妖狐の国の座椅子あふたー

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302 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:27:27.76 ID:jCAv+IA40
男(どうするか)

さっきみたいにしらこに掴みかかるか?
それともシエンさんに直接飛びかかるか?

これらは多分どっちも通用しない。

何故ならどちらも俺の殺意が足りないから。

殺意が足りないとシエンさんに刀を使って貰えない。素手で肩でも腕でも服でもなんでも片手で捕まれて終わり。

空いた手で刀が瞬時に抜かれてそれがくぅこを止められる力になってしまう。
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:28:05.15 ID:jCAv+IA40
素人の俺が手っ取り早く殺意を出せるもの……刃物の他には何か、何かないのか……?

男(ん?)

ズボンのポケットの中にそっと指を入れる。

シエン「む……?」

男(あるじゃねーか。刃物)

くぅこから練習用に貰ってた手裏剣が、一枚。

男(チャンスは一回)

俺がこいつをシエンさんに投げて彼が手裏剣を刀で弾いたところを狙う!
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:28:33.79 ID:jCAv+IA40
男(座椅子しか能の無かった前までの俺とは違う)

…………………………

『…主殿は一度たりとも的に手裏剣を当てたことは無かったと記憶しているでごじゃるが』

『うぐっ…や、やってみなくちゃ分かんねーだろ』

…………………………

男(へへっ……見てろよくぅこ)

主殿の凛々しき投てき、見せてやるからよ。
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:29:08.84 ID:jCAv+IA40
男「……頼むぜ」

シエン「ぬっ!?」

男「くぅこ!!」

声と合図に手裏剣を投げつけた。

しらこ「シエン!?」

シエン「甘いっ!!」

予想通り手裏剣の不意打ちをシエンさんは見事に刀で弾いて見せた。
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:29:41.09 ID:jCAv+IA40
シエン「まさかそのような獲物を隠し持っていたとは……しかしまだまだ……」

しらこ「シエン上だ!!」

くぅこ「上出来でごじゃるよ!!」

シエン「何っ!?」

くぅこはシエンさんの背後に飛びつくと彼の首を手刀で叩いた。

男(よっしゃ)

シエン「かはっ」

くぅこが畳に着地すると同時にシエンさんは気を失って地面に倒れた。

くぅこ「自分の土俵で負けるつもりがないのはせっしゃも同じでごじゃるよ。常に背後からを始点とするのが汚れ者のやり方でごじゃる」
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:30:16.76 ID:jCAv+IA40
しらこ「い、いつの間に」

男「くぅこ、またヤオとやりあったんだろ?大丈夫だったのか?」

くぅこ「たたかうまでも無かったでごじゃるよ」

男「マジで!?くぅこさんパネェ!!」

さすが俺の家来!!

くぅこ「な、なんでごじゃるか……?そのハジけた反応は……」

しらこ(くそっ!!あの気分屋めっ!!やっぱり直接殺しが絡まないとやる気にならないのか!?)
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:31:14.34 ID:jCAv+IA40
くぅこ「さてしらこ様、今度こそ覚悟してもらうでごじゃるよ」

しらこ「ひっ!!」

男「やめろくぅこ!!」

くぅこ「しかし主殿!!この者はいわば裏切り者でごじゃるよ!!」

男「もういいだろ。美味い飯食わせてもらったんだから」

くぅこ「……そういう問題では」
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:31:47.77 ID:jCAv+IA40
しらこ「男殿……」

しらこ「ふふっ、いいんだよ。くぅこ殿の言う通りだ。ボクは快く話に乗ってくれたあなた方を裏切ったんだ」

男「そりゃあびっくりしたけど……くぅこも無事みたいだし、俺はもう怒ってないよ。気にすんなって」

しらこ「いいさ。くぅこ殿、ボクからもお願いするよ。こんな醜いボクを一思いに殺してくれ」

男「は?」

くぅこ「主殿、しらこ様も覚悟を決めたようでごじゃる。領地主として最期は清く責任を取らせて差し上げるべきでごじゃるよ」

男「くぅこまで何言ってんだよ……」

くぅこ「これ以上しらこ様を庇うのは逆にこの方への侮辱となりえるでごじゃる」
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:32:17.94 ID:jCAv+IA40
男「お、おいおい」

くぅこ「やはり血は見たくないでごじゃるか?そういうことなら先に屋敷の外に出ていても構わないでごじゃるよ。ことが済んだら追いつくでごじゃる」

くぅこは鞘から短刀を抜くと座り込むしらこの首に刃を近づけた。

しらこも抵抗する様子がない。
目に光はなく虚ろで、完全に全てを諦めきった表情をしていた。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:33:13.06 ID:jCAv+IA40
男(こ、こんなの、おかしいだろ)

くぅこ「主殿、出て行くなら早くした方がいいでごじゃる。死への恐怖は感じる時間が長いと一度決めた覚悟も揺さぶってしまうでごじゃるよ」

男「そ、そうだ!命令だくぅこ。そんなことはやめろ!」

くぅこは黙ったまま短刀から手を離そうとしない。

男「はっは……おーい。聞こえなかったのか〜?主殿からの命令だぞ〜?」
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:34:06.45 ID:jCAv+IA40
くぅこ「主殿」

