シンジ「その日、セカイが変わった」

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527 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/17(日) 21:46:42.41 ID:/iWRPHOj0
ちょいテスト

殺す
528 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/17(日) 21:48:16.41 ID:/iWRPHOj0
シンジ「――はぁぁぁっ!!」ズザザー

カヲル「(その調子、勢いに身を任せてるんだ。シンジくん)」

シンジ「うぁぁあああっ!!」ゴンッ

カヲル「っ!」ドガシャァ

アスカ「扉が。て、鉄製なのよ、それ。こ、こんなの、人間の力じゃ」

カヲル「ふふっ」

シンジ「はぁっ、はぁっ」

カヲル「冷静に見ればまだ弱い。それでもアダムの鼓動を脈々と感じる」ガシッ

シンジ「うっ」

カヲル「スタミナの面に課題が残るね。まぁ、それもゆくゆくは解消されるだろうけど。どうだい? 人にして人ならざる者へと変わっていく心境は」

シンジ「き、気持ち悪いだけ、だ」

カヲル「手に有り余る力だから? 使いようによっては、リリンが用いる科学よりも強力だよ」ググッ

シンジ「ぐっ!」ミシ

カヲル「もっとも、今のままじゃ単なる強力なイチ兵士といった程度か。うん、気が変わった」

シンジ「な、なにを……言って」

カヲル「ボクを彼女を[ピーーー]。その目的に変化はない。だけど、過程を楽しもうと思う」チラッ

アスカ「……!」

カヲル「シンジくんが彼女を守るんだ」

シンジ「……?」

カヲル「そこのキミ。今後は僕に殺されないように気をつけて。あぁ、ちなみに誰かに喋った場合は即座に[ピーーー]。ボクには契約があるから」

アスカ「脅し?」

カヲル「事実だよ、これは。試してみるかい? 命がけで」

アスカ「……」

カヲル「三人だけの秘密にしよう。さて、そろそろ騒ぎを聞きつけて人が集まってきそうだ」パッ

シンジ「うっ」ドサッ

カヲル「ボクにもシンジくんの可能性を見せてほしい。ああ、今わかった。ボクはキミに会うために生まれてきたんだね、ええと、ハンカチは、と」フキフキ

アスカ「……」

カヲル「また今度会おう」スタスタ
529 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/17(日) 21:49:49.74 ID:/iWRPHOj0
何回か使ってたらアウト?

テスト

殺す
殺す
殺す
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/17(日) 21:49:56.15 ID:f8zoa8JSO
>>527
怖E
531 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/17(日) 21:51:54.67 ID:/iWRPHOj0
あー、わかった!天然ボケかましてました!
ピーがはいった本文をコピペしてたからそのまんまだっただけでした!w
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/17(日) 21:52:13.83 ID:2p0hn3Gao
初めての事例だ。何でだろう?
533 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/17(日) 21:53:49.46 ID:/iWRPHOj0
シンジ「――はぁぁぁっ!!」ズザザー

カヲル「(その調子、勢いに身を任せてるんだ。シンジくん)」

シンジ「うぁぁあああっ!!」ゴンッ

カヲル「っ!」ドガシャァ

アスカ「扉が。て、鉄製なのよ、それ。こ、こんなの、人間の力じゃ」

カヲル「ふふっ」

シンジ「はぁっ、はぁっ」

カヲル「冷静に見ればまだ弱い。それでもアダムの鼓動を脈々と感じる」ガシッ

シンジ「うっ」

カヲル「スタミナの面に課題が残るね。まぁ、それもゆくゆくは解消されるだろうけど。どうだい? 人にして人ならざる者へと変わっていく心境は」

シンジ「き、気持ち悪いだけ、だ」

カヲル「手に有り余る力だから? 使いようによっては、リリンが用いる科学よりも強力だよ」ググッ

シンジ「ぐっ!」ミシ

カヲル「もっとも、今のままじゃ単なる強力なイチ兵士といった程度か。うん、気が変わった」

シンジ「な、なにを……言って」

カヲル「ボクを彼女を殺すよ。その目的に変化はない。だけど、過程を楽しもうと思う」チラッ

アスカ「……!」

カヲル「シンジくんが彼女を守るんだ」

シンジ「……?」

カヲル「そこのキミ。今後は僕に殺されないように気をつけて。あぁ、ちなみに誰かに喋った場合は即座に殺す。ボクには契約があるから」

アスカ「脅し?」

カヲル「事実だよ、これは。試してみるかい? 命がけで」

アスカ「……」

カヲル「三人だけの秘密にしよう。さて、そろそろ騒ぎを聞きつけて人が集まってきそうだ」パッ

シンジ「うっ」ドサッ

カヲル「ボクにもシンジくんの可能性を見せてほしい。ああ、今わかった。ボクはキミに会うために生まれてきたんだね、ええと、ハンカチは、と」フキフキ

アスカ「……」

カヲル「また今度会おう」スタスタ
534 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/17(日) 21:54:22.74 ID:/iWRPHOj0
できましたね。お騒がせしました。
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/17(日) 22:01:22.01 ID:MU2fcSbCo
はよはよ
536 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/17(日) 22:20:01.26 ID:/iWRPHOj0
【数十分後 保健室】

アスカ「ねぇ」ギシ

シンジ「……ん?」

アスカ「あいつ、なんなの?」

シンジ「さぁ」

アスカ「さぁ⁉︎ さぁと言った⁉︎ 殺されかけたのよ! ついさっき!」ガバッ

シンジ「(アダム。綾波と同じ……手のひらにあるのは魂が空っぽだったのか)」

アスカ「あんたもどーなってんの⁉︎」

シンジ「どう話せばいいか」

アスカ「はぁ……」ポフッ

シンジ「アスカ……?」

アスカ「さっき、本気で終わったと思った、あたし」

シンジ「ご、ごめん。巻き込んで」

アスカ「目的、なんなの?」

シンジ「わからない」

アスカ「またそれ」

シンジ「本当なんだ。目的がわからないのは。どうしてアスカを狙うのか」

アスカ「こういうのは、順序立てて考えてくもんよ」

シンジ「……」

アスカ「助かった。今はそれだけで満足してあげる」

シンジ「うん」

アスカ「でも、思考が落ち着いたら洗いざらい全部話しなさい。バカシンジだけじゃ心許ないから」

シンジ「う、うーん、それは」

アスカ「どうせいつものことだからウジウジ悩んでんでしょ? なに抱えてたか聞くのは」

シンジ「……」

アスカ「それから……ええい、今はいいや。少し眠りましょ」

シンジ「首、大丈夫?」

アスカ「ん。数日ぐらい痕になるかもしれない。湿布で隠しとく」

シンジ「ミサトさんへの言い訳考えなくちゃね」

アスカ「そうね。あいつへの復讐も」

シンジ「ふ、復讐って」

アスカ「やられっぱなしじゃ気が済まない。泣き寝入りなんてごめんよ」ゴロン
537 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/17(日) 22:41:14.86 ID:/iWRPHOj0
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「――失敗したですって⁉︎」バンッ

カヲル「はい」

ユイ「どういうつもり⁉︎ 契約を違えるつもりなの⁉︎」

カヲル「いいえ」

ユイ「バカにしてるの⁉︎」カシャン ブンッ

カヲル「万年筆は投げるものではありませんよ」パシ

ユイ「今すぐ戻って息の根を――」

カヲル「シンジくんとアダムの融合速度が想定を上回っています」

ユイ「……⁉︎ シンジの?」

カヲル「そういった事態は伺っていませんよ。あなたの落ち度です」

ユイ「邪魔がはいったのね? 細胞の活性化ができるようになっているの?」

カヲル「間違いなく。どういう仕組みで肉体が強化されるか気がついていないようですが」

ユイ「無意識?」

カヲル「(意図的だよ)」

ユイ「そう。既にそこまで……」

カヲル「誰もが持つ心の壁。A.Tフィールド。法則に辿り着くのも時間の問題かと」

ユイ「まずいわ。それは」

カヲル「リリンを超越した存在になりつつある。精神が未熟な中学生といっても脅威だ。わかりやすく言うと、ボクのような無から造られた人工物と違い、人と使徒のハイブリッド的存在だからね」

ユイ「……」

カヲル「いかように?」

ユイ「話をする必要はありません。あなたは契約を全うしなさい」

カヲル「ボクは自分の役割を――」

ユイ「私は次の手を打ちましょう」
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 06:46:42.80 ID:l4S07ieXo
オモロ
539 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/18(月) 11:23:08.68 ID:yqnrO/IZ0
【数十分後 エレベーター内】

ユイ「分子成形、侵食スピードが常軌を逸しています。こちらが予測していた日数よりも遥かにはやい」

冬月「我々は前例にないことをやろうとしている。多少のズレはいたしかたあるまい」

ユイ「……」

冬月「アダムにとっても刺激的だったのやもしれぬな」

ユイ「使徒は学習し、知恵を身につけます。これまで襲来した特徴をとっても、外見、能力、それぞれが失敗と不満点を改善しようとしている」

冬月「自立志向型の考えを元に成り立つ。おかしいのは魂が空っぽであるにもかかわらず、どうやって肉体強化を」

ユイ「人は無から魂を作れない。神ではありませんのよ。“残り香”。魂をタブリスに移したのではありません。――厳密に言えば、“分けられた状態”なのです」

冬月「そうだとしても、サードチルドレンの内にある魂はしぼりカスではないのか?」

ユイ「原初の時代の遺物に確認しに向かっています」

冬月「ふっ、少なからず動揺しているのか。そんなに息子を心配せずとも」

ユイ「急展開になろうとしているかもしれないのです」

冬月「……?」

ユイ「もし、もし、肉体だけでなく、アダムそのものが再構築されているのなら――」

冬月「なに? もしや、魂の再生? そんなことは、まさか」

ユイ「本件は無用なパニックを避けるため、あらゆる角度からシンジの状態を分析する目的があります。パンドラの箱、我々は禁忌の領域を侵害している。忘れないで」

冬月「いかんな。完全な使徒として活動しだすとなれば人の脆弱な自我の容量を超え、ひとたまりもなく決壊する」

ユイ「……」チーン

冬月「セントラルドグマに降りてくるのはいつ以来か。そして――ここに安置してあるリリスと対面するのも」

ユイ「急ぎましょう」コツコツ
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 11:48:08.24 ID:vVg1OtBW0
エレベーターがついた音だとはわかるが、タイミング的にユイが絶望顔になってるように見える
541 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 11:59:27.25 ID:yqnrO/IZ0
リリス「……」

ユイ「リリス。我々人類にとって母なる存在、聞きたいことがあるの」

冬月「ロンギヌスの槍で封印されている。魂でさえレイの中にある状態で、なにも認識できや――」

リリス『おかえりなさい』

冬月「……っ⁉︎」ギョッ

ユイ「黒き月。ファーストインパクトという大災害をおこし地球に降り立った最初の時、外殻は月に、葛城調査隊が発見する西暦2000年までアダムは休眠状態にはいった」

リリス「……」

冬月「ば、バカなっ! このような、ありえん!」

ユイ「生命の実を持つアダム、知恵の身を持つリリス。母さんは人類の元となる生命体に知恵を分け与え、人類はDNAを紡ぐことで継承していった」

冬月「ゆ、ユイくん。キミは一体」ガシッ

ユイ「アダムとリリスの融合。それは究極の生命体を意味する。さらに、ヒトをかけあわされば、どんな願いでも叶う」

冬月「ひ、瞳の色が――」

ユイ「お願い。私を初号機の中から呼び覚ましてくれた時のように、助けて。アダムの共振を感じているでしょう?」

冬月「初号機だと? リリスの助力で……な、なにがあったのだ」

リリス『なにを、望むの?』

冬月「(頭の中に直接言葉が浮かんでくる……)」

ユイ「シンジを、この世界のトリガーにしたい」

リリス『愛しく哀れな我が子。それが願い?』

ユイ「……不可解なの、母さんの肉体にある魂は完全な状態?」

リリス『違う』

ユイ「では、不完全な形での再構築」

冬月「……」ゴクリ

ユイ「ありがとう、母さん。まだもう少し休んでいて。もう少しだから」
542 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 14:10:49.37 ID:yqnrO/IZ0
冬月「待て。どういうことか説明してもらおう」

ユイ「それよりも――」

冬月「協力できない」

ユイ「……わかりました。この瞳はリリスの影響によるものです。といっても“混ざり”は薄い。レイを原液だとすればさらに水でうすめたもの。力は使えません。こうしてリリスとの対話ができるだけ」

冬月「俺にも聞こえたぞ。言葉がイメージとして浮かび上がった程度だが」

ユイ「私が近くにいることで少なからず影響を与えたのでしょう」

冬月「ユイくんはリリスの声が直に聞こえるのか」

ユイ「生身の人間では、存在の崇高さから自我を保てない。朧げにしか……聞いてはならないと防衛本能が働いてるのかもしれませんね」

冬月「初号機の中でリリスと邂逅したのかね」

ユイ「潜りすぎてとりこまれたあの日。私の肉体は液体状にまで還元され、魂はコアとひとつとなりました」

冬月「そこまでは承知している」

ユイ「その後になにが起こったのか。意識を確立できない狭間で、私はリリスと対話することに成功したのです」

冬月「……」

ユイ「膨大な知識が雪崩れ込んでくる。洪水のように。ひとつひとつの細胞が、まるで電気ショックを与えられているみたいでした」

冬月「脳では到達できない領域」

ユイ「アメリカ心理学の父であるウィリアム・ジェームズは“人の脳は普段、その10パーセントも使用していない”と提唱しました。100パーセントを使うと無理がでて耐えきれないからです。俗説だとする真っ向から否定した発表もあります」

冬月「……」

ユイ「それがどちらであれ、“それほどの量”の知識が私の中を駆け巡ったのです。想像できますか?」

冬月「言わんとする意図はわかる。対話に成功したキミは、コアを通してどうした」

ユイ「孤独を、理解しました」

冬月「……」

ユイ「リリス、アダムという原初の人々でも逃れる術はなかったのです。確立した存在である以上。それと同時に、私が今までどこか虚しいと感じていた理由も……」

冬月「コアから抜けだした方法は」

ユイ「ただ、もう一度、“会いたい”と願ったのですよ。純粋に。気がついたら、初号機の前にいました」

冬月「だが、肉体はサルベージに失敗して既に」

ユイ「科学でさえクローン技術を通して作れるのです。神に創造ができないとでも? 我々は彼らの力を模しているにすぎません」

冬月「うう、む」

ユイ「幸いなことに、私の魂は初号機のそばにありました」

冬月「つまり、その頃からキミはリリスと通じ合っていたのか? これまでずっと?」

ユイ「ふふっ、通じ合う? 概念はそのようなものではない」

冬月「……」

ユイ「もうよろしいですか? シンジの中にあるアダムをなんとかしなければ。覚醒させるには早すぎます」

冬月「よかろう。計画書の見直しが必要だな」

ユイ「修正はまだききます。表面化したのは幸いと考えましょう。私たちが気がつく前に、融合が今以上進んでないと」

冬月「セカンドチルドレンはどうなった?」

ユイ「まだ生きています。ですが、必ず死んでもらいます」

冬月「まずいことにならなければいいか」

ユイ「先生。感謝しています」

冬月「……」

ユイ「あなたがそうやって不測の事態を考慮してくれるからこそ、行き過ぎた行動に対して歯止めがかる」

冬月「ふん、俺は静観しているに過ぎんよ。キミも碇も言ってやめるような奴ではあるまい」

ユイ「サポートしていただいてるのは事実です。これからも、よろしくお願いします」
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 14:23:00.05 ID:JURYdx4jO
このSSのストーリーすげえな
544 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 15:03:47.79 ID:yqnrO/IZ0
【第壱中学校 保健室 放課後】

ヒカリ「失礼します。先生。アスカは」

先生「目を覚ましてるわよ。会ってく?」

アスカ「――ヒカリ?」

ヒカリ「あっ」タッタッタ シャ

アスカ「おはよ」

ヒカリ「なにを呑気な……首っ⁉︎」

アスカ「平気だって。ちょっと大袈裟に湿布はってるだけ」

先生「女の子ですものね。手形が残っているのなんて見せられないし。心配ないだろうけど……一応、病院は行くのよ? 碇くんだっけ、彼は、まだ起きない?」

アスカ「まだ眠っています。さっきは、頑張ってくれたから」

先生「そう。疲弊していたのね。まさか、暴漢がここに来るなんて、こわいわ。ネルフに連絡しておいたからすぐに捕まると思うけれど」

アスカ「(それはないわね、たぶん)」

ヒカリ「でも、よかった。本当に」グス

アスカ「泣かないの。女の涙はとっておきなんだから」

先生「言うわね」

アスカ「先生、ここは大丈夫ですから」

先生「そう? それじゃあ、ちょっとタバコ休憩にでも」

ヒカリ「碇くん、気がついて追いかけてくれてたんだ」

アスカ「……? なに? どういうこと?」

ヒカリ「ちゃんと伝えられなかったけど、アスカの様子がおかしいって言ったの。そしたら、突然用事があるからって」

アスカ「そうなの?」

ヒカリ「よかったぁ」

アスカ「そっか。ちったぁ男見せたんだ。こいつ」

ヒカリ「うん、暴漢を追い返したのって碇くんなんでしょう? すごいよね、そんな人だとは夢にも思わなかった」

アスカ「まぁ、よくやってたわよ。人間じゃできないぐらい」

ヒカリ「ぷっ、なにそれぇ?」

アスカ「……」

ヒカリ「碇くん、起こす? 下校時間だし」

アスカ「そうね、もうちょっと」

ヒカリ「えっ、でも。帰らなくちゃ……あ、迎えきてもらうとか?」

アスカ「ううん、違う、よっと」ギシッ シャッ

ヒカリ「やっぱり起こすの?」

アスカ「ヒカリ、黙って」ギシッ

ヒカリ「あ、アス――」

シンジ「すぅー……すぅー……」

アスカ「……」チュ

ヒカリ「え、ええぇぇぇっ⁉︎」ガタッ

アスカ「ばっちい」ゴシゴシ

ヒカリ「あ、ああああっアスカっ⁉︎ そ、それって、き、ききキスっ!」

アスカ「どんなもんかと思ったけど。なにも感じない」

ヒカリ「ほぇー」ポー

アスカ「はぁ……。さっさと起きなさい! ねぼすけシンジっ!」
545 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 15:31:05.86 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「いっ⁉︎ な、なんだ⁉︎ なにが……あれ? ここは」

アスカ「ようやくお目覚め?」ぶっすぅ

ヒカリ「……」ドッキンドッキン

シンジ「アスカがどうして腰に手を当てて立って、洞木さんは」

アスカ「なに寝ぼけてんのよ! 下校時刻! ヒカリは迎えに来てくれたの!」

シンジ「寝たまま――」

アスカ「目は覚めた?」

シンジ「あ、うん。洞木さん?」

ヒカリ「へ?」

シンジ「どうしたの? ぼーっとして」

ヒカリ「だ、だだだって、今、アスカが――」

アスカ「なんでもない」チラ

ヒカリ「あ、うん、そ、そう。ちょっと考え事」

シンジ「アスカ、痛みは?」

アスカ「あんたそればっかりね。別にこれぐらいどーってことないわよ」

ヒカリ「わ、私っ! 保健室の先生に挨拶してくる! 二人で話してて!」タッタッタッ

シンジ「……?」

アスカ「まったく、ヒカリったら。余計な気まわしちゃって」

シンジ「(ふぅ。力が戻ってる。ただ、少しだるいな)」

アスカ「シンジ」

シンジ「なに?」

アスカ「落ち着いたら話、聞かせてもらうって言ったわよね」

シンジ「……うん」

アスカ「帰りに私のマンションに――」

マナ「シンジくんっ⁉︎ ごめん! 遅れて! 日直の仕事があって!」ガララッ

アスカ「またあんたぁ?」

マナ「アスカをかばって怪我したって! どこ⁉︎ どこ怪我したの⁉︎」ガタンッ

シンジ「いや、僕は別に」

マナ「よかったぁっ!」ギュウ

アスカ「ちょっと、なに抱きついてるわけ? あんたじゃなくシンジに用事があんのよ」

マナ「別に誰と誰が抱きついても関係ないでしょ。首、平気?」

アスカ「あんたに心配されたくないわ。離れたら? 苦しそうだし」

シンジ「あの、ちょっと、二人とも」

マナ「なんでアスカにわかるのよ?」

アスカ「怪我してるかもしれない相手によく体重かけられるわね。あんたの体重、5トンぐらいあるんじゃなかった?」

マナ「ご、ごとっ⁉︎ そんなわけないでしょ⁉︎」

アスカ「ほら、シンジ」ガシッ

シンジ「っと、あ、アスカ?」

マナ「いきなり腕掴まなくても! いつも強引なのね」

アスカ「ちっ、あんたにはわかんない話があんのよ」

マナ「あぁ〜ら? どういう話?」

アスカ「言えない」
546 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 15:34:17.33 ID:yqnrO/IZ0
マナ「二人だけの秘密? ……アスカ、あなた」

アスカ「胸糞悪くなる勘違いしないでくれない?」

マナ「わかるよ、私。素直じゃないだけのくせに!」

アスカ「……っ! 言ったわね、このクソアマ。この前の続きがやりたいって――」

シンジ「もうやめるんだ! 二人とも!」

マナ「ご、ごめん」

アスカ「ふん」

シンジ「僕の態度がはっきりしないのがいけないんだ。マナ、アスカと話をする。自分の意思で。いい?」

マナ「あ……」ギュウ

アスカ「ふふん、残念でしたぁ〜」

シンジ「アスカも。マナは心配してくれてるだけだよ」

アスカ「(バカシンジ。こいつは女の嫉妬をしてるのよ)」

シンジ「僕なら、大丈夫だから。マナも帰って」

マナ「えっ、でも、方向同じだし! わ、私も一緒に!」

シンジ「今日はアスカと二人にしてほしい」

先生「っとに。最近のマセガキどもは」

ヒカリ「な、なにやってるのよ。もぉ」

アスカ「あ……」

先生「そんだけ騒がれる元気があれば充分よ。とっとと帰りなさい。はぁ……。私なんか数年彼氏いないのに」

マナ「す、すみません」

先生「あわれみは余計みじめになるだけだわ……」
547 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 19:06:20.72 ID:yqnrO/IZ0
【ミサト宅 リビング】

