シンジ「その日、セカイが変わった」

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628 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:33:35.05 ID:MW53ChTl0
ムサシ「なんでそんな肩入れしてんだよ。別任務で離れてるって聞いたが、そいつと一緒だったし」

マナ「必要? その話が今」

ムサシ「なんだよ」

マナ「ねぇ、ムサシ。優しかったあの頃に戻ってよ。おかしいのよ。ここも。私たちも」

ムサシ「はぁ……」

マナ「これしかないって思わされてるだけ! 隊を抜けても、貧しくても、笑い合ってたあの頃に……!」

ムサシ「物乞いみたいなマネしろってのか!」

マナ「仕事ならきっとあるよ!」

ムサシ「俺は嫌だ! あんな生活! 二度とごめんだ!」

マナ「ムサシ……」

少年兵A「おう、ムサシ。先に行くぞ」

ムサシ「ああ、俺もすぐ行く」

マナ「ねぇ、考えなおして? 私も協力するから」グイッ

ムサシ「うるさいっ! ここには家族がいるんだ! 見捨てられるわけないだろっ!」バシッ

マナ「きゃっ」

ケイタ「ムサシっ!」

ムサシ「あっ……くそっ」

ケイタ「大丈夫? マナ」スッ

マナ「私たちはずっと三人一緒だったじゃない。ここの人たちは、みんな、仕方なく一緒にいるだけよ。命令違反をしたら守ってくれるっ⁉︎」

ムサシ「……」

マナ「もしそうなれば、みんなが牙を剥くわよ! そう教育されてるから!」

ムサシ「そんなことにはならない。命令違反なんてありえないからだ」

マナ「気がついてよ! 洗脳されてるの!」

ムサシ「――うるさいっ! うるさいうるさいっ! 命令は絶対だ! 守るべきものだっ!」

シンジ「ほんとにそう?」

ムサシ「なに……?」

マナ「し、シンジくん?」

シンジ「自分の考え、ないの?」

ムサシ「俺の考えがそうなんだ! 命令と常に同じだ!」

シンジ「マナや浅利くんとだったら、どっちを選ぶんだよ」

ムサシ「そ、それは……。お前には関係ないだろう! 気安く呼ぶな!」

ケイタ「……」

シンジ「このままここにいると、戦場にいっちゃうんだろう。浅利くん、死んじゃうかもしれないよ」

ムサシ「俺たちがやらなきゃ、どうせ誰かは死んでるんだ!」

シンジ「だったら、なんでキミ達が行く必要があるんだよ」

ムサシ「な、なに言ってんだ、お前」

シンジ「僕は、逃げたらいいと思う」

ムサシ「このっ! パイロットのお前がそれを言うのかっ⁉︎ 戦うべきだって言うべきだろ! じゃなきゃ死んでいったやつが――」

シンジ「僕が戦うよ。使徒とは」

ムサシ「……くっ、あっはっはっ。雑巾投げつけられたのにか? 頭おかしいんじゃないのかお前」

マナ「なにがおかしいのよっ! 立派じゃない!」
629 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:56:26.23 ID:MW53ChTl0
ムサシ「できもしないことを口にするのが立派なもんかっ!」

シンジ「……たしかに、今のは軽はずみだったかもしれない。けど、キミだって苦しいんだろ」

ムサシ「俺が苦しい?」

シンジ「最初は、ご飯が食べられればよかった。こんなつもりじゃなかったんじゃないの」

ムサシ「お前になにがわかる!」

シンジ「素直、なんだね。だから、こうやって受け止めてしまう」

ムサシ「ロボットがあるやつには永遠にわからない! 歩兵部隊のこわさも! 苦しみも!」

シンジ「……いい。わかった。僕がトイレ掃除しとくよ」

マナ「無理よ。時間に間に合わなかったら隊の全員が処罰対象になる。そうなったら、もっと……!」

シンジ「大丈夫。できることからやっていけばいい」

ムサシ「……」

ケイタ「……あの、碇隊員」

ムサシ「やめとけ、ケイタ。どうせできっこねぇ。そしたらまた風当たりが強くなるだけだ」

ケイタ「ムサシ」

ムサシ「行くぞ」スタスタ

ケイタ「ま、待ってよ、ムサシ!」タタタッ

シンジ「ふぅ……よっと」パンパンッ

マナ「シンジくん、私、手伝う」

シンジ「いいよ。ここは男子トイレなんだし」

マナ「ムサシ、あんな人じゃなかったのっぐすっ」ポロポロ

シンジ「あ……」

マナ「どんどん変わっていっちゃって。ケイタも、なにも言えなくて」

シンジ「そうなんだ、うん、大丈夫」

マナ「できれば、恨まないであげてほしい。私が勝手なこといってるってわかってるけど」

シンジ「平気だよ。これぐらい」

マナ「ごめんね」

シンジ「いいんだ。それよりもマナも戻った方が」

マナ「私、シンジくんに近づけって言われてるから」

シンジ「え? まだ続いてるの?」

マナ「うん、だからここに来れたの。きっと、シンジくんが辛い思いをしてる時に手を差し伸べさせたいんじゃないかな。離れられなくなるように」

シンジ「いろいろ考えるんだね」

マナ「汚いよね、大人って。利用して、利用されて。あるのは打算ばっかり」

シンジ「……そうかもしれない」

マナ「掃除、しよっか」

シンジ「いや、そこは僕ひとりでやる。マナは見てていいよ」

マナ「え? でも」

シンジ「僕がやらなきゃ意味がないんだ」

マナ「……うん、わかった」






630 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 01:24:35.36 ID:xjXiNuolo
>>627
まあ神経ブロックはできるし、エヴァの中が一番安全って言っちゃってるからなあ。

にしてもあんまりゲスに書きすぎると助ける必要性というか、蓋然性がなくならないか?
631 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 18:47:47.00 ID:MW53ChTl0
構成はこれまでの流れの中で無理のないように組み立てているつもりです
たいしたものではないですが戦自パートの導入部位みたいな感じですかね
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 18:52:24.62 ID:Xk8i3Od9o
>>630
ゲスになりすぎないようにマナが必死にフォローしてるんだろう
633 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 19:54:28.31 ID:MW53ChTl0
【数十分後 男子トイレ】

マナ「掃除の効率いいのね。あ、そのタオルは最後にここ。手洗い場で浸しておくの」

シンジ「なんとなく毎日してたら自然とこうなってた。洗剤使うの?」

マナ「うん。水がたまったら洗剤を少量いれて、タオルはこうやって伸ばして浮かせて」トプン

シンジ「へぇ、こんな洗濯法なんだ」

マナ「シンジくんって、ほんと、変わってる。普通かと思えば、そうじゃない思う瞬間もあって……。戦いとかそういう争い事に遠そうな存在に見える」

シンジ「エヴァがなかったら普通に暮らしてただろうからねぇ」

マナ「楽しい? 毎日が。自分のしたいことしてるの?」

シンジ「してるよ。選べる中からだけど。僕は自分の中で満足できればいいんだ」

マナ「やっぱり、戦自は似合わないよ。シンジくんには――」

ムサシ「おいっ! パイロット!」

シンジ「あぁ、おかえり」

ムサシ「ちゃんと掃除は……あ、あ?」

ケイタ「わぁ、すごい。これひとりで? マナも手伝ったの?」

マナ「私はぼーっと眺めてただけ」

ムサシ「ウソつけ! こんな短時間でそんなの無理に決まってるだろう!」

マナ「本当の話。なによ、自分たちだけどっかいっちゃったくせに。疑うなら最初から監視しとけばいいじゃない」

シンジ「疲れはしたよ。ただ、家事全般はもともと慣れてたし」

ムサシ「家事が得意な戦自だと⁉︎ お前は配膳係か!いちいちイラつく! 間の抜けた返事しやがって! まだ訓練メニューは残ってるぞ!」

シンジ「はぁ……ちょっと、聞いてほしいんだけど」

ムサシ「新兵の話なんぞ――」

シンジ「聞けって言ってるだろっ!!」ビターン

ムサシ「な、なん……?」

シンジ「まず、僕が新入りだってのはその通り。ここのルール、習慣なんて知らない。だから覚えるまでの間、こんなことがあっても納得はできる」

ケイタ「……」ポカーン

シンジ「問題は“このやりとりがいつまで続くのか”って話なんだ。ムサシ、くんの話を聞いてると僕がパイロットなのが気にくわないようと言ってるように思える」

ムサシ「当たり前だろ、お前みたいな軟弱者が」

シンジ「キミが僕を認めることはあるの? 今聞いてもないと即答で――」

ムサシ「ないっ!!」

シンジ「……だよね。それは嫌なんだ。僕はネルフの人間でパイロットだけど、そうじゃないと思ってもらえない?」

ケイタ「そんなの、無理だよ……」

シンジ「どうして?ここが戦自で、キミたちは隊員だから? でも、今は僕もそうだよ」

ムサシ「一定期間だけなんだろ! すぐに帰っちまうくせに!」

シンジ「いつかはネルフに戻るとは思う。でも、所属機関を間に挟まなければ、キミたちと僕の間になにもないじゃないか」

ムサシ「お前、頭のネジが一本はずれちまってんじゃねぇのか! そんなのがまかり通るわけねぇだろ!」

シンジ「だったら、どうしたらいい?」

ムサシ「そりゃ聞くまでもねぇだろ、体力テストで良い成績を残せば」

シンジ「(あぁ、やっぱりそうなのか、アスカの言う通り。ここで力を使ったら母さんの思惑通りなんだろうし……うぅーん)」

ムサシ「――それか、俺にタイマンで勝ったら認めてやる」

ケイタ「無茶言うなよ、ムサシ」

シンジ「ん? タイマン? それって負けても誰にも言わない?」

ムサシ「お前がか? いや、言いふらす!」
634 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 20:32:56.04 ID:MW53ChTl0
【昨夜 マヤ宅 リビング】

