【安価スレ】堕ち行く光

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901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/04(土) 23:25:53.55 ID:NJZ8vwuuO
>>900、火→風、植物→土、雷→水→火の順に、ある程度の有利不利が存在しています。
これらを総括して四元魔法と呼びます。
ある程度なので、出力に差があれば簡単に不利相性でも覆せる関係性です。
影魔法と闇魔法、神聖魔法と光魔法では、闇や光の方が根源的な魔法なので性能面では闇や光にどうしても軍配が上がってしまいます。

一般的に需要が大きい魔法ほど才能を持つ人が多くなるので、上記に挙げた四元魔法は必然的に使える人が多くなります。
また、需要が特に大きい(生命に関わるので)治癒魔法や加護魔法(俗に言うバフ)などについては、さらに使える人が多くなります。
需要がある=研究が進んでいるということになりますので、才能が無くても初歩的な魔法が使えるように改良されています。
簡略化されてもなお、体質などで使えない人もいますが。珠樹くんやリヒトくんがいい例です。

呪詛魔法や錬成魔法などは需要があまりないor日常生活に浸透していないため、使い手も少なくなってしまいます。
特に、錬成魔法については俗に言う錬金術として体系化されているので魔法として使う人は滅多にいません。
魔法の方が実験器具が不要だったり錬成範囲が広かったりで便利ではありますが、やはり技術として普及してしまったため今更そんな難しい、利便性の面で淘汰されて逸失した魔法を学んでも…って感じですね。

外的要因などで魔法の性質が変化したり、全く別の魔法を習得したりってのはあり得ます。
リヒトくんが冥光魔法を使えるようになったのも様々な要因が重なったからです。

長文すみません。
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/05(日) 00:06:38.58 ID:QRxbsdnao
>>901
回答ありがとうございます。参考になります
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/05(日) 13:06:31.11 ID:d8gz0bbaO
【名前】カーラ
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】炎魔法
赤褐色の髪をセミロング程度に伸ばした少女。年齢は本人にもわからないが十代中頃と思われる
シルヴィアの下に来る前は貧民街のストリートチルドレンだった。独力で覚えた炎魔法を武器に、敵対する同類や自分を利用しようとする大人など、邪魔者は全て焼き払い弱肉強食の世界を生き抜いてきた
シルヴィアにその才能を見出だされて勧誘されるも、一度それを拒否している。その後暴徒鎮圧の名目で再度訪れたシルヴィアに無事鎮圧され、弱肉強食の掟に従いシルヴィアの傘下へ入った
性格は一見荒っぽいが、内面は冷徹なリアリスト。シルヴィア同様に生まれや性別による格差を嫌っているが、自分たち平民以下には上の連中を叩き潰す力がない事実も認識しており、構造上の弱者が強者に服従するのは仕方のないことだとも思っている
しかしその更に根底には激情を秘め、いつか必ずフェルリティアの忌々しい支配構造を破壊してやると密かに企んでいた
シルヴィアに対しての感情は大雑把に言えば尊敬4割反抗6割といったところ。彼女の失踪については、別離の悲しみよりも勝ち逃げされた悔しさの方が大きかった
その失踪に何らかの悪意が関わっていたことは察知しており、失踪後は悔しさを晴らす為にも支配構造破壊の念を強める
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 19:42:40.62 ID:V085saAyO
夜10時より更新するのでそこまでが期限となります。
集まった安価からこちらで決めます。
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:54:43.76 ID:zwb81mNLO
紫炎を纏った凶刃と光を纏った聖剣が、帳の降りた荒れ地というキャンバスを彩る。
二色の光が織りなす光景は美しくも、禍々しい。

入れ替わる攻防の最中、闘争本能が警鐘を鳴らす。
それに従い、大岩を盾にして後退した。

ザン、と鈍い音を立て刃が滑る。
両断された大岩は崩れ落ち、切断面は火に炙られたチーズのように、どろりと熔けていた。

この一撃だけは受けたら不味い。そう理解するのに時間は必要ない。
刃が纏っているのは万象を焼き尽くす復讐の業火だ。
光魔法と聖女の加護があっても、紫炎に焼かれては無事では済まないだろう。

そこで、幽者は一つの鬼札を切った。

「マナ。力を貸してくれ」

この戦いは、アークミノタウロスとの戦いとは理由(わけ)が違う。
乗り越えるべき過去(シルヴィアの死)もなければ、意固地になる必要(自力で打ち倒す必要性)もない。
堂々と、遠慮なく、マナの力を受け容れることができるのだ。

先の戦闘では、彼女の意志で力を貸そうとしてくれた。
それをずっと拒み続けるのは失礼だし何より、嬉しかったのだ。
人を否定し続けていた妖精が自分から歩み寄ってくれた。
それだけで、力を借りる理由としては充分すぎる。

それに、戦いとは本来、どんな手を使ってでも勝たねばならないものだ。
勝つためなら卑怯な手段も上等だし、そもそも共に戦う仲間を頼るのは当たり前だ。
当時頼っていた戦友の力が、妖精の力に変わるだけのこと。

