都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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515 :投下してからミスに気付く方。花子さんとかの人です  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/01/30(日) 00:16:55.39 ID:Dm4Ce5tm0
あっ(セリフ抜けに気付く)

>>512

「こちらとしましても、咲季さんとは仲良くさせていただいておりましたので 〜 」

のせりふの後に

「犯人の野郎は、一応生きてはいるが。「組織」その他いくつかの団体が共同で管理してる、都市伝説契約者の犯罪者収容所にいる」

を入れてやってくだせぇ
516 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/01/30(日) 01:10:37.20 ID:jrwXiB+Do
 
>>510-513
うわーこれは抉られる! きっつい真似しやがるな土川先生よぉ!
実の娘使って的確に嫌がらせしてくる辺り、土川先生は次世代グループ相手の心理戦に詳しすぎない? 怖い
そりゃ暴走もするわこんなん……
投下お疲れ様です&ありがとうございます
過去のあれやこれやが一気にパズルピース嵌っていく感が凄いですが
ひとまず次世代ーズ、早渡、いよっち先輩が各々確認したいことをチラ裏に飛ばします
 
517 : ◆John//PW6. [sage]:2022/01/30(日) 02:33:47.85 ID:jrwXiB+Do
 
今夜は投下無理だ……
518 :お夕飯支度前の投下な花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/30(日) 17:52:55.85 ID:Dm4Ce5tm0
>実の娘使って的確に嫌がらせしてくる辺り、土川先生は次世代グループ相手の心理戦に詳しすぎない? 怖い
主に憐の心抉って弱めようとしたらその余波で約二名に大暴走されたので詰めが甘いけどね



ひとまず、>>510-513の裏側をぽいちょするよ!
519 :一方大人の情報交換とか  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/30(日) 17:55:09.90 ID:Dm4Ce5tm0
 東区にある小さな診療所。
 そこで、「三年前」の事件について語られている間、その隣の部屋……診察スペース。
 ちょうど患者がいないのをいい事に話をしている大人が二人。
 互いに、互いが持っている情報のすり合わせ。とはいえ、どちらも情報源に頭もある為そこまで深く新情報が出るものでもないが。
 その一方、診察スペースだというのに気にすることなく煙管(流石に煙草ではなく緑茶だが)を揺らしている鬼灯は自信が三年間追い続けての「狐」の情報を語る。

「誘惑の解除だが。心にうまい事隙作った方が解除しやすいな。まぁ、どんだけ深く誘惑されているかにもよるが」
「心の隙、かい?」
「あぁ。一瞬でもいい。精神に衝撃翌与えて一瞬思考を止めるでもいい。その一瞬でも隙ができると、解除がしやすかったな」

 三年間、「狐」を追いかけその手駒を撃退し続けていた鬼灯。
 場合によっては、自分では戦いにくいと判断。誘惑の解除を試みた事もあったのだ。
 成功率はせいぜい四割。試行錯誤しながら行っていたにしては上々か。
 「通り悪魔」に飲まれたが故、人の心の隙を見つける事を得意とする鬼灯だからこそか。
 話を聞きながら、「先生」はふぅむ、と自身の知る事例をいくつか思い浮かべる。

「ヨーロッパの方で、「アヴァロン」が「狐」の手駒が入りかけた話はそちらも把握しているね?」
「おぅ。その騒動で、「アヴァロン」で寝てた奴らが一部目を覚まして大混乱だったんだろ。中で喧嘩おっぱじめてむしろその被害が酷かったらしいが」
「犬猿の仲と言っていい関係の者もまとめて眠らせてた「アヴァロン」側の落ち度だからねぇ、あれは」

 まぁ、それはさておき。

「その騒動、「レジスタンス」の「ピーターパン」も引っ張り出されたそうでね。概念殺し級の力遠慮なく使って入り込みかけた「狐」の手駒の誘惑解除したそうだ」
「あの自由気ままの傍若無人まで動いたのか……まぁ、あいつなら軽々できるか。誘惑の解除も」
「彼と同じことができる者はそうそういない故そこまで参考にはならんがね。ただまぁ、君がやったように「狐」の誘惑は解除しようがある、と言う事だな」

 「迷い子の少年が知らんようだったら教えておくか」と「先生」はそう考えた。
 以前に彼に情報を伝えた際は、「狐」の魅了の上書きについては話したが、解除に関しては「狐」自ら解除した例しか話せていない。
 その時は外的要因での解除方が、概念殺しレベルによる例外しかわからなかった為半分仕方ないが。他にも手段があるなら別だ。

「精神に衝撃を与えて、か。不意を打って驚かせるだけでもだいぶ違いそうだな」
「そうすりゃ、お前なら解除できるだろ……なんだかんだ言って、誘惑も「毒」の範疇だろ」
「まぁ、「狐」の場合香りによる分だけでも「毒」の一種ではあるね。その他の要素も関わるからなんとも言えんが。できなくもなかろう」

 試してみる手はあるな、と手段を考える。
 精神に衝撃を与えて直後に毒の解毒、となると己にできる手段となると…………

「……ところで」

 思案に沈みかけた意識は、鬼灯によって引き上げられた。
 向けられてくる眼差しに、伺うような色が見えた。

「今回初対面の坊主もいたから坊や達の前では言わなかったが。お前、そんなもの取り込んで。何をしようとしている?」
「ん?……あ、あー。そうか。君だと気配に気づくか」
「こちとら苦手な気配だからな。うっすらだがわかる…………何やったんだ」
「私は、ただ保険になるためにやっているだけだよ」

 にこり、「先生」は笑って答える。
 そう、己はあくまでも「保険」でしかない。

「何分、「狐」勢力以外も面倒な事が色々とあるからな。だから、余計に保険が必要だと判断した」
「だとしても、いくらお前さんでも無茶やってるだろ」
「なぁに。触媒になるくらいはできるからね…………最終的に、私は「物」なのだ。保険としてうまく扱ってもらえれば、それでいいのさ」

 からからと、「先生」は笑う。
 自身が契約しているものが故、己は「物」として扱われても問題ない、と言う思考がこの「先生」にはある。
520 :一方大人の情報交換とか  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/30(日) 17:56:43.21 ID:Dm4Ce5tm0
 今回言っている「保険」と言うのが、何のための、誰のための「保険」であるのか。
 言わない気になれば、どこまでも口を割らない事だろう。「先生」はそういう人物だ……まぁ、特定条件を満たした相手に問われれば、あっさり吐く可能性もまた、あるのだが。

「……お前さん、一応「薔薇十字団」の重要存在だろうがよ」
「ん?私は「薔薇十字団」所有物でしかないよ。重要と言うまでではない」
「嘘つけっつか自覚しろ…………龍一がお前さん絡みでため息ついてた理由がよくわかる」
「ははは、立場ある者にため息つかせる件については「通り悪魔」の御仁には言われとうないよ」

 「狐」追いかけ世界を巡り巡り、多少目立つ範囲で暴れ爪痕残し。
 そうとうな無茶をしている事は確かだ。
 一部、「狐」へと打撃を与えるために他の集団に「魔が差した」行動をとらせてぶつけあったりもしている。
 「狐」を倒すために、手駒を削るために、手段を選んでいないのだ。

「どうにも。君は子供の為となると冷静さを欠く一面があるな。三年間、何度大暴れしたかな?」
「…………さてな、一々数えちゃいねぇよ」

 くつくつと笑いながら、鬼灯が手元で煙管を弄ぶ。
 数えていない、と言うのは半分その通りで半分嘘だろう。
 この男は、どうにも「ぷっつん」するとその間の記憶が飛んでしまうらしい。
 大暴れした記憶はあっても、具体的にどの程度暴れたかがはっきりしないのだ。
 そして、子供にやさしい一面があるこの男は、子供が害されるような事があると一気に見境なくやらかすことが、多々ある。
 多少の制御が効いている「先生」とはまた別な意味で制御が効いていないのが、この鬼灯と言う男だ。
 それでも学校町にいる間は、獄門寺家の客人としてふるまっている為多少マシか。

「俺の事ぁいいんだよ。お前さん、気をつけとけ。どうにも「狐」の奴、お前さんに目ぇつけてるようだし」
「おや?…………三年前の時はその手駒にすら接触されんかったと思うんだが」
「接触される前に向こうが学校町から撤退しただけだ。三年前は、お前さんが診療所構えたばかりで、あちこちからえげつねぇ数の監視つけられてたから近づくに近づけなかったんだろ」
「確かにあの時は、そこまでやらんでいいと言うのに彼から護衛までつけられてしまったが」

 当時の様子を「先生」は思いかえす。
 ……「狐」絡みの者から、当時は接触されていない。近づかれる前に、護衛が処分していた可能性はある。「薔薇十字団」に確認をとるべきか。

「……しかし。私は「狐」に目をつけられるような要素など」
「その要素しかねぇだろ。国際問題になりかねない奴が」
「うん、うん?私程度の性能であれば、きちんと手順を踏めば辿り着ける範囲で有ろうよ」
「お前、いつか本気でローゼンクロイツに怒られとけ。とにかく、お前さんは「狐」か、もしくは手駒に接触される可能性があるんだ。用心しとけ」
「…………私個人は最終的にはどうなってもいいというかまぁなんとかなるんだが。私以外にも被害が飛ぶと面倒であるな。程々に用心しよう」

 面倒だなぁ、と「先生」はぼやく。
 自身の立場に関しては正確に把握していない節があるにしても、周囲に被害が広がると面倒と言うのは流石にわかる。
 鬼灯としても、「先生」がどうなっても個人的にはどうでもいいのだが、その余波が周囲に広がるのが嫌といったところか。

「……あぁ、本当。面倒だねぇ」
「あぁ。全くだ」

 いくつもの自体が積み重なり。
 混ざり合い絡み合い、事態は複雑に、面倒になっていく。

(……まぁ、そうだとしても。「狐」の結末は、変わらんだろうて)

 そのためにも、自分が「保険」になるのだから。?
 役目を自覚し、「先生」は緩やかに、穏やかに、笑みを浮かべていた。




to be … ?
521 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/01/30(日) 18:58:47.97 ID:jrwXiB+Do
 

>>496
  「一日目の夜、『あkえ縺ョ縺イ縺槭¥』」 の後の時間


以下3話と同時間帯と思われる
>>488-489
「見つけた=見つけられた=見つかった」
>>491-493
「甘い頭痛と先への備え」
>>506
「甘く浸る夢の中」

 
522 :次世代ーズ 「一日目の夜、『あkえ縺ョ縺イ縺槭¥』」 ◆John//PW6. [sage !inaba_res]:2022/01/30(日) 19:00:13.67 ID:jrwXiB+Do
 


「ミスター・パッツィ、お会いできて誠に光栄です
 拙者は中之条、『朱の師団』元三番隊、今は四番隊に居る者です」

「あっ……、どうも」


 ヴィットリオ・パッツィは「トンカラトン」からいきなり声を掛けられた

 「朱の匪賊」、「トンカラトン」のみで構成される武装都市伝説集団
 彼ら「トンカラトン」自身は自らを「朱の師団」と名乗っている
 彼らの一部は全身を真っ赤な包帯で身を包んでおり、それ以外の者は片腕に一巻きの赤い包帯を結んでいた

 全身が真っ赤な包帯なのは「師団」の幹部クラス。現在は二、三名ほどだ
 腕に赤い包帯を結んでいるだけの個体は、幹部以外の下位戦闘員だ

 中之条、そう名乗る「トンカラトン」は全身を真っ赤な包帯で包んでいた
 幹部、あるいはそれに相当する地位にある。そういうことになる


「『十六夜の君』にこうしてお目にかかれたことも、ひとえにパッツィ殿のお力添えによるもの。感謝してもしきれぬ……!!」
「ああ、……まあなんつーの? 良かったじゃねえか」


 このとき、ヴィットリオは若干引き気味だった
 全員野郎な、しかもサムライのようなむさ苦しく泥臭い雰囲気の「トンカラトン」集団だ
 「あの方」に仕える同士なので、いくら野郎とはいえ邪険にする理由もヴィットリオには無い

 しかしだ、そうは言ってもこの中之条、いくらなんでも顔が近いうえに圧が強い。強すぎる


「あのスマホとかいう機器で連絡を取るほかないときは心細さが勝っており、気でも狂おうかという心持ちでしたぞ……!!」
「あー。気持ちは分かる、だが結果オーライってやつだろ。合流できたしな」


 とにかくこの暑苦しい雰囲気をまとい、押し殺した声で話し掛けてくる中之条さんにはなるべく早く仲間のところに戻って頂いた方がいいだろう
 ヴィットリオはちらりと他の「トンカラトン」集団の方に目をやった


「ぬう、『十六夜の君』の家臣にも相当腕の立つ剣客が居ると耳にした。是非お目にかかりたいものだが」
「隊長殿、なにぶん決戦前の様相です故……」
「……ぬう」


 あっちはあっちで何か話し込んでいる様子だ、こちらの状況に気づいてくれることは無いだろう――とりあえず目の前の中之条に視線を戻す


「ときにパッツィ殿! ひとつお尋ねしたいことがある! 三年前、……そう、三年前……!
 我ら『師団』三番隊が『十六夜の君』に助力を求められ、憎き敵を打ち滅ぼさんと、とある町で斬り合いに至ったものの
 力及ばず……三番隊は……壊滅致しました……! しかし、あの憎き敵……! あれほどの力量があるならば、まさか……まさかとは思うが
 『十六夜の君』が、用心棒として招き入れているのではないかと……! 拙者はそれを疑い、早急に確認を取りたい!
 『十六夜の君』についている者で、破廉恥極まりない毒婦はおらぬか!? スケスケの服を身に纏い、豊満な肢体を見せつけてきおる毒蛇のような女は!?
 もれなく……別の……女子も居たような……気がするが、要はその毒婦よ!! 力だけは確かであった!! パッツィ殿!! 如何であろうか!?」

「いや、ちょっと知らんわ……」


 我々同士のなかに「破廉恥極まりない毒婦」、「スケスケの服を身に纏い」、「豊満な肢体を見せつけてきおる毒蛇のような女」……
 いや、居ない。断言していい。仮に「あの方」に仕える同士にそんな女がいるとしたら、色々な意味でヴィットリオ自身が見逃す筈がない


「別で動いてる連中とも考え辛いし、そんな女はいないんじゃねえかな。てかそんな話は初耳だが……」
「そうであるか……、そうであるか……! かたじけない、パッツィ殿。良かった、アレが『十六夜の君』の用心棒では無いのなら。……戦場で見つけ次第、存分に斬れるわ……!!」


 独りなにやら盛り上がっている中之条から、ヴィットリオはやや距離を取る
 なんというか圧が増しただけでなく、物々しい殺気めいた凄味を発し始めたからだ


「一応他の連中に心当たりがないか聞いてみるわ。でもそんな女は……加わってねえと思うんだよなあ」
「かたじけない、パッツィ殿! 貴方は良き御仁だ! この戦を乗り切った暁には、必ずやその御礼を……!」


 ヴィットリオはなんとか中之条との会話を切り上げ、その場から離れることに成功した
 話からするに、中之条は三番隊を壊滅させた者が同士に加わっていないか、それを確認したかったらしい
 仇討ちでもする気か? いや、所詮はあちらの事情だ。今は他にすべきこともある

 ヴィットリオはその場を後にする




□□■
523 : ◆John//PW6. [sage]:2022/01/30(日) 19:23:43.24 ID:jrwXiB+Do
 
>>518
憐君狙いか……ロクな理由じゃなさそう
治癒能力者を取り込む狙いかな?

>>519-520
投下お疲れ様です
おお鬼灯さん「狐」の魅了解除を試してたのか
これは心強い……
それはそうと「先生」何企んでるんだ……フラグじゃないといいけど

今夜中に少なくともあと一つ、>>510-514 の続きを投げる予定です
チラ裏に追加確認(すいません……)したい点を飛ばしました
 
524 :真冬日の大地の花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/30(日) 21:55:05.46 ID:Dm4Ce5tm0
乙でしたのー

>いや、居ない。断言していい。仮に「あの方」に仕える同士にそんな女がいるとしたら、色々な意味でヴィットリオ自身が見逃す筈がない
ですね、ヴィットリオなら絶対覚えてるわ
加わった時期より前に居た場合は知らないけど、顔合わせてたら覚えてる

そして、ちょいと話の流れとか都合的に、そちらのお話が>>491-493よりちょっと前想定にしちゃって大丈夫でしょうか
駄目だったら駄目だったでうまい事帳尻合わせやす


>憐君狙いか……ロクな理由じゃなさそう
天使って、なんか一杯いるし似たような名前多いし混合しやすいよね

>それはそうと「先生」何企んでるんだ……フラグじゃないといいけど
企んでるっつよりは「保険として備えてる」なんででぇじょうぶでぇじょうぶ

ひとまず、無理しない範囲でいくのよ



525 : ◆John//PW6. [sage]:2022/01/30(日) 21:59:28.57 ID:jrwXiB+Do
 
乙ありです、今めっちゃ書いてる

>>524
>そして、ちょいと話の流れとか都合的に、そちらのお話が>>491-493よりちょっと前想定にしちゃって大丈夫でしょうか
問題ないでーす、自分もそれくらいを想定してました

>天使って、なんか一杯いるし似たような名前多いし混合しやすいよね
ほらきた! またなんかアレっぽいのがきた!
 
526 :真冬日の大地の花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 00:17:38.24 ID:hcB114oa0
■おおざっぱなじかんじく
>>522

>>491-493>>506

今から投下するやつ


                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ いくよ!
                ヽ  〈 
                 ヽヽ_)
527 :企み企まれ  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 00:18:55.17 ID:hcB114oa0
 こつこつと、隠れ家の中を歩みながら郁は思案していた。
 やっと、あの方と合流出来た。「組織」の中で情報を集め続け横流しするという地味な任務。
 それを三年間、ずっと続けた。
 たかが三年、されど三年。
 正直、今年の春にあの方と連絡が取れなくなった際には流石に焦ったが。それでも、何人かの「あの方」の手駒と行動を共にしていた「ピエロ人形」の契約者との連絡は引き続き行えたのが幸いだった。
 そちらに情報を流し続け、うまく「組織」の目を誤魔化せる隠れ家を提供し、そこを隠し続けた。
 多少親しくしていた同僚を鬼の「餌」にして……まぁ、ついでに与えるつもりだった、その同僚の担当契約者と自分の担当契約者は残念ながら「餌」にならなかったようだが。多少は鬼の腹を膨らませた。

(その「ピエロ人形」の契約者が死んだ訳だが……まぁ、仕方ないだろう。必要な犠牲だ。能力を見ても、そこまで役に立つ訳ではないしな)

 学校町では、鬼の「餌」の確保のために能力を使っていたようだったが。
 そのくらいならば、今後、特に必要と言う訳でもない。
 いくらでも代わりの利く存在だったのだ。死んだところで、たいしてあの方の痛手にはならない。
 事実、あの方は「ピエロ人形」の契約者の死について、惜しんでいる様子は見えなかった。
 つまりは、その程度だという事だ。鬼の「餌」となって役に立ったのだから、そこだけは誉めてやろう。だが、それだけなのだ。

(あの方が、今後の戦力拡大のために重要視しているのは鬼と……「アナベル」。あれは、呪いの力を強めるのもいいがそうした呪いの伝承系で混ぜることも考えているのだろうな)

 「アナベル」と言うはっきりとした個体名がある為やや難しいだろうが。
 それでも、呪いの人形の類は世界中たくさんあるし、映画の影響もあって新たな話が生まれやすい。
 そうした辺りも混ぜてしまえば、どれだけ強大な呪い人形となるだろう。

(……そう。混ざる、混ぜる。取り込んで同化する。似たものは全部混ぜてしまえばいい)

 そうしてどんどん進めていけば、きっと。
 そのうち、世界の何もかも曖昧になって、混ざり合って混ぜ合わせられて。
 人間も、そうではないものも。
 すべてがあいまいで、あやふやになって…………そうした不安定なもの、すべてに。あの方の誘惑が流れ込めば。

(全部、あの方のものになって。そして…………その傍で。僕だけがしっかりしていればいい)

 口元を得実の形に歪め、身勝手な欲望(ゲンソウ)を思い浮かべる。
 今回の件で「組織」とのつながりは切れてしまったが、あそこで蓄えた知識と裏の情報網はある。
 今後は、自分は情報網を広げていくことに専念していくとしよう。

 こつこつこつ、思案を続けながら歩んでいて……ちらり。視界の隅に入ったものに、おや、と声を上げた。

「何をしているんだい、君達」
「っ!」

 空き部屋の隅、まるで隠れるように人影二つ。
 覗き込んでみれば、男が二人。
 ますます、おや、と声を上げてしまった。

「なんだ、逢引かい?」
「それは絶対にない」

 即答しながら郁を睨んでくるのは、人影の内一方……九十九屋 九十九。
 表向きは針金アーティスト。裏の顔は「殺し屋」。今現在、あの方の手駒の中では……おそらく、もっとも戦闘力が高い男。
 どこにも所属せずフリーで活動していたが故の習性なのか、味方にも己の契約都市伝説を語らぬ悪癖はあるが。そこを差し引いても優秀な男。
 その九十九が影に隠すようにした相手は、どうやらヴィットリオ・パッツィのようだった。

(「死神を閉じ込めた樽」の契約者…………正直、使い勝手は微妙だな。死神ならば問答無用だが、それ以外は無警戒、もしくは発動者に意識を払っていない相手にしか発動できない。しかも一人閉じ込めたら、それを解放するまで次が使えない……)

 当人の戦闘力はないに等しいし、元々は「教会」の子飼い。正式所属ではなかったのだから、「教会」の情報もたいして持ってはいないだろう。
 その存在の重要度は低い。いざとなったら、切り捨ててももないだろう。

「二人でこそこそ、何をしていたんだい?」
「情報交換、と言うか確認だ。あの方が釣れてきた、「朱の師団」の中之条とか言う奴。あいつが探しているって言う女について」

 九十九の言葉に、郁はふむ、と考える。
 確かに、今宵、自分達の前にやっと姿を見せてくれたあの方が連れてきた都市伝説の集団。
 その中でも、ある程度上の立場なのだろう者が何か言っていた記憶がある。
 直接尋ねられていないので答えてはいないが。こちらが知っている範囲では、その者が探している者の情報はなかったと思うが。

「僕の知っている範囲ではその毒婦とか呼ばれるような女性に心当たりはない。あえて言うなら「バビロンの大淫婦」が該当するかもしれないが、あれはあの方の配下にはなっていないからね。君達は、心当たりはないのかい?」
「ない……そもそも。三年前、俺はイタリアにいたからな。当時、こっちで何が起きていたかまでははっきり把握していない」

 きっぱりと答えてくる九十九。
 ちらり、九十九の背後にいるヴィットリオに郁が視線を向けると、彼もまた首を左右に振った。

「俺も、三年前はまだイタリアで「教会」の子飼いやってた頃だし…………あいつの説明聞く限りの外見の女性と会った事あるなら、間違いなく覚えてる。記憶にないから、いないはずだ」
「そうか……」

