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妖狐の国の座椅子あふたー
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231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/05/11(木) 23:27:54.68 ID:8DLI6akdO
おつ
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/06/07(水) 06:33:05.23 ID:sGhpDxuWO
前作から一気に読んで追いついた
どいつもこいつも可愛過ぎるだろ
続き期待してる
233 :
◆hs5MwVGbLE
[saga]:2017/06/12(月) 23:38:39.38 ID:RxFqSWQK0
……………………………
しらこ「くぁ…そろそろお昼寝の時間だ」
しらこ「それじゃあ男殿、お願いしていいかな?」
男(来たか)
今からすることは今回俺がここに呼ばれた理由…
俺は用意された座布団に腰掛けて胡座をかいた。
男「ん、いつでもいいぞ」
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:39:25.57 ID:RxFqSWQK0
しらこ「よいしょ……っと」
男「座り心地はいかがかね。わざわざ呼んだかいはあったかい」
しらこ「それを言うのは早すぎるよ男殿。これで終わりではないだろう?」
しらこ「さぁ、ボクのことを撫でておくれよ」
しらこは首だけ上に向けてはやくしてくれと俺を急かした。
男「…もう愚弄してるとか言わないのか?」
しらこ「まさか」
男「ほいよ。じゃっ、失礼しますよっと」
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:44:41.69 ID:RxFqSWQK0
しらこの頭に手を置き、彼の白い狐耳の裏をかくようにして撫でる。
しらこ「んぁ…いぃ…そーだよ…これが欲しかったんだ…」
しらこ「この世のものとは思えない、この安らぎがさ」
男「…ありがたいお言葉だよ」
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:45:20.02 ID:RxFqSWQK0
欲しいものがあったら、人はそれを手に入れようとするわけだ。
だがそれらを自分の欲望を満たす段階まで取り入れるには入手難易度というものが常に付きまとう。
単純な値段の高さもそれにあたるが…
それが高いものはどんなに欲しくても諦めてしまいがちとなる。
しらこにとって俺はそういう『手に入れようとするには少し面倒』な存在だと思う。
なんせ土地の一部を釣り餌に使ったんだ。
相当だろう。
しかし彼は俺を諦めずに、そうまでしてこの一時だけのためだけに俺をここに連れてきた。
……そう考えるとなんだか嬉しくなった。
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:45:56.58 ID:RxFqSWQK0
尻尾の付け根から上へじわじわと撫で上げると彼は歳に似合わないその小さな背中をブルッと震わせた。
しらこ「んっ……」
しらこ「あの、さ…ボクはどういうわけかいつまでたっても童の容姿のままなんだ。そのことに少し劣等感を抱いていてね」
しらこ「同性のよしみだ。わかるだろう?」
男「…まぁ」
男(気にしてたのか)
妖狐姫と同じく彼の堂々とした領地主としての佇まいを見ているとそんな気はまったく感じられなかったのだが…
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:47:58.17 ID:RxFqSWQK0
しらこ「でもさ、こうして男殿の上で丸くなっていると……なんでかな、不思議とこんな小さな身体でも良かったって思えるんだ」
しらこ「落ち着くんだ。これはボクが人並みに成長していたら得られなかった悦びだと思う」
しらこ「出来過ぎてるとは思わないかい?これじゃあまるでボクは貴方の上に座るためにこんな身体なんじゃないかって思っちゃうよ」
男「なんとなく分かるよ。その気持ち」
多分、妖狐姫も彼のこの話をまともに耳にいれてくれさえすれば共感くらいはしてくれるのではないだろうか。
239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:56:19.93 ID:RxFqSWQK0
しらこ「そうだろう?そうだろう?」
そこまではずっと俺の方を向きながら話したしらこだったが、急に首を戻して低い声になった。
しらこ「……それでも貴方は、明日にはここを出て行ってしまうのだろう?」
男にしては長すぎる彼の前髪が、彼の顔に深い影を作った。
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:57:10.00 ID:RxFqSWQK0
男「はぁ」
男「分かってるなら口に出さない方がいいぞ」
男(おかしいな)
俺は、だ。
今膝椅子に乗るこの方の頼みでここに来ていて、仮にもこの方を満面の笑みで満たすためにここに来たのに…
なんでこの方の
しらこ「…っ」
瞳を潤わせてしまっているのだろう。
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:58:03.28 ID:RxFqSWQK0
しらこ「ふぁあ…しつれぃ。心地よさにだらしなくあくびをもらしてしまったよ」
しらこは俺にバレないようにか露骨なあくびの演技をしてからくしくしと目をこすった。
男「明日のことなんか考えなくていいって」
しらこ「あっ…」
俺は彼の目を片手で目隠しするように覆った。
男「今はさ、そんな顔せずに気持ちいいって顔のまま眠って欲しいかな」
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:59:08.31 ID:RxFqSWQK0
しらこ(…分かっていた。貴方は簡単にはボクのものになんかなったりしない)
しらこ(でも、ボクもまた欲しいものはどんな汚い手を使ってでも手に入れようとする奴だってこと、貴方も知ってるだろう?)
