志希「〜激走〜アタシと鬼のアメリカ逃走記」

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175 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:18:34.85 ID:xUsdKWMzo

「アタシのダッドは、研究者だった。 優秀だよ? あたしが言うのもなんだけど。 志希ちゃんが賢すぎただけで。 でも」

鳶が鷹を生む。

悠々と大空を羽ばたいて、自身を追い抜く鷹を見上げて、鳶はどんな気持ちだったろう。

「あたし達、『研究者』は自分より優れたものが許せない。 真理を解き明かすのは己でなくてはならない。 業のカタマリ。 そんなこともわからなかったお嬢ちゃんは、もっともっともっとーーー貪欲に頭を撫でて欲しがったの」

そうして無自覚のまま、鷹は鳶を追い立てた。

歪みの極致、その『臨界』まで。
176 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:19:01.69 ID:xUsdKWMzo

「欲張った結果は、だいばくはつ! ママは泣いて、ダッドは怒って、『志希』は頬をおさえて呆けてた」

そして、逃げるように大学へ。
そこでもまた、繰り返す。

ココロのわからぬ天才は、満ち足りぬを繰り返す。

実験することが、許され褒められる唯一の手段だと信じながら。

そうして、禁忌を創った。

「にゃはは。我ながらかわいいよねー。必死で。 この白衣も昔誕生日にダッドから貰ったのそのままなんだよ? 未練がましいというか、なんというかさー」

薄汚れた白衣の裾をつまんで、痴女が穿いてないを見せつけるときのポーズをする志希。

列は再び止まっている。
177 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:19:31.41 ID:xUsdKWMzo

「………親の愛を受けたいと思うのは、当然の反応です。 卑下することじゃ、けしてない」

「そのせいで、こんな目にあってるって言うのに?」

志希は笑っている。

いつもの通り、捉えどころのない、自由な笑みで。

「黒服のヘンタイに追っかけられて、死ぬ思いして、そんで。 そんで」

細められた目の端から、つぅと伝う液体。
178 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:19:58.99 ID:xUsdKWMzo






「どうしてキミに、ココロを許してるのかなぁ?」





179 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:20:27.00 ID:xUsdKWMzo

「志希………」

多分、流れる雫にも気付いていない。
そんな余裕がない。

初めて挿入れた興奮で相手を気遣えないのと同じ。

「わかんない。わかんないんだよね。 どうして志希ちゃんはキミの匂いに惹かれるの? どうして志希ちゃんは見ず知らずのキミと一緒にいるの? どうして志希ちゃんはヘンタイスーツと違うって思ってるの? どうして『志希ちゃん』は………『志希』は………」

「…………」

上手い言葉が出てこない。

涙を流す淑女を抱き締める紳士もない。

ただ、棒のように立ちて。

鬼は、無力だった。
だが、しかし。
180 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:21:21.85 ID:xUsdKWMzo

「どうして『志希』なの? なんで『志希』は『パパ』と『ママ』と一緒に暮らせないの? どうして? どうして? どうして? イヤだ……イヤだよ……撫でてよ……助けてよ……『パパ』、『ママ』……あたしの居場所を返してよ……」

幼児退行したような、今にも赤ちゃん言葉を発し再び周りからの視線が刺さりそうな、そんな状況。

自ずから発した言葉で、『志希』は『志希』を追い詰めていた。

「それは、貴女が……」

鬼はつい、なぜ自分でも云ってしまったのかわからない。

生理遅れを告げる恋人に真っ先に中絶を勧めるような、そんな愚を犯してしまった。
181 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:21:47.98 ID:xUsdKWMzo

「弱い、からです」

「ーーーーえっ……?」

期待していた。
表情からありありとそれが読み取れる。

だが鬼の人生に、そんなモノはなかった。
そんな感情〈モノ〉抱く暇もなかった。

だから、彼は告げる。

EDを宣告するタケノコ医者のように残酷に。

「この世は所詮、弱肉強食。 強ければ生き、弱ければ死ぬ」

つらつらと、鬼は理を説いていく。
志希はうつむき、その色は見えない。
182 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:22:19.11 ID:xUsdKWMzo

「他人に期待をするな、甘えるな。助けて『欲しい』、ですって?」

だが、鬼はその瞳を隠す眼鏡を払い、志希の顎を持ち上げて、真正面から見据えさせる。

黒炎とは違う、煤の落ちた、猛々しく真っ赤な焔。

「どうして助け『させる』じゃあないんです。 私は違う。 私を放り出した馬鹿親共に、私の価値を教え込む。 今もまさに、その経過です。 強く生きる、そのために」

手を離し、再び眼鏡をかける。

志希は幾ばくか呆然と、鬼の顔を見つめて。
183 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:22:46.15 ID:xUsdKWMzo

「キミってホンとに優しく、ないかも………」

そうして痛々しく、笑ったのだ。

「志希、私は」

「いいよー別に♪ あたしから振った話だしねー。 あ、でも1つだけ言い忘れてたことがある、カモ」

とん、と鬼の胸を押して、背中を向ける。

頭だけ振り返り、志希は笑いながら言った。

様々な色〈シキ〉をごちゃ混ぜた、そんな顔で。
184 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:23:39.17 ID:xUsdKWMzo

「志希ちゃん、失踪グセがあるんだよね〜♪ だから」




「ばいばいお兄さん」





「ーーー志希っ!」

鬼が手を伸ばすより一瞬早く、志希は駆け出し、手が空を切った瞬間に、その姿は失せていた。

「あんのバカ娘……!」

いつも通りなら、反応することなどわけはなかった。

だが、『熱』に浮かされ、色をかき混ぜられたのは、彼も同じだったから。

「どうして一言、私に言わないんです……! たった一言を……!」

たかが数日。
なれど彼は、細い細い線ではあるが、確かに絆を感じ初めていたのに。

「弱い貴女に撒かれるほど、弱くはありませんよ、私はーーー!」

携帯を懐から取りだし、悪魔へ繋がる666を押しながら鬼はまた踏み出していった。

鬼の抱かぬココロというものを、抱え始めながら。

進みだした列に、そうして二人ともいなくなった。
185 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:24:19.25 ID:xUsdKWMzo



