【FEif】リリス(……これは、だめそう……ですね……)

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591 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/23(月) 23:07:00.25 ID:exWJQDRV0
リリス『でも、そうやって悩んでいるということは。やっぱり、アクアさんもカムイ様の事を本当に愛したいからだと私は思います』

アクア「リリスに言われても、あなただって愛はわからないって」

リリス『そうですね、私には愛はわかりません。でも、同じことが繰り返されるとその行為に疑問を抱いてしまうのは、誰しもあることだと思います』

アクア「そうなのかしら?」

リリス『ええ、現に私にもそう言ったことがありました』

リリス『私がカムイ様にお食事を頂いていることは御存じと思います。毎日毎日カムイ様から食事をいただけるのはとてもうれしかったのですが、ある日を境に笑顔で無くなっている自分がいたんです。でも持ってきてもらった手前、無碍に出来ないからと力いっぱいジャンプをして喜びをアピールする。そんな状態になってしまいました』

アクア「そう、相手のために喜んだふりをする、色々と追い詰められていたのね」

リリス『はい。そんなある日、特に用事もなくカムイ様が来てくれたんです。私に声を掛けにきただけだったのですが。私はとてもうれしかったんです』

アクア「どうして?」

リリス『それはですね。私は食事を頂くことではなくて、カムイ様が会いに来てくださることが何よりもうれしいことだった。だけど、長く続いた食事という習慣がそのことを忘れさせ、その行為に対する対応だけをするように、私を縛り上げていたんです。私は、本当にうれしいことを忘れていたということです』

アクア「……」
592 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/23(月) 23:19:25.38 ID:exWJQDRV0
リリス『おそらく、アクア様もそうなんだと思います。毎日のように行われる行為に、今答えが見つからなくなっているだけで、きっと本当はカムイ様の事を色々と思っているに違いないんです』

アクア「……リリス」

リリス『だからゆっくりと考えていきましょう。大丈夫です、ここに滞在している間に答えを出す必要はありませんから』

アクア「……ふふっ、まさかあなたに本格的に慰められることになるとは思っていなかったわ。もしもそうなら、私がカムイをメチャクチャにしたいというのは、私がしたい愛情表現なのかもしれないわ」

リリス『やられっぱなしは性に合わないってだけでは?』

アクア「ふふっ、ありがとう。他のみんなの意見も色々と参考にしてみるわ。明日からは自由にして、私も私なりに頑張ってみるつもりだから」

リリス『頑張ってくださいね、アクアさん』

アクア「ええ」

リリス『ところで、アクアさん。最初に悲しい現実がとか言ってましたけど、あれってどういう意味なんですか?』

アクア「悲しい現実……ああ、そのことね」

リリス『はい』

アクア「大したことではないの。私の胸が前に比べて大きくなっただけの事だから」

リリス『え?』

アクア「ね、大したことなかったでしょう?」ニッコリッ

リリス『………』

『………え?』
593 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/23(月) 23:20:21.34 ID:exWJQDRV0
今日はここまで

 FEHのリリス実装は何時になるんですか。
594 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/29(日) 20:05:19.18 ID:gU7Y0K7Y0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―???―

リリス(また夢を見る。あまり見たくもないのに。だけど、私はそれをぼんやりと見るしかなかった。淡い光に包まれているからだけじゃない。私はその初めて見る場所が分からなかったから、ぼんやりと眺めるしかなかったのだ)

リリス(青い石畳の床に、黒い影が二つ。私はそれを後ろから、ゆっくりと眺めている。動き出さない世界を見つめながら、少しだけ輪郭に色が入り始める。だけど、誰だかはわからない。いや、誰だかは予想が付く、私が夢を見る理由は決まっているからだ)

リリス(それが私の役割であるのだから……)

リリス(光が強くなってくる。夢の終わりが来た。消滅していく世界に睨みを利かせて、何か手掛かりはと見つめてみるが、床が青い場所に二人の人影があるということ以外わからないまま。これはただの夢だと願いながら私は目を覚ました)
595 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/29(日) 20:39:54.34 ID:gU7Y0K7Y0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―南国の異界・宿泊施設『ピエリとリリスの部屋』―

リリス『……んっ。朝ですか……』ウトウト

リリス『えっと昨日は、そうでした。アクアさんに適度に報告を行って、それで胸が成長したとかいう話を聞いて……』

リリス『……』サスサス

リリス『竜の体ではまるまるフォルム過ぎて大きいのか小さいのかもわかりません。……でです』

ピエリ「スヤ……スヤ……」

リリス『なんでピエリさんが私を抱き枕にして眠っているんでしょうか。わざわざシングルベットを抜け出して、私を抱き枕にする必要なんてないと思うんですけど』

ピエリ「んんっ、えへへー、リリス〜」ギューッ

リリス『ちょ、ピエリさん。背鰭、背鰭が折れる。折れちゃいます!』

ピエリ「んー、冷たくて、きもちぃのぉ」ペタペタ

リリス『ひゃっ! ちょっと、お腹、そんないっぱい触っちゃダメ……んっ!』ピクッ

ピエリ「ん、えへへ〜」サワサワッ

リリス『や、駄目ですピエリさん! そんな下まで手を伸ばしちゃだめ――』

 サワサワ サワサワッ ピクンッ

 ……

 ギョムッ

リリス『ぴええええええええっ!』
596 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/29(日) 20:49:10.16 ID:gU7Y0K7Y0
 バッ!

リリス『はぁはぁ……。なんか、ギュムって、私のがギュムって!』

ピエリ「んー、ふわああああっ。リリス、どうしたの?」

リリス『どうしたのじゃありませんよ。ピエリさん!』

ピエリ「?」

リリス『あのですね、昨日ちゃんと話し合ったじゃないですか。夜は別々のベットで寝ましょうって』

ピエリ「んー、そんな約束したの?」

リリス『しましたよ。なのに、朝起きたら私を抱き枕代わりにして、約束守ってないじゃないですか』

ピエリ「だって、リリスの体冷たいし、とっても抱き心地がいいのよ。ピエリ、リリスを抱きしめて眠るのが気に入っちゃったの」

リリス『気に入ったとしても駄目です。私が竜の時にどんな姿をしてるのか考えてください。もしかしたら、私が狼になってあなたを襲っちゃうかもしれないんですよ?』

ピエリ「大丈夫なの。襲ってきたらお腹に向かって一突きえいってしてあげるのよ。襲われたら返り討ちにして問題ないってマークス様も言ってたの」

リリス『ああもう』
597 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/29(日) 20:56:22.26 ID:gU7Y0K7Y0
リリス『ともかくです。私が人の姿に戻るまでは、一緒のベットは遠慮してください』

ピエリ「うー、どうして人の姿ならいいのに、竜の姿じゃダメなの?」

リリス『ダメな理由位察してください』

ピエリ「そんな風に背を向けて言われても納得できないのよ。ピエリの方をちゃんと向いて話をするの」

リリス『い、今は向けません』

ピエリ「どうしてなの?」

リリス『ど、どうしてってそれは……だ、駄目ですそんなあそこがカチンカチンだからとか、そんなこと言えるわけがって、ああ、どうしてこういう事は思わず考えてしまうんですか私は!』

ピエリ「? リリスのあれ、カチンコチンになってるの?」

リリス『いえ、カチンカチンです、ってそうじゃなくて。ともかく、今はピエリさんに正面を見せるわけにはいかないので。その、あれです。ちょっとシャワー室に行ってきます!』ビューンッ!

