ネリー「アワイとネリーは」 淡「プロ歴100年級!」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 21:41:17.64 ID:99KCVrbSO

淡「ごめんなさい! ほんとはぜんぜんそういうのしたことなくて……!」

ネリー「ネリーもほんとは経験ないの……結婚するまでそういうのしたらダメだから……」

秋一郎「くくっ、なに勘違いしてんだ」

淡「え?」

聡「まったく最近のガキはマセてるもんだ。その点うちの孫娘は貞淑で……」

秋一郎「おめえの孫自慢は聞き飽きたよ」

ネリー「あの、ちがうの?」

秋一郎「安心しろ、小便くせえ小娘に催すほど青くねえよ」

聡「おおかた友達の前で見栄張ってしまったんだろうが、
  若いモンが軽はずみに自分を安売りするようなことを言うもんじゃないな」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 21:43:19.92 ID:99KCVrbSO

淡「……でも乗り気だったじゃないですか」

秋一郎「ああ、じゃあ約束どおり肩揉んでくれや。ガチガチに凝り固まっちまってな」

淡「肩揉み……」

聡「やっぱりたまに整体行かないと。揉んでくれる孫と一緒に住んでるんなら話は別だけどねえ」

秋一郎「最近は孫が部活で忙しいんだろ? おめえもだいぶ腰悪いだろが」

聡「そうなんだよな。そっちのちっこいお嬢ちゃんはこっちの長椅子んとこに来な。
  靴脱いで乗ってもらおうか。腰の上を踏む感じでな」

ネリー「腰マッサージ……」

聡「なーに、ほんの5分もやってくれりゃいい。しっかりご奉仕頼むぞ」

秋一郎「なに呆けてんだ。気は進まねえが、やっぱり不健全なマッサージにするか?」

淡「いえ! すぐに!」

ネリー「ご奉仕させていただきます!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 21:47:28.33 ID:99KCVrbSO

ネリー「……」

淡「……」

ネリー「そういえば男子プロは昔の方がレベル高かったんじゃなかったっけ」

淡「あー、そうだった。たしかあのぐらいの年代が最盛期だよ」

ネリー「歴代最高の時代の最高の選手じゃなー」

淡「それにおじいちゃん相手にムキになるのもアレだしね」

ネリー「そうだよ。なんか今まで調子出ないと思ったら、
    やっぱり一回り以上歳が上だと遠慮しちゃうっていうかさ」

淡「あるある……はは……」

ネリー「……」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 21:50:17.48 ID:99KCVrbSO

淡「……ねえ、実は私たちってまだプロには……」

ネリー「……そんなわけない。もういいよ。もう昼間の麻雀はおしまい」

淡「え?」

ネリー「一応留学生の身だから大人しくしてたけど、もう遠慮しない。
    ネリーは国で小さい頃から大人相手に闇麻雀で力をつけたんだから。本領発揮してやる」

淡「ああ、私もそっちの方が得意かな」

ネリー「じゃあ次は手積みで相手してくれる人を探そう。
    万が一のときのためにサイコロ持ってきてよかった」

淡「へー、手積みの方が慣れてるんだ。まあ私らならどっちでも支配しちゃうけどね。
  なんたって――」

ネリー「アワイとネリーは」

淡「闇プロ級!」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 21:51:45.13 ID:99KCVrbSO

国広一「ツモ」

ハギヨシ「ポン」

一「ツモ」

一「ロン」

ハギヨシ「チー」

一「ツモ」

一「ツモ」

ネリー(は……? こっちは積み込んでるのにそれより早い……
    すり替えるだけじゃ追いつけない……)

淡(みんな5向聴の気配から1巡で1向聴とかテンパイになってる!
  なにこれすっごい!)

一「萩原さん見逃ししてるでしょ? ボクばっかり和了ってごめん」

ハギヨシ「いえ、同じ高校生雀士の国広さんから引導を渡して差し上げた方が
     道を正せるという話ですので」

一「まあね。ツモ……そろそろやめる?」

ネリー「……まだだよ。次で本気出して親かぶり喰らわせてやるから」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:02:41.63 ID:99KCVrbSO

ネリー(ちょっと危険だけど左手芸連発してやる)

一「長野から来るので疲れてるから早いとこ済ませたいんだけどな。
  パーティー終わったらとんぼ返りだし」

淡「泊まっていかないんですかー?」

一「予定入ってるからね……みんなでピクニックとか。
  ねえ萩原さん、明日は晴れるかな?」

ハギヨシ「予報では長野の降水確率は10%です。まず大丈夫でしょう」

ネリー(なにがピクニックだよ、余裕ぶっちゃって。その予定、傷心旅行に変えてあげるよ)

淡「――よーし、今度こそ……国広せんぱーい、1打目から長考ってカッコ悪くない?
  早くツモりたいんですけどー」

一「それがさ……和了ってるんだ。ツモ」

ネリー「なっ!?」

淡「はぁ!? 天和じゃん! すっごい! 初めて見た!」

ネリー「まさか……」

淡「ねえ写真撮らせて! うわ〜ホントに和了ってる」

ネリー「積み込みだよ! サイも自5だし!」

一「言いがかりはやめてよね。君たちと同じ1年生でも、原村さんだったら
そんなこと言わないと思うよ。ねえ萩原さん?」

ハギヨシ「はい。確率的にはあり得ることですね」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:08:30.68 ID:99KCVrbSO