しらこ(だからさ、先に言っておくよ)
しらこ「…すまないね。男殿」
男「ん?」
しらこ「あー……」
しらこ「……『ありがとう』って意味さ」
しらこ「おやすみ、男殿」
男「ああ。おやすみ」
しらこはそう言うと数分もしない内に寝息を立て始めた。
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/12(月) 23:59:42.62 ID:RxFqSWQK0
もたれたままだとずるずるとずれ落ちてしまうので時折彼を深く抱きよせる。
彼の寝顔を上からのぞき込むとその童顔も相まって、一時彼を敵の類として認識していた自分が信じられなくなった。
しらこ「ん、すぅ…しゅ…」
なんと言っていいのだろうか、そのくらい今の彼は
可憐で
平たく言うと俺の目には……
男「かわ、いい……?」
と、映った。
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:00:37.88 ID:hjjuyDpX0
「まさかそちらの趣味にも目覚めてしまったでごじゃるか?」
この屋敷にいても領地主の部屋の天井からは同じ声が聞けるとは……
さすがだ。
男「妬いてんのー?」
上を向いて姿の見えない家来に適当に言葉を投げる。
「あ、主殿が男好きになってしまってはあちらの屋敷の後継者が望めぬでごじゃるからな。少し心配になっただけでごじゃるよっ」
しらこ「ぬ〜……」
「ほら、あまりそこで喋っているとしらこ様が起きてしまわれるでごじゃるよ」
男「へーへー」
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:01:59.37 ID:hjjuyDpX0
男(しらこ…)
しらこ「にゅ…しゅー、しゅー…」
男(お前のそんな顔見たら、俺はもうお前のこと嫌な奴だったなんて思えなくなっちまったよ)
……………………………………
『……それでも貴方は、明日にはここを出て行ってしまうのだろう?』
……………………………………
男「そうだな」
男(でもお前がそんなにも俺を気に入ってくれているのならもしかして俺たち、友達くらいには親しくなれんじゃないか)
いや、さすがに領地主様と友人にだなんて……
(少しおこがましいかな)
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:02:42.95 ID:hjjuyDpX0
しらこは夕飯の時間になるまで俺の膝の上で眠った。
夕飯には朝よりも豪華な肉料理などがたくさんならんだ。
最初はくぅこがまた警戒していたがどうやらそのような心配はする必要がなかったようで、夕飯も特に薬品などを盛られることはなかった。
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:03:19.36 ID:hjjuyDpX0
シエン「男殿!」
夕飯を済ませた後シエンさんに修行を手伝うように頼まれたのだが……
男「あ、すみません……今回はあくまでしらこの頼みということなので……はは」
断っておいた。
筋骨隆々のシエンさんはどう見ても俺よりも体重がありそうだったので支えられる自信がなかった。
シエン「……そうでしたな。失礼」
俺に背を向けたシエンさんにはいつもの覇気がなく、しょんぼりと肩を落としているようにも見えた。
……ちょっと悪いことした、かも?
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:03:51.37 ID:hjjuyDpX0
………………………………
素人でも分かるほどの超高級布団から身体を起こした朝、俺とくぅこは早々に出て行く支度を済ませ、しらこたちと二度目の朝食を囲んだ。
しらこの言う通り昨日よりも多めに出された団子をくぅこはもはや無警戒で頬張っていた。
男「さて、帰るか」
くぅこ「おいとまするでごじゃるよ」
今から帰れば夕方前には隣町に着くだろうか。
帰ったら妖狐姫がすがりついてくるに違いない。
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:06:32.11 ID:hjjuyDpX0
男(そうしたらいつもの百倍か)
一体何をすればいいのやら……
かくいう俺も少し妖狐姫が恋しくなってきた。
男(一日離れていただけなのにな)
俺も相当彼女に毒されている。
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:07:19.44 ID:hjjuyDpX0
シエン「お気をつけて」
男「はい」
屋敷の門の前、しらことシエンさんはそこまで俺を見送りに来てくれたがしらこは一言も喋りそうになかった。
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:08:19.02 ID:hjjuyDpX0
男「しらこ」
おこがましいかもしれないけど、伝えたい。
男「俺と」
くぅこ「主殿……?」
男(友達に……)
男(あ、れ?)
急に、声がうまく出せなくなった。
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:09:14.58 ID:hjjuyDpX0
足元がふらつく。
視界が、暗くなっていく。
男(しら、こ)
意識が途切れる前に最後に見えたしらこの口の動きを見て俺は……
すま……
あの謝罪の本当の意味を理解した。
……いね
「男殿」
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:09:54.32 ID:hjjuyDpX0
くぅこ「主殿!?主殿!」
しらこ「おっと。これは大変だ」
くぅこ「止まるでごじゃる!」
シエン「くぅこ殿」
しらこ「シエン動くな」
シエン「…はっ」
門番「貴様ぁ!しらこ様から離れろ!」
しらこ「門番もだ」
門番「ぐっ」
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:10:39.27 ID:hjjuyDpX0
しらこ「短刀なんて、そんな物騒なものを首に近づけたら危ないじゃないか」
しらこ「……くぅこ殿、これは一体どういうつもりだい?」
くぅこ「それはこちらの台詞でごじゃるよ。主殿に、何をしたでごじゃるか」
しらこ「疑い深いなぁ。さすがだね」
しらこ「まぁもう隠すのも無理かな。……少し眠ってもらっただけだよ」
しらこ「ボクのモノにするために、ね」
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:11:29.45 ID:hjjuyDpX0
くぅこ「っ!……覚悟するでごじゃる!!」
しらこ「シエン」
シエン「はぁっ!」
くぅこ「なっ!!」
くぅこ(み、見えなかったでごじゃる…)
くぅこ(一瞬で…手元の短刀を弾かれたでごじゃるか!?)
しらこ「門番、男殿を部屋へ連れて行け」
門番「はっ!」
くぅこ「待つでごじゃる!」
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:12:16.99 ID:hjjuyDpX0
しらこ「シエン、くぅこ殿を頼んだよ」
くぅこ「くっ!」
シエン「徳の外した道だということはあっしもしらこ様も覚悟の上。くぅこ殿、相手をしてもらおうぞ」
くぅこ「どうなっても知らぬでごじゃるよ」
シエン「そなたの実力を知らぬわけではないが……それは闇夜を土俵とした話」
シエン「朝焼けの中の一対一。このシエン、たかだか少女に屈する気はない」
くぅこ「せっしゃの前で主殿に手を出したこと……後悔してもらうでごじゃるよ」
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:12:50.51 ID:hjjuyDpX0
………………………………
男「……んぅっ」
目覚めると俺は布団の上で寝かされていた。
見上げた天井は昨日くぅこと喋った時と同じ木目をしていた。
障子からうっすら差す日光はどう見ても朝のものではない。
昼まで眠っていたということだろうか。
男(とりあえず生きてた)
盛られた薬は毒ではなかったようだ。
ひとまず胸をなで下ろす。
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:13:49.72 ID:hjjuyDpX0
しらこ「起きたかい。男殿」
男「しらこ、これはどういうことなんだ」
しらこ「どういうことも何も、分かるだろう?」
しらこ「んっ……」
白毛の美少年は微笑むと俺の掛け布団の上にうつ伏せにもたれかかった。
しらこ「今日から貴方はボクの座椅子ってわけ」
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:14:24.96 ID:hjjuyDpX0
男(ヤ、ヤンデレって奴?)
