【咲-saki-安価】京太郎「朝の光〜」 咲優和久まこ「眩しくて!」【艦これ要素】

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505 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 00:56:32.00 ID:iFhmxVoCo
こんばんわ
明日に続きを投下する予定です。
お楽しみに

>>504
そりゃもう、放置プレイに決まってますよ
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/31(水) 00:58:18.73 ID:YPwqUZjlO
安価スレと書いてるけど実質コンマスレだよな
安価ねえし
507 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 01:04:51.08 ID:iFhmxVoCo
>>506
立てた当初は安価とコンマを使う予定だったんですが…
いつの間にかほとんど使わなくなってしまったんですよ…

ややこしいなら新スレ立ててタイトルから【安価】抜いたほうがいい?
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/31(水) 01:45:43.48 ID:uPvdC2HRO
安価とらないんなら抜いてもいいんじゃない?
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/08/31(水) 18:29:05.79 ID:qO7hM75N0
どうするかは埋まってからで良いのじゃね。
510 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 23:12:07.49 ID:iFhmxVoCo
もう少ししたら投下します!
511 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 23:27:18.63 ID:iFhmxVoCo


パパパパー パパパパー パパパパッパパッパパー

シュッコウヨーイ!!


鎮守府の青く澄んだ空に高らかに出港ラッパが鳴り響く。
それと同時に妖精さんの掛け声がかかり、艦娘たちが背負った艤装の主機の音がより大きくなる。。
第1、第2、第3、第5、第6、第7番バースからゆっくりと動き出す艦娘たち。
古鷹を機関に据え、大井、鬼怒、春雨、雷、電を僚艦とした水雷戦隊が航行序列を整えつつ外洋に向かう。
鬼怒が隊列からはみ出したり、速度を合わせられずにアタフタしているが、まあ仕方ないと言える。
彼女はつい先日戦線に加わった新人なのだから。

そんな艦隊を埠頭から見送る複数の人影がある。
2人は軍帽を振る… いわゆる帽振れで見送り、残りの8人は手を振って見送っている。
その見送りは艦隊が水平線の向こうに沈むまでつづけられた。


「行きよったのォ… チャンピ… 鬼怒は大丈夫じゃろうか?」

「まあ、重巡1、軽巡2、駆逐3の水雷戦隊で5名はそこそこ手練れだからなぁ… 少なくとも鎮守府正面海域で手古摺ることは無いはずだ」

「たしかのそうじゃのォ」


京太郎とまこが見送りながら話をしている。
その会話の途中でまこがクククっと急に笑い出し、京太郎が不思議な顔をする。


「…どうしたんだ浦風、いきなり笑いだしたりして」

「なに、つい先日までわしに敬語、ちょっと前はしどろもどろなタメ口で話ちょったのに、今はずいぶん慣れたもんじゃなっとおもっての」


そう言って再び含み笑いをするまこ。
それを京太郎は苦笑して「4ヶ月もたてば流石になれるさ」っと返す。
そんな会話を楽しそう視する2人を見つめるのは煌、憧、佳織、智葉、恭子、塞、白望、小蒔の8人。
顔には何とも言えない表情が張り付いている。


「さて、それじゃ執務に戻るか。皆さんも、今朝渡した地図の立ち入り禁止区域以外なら何処でも自由に過ごしていいですよ」

「あ、ああ… ありがとう… 安心してくれ、言いつけは守る」

「それと、滅多にないと思いますが警報が出た場合は直ぐに防空壕に避難してくださいね」


クルリと回れ右をして智葉たちに声を掛ける京太郎。
どもりながら返事をするのは智葉、どうやらまだ軍人モード(久命名)の京太郎に慣れないようだ。
返事を聞いて京太郎はニッと笑いながら色気のある挙手礼をする。
同じく隣でまこも挙手礼。


「で、提督。昨日抱いた鬼怒の具合はどうじゃった?」

「…いきなり下世話だなぁ、おい… オッサンみたいだぞ浦風」

「何とでも言いんさい。棒姉妹のことが気になるのはおかしいん?」


和気藹々と表現するにはちょっとアレな話題ではあるが、仲良さげに会話しながら鎮守府の本部等に向かって歩く京太郎とまこ。
2人のあとを智葉達8人が追いかけていく。
さわやかな海風が、朝の軍港を吹き抜けた。
512 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 23:27:47.96 ID:iFhmxVoCo

さて、鎮守府の提督の仕事は多い。
艦隊司令部への報告書や兵站関係の要求書。
鎮守府内の資材管理はもちろんのこと、各種問題が発生したときの専門機関への依頼等々。
変わったところでは、各地方自治体の要望陳述や漁協への深海棲艦の活動予測・予報の提供等がある。
そして、一番重要なことであるが艦娘の管理・ケア。
これらを毎日こなさなければならないのだからかなりの激務だ。
つい先日まで清澄鎮守府は提督1人に艦娘6人体制、当然、艦隊を出動させれば秘書艦も出撃してしまう…
そして、執務机に積みあがる書類は提督1人でこなせる量ではない。

で、何が言いたいのかと言うと…


「浦風、ここからここまでの書類は秘書艦裁量で決済できるから片付けといて」

「ほい、了解じゃ」

「あと、艦隊司令部への報告は3日後だからその旨をボードに書いといて」

「わかった」

「うーん、大分片付いたぞ… 休憩するか、浦風ー、お茶淹れて」

「はい、おつかれさん」


昨日、照が鬼怒として艦隊に参加したので、艦隊出撃中でも秘書艦が鎮守府にとどまることが出来る。
これがどのくらい喜ばしいかと言うと、京太郎がもろ手を挙げて万歳三唱をするくらいだ。
秘書艦が居るだけで仕事の効率は倍以上に跳ね上がる。
地味に重要なことだ。


「しかし… 宮永照が艦娘になることを即断しよったのは予想できんかった…」

「…まぁ、咲と同じくらい長い付き合いだから…」

「妹と幼馴染じゃけぇ、その姉とももちろんっちゅう訳けェ」

「仲は良かったと思う… でも、いきなり抱いてとはな…」


小休止にお茶と間宮羊羹を楽しみつつ雑談をする2人。
話題は咲の姉、照のことだ。
こっちに飛ばされた日に三つ指ついて京太郎に挨拶、そして艦娘になることを二つ返事で了承。
全く迷うそぶりのない即断即決のお手本だった。

京太郎自身、照と仲がいいのは理解していたが、まさかエッチOKなほど好意を持たれているとは予想外だった。
実は京太郎は忘れているが本当に幼い時にこんな会話がった。

「京ちゃん、結婚しよう」

「照ちゃん、結婚て大人のモノだよ」

「じゃあ、大人になったら結婚しよう!」

「うーん… うん、いいよ」

「約束だよ! 絶対だからね!」

微笑ましい子供同士のじゃれ合いだ。
この後、照が約束のしるしとして何かを欲しがったので、京太郎が100円のおもちゃの指輪を上げている。
ここで終われば本当に微笑ましい子供時代のエピソードで終わったのだが…
この約束、今でも照は覚えていて成就させる気満々なのだ。
白糸台の部活でも「将来を約束した人がいる」と言って地味に話題になっていたりする。
こんなことが背景にあったので、『艦娘になる=京太郎とのエッチ必須』と言うのは彼女にとって渡りに船。
答えは『はい』か『イエス』の二択である。
513 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 23:28:14.68 ID:iFhmxVoCo


「…まぁ、わし等の取り決めに従っちょるんなら文句は言えん」

「仲良く頼むぜ… 他の鎮守府だと修羅場で死人が出るなんとこともあるらしいからな…」


京太郎の麾下の艦娘になるにあたってまこ達はいくつかの取り決めをしている。
1つ、京太郎ノ独占ヲ禁ズ
1つ、京太郎ノ負担ニ成ルコトヲシナイ
1つ、艦娘同士ノ仲ヲ良好ニ保ツヨウニ務メルコト
1つ、京太郎ノ求メニハ原則応ジルコト
他にもいくつかあるのだが、主なものはこの4つ。
基本的な考えは、京太郎を平等にシェアしよう、節度モラルをもって仲良くしよう、修羅場は回避しようと言う淑女協定だ。

因みに、複数の艦娘と肉体関係を持つという提督の仕事柄、鎮守府の修羅場の発生率は決して低くはない。
これ、実に大きな問題なのだ。
後方から艦隊に指令を出し、艦娘とエッチして、書類を書くだけ…
これで提督の仕事の9割を締めるので、なんとも楽な仕事と思われるだろう。
しかし、提督の戦死・殉職・離職率、意外に高い。
年に3〜4人は死んでおり、その何倍もの離職者が居る。
その原因を高い順に上げると…

一位:シュラバヤ沖海戦(痴情の縺れ)48%
二位:アンアンキシムサウンド=ベッドウエー海戦(腹上死・腎虚)40%
三位:深海棲艦の襲撃10%
四位:その他2%

となる。
艦娘と言えど、元は適正を持っていただけの普通の少女たちだ。
当然、そのような複数の少女たちと肉体関係を持つのだから上手に立ち回らないと嫉妬による泥沼の関係が発生する。
言い争いや、鎮守府の雰囲気が悪くなるくらいならまだ良い、最悪の場合は刃傷沙汰に発展し死傷者が出る。
この修羅場の発生率が原因で、40年ほど前には男子のなりたい職業ベスト5に入っていた提督と言う職業、いまやワースト3にランクインしている。
艦隊司令部、海軍省、大本営もこの問題には頭を痛めているが、如何せん根本的な解決策は見つかっていない。
提督の成り手が無ければシーレーンは深海棲艦によってズタズタにされ、日本の存続すら危うくなる。
その故、提督の適性を持つ男子が見つかれば陸海空軍、学校、地方公共団体が一丸となって入隊の説得にあたるというのが年度末の風物詩だ。
説得される方の男子にとってはいい迷惑である。

まぁ、長々と説明したが…
ようは京太郎たちは上手くやっているということだ。
京太郎のコミュ力と咲たち艦娘の協力があってこその円滑な鎮守府運営である。


「さて… 小休止はここまでにして残りの仕事を片付けるぞ!」

「了解じゃ!」
514 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 23:28:40.79 ID:iFhmxVoCo