一「それにもしこれがイカサマだとしても、イカサマっていうのは現場を押さえなきゃ。
  和了った後でケチつけても証拠がないんじゃどうしようもないよ」

ネリー「……くそ、二度振りにしておけば……同じことか……」

一「サイだけ自動卓の使う? それとも手積みはやめる?」

ネリー(自動卓なら積み込みは防げる……いや、それだとこっちがイカサマするのも難しくなるし……)

ハギヨシ「……イカサマを疑われているようでしたら、サイの取り決めを変える手もございます。
     例えば、開門の山は対面で固定、位置は上家と下家がサイを一つずつ振った合計、など」

淡「それだと親が配牌にぜんぜん関われないね」

ネリー(それならネリーの対面の国広と下家の萩原が同時にサイを振ることはないか……)

ネリー「いいよ。それでいこう」

一「それじゃ次いこうか……もう崩していい?」

淡「うん。キレイに撮れた。休み明けに部のみんなに自慢しよーっと」

ネリー(さてと、これだと国広の親では対面のネリーの山がドラになる。
    萩原がサイを操作できても、もう一つはアワイが振るから2になるのはそうそうないだろうし)

一「サイは……7だね」

淡「よーし、私も地和……無理かー。ん? ネリー、ドラめくってよ」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:09:52.57 ID:99KCVrbSO

ネリー「あ、ルール変えたばっかりだから忘れてたよ」

ネリー(ふふ……めくるときにすり替えてネリーに都合のいいドラにしてやる。
    ここは南を置いて、後で山の右に仕込んだ西を持ってくるか)

ハギヨシ「あっ……と、失礼」

ネリー(牌を落とした……しめた、この位置ならアワイが取って渡すはず)

淡「ちゃんと取ってくださいよ〜。見えちゃった。はい」

ハギヨシ「ありがとうございます」

ネリー(よし、そっちに意識がいってる隙にすり替え完了。西ドラ3確定!)

一「あー、まいったな」

淡「なに? さっきので運使い果たしちゃった?」

一「これ、和了ってるんだよね。ツモ」

ネリー「はぁ!?」

淡「うわーっ! 2連続天和! なにこれぇ!」

ネリー「そんなわけないでしょ! イカサマだよ!」

一「だから確率的にあり得ることだって。ねえ?」

ハギヨシ「はい。なかなかの偶然ですね」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:12:57.59 ID:99KCVrbSO

淡「すっごいよ! だって配牌はネリーと私の山からだったし、サイは私と執事さんが振ったし!」

ネリー(そんなはずは……あっ! ツバメ返しだ! それしかない。
    開門が対面固定ってことは、萩原のサイが1なら配牌のとき国広の山には差し掛からない)

ネリー「……牌落としたのってわざとでしょ?」

ハギヨシ「はて、仰る意味がわかりませんが」

ネリー「国広と反対側に牌を落としてアワイの注意を引いて、
    牌を渡してもらう腕でネリーの視界を遮ったんだ。その隙にツバメ返しを――」

ネリー(いや、だとしてもあの一瞬で……しかもまったく音がしなかった……
    牌を積むときだって注意して見てたのに……こんなの勝てっこない……)

一「萩原さんはネリーさんがドラのすり替えしようとしてるのが気になったんじゃないかな」

ネリー「……え、なに言って……」

一「最初の局だけ様子見してたけど、あとは積み込みに左手芸に握り込みに、やり放題だったよね。
  まあこっちの方が先に和了っちゃったけどさ。はっきり言ってバレバレだよ」

淡「え、ネリーってイカサマしてたの!?」

ネリー「……」

一「普段はしてないんだろうけど。インターハイのときもちゃんと打ってたし。
  でも奥の手として使ってたらいつか痛い目に会うよ」

淡「それはダメだよネリー」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:15:09.67 ID:99KCVrbSO

ネリー「アワイだって得意だって言ったでしょ」

淡「そんなこと言ってないよ」

ネリー「言ったよ! 昼間の麻雀より得意だって。
    闇プロっていうのもあんまり聞かない言葉だったけど、裏プロのことでしょ?」

淡「なにそれ。私はただ暗いところの方が星がよく見えるってだけで……
  だから節電って理由つけて部屋暗めにしたんじゃん」

ネリー「そんな……」

一「あれイカサマがバレにくいようにじゃなかったんだ。
  とにかく、イカサマはろくなことにならないからもうやめなよ」

ネリー「……」

一「そのうち粘着質の液体を練り練りして泡泡になる仕事に就くハメになるよ。ね?」

ネリー「……やってないよ。現場を押さえなきゃダメなんだよね? 証拠ないでしょ?」

一「……はぁ、往生際が悪いなぁ。しょうがない、ちょっとごめん――ね」

ネリー「あっ! 返せ!」

一「帽子のここと、ここと……ここもか。ほら、牌が仕込んである。動かぬ証拠ってやつだよ」

ネリー「……」

淡「ほんとにイカサマしてたんだ……」

一「じゃあ、大星さんの言ってたようにケジメつけなきゃね」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:17:39.42 ID:99KCVrbSO

淡「え……私が……?」

ハギヨシ「“イカサマなんてしたら指つめてケジメだよ”――確かに対局前にそう仰いました」

淡「だってそんな、ネリーがやるなんて思ってなかったから……」

ネリー「そんなの無効だよ! そっちだってイカサマしてたんだから!」

一「……やっぱり君はサマを使うべきじゃないね。そんな理屈が通用すると思ってるんだから。
  イカサマを証明してみせてよ。ボクはした。君はできない。それが全てだよ。それじゃ――」

ネリー(えっ! 鎖で縛られ……どこから出した!?)