男「あのさ、こんなことしたって無駄だって分かってるだろ?すぐ近くにはくぅこだっているし……」
しらこ「ふふん」
男(あれ?)
くぅこの気配を近くに感じない。
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:15:42.99 ID:hjjuyDpX0
男「お、おい!くぅこを何処にやった!」
しらこ「くぅこ殿が心配かい?」
男「しらこてめぇ!くぅこに一体何を……」
布団から身体を一気に起こしてしらこに掴みかかろうとしたとき、いつの間にか背中に立っていたシエンさんに服の背を引かれた。
男「うわっ」
シエン「落ち着き願おう」
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:16:36.60 ID:hjjuyDpX0
服を掴んで覇気を漂わせる彼の顔を見上げるとまだ付いてから新しいと思われる刃物による切り傷が見えた。
男(もしかしてシエンさんはくぅこと闘ったのか?)
くぅこは強い、だがしらこの筆頭護衛で場数も彼女より圧倒的と見える彼ならば彼女を軽くあしらうことも造作もないことなのかもしれない。
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:17:30.92 ID:hjjuyDpX0
男「……くぅこは生きてる、のか?」
心臓が落ち着かない。
この最悪の気分は二度目だ。
男(頼むっ!生きててくれ!)
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:18:20.04 ID:hjjuyDpX0
しらこ「男殿が自らボクの座椅子になってくれるって言うならくぅこ殿の無事は保証するよ」
男「くっ!」
もちろん、そんなこと認めるわけにもいかないし認めたくもない。
あの屋敷のために、妖狐姫のために。
今どこにいるかも分からないくぅこを助けたいという気持ちも山々だが、ここでやすやすとこの取引に応じてしまうことは彼女も望まないだろう。
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:19:10.90 ID:hjjuyDpX0
男(どうする)
まだ、希望がないというわけではない。
いくらシエンさんがくぅこより強いといっても彼女もまたシエンさん以外ならこの屋敷の誰にも負けないだろう。
今シエンさんがここにいるということは、彼女は何処かで縄にでも縛られて放置されているのだろうが、彼女よりも強い見張りがいないとなればくぅこは必ずここに来てくれるはずだ。
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:20:11.20 ID:hjjuyDpX0
しらこ「まだ殺しはしないけど、まぁ彼女が再びここにくるのは不可能だろうね」
男「うちの家来を随分とコケにしてくれるじゃねーの。……痛い目見るぞ」
しらこ「とっておきの見張りをつけておいたんだ」
男「とっておきの、見張り……?」
男(くぅこより強い奴ってことか?)
馬鹿な
ぬかせ、そんな奴この街にポンポンいるわけがない。
俺を殺しに来た連中ですら瞬殺だったんだぞ!?
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:21:26.52 ID:hjjuyDpX0
男「はっ……」
男(……いや)
もう一人、知っている。
確実にくぅこより強い奴。
………………………………
『馬鹿な男よ…某でなければそのまま貫いていたぞ』
『いやぁ、実はくぅこ殿に詳しい人物から貴方のことをいろいろ聞いてね』
………………………………
気がついた瞬間、全身から血の気が引いていくのを感じた。
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:22:07.70 ID:hjjuyDpX0
男(どうすれば、いいんだ……俺は……)
しらこ「貴方も知っている男さ」
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/13(火) 00:22:46.52 ID:hjjuyDpX0
「ヤオ、だよ」
269 :
◆hs5MwVGbLE
[saga]:2017/06/13(火) 00:24:02.61 ID:hjjuyDpX0
なうろうでぃんぐ…
(-ω-)
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/06/13(火) 00:25:36.65 ID:ZYOwSfXCo
( ・,_ノ・ )y━・~~~乙
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/06/13(火) 02:45:35.08 ID:vddsyUtA0
ホモは勘弁
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/06/13(火) 10:09:53.57 ID:D1W7OjwCO
このままだとしらこルートはなさそうだが、上手くまとめてくれるならそれもまたよし。
ホモとショタは別、分かるね?
273 :
◆hs5MwVGbLE
[saga]:2017/06/22(木) 06:08:32.13 ID:jCAv+IA40
…………………………
くぅこ「うぅ、ぐっ……」
くぅこ「はわっ!?ここは……」
くぅこ「ふぇ?車の座台でごじゃるか?」
車屋「お?嬢ちゃんおはよーさん。……つってももう昼間だがね」
くぅこ「はっ!」
くぅこ(主殿!)
くぅこ(思い出したでごじゃる!せっしゃはシエン殿に敗れて気絶してしまっていたでごじゃるよ)
くぅこ(出来るだけ遠くへ追い払うようにせっしゃを車屋に乗せたでごじゃるな。こんなところで伸びている暇はないでごじゃる)
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:09:13.39 ID:jCAv+IA40
くぅこ「車屋殿、この車は何処へ向かっているでごじゃるか?」
車屋「嬢ちゃんは隣町から来ただろ?隣町へ帰るんじゃねーのかい?」
くぅこ「事情が変わったでごじゃるよ!今すぐ反対方向の屋敷へ戻って欲しいでごじゃる!」
車屋「……それはできねーよ嬢ちゃん」
くぅこ「そこを何とか!」
くぅこ(こうなれば仕方なし。無理矢理にでも降りて戻るでごじゃる!)
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:09:49.26 ID:jCAv+IA40
くぅこ「失礼するでごじゃるよ」
車屋「……嬢ちゃん」
くぅこ「む!?」
くぅこ(せっしゃが腕を掴まれた!?)
車屋「もう一度いうぜ?それはできねーんだ」
くぅこ「……只者ではないでごじゃるな」
車屋「まだ気づかないのか?くぅこ……あの男に甘やかされてまた少し弱くなったか」
くぅこ「なっ……!?」
くぅこ(これは……変化の煙っ!?)