その後、サクサクと仕事を進め、執務机に山と積まれていた書類も日が傾くころには綺麗に無くなった。
執務終了時刻まではまだ間があるが、今日の業務は終わりにすると決めた京太郎。
まこと再びお茶を嗜んでいた。
2人でまったりとしていたところ、執務室の扉がコンコンっとノックされる。


「はい、どうぞ」

「須賀君、すまんな。お邪魔する」


京太郎の返事とともに入ってきたのは智葉、小蒔、塞の3人。


「で、3人そろって何の用じゃ?」

「ちょっと、相談しなければいけないことがあってな」

「ふむ… まぁ取りあえずソファに掛けてください」


そう言って新調されたばっかりの高級ソファに座るよう勧める京太郎。
先日の新規組自由落下事件で破壊された執務室と娯楽室であるが…
妖精さんの不思議パワーで一晩のうちに直っていた。
内装の家具なんかは、艦隊司令部に連絡するとその日のうちに届く始末。
因みに予算は司令部持ちで、京太郎たちの懐は一切痛まなかった。


「で、相談とは…」

「まぁ、まずはこの札を見てくれ」

「…なんじゃ? このぶち古そうなお札は?」

「それは霧島神境に代々伝わる念話符です。持っている人同士なら念話で意思疎通が出来ます」

「それはまた… 何ともオカルトチックな…」

「そういうなら須賀君たちが異世界に飛ばされていることも十分オカルトチックだと思うわよ?」


渡された念話符をしげしげと見つつ、飛び出してきたオカルト話に苦笑を浮かべる司令官・京太郎。
尤も塞に突っ込まれてさらに苦笑が深くなったのだが。


「で、わりゃら、こんなもんわしらに見せて何がしたいんじゃ?」

「元の世界に居るだろう皆に、私たちと君たちの現状を伝えたい」

「それに清澄の皆さんのご両親にも無事を伝える必要があると思います」

「…なるほど… その念話符の使用許可と、伝えるべき情報の取捨選択が相談の内容ですか…」

「そうなんだけど… 察しが良すぎない? 須賀君」


智葉と小蒔の言葉を聞いて凡その相談内容にあたりをつけた京太郎。
ほぼ正解を言い当てていて、その読みの鋭さに塞が呆れた顔をする。
515 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 23:29:07.61 ID:iFhmxVoCo

全ての情報を伝えないのは、情報過多になって相手方が混乱しないようにとの配慮と…
異世界とはいえ軍事情報が含まれているので、機密漏えいを起こさないための配慮である。
この辺のことを察した彼女たち、結構優秀である。


「まあ、基本的に軍事情報と言っても漏れて痛いものは少ないですね」

「じゃけど、擦り合わせは必要じゃな。あと、アレだけは伝えられたらあずるけぇ…」

「確かに… 一撃轟沈防止処置は知られたら困るな…」

「心配しなくても、それを伝える気はないわよ…」


腕を組み、情報の内容を頭に浮かべる京太郎。
特に困る情報は無いが、一撃轟沈防止処置だけは例外だ。
正直、元の世界の人間にこれが知られたら気まずいどころの話ではない。
と言うか各々の両親に知られたら…
考えたくもない事態である。


「…一度、全員で話す必要があるな…」

「そうじゃの… しかし暫くは出撃や出張の予定がつまっちょるぞ」


ペラペラと予定表を見ながら相談する京太郎とまこ。


「…よし、ここだな… 10日後の土曜日、この日なら全員非番にしても大丈夫だ」

「そうじゃの」

「と言うことで… 辻垣内さん、臼澤さん、神代さん、10日後の土曜日に16人全員そろって話し合ってから、その念話符を使用する。それでいいですか?」

「結構時間が空くが、まぁ、仕方ないだろう。了解した」

「でも、向こうから念話があった場合はどうするの?」

「その時はさらっと概要を伝えるだけ、後日、詳しい情報を教えると伝えてください」

「仕方ないですね」


こうして後日、元の世界との情報のやり取りを行うことになった。
取りあえずその日まで、智葉たちには艦これ世界の常識とか情報とかを学んでもらうことにした京太郎。
テレビの視聴は許可を出すだけでよかったが、書籍、雑誌の購入手配で仕事が僅かばかり増えることになった。

話は変わるが、出撃していた艦隊は無事に日が落ちる前に無事帰投した。
重巡1、軽巡2、駆逐3と言うフル編成の水雷戦隊。
駆逐イ級をタコ殴り、3隻編成の深海棲艦水雷戦隊に圧勝して帰ってきた。
ダメージもカスダメのみと言う結果で、照の初陣としては大成功だろう。
そして帰投した艦隊にも10日後の件が伝えられ、その日までに各々が何を伝え何を伝えないかを考えておくことになった。
516 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/08/31(水) 23:31:32.34 ID:iFhmxVoCo
今夜は以上です!
提督の皆々様は夏イベお疲れでした。
…結局>>1はアクィラとニムを掘り当てることが出来ずじまいで凹んでます…

新スレにして【安価】をタイトルから抜くのはもう少し考えてみようと思います。
それでは次回までしばしお待ちを


感想、意見等大歓迎です!
どんどん書いてください
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 00:30:58.43 ID:CoZGEt1ho

タイトル云々はこのスレが終わって次スレ立てる時でいいのよ
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/09/01(木) 08:01:49.72 ID:rnMwrq3AO
乙です。
>>511で『機関』となってますが『旗艦』だと思います。
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/09/04(日) 10:43:09.41 ID:CVxUtrrDO
久しぶりに来たら大分更新されてた乙
…俺もどっちも出なかったよ、次頑張ろう…
520 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/09/10(土) 21:13:58.03 ID:hQdwlYv1o
お久しぶりです
ちょっと研究が忙しくて、筆を執る時間がないのが何とも…
ちょっと間が空くと思いますが、お待ちください
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 11:02:36.56 ID:ghBJc5Quo
乙乙
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/09/15(木) 08:19:02.54 ID:VtfOUpRnO
【名前】 秋田 美羽 あきたみう
【性別】 女
【容姿】 長身だが胸はそんなにない
【性格】 常に余裕ぶっており超然としている
【学年】 2年
【高校】 清澄
【特記】観察力が強く相手の考えを予測できる
523 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/10/16(日) 23:46:10.76 ID:QpRvoW3Co
お久しぶりです
リアルが忙しすぎてほとんど手がついていない現状…
誠に申し訳ない
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 23:47:34.93 ID:6xo9NH2io
続ける意思があるなら気にせんよ
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/20(木) 22:09:44.71 ID:LG+TaQuo0
まあ、ここの1は1-3ヶ月、間を開けることが何回かあったが、それでも続いているから、そういう意味では安心
526 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:31:27.04 ID:e29i8VVho
凄まじくお久しぶりです。
最新話を投下するのでご笑納ください。
527 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:31:53.50 ID:e29i8VVho


智葉達が艦これ世界に飛ばされてから十数日後…
鎮守府の大会議室に16人が集まっていた。


「さて、向こうに伝える情報はこんな感じかな?」


議長役の須賀京太郎提督が皆の顔を見渡して発言する。
ここ数日、何人か手隙のメンバーで討議を重ねていたのも功を奏し、かなり分かりやすい感じで情報がまとまった。
伝える事柄が多すぎず、少なすぎずイイ感じで、これをまとめたメンバーの能力の高さがうかがえる。


「よし! それじゃあ元の世界と連絡を取ろう」

「あっ… でもこの札ってどうやって使うんですか?」


京太郎の音頭で早速始めようと言った時に佳織がふと疑問を挟む。
因みに彼女、二晩グッスリ寝たら憑き物が落ちたかのように元の性格に戻っていた。


「それはですね… 送信側は左右どちらでもいいので耳に符を当てて、目を閉じて…」


小蒔が懇切丁寧に念話符の使い方を説明する。
まぁ、とりあえず元の世界との連絡の準備が整ったのだ。
これでこちら側の現状を伝えることが出来るし、帰還の方法も分かるかもしれない。
何より突然異世界に飛ばされて2か月…
心配している親たちに無事を伝えることが出来る。
色々な期待を載せて、世界を越えた通信が今始まる。




528 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:32:19.77 ID:e29i8VVho


変わって、清澄高校の麻雀部部室。
何処から調達したのか部屋のど真ん中にチークで出来た高級そうな円卓がドデンと据えられていた。
その周りを囲むように座るのは久たちを救出する目的で集まった麻雀インハイ出場校の面々。
物々しい雰囲気の中、議長役の透華が口を開く。


「…2日前の爆発で辻垣内さん、臼澤さん、小瀬川さん、神代さん、宮永さん、花田さん、妹尾さん、、末原さん、新子さんが行方不明とは…」

「それにけが人が数人出てしまいましたわ…」


まるで自分を責めるかのように声を絞り出す。


「一番の重症がハギヨシさんの大腿骨と上腕骨の骨折… それ以外はかすり傷程度の軽傷なのが救いと言ったら救いかな…」


透華のセリフに一が補足する。
透華がチラッと後ろを振り返るとそこには右足と右手にギプスを着けて車いすに座ったハギヨシが居た。
なお、ハギヨシがこんな状態なので給仕その他は純と歩が代理で頑張っている。
ハギヨシ以外のけが人もいたのだが、一の言う通り包帯こそ巻いているが、一週間のうちに完治する擦り傷ばかりである。


「…私を爆発から庇ったばかりに… ハギヨシ、申し訳ありませんわ」

「頭を上げてください、お嬢様。執事として当然のことをしたまでです。むしろ職務を全うできずに申し訳ありません」


出来た主従である。
そのまま謝罪合戦になりそうな透華とハギヨシ、一が止めなければそのままお互い謝り続けていただろう。


「で、どうするのよー?」

「9人も一気に行方不明になるなんて流石に予想外やからなー… 親御さんには連絡したん?」

「ええ、それはもちろん… 気が重かったですがしないわけにはいきませんし」

「龍門淵さんに全部押し付けた様で申し訳ないねぇ」

「お気になさらないでください、まあ、全員、理解のある親御さんで助かりましたが…」


現状確認のための雑談だが、9人が新たに神隠しに遭って事態は更に悪化したと言えよう。
考えれば考えるほど頭を抱えたくなる事態だ。
なにせ神隠しに遭ったメンツの共通点と言えばインハイ出場経験…
いや、京太郎も入れれば全く共通点が見いだせない。


