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シンジ「その日、セカイが変わった」
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503 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/16(土) 20:23:47.93 ID:5QRrjQdb0
【第三新東京市 繁華街】
シンジ「はぁっはぁっ」タッタッタッ
カップル男「うぉっ⁉︎」ドンッ
シンジ「あっ、す、すみませ――」
カップル男「いってぇな! よく見ろよ!」ドゴッ
シンジ「うぐっ」ズサ
カップル女「あ〜あ、なにも殴らなくたって。……中学生じゃん。大丈夫? ボク?」
カップル男「こいつが悪いだろうが。人混みでよ」
シンジ「……」ムクッ
カップル女「短気な性格なんとかしなさいよねぇ〜」
シンジ「すみませんでした」ペコ
カップル男「ち、ったく」
カップル女「まぁまぁ。事故なんだから。ボクも気をつけてね」
シンジ「はい」
カップル男「たこ焼きでも食って帰るか?」
カップル女「なんでデートでたこ焼きなわけ? 炭水化物のかたまりとか」
カップル男「うめぇだろ――うぉっ⁉︎」ドンッ
マナ「大丈夫⁉︎ シンジくん⁉︎」
シンジ「ま、マナ? どうしてここに?」
カップル男「……」プルプル
カップル女「ちょっと、落ち着きなよ」
カップル男「おい、ガキども」
マナ「殴ることないじゃないですか⁉︎」
シンジ「あっ」
カップル男「なんだとぉ? 社会常識知らねーのかよ?」
マナ「いきなり手をあげるあなたに言われたくありません!」
カップル男「俺はなぁ、女にだって容赦しねぇぞ。カミソリのような男だからな」
カップル女「ふるっ。センスが昭和なんですけど」
カップル男「うっせぇっ! お嬢ちゃんよぉ、歯をくいしばれ」
マナ「いやです」
カップル男「な、なに?」
マナ「警察、呼びますよ」
カップル女「ちょっと。もうそれぐらいにしときなってマジで。通行人も足止めて見だしてるし」キョロキョロ
カップル男「警察やギャラリーがなんだっつうんだ! 世の中なめくさってるガキが!」ブンッ
マナ「……っ⁉︎」ギュッ
シンジ「ま、マナっ! ……がはっ」ドサッ
カップル男「おーおー、かわりに殴られるとはねぇ」
マナ「シンジくんっ⁉︎」
ケンスケ「――おまわりさん! こっちです!」
カップル男「げっ⁉︎ まだツレがいたのかよ⁉︎ はやくねぇ⁉︎」
カップル女「もう! だから言ったじゃん!」
警官「こらぁ! なにやってるんだ!」
504 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/16(土) 20:47:49.39 ID:5QRrjQdb0
カップル男「――だから俺は悪くねぇって! 悪いのはそこのガキどもだろーがよ!」
警官「話は交番でゆっくりな」
カップル男「なぁんで俺が⁉︎ 先に仕掛けてきたのこいつらで」
警官「すれ違いざまに肩がぶつかっただけだろう。そうだね?」
ケンスケ「はい! しっかり見てました!」
カップル男「そいつはツレだろう! 公正な判断をしろ!」
警官「ぎゃーぎゃーうるさい。立派な傷害罪にあたる」
カップル女「はぁ……帰ろっかな」
シンジ「あの」
警官「調書を書く必要があるから。キミも同行してもらうよ」
シンジ「いえ、そうじゃなくて。僕も悪かったですから」
カップル男「あ?」
マナ「シンジくん?」
シンジ「お互い様ってことで。その人、離してくれてあげませんか」
警官「そうはいかない。キミ、擦り傷があるじゃないか」
シンジ「ちょっとだけですから」
警官「訴えを取り下げるということかい?」
カップル男「……」
シンジ「はい。それとも罪を犯したことに変わりないなら、そういうの関係ないんですか?」
警官「いや。警察は法を取り締まる番人といわれてるが裁判官や弁護士や検事のような立場じゃない。捕まえるのが専門の仕事だ」
シンジ「はい」
警官「被害届けというものを申請されはじめて動く場合がある。実際に現場を目撃した場合は別だが、喧嘩はその場で示談になることも」
マナ「ねぇ、こういったのはきちんと罰を与えないと。反省するきっかけになるんだよ?」
シンジ「いいんだ。あの、すみませんでした」
マナ「シンジくんっ!」
ケンスケ「はぁ……」
カップル男「まぁ、悪かったな坊主」
カップル女「ここまでの騒ぎにしたのはあんたが悪いの」
カップル男「ちっ」
シンジ「これで、だめですか?」
警察「こっちとしても雑務に追われていてね。いいなら構わないが」
シンジ「だったら、手打ちで」
カップル男「おい、ガキども」
シンジ「はい?」
カップル男「たこ焼き、何味が食いたい」ブスゥ
505 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/16(土) 20:56:30.45 ID:sf1Wve5uo
>マナ「いきなり手をあげるあなたに言われたくありません!」
これが究極のおまいう
506 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/16(土) 21:27:38.32 ID:5QRrjQdb0
【近くの公園】
ケンスケ「いやぁ、あのお兄さんも豪気だねぇ! 一人十パックも持たせてくれるなんてさぁ!」ぱくっ
シンジ「うん、そうだね」ガサ
マナ「……」
ケンスケ「食べきれるかなぁ。まぁ、帰って冷蔵庫に入れておけば」
マナ「なんで、あんな風に許しちゃったの?」
シンジ「ん?」
マナ「だって、シンジくんは肩にぶつかっただけじゃない。殴られるなんておかしいよ」
ケンスケ「(惣流に同じことやってるけどねぇ、ま、シンジに関するとなると見境いつかなくなるってのは理解したけど)」
シンジ「悪いと思ってくれたんだよ。だから、こうやって」
マナ「その場しのぎなだけよ! おごって餌付けしてやったからチャラ! 反省はしない! また繰り返すよ⁉︎」
シンジ「……」
マナ「警官がこなかったらどうなってたと……」
シンジ「一方的に痛めつけられてたかもしれないね。でもそうはならなかったよ。今、僕たちはこうしてたこ焼きを食べてる」
マナ「……」
シンジ「展開ひとつ違うだけで、どうなってたかわからないけど……僕に落ち度がなかったわけじゃないし」
マナ「シンジくん……」
シンジ「正解がわからないんだ。なにを選べばいいのか」
ケンスケ「まぁ、シンジは考えすぎなとこあるよ」
シンジ「そうかな」
ケンスケ「霧島もさ。過ぎたことはおしまい。そう割り切らなくちゃ。常に100パーセント正しい判断ができる人間なんかいないよ」
マナ「それは、そうだけど」
ケンスケ「惣流にもさ、ちゃんと話をした方がいいんじゃないか?」
マナ「なんで、いま、そんなこと……」
ケンスケ「それだって次の展開。将来を考えての話じゃないか」
マナ「うぅん」
ケンスケ「“感情”って、厄介だよなぁ。やっちゃいけないってわかってても制御できない」
マナ「見たいから、盗撮するの?」
ケンスケ「うっ! あ、あくまでビジネスだよ!」
シンジ「ぷっ、あはは、そうだなアスカには、落ち着いたら話てみたらいいよ」
ケンスケ「……さっきは、なにを急いでたんだ?」
マナ「綾波さんとなにか?」
シンジ「どうして、それを知って?」
507 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/16(土) 21:43:49.27 ID:5QRrjQdb0
マナ「あっ、えっと、その」
ケンスケ「たまたま一緒に歩いてるとこ見かけたんだよ」
シンジ「そうだったんだ」
マナ「……」ほっ
シンジ「すこし、ショッキングなことを知ってしまって。それで」
ケンスケ「おぉっ! なんだ⁉︎ 綾波になにか隠された事実でもあったのか⁉︎ これはスクープだぞ、ファンクラブの連中に――」
マナ「こぉら」コツン
ケンスケ「いで」
マナ「女の子を詮索してたら本当に嫌われちゃうよ」
ケンスケ「いや、でも。ほしいパーツが」
マナ「お小遣いがほしいなら別の方法にしなよ」
シンジ「これはケンスケにも話することができないんだ」
ケンスケ「ちぇ」
シンジ「(どうせ信じてもらえないだろうし。いや、話すと危険だから。また無関係な人を巻き込んでしまう)」
マナ「あの、私にも?」
シンジ「……ごめん」
マナ「(なにがあったんだろう……)」
ケンスケ「さぁて、そろそろ帰るか。トウジの家によってっておすそ分けでもしてやるかな」
シンジ「あ、それだったら僕のもついでに頼める?」
ケンスケ「いいよ」
シンジ「ありがとう」
マナ「途中まで、送ってくれない?」
シンジ「え? それなら、ケンスケが同じ方向だし」
ケンスケ「僕はトウジに家によるって言ったろ?」
シンジ「あ……」
ケンスケ「(女に恨まれちゃこわいって言うし)」
シンジ「わかった、また明日学校で」
ケンスケ「またな! 霧島! 碇!」
508 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/16(土) 22:08:58.01 ID:5QRrjQdb0
シンジ「……」テクテク
マナ「殴られて、痛かった?」
シンジ「大丈夫だよ、おかげですこし落ち着けた」
マナ「あんなに慌ててるなんて……どうしても、話せない?」
シンジ「うん」
マナ「そっか。……あの、ありがとう。かばってくれて」
シンジ「いいよ、気にしないで」
マナ「シンジくんっていつもそう言うね」
シンジ「……?」
マナ「“気にしないで“って。よく考えたら、それって自分勝手かも」
シンジ「どうして?」
マナ「だって、こっちが気になってることにたいしてもそうでしょう? 優しいけど」
シンジ「僕は優しくなんかないよ。自分のしたいことをしてるだけだから」
マナ「相手が中心にあるか、自分が中心にあるかでそれは違うの。シンジくんから感じるのは、思いやりの気持ち。……あはは、私が良いように考えてるのかな」
シンジ「そんなんじゃ……」
マナ「複雑だよね、人って。同じものでも、捉え方で見てる景色が180度反転する」
シンジ「……」
マナ「シンジくんの、そういうところ、好き、なんだと思う」
シンジ「え?」
マナ「いや、その……ちょっと、いいかなってっていうか。今まで、ガサツな人しかいなかったから」
シンジ「幼馴染の友達は? マナのこと、思いやってくれてたんじゃないの?」
マナ「もちろん。お互いにわかる部分が多いから。阿吽(あうん)の呼吸って感じで……かけがえのない人。でも、なんていうかな、家族みたいな」
シンジ「家族……」
マナ「小さい頃からずっと一緒にいたから。異性としてよりも、いて当たり前の存在になっちゃった」
シンジ「……」
マナ「部隊に配属されて知り合ったのは女の子ばかりだから。……はじめてかも。異性って思える人」
シンジ「僕は……」
マナ「いいの。なにも言わないで」
シンジ「……」
マナ「今は、こうして、はじめての感情があるだけでいい。大切にしたいだけだから――」
509 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/16(土) 22:11:22.96 ID:5QRrjQdb0
ちと間違ったんでレスしなおし
510 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/16(土) 22:12:50.76 ID:5QRrjQdb0
シンジ「……」テクテク
マナ「殴られて、痛かった?」
シンジ「大丈夫だよ、おかげですこし落ち着けた」
マナ「あんなに慌ててるなんて……どうしても、話せない?」
シンジ「うん」
マナ「そっか。……あの、ありがとう。かばってくれて」
シンジ「いいよ、気にしないで」
マナ「シンジくんっていつもそう言うね」
シンジ「……?」
マナ「“気にしないで“って。よく考えたら、それって自分勝手かも」
シンジ「どうして?」
マナ「だって、こっちが気になってることにたいしてもそうでしょう? 優しいけど」
シンジ「僕は優しくなんかないよ。自分のしたいことをしてるだけだから」
マナ「相手が中心にあるか、自分が中心にあるかでそれは違うの。シンジくんから感じるのは、思いやりの気持ち。……あはは、私が良いように考えてるのかな」
シンジ「そんなんじゃ……」
マナ「複雑だよね、人って。同じものでも、捉え方で見てる景色が180度反転する」
シンジ「……」
マナ「シンジくんの、そういうところ、好き、なんだと思う」
シンジ「え?」
マナ「いや、その……ちょっと、いいかなってっていうか。今まで、ガサツな人しかいなかったのもあって」
シンジ「幼馴染の友達は? マナのこと、思いやってくれてたんじゃないの?」
マナ「もちろん。お互いにわかる部分が多いよ。阿吽(あうん)の呼吸って感じで……かけがえのない人。でも、なんていうかな、家族みたいな」
シンジ「家族……」
マナ「小さい頃からずっと一緒にいたもん。異性としてよりも、いて当たり前の存在になっちゃった」
シンジ「……」
マナ「部隊に配属されて知り合ったのは女の子ばかりで。……はじめてかも。異性って思える人」
シンジ「僕は……」
マナ「いいの。なにも言わないで」
シンジ「……」
マナ「今は、こうして、はじめての感情があるだけでいい。大切にしたいだけだから――」
511 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/16(土) 22:49:16.35 ID:5QRrjQdb0
【マヤ宅 リビング】
シンジ「僕がですか?」
マヤ「たまには、人の作った料理食べてみたいって思って。だめ?」
シンジ「かまわないですよ。なにかリクエストあります?」
マヤ「シンジくんの得意なやつがいいかな」
シンジ「得意な……」
マヤ「和でも洋でも中でも。まかせる」
シンジ「わかりました。早速、とりかかりますね」
マヤ「あっ、ちょっと待って」スッ
シンジ「……?」
『今、電波遮断できる?』
シンジ「(紙に書いてるのは……うーん、あまりやりすぎたら怪しまれちゃうだろうし、どうしようかな。……大事な話かもしれない、よし)」
マヤ「……」
シンジ「ふぅ、今度はうまくできたみたいだ。どうしたんですか?」
マヤ「それって、身体に負担がかかるの?」
シンジ「まったくないってわけじゃありません」
マヤ「手短に済ませるね。聞きたいことがあったの。あの、シンジくんのその瞳。もしかして、ネルフに非人道的な実験で……」
シンジ「言えません」
マヤ「聞きたいの。私の意思よ」
シンジ「でも、これ以上知ってしまえば」
マヤ「危険になる。わかれば司令になにをされるか……それは理解してる。でも、それでも、ネルフが裏でなにをしようとしているか……知りたい」
シンジ「突然、どうしたんですか」
マヤ「考えてみた。どうしたらいいかなって。でも、考えても考えてもなにもわからない。与えられた責務に対して、疑問を抱かず、正しいことをしてるってやってきた」
シンジ「……」
マヤ「――空っぽ、だった。仕事に求めてたのは、安心と安らぎ。業務を通して、ちゃんと人並みの生活ができてるっていう安心感を得られてただけ」
シンジ「僕からは言えません」
マヤ「自分で調べる」
シンジ「えっ」
マヤ「シンジくんが教えてくれないなら。そっちの方が危険よ?」
シンジ「そ、そんな……」
マナ「私だって無駄に歳を重ねてるわけじゃないから。こういった狡猾さを身につけてるのよ」
シンジ「……」
マヤ「あなたの力になりたいのよ。シンジくん」
シンジ「僕の、力になりたいから?」
マヤ「ええ」
シンジ「だったら、こうして一緒に住んでくれてるだけで」
マヤ「相手は総司令という立場にいる人。ひいてはネルフという組織そのものでしょう? シンジくんがなにかに抵抗しようとしてる。そんなの見てれば気がつく」
シンジ「……」
マヤ「味方は多い方がいい、それも絶対に裏切らない人。そう思わない?」
シンジ「そう、ですけど」
マヤ「お願い、話して。ネルフはシンジくんに……なにをしたの? どうして赤い瞳なの?」
512 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/16(土) 23:14:38.60 ID:5QRrjQdb0
シンジ「言えません」
マヤ「そう……ふぅーん、わかった。じゃあ」
シンジ「ただ、全てをという意味です。自分で調べないという条件を飲んでくれるなら、どうして赤い瞳になったのかは教えます」
マヤ「わかった。今一番知りたいのってそこだから」
シンジ「次から次に疑問がでてくるかもしれません。そうなったとしてもですよ」
マヤ「……了解」
シンジ「ふぅ……瞳が赤くなってるのは、力を使ってるせいです。なぜかはわからない。力を使うとこうなるとしか」
マヤ「気がついたんだけど。レイに似てるって」
シンジ「(綾波はリリスの魂の容れ物だからねぇ。アダムに頼り力を発動してる状態の僕と……でも、それを話すことはできない)」
マヤ「シンジくん?」
シンジ「すこし、グロテスクなものを見せます」スッ
マヤ「あ、やっぱりその、手」
シンジ「昨日、包帯をとっちゃいましたから。今はもう任意で出し入れできるようになったんですけど、これのせいです」
マヤ「なに、それ? 胎児みたいな形してる」
シンジ「マヤさんが危険な目にあいそうになったあの日。お風呂場で見ましたね、これを」ニギ ニギ
マヤ「ええ」
シンジ「移植されたんです。ほんの一週間ぐらい前。それからしばらくして、力が使えるようになり、発動するときだけ、瞳がこの色に」
マヤ「移植って? 遺伝子操作を行った改造人間のようなものじゃないの?」
シンジ「そんなんじゃありませんよ。僕という個人に別の異物がはいりこんでる状態です」
マヤ「(DNAからいじってるのかと思ったけど、そうじゃないもの調べてたのね、私)」
シンジ「これだけです」
マヤ「待って。それの正体は?」
シンジ「……」
マヤ「そこまで聞いたらいい。お願い」
シンジ「使徒です」
マヤ「なっ⁉︎」ガタッ
シンジ「……」
マヤ「使徒⁉︎ 使徒が手のひらに⁉︎ う、嘘でしょっ⁉︎」
シンジ「本当の話です。だから、人では使えない力が使えます」
マヤ「し、信じられない。人体への影響は? そんなことが可能なの……」
シンジ「僕は僕のままでいられてます」
マヤ「それじゃあ――」
シンジ「質問はここまで。約束でしたよ」
マヤ「……」
シンジ「自分で調べるなんてマネもしないでください」
マヤ「……わかった。約束、だもんね。でも、平気なの? その、本当に、体調とか」
シンジ「今のところは。衝動もそのせいで」
マヤ「使徒の仕業だったの。だから……でも、司令がそう命令して」ブツブツ
シンジ「そろそろつらくなってきました。お話はそれぐらいでいいですか?」
マヤ「ごめんなさい、つらい思いをさせて」
513 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/17(日) 00:57:13.20 ID:MU2fcSbCo
オッ
514 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/17(日) 05:03:37.74 ID:F3jrjWUV0
【第三新東京都市 弐号機 格納庫】
カヲル「赤く染め上げられた拘束具、まるで道化師。……この子の魂は殻に閉じこもったままなのか」
ユイ「キレイでしょう」コツコツ
カヲル「……」
ユイ「夜更けになんのご用?」
カヲル「アダムから産まれたコレを見にきたくて」
ユイ「あなたにとっては、ただの模造品でしょ? デッドコピーと言うべきかしら。構造について興味があるの?」
カヲル「面白い。そんなところかな」
ユイ「好奇心、ね。アダムの魂、生き写しなだけはある」
カヲル「……」
ユイ「昼間の使徒へは静観の構えとします」
カヲル「なぜ?」
ユイ「バカバカしいからよ。過剰防衛をするのが。あなたのいたずら……火遊びだった? 付き合うのなんて嫌」
カヲル「そうやすやすと騙されてくれないね」
ユイ「人は、使徒だけじゃない。多くの脅威に晒されている。それでも、破滅するとわかっていながら尚、歯車を止められない」
カヲル「愚かだ。使徒というわかりやすい外敵が襲来しても、各地で起こる紛争、代理戦争は止むことを知らない」
ユイ「そう仕向けられてるから。情報操作、プロパガンダをばらまいて意図的に大衆を誘導し、操作している」
カヲル「情報化社会の弊害だね。あらゆる方向性から正しいと思うことは歪められ、また、常に変化し、狂う」
ユイ「13年前、葛城調査隊に発見されてからロンギヌスの槍を使用して……バラバラにされた記憶はあるの?」
カヲル「いいえ。目が覚めたら、というよりも意識があるのはこの肉体の中だけ」
ユイ「シンジの中にある、再構築したアダムは?」
カヲル「そのものだよ。使徒のもつ特殊能力、その中でもとりわけ神に近しい存在であるアダムにとって再生など造作もない」
ユイ「初号機もできるでしょうね」
カヲル「あの紫色の機体はリリスをベースに改修しているんだったね」
ユイ「シンジ同様、初号機も実物に近しいモノよ」
カヲル「しかし、オリジナルのリリスはここの地下奥深くに……」
ユイ「……」
カヲル「――……まさかっ⁉︎ そうか、そういうことか」
ユイ「核心とも言える部分を告げたのには理由があります」
カヲル「……」
ユイ「私達の眼前にいる弐号機パイロットであるセカンドチルドレン。彼女を、殺めてほしいの」
カヲル「あなたの権限を使えば赤子の手をひねるよりも簡単に遂行できるでしょう」
ユイ「シンジに悟られるわけにはいかない」
カヲル「……」