一「じゃあ手を固定して、と。ごめんね萩原さん、切る方任せちゃって」

ハギヨシ「いえ、こればかりは国広さんにさせるわけにはいきませんので」

ネリー「放せ! こんなの……!」

淡「だめだよ! 血がどばーって出るよ! 卓汚して怒られるよ!」

ハギヨシ「ご安心を。痛みも出血も最小限に致します」

一「萩原さんの腕前は見事なものだから、綺麗にいくよ。
  それになにも全部は取らないよ。親指さえなければ麻雀は難しいからね」

ネリー「ウソ……でしょ……?」

ハギヨシ「残念ながら」

ネリー(今どこからナイフ出した!?)
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:19:26.07 ID:99KCVrbSO

ネリー「やだ……待って……」

淡「私が変なこと言ったせいで……やめて……」

一「大星さんが言わなくても、どの道こうなってたよ。
  裏街道の末路はこういうものだって覚えておくといい」

ハギヨシ「参ります。御覚悟を」

淡「あ……だめっ……!」

ネリー「や……許し……」

ハギヨシ「ふっ!」

ネリー「わあああぁぁ!」

淡「いやああああぁぁ…………って、あれ? 指、ついてる……」

ネリー「…………ひっ、痛く、ない……?」

一「な〜んちゃって。刃が引っ込むおもちゃナイフでした〜」

ハギヨシ「よく見れば粗雑な作りですね」

ネリー「……」

一「ごめんね。怖かった? でも今回は偽物だったけど、場合が場合なら本物だったかもしれないよ。
  これに懲りたらもうイカサマに頼るのはやめなよ。そんなの使わなくても十分強いんだからさ」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:22:28.81 ID:99KCVrbSO

ネリー「……ふ、ふええええぇぇ〜……!」

一「あっと、やりすぎちゃったかな」

ネリー「ママ〜! デダ〜!」

一「……お母さん?」

ハギヨシ「グルジア語のお父さん・お母さんですね。ややこしいですがお父さんの方がママです」

一「万能すぎる……萩原さん何ヵ国語わかるの」

ハギヨシ「執事としてのたしなみです」

一「執事のハードル高いなぁ……」

淡「ネリー! 無事でよかったよおおおぉぉ!」

一「大星さんも安堵で泣いちゃってるし……これ、どうしよ」

ハギヨシ「昔のアイドルには泣く子を手品で元気にさせる方がいたそうです。
     今こそ手品の本来の使いどころなのでは?」

一「そっか、そうだね。それじゃ手軽にやれるやつで……ほぉ〜ら、親指が――取れちゃった」

ネリー「うああああぁぁん!」

淡「びええええぇぇん!」

一「あれ、逆効果!?」

ハギヨシ「そのネタは選択ミスかと」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:24:34.31 ID:99KCVrbSO

一「あー、久しぶりに技使っちゃったな。罪悪感が……」

ハギヨシ「公式試合でもないのですから、あまりお気になさらずに。
     そもそも透華お嬢様たってのご希望ですから、気に病む必要もないのでは?」

一「そうなんだけど、透華も苦渋の選択だったと思うし。絶対竹井さんの口車に乗せられたんだよ。
  ボクにしかできない人助けだって言ってたけど、べつにボクじゃなくても解決できたでしょ」

ハギヨシ「ですから、私共にお任せいただけるように申し上げたのですが」

一「……だって、透華の期待には応えたいじゃない。嘘の話だったとしてもさ」

ハギヨシ「まったくの嘘というわけでもありませんが。ここで止めなければ悲劇を招いていた
     可能性も十分にあり得ます。そして生半可な説得では止められなかったでしょう」

一「まあ、これで懲りてくれるといいんだけど。ボクみたいになってほしくないからね」

ハギヨシ「これを機に、今後も手枷は外されてはいかがでしょう」

一「うーん……今回は特別だよ。さすがにあれがあったらあの子の目を欺くのは難しかっただろうから」

ハギヨシ「……透華お嬢様は龍門渕家としてこのような会合に招かれることが度々ございます。
     あのとおり明朗闊達なお方ですから、口さがない噂話など歯牙にもかけないのですが……」

一「噂話?」

ハギヨシ「龍門渕の跡取りは付き人に手枷を強要する嗜虐趣味――
     そのような不名誉な噂話は可能な限り霧散させたいというのが、私共の願いなのです」

一「……善処するよ。ショールか何かで隠れるかなぁ……」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:26:18.55 ID:99KCVrbSO

ネリー「……」

淡「……」

ネリー「ふう〜、なんだかんだ言っても日本人は甘ちゃんだね。演技に騙されるなんて。
    イカサマが見抜かれたのはちょっとびっくりしたけど、ネリーの方が一枚上手だったね」

淡「……」

ネリー「泣きの演技で同情を誘うのもテクニックのうちなんだよね。
    技ではやられたかもしれないけど、駆け引きでは勝ったかな」

淡「……ホントに心配したんだから」

ネリー「……ごめん」

淡「ねえ、もうやめよっか。やっぱり私たちまだ……」

ネリー「ダメ! ここでやめたら負け犬だよ。勝手に勝負を挑んでボロ負けって、絶対お説教だよ」

淡「それはやだけど……でも勝てないし……」

ネリー「大丈夫、次は絶対勝つから。これまでは苦手な日本式のルールだったから。
    ネリーの一番得意な欧州ルールならこっちのもんだよ」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:28:31.73 ID:99KCVrbSO