「はぁ、どないすればいいんや…」


絹が頭を抱えてため息を吐いたとき、突然それは来た。
ピーンと言うかキーンと言うか何かがつながったような感覚が頭の中に感じられる。
それは絹だけでなくこの場にいる全員が感じたらしく、見渡せば誰も彼もがキョロキョロと周りを見渡している。
例外は永水女子のメンバーだけで…


「来ました! 符を使った念話です!!」


それは待ちに待った小蒔たちからの通信に間違いなかった。
その声を聴いた皆は、事前のレクチャー道理に符を耳に当てだした。


「もしもし! 小蒔ちゃん!?」


大慌てで小蒔に語りかける霞さんじゅうはっさい。
が、帰ってきた返事は…

『モシモシ、カスミチャン!?』

「ファッ!?!?」


まるでビデオを倍速回しにした、もしくはターンテーブルのスピードを思いっきり速くしたような声が聞こえる。
早すぎて内容が聞き取れないくらいに…


「小蒔ちゃん! 早口じゃなくてゆっくりしゃべって!!」


529 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:32:46.88 ID:e29i8VVho

一方、その頃の清澄鎮守府
小蒔を始めとした後から転移してきたメンツが念話符を耳に当て元の世界との交信を行っている。


「何だか異様な光景ね… お札をを耳に当てて…」


久の言葉に首を縦に振る京太郎たち。
年頃の女の子たちがそろいもそろって耳にお札を当てている…
どこの新興宗教だと問いたくなる光景である。


「来ました!」


そう小蒔が声を上げたとき、念話を試みているメンツは頭の中に何処からともなく声が聞こえるような感覚を覚える。
が、聞こえてきたのは…


『モーーーーーーシーーーーーーモーーーーーーーシーーーーーーーー… コーーーーマーーーーキーーーーチーーャーーーンーーーーーー……』

「ファァアアッ!?!?!?」


ビデオの超スロー再生のようなド低音の不気味な音声だった…


「何この声!?」

「おい、神代! 念話符の声ってこういう風に聞こえるものなのか!?」


混乱する念話符メンツ。
一番混乱しているのは小蒔だったりする。


「いえ… 普通に聞こえるはずなんですが… もしもし!霞ちゃん!?」


智葉の質問に否定の返事を返しつつ、呼びかける小蒔。
が、またしても帰ってきたのは…


『コーーーーマーーーーキーーーーチーーャーーーンーーーーーー…… ハーーーーヤーーーークーーーーチーーージーーャーーーーナーーーークーーーーテーーーー… ユーーーッークーーーーリーーーーシーーャーーーベーーーッーーテーーーーーー……』


またもや超スローのド低音。


「もう! 霞ちゃん! もっと早くしゃべって!!」


ちょっと苛立ちつつ、早くしゃべる様に早口でまくしたてる小蒔だった。

530 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:34:48.68 ID:e29i8VVho


一方、その頃の清澄高校麻雀部部室では、聞こえてくる念話がどんどん早くなっていて、耳を澄まさないとキュルキュルとしか聞こえなくなってきていることに霞が苛立ち始めていた。


「小ーまーきーちゃん! もーっとーゆーっくーりー、しゃーべーってー!」


すこし間延びした声で額に青筋を浮かべながら交信する霞。
さて、賢明な読者諸兄は何が起こっているのかもうお分かりかと思う。


何故か清澄高校側では超早送り、清澄鎮守府側では超スローで聞こえる
            ↓
清澄鎮守府側が早くしゃべる様に早口で伝える
            ↓
高校側がより早送りで聞こえるため、ゆっくりしゃべる様にゆっくりした口調で伝える
            ↓
鎮守府側ではさらにスローで聞こえ、早くしゃべる様にさらに早口で伝える
            ↓
高校側ではさらにさらに早送りで聞こえ、以下無限ループ


こんな状況に陥ってるのだ。
で、念話符を耳に当てている面々。
高校側の全員と、鎮守府側の後から転移したメンツはお互いのその意思疎通のすれ違いにヒートアップしている。
清澄鎮守府の会議室で小蒔たちの念話を見ている京太郎たち。
冷静に… と言うか何が起こっているのかよく分からないので傾げている。


「一体どうなっているんですかね?」

「…さあ、全くわからんわ…」


頸を傾げるまこと京太郎。
ところどころの発言内容で向こうの声がスローで聞こえることは把握している。
さらに向こうはゆっくりしゃべる様に要求しているらしいことも漏れ聞こえる発言から推測出来る。
ここで、理系の和があることに気づいた。


「…もしかして、元の世界とこの世界では時間の流れが違うのかもしれませんね…」

「どういうことなのです?」

「向こうの世界でこちらの声が早く聞こえて、こちらの世界であちらの声がスローで聞こえることもこれで説明が付きますから…」


そう言って電の疑問に説明で答える和。
たとえに出したのはビデオだ。


「ビデオの早回しとスローで考えると分かりやすいのですが… 早回しにすると声が早く聞こえますよね?」

「そうだけど… それがどうしたの?」

「例えばですよ、ビデオを5倍速で5分間再生するとビデオの中の時間は25分経つことになります」

「でも、見ている私たちの時間は5分間のまま変わることはありません」

「ふんふん」

「なるほど、逆で5倍スローの場合は5分間私たちが視聴したとしても、ビデオの中では1分しか経っていない」

「その通りです。倍率は分かりませんが向こうの声がゆっくり聞こえるこちら側は時間が速く流れて…」

「こっちの声が早く聞こえる向こう側はゆっくりと流れているわけね…」

「おそらく」


中々の洞察力である。
取り合えず、この推測を紙に書いて頭に血が上っている小蒔たちに渡すことにした京太郎一行。
このメモを見て何が起こってるのか小蒔たちもようやく把握した。
531 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:35:17.47 ID:e29i8VVho

で、改めて意思疎通を図るのだが、やはり中々もどかしいものがある。
それでも粘り強くお互いの情報を交換していく。
途中で京太郎たちがストップウォッチを持ち出し、時間の流れの倍率の割り出しにかかる。


「うーん… 誤差が酷いけど… 凡そ4〜6倍こっちの時間は早く流れているか…」

「まぁ、正確な倍率を出したからと言って意味は少ないんだけどね」

「しかし… これはこれでメリットもあるし、デメリットもあるのォ…」

「じぇ?」

「…ゆーき、分かってます?」

「じぇんじぇん」


頭の上にクエスチョンマークが見て取れそうな表情の優希に、和が呆れながら説明を始める。


「この場合、メリットは私たちの帰還が多少遅れたとしても向こうではあまり時間が経っていないことです」

「まぁ、4倍だと仮定すると20ヶ月… こっちで2年以内に帰ることが出来れば向こうでは年度内に帰れるわ」

「デメリットですけど… 元の世界の人よりも歳をとることですね」

「まぁのぉ… 向こうで1年たったとして… 級友が1年しか年取っていないのにワシらは4年歳をとる計算じゃからのォ」

「それは… なるべく避けたいじぇ…」

「染谷先輩と部長、20歳過ぎて高校生することになりますもんね…」

「咲、俺らも19歳で高校生だぞ? その場合…」


ゲンナリした表情で予測される未来を語る京太郎たち。
帰るなら早く帰る算段を付けた方がいい、下手すると自分たちと世界とのギャップに悩むことになる。
本格的に帰る手段が見つかるのが遅くなったらこの世界に骨を埋める… そんな考えが皆の頭をよぎる。


「まぁ、とりあえず麻雀牌を手に入れることに集中しよう…」

「須賀君の言うとおりですね、木を使って自作してみましたけど… 牌が不揃いすぎてゲームになりませんでしたし…」


実は以前に、木や竹を使って麻雀牌の自作を試みていた。
しかし、結果は大失敗…
形や大きさは不揃いなうえ、木目なんかで使っているうちにどの牌か判別できてしまうのだ。
ナチュラルにガン牌が出来るのではゲームにならない。
ユリア樹脂の入手も考えてみたが…
制海権を深海棲艦に握られているので物資についてはある程度の統制が行われているのがこの艦これ世界だ。
不足しているほどではないが、充分とも言い難い。
なのでユリア樹脂どころか、プラ系の材料は入手が不可能だった。
まぁ、仮に手に入れられたとしても加工法が分からないのでどのみち無理なのだが…
結論として、戦果を挙げて褒賞の麻雀牌を手に入れるしかなかった。


「そもそもなんで麻雀牌が超貴重品になるのよ…」


久が天井を見上げて嘆く。

532 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:35:43.83 ID:e29i8VVho

「ん? なんか焦げ臭くないか?」


京太郎が異臭がすると言い出した。
その声に反応してクンクンと鼻を鳴らす咲、和、久、まこ、優希。
言われ見れば何かが焦げるにおいが微かにする。


「おい、浦風! 給湯室!!」

「そげなバカな! 元栓は締めたはず!!」


京太郎が言うと、まこは慌てて給湯室に掛けていく。


「給湯室は大丈夫じゃ!」


暫くしてまこから給湯室に異常はないと報告が上がる。
じゃあこの異臭はどこから!?
そういって原因を探そうとする咲たち。
結論から言うとすぐに見つかった。


「ねぇ提督… 私の目が確かなら… 神代さんたちが使ってるお札全部から煙が上がってるんだけど…」

「安心しろ大井… 俺にもそう見える…」


清澄メンバーの目に映ったのは小蒔たちが使っている念話符の端から上がる黒い煙…
当の小蒔たちは念話でのやり取りに夢中で全く気が付いていない。
京太郎たちが慌てて知らせようとしたその刹那。
533 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:36:09.95 ID:e29i8VVho

パァァアアアアン!!


