【安価スレ】堕ち行く光

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725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/12(木) 08:30:17.00 ID:uA2cY25CO
仲間を連れて街を周ろう
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/14(土) 20:32:05.80 ID:dj5L0uCwO
定休週が明け、牡丹雪の営業が始まる日。半ば逃げるように店を出たリヒトたちは途方に暮れていた。
これから客の相手をする従業員がいる中、部屋に閉じこもって平静を保てる自信が無かったが故の逃散である。
寧ろ、客に接待する彼女らが近くにいるのにどんな顔をすればいいのか、逆に問い正したいくらいだ。

彼女らはプロフェッショナルだから気にしないだろうが、こちらは変に知識があるえっちな14歳と無気力無知な妖精、頭がバグりにバグりまくったポンコツゴーレムとかわいいペット。
そして、それらキワモノ集団を統べる戦闘しかできない幽者。こんな面子が留まっていて碌なことになるわけがないのだ。

「そういえば、この街に来てからゆっくり観光してなかったですね」

「だな」

緋桜郷に入り茶屋で団子を貪っていたら強制連行されたのは記憶に新しい。ちょうどそこの茶屋だったか。

「〜〜〜♪」

そうそう。そして、珠樹という名の馬耳や尻尾が生えた目の前で団子を食べている少年に案内を受けたはずだ。

どうして彼がここにいるのだろう。リヒトは無性に自身の頬をつねって現実か確かめたくなった。
痛かったので現実だった。

「あ、おはようございます。皆様お揃いでお出掛けですか?」

「まあそんなとこだ」

尻尾をパタパタさせ団子を味わう珠樹の問いを肯定する。
店員と思しき少女や店主っぽいおばちゃんが珠樹に向ける視線がお熱くて困る。飛び火して燃え尽きないか心配だ。

「あ、店員さん。同じのあと二つお願いしますっ」

「はい!!!!!!!!!」

「…お楽しみくださいな」

食事の邪魔をするのはよくない、とウィンディにアイコンタクトをし、そそくさとその場を離れた。
離れた途端に茶屋の前に人だかりができたのは、いったい何故なのだろうか。皆目見当もつかない。
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/14(土) 20:33:08.66 ID:dj5L0uCwO
案内所で地図を受け取り、皆で確認する。
一人一枚貰ったのだが、ハリゴーディンが地図を要求した時案内所の人は軽く困惑していた。そりゃそうだとしか言えない。

「こうして見ると緋桜郷って広すぎません?レムカーナの三倍はありますよこれ」

「広い。べらぼうに広い」

魔族を厭いチマチマ領土を広げたレムカーナと来る者拒まず受け入れ続けた緋桜郷。
その規模は雲泥の差であり、格の違いをありありと示していた。

「これ全部観光しようと思ったら何ヶ月掛かるんだ?想像したくないわ」

「関係者以外立ち入り禁止って書かれてること結構ありますけどそれは除外しますよね?」

「流石にするよ?まさか俺ってそれ訊かれるくらいに蛮族と思われてる?」

「はい。だって、ほら。私がここにいる理由考えたら…ね?」

「なるほど完全に理解した」

そんな会話をしつつ街を練り歩く。見るもの全てが新鮮で飽きが来ない。まあ、ここに住んだらやがては退屈になるのだろうが。

ざっと地図を見る限り、すぐ近くにあるのは酒場と武具店、冒険者ギルドくらいだろうか。
少し足を伸ばせば天守閣、桜花衆の居城に行けるが、行ったところで何があるやら。
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/14(土) 20:36:31.26 ID:YJPPj8CQO
どこに行くかを↓1にどうぞ。参考までに緋桜郷の立地をざっくり記載します。

A:酒場に行ってみる。
B:武具屋を覗く。
C:冒険者ギルドに行ってみる。
D:その他。自由安価。


緋桜郷の立地

一番街〜九番街まで分かれております。内容は下記に記載。

一番街 天守閣 政界
二番街 牡丹雪 高級店の集合場所
三番街〜五番街 住宅地(数字が大きくなるほど高級に)
六番街 冒険者向けの宿場街 装備についてもここ
七番街 普通の店はここ えっちな店もあるよ 一番広い
八番街 所謂貧民街 でもちゃんと統治してるから治安はいいよ 一応定期的に炊き出しあるよ 病気で人が死んだりするけど平和だよ
九番街 研究するとこ 図書館もここだよ
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/14(土) 21:20:01.85 ID:Zb+E4/HMo
9番街の図書館に
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 00:18:22.04 ID:/DKEMzxzO
とりあえず手持ち無沙汰な現状を打破するため、ウィンディに行きたいところがあるか問う。
しかし、見どころが多すぎて逆に決められないようで、悩んでいる姿を見るに終わった。
仕方あるまい。ここは大人の自分が気を利かせてやろうではないか。
そう意気込んだリヒトは、大仰な咳払いをして、口を開く。

「こういう街にどんな本が保管されてるか気になってんだよね。ってわけで図書館とかどうっすか?」

「なんですかその語尾。その案には大賛成ですけど」

「では出陣である。面白い本が有ればいいな」

「ですね」

『むむ、これは立ち入り禁止でワタクシたちだけお留守番の匂いがプンプンします』

「お前のどこに鼻があるんだ」

『あると思わないでください。これはただのゴーレムジョークです』

「もう何も言うまい…」

数十分掛けて図書館に来たリヒト一行だったが、ハリゴーディンは中に入れなかった。
なんでも「万一暴走とかして器物損壊とかをされたらガチで困るから入んな!」とのお叱りを受けたようだ。
フェルリティアでの世迷言を知っているこちらとしては反応に困った。
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 00:23:31.42 ID:/DKEMzxzO
どんな本を読むかを↓2までに一冊ずつどうぞ。
ウィンディの読む本は↓2まででコンマ判定します。


01〜05:ムフフな本
06〜45:魔法についての見解〜by(自称)忍術マスターシノビマン〜
46〜80:忍術についての見解〜by(自称)魔法マスターマジックマン〜
81〜99:光と闇の相関、異端なる光について
00:古びた手記
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 00:33:41.18 ID:lLgAhe2iO
そろそろ00を
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 01:11:06.59 ID:LJpsECh0o
緋桜郷妖怪絵巻
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 01:22:59.32 ID:5dFVqQVgO
あと一つリヒトが読む本を募集中です。
よっぽど変な本じゃなければあると思って大丈夫です。もし変な本が出たら審議します。
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 01:23:06.99 ID:hLFHboGOo
これが世界各地の勇者だ!
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 01:37:43.64 ID:/6jZyY6sO
今日はここまでです。↓1コンマで勇者本の情報を判定します。


01〜20:初版(約200年前の情報までしか載ってない)
21〜60:第15版(約50年前の情報まで記載(ヴィクター・グランハイトあたりの世代まで))
61〜99:第20版(リヒトがやらかすまでの情報が記載)
00:???
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 01:56:10.13 ID:O9PeHkAU0
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 02:14:34.53 ID:wpdTePZMO
というわけで寝る前に妖怪と200年前に観測された勇者を募集します。
足りない時などはこちらで考えますのでご気軽にどうぞ。以下のテンプレートをご利用ください。


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【人種】その名の通り。
【性別】その名の通り。
【魔法】どんな魔法を得意とするか。全く使えない人もいます。

魔法から下は自由記入欄となります。来歴や特徴などご自由にお書きください。


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【異名】その名の通り。
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 05:35:19.38 ID:hLFHboGOo
【名前】?
【異名】福呼び様
見た目は着物を着ているごく普通の子供にしか見えないらしいが誰もその姿は知らない
食べるのが好きでよく普通の子供にまぎれて飲食店に現れては食事をして去っていくという
その店に繁盛をもたらすと言われているため多くの店の主人はこの妖怪を信じており子供の客には親切にする文化が根付いている
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 10:03:31.51 ID:daABBzKZO
【名前】ルーク・ファンブルダイス
【人種】人間
【性別】男
【魔法】使えない
遥か昔に世界征服を企んだ魔王を1人で倒して世界を救った勇者。
魔法は使えなかったが、規格外の強さだったようだ。
誰とも会話をせず、一方的に人々を救い続けた。
その結果、その強さと行為を恐れた人々の手によって公開処刑される。処刑される直前でも一言も発さず、ただ静かに笑みを浮かべていた。
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 14:44:36.55 ID:LJpsECh0o
【名前】ヒオウサンショウウオ
【異名】湖底桜
緋桜郷外れの湖に棲むサンショウウオのような妖怪
小型の竜くらいの大きさがあり、透き通るような淡紅色の体を持つ
性格は物静かで温厚。防衛目的以外に地上の生き物を襲うことはないため、出くわしても特に危険はない。岩場で昼寝していたヒオウサンショウウオに地元の子供が抱き付いても、特に何もせず昼寝を続けたという目撃翌例もある
しかしもし湖を汚したり生態系を乱す乱獲を行うような者がいれば、ヒオウサンショウウオの怒りを買い、不届者の頭上に局所的な豪雨と落雷が三日三晩降り続くと言われている
サンショウウオに似ているが、近年の研究では水竜の一種とする説が浮上してきている
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 16:46:13.06 ID:sHKLrHQR0
【名前】ネイト・アンドリュー
【人種】人間
【性別】男
【魔法】氷魔法、炎魔法
赤髪で身長が高い男性。2本の剣を持っている。冷静沈着だが困っている人はほっとけない優しい性格。仲間共に数多くの魔物を倒してきた勇者。戦闘スタイルは二刀流で戦い、氷と炎の魔法を使う。性格や実績から多くの市民から慕われおり、結果とある王国の国王になった。現在でも王国ではその伝説が伝えられている。
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 20:27:57.39 ID:S+LPbjWyO
【名前】ドクロサムライ
【異名】歌う骸骨将軍
腕が6本、甲冑と兜をつけいる大きい骸骨。6本の腕全てに刀を持っている。緋桜郷の外れにある荒れ地にいる(他の場所には移動しないで荒れ地のどこかにいる)。非常に好戦的で誰にでも斬ろうとしてくる。歌うのが好きでよく歌っている。そのため場所の位置もある程度特定できる。一度倒すとバラバラになるがしばらくすると元に戻り封印しない限り何度も復活する(元々封印してあったが封印していた岩が壊れてしまい蘇った)。
昔は宴が好きな将軍で仲間と一緒に宴していた時に敵に襲われ亡くなった。その亡くなった魂の怨念がドクロサムライに変化した。
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/16(月) 01:45:17.97 ID:0fzmrwJq0
【名前】イナズマミケネコ
【異名】雷電猫又
緋桜郷の外れにある山に生息する猫又の妖怪。三毛猫のような模様があり、尻尾の先端が雷のようにジグザグしている。大きさは中型の竜くらいの大きさがある。常に電気を纏っており電気による広い範囲で攻撃したり、鋭い爪で切り裂いてくる。さらに動きも結構俊敏。基本的にマイペースな性格だがイナズマミケネコに攻撃すると怒って気がすむまで暴れてしまう。その為、地元の人達は見つけても近寄らないようにしている。
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/16(月) 02:09:48.73 ID:WhzL308d0
【名前】トレボール・ヴェルヌ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】なし
通称「剣を持たない勇者」
近隣の魔族の王国とのいさかいが絶えない王国で中流階級として生まれた彼は
その類稀なカリスマ、交渉力、リーダーシップによって人民を纏め上げ
ついに魔王との会談にこぎつけ、話し合いによって和平をもたらすという偉業を成し遂げた
戦う力をなんら持たない彼はおそらく歴史上でもっとも弱い勇者であろう
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/16(月) 23:57:00.91 ID:dCCVrh3BO
【名前】バン・ブラウ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】爆発魔法
自身の魔法と拳だけで魔王を倒した勇者。武器を扱うのが苦手で拳で闘う戦闘スタイル(魔法も得意)。前は王国の騎士を勤めていたが危険な魔法とオラオラ系なところから騎士をクビになった。その後、冒険者となり仲間と共に旅をし魔物や魔王を倒してきた。オラオラ系で言動も威圧的だが信念を曲げず仲間思いの性格のため多くの人に慕われてきた。魔王倒した後、国を作り、領主として人々をまとめた。
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/17(火) 13:02:05.01 ID:JiX8zqO+O
ちょっと忙しいので投稿が土曜日くらいになりそうです。妖怪や勇者の募集は終了とします。
連続で申し訳ないですが、桜花衆所属のキャラクターや新しく牡丹雪に入ってくるキャラクターを募集します。

牡丹雪に入る理由は前の店が取り潰しに遭った、捨て子の配属など理由はなんでも大丈夫です。
ではまた土曜日にお会いしましょう。
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/17(火) 13:10:01.96 ID:JiX8zqO+O
ちなみに、桜花衆は緋桜郷を支配している組織です。言ってしまえば、日本の国家権力を集約したような存在です。
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/17(火) 18:40:33.26 ID:T24fDdPHO
質問ですが桜花衆所属のキャラと新しく牡丹雪に入るキャラの人種は何でもいいですか?それとも鬼や天狗限定ですか?
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/17(火) 18:51:16.37 ID:bVMgckxjO
種族の坩堝の緋桜郷は伊達ではありません。人間も天狗も鬼も獣人もエルフも魔族も吸血鬼もなんでもござれです。
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/17(火) 23:04:01.78 ID:MCarVK/90
【名前】瓦 権兵衛(かわら ごんべえ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風と水の忍術
桜花衆の一人にして緋桜郷における警察組織のトップを長年勤める男
赤と黒が基調の着物を着て、非常に硬い金属で出来た特注の十手を用いる
言動はかなり荒っぽいが義理堅く犯罪を許さない心を持つ
時間に余裕さえあれば自ら街の見回りをし悪人を(下駄とは思えないスピードで走りまわって)追いかけたりする
顔が般若のお面そっくりなため、よく悪人に間違われる
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/19(木) 14:04:11.55 ID:gc9r5eg80
【名前】オリビア・ワスティ
【人種】エルフ
【性別】女
【魔法】植物魔法
銀髪でスタイルが良い女性。年齢は400歳と言われている。桜花衆の一人で槍と魔法を使って戦う戦闘スタイル。穏やかでマイペースな性格だが頭がよく桜花衆の参謀をつとめている。元々はエルフがいる森にいたが外の世界に憧れを持ち旅をしていた。その後、緋桜郷を訪れた時に桜花衆の一人にスカウトされ桜花衆に入った。200年前に観測された勇者と共に旅をした事がある。
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/19(木) 20:36:27.64 ID:XvdpRIj4O
【名前】エル・ファルス
【人種】吸血鬼
【性別】女
【魔法】変化魔法、変化忍術
緋桜郷が正式に雇っている忍達を取りまとめる長。
しかし、緋桜郷に住む殆どの者はそのことを知らない。
高身長で黒髪。笑うと牙が見える。
幼い頃は奴隷だったが、心優しい貴族に買われて長い時間を共に過ごす。その後、寿命差で主人と離別して死に場所を探していたところ、お雪に出会い、気がつけば桜花衆の一員になっていた。
貴族時代に培った処世術や変化魔法を利用し、忍者としては非常に優秀な能力を持っているが、普段は賭場に入り浸り、賭け事と酒に溺れている。
普段の言動(酔っている時)は荒い口調だが、忍者として行動するときや素面の時は育ちの良さが出る。
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 02:14:51.28 ID:oJeoS0b7O
【名前】キラ・レイデン
【人種】狐の獣人
【性別】男
【魔法】影魔法
白髪短髪の男性。白い狐耳と尻尾がついている。関西弁を話している。桜花衆の1人で桜花衆の諜報活動を行っている。普段はおおらかな性格だが諜報活動の時は冷静沈着になる。かなりの情報通で色んな事を知っている。幼い頃、家族が事故で亡くなり自分だけが生き残った過去がある。緋桜郷にきた時はその情報通なところをかわれ桜花衆に入った。魔法を駆使して隠密行動や攻撃、捕縛ができる。武器は短剣を使っている。旅館「牡丹雪」の温泉が好きでたまに来ることがある。
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 04:33:06.39 ID:4PsxJxlmo
【名前】桔梗(ききょう)
【人種】鬼
【性別】女
【魔法】炎魔法、簡単な治癒魔法
長身でショートの桃色髪で出るところの出た女性。腰に刀と脇差をさげている
早くに両親をなくして孤独になったとき周囲が誰も引き取ってくれなかったため子供のころから自分の力で生きていくしかなかった
そのことが少しトラウマになっていて自分の生まれた地域に苦手意識を持っている
緋桜郷の伝統的な武術を身につけて冒険者稼業や用心棒をやっていたときに伝手で牡丹雪の仕事を紹介された
乱暴な客に対応する用心棒として雇われて普段は掃除や雑用を担当
男のような振る舞いをするがそれは一人で生きていくための処世術として身に付いたものであり根は純真で女性らしい
心の奥では自分には帰るべき場所がないという寂しさを抱えている
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 13:58:17.10 ID:rjB7/JXS0
【名前】灯籠(とうろう)
【人種】天狗
【性別】男
【魔法】鋼魔法
桜花衆の1人にして緋桜郷の商人会長を勤めている。オレンジ髪にサングラスをしている。天狗の羽がついている。腰には武器のメイスを下げている。テンションが高くお調子者。流行には敏感で常に流行を取り入れたり、新しいものを販売しているため、彼のお店はいつも長い列ができている。店は日常のものや冒険者に役立つアイテムなどが売っている。元々孤児だったが優しい商人の人に拾ってくれて育ててくれた。成長して商人なろうと決心し勉強や技術をし今にいたる。魔法を使って体を固くして防御したり、人に教わった体術や武器のメイスを使って戦う。
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 16:37:46.84 ID:W+KsXtFD0
【名前】嵐月(らんげつ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風魔法
桜花衆の中でも幹部的な立ち位置にある、眼光鋭く頬に刀傷のある黒髪長髪の男性。前をはだけた着物を直接素肌に着て、腰には業物と思しき刀を下げている
現在は桜花衆に統合されて存在しないものの、かつては緋桜郷の見回りや用心棒、金を踏み倒すような客への取り立てといった極道的な組織の親分を務めており、その強さと男気から男女問わず憧れられていた
現在でもその武闘派ぶりは健在であり、緋桜郷に勇者であるリヒトがやって来たと聞いて一度戦ってみたいと周囲に漏らしているという
ちなみに戦いで本気になると着物を脱ぎ捨て、背中に彫られた風神の刺青が露わになる
それを見て生きて帰れた者は今まで一人もいないと言われている
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 19:32:26.56 ID:W+KsXtFD0
>>757
ちょっと文章的におかしい所があったので修正します

【名前】嵐月(らんげつ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風魔法
桜花衆の中でも幹部的な立ち位置にある、眼光鋭く頬に刀傷のある黒髪長髪の男性。前をはだけた着物を直接素肌に着て、腰には業物と思しき刀を下げている
現在は桜花衆に統合されて存在しないものの、かつては緋桜郷の見回りや用心棒、金を踏み倒すような客への取り立てといった仕事をこなす極道的な組織の親分を務めており、その強さと男気から男女問わず多くの者達から憧れられていた
現在でもその武闘派ぶりは健在であり、緋桜郷に勇者であるリヒトがやって来たと聞いて一度戦ってみたいと周囲に漏らしているという
ちなみに戦いで本気になると着物を脱ぎ捨て、背中に彫られた風神の刺青が露わになる
それを見て生きて帰れた者は今まで一人もいないと言われている
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 20:57:57.69 ID:8H87JUlcO
【名前】瑠璃(るり)
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】呪詛魔法
新しく牡丹雪に入った女性。年齢はおよそ20歳前後
艶やかな濡羽色の髪を腰丈までストレートに下ろし、いつも物憂げな表情をしている。体つきはやや華奢で暗色系の和装を好む
元はある寒村の出身で食い詰めた家族に奴隷として売られ、最近まで違法な店で働かせられていた。先日その店が桜花衆の働きにより取り潰され、身寄りを失ったために牡丹雪に置かれることとなる
前の店では違法薬物や異常行為を強要されていた。体の傷や異常は都度回復魔法や浄化魔法で治癒されていたため殆ど残っていないが、心には無数の癒えない傷を負っている。そういった事情から自己肯定感が低く、夜の仕事をしている最中にしか生きる実感を得られない。また、自分はそれ以外に価値がないとも思っている
家族のことは恨んでいるが、食い詰めていた事情も理解できるため、心の底から呪うことまではできていない
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/21(土) 22:40:59.64 ID:AUXGAStX0
【名前】サイエス・リーヨー
【人種】人間
【性別】男
【魔法】硫酸魔法
桜花衆の一人でもあり科学者を勤めている男性。緑髪で髪はボサボサになっている。メガネをかけて、白衣を着ている。優しくいつも笑顔で話しかけている。緋桜郷のところにある研究所で色んなを研究しており、ポーションなどの回復アイテムも作ることができる。遠距離での攻撃が得意で弓や魔法で硫酸の弾丸を飛ばしたり、科学薬品を投げたりなどしている。元々別の街の出身で研究していたが現在は緋桜郷に住んでいる。桜花衆のメンバーや緋桜郷の住人とも仲が良く飲みに行ったりなどしている。
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:07:12.21 ID:4myQnQBDO
お待たせしました。これより再開します。
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:08:19.12 ID:73/7szOwO
図書館を見て第一に感じた印象は『古風』だろうか。
緋桜郷特有の木造建築は他の地域の様式と当然のことながら大きく異なり、昔らしさを感じさせる。温かみがあって嫌いではないのだが。
完成して何百年も経っている割には綺麗で、作りもしっかりしている。さぞかし立派な名工が手掛けたのだろう。

