【安価スレ】堕ち行く光

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725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/12(木) 08:30:17.00 ID:uA2cY25CO
仲間を連れて街を周ろう
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/14(土) 20:32:05.80 ID:dj5L0uCwO
定休週が明け、牡丹雪の営業が始まる日。半ば逃げるように店を出たリヒトたちは途方に暮れていた。
これから客の相手をする従業員がいる中、部屋に閉じこもって平静を保てる自信が無かったが故の逃散である。
寧ろ、客に接待する彼女らが近くにいるのにどんな顔をすればいいのか、逆に問い正したいくらいだ。

彼女らはプロフェッショナルだから気にしないだろうが、こちらは変に知識があるえっちな14歳と無気力無知な妖精、頭がバグりにバグりまくったポンコツゴーレムとかわいいペット。
そして、それらキワモノ集団を統べる戦闘しかできない幽者。こんな面子が留まっていて碌なことになるわけがないのだ。

「そういえば、この街に来てからゆっくり観光してなかったですね」

「だな」

緋桜郷に入り茶屋で団子を貪っていたら強制連行されたのは記憶に新しい。ちょうどそこの茶屋だったか。

「〜〜〜♪」

そうそう。そして、珠樹という名の馬耳や尻尾が生えた目の前で団子を食べている少年に案内を受けたはずだ。

どうして彼がここにいるのだろう。リヒトは無性に自身の頬をつねって現実か確かめたくなった。
痛かったので現実だった。

「あ、おはようございます。皆様お揃いでお出掛けですか?」

「まあそんなとこだ」

尻尾をパタパタさせ団子を味わう珠樹の問いを肯定する。
店員と思しき少女や店主っぽいおばちゃんが珠樹に向ける視線がお熱くて困る。飛び火して燃え尽きないか心配だ。

「あ、店員さん。同じのあと二つお願いしますっ」

「はい!!!!!!!!!」

「…お楽しみくださいな」

食事の邪魔をするのはよくない、とウィンディにアイコンタクトをし、そそくさとその場を離れた。
離れた途端に茶屋の前に人だかりができたのは、いったい何故なのだろうか。皆目見当もつかない。
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/14(土) 20:33:08.66 ID:dj5L0uCwO
案内所で地図を受け取り、皆で確認する。
一人一枚貰ったのだが、ハリゴーディンが地図を要求した時案内所の人は軽く困惑していた。そりゃそうだとしか言えない。

「こうして見ると緋桜郷って広すぎません?レムカーナの三倍はありますよこれ」

「広い。べらぼうに広い」

魔族を厭いチマチマ領土を広げたレムカーナと来る者拒まず受け入れ続けた緋桜郷。
その規模は雲泥の差であり、格の違いをありありと示していた。

「これ全部観光しようと思ったら何ヶ月掛かるんだ?想像したくないわ」

「関係者以外立ち入り禁止って書かれてること結構ありますけどそれは除外しますよね?」

「流石にするよ?まさか俺ってそれ訊かれるくらいに蛮族と思われてる?」

「はい。だって、ほら。私がここにいる理由考えたら…ね?」

「なるほど完全に理解した」

そんな会話をしつつ街を練り歩く。見るもの全てが新鮮で飽きが来ない。まあ、ここに住んだらやがては退屈になるのだろうが。

ざっと地図を見る限り、すぐ近くにあるのは酒場と武具店、冒険者ギルドくらいだろうか。
少し足を伸ばせば天守閣、桜花衆の居城に行けるが、行ったところで何があるやら。
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/14(土) 20:36:31.26 ID:YJPPj8CQO
どこに行くかを↓1にどうぞ。参考までに緋桜郷の立地をざっくり記載します。

A:酒場に行ってみる。
B:武具屋を覗く。
C:冒険者ギルドに行ってみる。
D:その他。自由安価。


緋桜郷の立地

一番街〜九番街まで分かれております。内容は下記に記載。

一番街 天守閣 政界
二番街 牡丹雪 高級店の集合場所
三番街〜五番街 住宅地(数字が大きくなるほど高級に)
六番街 冒険者向けの宿場街 装備についてもここ
七番街 普通の店はここ えっちな店もあるよ 一番広い
八番街 所謂貧民街 でもちゃんと統治してるから治安はいいよ 一応定期的に炊き出しあるよ 病気で人が死んだりするけど平和だよ
九番街 研究するとこ 図書館もここだよ
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/14(土) 21:20:01.85 ID:Zb+E4/HMo
9番街の図書館に
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 00:18:22.04 ID:/DKEMzxzO
とりあえず手持ち無沙汰な現状を打破するため、ウィンディに行きたいところがあるか問う。
しかし、見どころが多すぎて逆に決められないようで、悩んでいる姿を見るに終わった。
仕方あるまい。ここは大人の自分が気を利かせてやろうではないか。
そう意気込んだリヒトは、大仰な咳払いをして、口を開く。

「こういう街にどんな本が保管されてるか気になってんだよね。ってわけで図書館とかどうっすか?」

「なんですかその語尾。その案には大賛成ですけど」

「では出陣である。面白い本が有ればいいな」

「ですね」

『むむ、これは立ち入り禁止でワタクシたちだけお留守番の匂いがプンプンします』

「お前のどこに鼻があるんだ」

『あると思わないでください。これはただのゴーレムジョークです』

「もう何も言うまい…」

数十分掛けて図書館に来たリヒト一行だったが、ハリゴーディンは中に入れなかった。
なんでも「万一暴走とかして器物損壊とかをされたらガチで困るから入んな!」とのお叱りを受けたようだ。
フェルリティアでの世迷言を知っているこちらとしては反応に困った。
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 00:23:31.42 ID:/DKEMzxzO
どんな本を読むかを↓2までに一冊ずつどうぞ。
ウィンディの読む本は↓2まででコンマ判定します。


01〜05:ムフフな本
06〜45:魔法についての見解〜by(自称)忍術マスターシノビマン〜
46〜80:忍術についての見解〜by(自称)魔法マスターマジックマン〜
81〜99:光と闇の相関、異端なる光について
00:古びた手記
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 00:33:41.18 ID:lLgAhe2iO
そろそろ00を
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 01:11:06.59 ID:LJpsECh0o
緋桜郷妖怪絵巻
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 01:22:59.32 ID:5dFVqQVgO
あと一つリヒトが読む本を募集中です。
よっぽど変な本じゃなければあると思って大丈夫です。もし変な本が出たら審議します。
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 01:23:06.99 ID:hLFHboGOo
これが世界各地の勇者だ!
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 01:37:43.64 ID:/6jZyY6sO
今日はここまでです。↓1コンマで勇者本の情報を判定します。


01〜20:初版(約200年前の情報までしか載ってない)
21〜60:第15版(約50年前の情報まで記載(ヴィクター・グランハイトあたりの世代まで))
61〜99:第20版(リヒトがやらかすまでの情報が記載)
00:???
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 01:56:10.13 ID:O9PeHkAU0
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/15(日) 02:14:34.53 ID:wpdTePZMO
というわけで寝る前に妖怪と200年前に観測された勇者を募集します。
足りない時などはこちらで考えますのでご気軽にどうぞ。以下のテンプレートをご利用ください。


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【人種】その名の通り。
【性別】その名の通り。
【魔法】どんな魔法を得意とするか。全く使えない人もいます。

