【安価スレ】堕ち行く光

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/07/31(日) 23:27:31.09 ID:oe7E69neO
曇天の空から降り注ぐ豪雨が、乾いた大地を潤す。その中を、一人の青年が歩いていた。
精気の抜けた顔は雨とも涙ともつかぬ液体で濡れ、その眼差しは深淵のごとき闇を湛えている。
誰の目に見ても悲惨な出来事があったのだと想像させる姿であり、事実、彼にとっては世界に絶望するに足る悲劇があった。

麻布に覆われた『何か』を大事そうに抱き抱え、当もなく彷徨う旅人は、この世界に希望など抱いてはいなかった。

「…滑稽だな。俺も、貴女も」

人のために戦い、傷つき、癒し。その結果が護りたかった人々からの痛罵とは。
端から見返りなど求めていなかったが、こうも堂々と非難され、手のひらを返されては呆れることすら出来なかった。
寧ろ、その結末を見抜けなかった自分の眼の節穴具合に嘆息するばかりだ。

「貴女は良かったのか?こんな終わり方で」

麻布を捲り、顔を露出させる。その表情からは、彼女の後悔がありありと感じられる。

「俺は…嫌だな…」

勇者は聖女の亡骸を強く抱きしめ、声無き嘆きを上げた。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/07/31(日) 23:27:58.70 ID:Zpw2gTweO
血に染まった晩餐会は、主催者の悲鳴を以って幕を閉じる。穢された思い出は消えることなく、記憶を蝕み続ける。

「なんでだよ…クソッ…。なんで、アンタたちは…」

過去に裏切られた勇者は、両の手に握られた剣を持つことを忘れ地面に蹲る。
ズキズキと痛む頭を抱えながら、眼前の地獄を記憶に残す。

物言わぬ肉塊となった王と宰相らが、この国の運命を告げている。動乱に呻く時代を示している。が、そんなことはどうでもよかった。
ただただ苦しかった。あれほど輝かしかった思い出は、どす黒い悪意に塗れて心を蚕食していく。
目の前の光景が現実なのだという事実が、どうしようもなく辛かった。

「…はは…はははははは…!」

その現実から逃れるべく、勇者はひたすらに笑う。世界に翻弄される愚者たる自身を嘲る。
もう、勇者は既に死んでいた。その抜け殻たる虚ろなる者、幽者だけがそこにいた。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/07/31(日) 23:28:31.39 ID:tPwhg3wRO
懐かしい夢から目覚め、自室を出る。右腕の包帯を外すと、昨日負ったはずの傷は跡形も無くなっていた。

「…ぷはぁ」

戦利品のワインをラッパ飲みで一息に飲み干す。葡萄が有名な村の名産品なだけあって、下手な酒場で味わったものよりも数段美味だった。
ここまで美味いなら一気飲みするのはもったいないかもしれない、と若干の後悔が生まれたが気にしないことにする。
欲しいならまた奪えば良い。今までそうやってきたのだから、躊躇う必要は無い。

「non dubitabis(汝、躊躇うべからず)…。先人は良い名言を残してくれたものだよ」

jus rem agis(正しい行いをする者よ)、という枕言葉が前にあったはずだが、別に無視していいだろう。人のやりたいことを妨げるのなら、馬に蹴られて死んでも仕方ないものだ。
どうしても妨げたいのなら、力で捻じ伏せるしかあるまい。

そんな思考をしつつ空になったワイン瓶を机に置き、作り置きされていたパンを片手に家を出た。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/07/31(日) 23:29:31.21 ID:1tIcqOPCO
【名前】リヒト・ブラウダ
【人種】人間
【性別】男性
【魔法】光魔法及び冥光魔法
碧眼のみが産まれるブラウダ家に突如産まれた紅眼の忌み子。
『自由の身となる代わりに金輪際家名を使わない』という誓約を結んだため他人は彼の姓を知らないが、家名を持たない人は割といるので特に気にされていない。
愛されたことがないので愛し方を知らず、故に愛に飢えている哀しき人間。
根は善人なのだが、目的のためなら非道を厭わない黒い部分がある。
現在は特級指名手配されているため、偽名である『リュクス』という名を使っている。


【どういうスレなの?】
このスレはリヒトが自分を信じてくれる人のために、そして誰にも裏切られたくないリヒト自身のために国を作るスレです。
それまでに何をするかは自由です。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/07/31(日) 23:33:21.18 ID:Vu/EZF18O
というわけでスタートです。現在のリヒトに同行してくれている仲間を計2名募集します。内訳は下記の通りです。テンプレートも併記しております。

必要数:1 指名手配直後からの仲間 性別不問
必要数:1 壊滅させたキャラバンから強奪した仲間(奴隷) 性別不問


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【人種】その名の通り。
【性別】その名の通り。
【魔法】どんな魔法を得意とするか。全く使えない人もいます。

魔法から下は自由記入欄となります。来歴や特徴などご自由にお書きください。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/01(月) 04:16:23.88 ID:ZNyStH1No
【名前】マナ
【人種】妖精
【性別】女
【魔法】祝福魔法
故郷を焼かれ、帰る場所を失った妖精の子
かつては同種の仲間に囲まれて幸せに暮らし、生命を愛する心を持っていた。しかし今は生命の存在、活動にやや否定的
特に今後の目的や展望があるわけではなく、故郷を焼いた者に復讐するほどの熱意もなく、日々無気力に過ごしている
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/01(月) 08:33:49.19 ID:OIJ2a2Ke0
【名前】シルヴィア・レイナス
【人種】人間
【性別】女
【魔法】全属性が使用できるが、後述の腕輪のせいで魔翌力のほとんどが封じられている
美しい銀髪と抜群のスタイルを持つ妖艶な美女
絶大な魔翌力と全ての属性の魔法を使いこなすという類い稀な魔法の才能を持ち、賢者として崇められていた
しかし彼女の非凡すぎる才能を次第に危険視したり嫉妬する者達が出始め、ついには騙されて魔翌力を抑制する腕輪をはめられた挙句殺害されそうになってしまう
辛くも逃げ出せたものの、その事については強い恨みを持っており、自分を殺そうとした者達への復讐、
ひいては才能ある者達が生まれや性別などに囚われず、正しく評価される世界を作る事を目指している
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/01(月) 19:27:33.92 ID:9/m36iXY0
【名前】ウルトラレイン
【人種】女性型のウルトラマン
【性別】女性
【魔法】ウルトラマンに変身出来る、格闘技や光線を出して怪獣と戦う
    力自体は非常に強力だがウルトラマンの宿命で地球状では3分間しか地球状では戦えない、
 【その他】 変身した姿は長い銀髪と青い瞳を持った美しい戦乙女、体のデザインは青色がメイン
 【性格」正義感がとても強く、お嬢様言葉を喋る
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 09:41:28.27 ID:m+wh6UcvO
爛々と照り付ける太陽が眩しい。天気が良いのはいいことだが、限度というものがあるだろう。
未だに散乱したままの瓦礫を破壊しつつ、天気に対する愚痴を漏らす。それで何かが変わるわけではないが、気休めにはなるものだ。