マヤ「プレゼントがあるの。はい、どうぞ」トン

シンジ「嬉しいな。僕、誕生日じゃないですよ?」

マヤ「いいからいいから」ニコニコ

シンジ「……?」

マヤ「開けてみて?」

シンジ「なんだろう……? え、これって」ガサガサ

マヤ「驚いた? カラーコンタクト。シンジくんには必要でしょ?」

シンジ「あ、瞳の色を隠すために?」

マヤ「外見的な特徴はただひとつ、やっぱりその瞳。普段は黒色なのに、力を使う時だけ赤い色に変化する」

シンジ「なんで今まで見落としてたんだろう」

マヤ「簡単なことほどね。灯台下暗しって言うじゃない」

シンジ「マヤさん……ありがとう」

マヤ「実験してた私が言うのもなんだけど、その力はあまり使わない方針がいいと思うの。特に戦自にいる間は」

シンジ「……?」

マヤ「もし、常人ではありえない身体能力してるってわかれば、とんでもない騒ぎになるはず。だから、力を誇示したいが為になんてしちゃだめ」

シンジ「はい」

マヤ「司令はまだ探ってるのかもしれない。シンジくんのその力について。……言ってないのならだけど」

シンジ「リツコさんは言ってませんよ。そう確信できます」

マヤ「とにかく、その力はここぞって時に使うのよ? 約束、ね?」
635 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 21:02:44.03 ID:MW53ChTl0
【再び 同男子トイレ】

シンジ「(カラーコンタクトはバックの中だったはず、いや、やっぱり……ここで力を使ったら軽率すぎるか)」

ムサシ「どうした! 怖気づいたのか!」

マヤ「もうやめてよっ!」

ケイタ「そうだよ、ムサシ。やるわけないさ」

シンジ「うぅーん」

ムサシ「とんだ腰抜け野郎だな」

シンジ「……うん、言いふらされると困るからやっぱりやらない」

ムサシ「負けるのがこわいのかっ⁉︎」

シンジ「そんな感じ」ポリポリ

ムサシ「はぁ、さっきまでの威勢はなんなんだよ。なぁ、マナ。なんでこんなやつにまとわりついてんだ?」

マナ「ムサシには関係ないでしょ?」

ムサシ「珍しいだけだろ。珍獣みたいな扱いか?」

マナ「なに? ヤキモチ?」

ムサシ「ばっ⁉︎ 俺がなんでっ⁉︎」アタフタ

マナ「悪いけど、ムサシはそういう対象じゃないから」

ムサシ「……っ⁉︎」

ケイタ「告白する前からフラれるってきついね、ははっ」

ムサシ「ケイタッ!! この野郎っ!」バシッ

ケイタ「いたっ」

シンジ「そろそろ集合時間じゃない?」

ムサシ「マイペースすぎんだろ。お前は結局なにがしたかったんだ?」

シンジ「うーん、僕もね、探ってる感じ」

ケイタ「探るってなにを?」

シンジ「なにが一番いいのか」

マナ「……?」

シンジ「遅れちゃうよ。急ごう」タタタッ

ムサシ「勝手に仕切るなっ!」

ケイタ「あぁ、行っちゃった。マナ、僕たちも隊に」

マナ「ねえ……ケイタ」

ケイタ「なに?」

マナ「なんか、不自然じゃない?」

ケイタ「え? なにが?」

マナ「あのさ、シンジくんってこれまでなにしてたの?」

ケイタ「トイレ掃除でしょ?」

マナ「その前」

ケイタ「ええと、ランニングとダッシュ……合間に腕立てと」

マナ「吐いた? それとも倒れた?」

ケイタ「そういえば、まだ……あれ? なんであんなに普通なんだろう? 最中は、かなり遅めのペースでひいひぃ言ってたのに」

マナ「普通ならだるくて死んだ魚の目をしてるはずでしょ? もう回復したってこと?」

ケイタ「う、うぅん。でも、今日はご飯は食べれないと思うよ。飯が喉を通らないくらい、疲れてる、はず……」
636 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 19:31:57.95 ID:A0IdrlUO0
【厚木基地 参謀本部】

総長「陸上軽巡洋艦トライデント級か。この作戦計画の立案者は例の?」

軍曹「はっ、我が軍に取り入る為、設計図を持参したかと」

総長「実現できるのか?」

軍曹「本人は必ずや実現できると信じているようです。熱の入りようは生半可ではありませんでしたよ」

総長「――時田シロウ。ジェットアローン(JA)計画の落ちこぼれか。日本重化学工業、通産省、防衛庁の共同計画を頓挫させた男」

軍曹「こちらから質問したら、陰謀だとまくしたてたそうです」

総長「ふん、例えそうだとしても失敗は失敗だ」

軍曹「仰る通りです」

総長「完成までどれぐらいかかると言っている?」

シロウ「失礼しますよ」

総長「お前は……なぜここに入れた?」チラッ

軍曹「し、失礼しました。至急、確認に」

シロウ「その必要はありません。防衛庁の者だと表に立っている衛兵に伝えたらすんなり入れてくれました。この身分証を提示してね」

総長「貴様は解雇されているはずだろう。なぜ持っている」

シロウ「必要だったからですよ……。再就職先に」

総長「ここがそうだと言いたいのか? 早計な」

シロウ「6年です」

総長「なに?」

シロウ「そのトライデントが完成するまでの月日の回答になります」

総長「6年もかかるのか?」

シロウ「なに、最初の使徒が現れたのは今から十数年前ではありませんか」

総長「ペースが早まっている」

シロウ「今が異常なんですよ。いつ現れるのかわからないのなら、次もまた十数年後かもしれない」

総長「だめだ。時間がかかりすぎる」

シロウ「タネを蒔いておかないのですか? やはり、あなた方は無能だ。ネルフの下働きが似合っている」

軍曹「き、貴様っ!!」

シロウ「あなた方が辛酸を舐めているのは、なにもしてこなかったからでしょう? 対人である戦争に明け暮れて、宇宙外生命体に対しての準備をね」

総長「……」

シロウ「このままでは、ずっとやつらに先を越されてしまいますよ? いいんですか?」

総長「口の減らないやつだ。ネルフに赤っ恥をかかされた恨みを晴らしたいだけだろう」

シロウ「はい、もちろんです。それのなにが問題で?」にっこり

総長「……」

シロウ「“ネルフを潰したい”。私達の利害は一致している。そうじゃないのですか?」

総長「……実現できると過程した場合の予算はいくら計上する目算だ?」

シロウ「軽く見積もって1兆ほど」

総長「……っ⁉︎ ば、ばかなっ! そんな財源がどこにある!」

シロウ「税率をあげるなりなんなり手はあるでしょう。この国に住まうものならば当然の義務。嫌なら国から出ていけばいい」
637 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/27(水) 19:52:19.68 ID:A0IdrlUO0
総長「政府の認可が降りるわけないだろう!」

シロウ「そこはあなた方、軍上層部の腕の見せ所というわけです。私は出資を求めているのですから」

総長「話にならん」

シロウ「ふっ、よろしいですか。ネルフはそもそも、世界各国政府容認の元、治外法権化しています。法律的にいえば日本領土内に在りながらひとつの国家なのです」

総長「それぐらいは承知している」

シロウ「無尽蔵とも思える資金もまた、日本だけではない各国の後ろ盾があって成り立っている」

総長「……なにがいいたい?」

シロウ「潰す相手は“世界そのもの”だと言っているのです。1兆で買えるとなれば安いものでしょう? 世界のリーダーになりたくないのですか?」

総長「使徒は本当に現れないのか? 信用できん」

シロウ「その点についての確証は持てませんがね。そういうことではない。芽がでるタネの話なんです」

総長「規模が大きすぎる。提督の前でプランを話せ」

シロウ「では、私を紹介していただけますか? それと、6年後を見据えてパイロットの選定にもご協力いただきたい。もちろん、戦自出身者をね」

総長「話は通してやる。ただし、その後のことは自分でなんとかしろ。軍曹」

軍曹「はっ! 年齢に適齢期はあるか?」

シロウ「そうですね、20歳ぐらいがちょうどいいでしょう。サンプルの時間も大いにとれますし」

軍曹「リストアップする」

シロウ「ああ、勘違いしないでくださいよ。6年後にハタチですからね」

軍曹「……了解した。ということは少年兵からの選抜になるか。ちょうど活きの良いのがいる。次期主席候補でいいだろう」

シロウ「野心は必要ありません」

軍曹「心配するな。扱いやすいガキだ。透明性や言論性の自由も求めない」

シロウ「それはそれは。うってつけですね。モルモットにふさわしい。予備も一名ほしいんですが」

軍曹「問題ない。いつも一緒にツルんでいるやつがいる。そいつをつけよう」

シロウ「これで、パイロット候補生は話がつきましたね。早くて助かります」

総長「まだなにか具体的に決まったわけではない」

シロウ「ええ、ええ。もちろんですとも」

総長「先方の都合もある。日時はおって通達し――」

シロウ「今がいいですねぇ、鮮度が落ちてしまいますので。そこにおいてある衛星電話機を使えば一瞬で繋がるでしょう?」

総長「承認できん。有事の際以外は使用することを禁じられている」

シロウ「今がその時なんですよ。参謀総長」
638 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 20:21:13.18 ID:A0IdrlUO0
【夕方 食堂】