男「な、なんだよ」

俺をキッと睨んだ彼女の顔には鬼神すら宿っているように見えた。

くぅこ「主殿がせっしゃを心配してくれたように、せっしゃもまた主殿の身を心の底から案じていたでごじゃるよ」

くぅこ「主殿は、主君を危険にさらされたこの怒りを……我慢して内に秘めろと仰るでごじゃるか?」

『鬼の目にも涙』俺が今彼女の顔を絵にして描いたならその絵にそう命名しただろう。

『我慢』それは俺が彼女に対して命令によって禁止したこと。
こいつに更に暴君の魂を重ねて命令できるか……彼女の涙を見れば答えはノーだった。

男(くそっ)

それ以上は俺は彼女と目を合わせることができず視線を下にそらした。
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:34:58.47 ID:jCAv+IA40
命令は使えない。
しらこも死を受け入れようとしている。

この状況をなんとかして止めたいなら、くぅこの怒りの矛先を向ける場所を新たに作りながらしらこの諦観を正さなくてはならない。

しらこ「生きてても、もう意味なんかないんだ」

突然しらこがぼそぼそと蚊のなくような声で呟いた。

男「……くぅこ、せめて少しだけでもしらこと話す時間をくれ」

くぅこ「……しょーち」

男「ありがとうくぅこ」

くぅこは声こそ鋭く反抗的だったが、仕方なさそうに短刀の刃先をしらこから遠ざけた。
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:35:51.22 ID:jCAv+IA40
男「しらこ、なんでそんなこと言うんだ?」

しらこ「そんなの、分かっているだろう?」

しらこ「貴方が手に入らないからだよ……」

男「そんな理由で……」

しらこ「そんな理由だと!?」

しらこ「例えばこれから先どのような幸福を得ても……貴方の上で眠る以上の幸福は、手に入れられそうにないんだ……。できることなら、ずっと貴方の膝で抱かれて眠っていたいのに」

しらこ「何もやる気がしないんだ……もう貴方の上に座ることはないと思うと」

しらこ「そんなの、生きてる気がしないよ……」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:36:34.83 ID:jCAv+IA40
いつか、誰かの感情を動かすような存在でありたいと、誰かの生きる理由になるような存在になりたいと、そう思ったことがある。

しかし俺はその先を深く考えたことがなかった。

誰かの生きる理由になるということ、それは逆に誰かの死んでもいいと思ってしまう理由になること。

…………………………


『かたじけにゃい…せっしゃも…主殿のためならこの命惜しくないでごじゃるっ…』


……………………………

それを共に誓い合った仲なら、全然苦ではないが……

自分が一方的にその立場になってしまうというのは、あまりいいものではなかった。
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:37:15.62 ID:jCAv+IA40
男「……はぁ」

てんこさんから一番最初にしらこの話を聞いたときから薄々気がついてはいたが、こいつはまぁまぁ暴君だ。

多分俺が妖狐姫との縁談に割って入る前まではこの世の欲しいと思ったものは意地でも手に入れてきたのだろう。

だから安い妥協を知らない。

くぅこ「もうよいでごじゃるか?」

男「くぅこ、まだもう少しだけ待ってくれ」

くぅこ「ぬぅ……」
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:37:59.44 ID:jCAv+IA40
男「目標を見失っちまったってことか?……俺が手に入らないって分かったから」

しらこ「まぁ、そんなとこだよ……」

男「分かるよ、その気持ち」

しらこ「ふぇ?」

男「目標がないとなーんにもやる気が起きねーよな。俺も自分に目標を作るのが下手くそでさ」

男「その内自分がやる気にならないだけなのに、『自分は何をやっても駄目なんだー』って思い始めちゃって気がつきゃ穀潰しよ」
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:38:39.28 ID:jCAv+IA40
男「やっぱり俺たち気があうんじゃね?」

しらこ「え?え?」

男「な」

俺はしらこの前に座り込んで彼の両肩に手を置いた。

男「俺と友達になってくれないか」

しらこ「友……達……?」

くぅこ「主殿!?何の話をしているでごじゃるか!?しらこ様は今から……」

後ろのくぅこの声に構わず続ける。
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:39:27.08 ID:jCAv+IA40
男「友達になったらさ、遊びに行くんだ。一月に一回でどうだ?一月に一回しか会えないって言ったら寂しいけど、一月に一回のお楽しみって考えたら……ワクワクするだろ?」

男「俺が遊びに来たらさ、この街のいろんな場所へ案内してくれよ。楽しい場所とか、美味いものが食える場所とか……あ、それは舌の肥えきったお前には難しいか」

男「後はさ……」

しらこ「う、うん」

男「俺の膝椅子に乗って、一緒に昼寝したりとか、さ……」

しらこの瞳は、徐々にだが光を取り戻し始めていた。

きっと俺と過ごす一ヶ月後の1日を、頭の中で思い描いてくれているに違いない。
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:40:02.67 ID:jCAv+IA40
男「目標を見失って生きる糧がないんだなんて言うなら、一月に一回俺がその目標になる。俺もその日を一月の楽しみにするよ」

男「だから、その……あー!うまく言えないけど」




男「お、俺のために生きろ!」




321 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:40:38.91 ID:jCAv+IA40
しらこ「え……」

くぅこ「はぇ!?」

しらこ「う、ぅ……」

何故か、しらこの顔が赤くなっていく様子が見えた。

男(あれ?俺なんか変なこと言ってる……?)