淡「欧州ルールって、歌ってもいいってやつ?」

ネリー「それだけじゃなくて、トラッシュトークとかなんでもありなの。
    物音立てて威嚇したり、足でつっついて牽制したり。わざとノロノロ打ってペース乱したり」

淡「げ、セコいじゃん」

ネリー「ほら、サッカーとかでも時間稼ぎとか審判に隠れてユニフォーム引っ張るとかあるでしょ。
    ああいう感じでテクニックとして認められてるから、ほとんど反則取られないの」

淡「なんでもって、イカサマも?」

ネリー「それはダメ……イカサマはもうしないよ」

淡「それならいいか。じゃあ次で最後にしようね」

ネリー「わかったよ。最後ならアワイも思いっきり煽るといいよ。口は得意でしょ?」

淡「まあね。好きに喋っていいのはおもしろそう」

ネリー「ふふ……公式試合でもないから審判はいない。
    なんでもありならネリーが最強って証明してあげるよ」

淡「じゃあ今度こそ――」

ネリー「アワイとネリーは」

淡「プロ……セミプロ級!」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:29:48.94 ID:99KCVrbSO

獅子原爽「パウチカムイ」

戒能良子「ん……」

ネリー「ふひゃっ!」
淡「ふひゃっ!」

良子「……なるほど、はやりさんが恐れるのも無理はないね」

爽「あれ、効いてない……?」

良子「初手テスカトリポカで防がせてもらいました」

爽「なんだそれ!」

良子「今度はこっちからいきましょうか――アスモデウス」

ネリー「ふひゃっ!」
淡「ふひゃっ!」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:31:17.90 ID:99KCVrbSO

良子「アスモデウスは色欲を司る悪魔。快楽を与えることも――」

爽「やっべー」

良子「……何ともないみたいだね」

爽「ホヤウがいなけりゃ即死だったな」

良子「やるね。でも私はそういう悪魔をあと2体呼び出せる。
   二重三重の感覚にいつまで耐えられるかな?」

ネリー「ふひゃんっ!」
淡「ふひゃんっ!」

爽「こっちもまだぜんぜん本気じゃないんですよね〜。リミッター外すと私もしばらく
  制御できなくなるから、どうなっても知らないですよ?」

ネリー「ふひゃあぁっ!」
淡「ふひゃあぁっ!」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:33:19.32 ID:99KCVrbSO

爽「――そろそろやめません?」

良子「……しょうがないか。ダメージを負わせることができなかったのは残念だけど」

爽「お互いに打ち消す力の方が強かったみたいですね。
  それにしても、2人とも意識あるかな? ずっとツモ切りばっかりだったけど」

良子「この子たちが何でもありで打ちたいって言ってきたんだけど、
   自信のわりにぜんぜん相手にならなかったね」

爽「こいつらの想定する“何でも”の範疇を超えてたんじゃないかなー」

良子「そういえば君が遅れて部屋に入ってきたとき、
   ネリーさんなんかはそれまでの強気が嘘のように動揺してたね」

爽「時間もなくて即始めちゃったけど、ほんとは中止にしたかったのかな。
  私もほんとは使いたくなかったんですからね。戒能プロにお願いされちゃしょうがないけど」

良子「一度直に体験してみたかったものでね。交通費は私持ちだから、
   旅行と軽食付きのアルバイトとでも思ってほしい」

爽「まあプロの人たちと会える機会も貴重なんでいいですけど」

良子「なんなら後でスイーツでもおごるよ。ここのビュッフェには置いてないような
   珍しい品を扱う隠れた名店が近くにあるんだよ。時間があれば」

爽「マジすか、さすが東京。ごちそうさまです!」

良子「じゃあ戻って何か飲みながら話そうか。君の力には興味があるからね」

爽「あれ、いいんですか? 負けたら恥ずかしい話暴露するって条件だったけど。
  “戒能プロのクールなお顔が屈辱で歪むところが見た〜い”ってだいぶ煽られてたじゃないですか」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:35:17.38 ID:99KCVrbSO

良子「まあ、興味もない――」

淡「……私、恥ずかしい、話、なんて、ないし……」

ネリー「……ネリーも、清く、正しく、生きてる、から……」

爽「あ、ずりーぞ」

良子「……黙ってれば反故にしてもよかったんだけど、ウソつきの悪い子にはおしおきかな。
   さっき呼び出した悪魔の中に、強制的に秘密を暴くのがいてね」

淡「え……」

良子「――なるほど。大星さんは中学2年の頃の体験が元で電池フェチ、と」

淡「まさか……」

良子「好奇心で単3電池を挿」

淡「ひいいいぃぃ! だめ! やめて!」

爽「マジで!? え、単2は? 単1は?」

良子「それは」

淡「やめてくださいぃ! ごめんなさい! お許しを!」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:43:32.47 ID:99KCVrbSO

良子「まあいいでしょう。それで、清く正しく、でしたっけ?」

ネリー「……」

良子「――へえ、馬乗り遊びが好きなんだね」

ネリー「カンケリ――じゃない、缶馬ぐらいべつにいいでしょ。
    子供っぽいかもしれないけど、恥ずかしくなんかないよ」

良子「そっちじゃなくて、寮の部屋での1人遊びの方だよ」

ネリー「ちょっと」

良子「夜な夜な机の角」

ネリー「わあああぁぁ! ちがう! ちがうの!」

爽「角派かよ。小さい頃にハマっちゃったのか?」

良子「それが」

ネリー「待って! マパティエ! マパティエット!」

爽「余裕なさすぎて母国語出てる?」

良子「グルジア語の“ごめんなさい”だね」

爽「なんでわかるのこの人……マジで海外で傭兵やってたとか……?」

良子「ノーウェイノーウェイ……」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:44:52.97 ID:99KCVrbSO