シンジ「うん、おいしい。雑かと思ってたんだけど、普通の料理なんだね」もぐもぐ

マナ&ケイタ「……」ぽかーん

ムサシ「それも全部国民の税金なんだ。役立たずのくせに申し訳ないとか思わないのか?」

ケイタ「あの。よく、食べれるね」

シンジ「え?」

マナ「食欲旺盛なんだ?」

シンジ「あぁ、うん、まぁ? どうしたの? なんかおかしい?」

ケイタ「いや、そういうわけじゃないけど……。どうだった? 今日一日終えてみて」

ムサシ「まだ終わってないだろ。これから点検とかやることが山積みだ」

シンジ「部活の合宿みたいな感じなのかな。僕は運動部に入った経験がないから想像だけど」

ケイタ「ぶ、部活の延長上……ね」

マナ「シンジくん、訓練についていけなかったんでしょう?」

シンジ「そうだね。やっぱり、やる量っていう密度が濃いのはそう思った」

ムサシ「当たり前だ。なんていったってここは――」

マナ「ムサシ、ちょっとうるさい。持てないものとか、あった?」

シンジ「いや? 途中で背負ったリュックは重かったな」

マナ「あぁ、装備一式を積んだバックパックのこと? 銃も携行したの?」

シンジ「うん、なんだっけ? M16? 銃も重くて驚いたよ」

ケイタ「そういえば、たしかに。後半はなんなくこなしてたような……」

シンジ「あれをいつも背負ったまま移動するんだよね? 大変だ」

マナ「ねぇ、ケイタ。今日は水泳訓練なかったの?」

ケイタ「なかった。そのかわり、地獄のトンボかけがあったけど」チラ

シンジ「このトンカツもちゃんと揚がってる」もぐもぐ

マナ「な、なんで?」

ケイタ「さぁ……?」

ムサシ「おい! そのカツ俺にも一切れくれ!」

シンジ「自分のあるじゃないか」

ムサシ「やかましい! 俺とお前で貢献してる度合いが違うんだ!」

シンジ「お断りだね」

ムサシ「な、なんだとっ! お前やっぱり!」

シンジ「その漬物、いらないの?」

ムサシ「あ? いや、これは最後に」

シンジ「僕のキャベツとトレードしよう」

ムサシ「なっ⁉︎ 馬鹿言ってんじゃねぇ! 俺は漬け物が好物なんだ!」

シンジ「し、渋いね」

ムサシ「ばあちゃんっ子だったからな、俺は。……ってそうじゃねぇだろ!」

シンジ「そういうことなら、漬け物あげるよ。少し箸つけちゃったけど」ヒョイ

ムサシ「お? お、おう」

マナ「ぷっ」

ムサシ「……っ! なんなんだよお前はっ!」
639 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 21:32:23.91 ID:A0IdrlUO0
【夜 戦闘機格納庫】

ケイタ「長いだろ。この階段。運搬用のエレベーターとかつけてくれたらいいのに」

シンジ「うん、これ、どこに? 戦闘機の銃弾って、重い、な」

ケイタ「まとまった数は梱包されてフォークリフトやクレーンをつかって運ぶんだけど。端数は、こうやって、人力でっ、よっと」

シンジ「スピードを要求されるんだね、こういう作業って」

ケイタ「“戦場じゃ敵は待ってくれない”が教官の口癖。出撃にしてもそう、使徒が襲来した時に、誰よりもはやく準備を終えていなきゃいない」

シンジ「……」

ケイタ「ネルフがもっと、僕たちに敬意を払ってくれてたら……。キミは陰でこんな仕事してるって知らなかっただろう?」

シンジ「うん」

ケイタ「魔法じゃないんだ。勝手に出てくるわけじゃないし、色んな人が動いて、ひとつの形になってる」

シンジ「そうだね……」

ケイタ「いつも汚れ仕事さ。華のあるキミみたいなパイロットと違って……雑草は、人のやりたがらない仕事を引き受ける」

シンジ「……」

ケイタ「誰だってできるってみんなそう思うのもわかるよ。肉体労働っていうのは、体が資本で、作業そのものは単純だから。でもやる人がいないと出撃すらままならないってことだけは理解しておくべきなんだ」

シンジ「うん。言い返す言葉もないや」

ケイタ「まぁ、それと組織の体質とは話しが繋がらないんだけど」

シンジ「そこまでわかってるのに、戦自じゃないとダメなの? 別の生き方が」

ケイタ「いったろ? 誰かがやらなきゃいけないんだって。僕は食いっぱぐれがなさそうだからっていう動機だけど、ムサシはそう考えてる」

シンジ「浅利くんは? やっぱりマナやムサシくんと一緒にいたいから?」

ケイタ「そうだよ。いつかは、離れ離れになるかもしれない。そういうことを考えないわけじゃない、だけど、今はみんなで一緒にいたいんだ。死ぬことになってもさ」

シンジ「……」

ケイタ「境遇なんてものはきっかけ。人は平等じゃないんだ。パイロットに選ばれる強運があればな。……のたれ死ぬやつもいるのに、僕なんて友達がいるだけマシな方だよ」

シンジ「……」

ケイタ「急ぐよ。遅れるとまた追加で懲罰が待ってる」カンカン

シンジ「わかった、よいしょっと」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 23:28:26.25 ID:kMpDJk9Jo
時田さん…
人を巻き込まないためにJAを作ったんじゃないのか
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 01:46:17.96 ID:LMhSvhxyo
おつ
642 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/28(木) 18:50:06.02 ID:NayB0tUw0
【射撃訓練場】

教官「皆聞け! 今回の座学では、兵站(へいたん)部の者に向けてのものとなる。貴様らは戦自陸軍の配属になる予定であるから、知識もまた重要である!」

少年兵一同「はいっ!!」

シンジ「うっ、重っ。ねぇ、聞くだけなのにわざわざ装備一式を担ぐ必要あるの?」

ケイタ「シッ。静かに」

教官「お前たちが身につけているものは、継戦能力を維持するのに必要な“最低限”の装備だ。ムサシ隊員!」

ムサシ「はっ!」ザッ ビシッ

教官「重いか⁉︎ 陸路を闊歩する場合に困難かっ⁉︎」

ムサシ「問題ありませんっ!!」

教官「よしっ! 各隊員よく聞け。注目すべきは銃弾や軽機関銃ではない。これが標準の総装備だということだ。海に投げ出されたらどうなる!」

ムサシ「重量が増すはずであります!」

教官「その通りだ! 水分を多量に含めば、衣服、火器、防具にいたるまで重さは今の三倍になる……」

少年兵一同「……」ゴクリ

教官「そうなればどうなる! 助かるための命綱ともいえる武器を手放すのか⁉︎ 」

少年兵一同「……」ドヨドヨ

教官「――否ッ! それは自殺行為である! 例え助かったとしても、浮上すれば敵が待っているからだ! 絶対に捨てるな!」

少年兵一同「はいっ!!」

教官「貴様らの誰が死んでも、必ずや突撃し、制圧し、仇をうってくれる! 武器に魂をこめるんだ! 上下一心!」

少年兵一同「上下一心ッ!!」

教官「碇隊員! 前へ!」

シンジ「あっ、はいっ!」スッ

教官「諸君、彼の姿をよく見ろ。……まるで似合っていない。孫にも衣装じゃないか? これでは装備が歩いているようなものだ」

少年兵一同「はははっ」

教官「誰が笑っていいと言った!」ピーッ

少年兵一同「……!」ピタッ

シンジ「(たしかに、厳しいかもしれない。でも、ここまで統率をとれるなんて……ネルフって結構自由なんだな)」

教官「貴様らもまだひよっ子にすぎん!」ドンッ

シンジ「うっ」ドサッ

少年兵一同「……」シーン

教官「どうした! 今のは笑っていいぞ!」

少年兵一同「は、ははっ」

教官「貴様がネルフでどんな鍛え方をしたか知らんが、ここにはここのルールがある! それを現時刻より身をもって体感してもらう!浅利隊員!」

ケイタ「はっ!」ザッ ビシッ

教官「痛めつけてやれ」ポン

シンジ「なっ、なんでっ⁉︎」

教官「他の者もだ! 各員列を作れ。……碇隊員を仲間に迎える儀式だ!」

シンジ「ぎ、儀式っ⁉︎ こんなのがっ⁉︎」

教官「口答えをしたな⁉︎ 軍規の乱れを見過ごすわけにはいかん! 笛の合図で代わり番で鉄拳制裁だ!」ピーッ

ケイタ「誰も味方じゃないって言ったよ。……恨まないでね」ボソ ブンッ

シンジ「グッ……っ⁉︎」ドサッ

教官「よしっ! 次ッ――」
643 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/28(木) 19:56:11.17 ID:NayB0tUw0
【ネルフ本部 執務室】

冬月「時田シロウ。行方を眩ましていたかと思えば、まさかこんな形で再浮上してくるとはな」

ユイ「内通者からの定時報告によれば、海軍提督に直訴したようですね」

冬月「我々のシナリオにはないぞ」

ユイ「置き土産がまさかこんなところにもあるとは。JA計画潰しは夫の指示で先生も関与されていたんでしたね」

冬月「……」

ユイ「内閣府はどうでると見ますか」

冬月「一度失敗した者に対し、この国は甘くない。しかし、それは国民に信を問うた場合――」

ユイ「利権が絡めば、その限りではなくなりますね。企業体質といいますか、動く可能性はおおいにある」

冬月「然り。政府の連中も金の匂いには敏感だ。投資分以上の金額を回収すると確約できれば銀行も重い腰をあげるだろう」

ユイ「6年という気の長い月日……。黙認してもいいですが、調子づかせるのは嫌な予感がします。消しますか」

冬月「いいのか? つけいる隙を与えるやもしれんぞ」

ユイ「厄介なのは“執念”です。彼は当初の理念を忘れ、復讐という炎を燃やしている。よほどくやしかったのでしょうね」

冬月「輝かしい人生(レール)の汚点だからな。エリートとはえてしてそういうものだ。崇高な理想を掲げても、一度の挫折でこうなる者もいる」

ユイ「ふぅ……」

冬月「時田はいつ暗[ピーーー]る腹づもりだ」

ユイ「タイミングは見極めなければなりません。それによって開く穴は大きく、また、小さくなる」

冬月「研究中の事故となるよう工作するか」

ユイ「焦る必要はありません、障害になれば即座に」

冬月「承知した。決行に必要な準備は済ませるよう連絡しておこう」

オペレーター「司令。内通者より秘守回線が。なにやら変化があっているようです」

ユイ「繋いで」

軍曹『ご子息の件でご報告があります。現在、射撃訓練場にて隊員による集団暴行を目視確認いたしました。いかがいたしますか?』

ユイ「シンジの身体に変化は?」

軍曹『お待ちください。――……だめですね、双眼鏡を使っているのですが、不自然な点は』

ユイ「他には。なんでもいい」

軍曹『し、失礼しました。ここからだと、特になにか……』

ユイ「もう結構よ。怪しまれない程度に仲裁してちょうだい。深夜の監視は充分に警戒して」プツッ

冬月「ふむ。判断をつけずらいな」

ユイ「確認のための行為が覚醒を促すようなことがあってもいけませんし……」

冬月「どちらにせよ、手が出せん、か」
644 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/28(木) 20:50:32.85 ID:NayB0tUw0
【再び 射撃訓練場】