控えめな爆音を轟かせながら念話符が爆発した。
音の大きさは癇癪玉より少し大きい程度で、京太郎たちはビックリするだけで済んだ。
問題は小蒔たちである。
念話符を持っていた全員が、念話の為に符を耳に当てていたのだ。
耳の直近で癇癪玉を上回る破裂音。
同然耳に大ダメージ… 下手すれば鼓膜破裂で失聴だ。


「んぉぉおおおおおお!!!」

「すばら! スバラ! すばらぁぁああああ!!!」

「きゃだぁああえあえあえ!!」

「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」?!?!}」


案の定、爆音と耳に走る激痛でパニックになって床を転げまわる念話組。
と言うか早く医者に連れて行かなければ取り返しがつかなくなる恐れがある。


「医者! 医者を呼んで!!」


咲が叫ぶが、そこで京太郎が追加の指示を出す。


「医者もだけど、ウェットドックの用意を急げ!! 艦娘の適性があればドックを使えば傷を治すことができるはずだ!! バケツの使用も許可する!!」

「はわわ! 了解なのです!!」

「取りあえず、ドックで治るか試みろ! そっちの方が医者を呼ぶより早い!」

「合点じゃ!」

「和は万が一の時に備えて医者を連れてこい! ドックで治っていた場合にも一応診察してもらう!」

「はい!」

「事態は一分一秒を争う! かかれぇぇぇえッ!!」

「「「よーそろー!!」」」


京太郎の機転ですぐに露天風呂(ウェットドック)に放り込まれた念話組、狙い通りバケツを投入後すぐに回復し後遺症等の心配はないとのことだった。
一方、元の世界では清澄の部室に集っていた面子も念話符が爆発し大ダメージを受けていた。
小蒔たちからの情報を紙に書いてまとめていたハギヨシが無事だったため病院に直行することができ、こちらも後遺症が出なかったのが不幸中の幸いだった。
534 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/11/12(土) 21:37:37.16 ID:e29i8VVho
はい、本日の投下は以上です
リアルが忙しい + WoWSにハマってしまい時間が取れずにこんなに遅く・・・
申し訳ありませんでしたm(_ _)m

次回の投下もお楽しみに!
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 21:44:11.47 ID:QONKLRbQo
乙です
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 22:27:50.20 ID:/fTrvhtx0
乙です!
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/11/12(土) 23:41:05.14 ID:jFRJUGrP0
乙です
オカルト的な物だし深海棲艦から強奪した物(他の姫と楽しむ為に持っていたほっぽは奪われ涙する)じゃないと効果が無いのかもしれないが、注文生産で職人さんに作って貰えば十万単位の高価な物になるかも知れないけど、ガン牌出来ない精度の製品を作ってくれそう。
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 23:44:41.36 ID:6A7jXwEm0
乙!
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/13(日) 08:41:19.08 ID:xM/cE1eN0
そういや、原作だと一応あったけどこっちではどうなんだっけ?
家具の雀卓
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/13(日) 16:20:03.24 ID:vDI+t54Eo
家具職人が必要=貴重品って感じなんじゃないの
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/14(月) 22:25:12.46 ID:duE53SLO0
乙でした
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/11/16(水) 23:15:00.70 ID:mrripxAg0
雀卓は独特なシルエットの某軽空母のあの人に代わりを務めて貰おう。
もしくは夜戦明けでフラフラのメンバーの誰かが彼女を見て良からぬ妄想をするとか。
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/07(水) 18:01:29.83 ID:mtWkQG+30
544 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/12/14(水) 22:00:36.67 ID:9h70ajrZo
お久しぶりです。
RJいじめは止めるんだ!

という事で新話投下していきます
545 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/12/14(水) 22:01:46.46 ID:9h70ajrZo



「重巡り級を旗艦とした敵水雷戦隊見ゆ! 全艦、単縦陣!」


水平線に幽かに艦影を認めた咲は手持ちの双眼鏡で艦種の識別を行う。
その艦影が深海棲艦だと確認すると旗艦の咲が凛々しく号令を発する。
間髪入れず、残りの五人は警戒航行序列を解き、見事な単縦陣に移行する。


「左舷、砲雷撃戦、用意!」

「私、砲雷撃戦って聞くと…燃えちゃいます。」

「ってー!!」

「陣形を保ちつつ、臨機応変に、行くよ!」

「なのです!」

「砲雷撃戦、開始じゃ!」


それぞれが掛け声を掛けながら敵艦隊へ接近していく。
そして始まる砲撃戦。
砲弾の着弾による水柱が白く立ち上り、両艦隊が砲弾を打ち出す爆煙が黒く漲る。
砲弾の雨を潜りながら更に艦隊間の距離が縮まり魚雷の射程内に入る。
水雷戦隊の本領、雷撃戦の開始である。


「雷撃戦… 開始!!」


咲の号令とともに一斉に魚雷が海に放たれる。
敵艦隊も魚雷を撃ったのか、自分たちに向かって真っすぐに伸びてくる白線が青い海にはっきりと見える。


「各艦、回避!」




546 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/12/14(水) 22:02:54.05 ID:9h70ajrZo




場所は変わって清澄鎮守府の執務室。
本日の秘書艦は駆逐艦『春雨』こと和だ。
京太郎の執務机と直角になる様に配置された秘書艦用の机で、書類のチェックと秘書艦権限で出来る決済をこなしている。
提督の裁可が必要な書類は手を伸ばせば届く提督の机の上に置く。
京太郎と和、二人とも黙々と手を動かし書類をさばいていく。


「うーん… ここらで休憩を入れるか、春雨」

「はい、提督」


ぐいーっと背を伸ばしつつ休憩の宣言をする京太郎。
2時間は机に齧りついていたので集中力が切れてきたのだ。
答えた和は直ぐにペンを置き、給湯室に入ってお茶の準備を始める。
頭の中を空っぽにしてボーっと机の上に飾られた写真を眺める京太郎。
現在の清澄鎮守府に所属する艦娘7人と京太郎が写った写真だ。
写真を眺めつつ…


「やっぱり和の胸ってデカいよなァ…」


健全な15歳男子なのだから仕方は無いのだが、今考える事かと問いたい。
写真に写った和の姿。
白露型特有の黒のセーラー服を押し上げてその存在感を存分に主張する和の両胸。
駆逐艦『春雨』は小ぶりな胸の艦娘が多い中、和のKカップは尋常ではない。
駆逐艦でこれに匹敵する艦と言えば『潮』『浦風』『浜風』など数えるほどしかいないだろう。
駆逐艦のおっぱいビッグセブンの一角に食い込む和の胸恐るべしと言ったところか。


「須賀君、お茶入りましたよ」


そう言ってお盆に大きめの湯飲み2つを載せて運んでくる和。
どうやら今日のお茶請けのお菓子は間宮羊羹らしい。
湯飲みと一緒に乗っているお皿の上の羊羹に視線を走らせた後、チラッと和の巨乳に目が向いてしまう。
意外とこういうチラ見は目の動きからバレてしまう事が多い。
清澄高校にいたころの乙女な和なら、顔を少し赤くし、両手で胸を隠すような仕草と非難するような目線を向けてくるのが常だったが、此処にいるのは女になった和である。
クスッと微笑を浮かべ、湯飲みとお皿を机に置き…


「須賀君、意外とそれ分かるんですよ」


余裕綽々と言った様子で一言いい、あまつさえ京太郎の腕に抱きつくくらいのことは平気でするようになった。
ナチュラルに「当ててんのよ」を… いや、この場合は完全に意図的にやっている。
スキンシップと自身のセックスアピールは欠かさないらしい。
因みに、京太郎以外の男が和の胸をチラ見した場合、ゴミを見るような目で非難の視線を向けてくる。
どうやら和の中では、自分の体は京太郎の所有物で京太郎専用という意識があるらしい。


「ハハハ、ごめんごめん今度からは分からないように上手くやるさ」

「そこでやめると言わないんですね」


対する京太郎も慣れたもので軽く流す。
既に肌を重ねて、お互いの恥ずかしいところの隅々まで見せ合った仲である。今更照れるのもバカらしいのだろう。
しばし休憩して英気を養った後、書類との格闘を再開する2人。
やはり人手が倍になると効率がいいのか、見る見るうちに書類は減っていく。
547 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/12/14(水) 22:03:20.41 ID:9h70ajrZo

「よし! 本日のお勤め終了!」

「提督、お疲れ様です」


処理すべき書類がすべて片付いたら京太郎が業務は終わりと宣言する。
同時に和は艦隊司令部へ発送する書類の発送手続きに鎮守府の隣にある陸軍の出張所へ向かった。

基本、どんな国でも陸軍と海軍の仲は悪いものだ。
あのアメリカでさえ予算や権限の奪い合いで陸と海の間に深海よりも深い溝が存在した。
だが深海棲艦が猛威を振るっているこの世界、資源を輸入に頼る日本にとってシーレンの防衛はまさに死活問題… いや、国家存亡にかかわる問題である。
そんな状況において陸軍と海軍で仲違いなど出来るはずがない。
陸軍にとっても消費する資源が入ってこなければ困るのだ。
そのシーレンの防衛を一身に背負っているのは海軍と艦娘、陸軍としても両者を応援こそすれ敵視する理由はほとんどなかった。

海軍が深海棲艦との戦いに専念できるよう、日本国内の陸上にかかわる事は全て陸軍が引き受けている。
海軍の公文書・機密文書の輸送についても陸軍が請け負っており、両軍の間には完全な信頼関係が成立していた。
…もっとも、見目麗しい娘が多い艦娘にかっこいいところを見せたいという、泥臭い陸軍の男の下心も見え隠れしているのだが…

そんな背景があるので、全ての鎮守府に小さいながらも陸軍の出張所が併設されているのだ。
此処には憲兵もおり、なにか騒動があった時に鎮守府の治安維持や警備に出てくることもある。