魔法から下は自由記入欄となります。来歴や特徴などご自由にお書きください。


【テンプレート】
【名前】その名の通り。
【異名】その名の通り。
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 05:35:19.38 ID:hLFHboGOo
【名前】?
【異名】福呼び様
見た目は着物を着ているごく普通の子供にしか見えないらしいが誰もその姿は知らない
食べるのが好きでよく普通の子供にまぎれて飲食店に現れては食事をして去っていくという
その店に繁盛をもたらすと言われているため多くの店の主人はこの妖怪を信じており子供の客には親切にする文化が根付いている
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 10:03:31.51 ID:daABBzKZO
【名前】ルーク・ファンブルダイス
【人種】人間
【性別】男
【魔法】使えない
遥か昔に世界征服を企んだ魔王を1人で倒して世界を救った勇者。
魔法は使えなかったが、規格外の強さだったようだ。
誰とも会話をせず、一方的に人々を救い続けた。
その結果、その強さと行為を恐れた人々の手によって公開処刑される。処刑される直前でも一言も発さず、ただ静かに笑みを浮かべていた。
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 14:44:36.55 ID:LJpsECh0o
【名前】ヒオウサンショウウオ
【異名】湖底桜
緋桜郷外れの湖に棲むサンショウウオのような妖怪
小型の竜くらいの大きさがあり、透き通るような淡紅色の体を持つ
性格は物静かで温厚。防衛目的以外に地上の生き物を襲うことはないため、出くわしても特に危険はない。岩場で昼寝していたヒオウサンショウウオに地元の子供が抱き付いても、特に何もせず昼寝を続けたという目撃翌例もある
しかしもし湖を汚したり生態系を乱す乱獲を行うような者がいれば、ヒオウサンショウウオの怒りを買い、不届者の頭上に局所的な豪雨と落雷が三日三晩降り続くと言われている
サンショウウオに似ているが、近年の研究では水竜の一種とする説が浮上してきている
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 16:46:13.06 ID:sHKLrHQR0
【名前】ネイト・アンドリュー
【人種】人間
【性別】男
【魔法】氷魔法、炎魔法
赤髪で身長が高い男性。2本の剣を持っている。冷静沈着だが困っている人はほっとけない優しい性格。仲間共に数多くの魔物を倒してきた勇者。戦闘スタイルは二刀流で戦い、氷と炎の魔法を使う。性格や実績から多くの市民から慕われおり、結果とある王国の国王になった。現在でも王国ではその伝説が伝えられている。
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/15(日) 20:27:57.39 ID:S+LPbjWyO
【名前】ドクロサムライ
【異名】歌う骸骨将軍
腕が6本、甲冑と兜をつけいる大きい骸骨。6本の腕全てに刀を持っている。緋桜郷の外れにある荒れ地にいる(他の場所には移動しないで荒れ地のどこかにいる)。非常に好戦的で誰にでも斬ろうとしてくる。歌うのが好きでよく歌っている。そのため場所の位置もある程度特定できる。一度倒すとバラバラになるがしばらくすると元に戻り封印しない限り何度も復活する(元々封印してあったが封印していた岩が壊れてしまい蘇った)。
昔は宴が好きな将軍で仲間と一緒に宴していた時に敵に襲われ亡くなった。その亡くなった魂の怨念がドクロサムライに変化した。
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/16(月) 01:45:17.97 ID:0fzmrwJq0
【名前】イナズマミケネコ
【異名】雷電猫又
緋桜郷の外れにある山に生息する猫又の妖怪。三毛猫のような模様があり、尻尾の先端が雷のようにジグザグしている。大きさは中型の竜くらいの大きさがある。常に電気を纏っており電気による広い範囲で攻撃したり、鋭い爪で切り裂いてくる。さらに動きも結構俊敏。基本的にマイペースな性格だがイナズマミケネコに攻撃すると怒って気がすむまで暴れてしまう。その為、地元の人達は見つけても近寄らないようにしている。
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/16(月) 02:09:48.73 ID:WhzL308d0
【名前】トレボール・ヴェルヌ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】なし
通称「剣を持たない勇者」
近隣の魔族の王国とのいさかいが絶えない王国で中流階級として生まれた彼は
その類稀なカリスマ、交渉力、リーダーシップによって人民を纏め上げ
ついに魔王との会談にこぎつけ、話し合いによって和平をもたらすという偉業を成し遂げた
戦う力をなんら持たない彼はおそらく歴史上でもっとも弱い勇者であろう
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/16(月) 23:57:00.91 ID:dCCVrh3BO
【名前】バン・ブラウ
【人種】人間
【性別】男
【魔法】爆発魔法
自身の魔法と拳だけで魔王を倒した勇者。武器を扱うのが苦手で拳で闘う戦闘スタイル(魔法も得意)。前は王国の騎士を勤めていたが危険な魔法とオラオラ系なところから騎士をクビになった。その後、冒険者となり仲間と共に旅をし魔物や魔王を倒してきた。オラオラ系で言動も威圧的だが信念を曲げず仲間思いの性格のため多くの人に慕われてきた。魔王倒した後、国を作り、領主として人々をまとめた。
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/17(火) 13:02:05.01 ID:JiX8zqO+O
ちょっと忙しいので投稿が土曜日くらいになりそうです。妖怪や勇者の募集は終了とします。
連続で申し訳ないですが、桜花衆所属のキャラクターや新しく牡丹雪に入ってくるキャラクターを募集します。

牡丹雪に入る理由は前の店が取り潰しに遭った、捨て子の配属など理由はなんでも大丈夫です。
ではまた土曜日にお会いしましょう。
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/17(火) 13:10:01.96 ID:JiX8zqO+O
ちなみに、桜花衆は緋桜郷を支配している組織です。言ってしまえば、日本の国家権力を集約したような存在です。
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/17(火) 18:40:33.26 ID:T24fDdPHO
質問ですが桜花衆所属のキャラと新しく牡丹雪に入るキャラの人種は何でもいいですか?それとも鬼や天狗限定ですか?
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/17(火) 18:51:16.37 ID:bVMgckxjO
種族の坩堝の緋桜郷は伊達ではありません。人間も天狗も鬼も獣人もエルフも魔族も吸血鬼もなんでもござれです。
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/17(火) 23:04:01.78 ID:MCarVK/90
【名前】瓦 権兵衛(かわら ごんべえ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風と水の忍術
桜花衆の一人にして緋桜郷における警察組織のトップを長年勤める男
赤と黒が基調の着物を着て、非常に硬い金属で出来た特注の十手を用いる
言動はかなり荒っぽいが義理堅く犯罪を許さない心を持つ
時間に余裕さえあれば自ら街の見回りをし悪人を(下駄とは思えないスピードで走りまわって)追いかけたりする
顔が般若のお面そっくりなため、よく悪人に間違われる
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/19(木) 14:04:11.55 ID:gc9r5eg80
【名前】オリビア・ワスティ
【人種】エルフ
【性別】女
【魔法】植物魔法
銀髪でスタイルが良い女性。年齢は400歳と言われている。桜花衆の一人で槍と魔法を使って戦う戦闘スタイル。穏やかでマイペースな性格だが頭がよく桜花衆の参謀をつとめている。元々はエルフがいる森にいたが外の世界に憧れを持ち旅をしていた。その後、緋桜郷を訪れた時に桜花衆の一人にスカウトされ桜花衆に入った。200年前に観測された勇者と共に旅をした事がある。
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/19(木) 20:36:27.64 ID:XvdpRIj4O
【名前】エル・ファルス
【人種】吸血鬼
【性別】女
【魔法】変化魔法、変化忍術
緋桜郷が正式に雇っている忍達を取りまとめる長。
しかし、緋桜郷に住む殆どの者はそのことを知らない。
高身長で黒髪。笑うと牙が見える。
幼い頃は奴隷だったが、心優しい貴族に買われて長い時間を共に過ごす。その後、寿命差で主人と離別して死に場所を探していたところ、お雪に出会い、気がつけば桜花衆の一員になっていた。
貴族時代に培った処世術や変化魔法を利用し、忍者としては非常に優秀な能力を持っているが、普段は賭場に入り浸り、賭け事と酒に溺れている。
普段の言動(酔っている時)は荒い口調だが、忍者として行動するときや素面の時は育ちの良さが出る。
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 02:14:51.28 ID:oJeoS0b7O
【名前】キラ・レイデン
【人種】狐の獣人
【性別】男
【魔法】影魔法
白髪短髪の男性。白い狐耳と尻尾がついている。関西弁を話している。桜花衆の1人で桜花衆の諜報活動を行っている。普段はおおらかな性格だが諜報活動の時は冷静沈着になる。かなりの情報通で色んな事を知っている。幼い頃、家族が事故で亡くなり自分だけが生き残った過去がある。緋桜郷にきた時はその情報通なところをかわれ桜花衆に入った。魔法を駆使して隠密行動や攻撃、捕縛ができる。武器は短剣を使っている。旅館「牡丹雪」の温泉が好きでたまに来ることがある。
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 04:33:06.39 ID:4PsxJxlmo
【名前】桔梗(ききょう)
【人種】鬼
【性別】女
【魔法】炎魔法、簡単な治癒魔法
長身でショートの桃色髪で出るところの出た女性。腰に刀と脇差をさげている
早くに両親をなくして孤独になったとき周囲が誰も引き取ってくれなかったため子供のころから自分の力で生きていくしかなかった
そのことが少しトラウマになっていて自分の生まれた地域に苦手意識を持っている
緋桜郷の伝統的な武術を身につけて冒険者稼業や用心棒をやっていたときに伝手で牡丹雪の仕事を紹介された
乱暴な客に対応する用心棒として雇われて普段は掃除や雑用を担当
男のような振る舞いをするがそれは一人で生きていくための処世術として身に付いたものであり根は純真で女性らしい
心の奥では自分には帰るべき場所がないという寂しさを抱えている
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 13:58:17.10 ID:rjB7/JXS0
【名前】灯籠(とうろう)
【人種】天狗
【性別】男
【魔法】鋼魔法
桜花衆の1人にして緋桜郷の商人会長を勤めている。オレンジ髪にサングラスをしている。天狗の羽がついている。腰には武器のメイスを下げている。テンションが高くお調子者。流行には敏感で常に流行を取り入れたり、新しいものを販売しているため、彼のお店はいつも長い列ができている。店は日常のものや冒険者に役立つアイテムなどが売っている。元々孤児だったが優しい商人の人に拾ってくれて育ててくれた。成長して商人なろうと決心し勉強や技術をし今にいたる。魔法を使って体を固くして防御したり、人に教わった体術や武器のメイスを使って戦う。
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 16:37:46.84 ID:W+KsXtFD0
【名前】嵐月(らんげつ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風魔法
桜花衆の中でも幹部的な立ち位置にある、眼光鋭く頬に刀傷のある黒髪長髪の男性。前をはだけた着物を直接素肌に着て、腰には業物と思しき刀を下げている
現在は桜花衆に統合されて存在しないものの、かつては緋桜郷の見回りや用心棒、金を踏み倒すような客への取り立てといった極道的な組織の親分を務めており、その強さと男気から男女問わず憧れられていた
現在でもその武闘派ぶりは健在であり、緋桜郷に勇者であるリヒトがやって来たと聞いて一度戦ってみたいと周囲に漏らしているという
ちなみに戦いで本気になると着物を脱ぎ捨て、背中に彫られた風神の刺青が露わになる
それを見て生きて帰れた者は今まで一人もいないと言われている
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 19:32:26.56 ID:W+KsXtFD0
>>757
ちょっと文章的におかしい所があったので修正します