ピエリ「あ……行っちゃったの」
598 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/29(日) 21:07:04.33 ID:gU7Y0K7Y0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ザアアアアアアアッ

リリス『冷水でかなり冷たいですけど、これなら効果ありですよね』チラッ

 ショボン……

リリス『はぁ、作戦は成功ですね。ピエリさんの無邪気さはどうにかしてもらいたいものですね』

リリス『……それにしても、やっぱり先ほど見た夢は、またそういうことが起きる前兆だという事でしょうか』

リリス『もう戦いは終わったはずで。そんな夢を見る事なんてないと思っていたのに、やっぱりあの時の淡い光は勘違いでも何でもなかったのだとしたら……』

リリス『でも、一体誰が仕掛けてくるというのでしょうか。この異界に乗り込んでくるなんてことを行う必要性があるとは思えませんし……』

リリス『だけど、私が夢を見る理由を考えると……』

 ザアアアアアア

リリス『いいえ、もしかしたら私も普通に夢を見るようになったのかもしれません。なら、あの見た光景にも意味がなかったと言えるはずです。だって、今まであんなにぼやけた夢を見る事なんてなかった』

 ザアアアアっ

リリス『だから、杞憂に決まっているんです……』
599 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/29(日) 21:12:14.21 ID:gU7Y0K7Y0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ガチャッ バタンッ

ピエリ「あ、リリス。もう大丈夫なの?」

リリス『はい、大丈夫ですよ。ちゃんとこれも持ちましたし』パシッ フワフワッ

ピエリ「えへへ、リリスはその玉を持ってるのが一番なの。ピエリのリボンみたいに、リリスのトレードマークなのよ」

リリス『できれば私のトレードマークはこのカチーフであってほしいんですけど。私だとわかるように、これを今でも被っているんですから』

ピエリ「? カチーフが無くてもリリスの事見間違えたりしないのよ?」

リリス『それはそうかもしれませんが、その没個性にならないようにと言いますか……。まぁ、いいです。それで、ピエリさんは朝食までどうしてますか?』

ピエリ「えっとね、ピエリちょっとお外を歩いてくるの。リリスも一緒に行くの?」

リリス『散歩ですか。少し運動したいので、確かにいいですね』

ピエリ「うん、それじゃ急いで支度するの」ババッ

リリス『部屋に同性しかいないとしても、なんの躊躇もなく服を脱ぐのはどうかと思います。そういう無防備さに男というのはですね』

ピエリ「ん? ピエリ別に気にしないの」プルンップルンッ

リリス『……大きいのが揺れてますね……」ジーッ

 ……ムクッ

リリス『……ちょっと、もう一度シャワーを浴びて来ますね』フワフワ

ピエリ「リリス、そんなに玉を押し付けてどうしたの?」

リリス『押し付けないといけない時ってあるものなんですよ……』

 ガチャッ バタンッ……

ピエリ「変なリリスなの」プルンッ
600 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/29(日) 21:14:52.37 ID:gU7Y0K7Y0
今日はここまで
601 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/30(月) 19:01:36.11 ID:gk0GcDcs0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―異界の南国・宿泊施設外周―

ピエリ「んー、すっごくいい天気。暗夜だとこんなにお日様が出ることないから、とっても楽しいの」

リリス『そうですね。しかし、暗夜と白夜、これほど偏った気候条件で生活が成り立っているのは不思議です。白夜にも夜という時間はあっても、暗夜のような暗闇は在りませんからね』

ピエリ「そう、白夜に初めて泊まって時ビックリしたの。眠ってた時も起きた時も明るかったから、ピエリ眠ってないって思っちゃったのよ」

リリス『白夜から暗夜に来た人も、何時も暗いから寝ても起きても夢の中みたいだって困惑していらっしゃるそうです。そう考えるとアミュージアやイズモといった公国の方が、朝昼晩がきちんとやって来る場所と言えますね。ピエリさんはどちらの方が好みですか?』

ピエリ「んー、ピエリはずっと暗夜の王都に住んでたから、ずっと暗い方が馴れてるの。白夜もいいけど、やっぱり暗夜の方が好きなの」

リリス『そうですか。私としては朝も昼も夜もあった方がいいと思うのですが』

ピエリ「そうなの? それじゃ、リリスはアミュージアとかイズモみたいな場所が故郷ってことなの?」

リリス『残念ですけど、それはハズレです』

ピエリ「ちがうの? でもそうなの、リリスは星竜だから、星界の生まれなのよ」

リリス『それもハズレです。私は元々星竜だったというわけではありません。色々とあって、こういう形になってしまっただけなんですよ』

602 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/30(月) 19:15:56.27 ID:gk0GcDcs0
ピエリ「? 色々って何なの?」

リリス『色々は色々ですよ。残念ですけど、そこら辺はガードを固くしているので、そう簡単にポロリしたりしませんから』

ピエリ「んー。ピエリ、リリスの事あんまりよく知らないのに、リリスはピエリのことそれなりに知っててずるいの」

リリス『それなりにっていうわけではありませんよ。私が知っているのは、ピエリさんは料理がとっても上手な無邪気で子供っぽい人っていうことくらいです』

ピエリ「もう、ピエリは子供じゃないの。リリスはピエリのこと全然わかってないのよ」

リリス『そういうムキになるところが子供っぽいところなんですけどね。でも、ピエリさんがとても料理上手なのは間違っていないことだと思いますよ。いつかの料理、とてもおいしくて出来ればまた食べたいくらいです』

ピエリ「ふふーん、ピエリはお料理得意なの、中でもお肉を料理するのが大好きなの。大きなお肉を用意してもらって、包丁で八つ裂きにするの。血抜きしてないのはいっぱい血が出るから、ピエリいつも下ごしらえさせてもらえるのよ」

リリス『それ、一緒に面倒事も押し付けられてませんか?』

ピエリ「いっぱい血を抜いて、最後に包丁でえいえいってして炒めたり煮たりすると、とってもおいしい料理が出来上がるのよ」

リリス『ピエリさんは簡単に言いますけど、私はカムイ様ほどではありませんけど不得意なので、そううまく出来る気がしません』

ピエリ「リリス、ピエリの前でカムイ様の料理の話はしないでほしいの。ピエリ、あの料理を思い出すと、なんだかイライラしちゃうのよ」

リリス『まぁ料理できる人から見たら、あれは食材への冒涜ですもんね』
603 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/30(月) 19:31:26.68 ID:gk0GcDcs0
ピエリ「……あれ、なんでピエリがリリスの質問に答えてるの? ピエリ、リリスの事知りたいって思ってたから危なかったの。忘れなくてよかったの」

リリス『うっ、気づかないでくれれば誤魔化しきれたのに』

ピエリ「ねぇねぇ、リリスの事を教えてほしいの」

リリス『はぁ、教えてほしいと言われても。いったい何を教えればいいんですか? 私の事を知ったところでピエリさんにメリットがあるとは思えませんし……』

ピエリ「よくわからないけど、ピエリはリリスのことが知りたいだけなのよ。ピエリ、リリスとお友達なの。だから、リリスのことをもっと知りたいって思っただけなのよ」

リリス『……そ、そうですか////』ポリポリ

ピエリ「? リリスどうしたの、なんだか顔が赤くなってる気がするの」

リリス『その、あまり態勢の無いことを言われてしまうと、こうなってしまうものなんです。恥ずかしいというよりは、その、何でしょうか、よくわかりません……』

ピエリ「ふふー、リリスはピエリに子供って言ってるけど、リリスの方がピエリより子供なの」

リリス『そ、そんなことはありません!』

ピエリ「あ、ムキになってるの。ムキになるのは子供ってさっきリリスが言ってたから、リリスは子供なのよ」

リリス『あれはピエリさんに向かっての言葉であって、それにピエリさん私より年下ですよね?』

ピエリ「ん、わからないの。ちなみにピエリは〇〇歳なの。リリスはいくつなの?」

リリス『やめましょう、年齢で子供か大人かなんてわかるはずありません』
604 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/30(月) 19:57:37.42 ID:gk0GcDcs0
ピエリ「それで、リリスの事なの」

