シンジ「その日、セカイが変わった」

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49 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 15:55:49.28 ID:ydzk62+70
【ネルフ本部 執務室】

冬月「やれやれ、まだ悩んでいるのか」

ゲンドウ「そうではない。今さらどう向き合えと言うのだ」

冬月「構えることかね」

ゲンドウ「親としての接し方がわからん」

冬月「そうではないだろう。お前は、息子を愛しているのかさえわかっていない。ユイくんに向けている情のカケラでさえ持ち合わせているのか、自信がない」

ゲンドウ「……」

冬月「不器用なところばかり似よって。お前たちはまぎれもない親子だよ」

ゲンドウ「シンジに親として接するのがユイのためであるのは明白だ」

冬月「自分の為だ。履き違えるな。お前の望みを叶える道具として扱うから、道具を愛するのはどうしたらいいかわからんのだろうが。レイに対しては、ユイくんの面影を投影していたようだがな」

ゲンドウ「……」

冬月「ユイくんが生きているからといって、当然のように手に入ると自惚れるなよ? 見捨てられんように、せいぜい気をつけろ」

ゲンドウ「ああ」

冬月「ひとつだけ助言をしてやろう。……“家”とは帰る場所でもある。息子に帰る場所はあるのか?」

ゲンドウ「生活に不自由はないはずだ。規定にのっとって葛城一尉に世話を一任してある」

冬月「そうではない。規律や法律は弱者を守る為にあり、現代社会は物に溢れ、便利になった。必要な管理と設備を整えれば、不自由はないだろう。だが、それだけでいいのか? 心が貧しくなっているのではないか?」

ゲンドウ「人は、与えられた道具をどう使うか選ぶ、娯楽でさえも溢れている。選択肢は多いにこしたことはない……使う側の問題だ」

冬月「MAGIのような市政さえも行える極めて効率的なコンピューターという例もある。機械という電子製品に頼り良い結果が得られる、それは同意する」

ゲンドウ「……」

冬月「しかし、それだけでは満たされない。人の心は人でしか埋められないからな。人類補完計画もそこに起因する」

ゲンドウ「俺がやるのは性に合わん」

冬月「昔と今では価値観が違うがね。昔の人が不便だから、生活ができていなかったから、幸せでなかったかと言うと違う、食卓に笑顔があったからだ」

ゲンドウ「なにが言いたい」

冬月「答えを言っているだろう、わからなければ息子に学ぶんだな」
50 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 16:18:04.93 ID:ydzk62+70
【第三新東京都市第壱中学校 昼休み】

ケンスケ「どうしたんだよ、ずっと窓の外見て黄昏ちゃって」

シンジ「あ、いや、なんでもないよ」

ケンスケ「碇がなんでもないって言うときは大抵なにかある時だよなぁ」

トウジ「シンジはめずらしくないやろ」

ケントウ「そういや、そうか」

トウジ「せや、この前はあかんかったが放課後時間あるか?」

シンジ「あぁ、ごめん。でも、そんなに大事な用事?」

トウジ「妹がなぁ」

ケンスケ「碇にお礼を言いたいんだとさぁ」

シンジ「それって、僕のせいで怪我したっていう……」

トウジ「まぁ、シンジのせいやないのはワシもわかっとる。サクラや、妹の名前は」

シンジ「お礼なんて、僕はなにもしてないよ」

ケンスケ「僕も一緒に行っていいんだろう?」

トウジ「お前は連れ行くわけないやろっ!」

ケンスケ「仲間外れにする気か⁉︎」

トウジ「ワシは兄として妹の身の安全を確保しとるんや!」

ケンスケ「トウジっ⁉︎ 僕は変態じゃないぞ!」

トウジ「お前が普段やっとる盗撮は変態行為やないんかい!」

ケンスケ「ブロマイドはビジネスさ! トウジだって儲けに一枚噛んでるだろ!」

トウジ「ぐっ」

ケンスケ「僕の趣味はあくまでカメラなんだからな!」

トウジ「はたからみたら女の尻追っかけとるストーカーやないか!」

ケンスケ「見損なったよ! 僕たちの友情はそんなものだったんだな!」 バンッ

シンジ「ちょ、ちょっと2人とも」

トウジ「今は会わせる気はない!」

ケンスケ「そうかよ! だったらいいよ!」タタタッ

シンジ「トウジ、ケンスケが」

トウジ「かまへんやろ。いざとなったら拳で語りゃええ」

シンジ「ケンスケは、変態じゃないよ」

トウジ「それはワシもわかっとる。妹は、そんなに長く話せる状態やないんや」

シンジ「あ……そう、なんだ」

トウジ「しみったれた空気にさせてすまんのぉ」

シンジ「いいんだ。まだ、回復してないの?」

トウジ「目処はたってない……。病院の先生からは、もっと設備の揃った病院に転院を薦められるが、そんな金、どこにあるっちゅうねん」

シンジ「……」

トウジ「あいつが笑顔になれるんなら、今はそれでええ。シンジ、すまんが励ましたってくれ。お前の活躍の話をすると、ほんま嬉しそうな顔するんや」ペコ

シンジ「やめてよ! 僕のせいなんだ! 僕ができるのならなんでも……!」

トウジ「お前なら、そう言ってくれると思うとったわ。怪我は事故やが、パイロットがシンジでよかったとワシかて思うとるで。どうしようないクズやったらやるせないだけやからな」
51 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 16:31:17.27 ID:ydzk62+70
【小田原病院 病室前】

看護師「あら、鈴原くん。今日もお見舞い?」

トウジ「お世話になっとります」 ペコ

看護師「めずらしいわね。友達も一緒だなんて」

シンジ「はじめまして」

看護師「はい、こんにちは」

トウジ「サクラは、変わりないでしょうか?」

看護師「鎮痛剤を投与しているから、今は落ち着いてるわよ」

トウジ「そうですか……」ホッ

看護師「あんまり根を詰めすぎないようにね。毎日来るのはいいけど、鈴原くんが倒れたら……」

シンジ「え? トウジ、毎日来てるんですか?」

看護師「えぇ。よっぽどサクラちゃんがかわいいのね。新聞配達もしてるんでしょう? 今時えらいわ〜」

トウジ「あ、その」

シンジ「知らなかった……」

トウジ「まぁ、その、な」

看護師「あら? 言っちゃまずかった?」

トウジ「いえ。ワシらは、病室にはいるので」コンコンッ

サクラ「……はい?」

トウジ「サクラ、はいるで」 ガララ

サクラ「……」ニコ

トウジ「そのまま、ラクにしとけ。なんや、またカーテン閉めとったんか」

シンジ「お、お邪魔します」

サクラ「兄ちゃん、今日はお友達、連れてきた?」

シンジ「……」

トウジ「せや、誰やと思う?」

サクラ「うーん?」

トウジ「お前にいつも話を聞かせてたやつや」 シャ

サクラ「えぇ?」

シンジ「はじめまして、サクラちゃん」

サクラ「わぁっ! 怪獣をやっつけてくれてるシンジさん⁉︎」

トウジ「そうや。どや? 嬉しいか?」

サクラ「うんっ! とっても嬉しい! 兄ちゃん、身体起こして!」

トウジ「よしきた! そうか、嬉しいか、よかったな、ほんまに、よかったな」

シンジ「(だめだ、トウジが我慢してるのに僕が泣いちゃだめだ)」

サクラ「どうぞ、座ってください。なにもないとこで申し訳ないわ」

シンジ「ごめん、ごめんね。本当に、怪我をさせてしまって……うっ、うぅ……」ポロ

トウジ「泣くやつがあるかぁ! サクラ、シンジも会えて嬉し泣きしとるみたいやぞ⁉︎」

シンジ「ぐすっ、ごめん、僕が、もっとちゃんとしていれば……ごめんよ……」ポロポロ

サクラ「エヴァっていうんでしょう……? あないにおっきなものに乗ってたらしかたないよ、私は気にしてないよ?」
52 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 16:45:54.25 ID:ydzk62+70
シンジ「トウジ……」

トウジ「なんや?」

シンジ「今まで、本当にごめん。僕は、自分がなにをしたのかわかってなかった」

サクラ「……? 兄ちゃん、シンジさんどないしたん?」

トウジ「おい、サクラかて、びっくりしとるやないか」

シンジ「もっと、はやく、くるべきだったんだ」

トウジ「もしシンジがきたいと言うてもワシは断っとったはずや」

シンジ「そうじゃないんだ。もっとはやく申し出るべきだった。来れる来れないんじゃないんだ」

トウジ「まぁ、そんな深刻に考えんなや」

シンジ「僕がなんとかしてみせる……!」

トウジ「はぁ?」

シンジ「僕の力じゃ無理かもしれないけど。今から、父さんのところに、ネルフ本部に行かなくちゃ」

トウジ「お、おい。せやけど、時間が遅くなるんちゃうか?」

シンジ「ジッとしていられないんだ。また、明日学校で。なにかあったらすぐに言うよ。サクラちゃん、ごめんね、改めてお見舞いにくるから」

サクラ「う、うん……」
53 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 17:19:26.38 ID:ydzk62+70
【ネルフ本部 発令所】

シンジ「はぁっ、はぁっ、父さんっ!」

ゲンドウ「お前と話している……いや、どうした?」

シンジ「忙しいのはわかってるよ。ごめん。頼みがあるんだ」

ゲンドウ「手短に済ませろ」

シンジ「僕が、初号機に乗って出撃したときに、怪我をした子がいるんだ。その子がとても重い怪我みたいで」

ゲンドウ「……」

シンジ「ネルフ付属病院に転院させるのは無理かな」

ゲンドウ「甘えは許さん、望みがあるのならば自分で勝ち取ってみろ」

シンジ「でも、僕じゃできる範囲が、だから父さんに頼んでるんじゃないか!」

ゲンドウ「俺を動かすに足る理由を示せ」

シンジ「なんだってするよ。エヴァにだって乗り続ける。それならどう?」

ゲンドウ「取り引きしたい場合は、自身の不確定な行動に対して手にあまる発言をするな。なぜ、助けたいと思った?」

シンジ「えっ?」

ゲンドウ「我々は使徒を相手に戦っているのだ。怪我人はこれからも出続ける」

シンジ「そうかもしれない、けど!」

ゲンドウ「クラスメイトだからか」

シンジ「友達の妹なんだ! 僕のせいで怪我したんだ!」

ゲンドウ「誰しもに救済はない。お前は、友達だからという理由で選ぶのか?」

シンジ「……っ!」

ゲンドウ「どうした? この程度で揺らぐのか? もう一度だ。お前が怪我をさせる人々はこれからも出続ける。エヴァに乗り続けるとはそういうことだ」

シンジ「ぼ、僕は……」

ゲンドウ「シンジ! 答えろ!」

シンジ「う……」

ゲンドウ「責任を持てないのならば帰れ、目障りだ」

シンジ「自分の目の届く範囲は、守りたいんだ。だって、それが僕がエヴァに乗る理由だから!」

ゲンドウ「俺に褒められたいからというのは、取り繕ってつけたウソだったのか」

シンジ「違う! ……ひとつじゃないんだ。僕が乗り続ける理由は誰かに嬉しいと思ってほしいから」

ゲンドウ「多様性はある、だが、お前が望む未来は実現に程遠い」

シンジ「お願いだよ、父さん。どうか、転院させてやってほしいんだ」

ゲンドウ「ふっ、次は拝み倒しか」

シンジ「どうしたらいいかわからないんだよ!」

ゲンドウ「……」

シンジ「くっ!」ギリッ

ゲンドウ「お前がやっているのはなんだ? 求めている結果に至るまで、お前にできるのはなにか、よく考えてみろ」
54 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 17:35:45.20 ID:ydzk62+70
【ミサト宅 リビング】

司会(TV)「それでは、次の万国びっくりさんは、何と、算数のできるワンちゃんの登場です!」

芸人(TV)「ほんまでっか⁉︎ うさんくさいわぁ〜」

シンジ「アスカ」

司会(TV)「それが本当! さぁ、登場してもらいましょう! 新潟からお越しの、天才ワンワン、ハナちゃんです!」

アスカ「ん〜?」

シンジ「前に僕に、目先しか考えてないって言ったの覚えてる?」

アスカ「あぁ? あったよーな、なかったような」

シンジ「覚えてなくてもいいんだけど、僕は、どうしたらいいのかな?」

アスカ「はぁ、また病気が発症したの?」

シンジ「病気って……」

アスカ「今の時点で目先だけじゃない。人に聞く前に自分で考えようとした?」

シンジ「考えたよ。考えたけどわからないんだ」

アスカ「そうやってつまずくとすぐ他人の力に頼ろうとする」

シンジ「……」

アスカ「なにを考えたのよ? 具体的に! 言ってみなさい!」

シンジ「トウジ、知ってるだろ? 妹さんが僕のせいで怪我したから父さんに転院を頼みに行ったんだ」

アスカ「それでぇ?」ジトー

シンジ「そしたら、父さんは、僕がエヴァに乗り続ける限り、怪我人はでるって。なにをしているのか、よく考えろって言うんだ」

アスカ「はぁ」

シンジ「あ、僕が、エヴァに乗るならいいかって聞いたからなんだけど……」

アスカ「バッカみたい」

シンジ「そ、そうかな」

アスカ「なんでそんなこともわからないのよ」

シンジ「えっ?」

アスカ「あんた、碇司令が[ピーーー]って対価を要求してきたらどうするつもりだったの?」

シンジ「そ、そんなの、できるわけ」

アスカ「そうよね。じゃあなんでいちいち真に受けて返すわけ?」

シンジ「ど、どういう……?」

アスカ「ホントにバカね……。いい? 碇司令が考えろっていうのはね、なにかを犠牲に差し出せっていうものじゃないわ」

シンジ「そうなの?」

アスカ「他には? なにか言われてない?」

シンジ「えっと、なんだったかな。責任をもたないなら、帰れとか、あとは……」

アスカ「そこね。あんたさぁ、自分では責任持ってるつもりかもしれないけど、全部丸投げしてんのよ」

シンジ「う、うん」

アスカ「怪我人にしてもそうだし、面倒についてもそう。一人を助ける為に何人が動くか考えないのぉ?」

シンジ「うーん」

アスカ「権力はないよりはあったら手段が増える。それは力だし、お金も付加価値。だけど、それで不幸になるかもしれない人がいるってことよ」

シンジ「ど、どうして不幸になるのさ」

アスカ「急な仕事が入って、娘の誕生日に帰れない人がいるのかもしれない。他ならないあんたの頼みのせいで」

シンジ「……」

アスカ「その子に、あんたはなんて謝るのよ? 僕は友達の妹を助ける為にって言い訳すんの? 大層な理由よね。我慢して、許してくれるかもしれない、だけど、あんた、それでいいの?」
55 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 17:39:28.07 ID:ydzk62+70
シンジ「だけど、その人にとってはそれが仕事で」

アスカ「ふん。ラチがあかない」

シンジ「うぅ……」

アスカ「あぁん、もうっ! よーするに! 信念を持てって話よ! 自分で決めた結果に! 悪くても良くても受け入れる覚悟が、あんたにはあったの⁉︎ 本気ってそんなもん⁉︎」

シンジ「……」

アスカ「ぐじぐじ悩んでるのがなかった証拠でしょ⁉︎ 一度頼みを蹴られたからなんだってのよ。ダメなら相手が折れるまで何度でも頼めばいいじゃない」

シンジ「……」

アスカ「どうせ、一時のテンションに身をまかせたとかなんじゃないの? ガキにありがちな話ね」

シンジ「そうか、だから父さんは僕に念をおして聞いてきたのか……」

アスカ「やっとわかったの?」

シンジ「うん、僕はやっばりバカだね」

アスカ「またすぐそうやって自虐に走る」

シンジ「だけど、アスカに聞いてよかった。ありがとう」

アスカ「ま……あんたにしちゃ、悪くない選択だったわね」

シンジ「僕はまだまだ子供で、すぐには大人になれない」

アスカ「……」

シンジ「階段を一段目から十段目にはいけないように、すぐに結果なんてでないんだね」

アスカ「このあたくし様は凡人とは違ってすっ飛ばしてきたけど」

シンジ「アスカはそのかわりに、努力をしてきたんだと思う。だけど、僕は何もしてこなかった。いつでもできたのにしなかった。だから今という結果があるんだ」

アスカ「少しはわかってきたみたいね」

シンジ「トウジの妹にしても、なんとかしてみせるって根拠のない約束をしてしまった。僕に、そう言い切れるはずがないのに」

アスカ「言い切ってもいい。それを必ず達成するなら」

シンジ「うん」

アスカ「あんたは、ちゃんと約束を守れる男になりなさいよ」

シンジ「守ってみせるよ……! 必ず! 僕、ちょっと出かけてくるから!」

アスカ「えぇ? 晩ご飯はぁ⁉︎」

シンジ「冷蔵庫にあるタッパーに入ってるひよ!」タタタッ
56 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 17:45:17.69 ID:ydzk62+70
アスカ「いっちゃった……。あいつどこに行ったんだろ。ダイヤ改正してるから終電なくなってるのに。バカを通り越して大バカね」

ペンペン「クゥゥゥ〜」

アスカ「お腹すいちゃったわね、ペンペン。タッパーの中身はっと……」ガチャ

ペンペン「クエ〜ッ! クエッ!」

アスカ「ロールキャベツか。チンして食べましょ」

ペンペン「クエッ!」

アスカ「不器用だけど、マシになってきてるのかな」

ペンペン「クエ?」

アスカ「大人の男性もいいけど、育てるってのもありかもしれないわね。どう思う? ペンペン」

ペンペン「クエッ! クェクァッ!」 パタパタ

アスカ「足りない部分は補ってやればいいわけだし。……うーん……はっ⁉︎ な、なに考えてるの⁉︎ しっかりしなきゃ! アスカ!」
57 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 17:59:02.65 ID:ydzk62+70
【ネルフ本部 初号機ケイジ】

ゲンドウ「(ユイ……)」

リツコ「碇司令、こちらにいらっしゃったのですか」

ゲンドウ「君か」

リツコ「本日は泊まりですか?」

ゲンドウ「あぁ」

リツコ「私もです」

ゲンドウ「まだ終電はあるだろう」

リツコ「地下拡張工事の為、ダイヤの改定が行われています。二時間前に運休となっておりますわ」

ゲンドウ「そうか」

リツコ「近くのラウンジでお酒でもいかがですか?」

ゲンドウ「いや」

シンジ「はぁっ……はぁっ……」

リツコ「シンジくん? あなた、まだ帰ってなかったの?」

シンジ「父さんっ!!」キッ

ゲンドウ「……」

シンジ「トウジの妹を! 転院させてやってくださいっ!」

ゲンドウ「なぜだ?」

シンジ「僕がそうしてほしいんだ! 理由なんてないよ!」

ゲンドウ「考えたのか、短い時間でだせる程度のものか」

シンジ「そうじゃない! だって、僕にはなにもないから!」

ゲンドウ「……」

シンジ「僕にはこうするしかないんだ! 何度ダメと言われても諦めずにお願いするしか!」

リツコ「この子、なにを言ってるの?」

シンジ「父さんは僕に考えろと言った! だけど、僕はトウジに約束したんだ! なんとかしてみせるって!」スッ

リツコ「無様ね。立ち上がりなさい、シンジくん。土下座なんて不恰好なまねを中学生が――」 スッ

シンジ「離して! お願いだよ、僕はこれぐらいしかないんだ。父さんのように権力があるわけでも、お金があるわけでも、人脈があるわけでもない」

ゲンドウ「……」

シンジ「でも、僕は! 願いを叶えるためにあがいてみせる!」ガシッ

リツコ「シンジくん、いい加減にしなさい。碇司令の足を離すのよ」 グイッ

シンジ「お願いします。父さん、今はこれが僕にできる精一杯なんだ。拝み倒しでもなんでもいい、それしかできないのなら、格好悪くても」

ゲンドウ「シンジ」

シンジ「……」

ゲンドウ「転院したとしても回復しなかったらどうするのだ?」

シンジ「それでも、なにもしないよりはいいっ!」

ゲンドウ「お前が勉強し、救おうという気持ちがあるか? 諦めなければいけない機会は必ず訪れる」

シンジ「なにかをやらなくちゃわからない! そうなる時もあるかもしれない! 怪我人だって、これからも……」

ゲンドウ「そうだ。お前が乗り続ける限り、大なり小なり、犠牲はつきものだからな」

シンジ「守れた人達だっていたんだ!」

ゲンドウ「全員は無理だ。どうやって選び、切り捨てる?」

シンジ「そ、それは……」

冬月「碇、それぐらいでいいだろう」 コツコツ

リツコ「ふ、副司令」
58 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 18:07:05.58 ID:ydzk62+70
冬月「若人とは詰めが甘いものだ」

