【安価スレ】堕ち行く光

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103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 23:32:44.63 ID:G/8aIQwfO
空模様は悪化し続け、雨量も増し続ける。視界も塞がる土砂降りの中、リヒトは雨宿りの場所を探していた。

濡れた階段を勢いよく滑り、目についた建物に駆け込もうとするが、どこもかしこも満員御礼だった。

「−−−−♪」

鼻歌交じりのマナは上機嫌だが、さもあらん。雨は自然の恵みだ。それを浴びている現状は、彼女にとって心地良いのだろう。

「うぅ寒い寒い。早く雨宿りしないと風邪引いちまう」

それは妖精にとっての話で、人間からすればいい迷惑なのだが。
コート越しに身体を打ち据える豪雨が、ひたすらに体温を奪っていく。このままじゃまずい、とリヒトはとにかく走った。

そしていつしか、スラム街まで来てしまっていた。
放置されている廃屋のおかげで雨露を凌げるが、スラム街の様子など知らないので不安だ。
願わくば、お馬鹿な悪党に絡まれませんように。

そんなリヒトの祈りは届くのか。当の本人は露ほど期待しちゃいなかったりする。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 23:33:20.38 ID:G/8aIQwfO
何をするかを↓1にどうぞ。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 23:56:29.02 ID:IkVY/dy8o
ここを根城にしていたミェンが帰ってきたので勧誘する
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 00:44:57.76 ID:Rd/H027sO
「あれ」

「おや、昨日ぶりだね」

雨が止むのはいつなのか、と光魔法で鳥を作ったりして遊んでいると、突然声を掛けられる。
想定していたお馬鹿な悪党ではないようで一安心というものだ。もし彼女が悪党なら、それはそれとして遠慮なくぶちのめすが。

「リュクスさんがなんでここに?てっきり宿屋にいるかと思ったよ」

「雨宿りしたくてね。ついでに、スラムがどんなところか見物に来たんだ」

「変な人だね。普通、レムカーナのスラムと言ったら誰も近寄らないのに。…まぁ、だからボクが居座れるんだけど」

ミェンはぼろぼろの椅子を引っ張り出し、それを指差した。どうやらここに座ってもらいたいようだ。
断る理由もないので、リヒトは椅子に座った。ミシミシと音を立てている脚が折れないか心配である。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 00:45:39.64 ID:ukfcFGrGO
「それで、ボクに何をしてほしいの?知り合いでも、お代はきっちり頂くからね」

「は?」

「え?」

ミェンの口から出た言葉はあまり気分の良いものではなかった。
浮浪児の少女が一人で生きるのならそういうことをしているのだろう、と予想はついていたが、いざこうして言われると、なかなか来るものがある。

「お客さんじゃないんだね。ごめん、今のは忘れて」

よりによって、彼女の返答がこれだ。隠す気がさらさらなくて、もう笑うしかない。

「…まぁ、そういうことをしてるんじゃないか、とは思ってたが。なるほど、この廃屋で待つのが合図なわけか」

「忘れてよぅ」

ぷりぷりと怒るミェンに小さい笑い、廃屋の並ぶ通りを見つめる。微かに人の気配がするから、どこかに潜んでいるのだろう。

「雨、止まないな」

「こんなに曇ってたらね。おかげで、今日の稼ぎが台無しだよ」

パンの切れ端を齧るミェンは、どことなく哀愁を漂わせている。スラムに住む貧困層など皆こんなものだと言われれば、そうなのだが。

天井を見つめ思考を纏めたリヒトは、意を決したようにミェンを見やり、口を開く。

「なあ、少しいいか?」

「んん?」

パンを飲み込んだミェンは、幽者の声に反応し、顔を向けた。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 00:46:13.02 ID:8F5nP2eyO
我ながら馬鹿正直に答えたものだと。のちにリヒトが激しく後悔するミェンの勧誘。

それを聴いていたミェンは、茶化すでもなく、ただ黙々とリヒトの言葉を聴き、意味を咀嚼していた。

「君の知ってる俺とは話し方が違うだろうが、それはご容赦いただきたい。…俺には素性を隠す理由があるもんでな」

「気にしないよ。続けて」

「助かる。俺はリュクスなんて名前じゃない。本名はリヒトつってな。指名手配されてる有名人にも同名の奴がいるだろ?あのリヒト本人だ」

言外にリヒトの正体を言いふらしたらどうなるかを示しているのだが、そこまで伝わっているかは定かではない。
まぁ伝わっていようがいまいが、勧誘することには変わらないが。

「昨日話した、死んだ仲間との約束。内容は言ってしまえば至極単純でな。『出生や性差等に囚われない、正しく才能や努力を評価される国を作る』。他の人には馬鹿にされるような荒唐無稽な夢さ。笑ってくれて構わないよ」

「笑うわけないよ」

真っ直ぐにこちらを見つめるミェンに心中で感謝しつつ、リヒトは手を差し伸べる。

「俺の夢には、足りないものが多すぎる。だから、君さえ良ければ、俺に力を貸してほしい。俺も出来る限りの支援をする。だから、どうか」

二人の視線が交錯し、無言の空間が広がる。瞑目ののちに、ミェンははっきりと答えた。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 00:47:06.86 ID:8F5nP2eyO
ミェン勧誘 判定↓1コンマ
本レスよりコンマが高ければ成功です。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 00:52:41.09 ID:fOAR2VFvO
難易度高いなあ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 00:56:59.19 ID:fQORAuivo
コンマさんは主人公がお嫌いのようだ……
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 01:06:45.16 ID:XVk1W2XpO
「ごめん」

示されたのは、明確な拒絶の意志。ここまできっぱりと言われては、いくら食い下がっても無駄だろう。

「ボクにそんな大役は似合わないから。もっと他に、君に相応しい人がいるはずだよ」

「ごめんね。君は勇気を出してボクを誘ってくれたのに袖にしちゃって…」

「…いや、いい。俺みたいな奴に、普通命なんて預けられないよな。仲間一人守れなかったような、指名手配されてるような奴に。見通しの甘さが知れただけでも収穫だ」

「…じゃあな。風邪、引くなよ」

「うん。君も、体調を崩さないようにね」

頃合いを見計らったように雨が弱まる。リヒトは逃げるようにスラムを去り。
幽者を見送った少女は、最後のパンを口に含んだ。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 01:07:28.04 ID:XVk1W2XpO
何をするかを↓1にどうぞ。
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 01:16:35.86 ID:fQORAuivo
かわいそうに思ってくれたのか、マナの手が後頭部を撫でる
(こういうのでもいいですか?)
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 01:20:05.62 ID:YuqHsaUgo
勧誘がここまで大変となると初めから同志だったシルヴィアの死がかなり痛いな。心情的にも労働力的にも
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 01:20:44.70 ID:2gOGWv6WO
今回はそのまま進めますが、リヒト主体の行動だと助かります。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 01:35:47.72 ID:fQORAuivo
分かりました
すみません
ありがとうございます
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 01:46:52.21 ID:NSom125XO
夕方。宿屋に戻り椅子に腰掛けると同時に、雨がまた降り出した。ここまでひっきりなしに降るとは、明日は快晴になってもおかしくない。もしかしたら、逆に槍や矢でも降ってくるかもしれない。

雨音を聴きながら、ただ時間が過ぎるのを待つ。盛大に勧誘をしくじった今、何もする気が起きない。
食事が運ばれたが、それに手を付けることもせず微動だにしない。石像のように、リヒトは静かにしていた。