シンジ「――ぐっ!」ドサァッ

軍曹「貴様ら! なにをしているかッ!」

マナ「シンジくんっ!!」タタタッ

ケイタ「マナ? どうしてここに」

教官「こ、これは、軍曹殿」

軍曹「消灯時間が近いゆえ、見回りだ」

教官「そうでしたか。新入りに軍規を叩きこんでいたところであります!」

軍曹「その辺にしておけ」

教官「まだ一巡しておりませんが」

軍曹「骨を折ってはいないな?」

教官「ムサシ隊員! 確認しろ!」

ムサシ「はっ! おい、立て」グイッ

シンジ「うっ、いつっ」ボロ

ムサシ「打ち身は数箇所ありますが、骨は無事なようです」

軍曹「解散しろ。霧島隊員。医務室まで連れていってやれ」

マナ「大丈夫っ⁉︎」

教官「よーしっ! 皆聞こえたな! 速やかに解散だ!」

少年兵一同「はいっ!!」

軍曹「そこのお前」

ムサシ「はっ!」ビシッ

軍曹「女手ひとつは大変だろう。同行を許可する」

ムサシ「了解! ……肩を貸してやる、捕まれ」

シンジ「うっ、うぅっ」

ケイタ「ムサシ! 僕もついていくよ!」

軍曹「明日のスケジュールはどうなっている」

教官「空挺部隊との合流訓練になっております!」ビシッ

軍曹「ということは、朝が早いな。本日の当直は俺が担当してやる」

教官「よろしいのですか?」

軍曹「たまにはな。デスクにウィスキーを置いてあるはずだ」ポン

教官「あ、ありがとうございます!」ビシッ
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 22:04:51.01 ID:eL9SI/8No
軍曹やったんかい
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 14:10:09.40 ID:1KvikAdgO
支援
https://youtu.be/Anq4Q21_jTg
647 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/29(金) 15:43:13.48 ID:J/eMFMqO0
【医務室】

医師「うん、頑丈な骨をしているな。湿布薬を貼っておけば腫れは引くだろう。……明日の訓練は見学させるよう私から話をしておいてやる。ではな」ポン コツコツ

マナ「なんで止めてくれなかったの⁉︎」キッ

ムサシ「なんだ、なぜ睨む? これは儀式だと教官は――」

マナ「わかってるはず! なんのために必要なのか!」

ケイタ「ま、マナ……」

マナ「洗脳の手順になってる! こうやって、痛めつけて、精神的に追いやることで次第になにも考えられなくなるわ! 自分の考えを持てなくなってしまうの!」

ムサシ「俺たちは命令を遂行すればいい。自分で判断することは輪を乱す行為だ」

マナ「どうしてよ! おかしいと思わないの⁉︎ 一般人がこんな目にあう場所なのに⁉︎」

ムサシ「命令だからだ。しきたりがある」

マナ「話にならない……。ねぇ、ケイタ。なんとか言ってやってよ」

ケイタ「ぼ、僕が?」

マナ「一度脱走しかけたなら私と同じこと思ってるはずでしょう? なんで口に出してくれないの……?」

ケイタ「だ、だって……」

マナ「黙ってついていくだけが友達じゃないのよ! ムサシを大切に想うなら……!」

ムサシ「黙れッ!! 俺たちは、俺はこれでいいんだ! 望んでここにいる!」

マナ「ぐすっ、うっ」ポロポロ

シンジ「うっ」

マナ「……っ! シンジくん⁉︎ 気がついた⁉︎」ガタッ

シンジ「声で、目が覚めた。いててっ、よく、喧嘩するんだね。三人とも」ムク

ムサシ「お前には関係のないことだ」

シンジ「さっきのパンチ、効いたよ。さすが鍛えてるだけはあるんだと思った。身体の芯に響くみたいな」

ムサシ「当たり前だ。そんじょそこらのゴロツキとは違う、腰の入ったモノだからな」

ケイタ「僕らは空手をやってるから、必修科目で。みんな帯持ちなんだ」

シンジ「やっぱり、努力してるんだね」

ムサシ「悔しいとかないのか、男なら誰だって」

シンジ「これまでの生活とあまりに乖離しすぎてて、実感が沸かないんだ。……痛くないわけじゃないよ」

ムサシ「そういうものか。本当にネルフで訓練してなかったんだな。抵抗もできないとは」

シンジ「普通はするの?」

ムサシ「黙って殴られるバカはお前ぐらいのもんだ。最初は全員にアレが行われる。反発すればするほど制裁はきつくなるが」

シンジ「自分の無力さをしらしめる行為ってことか」

ムサシ「はぁ……。たしかに、その通りだろう。あれをやる意味は、どんなに優れていようと、限界があり、数が束になれば、個なんてものはあっというまに蹂躙されると伝えることにある」

ケイタ「――最強は、強力な個じゃない。情報に基づいた戦略と、数による暴力」

マナ「想像より、実体験は身体に染みこんでしまう。だって、それが現実だから。でも、それは表向きよ。本当の意味は洗脳で……!」

ムサシ「くだらない妄想はやめろ」

マナ「なんで、どうして……」

ムサシ「使徒とかいうバケモンにはいくら束になってもデタラメな盾がある以上、なす術なしだが。……あれは人外だからノーカンだ。俺たちはあくまで対人を想定した部隊」

シンジ「……」

ムサシ「マナ……。俺たちはこの中で生きていくしかないんだ」

マナ「できるよ! 貧しくたっていい! 慎ましく暮らせばそれで……!」

ムサシ「俺は嫌だ。ケイタ、行くぞ」クルッ コツコツ

ケイタ「マナ……ごめん」タタタッ

マナ「ばか……。二人とも、ばかなんだから……うっ、うっ」ポロポロ
648 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 16:15:17.44 ID:J/eMFMqO0
【通路】

ケイタ「……なんでマナの為だって言ってあげないの? そうすればきっと」

ムサシ「そんなのは押しつけだよ」

ケイタ「でも! 伝えないよりは!」

ムサシ「マナの性格を考えればわかるんじゃないか。自分のせいだって知れば、自分を許せなくなる」

ケイタ「……っ!」

ムサシ「なにも知らなくていいんだ」

ケイタ「このままじゃ、僕たちの心が離れてしまうよ。ずっと三人一緒だったのに……」

ムサシ「どうせ成人すれば戦地に送りこまれて死ぬんだ。だったら、一人ぐらい幸せになったっていいじゃないか」

ケイタ「なにも知らないままで?」

ムサシ「痛みを分かち合うのが幸せなもんか。嫌われたっていい」

ケイタ「報われなくて、それでいいの」

ムサシ「想いを伝えるだけじゃない。陰ながら支えるのに、相手が気がつく必要なんか……」

ケイタ「ムサシ……」

ムサシ「これでいいんだ」

ケイタ「……」

ムサシ「いつかは、ネルフに帰る。マナを連れていってくれれば。ケイタもそう思うだろ?」

ケイタ「そ、それは」

ムサシ「マナはここに似合わない、やっていけないんだ」

ケイタ「そう、だね……」

ムサシ「だが、あれじゃいくらなんでも軟弱すぎる。やってやろうっていう気概が見えない。俺たちでいっちょ鍛えなきゃな」

ケイタ「うん」

ムサシ「ケイタにも、嫌な役を引き受けさせちまうことになる」

ケイタ「水臭いな。僕は、二人の為になれるならなんだってしてきたじゃないか」

ムサシ「一度逃げだそうとしたやつが言うかぁ?」

ケイタ「あ、あれはっ! その、あんまりにも辛くて……」

ムサシ「毎日だもんな。この暮らしが」

ケイタ「うん、ずっと続くと想像すると、耐えられなくてさ」

ムサシ「せいぜい怪我や病気に気をつけようぜ。除隊されてしまえばなにもできなくなる」

ケイタ「そうだね。その後の生活は保障されないし」

ムサシ「ああ……いっけね、就寝前に点呼があるの忘れてた!」

ケイタ「え? 今日は、別の当番のはずじゃ」

ムサシ「代わったんだよ! 走るぞ!」タタタッ

ケイタ「わっ、ま、待ってよっ! ムサシっ!」
649 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 22:05:59.54 ID:J/eMFMqO0
【再び 医務室】