ゲンドウ「冬月、口を挟むな」

冬月「子育てにハリきりすぎだ。メリハリをつけんと、潰れてしまうぞ」

ゲンドウ「シンジ」

シンジ「はい」

ゲンドウ「お前が手続きをしろ。わからなくても解決する方法を見つけるのだ。赤木博士」

リツコ「は、はい」

ゲンドウ「全職員に通達。サードチルドレンを現時点より部外者として扱え。いかなる時もだ」

リツコ「しょ、承知いたしました」

ゲンドウ「葛城一尉にも連絡して、同居を解消。身の回りの世話は、全て、自分でやらせるのだ」

冬月「おい、碇」

シンジ「いいんです。それで転院を認めてくれるんだね?」

ゲンドウ「ああ」

シンジ「だったら、僕はそれでいい」

ゲンドウ「口だけならなんとでも言える。お前が挫けないか、見せてみろ」

シンジ「わかったよ。それが、父さんの望みなら」

ゲンドウ「一区切りの結果に過ぎない。お前が選び、お前が行動したせいでこうなったのだ。自分で選んだというのを忘れてはならない。いかなる結果が待ち受けようと、悔いは残すな、胸を張れ。自分自身に、言い訳はするなよ」

シンジ「……っ!」ギュウ
59 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 18:21:06.71 ID:ydzk62+70
【ネルフ本部 ラボ】

ミサト「マジに言ってんの?」

リツコ「ええ。これがシンジくんの支給される生活費」ペラ

ミサト「……ちょっとこれ、十万ぽっち? 家賃を含めたらギリギリの生活じゃない! ワンルームに住まわせる気⁉︎」

リツコ「碇司令が直々にお決めになったわ」

ミサト「厳しすぎるわ! 私が直訴します!」

リツコ「無駄よ」

ミサト「シンジくんはまだ中学生なのよ⁉︎ こんなはした金でどうやって生活しろって! エヴァに支障をきたすかもしれない!」

リツコ「そうなったら、どうなるのかしらね」

ミサト「情がないからってあんまりよ! やりすぎだわ!」

リツコ「そうは見えなかったけど」

ミサト「え……? というか、なんであんた、むくれてんの?」

リツコ「なんでもないわ」

ミサト「とにかく、碇司令に話をしないと!」

リツコ「やめなさい。左遷させられるわよ」

ミサト「どうしてよ! シンジくん、なにもしてないわよ⁉︎」

リツコ「シンジくんが望んだのだから、あなたも従いなさい」

ミサト「はぁ? シンジくんがぁ?」

加持「女が男のやることにいちいち口出しするのはご法度だぞ」トン

ミサト「チッ、あんた、こんなところでブラついてて仕事はどうしたのよ、仕事は」

加持「葛城に言われるとは心外だな、初号機ケイジで面白いものを見かけたんでね。リッちゃん、コーヒーもらうよ」

リツコ「ぬるいわよ?」

加持「かまわない」

ミサト「わたしはねぇ! シンジくんを心配して!」

加持「余計なお節介だろう、なぜ、そこまでシンジくん気にかけるんだ」

ミサト「気にならないわけがないでしょ。あの子、まだ中学生なのよ。使徒と戦うだけでも重荷なのに」

加持「いいんじゃないか? それがシンジくんの意思なら」

ミサト「純粋すぎるのよ。まわりに利用されるわ」

加持「それも勉強さ」

ミサト「あんたねぇっ! そうなってからじゃ遅いのよ⁉︎」

加持「心配してるのは、エヴァに乗れなくなるからか? それともシンジくん自身の?」

ミサト「両方よ!」

加持「シンジ君は今、現実と歩きだそうとしている。このままじゃ弱すぎるからな。向き合う準備をしている段階なのさ」

ミサト「わかったような顔しちゃって」

加持「蝶は芋虫からサナギへ、そして羽ばたいていく。人間も成長は一緒さ。いずれ通る道だ」

ミサト「潰れるわよ、シンジくん」

加持「セカンドインパクトを経験した俺たちは、地獄を見た。それに比べれば、どんな環境でも恵まれてるよ」

ミサト「価値観が違うの!」バンッ
60 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 18:29:45.92 ID:ydzk62+70
加持「……」

ミサト「今の子供たちはみんな、セカンドインパクトを教科書でしか知らない! シンジくんたちはその変わりはじめた世代なのよ!」

加持「時代が変わっても、与えられた環境でしか生きていけないのはみんな同じだ。子は親を選べないのと同じでね」

ミサト「私は納得がいかない! 生活にだって、すぐに行き詰まるわよ!」

加持「切り詰めるか、新聞配達なり手段はあるぞぉ? 中学生でも事情を話せば雇ってくれるしな」

ミサト「パイロットなのよ⁉︎ 人類を守るかたわらで、そんなことさせるの⁉︎」

加持「しちゃいけないって決まりはないだろう?」

ミサト「もういい。あんたと話してもストレスがたまるだけだわ!」

リツコ「あなた達が子育てしているわけではないのよ、夫婦喧嘩ならよそでやってくれない?」

ミサト「ふ、夫婦って、そんなつもりじゃ!」

加持「俺も心配してるのは一緒さ。どことなく弟に似てるからな」

ミサト「……?」

加持「それじゃ、葛城のマンションに行きますか」

ミサト「なんでよ!」

加持「アスカにも話してておきたいんでね」

ミサト「アスカに?」

リツコ「私はいなくなってくれるならなんでもいいわ」
61 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 18:54:43.67 ID:ydzk62+70
【ミサト宅 リビング】

ミサト「アスカ、ただいま」

アスカ「あっ! 加持さぁ〜んっ!」 ダダダッ

加持「よう」

アスカ「私に会いに来てくれたのね! 嬉しいっ!」 ギュウ

加持「元気にしてたか?」

アスカ「も〜! 日本に来てから全然顔見せてくれないんだもの!」

加持「悪い。仕事が立てこんでいてな」

アスカ「私の為に時間を作ってくれなきゃや〜よ」

加持「シンジくんとうまくやってるそうじゃないか」

アスカ「うげっ、バカシンジ?」

ミサト「シンジくん、ここから出てくのが決定したわ」

アスカ「マジ……?」

ミサト「マジよ。友達の妹を転院させる交換条件だそうよ」

アスカ「え? だって、さっきの、私のせい?」

加持「なにかあったのか?」

アスカ「べ、べつに!」プイッ

ミサト「明日には全職員に通達されるわ。碇司令の発令は絶対遵守、組織である以上、規則には逆らえない」

アスカ「なにやってるのよ……! あのバカっ!」

ミサト「アスカ、なにか訳知りみたいね」

アスカ「正直に言うと少しね……それで、どこに住むかもう決まったの?」

ミサト「三日の猶予を与えられたわ。それまではネルフで寝泊まりするようになってる」

アスカ「どこに?」

ミサト「シンジ君が誘拐された時にあなた達も寝泊まりしたコンテナよ」

アスカ「エヴァのシンクロはどうするの?」

ミサト「通常通り、行ってもらうわ。当人も了承済みの決定よ」

アスカ「……」

ミサト「はぁ……」

加持「一人暮らしをするから、寂しくなるな」

アスカ「平気よ。むしろせーせーするわ」

加持「いなくなってはじめてわかることもあるさ」

アスカ「そんなのわからなくていい!」

加持「アスカは今回のシンジくんの判断をどう思う?」

アスカ「まぁ、バカはバカなりに根性見せたって感じ。ただ、ここまでするとは思ってなかった。他人の面倒なんてほっとけばいいのに」

加持「だが、シンジくんはそれを選ばなかった。立派じゃないか」

アスカ「ふん。どうせ三日坊主でしょ」

加持「みんなが無理だと、厳しいと言うが、シンジくんは挑戦しようとしている。彼は歩き出したんだよ」

アスカ「私だって、そんなのやれと言われればできるわよ」

加持「アスカは大学に飛び級で合格し、卒業してるしな。努力を継続させる辛さを知っている。しかし、シンジくんは今なのさ」

アスカ「……」

加持「誰しもに最初がある。アスカが決意した日を思い出してみろ。その時と同じ気持ちでシンジくんが立ち上がったとしたら……」

アスカ「まだなにもわからないわ」
62 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 20:33:02.38 ID:ydzk62+70
【第三新東京都市立第壱中学校 昼休み】

シンジ「トウジ」

トウジ「おう、昼休みから出勤か。ネルフの用事やったんか?」

シンジ「今朝は、転院に必要な手続きの詳細を聞きに付属病院に行ってたんだ」

トウジ「病院て……」

シンジ「父さんに頼んだら、転院が認められたんだ。サクラちゃんが治るかもしれないんだ!」

トウジ「やっぱり、そうなったか。サクラに会わせたのは失敗やったのぉ」

シンジ「え?」

トウジ「話はありがたい。やけどな、頼んでほしいなんて、ワシがひとことでも言うたか?」

シンジ「い、いや、でも」

トウジ「こうなると思うたから会わせたくなかったんや。ワシがお前がきたくても断るというたのは」

シンジ「治るかもしれないんだよ?」

トウジ「人間ってのは複雑やな。ワシはサクラを心配しとる。せやけど、お前も心配や」

シンジ「僕はいいんだ」

トウジ「治療費は、ネルフが負担してくれるんか?」

シンジ「そうだよ、なにも心配しなくていい」

トウジ「なぜ、ワシに一言、聞いてくれへんかったや」

シンジ「それは、僕のせいだから」

トウジ「お前がやっとるんは押しつけや。どうにもならんと判断したらワシから相談する」

シンジ「ご、ごめん、だけど……!」

トウジ「ワシがお前に感謝の気持ちがなくても、ええんか?」

シンジ「いいよ、考えが足りなかったのは僕が悪い。トウジの気持ちを」

トウジ「いや、ええよ。転院させてもらうわ」

シンジ「よ、よかった! 転院には紹介状が必要で!」

トウジ「それぐらいワシも知っとるわ。必要な手続きは全て調べ終わっとるからの。万が一、転院となった時の為に」

シンジ「そっか。転院させるのは、考えたりするよね」

トウジ「必要な書類は近日中に渡す。それでええか?」

シンジ「うん、受け取ったらすぐに父さんに話て、金銭的な詰めにはいるよ」

トウジ「わかった……。シンジは先に教室に戻っておいてくれ。ワシは少し、風に当たって戻る」

アスカ「鈴原、ちょっと待ちなさい。あんた、打算したわね……」

トウジ「……?」

アスカ「こうなるのがわかってて、シンジを妹に会わせたんでしょ⁉︎」

シンジ「アスカ?」

アスカ「転院させるために! あんたは言わずとも最初からシンジに頼んでたのよ! 妹の状態を見せつけることで!」

トウジ「……」キッ

アスカ「シンジ。あんた、利用されてんのよ?」

シンジ「やめてよ、トウジがそんな……」

アスカ「なんでシンジに会わせたのよ!」

トウジ「お前は、シンジが心配なんやな」

アスカ「話をすり替えないで!」 バンッ

トウジ「妹が会いたがったからや」

アスカ「シンジがこうなるとわかってて、妹の頼みを断らなかったのは、そういうことでしょ⁉︎」

ケンスケ「(僕に会わせなかったのは、そういう理由か)」
63 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 21:00:04.86 ID:ydzk62+70
トウジ「せやったら、なんや! こうでもしない限り、どうしようもなかったんや! シンジが自分で決めた選択や! ワシたちを見捨てるのもできた!」ガンッ

アスカ「ようやく本音を言ったわね。だったら、シンジに最初からそうお願いしなさいよ。あんた達、友達でしょ? 利用するなんて」

シンジ「いいんだ。治るなら」

アスカ「ばっ、バカァ⁉︎ あんた、今の話聞いてた⁉︎ こいつは最初からそのつもりで会わせたのよ⁉︎ それなのに、えらっそーに」

トウジ「う、いや、ワシは」

アスカ「怪我させたのをまだ根に持ってるんじゃないの⁉︎ 心のどこかで!」

トウジ「ワシはシンジを友達と思っとる! せやけど! サクラを救うにはこうするしか!」

アスカ「昨日は煽って言ったけど、まだ中学生なのよ? 身分証だって社会的に認められてない。こいつの魂胆は今わかったでしょ⁉︎」

シンジ「トウジにはトウジの事情があったんだ。僕が怪我をさせたし、それに、やると決めた。最後までやってみせる。トウジとした約束だけど、父さんとの約束でもあるから」

アスカ「根性は認めてあげる、今回は逃げても責めないから撤回しなさいよ」

トウジ「シンジは、お偉いさんの息子なんやし、頼めば、それぐらい……」

アスカ「たしかにナナヒカリだけど! すんなり通ると思う⁉︎」

シンジ「もういいんだ、アスカ」

アスカ「くっ! この私が心配してやってんのよ⁉︎」

シンジ「ありがとう、アスカに助けてもらってばかりで。だけど、やらせてほしいんだ」

アスカ「好きにすれば⁉︎ もう知らないっ!」
64 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 23:20:18.15 ID:ydzk62+70
トウジ「シンジ、お前……」

シンジ「なんでもない。気にしなくていいよ」

トウジ「あいつの取り乱し方はそんなんやなかったやろ。心配せなあかんようなのがあったんちゃうんか⁉︎」グイッ

ケンスケ「話は聞かせてもらったよ」

シンジ「ケンスケ……」

ケンスケ「トウジ、僕に謝らなきゃいけないんしゃないか?」

トウジ「今はシンジの話を……!」

ケンスケ「もちろん碇にもだ! なんで正直に話さなかったんだよ! 碇だって、僕だって、事情を知ってれば力になろうとしたのに! 僕にはコネがないからか⁉︎」

トウジ「うっ、そ、それは」

ケンスケ「いいか、順番を間違えちゃいけないんだ! 僕たちは友達だろう、だったらまずは誠意を見せなくちゃ!」

トウジ「……」

ケンスケ「トウジッ! なんのために碇に殴らせたんだよ!」グイッ

トウジ「……離せ」

ケンスケ「離さないね! 友達が間違った道に進んだら正さなきゃならない! 碇がどういう戦いしてるか僕たちは見たからだろ⁉︎」

トウジ「ぐっ……」

シンジ「ケンスケ。もう、その辺で」

ケンスケ「碇、そんなんじゃだめだよ。僕たちは他人同士だ。ぶつかるのは当たり前なんだ! 喧嘩したっていい! 友達を続けたいなら、きっちり清算しないと!」

シンジ「……」

ケンスケ「どうした⁉︎ トウジ、殴りたいなら殴ってみろよ⁉︎」

トウジ「わかった。わかったから、もう離してくれ」

ケンスケ「……」スッ

トウジ「すまんな、シンジ。ワシは卑怯モンや。惣流が言うたのは当たっとる」

シンジ「いいよ」

トウジ「自分に言い訳をしたんや、簡単に許したらあかん。心のどこかで、許してくれる、悪いのはお前やって、そう思っとった」

シンジ「……」

トウジ「怪我をさせたのはとっくにチャラになっとったはずやのに、痛みに耐えてる妹を見るたんびに、なんでこんな目にあわなきゃあかんのかって、ワシは、ワシは……!」ガク

シンジ「怪我が治るまで、そう思うのも仕方ないよ」

ケンスケ「碇、それでいいのか?」

シンジ「うん」

ケンスケ「いいやつなんだな、碇は」

トウジ「ケンスケも、黙っとってすまん」

ケンスケ「ロリコン扱いしたのもだろ!」

トウジ「そっちも気にしとったんかいな」

ケンスケ「こいつぅ……!」

トウジ「すまん」

ケンスケ「まぁ、僕は碇に比べたら、なんてことないように思えるけどさぁ」

トウジ「それで、シンジ。お前、なんかあったんか?」

シンジ「……なにも、ないよ」

トウジ「ほんまか?」

シンジ「いやだな。なにもないのに、なにかあったなんか言えないじゃないか。僕にウソをつけっていうの?」

ケンスケ「そうだな、ウソをついたってすぐにわかるんだぞ?」

シンジ「や、やめてよ。二人とも。本当になにもないよ、教室に戻ろう。そろそろ昼休み終わるから」
65 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 23:45:07.31 ID:ydzk62+70
【放課後 第三新東京都市 繁華街】

シンジ「うーん、やっぱりどこを選んでも自転車は必要になるな」

加持「本を読みながら歩くと危ないぞ?」

シンジ「す、すみませ……加持さん? 外で会うのめずらしいですね」

加持「奇遇だな。手に持ってるのは賃貸雑誌か?」

シンジ「そうです、けど」

加持「そこのベンチで少し座ってかないか? コーヒーぐらいは奢るよ」

シンジ「……僕、男ですよ?」

加持「ぶっ、な、なんだぁ?」

シンジ「加持さんって、女の人じゃないと奢らないんじゃないんですか?」

加持「お、おいおい、誰だ、そんなホラ話したのは」

シンジ「ミサトさん、ですけど」

加持「あいつもよからぬことしか吹きこんでないな。俺は、女相手だけじゃないよ」

シンジ「そうなんですか。それじゃ遠慮なく」テクテク

加持「葛城から聞いたよ。一人暮らしするんだって?」ガコン

シンジ「(自転車が1万円ぐらいで、引っ越し費用は負担してもらえるだろうから、これは必要ないと)……え、あ、はい」

加持「ふっ、計算でもしてるのか? 昔を思い出すな」

シンジ「昔?」

加持「俺も、ちょうどシンジくんと同じ歳の頃、極貧生活の中で切り詰めた暮らしをしていてね。今とは違い、物資がなかったってのもあるんだが」

シンジ「家出でもしてたんですか?」

加持「そんななまっちょろいもんじゃない、帰る家がなかったのさ」

シンジ「帰る、家が?」

加持「セカンドインパクト。未曾有の大災害は、世界に大きな影響を与えた。気候の変動、生態系への影響。俺たち人間社会にもね」

シンジ「あ……」

加持「孤児だったのさ。俺は。とにかく毎日の生活が大変でね。守ってくれる人も、頼れる人もいなかった。俺は運悪く、特に治安の悪い地区にいてね」

シンジ「……」

加持「食料の不足。誰しもが誰かを疑い生きている。人間の汚いところを幾度となくみてきた」

シンジ「教科書でしか、知らないから」

加持「今のシンジくんなら、想像しようとするだろう。だから俺は話してるのさ」

シンジ「……」

加持「聞きたくないかもしれないが、俺からすれば君は恵まれている。生まれた時から人はみな平等ではないからね」
66 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/25(日) 23:53:21.60 ID:ydzk62+70
シンジ「加持さんがセカンドインパクトを体験したのっていくつぐらいの時なんですか?」

加持「まだ小さかったよ」

シンジ「どうやって生活を?」

加持「盗みさ。軽蔑するかい?」

シンジ「いえ、そんな。だけど、想像がつかなくて。今って、復興してるから」

加持「国内はだいぶな。しかし、発展途上国はいまだ復興には程遠いのが現実だ。紛争はいつの時代でも行われている。気にしないものだろう? 外に目を向けない限りは」

シンジ「そう、かな」

加持「もっと、シンジくんには世界を見てもらいたいがな。それも難しい」

シンジ「世界、ですか。僕は自分の生活で手一杯ですよ」

加持「実際に見るのと、想像は違うぞぉ」

シンジ「毎日盗んでたんですか?」

加持「孤児同士で集まって生活をしていたからな。食料はいつもかかえている問題だった」

シンジ「……」

加持「ある時、俺が失敗してね。 その相手がヤバかった。拷問をね」

シンジ「え……」

加持「こわかった。でも、相手は許しちゃくれない。残りの孤児の居場所を聞かれて、どうしたと思う?」

シンジ「わ、わかりません」

加持「俺は喋った。自分が助かりたい。その一心で」

シンジ「一緒に暮らしてた人達は……?」

加持「縄を解かれたあと、しばらくして、俺は、おそるおそる戻ったよ」

シンジ「……」

加持「みんな殺されてた。誰も生きちゃいなかったのさ」

シンジ「あ……」

加持「俺は自分を責めた。しかし、この世の中が悪いという考えもあった。セカンドインパクトを呪った」

シンジ「僕なら、立ち直れないだろうな」

加持「そうなってみなければなんとも言えないだろう。現実は理不尽で残酷な瞬間もある。運命、なんて一言では片付けられないほどにね」

シンジ「……」

加持「みんながそんな経験をするわけじゃないさ。今は世代も違う。シンジくんは、なにが起こっても、諦めないで前に進むんだ」

シンジ「はい」

加持「重い話をしてすまなかったね」

シンジ「いえ、そんな……」

加持「金がなくなったらパンの耳でもかじるといい。揚げたらうまいからな」

シンジ「そうですね、最初は出費も多いだろうし、そうします」

加持「ま、生きてりゃなんとかなるさ」ポン

シンジ「……はい」
67 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 01:02:45.40 ID:+ko4vlT80
【ネルフ本部 発令所】