まだ午前中だからなのか人は少なく、ざっと見た限りでもご年配の方や真面目な冒険者くらいしか見当たらない。
おそらく娯楽に溢れた緋桜郷の住民は外で遊ぶのだろう。そのような娯楽を必要としない者、知識を求める人がここに集うのだと思われる。

「外に置いてるハリゴーディンがパクられたら敵わん。なるべく手短に済ませて出るか」

「あんなのを盗む物好きいますかね?チャカちゃんは可愛いので盗まれそうですが、アレがリードを持ってるので結局誰も近づかないと思いますけど」

仮にも仲間なのにあんなのとかアレ呼ばわりするウィンディはなかなかイイ性格をしている。
まあ、そんな呼ばれ方をするハリゴーディン側に多大な問題があるので致し方なしである。

30分後くらいに図書館を出るまで自由行動とし、その場は解散することにした。
これで何かしらを得てもらいたいものだと頭の片隅で思いつつ、リヒトは本に手を掛けた。
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:08:52.13 ID:73/7szOwO
リヒトが選んだ本は二つ。一つは『緋桜郷妖怪絵巻』なる題名の絵本。もう一つは『これが世界各地の勇者だ!』なる題名のゴシップ誌だ。

緋桜郷妖怪絵巻は、緋桜郷に言い伝えられている妖怪を分かりやすく解説している子供向けの絵本だ。
危険なものはおどろおどろしく、可愛いものは可愛らしく描かれており、いかにも子供が好みそうである。
まあ、その実態は緋桜郷周辺の情報を纏めた魔物図鑑とでも呼ぶべきものなのだが。
先祖代々伝えられる魔物の情報を妖怪として、後世に遺すこの書物の価値は地味に大きい。当時を知る手段にもなる。
たまに本物の妖怪(謎の存在)が紛れ込んでいるのはご愛嬌と言ったところか。

もう一つの本は、当時世界中で観測されていたらしい勇者の情報を収録した勇者図鑑。と本誌は謳っている。
だがその実情は筆者の主観が入りに入ったゴシップ誌と大して変わらない。
数年毎に発刊すると後書きに記載しておきながら、図書館に保存されているのは初版のみ。
発刊したは良いが誰にも買われなかったのか。はたまた売れはしたが信憑性の無い与太話や噂話がありすぎて出版社が焼き討ちでも喰らって絶版になったのか。
真相は定かではないが、二百年前に初版が出たっきりなのでお察しするしかない。話半分で読めば良いだろう。
そう思考に区切りをつけ、本を開いた。
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:09:31.94 ID:73/7szOwO
『福呼び様』


昔々、ある村に小さな食堂がありました。子供好きのおばあちゃんが作るご飯はとっても美味しく、村の子供たちに大人気でした。
ですが、その村に病気が流行り、たくさんの人が亡くなってしまいます。
怖くなった人たちはみんな、村を去って出ていきます。
亡くなった子供たちが寂しくないよう、おばあちゃんはたった一人村に残り、何年も何年も、ご飯を作っていました。

ある日、男の子が一人お店にご飯を食べにきました。
その顔は見たことがなく、周りにも家族がいなかったのでおばあちゃんは不思議に思いましたが、お腹を空かせた男の子のためにご飯を作ってあげました。
ご飯を全部食べた男の子は、お辞儀だけをして店を出て行きました。

次の日。何やら店の前が騒がしいとおばあちゃんは朝早くに目が覚めます。
するとなんと、たくさんの行列ができているではありませんか。
お客様に話を聞いてみると、たまたま近くを通りがかった商人が、子供に美味しいご飯屋さんがある、と道案内を受けたというのです。
しかし、もう村には子供はいません。不思議なことが何度もあるなんて、とおばあちゃんは思いますが、お客様のためにご飯を作りました。
それからは、美味しいご飯が食べたいと村に人が戻ってきてお店はとっても繁盛しました。
たくさんの人に囲まれたおばあちゃんは、そのまま幸せに過ごしました。

福呼び様が幸せを呼び込んでくれたおかげで、また一人幸せになれましたとさ。

めでたしめでたし。

著:亀有南斎
絵:脇差ぐねぐね太郎
《緋桜郷妖怪絵巻》より抜粋
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:10:27.21 ID:73/7szOwO
何ページか読み進め、リヒトは絵巻を本棚に戻す。福呼び様以外にもいくつか読み込んだが、どれも関わらない方が吉と書かれていた。
ごく一部しか読んでいないので何とも言えないが、ガチモンの妖怪である福呼び様以外はやはり、人類にとって害獣のような存在らしい。
だから、こういった本を使って危ない奴にちょっかいを掛けるな、と警鐘を鳴らしているのだろう。
死が見えているのにわざわざそれに触れる必要は無いのだから。

例えば、ヒオウサンショウウオ。透き通るような淡紅色の身体を持つ、サンショウウオに似た魔物だ。
緋桜郷(ひざくらきょう)の近辺に住むのにヒオウと付いているのが気になるが、湖のヌシと呼ばれる時があるらしいので王と桜のダブルミーニングなのかもしれない。
性格は物静かで温厚。彼側から攻撃をすることは防衛行動以外ではまず無いので、彼の怒りを買うようなことさえしなければ安全らしい。
昼寝中に抱きついても大丈夫らしいが、普段は水底でのんびりしているそうなのでヌメヌメしてそうだ。少なくともリヒトは触りたくないと思っている。
そんなヒオウサンショウウオの怒りを買った不届者はどうなるかと言うと、頭上から局所的な豪雨と落雷が降り注ぐのだという。普通に迷惑で死人が出そうだ。
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:11:01.11 ID:73/7szOwO
他にも、ドクロサムライやイナズマミケネコといった魔物も目を引いた。
二又の尻尾を持つ猫型の魔物であるイナズマミケネコは手を出さなければ毛繕いをしたりと可愛らしい姿を見せるが、一度でも手を出せばそれはまさに逆鱗に触れられた龍の如く暴れ始めるらしい。
ただでさえ数mと中型のドラゴン級のサイズを持つ魔物が雷を纏って大暴れするのだから、その被害は想像したくないレベルである。人里まで攻めてこないのがせめてもの救いか。

六本の腕を持つ骸骨の魔物であるドクロサムライに至っては、目が合った瞬間に剣を振るってくるという好戦的にも程がある生態をしている。
宴に興じていた将軍が夜襲を受け、部下と共に惨殺された怨念から生まれた魔物らしい。
悲しい出自の魔物だが危険な存在には変わりなく、殺すのは難しい上に封印も面倒、しかし縄張りである荒れ地からは動こうとしないので、桜花衆側も不干渉に徹しているらしい。
緋桜郷を経由するキャラバン隊にも、荒れ地に接近しないようにとお触れを出しているのだとか。

面白いものが知れた、とリヒトは絵巻の齎した情報に満足する。
ドクロサムライとやらなら、光魔法で存在ごと消し炭にできそうだと物騒な思考をしつつ、次の本に目を通した。
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:11:38.61 ID:73/7szOwO
皆様の多大なる要望を経て、本誌が発行できたことを喜ばしく思います。
はい、というわけで始まりました『これが世界各地の勇者だ!』です。好評だったら数年単位で出していこうと思うのでそこんとこよろしく。

えー、まず本誌を出すに至った理由なんですけれども。私は今までに世界各地を旅してバチクソに痛い目に遭ってきましてね。
その時にまあ、目にしたり耳にするわけですよ。勇者のお話とか昔話をね。
んでもって、どれもこれも勇者に至るまでの経歴が違うから面白いって思いましてね。
ならこれを他の人にも知ってもらって、あわよくば印税をガッポガッポ…いやなんでもないです。

何はともあれ、石碑を読み解いたり金を貢いだりしてやっとこさ手に入れた情報ばかりです。
参考にしてくれたら嬉しいです。それでは本題にGo!
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:12:22.27 ID:73/7szOwO
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769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:12:56.20 ID:73/7szOwO
『世界に殺された勇者』

えー。この勇者を初っ端に紹介してええんかと悩んだんですけども。
やっぱり掴みはインパクトが大事!なもんで、現実はそう上手くいくものじゃないよって教えるのも含めて先陣を切っていただきました。本人は首を切られたんですけれども。

彼の名は『ルーク・ファンブルダイス』。冗談みたいな名前ですがマジでこの名前です。ガッチガチに厳重に封印されてた祠の石碑に書かれてたんでたぶんガセじゃないと思います。
もし嘘だったら緋桜の下に埋めてもらって構いません。

彼がどんな勇者だったのか。いつの時代の勇者なのか。についてなんですが。
言ってしまえば遥か昔…そうですねー。ざっと数千年前の時代に存在してたみたいです。
我々が生きるこの世界。文明が長い間続かないのは周知の事実だと思います。ざっくり数百年経ったら綺麗さっぱり滅んで、また新しい国とかできてますしね。
だから世界中に遺跡とかがあるわけです。滅ぶ原因は自然現象だったり戦争だったりとあるわけですが、私は専門家じゃないのでこの話はここまで。

まあつまり、そんな昔に生きていたこの勇者はとにかく強かったんです。とんでもなく強かったんですよ。
少なくとも、魔法の類は一切使えなかったそうですが、そのシンプルにして規格外の強さを以って、世界征服を企んだ魔王をたった一人でぶち殺し、世界を救いました。
しかも、彼は死ぬ瞬間まで何一つ喋らなかったんです。意志も伝えず、ただ黙々と、返礼さえも求めず人を救い続けました。
彼が優しすぎたのか。それとも頭のネジが外れていたのか。何かがあって心を壊したのか。それは情報が無いので何も解りませんけれど。
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:13:35.47 ID:73/7szOwO
その力を、行為を恐れた民衆は、世界は、彼の死を望みました。自身を救ってくれた英雄を、ただ怖いというだけで殺そうとしたのです。
しかし、勇者はそれを拒むことなく、首を差し出します。
断頭台に取り付けられ、心無い罵声を浴びせられる中でも、彼は微笑みを浮かべていました。
振り下ろされる大鉈。飛び散る鮮血。
何も求めず、ただひたすらに救い続けた英雄は。人のエゴによって都合良く切り捨てられた英雄は。死してもなお笑っていたのです。

それでもあなたは、勇者になりたいと思いますか?

著:不死鬼 八犬
《これが世界各地の勇者だ!》より抜粋
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:14:30.68 ID:73/7szOwO
最初の一人目を読了した時、ぞくりと背筋に氷柱を差し込まれたような感覚がした。
額に手をやると、冷や汗がべったりと付いていた。その理由は考えるまでもなかった。

自分も彼と同じ末路を辿っていたのかもしれない、と、本能が嫌悪感を示したのだ。
何も求めず戦い続けた自分と、何も求めず人を救い続けた彼が、重なって見えてしまった。
厳密に言えば、何も求めなかったわけではないのだが。戦争が終わった後、身を寄せていたフィアリス家への爵位を嘆願した。
その結果、田舎町の名家だったフィアリス家は男爵の爵位を賜り、正式に統治するようになったのは記憶に新しい。

もう戻れない、戻ってはいけない嘗ての故郷に思いを馳せる。
故郷と呼ぶべき場所は三つほどあるが、その中でもフィアリス家が一番居心地が良かった。

「…どうしてあの人は、俺を赦したんだろうな。あれほど俺を恨んでたのに。…憎んでたのに」

護れなかった聖女の父母に会った時。聖女の死を伝えた時。殺される覚悟はしていた。寧ろそれを望んでいた。
なのに、彼らは殺すこともせず見逃した。愛しの娘を見殺しにした大罪人を、裁こうともしなかった。
今でも、その理由は分からない。分かる日はやってくるのだろうか。

光の失せた紅眼が、天井へ向けられる。木材の模様が目に映った。
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:15:09.94 ID:73/7szOwO
ニンニン。はじめまして皆の衆。皆大好きシノビマンでござるよ。ニンニン。
さてさて、拙者が此度筆を取った理由でござるが。
どうやら異邦には魔法なる摩訶不思議な妖術があるらしいのでござる。
幸い、魔法への知見を持つ者と対談する機会があったので、魔法に対する見解を述べようと思った次第でござる。
皆もこれを読んで、立派な忍になるでござるよ。シノビマンとの約束でござる。ニンニン!

まず、忍術と魔法の差異について示さねばなるまい。大前提として、どちらも魔力を消費するものであることに変わらぬ。
忍術の場合は、魔力を練りつつ図示したような特定の印を結ぶことで火を吹いたり風の刃を放ったり、と望んだ現象を起こす技術でござる。
しかし、魔法の場合はあら不思議。謎の呪言を呟きながら魔力を練ると、大爆発が起きたり雷が落ちたりするのでござるよ。怖いね。
同じ魔力を使っておきながら、現象を起こすまでの過程がここまで異なるのは驚きでござる。
ここで、拙者はこの差がどう影響を及ぼすのか拙者なりに考察したでござる。少し長くなりまするが刮目して見よ!


著:(自称)忍術マスターシノビマン〜
《魔法についての見解》より抜粋
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:16:12.45 ID:73/7szOwO
はじめましての方ははじめまして。そうでない方はお久しぶり。千を超える魔法を極めた最強の魔法マスターマジックマンです。
今回は、緋桜郷と呼ばれる地域で何故か大流行している魔法モドキである忍術について独自の見解を交えて話していこうと思います。
つまらなさそうって思った奴は呪うから覚悟しとけよ。何食っても雑草の味しかしないようにしてやるからな。

ゴホン。魔法とは何か。それを説明しようとしたらそれはもうめんどくさいことになるのでそこから知りたいならまずフェルリティアで一年くらい勉強してきてください。
人の生活様式に地域差があるように、魔法の形式にも地域差があります。
解りやすいのは呪詛魔法とかですね。詠唱と触媒を併用するものもあれば、生贄一つで行使するものもあります。

先述した忍術はおそらく、緋桜郷で独自の進化を遂げた魔法だと思います。そうでないとやってられません。
どっちも魔力を使うし現象を起こしてますからね。
だからって、なんであんな痛々しいポーズを取るのか理解できませんが。頭の中が少年時代で止まった奴が考案したのか?

と愚にもつかない推測はさておき。魔法と忍術の明確な違いですが、魔法の方が才能による効果の差が顕著に出ることですね。
忍術の方はやり方さえ知っていれば、ある程度の効果は保証されます。才能絶無の子供がやっても、天才の大人がやっても最低限の効果はあるってわけです。
その分魔力を喰うのでお子ちゃまがやったら最悪死にますけど。
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:17:15.56 ID:73/7szOwO
それに対して、魔法の方は全然変わります。天と地ほどの差が出ます。
才能の欠片もない奴が火炎魔法を行使したところで、蝋燭の火くらいしか出ないんですよ。
同じやり方を私がしたら家が消し飛びます。たぶん。危ないからやったことないんで確証はないです。

ざっくりまとめると違いはこんな感じです。

魔法:魔力消費は魔法ごとに調節可能。威力や難易度も同時に変動する。才能があれば際限なしに性能強化。

忍術:魔力消費は忍術ごとに最低値のみ固定。威力や難易度は結ぶ印の数と魔力消費に依存。魔力量の才能のみが性能に影響を及ぼす。

まあこれは私なりの見解なので、絶対にこうだ間違いない、と保証はしてないです。クレームは受け付けないので悪しからず。

著:(自称)魔法マスターマジックマン
《忍術についての見解》より抜粋
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:18:02.80 ID:73/7szOwO
二つの本を読み終えたウィンディは人目も憚らずに嘆息した。書き手の個性が出過ぎている。
もっと簡潔に、詳細を書いてほしいのに、ござるだの呪うぞゴラだの余計なことが書かれていて読む気が失せていく。
意地で読了したが、何を書いていたのか半分くらい頭から抜け落ちてしまった。
今からもう一度読み直す気力も時間も価値も無いので、絶対にしないが。

「そろそろ時間ですよリヒトさん。早く外に出ましょう」

「…ああ」

入り口で突っ立っていたリヒトに声を掛ける。が、表情はあまり明るくなかった。
お目当ての本でも無かったのだろうか。

「どうしました?えっちな本でも探したけど見つからなかったんですか?」

「…違うが。ちょっと考え事をしてただけだ」

「なるほど。そういうことにしておきますね」

「だから違うって」

そんな他愛のない会話をして、二人は図書館を出る。
外に出ると、ハリゴーディンはチャカと共に大道芸をしていた。
何がどうしてそうなったのか。二人は考えるのをやめた。

ちなみに見物客は一人もいなかった。見るからに怪しいのだから当たり前である。
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:19:03.80 ID:73/7szOwO
何をするかを↓1にどうぞ。
勇者の本は借りてるので読みたい時は行動として選んでください。
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/21(土) 23:48:17.98 ID:q0t0Tz6eO
武具屋を覗く

リヒトはともかくウィンディやマナはなんか食らったら即死しそうなので…
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 01:43:23.44 ID:gy4NW0jYO
続いて一行が向かったのは六番街。冒険者向けの店や宿屋が軒を連ねている宿場街だ。
武具店や道具屋の他、魔導具店といった便利アイテムも取り揃えているので、魔物と戦ったりダンジョンに潜ったりする前に品揃えを見ておいて損はない、とよく言われているらしい。
レムカーナ軍に随伴していた時は支給を受けていたリヒトには微塵も関係ない話ではあるが。

「へー。超硬質メタライトってこんなに高いんだな」

武具店にオーダーメイドしてもらう際に利用できる素材を興味本位で見ていたのだが、偶然ハリゴーディンの装甲材と同じ物を発見した。
値段は馬鹿みたいに高かった。これを採算度外視で大量に注ぎ込んだハリゴーディンの製作者はやはり頭がおかしい。
そんな高級品に自爆機能を盛り込んでいるのだから、一度死んで馬鹿を治した方がいいのではないか、と一瞬真面目に思ってしまった。
流石に失礼すぎたと自覚したため内心で謝罪するが、正直まともじゃないと誰に対してか分からない抗議をしておく。
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 01:44:39.84 ID:gy4NW0jYO
「武具店に何か注文するんです?」

「俺の分はするつもりはないが。君とかマナ用の防具くらいは作った方が良いと思ってな」

「戦わないので不要です。痛いのやです」

「どうせいっかいなぐられたらしぬからいらない」

「二人のへちょい耐久力だと流れ弾で死ぬリスクがあるから困ってるんだが」

無数の修羅場を経て鍛え上げられたリヒトと、そんな経験などしたことがない二人では肉対面の強さに圧倒的な差がある。
リヒトにとっては些細な怪我で済むようなダメージも、二人にとっては致命傷になり得るだろう。

妖精という種族である以上、マナの虚弱性は保証されている。これっぽっちも良くないことだが。
しかも、常人より遥かに小さな体躯をしたマナに合う防具などあるのだろうか。
そもそもそれを作ったとして、彼女が着込んでくれるだろうか。
反人工物ウーマンのマナが首を縦に振ってくれるイメージが湧かない。

ウィンディもウィンディで、魔法使いということは重装が難しい現実が立ち塞がっていた。
詳しい理由はリヒトには解らないが、鎧などの重装備をしていると、魔法の行使に悪影響を及ぼすらしい。
だからなのか、魔法使いは基本軽装だし、重装備をした戦士が魔法を行使する際は簡単なものに留めておくか、利用する武器などに触媒としての機能を持たせて、無理矢理性能を底上げして補っている。

リヒトの場合はかなりの特異ケースで、そもそもが軽装であるのに加えて、聖剣が触媒としての機能を勝手に果たしてくれるのでデタラメな魔法をポンポン放てたりする。
ガチガチに装備を固めるよりかは、軽装で素早く動いて魔法をぶっ放した方が戦果を挙げられるのだ。

「なんというか、世の不条理とか理不尽を感じますね」

「どういう意味だオイ」

遠い目をし始めたウィンディに抗議の視線を向けるも、乾いた笑いで黙殺されたリヒトだった。
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 01:47:20.82 ID:gy4NW0jYO
誰にどんな装備を買うかを↓2までどうぞ。一レスにつき一人です。現時点ではそこまで金が無いので贅沢はできません。
買わない選択肢もあります。



マナ 小盾とお子様用ヘルメット
ウィンディ 耐物ローブとお鍋の蓋
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 04:22:35.75 ID:HEQa7yoh0
ウィンディ 耐物ローブ
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 09:40:58.30 ID:6eQquFQIo
マナ 子天狗の葉団扇
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 17:57:27.06 ID:DtH6g9FEO
評判の良い武具店を調べ、店内を確認する。陳列されている物は全て規格品のようで、サイズ毎に分別して置かれている。
オーダーメイドも承っているらしく、現に今目の前で装備製作を依頼して去っていった冒険者がいた。