 現状、あの方の手駒はこの隠れ家に集まっている者のみ。
 ……ならば、件の女性はあの方の手駒にいない。協力者でもないだろう。

「わかった。では、僕は明日に備えて色々とやっておくよ。そっちも、明日に備えておくんだよ」
「…………あぁ」

 くすりと笑い、郁は踵を返す。
 そう、明日に備えておくべきなのだ。
 明日、事を起こして、それを成功させるために。
 …………自分も、何かしら切り札を用意しておくとしよう。
528 :企み企まれ  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 00:20:09.35 ID:hcB114oa0




 郁の足音が遠ざかっていくのを確認する。
 いや、足音だけではなく、気配も。
 あれは、「てけてけ」と「とことこ」の多重契約で飲まれた者だと聞いている。下半身だけで遠ざかったふりもしかねない。

「……なぁ、九十九」

 ヴィットリオが何か言いかけたのを、軽く手を上げて制した。
 郁が来る前に話していた件についてだろう。それはもう、伝えるべき事は伝えた。
 ……あとは、ヴィットリオ次第。
 そして、自分がどれだけうまく動けるかにかかっている。

(万が一。アダムの後追って地獄に行くのは。俺一人で十分だ)

 万が一が来ることを恐れることすら、「あの方」への背信。
 ……それをわかっていて、余計に頭が痛む。
 だが、痛みが酷くなり続けるからこそ、余計に備えるべきだった。
 ヴィットリオの頭痛を悪化させたのは多少悪かったが、いざと言うときのことを考えて我慢してもらうとしよう。
529 :企み企まれ  ◆7JHcQOyXBMim [sage !red_res]:2022/01/31(月) 00:22:35.56 ID:hcB114oa0



 頭痛が酷い。痛みが消えない。
 …………今はまだ、この痛みを消してはならない。




to be … ?
530 :明日朝の雪が怖い花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 00:29:25.11 ID:hcB114oa0
はい(はい)
なんかフラグ見えるような気がするけど気のせいですね
二人がこそこそ何してたかはBLの女神が「はぁい♡」してきそうなのでキンクリされました

>>525
>問題ないでーす、自分もそれくらいを想定してました
そう言っていただけたので遠慮なくそういう流れで書いた
うまく言い訳用意できて九十九屋がほっとしてます

>ほらきた! またなんかアレっぽいのがきた!
(そっぽ向いて口笛吹いてる)
531 : ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:26:16.13 ID:vgGlqA+Io
 
 >>527-529
 投下お疲れ様でした
 なんかまたヤバそうな爆弾が来るかな?
 あとこんなときだからこそシッポリ(意味深)やってたのか
 九十九屋さんのヤバいフラグ臭が怖い
 
532 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:26:56.57 ID:vgGlqA+Io
 

>>510-513
「人狼遊戯のその後に」 へのクロス

●内容
・東一葉からの質問
・早渡脩寿からの質問
・早渡からの情報&物証の提供


 
533 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 1/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:30:14.50 ID:vgGlqA+Io
 


「そっか、咲李が飛び降りた後。そんなことがあったんだ」


 場にいる全員が一通り、かつて見た「再現」の終盤に起こったことを話してくれた
 そして、それを受けて、いよっち先輩は静かにそう零した
 その声は微かに震えている。今は見守るしかない


「灰人君。私、もちろん当時の記事も読んだよ。……もどしそうだった」


 いよっち先輩は急に天井を向いた
 そのまま深呼吸を繰り返しているようだった


「おじさんが……、土川先生が、犯人だって。信じられなかった。信じたくなかった
 だって、咲李のお父さんだから。なのに。なんでそんなことになったんだろう、って」


 俺は静かに憐ちゃんに目を向ける


 酷く、虚ろだった


 少なくとも、先ほどまで柔らかい微笑と雰囲気を纏っていた彼ではなかった
 彼が持っていた、温かく優しい感情を、すべて拭い取られたかのような、そんな状態だ
 少なくとも俺にはそう見えた


 どれだけ傷つけられたんだ
 どれだけ打ちのめされたんだ


 当事者ではない俺に、理解できる筈も無いことだ
 それでも


 憐ちゃん
 辛いだろうが、――どうか、顔を上げてほしい


「土川先生、まだ生きてるんだよね? でも先生も『狐』に、操られてた、だけなんだよね?」
「どうだろうな」


 やや長い沈黙の後、いよっち先輩が発した問い掛けに、吐き捨てるような口調で応じたのは荒神灰人先輩だった
 その表情には、冷たい怒りが滲んでいた
 そっと角田の人に視線を滑らせる――目が合った。険しい表情で微かに首を横に振っている

 まさか
 自らの意志で、実の娘を利用したってのか?


「土川先生。今は、ちゃんと、罪を償って、くれたかなあ……?」
「そうだといいけど」


 そう尋ねるいよっち先輩の声はどうしようもなく震えている
 対して、それに答えたのは憐ちゃんだった
 彼はまだ、俯いたままだ

 だが、彼の答えとは裏腹に、部屋の空気はあまりにも重々しい
 日景は沈黙を守っているが、隠す気も無いほどの怒りを発していた
 空気は語っていた。犯人――土川羽鶴に、贖罪を求めるだけ無駄であると


「ごめんね。本当はわたし、ここに来るとき、――泣かないって決めてたのに」


 いよっち先輩は口元を押さえ、真っ直ぐに憐ちゃんを見ていた
 今にも涙が零れ出しそうな眼で




 
534 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 2/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:31:41.30 ID:vgGlqA+Io
 

「わたしも、死んだあと。土川先生に操られてたんだよね
 わ……わたしも。操られて、みんなに……酷いこと、しなかった?
 誰か……、誰かを、殺したり、してなかった?」

「してない」

「無い。断言していい。そんなことは無かった」


 花房君と、日景が即答した
 日景は最早隠すことのない怒気を立ち昇らせていた


「そんなふざけた真似をされる前に、その場で潰したからな」


「ずっと、怖かったの。わ、わたしも、誰か……殺したり、したんじゃないかって」

「重ねて言うけど。してないよ」


 花房君は、穏やかな口調でそう答えた
 先ほどの、怒りすら感じられた声色ではなく、先輩を安心させるような優しい言葉だった

 その直後、先輩は顔をくしゃくしゃにして、引っ張り出したハンカチを眼に押し当てた


 いよっち先輩、ずっと思い詰めてたみたいだったからな
 ここからは俺が引き受けよう


「俺からも確認したいことがある
 犯人の――土川羽鶴は、一応『組織』の管理下にあるって話だったが、念のため訊いておきたい」


 「笑う自殺者」 と 「富士の樹海の自殺者の幽霊が、人間を引き込んで自殺させる」
 この多重契約者だった土川羽鶴は、この二種の契約能力を組み合わせて、東区中学の生徒達を
 つまり、教え子達を、自殺させ、その死後は殺害した生徒達を意のままに操った
 そういう話らしいが


「『組織』が何らかの措置を施した、って信じたいんだけど
 いよっち先輩が、まだ犯人の能力影響下にある、なんてことは無いんだよな?
 支配権をまだ握られてる状態だなんてことは無いんだよな?」

「安心しろ、そっちは問題ない」


 花房君に即答された
 先ほどと変わらぬ、穏やかな返答だ


「もう支配されることはないよ。一応『組織』の立場からも答えた方がいいんじゃないか。慶次」

「基本的に『組織』で確保した犯罪者は、契約した都市伝説を剥奪される
 それが難しい場合でも二度と再発動できないように措置を講じられる。それに、あいつは重度の監視下に置かれてるからな
 再支配の危険性は無えよ」


 花房君から振られた角田の人が改めて説明してくれた

 思わず息を吐き出した
 一応、高奈先輩たちが見る分にも「問題はない」という判断に至ったそうだが
 角田の人から断言してもらえたのは、大きい。一旦は安心していいだろう


「オーケー、どうも。流石に『組織』が何とかしたって思いたかったけど
 裏取れるまではいよっち先輩も不安だったみたいだからな、リモコンで操作される事態は起こり得ないと。理解した」

「そこはもう少し『組織』を信用しろや」


 角田の人の突っ込みに苦笑いで応じる
 こっちもそれなりに気を張ってたんだ。ちょっと大目に見てほしい


 一応これで一通り訊いておきたいことは確認したことになる
 何かとやきもきしたが、場をセッティングしてくれた花房君はじめ、みんなに感謝しないと




 
535 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 3/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:35:09.24 ID:vgGlqA+Io
 



「早渡、確認しておきたいことは本当にこれで全部か?」

「うん、今のところは以上だ。いよっち先輩から何か無ければ――」

「いや。いよっち先輩とは別に、早渡。お前自身が確認しておきたいこと、言っておきたいことだ」



 花房君にそんなことを切り出され

 少し、躊躇した



「一応こっちの意図としては、確認事項があれば一気に出してもらった方が
 色々情報も共有しやすくなるしな。で、どうだ早渡」

「早渡、後輩。わたしのことは気にしないでいいらかね
 訊きたいことあるなら、今のうちに訊いておきなよ」



 落ち着いたのか、顔を上げたいよっち先輩にもそう言われた
 参った、いよっち先輩にも気を遣われてしまった

 迷い、迷い、黙ったまま
 いよっち先輩の赤くなった眼から、角田の人に顔を向ける――何か言えよ、という顔をされた



「――わかった、少し長くなるけど聞いてほしいことがある」





               כִּי-מַשְׁחִתִים אֲנַחְנוּ, אֶת-הַמָּקוֹם הַזֶּה





「改めて自己紹介するよ。俺は早渡脩寿
 今年の三月まで『広商連』は『団三郎』圏内の『北辰勾玉 庵屋』、通称『七つ星団地』で厄介になってた
 今も籍は置いてるけど、四月には此処、学校町に越してきたんだ。『狐』を追うために」

「ああ、矢張り『広商連』の方でしたか」

「うん、獄門寺君の家のことも聞いてたよ」


「それで――、『七つ星』に拾われる前は『七尾』に居たんだ。身寄りがなくてな
 山梨の『七尾チャイルドスクール』っつー小中高一貫な感じの学校兼施設で教育を受けてた
 幼い頃にはもう契約させられて、物心ついた頃には既に契約者って感じだった」


 「七尾」が都市伝説の研究を進めていたこと
 適正のある子を都市伝説と契約させ、人材として訓練していたこと
 「チャイルドスクール」には普通クラスと契約者のクラスが存在し、俺もそこで教育されていたこと
 過去をざっくり話していった


「『チャイルドスクール』はE6、小学六年相当の頃に突然解体された
 表向きはそれまでに性的児童虐待が行われていた事実が一気に問題化して、それで閉鎖に至った、てことになってる」

「だいぶ前に大きなニュースにもなってたしな」

「え、そうなの? 知らなかった……」


 花房君の相槌に首肯した
 いよっち先輩が中一のときか、まあ知らなくてもいい話だ
 醜いスキャンダルみたいなもんだからな


 
536 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 4/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:36:37.70 ID:vgGlqA+Io
 

「で、真相はそうじゃなかったと」

「うん。EカリのANクラス――初等教育課程の契約者訓練クラスが『組織』の襲撃を受けた
 多分その時期に『七尾』がAN研究進めてたのが『組織』にバレたからで
 『組織』の連中はANクラスの人材を無理矢理拉致ろうとしたんじゃないか、俺はそう見てる」

「ちょっと待て」


 角田の人の横槍が入った


「俺も詳しく知ってるわけじゃ無えんだが、『組織』は『七尾』を監視こそすれ、『七尾』の研究推進を黙認してた筈だ
 いくつかの基礎研究を『七尾』に委託したりとかな。それに『七尾』の都市伝説研究を『組織』が知ったのは
 『七尾』施設解体よりかなり前だった記憶があるぞ。色々おかしくねえか?」

「『組織』に発覚したのは、『スクール』襲撃より前のタイミングだと。そういうことか?」

「俺の記憶が確かなら間違いねえよ」

「……確かに『七尾』が『組織』から何らかの助力やら技術提供を受けていたフシはあった
 けど、悪い。当時はクソガキだった俺はそこまで知らなかったわ。てっきり『組織』がそれを口実に襲撃してきたと思ってたからな」

「そこもだ、“襲撃された”ってとこにも違和感がある
 基本的に『七尾』ほどの大企業――『七尾グループ』だったか? あれほどの規模を『組織』が抑えるとなると
 普通はグループの主要会社を迅速かつ同時に速攻で抑える感じで動く。どっちかていうと首脳陣を確保するイメージだ
 仮に『組織』が『七尾』を抑えるとしたら一ヶ所を叩くなんて真似はしない。早渡、襲撃してきたのが『組織』の連中だって言うが、何か証拠はあんのか?」


 角田の人の突っ込みに、一度深呼吸した
 一気に事態が動きそうだ

 万が一を考えて、用意してきたが
 正解だったな


 俺は鞄からバインダーを取り出した
 近くにいる、日景に渡す


「見てもいいのか?」

「うん、角田の人にも回してほしい」


 日景はテーブルの、なるべく中心にくるようにしてバインダーを置いた
 いくつかの写真が挿入されたページが開かれる
 何人かが席を立ち、写真を視た


「これは――実銃か」

「H&Kの、多分最新型の自動拳銃。それと光線銃だ
 角田の人、連中は銃を使って俺たちの目の前で、世話になった先生と、研究員を射殺したんだ」

「……え?」


 いよっち先輩が息を飲むのが聞こえた
 だがもう、切り出した以上は止めることはできない


「俺は襲撃してきた連中の何人かを返り討ちにして、所持していたこういう物品を奪取した
 そして、『スクール』から逃走した。連中も何人か腕の立つ奴がいて、俺を追跡してきた
 車両を奪って長野まで逃げてたが、捕まって殺されかけたときに、『七つ星』に拾われた」


 角田の人は一旦黙って俺の話を聞いてくれた
 そして、バインダーをめくり、ページを戻り、こちらを見た



 
537 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 5/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:39:47.67 ID:vgGlqA+Io
 

「この光線銃、穏健派の一部と過激派の一部で使われてるモデルだ
 ただ何とも言えねえな、所属を詐称するために別派閥の銃を使った可能性もあるが
 それにこの実銃は、『組織』内でも所持と運用に規制が掛かってるやつだ
 シリアルナンバーまで映りこんでやがるから照合しやすい。あと、これは記憶除去装置だな
 認めたくはねえが、『組織』の人員が噛んでる臭いな。……おい、そういやこれの実物はどうした?」

「この町以外の安全な場所に隠匿してある。何せヤバめの物証だからな、奪われるわけにはいかねえだろ」

「なかなかキナ臭え話になってきたな。早渡、この件の事実確認を取りたい。こいつは借りてもいいか?」

「どうぞ。 じゃあこういうのはどうだ? そっちで得られた情報と、物証をトレードってすることで」

「ハッ、生意気な野郎だ――。俺の知り合いに権限持ちがいる、そいつに話を通しとく
 だが、今は発生している問題の対処が先だ。めぼしい情報が得られるまで、一寸まとまった時間くれや」

「分かった、頼みます」


 角田はバインダーを取り上げ着席した
 ページをめくりつつ、複雑そうな表情で首を横に振っている


「それで――九宮空七のことを話さないとな」

「最初会ったとき話していた、お前の初恋の人か?」


 花房君の言葉を受けて、眼を閉じる

 全員の視線を受けてる気分だ
 それにこれを口に出すと、認めてしまったことになる

 それでも、進むしかない


「最近になって昔のことを色々思い出したんだけど、多分その“初恋”ってやつ
 『七尾』の研究者の誰かしらに、“俺が空七を好きになる”ように記憶の植え付けをされた可能性がある
 まあ有り体に言って記憶操作の洗脳を受けたかもしれない。多分誰かのイタズラかなんかだ。それに――」


 思い出したくない過去
 だが、吹っ切らないといけない過去だ


「――それに、それ以前に。アイツには、愛人いたしな。逢瀬の現場を何度か見ちまったし。肉体関係があることも、知っちまったし
 俺はそれを見て見ぬ振りして、……自惚れから告って、クソミソに言われて切り捨てられたしな。我ながら何やってんだかな
 アイツは最初から俺のことは眼中に無かったんだ。俺が、只の勘違いしてた馬鹿野郎ってだけだよ」

「それでも、お前の……幼馴染なんだろ?」

「……そうだな」


 花房君、的確に突いてくるな
 思わず笑ってしまった


 眼を開く
 携帯を引っ張り出し、画像を呼び出した
 「チャイルドスクール」時代の、空七の画像だ

 とりあえず近場の日景に手渡した


「今の外見から大分かけ離れてる可能性もある。そこは踏まえといてほしい」

「……それ。データで貰っても、いい?」

「どうぞ?」


 俺の返答を聞いた日景は直ぐに広瀬(晃)ちゃんへ携帯を渡した
 広瀬(晃)ちゃんが俺の携帯を弄り始めたのを見て、広瀬(優)ちゃんがこちらに遠慮がちな視線を向けた


「晃にデータ全部抜かれちゃうと思うけど、大丈夫?」

「問題ないよ。ヤバい情報とか恥ずかしい画像なんかは事前に別ストレージへ避難済みだから」

「……なら、問題なし。でも、やりようは、ある。から、油断しないで」


 
538 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 6/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:41:04.02 ID:vgGlqA+Io
 

 ……広瀬(晃)ちゃん? やりようって何? 何するつもりなんだ?
 いや、今はいい。信じよう、広瀬(晃)ちゃんの良識と良心を
 突っ込みたい気持ちはどうにか抑えた



「九宮空七、『七尾』が有する人材のなかで“最高傑作”と呼ばれた契約者
 俺が知ってる頃は『幸運のギザ十』と契約していた。“第一種適合”、完全にAN-Pを意のままに操作できる
 それだけじゃない、アイツは理論上、どの都市伝説とも、コストを脅かすことなく、無制限に契約できる特殊な“器”を有していた
 E4の頃は『ギザ十』以外にあと2種類のANとも契約してたらしいけど、そっちは俺にも分からない」

「空七は『スクール』襲撃の夜、『組織』に連行された。佳川有佳、教師役の研究者と一緒に
 後から知った話では、空七自らの意志で『組織』に従ってたらしい。それで―― 一年半かそれくらい経った辺りで、空七が死んだという話を聞いた
 大体今から三年前くらいの時期に、『組織』の命令で『狐』討伐戦に駆り出されて、『狐』の勢力に殺されたと」

「でも、俺は――、アイツは生きてると見ているんだ。その後に色々聞きたくない話を耳にしたからな
 幾つかの可能性を考えた。もし、本当に『狐』の手勢と交戦したなら、それで敗けたとしたら――九宮空七をわざわざ[ピーーー]真似をするほど『狐』も浅はかじゃ無いんじゃないか
 アイツの実力を考えたら、“魅了”して手元に置いとくのは悪い手じゃない筈。それで今は、九宮空七が『狐』の手勢に取り込まれてるんじゃないかと、そう疑ってる」

「だから――」



 息を整えながら、今話しておくべき内容を話す
 最も伝えないといけない内容は


「みんなは『狐』に付いてる配下のほうも、もれなく全員[ピーーー]つもりか?
 もし可能なら、配下の奴と話がしたい。空七が『狐』の配下に取り込まれたのかを聞き出したいんだ
 せめて配下の、少なくとも一人とは話をさせてほしい」


 全員を見渡し、やっぱり花房君に視線を戻す
 あくまでも穏やかに俺の話を聞いてくれる花房君に、謎の安定感を覚える

 今はそれがありがたかった


「もしも『狐』の配下に九宮空七がいるとしたら、離脱も考慮に入れてくれ。君らができるんなら……殺してもいい」

「駄目でしょ!!」


 いよっち先輩に突っ込まれた


「え、だって。早渡後輩の、幼馴染でしょ? だ、……大事な人なんでしょ?」

「先輩、ごめん。聞いた話が本当なら、空七はもう取り返しのつかないレベルで人を殺してる。誰かが止めないといけない」


 深呼吸する


「俺が止めるとしたら、そんときは殺しになる」

「……そんな」

「おい、なら俺達に殺人の罪を犯せってのか?」


 日景に、睨まれた


「安心しろ、仮にそいつが『狐』の配下に居たとして。見つけたら何とか拘束してやる。なに物騒なこと吐いてやがんだ、お前は」


 
539 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 7/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:43:50.00 ID:vgGlqA+Io
 

「それが出来たらそっちのが最良に決まってる。ただ今の空七は『ソドムを滅ぼす神の怒り』と契約してる可能性がある
 聞いた話が本当なら、かなりヤバい。赤黒の光を放ってレンジ内の全ての対象を、問答無用で塩の柱に変えるらしい」

「おい、それはあれか。『創世記』の――」

「『主は硫黄と火を、主の所拠り、即ち、天よりソドムとゴモラに雨しめ、其邑と低地と其邑の居民、及び地に生る處の物を盡く滅し給へり。ロトの妻は後を回顧たれば鹽の柱となりぬ』――19章24-26節の、“奇蹟”だな」


 日景と灰人先輩の言に、首肯する
 横合いから角田の人に、盛大に舌打ちされた


「そういうことは、早く言えよ! 『組織』が介入すべき案件じゃねえか!!」

「角田、静かにしろ。早渡が話してんだろ?」

「あ゛!?」


 日景と角田の人が何やらまたバチバチし始めたが
 悪い、フォローしてる場合じゃない


「それよりお前は『狐』を仕留めることに参加しないような口振りだが、本当のところはどうだ? 本心を話せ」

「そりゃ――、そちらに合流できるなら、したいですよ」


 灰人先輩はあくまで静かな口調で問うてきた

 俺は最低な真似をした
 本来なら俺が空七を殺さないといけない
 なのに
 みんなに押し付けるような真似を
 それを前提とするかのような頼みを


「すいません、今抱えてる問題を解決させたら直ぐにでもそちらに合流したいです
 でも、そちらでも前もって計画を立ててたと、花房君から聞いた話からそう判断しました
 自分が混じると、計画的に問題あるんじゃないですか?」

「そこは気にしていない。仮にお前が加わろうと加わらずともやることに変わりはないからな
 それで。早渡、お前の抱えている問題とは?」

「――『ピエロ』の件になります」


 横合いから再び、角田の人の盛大な舌打ちが響いた





               🤡  🤡  🤡





「『組織』でも本格的な報告が増えたのは十月の頭からだ
 それ以前から学校町に侵入してた可能性はあるが」

「親が話してるの耳にしたけど、『ピエロ』って『狐』とは別個の勢力なんでしょ?」

「『ピエロ』はどちらかと言うと、自らの存在が非契約者の一般人にも目立つように動いているだろ
 これまで情報を徹底的に隠したがってた『狐』の手勢とは、正直思えねえ」

「一応『組織』内部でもそういう見方してるが、情報攪乱のために『狐』が加えた賑やかし要員って可能性も排除できねえ」

「いずれにせよ、現時点で判断を下すのは早計ですね」

「てか『狐』の手勢なら、『狐』を潰しちまえば勝手に自滅するだろ」


 みんなも「ピエロ」の動向には注意を向けていたらしい


 
540 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 8/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:46:37.69 ID:vgGlqA+Io
 