「おはようリヒトくん。私お手製のロイヤルなブレッドのお味はいかがかな?」

「普通。パン窯とかないから最初から味に期待してなかったが」

「お世辞でもいいから褒めてもらいたかったねぇ」

「そこまで俺は気が利かないものでね」

切り株に腰掛けてロイヤルなブレッドを頬張っている、美貌が台無しになっている女性。
彼女の名は『シルヴィア・レイナス』と言う。

流行に疎いリヒトでもその名を知っていたほどに著名な人物で、並び立つ者はいない、と断言されていた大賢者"だった"。
その才故に尊敬を集め、その才故に嫉妬に塗れた。
そして、人の悪意によって、自身を支えていた大いなる翼は奪われた。
今の彼女は、知識だけが取り柄の無力な人間と化している。過去の面影はその姿しか残っていない。

翼を失った大賢者は幽者に救われ、希望を無くした幽者は大賢者に救われた。
その関係とある種のシンパシーが、彼らを繋ぎ留めている。

「アレはどうだ?」

「意気消沈…というか、無気力状態だね。完全にやる気なし子ちゃんだよ」

リヒトがアレと呼ぶ、偶然幽者の目の前を通りがかってしまった不運なキャラバンから強奪した戦利品。人の悪意に故郷を奪われた人ならざる者。
それは、苦しみから逃れるべく心の檻に閉じこもっていた。

「…そうか。ま、しゃーないよな。ちと様子を見てくるわ」

「行ってらっしゃい」

勝手に死なれては大損だと、リヒトはわざとらしく口にしてアレの元に向かった。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 09:41:58.38 ID:m+wh6UcvO
「−−−−」

鬱蒼と繁る森の中、それはいた。背中から水晶のような羽を生やし、虚ろな表情で空中を漂っている。
その姿からは生きる気力を感じられず、漏れ出すように紡がれる歌は人には理解出来ず、ただ脳を蝕む。

「んな顔するなよ。生きてたら俺みたいにいいことがあるって」

喉元まで込み上げている嘔気を押し留め、平静を装い声を掛ける。歌は止まり、不快感も治まった。

「…どんないいことがあったの?」

「…まぁ、色々ですね」

いいことなぞ全く無かったので、追及されるのは困りものだ。そんなリヒトの心情を察したのか、それとも興味が無かったのか。
妖精は目を閉じ、後ろを向いた。

嘗て昏迷の森と呼ばれる地域に暮らしていた、という『マナ』と名乗った妖精は、自宅に連れ帰ったや否や近隣の森に逃げ込んだ。
逃げ込んだというよりは、こちらの方が居心地が良い、と言った方が正しいのかもしれない。
彼女ら妖精は、本来人の世に出てこない存在だ。森の奥で、自然と共に在るのが妖精というものだ。
そんな存在であるマナが、人の暮らす家を拒絶するのは道理と言えよう。

空に浮かび、瞑目しているマナを見たリヒトは踵を返す。
何かあったら助けを呼ぶように伝えると、妖精は小さく頷いた。

『なぜ、わたしをたすけたの?』

帰りの道すがら、救出されたマナに問われた言葉を思い出す。頭をガジガジと掻きながら、リヒトは声を漏らした。

「…言えるわけねぇだろ、クソ…」

あんな悲しそうな顔をされたら、目を背けることなんて出来なかった。そんなこと、本人には言えなかった。

自分を誤魔化すように頭を振った後、リヒトは足速に駆けていった。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 09:42:32.92 ID:m+wh6UcvO
「さて、ゴミ掃除ついでに作戦会議といこうか」

「ああ」

数百年前に定住を試みた先人が残した家屋。その全ては自然に呑まれて廃墟と化した。

人が文明を築いてから日が浅い現代では未開拓の領域はあまりにも広く、故にこうしてリヒトたちが隠伏生活を行えている。

「私たちの最終目標は何か。はいお答えくださいリヒトくん」

「自分の国を作って皆から愛されたい」

「うんうん。馬鹿正直に自分の願望を言ってくれてありがとう」

くつくつと笑うシルヴィアは揶揄っているのか、リヒトの頬をペチペチと叩く。これっぽっちも痛くないが、気恥ずかしいのでリヒトはそっぽを向いた。

「君は自分の国を作る。私は出生や性差等に囚われない、正しく才能や努力を評価される世界を作る。あとついでに私をこうした奴らを地獄に叩き落とす。という遠大な目標を掲げているわけだ」

人に話せば爆笑の後軽蔑が待っていること確実の、子供でも人に言わないほどの馬鹿馬鹿しい夢を、彼らは本気で、大真面目に成そうとしている。
一人は忌み子である自分でも、愛される権利を持っていることを信じるために。
一人は自身のような者を二度と生まないために。

「で、その過程に何が必要か話し合おうじゃないか。どうせ私が一方的に言うだけだろうけど」

どこから取り出したのか。スリムな眼鏡を付けたシルヴィアは、羊皮紙と羽ペンを片手に瓦礫に座った。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 09:43:18.53 ID:m+wh6UcvO
「まず私たちに足りない物は何だと思う?」

「人員。物資。領地。その他諸々」

「つまり全部足りないってわけだ。人手不足なのもそうだけど、物資が足りないのは痛いね。今有る物資も、私たちが数週間食い繋ぐのがやっとの量しかないからね」

「でもさぁ、物資を強奪(うば)っても運ぶ手段が無いじゃん。馬さえいないから俺が全部担ぐしかないし」

「だから、輸送手段が欲しいところだね。龍騎兵(ドラグーン)がベスト…次点で空騎兵(エアライダー)かな」

「最悪騎兵(ライダー)がいれば良いだろ。高望みしたってしょうがない」

「強欲じゃないのは偉いぞリヒトくん。愛されるために国を作ろうとしてる輩とは思えない!」

「忌み子が愛されるのを望んだって別に良いだろ!」

その後、あーでもないこーでもないと議論と言う名の談笑をする二人がいた。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 09:43:50.51 ID:m+wh6UcvO
何をするかを↓1にどうぞ。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/02(火) 10:16:25.44 ID:uS8tcFE80
仲間を探す
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 10:50:21.95 ID:uh0k/OhuO
「んじゃ、行きますか」

普段着から軽装に着替え、荷物を整理する。シルヴィアも同じく軽装に着替えて準備を済ませた。

「………」

マナ、ひいては妖精には着替えという概念がない。故に準備するものもなかったし、彼女にはそもそもする気が無い。

現在のパーティ構成は近接1、遠隔(笑)1、無職1という割り当てだ。つまり、リヒトが頑張らなければ全員死ぬ。
責任重大だが、勇者と呼ばれた彼の実力は伊達じゃない。並大抵の脅威であれば千切っては投げ千切っては投げである。

「頑張れリヒトくん。今の私は人喰いネズミにすら簡単に殺されちゃうからね!」

「自慢して言うことじゃねぇ!」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 10:56:45.88 ID:ctuF+rjyO
目的地を↓2にどうぞ。

A:賊のアジト 道中イベント:0
B:荒廃した街 ソルド 道中イベント:2
C:王亡き都 レムカーナ 道中イベント:4
D:普遍の町 アリフ 道中イベント:0
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/02(火) 11:12:17.29 ID:50IrCxfRo
踏み
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/02(火) 11:33:57.61 ID:mZq0QmmDO
C
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 13:24:27.42 ID:JBqdiSZ8O
「いやーすまないね!勇者にすら打ち勝てる自分の才能が恐ろしいよ!!!」

「帰ったら許さねぇ」

どこに向かうかを決める一世一代の大博打。即ちじゃんけんに大敗を喫したリヒトは、シルヴィアを抱えたまま獣道を駆けていた。ちなみに、マナはリヒトの頭にしがみ付いている。