ふむ、と残金と必要な物について思考しつつ、リヒトは藍色のローブを手に取った。
商品の名前は『対物ローブ』。大仰な名前が付いているが立派な市販品であり、はっきり言って世界各地どこでも買える防具だ。

対物と聞くと、分厚い装甲をぶち破るようなパワーを持つイカレ武器ばっかり想像してしまうが、今回手に取ったものは対物理の意味合いを持つ。
斬撃。刺突。殴打といった物理的な攻撃にある程度の耐性を持たせた、魔法使い用の防具である。
ただの布に耐性を持たせるカラクリは、生地に編み込まれた魔法である。
この魔法が衝撃を和らげることによって、魔法使いが苦手とする物理的なダメージを軽減させているのだ。

一流の魔法使いともなれば、高級な素材を贅沢に使って物理、魔法、属性全てに強力な耐性を持たせた防具一式を揃えているのだが、悲しいことにそんな財力は存在しない。

効果が如何程なものか、ウィンディに試してもらう。おっかなびっくりといった様子で鉄の棒を握ったウィンディは、ローブ越しに木の板を叩いた。
カン、と軽い音を立てるが、木の板は割れることなくその形状を保持していた。
ローブを外してもう一度木の板を叩くが、今度は綺麗に割れた。

「おおー…」

なるほど。値段と性能のコスパを考えれば、これは買っておいて問題はなさそうだ。
とにかく安く、それでいてある程度の品質は保証されている。これだから市販品は普段使いにありがたい、とリヒトの口角が吊り上がった。
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 17:58:11.23 ID:DtH6g9FEO
さて、お次はマナの道具である。ウィンディにだけ買ってマナだけお預け、なんてことをして拗ねられると非常に困るのだ。
実際、マナはリヒトの肩に座っているのだが露骨に不機嫌になっている。
膨らんだ頬を押すと、ぽひゅー、と間抜けな音を出しながら空気が抜けていった。こうして見ると小動物のようで可愛らしいのだが。

適当に商品を見繕うも、マナはじっとりとした視線を向けてくるだけで評価は良くない。
やはり人工物はNGで、鉄製の道具など論外のようだ。
ならば、とリヒトが取り出したるは『子天狗の葉団扇』なる団扇。
こちらは名前の示す通り、子供の天狗がよく使う道具であり、葉っぱを束ねて作っているので自然に優しい。

秘めたる力はそよ風を生み出したりちょっとした加護を与えたり、と大したことないのが難点だが、子供用の物なので仕方ない。あとこれより大きかったらたぶんマナでは持てない。

マナの視線の温度が下がる。それでもめげずに団扇を押し付けると、渋々といった様子で受け取った。
マナ的には許容範囲ギリギリだったようだ。

お買い物を済ませたリヒトは店を出る。

「えー皆様に悲報があります。活動資金がそろそろ底を突きそうです」

そして、端的に破産一歩手前だと宣告した。
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 17:58:54.09 ID:DtH6g9FEO
「えー皆様に悲報があります。活動資金がそろそろ底を突きそうです」

何故こんな悲しい宣言をする羽目になったのか。理由は明白である。それは。

「ぎゃう?」

このかわいいペットを購入したからである。それ以外にも理由はあるが、直近でした買い物の中でぶっちぎりで金が飛んだのがこれなのだ。
アリフで親切な人からもらった宝石などを換金したっきりで、それ以降は特に収入もなく支出ばかりがあったのだから、寧ろよくここまで保たせたと自身の倹約ぶりを褒めちぎりたいくらいだ。
そんなことを考えながら、チャカの頭を撫でる。

「あれ?これもしかして私のせいです?」

「さて、どうでしょうね」

今までに何を買ったのか思い出していたのだろう。先の言葉を呟いたウィンディは冷や汗を掻いていた。

「どどどうしましょう私お金持ってないです働き方も知らないですごめんなさい後生ですから身売りだけは勘弁してくださいこんな貧相な身体じゃ変態しか寄りつかないです杖も売らないでくださいつまり私にお金を稼ぐ手段は無いってことですねつまりもう終わりですねはい!!!!!!!」

はいじゃないが。勝手にヒートアップして結論付けたぐるぐるお目目なウィンディちゃんに、リヒトは呆れながら手刀を振り下ろす。
額からぺち、という音が鳴る。相変わらずウィンディは目を回しながらあうあう言っていた。

「幸い、ここ緋桜郷は人も金も集まる場所だ。俺らでもやれる仕事はある。なんなら俺向けの仕事は絶対に仰山ある。そういうもんだ。ってわけで、君が身体を張って稼ぐ必要はたぶんないんじゃないかな」

そう告げるリヒトの言葉は言外に、荒事に首を突っ込む気満々であることを示していた。
残念ながらそこに気付けるほどウィンディは物騒な思考はしておらず、リヒトさんのえっちと的外れにも程がある返答が返ってきた。
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 17:59:42.24 ID:DtH6g9FEO
何をするかを↓1にどうぞ。
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 18:10:48.45 ID:fh0kr4a00
じゃあ仕事を求めて冒険者ギルドへ
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 19:20:13.95 ID:8fvpws2pO
そんな困ったウィンディちゃんを連れ、冒険者ギルドを訪ねる。
気のせいだろうか。ここまで大きな街に設置されているギルドなのに人が全然いない。
魔物退治なりキャラバン隊の護衛なりで人手が欲しいはずなのだが。

「冒険者ギルドにようこそー。依頼を受ける場合はそちらの掲示板で内容を確認するか、受付に直接お願いしまーす」

と、案内を受けて掲示板に目を通す。人が全然いない理由が解った。

「…しょっぺえー」

依頼内容がしょぼかった。それはもう目も当てられないくらいにしょぼい。
期待していたような高給与の依頼などは一切無く、建物の修繕や商店、茶店などのヘルプ募集といった雑用がほぼ全てである。
申し訳程度にある討伐依頼も、八番街に巣を作った人喰いネズミの処理といった簡単なものしかない。

ダンジョンで救援を求めてる人でもいないかな、と救援依頼もチェックするがそんな人はいなかった。そもそも誰も挑戦していない。

何故こんなことになっているのか。天下の冒険者ギルドがこんな体たらくでいいのか。
ちょっと桜花衆の頭領にクレームでも入れようかと思ったが、そこで一つの推論に思い至った。
ここ緋桜郷は享楽の郷。ある人は娯楽を求めて。ある人は疲れた心身を癒やしに。つまりは慰安のために訪れる郷だ。
なのに何故大変な思いをする必要があるのか、という話だ。遊びに来たのに命を懸けることはない。
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 19:20:56.22 ID:tD2VwJE1O
それに、緋桜郷は彼岸花 紅華が、桜花衆が統治している郷だ。自国の優先して解決すべき問題は、なるべく自力で解決しようとするはずだ。
桜花衆が処理するまでもない事案、または冒険者ギルドに委託しても良い事案のみが依頼として掲示されているのだろう。
よほど切羽詰まった事態でもなければ、冒険者ギルドに助力を乞うこともない。
それ以前にそんな事態が頻発していたら、とっくにこの郷の統治は破綻している。

以上の理由から、大したことない依頼しか掲示されていないのだと思われる。
なら仕方ない。クレームは取り下げよう。寛大な心を持つリヒトは冒険者ギルドを赦すことにした。

暇そうに談笑している職員を見るに、これが平常運転のようだ。平和でなによりだと、リヒトは小さく笑う。
そんなリヒトをよそにウィンディは図書館のアルバイト募集を受けようとしていた。
楽な方ばかり選んじゃダメよ、とその依頼を取り下げる。

杖で強めに叩かれた。
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 19:25:09.92 ID:tD2VwJE1O
何をするかを↓1にどうぞ。


A:簡単な依頼を受ける。誰がどんな内容のものを受けるかを例を参考に記載してください。戦闘系は無いです。
B:八番街の人喰いネズミ退治を受ける。
C:天守閣へ。
D:その他。自由安価。




リヒト 回復薬の販売員
ウィンディ 食堂の一日看板娘
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 19:36:49.24 ID:cS9ALRqCo
B
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 20:00:55.24 ID:9lBbC/Q/O
その後リヒトらが引き受けたのは、人喰いネズミの退治依頼。
人喰いネズミは人里にもよく出没する低級の魔物で、新米冒険者が経験を積むための練習台としても有名だ。
しかし、腐っても魔物。いくら低級といえども民間人を殺めるだけの力はあり、『人喰い』と付くだけあって人肉を好んで食す。
下水道などから侵入した人喰いネズミが巣を作り、子供が被害に遭うのはままあることであり、割と頻繁に冒険者ギルドではネズミ退治の依頼が出ている。

今回の依頼場所は八番街の水路。汚水が流れているわけではなく、緋桜郷全体に温泉を通すために張り巡らされた水路にどこからか入り込んだ人喰いネズミが巣食ってしまったらしい。
ギルドに流されたということは火急の要件ではない。もし被害者が続出していたら彼らが既に対応しているはずだ。
おそらく、周辺の地域にはネズミの巣に近づかないよう警告されているのだろう。それでも近づく命知らずの末路はお察しである。

「怖い〜…やだ〜…戦いたくないですぅ〜………」

「そう言うんじゃないよ」

イヤイヤ期に入って駄々をこねるウィンディの背中を押し前進する。道ゆく人の視線がとても痛い。

「ママー。あれなにー?」

「しっ。見ちゃいけませんよ」

邪険に扱われるのはとても辛いものだとリヒトは心中で涙を流す。何故こんな扱いをされにゃならんのだ。
愚痴を溢したくなるが今は我慢である。今はネズミを駆除して、近隣の安全を確保するのが優先だ。

「おうちかえる〜!いたいのやーだー!!!」

遂に幼児退行してしまったウィンディに痺れを切らし、リヒトはネズミの巣まで最短経路で突っ切る。八番街に少女の悲鳴がこだました。
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 20:04:35.74 ID:9lBbC/Q/O
人喰いネズミにどんな対処をするかを↓1にどうぞ。


人喰いネズミ

体長50cm程度のネズミ。肉食で特に人肉を好む。
不潔で臭い嫌な魔物であり、人喰いネズミの巣は汚すぎて誰も近寄らない。
戦法は集団でただ噛み付くだけ。知性の欠片もないが、数の暴力でゴリ押ししようとする。
魔物だがネズミの生態に近いので、放っておくと指数関数的に数が増える。
こいつの肉は何があっても食ったらダメ。
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 20:37:51.86 ID:ab97bn5A0
ウィンディに経験を積ませる意味も込めて囮にする
そして集まってきたところを一気に叩く
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 21:10:02.65 ID:IVtGeeOeO
人喰いネズミ駆除 判定↓1コンマ


01〜10:ウィンディ穀潰しの巻
11〜40:ウィンディなんとか最低限は頑張るの巻
41〜80:ウィンディ及第点の巻
81〜99:ウィンディ花丸の巻
00:???
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 21:16:20.62 ID:cS9ALRqCo
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 22:33:24.13 ID:tp+aQWywO
レムカーナにおけるスラム街である八番街。その中にある水路。そこには、薄汚れた獣が群れを成し、巣を作っていた。
汚物に塗れたそれはとても酷い悪臭を放ち、もはや物好き以外は誰も近寄らない禁足地となってしまっている。
そんなところに腐肉が転がっているのは何故なのか。誰も詮索しないししたがらない。
触らぬものには祟りなし。誰も好き好んで、嫌なものに関わりたくはないだろう。それで死んでしまっては、元も子もないのだから。

目的地が眼前に迫り、リヒトは顔を顰める。ウィンディは水路に向けてキラキラを放出した。
乙女への配慮として、その瞬間は見ないであげている。気を配るだけの余裕があることの証左でもあった。

「…臭い。これはちとキツいな」

「でっだい゛じま゛じょう゛ごの゛ま゛ま゛じゃじに゛ま゛ず」

「撤退は許可できん。あいつらは俺たちを獲物として見定めたからな。これで逃げたらこの薄汚いネズミが世に放たれるぞ」

泣き言を宣うウィンディを制し、視線を前に向けさせる。ギラリと光った無数の眼光が二人(と二匹と一機)を射抜いた。
チャカの優れた嗅覚にクリティカルヒットしたのだろう。完全にダウンしてしまっており、ハリゴーディンが抱っこしているのだがうんともすんとも言わない。
役に立つのはリヒトとウィンディだけだ。リヒト一人さえいればそれで充分なのだが。
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 22:34:11.96 ID:tp+aQWywO
とはいえ、こんな簡単な依頼を引き受けた理由は一つ。ウィンディに多少強引にでも経験を積ませるためだ。
イヤイヤ言ってばかりのウィンディに少しでも成功体験を積ませれば、自信を持ってくれるかもしれない。
この世界で生きるのであれば、戦わなければならない時はいずれやってくるのだ。たとえそれが、本人が厭う戦いだとしても。
その時にこの経験は役に立ってくれるはずだと、リヒトは大真面目に考えている。
戦いに摩耗したリヒトの精神は、どうしようもないほどに歪んでいた。

人喰いネズミの脅威度ははっきり言って低い。なりたてホヤホヤの新米冒険者でも、四人集まれば二十匹前後はやっつけられる。
回復薬などの入念な準備をしていたら、という但し書きが付くがまあ、才能のあるウィンディなら本気になれば五十は軽く殺せるだろう。リヒトの場合は言うまでもない。
そんな人喰いネズミの数は約四十前後。比較的大規模な群れになっているようだ。あと数日対処が遅れていたらどうなっていたのやら。
そんなことを考え、ウィンディの肩を叩く。あとは任せた、とキラリと光った笑顔とサムズアップを添えて。

「えっ?」

何事もぶっつけ本番あるのみ。リヒトはそう言って、ウィンディから距離を取る。
離れていくリヒトからネズミの巣に視線を向けると。

「ぴいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!?!?!!!」

腹を空かせた人喰いネズミの大行列が、ご飯(ウィンディ)目掛けて突撃していた。

ウィンディの初体験が今、始まる。
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 22:34:55.83 ID:tp+aQWywO
これで今日は終わりです。
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 23:04:52.33 ID:cjsXtN93O
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 23:10:25.25 ID:6eQquFQIo

まあいざって時に身を守れないと実際ヤバい世界観だしね
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 23:18:58.23 ID:cS9ALRqCo
おつー
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:21:01.79 ID:72ANxGUSO
幽者の思いつきにより突如始まったスパルタトレーニング(ネズミ駆除大作戦)。
その参加者にして被害者の少女は、この状況にどう立ち向かうか。
幽者は後方にて高みの見物(物理)を決め込んでいるが、限界だと感じたらすぐに魔法をぶっ放すつもりでいる。
まあ、危なくなったらすぐお助け、と今後もしていたらやがて甘えが生まれて成長が見込めなくなるので、初回サービスみたいなものである。
つまり、今回だけは早めに助けるが今後はどうするか全く考えていないのである。行き当たりばったりにも程があった。

さて、ヒャッハァ!新鮮な餌だァ!と言わんばかりに押し寄せてくる人喰いネズミに対し、ウィンディが取った策は。

「風穿(エアロレイト)ッ!!!」

お得意の風魔法を使った迎撃戦法である。思い切りの良さは評価点だが、その戦法を使うには相手の物量が多すぎた。

練り上げられた魔力が風の矢となり、肉を穿ち骨を断つ。ベキ、グチ、と嫌な音が鳴る。
先頭を突っ走っていた一番槍に魔法が直撃。螺旋を描く空気の刃が全身を断裁し、肉と血を周囲にぶち撒けた。

しかし、それだけではネズミの侵攻は止まらない。たかが一匹仲間が死んだところで止まるわけがない。
今の彼らには獲物しか見えていない。今の彼らには腹を満たそうとする欲望しか存在しない。
仲間一匹が死んだからといって、何故躊躇う必要がある。どうせいくらでも産み落とす命。先行投資と思えば安いものだ。

「とは思ってねえか。所詮ネズミだ。ただ本能に突き動かされてるだけだろうな」
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:21:33.29 ID:72ANxGUSO
空中からウィンディの奮闘を俯瞰するリヒトは、そう溢して目を細める。
誰かに見られている。敵意の無い視線が全身に突き刺さっていた。
その大半は興味本位のものだ。おそらく周辺地域に住んでいる子供が、空に浮かんでいる自分をへんなのがいる!という感じで見ているのだろう。

だが一つ。たった一つだけ、全く毛色の異なる視線が混じっていた。
視線の大元に顔を向ける。遠く離れた家屋の屋根に、年若い青年が立っていた。この郷屈指のイケメン美人ロリボーイ珠樹くんである。
軽く会釈してみると、こちらに認識されたことに驚いたのか少しの間呆気に取られた表情をしていたが、すぐに表情を戻し、綺麗な敬礼を見せてくれた。

仕事熱心で熱意のある若者だと感心する。おそらく彼は、リヒトたちが依頼を受けたことを知り、各所の水門を閉じていたのだろう。
その仕事が終わったから、進捗確認や実力調査も含めて様子見しているのだと思われる。
水路脇で戦闘する以上、ネズミの死骸や血液が水路に混入するのは半ば確定している。
実際、派手にぶち撒けられたネズミの肉と血が水路を流れる温泉に現在進行形で混入している最中である。
なんなら少し前にウィンディが放出したキラキラが温泉に溶け込んでいるわけで。
こんなものが店の温泉に使われたら大惨事どころではない。この世の終わり、地獄の始まりである。
自分だったらそんな温泉に死んでも浸かりたくない。

そんな益体もないことを考えつつ、再度ウィンディに目を向けた。
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:22:22.54 ID:72ANxGUSO
同胞が一匹天に召したのを無視して、今日のご飯に向けて行軍する人喰いネズミたち。
それに対処すべく、ウィンディは次の魔法の準備を始める。

(私の考案した理論の検証用の魔法だからそんなに効果ないよね解ってましたー…!っていうか人とかに向けて撃ったことなかったから分からなかったけどエグい音出たしあのおっきなネズミがワンパンで死んじゃったしこれ絶対人に向けて撃っていいやつじゃない!!!)