マヤ「あの、先輩」

リツコ「どうしたの?」

マヤ「シンジくん、どう接したらいいでしょうか」

マコト「みんな困惑してますよ。突然、パイロット扱いするなだなんて」

リツコ「いつも通りでかまわないわ」

マヤ「でも、それじゃ、命令違反になるんじゃ」

シゲル「そうスよ。碇司令にバレたらどうするんすか」

リツコ「私はあの子に仕事以上の感情はないもの。あなた達はあるの?」

マヤ「え! いや、そういうわけじゃ……」

リツコ「特別優しくしていたわけでもないし」

マヤ「先輩は、フラットなんですね。どこまでも科学者で尊敬します。私は、どうしても感情的に考えちゃって」

マコト「でも、今まで通りって言われても」

リツコ「部外者として扱うといってもエヴァパイロットとしての業務はいつも通りなのよ。普通にしなさい」

シゲル「うっす」

マヤ「はい」

リツコ「ただし、馴れ合いすぎないようにね。子供が頑張っていたら褒めてあげたり、気遣ってあげたくなるのをやめればいいだけ。仲間意識は捨てて、派遣社員相手だと思えば?」

マコト「じゃあ、僕たちは正社員ですか? クビを切られるのは、こっちが先な気がするけどなぁ」

リツコ「個の価値としてはあなた達が下なのは間違いないわね。くだらない話をする暇があったら、手を動かしなさい」

マヤ「わかり、ました」

ミサト「まめなんでこう、スカーッとしたいときに使徒は来ないのよ! こんなにも待ち遠しいなんて!」 ズンズン

リツコ「更年期障害にはまだはやいんじゃなくて? それとも欲求不満?」

ミサト「うっさいわねぇ! リツコこそ、ラボに引きこもってないでなにしてんのよ!」

リツコ「MAGIの確認よ。ミサトも給料泥棒と言われない内に仕事をしたら?」

ミサト「わかってるってばぁ。ねぇ、シンジくん、やっぱり、うちで」

リツコ「しつこいわね。シンジくんに惚れてるの?」

ミサト「じょーだん言うんじゃないわよ! 私は家族として!」

リツコ「ごっこでしょ。ミサトのは。本物の親子の決定に他人が口をだすのは筋違いよ。シンジくんの為を思うのなら見守りなさい」

ミサト「親子って言えるぅ⁉︎」

リツコ「ミサト、これ以上の追求は、自分が納得したいだけと見なすわよ」

ミサト「はぁ、シンジくんは? もうコンテナ生活はじめてるのよね?」

リツコ「確認しに行ってきたら? 邪魔されるより、そうしてくれると助かるわ」
68 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 14:50:50.72 ID:qmTw1PEeO
【ネルフ本部 コンテナ】

ミサト「シンジくーん? いる?」

シンジ「ミサトさん? どうぞ」

ミサト「では、失敬」 ガチャ

シンジ「どうしたんですか?」

ミサト「昨日の今日で話する機会がなかったから、どうしてるのかと思って。部屋は決まった?」

シンジ「いえ、まだ。条件を照らし合わせて煮詰めてる最中です」

ミサト「候補はあるの?」

シンジ「家賃との相談になるからまだ、なんとも言えないんですけど、その中でこれ」ペラ

ミサト「やっぱりワンルームね……内見はしたの?」

シンジ「内見?」

ミサト「実際に見て、確かめること。あなたはまだ一人暮らしをした経験がないからわからないでしょうけど、近隣の様子や、汚さとか立て付けとか、あと何畳という記載に至るまで見るまでわからない部分が多いのよ」

シンジ「なるほど……」

ミサト「それにここ、学校まで電車で通うの?」

シンジ「それなら自転車で」

ミサト「シンジくん、頭で考えるよりも実際に行うのは大変よ? 毎日の話だってほんっとーにわかってる?」

シンジ「はい、わかってるつもりですけど。やらなきゃわからないと思います」

ミサト「あなたが望むのなら、また一緒に暮らすのもできるのよ?」

シンジ「いえ、父さんの期待を裏切りますから」

ミサト「どこに期待があるっていうの⁉︎ こんなの、ただの横暴じゃない!」

シンジ「僕は一度、父さんから逃げました。今回も逃げ出したら、次はいつ向き合おうとしてくれるか」

ミサト「私は、あなたの為を思って!」

シンジ「ありがとうございます。でも、決めたんです。僕は、やらなくちゃいけない」

ミサト「辛いわよ?」

シンジ「僕も、そして、父さんも不器用だと思うんです。皮肉、ですよね。似ているからわかるんです。辛い選び方をしているのかもしれません。だけど、手探りでも前に進みます」

ミサト「バカ……」

シンジ「すみません」

ミサト「男はなんでも自分でやらなきゃ気が済まないのね」

シンジ「ミサトさん……?」

ミサト「わかったわ。なにも言わない。ただし、最後までやりとげるのよ。いい?」

シンジ「はい、わかりました」
69 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 15:01:59.02 ID:qmTw1PEeO
【ミサト宅 リビング】

アスカ「スーパーの惣菜ぃ?」

ミサト「やっぱ、だめ?」

アスカ「はぁ、まだいいけどさぁ、毎日じゃいつか飽きるわよ? それに、食費だってかさむわ」

ミサト「うっ……今月はカードの支払いが」

アスカ「ミサトが外飲みばかりしてるからでしょ。居酒屋とかバーとか」

ミサト「うぅぅ。だってぇ、お酒ぐらいいいじゃなぁ〜い」

アスカ「よくアル中にならないわよね」

ミサト「まぁ、肝臓は丈夫だし♪」

アスカ「ほかには……? なんかないの?」ガサガサ

ミサト「枝豆とジャーキーでしょ。あとチーズと。するめと……」

アスカ「いい加減にしてよね! 全部ツマミじゃない! しかもなにこれぇ? ビール、ビール、ビール、チューハイ」トントントントン

ミサト「アスカは唐翌揚げが……」

アスカ「それもツマミ! 窓から投げ捨ててやる!」

ミサト「ひぃぃぃっ⁉︎ や、やめてぇっ!」

アスカ「くっ! 離しなさいよ! 往生際がわるいんだからぁっ!」

ミサト「ら、ラーメンで手を打たない⁉︎」

アスカ「太るだけよ! 塩分高いんだからね!」

ミサト「シメにはラーメンって……」

アスカ「そこをどきなさい。全部捨ててだめな大人を躾てあげるわ」

ミサト「ストップ! わかった! 出前とりましょう! ねっ⁉︎」

アスカ「今日はそれでよくても今後どうするつもりなのよ……」

ミサト「とほほ。シンちゃん、帰ってきて……」

アスカ「まさかこんな形でシンジがいなくなったのが痛手とはね」

ミサト「アスカもやっぱりシンジくん、いた方がいいわよね?」

アスカ「どういう意味?」ジトー

ミサト「アスカが希望するなら、碇司令に……」

アスカ「やめてよね! あんな頑固モン知らない! せっかく、このあたしが」ブツブツ

ミサト「……? アスカ、なにかあったの?」

アスカ「あんまりにもバカバカしくて嫌気がさしただけ。はぁ、加持さんこないかなぁ」

ミサト「アスカは結婚するとしても、あんなの選んじゃだめよ。そうねぇ……シンジくんみたいなタイプが合ってると思う」

アスカ「シンジがぁ? ぜんっぜん、実感わかないんですケドぉ?」

ミサト「たしかに、シンちゃんは付き合うと考えたら、面白味にかけるわね。一緒にいて楽しいというより、落ち着く感じだもの」

アスカ「だから?」

ミサト「付き合うのと結婚は別って話よ。シンちゃんは家庭的だし、いい夫になるんじゃないかしら」

アスカ「はぁ、あのねぇ、私まだ中学生なのよ?」

ミサト「シンジくんだって、まだ若いんだし。これから化けるかもしれないじゃない」

アスカ「私はいいの! ミサトこそ、加持さんは?」

ミサト「まぁ、大人には色々あるのよ」

アスカ「ふん、言い訳ね。歳を重ねてるだけじゃない」

ミサト「うぐっ! い、痛いとこつくわね」

アスカ「料理もできないのがその証拠よ。ぐーたら酒飲み!」

ミサト「す、すみませぇん」
70 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 15:17:19.81 ID:qmTw1PEeO
【ネルフ本部 ラボ】

レイ「あの、赤木博士」

リツコ「なに?」

レイ「碇くんが、一人暮らしするって本当ですか?」

リツコ「ええ」

レイ「私が住んでるマンションなら空きが」

リツコ「却下」

レイ「……」

リツコ「碇司令がお許しにならないわ。余計な口出しはしないで、用件が済んだなら、下がっていいわよ」

レイ「碇くんは、どうして引っ越しようと思ったんですか?」

リツコ「シンジくんは、意地を張らず、人の間で流れるように生きようとする他人指向型の子よ。ことなかれ主義とも言うわね。人の指図には逆らわず、波風を立たせるのを嫌う」

レイ「……」

リツコ「ヒトは変わっていくものよ。どこまでいっても自分という概念に変わりはないけれど、それぞれが持つイメージを覆せるかどうか。その一点に集約される」

レイ「碇くんは、変わろうとしてるんですか?」

リツコ「シンジくんは、問題を放置する消極的な姿勢をやめて、解決しようと試みた。それを変化というのならそうなるわね」

レイ「……」

リツコ「どちらにしろ、あなたには興味のない話でしょ?」

レイ「はい」

リツコ「私から見れば、碇司令の変化が気になるけど」

レイ「碇司令、ですか?」

リツコ「言ってもしょうがない……いえ、レイなら誰かに喋る心配は……いいかもしれない。レイなら感情という概念がないわよね」

レイ「……」

リツコ「変、なのよねぇ。以前の碇司令ならば、シンジくんと話をする機会すら設けなかったはずよ。なのに、シンジくんが話をしたいと言えば応えている」

レイ「碇司令が……」

リツコ「今まで徹底して無関心、放任主義を貫いてきていた……今になって、導いているとすら思える節があるわ。親子の関係が似合わないイメージだからこそ、強烈な違和感がある」

レイ「……」

リツコ「副司令がなにか企んでいるのかしら」

レイ「……」

リツコ「条件付きとは言え、碇司令がシンジくんの頼みを聞くに値する価値はどこにもない。泣き落としが通用するような人ではないもの」

マヤ「先輩、はいってもいいですか?」コンコンッ

リツコ「どうぞ」

マヤ「失礼します。あ、レイもいたのね」

リツコ「なにか問題?」

マヤ「はい、第二技術課からパーソナルデータについて不備があるという指摘を受けまして」

リツコ「どの数値?」

マヤ「ここです。計算したみたところ、たしかに誤差がマイナス0.03ほど発生しています」

リツコ「通常ならばありえないわ。MAGIのシステムデータ更新は?」

マヤ「新しい更新プログラムを適用したばかりですが……バージョンが原因でしょうか」

リツコ「バグかもしれない。発令所に行って確かめてみましょう」

マヤ「今日も、残業、ですね」

リツコ「一通り目処がついたら帰れるようにしてあげるから」

マヤ「いえっ! 私、そんなつもりじゃ!」

リツコ「どのつもりでも構わないわ。行くわよ」コツコツ
71 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 15:40:05.90 ID:qmTw1PEeO
【二日後 第三新東京都市第壱中学校 屋上】

シンジ「(今日がいよいよ期日だな。決めたアパートは、学校から13km……。自転車でどれくらい時間かかるんだろう)」

男子生徒A「お前か? ロボットのパイロットって」

シンジ「えっ?」

男子生徒A「お前だろ。ネルフだかなんだかしらねぇけど何様だよ?」

シンジ「えっと、誰?」

男子生徒A「うるせぇ。気にくわねぇんだよ、お前みたいな調子にのってるやつ」スッ

シンジ「ちょ、ちょっと待ってよ。僕がいったいなにしたって――」

男子生徒B「こいつに何かしたら、俺たちが……」

男子生徒A「あ? ビビってんのかよ?」

男子生徒B「ビビってねーよ⁉︎」

男子生徒A「度胸試しにちょうどいいじゃん。ロボットのパイロットをボコしたって言えば、ハクがつくし」

シンジ「な、なんだ?」

男子生徒A「ま、そういうわけだから、お前には踏み台になってもらう。覚悟しろよ、なっ!」ブン

シンジ「いつっ……!」 ズザザ

男子生徒A「へ、へへ。ほら見ろ! パイロットなんて言ってもたいしたことねぇじゃん!」

男子生徒B「お、おい。もうやめろって」

シンジ「……」キッ

ヒカリ「誰かいるの?」キィィ

男子生徒A&B「……っ⁉︎」

ヒカリ「なに? 碇くん? どうして倒れて……血がでてるじゃない⁉︎ あんた達、なにやってるのよ⁉︎」

シンジ「洞木さん?」

ヒカリ「……っ!」タタタッ

男子生徒A「な、なんだよ。邪魔するのか?」

ヒカリ「上級生ね! 先生に言いつけられたくなかったから、帰りなさいよ!」バッ

男子生徒B「やりすぎだって、なぁズラかろうぜ」

男子生徒A「ふ、ふん。先生に言うなよ!」タタタッ
72 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 15:40:41.15 ID:qmTw1PEeO
ヒカリ「最低。なんでこんな……。碇くん、大丈夫?」スッ

シンジ「平気だよ。ちょっと殴られただけだから」

ヒカリ「殴られたって……保健室、行く?」

シンジ「いや、やめとく。そろそろネルフに行かなくちゃいけないし」

ヒカリ「どうして?」

シンジ「わからない。名前を聞く暇もなかったんだ」

ヒカリ「そんな……やっぱり、噂のせい」

シンジ「噂って?」

ヒカリ「碇くんがいなくなった時に、ネルフの人達が学校にきて、すごく騒がしかったの。だから、それでちょっとこわいねって。でも、三年生達は遊びが」

シンジ「そっか……さっき話してた度胸試しって」

ヒカリ「誰かに言ったほうがいいんじゃない? 」

シンジ「言っても、どうせなんともならないよ」

ヒカリ「そうなの? 碇くんならエヴァパイロットなんだし」

シンジ「僕がなんとかしなくちゃいけないんだと思う。自分でやりはじめてわかったんだ。僕はきっと、父さんに試されてる」

ヒカリ「試す……?」

シンジ「これまで自分の耳も目も塞いで生きてきた。だから辛くて僕がまた逃げださないか、父さんはきっと……洞木さんは、こわくないの?」

ヒカリ「私は、アスカとも友達だし。よくわからないから、軽々しくは言えないけど。孤立しちゃったら、かわいそうじゃない」

シンジ「僕たちは、何も危害をくわえるつもりはないよ」

ヒカリ「わかってる……。でも、力ってこわいの。それが権力でもなんでも。私達が、弱い人達が、危ないと思うものに近づかないようにしようって思うのは普通でしょ?」

シンジ「うん」

ヒカリ「きっと、こわがる必要ないんだと思う。けど、まわりがこわいって言ったら本当にこわいのかもって、流されてるのかな……ごめんね。こんな話、私達を守ってくれてるのに」

シンジ「僕もパイロットじゃなかったら、そうかもしれない。関わろうとはしないよ」

ヒカリ「アスカには、今の話、言わないで。友達でいたいの」

シンジ「わかった、約束するよ」

ヒカリ「えへへ、ありがとう。でも、その腫れた顔でネルフに行ったら、わかると思うよ?」

シンジ「あ、そうだね。でも、すぐにひくようなものじゃないし……」

ヒカリ「やっぱり、保健室に行こう? アイシングしてあげる。気休めでも腫れがおさまるかもしれないから」

シンジ「あ……ありがとう」
73 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 16:03:49.04 ID:qmTw1PEeO
【ネルフ本部 作戦会議室】

アスカ「ぷっ、あっはっはっはっ! なぁ〜によ、その顔ぉっ?」

シンジ「仕方ないだろ、階段で転んだんだから」

アスカ「く、くくっ。転んだって、あんた本当に間抜けね」

ミサト「アスカ、それぐらいにしときなさい」

レイ「作戦司令……。今日はなぜ招集を」

ミサト「みんなのシンクロ率がなかなか上がらないからヒアリングをね」

アスカ「私はトップでしょ! なんで私まで受けなきゃならないのよ!」

ミサト「言ったでしょ? 問題は順位ではなく、伸び代。アスカだって日本に来てから上昇が見受けられないけど」

アスカ「私はっ、まだ慣れてないからよ!」

ミサト「そう、それじゃ、いつまでに慣れるの?」

アスカ「そんなの、いつまでとか……」

ミサト「具体的に提示できなければ、甘えでしかないわ。もっとも提示するからには守ってもらいますけど」

アスカ「だったらもっとパイロットのケアをちゃんとしてよね! 満足に行き届いてるなんて一度も思ったことないわよ!」

ミサト「規定にのっとって必要な待遇は、すべて管理されています。今は使徒が来ていないから、対策が後手に回らないように話を聞く機会を設けているのよ」

レイ「私は、現状に不満はありません」

アスカ「またあんたはっ! いつもそうやって優等生ぶる!」

ミサト「レイ、環境と別に原因があると思い当たる点はある?」

レイ「いえ」

ミサト「アスカは?」

アスカ「私はもっと、最高のスタッフを揃えてほしい! そうしてくれるのなら、どこまでも高めてみせる!」

ミサト「考慮します。シンジくんは?」

シンジ「いえ、僕は、なにかあると言うわけじゃ」

ミサト「それは、あなたに上昇志向がないという考え?」

シンジ「いえ、そういうわけじゃ」

ミサト「この際だから言っておくわ。みんなよく聞きなさい」

シンジ&レイ&アスカ「……」

ミサト「あなた達はエヴァに乗るのが仕事ではないわ。使徒を倒す、ひとつの目的の為に、ネルフ全体が、いいえ、人類全体が協力しあっているの」

アスカ「わかってるわよ!」

ミサト「シンクロ率の上昇は作戦の成功率を高めるにも有効な手段のひとつよ。ここまでで満足なんて低い意識ではなく、しっかりと自覚を持ってテストにも取り組んで」

レイ「了解」

ミサト「シンジくん、少し話があるからついてきて。アスカとレイはお互いに問題点をだしあってみなさい」

アスカ「またシンジだけぇ?」

ミサト「住居の件を碇司令に報告しなくちゃいけないのよ」

シンジ「あ、わかりました」

ミサト「そんなに時間かからないと思うから。二人はまとめといてね」コツコツ ガチャン
74 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 16:04:23.19 ID:qmTw1PEeO
アスカ「――ムカつくっ!」ガンッ

レイ「……」 チラ

アスカ「なぁ〜にが人類全体よ。私達が最前線で戦わなきゃどうしようもないくせに!」

レイ「わめいたって何も変わらないわ」

アスカ「なんですって⁉︎」

レイ「あの場でそう発言すればよかった」

アスカ「言っても暖簾に腕押しでしょ。結局ねぇ、自分達の正当性を主張してそれで終わるのよ!」

レイ「エヴァに乗らなければいい」

アスカ「そんな話じゃないのよっ! 私はっ! 私は! やらなくちゃいけないんだから!」

レイ「そう」

アスカ「シンジばっかりずるいわよね。誰に殴られたか知らないけどさぁ」

レイ「え?」

アスカ「あんた、人形みたいなやつね。気がつかなかったの? 転んだってウソついてたけど、あれ。どう見てもそういう腫れ方よ」

レイ「……」

アスカ「ミサトが気がついてないはずない」

レイ「あなた、笑ってたわ」

アスカ「気にするのそこぉ? あたしは、あいつがウソつくんだから、合わせてやっただけよ」

レイ「合わせる……」

アスカ「かっこつけたいんじゃないの? 男ってのはそういうのあるみたいだし」

レイ「経験があるの?」

アスカ「な、ないけど! 雑誌で見たの! いいでしょ、別に!」プイッ
75 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 21:33:31.97 ID:+ko4vlT80
【ネルフ本部 執務室】