「俺の事情を知ってるくせにレムカーナを選ぶか普通!特級指名手配犯だぞ俺!?」

「大丈夫大丈夫。いざとなったら飛んで逃げられるでしょ君」

「精神衛生上非常によろしくない!あっ」

長い獣道を抜け出すと、そこは崖っぷちだった。勢いのまま飛び出した三人組は、重力に従い落ちていく。
一瞬焦った顔を見せたリヒトだったが、すぐに表情を元に戻し、意識を集中させた。
溢れ出す光が身を包み、光の翼を現出させる。飛竜の翼もかくや、というほどの雄大な翼を広げ、勢いよく滑空する。

「快適快適。私を落とさないよう気をつけておくれよ?」

「すぴーどさげて」

「注文が多い奴らだなったく!!!」

ぶつくさ文句を垂れているが、要望通りに快適なスピードを維持するリヒトだった。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 13:28:31.99 ID:T8j5xHVvO
道中イベント 判定↓1コンマ


01〜15:魔物の群れが現れた!
16〜30:ならず者が現れた!
31〜70:何も起きなかった!
71〜85:行商人が現れた!
86〜99:何かが起きた!(自由枠)
00:???
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/02(火) 14:48:53.70 ID:yi8LVW/DO
はい
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 21:30:27.28 ID:EX6KTASnO
煌々たる星空が見える夜、川の近くでは小さな焚き火が燃えていた。パチパチと音を立てて燃え、風に揺れる炎は儚くも美しい。

「はふ…」

リヒトが設置した光源頼りに読書をしていたシルヴィアは、襲う眠気を誤魔化すことなく欠伸で示した。戦力の99.9%を占める要であるリヒトはここにいない。いる必要が無い。

「流石私。魔力を封じられても、叡智一つで問題を容易く解決出来てしまうなんて…。と、自画自賛しても、反応してくれる人がいないと存外つまらないものだね」

「………」

膝下に丸まって眠るマナの頭を撫でる。マナはじっとりとした視線を向けた後に、また目を閉じた。

退屈しのぎに、シルヴィアは小石を拾って軽く放り投げる。一定の距離を進むと、不快な音と共に塵と化した。

「…ちょっと出力上げすぎたかな。後で術式を調整しようそうしよう」

リヒトとシルヴィアの共同作業で構築された結界は、小規模な軍勢が匙を投げて不貞寝する程度には強固だった。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 21:31:17.00 ID:otp0XyTyO
野営地から少し離れた森の中。一人の青年が夜空を眺めていた。無数の魔物が跳梁跋扈しているが、怯えてはいない。
寧ろ、魔物側が怯えている。こっち来んなあっち行け。どこかに行ってくださいお願いします!と涙ながらに念じている気さえしてきた。

リヒトは星空に手を伸ばす。無数の星が手のひらに隠れるが、触れることはない。

「星に手を伸ばしても、決して届きはしない。俺の夢も、同じものかもしれない」

それでも。

「俺は絶対に、夢を諦めない」

決意を確かめるように、星を握りしめた。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 21:32:59.80 ID:Z3vjnK0VO
道中イベント 判定↓1コンマ


01〜15:魔物の群れが現れた!
16〜30:ならず者が現れた!
31〜70:何も起きなかった!
71〜85:行商人が現れた!
86〜99:何かが起きた!(自由枠)
00:???
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/02(火) 21:34:51.35 ID:dmml45dE0
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 21:45:31.37 ID:RcGmexNjO
「はい終わり」

最後の一匹を始末したリヒトは、剣に付いた血を拭う。光を湛えた聖剣は、ふわりと浮いて虚空に消えた。
慈悲を以って命を絶つ。一息に殺めるのはリヒトなりの慈悲であり、配慮だった。
一撃で絶滅しなければ、その分苦しみが続く。逃れ得ぬ死であるのなら、少しでも楽に逝かせてやろう、という優しさだ。
無論、それが自己満足であることは自覚している。殺しているのに何が優しさだ、との非難は甘んじて受け入れよう。

だが、この戦い方を辞めるつもりはない。迅速に、確実に殺めることは、自身の安全にも関わるからだ。
生き延びるから、禍根が生まれる。ならば、殺し尽くせば禍根など生まれない。
それは、度重なる激戦で得てしまった、常人とは異なる価値観だった。

「にんげんはなぜ、ほかのいのちをうばうの?」

不意に口を開くマナ。その問いに、リヒトは答えられなかった。
殺すことだけを求められた勇者には、正しい答えが分からなかった。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 21:46:18.65 ID:3gHmBlN4O
道中イベント 判定↓1コンマ


01〜15:魔物の群れが現れた!
16〜30:ならず者が現れた!
31〜70:何も起きなかった!
71〜85:行商人が現れた!
86〜99:何かが起きた!(自由枠)
00:???
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/02(火) 22:04:14.94 ID:50IrCxfRo
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 22:05:57.77 ID:Y5zXCckqO
どんなことがあったかを↓1に。話の流れにそぐわないもの、あり得ないものなどは下に流れます。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/02(火) 22:11:11.76 ID:Ty+u76J0O
草木の生い茂る廃城を見つける
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 23:22:21.37 ID:+TIyWFxxO
リヒトはシルヴィアたちより先行し、周囲に危険が無いか偵察していた。
しかし、目ぼしいものは何も見つからない。魔物もいなければ、賊らしき人影や馬車の痕跡すらも見えない。

「もう少し高度を上げるか」

光の玉を二発打ち上げた後に、さらに上へと飛翔する。合図を送ったから、二人もすぐ駆けつけるだろう。

「…む?」

リヒトから見て二時の方向。方角で言えば北西の先に、人工的な何かが一瞬見えた。
好奇心を抑えるつもりは端から無いので、仔細が判明する距離まで接近する。
ある程度近づいてから解ったことなのだが、人工的な何かとは『廃城を構成する見張り塔』だった。放置されて長いのか草木が生い茂り、蔦が表面を覆っていた。
我ながら良く見つけられた、と感心するほどに、風景に同化して分かりにくい。

鬼が出るか蛇が出るか。心躍る廃城探索の始まりだ。
口角を吊り上げたリヒトは、光を三度放った。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 23:22:59.54 ID:+TIyWFxxO
廃城前の石碑で合流した幽者御一行はまず、この城がどういうものなのかを調べることにした。
現代では使われていない文字に加えて経年による風化のせいで文字は全く読めなかったが、天才は格が違った。

「『ヴォルグス城』…で間違いないね」

文字を丸写しした羊皮紙を見て、シルヴィアは満足気に頷く。解読に成功したらしい。

「まぁ、私にかかればこんなものさ。早く中を調べようか。どんな書物が遺っているか楽しみでしょうがないよ!」

「わーってる。露払いはお任せあれってな」

聖剣を肩に担ぎ、リヒトは閉ざされた扉に触れる。鉄製の扉は錆び付いており、ビクともしなかった。
立ち塞がる困難は全て、この聖剣たちと共に乗り越えてきた。ならば、今回も同じようにするだけだ。

「…ぉらっ!」

リヒトは、全身全霊の蹴りを叩き込んだ。

「いや斬り捨てなさいよ。聖剣たちがかわいそうじゃないか」

「腕が痺れるからやだ」

轟音を立てて闇へと消えた扉をよそに、シルヴィアは呆れたように頭を抱えた。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 23:23:27.26 ID:+TIyWFxxO
『わたしはねてる』