シンジ「まだ散らかってないみたいだね」

アスカ「二日ぶりでしょ。さて、ここなら誰かに聞かれる心配はない。マナにもね」

シンジ「そんなに露骨に言わなくたって」

アスカ「マナは戦自で、あたしたちを調べてる。シンジにだって、演技に見えなくなってきたけど。……今いい。昼休みのやつ、知り合いみたいだったけど?」

シンジ「カヲルくん?」

アスカ「そう、それ。どこで知り合ったのよ」

シンジ「フォースチルドレンなんだ」

アスカ「あいつがっ⁉︎」ガタッ

シンジ「三号機が配備されるって聞いた。ネルフの通路でたまたますれ違って」

アスカ「戦自じゃなくあたしたちの同僚じゃない⁉︎ どうして狙ってくるの⁉︎」

シンジ「……わからない」

アスカ「あんたの目が赤くなった理由は?」

シンジ「そ、それは……」

アスカ「正直に言った方がいいわよ。隠すのって気づかれないことに前提にあるんだから。あたしはこの目で現場を見てる」

シンジ「(うまく、誤魔化すしか)」

アスカ「あんたとあいつ。動きは素人同然。直線的だし、身のこなしを見ればすぐわかる。格闘技経験じゃない。異常なのは、圧倒的な俊敏さと力強さ」

シンジ「……」

アスカ「蹴りがくるとわかってても、反応できない速さと、鉄製の扉を壊す威力。どうやったの?」

シンジ「僕にもよくわからなく――」

アスカ「……」バンッ

シンジ「……」

アスカ「シンジ。二度は言わない」

シンジ「ごめん。話しをすると危険になるんだ。アスカが」

アスカ「もうなってるでしょ⁉︎ 命を狙うって宣言してんのよ⁉︎」

シンジ「僕が守るから」

アスカ「なにも知らされず? いつ来るかわからないのにのほほんと生活しろって言わけぇ?」

シンジ「う、うぅん」

アスカ「あんたねぇ、共同生活してたんだからさぁ。もう少しあたしの性格ってもんを理解してないのぉ?」

シンジ「だけど……」

アスカ「命ならねぇ! とっくに賭けてんのよっ!」バンッ

シンジ「……」

アスカ「――じゃなきゃ、エヴァになんか乗れないじゃないっ!!」

シンジ「……」

アスカ「僕が守るぅ? あんたが、このあたくしさまを? たった一回うまくいっただけでのぼせんじゃないわよ!」

シンジ「そこまででいいよ。わかった……話すから、座って」

アスカ「……」スッ
548 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 19:36:03.23 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「まず、いろんな人が関わってて」

アスカ「誰?」

シンジ「(加持さんは伏せておいたほうがいいかな)」

アスカ「ひとつ忠告しとく。いや、警告。今からあんたが言ったの、それを無条件で信じてあげる」

シンジ「……」

アスカ「ただし! ウソついたら絶対に許さない。変なごまかしも。……あんたと一生口きかないから」

シンジ「本気、なんだね」

アスカ「あたしとの関係がどうでもいいっていうんならそうすれば? 見殺しにだってできるんだから」

シンジ「……」

アスカ「誰かに殺されるなら、エヴァに乗って戦って死ぬほうがまだマシ。でも、そうなら仕方ない」

シンジ「わかったよ」

アスカ「じゃあ、聞く」

シンジ「順序立てて話すよ。まず、最初は、たぶん、誘拐された時が、全てのはじまりだったんだ」

アスカ「あぁ、そういやそんなことも」

シンジ「やったのは、母さんだったんだ」

アスカ「まじ?」

シンジ「その時は誰かわからなくて。しばらくして、父さんと食事してる時に姿を見せてきて」

アスカ「……」

シンジ「母さんだってその時はじめて知った。父さんは僕に写真は全部捨てたって言ってたから、わからなかったんだ」

アスカ「え、あんた、ママの顔、知らなかったの?」

シンジ「うん。おかしいよね。覚えてたのは記憶の中の声だけ。思い出そうと何度かしたことあったけど、首から上が影がさしてるみたいな感じ」

アスカ「……そう。ろくな思い出ないんだ」

シンジ「それから、またしばらくすると、いつのまにか、母さんが父さんを追い詰めてた」

アスカ「え?」

シンジ「僕はなにも知らなかったんだ! ただ、父さんに認めてほしかっただけだから! ……だから、頑張ろうと思ってた矢先のことだった」

アスカ「碇司令ってアラスカに調査に行ってるって……」

シンジ「(話していいのか、本当に……)」ギュウ

アスカ「……」スッ

シンジ「……っ!」

アスカ「手、そんなに強く握らなくたって。ほら、重ねてあげるから。こうすると安心するでしょ」

シンジ「……」

アスカ「続き、話して」
549 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 19:57:20.29 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「父さんは、父さんは……死んだ」

アスカ「……っ⁉︎」ギョ

シンジ「母さんにとどめをさされた」

アスカ「碇、ユイ司令が⁉︎ ……関わってる人が少なくないって」

シンジ「アスカなら、わかるんじゃないの? 父さんと近しい人達」

アスカ「待って! ……まさか、ミサトもっ⁉︎」

シンジ「ミサトさんはなにも知らないよ。蚊帳の外と言ってもいいぐらい」

アスカ「……」ほっ

シンジ「父さんの側近達は、といっても数は少ないけど、母さん側についた」

アスカ「あんたの両親って殺し合いしてたの」

シンジ「実際にはそうじゃないんだ。父さんは夢にも思わなかったんだよ。母さんを愛していたから」

アスカ「背中から刺したみたいな?」

シンジ「うん、それに近い状況だと思う。母さんは母さんで目的があって、ネルフ総司令というポジションがほしかったんだ」

アスカ「それって普通に殺人事件じゃない!」

シンジ「だけど、罪に問われることはない。不公平だよね」

アスカ「どっかに申告とか」

シンジ「それだけは絶対にしちゃだめだ。ネルフの保安部も、諜報部も、第三新東京都市の旧警察機構だって自由に弾圧できる権限を持ってる」

アスカ「だ、だって、そんなの、ただの独裁者じゃ」

シンジ「ネルフのさらに上の組織がある。そこが母さんの味方をしている以上は、どうしようもできないんだ。ただ、母さんの計画の邪魔をするだけ」

アスカ「あ、あんた……とんでもない状況にいたのね」

シンジ「ふぅ……ジリ貧だって僕もわかってるんだ。このままじゃ誰かを守れない」

アスカ「(碇ユイ司令、ウソくさい人だと感じてたけど、まさか、そんな風になってるなんて)」

シンジ「あんな力が使えるのは……」

アスカ「使える、のは?」

シンジ「その、ネルフに、母さんにあることをされたんだ」

アスカ「なにを?」

シンジ「言いたくない」

アスカ「なんで? あたしの身が危険だって言うのなら」

シンジ「違うんだ。言ってしまうとどうなるかわからないから」

アスカ「……?」

シンジ「僕だってこわいんだよ、アスカ」

アスカ「……」

シンジ「アスカは、真実を知りたい。だけど、それだけで僕がどうなってるのかなんてどうでもいいんだろ」

アスカ「そういうわけじゃ」

シンジ「そうだよ。アスカの身の安全に関することだったら言う」
550 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 20:18:06.81 ID:yqnrO/IZ0
アスカ「……っ!」バンッ グイッ

シンジ「ちょ、ちょっ」

アスカ「いい? バカシンジ。一度しか言わないからね」

シンジ「な、なんだよ、ていうか、襟から手を離してよ。ちゃんとウソついてないじゃ――」

アスカ「そういうことじゃないのよ。あたしがあんたをどうでもいいと思ってるならこんなこと言わない」

シンジ「……」

アスカ「あんたがバケモノになってても、軽蔑しないって約束する。使徒相手にしてんだしさ」パッ

シンジ「ば、バケモノって」

アスカ「肝心なところを聞いてないもの。あんたの力の理由。くどいようだけどあれは人間技じゃない」

シンジ「……ふぅ。あの力は、使徒の力なんだ」

アスカ「使徒? あんたって使徒だったの?」

シンジ「あはは、そう直に聞かれると笑っちゃうね。使徒を移植されたんだよ、母さんに」

アスカ「えぇえぇぇっ⁉︎」

シンジ「だから、あんな力になっちゃったんだ」

アスカ「てことは、フォースも⁉︎ え? 待って? 最近のトレンド? エヴァのパイロットって改造人間にされちゃうのぉっ⁉︎」

シンジ「そ、そういうわけじゃないよ! カヲルくんと僕が異例で」

アスカ「た、助かった。あたしだったら絶対に嫌だし……でも、それで良い成績残せるなら、ううーん」

シンジ「あ、アスカ。なにも良いことないよ、こんなの。冷静に考えてよ」

アスカ「あたしは冷静よ。まぁ、それはいいけど。見た目的な変化は目だけ?」

シンジ「あと、この手なんだけど」スッ

アスカ「うげっ! キモっ! やっぱあたしはいいわ」

シンジ「……はぁ」スッ

アスカ「へぇ、任意で消すことできるんだ?」

シンジ「うん、まぁ」

アスカ「で? あんたって使徒なの? 人間なの? というか得体の知れないモンをよく移植させるわね」

シンジ「……」ポリポリ

アスカ「わかった。とりあえず、ユイ司令が裏の顔を持ってて、碇元司令が亡くなってること。あんたの力の正体も」

シンジ「(よかった、これで終わりそうだ)」

アスカ「誰が関わってるか、具体的な名前は聞いてない」

シンジ「……」ギクッ

アスカ「教えてよ」

シンジ「ううんと、アスカなら頭がいいから」

アスカ「あんた知ってるんでしょ? だったら、言ってくれたらいいだけじゃない」

シンジ「その、危険――」

アスカ「それは何度も聞いた。その上で言ってるともさっきも言ったわ」

シンジ「……」

アスカ「なにを出し渋ってんのよ」





551 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 20:46:15.93 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「リツコさんと、副司令……」

アスカ「それだけ?」

シンジ「ううんと」

アスカ「違うんでしょ。全部吐いちゃいなさい。カツ丼はセルフサービスだから出前とるならはやくしてね」

シンジ「(た、たかられた経験はないけど、こんな感じなのかな)」

アスカ「……」ジトー

シンジ「アスカ。よく考えてよ。本当に、知りたいの? 今ならまだ」

アスカ「シリタイ。ヨクカンガエタ。オシエテ」

シンジ「考えてないだろっ! なんで棒読みになってるんだよ!」

アスカ「後悔はしない……。これから先、シンジのその力に頼ることはあるかもしれない。自分でいうのもなんだけど、プライドの高いあたしが折れてんのよ。それでも守られるだけは嫌」

シンジ「……」

アスカ「知りたいのは、知らなくちゃいけないから」

シンジ「ふぅーー。本当に、後悔しないんだね?」

アスカ「しないわ」

シンジ「……加持さんだよ」

アスカ「……」

シンジ「……あ、アスカ?」

アスカ「そ。わかった。それで終わり? ファーストは?」

シンジ「あ、綾波も。その関係してるけど、母さん側じゃないんだ。どっちかっていうと、僕の方」

アスカ「けっこう複雑な相関図になってるのね。戦自のマナもいるし、あいつは、まぁいいか」

シンジ「あの、ショックじゃないの?」

アスカ「加持さん? そりゃショックよ。表にだしてないだけ。あんたとさっき約束したから。無条件で信じるって」

シンジ「そんな……」

アスカ「加持さんがパソコンに向かってなにかしてるのはしょっちゅうだし。仕事だと思ってた。……まぁ、それも仕事だったのかもしれないけど」

シンジ「……」

アスカ「ミサトには、今日のことうまく誤魔化しとくから。あんたは帰っていいわよ」

シンジ「え? でも、ご飯とか」

アスカ「空気読みなさいよ。取り繕ってる内に、帰って」

シンジ「……やっぱり、話さない方が」

アスカ「これは私が知りたいと求めたこと。あんたは話をしただけ。……なにも悪くない」

シンジ「アスカ……」

アスカ「帰って。お願い」

シンジ「わかった……」ガタッ

アスカ「……」ギュウ

シンジ「あ、あれ?」ヨロヨロッ ドサ

アスカ「……? なにやってんの」

シンジ「なんだ、手が、まさかっ」ドクン ドクン

アスカ「シンジ?」ガタッ

シンジ「あ、アスカァっ! は、はやく、逃げて! 衝動が! 言ってないことがっこのっ手には! もうひとつ、厄介なことがあって」

アスカ「なに? なんかあんの?」

シンジ「こ、壊したくなるんだ! だ、だから、走って逃げてっ!」ググッ

アスカ「ちょ、ちょっとあんた、また、目の色が」
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 22:36:11.70 ID:tuUTmUH7o
はよ
553 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 22:46:35.28 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「僕にふれちゃだめだっ!!」バチンッ

アスカ「いたっ」ドサ

シンジ「あ、違うんだ、そんなつもりは」

アスカ「いたぁ、いきなり手を叩かなかったって」

シンジ「だめだ、アスカはだめだ」

アスカ「シンジ、ねぇ」スッ

シンジ「うぅうぅぅっ!」

アスカ「壊したいの? えぇと、なにか壊せるもの、積み木は、ないし。そうだ! コップ!」

シンジ「違うんだ、これはっ、そういうものじゃなくて」

アスカ「違う? じゃあなに?」

シンジ「アスカ、助けて」

アスカ「え……?」

シンジ「僕が溶けてなくなってしまう。アスカの顔が、わからナくなル」

アスカ「ちょっと、どうしたのよ!」ユサユサ

シンジ「……」

アスカ「し、シンジ? 気失ってるの?」ソォー

シンジ「さわるな」

アスカ「あ、だけど」

シンジ「……」パァンッ

アスカ「いたっ! ってぇ! またやったわね! えっ⁉︎
――ちょ、なにっ、汚なっ、舌いれっ、んっ、いたっ」

シンジ「ぷはぁ、はぁーはぁー」

アスカ「このどすけべえっ! 誰がキスしていいっつったのよ! し、舌いれたでしょ⁉︎?」ゴシゴシ

シンジ「……」ググッ

アスカ「くっ、力、つよっ! ちょっと、シンジ! ほんとにどいて! どういうつもり! なにか喋んなさいよ!」ジタバタ

シンジ「……」ガシッ

アスカ「え?」

シンジ「……」ブチブチブチッ

アスカ「きゃあああっ⁉︎」

シンジ「くっ、くっくっくっ」

アスカ「まさか、衝動って……」

シンジ「うぐっ⁉︎」ドサッ

アスカ「(力が抜けた⁉︎)」

シンジ「アスカ、逃げ――うぐっ」ゴスッ

アスカ「とりあえず蹴り一発! さっさとどけ!」

シンジ「うぅっ!」ドサッ

アスカ「これはマジで逃げた方が良さそうね。ああ、まったく、制服破いてくれちゃって! ミサトにどうやって言い訳すんのよ!」

シンジ「そんなことより、今は!」

アスカ「わかってる! でも! 着替え!」

シンジ「もう持ちそうにない! はやくっ!!」

アスカ「えぇと、ええと、たしかこっちに脱いだままのワンピースが。こ、こっち見ないでよ!」

シンジ「み、みてない……」ドサッ

アスカ「え? ちょ、ちょっと、まだ待って。今着てる! 着てるからぁ!」
554 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 22:48:46.97 ID:yqnrO/IZ0
改行おかしくなったんでレスしなおし
555 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 22:50:30.45 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「僕にふれちゃだめだっ!!」バチンッ

アスカ「いたっ」ドサ

シンジ「あ、違うんだ、そんなつもりは」

アスカ「いたぁ、いきなり手を叩かなかったって」

シンジ「だめだ、アスカはだめだ」

アスカ「シンジ、ねぇ」スッ

シンジ「うぅうぅぅっ!」

アスカ「壊したいの? なにか壊せるもの、積み木は、ないし。そうだ! コップ!」

シンジ「違うんだ、これはっ、そういうものじゃなくて」

アスカ「違う? じゃあなに?」

シンジ「アスカ、助けて」

アスカ「え……?」

シンジ「僕が溶けてなくなってしまう。アスカの顔が、わからナくなル」

アスカ「ちょっと、どうしたのよ!」ユサユサ

シンジ「……」

アスカ「し、シンジ? 気失ってるの?」ソォー

シンジ「さわるな」

アスカ「あ、だけど」

シンジ「……」パァンッ

アスカ「いたっ! ってぇ! またやったわね! えっ⁉︎――ちょ、なにっ、汚なっ、舌いれっ、んっ、いたっ」

シンジ「ぷはぁ、はぁーはぁー」

アスカ「このどすけべえっ! 誰がキスしていいっつったのよ! し、舌いれたでしょ⁉︎?」ゴシゴシ

シンジ「……」ググッ

アスカ「くっ、力、つよっ! ちょっと、シンジ! ほんとにどいて! どういうつもり! なにか喋んなさいよ!」ジタバタ

シンジ「……」ガシッ

アスカ「え?」

シンジ「……」ブチブチブチッ

アスカ「きゃあああっ⁉︎」

シンジ「くっ、くっくっくっ」

アスカ「まさか、衝動って……」

シンジ「うぐっ⁉︎」ドサッ

アスカ「(力が抜けた⁉︎)」

シンジ「アスカ、逃げ――うぐっ」ゴスッ

アスカ「とりあえず蹴り一発! さっさとどけ!」

シンジ「うぅっ!」ドサッ

アスカ「これはマジで逃げた方が良さそうね。ああ、まったく、制服破いてくれちゃって! ミサトにどうやって言い訳すんのよ!」

シンジ「そんなことより、今は!」

アスカ「わかってる! でも! 着替え!」

シンジ「もう持ちそうにない! はやくっ!!」

アスカ「えぇと、ええと、たしかこっちに脱いだままのワンピースが。こ、こっち見ないでよ!」

シンジ「み、みてない……」ドサッ

アスカ「ちょ、ちょっと、まだ待って。今着てる! 着てるからぁ!」
556 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 23:18:57.06 ID:yqnrO/IZ0
シンジ「……」ユラァ

アスカ「まずっ! ミサトの一升瓶にでも抱きついてなさい!」ブンッ

シンジ「……」パシッ

アスカ「ちっ、逃げなくちゃ」

シンジ「……」テクテク

アスカ「ここの出口はひとつ。その通路を塞ぐってわけ。そんなに私を襲いたいの」

シンジ「……」ジー

アスカ「うっ、気持ちわる。品定めでもしてる気? こんなんじゃ守るどころじゃないじゃない、ほんっと、バカなんだからぁっ!」ブンッ

シンジ「……」パシッ

アスカ「甘い! もういっちょうっ!」ブンッ

シンジ「……っ⁉︎」ゴーンッ ドサッ

アスカ「はっはーん! クリーンヒット! ……なんなのよっ、たく」

シンジ「……」ムクッ

アスカ「もぉ〜〜まだぁ? いい加減にしてよぉ〜〜っ!」ブンッ ブンッ

シンジ「……」パシッ パシッ

アスカ「(さすがに学習したか。ええぃ、こうなったら!)」

シンジ「……」

アスカ「し、シンジ〜? ほぉら」チラリ

シンジ「……」ピクッ

アスカ「ふんっ!」ブンッ

シンジ「……っ⁉︎」スコーンッ ドサッ

アスカ「こ、こんなマヌケな手にひっかかるなんて。なにが衝動よ。単なるケモノじゃない」

シンジ「うっ、うぅ」ムク

アスカ「まだくるのぉ?」ゲンナリ

シンジ「あ、あれ? うわぁっ⁉︎」

アスカ「ミサトの! 焼酎瓶なら! まだまだ!」ブンッ

シンジ「あぶっ! あぶない! や、やめてっ! やめて! アスカ!」ガシャン

アスカ「……? 正気に戻ったの?」

シンジ「はぁ、たぶん」

アスカ「もう平気? ほんとに? 演技してるだけとか」ガシッ

シンジ「ち、ちちちっ違うよ! だから! 酒瓶を掴むのはやめて!」

アスカ「あんた、なに重要なこと言い忘れてんのよ!」

シンジ「ご、ごめん! 今来るとは思わなくて!」

アスカ「あーあ、部屋の中めちゃくちゃ」

シンジ「あ……うん」

アスカ「その衝動ってやつ。制御できないの? とんだ欠陥じゃない」

シンジ「自分じゃどうしようもできなくて」

アスカ「昼間のやつとあんた、どっちから襲われるかわかったもんじゃないわよぉ」

シンジ「それは……そうだね、ごめん」

アスカ「どーなの? もうなさそうなの?」

シンジ「たぶん」

アスカ「今起こったことは、事故だと思って忘れてあげる。でも、それで昼間助けてくれた借りはなし。チャラ。いーわね⁉︎」

シンジ「め、めんぼくない」シュン
557 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/18(月) 23:40:02.93 ID:yqnrO/IZ0
【ミサト宅 数十分後】

アスカ「気持ち悪いったらもー」ガラガラガラッ ペッ

シンジ「そんな、念入りにうがいしなくても」

アスカ「なんか言った?」ギロッ

シンジ「なんでもないです」

アスカ「あのねぇ、雰囲気ってもんがあんでしょーが。無理やりが好きな女がどこにいるっつーのよ」

シンジ「……」シュン

ペンペン「クェーッ」コツコツ

アスカ「駄ペンギンは今更でてきて床舐めようとしてるし。くちばし濡らしてなにやってんだか」ガラガラガラッ ペッ

シンジ「あっ、ペンペンだめだよ」

ペンペン「クェ?」

アスカ「もう言ってないことない?」

シンジ「えぇと、ないことはないけど、さっきみたいな危害を与えるようなのは」

アスカ「それはあるっつーの!」

シンジ「そ、そっか」

アスカ「めんどくさそうだから今日はいい。感傷に浸る暇すらないじゃない」ブツブツ

シンジ「……」フキフキ

アスカ「ミサト、どう言い訳する?」

シンジ「あ……どうしようか」

アスカ「昼間の件は暴漢ってことにしたけど。それすらも怪しまれないか苦しいのに。問題は制服よ」

シンジ「うん」

アスカ「あんたが破いたってことにする?」

シンジ「えっ」

アスカ「二人きりでいたらあんたがあたしに欲情して、抵抗したら破けたって。大目玉くらうだろうけど」

シンジ「うぁ、それは、でも、そうするしかないね」

アスカ「使徒のせいにもできるけど、それ。ミサトに言いたくないんでしょ?」

シンジ「うん」

アスカ「だったら、変に誤魔化すよりは、本当のことを織り交ぜて言った方がいい。こっちも完全な作り話だとボロでちゃうし」

シンジ「わかった。それでいこう」

アスカ「厳罰は覚悟しときなさいよ。少しはフォローしたげるから」
558 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/19(火) 00:06:23.16 ID:XHL6SpVG0
【また数十分後】