リリス『え、やっぱり話さないとだめなんですか?』

ピエリ「当たり前なの。えーっとね、リリスって星界を守ってるけど、その前は何をしてたの?」

リリス『前まで、それはマイキャッスルを管理する前という意味ですか?』

ピエリ「そうなの。ピエリ、マイキャッスルに来た時に一度だけリリスを見ただけなの。だから、それよりも前は何をしてたのか知らないのよ」

リリス『……そうですね。私は厩舎係として北の城塞に仕えていました。最初にした仕事はあまりうまくいきませんでしたけど、徐々に仕事にも慣れて――』

ピエリ「なんだかつまらないの」

リリス『えー、ピエリさんが話してって言ったんじゃないですか』

ピエリ「だって、リリス、仕事の事しか話してないの。ピエリ、リリスが何をしてたのか聞きたかったの」

リリス『だから厩舎係の仕事をしていたと言っているじゃないですか』

ピエリ「それじゃ、リリスはそれ以外に何かなかったの?」

リリス『それ以外と言われましても……。そうですね、あるとすればやはりカムイ様の事でしょうか。私が厩舎係になって少して、カムイ様が来てくださったときがあったんです。何でも、ギュンターさんから鍛錬の一種だと馬の世話をするように言われたらしくて』

リリス『だけど、その日の馬は気性が荒くて、正直カムイ様に怪我でもあったら大変だと注意していたんですが、一頭が激しく暴れ出してしまいまして』

ピエリ「それでどうなったの? その馬に何かされちゃったの?」
605 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/30(月) 20:08:42.50 ID:gk0GcDcs0
リリス『ふふっ、それがカムイ様、馬に近づくと優しく鬣を撫で始めたんです。見ただけで危ないってわかるのに、すたすたと近づいて』

ピエリ「暴れてる馬に近づくなんて危ないの。後ろ足で蹴られたら、首が変な方向に向いちゃったりするのよ」

リリス『私はかなり慌ててました。なにせ大切な主君を危険な目に合せてしまっているわけですから。でも、あれがカムイ様の人柄なんだと思います。暴れていたはずの馬が段々と大人しくなっていったんです。私は一頭宥めるのにも時間を使ってしまうのに、カムイ様はいとも簡単に宥めてしまうものですから、正直厩舎係の面目丸つぶれでした』

ピエリ「ふふっ、リリス。内心悔しかったのね」

リリス『ええそうですよ。これでも厩舎番を少しの時間任されるようになった矢先だったので……。本当に、カムイ様に敵いません』フフッ

ピエリ「えへへ、ピエリ一つだけリリスの事が分かったの」

リリス『え?』

ピエリ「リリスはカムイ様の事が好きなの。仕事のお話だけの時と違って、リリスの顔いっぱい、いっぱい動いてたのよ」

リリス『そ、そんなに動いてましたか。いやですね、恥ずかしい////』

ピエリ「えへへ、リリスのこと一つ知れてうれしいの」ニコニコ

リリス『もう……。私の事を、ピエリさんに一つ知られてしまいましたね』

ピエリ「ふふん、ピエリがもっともっとリリスの事を知って全部見つけ出してあげちゃうから、覚悟するのよ」ビシッ

リリス『ふふっ、お手柔らかにお願いしますね』
606 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/30(月) 20:14:59.20 ID:gk0GcDcs0
ピエリ「ふふーん、ピエリ手加減なんてできないの」

リリス『はいはい、わかってますよ。それより、どうしますか? そろそろ宿泊施設に戻るのも――』

リョウマ「む、そこにいるのはピエリとリリスか?」タッタッタッ

リリス『あ、リョウマ様。おはようございます、それに……ベルカさん?』

ベルカ「おはよう……」

ピエリ「おはようなの!」

リリス『おはようございます。どうしたんですか、こんな朝からお二人とも』

リョウマ「俺は日課としている朝の素振りに出る所でな。そしたらベルカと会って、一緒に素振りでもしないかと誘って、今一緒に浜に向かっているところだ」

リリス『そうなんですか。でも、ベルカさん。なんで私の浮き輪を持っているんですか? 素振り用の武器は?』

ベルカ「昨日マークス様が武器にも使えると言っていたから、これで素振りをするわ。確かに、これは中々に強い武器になると思う…」

リリス『あのー、浮き輪は浮くためのものですよ?』

リョウマ「だが、俺の木刀の一撃を喰らって割れなかったところを見るに、これは中々に強い武器だ」

リリス『だから浮き輪は浮くためのものですから』

ベルカ「それで、朝の素振りが終わったら打ち合いをしてみようってことになったの」

リョウマ「ああ、俺の剣戟をどれほど受け切れるのか興味もあったが、何よりベルカの腕がどれほど上がったのか確かめてみるのも悪くない、そう思ったわけだ」

607 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/30(月) 20:47:35.15 ID:gk0GcDcs0
ピエリ「なるほどなの」

リリス『それにしても朝から素振りと打ち合いは中々にハードな鍛錬ですね』

リョウマ「何、毎日行っていればそれほど苦にはならん。それに毎日の鍛錬が今の自分に繋がっていることもある。これをやらないと一日が始まった気がしないのでな」

リリス『あはは、毎日続けてきた習慣は疎かにすると、なんだか調子が狂ったりしますからね』

リョウマ「ああ。そうだ、良ければお前たちも来るか?」

リリス『え、私たちもですか?』

リョウマ「ああ、無理にとは言わないさ。だが、朝から軽く汗を掻くのも悪くは無いと思ってな」

ピエリ「なんだかおもしろそうなの。ピエリ、リョウマ様とベルカと一緒に素振りするの。あ、だけど、ピエリ素振りのための道具持ってきてないのよ」

ベルカ「なら、予備のこれを使えばいいわ…」スッ

ピエリ「あ、リリスの浮き輪なの! あ、この角すごいの! すっごく固くて相手をボコボコに出来そうなのよ」

リョウマ「ふっ、言っただろう。中々に強い武器だとな。それでリリスはどうする?」

リリス『このまま一人帰るのもあれですし、ご一緒させていただきます』

リョウマ「そうか。しかし、リリスは何を使って素振りをするか……」

リリス『ご心配なく、私にも素振りに仕えそうなものがありますので』

リョウマ「? 何も持っていないように見えるが」

リリス『大丈夫です。私にはこの――』

『尻尾がありますので』ユラユラ
608 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/07/30(月) 20:48:25.58 ID:gk0GcDcs0
今日はここまで

 みんな、リリスの浮き輪は持ったか?
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/31(火) 23:15:56.94 ID:8KqYmkxkO
更新が多いとやはり嬉しい
610 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/02(木) 22:17:04.55 ID:WaW1UoZ60
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ヒノカ「はぁ、昨日は色々とありすぎてあまりよく寝られなかった。サクラにタクミ、これから二人とどうやって接していけばいいんだ……」

ヒノカ「タクミを見ると頭にあの獣のような叫び声が反響するし、サクラを見てはもしかしたらという想像が頭を過って……」

ヒノカ「だめだだめだ、私は二人の姉だ。こんなことで迷ってどうする。どうにか気分を入れ替えるために、こうやって浜まで来たんだ。まずは軽く体を動かして――」

リョウマ「はっ! せやっ! とうっ!」ブンブンブンッ

ヒノカ「ん? あそこにいるのはリョウマ兄様か。朝の鍛錬を欠かさないとはさすがだな。リョウマ兄様!」

リョウマ「む? なんだ、ヒノカか。お前も朝の鍛錬か?」

ヒノカ「ああ、何をする予定かは決めてなかったけど、ちょっと体を動かしたくて。リョウマ兄様は一人で?」

リョウマ「いや、俺だけじゃない。向こうを見てみるといい」

ヒノカ「向こう?」チラッ

ピエリ「えいっ、えいっ、えいなの!」ブンブンブンッ ドゴンドゴンドゴンッ!