照「あ、いた」

智葉「その様子だとだいぶヘコまされたようだな」

照「トバされた?」

淡「数え切れないぐらい……」

ネリー「尊厳もプライドもトバされたよ……指はトバされなくて済んだけど……」

智葉「そうか。自分たちの思い上がりが身に染みたか」

淡「井の中の蛙でした」

ネリー「蛙どころかノミだったよ……社会のダニなんだ……」

淡「私はしらみだ……」

照「相当効いたみたいだね。普段からは考えられないぐらいネガティブになってる」

智葉「効きすぎじゃないか? 対局を確約できたのは3組ほどだったはずだが」

照「色々連絡してみたけど、結局は効果あったの最初の数人だけだったんだよね」

淡「……ごめんなさい、勝手に対局申し込みました」

智葉「やはりそうか。後で礼に赴く必要があるな」

照「誰と打ったの?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:45:56.67 ID:99KCVrbSO

ネリー「最初に頂点取ろうと思って……小鍛治プロと三尋木プロ」

智葉「ぶっ!」

照「いきなり……」

淡「そこは勝てなかったから、次に強い瑞原プロと野依プロに……」

照「チャレンジャーだね」

智葉「勇気と無謀は別だ」

ネリー「トッププロは厳しいと思ってたら、ヒメマツの監督が声掛けてきて……」

智葉「そこは愛宕が話を通してくれたところだな」

照「善野監督って体力的にプロは断念したみたいだけど、
  実力はあの黄金世代でもトップクラスって話なんだよね」

淡「その世代はみんな強いからもっと上の世代を狙おうとしたら、千里山の監督と宮守の監督が来て」

智葉「そこも愛宕ルートと姉帯ルートだな」

照「親交があったみたいで一緒に打ってくれるって言ってたよね」

ネリー「それでも勝てなくて、女子はレベル高いから男子ならって思って、大沼プロと南浦プロに」

智葉「よりによってそこか……」

照「黎明期を支えた世代って独特の凄味があるよね」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:47:45.12 ID:99KCVrbSO

淡「それで……」

ネリー「……その、今度は手積みでって」

智葉「手積み……? ふん、なるほどな」

淡「そしたらすごい良いタイミングで龍門渕の人が打とうって言ってきて」

照「竹井さんが話通してくれたんだって」

智葉「保険が利いたな。それで指がトぶところだったというわけか」

ネリー「うん……でももうトぶようなことしないから」

智葉「……ならいい。私たちの呼んだ相手全員とは打ったようだな。それで終わりか?」

淡「負けっぱなしだったから最後に一発逆転狙って、テルに勝った人に勝てば認めてくれるかなって、
  戒能プロを倒そうと思ったの。なんでもありのルールで」

照「なんでもありで!? 一番やっちゃいけないところ……」

ネリー「そしたら戒能プロが打ちたい人呼んであるって、後から獅子原が来たんだよ」

照「うわあ……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:49:28.50 ID:99KCVrbSO

智葉「宮永から話は聞いていたが、そんなに危険なのか」

照「戒能プロは2年前のインターハイで当たったとき、
  チラッとしか見えなかったけどなんかものすごいものたくさんに守られてた」

智葉「獅子原とは対局経験はなかったよな?」

照「インターハイの開会式で見かけたとき、戒能プロと同じような感じがした。
  準決勝あたりではもう薄れてたけど」

智葉「私からしたらお前も同じような危険を感じるがな」

照「根本的に違うんだよ。あの人たちは麻雀とかそういう次元じゃなくて、
  なんていうかとにかくヤバい」

智葉「そうか。そうなるとやはり想定した以上に恐ろしい面子と卓を囲んだわけだな」

照「たぶん私でもこの連戦だったらしばらく落ち込む」

智葉「小言の一つでもくれてやろうかとも思ったが、私から何か言うまでもなさそうだな」

ネリー「バイトはやめるよ。サトハがいたときみたいにちゃんと練習するから」

淡「私も真面目に練習する。でも……忙しいのはわかってるけど、たまにはテルも部に顔出してよ」

照「え、うん。プロ入りのためのあれこれも一段落したから、これからはちょっと打ちに行けると思う」

智葉「私もたまには様子を見に行くか」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:51:50.75 ID:99KCVrbSO

ネリー「ほんと? ぜったい?」

智葉「やけに食いつくな……指切りしてもいいぞ?」

ネリー「ひっ……!」

淡「だめ、それはだめ……」

照「指切りって約束のことでしょ」

智葉「すっかりトラウマになってるようだな……」

照「心配しなくても、辻垣内さんなら大事な後輩をほっぽったりしないよ」

智葉「おい」

照「ファミレスで話したときそう言ってたよね」

ネリー「大事? 代替わりしたらぜんぜん来なくなったのに?」

智葉「……宮永と同じで、プロ入りのためにいろいろ忙しかったんだよ。ずっと気には掛かっていた。
   お前は勝負には貪欲だが、どうも金が目的で麻雀はそのための手段になっている気がしてな」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:54:15.85 ID:99KCVrbSO

ネリー「だめなの? プロだってお金のためじゃないの?」

智葉「もちろんそれも大事なことだが、プロの面々と接していると感じるんだよ、矜持をな。
   勝つことそれ自体が目的で、己の麻雀を突き詰め高みを目指す揺るぎない信念を持っている」