「俺は商業の同級の女子から、友人の失踪について調べてほしいって頼み込まれたんだ
 警察には相談してるが、まあ成果は無いみたいで」

「『ピエロ』に誘拐された、と?」

「いえ、その失踪した子ってのが元々素行が良くなくって、単純な家出の可能性もある、そう思ってたんすよ
 でも、失踪の直前にヤバい連中とつるんじゃって大変なことになった、的な連絡を友人にしてたらしくて
 あと、それだけじゃないですね。学校町のあちこちの学校で、失踪が相次いでるらしいっすね?」

「あッッたま痛え問題だよ、ッッとーに! ただでさえ『狐』の件でピリピリしてるって時節によ!」


 角田の人が先ほどより、キレそうな表情で頭を抱えている


「天地は『狐』に掛かり切りだからな、『ピエロ』の方は別の派閥が担当してる
 だが荒事になると、俺にも話が回って来たり ―― ったく」

「『ピエロ』はAN由来の物品や銃火器を携行して、それを使ってくる
 この町の警察は『組織』と繋がってるらしいけど、警察じゃ対処しようがない
 収容の取れない事態になる前に、角田の人――アンタと連絡先をやり取りしときたい」

「……ここまで話を振られといて、俺に断れると思うか?」


 悪い、角田の人
 俺もそれを狙って話を進めてた


「その前にまず、角田の人に渡しときたいものがある」


 俺は鞄からいくつか物証を取り出した
 全て厚手のポリ袋に封入したものだ


「まずは、これだ」

「おい、さらっと実銃を取り出してんじゃねえよ」

「俺が『ピエロ』と交戦した際に、連中が取り落としていったものだ」


 日景の突っ込みを華麗にスルーし、ポリ袋ごと自動拳銃を押し付けた
 角田の人に回してくれ


「Kimber TLE II、.45 ACPモデル。考えたくないが連中は対人射撃を念頭に置いてる。そう見なすべきだ」

「この銃自体からは、都市伝説の気配は無えな」

「これも回して。現場から回収した空薬莢、.45 ACP弾だ」

「こっちからは気配あるぞ、弾になんか仕込んでやがったのか」

「日景、問題はこれなんだ。こっちは、さっきの拳銃に装填されてた未使用の実包と
 連中が発砲して壁やらに突っ込んだ弾頭を回収したものだ」


 早口でそう説明しながら
 未使用の .45 ACP弾 と、砂礫ごと回収した潰れた弾頭が入ったポリ袋を渡した


「おい、これ――かなりヤベえやつじゃねえか」


 日景の声に、僅かな怒りが混じる
 俺も同意見だ


「詳しくは解析しないと何ともだが、この弾頭はわざと脆く作製されてる
 内容は媚薬、多分『スパニッシュ・フライ』の粉砕物に、治癒系の霊薬、『鎌鼬の塗薬』かなんかだ
 それに向精神薬、睡眠薬、これらの混合物だと思う。内容が内容だけに、多分お互いに効能を相殺し合わないように調整されてる」

「……どういうこと、なんですか?」


 紅ちゃんが震えを抑えたような声で訊いてくる
 いや、彼女も恐らくその意味するところは気づいているかもしれない



 
541 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 9/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:51:06.54 ID:vgGlqA+Io
 

「恐らくこの弾丸は、誘拐する“獲物”に対して撃ち込むもので
 @まず向精神薬か睡眠薬だかで“獲物”の動きを鈍らせて、A媚薬が効いて従順になったところで“獲物”を安全に誘拐するためだろうな
 B撃たれた傷口は、弾丸に仕込まれた霊薬で治癒するから傷は残らず、かつ残りの薬物を的確に“獲物”の体内に残留させることができるんだろうな」

「……下衆の所業じゃない」


 やや冷え込んだような声色で、花房君が的確な解説をおこない
 それに対して大門さんが吐き捨てるような口調で応じた


 ごめんな、いよっち先輩。紅ちゃん。本来なら角田の人と二人きりで話すつもりだったんだが
 場の流れと、あと俺の勢いでモノを早々に出してしまった。後で謝らないと
 青い顔してる二人を見て、胃の底が不快に沸き立つ

 だが今は、情報の共有と連携が先だ
 心を鬼にする


「それから、現場に残った弾痕の撮影画像、現場の、南区の座標付きだ。これを角田の人に託す
 『警察』経由より、角田の人に直接頼む方が勝負が速いと判断した」

「角田、これは『先生』にも実包の解析頼んだ方がいいんじゃねえか?」

「……腹立つが、已む無しかもな。しかし、そうだな……、相手が実銃を使ってくるなら、逆に対策の立てようがある」


 日景経由で画像データが収められたスマホ用メモリカード入りのポリ袋も角田の人に渡った
 角田の人は先ほどよりも一層深刻そうな表情でブツブツと独り言を呟いている


「それより早渡、『ピエロ』と交戦したそうだが」

「ええまあ、各個体の戦闘力は大したことないうえでにANfx持ちでもないから倒すのは容易っす
 つまりどっかに『ピエロ』を発現させてる本体がいるってことなんですけど」

「俺が聞きたいのはそうじゃない。早渡お前、“撃たれた”な?」


 灰人先輩の視線が突き刺さる
 参ったな、どこまでお見通しなんだ、この人


「撃たれたって言っても、こんなヤバい弾頭でなくて、普通のフルメタルジャケット弾でした
 背後から数発。油断してた俺が悪い。幸い全部体を貫通しましたし、弾が通った傷口は念入りに削いで捨てましたよ」

「そうか。素人の医療行為は褒められた真似ではないが。大事に至っていないのであれば」

「まあ免許なんて当然ないですけど、でも俺も一応処置の心得はあるんで」


 違うそうじゃない、今の発言何から何までおかしい
 誰かの突っ込みが聞こえた気がしたが、一旦スルーしとこう
 いま大事なのはそっちじゃないし




 
542 :次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」 10/10 ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:52:06.53 ID:vgGlqA+Io
 

「いや! でも! 早渡後輩!? 撃たれたんでしょ!? びょ、病院には、行ったの!?」

「先輩大丈夫、傷はみんな完治したし
 それにさっき『先生』からエリクサー入りのお茶も頂いたし。すこぶる快調だよ」

「駄目だよ!? 駄目だよ!!?? 後で『先生』にちゃんと診てもらおうね! お姉さんと約束して!?」

「分かった、分かったから! そんな、泣きそうな顔しないで!!」


 とまあ取り敢えず、俺から伝えたいこと、確認したいことはこれくらいだ。多分
 思い出したらその都度共有するとして、いやでもこれ以上は無かった。と思う


「とりあえず早渡の携帯を寄越せ。連絡先を登録しとく」

「角田の人、悪い。後は頼んだ。ちょっとトイレ借りる」


 角田の人は広瀬(晃)ちゃんから俺の携帯を受け取っていた
 それを見て、席を立つ

 顔を洗いたい気分だ
 色々洗いざらい話したのは久しぶりな気がする

 俺は――角田の人に向き直った


「角田慶次」

「あン?」

「色々と迷惑かけます。――どうか、よろしくお願いします」


 彼に、頭を下げた


「やめろ薄気味悪い、とっとと行ってこいや」


 角田の人に鼻であしらわれ、早よ行けとばかりに手を振られた
 んな……、花房君の方を見ればニヤニヤと笑われてしまった

 花房君の口元が僅かに動いていた



 “良かったな”



 そう、言われた気がした


 恥ずかしいな


 俺はその場から逃げるように退室した


















□■□
543 : ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 01:52:47.21 ID:vgGlqA+Io
 

 花子さんの人へ感謝申し上げます orz
 導入と言った癖に、かなりガッツリ書いてます

 今回の話で色々出るもんが出たように思う
 細かい点のミスに気づいた場合はwiki収載時に加筆修正するとしても
 事実誤認等あれば遠慮ない突っ込みを頂きたいところです

【補足】
・「リモコンで操作される事態」……リモートコントロール(遠隔操作)される危険性、という意味合い

 【今後のおはなし】
 ・早渡は上でああ言ってるけど、「狐」本戦にはまず参加しない(できない)方向
 ・「ピエロ」の件はPナンバーも、∂ナンバーも動く(予定)

 
544 :明日朝の雪が怖い花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 02:01:54.56 ID:hcB114oa0
乙でしたのー
投下を見届けたので一旦力尽き( ˘ω˘)スヤァしてきます。詳しい感想やらお返事は明日
と言いつつこれだけはちょいと確認

九宮空七さんに関して、それぞれの所属組織が情報持ってない(「狐」勢力でそういうのいるって情報はひとまずない)よっての、一応伝えた方がいいかな?
伝える場合、早渡がそれぞれがどこの所属か(どこと繋がりがあるか)改めてきちんとわかる感じになりそうではある

ついでに
>>531
> あとこんなときだからこそシッポリ(意味深)やってたのか
九十九「それはない」
 咄嗟に取った行動の発想が若干、後で「先生」がとる行動と被るが……
545 : ◆John//PW6. [sage]:2022/01/31(月) 02:11:00.05 ID:vgGlqA+Io
 
遅い時間になって申し訳ないです

>>544
> 九宮空七さんに関して、それぞれの所属組織が情報持ってない(「狐」勢力でそういうのいるって情報はひとまずない)よっての、一応伝えた方がいいかな?
負担が増えそうですが、是非ともお願いします……!

九宮に関してはこの後チラ裏に何か残しておきます
 
546 :お昼ごはん前にレスを返す花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 11:58:59.84 ID:hcB114oa0
改めて次世代ーズの人乙でした
東ちゃん、咲李の直前に引き込まれて死んでるので他の誰かを引きずり込んでないのでキレイナからだよ大丈夫(??)
そして
> いや、今はいい。信じよう、広瀬(晃)ちゃんの良識と良心を
(幼馴染達の方を見る)(沈痛な面持ちで首を左右に振られた)
…………ふぁいと!

ひとまず天地の仕事は確実に増えたな……
……「狐」本戦でこれ天地ストレス解消とばかりに派手にやるんじゃ

そしてさらに気づいた
あ、これ、「先生」退席させててよかった(若干「先生」の地雷と言うかトラウマ案件が聞こえた為)

>>531>>545
> 九十九屋さんのヤバいフラグ臭が怖い
このところ頭痛で寝不足気味なのに頭痛悪化してるので、決戦当日寝不足&頭痛でバトルになりますね
コンディション最悪では???(なおそれくらいのハンデがあってちょうどいい可能性からは視線を逸らす)

>負担が増えそうですが、是非ともお願いします……!
持ってないって伝えるだけならたいして負担にならないんでだいじょーぶ
547 :カレー煮込む前に投下する花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 17:44:13.05 ID:hcB114oa0
■いままでのあらすじ
「みんなで遊ぼう」「みんなで遊ぼう人狼遊戯」

>>510-513
「人狼遊戯のその後に」

>>533-542
「次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」」

今から投下するの



                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ いくよ!
                ヽ  〈 
                 ヽヽ_)
548 :簡単なご返答  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 17:46:04.89 ID:hcB114oa0
(あれ?)

 手洗いから戻る際中、早渡はわりと大きめのサイズの蜘蛛の姿を見たような気がした。
 そう、結構大きい。サイズ的に、軍曹ことアシダカグモだろうか。
 あれは物体Gすら捕らえるという最強クラスの狩人。益虫として放置されていたのだろうか。
 どちらにせよ、物陰に戻っていったから関係ないか。

「――――――り神の御仁は、今は警戒を強めていて、そうやすやすとは――――」
「だからって――――そもそも、お前、どこでアレと接触――」

 部屋に戻る途中、診察室の方から「先生」と、鬼灯……周りが言っている様子から想像するに、「地唄師匠の鬼灯先生」その人の会話の断片が聞こえてきて。
 微妙に、不穏な単語が混じっていたような気がしつつ、早渡は皆のいる部屋へと戻った。
 まだ、きちんと答えを聞いていない部分が、あるのだから。

549 :簡単なご返答  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 17:48:23.15 ID:hcB114oa0
「…………「先生」が退室しといて正解だったか」

 ぽそり、と灰人が口に出したのを、慶次は聞き逃さなかった。
 その意味を、ふと考える。

(……そういや、あの白衣がそもそも発狂するに至った原因は確か……)
「………………邪魔だな、「ピエロ」」
(ん?)

 ……今、聞こえた呟きは、誰のものだった?
 酷く冷え込んだ、同時に心底苛立っているような、そんな声だったような……
 軽く皆を見回したが、俯いたままの憐以外は大体皆、何やら思案していた。呟いたのなら、他にも誰か聞きとめていたはずだが気にしている様子のものはいない。
 憐が呟いたとしたら違和感を感じるし、気のせいだっただろうか。

 …………そう考えていたら、早渡が戻ってくる。
 す、と、皆の意識と視線がそちらを向いたが、憐はうつむいたままだった。

「さて、っと。俺達が、「狐」の配下も全員殺そうとしているか、だけど」

 相変わらず、直斗はにこにこと笑っているままだ。
 いくら物騒な話題になろうとも、変わらない。心の内を見せないための笑顔を続けている。

「……「狐」についてる人達、基本的には誘惑にかかった被害者、だから……殺さずにすむのが、一番なんだけど……」

 先ほどとあまり変わらぬ、弱々しいような。気弱さや心細さを感じさせる声で、憐がそう答えた。
 憐の、普段の行動やら言動やら見ていれば、「できる限り殺したくはない」と、そういう事なのだろう。
 もっとも、同時に、そうやりたくともできない事もわかっている。そんな様子の声だ。

「全て、生かしたままは難しいでしょう……特に、契約者の方ではなく、都市伝説そのものとなりますと……」
「「狐」に誘惑されてる状態じゃなくとも、人を害する意思があるなら、って事ね」

 龍哉と優が続けてそう答えてきた。
 そう、問題はそこだ。
 ただ「狐」に誘惑されて操られての行動であれば、それはただの被害者でしかない。
 だが、元から、人に害をなすような者の場合。誘惑が溶けたらそれはそれで普通に人へと害を与え続けるだけ、になりかねない。
 そういう存在となると、どうしても処分する必要性があるという事だ。
 一応、契約者ではなく都市伝説そのものの方だけをさして答えていたが。契約者であろうとも、元から悪人である場合はただ取り押さえるだけは難しい可能性がある。
 ……それこそ、土川 羽鶴のような例もある。一応あれは生かされたが。あれより酷い相手だと難しくなるだろう。

「……「狐」の配下と会話、だけど…………できるかどうか、は、わからない」
「会話したいなら、「組織」に身柄確保される前にさっさと接触しないと。多分、聞く暇すらないわよ。どうしても会話したいなら、融通利かせてもらえるようにはしてみるけど」

 晃の言葉に続けていた神子が、お父さんの胃が死なない程度に、とぼそっと続けていた。
 ……確か、神子の父親は…………あぁ、うん。胃の無事を願っておこう。

「…………なるたけ、九割殺しで抑える」
「それ本当に抑えてる?大丈夫?うっかりもう一割いかない?」
「そこまで貧弱なら、元から話ほとんど聞き出せねぇだろ」
「……遥には後でよく言い聞かせとく」

 遥の返答には流石に早渡からのツッコミと灰人からのフォロー……フォロー……?が入った。
 確かに、遥の戦闘力を考えると、相手次第では本気で九割殺しが十割になりかねない。
 …………それくらいの存在なのだ。「ベオウルフのドラゴン」、と言うより竜種の類の契約者と言うやつは。
 遥の場合、祖父が「黄金伝説のドラゴン」との契約を維持している者であるため、そっちを見本にしている可能性があるからあまり自分の実力を気にしていなさそうだが。
550 :簡単なご返答  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/31(月) 17:49:50.13 ID:hcB114oa0
「九宮空七、だったな。「組織」の方……と言うか、CNoとANoでは、少なくとも彼女が「狐」に加担してるって情報はないんだよな?」

 遥と灰人が睨み合いかけたところで、直斗が話題を逸らすようにこちらとかなえに問うてきた。
 問われると思っていなかったのか、かなえはやや慌てた様子だったが。

「あぁ。こっちが見た範囲ではなかった……なかったよな?」
「う、うん。なかった、と思う……」
『主の傍で見ていたが。そのような名前や、先ほどの画像の面影がある女子はいなかったはずだ』

 ぬぅ、とかなえの傍に「岩融」が姿を現した。
 今までずっと姿を消していたそれが姿を現したのを見て、東が「わ」と驚いたような声をあげたのが聞こえた。

「俺達が閲覧できない範囲の資料にあった場合は別だけどな。それこそ、SNoとか」
「あそこの資料は閲覧制限厳しいものね…………あ、「組織」のDNoの資料でも覚えないわよ、その子については」

 神子も、そうきっぱり言い切った。
 彼女の父親はDNoではそこそこ、上の位についている。担当契約者がアレ(憐の父親だが)なのと当人が仕事人間なところがあるせいで未だに割を食っている面はあるが情報は確かだ。

 ……そして。

「「獄門寺組」にて集まっている情報にて、その方の情報はありません」
「「首塚」も同じく。おふくろが見せてくれた資料にもなかった」
「……「教会」の情報でも、なかった、と思う」
「「レジスタンス」に集まってきている情報の中に、その名前はないな」
「「マッドガッサー一味」として。その名前、「狐」の手駒の中に確認していないわ」
「……ん…………データ見直したけど、ない」

 龍哉が、遥が、憐が、灰人が、優と晃が続ける。
 いくつもでる集団の名前に、東が目をぱちぱちとさせていた。

「みんな、違うところからの、情報……?」
「そりゃ、ある意味みんな所属違うからな」
「俺は、厳密には俺が所属してるんじゃなくてお袋がだけどな」

 口に出された疑問に、直斗と灰人が答えている。
 そう、この連中はみな、所属している集団が違うのだ。
 まぁ、「獄門寺組」や「マッドガッサー一味」は「首塚」との結びつきが強いし、遥や憐のように片親が「組織」絡みと言うパターンもあるが……

「気になるようだったら、「先生」と鬼灯さんにも聞いとくといいよ。「先生」なら、「薔薇十字団」からの情報知ってるはずだから」

 結構上の方の情報も、と付け足す直斗。

 ……あぁ、本当。
 ここにいるだけで、だいぶ、多方面の情報が集まる。

(愛百合からの情報がだいぶ偏ってたってのがわかったのも。まぁ、勉強の一つか)

 多方面からの情報が集まるなら、それを吸収るするまで。
 ……そして。それを、仕事に活かしていくだけの事だ。



to be … ?
551 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/01(火) 03:01:03.77 ID:lWijq6OWo
 
>>547-550
投下お疲れ様でした
こうして情報が出たことは非常にありがたい
あと花房君がスムーズに司会進行してくれたのにも感謝です
かなえ嬢、思わぬタイミングで話振られてビックリしてるのいいですね
全員の所属グループでは、今のところ九宮が特に「狐」に加わった情報は得られてない
そういう整理した早渡は(じゃあもう「狐」の配下に直接確認するしかねえか……)と考えるか

念のため「先生」と鬼灯さんに尋ねるとしたら戻って来たタイミングかな?
了解です、これを受けて今度は短い話になる、と思いますが出します

しかしこちら都合で恐らく明日、明後日は来ることができない可能性が大 orz
メモをいつもの場所に残します
 
552 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/01(火) 11:01:45.11 ID:lWijq6OWo
 
>>549
一晩経ったら気になりだした
「先生」の地雷って娘さん関連だろうか
しかし「先生」の発狂は20年前、いや娘さんの年齢にもよるか
 
553 :カレーの残りを食パンに塗ってチーズのっけてトーストした花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 16:28:41.17 ID:CYmlSjjO0
>>551-552
>あと花房君がスムーズに司会進行してくれたのにも感謝です
契約者じゃないしどこの集団にも所属してない分、手に入る情報はどうしても後れを取りやすいんで
その分、司会進行みたいなの請け負いやすくて慣れてるんでしょうね

>念のため「先生」と鬼灯さんに尋ねるとしたら戻って来たタイミングかな?
かなー?
二人共、適当なタイミングで部屋に戻して大丈夫です

>「先生」の地雷って娘さん関連だろうか
いんや、洗脳で恋心植え付け云々の方
554 :花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 20:50:06.17 ID:CYmlSjjO0
■いまからとうかするもののおおざっぱな時間軸
「死毒より未来生きる者へ」(wiki参照)の後から「動き出した歯車は止められない」(wiki参照)の間辺り


                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ そこまでほんぺんにかんけいないから
                ヽ  〈 どれくらいかそうとうおおざっぱだよ!
                 ヽヽ_)
555 :「日常」の過ごし方と守り方  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 20:51:25.69 ID:CYmlSjjO0
 非日常を知っているが故、日常を過ごすにしても多少の警戒はどうしてもある。
 それでも、全く警戒しないよりはましであろうと日常を過ごす。
 それでなんとかなっているのならば、まずはそれでいいのだろう。

(中央高校よりは、都市伝説の出没頻度低いしな……)

 それでも昔よりは出没頻度は減っている、とは聞くのだが。
 周囲から聞いた話では、まだそこそこ出没するというのだからあちらは忙しそうだ。
 父親の勤務先だからと言う理由であちらへの進学は止めた訳だが、そういう意味でも正解だったのかもしれない。

「――――み。荒神ー?聞いてるか?」
「ん?……あぁ、悪い。聞いてなかった」
「お前なぁ。「ヴァンパイアCATS」ではどの子が一番可愛いかって話してたろ」
「前から言っているが、俺はアイドル関連は興味がない」
「「FOXGIRLS」のリーダーは知ってるじゃん」
「あれはアイドルとしてじゃなくてアクション女優として認識してるだけだ」

 クラスメイトとの日常の会話は悪いものではないしなるべく行った方がいいというのはわかっているのだが。
 それでも、興味のない話題はどうしても流れやすい。アイドルにも人の美醜にもそこまで興味がない自分に、今回の話題は難易度が高い。
 こんな自分と、それでも会話してくれるクラスメイトにはいい加減感謝すべきか。

「あ、いたいた、荒神くーん、はい、預かりもの」

 と、クラスの女子が一人駆けてきて、何やら封筒の形に折りたたまれた紙を渡してきた。
 ハートのシールで封がされている。おそらく、便箋か何かをレターセットの封筒のように可愛らしく折りたたんだものか。

「何それ、ラブレター?」
「そうじゃない?どこの学年でどこのクラスの子かわからないけど、荒神君に渡してほしいって預かってきたの」
「…………深川。せめて、そういうもん預かるなら名前くらいは確認しとけ」

 中学の頃からの知り合いのその女子は、「ごめーん」等と軽い調子で謝罪してくるが。
 せめて、預かりものは預けてきた相手の名前くらい把握していてほしい。

 覗き込んでくる周囲を軽く払いながら、折りたたまれたそれを広げて確認する。
 大事な話があるから、放課後に校舎裏に来てほしいという短い一文が丸っこい文字で書かれていた。