ミサト「――シンジくん。今の話は本当なの?」

シンジ「は、はい。すみません」

アスカ「あたしが魅力的すぎるっていうのも」

ミサト「アスカ、黙りなさい。シンジくんはそんなことしない子だと思ってたのに。思春期の性欲を舐めてたわね」

シンジ「本当に、すいません」

ミサト「いい? シンジくん。アスカは、多感な年頃なのよ? この時期に残る思い出って20代、30代の人格形成に大きく影響するの」

シンジ「はい」

ミサト「困ったことに、今だに実感が沸かないんだけど。あの制服を見たらねぇ」チラッ

アスカ「まぁ、そこまで気にしてないし」

ミサト「だめよ。こんなことになってしったのは、大問題だわ」

シンジ「……」

ミサト「このことは、司令はもちろん、同居している監督官の伊吹二尉にも連絡します」

アスカ「ちょっと。当事者のあたしがいいって言ってんのよ」

ミサト「これはね、甘やかしてたらシンジくんの為にならないの。今後に影響するのは、彼も同じなのよ。正しい道徳を身につけさせなくちゃ」

アスカ「ミサトは親じゃないでしょ?」

ミサト「監督者という責務があります。パイロットの管理は私に一任されているの」

アスカ「はぁ……」

ミサト「暫定処置として学校とネルフの往来以外は自宅謹慎処分を言い渡すわ。追加があれば、また連絡する」

アスカ「やりすぎじゃない?」

ミサト「やけにシンジくんをかばうのね」

アスカ「だからぁ、別に気にしてないって」

ミサト「いきなり襲いかかるなんて情状酌量の余地なしよ。却下します」

シンジ「わかり、ました」

アスカ「……」

ミサト「今日はもう帰りなさい。ここに来るアルバイトの件も、白紙に戻すから」

アスカ「いい加減にしてよねっ!」バンッ

ミサト「……?」

アスカ「ぐちぐちぐちと! あたしが水に流すって言ってんでしょう⁉︎」

ミサト「ちょっと、落ち着きなさい」

アスカ「ミサトは親でもなんでもない! シンジがここに来ない理由にはならないわ!」

ミサト「今言ったけど、これはシンジくんの為で」

アスカ「はん、職権乱用よ」

シンジ「アスカ、いいんだ。あの、ミサトさん。僕が悪かったですから、処罰は甘んじて受けます」

ミサト「……はぁ、本当にこのシンジくんが? どうしてもイメージが沸かないのは私も一緒」

シンジ「はい、それは事実です。アスカを見てると……」

ミサト「むらむらぁっときちゃったの?」

シンジ「はい、その、むらむらっと」

ミサト「……」チラッ

アスカ「なんでこっち見んのよ」

ミサト「あたしにも、むらむらぁっときた?」

シンジ「へ?」

ミサト「いや、あたしと、ほら、一緒にいる期間あったじゃない? アスカが来る前は二人きりで住んでたし」
559 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/19(火) 00:31:31.75 ID:XHL6SpVG0
シンジ「いえ、ミサトさんには」

ミサト「あらぁ? だめ? まだまだイケると思ってんだけど。胸とか好きなんじゃないの? ほれほれ」もみもみ

シンジ「えっと」サッ

ミサト「どぉ〜〜もおかしい。目線を逸らすぐらいウブな子が?」

アスカ「ちっ。やっぱその処罰でいいわ」

ミサト「はぁ?」

シンジ「……」

ミサト「あんた達、なぁんかあたしにウソついてない?」

アスカ「なにも」

ミサト「シンちゃん?」

シンジ「いえ、なにも。み、ミサトさんにはむらっとしなくて、アスカはかわいいから」

アスカ「とーぜん!」

ミサト「処罰は、冗談じゃ済まされないわよ。撤回するなら今のうち。アスカも、シンジくんがつらい目にらあっていいの?」

アスカ「あたしはなにもなしでいいって言ってるじゃない!」

ミサト「だったら違う事実を話なさい。正直に」

シンジ「本当なんです! ミサトさん! 僕がアスカを襲ったのは!」

ミサト「ウソじゃないのね?」

シンジ「はい! ウソじゃありません!」

ミサト「了解したわ。それと、昼間の暴漢の件なんだけど。シンジくんがアスカを助けたんですって?」

シンジ「あ、そうです。体育館裏に行ったら、アスカが襲われてて」

ミサト「アスカ? どうしてそこに?」

アスカ「あたしは、今朝下駄箱に手紙がはいってたの」

ミサト「手紙?」

アスカ「そ。書いてたのは時間と場所の指定だけ。最初はどうせいつもの告白だと思って捨てようと思ったんだけど、クラスメートに行くべきだって言われてさ」

ミサト「それで、行ったら暴漢がいたと。シンジくんはなぜ?」

シンジ「僕は、その見ていたクラスメートから言われたです。アスカが体育館裏に行ったって」

ミサト「よく撃退できたわね?」

シンジ「無我夢中で。アスカの首を締めてたから」

ミサト「体育館の倉庫かしら? 鉄製の扉がひしゃげてたって報告がきてたけど、これは?」

アスカ「それは、その変態が、おっさんだと思うんだけどバイクを用意してたの。逃走用、だと思う」

ミサト「バイク?」

アスカ「シンジに体当たりされて、おどろいて逃げようとしたわ。でも、アクセルを力んだみたいでウイリーしちゃって。突っ込んだ」

ミサト「おかしいわね、部品は見つかってないみたいだけど」

アスカ「当たりどころがよかったんじゃないの? 老朽化でサビてたとか。その後、乗ったまますぐに逃げたし」

ミサト「ふぅーん、なるほど。今の話を統括すると――」チラ

シンジ「……」

ミサト「ねぇ、シンジくん」

シンジ「はい?」

ミサト「アスカのこと好きなんだ?」
560 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/19(火) 00:57:25.79 ID:XHL6SpVG0
シンジ「な、なんでそうなるんですかっ!」

ミサト「だってー、アスカが告白されてるの知って、わざわざその場所見に行ったわけでしょ? それで助けたかと思いきや、二人きりになったら我慢できずに襲っちゃう」

アスカ「そうだったの?」

シンジ「ちょ、アスカ⁉︎」

ミサト「そう考えるのが自然じゃないのん?」

シンジ「うっ、た、たしかに、アスカのことはいいなって」

ミサト「へぇぇ〜。いがぁい」

アスカ「しょーがないわよねぇ」

ミサト「ねぇねぇ、アスカのどこがいいの? 好きなら答えられるでしょ?」

アスカ「……」チラ

シンジ「あ、アスカはかわいいし」

ミサト「それはさっき聞いたわよ。顔だけなら一目惚れしてるでしょ? いつから?」

シンジ「最近、かな」

ミサト「じゃあ、別の部分なわけだ。どこ?」

シンジ「(ミサトさん、ウソついてるって当たりをつけてるな。仕方ない、こうなったら、僕がアスカに良いと思ってるところを言えば)」

ミサト「答えられないの? 女なら――」

シンジ「違います。本当に、アスカのことが好きなんです」

ミサト「おっとぉ」

シンジ「勝ち気なところ、そりゃほとんどひどいことばかり言われますけど。優しくないわけじゃないっていうのは、クラスで対応を見てればわかるんです」

アスカ「え……?」

ミサト「……」

シンジ「本当は、すごく優しい子なんじゃないかなって。容姿がいいのも本当です。誰だってかわいいにこしたことないじゃないですか。授業を受けている時もなんとなく見ちゃうものでしょう」

ミサト「そうね、それはあるかもしれない」

シンジ「一緒に過ごしてると、ユニゾンの時なんかはたまに喧嘩しました。張り合って」

アスカ「……」

シンジ「特別になりたかったんです。アスカの」

ミサト「そうだったの……。ユニゾン、か。あれがきっかけなら、作戦行動とはいえ、こちらにも非はあるわね」

アスカ「あんた、本当に……?」

ミサト「だからといって、繰り返しになるけど……襲うなんてやっちゃいけないことよ」

シンジ「ひどいことをしたと反省してます」

ミサト「(急に口調がなめらかになったわね。目つきも。こりゃマジ?)」

シンジ「(ふぅ……。アスカが言うように本当の出来事を織り交ぜて正解だったな。ウソついてるって引け目が少ない)」

アスカ「(シンジ……こいつ本当にあたしのこと好きだったんだ。だから、あんなに必死になって)」

ミサト「わかったわ。話は以上よ。犯人はネルフが総力をあげて検挙するから。アスカは安心して」

アスカ「え? ああ。うん」

シンジ「今日はもう帰ります。アスカ、本当にごめん」ペコ

アスカ「別に、気にしてない」
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 02:09:02.49 ID:5FPFqmueo
旧劇だと多分アスカと相思相愛なんだろうけど…
いやでも綾波が死んだからアスカにいったのか?

少なくとも本編でアスカに依存する前に分岐してるのかこのss
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 02:35:10.05 ID:o+7zENhOO
旧劇じゃアスカと二人きりの浜辺エンドイメージ強くて相思相愛と思ってるやつ多いけどそうじゃないよ
シンジはアスカに逃げただけ
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 03:00:46.16 ID:iWdZWX1IO
>>1のあらすじに書いてあるじゃん
ユニゾンから数日後だって
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 03:33:01.65 ID:7OgBkqYDo
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 15:33:36.88 ID:KyUFjAUsO
しかし行数ここまで詰めこんでよく続くね
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 15:56:58.16 ID:13Lxsi5wo
よし子さん、続きはまだかの
567 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/19(火) 22:05:26.43 ID:ZsDOa4S/0
【マヤ宅 リビング】

マヤ「どうしてアスカを襲ったりなんかしたの⁉︎ 連絡きてびっくりしちゃったじゃない!」バンッ

シンジ「ええと、その、我慢できなくて」

マヤ「我慢できなかったって……。不潔よ! シンジくん!」キッ

シンジ「す、すみません。僕が抑えられたらよかったんですけど、マヤさんにもご迷惑かけて」

マヤ「そう、ちゃんと抑えなくちゃ……抑える?」

シンジ「いくらこの手のせいだと言っても、それを言い訳にできませんし」

マヤ「え? し、シンジくんが自分の意思で襲ったんじゃ?」

シンジ「違いますけど」

マヤ「あっ、そうだった。衝動のせいなのね、やだ、私ったら年甲斐もなく、早とちりしちゃって」

シンジ「どうしたんですか?」

マヤ「ご、ごめんなさい。葛城一尉の連絡を額面通りに受け取ってしまって。つい……。シンジくんは、やむを得ない事情があったんですものね」

シンジ「よくわからないんです」

マヤ「え? やっぱり……」

シンジ「あぁ、いえ、そういうわけではなくて。僕も男ですから。手を言い訳に、女の人相手にそういうことしたい気持ちがどこかにあったんじゃないかって」

マヤ「……」

シンジ「未遂で終われましたけど、アスカが機転を利かせず、やられたままだったら。そう考えると、どうしても割り切れません」

マヤ「シンジくん……」

シンジ「あの時、意識を乗っ取られてしまったのは事実です。……だけど、だけど、その考えが頭から離れない」

マヤ「なに?」

シンジ「本当は、僕がやりたいことを増長してるのかもしれない。お酒を飲んだことありませんけど、大人達はよく言ってるじゃないですか。気が大きくなるって」

マヤ「気分が良くなるからね。お酒の席は無礼講っていうぐらい」

シンジ「それと似たような感じじゃないかって自問自答してみても答えはでてきません」

マヤ「……おいで、シンジくん」

シンジ「えっ」

マヤ「いいから。こっちに来なさい」

シンジ「はぁ、なんですか?」ガタッ テクテク

マヤ「膝をついて座って?」

シンジ「はい?」スッ

マヤ「ラクにして」ギュッ

シンジ「え? ま、マヤさん、あの。む、胸が」

マヤ「頭を抱きしめてるのよ。そうなって当たり前じゃない。どう?」

シンジ「どうって……」チラ

マヤ「シンジくんは、どうして他人の為に考えようとするの?」

シンジ「僕なんかでも誰かの役に立てたら嬉しいから」

マヤ「どうして、“なんか”なんて言うの? 自分に自信がないの?」
568 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/19(火) 22:27:24.40 ID:ZsDOa4S/0
シンジ「……」

マヤ「今、電波遮断できる?」ボソ

シンジ「あ、その為に。待ってください」

マヤ「うん」

シンジ「どうぞ。あんまり乱用するのはさすがに。こう頻度が続くと機械の不調だと通せなくなると思うし」

マヤ「碇司令はシンジくんが力を意図的に使用できるとご存じ?」

シンジ「いえ。たぶん、知らないと」

マヤ「だったら、制御できてないってことにできないかしら」

シンジ「……なるほど」

マヤ「騙す必要なんてないのよ。聞かれない限りは。聞かれた時にとぼければいい」

シンジ「いいかもしれませんね。これまで起こっていたことが起こらなくなるのも不自然ですし」

マヤ「身体の負担は平気?」

シンジ「はい。長時間でなければ」

マヤ「つらいかもしれないけど、我慢、できる?」

シンジ「こんなのどうってことないです」

マヤ「さっきの話に戻るけど。私だって自信なんかないのよ」

シンジ「……」

マヤ「他人がどう見られて、どう思われてるかわからない。行動することで傷つけてしまうかも。そう悩んで、一歩が踏み出せない人って多いの」

シンジ「そう、ですよね。みんな同じで……」

マヤ「だからこそね? リーダーシップがある人が輝いて見える。そういう部分があると、強く惹かれてしまう」

シンジ「……」

マヤ「先頭に立つって、思いがけない出来事や未知と真っ先に遭遇するの。対応の如何次第で、どう転ぶか、責任だって伴う」

シンジ「はい」

マヤ「言ってる意味、わかる? 組織という巨大な権力に抗おうとしてるんでしょう? 中学生に求めるのは酷だって、理解してるけど――私の目を真っ直ぐ見て」ガシ

シンジ「……はい」

マヤ「自信がなくても、まわりに悟らせちゃだめ。シンジくんが迷っちゃだめなのよ」

シンジ「……」

マヤ「できなくてもいい。失敗したっていい。あなたがあなたを信じて。守りたいと思う人がいるなら、そうしなきゃ」

シンジ「僕は……」

マヤ「私も力になってあげる。足りないところを補えるように」

シンジ「マヤさん……」
569 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/19(火) 22:59:00.33 ID:ZsDOa4S/0
マヤ「よし、ところで衝動って女性じゃなく物を壊すことじゃ満足できないの?」

シンジ「あ……はい。その、女の人のみに限定されるらしくて」

マヤ「……う」ヒクヒク

シンジ「これ、アダムっていうんですけど。性に対する好奇心が強いみたいで」

マヤ「アダム? アダムって、聖書とかでよく知られてる……他の使徒と同じタイプのコードネーム?」

シンジ「いえ、これは本物みたいです。あのアダム――」

マヤ「じ、実在してたのっ⁉︎」

シンジ「みたいです」

マヤ「す、すごい発見よ! それ!」

シンジ「学術的価値はともかくとして、このアダムの衝動はいつ襲ってくるか、予測がつかないんです」

マヤ「力を使える代償ってとこね。もしかしたら、今こうしてる瞬間にも?」

シンジ「はい。極端な話、トイレの中でも、お風呂でも、学校でも、いつでもありえます」

マヤ「法則の原因究明しないと大変だわ」

シンジ「綾波から聞いた話によると、同化が進む上でどうしようもない、と」

マヤ「レイ? レイも?」

シンジ「あ、いえ、余計な話を挟んじゃいましたね。綾波は僕と違います。忘れてください」

マヤ「先輩が関係してるならレイも……おかしくない」

シンジ「マヤさん」

マヤ「ごめん、約束、したもんね。パターンを探りましょう」

シンジ「パターン、ですか?」

マヤ「サンプルが少ないから、断定できるほどのデータを収集する必要があるけど。シンジくんの手にある、アダム。例えば、そうね……刺激を与えてたとか」

シンジ「僕は、なにも」

マヤ「気持ちの高ぶりだとかなかった?」

シンジ「いえ、そんなことは」

マヤ「様々なケースが考えられるわよ。力を使用しすぎていたとか。最悪なのは、気まぐれ」

シンジ「気まぐれ……つまり、使徒の匙加減次第?」

マヤ「そうだったら、シンジくんに打つ手はなくなる。薬剤を投与して、細胞の活性化を抑えるとか、そういう別の手段しか……」

シンジ「……それでも、抑えられるなら」

マヤ「簡単に言わないでよ。そう決意したって、実現できるかどうか。薬剤の入手方法は? なにが有効なの? 様々な実験をして、シンジくんの身体に悪影響は?」

シンジ「あ……」

マヤ「ふぅ……どうしようかしら。あ、まだ電波は遮断してるわよね」

シンジ「もちろんです。聞かれちゃまずいですよね」

マヤ「うん。私、自分で調べてみるけど、期待はしないでね? 研究データがない限りは、ただの理論でしかないし。使徒の衝動を抑える方法だなんて……」

シンジ「でも、調べてるのがバレたら」

マヤ「これぐらいなら平気でしょ? ……まずいかなぁ」

シンジ「用心はした方がいいですよ」
570 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/19(火) 23:29:02.61 ID:ZsDOa4S/0
マヤ「抑えられたきっかけは?」

シンジ「アスカがミサトさんの酒瓶を投げてきたので」

マヤ「さ、酒瓶を。それが身体にあたった衝撃で?」

シンジ「はい。なんとか正気に戻れました」

マヤ「アスカは知ってるの?」

シンジ「いろいろあって。今日、話しました」

マヤ「シンジくんの今の状態を知ってるのは、司令達を除けば、私とアスカとレイ?」

シンジ「はい。ミサトさんは知りません」

マヤ「少なくない人数が、知ってるのね。あまり、喋らない方がいいわよ。危険だし」

シンジ「極力、そうしたいと思ってます」

マヤ「うーん。私、薬学方面弱いんだよねぇ、先輩は天才だから心理学も専攻してたけど」

シンジ「あの、無理なら……」

マヤ「私と一緒にいる時間長いのよ? 帰ってきてずっと。衝動が起こったら、その、つい最近みたいに、また……」

シンジ「そ、そうならないようにします! そ、そういえば、マヤさん、あの時、正気だったんですか?」

マヤ「へ? なんの話?」

シンジ「僕、てっきり、アダムがなにか力を使ってると思って。マヤさん、積極的だったし」

マヤ「し、シンジくんっ!」バンッ

シンジ「は、はい!」

マヤ「はぁー……あれは、ちょ、ちょっとだけ、そのぉ」

シンジ「……?」

マヤ「い、言わせようとしてない?」

シンジ「そんなわけありませんよ!」

マヤ「そ、そう、なんだ」ガッカリ

シンジ「マヤさん?」

マヤ「じ、実験、してみよっか?」

シンジ「――え?」

マヤ「刺激与えなくちゃいけないでしょう?」

シンジ「あ、手にですか?」

マヤ「うん。色々、試してみない?」

シンジ「でも、それで本当に衝動がきてしまったら」

マヤ「そんなビクついてちゃ先に進めないわ。一度悪化させみるぐらいの気持ちでやらないと」

シンジ「ううん、わかり、ました。最初は、軽めからで」

マヤ「力って、電波遮断だけ?」

シンジ「あとは、身体能力の強化ができます」

マヤ「へぇ、それ、やってみようか」

シンジ「消耗が激しいです。監視されてる状況だと遮断をしなくちゃいけないし、長時間はとても。なので、別の方法から」

マヤ「了解。それじゃ、手、さわってみる。貸して」

シンジ「はい」スッ

マヤ「……」フニフニ

シンジ「……」

マヤ「どう? なにか感じる?」

シンジ「いえ、なにも」
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/20(水) 06:23:56.31 ID:7a/VDZneo
572 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/20(水) 19:56:29.88 ID:W0aeVfls0
シンジ「これって本当に意味のある行為なんですか?」

マヤ「“百聞は一見にしかず。科学者たるもの、日常にこそ着目しなさい。ひょんな発見があるかも”」

シンジ「は、はぁ」

マヤ「どうだった? 先輩の口調をマネてみたんだけど」

シンジ「あ、あんまり……」

マヤ「そう、そうなのよ。いつもあの背中を追いかけてるつもりなのに。見えるのは、後ろ姿だけ」

シンジ「憧れ、なんですね」

マヤ「そういう域の人じゃなかったわ。象徴、シンボルだとしても過言じゃない。今は、素直に尊敬できなくなってしまったけど」

シンジ「僕のせいだ」

マヤ「いいえ。それは違う。たしかに巻き込まれたのは、私の意思があったかといえばそうじゃない。……けど、先輩の新たな一面が見えて失望したのって私なの」

シンジ「……」

マヤ「ううんとね」

シンジ「いえ、意味わかりますよ」

マヤ「そっか。だから、責任を感じるのはやめてね。これは、私と先輩の問題だから。私たち二人の間に割って入ってこないで?」

シンジ「……わかり、ました」

マヤ「続けよっか」

シンジ「あの、ちょっと辛くなってきたので、今日はもう」

マヤ「そんなに持続時間短いんだ。まだ30分も経過してないわよ?」

シンジ「そういえば、どれぐらい続けられるか測ったことないや」

マヤ「まず、自分になにができるのかをよく知った方がいいと思うわ。力の使い道に活用できるし」

シンジ「そうですね、やっぱり、限界まで続けてみようと思います」

マヤ「だいたいの目安だけど、今って20分ぐらいよね」

シンジ「はい」

マヤ「了解。そのままちょっと待ってて。ノート端末を取ってくる」ガタッ

シンジ「マヤさんが親切にしてくれる理由って?」

マヤ「……」ピタ

シンジ「……?」

マヤ「正直なところ、気がつけば、いつも思考の中にいる。シンジくんと一緒ね。……自分を認めて、向き合える自信がないの」

シンジ「……」

マヤ「先輩に裏切られたと感じてる、その寂しさを埋めてるだけなのかもって思う時もある。シンジくんに縋って」

シンジ「僕は、感謝してますよ」

マヤ「……」

シンジ「マヤさんがいてくれてよかったと思ってます。それでいいじゃないですか」
573 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/21(木) 10:33:42.09 ID:oz+dgW4j0
マヤ「それ、シンジくんも同じだよ。あなたはエヴァに乗れるっていうだけで満足なの? 自分の価値を見出せる?」