ネリー「そんなのむずかしいよ……サトハは持ってるの?」

智葉「どうかな。体現しようと努めてはいるが」

照「そうだね、プロとアマチュアの違いってそこかもしれない。
  淡も負けん気は強いけど遊んじゃうところあるから。アマチュア根性っていうのかな」

淡「うっ……」

智葉「2人とも才覚ならば私よりも恵まれているだろう。
   驕らず正道に就いて超えてみせてほしいものだな」

照「アマを卒業すればもっと強くなれる」

淡「……うん、がんばる」

ネリー「わかった」

智葉「ふ、結局説教じみたことを言ってしまったな」

照「ところで、2人ともなんで変なメイクしてるの?」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 22:56:27.56 ID:99KCVrbSO

智葉「そうだ、急にケバケバしくなっていて驚いたぞ」

淡「あ、罰ゲームで……」

照「すごいね、白塗り黒涙に口裂けって。ジョーカーみたい」

ネリー「え!?」

智葉「いや、そういうレベルじゃないだろう。こういうのはデスメタルとか
   ブラックメタルって言うんじゃないのか」

淡「……あ! 大泣きしたから流れ落ちたんだ!」

ネリー「そういえばアワイの顔、なんか変だと思ってた」

淡「ネリーの変な顔も気にならないぐらい切羽詰まってた……」

ネリー「顔洗ってくる!」

照「メイク落とし持ってる?」

淡「石鹸でなんとかする!」

智葉「……その間に挨拶回りに行くか」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:01:33.40 ID:99KCVrbSO

良子「おや、そこにいるのは私がディフィートしたことがある宮永さんじゃないですか」

照「……どうも」

爽「やっほー、ご無沙汰」

照「あ、獅子原さんも来てたんだ」

爽「インハイ以来だね」

智葉「戒能プロ。うちの者が世話になったようで申し訳ありません」

良子「いや、こっちも面子が欲しいところだったからね。どうせなら宮永さんを入れて
   公式試合じゃできないトバし方をすればよかったかな、残念」

爽「なに物騒なこと言ってんですか」

智葉「……なんだかお前に当たりがきつくないか?」

照「なんか知らないけど目の敵にされてるみたい。会う度に突っかかってくる」

良子「あの後輩さんたちは一緒じゃないのかな?」

智葉「ああ、ちょっと化粧直し――というか化粧落としに行ったところです」

照「あれ、獅子原さんたちが最後に対局した相手だって言ってたけど、
  そのときはもうひどい状態だったんじゃ……」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:07:31.26 ID:99KCVrbSO

爽「化粧が? かなり気合い入ったブラックメタル風だったよね」

照「言ってくれればよかったのに」

爽「そういうメイクじゃなかったの? てっきり反キリスト系の属性で私に対抗しようとでも
  してるのかと。まあ私はそっち系依存ってわけじゃないから効果ないけど」

良子「闘牌モードとしてのメイクだと思ってたから、特に違和感はなかったね」

智葉「いや、この場であの仮装はどう見ても異常でしょう」

良子「南米なんかで勝負した時にはよく見たよ、あのぐらいのメイクは。
   非日常の装いは霊的な感覚を高めるからね」

爽「そうそう。アイヌの人たちも昔は唇のまわりに刺青入れたりしてたみたいだし」

良子「私も高校の頃は対局に備えて髪を伸ばしたりしてたね」

爽「ああ、髪は基本ですよねー。私は長いの苦手だからアシンメトリーで非日常を演出してるけど」

良子「制服のネクタイもそうかな?」

爽「あ、わかります? 正装のシンボルをあえて裏返すことで呼び寄せやすくなるって
  気づいたんですよねー。戒能プロは今は対局のとき特にそういう装いしてないですよね」

良子「シンプルに数珠的なものでまかなうようにしたからね」

智葉「……何の話をしてるんだ? 麻雀の要素あったか?」

照「ほら、なんかヤバいでしょこの人たち」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:08:41.17 ID:99KCVrbSO

智葉「まあ、ふざけていると取られなかったのは幸いか」

照「イタズラ好きで変なメイクとかやりそうだもんね」

良子「後輩のやんちゃに困ってるみたいだね」

智葉「恥ずかしながら」

照「実力あるからって、けっこう自由にさせちゃってたところあったから……」

智葉「舐められているところはあるだろうな」

照「私も先輩の威厳あんまりないからなあ」

智葉「そういうわけで、迷惑を掛けた方々に挨拶回りに出向こうとしたところです」

爽「大変だね〜。行ってらっしゃい」

良子「……私も人にどうこう言える立場ではありませんが、人生の先輩として一つ教えておきましょう」

照「はい?」

良子「それまでちゃんと練習してた子がサボったり度が過ぎて生意気になったりするのは、
   往々にして深層心理ではただかまってほしいだけだったりするものだよ。
   親とか先生とか友達とか――敬愛する先輩とかにね」

智葉「……ご助言感謝します。では失礼します」

照「それじゃ……」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:10:11.05 ID:99KCVrbSO

爽「ふーん、なるほどね〜。さっきの覗き見大好きな悪魔情報ですか〜?」

良子「いや、これはただ私が感じたことを言ったまでだよ」

爽「そうすか。私もね、そういう法則一つ知ってるんですよ」

良子「?」

爽「普段礼儀正しい人がやけに突っかかったりするときっていうのは、
  往々にして嫉妬が絡んでるんですよ。敬愛する先輩とかにね〜」

良子「……詳しいね」

爽「身近に嫉妬大王がいるもんで、わかっちゃうんですよね」

良子「あのアイドルの子かな?」

爽「いや、あいつは全然そういうのなくて、素直でいい子ですよ」

良子「どうかな。そういう子ほど不満があっても抱え込んで、
   爆発すると手が付けられなくなるものだよ」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:12:16.05 ID:99KCVrbSO