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:10:26.03 ID:jCAv+IA40
ヤオ「いやはや、妹弟子に見破られるような変化をしているようではそれこそ某が脆弱か」
くぅこ「ヤオ殿もしらこ様の手先でごじゃるか?」
ヤオ「何度もあの男の関係で振り回されるのは少々しゃくに障るがこれも仕事でな」
くぅこ「ならヤオ殿を振り払ってでも戻るまででごじゃる」
ヤオ「一度某に殺されかけた貴様がか?……笑わせる」
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:10:55.91 ID:jCAv+IA40
ヤオ「いいだろう。一度だけこの手を解いてやる。構えろ、くぅこ」
くぅこ「っ!」
ヤオ「今のところ殺せとの依頼は受けていない。あくまであの男が折れるまで貴様を人質にとることを続行するだけだ」
ヤオ「すなわち某は貴様を殺しはしない。だが、貴様は某を殺めるつもりで来い……そうでなければ」
くぅこ「参るでごじゃるよ」
ヤオ「ここは通れんぞ」
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:11:27.05 ID:jCAv+IA40
……………………………………
せっしゃとヤオ殿は同じ師のもとで育った兄妹弟子だった。
実の親の顔は覚えていない。
生きているのかすら分からない。
このくぅこの名すら、誰が名付け親なのやら……
物心ついたときには忍者である師匠様に拾われていて、その師匠様について行くことが生きる術だったせっしゃが忍道を志すことは必然だった。
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:11:57.50 ID:jCAv+IA40
師匠「ほっほ…まだまだ粗いがついにくぅこも変化の術を使えるようになったのう」
くぅこ「ししょーさまぁ。せっしゃすごい?すごいでごじゃるか?」
師匠「ほっほ。すごいすごい。くぅこは筋がいい…これは天才かもしれんのう」
くぅこ「えへへ〜」
ヤオ「っ……」
くぅこ「あにじゃ〜!」
ヤオ「ふん……」
くぅこ「…あにじゃ?」
師匠「ほっほ。ヤオのやつめ。ワシがくぅこばかり褒めるからさては嫉妬じゃな」
くぅこ「ふ〜ん」
ヤオ殿……あにじゃはそれをあまり良しとしなかったようだったが……。
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:12:38.05 ID:jCAv+IA40
…………………………
師匠「さてさて。そろそろ焼けたころじゃな」
くぅこ「美味そうでごじゃるよ〜!」
くぅこ「はむっ!むしゃむしゃ…もぐもぐ」
師匠「ほっほ。よい食いっぷりじゃが、喉を詰まらせることのないようにの」
くぅこ「ごっほ!ごほっ!」
師匠「……おそかったようじゃの」
ヤオ「くぅこ」
くぅこ「んっ…。ごくっごくっ……ぷはっ」
くぅこ「かたじけにゃいでごじゃる」
師匠「くぅこや、食事は命を繋ぐものじゃ。そのような行為で命を落とすほど馬鹿馬鹿しいこともないぞ?落ち着いていただくのじゃ」
くぅこ「ししょーさまの焼いたものは全部美味でごじゃるゆえ……てへ……」
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:13:21.02 ID:jCAv+IA40
ヤオ「はぁ」
くぅこ「もぐもぐ……もうなくなってしまったでごじゃるよ」
師匠「ほっほ。まぁその早食いもまた、何処ぞやで役に立つかもしれの」
くぅこ「あにじゃはまだ一口しか食べてないでごじゃるか?」
ヤオ「……それがどうした」
くぅこ「と、特にどうこうというわけではないでごじゃるが」
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:13:47.27 ID:jCAv+IA40
ヤオ「そうか。はむっ」
くぅこ「……じー」
ヤオ「……欲しいのか」
くぅこ「じゅる」
ヤオ「……やる」
くぅこ「まことでごじゃるか!?」
師匠「これくぅこ」
ヤオ「……いい。少食も修行の一環だ」
くぅこ「はむっ!はむっ!」
くぅこ「えへへ〜。かたじけないでごじゃるよ〜」
ヤオ「……ふっ」
それは、せっしゃが主に精神面で忍道とは程遠い存在だったからであった。
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:14:44.80 ID:jCAv+IA40
…………………………
だがあにじゃはそんなせっしゃを完全否定することなく受け入れてくれようとしていた。
ヤオ「くぅこ、貴様は忍者を目指すことを諦めたほうがいい」
くぅこ「え」
忍の道から離そうとする形で……
今思うとそれはあにじゃからせっしゃへの大きな優しさだった。
くぅこ「……っ!!」
しかし当時のせっしゃにはそんなあにじゃの気持ちが理解しきれなかった。
それどころか物心ついたときから定められた道だと信じて歩んできた志を否定されたことへの怒りの念すら湧いてきた。
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:15:21.85 ID:jCAv+IA40
このとき、せっしゃに本当になんの才も無ければそれも良しとできたかもしれないが
皮肉にもせっしゃは師匠様の言う通り戦闘面の才能だけはあったようで、それが更にあにじゃの言っている言葉を理解できない障害物となった。
せっしゃは力を認めてもらおうと新しい術を習得する度にあにじゃへ組手を挑んだ。
ヤオ「ふん!」
くぅこ「ひあぁ!」
……勝てたことは、一度もなかった。
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:15:55.47 ID:jCAv+IA40
結局、一矢も報いることのない内にあにじゃは師匠様のもとを離れて行ってしまった。
悔しかった。
そこからはできるだけ我を切り捨て、あにじゃの目指していたであろう理想の忍者像だけを追って修行を続け、ときは流れてせっしゃは姫様に仕える身となった。
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:16:39.19 ID:jCAv+IA40
…………………………
その結果何時しかせっしゃは
盗賊「ひっ!わ、悪かった!別に姫様にどうこうしようってつもりはなかったんだ!ただ金目の物が欲しくてっ!だから、い、命だけは……!」
くぅこ「……さらばでごじゃる」
盗賊「ギャッ!」
盗賊「ぐ、ぇっ……」
闇夜にて屋敷に仇なす者の首を掻く、それが存在の全てとも言える冷酷な狐となった。
…………………………
くぅこ「しょ…しょの…やはり汚れ仕事をしている身に魅力はないということでごじゃろうか…」
男「そんなことないって。くぅこは可愛いよ」
あの日までは……。
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:17:18.29 ID:jCAv+IA40
………………………………
その後、せっしゃがあにじゃの言っていた言葉の真意を完全に理解できたのはあにじゃに命を奪われかけたときだった。
ヤオ「…だから忍者を志すことをやめ、抜け忍となることを勧めたというのに」
ヤオ「だが某が見てきた貴様の中で、今貴様は最も少女らしい顔をしている」
ヤオ「普通の街娘としてこの世に生を受けたなら…もう少し幸せに死ねたかもしれんな」
ヤオ「許せ…我が親愛なる妹弟子よっ!」
(ああ)
あにじゃは、心の底からせっしゃを愛してくれていたのだ。
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:17:44.31 ID:jCAv+IA40
だから、いつか来るかもしれなかったこの敵対する瞬間を、兄妹弟子同士で殺しあう瞬間を、必死に避けようとしてくれていたのだ。
己の信じる私情に揺さぶられない忍者になりきるために。
『えへへ〜。かたじけないでごじゃるよ〜』
妹弟子の笑顔を、失わないために。
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:18:25.02 ID:jCAv+IA40
……………………………………
くぅこ「はぁ…!はぁ…!」
ヤオ「その程度か」
くぅこ(まだ、一矢報いるには程遠いでごじゃるか……?)
