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妖狐の国の座椅子あふたー
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131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:47:22.84 ID:FayaPCLc0
くぅこ「てんこ殿がそのような輩に遅れを取るとは思えぬでごじゃるが…」
てんこ「別にそのままの格好でもいいんだ。それとも…私と出かけるのは嫌か?」
やはり私では駄目なのか…くぅこ…
くぅこ「け、決してそういうわけではないでごじゃるが…もしせっしゃもてんこ殿も不在のこの屋敷に白昼堂々不届き者が来ないとも限らないでごじゃるよ」
男「心配すんなって!もし悪い奴が来たら俺がくぅこから教えてもらった手裏剣で追い返してやるさ!」
くぅこ「…主殿は一度たりとも的に手裏剣を当てたことは無かったと記憶しているでごじゃるが」
男「うぐっ…や、やってみなくちゃ分かんねーだろ」
くぅこ「主殿は戦が不向きな殿方、無理をする必要はないでごじゃるよ」
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:47:48.46 ID:FayaPCLc0
男「ぐぐぐ…だーもう!なんか悔しいから命令っ!今日はてんこさんについて行くこと!」
くぅこ「はぁ…主殿は困ったらすぐそれでごじゃる…全く困った主人でごじゃるな」
くぅこ「てんこ殿、主殿からの命令とのことででごじゃる。本日はてんこ殿について行くでごじゃるよ」
てんこ「は、はぁ…」
少しくぅこの意思ではない気もするが…
まあこれで久しぶりにくぅことも二人きりだ。
楽しむとしよう。
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:48:17.15 ID:FayaPCLc0
………………
てんこ「もぐもぐ…ここの茶屋の団子は何度食べても飽きないな。本当に美味だ」
買い出しの用事を終えた私は約束通りくぅこを茶屋に招いていた。
くぅこ「…今日は一体どうしたでごじゃるか?」
くぅこは団子を食べ終えると不思議そうな目で私を見つめていた。
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:48:50.42 ID:FayaPCLc0
てんこ「え?あ…あの…その…」
てんこ「少しな…寂しくなってしまったのだ…」
くぅこ「寂しく?何故でごじゃるか?」
てんこ「旦那様がこの世に来てからというもの…姫様やくぅこの隣にはいつも旦那様がいるだろ?自分の居場所がなくなってしまったような気がしてならんのだ」
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:49:18.47 ID:FayaPCLc0
くぅこ「…我慢しているでごじゃるか?」
てんこ「我慢?何をだ」
くぅこ「姫様のお隣にいることでごじゃるよ」
てんこ「くぅこ、何を言うか。我慢も何もないだろ?今姫様にとって最も近い存在であるべきは旦那様だろ」
てんこ「それは仕方のないことだろ…仕方のないことなんだ…」
俯くとまた涙が出そうになったので私は上を向いた。
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:49:59.51 ID:FayaPCLc0
くぅこ「それを我慢というでごじゃるよ」
くぅこは呆れ気味にため息を吐くと一つ提案した。
くぅこ「一度姫様と二人きりになった方がいいでごじゃるな。時間はせっしゃが作るでごじゃるよ」
てんこ「へ?」
私がきょとんとした顔でくぅこを見ると彼女は一口茶をすすってから言った。
くぅこ「てんこ殿の様子がおかしいままだとせっしゃも姫様も主殿も心配するでごじゃる」
くぅこ「てんこ殿の居場所がなくなるわけないでごじゃるよ。むしろないと困るでごじゃる。姫様にも同じ相談をしたらきっと同じことを言うと思うでごじゃるよ」
くぅこ「…我がままな姫様と危なっかしい主殿を置いてこのまま何処かへ行かれでもしたらせっしゃの身が持たないでごじゃる」
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:50:25.66 ID:FayaPCLc0
てんこ「くぅこ…貴様は変わったな」
てんこ「今の貴様は伸び伸びとしている。前と比べると何処かたがが外れたようだな」
くぅこ「耐え忍ぶ者としては失格でごじゃるが…そうかもしれないでごじゃるな」
てんこ(くぅこも私の知らないところで少しずつ変わってるんだな…)
そう考えると彼女をいつまでも妹扱いしていた自分が恥ずかしくなってきた。
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:50:58.36 ID:FayaPCLc0
てんこ(これを機に私も変われるだろうか)
てんこ「…そういえば時間を作るって言っていたがどのようにして作るのだ?」
くぅこ「多少強引な方法でごじゃるが上手くやってみせるでごじゃる」
くぅこ「本日の団子の恩は返させてもらうでごじゃるよ」
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:51:42.12 ID:FayaPCLc0
………………
次の日、私はくぅこの指示通り領地主の仕事を終えたばかりの姫様の部屋へと向かってた。
てんこ「失礼します」
妖狐姫「てんこか。座椅子はまだ来ぬのかの?」
てんこ「ええっとですね…旦那様は取り込み中とのことでして…」
てんこ「本日は旦那様の代役としてこのてんこが姫様の座椅子となりますっ!」
妖狐姫「…取り込み中じゃと?」
姫様の眉間にシワが寄る。
てんこ(う…これでは後で旦那様が叱られるな。少しでも穴埋めしなければ…)
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:52:09.44 ID:FayaPCLc0
てんこ「旦那様は本日少しばかり風邪気味とのことでして…その、姫様にうつすといけないということで…」
妖狐姫「はぁ…そうかの…なら本日はうにゅに頼むとしよう。偶にはよかろ」
てんこ(おぉ…)
後は頼んだぞ…くぅこ。
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:52:51.18 ID:FayaPCLc0