シンジ「……」

マヤ「……励そうとしてくれてるのよね。でも、気になっちゃって頭から離れないの。いろいろな考えがまとまらない」

シンジ「(よく見たら目の下にうっすらクマができてる。いつからなんだろう。気がつけないなんて……僕は、バカだ)」

マヤ「お互いを反面教師にできたらラクになれるかもしれない、私たち」

シンジ「(迷ってるんだ。僕と同じ。だったら――)」

マヤ「どうしたら……」

シンジ「ふぅ、僕は、普段自分の思ってることを言いません。我慢しちゃうんです。とりつくろって」

マヤ「え?」

シンジ「波風を立てたくないから。争いごとや喧嘩が、時には必要なことだってわかってます。でも嫌いなんです。そういうの」

マヤ「それは私も同じ。人ってどうして争うのかな」

シンジ「自分のエリアを守りたいから。常識、社会、価値観の違い。僕らは独立した個だからです」

マヤ「……」

シンジ「あえてそこを突いて操作しようとする人もいます。母さんみたいに」

マヤ「性善説なんて、ありえないものね。悪意をもってる人もいる」

シンジ「それも突き詰めれば、“自分が満足したい”この一点に集約されます。あくまで僕の考えです」

マヤ「続けて」

シンジ「僕が誰かの役に立てるならと思うのは、自分の為でもあるんです。父さんに認められたい、僕はエヴァのパイロットなだけじゃないって、周囲に認めさせる為の」

マヤ「(学生時代、勉強だけと思ってた私と同じなのね)」

シンジ「自分で努力したわけじゃない。棚ぼたみたいに、ある日突然、人類の希望なんて言われたんです。有難いと思う人、調子にのる人もいるかもしれません。だけど、僕はそうじゃなかった。実感がわからなければ嬉しくともなかったんです」

マヤ「……」

シンジ「元いた場所、先生のところにいたときは別段なにか不満があったわけじゃない。ごく普通の日常、それが当たり前だと感じていたし、自分の意思でここにいるわけじゃない。なんで僕がってずっと思ってました」

マヤ「……」

シンジ「それでも逃げられなかったのは、ちっぽけなプライドと……“乗れと言われたから乗る”それだけでした」

マヤ「そう、だったの」

シンジ「誰かが、“僕のおかげで助かった”って言うと、ざまあみろって思うようになってきました。どうだ、僕はできるんだぞって」

マヤ「……」

シンジ「父さんに認められたい気持ちに今も変わりははありません。最終目標は、一番見返したい相手は、父さんなんです」

マヤ「……」

シンジ「(もう死んでしまったけど、恥ずかしくない生き方をしなくちゃ)」ガタッ

マヤ「それで……?」

シンジ「僕は、僕は、父さんとは違います。まだ中学生だし、子供です。なにが正解かなんてわからない、だけど、マヤさん」ガシ

マヤ「な、なに?」

シンジ「僕は、マヤさんのことも大切な人だと思ってます。悩みがあるなら、聞きます。力になれるなら、なんだってしますよ」

マヤ「……」

シンジ「不安、なんでしょう? マヤさんだって、僕を、他人を気遣ってる余裕ないのに」ギュウ

マヤ「あ……」

シンジ「……ありがとう。僕が伝えたかったのは、感謝の気持ち、それだけです」
574 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 11:13:25.48 ID:oz+dgW4j0
マヤ「(やっ、やっぱり、胸が高鳴る。憂いを帯びている表情が色っぽく見える)」

シンジ「……」

マヤ「(私、倒錯してるのかな。先輩を想って自慰をしてた時点で、そうだけど……でも、こんな年頃の子にときめくなんて)」

シンジ「マヤさん? 熱あるんじゃないですか?」

マヤ「……」ウットリ

シンジ「顔赤いけど平気ですか?」

マヤ「平気。もう少し、このまま」

シンジ「……はい。わかりました」

マヤ「(この子の喜ぶことがしたい、そう思いだしてる。はぁ……どうしよう。悩みがシンジくんのこともあるって言ったら、どんな顔するのかしら)」

シンジ「うっ」

マヤ「(軽蔑、するわよね。一度身体を重ねたぐらいでって思われるかもしれない)」

シンジ「ま、マヤさん、あの。限界、かもしれません」

マヤ「え? あっ!」

シンジ「このまま力を発動し続けるとどうなるか……!」

マヤ「オーバーヒートしそうなの?」

シンジ「わかりま、せん。ただ、眠くなってしまいます」

マヤ「睡眠をとることで体力を回復しようしてるんだわ……」

シンジ「あの、もういいですか?」

マヤ「いえ、限界までやってみてくれない? どうなるか観察したいの」

シンジ「う、わ、わかりました」

マヤ「待ってて!」ダダダッ

シンジ「(今までは、気がつけば、力が使えなくなってたりしてたから、はじめてだな)」

マヤ「はいっ、体温計! くわえて!」カポッ

シンジ「んむっ!」

マヤ「どう? 体調に新しい変化は?」

シンジ「いぇ、まらなにも。いいんふぇすか、これ、マヤさんの体温計じゃ」モゴモゴ

マヤ「今はいいから! えぇと、ノートパソコンは……」

シンジ「……」

マヤ「シンジくん? 今から本格的にデータを収集するわ。無理をしている状態は、悪化していると同義だけど、あなたの身体に変化が起きやすい状態ってことでもある」

シンジ「ふぁい」

マヤ「頭痛、めまい、痺れ、眠気、なんでもいいの。とにかく身体におこっていることを申告して。本当は心拍数とかも取りたいだけど、設備がないから」

シンジ「大丈夫、です」もご

マヤ「時間はだいたいではかる。何分毎にどういう変化がおこるか。記録を取り続けたいと思うの。できる?」

シンジ「……」コクコク

マヤ「実験、スタート――」
575 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 14:39:30.18 ID:oz+dgW4j0
【翌日 ネルフ本部 発令所】

マヤ「昨日採取したデータを検証しなくちゃ」

シゲル「マ〜ヤちゃん。あいかわらず忙しそうだねぇ」

マヤ「なに? 邪魔しないでよ」

シゲル「なにしてんの? ライフルの検証?」ヒョイ

マヤ「勝手に見ないでったら!」

シゲル「うん……? なんだこれ? 生態調査とその傾向……なんの?」

マヤ「青葉くん! 公私混合はしないで! この際はっきりさせとく!」ガタッ

シゲル「ん?」

マヤ「私はあなたと仕事以外で関わりたくない!」

シゲル「今は、だろ?」

マヤ「なんで、なんでわかってくれないのよ」

シゲル「まぁそう肩に力をいれなさんなって。怒るにも体力使うぜ?」

マヤ「……」

シゲル「俺はこのとーり適当な人間だしさ。愚痴は言うし、軽口だって叩く。そうしなきゃやってられねぇもん。なんつーか、こう、マヤちゃん見てるさ。変なんだよなぁ」

マヤ「変? 私になにか文句があるの?」

シゲル「いやいやぁ、そうじゃないよ。生きてて楽しいわけ?ってそう見えるわけだ」

マヤ「私のなにがわかるって言うの」

シゲル「わからねーよ? わからねーけど、俺にはそう見えちまう」

マヤ「……」

シゲル「はぁ、なんでこう不器用なのかねぇ。たまには息抜きしなきゃ疲れちまうだろう?」

マヤ「私だって息抜きぐらい! それに、今はやりたいことがある! 集中したいの!」

シゲル「やりたいこと? ってーと、その論文を完成させるのが?」

マヤ「ほっといてよ! お願いだから!」

リツコ「それぐらいにしときなさい」

シゲル「おっと。おはようございます」

リツコ「青葉くん、あまりやりすぎるとセクハラとしてコンプライアンス違反になるわよ」

シゲル「俺はいやらしい発言を誘導したりボディタッチしてるってわけじゃ」

リツコ「嫌がってるでしょう。無作法なマネは自重しなさい。例えマヤを青葉くんが良いなと思っていても」

シゲル「えっ! いや、その」

マヤ「……そんな下心のために、気持ち悪い」

リツコ「マヤ、あなたにもまたお説教しなければならないようね。ついてきなさい」

シゲル「なにも本人にバラさなくたっていいのに。ちぇ」
576 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 15:08:41.03 ID:oz+dgW4j0
【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「――明日の電車で実家に療養なさい。司令には私から伝えておく」

マヤ「えっ⁉︎ そんなっ」

リツコ「命令よ。伊吹二尉。本日付けであなたを技術ニ課から解雇します」

マヤ「せっ、先輩っ! 待ってください! どうしてですかっ⁉︎」

リツコ「以前に私は忠告した。あなたの身元保証人には私がなっていると。それ、まだなにか調査しているのね。勝手な振る舞いに対する責任は負いきれないわ」

マヤ「ち、違うんです! これは、使徒の生態調査をしていただけで」

リツコ「使徒?」ピク

マヤ「これまでの使徒の襲来パターンから次の使徒に有効な分析や対策案を練ろうと」

リツコ「なぜ今なの?」

マヤ「あの、この前は先輩とあんな風に口論しちゃいましたし。落ち着かなかったので、なにか気持ちが落ち着くものをしようって思って。作業をしてれば忘れられるじゃないですか!」

リツコ「……」

マヤ「本当に、それだけなんです!」

リツコ「マヤ、見えすいた嘘はやめなさい」

マヤ「えっ」

リツコ「例えそれが本当だとしても、知り得た事実はあなたの負担になっている。これから起こる出来事に耐えきれないわ」

マヤ「わからないじゃないですか! お願いします! 今辞めたくはないんです!」

リツコ「……」

マヤ「先輩! お願いです!」

リツコ「なにが理由? なぜネルフにしがみつくの?」

マヤ「私の目標なんです。先輩が……どういう性格でも、研究に対する姿勢や視点について学ぶべきことはまだたくさんあります。ウソじゃありません」

リツコ「パソコンを貸しなさい」

マヤ「はい」スッ

リツコ「……これは。使徒? いえ、誰のデータ?」

マヤ「シンジくんです」

リツコ「あなた、やっぱり……!」

マヤ「どうしてですかっ⁉︎ 先輩はいつもフラットに物事を見極めていました! 科学者として証明するべきでしょう!」

リツコ「シンジくんに、なにか聞いたのね?」

マヤ「少しだけ。シンジくんは今日こうして先輩に話していることを知りません。私が自分の意思で話してることだからです!」

リツコ「……」

マヤ「先輩……! 目を覚ましてください! 私たちは、シンジくんにこそ協力をするべきです!」

リツコ「あなたを解雇する前にシンジくんに話を聞く」

マヤ「先輩っ!!」

リツコ「黙りなさいっ! どれほどの危険に首をつっこんでいるのかわかっているの⁉︎」バンッ

マヤ「わかってます! だけど、それでも私は! 先輩と……!」

リツコ「らちがあかないわね。もう通常業務に戻りなさい。シンジくんは今学校にいるから、終わったらここにくるように指示する。あなたも同席するのよ」

マヤ「……」ギュウ

リツコ「中学生にほだされるなんて。あなた、恥を知ったらどう?」

マヤ「先輩こそ! やっていいことと悪いことに年齢は関係ありません!」

リツコ「……さがって。さがりなさい。伊吹二尉」
577 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 15:29:06.55 ID:oz+dgW4j0
【第壱中学校 昼休み】

マナ「シーンジくんっ」

シンジ「……」ぼー

マナ「あれ? おーい、もしもーし」

ケンスケ「シンジなら朝からずっとこの調子だよ」

マナ「そうなの?」

ケンスケ「霧島は遅刻ギリギリにきたからな」

マナ「今朝は寝坊しちゃって」

トウジ「センセ、飯やぞ。飯」

シンジ「……」

トウジ「なんや、電池でも切れとるんかいな。おいケンスケ、ゼンマイ貸せや」

ケンスケ「人間に使えるネジなんかあるわけないだろ」

マナ「なにかあったのかな? もしかして、昨日のアスカ?」

アスカ「はぁ……あんたねぇ、ことあるごとにあたしに対抗心だすのやめない?」

マナ「噂をすれば。耳がよろしいのね」

アスカ「地獄耳だって言いたいわけ?」

トウジ「まぁまぁ! そないな猿蟹合戦よりも霧島さま! 今日のお弁当は……」

ヒカリ「あの、鈴原、よかったら、これ」スッ

トウジ「あん? 委員長やないか。どないしたんや、これ」

ヒカリ「うち、お姉ちゃんと妹の分も作ってるからあまりすぎちゃって」

トウジ「委員長の料理かぁ〜。まずそう――」

マナ&アスカ「黙って食べなさいっ!」バチーン

トウジ「な、ナイスコンビネーション」パタリ

アスカ「シンジ。シンジ」ユサユサ

シンジ「……」ぼー

アスカ「ちっ! バカシンジっ!」ユサユサッ

シンジ「あ、うわ、うわぁっ⁉︎ あ、アスカ? み、みんなも? なに?」

ケンスケ「昼だよ」

シンジ「あぁ、そんな時間。トウジはなんで倒れてるの?」

マナ「気にしなくていいの。どうしたの? 体調、悪い?」

シンジ「(昨日、あれから気絶しちゃったし。力を使いすぎた影響なのかぼーっとしたままなんだよなぁ)」

ケンスケ「なんでもいいけど、さっさと食べちまおうぜ」
578 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 15:58:13.74 ID:oz+dgW4j0
【夕方 ネルフ本部 ラボ】

シンジ「碇シンジです。失礼します」カシャ

シンジ「(マヤさんも?)」

リツコ「あら。シンジくん、いらっしゃい。呼び出された理由、察しがついたんじゃなくって? ここは監視されてないから、好きに発言してもらって大丈夫よ」

シンジ「はっ! まさか……!」

リツコ「まずはお掛けなさいな。飲むのはコーヒーしかないけど。いる?」

シンジ「いえ」

リツコ「そう。それじゃ、私も座らせてもらうわね」ギシ

シンジ「……」チラッ

リツコ「ここに呼びだした理由は、マヤに関係していること。だから同席させている。シンジくんはマヤに取り入ることに成功したみたいだけど、部下の暴走まではわからないわよね」

シンジ「取り入る? 僕はそんなんじゃ」

リツコ「命にかかわるわよ」

マヤ「説明したじゃないですか! 使徒を移植されたことしか知らないって!」

リツコ「シンジくんに直接聞きたいの。余計な口を挟まないように」

シンジ「……マヤさんが言ってる通りです」

リツコ「危険だと承知していたわね?」

シンジ「母さんを納得させるためでした。指示が降りていたので」

リツコ「犯せと? それも先ほどマヤから聞いてたけど」

シンジ「はい。合意のない行為を僕は許せませんでした。なので、余計なことを除いて話した上でなにか対策を練ろうと思ったんです。僕からも質問いいですか?」

リツコ「いいでしょう」

シンジ「リツコさんにじゃありません。マヤさん、どうして……」

マヤ「ご、ごめんなさい。最初は先輩に言うつもりなかったんだけど、きっとわかってくれるって」

シンジ「……」

リツコ「このデータ。あなたの内に秘めた衝動を抑えるのに役立てるつもり?」

シンジ「僕じゃありません。使徒です」

リツコ「いずれひとつになる。あなたのものといっても間違いではないわ。ふぅ……どうしたものかしらね」

シンジ「母さんはまだ知らない。そうですよね」

リツコ「自己保身よ。私も厳罰を言い渡されるもの」

シンジ「リツコさんは、なんで母さんに協力してるんですか?」

リツコ「あなたに協力しろと?」

シンジ「そうじゃありません。知りたいだけです」

リツコ「人類はいずれ滅びてしまうからよ。ノアの方舟たる補完計画。舵取りに協力しているに過ぎない。犠牲になるものが何人いようともね」

シンジ「それだけですか?」

リツコ「中学生が生意気な口をきくんじゃありません。あなたは全体像が見えていない子供。綺麗事を並べて個人の生死に翻弄されているだけ」

シンジ「そうかもしれません。でも、勘違いしないでください」

リツコ「よく喋るようになったわね」

シンジ「リツコさんと同じです。僕は僕のやりたいようにやろうって決めてるだけ。その目的意識が、どうなのか。そこに違いは必要ありますか?」

リツコ「ないわ。望むように生きようとする権利は誰にでもあるもの」

シンジ「母さんに協力することを悪いと言ってるわけじゃない。リツコさんが正義だと思う、大義名分がそこにあるんでしょうから。でも、本当にそれだけですか?」

リツコ「(この子……)」

シンジ「誰だって、弱い部分はある。リツコさんは、そんなに完璧なんですか?」

リツコ「シンジくん。あなた、もしや、私の、知ってるの?」

マヤ「シンジくん……?」
579 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/21(木) 16:20:31.86 ID:oz+dgW4j0
シンジ「ふっ、くっくっくっ」

リツコ「なにがおかしいの?」

シンジ「うろたえてるからですよ。誰にだって秘密は……触れられたくないことはある。そうじゃないんですか?」

リツコ「……」

シンジ「僕は、マヤさんを守りたい。リツコさんよりもです」

マヤ「し、シンジ……くん?」

シンジ「もし、マヤさんを殺せば、僕はたぶん抑えられなくてリツコさんを殺します。中学生ですから。ついうっかりってこともありますよね」

リツコ「年齢を言い訳にする気?」

シンジ「子供扱いしてるのはリツコさんの方です。対等に考えてください。僕に取り引き材料はないわけじゃありません」

リツコ「――脅し?」

シンジ「どう受け取ってもらっても結構です」

リツコ「(親に似てきたのかしら。いえ、短期間でそれはありえない。これはある程度の覚悟を持っているわね)」

シンジ「僕としてはゆっくり見守っていただきたいと思っています。マヤさんに危害を加えず」

リツコ「やけに思考が冴えているようね。それもアダムの影響?」

シンジ「いえ。そういうわけじゃありませんよ。僕はリツコさんがこわいので」

リツコ「私が?」

シンジ「はい。母さんの側近で、最も警戒すべき相手の一人だと考えています。そんな人と対峙している。どうなります?」

リツコ「ふふっ、なるほど。よくわかった。マヤは板挟みってわけ。私とシンジくんの」

シンジ「マヤさんは、なにも知らなくてよかったんです。僕達が巻き込んでしまった。そうでしょ? リツコさん」

リツコ「……そうね」

シンジ「今回だけは見逃してくれませんか。僕が使徒の力を自覚している件についても」

リツコ「口約束でしか保証しないわよ」

シンジ「契りは必要ありません。リツコさんを信じます」

リツコ「愚かだわ。大人を舐めると痛い目にあう」

シンジ「自分の都合の良いように振る舞うのが大人だっていうんですか?」

リツコ「それは一面よ。狡猾で、そういう生き方を知っているのも歳を重ねたものに多くなる」

シンジ「だったら、僕はリツコさんの人間性を信じます」

リツコ「あなたが、私を? 信じるという意味をわかってるの?」

シンジ「無条件にじゃありませんよ。マヤさんはリツコさんにとっても大切な部下でしょう」

リツコ「……」
580 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 16:50:34.50 ID:oz+dgW4j0
シンジ「人情っていうんですか? こういうの。難しい言葉はよくわかりませんけど」

リツコ「よく言うわ。もしかしたら、あなた、化けるかもしれないわね」パサ

シンジ「これは……? なんですか?」

リツコ「ダミーとその計画書。適格者が存在せずとも、エヴァの起動を可能にするシステムよ。読んで理解できる?」

シンジ「……」ペラ

マヤ「わ、私にも」

リツコ「黙って」

シンジ「……ベースは綾波ですか?」

リツコ「驚いた。一見しただけでよくそこまで考えが辿り着けたわね。やはり、親の血は受け継いでいる、か」

シンジ「無人機にしてどうするつもりですか」

リツコ「その前に、あなたのやろうとしていることはなに?」

シンジ「リツコさんから見れば、駄々をこねてるように見えるかもしれませんが、僕は補完計画を発動させない別の道を模索したい」

リツコ「ナンセンスね。第三の選択肢なんてありえないわ。発動させなければ人類は滅びてしまう。“再生させるか”、“無に帰すのか”。シンジくんはこの二択で終焉を選ぼうというの?」

シンジ「道がなければ作れば良い。人類はそうやって進化してきました」

リツコ「それは何世代も紡いで学習してきた時間があったからだわ。今回は結論をだすまでに一年も……もっと短いかもしれない。そんなに猶予はないのよ」

シンジ「最後まで足掻いてみたいんです。人が人のせいで終わりを迎えるというのなら、それも自然の摂理のはず」

リツコ「私たちのしようとしていることは神の真似事ですものね」

シンジ「いくら大義名分を掲げようとも。困難を前に諦めるのを強要しないでください」

リツコ「では、シンジくんは司令ととことんやりあうつもり?」

シンジ「僕が望むのは現状維持です。母さんは変革を求めている。この国だって他国がしかけてきたら自己防衛するじゃないですか」

リツコ「しかけているのは私たちだと?」

シンジ「その通りです。人類補完計画の発動を止める。その上で計画性がないとしても、愚かだとしても、人類の未来は人類が決めるべきです」

リツコ「あなたに対する評価を改めましょう。見た目を抜きにすれば、中学生が発するとは思えないわね。青臭いだけと言えなくもないけど」

シンジ「母さんもそうですが、リツコさんもですか」

リツコ「……?」

シンジ「採点してる気になってる時点で、上から見てるんですよ。評価って、そういうものでしょう」

リツコ「これは失礼。取り引きに話を戻しましょう。シンジくん、あなたは私がマヤを救いたいと思っているのね?」

シンジ「少なからずは」

リツコ「そうね。でも切り捨てられないわけじゃない、と言ったら?」

マヤ「(先輩、なんだか、楽しそう?)」

シンジ「そうだとしたら困っちゃいます」

リツコ「ふふっ、可愛げ、身につけたの?」

シンジ「ありのままを言っただけですよ」
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 18:40:27.69 ID:iBtBJlfuo
C
582 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 20:09:52.99 ID:oz+dgW4j0
【リツコ宅 リビング】

