方「パトロールにいこうかな」

ほむら「……今日も?」

貴方「うん。倒すことももちろん目的なんだけど……少しでも魔女を知るためにはやっぱりパトロールしかないと思って」


 ただ、これまでもパトロールしてきて、もっと長く活動してる巴さんや佐倉さんもいるのに

 今から新しい情報を見つけられることがあるのかとも思う。


貴方「そういえば、暁美さんは魔女が現れる瞬間って見たことある? グリーフシードからじゃなく」

貴方「魔力で察知しづらいからっていうのもあるけど……そもそも、パトロールしててもグリーフシードってほとんど見ることないと思うんだ」

貴方「この街のメンバーは使い魔もちゃんと倒してるし、それなのに変わらないペースで見つかるのっておかしい気がするんだよ」

貴方「……とんでもない妄言だって思うかもしれないけど」


 不思議な話を聞いたような反応……だろうか。急に何を言ってるんだと思われてそうでちょっと怖い。

 でも、暁美さんはちゃんと考えてくれてた。


ほむら「……少し前にはいなかったはずのの場所に、いきなり現れたことならあるわよ」

ほむら「使い魔も植え付けられたグリーフシードも確かになかったわ」

貴方「……! 本当に!?」

ほむら「街に居る魔女がどうやって発生しているのか、というのを調べるのは悪い考えじゃないのかもね」


 暁美さんが賛同してくれたのは心強かった。

 となると、すでにいる魔女は他の人に任せるとして、俺たちが探すのは魔女が『いない』場所だ。

 今までのパトロールとは違う行動だしまったく無意味に終わるかもしれない。けど、新たな方針が出来たのはわずかな希望になった。

391 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/21(日) 22:40:29.88 ID:JiCsVdQ+0


 ――――現時点で魔女がいないものの、居ることの多い場所に張ることにした。

 薄暗い廃墟の中、暁美さんと二人。

 恋人という関係に進展しても、相変わらず口数は少ないままだった。


貴方(というか、暁美さん告白する前とまったく雰囲気変わんないんだよな)

貴方(まだなって三日とはいえ、恋人らしい空気になったことないし……)

貴方(……いや、むしろこっちのほうこそ暁美さんからしたらそういう風に映ってるんじゃねーか!?)


 しかし、こんなことを考えるにはこの場所はムードがなさすぎる。

 そんな時、暁美さんがぽつりと話しはじめた。


ほむら「……今日は珍しくキュゥべえが一度も話しにこなかったわ」

貴方「え? ああ、あいつ……」


 あいつもなんだかんだで暁美さんのことを気にかけていた。

 朝俺がさやかたちと話すようになってからは、キュゥべえは暁美さんとよく話していたはずだ。

 でも今朝は一日中窓辺のほうにいたんだった。で、俺は話しかけても、寝られた。


ほむら「私と深く付き合って話してくれるのって、あなたとキュゥべえくらいだったから」

貴方「明日文句言うか。俺も聞きたいことあったのに。キュゥべえに聞いたら少しはわかることあるんじゃないかって」



 ……それからしばらくボーっとして過ごした。

 もう結構時間が経つが、なにも様子が変わることはない。

 他の場所から使い魔や魔女が近づいて来たりすれば反応でわかるんだ。もしそれ以外でこの場所に現れることがあれば。



貴方「……やっぱり、無駄足だったかな」

ほむら「そうだとしても仕方ないわ」

貴方「まあ、そうだな……」


 明日、キュゥべえやみんなにも話を聞いてみるか。

 今日はもう諦めかかって明日のことを考え始めた時、ソウルジェムが魔力に反応しはじめた。

 ……それは、とても微かな。

392 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/22(月) 00:10:44.63 ID:Pu2jQAVq0


ほむら「この反応、近づいてくる」

貴方「本当だ。まだ小さいけど、段々……」


 微かだった反応は大きくなっていく。これは他の場所から来る魔女の反応だ。どこへいく? ここに来るのか?

 新しいことが知れたわけではないが、こんなふうにやってくるのは初めて見ることだった。

 廃墟の外へと駆けだす。


貴方「迎え打つか!」


 反応を見て進行方向を探り、魔女が動きを止めてからすぐに結界に入る。

 まるで地獄をイメージしたかのような刺々しいだった。

 使い魔を倒しながら道中を進み、魔女のいる深層を目指す。ここまではスムーズだ。


 そうして結界を進んでいくと、重く閉ざされた最後の扉へと手をかけた。


貴方「よし……いっせーので開けるよ」

ほむら「ええ」


 開けた先にあるのは、まさに地獄の最奥にふさわしい部屋。こんな場所に似合いそうな大柄な怪物が魔女だろう。

 大柄な魔女というのもいくつか相手にしてきてる。大体こういうのは、力は強いがのろくて、しぶとい奴が多い。


貴方「まずは使い魔倒す?」

ほむら「私が時間を止めて攻撃すればこのままでも……」


 まだ安全な距離を保って作戦を練っているつもりだった。

 その気になれば暁美さんならどんな距離からでも先手を打ち一瞬で追い詰められる。

 しかし―――そのアドバンテージがこちらだけにあると思い込むのはよくなかった。


貴方(!? いま魔女が消えっ……)


 どこに行ったかわからない。考えている余裕も見回している余裕もない。だが最悪なのは背後だ。

 それでもここは戦闘の場。不意を突かれた状況でも、暁美さんはすぐさま振り向いて盾を持つ腕を上げる。


ほむら「なっ……――――」


 その時、何かが割れた派手な破壊音が腕元から鳴り響く。


 それと同時に感じ取ったのは僅かな魔力の霧散、消滅。

 暁美さんの変身が解けたということだった。

393 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/22(月) 00:14:40.43 ID:Pu2jQAVq0
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今回はここまでよ
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 21:29:59.80 ID:X7pcQo1t0
乙です
いったい何が・・・?
395 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/23(火) 19:06:42.64 ID:HUrNMwxm0


貴方「そんな――!」


 暁美さんはもう戦える状況じゃない。もたもたしていればやられる。

 だったら今やるしかない! 構えも万全じゃないが武器を向けていった。


 魔女の魔法が暁美さんと同じ時間停止だったらと思ったが、時間を止めている間の攻撃や行動をしてこないってことは違うんだろう。

 第一印象は半分は当たってた。瞬間移動以外の普段の動きはのろい。

 瞬間移動からの大振りな攻撃で確実に殺そうとしてくるタイプらしい。それさえ警戒していればいい。動きは思ったよりも単調だ。


 避けられるけど攻撃が当てづらい。それこそ時間さえ止められれば相性が良かったはずなんだろうけど……!


貴方「くそっ……ちょこちょこと逃げやがって!」

ほむら「……引き付けて動作の隙を狙って」

貴方「わ、わかった!」


 そうだ、訓練の時のように動きをよく見るんだ。暁美さんのアドバイスを意識して動く。

 ――ようやく魔女を倒すことができた。



 結界が消滅して、やっとゆっくり暁美さんを見ることができる。

 暁美さんは腕から血を流していた。衝撃に耐えきれなくて盾が割れたんだ。それと同時に――。

 じゃあ、ソウルジェムはどうなったんだ?