……………………
男「そろそろ座椅子の時間だな」
くぅこ「あ、主殿!待って欲しいでごじゃるっ」
男「ん?どうした?」
くぅこ「せ、せっしゃたった今主殿とかたく抱擁を交わしたくなったでごじゃるっ」
男「え…?まだ昼間だぞ?それに後で妖狐姫にいろいろ言われたら嫌だし…」
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:53:23.74 ID:FayaPCLc0
くぅこ「せっしゃ主殿から我慢することを禁止されているでごじゃるゆえ…」
くぅこ「あ、主殿ぉ…駄目でごじゃるか…?」
男「くぅこ…」
男「くぅこぉ!!!」
くぅこ「まふっ」
男「しょうがないなぁくぅこは!でも俺はそんな珍しく甘えん坊なくぅこも大好きだぞ〜!」
くぅこ「んっ、そっ、そんなにしたら髪と服が乱れてしまうでごじゃるよぉ」
くぅこ(…ゆーわくの術の使い方がだんだん分かってきたでごじゃるな)
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:53:59.64 ID:FayaPCLc0
………………
てんこ「姫様…いかがでしょうか」
私は姫様を膝の上に乗せて丁寧に頭を撫でていた。
妖狐姫「…むぅ」
てんこ「…やはり旦那様でなければ満足されませぬか?」
妖狐姫「悪くはないのじゃがの、あやつはやはり別格じゃからな。もはやあやつと他の座り心地なぞ比較する方が愚かなのかもしれんの」
てんこ「っ…」
私の心は、重く沈んだ。
このただでさえどこか追い詰められた精神状態だぞ?沈まぬ方がおかしいだろう。
私の精神はそこまで硬く強固なものではない。
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:54:30.24 ID:FayaPCLc0
てんこ「ひ、ひめさまぁ…」
妖狐姫「てんこ…?」
ついに耐えられなくなった私はあろうことか姫様のお美しい黄金色の長髪を涙にて汚してしまった。
妖狐姫「どっ、どうしたというのじゃてんこ!何処か痛むのかの!?」
てんこ「実は…旦那様が風邪というのは全くの嘘なのでございます…」
妖狐姫「は…?嘘とな?」
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:55:02.19 ID:FayaPCLc0
てんこ「ただ…最近この身が姫様から遠のいている気がしてならなくて…」
てんこ「わだしはっ…もうごの屋敷に必要なぎ存在なのでじょうが…」
どうかしている
何よりも先に姫様に涙を落としてしまったことを謝罪すべきことは分かっているというのに…
それでも今の私は己の中にたまった負の感情を放出せずにはいられなかった。
もしくぅこの言う通り、姫様がくぅこと同じことをおっしゃってくださるというのなら
早く癒して欲しかった。
いつから私はこんなにも醜き者になってしまったのだろう。
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:55:36.38 ID:FayaPCLc0
だが姫様の反応は私が求めていたものと少し違っていた。
妖狐姫「馬鹿者」
てんこ「きゃんっ!」
姫様はこちらを向くと私の額を軽く小突いた。
てんこ「姫…様…」
妖狐姫「はぁ…何を言い出すかと思えばくだらぬ…実にくだらぬのう」
妖狐姫「なんじゃ?座椅子の奴にあほうでもうつされたか?まさかうにゅの口からからそのような冗談が出るとは」
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:56:33.68 ID:FayaPCLc0
妖狐姫「うにゅが屋敷からいなくなるなぞ考えられぬわ!もちろん父上や母上のように先を逝くこともわらわは許さぬぞ」
妖狐姫「…じゃからそのようなつまらぬ悩みでわらわの着物を汚すでない」
姫様はそこまで言うと機嫌が悪そうにぷいとまた前を向いた。
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:57:15.12 ID:FayaPCLc0
てんこ「姫様…」
てんこ(嬉しい)
くぅこの言う通りだった。
私はまだ必要とされていた。
それが確認できただけでも私は歓喜した。
てんこ「ひめさまぁ〜!」
妖狐姫「んなっ!?やめんかっ!そのような顔でひっつくでないっ!」
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:57:56.64 ID:FayaPCLc0
私は開き直った。
てんこ(多少醜くたっていいじゃないか)
いつも私はこの方に振り回されているのだ。
てんこ「うっ、うっ、ずびっ…」
妖狐姫「ひっ!こ、これぇ!」
てんこ(このくらいの褒美、求めてもバチはあたらぬでしょう?)
てんこ(父上様…)
気がつけば私もまた、変わっていたのだな。
自分の気がつかぬ内に私もここまで我がままになっていたとはな…
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 03:58:52.80 ID:FayaPCLc0
………………
てんこ「もーしわけありませんっ!姫様っ!」
しかしまぁ落ち着いてみるとやはり恥ずかしくなるもので…
私は恥ずかしさと申し訳なさに畳に土下座していた。
妖狐姫「ごほんっ…まあよい。どうせ汚れた衣服を何とかするのもうにゅの役目なのじゃからな…表をあげるのじゃ」
てんこ「はぁ…」
妖狐姫「しかしなんじゃ…そのようなことを考えてしまう辺りうにゅも相当疲れておるの。くぅこと同じじゃな…うにゅにも多少なりとも癒しが必要じゃろう」
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:00:31.90 ID:FayaPCLc0
妖狐姫「うにゅにはわらわの知るこの世で最上級の極楽を与えてやろう」
てんこ「い、いえ私にはそのようなものは…!」
とは言っても私も生きる者…姫様の思う最上級の極楽…
てんこ(全く気にならないわけではないが…)
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:01:17.76 ID:FayaPCLc0
妖狐姫「本日わらわが眠る間の一夜だけ、座椅子を貸してやろう」
てんこ「は…?」
私は瞬間固まった。
てんこ(それは…この私が旦那様の上に座るということか…?)