短刀、手裏剣、クナイ、針、あらゆる刃物と武装を彼を傷つけるために振るうもそれらは全て受け流すだけのために振るわれた彼のクナイによって弾かれた。
妖術には妖術でかわされ、武器を使用しない純粋な体術に至っては組み伏せられるのが目に見えているので挑もうとすら思えない。
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:19:04.44 ID:jCAv+IA40
ヤオ「やはり、あの男に甘やかされてさらに弱体化したと見える」
くぅこ「主殿は関係ないでごじゃる!」
そう、例えせっしゃがあの血を血で洗う冷酷な狐のまま戦い続けていたとしても彼に一矢報いることができたか。
答えは恐らく否だ。
なぜなら彼と同じ道を歩んだところでせっしゃの目の前に広がるのは彼がさらに伸ばした道だからだ。
何処かで違う道、彼とは違うやり口、彼が知らない戦術を身につけないことにはこの圧倒的な実力差は縮まることをしらないだろう。
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:19:30.57 ID:jCAv+IA40
ならやはり今己が彼に見せるべきは……
くぅこ(主殿と共に寄り添うことで手に入れた力)
それしかない。
それでしか勝利は掴めないし、主殿を助けることは叶わない。
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:20:07.98 ID:jCAv+IA40
くぅこ(主殿……)
ヤオ「は……?」
せっしゃは両手に持ったクナイと短刀を地面に捨て、続いて胸内にしまっていた手裏剣、地下足袋に隠していた針すら放り出した。
くぅこ(この術を主殿以外に使用することを許して欲しいでごじゃるよ)
そしてゆらゆらと無防備に
ヤオ「どうした……戦意を消失し自暴自棄となったか」
ヤオ殿に近づいて行く。
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:21:06.77 ID:jCAv+IA40
ヤオ(妙だ。そのまま近づいてどうするつもりだ?まだ試していない純粋な肉弾戦を挑む気か?しかしそれでは武器を捨てる理由にはならない。口の中に針でも仕込んでいるのか)
ヤオ(浅はかなり。……千里眼の術)
殺意も戦意も、完全に捨てきるのは容易だった。
彼は自分を家族のように想い、親しくしてくれた相手だったから。
ヤオ(馬鹿な……手裏剣もクナイも針も見えない。それどころか殺意すら感じられない。だからといって逃げようという気も感じられない)
ヤオ(くぅこ貴様……)
ヤオ「一体何を企んでいる?」
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:22:08.35 ID:jCAv+IA40
くぅこ「……じゃ」
ついにヤオ殿の目と鼻の先まで近づき、彼の胸元に顔を埋めるようにして抱きついた。
抱きつかれて一瞬身構えたヤオ殿だったが、自らを抱く腕の力の弱さからすぐに構えを解いた。
ヤオ「どうした……」
くぅこ「あにじゃ……」
ヤオ「なっ!?」
ヤオ(どうして今になってその呼び名を……!!)
ヤオ「やめろっ!!」
(その呼び名はっ!!)
くぅこ「あにじゃ……?」
(某を忍道から遠ざけるっ!!)
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:22:47.08 ID:jCAv+IA40
ヤオ「……今すぐ離れろ。さもなければ刺し殺す」
くぅこ「別に突き放すことくらい造作もないことのはずでごじゃるよ」
ヤオ「……離れろと言っている」
少し上を向いて
尻尾を左右に振る。
くぅこ「何故でごじゃるか?」
耳は立てずに力を抜いて
前に体重をかけるようにもたれかかる。
ヤオ(なんだその顔は……)
ヤオ(一体何処で覚えた……そんな……)
くぅこ「許してほしいでごじゃるよ」
ヤオ(オスに媚びた顔を……!!)