貴方「……ない…………これから魔法少女としてどうなるんだ……?」

ほむら「…………」

貴方「でも、盾があったからこれで済んだんだね。よかった……」

ほむら「……そうね」



 とりあえず俺の魔法で傷を治すことはできる。しかし、変身状態で壊され跡形もなくなったソウルジェムは戻らない。

 暁美さんは終始、どこか実感しきれていないような茫然とした様子だった。


――――
――――
396 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/23(火) 19:51:54.20 ID:HUrNMwxm0
――――
17日目 朝



貴方『キュゥべえ、聞きたいことがあるんだ』

貴方『……本当に大事な話があるんだよ! 聞こえてるんだろ!?』


 教室で姿を見つけてからテレパシーで呼びかけてるのに、キュゥべえは今日も窓辺で寝ている。

 今キュゥべえには聞きたいことがいっぱいある。なにより一番は暁美さんのソウルジェムのことだ。

 呼び続けていると、キュゥべえはやっと薄目を開けた。


QB『眠い…………』


 ……寝ぼけた声でそれだけ言ってまた眠ってしまった。


貴方『お、おいっ! 契約者のサポートがお前の役目なんだろ? ちゃんと仕事しろよ……!!』


 いつも暇そうだしちゃんと仕事してるか怪しいと思ってたけど、こんな大事な時にサボるなんて。

 休日は会ってないけど、知ってる限りじゃ昨日からだ。

 何か異常が起きてる? まさか変な病気にでもかかったのか?


貴方(……あいつ、起きたらとびっきり変な言葉でも教えてやるからな。そんでみんなの前で恥かかせてやる)


 いつのまにかいつもの三人が横にいた。

 今日は少し早く来たはずだったけど、もう彼女たちが登校してくる時間になってたらしい。


さやか「【貴方】、おはよ。……どうしたの? なんか険しい顔してない?」


 なんだかみんな、心配してるような顔してた。

 キュゥべえのことは今は諦めて、二人には話をしておくか。志筑さんには悪いけど……。

 さやかと鹿目さんに廊下までついてきてもらった。

397 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/23(火) 20:27:00.10 ID:HUrNMwxm0

まどか「わたしたちだけ呼ぶってことは、魔法少女のことなんだよね?」

さやか「キュゥべえを見てなかった? なんか話してたの?」

貴方「それが、キュゥべえは呼んでもずっと寝ててまともに話せる状態じゃなくてさ……昨日からなんだ」


 基本的にはキュゥべえは学校がある間はずっと学校にいる。

 鹿目さんたちは学校にいるときは誰かと一緒にいることが多いから、キュゥべえともあまり話さないんだろう。

 ……学校にいる時以外はどうだろう? たしかにわざわざ用事がある時っていうのは少ないが…………。


貴方「実は、暁美さんのソウルジェムがなくなったんだ。魔女と戦ってる時に壊されて……」

さやか「……は!?」

まどか「ほむらちゃん、もう魔法少女じゃないの……?」

貴方「魔法は使えないみたいだ。変身さえ」

貴方「こういう時どうすればいいか聞こうと思ってたんだけどさ。……キュゥべえに言ったら予備をくれるかもしれないし」

まどか「予備とかあるの……?」

貴方「いや、知らないけど。でもそうでもなきゃ本当に魔法少女引退になるだろ?」

さやか「あ!そしたら二個目の願い叶えられたりしない!? 壊すたびに願い叶え放題とか!」

貴方「…………」


 さすがにそれはどうかと思った。

 ……でも、たとえそうだったとしても暁美さんからは興味も欲望も感じなくて、叶えたい願いって思い浮かばないとも思う。

 さやかたちに対する敵対心ももう薄まったみたいだし。……そういえば、さやかの暁美さんへの疑念もどうにかならないかな。


貴方「二人に聞こうと思ってたことはもう一つあるんだ。二人は魔女が現れるところって見たことある?」

まどか「現れるって、グリーフシードから?」

貴方「グリーフシードからでも、どこか違う場所からやってくるでも……それ以外でも」

貴方「この街に沸く魔女がどうやってきてるのか調べたほうが闇雲に魔女を倒すよりいいと思うし、そういう意味も込めてさ」

さやか「……もしかして、【貴方】は“それ以外”ってやつを知ってるの?」
398 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/23(火) 21:29:45.05 ID:HUrNMwxm0


 たしかにこれは、“それ以外”がある可能性を考えての質問だった。

 その意図に気づいただけにしては、さやかの顔はいやに真剣だった。


貴方「知らないけど、ないとは言い切れないと思ってるんだ。全部が全部、使い魔から成長するか他の街から来てるとは思えなくて……」

さやか「あたし、昨日見たんだ。なにもなかったとこから急に魔女の結界が現れたの」

さやか「その近くにほむらが居たんだ。でも戦わないでどこかに行っちゃった」

貴方「えっと、ちょっと待てよ……昨日? 暁美さん?」

さやか「最初はもう暗かったし人違いかと思ったんだけど、やっぱほむらだと思うんだ! だって……――!」

さやか「消えたから! そんなのできるのってあいつの時間停止くらいでしょ!」


 魔女が急に現れた話は暁美さんからも聞いてたが、そこで暁美さんの名前が出るとは思ってなかった。

 昨日の夜ならソウルジェムがなくなったから戦えなかったのはわかるけど、時間停止?


貴方「見間違えじゃないのか? それ。暁美さんはもう魔法を使えないのに」

さやか「魔法が使えないのも嘘なんじゃないの?」

貴方「嘘って…… そんな嘘ついてどうするんだよ」

さやか「戦えるなら使い魔だったらまだしも魔女と戦わないのはおかしいし、魔女もあいつが出したって考えたらどう?」

貴方「え……」

さやか「だとしたら、あいつって本当に魔法少女なのかな?」

さやか「キュゥべえが契約した覚えがないって言ってたよね? つながるって思わない?」

まどか「そんな、本当に? でもそう考えれば………… 本当にほむらちゃんが魔女を? 魔法少女じゃなかったら……なに?」

さやか「さあ。魔女の親玉、とかね……」


 俺を置いて勝手に話が進んでいく。

 暁美さんは心を開いてくれた。仲良くなれた。……恋人にもなれた。

 でもまだ暁美さんが語らない部分があるのは事実だ。魔法少女としての暁美さんには多くの謎がある。


 さやかの暁美さんへの疑念は、薄まるどころかより濃くなっていた。


さやか「……【貴方】は誰にでも優しいもんね。ほむらのことも大事に思ってるのはわかってるよ」

さやか「あたしたちと同じくらいに……いや、もっと特別に?」

貴方「……」

さやか「でもほむらのことは信じすぎないほうがいいよ。あたしは……!いや……あたしたちも、【貴方】のことが好きだから」


 …………いつのまにか廊下に人はいなくなってた。

 HRが始まるチャイムが鳴って、教室に戻っていった。

 心の整理が追いつかないまま。


――――
――――
399 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/23(火) 22:00:13.74 ID:HUrNMwxm0
放課後



 朝はギリギリまで廊下で話していて遅れてしまい、先生から怒られてしまった。

 でもまさかあんな話になるとは思ってなかったんだ。今でも考えがまとまらない。

 キュゥべえも一日中寝てる。


 ……本当に暁美さんが魔女の出現と関わってるのか?