ベルカ「………」ブンブンブンッ ドスンドスンドスンッ!

リリス『ふっ、ふっ、ふっ』クルリンッ クルリン クルリンッ ベシンベシンベシンッ!

リョウマ「思ったよりも、あの浮き輪は侮れない存在だな。ピエリやベルカの黙々とした素振りにも耐えている」

ヒノカ「そっちよりもあれ(リリス)が気になって仕方ないんだ、兄様」
611 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/02(木) 22:28:46.56 ID:WaW1UoZ60
リリス『ふっ、ふんっ、はああっ!』クルリンッ クルリンッ クルリンッ

ヒノカ「リリス、何をやっているんだ?」

リリス『あれ、ヒノカ様。おはようございます、昨日は……あんまり眠れなかったみたいですね。目元、うっすらとですが隈が出来てますよ』

ヒノカ「うっ、わ、私の事はいいんだ。それよりもどうしたんだ、そんなくるくるくると風車みたいに回って」

リリス『え、私そんな風に見えましたか?』

ヒノカ「横から見ると、そう思えなくもなかったぞ。それに、あんなに力強く砂を巻き上げて、思ったよりも力はあるんだな」

リリス『はい、私宙返りだけは得意なので。毎日ご飯を貰う度に、カムイ様の目の前で宙返りをしていましたから。筋力の殆ども実際この尻尾だと言っても過言ではありません。まぁ、筋力を使う場面なんて一回もありませんでしたけど』

ヒノカ「リリス、ならどうして尻尾を使って素振りなんかを?」

リリス『特に理由は在りませんよ。そうですね、あるとすれば、時々砂とかゴミのついた食材を持ってくるカムイ様に一回くらいテールサマーソルトを喰らわせてやりたい!と言ったところでしょうか』

ヒノカ「リリス、そういう時は素直に怒っていいと思うぞ」
612 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/02(木) 23:10:30.32 ID:WaW1UoZ60
ピエリ「あ、ヒノカ様なの。おはようなの!」

ヒノカ「ああ、おはようピエリ。それにベルカも」

ベルカ「おはよう、ヒノカ様…。ヒノカ様も朝の鍛錬に?」

ヒノカ「ああ、そのつもりだ」

ベルカ「そう……。見た所、素振りの道具は持ってきてないみたいだけど」

ヒノカ「何をするかは決めていなかったから、どうするか」

ピエリ「なら、ヒノカ様もリリスの浮き輪を使うの。これとっても持ちやすくて、地面をどんどんって叩けるから、とってもおすすめなの! お鼻の部分で砂を叩くと、すっごい音がするのよ」

リリス『あの、本人が隣にいるのわかってて言ってるんですか?』

ベルカ「持ってきた予備があるから、これを使えばいい…」

ヒノカ「あ、ありがとう」ギョムッ

ヒノカ「……」

浮き輪リリス「」

ヒノカ「……思ったよりも可愛いい造形だな。これを使って素振りをするというのは、その、何だか気が引ける……」

リリス『うう、ヒノカ様だけです』

ヒノカ「はは、でもこれしかないなら仕方ないさ」

リリス『……え?」

ヒノカ「少しだけ素振りをさせてもらうとしよう。ふんっふんっ!」ブンブンッ

リリス『……』

ヒノカ「はっ、やっ!」ブンブンッ

リリス『……お尻』ボソッ

ヒノカ「やめろおおおおお!!!!」
613 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/02(木) 23:11:53.76 ID:WaW1UoZ60
今日はこれだけ

 リリスが宙返りした瞬間に飛び込んでビンタされたい
614 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/10(金) 19:00:38.96 ID:tD3gb6oL0
ヒノカ「リリス、なぜ言った!? なんでその言葉を口にした!?」

リリス『いえ、今唐突に尻尾の部分が痒くなってですね、別にワザと言ったわけじゃないんです』

ヒノカ「そんなに私が素振りをするのが気に入らなかったのか?」

リリス『……』

ヒノカ「そうか、すまない。すでにピエリやベルカが振っているから、大丈夫だと思ってしまって」

リリス『いえ、私の方こそごめんなさい。私の今の姿では心にとどめておくことさえも、難しい状況だということを忘れていました。ヒノカ様、昨日の一件でお尻に敏感になっているはずなのに、あえて、お尻と言ってしまいました』

ヒノカ「……やはりワザとだったんだな?」

リリス『ええ、まぁ、……そうですね』

ヒノカ「……」

 スッ

リリス『あれ、ヒノカさん。そんなに高く浮き輪を掲げてどうしたんですか?』

ヒノカ「リリス、やはり素振りは良くない。無心で振っているだけでは体がなまってしまう。そこでだ、ちょっとここに来てくれ」

リリス『はい、ここですね。着きましたよ、それでこれから何を――』

ヒノカ「はあああああっ!!!!」ブンッ

 ドゴンッ!
  パラパランッ……
615 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/10(金) 19:10:50.51 ID:tD3gb6oL0
ヒノカ「……」

リリス『ちょ、何ですか!? 反応遅れたら顔面に浮き輪が当ってたんですけど!?』

ヒノカ「ちっ。ああ、すまない、すまない、力加減が出来なくてな。本当は寸止めしようと思っていたのに、まぁこういうこともある。さぁ、定位置に戻ってくれ、今度はちゃんと寸止めするさ」

リリス『今、思いっきり舌打ち聞こえましたよ!? それに何ですかその構え、体反って待機して、確実に全力で振り抜くつもりじゃないですか。私、色々と食べても体はそれほど強くなれていないんですよ?』

ヒノカ「大丈夫だ、もし失敗してもノスフェラトゥに殴られたくらいで済む。流石に奴の一撃で死ぬようなことはないはずさ」

リリス『その威力は私のとって致命傷になってしまうと思います』

ヒノカ「む、そうなのか? まぁ、その時はその時だろう。さぁ、私の朝の訓練に協力してくれるよな?」

リリス『いいともー、なんて言うと思ってるんですか!?』

 ワーワー ギャーギャー

リョウマ「ふむ、ヒノカとリリスは思ったよりも打ち解けているみたいだ。ふっ、戦争が終わってからというもの、ああして楽しそうなヒノカの姿を見るのは久しぶりだ」

ベルカ「……楽しそう?」
616 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/10(金) 19:30:12.73 ID:tD3gb6oL0
リョウマ「ああ、裏表なく互いの本心をぶつけられる関係というのは、中々巡り会えるものではない」

ベルカ「ただ言い合いをしているだけのようにしか見えないけど……」

リョウマ「なに、あれも一つの良好な関係というものだろう。一度も喧嘩をしないということは確かにいいことかもしれないが、それはお互いの上辺だけを見合っているだけということもあり得る。相手を理解することはそう簡単にはいかないという事さ」