であれば、躊躇う必要はどこにある。
一人でできることなどたかが知れている。
だから人は、生き物は皆、手を取り合うのだ。

「−−−−(あなたに、力を)」

脱線した思考が、妖精の祝詞によって引き戻される。
何と言っているのかは理解できないが、何を言っているのかは理解できた。

沸々と全身の血肉が沸き立ち、力が溢れ出す。
それでいて、思考は絶対零度のように冷え切り、まるで凪いだ海のように静かだった。

雑念が消える。無駄が削ぎ落とされる。
研ぎ澄まされた意識は、蓄積された経験と合わさり、もはや未来予知に近しいものになる。

マナの力添えに謝辞で返し聖剣を構える。
亡霊を討たんとする幽者は今、荒れ地を駆ける流星と成った。
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:55:30.44 ID:zwb81mNLO
何が、起きた。

中空に弾き出されたドクロサムライは、現在の状況を整理することに努める。
復讐心に塗り潰されていた理性が戻り、本能に上書きされていた思考が再開する。

べき、と骨の砕ける音が聞こえる。
二本の腕が根本から断ち切られ、縦横無尽に空を駆け巡る光剣によって細切れにされていく。
夜を照らす光。あるいは闇を祓う光。
そう形容するしかない神聖な輝きが、怨讐に塗れた穢れた肉体を削り取り、浄土へと送還する。

続けざまに、全身が物理法則を無視して上下左右に吹き飛ばされる。
箱に小物を入れて乱暴に振るったように、身体が弾ける。
その度に、腕や足が壊れていく。
その度に、流星が通り過ぎていく。

四肢が全て離断し、胴体と頭部のみが残る。
全方位から加わる衝撃によって身体が回転し、顔が空を見上げた瞬間。
流星の正体が人だということに気づいた。

ああ、なるほど。

貴殿は私たちを解放するために、来てくれたのか。

無辜の民をこれ以上手にかけないように天が遣わした使者が貴殿なのか。

無様に死んでおきながら、成仏することにさえ他者の力を借りるとは情けなくて仕方がない。

腹を切って詫びたい所存だが、あいにくもう拙者には切れる腹がない。本当に申し訳ない。

だがこれでようやく、皆と共に逝ける。貴殿には感謝してもしきれぬ。

ありがとう。意識が途絶える直前に絞り出したこの言葉は、貴殿に届いたのだろうか。
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:56:10.75 ID:zwb81mNLO
流星が地に墜ち、凄絶な爆発が発生する。
光が収まった頃には、荒れ地にぽっかりと一つの大きなクレーターができていた。

戦闘の終わりを告げる吐息が漏れる。
空を飛び回っていた光剣は幽者の傍らに集い、霧散した。
骨の一欠片も残さず消滅したドクロサムライ。彼は消滅の直前に何を言っていたのだろうか。
口が動いているのは辛うじて分かったが、どのような言葉を紡いでいたのかは一切分からない。
読唇術の類は習得していないのだから当たり前だが。

まあ、いい。なんにせよドクロサムライは成仏した。
邪悪な気配は完全に消え去ったし、しばらく待ってみても地面から骸骨が這い出てきたりとかもしない。

もしまた復活したらその時はもう一度消し飛ばすだけだ。
何回も何回も何回も何回も何回もボコボコにしてしまえば、やがて心が折れてこの世を去ってくれるだろう。

「おつかれさま」

「ん」

労ってくれたマナに感謝を述べる。
やっと、本当の意味で彼女と友好関係を築けたような気がした。
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:57:14.88 ID:zwb81mNLO
天守閣に報告に向かったリヒトは、門前の広場に数名の男性が磔にされているのを見つけた。
出発前は無かったはずなので、仕事の最中に設置されたようだ。

全員が全員血を垂れ流しており、痛みに身を捩って呻き声を上げていた。

「はいはーい。一発ぶちかましたい人はこの鉈を使ってなー。頭と首を狙うのは御法度やでー」

と、まるでセールス中の売り子のように声掛けをしている狐耳の男性。
軽い雰囲気で人に渡しているのは錆びて刃毀れした鉈だった。
あまりにアンバランスな光景に、さすがのリヒトも言葉を詰まらせる。
こんなのはウィンディみたいな多感な年頃の女の子には見せられない。

「ん、なんや?兄さんもやりたいん?」

ケロッとした表情で問う青年に、リヒトは首を横に振って答える。
彼らが見せしめにされているのは明白なので、あまり関わりたくないというのが本音だ。

だが、そんなことを知ってか知らでか。お構いなしに青年は口を開いた。

「他所から来た兄さんには物騒だったり非人道的に見えるかもしれんけどな。これが緋桜郷…んにゃ、桜花衆の流儀なんよ。『人の道を外れた外道は、如何なる手を使ってでも罪を贖わせろ』ってな」