 『ほむらのことは信じすぎないほうがいいよ』――さやかの忠告は必死だった。さやかの疑念は俺たちを守ろうとしてのことだ。


ほむら「【貴方】くん……今日は?」

貴方「あ、ああ。そろそろ行くか」

ほむら「……昨日はごめんなさい。これから私はパトロールについて行っても足手まといね」

貴方「い、いや。何も謝ることなんて……」


 暁美さんは落ち込んでいる、ように見える。魔法少女としての力に自信があったから。



1暁美さんに朝のことを聞いてみる
2巴さんに魔女のことを相談しにいく
3佐倉さんに魔女のことを相談しにいく
4自由安価

 下2レス
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 22:07:13.26 ID:BVLzXe3O0
2
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 22:29:24.18 ID:VUgAnin90
3
402 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/23(火) 23:49:10.20 ID:HUrNMwxm0


 今日のところはとりあえず、ベテランにも話を聞きにいったほうがいいかもしれない。

 そうだ、佐倉さんは今日は来てるだろうか。


 校門の方で待ってるかもしれないと思いテレパシーを飛ばしてみると、返事があった。


貴方「今日はちょっとやりたいことがあるんだ。魔女のこと、他の人にも聞きたいから」

ほむら「……ええ」


 暁美さんの意気消沈した顔を見るとやっぱり胸が締め付けられた。

 暁美さんのどこまでが本当でどこまでが嘘なのかはわからない。でも、全部演技なんてできるだろうか。


貴方「おまたせ、佐倉さん」

杏子「なんか話があるって?」

貴方「うん……」



 『魔女が現れる瞬間を見たことがあるか』――佐倉さんにも、みんなにしたのと同じ質問をしてみることにした。



杏子「使い魔の産み落としたグリーフシードが孵る様子ならしょちゅう見たぞ」

杏子「生まれる寸前を狙うと使い魔もいなくて魔女を倒しやすいんだ。……風見野にいた頃の話だけどな」

貴方「こっちじゃどう?」

杏子「全然。これだけの魔法少女がみんなで使い魔倒してれば当たり前だな。その割に本当によく育つ街だよ」

杏子「都会だから魔女が育ちやすいだろうとは思ってたけど、これだけグリーフシードが手に入るならどこも奪い合いなんか起きないだろうね」


 まさか、他の街よりも魔女がいるのは暁美さんのせい?

 佐倉さんは育ちやすいからと理由を挙げたけど、グリーフシードは全然見ないって言った。


 なにより、佐倉さんは魔女が突然自然発生するケースについて言及しなかった。


――――
――――
403 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/24(水) 00:23:23.32 ID:8xbdRGvi0
--------------------
>>402
みんなで使い魔倒してれば当たり前=育たないって言ってるのによく育つって普通に矛盾してるから
「よく出る」とかに脳内置換しといてください

今回はここまで
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/24(水) 22:35:43.37 ID:EOaB0VqL0
そろそろドロドロの女の闘いが始まるかな?
405 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/27(土) 21:14:08.62 ID:A0siUgHw0
18日目



 ……佐倉さんの話を聞くに、この街は他の街よりも魔女が多いらしい。


 佐倉さんには暁美さんのことは言えなかった。

 不確定な情報で混乱させたくなかったし、なによりそんなことが広まれば暁美さんが不利になるだろうから。


 でも、少なくとも魔女が繁殖せずに発生することがあるというのはほぼ確信していた。


 この前から気になっていた。魔女はどこからくるのかと。

 考えてみればこの街以外でもそうだ。魔女は同系統の使い魔しか生まない。最初に生まれた魔女がいるはずだ。



ほむら「【貴方】くん」


 気付けばもう放課後だ。暁美さんが席に来ていた。


貴方「ああ、暁美さん……もう帰る?」

ほむら「ええ。そうなんだけど」


貴方(まさか、その元凶も…………暁美さんが?)


ほむら「……?」


 たった一人で全ての魔女を生み出してるとは考えにくいけど、前に考えたみたいに組織でもあったとすれば?



1暁美さんは信用できない
2さやかの言ったことはきっと勘違いだ
3もう少し考えてみよう

 下2レス
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 21:22:51.10 ID:8sPD96aN0
3
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/27(土) 21:36:10.92 ID:+T9d/bUk0
408 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/27(土) 22:27:28.67 ID:A0siUgHw0


 ……いや、疑心暗鬼に駆られちゃ駄目だ。

 魔法少女としての、暁美さんの謎――暁美さんの『正体』が何だったとしても、今まで見てきた暁美さんも『本当』だ。


 そんなに器用な人じゃないのはよく知ってる。そもそも、魔女の自然発生の話を聞いたのは暁美さんが最初だったじゃないか?


貴方「うん、一緒に帰ろうか」

ほむら「……今日はうちに来ない? ……何もなくてつまらないと思うけど」

貴方「そ、そんな気を遣わなくていいよ。誘ってもらえるのは嬉しいよ」


 さっきから何かを言いかけてたってことに今気づいたが、意外な誘いだった。

 暁美さんの家を訪れるのは二度目。前はさやかたちが居た。


ほむら「私もつまらないのよ、一人で家にいても。前だったらパトロールに出ていたけれど今は何もすることがない」

貴方「ああ……何かいい暇つぶしでも見つかればいいね。それか、とりあえずキュゥべえが起きてくれたら聞けるんだけど」

ほむら「キュゥべえ、どうしたのかしらね」


 ソウルジェムを失ってから暁美さんは時間が余っているようだった。

 キュゥべえのことも気になるが、このまま魔法少女としての力が戻ればそれで全て解決になるのだろうか――とも思ってしまう。

 この先、魔女を全て倒した後は? 一生魔法少女としての力に囚われたままというのはあまりに空虚すぎる。

409 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/27(土) 22:40:46.73 ID:A0siUgHw0

貴方「おじゃまします」

ほむら「ええ、とりあえずそこに掛けて」


 家に上がらせてもらうと、第一印象はやはり生活感がない部屋――ってことだった。

 何もないとは言っていたが、謙遜ではなく無駄なものどころか必要なものすらないように見えた。

 だからかわからないが、アパートの一室にしては外観より広く思える。


 円を描くように並んだ椅子。その中央にあるテーブルを挟んで二人で座っている。

 四面を覆う白い壁と、規則的な振り子時計の音にどことなく圧迫感を感じる。


 あの時と違って二人だけで静かな部屋だから余計に気になるんだろうか。


貴方「……この椅子の並びって時計?」

ほむら「多分」

貴方「あ、もしかして時間操作の魔法だから?」

ほむら「……多分」

貴方「そのへんで寝てるの?」

ほむら「ええ……適当に」

貴方「身体痛くならない?」

ほむら「よく転げ落ちるわ」

貴方「……」


 もう少し快適にしようと思えば出来るだろうに、それも興味がないのかな……。

410 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/27(土) 23:09:53.33 ID:A0siUgHw0

貴方「物増やしたりしないの? ……あれ?その箱は?」

ほむら「昨日やることがなくて掃除をしていた時に見つけたの」


 部屋の隅にダンボールが1箱置かれているのを見つけた。

 すでに封は開いているようだった。


貴方「ダンボール? 何か頼んだの?」

ほむら「いえ」

貴方「宅配便じゃないってことは、引っ越しの時のダンボールとか?」

ほむら「……多分」

貴方「……前から思ってたけど、暁美さんって不思議な言い方をするよね。自分のことなのによく『多分』なんて言い方をするから」

ほむら「え……?」


 暁美さんについての『違和感』……それは前まで明確じゃなかったけれど、いつからか自分の中ではっきりとしていた。

 それが『自分のことなのに推測のような言い方をすること』――だった。


貴方「暁美さんに何か聞いても『さあね』なんて言って誤魔化されちゃうこと多いけど、もしかして、さ」


 もしかして俺の推測が全部間違ってて本当に悪いことを隠してるんだったらどうしようって思ったけど、

 自分の見てきた暁美さんへの思いを信じることにした。


貴方「本当に答えられないんじゃない? ……自分でも知らないから」

ほむら「………………」

ほむら「……どうして」

ほむら「…………どうして、そのくらいのことも誰にも相談できなかったのかしらね」
411 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/28(日) 00:08:21.99 ID:3DbugbAB0