ベルカ「……よくわからないわ」

リョウマ「ベルカはカミラ王女と喧嘩したことは無いのか?」

ベルカ「私はカミラ様の臣下、従うことが私の役割…。カミラ様の指示に反したことをするつもりはないわ…」

リョウマ「そうか……。俺としては臣下にも気兼ねなく接してもらいたいと思っているのだが……」

ベルカ「リョウマ王子は少し変わっているわ…。臣下がそんな軽い行動を取れば、それがあなたの評価に影響する。私はカミラ様の評価が下がる様な事をするつもりはない…」

リョウマ「確かにそうかもしれないが、公の場でなければカミラ王女と親しくする分には問題ないだろう?」

ベルカ「……私にそんな時間は無いわ」

リョウマ「?」

ベルカ「それより、あの二人はまだ収まってないみたい…」

リョウマ「む?」
617 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/10(金) 19:33:16.56 ID:tD3gb6oL0
リリス『はぁはぁ、ちょ、ヒノカさん。そろそろ許してくれませんか……』

ヒノカ「ああ、許してやるさ。その木から降りてきて、ここにちょこんと座ってくれればな」

リリス『浮き輪を力強く握って言っているから、説得力ありませんよ!』

ヒノカ「くっ、私がカミラ王女ともっと親密に仲良くなっていれば、ここで飛竜を駆ることが出来たというのに……。さぁリリス、さっさと降りてくるんだ。大丈夫、最後の一撃は切なく終わると決まっている」

リリス『そんな一撃要りません!』

 ギャーギャー
  ウーウー

リョウマ「……もしかすると、ヒノカは本当に怒っているのかもしれないな」

ベルカ「そうとしか思えないけど?」

リョウマ「うーむ、しかし、喧嘩するほど仲がいいと――」

ピエリ「え、それじゃピエリとリリスは仲良しさんじゃないの!?」

ベルカ「またややこしくなりそう……」

ピエリ「リョウマ様。ピエリ、リリスとあんな喧嘩したことないのよ。喧嘩しないと仲良しじゃないってリョウマ様言ってるけど、それって本当なの?」

リョウマ「い、いやそうではないと思うが。ただ、俺からするとあの二人はとても仲が良く見える、というだけのことだ」

ピエリ「……だったらヒノカ様もピエリと同じことしたのか、確かめるの!」タタタタタッ

リョウマ「……何を確かめるつもりだ?」

ピエリ「決まってるの!」

「リリスのこと気持ちよくしたことがあるか聞くのよ」
618 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/10(金) 19:34:35.69 ID:tD3gb6oL0
今日はここまで

 理不尽な仲良し理論が二人を襲う
619 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/14(火) 19:51:08.27 ID:tBPp48J00
ヒノカ「降りてこいリリス! 降りてくるんだ!」

リリス『いやです。私、ヒノカ様がその浮き輪から空気を抜かない限り、この木の上に立て籠もります』

ヒノカ「そんなところにいたらいつか脱水症状で倒れてしまう。そんなことはやめるんだ」

リリス『いずれやって来る脅威よりも、今目の前にある脅威を避けさせていただきます。私、これでも断食にはそれなりの自信がありますので、ご心配なさらずにどうぞ』

ヒノカ「くっ、長期戦になればなるほどこちらが不利ということか」

ヒノカ(……というか。さんざん大声を出したからなのか、若干腹の虫が収まって来た気もする。今思えば、こうして条件反射のようにお尻に敏感になっていては、それこそ今後の生活に影響を与えかねない。そうだ、落ち着け、リリスに悪気があったにしてもだ、それを受け流す心の余裕、そしてゆとりを持ち合わせること、それこそが今私に必要なことなのではないのか?)

ヒノカ「……」

リリス『……あれ、静かになりました?』

ヒノカ「リリス……。今回の件だが――」

 タタタタタッ

ピエリ「ヒノカ様!」

リリス『ピエリさん?』

ヒノカ「なんだピエリ、私は今リリスと話を――」

ピエリ「ヒノカ様は、ピエリみたいにリリスにきもちいいことしたことあるの?」

ヒノカ「……は?」

リリス『ちょ――』
620 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/14(火) 20:04:24.41 ID:tBPp48J00
ヒノカ「おい、ピエリ。いったい何を言っているんだ?」

ピエリ「ん、ヒノカ様とリリスを見てて、リョウマ様がとっても仲良しだって言ってたの」

ヒノカ「仲がいい? これを見て仲がいいとは、リョウマ兄様は何を言って――」

リョウマ「いや、お前と臣下同士の掛け合いを見る限りでは、そう思えなくもないと思っただけの事だ」

ヒノカ「リョウマ兄様、何でもかんでもその理屈が通るわけではないと思う。私にも本当に怒りたくなることがいくつかある。リリスはそれを突いたんだ」

リリス『私もさすがに我慢できないことがあります。ヒノカ様、期待させておきながらあっさり裏切りましたし』

ヒノカ「う、それは確かにあるかもしれないが……。ともかくだ、ピエリの質問の意味がよくわからない。どうして、私にそんなことを聞いたんだ?」

ピエリ「前にピエリ、リリスのこと気持ちよくしてあげたのよ」

ヒノカ「あー、あのみんなの前でリリスが気持ちよかったと宣言したことか」

ピエリ「そうなの!」

リリス『自信満々な宣言やめてよぉ』

ピエリ「うん、スズカゼがね。気持ちよくしてあげて、相手が気持ちいいって思ったらとっても仲良しさんな証拠だって言ってたの! だけど、リョウマ様は喧嘩するほど仲がいいって言ってる。ピエリ、リリスとこんなに喧嘩したことないから……」

ヒノカ「ピエリ……」

ピエリ「だから、もしかしてピエリが知らないところでヒノカ様はリリスに気持ちのいい事したんじゃないかって思ったの!」

ヒノカ「どうしてそうなる?」
621 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/14(火) 20:30:50.14 ID:tBPp48J00
ピエリ「だって、昨日。リリス、夕ご飯のまえにどこかに出かけてたの。ヒノカ様、すっごく疲れてたから、リリスはお見舞いに行ってたのよ」

ヒノカ「た、確かにそれはそうだが……」

リョウマ「なるほど、疲れている自分を労わってくれたリリスに恩返しとして、気持ちのいい事を提供したという事か……」

ヒノカ「兄様の言葉の九割が勘違いで、私がどうにかなりそうだよ」

リリス『私も、少しクラクラしてきました』

リョウマ「しかし、気持ちのいい事というと一体何をしていたのか、そこが少しばかり気になるところだな……。やはり揉み解しといったことだろうか?」

ヒノカ「へ?」

リョウマ「む、違うのか? 昨日、島の中を歩き回っていたと言っていたただろう」

ヒノカ「……そ、そうなんだ。リリスの体を少し解してやろうと思ってな」チラッ

リリス『は、はい。そうなんですよ。私、こうして浮かんでいるだけに見えますけど、実は思ったよりも凝っているみたいで、ヒノカ様にとても気持ちよくさせていただいて』

リョウマ「ほう、そうだったのか」

ヒノカ「ああ、そうなんだ。あまり腕に自信はなかったが、満足してくれて何よりだった」

リリス『ええ、中々に良かったですよ』

ヒノカ「そういうわけだから、えっと、その……なんだ。私とリリスは、仲が良いということになるのか?」

リリス『……ピエリさんの考えだとそうなります。あはは、口にするとなんだか恥ずかしいですね////』

ヒノカ「はは、リリスはしゃべってないじゃないか。でも、そうだな、こうして口にすると照れ臭いな/////」

ヒノカ&リリス「//////」
622 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/14(火) 21:20:45.37 ID:tBPp48J00
リョウマ「ふっ、やはり俺の目に狂いはなかったな」