とだけ言い残して木に寄りかかったマナを除いた、リヒトとシルヴィアコンビは意気揚々と廃城を探索する。
長い間人の手が加わっていなかったので内部は荒廃しており、触れただけで崩れ落ちるほど脆い足場もあった。

「………」

虫に食われ、カビが生えてマトモに読めない書物も散乱していた。なんとか読めそうな部分を見つけ出し、シルヴィアに解読を頼むが、溜め息ばかりが返ってくる。

「落書きでも書かれてたのか?」

「住人…正しくは衛兵の手記さ。この城が滅ぶまでの顛末が記されててね」

「へー。普通に重要な情報の気がするが」

「主観の…それも一つの視点で見た情報だけ手に入れても、という話さ。同じ筆者の手記だけを見たって何も得られやしないよ」

シルヴィアは不満そうに本を直し、自身の持つ羊皮紙を取り出した。そして、勢いよくペンを走らせた。

「とはいえ、数少ない情報だ。目に見える形として残せば、筆者も報われるだろう。興味があるなら、何が書かれていたか教えてあげるよ?」

「またの機会で頼む」

興味なさげにリヒトは答え、保存食の干し肉を齧った。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/02(火) 23:26:47.13 ID:+TIyWFxxO
廃城探索 判定↓1コンマ


01〜30:宝箱を一つ発見。(安価一回)
31〜60:宝箱と新しい手記を一つずつ発見。(安価一回と情報を獲得)
61〜99:宝物庫を発見。(安価複数回)
00:???
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 00:12:35.90 ID:SAvywdSDO
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 01:01:22.18 ID:OZv5ZrZgo
きたい
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/03(水) 01:14:17.85 ID:2kEEnaFQO
「お待たせしたね。さて、お次は君の番だよリヒトくん」

「ああ。頭を使う作業は任せた」

「任されたよ」

城内の廊下を歩きつつ、城中に巣食っていた魔物を一掃していく。所々腐敗している魔物が多いが、ゾンビの類ではなさそうだ。

「…この城が無人になった元凶だよ。その腐りかけのネズミや犬に噛まれたら、そこから疫病に感染して死に至るんだ」

「えっ」

「外に疫病が広まっていない理由は単純明快。この病気に罹った生き物は、日の光や水を極度に嫌うんだ。意志に関係なくね」

「つまり、この城から外に出られないんだ。一度出てしまえば、拒絶反応でたちまち息絶えてしまうだろう」

「…治療法は?」

「ない!」

なるほど。クソみたいな病気だ。二人は顔を見合わせて、冷や汗を流した。こんな病気に罹って死ぬなど、死んでもごめんである。

「見敵必殺だ。怪しい奴がいたら片っ端から教えてくれよ!」

「死にたくないから死ぬ気で探すよー!」

半ば自棄になった二人組は、お宝目指して城内を走り回った。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/03(水) 01:14:54.70 ID:2kEEnaFQO
「…これで、粗方探し終わったかな」

宝箱がありそうな場所を調べ回ったが、どこもかしこももぬけの殻だった。見つかったものといえば、先人の遺骸くらいだ。
鎧と白骨が散乱した無惨な光景。嘗てはここが人でいっぱいだったと考えると、無性に悲しくなる。

今二人がいるのは、城主が利用していたであろう寝室だ。人が数人寝られるほどに大きなベッドと、埃を被った鏡台が特徴的な、しかしどの城でもよく見られる様式の部屋だった。

「…こりゃ期待外れだな。一休みしたらレムカーナに行こうぜ」

「ちょっと待っておくれよ…」

そう言って、シルヴィアは羊皮紙に図面を書き殴る。知識不足のため確証は無いが、ヴォルグス城の間取りに見える。
周囲を見渡し、独り言を溢し。正直関わりたくない行動をするシルヴィアから、リヒトは数歩後ずさる。
特に気にする様子もなく、シルヴィアは作業を続けた。

「解った!」

待つこと数分。突如、賢者が口を開いた。珍しく大きな声を出すものだから、リヒトは少し驚き、シルヴィアの方へ振り返った。

「解ったって、何が?」

「リヒトくん。そのベッドを壊すかどかしておくれ」

「ん」

指示を疑問に思いつつ、リヒトは剣を抜いた。光を纏った聖剣が振るわれ、光の奔流が壁ごとベッドを吹き飛ばした。

「やりすぎだけどまぁいいか。次は、そこにある瓦礫を取っ払って」

「了解。…おぉ?」

不自然に積み重なった瓦礫を排除すると、石製の梯子が目に映った。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/03(水) 01:15:36.94 ID:2kEEnaFQO
リヒトは梯子を降りつつ、今の位置をシルヴィアに確認する。

「ここは、裏手のバルコニーから見えていた壁の出っ張りの部分だよ。てっきり、構造上作らざるを得なかった、補強用の部分だと思ってたんだけど」

「城内を調べて不思議に思ったんだ。ここには、貴重品を隠す領域が無いことにね。王権を象徴する宝具とかを、略奪者に奪われないように隠す秘密の部屋が普通はあるはずなんだ」

だが、そのような怪しい場所は見つからなかった。隠し通路や隠し扉も、床をいくつか破壊までして調べたが存在しなかった。
一階から最上階まで間取り図を書き出し、唯一そういった通路が隠せそうな場所がここだったらしい。

「最深部に到着…。何がありますことやら」

長い梯子を降り終えると、今度は石で作られた扉が目に映る。外気に晒されていなかったからなのか、新品同然の外見をしていた。

「それでは御開帳だ。3…2…1…0!」

力を込め、扉を押す。地響きと共に、ゆっくりと扉が動いた。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/03(水) 01:18:53.93 ID:dx3FJKYUO
戦利品 判定↓3までのコンマ 最低2つ保証
何が入っているかを記載してください。何が入っているかが記載されているレスのコンマで判定します。


01〜30:スカ
31〜99:あたり
00:おおあたり

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 01:26:30.12 ID:v8Wl41ec0
眠っている少女
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 01:31:32.24 ID:Ch8eusDyo
何らかの魔翌力を秘めた宝珠
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 01:39:24.30 ID:AR8yVPK8o
代々伝わるめちゃくちゃ美味い料理のレシピ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/03(水) 01:46:42.30 ID:wPJ2/mIiO
全部スカなので↓2までのコンマで再判定
↓1は00を除いて三等分、↓2は二等分して、それぞれのコンマの大きさに対応したものを選びます。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 01:48:03.43 ID:v8Wl41ec0
連取りありなら
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 06:39:11.75 ID:OZv5ZrZgo
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/03(水) 12:24:09.39 ID:Yma5WwEOo
>>42
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 02:25:38.13 ID:a37F8p4WO
undefined
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 02:26:08.23 ID:a37F8p4WO
扉を開けると暗黒に満ちた宝物庫が姿を見せる。一寸先は闇、と比喩でよく言われるが、実際に現象として目にすることになるとは思わなかった。
見えない。何も見えない。マジで見えない。自分の手を眼前まで近づけても、全く見えないのだ。光の概念がこの場所だけ存在していないのかと錯覚を覚えてしまう。
流石に暗闇の中を手探りで行動するのは無謀だ。二人とも暗視の手段は持っているが、それは星の元でしか使えないし何でもかんでもはっきりと認識出来るわけではないのだ。

リヒトは光の短剣を数本作り、石畳や天井に突き刺した。ほうら明るくなったろう、とでも言いたげだが、数が多すぎて逆に眩しいまである。

「…まぁ、予想はしてたよ。この人たちも辛かっただろうな」

光が戻った視界に映るのは、朽ち果てた衣類と亡骸。そして、大事そうに守られた三つの宝箱。
遺体が身につけている宝飾品からして、亡くなられたのは城主夫妻と、その親衛隊の騎士だということは容易に想像出来た。死因はおそらく餓死。