つまり人に向けてはいけない魔法をボコスカ放つであろうリヒトには人の心が無い。
なんならこんな状況に有無を言わさずぶち込んでいる時点でド畜生であった。後でかの邪智暴虐の幽者を呪わねば。ウィンディは決意した。

構えた杖に魔力が集い、大気を震わせる。威力は下がってしまうが詠唱は省略し、魔法の行使だけを最優先とする。

「大嵐流(タービュストローム)!!!!!」

刹那、幾重にも重なった乱気流が、ウィンディの前方に発生した。
周辺への影響を防ぐために範囲は通路ギリギリに抑えているがその分、極小の乱気流を大量に発生させることで威力を補っている。
詠唱省略による威力の減衰は多少なりとも抑えられただろう。

先程の風穿とは比べ物にならない威力の暴力がネズミを襲う。一度乱気流の壁に入ったが最期、全方位から迫り来る風の刃によって細切れにされていった。
しかし、それでも突撃をやめないやめられない。
力押しのごり押ししか能の無いネズミには、どんな障壁が立ち塞がろうと齧り付いて突き破ることしかできないのだ。
806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:23:06.52 ID:72ANxGUSO
二十匹ほど仕留めた頃だろうか。風の威力が弱まり、遂にネズミが乱気流の壁を突き破る。
先に殉職したネズミの死骸が障害となり、空気の流れが弱まったのだ。彼らの死は無駄ではなかった。天国のネズミも喜んでいるだろう。

「お疲れさん。初陣でこれだけやれりゃ充分だよ」

障害を乗り越え、ネズミが獲物に喰らい付こうとしたまさにその時。
瞬きの間にウィンディの前方に移動した幽者は、右腕を突き出した。

「天喰らう白狼は遍く御魂を楽土に導く」

微かに耳に聞こえる魔法の詠唱。その優しい声色とは裏腹に研ぎ澄まされる魔力はあまりに冷たく。

「踊れ。天狼星(シリウス)」

産み落とされた白い狼は、真の捕食者がどちらか。哀れな生贄に現実を思い知らせた。
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:23:56.29 ID:72ANxGUSO
同刻。牡丹雪にて。

「本日はお越しいただきありがとうございました。またお客様が牡丹雪を訪ねられる日を、心よりお待ちしております」

客を見送り、息を吐く。雫が注いでくれたお茶を飲み、また息を漏らした。

「どったの女将さん。頭領の愚痴を聴きすぎて疲れちゃった?」

「紅ちゃんの愚痴は聴き慣れてるさ。この溜め息はそれとは別件だよ」

「…やっぱ、アレの件かな?」

コクリ、とお雪は頷く。何かを案じているように目は細まっており、表情は芳しくない。

「…まー、腹立つよね。わたしがあの店に入った時、はらわたが煮えくり返ったもん」

普段の明るい表情を隠し、冷徹な目を入り口に向ける。戸は閉められているので、客に見られる心配はない。

「霧香たちが先手を打ってくれたおかげで、奴らが逃げる前に店を取り潰すことができた。…他所からやってきた時点で探りを入れておくべきだったね」

「たらればを言ってもしょうがないよ。あの子たちの安全を確保できただけ良しとしましょ」

「…もう手遅れかもしれないけどね」

手元の書類に一瞬視線を移し、引き出しに戻す。物憂げな表情をした女性の絵が、名前の横に描かれていた。

「…毎度のことだけど、霧香には頭が上がらないよ。こんな役回りばかり任せて申し訳ない」

「んーにゃ。わたしは気にしてないよ。もう慣れたし、辞める気はないから」

「…ごめんね」

絞り出すようなお雪の謝罪に、霧香は気まずそうに腕を組む。柔らかい双丘が形を変え腕を包んだ。
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:24:27.04 ID:72ANxGUSO
万難を喰らい空へと還る白狼。後に残ったのは血痕だけだった。
こっそり左手に持っていた聖剣も虚空へ戻す。やはりこれがあるのと無いのでは魔法の性能が段違いである。

「………」

ウィンディの方を振り返ってみると、ものすごく不機嫌そうな顔をしていた。私怒ってます。プンプンです。とか言いそうだ。

「ずるです。魔法の勉強してないのにそんな魔法使えるのはどう考えてもずるですよ」

「んなこと言われても。理論とか全然分からないからフィーリングになるが使いたいなら教えるけど?」

「常識的に考えて私が光魔法を使えるわけないですよ。光と闇は希少なんですからね」

「そうなの?メリちゃん最かわ教の化け物どもはポンポン撃ってきてたが」

「それはそのメリちゃん最かわ教の人たちがおかしいだけです」

「そう言われると否定できんな。あいつら揃いも揃って英雄級だったしな…」

当時死闘を演じた猛者を追憶する。
一対一(サシ)で戦り合って辛うじて勝てるかどうかの相手が何人もいたのに、よくメリオゴストーグに一撃入れられたものだと当時の自分を手放しで褒め称えたい。
というか何故攻撃できたのか本当に解らない。同じことをもう一度やれと言われたら即座に首を斬るくらいには無理難題だった。

まあ、何はともあれ戦争は終わったし、今回の依頼も解決した。終わりよければ全てよし。
それでいいではないか、と投げやりになる。
戦うのは二度とごめんです。そんな怨嗟と実感の籠った嘆きが耳に聞こえたが気のせいだろう。
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:25:59.00 ID:72ANxGUSO
何をするかを↓1にどうぞ。
行動時間はだいたいお昼時くらいの時間帯で、報酬金は自動で受け取ります。安い依頼なのでまだ贅沢はできません。
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/25(水) 23:55:51.00 ID:zFFuh7n8O
天守閣へ行ってみよう
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 00:42:46.99 ID:reUN9bHZO
「そこの旅行者、止まれーい!」

リヒトたちは天守閣の正門付近に来たところで足止めを食らう。まあそうなるだろうな、とは思っていたので、そこまで問題ではない。

しかし、相も変わらず荘厳な佇まいだと素直に感心する。ここまでの規模の城を建てるには、並大抵の時間と費用、労力を費やしただろうに。

目の前の現実から逃げ出していたら、足止めをしていた衛兵に詰問される。やれ旅行者が何の用だの招待も受けてないのに来ちゃダメだぞだのやかましい。
そんなマジレスや正論を聴くつもりはない。金だ。金がとにかく欲しいのだ。
だから仕事をくれ。くれないのならこっちから仕事を受けに行く。と抗議しようと思ったところで。

「どうした見張り番。そんなぎゃいぎゃい騒いでよ」

「ら、嵐月様!?」

男性が急に正門を開けて出てきた。着物を着ているのだが胸元はおっ広げられていて、素肌が丸出しで危険が危ない。ポロリしないか誠に心配である。
嵐月と呼ばれた男性は一瞬目を丸くし、ニヤリと笑った。

「誰かと思えば勇者様じゃねえか。あんたの武勇、俺も何度か耳にしたよ」

「勇者…?はっ!?つまり彼は、頭領に数日前に歓待を受けたあの…?」

「そういうことだ。そういや、お前はその時非番だったっけな。顔を知らないのも無理はないか」

「と、とんだご無礼を失礼しましたぁっ!!!」

「そんなビビられるとこっちが困るんだが」

もしや、魔族と見るや即攻撃するような蛮族に思われているのだろうか。
だとするならば抗議も辞さない。裁判に持ち込んで勝訴させてもらおう。
そんな意図を込めて視線を飛ばすと、露骨に怯えられた。

何故だか申し訳なくなった。
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 00:43:25.99 ID:reUN9bHZO
そんなこんなで天守閣の訪問は許可され、現在は嵐月の同行を受けながら天守閣内を歩いていた。

「案内感謝するよ。前にここに来た時は彼岸花さんのとこまで直行したからな、どこに何があるのかさっぱりなんだ」

「これくらい些事に過ぎん。感謝されても困るってもんだ」

雑談を交わす男連中の後を追い、ウィンディとハリゴーディンは進む。
ワイルドなイケメンの鬼さんでした。のちにウィンディは嵐月のことをそう語ったという。

「桜花衆用の依頼はここで受け付けてる。まあ、お前なら仕事しても問題ないだろ。頭にも俺から口添えしとくわ」

「どうも」

実力だけは買われているのか、特に文句は言われなかった。それだけ忙しいということもあるのだろうが、助かっているので何も言わないでおく。

「俺はこれから飲みに行くんでお別れだ。もし機会があれば、お手合わせ願うよ」

「…機会があれば、な」

カラ、コロ、と下駄を鳴らし嵐月は去っていく。
その足取りは悠然としていて、しかし荒々しかった。
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 00:49:10.85 ID:reUN9bHZO
何をするかを↓1にどうぞ。


A:盗賊殲滅の依頼を受ける。異常な強さの魔族がいるとの報告あり。
B:ドクロサムライ討伐の依頼を受ける。
C:大量発生した魔物の殲滅依頼を受ける。難易度はコンマで後ほど判定。
D:やっぱりやめる。
E:その他。自由安価。
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/26(木) 00:51:25.75 ID:nTuk9GSo0
C
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 01:04:37.63 ID:reUN9bHZO
魔物の強さ 判定↓1コンマ


01〜10:ブチギレイナズマミケネコの群れ。報酬金いっぱい。
11〜80:何故かやってきたアークミノタウロス先輩たち。報酬金そこそこ。
81〜99:シラヌイドリの大群。報酬金安め。
00:ヌ・レオン降臨
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/26(木) 01:16:33.66 ID:otnC0vlgo
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 01:18:17.47 ID:reUN9bHZO
では本日はここまでです。↓1にウィンディやハリゴーディンたちを同行させるか記載してください。
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/26(木) 01:27:09.03 ID:vg/LAus8O
させない

819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/26(木) 12:10:54.48 ID:jy44QPP0o
おつおつ
リベンジと行こう
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:10:14.79 ID:FVTh8u9EO
「さて、どんな依頼があるのかなっと」

受付嬢に会釈して、依頼リストを確認させてもらう。掲示板方式ではないのはギルドはないからなのかもしれない。

候補は主に三つ。一つ目はどこの街でもターゲットに挙げられる傍迷惑な存在である盗賊の殲滅。
どうやら今回の盗賊団はそんじょそこらのものとは格が違うようだ。
緋桜郷へ向かうキャラバン隊を二つ、緋桜郷から出発したキャラバン隊を一つ壊滅させ、討伐部隊を二度も撃退しているとの報告が上がっている。
それでいて盗賊団の規模が小さいため現在の所在もおおよそでしか分からない、ともはやお手上げ状態とも言える。
大規模な盗賊団であれば、拠点も相応の規模を必要とするので強襲作戦などの策を取れたのだろうが。

二つ目はドクロサムライの討伐。亡霊と成り果てた将軍が、罪なき人々を手に掛ける。
そのような悲劇を終わらせたいのだろう。依頼としてリストに載っているのはそういうことだ。
とはいえ、かなり腕が立つ魔物であることも事実。生半可な強さでは返り討ちに遭う上、生息地にさえ近づかなければ脅威たりえないので後回しにされているようだ。
その間一人寂しく歌っているドクロサムライ将軍がかわいそうでならない。
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:11:14.33 ID:FVTh8u9EO
三つ目はどこからともなく現れたアークミノタウロスの大群の撃滅である。
どこまで行っても邪魔してくるのか、とリヒトは苦い顔をした。
この中で一番優先すべきなのはこの依頼だろう。
盗賊は今のところキャラバンを襲っているだけだし、ドクロサムライは近づかなければセーフである。
しかし、このミノタウロス軍団は違う。こいつらは人肉の味を知った途端にアグレッシブになる。
依頼が出ている以上、世界各地から人の集うここ緋桜郷を狙って侵攻していると見て間違いない。
放っておいても桜花衆が死に物狂いで防衛に当たるだろうが、先手を打っておいて損はないはずだ。

そして、蓮武との模擬戦を経て痛感した。自分はどうしようもないほどに鈍っていると。
根本的な実力差があったのでその時は誤魔化せたが、今冷静に思い返すとちょっと真面目に笑えないレベルでひどい動きをしていた。
身体も、太刀筋も、判断も、感覚も。その全てが衰えていた。
戦争が終わってからは全力を出す機会が無くなったので当然のことではあるのだが、鈍ったことを実感したのなら放置するつもりはない。

戦争が終わり、聖女を喪い、過去を否定され、その果てに貪った怠惰な生活の代償がシルヴィアとの死別。
主因ではなくとも、遠因ではあるのは確定的に明らかだ。
冥光に頼った途端に、アークミノタウロスを跡形も無く消し去った事実が何よりの証拠である。
あの時、当時の二割ほどの輝きを取り戻していたなら、苦戦することもなかったはずだ。

「…リベンジ戦といかせてもらうか」

一線から退き、ぬるま湯に浸かっていたが故に鈍った身体を鍛え直すため。そして何より冥光に頼らず過去を越えるため。
リヒトは一人、過去(トラウマ)と戦うことを決意した。
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:12:13.10 ID:FVTh8u9EO
太陽が沈み、月が顔を見せる。風が吹く夜の草原の中にただ一人、幽者が座していた。

「…ついて来なくていいと言ったはずだがな」

「しるう゛ぃあはいつもりひとのそばにいた。…わたしはしるう゛ぃあにたすけられた」

「だから、わたしもいっしょにいる。それだけ」

リヒトの肩に座り、淡々と喋るマナ。いつになく雄弁であり、いつもより距離が近い。
具体的には、身体一つ分近づいている。いつもは肩幅ギリギリに座っているのだが、今は耳元に寄り添っていた。

「…殺し合うのを観ても、面白くないぞ?」

きにしない、とマナは告げ、首元に手を添える。力が漲った気がした。

「気持ちはありがたいが今回だけは手助け干渉一切無用、だ。俺一人の力で終わらせなきゃ、意味がない」

「…うん…」

躊躇いつつも、マナは手を離す。そして、定位置であるフードに潜り込んだ。
リヒトは瞑目し、暗闇の中で微かに煌めく光に身を委ねる。聖剣の輝きが増し、光が溢れ出した。

幾度となく味わった喪失の痛み。その度に心は渇き、今では涙すら流れなくなった。

幾度となく奪ってきた命。満たされる度に心は渇き、次なる贄を求め飢えていた。

この渇きを。飢えを。空っぽの心を満たしてくれるのは戦いだけだ。
幾多の離別と闘争の果てに心身に刻まれた闘争への渇望はもはや宿痾に等しく。
ただただ、戦う時を待ち望んでいた。
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:12:48.64 ID:FVTh8u9EO
地を揺らす地響きが近づいてくる。閉じていた目を開けると、地を埋め尽くす怪物の群れがそこに。
各々が携えた得物は全て異なり同じものは二つとないが、血に染まり錆びついているのは共通している。

それでこそだと心が躍り、口元は歪な弧を描く。弱者を甚振っても意味はない。強者と戦い捩じ伏せることに意味がある。
ただならぬ気迫を纏っているからさぞかし強いのだろう。手に持つ大斧の血錆が、修羅場を潜ってきたことを物語っている。

相手にとって不足はなし。足りないものを敢えて挙げるならば。
絶対的な強者と相対した時に感じる死の予感だけだ。

ふう、と小さく息を吐き、聖剣を空へ掲げる。軽く手首を捻ると、極大の閃光が空に放たれ、夜を照らす。

「…悪いが、あんたらの鏖殺を仰せつかったんでな。ここから先には誰も行かさないし、誰も逃さない」

空へと連なる光の柱が漆黒の天蓋を打ち砕く。数瞬遅れて光が弾け飛び、地表に降り注いだ。
凄まじい衝撃が大地を揺らし、眩い光が戦場を照らす。
夜に咲く緋桜と同等の長大さを誇る無数の光剣が、リヒトたちを囲うようにして突き立てられる。
その根本、柄から上に向けては十字架が伸び、左右に繋がっている。
何も知らぬ者が見たら天変地異かと見紛うほどに大規模の結界が作り出された。
誰一人として逃さないという決意表明であり。部外者の乱入を許さないという拒絶。
言葉を知らずとも理解したのか、アークミノタウロスの間にも剣呑な空気が広がる。

結界を展開した時に、事前に告知しておけばよかったと後悔するも後の祭り。
何か言われた時は、素直に謝罪すればいいだろう。

そんなことを一瞬考えたが何はともあれ。

時は満ち、舞台は整い、役者は揃った。今、過去との訣別の儀を始めよう。

天を劈く怒号と空間を縫う閃光が、戦いの始まりを告げた。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:14:54.36 ID:FVTh8u9EO
VSアークミノタウロス軍団 判定↓1コンマ


01〜05:リヒト負傷
01〜15:膠着状態
16〜35:半数殲滅
36〜70:全滅 ある程度当時の実力を取り戻します
71〜99:全滅 当時と遜色ない実力に戻ります
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/27(金) 20:37:11.98 ID:0f5257D1o
いけ
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 22:08:21.15 ID:7iSQT3fdO
草原に響き渡るのは剣戟と咆哮。あるいは悲鳴。人ならざるものが発する身の毛のよだつ絶叫は魂を震え上がらせ、怖気を走らせるだろう。
が、今はそんなことなどどうでもいい。煩くて、煩くて、とにかく耳障りで仕方がない。

「ギィッ!?!」

ので、頭を潰して黙らせた。これで少しは静かになるだろう。
温まっていく身体とは裏腹に、思考は冷めていく。命を刈り取る度に、鋭さを取り戻していく。
嗚呼、この感覚だ。肉を断ち切るこの感覚が懐かしかった。
久方ぶりの実戦に、魂が奥底から悦び震えている。

風切り音と共に大剣が振り下ろされる。
光魔法で剣を二本作り、交差させて受け止めた。

背後から剛腕が振るう大槌が迫る。
左方から剛腕が振るう大斧が迫る。
右方から剛腕が振るう大槍が迫る。
空へと飛び、攻撃を回避する。

聖剣に魔力を込めて、斬撃と共に解き放つ。
空間を光の線が縫い、閃きと共に血飛沫が舞う。

何匹殺したのか、数えるのは途中から辞めた。余計な思考は切り捨て、戦闘に必要な情報だけかき集める。

攻勢に出るものがいるなら、どう躱すかを思考する。そして殺す。
守勢に回ったものがいるなら、どう突き崩すのが有効か思考する。そして殺す。
全ての思考が殺害へと繋がり、出力された行動全てが殺害という結果を残す。

血が流れ、命が消え、大地が赫く染まる。その色はまるで鮮やかに咲く緋桜のようで。
怪物と共に剣の舞(ソードダンス)を踊る幽者と聖剣。その姿はまるで雪にはしゃぐ子供と子犬のようで。
惨憺たる光景を生み出しながら、怪物と人間が踊り狂う。
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 22:09:06.66 ID:7iSQT3fdO
しかし、その演目はすぐに終わりを迎えた。

「…逃げんなよ。一度武器を取ったなら、殺すか死ぬかの二択だろうが」

風に吹かれて飛ぶ枯葉のように、為す術なく命を散らした同胞。
その惨状に耐えかね逃げ出した生き残りを、容赦も慈悲も存在しない銀色の刃が貫いた。

「戦うのを選んだのはお前たちだ。負けたなら潔く死ねよ」

追い詰められたら人も魔物も変わらないな、と心中に溢し、剣を引き抜く。
臓物と血、そして脂に塗れた聖剣が、月光を反射した。

光の結界が崩れ、夜の帳が再び降りる。静寂が戻った草原で、アークミノタウロスの生首回収に勇者は勤しむ。

「あれだけ派手にやったとはいえ、証拠はやっぱ要るからな。原型を留めてるのがいくらかあって助かるよ」

童心に帰ったように明るい表情で後始末をするリヒト。それを無言で見つめるマナ。

「………っ」

手応えに満足気に頷くリヒトの目は、マナが目を背けたくなるほどに綺麗だった。
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 22:10:03.38 ID:7iSQT3fdO
今日はこれで終わりです。次から牡丹雪での話に変わります。
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/27(金) 22:13:16.58 ID:0f5257D1o
おつ
戦力的に万々歳のはずなのに手放しでは喜べねえのは気の所為と思いたい
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/27(金) 23:16:31.39 ID:v9H3L9+8o

これで伝説級の竜とかにも相対することができるようになったのだろうか
しかし意外と正統にヒロインしてるマナちゃん良いね
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:39:28.22 ID:pFYHrz7EO
山奥に隠された小さな集落。
人が営んでいた頃の面影は影も形もなく、骸が無造作に転がっている。
そして、その亡骸は現在進行形で作られている最中だった。

他でもない、幽者自身の手によって。

首を断ち。心臓を穿ち。胴体を両断し。様々な手段で戮殺する幽者には何の感情もなく、何の感傷もない。
楽しくなければ苦しくもない。嫌でもなければ好きでもない。
幽者からすればそれは、ただ金を稼ぐための手段であり、有り余った時間の浪費先でしかなかった。

作業のように消費される命。断頭台に差し出された頭のように、淀みなく断首が行われ、無為に命が消えていく。
剣を取ろうが、逃げ出そうが変わらない。ただただ無慈悲に。ただただ平等に。死へと導いた。

ある者は武器を捨て跪いた。しかし首を刎ねられる。
ある者は自らの全てを差し出すと言った。しかし首を刎ねられる。
男女問わず。老若問わず。皆、平等に死んでいった。

『なんでもするから…!貴方の好きにしていいから…だから殺さないで…!わたしは、まだ、生きていたいの…!!』

今まで散々殺戮と略奪を楽しんでおいて何を言うのか。呆れながら首を落とした。

『俺たちはまだ子供だぞ!?なんでそんな…平気で殺せるんだよ!?』

武器を取った時点で歳や性別など関係ないだろうに。呆れながら首を落とした。
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:40:28.69 ID:pFYHrz7EO
戦闘が始まる前に警告はしていたのに。一回だけ猶予を与えたというのに。
それを拒み、戦うことを選んだのは貴様たちだと。
ならば、全てが終わった後の処遇は自分に委ねられているのだと。
何度目か知れない溜め息と共に、聖剣を振り下ろした。

『今からお前たちを全員ぶち殺して金に換えるわけだが、俺も鬼じゃない。今から10数える間に投降した奴は殺さないでやる。…誰もいない、か。じゃあもう手遅れだ。命乞いしようが泣き叫ぼうが俺は殺すからな。恨むなら判断を誤った愚鈍な自分を恨め』

と、確かに自分は宣言した。別に怒ってなどいない。
ただ宣言通りに事を進めているだけだ。

勝てる見込みのない戦いに勝てると思い込み譲歩を突っぱねておきながら、蹂躙され始めた途端に救命を嘆願するなど。
虫のいい話ではないだろうか。
そんな自分勝手な輩に差し伸べる手などないと、幽者は最後の生き残りの首に剣を添える。

『や…あ……ぁ………』

身体はガタガタと震え、言葉にならない声を絞り出す少女。
端正な顔は恐怖に歪み、色々な液体を垂れ流していてぐちゃぐちゃになっていた。
綺麗な顔が台無しだと思いながら聖剣を振り抜く。ずるりと首が落ち、血が噴水のように噴き出した。

『降ってくれれば殺さないって…警告しただろうが。なのにそんな、悲しそうな顔するなよ』

『まるで、こっちが悪者みたいじゃないか』
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:41:09.97 ID:pFYHrz7EO
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834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:41:48.15 ID:pFYHrz7EO
ふと、過去に一仕事した時のことを思い出した。
今回の虐殺劇が、似たような記憶を勝手に引っ張ってきたのかもしれない。
犠牲者の実力こそ天と地ほどの差があるが、どちらの結末も変わらず。
一人残らず。一匹残らず。その尊くもない命を散らした。

「人のためになることをしても敬遠されるとは難儀なものだね」

アークミノタウロスを余さず滅ぼし、首をかき集め、天守閣に提出した。
プロ根性故か受付嬢は笑顔で応対してくれたが、その笑顔は引き攣っていたし、他の人が自身に向ける視線は化け物に向けるそれと同じだった。