ピエリ「うう、ピエリ、ヒノカ様に負けちゃったの。こうなったら、ピエリ、もっともっと仲良しさんになるためにリリスと喧嘩するの!」ブンブンッ

リリス『あれ? また私下に降りられなくなってるんですけど?』

ヒノカ「ふふっ、私をからかった罰が当たったんだろう」

リリス『自分だけ何解決したみたいな顔をして、少しは助ける素振りをしてもいいと思うんですけど?』

ヒノカ「私が邪魔をすると、ピエリが困るだろう? それはお前も望まないことだと思うからな」

リリス『それはそうかもしれませんが……』チラッ

ピエリ「リリス、降りてくるの! えいっえいってしてあげるの!」ボスンボスン

リリス『うわぁ、地面がすごい抉れてますねぇ……』ガクガクブルブル

ピエリ「えへへ、リリス。早く来るの!」

ヒノカ「頑張るんだぞ、ピエリ」

ピエリ「うん、ピエリ頑張っちゃうの!」

ヒノカ(……ふぅ、どうにか話を濁すことが出来た。なんだかんだ、リリスが私の話に乗っかってくれて助かったな。朝食の時、なにかおかずを一つ分けてあげよう)

リョウマ「ところで、ヒノカ。一つだけいいか?」

ヒノカ「なんだ、リョウマ兄様」

リョウマ「純粋な疑問があってな。リリスは浮いているが、何処の筋肉を酷使していたんだ?」

ヒノカ「……へ?」
623 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/14(火) 21:47:07.52 ID:tBPp48J00
ヒノカ「リリスがどの筋肉を酷使していたか、か?」チラッ

リリス『?』

ヒノカ(浮いている物体が酷使する筋肉? やはり背筋か? いや、もしかしたら尻尾で均衡を保っていたのかもしれない。ううむ、だめだ、変に考えるといろいろ拗れる可能性がある。ここは太ももや足ということにしておこう、幸いあの変な玉を抱えているのだから、何時も力んでいるに違いない、さぞや疲れているはずだ)

ヒノカ「ああ、それはだな――」

ピエリ「お尻なの!」

ヒノカ「え?」

リリス『え?』

ベルカ「えぇ……」

ピエリ「昨日リリスにヒノカ様のお部屋で何してたのか聞いたら『お尻の事とか、お尻の事とか、そう、お尻の事とか』って言ってたの。多分、ヒノカ様にお尻をいっぱい気持ちよくしてもらったってことなのよ!」

リョウマ「そうだったのか……。お前たちは、すでに尻を揉みしだくような関係に……」

リリス『違います』

ヒノカ「断じて違う」
624 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/14(火) 21:49:03.87 ID:tBPp48J00
今日はここまで
625 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/21(火) 20:26:46.34 ID:strW7KPN0
リョウマ「まぁ、どんな理由にせよ。ヒノカとリリスの仲が良いのはいい事だ。これからもヒノカと仲良くしてやってくれ」

リリス『あの、理由の部分だけは訂正してもらえませんか?』

ヒノカ「そうだ、私とリリスはそんな爛れた関係ではない」

リョウマ「わかっているさ。それにお前がカムイと同じくそちら側の人間だった場合、報われない者が出てきてしまう、正直それはそれで心苦しいというか、なんというか……」

ヒノカ「そちら側? いったい何のことだ、兄様?」

リョウマ「こちらの話だ。気にすることは無い。それよりもベルカ、準備運動はここまででいいか?」

ベルカ「ええ、とっくに準備は出来ているわ…」ガシッ

リリス『……ベルカさん、その大量に背負った私の浮き輪はなんなんですか?』

ベルカ「予備ね。頑丈だけど所詮浮き輪、何度か使えば割れてしまうから…」

リリス『何度か使えばって、浮き輪として利用すれば数十回以上持つと思いますけど?』

リョウマ「リリス、今この場で浮き輪にも違う使い道が適用されていることを忘れていないか?」

リリス『いえ、浮き輪は浮き輪として使ってもらいたいと、心から願っていますよ』

ピエリ「そう? ピエリはこれでブンブンするのが楽しいのよ」ドゴンドゴンッ

リリス『ピエリさん。ちょっと海に行って浮き輪の使い方、ちゃーんと覚えましょうね』

ピエリ「浮き輪の使い方くらい知ってるのよ。リリスはお馬鹿さんなのね」

リリス『あぁん?』
626 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/21(火) 20:33:53.73 ID:strW7KPN0
リョウマ「よし、こちらの準備も整っている」チャキッ

ベルカ「そう、開始の合図は?」

リョウマ「ベルカの始めたいタイミングで構わん。本気で来い、こちらも本気で撃ちこませてもらう」

ベルカ「……」

 ジリッ

リョウマ「……」

 ザザッ

ヒノカ「この空気、やはり兄様だ。訓練であろうとも、これほどに場に緊張感を漂わせることが出来るとは……」

ピエリ「なんだか、見てるだけでも緊張するの」

リリス『リョウマ様と対峙しているベルカさんのビジュアルは、かなりシュールですけどね』

ヒノカ「確かにそうかもしれないが、ベルカの腕も確かなものだろう。心得の無いものが兄様の前に立てば、この気迫を前に動けなくなってしまうこともあるくらいだ」

リリス『そうなんですね』

ヒノカ「ああ、そういう意味ではとても尊敬しているよ」

ピエリ「ねぇヒノカ様、それ以外だとリョウマ様のこと、尊敬してないってことなの?」

ヒノカ「あ、そろそろ始まるみたいだ」

ピエリ「ヒノカ様?」
627 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/21(火) 20:44:19.04 ID:strW7KPN0
ベルカ「……!」ダッ

リョウマ「!」チャキッ

ベルカ「はあっ!」ブンッ

リョウマ「ふんっ」チャキッ ガキンッ

ベルカ「!」

リョウマ「そこだ!」グッ 

 ダッ
 ドスッ! パァンッ!

ピエリ「リリスが頭から割れたの!」

リリス『なんでそこだけ実況するんですか!?』

ベルカ「ちっ……。なら……これでどう!」ガシッ ブンッ

 ヒュンヒュンヒュン!

リョウマ「むっ……目くらましなど!」ブンッ ガキィンッ

 ポサッ

リリス『容赦なく地面に叩きつけられましたね、私の浮き輪……』シクシク

ピエリ「リリス、撃ち落とされちゃった。ベルカ、一本無駄遣いしちゃったの」

ヒノカ「いや、それはちがうぞピエリ。もう、ベルカは次の手を打っている」

ピエリ「え? そうなの?」

ヒノカ「ああ、おそらく距離を詰めるための一手、次でこの行為の理由が分かるはずだ」


628 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/21(火) 20:47:21.48 ID:strW7KPN0
ベルカ「……」タタタッ

リョウマ「なるほど、投擲した浮き輪にこちらの意識を逸らさせたか。だが、その手に乗ると思って――」

ベルカ「ふんっ!」ガシッ ブンッ

 ヒュンヒュンヒュン!

リョウマ「なに!?」

リョウマ(両方投げてきただと!?)

リョウマ「だが、こんなもの落としてしまえば!」ブンッ

 ドゴッ! 
  パァンッ!