しらこ「わ、分かったよ。貴方と友人になるから……いい加減その手を離してくれないか」

男「あ、ごめん痛かったか?」

彼の肩から手を話す。

確かに熱弁し過ぎて手に力がはいってたかも……

しらこ「……そういうわけじゃ、ないけどさ」
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:41:36.92 ID:jCAv+IA40
くぅこ「主殿。話はそれで終わりでごじゃるか?」

男(さて、次はこっちをなんとかしないと)

しらこ「ひぃぃ!あ、あ……」

しらこは人が変わったかのようにくぅこに怯え始めると俺の後ろに隠れた。

どうやら生きようという気になってくれたらしい。

くぅこ「主殿、そこを退くでごじゃるよ」

男「友が過ちを犯してしまったときは共にそれを償ってあげるのもまた友情の王道よ」

俺は臆することなくしらこの前に背を向けて立ち、彼の前で両腕を広げて見せた。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:42:11.20 ID:jCAv+IA40
男「くぅこ、しらこの代わりだ。その怒りは俺へぶつけろ。俺を斬れ」

くぅこ「主殿、本気でごじゃるか」

す、すみません臆することなくというのは真っ赤な嘘です。

短刀でも十分怖い。

男(ま、まじで漏らしそう。ってかくぅこが本気で俺を斬って全治一ヶ月後で済むのか?)

男「し、死なない程度でお願いします」

さっきまでアホみたいに格好つけていたのにそれを全てパーにするほど格好悪い発言が思わず口から溢れた。
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:42:51.87 ID:jCAv+IA40
くぅこ「はぁ。そんなこと、姫様に勝手でできるわけないでごじゃろう。ここは主殿と美しい友情に免じて全て水に流して差し上げるでごじゃるよ」

男「く、くぅこ〜!!」

ため息を吐き短刀をしまうくぅこに俺は抱きつきながら泣いた。

くぅこ「何だかいつもの主殿を見たら、全部どうでもよくなったでごじゃるよ」

くぅこ(……にしても)

…………………………

『お、俺のために生きろ!』

…………………………

くぅこ(やはり主殿はとんでもない方でごじゃるな……)

くぅこ(くくっ、せっしゃ一生ついて行くと決意しなおしたでごじゃるよ)

325 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:43:23.57 ID:jCAv+IA40
…………………………

男「んじゃあなしらこ」

しらこ「ああ、もうすっかり夕暮れだね。改めて……騒ぎを起こしてすまなかった」

シエン「あっしからも謝罪いたす」

男「もういいって。そんなことより一ヶ月後、楽しみにしてるからな!」

しらこ「う、ん……」
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:44:08.63 ID:jCAv+IA40
……………………

男「はぁ、こりゃ妖狐姫もカンカンだな」

くぅこ「そうならないためにできるだけ早く帰れる手配をしておいたでごじゃるよ」

男「マジ!?さすがくぅこ!!」

くぅこ「ヤオ殿に頼んでおいたでごじゃる」

男(え?ヤオから逃れるだけじゃなくてそんなことまでしたの?)

あのヤオが安安とくぅこからそんなお願いを聞くとは思えない。

男(戦うまでもなかったとか言ってたけど、一体何したんだ……?金……?)

あいつも現金なやつだなー……
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:44:52.79 ID:jCAv+IA40
男「で?その車屋はどこだ?」

くぅこ「そろそろ来るはずでごじゃるよ」

くぅこが向いた方向からものすごい土煙を上げて何者かが迫ってくる。

男「え……?もしかして手配した車屋って」

くぅこ「くろこ殿でごじゃるよ」

くろこ「へいへい兄ちゃん!!ひいきにしてくれてありがとー!!あ、もしかしてアタシに惚れちゃった?いけないんだー!!浮気なんだー!!」

くろこ「ま、出すもの出してくれたらどこまでも相手してあげるけど?茶屋と宿屋に寄るのは別料金だけどさ」

男(さ、最悪だ……)

くぅこ「くろこ殿、冗談はそこまでにして隣街まで急いでほしいでごじゃる」
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:45:34.38 ID:jCAv+IA40
男「あ、急がなくていいよ。急がなくていいから」

こいつのジェットコースターに乗るくらいなら妖狐姫に怒られた方が何倍もマシだ。

くぅこ「何を呑気なことを言っているでごじゃるか。くろこ殿、超特急で頼むでごじゃるよ」

男「え、ちょっ……」

くろこ「はいはい了解。じゃっ、縛ってやるから、そこに二人ともうつ伏せで転がりな」


くろこ「それじゃっ、隣街の屋敷まで……しゅっぱーつ!!!!!!」


「いやあああああああ!!!!!!」



329 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:46:14.18 ID:jCAv+IA40
………………………………

しらこ「さてさて明日から忙しくなるぞ」

シエン(しらこ様、男殿が帰ったというのに随分と上機嫌ですな)

しらこ「ああ〜!!!!」

シエン「どうかしましたか」

しらこ「男殿に好きな食べ物を聞くのを忘れていた!!シエン、明日隣町まで行って聞いてこい!!」

シエン「なっ!?」

しらこ「先ずはそれを中心にボクも料理の練習をしよう」

シエン「おや?そのようなことをしなくても屋敷の料理人に頼めばいいのでは?」

しらこ「ボクが作りたいから作るんだ!!」

シエン「は、はぁ」
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:46:59.16 ID:jCAv+IA40
しらこ「後はそうだな。一月に一回の日だ。やはり服装も特別なものを用意しよう」