ということは、彼らは贖罪の真っ最中ということだろうか。
どう見ても反省しているように見えないが。
寧ろ、今後起きることに絶望しているようにしか見えない。

「そりゃそうよ。こいつらは処刑すると上の人が決めたさかいに。悪行の限りを尽くした外道やから、どんなに苦しんだところでこれっぽっちも同情せんがな」

ほら、と青年が指差した先には、腰の曲がった老夫婦が、怨恨の籠った瞳で磔にされた罪人を睨んでいた。
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:57:46.28 ID:zwb81mNLO
そして、血のついた鉈で。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁああっっっっっ!!!!!!」

力いっぱい斬りかかり、ノコギリで切り落とすようにゆっくりと鉈を引き抜いた。
殺傷力を削ぎ落とされた鉈は腕を切り落とすこと叶わず、鮮血と肉片を散らせる結果に終わる。

だが、これが目的なのだろう。殺すのではなく苦しめる。だから刃を潰しているのだ。
これはあくまで、被害者の溜飲を下げさせるための手段だと、恨みを晴らすための手段だと、その光景から容易に想像できた。

「お前たちのせいで愛華は…私たちの孫は…!!!!」

涙ながらにそう語りつつ、鉈を振るうのを止めない老人の目は怒りに燃えていた。
どのような悲劇があったのか。それは彼らの様子からしか伺えないが、相当に悲惨だったようだ。

「だが、あんなにザクザク斬らせて大丈夫なのか?これが処刑法だって言うなら俺の指摘は的外れのアホだが、そうじゃないだろ?」

「まあ、せやな。だがご安心を。この磔には特殊な術が仕込んであるから、死にさえしなけりゃすぐ傷が治るんよ。でないと皆が恨みをぶつけれんやろ」

惨いことをする。と桜花衆の容赦のなさに若干の戦慄とシンパシーを覚えつつ、リヒトは天守閣へと入る。

「緋桜郷を楽しんでな。英雄さん」

背を向けた瞬間に投げかけられた青年の言葉から逃げるように、後処理を済ませた。
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:58:28.37 ID:zwb81mNLO
牡丹雪に戻り、夕食を食べて腹を満たす。
戦いの後に食べる飯は格別なのは言うまでもない。それが、達人の振る舞ってくれる料理となればなおさらだ。

「ごっそさん」

三人前の料理を食べ切り、食器を返却する。
部屋で聖剣の手入れをしていると、不意にドアがノックされた。

「どうぞー」

リヒトが声を上げると、ドアがゆっくり開かれる。果たして、来客の正体とは。

「お疲れ様です〜」

ぽわぽわしていてぽよぽよしていてとってもきゅーてぃーな美人の鬼娘結衣乃だった。
属性過積載ではあるが、正直他の面々も同じようなものなので気にならない。気にしたら負けとも言う。

しかし、彼女がここを訪ねてくるとは何か頼みでもあるのだろうか。
そこまで親密ではないはずなのだが。

「ちょっとお願いがありましてですね〜。こう、ばんざーい、ってしてくれませんか?」

結衣乃はそんなことを言いながら、背筋をピンと伸ばして両腕を上げる。お山がぶるんと揺れた。

特に断る理由もないので、リヒトは了承して両腕を上げる。

すると。

「そぉーれ〜!」

結衣乃の口から吐き出されたか細い糸が、リヒトの腕や胴体、腰に絡みつく。
すわ何事かと目を見開くが、結衣乃の表情に敵意や悪意は介在せず。
別に痛いわけでもないので、どうすればいいのか分からないリヒトは困惑していた。
その間も肌に擦れている糸がくすぐったいのが困りものだが。

待つこと数十秒。ほう、と感嘆の息を漏らした結衣乃は両手をパンと叩き、にっこりと笑った。

「ありがとうございました〜。これで採寸は終わりましたので楽にしてくださいね〜♪」

気がつくと身体に絡みついていた糸は綺麗さっぱりとなくなっていた。
これにて失礼いたします。とだけ言い残した結衣乃は、上機嫌で部屋を出ていく。

何故か死んだ魚のような目をしたウィンディが枕に頭をぶつけている光景を幻視した。
そんなことをしても成長しないのだと心の中で荒ぶるウィンディを諌め、合掌する。

ウィンディが食事の際に飲む牛乳の量が何故か増えていた。
911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:59:13.36 ID:zwb81mNLO
「…以上が伝書に記載されてた内容ですね。これは大変なことになりました」

手紙を折りたたみ、桐箱に仕舞う女性。
銀髪から見え隠れする耳は尖っており、人外の者だとこの上なく示していた。

「どうしましょう?『黒罰の幽者リヒト』を名乗る人物によってフェルリティアは都を覆う結界ごと崩壊して墜落、貴族の半数は殺され、生き残りは住民を見捨てて逃散…その見捨てられた住民も何割かは難民として各地に流出…と割と笑えない事態な気がしますね〜」