【名前】嵐月(らんげつ)
【人種】鬼
【性別】男
【魔法】風魔法
桜花衆の中でも幹部的な立ち位置にある、眼光鋭く頬に刀傷のある黒髪長髪の男性。前をはだけた着物を直接素肌に着て、腰には業物と思しき刀を下げている
現在は桜花衆に統合されて存在しないものの、かつては緋桜郷の見回りや用心棒、金を踏み倒すような客への取り立てといった仕事をこなす極道的な組織の親分を務めており、その強さと男気から男女問わず多くの者達から憧れられていた
現在でもその武闘派ぶりは健在であり、緋桜郷に勇者であるリヒトがやって来たと聞いて一度戦ってみたいと周囲に漏らしているという
ちなみに戦いで本気になると着物を脱ぎ捨て、背中に彫られた風神の刺青が露わになる
それを見て生きて帰れた者は今まで一人もいないと言われている
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/20(金) 20:57:57.69 ID:8H87JUlcO
【名前】瑠璃(るり)
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】呪詛魔法
新しく牡丹雪に入った女性。年齢はおよそ20歳前後
艶やかな濡羽色の髪を腰丈までストレートに下ろし、いつも物憂げな表情をしている。体つきはやや華奢で暗色系の和装を好む
元はある寒村の出身で食い詰めた家族に奴隷として売られ、最近まで違法な店で働かせられていた。先日その店が桜花衆の働きにより取り潰され、身寄りを失ったために牡丹雪に置かれることとなる
前の店では違法薬物や異常行為を強要されていた。体の傷や異常は都度回復魔法や浄化魔法で治癒されていたため殆ど残っていないが、心には無数の癒えない傷を負っている。そういった事情から自己肯定感が低く、夜の仕事をしている最中にしか生きる実感を得られない。また、自分はそれ以外に価値がないとも思っている
家族のことは恨んでいるが、食い詰めていた事情も理解できるため、心の底から呪うことまではできていない
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/21(土) 22:40:59.64 ID:AUXGAStX0
【名前】サイエス・リーヨー
【人種】人間
【性別】男
【魔法】硫酸魔法
桜花衆の一人でもあり科学者を勤めている男性。緑髪で髪はボサボサになっている。メガネをかけて、白衣を着ている。優しくいつも笑顔で話しかけている。緋桜郷のところにある研究所で色んなを研究しており、ポーションなどの回復アイテムも作ることができる。遠距離での攻撃が得意で弓や魔法で硫酸の弾丸を飛ばしたり、科学薬品を投げたりなどしている。元々別の街の出身で研究していたが現在は緋桜郷に住んでいる。桜花衆のメンバーや緋桜郷の住人とも仲が良く飲みに行ったりなどしている。
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:07:12.21 ID:4myQnQBDO
お待たせしました。これより再開します。
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:08:19.12 ID:73/7szOwO
図書館を見て第一に感じた印象は『古風』だろうか。
緋桜郷特有の木造建築は他の地域の様式と当然のことながら大きく異なり、昔らしさを感じさせる。温かみがあって嫌いではないのだが。
完成して何百年も経っている割には綺麗で、作りもしっかりしている。さぞかし立派な名工が手掛けたのだろう。

まだ午前中だからなのか人は少なく、ざっと見た限りでもご年配の方や真面目な冒険者くらいしか見当たらない。
おそらく娯楽に溢れた緋桜郷の住民は外で遊ぶのだろう。そのような娯楽を必要としない者、知識を求める人がここに集うのだと思われる。

「外に置いてるハリゴーディンがパクられたら敵わん。なるべく手短に済ませて出るか」

「あんなのを盗む物好きいますかね?チャカちゃんは可愛いので盗まれそうですが、アレがリードを持ってるので結局誰も近づかないと思いますけど」

仮にも仲間なのにあんなのとかアレ呼ばわりするウィンディはなかなかイイ性格をしている。
まあ、そんな呼ばれ方をするハリゴーディン側に多大な問題があるので致し方なしである。

30分後くらいに図書館を出るまで自由行動とし、その場は解散することにした。
これで何かしらを得てもらいたいものだと頭の片隅で思いつつ、リヒトは本に手を掛けた。
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:08:52.13 ID:73/7szOwO
リヒトが選んだ本は二つ。一つは『緋桜郷妖怪絵巻』なる題名の絵本。もう一つは『これが世界各地の勇者だ!』なる題名のゴシップ誌だ。

緋桜郷妖怪絵巻は、緋桜郷に言い伝えられている妖怪を分かりやすく解説している子供向けの絵本だ。
危険なものはおどろおどろしく、可愛いものは可愛らしく描かれており、いかにも子供が好みそうである。
まあ、その実態は緋桜郷周辺の情報を纏めた魔物図鑑とでも呼ぶべきものなのだが。
先祖代々伝えられる魔物の情報を妖怪として、後世に遺すこの書物の価値は地味に大きい。当時を知る手段にもなる。
たまに本物の妖怪(謎の存在)が紛れ込んでいるのはご愛嬌と言ったところか。

もう一つの本は、当時世界中で観測されていたらしい勇者の情報を収録した勇者図鑑。と本誌は謳っている。
だがその実情は筆者の主観が入りに入ったゴシップ誌と大して変わらない。
数年毎に発刊すると後書きに記載しておきながら、図書館に保存されているのは初版のみ。
発刊したは良いが誰にも買われなかったのか。はたまた売れはしたが信憑性の無い与太話や噂話がありすぎて出版社が焼き討ちでも喰らって絶版になったのか。
真相は定かではないが、二百年前に初版が出たっきりなのでお察しするしかない。話半分で読めば良いだろう。
そう思考に区切りをつけ、本を開いた。
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:09:31.94 ID:73/7szOwO
『福呼び様』


昔々、ある村に小さな食堂がありました。子供好きのおばあちゃんが作るご飯はとっても美味しく、村の子供たちに大人気でした。
ですが、その村に病気が流行り、たくさんの人が亡くなってしまいます。
怖くなった人たちはみんな、村を去って出ていきます。
亡くなった子供たちが寂しくないよう、おばあちゃんはたった一人村に残り、何年も何年も、ご飯を作っていました。

ある日、男の子が一人お店にご飯を食べにきました。
その顔は見たことがなく、周りにも家族がいなかったのでおばあちゃんは不思議に思いましたが、お腹を空かせた男の子のためにご飯を作ってあげました。
ご飯を全部食べた男の子は、お辞儀だけをして店を出て行きました。

次の日。何やら店の前が騒がしいとおばあちゃんは朝早くに目が覚めます。
するとなんと、たくさんの行列ができているではありませんか。
お客様に話を聞いてみると、たまたま近くを通りがかった商人が、子供に美味しいご飯屋さんがある、と道案内を受けたというのです。
しかし、もう村には子供はいません。不思議なことが何度もあるなんて、とおばあちゃんは思いますが、お客様のためにご飯を作りました。
それからは、美味しいご飯が食べたいと村に人が戻ってきてお店はとっても繁盛しました。
たくさんの人に囲まれたおばあちゃんは、そのまま幸せに過ごしました。

福呼び様が幸せを呼び込んでくれたおかげで、また一人幸せになれましたとさ。

めでたしめでたし。

著:亀有南斎
絵:脇差ぐねぐね太郎
《緋桜郷妖怪絵巻》より抜粋
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:10:27.21 ID:73/7szOwO
何ページか読み進め、リヒトは絵巻を本棚に戻す。福呼び様以外にもいくつか読み込んだが、どれも関わらない方が吉と書かれていた。
ごく一部しか読んでいないので何とも言えないが、ガチモンの妖怪である福呼び様以外はやはり、人類にとって害獣のような存在らしい。
だから、こういった本を使って危ない奴にちょっかいを掛けるな、と警鐘を鳴らしているのだろう。
死が見えているのにわざわざそれに触れる必要は無いのだから。

例えば、ヒオウサンショウウオ。透き通るような淡紅色の身体を持つ、サンショウウオに似た魔物だ。
緋桜郷(ひざくらきょう)の近辺に住むのにヒオウと付いているのが気になるが、湖のヌシと呼ばれる時があるらしいので王と桜のダブルミーニングなのかもしれない。
性格は物静かで温厚。彼側から攻撃をすることは防衛行動以外ではまず無いので、彼の怒りを買うようなことさえしなければ安全らしい。
昼寝中に抱きついても大丈夫らしいが、普段は水底でのんびりしているそうなのでヌメヌメしてそうだ。少なくともリヒトは触りたくないと思っている。
そんなヒオウサンショウウオの怒りを買った不届者はどうなるかと言うと、頭上から局所的な豪雨と落雷が降り注ぐのだという。普通に迷惑で死人が出そうだ。
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:11:01.11 ID:73/7szOwO
他にも、ドクロサムライやイナズマミケネコといった魔物も目を引いた。
二又の尻尾を持つ猫型の魔物であるイナズマミケネコは手を出さなければ毛繕いをしたりと可愛らしい姿を見せるが、一度でも手を出せばそれはまさに逆鱗に触れられた龍の如く暴れ始めるらしい。
ただでさえ数mと中型のドラゴン級のサイズを持つ魔物が雷を纏って大暴れするのだから、その被害は想像したくないレベルである。人里まで攻めてこないのがせめてもの救いか。

六本の腕を持つ骸骨の魔物であるドクロサムライに至っては、目が合った瞬間に剣を振るってくるという好戦的にも程がある生態をしている。
宴に興じていた将軍が夜襲を受け、部下と共に惨殺された怨念から生まれた魔物らしい。
悲しい出自の魔物だが危険な存在には変わりなく、殺すのは難しい上に封印も面倒、しかし縄張りである荒れ地からは動こうとしないので、桜花衆側も不干渉に徹しているらしい。
緋桜郷を経由するキャラバン隊にも、荒れ地に接近しないようにとお触れを出しているのだとか。

面白いものが知れた、とリヒトは絵巻の齎した情報に満足する。
ドクロサムライとやらなら、光魔法で存在ごと消し炭にできそうだと物騒な思考をしつつ、次の本に目を通した。
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:11:38.61 ID:73/7szOwO
皆様の多大なる要望を経て、本誌が発行できたことを喜ばしく思います。
はい、というわけで始まりました『これが世界各地の勇者だ!』です。好評だったら数年単位で出していこうと思うのでそこんとこよろしく。