シンジ「食材は自由に使わせてもらいますよ。それにしても意外でした、まさか、条件を飲む理由が」

リツコ「なにもなしじゃ遊び心がないわ。口実だけど、シンジくんの手料理はおいしいって評判だし、一度食べてみたかったの」

シンジ「みんなが過大評価しすぎです。レシピ通りにやれば誰だってできる」

リツコ「美味しいものは美味しい。それでかまいやしないわ」

シンジ「電気タイプなんですね。ここのコンロ」ピッ

リツコ「どこまで把握してるの?」

シンジ「言いたくありません」

リツコ「もしかして、夢の出来事も覚えてるんじゃ? タブリスになにか吹き込まれた?」

シンジ「カヲルくんですか?」キョトン

リツコ「(違うのね。タブリスではない、一体誰が……。アダム、使徒からの直接コンタクト?)」

シンジ「……なにを知ったとしてもやりたいと思ってることは言った通りです」

リツコ「特別に教えてあげる。先程渡した計画書。あれは古い物よ。変更される前のね」

シンジ「……」トントントン

リツコ「新しいダミーの研究は既にはじまっている。ベースは渚カヲル」

シンジ「そうですか。やっぱり、やることに変わりはないんですね」

リツコ「補完計画に必要不可欠ですものね。それは、あなたも同様に。……どう? 人類代表に選ばれた気分は」

シンジ「元々、そういう計画じゃなかったでしょう」

リツコ「鋭い。まるで知っているかのよう口ぶりに先程から鳥肌がたってしまう」

シンジ「褒めたってなにもしませんよ」

リツコ「私、おべっか使うの嫌いなのよ。もし本当にシンジくんがなにも知らないままに推察だけで発言しているとしたら、これほど興味深い話はない」

シンジ「そうですか」

リツコ「とっても不自然ですもの。一週間ほど前まで、事なかれ主義だっただけに、不気味だわ」

シンジ「そんな気がするだけです」

リツコ「ふっ、たしかにシンジくんのお父様が提唱していた補完計画は、初号機が中心にあった。なぜだと思う?」

シンジ「なんでもわかるわけじゃありませんから」ジュー

リツコ「想像でかまわないわ。言ってみて」

シンジ「母さんが現れるまでの父さんは僕に興味がなかった。自分の息子というよりも、道具。僕が必要だっわけじゃない。必要なのは、パイロットだったんでじゃないでしょうか」

リツコ「……」

シンジ「そう考えると、ダミー計画を読んでみて納得がいきます。初号機さえあればいいと思ってたんじゃないかって」

リツコ「そこまでは正解。でも、それは碇司令に初号機が必要な理由であって、私の質問に対しての答えではない。補完計画になぜ必要?」

シンジ「見当もつかないや。発動するまでにいくつか条件があるんじゃないんですか? 僕の手にあるアダムがまず第一。そして二番目には初号機とか。そういういくつものピースが重なってる」

リツコ「(おそろしい子なのかもしれない)」

シンジ「おそらくですけど、今は準備段階。その合間に使徒が来てる。準備ができれば、いつでも補完計画を発動したいと思ってる」コトコト

リツコ「そこは違うわ。私たちはタイムスケジュールに沿って準備、行動しているの」

シンジ「(裏死海文書。真実が書かれた予言書のことか)」

リツコ「莫大な国連費がかかっているのよ。億を飛び越えて兆単位の資金。この時点で何人死んでてもおかしくない」

シンジ「お金、ですか」

リツコ「欲をだして人が死ぬなんてしょっちゅうある話でしょう。一億あれば人殺しをする輩なんて万といるわよ。それがネルフにかかっているのは兆。規模の大きを実感できる?」

シンジ「いえ、あんまり」

リツコ「桁が大きすぎるのね」
583 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 20:45:41.66 ID:oz+dgW4j0
リツコ「――ほんと。美味しい」

シンジ「どうも」

リツコ「これほどの腕前ならミサトじゃなく私が引き受け人になるべきだったかしら」

シンジ「今はマヤさんですけどね」

リツコ「シンジくん、マヤに頼るのはやめなさい」

シンジ「……」

リツコ「危険だわ。ユイ司令は、必要だと判断すれば容赦がなくなるわよ」

シンジ「わかってます。今は計画の中心にいるのが僕。それ以外は道具、でしょ」

リツコ「ご明察。そこまでわかってるのなら説明する必要はないわね」

シンジ「であれば、同居を解消するように働きかけてください。一緒に住んでいると否応にでも巻き込んでしまう」

リツコ「一理ある」

シンジ「衝動は時と場所を選んでくれません。僕の都合なんておかまいなし」

リツコ「それがマヤに向けられる。そう考えてるのね?」

シンジ「はい。そうなれば僕の望むところではありません。マヤさんに話をしたのはその対応策なんです」

リツコ「……シンジくんから?」

シンジ「そうです。マヤさんになにも非はありません」

リツコ「それはウソね。聞いただけじゃ、動こうとしないもの。あなたに惹かれるなにかがあったはず」

シンジ「曲がったことが許せないだけなんじゃないですか」

リツコ「かばってるつもり? お優しいこと」

シンジ「リツコさんのせいでもあります」

リツコ「私も?」

シンジ「憧れていた先輩が思っていた人ではなかった。現実と理想の違い」

リツコ「幻滅したのが?」

シンジ「気がつかないんですか。マヤさんにとって、リツコさんは心の支えだったんです。それがなくなってしまい、弱ってしまった」

リツコ「あの子、まだ子供ね」

シンジ「子供だとか関係ないと思います。むしろ、歳をとってるからこそ他人のありがたみがわかる。大事な人であればあるほど」

リツコ「あなた、まだ若いでしょう」

シンジ「この一週間、本当に密度が濃かったんですよ。自分の面と向き合うことを余儀なくされました。自分のしたいことで精一杯で、僕はまわりを見ていなかったと実感できるほどに」

リツコ「一時的なものね。人は忘れながらに生きているから」

シンジ「それでも、この出来事を僕は忘れないと思います」

リツコ「あなたの経験則から導きだされた答え。つまり、悟ったからみんなもそうであると?」

シンジ「違います。ただ、若さとは、無謀なことができる期間なんだと漠然と感じます」

リツコ「……」カチャ

シンジ「ワイン、飲まれますか?」

リツコ「シンジくん。将来はウェイターにでもなったら?」

シンジ「僕に将来なんてあるんですかね」

リツコ「自身の死についてまで悟りを開いたの?」

シンジ「いえ、よく、わかりません」

リツコ「もうこんな時間。話すぎたわね。帰っていいわよ」

シンジ「あ、はい」

リツコ「またいつでもいらっしゃい。敵といっても、私はお母様より融通が効くわよ」

584 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 22:07:42.55 ID:oz+dgW4j0
【マヤ宅 リビング】

シンジ「ただい……わあっ⁉︎」

マヤ「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください」

シンジ「ま、マヤさんっ⁉︎ なにやってるんですか⁉︎」

マヤ「あ、シンジくん、おかえり。ごめんね、いま、準備してるから」

シンジ「ロープから手を離して! そんなの一体どこから」

マヤ「帰りにホームセンターに寄って買ってきたの」

シンジ「いや、そうじゃなくて! 大丈夫ですよ!なにも心配しなくていいんです!」

マヤ「うふ、うふふ。私、失敗しちゃった。先輩ならわかってくれると思ったのに。また裏切られちゃったの」

シンジ「そ、それは……リツコさんもやりたいことがあって……!」

マヤ「私には仕事しかないもの。実家に帰るぐらいなら、生きてたって」

シンジ「そんなことありませんよ! 生きてればなんだってできます!」

マヤ「気力がなくなっちゃったの! シンジくんの力になりたかった、けど、逆に足を引っ張っちゃったね」

シンジ「一度失敗したぐらいでなんだっていうんですか!」

マヤ「取り返せるつまずきならまだいい。だけど、クビなら無理。やり直すにしても、ネルフとは別の場所」

シンジ「仕事が全てだなんて、そんな……」

マヤ「決めたの。先輩に見捨てられて、シンジくんにも迷惑をかけて。ボロボロだわ」ガタッ

シンジ「まって!」ダダダッ

マヤ「うっ」ガクッ ジタバタ

シンジ「くそっ!」ガシッ

マヤ「は、離してっ! シンジくん! 離してよっ!」

シンジ「暴れないでくださいよ! 持ちあげるのに力が……」

マヤ「死なせてよ! 死にたいの!」

シンジ「(こうなったら、力を使うしか……!)」

マヤ「え?」ヒョイ

シンジ「はぁ……。まさかそんなに張り詰めてたなんて」

マヤ「お、重くないの?」

シンジ「今は箸を持ちあげる重さぐらいですよ。使徒の力を使ってますから」

マヤ「そういう……あの、降ろして。お姫様抱っこされるような歳じゃ」

シンジ「もうしませんか? こういうこと」

マヤ「……」

シンジ「だったら、降ろせません」

マヤ「わかった。しないから」

シンジ「一瞬とはいえ苦しかったでしょ」スッ

マヤ「うっ……ぐすっ……」

シンジ「僕が止めたのは、マヤさんが死んだら悲しいからです。ここにいたっていいんですよ。ネルフにも」

マヤ「本当? 私、まだ、やり直せる?」

シンジ「リツコさんの了承は得られました。信じてもいいと思います。危険はありますが」

マヤ「ありがとう、シンジくん、ありがとう」ギュウ

シンジ「(女の人ってみんなこうなのかなぁ)」ポンポン
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/22(金) 19:13:10.23 ID:23+v/2wRo
C
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/22(金) 19:48:04.40 ID:WQoYycWcO
たまに見かけるCってなに?
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/22(金) 19:50:58.76 ID:g5r530lSO
支援
588 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 22:21:24.44 ID:yBhD/MoW0
ちょいすんまへん
読み返すと>>576からセリフ回し荒くなってるんでレスしなおし
589 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 22:37:21.93 ID:yBhD/MoW0
【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「――療養の為、実家に戻りなさい」

マヤ「えっ⁉︎ そんなっ」

リツコ「命令よ。伊吹二尉。解雇予告だと思ってもらって結構です。休職期間が明けた後、技術局ニ課より……」

マヤ「せっ、先輩っ! 待ってください! どうしてですかっ⁉︎」

リツコ「ありのままの事実を伝えていたはず。身元保証人には私がなっていると。にもかかわらず、まだ調査しているわね。勝手な振る舞いに対する責任は負いきれない」

マヤ「ち、違うんです! これは、使徒の生態調査をしていただけで」

リツコ「使徒?」ピク

マヤ「これまでの使徒の襲来パターンから次の使徒に有効な分析や対策案を練ろうと」

リツコ「動機は?」

マヤ「あの、この前は先輩とあんな風に口論しちゃいましたし。落ち着かなかったので、なにか気持ちが落ち着くことをしようと思って。作業に没頭してれば考えなくて済むじゃないですか!」

リツコ「……」

マヤ「本当に、それだけなんです!」

リツコ「マヤ、見えすいた嘘はやめなさい」

マヤ「せ、先輩……」

リツコ「知り得た事実が負担になっている。これから起こるであろう出来事に耐えきれるように見えない」

マヤ「わからないじゃないですか! お願いします! 辞めたくはないんです!」

リツコ「……」

マヤ「先輩! お願いです!」

リツコ「なぜネルフにしがみつくの? ここで働いていたという実績があれば、引く手あまたよ」

マヤ「私の目標なんです。先輩が。……どういう性格だとしても、研究に対する姿勢や視点について学ぶべきことはたくさんあります。ウソじゃありません」

リツコ「パソコンを貸しなさい」

マヤ「はい」スッ

リツコ「……これは。使徒? いえ、誰のデータ?」

マヤ「シンジくん、です」

リツコ「あなた、やはり……!」

マヤ「どうしてですかっ⁉︎ 先輩はいつもフラットに物事を見極めていました! 科学者として証明するべきでしょう!」

リツコ「なにか聞いたのね?」

マヤ「少しだけ。彼はなにも知りません。私が自分の意思で話してることだからです!」

リツコ「……」

マヤ「先輩……! 目を覚ましてください! 私たちは、シンジくんにこそ協力をするべきです!」

リツコ「あなたを解雇する前にシンジくんに事情聴取しなくちゃ」

マヤ「先輩っ!!」

リツコ「黙りなさいっ! どれほどの危険に首をつっこんでいるかわかってるのっ⁉︎」バンッ

マヤ「わかってます! だけど、それでも私は! 先輩と……!」

リツコ「らちがあかないわ。通常業務に戻りなさい。シンジくんは学校にいるから、放課後ここにくるように指示する。あなたも同席するのよ」

マヤ「……」ギュウ

リツコ「中学生にほだされるなんて。恥を知ったらどう?」

マヤ「先輩こそ! やっていいことと悪いことに年齢は関係ありません!」
590 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 22:47:04.38 ID:yBhD/MoW0
【第壱中学校 昼休み】

マナ「シ〜ンジくんっ」

シンジ「……」ぼー

マナ「あれ? おーい、もしもーし」

ケンスケ「シンジならずっとこの調子だよ」

マナ「そういえば、授業中もそうだったね?」

ケンスケ「めずらしーね。霧島がシンジのチェックを怠るなんてさ」

マナ「はぁ、緑化委員になんか立候補しなきゃよかった」

トウジ「センセ、飯やぞ。飯」ポン

シンジ「……」カクン

トウジ「なんや、電池でも切れとるんかいな。おいケンスケ、ゼンマイ貸せや」

ケンスケ「人間に使えるネジなんかあるわけないだろ」

マナ「なにかあったのかな? もしかして、昨日のアスカ?」

アスカ「はぁ……あんたねぇ、ことあるごとにあたしに対抗心燃やすのやめない?」

マナ「噂をすれば。耳がよろしいのね」

アスカ「へぇ、地獄耳だって言いたいわけ?」

トウジ「まぁまぁ! そないな猿蟹合戦よりも霧島さま! 今日のお弁当は……」

ヒカリ「あの、鈴原、よかったら、これ」スッ

トウジ「あん? 委員長やないか。どないしたんや、これ」

ヒカリ「うち、お姉ちゃんと妹の分も作ってるからあまりすぎちゃって」

トウジ「委員長の料理かぁ〜。まずそう――」

マナ&アスカ「黙って食べなさいっ!」バチーン

トウジ「な、ナイスコンビネーション」パタリ

アスカ「シンジ。シンジ」ユサユサ

シンジ「……」ぼー

アスカ「ちっ! バカシンジっ!」ユサユサッ

シンジ「あ、うわ、うわぁっ⁉︎ あ、アスカ? み、みんなも? なに?」

ケンスケ「とっくに昼だよ」

シンジ「あぁ、そんな時間。トウジはなんで倒れてるの?」

マナ「体調、悪い? 保健室いく?」

ケンスケ「当たり前のようにスルーするなぁ」

シンジ「(昨日、あれから気絶しちゃったし。その影響なのか倦怠感が凄いんだよなぁ)」

ヒカリ「あの〜、鈴原?」チョンチョン

ケンスケ「なんでもいいけど、さっさと食べちまおうぜ。残り時間短くなっちゃうよ」
591 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 23:03:17.60 ID:yBhD/MoW0
【夕方 ネルフ本部 ラボ】

シンジ「碇シンジです。失礼しま……す」アングリ

リツコ「いらっしゃい。シンジくん」

シンジ「マヤさんが、どうしてここに? そんな……⁉︎」

リツコ「まずはお掛けなさいな。飲めるのはインスタントコーヒーしかないけど。淹れましょうか?」

シンジ「いえ」

リツコ「そう。それじゃ、私も座らせてもらうわね」ギシ

シンジ「……」チラッ

リツコ「ここに呼びだした理由について、察しがついたんじゃなくって? なぜ同席させているのかも。シンジくんはマヤを従わせるまで成功したみたいだけど、部下の暴走はわからなかったようね」

シンジ「僕はそんなつもりじゃ」

リツコ「言葉を選びなさい? そうしないと、命にかかわる」

マヤ「何度も説明したじゃないですか! 使徒を移植されたことしか知らないって!」

リツコ「彼に直接聞きたいの。余計な口を挟むのは慎んでちょうだい」

シンジ「……マヤさんが言ってる通りです」

リツコ「そう。喋ったら危険だと承知していたわね?」コト

シンジ「母さんを納得させるためでした。指示が降りていたので」

リツコ「犯せと? それも先ほどマヤから聞いてたけど」

シンジ「はい。合意のない行為を僕は許せませんでした。なので、余計な部分を除いて話をした。時間稼ぎをして対策を練ろうと思ったんです。僕からも質問いいですか?」

リツコ「発言を許可します」

シンジ「リツコさんにじゃありません。マヤさん、どうして……」

マヤ「ご、ごめんなさい。先輩に言うつもりなかったんだけど、きっとわかってくれる、希望を捨てきれなくて」

シンジ「……」

リツコ「このデータ。内に秘めた衝動を抑えるのに役立てるつもり?」

シンジ「僕のじゃありません。使徒です」

リツコ「いずれひとつになるでしょう。過程と結果が違うだけであなたのものといっても過言ではないわ。ふぅ……どうしたものかしらね」

シンジ「母さんはこのことをまだ知らない。そうですよね」

リツコ「自己保身よ。私も厳罰を言い渡されるもの」

シンジ「リツコさんは、どうして母さんに協力してるんですか?」

リツコ「質問に質問を返すようだけど、あなたに協力しろと?」

シンジ「そうじゃありません。知りたいだけです」

リツコ「人はそう遠くない未来に滅びてしまうからよ。ノアの方舟たる補完計画。舵取りに協力しているに過ぎない。犠牲になるものが何人いようともね」

シンジ「それだけですか?」

リツコ「中学生が生意気な口をきくんじゃありません。あなたは全体像が見えていない子供。綺麗事を並べて個人の生死に翻弄されているだけ」

シンジ「そうかもしれません。でも、勘違いしないでください」

リツコ「よく、喋るようになったわね」

シンジ「リツコさんと同じです。僕は僕のやりたいようにやろうって決めてるだけ。その目的意識が、どうなのか。そこに違いは必要ありますか?」

リツコ「ないわ。望むように生きたいと願う権利は誰にしもに与えられる」

シンジ「母さんに協力することを悪いと言ってるわけじゃない。リツコさんが正義だと思う、大義名分がそこにあるんでしょうから。でも、本当にそれだけですか?」

リツコ「(この子……)」

シンジ「誰だって、弱い部分はあるんじゃないの。リツコさんは、そんなに完璧なんですか?」

リツコ「シンジくん。あなた、まさか……私の、知ってるの?」

マヤ「……?」
592 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/22(金) 23:14:49.11 ID:yBhD/MoW0
シンジ「ぷっ、くっくっくっ」

リツコ「なにがおかしいの?」

シンジ「可笑しいですよ、うろたえてるのが。誰にだって秘密は……触れられたくない部分はある。そうリツコさんが言ってるのと同じじゃないんですか?」

リツコ「……」

シンジ「僕は、マヤさんを守りたい。リツコさんよりもです」

マヤ「し、シンジ……くん?」

シンジ「もし、マヤさんを殺せば……僕はたぶん抑えられなくてリツコさんを殺します。中学生ですから。ついうっかり弾みでってことが起こるかもしれない」

リツコ「年齢を言い訳にする気?」

シンジ「子供扱いしてるのはリツコさんです。対等に考えてください。僕に取り引き材料がないわけじゃありません」

リツコ「――脅し?」

シンジ「どう受け取ってもらっても結構です」

リツコ「(親に似てきた? ……不自然ね、これはある種の覚悟からきているのかもしれない)」

シンジ「僕としてはゆっくり見守っていただきたいと思っています。マヤさんに危害を与えず」

リツコ「やけに思考が冴えているみたいね。アダムの影響?」

シンジ「そういうわけじゃありませんよ。僕はリツコさんがこわいので」

リツコ「私が?」

シンジ「はい。母さんの側近で、最も警戒すべき相手の一人だと考えています。そんな人と対峙している。どうなります?」

リツコ「ふふっ、なるほど。よくわかった。マヤは板挟みってわけ。私とシンジくんの」

シンジ「マヤさんは、なにも知らなくてよかったんです。僕達が巻き込んでしまった。そうでしょ? リツコさん」

リツコ「そうね」

シンジ「今回だけは見逃してくれませんか。僕が使徒の力を自覚している件についても」

リツコ「口約束でしか保証しないわよ」

シンジ「契りは必要ありません。リツコさんを信じます」

リツコ「愚かだわ。大人を舐めると痛い目にあう」

シンジ「自分の都合の良いように振る舞うのが大人だっていうんですか?」

リツコ「それは一面にしかすぎない。ずる賢く、狡猾で、そういう生き方を正当化する方法を知っているのも大人なのよ」

シンジ「だったら、僕はリツコさんの人間性を信じます」

リツコ「信じるという意味をわかってるの?」

シンジ「無条件にじゃありませんよ。リツコさんにとっても大切な部下ですよね」
593 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 23:55:45.87 ID:yBhD/MoW0
シンジ「人情っていうんですか? こういうの。難しい言葉はよくわかりませんけど」

リツコ「よくもまぁぬけぬけと。……もしかしたら、化けるかも。試してみる価値はある」パサ

シンジ「これは……? なんですか?」

リツコ「ダミーとその計画書。適格者が存在せずとも、エヴァの起動を可能にするシステムよ。理解できる?」

シンジ「……」ペラ

マヤ「わ、私にも」

リツコ「黙って」

シンジ「――ベースは綾波ですか?」パサ

リツコ「驚きね。一読したかと思えば瞬時に辿り着いた。やはり、親の血は受け継いでいる、か」

シンジ「無人機にしてどうするつもりですか」

リツコ「その前に、あなたが計画していることはなに?」

シンジ「リツコさんから見れば、駄々をこねてるように感じるかもしれませんが、僕は補完計画を発動させない別の道を模索したい」

リツコ「ナンセンスよ。第三の選択肢なんてありえないわ。発動させなければ人類は滅びてしまう。“再生させるか”、“無に帰すのか”。シンジくんはこの二択で終焉を選ぼうというの?」