しらこ「男殿の世界のものなんてどうだろう。うわさには聞いたことがある。なんでもあの世界にはめいど?服なるものがあってそれが殿方に人気らしいな。きっと最高級の服装に違いない」

しらこ「そうと決まれば明後日にでも転移鳥居を開こう。準備だシエン」

しらこ(ふふっ……男殿……)
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/06/22(木) 06:48:11.42 ID:jCAv+IA40
しらこ「後はそうだな。一月に一回の日だ。やはり服装も特別なものを用意しよう」






「今度こそ、貴方をボクのものに……」






〜しらこの野望〜

おわり
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:49:45.82 ID:jCAv+IA40
>>331

みすった
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:50:43.63 ID:jCAv+IA40






「今度こそ、貴方をボクのものに……」






〜しらこの野望〜

おわり
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/22(木) 06:51:44.43 ID:jCAv+IA40
なうろうでぃんぐ…

(-ω-)
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 07:36:55.14 ID:ej//KGhCo
男がイケメンすぎる
これはしらこも惚れますわ
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 09:44:56.05 ID:hvZr6CaRO
女装男の娘はご褒美。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/23(金) 00:49:00.66 ID:QuU0+F7jo
338 : ◆hs5MwVGbLE [saga]:2017/07/05(水) 03:46:37.58 ID:bMRps9Kk0
妖狐姫「うにゅも中々座椅子の心得が分かってきたのう」

てんこ「光栄でございます姫様」

妖狐姫「あの日の夜にあやつからいろいろ学んだのかの?」

てんこ「あの日とは?」

妖狐姫「うにゅに座椅子を貸してやった日のことじゃ」

てんこ「え……?あ、えーっと……ですね……あの日の夜は……」

妖狐姫「む、なんじゃ急に心地が悪くなったの」

てんこ「も、申し訳ございません」
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:47:41.25 ID:bMRps9Kk0
妖狐姫「やはりあやつが恋しいのぅ……はよう帰ってこぬのか」

てんこ「……そうですね。私も早く旦那様とくぅこの顔を見て安心したいものです」

妖狐姫「ぬぅ、なんとかしてあやつの方からもわらわから離れがたいようにできぬものじゃろうか」

妖狐姫「やはりコウノトリとやらに認められるほど仲を深めなくては……」

てんこ「あ……はい。そうでございますね」

妖狐姫「む……?」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:48:11.71 ID:bMRps9Kk0
妖狐姫「のうてんこ」

てんこ「はい。どうなされましたか」

妖狐姫「前にコウノトリとやらの話を座椅子にしたときにあやつからあわれむような視線を送られたのじゃが……」

てんこ「は、はぁ」

妖狐姫「何故か今のうにゅも同じような顔をしておるのじゃ」

てんこ「そ、そんなことは」

妖狐姫「うにゅの言っておったこと……はたして本当なのかの……?」

てんこ「う……」
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:48:52.27 ID:bMRps9Kk0
………………………………

男「う、うえぇ……」

くぅこ「くろこ殿、助かったでごじゃるよ」

くろこ「はいまいどあり。兄ちゃんもまたね〜」

くろこ式ジェットコースターを降りた俺は彼女の巻き起す土煙を背中で浴びながら一人えづいていた。
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:49:24.50 ID:bMRps9Kk0
男「ゴホッ!!ゴホッ!!うぇ……」

男(だからかかってんだよ。帰るときくらい歩け!!)

くぅこ「主殿……大丈夫でごじゃるか……?」

地に膝を着く俺の背中をくぅこが優しくさすってくれた。

……少し救われた気がする。

男「はぁ、さっきの土煙もそうだが道中も酷かったしおかげで全身ドロドロだ。こりゃ屋敷に上がったら一番に風呂だな」

くぅこ「それがいいでごじゃるな。せっしゃ主殿の背中を流させてもらうでごじゃるよ」

男(マジで?)

かなり救われた気がする。
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:49:59.31 ID:bMRps9Kk0
くぅこ「てんこ殿に戻ったと伝えてくるでごじゃる」

くぅこはそう言い残し、屋敷の塀をひとっ飛びで越えて行った。

男(あれじゃあ他の忍者も楽勝で進入できそうだな)

あまりの屋敷の警備のザルさに少し心配しながらも門の前で待機していると内側から門が開き始めた。
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:50:34.01 ID:bMRps9Kk0
男「ただい……」

門が開き、見えてきたてんこさんの姿に挨拶する前に俺の懐に弾丸のように妖狐姫が飛び込んできた。

男「うわぁ!!」

妖狐姫「座椅子っ!!」

男「あはは……ただいま……」

てんこ「おかえりなさいませ旦那様。姫様は夕方からずっと落ち着かない様子でな。大変だったのだぞ?」

妖狐姫「ぐしゅ……座椅子ぅ……」

男「なんで泣いてんだよ」

妖狐姫「うにゅにもしものことがあったら……わらわは……わらわは……」

男「おおげさだな。戦地から帰ってきたわけでもあるまいし」

男(いやちょっとした戦地だったか?)