机に置かれた手記には、臣下を置いて病魔の蝕む地上から逃げたこと。そして、病に苦しむ臣下と共に逝けぬ自分の不甲斐なさなどに対する謝罪と後悔が記されていた。
当時の情勢が分からないので憶測でしかないが、本気で逃げ出すのなら城から出るだけで良かった。
にも関わらず、わざわざ脱出口が無い宝物庫に逃げ込んだということは、そういうことだろう。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 02:27:23.37 ID:a37F8p4WO
「…見捨てることが出来なかったんだろうね。病に苦しむ兵士たちを置いて逃げることが出来ず、かといって同じ苦しみを味わう覚悟が足りず。だから…」

「だから、この人たちはこの場所で、命を終えることを選んだ。同じようには逝けなくとも、せめて、同じ場所で。共に生きてきたこの城で終わりたかったから。…哀しいね」

原因も不明な疫病で国が滅ぶことなど、短い人類の歴史を辿ればままあることだ。集落単位になればなおさら。
だが、これは。こんな終わり方は哀しすぎる。理不尽すぎる。

「まぁ、それはそれとして。お宝を拝見させていただくか」

「ムードもへったくれも無いね。人の心は無いのかい?」

「人の心があるから宝に惹かれるんだろ」

先程までの陰鬱な雰囲気は霧散し、彼らが命を賭して遺した未知のお宝への興味が場を支配する。どこからか、呆れた溜め息が聞こえた気がした。
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 02:27:54.88 ID:a37F8p4WO
鍵の掛かった宝箱を開けるのに一番手っ取り早い方法は何か。道行く人々に訊ねれば、様々な答えが返ってくるだろう。
盗賊に頼む。鍛冶屋に頼む。なんかいい感じに鍵だけ壊すなどなど。
幽者の答えはこれだ。

「箱を解体すれば良いんだよぉ!!!!!」

リヒトは聖剣を取り出し、一つ目の宝箱を斬り刻む。幾度も閃光が走り、鞘に収められた瞬間、宝箱はバラバラになって中身を露出させる。
果たして、ヴォルグス城の至宝の正体とは。

「『は ず れ』」

と古代語でデカデカと書かれた羊皮紙が、至宝の正体だったらしい。なるほど、このガッカリ感がお宝というわけか。
お宝をくれた返礼として、この城は跡形もなく滅ぼさなければならない。
聖剣が色を変え魔剣となる緊急事態が発生しているが、シルヴィアは意に介さず残りの宝箱を物色する。パカっと、何の抵抗もなく開いた。

「は?!?」

「最初から鍵は掛かってなかったよ。鍵チェックも無しに実力行使に出るリヒトくんが私は怖いよ」

「いや普通宝箱には鍵が掛かってるって思うだろ!?」

「鍵が空いてたのは事実なんだから逆ギレされても」

雑談の間に、魔剣はまた聖剣へと戻る。ヴォルグス城消滅の危機は避けられた。
シルヴィアの吐息と共に宝箱から取り出されたのは、紫紺に染まった透明な宝珠と、古代語がびっしりと書かれた羊皮紙の束だった。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 02:28:28.73 ID:a37F8p4WO
「おぉっ!なんかそれっぽいやつじゃん!」

「それっぽいっちゃあそれっぽいけどね。君が思ってたであろう金銀財宝とは程遠いよ?」

「この際人を小馬鹿にした書き残しじゃなければなんでもいいわ!」

先程上げて落とされたことに対する恨み節を溢すリヒトは、羊皮紙を手に取る。が、すぐに目を背けた。

「古代語なんて読めねぇよ」

「もし君が読めても興味は無いだろうけどね」

シルヴィアが大事そうにカバンに入れたそれは、ヴォルグス城に伝わる極上料理。そのレシピだった。レシピの題名は『気になるあの人も即死!?胃袋を掴んで離さぬメチャウマビーフシチュー』である。物騒な題名で怖い。
もう一つのお宝は、シルヴィアをしてよく分からんと漏らす謎の魔力が秘められた宝珠だ。彼女が言うには、リヒトの魔力に似た波長を感じるらしい。

「まぁ、たまたま見つけた廃墟での収穫と考えれば悪くはないんじゃないかい?レムカーナはもうすぐだ。早いとこ用事を済ませようじゃないか」

「…その前に、少し時間をくれ」

収穫に満足し宝物庫を出ようとするシルヴィアを、リヒトは決意を秘めた表情で止めた。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 02:29:03.33 ID:a37F8p4WO
「…これでよし」

目に見えた亡骸を全て、ヴォルグス城の中庭に移動させる。
リヒトが光魔法で発破を掛け、ぽっかりと空いた二つの穴に、亡骸を分別して埋めていく。ちなみに、左が城主夫妻を入れた穴で、右がその他の遺体を入れた穴だ。
遺体を入れ終わったら、土で穴を完全に埋める。そして最後に。

『ヴォルグス城の城主、苦楽を共にした臣下と此処に眠る』
『ヴォルグス城に生きた者、敬愛する城主と此処に眠る』

と、リヒトが慣れない手で文字を彫ったお手製の石碑を建て、埋葬は終了した。

「お優しいことで」

「…別にそんなんじゃない。放置してどっか行くのは、墓荒らしみたいな気がして嫌だったんだよ。かといって、城主だけ埋めても中途半端だしな」

所詮これは、ただの自己満足だ。こんなことをしても、犯した罪は消えない。死者の眠りを妨げた事実は変わらない。だけど。

「…俺、この城に来れて良かったと思うよ」

人知れず滅んだヴォルグス城を。滅びゆく中で未知の脅威に怯えながらも、懸命に生きた者の覚悟と生き様を。互いに想い合っていたことを知れたから。

「…そうだね。君がそう思ったら、死んだ人も浮かばれるよ。きっと」

眠ったままの小さな妖精を抱き、二人はヴォルグス城を後にした。

夜な夜な談笑する声が聞こえる廃城を見つけたら、決して近づいてはならない。
死ぬほど美味い(物理)ビーフシチューを振る舞われて、二度と戻ってこれなくなるから。

そんな噂が冒険者の間で広まるのは、また別のお話。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 02:29:31.31 ID:a37F8p4WO
道中イベント 判定↓1コンマ


01〜15:魔物の群れが現れた!
16〜30:ならず者が現れた!
31〜70:何も起きなかった!
71〜85:行商人が現れた!
86〜99:何かが起きた!(自由枠)
00:???
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 02:32:29.12 ID:aSx416AA0
a
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 03:00:47.83 ID:uTc78J9QO
長い旅が終わりを迎えレムカーナが目前に迫ったところで、問題に直面することになった。

「…チッ。楽には行かせてくれねぇか」

聖剣を肩に担ぐ勇者は不快気に舌を打ち、前に出る。賢者は妖精を背負い、一歩後ずさった。

眼前にいるのは、強固な鎧を纏ったミノタウロスの群れ。おそらく種族はアークミノタウロスだ。
本来であれば、人里から遠く離れた洞窟などに居住しているはずなのだが、何故ここにいるのだろうか。