えー、まず本誌を出すに至った理由なんですけれども。私は今までに世界各地を旅してバチクソに痛い目に遭ってきましてね。
その時にまあ、目にしたり耳にするわけですよ。勇者のお話とか昔話をね。
んでもって、どれもこれも勇者に至るまでの経歴が違うから面白いって思いましてね。
ならこれを他の人にも知ってもらって、あわよくば印税をガッポガッポ…いやなんでもないです。

何はともあれ、石碑を読み解いたり金を貢いだりしてやっとこさ手に入れた情報ばかりです。
参考にしてくれたら嬉しいです。それでは本題にGo!
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:12:22.27 ID:73/7szOwO
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769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:12:56.20 ID:73/7szOwO
『世界に殺された勇者』

えー。この勇者を初っ端に紹介してええんかと悩んだんですけども。
やっぱり掴みはインパクトが大事!なもんで、現実はそう上手くいくものじゃないよって教えるのも含めて先陣を切っていただきました。本人は首を切られたんですけれども。

彼の名は『ルーク・ファンブルダイス』。冗談みたいな名前ですがマジでこの名前です。ガッチガチに厳重に封印されてた祠の石碑に書かれてたんでたぶんガセじゃないと思います。
もし嘘だったら緋桜の下に埋めてもらって構いません。

彼がどんな勇者だったのか。いつの時代の勇者なのか。についてなんですが。
言ってしまえば遥か昔…そうですねー。ざっと数千年前の時代に存在してたみたいです。
我々が生きるこの世界。文明が長い間続かないのは周知の事実だと思います。ざっくり数百年経ったら綺麗さっぱり滅んで、また新しい国とかできてますしね。
だから世界中に遺跡とかがあるわけです。滅ぶ原因は自然現象だったり戦争だったりとあるわけですが、私は専門家じゃないのでこの話はここまで。

まあつまり、そんな昔に生きていたこの勇者はとにかく強かったんです。とんでもなく強かったんですよ。
少なくとも、魔法の類は一切使えなかったそうですが、そのシンプルにして規格外の強さを以って、世界征服を企んだ魔王をたった一人でぶち殺し、世界を救いました。
しかも、彼は死ぬ瞬間まで何一つ喋らなかったんです。意志も伝えず、ただ黙々と、返礼さえも求めず人を救い続けました。
彼が優しすぎたのか。それとも頭のネジが外れていたのか。何かがあって心を壊したのか。それは情報が無いので何も解りませんけれど。
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:13:35.47 ID:73/7szOwO
その力を、行為を恐れた民衆は、世界は、彼の死を望みました。自身を救ってくれた英雄を、ただ怖いというだけで殺そうとしたのです。
しかし、勇者はそれを拒むことなく、首を差し出します。
断頭台に取り付けられ、心無い罵声を浴びせられる中でも、彼は微笑みを浮かべていました。
振り下ろされる大鉈。飛び散る鮮血。
何も求めず、ただひたすらに救い続けた英雄は。人のエゴによって都合良く切り捨てられた英雄は。死してもなお笑っていたのです。

それでもあなたは、勇者になりたいと思いますか?

著:不死鬼 八犬
《これが世界各地の勇者だ!》より抜粋
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:14:30.68 ID:73/7szOwO
最初の一人目を読了した時、ぞくりと背筋に氷柱を差し込まれたような感覚がした。
額に手をやると、冷や汗がべったりと付いていた。その理由は考えるまでもなかった。

自分も彼と同じ末路を辿っていたのかもしれない、と、本能が嫌悪感を示したのだ。
何も求めず戦い続けた自分と、何も求めず人を救い続けた彼が、重なって見えてしまった。
厳密に言えば、何も求めなかったわけではないのだが。戦争が終わった後、身を寄せていたフィアリス家への爵位を嘆願した。
その結果、田舎町の名家だったフィアリス家は男爵の爵位を賜り、正式に統治するようになったのは記憶に新しい。

もう戻れない、戻ってはいけない嘗ての故郷に思いを馳せる。
故郷と呼ぶべき場所は三つほどあるが、その中でもフィアリス家が一番居心地が良かった。

「…どうしてあの人は、俺を赦したんだろうな。あれほど俺を恨んでたのに。…憎んでたのに」

護れなかった聖女の父母に会った時。聖女の死を伝えた時。殺される覚悟はしていた。寧ろそれを望んでいた。
なのに、彼らは殺すこともせず見逃した。愛しの娘を見殺しにした大罪人を、裁こうともしなかった。
今でも、その理由は分からない。分かる日はやってくるのだろうか。

光の失せた紅眼が、天井へ向けられる。木材の模様が目に映った。
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:15:09.94 ID:73/7szOwO
ニンニン。はじめまして皆の衆。皆大好きシノビマンでござるよ。ニンニン。
さてさて、拙者が此度筆を取った理由でござるが。
どうやら異邦には魔法なる摩訶不思議な妖術があるらしいのでござる。
幸い、魔法への知見を持つ者と対談する機会があったので、魔法に対する見解を述べようと思った次第でござる。
皆もこれを読んで、立派な忍になるでござるよ。シノビマンとの約束でござる。ニンニン!

まず、忍術と魔法の差異について示さねばなるまい。大前提として、どちらも魔力を消費するものであることに変わらぬ。
忍術の場合は、魔力を練りつつ図示したような特定の印を結ぶことで火を吹いたり風の刃を放ったり、と望んだ現象を起こす技術でござる。
しかし、魔法の場合はあら不思議。謎の呪言を呟きながら魔力を練ると、大爆発が起きたり雷が落ちたりするのでござるよ。怖いね。
同じ魔力を使っておきながら、現象を起こすまでの過程がここまで異なるのは驚きでござる。
ここで、拙者はこの差がどう影響を及ぼすのか拙者なりに考察したでござる。少し長くなりまするが刮目して見よ!


著:(自称)忍術マスターシノビマン〜
《魔法についての見解》より抜粋
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:16:12.45 ID:73/7szOwO
はじめましての方ははじめまして。そうでない方はお久しぶり。千を超える魔法を極めた最強の魔法マスターマジックマンです。
今回は、緋桜郷と呼ばれる地域で何故か大流行している魔法モドキである忍術について独自の見解を交えて話していこうと思います。
つまらなさそうって思った奴は呪うから覚悟しとけよ。何食っても雑草の味しかしないようにしてやるからな。

ゴホン。魔法とは何か。それを説明しようとしたらそれはもうめんどくさいことになるのでそこから知りたいならまずフェルリティアで一年くらい勉強してきてください。
人の生活様式に地域差があるように、魔法の形式にも地域差があります。
解りやすいのは呪詛魔法とかですね。詠唱と触媒を併用するものもあれば、生贄一つで行使するものもあります。

先述した忍術はおそらく、緋桜郷で独自の進化を遂げた魔法だと思います。そうでないとやってられません。
どっちも魔力を使うし現象を起こしてますからね。
だからって、なんであんな痛々しいポーズを取るのか理解できませんが。頭の中が少年時代で止まった奴が考案したのか?

と愚にもつかない推測はさておき。魔法と忍術の明確な違いですが、魔法の方が才能による効果の差が顕著に出ることですね。
忍術の方はやり方さえ知っていれば、ある程度の効果は保証されます。才能絶無の子供がやっても、天才の大人がやっても最低限の効果はあるってわけです。
その分魔力を喰うのでお子ちゃまがやったら最悪死にますけど。
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:17:15.56 ID:73/7szOwO
それに対して、魔法の方は全然変わります。天と地ほどの差が出ます。
才能の欠片もない奴が火炎魔法を行使したところで、蝋燭の火くらいしか出ないんですよ。
同じやり方を私がしたら家が消し飛びます。たぶん。危ないからやったことないんで確証はないです。

ざっくりまとめると違いはこんな感じです。

魔法:魔力消費は魔法ごとに調節可能。威力や難易度も同時に変動する。才能があれば際限なしに性能強化。

忍術:魔力消費は忍術ごとに最低値のみ固定。威力や難易度は結ぶ印の数と魔力消費に依存。魔力量の才能のみが性能に影響を及ぼす。

まあこれは私なりの見解なので、絶対にこうだ間違いない、と保証はしてないです。クレームは受け付けないので悪しからず。

著:(自称)魔法マスターマジックマン
《忍術についての見解》より抜粋
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:18:02.80 ID:73/7szOwO
二つの本を読み終えたウィンディは人目も憚らずに嘆息した。書き手の個性が出過ぎている。
もっと簡潔に、詳細を書いてほしいのに、ござるだの呪うぞゴラだの余計なことが書かれていて読む気が失せていく。
意地で読了したが、何を書いていたのか半分くらい頭から抜け落ちてしまった。
今からもう一度読み直す気力も時間も価値も無いので、絶対にしないが。

「そろそろ時間ですよリヒトさん。早く外に出ましょう」

「…ああ」

入り口で突っ立っていたリヒトに声を掛ける。が、表情はあまり明るくなかった。
お目当ての本でも無かったのだろうか。

「どうしました?えっちな本でも探したけど見つからなかったんですか?」

「…違うが。ちょっと考え事をしてただけだ」

「なるほど。そういうことにしておきますね」

「だから違うって」

そんな他愛のない会話をして、二人は図書館を出る。
外に出ると、ハリゴーディンはチャカと共に大道芸をしていた。
何がどうしてそうなったのか。二人は考えるのをやめた。

ちなみに見物客は一人もいなかった。見るからに怪しいのだから当たり前である。
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/21(土) 23:19:03.80 ID:73/7szOwO
何をするかを↓1にどうぞ。
勇者の本は借りてるので読みたい時は行動として選んでください。
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/21(土) 23:48:17.98 ID:q0t0Tz6eO
武具屋を覗く