ミサト「失礼いたします」

冬月「……? サードチルドレンの顔の腫れはどうした。報告を」

ミサト「階段で転んだとの申告を受けております」

冬月「学校のかね?」

シンジ「はい」

冬月「この場では、虚偽申告をするなぞ許されん。パイロットの健康管理は葛城一尉の管理下にあるのだからな。管轄には、安全面も含まれている」

シンジ「……」ギュウ

冬月「まともな証言を得られないのであれば、葛城一尉にけじめをつけさせるだけだぞ」

シンジ「ミサトさんに……?」

ゲンドウ「作戦部長。中学生のお守りひとつできないのか」

ミサト「申し訳ありません」

シンジ「……! 父さんっ!」

ゲンドウ「いつ、どこで、どのように転んだか裏をとったのか」

シンジ「父さん、ミサトさんはなにも悪くないよ!」

ミサト「サードチルドレンの自主性に任せております」

ゲンドウ「嘘の申告を許したのか」

ミサト「問題になるようでしたら、改めて対処すべきかと」

冬月「タイミングが悪かったな。危機管理の問題なのだ、これは。また誘拐されるような事態に陥ったら、弁明の余地なし、すべて迅速かつ適切に処理してもらわんと困るよ。理解した上で発言しているのだろう?」

ミサト「はい」

ゲンドウ「二ヶ月の減給処分だ」

ミサト「はっ!」ビシッ

シンジ「そんな、ミサトさん、違うんだ、この腫れは」

ゲンドウ「次の報告を」

シンジ「僕の話を聞いてよ! ミサトさんが僕のせいで、そんな話……」

ミサト「サードチルドレンの住居についてご報告が」

シンジ「ミサトさんっ⁉︎」

ゲンドウ「聞こう」

ミサト「申告により、住所が決定いたしました。こちらがそのアパートになります」ペラ

冬月「安全とはもちろん言いがたいな」

ミサト「警護はいかがいたしますか?」

ゲンドウ「保安条例第十二項を適用させろ」

ミサト「厳重警護ですか?」

冬月「葛城一尉。復唱はしたまえ 」

ミサト「了解。保安条例第十二項を適用させ、出頭させます」

シンジ「くっ、なんなんだよっ! 僕にまかせるんじゃなかったの⁉︎」ギリッ

ゲンドウ「ご苦労だった。さがっていい」

ミサト「碇司令。ひとつだけ、質問をよろしいでしょうか?」

ゲンドウ「なんだ」

ミサト「シンジくんをどうなさりたいのですか?」

ゲンドウ「どうもしない。こいつの人生だ」

ミサト「エヴァに乗るのもですか⁉︎ 十四歳に背負わせるのは過酷すぎます!」

ゲンドウ「いまさらなにを言う。我々は子供に頼るしかない。パイロットは必要だ」
76 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 21:52:02.36 ID:+ko4vlT80
【ネルフ本部 エレベーター内】

シンジ「あの、ミサトさん。僕のせいで」

ミサト「黙って」

シンジ「でも……! 僕がウソの申告をしたのが原因でミサトさんが!」

ミサト「黙りなさい」

シンジ「……」ギュウ

ミサト「シンジくん。自分で決めるのは結構。でも、その判断が正しいものかどうか、もう一度考える必要があると思わない?」

シンジ「僕は、なんとか自分で解決しようと」

ミサト「碇司令に部外者と言われたから? あなたはパイロット、代わりのきかない者でもある」

シンジ「……」

ミサト「決断には責任がついてまわるの。シンジくんの責任ではないかもしれない。だけど、関わっている者達に影響する。パイロットは、そんなに軽い立場じゃないのよ」

シンジ「す、すみません」

ミサト「……にひひっ」ペチンッ

シンジ「い、痛っ!」

ミサト「ガキが気にしてんじゃないわよ。失敗はつきものなんだから。私がへこでると思う?」

シンジ「えっと」

ミサト「現場からの叩き上げはねぇ、こんなのしょっちゅうなんだから。毎日胃に穴があきそうになる中で戦ってるの。シンジくん達がエヴァに乗ってるように、私たちだって日常で自分の居場所を守るために、ね」

シンジ「……」

ミサト「全部を守るなんて考えるのやめちゃいなさい。まずはできることから、それが最初の一歩」

シンジ「はい」

ミサト「しっかし、減給はちょっち痛いわねぇ〜」

シンジ「あの、僕で力になれるのなら、なんでも」

ミサト「ぷっ、だっはっはっ! シンジくんがぁ? ……あら、でも、そうねぇ」

シンジ「……?」

ミサト「シンちゃん、ウチに料理作りに来てくれない?」パチン
77 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 22:12:32.17 ID:+ko4vlT80
【ミサト宅 リビング】

シンジ「なにがあるんだろう」ガチャ

ミサト「買い足しはしてないけど、まだそんなに日数たってないから。腐ってないでしょ?」

シンジ「そうですね。お肉は冷凍していたのがあるし、野菜も少し痛んでるけど、うん、これなら食べられそうだ」

アスカ「うげっ、本当に大丈夫?」

シンジ「匂いを嗅げば大抵わかるよ。牛乳は、新しいね。トマトもあるし、これならホワイトソースが作れると思うよ」

ミサト「よかったわねぇ〜、アスカ。シンジくんが作りにきてくれて」

アスカ「助かったのはミサトでしょ」

ミサト「お惣菜続けたかったの?」

アスカ「うっ」ヒク

シンジ「料理、覚えたらいいのに。トマトソースも作っておくよ。瓶にいれておくから。パスタにでもあえて食べたらいい」

アスカ「ふ、ふんっ。料理なんてあたしは嫌だからいいの」

シンジ「この家には必要じゃないか」

ミサト「シンジくーん、熱燗、もう一本、おねがぁ〜い」プラプラ

シンジ「はい、エプロンはっと」

アスカ「あんたさ……」

シンジ「ん?」

アスカ「不安とかないの?」

シンジ「へ?」キョトン

アスカ「べ、別に。気になったわけじゃない。ただ、ぬくぬく育ったお坊ちゃんじゃない?」

シンジ「おぼっちゃ……て、そうでもないけど」

アスカ「まぁ、そりゃ誰だって生きてりゃなにかしらあるだろうけど、あたしに比べたらお坊ちゃんって話よ。なんたって、このあたしは天才とか神童とか言われてたんだし」

シンジ「そう、だね。アスカに比べたら」

アスカ「新しい目的を掲げてはじめる不安は私だからわかる。……本当は、泣きたいんじゃないの?」

ミサト「……」グビリ

シンジ「そんな、一人暮らしするだけだよ」

アスカ「鈴原は、まだ知らないの?」

シンジ「あぁ、うん。トウジには、言いいたくないんだ。言ったら、きっと心配するから」トントントン

アスカ「お人好しもいい加減にしなさいよ、あんたのやってるのははっきり言って偽善だわ、自分の為でしょ」

シンジ「うん、そうだよ」

アスカ「あんた、少し変わった」

シンジ「それは、アスカが僕を知らないからだよ。僕たちはパイロットっていう繋がりがあるけど、身の上話をほとんどしないからねぇ」

アスカ「当たり前ね。エヴァがなければ、あたしは日本にすら来てない、うぅん、きっとママの時に……」

ミサト「……」ピクッ

シンジ「アスカのお母さん?」

ミサト「そっか、シンちゃんは知らないんだっけ」

アスカ「ミサト」キッ
78 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 22:53:07.21 ID:+ko4vlT80
ミサト「はいはい」

シンジ「……? なんですか?」

アスカ「なんでもない! 料理まだぁ?」

シンジ「今作ってるよ」

ミサト「シンジくん」

シンジ「はい?」

ミサト「誰かを守るには、強くならなくちゃだめよ。今のシンジくんに求めるのは難しいかもしれない、強さってなにかわかる?」

アスカ「……」

シンジ「最近考えたというか、こういうことなのかなって思う時が多くて」

ミサト「話してみて」

シンジ「僕は、自分でいっぱいいっぱいだったんじゃないかって。他人から良く思われたい、自分のしたいようにしたい、みんな誰だって持ってる話ですけど」

ミサト「そうね」

シンジ「できないってわかった時に、駄々をこねたり、いろんな反応があると思うんです。僕は、できるの少ないから」

ミサト「強くなるには、どうしたらいいと思う?」

シンジ「当たり前にできるようになる、のが必要、なんじゃないかな。最初は不慣れかもしれない、だけど、それができて当然まで繰り返す。そうなれば、きっと色んな、予期しない出来事にもぶつかると思うから」

ミサト「そうよ、様々なパターンがあるの。私たちの歳になっても変わらない。驚きと困惑の連続なの、不安にもつながる」

アスカ「ふん」

ミサト「アスカは、背伸びをしているけれど、この子はこの子で、わかっているの。大人たちの理不尽さを、そして子供である自分の限界を」

シンジ「アスカが?」

アスカ「やめて!」バン

ミサト「アスカ、あんたも、素直になるのを覚える良い機会なんじゃない?」

アスカ「こんな話聞きたくない! ミサトだって他人をとやかく言えないわ!」

ミサト「わたし?」

アスカ「保護者面してなによ! 自分が寂しいだけなんでしょ⁉︎」

ミサト「大人になればわかるわよ。たまには、虚しいと思う時だってあるって」

アスカ「私は都合のいいペットなんかじゃない! 素直になりたかったら自分からそうするわ!」

シンジ「アスカ、言いすぎたよ」

アスカ「シンジもシンジよ! ちょぉ〜っと変わったったぐらいで調子にのっちゃってさぁ!」

シンジ「そんな、僕は、ただ自分で思ったから」

アスカ「ほぉら、また言い訳! 現状がわかったら次は自分の壁にぶち当たんないようにしないと!」

ミサト「ぷっ、アスカったら、シンジくんに世話やいてるじゃない」

アスカ「ぬぐっ!」

ミサト「さ、シンちゃん。料理、はやく作っちゃって」
79 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 23:11:00.75 ID:+ko4vlT80
【第三新東京都市 ホテル バー】

加持「はやかったじゃないか」

リツコ「クラシックがかかっているバーなんて」

加持「リッちゃんは嫌いかい?」

リツコ「いいえ」

加持「バッハの無伴奏。一人舞台は演奏者によって聞く耳の解釈が違う。弾き語りみたいなものさ、なにを想うか、それで心に響く度合いが違う」

リツコ「ちょうどよかったのかもしれない。気分を高めたいわけではないから」

加持「昂りがあるなら、それはそれで俺としちゃ歓迎なんだが?」

リツコ「やめて。今日はそんな話をしにきたんじゃないの」

加持「わかってるよ。ここなら誰かに聞かれる心配もない。リッちゃんは碇司令とシンジくんについてどう考える?」

リツコ「わからないわ。私にもなにか頂ける?」

加持「山崎18年のウィスキーでかまわないか?」

リツコ「ええ」

加持「あの二人の間に誰かが介入したのは間違いない。それも影響力のある誰かだ」

リツコ「それで?」

加持「想像がつかないよ。シンジくんだけならわかるが、碇司令、と推察すると副司令以上には。リッちゃんだと思ってたんだが、アテがはずれたな」

リツコ「タバコ、吸ってもかまわないわよね」スッ

加持「火をつけよう」 カチ

リツコ「いつから私と碇司令の関係に気がついていたの?」

加持「いつをご希望で?」

リツコ「ふざけないで!」

加持「そう怒るなよ。最近さ」

リツコ「加持くん、これはプライベートな問題よ」

加持「悪かったよ」

リツコ「碇司令との関係は詮索しないで……!」

加持「しかし、どうにも気になってね。悪癖だな。自分の目でたしかめないと気がすまない」

リツコ「あなたが確かめたいのはもっと別の件ではなくて? 好奇心は猫をも[ピーーー]わ」

加持「おっと、これは手痛いしっぺ返しだ」

リツコ「ちゃんと聞いて。これは友人としての忠告。委員会に消されてからじゃ遅いのよ」

加持「謎は暴かないと面白くないだろう?」

リツコ「碇司令も勘づいてる。いつか身動きがとれなくなるわ、袋小路に追いつめられたネズミのようにね」

加持「そうなったら、葛城をよろしく頼むよ」

リツコ「自分でやりなさい」

加持「学生時代が懐かしいな。あの頃に戻りたいよ」

リツコ「なにも考えず、夢と希望に溢れ、若さで生きていた。でも、誰しもが汚れて大人になっていくのよ」

加持「難儀なもんだ」
80 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/26(月) 23:11:43.34 ID:z30POKuYO
リツコ「話を戻しましょう。私も、気になってはいる」

加持「そうだろうな。だからここにいる」

リツコ「わからないのは事実よ。碇司令以上の特権階級というと思い当たる人物はキール議長達ぐらいしか」

加持「シンジくんの身辺調査はしているんだろう?」

リツコ「ふぅー。ええ」

加持「きっかけは誘拐事件だ。犯人は捕まっていない。それどころか、捜査に消極的な姿勢が見られる」

リツコ「パイロットが無事に戻ったからではなくて?」

加持「なぜだ? なぜシンジくんは無事に戻ってきた? 誘拐した目的が今だに見えず、音沙汰がないのは不自然じゃないか」

リツコ「痕跡がないのだから、わかりようも」

加持「いや、それができたのさ。シンジくんを帰した、そして碇司令との関係の変化でね」

リツコ「……」

加持「誘拐までは完璧だった。足取りも掴めず、証拠を全て抹消するには明らかな悪手だ。と、なると、目的はそうではない」

リツコ「シンジくんにもう一度聞いてみる?」

加持「その必要はないさ。そうすれば、碇司令が止めるだろう。俺には確信に似たなにかがあるね」

リツコ「つまり」

加持「ここまでの経緯を話すと、碇司令とシンジくんを取り持つことができ、尚且つ碇司令にとってかなりの影響力を持つもの。それは権力じゃない。脅しが通用する相手とも考えにくい」

リツコ「二人にとって、親しい者?」

加持「リッちゃんだと思った理由がわかったか? それが、誘拐犯の正体さ」

リツコ「でも、そんな人が……」

加持「先入観を捨てて考えるんだ。俺は引き続き調べてみるよ」

リツコ「まさか、そんなはず、ありえないわ」
81 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/27(火) 02:17:03.81 ID:d4zFeL7H0
【ネルフ本部 コンテナ】

シンジ「はぁ、疲れた……」ガチャ

ユイ「おかえり。シンジ」

シンジ「わ、わぁっ⁉︎」

ユイ「そんなところで立ってないで、はやく中に入りなさい。一人暮らしをするのね」

シンジ「えぇ、まぁ……はい」 スッ

ユイ「どうしたの? 正座なんかして」

シンジ「いや、なんでいるのかなって」

ユイ「いちゃだめだった?」

シンジ「そういうわけじゃ」

ユイ「どう接していいかわからないの無理がないわね。いきなり現れて母親なんて言われても」

シンジ「あ、いや、そのっ」

ユイ「それでかまわないわ。親子の縁は簡単に断ち切れないものだから。私たちは血が繋がっているという事実さえあれば、やりなおす機会はある」

シンジ「そうですね」

ユイ「ええ。あなたは冷たくされた父親に自身の価値を認めてほしいと追い縋り、そして死んだと思っていた母である私にはなにをしてほしいの? 愛情? 思いきり甘えたい?」

シンジ「わかりません」

ユイ「反動は誰にだってあるものよ。シンジは頑張ってないわけじゃなかった。ただ、自信がなかった。そうよね?」

シンジ「僕は、そんな」

ユイ「頭を撫でてほしいの? 抱きしめてほしい?」

シンジ「その、僕は中学生ですから」

ユイ「母親にとってはいくつになっても息子なのよ。それとも、母ではない、異性にそうしてほしい?」

シンジ「あの、なんて呼べば、そこからはじめませんか」

ユイ「好きなように呼びなさい。どんな呼び方をされても私は怒ったりはしないわ」

シンジ「そ、それじゃぁ、ユイさん?」

ユイ「やっぱり母さんとは呼んでくれないのね」シュン

シンジ「え、だって今どんな呼び方をされても」

ユイ「怒らないとは言ったけど、悲しまないとは言ってない。それに、残念そうな素ぶりが見えないと愛していると伝わらないでしょう?」

シンジ「あ、愛してるって」

ユイ「私にとってもシンジにどう接したらいいかわからないの。だから、時にはストレートに伝えないとね?」

シンジ「なんで、今になって戻ってきたの?」

ユイ「シンジに会いたかったから」

シンジ「……」ギュウ

ユイ「本当よ」

シンジ「そんなのウソだ。だったらもっとはやく戻ってきてくれたってよかったじゃないか」

ユイ「そうね。私が愚かだった。こんなにも簡単な答えに行き着けなかったなんて」

シンジ「答え?」

ユイ「私の望みは、星と共に悠久の時を超えた存在になることだった。でも私はすでに、望みを叶えていたの。あの人を利用してシンジを産めたんだもの」

シンジ「なに言ってるかわからないよ」

ユイ「知恵の輪は既に出来上がっていたの。あなたの選択で人類に、生きとし生けるもの全てに、福音をもたらしなさい」

シンジ「ほ、本当になに言ってるんだよ」

ユイ「あぁ、シンジ。私の望みは全てあなたにある。あなたが私の願いそのもの」

シンジ「な、なんなんだよ。この人が、本当に母さん?」

ユイ「紛れもなく、母親よ。六分儀という性もあなた。 少しの間眠りましょう。起きたらまたいつも通り。眠りなさい、かわいいかわいい私のシンジ」プス
82 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/27(火) 13:10:52.93 ID:d4zFeL7H0
【ネルフ本部 執務室】

冬月「加持特別監査官。呼びだされた理由は説明するまでもないな?」

加持「いやはや、驚きましたよ。夜分遅くに、まさか副司令直々のお呼び出しとは」

冬月「無駄口を叩かんでいい。なにやら、こそこそと嗅ぎ回っているみたいだが」

加持「さて」

冬月「下手な誤魔化しはやめるんだな」パサッ

加持「……」

冬月「ここにある写真で、君の姿がはっきりと確認できる。スーパーコンピューターMAGIの配線管理室でなにを傍受していた」

加持「碇司令もご存知っすか?」

冬月「報告するかどうかは詳細を聞いてから決める」

加持「なぜ、すぐに報告しないんです?」

冬月「碇も暇ではないのでな。こういった雑務はどの道、私にまわされる」

加持「苦労してますね」

冬月「まったくだよ。だが、問題を生みだしているのはキミだ」

加持「サードチルドレンと碇司令の変化が気になったもので」

冬月「それだけのために命を危険に晒すのか」

加持「裏を返せば、俺の命よりも重い価値があるということでは?」

冬月「勘違いするな。キミの命など、道端に転がる石ころと同じだ。とるにたらんよ」

加持「それもそうだ……俺はあるひとつの仮説を立てています」

冬月「言ってみたまえ」

加持「2人の仲を取り持とうとしているのは、死んだはずの人間の亡霊なんじゃないかとね」

冬月「なぜ、そこまで」

加持「碇ユイ。彼女が生きているとすれば、セカンドインパクトの真実にもっとも近い。ある意味では、委員会や碇司令よりも。それは、魅力的なんですよ」

冬月「我々の子飼いでいれば今しばらくは長生きできたろうに、裏の顔を持っていたか。後悔はないか?」

加持「するならとっくにやめてますよ」

冬月「そうか」カチャ

加持「副司令に拳銃は似合わないっすね」

冬月「似合わん姿を見せるのも仕事というものだ」 パァン
83 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/27(火) 13:20:32.20 ID:d4zFeL7H0
ユイ「――失礼します。あら、こちらで倒れてるのは……お取り込み中でしたか?」