「腹でも空かせてるんじゃないの?人を喰ったミノタウロスはアグレッシブだからね」

なるほど。人の味を覚えて、わざわざ人が多く住むレムカーナまで来たというのか。
欲を満たすためなら苦労は厭わない。素晴らしい精神性だ。

リヒトは群れの先頭に立つミノタウロスの獲物を凝視する。返り血と臓物がべったりと塗れたそれは、数多の命を刈り取ったことを物語っている。
先程から鼻を突く屍臭の正体に気づき、気分が悪くなる。

そんなことは知らねーと、ミノタウロスは咆哮と共に突進を仕掛けた。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 03:04:44.30 ID:+MoV9pGPO
戦闘 判定↓1コンマ


01〜05:リヒトピンチ。
06〜25:シルヴィア&マナピンチ。
26〜45:戦闘膠着。
46〜75:有利。
76〜90:ミノタウロス隊撤退。
91〜99:ミノタウロス隊全滅。
00:???
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 03:44:17.06 ID:FECU2vr1o
_
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 09:51:19.51 ID:BJb5QkE4O
ミノタウロスの号令と思しき怒号が聞こえ、群れが一斉に突進を始めた。
ムッキムキの上半身と妙に貧弱な下半身から生まれる推進力は伊達ではなく、筋肉の波濤と形容しても差し支えがないほど、その突進には迫力と重圧があった。

現役時代にアークミノタウロスと戦り合った経験が無いため、どういう出方をするか分からない。
ので、まずは小手調べとして牽制を行うことにした。

リヒトが『光絶(スプライト)』と呼ぶ、魔力を用いた極小範囲の空間切断。数多の戦闘の中で体得した、効率的に戦力を減らす殺戮の化身たる魔法は、悉くが避けられた。

「初見で避けられるかっ…!」

リヒトは即座に小手先の技は通用しないと判断し、シルヴィアとマナに逃走の指示を出す。
はっきり言って、お荷物な二人を守りながら挙動からしてかなりの手練れである魔物の軍勢を処理するのは、幽者であるリヒトでも苦労するものだ。

「ーーーー!!!!」

「下位種相手の対策が通用するか分からねぇが!!」

光の魔力を纏った双掌で地面を突く。魔力が大地に満ち、無数の光剣が突き立った。
致死性の悪路を形成し、突進を妨害する。騎兵にも転用出来る突進対策の効果は果たして。

「ーーーーっ!!!!!!」

効果ナシ。枯れ枝を折るようにパキパキと折られては、なけなしのプライドも傷つくと言うものだ。
というか、本当にあのミノタウロスの上位種なのだろうか。明らかに耐久性などが段違いで高いのだが。似た外見の別種だったりしないだろうか。
そんな疑問が浮かんでくるほど傍若無人な振る舞いをするミノタウロスは半数がリヒトに押し寄せた。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 09:52:12.88 ID:BJb5QkE4O
ミノタウロスとリヒトが揉みくちゃになっている頃、シルヴィアとマナはただひたすらに逃走していた。

「ひぃ…!ひぃ…!インドア大賢者にランニングは厳しいって…!」

「うし、きた」

「分かってるよぉ…!」

ヘロヘロな走りを魅せるシルヴィアに、呆れながらも魔法を掛けるマナ。
妖精の齎す祝福で身体能力が上がっているのだが、悲しいかな。0に何を掛けても0なのだ。

「クソゥ!私が魔力を封じられてなかったら、あんな筋肉ダルマ秒で消し飛ばせるのに!」

悪態を吐くシルヴィアを慮ることなく、筋肉ダルマは獲物を構え距離を詰めた。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 09:56:07.38 ID:aJC0rZfWO
死亡判定 判定↓1コンマ


01〜10:シルヴィア死亡
11〜20:マナ死亡。
21〜30:シルヴィア負傷。
31〜40:マナ負傷。
41〜55:リヒトはみがわりをつかった!
56〜95:妨害成功。
96〜99:ピンチはチャンス。
00:???
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 10:06:03.04 ID:QAXhO8330
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 10:36:55.43 ID:KgSlAMPMO
ああ、これは駄目だ。眼前に迫るアークミノタウロスを見て、シルヴィアは諦観した。
リヒトが筋肉ダルマ包囲網を抜け出すのにおよそ10秒掛かる。そんな時間があれば、どちらかが確実に死ぬ。

「…私に、他人を踏み台にしてまで生きる強かさは無いのでね」

人肉を求めてレムカーナまで来たのなら、妖精のマナは興味の対象外のはずだ。そう予想を付けたシルヴィアは一歩、前に出た。

「どうしようもない人生だったが、まぁ。君といた時間は、存外悪くなかったよ。リヒトくん」

「私の夢は既に託している。必ず実現させてくれたまえ。…頼んだよ」

人を疑い、見限ることが出来なかったが故に、翼を失った。他人を踏み台に出来なかったが故に、命を失う。
大賢者の末路としては三流の悲劇だと、シルヴィアは小さく笑い、命を散らした。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 10:37:38.05 ID:KgSlAMPMO
人々の羨望を集めた大賢者は、人知れず凶刃に斃れた。
飛び散る鮮血は、惨たらしくも、美しい。
力なく倒れたシルヴィアの遺体を、涎を垂らしたミノタウロスが鷲掴む。

己が非力だったばかりに、死ぬ必要のない者が死んだ。その事実は甘んじて受け入れる。
が、今はまだ、悔やむ時間ではない。
そして何より、目の前の魔物は大事な遺体を喰らおうとしている。そんなこと、絶対にさせるわけにはいかない。

悪夢からようやく解放されたのだ。何人たりとも、その永い眠りを妨げることなど許されない。だから。

「その薄汚い手で、シルヴィアに触れんじゃねぇぇっ!!!!!!」

何度味わったか知れない喪失感と共に、魔剣の力を解き放った。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 10:40:11.04 ID:qLF5kPxPO
戦闘 判定↓1コンマ


01〜05:マナピンチ。
06〜15:戦闘膠着。
16〜40:有利。
41〜65:ミノタウロス隊撤退。
66〜99:ミノタウロス隊全滅。
00:???
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 10:50:36.89 ID:k4dGG/FL0
たあっ
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 11:41:04.09 ID:8Dgzlt0WO
黒光の流星。死の閃光。そう形容するしかない、禍々しい光が、戦場を斬り裂いた。
血と臓物を散らし、生ぬるい風が吹き荒れる。屍臭の混じったそれは命が無造作に刈り取られた証左であり、圧倒的な暴力に捩じ伏せられた結果だ。

「いっつもこうだ。なんで、俺は喪うんだよ。大切な物ほど、あっけなく失くしてしまう。手から零れ落ちてしまう」

膨れ上がる憎悪は、魔剣の刀身に纏わりついて。深淵の如き光を湛える。
光でもあり闇でもある。度重なる絶望によって目醒めてしまった、リヒトが冥光と呼ぶ破滅の魔力。それが、獲物を見定め、放たれる時を待っていた。

相対するミノタウロスは、死の予感を敏感に感じ取る。これには勝てないと。命が惜しくば、戦利品を捨てて逃げろと。
耳を劈く咆哮が大地を震わせ、ミノタウロスの軍勢は回頭して逃走を始める。
だが、幽者にそれを見逃す理由は無かった。

冥光を纏った魔剣の横薙ぎ。たったそれだけで、命全てが無へと帰した。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 11:41:51.10 ID:C28H3fo7O
生命の消え去った戦場に立つのは、勝者にして敗者の幽者。そして、無感情な妖精。
虚な表情で遺体を麻布に包む幽者は、皮肉にも遺体の回収の手際が良かった。