想像できない。
妖狐姫「うにゅがそのような落ちた気分になってしもうたのはわらわとの関わりが遠のいたように感じたからじゃろう?」
てんこ「確かにその通りですが…それと旦那様にどのような関係が?」
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:02:09.44 ID:FayaPCLc0
妖狐姫「まだ気付かぬのか。わらわとうにゅが遠のいたのではない。うにゅと座椅子がまだ遠い関係にあるということじゃ」
てんこ「私と旦那様が?」
妖狐姫「うにゅと座椅子はこの同じ屋敷に住まう者でありながらまだ完全に打ち解けてないと見える。よい機会じゃ、世間話でもして今晩にて溝を埋めてみてはどうじゃ?」
妖狐姫「そのように不安がる必要なぞない。わらわも稀にあやつに座りながらあやつの世の話を聞くのじゃが」
妖狐姫「…案外楽しいものじゃぞ?」
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:02:54.15 ID:FayaPCLc0
………………
てんこ「…と、いうわけだ」
そしてついに夜が来てしまった。
私は旦那様を部屋へ呼んだ。
男「へ、へぇ…そうなんですか…」
旦那様といえど殿方
てんこ(姫様の提案とはいえ自分から殿方を寝室に招いたことなど初めてだっ…)
私は変に緊張していた。
落ち着けず不自然に天井へと目をやってしまう。
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:03:33.53 ID:FayaPCLc0
てんこ(くぅこぉ…どうせ何処かに隠れているのだろう?どうせなら降りてきてはくれないのか?)
気配すら感じ取れないくせにくぅこに助けを求めてしまった。
男「とりあえず…座りますか?」
旦那様も少し困惑した顔のままだったが座布団の上に胡座をかいた。
てんこ「あ、あぁ…」
私も立ち上がり旦那様の方へ歩く。
旦那様に尾の方を見せ、ゆっくりと腰を下ろしていく…
私のお尻が旦那様の膝椅子に収まった。
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:04:10.69 ID:FayaPCLc0
しかしだ、姫様やしらこ様と違って私は身体の大きさが違う。
微妙に収まらない身体は徐々にずれていってしまう。
男「おっとっと」
てんこ「はうっ!?」
突如旦那様が私の腹に腕を回して抱き寄せた。
男「あっ!すみませんっ!」
てんこ「あ、いや…私こそすまない…」
それから私たち二人はすっかり固まってしまった。
旦那様もこのような状態で何を話せばいいのやらと困っている様子だ。
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:04:38.55 ID:FayaPCLc0
てんこ(そういえばこうして座った後は…)
てんこ「…撫でるのではないのか?」
男「うぇっ!?え、えぁ…頑張ります…」
男「まあ俺も日々精進してるんで、お客様用もバッチリですよ。…多分」
てんこ(お客様用…)
その言葉が何処か引っかかった。
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:05:18.50 ID:FayaPCLc0
てんこ「私は…お客様ではないぞ…」
男「え?」
てんこ「私は…私もっ!旦那様と同様のこの屋敷の者なのだ!」
てんこ「だ、だから…だから…」
声は詰まり続け上手く言えない…
上手く説明できないが…
てんこ(嫌だ…嫌なのだ…)
『お客様』では…
男「てんこさん…?」
目を強く瞑って捻り出すような声で言った。
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:06:02.23 ID:FayaPCLc0
てんこ「私もっ!姫様と同じように愛でて欲しいぃっ!」
男「は…?え…?は…?」
てんこ「…駄目だろうか?」
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:06:47.36 ID:FayaPCLc0
恐る恐る後ろを見ると旦那様は豆鉄砲を食らった鳥のような顔をしていたが、やがて真剣な面持ちになって言った。
男「難しいかもしれないけど…やってみます…」
てんこ(難しい…か…)
てんこ「何故難しいのか、理由を聞いてもよろしいか?」
男「あー、俺いっつも妖狐姫を撫でるときは可愛いものを愛でるって感じなんですけど」
男「てんこさんは可愛いって感じじゃなくて…そう、大人の女性って感じで、美しいって感じだから…」
てんこ「う、美しい!?」
まさか旦那様からそのような目で見て貰えていたとは…
てんこ(…素直に嬉しくはあるが)
てんこ「そうか…礼を言う…」
またも小声になる。
さっきからずっと調子を狂わされている気がする。
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:07:25.68 ID:FayaPCLc0
男「あ、でも今のは可愛かったです」
腹に回されていた片方の腕が頭へと移動した。
頭の上で旦那様の手のひらが動く。
てんこ(確かに…柄ではないな…)
だがそこには同時に確かな安らぎも存在した。
てんこ(落ち着く)
目を閉じればそのまま睡魔に飲み込まれてしまいそうなほどの癒しを感じる。
てんこ(これが姫様の思うこの世で最上級の極楽)
てんこ(ああ…今なら羞恥心など放り捨てて何でも喋ってしまいそうだ…)
立派な美酒を飲んで心地よく酔っているときと同じような感覚だ。