数刻後、ゆっくりと船を漕いでいたリヒトは、不意に目が覚めた。机には冷め切った料理が残っており、ランプの灯は既に消えていた。

「…いつのまにか寝てたか」

凝り固まった身体を解すべく立ち上がろうとするが、違和感に気づく。妙に肩が重いのだ。

「おきた」

「んぁ…?なんだ、マナか」

人様の肩に座り込んだ妖精は、その小さな手で人間の頭を撫でていた。あり得ない行動に、リヒトは顔を顰める。何か悪いものでも食べたのか。それとも、頭でもぶつけたのか。

「わたしがねるとき、しる?ぃあはいつもこうしてた。ただそれだけ」

リヒトの疑念を感じ取ったのか。マナは無表情なまま、口を開いた。

「おきたならもうしない。ねる」

そして、それだけ述べると布団に包まり、寝息を立て始めた。

「…情けねぇなぁ、俺…」

誰にも聞こえないほど小さな声量で、幽者は己の無力さを嘆いた。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 01:47:34.06 ID:NSom125XO
何をするかを↓1にどうぞ。
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 02:03:53.69 ID:iNsBmo4DO
魔法学院というのがあるならそこへ
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 12:24:50.21 ID:gZ37uU54o
幾らシルヴィアが死んで傷心だったからといって昨日会った子にいきなり勧誘は急すぎたんだ
もっと段階を踏むか危機を救うとかすれば判定コンマは易化すると思うんだ(多分)
何が言いたいかというと早まった申し訳ない!
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 13:58:58.53 ID:wzhM8H4/O
どこの国にも、魔法を研究し学ぶ機関が存在する。魔法の歴史は人類の歴史であり、そこに隠された真理を探究することは、未来を照らす光明と成る。
レムカーナに存在する同様の機関は、邸宅街に設立されている『レムカーナ王立魔法学院』である。
『真理の果てに希望が在る』。この言葉と共に日進月歩していたのだが情勢悪化に伴い形骸化し、その様相は見る影も無くなった。
中には真面目に研究を進めている者もいるが、真理を追い求める魔法使いの集う神聖で高潔な聖域は貴族のお遊び会場になりかけているのが実情だ。

表向きは『才能さえあれば家柄や身分に囚われず探究を行える平等な学院』ということで通っているため、平民や流浪人、果てはスラム街の住人ですら、この学院に籍を置く者もいる。
内情ははっきり言って『クズの掃き溜め』、『現世に顕現した地獄』と呼ばれる程度には終わっているわけだが。

そのため、現状に鬱屈した感情を溜め込んでいる魔法使いはかなりの数に及ぶ。『誰かこのクソみたいな学院を壊してくんねーかな。私は真理を知りたいのであって、金持ちに媚を売りたいわけじゃないんだけど』と考えている人が大多数だ。

故に、リヒトとしても都合の良い場所だった。上手くいけばワンチャン仲間を増やすことが出来る。惜しむらくは。

「俺魔法使いじゃねーからな。どうやって潜入するべ」

そう。リヒトは戦闘の達人であって、魔法使いでは断じてない。普段使っている光魔法も、実際は理論など関係なしに魔力量で取り繕った、俗に言うごり押しで形にしている魔法なのだ。
尤も、その魔法で大概の敵は昇天したわけだが。やはり暴力は全てを解決する。

リヒトが戦争の中で知った真理。それは、力こそパワーであり圧倒的な暴力こそジャスティスだというあまりにもあんまりな結論だった。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 13:59:41.63 ID:wzhM8H4/O
レムカーナ王立魔法学院で何をするかを↓1にどうぞ。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 15:53:57.85 ID:Rmj79zvDO
燻ってる不満分子を見定める
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 20:49:14.70 ID:UlMAlwdBO
「悪いな。ちょっと眠っててくれよ」

運悪く幽者の目の前を通り過ぎた学院の生徒は、ボッコボコに殴られて夢の中にいる。
真っ黒な包帯を巻いていたり頭蓋骨が刺さった杖を持っていたりと色物感が否めないが、リヒトには却って好都合である。
素性を隠し堂々と学院に潜入する手段を得た。ならば、次にするべきことは。

この学院には火種が大量に燻っている。その原因は貴族の横暴なのだから、彼らがどうなっても自業自得と鼻で笑われるだろう。
だが、所詮は火種。派手に燃え上がっていない今は、水面下で慎ましく行動するしかない。
そういう後ろめたい隠しごとをしていれば、態度に僅かながらに表れるものだ。それを見抜けば良い。

恨むなら貴族を恨め。そう念じながら、生徒の身ぐるみを剥ぐ。意外なことに、風変わりな魔法使いは相当の美人だった。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 20:51:02.96 ID:UlMAlwdBO
判定 ↓2までのコンマ


00〜40:見つからない
41〜80:個人発見
81〜99:コミュニティ発見
00:???
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 21:03:09.79 ID:a9u/Ga6ro
うーい
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 21:12:21.61 ID:36mqMJwQo
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/08(月) 21:15:16.20 ID:xoNVfWUOO
仲間を二人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 21:18:06.65 ID:7dn/tNJhO
【名前】ミミル
【人種】兎の獣人
【性別】女性
【魔法】生命魔法
若くして魔法学院で研究者の立場に就く才媛で、生命力に干渉して回復や吸収、探知などを行う生命魔法と医学のエキスパート。
白い髪と赤い瞳、シミ一つ無い白い肌。兎の耳と尻尾。背丈や顔立ちは10代前半に見えるほどだが、豊かな胸やくびれた腰回りなど早熟な体つき。つり目がちな目付きと生意気そうな雰囲気がある顔立ち。
白衣と学院の制服。
プライドは高いが善良な気質の努力家で、研究の動機も医療で人命を救うためというもの。口調は丁寧だがかなりの毒舌家。
医療の道を志しているため流血やグロには耐性があり、いざという時には機転もきく。
彼女の研究は生命魔法と医学の併用による再生医療で動物実験の段階では四肢と臓器を失なった(抜いた)モルモットを完治させている。
しかし、ナンパしてきた貴族を袖にしたところ研究費の減少や妨害、嫌がらせなどが始まり現在研究は行き詰まっているため、貴族に怒りを抱いている。
なお、売女と陰口を叩かれているが、逃げ足が速く恋愛経験もないためいまだ清い体である。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 21:20:08.46 ID:bG6xUggpO
【名前】ウィンディ・ヴァルマンウェ
【人種】人間
【性別】女
【魔法】風魔法
長い緑の髪を二つ結びにした小柄な少女。以前にシルヴィアの教えを受けていた魔法使いの一人
一見陰気だが、根には他者の痛みを理解して共感できる知性と優しさを持つ
また、魔翌力量が非常に大きく、魔翌力操作の精密性も極めて高い。反面体はとても弱く、頻繁に体調を崩す
風を操ることで空を飛ぶことができ、馬車一台分程度の荷物であれば空輸させることも可能。単独飛行はほぼ無制限に行えるが、荷運びはとても疲れため多用できない
平民の出であり、病弱なことや才能への嫉妬などにより他の魔法使い(主に貴族層)から嫌がらせを受けることが多い
シルヴィア失踪後は嫌がらせが一層増えたため学院を出ることも考えたが、何の後ろ楯もなしに病弱な自分が外で魔法使いとしてやっていけるとも思えず、毎日心身を磨り減らしながらなんとか生きている
こういった事情から、自身の人生や世の流れにはかなり悲観的
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 21:46:51.42 ID:iNsBmo4DO
シルヴィア繋がりみたいなのは割と考えやすいね
良くも悪くも影響力強かったはずだし
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 12:42:01.15 ID:Zio9jdZWO
レムカーナ王立魔法学院の生徒に扮装したリヒトは、意気揚々と学院内を練り歩く。人選は間違っていなかったようで、特に怪しまれてはいない。
近くを横切っただけなのに『うわでた』だの『こわ…近寄らんとこ…』だの散々な言われようだが。本人の扱いが伺えるし、流石に同情する。