「やはりラブレターか……」
「くそ、いつも灰人ばかり……!おこぼれは来ないのか!」
「今年入ってから何回目だ?」
「八回目だな……そして、こいつはそれを全て断っている」
「その気もないのに告白承諾したら、それこそ相手に失礼だろうが」

 もっともな事を告げたつもりなのだが、なぜか嫉妬の類が混じっていると思わしき視線が突き刺さる。
 付き合う気もないのに承諾する方が、相手に失礼だろう。
 手紙を、元の折り目を無視して適当に折りたたんでポケットに放り込む。

「ほら、次の数学、小テストあんだろ。そろそろ準備しとけ」
「あっ」
「っく、その事実から目をそらしていたというのに……おに!きちく!!」
「現実から目をそらす暇あったら勉強しろ。岸立を見習え」

 こちらの会話に耳は傾けていたようだが、会話には加わらず予習していたクラスメイトをちらりと見る。
 視線に気づいたあちらは、軽く笑ってきた。
 学年一位を去年からずっとキープしている彼は、がり勉と言う訳ではないが日々の努力は怠っていない。

 半分唸りながら席に戻っていく連中を見送りながら、適当にポケットに突っ込んだ手紙を思う。
 今日は、診療所に行くのは遅れそうだ。

556 :「日常」の過ごし方と守り方  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 20:52:42.80 ID:CYmlSjjO0



 放課後、人気のない校舎裏に向かう。
 誰かにつけられている、という事はない。
 手紙に書かれていた通りと言うべきか、一人の女子生徒の姿がそこにあった。
 あまり、血色のいい顔ではない。

「あ……来てくれたんですね」
「呼び出されたからな。で、何の用だ」

 さっさとすませたい。
 用件を切り出すように言えば、その女子生徒は物憂げに俯いた。

「その……私、あなたに、一目惚れを」
「俺は興味ない」

 即答する。
 色恋の沙汰には、今のところ興味はない。
 一目惚れというものが、よほどの事でもない限りただの思い違いだという事も知っている。

「用件がそれだけなら、帰るぞ」
「あ、ま、待って……」

 背を向けて歩き出そうとすれば、腕を掴まれた。
 女子生徒とは思えぬ強い力で、束縛される。

「酷い人」

 薄く笑う声。
 首元に、牙が、伸びて。



「あら?」

 間の抜けた声がした。
557 :「日常」の過ごし方と守り方  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 20:54:08.00 ID:CYmlSjjO0
 こちらが束縛を抜け、振り返りざまに首を斬りつけたのがよほど不思議だったらしい。
 ほんの一瞬だったし、相手はどうにもこちらの首筋しか見ていなかった。どうやって束縛を抜けたのか気づいてすらいまい。
 「切り裂きジャック」の、犯人は医者であったという説。それによって手元に生み出されるメスは、いつでも鋭さを保っている。

「ギ……!?きさ、ま、気づいて」
「お前の顔の生徒はこの学校にはいない。転入生が来るという話もない」

 学校の生徒と教員の顔は全て記憶している。
 目の前の相手が、学校の生徒ではない事くらいはわかる……たとえ、この学校の制服を着ていようとも、だ。

「三年の特進科で、行方不明になった生徒が出ていたな。成績が伸び悩んでの失踪、と噂されてはいたが。お前が殺したか」
「ギ、ギギギ……」

 ずる……と、体から首が、抜けた。
 その生首から食道が繋がっていて、内臓がぶらりとぶら下がる。
 「ペナンガラン」。マレー半島とかあちらの伝承の存在だったはず。
 女の生首から内臓垂らして飛び回る吸血鬼。

「殺して、体を奪ったか。首はどこへやった」
「ギ………っ、キキキキッ。さてね。そこらの犬コロに、くれてやったさ」

 牙が伸びる。
 こちらを、獲物と見定めている。

「アタシは、お前みたいな、契約者の血が好きなんだよねぇ……!吸わせろぉ!!」

 正体を見破られた時点で、こちらを生かすつもりもないのだろう。
 内臓が、うねる。
 こちらを束縛せんとうねり伸びてきたそれへとメスを突き立て、そのまま切り裂きながら一気に本体たる生首へと近づく。

「ギギャ……ッ」
「「狐」の勢力でもなさそうだ。もう聞き出す事もない」

 ぐるりと、唇を、鼻を、眉間を。
 一閃し、さらに、見開かれた目に突き立てる。

「この時期に、余計な手間を焼かせるな。鬱陶しい」

 悲鳴をあげる事もなく、ぼとり、「ペナンガラン」は地に落ちて、そのままさらさらとその生首が、内臓が、塵のように崩れていく。
 あとに残されたのは、使われていた犠牲者の体。
 ため息をついて、携帯端末を取りだす。

「……あぁ、お袋?……「ペナンガラン」を討伐した。それが使ってた体が残ってる…………わかった。悪いけど、任せた」

 「レジスタンス」経由で、始末は任せる異にして。
 いつも通り、メスを消すと、さっさと診療所へと向かう事にした。


 非日常はいつでもすぐそばにある。
 それに対処できるように日常を過ごす。
 ……それが、自分の変わらぬ日常なのだろう。



to be … ?
558 :おねむの精に憑かれし花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 20:55:50.51 ID:CYmlSjjO0
そういえば一人だけ通う高校違うせいで学校での様子が出てなかった灰人の学校での様子でした
彼は彼なりに、日常を楽しんで守っているようです
559 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/03(木) 23:16:31.66 ID:sJvHdS0To
 

>>555-557
投下お疲れ様です
東区の高校も割と実害あるやつが徘徊してるな!?
そして遂に出ましたか、FOXGIRLS……これはお狐仮面が学校町にも登場するフラグかな? (明らかな話題の飛躍)

>  学校の生徒と教員の顔は全て記憶している。
凄い、これは凄いぞ、自己紹介の手間が省けるな!
高校の生徒を名乗る侵入者がいても一発で分かるというね


>>553
> いんや、洗脳で恋心植え付け云々の方
闇が深すぎる……

 
560 :次世代ーズ 節分 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/03(木) 23:18:36.34 ID:sJvHdS0To
 

 節分


 @節分の日の業務終了後

 コトリー「せっつぶーん! ですのー!」
 JD先輩「節分といったら豆撒きだよなー」

 おばちゃん店員「ちなみにもう『ラルム』の豆撒きは済ませたわ」
 おばあちゃん店員「後片付けもバッチリ❤」

 せと  「ちなみに今年も店長は私たちに節分専用の衣装を着せようとしましたが全力で阻止しました!!」
 店長  「 😂 」

 コトリー「さすがにあんな丈が短いトラ柄の衣装は肌が見えすぎですの!」 プンスカ!!
 店長  「それがいいんじゃないかー 😂 」
 せと  「店長さんがちょっとかわいそうだったので、角のヘッドバンドだけ付けました……」


 A恵方巻

 JD先輩「そして節分といったら恵方巻だろー!?」
 コトリー「今年もてんちょーとヒロ先輩が頑張ってくれましたの!」

 店長  「ふふふ……! まかないにしては気合入れすぎちゃったかな?」
 ヒロ  (頑張ったって言っても、店長さんが用意したのを巻いただけなんだけど……)

 JD先輩「そんで、今年の恵方は北北西なんだけど」
 ヒロ  「えっと、コンパスアプリを……」

 おばあちゃん店員「今年の恵方はぁぁぁ! ずばりぃぃぃぃ!」 キュイイイイイイイッッ
 おばあちゃん店員「あっちじゃああああ!!」 ペカァァァァァァ
 おばあちゃん店員「業務用第一冷蔵庫と作業棚の間!!」 ビシィッ

 JD先輩「あっ事前に調べててくれたんすね、アザーッス!」

 おばあちゃん店員(うふふ❤ これくらいは「五時ババア感覚」でお茶の子よぉ❤)


   説明しよう! 五時ババア感覚とは!
   「ラルム」の店員であるおばあちゃん店員は何を隠そう、都市伝説「五時ババア」なのだが!
   彼女は生来の能力として、時計の力を借りずとも現在な時刻、及び「5:55まであと何時間なのか」を割り出すことができる!
   これは地球の自転や各恒星、惑星との角度等を五時ババア的磁気コンパスやババア的霊感によって取得し、無意識下の演算で割り出しているためだ!
   そしてこのスキルを利用することにより現在位置から見た正確な方位をも把握することができるのだ! これらの技能は「五時ババア」としての長年の研鑽によって獲得されたものだ! 怖い! 恐ろしいぞ! 五時ババア!!


 せと  「それじゃ、頂きます」
 JD先輩「ちゃんと願い事を考えながらだぜー」

 コトリー「……」 モッチモッチ
 せと  「んっ……んん……」 ンモンモ
 JD先輩「う……ふうっ……んっ……」 モッモッ

 ヒロ  「……」
 ヒロ  (なんで三人とも目からハイライト消えてるの? なにそのエッチな吐息……エッチなんですけど……)

 コトリー「んんーふ、んふふー……(みなさんも良い節分をー)」 モッチモッチ



 
561 :次世代ーズ 節分 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/03(木) 23:19:48.83 ID:sJvHdS0To
 

 ■登場人物

 コトリー: コトリーちゃん。『ラルム』の店員さん。登場はめっちゃ久しぶり
 せと: 遠倉千十。『ラルム』の店員さんでコトリーちゃんと同い年。「次世代ーズ」ではようやく本格的に前に出てきた

 JD先輩: 『ラルム』の店員さん。コトリー、せととバイト同期

 おばちゃん店員: 『ラルム』の支柱。パート暦ウン十年のベテラン。一般人
 おばあちゃん店員: 『ラルム』の心臓部。男一人の店長を色々サポートする。正体が「五時ババア」だが、それを知ってるのは(店員さんでは)千十くらい?

 店長: 『ラルム』の店長。悪い人ではないけど高校生バイト組のコトリー&せとにコスプレさせようとするが常に断られる。味方はJD先輩くらい

 ヒロ: 今回初登場の『ラルム』の店員さん。美大生で、「ラルム」の広告デザインは彼女の手によるもの



 ■ラルム
   芽香市(通称:学校町)東区に隣接する市(といっても限りなく東区に近い)に位置したカフェ
   店長さん的には学生や若年層にも入りやすいお店にしたかったようだが、メニューがお高めなので今のところ客層は高翌齢者やおでかけ中のご婦人が多い
   都市伝説や契約者による抗争と無縁な平和空間……なのだが、お忍びで神様と呼ばれる存在がひそかにお客さんとしてやって来ることがある
   9月時点から開始した「次世代ーズ」より少し前に、店舗と店員が呪詛汚染被害に遭う事件が発生しており、このときは土地の守り神が激昂した

 



 前回の続き、今夜中には出せそうですが
 日付またぐ前に間に合うか……!?
562 :次世代ーズ 節分 ◆John//PW6. [sage saga]:2022/02/03(木) 23:32:45.47 ID:sJvHdS0To
 

 >>561
 × 高翌齢者
 ○ 高齢者

 漢字置き換えトラップを回避したと思ったら、ツール上の目視確認を怠っていました、おのれ


 
563 :煎り豆美味しいした花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/03(木) 23:38:55.60 ID:i4Th7lYU0
余談ながら、「ペナンガラン」は「イブラリン」と言う名前で日本では紹介されたこともあるそうです
胃ぶらりんと覚えると早いかもしれません(???)

次世代ーズの人乙でしたの
恵方巻と言えばエッチな食べ方だよね(??)


>>559
>東区の高校も割と実害あるやつが徘徊してるな!?
中央高校ほど都市伝説の出没頻度高くないにしても、たまにこういうの出たりはしそう

>高校の生徒を名乗る侵入者がいても一発で分かるというね
当人曰く「事務員や用務員とかは覚えきれてないからまだ穴がある」との事
そこまで覚えるのは流石に大変じゃねぇかな……
564 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 00:51:12.16 ID:i7S41P6Po
 

>>548-550
「簡単なご返答」 へのクロス

●内容
・「狐」本戦参加組からの返答を受けて、早渡の会話
・「先生」、鬼灯と早渡の会話
・そういや早渡が持ち込んだ大き目のフルーツロールケーキはどうなった!?

 
565 :次世代ーズ 「早渡、返答を受けて」 1/5 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 00:52:08.12 ID:i7S41P6Po
 


 診療所のトイレを借りて、顔を洗った
 少しだけすっきりした、気がする
 思えば色々話してしまった

 いやでももう後には引けない
 いずれやるべきことだったから



 鏡越しに自分の顔を睨む
 思った以上に顔に出てるな、俺



 トイレから出た後、大きめの蜘蛛の姿が見えた、気がする
 それも割と大きめのやつだ

 診療所にも出るんだな
 いや見間違いかも、なんかそれっぽい影だっただけかもしれない



(脩寿、知ってる? 蜘蛛はね――)



 何故このタイミングで思い出すのか
 昔々、空七に言われた台詞だ



(――知恵の神様なんだよ。だから、虐めちゃダメだよ)



 思わず溜息が漏れる
 空七。お前、一体どこで何やってんだよ
 事と次第によっては――いや、今は考えるな



 俺はほぼ無意識に
 蜘蛛の幻影が見えた場所に、軽く頭を下げていた










 部屋へ戻る途中、「先生」とあと一人の方――「通り悪魔」の御仁と「先生」に呼ばれていたので、ほぼ間違いないかもしれない――の声を聞いた
 まだ話し中のようだ、部屋へ戻ろう











 
566 :次世代ーズ 「早渡、返答を受けて」 2/5 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 00:52:45.42 ID:i7S41P6Po
 

「さて、と。俺達が「狐」の配下も全員殺そうとしているか、だけど」


 部屋に戻り、花房君が再び音頭を取った
 前々からうっすら感じていたが、花房君はこの手の進行が得意なようだ

 全員が色々と教えてくれ、助言をくれた
 現時点で「狐」の手勢に加わった者は魅了の被害者、基本的に殺さずの方針を取るが
 それでも全員を生かしたままにするのは難しいであろうこと

 それ故に、恐らく「狐」の手勢との交戦は熾烈を極める
 手勢との会話は困難、会話できるとすれば「組織」に身柄を押さえられる前だということ


 「なるたけ、九割殺しで抑える」
 「それ本当に抑えてる?大丈夫?うっかりもう一割いかない?」
 「そこまで貧弱なら、元から話ほとんど聞き出せねえだろ」
 「……遥には後でよく言い聞かせとく」
 「あ?」


 日景からそんな物騒な返答が飛び出し、思わず突っ込んでしまった
 黙って話を聞くつもりだったが、なんというか日景はちょっとみんなともどこか少しズレてるっぽいな
 いや、これはあくまで俺の感想だ。わざわざ口に出すつもりはない

 しかしなんか今度は日景と灰人先輩がバチバチし始めたんだけど?
 何? 日景は一体何処にどんだけ地雷もってんの? ちょっと怖いんだけど




 続いて花房君は(日景と灰人先輩の睨み合いを流すように)みんなの所属組織が空七の情報を握っているか、全員に確認した

 おおむねどの勢力も、空七が「狐」に加わってるかどうかの情報を持ち合わせていなかった
 ……ちょっと先行きが不安になるな。そもそも空七のAN-Pがアレだとしたら、絶対に他勢力の注意を引くはずだ


「気になるようだったら、「先生」と鬼灯さんにも聞いとくといいよ。「先生」なら「薔薇十字団」からの情報知ってる筈だから」
「オーケー、お二人が戻ったら確認してみるよ」


 花房君からありがたい提案だ
 だが、花房君の厚意を無下にするつもりじゃないけど、他の勢力も情報を握ってないなら
 恐らく「先生」や鬼灯さんも知らない可能性がある
 てか、あの人は鬼灯さんで間違いないらしい。後で本人に直接尋ねてみよう

 そうしてると、憐ちゃんの視線を感じた
 見れば少しだけ顔を上げてこちらを見ている、気がする
 いや、憐ちゃんの前髪の所為で実際にこっちを見ているのか分からないけど、口元が何か言いたそうな感じするぞ?


「さっきの話だけどよ」


 憐ちゃんに声を掛けようとした寸前で、日景に話し掛けられた


 「そもそも、魅了が解けたからっつって。手駒がお前に協力するかは何とも言えねえ
  欲しい答えが返ってくるなんて期待はしない方がいいんじゃねえか」

 「そこは理解してる。めぼしい情報が得られたら御の字くらいで考えてるよ」

 「よし、決まりだな。こちらとしても可能な限り協力はする
  でもみんなからも話が何度も出てるように、九宮空七が加わってるかを聞き出すこと自体が難しいと見ている
  それでもいいなら手を貸すよ。あまり期待はするなよ?」

 「分かった、協力に感謝するよ。ありがとう」


 日景と俺のやり取りを聞いて、花房君がいい感じでまとめてくれた
 俺からお礼の後で、具体的なプランについて話した

 @「狐」の配下を確保したタイミングで俺を呼び出してもらい、俺が間に合えば配下の奴に直接空七の参加如何を聞き出す
  俺の本心としてはこっちで行きたいが、何度も話が出たように難しいのは承知だ
 A俺が間に合わない場合、俺に代わってみんなのうち誰かが「狐」の配下に空七の参加について尋問する
  そして現場が落ち着いたタイミングで、改めて俺に情報を共有する
  こちらは次点だが、現実的にはこちらで落ち着きそうだ。だがこちらにしても困難な頼みであるのには変わりない


「ま。答えがあったら儲けもん、程度で考えとけ」


 
567 :次世代ーズ 「早渡、返答を受けて」 3/5 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 00:55:17.02 ID:i7S41P6Po
 


               ●



「うん? “塩の柱にする光を放つ”契約者? 迷い子の少年の幼馴染か。すまんな、そんな話は聞いていないね」

「そう、ですか」

「少なくとも『薔薇十字団』では掴んでおらんね。あの後も調べてもらってはいたんだが、今に至るまでクリスからもそういう話は入っておらん」


 しばらくして「先生」と鬼灯さんが戻って来たので、早速俺はお二人に尋ねてみた
 「先生」は以前俺と会ったときから、改めて状況の確認を取ってくれていたらしい
 クリス、とは「先生」のお知り合いだろうか? 「薔薇十字団」――恐らくヨーロッパの勢力かもしれないが詳細は不明だ――でも空七の加担は不明だという


「俺も長いこと『狐』を追ってるが。そんな奴が加わってるって話は耳にしてないな」

「ん、んー。そも、それほどの契約者が『狐』に加わってるなら、どの勢力も真っ先に警戒するであろ?」

「だが。そいつが仮に『狐』に抱きこまれたとしたら、時期は三年前。だったな? 坊主」

「はい、可能性としてはその時期です」


 鬼灯さん、そう呼ばれた方は
 煙管を燻らせながら思案気の表情で空を見ていた


「そんな殺人光線ぶっ放せる奴を抱き込んでんなら、『狐』にとってもとっときの隠し玉だ。今でも隠匿してる可能性はあるんじゃ無えか?」

「んー、切り札としてはあり得るだろうが、あまりそういう可能性は考えたくないね」

「それも『狐』を潰しちまえば、自ずから明らかになるだろ」


 鬼灯さんの仰る通りだ
 結局は「狐」さえ仕留めれば、空七が「狐」に加わってるかどうかははっきりする




 それで
 もし、空七が

 「狐」に加わっていなかった場合は?

 魅了ではなく、自らの意志でアレをやったのだとしたら?

 俺は




 俺は、「先生」と鬼灯さんに頭を下げた











 
568 :次世代ーズ 「早渡、返答を受けて」 4/5 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 00:56:58.63 ID:i7S41P6Po
 


               ●


「じゃ、早渡君が買ってきたロールケーキ、全員食べてね」

「俺は甘いの苦手だ」

「とにかく食べて。この量だと全員で食べないと減らないし、残りが『先生』の冷蔵庫行きになるにしても、減らさないと」

「私は構わんよ」


 悪い! 広瀬(優)ちゃん!
 彼女が全員に声を掛けて、俺が持ち込んだロールケーキを銘々に押し付けていた

 俺が買ったのは、南区のケーキ屋で売っていた、やたら大きいと有名なフルーツロールケーキだ
 大きいと評判のフルーツロールで、味は良いがお値段も中々良い感じに張っちゃう一品
 そこそこの人数が集まるって聞いてたから良かれと思って買ってきたんだが
 あんなヘビーな話の後だ、持ち込んだ俺の想像力不足がとっても痛い


 日景は憐ちゃんの様子を気にしてたようで傍にいた
 俺も憐ちゃんが気になるが、今は日景に任せよう

 ちら、と横目で角田の人をうかがうと
 相変わらず俺が渡したバインダーをめくりながら深刻そうな面持ちで携帯を弄っていた
 その横にいる紅ちゃんは角田の人の顔色をうかがうように、一緒にバインダーを眺めているようだ

 ちなみに紅ちゃんの手元にはロールケーキの三分の一、いや半分近い量が皿に盛られている
 大丈夫、紅ちゃん? 胸焼けしない? いざとなったら角田の人の口に詰め込んでくれよ?


「で、坊主。話ってのは」


 俺は今、鬼灯さんを前にしている
 一応場の空気もいささか緩んだ頃合いだ
 そう判断して、先ほどから気になっていたことを確認しようとした


「あはい、あの――不躾ですいません。鬼灯さんは、あの“鬼灯先生”でしょうか?」

「あの“鬼灯”てのは、どの鬼灯だい? この世に鬼灯を名乗る奴ァ腐るほど居るが」


 鬼灯さんは優雅な手つきで煙管を弄びながら、そんなことを言う
 むむむ、この雰囲気といい応じ方といい、恐らくドンピシャかもしれない
 そうだな、ここはひとつ――


「俺の言う“鬼灯先生”は一人だけです
 佐渡相川の『闇市』では鬼灯さんが来たと知れただけで、市中がお祭り騒ぎになって
 鬼や人の子が集まって来ては鬼灯さんに遊んでもらうんだと構って貰えるまで決して離さず
 沼垂の花街に足を運べば、その三味線の音色を聞きたいと誰も彼も自分の店へと引き込もうとする
 それに極め付けは鍾恩屋の太夫さん、絶ッ対にお客には表情を見せないって有名な巻田さんから逆指名され
 お会いしたらお会いしたで傍目からも分かるほど巻田さんの色白の顔は燃え上がるように一瞬で真っ赤になったそうじゃないですか
 こんな武勇伝があるのはこの世広しと言えど貴方だけですよ、“地唄師匠”の鬼灯先生」

「な――ンで坊主が色街の話を知ってンだ」

「なんなら、まだ挙げましょうか? 鬼灯先生の武勇伝」

「分かった分かった、俺ァお前さんの謂う鬼灯だろうさ。だが此処では“先生”は止めな」

「承知しました、鬼灯さん」

 
569 :次世代ーズ 「早渡、返答を受けて」 5/5 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 00:58:30.14 ID:i7S41P6Po
 



 参ったと言わんばかりで俺を片手で制してきたのは、やはりあの鬼灯さんだったらしい
 まさか学校町でお会いすることになるなんて、思ってもなかったぜ


「坊主、まだ名前聞いちゃいなかったな」

「あ、自己紹介がまだでしたね
 今年の三月までは『北辰勾玉 庵屋』で厄介になってました、早渡脩寿と申します
 今年の四月から学校町に越してきて、南区商業に通ってるんですけど」

「成程、合点がいった。お前が“七つ星のコトブキ”で、“かんのぬえ”だな?」

「――っッッ!?!? な、なんでそれを!?」


 思わず周囲を見回す
 が、幸いなのか誰も聞いてなかった様子だ、多分
 見れば広瀬(晃)ちゃんのところに若干名集まってる様子だ
 俺の携帯か? 角田の人から再び広瀬(晃)ちゃんに返された俺の携帯か?
 だが今はそれどころじゃない!!