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:08:02.19 ID:FayaPCLc0
男(お、尻尾が揺れてる)
てんこ「…旦那様は私のことはお好きか?」
男「なっ!?」
旦那様の手が止まってしまった。
言い方が悪かったな。
てんこ「深い意味ではないんだ」
てんこ「前に旦那様は私から嫌われていると思っていたと言っていたな。あれを聞いてからな、少しその逆も考えてしまうんだ」
てんこ「私からの当たりが厳しすぎてむしろ私が旦那様から嫌われてしまっているのではないのかとな」
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:08:40.39 ID:FayaPCLc0
男「いや!そんなことは全然…」
てんこ「先に言っておこう。私は旦那様のことが好きになってきたよ」
男「え」
てんこ「私たちはどちらもこの屋敷に住まう者、姫様にとって無くてはならない存在…」
てんこ「姫様もくぅこも合わせて、私たちは血こそ繋がってはいないが家族なんだよ」
てんこ「つまらぬ嫉妬の情に流されてそんな大事なことも私は忘れていたのかもな」
てんこ「姫様に私と旦那様の間にある溝を指摘されてな、ここではっきりさせておきたいんだ」
てんこ「もし私に今も苦手意識があるならはっきり言ってくれ、これから好かれるように努力する」
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:09:15.65 ID:FayaPCLc0
男「…俺は」
私を抱く旦那様の腕に少し力が入った。
旦那様は顔を私の耳元に持ってきて呟いた。
男「嫌いな奴を膝に乗せてこんなに強く抱きしめたりはしません…」
てんこ(へ…)
男「今はもうそのくらいには…俺もてんこさんのこと、好きですよ」
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:10:03.82 ID:FayaPCLc0
てんこ「ふぇ?え…ぇ…」
自分でも分かるくらい顔が熱くなっていくのを感じる…
てんこ(ついさっきまではどんな恥ずかしい言葉を並べたって平気だったのにっ!)
頭を撫でる手が止められたからだろうか、完全に醒めてしまった。
男「あ、俺も深い意味ではないですよ?」
てんこ「くっ、あ…わ、分かっているっ!!」
てんこ「ぬ〜!ああああああああ!!!」
てんこ(なんだこれはなんなのだこの気持ちはっ!)
よくわからない胸騒ぎがする
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:10:38.96 ID:FayaPCLc0
男「てんこさん!?」
嬉しいような恥ずかしいような…しかしそれらとはもっと違うような…
とにかく今はあの酔いしれた頭に戻りたい
私は旦那様の膝の上でじたばたと身悶えながら懇願した。
てんこ「も、もう一度!頭を撫で回してくれっ!今度は尻尾も頼むっ!」
男「あ…はい…」
その後旦那様に身を任せっきりとなった私は結局彼の上で寝息を立てることとなってしまった。
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:11:24.49 ID:FayaPCLc0
………………
てんこ「はっ!」
私は布団から飛び出すように身体を起こした。
てんこ「もう朝か」
てんこ「そうか…私はあのまま…む、旦那様は…」
部屋中を見渡すも当然旦那様の姿は無かった。
てんこ「はぁ…」
てんこ(そもそも私がわざわざ布団に入れてもらっているのだ。当たり前だろう)
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:11:53.58 ID:FayaPCLc0
旦那様のことを考えると昨晩のことを思い出してしまう。
…………………………………………
『今はもうそのくらいには…俺もてんこさんのこと、好きですよ』
…………………………………………
てんこ「う…」
てんこ「あぁぁぁぁ!」
わしゃわしゃと髪をかき回して無理やりにでも忘れようとするもあのときのなんともいえない気持ちが胸を離れない。
てんこ「うぅ〜…」
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:12:23.88 ID:FayaPCLc0
……………………
男「くぅこ、はい団子」
くぅこ「あーん…む…」
俺の最近の楽しみは夕食にでた団子でくぅこに餌付けすることだ。
自分の分が減ってしまうが俺の出した団子串に食いつくくぅこが最高に愛らしいのでなかなかやめられない。
くぅこ「…もぐもぐ」
そのあと恥ずかしそうにそっぽを向いてもぐもぐする様子もいい。
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:13:09.57 ID:FayaPCLc0
妖狐姫「これ座椅子!はようわらわにもよこさぬか!」
男「…はいはい」
ついでのように妖狐姫にもあげないといけないのが玉に瑕だ。
これはまあ…税金みたいなもんだろう。
てんこ「…だ、旦那様!」
男「え?」
…今日はてんこさんの説教も込みか。
やってることは確かに行儀が悪いとはいえさすがに辛い。
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:13:48.12 ID:FayaPCLc0
てんこ「しょ、しょの…」
男「ん?」
…なんか様子が違う?