「………」

包帯に染み付いたお香のような匂いに精神的ダメージを受けながら、生徒の様子を観察する。
貴族のグループで談笑する女性たちの目は全員死んでいたが、それ以外に怪しいところはない。
早々に見切りを付け場所を変える。複数ある研究棟なら誰かいるだろうと淡い希望を抱いて。

果たして、その希望は成就することになる。

「…はぁ」

開きっぱなしのドアから、こっそりと内部を覗く。薬の匂いと学院に似つかわしくない血生臭い臭いが混ざり、本能が嫌悪する悪臭が漂っていた。
戦闘で培った胆力を以って不快感を抑え込む。が、それでも辛いものは辛い。
顔を顰めていたリヒトは、その惨憺たる光景に絶句した。

研究用に飼育していたと思しきモルモットは惨たらしく殺されており、趣味の悪いことに、モルモットから引きずり出された内臓で、罵詈雑言が書かれていた。犯人の性格が悪すぎて笑えない。

被害者は溜め息を吐き、黙々と遺体を壺に入れている。あまりに痛ましい姿は目に入れることすら憚られた。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 12:42:37.30 ID:Zio9jdZWO
ミミルにどういうコンタクトを取るかを↓1にどうぞ。
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/09(火) 12:46:06.36 ID:+an3nPpCo
遺体処分や清掃の手伝いを申し出る
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 21:34:04.51 ID:if5Pl47CO
床にへばり付いた臓腑に薬品を掛け、布で丁寧に拭き取る。そんな地味な作業を泣き言や文句一つ言わず、健気に悪意の犠牲者を弔っていく。

見ているだけというのも気が引けたので、リヒトは手伝いを申し出ることにした。

「一人でこの数はしんどいだろ。俺も手伝うよ」

「…ギムレインさんの恰好なのにどうして男性の声がするんですか?????」

「やっべ忘れてた」

自分がレムカーナ王立魔法学院の生徒に扮装している不審者だということを忘れて。しかも、元の人物は変人かつ女性だ。
そんなのに成りすましている時点でどう取り繕っても変態にしかならない。つまり詰んでいる。

「…これにはそこまで深くない理由(わけ)があってだな。説明は後で必ずするから、まずはその死体をどうにかしないか?放っておいても臭いが染み付いたりで良いことないだろ」

「…それもそうですね。事が終われば通報しますのでそのつもりでお願いします」

「それは勘弁してください」

死人が大量に出てしまいます。と心の中で付け加えながら、リヒトは通報しないように懇願した。
ものすごく呆れた表情をしていたが、渋々といった感じで了承を得ることに成功した。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 21:35:15.92 ID:if5Pl47CO
「…随分と手慣れているのですね。嫌悪感は無いのですか?」

手際よくモルモットの死体を壺にぶち込んでいくリヒトに、訝しむように少女は問う。逡巡の後に、口を開いた。

「昔は色んな戦場を転々としていたからな。そりゃ、嫌でも慣れるものさ」

仲間だって何人も弔った。罪の無い人々の亡骸も、集団墓地に埋める最後の仕事まで務めた。それが、せめてもの償いだったから。

「そうですか。不躾な質問をしたこと、お詫びします」

律儀に頭を下げた少女だが、リヒトは気まずそうに頬を掻く。リヒトからすれば、別に気にされるようなことではないのだ。

「頭なんか下げんな。そもそも俺は不審者なんだから、気を遣う必要なんてねぇよ」

「なら今すぐ教師を呼んできますのでお待ちを」

「それだけはやめてくれ。流血沙汰になっても責任取らないからな」

誰の血が流れるのか。それだけは伏せておく。堂々と言えるほど、リヒトは図太くなかった。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 21:35:48.80 ID:if5Pl47CO
モルモットの詰まった壺を抱え、学院東部の人工林に入る。植生の研究も兼ねているようで、かなり立派な木が所狭しと生えている。
その中に、木の板で作られた簡素な十字架が立っていた。ここが何なのかは、見ただけで解る。

「…ありがとうございます」

地面を掘ると、両手では足りない数の壺が埋められていた。持参したものを同じ場所に供え、また埋め立てる。
少女は部屋に栽培していた花をそっと添える。柔らかい匂いが鼻を擽った。

「ご助力感謝します。私一人では、ここまで効率よく済ませられませんでした」

「別に。あんなのを無視するなんて、人としてどうかと思っただけだ」

「不審者のくせに何を言ってるんですか。今更すぎません?」

「うるせー…」

彼女には口喧嘩では勝てないとこの短時間の会話で察してしまった自分が悔しい。と、後にリヒトは語る。シルヴィアに勝つことも到底不可能だった口撃力0のリヒトに、勝てる相手がいるのか甚だ疑問だが。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 21:36:44.09 ID:if5Pl47CO
ミミルと何を話すかを↓1にどうぞ。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/09(火) 21:42:00.59 ID:8JIaHbQuo
こいつ(服の持ち主)はどんなやつなんだ?
どうも避けられるんだが
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 21:55:20.87 ID:RwbwFD4EO
「…ところでさ」

「はい」

「この服の持ち主どんだけやべー人なんだ?どうにも避けられてて気になるんだが」

自分を指差しながら問うリヒトに、ミミルと名乗った少女は呆れていた。

「ギムレインさんを知らないんですか。学院では有名な方ですよ」

「へぇ。どんな感じに有名なんだ?」

「呪詛魔法の研究者です」

なるほど。怯えられる理由が分かった。そりゃ近寄られたら怖いよな。リヒトはミミルの解答に疑問が氷解し、大きく頷いた。

「『自分にセクハラをした貴族や教師を呪死させた』、『魔法の研鑽のために故郷を呪って滅ぼした』との噂もありますよ。所詮は噂なので、確証はありませんが」

「………」

こんな噂が流れていて、平然と学院に通えるギムレイン嬢の精神力に、リヒトは心の底から震え上がった。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 21:55:46.62 ID:RwbwFD4EO
ミミルと何を話すかを↓1にどうぞ。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/09(火) 22:33:22.69 ID:UGSyC+CFO
ミミルはどんな研究を?
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 23:03:00.44 ID:DKnXKfFAO
色々な意味でとんでもない逸材のギムレイン嬢をしばいてしまったことを内心謝罪しつつ、次の話題へシフトさせる。
このままここにいない人の話で盛り上がっても、リヒトに何のメリットも無いのだ。

「ミミルはどういった研究をしてるんだ?モルモットを飼ってたってことは、薬関係か?」

「再生医療です。生命への干渉を可能とする生命魔法と、傷病を治療する医学を併用し、人命を救う技術です」

「すごいな。その再生医療とやらは、どこまで治せるんだ?」

「まだ臨床試験もしていない…志願者がいないので、動物実験の成果のみになりますが…。両前脚と消化器官を摘出したモルモットを完治することに成功しています」

「…完治?腕も内臓もそっくり再生したってのか?」

「ええ。貴方に埋葬していただいた子が、その被験体でした」

「…なるほどな」

下劣な輩によって命を奪われた数匹のモルモット。散乱していた内臓の量からして、彼女の言葉を真とするならば、確かに再生していたのだろう。それだけの量の内臓が、あの部屋には散らばっていた。

「…尤も。研究がこれ以上進むことは無さそうですが。彼らにとっては、人命よりも自信の悦楽の方が重要なようです」

あれほど陰湿な仕打ちを受けているのだから、彼女の現在の状況も想像がつく。
大方、このツンツンしている少女に惚れた男が、フラれた腹いせに嫌がらせをしているのだろう。
嬲ったりせずにネチネチと姑息な手を使っているのを、最後の良心が残っていると言うか卑怯者と言うか評価は別れるが、人間性が悪いことに変わりはない。