リヒトはともかくウィンディやマナはなんか食らったら即死しそうなので…
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 01:43:23.44 ID:gy4NW0jYO
続いて一行が向かったのは六番街。冒険者向けの店や宿屋が軒を連ねている宿場街だ。
武具店や道具屋の他、魔導具店といった便利アイテムも取り揃えているので、魔物と戦ったりダンジョンに潜ったりする前に品揃えを見ておいて損はない、とよく言われているらしい。
レムカーナ軍に随伴していた時は支給を受けていたリヒトには微塵も関係ない話ではあるが。

「へー。超硬質メタライトってこんなに高いんだな」

武具店にオーダーメイドしてもらう際に利用できる素材を興味本位で見ていたのだが、偶然ハリゴーディンの装甲材と同じ物を発見した。
値段は馬鹿みたいに高かった。これを採算度外視で大量に注ぎ込んだハリゴーディンの製作者はやはり頭がおかしい。
そんな高級品に自爆機能を盛り込んでいるのだから、一度死んで馬鹿を治した方がいいのではないか、と一瞬真面目に思ってしまった。
流石に失礼すぎたと自覚したため内心で謝罪するが、正直まともじゃないと誰に対してか分からない抗議をしておく。
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 01:44:39.84 ID:gy4NW0jYO
「武具店に何か注文するんです?」

「俺の分はするつもりはないが。君とかマナ用の防具くらいは作った方が良いと思ってな」

「戦わないので不要です。痛いのやです」

「どうせいっかいなぐられたらしぬからいらない」

「二人のへちょい耐久力だと流れ弾で死ぬリスクがあるから困ってるんだが」

無数の修羅場を経て鍛え上げられたリヒトと、そんな経験などしたことがない二人では肉対面の強さに圧倒的な差がある。
リヒトにとっては些細な怪我で済むようなダメージも、二人にとっては致命傷になり得るだろう。

妖精という種族である以上、マナの虚弱性は保証されている。これっぽっちも良くないことだが。
しかも、常人より遥かに小さな体躯をしたマナに合う防具などあるのだろうか。
そもそもそれを作ったとして、彼女が着込んでくれるだろうか。
反人工物ウーマンのマナが首を縦に振ってくれるイメージが湧かない。

ウィンディもウィンディで、魔法使いということは重装が難しい現実が立ち塞がっていた。
詳しい理由はリヒトには解らないが、鎧などの重装備をしていると、魔法の行使に悪影響を及ぼすらしい。
だからなのか、魔法使いは基本軽装だし、重装備をした戦士が魔法を行使する際は簡単なものに留めておくか、利用する武器などに触媒としての機能を持たせて、無理矢理性能を底上げして補っている。

リヒトの場合はかなりの特異ケースで、そもそもが軽装であるのに加えて、聖剣が触媒としての機能を勝手に果たしてくれるのでデタラメな魔法をポンポン放てたりする。
ガチガチに装備を固めるよりかは、軽装で素早く動いて魔法をぶっ放した方が戦果を挙げられるのだ。

「なんというか、世の不条理とか理不尽を感じますね」

「どういう意味だオイ」

遠い目をし始めたウィンディに抗議の視線を向けるも、乾いた笑いで黙殺されたリヒトだった。
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 01:47:20.82 ID:gy4NW0jYO
誰にどんな装備を買うかを↓2までどうぞ。一レスにつき一人です。現時点ではそこまで金が無いので贅沢はできません。
買わない選択肢もあります。



マナ 小盾とお子様用ヘルメット
ウィンディ 耐物ローブとお鍋の蓋
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 04:22:35.75 ID:HEQa7yoh0
ウィンディ 耐物ローブ
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 09:40:58.30 ID:6eQquFQIo
マナ 子天狗の葉団扇
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 17:57:27.06 ID:DtH6g9FEO
評判の良い武具店を調べ、店内を確認する。陳列されている物は全て規格品のようで、サイズ毎に分別して置かれている。
オーダーメイドも承っているらしく、現に今目の前で装備製作を依頼して去っていった冒険者がいた。

ふむ、と残金と必要な物について思考しつつ、リヒトは藍色のローブを手に取った。
商品の名前は『対物ローブ』。大仰な名前が付いているが立派な市販品であり、はっきり言って世界各地どこでも買える防具だ。

対物と聞くと、分厚い装甲をぶち破るようなパワーを持つイカレ武器ばっかり想像してしまうが、今回手に取ったものは対物理の意味合いを持つ。
斬撃。刺突。殴打といった物理的な攻撃にある程度の耐性を持たせた、魔法使い用の防具である。
ただの布に耐性を持たせるカラクリは、生地に編み込まれた魔法である。
この魔法が衝撃を和らげることによって、魔法使いが苦手とする物理的なダメージを軽減させているのだ。

一流の魔法使いともなれば、高級な素材を贅沢に使って物理、魔法、属性全てに強力な耐性を持たせた防具一式を揃えているのだが、悲しいことにそんな財力は存在しない。

効果が如何程なものか、ウィンディに試してもらう。おっかなびっくりといった様子で鉄の棒を握ったウィンディは、ローブ越しに木の板を叩いた。
カン、と軽い音を立てるが、木の板は割れることなくその形状を保持していた。
ローブを外してもう一度木の板を叩くが、今度は綺麗に割れた。

「おおー…」

なるほど。値段と性能のコスパを考えれば、これは買っておいて問題はなさそうだ。
とにかく安く、それでいてある程度の品質は保証されている。これだから市販品は普段使いにありがたい、とリヒトの口角が吊り上がった。
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 17:58:11.23 ID:DtH6g9FEO
さて、お次はマナの道具である。ウィンディにだけ買ってマナだけお預け、なんてことをして拗ねられると非常に困るのだ。
実際、マナはリヒトの肩に座っているのだが露骨に不機嫌になっている。
膨らんだ頬を押すと、ぽひゅー、と間抜けな音を出しながら空気が抜けていった。こうして見ると小動物のようで可愛らしいのだが。

適当に商品を見繕うも、マナはじっとりとした視線を向けてくるだけで評価は良くない。
やはり人工物はNGで、鉄製の道具など論外のようだ。
ならば、とリヒトが取り出したるは『子天狗の葉団扇』なる団扇。
こちらは名前の示す通り、子供の天狗がよく使う道具であり、葉っぱを束ねて作っているので自然に優しい。

秘めたる力はそよ風を生み出したりちょっとした加護を与えたり、と大したことないのが難点だが、子供用の物なので仕方ない。あとこれより大きかったらたぶんマナでは持てない。

マナの視線の温度が下がる。それでもめげずに団扇を押し付けると、渋々といった様子で受け取った。
マナ的には許容範囲ギリギリだったようだ。

お買い物を済ませたリヒトは店を出る。

「えー皆様に悲報があります。活動資金がそろそろ底を突きそうです」

そして、端的に破産一歩手前だと宣告した。
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 17:58:54.09 ID:DtH6g9FEO
「えー皆様に悲報があります。活動資金がそろそろ底を突きそうです」

何故こんな悲しい宣言をする羽目になったのか。理由は明白である。それは。

「ぎゃう?」

このかわいいペットを購入したからである。それ以外にも理由はあるが、直近でした買い物の中でぶっちぎりで金が飛んだのがこれなのだ。
アリフで親切な人からもらった宝石などを換金したっきりで、それ以降は特に収入もなく支出ばかりがあったのだから、寧ろよくここまで保たせたと自身の倹約ぶりを褒めちぎりたいくらいだ。
そんなことを考えながら、チャカの頭を撫でる。

「あれ?これもしかして私のせいです?」

「さて、どうでしょうね」

今までに何を買ったのか思い出していたのだろう。先の言葉を呟いたウィンディは冷や汗を掻いていた。

「どどどうしましょう私お金持ってないです働き方も知らないですごめんなさい後生ですから身売りだけは勘弁してくださいこんな貧相な身体じゃ変態しか寄りつかないです杖も売らないでくださいつまり私にお金を稼ぐ手段は無いってことですねつまりもう終わりですねはい!!!!!!!」

はいじゃないが。勝手にヒートアップして結論付けたぐるぐるお目目なウィンディちゃんに、リヒトは呆れながら手刀を振り下ろす。
額からぺち、という音が鳴る。相変わらずウィンディは目を回しながらあうあう言っていた。

「幸い、ここ緋桜郷は人も金も集まる場所だ。俺らでもやれる仕事はある。なんなら俺向けの仕事は絶対に仰山ある。そういうもんだ。ってわけで、君が身体を張って稼ぐ必要はたぶんないんじゃないかな」

そう告げるリヒトの言葉は言外に、荒事に首を突っ込む気満々であることを示していた。
残念ながらそこに気付けるほどウィンディは物騒な思考はしておらず、リヒトさんのえっちと的外れにも程がある返答が返ってきた。
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 17:59:42.24 ID:DtH6g9FEO
何をするかを↓1にどうぞ。
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 18:10:48.45 ID:fh0kr4a00
じゃあ仕事を求めて冒険者ギルドへ
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 19:20:13.95 ID:8fvpws2pO
そんな困ったウィンディちゃんを連れ、冒険者ギルドを訪ねる。
気のせいだろうか。ここまで大きな街に設置されているギルドなのに人が全然いない。
魔物退治なりキャラバン隊の護衛なりで人手が欲しいはずなのだが。

「冒険者ギルドにようこそー。依頼を受ける場合はそちらの掲示板で内容を確認するか、受付に直接お願いしまーす」

と、案内を受けて掲示板に目を通す。人が全然いない理由が解った。

「…しょっぺえー」

依頼内容がしょぼかった。それはもう目も当てられないくらいにしょぼい。
期待していたような高給与の依頼などは一切無く、建物の修繕や商店、茶店などのヘルプ募集といった雑用がほぼ全てである。
申し訳程度にある討伐依頼も、八番街に巣を作った人喰いネズミの処理といった簡単なものしかない。