ユイ「あくまで、あなたがやったと思わせる」
カヲル「予定を繰り上げるつもりか」
ユイ「局面を分ける一手。そのひとつを打つ時がきたのです」
515 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 05:32:39.87 ID:F3jrjWUV0
【翌日 ミサト宅 リビング】
アスカ「ふぁ〜ぁ。ねむぅ」
ミサト「どひゃー! 寝坊しちったぁ!」ガタガタ
アスカ「……ごはん、炊飯器」カパッ
ミサト「化粧ポーチどこやったっけぇ! アスカぁ〜! 見てない〜?」
アスカ「んぁ?」
ミサト「だぁ! だめだこりゃ、えーと、ここでもないそこでもない……あった!」
アスカ「間に合うの?」
ミサト「車の中で化粧するわ! 今日は絶対に遅刻できない日なのよ!」
アスカ「遅刻していい日なんてあんの」
ミサト「言葉のあやでしょーが! っと、いけない! 戸締りあとよろしくぅ!」シュタ
アスカ「おかず、おかず」
ペンペン「クェー」
アスカ「ペンペンのも……」
ペンペン「クェッ! クァーッ!」クイクイ
アスカ「はいはいわかったから。慌てなさんなって。食い物は逃げやしない――」
ペンペン「クェー!」コト
アスカ「あんた! その人形どこから……あたしの部屋に入ったのね!」パチン
ペンペン「……クェー」
アスカ「っとに、油断も隙もあったもんじゃない、シャチの群れの中に放りこむわよ」
ペンペン「クェッ⁉︎」ガタガタ
アスカ「ママ? 大丈夫?」ヒョイ
ペンペン「クェー?」
アスカ「これはね、ママからもらった大切な大切な形見なの。いい? わかった?」
ペンペン「クェッ!」ビシッ
アスカ「返事だけはいっちょまえなんだから。本当にわかってんの? ……ペンギンに言うのも変な話か」
ペンペン「クェー!」
516 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 11:08:15.49 ID:F3jrjWUV0
【早朝 下駄箱】
アスカ「……?」スッ
ヒカリ「あっ、アスカも今ついた所? おはよう」
アスカ「おはよ」
ヒカリ「手に持ってるのって、手紙? ラブレター?」
アスカ「下駄箱っていうおあつらえ向きのシチュエーションじゃそうなんじゃない? 中身は読んでないけど」
ヒカリ「わぁ、すごいな。あれ? でも転校してきた頃は連日そうだったような」
アスカ「最近はめっきり数減ったわね」
ヒカリ「それ、読むの?」
アスカ「捨てようかと」
ヒカリ「せっかくだし目を通すだけでもしてあげたら? 気持ちがこもってるのに」
アスカ「なんか、呪われそう」
ヒカリ「そう?」
アスカ「顔もわからない相手に想われてるってだけで気味が悪いもんでしょ、普通は」
ヒカリ「アスカはモテてるから。モテない人の気持ちがわからないんですよーだ」
アスカ「ヒカリは得体の知れない相手からもらって嬉しいの?」
ヒカリ「あ、相手によるかな?」
アスカ「ふぅ〜ん」
ヒカリ「恋愛は、してみたいし……」
アスカ「じゃあ、いる? これ」
ヒカリ「なんでそういう話になるのよ! アスカ宛てでしょ!」
アスカ「案外わかんないかも」
ヒカリ「わかるわよ! どう見たら間違えるの!」
アスカ「じょーだんだって」
ヒカリ「もう! 私だって、いいなって想う人、いないわけじゃないし」ボソ
アスカ「なんか言った?」
ヒカリ「ううん、なんでもない。それより、どうするか決めた?」
アスカ「はいはい。読めばいいんでしょ、読めば。こんなの書いてあるのといえば決まり文句よ。どうせお世辞、一目惚れ、告白――」ガサガサ
ヒカリ「読んできちんとお断りすればいいじゃない」
アスカ「……これって……」
ヒカリ「どうしたの?」
アスカ「いつ? いつ下駄箱にいれたの?」キョロキョロ
ヒカリ「アスカ?」
アスカ「なんでもない。ヒカリ、今日の昼休みは一人でご飯食べてくれない?」
ヒカリ「いいけど……大丈夫? 顔色、悪いよ?」
アスカ「平気」グシャ
517 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 19:40:37.66 ID:/iWRPHOj0
【ネルフ本部 模擬体室】
マコト「ポジトロンスナイパーライフルの実機データ、入力完了。仮想敵、スタンバイ」
シゲル「了解。シミュレーションシステム、スキャンのプロセスを335までを省略」
マヤ「……」
マコト「おい、マヤちゃん」
マヤ「あっ、りょ、了解です。データローディング開始します」
リツコ「レイ? 調子は?」
レイ『問題ありません』
リツコ「大丈夫、プログラムの指示通りにやればいい。ディスプレイにターゲットがでたら、射撃ボタンを押して。なるべく早く、できる限り直感的にね」
レイ『はい』
リツコ「テストスタート」
マコト「20秒前、テンカウントよりはじめます」
マヤ「了解」
シゲル「15秒前」
マコト「10秒前……9.8.7.6.5.3……――投影開始」
レイ『……』カチ
リツコ「……? どうなってるの? なにも反応がないわ」
マヤ「待ってください。システムコード、エラー。プログラムが強制終了しています」
リツコ「バグ? エラーコードは?」
マコト「E1056辺りで……」
リツコ「躓く箇所ではないはず」
シゲル「だとすれば、物理的なパーツの劣化かな。コンデンサがショートしているのでは?」
リツコ「メンテナンスは怠らないように言ってあるのに。主要製品ラインの部署に至急、確認をとって」
マコト「了解」
レイ『(電子機器に干渉してる。来るのね、彼)』
518 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 19:57:51.26 ID:/iWRPHOj0
【第壱中学校 教室 昼休み】
アスカ「……」スッ スタスタ
トウジ「なんか今日はピリピリしとらんか。あいつ」
ヒカリ「鈴原……。やっぱり、わかる?」
トウジ「なんとなくなぁ。眉間にこぉ〜んなしわよっせたら誰でも気がつくわい」
シンジ「どうしたの? トウジ。購買のカツサンド売り切れちゃうよ」
トウジ「訂正。シンジ以外はな」
シンジ「なんだよ、いきなり」
ヒカリ「あの、碇くん」
シンジ「……?」
ヒカリ「アスカの、様子がおかしいの」
シンジ「そうなの? 僕は気がつかなかったけど」
トウジ「まぁいっつも顔つき合わしとるからのぉ」
ヒカリ「今朝、下駄箱に手紙があって。それから様子が変なの」
シンジ「手紙?」
ケンスケ「ラブレターかぁ?」
ヒカリ「余計な横槍いれないでよ。うん、なんだか顔色が悪くて」
シンジ「ふぅーん」
ヒカリ「――あの、もしよかったら」
シンジ「……!」キョロキョロ
トウジ「おっ、なんや? ハエでも飛んどったんか」
シンジ「(この感じ。これは、アダムの……)」
マナ「シーンジくん! 一緒にお昼」
シンジ「みんなごめん、僕、ちょっと用事できたから」タッタッタッ
マナ「って……」
ヒカリ「碇くん!」
ケンスケ「なんだぁ、あいつ?」
トウジ「腹でも痛くなったんちゃうか」
マナ「……」シュン
トウジ「ところで霧島さま! そのお弁当はもしかして余ってしまったりするのでしょーか!」
マナ「え? これ?」
トウジ「はい!」
ヒカリ「あ、す、鈴原。もしよかったら」
マナ「あげないわよーだ! べーっ!」
トウジ「そんなご無体な!」
ヒカリ「だから、私の……」
ケンスケ「青春だねぇ」
519 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 20:32:26.81 ID:/iWRPHOj0
【体育館裏】
アスカ「どういうつもり⁉︎」
カヲル「……」スッ
アスカ「見ない顔ね……? 別のクラス? 上級生かしら。どうでもいいわ。この手紙!」ブンッ ポイッ
カヲル「気に入ってくれたかい?」
アスカ「“ママについて知りたければ来い”ですって⁉︎ あんた、何者よ!」
カヲル「その質問でいいの?」
アスカ「……?」
カヲル「この場合、目的と動機。この二つに分けられるんじゃないかな。キミが知りたいのは、ボクが何者であるのか。それを知りたいと?」
アスカ「なに言ってんの、こいつ。……さては、戦自? どうりで見ない顔だわ」
カヲル「ボクの質問にまだ答えていないよ」スタスタ
アスカ「そんな必要ないわ。もう我慢ならない、とりあえず、ママを引き合いにだしたあんたは」
カヲル「……」トンッ ビュ
アスカ「――っ⁉︎ なに、はやっ⁉︎」
カヲル「ここまでノコノコとやってきて減らず口ばかり」ガシッ
アスカ「がっ、かはっ⁉︎」
カヲル「驚いたかい? この肉体は容れ物とはいえ、人間相手ならこの程度。キミは最初の質問で“ボクが何者か”ではなく、“ボクがなにをしにきたのか”を聞くべきだったんだ」ググッ
アスカ「(ぐっ、この力、やばっ、首をしめられ)」
カヲル「そうしたら――キミを殺しにきたと教えて逃げられたかもしれないのに」
アスカ「うっ! ぐっ」ブンッ
カヲル「おっと。威勢がいいね、呼吸もままならないだろうに、膝蹴りとは。はやく苦しみから解放されるよう首の骨を折って――」
シンジ「アスカッ!!」
アスカ「し、ん……」
カヲル「そうか、やはり共鳴したのか」
シンジ「か、カヲルくん⁉︎ な、なにやってるんだよ!」
カヲル「見ての通りだよ、待ってて、もうすぐ終わる」ググッ
アスカ「あぁぁっ、うっ」ミシ
シンジ「や、やめてよ! カヲルくん!」ダッダッダッ ドンッ
カヲル「……」ヨロ
アスカ「げほっ、げほっ、おぇ、おぇえっ」
シンジ「アスカ、大丈夫?」スッ
カヲル「急激に酸素を吸い込むからそうなる。それは賢い選択とは言えないな」
アスカ「ぜぇ、ぜぇ」ギロッ
カヲル「シンジくん、無用な情けは彼女を苦しめるだけだよ。ラクに死なせてあげなくちゃ」
シンジ「どうしてこんなこと」
カヲル「ボクはね、彼女を殺しにきたんだ」
シンジ「……⁉︎ き、キミがなにを、言ってるのかわからない、がはっ!」ズザザー
カヲル「まだ回復するまでに時間がかかる。そうだろ? 惣流・アスカ・ラングレー」
アスカ「……」チラ
シンジ「うっ、ぐっ」
アスカ「蹴りだけであんなに飛ぶもんなのね。シンジがいくらヤワといってもありえない」
カヲル「彼に危害を加えるつもりはなかったんだ、ただ、邪魔だからね」
アスカ「(ちくしょう、足に力がはいらない……!)」グッ
520 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 20:51:41.88 ID:/iWRPHOj0
カヲル「言ったはずだよ」スッ ガシッ
アスカ「あうっ」
カヲル「キミになにか恨みがあるわけじゃない。だから、苦しませずに送ってあげたいんだ」
アスカ「じょ、じょーだんじゃないわ。私は死なない! 死んでたまるもんか!」
カヲル「残念だけど、ここで死ぬんだ。そして、シンジくん。キミは自分の無力さを呪うがいい」
シンジ「あす、かぁっ!」ググッ
アスカ「なにそれ、当て馬みたいじゃない」
カヲル「聞いていた通り。察しは悪くないみたいだね、残念だ」
アスカ「うっ!」
カヲル「……」ググッ
アスカ「(こんな呆気なく、突然、終わり? 私の人生、こんなとこで……)」
シンジ「……!」
アスカ「(こんな、こと、なら、もっといろ、いろ……やっときゃ、よかった。加持さんと)」
シンジ「アスカ……!」ヨロヨロ
アスカ「(――い、しき、視界、ぼや、け……ま、ママァ)」
シンジ「は、離せ!」
カヲル「……っ⁉︎」ピクッ
シンジ「――アスカを、離せっっ!!」ダッダッダッ
カヲル「くっ」パッ
アスカ「うっ」ドサ
シンジ「そこだ!」ブンッ
カヲル「なにっ⁉︎」ドンッ
アスカ「げほっ、げほっ、うっ、げほっ」
シンジ「はぁっはぁっ」
アスカ「し、シン……ジ?」
カヲル「驚いた。まさかこんなにも同化が進んでるとは。……容れ物のボクと、オリジナルのキミ。肉体の差か。まんまとマウントをとられてしまったよ」
シンジ「……」ガシッ
カヲル「それで? 馬乗りになってどうするつもりなんだい?」
アスカ「はぁ、はぁ、うっ、けほっ」
521 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 21:09:34.86 ID:/iWRPHOj0
シンジ「よくも、よくも」ゴス ゴス ゴス
カヲル「……っ! ぐっ、がっ」
シンジ「くっ、クックックッ」ゴス ゴス ゴス
アスカ「ちょ、ちょっと、シンジ」
シンジ「よくも、ヤッタナ! 容れ物の分際デ!」ゴス ゴス ゴス
カヲル「……」ピクッ ピクッ クテ
アスカ「ま、まずい⁉︎ シンジ! やめなさいよ!」
シンジ「取れないんだよ、L.C.Lの血の匂いが!」
アスカ「シンジ! あたしはもう大丈夫だから! それ以上はだめ! シンジったら!」
シンジ「いつもいつもいつも、関係ない人を巻き込んで! なんでいつも僕ばっかり!!」ゴス グシャ ゴス
アスカ「(くっ、足、動け、動け動け動け)」ヨロヨロ
シンジ「もうたくさんなんだ! 誰かが死ぬのは! なんで僕をこんな目に! どうして!!」ゴスッ ゴスッ
アスカ「シンジっ! やめて!!」ヨロリ ドサ
シンジ「はぁ、はあっ……アスカ?」ピタッ
アスカ「そうよ、私よ。大丈夫だから」ほっ
シンジ「いや、違う」
アスカ「……?」
シンジ「ボクは、ダレだ? 僕は、僕は」
アスカ「し、シンジ? あんた、一体、瞳の色……」
カヲル「そのまま衝動に身を任せていればいいのに」
シンジ「……!」ギョ
カヲル「詰めが甘い」グッ
シンジ「がはっ!」
アスカ「う、うそぉっ⁉︎ な、なんで⁉︎ 顔面血だらけなのよ⁉︎」
カヲル「僕にとっては、死はなにもこわくないんだ。生と死は等価値ではないからね。痛みも」
アスカ「こ、こいつ、なんなの」
カヲル「未知の領域だろうね。キミには。だけど、ほら。片割れである彼にとっては――」
シンジ「……」ムクッ ユラァ
カヲル「そう来なくちゃ」
522 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 21:34:24.40 ID:/iWRPHOj0
シンジ「――はぁぁぁっ!!」ズザザー
カヲル「(その調子、勢いに身を任せてるんだ。シンジくん)」
シンジ「うぁぁあああっ!!」ゴンッ
カヲル「っ!」ドガシャァ
アスカ「扉が。て、鉄製なのよ、それ。こ、こんなの、人間の力じゃ」
カヲル「ふふっ」
シンジ「はぁっ、はぁっ」
カヲル「冷静に見ればまだ弱い。それでもアダムの鼓動を脈々と感じる」ガシッ
シンジ「うっ」
カヲル「スタミナの面に課題が残るね。まぁ、それもゆくゆくは解消されるだろうけど。どうだい? 人にして人ならざる者へと変わっていく心境は」
シンジ「き、気持ち悪いだけ、だ」
カヲル「手に有り余る力だから? 使いようによっては、リリンが用いる科学よりも強力だよ」ググッ
シンジ「ぐっ!」ミシ
カヲル「もっとも、今のままじゃ単なる強力なイチ兵士といった程度か。うん、気が変わった」
シンジ「な、なにを……言って」
カヲル「ボクを彼女を[
ピーーー
]。その目的に変化はない。だけど、過程を楽しもうと思う」チラッ
アスカ「……!」
カヲル「シンジくんが彼女を守るんだ」
シンジ「……?」
カヲル「そこのキミ。今後は僕に殺されないように気をつけて。あぁ、ちなみに誰かに喋った場合は即座に[
ピーーー
]。ボクには契約があるから」
アスカ「脅し?」
カヲル「事実だよ、これは。試してみるかい? 命がけで」
アスカ「……」
カヲル「三人だけの秘密にしよう。さて、そろそろ騒ぎを聞きつけて人が集まってきそうだ」パッ
シンジ「うっ」ドサッ
カヲル「ボクにもシンジくんの可能性を見せてほしい。ああ、今わかった。ボクはキミに会うために生まれてきたんだね、ええと、ハンカチは、と」フキフキ
アスカ「……」
カヲル「また今度会おう」スタスタ
523 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 21:35:59.52 ID:/iWRPHOj0
コマンドは発動してるんでレスしなおし
524 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/17(日) 21:36:54.40 ID:/iWRPHOj0
シンジ「――はぁぁぁっ!!」ズザザー
カヲル「(その調子、勢いに身を任せてるんだ。シンジくん)」
シンジ「うぁぁあああっ!!」ゴンッ
カヲル「っ!」ドガシャァ
アスカ「扉が。て、鉄製なのよ、それ。こ、こんなの、人間の力じゃ」
カヲル「ふふっ」
シンジ「はぁっ、はぁっ」
カヲル「冷静に見ればまだ弱い。それでもアダムの鼓動を脈々と感じる」ガシッ
シンジ「うっ」
カヲル「スタミナの面に課題が残るね。まぁ、それもゆくゆくは解消されるだろうけど。どうだい? 人にして人ならざる者へと変わっていく心境は」
シンジ「き、気持ち悪いだけ、だ」
カヲル「手に有り余る力だから? 使いようによっては、リリンが用いる科学よりも強力だよ」ググッ
シンジ「ぐっ!」ミシ
カヲル「もっとも、今のままじゃ単なる強力なイチ兵士といった程度か。うん、気が変わった」
シンジ「な、なにを……言って」
カヲル「ボクを彼女を[ピーーー]。その目的に変化はない。だけど、過程を楽しもうと思う」チラッ
アスカ「……!」
カヲル「シンジくんが彼女を守るんだ」
シンジ「……?」
カヲル「そこのキミ。今後は僕に殺されないように気をつけて。あぁ、ちなみに誰かに喋った場合は即座に[ピーーー]。ボクには契約があるから」
アスカ「脅し?」
カヲル「事実だよ、これは。試してみるかい? 命がけで」
アスカ「……」
カヲル「三人だけの秘密にしよう。さて、そろそろ騒ぎを聞きつけて人が集まってきそうだ」パッ
シンジ「うっ」ドサッ
カヲル「ボクにもシンジくんの可能性を見せてほしい。ああ、今わかった。ボクはキミに会うために生まれてきたんだね、ええと、ハンカチは、と」フキフキ
アスカ「……」
カヲル「また今度会おう」スタスタ
525 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 21:38:39.12 ID:/iWRPHOj0
ちょっと前まではsagaで大丈夫だったのにダメになってる
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/17(日) 21:43:34.92 ID:2p0hn3Gao
あれ?sagaで入らない?
もしかして大文字になってるとか?
527 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/17(日) 21:46:42.41 ID:/iWRPHOj0
ちょいテスト
殺す
528 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/17(日) 21:48:16.41 ID:/iWRPHOj0
シンジ「――はぁぁぁっ!!」ズザザー
カヲル「(その調子、勢いに身を任せてるんだ。シンジくん)」
シンジ「うぁぁあああっ!!」ゴンッ
カヲル「っ!」ドガシャァ
アスカ「扉が。て、鉄製なのよ、それ。こ、こんなの、人間の力じゃ」
カヲル「ふふっ」
シンジ「はぁっ、はぁっ」
カヲル「冷静に見ればまだ弱い。それでもアダムの鼓動を脈々と感じる」ガシッ
シンジ「うっ」
カヲル「スタミナの面に課題が残るね。まぁ、それもゆくゆくは解消されるだろうけど。どうだい? 人にして人ならざる者へと変わっていく心境は」
シンジ「き、気持ち悪いだけ、だ」
カヲル「手に有り余る力だから? 使いようによっては、リリンが用いる科学よりも強力だよ」ググッ
シンジ「ぐっ!」ミシ
カヲル「もっとも、今のままじゃ単なる強力なイチ兵士といった程度か。うん、気が変わった」
シンジ「な、なにを……言って」
カヲル「ボクを彼女を[ピーーー]。その目的に変化はない。だけど、過程を楽しもうと思う」チラッ
アスカ「……!」
カヲル「シンジくんが彼女を守るんだ」
シンジ「……?」
カヲル「そこのキミ。今後は僕に殺されないように気をつけて。あぁ、ちなみに誰かに喋った場合は即座に[ピーーー]。ボクには契約があるから」
アスカ「脅し?」
カヲル「事実だよ、これは。試してみるかい? 命がけで」
アスカ「……」
カヲル「三人だけの秘密にしよう。さて、そろそろ騒ぎを聞きつけて人が集まってきそうだ」パッ
シンジ「うっ」ドサッ
カヲル「ボクにもシンジくんの可能性を見せてほしい。ああ、今わかった。ボクはキミに会うために生まれてきたんだね、ええと、ハンカチは、と」フキフキ
アスカ「……」
カヲル「また今度会おう」スタスタ
529 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/17(日) 21:49:49.74 ID:/iWRPHOj0
何回か使ってたらアウト?
テスト
殺す
殺す
殺す
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/17(日) 21:49:56.15 ID:f8zoa8JSO
>>527
怖E
531 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 21:51:54.67 ID:/iWRPHOj0
あー、わかった!天然ボケかましてました!
ピーがはいった本文をコピペしてたからそのまんまだっただけでした!w
532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/17(日) 21:52:13.83 ID:2p0hn3Gao
初めての事例だ。何でだろう?