マナ「うっ、うっ、ぐすっ」

シンジ「マナ……」

マナ「あっ、ご、ごめんねっ。見苦しいとこみせちゃって」

シンジ「いや、そんな風には思わないよ」

マナ「ありがとう……痛む? 平気?」

シンジ「平気だよ。そろそろ僕たちも戻らないといけないね」

マナ「ネルフにいつ帰る予定だとか、まだわからないの?」

シンジ「うん。初日だし、なにも連絡がない」

マナ「そっか……そうだよね」

シンジ「あのさ、マナ――」

マナ「うん?」

シンジ「黙ってこうしてるつもりはないんだ。協力、お願いできないかな?」

マナ「……? なにをするつもり?」

シンジ「情報がほしい。戦自の」

マナ「なにが知りたいの?」

シンジ「まず、ネルフと戦自のいがみ合いについての関係性はだいたい理解した。隊員達がどう思ってるのか」

マナ「うん」

シンジ「ただ、ネルフにとっては……悪く思わないでほしいんだけど。戦自ってそんなに重要じゃないんだ。相手にしてないと言ってもいいぐらいだと思う」

マナ「あ……うん」

シンジ「戦自は余計に気にくわないんじゃないかな。それでね、ここって国内の基地だとどれぐらいの規模なの?」

マナ「うーん、そうね、日本で三本の指に入るぐらいは」

シンジ「だったら、重要拠点のはず。戦自はネルフをどうしたいんだろう?」

マナ「えっと、あわよくば潰したい、んだと思うよ」

シンジ「そこまでになると気にくわないだけじゃないよね?」

マナ「……お金。ネルフって莫大な資本をバックボーンにしてるでしょ? それこそ、世界からかき集めてるぐらい。だから、それが狙い。直接掌握も視野にいれてる」

シンジ「ちょ、直接掌握? それって、攻めこんでくるってことだよね。でも、そんなことしちゃ各国政府が黙っていないんじゃ」

マナ「理由があれば、大義名分は作ることができるもの。たとえば、そう……ネルフの私物化とか」

シンジ「――そうか、だから僕と母さんの関係を調べてたんだね?」

マナ「私も全てがわかるわけじゃないけど、そんなところなんだと思う」

シンジ「ここの責任者、ええと、一番偉い人は?」

マナ「参謀総長じゃない、かな。さらに上に陸軍将軍がいるけど、国会議事堂に出頭してるはずだから」

シンジ「マナのここでの任務って?」

マナ「私は、通信士。管制塔の業務もたまにする感じ」

シンジ「さっきの軍曹は? マナと一緒にきたのはどうして?」

マナ「あの人は、いろんなところを兼任してるの。私が廊下を歩いてたら、たまたま呼ばれて。シンジくんに近づけさせようする任務の一環」

シンジ「……なにか行動を起こさなくちゃいけない」

マナ「えっ?」

シンジ「もうすぐ消灯時間だって言ってたよね」

マナ「うん、そうだけど……?」

シンジ「軍曹は今どこに?」

マナ「えっと、当直を代わるって言ってたから、宿直室じゃない?」

シンジ「案内してもらえる?」
650 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 22:44:26.98 ID:J/eMFMqO0
【宿直室】

軍曹「おっ、もうこんな時間か。どれ、様子を見に――……お前は、サードチル、ごほん、なんだ?」

シンジ「さっき止めてくれたお礼が言いたくて」

軍曹「気にせんでいい。身体の具合はどうか。なにか変わったところがあったら申告しろ」

シンジ「節々が痛むくらいです。あのままだったら、どうなってたか」

軍曹「霧島隊員はどうした? 一緒じゃないのか?」

マナ「あ、すいません、夜分遅くに」

軍曹「なんだ、いるじゃないか。大丈夫ならそれぞれの宿舎に戻れ」

シンジ「ちょっと話を聞いていただきたいんですけど」

軍曹「話? なんだ?」

シンジ「ネルフに関することです。正直、僕もあの組織には嫌気がさしてまして」

軍曹「はぁ?」

マナ「し、シンジくん?」

シンジ「情報、ほしいんじゃないですか?」

軍曹「なに言ってるのかわかってるのか?」

シンジ「タダでとは言いません。そのかわりなんですけど、軍曹殿に僕の身の安全を保障してもらえませんか」

軍曹「……つまり、その引き換えに?」

シンジ「はい。こわいんです、このままエスカレートするとどうなってしまうかわからなくて」

軍曹「(ふむ、保身に走ったか……どうしたものか。ここで俺が断れば次の取り引き相手を探すだろうな。そうなれば、ネルフの情報が戦自の手に……)」

シンジ「どうですか? だめですか?」

軍曹「いや、分かった。交換条件に応じよう」

シンジ「ほんとですか? 助かったぁ」

軍曹「それで、情報というのは?」

シンジ「なにが知りたいんですか?」

軍曹「そうだな。我々が探っている本丸は碇ゲンドウ、そしてその妻である碇ユイ。この夫婦と上層組織である国連に癒着がないかどうかだ」

シンジ「戦自ではどこまで掴んでるんです?」

軍曹「教える意味はない。まず貴様が持っているカードを切る番だ」

シンジ「いえ、重要なことなんです。お互いに有益にしたい」

軍曹「……しかたない、サービスだぞ。まだろくに証拠をつかめていない。公式発表のあった異動についてな」

シンジ「どうしてですか? 父さんはアラスカに行っていると知ってるんでしょ。会いにいけばいいのに」

軍曹「詳しい所在は極秘扱いになっていてな。国連でも一部のゼーレの名のつく代表団しか知りはしない。しかし、そのいずれもが安全面を理由に硬く口を閉ざしているのだよ」

シンジ「……」

軍曹「さぁ、話せ。なにを知っている?」

シンジ「僕は、あなた方がほしがっている答えを知っています」

軍曹「なに……? それは、つまり」

シンジ「ただし、教えるには僕の安全だけは釣り合わないと判断しました」

軍曹「たしかな証拠があるのか?」

シンジ「はい。あります」

マナ「し、シンジくん、ネルフと戦自の開戦の火種になる、よ」

軍曹「(こいつ、なにを考えてる? ネルフを売って寝返るつもりか?)」
651 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 23:16:32.68 ID:J/eMFMqO0
シンジ「戦自はエヴァに勝てるつもりでいるんですか?」

軍曹「あんなものは対使徒に特化しているだけの欠陥品だ。電源ケーブルを狙い撃ちしてしまえば五分で活動限界ではないか」

シンジ「……そうか、それはたしかに」

軍曹「永久機関である使徒と違い、やりようはいくらでもある。本部の直接掌握をしてもいいしな」

シンジ「(やっぱり、そういうことか……ん? あれって、どっかで見たような)」

軍曹「ん? なんだ? どこを見ている?」

シンジ「あっ、いえ。別に……」

軍曹「もったいぶらずにはやく教えろ。証拠とはなんだ」

シンジ「(うぅーん、どこで……はっ、そうだ。たしか加持さんがカフスにしてたボタンと同じ……?)」

軍曹「おい、もしやなにもなしではあるまいな?」

シンジ「あの、その机の上に置いてあるバッジは?」

軍曹「ん? ……あ、あぁっ、これか。ネルフに行った時に記念品として頂いてな」

シンジ「記念品?」

軍曹「そうだ。珍しくもないだろう」

シンジ「……いつ、ネルフに?」

軍曹「先日だ。それよりも、具体的な提示はまだか?」

シンジ「気が変わりました」

軍曹「なに……? 貴様、俺を舐めてるのか?」

シンジ「いえ、迂闊だったんです。母さんが送りこんでたスパイの可能性を考えずに。とんでもない墓穴を掘るところでした」

軍曹「す、スパイ? なにを」

マナ「え……?」

シンジ「それは――記念品なんかじゃないっ!」

軍曹「そ、そうだったか? いや、これはだな」

シンジ「僕に正体がバレたと母さんがわかれば、どうなるかわかりますね」

軍曹「……」グッ

シンジ「お互いにこの話はなかったことに。マナ、行こう」

マナ「えっ? いいの?」

シンジ「なにもせずに見送ろうとしてるじゃないか。それが答えだよ」

軍曹「小僧……。図に乗るなよ」

シンジ「諜報部の人ですか。それとも、保安部からの特殊部隊? どちらでもかまいません、もし、母さんにこの顛末を報告するつもりなら、一言伝えおいてほしい」

軍曹「俺がしないと高を括ってるのか?」

シンジ「そうじゃありませんよ。まだ、はっきりとは伝えてなかったから。僕は、母さんのやろうとしてることを認められないって」

軍曹「なにをするつもりだ? こちらを裏切るつもりか?」

マナ「そ、そんな。うそ……? 軍曹殿が、ネルフからの内通者だなんて……!」

軍曹「ちっ」
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 01:10:36.16 ID:Qcw5UgHuo
スパイと知らなかった上での交渉ならマジで売るつもりだったのか
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 21:36:35.01 ID:zpVr/23no
今日は来ない系?
654 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/02(月) 01:39:09.06 ID:IBAdFOvk0
【通路】

マナ「待ってよ!」タタタッ

シンジ「(先走りすぎた。まさか、ネルフから潜入工作員がいたなんて……)」スタスタ

マナ「シンジくんってば!」グィッ

シンジ「僕がバカだったんだ。マナの情報が筒抜けだったのも、そう考えればわかったはずなのに」

マナ「えっ? ……あっ、軍曹が流出させてたってこと?」

シンジ「誰がとかそうじゃないんだよ、マナ。一人とは限らない。もっといるかもしれない」

マナ「ごめん、よくわからないんだけど」

シンジ「中学校に転校してきた時、マナの正体は即座に見破られていたよね」

マナ「うん、だから、その犯人が軍曹って話じゃないの?」

シンジ「どうしてあの人だと思うの?」

マナ「だって、ネルフからの工作員って判明したじゃない」

シンジ「なんで一人だけだって決めつけるんだよ。判明したのは、軍曹はネルフから潜入してるのが確定したってことだけ。複数いるかもしれないだろ」

マナ「そっか……二人いたら、もう一人がってこともあるかもしれないものね」

シンジ「……」

マナ「シンジくん? なに、考えてるの?」

シンジ「嘘の情報を渡すつもりだったんだ。次に、母さんを混乱させたらと思った」

マナ「それじゃあ、取り引きを持ちかけたのはフェイクだった?」

シンジ「形だけのね。驚いた?」

マナ「驚くに決まってるじゃない。本当に戦争になっちゃうんじゃないかって思った」

シンジ「ごめん。突発的に思いついたから打ち合わせをしなかったね」

マナ「いいよ。でも、これからは? 軍曹に口止めしなきゃ困らないの?」

シンジ「どうやって? 弱みを握るとしても方法は……」

マナ「ねぇ、シンジくんは何を隠して……ネルフとどうなりたいの?」

シンジ「僕は、ある計画を止めたいんだ。その為に動こうと決めてる」

マナ「ある、計画?」

シンジ「詳しくは話せない」

マナ「……それって、母親と敵対しなきゃいけないの? 総司令だよ?」

シンジ「出たとこ勝負なところだってある。だけど、そうなったとしてもおかしくはない」

マナ「わかった。それ以上は聞かない……軍曹はどうする?」
655 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 02:03:24.03 ID:IBAdFOvk0
シンジ「……」