「…あの時の俺なら、有無を言わさず殺してただろうな」

世界に絶望しきり、破滅的な生活を送っていた時期が、リヒトにはあった。
当時の自分であれば、こんな話を聞いていたら即座に手を出していたことは想像に難くない。
昔と比べたら随分と堪え性があるものだと、自嘲気に笑う。

「一人で何笑ってるんですか。気持ち悪いですよ」

そして、刺々しい毒を浴びた。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/09(火) 23:04:03.19 ID:DKnXKfFAO
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ミミルとのファーストコンタクトを終了します。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/09(火) 23:19:43.48 ID:8JIaHbQuo
ここはいったん終了

(再生ってミェンと繋げられるんかなーって思ったけど尻尾どころか耳の事情さえ聞いてなかったわ厳しいか)
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/10(水) 01:15:22.62 ID:uzE1s5b8O
学院中央に聳え立つ巨大な時計塔に視線を移すと、扮装してからきっかり30分が経過していることを示していた。
あと数十分もすれば目を覚ますだろう。それまでに事を済ませねばならない。

「俺はもう失礼するわ。後生だから通報だけは…」

大人が自分より年下の女の子にぺこぺこ頭を下げる情けない姿。それを見ながら、ミミルは首を横に振った。

「私はギムレインさんと話をしただけです」

そんなことを言って、彼女は口を閉ざした。目も瞑っており、見ざる聞かざる言わざるを決め込んでいる。
この態度が明確な返答であり、彼女の優しさとも取れた。

「…サンキュ」

リヒトは頭を下げ、音もなく姿を消す。気配が無くなったのを感じ取り、目を開く。
そして、溜め息混じりに言葉を漏らす。

「人を救いたい。その無垢な思いは、人の欲望一つで無惨に踏み躙られるべきものなんでしょうか」

少女の独白は、虚空に溶けた。
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/10(水) 01:16:10.89 ID:VcuADvnDO
ミミルの元から遁走したリヒトは、学院正門まで戻って来ていた。タイムリミットは刻一刻と迫っているので、無駄な時間は過ごせない。
効率よく内部を調べねば、と意気込み、一身に浴びる視線を無視して学院内を走り回った。それはもう走りまくった。
翌日からは『俊足の奇行師』などと呼ばれかねない不幸なギムレイン嬢に、後ほどお詫びのお菓子を差し上げよう。そう心に決めた。

そんなこんなで爆走していると、近くの保健室から人の気配がした。

「………」

ベッドに横たわり、虚な目で天井を見つめる緑髪の少女。カバンからはぼろぼろの手紙が顔を出しており、枕元にも同様に傷ついた書物が置かれている。

彼女以外に人の気配は感じられない。保健医さえも、この場にはいないようだ。利用者を置いてどこかに行くなど職務怠慢な気がするが、却って好都合なので黙っておく。

「けほ…」

咳き込む少女の顔は赤く、息は荒い。もしかしなくても風邪を引いている。

「最後に風邪引いたのいつだっけな」

ふと気になり記憶を辿るも、風邪を引いた記憶は欠片も無い。そもそも、病気にかかった記憶が無い。
昨日だってあれほど濡れたのに、熱っぽさは一切無い健康体だ。頑丈な身体を持っててよかった。
そんな場違いなことを考えていると、窓が開かれた。

「…誰ですかぁ!?」

「おわぁぁぁぁっ!!?」

突然の大声に驚いたリヒトは窓際から墜落するが、光の翼を生やして何を逃れる。
真っ黒な包帯を巻いて骸骨付きの杖を持った変態からさらに光輝く羽が生えた変態にランクアップした変態を見て、少女は絶句する。
どう弁明するか悩むリヒトだったが、もう手遅れなことに気がついた。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/10(水) 01:17:12.25 ID:VcuADvnDO
ウィンディと何を話すかを↓1にどうぞ。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/10(水) 01:35:48.65 ID:HjvcNx8nO
自分のことは誤魔化しつつ、水や薬や氷枕など必要なものがないか訊いてみる
151 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/11(木) 03:10:25.34 ID:2FUsnFcC0
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152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 03:18:44.68 ID:T1bfsHiBO
空中で腕を組み、仁王立ちをしたリヒトは、威風堂々とした覇気を纏い、威勢よく吼えた。

「今は俺が誰かなんてどうでもいい!!!!」

「よくないです!ぜんっぜんよくないですよ!!?」

少女は首と手をぶんぶんと振り否定するが、リヒトは知ったことかと無視を決め込む。

「うるせぇ!今の君に必要な物があるならなんでも持ってきてやるから言えってんだ!!!!!」

「言ってることの割に語気が強すぎる!優しいのか怒ってるのか分かんない!…お水と身体を冷やせる物をお願いしますぅ」

「合点承知」

要望を聴き受けるや否や、放たれた矢の如くリヒトは駆け出す。呆気に取られているのも束の間、光と共に不審者は帰還した。

「速すぎません?」

「速いと困ることがあるんですかぁ!?」

「逆ギレ!?」

荒々しい言葉遣いの不審者に病人は狼狽えてばかりだが、これもリヒトの思惑の内だったりする。
自身のことを訊かれないように、ツッコミどころを量産して誤魔化す姑息な手である。
思惑通り、少女はリヒトの正体について問うことはしなかった。代わりにげっそりしているがたぶん大丈夫だろう。

「…えと。少し失礼しますね」

濡れたタオルと水筒を受け取り、少女は頭を下げながらカーテンを閉めた。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 03:19:25.60 ID:T1bfsHiBO
ウィンディと何を話すかを↓1にどうぞ。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 12:03:54.95 ID:nOIEdly5o
保健医はいないのか聞く
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 14:18:46.20 ID:mEegrHlLO
「お見苦しいところをお見せして失礼しました」

数分後、カーテンを開けた少女は恭しく謝罪をした。気にするなとリヒトは答え、頬を掻く。
ベッドに腰掛け、窓を見る少女。『ウィンディ・ヴァルマンウェ』と名乗っていた彼女は、なおも謝罪を続ける。

「見ず知らずの貴方の手を煩わせてしまったことも詫びなければなりませんね。他人に迷惑を掛けてばかりの自分が嫌になります」

「迷惑には思ってないけどな。たかがお使い程度で機嫌を損ねるほど、俺は子供じゃないつもりだ」

と、つっけんどんな態度を取っているが、これが照れ隠しでしていることなのは本人も自覚している。
仕事柄、感謝を受けることには慣れていたのだが、素直に受け止めるのが苦手な難儀な性格をしたお子ちゃまであることも自覚していたりする。どうせ矯正は出来ないと諦めているが。

「…んで、何故ここには保健医がいないんだ。病人がいるのに留守にするなんて、おかしいだろ」

「昨日に雨が降ったからです。雨が降った翌日は、決まって体調を崩してしまうので。私みたいな人の面倒を見たくないんでしょう」

「だから、いつもここにいる時は一人ですよ。貴方が気にすることではありません。私も気にしてないですし」

「…そうか」

そう呟き笑うウィンディの顔は、あまりに儚くて見るに堪えなかった。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 14:19:29.54 ID:mEegrHlLO
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 14:41:07.25 ID:R0P2SG5S0
他に体のことを気遣ってくれる友人や教師はいないのか聞く
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 20:18:34.04 ID:xJ52IN+MO
「いるわけないですよ?」

身体のことを気遣ってくれる友人や教師はいないのか。試しに質問をしたリヒトだったが、猛烈に後悔している。
いくらなんでも返答が速すぎる。それが当然の摂理かのように、ウィンディは答えた。

「私みたいなすぐ身体を壊す魔法だけが取り柄の病弱体質の面倒を見てくれる優しい人なんている方がおかしいですよ。貴族の方たちの嫌がらせを現在進行形で受けているので厄介事に巻き込まれたくない人は私を避けてます。つまりぼっちです。まぁこれは入学当初から変わってないんですけど」