まあそんなこと口が裂けても言えない。
多分もう二度と隣街へ行けなくなる。
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:51:16.60 ID:bMRps9Kk0
男「というか今俺にそんなにひっついたら泥つくぞ」

てんこ「たしかに酷い格好だな」

男「車屋をえらばないとこうなった」

てんこ「その車屋は儲かってるのか……?」

男「ははっ……どうでしょうか」

あれで儲かってるならこの世に車酔いという言葉は存在しなさそうだな。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:51:46.44 ID:bMRps9Kk0
男「とりあえず風呂入っていいですか?」

てんこ「ああ、それは全然構わないが」

妖狐姫「ならわらわも一緒じゃ!!」

男「え」

てんこ「なっ!?姫様は先ほど私と入浴を済ませたばかりではありませんか」

男「そ、それに俺と一緒にだなんて……なぁ……?」

くぅこと背中を流し合うという俺の天国計画に若干の支障が出るではないか。

それは一大事だ。
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:52:26.43 ID:bMRps9Kk0
くぅこ「てんこ殿、良いでごじゃろう。たまには夫婦水入らずで裸の付き合いというのも」

てんこ「くぅこ……」

くぅこがそんなことを言いながらてんこさんの後ろから歩いてきた。

男「え?じゃあくぅこは……」

くぅこ「せっしゃは後で一人ゆっくりつからせてもらうとするでごじゃるよ」

男(そ、そんなにこにこした顔でこの世の終わりみたいなこと言わないでくれよ……)
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:53:12.09 ID:bMRps9Kk0
妖狐姫「座椅子、忘れたわけではあるまいな」

男「何をだよ」

妖狐姫「帰ってきたらいつもの百倍わらわを愛でるという約束じゃ」

妖狐姫「百倍というのは片時も離れることのないということじゃ」

男「え、そういう意味だったのか」

妖狐姫「うむ。今晩は風呂も寝るときも共に過ごすのじゃ」

くぅこ「それがいいでごじゃるよ」

男「ちょっと待っていやその……」

妖狐姫「そうと決まればさっさとゆくぞ!!専用の座椅子がいつまでも汚れていては座るに座れんからな」

俺の背後へと回り込んだ妖狐姫が両手で俺の背中をぐいぐいと押し、屋敷へ上げていった。

男「あの……俺のうはうは天国は……」

妖狐姫「何をわけのわからんことを言っておるのじゃ。さっさと歩かんか」

男「……はい」

こうして俺の救われたような気持ちは風に舞う灰のようして消えたのであった。

泣きそう。
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:53:52.30 ID:bMRps9Kk0
てんこ「……大丈夫なのだろうか」

くぅこ「てんこ殿?」

てんこ(……今の姫様は)

(少し、危険かもしれん)
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:54:23.85 ID:bMRps9Kk0






妖狐姫百倍の夜






351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:55:07.12 ID:bMRps9Kk0
なうろうでぃんぐ……

(-ω-)
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 07:36:04.81 ID:Ta8cq8g5o
期待
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 08:50:48.16 ID:NKQlC4rXo

これは気になる展開
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 19:23:59.56 ID:BP1E/1LA0
妖狐と言うぐらいだから変化すんのかな?
百倍に…
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/07(金) 02:58:42.42 ID:o9YtV6MYo
コウノトリに認められるのか
356 : ◆hs5MwVGbLE [saga]:2017/07/08(土) 01:49:34.51 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫「極楽極楽なのじゃ」

だだっ広い湯船の中、長い金髪を短く留めた妖狐姫は俺にもたれかかってご満悦だ。

男(これ広いの意味ないよな)

これならあっちの世界の俺の家でもできそうなくらいだ。
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:50:07.41 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫「やはりわらわにはうにゅのおらん日なぞ考えられぬな」

男「あー、そのことなんだけどな」

妖狐姫「む?」

男「俺、いろいろあってしらこと友達になったんだ。んでまぁこれからも隣街に遊びに行くことにしたんだよ」

男「だからこれからも一月に一回は俺のいない日があるんだ」

これくらいの報告は前もってしとかなければ……何も言わずに行こうとして妖狐姫に引き止められて隣街に行けないとなるとしらこが可哀想だ。

妖狐姫「な……」

男「ごめんな」
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:52:07.47 ID:m4Ar2j/P0
先ほどまで上機嫌だった妖狐姫の顔はしょんぼりとした表情になり、今にも泣きそうな顔で俺をじっと見つめてきた。

男(さすがにそうなっちゃうか)

男「じゃ、じゃあさ、こんなのはどうだ?俺が隣街から帰ってきた日は必ずいつもの百倍お前の相手になるってのは」

男(まあ一緒に風呂入って寝るくらいなら……)

妖狐姫「っ……」

男(……あれ?)

十秒ほど、風呂場は沈黙の中を水音が泳ぐだけとなった。

やがて妖狐姫は身体をくるりとこちらへ向け、俺を見上げると口を開いた。
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:53:19.31 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫「うにゅは……この街に飽きてしもうたのかの?」

男「え?」

妖狐姫「わらわと寄り添うことに、飽きてしもうたのかの?」

男「そ、そんなわけ」

妖狐姫「なら何故そんなことを言うのじゃ!!」

妖狐姫は俺の首に腕を回すとそのまま抱きついてきた。

彼女の身体に巻いてあった布は水を吸って重くなったせいか彼女が軽く立ち上がると同時にずるりと落ちて湯のなかに取り残された。

妖狐姫「わらわはこんなにも……うにゅと離れがたいというのに」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:53:57.32 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫は一糸まとわぬしっとりと濡れた柔肌を俺の全身に押し付けてその言葉を体現した。

男「ちょっ……落ち着けって……」

多分、落ち着いてないのは俺の方だが……

いつも膝に乗せている妖狐姫といえど、全裸でこうされると落ち着いていられるわけがない。

いや、俺が幼女好きかどうかなんてのはこの際関係ないだろう。

男(そうだろう!?くぅこ)