などと言いながらあはは、と笑う女性は大概図太かった。
それを聴いている鬼の女性も、険しい表情はしていないのでどっこいどっこいといったところか。

「伝書には難民受け入れ申請も同封されてました。人数はざっと見て数百人程度ですかね。まあ、移動手段は馬車か徒歩しか無いので相当な大所帯だと思いますが」

「…そうですね。護衛に騎士団なりが付いているでしょうが、それでも人数は心許ないでしょう。野盗や奴隷商などに襲撃される可能性はあるかと」

「こちらも部隊を派遣しますか?合流するまでの数日でどれだけの損害が出るのかは不明ですが、緋桜郷の面目は保てますよ」

「…分かりました。ではそのように」

指示を受けた女性は、一礼をして部屋を出ていった。
一服した鬼は白煙を吐きつつ、吸い殻を灰皿に落とす。
傍に待機していた男性が、慣れた手つきでそれを処理した。

人の世は変わりゆくものだ。
定期的に訪れる大きな時代のうねり。それに呑み込まれぬように立ち回るのが長の勤め。
でなければ滅ぶだけだ。長いだけの歴史に胡座を掻いていた魔法都は今、その傲慢のツケを払いあっけなくイルステッド最長の歴史に幕を閉じた。

変わる世界に我々が。貴方がどう立ち回るのか。

「どうなるか見ものやねえ、兄さん?」

彼岸花 紅華は妖しく笑い、一献傾いた。
912 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 23:00:46.88 ID:zwb81mNLO
何をするかを↓1にどうぞ。現在の行動は夜です。今回の行動は牡丹雪のキャラ全員と交流可能です。
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 00:15:14.75 ID:iApXyFGOo
服依頼したっけ?(描写ないよね)と結衣乃に確認しにいく
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 00:49:32.63 ID:xsjZDp2GO
採寸されるような依頼などしていないはずなので、真相を探るべくリヒトは結衣乃の部屋を訪問していた。

「鍵は開いてますよ〜」

との返事をいただいたので、遠慮なく失礼する。
部屋の中には、針と糸で生地を縫い縫いしている結衣乃の姿があった。

未だ製作段階でまだまだ先がありそうに見えるが、フードが付いていてどことなく、というより露骨に自分が普段使っているコートを想起させるデザインをしている。
誰も作ってくれ、と言った覚えはないのだが。
これが俗に言う手作り品押し売り商法なのだろうか。

「あ、いえ。私が好きでやってることなのでお気になさらず〜」

牡丹雪で働く子やウィンディに作ってあげるのならまだ分からないでもないが、どうして自分の服を作っているのだろうか。
素直に疑問をぶつけてみると、穏やかな表情で返答される。

「リヒトさんは最近、平和のためにすごく頑張ってるじゃないですか?だから、私なりにお礼というか〜、頑張ってえらいね〜って褒めたいというか〜」

物は言いようとはいうがそれにしたって限度がある、とリヒトは結衣乃に見えないように頭を抱える。
確かに緋桜郷が平和になっているのは事実だが、それはあくまで結果的にそうなっているだけに過ぎない。
そもそもリヒトがその依頼を受けたのは利己的な理由だ。
緋桜郷をより平和に、より良い街にするために、という彼女が想定しているであろう忠誠心溢れる理由は、残念ながら一片たりとも存在しないのだ。

「だが…。それにしたって、仕事を終えてすぐやることでもないだろ。朝から晩まで働き詰めで疲れてるはずなんだから、ゆっくり休んだ方が良いと思うが…」

「そういうこと言っちゃうと、人に嫌われちゃうかもですよ〜?」

勝手にしておいて横暴だな。
リヒトはそんなことを思いながら、脱力しつつ苦笑した。
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 00:50:24.25 ID:RE5kkDM0O
結衣乃と何をするかを↓1にどうぞ。
916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 01:15:35.47 ID:+nnH5jIaO
せっかくなので見学させてもらう
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 13:18:25.89 ID:y8Xq85TLO
クスクスと微笑む結衣乃の手は淀みなく動き、生地の形を整えていく。
月明かりと蝋燭の火に照らされながら服を仕立てる結衣乃の姿はまるで天女のよう。
赫色の青春を送っていたせいで美醜感覚が盛大に麻痺しているリヒトでさえ美しいと感じ、見惚れてしまう光景。
これでまだ子供だというのだから恐れ入る。

「リヒトさんって、人のことを好きになったことはありますか?」

特に意識していないであろう、結衣乃の口から放たれた何気ない質問。
それを聞いた瞬間、首筋を冷や汗が濡らした。

地雷を踏むのは勘弁してほしい、と内心に弱音を吐く。
そんな質問に答えられるほど、幽者は明るい人生を送ってこなかった。

ただ目が紅いだけで家族に殺されかけた。
ただ目が紅いだけで光の無い地下室に幽閉された。
ただ目が紅いだけで家族との繋がりを絶たれた。

力が無かったから逃げ延びた先でも辛酸を舐め続けた。
満足な食事にありつくことは叶わず、捨てられた残飯を食らうことで命を繋ぎ、必死に生きてきた。
何の希望も持たず、無為に日々を過ごし、命が消えゆく瞬間を待っていた日々。