盗賊の首をギルドに提出した時よりはマシな反応ではあったが。
その時は本当にひどかった。
生首を見た受付嬢が全員えずいて白目を剥くわ、子供や女の子の生首を見た冒険者が義憤に駆られて道徳心の欠片もないのか、なんて脳内お花畑なバカ理論を展開された。
もちろん投降勧告はしたし、断った場合は誰一人として例外なく殺すと宣言していた。
その上で首を横に振られたのだから生かしておく理由はない、ときっぱり言い放つと、冒険者は絶句していた。

まあ、冒険者の言い分や気絶してしまった受付嬢らの気持ちは分からないものではなかったが。
彼らは冒険者であって傭兵でも兵士でも断じてない。
そんな彼らが人殺しに忌避感を持っているのは当然のことで。
それ故に、盗賊と相対した時も捕縛で済ませるのがほとんどだ。
だから、老若男女関係なく殺めた自分を冒険者は理解できなかったのだろう。
だから、受付嬢たちも人間の死体を、もっと言うなら人間の首など見ることは滅多になく耐性も付いていないのだろう。
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:42:18.80 ID:pFYHrz7EO
「…まあ、今回は俺の見た目も原因だろうが。ちょっと下手を打ったな」

そんなことを呟くリヒトは、全身血塗れだった。
別に大きなダメージを受けたわけではない。
寧ろ、今回の戦闘では無傷だった。完全勝利というやつである。

全身を赤黒く染める血の正体は、アークミノタウロスを盛大にぶっ殺した時に浴びた返り血である。
それはもうバッタバッタと薙ぎ倒したので浴びた血の量もえらいことになっており、見るも無惨でブラッディな姿になっていた。

そんな状態で街の中を歩くものだから人混みは自分を避けて空洞ができるし、周囲からはヒソヒソ声が聞こえてくる。
そして、そんな状態で牡丹雪に入ったものだから。

「おお…おおおお女将さーん!!!!!ブラッディでスプラッタなことになっている重傷者が来ましたーーーーっっっ!!!!!!静音さんをーーっっ!!!衛生兵ーーーーっっっ!!!!」

と、盛大な勘違いをさせてしまった。
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:43:05.67 ID:pFYHrz7EO
汚れを落とすために風呂を浴び、用意されていた着物に着替える。
私服は現在雫が一生懸命洗っているそうなので、しばらく返ってこないようだ。

慣れない肌触りに顔を顰めながら脱衣所を出る。お雪が自分を待っていたのか、そこに立っていた。

「何があったのかは桜花衆から訊いてるよ。お疲れ様…と言いたいとこだけど。あんな姿を見せたリヒトさんにはお説教だよ」

申し訳ないと頭を下げる。聞き分けが良くてもダメだと、どこからか取り出した扇子で頭を叩かれた。
ぺち、と小さな音が鳴る。痛くなど当然ないし、不愉快でもない。
まあ、子供扱いされてる感が気になると言えば気になるが。

それからというもの、晩御飯が冷めてしまったからリヒトの分だけリンが作り直していること。
あんな格好で帰ってきたものだから子供たちが怯えて心配していたことをこんこんとお説教された。
客は全員寝静まっているようなので、他に人がいなかったのが不幸中の幸いか。
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:43:41.19 ID:pFYHrz7EO
「…と、愚にもつかない説教はここまでにして。お前さんに紹介したい人がいてね。…おいで」

お雪の合図を経て、女湯の扉が開かれる。
もう深夜なので温泉は閉められているのだが、反射的に目を背けた自分は正しかったはずだ。
そんな自己弁護を済ませると、お雪の声が聞こえた。

「彼女たちは本日付けで牡丹雪預かりとなった人たちだよ。ほら、挨拶なさい」

意味がわからない、とリヒトは首を傾げる。
あくまで自分は客人であり、牡丹雪所属の用心棒とかでもないのだ。
新人が入ったからといって、自分に紹介する必要などないだろうに。

そんなリヒトの疑問を無視して、桃色の髪をした女性が口を開いた。

「私は桔梗(キキョウ)と言う者だ。桜花衆の仲介により、牡丹雪で用心棒を務めることになった。貴殿のことはお雪殿より聴いている」

「…何と仰ってました?」

「大層腕の立つ猛者だと。どうやら話通りの辣腕を持つご様子で」

お褒めいただき光栄だ、と返して頬を掻く。
こうも素直に褒められては気恥ずかしいものがあるのだ。
照れているリヒトを見つつ、桔梗は一礼する。
凛とした佇まいが印象的な女性だった。
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:44:46.45 ID:pFYHrz7EO
「…私(わたくし)は瑠璃(ルリ)と申します。先日、籍を置いておりました店舗が店を畳んだので、お雪様の口添えもあって牡丹雪に引き取っていただく運びとなりました」

続いて口を開いたのは、艶やかな黒髪を伸ばした女性。
深窓の令嬢、という評価がピッタリ当てはまるような、美しい女性だった。
濡羽色、というのだろうか。微かに青みがかった黒髪は艶めかしく輝き、見る者全てを魅了させる。
紺色の着物も相まってその黒は主張をさらに強め、ふとした瞬間に夜に溶けて消えてしまいそうな儚さを内包している。
誰もが目を奪われ釘付けになってしまう絶世の美女。それがリヒトの抱いた印象だった。
奇しくもそれは、牡丹雪に務める女性全員に抱く印象であり、牡丹雪の顔面偏差値のインフレをこの上なく示していた。

だがしかし、彼女に抱いた好印象は瑠璃の発した言葉によって粉々に砕け散ることとなる。

「…私は見習い故、夜のお勤めは許されておりません。ですのでどうか、貴方様がよろしければ一晩でいいので抱いていただきませんか?誠心誠意尽くしますのでどうか、ご一考いただければ…」

これはヤバい。とんでもない激ヤバウーマンだとリヒトの勘が告げていた。
彼女の誘いに乗ったが最後、ケツの毛までむしり取られて捨てられる気配を感じる。

「………」

これはいったい全体どういうことだと、お雪に目線で尋ねる。
悲しげな表情で首を振られた。
どういうことか分からないが、厄ネタを抱えていることはなんとなく分かった。

「………?」

不安そうにこちらを見る瑠璃。
ここで無言を貫き通すのは簡単だが、それで彼女がどう出るか不明なので選択肢から除外する。
ならば、取るべき選択肢は一つ。

「コノケンハオモチカエリサセテイタダキマス」

全人類が所有する伝家の宝刀。曖昧な返事によるはぐらかし、問題の先送りである。
困った時は未来の自分がなんとかしてくれる、とリヒトは考えることをやめた。
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 00:47:07.31 ID:pFYHrz7EO
何をするかを↓1にどうぞ。行動順としては夜食→深夜の行動(今回の行動)→朝の行動となります。
他のキャラクターは全員寝ているので、交流できるのはマナ、桔梗、瑠璃、お雪、リンのいずれかのみとなります。
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/29(日) 02:51:05.29 ID:4LKeet700
お雪と交流する
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 08:42:51.27 ID:pFYHrz7EO
さて、紆余曲折あったが夕食にありつくことができた。
手間暇かけた料理を作り直しさせてしまったのは申し訳なかったが、仕事をしていたなら仕方がない、と許してくれたリンは器が大きい。

食事を済ませて食器を全て洗い終えたリヒトは、お雪の部屋を訪ねていた。

「夜分遅くに何用だい?わしもそろそろ寝たかったんだけどね」

眼鏡を外し印象の変わったお雪がお出迎えする。
寝支度をしていたところを邪魔してしまった形だが、牡丹雪の営業が再開した今、彼女と会話をする機会は限られているのだ。
少しくらい大目に見てほしい、と詫びを入れる。

「そういうことならしょうがないねえ」

と、こちらのわがままに微笑で返してくれたお雪。
本当に優しくて頭が上がらない。
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 08:44:14.30 ID:pFYHrz7EO
お雪と何をするかを↓1にどうぞ。
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/29(日) 09:08:52.22 ID:d9doKakIo
先ほどの瑠璃の申し出について聞いてみる
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 10:25:01.96 ID:pFYHrz7EO
座布団の上に座り、お茶請けのせんべいを齧る。甘辛い味付けが口に合った。

「さっきのことについて訊きたいんだが」

単刀直入に話を切り出す。今回は世間話に興じるつもりはないのだ。

「瑠璃さんはさっき、俺に相手してほしいと言っていた。でもその直前には夜のお勤めは許されていない…とも言っていた。どういうことなんだ?」

「…ああ、そういう話か」

目を細めたお雪ははあ、と臓腑の息を吐き出す。
溜め息を吐くと幸せが逃げるらしいが、そこんとこどう思っているのだろうか。

「それはお互い様だよ。お前さんだって溜め息は吐くだろうに」

それを言われると弱い。リヒトは目を逸らし、話題を戻して誤魔化しに入った。

「…彼女は奴隷階級の子でね。数日前までは、違法な店で働かされていたんだよ。違法薬物や異常行為を強要された彼女は、桜花衆の尽力もあって身柄を保護されたわけだけど…。店でどんな扱いをされていたのかは、ご想像にお任せするよ。…ただ、心を壊すには充分すぎる仕打ちを受けたことは、念頭に入れておくれ」

無言で頷き、続きを促す。お雪も首肯で返し、話を続けた。
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 10:25:57.73 ID:pFYHrz7EO
「桜花衆に救出された瑠璃の処遇についてだが、数度の会議を経て牡丹雪で預かることに決まったんだよ。…あくまで引き取りだから、彼女は未だに奴隷としての身分を捨てれていないがね。それは、彼女を心から愛し、守ってくれる殿方の務めさ。わしの役目ではない」

「引き取った理由は?」

「ここに勤めている間は傷ついた心身の療養に充ててもらいたいのさ。だから、夜のお勤めは禁止しているんだ。…実のところ、瑠璃には見習い期間中のみの措置とは伝えているが彼女が務めを果たす日は来ないよ。たとえ彼女が、殿方と床を同じくするのを望んでいるのだとしても、ね」

「じゃあ、あの申し出は断るべきだな。それを馬鹿正直に言ったらダメかもしれんが」

「そうしてもらえるとありがたい。…が、拒絶し続けてどうなるかは未知数。適度に会話して、お前さんからも瑠璃を気にしてあげてくれると助かるよ」

「俺が?逆にトラウマを刺激したりしないか?」

「彼女が夜伽を頼み込むのは、それしか自身に価値がないと思っているから。それさえできなければ切り捨てられると怯えているからだ。…逆に言えば、身体を重ねている間は自分には生きている価値があると認められ、安心を得られるということでもある。お前さんが乱暴しなければ、大丈夫だと信じているけどね」

人の心は分からないから確証はない、とお雪は悲しげに溢す。

艶やかに咲く桜に照らされる緋桜郷。
強い光が深い影を落とすように、緋桜郷にもまた、深い闇が蠢いている。
皆が笑う陰では泣く人もおり、絶望に心身を苛む人がいるのだと実感する。

奇しくもそれは、過去の自分(勇者と幽者の関係)と似ていた。
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 10:26:54.11 ID:pFYHrz7EO
お雪と何をするかを↓1にどうぞ。
これで今回の交流は終わりとなります。
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 10:32:43.70 ID:pFYHrz7EO
一部訂正します。


「桜花衆に救出された瑠璃の処遇についてだが、数度の会議を経て牡丹雪で預かることに決まったんだよ。…あくまで引き取りだから、彼女は未だに奴隷としての身分を捨てれていないがね。それは、彼女を心から愛し、守ってくれる殿方の務めさ。わしの役目ではない」

「引き取った理由は?」

「ここに勤めている間は傷ついた心身の療養に充ててもらいたいのさ。だから、夜のお勤めは禁止しているんだ。…実のところ、瑠璃には見習い期間中のみの措置とは伝えているが彼女が務めを果たす日は来ないよ。たとえ彼女が、殿方と床を同じくするのを望んでいるのだとしても、ね」

「じゃあ、あの申し出は断るべきだな。それを馬鹿正直に言ったらダメかもしれんが」

「そうしてもらえるとありがたい。…が、拒絶し続けてどうなるかは未知数。適度に会話して、お前さんからも瑠璃を気にしてあげてくれると助かるよ」

「俺が?逆にトラウマを刺激したりしないか?」

「彼女が夜伽を頼み込むのは、それしか自身に価値がないと思っているから。それさえできなければ切り捨てられると怯えているからだ。…逆に言えば、身体を重ねている間は自分には生きている価値があると認められ、安心を得られるということでもある。それに、客相手にするのとお前さん相手にするのでは勝手が違うんだよ。普通の客は遊女の心境など知ったこっちゃないが、お前さんは瑠璃のことを今知った。つまり、彼女を慮った言葉を投げかけられるわけだ」

それで解決するかは分からないけれど、とお雪は悲しげに溢す。

艶やかに咲く桜に照らされる緋桜郷。
強い光が深い影を落とすように、緋桜郷にもまた、深い闇が蠢いている。
皆が笑う陰では泣く人もおり、絶望に心身を苛む人がいるのだと実感する。

奇しくもそれは、過去の自分(勇者と幽者の関係)と似ていた。
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/29(日) 13:13:53.31 ID:551tRLirO
改めて諸々の礼を言う
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 14:50:15.87 ID:pFYHrz7EO
バリボリと皿に乗っていたせんべいを食べ終える。
わしのお気に入りが…というお雪の小さな嘆きが聞こえた気がするが気のせいだと思われる。

面と面で向かい合う機会はこれからもあるだろう。お互いに息災ならば、きっと。
だが、それでも。言葉にしなければならない、と気を引き締め、口を開く。

「貴女には感謝している。緋桜郷のことなど右も左も解らない俺たちを、文句一つ言わずに迎え入れてくれて。本当に助かった。ありがとうございます」

万感の想いを込めた言葉をぶつけ、頭を下げる。
彼女には、牡丹雪には世話になりっぱなしだ。
寝床を用意してくれて。食事も作ってくれて。
ともすれば、ヒモ扱いされているのではないかと懸念を抱いたことも二度や三度ではない。
実際そうじゃろと言われたらぐうの音も出ないが、とにかく色々と便宜を計ってもらった。
対するお雪の反応は。

「いや、そんな今生の別れみたいな言い方されてもね。まだここには滞在するんだろう?」

微妙だった。
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 14:51:29.51 ID:pFYHrz7EO
「…確かに、まだしばらくは滞在するとは思う。だが、こんなご時世だ。いつどこで誰がどう死ぬか分からない。感謝の言葉ってのは後回しにするほど言いにくくなるし、その時お互いに生きてる保証も無い」

あの時言っておけば良かった。そう後悔しないために。
あの時言っておけば良かった。そう後悔してきたから。
だから、敢えてこのタイミングで伝えたのだ。
何も言えず終わるよりは、ずっとずっとマシだから。

聖女にも。大賢者にも。感謝の言葉は伝えず終いだった。
思いがけない事態に陥り、永遠の別れとなってしまった。
言いたいことがたくさん合ったのに、と思えど、時は既に遅く。

人は簡単に死ぬ。散々思い知らされた事実だ。
怪我をすれば死ぬ。病気に罹れば死ぬ。呪いをかけられたら死ぬ。事故に遭ったら死ぬ。
明日、目が覚めた時にお雪がいない可能性は、決してゼロではないのだ。
リヒトがこの世を去っている可能性もまた同様に。
全ては奇跡の上に成り立っている。
この出逢いも。この日常も。全て。数えきれない奇跡が積み重なり、形になったものだ。

その奇跡が残っているうちに、できることはしておきたかった。

「今まで後悔し続けた。ああすればよかったと何度も悔やんだ。だから、こんなタイミングではあるが、感謝の言葉を述べさせていただいた。…同じ思いをするのは嫌だからな」

縁起でもない、というのも解る。
突然結婚すると言ったり、君と出逢えて良かったと言い出したら、その後は決まって不幸に見舞われるものだ。
今リヒトが告げた言葉もその例に漏れず、何故か不幸を呼び寄せてしまう。

だが。

「俺はまだ死ねない理由が山ほどある。だから絶対に死なないよ。何年後だって、何十年後だってまた、ここの温泉に入りに来るさ。絶対にな」

命を懸けて聖女が与えてくれた祝福(呪い)。
死に際に大賢者が遺してくれた願い(責任)。
戦いの最中で受け取り奪い背負った命(十字架)。

それがある限り、勇者(幽者)は決して死なない(死ねない)のだ。
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 14:52:05.62 ID:pFYHrz7EO
何をするかを↓1にどうぞ。今回の行動は朝になってます。
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/29(日) 15:02:06.25 ID:rd0UjtJz0
緋桜郷の繁栄を神に祈る
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/29(日) 15:02:33.19 ID:rd0UjtJz0
緋桜郷の繁栄を神に祈る
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 16:54:31.11 ID:pFYHrz7EO
新しい朝が来た。活気に溢れる希望の朝だ。
そんな朝にやることいったら一つしかない。

「………」

神様へのお祈りである。

天にまします我らが神よ、どうか緋桜郷に更なる繁栄と安寧が在らんことを。

幽者の曇りなき黙祷は神に捧げられ、神々のご加護を齎すだろう。

それはそれとして、こんな眼を持って産まれさせた神に怨念と憎悪の籠った怨嗟をついでに呪詛として振り撒く。
紅眼を授かったが故に勇者と成ったが、人並みの幸せと愛を受け取れるのならば、こんな力は要らなかった。
この眼が碧眼だったなら。家族に愛されブラウダ家で平和に暮らせていたのに。

勇者を経て幽者と成る。その過程で救われた命がある。金銀財宝にも勝る尊い出逢いがある。
だが、それでも。それらを全て手放すとしても、家族にだけは愛されたかった。

もう家族ではなくなった人たちへの微かな郷愁と共に、リヒトは中指を立てる。

「何が神様だふざけやがって。お前のせいで俺の人生めちゃくちゃだクソがよお!!!!!!」

信仰する神がいない故に為せる蛮行。
狂信者が見たら発狂死ののちに袋叩き待ったなしの無礼を働き、神様の馬鹿野郎!!!!と無言の抗議をここではないどこかへ行った。
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 16:55:18.50 ID:pFYHrz7EO
何をするかを↓1にどうぞ。
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/29(日) 17:22:57.19 ID:d9doKakIo
昨晩遅くに夜食の用意や血染め衣類の洗濯等の迷惑をかけたことについて、リンと雫に感謝と謝罪を伝えて菓子折りを贈る

>>855のコンマが偶数なら従業員と交流できるって認識で合ってる?ダメなら安価下でお願いします
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/29(日) 17:25:12.61 ID:pFYHrz7EO
>>856、その認識で合っております。
続きは夜からの予定です。
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/29(日) 17:26:52.42 ID:L6NPwdDQo
たんおつー
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/30(月) 02:03:03.47 ID:KAh7ARmFO
さて、そんなこんなでお祈りを済ませたリヒトは、七番街で買い物をして牡丹雪に戻ってきていた。
子供向けのあまーいスイーツから大人向けのビターなスイーツまで、とりあえず買えるだけ買ってきたのだ。

理由は単純明快。先日のひと騒動で迷惑を掛けてしまった人たちにこれから詫びを入れるのだが、どんなお菓子が好きなのか分からないからだ。
どれが好きか分からないならたくさんお菓子を買って好きなものを選ばせればいいじゃない、と万人が恐れ慄き首を垂れること必至の妙案を思いついてしまった自分の聡明な頭脳が恐ろしい。

今更ではあるが牡丹雪は八階建ての旅館であり、構造は以下のようになっている。

一階は受付兼浴場兼休憩室。
ここには簡素な売店も設置されてるので、お菓子や牛乳を飲みながら休憩室で談笑することもできる。

二階は宿泊客用の食事処。
全席個室仕様であり、家族で仲良く食事をしたり、本人の同意があれば遊女と食事をできたりする。
もちろん費用は全額客持ちである。

三、四階は宿泊層。
各階に客室は五つずつと少ないが、そもそも牡丹雪は高級店なのでそこまで客を取るつもりはなく、現状でも充分採算は取れているらしい。
遊女の接待もここで行われるので、防音処理は完璧らしい。
一度チャカに遠吠えさせてみたが、外の人には何も聞こえなかった。

五、六階は従業員用の階層。
五階は新人や子供用の部屋であり個室は無い。数人程度で共同生活をさせているのだとか。
六階は結衣乃や霧香ら遊女、そしてリンや静音といったベテランの部屋であり、全員個室が与えられている。
従業員も増減するので、必要な時は部屋の間取りを変えたりして対応している。

七階はリヒトが現在宿泊している客人用の階層。
桜花衆の賓客や他国の使節など特定の人物にのみ滞在を許される専用の客室である。

八階はお雪用の客層。
お雪の私室や物置き、書庫や会議室などが設置されており、有事の際にはここで会議をする時もある。
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/30(月) 02:03:38.24 ID:KAh7ARmFO
閑話休題。