「はっ、はっ、はぁーーーーふぅ」

無我夢中。
自慰天昇。

なりふり構わず走って走って、気付けば見知らぬ廃工場。

乱れた呼吸を整えながら、志希は壁に寄りかかる。

「にゃはは。 あたしったら弱すぎでしょ……。 熱で簡単に壊れちゃうなんて……弱い分子結合だにゃあ……」

わかってはいたことだ。

誰も言葉にしないだけで、自分自身、目を逸らして来ただけで。
186 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:24:46.07 ID:xUsdKWMzo

「くーるくーるまーわるー。 れいじーれいじーにげたくてー。 ………本能くすぐられちゃったなぁ……あはっ。 クンクン、あたし、ひどい匂い……」

ずるずる、腰が落ちていく。

嫌な匂いを擦って削る、そんな滑稽な姿。

穴の空いた天井を見上げて、ぽつり、呟いた。

「…………お腹………空いたなぁ」
187 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:25:14.33 ID:xUsdKWMzo

「安心してくだサイ。 時期に食べル必要も、なくなりマスからーーー」

突然変態スーツの声。

逃げなくちゃと思う間もなく、近づいてきた黒い塊から電流が飛び出してーーーーー

「ーーーーオヤスミなさい、二度と目覚メヌ悪夢ヘ」



志希の意識は、ぷつりと途切れた。

188 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:25:41.44 ID:xUsdKWMzo



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189 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:26:09.33 ID:xUsdKWMzo

「………今、なんと?」

信じられない言葉を聞いたかのように、鬼は立ちすくみ、その体は怒りに震えている。

例えるなら、髪の毛を『お前の頭、まるでスカトロプレイでひりだした太巻きみてぇだなぁ。 蝿でも飼うつもりか? あぁん?』と貶された青年ヤンキー。

けれど電話の主は悪びれず、続ける。

「だからですね、『志希ちゃんは放っておいていい』と言ったんです」

「理解、できませんね……貴女のことだ。 彼女がいなければ、クスリが本物かも確かめられない、と考えるはず。 みすみすリスクを背負うのですか……?」

詭弁だ。
ちひろにかかればクスリの中身を調べ、分析し、弄ることすら容易。

鬼の本音は別にある。
190 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:26:39.33 ID:xUsdKWMzo

「あらら。 想像以上に仲良くなっちゃって……少し嫉妬しちゃいますね。 うふふ♪」

「御託はいいんです。 納得のいく、説明を」

携帯がめしめし、と悲鳴をあげる。

探しに行きたい今すぐに。
鬼の心は爆発寸前。

「志希ちゃんとの契約は、『私がクスリを手に入れる』ことと、『あなたが志希ちゃんの奴隷になる』こと」

若干、鬼の扱いが下降修正されているが、そこはご愛敬。

「そして、私はクスリを手に入れた。 まぁ、色々と仕込んでいたらすこし手間取りましたけど」

「だから、まだ志希の契約がーーー」

悪魔は、ひどく当たり前に答えた。
191 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:27:08.00 ID:xUsdKWMzo

「失踪したんでしょう? なら、奴隷を捨てたのと同じことですよ。 契約は履行された。 もう、私があなたを、彼女に貸してあげる理由が、ない」

棒を擦ればミルクが出るのと同じように、それは至極当然のこと。

「私は……認め……ません」

「『あなた』は、『私』の、護衛でしょう。 聞き分けのない子供は、嫌いですよ?」

「ーーーーー」

鬼の顔が、ただの子供の顔になって。

ともすれば泣き出しそうなその表情で。

渇いた喉から絞り出して、言った。
192 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:27:35.84 ID:xUsdKWMzo

「ーーー今更、母親面、するな」

「なんです? 泣きそうなんですか? 弱い子は、もっと。 嫌いですよ」

「………ましい」

「なんですか? はっきり言わないと伝わらないですよ」

鬼の人生、初めての駄々が、爆発した。
193 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:28:07.06 ID:xUsdKWMzo

「喧しい! クソババア! 私は、志希を見つけ出す! 散々育児放棄してきたんだ! 一度や二度くらい、私のために動いたらどうです?!」

ちひろの電話が壊れてしまいそうなほどの大声。

拙い罵倒。 だが、ちひろは微笑んで。

鬼には感づかれないよう、声のトーンを落とし、答える。

「あらあら。 親になんて口聞くんですかね、この子は。 けれど、まぁ。 たしかに私にも非はあります。 だから手は貸しますよ。 勿論、タダじゃないですけど」

「何でもいい! さっさとしてください!」

すっすっす、と携帯を素早く操作して、情報を送る。
194 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:28:40.05 ID:xUsdKWMzo

「志希ちゃんの食事に仕込んだ、GPSの情報です。 行くなら急いだ方がいいですよ? どうも変態さん達が先に見つけ………あら、もういないみたい」

会話先の失せてしまった携帯を閉じて、ポケットに仕舞う。

志希と鬼からそう遠くない、カフェの一角。

ちひろはアイスティーを飲みながら、独り言のように、呟く。

「感慨深いですねぇ……うふふ♪ 子供が千尋の谷から這い上がる。 少なくともこれくらいはしてくれないと、私と『あなた』の子は務まりませんもの。 ね?」

否、独り言ではない。
ちひろの相席。

その先にいる男。
195 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:29:07.71 ID:xUsdKWMzo

「ーーーふんっ。 この俺を呼びつけ、何かと思えば、まさか『子守り』とはな……。 あまりに過ぎて、『飽き果てる』ことすら忘れるわ」

「あら。 まだまだこれからですよ? 息子の一人立ちなんですから、私達が最後まで見ていてあげないと♪」

「アハハハハハ! よく言ったものよ! 鬼か! 悪魔か! ちひろか! キサマの欲の深さには、俺ですら二の足を踏む!」

「こわいこわい世界の中で、息子に強く生きて欲しい。 母の愛は善く、深いんです♪」

「……まァ、いい。 折角アメリカくんだりまで来たのだ。 子供を『あやす』のもーーーー面白かろう……」

鬼と悪魔が並び立ち、息子の晴れ舞台へ、向かい始めた。
196 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:30:28.48 ID:xUsdKWMzo


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「ーーーん、んぁ? はれ、ここどこ……? フランス人と日本のハーフの女の子と、敏感舌の女の子について性知識会議開いてたはずなのに……」