それは、ソルドを抜け出して聖女と巡り逢うことで終わりを迎えた。

それから先はひたすらに剣を振るってきた戦いの日々が続いただけだ。
奪い、奪われる。暴力と混沌に満ちた地獄を進んできただけだ。

そんな世界で生きてきた自分にとって聖女は。戦友は。大賢者は。妖精は。まだ未熟な魔法使いは。どんな人なのだろうか。

皆のことが好きだったと、心の底から言えるような存在なのだろうか。

結衣乃の問いは幽者の痛いところを突いてしまったが、奇しくもそれが、自分と向き合うきっかけになった。
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/02/06(月) 13:20:40.59 ID:y8Xq85TLO
リヒトの心情整理タイムになるのでシンキングタイムを設けさせていただきます。
次に出す安価は結衣乃の問いにどう答えるか、です。

質問等ありましたらお願いします。今開示できる範囲の情報をお出しいたします。
今日の夜くらいにお答えします。
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 15:12:14.88 ID:REYhtqouo
たんおつ
聖女クロエとシルヴィア、マナは直接の面識はありましたか?
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 17:42:50.79 ID:1uvGdmbFo
・リヒトは「好き」という心理をどのようなものだと考えていますか?
・リヒトは、誰かを好きになることや、それを言葉にすることに忌避感や罪悪感を抱いていますか?
・リヒト自身は、皆のことが好きだったと心の底から言えるような在り方をどう思っていますか?
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 18:25:18.45 ID:agmMhE+AO
とりあえず今来てる質問に返答します。


Q.聖女クロエとシルヴィア、マナは直接の面識はありましたか?

A.ありません。強いて言うなら、シルヴィアが聖女や勇者時代のリヒト活躍を耳にした程度です。

Q.リヒトは「好き」という心理をどのようなものだと考えていますか?

A.過去の経験から恋愛観についてはガバガバにされています。「ずっと傍にいてもいい。たとえ血肉が削ぎ落ち魂が壊れようとも、何があってもその人を護りたい。そう思えるような人に対しての感情が『好き』とか『愛』って言うんじゃないかな?」と、敢えて言葉にするならという前置き付きでお言葉をいただいております。

Q.リヒトは、誰かを好きになることや、それを言葉にすることに忌避感や罪悪感を抱いていますか?

A.どちらも抱いています。忌み子だった事実と人殺しである事実が、どちらも負い目になってます。

Q.リヒト自身は、皆のことが好きだったと心の底から言えるような在り方をどう思っていますか?

A.「そこまで真摯に人と向き合える在り方が羨ましく、そして眩しい。取り返しのつかないことをした俺に、そんな資格はあるのかね?」とのことです。

また、同時に「こんな考えをしながら生きてる奴を愛してくれるような物好きはいないだろう。なら、本気で愛されたいのなら変わる必要があるはずだ。…俺が本気でそう思ってるなら、の話だが」と言ってました。
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 18:50:15.67 ID:5uZ7Cd/10
勇者時代のリヒトは聖女や戦友とどういう接し方をしていた?
シルヴィア達に接する時のような感じだったか?それとも聖女や戦友にはまた違う接し方をしていたか?
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 20:09:28.97 ID:lDnYN0TlO
リヒトにとって護りたい人、護りたかった人はいますか?
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 21:14:10.17 ID:ld5woU/aO
Q. 勇者時代のリヒトは聖女や戦友とどういう接し方をしていた?
シルヴィア達に接する時のような感じだったか?
それとも聖女や戦友にはまた違う接し方をしていたか?

A.勇者時代のリヒトは基本敬語を使ってました。物腰も穏やか、というよりは低く、他人の顔色を窺うような感じですね。
戦争終盤からはシルヴィアたちに接するような感じになりましたが、今より口が悪かったです。厭戦感情マシマシだったので。
それでも、恩人である聖女に対しては敬語を崩さず接していました。

Q.リヒトにとって護りたい人、護りたかった人はいますか?

A.聖女です。あくまでウィンディやマナたちは仲間だから守る対象になっているのであって、何よりも大切な人か、と問われたら答えに詰まる程度の関係性です。
しかし、リヒトが聖女を護ることはできませんでした。そういったトラウマも他人と親密にならない原因なのかもしれませんね。
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 23:29:46.23 ID:PB19rtMc0
生前の聖女はどのような人物だったか?
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/07(火) 09:51:58.63 ID:ylGZWNyUO
Q. 生前の聖女はどのような人物だったか?