ほむら「気付いたら私はこういう人だったのよ。魔法少女としての力以外、自分と言えるものが何もなかった」

ほむら「それと……『まどか』」

貴方「……鹿目さん?」

ほむら「ええ。『まどかを救う』のが自分の役目だと。それだけ意識にあったの」

ほむら「でも、そんな必要なかったのよ。【貴方】くんも知っての通り」

貴方「ああ……そうだな。鹿目さんは強い人だよ」


 暁美さんはついに心の奥にしまっていたものを話してくれた。


 それなら鹿目さんに執着していたのも、魔法少女としての力以外に自信がないのも無理はない。

 それだけが自分を作るものだったのだから。


ほむら「どうしてまどかを救おうとしていたのか、私も結局わからなかった」

ほむら「あの子のことなんて私は本当はどうでもよかったのでしょうね。友達にもなれなかった」

貴方「今からでも友達にはなれるんじゃない……? ほら、魔法少女じゃなくなったってクラスメイトなんだしさ」


 しかしそれも、暁美さんにその気があるならの話だ。それにさやかのこともある。


ほむら「このことを相談したら、美樹さんもわかってくれるのかしら?」

貴方「……いや、残念だけど、それは無理かもしれないと思う」


 さやかは一昨日の一件から暁美さんを疑ってる。

 今更暁美さんが知らないことを話したところで、嘘をついてると思われてもおかしくない。


貴方「そうだ、一昨日の夜って家に帰ってからどうしてた? 何か変なことはなかった? ……魔女とか見なかった?」

ほむら「外には出ていないわ。変なことは何も」

貴方「……そっか。あと、魔法はやっぱり使えないんだよね?」

ほむら「ええ。ソウルジェムは魔力の源だもの。あれがないと使えないのでしょう」


 じゃあ、あの話は本当に見間違い? 消えたっていうのは?

 謎は謎のままだ。

412 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/28(日) 00:38:29.26 ID:3DbugbAB0

ほむら「……水も出せてなかったわね」

貴方「本当にそんなに気を遣わなくていいよ」


 ……思ったより話しこんでいたようだ。

 いつのまにか夕方になっている。


貴方「夕食はいつもどうしてるの?」

ほむら「買うか外で食べてるわ。……食べないこともあるけど」

貴方「ちゃんと食べないと駄目だよ! 一緒にどっかいく?」

ほむら「それでもいいわね」


 この辺なら、少し歩けば色々と店はある。

 佐倉さんと一緒に居てせっかく料理屋事情にも多少は詳しくなれたんだ。


 暁美さんの家を出る前に、蓋の開いたダンボールの中身が見えた。


貴方「それって眼鏡? 暁美さん、目悪いの?」

ほむら「いいえ……困ったことはないわ。私も昨日見つけて」

貴方「近眼用じゃないんじゃない? お洒落用とか、ブルーライトカットとか」

ほむら「私はそんなのにこだわる人だったのかしら……」


 暁美さんがケースを手に取る。言ってはみたもののたしかにそういうイメージは思い浮かばない。

 中身は赤縁の眼鏡だ。


貴方「近眼か遠視かわからないけど視力補正用みたいだね。レンズのむこうが歪んでる」


 可愛らしいケースの雰囲気からして、暁美さんのイメージとは離れたものだった。

 ダンボール箱の中には他にも似たような印象の小物類が目についた。


ほむら「どこのお店に行くの? 行きつけとかあるの?」

貴方「ああ、まあ最近気に入った店ならあるかな」


 いつのまにか暁美さんもケースを元の位置に戻している。

 中身は気になったが、ジロジロ見るのもあまりよくない。

 これから行く店のことに思考を移した。


――――
――――
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 07:57:49.64 ID:HD7QHusI0
眼鏡掛けてって頼んだらしてくれるかな?
414 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/28(日) 19:52:09.09 ID:3DbugbAB0
19日目



 ――朝、教室に行くとなんだか騒がしかった。

 廊下からでも人だかりが出来てるのが見える。

 そこにある席って、たしか……。


*「どうしたの? 暁美さんそれ、イメ……チェン?」

*「それ度が入ってるの?」


貴方(やっぱり暁美さんの席だ……)


 暁美さんはみんなの憧れの的だ。彼女の周りに集まるのはクラスでも積極的で派手目なタイプの人が多かった。

 今も男女問わず集まっているが、聞こえるのはどちらかというと、ざわめきや心配するような声だった。


 ……それをさやかたちは遠巻きに見ていた。


さやか「……なにあれ? アイツいきなりどうしちゃったのさ?」

まどか「ずいぶん雰囲気変わっちゃったね……」

仁美「このイメチェンは予想外でしたわ。【貴方】くんは何かご存知ですか?」

貴方「いや……」


 俺だって予想外だった。

 でも、昨日話した中で思い当たることなら。


貴方(……眼鏡?)

415 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/28(日) 20:22:18.85 ID:3DbugbAB0


 ――――それから、暁美さんとちゃんと話せたのは昼休みになってからだった。

 半日も経つと、物珍しさで集まっていた生徒もすでに去っていた。


ほむら「【貴方】くん、あの、あの……話してもいいですか?」

貴方「は、はあ。どうぞ?」

ほむら「昨日帰ったあと、試しにこの眼鏡をかけてみたら……記憶が戻ったんですよ!」

ほむら「ついに自分を取り戻せたんです。今なら自分がどんな人かも、どうやって育ったかも、いつ契約したかも……ちゃんと言えます」


 直接話してみると、朝心配されてたのがよくわかるくらいには雰囲気が違った。

 これがなくしていたものを取り戻した、本来の暁美さん。


 ――やっぱ、唐突に言われると困惑のほうが大きかった。

 俺からしたら、今まで見てきたのが暁美さんのイメージだったから。


貴方「……それはよかったけど、そんな感じだったの?」

ほむら「…………」


 そう言うと、暁美さんはおもむろに眼鏡を外した。


ほむら「話そうと思えば今まで通りにも話せるわよ。もうこっちでも慣れたから」

貴方「あ、そうなん……」

ほむら「でも……どっちにしても、そう大きくは変わってなかったのよ。人付き合いが得意じゃないのは元から。暗いのも元から」

ほむら「他の人にはそうは見えないのかもしれないけどね」

貴方「……ところで、眼鏡を外す必要は?」

ほむら「気持ちを切り替える何かが欲しいだけ」


 そう言うと、暁美さんはふたたび眼鏡をつけた。

 視力で困ったことはないと言ってたけど、不思議とつけても外しても過ごせるみたいだ。

416 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/28(日) 20:54:59.66 ID:3DbugbAB0


貴方「それより、いつ契約したかも思い出したって言ったよね。それについては!?」

ほむら「あ……はい。それは放課後にみなさんの前で言います」

ほむら「私がはっきり事情を言わなかったせいで疑われるようなことになったんです。他の人ともちゃんと話したほうがいいと思って」

ほむら「私も実は、みんなとどう接したらいいかわからなくて……【貴方】くんとはこうやって話せたんですけど……」

貴方「俺と話せたんなら大丈夫だと思うよ? ゆ、勇気持って!」

ほむら「は、はい」


 ……やっぱり慣れないな。

 そう思いながらも、オドオドと自信なさげにしてる暁美さんを元気づけた。


――――
――――



 それから放課後、訓練場所の土手にみんなを呼んで集まった。

 合同訓練は休日にやってたから、平日に集まることはそうそうない。今日は訓練じゃなく話。

 ここに来るまでにもみんな特別な空気は感じ取ってたみたいだ。



 キュゥべえも引っ張って連れてきたけどまだ寝たまま。

 ……いや、引っ張ってというのは正しくない。実際には暁美さんの腕の中ですやすやしてる。正直羨ましい。


貴方「……ここまで運んで来ても、やっぱキュゥべえは寝たままか」

ほむら「でも寝顔見てるとかわいい」

マミ「それで、暁美さんから話があるって聞いたんだけど……今日はどうしたの?その格好は?」

さやか「今日は朝からこうなんですよ。で、何を話すの?」

ほむら「と、とりあえず聞いてください……今まで話せなかった、私のことを」

417 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/28(日) 21:31:04.88 ID:3DbugbAB0