遠い未来を幻視しつつ、志希は寝ぼけ眼を擦ろうする。

ジャラリ。

動かぬ両手には鎖。
天井から吊り下げられた拘束具に、吊り下げられていた。

197 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:31:05.86 ID:xUsdKWMzo

「HAHAHAHAHAーーお目覚めのようですね、イチノセさん。 ご機嫌はーーー」

「ぎにゃあああああ?! ヘンタイが! ヘンタイがいるぅぅぅぅ! イヤァ、志希ちゃんの貞操が大ピンチぃぃぃいいい!?」

「ーーーってナニを言ってるんですかこのコムスメは?! 」

格好をつけて暗闇から出てきたというのに、志希の罵声で全て台無しである。

相棒の、雑巾の絞り汁よりも下らないジョークに対して、おべっか言わねばならない下半身不随ジョッキーのような悲しさがあった。

「Shit……ほんとうにあの男といいアナタといい、これだからジャップは……」

「……何の用って、聞くまでもないよねー。 でも、あのクスリはキミ達の手にはーーー」

「クスリ? これのことですか?」

石膏が巻かれた変態スーツの手には、ブラウン色の液が詰まった栄養ドリンクに似たビン。
198 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:31:32.98 ID:xUsdKWMzo

「なっ、なんで、それを!」

「HAHA! 貴女の研究室にあることはわかっていましたカラね。 蛍光色の女がクスリを手にしていた時は驚きましたがーーー」

見せびらかすように、志希の前にドリンクを突き付けて、変態は笑う。

「結局は、私達の手の中。アナタの努力は、ジャパンでいう、水の泡ってことですよ」

志希の顔には絶望。

ちひろさんがしくじったのかーーー
後悔だとか、悔恨だとか様々な感情が脳に渦巻く。

腹が鳴る。
エネルギーが足りない。
思考がまとまらない。
199 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:32:04.61 ID:xUsdKWMzo

「Hm〜〜♪ いい、カオですねぇ〜。 さて、ここらでだめ押しとイキましょうか?」

変態が不器用に指を左右に振り、クイズショーの司会を気取る。

「クスリを手に入れ、目的を果たした私達」

「………」

その通りだ。
既に志希を追う意味はない。

では、この状況は一体なんだ?

腹が、減った。

「しかし、私達はアナタを拘束しています。 その理由は、何でしょうカ?」

17歳に欲情する性的倒錯者の集まりがFBIーーーではないだろう。

志希には及びもつかない。

ニコニコと、心底楽しみながら変態スーツが志希を地獄へ突き落とす。
200 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:32:31.29 ID:xUsdKWMzo

「そのワケが、彼です」

今度こそ、邪魔されることなく暗闇から、存分に格好をつけて演者が現れる。

彼は、かつて志希のココロに傷をつけ。

「ひさしぶり、志希」

そして、再び彼女に消えぬ痕をつけんとしていた。

「………ダッ………ド?」

場違いに、志希の腹が唸りをあげ続ける。
201 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:33:07.41 ID:xUsdKWMzo

「そんなに驚くことかい、志希?」

「だ、だってダッドは……! あたし、ダッドに誉めて、欲しくて……それで!」

志希の表情が幼児のそれへ戻る。

認めて欲しい、撫でて欲しい。

彼女の目的が、黒幕じみた不敵さと、豚を見るような冷たい目で彼女を見ていた。

「相変わらず、腹立たしい」

「………っ!」

「お前がそんなだから、そんな有り様だから。 パパがこうなってしまったということが、わからないのかい?」

溝の底よりなおも濁り、吐き気を催す邪悪の詰まった父の双眸。

自身の狂気を娘の『罪』にすり替えて男は続ける。
202 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:33:44.68 ID:xUsdKWMzo

「私は許せないんだよ。 私よりも優れた人間が。 ましてや、自分の種が創った写し見など、なおのこと。 だからね、志希」

そうして男は、簡単に。

志希と彼を繋ぐ『環』を、切り裂いた。





「お前を消してしまうことにした」




203 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:34:11.60 ID:xUsdKWMzo
志希の唯一の思い出、誕生日に『パパ』から貰った〈白衣〉を、武骨なナイフで、ずたずたに。

引き裂き、踏みつけ、踏みにじり。

志希のココロを蹂躙する。

「あ、あぁぁあ! や、やめてよ、ダッド! や、やめて! お願いだから、『パパ』ぁぁぁぉあ!」

「はは。 いい声で鳴くじゃあないか。 天才も鳴き声は人と同じと見える。 だが、まだだ」

何の躊躇もなく、男は志希の服に刃を走らせる。

露となるその素肌。

世のアニマルビデオのどこを探しても、娘を拘束し、刃物で衣服を剥いでいくシーンなど存在しないだろう。

狂気すらも遠い、沙汰の外。
204 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:34:56.19 ID:xUsdKWMzo

「ほう。 美しい。 神とやらは余程お前が好きなようだ。 ますます腹が立つよ」

「やめて………お願いパパ………許して………」

「ははは! 許す? 何を? 私は怒ってなどいないのだよ、志希」

「ほん、とに……?」

既に志希の心は限界。

男の言葉尻1つでさえも、今の彼女にとっては蜘蛛の糸に感じられた。

だか、勿論。
205 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:35:24.28 ID:xUsdKWMzo

「私はただ、何の努力もなしに、産まれながらに才を持つ『ギフテッド』などというものが、この世に存在するのが許せないだけだ」

志希の瞳から光が消える。

なんてことはない。

自分が一番欲しかった者は、自分なんて見ていなかった。

ただただ、研究者たるを。
己が頂点であることを、彼の世界は欲していたのだ。

「さて、流石にこれ以上、自分の手で行うのは忍びない。 私もヒトの親の身だ」

「クックック。 面白いジョークです。 このまま蚊帳の外かと辟易していましタがーーー」

「…………」

変態スーツが、肌を晒す乙女に一瞥。

ぺろり、と舌舐めずりを一つ。

いきり立つ彼の者の股間は、17歳に欲情するがちでヘンタイオトナであることを示していた。
206 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:35:56.74 ID:xUsdKWMzo