シンジ「道がなければ作れば良い。人類はそうやって進化してきました」

リツコ「それは数千年もの間、生命を紡いで反省と学習をできた期間があったから。今は結論をだすまでに一年……もっと短いかもしれない。猶予はない」

シンジ「最後まで足掻いてみたいんです。人が人のせいで終わりを迎えるというのなら、それだって自然の摂理のはず」

リツコ「私たちのしようとしていることに対して弾糾するつもり?」

シンジ「いくら大義名分を掲げようたって。知的生命体である人の可能性がある。どうしてやる前から諦めなくちゃいけないんだよ」

リツコ「ことのなりゆきを見守るだけでは99%の人が死ぬとMAGIの試算がでてる。果てしない暴力が終わった後、石器時代まで文明は退化するわよ」

シンジ「……僕が望むのは現状維持です。母さんは変革を求めている。この国だって他国がしかけてきたら自己防衛するのと一緒です」

リツコ「保守的ね。しかけているのはこちら?」

シンジ「補完計画の発動を止める。その後に計画性がない、愚かな選択だとしても、人類の未来は人という種が決めるべきです」

リツコ「評価を改めるべきかしら。見た目を抜きにすれば、中学生が発している意見と思えない。言葉に酔ってるだけと受け取れなくもないけど」

シンジ「母さんもそうでしたけど、リツコさんもですか」

リツコ「……?」

シンジ「採点してる気になってる時点で、上から見てるんですよ。評価って、そういうものでしょう」

リツコ「これは失礼。取り引きに話を戻しましょう。シンジくん、あなたは私がマヤを救いたいと思っているのね?」

シンジ「少なからずは」

リツコ「切り捨てられないわけじゃない」

マヤ「(先輩? なんだか、楽しそう?)」

シンジ「そうだとしたら困っちゃいます」

リツコ「ふふっ、可愛げ、身につけたの?」
594 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 00:20:10.14 ID:Nz14Uu3d0
【リツコ宅 リビング】

シンジ「食材は自由に使わせてもらいますよ。それにしても意外でした、まさか、条件を飲む理由が」

リツコ「なにもなしじゃ遊び心がないわ。口実になるけど、シンジくんの手料理はおいしいって評判だし、一度食べてみたかったの」

シンジ「みんな、過大評価しすぎなだけです。レシピ通りにやれば誰だってできるのに」

リツコ「料理人に失礼よ。美味しいものは美味しい。それでかまいやしないわ」

シンジ「電気タイプなんですね。ここのコンロ」ピッ

リツコ「どこまで把握してるの?」

シンジ「また続きですか……言いたくありません」

リツコ「もしかして、昏睡状態の出来事を覚えてるんじゃ? タブリスになにか吹き込まれた?」

シンジ「カヲルくんですか?」キョトン

リツコ「(違う、タブリスではない。だとしたら、一体誰がここまでの変貌に導いたのかしら……。外的要因をくわえなければ不可能なはず)」

シンジ「……なにを知ったとしてもやりたいと思っているのは言った通りです」

リツコ「特別に答えををあげるわ。先程渡した計画書。あれは古い書類よ。変更される前のね」

シンジ「……」トントントン

リツコ「新しいダミーの研究は既にはじまっている。被験体は渚カヲル。進捗状況までは教えない」

シンジ「構いませんよ。やっぱり、やることに変わりはないんですね」

リツコ「補完計画に必要不可欠ですものね。それは、あなたも同様に。……どう? 人類代表に選ばれた気分は」

シンジ「元々、そういう計画じゃなかったでしょう」

リツコ「鋭い。まるで知っているかのよう口ぶりに先程から鳥肌がたちっぱなし」

シンジ「褒めたってなにもしませんよ」

リツコ「私、おべっか使うの嫌いなのよ。もし本当になにも知らないままに推察だけで発言しているとしたら、これほど興味深い話はない」

シンジ「そうですか」

リツコ「とっても不自然ですもの。一週間ほど前まで、事なかれ主義だっただけに、不気味」

シンジ「そんな気がするだけです」

リツコ「シンジくんのお父様が提唱していた補完計画は、初号機が中心にあった。なぜだと思う?」

シンジ「なんでもわかるわけじゃありませんから」ジュー

リツコ「想像でかまわないわ。言ってみて」

シンジ「母さんが現れるまでの父さんは僕に興味がなかった。自分の息子というよりも、道具。僕が必要だっわけじゃない。必要なのは、パイロットだったんでじゃないでしょうか」

リツコ「ガッカリした?」

シンジ「いえ。そう考えると、ダミー計画を読んでみると納得がいきます。初号機さえあればいいと思ってたんじゃないかって」

リツコ「そこまでは正解。でも、それは碇司令に初号機が必要な理由であって、私の質問に対しての答えではない。補完計画にはなぜ?」

シンジ「見当もつかないや。発動するまでにいくつか条件があるんじゃないんですか? 僕の手にあるアダムがまず第一。そして二番目には初号機とか。そういういくつものピースが重なってる」

リツコ「(他人事のようね。冷静に分析してる)」

シンジ「おそらくですけど、今は準備段階。その合間に使徒が来てるのかな。……準備ができれば、いつでも補完計画を発動したいと思ってる」コトコト

リツコ「そこは違うわ。私たちはタイムスケジュールに沿って準備、行動しているの」

シンジ「(裏死海文書。真実が書かれた予言書か)」

リツコ「莫大な国連費で補っているのよ。億を飛び越えて兆の運用金。この時点で何人死んでてもおかしくない」

シンジ「お金、ですか」

リツコ「欲をかいて人殺しなんてしょっちゅうある話でしょう? それが一連の計画にかかっている単位が兆。規模の大きを実感できる?」

シンジ「いえ、あんまり」

リツコ「碇前司令も幾度となく手を汚しているわよ」
595 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 00:34:03.46 ID:Nz14Uu3d0
シンジ「驚きはありません。やってても不思議じゃないと思います。できましたよ、冷めないうちにどうぞ」コト

リツコ「あら、本当に美味しい。これほどの腕前ならミサトじゃなく私が引き受け人になるべきだったかしら」

シンジ「今はマヤさんですけどね」

リツコ「シンジくん、マヤに頼るのはやめなさい」

シンジ「……」

リツコ「危険だわ。ユイ司令は、冷酷になれば容赦がなくなるわよ」

シンジ「わかってます。今は計画の中心にいるのが僕。それ以外は道具、でしょ」

リツコ「ご明察。そこまでわかってるのなら説明する必要はないわね」

シンジ「同居を解消するように働きかけてください。一緒に住んでいると否応にでも巻き込んでしまう」

リツコ「ふぅん、一理ある」

シンジ「衝動は時と場所を選んでは……。僕の都合なんておかまいなし」

リツコ「それがマヤに向けられる。そう考えてるのね?」

シンジ「僕の望むところではありません。マヤさんに話をしたのは対応策の一環なんです」

リツコ「……シンジくんから?」

シンジ「そうです。マヤさんになにも非はありません」

リツコ「それはウソね。聞いただけじゃ、動こうとしないもの。あなたに惹きつけられるなにかがあったはず」

シンジ「曲がったことが許せないだけなんじゃないですか」

リツコ「かばってるつもり? お優しいこと」

シンジ「リツコさんのせいでもあります」

リツコ「私も?」

シンジ「憧れていた先輩が思っていた人ではなかった。現実と理想の違い」

リツコ「あの子のかかえる問題点は理解しているわ」

シンジ「気がついてないんですよ。マヤさんにとって、リツコさんは心の支えだったんです。それがなくなってしまい、弱ってしまった」

リツコ「(シンジくんのデータ、早急に書き換えなければ……)」

シンジ「この一週間、本当に密度が濃かったんですよ。自分の色んな面と向き合なくちゃいけなくなってました。したいことで精一杯で、僕はまわりを見ていなかったと実感できるほどに」

リツコ「一時的なものよ。人は忘れながらに生きているから」

シンジ「それでも、これまでの出来事を僕は忘れないと思います」

リツコ「経験則から導きだされた答え? 悟ったからみんなもそうであると?」

シンジ「違います。ただ、若さとは、無謀なことができる期間なんだと漠然と感じます」

リツコ「……」カチャ

シンジ「ワイン、飲まれますか?」

リツコ「シンジくん。将来はウェイターにでもなったら?」

シンジ「僕に将来なんてあるんですかね」

リツコ「自身の死についてまで悟りを開いたの?」

シンジ「いえ、よく、わかりません」

リツコ「もうこんな時間。話すぎたわね。ごちそうさま」

シンジ「あ、はい。でも、少し手をつけただけじゃ」

リツコ「料理自体に不満はない、頭の回転が鈍くなるから、少食なのよ。満腹感はどうしても受け付けたくないというだけ。またいつでもいらっしゃい。歓迎するわ」

シンジ「……」

リツコ「(今のあなたなら、ね)」
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/23(土) 00:43:03.41 ID:ub4QE0yxo
リツコの考えがよくわかんないんだよな。冬月は毒を喰らわば皿までって
感じなんだろうけど、リツコはどうなんだろう。本当に人類のためなのかな?
597 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 00:46:54.89 ID:Nz14Uu3d0
【マヤ宅 リビング】

シンジ「ただいま。あれ? マヤさん、なにして――わあっ⁉︎」

マヤ「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください」

シンジ「ちょっとっ⁉︎ なにしようとしてるんですか⁉︎ なに考えてるんですかっ⁉︎」

マヤ「あ、おかえり。ごめんね、いま、準備してるから」

シンジ「ロープから手を離して! そんなの一体どこから」

マヤ「帰りにホームセンターに寄って買ってきたの」

シンジ「いや、そうじゃなくて! 大丈夫ですよ!なにも心配しなくていいんです!」

マヤ「うふ、うふふ。私、墓穴掘っちゃった。先輩ならわかってくれると思ったのに。また裏切られちゃったの」

シンジ「そ、それは……リツコさんもやりたいことがあって……!」

マヤ「私には仕事しかないもの。実家に帰るぐらいなら、生きてたって」

シンジ「そんなことありませんよ! 生きてればなんだってできます!」

マヤ「気力がなくなっちゃったの! シンジくんの力になりたかった、けど、逆に足を引っ張っちゃったね」

シンジ「一度失敗したぐらいでなんだっていうんですか!」

マヤ「取り返せるつまずきならまだいい。だけど、クビなら無理。やり直すにしても、ネルフとは別の場所」ツゥー

シンジ「マヤさん、泣いて……仕事が全てなんて、そんな……別の幸せが」

マヤ「決めたの。先輩に見捨てられて、シンジくんにも迷惑をかけて。もう、ボロボロだわ」ガタッ

シンジ「まってっ!」ダダダッ

マヤ「うっ」ガクッ ジタバタ

シンジ「くそっ!」ガシッ

マヤ「は、離してっ! シンジくん! 離してよっ!」

シンジ「暴れないでくださいよ! 持ちあげるのにきつくなる……」

マヤ「死なせてよ! 死にたいのっ!」

シンジ「(こうなったら、使徒の力に頼るしか……! こんなに使ったら、母さんに絶対にバレるきっかけを与えてしまう! けど!)

マヤ「え?」ヒョイ

シンジ「はぁ……。まさかそんなに張り詰めてたなんて」

マヤ「お、重くないの?」

シンジ「箸を持ちあげる重さぐらい。これが身体能力の強化です」

マヤ「今の状態が……あの、わかったから降ろして。お姫様抱っこされるような歳じゃないし」

シンジ「もうしませんか? こういうこと」

マヤ「……」

シンジ「答えを聞くまで降ろせません」

マヤ「しないから」

シンジ「一瞬とはいえ苦しかったでしょ」スッ

マヤ「うっ……ぐすっ……」

シンジ「僕が止めたのは、マヤさんが死んだら悲しいからです。ここにいたっていいんですよ。ネルフにも」

マヤ「本当? 私、まだ、やり直せる?」

シンジ「リツコさんの了承は得られました。信じてもいいと思います。危険はありますけど、納得、してるんでしょう?」

マヤ「ありがとう、シンジくん、ありが、とうぅっ……うっ、うああぁっ」ポロポロ

シンジ「(女の人ってみんなこうなのかなぁ?)」ポンポン
598 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/23(土) 16:45:13.43 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「これで何度目?」

諜報部「伊吹二尉のお宅に、ご子息が移られてからですか? 電磁波発生の頻度は――」

ユイ「バカな質問をしたわ。ほぼ毎日ね」

諜報部「いかがいたしますか? その、リユース品ではありませんし、あまりにも」

ユイ「こちらで検討します。疑問を抱かなくていい」

諜報部「はっ! 失礼いたします!」ビシッ

ユイ「シンジったら、もう。安直な手段を選ぶのはよろしくない。あの人に似たのかしら」

冬月「早計すぎるのではないか。やつが意図的に制御できているとなぜ言い切れはしまい。あるいは、垂れ流しているだけとも」

ユイ「魂の同化が促進されている点を憂慮すべきですね。アダムに振り回されているのか、意図的に行使できるようになっているのか」

冬月「直接問いただしてもいいが、素直に口を開くとも思えん。穏便に事を進めるのは難しいやもしれんな」

ユイ「……」

冬月「なに、割り出すのにそれほど難儀はせんだろう。こうまであからさまになっていては」

ユイ「豊富なサンプルを元に科学に頼るとしますか」

冬月「MAGIか。我々もラクな手段を選んでいるのだからサードチルドレンを笑えんな。便利な道具は人を腐らせもする。……おい」

リツコ「ごようでしょうか?」スッ

ユイ「一度帰宅したのに悪かったわね。行き違いだったとはいえ、残るよう通達するのを怠って」

リツコ「お気になさらず。やりかけの仕事を思い出していたので丁度良いぐらいです」

ユイ「データを洗い出してほしい。主に行動記録」

リツコ「承知いたしました」

ユイ「それと、伊吹二尉はどうするつもり? なにか知ったはずよね?」

リツコ「なんのことでしょうか」

ユイ「使徒の能力を使える状態にまで移行してるわ。同居人である彼女が無事な以上――」

リツコ「無用な詮索をやめるようきつく言い含めております。問題ありません」

ユイ「以前に言ったわよね?」

リツコ「はい。いかなる場合を以てしても責任は私が負います」

冬月「おい、それぐらいでよかろう。作業に必要な質問があれば聞こう」

リツコ「日付けはいつまで遡りますか?」

冬月「全てだ。幼少期から今日(こんにち)に至るまでMAGIの演算能力で総当たりにしろ。やつの分析も忘れるなよ」

リツコ「おまかせください。変異点を見つけ次第、逐一報告いたします」

ユイ「ねぇ、赤木博士」

リツコ「なんでしょうか?」

ユイ「どうしたら私に心を許す?」

リツコ「ご質問の意図を計りかねます」

ユイ「わからないから聞いてみたのよ。夫の真実を知って、私の存在を知って……あなたの心は死んだまま。ゾンビみたいに」

リツコ「安い挑発でなにか釣ろうとなさっているのですか。それもまた、以前と同様に」

ユイ「失敗という教訓を活かし鉄仮面を被ったってわけ。……以上です、取り掛かって」
599 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 16:48:49.28 ID:Nz14Uu3d0
あらら、ちょっとレスしなおし
600 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 16:50:43.88 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「これで何度目?」

諜報部「伊吹二尉のお宅に、ご子息が移られてからですか? 電磁波発生の頻度は――」

ユイ「バカな質問をしたわ。ほぼ毎日ね」

諜報部「いかがいたしますか? その、リユース品ではありませんし、あまりにも」

ユイ「こちらで検討します。疑問を抱かなくていい」

諜報部「はっ! 失礼いたします!」ビシッ

ユイ「シンジったら、もう。安直な手段を選ぶのはよろしくない。あの人に似たのかしら」

冬月「早計すぎるのではないか。やつが意図的に制御できていると言い切れはしまい。あるいは、垂れ流しているだけとも」

ユイ「魂の同化が促進されている点を憂慮すべきですね。アダムに振り回されているのか、意図的に行使できるようになっているのか」

冬月「直接問いただしてもいいが、素直に口を開くとも思えん。穏便に事を進ようとする前提にこだわれば、ちと厄介だな」

ユイ「……」

冬月「なに、割り出すのにそれほど難儀はせんだろう。こうまであからさまになっていては」

ユイ「豊富なサンプルを元に科学に頼るとしますか」

冬月「MAGIか。我々もラクな手段を選んでいるのだからサードチルドレンを笑えんな。便利な道具は人を腐らせもする。……おい」

リツコ「ごようでしょうか?」スッ

ユイ「一度帰宅したのに悪かったわね。行き違いだったとはいえ、残るよう通達するのを怠って」

リツコ「お気になさらず。やりかけの仕事を思い出していたので丁度良いぐらいです」

ユイ「データを洗い出してほしい。主に行動記録」

リツコ「承知いたしました」

ユイ「それと、伊吹二尉はどうするつもり? なにか知ったはずよね?」

リツコ「なんのことでしょうか」

ユイ「使徒の能力を使える状態にまで移行してるわ。同居人である彼女が無事な以上――」

リツコ「無用な詮索をやめるようきつく言い含めております。問題ありません」

ユイ「以前に言ったわよね?」

リツコ「はい。いかなる場合を以てしても責任は私が負います」

冬月「おい、それぐらいでよかろう。作業に必要な質問があれば聞こう」

リツコ「日付けはいつまで遡りますか?」

冬月「全てだ。幼少期から今日(こんにち)に至るまでMAGIの演算能力で総当たりにしろ。やつの分析も忘れるなよ」

リツコ「おまかせください。変異点を見つけ次第、逐一報告いたします」

ユイ「ねぇ、赤木博士」

リツコ「なんでしょうか?」

ユイ「どうしたら私に心を許す?」

リツコ「ご質問の意図を計りかねます」

ユイ「わからないから聞いてみたのよ。夫の真実を知って、私の存在を知って……あなたの心は死んだまま。ゾンビみたいに」

リツコ「安い挑発でなにか釣ろうとなさっているのですか。それもまた、以前と同様に」

ユイ「失敗という教訓を活かし鉄仮面を被ったってわけ。……以上です、取り掛かって」
601 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 17:42:19.47 ID:Nz14Uu3d0
【翌日 ネルフ本部】

リツコ「ミサト、ちょっといい?」

ミサト「ふぁ〜ぁ。なぁにぃ? デスクワークが溜まりまくっててさぁ、あんまり寝れてないのよぉ〜」

リツコ「髪ぐらい整えたらどう? 監査近いんだから」

ミサト「へいへい。ありがたぁ〜いお小言なら耳にタコができるほど――」

リツコ「生活態度があまりにだらしないから逸れてしまったわ。用件は別にある」

ミサト「なんでしょーか」

リツコ「特別プログラムの企画書を用意したの。見てくれない?」パサ

ミサト「文字読みたくないのに〜。……わかりましたぁ! 睨まないでよ」

リツコ「現時点での成績はアスカが頭一つ抜きん出ている。誤差を約10パーセントほど離してね」

ミサト「ちょっと、なにこれ? なんでシンジくんがエースパイロットに? 成績からいってアスカでしょ⁉︎」

リツコ「チルドレン達にはまとめ役の人間が必要だわ。いわゆる中間管理職的な」

ミサト「だったら別個でそういうポジションを設ければいいだけなんじゃないの? シンクロ率で上回っているならまだしも」

リツコ「これまでの働きを多角的に分析し、判断しました。まず最初に太平洋上に出現した使徒は同乗。後半に驚異的な伸びを見せているから彼のおかげね」

ミサト「……」

リツコ「次に、日本でのデビュー戦においては、ミサトの命令を無視し、独断専行。無様にも撤退。その数日後、共同作戦を展開しての撃破」

ミサト「ふぅ〜ん」

リツコ「いずれのケースもアスカの働きだけでと言える? 実戦においてどちらがエースにふさわしいかしらね?」

ミサト「プライドの高いアスカが認められると考えてるの? 到底ありえないわ。反発は必至よ」

リツコ「シンジくんには積み上げた“努力”という下地がない。それぐらいはわかっています」

ミサト「納得させる手を考えてるってこと?」

リツコ「そうではないわ。危機感を煽る為の競争意識」

ミサト「たしかに、そっかぁ。今のあの子はシンクロ率トップという肩書きの上にあぐらをかいてるものね」

リツコ「チームリーダー、そしてエースパイロットは必ず一致する必要はない。指摘には同意する。パイロット達がだらけきっているのも事実だけどね」

ミサト「それなら――……いっ⁉︎ ぺ、ページめくったらとんでもないこと書いてあるじゃない! こ、これって……シンジくんが耐えられる?」

リツコ「あくまで適正を診断する検証。承認はいかがいたしますか? 作戦司令」

ミサト「う、うぅ〜ん。いや、でも、これはさすがに……大丈夫?」

リツコ「案ずるより生むが易しよ。試してみてだめだったら、引き上げればいい」
602 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 18:19:34.21 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】

冬月「企画書は既に目を通してある。正気かね、サードチルドレンを」

ユイ「――戦自へ訓練生として入隊させるとはね」パサ

リツコ「不都合はありません」

ユイ「水面下で対立関係にあるのを知らないわけではないでしょう。そんなことを頼んだ覚えはないんだけど」

リツコ「戦自はネルフに鬱憤が溜まっています。国民ではない、うさんくさい組織の下働き。都合の良い召使い的な存在に成り下がっているのですから」

ユイ「言われなくともわかっています。ガス抜きに使う気?」

リツコ「特別扱いをさせては余計に不満を噴出させます。他の隊員同様の扱いであればあるほど望ましいかと」

ユイ「同じ扱い? 不可能よ」

リツコ「葛城一尉からは精神力を鍛えるのに適した環境だと同意を得ています。加えて、アダムの能力を使えるかの検証にも良い兆候を見出せるはず」

ユイ「電磁波だけでなく、身体能力強化、ね」

リツコ「昨夜のMAGIの結果は、賛成1、反対2でサードチルドレンにアダムの自覚はないとの結論がくだされました」

冬月「なに? ならば使徒が暴走しているということか?」

リツコ「賛成が1あります。限りなく0に近い数字ではあるものの、微妙な結果となってしまいました」

冬月「ううむ」

リツコ「つきましては、伊吹二尉との同居解除を提言いたします。戦自への入隊が決まれば、不要になりますので」

ユイ「肉体的、精神的に慣れない環境、追いつめてからの反応……」

リツコ「いかがでしょうか?」

ユイ「悪くない提案です。期間は設けないように」

リツコ「元よりそのつもりです。短い期間になるのは間違いありませんが、本人に告げると“その間だけ耐えればいい”と思わせてしまう。意味がなくなってしまいます」

ユイ「よろしい。承認します」

冬月「ええい、少し落ち着きたまえ。勇足すぎる。やつはこちらの核となる存在だぞ。あの線の細い身体に軍隊訓練なぞ」

ユイ「無理だと判断したらすぐに呼び戻します。ネルフから戦自へ何名か潜伏しているわね」

リツコ「はい」

ユイ「大至急、連絡をとってちょうだい。私は午後の予定をキャンセルしてあちらの責任者と会食を行います」

冬月「ネルフ総司令がアポもなしに突然の来訪か。てんやわんやする姿が目にうかぶよ。またヘイトを溜めるだろうな」

リツコ「(ここまでは順調。変わりようが本物かどうか。働きに期待してるわよ、シンジくん)」
603 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 18:59:09.75 ID:Nz14Uu3d0
【第壱中学校 昼休み 屋上】