「ほかのいのちをころすのにころされるのはいやなのね?」

「…生き物はそういうものだ。そこらの魔物も、同じことをやってるだろ」

世界に苦しめられたとは思えないほどに穏やかな顔をしたシルヴィアを抱え、剣を虚空に戻す。
勇者のみが持つという聖剣を見せびらかす意味は、あまりにも大きいからだ。

「にんげんだけよ。たのしむためにいのちをうばうのは」

「…そうだな。それだけは、俺も同意するよ」

人の闇を知っているリヒトはマナの言葉を肯定し、レムカーナへと入った。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 11:42:12.07 ID:EaOI1lKEO
レムカーナへと至ったリヒトは、まずは教会に向かった。遺体を抱えたまま行動するのは、悪目立ちしてしょうがない。

「…はい。名前は『シルヴァ・レナ』でお願いします。はい。ありがとうございます」

棺を見繕い、金銭を支払う。かなり重い買い物ではあるが、躊躇うものではないので即決で購入した。
棺の受け取り日を決め、教会を出る。あれほど口うるさかった賢者の声が、不思議と今は懐かしく、恋しく感じる。

王亡き都『レムカーナ』。国王と宰相が『不慮の事故で死亡した(リヒトが殺した)』ため、内政が不安定な大都市である。
そのため、ならず者の数が増えスラムが広がり、と治安悪化の一途を辿っているわけだが、リヒトは心底どうでもよかった。

重要なのは、ここで仲間が増えるか否かだ。シルヴィアもそれを望んでこの場所を選んだのだ。
是が非でも仲間を見つけなければならない。

「…人が一人減っただけで、こんなに寂しくなるもんなんだな」

宿屋の食事を食べつつ、リヒトはそんなことを溢した。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 11:42:46.08 ID:EaOI1lKEO
何をするかを↓1にどうぞ。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 12:34:18.97 ID:b2tJ47Mb0
協力的な者を探す
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 12:46:30.65 ID:F0UVP+VLO
兎にも角にも人手が足りない。とにかく足りない。全くもって足りない。
幸いにも、ここレムカーナは人だけはいるものだ。その内容は置いといて。

「マナ…は…どうするか。正直いてもいなくても変わらないんだよな。かと言って、同行させたら目立つし」

妖精という存在自体、人里ではまずお目にかかれないものだ。そんなのを引き連れたぼっちの人間など、どう足掻いても注目を浴びてしまう。
それに、無気力な彼女にいったい何が出来るのか。甚だ疑問である。

「…とりあえず、この部屋に待機しておいてくれ。くれぐれも、他の人に見つかるなよ?」

「…わかった」

どこか寂し気なマナを見つつ、リヒトは部屋を退出する。外から、雷の音が聞こえてきた。

「…そろそろ一雨降るかな。その前に用事は済ませたいもんだ」

コートに穴が空いていないか確認し、宿屋を出た。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 12:48:51.39 ID:F0UVP+VLO
判定↓2までのコンマ
どこを探索するかを記載してください。どこを探索するかが記載されているレスのコンマで判定します。


01〜30:いない
31〜99:いた
00:???
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 13:05:18.99 ID:ttv+IH4/0
酒場
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 13:05:25.08 ID:q6ZafedYo
邸宅街
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 13:17:45.99 ID:qjxbjpYOO
仲間を一人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 13:39:43.07 ID:FECU2vr1o
【名前】ミェン
【人種】猫の獣人
【性別】女
【魔法】身体能力強化魔法
猫耳しかない獣人。その耳も片方は半分千切られている。
尻尾がないため故郷で迫害され、耳もその時に傷つけられた。行く宛もなく流れ着いたこの街で隠れつつ生き延びている。人間のコミュニティのなかでは獣人は珍しくため普段は帽子で隠している。
ただ、境遇に反して本人はとてもポジティブ思考。……あるいはもう壊れてしまっているのか
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 19:55:22.57 ID:Z+7Z4j6n0
まだ募集してるなら
【名前】アルカ・レジーナ
【人種】人間
【性別】女
【魔法】錬金魔法、全属性(失敗率99%)
見た目は普通の町娘。魔法使いを目指して修行の旅に出たが、使う魔法は失敗ばかりで自分には才能がないと思っている。錬金魔法に関してはこれまでの歴史の中でも指折りの才能を持っているが、本人はまったく気がついておらず、使う気もまったくない。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 19:57:26.82 ID:J0UTnyZnO
まずリヒトが足を運んだのは冒険者であれば誰もが利用する施設。いわゆる酒場だ。
冒険者=酒場中毒だということは昔から認知されているし、それは間違ってない。
いつ死ぬか分からない難儀な商売なので、気軽に楽しめる娯楽が人気なのも頷ける。

「…狙い目はあの娘だな」

酒場に入るや否や、リヒトは客を一瞥して目星を付ける。
自身も同じ経験をしているが故に、リヒトには排斥された同類が感覚で解るのだ。

酒場の隅っこでコソコソと小さなジャーキーを齧る女の子は浮浪児のようにも見えるが、素性などどうでも良いのだ。
重要なのは、役に立つかどうか。あと、自分を愛してくれるか。どっちが欠けてもならない。
いっそ清々しいまでにリヒトは自分の欲望に忠実だったが、その原因が彼の置かれた境遇だと知って、それでも罵倒出来る者がいるのだろうか。
もしいるのなら、それは何にも苦労することが無かった、全てに恵まれた人だけだろう。

「やぁお嬢さん。もし嫌でなければ、隣に座ってもよろしいですかな?」

営業スマイルを浮かべ、明るい声で問いかける。少しは警戒されることを想定して返答をいくつか用意していたのだが、それは全てドブに捨てられることになる。

「ボクの隣?いーよっ!」

にぱっと、太陽のような笑みを浮かべた少女は、隣の椅子を指差した。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 19:58:30.99 ID:J0UTnyZnO
会話の話題を↓1にどうぞ。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 20:08:36.51 ID:MhupgxLc0
大事な仲間を亡くしたので、悲しさを紛らわす為に誰かと話したかったと語る
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 20:28:48.20 ID:uR50DJ9yO
内心呆気に取られながらも、平静を保ったまま席に座る。ウェイトレスに安酒を頼み、会話を試みた。

「それで、どうしてボクの隣を選んだの?他の席もまだまだ空いてるよ?」

キョトンとした表情で首を傾げる少女は、小動物のように愛くるしい。
ごもっともな質問にリヒトは頷き、憂鬱そうに答えた。

「君の言う通り、他にも席はある。けど、座る気は無かったよ。面白おかしく話したい時もあるけど、今はそうじゃなくてね」

酒を運んできたウェイトレスに謝辞を述べ、グラス内の氷を指先で弾く。その光景を眺める瞳には、昏い闇が見え隠れする。

「…レムカーナに到着する直前。魔物の軍勢に襲われて、大切な仲間を亡くしたんだ。夢を語り合い、共に為そうと誓い合った、とても大切な仲間をね」

「こんな世界だ。仕方ないことだと割り切りたいさ。けど…どうしても、悲しさだけは消えないから。少しでも紛らわせようと、そう思ったわけだ。…こうして言うと、仲間の代わりに利用してるみたいだね。ごめん」