A.性善説が服を着て歩いているような超が付くほどのお人好しです。それでいて自己犠牲の精神の塊で頑固な女の子でした。
たとえ自分が死ぬと分かっていても、それでも構わないと死ぬその瞬間まで人を助けるために命を分け与えた善人でした。
最後の最後に、勇者の未来に全てを捧げたわけですが。
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/07(火) 09:53:42.84 ID:ylGZWNyUO
↓3までに結衣乃の問いにどう答えるかをどうぞ。良さげな回答が揃ったらそこで締め切ります。
928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/07(火) 12:21:50.41 ID:jPap4Ha4o
大切だった人はいたよ……結局守れなかった人を好きだったなんて烏滸がましくて言えない
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/07(火) 12:52:06.08 ID:/uawuJPaO
ある、と胸を張って言えるような人間になりたかったよ
変われるなら……変わろうとしても良いなら、変わりたいけれども
930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/07(火) 20:16:34.32 ID:EVsCLK0zo
そんな人間でも境遇でもなかったからな……分からないよ
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:35:02.90 ID:oSyljNrxO
undefined
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:35:47.28 ID:AVJvGUllO
静まり返った室内。不思議そうに首を傾げる結衣乃をよそに、リヒトは重い口を開く。

「そんな人間でも境遇でもなかったからな…分からないよ」

他人を素直に好きになれるような真っ当な人間でもなければ、まともな境遇で育ってきたわけでもない。
そもそも、好きがどういう意味なのかすら解らない。
そんな自分が他人に好かれることを、愛されることを目的として行動しているのは滑稽の極みだが。

結衣乃の質問に、肯定で返せるほど他人のことを好意的に思ったことはない。
と考えれば、はい、と答えることはできなかった。

「俺だって、人を好きになったことがある、と胸を張って言えるような人間になりたかったよ」

数多の離別と闘争の果て、無数の骸と血河を築き到達した平和という未来。
その代償はあまりにも大きく、過去が残した傷痕も深い。

人に愛されなかったが故に人を愛せず。それ故に人から愛されることのない負の螺旋。
それを断ち切るには過去のしがらみが多すぎて、断ち切ろうにも幽者の心が弱かった。
どうせ失うものならば。どうせ奪われるものならば。どうせ裏切られるものならば。
初めから好きになることはない。そう、逃げ続けている。
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:36:36.40 ID:aOR+dD2fO
「…大切だった人はいたんだ。けど…結局守れなかった人を好きだったなんて、烏滸がましくてそんなことは言えない」

地獄から救ってくれた人。共に在ろうとしてくれた人。目の前で命を落とした人。
死の間際に彼女が残してくれた祈り。それは幽者を生に縛り付ける呪いでもあった。

素敵なお嫁さんを見つけてほしい。
たくさんの人に愛されてほしい。
幸せに暮らしてほしい。
聖女は命が終わるその瞬間まで、勇者の未来を案じてくれた。
だが、当の本人がその未来に恐れ、怯えているのだから救えないものだ。

大切だったというのに、護ることもできないで死別した。
それなのに、聖女のことを好きだと言える権利があるのだろうか。
護れもしないくせにそんな言葉を並べ立てるなど、烏滸がましいにも程がある。

「それでも変われるなら…変わろうとしても良いなら…変わりたいけれども。そんな権利はあるのかな。殺すことしかできない俺に。奪うことしかできない俺に」

それは懺悔のように。幽者の口から絞り出された心の嘆きは弱々しく、か細い。
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:37:09.59 ID:aOR+dD2fO
永遠にも思える静寂の中。お互いの吐息だけが聞こえる。
暗い部屋の中で俯く幽者の紅眼は昏く輝き、それを見つめる少女の眼は確かな決意を秘めている。

「リヒトさんは、皆が死ね、と言ったら死ぬんですか?」

そして、幽者を優しく抱きしめた。
まるで子供をあやすように、優しく優しく背中を撫でる。
いい大人が子供に慰められている、憲兵案件待ったなしの事案発生中みたいな衝撃的光景だが、二人の間にそんな茶化せるような空気は一切ない。

結衣乃の胸の中で、幽者は静かに首を振る。
こんな罪人にも背負っているものがあるのだと、それを果たすまでは死ねないのだと、言葉にはできなかったが行動で示す。

「ですよね。他人が何を言っても。どう思っても。最後は自分で決めることだと思うんです。他人がどうとかではなく、リヒトさんが自分を赦せるかどうか。結局はそこなんですよ」

無言で言葉を聴き続ける。

「…辛い時があったでしょう。泣きたい時もあったでしょう。それでも我慢してきたと思いますが、今はいっぱい泣いていいですよ。大人だって泣く権利はあるんです。…ここであったことは二人だけの秘密にしますから」

「…もう、涙なんて枯れ果てたよ」

聖女を喪った時、勇者はひたすらに泣いた。喪失の苦しみに。己の無力さに。
それ以来、涙が流れたことはない。
心が壊れたからなのか、本当に涙が枯れたのか。どういう原因かは分からないが。
ともかく、泣けと言われて泣くことはできない。
演技しようにも、嘘泣きすらしたことがないのでどうしようもないのだ。

幽者の返答を聴いた結衣乃は諦めたように笑い、しばらくの間幽者を抱きしめ続ける。
その間、幽者は戸惑いつつもそれを受け入れるしかなかった。
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:39:02.79 ID:aOR+dD2fO
結衣乃と何をするかを↓1にどうぞ。
これで今回の交流は終わりとなります。