「存分に楽しめそうデス……両手がうまく動かないことが残念デスが、まあ一興と思いまショウ」

「こ、来ないで……!」

あまりにもエネルギーが足りないのか、鎖を引きちぎることができない。

気付けば、志希の周りには変態スーツの束。

無力な囚われのお姫様に、もはやなす術などなく。

であるならば、唯一できることは。

「HAHAHAHAHA! 震えなサイ、イチノセさん! この世はショセン弱肉強食! あなたはただの、アワレナ獲物なんですカラ!」

そうして、衣服を剥がれ、産まれたままの姿の志希に、悪辣どもの手が伸びーーーーー



207 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:36:26.55 ID:xUsdKWMzo







ーーーー瞬間、廃工場の入り口が弾けとんだ。


「ーーーその通り。 この世は所詮、弱肉強食。 だからこそ」


スーツを正し、真っ赤な髪を後ろへ撫で付けて。
細眼鏡を指で上げるその男。

鬼が、助けを祈る姫様を、救いに来たのだった。


「私が常に“ヤる側”です……」





208 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:37:02.41 ID:xUsdKWMzo


固定された扉を蹴破り、状況を把握。

頬を掻いて、何でもないように振る舞って鬼は口を開いた。

「何ですか、志希。 その格好」

「キミ、どうして……」

「さてね。たまたま寄った廃工場にたまたま貴方がいた、それだけですよ」

そんなわけもないだろうに。
小さく上下する肩に、常より速い呼吸。

何よりも速く駆けた鬼は、精一杯に格好つける。
209 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:37:30.95 ID:xUsdKWMzo

「早く服を着ないと風邪引きますよ。 ほら、途中、たまたま。 偶然に。見つけたものです」

鬼の手には、まっさらな白衣。

床に落ちた、ばらばらに刻まれたぼろ切れとは対照的な。

新たな孵化を促す、『温かい』包。

「それと、訂正しておきます。 貴女は弱くなんてありませんでした。 だって」

変態スーツの一人が鬼へ飛び掛かる。

姿勢を崩さず、右足を軸に回転しながら避けて。

一閃。

降り下ろされた激鉄が変態の頭を踏みしめ、にじる。
210 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:38:03.79 ID:xUsdKWMzo

「この私に、助けに『来させた』んですから。 だから、一言。 貴女の口から一言を」

『痛み』を貰った。
『温かさ』を貰った。

だからこそ彼は、バラバラになった志希のハートを一つ残らず掬い上げ、救うのだ。

変態スーツが叫び、指示を飛ばすが二人には聞こえない。

廃工場を舞台にして、演者が今は二人きり。

救いの『騎士』と囚われの『お姫様』。

ならば台詞は決まっている。
211 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:38:32.77 ID:xUsdKWMzo





「あたしを『助けて』よ、お兄さんーーー」

「ーーー承知しました、お嬢さん」

勧善懲悪の至極つまらない、陳腐な劇が、大団円へ向けて、幕を下ろし始めた。


212 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:39:13.70 ID:xUsdKWMzo




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213 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:39:40.53 ID:xUsdKWMzo

「ーーー勝ったと、お思いですか、お猿さん」

既に他の変態スーツは真のヘンタイを残し、鬼に食われた。

ヘンタイは両腕使えぬ。満身創痍。

万に一つも勝ちは、ない。

「質問に質問で返して恐縮にですが、ここから逆転できるとでも? 」

「勿論、何故なら私には、コレが、ある」

ヘンタイの手の中で揺れる液体。

悪魔の品が契約の時を待っている。

だが、鬼は冷静そのもの。
冷ややかな目で勝ち誇るヘンタイを眺めている。
214 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:40:10.41 ID:xUsdKWMzo

「私なら、使いませんがね。 そんな怪しげなドリンク」

「畏れ、デスか? 無理もない、今からアナタは世紀の瞬間を見るコトニナルーーーー」

ヘンタイは、ビンの蓋を外し、一息に液体を飲み込んだ。

変化は、劇的だった。

「オ、ォォォォ、オオオオオオオオオオオオ!」

蠕動する筋肉。
石膏が碎け、折れていたはずの両腕が、丸太の如く膨らんでいく。

人間の域を超え、人外の化物へと。
215 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:40:43.01 ID:xUsdKWMzo

「…………」

「HAHAHAHAHA! マーベラァスッ! すばらしい、力が溢れてくるようでスよ! お、おおお精力すらも……!」

爆発的に増加する体積の中でも、とりわけ、股間の膨張率が甚だしい。

17ー19ー29ー37ー69ー。

際限なく、肉は棒長していく。

「なんという高揚カンッッッ! 立てる! 立てるぞ! 私は今やこの世の弱肉強食の頂点にーーー!」
216 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:41:12.12 ID:xUsdKWMzo








瞬間、股間から血が噴き出した








217 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:41:43.10 ID:xUsdKWMzo

「エッ……………?」

ナニが起きたのか、ヘンタイはわからない。

ビュル、ビュル、ビュ、ビュー。
呆ける間にも命の放出は続いている。

「ひ、ヒイィィィィ!? ナニが、コレは!?」

「だから、言ったでしょう」

噴出する血精を万が一にも当たらぬよう避けながら、鬼は眼鏡を正す。

「……そもそも、あの女がクスリを手にした時点で、ヘマをするわけがないんです」

「な、ナンノはな………クァッ?!」

萎んでいく。
膨らんだ体の内、唯一、珍矛を残して。

最早立つことも出来ず、勃ったまま、ヘンタイは仰向けに崩れ落ちる。
218 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:42:23.82 ID:xUsdKWMzo

「貴方には同情します。 はっきり言って、その死に様はこの世で最も下劣で、無様で、弱きに過ぎる」

びくんびくんと、震え続けるヘンタイの眼が狂い始める。

全てを射精に費やす体が、脳に極限の快楽を与え始めているのだ。

まさに死の絶頂。

彼は確かに、♂の器官という意味では、生物界の頂点に勃った。

「Ah、hu、ohohohohohOh、OHOHOHOHOHOH〜〜〜〜!」

そうして、一際根本が膨らんで、一際大きな命の煌めきを、天空へと放った。
219 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:42:50.53 ID:xUsdKWMzo





「OHーーーーーYESッッッッッッ!」




天井を貫き、大空へと飛び散った真っ赤な生命の滴は、太陽に見守られながら、大きな大きな虹を描いたのであった。


220 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:43:16.93 ID:xUsdKWMzo





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



221 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:43:50.43 ID:xUsdKWMzo


「ナニが、起きた………?」

呆然と、鬼が娘へと近づいていくのを眺めるだけの研究者。

傍らには既に逝き絶えて、断続的にアメリカンドリームする故=ヘンタイ。

その口はだらしなく開き、突っ込まれるのを待つようだ。

「ば、バカな、あのクスリが本物かどうかなど、私が事前に調べているっ……い、一体ナニが?!」



「よっぽど、無能なんですねお父さん」

何もなかった空間に、突如現れる来訪者。

研究者は飛び退いて、異人へ振り向く。
222 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:44:20.79 ID:xUsdKWMzo