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:23:31.99 ID:jCAv+IA40
くぅこ「ここを、通して欲しいでごじゃる」
ヤオ「そんな直球な願いを某が情けで聞くとでも?」
くぅこ「思っているでごじゃる」
くぅこ「あにじゃ……だから……」
くぅこ「せっしゃに優しかった……あにじゃだから……」
ヤオ「っ〜〜!!」
ヤオ「……馬鹿な奴め」
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:24:08.97 ID:jCAv+IA40
くぅこ「恩にきるでごじゃるよっ」
ヤオ「それ以上ひっつくな!!」
ヤオ「……興が冷めた。次はない」
くぅこ「二度あることは三度あると主殿が言っていたでごじゃるよ」
せっしゃはヤオ殿から離れると彼の真横を歩いて通り過ぎた。
主殿の囚われた屋敷の方向へ。
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:24:44.69 ID:jCAv+IA40
ヤオ「待て」
ヤオ「……乗っていけ。連れて行ってやろう」
くぅこ「くくっ。あにじゃもその優しさは変わらぬでごじゃるな」
ヤオ「黙れ。手遅れになりたいか」
くぅこ「ときにあにじゃ、奥さんがいるというのは本当でごじゃるか?変化を見破れなかったのはそれが信じられなかったのもあるでごじゃるよ」
ヤオ「……あんなもの作り話に決まっている」
くぅこ「何故わざわざそんな話を……」
ヤオ「あの男の声が耳障りだったからだ」
くぅこ「え」
ヤオ「……ごほん。行くぞ」
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:25:35.79 ID:jCAv+IA40
………………………………
しらこ「ずっとだんまりだね男殿」
シエン「これ以上悪人面をするのは心の臓が痛みいるが……早く観念した方がくぅこ殿の身のためにもなりますぞ」
男(そう、だよな……)
男(それに俺が戻ってこないとなれば妖狐姫が黙っていないだろう)
きっと、てんこさんを連れて俺を連れ戻しに来てくれるに違いない。
もともと妖狐姫はこうなることを予測して俺を引き止め続けてくれたんだ。これだけには賭けたくなかったが……
男(くぅこの命には変えられない)
男(ごめん!妖狐姫!)
男「ああ、そうだな」
しらこ「ふふっ、やっとボクの座椅子になってくれるんだね」
300 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:26:08.01 ID:jCAv+IA40
男「わかっ……」
男「っ!!」
そのとき確かに感じ取った。
天井裏の、いつもの気配を。
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:26:47.68 ID:jCAv+IA40
しらこ「どうしたんだい?」
男「いやまだだ。折れないぞ俺は」
男(分かるぞくぅこ)
今天井から降りて俺を連れ去ろうにもシエンさんとの衝突は避けられない。
明るい中真っ向でのタイマンではシエンさんに勝つことはできない。
それを彼女は知っている。
彼女には隙が必要なんだ。
シエンさんの不意をつけるだけの隙が。
302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:27:27.76 ID:jCAv+IA40
男(どうするか)
さっきみたいにしらこに掴みかかるか?
それともシエンさんに直接飛びかかるか?
これらは多分どっちも通用しない。
何故ならどちらも俺の殺意が足りないから。
殺意が足りないとシエンさんに刀を使って貰えない。素手で肩でも腕でも服でもなんでも片手で捕まれて終わり。
空いた手で刀が瞬時に抜かれてそれがくぅこを止められる力になってしまう。
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:28:05.15 ID:jCAv+IA40
素人の俺が手っ取り早く殺意を出せるもの……刃物の他には何か、何かないのか……?
男(ん?)
ズボンのポケットの中にそっと指を入れる。
シエン「む……?」
男(あるじゃねーか。刃物)
くぅこから練習用に貰ってた手裏剣が、一枚。
男(チャンスは一回)
俺がこいつをシエンさんに投げて彼が手裏剣を刀で弾いたところを狙う!
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:28:33.79 ID:jCAv+IA40
男(座椅子しか能の無かった前までの俺とは違う)
…………………………
『…主殿は一度たりとも的に手裏剣を当てたことは無かったと記憶しているでごじゃるが』
『うぐっ…や、やってみなくちゃ分かんねーだろ』
…………………………
男(へへっ……見てろよくぅこ)
主殿の凛々しき投てき、見せてやるからよ。
305 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:29:08.84 ID:jCAv+IA40
男「……頼むぜ」
シエン「ぬっ!?」
男「くぅこ!!」
声と合図に手裏剣を投げつけた。
しらこ「シエン!?」
シエン「甘いっ!!」
予想通り手裏剣の不意打ちをシエンさんは見事に刀で弾いて見せた。
306 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:29:41.09 ID:jCAv+IA40
シエン「まさかそのような獲物を隠し持っていたとは……しかしまだまだ……」
しらこ「シエン上だ!!」
くぅこ「上出来でごじゃるよ!!」
シエン「何っ!?」
くぅこはシエンさんの背後に飛びつくと彼の首を手刀で叩いた。
男(よっしゃ)
シエン「かはっ」
くぅこが畳に着地すると同時にシエンさんは気を失って地面に倒れた。
くぅこ「自分の土俵で負けるつもりがないのはせっしゃも同じでごじゃるよ。常に背後からを始点とするのが汚れ者のやり方でごじゃる」
307 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:30:16.76 ID:jCAv+IA40
しらこ「い、いつの間に」
男「くぅこ、またヤオとやりあったんだろ?大丈夫だったのか?」
くぅこ「たたかうまでも無かったでごじゃるよ」
男「マジで!?くぅこさんパネェ!!」
さすが俺の家来!!
くぅこ「な、なんでごじゃるか……?そのハジけた反応は……」
しらこ(くそっ!!あの気分屋めっ!!やっぱり直接殺しが絡まないとやる気にならないのか!?)