リョウマ「なに!?」

ピエリ「あれ、今回のリリスは割れちゃったの。リョウマ様、そんなに力強く落としたようには見えなかったのにどうしてなの?」

ヒノカ「私にもわからない、兄様が思っていたよりもリリスの強度が弱かったのかもしれない。いや、もしかしたら先ほどの素振りの間に弱いリリスを一つ作り上げていたのかもしれないな」

ピエリ「どういうことなの、ヒノカ様」

ヒノカ「ベルカは自身の投擲攻撃にかなりの自信があるようだし、兄様は避けるより撃ち落とす選択をした。だから、二本目も同じように打ち落すだろうと予測して、他に比べて弱いリリスを投げ、破裂させることで隙を作り上げて肉薄する。これがベルカの狙いだったんだ」

ピエリ「なるほどなの! 弱いリリスならリョウマ様の攻撃で割れても仕方ないのよ」

リリス『私を弄って楽しいですか!? 楽しいんですか!?』
629 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/21(火) 20:49:53.09 ID:strW7KPN0
リョウマ(くっ、隙を作ってしまったか。だが、今のベルカは丸腰、距離に入られなければ!)

リョウマ「そこだ!」ダッ ブンッ

ベルカ「っ!」サッ ガシッ

 ブンッ
  ガキィン!

リョウマ「それは先に撃ち落としたリリス! くっ、まさか迎撃したつもりが、近距離に武器を設置させる行為に繋がるとは思いもしなかったぞ」

ベルカ「はっ、ふんっ!」ブンブンッ

リョウマ「っ」サッ ササッ

ヒノカ「すごい、兄様をあそこまで追いつめるなんて。ベルカの奴、さすがはカミラ王女の臣下だけはある」

ピエリ「あ、リョウマ様が押され気味なのよ。これはベルカの勝ちなの!」

ヒノカ「見た目は確かにそう見える。だが、そういうわけではないぞ」

ピエリ「?」

ベルカ(よし、動きを抑え込んだ。これで――)ガシッ ダッ

リョウマ「ここまでの打ち込み、見事だ。だが、最後の最後まで来は抜かぬことだ!」チャキッ ザッ

ベルカ「え!?」

リョウマ「はあああああっ」ブンッ

 バシンッ パァンッ!!!!
  ビリリリッ!
630 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/21(火) 20:54:13.49 ID:strW7KPN0
ベルカ「……あ」

リョウマ「見事だ。しかし、最後に欲が出たようだな、ベルカ」

ベルカ「……そうね。あの瞬間、こちらの攻撃を当てる事だけを考えていたわ。暗殺の時と違って、今は敵と対峙しているのに…。私の落ち度ね…」

リョウマ「だが、間合いをこうして詰められるとは思ってもいなかった。中々に新しい経験になったよ。ありがとう」

ベルカ「そう、ならいいわ。だけど、次は同じようには行かないわよ…」

リョウマ「ああ、望むところだ」

ピエリ「ベルカ惜しかったの……。それにしても、リョウマ様の動きはとっても早くて、ピエリわからなかったのよ」

ヒノカ「うむ、やはり強さに衰えは感じられない。兄様は白夜一の侍であることに変わりはないという事か。しかし、中々に白熱した試合だったな、リリス」

リリス『そうですね……』

ヒノカ「どうしたんだ、浮かない顔をしているが」

リリス『浮かない顔をしたくなる理由が私にはあるんですけど。それはさておいて、何かが破れたような音が聞こえませんでしたか? そのビリリって……』

ヒノカ「ビリリ? そんな音、聞こえたか――」

 ヒュウウッ
  ヒラヒラ ポスリッ

ヒノカ「む、なんだ、この布切れは……。先ほど割れたリリスの残骸か何か、か?」

リリス『出来れば、浮き輪の残骸と言ってもらえませんか。えっと、これは……。水着の切れ端?』
631 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/21(火) 20:58:01.12 ID:strW7KPN0
ヒノカ「……仄かに温かみがあるが。一体、誰のものだろうか? その、私よりはある気がする……な」

リリス『ヒノカ様、苦しそうに言うのは止めてください』

ピエリ「これ、ピエリには合わないから、ピエリのじゃないの」

リリス『私でもないですし、ヒノカ様の物でもありませんね』

ヒノカ「ああ、私たち以外に誰かが浜辺に来ていて、何らかの拍子にここまで飛んできたのかもしれない。私たち以外の人影は――ん?」

リョウマ「……」

ベルカ「……?」

ヒノカ「何だか二人の様子がおかしいみたいだが?」

ピエリ「本当なの、リョウマ様。なにか考えてるみたいに見えるの」

リリス『どうしたんでしょうか? ちょっと様子を見に行きましょう』スイスイ~

リョウマ「……」

ベルカ「リョウマ王子、なにか……?」

リョウマ「……ふむ」

ヒノカ「リョウマ兄様、何かあったの……か……」

ベルカ「ヒノカ様? リョウマ王子が動かなくなったのだけど、何かあったの?」 プルンッ

ヒノカ「ベルカ、む、胸が丸見えじゃないか!は、早く、これを付けろ!/////」

ベルカ「?」

リリス『なるほど、あの、ビリリリッという音は、ベルカさんの胸の水着が千切れ飛んだ時のものだったんですね……』

リョウマ「ああ、俺の攻撃の勢いで吹き飛んでしまったようだ、先ほどまで怪我がないかを確認した。どこにも怪我はなかったよ」

リリス『そうでしたか。それで、リョウマ様――』スッ

『言いたいことはそれだけですか?』ペチンペチンッ
632 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/21(火) 20:59:17.27 ID:strW7KPN0
今日はここまで

 
633 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/26(日) 19:50:42.97 ID:sH0tw0bD0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◆◇◆◇◆◇
―南国の異界・宿泊施設入り口―

カミラ「今日もいい天気ね」

レオン「あ、カミラ姉さん。おはよう」

カミラ「あら、レオンおはよう。ふふっ、昨日はよく眠れたかしら?」

レオン「まぁね。こういった場所は熱帯夜っていうのかな? 夜も熱くて眠れないかもしれないって思ってたけど、そんなこともなくてよかったよ」

カミラ「そうね。この異界は蒸し暑い感じじゃないから、過ごしやすくてとてもいいところだと思うわ」

レオン「そうだね。あ……」

カミラ「?」

カムイ「あ、カミラ姉さんにレオンさん、おはようございます」

カミラ「おはようカムイ。ふふっ、今日もかわいらしいわね」

カムイ「ありがとうございます、カミラ姉さん。レオンさんどうしたんですか?」

レオン「な、なんでもないよ、その、おはようカムイ姉さん」

カムイ「はい、おはようございます。どうしたんですか、もしかして昨日あまり眠れなかったとか?」

レオン「ううん、そういうわけじゃないから。気にしないでいいよ。こんな朝早くにどうしたんだい?」

カムイ「はい、ちょっと軽く散歩にでも出ようと思いまして、良かったら一緒にどうですか?」

カミラ「うれしいわ、だけどごめんなさい。そろそろベルカが戻ってくるころだから、ここで待っていないといけないから」

カムイ「そうですか…」

カミラ「レオンはどうかしら? 起きたばかりなんだから、軽く歩いてくるのもいいと思うわ」

レオン「そんな、僕はまだ寝起きじゃ……」

カミラ「そう? それじゃその裏表逆の羽織は、レオンのセンスなのね?」

レオン「! そ、そういうことは静かに言ってよ!////」ガサゴソ

カムイ「ふふっ、なんだかレオンさんらしいですね。とっても愛嬌があっていいと思います」

レオン「か、揶揄はないでよ、姉さん!」
634 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/26(日) 20:13:35.73 ID:sH0tw0bD0
レオン「はぁ、もう……。朝からどうしてこんな辱めを受けなくちゃいけないんだ…」