マナ「サードチルドレンが部隊に⁉︎」

上官「こちらも突然の申し出で混乱している。実戦に就くわけではないが」

マナ「配属されるのってどこですか?」

上官「貴様の友人二人と同じ歩兵部隊になる予定だ」

マナ「まさか、そんな偶然……」

上官「我々が慌てふためる事態にならないよう、それを調べるのが貴様の任務なんだがな」

マナ「す、すみません」

上官「まぁいい。任務もとりあえずは解除という形になる」

マナ「えっ? あの、それって、ムサシとケイタを情報室に」

上官「満足に結果を出していないのにか? 考えが甘すぎるぞ、霧島隊員」

マナ「それじゃあ、これまでの話は」

上官「気を急かすな。キミが部隊に帰還した後、サードチルドレンの近くに身を寄せてもらう。解任されるのは潜入であって、情報の引き出し役は引き続きという運びになる」

マナ「あの、いつから?」

上官「明日だ」

マナ「あしたぁっ⁉︎」

上官「いちいちうるさい。電話越しとは言え頭が痛くなる」

マナ「失礼いたしました。急ですね、本当に」

上官「こちらとしても暇なわけでない上にお坊ちゃんのお守りとは。明日から部隊に復帰しろ。学校への必要な申請は済ませておく」

マナ「サードチルドレンは知っているんでしょうか?」

上官「こちらが預かり知るところではない。なにか聞いていないのか?」

マナ「いえ、なにも」

上官「報告について疑問視せざるをえない。本当に距離が近づいていたのか? 良いようにあしらわれていたんじゃないか」

マナ「そんなはずは。まだ知らないだけって可能性もありますし」

上官「至急、確認をとれ。それと、身分を隠す必要もないぞ。どうせ明日になればわかるからな」

マナ「しかし、ネルフに調査していた実態を把握されてしまうのでは」

上官「うまくやれ」

マナ「そんな。どうやって――」

上官「貴様が“女”を使うなりどうとでもしろ。以上だ」ブツッ

マナ「一体、なにがどうなってるの……。シンジくん」
604 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 20:23:21.10 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「今頃職員室で聞いてるんじゃないかしら。断らないと思うわよ、彼」

マヤ「パイロットなのに、どうして……! 使徒が来たらどうするつもりですか⁉︎」

リツコ「使徒は来ない。まだね」

マヤ「先輩……昨日の件ですか? その当てつけに」

リツコ「私情を挟んでいるわけないでしょう。彼も同じよ。マヤの為に行くわけではない」

マヤ「なんでこんなマネしなくちゃいけないんですかっ⁉︎ 相手は中学生なんですよ! なのに、いい大人がよってたかって」

リツコ「年齢は関係ないと言ったのはあなたもなのよ」

マヤ「正しい行動に対してです! 本来ならば、自分の意思を貫くのも難しい年齢なのに」

リツコ「才能あるものの義務よ。スポーツ選手など様々な分野で突出した活躍を見せている子供達は見てごらんなさい。取材の受け答えとか機会はあるでしょう?」

マヤ「シンジくんは普通の子供でしょう! 年相応の!」

リツコ「それはあなたが枠を決め、限界だと見ているから。行き過ぎた心配は若人の可能性を潰す結果になりかねない」

マヤ「詭弁です!」

リツコ「たしかにほんの少し前までの彼ならば、私はこの発案を思いつきもしなかったでしょう。なぜならば、あまりにもイメージと反り合わないから」

マヤ「……!」ギリッ

リツコ「この一週間、ユニゾンの時と日数はそう変わらないけれど、成長は眼を見張るものがある。そう思わない? あの子が化けるなんて誰が予想できた?」

マヤ「そ、それは……」

リツコ「シンジくんを男として見てるのね。中学生と自分に言い聞かせながら、倫理と恋心との狭間で揺れている。世間一般的な常識では認められない、しかし、着実に胸にある情熱を育みつつある」

マヤ「わ、私はそんなつもり」

リツコ「そう? 大事に、大切にしまっているその想い。もし、と考えた経験があるはず。シンジくんの年齢があと数歳違かったら――」

マヤ「やめて、私の想いを汚さないでっ!」

リツコ「そんなつもりはないわ。四十と二十の結婚なんて世にありふれているのだから」

マヤ「先輩……っ!」

リツコ「(恨まれたかしらね。やはり、まだひよ子)」

マヤ「私をネルフに残していただいたことには感謝しています。ですが、もう、先輩を師とは仰ぎません」

リツコ「それでかまわないわ」

マヤ「どうでもいいんですか⁉︎ 私は、先輩以上にシンジくんに感謝しているからです」

リツコ「たった数日で? 私との数年はなんだったの?」

マヤ「こんな扱いをうけて黙っていられますか⁉︎ あの子は誠実に、私に対して真摯に接してくれます」

リツコ「また勝手なイメージで固定化するつもり?」

マヤ「私の想いを馬鹿にしないでください。たとえ数日しかなくても、あの子の為に尽力してみせます」

リツコ「技術サポートしか能のないあなたになにができると言うの?」

マヤ「結構です。先輩に……あなたに言われる筋合いはありません」

リツコ「私の気を引きたいの? なぜわざわざ宣言する必要が?」

マヤ「……っ!」ギリッ

リツコ「仕事に戻りなさい。伊吹二尉。あなたの居場所はここではなく、デスクのはず」

マヤ「この……っ!」

リツコ「言葉でなく能力で示しなさい。それが最後の教え。以上よ」
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/23(土) 21:09:15.54 ID:cB2Fxzbro
大事なパイロットだし無理だったらちゃんと戻すのに過保護だぜマヤちゃん
中学生でも男の意地を見せてきたからリツコだって提案したんだし
606 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/23(土) 21:44:35.04 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】

加持「これはこれは、お早いおかえりで。戦自に、わざわざ敵陣の中に放り込むとは。崖から突き落とす獅子のようなマネをされますね」

ユイ「潜りこめる?」

加持「厳しいでしょう。俺は政府にツラが割れてるもんで」

ユイ「先に潜伏している者達だけでは心許ないわ」

加持「壮絶なイジメが待っているかもしれませんよ。寝食を共に過ごす団体生活な上、シンジくんが厳しい訓練についていけるはずもない」

ユイ「寝込みを襲われる危険性がある。相手は血気盛んな年齢だし、一歩間違えれば殺されるかもしれない」

加持「そいつぁ、ちとすぎると思いますが。辛い状況に陥るのに変わりありませんけど」

ユイ「あの子はパイロットとして行くことになるのよ」

加持「身の丈に合わない玩具を与えられ、ちやほやされていると傍目には見えるでしょうな。……妬み、僻みの対象か。醜いっすね。人間というものは」

ユイ「死んでしまうのは避けなけれれば」

加持「ま、コンタクトを試みますよ。政府の権限を使いこちらからも数名潜伏させておきます」

ユイ「注目度は予想の倍を想定して。鳴り物入りで入ってくる大型新人以上だと」

加持「なにせ、人類を守る英雄ですしね。ところで、そろそろ俺にも餌がほしいんですが」

ユイ「構造の断面図の件? 先生」

冬月「どうせ催促されるだろうと予見していた。既に用意してある」スッ

加持「準備がはやくて助かります。このUSBメモリの中身は?」

冬月「半分正確で、半分は偽のシロモノだ。ハリボテに過ぎんよ」

加持「なるほど。政府に渡すのは、肝心なところを伏せた部分ですか」

冬月「なにもなしではキミの安全が危うくなるからな。譲歩した結果だと思え」

加持「俺を使えると評価してくれてるんでしょ。甘んじて受けますよ」カチャ

ユイ「信じさせるには充分なデータのはずよ」

加持「了解。ご子息の件もこれで動きやすくなるでしょう」

ユイ「明日、シンジは入隊する。急いで」
607 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 22:08:17.39 ID:Nz14Uu3d0
【第壱中学校 校長室前】

シンジ「失礼しました」

マナ「はぁっ、はぁっ、ようやく見つかった、職員室に行っても、答えられないって言うからっ」

シンジ「マナ? ……なにか連絡があったんだね」

マナ「ほん、となの? ……ふぅ」

シンジ「今聞いたところなんだ。明日、戦自に入隊することになった。期間は設けられてない」

マナ「どうして? なんでいきなり?」

シンジ「僕にもなにがなんだか。思い当たる節がないわけじゃないけど」

マナ「……あるの?」

シンジ「たぶん、母さんが僕が使ってる力に気がついたんだと思う。隠し通ないとは思っていたんだ。でも、僕に直接確認せず、こうくるとはねぇ」

マナ「なんのこと言ってるかわからないけど、他人事みたいな感想を呑気に! 戦自じゃネルフはっ!」

シンジ「訓練ってきつい?」

マナ「こわがらせるかもしれないけど、正直に言うね。身体を鍛えるのが好きな人でも、夜中に逃げ出すぐらい」

シンジ「そんなに?」

マナ「装備って重い物だと数十キロの重量があるの。だから基礎訓練は徹底的に行われる。筋肉痛なんて当たり前、むしろ毎日。入隊間も無く行われるのは、体力作りと仲間意識のイロハ」

シンジ「そう、なんだ」

マナ「撤回できないの? その、貶してるわけじゃないんだけど、シンジくんの身体つきじゃ。……本当につらいと、思う」チラッ

シンジ「うぅん」

マナ「いじめられるかもしれない。四六時中一緒にいるわけじゃないし、かばいきれるかどうか」

シンジ「一緒って?」

マナ「あぁ、そっか。私も明日付けで部隊に復帰するように通達があって。上官、すごく不機嫌だったけど」

シンジ「聞いてないからか。ごめんね、伝えることできなくて」

マナ「私を気遣ってる場合じゃないんだよ!」

シンジ「それなら、マナの友達とも会えるかもしれないね」

マナ「す、すぐに会えると思うけど。なにしろ、同じ部隊だし、って、そうじゃなくって」

シンジ「トウジたちにも伝えよう。別れの挨拶はちゃんとしなくちゃ」スタスタ

マナ「ちょ、シンジくんってばぁ!」
608 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 22:53:56.21 ID:Nz14Uu3d0
【教室】

トウジ「な、なななななんやとぉっ⁉︎ シンジが、明日っから戦自に入隊っ⁉︎ おまけに霧島までっ⁉︎」

シンジ「うん」

ケンスケ「ふ、二人一緒にって。まさか、駆け落ちなんじゃ」

マナ「そんなわけないでしょ⁉︎」

トウジ「いつ決まったんや!」

アスカ「まじで言ってんの?」

シンジ「ちょっと落ち着いて。決まったことに慌てても仕方ないよ。質問は一人ずつ答えるから。まず、トウジ、さっき」

トウジ「さっきて⁉︎ ネルフはどないするんや⁉︎」

アスカ「ミサトは?」

シンジ「今のところはなにも連絡がない。待ってたらくるんじゃないかな」

アスカ「シンジ、ちょっと」

ケンスケ「お、おい。僕たちの質問がまだ」

アスカ「マナだって戦自に行くんでしょ? 質問したいこと済ませといて。あたしはこいつに大事な用があんの」

シンジ「わかった、いいよ。アスカ」スタスタ

アスカ「……」スタスタ

シンジ「教室の隅でいいんじゃないかな。声は潜めるし、カヲルくんのことだよね」

アスカ「そーよ! どうすんのよ、なんでいきなりこんな事態になってるわけ!」

シンジ「母さんがなにか手引きしてるのは間違いない。わかるのはこれだけ。もしかしたら力を使ったのがバレたのかも」

アスカ「はぁ……やっぱり体育館でのこと、誤魔化しきれなかったの」

シンジ「いや、それだけじゃないよ」

アスカ「他にもなにかあんのぉ? 期限はいつまで?」

シンジ「いや、特に言われなかった」

アスカ「パイロットは続けるの?」

シンジ「うん、そうだね。ただ、アスカと会えるのはこれまで通りとはいかないんじゃないかな」

アスカ「フォースはどうする気?」

シンジ「カヲルくんは僕が手を出せない状況では、たぶん、襲ってこないよ」

アスカ「根拠は?」

シンジ「可能性を見せてくれって言ってた。だから、僕がどう打開するかを試したいんだと思う」

アスカ「不安の残る話だわ。ま、あんな馬鹿力発揮できるんだから余裕でしょ。とどのつまり、筋肉バカの集まりよ。首席とれる成績残してさっさと帰ってきてよね」

シンジ「使徒の力は、使わない」

アスカ「ボリュームが小さくて聞き間違えしたのかしらぁ? もう一回言ってくれる?」

シンジ「正確には、使えないんだ。母さんにバレてるという確証を持てないから」

アスカ「軍隊舐めてない? 米海軍の話してるの聞いたことあるけど、戦自はクレイジーっつってたわよ」

シンジ「そういうことじゃないよ。繰り返しになるけど、入隊よりも母さんがこわいんだ」

アスカ「あんた、これまでろくに身体を鍛えた経験ないんでしょ? あの瞳の色してないときは普通の人間と同じなのよね?」

シンジ「うん」

アスカ「血反吐はくわよ」

シンジ「まぁ、やるしかないね」
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/24(日) 03:30:54.83 ID:23pHQwepO
戻ってきたらリっちゃん落ちるな
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/24(日) 11:33:44.29 ID:dhs52MB4O
すげー面白いこれ
展開がゲーム化しててもおかしくないぐらいじゃんというかしたい
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 03:13:03.62 ID:mnK7Tb5ko
遅いな、シンジくん
612 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/25(月) 16:12:30.59 ID:ttRCl0Z50
【夜 ミサト宅 リビング】

アスカ「はぁ? まだシンジに言ってないの?」

ミサト「うん、まぁ……その、ね。通達は既に。だから、連絡してない」

アスカ「歯切れ悪いわねぇ。あたしたちの上官にあたるミサトが伝えなくて業務連絡だけなんて」

ミサト「なんか、言ってた?」

アスカ「自分で確認したらいいじゃない。そういうところばっかり。ずるいわよ、そんなの」

ミサト「悪いとは思ってるわ。ただ、シンジくんの為になることだとも思うのよ」

アスカ「そういうことを言ってるんじゃないの! ミサト一言、声をかけるべきでしょって!」

ミサト「たまに、何考えてるのかわからないところがあるのよ、あの子。最近は、特にその傾向が強くて」

アスカ「だから逃げるの?」

ミサト「帰ってきたら、ちゃんと話をするわ。だめでも褒めてあげるつもり。行くって即決しただけでもたいしたものよ」

アスカ「はぁ……戦自からネルフに通うようになるの?」

ミサト「いえ、ここからだと距離が離れすぎてるし、レイにサポートしてもらうけど弐号機の出番が多くなる。新兵器のテストもあるし」

アスカ「ってことは、あたし?」

ミサト「そうよ。ちょっち、これ見て」パサ

アスカ「……? なに、これ?」

ミサト「リツコが発案した、パイロットの役割分担」

アスカ「シンジがエースっ⁉︎ なんで⁉︎」バンッ

ミサト「彼が不在の間は、アスカの試験運用期間でもあるの」

アスカ「私の? そんな必要ないでしょ! シンクロ率はトップで」

ミサト「だからよ。いくらテストで成績が良かったとしても実戦で役にたたなければ――」

アスカ「あたしは使徒を二体も撃破してるでしょっ!!」

ミサト「いずれも、シンジくんのサポートがあってよね」

アスカ「……っ!」

ミサト「大きな枠でいえば、私達は全体がチームなんだし、助け合うのは間違いじゃない。むしろ良い傾向だと思うわ。だけど、作戦を立案するにあたり実力差が明確に把握できている方が都合がいいのよ」

アスカ「適材適所って言いたいの? エースも、チームリーダーも」

ミサト「あなたの実力で黙らせればいいだけよ。自信、ないの?」

アスカ「あるに決まってるわっ! あたしは、やるしかないんだもの」

ミサト「私だけじゃない、ネルフ上層部、赤木博士を唸らせる結果を求めます」

アスカ「……」ギュウ

ミサト「(やはり、競争は良い刺激になるみたいね。さすがリツコってわけか)」

アスカ「わかった。シンジよりもあたしがエースにふさわしいって証明してみせる」

ミサト「その意気よ。あたしも期待してるわ」

アスカ「(フォースのことは、とりあえず忘れなくちゃ。シンジのことも)」
613 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 16:35:47.27 ID:ttRCl0Z50
【マヤ宅 リビング】

シンジ「あの、マヤさん。お通夜みたいな暗い表情はやめてください。僕なら平気ですから」

マヤ「シンジくん。本当に脅されてるわけじゃないの? 私が、昨日、ポカしたから」

シンジ「違います」

マヤ「今の戦自は、ネルフに良い顔はしないわよ。この前、日向くんが行った時だって、嫌がらせされたって言ってた」

シンジ「……」

マヤ「エヴァが出撃する前、まず軍事力を使って使徒の持つ能力、正しくは戦力を計るの。その為に、戦自は、得体の知れない組織の下働きとして……時間稼ぎをする戦死者を毎回だしてる」

シンジ「そうですね」

マヤ「ネルフの要請が悪いわけじゃないの。高官達は、自分達のメンツを守るために無理だとわかっていても人材を投入してるから」

シンジ「……」

マヤ「でも、当事者である戦自内部はそう思っちゃくれないわ。全部、私達のせい。一番悪いのは使徒がもちろんだけど、ぶつけるところがそこしかないの」

シンジ「はい」

マヤ「……そういった恨みや遺恨がある場所に訓練生として送りこまれる。私、心配だわ」

シンジ「心配してくれて、ありがとうございます」

マヤ「なにかないか、考えたんだけど。オペレーターが主業務の私にできることなんて、明日の準備ぐらいしか」

シンジ「気持ちだけで充分ですよ。マヤさんが感謝して、心配してくれるだけで。僕は間違ってない、そう思えるから」

マヤ「シンジくんっ!」ギュウ

シンジ「わっ! あ、あのっ」

マヤ「無事に帰ってきてね。待ってるから」

シンジ「……はい」

マヤ「帰ってきたら、私の気持ちも、きっち地に足がついてると思う。そしたら、シンジくんに……」

シンジ「え?」

マヤ「今はまだ、天秤がどっちに傾いてるのか見定められない。でも、なにがあっても私はあなたの力になってみせる。ずっと味方よ。約束します」

シンジ「……ありがとうございます」

マヤ「立派よね、本当に。中学生とは思えない」

シンジ「いや、そんな」

マヤ「よーしっ、今夜は腕によりをかけて料理作っちゃうねっ!」
614 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 16:58:18.87 ID:ttRCl0Z50
【翌日 オスプレイ内 移動中】

戦自パイロット「今のうちに第三新東京市の景色をせいぜい楽しんでおけよ!」

シンジ「え? なんですか? プロペラとエンジン音がうるさくて」

戦自パイロット「外だよ! 外! しばらくはこいつが見納めになるだろからな!」

シンジ「あぁ」ぼんやり

戦自パイロット「なにをやらかしたか知らないがそんな華奢な身体つきで戦自への訓練生とはな! パイロットなんだろ? お前!」

シンジ「はい」

戦自パイロット「お坊ちゃんのくせしてパイロットに選ばれたんだろ? 俺たちの中からじゃなく! なんでお前みたいなナヨっちいガキが選ばれたんだ?」

シンジ「わかりません」

戦自パイロット「ふん、なんにせよもうすぐ到着する! 覚悟しとけよ小僧! 訓練はきついぞ!」

シンジ「はい」

戦自パイロット「声を張り上げろ! ボソボソと喋ってんじゃねえっ!!」

シンジ「あ……は、はいっ!」

戦自パイロット「(ネルフで使えないからこったきたのか? ちっ)」

マナ「私語は謹んでください! 到着までの予定は?」

戦自「ヒトヒトマルマルだ!」

マナ「シンジくん。ついたら、上官か分隊長から挨拶を求められると思うから」

シンジ「うん、わかった」

マナ「いい? 声は小さくしちゃだめよ? 腹筋にしっかり力いれて。恥ずかしいなんてもっての他。声を枯らす気持ちで」

シンジ「うん」

マナ「慣れてないから、気後れしちゃうと思うけど。できるだけ、理由を与えたくないの」

シンジ「理由?」

マナ「懲罰を与える理由。はぁ、無事に済めばいいけど」
615 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 18:23:48.27 ID:ttRCl0Z50
【厚木基地 滑走路】

分隊長「配置につけ!」

ムサシ&ケイタ「はっ!」ザッ ザッ

マナ「シンジくん、手」

シンジ「ありがとう」

ムサシ「ぷっ、なんだあいつ。女に手を引かれてんか」

マナ「ムサシ! 聞こえたわよ!」キッ

ムサシ「久しぶりなのに随分とご挨拶じゃないか」

ケイタ「やめろよ、二人とも」

分隊長「休めッ! 玩具のパイロットというのはキミか?」

シンジ「はい」

分隊長「声が小さい! もう一度ッ!」

シンジ「は、はいっ!」

分隊長「軍曹からはえこひいきをするなとの命令だ。メディカルチェックをまず受けてもらう。おい。奴を敷地内にある施設に連れていってやれ」

ムサシ「こんなやつがパイロットだったのか……いつっ! いってぇなぁっ! 頭叩くなよ!」

マナ「なに威張ってるのよ。ムサシだって入隊間もない頃はビクビクしてたくせに」

ムサシ「俺はこの隊の有望株だからな」

マナ「虎の威を借る狐みたいなこといっちゃって、一人じゃなんにもできないくせに」

ムサシ「こいつよりはできると思うけどねぇ」

マナ「前はそんなこと言わなかったのに。変わったわね」

ムサシ「ふん」

マナ「いい加減にしてよ! みっともない!」

ケイタ「はぁ……それじゃ行こうか。ネルフのパイロットくん」

シンジ「シンジ。碇シンジ」

ケイタ「ん? あぁ、自己紹介か。浅利ケイタ。キミと同じ隊の少年兵だよ。そんで、あっちで威張ってるのがムサシ・リー・ストラスバーグ。僕とマナはムサシって呼んでる」

シンジ「そっか」

ケイタ「でも、本当に大丈夫なの? 訓練に耐えられるように見えないけど」

ムサシ「おいケイタ! はやく済ませてこいよ! しごけると思うとワクワクしてるんだ!」

マナ「ムサシぃっ!」

ムサシ「なんだよ! 人を踏み潰すためにあのロボットに乗ってるんだろ! お前!」

マナ「なんてこと言うのよ!」

ムサシ「宇宙からくる怪獣と戦うって言われてちやほれされてるんだろどーせ!」

マナ「……っ! 」ブンッ

ムサシ「おっと」パシッ

マナ「くっ」

ムサシ「担当は情報室だろ、さっさと行けよ」

分隊長「そこまでにしておけ。焦る必要はない」

ムサシ「はっ!」ビシッ

分隊長「地獄を見せてやる。浅利隊員、なにをぼさっと突っ立っている。腕立てさせられたいのか」

ケイタ「は、はっ!」ビシッ

シンジ「ふぅ……」ポリポリ
616 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 18:42:52.60 ID:ttRCl0Z50
【軍事病院】