冬月「問題ない、かたはついた。死体はすぐに処理させるよ。今日はどうしたね?」

ユイ「まずは感謝の言葉を。シンジを守っていただき、ありがとうございました」

冬月「白々しい、私は、あの子を守っていたのではない。キミを守っていたつもりだったよ」

ユイ「結果に相違ありません」

冬月「全てはキミの計画の内だったのだろう」

ユイ「私はこれまでの人生で計画など考えたこともありません」

冬月「キミのその笑顔に、俺もすっかり騙されたよ。ただ、純粋なだけだと思っていた」

ユイ「私は願いに対して真っ直ぐでいたい。それだけです」

冬月「そのために、どれだけの人間を欺いてきた」

ユイ「かわいそうな人。あなたは、自分が思っていた理想像と違う私に幻滅なさっているんですね」

冬月「キミに振り回されるのはもうたくさんだ」

ユイ「いいえ。あなたはもう引き返せない。私から解放されたい? それとも、愛されたい?」

冬月「う、き、キミは」

ユイ「感謝しています。あの人から私を守ってくれた。私のために自分を押し殺し、耐えてきたのですね」

冬月「碇の悩む姿も、キミは気にもとめなかったんだろう。俺のようにざまあみろとほくそえんでいたんじゃない。興味がなかったんだろう?」

ユイ「いいえ。愛情を注いでいました。ただ、形が変わるだけなのです」

冬月「詭弁だな」

ユイ「ふふっ、先生。もうひとつ、最後のお願いを聞いてくださいますか」

冬月「聞くだけならな。言ってみろ」

ユイ「シンジをください」

冬月「次は自分の息子を翻弄するつもりか」

ユイ「私の願いの成就は、あの子に幸せな結末になります」

冬月「人を操り、行き先を誘導する。形だけの意思になんの意味がある」

ユイ「重要なのは、自分で選んだという事実のみですわ。それだけで簡単に納得してしまう」

冬月「あくまで己に責任はないと言い張るつもりか。キミのやっているのはただの刷りこみだぞ」

ユイ「そうかもしれませんね。幸せは、掴みとることもできますし、作為的に用意することもできる」

冬月「籠の中の小鳥にするのかね」

ユイ「塀の中の世界が全てであるならば、それは何よりの幸せです」

冬月「間違っている! 人は外を見なければ中の有り難みを実感できん!」

ユイ「シンジならば価値を見い出せるはず」

冬月「なんたる言い草だ! これまでの計画を水泡に帰すつもりなのかっ!」バンッ

ユイ「元々、裏死海文書をゼーレに渡したのは私。……発端は私なんです」

冬月「始まりはきっかけにすぎん。動きだしてしまっている以上、キミの手から離れているのだぞ。直接的にも、間接的にも関わってきた多くの人間の運命が狂わされてしまっている」

ユイ「修正させてもらいます。補完計画をあるべき姿に」

冬月「バカな……! 今さらそんな話が」

ユイ「先生、許してください。約束の時、願いの成就の為に」
84 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/27(火) 13:43:32.60 ID:d4zFeL7H0
キール「そこまでだ」コツコツ

冬月「その声は……?」

キール「久しぶりだな。こうやって対面するのは」

冬月「キール議長、なぜここに。もしや、委員会とユイくんは最初から協力関係にあったのか」

キール「存命を知る立場にあったのは、正確には、議長である私だけだ」

冬月「ならば、碇の企みもとっくにご存知なのでしょうな。我々の命運もこれで尽きたか」

キール「そうはなるかは、キミ次第だ」

ユイ「先生にはまだ使い道がありますもの」

冬月「俺が嫌だと言ったら?」

キール「ユイ博士が帰ってきた以上、その選択肢は用意されていない。ネルフなぞもはや形骸だけの姿にすぎん」

冬月「……」

キール「キミが選ぶのは、ラクに死ぬか、悶え苦しんで死ぬかのどちらか」

冬月「沈黙をもって答えよう」

キール「そうか。加持リョウジ」

加持「……」ピクッ

キール「いつまでそうしている」

加持「もうよろしいので?」 スッ

冬月「お前はっ⁉︎ たしかに先ほど撃ったはすだっ!」

加持「その拳銃、空砲っすよ。あとはこうやって、血のりをね」

冬月「まさか、私をここにおびき出すために」

加持「まんまと罠にかかってくれましたね。いつも碇司令と一緒にいるんで、遠回りしましたが」

冬月「そうか、最初から狙いは俺だったか。拉致すればいいものを。キール議長もまわりくどいやり方をなさる」

キール「まだ、碇に悟られるわけにはいかない。まだ、答えは聞いていない。沈黙以外で答える最後の機会を与える」

ユイ「先生、賢い選択をなさってください。あなたはあの人に嫉妬していた」

冬月「違う。あれは気の迷いだった」

ユイ「そうやって逃げるのですね。私の存在を心から消しさるおつもりですか」

冬月「魔性の女め!」

ユイ「生きてきた時間を取り戻すには、先生はあまりにも遅すぎたんです」

冬月「……」

ユイ「私のために汚れた手も、包みこんでさしあげます」スッ

冬月「なぜだ? どうしてこうなってしまったのだ」

ユイ「先生はなにも悪くありません。何も考えなくていいのよ、全て、私のせいにしてしまえば、先生はラクになれる」ニコ
85 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/27(火) 13:54:30.71 ID:d4zFeL7H0
【ネルフ本部 ラボ】

マヤ「先輩? まだ残って……だ、大丈夫ですかっ⁉︎」 タタタ

リツコ「マヤ?」コトン

マヤ「うっ、お、お酒の匂い。ちょ、ちょっと飲み過ぎなんじゃ」

リツコ「ふっ、かまわないでしょ。どれぐらい飲もうと、あの人は、心配すらしてくれない、優しい言葉をかけてくれた記憶なんかないわ」トクトク

マヤ「いったい、誰の話……こ、こぼれますっ! こぼれてます!」

リツコ「あの人はね、今だにいなくなった人が忘れられないのよ。私はいったい、なんなの……なんだっていうの!」ガシャンッ

マヤ「きゃあ⁉︎」 ドサ

リツコ「いつまでも過去の出来事にとらわれて。そんなに恋しいのかしらね……」

マヤ「せ、先輩、もうそれぐらいに」

リツコ「加持くんは言ったわ。先入観を捨てろって、もし彼女が生きているとしたら……これまでの私はどうなるの?」

マヤ「あの?」

リツコ「許せるわけない……私を捨てるなんて……許せるわけがないのよっ!」ブンッ

マヤ「ひっ⁉︎」

リツコ「でも、可能性のひとつにすぎない。仕事、しなくちゃ。あの人のために。MAGIのメンテナンス、母さん、待ってて」スッ

マヤ「先輩⁉︎ そんなフラフラの状態でいったいどこに⁉︎」

リツコ「かまわないで!」ドンッ

マヤ「あぅっ!」ドサ

リツコ「一人にして……一人になりたいのよ」
86 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/27(火) 14:09:15.87 ID:d4zFeL7H0
【ネルフ本部 モニター室】

加持「まさか、リっちゃんがこうも疑心暗鬼になってくれるとはね」

ユイ「不倫なんて報われない恋よ。頭でわかっていても、希望を抱かずにはいられない。ましてや、死んだと思っていた人間が相手だもの」

加持「勉強になりますな。これもあなたの計画通りですか? ユイ博士」

ユイ「今だ過程、どう選ぶかは個人が決める」

加持「リッちゃんは、これからどうなります」

ユイ「聡明な頭脳を持っていても所詮はオンナなのよ。彼女が何に縋っているのか考えればわかる」

加持「碇司令は権力こそあれど、実態は孤独です。副司令とリッちゃんという腹心を失えば、丸裸も同然だ」

ユイ「そうね」

加持「ネルフを乗っ取るには都合が良すぎますね」

ユイ「あの人が気がついた時には外堀は埋まっているのが理想。それまで、私は疑われてはいけないし、あの人のイメージの中にある私を壊してはいけない」

加持「肝心の碇司令はご子息への教育にご執心のようですしね、それもあなたに会いたいという願いの為に」

ユイ「シンジに父親のかわりはいないからそうしたの。向き合うようになったのは私がきっかけ」

加持「子育て放棄を理由に、シンジくんには父親を……そして、碇司令には目くらましを。まさに一石二鳥ってわけですか。正直、全てがあなたの手の内でおそろしくさえあります」

ユイ「買い被りすぎよ」

加持「碇司令が折れれば、後ろ盾にはキール議長がいる。争いはなく、ほぼ無傷でネルフが手に入る。のぼりつめたらどうするんです?」

ユイ「表舞台に立ったら、シンジにふさわしい相手を用意させる」

加持「セカンドチルドレンですか?」

ユイ「そうと決まったわけではない。私を罵る?」

加持「やめときますよ、出来過ぎているとは思いますがね」

ユイ「そう」

加持「硬化ベークライトで固められた、アダムの処置については?」

ユイ「ゆっくりやりましょう。特等席で見届けたいのならそうしなさい」
87 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/27(火) 14:45:45.67 ID:d4zFeL7H0
【同刻 芦ノ湖】

ゲンドウ「始まりの地、ここが出発地点か」

カヲル「夜分遅くに一人で出歩くとは感心できませんね。あなたは、自分のお立場をもう少し考えた方がいい」

ゲンドウ「……」 チラ

カヲル「はじめまして。お父さん」

ゲンドウ「その制服は、第壱中学校のものだな」

カヲル「はい。と、言っても通ってすらいませんが」

ゲンドウ「機関の所属名はどこだ」

カヲル「重要なのは、ボクがヒトかそうではないかではありませんか?」

ゲンドウ「……」

カヲル「大昔、ここにリリスの黒き月が落ちてファーストインパクトが起こった。そして、アダムから生まれた僕たち使徒は、眠りについた」

ゲンドウ「俺に接触してきた目的はなんだ」

カヲル「言ったでしょ? どこでもないって。目的は生き残る、わかりやすい話です」

ゲンドウ「(使徒か)」

カヲル「その呼び名はおかしい。リリンも気がついているんだろ? ヒトも十八番目の使徒であるということを」

ゲンドウ「思考を読めるようだな」

カヲル「そんなのはどうでもいい。リリンはリリスから生まれ、僕たちはアダムから生まれた。種を残す為に僕たちはどちらか一方が滅ぶ運命にある」

ゲンドウ「あなた達使徒が悠久の時を生きられても、我々人類と同様、永劫ではない」

カヲル「ヒトは死にゆく運命(さだめ)だと言いたいのかい? 次の世代へのバトンを紡いで」

ゲンドウ「人は完璧にはなれない。状況への変化に適応するために選んだ進化のプロセスだ」

カヲル「なぜ?」

ゲンドウ「群れに答えはある。個として見れば脆弱な生物だ」

カヲル「完璧な生命体は救済だと考えているのかい?」

ゲンドウ「むなしいだけだ。群れを捨てれば、完璧であるにこしたことはないだろう。だが、それでは生きる意義を失う」

カヲル「死の価値とはなんだ?」

ゲンドウ「死とは個の終着点に過ぎない。魂の解放とも言えるが、それまでになにを成すかという散りざま次第だ」

カヲル「……」

ゲンドウ「あなたは何番目の使徒なのだ」

カヲル「ボクは渚カヲル。第壱使徒です」

ゲンドウ「なに?」ピク

カヲル「話を続けましょう。ボクたちはお互いに不完全な生命体だ。アダムより生まれしヒト以外の使徒はリリンを滅ぼし、完全な個体になろうとしている。わからないのは、リリン。キミ達だよ」

ゲンドウ「それが、今の質問か」

カヲル「リリンは自ら進化の可能性を閉ざそうとしている。科学の力を使い、エヴァというデッドコピーを作り、使徒を撃退する一方で、滅びの道を歩んでいる」

ゲンドウ「ふっ」

カヲル「なぜだ? なぜ、リリンは生き残りたいと願うのに、群れを放棄しようとする? 今の話と辻褄が合わないじゃないか」

ゲンドウ「人の心が気になるか」

カヲル「……」

ゲンドウ「知恵の実を与えられた人類はいまや、一部の意向により方向づけられ、操作されている。個としての意思は尊重されない」

カヲル「ヒトをまとめるためにかい?」

ゲンドウ「領土をまとめるには統治者が必要だ。しかし、いずれ腐敗していく……進化は頭打ちなのだよ。紛争は終わらず、破壊を、資源を食いつぶしている。人は増えすぎ、傲慢になってしまったのだ」
88 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/27(火) 14:53:43.18 ID:d4zFeL7H0
カヲル「ヒトの歴史は悲しみに綴られている。だからなのかい? 個を選び、群れを捨てるのは」

ゲンドウ「その通りだ。人は感情を捨てて生きていけない。理性だけでは生きられないからな」

カヲル「幻滅したよ」

ゲンドウ「どう受けとってもらってもかまわん。どの道、どちらかは滅ぶ。あなた達使徒と戦うのは人にとって決定事項だ」

カヲル「……」

ゲンドウ「用件はそれだけか?」

カヲル「そうですよ……あぁ、それと」

ゲンドウ「なんだ」

カヲル「キミたちリリンがネルフと呼んでいる地下施設にあるのは、本当にアダムの本体?」

ゲンドウ「その問いには、俺も同じ疑問がある。お前はコピーか?」

カヲル「お互い、答えるつもりがないのはわかりました」

ゲンドウ「用が済んだのなら消えろ」

カヲル「悲しいね。歌という文化の極みを残せる美しさを持っているのに、それでもダメなのか」テクテク
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/27(火) 22:52:30.06 ID:GL4sBxx1O
内容変わってる?
90 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/28(水) 11:04:31.21 ID:+tCFHMrJ0
無駄の省略と整合性をはかっています
誤字はあいかわらずありますが少なくなってるのでまぁ良しとします
91 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/28(水) 15:34:07.61 ID:ZadT34pk0
【翌日 ネルフ本部 ラボ】

ミサト「おじゃま〜……って、ちょっとリツコ」

リツコ「あぁ、ミサト」

ミサト「ひどいクマじゃない、それにここ、どうしたの?」

リツコ「年増の癇癪よ」

ミサト「と、年増……達同い年なんだからね? それにまだ三十路にもなってないのに、なに言ってんのよ」

リツコ「四捨五入すれば変わらないでしょ? 二十五を過ぎれば下り坂とも言うし、男は若い女の方がいいじゃない」

ミサト「気持ちの問題よ。見た目だって、まだまだ……」

リツコ「ホント、あっという間よね。ハタチを過ぎてからは」

ミサト「まぁ、それはそうだけど。めずらしいじゃなぁい、センチメンタルになるなんて」

リツコ「少し、感傷に浸りたいだけ」

ミサト「ふぅん……リツコがそうなるのって男絡み?」

リツコ「どうかしらね」

ミサト「どうせ私みたいにペラペラ喋るようなのと違ってあんたは喋らないですよーだ」

リツコ「そのセリフ、キャンパスで最初に会った時を思い出すわ」

ミサト「え? いつだったっけ?」

リツコ「学食であなたが私に話しかけてきたの、もう忘れたの?」

ミサト「言われてみれば、そうだったわね……」

リツコ「妙に馴れ馴れしく話しかけてきたから、最初は仲良くなれないと思ったりもしたけど」

ミサト「でへへー。その節はどーも」

リツコ「あの頃はまだ、色んな体験が楽しくて、私もスレてなかった。いつからかしら、楽しかったはずの遊びや研究に居場所を見つけられなくなったのは」

ミサト「誰だって、飽きるわよ」

リツコ「いいえ。むなしいの」

ミサト「そっか、リツコもか」

リツコ「新しい発見があると、価値観が一変し、私は、その為に生きていると、幸せを実感できた。でも、それだけでは、今は物足りない」

ミサト「虚構と現実のはざま、いつまでも選り好みはしていられないものね」

リツコ「それでも、人は希望に恋い焦がれる。叶わない望みを抱くのは、辛いのね」
92 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/28(水) 15:55:21.98 ID:ZadT34pk0
【ネルフ本部 執務室】

リツコ「お呼びでしょうか」

ゲンドウ「ダミープラグ計画を急ぎたい。レイのパーソナルデータ収集の報告をしろ」

リツコ「必要な情報は既にMAGI上で計算を終えております」

ゲンドウ「委員会に報告を行うには、試験運用まで移行しているのが必須条件だ。形になるまでにどれぐらいの期間を要する」

リツコ「不確定な要素が多過ぎます。計算を終えているといっても、実際にシステムに最適化をして組み入れるにはまだまだ調整が必要ですわ」

ゲンドウ「では、質問を変えよう。全体の何パーセントまで完了している」

リツコ「60といったところでしょうか、完璧を望まれるのであれば残り30にさしかかった辺りがもっとも時間を要します」

ゲンドウ「……」

リツコ「レイのデータはダミーと照らし合わせ、細かい誤差が発生します。詰めを急ぎすぎると制御不能になる可能性が高まります」

ゲンドウ「かまわん、動けばそれでいい」

リツコ「なぜ、ご報告を?」

ゲンドウ「老人達は予定を早めるつもりのようだ。秘密裏に十三号機までの建造を世界各地で進めている」

リツコ「では、量産機にやはりダミーシステムの採用を」

ゲンドウ「ああ。やつらはパイロットという不安定な要素を排除する決定を下した。我々も切り捨てられぬよう保険はかけなければならん、技術のノウハウはこちらにあると見せつけたいのだ」

リツコ「承知いたしました。次に、ご子息誘拐の件ですが」

ゲンドウ「その件は、もういい」

リツコ「徹底解明すべきでは?」

ゲンドウ「サードチルドレンは生きて戻ってきた、パイロットとしての価値があれば充分だ。余計な人手をまわす余裕はない」

リツコ「犯人の目的は依然として不明なままです。なぜ生きて返してたのでしょうか」

ゲンドウ「……」

リツコ「誘拐犯にとって傷つけたくはなかった、あるいは、傷つけるのが目的ではなかっとしたら」

ゲンドウ「もういい、下がれ」

リツコ「……っ! なぜ、母さんも、私も……あなたにとってなんなの……! さぞや気分がいいでしょう! 母娘揃って一人の男に!」

ゲンドウ「赤木博士、君には期待している」

リツコ「この後に及んでまやかしをして、隠し事をするつもり⁉︎ シンジくんをさらったのが誰かわかってるんじゃなくて⁉︎」

ゲンドウ「以上だ、さがりたまえ」

リツコ「ねぇ……私を……愛してる……?」

ゲンドウ「……ああ」

リツコ「うそつき……」クル
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/28(水) 17:39:03.47 ID:ZadT34pk0
【ネルフ本部 発令所】

マヤ「初号機、冷却値をクリア、作業はセカンドステージに移行してください」

リツコ「零号機の胸部生体部品はどう?」

マヤ「大破していますからね。塗装も含めて新調しますが追加予算の枠、ギリギリです……あの、先輩、昨日は……」

リツコ「忘れてちょうだい」

マヤ「はい……」

マコト「作業完了しました。地上でやってる使徒の処理も、タダじゃ無いですし、たまりませんね」

リツコ「人はエヴァのみで生きるにあらず。生き残った人たちが生きていくにはお金がかかるのよ。復旧率は?」

マヤ「先の戦闘によって第三新東京市の迎撃システムは、大きなダメージを受け、現在までの復旧率は26%です」

シゲル「そういえば、米国を除く全ての理事国が量産計画の予算を承認したと聞きました」

リツコ「そう」

マヤ「え、アメリカは既に三号機を着工開始してるんじゃなかった?」

マコト「それが、今になって難色を示してゴタゴタしてるらしいよ。あの国、失業者アレルギーだから」

マヤ「EU加盟国よりも生産力は高いはずなのに」

シゲル「大国は大国なりの意地とプライドってもんがあるんじゃないの〜? 整備計画が頓挫しないといいけどね」

マコト「そういえば、赤木博士も大変ですね」

リツコ「なんの話?」

マコト「定例会議でパイロット問題で追及されたって噂、聞きました」

シゲル「俺も俺も。人道的ではないとかなんとか言われたんじゃないんスか?」

リツコ「その他に、五分で動かなくなる決戦兵器だとか、制御不能に陥る危険極まりない兵器だとかね。そこ、計算間違ってるわよ」

マコト「ほんとだ」カタカタ

リツコ「先の戦闘で国連は大規模な追加予算をネルフに補填させたわ。某国では二万人の餓死者がでているというし、ある程度は仕方ないのかもしれない」

マヤ「に、二万人、ですか」シュン

リツコ「ウチの利権にあぶれた連中のやっかみでもあるのよ」

冬月「左様。政府による突き上げだ。ただ文句を言うだけが仕事の、くだらない連中のたわごとだよ」

リツコ「おはようございます」

マヤ&マコト&シゲル「おはようございます」

冬月「作業の進捗状況はどうかね」

マヤ「現在、L.C.L.の温度は36を維持、酸素密度に問題なし」

シゲル「各計測装置は正常に作動中」

リツコ「今の所は順調ですわ。初号機と弐号機の修復作業は明後日までには完了いたします」

冬月「ふむ、ごくろう」
94 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/06/28(水) 18:15:16.31 ID:ZadT34pk0
【ネルフ本部 加持 デスク】