……近くにくぅこの気配はない。

男(マジで夫婦水入らずにしてくれたのかよ)

今はその気遣いが逆に憎い。

男(主殿が幼き姫様を襲ったりしたらどうするのって!!)
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:54:25.35 ID:m4Ar2j/P0
男「この街に飽きたとか、お前が嫌になったとかじゃないから……本当だって……」

妖狐姫「……ならその証明をするのじゃ」

男(前にもこんなことがあったような)

………………………………

『じゃっ、じゃが…そうじゃな。やはりしらこもほざいていた通り言葉だけというのは信用ならんな』

『行動で示してみせよ』

………………………………

男(そういえばこいつはそんなやつだったな)
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:54:59.85 ID:m4Ar2j/P0
そのことを思い出し軽く深呼吸すると俺は妖狐姫を抱きしめた。

男(……柔らかい)

彼女と初めて会ったときのことを思い出す。
服の無い彼女はあのときの何倍も柔らかかった。

……それこそ、百倍。

全身の肌が吸い付くように俺と密着する。
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:55:51.92 ID:m4Ar2j/P0
男「これでいいか?」

妖狐姫「まだじゃ」

男(駄目か)

これ以上を求められると本当にいろいろ危ないことになりそうだけど。

男「せ、せっぷん?」

……しないと駄目ですかね?やっぱり。

妖狐姫「そうではない」

男「ん?」

あれ、違うのか。



妖狐姫「……わらわと、子をなすのじゃ」




364 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:56:33.81 ID:m4Ar2j/P0
男「へ?」

男(妖狐姫と……え……?)

頭の中で次々と犯罪的な妄想が膨らんでいく。

あと妄想と一緒にいろいろ膨らんで

男(いや、ちょっと待て落ち着け俺!!)

重要なことを忘れていた。
それは彼女がまだ赤ちゃんはコウノトリさんが運んできてくれるものだと思っていることだ。

つまり彼女の言う『子を成す』ということはそれすなわちコウノトリさんが認めてくれるくらい彼女とイチャイチャすることだ。

それならなんともない。
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:57:02.53 ID:m4Ar2j/P0
男「あはは……いやでももう夜だしコウノトリさんは今寝てるかもしれないぞ?だからいっぱい仲良くするのは明日からでも……」

妖狐姫「てんこから聞いたのじゃ」

男「ん?何を?」

妖狐姫「しょの……正しい子のなし方じゃ……」

男(てんこさんおい)
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:57:39.76 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫「だからの?もしうにゅもわらわから離れがたいと思ってくれておるのなら……それを示してほしいのじゃ」

妖狐姫「……わらわと」

妖狐姫は上半身だけでなくじりじりと下半身も浮かせて近づけてきた。

妖狐姫「……血を混ぜあって」

男(あれ……?)

何かが変だ。

もくもくと白い湯気が立ち込める風呂場、しかしその湯気は次第に桃色に染められていった。

まるで湯気じゃない何かになるように。

それに伴い俺の頭も靄に包まれるように意識が朦朧としてくる。
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:58:16.16 ID:m4Ar2j/P0
上目遣いで俺を見上げる妖狐姫が目を瞑って顔を寄せてきた。

妖狐姫「ん……ちゅ……」

彼女の舌が俺の口内を舐めとるように這う。

その感触が、死ぬ程気持ちいい。

妖狐姫「ちゅっ……れろ……ちゅっ……」

男(なんだ……これ……)
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:59:07.58 ID:m4Ar2j/P0



幻覚を見た。




大口を開けた狐の化け物が、俺の頭を丸呑みにする。




……そんな幻覚。



369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:59:41.98 ID:m4Ar2j/P0
男(駄目だ。なんかよく分からないけど、これは駄目だ!!)

男「ぷはっ……!!」

幻覚のせいか、それとも俺の最後の理性がそうさせたのか、一瞬恐怖にも似た感情を抱いた俺は妖狐姫の両肩を持って彼女を突き放した。

男「はぁ……はぁ……」

妖狐姫「座椅子……?」

俺に拒絶されたかのように感じてしまったのか、彼女はまたも涙目で俺を見た。

男(な、なにかフォローを)

男「ちょっとのぼせそうになった……そろそろ上がろうぜ」

俺は彼女の手を引いて風呂場を出た。
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:00:24.24 ID:m4Ar2j/P0


男「ほら、身体拭いてやる」

乾いた手ぬぐいで彼女の全身を拭いていく。

上から順番に、肩、胸、背、腹、尻、太もも

妖狐姫「んっ……」

男(……すべすべだ)

最後に別の手ぬぐいで彼女の髪をわしゃわしゃと包んだ。
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:01:10.99 ID:m4Ar2j/P0

男「はい終わり」

妖狐姫「……座椅子」

男「ん〜?」

妖狐姫「今日は、寝るときも一緒じゃぞ?」

『今日は寝るときも一緒』帰ってきたときにも聞いたその言葉の意味は全く違うものとなって脳に認識された。

男「う、うん。分かってる」

やっぱり、何かが変だ。

今日は彼女の上目遣いを見るといつもより妙にどきどきしてしまう。

『可愛い』を超えた感情を抱きそうになってしまう。

誰もが一度は思ったことがあるであろう、あの風呂上がりに鏡を見たら『あれ?俺って結構イケメンじゃね?』と思ってしまうアレ。

アレがもし女の子にも適用されるならそれのせいかもしれない。

……とか?