短いですが今回の更新は終わりです。
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/09(木) 12:08:58.89 ID:bxbQwT/Eo
服と慰めてくれたお礼に何かしたい、幽者に出来ることなら何でもしようと言う
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/14(火) 00:04:17.57 ID:Oe3qc5UDO
柔らかい感触から解放された幽者は深々と頭を下げ。

いい年した大人がこんな醜態を見せて申し訳ない。
お詫びと言ってはなんだが、服と慰めてくれたお礼も兼ねて何かしたい。
自分にできることなら何でもする。

そう、はっきりと伝えた。

対する結衣乃の反応は。

「変なところで律儀ですね〜。そこまで真摯に受け止めていただけたのは嬉しいですが、今のところは特に困ってないので…どうしましょう〜」

と、余裕を持って受け止められた。これではどちらが大人か分かったものじゃない。

「思いつかないならそれでもいいさ。助力が必要になった時に呼んでくれれば、それで」

「では、そうしますね。…そろそろ私もおやすみしますので、リヒトさんも部屋に戻ってください」

「ああ。急に悪かった」

「いえいえ。おやすみなさい」

「…おやすみ」
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/14(火) 00:05:44.95 ID:0K1baK9rO
自室に戻り、カバンで眠らせたままだった宝珠を取り出す。
紫紺に輝くそれは夜空のようにも見え、暗澹と淀む深淵のようにも見える。
だが、不思議と目が離せない。どうしても注視してしまう。

「…結局、これがシルヴィアの忘れ形見になっちまったな」

ヴォルグス城の探索で手に入れた宝珠。
後にも先にも、シルヴィアと共に手に入れた物はない。
これが、これだけが、共に歩んできた証。

マナも同様の存在になるのかもしれないが、彼女は生きている。物扱いするのは忍びない。

ふと、彼女と出逢った時のことを思い出した。

善意を踏み躙られ、血と泥に塗れながらも美しかった大賢者とは、閑散とした路地裏で巡り逢った。
言ってしまえばただの偶然。しかし、その出逢いは奇跡であり、運命でもあった。
彼女と出逢い、リヒトは前に進む決意ができた。
独善的であれど、変わろうとした。

「…ああ、そうか。なんで俺が貴女に惹かれたか、解ったよ」

何故、あの時彼女の手を取ったのか。共に進むと決めたのか。ようやく解った。

シルヴィアと自分は似ていたのだ。
死別と裏切りの果てに世界に絶望しながらも、人のために行動するのを辞められない幽者。
謀略と裏切りの果てに理想と心身を穢されながらも、弱者のために理想を決して捨てず掲げ続けた大賢者。
最終的な目的が利己的か、利他的かという差こそあれど、どれほど悲惨な目に遭っても他者のために行動する二人が惹かれるのは、当然の帰結とも言えた。

「…なあ、シルヴィア。貴女は何故、俺に手を差し伸べたんだ?」

その問いの答えは聞こえない。
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/14(火) 00:08:36.48 ID:p7QefD14O
何をするかを↓1にどうぞ。朝の行動になります。
牡丹雪の人たちは>>724のルールで交流の可否が決まりますが、新人の瑠璃と用心棒の桔梗のみ、無条件で交流可能です。
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/14(火) 00:33:52.55 ID:XagkZGGZ0
連れていけるなら瑠璃と桔梗を連れて賭場へ
(瑠璃に生きる目的を見つけてもらうため、桔梗は念の為の護衛として連れていきたい)
無理なら過去の回想
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:09:58.72 ID:8o2N7ktoO
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942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:10:27.50 ID:q4nheRggO
朝ご飯を済ませたリヒトは今日することを見定めるために地図を眺めていた。
緋桜郷には大抵の施設が存在する。商店街はもちろんのこと、賭場などの大人のお店も多数出店しており、娯楽には事欠かない。
なんなら牡丹雪自体が大人のお店でもあるわけだ。

「…賭場か。そういや行ったことねえな」

賭場。またの名はカジノ。
一攫千金を夢見たギャンブラーが素寒貧になりゴミ捨て場に投棄されるか、はたまた僅かな可能性を掴み取り勝者になるか、一世一代の大博打が日夜行われる場所。
思えば、色々あって荒れていた時も酒を飲んだり盗賊を根切りにするくらいで、ギャンブルに勤しんではいなかった記憶がある。

変なところで良い子ちゃんな自分に苦笑し、財布を確認する。
直近で大仕事を何度かしたので、懐にはかなりの余裕がある。多少ボロ負けしても問題ないだろう。
資金を考えて楽しくギャンブル!と地図にも書かれているので、ドブに捨ててもいい分だけ使えばいいはずだ。