マナ「脅す?」

シンジ「脅すって、脅迫? 材料がどこに――」

マナ「まだろくに調べてないからなんとも言えないけど。家族をネタにするとか」

シンジ「そんな……それに、そうなったら逆に母さんに告げ口をされるきっかけを与えてしまうかもしれない」

マナ「でも、方法を見つけて対等の立場にならないと……シンジくんだけが不利になってしまってるのよ」

シンジ「わかってる」

マナ「時には汚いと思う手段だって必要だよ。すべてが順調なら頼る必要はないけど。失敗した分は取り戻さなくちゃ」

シンジ「落ち着いて考えなきゃいけない。明確なミスをしたのは一度だけなんだ。慌てて判断間違いを繰り返せば取り返せなくなる」

マナ「だけど……っ! 迅速に状況判断をして決断しないと……!」

シンジ「わかってるっ! わかってるよ、もしかしたら、今ごろ母さんに」ギリッ

マナ「……」

シンジ「――……ひと騒動起こすよ」

マナ「えっ?」

シンジ「カラーコンタクトを取りに行ってる暇はないから、範囲がどこまで有効か試したことないけど……力を限界まで使う」

マナ「力って……? なにするつもり?」

シンジ「基地に張り巡らされている電波を丸ごと妨害する。機器を一時的に使えない状態に」

マナ「そんなの不可能よ。軍事施設はサイバーテロのに対する備えだってあるんだから。予備の電源が……」

シンジ「僕がやろうとしてることは停電にするわけじゃないんだ。ただよってる電波に強力な上書きをするだけ。正常に働けないほどのね」

マナ「可能だとして、そんなことしてどうするの?」

シンジ「説明してる猶予はない。はじめるよ」

マナ「は、はじめるって……? どうやって?」

シンジ「ふぅ……」スッ

マナ「シンジくん……? 目を瞑ってなにを」

シンジ「……」キィーンッ

マナ「え、な、なに? これ。突然、耳鳴りが」
656 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 16:05:53.47 ID:IBAdFOvk0
【ネルフ本部 初号機格納庫】

カヲル「我慢できなかったのか、シンジくん……」

レイ「……」スタスタ

カヲル「キミは……。やはり行くんだね」

レイ「この初号機は仮初めのもの」

カヲル「……」ジー

レイ「要(かなめ)となるコアはないわ」

カヲル「そうか、そういうことか」

レイ「碇くんが呼んでる。行かなくちゃ」

カヲル「方法は?」

レイ「エントリー、手伝って」

カヲル「向こうにある赤い機体を使ったら?」

レイ「こっちの方がいい。碇くんの匂いがするもの」

カヲル「……わかった。ハッチはボクが開けてあげるよ」

レイ「時間がない。司令が発令をだす前に、行動を開始」

カヲル「やれやれ、人使いが荒いな」

レイ「あなた、ヒトじゃないでしょ」

カヲル「比喩表現さ。太陽のように明るい日差しが指すのか……それとも。ボクはまだシンジくんに希望の光を見出せていないのだけど」

レイ「またひとつの分岐点に到達した。選ぶのは私たちじゃない。見守り、そして、助力する」

カヲル「(この先にあるセカイは、果たして福音をもたらすに値するのか……)」

放送「緊急自体発生! 緊急自体発生! 使徒の反応を感知! 場所は厚木基地方面! 職員は速やかに――」

レイ「エマージェンシーコールが開始された」

カヲル「……」

作業班「ったく! いきなりは勘弁しろって! ……キミたちは、こんなところでやって?」

カヲル「こんばんは」スッ ドンッ

作業班「なんだ? ……か、体に宙にっ⁉︎ がはっ⁉︎」ドサッ

カヲル「急ぐんだ。ヒトが集まってくる前に」

レイ「ええ」タタタッ
657 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 19:16:55.50 ID:IBAdFOvk0
【ネルフ本部 発令所】

シゲル「厚木基地方面より半径10キロ範囲にて強力なジャミング波をキャッチ!」

冬月「衛星からの映像は?」

マコト「光波、粒子を遮断してる……す、すごいぞ、これは」

冬月「ろくにモニタリングできんか……ユイくん」

ユイ「暴走か、あるいは――」

冬月「意図的に力を発動しているかだな。……葛城一尉の所在は?」

マヤ「こちらに向かっているはずですが、まだ」

冬月「やむをえんな。到着するまでの間、陣頭指揮は司令部で執る」

マコト「まっ、待ってください! 初号機にエントリー反応!」

冬月「なに? 誰が乗っている?」

シゲル「こちらからの信号を拒絶! 内部をモニターできません!」

冬月「ケイジ周辺の映像を出せ」

マコト「そんな、どうなってるんだ。作業員たちが」

冬月「気絶? 死んでいるのか? 大至急、録画データを解析! 今より30分前にまで遡り怪しい映像がないかチェックしろ!」

シゲル「りょ、了解!」

冬月「現時刻を以って、第一種戦闘配備に移行だ! チルドレン達への通達も忘れるなよ!」

オペレーター「了解! 緊急発令! これより第一種戦闘配備へ移行!ただちに指定の配置につけ!」

マヤ「映像の巻き戻し作業を完了! ……これはっ⁉︎ ダメですっ! ノイズがひどくて!」

冬月「やはりタブリスが裏で暗躍していたか」

ユイ「初号機はどうなってる?」

マコト「独力で第三ロックボルトまで解除した模様!」

ユイ「出撃するつもりね。全カタパルト射出盤にロック。急いで」

マコト「了解! ――第二までのカタパルトロック作業、完了! 続いて第三……っ⁉︎」

ユイ「どうしたの? なにか問題が?」

マコト「ぱ、パターン青っ⁉︎ 第三カタパルト付近で使徒の反応を確認!」

シゲル「本部内部に使徒っ⁉︎ いつのまに!」

ユイ「技術班を至急現地に向かわせて。命を賭(と)して初号機の出撃を阻止するのよ」

ミサト「ぜぇっ……ぜぇっ。だぁ……っ、おくれ、ました」

マコト「葛城さん!」

ミサト「ふぅ、ふぅっ、んっ、日向くん、どうなってるの? なんの騒ぎ?」

リツコ「使徒みたいね」

ミサト「リツコ? あんたも今来たの?」

リツコ「マヤ、信号をキャッチした場所は?」

マヤ「あ、厚木基地方面です。現在、広範囲に渡り電波妨害が行われており、発生源の特定を急いでいます」

リツコ「(シンジくんったら、若いわね。我慢しきれなかったのかしら)」

ミサト「えっ、ちょっと待って。初号機がでてるの? パイロットは?」

マコト「不明です!」

ミサト「不明って……? 誰が乗ってるかわからないの⁉︎ レイとアスカはっ⁉︎」

リツコ「寝ぼけてるの? アスカは一緒に連れてきているのではなくて?」

ミサト「あぁっ、そうだった! セカンドチルドレンの弐号機へのエントリー急いで!」

ユイ「零号機の凍結も現時刻をもって解除。以降の指揮は葛城一尉に一任します」

ミサト「了解! さぁ、みんな、久々の使徒戦になりそうよ! 平和ボケしてんじゃないでしょーね⁉︎」
658 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 19:41:35.44 ID:IBAdFOvk0
【厚木基地 宿舎】

ムサシ「――なんだ? やけに静かだな」

軍曹「はぁ、はぁっ」

ムサシ「軍曹殿? 見回りの時間はまだ」

軍曹「全隊員、整列ッ!」ピーーーーッ

少年兵一同「……っ⁉︎」ガタガタッ

軍曹「さっさとせんかっ!!」

ムサシ「――隊員以下23名! 整列を終えましたっ!」

軍曹「現在、参謀本部が何者かにサイバー攻撃を受けている!」

少年兵一同「……」ドヨドヨ

軍曹「静かに! 従って全ての電子機器が使用不可能だ! 発生源の割り出しを急いでいるが、あらゆる可能性を想定して動かなければならない! 出撃準備!」

ムサシ「しゅ、出撃でありますか? しかし、どうやって?」

軍曹「人力に決まっておろう! ヤシマ作戦を思い出せ! さいわい、ガソリンで動くものはかろうじて起動ができる!」

ケイタ「ねぇ、ムサシ。EMP攻撃を受けてるのかな?」

ムサシ「電磁パルスか。ありえる。となると、隣国の嫌がらせか」

ケイタ「人間同士で争ってる場合じゃないのにさぁ」

軍曹「私語は慎め! 作業開始!」ピーーーーッ

少年兵一同「了解っ!!」

シロウ「ちょっと待ってもらえませんか」

軍曹「き、貴様は。まだこの基地に滞在したのか?」

シロウ「そう邪険にしないでくださいよ。面白いイベントに鉢合わせできたようだ」

軍曹「見ての通り急いでいる。引き止めた理由を簡潔に述べろ」

シロウ「ムサシ、くん。でしたか、彼とお友達を拝借したい」

軍曹「なんの為にだ?」

シロウ「急いでいるのでは? 詳しく話をすると余計な手間をとらせてしまいますが」

軍曹「ちっ、おい、ムサシ隊員! 浅利隊員!」

ムサシ&ケイタ「はっ!」ザッ ビシ

軍曹「時田博士に同行しろ。……のこりの物は各担当区域に急げ!」
659 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/03(火) 22:38:08.54 ID:J0McYcGp0
【厚木基地 執務室】