「うーん… コーヒーでも入れるかな? でも給湯室に俺が入ると皆がうるさいし…」


突如、コーヒーが飲みたくなった京太郎。
給湯室に淹れに行くかと思ったが、途中でやめた。
艦娘の皆の間で給湯室は秘書艦の聖域とされ、それ以外が入ることはタブーになっている。
こうなった理由は、一日中書類漬になる京太郎に雑事をさせたくないという可愛い理由だった。
提督自室にもサイフォンやティーセットがあるが、京太郎はまだ日が出ているうちに自室に行くことはほとんどしない。
日の高いうちから自室とかヒッキーみたいと言う理由らしい。

そんなこんなで少し手持ち無沙汰な京太郎。
ボーっと壁に掛けられた時計を見ていると、コンコンと扉がノックされた。


「はい、どうぞ」
548 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/12/14(水) 22:03:53.99 ID:9h70ajrZo

「お邪魔します」


そう言って入ってきたのは智葉をはじめとした後期転移組。


「どうしたんです、皆さん揃って? 何か不都合でも?」

「いやなに、扉の横のサインプレートが【執務終了】【在室】になってたのでな。世間話でもと皆で来たんだ」


京太郎の疑問に、智葉が代表して答える。
どうやら彼女、後期転移組のリーダに収まったようだ。
皆に席を勧めて、京太郎は給湯室に向かう。
来客があるのにお茶すら出さないのは流石に無礼だし、何より自分もコーヒーが飲みたい。
咲達に何か言われても作戦の高度で柔軟な運用だと押し切る気満々である。


「どうぞ、男手のコーヒーだけど」


そう言って人数分のコーヒーを出す京太郎。
ちなみに京太郎、ハギヨシに色々教わっているので紅茶やコーヒーを入れる腕前はそこらの喫茶店よりも良かったりする。


「すばらな味です! それにしても突然押しかけて迷惑ではなかったですか?」


コーヒーを一口飲みその香り高い苦みを堪能した煌が旨いと褒める。
そして突然の訪問で迷惑を掛けていないか聞いてくる。


「大丈夫ですよ、すでに今日のノルマは終えましたし… あとは出撃している艦隊の帰還を待つだけですから」

「ずいぶん手際がいいわね… どんな手品なの?」

「どんな手品って… 憧、こっちに飛ばされて数ヶ月経ってるんだ、流石に書類仕事にも慣れるさ」


コーヒーを啜りながら他愛もない話をする面々。
そんな中、戻ってきた和がノックもそこそこに執務室に入ってくる。


「あれ、皆さんいらっしゃってるんですね」


智葉達9人を見てそう発言する和。
彼女らの手元にコーヒーカップがあることを見て京太郎が給湯室に入ったことも瞬時に察している。
まぁ、来客なのだから仕方がないが…
やはり秘書艦の聖域を犯されたことはお気に召さないのかちょっと膨れっ面になる。


「須賀君… 給湯室は秘書艦の管轄ですよ…」

「ハハハ、いや済まない。だがこれは高度で政治的かつ戦略的な作戦の柔軟な運用だ。許してくれ」

549 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/12/14(水) 22:04:20.14 ID:9h70ajrZo


一応は勤務時間なのだが、先ほど勤務終了を京太郎が宣言していたので提督に対する艦娘の口調ではなく同級生に対する口調になっていた。
和の可愛い抗議に笑いながらユーモアを交えて良いわけをする京太郎。
予想通りの返答なので和は軽くため息をついて、お代わりのコーヒーの準備をするべく給湯室に姿を消す。
その2人の慣れたやり取りを見て大阪出身の逸般人の恭子が一言。


「なんや2人のやり取り。妙に慣れてるというか自然体と言うか… 夫婦見たいやな」


その後、和を世間話を交えて世間話で盛り上がる。
こんな他愛のない会話でもお互いの人間性はよくわかるものだ。
智葉達にしても京太郎は悪い奴じゃないと解っていても、こうやって交流を持たないことには実感は出来ない。
そう、須賀京太郎という男子をもっと理解するためにあえて彼女たちはこうやって押しかけたのだ。
京太郎たちの方もそれは重々承知の上で、いらぬ不和を産まないためにもこう言ったやり取りは大切にするようにしている。
そして交流を重ねるごとに京太郎との距離は確実に縮まっている。
この鎮守府に飛ばされた時は、軽蔑と侮蔑の色が混じった目線を向けていたことを考えると驚きの進歩である。
咲や和、他4名の様子を見ていても京太郎が女の子を無下に扱う下種ではないことは一目瞭然だし、その心にある思いはホンモノだと実感できる。
それどころか、真剣に執務に取り組み、艦娘のことを考えてあらゆる手を打つ姿を見ていて、そんな男の子に大切に扱われたいと思うのが乙女心だろうか。
何人かは無意識に京太郎に想いを寄せ始めていたりする。


「そろそろ艦隊の帰投予定時間か…」


そう言ってカップのコーヒーを飲み干し腰を上げる京太郎。
執務室を出て、埠頭まで艦隊の出迎えに向かった。

日が水平線に近づき、徐々に空が茜色に染まりつつある。
埠頭では程よい海風が吹き抜け、潮の香りが心地よい。


「もうそろそろ見えるはずなんだがな…」


そう言いながら双眼鏡で水平線を見渡す京太郎。
傍には和や智葉達も同じように双眼鏡を覗いている。


「ねぇ、須賀君。水平線の向こうってことは結構距離があるんじゃ…」


京太郎にそう聴く佳織。
まぁ、水平線の彼方と言うのは結構遠距離と思うのが普通ではあるのだが…


「そう思うでしょ、妹尾先輩。実は水平線までの距離って4kmくらいなんですよ」

「嘘!?」


長野住まいの彼女にとって海はある種の憧れがあったのだろう。
水平線の彼方と言うのは未知なる世界と同じような感覚だったのだが、歩いて僅か1時間ほどの距離だと聞いて目を丸くしていた。
実はこの事実、京太郎たちもこっちの世界に来てから知った事実だったりする。


「まぁ、観測する高度によって水平線までの距離は変わるんですけどね… と、見えました。艦隊が帰ってきましたよ」


水平線にポツポツと6つの黒い影が浮かび上がる。
双眼鏡で見ると咲たち艦娘艦隊だとはっきり分かった。


「速度はおよそ半速(9ノット)程ですね、だとすると20分ほどで接岸ですね、提督」


和がざっと暗算で到着時までの時間をはじき出す。
京太郎も同じ計算だったらしく、うんうんと頷いていた。

550 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/12/14(水) 22:05:01.47 ID:9h70ajrZo


「艦隊戻りました!」

きっちり20分後には埠頭に出撃していた6人の姿があった。
旗艦を任されていた咲の号令で京太郎に対して一斉に海軍式の敬礼。
それに京太郎が答礼し簡単な報告を受ける。
詳細な報告は後程書類でなされるので本当に簡単なものだ。


「中破1名、小破2名。海域の攻略は成功しました!」

「ご苦労様。小破以上は直ぐにドックに入って傷を癒すこと。古鷹、あとで報告を頼むぞ」


そんなやり取りで解散を命じる京太郎。
心の中で誰一人欠けなかったことに安堵していた。
いくら昨日の夜に轟沈防止処置をしていたとしても行く先は戦場…
何があるかは分からないのだから。

解散の命が下りたら思い思いに過ごしていいと決めてあったが…
ほぼ全員の行動は一致している。
必ず決まって京太郎の周りにたむろするのだ。


「お・ま・え・ら! 戯れは良いから損傷してるやつは早くドックへ行ってこい!!」


埠頭に京太郎の叫びが木霊した。
551 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2016/12/14(水) 22:06:14.12 ID:9h70ajrZo
という事で今回の投下はここまで

最近やたら文章がくどくなったような気がするんだが…
なんでだろうか?

感想意見等募集中
どんどん書いてください
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/14(水) 23:36:53.83 ID:qzUjAgNoo
乙ー
後発組との個別のエピソードなんかも
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 14:38:25.11 ID:2RszVSPIo
乙です
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/12/15(木) 23:03:51.07 ID:sbeYlrxf0
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/16(金) 06:43:43.56 ID:YyNDs1Ew0
乙!
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2016/12/21(水) 22:18:42.78 ID:avbVq3r50
ほっぽ「マージャンナイ…カエレ!!(麻雀卓を背中で隠し威嚇)」
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/04(水) 18:41:22.52 ID:RYgl/4lH0
舞ってる
558 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/01/09(月) 23:06:16.78 ID:aFjHf5OBo
お久しぶりです。
リアルが忙しいもので時間が空いてしまい申し訳ないです。
559 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/01/09(月) 23:07:04.84 ID:aFjHf5OBo
長野にあるとある喫茶店、扉には『本日臨時休業』の札が掛かっている。
その扉の前に若々しい女性の姿がある。
女性は何のためらいもなく扉を押して店の中に入っていく。
店の中には大体同じ年代の女性が13名、一つの大きなテーブルを囲っていた。


「皆、遅くなってごめんなさい!」

「大丈夫よ愛子、皆さっき来たばっかりだし…… 約束の時間までまだあるから」


店の中に入ってきたのは須賀愛子、京太郎の母親である。


「明子、久しぶりね。仕事で忙しいって聞いたけど?」

「ええもう本当に! 今日は有給を使ったのよ」


もう一人の女性は原村明子、和の母親だ。
どうやらこの2人、結構親しい知り合いのようである。


「愛子さん、何か飲まれますか?」

「ありがとう夕子ちゃん、紅茶お願いできる?」

「はい」


愛子に注文を伺いに来たのは染谷夕子、お察しの通りまこの母親で、この喫茶店の名前は『roof-top』。
まこの実家である。


「愛子、とりあえず座ったら? 一服して話を始めましょう」

「そうね…… そうさせてもらうわ」


愛子が席に着くとすかさず夕子が紅茶を持ってくる。
560 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/01/09(月) 23:07:31.38 ID:aFjHf5OBo