308 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:31:14.34 ID:jCAv+IA40
くぅこ「さてしらこ様、今度こそ覚悟してもらうでごじゃるよ」
しらこ「ひっ!!」
男「やめろくぅこ!!」
くぅこ「しかし主殿!!この者はいわば裏切り者でごじゃるよ!!」
男「もういいだろ。美味い飯食わせてもらったんだから」
くぅこ「……そういう問題では」
309 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:31:47.77 ID:jCAv+IA40
しらこ「男殿……」
しらこ「ふふっ、いいんだよ。くぅこ殿の言う通りだ。ボクは快く話に乗ってくれたあなた方を裏切ったんだ」
男「そりゃあびっくりしたけど……くぅこも無事みたいだし、俺はもう怒ってないよ。気にすんなって」
しらこ「いいさ。くぅこ殿、ボクからもお願いするよ。こんな醜いボクを一思いに殺してくれ」
男「は?」
くぅこ「主殿、しらこ様も覚悟を決めたようでごじゃる。領地主として最期は清く責任を取らせて差し上げるべきでごじゃるよ」
男「くぅこまで何言ってんだよ……」
くぅこ「これ以上しらこ様を庇うのは逆にこの方への侮辱となりえるでごじゃる」
310 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:32:17.94 ID:jCAv+IA40
男「お、おいおい」
くぅこ「やはり血は見たくないでごじゃるか?そういうことなら先に屋敷の外に出ていても構わないでごじゃるよ。ことが済んだら追いつくでごじゃる」
くぅこは鞘から短刀を抜くと座り込むしらこの首に刃を近づけた。
しらこも抵抗する様子がない。
目に光はなく虚ろで、完全に全てを諦めきった表情をしていた。
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:33:13.06 ID:jCAv+IA40
男(こ、こんなの、おかしいだろ)
くぅこ「主殿、出て行くなら早くした方がいいでごじゃる。死への恐怖は感じる時間が長いと一度決めた覚悟も揺さぶってしまうでごじゃるよ」
男「そ、そうだ!命令だくぅこ。そんなことはやめろ!」
くぅこは黙ったまま短刀から手を離そうとしない。
男「はっは……おーい。聞こえなかったのか〜?主殿からの命令だぞ〜?」
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:34:06.45 ID:jCAv+IA40
くぅこ「主殿」
男「な、なんだよ」
俺をキッと睨んだ彼女の顔には鬼神すら宿っているように見えた。
くぅこ「主殿がせっしゃを心配してくれたように、せっしゃもまた主殿の身を心の底から案じていたでごじゃるよ」
くぅこ「主殿は、主君を危険にさらされたこの怒りを……我慢して内に秘めろと仰るでごじゃるか?」
『鬼の目にも涙』俺が今彼女の顔を絵にして描いたならその絵にそう命名しただろう。
『我慢』それは俺が彼女に対して命令によって禁止したこと。
こいつに更に暴君の魂を重ねて命令できるか……彼女の涙を見れば答えはノーだった。
男(くそっ)
それ以上は俺は彼女と目を合わせることができず視線を下にそらした。
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:34:58.47 ID:jCAv+IA40
命令は使えない。
しらこも死を受け入れようとしている。
この状況をなんとかして止めたいなら、くぅこの怒りの矛先を向ける場所を新たに作りながらしらこの諦観を正さなくてはならない。
しらこ「生きてても、もう意味なんかないんだ」
突然しらこがぼそぼそと蚊のなくような声で呟いた。
男「……くぅこ、せめて少しだけでもしらこと話す時間をくれ」
くぅこ「……しょーち」
男「ありがとうくぅこ」
くぅこは声こそ鋭く反抗的だったが、仕方なさそうに短刀の刃先をしらこから遠ざけた。
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:35:51.22 ID:jCAv+IA40
男「しらこ、なんでそんなこと言うんだ?」
しらこ「そんなの、分かっているだろう?」
しらこ「貴方が手に入らないからだよ……」
男「そんな理由で……」
しらこ「そんな理由だと!?」
しらこ「例えばこれから先どのような幸福を得ても……貴方の上で眠る以上の幸福は、手に入れられそうにないんだ……。できることなら、ずっと貴方の膝で抱かれて眠っていたいのに」
しらこ「何もやる気がしないんだ……もう貴方の上に座ることはないと思うと」
しらこ「そんなの、生きてる気がしないよ……」
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:36:34.83 ID:jCAv+IA40
いつか、誰かの感情を動かすような存在でありたいと、誰かの生きる理由になるような存在になりたいと、そう思ったことがある。
しかし俺はその先を深く考えたことがなかった。
誰かの生きる理由になるということ、それは逆に誰かの死んでもいいと思ってしまう理由になること。
…………………………
『かたじけにゃい…せっしゃも…主殿のためならこの命惜しくないでごじゃるっ…』
……………………………
それを共に誓い合った仲なら、全然苦ではないが……
自分が一方的にその立場になってしまうというのは、あまりいいものではなかった。
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:37:15.62 ID:jCAv+IA40
男「……はぁ」
てんこさんから一番最初にしらこの話を聞いたときから薄々気がついてはいたが、こいつはまぁまぁ暴君だ。
多分俺が妖狐姫との縁談に割って入る前まではこの世の欲しいと思ったものは意地でも手に入れてきたのだろう。
だから安い妥協を知らない。
くぅこ「もうよいでごじゃるか?」
男「くぅこ、まだもう少しだけ待ってくれ」
くぅこ「ぬぅ……」
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:37:59.44 ID:jCAv+IA40
男「目標を見失っちまったってことか?……俺が手に入らないって分かったから」
しらこ「まぁ、そんなとこだよ……」
男「分かるよ、その気持ち」
しらこ「ふぇ?」
男「目標がないとなーんにもやる気が起きねーよな。俺も自分に目標を作るのが下手くそでさ」
男「その内自分がやる気にならないだけなのに、『自分は何をやっても駄目なんだー』って思い始めちゃって気がつきゃ穀潰しよ」
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:38:39.28 ID:jCAv+IA40
男「やっぱり俺たち気があうんじゃね?」
しらこ「え?え?」
男「な」
俺はしらこの前に座り込んで彼の両肩に手を置いた。
男「俺と友達になってくれないか」
しらこ「友……達……?」
くぅこ「主殿!?何の話をしているでごじゃるか!?しらこ様は今から……」
後ろのくぅこの声に構わず続ける。
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:39:27.08 ID:jCAv+IA40
男「友達になったらさ、遊びに行くんだ。一月に一回でどうだ?一月に一回しか会えないって言ったら寂しいけど、一月に一回のお楽しみって考えたら……ワクワクするだろ?」
男「俺が遊びに来たらさ、この街のいろんな場所へ案内してくれよ。楽しい場所とか、美味いものが食える場所とか……あ、それは舌の肥えきったお前には難しいか」
男「後はさ……」
しらこ「う、うん」
男「俺の膝椅子に乗って、一緒に昼寝したりとか、さ……」
しらこの瞳は、徐々にだが光を取り戻し始めていた。
きっと俺と過ごす一ヶ月後の1日を、頭の中で思い描いてくれているに違いない。
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:40:02.67 ID:jCAv+IA40
男「目標を見失って生きる糧がないんだなんて言うなら、一月に一回俺がその目標になる。俺もその日を一月の楽しみにするよ」
男「だから、その……あー!うまく言えないけど」
男「お、俺のために生きろ!」
321 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:40:38.91 ID:jCAv+IA40
しらこ「え……」
くぅこ「はぇ!?」
しらこ「う、ぅ……」
何故か、しらこの顔が赤くなっていく様子が見えた。
男(あれ?俺なんか変なこと言ってる……?)