男(ないか)
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:01:44.30 ID:m4Ar2j/P0
白い襦袢を羽織った妖狐姫は風呂場の脱衣所の戸に手をかけると最後にもう一度だけこちらを向いた。

妖狐姫「……先に部屋で待っておるぞ」

そう言い残し彼女は脱衣所を後にした。

男「はぁ……」

男(どうしよう。妖狐姫が百倍可愛い)

頭を抱えていると外側から誰かが戸を叩いた。

男「はい?」

男(くぅこかな?)

「旦那様、少しお話が……」

男「あれ?あ、はい!!ちょっと待っててください」
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:02:29.87 ID:m4Ar2j/P0
……………………

男「で、話とは」

服を着た俺は妖狐姫の部屋へ行く前にてんこさんの部屋へ寄っていた。

男「さ、先に言っときますけど!!別にあいつには何もしてませんからっ!!」

もしそのことで俺を叱ろうというのなら止めてほしい。
むしろ何もしなかった俺を褒めてほしいくらいだ。
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:03:03.28 ID:m4Ar2j/P0
てんこ「その逆だ。私は旦那様の心配をしていたのだ」

男「え?俺の、心配を?」

てんこ「そうだ」

てんこさんは湯飲みに淹れた茶を一口すすると話し始めた。

てんこ「……実は、領地主の血筋を持つものは年頃になるとその子孫を残すために無意識に異性を引き寄せるための妖気を出すのだ。後継者を確実に作るためにな」

てんこ「旦那様がそれに当てられてないか心配になったのだ」

男(なるほど、あの変な感じや桃色に見えた湯気はその妖気が原因か)
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:04:01.15 ID:m4Ar2j/P0
男「正直……当てられてました」

原因がはっきりしているならてんこさんも怒るまい。

てんこ「はぁ、やはりか」

男「あの、やっぱり腹くくれってことですか……?」

てんこ「まぁ、たしかに姫様ももう子どもを産めないわけではないし、街のためを思うならそういうことも早いに越したことではないのだが……」

てんこ「姫様ほどの幼い身体で子を産むとなるとそれだけで姫様の命の危機に繋がる」

てんこさんの言葉は何処か尋常じゃない重みを感じた。
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:04:31.53 ID:m4Ar2j/P0
男(まるでそういうことがあったかのようだな)

………………………………


『実は姫様の母上は姫様をお産になったさいに他界されて…』

………………………………

男「っ!!まさか……」

てんこ「ああ、そのまさかだ。姫様の母上は姫様ほどの歳で亡くなっておられる」

男(お、お義父さん……あんたって人は……)

英雄、色を好みすぎた。
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:05:08.21 ID:m4Ar2j/P0
てんこ「だから姫様にはまだご自身の成長を待ってほしかったのだ……それは叶わぬことではなかったはずだったのだが……」

てんこ「今回の件で姫様の中の旦那様への想いが爆発してしまったようなのだ」

てんこ「旦那様!!どうにかして姫様のお気持ちを落ち着かせてほしいのだ!!」

男「ど、どうやって……」

てんこ「それはもう……いつもの百倍姫様のお相手をするしか……」

もう百倍ってなんだよ。
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:05:52.15 ID:m4Ar2j/P0
てんこ「しかしやはり旦那様も殿方……血筋の妖気に当てられてずっと劣情を抑えていろというのは酷だろう」

男「……まぁ」

てんこ「だから」

てんこ「ど、どうしても我慢できなくなったときは……またこの部屋へ来てほしい。私が旦那様の……を……介抱しよう……」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:06:34.49 ID:m4Ar2j/P0
男「え……」

てんこ「う、嘘じゃないぞ!!これも姫様のため……私は本気だ!!」

本気だと分かってもらうためだろうか。
てんこさんは顔をずいと寄せて俺に迫った。

絶対無理してる。

男「あ、あの……分かりました。分かりましたから」
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:07:03.98 ID:m4Ar2j/P0
男「じゃ、じゃあ万が一のことがあったときは……よろしくお願いします」

俺は畳に手をついて立ち上がると決意した。

男(てんこさんの手を煩わせるわけにはいかない)

耐えねば。

てんこ「旦那様……」

男「失礼します」
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:07:54.18 ID:m4Ar2j/P0
…………………………

廊下に出た俺は両手で自らの頬を挟むように叩いた。

男(……ちょっとてんこさんもいつもより可愛いなって思っちまったじゃねーか)

男(あーあーくそ!!一日屋敷を離れただけでみんながこんなにも愛おしく感じるなんて)

ホームシックも百倍だ。

男「はぁ……さて、どうしたもんかね」

男「……そういやくぅこは今頃風呂場か」

男(ちょっと、脱衣所に戻るか)
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:08:27.87 ID:m4Ar2j/P0
なうろうでぃんぐ……

(-ω-)
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/08(土) 08:38:37.25 ID:IzdVSt+Go
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/08(土) 13:31:21.43 ID:0w4sEvN1O
これはツライ状態ですね(ゲス
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/08(土) 17:08:07.51 ID:C8dfoMaA0
こうのとりさん来るのかな?
くぅこの所にww
386 : ◆hs5MwVGbLE [saga]:2017/07/10(月) 02:52:07.59 ID:0qMfg27A0
…………………………

妖狐姫「座椅子、遅かったではないか」

男「あー、ちょっとな。てんこさんと話してた」

妖狐姫「むぅ」

妖狐姫は少し頬を膨らませてから、布団の中に入った。

妖狐姫「はよう!!」

敷き布団に俺が横になれるスペースを作ると彼女は急かすようにその場所をバシバシと叩く。

男「はいはい」

妖狐姫「はーよーう!!」

男「ちょっとくらい待てよ。よっこいしょっと」
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:52:48.29 ID:0qMfg27A0
俺が布団に入ると妖狐姫はいの一番に俺に抱きついた。

それに応じるように俺も彼女の頭を撫でる。

妖狐姫「まふっ……」

男(あれ?)