「飛騨高山で『悪魔』とやり合ったんだろ? 界隈じゃあ有名な話だ
 それに穂張の若柘榴役とも仲良くなったって言うじゃねえか。で、いつ嫁に獲るんだ?」

「違うッ! 違いますッ!! 高山のアレはともかく、穂張の件は完ッッ全に誤解です!! どうか、内密にっっ!!」


 全部バレてるっ!! 全部バレてやがるっ!!
 この様子だと息巻いて「天使」とガチったところを瞬殺された話とかも知ってるに違いないっ!!

 鬼灯さんは煙管を弄びながらくつくつと笑っている
 あっ! も、も、も、もしかして揶揄われた!? もしやさっきの仕返しか!?


「そんで、コトブキ。脇本の旦那は元気かい?」
「へ? あっ! え、お、親父殿っすか? 元気ですよ、ピンピンしてますけど」
「旦那には昔少しばかり世話になってな、旨い酒をよく知ってる。昔話を聞いたりするか?」
「あの、いえ。親父殿はあんまり昔の話をしたがらないし、訊いてもとぼけちゃうんで」
「そうかい、その様子じゃ先代団三郎の前で上覧試合やった話も知らねえだろうな」
「えっ? えっ?? ちょっ、い、何時!? いつの話ですか!?」
「明治だか大正だか。まあアレだ、お前さんが成人した暁にでも聞けるだろ。楽しみにとっとけ」
「えっ!? えっ!!??」


 鬼灯さん、親父殿の過去を知ってるのか!?
 うわっ聞きたい! 本心を言えば今直ぐ聞きたい!!
 てか俺の「七つ星」時代の恥ずかしい話も知ってる可能性高い!!
 どうしよ俺!! 落ち着け俺!!

 そう、そうだ。空七だ
 落ち着け、今は混乱している場合じゃない。落ち着け、俺


「坊主が気負うことは無えだろ」


 鬼灯さんは、まるでこれまでもそうしていたかのように煙管を燻らせていた
 少しばかり――空気が張り詰めた、気がした


「柳は緑、花は紅。のさばる者は何れ滅ぶ。これが浮世の理って奴だ」


 鬼灯さんの言葉はどこか楽しげで
 しかし、確かに刃の切っ先じみた冷たさが滲んでいた














□■□
570 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 01:01:13.48 ID:i7S41P6Po
 

 【補足】

 ・フルーツロールケーキ
   早渡が学校町南区のケーキ屋で買ったという中々結構なサイズのフルーツ入りロールケーキ
   評判になるほど美味らしいが、その分値段も張る
   そうです、前スレ 935 の回収です

 ・佐渡相川の『闇市』
   団三郎の本拠。恐らく此処の闇市は常人には知覚できない半異界に存在する
   「闇市」を束ねる「広商連」は特に三つの勢力に大別することができ、日本三名狸伝説にあやかった名を持つ。団三郎はその一つ

 ・沼垂の花街
   御存じ色街、実在の地域にオーバーラップするようにして異界内に位置する
   人妖の別なくいろんなおねえさんがいます

 ・鍾恩屋の巻田さん
   高級遊郭、鍾恩屋
   そこに籍を置く、太夫と呼ばれる花魁のおねえさん
   「雪女」の血筋らしく、その美貌を一目見た男性は一瞬で心奪われるという
   彼女は「地唄師匠の鬼灯先生」の噂を聞き、さらにはその三味線の音に心を奪われ
   是非ともお会いしたいと方々に無理を言って、遂には鬼灯さんを逆指名することに成功する
   ところがいざ鬼灯さんと対面するとお顔が真っ赤になってしまったらしく、その後どうなったかは話が伝わっていない
   ある筋によると、巻田さんと鬼灯さんのやり取りを垣間見た鍾恩屋の女将さんも顔面が真っ赤になってしまったらしい

 ・北辰勾玉 庵屋
   早渡が世話になった場所、「団三郎」勢力圏内にある
   実在化した伝承存在や結界に関する保守サービスの実施や、護衛の業務等を請け負っている
   「脇本の旦那」こと「親父殿」はここの長、詳細な年齢はとぼけ通しているが、戦国‐江戸時代の生まれなことは確からしい

 ・七つ星のコトブキ
   早渡は「闇市」内で大体こう呼ばれる
   “かんのぬえ”は用心棒(バウンサー)稼業時の名乗りで、「コトブキ=かんのぬえ」という事実は「七つ星」以外の周囲には伏せられていた
   鬼灯さんには当代団三郎が酒の席でうっかりバラしちゃったのかもしれない

・飛騨高山のアレ
   早渡の恥ずかしい過去。詳細は多分語られないかもしれないし、ちょっとは語られれるかもしれない

・穂張の件
   穂張神社という特殊なお勤めをおこなっている神社には多数の娘さんがいるが
   そこの美人姉妹と仲良くなったのが(主に姉の吹聴により)、なんか話が大きくなった
   穂張神社や柘榴役についてはそのうち単発で出るかもしれない……「次世代ーズ」の気力があれば……

・上覧試合
   先代団三郎の御前で行われた上覧試合
   団三郎圏内の強豪が自慢の力と技を先代の前で披露したそうです
   今より(若干)若い和装の親父殿(刀)は、洋装の紳士(糸と毒針)とかなり派手な立ち回りを演じたらしいが、この話は本編では出ないかもしれない
   この上覧試合、もしかすると当時の獄門寺家や将門様ゆかりの方々も関わってるかもしれない










 花子さんの人に土下座 orz
 これで許可頂いた部分については大体言及できたか!? と思います
 憐氏の突っ込みについては此処ではあまり触れずにでいきました


 
571 :他所事と同時進行してた花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 01:39:27.10 ID:ApD3L2JW0
乙でしたー
蜘蛛は知恵の神様。そう、そんな一面もあるね(某トリックスターからは視線を逸らす)
かなえなら……それだけの量いける、な……!(なおカロリー)
そして鬼灯何やってんの?お前結婚前も人間社会で似たような事やったよな??っつかかつての結婚相手との出会いそういう感じの場所だったよな??
早渡君の携帯の中身……丸裸、だろうな……


>憐氏の突っ込みについては此処ではあまり触れずにでいきました
はぁいですよ
後日、お返事ネタっぽいの書けたらいいねの心意気で行きます
572 :さて、と投下しようとする花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 01:42:17.12 ID:ApD3L2JW0
■いまからとうかするもののおおざっぱな時間軸
「死毒より未来生きる者へ」(wiki参照)の後から「動き出した歯車は止められない」(wiki参照)の間辺り


                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ なんかきゅうにおもいついたんだってさ!
                ヽ  〈 そこまでだいじなしーんじゃないいきぬきだよ!
                 ヽヽ_)
573 :狂犬忠犬番犬猛犬  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 01:43:40.06 ID:ApD3L2JW0
 荒神 憐。
 中央高校の現狂犬たる日景 遥のお気に入り。
 憐の事を、そのように認識している不良はちらほらといる。
 実際、遥が大切な友人達の中でも殊更憐を気にかけているのは事実である。
 それこそ、ナチュラルホモ疑惑をかけられるレベルで気にかけているし大切にしている。
 動かしようのないその事実は、遥自身が一切合切隠そうとしない為に他人にまで認識されているのである。
 憐にとってはいい迷惑であろうが、憐の方も昔からそうだったために変に慣れてしまっていてほとんど怒らない。
 いつもへらへらとした軽い笑みを浮かべていて、体格に恵まれた遥とは正反対に小柄で細い体。
 彼らがどのような縁で、絆で、結び付けられているのか。それを知らない部外者からは、遥が憐を宝物のように扱う理由もわからない。
 だからか、勘違いする輩も存在する。
 憐が遥の太鼓持ちだ、とか。虎の威を借る狐だ、とか。日景 遥の「コレ」だとか。
 彼らの普段の様子を見ていればそうではないと(よほど頓珍漢でもないかぎり)わかる事であろうが、中途半端な噂で勘違いする者もいる、と言う事だ。

「なぁ、憐。一緒に帰r「はーい、はるっちは今日はバイトあるし俺っちは教会のお手伝いあるから帰り道反対っすからねー。まっすぐバイト行かなきゃダメっすよー」ちっくしょう!!」

 いつも通りのやりとりをして、学校の前で遥と分かれる憐。
 項垂れる遥に神子の一撃が入ったのは憐が背を向けてからだったのは、神子が憐に気を使ったのか、単なるタイミングの問題か。

 他の、いつもつるんでいる幼馴染達も今日は各々用事があるようで憐と帰る方向が同じ者がいない。
 一人で教会に向かって歩くその姿はあまりにも無防備で無警戒に見える。

 ――あれを痛めつけでもすれば、日景 遥も慌てるだろう。
 ――男にして小柄で顔立ちも可愛らしいあれが本当に男かどうか、脱がせて確認でもしてやろうか。
 ――きっと、とっくに「可愛がられて」でもいるだろう。

 身勝手な、邪な、邪悪な思考でもってそれらは憐の後を付け始めた。
 憐は気づいているのかいないのか。どちらにせよ、ついてくるそれらを気にする様子なく歩いていっている。
 流石に、それらとて人目のある場所で絡みに向かう度胸はない。そんなことをして速攻遥にバレる危険を犯すほどの愚者でもない。愚者に変わりはないが、愚者にもレベルがあるのだ。
 住宅街を進んでいき、あまり、人目のない道へ。
 あと少し、あと少し…………

「……あ、カイザー司祭様。お買い物帰りっすー?」
「おや、憐。いえ、そうではないのですが……」

 …………!
 憐が、知り合いらしい司祭に話しかけにいった事でそれらは動きを止め、警戒態勢に入った。
 東区にある教会の司祭……の、穏やかで人当たりがいい方だ。
 大きな段ボール箱を抱えるように持っている。どこぞからおすそ分けでも貰ったのかもしれない。

「俺っちが持ちましょうかー?」
「……あなたが持つには、少しばかり重たいかと。野菜がたくさん詰まってますので」
「むぅ……俺っち、そこまで非力じゃないっすよー?」

 二人並んで、教会への道を歩いていく。
 ……穏やかな司祭は両手がふさがっている。そもそも、背丈こそあるが荒事に慣れているような見目はしていない。
 一緒に、襲ってしまえばいいだろう。
 巻き込むようにしてしまえば、憐に対しても大層嫌がらせになるだろう。
 今度こそ、それらは二人相手に距離を詰めようとして。

 ひゅう、と。
 あまりにも季節外れの、冷たい、冷たい風が、吹いた。


574 :狂犬忠犬番犬猛犬  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 01:48:54.79 ID:ApD3L2JW0



「ただいま戻りました」
「こんにちはー、いつものお手伝い来ましたー」

 カイザーと憐の声が聞こえて、教会の講堂で一人考え事をしていたジェルトヴァは顔を上げた。
 確か、カイザーは北区の方に用事があると出かけていたはずだったが、帰り道で憐と合流したか。
 そちらへと、視線を向けて。憐が、重たげに箱を抱えているのに気づいて、素早く駆け寄っていく。

「重たかっただろう。大丈夫か」
「いえ、大丈夫っすー」
「……すみません。こちらから手を放すわけにはいかなかったもので」

 申し訳なさそうなカイザーの声に、仕方ない、とジェルトヴァは判断した。
 何故なら、カイザーがメルセデスの司祭服の襟首をがっちりと掴んで、決して離さぬ体勢だったからだ。
 猫の子のように掴まれて、メルセデスは不満げな表情を浮かべている。
 ……それでもその手を振り払っていないのは、結局はメルセデスがカイザーに頭が上がらぬのが原因だろう。
 悪魔であるが故に、殊更、「契約」と言うものには強く縛られるのだ。

「…………では、メルセデス。少々、お部屋で話が」
「別に、お前らを護っただけだろうが。第一、お前らが絡まれた方が後々めんどくせぇだろ」
「一般の方を氷漬けにしようとしてはなりません」

 ……やらかしかけたのは、あの悪魔は。
 半ば引きずられていくように奥へと連れていかれるメルセデスを見送り、ジェルトヴァはため息をついた。

「…………お前は、大丈夫か?」
「?俺っちは問題ないっすよー?怖い人達は、メルセデス司祭が何とかしてくれたっすしー」
「…………あの悪魔は気まぐれな面もあるから、気を付けるようにな」
「はーい。でもまぁ、カイザー司祭に関する事はあの人……人?悪魔、正直っすから。そこは信用してるっす」

 へらり、と憐はいつも通りの笑みを浮かべる。
 その笑みに、憐の母親に似た物を感じながらジェルトヴァは憐が抱えていた段ボールを受け取った。
 キッチンまで運ぶべきだろう。

「量が量みたいっすし、収納お手伝いしますねー?」
「あぁ、すまないが、頼んだ」

 ぱたぱたと、自分と並んでキッチンへと向かう母親似の小柄な姿を見て。
 あまり荒事に巻き込みたくないし巻き込むべきではない、と……あまり、憐の母親たるフェリシテと重ねすぎてもいけないと己を戒めながらも、ジェルトヴァはそう、考えていた。






「――――あれは、そんな可愛らしいもんじゃねぇだろうに」
「メルセデス。話を聞いていませんでしたね?」
「お前が堕天したら聞いてやる」
「お断りします」






575 :狂犬忠犬番犬猛犬  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 01:50:01.39 ID:ApD3L2JW0
 狂犬、忠犬、番犬、猛犬。
 見た目じゃ誰も、わからない。



               Red Cape




to be … ?
576 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 02:44:41.46 ID:i7S41P6Po
 

 >>571
 乙ありです
 > かなえなら……それだけの量いける、な……!(なおカロリー)
 紅さん……ごめんね……
 > 早渡君の携帯の中身……丸裸、だろうな……
 これはちょっとした小ネタを行きたいですねー

 >>572-575
 投下お疲れ様でした
 今回の襲撃者、非契約者だったか……命知らずな
 さて
 憐君とメルセデス氏の意味深長なやり取りは
 戦技披露会(「足音、足音?」)にもありましたが、これは最後の最後まで目が離せんな
 > 「メルセデス。話を聞いていませんでしたね?」
 > 「お前が堕天したら聞いてやる」
 > 「お断りします」
 もうこのやり取りが実になんというか

 
577 :雪かきやってもやってもまた次が来る花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 10:06:06.83 ID:ApD3L2JW0
>>576
>紅さん……ごめんね……紅さん……ごめんね……
普段からそれくらい食べてるし大丈夫じゃない?(酷)

>これはちょっとした小ネタを行きたいですねー
かわいそう(暖かい眼差し)

>憐君とメルセデス氏の意味深長なやり取りは
あ、ごめん、最後の会話はカイザーとメルセデスの会話ですね
メルセデスが「――――あれは、そんな可愛らしいもんじゃねぇだろうに」と言った「あれ」は誰の事なんだろうね
578 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 17:43:02.76 ID:i7S41P6Po
 
 >>577
 > 普段からそれくらい食べてるし大丈夫じゃない?(酷)
 すまんな紅ちゃん
 
 > あ、ごめん、最後の会話はカイザーとメルセデスの会話ですね
 あー! 失礼しました……
 > メルセデスが「――――あれは、そんな可愛らしいもんじゃねぇだろうに」と言った「あれ」は誰の事なんだろうね
 クライマックスで来る! 絶対に「次世代の子供達」クライマックスで来る! と予想
 
 
 では小ネタいきます
 次スレに来れるのは……早めにしたい
 
 
579 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 17:44:49.48 ID:i7S41P6Po
 

 ●はじめに
  これは「次世代ーズ」 「早渡、返答を受けて」のおまけです
  本編にがっつり関連するかもしれませんが、関連しないかもしれません
  一部登場人物の言動におかしいところがあるかもしれません、頭もおかしくなってるかもしれない
  花子さんの人の連載「次世代の子供達」に登場する人物も引き続き登場します、この場を借りて花子さんの人に土下座申し上げます orz


 ●本題
 >>569
 > 見れば広瀬(晃)ちゃんのところに若干名集まってる様子だ
 > 俺の携帯か? 角田の人から再び広瀬(晃)ちゃんに返された俺の携帯か?
 > だが今はそれどころじゃない!!

   このとき、何が起こっていたのか!?



 @初コンタクト

  晃 「……では、データを全部……ぶっこ抜く」
  優 「あとで早渡君に怒られない?」
  晃 「大丈夫、早渡だし」

  システムメッセージ? 【あっあっあっ! ちょっとまって!!】

  晃 「?」
  晃 「早渡の携帯……なんか、いる」
  優 「なんか?」

  システムメッセージ? 【あっ、もういいよー! 準備OK!】
  システムメッセージ? 【事前に話は聞いてたけど、脩寿のスマホからデータ吸い出すんでしょ?】
  システムメッセージ? 【ボクが事前にデータをごっそり別の場所に移動しといたから、面白いものあんまり残ってないと思うよ?】
  システムメッセージ? 【あっ、あとなんかトロイとか仕込むのは止めてねー! 結局ボクが苦労することになるからさー! 破壊は簡単だけどさー! 後処理がさー!!】

  晃 「失敬。そんな真似は……しない」
  優 (今の間は何?)
  晃 「で。君は、だれ?」

  システムメッセージ? 【あー、そこ気になるー? 気になっちゃうー?? うふふー❤】



 A祷 毬亜、登場

  晃 「勝手に。ビデオ通話、立ち上がった……」
  優 「ヤバいやつじゃない?」

  ? 『あっ! 待って! ヤバくないから! 攻撃とかしないでよ!!』 ☜ 画面に青い空間が立ち上がった
  ? 『えっと、久しぶりなんだよなー、これ』 ゴソゴソ
  ? 『あっ! 映った? ハローハロー!? 見えるー? 聞こえるー?』 ☜ 画面に映った銀髪碧眼のおんなのこ

  優 「わっ。何、この子」

  女子『はじめましてー、花房君の幼馴染でしょー? 話は脩寿から聞いてるよー。ボクは祷 毬亜(いのり まりあ)! 脩寿と同じく「七尾」出身でアレの幼馴染なのー! よろしくねー!』 ☜ 両手を腰に当ててどや顔で胸を張ってる

  晃 「こっちも、契約者?」

  まり『そうだよー、んふふー❤ 能力で脩寿の携帯をリアルタイムでモニターしてまーす❤』 ☜ 水色のエプロンドレスをあざとくフリフリしながら
  まり『ちなみにー❤ ボクは脩寿にあれやこれやされちゃって、今は脩寿の 愛人 兼 奴隷 なんだー❤❤』  テーン!

  優 「     」
  晃 「直斗直斗。とんでもないヤツが、出てきた」
  直斗「なんだ? とうとうヤバい画像でも掘り当てたのか?」




 
580 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 17:46:07.85 ID:i7S41P6Po
 

 Bフレンド申請

  まり『というわけで、今の脩寿のスマホにはさっき話してた事件関連のデータしか置いてないから、君たちのお目当ては無いかもよー』 フフーン!
  まり『でさー、ここから先はお願いなんだけどー。ボクとフレンドになってくれない? 相互しようよー』 ☜ 美少女が手を合わせて拝むようにお願い
  まり『その代わり、脩寿の恥ずかしい写真とか、隠し持ってる画像とかそういうのをあげるからさー、どうかなー??』 ☜ 上目遣い

  直斗「アレの情報と交換ってわけか」
  晃 「コンテンツの、内容による」

  まり『大人のお姉さんに抱きしめられて真っ赤になってる脩寿の写真とか、空七ちゃんにシバかれて悶える脩寿の動画とか』
  晃 「乗った」
  優 (乗っちゃ駄目でしょ)

  まり『じゃあじゃあ! コード送るから、カメラで読み取ってー! 後は自動でフレンド登録されちゃうからさー!』 フフーン!!
  晃 「こっちのスマホに、勝手に、……コード表示されてる」
  優 「こっちにも来てるんだけど?」
  直斗「俺のにも来たな」

  まり『あっ! コード読み取る前に、いいねボタンとチャンネル登録してくれると嬉しいなー❤』 ☜ コード情報の下にある「いいね」ボタンと「SUBSCRIBE」アイコンを強調表示
  晃 「……」 ☜ いいねと登録を無視ししてコードだけ読み取る
  優 「   」 ☜ 表示されたポップアップごと削除



 Cまりあ? 何やってんの、ねえ? おい? まりあ??

  まり『気を取り直して! 脩寿の写真をいくつかシェアする前に、他の写真から共有しとくねー』
  まり『脩寿がさっきみんなに見せた空七ちゃんの画像、確かに写りはいいんだけど他にもあるんだよなー』
  まり『例えばこれ! 縛られて天井から吊るされた脩寿と、しばき棒で脩寿をぶっ叩いてる空七ちゃんの動画! ほしいー?』
  晃 「ほしい」

  まり『空七ちゃんとクル子ちゃんが水着を見せに来てめっちゃ照れてる脩寿の動画! ほしいー?』
  晃 「ほしい」

  まり『岐阜の小学生巫女ちゃん姉妹に両側から抱き着かれて顔面が大暴れしてる脩寿の写真! ほしいー?』
  晃 「ほしい」

  まり『同じく巫女ちゃん姉妹とプールでくっつかれてなんか葛藤してる脩寿の写真! ほしいー?』
  晃 「ほしい」

  まり『じゃあじゃあ、女子大生の巫女さんにおっぱい押し付けられて真っ赤になってる脩寿の写真! ほしいー?』
  晃 「ほしい」

  まり『これどうだろー? 半裸の「サキュバス」をキレながらしばいてる脩寿の動画! このあと逮捕された「サキュバス」が送って来たエッチな挑発自撮りもセットで! ほしいー?』
  晃 「ほしい」

  優 「……」 ☜ 動画を見ている
    早渡『おいっ! やめろ空七っ!! マジでそれはお前オイまじでお前っ!!』
    空七『うるさいっ!! 脩寿が悪いんだからねっ! バカーッ!! バカーッッ!!!』 ☜ しばき棒で早渡のケツをしばく空七
    早渡『がああああああっ!! がああああああっ!! あ゛あ゛っ!! 当゛た゛った゛っ!! 当゛た゛った゛って゛っ!!』 ☜ 絶叫する早渡
  優 「仲良かったのねー」

  直斗「ちょっと早渡情報の共有用ルーム立てとくわ」
  晃 「うん、頼んだ」



 D深まる誤解?