「な、なんだ貴様はっ! どこから入った!? 」

「しがない事務員ですよ、っと。 まぁそんなことはどうでいいんです。 いやはや、滑稽でしたねお父さん♪」

ぱちぱちぱち、と手拍子で研究者を煽るちひろ。

その蛍光色の姿に、ヘンタイの報告を思い出した。

「き、貴様はまさか! クスリの在処を探っていたという、あの女か!」

「おめでとうございます。 その程度の脳味噌はお持ちみたいですね。 所詮は、そこまでですが」

「ーーーー私を馬鹿にするなっ!」

懐から、娘のココロを引き裂いた凶器を取りだし、ちひろに向けるーーー

223 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:44:47.95 ID:xUsdKWMzo


ーーーが、その手には何も握られてはいなかった。

「ざくぅ♪」

代わりにちひろの手に収まった刃。

額に突き刺すおどけた演技で、研究者はへたりこんだ。

「情けないですね、くすくす。 そんなことだから子育て一つ満足にできもしないんですよ?」

「ーーーッッッッ! あ、悪魔めが! え、FBIは何をしている?! 何故突入してこない! さっさとこの女をつまみ出せぇ!」

「あら、悪魔だなんて、心外ですね。……ですけれど、子供の巣立ちを見守るのは、悪魔だって鬼だって同じなんですよ? その証拠にーーーホラ。 あの人って、意外に子煩悩なんですから……♪」
224 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:45:29.03 ID:xUsdKWMzo



ーーーー廃工場、外。


大空高くに虹が輝き、底抜けに明るい真昼時。

破られた扉の外、優に100を超える黒スーツ達が今にも雪崩れ込まんとしていた。

その舞台に、男が一人。

灼熱のごとく赤き髪をそばだてて、同色の衣服に身を包む。

「ーーーーチッ、ちひろめ……こんな雑魚どもの当て馬にこの俺を使いおって……」

まだまだ増える黒のセダンから、同じく黒服達がぞろぞろと。

ロリータの黄金水に群がる少女愛者達のように、群れ集まる。

そして、全員の銃口が男へと向く。
225 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:45:55.43 ID:xUsdKWMzo

「まぁいい……デキの悪い息子の門出だ。 腹ァ満たすにはほど遠いがーーー」



両手を高く掲げる、構えとも呼べぬ独特の体勢。

寄り集まった後背筋が、鬼の笑みを浮かべた。



「ーーーー食ってやろう」
226 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:46:25.35 ID:xUsdKWMzo




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



227 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:46:55.37 ID:xUsdKWMzo

「大丈夫ですか?! 志希?! ヘンタイどもにナニかされませんでしたか?!」

ヘンタイ達を蹴散らしていた時のような鬼神のごとき面構えはぶっ飛んで、心配性で人のいい、鬼の素顔。

志希はなんだか安心して、思わず微笑みが零れていた 。

「まったく、勝手にいなくなりさえしなければ、こんなことにもならなかったのに……帰ったらお仕置きですよ……」

何気なく、鬼の口にしたその言葉。

それが今の志希には、あんまりにも衝撃的で。
228 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:47:33.87 ID:xUsdKWMzo

「帰る……帰るんだ………」

うわ言のように呟く少女に、鬼は優しく笑いかける。

「………ええ、帰るんです。 それに」

ちらり、と未だ痙攣するヘンタイを見やる。

「ここは品が、なさすぎる」

「ーーーーぷっ」

「はは………」



「「あははははは!」」


229 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:48:01.80 ID:xUsdKWMzo

大団円。
すべては丸く収まって。

鬼と天才が、居場所を見つける。

今回はそんな、お話だったのだ。

「あはは、志希ちゃん帰ったらご飯食べたいにゃあ……」

「ええ、いくらでも食べてください」

「にゃはは♪ やったーーーー」
230 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:48:28.70 ID:xUsdKWMzo







ーーーーーだが、まだだ。





231 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:48:54.79 ID:xUsdKWMzo
どくん、と志希の体が波打つ。

「ーーーー志希?」

「う、うぁ、ぁぁぁぉあぁぁぁぉあぁぁぁぉああああああ!?」

「志希ッッッ!」

思い出されるはヘンタイの最期。

まさか、そんな。
あれはちひろの細工の結果じゃーーー

鬼の脳裏を走る電流。

「ガアアァァァァァァ!?」

志希を拘束していた鎖が、爆発的な力によって四散する。

その勢いのあまりの強さに、鬼は距離をとらざるを得なかった。
232 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:49:44.44 ID:xUsdKWMzo

「こ、これは一体……?!」

舞い上がる砂煙。

廃工場に満ち満ちて、膨れ上がるプレッシャー。

「ーーーーーーーフシャー」


開けた視界の先には、全裸で女豹のポーズをとる、一ノ瀬志希の野性味溢れる肢体があった。











大団円には、まだ遠い








233 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/12(日) 22:55:15.22 ID:xUsdKWMzo
とりあえずここまで。


>>171 冴羽様はほんとうにしんしなおかた


疲れた……不用意にチャコフするもんじゃないですね。


ほぼ常に着てる白衣と父親の呼称の多さから膨らんだお話ですが、もうすぐ終わります。


健康的に寝て、また明日出します。



震えて眠れ紳士達 紳士王はオレだ



234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 00:29:28.90 ID:QrQ31VGY0
アメリカ映画かな?
おっつん
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 03:01:02.00 ID:ZjBA04f+o
あく続き書いて
236 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:16:22.99 ID:ZD0Y9woyo
お早うございます。


それでは、一気に出しきりたいと思います。


紳士度高すぎるのと、文学的雄雌交配があるので一応注意をば。


よろしくお願いいたします
237 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:18:05.80 ID:ZD0Y9woyo

『そこで志希ちゃんは、腰を低く備え、ある種特徴的な構えを見せたのです。

それは例えるなら……なんだろ? ねぇねぇプロデューサー、なにかなー?

え? うん。 ……えへへ☆ もー! フレちゃんが可愛いのはいつものことでしょ?