ダンジョンで救援を求めてる人でもいないかな、と救援依頼もチェックするがそんな人はいなかった。そもそも誰も挑戦していない。

何故こんなことになっているのか。天下の冒険者ギルドがこんな体たらくでいいのか。
ちょっと桜花衆の頭領にクレームでも入れようかと思ったが、そこで一つの推論に思い至った。
ここ緋桜郷は享楽の郷。ある人は娯楽を求めて。ある人は疲れた心身を癒やしに。つまりは慰安のために訪れる郷だ。
なのに何故大変な思いをする必要があるのか、という話だ。遊びに来たのに命を懸けることはない。
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 19:20:56.22 ID:tD2VwJE1O
それに、緋桜郷は彼岸花 紅華が、桜花衆が統治している郷だ。自国の優先して解決すべき問題は、なるべく自力で解決しようとするはずだ。
桜花衆が処理するまでもない事案、または冒険者ギルドに委託しても良い事案のみが依頼として掲示されているのだろう。
よほど切羽詰まった事態でもなければ、冒険者ギルドに助力を乞うこともない。
それ以前にそんな事態が頻発していたら、とっくにこの郷の統治は破綻している。

以上の理由から、大したことない依頼しか掲示されていないのだと思われる。
なら仕方ない。クレームは取り下げよう。寛大な心を持つリヒトは冒険者ギルドを赦すことにした。

暇そうに談笑している職員を見るに、これが平常運転のようだ。平和でなによりだと、リヒトは小さく笑う。
そんなリヒトをよそにウィンディは図書館のアルバイト募集を受けようとしていた。
楽な方ばかり選んじゃダメよ、とその依頼を取り下げる。

杖で強めに叩かれた。
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 19:25:09.92 ID:tD2VwJE1O
何をするかを↓1にどうぞ。


A:簡単な依頼を受ける。誰がどんな内容のものを受けるかを例を参考に記載してください。戦闘系は無いです。
B:八番街の人喰いネズミ退治を受ける。
C:天守閣へ。
D:その他。自由安価。




リヒト 回復薬の販売員
ウィンディ 食堂の一日看板娘
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 19:36:49.24 ID:cS9ALRqCo
B
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 20:00:55.24 ID:9lBbC/Q/O
その後リヒトらが引き受けたのは、人喰いネズミの退治依頼。
人喰いネズミは人里にもよく出没する低級の魔物で、新米冒険者が経験を積むための練習台としても有名だ。
しかし、腐っても魔物。いくら低級といえども民間人を殺めるだけの力はあり、『人喰い』と付くだけあって人肉を好んで食す。
下水道などから侵入した人喰いネズミが巣を作り、子供が被害に遭うのはままあることであり、割と頻繁に冒険者ギルドではネズミ退治の依頼が出ている。

今回の依頼場所は八番街の水路。汚水が流れているわけではなく、緋桜郷全体に温泉を通すために張り巡らされた水路にどこからか入り込んだ人喰いネズミが巣食ってしまったらしい。
ギルドに流されたということは火急の要件ではない。もし被害者が続出していたら彼らが既に対応しているはずだ。
おそらく、周辺の地域にはネズミの巣に近づかないよう警告されているのだろう。それでも近づく命知らずの末路はお察しである。

「怖い〜…やだ〜…戦いたくないですぅ〜………」

「そう言うんじゃないよ」

イヤイヤ期に入って駄々をこねるウィンディの背中を押し前進する。道ゆく人の視線がとても痛い。

「ママー。あれなにー?」

「しっ。見ちゃいけませんよ」

邪険に扱われるのはとても辛いものだとリヒトは心中で涙を流す。何故こんな扱いをされにゃならんのだ。
愚痴を溢したくなるが今は我慢である。今はネズミを駆除して、近隣の安全を確保するのが優先だ。

「おうちかえる〜!いたいのやーだー!!!」

遂に幼児退行してしまったウィンディに痺れを切らし、リヒトはネズミの巣まで最短経路で突っ切る。八番街に少女の悲鳴がこだました。
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 20:04:35.74 ID:9lBbC/Q/O
人喰いネズミにどんな対処をするかを↓1にどうぞ。


人喰いネズミ

体長50cm程度のネズミ。肉食で特に人肉を好む。
不潔で臭い嫌な魔物であり、人喰いネズミの巣は汚すぎて誰も近寄らない。
戦法は集団でただ噛み付くだけ。知性の欠片もないが、数の暴力でゴリ押ししようとする。
魔物だがネズミの生態に近いので、放っておくと指数関数的に数が増える。
こいつの肉は何があっても食ったらダメ。
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 20:37:51.86 ID:ab97bn5A0
ウィンディに経験を積ませる意味も込めて囮にする
そして集まってきたところを一気に叩く
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 21:10:02.65 ID:IVtGeeOeO
人喰いネズミ駆除 判定↓1コンマ


01〜10:ウィンディ穀潰しの巻
11〜40:ウィンディなんとか最低限は頑張るの巻
41〜80:ウィンディ及第点の巻
81〜99:ウィンディ花丸の巻
00:???
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 21:16:20.62 ID:cS9ALRqCo
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 22:33:24.13 ID:tp+aQWywO
レムカーナにおけるスラム街である八番街。その中にある水路。そこには、薄汚れた獣が群れを成し、巣を作っていた。
汚物に塗れたそれはとても酷い悪臭を放ち、もはや物好き以外は誰も近寄らない禁足地となってしまっている。
そんなところに腐肉が転がっているのは何故なのか。誰も詮索しないししたがらない。
触らぬものには祟りなし。誰も好き好んで、嫌なものに関わりたくはないだろう。それで死んでしまっては、元も子もないのだから。

目的地が眼前に迫り、リヒトは顔を顰める。ウィンディは水路に向けてキラキラを放出した。
乙女への配慮として、その瞬間は見ないであげている。気を配るだけの余裕があることの証左でもあった。

「…臭い。これはちとキツいな」

「でっだい゛じま゛じょう゛ごの゛ま゛ま゛じゃじに゛ま゛ず」

「撤退は許可できん。あいつらは俺たちを獲物として見定めたからな。これで逃げたらこの薄汚いネズミが世に放たれるぞ」

泣き言を宣うウィンディを制し、視線を前に向けさせる。ギラリと光った無数の眼光が二人(と二匹と一機)を射抜いた。
チャカの優れた嗅覚にクリティカルヒットしたのだろう。完全にダウンしてしまっており、ハリゴーディンが抱っこしているのだがうんともすんとも言わない。
役に立つのはリヒトとウィンディだけだ。リヒト一人さえいればそれで充分なのだが。
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 22:34:11.96 ID:tp+aQWywO
とはいえ、こんな簡単な依頼を引き受けた理由は一つ。ウィンディに多少強引にでも経験を積ませるためだ。
イヤイヤ言ってばかりのウィンディに少しでも成功体験を積ませれば、自信を持ってくれるかもしれない。
この世界で生きるのであれば、戦わなければならない時はいずれやってくるのだ。たとえそれが、本人が厭う戦いだとしても。
その時にこの経験は役に立ってくれるはずだと、リヒトは大真面目に考えている。
戦いに摩耗したリヒトの精神は、どうしようもないほどに歪んでいた。

人喰いネズミの脅威度ははっきり言って低い。なりたてホヤホヤの新米冒険者でも、四人集まれば二十匹前後はやっつけられる。
回復薬などの入念な準備をしていたら、という但し書きが付くがまあ、才能のあるウィンディなら本気になれば五十は軽く殺せるだろう。リヒトの場合は言うまでもない。
そんな人喰いネズミの数は約四十前後。比較的大規模な群れになっているようだ。あと数日対処が遅れていたらどうなっていたのやら。
そんなことを考え、ウィンディの肩を叩く。あとは任せた、とキラリと光った笑顔とサムズアップを添えて。

「えっ?」

何事もぶっつけ本番あるのみ。リヒトはそう言って、ウィンディから距離を取る。
離れていくリヒトからネズミの巣に視線を向けると。

「ぴいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!?!?!!!」

腹を空かせた人喰いネズミの大行列が、ご飯(ウィンディ)目掛けて突撃していた。

ウィンディの初体験が今、始まる。
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/22(日) 22:34:55.83 ID:tp+aQWywO
これで今日は終わりです。
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 23:04:52.33 ID:cjsXtN93O
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 23:10:25.25 ID:6eQquFQIo

まあいざって時に身を守れないと実際ヤバい世界観だしね
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 23:18:58.23 ID:cS9ALRqCo
おつー
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:21:01.79 ID:72ANxGUSO
幽者の思いつきにより突如始まったスパルタトレーニング(ネズミ駆除大作戦)。
その参加者にして被害者の少女は、この状況にどう立ち向かうか。
幽者は後方にて高みの見物(物理)を決め込んでいるが、限界だと感じたらすぐに魔法をぶっ放すつもりでいる。
まあ、危なくなったらすぐお助け、と今後もしていたらやがて甘えが生まれて成長が見込めなくなるので、初回サービスみたいなものである。
つまり、今回だけは早めに助けるが今後はどうするか全く考えていないのである。行き当たりばったりにも程があった。

さて、ヒャッハァ!新鮮な餌だァ!と言わんばかりに押し寄せてくる人喰いネズミに対し、ウィンディが取った策は。

「風穿(エアロレイト)ッ!!!」

お得意の風魔法を使った迎撃戦法である。思い切りの良さは評価点だが、その戦法を使うには相手の物量が多すぎた。

練り上げられた魔力が風の矢となり、肉を穿ち骨を断つ。ベキ、グチ、と嫌な音が鳴る。
先頭を突っ走っていた一番槍に魔法が直撃。螺旋を描く空気の刃が全身を断裁し、肉と血を周囲にぶち撒けた。