「速い速い」

捲し立てるように喋り続けるぼっちに、不審者は頭痛がしてきた。このまま不幸話を続けさせても気が滅入るだけなのだが、何故かウィンディはハイテンションである。
熱で頭がおかしくなっているのかもしれない。

「唯一こんな私を慮ってくれてた先生が一人だけいたんですけど、去年から手紙がぱったりと届かなくなって。何度も何度も何度も何度も何度も何度も送っているんですけど、現在も音信不通だしその人は反逆罪で死刑になったとかもっぱらの噂だし。やっぱり私に関わった人は皆不幸になる運命なんですかね…」

乾いた笑いを浮かべるウィンディ。リヒトはただ、押し黙っていた。
血の繋がった家族からすらも愛されず、存在を抹消されかけた彼は、理不尽に苦しむ者に掛ける言葉を見つけられない。知らない。
故に、口を噤んでしまった。どんな言葉をかけても意味がないと解っていたから。
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 20:20:32.64 ID:xJ52IN+MO
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 20:27:38.45 ID:qkcwoMZ9o
もし、願いさえすればこの状況を壊せるとしたらどうするか聞く
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 20:32:38.84 ID:F+zgE8OQO
願望 判定↓1コンマ


奇数:願ったところで…
偶数:終わるのだとしたら…
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 21:06:42.18 ID:gcAkZ5+CO
どうなる
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 23:03:23.45 ID:UOJKgfR1O
「…実を言うと私、この学院にいたくないんです。何をしても嫌がらせばかりされて、誰にも認められないで。ここから逃げることも考えました。けど…。見ての通り、私は弱々しいので。学院の外に出たとしても、魔法使いとしてお役に立つことなんて出来ないから…」

故に、心ない罵声を浴びて精神を磨り減らしていてもこの学院に留まっている。抜け出せずにいる。
そんなに嫌なら逃げればいいと、悪魔の囁きをするのは簡単だ。だが、それで逃げられるのならどれほど楽なのだろう。
彼女の言う通り、逃げられずどうしようもないから、彼女はこうして苦しみ、精神を摩耗させながら生きているのだ。
甘い言葉で唆し学院から去らせたところで、彼女に良い影響は無い。もがきながらも必死に生きている少女の今までを否定するのと同義だ。
彼女自身の意志で選ばせる必要がある。束縛から解放され世界に反旗を翻す、修羅の道を。

「…もしも。願うことで状況が変わるとしたら。この苦しみを終わらせることが出来るのなら。ウィンディ・ヴァルマンウェ。君はどうする?」

「変革を願い、苦難の待ち受ける修羅の道を征くのか?それとも、腐りゆく世界の中で、終わりが来るのを祈りながら耐え忍ぶのか?」

故に、問う。彼女の答えを。心の叫びを。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 23:03:59.21 ID:hDBjF32UO
包帯を外したリヒトは、その紅い眼差しを少女に向けた。意志を、魂を見定める紅眼は紅玉のように煌めき、それでいて闇を孕んでいる。

「わ、私、は…」

温度が急低下した視線を受け、ウィンディは微かに震える。風邪の影響もあるだろうが、その主因は恐怖だ。
心の奥底に押し込めていた、真なる感情。それを見抜かれているような錯覚を感じており、恐怖を覚えていた。

だが、不思議と忌避感は感じられなかった。躊躇いこそ心中にあるのだが、打ち明けてしまおうという意志の力が少しずつ勝っていく。
まだ、つい最近会ったばかりの変人にして、学院に不法侵入している不審者だというのに。
心のどこかでは、彼を信用してもいいのかもしれないと、警戒心を緩めている自分がいるのかもしれない。

「…変えられるのなら、変えたいです…っ。壊してしまいたいです…っ!こんな、人を踏み躙って快楽に溺れるのが是とされるような、世界なんて…」

「そして、こんな世界に圧し潰されているのに、仕方がないって諦めてる自分…も…!!!」

涙でぐちゃぐちゃになったなりながらも、ウィンディは必死に言葉を紡ぐ。嗚咽混じりではあったが、だからこそ。彼女の真意を聞き届けることが出来た。

「君の勇気に感謝を」

勇気を振り絞った勇敢な少女に、幽者は柔らかな微笑みで応えた。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/11(木) 23:05:23.18 ID:SQPap6frO
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ウィンディとのファーストコンタクトを終了します。
また、継続する場合は今回の会話がファーストコンタクト最後の会話となります。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/11(木) 23:17:12.82 ID:nOIEdly5o
周囲に自分たち以外誰もいないことを確認し、素顔を晒して真の名を名乗る
167 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/13(土) 03:25:34.16 ID:uIQIfXwr0
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168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:48:51.09 ID:uFvyl4yAO
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169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:49:18.73 ID:uFvyl4yAO
勇気を以って応えられたなら、こちらも勇気を以って応えるのが道義というものだ。
先日のことを思い若干逡巡を見せるが、迷いをすぐさま断ち切り、ウィンディを見る。

「まずは、君にだけ名乗らせて、自分だけ名乗っていなかった無礼を謝罪しよう」

「あ、いえ。それは大丈夫です。不審者が名前を名乗るってそれはそれでおかしいですし」

不審者であることは否定しようがないのだが、ここまではっきり言われると対応に困るものだ。
リヒトは苦笑しつつも、台無しになりかけていたシリアスな雰囲気を取り戻す。

「…俺が謝りたいことは素性を伝えていなかったことだけじゃない。レムカーナの現状は、俺が招いたと言っても過言じゃないんだ」

「えっ…!?」

今明かされる衝撃の事実。少女は自身の耳と正気を疑い、頬を抓る。痛みを感じ現実だと理解したようで、目を白黒させていた。

「う、嘘ですよね?」

「嘘じゃない。国王と宰相らの不審死…それに関わってた…いや、この言い方は逃げだな。二人を弑したのが俺だ」

「特級指名手配犯…『光燿の勇者リヒト』。その名が示すのは俺自身であり、俺こそが嘗て、勇者の名声を欲しいままにしていた英雄の残穢なんだよ。輝かしい功績ばかり語り継がれていた英雄の…真実の姿がコレなんだ。失望しただろ?」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:49:50.60 ID:uFvyl4yAO
憂いを帯びた笑みを浮かべたまま、リヒトは聖剣を取り出す。これこそが勇者たる証であり、背負いし罪の象徴である。
白銀の刀身に金色の装飾があしらわれ、光の魔力が剣から溢れ出して空へと還っていく。
神聖さすら感じさせる風貌をした剣だが、その輝きは夥しい数の命を喰らった証左だ。
首を刎ね命を喰らう度に輝きを増した聖剣は、魔剣へと堕ちるに足る素質を持っていた。
故に、リヒトが混沌に堕ちると同時に聖剣も魔剣へと転じた。
ちなみに、聖剣と魔剣が表裏一体の同一の存在であることを知っている人はもうこの世に一人しかいない。
とは言っても、その一人とは聖剣(魔剣)の所有者である勇者(幽者)リヒト本人だけなのだが。

聖剣の存在をウィンディの目に焼き付けさせ、直ちに虚空へ格納する。部外者への身バレを防ぐための措置だ。
どうせバレてしまうことではあるが、可能な限り人数を最小限に抑えておきたい。今後の活動が面倒になっては敵わないのだ。

「…時間だ。俺はもう行くよ」

やるべきことは終わった。そう胸中に吐き出したリヒトは、姿を消した。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:50:28.75 ID:uFvyl4yAO
レムカーナ城から広がる水路の脇。まず人が通らないであろう静寂の広がる場所に、全身を縄で縛られた魔法使いが倒れていた。言うまでもなく事件である。