「あら、良い香り」

「今年採れたダージリンですよ」


紅茶の良い香りを堪能しつつ、慣れた手つきで茶を喫する愛子。
ほどなくしてカップを置くと徐に口を開く。


「今回のことは本当に御免なさいね…… ウチの息子のトラブルに大切な皆の娘を巻き込んでしまって……」

「何を言ってるんや、愛子はん。大切な子供に一大事が起きたんはそっちも同じやんか」


いきなり愛子が謝罪の言葉を口にする。
実はここに集っているのは清澄高校の麻雀部部室で神隠しに合ったメンバーの母親たちである。
ここで出席者を整理しておこう。
京太郎の母親の愛子、和の母親の明子、まこの母親の夕子の三人はご存じのとおり。
残りの面子を紹介しよう。
残りの清澄メンバーの母親は片岡天美、宮永雪子、竹井亜矢乃。
清澄以外のメンバーの母親は花田千歳、新子和江、妹尾汐依、小瀬川響、臼澤陸奥美、辻垣内朝子、神代霧江、末原龍江である。


「そうですよ。こんな事態、誰も予測できませんよ」

「そうそう」

「まぁ、責任の追及のしようもないですし、前向きに解決策を考える方が健康的ですよ」

「あらあら」


愛子の謝罪に帰ってきた言葉は何とも思いやりと理解のありすぎる言葉である。
と言うかこの母親ズ、妙に親しげで何とも言えない和やかな雰囲気だ。
大事な子供たちが神隠しに合ったというのにこののほほんとした空気はいったい何なのだろうか……


「相変わらずマイペースなようで、気ィ使いやな…… 愛宕」


そんな中、龍江が特大の爆弾を放り投げた。
京太郎の母親の正体をいきなり当ててきたのだ。


「フフフ…… もう四十を超えたけど人の本質って変わらないものね、龍驤」

「ハッ、そうそう性格が変わるわけないで」


さり気に愛子の発言も爆弾だ。
末原龍江、御年49歳。
その正体は元軽空母艦娘の龍驤である。


「須賀海軍特務大将を慕ってこちらの世界に来て…… 28年経ちますか、月日の流れるのは早いものですね」

「でも皆若々しいですよ、艦娘だったころとあまり変わってないですから」


何と驚いたことに、『roof-top』に集った14人の母親、全員元艦娘である。

561 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/01/09(月) 23:07:59.25 ID:aFjHf5OBo

………………………
………………
………
562 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/01/09(月) 23:08:29.67 ID:aFjHf5OBo

「じゃ愛宕、須賀家の方で持ってる情報を教えて。私の方でも独自に情報を集めてるけど…… 貴女のところが一番詳しいと思うの」

「分かってるわ明石。『須賀家異世界見聞録』の抜粋と要約を持ってきたわ」

「ウチ等も子供たちから拾える情報は拾ってきたで」

「これだけ揃えば何とか解決策が見つかるかもしれませんね」

「そうだといいんだがな……」


場を仕切りなおして本来の目的の情報の交換を始める元艦娘の母親達。
ちなみに皆の経歴は……

元重巡艦娘『愛宕』の須賀愛子、優希の母親の片岡天美は軽巡艦娘『天龍』、咲照姉妹の母親の宮永雪子は駆逐艦娘『雪風』、原村明子は工作艦娘『明石』である。
和の機械好きは血筋だったようだ、なぜか法曹界で職を得ているのかは謎である。
『roof-top』の名物女将の染谷夕子は元駆逐艦娘『夕雲』、竹井亜矢乃は軽巡艦娘『矢矧』、水上機母艦娘『千歳』だった花田千歳。
此処に集った面子は千歳の娘の煌が大酒呑みになるだろうと予想している。

新子和江、元戦艦艦娘『大和』、妹尾汐依は潜水艦娘の『伊401』である。
小瀬川響、名前そのまま元駆逐艦娘『響』で、臼沢陸奥美は戦艦艦娘『陸奥』、こちらも名前そのままである。
辻垣内朝子は駆逐艦娘『朝潮』、まじめ一辺倒の彼女は現在警察官をやっている。
小蒔の母親の神代霧江は戦艦艦娘『霧島』、霧島神境に嫁いだのも何となく納得である。
大阪住まいの末原龍江は軽空母艦娘『龍驤』、こちらも大阪住まいは納得である。


「うーん…… 竜門淵の御嬢さんによると艦これ?世界に飛ばされたってことらしいけど……」

「艦これって、あのMNB.comの『艦隊これくしょん』ですよね? あれには驚かされました」


明石の言葉に朝潮が反応する。
そう、件の『艦隊これくしょん』の世界観は彼女たちが住んでいた世界と本当によく似ているのだ。

563 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/01/09(月) 23:08:56.19 ID:aFjHf5OBo


「本当に驚きましたね。と言うか絶対私たちの世界から転移してきた人が開発に加わってるって思っちゃいました……」

「事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだよね」

「まぁ、それは置いておくとして…… 帰ってくる方法が皆目見当がつかないとは……」


大和、汐依、矢矧が眉間に皺を寄せながら言う。


「まぁ私たちの子供達だからね、無事に帰ってくるとは思うよ」

「あらあら、娘を随分信頼してるのね? 響」

「普段は怠い怠いって言ってるけど…… やる時はやる娘だからね」

「それに向こうに飛ばされたのは私たちの娘さ、生存率10%と言われたアイアンボトムサウンドすら生き抜いた私たちの血を分けた娘たちだよ、これくらいは切り抜けられるさ」

「確かに私たちの娘ならそれ位は切り抜けて欲しい所ね」

「そして司令官は須賀海軍大将と愛宕さんの息子、絶対に戻ってこれるさ」


響、陸奥、霧島が会話する。
響は娘、と言うか皆を信頼しているようで楽観的な見方をしている。
霧島は霧島でこっちも結構楽観的だ。

幾ら話し合ってもこれだという対策は出てこず、次第に世間話に移っていく元艦娘の奥様方。
暫くおしゃべりした後、時折こうして集まって意見交換会を開くと約束してお開きになった。
564 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/01/09(月) 23:10:35.82 ID:aFjHf5OBo
短いですけどここまで
今回は京太郎たちが居なくなった世界での親の行動を書いてみました

原作と母親の名前が違う!と言うのが何名か居るのですが……
そこはご容赦ください
ではまた次回の投稿でお会いしましょう
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/09(月) 23:55:01.85 ID:NqMEDiyz0
つまりタコスの中二病は親譲り
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 00:49:39.60 ID:0ZWaxDm6O

クロス物、改変注意を明記すれば問題無いっす。
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 06:33:14.21 ID:8KxB4Sv60
乙!
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 19:55:49.65 ID:n6mCd4KK0
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/24(金) 11:04:18.29 ID:ZBRrsDV2o
570 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/03/02(木) 17:45:12.38 ID:vrk1G1Y4o
すいません、リアルが忙しいのとモチベが下がっていて長い間空いています……
もう少ししたら投下できると思いますので、しばしお待ちを!
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2017/03/02(木) 21:22:15.11 ID:GyPeKocZ0
まっ照
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/03(金) 04:37:27.55 ID:ewNR8VkTO
ゆっくり
まっ照
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/11(土) 07:08:02.89 ID:lJ7txbJ7o
まっ照
574 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/04(木) 22:04:44.33 ID:c9CRllVio
超絶お久しぶりです
なんやかんやで以前の投下からおおよそ4か月・・・

お待たせして申し訳ない
取りあえず続きの投下をしますね
575 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/04(木) 22:05:18.87 ID:c9CRllVio


ペラ カリカリ… ペタ    ペラ カリカリ… ペタ


現在の時刻はヒトヒトサンマル、お昼前の提督執務室は書類にペンを走らせる音と判をつく音が聞こえるほど静かだ。
本日の秘書艦は大井(久)で、2人とも集中しきって業務をしていせいで先ほどから一言も喋っていない。
まぁ、サッサと書類を処理し終われば早めに終業できるからなのだが。

「うーん! もうすぐお昼か…… 書類は粗方片付いたし、今日は出撃もない。日の高いうちに終業に出来るな!」

「あ゛ー…… 大分集中してたわねぇ、体が硬いわ」

ググッと伸ばした背中からバキバキっと音がする。
朝から座りっぱなしで作業していたのだから体が硬くなるはずだ。
少し休憩することにした京太郎と久、お茶を淹れに給湯室に入っていく久の背中を見送りながらつい数か月前では全く想像もしえなかった自分たちの境遇に想いを馳せる。

(それにしても、人生どうなるか分からんよなぁ……)

艦娘と提督になったこともそうだが、何よりも本人たち公認の7股している自分が信じられなかった。
元の世界に帰った時が怖いが……
今は取りあえず久が入れてくれた緑茶を堪能することに集中しようと意識を切り替えた京太郎だった。
576 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/04(木) 22:06:56.71 ID:c9CRllVio
で、作業は順調にはかどりヒトロクマルマルには本日分の仕事が終わった。
あとは暇をつぶしつつ遠征に出た咲達の帰りを待って夕食を摂るだけだなと、ボーっとしながら考えていたのだが、突然のノックにその思考が途切れた。

「はいどうぞ」

京太郎が返事をすると、入ってきたのは煌、憧、佳織、白望、智葉、小蒔、塞に恭子の8人。
照を除いた後期転移組の面々である。

「みんな雁首揃えてどうしたんですか?」

「いや、丁度執務が終わったと連絡があったから来たんだ。大事な話をしようと思ってね。予め執務が終わったら連絡をくれるように久に言ってたからな」

皆にソファーを進めて、用件を尋ねる京太郎。

「須賀君、まどろっこしい話は後にして単刀直入に言うわ」

「…………」

「私達8人を艦隊に加えてもらえないかしら?」

大事な話の下りで何となく話の内容を察していたのか塞の言葉に眉をピクリと動かすだけでほとんど表情を動かさなかった京太郎。
久の淹れたお茶を啜りながら「なるほど」と相槌を打つ姿には妙な貫禄があった。