533 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/17(日) 21:53:49.46 ID:/iWRPHOj0
シンジ「――はぁぁぁっ!!」ズザザー
カヲル「(その調子、勢いに身を任せてるんだ。シンジくん)」
シンジ「うぁぁあああっ!!」ゴンッ
カヲル「っ!」ドガシャァ
アスカ「扉が。て、鉄製なのよ、それ。こ、こんなの、人間の力じゃ」
カヲル「ふふっ」
シンジ「はぁっ、はぁっ」
カヲル「冷静に見ればまだ弱い。それでもアダムの鼓動を脈々と感じる」ガシッ
シンジ「うっ」
カヲル「スタミナの面に課題が残るね。まぁ、それもゆくゆくは解消されるだろうけど。どうだい? 人にして人ならざる者へと変わっていく心境は」
シンジ「き、気持ち悪いだけ、だ」
カヲル「手に有り余る力だから? 使いようによっては、リリンが用いる科学よりも強力だよ」ググッ
シンジ「ぐっ!」ミシ
カヲル「もっとも、今のままじゃ単なる強力なイチ兵士といった程度か。うん、気が変わった」
シンジ「な、なにを……言って」
カヲル「ボクを彼女を殺すよ。その目的に変化はない。だけど、過程を楽しもうと思う」チラッ
アスカ「……!」
カヲル「シンジくんが彼女を守るんだ」
シンジ「……?」
カヲル「そこのキミ。今後は僕に殺されないように気をつけて。あぁ、ちなみに誰かに喋った場合は即座に殺す。ボクには契約があるから」
アスカ「脅し?」
カヲル「事実だよ、これは。試してみるかい? 命がけで」
アスカ「……」
カヲル「三人だけの秘密にしよう。さて、そろそろ騒ぎを聞きつけて人が集まってきそうだ」パッ
シンジ「うっ」ドサッ
カヲル「ボクにもシンジくんの可能性を見せてほしい。ああ、今わかった。ボクはキミに会うために生まれてきたんだね、ええと、ハンカチは、と」フキフキ
アスカ「……」
カヲル「また今度会おう」スタスタ
534 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 21:54:22.74 ID:/iWRPHOj0
できましたね。お騒がせしました。
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/17(日) 22:01:22.01 ID:MU2fcSbCo
はよはよ
536 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 22:20:01.26 ID:/iWRPHOj0
【数十分後 保健室】
アスカ「ねぇ」ギシ
シンジ「……ん?」
アスカ「あいつ、なんなの?」
シンジ「さぁ」
アスカ「さぁ⁉︎ さぁと言った⁉︎ 殺されかけたのよ! ついさっき!」ガバッ
シンジ「(アダム。綾波と同じ……手のひらにあるのは魂が空っぽだったのか)」
アスカ「あんたもどーなってんの⁉︎」
シンジ「どう話せばいいか」
アスカ「はぁ……」ポフッ
シンジ「アスカ……?」
アスカ「さっき、本気で終わったと思った、あたし」
シンジ「ご、ごめん。巻き込んで」
アスカ「目的、なんなの?」
シンジ「わからない」
アスカ「またそれ」
シンジ「本当なんだ。目的がわからないのは。どうしてアスカを狙うのか」
アスカ「こういうのは、順序立てて考えてくもんよ」
シンジ「……」
アスカ「助かった。今はそれだけで満足してあげる」
シンジ「うん」
アスカ「でも、思考が落ち着いたら洗いざらい全部話しなさい。バカシンジだけじゃ心許ないから」
シンジ「う、うーん、それは」
アスカ「どうせいつものことだからウジウジ悩んでんでしょ? なに抱えてたか聞くのは」
シンジ「……」
アスカ「それから……ええい、今はいいや。少し眠りましょ」
シンジ「首、大丈夫?」
アスカ「ん。数日ぐらい痕になるかもしれない。湿布で隠しとく」
シンジ「ミサトさんへの言い訳考えなくちゃね」
アスカ「そうね。あいつへの復讐も」
シンジ「ふ、復讐って」
アスカ「やられっぱなしじゃ気が済まない。泣き寝入りなんてごめんよ」ゴロン
537 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/17(日) 22:41:14.86 ID:/iWRPHOj0
【ネルフ本部 執務室】
ユイ「――失敗したですって⁉︎」バンッ
カヲル「はい」
ユイ「どういうつもり⁉︎ 契約を違えるつもりなの⁉︎」
カヲル「いいえ」
ユイ「バカにしてるの⁉︎」カシャン ブンッ
カヲル「万年筆は投げるものではありませんよ」パシ
ユイ「今すぐ戻って息の根を――」
カヲル「シンジくんとアダムの融合速度が想定を上回っています」
ユイ「……⁉︎ シンジの?」
カヲル「そういった事態は伺っていませんよ。あなたの落ち度です」
ユイ「邪魔がはいったのね? 細胞の活性化ができるようになっているの?」
カヲル「間違いなく。どういう仕組みで肉体が強化されるか気がついていないようですが」
ユイ「無意識?」
カヲル「(意図的だよ)」
ユイ「そう。既にそこまで……」
カヲル「誰もが持つ心の壁。A.Tフィールド。法則に辿り着くのも時間の問題かと」
ユイ「まずいわ。それは」
カヲル「リリンを超越した存在になりつつある。精神が未熟な中学生といっても脅威だ。わかりやすく言うと、ボクのような無から造られた人工物と違い、人と使徒のハイブリッド的存在だからね」
ユイ「……」
カヲル「いかように?」
ユイ「話をする必要はありません。あなたは契約を全うしなさい」
カヲル「ボクは自分の役割を――」
ユイ「私は次の手を打ちましょう」
538 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/18(月) 06:46:42.80 ID:l4S07ieXo
オモロ
539 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/18(月) 11:23:08.68 ID:yqnrO/IZ0
【数十分後 エレベーター内】
ユイ「分子成形、侵食スピードが常軌を逸しています。こちらが予測していた日数よりも遥かにはやい」
冬月「我々は前例にないことをやろうとしている。多少のズレはいたしかたあるまい」
ユイ「……」
冬月「アダムにとっても刺激的だったのやもしれぬな」
ユイ「使徒は学習し、知恵を身につけます。これまで襲来した特徴をとっても、外見、能力、それぞれが失敗と不満点を改善しようとしている」
冬月「自立志向型の考えを元に成り立つ。おかしいのは魂が空っぽであるにもかかわらず、どうやって肉体強化を」
ユイ「人は無から魂を作れない。神ではありませんのよ。“残り香”。魂をタブリスに移したのではありません。――厳密に言えば、“分けられた状態”なのです」
冬月「そうだとしても、サードチルドレンの内にある魂はしぼりカスではないのか?」
ユイ「原初の時代の遺物に確認しに向かっています」
冬月「ふっ、少なからず動揺しているのか。そんなに息子を心配せずとも」
ユイ「急展開になろうとしているかもしれないのです」
冬月「……?」
ユイ「もし、もし、肉体だけでなく、アダムそのものが再構築されているのなら――」
冬月「なに? もしや、魂の再生? そんなことは、まさか」
ユイ「本件は無用なパニックを避けるため、あらゆる角度からシンジの状態を分析する目的があります。パンドラの箱、我々は禁忌の領域を侵害している。忘れないで」
冬月「いかんな。完全な使徒として活動しだすとなれば人の脆弱な自我の容量を超え、ひとたまりもなく決壊する」
ユイ「……」チーン
冬月「セントラルドグマに降りてくるのはいつ以来か。そして――ここに安置してあるリリスと対面するのも」
ユイ「急ぎましょう」コツコツ
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/18(月) 11:48:08.24 ID:vVg1OtBW0
エレベーターがついた音だとはわかるが、タイミング的にユイが絶望顔になってるように見える
541 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 11:59:27.25 ID:yqnrO/IZ0
リリス「……」
ユイ「リリス。我々人類にとって母なる存在、聞きたいことがあるの」
冬月「ロンギヌスの槍で封印されている。魂でさえレイの中にある状態で、なにも認識できや――」
リリス『おかえりなさい』
冬月「……っ⁉︎」ギョッ
ユイ「黒き月。ファーストインパクトという大災害をおこし地球に降り立った最初の時、外殻は月に、葛城調査隊が発見する西暦2000年までアダムは休眠状態にはいった」
リリス「……」
冬月「ば、バカなっ! このような、ありえん!」
ユイ「生命の実を持つアダム、知恵の身を持つリリス。母さんは人類の元となる生命体に知恵を分け与え、人類はDNAを紡ぐことで継承していった」
冬月「ゆ、ユイくん。キミは一体」ガシッ
ユイ「アダムとリリスの融合。それは究極の生命体を意味する。さらに、ヒトをかけあわされば、どんな願いでも叶う」
冬月「ひ、瞳の色が――」
ユイ「お願い。私を初号機の中から呼び覚ましてくれた時のように、助けて。アダムの共振を感じているでしょう?」
冬月「初号機だと? リリスの助力で……な、なにがあったのだ」
リリス『なにを、望むの?』
冬月「(頭の中に直接言葉が浮かんでくる……)」
ユイ「シンジを、この世界のトリガーにしたい」
リリス『愛しく哀れな我が子。それが願い?』
ユイ「……不可解なの、母さんの肉体にある魂は完全な状態?」
リリス『違う』
ユイ「では、不完全な形での再構築」
冬月「……」ゴクリ
ユイ「ありがとう、母さん。まだもう少し休んでいて。もう少しだから」
542 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 14:10:49.37 ID:yqnrO/IZ0
冬月「待て。どういうことか説明してもらおう」
ユイ「それよりも――」
冬月「協力できない」
ユイ「……わかりました。この瞳はリリスの影響によるものです。といっても“混ざり”は薄い。レイを原液だとすればさらに水でうすめたもの。力は使えません。こうしてリリスとの対話ができるだけ」
冬月「俺にも聞こえたぞ。言葉がイメージとして浮かび上がった程度だが」
ユイ「私が近くにいることで少なからず影響を与えたのでしょう」
冬月「ユイくんはリリスの声が直に聞こえるのか」
ユイ「生身の人間では、存在の崇高さから自我を保てない。朧げにしか……聞いてはならないと防衛本能が働いてるのかもしれませんね」
冬月「初号機の中でリリスと邂逅したのかね」
ユイ「潜りすぎてとりこまれたあの日。私の肉体は液体状にまで還元され、魂はコアとひとつとなりました」
冬月「そこまでは承知している」
ユイ「その後になにが起こったのか。意識を確立できない狭間で、私はリリスと対話することに成功したのです」
冬月「……」
ユイ「膨大な知識が雪崩れ込んでくる。洪水のように。ひとつひとつの細胞が、まるで電気ショックを与えられているみたいでした」
冬月「脳では到達できない領域」
ユイ「アメリカ心理学の父であるウィリアム・ジェームズは“人の脳は普段、その10パーセントも使用していない”と提唱しました。100パーセントを使うと無理がでて耐えきれないからです。俗説だとする真っ向から否定した発表もあります」
冬月「……」
ユイ「それがどちらであれ、“それほどの量”の知識が私の中を駆け巡ったのです。想像できますか?」
冬月「言わんとする意図はわかる。対話に成功したキミは、コアを通してどうした」
ユイ「孤独を、理解しました」
冬月「……」
ユイ「リリス、アダムという原初の人々でも逃れる術はなかったのです。確立した存在である以上。それと同時に、私が今までどこか虚しいと感じていた理由も……」
冬月「コアから抜けだした方法は」
ユイ「ただ、もう一度、“会いたい”と願ったのですよ。純粋に。気がついたら、初号機の前にいました」
冬月「だが、肉体はサルベージに失敗して既に」
ユイ「科学でさえクローン技術を通して作れるのです。神に創造ができないとでも? 我々は彼らの力を模しているにすぎません」
冬月「うう、む」
ユイ「幸いなことに、私の魂は初号機のそばにありました」
冬月「つまり、その頃からキミはリリスと通じ合っていたのか? これまでずっと?」
ユイ「ふふっ、通じ合う? 概念はそのようなものではない」
冬月「……」
ユイ「もうよろしいですか? シンジの中にあるアダムをなんとかしなければ。覚醒させるには早すぎます」
冬月「よかろう。計画書の見直しが必要だな」
ユイ「修正はまだききます。表面化したのは幸いと考えましょう。私たちが気がつく前に、融合が今以上進んでないと」
冬月「セカンドチルドレンはどうなった?」
ユイ「まだ生きています。ですが、必ず死んでもらいます」
冬月「まずいことにならなければいいか」
ユイ「先生。感謝しています」
冬月「……」
ユイ「あなたがそうやって不測の事態を考慮してくれるからこそ、行き過ぎた行動に対して歯止めがかる」
冬月「ふん、俺は静観しているに過ぎんよ。キミも碇も言ってやめるような奴ではあるまい」
ユイ「サポートしていただいてるのは事実です。これからも、よろしくお願いします」
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/18(月) 14:23:00.05 ID:JURYdx4jO
このSSのストーリーすげえな
544 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 15:03:47.79 ID:yqnrO/IZ0
【第壱中学校 保健室 放課後】
ヒカリ「失礼します。先生。アスカは」
先生「目を覚ましてるわよ。会ってく?」
アスカ「――ヒカリ?」
ヒカリ「あっ」タッタッタ シャ
アスカ「おはよ」
ヒカリ「なにを呑気な……首っ⁉︎」
アスカ「平気だって。ちょっと大袈裟に湿布はってるだけ」
先生「女の子ですものね。手形が残っているのなんて見せられないし。心配ないだろうけど……一応、病院は行くのよ? 碇くんだっけ、彼は、まだ起きない?」
アスカ「まだ眠っています。さっきは、頑張ってくれたから」
先生「そう。疲弊していたのね。まさか、暴漢がここに来るなんて、こわいわ。ネルフに連絡しておいたからすぐに捕まると思うけれど」
アスカ「(それはないわね、たぶん)」
ヒカリ「でも、よかった。本当に」グス
アスカ「泣かないの。女の涙はとっておきなんだから」
先生「言うわね」
アスカ「先生、ここは大丈夫ですから」
先生「そう? それじゃあ、ちょっとタバコ休憩にでも」
ヒカリ「碇くん、気がついて追いかけてくれてたんだ」
アスカ「……? なに? どういうこと?」
ヒカリ「ちゃんと伝えられなかったけど、アスカの様子がおかしいって言ったの。そしたら、突然用事があるからって」
アスカ「そうなの?」
ヒカリ「よかったぁ」
アスカ「そっか。ちったぁ男見せたんだ。こいつ」
ヒカリ「うん、暴漢を追い返したのって碇くんなんでしょう? すごいよね、そんな人だとは夢にも思わなかった」
アスカ「まぁ、よくやってたわよ。人間じゃできないぐらい」
ヒカリ「ぷっ、なにそれぇ?」
アスカ「……」
ヒカリ「碇くん、起こす? 下校時間だし」
アスカ「そうね、もうちょっと」
ヒカリ「えっ、でも。帰らなくちゃ……あ、迎えきてもらうとか?」
アスカ「ううん、違う、よっと」ギシッ シャッ
ヒカリ「やっぱり起こすの?」
アスカ「ヒカリ、黙って」ギシッ
ヒカリ「あ、アス――」
シンジ「すぅー……すぅー……」
アスカ「……」チュ
ヒカリ「え、ええぇぇぇっ⁉︎」ガタッ
アスカ「ばっちい」ゴシゴシ
ヒカリ「あ、ああああっアスカっ⁉︎ そ、それって、き、ききキスっ!」
アスカ「どんなもんかと思ったけど。なにも感じない」
ヒカリ「ほぇー」ポー
アスカ「はぁ……。さっさと起きなさい! ねぼすけシンジっ!」
545 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 15:31:05.86 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「いっ⁉︎ な、なんだ⁉︎ なにが……あれ? ここは」
アスカ「ようやくお目覚め?」ぶっすぅ
ヒカリ「……」ドッキンドッキン
シンジ「アスカがどうして腰に手を当てて立って、洞木さんは」
アスカ「なに寝ぼけてんのよ! 下校時刻! ヒカリは迎えに来てくれたの!」
シンジ「寝たまま――」
アスカ「目は覚めた?」
シンジ「あ、うん。洞木さん?」
ヒカリ「へ?」
シンジ「どうしたの? ぼーっとして」
ヒカリ「だ、だだだって、今、アスカが――」
アスカ「なんでもない」チラ
ヒカリ「あ、うん、そ、そう。ちょっと考え事」
シンジ「アスカ、痛みは?」
アスカ「あんたそればっかりね。別にこれぐらいどーってことないわよ」
ヒカリ「わ、私っ! 保健室の先生に挨拶してくる! 二人で話してて!」タッタッタッ
シンジ「……?」
アスカ「まったく、ヒカリったら。余計な気まわしちゃって」
シンジ「(ふぅ。力が戻ってる。ただ、少しだるいな)」
アスカ「シンジ」
シンジ「なに?」
アスカ「落ち着いたら話、聞かせてもらうって言ったわよね」
シンジ「……うん」
アスカ「帰りに私のマンションに――」
マナ「シンジくんっ⁉︎ ごめん! 遅れて! 日直の仕事があって!」ガララッ
アスカ「またあんたぁ?」
マナ「アスカをかばって怪我したって! どこ⁉︎ どこ怪我したの⁉︎」ガタンッ
シンジ「いや、僕は別に」
マナ「よかったぁっ!」ギュウ
アスカ「ちょっと、なに抱きついてるわけ? あんたじゃなくシンジに用事があんのよ」
マナ「別に誰と誰が抱きついても関係ないでしょ。首、平気?」
アスカ「あんたに心配されたくないわ。離れたら? 苦しそうだし」
シンジ「あの、ちょっと、二人とも」
マナ「なんでアスカにわかるのよ?」
アスカ「怪我してるかもしれない相手によく体重かけられるわね。あんたの体重、5トンぐらいあるんじゃなかった?」
マナ「ご、ごとっ⁉︎ そんなわけないでしょ⁉︎」
アスカ「ほら、シンジ」ガシッ
シンジ「っと、あ、アスカ?」
マナ「いきなり腕掴まなくても! いつも強引なのね」
アスカ「ちっ、あんたにはわかんない話があんのよ」
マナ「あぁ〜ら? どういう話?」
アスカ「言えない」
546 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 15:34:17.33 ID:yqnrO/IZ0
マナ「二人だけの秘密? ……アスカ、あなた」
アスカ「胸糞悪くなる勘違いしないでくれない?」
マナ「わかるよ、私。素直じゃないだけのくせに!」
アスカ「……っ! 言ったわね、このクソアマ。この前の続きがやりたいって――」
シンジ「もうやめるんだ! 二人とも!」
マナ「ご、ごめん」
アスカ「ふん」
シンジ「僕の態度がはっきりしないのがいけないんだ。マナ、アスカと話をする。自分の意思で。いい?」
マナ「あ……」ギュウ
アスカ「ふふん、残念でしたぁ〜」
シンジ「アスカも。マナは心配してくれてるだけだよ」
アスカ「(バカシンジ。こいつは女の嫉妬をしてるのよ)」
シンジ「僕なら、大丈夫だから。マナも帰って」
マナ「えっ、でも、方向同じだし! わ、私も一緒に!」
シンジ「今日はアスカと二人にしてほしい」
先生「っとに。最近のマセガキどもは」
ヒカリ「な、なにやってるのよ。もぉ」
アスカ「あ……」
先生「そんだけ騒がれる元気があれば充分よ。とっとと帰りなさい。はぁ……。私なんか数年彼氏いないのに」
マナ「す、すみません」
先生「あわれみは余計みじめになるだけだわ……」
547 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 19:06:20.72 ID:yqnrO/IZ0
【ミサト宅 リビング】
シンジ「まだ散らかってないみたいだね」
アスカ「二日ぶりでしょ。さて、ここなら誰かに聞かれる心配はない。マナにもね」
シンジ「そんなに露骨に言わなくたって」
アスカ「マナは戦自で、あたしたちを調べてる。シンジにだって、演技に見えなくなってきたけど。……今いい。昼休みのやつ、知り合いみたいだったけど?」
シンジ「カヲルくん?」
アスカ「そう、それ。どこで知り合ったのよ」
シンジ「フォースチルドレンなんだ」
アスカ「あいつがっ⁉︎」ガタッ
シンジ「三号機が配備されるって聞いた。ネルフの通路でたまたますれ違って」
アスカ「戦自じゃなくあたしたちの同僚じゃない⁉︎ どうして狙ってくるの⁉︎」
シンジ「……わからない」
アスカ「あんたの目が赤くなった理由は?」
シンジ「そ、それは……」
アスカ「正直に言った方がいいわよ。隠すのって気づかれないことに前提にあるんだから。あたしはこの目で現場を見てる」
シンジ「(うまく、誤魔化すしか)」
アスカ「あんたとあいつ。動きは素人同然。直線的だし、身のこなしを見ればすぐわかる。格闘技経験じゃない。異常なのは、圧倒的な俊敏さと力強さ」
シンジ「……」
アスカ「蹴りがくるとわかってても、反応できない速さと、鉄製の扉を壊す威力。どうやったの?」
シンジ「僕にもよくわからなく――」
アスカ「……」バンッ
シンジ「……」
アスカ「シンジ。二度は言わない」
シンジ「ごめん。話しをすると危険になるんだ。アスカが」
アスカ「もうなってるでしょ⁉︎ 命を狙うって宣言してんのよ⁉︎」
シンジ「僕が守るから」
アスカ「なにも知らされず? いつ来るかわからないのにのほほんと生活しろって言わけぇ?」
シンジ「う、うぅん」
アスカ「あんたねぇ、共同生活してたんだからさぁ。もう少しあたしの性格ってもんを理解してないのぉ?」
シンジ「だけど……」
アスカ「命ならねぇ! とっくに賭けてんのよっ!」バンッ
シンジ「……」
アスカ「――じゃなきゃ、エヴァになんか乗れないじゃないっ!!」
シンジ「……」
アスカ「僕が守るぅ? あんたが、このあたくしさまを? たった一回うまくいっただけでのぼせんじゃないわよ!」
シンジ「そこまででいいよ。わかった……話すから、座って」
アスカ「……」スッ
548 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 19:36:03.23 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「まず、いろんな人が関わってて」
アスカ「誰?」
シンジ「(加持さんは伏せておいたほうがいいかな)」
アスカ「ひとつ忠告しとく。いや、警告。今からあんたが言ったの、それを無条件で信じてあげる」
シンジ「……」
アスカ「ただし! ウソついたら絶対に許さない。変なごまかしも。……あんたと一生口きかないから」
シンジ「本気、なんだね」
アスカ「あたしとの関係がどうでもいいっていうんならそうすれば? 見殺しにだってできるんだから」
シンジ「……」
アスカ「誰かに殺されるなら、エヴァに乗って戦って死ぬほうがまだマシ。でも、そうなら仕方ない」
シンジ「わかったよ」
アスカ「じゃあ、聞く」
シンジ「順序立てて話すよ。まず、最初は、たぶん、誘拐された時が、全てのはじまりだったんだ」
アスカ「あぁ、そういやそんなことも」
シンジ「やったのは、母さんだったんだ」
アスカ「まじ?」
シンジ「その時は誰かわからなくて。しばらくして、父さんと食事してる時に姿を見せてきて」
アスカ「……」
シンジ「母さんだってその時はじめて知った。父さんは僕に写真は全部捨てたって言ってたから、わからなかったんだ」
アスカ「え、あんた、ママの顔、知らなかったの?」
シンジ「うん。おかしいよね。覚えてたのは記憶の中の声だけ。思い出そうと何度かしたことあったけど、首から上が影がさしてるみたいな感じ」
アスカ「……そう。ろくな思い出ないんだ」
シンジ「それから、またしばらくすると、いつのまにか、母さんが父さんを追い詰めてた」
アスカ「え?」
シンジ「僕はなにも知らなかったんだ! ただ、父さんに認めてほしかっただけだから! ……だから、頑張ろうと思ってた矢先のことだった」
アスカ「碇司令ってアラスカに調査に行ってるって……」
シンジ「(話していいのか、本当に……)」ギュウ
アスカ「……」スッ
シンジ「……っ!」
アスカ「手、そんなに強く握らなくたって。ほら、重ねてあげるから。こうすると安心するでしょ」
シンジ「……」
アスカ「続き、話して」
549 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 19:57:20.29 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「父さんは、父さんは……死んだ」
アスカ「……っ⁉︎」ギョ
シンジ「母さんにとどめをさされた」
アスカ「碇、ユイ司令が⁉︎ ……関わってる人が少なくないって」
シンジ「アスカなら、わかるんじゃないの? 父さんと近しい人達」
アスカ「待って! ……まさか、ミサトもっ⁉︎」
シンジ「ミサトさんはなにも知らないよ。蚊帳の外と言ってもいいぐらい」
アスカ「……」ほっ
シンジ「父さんの側近達は、といっても数は少ないけど、母さん側についた」
アスカ「あんたの両親って殺し合いしてたの」
シンジ「実際にはそうじゃないんだ。父さんは夢にも思わなかったんだよ。母さんを愛していたから」