「う…ううむ…」

意識を取り戻した魔法使いは、身体を倒したまま周囲を見渡す。身動ぎ一つ出来ないが、特に慌ててはいない。これもまた、彼女の日常なのだ。
自身の身体に目を移すと、素肌が露わになっていた。普段身につけている包帯がそこにはなく、全身に刻まれた刻印が存在を主張している。

「ふむ?頭は痛いがそれ以外に不調は無し。暴行に遭ったのだろうが、純潔を散らしたわけでもない、か。むむむ?」

現状を把握すればするほど納得がいかなくなる。身体目当てで暴行を加えたのかと思ったが、そういった形跡は無い。服が盗られただけだ。ついでに言うなら杖も無くなっているが、どういうわけか猛スピードでこちらに接近している。所有者の手元に戻ってくるような魔法は掛けていないのだが。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:50:55.79 ID:uFvyl4yAO
首を傾げていたギムレインの元に、この問題行動を引き起こした首魁が戻ってきた。

「おっ。目が覚めてたか。結構強めに叩いちまったんだが、存外強靭だな」

「被害者の元にわざわざ戻ってくるとは。豪胆だね」

紙袋を片手に持っている男性は、特に焦った様子も見せず平然としたまま近づいてくる。
僅かに警戒するギムレインだったが、それはすぐに解かれた。

「お詫びの品です。どうぞお受け取りください」

「?????」

杖と包帯一式、オマケに出来立てのクッキーが詰まった袋が差し出されたのだ。意味がわからない。本当に意味が解らない。

「意味が解らないならそれでいいんだ。じゃあな!!!!!」

ギムレインが疑問に唸っているとそこで初めて、犯人は慌てた様子で逃走する。あまりに速く逃げられたせいで、逃げ始める瞬間を見逃してしまった。

「…よく分からないけど、私に何かしたのならちょっと呪いを掛けとこう」

膨れっ面のギムレインは、杖を片手に魔法を詠唱した。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:51:27.98 ID:uFvyl4yAO
翌日。腹痛と下痢に苦しんでいるリヒトは、げっそりとした表情で食事をしていた。
死にかけているリヒトを見かねたマナが祝福を与えているが、快方には向かっておらず、なおも瞳は濁ったままだ。

「…なんだこれ。新手の呪いかよ…。呪いなんて掛けられるようなこと、した覚え無いんだけどな…」

腹をさすりながら、リヒトは備え付けのカレンダーに目を通す。
レムカーナに滞在して、既に数日が経過していた。

リヒトがレムカーナに辿り着いてから、様々な事件が発生している。見張りが闇討ちに遭って一週間の入院生活を余儀なくされたり、レムカーナ王立魔法学院に在籍している魔法使いが暴行を受けたのちにお菓子をもらって釈放されたり、学院に不審者が侵入してゴミ掃除や病人を介抱したり。その犯人が誰かは言うまでもないだろう。
警備の目も厳しくなっている。そろそろ、偽名を使っていようと正体に勘付かれる頃合いだ。

「潮時、か…」

今日の夜。それがタイムリミットだと、リヒトの勘が告げていた。
後悔しないように、為すべきことを為さねばなるまい。
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/13(土) 21:52:51.23 ID:uFvyl4yAO
何をするかを↓1にどうぞ。
↓1コンマが奇数ならレムカーナから撤退、偶数ならあと一回だけ行動権があります。
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/13(土) 22:40:18.94 ID:q++EbvOWo
魔法学院の半壊を手土産にウィンディを共に来ないかと迎えに
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:18:42.58 ID:wVQj5y0dO
BGM:Critical Drive
https://youtu.be/9iMyp7k53Rs
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:19:18.60 ID:wVQj5y0dO
快晴だった空模様が打って変わり、瀑布の如き雷雨が降り注ぐ。その雨はまるで、天が、神々が嘆いているようで。
レムカーナの住人は不安に思いつつ、家に籠もっていた。それでも健気に巡回を続ける兵士たちの愛国心には脱帽する他ない。

そして、雷雨の中を一筋の光が駆けていた。

「…ふぅ」

これから始まるお祭り騒ぎに備え幽者は臓腑に溜まっていた息を吐き出し、魔力を研ぎ澄ます。

もう、後戻りは出来ないのだ。恐れるな。自身の為すべきと思ったことを、為し遂げろ。他人の都合など考えずに、己の意志で。
今までだって、そうしてきたのだろう。
行為の正しさを自問自答し、決意を固める。

シルヴィアがいたなら、大爆笑していただろう。『たった一人の子供のために、またレムカーナを敵に回すのかい。君は頭のネジが外れまくってるねぇ』と。
反論のしようがない。全くもってその通りだ。
だが、こうも言うだろう。『君が望むのならそうしたまえ。才能を摘み取る愚を犯すような学院、滅んだとしても誰も文句は言えないさ』と。

「…くく。つくづく俺は、大切な人を喪ってきたな」

『慈愛の聖女クロエ・フィアリス』。『彼岸の大賢者シルヴィア・レイナス』。他に喪った人は数えきれない。
喪ったものは決して戻らない。だから、その喪失は無駄ではなかったと。必要なものだったと。割り切るしかない。たとえ、割り切ることが出来ない不条理な死だったとしても。
彼女たちの死に意味があったのだと、信じたいから。

「俺はどうせ、地獄に堕ちる。君たちはきっと、天国からここを見てるんだろう。なら、見届けてくれ」

勇者と慕われた者の末路。三流にも劣る悲劇の結末を。もう、会話など交わせない。だから、これが。この無様な生き様こそが餞だ。
漆黒の意志を秘めた双眸が、黒天の空を見上げた。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:19:47.27 ID:wVQj5y0dO
200年もの由緒ある歴史を持つレムカーナ王立魔法学院。邸宅街の二割の占める敷地を所有している世界でも有数の魔法学院は今、未曾有の危機に瀕していた。
誰もが勘弁してくれと懇願しやつれること必至の、紛う方なき大災害が冗談抜きで突然襲い掛かった。

「ぎゃー!」

剣の一振りで光の奔流が波濤のように押し寄せ、なんとか反撃しようとしたら得物が光の刃で切断される。不可避の理不尽がやりたい放題をしていた。
レムカーナ王立魔法学院の取り壊しという暴挙をやらかしている下手人の配慮なのか、はたまた命の責任を取りたくないだけなのか。
派手に盛大に吹き飛ばされている警備兵や生徒は、目立った外傷も見られず命に別状は無い。ただ全身が痛くて動けないだけだ。

「とっ止めろー!どんな手を使ってもいいからこの大馬鹿野郎を止めるんだー!!!」

貴族の連中があたふたしながら指示を飛ばす。その場にいた全員がマジかよお前といった視線で睨んでいた。
取り巻きの数人がやる気を感じられない魔力の鎖を放つ。リヒトはそれを甘んじて受け入れ。

「ふんっ」

小手先の技など使わず、圧倒的なパゥワーで引き千切った。
貴族に向けられていた呆れを含んだ視線は、何故かリヒトに向けられる。

「無理矢理『魔力の鎖(マジックチェーン)』を引き千切るって…。えぇ…?」

「もしや蛮族か何かでいらっしゃる?」

「こんな蛮族いるわけねぇだろ」

知性を疑う質問を一蹴し、リヒトは作業を再開した。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:20:14.97 ID:wVQj5y0dO
騒ぎと爆音を聞いて駆け付けた教師陣による高威力の魔法の雨霰。それを光の翼で耐え、カウンターに百を超える光弾をお見舞いする。
知識を身に付け、ただただ研鑽を重ねた強大な魔法は、膨大な魔力量に裏打ちされたごり押しと言う名の暴力で無へと帰した。やはり力は全てを解決する。
増援が到着するや否や、光弾を浴びて地べたに大の字で寝そべっていく光景はいっそ喜劇的に見える。