てんこ「わた、私も…」
てんこ「旦那様の団子が…ほし、ぃ…」
男「…は」
くぅこ「ぶっ!?」
妖狐姫「ほぇ…?」
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/04/18(火) 04:14:35.81 ID:FayaPCLc0
てんこ「ひ、姫様はともかく…くぅこにあって私にないというのはおかしいではないか…」
「…いいだろう?」
てんこの憂鬱
おわり
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/04/18(火) 06:50:36.69 ID:fvToqSV7o
てんこの話きたか
乙
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/04/18(火) 09:40:38.90 ID:8moqVThIo
旦那様の団子(意味深)
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/04/18(火) 14:20:21.38 ID:WWK4vJAcO
堕ちたな(確信)
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/04/19(水) 01:34:32.05 ID:zVgjmO2IO
最高
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/04/19(水) 16:01:48.98 ID:Z92mZk/A0
てんこにも悦び教えてやらないとな
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/04/23(日) 11:37:37.69 ID:cGD7Rjh3o
落ちて行く所はいいぞ
おつ
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/04/26(水) 02:59:10.55 ID:ZcRIvk2sO
いいね
180 :
◆hs5MwVGbLE
[saga]:2017/05/02(火) 03:46:42.14 ID:BR6G/i8m0
なうろうでぃんぐ…
(-ω-)
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:47:28.05 ID:BR6G/i8m0
…………………………
シエン「しらこ様、商人の客人でございます」
しらこ「…あー、今日は気が乗らないんだ。お引き取り願いたいな」
シエン「し、しかししらこ様!あの商人には昨日もしらこ様の個人的都合で帰ってもらっています。…お言葉ですが少々勝手が過ぎるかと」
しらこ「うるさいなぁ!シエン!ボクに口答えするのか!?」
シエン「しらこ様がそのような体たらくでは一時の隣街のようにこの街はいずれ終わってしまいますぞ!」
182 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:48:02.55 ID:BR6G/i8m0
しらこ「そ、そんなこと…分かっている。分かってるけどさ…」
シエン「…男殿でございますか」
しらこ「…お前も分かっているじゃないか」
シエン「無い物ねだりで街を廃れさせてしまっては笑えませぬぞ…」
しらこ「お前も彼と共に修行がしてみたいと嘆いていただろう」
シエン「それはそうでございますが…」
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:48:48.65 ID:BR6G/i8m0
しらこ「シエン!領地主の命令だ!隣街から男殿を連れてこい!」
シエン「無茶振りはやめていただきたい!」
しらこ「無理だと思うなら連れてこなくていいぞ。とにかくボクはもう一度彼の上に座るまでは仕事をしないからな!」
シエン「なっ!?」
隣街商人「あ、あのー…しらこ様はまだ…」
シエン「も、申し訳ない!今しばらくお待ちを!」
シエン「しらこ様!!!」
しらこ「…早く都合を伝えてやったらどうだ。商人殿が可哀想だ」
シエン「ぐぐぐっ…」
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:49:21.69 ID:BR6G/i8m0
………………………………
シエン「…というわけでございます」
男「は、はぁ…」
てんこ「なんだかすごい話だな。旦那様を連れてきたばかりの姫様のようだ」
ある日の昼。
わざわざ隣街からなんと俺への客人だと言うので出迎えてみるとそこには困り果てた顔のシエンさんがいた。
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:49:54.20 ID:BR6G/i8m0
シエン「無論無償でとはぬかさぬ。しらこ様曰く男殿の働き次第で今回は土地の一部の譲渡も検討しているとのこと」
てんこ「と、土地だと!?」
シエン「左様」
男「そんなことして大丈夫なんですか?隣街はわざわざここから買い取った商人を全て無料でこっちに返したばかりじゃないですか」
シエン「このまま廃れていくなら同じ、いやそれ以上でございます」
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:50:29.42 ID:BR6G/i8m0
男「うーん…まぁ一泊二日程度なら俺は良いんだけど…」
てんこさんと目を合わせる。
彼女の顔を見る限り俺と同じ考えのようだ。
てんこ「…姫様がそれをお許しになるかどうか」
男「ちょっと妖狐姫に聞いてくるよ」
てんこ「シエン殿、しばし時間を頂いても?」
シエン「承知」
男「…土地の話もしていいですか?」
シエン「問題ありませぬ」
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:51:12.84 ID:BR6G/i8m0
…………………………
妖狐姫「ふざけておるな!」
妖狐姫の部屋の襖や障子が彼女の怒鳴り声で少し揺れた気さえした。
男(…まぁそうなるよな)
てんこ「…まあ、私も少しばかり同じ意見ではございますが」
男(え…てんこさんも?…なんで?)
てんこ「私は旦那様が行くと仰るなら無理に止めはしません。判断は当人と姫様に全てお任せしますが」
妖狐姫「よりにもよってしらこに座椅子を貸すじゃと!?そのようなことをわらわが許すと思うたのか!」
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:51:54.99 ID:BR6G/i8m0
男「まぁ聞けよ妖狐姫。なんでも俺が少しばかり出かけるだけでちょっとした土地が手に入るらしいぞ」
妖狐姫「関係ないわ!余分な土地なぞいらぬ!」
男(う、うーん…)
実は俺としては少しだけ行きたい気持ちがあった。
勿論ここが嫌になったとか、偶には別の領地の空気が吸いたいだとかではない。
今の俺の生活、ぶっちゃけ言ってしまうとだ。
男(このままじゃあっちの世界でのゴロゴロしてた日々とそんな変わらないんだよな)
まぁ妖狐姫を癒すのが仕事、くぅこを愛で…じゃなくて乗せるのが修行というのならそうでもないのだが…。
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:52:36.85 ID:BR6G/i8m0
とにかくだ。この屋敷に住まう者として一度でいいから妖狐姫たちだけでなく、この街に何かしら貢献したかったのだ。
そんなところにタイムリーに自分の頑張り次第で土地が貰えるという話が転がり込んできたではないか。