頭を下げるリヒトに、少女は首を横に振った。その表情からは、慈愛が溢れていた。

「ううん、気にしなくていいよ。…そうやって他人に頼りたくなるくらい辛かったんだね。ボクとお話しして少しでも気が楽になるのなら、喜んで」

「…ありがとう」

今にも泣き出しそうな顔で笑うリヒトに、少女も破顔した。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 20:29:22.93 ID:uR50DJ9yO
会話の話題を↓1にどうぞ。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 20:39:22.73 ID:F01D8y200
彼女の苦労話を聴く
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 21:07:49.49 ID:spJmStW+O
歓声が飛び交い賑わう酒場の片隅で、ゆったりとした雰囲気の中で会話をする男女のペア。
なにかを感じ取ったのか冷やかしに来る人はおらず、それはリヒトとしても都合が良かった。

ムードは上々。演技がバレているようにも見えない。このまま行けば友好的な関係が築けそうだ。と、自分の観察眼が確かなことに安心する。

「ところで、君もかなり苦労したんじゃないかな?」

「え?」

少し話の流れが強引すぎたか、と内心臍を噛む。が、このまま突っ切ってしまえばいい、と押し通すことにする。

「…いや、俺も苦しんできたことがたくさんあってね。爪弾きにされたり、裏切られたり。だから、解るんだ。同じように苦しんだ人が」

それが声を掛けた理由だと、心中で付け加える。その意図は見抜かれなかったようで、『ミェン』と名乗った少女は驚いた表情をする。

「ボク自身、今は全然気にしてないけど。昔は結構痛い目に遭ったかなぁ。お兄さんにとっては面白くないかもだけど、聴く?」

「もちろん。こっちの話を聴いてくれたんだ。俺も話を聴くのが道理ってものさ」

「分かった」

それから、ミェンは本当に気にしてない風に話をした。何故か、自分が惨めに思えた。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 21:08:25.85 ID:spJmStW+O
「ボクは元々、遠い山に住む一族の出身なんだ。でも、ボクだけ他の人と見た目が違ってて。色々なことをされたよ」

色々なことがなんなのか。大体予想はついているが、敢えて聴かないことにした。その詳細を聞くことに意味は無い。
今回の会話で肝要なのは、過去の苦しみを共有して打ち解けることだ。苦労話に理解を示し、同情する。
それは、見ず知らずの他人と仲良くなるのに手っ取り早い方法だ。

「それで、故郷を追い出されてここまで逃げて来たんだ。知らないことをいっぱい知れたから、故郷の人を恨んでなんかないよ」

「…そっか。強いな、君は」

「そう?褒められると照れちゃうな…えへへ…」

頬を上気させたミェンは、もじもじしながらはにかんだ。
その可愛らしい仕草は、下劣な連中が見たら劣情を抱かせるに充分な破壊力を持つ。

なんでこんな娘が、ここレムカーナで明るくいられるのか。不思議でしょうがない。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 21:09:29.23 ID:spJmStW+O
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。ファーストコンタクトを終了します。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 21:14:59.79 ID:MhupgxLc0
終了する
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 21:42:17.43 ID:qOrRIBPbO
ある程度の友好関係を築けたところで、交流を打ち切る。欲張っては損をするだけなのは、痛いほど身に染みている。

リヒトは時計をチラリと見やり、グラス内の酒を飲み干した。

「そろそろ夜も更けたので、俺は失礼するよ。ミェンも不審者にお気をつけて」

「もう行っちゃうんだね。じゃあ、ここでお別れだ」

酒場に入る前と比べて、幾分か晴れやかな表情を作ったリヒトは席を立った。
ミェンはヒラヒラと手を振り、店を出るリヒトを見つめ続けていた。

「初動は上手くいったかな。この調子で進めばいいが…」

軽く酔いの回った頭を押さえながら、貴族の住まう邸宅街を目指す。案の定見張りがいたので、必殺のステルスアタックに沈んでもらった。

一時間ほど人捜しをするも、成果が得られずがっくりと項垂れたリヒトだった。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 21:42:48.94 ID:qOrRIBPbO
翌朝。やれ襲撃だ。やれ強盗だ。とてんやわんやの邸宅街は、人だかりに溢れていた。
治安の悪い平民街はともかく、見張りや衛兵が常駐する邸宅街は、暴力沙汰が皆無なのだ。
そこで気絶している見張りがいたとなれば、話題になるのも宜なるかな。

「あむ…」

頑なに食事を摂らないマナに近所の青果店で購入した果物を与え、冷や水を飲む。
眠気覚ましにはその刺激がちょうど良く、はっきりと意識が覚醒した。
レムカーナに何日いるかは決めていないが、拠点に戻るからには、何か成果が欲しいものだ。

シルヴィアとの約束を脳内で反芻し、ヴォルグス城で入手したレシピを撫でる。

「…古代語、教えてもらえばよかったかな」

後悔先に立たず。そんなことわざをふと思い出し、瞑目した。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 21:43:18.91 ID:qOrRIBPbO
何をするかを↓1にどうぞ。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 21:50:04.73 ID:q6ZafedYo
マナをコートに隠して観光しつつ、妖精の目線で協力者探しを手伝ってもらう
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 22:04:57.43 ID:x+OHSZc+O
「…へんなにんげん」

「今更だ」

降り頻る雨の中、コートを身につけ外に出る。雨で人通りが少なくなり、絶好の観光日和となった。身体が濡れることに目を瞑れば、だが。

フードを被るリヒトの首元。そのすぐ隣から、ひょっこりと小さな頭が顔を出す。
道行く人々の視線は、特に集まっていない。コート様々である。

「マナ。お前目線で利用出来そうな人がいたら教えてくれ」

「わたしはりひとのやることにきょうみない」

「そう言うな。食いたい物があれば奢ってやるから」

「いらない」

「頼むよ。一生のお願いだ」

「…ならやる」

「サンキュ」

気まぐれな妖精に頭を抱えながら、雨天のレムカーナを練り歩く。
何か、面白いものでもあればいいが。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 22:06:59.31 ID:x+OHSZc+O
どこを観光するかを↓1にどうぞ。
マナチェッカー 判定↓2コンマ


01〜45:きょうみない
46〜99:きょうみある
00:???
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 22:12:54.92 ID:GqXuWNwCO
高台の庭園
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 22:15:14.32 ID:Mz9BpWQY0
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 22:46:12.50 ID:UpFCM8+ZO
城下に続く長い階段。昔を思い出しながら登っていると、雨は勢いを増していく。
空を見上げてみると雲は更に厚さを増し、帷が降りたように真っ黒だった。
このままだと濡れ鼠だと、リヒトは足早に駆け上がる。振り落とされないように首を掴む、マナの手が割と痛かった。

城門のすぐ側に設置された高台には、庭師が丹精込めて手入れした庭園が広がっている。
色とりどりの花や草木が咲き乱れ、殺風景な城を彩っている。のだが。

「…ひとがつくったしぜんは、ただのにせもの。おもしろくなんてない」

マナのお気に召さなかったようだ。自然と共に在る妖精らしい意見を戴いた。

「これなら、りひとのいえのあたりのほうがまだまし」

「ほう。お褒めいただき光栄でありますマナ嬢」

「………」

マナは無表情を僅かに崩し、悔しそうに頬を膨らませた。その姿は、餌を頬張るリスにどことなく似ていた。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/07(日) 22:46:56.50 ID:UpFCM8+ZO
何をするかを↓1にどうぞ。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 23:16:56.39 ID:FECU2vr1o
濡れ続けるのもアレだしハイオクで雨宿り
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/07(日) 23:17:26.76 ID:FECU2vr1o
ハイオク→廃屋
すまん
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