 暁美さんはまず、俺が昨日聞いた記憶喪失のことと、記憶を取り戻した経緯を話した。

 そして、話は暁美さんの過去のことに入る。


ほむら「小さい頃から身体が弱くて、入院生活ばかりだった私にはなかなか友達ができませんでした」

ほむら「でも魔女に襲われた時、鹿目さんと巴さんに助けてもらって……そこから鹿目さんとも仲良くなれたんです」

ほむら「鹿目さんは、私にとってはじめてできた友達だった。だから大切だった。……今度は自分が助けたいと思った」

まどか「え、えっと……?」

さやか「なんでまどかが知らないのよ!」


 話の途中で割り込まれると、暁美さんは一瞬口ごもり、そして片手で眼鏡を取った。


ほむら「い、いいから話を聞きなさい!」

貴方「ま、まあまあ。先を聞こう」


 オドオドから一変した強気な一喝はなかなかに効いたようだ。……まあ、眼鏡取っただけなんだけど。

 そして、さっきの豹変など何もなかったかのように続けた。


ほむら「……二人はその後、大きな魔女と戦ったせいで死んでしまった。それをなかったことにするためにキュゥべえと契約して過去に戻ったんです」

杏子「なるほどねえ、だからキュゥべえも契約した覚えがないと……。肝心のキュゥべえは寝てるけどな。おーい、話聞いてた?」

QB「きゅ…………?」

マミ「いつからこんな寝坊助さんになってしまったのかしら。うちにもほとんど顔を見せなくなったし……」

さやか「まあでも、ちゃんとキュゥべえと契約して魔法少女になったっていうのね」

マミ「それで、大きな魔女っていうのはどんなものなの? 私と鹿目さんでやられるくらいだし、対策が必要になるかもしれないわよ」

ほむら「たしか、ワルプルギスの夜――って聞いたような」

杏子「来んのかよ! いつ?」

ほむら「で、でもそれってずっと前のはずなので……多分もう大丈夫なんだと思います」

マミ「時間を戻ったらワルプルギスの夜がくることもなかったことになったのかしら?」

ほむら「多分……」

杏子「そりゃよかった。最悪死ぬかもしれない相手とやりあいたくなんてないよ。まあ、その時と違ってこんだけの人数がいれば勝てそうだけど」


 話に出てこなかった人がいたのは気になったが、その過去自体がずっと前の話のようだ。

 すでに過ぎ去った危機と考えてもいいんだろうか。

418 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/02/28(日) 21:58:45.66 ID:3DbugbAB0


貴方「それでその話って終わり?」

ほむら「はい。これ以上はとくにないですけど……」

貴方「そっか。ありがとう。じゃあ、時間を戻ったときに記憶が飛んじゃったのかな……?」

マミ「時間と一緒に自分の記憶も戻される……そのせいで記憶に混乱が起きたとか?」

まどか「ワルプルギスの夜さんがこなくなったのはいいけど、あんまり意味ないね……。むしろマイナスかも」

杏子「ちょっとキュゥべえ」

QB「むにゅ……」


 佐倉さんがキュゥべえを突っつくがほぼ無反応だ。


まどか「ま、まあ……なんだか急すぎてびっくりしたけど、今のほむらちゃんならちょっと親近感湧くかも」

ほむら「…………」


 鹿目さんはそう言ったが、暁美さんはどうしたらいいかわからなさそうにしてた。

 ……時間を戻る前と違ってこれまでのことがあるんだから、当然だろうか。


 そういえば、いつのまにか呼び方も変わってる。他の人に対する時と同じ、苗字呼びだ。


さやか「……あたしもアンタのことあからさまに疑いすぎてたよ。その話、忘れてることくらいちゃんと話してくれればよかったのに」

ほむら「ご、ごめんなさい。きっと私が臆病だから変な意地を張ってたんです」

さやか「今ならともかく、前の姿見て臆病なんてイメージ出てこないわよ!」


 ……と言いつつも、さやかはまだ何かを考えるようにしてた。


 暁美さんの話は終わったが、まだ解散するには早い時間だ。

 せっかくみんな揃ってるんだから訓練でもするか?


1みんなと訓練
2さやかと話す
3ほむらと帰る
4自由安価

 下2レス
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/28(日) 22:09:28.18 ID:zcYksC6x0
2
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/01(月) 02:11:50.64 ID:CGmQTY1N0
421 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 18:54:32.20 ID:aani6tff0


杏子「で? このあとどーすんの?」

貴方「俺はまだここに残ろうかな。せっかくだしみんなで訓練にするのもいいんじゃないかな」

まどか「わたしもそれに賛成! 休みじゃなくてもせっかく集まってるんだもんね」

杏子「お茶会があるならあたしも喜んで参加するんだけどなあ」

さやか「まーたアンタは食い意地ばっかり張って!」

マミ「ええ、終わったらしましょうか。頑張った分のご褒美は必要だものね」

さやか「え、いいんすか! やった!」


 暁美さんは様変わりしてしまったが、他のみんなはいつもの空気だ。

 最近はとくにギスギスとしていたから、むしろ前よりも明るく感じる。


 その代わり、さっきまで中心になって話していた暁美さんは、そこがもう自分の居場所ではないというように離れたところから見ていた。


ほむら「……私は先に帰ってますね」

貴方「あ、ああ。また明日」


 ……暁美さんの願いは叶っていた。

 悲劇の元凶のワルプルギスの夜もいなくなって、今ここにいるみんなは誰一人として欠けることなく過ごしている。


マミ「どうしたのかしら?」

まどか「ほむらちゃん、ソウルジェムがなくなっちゃってもう魔法が使えないって聞きました」

マミ「そんなことが……。暁美さんは魔法少女を続けたいと思ってるのかしら?」


 前までだったら間違えなく『そうだ』と言えたけど、今の彼女の心はわからない。

422 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 20:14:01.70 ID:aani6tff0


貴方「やっぱり、俺たちってソウルジェムがなくなったら戦うことも魔法を使うこともできないんですかね」

マミ「そうなんじゃないかしら。ソウルジェムは魔力の源だもの」

マミ「変身するのもソウルジェムを使うし、変身せずに直接魔力を取り出して魔法を使うにもソウルジェムがないと」

貴方「やっぱそうっすかね……」

マミ「試しにやってみる? ソウルジェムなしに魔法が使えるかどうか」



 みんなで訓練をする傍ら、試しにソウルジェムを少し離したとこに置いて何かできるか試したが、案の定何もできなかった。

 何をどうしたらいいかもわからず、修行すれば技が打てると思い込んでいる中二病を見るような目で笑われたので虚しい気分になった。



さやか「んー……まあ、そりゃあたしたちフツーの人間だもんね。キュゥべえがくれた力がなきゃ魔法なんて使えるワケないよ」

マミ「暁美さんの話は急だったけど…………暁美さんがどう思ってるにせよ、なくなったのが本当なら当分はお休みになるわね」

マミ「せめてキュゥべえが起きてくれたらよかったけど、これだもの」

貴方「本当ならって、疑ってるんですか?」

マミ「魔女との戦いはいつでも命懸けだけど、彼女の強さを考えたら半信半疑にもなるわよ」

貴方「実は、ソウルジェムが壊された時俺も一緒に居たんです。あの時は魔女の攻撃を受け止めきれなくって」

マミ「そうだったの? それなら最初からそう言ってくれれば……【貴方】くんが言うなら信じるわ」


 マミさんは暁美さんのことを疑ってるんだろうか?