今は志希ちゃん達のかーいーそーう! アタシ達の番は二週目〜♪ ってそだそだ。 あれ? なんだっけ? ま、いっかー♪』

カンペカンペ。
238 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:18:55.70 ID:ZD0Y9woyo

『わぉ! これカンニングペーパーって言うんだよね? え? 違う?

フレデリショック! んー? カナデちゃん急にこっちきてどしたの〜?

まだフレデリカのばとるふぇいずは終了してないぜぃ……!

あ、ちょ、そ、そーりーそーりーひげそーりー!

ちゃ、ちゃんとやるからぁぁぁぁぁぁぁ…………』

………。
239 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:19:41.22 ID:ZD0Y9woyo

『ーーーーこほん。 そうね、例えるなら、猫科。 あなたも覚えがあるでしょう?
猫が欠伸しながら、全身を伸ばすあれよ。 いわば脱力の極みね。
志希のその姿は、次の瞬間への、『溜め』だったのよ』

ーーーなるほど、つまりは予備動作である、と?

『ええ、その通り。 現代に甦ったジュラ紀の戦士がとったように。 引き絞られた弓と矢が、確実に志希プロを狙っていたのよーーーー。

え? それなら志希プロは物凄く不味い状況なんじゃないかって?

………ん、あなた達はやっぱり彼をわかってないわ。

もし、紳士プロ、いえ『元』紳士プロがフレちゃんに同じ状況に追い込まれたら、彼は受け止めるわ。 どんな愛も受けきるのが彼だから』
240 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:20:23.21 ID:ZD0Y9woyo
ーーー興味深い。志希プロは全く異なる、と。

『ええ、彼は冷静そのものといって過言ではないわ。 破天荒な志希を抑えてるんですから当然よね。
愛に臆病って意味じゃないのよ?
ただ、時と場を、〈最善〉を理解しているのよ、彼は。
とはいえ、私のプロデューサーには敵わないけれど。
ねぇ、聞いて? ついこの間なんて、あの人ったら、私にパン○ースを履かせようとしたんだけれど、その理由がーーーー』


始まりそうになった黄金色の話を打ち切って。
ーーーー場面は、廃工場へ舞い戻る。
241 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:20:56.20 ID:ZD0Y9woyo
ーーーーー諸君は水の固さをご存知だろうか。
なに? 水は不定で柔らかい?

否、その一見危なげないものこそが、最も危ういものなのだ。

濡れ透けプレイや、肛門洗浄だけなら問題はない。

しかし、仮に時速60kmで、水に叩きつけられたならーーーその硬度はコンクリートに匹敵する。

つまり、物体の威力というのは、状況
次第で幾らでも変化しうるということなのだ。

だからこそ、鬼になくて志希にある。
その差は、とてつもない意味を帯び、戦力差として現れ出でる。
242 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:21:29.09 ID:ZD0Y9woyo

「ふしゃぁーーーッッッッ!」


目で捉えるのがやっとの、志希の特攻。
ちん皮一枚隔てるのがやっと。

しかし、それは志希の体がドラム缶型だったらの話。

「………くぅっ!」

志希の突撃をかわす度に、確実に鬼の衣服は削り取られる。

(ただの脂肪の塊が、こんなにも恐ろしいとは……!)
243 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:22:00.21 ID:ZD0Y9woyo
高速で動く志希に追随する、83の巨大なバストが鋼鉄のような破壊力を伴って、振り回されるのだ。

そう、鬼になくて志希にある、二つのお山によって徐々にだが、確実に鬼は追い詰められていた。

正に狂気のおっぱいビンタッッッ!
お前を確実にーーーヤる。

青少年達の希望の象徴であるパイオツカイデーは今や、絶望の塊。


「………くっ! 避けきれ、ない!
だが、なんだ、この違和感は……!」

鬼の気付いた不快感。
それは、自身の体の傷つかなさだ。

切り裂かれるのは衣服のみ。
理性が飛んだはずの志希から感じる、明確な意図ーーー!
244 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:22:49.06 ID:ZD0Y9woyo

(服を切り裂く……? つまりは、服を脱がせる……。 はっ! ま、まさか志希!)

気付く。
その意図に。

(理解ったぞ、志希の狙いがーーー! なんと馬鹿げた、想像だにしないーーー!)

思えば幾つも予兆はあったのだ。

『キミ、いい匂いするかも♪ こんな人はじめて〜。 いったいどこからするのかにゃあ? ねね、分析させてぇ〜』

『うーん。 うなじじゃ、ない……。 匂いの元は別にある……? てことは上じゃなく、下?』

『はすはすはすはす! な、なにこれ! キミのパンツから志希ちゃんの脳下垂体を直撃するビッグエキスが!? 嗅ぎたい! もっともっと! こんなのがまんできるワケない!
発生源はいったいーーーー』
245 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:23:23.22 ID:ZD0Y9woyo

ーーーー鬼の思考が解答へとたどり着いたのとほぼ同時。

志希の更なるおっぱいビンタが、鬼の衣服を刈り取った。

それはついに拘束帯と、そしてその先にある最終防護壁をうち壊した。

「志希……! 貴女の狙いははなから私のーーーー」


ーーーボロンッ。


巨大なオノマトペが聞こえたと、錯覚するほどの象さんが、二人の戦いの場に乱入したのだった。

246 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:24:00.92 ID:ZD0Y9woyo


ぶらんぶらんと、象さんをパオーンさせながら、鬼は、考えていた。

志希を正気に戻す方法。
傷をつけることはもってのほか。

しかし、鋭い痛みを伴わなければ、人に理の覚醒を促すことは困難に過ぎる。

極限まで追い詰められた状況。
助けに駆けつけた少女と、全裸にて廃工場で向かい合うという地獄。

カタークナイト、そしてパイパニック。
エロパロ映画ですら役者不足の、三流の極み。

ありえないなんてことは、ありえないーーーー

その言葉を体言したかのような状況下だからこそ。

鬼は平素なら考え付かない解答にたどり着く。
247 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:24:30.17 ID:ZD0Y9woyo

(私と志希の間にある、圧倒的な戦力差。 それはただの脂肪の塊だった。 だが、しかし)

必要なのは逆転。
鬼になくて、志希にあるもの。

狂気に身をやつしてこそ産まれるモノ。
世界が反転を始めていた。

(本来胸とは、子をあやし、男を受け止める、『守り』の器官……母性として、女としての象徴。 ならばーーー)
248 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:25:10.50 ID:ZD0Y9woyo