爽「え、マジで」

良子「本当はアイドルなんてやりたくないんじゃないかな。
   強要してくる先輩に辟易していると思うよ」

爽「……いや、そんなことはない! 惑わせようったってそうはいかないですよ。
  はやりんの手先め……」

良子「仕方ないですね。はやりさんを付け狙う不届き者には、
   はやりさんの魅力をたっぷりと教えてあげましょう」

爽「あ、肌めっちゃキレイですよね」

良子「そう! そうなんです! 若い頃から――あ、いや、今も若々しいですけど、とにかく昔から
   節制に努め自分を磨き上げてきた人だから、その努力が形として表れているわけです。
   一緒に温泉に行ったときなんかも、それはもう天女の如く……」

爽(なんだこのテンション……UFO語りするユキにそっくりだな)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:14:07.71 ID:99KCVrbSO

智葉「――敬愛、か。どうなんだろうな」

照「少なくとも辻垣内さんは慕われてると思うよ、ネリーさんに」

智葉「そうか?」

照「見てればわかるよ。あの子けっこう味方にも警戒心出すけど、辻垣内さんには一切ないもん。
  あ、一見堅そうなんだけど、中身はすっごくふわふわしてる」

智葉「……しかし私から見れば大星こそお前に完全に懐いてると思うがな」

照「そうかな。菫みたいに厳しくできなくて甘やかしちゃうからだと思うけど」

智葉「役割分担というものもあるだろうが、自信家のあいつが盲目的に認めているというのは、
   そういうところを超えて慕っているということだろう」

照「それならありがたいけど」

智葉「傍から見ると口が悪く上級生にもキツいことを言うやつだが、お前にはそうでもないだろう?
   ん、柔らかく口当たりがいいな」

照「……まあ、私も淡のお調子者なところとかちょっと生意気なところとか、
  嫌いじゃないっていうか一緒にいて心地良いし。辻垣内さんもそうじゃない?」

智葉「……そうだな。ネリーは私にはない無邪気さがある。
   それがまあ、なんだ、少し羨ましかったり癒やされたりもする」

照「もう部は引退したし、新しい代にあんまり口出さない方がいいかとも思ったけど、
  やっぱりまだまだ目が離せないね」

智葉「ああ。結局のところ、私らもあるべき厳格な先輩の姿からは程遠いか。まったく、甘いな」

照「うん、甘いね」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:15:22.10 ID:99KCVrbSO

淡「あ、テルたちいた!」

ネリー「遅いよ。どこ行ってたの?」

照「ごめん、もっと早く戻るつもりだったんだけど」

智葉「思ったより挨拶が必要な人が多くてな」

淡「……テルー、口のまわりクリームついてるよ」

照「えっ、しまっ……!」

淡「可愛い後輩をほっぽってお菓子食べてたんだ。ふ〜ん……」

照「私はただ甘照大神の導きのままに……」

淡「テルも甘を卒業できてないじゃん」

智葉「だからケーキ全種類制覇はやめておけと……」

ネリー「サトハ、きな粉ついてるよ」

智葉「なっ……!? ごほっ! げほっ!」

ネリー「むせるほど……」

智葉「いやこれは、即効性のエネルギー補給としてだな……」

ネリー「信玄餅食べてるだけじゃ信念持ちにはなれないよ」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:16:22.75 ID:99KCVrbSO

照「……まあそれはそれとして、これからも頼ってくれていいからね」

智葉「ああ。卒業しても遠慮するな」

淡「どうかな〜。なんかちょっと頼りがいがな〜」

照「え」

ネリー「プロになってお給料出たら際限なく買い食いしてそうだしね〜」

智葉「何を言う」

淡「来年は部長やらされるかもしれないし、菫先輩に頼るべきかな〜」

ネリー「ネリーも留学生特有のめんどくさいこととかあるし、
    メールとかでメグを頼った方がいいかな〜」

智葉「ぐっ……」

照「そんな……」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:17:46.85 ID:99KCVrbSO

淡「な〜んてウソウソ。ありがと。これからもよろしくね、テルー」

ネリー「頼りにしてるよ、サトハ」

照「……焦った」

智葉「まったくイタズラ好きなやつらだ」

郁乃「なに〜? イタズラ〜?」

ネリー「あ、ヒメマツの……」

淡「さっきはどうも……」

郁乃「あら〜お化粧落としちゃったん? 可愛かったのに〜」

智葉「赤阪監督。うちの者が世話になったようで申し訳ありません」

照「本来こちらから伺うべきところをすみません。対局していただきありがとうございました」

郁乃「ええよ〜こんぐらい」

淡「挨拶回りしたんじゃなかったの?」

照「この人だけつかまらなかった」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:19:43.86 ID:99KCVrbSO

郁乃「まあ大星ちゃんもヴィルサラーゼちゃんも頑張ってな〜。
   1年生で強いのが出てくるとウチの連中にも発破掛けやすいわ〜」

淡「あ、はい」

ネリー「がんばり、ます」

郁乃「宮永ちゃんと辻垣内ちゃんも後輩にこれ以上差つけられないように頑張らんとな〜」

智葉「ん?」

照「え?」

郁乃「部内じゃこの子らにボロ負けしとるんやってな〜。
   プロ入りするのにそれやったら示しつかんわ〜」

淡「いや、それは……」

ネリー「ちょっと吹いたっていうか……」

郁乃「え〜? 宮永ちゃんはお菓子賭けていっつも巻き上げられて泣いてたんやろ?
   大星ちゃんがポッキーの持つとこだけ恵んであげてたって言ってたやん」

照「……」

淡「あわわ……」

郁乃「辻垣内ちゃんは毎回トバされて罰ゲームでセンブリ茶飲まされて泣いてたってな〜。
   ヴィルサラーゼちゃんが情けでたまに烏龍茶にすり替えてあげてたんやろ?」

智葉「……」

ネリー「い、意味わかんない……」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:21:56.74 ID:99KCVrbSO