 さやかの時とは違って二人はあまり関わることもなかった分、険悪な様子は見られなかったけど……。


貴方「ところで、キュゥべえはなんでずっと寝てるんですかね?」

マミ「さあ……たしかにここまでくると心配よね。もし病気なら魔法で治せたりしないかしら?」


 キュゥべえは相変わらず寝ている。回復の魔法を使っても無反応だった。

 普段は学校に置き去りだが、このままここに置いていくのもあんまりなので結局お茶会にも持っていくことになった。

423 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 20:23:12.53 ID:aani6tff0


 ――――お茶会の帰り、みんなと別れた後は一人で帰り道を歩いていた。



 暁美さんが一人抜けても、チームは以前とほとんど変わらなかった。

 暁美さんは前から無口で、結局ずっと俺以外とは打ち解けられずにいた。

 このチームには居場所など感じていなかったのかもしれない。でも、みんなとの記憶が戻った今なら意識は変わったんじゃないか?


貴方(あの話……みんな受け入れてくれたのかな)


 前から暁美さんのことを疑ってたさやかは、途中で一回口を挟んだものの、最後を聞いた後は受け入れたようだった。

 さやかのことだから嘘だと思えばすぐ食って掛かるだろうし、そうしなかったってことは言葉通りに信用はしたのだろう。


 マミさんは多少疑ってたように見えたけど……。

 俺もあの暁美さんの様子には今も慣れないが、あの態度が嘘にも見えなかった。



 これまでの話に……



1矛盾はない
2矛盾はある

 下2レス
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/03/06(土) 20:33:07.16 ID:UuOO7zh/0
2
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 20:59:53.71 ID:oYBcWX71o
1
426 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 21:19:12.97 ID:aani6tff0


 ……暁美さんはワルプルギスの夜に殺された鹿目さんたちを守る為に契約して、過去に戻ってきた。

 鹿目さんに執着していたのも、キュゥべえが契約した覚えがないのもそのせいだ。


 俺らから見れば暁美さんは変わってしまったが、思い出した過去に納得しているようだった。

 聞いた話にたしかに矛盾はない。



貴方(…………じゃあ、気のせいか)



 暁美さんは魔法少女ではなくなってしまったが、俺たちは全ての魔女を倒すことを目標に戦い続ける。

 そして……――――――――不思議なことに、それは遠くない未来に達成できた。

 少し前から調べていた魔女の自然発生……それも勘違いでしかなかったんだろうか?

 それに、記憶が戻ったことのインパクトですっかり忘れていたが、暁美さんがそれに関わってるんじゃないかという疑いも。



 この世界からは魔女がいなくなり、魔法少女も魔法少年もいなくなった。

 真の平和が訪れたのだ!


 ただ……キュゥべえの姿もあのお茶会の日以来見ることがなかった。それだけが気がかりだった。

 一体何処に行ってしまったんだろうか? 短い間だったが一緒に過ごした友が消えたことには寂しさを感じていた。



 これからも俺たちの未来は――――



 ――――世界は突如、全てが真っ黒に潰されて終わった。

 意識が終わるその寸前、目の前には暁美さんの部屋と、そこでこちらに微笑む彼女の姿が見えた気がした。



END.? 強制終了
427 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 21:47:17.98 ID:aani6tff0
――――
――――


「……さすがにこの結末はあんまりだ?」

「この話に飽きた人もいるんじゃないの? ……私は飽きたわ。だってもうクリアしたゲームなのよ」

「蛇足でしかないのに、これ以上何を望むの?」



1ハッピーエンド
2謎の解明
3???の救済


「別に答えなくていいわよ」


「ハッピーエンド? 幸せなままで終わったのだからこれはハッピーエンドじゃない」

「謎の解明? 真実を知ったせいで絶望して魔女になった魔法少女を知ってるわよね。真実なんて知らないほうがいいものよ。
 この世界ではソウルジェムはただの魔力の源だって? ……ええ、そうだったわね」

「3は意味が分からないわ。もう名前を隠す必要もないほど察しはついていると思うけれど……」



「……『攻略』がしたいのね。ギャルゲーだから」



>>423を2でやり直します。???が攻略できるようになりました。


――――
――――
428 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 21:57:10.65 ID:aani6tff0


 ……暁美さんはワルプルギスの夜に殺された鹿目さんたちを守る為に契約して、過去に戻ってきた。

 鹿目さんに執着していたのも、キュゥべえが契約した覚えがないのもそのせいだ。


 俺らから見れば暁美さんは変わってしまったが、思い出した過去に納得しているようだった。

 聞いた話にたしかに矛盾はない。


貴方(でも、巴さんが疑い始めたのはあの話を聞いてからだ。それって……)



※矛盾に関係するセリフを選んでね

1マミ「そんなことが……。暁美さんは魔法少女を続けたいと思ってるのかしら?」
2マミ「暁美さんの話は急だったけど…………暁美さんがどう思ってるにせよ、なくなったのが本当なら当分はお休みになるわね」
3マミ「魔女との戦いはいつでも命懸けだけど、彼女の強さを考えたら半信半疑にもなるわよ」

 下1レス
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 22:11:30.52 ID:hvMAMh+A0
1
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/03/06(土) 22:12:52.77 ID:SSxLXnjO0
さっぱりわからん
431 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 22:17:06.57 ID:aani6tff0


貴方(暁美さんが魔法少女を続けたいと思ってるかどうか……前までは魔法少女であることだけがアイデンティティだったけれど今は違うはず……)

貴方(正直、記憶を取り戻した後の暁美さんがどう思ってるかよくわからないんだよな……)



※これじゃないようです…

1マミ「暁美さんの話は急だったけど…………暁美さんがどう思ってるにせよ、なくなったのが本当なら当分はお休みになるわね」
2マミ「魔女との戦いはいつでも命懸けだけど、彼女の強さを考えたら半信半疑にもなるわよ」

 下1レス
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 22:19:11.40 ID:oYBcWX71o
1
433 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 22:47:20.34 ID:aani6tff0


貴方(ソウルジェムがなくても魔法が使えないか、試してみたけど無理だったな)

貴方(このままじゃやっぱりお休みになるだろうな……)



※これじゃないようです…



貴方(って、それじゃなくて…………『暁美さんの強さ』)

貴方(たしかに暁美さんの魔法――時間停止は強いけれど、暁美さんの強さはそれだけじゃなくて銃の腕や身のこなしもベテランじみてた)

貴方(暁美さんの話だと戦い慣れしてるわけもない病弱な少女だったはずだし、みんなと会ったのは契約してすぐってことになる)

貴方(魔法少女としてベテランの巴さんだから、真っ先にそこが気にかかったんだろう)


 暁美さんが嘘をついてるようには見えなかったけど……。

 もしあるとすれば、まだ思い出していない過去がある――――とか?


貴方(……そもそも、なんで暁美さんは“眼鏡”で思い出したんだ?)

貴方(眼鏡なんて、視力が悪い人にとっちゃ身体の一部みたいなものだろ。とくにそこにきっかけになるような何かがあるとも思えないのに)

貴方(見つけたのも部屋を整理しはじめてからってのも気になるし、まるであえてそこに記憶を封じ込めてたみたいな……)


 そういえば、記憶が戻ったことのインパクトですっかり忘れていたが、

 暁美さんが魔女の自然発生に関わってるんじゃないかって疑われてた件もあったっけ。あれはどうなったんだろう? さやかの勘違い?