シンジ「だめだ、これも違う。そっちは――」

マナ「こんなところに忍びこんでもし見つかったら……。それにその瞳の色」

シンジ「悪いけど、まだやる事があるんだ。急がなくちゃいけない。詳しい説明はあとで」

マナ「でも、基地の凄い騒ぎになってるし、シンジくんがなにかしたんだよね?」

シンジ「だから、今は……――あった」ガタガタ

マナ「なに? ……えっ、それって、ネルフの報告書?」

シンジ「……戦自はネルフを調べてるって言ってたよね。だから、調査報告書がどこかにあるはずだと思ったんだ。当てずっぽうでここに来たけど、運がよかった」パサ

マナ「入手してどうするつもり?」

シンジ「あるはずなんだ、きっと、アレが」

マナ「あれって? ねぇ、なんのことだかわからないっ」

シンジ「ここまで大規模に力を使ったら母さんは僕を怪しむ。いや、もう怪しんでいるんだろうけど」ペラ

マナ「それとその書類になんの関係が? 今は軍曹の口封じが先決なんじゃないの?」

シンジ「使い捨ての駒のひとつなんだよ。チェスでいうポーン。僕たちに彼を止める手立てはない。方法は殺すしか――」

マナ「こ、殺さなくてもっ! それなら脅迫する方がまだっ!」

シンジ「僕だってそんなつもりは毛頭ない。かといって、脅迫するつもりもね」

マナ「だったら、どういう?」

シンジ「僕はね、ずっと糸を頼りにその上を歩いてきた。ロープの上を歩く綱渡りの人生とかって言うじゃない?」

マナ「うん」

シンジ「僕の力の正体を隠すには、なにもしないのが一番いいんだ。誰かが困っていても、見て見ぬふりをしてやり過ごす。そう――……“行動”しなければ“起”は生まれない」

マナ「う、うん?」

シンジ「それだけじゃ嫌だったんだ。僕は、自分自信が好きじゃなくてキライだったから。……父さんにも、捨てられたくなくて。必死にこっちを見て、頑張ってる僕を見てってわめいてるだけの子供だった」

マナ「……」

シンジ「やっとそれが理解できそうになった時、父さんは帰らぬ人になってしまった。だから、自分を好きになれるように、父さんに褒めてもらえるように、みんなを守りたいんだ。自分の為にね」

マナ「……」

シンジ「――……あった」

マナ「なにが、あったの?」

シンジ「極秘ファイル。戦自が企んでいて僕たち知らないモノ」

マナ「交渉テーブルの材料に使うつもり?」

シンジ「決断の時がきてる。全てを母さんに曝け出すその時が」

マナ「シンジくん……?」
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 22:44:20.16 ID:ek8WwxBlo
戸棚か引き出しかわからないけど重要書類の場所に鍵もかけてないのか…
661 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/03(火) 23:08:25.95 ID:J0McYcGp0
【ネルフ本部 発令所】

シゲル「安全盤のロックが解除されています! こちらからの制御は不能!」

ミサト「第三カタパルトから強引に上がるつもりか。……本部内における使徒の位置は?」

マコト「同区画にて停止中っ……――ま、待ってくださいっ! 反応ロスト! 消失しました!」

ミサト「消えたっ⁉︎ 使徒がっ⁉︎」

マヤ「初号機は依然として進行中! 技術班の車両と接触……このままじゃ、地上に出られてしまいますっ!」

ミサト「アスカっ! 聞こえる⁉︎」

アスカ『はいはい』

ミサト「準備が済み次第、目標である初号機を追いかけて」

アスカ『追いかけるって。すぐに活動限界になるんじゃないの? アンビリカルケーブルだって繋いでないみたいだし』

ミサト「目的が不透明よ。例え数分でも市街地をむちゃくちゃに破壊しまくられたら被害は甚大だわ」

アスカ『そもそもエヴァってチルドレンしか乗れなあんじゃないの?』

リツコ「そのはず。私たちが知らないだけでなければね」

アスカ『んなアバウトな』

リツコ「パイロットの正体は活動停止してから拝めばいい」

ミサト「使徒の動きに警戒して。消えたなんてありえないわ、どこかに潜伏しているのよ」

冬月「エヴァの存在意義は使徒に対する防御にこそある。人災になることは許されん」

ミサト「はい。とにかく今は初号機停止を最優先――……アスカ? 準備はいい?」

アスカ『このあたしに任せておけばお茶の子さいさいよ。誰がパイロットでも止めてみせる』

ミサト「レイに連絡がつかないから、今はアスカだけよ。頼りにしてる」

アスカ『ふふーんっ! エースとしての腕の見せ所ってわけね! 意外にすぐに機会が訪れたわ!』

マヤ「弐号機、主電源通電! 起動します!」

ミサト「たのんだわよ。エヴァンゲリオン弐号機、発進……!」
662 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/03(火) 23:43:44.85 ID:J0McYcGp0
【弐号機 プラグ内】

アスカ「――うんと、初号機はぁ〜っと。あれ? 地上に出てもいないじゃない。ミサト、どうなってんの?」

シゲル『目標、加速開始! 国道50号線をまっすぐ北上しています!』

アスカ「げぇっ⁉︎ ええっ、ちょっと、それって」

リツコ『追跡するには、弐号機もアンビリカルケーブル接続を切るしかない』

アスカ「ちっ、向こうの電池切れを待ってりゃいいと思ったのにさぁ」

ミサト『市街地の破壊が目的ではないだけ良しとしましょう。ここから北上するにあたり主要な都市は?』

マコト『ほとんど海の底ですよ。あるといったら、軍事拠点の厚木基地ぐらいしか』

ユイ『すぐに追跡を開始』

ミサト『えっ? し、しかし、長距離の移動は。通過するころにはほとんど残り時間が』

ユイ『国外に持ち出されたらとは思わないの?』

ミサト『そうか、そういうパターンもあるのか。失礼致しました。聞こえたわね、アスカ?』

アスカ「たくもーっ! なんで追いかけっこしなくちゃなんないのよぉ!」

リツコ『急いで加速状態にはいって。シンクロ率で速度は上下するけど、マックスで音速を超える』

アスカ「すごいGがきたりすんじゃないでしょうね?」

リツコ『心配いらないわ。プラグ内を満たしているL.C.Lが衝撃を吸収してくれるから』

アスカ「はぁ……よっと」ガコンッ

ミサト『なにやってるの』

アスカ「スプリンターみたくクラウチングスタートした方がかっこいいじゃない。気分よ、き・ぶ・ん」

ミサト『遊びじゃないのよ。スタート』

アスカ「あー、やだやだ、これだから大人ってのは。言われなくても、行くわよっ!」ダンッ ダンッ ダンッ

マヤ『弐号機加速状態に移行!』

アスカ「……ほんとだ。中は全然変わりないんだ」ダンッ ダンッ ダンッ

リツコ『集中して。走ることだけをイメージするのよ。マヤ、アンビリカルケーブルの有効範囲は?』

マヤ『間も無く切れます』

リツコ『初号機と弐号機のタイム差の算出、急いで』

ミサト『追いつける?』

リツコ『ざっとみた感じ、厳しいわね』

ミサト『アスカっ! 真面目にやってる⁉︎ 目標を抑え込んで停止させなくちゃいけないのよ!』

アスカ「やってるわよ! 最高速に移行するまで加速ギアってもんがあるでしょーが!」

リツコ『シンジくんなら、どうするかしらね』

アスカ「……っ⁉︎ なんで今あのバカシンジが出てくんのっ⁉︎」

リツコ『彼はいつも私たちの期待した結果を残してくれたもの。過程は右往左往することはあっても』

アスカ「私じゃ無理って言いたいわけっ⁉︎」

リツコ『ほしいのは結果なのよ。おわかり?」

アスカ「くっ! この……っ!」

マヤ『弐号機、シンクロ率が5パーセント上昇!」

シゲル『――さらに加速! ケーブルの断線を確認! 内部電源に切り替わります!』

ミサト『五分が勝負の分かれ道ね。とにかく全速力で走って! 急ぐのよ!』
663 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 00:18:48.65 ID:EZgE3ZWW0
【ネルフ本部 発令所】

マコト「内閣府よりホットライン入電。戦自司令室と日本政府が回線に割り込んできています。どうやら、状況の説明を求めているようですが……」

冬月「ハゲタカどもめ。やはり見過ごしはせんか」

ユイ「……」

冬月「どうする? 人為的ミスだと応答するわけにはいかんぞ」

ユイ「全てキャンセル。ネルフ特権十五項を発動して。後に報告すると伝えなさい」

シゲル「了解。そのように返信いたします」

マヤ「到着時刻の解析が終了! 切断後、およそ3分で初号機に追いつけます!」

リツコ「サブタスクで予定時刻を表示」

マヤ「了解!」

ミサト「いい感じよ!そのまま加速を続けて!」

アスカ『ぬぅぅぅおおぅりやぁあああっ!!』

冬月「初号機の目的地はもしや、サードチルドレンではあるまいな?」

ユイ「パイロットがタブリスなら……」

冬月「奴はなにを考えているんだ。こちらとしてもこれ以上、野放しにするわけにはいかんだろう」

マコト「目標、神奈川方面に向け進行中」

シゲル「軍の総合観測所から入電。エヴァを停止するよう言ってきています。……関連施設からの回線が入り乱れてるな、こりゃあ」

ユイ「一時的でかまわない。作戦行動に支障をきたすようであればシャットアウトして」

シゲル「りょ、了解!」

マヤ「目標、活動限界を残り2分を切りました!」

ミサト「弐号機は⁉︎」

マヤ「タイムラグがありますので、残り3分30秒!」

ミサト「アスカ! 追いつければこちらが有利よ、足止めするだけでいい! 待ってれば勝手に自滅するわ!」

アスカ『くっ! もっとラクショーだと思ったのにぃぃっ!』

マヤ「……っ⁉︎ 初号機、さらに加速っ!」

シゲル「音速の壁を突き破ります!」

ミサト「まずいわよ……! とんでもない突風がくる! 近隣に住宅地はっ⁉︎」

マコト「付近半径5キロメートル四方は山に囲まれています!」

ミサト「ほっ、助かった――」

リツコ「安心するのはまだはやい! 弐号機の加速数値はっ⁉︎」

マヤ「初号機の加速率が想定の遥か上になってしまっています!」

リツコ「計算外だわっ! アスカ! もっと速く! 追いつけなくなるっ!」

アスカ『んなくそぉおおおおっ!!』

マコト「ダメです! 弐号機、速度あがりませんっ!」

リツコ「初号機に停止信号を送信!」

マヤ「送信、やはりだめです! 受け付けません!」

リツコ「何度でもトライし続けなさい!」

ミサト「間に合わないか……! アスカっ! 作戦を変更! 初号機が停止した地点に急いで向かって!」
664 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 00:49:14.27 ID:EZgE3ZWW0
【厚木基地】