「うん? あんまり驚かへんねんなぁ」

「まぁ、何となく。話の切り出し方から察しは付きましたし…… でも良いんですか? 艦隊に加わるということは……」

「まぁ、確かに軽々しく受け入れるような話やないけど」

「この1ヶ月、須賀君たちの様子を見ていたらそれもいいかなって」

京太郎の言葉に恭子と憧が答える。
彼女たちも決断するまで結構悩んだようだ。
しかし、この1か月ほど京太郎たちの様子をずっと見ていたが、京太郎は咲達に誠実であったし、咲達は京太郎と一緒に居ることを幸福に思っていた。
もちろん照を含めると七股……
元の世界の価値観で行けばトンデモなかったが、この世界にはこの世界の流儀がある。
お互いが納得しているならそれでいいかなという考えに煌たちも自然と毒されてきていた。

「それに、稲美ちゃんからある言葉を聞きまして……」

「それは?」

「「エッチから始まる恋もあるのですよ」ですね」

それを聞いた京太郎と久は苦笑いする。
そう言えば自分たちもこっちに飛ばされて踏ん切りがつかなかったときに電から同じことを言われたなと。

「それじゃ、最後にもう一度確認させてください…… 艦娘として戦線に参加するんですね?」

「ええ、私たち8人の命と将来、須賀君に預けるわ」

577 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/04(木) 22:09:38.92 ID:c9CRllVio
短いですが今回の投稿はここまで
やけにあっさり仲間になったなと思いますが、>>1にはこれ以上の描写無理でした…・・
取りあえず悩みに悩みまくった部分が過ぎたので以降は気楽に書いていこうと思います

艦これの春イベも始まりましたし、やることが増えたなぁ(白目)
提督の皆様方はリアルに触らない程度に武運長久を祈ってます

では次の投下でお会いしましょう

578 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/05(金) 00:58:21.07 ID:ObG9o2yY0
乙!
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 11:53:47.81 ID:v3wU81hgo
乙です。
ずっと待っていたのよ゚・。*(゚∀゚*)。・゚+
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 14:48:50.93 ID:hoJvPwyC0

まずはテルーの描写を見たい
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/12(金) 02:27:27.63 ID:TsRjcMuRO
久しぶりの更新あざッス

生存報告さえあればゆっくり待ってますのでねっとりな描写オナシャス
582 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/19(金) 00:26:14.90 ID:ib8Wn7o3o
こんばんわ!
2週間目で新話投下だぜ!!
583 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/19(金) 00:26:46.97 ID:ib8Wn7o3o


ペラ カリカリ… ペタ    ペラ カリカリ… ペタ

今日も今日とて執務室で書類処理に勤しむ京太郎。結構誤解されるのだが高級将校(少佐以上)は戦場で戦うのが仕事ではなく、組織集団での指揮監督が主な役割、つまり主戦場は後方のデスクの上、書類と格闘するのが主な任務なのだ。

「くわぁぁぁ…… もうヒトロクヨンマルか、疲れたなぁ」

 緑色の第三種軍装に身を包んだ京太郎はチラリと時を見ながら大きな欠伸を一つする。

「さて、そろそろ迎えに来るって言ってた時間になるんだけどな……」

京太郎がそう呟くと、執務室の扉がコンコンとノックされる。

「入れ」

「失礼します。司令官さん、歓迎会の準備が完了したのでお迎えに上がったのです!」

「ご苦労様」

入ってきたのは電、ビシッと敬礼を決めつつ要件を手短に言う。それに微笑みながら京太郎が返答をする。
 

584 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/19(金) 00:27:18.77 ID:ib8Wn7o3o



 話は朝の課業開始前に遡る。

「歓迎会?」

「そうなのです。塞さ…… Romeさんたち9名が新たに艦隊に加わるので、歓迎会を開こうと」

課業前に電が相談があるというので応接セットのソファーで話を聞いた京太郎。眠気覚ましのコーヒーの香りを楽しみつつ、電の口から出たのは新規移転組の歓迎会の提案だった。
 
「それに、この鎮守府が発足したときも一寸したお祝い程度しかしていませんし…… 丁度いいからパーティーを開こうと思うのです」

「なるほどね」

 京太郎としても賛成である。もっとも最大の問題は準備と予算であるが……

「準備の方なら大丈夫なのです。間宮さんには話を通してあります。司令官さんのOKが出ればすぐに動けるのです」

「……根回しの良いことで…… フム、予算の方もC会計なら通るな…… よし、許可する。駆逐艦『電』、歓迎会の総指揮を任せる」

「なのです!」

こうして怒涛の勢いで歓迎会の開催が決まったのであった。



585 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/19(金) 00:28:07.97 ID:ib8Wn7o3o


「それじゃ…… 照さん、塞さん、白望さん、恭子さん、智葉さん、煌さん、小蒔さん、佳織さん、憧の仲間入りを祝して乾杯!!」

「かんぱーい!!!」

それぞれのグラスに飲み物が注がれ、京太郎の乾杯の音頭で歓迎会が始まる。会場は鎮守府の食堂で、テーブルにはこれでもかと言うくらい美味しそうな料理が並んでいる。

 「……ん?」

 飲み物を口に含んだ瞬間、京太郎に怪訝な表情が浮かぶ。彼のグラスに入っているのはオレンジジュース、そのはずだ。しかし、口の中に今まで味わったことのない変わった風味が駆け抜ける。ちょっと苦いような何とも言い難い風味だ。

「これってもしかして……」

頭の中で何かが引っかかったのだろう。京太郎は電が注いで回ったジュースの瓶のラベルを確認する。そんな彼を余所目に配下の艦娘たちは早くも盛り上がってジュースをガブ飲みし、料理にドンドン箸をつけ始めている。

「アルコール5%…… ってこれ酒じゃねぇか!? おい! 電!!」

そうグラスに入っていたのはアルコール入りジュース…… 所謂、酎ハイだ。大慌てで歓迎会の幹事を呼ぶ。

「なんです? 司令官さん」

「なんです? じゃねえだろ!! これ酒じゃねえか!?」

「お酒ですよ。それがどうかしましたか?」

いきり立つ京太郎の言葉に堂々と返す電。余りにあっさりと返されたので逆に京太郎の思考が停止してしまうほどだった。

「いや…… 俺たち未成年…… お酒は二十歳になってから……」

京太郎が何とか言葉を返すが、それを聞いて「ああ」と合点が行く電。

「大丈夫なのです。艦娘や提督になれば軍属ですから酒類の年齢制限は取っ払われるので合法なのです」

「……それ、初めて聞いたぞ」

アルコールのせいではない頭痛がしてきた京太郎、おでこに手を当てつつ軽いため息をつく。チラリと咲達の方を見てみると誰も訝しむ様子もなく飲んでいた。

「というよりか、あいつらも気づけよ……」

「ああ、司令官さんが来る前に説明していましたから」

「認識済みかよ、おい!!」

突っ込みに疲れた京太郎はもう何も考えず、宴会を楽しむことにした。どうやら考えたり悩むのが馬鹿らしくなったみたいである。
586 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/19(金) 00:28:36.05 ID:ib8Wn7o3o

「きょーちゃん! なに一人で黄昏ているのかなぁ? 一緒に飲もうよ!!」

顔を赤くしながら咲が絡んでくる。完全に酔いが回ってるようで、ご機嫌なご様子。咲が絡み始めると、途端にみんなが京太郎に絡み始める。

「須賀君、これおいしいれすよ」

「ワハハ! 京太郎! 呑んじょるか?」

最早、魔女のサバトである。普段は怠そうな顔でダレている白望がノリノリのニコニコ顔の時点で相当な違和感だ。お酒の力は本当に怖い、「お前、そんな性格だったか?」と突っ込みどころ満載の連中が量産されている。

「熱い! なんだか熱いわよ! この部屋!!」

そう叫びなが服を脱ぎ捨て真っ裸になっている脱ぎ魔は憧。

「……だから私はおかしいと思うんですよ…… ちゃんと聞いてます?」

赤ら顔でグチグチと説教くさい愚痴を垂れ流しているのは小蒔。こやつは怒り上戸らしい。

「一番、塞! 海軍軍歌、歌います!! 雪―の進軍―氷を踏んでー」

「塞― それ陸軍だじょ」

調子はずれで「雪の進軍」を歌いだす塞に突っ込む優希。海軍の軍歌を歌うと言っておきながら陸軍軍歌を歌う時点で脱力ものである。

「ウフ…… ウフフフフ……」

久は久で壁の方を向いて笑っていてかなり不気味である。

「どう収拾つけるんだよ…… これ……」

頭を抱える京太郎であった。チラリと他所に目を向ければまだ2ケースはあろうかと言う未開封の酒瓶が置いてある。ラベルは見えないが焼酎やウォッカなども混じっているようだ。本格的にため息をつく京太郎、そしてそんな彼に更なる災難が襲い掛かる。

587 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/19(金) 00:29:10.68 ID:ib8Wn7o3o

「なに一人素面のままなんだ? ほら呑め!」

「イッキ! イッキ!」

目が据わった智葉に、顔を真っ赤にしてハイテンションの佳織が絡んでくる。手に持ってる瓶には『大魔王』のラベルが……

「いや、俺は……」

「つべこべ言わずに飲め!!」

断ろうとしたら持ってるコップに有無を言わさずなみなみと注がれる透明の液体。智葉の眼光に気圧された京太郎にはyesといって飲む以外の選択肢など無かった。

「……クッ!」

覚悟を決めてコップの中の液体を飲み干す京太郎。

「おお! 良い飲みっぷり! ジャンジャン行こう!!」

そう言って空になると間髪入れずに注がれてしまい、休まる暇など無い。ですぐに限界が訪れてダウンしてしまう京太郎。そんな彼を尻目に艦娘たちのサバトは夜遅くまで続いたのだった。
翌日、お決まりの二日酔いでダウンする京太郎。当然、執務など出来るはずもなく鎮守府は臨時休業と相成った。一方で咲達はケロリとしていていつも通りの体調、艦娘と言うのは肝臓も鋼鉄なのかと心の奥底で寒気を感じた京太郎だった。
588 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/05/19(金) 00:30:29.43 ID:ib8Wn7o3o
では、今日の投下はこれで終了
次の投下までお待ちください

感想など書いてもらえると>>1は大変うれしいです

最後にこれだけは言っておかねばなるまい

「お酒は20歳になってから!!」
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 05:14:17.26 ID:CnClUyngo
乙ー
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 01:19:21.56 ID:vkjZV2jQO
更新乙です!