大量の荷物を抱えて、リヒトは五階の子供部屋を訪ねていた。
どうやら来客の対応も落ち着いたようで、チャカを抱っこした雫が中から出てきた。

「ど、どうしたんですかその荷物!?」

目をぱちくりさせながら驚愕する雫に、先日の件で謝罪しに来たと告げる。
取り繕う必要も畏まる必要もないので率直な物言いになってしまったがまあ別にいいだろう。

「夜も遅かったのに血だらけの服を洗わせてすまなかった」

「え…あ、ああ〜!そのことだったんですね!私は全然気にしてないので大丈夫ですよ!」

何故訪問されたのか。その理由を知った雫は強張った表情を氷解させ、明るい笑顔を見せる。

「それよりも、本当に怪我はありませんか?リヒトさんが対応した魔物は、桜花衆のベテランさんでも危険だと耳にしましたが…」

「それは平気だ。一発も喰らわなかったし、だいたいの傷は一日寝たら治る程度にはタフだからね」

聖女様の祝福のおかげでな、と胸中で呟く。
彼女が死んでからは一度も重傷を負っていないが、矢が数本刺さる程度なら数時間で治癒したので相当にえげつない祝福が掛けられているのだと思われる。

ほえー、と感嘆の言葉を漏らす雫の胸元で、チャカがおやつを催促する。
酒のつまみに購入していたナッツ類を齧らせると、嬉しそうに一鳴きした。
861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/30(月) 02:04:32.58 ID:KAh7ARmFO
続いてリヒトが足を運んだのは六階にあるリンの私室。
一応雫に部屋を訪ねて問題ないか訊いたので大丈夫なはずだが、もしセクハラだと怒られたら土下座しよう。
覚悟を決めたリヒトは、小さく深呼吸してドアをノックする。
しばらく待っても返事はない。

「留守かな…?」

もしかしたら、まだ厨房で料理の仕込みや食器洗いをしているのかもしれない。
入れ違いになっては困るので謝罪の言葉を認めた手紙と菓子折りを部屋の前に置き、厨房へ向かう。

しかし。

「リン?昼ごはんの準備も全部済ませたから夕方まで休憩に入ってるよ。あの人は基本、自室でゆっくりしてるはずだけどね」

とお雪が返答するだけで、リンの姿はどこにもなかった。
気になって部屋に戻ると、置いてあったはずの荷物が無い。

代わりに。

「…ありがとう」

『料理くらいいくらでも作ってあげるから、生きて帰ってきなさいな』とだけ書かれた、リン直筆と思われる紙が、飴玉と一緒に置かれていた。

飴玉はとても甘くて、ほんの少ししょっぱかった。
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/30(月) 02:07:37.87 ID:KAh7ARmFO
何をするかを↓1にどうぞ。ウィンディは図書館に勉強しに行ったため交流不可です。
ハリゴーディンとチャカは牡丹雪でお留守番中です。
それ以外は>>724のルールで交流の可否が決まりますが、新人の瑠璃と用心棒の桔梗のみ、無条件で交流可能です。
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/30(月) 02:08:10.95 ID:KAh7ARmFO
それと今日の更新は終わりです。
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/30(月) 02:23:24.57 ID:ch90n1h1o

勇者の本の続き読む
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/30(月) 04:17:24.13 ID:JN/x10kuo
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 01:36:04.03 ID:R3USPI2tO
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867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 01:36:40.77 ID:R3USPI2tO
『剣を持たない勇者』

勇者とは何か。この問いにあなたはどう答えますか。
誰よりも強い者?勇気を持って悪に立ち向かう者?
どんな答えを出すかは人それぞれでしょう。私はそれにとやかく言うつもりはありませんし、言える立場じゃありませんからね。

私はこう思います。

平和のために戦う者、と。

殺し合うだけが戦いではないのです。言葉を交わし対話を試みる。心を通わせることもまた、立派な戦いなのです。

私がこれより紹介する勇者の名は『トレボール・ヴェルヌ』。
人類史上最弱と呼ばれる、奇跡を起こした勇者です。

彼が生まれたのは遠い地イザリアの某国。戦乱に呻く惨劇の時代に生を受けました。
中流階級に生まれた彼は、戦争真っ只中の自国を、そして敵国を憂い、平和の道を模索します。
一番手っ取り早いのは敵を全て、綺麗さっぱり滅ぼすことです。敵がいなくなれば平和になりますからね。

だがしかし、彼はとにかく弱かった。武器の腕はへたっぴで痛いことが大っ嫌い。
喧嘩になったらすぐ謝り事を治める、軟弱者と謗られるような人でした。
力など持たない彼にその選択肢はなく、そもそも彼の人間性もあり、徹底抗戦を選ぶつもりはなかったでしょう。

そんな彼は考えました。何故敵国と争うのかを。その原因とは何か。何のために争うのか。
それを知るために、国中を駆け回りました。

原因については割愛しますが、ほんの些細な誤解から、お互いがすれ違ってしまった…とだけ言っておきましょう。
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 01:37:19.80 ID:R3USPI2tO
激化する戦争の中で、トレボールもまた、戦い続けました。
貴族と激論を繰り広げ、民衆を先導し、魔王に直談判さえしてしまいます。

その果てに、戦争が終わりました。
対話を経てお互いを理解し、尊重し合う未来が訪れたのです。
戦争が終わるその瞬間まで、トレボールは一度たりとも剣を取ることはありませんでした。

前人未到の偉業を成し遂げたトレボールの功績はイザリア中に語り継がれ、伝説となりました。

故に、人は畏敬を込めてこう呼ぶのです。
奇跡を齎した者。人魔の架け橋。希望に満ちた未来の象徴たる英雄トレボール・ヴェルヌのことを。

『剣を持たない勇者』と。

著:不死鬼 八犬
《これが世界各地の勇者だ!》より抜粋


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869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 01:38:03.06 ID:R3USPI2tO
史上最弱の勇者の記録を読み終えたリヒトは本を閉じて瞑目する。

素晴らしい。なんとも感動的な話だ。と、万人が喝采を以って讃えるであろう功績。

だが、そんなものは。

「…俺には眩しすぎるよ」

手を汚して、穢してきた自分にはあまりにも眩しい。
戦うことしか知らなかった。戦うことしかできなかった。
戦い漬けの日々を送っていた自分には永遠に成し遂げることのできない奇跡。
そんなものを見せられても、そうですかすごいですねえらいえらい!としか返せないのだ。

いつ死ぬか分からないこの世界。戦う力があるのと無いのでは、ある方が良いのは確かだ。

だが。

「…一度手を汚してしまえば、もう戻れない。そういう意味では、彼は幸せ者だよ」

数えきれない数の命を奪ってしまった。
戦友との死別を何度も経験してしまった。

その結果、命の価値が曖昧になってしまった。

無論、救える命があるなら救うに越したことはない。
だが、手にかける選択肢があまりに身近なのもまた事実。
それ故に、とりあえず殺しときゃ解決するっしょ、と物騒な選択肢が第一候補に入ってしまう。
そして何より、命の優先度を勘案した際に、自分の命が一番安いと理解してしまった。

奪うことしかできない自分より価値のない人がいるはずはないと。
諦念にも似た確信を抱いたリヒトが、自身を愛せないのは道理と言えよう。

故に、愛を求めるのだ。自分で自分を愛することができないから、他人にそれを求めている。
そんな救えない人間が自分なのだと、幽者は嗤った。
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 01:39:31.29 ID:R3USPI2tO
何をするかを↓1にどうぞ。現在は夕方の行動となります。ウィンディは戻ってきました。
牡丹雪のメンツは依然変わりなく>>724のルールで交流の可否が決まりますが、新人の瑠璃と用心棒の桔梗のみ、無条件で交流可能です。
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/31(火) 01:45:13.21 ID:Jnt9IT4mo
ドクロサムライ討伐

リヒトくんはもっと感謝されるべきだよ…
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 02:01:15.54 ID:R3USPI2tO
リヒトくんがこんなことになった原因は戦争とか王様への失望とか聖女死亡とか色々ありますが、根本的には幼少期にひどい目に遭ったからです。
つまり紅眼に産んだ神様が悪い。
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 02:48:23.93 ID:R3USPI2tO
光と闇。相反する存在であるこの二つはすこぶる相性が悪い。

不浄を祓う浄化の光。
清浄を穢す汚染の闇。

悪を滅する粛正の光。
正義を腐敗させる堕落の闇。

故に、闇は光を畏れ、光は闇を拒む。
相反し、相克する光闇は決して相容れることなく、反発しあう。

つまり、リヒトが扱う光魔法は闇に汚染された不死種の天敵であり、闇と親しい魔族の天敵でもあった。

リヒトがメリちゃん最かわ教相手に戦争終結まで立ち回れたのは光魔法のおかげと言っても過言ではなく、今の本人の人間性はともかくとして、勇者に向いている存在であったことは確かだ。

だが、リヒトは弾けた。世界に絶望した幽者は存在するはずのない、冥光という異端なる光に触れ、自身の力と変えた。

光と冥光。光と闇の関係と似ているようで、その関係性は全く違う。
堕落しようとも光であることは不変であり、しかし、幽者が心に影を落とした時のみ漏出する絶望と憎悪の残滓。
冥光が強まることは即ち、未来の否定と同意義である。

だが、それでも。どこまで堕ちようとも、光と冥光は幽者の傍に在り続ける。
世界に絶望し堕ちてもなお、人のために在ろうとする。
冥光はそんな幽者を表しているのかもしれない。
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 02:49:08.04 ID:R3USPI2tO
さて、夕暮れ時の緋桜郷を発ったリヒトが向かうのは、ドクロサムライが出没するとされる荒れ地である。
理由は一つ。ドクロサムライ討伐の依頼を受けたからであり、未練や怨讐その他諸々に縛られ現世に留まっている哀れな将軍をけちょんけちょんにして天国へ送ってやろう、という気遣いだ。

ドクロサムライは成仏できてハッピー。
桜花衆も問題が一つ解決してハッピー。
キャラバン隊も安心して物資輸送ができてハッピー。
リヒトも懐が潤ってハッピー。

その事実に気づいたリヒトが意気揚々と依頼を引き受けるに至った。
Win-Win-Win-Winの誰も不幸にならない最高の善行だと、本人は公言して憚らない。
それができるのは無駄に腕が立って光魔法を使えるお前だけだと嵐月に褒められた。くるしゅうない。

枯れ草がまばらに生え、独特な形をした大岩がそこかしこから屹立した荒れ地を全力疾走で行くこと数分。

真っ二つに割れた岩の上に、奴がいた。

「−−−−♪」

声帯が無いのに無理矢理声を出しているからなのか。
それとも魂が擦り切れて人語すら話せなくなったのか。

雑音にしか聞こえない歌を歌い、琵琶を鳴らす骸骨の姿がそこにあった。
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 02:49:43.53 ID:R3USPI2tO
坐禅を組んだ骸骨の全長は約2.5m。
全身に着込んだ甲冑は激闘に次ぐ激闘と風化によってボロボロであり、兜に至っては角が全て根本から折れている始末である。
六本ある腕のうち二本で琵琶を掻き鳴らし、残りの四本は刃毀れした刀を握りしめている。
そして、両脇には同じ刀が二本地面に突き刺さっており、昏い魔力を纏っていた。

なるほど、これはこれは。
怨念と憎悪の入り混じった不気味な力を感じ取り、幽者はニヤリと笑う。
期待以上の実力を持っていそうだ。アークミノタウロスでリハビリしておいて正解だった。
幽者は虚空より聖剣を取り出し、光魔法を行使。数本の光剣を自身の周りに生成し、狙いを定めた。

「−−−−!!!」

こちらの殺気に当てられたのかピタリ、と演奏を辞めたドクロサムライは、琵琶を投げ捨てて乱暴に剣を引き抜く。
戦う時を待ち侘びていたのだろうか。ドクロサムライは全身を震わせ、顎をガタガタ言わせている。

「…ザ…ジョ…ニ…!!!」

声と認識するのも難しい呻きを上げながら、得物を構える。
対する幽者も、聖剣と光剣を構えた。
郷に入っては郷に従えということで、嵐月より教えてもらった決闘の合図となる言葉を諳んじる。

「いざ、尋常に」

「−−−−!!」

幽者の言葉に応えるように、ドクロサムライの魔力が練り上げられ、紫色の火の玉が生み出された。
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 02:52:15.10 ID:R3USPI2tO
VSドクロサムライ 判定↓1コンマ


01〜05:死亡判定入りまーす
06〜15:リヒト負傷
16〜35:膠着状態
36〜80:優勢
81〜99:来た見た勝った
00:???
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/31(火) 02:58:13.53 ID:vG8rqcB7O
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/31(火) 03:03:07.24 ID:R3USPI2tO
本日はこれで終わりです。
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/31(火) 12:27:16.18 ID:vHuIiX5io
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 22:15:14.28 ID:FTlxw+qOO
さて、今日に至るまで放置されていた、緋桜郷では子供向け絵本に妖怪として登場するドクロサムライはいったいなんなのか。

有り体に言ってしまえば、骸骨兵、一般的にスケルトンと呼ばれる魔物の一種だと学者たちは推測している。
スケルトンはゾンビと並んで不死種の看板を務める二台巨頭だ。
世界各地どこにでもわんさかと湧き、定期的に神父や修道女がげっそりしながら葬送している、誰もが知っている魔物である。

そんなスケルトンとドクロサムライは姿形こそ違えど、共通点が存在している。

血肉が腐り果て骨だけとなった身体。
風雨に晒され劣化し摩耗した装備の数々。

しかし、明確に違う点が一つある。
スケルトンは先述した通り、世界中どこにでも大量に発生する。
だが、ドクロサムライは現在まで放置されている個体以外観測されていない。
つまり、新たに発生したドクロサムライは未だ存在しないのだ。

スケルトン自体様々な亜種が存在するカテゴリーだが、ドクロサムライのようにたった一体しか発生しない、というケースは滅多にない。
ただのスケルトンが夢半ばに散った将軍らの無念を取り込み進化したのか。
それとも、将軍らの魂が成仏できず、ドクロサムライという形で不死種となってしまったのか。
サンプルが一つしかないので、結論が出ていないのが現状である。

だがしかし、先程挙げた共通点からドクロサムライはスケルトンの一種と見做しているし、単体の戦闘力は明らかに格上である。
よって、学者たちはドクロサムライのことを特殊個体(エクストラ)と呼称している。

特殊個体とは、ごく稀に発生する通常種とは別格の戦闘力を持つ個体のことであり、皆一様に、通常種とは隔絶した容姿を持つ。
突然変異だったり度重なる生存競争を経ての自己進化だったりと要因は様々だが、いずれも通常種とは段違いに強いので、観測された時点で周辺地域に緊急通達が出る。
そして、人類に明確な損害を発生させると判断された場合は即座に討伐依頼が発令されるのだ。
確実に討伐できる場合のみ、ではあるが。
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 22:16:01.53 ID:OgZtLCiBO
そんな怨念に囚われて近寄るもの全てぶった斬るマンと化した激強スケルトンことドクロサムライは現在、最盛期の輝きを取り戻した幽者と死闘を演じていた。
止むことのない剣戟の音と爆発音が、その熾烈さを物語る。

怨嗟の紫炎が火閃となり幽者に迫る。
幽者も光閃を放ち対抗する。
二種の閃光がぶつかり合い、衝撃が周囲を破壊する。
一瞬の拮抗ののちに、白き光が打ち克った。

暴力を内包した光閃が亡者に襲う。
どこにそんな俊敏さがあったのか。軌道を見切った亡者は攻撃を躱し、幽者に接近する。

六本の腕を巧みに操り、疾風の如き猛攻を放つドクロサムライ。
三対の腕による手数で反撃を許さず、巨躯が生み出す破壊力で無数の屍の山を築いてきた。
今回もそうなるはずだったのだが。

「−−−−!?」

六本の腕を以ってしても、手数で負けていた。
たった一人の人間にその全てを見切られ、往なされていた。
その原因は今、身をもって知らされている。

光魔法が肉体を加速させ、猛攻に対抗し得る速度を引き出す。
幽者の乱舞に連動するように舞う光剣は、幽者と流麗な輪舞曲(ワルツ)を踊る。
正確無比にして無慈悲な攻撃は、その全てに即死級の威力が込められている。
その技に憐憫や同情といった感情はなく、ただただ冷たい漆黒の意志だけが存在している。

手数の多さという一つの大きなアドバンテージを完全に覆され、六つ腕の亡者は劣勢に立たされる。

それでも。胸に燃ゆる復讐の灯火だけは消してはならぬと、貴様を殺しその魂を焚べると、執念にも似た強い意志で抗う。

地平線に太陽が沈み、夜が目覚める直前。
激戦の余波で崩壊しかけている荒れ地にて剣を交える二人の戦士。
交錯する光芒。鳴り響く剣戟。その音が、光が全て消えた時。

どちらが立っているのか。それはきっと、すぐに分かる。
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 22:16:58.53 ID:rT6JPg8GO
VSドクロサムライ 判定↓1コンマ


01〜05:死亡判定入りまーす
06〜15:リヒト負傷
16〜35:膠着状態
36〜99:なんで負けたか明日まで考えといてください
00:???
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/02(木) 22:27:05.98 ID:Rvob4ciVO
そろそろ00
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/02(木) 22:48:43.78 ID:VV1HjrApo
これは勇者
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 23:01:17.40 ID:whAqng8xO
この人失うものがない時だけ強いな。というわけで終わりです。
ある判定だけ↓1コンマでしておきます。


01〜50:なし
51〜66:R
67〜82:F
83〜98:G
99、00:???
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/02(木) 23:02:20.82 ID:VV1HjrApo
なんか来い
887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/02(木) 23:12:13.75 ID:fZjJ+ob8O
おつ。ドロップ判定かな?Rで雷鳴の剣とか
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 23:24:39.13 ID:avaL6KmGO
謎の人物によりフェルリティアが崩壊しました。大量の避難民(人口の二割)がイルステッド中に発生します。
というわけで、特殊なイベントも今後発生します。シルヴィア関係のイベントになります。

シルヴィアの遺児 判定↓1コンマ


01〜40:一人
41〜70:二人
71〜90:三人
91〜00:四人
889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/02(木) 23:28:36.19 ID:fZjJ+ob8O
多く。
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/02(木) 23:29:09.77 ID:5rTdGc5d0
はい
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/02(木) 23:36:40.27 ID:aBnb8rM4o
レムカーナ、フェルリティア、ゴルギュリオかな
シルヴィアの遺児はあのホムンクルスやろか
892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 23:39:57.48 ID:DAQFo4w9O
シルヴィアの遺児は彼女が手塩にかけて育てた魔法使いのことになります。
血縁関係はありません。「今まで散々嬲られてきたが、性根の腐った下郎の子など死んでも産みたくないよ」とシルヴィアが言ってます。

シルヴィアの遺児を一人募集します。学生くらいの年齢でお願いします(長命種の場合は、その種族にとって学生になってるくらいの年齢で。必要に応じて調整します)。
また、巡り合う方法については来たキャラ安価からこちらが一人選び、そのキャラの設定からこちらで決めるため、来歴などはシルヴィア失踪まででお願いします。
フェルリティア崩壊後の動向は記載しないでいただくと助かります。それでは今度こそ終わりです。
質問等あれば明日の昼とかに回答できればしたいと思います。
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 23:41:45.08 ID:kCbt9A/kO
>>891、フェルリティアで出会ったホムンクルスについては、シルヴィアの想定外とだけ言っておきます。
何度か交流すれば(運良くできれば)情報を開示する予定です。
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/02(木) 23:54:29.67 ID:aBnb8rM4o
わお、フェルリティア崩壊したんならまたどこかで会えそうね
更新乙でした
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2023/02/03(金) 01:28:52.64 ID:C6zo/0Sh0
【名前】トリチェ=アースラグランジュ
【人種】ヴァンパイア
【性別】♀
【魔法】眠り魔法
金のツインテールに赤い瞳のロリっこ。腰から小さな蝙蝠の羽が生えている。
面白い事、興味ある事をとことんまで追求するために何でもする+したいというかなり逞しい性格
ナチュラル見下しな言動が多いが本人的にはそんな気はない
実家はそこそこ良家で当然ソリが合わず、最後は当主お気に入りの血袋(人間)を逃がした咎で追い出される
シルヴィアに拾われるまでは泥水啜ってきた(直喩)ので血は吸えるときに限界まで吸うタイプ
魔力、智力は並以下だが有り余る想像力をシルヴィア見抜かれ弟子になる
眠り魔法は対象を眠らせ無力化するもの。始めは見つめ合って30分後……というクソザコ具合だったがシルヴィアの指導により相手によるが10秒見るだけで昏倒させることが可能になっている
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/03(金) 22:38:05.81 ID:FwJpWqt2O
【名前】シオン・アダマン
【人種】人間
【性別】男
【魔法】錬成魔法
14歳。肩のあたりで切り揃えた青い髪。小柄で華奢な体格。実年齢より幼く見える少女的な顔立ち。
彼の使う錬成魔法とは既存の物質を分解・再構築する(ぶっちゃけハガレ○の錬金術のような)魔法で、この魔法で聖剣でも断ち切れないような合金を作り上げ自分の名前をつけることを夢みている。
普段は臆病ながらも知的好奇心が旺盛で柔軟な発想の持ち主。研究以外には割りと無頓着。
武門の家に生まれたが、戦いに向いてない気質であると判断され勘当された後、一時期町で腐った残飯を魔法で食べられる状態にして食いつないでいたところをシルヴィアに拾われた。
その後、シルヴィアの指導により様々な知識の習得や魔法を熟達させ、シルヴィアに対して恩師として尊敬するとともにほのかな恋心を抱く。
しかし失踪の際に置いていかれたことに複雑な感情を抱いている。