  いよ「まりあちゃんの声聞こえるんだけど、何してるの?」
  晃 「あ。東先輩」
  優 「あっ、ちょっ、一葉先輩は見ない方がいいと思います!」

  まり「あっ、いよっちー! おひさー!」
  いよ「お。みんなと仲良くなってるみたいだね、良かったねまりあちゃん」

  優 「知り合い……なんですか?」
  いよ「うん、早渡後輩と再会した頃に幼馴染ですって紹介されてね」

  いよ「でも女装よく似合ってるよねー、かわいいし。ちょっとライバル心に火が着いちゃうかも」
  晃 「?」
  いよ「あっ、余計なこと言っちゃった?」
  まり『ううん、最後にバラそうかなーって思ってたし! ボク、実は男なんです。うふふー❤』 テーン!!!

  まり『ちなみにさっきの 愛人 兼 奴隷 ってのは冗談だからね❤ 脩寿とはほんとに仲いい幼馴染ってだけだから❤ んふふー❤❤』 ☜ 悪戯っぽく笑ってる

  優 「     」
  晃 「……」 ☜ 無言で花房君のアイコンタクト
  直斗(早渡がコイツに女装を?)
  晃 (ありえない、と。否定できないところが、……怖い)


 
581 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/02/04(金) 17:47:51.85 ID:i7S41P6Po
 



 Eちなみに、前日譚

  まり『ねー、脩寿ー! このアバターってどーおぅ? かわいくなってるよね?』 フリフリ
  早渡「あー、かわいいかわいい」 ☜ 筋トレしながら

  まり『このドレスもどうかなー? かわいいよねー??』 フリフリ
  早渡「うん、いいんじゃねえかなー」 ☜ 夕飯を調理しながら

  まり『そ・れ・で!! いつになったら千十ちゃんと日向ちゃんって子を紹介してくれるのさー!!』 プンプーン!!
  早渡「……」 ☜ ベッドに寝転がって思案中
  まり『こういうときだけ直ぐ黙るー!! そういうとこだぞ!!』 プンスコ!!
  早渡「今後機会を改めてからな……」 ☜ 歯切れ悪い回答

  早渡「まりあお前、俺の恥ずかしい過去の話とかするなよ? アレな写真を見せたりとか」 ☜ 疑わしそうな目つき
  まり『やだなー、そんなことしないよー。 疑うのはやめてよー、もう脩寿ったらー』 ☜ 白々しいほどの棒読み
  早渡(不安だ……) ☜ なんとも言えない不安げな顔つき
  まり『…… ……んふふー❤』





 ●おわりに
  今回まりあがシェアしたのは、大体早渡脩寿が恥ずかしがる過去画像や動画がほとんど
  「七尾」や「広商連」の機密に関わる情報、見たら死ぬ系の画像、「名札付き」の写真 といった本当の意味でヤバい情報までは出してません
  これが if でないとしたら、多分早渡もまりあが画像や動画を流したこと知っても頭抱えつつまりあにお仕置きするでしょうが、最終的に笑って許してくれるんじゃないかな?
  最後に花子さんの人に改めて土下座申し上げます orz













 
582 :雪の塊が屋根から落ちて振動感じた花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 17:53:49.84 ID:ApD3L2JW0
次世代ーズの人乙でしたの
おぉっと、そちらの方が早かったか
微妙に矛盾でるかもだけどまぁいいや


では、お夕飯支度前にいっきまーす
583 :備えは大事  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 17:55:16.38 ID:ApD3L2JW0
■いままでのあらすじ
「みんなで遊ぼう」「みんなで遊ぼう人狼遊戯」

>>510-513
「人狼遊戯のその後に」

>>533-542
「次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」」

>>548-550
「簡単なご返答」

>>565-569
「次世代ーズ 「早渡、返答を受けて」

今から投下するの



                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ いくよ!
                ヽ  〈 
                 ヽヽ_)
584 :備えは大事  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 17:56:25.85 ID:ApD3L2JW0
「「先生」、リアちゃん、どれくらい食べられそう?」
「ふむ?……あ、もうちょっと多くても大丈夫だ。あの子も、食べ盛りになりつつあるからな」

 優がケーキを切り分けていた間、「先生」とそんな会話をしていたのが聞こえた。
 リア、と。誰かの名前だろうそれを聞いて、かなえが首をかしげている。聞き覚えがなかったか。

「……「娘」の名前だろ。「先生」の」
「あ、そ、そっか…………あれ?」

 ぽそりと伝えてやれば、納得した後にまた首をかしげている。
 そうしてから、小さく「あ」と声を上げた。

「「先生」、娘さんいたんだっけ…………噂でしか聞いたことなくて、本当かどうか、知らなかった」
「俺はちらりとしか見たことないが。いるな。今は、どこかに出かけてんのか気配はないが」

 少なくとも、自分が知っている範囲ではあれが「娘」のはずだ。愛百合が「あの先生に育てられるの、色々大丈夫かしらね?」と笑っていたのを覚えている。
 その点に関しては、天地も「あの男一人で子育てするのは情操教育が終わるだろ」と言い切っていたし。他にも、誰かしら手助けはしているのだと思うが。
 ……それこそ、灰人がここに手伝いに来ているのは、半分、その「娘」の様子を見るのも兼ねてか。

(正確には、「先生」と、それが「娘」として扱ってるものの監視、も兼ねているんだろうが……)
「はい、これかなえと、慶次の分」
「あっ、ありがとう」

 と、優がかなえとこちらの分も皿を差し出してきた。
 こちらにはごく普通の量。かなえの分は…………

「……かなえ。その量いけるのか?」
「え?う、うん、これくらいなら……」
「…………そうか」

 また太るのでは。その言葉は喉元近くまで出てとどまった。
 当人もそれくらいはわかっているだろう。今、多く食べ過ぎたなら後で節制するはずだ。
 …………多分。多分。



585 :備えは大事  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 17:57:36.57 ID:ApD3L2JW0




 ……ここで、「闇市」でのこちらの呼び名を知っている奴と顔合わせるとは思わなかった。
 「神隠し」と、あの白猫又が聞いていなくて良かった。「神隠し」からは後でさんざからかれるだろうし、猫又はぎゃいぎゃい変に騒ぐに違いない。「アヴァロン」に寄った折に、「狐」絡みは危ないからと双方そこに叩き込んで置いてきて正解だったという事だ。
 …………もっとも、「神隠し」の方は遠く離れたあの異界からでもこちらを見ていてもおかしくないが。

「……さっきの話、憐にはするなよ」
「え?」
「色街の話やらそういう話題は、苦手だからな。あいつ」

 ちらり、憐の様子を見る。
 憐は、今しがた話していた坊主の携帯を手にしている晃の方を見ていた。
 …………あ、灰人と龍哉が窘めはじめた。どの程度丸裸にされただろうか、あの中身は。
 憐は少しばかり困っているような、呆れているような。そういう表情をしていて。
 そうしてから、顔を上げた。こちらに近づいてくる。

「よぉ。この坊主の携帯の中身、護られたか?」
「待っっっっっっっっっって。みんなで何見てたの?むしろ広瀬ちゃん何してたの???」
「かい兄とりゅうっちが止めてくれたんで、あきっちのお母さんの契約都市伝説呼ばれずにすんだんで多分セーフっす」

 それは止めなかったらアウトだったという事か。
 晃のあぁいうところは父親似と言うべきなのか、それとも一緒に暮らしている他の連中の影響か。
 憐の、坊主を見る眼差しが若干生暖かいというか、優しいというか。その点については気のせいにしてやった方が坊主の精神面にはよさそうだろう。

「憐、坊主に話でもあんのか?」
「ぁ、はい……」
「……なんか言いたそうな事ありそうな顔してるな、とは思ったけど。やっぱりか」

 まだ幾分か考え込んでいるようではあったが。
 ひとまず、坊主に話しかけに来る程度には心も落ち着いたらしい。
 …………三年前の話は、今でも憐にとっては心を乱しすぎる。

「しゅうっちが探してる、「九宮空七」さんについて……ちょっと」
「空七について?」
「うん……その人の契約都市伝説。本当に、「ソドムを滅ぼす神の怒り」なの?」

 俯きはせず、しっかりと、坊主を見て憐は問う。
 え?と声を上げた坊主に、憐は言葉を続けた。

「正直なとこ。それだけの存在、「教会」が見落とすはずはないっす」
「…………創世記に書かれるようなもん、となると「教会」の警戒対象だからな」
「はい。そんなのが学校町や周辺に現れたなら。流石に、「教会」の本部からも連絡が来ます。「バビロンの大淫婦」の絡みで派遣されてきたのがジェルトヴァさん一人、ってのも。「ソドムを滅ぼす神の怒り」がいないって判断材料になりえます」

 こちらの言葉に対して、憐はさらにそう続けた。
 確かに、そこは引っかかる点だ。
 二十年程前の「十三使徒」の大事件のゴタゴタが尾を引いているとはいえ、「教会」は世界でも歴史深く、世界中に根を張る大組織であり。その根源は簡単に揺らぐものでなく、そこに所属する者は世界に目を光らせる。
 警戒対象を、封印対象を、そうやすやす見落とすとは思えない。

 憐の問いに、坊主も考えているようで。

「そりゃそうだ、俺も気になってた。『旧約』起源のあんな規模なANと契約とか、『教会』が見過ごすはずは無いだろうし、そもそも『教会』なら契約される前にANを確保するんじゃないか?」
「確保と言うか…………まぁ、確保ですむならいい、のかなぁ?契約しちゃってて、それを身勝手に使ったとしたら。だいぶ上の方の人が「めっ」ってやりに来ると思うんすけど」

 かなり柔らかな表現にとどめているが、最悪「消されかねない」と言う事だろう。
 憐の母親の「教会」での上司は、確かだいぶ上の立場だったはず。
 だからか余計に、憐は「教会」の裏側の知識を持っている……あの氷の悪魔が面白がって教えた可能性も否定はできないが。

「最悪、「ソドムを滅ぼす神の怒り」を装った別のもの、の可能性もあるっす…………ものがものなんで。それ装うとなるともっと危ないものの可能性もあるんで。そこは、気を付けて」
「……あぁ。とにかく本人かアイツの近場にいた佳川有佳を押さえて尋問するしかしない限り、ハッキリした答えは出ないと思うし……備えはしておくよ」
「ん、なんだい。迷い子の少年にも保険必要かい?一回分の保険くらいならすぐにでも迷い子の少年に仕込めるけど」
「「先生」、ステイ。「先生」がご自分以外に仕込む保険とか、嫌な予感しかしないんで」

 するりと話に入り込んできた「先生」の言葉を、憐は笑顔であっさり切り捨てた。
 正解だろう。本当に何をやらかすかわからない。
 残念、と「先生」は軽く笑ってはいるが。下手に動かれて組織間問題を起こされても困るだろう。
 
「一応、万が一の「保険」が欲しくなったら言うといいよ。「エクスカリバー」の契約者と戦う為に彼の者が仕込んだものには劣れども。それ以前にこっそりと我が親友が彼の者に仕込んでいた物程度であればいくらでも用意できる。痛みも快楽も何もなく仕込んであげる程度はできるからね」

 薄く笑いながら、そぅと坊主に囁きかけた、その様子は。
 ある種、「悪魔の囁き」にも似たものにも見えて。

 …………この、ある種の艶やかさは、この男もまた、正気の頃と発狂していた頃問わず、人を惑わせた者であり。
 今もってなお、ある種、他人を惑わせ狂わせるものであるのだと、思いださせた。




to be … ?
586 :お夕食ハンバーグ支度してくるのでレス返しその他は夜な花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/04(金) 17:59:42.13 ID:ApD3L2JW0
ちょいわかりにくいけど前半慶次視点、後半鬼灯視点です
早渡君、保険は欲しかったら「先生」、笑顔で仕込んでくれるよ
587 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/05(土) 13:48:06.06 ID:RCfG/gabo
 
 どうもこんにちは、昼休みーズです
 
 >>584-585
 投下お疲れ様でーす
 ほう……ほうほう、続けて?(ニコォォ)
 ちょっとこのあたりで娘さんのお話が出ましたね
 言われて気づいたけど荒神灰人君は「レジスタンス」からの監視要員かー
 恵ママの「スーパーハカー」さん呼ばれてたら、さすがのまりあもストップかけたと思う(多分)
 
 >>582
 >微妙に矛盾でるかもだけどまぁいいや
 
 >>579-581 のまりあ登場を、最初は >>569 のタイミングで想定していましたが
 これを >>585 で憐君と早渡が話してるタイミングに移動すれば、辻褄は合うかな?
 
 つまり修正した後のタイムライン的には
 
 
  >>569
     晃君が早渡携帯を弄っている
   ↓
  >>585
     灰人&龍哉&憐君が晃君を止める
     このタイミングで憐君が早渡に若干生暖かい視線を向ける原因となるものを見る?
   ↓
  同じく >>585
     憐君と早渡と鬼灯さんと「先生」が話をしている間に、晃君が 再度 早渡携帯を弄る
   ↓
  >>579-581
     晃君にまりあがコンタクト
     そして早渡の過去写真公開大会が😇
 
 
 ……こんな感じだろうか
 ……>>579 で本編に関連するかしないかは分からないと明示しましたが
 次世代ーズの中では >>579-581 を本編に組み込む気になってきたよ
 
 
 > 憐の、坊主を見る眼差しが若干生暖かいというか、優しいというか
 すると一体彼が何を見たのかが問題になるか
 まりあ登場までの早渡携帯には事件関連のデータしか入ってない状態なので
 (>>537 で「問題ないよ。ヤバい情報とか恥ずかしい画像なんかは事前に別ストレージへ避難済みだから」と早渡も発言済)
 そう考えると、恐らく「ピエロ」関連の卑猥な画像を見てしまった可能性があるかな?
 
 
 
 >>586
 それでは以下、早渡のお返事回をいきます
 
588 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/02/05(土) 13:48:52.01 ID:RCfG/gabo
 

>>584-585
「備えは大事」 へのクロス

●内容
・「先生」への早渡のお返事
・診察行為

 
589 :次世代ーズ 「厚意、返答、触診、そして」 1/3 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/05(土) 13:50:59.76 ID:RCfG/gabo
 

「しゅうっちが探してる、『九宮空七』さんについて……ちょっと」
「空七について?」
「うん……その人の契約都市伝説。本当に、『ソドムを滅ぼす神の怒り』なの?」
「え?」


 憐ちゃんに話し掛けられた
 何とか持ち直したらしいが、一瞬話し掛けられて呆けてしまった
 ややあって理解が追いつく。憐ちゃんも憐ちゃんで空七のANが気がかりらしい
 憐ちゃんの所属は教会系、そりゃあ気になるよな


「正直なとこ。それだけの存在、「教会」が見落とす筈はないっす」

「創世記に書かれるようなもん、となると「教会」の警戒対象だからな」

「はい。そんなのが学校町や周辺に現れたなら。流石に、『教会』の本部からも連絡が来ます
 『バビロンの大淫婦』の絡みで派遣されてきたのがジェルトヴァさん一人、ってのも。『ソドムを滅ぼす神の怒り』がいないって判断材料になりえます」


 んん、これは教会筋の情報か
 教会、少なくとも憐ちゃんレベルでは『ソドムを滅ぼす神の怒り』が、此処、学校町には存在するとは見ていないと


「そりゃそうだ、俺も気になってた
 『旧約』起源のあんな規模なANと契約とか『教会』が見過ごす筈無いだろうし
 そもそも『教会』なら契約される前にANを確保するんじゃないか?」

「確保と言うか……、まぁ、確保で済むならいい、のかなぁ?
 契約しちゃってて、それを身勝手に使ったとしたら。だいぶ上の方の人が『めっ』ってやりに来ると思うんすけど」


 憐ちゃんなりに気を遣っての物言いだろう、言わんとするところは理解できる
 空七は教会に抹殺される。人間なんて不安定なモノを器に、信仰基盤に関わるANを委ねるなんざ狂気の沙汰だ
 仮に空七が「神の怒り」ないしそれに類するANと契約してるなら、かなり穏当なところでは空七は教会の管理下に置かれるだろう
 普通なら空七を殺してANを剥奪し契約書状態にまで還元する。というか俺が教会の立場ならそうする。なにせ想定されるものが「神の怒り」だ

 あるいは憐ちゃんがそれとなく指摘してるように
 空七のAN-Pが「神の怒り」ではなく単なる俺の見込み違いだったとしたら?
 他にもあるかもしれないだろ、「旧約」以外にも赤黒の光を放って範囲内のモノを塩の柱に変える奇蹟が

 嘘を吐くな、自分に嘘を吐くな
 空七の“波”を知っているのは? 他ならぬ俺自身だろうが
 あの光景を、あそこで見たモノを、あのとき感受した“ニオイ”を、見なかったことにするつもりか?


     『いくらWasが強力だろうと、発動しさえしなければ。“世界”から隠蔽するなんて造作無いことだよ』
     『たとえ発動するにしても。それも結界内で完結させればいいだけのこと。騙したり隠したりはこの業界の当たり前でしょ』


 奥歯が、軋んだ
 落ち着け、いいから今は落ち着け
 空七は今、「狐」と共に学校町に居るかもしれないし、居ないかもしれない
 少なくとも教会は、現時点ではまだ目立った動きは見せていないということ、今はそれだけの話だ
 懸念ANは現時点で二種類、ひとつは既に言った「神の怒り」、こちら自体も確証の取れない情報だった
 もう一つの方は「神の怒り」以上に確証が取れないあやふやなもの、しかし拡大解釈の方向性如何では神聖四文字の立場をも脅かしうる強力な

 隠せ、今は隠せ。考えるな


「最悪、『ソドムを滅ぼす神の怒り』を装った別のもの、の可能性もあるっす――ものがものなんで
 それ装うとなるともっと危ないものの可能性もあるんで。そこは、気を付けて」

「……ああ
 とにかく本人か、アイツの近場にいた佳川有佳を押さえて尋問するかしない限り、ハッキリした答えは出ないと思うし……備えはしておくよ」


 何をどう備えると言うんだ
 俺では手も足も出ないだろうが、どう戦えと? 何を言っているんだ、俺は


「ん、なんだい。迷い子の少年にも保険必要かい? 一回分の保険くらいならすぐにでも迷い子の少年に仕込めるけど」


 憐ちゃんと「先生」の会話で、我に返った
 しまった、なんの話だ? 今の俺、思考が妙に捩じれてたな


 「先生」と、目が合った――軽い笑みを浮かべている
 なんか今、憐ちゃんと俺の話にすっと入ってきた?


 
590 :次世代ーズ 「厚意、返答、触診、そして」 2/3 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/05(土) 13:53:06.60 ID:RCfG/gabo
 

「『先生』、ステイ。『先生』がご自分以外に仕込む保険とか、嫌な予感しかしないんで」


 憐ちゃんも憐ちゃんで「先生」の提案を思いのほかばっさり笑顔で切り捨てた
 てか憐ちゃん、「先生」をワンちゃんみたく言ってるけど、いいの? 大丈夫?

 うっすら微笑を浮かべながら、「先生」はそんなことを言ってくる
 なんというか、今まで見たことのない、笑いかけ方だった。心の奥底を指先で撫で付けられるような、そんな錯覚


「一応、万が一の“保険”が欲しくなったら言うといいよ
 『エクスカリバー』の契約者と戦う為に彼の者が仕込んだものには劣れども
 それ以前にこっそりと我が親友が彼の者に仕込んでいた物程度であればいくらでも用意できる
 痛みも快楽も何もなく仕込んであげる程度はできるからね」

「あ、結構です」


 自分でも意外なほどに即答していた


「本当に? 必要ないのかね?」

「ご厚意はありがたいのですが、結構です。俺も俺で“保険”を拵えちゃったんで。欲張りすぎて俺の中で競合しちゃうと大変だから」


 ご厚意はありがたいのですが、結構です。俺も俺で“保険”を拵えちゃったんで。欲張りすぎて俺の中で競合しちゃうと大変だから
 それに小さい子は目にしたもの、直ぐに口に突っ込んじゃうじゃないですか。あれやられると大変なんで


「それに小さい子は目にしたもの、直ぐに口に突っ込んじゃうじゃないですか。あれやられると大変なんで」

「ふむ? 結構。では“保険”が必要になったらまた声を掛けたまえ」


 たしか「薔薇十字団」で、契約者に仕込む“保険”――となったらやっぱりアレだろうか。量産型「賢者の石」なんだろうか
 というか「先生」、さっきから何かちょっと笑顔が怖いんですけど、大丈夫でしょうか?
 何かしらの凄味を感じるんですけど。不穏さも感じちゃうんですけど。「先生」?


「あーっ! 『先生』っ!! 聞いてくださいっ!! 早渡後輩なんですけど、『ピエロ』に拳銃で撃たれたみたいなんですよっ!!」


 いきなり背後から大声を出されてビックリしそうになった
 振り向けば、いよっち先輩


「撃たれたのに病院にも行かずに自分で治したって!! そういうの良くないですよねっ『先生』っ!? 診察する必要ありますよねっ!?」
「ふむ? それは初耳だ、撃たれたのかね? 銃創の自己治療は命に関わるよ? 診 て あ げ よ う 」
「ほらっ! お姉さんも付き添ってあげるから! 『先生』に診てもらお? ねっ?」
「えっいや、あの、撃たれたって言っても! 数日前、あっいやっ、もう一週間前だし! もう傷も完治してますし! ピンピンだし!」
「つべこべ言わない! ほらぁ、早く診察室に行くーっ!!」
「あのっ、あのっ――!!」


 ちょっと怒ったような様子のいよっち先輩と、先ほどとは違った意味で凄味の増した「先生」の笑顔に圧され、思わず周囲を見回した
 鬼灯さん! は別のところを見ている! 憐ちゃん! と目が合った――そのっ、……助けて!


「駄目っす、ちゃんと診てもらうっすよ」
「憐ちゃんらしい真面目な回答っ!!」


 笑顔、ではなく
 毅然とした顔つきで、憐ちゃんにそう言われてしまった
 思わず足から力が抜けそうになり、なおも周囲を見回すと


「……なんで広瀬(晃)ちゃんのとこに人が集まってるの? ねえ、みんな俺の携帯見て何してんの?」
「あっ。さっきまりあちゃん出てきてたよ? みんなに挨拶してたし、早渡後輩の、あ……なんでもない」
「なんでもなくないよね!? いま何言い掛けたんだ!? おいコラ毬亜ァっ!? お前何してんだぁぁ!!??」
「はいっ大声出さないのっ!! ほらっ、診察室に行くよーっ!!」


 いよっち先輩にぐいぐい押されて部屋から強制退出されてしまった
 途中で広瀬(優)ちゃんと目が合った。非常に複雑そうな眼差しを俺に向けた後、露骨に視線を逸らしおった
 なに? なんなの? 怖いんですけど!? 毬亜あの野郎、何してくれたんだ!?