大講堂が爆発四散し破壊作業が一区切り付いたところで、ある生徒が口を開いた。

「あの剣…勇者が持ってるっていう聖剣なのでは?」

生徒の発言で空気が凍る。リヒトとしては、この行動を起こす時点で正体バレは確定だと思っていたので、特に気にしていない。
寧ろ、肯定した方がより騒動が大きくなり、衛兵たちもやりにくくなるだろうと考えていた。ので、首肯を以って答えとする。

「ゆゆゆ勇者ぁ!?!!!!国王たちを殺したっていうあのイカレポンチじゃないですかぁ!!!」

「無理!そりゃ止められるわけない!」

「貴族の首が欲しいならどうぞ持っていってください!だからどうか私たち一般庶民は見逃して!」

「俺を売るのかよ!?お、俺を殺したって王殺しほどの悪名は得られないぞ!!!」

好き勝手に物を言う観客に辟易し、リヒトは営業スマイルを浮かべて恐怖心を和らげさせるように言う。

「この学院を潰す以外に目的は無いから安心してくれ」

観客が全員、涙を流しながら蜘蛛の子を散らしたように逃散した。寛大な慈悲に感謝していたのだろう。たぶん。
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:20:40.87 ID:wVQj5y0dO
爆音轟音が鳴り止んだ後。保健室をリヒトは訪れる。予想通り、彼女がいた。

「あ、リヒトさん」

素顔を見せたままのリヒトを見て、素性を隠す必要は無いのだと判断したウィンディは、臆することなく名前を呼んだ。

例によって保健医は逃げ出しており、ここなは二人しかいない。絶好の機会と言う他ない。
だが、どう誘えばいいのか。リヒトは頭を悩ませる。
ミェンという失敗例があまりにも大きいため、リヒトの決心は足踏みしていたのだ。

こういう時こそシルヴィアがいればとも思うが、たらればを言っても現実は変わらないことは解っている。

「リヒトさん?」

小動物のように首を傾げる少女と、暗い表情をしている絶賛逃走中の指名手配犯。
誰も関わりたくない光景が、そこにはあった。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 09:23:11.73 ID:wVQj5y0dO
ウィンディ勧誘 判定↓1コンマ
本レスよりコンマが高ければ成功です。
また、↓3までにウィンディに投げかけたい言葉を募集します。


願望成功補正:↓1コンマに+20
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 10:36:23.83 ID:2JZNfRGmo
今一度、問おう
変革を願い、狂った幽者と共に茨の道を征く覚悟はあるか?

いや、天災……そう天災が学園を蹂躙しただけ、君を虐めている暇も余裕も貴族方からは無くなったろう、少しは過ごしやすくなる、このままお別れの方がいいかな


(素のコンマさん厳しい、が補正と回数で頼むクリアしてくれろ!)
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 10:53:08.40 ID:KcpE+OW5O
やったぜ。
ミミルとできればギムレ嬢も勧誘したい(強欲)
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 11:08:35.53 ID:jrxHb48ao
どんな者でも当たり前に愛されることができて、出生や性差等に囚われない正しく才能や努力を評価される世界を作りたい。前半は俺だけど、後半部分は大切な仲間から託された夢なんだ。
俺は……俺たちは、その為に戦っている。
まあ、今実働してるのは俺だけなんだけどな。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 11:18:16.40 ID:wVQj5y0dO
ちょうど良さそうなのでこの二つで〆にします。
あと、ギムレインは仲間になりません。名前があるだけのモブなので。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 12:59:07.81 ID:cswshFRDO
あら残念
モブの割にはキャラが濃かったからなんかあるのかと思ってた
おつ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 14:31:17.16 ID:wVQj5y0dO
「…その、なんだ。俺がここまで来たのは、君と雑談をするわけじゃない。それくらいは見て分かるだろうが」

「…はい。漂っている魔力から解ります。無茶なことをしましたね」

保健室周辺は意図的に攻撃範囲から外していたので傷一つない綺麗な姿を保ったままだが、外はそうもいかない。
勇者と謳われたリヒトの光魔法で、それはもうすごいことになっている。建築者も草葉の陰で嘆いているだろう。
別にリヒトからすれば無茶でもなんでもない、昔を思い出す大立ち回りをしただけなのだが、言うだけ野暮なので黙っておく。

外から足音が少しずつ近づいている。おそらく、姿を消した自分を捜しているのだろう。
余計な会話は省き本題に入らねば。と、意識を切り替える。

「どんな者でも当たり前に愛されることが出来て、出生や性差等に囚われない、正しく才能や努力を評価される世界を作りたい。前半は俺だけど、後半部分は大切な仲間から託された夢なんだ」

忌み子にだって愛される権利がある。ならば、誰にだって愛される権利があるはずだ。
それを形にするべく、自身を心の底から愛するべく、リヒトは行動していた。

出生や性差で差別され、排斥されてきた者たち。それを、彼女は知っていた。
この世に蔓延る理不尽を変革し、誰もが希望を抱けるように。シルヴィアはそう願い、歪んだ世界を正そうとしていた。

「俺は…。俺たちは、その為に戦っている。まあ、今は俺だけなんだけどな」

志半ばに斃れた者がいると、言外に示す。どうやら伝わったようで、ウィンディは沈痛な面持ちをしている。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 14:31:46.54 ID:wVQj5y0dO
「今一度、問おう」

剣を床に突き立て、右手を差し伸べる。そして、言葉を紡ぐ。

「変革を願い、狂った幽者と共に茨の道を征く覚悟はあるか?」

過去の希望に満ち溢れていた勇者はいない。絶望に狂った幽者だけがここにいる。それは、本人が一番自覚している。
それでも、彼には背負ったものがある。誓ったものがある。託されたものがある。願ったものがある。
故に、歩みを止めるつもりは無い。たとえ両の脚が折られ、断ち切られようとも。芋虫みたいに這いずってでも進んでみせる。リヒトにはそんな覚悟がある。

「それとも…。天災…そう、天災が学園を蹂躙し、君を虐めている暇も余裕も貴族方からは無くなっただろう。少しは過ごしやすくなるから、このままお別れの方がいいかな?」

自身が歩む修羅の道。鋭い茨に覆われた、数えきれない痛みに苦しみ道を。彼女に歩ませることを強制したくなかった。
己の意志で選ばなかった者を無理矢理連れて行っても邪魔になるだけだし、何より本人が苦しむ。マナは例外もいいところだ。
崩壊した学院の再建、犯人をみすみす取り逃がして失墜した権威の獲得に、貴族は追われることになる。
諸々の問題が解決するまで、ウィンディも学院で堂々と過ごせるだろう。

どちらを選ぶかは彼女次第。目を閉じて選択を待つリヒトの手が、不意に温かくなった。

「…私がここにいたのは、逃げ場が無かったからです。それを作ってくれるのなら、もう未練はありません」

「…これから、迷惑をいっぱい掛けるでしょう。そんな弱々しい私を、護ってくださいね?」

その言葉と笑顔が、何よりの答えだった。

「…ああ、任された」

少女の手を取り、幽者は翼を広げる。
鳥籠に囚われた少女は今、大空へと飛び立った。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 14:33:59.06 ID:wVQj5y0dO
何をするかを↓1にどうぞ。
↓1コンマで拠点帰還時のイベント数を判定します。


01〜40:0
41〜80:1
81〜99:2
00:???
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 14:44:36.78 ID:0SgLQxiT0
当面の活動資金を調達する
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 15:18:17.96 ID:wVQj5y0dO
速やかに宿屋に帰還し、荷物を纏める。もう長居は無用だ。マナに指示を出し、フード内に匿う。