アスカ「背中から刺したみたいな?」
シンジ「うん、それに近い状況だと思う。母さんは母さんで目的があって、ネルフ総司令というポジションがほしかったんだ」
アスカ「それって普通に殺人事件じゃない!」
シンジ「だけど、罪に問われることはない。不公平だよね」
アスカ「どっかに申告とか」
シンジ「それだけは絶対にしちゃだめだ。ネルフの保安部も、諜報部も、第三新東京都市の旧警察機構だって自由に弾圧できる権限を持ってる」
アスカ「だ、だって、そんなの、ただの独裁者じゃ」
シンジ「ネルフのさらに上の組織がある。そこが母さんの味方をしている以上は、どうしようもできないんだ。ただ、母さんの計画の邪魔をするだけ」
アスカ「あ、あんた……とんでもない状況にいたのね」
シンジ「ふぅ……ジリ貧だって僕もわかってるんだ。このままじゃ誰かを守れない」
アスカ「(碇ユイ司令、ウソくさい人だと感じてたけど、まさか、そんな風になってるなんて)」
シンジ「あんな力が使えるのは……」
アスカ「使える、のは?」
シンジ「その、ネルフに、母さんにあることをされたんだ」
アスカ「なにを?」
シンジ「言いたくない」
アスカ「なんで? あたしの身が危険だって言うのなら」
シンジ「違うんだ。言ってしまうとどうなるかわからないから」
アスカ「……?」
シンジ「僕だってこわいんだよ、アスカ」
アスカ「……」
シンジ「アスカは、真実を知りたい。だけど、それだけで僕がどうなってるのかなんてどうでもいいんだろ」
アスカ「そういうわけじゃ」
シンジ「そうだよ。アスカの身の安全に関することだったら言う」
550 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 20:18:06.81 ID:yqnrO/IZ0
アスカ「……っ!」バンッ グイッ
シンジ「ちょ、ちょっ」
アスカ「いい? バカシンジ。一度しか言わないからね」
シンジ「な、なんだよ、ていうか、襟から手を離してよ。ちゃんとウソついてないじゃ――」
アスカ「そういうことじゃないのよ。あたしがあんたをどうでもいいと思ってるならこんなこと言わない」
シンジ「……」
アスカ「あんたがバケモノになってても、軽蔑しないって約束する。使徒相手にしてんだしさ」パッ
シンジ「ば、バケモノって」
アスカ「肝心なところを聞いてないもの。あんたの力の理由。くどいようだけどあれは人間技じゃない」
シンジ「……ふぅ。あの力は、使徒の力なんだ」
アスカ「使徒? あんたって使徒だったの?」
シンジ「あはは、そう直に聞かれると笑っちゃうね。使徒を移植されたんだよ、母さんに」
アスカ「えぇえぇぇっ⁉︎」
シンジ「だから、あんな力になっちゃったんだ」
アスカ「てことは、フォースも⁉︎ え? 待って? 最近のトレンド? エヴァのパイロットって改造人間にされちゃうのぉっ⁉︎」
シンジ「そ、そういうわけじゃないよ! カヲルくんと僕が異例で」
アスカ「た、助かった。あたしだったら絶対に嫌だし……でも、それで良い成績残せるなら、ううーん」
シンジ「あ、アスカ。なにも良いことないよ、こんなの。冷静に考えてよ」
アスカ「あたしは冷静よ。まぁ、それはいいけど。見た目的な変化は目だけ?」
シンジ「あと、この手なんだけど」スッ
アスカ「うげっ! キモっ! やっぱあたしはいいわ」
シンジ「……はぁ」スッ
アスカ「へぇ、任意で消すことできるんだ?」
シンジ「うん、まぁ」
アスカ「で? あんたって使徒なの? 人間なの? というか得体の知れないモンをよく移植させるわね」
シンジ「……」ポリポリ
アスカ「わかった。とりあえず、ユイ司令が裏の顔を持ってて、碇元司令が亡くなってること。あんたの力の正体も」
シンジ「(よかった、これで終わりそうだ)」
アスカ「誰が関わってるか、具体的な名前は聞いてない」
シンジ「……」ギクッ
アスカ「教えてよ」
シンジ「ううんと、アスカなら頭がいいから」
アスカ「あんた知ってるんでしょ? だったら、言ってくれたらいいだけじゃない」
シンジ「その、危険――」
アスカ「それは何度も聞いた。その上で言ってるともさっきも言ったわ」
シンジ「……」
アスカ「なにを出し渋ってんのよ」
551 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 20:46:15.93 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「リツコさんと、副司令……」
アスカ「それだけ?」
シンジ「ううんと」
アスカ「違うんでしょ。全部吐いちゃいなさい。カツ丼はセルフサービスだから出前とるならはやくしてね」
シンジ「(た、たかられた経験はないけど、こんな感じなのかな)」
アスカ「……」ジトー
シンジ「アスカ。よく考えてよ。本当に、知りたいの? 今ならまだ」
アスカ「シリタイ。ヨクカンガエタ。オシエテ」
シンジ「考えてないだろっ! なんで棒読みになってるんだよ!」
アスカ「後悔はしない……。これから先、シンジのその力に頼ることはあるかもしれない。自分でいうのもなんだけど、プライドの高いあたしが折れてんのよ。それでも守られるだけは嫌」
シンジ「……」
アスカ「知りたいのは、知らなくちゃいけないから」
シンジ「ふぅーー。本当に、後悔しないんだね?」
アスカ「しないわ」
シンジ「……加持さんだよ」
アスカ「……」
シンジ「……あ、アスカ?」
アスカ「そ。わかった。それで終わり? ファーストは?」
シンジ「あ、綾波も。その関係してるけど、母さん側じゃないんだ。どっちかっていうと、僕の方」
アスカ「けっこう複雑な相関図になってるのね。戦自のマナもいるし、あいつは、まぁいいか」
シンジ「あの、ショックじゃないの?」
アスカ「加持さん? そりゃショックよ。表にだしてないだけ。あんたとさっき約束したから。無条件で信じるって」
シンジ「そんな……」
アスカ「加持さんがパソコンに向かってなにかしてるのはしょっちゅうだし。仕事だと思ってた。……まぁ、それも仕事だったのかもしれないけど」
シンジ「……」
アスカ「ミサトには、今日のことうまく誤魔化しとくから。あんたは帰っていいわよ」
シンジ「え? でも、ご飯とか」
アスカ「空気読みなさいよ。取り繕ってる内に、帰って」
シンジ「……やっぱり、話さない方が」
アスカ「これは私が知りたいと求めたこと。あんたは話をしただけ。……なにも悪くない」
シンジ「アスカ……」
アスカ「帰って。お願い」
シンジ「わかった……」ガタッ
アスカ「……」ギュウ
シンジ「あ、あれ?」ヨロヨロッ ドサ
アスカ「……? なにやってんの」
シンジ「なんだ、手が、まさかっ」ドクン ドクン
アスカ「シンジ?」ガタッ
シンジ「あ、アスカァっ! は、はやく、逃げて! 衝動が! 言ってないことがっこのっ手には! もうひとつ、厄介なことがあって」
アスカ「なに? なんかあんの?」
シンジ「こ、壊したくなるんだ! だ、だから、走って逃げてっ!」ググッ
アスカ「ちょ、ちょっとあんた、また、目の色が」
552 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/18(月) 22:36:11.70 ID:tuUTmUH7o
はよ
553 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 22:46:35.28 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「僕にふれちゃだめだっ!!」バチンッ
アスカ「いたっ」ドサ
シンジ「あ、違うんだ、そんなつもりは」
アスカ「いたぁ、いきなり手を叩かなかったって」
シンジ「だめだ、アスカはだめだ」
アスカ「シンジ、ねぇ」スッ
シンジ「うぅうぅぅっ!」
アスカ「壊したいの? えぇと、なにか壊せるもの、積み木は、ないし。そうだ! コップ!」
シンジ「違うんだ、これはっ、そういうものじゃなくて」
アスカ「違う? じゃあなに?」
シンジ「アスカ、助けて」
アスカ「え……?」
シンジ「僕が溶けてなくなってしまう。アスカの顔が、わからナくなル」
アスカ「ちょっと、どうしたのよ!」ユサユサ
シンジ「……」
アスカ「し、シンジ? 気失ってるの?」ソォー
シンジ「さわるな」
アスカ「あ、だけど」
シンジ「……」パァンッ
アスカ「いたっ! ってぇ! またやったわね! えっ⁉︎
――ちょ、なにっ、汚なっ、舌いれっ、んっ、いたっ」
シンジ「ぷはぁ、はぁーはぁー」
アスカ「このどすけべえっ! 誰がキスしていいっつったのよ! し、舌いれたでしょ⁉︎?」ゴシゴシ
シンジ「……」ググッ
アスカ「くっ、力、つよっ! ちょっと、シンジ! ほんとにどいて! どういうつもり! なにか喋んなさいよ!」ジタバタ
シンジ「……」ガシッ
アスカ「え?」
シンジ「……」ブチブチブチッ
アスカ「きゃあああっ⁉︎」
シンジ「くっ、くっくっくっ」
アスカ「まさか、衝動って……」
シンジ「うぐっ⁉︎」ドサッ
アスカ「(力が抜けた⁉︎)」
シンジ「アスカ、逃げ――うぐっ」ゴスッ
アスカ「とりあえず蹴り一発! さっさとどけ!」
シンジ「うぅっ!」ドサッ
アスカ「これはマジで逃げた方が良さそうね。ああ、まったく、制服破いてくれちゃって! ミサトにどうやって言い訳すんのよ!」
シンジ「そんなことより、今は!」
アスカ「わかってる! でも! 着替え!」
シンジ「もう持ちそうにない! はやくっ!!」
アスカ「えぇと、ええと、たしかこっちに脱いだままのワンピースが。こ、こっち見ないでよ!」
シンジ「み、みてない……」ドサッ
アスカ「え? ちょ、ちょっと、まだ待って。今着てる! 着てるからぁ!」
554 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 22:48:46.97 ID:yqnrO/IZ0
改行おかしくなったんでレスしなおし
555 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 22:50:30.45 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「僕にふれちゃだめだっ!!」バチンッ
アスカ「いたっ」ドサ
シンジ「あ、違うんだ、そんなつもりは」
アスカ「いたぁ、いきなり手を叩かなかったって」
シンジ「だめだ、アスカはだめだ」
アスカ「シンジ、ねぇ」スッ
シンジ「うぅうぅぅっ!」
アスカ「壊したいの? なにか壊せるもの、積み木は、ないし。そうだ! コップ!」
シンジ「違うんだ、これはっ、そういうものじゃなくて」
アスカ「違う? じゃあなに?」
シンジ「アスカ、助けて」
アスカ「え……?」
シンジ「僕が溶けてなくなってしまう。アスカの顔が、わからナくなル」
アスカ「ちょっと、どうしたのよ!」ユサユサ
シンジ「……」
アスカ「し、シンジ? 気失ってるの?」ソォー
シンジ「さわるな」
アスカ「あ、だけど」
シンジ「……」パァンッ
アスカ「いたっ! ってぇ! またやったわね! えっ⁉︎――ちょ、なにっ、汚なっ、舌いれっ、んっ、いたっ」
シンジ「ぷはぁ、はぁーはぁー」
アスカ「このどすけべえっ! 誰がキスしていいっつったのよ! し、舌いれたでしょ⁉︎?」ゴシゴシ
シンジ「……」ググッ
アスカ「くっ、力、つよっ! ちょっと、シンジ! ほんとにどいて! どういうつもり! なにか喋んなさいよ!」ジタバタ
シンジ「……」ガシッ
アスカ「え?」
シンジ「……」ブチブチブチッ
アスカ「きゃあああっ⁉︎」
シンジ「くっ、くっくっくっ」
アスカ「まさか、衝動って……」
シンジ「うぐっ⁉︎」ドサッ
アスカ「(力が抜けた⁉︎)」
シンジ「アスカ、逃げ――うぐっ」ゴスッ
アスカ「とりあえず蹴り一発! さっさとどけ!」
シンジ「うぅっ!」ドサッ
アスカ「これはマジで逃げた方が良さそうね。ああ、まったく、制服破いてくれちゃって! ミサトにどうやって言い訳すんのよ!」
シンジ「そんなことより、今は!」
アスカ「わかってる! でも! 着替え!」
シンジ「もう持ちそうにない! はやくっ!!」
アスカ「えぇと、ええと、たしかこっちに脱いだままのワンピースが。こ、こっち見ないでよ!」
シンジ「み、みてない……」ドサッ
アスカ「ちょ、ちょっと、まだ待って。今着てる! 着てるからぁ!」
556 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 23:18:57.06 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「……」ユラァ
アスカ「まずっ! ミサトの一升瓶にでも抱きついてなさい!」ブンッ
シンジ「……」パシッ
アスカ「ちっ、逃げなくちゃ」
シンジ「……」テクテク
アスカ「ここの出口はひとつ。その通路を塞ぐってわけ。そんなに私を襲いたいの」
シンジ「……」ジー
アスカ「うっ、気持ちわる。品定めでもしてる気? こんなんじゃ守るどころじゃないじゃない、ほんっと、バカなんだからぁっ!」ブンッ
シンジ「……」パシッ
アスカ「甘い! もういっちょうっ!」ブンッ
シンジ「……っ⁉︎」ゴーンッ ドサッ
アスカ「はっはーん! クリーンヒット! ……なんなのよっ、たく」
シンジ「……」ムクッ
アスカ「もぉ〜〜まだぁ? いい加減にしてよぉ〜〜っ!」ブンッ ブンッ
シンジ「……」パシッ パシッ
アスカ「(さすがに学習したか。ええぃ、こうなったら!)」
シンジ「……」
アスカ「し、シンジ〜? ほぉら」チラリ
シンジ「……」ピクッ
アスカ「ふんっ!」ブンッ
シンジ「……っ⁉︎」スコーンッ ドサッ
アスカ「こ、こんなマヌケな手にひっかかるなんて。なにが衝動よ。単なるケモノじゃない」
シンジ「うっ、うぅ」ムク
アスカ「まだくるのぉ?」ゲンナリ
シンジ「あ、あれ? うわぁっ⁉︎」
アスカ「ミサトの! 焼酎瓶なら! まだまだ!」ブンッ
シンジ「あぶっ! あぶない! や、やめてっ! やめて! アスカ!」ガシャン
アスカ「……? 正気に戻ったの?」
シンジ「はぁ、たぶん」
アスカ「もう平気? ほんとに? 演技してるだけとか」ガシッ
シンジ「ち、ちちちっ違うよ! だから! 酒瓶を掴むのはやめて!」
アスカ「あんた、なに重要なこと言い忘れてんのよ!」
シンジ「ご、ごめん! 今来るとは思わなくて!」
アスカ「あーあ、部屋の中めちゃくちゃ」
シンジ「あ……うん」
アスカ「その衝動ってやつ。制御できないの? とんだ欠陥じゃない」
シンジ「自分じゃどうしようもできなくて」
アスカ「昼間のやつとあんた、どっちから襲われるかわかったもんじゃないわよぉ」
シンジ「それは……そうだね、ごめん」
アスカ「どーなの? もうなさそうなの?」
シンジ「たぶん」
アスカ「今起こったことは、事故だと思って忘れてあげる。でも、それで昼間助けてくれた借りはなし。チャラ。いーわね⁉︎」
シンジ「め、めんぼくない」シュン
557 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/18(月) 23:40:02.93 ID:yqnrO/IZ0
【ミサト宅 数十分後】
アスカ「気持ち悪いったらもー」ガラガラガラッ ペッ
シンジ「そんな、念入りにうがいしなくても」
アスカ「なんか言った?」ギロッ
シンジ「なんでもないです」
アスカ「あのねぇ、雰囲気ってもんがあんでしょーが。無理やりが好きな女がどこにいるっつーのよ」
シンジ「……」シュン
ペンペン「クェーッ」コツコツ
アスカ「駄ペンギンは今更でてきて床舐めようとしてるし。くちばし濡らしてなにやってんだか」ガラガラガラッ ペッ
シンジ「あっ、ペンペンだめだよ」
ペンペン「クェ?」
アスカ「もう言ってないことない?」
シンジ「えぇと、ないことはないけど、さっきみたいな危害を与えるようなのは」
アスカ「それはあるっつーの!」
シンジ「そ、そっか」
アスカ「めんどくさそうだから今日はいい。感傷に浸る暇すらないじゃない」ブツブツ
シンジ「……」フキフキ
アスカ「ミサト、どう言い訳する?」
シンジ「あ……どうしようか」
アスカ「昼間の件は暴漢ってことにしたけど。それすらも怪しまれないか苦しいのに。問題は制服よ」
シンジ「うん」
アスカ「あんたが破いたってことにする?」
シンジ「えっ」
アスカ「二人きりでいたらあんたがあたしに欲情して、抵抗したら破けたって。大目玉くらうだろうけど」
シンジ「うぁ、それは、でも、そうするしかないね」
アスカ「使徒のせいにもできるけど、それ。ミサトに言いたくないんでしょ?」
シンジ「うん」
アスカ「だったら、変に誤魔化すよりは、本当のことを織り交ぜて言った方がいい。こっちも完全な作り話だとボロでちゃうし」
シンジ「わかった。それでいこう」
アスカ「厳罰は覚悟しときなさいよ。少しはフォローしたげるから」
558 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/19(火) 00:06:23.16 ID:XHL6SpVG0
【また数十分後】
ミサト「――シンジくん。今の話は本当なの?」
シンジ「は、はい。すみません」
アスカ「あたしが魅力的すぎるっていうのも」
ミサト「アスカ、黙りなさい。シンジくんはそんなことしない子だと思ってたのに。思春期の性欲を舐めてたわね」
シンジ「本当に、すいません」
ミサト「いい? シンジくん。アスカは、多感な年頃なのよ? この時期に残る思い出って20代、30代の人格形成に大きく影響するの」
シンジ「はい」
ミサト「困ったことに、今だに実感が沸かないんだけど。あの制服を見たらねぇ」チラッ
アスカ「まぁ、そこまで気にしてないし」
ミサト「だめよ。こんなことになってしったのは、大問題だわ」
シンジ「……」
ミサト「このことは、司令はもちろん、同居している監督官の伊吹二尉にも連絡します」
アスカ「ちょっと。当事者のあたしがいいって言ってんのよ」
ミサト「これはね、甘やかしてたらシンジくんの為にならないの。今後に影響するのは、彼も同じなのよ。正しい道徳を身につけさせなくちゃ」
アスカ「ミサトは親じゃないでしょ?」
ミサト「監督者という責務があります。パイロットの管理は私に一任されているの」
アスカ「はぁ……」
ミサト「暫定処置として学校とネルフの往来以外は自宅謹慎処分を言い渡すわ。追加があれば、また連絡する」
アスカ「やりすぎじゃない?」
ミサト「やけにシンジくんをかばうのね」
アスカ「だからぁ、別に気にしてないって」
ミサト「いきなり襲いかかるなんて情状酌量の余地なしよ。却下します」
シンジ「わかり、ました」
アスカ「……」
ミサト「今日はもう帰りなさい。ここに来るアルバイトの件も、白紙に戻すから」
アスカ「いい加減にしてよねっ!」バンッ
ミサト「……?」
アスカ「ぐちぐちぐちと! あたしが水に流すって言ってんでしょう⁉︎」
ミサト「ちょっと、落ち着きなさい」
アスカ「ミサトは親でもなんでもない! シンジがここに来ない理由にはならないわ!」
ミサト「今言ったけど、これはシンジくんの為で」
アスカ「はん、職権乱用よ」
シンジ「アスカ、いいんだ。あの、ミサトさん。僕が悪かったですから、処罰は甘んじて受けます」
ミサト「……はぁ、本当にこのシンジくんが? どうしてもイメージが沸かないのは私も一緒」
シンジ「はい、それは事実です。アスカを見てると……」
ミサト「むらむらぁっときちゃったの?」
シンジ「はい、その、むらむらっと」
ミサト「……」チラッ
アスカ「なんでこっち見んのよ」
ミサト「あたしにも、むらむらぁっときた?」
シンジ「へ?」
ミサト「いや、あたしと、ほら、一緒にいる期間あったじゃない? アスカが来る前は二人きりで住んでたし」
559 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/19(火) 00:31:31.75 ID:XHL6SpVG0
シンジ「いえ、ミサトさんには」
ミサト「あらぁ? だめ? まだまだイケると思ってんだけど。胸とか好きなんじゃないの? ほれほれ」もみもみ
シンジ「えっと」サッ
ミサト「どぉ〜〜もおかしい。目線を逸らすぐらいウブな子が?」
アスカ「ちっ。やっぱその処罰でいいわ」
ミサト「はぁ?」
シンジ「……」
ミサト「あんた達、なぁんかあたしにウソついてない?」
アスカ「なにも」
ミサト「シンちゃん?」
シンジ「いえ、なにも。み、ミサトさんにはむらっとしなくて、アスカはかわいいから」
アスカ「とーぜん!」
ミサト「処罰は、冗談じゃ済まされないわよ。撤回するなら今のうち。アスカも、シンジくんがつらい目にらあっていいの?」
アスカ「あたしはなにもなしでいいって言ってるじゃない!」
ミサト「だったら違う事実を話なさい。正直に」
シンジ「本当なんです! ミサトさん! 僕がアスカを襲ったのは!」
ミサト「ウソじゃないのね?」
シンジ「はい! ウソじゃありません!」
ミサト「了解したわ。それと、昼間の暴漢の件なんだけど。シンジくんがアスカを助けたんですって?」
シンジ「あ、そうです。体育館裏に行ったら、アスカが襲われてて」
ミサト「アスカ? どうしてそこに?」
アスカ「あたしは、今朝下駄箱に手紙がはいってたの」
ミサト「手紙?」
アスカ「そ。書いてたのは時間と場所の指定だけ。最初はどうせいつもの告白だと思って捨てようと思ったんだけど、クラスメートに行くべきだって言われてさ」
ミサト「それで、行ったら暴漢がいたと。シンジくんはなぜ?」
シンジ「僕は、その見ていたクラスメートから言われたです。アスカが体育館裏に行ったって」
ミサト「よく撃退できたわね?」
シンジ「無我夢中で。アスカの首を締めてたから」
ミサト「体育館の倉庫かしら? 鉄製の扉がひしゃげてたって報告がきてたけど、これは?」
アスカ「それは、その変態が、おっさんだと思うんだけどバイクを用意してたの。逃走用、だと思う」
ミサト「バイク?」
アスカ「シンジに体当たりされて、おどろいて逃げようとしたわ。でも、アクセルを力んだみたいでウイリーしちゃって。突っ込んだ」
ミサト「おかしいわね、部品は見つかってないみたいだけど」
アスカ「当たりどころがよかったんじゃないの? 老朽化でサビてたとか。その後、乗ったまますぐに逃げたし」
ミサト「ふぅーん、なるほど。今の話を統括すると――」チラ
シンジ「……」
ミサト「ねぇ、シンジくん」
シンジ「はい?」
ミサト「アスカのこと好きなんだ?」
560 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/19(火) 00:57:25.79 ID:XHL6SpVG0
シンジ「な、なんでそうなるんですかっ!」
ミサト「だってー、アスカが告白されてるの知って、わざわざその場所見に行ったわけでしょ? それで助けたかと思いきや、二人きりになったら我慢できずに襲っちゃう」
アスカ「そうだったの?」
シンジ「ちょ、アスカ⁉︎」
ミサト「そう考えるのが自然じゃないのん?」
シンジ「うっ、た、たしかに、アスカのことはいいなって」
ミサト「へぇぇ〜。いがぁい」
アスカ「しょーがないわよねぇ」
ミサト「ねぇねぇ、アスカのどこがいいの? 好きなら答えられるでしょ?」
アスカ「……」チラ
シンジ「あ、アスカはかわいいし」
ミサト「それはさっき聞いたわよ。顔だけなら一目惚れしてるでしょ? いつから?」
シンジ「最近、かな」
ミサト「じゃあ、別の部分なわけだ。どこ?」
シンジ「(ミサトさん、ウソついてるって当たりをつけてるな。仕方ない、こうなったら、僕がアスカに良いと思ってるところを言えば)」
ミサト「答えられないの? 女なら――」
シンジ「違います。本当に、アスカのことが好きなんです」
ミサト「おっとぉ」
シンジ「勝ち気なところ、そりゃほとんどひどいことばかり言われますけど。優しくないわけじゃないっていうのは、クラスで対応を見てればわかるんです」
アスカ「え……?」
ミサト「……」
シンジ「本当は、すごく優しい子なんじゃないかなって。容姿がいいのも本当です。誰だってかわいいにこしたことないじゃないですか。授業を受けている時もなんとなく見ちゃうものでしょう」
ミサト「そうね、それはあるかもしれない」
シンジ「一緒に過ごしてると、ユニゾンの時なんかはたまに喧嘩しました。張り合って」
アスカ「……」
シンジ「特別になりたかったんです。アスカの」
ミサト「そうだったの……。ユニゾン、か。あれがきっかけなら、作戦行動とはいえ、こちらにも非はあるわね」
アスカ「あんた、本当に……?」
ミサト「だからといって、繰り返しになるけど……襲うなんてやっちゃいけないことよ」
シンジ「ひどいことをしたと反省してます」
ミサト「(急に口調がなめらかになったわね。目つきも。こりゃマジ?)」
シンジ「(ふぅ……。アスカが言うように本当の出来事を織り交ぜて正解だったな。ウソついてるって引け目が少ない)」
アスカ「(シンジ……こいつ本当にあたしのこと好きだったんだ。だから、あんなに必死になって)」
ミサト「わかったわ。話は以上よ。犯人はネルフが総力をあげて検挙するから。アスカは安心して」
アスカ「え? ああ。うん」
シンジ「今日はもう帰ります。アスカ、本当にごめん」ペコ
アスカ「別に、気にしてない」
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/19(火) 02:09:02.49 ID:5FPFqmueo
旧劇だと多分アスカと相思相愛なんだろうけど…
いやでも綾波が死んだからアスカにいったのか?