 どうしよう、不安しかない



 
591 :次世代ーズ 「厚意、返答、触診、そして」 3/3 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/05(土) 13:54:50.58 ID:RCfG/gabo
 


「それではゆっくりと深呼吸をして。そう、繰り返して」


 とびっきり、胸いっぱいの不安と
 もしや取り返しのつかない状況になってるのではという悲壮感に満たされたまま
 俺は隣室の診察スペースで、「先生」に体を診てもらっていた

 俺は上半身を脱いで、「先生」に診察されていた
 首のリンパ節を軽く指で押さえられている
 温かいようでひんやりとした「先生」の指が、どこか心地よかった

 いよっち先輩は俺と一緒に診察スペースのなかに居た
 背後から先輩の視線を感じる、ちょっと意識してしまう


 やがて座っている丸イスを回転するようにして、今度は背中側を診られた
 いよっち先輩と目が合う――上半身とはいえ、俺は素肌を見られているわけで

 どうしような、恥ずかしくなってきたぞ

 俺の気持ちを察したのか、先輩は「先生」側へ移動したので俺の視界から外れた
 「先生」の診察途中だし、下手に動くわけにはいかない


「……どこが、撃たれたところなんですか?」
「うむ、傷は確かに塞がってはいるが。――此処と、此処と、此処だ」
「あっ、ほんとだ。ちょっと痕っぽくなってる……」
「しかしそれも数日経てば殆ど目立たなくなるであろう」


 「先生」が指先でそっと傷痕を触れるのを感じる、少しくすぐったい
 直後、別の感触を感じて思わず声を出しそうになった
 ひょっとして、先輩も触ってる!?


「そして銃弾は少年の体を貫通した、前にも痕跡が残っているね」


 出し抜けに椅子が回転する
 ――割と直ぐ近くにいよっち先輩の顔があった


「痛く、ない?」


 先輩と、目が合う
 心配そうな、そんな声色で
 先輩の指先が、再度、傷痕を撫でた――腹の、少し上の辺りだ

 細められた先輩の眼が、俺の傷痕に向けられている
 かすかに開いた先輩の口から、白い歯が辛うじて見えた
 ヤバい、何がどうヤバいのか、分からないけどなんかヤバい
 先輩の吐息が、俺の肌に当たってるんですけど。これはちょっと、なんかムズムズしてきた!

 声も出せず、そのまま硬直する
 先輩は先ほどから俺の腹の傷を指先で撫で付けていた
 くすぐったいどころではない、なんかゾクゾクしてきた
 目が、泳ぐ――先輩が前屈みの姿勢で傷に触れてくるもんだから、開いた襟元から、先輩の胸が


 やめろ! 早渡脩寿!! いよっち先輩は、年上とはいえ中学生だぞ!!!


「戻ってきたお嬢さん? その辺にしておきたまえ? 少年の繊細ハートがそろそろ悲鳴を上げそうだからね」
「ふぇ? ……あ゛っ!! ごめんっ!! ごめんね! 勝手に触っちゃった!!」


 弾かれた様に身を離す先輩と、朗らかに微笑む「先生」

 顔が熱い。やだ、今直ぐ服を着たい!
 さっきのアレコレ、なんかもう全部「先生」に見透かされてた気がする!!










□■□
592 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/05(土) 13:55:32.82 ID:RCfG/gabo
 
 今回はすぐ返事ネタ行けるだろと見ていましたが……
 今後の流れを考えたうえで、一旦お断りとなりました
 今回も事実誤認や「その描写ちょっとおかしい」等あれば、是非
 
593 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/05(土) 14:24:16.17 ID:RCfG/gabo
 
 ……待てよ、このタイミングで早渡に仕込もうと思えば仕込めるか
 一葉先輩もちょっと怒りながら「また危ない目に遭いそうなら『先生』にやってもらいなよ!(何やってもらうのか知らないけど)」と言いそうだし
 早渡も押されたら押されたで「じゃ、じゃあ一回分だけ」とか言いそうだし……最終的な判断は「先生」に委ねよう
 お昼休みを終えます
 
594 :今夜は卓あるんで投下無理っぽい花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/05(土) 17:14:05.91 ID:SuupVGOq0
投下乙でしたの
都市伝説をその気になれば誤魔化せるのは、まぁ憐の場合身近にそれをやってた奴がいるから余計にその辺考えるんですよね
えぇ……幾百年もの間、雹と霰の天使バルディエルに成りすましてた氷の悪魔クローセルと言う実例がいますから……
ちなみに都市伝説の誤魔化しや誤認に関しては、「先生」も「先生」なりに解説はする、かも?(予定は未定)(必要そうならやる)
うん……憐なら……ちゃんと診てもらうように言うね。仕方ないね
青少年のナニかが危ない所だったね。セーフ

>てか憐ちゃん、「先生」をワンちゃんみたく言ってるけど、いいの? 大丈夫?
母親の「先生」に対する態度模範にしてるだけなんで多分大丈夫です(???)



>>587
>言われて気づいたけど荒神灰人君は「レジスタンス」からの監視要員かー
真面目に助手としてお手伝いもしてるんですが、そういう一面もあります
「レジスタンス」に正式所属している訳では(現状)ないので、「先生」がなんかやらかしたら母親に告げる程度ですけど

>恵ママの「スーパーハカー」さん呼ばれてたら、さすがのまりあもストップかけたと思う(多分)
ストップかけないとギャグ方向で見られたくないもの全部発掘されかねない

>……こんな感じだろうか
それで大丈夫かな

>そう考えると、恐らく「ピエロ」関連の卑猥な画像を見てしまった可能性があるかな?
もしくは、「スーパーハカー」呼ばなくとも晃が自分でできるレベルでなんか発掘しちまったかどっちかですね

>>593
>早渡も押されたら押されたで「じゃ、じゃあ一回分だけ」とか言いそうだし……最終的な判断は「先生」に委ねよう
おっ、じゃあ行くか
大丈夫よ、一回きりのなら東ちゃんに「ちょっと目と耳塞いで背中向けててねー」って言わずにすむ
早渡君が口開けて飲み込んでくれりゃ一発よ
595 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/06(日) 00:31:13.90 ID:xaiXbPYRo
 
 >>594
 乙ありでございます
 
 > 都市伝説をその気になれば誤魔化せるのは、まぁ憐の場合身近にそれをやってた奴がいるから余計にその辺考えるんですよね
 だよなあ、絶対くるよなあ、憐君も心配してるとしたらそこだよなあ
 早渡は一人でグツグツしますが、「先生」や憐君が都市伝説の欺瞞、隠蔽、誤認、等々に言及するかは全面的に委ねます
 後々にも言及できる機会は大量に出てきそう
 
 いいのか「先生」、それでも「先生」穏やかに笑ってるんだろうなあ
 
 > おっ、じゃあ行くか
 > 早渡君が口開けて飲み込んでくれりゃ一発よ
 行きます、飲みます! やりますよ、彼は
 
596 :昨晩夜更かしだったのでねむねむ花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/06(日) 10:30:31.21 ID:oKMNb8Wc0
>>595
> だよなあ、絶対くるよなあ、憐君も心配してるとしたらそこだよなあ
憐だけじゃなく、幼馴染ず全員が心配っつか、その可能性は考えてますね
みんなメルセデスの事は知ってるし、他にも都市伝説を誤魔化したり、正体誤認される可能性については色々実例知ってるから
「先生」辺りに、その点さらっと説明させられるのが理想なのでがんばりゅ

> いいのか「先生」、それでも「先生」穏やかに笑ってるんだろうなあ
慣れちゃってるってか、「先生」、憐と憐の母親にはかなり甘いですよ

> 行きます、飲みます! やりますよ、彼は
了解!
597 :気づいたら日付越えてた花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/07(月) 00:41:28.52 ID:7IqL4E0R0
■いままでのあらすじ
「みんなで遊ぼう」「みんなで遊ぼう人狼遊戯」

>>510-513
「人狼遊戯のその後に」

>>533-542
「次世代ーズ 「いよっち先輩からの質問」」

>>548-550
「簡単なご返答」

>>565-569
「次世代ーズ 「早渡、返答を受けて」

>>584-585
「備えは大事」

>>589-591
次世代ーズ 「厚意、返答、触診、そして」 

今から投下するもの



                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ いくよ!
                ヽ  〈 
                 ヽヽ_)
598 :保険仕込みと時間つぶしの雑談  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/07(月) 00:43:05.18 ID:7IqL4E0R0
 にこにこと、穏やかに。「先生」は脩寿を見つめる。若いなぁ、と。
 青少年の何かが危なかった気配がしたが、まぁ仕方ない。若いのだし。おっぱいにはそういう魔翌力が存在するものだ。
 まぁ、そんな微笑ましい様子は一旦さておき、だ。

「弾丸の特殊効果は、本日の茶がエリクサー仕様だった故に解毒は完了しとると思うが」
「聞けば聞くほど、世の錬金術師が卒倒しそうというか一杯辺りの値段想像すると怖い」
「何かあったら、都市伝説関連わかる医者にきちんと診てもらうようにするんだよ」

 エリクサーに関しては、「先生」は己の契約しているものの力でそこそこ気楽に生み出せるため、気にしていない。
 それくらいの材料は、もしもの場合に備えて用意しているしある程度取り込んでいる。
 いつでも、必要なものを錬金できるようにしておくぐらいはしてあるのだ。
 そうじゃなければ、いざと言うときの緊急治療時に困る。

「……に、しても、早渡後輩。また危ない目に遭いそうなら、「先生」の言う保険、やってもらいなよ!」
「えっ。あ、いや、でも……」
「もしもの時の備えは多い方が大事だよ。こう……切り札のさらに切り札、じゃないけど。保険のさらに保険!」

 ぷんすこした様子で、一葉が脩寿にそう告げている。
 備えが多い事に関しては、「先生」も同意するところだ。
 むしろ「先生」の場合、己が誰かが成し遂げようとする事柄の「保険」となる事が今の役目、と思っている節すら多少はある。
 それを口に出してしまうと、九割方苦言を呈されてしまい首をかしげる事にもなるが。

 脩寿は一葉に言われて、ぐぬぬぬ、と考え込んでいるようだった。
 一度断りはしたものの、彼女に強めに押されると弱いのだろうか。
 将来、女性の尻に敷かれていそうな気配を感じたが、そこは指摘せずとも良いだろう。

「……じゃ、じゃあ、一回分だけ」
「ふむ、わかった。では迷い子の少年、口開けて」
「?はい」

 言われた通りに口を開く脩寿。
 「先生」はぱちり、手元を赤く輝かせてそれを生み出すと、ぽい、と。
 生み出したそれを、脩寿の口の中に放り込んだ。

 あ、と脩寿は声を上げるよりも早く、小指の爪ほどの大きさのそれを飲み込んでしまう。

「良し、保険仕込み完了」
「早い!?」
「なんか、宝石みたいに赤いちっちゃなキャンディを口に放り込んだみたに見えた」
「一回きりだが、命にかかわる怪我、毒、病に対抗できる。一度きりの命のストック、と思うと良い。今風に言うと「残機が増える」?」

 かつて、「組織」のとある黒服にこっそり仕込まれていた物。
 「賢者の石」の劣化版。一度きりしか発動しない未完成の代物。
 それよりもう少し上等な……その「組織」の黒服が、「エクスカリバー」の契約者たる狂人との戦いに備え仕込んだほどのレベルの劣化版「賢者の石」となると、流石にここまで気楽には仕込めない。
 が、逆に言えば、一回きりの使い捨て性能のものであればこの程度気楽に仕込めるのだ。
 あの「黒服」が気付かれぬうちに仕込まれていたのもそのせいだろう…………それを行ったのは、「先生」の古い友人なのはさておく。

「さて、一応、馴染むまで拒絶反応出ないか少し待とうか。あ、服は着ていいよ」
「あ、はい」

 ごそごそと、脱いでいた上半身を着こんでいく脩寿。
 その様子を見つつ、さて、と「先生」は思案する。
 ただ待っているだけも暇だろう。何かしら、話題になりそうな事柄はあるか。
 考え、あぁそうだ、と、話題を向けることにした。

「迷い子の少年。君は、君が探している少女の契約都市伝説が真に「ソドムを滅ぼす神の怒り」であるかどうか。その辺りの会話をしていたね?」
「…………はい」

 脩寿としては、そこは考え込んでしまう案件なのだろう。
 ぐつぐつ、ぐつぐつと、考え込みすぎて内で煮えたぎり、その思考そのものが毒と化してしまいかねない程に。
 思考は止めるべきではなく、立ち止まるべきではなく、とどまってしまえば最悪濁り腐り何もわからなくなる。
 そうではないだろう、と断言して否定するつもりはないが。
 少しばかり、濃度を薄める程度ならいいだろう。
599 :保険仕込みと時間つぶしの雑談  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/07(月) 00:46:46.10 ID:7IqL4E0R0
「我が助手の従弟が疑問を呈したのは、あの子の情報網的には当然といえば当然であろ。あの子が通う「教会」の支部には、凍れる悪魔の御仁もおるしな」
「凍れる悪魔……あれ?教会なのに、悪魔?」

 「先生」の言葉に、疑問符を浮かべたのは一葉だ。
 まぁ、そうだろう。通常、「教会」と言う名称を聞けば、そこに悪魔がいるというのはあまりイメージにはあわない。

「そうだよ。かつて、幾百年もの間、雹と霰の天使「バルディエル」に成りすましていた凍れる悪魔。ソロモンの悪魔の一体にして四十八の軍団を指揮する侯爵。天使の姿をもって現れる、かつては竜でもあった者。「クローセル」。二十年程前のごたごたで正体がばれても、幾重もの策略と保険と誰かさんの情けにて。今なお「教会」に所属したままだ」
「成りすます、ですか……」
「うむ。当人が策を巡らせたせいもあるが。そもそも、成りすましていた天使が司るは雹と霰。凍れる悪魔であれば、装うのは難しくなかろうて」
「似たような感じだから、バレにくかったって事、かな……?」

 そうだ、と一葉に対して「先生」は頷いて見せた。
 似たような存在。故に誤認しやすく、正体はバレにくい。

「「通り悪魔」の御仁が、「悪魔の囁き」と間違われやすいというある種似たような例もあるな。当人は成りすましているつもり等ないが、能力が似ているが故、間違われやすい」
「あぁ、聞いたことあります。そのせいで面倒な事に巻き込まれた事もあるとか」
「あの御仁の場合、人型とっとる「悪魔の囁き」系統の知り合いもいるしねぇ。当人にしてみれば、自分の能力の方が扱いにくいとの事だが。他者から見れば似たようなものだろう」

 「先生」は、脩寿を見つめる。
 診察前に、保険を仕込むかと問いかけた時の誘いかけるような艶やかさは今はなく。穏やかに人を教え導かんとする教師の笑顔。
 ……もっとも、あの問いかけをしていた際、己がある種の艶やかさを帯びていた自覚は「先生」にはない。
 かつて、己の心に入り込み染め上げ「愛」を植え込み操ってきた女を、逆に本気で惚れさせ結果的に死に至らしめた人の心を誘う天性の毒を。毒を知り尽くしたはずの男は自覚すらしていないのだ。

「……その都市伝説にもよるが。誤魔化し、偽る事はできる。誤認してしまう事はある…………思い込みは、時として猛毒にもなりえる」
「それは…………」
「人は、時として己の記憶にすら、己の感情にすら嘘をつく。正直、私も過去に思い切り経験がある。他者によって感じた印象すら操作される事もある…………我が助手の従弟が言うていたように。最悪、別のものである可能性も視野に入れた方が良いかもしれん」
「……でも。人を塩に変えちゃう、とか。そんないかにも特徴的な事、他の都市伝説で装えるのかな……?」

 もっともな疑問を一葉が口に出し。
 「先生」は、即座に答える。

「できるよ。ものすごく頑張れば私でもできる」
「「えっ」」
「やらんけどね。「姫君」から踏みつけられるどころかいっそ半殺し……いや、私は簡単には[ピーーー]ない故いっそ生殺し?にされる勢いで怒られる事確実であるし」

 むしろ、やる必要もないのだが。
 その結果を引き起こすことは、幾重にも能力を積み重ね使えばできるが。
 そこまでの労力をかけてやる事ではない。
 シンプルに毒をばらまいた方がずっと早い。それはそれで怒られるのでやらないが。

「他にも、かの「魔法」の契約者。「天災」たる魔法使いカラミティ・ルーンもできるだろうな。あの御仁はもっと派手に愉快で残虐なやり方を好むから、好き好んではやらんだろうけど」
「「魔法」……」
「あぁ言う万能一歩手前の力は、その気になれば誤認させやすいしされやすい。多種多様な事を行える者が、その一部だけをもって偽ると実に厄介だよ」

 あの魔法使いの活動圏内は主にヨーロッパ……この学校町に甥っ子がいたり友人と認識した者がいたりでそこそこの頻度でやってくるが一旦それはさておく……、例で出されてもピンと来ないか。
 ついでに、と。おそらく脩寿なら知っているであろう人物を、「先生」は例にあげる事にした。
600 :保険仕込みと時間つぶしの雑談  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/07(月) 00:48:22.10 ID:7IqL4E0R0

「迷い子の少年。「刀狩り」の青年は知っているかい?「獄門寺組」に所属しとる契約者なんだが」
「刀狩り?…………「刀狩り」の鉄(くろがね)さんですか?「獄門寺組」幹部の?「獄門寺組」に手を出そうとしたよからぬ集団を、たった一人でたいして時間もかけずに壊滅させたって言う?」

 やはり知っていたか。
 当人は「自分はフリー契約者!どこにも所属してないから!!」と言い張っていたが、やはり他からは「獄門寺組」所属認識だった。

「君は、「刀狩り」の青年が、どんな都市伝説と契約しているのか知っているかい?」
「「数珠丸恒次」や「蜥蜴丸」を使って戦ってた、って話を聞いたので刀剣類の都市伝説複数の契約、でしょうか」
「ふむ。やはり、よそからはそう認識されとるか」
「その言い方だと、早渡後輩の予想、外れてる……?」
「うん、違うね。実際は何であるのかは、「獄門寺組」所属ではない私が言うと角が立つ故、あとで「通り悪魔」の御仁辺りに聞くと良いとして、だ」

 あれは、その能力によって「奪い取った」刀剣だけ扱って戦っているところしか見られていないと見破られにくい。
 鬼灯は、獄門寺家に出入りしていて幼い頃の彼に剣の稽古つけてやった事もあるとかで「弱点狙い打ちされると一撃だったからな」と明確な弱点に気付いたが故に契約都市伝説を見破っていた。今は流石にその弱点をやすやすと狙わせてはくれないから稽古相手するのは無理と言っていたが。

「あれも、能力の一部だけ活用している現場しか見せていないと、見破るのは難しかろう。迷い子の少年のように、誤認してしまっても仕方ない」
「能力の一部…………」
「ただたまたま、能力の一部だけを見られたが故の誤認ならば良いが。意図して誤認させてくる場合は殊更、見破るのは難しくなろうて」

 …………ましてや。

「……そこに、悪意と言う毒が混じれば。余計に、ね」

 果たして、意図して誤認させたのか。
 それとも、たまたまだったのか。
 そこに、悪意と言う毒はあったのか。

(もしも、「言霊」だったりしたら実に厄介な猛毒。せめて、それではないと祈ろうか。祈る神などないが)

 口に出してしまえば、それこそ疑念と言う強すぎる毒になりかねないそこは、今は口に出す事なく。
 警告の一種として、伝えるべき事を伝えるに、とどめた。





to be … ?
601 :切腹土下座準備する花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/07(月) 00:52:12.46 ID:7IqL4E0R0
次世代ーズの人様に土下座しつつ投下完了
ひとまず、早渡君に一回限り発動の「賢者の石」を仕込みました
軽いものなので拒絶反応も出ないでしょう
ついでに、都市伝説を誤認しえる可能性とかについての軽い雑談
東ちゃんに、そこそこ疑問を飛ばすポジになっていただきました
602 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/08(火) 03:08:00.73 ID:quppXvrko
 

投下お疲れ様でしたー
保険、大事に使わせて頂きます😇
にしても早渡と先輩の距離感いいですね
「先生」の古い友人、ゲデさんかな?