貴方(あれは……)


 考え事をしながら歩いていると、街中に暁美さんの姿を見つけた。

 朝からしてた三つ編みはほどいていて、見慣れた姿の暁美さんだ。

434 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 23:12:17.52 ID:aani6tff0


貴方「暁美さん? 帰ったんじゃ……?」


 声をかけてみるとこちらを向く。やはり眼鏡もなかった。

 これは直感だが、彼女は今まで見てきた暁美さんではないと思った。

 もしかして、さやかが見たのは――――。


ほむら「……【貴方】くん。人をその人たらしめる要素って、何だと思う? 記憶? 性格? あるいは――――行動、かしら」

ほむら「それはきっと、本人と他者で違うと思うの」

ほむら「人の性格は必ずしも生まれ持ったものだけで決まらない。『記憶』。積み上げてきた経験、年月によって変わっていくものだわ」

ほむら「他者から見たその人らしさはその積み上げによって出来た性格による『結果だけ』……つまり、『行動』」

ほむら「たとえば、『この人ならこういう振る舞いをするだろう』――――といったものだと思うのよ」

ほむら「けど、本人にとって、経験を失い結果のみが残ったとしたら、それを自分らしいと思えるのかしら?」


ほむら「私。『暁美ほむら』の『らしさ』は、まどかを救うという意思にあるのでしょう」

ほむら「でも、私はそれを受け入れなかった」


ほむら「――――偽物とはいえ、気に入らなかったわ」


 偽物――。

 目の前の暁美さんが偽物と言い切ったのは、今まで見てきた暁美さんのことだ。

 俺の知ってる暁美さんは、記憶を取り戻す前も後もこんなに薄気味悪く笑わない。

 どういうことだかはわからないが、俺からすれば目の前にいる彼女のほうが――――


ほむら「……怒ったの? 偽物という言葉が悪かったかしら。分身と言い換えてもいいわ」

貴方「……もしかして、君が魔女を発生させてるのか?」


 だとすれば、目の前のこいつがすべての黒幕だ。

 暁美さんの分身、というのが本当なら心が揺らがないでもないが、こいつを倒せば真の平和が訪れるんじゃ……――!


ほむら「神様……じゃなかったわ。悪魔を相手に戦いを挑むなんて無謀なことはよしなさい」

貴方「……は!?」

ほむら「貴方、余計なことを考えたでしょう? そのまま気づかないままでいればよかったのに」

ほむら「私からすればこのまま終わらせてもよかったのだけど……少し興味が沸いたから話してあげる」

435 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 23:45:51.19 ID:aani6tff0


ほむら「私が魔女を発生させているというのは、まあ正解といっていいわ」

ほむら「本来『無い』ものをわざわざ作り出しているのだから、そうなるわよね」

ほむら「魔女がいなければ魔法少女の日常は成り立たないから。ただそれだけ。パトロールが外ればかりじゃつまらないでしょう?」

貴方「何を言ってるんだ……? 魔女なんかいなければ命懸けで戦う必要もなくなるんだ! ずっとそれを目標にしてきた!」

貴方「それとも、まさか俺たちにただ魔法少年少女ごっこをさせたかったって理由だけで魔女を作ったのか!?」

ほむら「ええ、そのまさかよ」


 目の前の暁美さんは当たり前のようにあっさりと言ってのけた。

 その拍子抜けするような態度を見ると、もはや怒りをぶつける気すら沸かなくなる。

 ただ何か、とてつもなく危険で大きな力を目の前にしているということを感じた。


ほむら「でもあなたたちは重要なことを知らない。本来の魔女は、魔法少女のソウルジェムから生まれるものなのよ」

貴方「……本来のって何だよ? じゃあ俺たちが戦ってたのはなんだって言うんだ?」

ほむら「さっきの言葉と合せると、偽物の魔女ね。この世界には本来『魔女はいるはずがない』のだから」


 暁美さんはそう言うと、後ろに隠していた手を胸の前に持ってきた。

 手に何かを掴んでいる。それは―――。


貴方「キュゥべえ!?」


 乱暴に耳を持たれて掴まれているのにも関わらず、キュゥべえは未だに寝息を立てている。


ほむら「インキュベーター。本来は私達を騙し、人の感情と魂を弄ぶ敵」

ほむら「でもこの世界では“あえて”造り替えたわ。この世界のキュゥべえの本当の役割を知っている?」

貴方「俺たちの心身のサポート……とか言ってたけど」

ほむら「本当の答えは、『ゲームのサポート』よ。ゲームが終わって役割がなくなったからいらなくなったの」


 ゲームが何かはわからないが、まさか――それがキュゥべえが寝てばかりになってしまった理由に関係あるのか?

 そんなことを考えていると、暁美さんはどこからか拳銃を出して……キュゥべえの頭に突きつけた。

436 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 00:14:42.48 ID:GsSMg3i50


貴方「ちょ、ちょっと! 何してるんだよ!」

QB「きゅ……? ん……?」


 銃口を押し付けられて、キュゥべえはやっと目を覚ます。

 そして、自分の置かれている状況を理解した。


QB「ほ、ほむら……? これは…………――!?」

ほむら「最後の憂さ晴らしに、私がお前を殺す」

QB「なんで……? た、助けて……………っ!」

貴方「や、やめろって!!」


 咄嗟に変身して目の前の暁美さんに飛びかかったが、まるで霞のようにすり抜けてしまう。

 さっき神だとか悪魔だとか言ってたが、本当に『この世界』の存在ではないということを物語っているようだった。


ほむら「インキュベーターは本来、感情を持たない異星人だった。こんなふうに怯えることもない生き物だったのよ」

ほむら「本来のソウルジェムはこいつに造り替えられた魂そのもの。そして、濁り切れば魔女を生み出す卵」

ほむら「壊れたり身体から離れすぎることがあれば魔法少女は生きていられない。……そんなことも教えてくれずに私たちは利用された」

ほむら「そして、殺しても殺しても代わりが沸いてくる倒せない敵……それが本来のキュゥべえよ」

ほむら「杏子とかは、自分の知る記憶との態度の違いに違和感を持ったかも」

ほむら「この世界のキュゥべえには感情を与えた。苦しんでもらうためにね」

QB「…………! …………!」


 キュゥべえは声にならない声を上げていた。

 だが、逃げられないことを悟ると、最期の瞬間――――俺に向けて言葉を遺して、逝った。


QB「……【貴方】……仲良くしてくれて、サンキュー……ベリー…マッチ――――――」


 銃声が響く。周りに人はいるはずなのに、誰もこちらに関心を向ける人はいなかった。


貴方「な、なんでその言葉をよりによって、今……全然似合わねぇよ……! こんなことなら適当に言葉教えるんじゃなかった!」

貴方「……暁美さん、こいつは人とズレてるし鈍感だけど悪い奴じゃないし俺はそこそこしゃべってたんだ。君の分身……もな」

貴方「俺からしたら本物だし一人だけだろ! 大体、本来とか偽物だとか、さっきからなんなんだよ!」

ほむら「【貴方】くんが今挙げた特徴は本来の名残ね。『外』を見てみなさい」
437 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 00:29:44.00 ID:GsSMg3i50


貴方「外…………? ここはもう外だろ?」

ほむら「意識すればもう見えるはずよ」


 ここは帰路の途中……もちろん屋外だ。

 でも、そういうことではなく。


 『外』に意識を向けると、そこは――――見覚えのある部屋。

 時計のように並んだ椅子の特徴的なこの部屋は……暁美さんの部屋だった。


 そして、そこには暁美さんがいた。『外』の暁美さんがこちらに向けて語りかける。


ほむら「……こっちが見えたわね」


 暁美さんの部屋の壁から見ているような視点だ。そして、『こちら』はまるで壁の一部のような――。

 本来だとか偽物だとか言ってたけど、これじゃあ……今まで現実だと思っていた世界は?