少なくとも本編でアスカに依存する前に分岐してるのかこのss
562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/19(火) 02:35:10.05 ID:o+7zENhOO
旧劇じゃアスカと二人きりの浜辺エンドイメージ強くて相思相愛と思ってるやつ多いけどそうじゃないよ
シンジはアスカに逃げただけ
563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/19(火) 03:00:46.16 ID:iWdZWX1IO
>>1
のあらすじに書いてあるじゃん
ユニゾンから数日後だって
564 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/19(火) 03:33:01.65 ID:7OgBkqYDo
乙
565 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/19(火) 15:33:36.88 ID:KyUFjAUsO
しかし行数ここまで詰めこんでよく続くね
566 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/19(火) 15:56:58.16 ID:13Lxsi5wo
よし子さん、続きはまだかの
567 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/19(火) 22:05:26.43 ID:ZsDOa4S/0
【マヤ宅 リビング】
マヤ「どうしてアスカを襲ったりなんかしたの⁉︎ 連絡きてびっくりしちゃったじゃない!」バンッ
シンジ「ええと、その、我慢できなくて」
マヤ「我慢できなかったって……。不潔よ! シンジくん!」キッ
シンジ「す、すみません。僕が抑えられたらよかったんですけど、マヤさんにもご迷惑かけて」
マヤ「そう、ちゃんと抑えなくちゃ……抑える?」
シンジ「いくらこの手のせいだと言っても、それを言い訳にできませんし」
マヤ「え? し、シンジくんが自分の意思で襲ったんじゃ?」
シンジ「違いますけど」
マヤ「あっ、そうだった。衝動のせいなのね、やだ、私ったら年甲斐もなく、早とちりしちゃって」
シンジ「どうしたんですか?」
マヤ「ご、ごめんなさい。葛城一尉の連絡を額面通りに受け取ってしまって。つい……。シンジくんは、やむを得ない事情があったんですものね」
シンジ「よくわからないんです」
マヤ「え? やっぱり……」
シンジ「あぁ、いえ、そういうわけではなくて。僕も男ですから。手を言い訳に、女の人相手にそういうことしたい気持ちがどこかにあったんじゃないかって」
マヤ「……」
シンジ「未遂で終われましたけど、アスカが機転を利かせず、やられたままだったら。そう考えると、どうしても割り切れません」
マヤ「シンジくん……」
シンジ「あの時、意識を乗っ取られてしまったのは事実です。……だけど、だけど、その考えが頭から離れない」
マヤ「なに?」
シンジ「本当は、僕がやりたいことを増長してるのかもしれない。お酒を飲んだことありませんけど、大人達はよく言ってるじゃないですか。気が大きくなるって」
マヤ「気分が良くなるからね。お酒の席は無礼講っていうぐらい」
シンジ「それと似たような感じじゃないかって自問自答してみても答えはでてきません」
マヤ「……おいで、シンジくん」
シンジ「えっ」
マヤ「いいから。こっちに来なさい」
シンジ「はぁ、なんですか?」ガタッ テクテク
マヤ「膝をついて座って?」
シンジ「はい?」スッ
マヤ「ラクにして」ギュッ
シンジ「え? ま、マヤさん、あの。む、胸が」
マヤ「頭を抱きしめてるのよ。そうなって当たり前じゃない。どう?」
シンジ「どうって……」チラ
マヤ「シンジくんは、どうして他人の為に考えようとするの?」
シンジ「僕なんかでも誰かの役に立てたら嬉しいから」
マヤ「どうして、“なんか”なんて言うの? 自分に自信がないの?」
568 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/19(火) 22:27:24.40 ID:ZsDOa4S/0
シンジ「……」
マヤ「今、電波遮断できる?」ボソ
シンジ「あ、その為に。待ってください」
マヤ「うん」
シンジ「どうぞ。あんまり乱用するのはさすがに。こう頻度が続くと機械の不調だと通せなくなると思うし」
マヤ「碇司令はシンジくんが力を意図的に使用できるとご存じ?」
シンジ「いえ。たぶん、知らないと」
マヤ「だったら、制御できてないってことにできないかしら」
シンジ「……なるほど」
マヤ「騙す必要なんてないのよ。聞かれない限りは。聞かれた時にとぼければいい」
シンジ「いいかもしれませんね。これまで起こっていたことが起こらなくなるのも不自然ですし」
マヤ「身体の負担は平気?」
シンジ「はい。長時間でなければ」
マヤ「つらいかもしれないけど、我慢、できる?」
シンジ「こんなのどうってことないです」
マヤ「さっきの話に戻るけど。私だって自信なんかないのよ」
シンジ「……」
マヤ「他人がどう見られて、どう思われてるかわからない。行動することで傷つけてしまうかも。そう悩んで、一歩が踏み出せない人って多いの」
シンジ「そう、ですよね。みんな同じで……」
マヤ「だからこそね? リーダーシップがある人が輝いて見える。そういう部分があると、強く惹かれてしまう」
シンジ「……」
マヤ「先頭に立つって、思いがけない出来事や未知と真っ先に遭遇するの。対応の如何次第で、どう転ぶか、責任だって伴う」
シンジ「はい」
マヤ「言ってる意味、わかる? 組織という巨大な権力に抗おうとしてるんでしょう? 中学生に求めるのは酷だって、理解してるけど――私の目を真っ直ぐ見て」ガシ
シンジ「……はい」
マヤ「自信がなくても、まわりに悟らせちゃだめ。シンジくんが迷っちゃだめなのよ」
シンジ「……」
マヤ「できなくてもいい。失敗したっていい。あなたがあなたを信じて。守りたいと思う人がいるなら、そうしなきゃ」
シンジ「僕は……」
マヤ「私も力になってあげる。足りないところを補えるように」
シンジ「マヤさん……」
569 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/19(火) 22:59:00.33 ID:ZsDOa4S/0
マヤ「よし、ところで衝動って女性じゃなく物を壊すことじゃ満足できないの?」
シンジ「あ……はい。その、女の人のみに限定されるらしくて」
マヤ「……う」ヒクヒク
シンジ「これ、アダムっていうんですけど。性に対する好奇心が強いみたいで」
マヤ「アダム? アダムって、聖書とかでよく知られてる……他の使徒と同じタイプのコードネーム?」
シンジ「いえ、これは本物みたいです。あのアダム――」
マヤ「じ、実在してたのっ⁉︎」
シンジ「みたいです」
マヤ「す、すごい発見よ! それ!」
シンジ「学術的価値はともかくとして、このアダムの衝動はいつ襲ってくるか、予測がつかないんです」
マヤ「力を使える代償ってとこね。もしかしたら、今こうしてる瞬間にも?」
シンジ「はい。極端な話、トイレの中でも、お風呂でも、学校でも、いつでもありえます」
マヤ「法則の原因究明しないと大変だわ」
シンジ「綾波から聞いた話によると、同化が進む上でどうしようもない、と」
マヤ「レイ? レイも?」
シンジ「あ、いえ、余計な話を挟んじゃいましたね。綾波は僕と違います。忘れてください」
マヤ「先輩が関係してるならレイも……おかしくない」
シンジ「マヤさん」
マヤ「ごめん、約束、したもんね。パターンを探りましょう」
シンジ「パターン、ですか?」
マヤ「サンプルが少ないから、断定できるほどのデータを収集する必要があるけど。シンジくんの手にある、アダム。例えば、そうね……刺激を与えてたとか」
シンジ「僕は、なにも」
マヤ「気持ちの高ぶりだとかなかった?」
シンジ「いえ、そんなことは」
マヤ「様々なケースが考えられるわよ。力を使用しすぎていたとか。最悪なのは、気まぐれ」
シンジ「気まぐれ……つまり、使徒の匙加減次第?」
マヤ「そうだったら、シンジくんに打つ手はなくなる。薬剤を投与して、細胞の活性化を抑えるとか、そういう別の手段しか……」
シンジ「……それでも、抑えられるなら」
マヤ「簡単に言わないでよ。そう決意したって、実現できるかどうか。薬剤の入手方法は? なにが有効なの? 様々な実験をして、シンジくんの身体に悪影響は?」
シンジ「あ……」
マヤ「ふぅ……どうしようかしら。あ、まだ電波は遮断してるわよね」
シンジ「もちろんです。聞かれちゃまずいですよね」
マヤ「うん。私、自分で調べてみるけど、期待はしないでね? 研究データがない限りは、ただの理論でしかないし。使徒の衝動を抑える方法だなんて……」
シンジ「でも、調べてるのがバレたら」
マヤ「これぐらいなら平気でしょ? ……まずいかなぁ」
シンジ「用心はした方がいいですよ」
570 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/19(火) 23:29:02.61 ID:ZsDOa4S/0
マヤ「抑えられたきっかけは?」
シンジ「アスカがミサトさんの酒瓶を投げてきたので」
マヤ「さ、酒瓶を。それが身体にあたった衝撃で?」
シンジ「はい。なんとか正気に戻れました」
マヤ「アスカは知ってるの?」
シンジ「いろいろあって。今日、話しました」
マヤ「シンジくんの今の状態を知ってるのは、司令達を除けば、私とアスカとレイ?」
シンジ「はい。ミサトさんは知りません」
マヤ「少なくない人数が、知ってるのね。あまり、喋らない方がいいわよ。危険だし」
シンジ「極力、そうしたいと思ってます」
マヤ「うーん。私、薬学方面弱いんだよねぇ、先輩は天才だから心理学も専攻してたけど」
シンジ「あの、無理なら……」
マヤ「私と一緒にいる時間長いのよ? 帰ってきてずっと。衝動が起こったら、その、つい最近みたいに、また……」
シンジ「そ、そうならないようにします! そ、そういえば、マヤさん、あの時、正気だったんですか?」
マヤ「へ? なんの話?」
シンジ「僕、てっきり、アダムがなにか力を使ってると思って。マヤさん、積極的だったし」
マヤ「し、シンジくんっ!」バンッ
シンジ「は、はい!」
マヤ「はぁー……あれは、ちょ、ちょっとだけ、そのぉ」
シンジ「……?」
マヤ「い、言わせようとしてない?」
シンジ「そんなわけありませんよ!」
マヤ「そ、そう、なんだ」ガッカリ
シンジ「マヤさん?」
マヤ「じ、実験、してみよっか?」
シンジ「――え?」
マヤ「刺激与えなくちゃいけないでしょう?」
シンジ「あ、手にですか?」
マヤ「うん。色々、試してみない?」
シンジ「でも、それで本当に衝動がきてしまったら」
マヤ「そんなビクついてちゃ先に進めないわ。一度悪化させみるぐらいの気持ちでやらないと」
シンジ「ううん、わかり、ました。最初は、軽めからで」
マヤ「力って、電波遮断だけ?」
シンジ「あとは、身体能力の強化ができます」
マヤ「へぇ、それ、やってみようか」
シンジ「消耗が激しいです。監視されてる状況だと遮断をしなくちゃいけないし、長時間はとても。なので、別の方法から」
マヤ「了解。それじゃ、手、さわってみる。貸して」
シンジ「はい」スッ
マヤ「……」フニフニ
シンジ「……」
マヤ「どう? なにか感じる?」
シンジ「いえ、なにも」
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/20(水) 06:23:56.31 ID:7a/VDZneo
乙
572 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/20(水) 19:56:29.88 ID:W0aeVfls0
シンジ「これって本当に意味のある行為なんですか?」
マヤ「“百聞は一見にしかず。科学者たるもの、日常にこそ着目しなさい。ひょんな発見があるかも”」
シンジ「は、はぁ」
マヤ「どうだった? 先輩の口調をマネてみたんだけど」
シンジ「あ、あんまり……」
マヤ「そう、そうなのよ。いつもあの背中を追いかけてるつもりなのに。見えるのは、後ろ姿だけ」
シンジ「憧れ、なんですね」
マヤ「そういう域の人じゃなかったわ。象徴、シンボルだとしても過言じゃない。今は、素直に尊敬できなくなってしまったけど」
シンジ「僕のせいだ」
マヤ「いいえ。それは違う。たしかに巻き込まれたのは、私の意思があったかといえばそうじゃない。……けど、先輩の新たな一面が見えて失望したのって私なの」
シンジ「……」
マヤ「ううんとね」
シンジ「いえ、意味わかりますよ」
マヤ「そっか。だから、責任を感じるのはやめてね。これは、私と先輩の問題だから。私たち二人の間に割って入ってこないで?」
シンジ「……わかり、ました」
マヤ「続けよっか」
シンジ「あの、ちょっと辛くなってきたので、今日はもう」
マヤ「そんなに持続時間短いんだ。まだ30分も経過してないわよ?」
シンジ「そういえば、どれぐらい続けられるか測ったことないや」
マヤ「まず、自分になにができるのかをよく知った方がいいと思うわ。力の使い道に活用できるし」
シンジ「そうですね、やっぱり、限界まで続けてみようと思います」
マヤ「だいたいの目安だけど、今って20分ぐらいよね」
シンジ「はい」
マヤ「了解。そのままちょっと待ってて。ノート端末を取ってくる」ガタッ
シンジ「マヤさんが親切にしてくれる理由って?」
マヤ「……」ピタ
シンジ「……?」
マヤ「正直なところ、気がつけば、いつも思考の中にいる。シンジくんと一緒ね。……自分を認めて、向き合える自信がないの」
シンジ「……」
マヤ「先輩に裏切られたと感じてる、その寂しさを埋めてるだけなのかもって思う時もある。シンジくんに縋って」
シンジ「僕は、感謝してますよ」
マヤ「……」
シンジ「マヤさんがいてくれてよかったと思ってます。それでいいじゃないですか」
573 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/21(木) 10:33:42.09 ID:oz+dgW4j0
マヤ「それ、シンジくんも同じだよ。あなたはエヴァに乗れるっていうだけで満足なの? 自分の価値を見出せる?」
シンジ「……」
マヤ「……励そうとしてくれてるのよね。でも、気になっちゃって頭から離れないの。いろいろな考えがまとまらない」
シンジ「(よく見たら目の下にうっすらクマができてる。いつからなんだろう。気がつけないなんて……僕は、バカだ)」
マヤ「お互いを反面教師にできたらラクになれるかもしれない、私たち」
シンジ「(迷ってるんだ。僕と同じ。だったら――)」
マヤ「どうしたら……」
シンジ「ふぅ、僕は、普段自分の思ってることを言いません。我慢しちゃうんです。とりつくろって」
マヤ「え?」
シンジ「波風を立てたくないから。争いごとや喧嘩が、時には必要なことだってわかってます。でも嫌いなんです。そういうの」
マヤ「それは私も同じ。人ってどうして争うのかな」
シンジ「自分のエリアを守りたいから。常識、社会、価値観の違い。僕らは独立した個だからです」
マヤ「……」
シンジ「あえてそこを突いて操作しようとする人もいます。母さんみたいに」
マヤ「性善説なんて、ありえないものね。悪意をもってる人もいる」
シンジ「それも突き詰めれば、“自分が満足したい”この一点に集約されます。あくまで僕の考えです」
マヤ「続けて」
シンジ「僕が誰かの役に立てるならと思うのは、自分の為でもあるんです。父さんに認められたい、僕はエヴァのパイロットなだけじゃないって、周囲に認めさせる為の」
マヤ「(学生時代、勉強だけと思ってた私と同じなのね)」
シンジ「自分で努力したわけじゃない。棚ぼたみたいに、ある日突然、人類の希望なんて言われたんです。有難いと思う人、調子にのる人もいるかもしれません。だけど、僕はそうじゃなかった。実感がわからなければ嬉しくともなかったんです」
マヤ「……」
シンジ「元いた場所、先生のところにいたときは別段なにか不満があったわけじゃない。ごく普通の日常、それが当たり前だと感じていたし、自分の意思でここにいるわけじゃない。なんで僕がってずっと思ってました」
マヤ「……」
シンジ「それでも逃げられなかったのは、ちっぽけなプライドと……“乗れと言われたから乗る”それだけでした」
マヤ「そう、だったの」
シンジ「誰かが、“僕のおかげで助かった”って言うと、ざまあみろって思うようになってきました。どうだ、僕はできるんだぞって」
マヤ「……」
シンジ「父さんに認められたい気持ちに今も変わりははありません。最終目標は、一番見返したい相手は、父さんなんです」
マヤ「……」
シンジ「(もう死んでしまったけど、恥ずかしくない生き方をしなくちゃ)」ガタッ
マヤ「それで……?」
シンジ「僕は、僕は、父さんとは違います。まだ中学生だし、子供です。なにが正解かなんてわからない、だけど、マヤさん」ガシ
マヤ「な、なに?」
シンジ「僕は、マヤさんのことも大切な人だと思ってます。悩みがあるなら、聞きます。力になれるなら、なんだってしますよ」
マヤ「……」
シンジ「不安、なんでしょう? マヤさんだって、僕を、他人を気遣ってる余裕ないのに」ギュウ
マヤ「あ……」
シンジ「……ありがとう。僕が伝えたかったのは、感謝の気持ち、それだけです」
574 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 11:13:25.48 ID:oz+dgW4j0
マヤ「(やっ、やっぱり、胸が高鳴る。憂いを帯びている表情が色っぽく見える)」
シンジ「……」
マヤ「(私、倒錯してるのかな。先輩を想って自慰をしてた時点で、そうだけど……でも、こんな年頃の子にときめくなんて)」
シンジ「マヤさん? 熱あるんじゃないですか?」
マヤ「……」ウットリ
シンジ「顔赤いけど平気ですか?」
マヤ「平気。もう少し、このまま」
シンジ「……はい。わかりました」
マヤ「(この子の喜ぶことがしたい、そう思いだしてる。はぁ……どうしよう。悩みがシンジくんのこともあるって言ったら、どんな顔するのかしら)」
シンジ「うっ」
マヤ「(軽蔑、するわよね。一度身体を重ねたぐらいでって思われるかもしれない)」
シンジ「ま、マヤさん、あの。限界、かもしれません」
マヤ「え? あっ!」
シンジ「このまま力を発動し続けるとどうなるか……!」
マヤ「オーバーヒートしそうなの?」
シンジ「わかりま、せん。ただ、眠くなってしまいます」
マヤ「睡眠をとることで体力を回復しようしてるんだわ……」
シンジ「あの、もういいですか?」
マヤ「いえ、限界までやってみてくれない? どうなるか観察したいの」
シンジ「う、わ、わかりました」
マヤ「待ってて!」ダダダッ
シンジ「(今までは、気がつけば、力が使えなくなってたりしてたから、はじめてだな)」
マヤ「はいっ、体温計! くわえて!」カポッ
シンジ「んむっ!」
マヤ「どう? 体調に新しい変化は?」
シンジ「いぇ、まらなにも。いいんふぇすか、これ、マヤさんの体温計じゃ」モゴモゴ
マヤ「今はいいから! えぇと、ノートパソコンは……」
シンジ「……」
マヤ「シンジくん? 今から本格的にデータを収集するわ。無理をしている状態は、悪化していると同義だけど、あなたの身体に変化が起きやすい状態ってことでもある」
シンジ「ふぁい」
マヤ「頭痛、めまい、痺れ、眠気、なんでもいいの。とにかく身体におこっていることを申告して。本当は心拍数とかも取りたいだけど、設備がないから」
シンジ「大丈夫、です」もご
マヤ「時間はだいたいではかる。何分毎にどういう変化がおこるか。記録を取り続けたいと思うの。できる?」
シンジ「……」コクコク
マヤ「実験、スタート――」
575 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 14:39:30.18 ID:oz+dgW4j0
【翌日 ネルフ本部 発令所】
マヤ「昨日採取したデータを検証しなくちゃ」
シゲル「マ〜ヤちゃん。あいかわらず忙しそうだねぇ」
マヤ「なに? 邪魔しないでよ」
シゲル「なにしてんの? ライフルの検証?」ヒョイ
マヤ「勝手に見ないでったら!」
シゲル「うん……? なんだこれ? 生態調査とその傾向……なんの?」
マヤ「青葉くん! 公私混合はしないで! この際はっきりさせとく!」ガタッ
シゲル「ん?」
マヤ「私はあなたと仕事以外で関わりたくない!」
シゲル「今は、だろ?」
マヤ「なんで、なんでわかってくれないのよ」
シゲル「まぁそう肩に力をいれなさんなって。怒るにも体力使うぜ?」
