都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

510 :人狼遊戯のその後に  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/01/29(土) 23:19:33.74 ID:V1oMm2kA0


 知りたいと思う事は罪ではなく。
 知ろうとする事も罪ではなく。
 知る事もまた、罪ではなく。

 さりとて、知らぬもまた罪ではなく。
 されど、知らぬは大罪なりや。


                         Ahuldea・Arkynayth
511 :人狼遊戯のその後に  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/01/29(土) 23:21:38.59 ID:V1oMm2kA0
 今のうちに話しておいたいいのだろう、と思った。
 下手に抱えられたままよりはずっといいだろう。
 ……半端に踏み込まれると、その方がずっと、危ないのだから。

 直斗はゆるゆると思案する。
 問われる内容によって、答えるべき事は変わる。
 もう答えてもいい事、まだ答えてはいけない事。
 自分達がやろうとしている事からして、その辺りはきちんと区分する必要がある。
 とは言え、答えによっては「誰に聞かれるか」が問題になる場合も、ある。
 今、この場にいる中で。一番、あまり聞かれたくない事があるのは……。

 ちらり、と、直斗が「先生」の方を見た。
 その視線を感じ、「先生」はうむ、と何やら頷くと。

「へーい、「通り悪魔」の御仁。ちょっと大人だけで秘密の会話しようか」
「は?」

 ぐっ、と。
 「先生」は鬼灯の腕を問答無用でつかむと、ゴーイングマイウェイに部屋から引っ張っていく。
 体格的には「先生」の方がずっと細身なのだが、見かけにそぐわぬ力があるようで。楽々とは言わないがわりと遠慮なく引っ張っていっている。

「おい、別にお前さんと話す事なんざ……」
「…………子供らには子供らだけで話したい事もあろうよ。ついでに、こちらが持っとる「狐」絡みの情報とそちらが持ってる情報をすり合わせたい」

 己を掴んでくる手を振り払おうとしていた鬼灯だったが。「先生」の言葉に思うところあったのか。
 手を振り払いはしたが、そのまま鬼灯は「先生」と一緒に退室していった。


「……空気読めたんだな、あの男」

 鬼灯を連れて部屋を出た「先生」の様子に慶次は思わず、そう口に出した。
 どちらかと言うとそういう点は気にしない、と言うか。空気を読んだうえであえて無視するような行動もとる人物と言う認識でもあったのかもしれない。

「まぁ、あの人も大人だし……と言うか。「先生」のあの言い方だとあなたも「子供」扱いだったけど、いいの?」
「腹が立たない訳じゃねぇが。あの二人から見りゃ俺も「子供」の範疇だろ」

 神子の問いに返答しつつ。腹は立つが、と心の中でそっと繰り返す慶次。
 それでも、江戸の時代から生きているという鬼灯やら、実際にはとうに六十七十かそれよりも上の年齢の「先生」から見れば、二十ちょっとの自分なんて子供のようなものだろう。
 ……子供扱いに腹が立たない訳ではないが。

 鬼灯が部屋を出て、直斗がゆるりと一葉の方を向いた。
 いつも通りの、笑顔。
 直斗にとっての一種のポーカーフェイスなのだろうと慶次は思う。
 都市伝説契約者でも「異常」持ちでもない癖に、都市伝説や契約者と関わる事を自分から決めたが故の直斗なりの処世術。
 そう言う者だとわかれば、うさんくささも多少は和らぐ。

「それじゃあ、一葉先輩。俺達に、聞きたい事あるんだろ?」
「あ……わかっちゃう?」
「それくらいは、素人でもわかるよ」

 探偵か何かの真似事でもしているようにそう言われ、むーぅ、となりながら。
 それでも、聞きたいことがあるのは事実だったのだろう。
 しゃんっ、と背筋を伸ばす。
 その様子を、ポチに足元にじゃれつかれながら早渡が見つめていた。
512 :人狼遊戯のその後に  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/01/29(土) 23:25:11.95 ID:V1oMm2kA0
「サクリが、飛び降りた後のことを教えてほしいの」

 ぴくり、と。
 一瞬、憐の体が小さく震えた。
 ……慶次が知っている限りの範囲でだが。「三年前」の件で、おそらくもっとも心が傷ついたのは憐だろう。
 本当ならば、「三年前」の話題時代苦しいのかもしれないが。同時に、避けては通れない事も、わかっている様子だった。

「サクリが飛び降りた後、事件がどうなったのか……犯人がどうなったのか。教えてほしいの」
「犯人については。当時ニュースになって新聞記事にもなっている。それでも確認できるだろ?」

 そう口にしたのは灰人だ。
 少しだけ、憐の方を見ていた様子だったから。憐を気遣ったのかもしれない。

「そうだけど……「表向き」、なんだよね?あれは」
「……「組織」が、都市伝説絡みの件は隠して、一般の連中が「受け入れられる」範囲に編集されたもんではあるだろうな」