「刀狩り」の鉄さん、一応フリーの立場と自称しているということは
闇市でも護衛もしくは戦闘要員としてフリーランスで活躍してるんですかね
早渡の口振りからしたら鉄さんと直接お会いしたことがない、もしくは
仮に闇市でお会いしてたとしても会話だけで戦い方とかは直接見たことがない感じだろうか

> あとで「通り悪魔」の御仁辺りに聞くと良い
ここなんですけど、早渡的には (本当に聞くとしたら、直接鉄さん本人に聞こう) となります
本人の許諾もないまま、本人以外の人から契約能力について聞くのは、非常に失礼な行為と認識してますので
(飲み会で、親密ではない同僚の年収やら配偶者やらマイナンバーやらの情報を、友人から聞き出すようなイメージ)

早渡が鉄さんとどれほど面識があるか、親密かによって話は変わってきますが
早渡の反応としては、鉄さんの能力は俺が見てたほど甘くはないんだなー、となりながら
話す機会があって鉄さんが許してくれるならそのとき聞いてみよう、ってふうに受け止めると思います

あとは「先生」の言葉を受けてかなり黙考する、という感じになるかな

早渡の反応回は少しお時間もらいますー

> 東ちゃんに、そこそこ疑問を飛ばすポジになっていただきました
先輩も自分の立場を踏まえてこの時期は色々勉強を始めてるはず
「先生」が先生してて非常に良かったです……

 
603 :温泉好きだけど入ると体力消耗激しい花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/08(火) 10:51:27.79 ID:MDc/933Y0
>>602
乙ありでーす

>「先生」の古い友人、ゲデさんかな?
ゲデではないですね
珍しく「先生」が愛称で名前を言う相手。「クリス」、とチラ裏で出してそちらで使っていただいたセリフで愛称出てます
当人は…………確か、過去に書いた話でも登場はしてなかったはず。フルネームじゃないが名前は出てるし存在は示唆されてるけど

>闇市でも護衛もしくは戦闘要員としてフリーランスで活躍してるんですかね
ってより、フットワークが軽いんですね
何かしら遠出する必要がでたと判断すれば、ふらっとそちらに赴いて行動します
そしてそれを、頭首たる龍一から許されてますね
当人、「獄門寺組には子供の頃から世話になってるけど所属してない。フリー!」って言い放ってますが、当人以外は彼を「獄門寺組」所属と思っています
「獄門寺組」に敵対するよからぬ輩を察知次第潰してたらそらぁそう

>仮に闇市でお会いしてたとしても会話だけで戦い方とかは直接見たことがない感じだろうか
そんな感じかな
上で言った通りフットワーク軽いし当人はフリーのつもりなので、闇市で厄介事あった時とか首突っ込んで助力した可能性あるなって思ってました

>ここなんですけど、早渡的には (本当に聞くとしたら、直接鉄さん本人に聞こう) となります
了解でーす
ちなみにこの時点での鉄、獄門寺家本家にいますね(学校町が久々に色々やべー気配してるので守りについてる)

>「先生」が先生してて非常に良かったです……
あいつ、ちゃんと先生できたんだな……って書いてて思いましたね
604 :罪深い赤薔薇の花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/08(火) 23:48:22.08 ID:MDc/933Y0
■おおざっぱなじかんじく
>>527-529
「企み企まれ」の後辺り
「狐」決戦当日の前夜深夜辺り

今から投下するやつ





                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ ソォイッ!
                ヽ  〈 
                 ヽヽ_)
605 :彼らに送る抹殺指令  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/02/08(火) 23:50:04.67 ID:MDc/933Y0
 甘い香りが充満している。
 どろどろに思考を溶かしてしまうような甘ったるい香りが。

 己は、この手の能力に対して強い方である、と郁は自負していた。
 他者には隠している己の事情の影響で、だ。
 ……その事情は、この甘ったるい香りを放つ主たる「白面金毛九尾の狐」にすら明かしていない。
 おそらくは気づかれているだろうけれど、気づかれていても傍に置いてくださるという事はそれだけ信頼されているという事。
 その事実に優越感を感じながら、郁は静かにそのやり取りを眺めていた。

 「白面金毛九尾の狐」は妖艶な笑みを浮かべながら、「朱の匪賊」が四番隊隊長包 六郎を見つめていた。
 その傍らでは、鬼が呪い人形を抱えたまますやすやと丸くなって眠っている。人形の首が思い切り絞まっているように見えるが、人形なので大丈夫なのだろう、多分。

「あなたには、頼み事があるの」
「頼み事、でございますか」

 えぇ、と、「白面金毛九尾の狐」が笑みを深めると、甘い香りがさらに強まったような錯覚を覚える。
 彼女が微笑めば、それだけ魅了の、誘惑の力は強まるのだ。
 いや、微笑んだ場合だけとは限らない。
 ほんの些細な仕草をしただけでも、魅了が、誘惑が強まる。
 この「白面金毛九尾の狐」はそういう存在なのだ。誘惑特化。それ以外の力が強くない代わりに、魅了に関してだけはこんなにも強い。

「「死毒」、アハルディア・アーキナイト。この男を、始末してほしい」
「「死毒」……」

 つ、と、「白面金毛九尾の狐」が郁に手を伸ばした。
 郁は彼女が求めているものが何であるのか理解していて、用意してあったその写真を彼女に手渡す。
 「死毒」。今は「先生」等と呼ばれている男。「薔薇十字団」所属の「賢者の石」の契約者。あの男の写真だ。
 「白面金毛九尾の狐」は受け取ったそれを、そのまま六郎へと手渡す。
 写真を手渡すその瞬間、指先がほんの少し触れ合う……あれでまた、六郎への魅了は強まり深まったのだろう。六郎の反応を見た限り、それは明らかだ。

「この男。かつて、私を毒殺しようとした男よ」
「何ですと!?こ、この男が、「十六夜の君」を……!?」
「えぇ。愛していると囁きながら。毒を生み出し、殺そうとしてきたの」

 彼女にとっても、それは苦々しい記憶なのだろう。
 まさか、誘惑した瞬間に殺されかけるなどと誰も思うまい。それが都市伝説ならばともかく、一応は人間として生まれ人間として育ち、契約しても飲まれず人間のままであった存在に、となればなおさらだ。
 発狂して正常な思考を保てなくなった人間の思考パターンは、たとえ都市伝説であろうとも理解が及ばないとも言う。

「そう簡単に死ぬ男ではないわ。だからこそ。痛めつけて痛めつけて痛めつけて痛めつけて痛めつけて痛めつけて痛めつけて、たっぷりと、もう一度その心が壊れるほどに苦しめて、嬲って、殺してやりたいの」

 艶やかに微笑みながら、残酷な事を囁きかける。
 そうするべき。そうしなければならない。そうするのが当たり前。
 囁きかけられている六郎は、そのように感じている事だろう。
 芯まで魅了され、とろけた思考は「白面金毛九尾の狐」の言葉を全て肯定してしまう。

「あの男はね、恐ろしい毒を使うの。どんな毒でも瞬時に作り上げることができるそうよ…………でも、安心して?対策手段はあるわ」

 つ、とまた「白面金毛九尾の狐」は郁に視線を向けた。
 眼差しが向けられる。甘い香りが、自分を向いたようにすら感じる。
 何を求められているのか、ちゃんとわかっている。
 救急箱よりも小さな小箱を、郁は六郎に差し出した。

606 :彼らに送る抹殺指令  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/02/08(火) 23:51:09.11 ID:MDc/933Y0
「どうぞ。中には「征露丸」が入っている。「組織」で少しばかり改良された強化版でね。まだ開発中の物だが、「死毒」の作り出すレベルの毒であっても抗うことができる」

 もっとも、改良中であるが故に問題もある。
 毒を防ぎはするのだが、効果が切れるとこの改良版「征露丸」自体が毒となってしまう。
 死ぬほどの毒ではない。毒を防ぐのと同じ程度、すなわち二十四時間程度死ぬほど腹を下し続ける程度の毒なので伝えずともいいだろう。

「せいぜい四十六個程度しか、僕の立場では確保できなかった。そちらでうまく配分して使ってくれ」
「かたじけない。しかし、こちらに全てお渡しになられるので?」
「あなたの隊が、「死毒」を殺してくれるのなら。私達が使う必要はないもの」

 それは暗に、「確実に殺すように」と命令しているようなもの。
 失敗は許さない、と暗に告げているのだ。

「……あぁ、それにしても、忌々しい」

 ふと、「白面金毛九尾の狐」は不機嫌を露わに顔を歪めた。
 通常であれば尾を損なうような表情の変化なのだが、彼女の場合このような表情ですら、一種の美を感じさせ人の心へと食い込む。

「「死毒」、あの男のせいで。この街に来てからずっと、私の意思は封じられ、閉じ込められていた…………本当。酷い事をする男だわ」
「何と!?「十六夜の君」を封じたのが…………この!「死毒」の仕業であると!?」
「……僕は、それは初耳なのですが。確かなのですか?」

 驚きと怒りの声を上げる六郎と、初めて聞いた情報に眉を顰める郁。
 「白面金毛九尾の狐」は、忌々し気に顔を歪めたまま頷いて見せた。

「あの男しか、原因は考えられない。どのような手段を使ったのか、それすら悟らせなかった。えぇ。えぇ。忌々しいし憎々しい」

 ……春に学校町に入り込んだ時の出来事を、「白面金毛九尾の狐」は鮮明に覚えている。
 街に入り込んですぐに見つけたのだ。以前に自分が誘惑した時より若返った姿になっていたが、間違えようがない。「死毒」の姿を。
 以前に誘惑して毒殺されかけた時と違い、正気を取り戻しているのだという事は「組織」で情報収集を任せていた郁から聞いていた。
 だから、今度こそ、誘惑してやるつもりだった。己の支配下にして、今度こそ便利な道具にしてやろうと、近づいて、声をかけて。
 ……気づいた「死毒」が振り返ってきたのと。
 己の意識が、突然、ぶつんっ、と途切れて。この肉体だけではなく、世界の何もかもに干渉できなくなってしまったのは、ほぼ同時だったのだ。

「状況から見て。私を封じてきたのはあの「死毒」しか、考えられない」
「お労しや……!「死毒」め、なんたる外道……!」
「えぇ、酷い、酷い男なの。だから…………たっぷり、痛めつけて、嬲って、苦しめて、殺してちょうだいね?」

 くすり、と「白面金毛九尾の狐」の顔に、妖艶な笑みが戻る。
 そして、つ……と、細い指が、六郎へと伸びて。
 美しい、笑みを浮かべたその顔が、六郎へと近づいて。

 六郎の頬に、柔らかで心地いい感触。

「お願いね?「死毒」に関することは、この郁に聞きなさいな」

 「白面金毛九尾の狐」の顔が、六郎から離れる。
 邪悪に、楽しそうに、笑う。嗤う。

 心を弄ぶ邪悪は、なんとも気軽に、気楽に。
 「朱の匪賊」へと、「死毒」の抹殺命令を、下した。



to be … ?
607 :鉄板焼き土下座してる花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/02/08(火) 23:52:32.04 ID:MDc/933Y0
次世代ーズの人に焼き土下座しつつ投下完了
包 六郎さんの喋り方自信なくってセリフ少ないのがバレバレだね

とまれ、ほっぺちゅープレゼントしつつお・ね・が・いしたようです
608 : ◆John//PW6. [sage]:2022/02/09(水) 06:16:17.65 ID:vLr72pR9o
 
投下お疲れ様です
隊長はここからどんどんおかしくなっていくんだ……!
話し方もギャグの暗黒面に向かってがんがん崩れていくぞ!!
美味しいね隊長さん! ここからもっと美味しくなるよ隊長さん!

思った以上に「先生」に対する殺意高めの「狐」から殺害依頼を受けたわけですが
これは隊長に極太のフラグが数本立ちましたね
しかも「征露丸」の副作用がえげつない、「組織」はこんなの使おうとしてたのか

というか今回の登場人物全員にあらゆる種類のフラグが刺さりまくってるぞ?



>>603
クリス氏といい薔薇十字団といいまだ謎が多いな……
鉄さんの件も承知です! 龍一氏から許可されてるってことは実質「獄門寺組」所属

 
609 :鉄板焼き土下座してる花子さんとかの人  ◆7JHcQOyXBMim [sage saga]:2022/02/09(水) 10:56:01.97 ID:cPkz8dlM0
>>608
>隊長はここからどんどんおかしくなっていくんだ……!
おいたわしや隊長さん(対岸から眺める)

>しかも「征露丸」の副作用がえげつない、「組織」はこんなの使おうとしてたのか
まだ実用化はされてない開発段階の改良品ですからねぇ
きちんと副作用なくなってから(せいぜい軽めの腹痛くらいまで抑えられたら)実用化、って感じかと
今回は郁が勝手にそれを持ちだしていただけです
ちなみに個数が中途半端なのは、5D20振って個数決めたからです。すまねぇな。半分に届かなかったよ達成値


>鉄さんの件も承知です! 龍一氏から許可されてるってことは実質「獄門寺組」所属
「獄門寺組」所属って思われてるのはその点もあるでしょう
っつか、もう当人フリー名乗るの止めて「獄門寺組」所属って認めた方がいい(名簿にも名前載せられてるし)
610 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/02/11(金) 02:38:09.73 ID:St4aCTY8o
 

 >>598-600
 「保険仕込みと時間つぶしの雑談」へのクロス


 ●時系列

  前スレ  811-814 「みんなで遊ぼう」   花子さんとかの人
   ↓
  前スレ  849-853 「みんなで遊ぼう「人狼遊戯」」   花子さんとかの人
   ↓
  前スレ  933-936 「いよっち先輩、来る」   次世代ーズ
   ↓
  本スレ >>510-513 「人狼遊戯のその後に」   花子さんとかの人
  本スレ >>519-520 「一方大人の情報交換とか」   花子さんとかの人
   ↓
  本スレ >>533-542 「いよっち先輩からの質問」   次世代ーズ
   ↓
  本スレ >>548-550 「簡単なご返答」   花子さんとかの人
   ↓
  本スレ >>565-569 「早渡、返答を受けて」   次世代ーズ
  本スレ >>579-581 「早渡、返答を受けて」のおまけ   次世代ーズ
   ↓
  本スレ >>584-585 「備えは大事」   花子さんとかの人
   ↓
  本スレ >>589-591 「厚意、返答、触診、そして」   次世代ーズ
   ↓
  本スレ >>598-600 「保険仕込みと時間つぶしの雑談」   花子さんとかの人


 ●ここまでのあらすじ

   【11月】のとある日の放課後、早渡は花房に呼び出され、「人狼」に挑む
   その後、診療所で合流した一葉とともに三年前の事件の真相を中央高校組から教えてもらう
   その席で早渡は自分の持っている情報や疑惑を共有した

   早渡の目的は「九宮空七を見つけ出すこと」、そして彼は「彼女が『狐』の下にいる」と疑っていた
   いくつかの嫌疑が呈され、早渡のなかで深まるのは疑いか、あるいは躊躇いか
   「先生」から“保険”をもらった後も、彼は答えの出ない問いを前に迷い続ける

   ところで隣室では早渡の幼馴染が早渡の恥ずかしい画像やら動画やらを中央高校組に提供し続けているぞ!? 早く止めろよ!!


 
611 :次世代ーズ 「様子見の間に」 1/3 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/11(金) 02:39:07.33 ID:St4aCTY8o
 



 顔赤くなってんの、バレてんじゃないかな?
 とりあえず顔を見せないようにYシャツを着直す



 いよっち先輩に圧されて、結局「先生」から一回分の“保険”を頂くことになった
 実のところ體内で妙なことにならないか不安だったが、特に何も起こらなかった

 今は一応「先生」の提案で、馴染むまでは様子見ということになった
 ……俺、いよっち先輩に泣かれて以後、先輩に圧されると弱くなってない?
 別の意味で不安が鎌首をもたげてくる

 あと「先生」的には撃ち込まれた弾の影響も心配してくれていたらしい
 あれは本当に何の変哲もない通常弾だったんだが、念のためということだ


「迷い子の少年
 君は、君が探している少女の契約都市伝説が、真に『ソドムを滅ぼす神の怒り』であるかどうか、その辺りの会話をしていたね?」

「あ……、はい」


 迷い、迷う
 残留する“波”は確かに、空七のそれだった
 かつてのものとは大分変質している。が、看過するほど俺の感覚も馬鹿じゃない


「我が助手の従弟が疑問を呈したのは、あの子の情報網的には当然といえば当然であろ
 あの子が通う『教会』の支部には、凍れる悪魔の御仁もおるしな」

「凍れる悪魔……あれ? 教会なのに、悪魔?」

「そうだよ。かつて、幾百年もの間、雹と霰の天使『バルディエル』に成りすましていた凍れる悪魔
 ソロモンの悪魔の一体にして四十八の軍団を指揮する侯爵。天使の姿をもって現れる、かつては竜でもあった者。『クローセル』
 二十年程前のごたごたで正体がばれても、幾重もの策略と保険と誰かさんの情けにて。今なお『教会』に所属したままだ」


 俺の知らない「教会」の事情を、ただ聞く

 成り済ます、装う、謀る。どの界隈でもそうなんだろうが、熟達した実力があれば
 他者を欺くことはそう難しいことではない、それが「先生」の話すところの趣旨だった


「その都市伝説にもよるが。誤魔化し、偽る事はできる
 誤認してしまう事はある……。思い込みは、時として猛毒にもなりえる」

「それは……」

「人は、時として己の記憶にすら、己の感情にすら嘘をつく
 正直、私も過去に思い切り経験がある。他者によって感じた印象すら操作される事もある
 ――我が助手の従弟が言うていたように。最悪、別のものである可能性も視野に入れた方が良いかもしれん」


 「先生」は真っ直ぐ俺を見て、諭すように語り掛ける
 俺が迷い、迷っているところを、見抜いているのか


「でも。人を塩に変えちゃう、とか。そんないかにも特徴的なこと、他の都市伝説で装えるのかな?」


 俺がどう返答すべきか迷っていると、いよっち先輩が疑問を口にした


「できるよ。ものすごく頑張れば私でもできる」

「「えっ」」


 それに対する「先生」の答えに思わず驚いてしまった

 少し遅れて、脳裏に彦さんの言葉が甦った


『お前もゆくゆくは同じことができるようになる、脩寿
 それは私にもできる、八にもできる。あるいは、定でも「呪宝」の力を借りれば同じことができる
 目の前の形に縛られるな。迷いに縛られるな。今お前の眼前にある物すら、如何様にも姿を変える。忘れるな――』




 
612 :次世代ーズ 「様子見の間に」 2/3 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/11(金) 02:40:43.28 ID:St4aCTY8o
 

 いかんな、どうしても空七のことになると思考が狭窄する
 頭じゃ分かっていてもこれじゃ駄目だ、学校町まで乗り込んだのに、この期で「先生」に諭されるなんて


「迷い子の少年。『刀狩り』の青年は知っているかい? 『獄門寺組』に所属しとる契約者なんだが」

「ほ!?」


 急に話を振られた
 刀狩り? まさか、刀狩りの鉄(くろがね)さんの話か?


「『刀狩り』の鉄さんですか? 『獄門寺組』幹部の?
 『獄門寺組』に手を出そうとしたよからぬ集団を、たった一人でたいして時間もかけずに壊滅させたっていう?」


 急に話を振られ、舌がもつれそうになりながら問い返す
 「先生」はうむ、と肯いた


「君は『刀狩り』の青年が、どんな都市伝説と契約しているのか知っているかい?」

「『数珠丸恒次』や『蜥蜴丸』を使って戦ってた、って話を聞いたので
 刀剣類の都市伝説複数の契約、でしょうか」

「ふむ。やはり、よそからはそう認識されとるか」


 俺は鉄さんの契約伝承を知らない
 なんとなく“古い”曰くと契約している、そんなイメージを抱いていたが


「その言い方だと、早渡後輩の予想、外れてる?」

「うん、違うね。実際は何であるのかは『獄門寺組』所属ではない私が言うと角が立つ故、あとで『通り悪魔』の御仁辺りに聞くと良いとして、だ」


 違ったらしい
 しかも今の話では少なくとも「先生」と鬼灯さんはご存じのようだ


「あれも能力の一部だけ活用している現場しか見せていないと、見破るのは難しかろう。迷い子の少年のように、誤認してしまっても仕方ない」

「能力の一部」

「ただたまたま、能力の一部だけを見られたが故の誤認ならば良いが。意図して誤認させてくる場合は殊更、見破るのは難しくなろうて」


 見た側の誤認
 そして、見せる側の欺瞞


「そこに、悪意と言う毒が混じれば――。余計に、ね」


 「先生」は、そう言葉を引き継いだ
 言葉が、無数の言葉が、頭を、腹のなかを、廻る

 先に答えを想像しないと正解に辿り着けない逆説的な問い掛け
 相手の能力がどんなものか分からないのが普通


「早渡後輩、だいじょぶ?」

「いま『先生』の言葉をこう、なんというか、反芻? そう、反芻してる」


 相手のANfxが不明だからって、俺はそこで立ち止まってきたか?
 戦う前から負けること考えるバカがいるか?
 違うだろ、違うよな

 それに「先生」には前にも言葉を貰った
 そう、俺は確かに貰った



 
613 :次世代ーズ 「様子見の間に」 3/3 ◆John//PW6. [sage]:2022/02/11(金) 02:41:56.84 ID:St4aCTY8o
 

          思い込みとは猛毒である。無知とは猛毒である。しかして、全てを知ったとして毒に殺されぬ訳ではない
          逆に、全てを知ったが故に『絶望』と言う名の致死量の猛毒によって殺される事もまたある

          知りなさい。たくさん、たくさん。君にとって必要な事を。『自分にとって都合のいい真実』ではなく『真なる真実』を見つけてごらん
          その真実が君にとって絶望だったとして、その絶望という猛毒に負けないくらいの『希望』と言う猛毒を見つけてごらん
          ――そうすれば、大概のことは、きっと大丈夫さ


 参ったな、やっぱり「先生」には全部見透かされてたんじゃないだろうか
 やっぱり空七のことになると思考が狭窄しやがる

 仮にアイツが道を踏み外すような真似をしてるとして
 俺はそれを全力で止める、それだけだ

 仮に俺がアイツにかつて抱いていた“好き”が幻だったとしても
 俺の幼馴染であることは、ANの同期であることは、――ダチ公なことには変わりない

 何処に居やがる、空七。待ってやがれ、空七


「『先生』、さっきの話なんですけど、『姫君』ってやっぱりお姫様なんですかね?」

「うん? お嬢さん、気になるのかね?」

「気になります! お姫様って『薔薇十字団』の偉い人なんですか? や、やっぱりお姫様って言うからには、お付きの騎士とかが居たりするんですか!?」


 とりあえずアイツに出会うまで、真相は分からずじまいだ
 今はやれることをやるしかない
 そう考え、ふと重圧から解放された気がした――あくまでそんな気がしただけだが


 そうだな、鉄さんについては、本人に訊いてみるのが一番だ
 鉄さんとは「七つ星」にいるとき何度も話をした仲だが、お互いに深いところまで話せたわけじゃない

 それに相手のAN-Pについて訊くってのはかなりデリケートな内容になるからな
 「先生」と鬼灯さんと鉄さんとが親密として、又聞きは無礼すぎる行為だ
 相手の武器や弱点に関わることだから、鉄さん自身が俺に許したときに、直接訊いてみよう

 それにしても鉄さん、元気にしてるだろうか
 最後に会ったのは今年のバレンタインの頃だったか



「ちょっと、それは駄目でしょ!!」



 不意に、隣室から大声が響いた
 何だ今のは、広瀬(優)ちゃんの声か?
 あれか? 俺か? 俺の携帯か!? 毬亜の野郎か!?

 耳を澄ませば何やら押し殺した声で何人かの囁き合いやらが聞こえる
 えこれ何? ヤバい? ひょっとして俺のセンシティブなあれやこれやがヤバい状況?


「『先生』!」

「うん? どうしたね、少年」

「俺の過去がスキャンダルに餓えた花野郎とその愉快な仲間たちの所為で危険に晒されてます! そろそろ止めないと!
 俺が女の子から貰った超プライベートな画像とか、そういうのが第三者に共有されたら、こりゃもう死活問題ですよ!?」

「え、何? 早渡後輩、そういう画像もらったりしてるの? 何? 気になるんだけど!?」

「そういう話は後だ先輩!
 『先生』後生です、あのほら大人の威厳的な何かであの中央高校グループを止めてくださいッッ!!
 俺はどうにかして毬亜を〆めますんで!! オイこら毬゛亜゛ぁ゛ぁ゛、お前まじマッハだかんなあぁぁっ!!」


 隣室で現在進行形の事態が最悪の状況に至ってんじゃないかとパニックになりかけた
 とりあえず牽制のために怒鳴ったものの、何やら当の隣室からは若干名のクスクス笑いが聞こえる

 「先生」!? もう俺の様子見はいいですよね!? 「先生」!? なに笑ってるんですか!? 先生!?








□■□
614 :次世代ーズ ◆John//PW6. [sage]:2022/02/11(金) 05:50:20.75 ID:St4aCTY8o
 

 花子さんの人に御礼申し上げます orz
 「先生」の言葉を受け、ひとまず迷いを吹っ切った、そんな感じの早渡ですが
 次世代ーズの想定してた以上に早渡の覚悟と思い切りが早くなってるので、これは荒事のハードさが上がる兆候だろうか









 以下は少し早い(?)バレンタインのお話
 現在の時間軸から過去に飛んで、遠倉千十が中学三年時の【2月】の出来事になります
 つまり現時点の【11月】からおよそ9ヶ月前のバレンタイン当日ですね


 
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