ケイタ「あ、検査終わった?」

シンジ「うん、これからどうすればいいの?」

ケイタ「僕たちが寝泊まりする場所を紹介するよ。歩きながらでいいからいくつか聞いてもいい?」

シンジ「いいよ」

ケイタ「ここに来るのこわくなかったの?」

シンジ「特には。なにをするのかもわからないし」

ケイタ「へぇ、戦自って海外からも過酷だって評されてるんだけど。ちっとも知らなかったのか」

シンジ「すこし、話を聞いたぐらいかな」

ケイタ「楽しいとこじゃないよ、ここは。すぐに他のことなんか考えられなくなる。きつい、それだけ。ははっ」

シンジ「長いの? ここ」

ケイタ「僕たちはまだそんなに。……数年ぐらいかな。夜中に逃げ出した経験あるんだ、僕。あ、もしかしてネルフじゃもっときつかったりするのかな」

シンジ「肉体を鍛えたりはしないよ」

ケイタ「そっか。それじゃ覚悟しておいたほうがいいよ。予想の三倍、もっとかな。身体が慣れるまで。……あと心も」

シンジ「キミはネルフに対してなにも思ってないの?」

ケイタ「どうだろう。キミがあまりにも普通すぎたから、なんだか拍子抜けしちゃって」

シンジ「……」

ケイタ「ただ、ここには味方なんていない。そう思って間違いないと思うよ。僕も含めてね」

シンジ「……わかった」

ケイタ「どうやってロボットのパイロットに選ばれたの? なにか試験があったの?」

シンジ「なにも。ただ乗れって」

ケイタ「ええっ⁉︎ 技術訓練で良い成績だったからとか、なにか」

シンジ「なにもない」

ケイタ「へ、へぇ」

シンジ「マナとは幼馴染だって聞いてるけど」

ケイタ「よく知ってるね」

シンジ「うん、まぁ」

ケイタ「マナとは小さい頃から一緒だったよ。戦自に入ろうって決めたのはムサシだけど。僕とマナはムサシについてきたんだ」

シンジ「さっきの?」

ケイタ「あいつも昔はこんな感じじゃない気さくなやつだったんだ。世の中が悪いよ。満足に飯も食えない」

シンジ「……」

ケイタ「マナはね、内臓が悪いだ」

シンジ「えっ? そうなの?」

ケイタ「うん、これは本人に言っちゃだめだよ。僕が“また”口が軽いって責められるから。だから、ムサシは余計はりきっちゃって」
617 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 18:59:56.13 ID:ttRCl0Z50
シンジ「内臓ってどうして?」

ケイタ「最初はマナもね、実務部隊にいたんだ。僕たちと離れたくない、たっての希望で」

シンジ「……」

ケイタ「でも、訓練の内容が過酷すぎた。連日、吐いちゃって、胃に負担がかかっちゃったんだ。騙し騙し、繰り返しているうちに倒れてしまった」

シンジ「病院に?」

ケイタ「うん、ここだよ。担ぎこまれて精密検査をしたら軍医からストップがかかった。不謹慎だけど、僕はすこしうらやましいと思ったな。もうきつい思いしなくて済むんだから」

シンジ「……」

ケイタ「国のため、国民のため、家族のため、僕はそんな大義があって入隊したわけじゃない。でも、死ななくちゃいけないんだろうね、ここにいる以上は」

シンジ「覚悟、できてるの?」

ケイタ「うん。できてる。僕には、ムサシとマナしかいないから。逃げ出したこともあったけど、今では、そう思うよ」

シンジ「そっか」

ケイタ「ムサシ、最近、暴走してるんだよな」

シンジ「……?」

ケイタ「あぁ、今のは独り言みたいなもん。上官の言うことを間に受けすぎるっていうか、戦地に出たがってるんだよね」

シンジ「戦地って、生身で出ちゃ死んじゃうじゃないか」

ケイタ「感覚がね、麻痺しているんだよ。ここにいると。そういう無謀なのが、勇猛だって思えてくる。キミはも数年過ごしたらわかるようになるよ」

シンジ「……」

ケイタ「さ、敷地内は広いから、この建物をでたらジープが止めてある。他の隊員と相乗りになっちゃうけど……」

シンジ「うん、わかった」

ケイタ「僕は、かばわないからね」ボソ

シンジ「え? なにか言った?」

ケイタ「なにも。碇隊員。戦自へようこそ」
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 19:02:45.95 ID:0Jt/Jhb1o
トウジとケンスケみたいな二人組なんだな
619 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 19:18:05.51 ID:ttRCl0Z50
ムサシ、マナ、ケイタの知り合った時期や関係性などは鋼鉄のガールフレンドと似通ったところもありますが当SSではけっこう違ってるんでそこは一応書いときます。
特にケイタはゲーム中でもセリフらしいものがないので背景設定を元に創作してます。
620 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 20:01:44.46 ID:ttRCl0Z50
【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「ミサトがきてるのかと思えば、アスカじゃない。ずっと待ってたの? 学校は?」

アスカ「今日は昼まで」

リツコ「そういえば土曜日だったわね。それで、なんのごよう?」

アスカ「ミサトから聞いた。新兵器テストあるんでしょ?」

リツコ「必要になればこちらから声をかけます」

アスカ「焦れったい。なにかないの?」

リツコ「功を焦っても同じことよ。自然体でいるのが一番」

アスカ「負けらんないのよ。シンジなんかに」

リツコ「ふぅ、あなた頭がいいのに」

アスカ「褒めてんの? 貶してんの?」

リツコ「この場合は残念に思っている」

アスカ「ぐっ」

リツコ「試験期間の話、ミサトから聞いたのね」

アスカ「……」コクリ

リツコ「私達は、なにもアスカに失望しているわけではない。ただ、小さなコミュニティの中にも役割が必要でしょう。円滑にことを運びやすくなる」

アスカ「それは理解してる。だからこうしてるんじゃない」

リツコ「わかってないわ。待ちなさい、と言ってるのよ。来るべき時がきたら、最高の結果をだせばいい。小さなポイント稼ぎなんてせこい真似しないで」

アスカ「……っ!」

リツコ「パイロットなのよ。技術部の仕事を手伝えるとおもってるの?」

アスカ「思って、ないけど」

リツコ「回れ右する準備は済んだ?」

アスカ「どうして、ファーストじゃなく、あたしでもなく、シンジなの」

リツコ「一番結果を残してるから。シンクロテストだけではない、実戦も含めてね」

アスカ「シンジだって! 報告書を読んだらヤシマ作戦はファーストと一緒にっ!」

リツコ「その前の二体はシンジくんが一人でやってるわ。特に最初に乗った場合なんて、レイでさえ不可能だったことを成し遂げてる」

アスカ「……」

リツコ「信じられる? レイもアスカも、エヴァに乗るためだけに準備をしてきた。長い間ね。ところが――彼ははじめて乗って、シンクロ率40パーセント。起動指数を叩きだした」

アスカ「……」ギリッ

リツコ「その後の活躍。性格のことはおいておくと、シンジくんこそが、エースにふさわしい」

アスカ「それ、本気で言ってんの? チームリーダーも?」

リツコ「ぐいぐい引っ張っていくタイプではないけれど、面倒見が悪くないところを着目しました」

アスカ「はぁ? そんなんでまとめられると」

リツコ「あなたならできると言うの? レイやシンジくんを頭から抑えつけるだけではなくって? 手柄は全部独り占め」

アスカ「あたしが一番うまくできるんだからその方がいいでしょ!」

リツコ「駄目よ。それじゃ、実力以上を引き出してもらわないと。リーダーは消去法です。彼以外にまかせられる人がいないと言えば正しいかしらね」

アスカ「な、なんですってぇ」

リツコ「この際だからはっきりと言ってあげる。エースに捕らわれているアスカでは、リーダーたる資格はない」

アスカ「ぐっ! もういいっ!!」バァンッ クルッ スタスタ
621 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 22:36:57.65 ID:ttRCl0Z50
【ネルフ本部 発令所】

マヤ「たしかなの?」

シゲル「あぁ、葛城一尉が話してるのをちらっと聞いたんだ。なんでも、シンジくんをオフェンスにして後の二人はサポートに回すらしいぜ」

マコト「ケースバイケースなんじゃないのか? エヴァが三体もいるんだし」

マヤ「そうよ。それにエースなんて聞こえはいいけどオフェンスって……。一番危険な役割じゃない」

シゲル「たしかに。先陣、切り込み隊長的な扱いに思えるよな」

マコト「次にくる使徒の能力や戦力がわかってるなら決まったフォーメーションで対応できるけどなぁ。そうじゃないし」

シゲル「競争心を駆り立てようとしてんのかねぇ」

マコト「なるほど。それはありえる」

マヤ「アスカは、反発するでしょうね」

マコト「違いない」

シゲル「当のシンジくんは戦自だっけ。今日から」

マコト「そっちのが驚きだよ。まさか戦自とは。うぅ、想像しただけで震えちまう」プルプル

シゲル「マコトは最近行ったんだろ? 視察」

マコト「物資の点検に。まぁ、陰湿だったよ」

シゲル「あーらま。体育会系ってそういうとこあるよな。さっぱりしてそうで」

マコト「ネルフの関係者ってだけで疎ましい存在なんだろ」

マヤ「……」

シゲル「どったの? 急に深刻な顔して。お通じが悪いの?」

マヤ「ねぇ、日向くん。次に行くのっていつ?」

マコト「どこに……戦自? ちょうどライフルの予備部品を確認しなくちゃいけないから三日後だけど」

マヤ「代わってくれない? なにかおごるから」

マコト「いや、こっちとしてはむしろ……なにか見たい兵器でもあるのか?」

マヤ「そんなとこ。気分転換にもなるかなって」
622 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 23:03:56.50 ID:ttRCl0Z50
【厚木基地】

シンジ「はぁっ、はあっ、はぁっ」タッタッタッ

ムサシ「どうしたパイロット! 二周遅れだぞ!」バンッ

シンジ「うっ、はあ、はぁっ」

ムサシ「5キロ走っただけでへばっちまったのか? やっぱりたいしことねーな!」

シンジ「む、胸がっ」

ムサシ「心臓が苦しいだろ? そりゃそーだ! 心拍数が上がってるからな! 自分で脈はかってみな! でも足は止めるなよ!」

シンジ「ちょ、ちょっと、少し、歩かせて」

ムサシ「駄目だ! きついときこそ根性を見せろ! 吐くまで走れ! 吐き終わったらまた走れ!」

シンジ「こっ、これって、オーバーワークじゃ」

ムサシ「甘ったれたことを言うな! 休みたいだけだろうが!」

教官「なにを喋っとるか貴様らぁッ! その場で停止!!」

ムサシ「失礼いたしましたっ!」ビシッ

シンジ「よ、ようやく、止まれ――」

教官「懲罰! 腕立て! 100回!!」

シンジ「……っ⁉︎」ギョ

ムサシ「了解ッ! いち、に、さん、し――」

シンジ「はぁ、はぁっ……」

教官「なにをしとるか碇隊員! 命令が聞こえなかったのかッ!」

シンジ「す、すいません」スッ

教官「なんだそのへっぴり腰は! まだ追加されたいのか!」

シンジ「ぐっ、やります。ちゃんと、やります」ググッ

教官「しっかりと顎先をつけて持ち上げるんだ! 笛吹いてやるから合わせてやれ!」ピッピッピッ

ムサシ「――じゅうはち、じゅうきゅう」

シンジ「ご、ろく、なな」

教官「腕が震えとる!!」

シンジ「そ、それはしかたな――」

教官「つべこべ言うな!! まだ喋る余裕があるのか!」

シンジ「(やっぱり、生身じゃ、きついな)」

教官「どうしたどうしたぁっ! 動きが遅いぞ! 隣を見てみろ!!」

ムサシ「にじゅうきゅう、さんじゅう」

シンジ「(下向いてれば瞳の色に気がつかれないはずだし、少し、頼るか……というか、もう限界……)」

教官「こんなやつがあの紫色の機体のパイロットだったとは、まったく。……ん?」

ムサシ「さんじゅうご、さんじゅろく」

シンジ「10、11、12、13、14、15、16、17、18」

教官「お?」

ムサシ「さんじゅうはち……?」

シンジ「19、20、21」

ムサシ「な、なんだこいつ。急に」

シンジ「(いけない、やりすぎたか)」

教官「な、なんだぁ? 今度はまたプルプル腕が震えだして」

シンジ「に、にじゅうにぃ」プルプル

教官「火事場の馬鹿力か」
623 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 23:37:49.30 ID:ttRCl0Z50
【一時間後】

シンジ「はぁっ、はぁっ」

教官「ちっ、もう時間だ。碇隊員、止まれ」

シンジ「よ、ようやく休憩」

教官「勘違いするなよ。残ったメニューは全て、今日中に終わらせる。いいな? 全てだ。それまでは眠れないと覚えとけ」

シンジ「(残り、15キロか)」

教官「第壱隊集合!!」ピーーーーーッ

シンジ「ふぅ、ふうっ」

教官「整列しろ!」

ムサシ「おら、チンタラすんな。さっさと並べ」

ケイタ「……」

シンジ「わ、わかりました」

教官「遅いっ! もっと早く並べ! 戦場でも貴様らはらそんな動きをするのかッ!」

ムサシ「申し訳ありません教官っ! 点呼開始しますっ!」

教官「あぁ、点呼は省略する。なにせお坊ちゃんのせいで時間をおしてるからな」

ムサシ「はっ!」ビシッ

教官「各員、隣にいるやつの顔をよく見ておけ。そいつが貴様らの戦友になる。弾から守り、また敵を倒してくれる」

ムサシ「お前には無理だよな」

シンジ「はぁ、はぁっ、ふぅー」

教官「我々は家族だ! 仲間だ! 最も強い絆で結ばれてなくてはならない! 信用できないものに命を預けられるか⁉︎」

少年兵一同「できませんっ!」

教官「そうだっ! 全員が仲間だ! 志しをひとつにしろ! 一致団結!」

少年兵一同「一致団結っ!!」

教官「我々に倒せない敵はいないっ! 死んでも倒せ! 仲間のために! 家族のためにっ!!」

シンジ「(うわぁ、すごい、な)」

教官「今日から諸君に新しい家族が加わった。紹介しよう。……碇隊員っ! 前へ!」

シンジ「うっ、は、はい」

教官「声が小さいっ!!」

少年兵A「なんだよ、あいつ。あんなのかよ」

シンジ「はいっ!」

教官「手短に挨拶を済ませろ」

シンジ「碇シンジです! よろしくお願いします!」

少年兵B「なんでこんなやつが?」

ムサシ「……」ニヤニヤ

教官「さがれ、碇隊員。貴様らもゆくゆくは一個師団に合流し編成される。そうなったら、この日々がまだマシだと思える戦場が待っている。敵は容赦などかけてくれない」

少年兵一同「……」

教官「この日々を己の糧にしろ! 血にしろ! 肉にしろ! 学んだことが自分を守ってくれる! 家族を守ってくれる!」

少年兵一同「はいっ!!」

教官「一人でも多くの敵を道連れにしろ! 一人一殺で満足するな!! 気合いを叫べ!!」

少年兵一同「うおおおおおっ!!」

教官「よぉーし! 100メートルダッシュだ! 10セットッ!!」

シンジ「(な、なんなんだよ、これ)」
624 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:03:50.57 ID:MW53ChTl0
【夕方 トイレ】

少年兵A「おい、新入り!」ブンッ

シンジ「え? うっぷ」ベチョ

少年兵A「トイレ掃除ひとりでやっとけや。できるだろ?」

シンジ「でも、命令では、みんなで」

少年兵B「うるせえ! できるだろって聞いたんだよ!」

ケイタ「……」ゴシゴシ

少年兵A「生意気だな、お前。どうせ体験だとか甘い考え抱いてきたんだろ?」

シンジ「いや、そんなつもりは」

少年兵B「ほらよ、モップ」カラン

少年兵A「浅利、行くぞ」

ケイタ「うん、わかった」

シンジ「えっ、ちょっと待ってよ。集合時間までに僕が全部?」

少年兵A「きちんと磨きあげろよ! あとで教官のチェックがはいるからな!」

シンジ「そんなっ! 終わりっこないよ!」

少年兵B「終わらせるんだろうが!」

ムサシ「おい、お前らなにやって――」

少年兵A「新入りにここのルールを教えてやってたんだ」

ムサシ「ははぁん。俺も仲間に入れてくれよ」ニヤニヤ

少年兵B「なぁ? ホントなのか? 黙認してくれるって」

ムサシ「間違いない。上官たちはこいつを好きにしていいって言ってたぞ。徹底的にやってやれって」

ケイタ「む、ムサシ……」

ムサシ「行くぞ、ケイタ。パイロット、ちゃぁ〜んと掃除しとけよ?」

シンジ「(そうか、そういう感じね)」

ムサシ「なんだぁ? その反抗的な目つきは」

シンジ「命令なんだろ。だったら、みんなでしなくちゃ」

ムサシ「ぷっ、おいおい聞こえたかよみんな」

少年兵A「お前が俺たちの仲間に数えられてると思ってるのか? ネルフの犬っころが!」

少年兵B「帰りたくなったんでちゅかぁ?」

シンジ「……そうじゃない。与えられた命令に責任を――ぐっ!」ドサッ

少年兵A「ロボットに乗ってるやつが俺たちに説教するな! 守られた環境で戦ってヒーロー気取りかよっ!!」

シンジ「やったことないくせに」

ムサシ「あ?」

シンジ「乗ったことないくせによくそんなこと言えるね」

ムサシ「乗れねーんだよ! 俺たちはなぁ! 地面這いつくばって生きてくしかねぇ! 雑草の気持ちがわかんのか! 踏みつけてるやつに!!」

マナ「あんたたちっ⁉︎」タタタッ

ムサシ「ちっ、うるさいのがきた」

マナ「――シンジくんっ⁉︎ 大丈夫っ⁉︎」

ムサシ「マナ。そいつに近づくな。雑巾で濡れてるからきたな……」

マナ「汚いのはあんた達の心でしょ⁉︎ 恥ずかしいと思わないの⁉︎ 彼だって国民の為に戦ってるのよ! ムサシ……! どこまで変わっちゃったの⁉︎」

ムサシ「俺はなにも変わっちゃいない!」

マナ「人を[ピーーー]なんて嫌だって言ってたムサシは、どこに。こんな、いじめみたいな真似して」
625 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:07:02.72 ID:MW53ChTl0
あらら、saga忘れたんでレスしなおし
626 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/26(火) 00:07:34.67 ID:MW53ChTl0
【夕方 トイレ】

少年兵A「おい、新入り!」ブンッ

シンジ「え? うっぷ」ベチョ

少年兵A「トイレ掃除ひとりでやっとけや。できるだろ?」

シンジ「でも、命令では、みんなで」

少年兵B「うるせえ! できるだろって聞いたんだよ!」

ケイタ「……」ゴシゴシ

少年兵A「生意気だな、お前。どうせ体験だとか甘い考え抱いてきたんだろ?」

シンジ「いや、そんなつもりは」

少年兵B「ほらよ、モップ」カラン

少年兵A「浅利、行くぞ」

ケイタ「うん、わかった」

シンジ「えっ、ちょっと待ってよ。集合時間までに僕が全部?」

少年兵A「きちんと磨きあげろよ! あとで教官のチェックがはいるからな!」

シンジ「そんなっ! 終わりっこないよ!」

少年兵B「終わらせるんだろうが!」

ムサシ「おい、お前らなにやって――」

少年兵A「新入りにここのルールを教えてやってたんだ」

ムサシ「ははぁん。俺も仲間に入れてくれよ」ニヤニヤ

少年兵B「なぁ? ホントなのか? 黙認してくれるって」

ムサシ「間違いない。上官たちはこいつを好きにしていいって言ってたぞ。徹底的にやってやれって」

ケイタ「む、ムサシ……」

ムサシ「行くぞ、ケイタ。パイロット、ちゃぁ〜んと掃除しとけよ?」

シンジ「(そうか、そういう感じね)」

ムサシ「なんだぁ? その反抗的な目つきは」

シンジ「命令なんだろ。だったら、みんなでしなくちゃ」

ムサシ「ぷっ、おいおい聞こえたかよみんな」

少年兵A「お前が俺たちの仲間に数えられてると思ってるのか? ネルフの犬っころが!」

少年兵B「帰りたくなったんでちゅかぁ?」

シンジ「……そうじゃない。与えられた命令に責任を――ぐっ!」ドサッ

少年兵A「ロボットに乗ってるやつが俺たちに説教するな! 守られた環境で戦ってヒーロー気取りかよっ!!」

シンジ「やったことないくせに」

ムサシ「あ?」

シンジ「乗ったことないくせによくそんなこと言えるね」

ムサシ「乗れねーんだよ! 俺たちはなぁ! 地面這いつくばって生きてくしかねぇ! 雑草の気持ちがわかんのか! 踏みつけてるやつに!!」

マナ「あんたたちっ⁉︎」タタタッ

ムサシ「ちっ、うるさいのがきた」

マナ「――シンジくんっ⁉︎ 大丈夫っ⁉︎」

ムサシ「マナ。そいつに近づくな。雑巾で濡れてるからきたな……」

マナ「汚いのはあんた達の心でしょ⁉︎ 恥ずかしいと思わないの⁉︎ 彼だって国民の為に戦ってるのよ! ムサシ……! どこまで変わっちゃったの⁉︎」

ムサシ「俺はなにも変わっちゃいない!」

マナ「人を殺すなんて嫌だって言ってたムサシは、どこに。こんな、いじめみたいな真似して」
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