カミラ「あら、皆が集まった朝食の場で指摘されるほうが良かったのかしら?」

レオン「うう……。何も言い返せない」

カムイ「それでレオンさんはどうしますか? 正直、一人で歩き回るのもなんだか寂しいので、ご一緒していただけると嬉しいんですけど」

レオン「え、えっと……」

カムイ「……」

レオン(こういった場所を姉さんと一緒に歩いていて、僕たちの事を何も知らない人が見たら、恋人同士だって思ってくれるのかな……。アクアじゃなくて、僕の事を……。こうやって誘ってくれてるんだから、姉さんももしかしたら……)

レオン「……」

カムイ「レオンさん?」

レオン「ごめん、ちょっと僕も用事があるんだ。少しだけ外の空気を吸いに来ただけで、だから悪いんだけど……」

カムイ「そうですか。分かりました、それでは一人で歩いて来ます。朝食には間に合うようにしますので、遅れても気にしないでください」

カミラ「わかったわ」

カムイ「それでは……」タッ タッ タッ

レオン「……」

カミラ「まだ、諦めきれていないのね」

レオン「……うん」
635 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/26(日) 20:26:22.93 ID:sH0tw0bD0
レオン「本当にどうかしてると思う。こんな難題は生れて初めてだ、こんな勝つことなんてない戦いだってわかっていても、それを受け入れられないことなんてさ…」

カミラ「……そう。レオンにもこんな風に誰かに恋い焦がれることがあるなんて、何だか不思議ね」

レオン「僕もそう思う。姉さんが幸せならそれでいいって思ってたのに、出来れば自分で幸せにしてあげたいって望んでいるんだから」

カミラ「……レオンはカムイを幸せにできる自信があるの?」

レオン「……わからない。だけど、辛そうにしてる姉さんを見るのは嫌だし……。ちがうね、多分だけど誰かに幸せにしてもらってる姉さんを見るのも僕は嫌なんだと思う…」

カミラ「欲張りね」

レオン「うん、初めてだからかもしれない。うまくコントロールできてないだけだから。離れたらどうにかなると思ってたのに、実際は心の中でただ膨れ上がっただけだったし、本当に厄介だよ、この感情は」

カミラ「厄介かもしれないけど、それはとても大切な物よ。誰かを好きなって、その誰かを幸せにしてあげたいっていう姿勢、おねえちゃんは嫌いじゃないわ」

レオン「ありがとう。でも。もしチャンスが巡ってきたら、僕は……」

カミラ「レオン?」

レオン「……ううん、何でもない」
636 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/26(日) 20:42:25.26 ID:sH0tw0bD0
カミラ「そう……。それにしてもベルカ遅いわね…。朝の訓練だけだからもう戻ってきてもいい頃なのに……。あら?」

 ズズズ― ズズズズズ―

レオン「何だろうこの音、向こうから聞こえてくるみたいだけど」

カミラ「そうね、何かを引き摺っているような音だけど――」チラッ

リョウマ「くっ、お前たち。確かに俺が悪かったかもしれないが。こんな形で拘束する必要はないだろう?」

リリス『悪かったじゃなくて、悪いんです。乙女の柔肌を越えた先を曝け出しておきながら、あまつさえそれをまじまじと観察するとは、武士道が泣いて腹を割るまであります!』

ベルカ「リリス、私は別に気にしてないから…」

カミラ「ふふっ、何かあったみたいね」

レオン「そうだね。僕は部屋に戻るよ、その散歩からカムイ姉さんが戻ってきたら気まずいし……」

カミラ「ええ、わかったわ。それじゃ、またあとでね?」タタタタッ

レオン「……はぁ〜」トボトボ
637 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/26(日) 20:50:42.50 ID:sH0tw0bD0
ピエリ「リリス、すごいの。あのリョウマ様をパッパッと捕まえちゃったの」

ヒノカ「あれは事故だと私は思うのだが。しかし、まさか浮き輪の残骸だけで見事に拘束できるものだな」

リョウマ「ああ、この材質では抜けるのに相当な力がいるぞ。出来れば解いてくれないかリリス」

リリス『ダメです。まったく、ああいうときは背中を向けるのが男だと思います。あんなにじっと見て……』

ベルカ「リリス、リョウマ様は私の体に怪我がないのか見てくれただけ…。だから――」

リリス『そうかもしれませんが……ん?』

カミラ「ふふっ、なんだかおもしろいことになっているみたいだけど。何かあったのかしら?」

リョウマ「む、カミラ王女か、おはよう」

カミラ「ええ、おはようリョウマ王子。ふふっ、今日はとてもカラフルな布を体中に巻き付けているのね?」

ピエリ「カミラ様、これリリスの残骸なのよ」

カミラ「リリスの残骸?」

リリス『ピエリさん、勘違いしそうないい方はやめてください』

カミラ「それで、どうしてこんなことになっているのかしら? リョウマ王子が何か粗相でも?」

リリス『それがですね……』
638 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/26(日) 20:56:54.32 ID:sH0tw0bD0
リリス『というわけなんです』

カミラ「なるほどね。リリスの気持ち、わからないわけじゃないわ。女の子はそう簡単に肌を見せる物じゃないものね?」

ヒノカ「カミラ王女がそれを言っても、あまり説得力が……。その今もそんな恰好をしているし……」

カミラ「そう? ここは南国の異界なんだから、むしろこれが正装だと思うのだけど?」プルンプルンッ

ピエリ「ピエリも熱いより、涼しくて動きやすい格好の方がいいの!」プルルンッ プルルンッ

ヒノカ「くっ!」

リリス『ともかくです。事故だとしてもあんなにまじまじとベルカさんの乳房を見つめるのはどうかと……』

カミラ「そうね、その点はリョウマ王子も紳士の対応をしてほしかったわ」

リョウマ「すまなかった。だが、俺も本気だったからな、怪我をしていないか確認をする必要があった」

カミラ「ふふっ、わかってるわ。リョウマ王子はベルカの裸に鼻の下を伸ばしていたわけじゃないんでしょう?」

リョウマ「ああ、俺はベルカの身を案じていただけに過ぎない…」

リリス『ほんとぉ?』

リョウマ「本当だ」

リリス『即答されると、もう何も言えません』
639 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/26(日) 21:00:10.19 ID:sH0tw0bD0
カミラ「なら何も問題は無いわ。それよりもベルカ、本当に怪我はなかった?」

ベルカ「ええ、怪我はないわ…。鍛錬では負けてしまったけど…」

カミラ「そう、次は勝てるといいわね」ナデナデ

ベルカ「ん……。撫でないでカミラ様…」

カミラ「ふふっ、頑張った臣下にはご褒美を上げないと」ナデナデ

ベルカ「……」

リリス『というかベルカさんもベルカさんです。もう少し体を隠すとか、そういうことをしてもいいじゃないですか。なんであんなに棒立ちのままでいたんです? 恥ずかしかったですよね?』

ベルカ「……え?」

リリス『だって、いつぞやのアミュージアで行われたダンスの祭典でカミラ様のダンスをお手伝いしたとき、かなり恥ずかしがっていたじゃないですか』

ベルカ「確かにそうだけど、あの時は多くの人もいたし、私も普通じゃなかっただけだから…」

リリス『そうかもしれませんが、もう少し恥じらいを持ってもいいとお思います。ベルカさんだって女の子なんですから』

ベルカ「恥じらいを持ったところで、誰かを殺せるわけじゃないなら。そんなもの必要ない…」

カミラ「ふふ、だけどそういうのに弱い男がいるのもまた事実よ。相手を骨抜きにしたりするのも夢じゃないわ」

ベルカ「そう? なら覚えた方がいいかもしれない…」

リリス『カミラ様、それはシャーロッテさんのお株です』
640 : ◆P2J2qxwRPm2A [saga]:2018/08/26(日) 21:01:29.71 ID:sH0tw0bD0
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