しらこ「わ、分かったよ。貴方と友人になるから……いい加減その手を離してくれないか」
男「あ、ごめん痛かったか?」
彼の肩から手を話す。
確かに熱弁し過ぎて手に力がはいってたかも……
しらこ「……そういうわけじゃ、ないけどさ」
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:41:36.92 ID:jCAv+IA40
くぅこ「主殿。話はそれで終わりでごじゃるか?」
男(さて、次はこっちをなんとかしないと)
しらこ「ひぃぃ!あ、あ……」
しらこは人が変わったかのようにくぅこに怯え始めると俺の後ろに隠れた。
どうやら生きようという気になってくれたらしい。
くぅこ「主殿、そこを退くでごじゃるよ」
男「友が過ちを犯してしまったときは共にそれを償ってあげるのもまた友情の王道よ」
俺は臆することなくしらこの前に背を向けて立ち、彼の前で両腕を広げて見せた。
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:42:11.20 ID:jCAv+IA40
男「くぅこ、しらこの代わりだ。その怒りは俺へぶつけろ。俺を斬れ」
くぅこ「主殿、本気でごじゃるか」
す、すみません臆することなくというのは真っ赤な嘘です。
短刀でも十分怖い。
男(ま、まじで漏らしそう。ってかくぅこが本気で俺を斬って全治一ヶ月後で済むのか?)
男「し、死なない程度でお願いします」
さっきまでアホみたいに格好つけていたのにそれを全てパーにするほど格好悪い発言が思わず口から溢れた。
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:42:51.87 ID:jCAv+IA40
くぅこ「はぁ。そんなこと、姫様に勝手でできるわけないでごじゃろう。ここは主殿と美しい友情に免じて全て水に流して差し上げるでごじゃるよ」
男「く、くぅこ〜!!」
ため息を吐き短刀をしまうくぅこに俺は抱きつきながら泣いた。
くぅこ「何だかいつもの主殿を見たら、全部どうでもよくなったでごじゃるよ」
くぅこ(……にしても)
…………………………
『お、俺のために生きろ!』
…………………………
くぅこ(やはり主殿はとんでもない方でごじゃるな……)
くぅこ(くくっ、せっしゃ一生ついて行くと決意しなおしたでごじゃるよ)
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:43:23.57 ID:jCAv+IA40
…………………………
男「んじゃあなしらこ」
しらこ「ああ、もうすっかり夕暮れだね。改めて……騒ぎを起こしてすまなかった」
シエン「あっしからも謝罪いたす」
男「もういいって。そんなことより一ヶ月後、楽しみにしてるからな!」
しらこ「う、ん……」
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:44:08.63 ID:jCAv+IA40
……………………
男「はぁ、こりゃ妖狐姫もカンカンだな」
くぅこ「そうならないためにできるだけ早く帰れる手配をしておいたでごじゃるよ」
男「マジ!?さすがくぅこ!!」
くぅこ「ヤオ殿に頼んでおいたでごじゃる」
男(え?ヤオから逃れるだけじゃなくてそんなことまでしたの?)
あのヤオが安安とくぅこからそんなお願いを聞くとは思えない。
男(戦うまでもなかったとか言ってたけど、一体何したんだ……?金……?)
あいつも現金なやつだなー……
327 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:44:52.79 ID:jCAv+IA40
男「で?その車屋はどこだ?」
くぅこ「そろそろ来るはずでごじゃるよ」
くぅこが向いた方向からものすごい土煙を上げて何者かが迫ってくる。
男「え……?もしかして手配した車屋って」
くぅこ「くろこ殿でごじゃるよ」
くろこ「へいへい兄ちゃん!!ひいきにしてくれてありがとー!!あ、もしかしてアタシに惚れちゃった?いけないんだー!!浮気なんだー!!」
くろこ「ま、出すもの出してくれたらどこまでも相手してあげるけど?茶屋と宿屋に寄るのは別料金だけどさ」
男(さ、最悪だ……)
くぅこ「くろこ殿、冗談はそこまでにして隣街まで急いでほしいでごじゃる」
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:45:34.38 ID:jCAv+IA40
男「あ、急がなくていいよ。急がなくていいから」
こいつのジェットコースターに乗るくらいなら妖狐姫に怒られた方が何倍もマシだ。
くぅこ「何を呑気なことを言っているでごじゃるか。くろこ殿、超特急で頼むでごじゃるよ」
男「え、ちょっ……」
くろこ「はいはい了解。じゃっ、縛ってやるから、そこに二人ともうつ伏せで転がりな」
くろこ「それじゃっ、隣街の屋敷まで……しゅっぱーつ!!!!!!」
「いやあああああああ!!!!!!」
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:46:14.18 ID:jCAv+IA40
………………………………
しらこ「さてさて明日から忙しくなるぞ」
シエン(しらこ様、男殿が帰ったというのに随分と上機嫌ですな)
しらこ「ああ〜!!!!」
シエン「どうかしましたか」
しらこ「男殿に好きな食べ物を聞くのを忘れていた!!シエン、明日隣町まで行って聞いてこい!!」
シエン「なっ!?」
しらこ「先ずはそれを中心にボクも料理の練習をしよう」
シエン「おや?そのようなことをしなくても屋敷の料理人に頼めばいいのでは?」
しらこ「ボクが作りたいから作るんだ!!」
シエン「は、はぁ」
330 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/06/22(木) 06:46:59.16 ID:jCAv+IA40
しらこ「後はそうだな。一月に一回の日だ。やはり服装も特別なものを用意しよう」
しらこ「男殿の世界のものなんてどうだろう。うわさには聞いたことがある。なんでもあの世界にはめいど?服なるものがあってそれが殿方に人気らしいな。きっと最高級の服装に違いない」
しらこ「そうと決まれば明後日にでも転移鳥居を開こう。準備だシエン」
しらこ(ふふっ……男殿……)
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