「え、妖精さん!?」

「ちょっと事故って面倒を見てるだけだ。人畜無害だから安心してくれ」

やる気無さ気にウィンディを見やり、マナは溜め息を吐いた。明らかにどうでもよく思っている。

「まだここにいるの?」

「そろそろ逃げる。まだやることが少しだけあるけどな」

「まだあるんですか?」

ある。地味だがとても重要なことが二つ残っている。
まず一つはシルヴィアの棺の回収。これは何があってもやり遂げなければならない。
もう一つは資金調達。これは帰り道でも出来るが、お金は多いに越したことはない。金の余裕は心の余裕なのだ。
ウィンディには解らないだろうが、リヒトは昔資金不足で非常に苦労したものだ。何度餓死しかけたか、想像しただけで冷や汗が止まらない。

「だからまず、安心出来るだけの金を集める。頑張って頑張って頑張りまくればたぶんどうにかなる!!!」

「根性論…」

最後は根性、成し遂げようとする意志が道を開くことをリヒトは知っている。勇者は意外と泥臭い。
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 15:20:57.43 ID:wVQj5y0dO
資金調達の方法を↓1にどうぞ。


A:冒険者に成りすまして金稼ぎ
B:盗賊を始末して金品強奪
C:キャラバンを襲撃
D:その他(自由枠)
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 15:21:45.88 ID:/TFz3EJ1O
B
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:07:36.46 ID:wVQj5y0dO
特級指名手配犯が出現したことが伝わり、レムカーナ全域に大量の兵士が投入された。窓から外を見ただけでも数十名の兵が目視出来、その本気度合いが伺える。

「…あのぅ。これ、本当に逃げられるんですか?」

雷雨の中でも悠々と巡回するドラグーン。空も大地も、どこを通っても警備の目から逃れることは出来無さそうだ。

「大丈夫…だと思う。ウィンディは空を飛べるか?」

自分一人なら余裕なのだが、一番の懸念点はウィンディの存在だ。彼女がどれだけ戦えるかによって、彼女自身の生存率は大きく変わる。

「あ、はい…。私一人なら、全然飛べます」

「なら大丈夫だ」

満足のいく答えが返ってきたので、リヒトは小さく笑った。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:08:03.83 ID:wVQj5y0dO
「隊長!怪しい人物がそこの宿屋に泊まっているとのタレコミがありました」

「よぅし!なら勧告無しに爆破してしまえぃ!ドラグーンを全騎召集しろ!」

可能な限りの人員を集め、包囲を固める。ここまですればどうにかなると、根拠のない自信を基に。
この程度で捕縛出来るのなら、疾うの昔に処刑出来ているというのに。

宿屋の直上に三騎のドラグーンが待機し、その外側を四騎のドラグーンが囲む。
勇者には飛行能力があることは有名なので、空路を警戒するのは当然のことだ。
だが、何故彼らはリヒトたちが反撃しないと思っているのだろう。
無抵抗のまま捕まる道理など、彼らには無いのに。

「奴を捕らえれば、私は三階級特進…!晴れて将校よ!!!ふははははー!!!」

ドラグーンが駆る火龍の豪炎が、宿屋に降り注ぐ。爆音と共に、爆ぜた。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:08:52.59 ID:wVQj5y0dO
立ち込める黒煙が、爆発の規模を物語る。尋常の者ならまず、この攻撃を受けて生きてはいまい。
だが、生憎と勇者は尋常の域を超えている存在だ。強大な悪を打ち倒した者が、たかが炎に焼かれた程度で生き絶えるわけがない。

「はははははは!はは…は…?」

勝利は確定したと言わんばかりの大笑がはたと止んだ。黒煙の中に、神々しい光が蠢いているからだ。
突風が吹き煙が霧散する。同時に、空間を閃光が縫う。

「は…ぁ…!??」

不快気に鼻を鳴らす勇者が姿を現した。傷一つ、煤一つ付いていないその姿は微小なダメージすら受けなかったことを示しており、その剣からは光が漏れ出している。

ズン、と数度地面が揺れる。その正体は、墜落した火龍たちだった。出血し完全に沈黙しているが、致命傷ではない。気を失っただけのようだ。
勇者リヒトが放った剣閃は、空を縫い空中の龍たちを撃ち落とすに足る威力を持っていた。
なけなしの慈悲で即死はしていないが、ここで反撃をしていたら、龍の首が飛んでいる。
幸いなことに、一撃で気絶したおかげで一命だけは取り留めているわけだが。生きてるって素晴らしい。

「俺の邪魔をするなら、多少痛い目に遭っても」

勇者は聖剣を掲げ、魔力を解き放つ。

「仕方ないよな?」

言い切った刹那、空から光の剣が降り注いだ。
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:09:20.72 ID:wVQj5y0dO
包囲網を物理的に破ったリヒトたちは、最短経路で教会に向かう。その道すがらで。

「わ、私っていらない子だったんじゃ…」

「そうでもない」

ウィンディの自虐をリヒトは首を振って否定する。ウィンディがいなければ、あそこまで効率よく反撃に転じられなかったのだ。

ウィンディが詠唱した風魔法が、暴風の壁を作り出していた。それによって火龍の吐息は二人に届くことがなかった。
最初は防御から反撃まで全てリヒトが担当する予定だったのだが、これくらいならさせてほしいと助力を願ったので任せてみた。
その結果がコレである。なかなかどうして、素晴らしい才能を持っているようだ。
ウィンディが防御を引き受けてくれたおかげで、リヒトは攻撃にのみ集中出来た。
だというのに、彼女が必要無かったとは口が裂けても言えない。お互いにとって最善の結果である。
リヒトたちにとっても。兵士たちにとっても。

教会に着くとすぐさま、リヒトは扉を蹴破る。ヴォルグス城で同様のことをしてから、すっかり板についてしまった。
先程の戦闘音に怯えていたのか、神父や修道女(シスター)は椅子の影に隠れていた。別に取って食うつもりはないのだが、文句は言えない。

予め棺の受け取り日を決めていたため、既に棺が出されていた。手際が良くて大助かりだ。

「ありがとう」

謝辞を一言だけ述べ、棺を背負う。そのまま、二人は空へと逃走した。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 18:12:17.31 ID:wVQj5y0dO
盗賊 判定↓1コンマ


01〜30:何も無し
31〜70:小規模なアジトを確認
71〜95:大規模なアジトを確認
96〜99:謎の集落を確認
00:???
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/14(日) 18:28:18.38 ID:2JZNfRGmo
今度は多勢でもいけるいける
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 19:10:00.79 ID:wVQj5y0dO
棺を背負ったままの逃避行はおよそ半日続き、レムカーナは地平線の果てに消え、疎に生えた雑草と露出した岩肌が彩る荒野に到達していた。

「………」

馬車が踏み慣らした道路を進む。人里からかなり離れてはいるが、人の痕跡は強く残っている。それがありがたい。
人が踏み入れた領域なら、そこまで強力な魔物は現れない。アークミノタウロスの群れは根本的な部分から違っていたため、レムカーナで遭遇してしまったが。

「大丈夫か?」

「はい。魔法で身体を動かすくらいなら、いくらでもへっちゃらです。まぁ、この距離を歩いていたら今頃倒れてましたけど…」

宙に浮いてついて来るウィンディを気にかけるが、特に様子は変わっていない。この調子なら、拠点まで戻れそうだ。

「拠点に行く前に少しだけ寄り道がある。すぐ済む用事だから、寄り道しても構わないか?」

「私に選択権は無いのでご自由にどうぞ」

後ろ向きな返事ばかりする同行者に頭痛がするが、こればかりは本人の気質の問題なので口を出すわけにはいかない。
口下手な自分を恨みつつ、足を進めるリヒトだった。
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 19:11:40.26 ID:wVQj5y0dO
盗賊への対処を↓1にどうぞ。


A:一人残らず鏖殺する
B:最低限の人数だけ生かす
C:全員捕縛する
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/14(日) 19:12:19.12 ID:wVQj5y0dO
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