マヤ「……」
シゲル「俺はこのとーり適当な人間だしさ。愚痴は言うし、軽口だって叩く。そうしなきゃやってられねぇもん。なんつーか、こう、マヤちゃん見てるさ。変なんだよなぁ」
マヤ「変? 私になにか文句があるの?」
シゲル「いやいやぁ、そうじゃないよ。生きてて楽しいわけ?ってそう見えるわけだ」
マヤ「私のなにがわかるって言うの」
シゲル「わからねーよ? わからねーけど、俺にはそう見えちまう」
マヤ「……」
シゲル「はぁ、なんでこう不器用なのかねぇ。たまには息抜きしなきゃ疲れちまうだろう?」
マヤ「私だって息抜きぐらい! それに、今はやりたいことがある! 集中したいの!」
シゲル「やりたいこと? ってーと、その論文を完成させるのが?」
マヤ「ほっといてよ! お願いだから!」
リツコ「それぐらいにしときなさい」
シゲル「おっと。おはようございます」
リツコ「青葉くん、あまりやりすぎるとセクハラとしてコンプライアンス違反になるわよ」
シゲル「俺はいやらしい発言を誘導したりボディタッチしてるってわけじゃ」
リツコ「嫌がってるでしょう。無作法なマネは自重しなさい。例えマヤを青葉くんが良いなと思っていても」
シゲル「えっ! いや、その」
マヤ「……そんな下心のために、気持ち悪い」
リツコ「マヤ、あなたにもまたお説教しなければならないようね。ついてきなさい」
シゲル「なにも本人にバラさなくたっていいのに。ちぇ」
576 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 15:08:41.03 ID:oz+dgW4j0
【ネルフ本部 ラボ】
リツコ「――明日の電車で実家に療養なさい。司令には私から伝えておく」
マヤ「えっ⁉︎ そんなっ」
リツコ「命令よ。伊吹二尉。本日付けであなたを技術ニ課から解雇します」
マヤ「せっ、先輩っ! 待ってください! どうしてですかっ⁉︎」
リツコ「以前に私は忠告した。あなたの身元保証人には私がなっていると。それ、まだなにか調査しているのね。勝手な振る舞いに対する責任は負いきれないわ」
マヤ「ち、違うんです! これは、使徒の生態調査をしていただけで」
リツコ「使徒?」ピク
マヤ「これまでの使徒の襲来パターンから次の使徒に有効な分析や対策案を練ろうと」
リツコ「なぜ今なの?」
マヤ「あの、この前は先輩とあんな風に口論しちゃいましたし。落ち着かなかったので、なにか気持ちが落ち着くものをしようって思って。作業をしてれば忘れられるじゃないですか!」
リツコ「……」
マヤ「本当に、それだけなんです!」
リツコ「マヤ、見えすいた嘘はやめなさい」
マヤ「えっ」
リツコ「例えそれが本当だとしても、知り得た事実はあなたの負担になっている。これから起こる出来事に耐えきれないわ」
マヤ「わからないじゃないですか! お願いします! 今辞めたくはないんです!」
リツコ「……」
マヤ「先輩! お願いです!」
リツコ「なにが理由? なぜネルフにしがみつくの?」
マヤ「私の目標なんです。先輩が……どういう性格でも、研究に対する姿勢や視点について学ぶべきことはまだたくさんあります。ウソじゃありません」
リツコ「パソコンを貸しなさい」
マヤ「はい」スッ
リツコ「……これは。使徒? いえ、誰のデータ?」
マヤ「シンジくんです」
リツコ「あなた、やっぱり……!」
マヤ「どうしてですかっ⁉︎ 先輩はいつもフラットに物事を見極めていました! 科学者として証明するべきでしょう!」
リツコ「シンジくんに、なにか聞いたのね?」
マヤ「少しだけ。シンジくんは今日こうして先輩に話していることを知りません。私が自分の意思で話してることだからです!」
リツコ「……」
マヤ「先輩……! 目を覚ましてください! 私たちは、シンジくんにこそ協力をするべきです!」
リツコ「あなたを解雇する前にシンジくんに話を聞く」
マヤ「先輩っ!!」
リツコ「黙りなさいっ! どれほどの危険に首をつっこんでいるのかわかっているの⁉︎」バンッ
マヤ「わかってます! だけど、それでも私は! 先輩と……!」
リツコ「らちがあかないわね。もう通常業務に戻りなさい。シンジくんは今学校にいるから、終わったらここにくるように指示する。あなたも同席するのよ」
マヤ「……」ギュウ
リツコ「中学生にほだされるなんて。あなた、恥を知ったらどう?」
マヤ「先輩こそ! やっていいことと悪いことに年齢は関係ありません!」
リツコ「……さがって。さがりなさい。伊吹二尉」
577 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 15:29:06.55 ID:oz+dgW4j0
【第壱中学校 昼休み】
マナ「シーンジくんっ」
シンジ「……」ぼー
マナ「あれ? おーい、もしもーし」
ケンスケ「シンジなら朝からずっとこの調子だよ」
マナ「そうなの?」
ケンスケ「霧島は遅刻ギリギリにきたからな」
マナ「今朝は寝坊しちゃって」
トウジ「センセ、飯やぞ。飯」
シンジ「……」
トウジ「なんや、電池でも切れとるんかいな。おいケンスケ、ゼンマイ貸せや」
ケンスケ「人間に使えるネジなんかあるわけないだろ」
マナ「なにかあったのかな? もしかして、昨日のアスカ?」
アスカ「はぁ……あんたねぇ、ことあるごとにあたしに対抗心だすのやめない?」
マナ「噂をすれば。耳がよろしいのね」
アスカ「地獄耳だって言いたいわけ?」
トウジ「まぁまぁ! そないな猿蟹合戦よりも霧島さま! 今日のお弁当は……」
ヒカリ「あの、鈴原、よかったら、これ」スッ
トウジ「あん? 委員長やないか。どないしたんや、これ」
ヒカリ「うち、お姉ちゃんと妹の分も作ってるからあまりすぎちゃって」
トウジ「委員長の料理かぁ〜。まずそう――」
マナ&アスカ「黙って食べなさいっ!」バチーン
トウジ「な、ナイスコンビネーション」パタリ
アスカ「シンジ。シンジ」ユサユサ
シンジ「……」ぼー
アスカ「ちっ! バカシンジっ!」ユサユサッ
シンジ「あ、うわ、うわぁっ⁉︎ あ、アスカ? み、みんなも? なに?」
ケンスケ「昼だよ」
シンジ「あぁ、そんな時間。トウジはなんで倒れてるの?」
マナ「気にしなくていいの。どうしたの? 体調、悪い?」
シンジ「(昨日、あれから気絶しちゃったし。力を使いすぎた影響なのかぼーっとしたままなんだよなぁ)」
ケンスケ「なんでもいいけど、さっさと食べちまおうぜ」
578 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 15:58:13.74 ID:oz+dgW4j0
【夕方 ネルフ本部 ラボ】
シンジ「碇シンジです。失礼します」カシャ
シンジ「(マヤさんも?)」
リツコ「あら。シンジくん、いらっしゃい。呼び出された理由、察しがついたんじゃなくって? ここは監視されてないから、好きに発言してもらって大丈夫よ」
シンジ「はっ! まさか……!」
リツコ「まずはお掛けなさいな。飲むのはコーヒーしかないけど。いる?」
シンジ「いえ」
リツコ「そう。それじゃ、私も座らせてもらうわね」ギシ
シンジ「……」チラッ
リツコ「ここに呼びだした理由は、マヤに関係していること。だから同席させている。シンジくんはマヤに取り入ることに成功したみたいだけど、部下の暴走まではわからないわよね」
シンジ「取り入る? 僕はそんなんじゃ」
リツコ「命にかかわるわよ」
マヤ「説明したじゃないですか! 使徒を移植されたことしか知らないって!」
リツコ「シンジくんに直接聞きたいの。余計な口を挟まないように」
シンジ「……マヤさんが言ってる通りです」
リツコ「危険だと承知していたわね?」
シンジ「母さんを納得させるためでした。指示が降りていたので」
リツコ「犯せと? それも先ほどマヤから聞いてたけど」
シンジ「はい。合意のない行為を僕は許せませんでした。なので、余計なことを除いて話した上でなにか対策を練ろうと思ったんです。僕からも質問いいですか?」
リツコ「いいでしょう」
シンジ「リツコさんにじゃありません。マヤさん、どうして……」
マヤ「ご、ごめんなさい。最初は先輩に言うつもりなかったんだけど、きっとわかってくれるって」
シンジ「……」
リツコ「このデータ。あなたの内に秘めた衝動を抑えるのに役立てるつもり?」
シンジ「僕じゃありません。使徒です」
リツコ「いずれひとつになる。あなたのものといっても間違いではないわ。ふぅ……どうしたものかしらね」
シンジ「母さんはまだ知らない。そうですよね」
リツコ「自己保身よ。私も厳罰を言い渡されるもの」
シンジ「リツコさんは、なんで母さんに協力してるんですか?」
リツコ「あなたに協力しろと?」
シンジ「そうじゃありません。知りたいだけです」
リツコ「人類はいずれ滅びてしまうからよ。ノアの方舟たる補完計画。舵取りに協力しているに過ぎない。犠牲になるものが何人いようともね」
シンジ「それだけですか?」
リツコ「中学生が生意気な口をきくんじゃありません。あなたは全体像が見えていない子供。綺麗事を並べて個人の生死に翻弄されているだけ」
シンジ「そうかもしれません。でも、勘違いしないでください」
リツコ「よく喋るようになったわね」
シンジ「リツコさんと同じです。僕は僕のやりたいようにやろうって決めてるだけ。その目的意識が、どうなのか。そこに違いは必要ありますか?」
リツコ「ないわ。望むように生きようとする権利は誰にでもあるもの」
シンジ「母さんに協力することを悪いと言ってるわけじゃない。リツコさんが正義だと思う、大義名分がそこにあるんでしょうから。でも、本当にそれだけですか?」
リツコ「(この子……)」
シンジ「誰だって、弱い部分はある。リツコさんは、そんなに完璧なんですか?」
リツコ「シンジくん。あなた、もしや、私の、知ってるの?」
マヤ「シンジくん……?」
579 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/21(木) 16:20:31.86 ID:oz+dgW4j0
シンジ「ふっ、くっくっくっ」
リツコ「なにがおかしいの?」
シンジ「うろたえてるからですよ。誰にだって秘密は……触れられたくないことはある。そうじゃないんですか?」
リツコ「……」
シンジ「僕は、マヤさんを守りたい。リツコさんよりもです」
マヤ「し、シンジ……くん?」
シンジ「もし、マヤさんを殺せば、僕はたぶん抑えられなくてリツコさんを殺します。中学生ですから。ついうっかりってこともありますよね」
リツコ「年齢を言い訳にする気?」
シンジ「子供扱いしてるのはリツコさんの方です。対等に考えてください。僕に取り引き材料はないわけじゃありません」
リツコ「――脅し?」
シンジ「どう受け取ってもらっても結構です」
リツコ「(親に似てきたのかしら。いえ、短期間でそれはありえない。これはある程度の覚悟を持っているわね)」
シンジ「僕としてはゆっくり見守っていただきたいと思っています。マヤさんに危害を加えず」
リツコ「やけに思考が冴えているようね。それもアダムの影響?」
シンジ「いえ。そういうわけじゃありませんよ。僕はリツコさんがこわいので」
リツコ「私が?」
シンジ「はい。母さんの側近で、最も警戒すべき相手の一人だと考えています。そんな人と対峙している。どうなります?」
リツコ「ふふっ、なるほど。よくわかった。マヤは板挟みってわけ。私とシンジくんの」
シンジ「マヤさんは、なにも知らなくてよかったんです。僕達が巻き込んでしまった。そうでしょ? リツコさん」
リツコ「……そうね」
シンジ「今回だけは見逃してくれませんか。僕が使徒の力を自覚している件についても」
リツコ「口約束でしか保証しないわよ」
シンジ「契りは必要ありません。リツコさんを信じます」
リツコ「愚かだわ。大人を舐めると痛い目にあう」
シンジ「自分の都合の良いように振る舞うのが大人だっていうんですか?」
リツコ「それは一面よ。狡猾で、そういう生き方を知っているのも歳を重ねたものに多くなる」
シンジ「だったら、僕はリツコさんの人間性を信じます」
リツコ「あなたが、私を? 信じるという意味をわかってるの?」
シンジ「無条件にじゃありませんよ。マヤさんはリツコさんにとっても大切な部下でしょう」
リツコ「……」
580 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 16:50:34.50 ID:oz+dgW4j0
シンジ「人情っていうんですか? こういうの。難しい言葉はよくわかりませんけど」
リツコ「よく言うわ。もしかしたら、あなた、化けるかもしれないわね」パサ
シンジ「これは……? なんですか?」
リツコ「ダミーとその計画書。適格者が存在せずとも、エヴァの起動を可能にするシステムよ。読んで理解できる?」
シンジ「……」ペラ
マヤ「わ、私にも」
リツコ「黙って」
シンジ「……ベースは綾波ですか?」
リツコ「驚いた。一見しただけでよくそこまで考えが辿り着けたわね。やはり、親の血は受け継いでいる、か」
シンジ「無人機にしてどうするつもりですか」
リツコ「その前に、あなたのやろうとしていることはなに?」
シンジ「リツコさんから見れば、駄々をこねてるように見えるかもしれませんが、僕は補完計画を発動させない別の道を模索したい」
リツコ「ナンセンスね。第三の選択肢なんてありえないわ。発動させなければ人類は滅びてしまう。“再生させるか”、“無に帰すのか”。シンジくんはこの二択で終焉を選ぼうというの?」
シンジ「道がなければ作れば良い。人類はそうやって進化してきました」
リツコ「それは何世代も紡いで学習してきた時間があったからだわ。今回は結論をだすまでに一年も……もっと短いかもしれない。そんなに猶予はないのよ」
シンジ「最後まで足掻いてみたいんです。人が人のせいで終わりを迎えるというのなら、それも自然の摂理のはず」
リツコ「私たちのしようとしていることは神の真似事ですものね」
シンジ「いくら大義名分を掲げようとも。困難を前に諦めるのを強要しないでください」
リツコ「では、シンジくんは司令ととことんやりあうつもり?」
シンジ「僕が望むのは現状維持です。母さんは変革を求めている。この国だって他国がしかけてきたら自己防衛するじゃないですか」
リツコ「しかけているのは私たちだと?」
シンジ「その通りです。人類補完計画の発動を止める。その上で計画性がないとしても、愚かだとしても、人類の未来は人類が決めるべきです」
リツコ「あなたに対する評価を改めましょう。見た目を抜きにすれば、中学生が発するとは思えないわね。青臭いだけと言えなくもないけど」
シンジ「母さんもそうですが、リツコさんもですか」
リツコ「……?」
シンジ「採点してる気になってる時点で、上から見てるんですよ。評価って、そういうものでしょう」
リツコ「これは失礼。取り引きに話を戻しましょう。シンジくん、あなたは私がマヤを救いたいと思っているのね?」
シンジ「少なからずは」
リツコ「そうね。でも切り捨てられないわけじゃない、と言ったら?」
マヤ「(先輩、なんだか、楽しそう?)」
シンジ「そうだとしたら困っちゃいます」
リツコ「ふふっ、可愛げ、身につけたの?」
シンジ「ありのままを言っただけですよ」
581 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/21(木) 18:40:27.69 ID:iBtBJlfuo
�C
582 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 20:09:52.99 ID:oz+dgW4j0
【リツコ宅 リビング】
シンジ「食材は自由に使わせてもらいますよ。それにしても意外でした、まさか、条件を飲む理由が」
リツコ「なにもなしじゃ遊び心がないわ。口実だけど、シンジくんの手料理はおいしいって評判だし、一度食べてみたかったの」
シンジ「みんなが過大評価しすぎです。レシピ通りにやれば誰だってできる」
リツコ「美味しいものは美味しい。それでかまいやしないわ」
シンジ「電気タイプなんですね。ここのコンロ」ピッ
リツコ「どこまで把握してるの?」
シンジ「言いたくありません」
リツコ「もしかして、夢の出来事も覚えてるんじゃ? タブリスになにか吹き込まれた?」
シンジ「カヲルくんですか?」キョトン
リツコ「(違うのね。タブリスではない、一体誰が……。アダム、使徒からの直接コンタクト?)」
シンジ「……なにを知ったとしてもやりたいと思ってることは言った通りです」
リツコ「特別に教えてあげる。先程渡した計画書。あれは古い物よ。変更される前のね」
シンジ「……」トントントン
リツコ「新しいダミーの研究は既にはじまっている。ベースは渚カヲル」
シンジ「そうですか。やっぱり、やることに変わりはないんですね」
リツコ「補完計画に必要不可欠ですものね。それは、あなたも同様に。……どう? 人類代表に選ばれた気分は」
シンジ「元々、そういう計画じゃなかったでしょう」
リツコ「鋭い。まるで知っているかのよう口ぶりに先程から鳥肌がたってしまう」
シンジ「褒めたってなにもしませんよ」
リツコ「私、おべっか使うの嫌いなのよ。もし本当にシンジくんがなにも知らないままに推察だけで発言しているとしたら、これほど興味深い話はない」
シンジ「そうですか」
リツコ「とっても不自然ですもの。一週間ほど前まで、事なかれ主義だっただけに、不気味だわ」
シンジ「そんな気がするだけです」
リツコ「ふっ、たしかにシンジくんのお父様が提唱していた補完計画は、初号機が中心にあった。なぜだと思う?」
シンジ「なんでもわかるわけじゃありませんから」ジュー
リツコ「想像でかまわないわ。言ってみて」
シンジ「母さんが現れるまでの父さんは僕に興味がなかった。自分の息子というよりも、道具。僕が必要だっわけじゃない。必要なのは、パイロットだったんでじゃないでしょうか」
リツコ「……」
シンジ「そう考えると、ダミー計画を読んでみて納得がいきます。初号機さえあればいいと思ってたんじゃないかって」
リツコ「そこまでは正解。でも、それは碇司令に初号機が必要な理由であって、私の質問に対しての答えではない。補完計画になぜ必要?」
シンジ「見当もつかないや。発動するまでにいくつか条件があるんじゃないんですか? 僕の手にあるアダムがまず第一。そして二番目には初号機とか。そういういくつものピースが重なってる」
リツコ「(おそろしい子なのかもしれない)」
シンジ「おそらくですけど、今は準備段階。その合間に使徒が来てる。準備ができれば、いつでも補完計画を発動したいと思ってる」コトコト
リツコ「そこは違うわ。私たちはタイムスケジュールに沿って準備、行動しているの」
シンジ「(裏死海文書。真実が書かれた予言書のことか)」
リツコ「莫大な国連費がかかっているのよ。億を飛び越えて兆単位の資金。この時点で何人死んでてもおかしくない」
シンジ「お金、ですか」
リツコ「欲をだして人が死ぬなんてしょっちゅうある話でしょう。一億あれば人殺しをする輩なんて万といるわよ。それがネルフにかかっているのは兆。規模の大きを実感できる?」
シンジ「いえ、あんまり」
リツコ「桁が大きすぎるのね」
583 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 20:45:41.66 ID:oz+dgW4j0
リツコ「――ほんと。美味しい」
シンジ「どうも」
リツコ「これほどの腕前ならミサトじゃなく私が引き受け人になるべきだったかしら」
シンジ「今はマヤさんですけどね」
リツコ「シンジくん、マヤに頼るのはやめなさい」
シンジ「……」
リツコ「危険だわ。ユイ司令は、必要だと判断すれば容赦がなくなるわよ」
シンジ「わかってます。今は計画の中心にいるのが僕。それ以外は道具、でしょ」
リツコ「ご明察。そこまでわかってるのなら説明する必要はないわね」
シンジ「であれば、同居を解消するように働きかけてください。一緒に住んでいると否応にでも巻き込んでしまう」
リツコ「一理ある」
シンジ「衝動は時と場所を選んでくれません。僕の都合なんておかまいなし」
リツコ「それがマヤに向けられる。そう考えてるのね?」
シンジ「はい。そうなれば僕の望むところではありません。マヤさんに話をしたのはその対応策なんです」
リツコ「……シンジくんから?」
シンジ「そうです。マヤさんになにも非はありません」
リツコ「それはウソね。聞いただけじゃ、動こうとしないもの。あなたに惹かれるなにかがあったはず」
シンジ「曲がったことが許せないだけなんじゃないですか」
リツコ「かばってるつもり? お優しいこと」
シンジ「リツコさんのせいでもあります」
リツコ「私も?」
シンジ「憧れていた先輩が思っていた人ではなかった。現実と理想の違い」
リツコ「幻滅したのが?」