591 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2017/05/21(日) 16:54:40.20 ID:jws+mb7r0
更新乙―
592 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/06/29(木) 21:21:30.46 ID:NG5ohWCto
お待ちどうさま
書き終わったので新話投下します
593 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/06/29(木) 21:24:24.31 ID:NG5ohWCto

「イッチ、ニー、サン、シー…… ニー、ニッ、サン、シー……」

カラッと晴れ渡った鎮守府の空、その蒼空に少女たちの声が溶け込んでいく。施設の1つである運動場に集まった15人の艦娘たちが、準備運動を兼ねたラジオ体操をしていた。

「それにしても、体力測定とは…… まるで学校みたいだな」

そう言いつつ真面目に体操をこなしていく智葉。

「まぁ、実際に鎮守府には就学年齢の女の子が所属することも多いので学校としての機能も備えているのですよ」

智葉の言葉に真面目に答えを返す電。その後、「学科に関しては通信ですが」と付け加えている。今、グラウンドには15人…… 清澄鎮守府に所属する全艦娘が集まっていた。

「はい! 準備運動は終了なのです! 説明をするので集合してください!」

一通り体操が終わり、電が皆に集合をかける。咲達清澄高校のメンバーはザッと乱れなく一瞬で集合する。この辺りは数か月ほど先行して軍隊経験を経た賜物である。一方で、つい最近来た照達後発組はオタオタと少し時間がかかってしまう。

「はい、今日は三か月に一度の定期体力測定なのです。項目は100m走、5km走、ハンドボール投げ、反復横跳び、懸垂、柔軟、立ち幅跳び、走り幅跳び、垂直飛び、握力なのです」

「それと初めての人も多いので注意しておきます。艦娘になると身体能力が大きく向上するので、今までの体の感覚と狂いがあるかもしれません。それを修正することもこの体力測定の目的の1つなのです」

電が一通り説明をし、体力測定が始まる。
594 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/06/29(木) 21:25:00.91 ID:NG5ohWCto
「……ほんと、何て言ったらいいのか分からないけど…… こんなに簡単に記録が伸びちゃっていいのかな?」

100m走と3km走の測定を終えて一息入れようと休憩タイム。2種目の自分の記録を見て佳織が呟く。5月に学校でした体力測定の結果と比べると異常なほど伸びていたのだ。具体的には100m走で10秒後半、3km走も10分台と驚愕の数字である。

「おー、やってるな」

そんな中、のんきな声を上げながら京太郎がやってきた。今日の執務はほとんど無かったので早々に終えて見物に来たみたいである。

「ほー、次はハンドボール投げか……」

電から次の測定種目を聞いて目の色が変わる京太郎。元ハンドボール部員として心に火が付いたらしい。

「よし、俺も投げるぞ!!」

そう言ってボールを持ち投げる所定の場所に移動する京太郎。そんな姿を苦笑いで見つつ測定員として準備する電と優希と恭子。

「よし! じゃあ投げるぞ!!  ……ドォォォォォリャァァァァ!!!」

妙な掛け声とともに空高く舞い上がるボール、放物線を描きながら飛んでいき記録はなんと48m。

「おお!すごいのぉ!!」

「流石、京ちゃん!」

かなりの記録に見ていた咲達も盛り上がる。久しぶりに体を動かしたにしては上出来の記録に、美少女たちの声援で鼻高々な京太郎。しかし、この後彼は顎が外れんばかりの驚きに見舞われることになる。
595 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/06/29(木) 21:25:29.43 ID:NG5ohWCto

「私も負けられないね……  ッテェェェェェ!!」

臼澤塞、記録47m

「わしも頑張ろうかのォ。おどりゃぁぁあああ!!」

染谷まこ、記録39m

「私だって頑張るんだから!!」

宮永咲、記録42m

「咲にも、皆にも負けない」

宮永照、記録41m

「これはこれは、皆さスバラです! では私も!!」

花田煌、記録44m

「あわわ! わ、私も頑張ります!!」

神代小蒔、記録30m

「負けるのは癪だな。私も頑張るか」

辻垣内智葉、記録47m

「てぇえええええ!!」「なのです!!」

片岡優希、吾妻稲美(電)、記録35m

「撃つわよ!!」

竹井久、記録40m

「負けませんから!!」

原村和、記録37m

「みんな頑張りすぎでしょ!!?」

新子憧、記録37m

「だるい……」

小瀬川白望、記録46m

「これは負けられへんな」

末原恭子、記録42m

「わ、私も負けません!」

妹尾佳織、記録25m
596 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/06/29(木) 21:26:11.64 ID:NG5ohWCto
どいつもこいつも女子レベルでは超高校級、男子レベルでもめったにお目にかかられない記録を連発する。おまけに全員ボールが着地する場所がど真ん中と正確である。流石の京太郎も表情が引き攣っている。一応は皆よりもいい記録を出しているので元ハンド部の面目は立ったのだが、油断すると抜いていきそうなのが何人も……
これからは執務と並行して体を鍛えていこうと心に誓った京太郎であった。夜の生活の為にも必要だろうから英断である。

「み、皆スゲーな……」

「私頑張ったでしょ? 京ちゃん、褒めて褒めてー!!」

お尻に尻尾が付いてたらブンブンと振り回されている勢いで京太郎に甘える咲。ちなみにそのセリフは悪夢と呼ばれた駆逐艦のモノだ。
右手で咲の頭をワシャワシャと撫でまわしながら皆を見渡す京太郎。

「それにしても、一昔前の体操服みたいな格好だなぁ。ブルマとは今時珍しい……」

そう零す京太郎。上は白のトレーニングシャツに下は赤のブルマ。確かに昭和の体操着と言えばその通りである。京太郎のセリフで少し顔を赤くする者がチラホラ。京太郎に見られて少し羞恥心がわいたらしい。

「あら、須賀君ってば私たちの姿に欲情しちゃった? ほらほら、幾らでも見ていいのよ」

羞恥心の欠片もなく煽ってくるのは久だった。ニヤニヤと体のラインを強調するようなポーズをとるあたり完全に面白がっている。

「ほら、塞なんてお尻のライン滅茶苦茶綺麗だと思わない? あっ、それと私今下着つけてないのよ」

「最後の情報は要らなかったなぁ! おい!!」
597 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/06/29(木) 21:27:41.18 ID:NG5ohWCto
明け透け過ぎて逆に京太郎の方が羞恥心を感じてしまう。
塞の方は久の発言すぐ後にシャツの裾を引き延ばしてお尻を隠そうとしていた。エロい。
ちなみにこの体操着も大本営の指定である。
ブルマに関して最初は抵抗感が強かったのだが、鎮守府内で着るので人目につくことは全くないこと、後、京太郎にセックスアピールできると思い当たるとそそくさと全員着始めるという一幕があった。
ちなみに電は待ったく抵抗感がなく、他の皆が恥ずかしがった理由がさっぱりわからない様子だった。

「全くもう……」

顔を少し赤くして再び周りを見渡す京太郎。
もうすでにここにいる全員と一線を越えて夜の営みをしたというのに初心なものである。艦娘の皆は次の測定種目に備えてストレッチや軽く体を動かし始めていた。
京太郎の目があってまだ少し恥ずかしいが、ここで恥ずかしがってもどうせ夜にはそれ以上に恥ずかしい姿と痴態を彼に披露する羽目になることに思い至り、開き直ることにしたようだ。
女は度胸である。
一方の京太郎の方はそこまで開き直れないようで目のやり場に困っていた。
特に開脚しての前屈ストレッチなど目に毒過ぎる。
何人かブルマに染みが出来ているのはおそらく汗のせいだろう、いやそうに違いない。そしてこんな状況だ、当然京太郎の息子は仰角を上げてもっこり状態になる。
荒ぶる息子を鎮めようと必死に精神を統一する京太郎だが、そんなもので静まるようなら世話は無い。
女性陣も気づいてはいるが京太郎のことを思って見てみぬふりの優しさである。もっとも舌なめずりしている淫乱娘も何人かいたようであるが……
598 : ◆RW9l2xb5q2 [saga]:2017/06/29(木) 21:29:05.40 ID:NG5ohWCto
今日の投下は以上です。
次の投下までしばしお待ちを

次は照の初夜あたりにしようかな
筆が乗る時と乗らないときの差が激しいのでまったりと待っていてください

では次の話でお会いしましょう

感想などは大歓迎です
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga sage]:2017/06/29(木) 22:24:04.21 ID:c9g5xrwm0

艦娘の元ネタの馬力を考えるとハンドボールの記録は…まあ、深く追求しない方が良いですね(優しい笑み)
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/29(木) 23:00:33.39 ID:vMYrYlRwO

個人的にブルマのみってのはいただけませんねぇ……
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/29(木) 23:23:48.81 ID:Em80tluho
1500mじゃないのか…
あと、女子だと1000mだったよね?
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 00:35:37.74 ID:d7A4oHeO0
おつです  GSのほうもいつの日か続きが来るとしんじております
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 10:31:56.08 ID:ujxs6kCu0
乙。おかげさまで妄想が止まらなくて最高です。
604 : ◆RW9l2xb5q2 :2017/07/18(火) 22:32:41.43 ID:49osHTuGo
>>599
追及しないで上げてください(笑)

>>600
さ、咲の世界では下着なんて九牛の一毛だから(震え声)

>>601
あー、その辺は結構適当に書いたので流していただけるとありがたいです
むしろ艦娘として力が底上げされている艦娘がただの女子なのだろうか? いやない(反語)

>>602
お待たせして申し訳ありません
今、ちまちまと書いていて大体7〜8割書き終ったところです
ハーメルンでもう一本別のモノ書いてるのでそちらを読んで待っていただけると嬉しいです(ダイマ)

>>603
楽しんで頂いてるようで何よりです!


いま、照との初夜を書いてます
もう少しお待ちください
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