アスカ「かぁ〜じさんっ!」ヒョイ

加持「アスカ、お前、学校はどうした、学校は」

アスカ「なんだか、加持さんに会いたくなっちゃってサボっちゃった!」ギュウ

加持「こら、おいっ、抱きつくな」

アスカ「また香水の匂い。今度は誰の?」

加持「大人の付き合いさ。少し、酒を飲んできただけだ」

アスカ「そうなんだ。なに見てたの? パソコン?」

加持「いや、これは」

アスカ「なに? なによこれぇ⁉︎ なんで私とシンジのDNA配列を調べてるの⁉︎」

加持「実験に関係するからだ」

アスカ「だって、これ、重なりあってるじゃない!」

加持「近い内に弐号機と初号機で互換性のチェックを予定しているらしくてな」

アスカ「互換性ぃ?」

加持「ぶっちゃけちまうと、相性が悪いかどうかだな」

アスカ「DNAで?」

加持「自分の精神は遺伝子の制約をあまり受けないと思っているだろうが、そうでもないのさ。食べ物の好み、顔の好み、そういったものはDNAによって操作されているという分析がある。親に似た人を好きになる原理だ」

アスカ「そうだとしても、それってあくまで一説なんじゃないの」

加持「情報収集として必要だと判断されたんだ。結果を聞きたいか?」

アスカ「バカシンジとの相性なんか聞きたくなんかない!」

加持「そうか? ここ見てみろ。なかなか良い数値で」

アスカ「どうして……? どうして加持さんは振り向いてくれないの? 私が子供だから?」

加持「ふぅ、本当に子供扱いしなくていいのか?」

アスカ「えっ」

加持「男を甘く見てるだろう」スッ

アスカ「え、あの、そのっ! か、加持さん?」

加持「どうした、ビビっちまったか?」

アスカ「意外といじわるなのね」

加持「そうか? アスカが俺に何を求めているのかわかってしまうからな。少し、からかってみただけさ」

アスカ「誰かにしがみついちゃだめなの?」

加持「だめとは言ってない。ただ、アスカが相手にしてるのは人間だ。思い通りにいくとも限らないものさ。大人の階段を駆け上がるのもいいが、本当に望んでいるのか?」

アスカ「探究心は必要よ」

加持「シンジくんと足して二で割ったらちょうどいいのかもな。アスカは焦りすぎている」

アスカ「そうやって、わかるようになりたいの。みんな誰だって、色んな一面を持ってるものだもの。シンジにガキだって言ってたけど子供なのは私も同じ」

加持「そうだな」

アスカ「抑えきれないの。感情の波を。あたし、どうしたらいいの?」

加持「自分で考えるんだ」

アスカ「いつもそうやって、あたしには優しくしてくれない。突き放すだけじゃない……見せかけだけの優しさなんてほしくないのに」

加持「これは結果をプリントアウトしたものだ。持って帰れ」ペラ

アスカ「いらないって――」

加持「黙って、受け取って帰るんだ」

アスカ「……っ!」

加持「授業にはまだ間に合うだろ? 昼からでもいいから、学校にはちゃんと行ってこい」ポン
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 12:21:28.45 ID:4hmlr8vQO
まだかよ!!!
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 12:50:55.26 ID:fyK2bkc4O
わしが続きを書いてやろう
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 12:55:20.97 ID:RrNnh5EeO
シンジ「うっ」どぴゅるるるる
アスカ「うっ」ずぴゅーーー
ゲンドウ「おめでとう」

完
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 13:16:19.39 ID:fsKnoHPIo
前みたいに面倒くさくなっちゃったんで結末ぱぱっと書いてコレで終わりですってならなければ遅かろうがなんでもいいよ
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 13:24:51.25 ID:p51fw/poO
あ?なんだコラかんだコラ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 13:45:41.77 ID:sP6RovNyO
        |:.:.:.:.:.:.:.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ∧:.\
        |:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : : : : : : :/: : : : : : : : : イ: : : : :|∨.: : : : : : : : : : : :∧: : :
        l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. l:.:|: 7: : :/: : : :イ: : : /:イ:|: : : /∧∨: :|: : :l: : : : : : : : |`ヽ
        `X:ァ<ヽ:.:.!:.|V: : ;イ: : : ::/: : :;イ:/|::!: : イ,リ Vi: : !: : :!: : : : : : : ::|
          》/ ヽ丿:|:.|:.|: /イ: : : /|: : / {/ !:!::/ }リ  W:リ∨:.!: : |: : : :|: :|
            〈 ′∧∨:/||l//|!:.:∠__!::/ /l′ V/ !′  }:.リ |:リ}: : !: : }i:ハリ
           ∨ i ノ V! |リ |/ _,.ム'=≧x=ー{′     _レ'_,.>''レlリ: :/|l' ソ
             Vーxヽ,リ    <じ勺   `X>    /ん勺¨X / }ノ
           \        ー '_         弋ン  /
              {`ー、                      ̄   /
          / ̄ハ|ハ                      /
          /. : : : : リ: : :.             __ ∨     /
        |:l i: (: : : /: : : :ヘ               ァ'´   /
         /:l ∨_/. : : : : : :\      x─ - -   /ー 、 _
      /:.: .:l  V: : : : : : : : : : :.\     ー‐  /\      ̄ ヽ
     /|: : : : .  V   . : : : : : : : \      , <´.    ∨       \
    / .:∧: :.: :.:.  ∨   : : : : : : : : : >‐ァ ‐《: :i: : .   \          、
 ./  . :.:.∧: : : : :.  \   : :ヽ:. : : : : : :/: : :∧::|: : :     \      |
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/01(土) 13:55:00.68 ID:tRA9EGpAO
書いてくれてありがとうという感覚はないのか・・・
















ありましぇーーん
102 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/01(土) 22:37:14.03 ID:7xjZiaP10
ちゃんと終わらせますよ
ぼちぼち投下してきましょかね
103 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/01(土) 23:36:41.70 ID:7xjZiaP10
【ネルフ本部 発令所】

冬月「ダミー計画か、昔を思い出すよ」パサ

ゲンドウ「……」

冬月「ゼーレのやり方は相変わらずか。組織内の人間だけで編成すればいろいろと面倒になる、その為の間に合わせに使うつもりだな」

ゲンドウ「ああ。やつらは特務機関ネルフを駒として見ている」

冬月「感心できんな。非人道的だと唱える理事会を抑えつけるのは。力と力で衝突すれば互いに犠牲は少なくなかろうに」

ゲンドウ「変わらずの潔癖主義だな。老人たちのやり方は理解できるものだよ。……この時代に綺麗な組織など生き残れん」

冬月「無人機……神を造りだすつもりなのか」

ゲンドウ「具現化された神への道標は未だ遠い」

冬月「この実験が成功すれば実現へ大きく近づく、それもまた事実ではないのか」

ゲンドウ「杞憂だ。S2機関を取り入れる手段がまだない」

冬月「ふむ、動力源か」

ゲンドウ「使徒から接触があった」

冬月「なんだと? いつだ?」

ゲンドウ「昨夜だ。やつは自らを第壱使徒だと名乗った」

冬月「まさか⁉︎ では、そいつは……」

ゲンドウ「そう。最初の人間、アダムだよ」

冬月「(ユイくんが根回しをしているのだろうか)」

ゲンドウ「おそらく、月のタブハベースにいたはずだ」

冬月「ううむ、第七支部の存在を我々に隠していたのはそれが理由だとすれば……」

ゲンドウ「知らされていない項目があるはずだ。こちらを無視して裏死海文書が掟の書へと行を移している」

冬月「軽率な行動は命とりになるやもしれんぞ」

ゲンドウ「わかっている。どの道オリジナルのアダムはこちらにある、地下にあるリリスと共に」

冬月「アダム、リリス、ロンギヌスの槍、そしてエヴァ三体。老人たちが焦るわけだな」

ゲンドウ「その通りだ。トリガーに必要なカードは揃っている」

冬月「碇、ひとつ聞きたい」

ゲンドウ「なんだ」

冬月「昔、お前がまだ学内にいた頃、ユイくんに近づいたのは、才能とそのバックボーンの組織を目的に近づいたというのが仲間内での通説だった」

ゲンドウ「……」

冬月「これまでの行動を思い返せば、それらがただのバカバカしい噂だったと理解している。人類補完計画を提唱したのもユイくんの為だからな」

ゲンドウ「ああ」

冬月「今はなんの為に動いている」

ゲンドウ「ふっ」

冬月「なにが可笑しい」

ゲンドウ「……先生。移りゆく流れ中で不変のものなど存在しません。目的など今となっては、理由のひとつなのです」

冬月「……」

ゲンドウ「動きだした歯車は壊れるまで回り続けるのだよ」
104 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/02(日) 00:04:39.53 ID:uPcXiuCB0
【ネルフ本部 コンテナ】

シンジ「うっ……いてて……」

加持「変な格好で寝てたからどこか痛めたかね」

シンジ「ここは……?」

加持「寝ぼけてんのか? ぼーっとしてるが」

シンジ「昨日はたしか、母さんと話をしてて、頭が痛い。今、何時ですか?」

加持「正午すぎかな。今日が引っ越しの予定日だろう?」

シンジ「はぁ、あの、加持さんが来た時に誰かいませんでした?」

加持「いや? 誰も見てないよ」

シンジ「いやっ、そんな。……いないなら、いいんですけど」

加持「甘い一夜でも過ごしたのかい?」

シンジ「ち、違いますよっ!」

加持「そうか。シンジくんは奥手そうだしな、若い内は、色んな子にアタックするのもいいと思うぞぉ」

シンジ「ミサトさんと同じようなこと言うんですね。僕は、加持さんみたいにはなれません」

加持「なにも俺になれという話じゃない。経験がものを言うのさ。本当に好きな子ができた時に、距離の測り方を知ってるのと知らないとでは違う。そうだろ?」

シンジ「それは、そうですけど……僕は、自信がないし」

加持「勇気と別物だ。自信はあとからついてくる。ないんだったらまずは作ろうとしなきゃな」

シンジ「はい」

加持「そう難しく考えるなよ。俺はシンジくんが自分のために一人暮らしを選んだのは最初だと思ってるさ」ポン

シンジ「そう、ですか」

加持「流されず、キミの意思で決めた」

シンジ「……」

加持「シンジくんは自信をもつ、そのハードルが高いんだろうな」

シンジ「僕は……」

ユイ「あら、起きてたの?」ヒョイ

シンジ「あっ! ど、どうしてここに⁉︎」

加持「おはやいご到着で」

ユイ「警護ご苦労様」

加持「いいっすよ。どうせなにかしてくれるわけじゃないんでしょ」

シンジ「か、加持さん? ユイ、さん、と知り合いなんですか?」

加持「シンジくん。俺はこの人に頼まれてここにいたんだ、ずっとってわけじゃないがね」

ユイ「シンジ。あなたを取り巻く環境は、今日から少しずつ変わっていくわ」

シンジ「な、なに言ってるんだよ。昨日はいったい……」

ユイ「疑問がつきないわね。だけど、あなたが納得してもしなくても時間は残酷に、それでいて平等に流れている。あなたが知るべきは、限られているの」

シンジ「いい加減にしてよっ!」バンッ

ユイ「待てないのよ。強引かもしれないけど、全てを理解できる頃になれば、きっと私に感謝をするでしょう」

加持「もう俺は帰っても?」

ユイ「かまわないわ。あの人にはうまく言っておいてね」

加持「シンジくん、すまない」 スッ

シンジ「加持さん、な、なんで……?」

ユイ「さぁ、これを受けとって」カシャ

シンジ「なんなんだよそれ……」

ユイ「使徒の目指すモノ。アダムよ」
105 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/02(日) 00:07:15.97 ID:uPcXiuCB0
シンジ「うっ……気味がわるい」

ユイ「怯えなくていいわ。シンジが初号機に乗ったのがはじまりだとすれば、アダムは通過点に過ぎない」

シンジ「アダムっていったい……」

ユイ「これは肉体だけ。いいえ、半身だけと言った方が正しいのかも」

シンジ「もういいよ、出てってよ! 今すぐに!」

ユイ「シンジ……。あなたの為なのよ」

シンジ「うそだっ! 今さら現れて、母親だって言われて、挙句にアダムだの神話だの!」

ユイ「強制はしたくない。お願いだから、アダムを受け入れて。そうすれば、リリスとの融合を済ますのみ。ゆくゆくはどんな願いも思いのままのよ?」

シンジ「僕は普通に暮らせればそれでいい! エヴァも使徒もいない、みんなが笑って過ごせるような……そんな生活がおくれればそれで……」

ユイ「できないの」

シンジ「どうしてだよ! 父さんだって、今ならきっと!」

ユイ「大きな流れが許してはくれない」

シンジ「僕にお願いするんだろ! だったら、僕のお願いだってきいてくれたっていいじゃないかっ!」

ユイ「全てが終われば、自ずと答えが、シンジの望んだ世界が待ってるわ。あなたがそう望むのなら……きっと」

シンジ「……なんなんだよっ……そればっかりじゃないか」

ユイ「聞きなさい」

シンジ「いやだっ!」

ユイ「黙って聞くの!」

シンジ「……っ!」

ユイ「いい? アダムとリリスは融合した次のステージで本来あるべき姿へと還る。でも、その状態では、魂の力に耐えられず、長い時間肉体を保持できないの」

シンジ「……」

ユイ「あなたの願いを叶える、そのために全てのエネルギーを使い魂は再び還元される。形が変わるだけなのよ」
106 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/02(日) 00:19:19.12 ID:uPcXiuCB0
シンジ「願いを叶えてくれるっていうなら、今叶えてよ!」バンッ

ユイ「無理なのよ、段階を踏まなければ」

シンジ「頭がどうにかなりそうだ!」

ユイ「やはり、理解を求めるのは難しいのね」

シンジ「そうだよ、僕たちには時間がたりない」

ユイ「でも、時は待ってはくれない」ピッ

シンジ「どこに電話……? ボタン?」

ユイ「シンジ、これだけは忘れないで。私は、あなたを愛している」

シンジ「だったら、もっと親らしくしてよ……!」

ユイ「ごめんなさい。あなたが世界を創造すればそうなるでしょう」

保安部「およびですか」ガチャ

ユイ「例の場所へ」

シンジ「この人は?」

ユイ「暴れるようなら気絶させなさい。遅くなると気がつかれる恐れがある」

保安部「了解」スタスタ

シンジ「こ、こないでよ! なにをするつもりなんだ!」

保安部「仕事だ。恨むなよ」スッ

ユイ「……」

シンジ「だ、誰かっ!」
107 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/02(日) 01:04:51.71 ID:uPcXiuCB0
【第三新東京都市第壱中学校 昼休み】

アスカ「ふん」ペラ

ヒカリ「アスカ……? なに見てるの?」

アスカ「あ、これは、その、なんでもっ!」パラ

トウジ「……? なんか落ちたで」ヒョイ

アスカ「あ! ちょっと、返しなさいよ!」バッ

トウジ「なになに? サードチルドレンとセカンドチルドレンは規定値を上回りお互いに良い影響を……」

アスカ「読み上げんな! 機密なんだからねぇ、それぇ!」ドン

トウジ「お、おう、って、なんやねんこれは! シンジとゴリラ女のグラフぅ⁉︎」

ケンスケ「なんだ?」ヒョイ

ヒカリ「え? 碇くんと……」

アスカ「ちがっ! はぁ……。機体の互換性テストがあるらしいのよ。だから、それが理由」

トウジ「ほっほぉ。そんなのがあるんか、大変やのぉ」

ケンスケ「へぇ、これ良いことづくめじゃないか」

ヒカリ「わ、私にも見せて」

アスカ「ヒカリまで……」

ヒカリ「あっ、ごめん。でも、気になっちゃうんだもん」

アスカ「いいけど。あくまでデータよ単なる」

ヒカリ「わぁっ、見てこれ! 二人の相性って凄く良いんだぁ!」

アスカ「聞いちゃいないわね」

トウジ「言われてみれば、シンジはぐいぐい引っ張ってくれるタイプと相性ええんかもしれんのぉ」

ケンスケ「うんうん、違いないねぇ」

ヒカリ「アスカ、一歩引いてワガママを許してくれる相手じゃないと疲れちゃうと思う!」

アスカ「……」ヒク

ケンスケ「エヴァのパイロットっていう繋がりだってあるし、本人達もまんざらじゃないんじゃないか?」

トウジ「ペアルックか⁉︎」

ケンスケ「そうそう、一つ屋根の下で生活してたし。ユニゾンの時はなぁ?」ニヤニヤ

トウジ&ケンスケ「いやぁ〜んな感じ!」

アスカ「……」プルプル

ヒカリ「ちょ、ちょっと二人とも」

トウジ「アスカ! 僕はアスカがすきだ!」

ケンスケ「シンジ! 実は私も……」

トウジ「ああ、アスカ。夫婦漫才しよう!」

ケンスケ「もちろんよ! シンジいっ!」

アスカ「……ころす」

トウジ&ケンスケ「へ?」

アスカ「遺言を残す時間を与えるわ。五秒だけね」ポキポキ

ヒカリ「あ、アスカ」

アスカ「止めないで、こいつらは死ぬ必要があるわ。なぜならバカにつける薬はないから」

トウジ「なははははははっ、ムキになるんは図星な証拠ぶへらぁっ⁉︎」ドサ

アスカ「次……!」スッ

ケンスケ「と、トウジ⁉︎ うわああぁっ⁉︎」ドタバタ


108 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/02(日) 01:29:02.42 ID:uPcXiuCB0
とりあえずここまで
次からはあまり変なレスあると投下しません
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 01:59:29.91 ID:wDQEmhQco
反応するとかえって荒らされると思うよ
あと、言っちゃなんだけど短期間に何度もスレ立て直したりしたらそりゃ目をつけられるよ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 02:03:57.33 ID:kbogh8c3O
感想ではない余計なことばかり書くでない
続けなくなったら困るではないか
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 03:22:41.54 ID:4OLnns6D0
感想書くまで、まだ話が進んでないじゃないか
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 07:41:49.61 ID:Hffa++s1O
>>108
お前は何様なんだよ
ここでお前がシコシコ勝手にオナってるのを物珍しさで見にきてる奴らが大半なのにお前がチャチャ入れられるのやだからやめますって言ったところでバカかこいつとしか思わんわ
お前のいう変なことを書かれるのが嫌ならここじゃなくて自由帳にでも書いてろks
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 08:37:40.76 ID:dwkKKMcpo
乙
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 09:41:55.20 ID:CKwhFxiqo
>>112
気に入らなきゃ、見なきゃいいだろ
書く自由もあれば、見ない自由もあるが、書けないのは、能力が無いからだ。
書けもしないで文句だけ付けてくるお前みたいなヤツが、この世で一番キモいんだよ。クズ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 10:29:38.92 ID:oPaCZhrBO
>>111
感想なんてどこにもないぞ
上から目線で言ってるやつがいるだけ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 10:38:31.06 ID:kbogh8c3O
内容について言及しない限り「感想」とは言わんだろしな
この板はこうだから短期間にうんたらかんたらとか自由帳にうんたらかんたらとか中身に一切触れてないし
>>109や>>112はただイッチの呟きに「反応」してるだけのおサルさんではないか
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 10:57:49.85 ID:Hffa++s1O
>>114
論点のすり替えになってないか?
ここは書きたくて書いてるやつがスレたてて書いてるところだぞ
お前らがどれだけ続き書いてくれって言ったって>>1が書きたくなくなったらそれまでなんだよ
>>1が感想以外を書かれたら続き書く気ありませんって言ったんだし書かないならそれはそれでいいじゃん
ここでは誰が何言ったっておかしくないんだし>>1がすぐへそ曲げるやつなのがわかったんだしいつ更新止まるかわからないことがわかっただけましだよ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 11:06:58.81 ID:pL8GWDJhO
投下しない=書かないとは一言も書いてないわけだが
それにこの>>1は前作で書くモチベなくなってもちゃんと完結させた実績があるやつだぞ
SSなんて立て逃げや放置してるやつがめちゃくちゃいるんだし実績があるとなしじゃ大違いだ
しかも前回レスと今回更新までに二日しか時間あいてないしそれで遅いと言われんのはこれまでの更新が早かったからからだろう
>>117はただ単に叩きたいだけだろ
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 11:13:50.06 ID:KPt6PJjJO
>>117
>>102もそうだけど立て直し以前から>>1は何度もちゃんと完結させると書いてあるではないかw
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 11:15:58.27 ID:SQ0SS4BXo
はいはいそこまでそこまで論議は別のところでやろうね
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 12:38:10.03 ID:A7fMqcPFO
>>117は前スレ最後で>>1が書いてるの見てこいよ
趣味で書いてる、立て直しは自己満、読みたくなければ読まなくていい、暇つぶしにでも使ってくれ←まとめるとこう
全部前スレ時点でお前の言ってること論破されてんぞ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 13:17:23.06 ID:pL8GWDJhO
変なレスがあるなら投下しないと書かれて自ら変なレスしていくやつって潰したいだけっしょ
待ってるやつの行動とは思えん
123 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/02(日) 20:12:19.25 ID:uPcXiuCB0
まさか二行でこんなにレスがつくとは
とりあえず自分のレスが一人歩きして拡大解釈された感じすかね
今日は書かないっすべつのことやってるんで
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:28:52.87 ID:RWCLxNRbo
ここまで黙ってたが、ひと言だけ。
余計な発言引き出して雑談しようって輩は結構いるから。