 慶次もそれは認める。
 そういうことは「組織」の仕事の一環でしかない。
 いつか、遠い未来。人間とそうではないものがわかりあえるように、と考えていたとしても。
 今はまだ、それには程遠く。都市伝説絡みの事件は隠す必要があるから。
 そうだよね、と一葉が慶次の言葉に頷いた。

「だから。表向き明らかになった事を知りたい、と言うか……みんなが、あの事件にどういう風に関わったのか。それを、教えてほしいの」

 じっと、一葉が皆を……「三年前」の事件、まさにその渦中にいた面子を、見る。
 ……憐が、俯いてしまったのが見えて。早渡の足元にじゃれついていたポチは、くるりと向きを変えて憐の足元まで行ってぺたんと伏せた。

 彼らは、それぞれ顔を見合わせたりしている。思案している様子も見える。

「……ひとまず。神子は完全には関わってないな。契約者じゃねぇし、あんま巻き込まないようにしたから」
「そうねーー。まっさか置いてけぼり食らうと思わなかったわ」

 じろ、と神子が遥を睨んでいる。
 直斗は関わっていたのに自分は置いてけぼりを食らった事実にご立腹なのだろう。
 ……もっとも。それは正解だったのだろう。
 結果的に、置いてけぼりを食らった彼女が自分達の両親やらに密告した為に、遥と灰人が都市伝説を暴走させた件での被害が(比較的)穏やかにすんだのだから。

「一応。咲季さんの遺書見つけた時までは私もいたけど。その後は置いてけぼり食らったから詳しくはないの」
「……ですので。こちらでお話いたしますね」

 ピンと背筋を伸ばしたまま、龍哉が微笑み言葉を継いだ。

「僕達は、咲季さんの遺書から。連続飛び降り事件が、咲季さんのお父上が契約都市伝説にて起こしていた事件と確定いたしました」
「咲季の、父親宛ての遺書が読まれもせず捨てられていたのも確認した。だから説得は無理だろうなってのも予測できた」
「こちらとしましても、咲季さんとは仲良くさせていただいておりましたので……その咲季さんの気持ちを踏みにじったあの方には、「落とし前」をつけていただくべき、と判断いたしました」

 合間、遥が補足を行う。
 周囲に先んじて咲季の遺書を発見、内容を確認する事で彼らは大人達よりも先に事件の真相を知ったという事だ。

「咲季さんの葬式の時に、その事で話してたんだけど……」
「…………誰かに、話、聞かれた気配が、して。だから。動くの、早めた」

 優と晃がそう続けると、かなえが少し、俯いたようだった。
 ……彼らが感じたという気配は、葬式に出席していたかなえだったのかもしれない。
 とにかく、行動を急いでしまった、と言う事か。

「大人に任せようと思わなかったのか」
「そっちの方が安全ではあるんだろうけどな。こっちとしちゃあ、気持ちのけじめがつかない」

 慶次の言葉には、直斗がそう返す。
 気持ちの整理、けじめ、納得。
 大人に任せてしまえば、それがつかぬままに結末を迎える可能性があっただろう。
 だから、多少無茶でも動いたという事だ。
 まぁ、神子が両親達に密告した以上、結局大人も関わってきたのだが。

「咲季の父親が、夜に誰かと学校で会ってたらしい事はこっちも掴んでいた」
「契約都市伝説の情報も出揃ってた。飛び降り被害者の中に都市伝説契約者がいなかった事も確認済み。相手の戦力は大まか予測で来ていた」
「戦力差的にはこちらが有利と見まして。そのうえで動かせていただきました」

 遥、灰人、龍哉がそういう。
 確かに、と慶次は納得した。
 面子的に、犯人に勝ち目がない。そもそも、「ベオウルフのドラゴン」がいる時点でほぼ積みだ。
 飛び降り被害者の中に、なんらかの強力な都市伝説契約者がいたならば。犯人たる土川 羽鶴の契約都市伝説に取り込まれて手駒となっていただろうから別だが。そういうことはなかった。
 控えめに見て、犯人が積んでいる。どうあがいても勝ち目がない。逃げられれば御の字である。
513 :人狼遊戯のその後に  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/01/29(土) 23:26:38.89 ID:V1oMm2kA0
「……危ない事、しなかった?」

 一葉は、そう皆に問うている。
 その問いかけに対して、視線をそらさなかったのは龍哉、直斗、遥、優、晃。
 ……視線をそらしたのは、憐、灰人。
 ついでに言うと、神子が遥と灰人を睨んでいる。

「…………危険な事に、するつもりはなかった」
「せいぜい取り押さえて、咲季さんが命をとして止めようとしても止まらない理由をこっちは聞き出すつもりだった」

 苦々しく言う灰人の言葉に、直斗は表情は崩さぬままに。しかし、声にほんの少し冷たさを纏わせて続ける。


「…………………あの野郎が。取り込んだ咲季を出してきやがったから」


 遥の目が、金色に変わる。僅か、口元から竜の牙が顔を出す。
 あまりにもはっきりとした、犯人……土川 羽鶴への、憎悪。
 三年前の件、土川 羽鶴はこの憎悪を……否、憎悪以上のものを真正面からぶつけられたのだろう。