しかし、それだけではネズミの侵攻は止まらない。たかが一匹仲間が死んだところで止まるわけがない。
今の彼らには獲物しか見えていない。今の彼らには腹を満たそうとする欲望しか存在しない。
仲間一匹が死んだからといって、何故躊躇う必要がある。どうせいくらでも産み落とす命。先行投資と思えば安いものだ。

「とは思ってねえか。所詮ネズミだ。ただ本能に突き動かされてるだけだろうな」
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:21:33.29 ID:72ANxGUSO
空中からウィンディの奮闘を俯瞰するリヒトは、そう溢して目を細める。
誰かに見られている。敵意の無い視線が全身に突き刺さっていた。
その大半は興味本位のものだ。おそらく周辺地域に住んでいる子供が、空に浮かんでいる自分をへんなのがいる!という感じで見ているのだろう。

だが一つ。たった一つだけ、全く毛色の異なる視線が混じっていた。
視線の大元に顔を向ける。遠く離れた家屋の屋根に、年若い青年が立っていた。この郷屈指のイケメン美人ロリボーイ珠樹くんである。
軽く会釈してみると、こちらに認識されたことに驚いたのか少しの間呆気に取られた表情をしていたが、すぐに表情を戻し、綺麗な敬礼を見せてくれた。

仕事熱心で熱意のある若者だと感心する。おそらく彼は、リヒトたちが依頼を受けたことを知り、各所の水門を閉じていたのだろう。
その仕事が終わったから、進捗確認や実力調査も含めて様子見しているのだと思われる。
水路脇で戦闘する以上、ネズミの死骸や血液が水路に混入するのは半ば確定している。
実際、派手にぶち撒けられたネズミの肉と血が水路を流れる温泉に現在進行形で混入している最中である。
なんなら少し前にウィンディが放出したキラキラが温泉に溶け込んでいるわけで。
こんなものが店の温泉に使われたら大惨事どころではない。この世の終わり、地獄の始まりである。
自分だったらそんな温泉に死んでも浸かりたくない。

そんな益体もないことを考えつつ、再度ウィンディに目を向けた。
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:22:22.54 ID:72ANxGUSO
同胞が一匹天に召したのを無視して、今日のご飯に向けて行軍する人喰いネズミたち。
それに対処すべく、ウィンディは次の魔法の準備を始める。

(私の考案した理論の検証用の魔法だからそんなに効果ないよね解ってましたー…!っていうか人とかに向けて撃ったことなかったから分からなかったけどエグい音出たしあのおっきなネズミがワンパンで死んじゃったしこれ絶対人に向けて撃っていいやつじゃない!!!)

つまり人に向けてはいけない魔法をボコスカ放つであろうリヒトには人の心が無い。
なんならこんな状況に有無を言わさずぶち込んでいる時点でド畜生であった。後でかの邪智暴虐の幽者を呪わねば。ウィンディは決意した。

構えた杖に魔力が集い、大気を震わせる。威力は下がってしまうが詠唱は省略し、魔法の行使だけを最優先とする。

「大嵐流(タービュストローム)!!!!!」

刹那、幾重にも重なった乱気流が、ウィンディの前方に発生した。
周辺への影響を防ぐために範囲は通路ギリギリに抑えているがその分、極小の乱気流を大量に発生させることで威力を補っている。
詠唱省略による威力の減衰は多少なりとも抑えられただろう。

先程の風穿とは比べ物にならない威力の暴力がネズミを襲う。一度乱気流の壁に入ったが最期、全方位から迫り来る風の刃によって細切れにされていった。
しかし、それでも突撃をやめないやめられない。
力押しのごり押ししか能の無いネズミには、どんな障壁が立ち塞がろうと齧り付いて突き破ることしかできないのだ。
806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:23:06.52 ID:72ANxGUSO
二十匹ほど仕留めた頃だろうか。風の威力が弱まり、遂にネズミが乱気流の壁を突き破る。
先に殉職したネズミの死骸が障害となり、空気の流れが弱まったのだ。彼らの死は無駄ではなかった。天国のネズミも喜んでいるだろう。

「お疲れさん。初陣でこれだけやれりゃ充分だよ」

障害を乗り越え、ネズミが獲物に喰らい付こうとしたまさにその時。
瞬きの間にウィンディの前方に移動した幽者は、右腕を突き出した。

「天喰らう白狼は遍く御魂を楽土に導く」

微かに耳に聞こえる魔法の詠唱。その優しい声色とは裏腹に研ぎ澄まされる魔力はあまりに冷たく。

「踊れ。天狼星(シリウス)」

産み落とされた白い狼は、真の捕食者がどちらか。哀れな生贄に現実を思い知らせた。
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:23:56.29 ID:72ANxGUSO
同刻。牡丹雪にて。

「本日はお越しいただきありがとうございました。またお客様が牡丹雪を訪ねられる日を、心よりお待ちしております」

客を見送り、息を吐く。雫が注いでくれたお茶を飲み、また息を漏らした。

「どったの女将さん。頭領の愚痴を聴きすぎて疲れちゃった?」

「紅ちゃんの愚痴は聴き慣れてるさ。この溜め息はそれとは別件だよ」

「…やっぱ、アレの件かな?」

コクリ、とお雪は頷く。何かを案じているように目は細まっており、表情は芳しくない。

「…まー、腹立つよね。わたしがあの店に入った時、はらわたが煮えくり返ったもん」

普段の明るい表情を隠し、冷徹な目を入り口に向ける。戸は閉められているので、客に見られる心配はない。

「霧香たちが先手を打ってくれたおかげで、奴らが逃げる前に店を取り潰すことができた。…他所からやってきた時点で探りを入れておくべきだったね」

「たらればを言ってもしょうがないよ。あの子たちの安全を確保できただけ良しとしましょ」

「…もう手遅れかもしれないけどね」

手元の書類に一瞬視線を移し、引き出しに戻す。物憂げな表情をした女性の絵が、名前の横に描かれていた。

「…毎度のことだけど、霧香には頭が上がらないよ。こんな役回りばかり任せて申し訳ない」

「んーにゃ。わたしは気にしてないよ。もう慣れたし、辞める気はないから」

「…ごめんね」

絞り出すようなお雪の謝罪に、霧香は気まずそうに腕を組む。柔らかい双丘が形を変え腕を包んだ。
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:24:27.04 ID:72ANxGUSO
万難を喰らい空へと還る白狼。後に残ったのは血痕だけだった。
こっそり左手に持っていた聖剣も虚空へ戻す。やはりこれがあるのと無いのでは魔法の性能が段違いである。

「………」

ウィンディの方を振り返ってみると、ものすごく不機嫌そうな顔をしていた。私怒ってます。プンプンです。とか言いそうだ。

「ずるです。魔法の勉強してないのにそんな魔法使えるのはどう考えてもずるですよ」

「んなこと言われても。理論とか全然分からないからフィーリングになるが使いたいなら教えるけど?」

「常識的に考えて私が光魔法を使えるわけないですよ。光と闇は希少なんですからね」

「そうなの?メリちゃん最かわ教の化け物どもはポンポン撃ってきてたが」

「それはそのメリちゃん最かわ教の人たちがおかしいだけです」

「そう言われると否定できんな。あいつら揃いも揃って英雄級だったしな…」

当時死闘を演じた猛者を追憶する。
一対一(サシ)で戦り合って辛うじて勝てるかどうかの相手が何人もいたのに、よくメリオゴストーグに一撃入れられたものだと当時の自分を手放しで褒め称えたい。
というか何故攻撃できたのか本当に解らない。同じことをもう一度やれと言われたら即座に首を斬るくらいには無理難題だった。

まあ、何はともあれ戦争は終わったし、今回の依頼も解決した。終わりよければ全てよし。
それでいいではないか、と投げやりになる。
戦うのは二度とごめんです。そんな怨嗟と実感の籠った嘆きが耳に聞こえたが気のせいだろう。
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/25(水) 23:25:59.00 ID:72ANxGUSO
何をするかを↓1にどうぞ。
行動時間はだいたいお昼時くらいの時間帯で、報酬金は自動で受け取ります。安い依頼なのでまだ贅沢はできません。
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/25(水) 23:55:51.00 ID:zFFuh7n8O
天守閣へ行ってみよう
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 00:42:46.99 ID:reUN9bHZO
「そこの旅行者、止まれーい!」

リヒトたちは天守閣の正門付近に来たところで足止めを食らう。まあそうなるだろうな、とは思っていたので、そこまで問題ではない。

しかし、相も変わらず荘厳な佇まいだと素直に感心する。ここまでの規模の城を建てるには、並大抵の時間と費用、労力を費やしただろうに。

目の前の現実から逃げ出していたら、足止めをしていた衛兵に詰問される。やれ旅行者が何の用だの招待も受けてないのに来ちゃダメだぞだのやかましい。
そんなマジレスや正論を聴くつもりはない。金だ。金がとにかく欲しいのだ。
だから仕事をくれ。くれないのならこっちから仕事を受けに行く。と抗議しようと思ったところで。

「どうした見張り番。そんなぎゃいぎゃい騒いでよ」

「ら、嵐月様!?」

男性が急に正門を開けて出てきた。着物を着ているのだが胸元はおっ広げられていて、素肌が丸出しで危険が危ない。ポロリしないか誠に心配である。
嵐月と呼ばれた男性は一瞬目を丸くし、ニヤリと笑った。

「誰かと思えば勇者様じゃねえか。あんたの武勇、俺も何度か耳にしたよ」

「勇者…?はっ!?つまり彼は、頭領に数日前に歓待を受けたあの…?」

「そういうことだ。そういや、お前はその時非番だったっけな。顔を知らないのも無理はないか」

「と、とんだご無礼を失礼しましたぁっ!!!」

「そんなビビられるとこっちが困るんだが」

もしや、魔族と見るや即攻撃するような蛮族に思われているのだろうか。
だとするならば抗議も辞さない。裁判に持ち込んで勝訴させてもらおう。
そんな意図を込めて視線を飛ばすと、露骨に怯えられた。