なお、勘当されているため普段は家名を名乗らない。
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/04(土) 09:13:50.14 ID:fJrREgx0O
今日か明日更新予定なのでそれまでが募集と質問回答の期間になります。
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/04(土) 13:34:40.59 ID:l8vooxKU0
【名前】アスラン・コルズ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】模倣魔法(相手の魔法をコピーする魔法)
赤髪短髪。背が低い。13歳の少年。性格は面倒くさがりだがやる時はしっかりやる性格。「面倒くさい」が口癖。模倣魔法は相手の魔法をコピーする魔法でもあって珍しくなおかつ難しかった為、上手く出来なかったがシルヴィアの指導のおかげで使えるようになり、今ではみた魔法はコピー出来るようになった。彼が赤ん坊の時に森に捨てられた時にシルヴィアに拾われ育ててくれた(名前もそこに記されていた)のでシルヴィアの事は、母親のような存在でもあり師匠でもある。シルヴィア失踪の際は、また捨てられたと不安があるけど1人で頑張っている。
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/04(土) 16:39:09.73 ID:x5DIFxiL0
【名前】ユーマ・スティングス
【人種】人間
【性別】男
【魔法】虫魔法
年齢12歳、灰色の髪で黒いローブを着た男の子。前髪は長く片目が隠れている。
元々両親がおらず孤児院に拾われて育ったが彼の虫を操るという魔法の特性上、他の子供達からは気持ち悪いと蔑まれ陰湿ないじめを受けるようになる。
そんな生活に耐えかねて孤児院を抜け出すが、今度は珍しい属性の魔法を使う者たちを捕獲して売りさばく奴隷商に捕まってしまい人生に絶望していた所、噂を聞きつけてやってきたシルヴィアによって買われるという形で救われた。
彼にとってシルヴィアは自分の魔法をすごいと言ってくれた唯一の人であり、師匠として、そして一人の女性として憧れを抱いていた。
シルヴィアが失踪した際は何も言わずに去ってしまったため当初は悲しんだが、一方で彼女を快く思わない者たちがいた事も察しており、もし失踪理由が自分の予想通りだとしたら弟子の自分が彼女に変わって復讐を成し遂げるべきだと考えている。
上述のような境遇で育った為、無口でなかなか人を信用しない性格だが、根は心優しい少年である。
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/04(土) 22:48:10.39 ID:WY/Yfcygo
質問
光魔法と闇魔法は相反する性質があって他よりも希少とのことですが、他の属性にもそういった特殊な相性があったりしますか?
また、魔法体系や属性体系のようなものがあれば、開示できる範囲で良いので知りたいです
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/04(土) 23:25:53.55 ID:NJZ8vwuuO
>>900、火→風、植物→土、雷→水→火の順に、ある程度の有利不利が存在しています。
これらを総括して四元魔法と呼びます。
ある程度なので、出力に差があれば簡単に不利相性でも覆せる関係性です。
影魔法と闇魔法、神聖魔法と光魔法では、闇や光の方が根源的な魔法なので性能面では闇や光にどうしても軍配が上がってしまいます。

一般的に需要が大きい魔法ほど才能を持つ人が多くなるので、上記に挙げた四元魔法は必然的に使える人が多くなります。
また、需要が特に大きい(生命に関わるので)治癒魔法や加護魔法(俗に言うバフ)などについては、さらに使える人が多くなります。
需要がある=研究が進んでいるということになりますので、才能が無くても初歩的な魔法が使えるように改良されています。
簡略化されてもなお、体質などで使えない人もいますが。珠樹くんやリヒトくんがいい例です。

呪詛魔法や錬成魔法などは需要があまりないor日常生活に浸透していないため、使い手も少なくなってしまいます。
特に、錬成魔法については俗に言う錬金術として体系化されているので魔法として使う人は滅多にいません。
魔法の方が実験器具が不要だったり錬成範囲が広かったりで便利ではありますが、やはり技術として普及してしまったため今更そんな難しい、利便性の面で淘汰されて逸失した魔法を学んでも…って感じですね。

外的要因などで魔法の性質が変化したり、全く別の魔法を習得したりってのはあり得ます。
リヒトくんが冥光魔法を使えるようになったのも様々な要因が重なったからです。

長文すみません。
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/05(日) 00:06:38.58 ID:QRxbsdnao
>>901
回答ありがとうございます。参考になります
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/05(日) 13:06:31.11 ID:d8gz0bbaO
【名前】カーラ
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】炎魔法
赤褐色の髪をセミロング程度に伸ばした少女。年齢は本人にもわからないが十代中頃と思われる
シルヴィアの下に来る前は貧民街のストリートチルドレンだった。独力で覚えた炎魔法を武器に、敵対する同類や自分を利用しようとする大人など、邪魔者は全て焼き払い弱肉強食の世界を生き抜いてきた
シルヴィアにその才能を見出だされて勧誘されるも、一度それを拒否している。その後暴徒鎮圧の名目で再度訪れたシルヴィアに無事鎮圧され、弱肉強食の掟に従いシルヴィアの傘下へ入った
性格は一見荒っぽいが、内面は冷徹なリアリスト。シルヴィア同様に生まれや性別による格差を嫌っているが、自分たち平民以下には上の連中を叩き潰す力がない事実も認識しており、構造上の弱者が強者に服従するのは仕方のないことだとも思っている
しかしその更に根底には激情を秘め、いつか必ずフェルリティアの忌々しい支配構造を破壊してやると密かに企んでいた
シルヴィアに対しての感情は大雑把に言えば尊敬4割反抗6割といったところ。彼女の失踪については、別離の悲しみよりも勝ち逃げされた悔しさの方が大きかった
その失踪に何らかの悪意が関わっていたことは察知しており、失踪後は悔しさを晴らす為にも支配構造破壊の念を強める
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 19:42:40.62 ID:V085saAyO
夜10時より更新するのでそこまでが期限となります。
集まった安価からこちらで決めます。
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:54:43.76 ID:zwb81mNLO
紫炎を纏った凶刃と光を纏った聖剣が、帳の降りた荒れ地というキャンバスを彩る。
二色の光が織りなす光景は美しくも、禍々しい。

入れ替わる攻防の最中、闘争本能が警鐘を鳴らす。
それに従い、大岩を盾にして後退した。

ザン、と鈍い音を立て刃が滑る。
両断された大岩は崩れ落ち、切断面は火に炙られたチーズのように、どろりと熔けていた。

この一撃だけは受けたら不味い。そう理解するのに時間は必要ない。
刃が纏っているのは万象を焼き尽くす復讐の業火だ。
光魔法と聖女の加護があっても、紫炎に焼かれては無事では済まないだろう。

そこで、幽者は一つの鬼札を切った。

「マナ。力を貸してくれ」

この戦いは、アークミノタウロスとの戦いとは理由(わけ)が違う。
乗り越えるべき過去(シルヴィアの死)もなければ、意固地になる必要(自力で打ち倒す必要性)もない。
堂々と、遠慮なく、マナの力を受け容れることができるのだ。

先の戦闘では、彼女の意志で力を貸そうとしてくれた。
それをずっと拒み続けるのは失礼だし何より、嬉しかったのだ。
人を否定し続けていた妖精が自分から歩み寄ってくれた。
それだけで、力を借りる理由としては充分すぎる。

それに、戦いとは本来、どんな手を使ってでも勝たねばならないものだ。
勝つためなら卑怯な手段も上等だし、そもそも共に戦う仲間を頼るのは当たり前だ。
当時頼っていた戦友の力が、妖精の力に変わるだけのこと。

であれば、躊躇う必要はどこにある。
一人でできることなどたかが知れている。
だから人は、生き物は皆、手を取り合うのだ。

「−−−−(あなたに、力を)」

脱線した思考が、妖精の祝詞によって引き戻される。
何と言っているのかは理解できないが、何を言っているのかは理解できた。

沸々と全身の血肉が沸き立ち、力が溢れ出す。
それでいて、思考は絶対零度のように冷え切り、まるで凪いだ海のように静かだった。

雑念が消える。無駄が削ぎ落とされる。
研ぎ澄まされた意識は、蓄積された経験と合わさり、もはや未来予知に近しいものになる。

マナの力添えに謝辞で返し聖剣を構える。
亡霊を討たんとする幽者は今、荒れ地を駆ける流星と成った。
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:55:30.44 ID:zwb81mNLO
何が、起きた。

中空に弾き出されたドクロサムライは、現在の状況を整理することに努める。
復讐心に塗り潰されていた理性が戻り、本能に上書きされていた思考が再開する。

べき、と骨の砕ける音が聞こえる。
二本の腕が根本から断ち切られ、縦横無尽に空を駆け巡る光剣によって細切れにされていく。
夜を照らす光。あるいは闇を祓う光。
そう形容するしかない神聖な輝きが、怨讐に塗れた穢れた肉体を削り取り、浄土へと送還する。

続けざまに、全身が物理法則を無視して上下左右に吹き飛ばされる。
箱に小物を入れて乱暴に振るったように、身体が弾ける。
その度に、腕や足が壊れていく。
その度に、流星が通り過ぎていく。

四肢が全て離断し、胴体と頭部のみが残る。
全方位から加わる衝撃によって身体が回転し、顔が空を見上げた瞬間。
流星の正体が人だということに気づいた。

ああ、なるほど。

貴殿は私たちを解放するために、来てくれたのか。

無辜の民をこれ以上手にかけないように天が遣わした使者が貴殿なのか。

無様に死んでおきながら、成仏することにさえ他者の力を借りるとは情けなくて仕方がない。

腹を切って詫びたい所存だが、あいにくもう拙者には切れる腹がない。本当に申し訳ない。

だがこれでようやく、皆と共に逝ける。貴殿には感謝してもしきれぬ。

ありがとう。意識が途絶える直前に絞り出したこの言葉は、貴殿に届いたのだろうか。
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:56:10.75 ID:zwb81mNLO
流星が地に墜ち、凄絶な爆発が発生する。
光が収まった頃には、荒れ地にぽっかりと一つの大きなクレーターができていた。

戦闘の終わりを告げる吐息が漏れる。
空を飛び回っていた光剣は幽者の傍らに集い、霧散した。
骨の一欠片も残さず消滅したドクロサムライ。彼は消滅の直前に何を言っていたのだろうか。
口が動いているのは辛うじて分かったが、どのような言葉を紡いでいたのかは一切分からない。
読唇術の類は習得していないのだから当たり前だが。

まあ、いい。なんにせよドクロサムライは成仏した。
邪悪な気配は完全に消え去ったし、しばらく待ってみても地面から骸骨が這い出てきたりとかもしない。

もしまた復活したらその時はもう一度消し飛ばすだけだ。
何回も何回も何回も何回も何回もボコボコにしてしまえば、やがて心が折れてこの世を去ってくれるだろう。

「おつかれさま」

「ん」

労ってくれたマナに感謝を述べる。
やっと、本当の意味で彼女と友好関係を築けたような気がした。
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:57:14.88 ID:zwb81mNLO
天守閣に報告に向かったリヒトは、門前の広場に数名の男性が磔にされているのを見つけた。
出発前は無かったはずなので、仕事の最中に設置されたようだ。

全員が全員血を垂れ流しており、痛みに身を捩って呻き声を上げていた。

「はいはーい。一発ぶちかましたい人はこの鉈を使ってなー。頭と首を狙うのは御法度やでー」

と、まるでセールス中の売り子のように声掛けをしている狐耳の男性。
軽い雰囲気で人に渡しているのは錆びて刃毀れした鉈だった。
あまりにアンバランスな光景に、さすがのリヒトも言葉を詰まらせる。
こんなのはウィンディみたいな多感な年頃の女の子には見せられない。

「ん、なんや?兄さんもやりたいん?」

ケロッとした表情で問う青年に、リヒトは首を横に振って答える。
彼らが見せしめにされているのは明白なので、あまり関わりたくないというのが本音だ。

だが、そんなことを知ってか知らでか。お構いなしに青年は口を開いた。

「他所から来た兄さんには物騒だったり非人道的に見えるかもしれんけどな。これが緋桜郷…んにゃ、桜花衆の流儀なんよ。『人の道を外れた外道は、如何なる手を使ってでも罪を贖わせろ』ってな」

ということは、彼らは贖罪の真っ最中ということだろうか。
どう見ても反省しているように見えないが。
寧ろ、今後起きることに絶望しているようにしか見えない。

「そりゃそうよ。こいつらは処刑すると上の人が決めたさかいに。悪行の限りを尽くした外道やから、どんなに苦しんだところでこれっぽっちも同情せんがな」

ほら、と青年が指差した先には、腰の曲がった老夫婦が、怨恨の籠った瞳で磔にされた罪人を睨んでいた。
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:57:46.28 ID:zwb81mNLO
そして、血のついた鉈で。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁああっっっっっ!!!!!!」

力いっぱい斬りかかり、ノコギリで切り落とすようにゆっくりと鉈を引き抜いた。
殺傷力を削ぎ落とされた鉈は腕を切り落とすこと叶わず、鮮血と肉片を散らせる結果に終わる。

だが、これが目的なのだろう。殺すのではなく苦しめる。だから刃を潰しているのだ。
これはあくまで、被害者の溜飲を下げさせるための手段だと、恨みを晴らすための手段だと、その光景から容易に想像できた。

「お前たちのせいで愛華は…私たちの孫は…!!!!」

涙ながらにそう語りつつ、鉈を振るうのを止めない老人の目は怒りに燃えていた。
どのような悲劇があったのか。それは彼らの様子からしか伺えないが、相当に悲惨だったようだ。

「だが、あんなにザクザク斬らせて大丈夫なのか?これが処刑法だって言うなら俺の指摘は的外れのアホだが、そうじゃないだろ?」

「まあ、せやな。だがご安心を。この磔には特殊な術が仕込んであるから、死にさえしなけりゃすぐ傷が治るんよ。でないと皆が恨みをぶつけれんやろ」

惨いことをする。と桜花衆の容赦のなさに若干の戦慄とシンパシーを覚えつつ、リヒトは天守閣へと入る。

「緋桜郷を楽しんでな。英雄さん」

背を向けた瞬間に投げかけられた青年の言葉から逃げるように、後処理を済ませた。
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:58:28.37 ID:zwb81mNLO
牡丹雪に戻り、夕食を食べて腹を満たす。
戦いの後に食べる飯は格別なのは言うまでもない。それが、達人の振る舞ってくれる料理となればなおさらだ。

「ごっそさん」

三人前の料理を食べ切り、食器を返却する。
部屋で聖剣の手入れをしていると、不意にドアがノックされた。

「どうぞー」

リヒトが声を上げると、ドアがゆっくり開かれる。果たして、来客の正体とは。

「お疲れ様です〜」

ぽわぽわしていてぽよぽよしていてとってもきゅーてぃーな美人の鬼娘結衣乃だった。
属性過積載ではあるが、正直他の面々も同じようなものなので気にならない。気にしたら負けとも言う。

しかし、彼女がここを訪ねてくるとは何か頼みでもあるのだろうか。
そこまで親密ではないはずなのだが。

「ちょっとお願いがありましてですね〜。こう、ばんざーい、ってしてくれませんか?」

結衣乃はそんなことを言いながら、背筋をピンと伸ばして両腕を上げる。お山がぶるんと揺れた。

特に断る理由もないので、リヒトは了承して両腕を上げる。

すると。

「そぉーれ〜!」

結衣乃の口から吐き出されたか細い糸が、リヒトの腕や胴体、腰に絡みつく。
すわ何事かと目を見開くが、結衣乃の表情に敵意や悪意は介在せず。
別に痛いわけでもないので、どうすればいいのか分からないリヒトは困惑していた。
その間も肌に擦れている糸がくすぐったいのが困りものだが。

待つこと数十秒。ほう、と感嘆の息を漏らした結衣乃は両手をパンと叩き、にっこりと笑った。

「ありがとうございました〜。これで採寸は終わりましたので楽にしてくださいね〜♪」

気がつくと身体に絡みついていた糸は綺麗さっぱりとなくなっていた。
これにて失礼いたします。とだけ言い残した結衣乃は、上機嫌で部屋を出ていく。

何故か死んだ魚のような目をしたウィンディが枕に頭をぶつけている光景を幻視した。
そんなことをしても成長しないのだと心の中で荒ぶるウィンディを諌め、合掌する。

ウィンディが食事の際に飲む牛乳の量が何故か増えていた。
911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 22:59:13.36 ID:zwb81mNLO
「…以上が伝書に記載されてた内容ですね。これは大変なことになりました」

手紙を折りたたみ、桐箱に仕舞う女性。
銀髪から見え隠れする耳は尖っており、人外の者だとこの上なく示していた。

「どうしましょう?『黒罰の幽者リヒト』を名乗る人物によってフェルリティアは都を覆う結界ごと崩壊して墜落、貴族の半数は殺され、生き残りは住民を見捨てて逃散…その見捨てられた住民も何割かは難民として各地に流出…と割と笑えない事態な気がしますね〜」

などと言いながらあはは、と笑う女性は大概図太かった。
それを聴いている鬼の女性も、険しい表情はしていないのでどっこいどっこいといったところか。

「伝書には難民受け入れ申請も同封されてました。人数はざっと見て数百人程度ですかね。まあ、移動手段は馬車か徒歩しか無いので相当な大所帯だと思いますが」

「…そうですね。護衛に騎士団なりが付いているでしょうが、それでも人数は心許ないでしょう。野盗や奴隷商などに襲撃される可能性はあるかと」

「こちらも部隊を派遣しますか?合流するまでの数日でどれだけの損害が出るのかは不明ですが、緋桜郷の面目は保てますよ」

「…分かりました。ではそのように」

指示を受けた女性は、一礼をして部屋を出ていった。
一服した鬼は白煙を吐きつつ、吸い殻を灰皿に落とす。
傍に待機していた男性が、慣れた手つきでそれを処理した。

人の世は変わりゆくものだ。
定期的に訪れる大きな時代のうねり。それに呑み込まれぬように立ち回るのが長の勤め。
でなければ滅ぶだけだ。長いだけの歴史に胡座を掻いていた魔法都は今、その傲慢のツケを払いあっけなくイルステッド最長の歴史に幕を閉じた。

変わる世界に我々が。貴方がどう立ち回るのか。

「どうなるか見ものやねえ、兄さん?」

彼岸花 紅華は妖しく笑い、一献傾いた。
912 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/05(日) 23:00:46.88 ID:zwb81mNLO
何をするかを↓1にどうぞ。現在の行動は夜です。今回の行動は牡丹雪のキャラ全員と交流可能です。
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 00:15:14.75 ID:iApXyFGOo
服依頼したっけ?(描写ないよね)と結衣乃に確認しにいく
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 00:49:32.63 ID:xsjZDp2GO
採寸されるような依頼などしていないはずなので、真相を探るべくリヒトは結衣乃の部屋を訪問していた。

「鍵は開いてますよ〜」

との返事をいただいたので、遠慮なく失礼する。
部屋の中には、針と糸で生地を縫い縫いしている結衣乃の姿があった。

未だ製作段階でまだまだ先がありそうに見えるが、フードが付いていてどことなく、というより露骨に自分が普段使っているコートを想起させるデザインをしている。
誰も作ってくれ、と言った覚えはないのだが。
これが俗に言う手作り品押し売り商法なのだろうか。

「あ、いえ。私が好きでやってることなのでお気になさらず〜」

牡丹雪で働く子やウィンディに作ってあげるのならまだ分からないでもないが、どうして自分の服を作っているのだろうか。
素直に疑問をぶつけてみると、穏やかな表情で返答される。

「リヒトさんは最近、平和のためにすごく頑張ってるじゃないですか?だから、私なりにお礼というか〜、頑張ってえらいね〜って褒めたいというか〜」

物は言いようとはいうがそれにしたって限度がある、とリヒトは結衣乃に見えないように頭を抱える。
確かに緋桜郷が平和になっているのは事実だが、それはあくまで結果的にそうなっているだけに過ぎない。
そもそもリヒトがその依頼を受けたのは利己的な理由だ。
緋桜郷をより平和に、より良い街にするために、という彼女が想定しているであろう忠誠心溢れる理由は、残念ながら一片たりとも存在しないのだ。

「だが…。それにしたって、仕事を終えてすぐやることでもないだろ。朝から晩まで働き詰めで疲れてるはずなんだから、ゆっくり休んだ方が良いと思うが…」

「そういうこと言っちゃうと、人に嫌われちゃうかもですよ〜?」

勝手にしておいて横暴だな。
リヒトはそんなことを思いながら、脱力しつつ苦笑した。
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 00:50:24.25 ID:RE5kkDM0O
結衣乃と何をするかを↓1にどうぞ。
916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 01:15:35.47 ID:+nnH5jIaO
せっかくなので見学させてもらう
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 13:18:25.89 ID:y8Xq85TLO
クスクスと微笑む結衣乃の手は淀みなく動き、生地の形を整えていく。
月明かりと蝋燭の火に照らされながら服を仕立てる結衣乃の姿はまるで天女のよう。
赫色の青春を送っていたせいで美醜感覚が盛大に麻痺しているリヒトでさえ美しいと感じ、見惚れてしまう光景。
これでまだ子供だというのだから恐れ入る。

「リヒトさんって、人のことを好きになったことはありますか?」

特に意識していないであろう、結衣乃の口から放たれた何気ない質問。
それを聞いた瞬間、首筋を冷や汗が濡らした。

地雷を踏むのは勘弁してほしい、と内心に弱音を吐く。
そんな質問に答えられるほど、幽者は明るい人生を送ってこなかった。

ただ目が紅いだけで家族に殺されかけた。
ただ目が紅いだけで光の無い地下室に幽閉された。
ただ目が紅いだけで家族との繋がりを絶たれた。

力が無かったから逃げ延びた先でも辛酸を舐め続けた。
満足な食事にありつくことは叶わず、捨てられた残飯を食らうことで命を繋ぎ、必死に生きてきた。
何の希望も持たず、無為に日々を過ごし、命が消えゆく瞬間を待っていた日々。

それは、ソルドを抜け出して聖女と巡り逢うことで終わりを迎えた。

それから先はひたすらに剣を振るってきた戦いの日々が続いただけだ。
奪い、奪われる。暴力と混沌に満ちた地獄を進んできただけだ。

そんな世界で生きてきた自分にとって聖女は。戦友は。大賢者は。妖精は。まだ未熟な魔法使いは。どんな人なのだろうか。

皆のことが好きだったと、心の底から言えるような存在なのだろうか。

結衣乃の問いは幽者の痛いところを突いてしまったが、奇しくもそれが、自分と向き合うきっかけになった。
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/02/06(月) 13:20:40.59 ID:y8Xq85TLO
リヒトの心情整理タイムになるのでシンキングタイムを設けさせていただきます。
次に出す安価は結衣乃の問いにどう答えるか、です。

質問等ありましたらお願いします。今開示できる範囲の情報をお出しいたします。
今日の夜くらいにお答えします。
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 15:12:14.88 ID:REYhtqouo
たんおつ
聖女クロエとシルヴィア、マナは直接の面識はありましたか?
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 17:42:50.79 ID:1uvGdmbFo
・リヒトは「好き」という心理をどのようなものだと考えていますか?
・リヒトは、誰かを好きになることや、それを言葉にすることに忌避感や罪悪感を抱いていますか?
・リヒト自身は、皆のことが好きだったと心の底から言えるような在り方をどう思っていますか?
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 18:25:18.45 ID:agmMhE+AO
とりあえず今来てる質問に返答します。


Q.聖女クロエとシルヴィア、マナは直接の面識はありましたか?