「あっちは、私達を動揺させようとしたんでしょうけどねー」
「……悪手。結果的に、一番危なくなったのはあいつ」
「あいつ、って、えっと、つまり……」
「下手人たる、土川 羽鶴ですね」

 一葉に説明している一同の話を聞きながら、慶次はちらり、憐の様子を見た。
 ……かなえがほぼ話していないのは、いいのだ。早渡の方も聞く姿勢に入っているだろうから、話していなくともわかる。
 ただ、憐が先程からほとんど発言していない。
 普段は、むしろこういう場では積極的に話す方だという印象があった。それが、ずっとうつむいたまま、口を開く様子がない。

 その、憐が。ようやく、ぽそり、口を開く。

「…………咲季さんのお父さん、「笑う自殺者」と、「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」を組み褪せて使っていて……それで、取り込んだ、咲季さんに」
「あ、憐……」

 遥は、その言葉を止めさせようとして。
 しかし、憐は自分が言うべきだと思ったのか。そのまま言葉を続けた。

「……咲季、さんに。俺達の事、「化け物」、って…………そう、言わせて、きて」

 続けられた言葉は震えていた。
 憐にとって、その「化け物」と呼ばれることに何かしら、トラウマがあったのかもしれない。
 それを、咲季の姿をしたものに言われた事が、致命的だったのかもしれない。
 「化け物」。その言葉が。三年前のあの事件にて、犯人の運命を決定づけるものになったに違いない。

「あれは、もう。咲季さんじゃないってわかってたのに。咲季さんの姿で、言われて…………」
「「憐が、泣いたから」」

 遥と灰人の言葉が、ほぼ重なった。
 一瞬、二人が互いを睨み合ったが、すぐに話を続ける。

「俺の宝(ともだち)を泣かせやがった奴、許せる訳ねぇだろ」
「……従弟っつっても弟同然だ。それを、あんな泣かせ方しやがって。許せるか」
「結果としては。憐が泣いたのを見て、そういう理由で遥と灰人が都市伝説暴走させた」

 直斗は軽く続けたが、それがどれほどまでに危険だったか。
 慶次は当時、その件に関わっていなかったため、どういう現場になっていたか伝聞と資料でしか知らないが。
 都市伝説契約者複数名で、土川 羽鶴がうっかり死なないようカバーしつつ暴走して暴れまわる遥、灰人両名を止めるはめになったらしい。
 不幸中の幸いは、二人共決して、身内には手を出さなかったという事か。どさくさに紛れて何かしよとした「過激派」がうっかり犠牲になったと聞いた気もするが、それは軽率な行動をした方が悪い。

「あの、暴走って、どれくらい危なかったの……?」
「……飲み込まれる、ところだった。俺が、ちゃんとしてなかったから…………遥と、かい兄を危険な目に、合わせた」

 憐が俯き続けていた意味を、ようやくきちんと理解する。
 三年前、遥と灰人が暴走し飲み込まれかけた件を。憐は、「ぜんぶ自分のせいだ」と認識している。
 実際、憐が泣きだしたのが暴走のきっかけではあったのだろうが……

「資料で見たが。暴走止まったのもお前のおかげだったはずだが?」
「それは……」
「そうね。こいつら二人共、憐が本気で泣きじゃくったから止まったし」

 神子の言葉に、灰人は静かに目をそらし。
 遥は「当然だ」とでもいうような、腕組した酷く堂々とした態度だった。

「当たり前だろ。俺は憐を泣かせたくねぇんだから。俺が原因で憐が泣くんだったら、泊るに決まってる」
「く、一応友達想いの範疇なんだろうけど、なんかこいつが言うと別の意味に聞こえる……!」
「そういえば。当時クラスの女子が「一年生にすごく薄い本が厚くなる子達がいる」って話してたっけ……」
「いよっち先輩。それ、今思い出しちゃいけない事だと思います」

 何か、余計なことが思い出されたりしているような気もするが。
 ……とまれ。三年前の件について尋ねられたことを、彼らは大体は答え終えた。

 …………直斗が、いつも通りの笑みを浮かべながら一葉と早渡を見つめている。
 他に、何か聞くことはあるか、とでもいうように。
to be … ?
514 :投下してからミスに気付く方。花子さんとかの人です  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/01/29(土) 23:29:43.08 ID:V1oMm2kA0
投下前に「次世代ーズの人様の「いよっち先輩、来る」からの続きのシーンです」の一文を入れ忘れたのがこちらになります


そういう訳で年単位でお待たせしてしまって申し訳ない&ミス残っていたら申し訳ない
東ちゃんに、三年前のことについてさらっとですがお伝えしました
前スレで質問してもらう事への答え大体答えた……はず……?
これ答えらさってないよってのあったらご指摘くださいまし
1295.56 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)