ここで俺の才を生かさずして他でどうこの街に貢献しようというのだ。
男「妖狐姫…俺も一度でいいからこの街の力になりたいんだ」
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:53:18.48 ID:BR6G/i8m0
妖狐姫「そのようなことを考えずともうにゅは十分…」
男「お前の日々の頑張りでこの街はあの絶望的に追い込まれていた状況からむしろ今は勢い付いてきている」
男「人が賑わうところには必然的に新しい人がさらに集まる。ここに商店を置きたいっつう商人はますます増えるだろう」
男「そうなるともっと土地が必要になってくる。でも土地なんてそうそう手に入らない。だから今俺を使ってくれ!必ずしらこを満足させてこの街に貢献する!」
てんこ「だ、旦那様…私は感動したぞ!いつの間にそんなにご立派に…」
男「はは…」
てんこさんは布で涙を拭いていた。
もっと早くやる気を出していれば母もこんな顔をしてくれただろうか。
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:54:05.91 ID:BR6G/i8m0
妖狐姫「ならぬ!一度はうにゅを亡き者にしようと企んだ者じゃぞ!?そのような者の本拠地にうにゅを置いておけるか!悪質な質屋に家宝を預けるようなものじゃ!」
くぅこ「そういうことならせっしゃに任せて欲しいでごじゃるよ」
天井裏からくぅこが畳に着地した。
妖狐姫「くぅこ…」
くぅこ「主殿の意思にせっしゃの意思あり。主殿の向かう場所にせっしゃのこの身ありでごじゃる。せっしゃも付いていくでごじゃるよ」
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:54:44.65 ID:BR6G/i8m0
てんこ「くぅこがついてくれるなら安心だな」
男「妖狐姫」
妖狐姫「ぬぅ…」
妖狐姫は少し間を置いてからため息を吐くと仕方なさそうに口を開いた。
妖狐姫「…出発前はいつも以上にわらわを愛でるのじゃぞ」
男「はいはい」
妖狐姫もやっと折れてくれた。
男「早く戻らないと。シエンさんが待ってる」
てんこ「そうだな」
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:55:13.70 ID:BR6G/i8m0
………………………………
シエン「しらこ様…なんとかあちら側も要件を飲んでくださいました」
しらこ「でかした。礼を言うぞシエン」
しらこ(…楽しみだよ男殿)
しらこ(貴方を必ず…ボクのものにしてみせる…)
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:55:53.41 ID:BR6G/i8m0
しらこの野望
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/02(火) 03:57:01.02 ID:BR6G/i8m0
なうろうでぃんぐ…
(-ω-)
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 08:15:50.19 ID:JurJxmX1o
ショタホモか…
期待
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 14:40:02.09 ID:PPhTEz/Yo
ヽ( ・∀・)ノ イイネ!!
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 16:39:00.00 ID:Yao6F4KA0
ホモはいらないな
てんこはよ
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/02(火) 17:12:24.00 ID:KFGbt9U7O
ホモは勘弁だが男の娘は別腹。
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/03(水) 08:28:26.67 ID:cHUqDXfoO
いやそれもホモだから
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/03(水) 18:08:13.60 ID:Xh2fvJbKo
いや、しらこさまが男装美少女の可能性がワンチャン
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/03(水) 19:08:31.03 ID:1JdePEtD0
こらこら文句を言うでないそなたら
楽しみにしておるぞ
203 :
◆hs5MwVGbLE
[saga]:2017/05/04(木) 00:46:40.54 ID:X2lDrYW00
男「妖狐姫…もうそろそろ出発の時間なんだけど…」
二日後の夕方、これでもかというくらい撫で回したつもりだったが、妖狐姫はまだ満足しないのか俺から抱きついて離れようとしない。
妖狐姫「…やじゃ」
適当に眠らせてその間に…とも思っていたのだが彼女は睡魔に抗い、目を半開きの状態で意地でも俺にすがりついてきた。
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 00:47:32.18 ID:X2lDrYW00
男「人力車が来るから外で待ってないと…な?」
妖狐姫「のぅ…やはり外泊なぞやめにせぬか?」
男「もうシエンさんには行くって言っちゃったんだ。そういうわけにもいかないよ」
妖狐姫「うぅ〜…」
くぅこ「車をくろこ殿に変えればまだ時間はあるでごじゃるよ」
男「それだけはぜってーやだ!」
もしくろこの車なんかに乗ったら俺はしらこの頭の上に吐瀉物をかぶせるだろう。
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 00:48:16.02 ID:X2lDrYW00
てんこ「姫様、私がいますよ」
妖狐姫「わっ…」
ひっつき虫と化した妖狐姫をてんこさんが後ろからそっと抱きかかえた。
てんこ「旦那様、旦那様が留守の間はこの私が姫様の座椅子となろう。だから旦那様は安心して己の使命に励んでくれ」
男「…はい!」
くぅこ「参るでごじゃるか」
男「行くか」
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 00:49:43.41 ID:X2lDrYW00
妖狐姫「…百倍じゃ」
男「んあ?」
妖狐姫「帰ってきたらいつもの百倍わらわを愛でるのじゃ〜!!!」
彼女はてんこさんの腕の中でバタバタと暴れながら叫んだ。
男「…分かったよ」
てんこ「だ、旦那様…そのときは私も…」
男「え?てんこさんも何か…」
てんこ「い、いや!やっぱりなんでもないっ!」
207 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 00:51:00.52 ID:X2lDrYW00
…………………………
くぅこ「屋敷が点になって行くでごじゃるよ〜…」
男「また二人っきりだな。くぅこ」
くぅこ「ふぇ!?二人きりだからといってよそ様の屋敷で…しょ、しょの…あのようなことは…」
男「あのようなことって?俺は何もいってないぞ〜?」
焦るくぅこの頭を撫でながら意地悪に煽る。
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 00:52:02.21 ID:X2lDrYW00
くぅこ「わふっ…」