貴方「それが……外の世界?」

ほむら「これも本当の空間じゃない。ここは『どこでもない空間』なのよ」

ほむら「もうすぐ宇宙は造り替えられる。今度は私が造り替える。ここはそれまでのほんの一瞬」

ほむら「私が……造り替える前の世界を懐かしむための場所」


 外の世界の暁美さんは……そう言いながら、切なそうに笑っていた。

438 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 22:11:42.13 ID:GsSMg3i50


ほむら「『ソレ』は私と貴方のための世界」

ほむら「ワルプルギスの夜なんて無縁で、ソウルジェムはただの魔力の源。季節が流れ、年を越し、進級する――そんな平和な世界」

ほむら「ついでにみんな仲良く――――というのは、今回は『私』のせいで壊れてしまってたけれど」

貴方「……なんで俺のため?」

ほむら「決まってるじゃない。貴方がこのゲームの主人公だからよ」


 ゲーム……そういえばさっきも言っていた。

 何がゲーム? 特別なことをしてた覚えはなかった。


ほむら「私はまどかを救うために契約した。でも何回過去に戻っても救えなかった。最初は他のみんなも救いたかったけど、諦めた」

ほむら「真実を知っては絶望する。ワルプルギスの夜には勝てない。まどかは繰り返すたびに素質を増して、契約して……魔女になる」

ほむら「これが本当の私の『経験』。まどか以外に自分にすら興味を持つこともできない、こんな性格にもなるわよね」

貴方「…………」

ほむら「……いえ、そこからまたさらに変わってしまったわね」

ほむら「貴方のいる世界は、本来の世界から邪魔な『絶望』だけを取り除いて再現させた世界。いわば魔法で作られたシミュレーションのようなものよ」

ほむら「前提設定が違っても、目標は同じ。みんなと向き合って、各自の抱える問題が解決できれば攻略完了……つまりゲームクリア」


ほむら「さやかには正義の魔法少女としての在り方の自信と、失恋を乗り越える力を与えた」

ほむら「マミには孤独と奥底に抱える戦いへの恐怖の克服を」

ほむら「まどかには自分への自信を与え、自己犠牲が最善とは限らないことを教えた」

ほむら「杏子には未来への希望を与えた」


 ……暁美さんはみんなの名前を挙げたが、自分の名は口にしなかった。
439 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 22:13:41.63 ID:GsSMg3i50


ほむら「世界を繰り返した末、貴方は見事にクリアした。でもこれは現実じゃないからもうお別れしないといけないの」

ほむら「いくらまどかから奪った力でも現実は仮想の世界ほど都合よく造り替えられない」

ほむら「特に私自身はね。自分の記憶までいじるとろくなことにならないのは決まってるし、思い知ったばかりだもの」

貴方「じゃあ……俺はなんだったんだ? なんで俺が主人公なんだよ」

ほむら「貴方、自分の過去をどこまで思い出せる?」

貴方「自分の過去?」


 今から遡っていって、契約した時のこと……今学期のはじめ……みんなとの出会い……家族との思い出。

 今まで気づかなかったのが不思議なくらい、近くの記憶ですらぼんやりとしていた。幼少期なんて完全に思い出せないことに気づく。


ほむら「その世界には『矛盾』を気づかせないために多くのことに制限がかかっている。貴方が自分を考えることも、その一つよ」

ほむら「与えられた設定と、普通の人間であること……それ以外に貴方の個性はないわ」

ほむら「貴方は本来『誰でもない』、けれど私たちの近くにいた『誰か』である存在。つまり、本来私たちとは深く関わることはない人だったのよ」

貴方「……」


 ずっと自分を普通の人だと思ってた。語ることがないくらいには平凡な家庭、過去……。

 でも違う。なにも無いから語れないだけだったんだ。


ほむら「もう言葉も出ない?」

ほむら「貴方にもお仲間にもこれ以上出来ることはないわ。その世界でいくら足掻いたところでゲームは現実に干渉できないもの」

ほむら「じゃあ……名残惜しいけれど、さようなら。世界」

440 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 23:01:46.04 ID:GsSMg3i50


 この世界のことを理解したからだろうか……。

 リセットでなくなったはずのみんなとの思い出……、この世界であったことを全部思い出した。


 暁美さんと作るはずの未来――さやかと考えた未来――巴さんと支え合う未来――

 ――仁美と約束した未来――鹿目さんと進級する未来――佐倉さんと誓い合った未来――


 それらは全部叶わないのか。やっと希望を持てたって人もいるのに。


 暁美さんとは険悪になったこともあった。でも、最後は仲良くなれた。

 最初に会った暁美さん。まだ気の弱い少女だった頃の彼女とだって仲良くなれた。

 そしてそれは…………



 紛れもなく目の前の暁美さんの『一部』でもあるはずだった。



貴方「暁美さん。暁美さんにも俺が与えられたものはあるはずだよ」

貴方「最初の『攻略』では何に頼らなくとも堂々と振舞える自信を……」

貴方「最後の攻略の時は、色んなものを失いすぎてて何をというのも難しいけど……心の支えにはなれたと思う」

ほむら「……ゲームの話だわ。本当の私じゃない」

貴方「でも、分身なんでしょ。そっちからしたら所詮現実じゃないのかもしれないけど……」


 俺の知る世界にいた暁美さんは分身なのだから。記憶と経験の差があれど、内面は同じはずだ。


貴方「暁美さんはみんなの救われるところが見たかったんだよな。その中には暁美さん自身も本当は含まれてたんじゃない?」

貴方「じゃなかったら、俺みたいなどこの誰かもわからないヤツじゃなくて自分の分身を主人公にすればよかったんだ」

ほむら「何を今更……私には無理よ。私には誰かを救うことなんてできない。できなかったからこうなったの!」

貴方「それは、この世界にはなかった『絶望』に邪魔されたからじゃなかった? 俺だってそんな事情があったらこうはいかないよ」

ほむら「それがなくたって……。私を見てきたならわかるでしょう」

貴方「なら、暁美さんはずっと誰かに助けてもらうことを望んでたんだよ。……本当に辛い時、助けてあげられなくてごめんな」

ほむら「何故謝るの……?」

貴方「だって、俺は『誰でもないけど近くにいた誰か』……なんだろ?」

貴方「きっと現実でも今までも近くにはいたし、これからも近くにいるはずなんだ。今度こそ、きっと、現実でも助けるから」

ほむら「…………」

441 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 23:17:03.13 ID:GsSMg3i50


貴方「……この世界を終わらせる前に、こっちの暁美さんに会う時間だけくれないか」

貴方「他の記憶も思い出したけど、やっぱ今の俺にとっては暁美さんが一番なんだ」

ほむら「な、なんなのよ……。世界が終わるということは死ぬのと同じなのよ? 貴方も、貴方の友達も、す……好きな人も全部ッ!」

ほむら「どうしてそんなに落ち着いていられるの? 私を倒すんでしょう? ……自分と友達を殺す私が憎いでしょう?」

貴方「足掻いたって無理なんだろ。神様か悪魔か知らないけど……俺が今まで倒してきたのは『この世界の魔女』で、別次元の存在の倒し方なんて知らないし」

貴方「そっちには手を伸ばすことも叶わない」

ほむら「……」


 手を伸ばすが、ただ往来の中にいる自分の前に自分の手があるだけだ。『画面の向こう』へは届きそうにもなかった。


貴方「じゃあ、またそっちの世界で会ったらよろしくな」




 伸ばした手を戻して、帰路の途中で進む道を変える。

 『外』にはもう意識を向けなかった。俺の世界はここだ。たとえ世界が終わるとしても、最後の瞬間までここでいい。




ほむら「…………私だって、会いたかったわよ。もっと昔に……こうなる前に……」

ほむら「いいえ……どうせ、あれは…………」

ほむら「本当はもっと、深く関わらなかったクラスメイトもいっぱいいたのよね……。でも私には関わる勇気も余裕もなかった」

ほむら「話していたら何かが変わったのかしら……?」

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