1日目 暗闇がある中、神は光を作り、昼と夜が出来た。

2日目 神は天をつくった。

3日目 神は大地を作り、海が生まれ、地に植物をはえさせた。

4日目 神は太陽と月と星をつくった。

5日目 神は魚と鳥をつくった。

6日目 神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくった。

7日目 神は休んだ。

天地創造に隠された真実。

海とは、女性。
大地とは、男。

ならば、生えてきた植物とは。
249 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:25:40.80 ID:ZD0Y9woyo

「ーーーー志希ッ!」

男は、吼えた。
女は、ピタリと動きを止めて、その崇高な姿に涙を流した。

神に近づき、そして倒れた人の『遺志』たる象徴が。

仁王に立ち、鬼がーーー笑う。

鬼の股間には、もはや二度と倒れることのない、『バベルの塔』が、誇り高く勃っていたのだ。
250 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:26:09.54 ID:ZD0Y9woyo






〈ヤりきれる武器を持っているのはーーーお前だけじゃないんだぜーーー〉





251 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:26:41.25 ID:ZD0Y9woyo


もはや、勝負は一瞬。
数秒の後に決着が訪れることを、鬼も、志希も、ちひろも。

その場に集う全てがそれを頭でなく、心で理解していた。


ビクッビクンッ!
倒れ伏していた黒スーツの、断続的な命の放出が、ゆっくりと終わりつつある。

「………」

「………志希、貴女には目覚めて貰わなければ困る」

これは、鬼の嗚咽だ。
生涯を一人で生きてきた鬼が、始めて他人を護りたいと思った。
252 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:27:37.35 ID:ZD0Y9woyo

「貴女のお陰で私は『痛み』を思い出した。 そして、『温もり』を」

弱肉強食。
いつしか自身に課した、生存の掟。
だがそれは、本当は誰かに対するサインだったのかもしれない。

「…………貴女は喧しいし、無礼で、不作法で、不様で、弱きに過ぎる」

強ければ生き。
弱ければ死ぬ。

だが、人は弱いからこそ人と生きるのだ。

誰かの弱さを、誰かが補って。
そうして無限の強さを作っていくのだ。

「だから、私に貴女を護らせてください。 私が私である、そのためにーーー」

ぶしゅう!
と、大きな噴出音をたてて、黒スーツの最後の命の煌めきが、赤く濁ったアーチを描いて、高々と舞った。
253 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:28:15.74 ID:ZD0Y9woyo


瞬間、志希が走り始めた。
互いの距離は遠くない。

刹那を、コマ送りにして流れる情景。
5,4,3,2,1。

弾丸のような突進。
迎え撃たねば致命傷は明らか。

だがしかし、鬼は動かず真正面から堂々と、志希の体当りを受け止めた。

「ぐっ……ふぅぅぅぅッッッ!」

肋骨、胸骨、右前腕、左大腿骨。
大小様々な骨が、めしめし、と軋む。

「ふしゃッッッ!」

志希のパイオツが頬を撃ち、脳を揺らす。
凄まじい衝撃。
視界が、暗転し、飛びそうになる。

それでもーーー倒れない。
志希の全てを鬼は受けとめる。
254 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:28:49.83 ID:ZD0Y9woyo

「先に謝っておきます志希。死ぬほど痛いですよーーー」

傷をつけず。
極大の痛みを与える。
不可能な命題。

だが、鬼になら叶う。
志希になら叶う。

二人のうちどちらが欠けても成立しない、そんな可逆反応式。

すべての人類が産まれたときより背負いし宿命、肉のカルマ。

「………ッ!?」

志希の体が、ビクッと、震える。
痛みでも、快楽でもない、ざわつき。
255 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:29:21.46 ID:ZD0Y9woyo

巨像がその鼻っ柱を、マリアナ海溝に擦り付けた、その感触。

未曾有の感覚に、志希の動きは停止する。

僅か瞬きほどの一瞬だが、男には充二分に過ぎた。

「喰らいなさいーーーーこれが私の、私達のドリルですッッッ!」




聖剣がーーーーーー楔を貫いた。



256 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:29:50.88 ID:ZD0Y9woyo


『お前の頭の上には、けして切れない。 私達のーーー』

ーーーーこの先を、いつからか忘れてしまった。

小さい頃は、パパと沢山お話した。
本を読み、内容をパパに伝えて、頭を撫でてもらう。
幼い志希にとっては、この上ないご褒美だった。

ずっと続くと思っていた、もう戻れない、割れてしまった結晶体。

鈴口が、秘口と口付けをかわす〈注:浜口流房中術書第七巻より抜粋〜三口責め〉。
257 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:30:22.26 ID:ZD0Y9woyo

「 」

ある時、パパからお下がりの白衣を貰った。
バースデーに欲を見せない子供に対し、パパとママは戸惑っていたのを覚えている。

でも、アタシは両親に認められたような、そんな子供じみた感傷を、ブカブカの白衣を着ながら思ってた。

軽いキスは終わり、亀頭がフレンチ・キスを求めて奥へ奥へ進んでいく。
258 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:30:50.70 ID:ZD0Y9woyo

「 」

ある日を境に、パパが頭を撫でてくれなくなった。
ママが、アタシにごめんなさいと謝った。
ギフテッドーーーーそう診断された日だ。

コツン、誰も今まで触れたことのない、一度きりの通過点に、肉棒が辿り着く。
259 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:31:19.83 ID:ZD0Y9woyo

「 」

賢いお馬鹿さんは、パパとママの笑顔を取り戻そうと必死になった。

本を読み漁り、報告。
その行為が、父を苦しめ、母に痛みが及ぶともしらずに。


すぅーーと、亀が頭を引っ込める。
呼吸を整え、溜めている。
260 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:31:49.94 ID:ZD0Y9woyo

「 」

限界がーーーー来た。
ダッドがアタシをぶった。

ママは、部屋の隅っこで泣いていて、ダッドは、何をか喚いていた。

たしか、嫉妬。
そんな感情だったと思う。


突撃兵が、容赦なく、薄い薄い防護膜を貫いた。
261 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:32:17.90 ID:ZD0Y9woyo

「ーーーーーーーー」

そうだ、アタシはあの時分かったんだ。

不可逆なんてこの世になくて。

それは切れてしまいそうな輪っかを繋ぐための方便なんだ。


兵は進む、密林の垣根を掻き分けて、奥へ奥へ。
破瓜の痛みの、その先へ。
262 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:32:50.18 ID:ZD0Y9woyo