沈む夕日と同じ色に染めた顔で俯く彼女の頬を意地悪につついた。
男「なんのことか知らないけど、くぅこがどうしてもって言うなら?出来る範囲のことはしてあげるよ」
男「家来に褒美を与えるのも主の務めだしな〜」
くぅこ「…なんでもないでごじゃるよ」
男「我慢するのは禁止だぞ?」
くぅこ「何も我慢してないでごじゃるぅ〜!」
くぅこは目をぎゅっと閉じたまま俺の胸をポカポカ叩いた。
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 00:53:17.30 ID:X2lDrYW00
男「まぁいいや。はいぎゅー」
おふざけ程度に彼女に抱きつく。
くぅこ「あぅ…我慢できてないのは主殿の方でごじゃるな…」
男「こんな可愛い家来が隣に座ってて我慢しろって方が無理でしょ」
くぅこ「むぅ…少しばかり調子に乗りすぎでごじゃる」
男「ごめん久しぶりに二人きりだから嬉しくてつい…駄目か?」
くぅこ「駄目と言ったらどうするつもりでごじゃるか?」
男「鬱だ死のう…」
くぅこがマジなら割とマジで
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:00:58.10 ID:X2lDrYW00
車屋「…兄ちゃん本当に姫様の婿さんなのかい?そっちの子は護衛役かと思ったら…なんでぃ、愛人さんかぃ」
くぅこ「な…あ、あいじん…?」
男「違うぜおっちゃん!愛人なんてそんな生ぬるいもんじゃないって!」
車屋「へぇへぇ…若いってのはいいねぇ…姫様も寛大なお方よな。うちの奥さんなら他の女の子にそんなことしてるのバレたら野菜包丁で切り刻まれちめぇよ」
車屋「ま、なんでもいいけどよ…いちゃつくのは降りてからにしておくれよ」
車を引っ張るガタイの良いおっさんは呆れ気味だった。
くぅこ「ほら怒られてしまったでごじゃる」
男「ちぇー…」
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:01:36.29 ID:X2lDrYW00
…………………………
次の日の朝。
俺たちは無事隣街に到着した。
車屋「ほい到着」
くぅこ「恩にきるでごじゃる。お代でごじゃるよ」
車屋「はいよ!確かに頂いたぜ」
車屋「つっても兄ちゃんの方は…」
男「ぐぅ…ぐぅ…」
くぅこ「すまぬでごじゃるよ。今起こすでごじゃる」
くぅこ「主殿ー!」
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:02:07.33 ID:X2lDrYW00
車屋「あ、嬢ちゃん」
くぅこ「ふぇ?」
車屋「ぶっちゃけ…その、兄ちゃんと嬢ちゃんの関係って…なんなんだい…?」
くぅこ「くく…ただの主従でごじゃるよ」
車屋「そーかい」
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:02:34.38 ID:X2lDrYW00
車屋(…某にはそうは見えんがな)
くぅこ「あーるーじーどーのー!」
男「んー…あと五分…むにゃー…」
車屋(さながら新婚夫婦といったところか)
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:03:35.60 ID:X2lDrYW00
………………………………
しらこ「男殿、よくきてくれたね」
シエン「あっしもお待ちしておりました」
男「久しぶりだな。しらこ様」
しらこの屋敷に上がるのは二度目だ。
前回散々俺を拒んだ門番が二つ返事で通してくれたのには何だか笑ってしまいそうになった。
今回はアンウェルカムではなくウェルカムというわけだ。
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:04:19.30 ID:X2lDrYW00
しらこ「もう『様』なんかいらないよ。貴方は特別だ」
男「お、おう」
男(まあわざわざ名指しで呼ばれるほどだから特別ってのは分かるけど…前との扱いの差でちと背中がむずがゆいな…)
しらこ「遠出で疲れたろう?ひとまず料理人にあなた方二人の朝飯も作らせておいたんだ。共に箸を取ろうじゃないか」
くぅこ「有難いでごじゃるな。お言葉に甘えてご一緒させていただくでごじゃるよ」
しらこ「くぅこ殿は食いっぷりがよいと聞いている。おかわりも遠慮しなくていいよ」
くぅこ「はにゃっ!?い、一体どこでそんなことを…」
くぅこが目尻で俺を睨む。
男「え…いや!俺は何も言ってないぞ!」
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:05:27.05 ID:X2lDrYW00
しらこ「いやぁ、実はくぅこ殿に詳しい人物から貴方のことをいろいろ聞いてね」
くぅこ「む…」
シエン「…しらこ様、あまり喋りすぎると変な誤解と警戒を招きますぞ」
しらこ「いや失礼失礼…安心してくれ。ボクは今回本当に男殿に癒して頂きたいだけなんだ。別にもうあなた方に対して恨みなんてものもないし殺伐とした考えもないよ」
男「だってさ。くぅこ、ここは信じてやろうぜ。あまり協力的じゃないと貰えるもんも貰えなくなっちまうぞ」
くぅこ「…主殿がそう言うなら」
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:06:18.40 ID:X2lDrYW00
少し耳の毛を逆立てたくぅこをおさめると丁度使用人の方々だと思われる女の人たちが朝食を乗せたお盆を部屋に運んできた。
しらこ「きたぞ。ボクはこの素晴らしき香りを鼻に入れるとどれだけ寝不足でも目が覚めてしまうんだ」
男(確かに…すっげぇ美味そうな匂いがする)
あの屋敷の料理に負けずとも劣らない…かいでるだけで腹つづみが打てそうだ。
そんな料理を乗せたお盆はとうとう俺の目の前に置かれた。
やはりここでもメインは油揚げなのか、一番最初に目に入ったのは大盛りのご飯の上に盛られた油揚げの卵とじだった。
男(これは、きつね丼か)
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:06:57.19 ID:X2lDrYW00
盆を囲むみなで合掌した後俺はそのどんぶりを手に取った。
そして箸を米に近づけ…
くぅこ「主殿、そのどんぶりを渡して欲しいでごじゃるよ」
ようとしたところを隣にいたくぅこに止められた。
男「どうした?…まさかここでもあーんして欲しいとか…」
くぅこ「…せっしゃのどんぶりと交換するだけでごじゃるよ」
俺の渾身のボケも虚しく、くぅこは真顔でそれをあしらうと俺のどんぶりと自らのどんぶりを取り替えた。
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:07:42.25 ID:X2lDrYW00
くぅこ「いいでごじゃるか?せっしゃがこれを口にしてなんとも無かったら主殿も食べ始めるでごじゃるよ」
男(なるほど毒味というわけだな)
さすがくぅこ用心深い。
くぅこは箸で一口分取ると口の中にそれを入れた。
そしてゆっくりとそれを噛む。
男「…どうだ?大丈夫そうか?」
くぅこ「っ!!!!」
突如くぅこが大きく目を見開いた。
220 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:08:20.71 ID:X2lDrYW00
男「くぅこ!?」
男(なっ…まさか本当に毒が…)
五秒ほど瞬き一つせず固まったくぅこだったが、その後彼女はいきなり電源が入った機械のようにどんぶりを勢いよくかきこみだした。
くぅこ「はむっ!はむっ!はふっ!」
男(え………?)