シンジ「気がつかないんですか。マヤさんにとって、リツコさんは心の支えだったんです。それがなくなってしまい、弱ってしまった」
リツコ「あの子、まだ子供ね」
シンジ「子供だとか関係ないと思います。むしろ、歳をとってるからこそ他人のありがたみがわかる。大事な人であればあるほど」
リツコ「あなた、まだ若いでしょう」
シンジ「この一週間、本当に密度が濃かったんですよ。自分の面と向き合うことを余儀なくされました。自分のしたいことで精一杯で、僕はまわりを見ていなかったと実感できるほどに」
リツコ「一時的なものね。人は忘れながらに生きているから」
シンジ「それでも、この出来事を僕は忘れないと思います」
リツコ「あなたの経験則から導きだされた答え。つまり、悟ったからみんなもそうであると?」
シンジ「違います。ただ、若さとは、無謀なことができる期間なんだと漠然と感じます」
リツコ「……」カチャ
シンジ「ワイン、飲まれますか?」
リツコ「シンジくん。将来はウェイターにでもなったら?」
シンジ「僕に将来なんてあるんですかね」
リツコ「自身の死についてまで悟りを開いたの?」
シンジ「いえ、よく、わかりません」
リツコ「もうこんな時間。話すぎたわね。帰っていいわよ」
シンジ「あ、はい」
リツコ「またいつでもいらっしゃい。敵といっても、私はお母様より融通が効くわよ」
584 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/21(木) 22:07:42.55 ID:oz+dgW4j0
【マヤ宅 リビング】
シンジ「ただい……わあっ⁉︎」
マヤ「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください」
シンジ「ま、マヤさんっ⁉︎ なにやってるんですか⁉︎」
マヤ「あ、シンジくん、おかえり。ごめんね、いま、準備してるから」
シンジ「ロープから手を離して! そんなの一体どこから」
マヤ「帰りにホームセンターに寄って買ってきたの」
シンジ「いや、そうじゃなくて! 大丈夫ですよ!なにも心配しなくていいんです!」
マヤ「うふ、うふふ。私、失敗しちゃった。先輩ならわかってくれると思ったのに。また裏切られちゃったの」
シンジ「そ、それは……リツコさんもやりたいことがあって……!」
マヤ「私には仕事しかないもの。実家に帰るぐらいなら、生きてたって」
シンジ「そんなことありませんよ! 生きてればなんだってできます!」
マヤ「気力がなくなっちゃったの! シンジくんの力になりたかった、けど、逆に足を引っ張っちゃったね」
シンジ「一度失敗したぐらいでなんだっていうんですか!」
マヤ「取り返せるつまずきならまだいい。だけど、クビなら無理。やり直すにしても、ネルフとは別の場所」
シンジ「仕事が全てだなんて、そんな……」
マヤ「決めたの。先輩に見捨てられて、シンジくんにも迷惑をかけて。ボロボロだわ」ガタッ
シンジ「まって!」ダダダッ
マヤ「うっ」ガクッ ジタバタ
シンジ「くそっ!」ガシッ
マヤ「は、離してっ! シンジくん! 離してよっ!」
シンジ「暴れないでくださいよ! 持ちあげるのに力が……」
マヤ「死なせてよ! 死にたいの!」
シンジ「(こうなったら、力を使うしか……!)」
マヤ「え?」ヒョイ
シンジ「はぁ……。まさかそんなに張り詰めてたなんて」
マヤ「お、重くないの?」
シンジ「今は箸を持ちあげる重さぐらいですよ。使徒の力を使ってますから」
マヤ「そういう……あの、降ろして。お姫様抱っこされるような歳じゃ」
シンジ「もうしませんか? こういうこと」
マヤ「……」
シンジ「だったら、降ろせません」
マヤ「わかった。しないから」
シンジ「一瞬とはいえ苦しかったでしょ」スッ
マヤ「うっ……ぐすっ……」
シンジ「僕が止めたのは、マヤさんが死んだら悲しいからです。ここにいたっていいんですよ。ネルフにも」
マヤ「本当? 私、まだ、やり直せる?」
シンジ「リツコさんの了承は得られました。信じてもいいと思います。危険はありますが」
マヤ「ありがとう、シンジくん、ありがとう」ギュウ
シンジ「(女の人ってみんなこうなのかなぁ)」ポンポン
585 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/22(金) 19:13:10.23 ID:23+v/2wRo
�C
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/22(金) 19:48:04.40 ID:WQoYycWcO
たまに見かける�Cってなに?
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/22(金) 19:50:58.76 ID:g5r530lSO
支援
588 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/22(金) 22:21:24.44 ID:yBhD/MoW0
ちょいすんまへん
読み返すと
>>576
からセリフ回し荒くなってるんでレスしなおし
589 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/22(金) 22:37:21.93 ID:yBhD/MoW0
【ネルフ本部 ラボ】
リツコ「――療養の為、実家に戻りなさい」
マヤ「えっ⁉︎ そんなっ」
リツコ「命令よ。伊吹二尉。解雇予告だと思ってもらって結構です。休職期間が明けた後、技術局ニ課より……」
マヤ「せっ、先輩っ! 待ってください! どうしてですかっ⁉︎」
リツコ「ありのままの事実を伝えていたはず。身元保証人には私がなっていると。にもかかわらず、まだ調査しているわね。勝手な振る舞いに対する責任は負いきれない」
マヤ「ち、違うんです! これは、使徒の生態調査をしていただけで」
リツコ「使徒?」ピク
マヤ「これまでの使徒の襲来パターンから次の使徒に有効な分析や対策案を練ろうと」
リツコ「動機は?」
マヤ「あの、この前は先輩とあんな風に口論しちゃいましたし。落ち着かなかったので、なにか気持ちが落ち着くことをしようと思って。作業に没頭してれば考えなくて済むじゃないですか!」
リツコ「……」
マヤ「本当に、それだけなんです!」
リツコ「マヤ、見えすいた嘘はやめなさい」
マヤ「せ、先輩……」
リツコ「知り得た事実が負担になっている。これから起こるであろう出来事に耐えきれるように見えない」
マヤ「わからないじゃないですか! お願いします! 辞めたくはないんです!」
リツコ「……」
マヤ「先輩! お願いです!」
リツコ「なぜネルフにしがみつくの? ここで働いていたという実績があれば、引く手あまたよ」
マヤ「私の目標なんです。先輩が。……どういう性格だとしても、研究に対する姿勢や視点について学ぶべきことはたくさんあります。ウソじゃありません」
リツコ「パソコンを貸しなさい」
マヤ「はい」スッ
リツコ「……これは。使徒? いえ、誰のデータ?」
マヤ「シンジくん、です」
リツコ「あなた、やはり……!」
マヤ「どうしてですかっ⁉︎ 先輩はいつもフラットに物事を見極めていました! 科学者として証明するべきでしょう!」
リツコ「なにか聞いたのね?」
マヤ「少しだけ。彼はなにも知りません。私が自分の意思で話してることだからです!」
リツコ「……」
マヤ「先輩……! 目を覚ましてください! 私たちは、シンジくんにこそ協力をするべきです!」
リツコ「あなたを解雇する前にシンジくんに事情聴取しなくちゃ」
マヤ「先輩っ!!」
リツコ「黙りなさいっ! どれほどの危険に首をつっこんでいるかわかってるのっ⁉︎」バンッ
マヤ「わかってます! だけど、それでも私は! 先輩と……!」
リツコ「らちがあかないわ。通常業務に戻りなさい。シンジくんは学校にいるから、放課後ここにくるように指示する。あなたも同席するのよ」
マヤ「……」ギュウ
リツコ「中学生にほだされるなんて。恥を知ったらどう?」
マヤ「先輩こそ! やっていいことと悪いことに年齢は関係ありません!」
590 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/22(金) 22:47:04.38 ID:yBhD/MoW0
【第壱中学校 昼休み】
マナ「シ〜ンジくんっ」
シンジ「……」ぼー
マナ「あれ? おーい、もしもーし」
ケンスケ「シンジならずっとこの調子だよ」
マナ「そういえば、授業中もそうだったね?」
ケンスケ「めずらしーね。霧島がシンジのチェックを怠るなんてさ」
マナ「はぁ、緑化委員になんか立候補しなきゃよかった」
トウジ「センセ、飯やぞ。飯」ポン
シンジ「……」カクン
トウジ「なんや、電池でも切れとるんかいな。おいケンスケ、ゼンマイ貸せや」
ケンスケ「人間に使えるネジなんかあるわけないだろ」
マナ「なにかあったのかな? もしかして、昨日のアスカ?」
アスカ「はぁ……あんたねぇ、ことあるごとにあたしに対抗心燃やすのやめない?」
マナ「噂をすれば。耳がよろしいのね」
アスカ「へぇ、地獄耳だって言いたいわけ?」
トウジ「まぁまぁ! そないな猿蟹合戦よりも霧島さま! 今日のお弁当は……」
ヒカリ「あの、鈴原、よかったら、これ」スッ
トウジ「あん? 委員長やないか。どないしたんや、これ」
ヒカリ「うち、お姉ちゃんと妹の分も作ってるからあまりすぎちゃって」
トウジ「委員長の料理かぁ〜。まずそう――」
マナ&アスカ「黙って食べなさいっ!」バチーン
トウジ「な、ナイスコンビネーション」パタリ
アスカ「シンジ。シンジ」ユサユサ
シンジ「……」ぼー
アスカ「ちっ! バカシンジっ!」ユサユサッ
シンジ「あ、うわ、うわぁっ⁉︎ あ、アスカ? み、みんなも? なに?」
ケンスケ「とっくに昼だよ」
シンジ「あぁ、そんな時間。トウジはなんで倒れてるの?」
マナ「体調、悪い? 保健室いく?」
ケンスケ「当たり前のようにスルーするなぁ」
シンジ「(昨日、あれから気絶しちゃったし。その影響なのか倦怠感が凄いんだよなぁ)」
ヒカリ「あの〜、鈴原?」チョンチョン
ケンスケ「なんでもいいけど、さっさと食べちまおうぜ。残り時間短くなっちゃうよ」
591 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/22(金) 23:03:17.60 ID:yBhD/MoW0
【夕方 ネルフ本部 ラボ】
シンジ「碇シンジです。失礼しま……す」アングリ
リツコ「いらっしゃい。シンジくん」
シンジ「マヤさんが、どうしてここに? そんな……⁉︎」
リツコ「まずはお掛けなさいな。飲めるのはインスタントコーヒーしかないけど。淹れましょうか?」
シンジ「いえ」
リツコ「そう。それじゃ、私も座らせてもらうわね」ギシ
シンジ「……」チラッ
リツコ「ここに呼びだした理由について、察しがついたんじゃなくって? なぜ同席させているのかも。シンジくんはマヤを従わせるまで成功したみたいだけど、部下の暴走はわからなかったようね」
シンジ「僕はそんなつもりじゃ」
リツコ「言葉を選びなさい? そうしないと、命にかかわる」
マヤ「何度も説明したじゃないですか! 使徒を移植されたことしか知らないって!」
リツコ「彼に直接聞きたいの。余計な口を挟むのは慎んでちょうだい」
シンジ「……マヤさんが言ってる通りです」
リツコ「そう。喋ったら危険だと承知していたわね?」コト
シンジ「母さんを納得させるためでした。指示が降りていたので」
リツコ「犯せと? それも先ほどマヤから聞いてたけど」
シンジ「はい。合意のない行為を僕は許せませんでした。なので、余計な部分を除いて話をした。時間稼ぎをして対策を練ろうと思ったんです。僕からも質問いいですか?」
リツコ「発言を許可します」
シンジ「リツコさんにじゃありません。マヤさん、どうして……」
マヤ「ご、ごめんなさい。先輩に言うつもりなかったんだけど、きっとわかってくれる、希望を捨てきれなくて」
シンジ「……」
リツコ「このデータ。内に秘めた衝動を抑えるのに役立てるつもり?」
シンジ「僕のじゃありません。使徒です」
リツコ「いずれひとつになるでしょう。過程と結果が違うだけであなたのものといっても過言ではないわ。ふぅ……どうしたものかしらね」
シンジ「母さんはこのことをまだ知らない。そうですよね」
リツコ「自己保身よ。私も厳罰を言い渡されるもの」
シンジ「リツコさんは、どうして母さんに協力してるんですか?」
リツコ「質問に質問を返すようだけど、あなたに協力しろと?」
シンジ「そうじゃありません。知りたいだけです」
リツコ「人はそう遠くない未来に滅びてしまうからよ。ノアの方舟たる補完計画。舵取りに協力しているに過ぎない。犠牲になるものが何人いようともね」
シンジ「それだけですか?」
リツコ「中学生が生意気な口をきくんじゃありません。あなたは全体像が見えていない子供。綺麗事を並べて個人の生死に翻弄されているだけ」
シンジ「そうかもしれません。でも、勘違いしないでください」
リツコ「よく、喋るようになったわね」
シンジ「リツコさんと同じです。僕は僕のやりたいようにやろうって決めてるだけ。その目的意識が、どうなのか。そこに違いは必要ありますか?」
リツコ「ないわ。望むように生きたいと願う権利は誰にしもに与えられる」
シンジ「母さんに協力することを悪いと言ってるわけじゃない。リツコさんが正義だと思う、大義名分がそこにあるんでしょうから。でも、本当にそれだけですか?」
リツコ「(この子……)」
シンジ「誰だって、弱い部分はあるんじゃないの。リツコさんは、そんなに完璧なんですか?」
リツコ「シンジくん。あなた、まさか……私の、知ってるの?」
マヤ「……?」
592 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/22(金) 23:14:49.11 ID:yBhD/MoW0
シンジ「ぷっ、くっくっくっ」
リツコ「なにがおかしいの?」
シンジ「可笑しいですよ、うろたえてるのが。誰にだって秘密は……触れられたくない部分はある。そうリツコさんが言ってるのと同じじゃないんですか?」
リツコ「……」
シンジ「僕は、マヤさんを守りたい。リツコさんよりもです」
マヤ「し、シンジ……くん?」
シンジ「もし、マヤさんを殺せば……僕はたぶん抑えられなくてリツコさんを殺します。中学生ですから。ついうっかり弾みでってことが起こるかもしれない」
リツコ「年齢を言い訳にする気?」
シンジ「子供扱いしてるのはリツコさんです。対等に考えてください。僕に取り引き材料がないわけじゃありません」
リツコ「――脅し?」
シンジ「どう受け取ってもらっても結構です」
リツコ「(親に似てきた? ……不自然ね、これはある種の覚悟からきているのかもしれない)」
シンジ「僕としてはゆっくり見守っていただきたいと思っています。マヤさんに危害を与えず」
リツコ「やけに思考が冴えているみたいね。アダムの影響?」
シンジ「そういうわけじゃありませんよ。僕はリツコさんがこわいので」
リツコ「私が?」
シンジ「はい。母さんの側近で、最も警戒すべき相手の一人だと考えています。そんな人と対峙している。どうなります?」
リツコ「ふふっ、なるほど。よくわかった。マヤは板挟みってわけ。私とシンジくんの」
シンジ「マヤさんは、なにも知らなくてよかったんです。僕達が巻き込んでしまった。そうでしょ? リツコさん」
リツコ「そうね」
シンジ「今回だけは見逃してくれませんか。僕が使徒の力を自覚している件についても」
リツコ「口約束でしか保証しないわよ」
シンジ「契りは必要ありません。リツコさんを信じます」
リツコ「愚かだわ。大人を舐めると痛い目にあう」
シンジ「自分の都合の良いように振る舞うのが大人だっていうんですか?」
リツコ「それは一面にしかすぎない。ずる賢く、狡猾で、そういう生き方を正当化する方法を知っているのも大人なのよ」
シンジ「だったら、僕はリツコさんの人間性を信じます」
リツコ「信じるという意味をわかってるの?」
シンジ「無条件にじゃありませんよ。リツコさんにとっても大切な部下ですよね」
593 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/22(金) 23:55:45.87 ID:yBhD/MoW0
シンジ「人情っていうんですか? こういうの。難しい言葉はよくわかりませんけど」
リツコ「よくもまぁぬけぬけと。……もしかしたら、化けるかも。試してみる価値はある」パサ
シンジ「これは……? なんですか?」
リツコ「ダミーとその計画書。適格者が存在せずとも、エヴァの起動を可能にするシステムよ。理解できる?」
シンジ「……」ペラ
マヤ「わ、私にも」
リツコ「黙って」
シンジ「――ベースは綾波ですか?」パサ
リツコ「驚きね。一読したかと思えば瞬時に辿り着いた。やはり、親の血は受け継いでいる、か」
シンジ「無人機にしてどうするつもりですか」
リツコ「その前に、あなたが計画していることはなに?」
シンジ「リツコさんから見れば、駄々をこねてるように感じるかもしれませんが、僕は補完計画を発動させない別の道を模索したい」
リツコ「ナンセンスよ。第三の選択肢なんてありえないわ。発動させなければ人類は滅びてしまう。“再生させるか”、“無に帰すのか”。シンジくんはこの二択で終焉を選ぼうというの?」
シンジ「道がなければ作れば良い。人類はそうやって進化してきました」
リツコ「それは数千年もの間、生命を紡いで反省と学習をできた期間があったから。今は結論をだすまでに一年……もっと短いかもしれない。猶予はない」
シンジ「最後まで足掻いてみたいんです。人が人のせいで終わりを迎えるというのなら、それだって自然の摂理のはず」
リツコ「私たちのしようとしていることに対して弾糾するつもり?」
シンジ「いくら大義名分を掲げようたって。知的生命体である人の可能性がある。どうしてやる前から諦めなくちゃいけないんだよ」
リツコ「ことのなりゆきを見守るだけでは99%の人が死ぬとMAGIの試算がでてる。果てしない暴力が終わった後、石器時代まで文明は退化するわよ」
シンジ「……僕が望むのは現状維持です。母さんは変革を求めている。この国だって他国がしかけてきたら自己防衛するのと一緒です」
リツコ「保守的ね。しかけているのはこちら?」
シンジ「補完計画の発動を止める。その後に計画性がない、愚かな選択だとしても、人類の未来は人という種が決めるべきです」
リツコ「評価を改めるべきかしら。見た目を抜きにすれば、中学生が発している意見と思えない。言葉に酔ってるだけと受け取れなくもないけど」
シンジ「母さんもそうでしたけど、リツコさんもですか」
リツコ「……?」
シンジ「採点してる気になってる時点で、上から見てるんですよ。評価って、そういうものでしょう」
リツコ「これは失礼。取り引きに話を戻しましょう。シンジくん、あなたは私がマヤを救いたいと思っているのね?」
シンジ「少なからずは」
リツコ「切り捨てられないわけじゃない」
マヤ「(先輩? なんだか、楽しそう?)」
シンジ「そうだとしたら困っちゃいます」
リツコ「ふふっ、可愛げ、身につけたの?」
594 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/23(土) 00:20:10.14 ID:Nz14Uu3d0
【リツコ宅 リビング】
シンジ「食材は自由に使わせてもらいますよ。それにしても意外でした、まさか、条件を飲む理由が」
リツコ「なにもなしじゃ遊び心がないわ。口実になるけど、シンジくんの手料理はおいしいって評判だし、一度食べてみたかったの」
シンジ「みんな、過大評価しすぎなだけです。レシピ通りにやれば誰だってできるのに」
リツコ「料理人に失礼よ。美味しいものは美味しい。それでかまいやしないわ」
シンジ「電気タイプなんですね。ここのコンロ」ピッ
リツコ「どこまで把握してるの?」
シンジ「また続きですか……言いたくありません」
リツコ「もしかして、昏睡状態の出来事を覚えてるんじゃ? タブリスになにか吹き込まれた?」
シンジ「カヲルくんですか?」キョトン
リツコ「(違う、タブリスではない。だとしたら、一体誰がここまでの変貌に導いたのかしら……。外的要因をくわえなければ不可能なはず)」
シンジ「……なにを知ったとしてもやりたいと思っているのは言った通りです」
リツコ「特別に答えををあげるわ。先程渡した計画書。あれは古い書類よ。変更される前のね」
シンジ「……」トントントン
リツコ「新しいダミーの研究は既にはじまっている。被験体は渚カヲル。進捗状況までは教えない」
シンジ「構いませんよ。やっぱり、やることに変わりはないんですね」