一美「こんなところにいた。すぐどこかにふらふらと……郁乃、来なさい」

郁乃「え〜、若い子らと楽しくおしゃべりしてたのに〜」

一美「そういう空気やなかったわ」

郁乃「そんじゃまたな〜」

ネリー「……」

淡「……あはは……」

照「……」

智葉「……宮永、この後打たないか? 久しぶりに全力でやりたい」

照「いいね。最近まともに打ってなかったから本気でやりたいな。
  明日は休日だし、夜通しでもいいよ」

智葉「それはいいな。うちなら離れで音を気にせず打てる。ネリー、お前も来い」

ネリー「え、いや、門限が……」

智葉「心配するな、寮には私から連絡しておいてやる」

ネリー「あ、うん……」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:24:56.26 ID:99KCVrbSO

照「淡も来るよね?」

淡「あー、行きたいんだけどなー、親がなー」

照「うちは自由だから泊まりも余裕って言ってたよね。なんなら私から親御さんに電話するよ」

淡「……いやー、辻垣内先輩の家って臨海の近くじゃないの? ちょっと交通費が」

智葉「心配するな、迎えを呼んだ。帰りも送り届けてやる」

淡「あ、はい……」

照「決まりだね。より真剣に打てるようにウマの代わりに何か賭けようか」

智葉「半荘ごとにセンブリ茶はどうだ?」

照「そういえばドリアンジュースが復刻したらしいよ」

智葉「それもいいな」

照「帰りにコンビニ寄って買っていこう。勝者用のお菓子も」

智葉「そうだな。しかしもう少しバイオレンス感が欲しいところだな」

照「トンだら恥ずかしい話とか?」

智葉「なるほど。アイドルの物真似など芸もつけるか」

照「ありだね。いっそ脱衣麻雀?」

智葉「ペナルティとしてはそれも一興か」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/07/05(火) 23:27:26.72 ID:99KCVrbSO

淡「……ネリー助けて……なんとか私にも和了れるように調整して……」

ネリー「なんで。いつも勝ってるんでしょ?」

淡「ウソなの! ホントはぜんぜん勝てないのぉ!
  ねえ、いつもトバしてるぐらいだからそれぐらいの余裕あるでしょ?」

ネリー「……無理だよ。ネリーもウソだもん」

淡「は?」

ネリー「トバしたことなんてないよ。ていうか勝てることもほとんど……」

淡「……ウソつき」

ネリー「先に言ったのはアワイだよ? すぐそうやって大袈裟にホラ吹いて自爆するんでしょ」

淡「うっ……ネリーだってよく見栄張って知ったかしてるじゃん。年中そうやって恥かいてるんでしょ?」

ネリー「それは……あーあ、結局似たもの同士か」

淡「そうだね。なんか気が合うと思ったけどそういうことなんだろうね」

ネリー「うん。はぁ、それじゃ大人しくおしおきされるしかないか」

淡「今回は調子に乗り過ぎちゃったしね。まったくもって――」

ネリー「アワイとネリーは」

淡「ウソで自爆年中!」



おしまい
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/05(火) 23:46:20.92 ID:CvhDpruAO
面白かったがR要素無いから向こうで良かったんじゃないかな
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/06(水) 01:02:45.13 ID:aFjBuUWgO
まーた咲さんが貶されてる
どうして白糸メインで書くクズ連中って咲さんdisらないと書けないんだろうね
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/06(水) 09:01:05.36 ID:bPCpHdlPO
おつおつ
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/06(水) 20:14:26.30 ID:WpPBLakPO
              -ー=-‐ 、__
          , r '"        ヽ,
          l             ' ,
         /   三ニ=ー-'`=ニiiiiiiiiiiil
        /  ニ'"       `ヾiiiiiiii|
        /  ニ'           'liiiiii|
       ,l   |,r=-;.,_   _,、-=-、|iiiiil
       l  .il .,rェェ、_" :;"ェェ j  |iiiiiil
       | . i| ,,     :;   ,,  iiiiiiil
       ,|   il,    , :: ,    liiiiiill
       l   iil,    ` '      ,|iiiiiiii|
      /     l、  ー- -,ー   イiiiiiiiiill
      /      iゝ、  ̄  /|iiiiiiiiiiiil
     /      i| `ー- ' " ,liiiiiiiiiiii|
  
    クソスレータ・テルナー[Qtosleata Telnault]
         (1946〜1992 イタリア)
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/08(金) 02:41:20.18 ID:OawYdIqB0
天照大神最弱とぽっと出ボスだしな
姉帯愛宕にも勝てるかどうか
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/09(土) 03:33:45.17 ID:lvRB3pLY0
すげーおもしろかった
ふたりともかわいい
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/09(土) 17:11:33.92 ID:rCEJe+Wuo
最初の二人にイライラしたけど
それがあるから改心が引き立つんだよね
読んで良かった

強いて言えば咲ちゃんや穏乃へのフォローが欲しかったかな
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/09(土) 17:30:20.07 ID:4j1ZCq4Go


爽と戒能の会話が面白いww
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/30(月) 20:36:25.15 ID:RZYSk91O0
かっこいい老人二人に濡れました
68.42 KB Speed:0   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)