そしてあっという間にきつね丼を平らげるとお盆にどんぶりをドンと置き、さっきまでの俺にやっと聞こえるか程度の小声とは真逆の大声で言った。
くぅこ「主殿!早く食べるでごじゃるよ!!」
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:08:52.32 ID:X2lDrYW00
男「は…?いや…さっきくぅこが待てって言ったんじゃ…」
くぅこ「何をしているでごじゃるか!?冷めてしまうでごじゃるよ!このまま冷めてしまうならせっしゃが…」
男「あー分かった分かったから」
俺のどんぶりに向かって伸びた彼女の手をはらうと俺は再びどんぶりを手に取り今度こそ最初の一口を味わった。
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:09:57.05 ID:X2lDrYW00
男「ぬぅ…!?」
たかが油揚げの卵とじ…
されどあなどることなかれ…
世に美味い卵かけご飯が存在した。
世に美味いいなり寿司が存在した。
ならばだ、それらの美味い二つの食べものが合わさったかのようなこの食べ物…
美味くないわけがないのである。
気がつけば俺は箸で米をかき込んでいた。
美味たるダシを吸った油揚げを奥歯でかみしめていた。
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:10:26.63 ID:X2lDrYW00
突然のあつあつご飯の波にに口の中は熱くも幸せの悲鳴をあげた。
喉が詰まった。
それでも箸はこの美味を求めて動き続けた。
死にかけた。
だがほんの一瞬、ほんの一瞬だが思ってしまった。
男(この味を舌に止めたまま死ねるなら…いっか…)
………………
…………
……
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:11:07.90 ID:X2lDrYW00
男「…んぷはっ!!!!」
男「はぁ…はぁ…はぁ…」
空っぽになった湯飲みをお盆に置いて息を整える。
男(あぶねー…毒なんてなさ過ぎて逆にもう少しで美味すぎる毒に殺されるところだった…)
しらこ「はは…男殿、そんなに急がなくてもきつね丼は逃げたりしないよ」
シエン「はっはっ!主従そろって豪快でございますなぁ!」
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:11:54.42 ID:X2lDrYW00
男「ああ…」
くぅこ「あ、主殿ぉ…」
俺は死にかけた故に落ち着きを取り戻したがどうやら彼女はまだ口の中の天国から戻ってこれていないようだ。
くぅこ「あ、あの店で食べていたきつねうどんはなんだったでごじゃるか…?あれは本当にうどんだったでごじゃるか…?」
くぅこ「いや、もしやその逆。この美味たる小麦粉はうどんではないもっと別の食べものでごじゃるか…?」
男「お、落ち着けくぅこ!俺たちが食べてたのもうどんだしそれもうどんだ!」
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:12:44.52 ID:X2lDrYW00
しらこ「食後には団子も用意してあるよ」
くぅこ「団子!」
しらこ「もし気に入ってもらえたなら明日の朝はもっと多めに作らせるとするよ」
くぅこ「真でごじゃるか!?」
しらこ「嘘なんてついてこちらに得なんてないじゃないか。丁重におもてなしさせてもらうよ。あなた方はお客様なんだからね」
しらこ「どうだい男殿?ここのご飯は魅力的だろう?こっちに来ればいつだってこれが食べられるよ?」
男「あはは…じょーだん」
しらこ「…つれないなぁ。こっちは冗談じゃないんだけど」
男「生憎あっちの飯も翼が生えそうなほど美味くてね」
男「あと…」
くぅこ「もぐもぐ……にゅ?」
男「いいもんが見られるもんで」
しらこ「ふーん…。そうなんだ」
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/05/04(木) 01:14:38.21 ID:X2lDrYW00
なうろうでぃんぐ…
(-ω-)
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 01:53:21.48 ID:51IAu1ZBo
乙
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 12:54:19.42 ID:WRONO64bo
てんこさんはちょっとグラマラスなお姉さんなイメージ
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/04(木) 16:02:29.40 ID:AXI9WlHao
おつ
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