じゃ、続きまで書いたら起こして
125 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/03(月) 13:53:57.91 ID:IlfL6BOR0
【ネルフ本部 ラボ】

加持「今日も地上は暑いよ」

リツコ「ここは休憩所ではないんだけど」

加持「もちろん、リッちゃんに会いにきてるのさ」

リツコ「他人におべっかばかり使うのって疲れないの?」

加持「本音だよ」

リツコ「もういいわ、ミサトが探してたわよ」

加持「あいつになにかした覚えはないが」

リツコ「気のない返事ね。約束でもすっぽかした?」

加持「いや」

リツコ「そう。私も聞きたい件があったからちょうどいい。加持くんはなにを知っている、いえ、どこまで状況を把握しているの。碇司令の奥様は本当に生きているの?」

加持「これはまた唐突だな。質問に質問で返すが、リッちゃんは自分をどこまで把握してる」

リツコ「……」コト

加持「分かった気がするだけで、完全には理解できない。自分自身が一番怪しいもんさ。100%理解し合うのは、不可能なんだよ」

リツコ「だからこそ人は、自分を、ひいては他人を理解しようと努力するのよ」

加持「裏切られたと、現実を受け止める覚悟はあるのかと聞いているんだ。その冷静な仮面が剥がれないかとね」

リツコ「とっくに見せかけだけよ。取り繕っていつも通りにいるだけ。本当の私は、壊れてるわ」

加持「ユイ博士は……生きているよ」

リツコ「ーーやはりね」

加持「ユイ博士が初号機に取り込まれた際に試みたサルベージは失敗した。だが、彼女は自力で戻ってきた。方法までは俺もわからない」

リツコ「まさか、ありえないわ。コアに取り込まれてしまったのよ……肉体は生命のスープに溶けてしまっているはず」

加持「だが、生きている、それは揺るぎない事実だ」

リツコ「……」

加持「このことを碇司令が知っているとしたら?」

リツコ「……っ!」キッ

加持「睨んでも碇司令とリッちゃんのこじれた関係は、俺が悪いわけじゃないぞ」

リツコ「今は、時間がほしい」

加持「恋愛というものは、どちらか一方に責任の全てが偏るわけじゃない。行動をするのは男だが、受け入れるのは女だ。双方合意の上で成り立っているからな。強制された関係でもないんだろう?」

リツコ「わかってるわ! ロジックじゃないのよ!」

加持「よく考えるんだ。碇司令がどちらを選ぶか、リッちゃんを選ぶはずが」

リツコ「やめて」

加持「自分一人で抱える前に、俺か葛城に相談してくれれば」
126 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/03(月) 13:59:05.41 ID:IlfL6BOR0
リツコ「……っ! 今さら友人面するつもり⁉︎ どこまで人をバカにすれば気が済むの⁉︎ 加持くんは最初から生きているって知っていたんでしょう⁉︎」

加持「騙したのはお互い様だ。リッちゃんが碇司令の企みに加担しているのを俺は知っている」

リツコ「そう……。奥様が生きているのなら、きっと不倫相手を殺したいのでしょうね」

加持「ユイ博士はなんとも思ってないさ。いずれ滅んでしまう世界だからな」

リツコ「加持くんは、ユイ博士側にいるのね」

加持「彼女の手足となって色々調査している最中でね、地下にある大量のクローンも見せてもらった」

リツコ「どうやってセキュリティカードを……」

加持「あれがダミー計画の正体か?」

リツコ「黙秘をさせてもらうわ」

加持「それならそれでかまわないが、リッちゃんは誰のために黙ろうとしているんだ?」

リツコ「それは」

加持「いつもの冷静沈着、頭脳明晰な姿からは想像もつかないな。その自信のない、揺れた瞳は」

リツコ「……」

加持「リッちゃんは利用されていたんだ。碇司令がユイ博士に会うために。補完計画の真の目的がそうだと知っていたか?」

リツコ「いや、もうやめて、うそ、うそだわ、そんなのうそよ」

加持「ここに、副司令の肉声を録音したテープがある」カチ

『碇ゲンドウは、碇ユイと会うために補完計画のシナリオを修正し、別の結末を用意した』

加持「……」カチ

リツコ「副司令が、なぜ……そんな……」

加持「合成はしていない。あとでいくらでも検証してもらっても、なんなら副司令に直接聞いてもいい……どちらの側にいるのかもね。それでも、碇司令に忠誠を誓うのか?」

リツコ「……」

加持「悪いようにはしない、正直に話してくれ」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 15:44:46.00 ID:IlfL6BOR0
【ネルフ本部 MAGI内部】

リツコ『母さん、先日葛城ミサトと言う子と知り合いました』

ナオコ『ようやくお友達ができたのね』

リツコ『他の人たちは私を遠巻きに見るだけで、その都度母さんの名前の重さを思い知らされるのですが、なぜか彼女だけは私に対しても屈託がありません』

ナオコ『そうなの、よかったわね』

リツコ『彼女は例の調査隊ただ一人の生き残りと聞きました。一時失語症になったそうですが、今はブランクを取り戻すかのようにベラベラと良く喋ります』

ナオコ『本当にめずらしい。そんなに楽しそうに話するなんて』

リツコ『まだあるんです。ミサトが大学に来ないので、理由を白状させたら、バカみたいでした。ずっと彼氏とアパートで寝ていたそうです』

ナオコ『あらあら、それは困ったわね』

リツコ『飽きもせず、一週間もだらだらと! 彼女の意外な一面を知った感じです、今日、紹介されました。顔はいいのですが、どうも私はあの軽い感じが馴染めません』

ナオコ『昔から男の子が苦手でしたね、リッちゃんは。自分の幸せを逃しちゃわないか心配よ。やはり女手一つで……ごめんなさい、ずっと放任してたものね、嫌ね、都合の良い時だけ母親面するのは』

リツコ「母さん、私、どうしたらいいの」ギュウ

MAGI「……」ブゥーン

リツコ「嫌なことがあると、こうやって、母さんのところで体育座りをして引きこもる。なにも成長していない。私の場所、私の空間、どこにあるの?」

ナオコ『ーー本当にいいの?』

ゲンドウ『ああ、自分の仕事に後悔はない』

ナオコ『嘘。ユイさんの事忘れられないんでしょ。でもいいの。私』スッ

ゲンドウ『……』

リツコ「ねぇ、母さんは碇司令と私の関係を知ったらどう思う? 嫉妬するかもしれない、実の娘に対してさえ」ナデナデ

MAGI「……」ブゥーン

リツコ「女である自分を捨てきれなかった母さんだから。最後まで女でいるのを選択したのね」

MAGI「……」ブゥーン

リツコ「後悔はない? ……私は、幸せの定義なんてわからない。わからなくなってしまった。なにを望んでいるのかでさえ。あの人に抱かれても、嬉しくなくなった」ドンッ

ナオコ『リッちゃん……幸せになるのよ』

リツコ「私だって! ……幸せになりたい、母さん、助けて……誰か、助けて」ギュウ

オペレーター放送「バルタザール並びにメルキオールの試験運行は次のフェーズへ移行します。技術一課の職員は速やかに作業を開始してください」

リツコ「仕事、やらなくちゃ。仕事」ブツブツ

マヤ「せんぱーいっ?」タタタ

リツコ「……」スッ

マヤ「あれ、ここにもいない、どこいったんだろう」キョロキョロ

リツコ「どうしたの」カシャン

マヤ「あ、中で作業をされてたんですね。躯体の中のテストプラグにデストルドー反応が検出されました」

リツコ「どれぐらい?」

マヤ「0.2と微量ですが無視するというわけにも」

リツコ「わかった。行きましょう」

マヤ「あの……? 結膜炎ですか? 目が真っ赤ですけど」

リツコ「そうね。そうかもしれない。あとで診てもらうわ」

マヤ「それなら私、いい眼科知ってます。そこの先生のところで家族みんなお世話になってるんですよ」

リツコ「そう……。マヤ、問題の箇所は私が当たるから副司令のところにいってこれを渡して」スッ

マヤ「これは?」

リツコ「渡せばわかる。中身を見てはだめよ」

マヤ「い、いえっ! そんな、見るなんてめっそうも!」ブンブン
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 16:14:38.50 ID:IlfL6BOR0
【付属病院 手術モニター室】

ユイ「もしもし、どうしたの?」

加持「赤木リツコがおちました、これで碇司令は孤立無援の状態です、いつでも裏をかけます」

ユイ「随分はやかったのね」

加持「お察しがついてるはずですがね。少しばかり、俺が動いたからですよ。旧知の間柄でもあるんです、ま、それぐらいはかまわないでしょ?」

ユイ「それで?」

加持「例の元は、やはり本部奥深くの第七層あります。綾波レイのパーツが大量に生産されているのをこの目で確認しました」

ユイ「あれはただの器。リリスの魂はひとつしかない、欲しいのは製造方法という技術的な話よ。データはもらえる?」

加持「驚きましたよ、ダミーの正体、そして、エヴァの正体にね……近日中にディスクに全てを記録し渡すそうです」

ユイ「まるで遺書ね」

加持「碇司令への最後通告はいつ頃をご予定で」

ユイ「そうね、死人を出さないようはやめましょう。赤木リツコは有能な人材だし、失うのは惜しい」

加持「わかりました、では、帰国後すぐにでも」

ユイ「かまわないわ、それじゃ」ピッ

シンジ『んぐんむーっ! んむむー!』

医師『ユイ博士、麻酔薬の投与を開始してもかまいませんか?』

ユイ「マイクを」

保安部「了解」ピッ

ユイ「シンジの猿轡をはずしてあげて」

医師『はっ』スッ

シンジ『ぷはっ! なんだよ、これ、はずしてよっ!』ガタガタ

ユイ「マイク越しでごめんなさいね。シンジにアダムの移植手術を行うのよ」

シンジ『……っ⁉︎』ギョ

ユイ「暴れられると危ないから全身麻酔になるけど、我慢しなさい」

シンジ『アダムってさっきの……⁉︎ なんでそんなっ⁉︎」

ユイ「理由は先ほど説明したわ。理解できていなくても仕方ないとも言った」

シンジ『そ、それはないんじゃないの……。僕は、そんなの望んでないって……!』

ユイ「たしかに、あなたはそう言ったわね。それでも、私はやめるつもりはない。はじめて」

医師『はっ。おい、猿轡を噛ませろ』

看護師A『あなたはそっちにまわって抑えてつけて』スッ

看護師B『了解』

シンジ『ふむぐぐーっ! むぐぐーっ! んー!』

医師『心配するな、すぐ終わるよ。ライトを』

看護師『はい』ガチャン
129 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/03(月) 16:55:00.26 ID:IlfL6BOR0
【数時間後 ネルフ本部 ターミナルドグマ 培養液】

リツコ「関節部の動きに異常は?」

レイ「問題ありません」

リツコ「そう、あと一時間浸かったら出ていいわよ」

レイ「はい、あの……赤木博士」

リツコ「なに?」カタカタ

レイ「ヒトと使徒の違いってなんですか?」

リツコ「どういう意味かしら」ピタ

レイ「弐号機の人から、私は人形みたいだって言われました。どう捉えていいのかわからなくて」

リツコ「アスカがあなたを?」

レイ「はい」

リツコ「ぷっ……くっくっくっ」

レイ「おかしいですか?」

リツコ「的を得ているわね。あの子、分析力がある」

レイ「……」

リツコ「レイは存在価値を探ろうとしているの? それは、人として? それともリリスという使徒として?」

レイ「よく、わかりません」

リツコ「あなたはわかっているはずよ、器でしかないくせに……!」

レイ「……」

リツコ「自己を確立させてどうするつもり? まさか、碇司令に目をかけてもらおうって魂胆かしら。今以上に」

レイ「……」ゴポゴポ

リツコ「人にも、使徒にもなれないのよ! ただの魂の入れ物でしかないわ! 中間の存在があなた!」

レイ「はい」

リツコ「培養液がなければ、長期間生きられない身体が物語っているでしょう? まわりを見てごらんなさい。機能に不備があれば、いくらでも変わりがいる」

レイ「私は、人形?」

リツコ「私達は神ではないのよ……! コピー体を作れても魂の創造はできない! くだらない質問はやめて!」バンッ

レイ「……はい」

リツコ「私、あなたが嫌いになったのよ。その顔を見る度に、誰をモデルにしてるか確認させられてしまうから」

レイ「……」

リツコ「すすんで壊すようなマネはしないわ、いくら変わりがいると言ってもね」

レイ「私は、死んだらどうなりますか」

リツコ「そのままよ」

レイ「今の、記憶は……」

リツコ「引き継ぐのは不可能。不満でもあると言うの?」
130 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/03(月) 16:56:06.14 ID:IlfL6BOR0
レイ「どうしてなのか、知りたいだけです」

リツコ「人のフリがうまくなったのね……いいわ、感情が芽生えたという前提で答えてあげる」

レイ「感情が芽生えた?」

リツコ「知的探究心から物事は動きだすの。知恵の実を食べたのもそそのかされたとはいえ、好奇心のせいだしね」

レイ「……」

リツコ「質問は、死ぬとどうして引き継ぎができないのか? でいいのかしら」ギシ

レイ「はい」

リツコ「魂が借りものだからよ。あなたの存在は、誰しもが見ている夢みたいなもの」

レイ「夢……」

リツコ「人は寝ている時、夢を見ている間は鮮明だけれど、次の場面に切り替わったら前に見てた映像は覚えていられない。もちろん、覚えている、という例外がないわけでもない」

レイ「はい」

リツコ「しかし、100%に限りなく近い数字で覚えていられないでしょうね。新しい器に移し変えるというのはそういう話。あなたという個人を確立させる根拠は生まれない」

レイ「いないのと同じ……リリス、それが私」

リツコ「魂はね」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 22:45:19.19 ID:8CovOC1uO
お前の書くエヴァSSは原作再現度ぱねえわ
よくキャラ掴んでんな
132 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/04(火) 11:40:28.86 ID:0bP/l5ZF0
原作で本当に言ってるセリフにそれっぽいの付け足してるだけなんで誰でもできますよ
とことん見た人の方が必然的に再現度はもっと高くなってくと思います
133 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/04(火) 12:12:28.23 ID:0bP/l5ZF0
【ネルフ本部 発令所】

シゲル「戦自より入電。ヒトロクサンマルに滑走路の使用許可を求めています」

ミサト「そんなスケジュールあったっけ。物資の搬入かしら?」

シゲル「いえ、違うようです。なにやらVIPを乗せているみたいスね」

ミサト「ぶいあいぴー? お偉いさん?」

マコト「誰でしょうか……政府関係者かな」

ミサト「こっちも暇じゃないってのに。識別信号はわかる?」

マヤ「シグナルは……エアフォースワン? 大統領専用機です」

ミサト「大統領ぉ⁉︎ アメリカの⁉︎」

マヤ「は、はい。間違いありません」

ミサト「大国のトップがお客様じゃなぁい。日本政府ではなくネルフに何の用かしら……」

マコト「さぁ……」

ミサト「なんだかきな臭い感じがするわね……とにかく、許可は出しておいて。あと日本政府にも確認を」

オペレーター「了解、内閣総理大臣へのホットライン開きます」

冬月「碇はまだ来ていないのか?」

マヤ「はい、まだお見えになっては」

冬月「やれやれ、良い上司とはいえんな」

マヤ「そんな。ネルフは碇司令がいてこそです」

冬月「下手な世辞はよせ。不満がないわけでもなかろう」

シゲル「そりゃ、まぁ……なにもないわけじゃないっスけど一般企業に比べたら天国みたいなもんですよ。なぁ?」

マコト「お前は給料面だけじゃないか」

シゲル「なにが悪いってんだぁ? 福利厚生も手厚いし、充分な対価が支払われていれば俺はどうだっていいね。贅沢だってできるし」

マコト「まったく」

マヤ「あ、そうだ。副司令、赤木博士からこちらの封筒を渡すように頼まれました」スッ

冬月「なに? 中身は、なにかしらの申請に不備があったか?」

マヤ「見ないように仰られていたので」スッ

冬月「……」カサ

マヤ「渡せばわかると伺っております」

ミサト「……?」

冬月「なるほど。この後は赤木博士に会う用事はあるかね?」

マヤ「はい。報告したい案件がありますので、もうしばらくすればラボに向かいます」

冬月「君に判断はまかせると伝えてくれ」

マヤ「了解しました」

ミサト「VIPの出迎えはいかがいたしますか?」

冬月「本来であれば碇が行うべきだがな。あいにくと碇は不在で、私も優先したい急用ができた。葛城一尉、代行を頼めるか」

ミサト「はっ! では、大統領との会談には私が出向いたします」ビシッ

冬月「ネルフは国連の管理下にある治外法権だ。誰が相手であろうと毅然とした態度でな」

ミサト「代表を任命いただき恐縮です。善処いたします」
134 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/04(火) 13:14:46.43 ID:0bP/l5ZF0
【人類補完計画委員会 特別収集会議】

ゼーレ02「生きていたとはな」

ユイ「ご挨拶が遅れまして、申し訳ございません」

ゼーレ04「これまでなにをしていた。なぜ今になって我々の前に姿を現してきたのだ」

キール「その問いには、私から答えよう。ユイ博士は、我々に最も有力な協力者として戻ってきた」

ゼーレ02「真意は?」

キール「補完計画の完遂に他ならない。証明として、碇が別のシナリオを目論んでいた証拠を得たらしめた」

ゼーレ03「中間報告書には目を通してある。本当なのかね? 抜粋すると、碇ゲンドウがキミに会う為に我々とは違う、別の結末を用意していたとは」

ゼーレ05「信じがたい話だよ。人類と個人を天秤にかけるだけでも正気とは思えない」

ユイ「事実ですわ。側近である冬月副司令からのインサイダー(内部告発)です」

ゼーレ06「ふん、愚かな男だ」

ゼーレ02「奴には然るべき罰を与えねばならない」

キール「異議はなし……だが、後任者を決めてからだ。タイムスケジュールの記述に余波が及んではならない」

ゼーレ05「それでは、私の国から」

ゼーレ02「君の国は責任が嫌いだろう? なにかあった時にゴタゴタするのではないかね」

キール「ネルフの後任者は碇ユイ博士に一任する」

ユイ「懸念は心中お察しします。もし、私がもっとはやく姿を現していたら、夫はこのような算段をしなかったでしょう」

ゼーレ06「ならば問おう。キミが我々に死海文書とは違う、裏死海文書を渡した時にこうなると予想できていたのでは?」

ユイ「私は、自分の願いを叶えようとするだけ精一杯で。他に気をまわす余裕はありませんでした」

ゼーレ02「薄っぺらい戯言を信じろと? くっくっ、笑わせる。発言には気をつけたまえよ。なぜ夫を蹴落としてまで後釜に座ろうとする」

ユイ「取るに足らない言葉よりも結果を。私に皆様方の意向に背く意思はありません、必要であると判断なされば監視をつけてくださっても結構です」

キール「よい。ユイ博士、確認をすべきはひとつだ」

ユイ「はい」

キール「その願いは我々の悲願と一致するものか?」

ユイ「相違ありません」

キール「以上だ。異議のあるものは?」

ゼーレ一同「……」

キール「約束の時はそう遠くはない。エヴァンゲリオン初号機による遂行を望むぞ」

ユイ「既にいくつか手をうっております。それと、もう一つ、報告させていただきたいことが……タブリスを潜入させております」

ゼーレ02「ああ、キール議長から伺っているよ」

ユイ「彼を三号機パイロットのフォースチルドレンに選定いたしました」

ゼーレ05「勝手なマネをしおって! さっそく司令気取りか!」

ユイ「なにが不満なのでしょうか。計画に遅延は許されません。マルドゥック機関に登録済である第壱中学校にいる生徒達のコアでは不十分です」

ゼーレ04「S2機関の搭載を試みている四号機ではだめなのか?」

ユイ「三号機と共に四号機は建造に遅れが発生しているそうですが」

ゼーレ05「それは……」

ゼーレ03「キミの国の話だったな。三号機と四号機の建造権を強引に主張しておいて情けない」

キール「承認する。ダミー計画はどうか」

ユイ「技術的な問題はクリアいたしました。夫は綾波レイのパーソナルデータを移植していますが、こちらは渚カヲルのパーソナルデータを移植いたします」

ゼーレ03「コントロールは有効なのかね?」

ユイ「アダムは凶暴性がありますが魂のデジタル化はできません。あくまでフェイク、擬似的なものです。想定上は可能です」

ゼーレ05「赤っ恥をかかせておいてできませんで済ませられるか! 必ず運用可能にするのだ!」

ユイ「はい。皆様方の意向通りに――」
135 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/04(火) 14:09:50.07 ID:0bP/l5ZF0
【ネルフ本部 女子ロッカールーム】