リツコ「補完計画に必要不可欠ですものね。それは、あなたも同様に。……どう? 人類代表に選ばれた気分は」
シンジ「元々、そういう計画じゃなかったでしょう」
リツコ「鋭い。まるで知っているかのよう口ぶりに先程から鳥肌がたちっぱなし」
シンジ「褒めたってなにもしませんよ」
リツコ「私、おべっか使うの嫌いなのよ。もし本当になにも知らないままに推察だけで発言しているとしたら、これほど興味深い話はない」
シンジ「そうですか」
リツコ「とっても不自然ですもの。一週間ほど前まで、事なかれ主義だっただけに、不気味」
シンジ「そんな気がするだけです」
リツコ「シンジくんのお父様が提唱していた補完計画は、初号機が中心にあった。なぜだと思う?」
シンジ「なんでもわかるわけじゃありませんから」ジュー
リツコ「想像でかまわないわ。言ってみて」
シンジ「母さんが現れるまでの父さんは僕に興味がなかった。自分の息子というよりも、道具。僕が必要だっわけじゃない。必要なのは、パイロットだったんでじゃないでしょうか」
リツコ「ガッカリした?」
シンジ「いえ。そう考えると、ダミー計画を読んでみると納得がいきます。初号機さえあればいいと思ってたんじゃないかって」
リツコ「そこまでは正解。でも、それは碇司令に初号機が必要な理由であって、私の質問に対しての答えではない。補完計画にはなぜ?」
シンジ「見当もつかないや。発動するまでにいくつか条件があるんじゃないんですか? 僕の手にあるアダムがまず第一。そして二番目には初号機とか。そういういくつものピースが重なってる」
リツコ「(他人事のようね。冷静に分析してる)」
シンジ「おそらくですけど、今は準備段階。その合間に使徒が来てるのかな。……準備ができれば、いつでも補完計画を発動したいと思ってる」コトコト
リツコ「そこは違うわ。私たちはタイムスケジュールに沿って準備、行動しているの」
シンジ「(裏死海文書。真実が書かれた予言書か)」
リツコ「莫大な国連費で補っているのよ。億を飛び越えて兆の運用金。この時点で何人死んでてもおかしくない」
シンジ「お金、ですか」
リツコ「欲をかいて人殺しなんてしょっちゅうある話でしょう? それが一連の計画にかかっている単位が兆。規模の大きを実感できる?」
シンジ「いえ、あんまり」
リツコ「碇前司令も幾度となく手を汚しているわよ」
595 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/23(土) 00:34:03.46 ID:Nz14Uu3d0
シンジ「驚きはありません。やってても不思議じゃないと思います。できましたよ、冷めないうちにどうぞ」コト
リツコ「あら、本当に美味しい。これほどの腕前ならミサトじゃなく私が引き受け人になるべきだったかしら」
シンジ「今はマヤさんですけどね」
リツコ「シンジくん、マヤに頼るのはやめなさい」
シンジ「……」
リツコ「危険だわ。ユイ司令は、冷酷になれば容赦がなくなるわよ」
シンジ「わかってます。今は計画の中心にいるのが僕。それ以外は道具、でしょ」
リツコ「ご明察。そこまでわかってるのなら説明する必要はないわね」
シンジ「同居を解消するように働きかけてください。一緒に住んでいると否応にでも巻き込んでしまう」
リツコ「ふぅん、一理ある」
シンジ「衝動は時と場所を選んでは……。僕の都合なんておかまいなし」
リツコ「それがマヤに向けられる。そう考えてるのね?」
シンジ「僕の望むところではありません。マヤさんに話をしたのは対応策の一環なんです」
リツコ「……シンジくんから?」
シンジ「そうです。マヤさんになにも非はありません」
リツコ「それはウソね。聞いただけじゃ、動こうとしないもの。あなたに惹きつけられるなにかがあったはず」
シンジ「曲がったことが許せないだけなんじゃないですか」
リツコ「かばってるつもり? お優しいこと」
シンジ「リツコさんのせいでもあります」
リツコ「私も?」
シンジ「憧れていた先輩が思っていた人ではなかった。現実と理想の違い」
リツコ「あの子のかかえる問題点は理解しているわ」
シンジ「気がついてないんですよ。マヤさんにとって、リツコさんは心の支えだったんです。それがなくなってしまい、弱ってしまった」
リツコ「(シンジくんのデータ、早急に書き換えなければ……)」
シンジ「この一週間、本当に密度が濃かったんですよ。自分の色んな面と向き合なくちゃいけなくなってました。したいことで精一杯で、僕はまわりを見ていなかったと実感できるほどに」
リツコ「一時的なものよ。人は忘れながらに生きているから」
シンジ「それでも、これまでの出来事を僕は忘れないと思います」
リツコ「経験則から導きだされた答え? 悟ったからみんなもそうであると?」
シンジ「違います。ただ、若さとは、無謀なことができる期間なんだと漠然と感じます」
リツコ「……」カチャ
シンジ「ワイン、飲まれますか?」
リツコ「シンジくん。将来はウェイターにでもなったら?」
シンジ「僕に将来なんてあるんですかね」
リツコ「自身の死についてまで悟りを開いたの?」
シンジ「いえ、よく、わかりません」
リツコ「もうこんな時間。話すぎたわね。ごちそうさま」
シンジ「あ、はい。でも、少し手をつけただけじゃ」
リツコ「料理自体に不満はない、頭の回転が鈍くなるから、少食なのよ。満腹感はどうしても受け付けたくないというだけ。またいつでもいらっしゃい。歓迎するわ」
シンジ「……」
リツコ「(今のあなたなら、ね)」
596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2017/09/23(土) 00:43:03.41 ID:ub4QE0yxo
リツコの考えがよくわかんないんだよな。冬月は毒を喰らわば皿までって
感じなんだろうけど、リツコはどうなんだろう。本当に人類のためなのかな?
597 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/23(土) 00:46:54.89 ID:Nz14Uu3d0
【マヤ宅 リビング】
シンジ「ただいま。あれ? マヤさん、なにして――わあっ⁉︎」
マヤ「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください」
シンジ「ちょっとっ⁉︎ なにしようとしてるんですか⁉︎ なに考えてるんですかっ⁉︎」
マヤ「あ、おかえり。ごめんね、いま、準備してるから」
シンジ「ロープから手を離して! そんなの一体どこから」
マヤ「帰りにホームセンターに寄って買ってきたの」
シンジ「いや、そうじゃなくて! 大丈夫ですよ!なにも心配しなくていいんです!」
マヤ「うふ、うふふ。私、墓穴掘っちゃった。先輩ならわかってくれると思ったのに。また裏切られちゃったの」
シンジ「そ、それは……リツコさんもやりたいことがあって……!」
マヤ「私には仕事しかないもの。実家に帰るぐらいなら、生きてたって」
シンジ「そんなことありませんよ! 生きてればなんだってできます!」
マヤ「気力がなくなっちゃったの! シンジくんの力になりたかった、けど、逆に足を引っ張っちゃったね」
シンジ「一度失敗したぐらいでなんだっていうんですか!」
マヤ「取り返せるつまずきならまだいい。だけど、クビなら無理。やり直すにしても、ネルフとは別の場所」ツゥー
シンジ「マヤさん、泣いて……仕事が全てなんて、そんな……別の幸せが」
マヤ「決めたの。先輩に見捨てられて、シンジくんにも迷惑をかけて。もう、ボロボロだわ」ガタッ
シンジ「まってっ!」ダダダッ
マヤ「うっ」ガクッ ジタバタ
シンジ「くそっ!」ガシッ
マヤ「は、離してっ! シンジくん! 離してよっ!」
シンジ「暴れないでくださいよ! 持ちあげるのにきつくなる……」
マヤ「死なせてよ! 死にたいのっ!」
シンジ「(こうなったら、使徒の力に頼るしか……! こんなに使ったら、母さんに絶対にバレるきっかけを与えてしまう! けど!)
マヤ「え?」ヒョイ
シンジ「はぁ……。まさかそんなに張り詰めてたなんて」
マヤ「お、重くないの?」
シンジ「箸を持ちあげる重さぐらい。これが身体能力の強化です」
マヤ「今の状態が……あの、わかったから降ろして。お姫様抱っこされるような歳じゃないし」
シンジ「もうしませんか? こういうこと」
マヤ「……」
シンジ「答えを聞くまで降ろせません」
マヤ「しないから」
シンジ「一瞬とはいえ苦しかったでしょ」スッ
マヤ「うっ……ぐすっ……」
シンジ「僕が止めたのは、マヤさんが死んだら悲しいからです。ここにいたっていいんですよ。ネルフにも」
マヤ「本当? 私、まだ、やり直せる?」
シンジ「リツコさんの了承は得られました。信じてもいいと思います。危険はありますけど、納得、してるんでしょう?」
マヤ「ありがとう、シンジくん、ありが、とうぅっ……うっ、うああぁっ」ポロポロ
シンジ「(女の人ってみんなこうなのかなぁ?)」ポンポン
598 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2017/09/23(土) 16:45:13.43 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】
ユイ「これで何度目?」
諜報部「伊吹二尉のお宅に、ご子息が移られてからですか? 電磁波発生の頻度は――」
ユイ「バカな質問をしたわ。ほぼ毎日ね」
諜報部「いかがいたしますか? その、リユース品ではありませんし、あまりにも」
ユイ「こちらで検討します。疑問を抱かなくていい」
諜報部「はっ! 失礼いたします!」ビシッ
ユイ「シンジったら、もう。安直な手段を選ぶのはよろしくない。あの人に似たのかしら」
冬月「早計すぎるのではないか。やつが意図的に制御できているとなぜ言い切れはしまい。あるいは、垂れ流しているだけとも」
ユイ「魂の同化が促進されている点を憂慮すべきですね。アダムに振り回されているのか、意図的に行使できるようになっているのか」
冬月「直接問いただしてもいいが、素直に口を開くとも思えん。穏便に事を進めるのは難しいやもしれんな」
ユイ「……」
冬月「なに、割り出すのにそれほど難儀はせんだろう。こうまであからさまになっていては」
ユイ「豊富なサンプルを元に科学に頼るとしますか」
冬月「MAGIか。我々もラクな手段を選んでいるのだからサードチルドレンを笑えんな。便利な道具は人を腐らせもする。……おい」
リツコ「ごようでしょうか?」スッ
ユイ「一度帰宅したのに悪かったわね。行き違いだったとはいえ、残るよう通達するのを怠って」
リツコ「お気になさらず。やりかけの仕事を思い出していたので丁度良いぐらいです」
ユイ「データを洗い出してほしい。主に行動記録」
リツコ「承知いたしました」
ユイ「それと、伊吹二尉はどうするつもり? なにか知ったはずよね?」
リツコ「なんのことでしょうか」
ユイ「使徒の能力を使える状態にまで移行してるわ。同居人である彼女が無事な以上――」
リツコ「無用な詮索をやめるようきつく言い含めております。問題ありません」
ユイ「以前に言ったわよね?」
リツコ「はい。いかなる場合を以てしても責任は私が負います」
冬月「おい、それぐらいでよかろう。作業に必要な質問があれば聞こう」
リツコ「日付けはいつまで遡りますか?」
冬月「全てだ。幼少期から今日(こんにち)に至るまでMAGIの演算能力で総当たりにしろ。やつの分析も忘れるなよ」
リツコ「おまかせください。変異点を見つけ次第、逐一報告いたします」
ユイ「ねぇ、赤木博士」
リツコ「なんでしょうか?」
ユイ「どうしたら私に心を許す?」
リツコ「ご質問の意図を計りかねます」
ユイ「わからないから聞いてみたのよ。夫の真実を知って、私の存在を知って……あなたの心は死んだまま。ゾンビみたいに」
リツコ「安い挑発でなにか釣ろうとなさっているのですか。それもまた、以前と同様に」
ユイ「失敗という教訓を活かし鉄仮面を被ったってわけ。……以上です、取り掛かって」
599 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/23(土) 16:48:49.28 ID:Nz14Uu3d0
あらら、ちょっとレスしなおし
600 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/23(土) 16:50:43.88 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】
ユイ「これで何度目?」
諜報部「伊吹二尉のお宅に、ご子息が移られてからですか? 電磁波発生の頻度は――」
ユイ「バカな質問をしたわ。ほぼ毎日ね」
諜報部「いかがいたしますか? その、リユース品ではありませんし、あまりにも」
ユイ「こちらで検討します。疑問を抱かなくていい」
諜報部「はっ! 失礼いたします!」ビシッ
ユイ「シンジったら、もう。安直な手段を選ぶのはよろしくない。あの人に似たのかしら」
冬月「早計すぎるのではないか。やつが意図的に制御できていると言い切れはしまい。あるいは、垂れ流しているだけとも」
ユイ「魂の同化が促進されている点を憂慮すべきですね。アダムに振り回されているのか、意図的に行使できるようになっているのか」
冬月「直接問いただしてもいいが、素直に口を開くとも思えん。穏便に事を進ようとする前提にこだわれば、ちと厄介だな」
ユイ「……」
冬月「なに、割り出すのにそれほど難儀はせんだろう。こうまであからさまになっていては」
ユイ「豊富なサンプルを元に科学に頼るとしますか」
冬月「MAGIか。我々もラクな手段を選んでいるのだからサードチルドレンを笑えんな。便利な道具は人を腐らせもする。……おい」
リツコ「ごようでしょうか?」スッ
ユイ「一度帰宅したのに悪かったわね。行き違いだったとはいえ、残るよう通達するのを怠って」
リツコ「お気になさらず。やりかけの仕事を思い出していたので丁度良いぐらいです」
ユイ「データを洗い出してほしい。主に行動記録」
リツコ「承知いたしました」
ユイ「それと、伊吹二尉はどうするつもり? なにか知ったはずよね?」
リツコ「なんのことでしょうか」
ユイ「使徒の能力を使える状態にまで移行してるわ。同居人である彼女が無事な以上――」
リツコ「無用な詮索をやめるようきつく言い含めております。問題ありません」
ユイ「以前に言ったわよね?」
リツコ「はい。いかなる場合を以てしても責任は私が負います」
冬月「おい、それぐらいでよかろう。作業に必要な質問があれば聞こう」
リツコ「日付けはいつまで遡りますか?」
冬月「全てだ。幼少期から今日(こんにち)に至るまでMAGIの演算能力で総当たりにしろ。やつの分析も忘れるなよ」
リツコ「おまかせください。変異点を見つけ次第、逐一報告いたします」
ユイ「ねぇ、赤木博士」
リツコ「なんでしょうか?」
ユイ「どうしたら私に心を許す?」
リツコ「ご質問の意図を計りかねます」
ユイ「わからないから聞いてみたのよ。夫の真実を知って、私の存在を知って……あなたの心は死んだまま。ゾンビみたいに」
リツコ「安い挑発でなにか釣ろうとなさっているのですか。それもまた、以前と同様に」
ユイ「失敗という教訓を活かし鉄仮面を被ったってわけ。……以上です、取り掛かって」
601 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/23(土) 17:42:19.47 ID:Nz14Uu3d0
【翌日 ネルフ本部】
リツコ「ミサト、ちょっといい?」
ミサト「ふぁ〜ぁ。なぁにぃ? デスクワークが溜まりまくっててさぁ、あんまり寝れてないのよぉ〜」
リツコ「髪ぐらい整えたらどう? 監査近いんだから」
ミサト「へいへい。ありがたぁ〜いお小言なら耳にタコができるほど――」
リツコ「生活態度があまりにだらしないから逸れてしまったわ。用件は別にある」
ミサト「なんでしょーか」
リツコ「特別プログラムの企画書を用意したの。見てくれない?」パサ
ミサト「文字読みたくないのに〜。……わかりましたぁ! 睨まないでよ」
リツコ「現時点での成績はアスカが頭一つ抜きん出ている。誤差を約10パーセントほど離してね」
ミサト「ちょっと、なにこれ? なんでシンジくんがエースパイロットに? 成績からいってアスカでしょ⁉︎」
リツコ「チルドレン達にはまとめ役の人間が必要だわ。いわゆる中間管理職的な」
ミサト「だったら別個でそういうポジションを設ければいいだけなんじゃないの? シンクロ率で上回っているならまだしも」
リツコ「これまでの働きを多角的に分析し、判断しました。まず最初に太平洋上に出現した使徒は同乗。後半に驚異的な伸びを見せているから彼のおかげね」
ミサト「……」
リツコ「次に、日本でのデビュー戦においては、ミサトの命令を無視し、独断専行。無様にも撤退。その数日後、共同作戦を展開しての撃破」
ミサト「ふぅ〜ん」
リツコ「いずれのケースもアスカの働きだけでと言える? 実戦においてどちらがエースにふさわしいかしらね?」
ミサト「プライドの高いアスカが認められると考えてるの? 到底ありえないわ。反発は必至よ」
リツコ「シンジくんには積み上げた“努力”という下地がない。それぐらいはわかっています」
ミサト「納得させる手を考えてるってこと?」
リツコ「そうではないわ。危機感を煽る為の競争意識」
ミサト「たしかに、そっかぁ。今のあの子はシンクロ率トップという肩書きの上にあぐらをかいてるものね」
リツコ「チームリーダー、そしてエースパイロットは必ず一致する必要はない。指摘には同意する。パイロット達がだらけきっているのも事実だけどね」
ミサト「それなら――……いっ⁉︎ ぺ、ページめくったらとんでもないこと書いてあるじゃない! こ、これって……シンジくんが耐えられる?」
リツコ「あくまで適正を診断する検証。承認はいかがいたしますか? 作戦司令」
ミサト「う、うぅ〜ん。いや、でも、これはさすがに……大丈夫?」
リツコ「案ずるより生むが易しよ。試してみてだめだったら、引き上げればいい」
602 :
◆y7//w4A.QY
[sage]:2017/09/23(土) 18:19:34.21 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】
冬月「企画書は既に目を通してある。正気かね、サードチルドレンを」
ユイ「――戦自へ訓練生として入隊させるとはね」パサ
リツコ「不都合はありません」
ユイ「水面下で対立関係にあるのを知らないわけではないでしょう。そんなことを頼んだ覚えはないんだけど」
リツコ「戦自はネルフに鬱憤が溜まっています。国民ではない、うさんくさい組織の下働き。都合の良い召使い的な存在に成り下がっているのですから」
ユイ「言われなくともわかっています。ガス抜きに使う気?」
リツコ「特別扱いをさせては余計に不満を噴出させます。他の隊員同様の扱いであればあるほど望ましいかと」
ユイ「同じ扱い? 不可能よ」
リツコ「葛城一尉からは精神力を鍛えるのに適した環境だと同意を得ています。加えて、アダムの能力を使えるかの検証にも良い兆候を見出せるはず」
ユイ「電磁波だけでなく、身体能力強化、ね」
リツコ「昨夜のMAGIの結果は、賛成1、反対2でサードチルドレンにアダムの自覚はないとの結論がくだされました」
冬月「なに? ならば使徒が暴走しているということか?」
リツコ「賛成が1あります。限りなく0に近い数字ではあるものの、微妙な結果となってしまいました」
冬月「ううむ」
リツコ「つきましては、伊吹二尉との同居解除を提言いたします。戦自への入隊が決まれば、不要になりますので」
ユイ「肉体的、精神的に慣れない環境、追いつめてからの反応……」
リツコ「いかがでしょうか?」
ユイ「悪くない提案です。期間は設けないように」
リツコ「元よりそのつもりです。短い期間になるのは間違いありませんが、本人に告げると“その間だけ耐えればいい”と思わせてしまう。意味がなくなってしまいます」
ユイ「よろしい。承認します」
冬月「ええい、少し落ち着きたまえ。勇足すぎる。やつはこちらの核となる存在だぞ。あの線の細い身体に軍隊訓練なぞ」
ユイ「無理だと判断したらすぐに呼び戻します。ネルフから戦自へ何名か潜伏しているわね」
リツコ「はい」
ユイ「大至急、連絡をとってちょうだい。私は午後の予定をキャンセルしてあちらの責任者と会食を行います」
冬月「ネルフ総司令がアポもなしに突然の来訪か。てんやわんやする姿が目にうかぶよ。またヘイトを溜めるだろうな」
リツコ「(ここまでは順調。変わりようが本物かどうか。働きに期待してるわよ、シンジくん)」
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