「ーーーーーーーーーーあっ」

ここが、始まり。
総ての命。その原初。

後に、志希最大の性感体となる部位の初開発は、彼女の性誕とも言うべき日に、行われた。


鬼の鬼の手が、故=処女のボルチオに深々とーーーーーー突き刺さった。
263 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:33:30.27 ID:ZD0Y9woyo

『お前の頭の上には、けして切れない。 私達のーーー』

ーーーーこの先を、いつからか忘れてしまった。

けれど、違うのだ。
忘れてなんかいなかった。
あんまり苦しかったから。
鍵をかけて、棄てちゃった。

やめよう。
もう逃げずに向かい合おう。

こんなにも強く、カラダの奥から強くノックする人がいる。
アタシはここにいてもーーーーいいんだ、


閉じられていた扉が、子を成す宮の入り口がーーーー開いた。

恐れていたドアの外には、大事な想い出が、手を広げて待っていた。
264 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:33:57.07 ID:ZD0Y9woyo






『ーーーー天使の輪っかがあるんだから』





265 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:34:26.54 ID:ZD0Y9woyo




こうして、志希の中の、鍵穴すらも存在しなかった、がんじがらめの楔は、エクスカリバーによって、断ち切られたのだ。



266 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:35:14.52 ID:ZD0Y9woyo


ゆっくりと、志希のカラダを地面へ下ろす。

慈愛に満ちたその表情は、もはや『鬼』ではない。
ただの、一人の、恋する男だ。

「………志希……」

ーーーと、喜びも束の間、志希の体が痙攣し始める。
上原亜衣がごとく、過剰な細動を伴って、震える。

「な、なんだ!? 志希! しっかりしなさい! 志希!」

「ーーーー始まってしまいましたね」

「ちひろーーー」

志希の体を抱き締める男の側に、いつの間にかちひろが立っていた。

片手に志希の父を雑巾を持つようにつまみつつ。

その表情は物憂げで、これからの未来を予感させた。
267 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:35:57.74 ID:ZD0Y9woyo

「志希ちゃんは、もう………」

「う、嘘だ……! そんなバカなことがありますか?! これから、これからなんですこいつは……!」

やっと始まるというのに。
あんまりじゃあないか。
男は大粒の涙をこぼし、叫んだ。

「なにか、なにか、ないのか! 貴女ならなにか……!」

「いいえ、私ではどうすることもできません……。 けれどあなたなら……」

一筋の光。
先走りにも吸い付く思いで、男は懇願する。

「教えてくれーーー私は志希を、彼女を救いたいんです。 お願いだーーー母さんーーー」
268 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:36:24.17 ID:ZD0Y9woyo

「………わかりました。 そこまで覚悟があるのなら、教えましょう。 ただし、死ぬほど辛いですよ?」

「……」

無言で頷く。
例え、神に挑めと言われようが今の彼ならにべもなく肯定するだろう。

深い、マリアナ海溝よりなおも深いーーーー『愛』。

そして、ちひろの口から出た言葉は。
269 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:36:55.74 ID:ZD0Y9woyo




「志希ちゃんに、貴方の精液を飲ませてください」



「わかりまし……………え、なんだって?」



悪魔の一言だった。



270 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:37:30.68 ID:ZD0Y9woyo

「精液を飲ませてあげてください。 スペルマ、男汁、赤ちゃんの種、子種」

「ば、ばかにしているのか母さん!?」

「そんなわけないでしょう! 時は一刻を争うんですよ!」

「いやいやいやいやいやいやいや。おかしい。 何もかも間違ってます。 普通ここは、眠り姫を起こす口付けとか、私の血をあげるーとか、そういう場面ですよ」

「はっ。 ファンタジーやメルヘンじゃないんですから。というか、発想がかわいいわね、お母さんびっくり」

「〜〜〜〜〜ッッ! せめて説明してください! 納得のいく!」

「志希ちゃんが作って自分に投与したクスリは、自身の体を健康にするクスリなの。 けれど試作だったために、過剰な力と副作用が起きたんです。 ゴリラじみた腕力と、グラップラーばりの身体能力と代償に、志希ちゃんは、異常なくらいエネルギーを必要とする体になった。 覚えがあるでしょう? 女の子と思えないくらい食べてたもの」

「ほ、ホンとに説明しやがったこのアマ……」
271 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:38:27.89 ID:ZD0Y9woyo

その通りだ。
志希と過ごした期間中、食費で財布の中身が吹っ飛んだ。

「暴走は、逃げた時にエネルギーを使いすぎたのと、監禁されたせいで食べれなかったから。 あのままだと多分、皆殺しにしてカニバルしてたでしょうね」

あの野獣のような変わり様はそのため。
だが、まだ解せない。

彼は志希が匂いを嗅ぐために、股間を狙ってきたのだと思っていたが、それでは話が合わない。

匂いで腹はふくれない。
272 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:38:58.07 ID:ZD0Y9woyo

「その通りよ。 だから志希ちゃんが狙っていたのは、貴方の股間のその先、ゆえに精液」

ここで、ちひろは頭を振り、物憂げな表情をつくる。

「なんの因果なんでしょうね……偶然出会った二人。 なのに、彼女の体は貴方の肉体から発せられる匂いに魅了された。 恐らくクスリの効果も相まって。 もうわかったでしょ? 貴方の精液が、匂いの塊が、彼女にとっては最大のエネルギーなのよ」

「そ、そんな………」
273 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:39:35.86 ID:ZD0Y9woyo

痛みを伴わない教訓には意義がない。
人は何かの犠牲なしに何も得ることはできないのだから。

等価交換の原則。
命を救うためには、命を犠牲にしなければならない。

犠牲になるのは、男の命〈子種〉と、そして何より尊厳〈命〉だった。

「貴方に、できるかしら……?」

「くっ………!」

走馬灯のように志希と過ごした日々が流れる。

『にゃはは♪ キミ、ほんとにいい匂いがするね……何だか、安心する、カモ』

迷いは、一瞬だった。
274 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 07:40:12.05 ID:ZD0Y9woyo



「……やってやる! やってやりますよ畜生め! たかが、私のプライドくらい、溝のネズミに食わせてやればいいんでしょう!」



ーーーーだが、男の決意とは裏腹に、


バベルは再び倒れていた。

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