しかし、独りぼっちというのも寂しいものだ。
賭場は子供の入店禁止!と強調して記載があるので、ウィンディはお子様だから当然NG。
となると、リヒトが誘える相手は限られてくる。
客の相手をしている結衣乃や霧香は無理。台所に立っているリンは言うまでもない。
その他様々な理由を考慮すると、誘う相手は瑠璃が最適だと思われる。
聞けば、牡丹雪を利用する客に交渉を幾度も持ちかけているらしい。
幸いまだ良からぬ輩に目をつけられていないので未遂に終わっていることと瑠璃の精神面を考え、お雪は敢えて何も言っていないと食事の時に零していた。
ならば、大事になる前に手を打っておくに越したことはない。これで生きる目的でも見つけてくれればめっけもんである。
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:11:01.60 ID:q4nheRggO
そう思ったリヒトは牡丹雪の営業が始まり盛況となっている中、接客が終わったタイミングでお雪にコンタクトを取る。
誰か指名するのかと問われたので否定はしなかった。間違いではないのだから。

「ほう。それは嬉しいことだね。そこまで牡丹雪を懇意にしてくれるのは女将冥利に尽きるよ」

「それで、誰を希望するんだい?紅ちゃんのお得意様になる予定のお方だからね。多少、融通は効かせるつもりだよ」

ニコニコと笑顔を見せるお雪に、若干の逡巡を挟み要望を伝える。

「…瑠璃さんで。あと、万一の事態があったら困るから桔梗さんも同行してくれると助かる」

刹那、お雪の笑顔が引っ込み、視線の温度が下がった。
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:11:28.59 ID:qYPKN+FJO
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945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:12:20.09 ID:qYPKN+FJO
来客対応を雫と桔梗に任せたお雪は、リヒトと共に店裏に出る。
辺りから喧騒が聞こえてくるが、誰の視線も通っていない少し薄暗い場所だった。

「…さて。ちょいとばかりお話ししようか」

表でする話じゃないからこんな場所で申し訳ない、とお雪は微笑しつつ謝罪する。
別に構わない、と答えておいた。彼女の懸念も尤もだ。真意を聴いておきたいと思うのも無理はない。

だがまあ、瑠璃の誘いには乗らない、と言ったのだからほんのちょっとくらいは信用してくれてもいいじゃないか、とは思ったが。
お雪がよほど心配性なのか。そもそも自分が微塵も信用されてないか。
このどちらかだろうがもしも、万が一後者だったら普通に悲しくて泣く。

「これでも長く生きてるからね。ここ数日共に暮らして、お前さんの人となりは解ってるつもりだよ。だから質問は一つだけ」

「お前さんは、瑠璃と桔梗を連れて何をするつもりだい?」

「…と言われてもな。二番街や七番街には賭場があるだろ?そこに瑠璃さんを連れて行きたくてな。桔梗さんはその時の護衛役だ。…あ、もちろん代金は俺持ちだからご安心を」

「仮にも女子を連れて行くところが賭場かい。普通、こういう時は洋服とか装飾品とかを買うんじゃないかね。いや、最近の若い子の流行は知らないんだけども」
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:12:58.97 ID:qYPKN+FJO
「二年前まで血で血を洗う戦争やってた奴に期待しないでいただきたい。それに俺にだって一応ちゃんとした考えがあるんだ。弁明させてくださいお願いします」

「どうぞ」

「ありがとうございますお雪様。…で、瑠璃さんを賭場に連れてく理由なんだが。半ば自棄っぱちになってる彼女に、生きる目的を見つけてもらいたいんだよ。楽しいことでも知ってくれれば、身を滅ぼすような真似はしなくなるかな…と」

「それでもしギャンブル狂いになったらどうするつもりだい?博打に費やす金を稼ぐ手段として夜伽をし始めたら、もう何もかも終わりじゃないかな?」

「そこは…彼女の人間性に賭けるしかない。根っこはいい人なはずなんだ。…たぶん」

彼女の人となりが全然分からないので、かなり苦しい言い訳になってしまった。
もう少し交流しておけばよかったかもしれない、と後悔するも後の祭り。

今の自分は破滅へ手招きしている悪魔そのものだ。
塩を撒かれてニンニクを食わされた上に十字架を刺されても文句は言えないだろう。

しかし。

「…でも、このままだとどう転ぶか分からないのも事実…。何かしらの楽しみを見出してくれれば変わるやもしれないし…むー…」

お雪は勝手に悩み始めた。彼女も瑠璃の状況に思うところがあるのかもしれない。
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:18:09.30 ID:qYPKN+FJO
↓1にどんな説得をするかをどうぞ。このレスのコンマを対象のレスのコンマが上回った場合説得成功です。
ダメだった時は回想になりますので、↓2に回想する項目を記載してください。


回想早見表


幼少期(幽閉時代)
少年期(ソルド時代)
少年期(聖女の召使い時代)
青少年期(戦争初期)
青年期(戦争終期)
青年期(ゴルギュリオ滞在時代)
青年期(シルヴィア邂逅時代)
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/16(木) 02:41:14.19 ID:tD8zIDmHO
ギャンブルの危険性についてあまり知らなかったと謝罪し、別の遊び(蹴鞠、羽根つきなど、緋桜郷の競技)に誘うのはどうかと提案する
949 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/16(木) 03:32:53.11 ID:m+TR03cs0
青少年期(戦争初期)
950 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/03/08(水) 23:01:52.25 ID:oaebpAt0o
待ってる
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