何故だか申し訳なくなった。
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 00:43:25.99 ID:reUN9bHZO
そんなこんなで天守閣の訪問は許可され、現在は嵐月の同行を受けながら天守閣内を歩いていた。

「案内感謝するよ。前にここに来た時は彼岸花さんのとこまで直行したからな、どこに何があるのかさっぱりなんだ」

「これくらい些事に過ぎん。感謝されても困るってもんだ」

雑談を交わす男連中の後を追い、ウィンディとハリゴーディンは進む。
ワイルドなイケメンの鬼さんでした。のちにウィンディは嵐月のことをそう語ったという。

「桜花衆用の依頼はここで受け付けてる。まあ、お前なら仕事しても問題ないだろ。頭にも俺から口添えしとくわ」

「どうも」

実力だけは買われているのか、特に文句は言われなかった。それだけ忙しいということもあるのだろうが、助かっているので何も言わないでおく。

「俺はこれから飲みに行くんでお別れだ。もし機会があれば、お手合わせ願うよ」

「…機会があれば、な」

カラ、コロ、と下駄を鳴らし嵐月は去っていく。
その足取りは悠然としていて、しかし荒々しかった。
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 00:49:10.85 ID:reUN9bHZO
何をするかを↓1にどうぞ。


A:盗賊殲滅の依頼を受ける。異常な強さの魔族がいるとの報告あり。
B:ドクロサムライ討伐の依頼を受ける。
C:大量発生した魔物の殲滅依頼を受ける。難易度はコンマで後ほど判定。
D:やっぱりやめる。
E:その他。自由安価。
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/26(木) 00:51:25.75 ID:nTuk9GSo0
C
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 01:04:37.63 ID:reUN9bHZO
魔物の強さ 判定↓1コンマ


01〜10:ブチギレイナズマミケネコの群れ。報酬金いっぱい。
11〜80:何故かやってきたアークミノタウロス先輩たち。報酬金そこそこ。
81〜99:シラヌイドリの大群。報酬金安め。
00:ヌ・レオン降臨
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/26(木) 01:16:33.66 ID:otnC0vlgo
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/26(木) 01:18:17.47 ID:reUN9bHZO
では本日はここまでです。↓1にウィンディやハリゴーディンたちを同行させるか記載してください。
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/26(木) 01:27:09.03 ID:vg/LAus8O
させない

819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/26(木) 12:10:54.48 ID:jy44QPP0o
おつおつ
リベンジと行こう
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:10:14.79 ID:FVTh8u9EO
「さて、どんな依頼があるのかなっと」

受付嬢に会釈して、依頼リストを確認させてもらう。掲示板方式ではないのはギルドはないからなのかもしれない。

候補は主に三つ。一つ目はどこの街でもターゲットに挙げられる傍迷惑な存在である盗賊の殲滅。
どうやら今回の盗賊団はそんじょそこらのものとは格が違うようだ。
緋桜郷へ向かうキャラバン隊を二つ、緋桜郷から出発したキャラバン隊を一つ壊滅させ、討伐部隊を二度も撃退しているとの報告が上がっている。
それでいて盗賊団の規模が小さいため現在の所在もおおよそでしか分からない、ともはやお手上げ状態とも言える。
大規模な盗賊団であれば、拠点も相応の規模を必要とするので強襲作戦などの策を取れたのだろうが。

二つ目はドクロサムライの討伐。亡霊と成り果てた将軍が、罪なき人々を手に掛ける。
そのような悲劇を終わらせたいのだろう。依頼としてリストに載っているのはそういうことだ。
とはいえ、かなり腕が立つ魔物であることも事実。生半可な強さでは返り討ちに遭う上、生息地にさえ近づかなければ脅威たりえないので後回しにされているようだ。
その間一人寂しく歌っているドクロサムライ将軍がかわいそうでならない。
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:11:14.33 ID:FVTh8u9EO
三つ目はどこからともなく現れたアークミノタウロスの大群の撃滅である。
どこまで行っても邪魔してくるのか、とリヒトは苦い顔をした。
この中で一番優先すべきなのはこの依頼だろう。
盗賊は今のところキャラバンを襲っているだけだし、ドクロサムライは近づかなければセーフである。
しかし、このミノタウロス軍団は違う。こいつらは人肉の味を知った途端にアグレッシブになる。
依頼が出ている以上、世界各地から人の集うここ緋桜郷を狙って侵攻していると見て間違いない。
放っておいても桜花衆が死に物狂いで防衛に当たるだろうが、先手を打っておいて損はないはずだ。

そして、蓮武との模擬戦を経て痛感した。自分はどうしようもないほどに鈍っていると。
根本的な実力差があったのでその時は誤魔化せたが、今冷静に思い返すとちょっと真面目に笑えないレベルでひどい動きをしていた。
身体も、太刀筋も、判断も、感覚も。その全てが衰えていた。
戦争が終わってからは全力を出す機会が無くなったので当然のことではあるのだが、鈍ったことを実感したのなら放置するつもりはない。

戦争が終わり、聖女を喪い、過去を否定され、その果てに貪った怠惰な生活の代償がシルヴィアとの死別。
主因ではなくとも、遠因ではあるのは確定的に明らかだ。
冥光に頼った途端に、アークミノタウロスを跡形も無く消し去った事実が何よりの証拠である。
あの時、当時の二割ほどの輝きを取り戻していたなら、苦戦することもなかったはずだ。

「…リベンジ戦といかせてもらうか」

一線から退き、ぬるま湯に浸かっていたが故に鈍った身体を鍛え直すため。そして何より冥光に頼らず過去を越えるため。
リヒトは一人、過去(トラウマ)と戦うことを決意した。
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:12:13.10 ID:FVTh8u9EO
太陽が沈み、月が顔を見せる。風が吹く夜の草原の中にただ一人、幽者が座していた。

「…ついて来なくていいと言ったはずだがな」

「しるう゛ぃあはいつもりひとのそばにいた。…わたしはしるう゛ぃあにたすけられた」

「だから、わたしもいっしょにいる。それだけ」

リヒトの肩に座り、淡々と喋るマナ。いつになく雄弁であり、いつもより距離が近い。
具体的には、身体一つ分近づいている。いつもは肩幅ギリギリに座っているのだが、今は耳元に寄り添っていた。

「…殺し合うのを観ても、面白くないぞ?」

きにしない、とマナは告げ、首元に手を添える。力が漲った気がした。

「気持ちはありがたいが今回だけは手助け干渉一切無用、だ。俺一人の力で終わらせなきゃ、意味がない」

「…うん…」

躊躇いつつも、マナは手を離す。そして、定位置であるフードに潜り込んだ。
リヒトは瞑目し、暗闇の中で微かに煌めく光に身を委ねる。聖剣の輝きが増し、光が溢れ出した。

幾度となく味わった喪失の痛み。その度に心は渇き、今では涙すら流れなくなった。

幾度となく奪ってきた命。満たされる度に心は渇き、次なる贄を求め飢えていた。

この渇きを。飢えを。空っぽの心を満たしてくれるのは戦いだけだ。
幾多の離別と闘争の果てに心身に刻まれた闘争への渇望はもはや宿痾に等しく。
ただただ、戦う時を待ち望んでいた。
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:12:48.64 ID:FVTh8u9EO
地を揺らす地響きが近づいてくる。閉じていた目を開けると、地を埋め尽くす怪物の群れがそこに。
各々が携えた得物は全て異なり同じものは二つとないが、血に染まり錆びついているのは共通している。

それでこそだと心が躍り、口元は歪な弧を描く。弱者を甚振っても意味はない。強者と戦い捩じ伏せることに意味がある。
ただならぬ気迫を纏っているからさぞかし強いのだろう。手に持つ大斧の血錆が、修羅場を潜ってきたことを物語っている。

相手にとって不足はなし。足りないものを敢えて挙げるならば。
絶対的な強者と相対した時に感じる死の予感だけだ。

ふう、と小さく息を吐き、聖剣を空へ掲げる。軽く手首を捻ると、極大の閃光が空に放たれ、夜を照らす。

「…悪いが、あんたらの鏖殺を仰せつかったんでな。ここから先には誰も行かさないし、誰も逃さない」

空へと連なる光の柱が漆黒の天蓋を打ち砕く。数瞬遅れて光が弾け飛び、地表に降り注いだ。
凄まじい衝撃が大地を揺らし、眩い光が戦場を照らす。
夜に咲く緋桜と同等の長大さを誇る無数の光剣が、リヒトたちを囲うようにして突き立てられる。
その根本、柄から上に向けては十字架が伸び、左右に繋がっている。
何も知らぬ者が見たら天変地異かと見紛うほどに大規模の結界が作り出された。
誰一人として逃さないという決意表明であり。部外者の乱入を許さないという拒絶。
言葉を知らずとも理解したのか、アークミノタウロスの間にも剣呑な空気が広がる。

結界を展開した時に、事前に告知しておけばよかったと後悔するも後の祭り。
何か言われた時は、素直に謝罪すればいいだろう。

そんなことを一瞬考えたが何はともあれ。

時は満ち、舞台は整い、役者は揃った。今、過去との訣別の儀を始めよう。

天を劈く怒号と空間を縫う閃光が、戦いの始まりを告げた。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/01/27(金) 20:14:54.36 ID:FVTh8u9EO
VSアークミノタウロス軍団 判定↓1コンマ


01〜05:リヒト負傷
01〜15:膠着状態
16〜35:半数殲滅
36〜70:全滅 ある程度当時の実力を取り戻します
71〜99:全滅 当時と遜色ない実力に戻ります
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