これではいつもと同じだ。

男(なら)

そう。このまま頭、そして尻尾を撫でていれば妖狐姫は確実に寝るはずだ。

そして彼女が寝た後に俺も無事就寝。
俺が戻ってきたことによって血筋の妖気も治まって明日にはいつも通り。

男(なんだ簡単じゃないか)

どうやら無理矢理魂を賢者にジョブチェンジさせるまでもなさそうだ。
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:53:37.08 ID:0qMfg27A0
俺はいつものように左右に揺れる妖狐姫の尻尾に触れた。

そのときだった。

妖狐姫「んっ、ひゃっ……」

男(ん?)

何故かいつもと反応が違う。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:54:17.29 ID:0qMfg27A0
男(触り方が悪かったか?)

さらに『いつも通り』を強く意識して尻尾を撫でる。

妖狐姫「……んぁ」

またいつもとは違う反応。
しかし妖狐姫はくすぐったそうな反応を見せながらも俺の服を掴んだまま離そうとしない。

男(な、なんで……)
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:54:59.46 ID:0qMfg27A0
妖狐姫「座椅しゅ……」

男「妖狐姫……?」

妖狐姫「今日はいつもの百倍じゃ。その、頭と尻尾以外も……触ってほしぃ……のじゃ……」

妖狐姫が襦袢の袖を軽く引いて見せると先ほども脱衣所で触れた真っ白な肩が露出する。

彼女は自身の頭の上に置かれた俺の手を持ち上げるとそっとその肩に置いた。

男(まただ……)

視界が桃色の妖気ではっきりしなくなる。

手は俺の意思に関係なく勝手に動き出すと彼女の肩を撫で始めた。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:55:36.06 ID:0qMfg27A0
妖狐姫「んむっ……」

またも無抵抗に彼女の口づけを許してしまう。

妖狐姫「ちゅっ……」

そしてさっきまで肩で止まっていた手は彼女の服に侵入しその小さくも熱のある鼓動を感じ取っていた。

妖狐姫「ちゅぅ……んはっ……」
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:56:07.52 ID:0qMfg27A0
妖狐姫は俺から顔を話すと勢いよく俺の胸に顔を埋めて

妖狐姫「……しゅき」

そう呟いた。
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:56:49.74 ID:0qMfg27A0



また、大きな狐の化け物が大口を開けた。




男(ああ……)




そして、ついに俺を頭から丸呑みにした。



394 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:57:31.47 ID:0qMfg27A0
男「妖狐姫」

俺は身体を起こすと彼女に覆いかぶさった。

目を潤ませ、服のはだけた妖狐姫が俺をまっすぐに見つめる。

妖狐姫「男」

妖狐姫「うにゅと血を混ぜ合う覚悟は、とおにできておるぞ……」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:58:15.05 ID:0qMfg27A0

なるほどな

男(これが代々伝わる血筋の力、か……)

ありがとよ。
大きな化け狐さん。

あんたの力に背中押されたおかげで、もっと妖狐姫のことを好きになれた気がするよ。
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:58:55.62 ID:0qMfg27A0
でも本気で好きになったなら……




………………………………

『姫様ほどの幼い身体で子を産むとなるとそれだけで姫様の命の危機に繋がる』

『旦那様!!どうにかして姫様のお気持ちを落ち着かせてほしいのだ!!』

………………………………




男(守らなくちゃ、だろ)





397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:59:42.44 ID:0qMfg27A0
決意と共に取り戻したほんの少しの意識の中、俺はズボンのポケットを上から握りしめた。

中に忍ばせておいた手裏剣の四つ角がズボン越しに手のひらに食い込む。

男「ってぇ!!」

妖狐姫「座椅子!?」

男(さっきくぅこの持ち物から持ってきといてよかった……後で返しとかないとな……)
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:00:43.88 ID:0qMfg27A0
俺は布団から飛び出すと部屋の隅にある柱の方向へ全力で走り出した。

男「らぁっ!!」

さぁ、逃げよう。

男(腰抜けなんでっ!!)
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:01:47.77 ID:0qMfg27A0


妖狐姫「何処へ行くのじゃ!!」

目には見えないが、狐の化け物の姿をした妖気は確実に俺をもう一度飲み込もうと追ってきていた。


その大口を広げて……
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:02:23.00 ID:0qMfg27A0
男(なーにが眠らせたらいいだ)

男(てめぇが先に眠ってろ!!このっ!!)

柱に手をついて頭を後ろに引く。

男(ロリコン座椅子野郎!!)
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:02:58.11 ID:0qMfg27A0





俺が頭を前へ降ったその後、部屋には鈍い音が響きわると共に、百倍の夜は終わりを告げた。





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