レイ「私にあるものは命、心の容れ物。作り物の人形。この鏡にうつっているのは……」 キュッキュッ

レイ(少女)「あなたはあなた」

レイ「あなた誰? これは誰? これは私。私は誰?」

レイ(少女)「私は一人目のあなた、同じものがいっぱいいるのも私。いらないのも私」

レイ「なぜ、あなたがわたしの中にいるの? 赤木博士は、夢の出来事は長期間記憶の保持ができないと言っていた。どうして、ずっと鮮明なの」

レイ(少女)「赤い土から作られた人間。男と女から作られた人間。私はこの世の理(ことわり)とは相反する存在だから」

レイ「あなた誰、あなた誰、あなた誰」

レイ(少女)「いらないものがいっぱい。赤い色。赤い色は嫌い。流れる水。血。赤いヒトは嫌い。弐号機パイロットも嫌い、でもいい。簡単に壊れる、あの女は壊す」

レイ「なぜ弐号機の人を壊すの? 私が私でない感じ。とても変。体が融けていく感じ。私が分からなくなる」

レイ(少女)「心の入れ物。魂の座」

レイ「私の形が消えていく。私でないヒトを感じる。リリス? 本来あるべき姿に還り、ひとつになりたいの?」

レイ(少女)「それはとても気持ちの良いこと」

レイ「ひとつになりたいのは私?」

レイ(少女)「私じゃない、変化している、私もあなたも同じ」

レイ「変化?」ポタ

レイ(少女)「顔を鏡でよく見て」

レイ「これは、水? 涙……泣いてる、ないてるのは、わたし……?」

レイ(少女)「鼓動を感じる」

レイ「……」 ゴシゴシ

レイ(少女)「祝福の鐘を鳴らし、歓喜の歌を。アダムが目覚める」

レイ「誰の中に?」

レイ(少女)「碇シンジ。もうひとつの紛い物は裏に」

レイ「私と同じ?」

レイ(少女)「違う。でも、いずれひとつになる。それはとてもとても気持ちの良いこと」

レイ「そう」

レイ(少女)「そろそろ行きましょう」

レイ「どこに」

レイ(少女)「碇くんの元に。アダムの元に」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 00:44:43.59 ID:e9dDNEfmO
アスカVSレイフラグ立ってる気がする
直す前はなかったよね
137 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/05(水) 11:16:18.59 ID:FtkwUp490
アスカとレイの構図にしてもそうですが基礎になる分が残っているので投下分までは足りない部分の再構築がやりやすいです
いろいろ加筆修正していますが前スレが下書きなら今スレは清書って感じですかね
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 22:26:12.50 ID:O6IxMjnHO
>>112で作者露骨に煽られてて草生えるこういうやつはNGにぶちこんじまえ
139 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/05(水) 23:14:32.88 ID:FtkwUp490
【第三新東京市 ビジネスホテル】

加持「ご無沙汰してます」

国防大臣「まずは、政府へおかえりとでも言うべきか。随分とつれなかったな」

加持「突然の連絡になってしまい申し訳ありません。調査部もパニクってましたよ。亡霊が今さら現れるとはね」

国防大臣「碇、ユイか」 パサ

加持「ご存知の通り、戸籍上は司令である碇ゲンドウ氏の妻です」

国防大臣「党の幹事長や総理も極めて驚かれていたよ。司令交代というゼーレからの一方的な通知、いや、脅迫では」

加持「心労がかさんでいるようで」

国防大臣「胃が痛いよ……裏があるのもわかりきっているからな。まったく、碇という一族はなんなのだ。両夫妻、そしてパイロットに至るまで、身内固めではないか」

加持「調べますか?」

国防大臣「答えるまでもなかろう。だが、キミだけでは心許ないと判断した」

加持「組む相棒のデータを貰えますか」 ポリポリ

国防大臣「……」スッ

加持「この子は……中学生、ですか」ペラ

国防大臣「彼女には、パイロットの監視を行ってもらう。戦略自衛隊からの派遣だ」

加持「こりゃあ、まいったな。腕は信用できそうにもありませんね」

国防大臣「ひよっこと聞いているが、なに、相手も素人同然だ。問題はなかろう」

加持「霧島、マナね」

国防大臣「彼女には裏切らないよう保険をかけてある。キミは、断面図を入手しろ」

加持「準備に時間がかかりますよ。本部構造の全体把握をされる理由は、やはり直接掌握を視野にいれているんすか?」

国防大臣「余計な詮索は身を滅ぼしかねないよ」

加持「俺が内偵だとバレていないとも限りません。情報はあっても困らない」

国防大臣「やけに臆病じゃないか。心配事でもあるのか?」

加持「上が助けてくれそうにないのが心配ですよ」

国防大臣「はは、たしかに。違いない。キミが死んでも代わりの人間を送りこむだけだからな。トカゲの尻尾は本体さえ生きていれば再生できる」

加持「哀れと思って教えちゃくれませんか? 政府は、ネルフをどうしたいんです」

国防大臣「布石だよ。今はまだ対使徒という組織だが、いなくなったらどうなる? ん?」コンコン

加持「……」

国防大臣「五分しか動かない決戦兵器でもおおいに脅威だ。では、操縦する人間は? 整備を行なっている連中はどうだ?」

加持「戦闘に関しては、素人同然ですな」

国防大臣「そうだろう」ニッコリ

加持「つまり、武力行使もやむをえないと判断しているわけですか」

国防大臣「もうひとつ、教えておいてやろう。日本政府の間では、工作に疑問符が出ている。もしや……キミがネルフ寄りの人間なんじゃないかと、ね」

加持「おだやかじゃありませんね」

国防大臣「身の潔白を証明し、キミの信頼を確固たるものにする為にもネルフ本部にあるセキュリティホール(欠陥)を探し出せ」
140 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/06(木) 16:15:18.22 ID:JVrC/eBL0
【厚木基地 戦自】

司令官「今回の任務は特務機関ネルフ、そのパイロットであるサードチルドレンの調査だ」

マナ「……」カサ

司令官「ネルフはこれまで治外法権を理由に、都合の良い振る舞いを行なってきた。我々は犠牲を払い、いつも足止めをしているに過ぎない」

マナ「はい」

司令官「本作戦は、ネルフ内部における組織図の明確な調査をするとともに、碇一族と委員会についての癒着を暴く足がかりとなる重要な任務だ」

マナ「……」

司令官「忌々しいが、使徒に有効な兵器は、あのエヴァとかいう玩具なのは事実である。だが、我々には我々の得意とする分野がある。政府にアピールする良い機会でもあるのだ。わかるな?」

マナ「はい」

司令官「友人達については、貴様の働き次第で、優遇を約束しよう。状況は全て整っている。あとは君次第だ」

マナ「もし、情報を引き出せなければ……」

司令官「使えない者を贔屓するわけにもいくまい。そうなったら、どうなるか。想像にまかせよう」

マナ「(私が失敗したら、ムサシとケイタは戦場に戻ることになる。そういう意味なのね……)」

司令官「今回の任務は極秘だ。政府の一部高官筋、及び戦自内部においても知る者は少ない。万一、君の正体が明るみにでても一切関与はしない」

マナ「……」

司令官「貴様は今、この時点で社会的に存在を抹消される。むろん、戦自のデータベースからも全ての記録を消去する。霧島マナであるには変わりないが、透明になるのだ」

マナ「はい」

司令官「影となって生きろ。スパイの鉄則だ」

マナ「(碇、シンジ……シンジ、くん……)」

司令官「二十四時間、ターゲットのみを考えろ。そうすれば結果を伴わせることができるだろう」

マナ「了解」

司令官「一字一句全てを暗記するつもりで」

マナ「(ターゲット……情報を集めるべき相手……大丈夫よ、マナ。私はかわいい、武器にできる)」

司令官「以上だ。霧島マナ隊員の健闘を祈る」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 19:21:12.06 ID:yOyrSe5XO
クソ面白いのはわかったから続きはよしてくれ頼む
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 22:20:50.29 ID:StJlfleSO
>>112
しねかすぼけ
143 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/07(金) 14:01:34.32 ID:5LyMqRrY0
【夕方 ネルフ本部 来賓室】

ミサト「さ、三号機をうちに、ですか?」

大統領「引き受けてもらうのは三号機のみで、四号機は引き続き我が国が担当する。同意に必要な詰めは全て済ませてあるから、あとはこの書類に責任者のサインを書くだけだ」

ミサト「しかし、ネルフは既に三体のエヴァを保有しています。日本領土内において過剰な戦力になりうるのでは……」

大統領「政治的な話だよ。現在、我が国では経済的に不安定な状態が続いている。それに伴い、市民の暴動や生活水準の低下が懸念されていてね」

ミサト「つまり、割り当てる予算がないと?」

大統領「情けない話だが、その通りだ。貧困層は医薬品でさえ入手するのが困難な状況になりつつある。そのような状態で、軍備にまわす余裕はない」

ミサト「WHOに支援を求めては……」

大統領「スイスのジュネーブ本部には、発展途上国から問い合わせが殺到しているそうだよ。その中に混じって、アメリカが恥部を晒すわけにはいかんのだ」

ミサト「受け入れるにしても隣国の反発が予想されます。相応の理由が必要になると思われますが」

大統領「その点については、先ほど君がいっただろう。日本は既にエヴァを三体も保有している」

ミサト「はい」

大統領「過剰な戦力ではなく、実績があると捉え、アメリカと日本、友好国という建前を使えばどうとでもなる」

ミサト「お話は承知いたしました。ですが、話が大きすぎて……私の一存では決めかねます。碇司令の判断を仰いでからになりますが、よろしいでしょうか」

大統領「キミの言う碇とは、碇ゲンドウかね?」

ミサト「はぁ、そうですが」

大統領「彼は本日付けで更迭になったと報告を受けている」

ミサト「え、えぇっ⁉︎」

大統領「後任を務めるのは、彼の妻である、碇ユイ博士だ。なにも聞いていないのか?」

ミサト「ぞ、存じません。事実なのでしょうか?」

大統領「嘘をついてなんになる。碇ゲンドウ氏はアラスカにて調査を行うはずだ」

ミサト「どなたの意向でしょうか?」

大統領「私が知るのは結果のみだ」

ミサト「(左遷? いいえ、違うわね。日本政府でさえネルフに人事の口だしできないはず……ゼーレ?)」

大統領「……」コト

ミサト「ですが、ユイ博士は、たしか、資料によると亡くなっているのでは……納得のいく説明を求めます」

大統領「上層組織によるゼーレの決定だ。キミも噂ぐらいは聞いたことがあるはずだな?」

ミサト「やはり……ですが、ゼーレの実態はほとんど存じません」

大統領「私も同じだ。世界は、一部の組織が牛耳っているに等しい。まったく、なにが大統領だ、傀儡だよ。これではな」

ミサト「……」

大統領「日本には藪をつついて蛇をだすというコトワザがあると聞く。これは善意からくる忠告だ」

ミサト「肝に命じます」

大統領「私は残り十六時間ほど滞在する。それまでに良い返事を期待しているよ」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/07(金) 21:48:10.25 ID:IWn7eWaSO
加持さんまた死にそう
145 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/07(金) 22:40:46.10 ID:5LyMqRrY0
【ネルフ本部 発令所】

マコト「まさか、そんな」

シゲル「ひゅ〜」

マヤ「い、生きてたんですね」

冬月「お前達、新司令に対してその態度はなんだ。失礼だろう」

ミサト「二点、質問を許可していただいてもよろしいでしょうか?」

ユイ「どうぞ」

ミサト「まず、今回の異動はあらかじめ決められていたのでょうか?」

冬月「葛城一尉。上層部の決定は作戦司令たる君の与り知るところではない。立場をわきまえたまえ」

ミサト「失礼いたしました。次の質問ですが、資料によると司令は初号機に取り込まれたとあります。実験中に発生した不慮の事故は、末端の職員ですら知っています」

ユイ「……」

ミサト「しかし、記載に反して碇司令はこうしてここにいらっしゃいます。この相違点についてご説明を求めます」

ユイ「今後の円滑な業務工程に関わる?」

ミサト「いえ、個人的な質問です」

ユイ「仕事に関わる話でないのならば、差し控えてもらえると助かる。プライベートを詮索されるのは好きじゃないの」

ミサト「ですが、職員全体が困惑しているのも事実です」

ユイ「そう、全く関係ないとは言えないのね。であるならば、データを開示します。気になる職員は後で見なさい」

ミサト「承知しました」

冬月「全館放送に切り替えろ」

オペレーター「了解」カチ

冬月「これから新司令の就任挨拶を行う、作業中の職員は手を止めて聞くように。では、ユイくん」スッ

ユイ「――この度、本日付けで特務機関ネルフ総司令に就任いたしました、碇ユイです。皆、急な人事異動で戸惑いがあるだろうけど、私達の目的は使徒殲滅。忘れないで。誰であろうと、不変だということを」

マヤ「……」

ユイ「命をかける、その決意と覚悟を持ってここに立っています。あなた達が自分の仕事に誇りを持っているように、この私も人類の為に働く一員なのです」

マコト「……」

冬月「彼女の能力については、私が保証しよう。碇に負けず劣らずのキレものだよ、敬うように……以上で挨拶を終える、放送を切れ」

オペレーター「はっ」

ユイ「では、バタバタして申し訳ないけど、葛城一尉」

ミサト「はっ」 ビシ

ユイ「最初の命令になります。零号機を現時刻をもって凍結」

ミサト「と、凍結っ⁉︎ 待ってください! 零号機はようやく予備のパーツを換装し終えたところで!」

ユイ「あくまで暫定的な処置です。三号機配備を受け入れる体勢は必要ですから」

ミサト「……」

ユイ「アメリカ側がどう主張しようと、こちらに丸投げの状態なのよ。反発を抑える予防策だと考えてくれる?」

ミサト「それは、たしかに。使徒が襲来した有事の際には解除されるのでしょうか?」

ユイ「投入やむなしと判断した場合にはね。その采配は、作戦司令に一任します」

ミサト「なぜ零号機を? レイは安定していますし、三号機でもよろしいのでは」

ユイ「零号機はプロトタイプ。試作品なのよ、弐号機で完成したエヴァシリーズの後継機が三号機。データを集めるのに都合が良い」

ミサト「では、大統領に受け入れ了承の旨、お伝えするということで、よろしいですね」

冬月「問題なかろう。これでキミはエヴァ四体の指揮権を管理する立場になるな」

ミサト「はっ」ビシ

冬月「今後とも精進するように」

ミサト「(その気になれば、世界を滅ぼせるわね)」
146 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/07(金) 23:24:56.87 ID:5LyMqRrY0
【ネルフ本部 営倉】

冬月「先ほどの放送は聞いたな」

ゲンドウ「冬月、裏切ったのか」

冬月「どう答えたら満足する」

ゲンドウ「ふざけるのはよせ。俺を見限ったな」

冬月「卓上の将棋盤を持ってきた。久しぶりに一局打たんか」

ゲンドウ「……」

冬月「上の連中の愚痴に付き合って疲れていてね、息抜きがしたい。勝手に広げさせてもらうよ」

ゲンドウ「ユイはどういうつもりだ」

冬月「本将棋というのは戦略の駆け引きだ。時には数百手先を読み合い、駒を奪い合い玉を目指す。玉とは王だ」 パチ パチ

ゲンドウ「……」

冬月「気がつかぬままに囲まれている場合もある。このようにな」パチ パチ

ゲンドウ「……」

冬月「そうなると退路はない。逃げ道を塞ぐまでをも計算に入れているからだ。待っているのは詰みという終局」

ゲンドウ「いまだ詰んではいない」

冬月「いや、既に投了しているのだよ。老人たちは我々の企みに気がついてしまった。後は、答え合わせを残すのみ」

ゲンドウ「……」

冬月「内部から伏兵に崩壊させられたのだ。相手が悪かったな。我々の手の内を知り尽くしていた」

ゲンドウ「……」

冬月「改まって言うに及ばないが、責任追及は免れんだろう。もうすぐゼーレから使いの者が来る」

ゲンドウ「これで終わりか」

冬月「呆気ないものだがな。仕事が残っているので失礼させてもらうよ。盤面はそのままにしておいてくれればいい」スッ

ゲンドウ「……」

冬月「付き合いは楽しいものではなかったが、礼を言わせてくれ。これまで、ありがとう」コツコツ
147 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/08(土) 00:22:48.87 ID:Akhu96qY0
【数時間後 同営倉】

保安部「立て」

ゲンドウ「……」スッ

リツコ「待って。少し話があるから、あなたは外で待機」

保安部「はっ。終わりましたらお声をおかけください」カシュ

ゲンドウ「なにをしにきた」

リツコ「今の気持ちを聞きにきたのよ」

ゲンドウ「ふっ、そんなものを聞いてなんになる」

リツコ「補完計画の目的を聞いたわ。決断した奥様の行動はまさに電光石火だった。なにを意味するかわかる? ずっと機会を伺っていたのよ。これでシナリオはご破算」カチャ

ゲンドウ「そうか」

リツコ「……っ! それだけ⁉︎ なんとか言ったらどうなの! 私が憎いでしょう⁉︎ それとも、私には憎しみを抱く感情すらないっていうの⁉︎」

ゲンドウ「……」

リツコ「これまで、どんな辛い命令だって耐えてきた! 振り向いてほしかったから! ……でも、それも終わり」

ゲンドウ「……」

リツコ「最初に犯された時は嫌悪感しかなった。私でさえわからなかったのよ! 回数を重ねるにつれて安らぎを感じ愛されたいと願うようになるなんて!」

ゲンドウ「目はかけていた」

リツコ「なにもかもウソよ! あなたが幸せになるのなんて許せない。許してはならない。だから、壊すの。今さら息子と奥様を取り戻して仲良くするだなんて、虫が良すぎると思わない?」

ゲンドウ「……」

ユイ「失礼するわよ」カシュ

リツコ「はい」スッ

ゲンドウ「ユイ……」

ユイ「あなた、もうおしまいよ。ネルフの権限と担当している業務は私が引き継ぐ。安心して退陣してもらっていいわ」

ゲンドウ「なぜだ、なぜこのような真似をする」
148 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/07/08(土) 00:23:55.61 ID:Akhu96qY0
ユイ「計画には修正が必要なの。黙って見ていてもよかったのだけど、あなたでは完遂できそうにないから」

ゲンドウ「……」

ユイ「引き際も肝心だとわかってちょうだい。大丈夫、きっと良い方向に持っていってくれる」

ゲンドウ「シンジに託せというのか」

ユイ「未来を担うのはいつだって若人よ。バトンを紡いでいくだけ、シンジもいつかは歳をとり次の世代を希望を託すことになる」

ゲンドウ「赤木博士」

リツコ「……」

ゲンドウ「その拳銃で俺を撃て」

リツコ「……」ピク

ゲンドウ「せめてもの償いだ。キミには辛い思いをさせた」

ユイ「はぁ、相変わらず不器用でバカね。撃たせたら一生枷になって残り続けるわよ。拳銃をさげなさい」

リツコ「私は、私は」プルプル

ユイ「赤木博士。腕をおろしなさい」

ゲンドウ「ユイ」

ユイ「なに?」

ゲンドウ「俺たちの息子を、シンジを頼んだ」

ユイ「言われなくてもそうするわ」

リツコ「……っ! 私の目の前で夫婦の会話をしないでちょうだい!」パァン

ゲンドウ「うっ」ドサ

リツコ「あ……っ!」ヘタリ

ユイ「あらあら、撃っちゃったわね」

リツコ「違う、そんなつもりは、勢いで、私、なんてこと……」

ユイ「……」コツコツ

ゲンドウ「ごほ、くだらん結末だな」

ユイ「肺を貫通した?」スッ

ゲンドウ「ああ」

ユイ「そう。このまま死ぬ?」

ゲンドウ「そうしよう、ぐふっ、げほっ」

ユイ「赤木博士」

リツコ「……う……あ……」ガタガタ

ユイ「この人はここで死にたいそうよ。拳銃を貸してもらうわね」スッ

ゲンドウ「すまない」

ユイ「最後まで、人に迷惑をかけるんだから」パァン
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