A.ありません。強いて言うなら、シルヴィアが聖女や勇者時代のリヒト活躍を耳にした程度です。

Q.リヒトは「好き」という心理をどのようなものだと考えていますか?

A.過去の経験から恋愛観についてはガバガバにされています。「ずっと傍にいてもいい。たとえ血肉が削ぎ落ち魂が壊れようとも、何があってもその人を護りたい。そう思えるような人に対しての感情が『好き』とか『愛』って言うんじゃないかな?」と、敢えて言葉にするならという前置き付きでお言葉をいただいております。

Q.リヒトは、誰かを好きになることや、それを言葉にすることに忌避感や罪悪感を抱いていますか?

A.どちらも抱いています。忌み子だった事実と人殺しである事実が、どちらも負い目になってます。

Q.リヒト自身は、皆のことが好きだったと心の底から言えるような在り方をどう思っていますか?

A.「そこまで真摯に人と向き合える在り方が羨ましく、そして眩しい。取り返しのつかないことをした俺に、そんな資格はあるのかね?」とのことです。

また、同時に「こんな考えをしながら生きてる奴を愛してくれるような物好きはいないだろう。なら、本気で愛されたいのなら変わる必要があるはずだ。…俺が本気でそう思ってるなら、の話だが」と言ってました。
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 18:50:15.67 ID:5uZ7Cd/10
勇者時代のリヒトは聖女や戦友とどういう接し方をしていた?
シルヴィア達に接する時のような感じだったか?それとも聖女や戦友にはまた違う接し方をしていたか?
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 20:09:28.97 ID:lDnYN0TlO
リヒトにとって護りたい人、護りたかった人はいますか?
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/06(月) 21:14:10.17 ID:ld5woU/aO
Q. 勇者時代のリヒトは聖女や戦友とどういう接し方をしていた?
シルヴィア達に接する時のような感じだったか?
それとも聖女や戦友にはまた違う接し方をしていたか?

A.勇者時代のリヒトは基本敬語を使ってました。物腰も穏やか、というよりは低く、他人の顔色を窺うような感じですね。
戦争終盤からはシルヴィアたちに接するような感じになりましたが、今より口が悪かったです。厭戦感情マシマシだったので。
それでも、恩人である聖女に対しては敬語を崩さず接していました。

Q.リヒトにとって護りたい人、護りたかった人はいますか?

A.聖女です。あくまでウィンディやマナたちは仲間だから守る対象になっているのであって、何よりも大切な人か、と問われたら答えに詰まる程度の関係性です。
しかし、リヒトが聖女を護ることはできませんでした。そういったトラウマも他人と親密にならない原因なのかもしれませんね。
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/06(月) 23:29:46.23 ID:PB19rtMc0
生前の聖女はどのような人物だったか?
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/07(火) 09:51:58.63 ID:ylGZWNyUO
Q. 生前の聖女はどのような人物だったか?

A.性善説が服を着て歩いているような超が付くほどのお人好しです。それでいて自己犠牲の精神の塊で頑固な女の子でした。
たとえ自分が死ぬと分かっていても、それでも構わないと死ぬその瞬間まで人を助けるために命を分け与えた善人でした。
最後の最後に、勇者の未来に全てを捧げたわけですが。
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/07(火) 09:53:42.84 ID:ylGZWNyUO
↓3までに結衣乃の問いにどう答えるかをどうぞ。良さげな回答が揃ったらそこで締め切ります。
928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/07(火) 12:21:50.41 ID:jPap4Ha4o
大切だった人はいたよ……結局守れなかった人を好きだったなんて烏滸がましくて言えない
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/07(火) 12:52:06.08 ID:/uawuJPaO
ある、と胸を張って言えるような人間になりたかったよ
変われるなら……変わろうとしても良いなら、変わりたいけれども
930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/07(火) 20:16:34.32 ID:EVsCLK0zo
そんな人間でも境遇でもなかったからな……分からないよ
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:35:02.90 ID:oSyljNrxO
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932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:35:47.28 ID:AVJvGUllO
静まり返った室内。不思議そうに首を傾げる結衣乃をよそに、リヒトは重い口を開く。

「そんな人間でも境遇でもなかったからな…分からないよ」

他人を素直に好きになれるような真っ当な人間でもなければ、まともな境遇で育ってきたわけでもない。
そもそも、好きがどういう意味なのかすら解らない。
そんな自分が他人に好かれることを、愛されることを目的として行動しているのは滑稽の極みだが。

結衣乃の質問に、肯定で返せるほど他人のことを好意的に思ったことはない。
と考えれば、はい、と答えることはできなかった。

「俺だって、人を好きになったことがある、と胸を張って言えるような人間になりたかったよ」

数多の離別と闘争の果て、無数の骸と血河を築き到達した平和という未来。
その代償はあまりにも大きく、過去が残した傷痕も深い。

人に愛されなかったが故に人を愛せず。それ故に人から愛されることのない負の螺旋。
それを断ち切るには過去のしがらみが多すぎて、断ち切ろうにも幽者の心が弱かった。
どうせ失うものならば。どうせ奪われるものならば。どうせ裏切られるものならば。
初めから好きになることはない。そう、逃げ続けている。
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:36:36.40 ID:aOR+dD2fO
「…大切だった人はいたんだ。けど…結局守れなかった人を好きだったなんて、烏滸がましくてそんなことは言えない」

地獄から救ってくれた人。共に在ろうとしてくれた人。目の前で命を落とした人。
死の間際に彼女が残してくれた祈り。それは幽者を生に縛り付ける呪いでもあった。

素敵なお嫁さんを見つけてほしい。
たくさんの人に愛されてほしい。
幸せに暮らしてほしい。
聖女は命が終わるその瞬間まで、勇者の未来を案じてくれた。
だが、当の本人がその未来に恐れ、怯えているのだから救えないものだ。

大切だったというのに、護ることもできないで死別した。
それなのに、聖女のことを好きだと言える権利があるのだろうか。
護れもしないくせにそんな言葉を並べ立てるなど、烏滸がましいにも程がある。

「それでも変われるなら…変わろうとしても良いなら…変わりたいけれども。そんな権利はあるのかな。殺すことしかできない俺に。奪うことしかできない俺に」

それは懺悔のように。幽者の口から絞り出された心の嘆きは弱々しく、か細い。
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:37:09.59 ID:aOR+dD2fO
永遠にも思える静寂の中。お互いの吐息だけが聞こえる。
暗い部屋の中で俯く幽者の紅眼は昏く輝き、それを見つめる少女の眼は確かな決意を秘めている。

「リヒトさんは、皆が死ね、と言ったら死ぬんですか?」

そして、幽者を優しく抱きしめた。
まるで子供をあやすように、優しく優しく背中を撫でる。
いい大人が子供に慰められている、憲兵案件待ったなしの事案発生中みたいな衝撃的光景だが、二人の間にそんな茶化せるような空気は一切ない。

結衣乃の胸の中で、幽者は静かに首を振る。
こんな罪人にも背負っているものがあるのだと、それを果たすまでは死ねないのだと、言葉にはできなかったが行動で示す。

「ですよね。他人が何を言っても。どう思っても。最後は自分で決めることだと思うんです。他人がどうとかではなく、リヒトさんが自分を赦せるかどうか。結局はそこなんですよ」

無言で言葉を聴き続ける。

「…辛い時があったでしょう。泣きたい時もあったでしょう。それでも我慢してきたと思いますが、今はいっぱい泣いていいですよ。大人だって泣く権利はあるんです。…ここであったことは二人だけの秘密にしますから」

「…もう、涙なんて枯れ果てたよ」

聖女を喪った時、勇者はひたすらに泣いた。喪失の苦しみに。己の無力さに。
それ以来、涙が流れたことはない。
心が壊れたからなのか、本当に涙が枯れたのか。どういう原因かは分からないが。
ともかく、泣けと言われて泣くことはできない。
演技しようにも、嘘泣きすらしたことがないのでどうしようもないのだ。

幽者の返答を聴いた結衣乃は諦めたように笑い、しばらくの間幽者を抱きしめ続ける。
その間、幽者は戸惑いつつもそれを受け入れるしかなかった。
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/09(木) 01:39:02.79 ID:aOR+dD2fO
結衣乃と何をするかを↓1にどうぞ。
これで今回の交流は終わりとなります。

短いですが今回の更新は終わりです。
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/09(木) 12:08:58.89 ID:bxbQwT/Eo
服と慰めてくれたお礼に何かしたい、幽者に出来ることなら何でもしようと言う
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/14(火) 00:04:17.57 ID:Oe3qc5UDO
柔らかい感触から解放された幽者は深々と頭を下げ。

いい年した大人がこんな醜態を見せて申し訳ない。
お詫びと言ってはなんだが、服と慰めてくれたお礼も兼ねて何かしたい。
自分にできることなら何でもする。

そう、はっきりと伝えた。

対する結衣乃の反応は。

「変なところで律儀ですね〜。そこまで真摯に受け止めていただけたのは嬉しいですが、今のところは特に困ってないので…どうしましょう〜」

と、余裕を持って受け止められた。これではどちらが大人か分かったものじゃない。

「思いつかないならそれでもいいさ。助力が必要になった時に呼んでくれれば、それで」

「では、そうしますね。…そろそろ私もおやすみしますので、リヒトさんも部屋に戻ってください」

「ああ。急に悪かった」

「いえいえ。おやすみなさい」

「…おやすみ」
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/14(火) 00:05:44.95 ID:0K1baK9rO
自室に戻り、カバンで眠らせたままだった宝珠を取り出す。
紫紺に輝くそれは夜空のようにも見え、暗澹と淀む深淵のようにも見える。
だが、不思議と目が離せない。どうしても注視してしまう。

「…結局、これがシルヴィアの忘れ形見になっちまったな」

ヴォルグス城の探索で手に入れた宝珠。
後にも先にも、シルヴィアと共に手に入れた物はない。
これが、これだけが、共に歩んできた証。

マナも同様の存在になるのかもしれないが、彼女は生きている。物扱いするのは忍びない。

ふと、彼女と出逢った時のことを思い出した。

善意を踏み躙られ、血と泥に塗れながらも美しかった大賢者とは、閑散とした路地裏で巡り逢った。
言ってしまえばただの偶然。しかし、その出逢いは奇跡であり、運命でもあった。
彼女と出逢い、リヒトは前に進む決意ができた。
独善的であれど、変わろうとした。

「…ああ、そうか。なんで俺が貴女に惹かれたか、解ったよ」

何故、あの時彼女の手を取ったのか。共に進むと決めたのか。ようやく解った。

シルヴィアと自分は似ていたのだ。
死別と裏切りの果てに世界に絶望しながらも、人のために行動するのを辞められない幽者。
謀略と裏切りの果てに理想と心身を穢されながらも、弱者のために理想を決して捨てず掲げ続けた大賢者。
最終的な目的が利己的か、利他的かという差こそあれど、どれほど悲惨な目に遭っても他者のために行動する二人が惹かれるのは、当然の帰結とも言えた。

「…なあ、シルヴィア。貴女は何故、俺に手を差し伸べたんだ?」

その問いの答えは聞こえない。
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/14(火) 00:08:36.48 ID:p7QefD14O
何をするかを↓1にどうぞ。朝の行動になります。
牡丹雪の人たちは>>724のルールで交流の可否が決まりますが、新人の瑠璃と用心棒の桔梗のみ、無条件で交流可能です。
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/14(火) 00:33:52.55 ID:XagkZGGZ0
連れていけるなら瑠璃と桔梗を連れて賭場へ
(瑠璃に生きる目的を見つけてもらうため、桔梗は念の為の護衛として連れていきたい)
無理なら過去の回想
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:09:58.72 ID:8o2N7ktoO
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942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:10:27.50 ID:q4nheRggO
朝ご飯を済ませたリヒトは今日することを見定めるために地図を眺めていた。
緋桜郷には大抵の施設が存在する。商店街はもちろんのこと、賭場などの大人のお店も多数出店しており、娯楽には事欠かない。
なんなら牡丹雪自体が大人のお店でもあるわけだ。

「…賭場か。そういや行ったことねえな」

賭場。またの名はカジノ。
一攫千金を夢見たギャンブラーが素寒貧になりゴミ捨て場に投棄されるか、はたまた僅かな可能性を掴み取り勝者になるか、一世一代の大博打が日夜行われる場所。
思えば、色々あって荒れていた時も酒を飲んだり盗賊を根切りにするくらいで、ギャンブルに勤しんではいなかった記憶がある。

変なところで良い子ちゃんな自分に苦笑し、財布を確認する。
直近で大仕事を何度かしたので、懐にはかなりの余裕がある。多少ボロ負けしても問題ないだろう。
資金を考えて楽しくギャンブル!と地図にも書かれているので、ドブに捨ててもいい分だけ使えばいいはずだ。

しかし、独りぼっちというのも寂しいものだ。
賭場は子供の入店禁止!と強調して記載があるので、ウィンディはお子様だから当然NG。
となると、リヒトが誘える相手は限られてくる。
客の相手をしている結衣乃や霧香は無理。台所に立っているリンは言うまでもない。
その他様々な理由を考慮すると、誘う相手は瑠璃が最適だと思われる。
聞けば、牡丹雪を利用する客に交渉を幾度も持ちかけているらしい。
幸いまだ良からぬ輩に目をつけられていないので未遂に終わっていることと瑠璃の精神面を考え、お雪は敢えて何も言っていないと食事の時に零していた。
ならば、大事になる前に手を打っておくに越したことはない。これで生きる目的でも見つけてくれればめっけもんである。
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:11:01.60 ID:q4nheRggO
そう思ったリヒトは牡丹雪の営業が始まり盛況となっている中、接客が終わったタイミングでお雪にコンタクトを取る。
誰か指名するのかと問われたので否定はしなかった。間違いではないのだから。

「ほう。それは嬉しいことだね。そこまで牡丹雪を懇意にしてくれるのは女将冥利に尽きるよ」

「それで、誰を希望するんだい?紅ちゃんのお得意様になる予定のお方だからね。多少、融通は効かせるつもりだよ」

ニコニコと笑顔を見せるお雪に、若干の逡巡を挟み要望を伝える。

「…瑠璃さんで。あと、万一の事態があったら困るから桔梗さんも同行してくれると助かる」

刹那、お雪の笑顔が引っ込み、視線の温度が下がった。
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:11:28.59 ID:qYPKN+FJO
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945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:12:20.09 ID:qYPKN+FJO
来客対応を雫と桔梗に任せたお雪は、リヒトと共に店裏に出る。
辺りから喧騒が聞こえてくるが、誰の視線も通っていない少し薄暗い場所だった。

「…さて。ちょいとばかりお話ししようか」

表でする話じゃないからこんな場所で申し訳ない、とお雪は微笑しつつ謝罪する。
別に構わない、と答えておいた。彼女の懸念も尤もだ。真意を聴いておきたいと思うのも無理はない。

だがまあ、瑠璃の誘いには乗らない、と言ったのだからほんのちょっとくらいは信用してくれてもいいじゃないか、とは思ったが。
お雪がよほど心配性なのか。そもそも自分が微塵も信用されてないか。
このどちらかだろうがもしも、万が一後者だったら普通に悲しくて泣く。

「これでも長く生きてるからね。ここ数日共に暮らして、お前さんの人となりは解ってるつもりだよ。だから質問は一つだけ」

「お前さんは、瑠璃と桔梗を連れて何をするつもりだい?」

「…と言われてもな。二番街や七番街には賭場があるだろ?そこに瑠璃さんを連れて行きたくてな。桔梗さんはその時の護衛役だ。…あ、もちろん代金は俺持ちだからご安心を」

「仮にも女子を連れて行くところが賭場かい。普通、こういう時は洋服とか装飾品とかを買うんじゃないかね。いや、最近の若い子の流行は知らないんだけども」
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:12:58.97 ID:qYPKN+FJO
「二年前まで血で血を洗う戦争やってた奴に期待しないでいただきたい。それに俺にだって一応ちゃんとした考えがあるんだ。弁明させてくださいお願いします」

「どうぞ」

「ありがとうございますお雪様。…で、瑠璃さんを賭場に連れてく理由なんだが。半ば自棄っぱちになってる彼女に、生きる目的を見つけてもらいたいんだよ。楽しいことでも知ってくれれば、身を滅ぼすような真似はしなくなるかな…と」

「それでもしギャンブル狂いになったらどうするつもりだい?博打に費やす金を稼ぐ手段として夜伽をし始めたら、もう何もかも終わりじゃないかな?」

「そこは…彼女の人間性に賭けるしかない。根っこはいい人なはずなんだ。…たぶん」

彼女の人となりが全然分からないので、かなり苦しい言い訳になってしまった。
もう少し交流しておけばよかったかもしれない、と後悔するも後の祭り。

今の自分は破滅へ手招きしている悪魔そのものだ。
塩を撒かれてニンニクを食わされた上に十字架を刺されても文句は言えないだろう。

しかし。

「…でも、このままだとどう転ぶか分からないのも事実…。何かしらの楽しみを見出してくれれば変わるやもしれないし…むー…」

お雪は勝手に悩み始めた。彼女も瑠璃の状況に思うところがあるのかもしれない。
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/16(木) 02:18:09.30 ID:qYPKN+FJO
↓1にどんな説得をするかをどうぞ。このレスのコンマを対象のレスのコンマが上回った場合説得成功です。
ダメだった時は回想になりますので、↓2に回想する項目を記載してください。


回想早見表


幼少期(幽閉時代)
少年期(ソルド時代)
少年期(聖女の召使い時代)
青少年期(戦争初期)
青年期(戦争終期)
青年期(ゴルギュリオ滞在時代)
青年期(シルヴィア邂逅時代)
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/16(木) 02:41:14.19 ID:tD8zIDmHO
ギャンブルの危険性についてあまり知らなかったと謝罪し、別の遊び(蹴鞠、羽根つきなど、緋桜郷の競技)に誘うのはどうかと提案する
949 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/16(木) 03:32:53.11 ID:m+TR03cs0
青少年期(戦争初期)
950 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/03/08(水) 23:01:52.25 ID:oaebpAt0o
待ってる
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