マナ「大丈夫? すごい汗かいてる」

シンジ「ちょっと、力を使いすぎちゃって。マナもそろそろ宿舎に戻って。僕に拉致されてたって言えばいいよ」

マナ「えっ? なんでそんなこと」

シンジ「基地内が大騒ぎになってるんだ。そんな時に不在じゃ、理由が必要だろ」

マナ「でも、それじゃシンジくんが……」

シンジ「僕はもうすぐここからいなくなる。綾波がここに来るだろうから」

マナ「綾波、さん?」

シンジ「まだ賭けの途中なんだ。このファイルを手に入れられたことはラッキーだったとしか言いようがないけど、今は良い方向に向かってる」

マナ「……」

シンジ「――だけど、次がどう転ぶかはわからない。こんなに都合よくことが運ぶとは思えないし……。これ以上、マナを巻き込みたくないんだ」

マナ「そんな……そんな、寂しいこと言わないでよ。たしかに、私たち知り合って間もないけど、友達じゃない」

シンジ「友達だから、そう思うんだ。ごめん、僕は自分勝手だよね」

マナ「また、会える?」

シンジ「いつか、生きてたら会えるよ」

マナ「死んじゃうみたいなこと言うのね」

シンジ「……」

マナ「シンジくんと一緒に行きたい気持ちが半分。でも、残り半分はムサシとケイタを残していけない」

シンジ「うん」

マナ「自分勝手なのは私だよ。助けてもらってばかりで、正体がバレた瞬間に……本当なら殺されてもおかしくなかった。今、選ぶことができるのはシンジくんのおかげ」

シンジ「……」

マナ「なにもしてあげられなくて、ごめんね」

シンジ「いいよ」

マナ「シンジくんが抱えてる色んなことを、一緒に分かち合ってくれる人、いる……?」

シンジ「どう、かな……」

マナ「もし、その相手が女の子だったら。自分から話さなくちゃだめだよ」

シンジ「でも、僕は」

マナ「甘えたっていいの。弱さを受け入れてくれると信じなくちゃ」

シンジ「……」

マナ「きっと、その子も待ってるはずだから。絶対、ね? 約束して?」

シンジ「――……わかった」

マナ「うんっ! ぐすっ……色々とごめんなさい。私……っ」

シンジ「マナ……」

マナ「本当に平気? 綾波さんがここに来られるの?」

シンジ「たぶん。力を発動した時点で気がついてると思うから」

マナ「そっか……わかった。私、戻るね?」

シンジ「うん」

マナ「本当に、また、会えるよね?」

シンジ「いつか、きっと」

マナ「デートする約束も守ってもらってないんだからね! きっとだよ……!」ポロポロ
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 08:05:35.37 ID:cMo7lRx9O
重要書類が段ボールの中で保存してるかのような描写だな……
しかも最重要系でしょ無人の場所に保存しないでしょ
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:09:18.98 ID:lSownb/vO
想像力が足りんやつらばかりだな
突然の騒動で慌てて席を外したとか考えんのかね
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:38:36.90 ID:2ft8E2cyO
シンジがくる前に書類見てた

騒動おきる

誰かが呼びにきたor急いでどっかに向かわなけれいけなかった

書類を引き出しか棚に閉まったけど鍵かけ忘れた

でいいじゃん
ヘルパーの件もそうだけど重箱の隅をつつけばいいってもんじゃないだろ
気にするようなとこか?
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:55:46.21 ID:8TQu/XDeO
話がしっかりしてるからそういうところでしか揚げ足取れないんだろ
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 12:08:46.94 ID:rFRCORg0o
超人パワーで開けたでええやん
670 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:05:44.31 ID:EZgE3ZWW0
【通路】

ケイタ「あれ、歩いてきてるのは、マナ……? 管制塔はこっちじゃ」

シロウ「お友達かい?」

ムサシ「左様でありますが――……」

マナ「ムサシ、ケイタ」トボトボ

ムサシ「あいつはどうした? そばについていたはずじゃ? 目が腫れて……泣いてたのか?」

ケイタ「なにかされたの?」

マナ「……」

ムサシ「あの野郎……っ!」

シロウ「あいつというのも同じ隊員か?」

ケイタ「あ、いえ、違います。ネルフから訓練生できている奴のことで」

マナ「ち、違うの。シンジくんは……」

ムサシ「……? 違うのか?」

マナ「その、違わないけど」

ケイタ「マナ……?」

シロウ「面白い。実に興味深い反応をしている。キミも我々に同行してもらおうか」

マナ「えっ? あの、なにかするんですか?」

シロウ「実験だよ。簡単な適性審査というべきか」

ムサシ「待ってください! 霧島隊員は情報管理部に所属しており――」

シロウ「発言の許可を許していない。ムサシ隊員は私から質問された場合にのみ答えたら良い」

ムサシ「……っ!」

シロウ「戦自に所属する者ならば理解しているだろう。命令系統の厳しさを」

ケイタ「し、しかし」

シロウ「キミまで口を挟む気か? よほど大切な者のようだな。私にとって些事にすぎんのが悩みどころだ」

ムサシ「……」

シロウ「そうだ、それでいい。霧島隊員といわれていたか? 行くぞ」

マナ「あの、私には任務が」

シロウ「その任務とやらは基地で起きている騒動を無視して許されることか?」

マナ「事情があったんです!」

シロウ「裁定を下せる権限はない。しかし、報告することはできるのだぞ……例えば、サボタージュしていたとかな」

ムサシ「でっち上げでしょう! そんなの!」

シロウ「ウソか真実か。重要な指摘はそこではないのだよ。キミらと私。……どちらが信用するに値するかだ」

ケイタ「(こ、この人……ムサシ)」チラ

ムサシ「……」コクリ
671 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:08:44.43 ID:EZgE3ZWW0
シロウ「アイコンタクトでイカれたやつだと確認しあっているのか? 子供にもわかりやすいよう説明しているだけのことだよ」

ムサシ「発令は絶対です。上官がご所望するのであれば俺たちは兵として、応えざるをえません」

シロウ「なにやら引っかかる言い方だな?」

ムサシ「――ひとつ問題が。博士が所属なされている機関は戦自ではありません」

シロウ「なぜキミにわかる?」

ムサシ「隊がつけているバッジを身につけておられないからであります」キラン

ケイタ「必ず着用するように義務づけられています」キラン

シロウ「んん〜?」ジー

ムサシ「したがって、戦自機関でない者からの命令に従う義務は――」

シロウ「これのことかな?」スッ

ムサシ&ケイタ「……っ⁉︎」ギョ

シロウ「すまないね。そのままポケットにしまったままだった」

マナ「当所属の博士殿でありましたか」

シロウ「いかにも。といっても、着任したばかりだが。……あぁ、そういえばまだろくに自己紹介をしていかなったな。本日付けで戦自科学研究室に配属となった、時田シロウだ。以降、お見知りおきを」ニヤリ

ムサシ「(くそっ……なんてこった!)」

ケイタ「む、ムサシ……!」

シロウ「さて――……これで、キミたちが私に従う道理ができてしまったわけになるが、他に気になるところは?」

ムサシ「くっ!」

シロウ「ここに配属となれば悪いようにはせんよ。人類の……いや、日本国の未来に貢献できると約束しよう」ニヤニヤ

ケイタ「マナっ! あいつはどこに行ったのっ⁉︎」

マナ「シンジくんなら――」ズズーンッ!

ケイタ「うわっ⁉︎ 地震? ……違う」

ムサシ「ちくしょう、今度はなんだって言うんだっ!」

ケイタ「滑走路の方角だ! 南!」
672 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:41:34.62 ID:EZgE3ZWW0
【滑走路】

シンジ「はぁっはぁっ」タッタッタッ

レイ『碇くん』

シンジ「綾波ぃっ! ここだっ!!」キッ

初号機「……!」ドンッ ドンッ ダンッ

シンジ「うわっ⁉︎」

初号機「……」プシューッ

レイ「碇くん、スピーカーに切り替えた。どうしたらいいの?」

シンジ「稼働時間が残り少ない! プラグをイジェクトして!」

レイ「了解」ピッピッ

戦自隊員「おーいっ! こっちだ……っ⁉︎ こ、こいつは、エヴァじゃないか⁉︎ なぜ厚木基地にっ⁉︎」

シンジ「(よし、人が集まってきてる)」

初号機「……」ガコンッ

シンジ「僕もそっちと合流する」カチ ピッ

レイ「……」シュー

シンジ「ありがとう、来てくれて。綾波なら、きっと気がついてくれると思ってた」

レイ「トラックが集まってきてる」

シンジ「うん。いいんだ、これで」

レイ「そう」

シンジ「母さんが窮地に立たされるから。結局頼ってしまって、ごめん」

レイ「かまわないわ」

シンジ「ミサトさんたちは?」

レイ「回線を切ってたから」

シンジ「そっか。今頃はネルフ本部も大騒動になってるだろうね」

レイ「弐号機が追走してきた」

シンジ「アスカが? それで、現在地は?」

レイ「わからない。途中で私が速度を上げたから」

弐号機「……!」ビュ シュバッ

戦自隊員「おい! そこの二人! 両手を上げて――な、なんだぁっ⁉︎」

弐号機「……」ズーーーンッ プシューッ

シンジ「なるほど……来たね」

アスカ「やっと追いついた……っ⁉︎ ふぁ、ファーストぉっ⁉︎ なんでここにっ⁉︎ 初号機が暴走してた犯人ってあんただったのぉっ⁉︎」

レイ「よく追いつけたわね。あの速度ではここまで辿り着けないと思ったのに」

アスカ「はっ! あれからすぐにあたしだってマッハに突入したわよ!」

レイ「……」

シンジ「アスカ。一日ぶり」

アスカ「シンジ……? って、今はあんたにかまってる暇ないわよ! そこの人形!」ビシッ

レイ「……」

アスカ「どういうつもりっ⁉︎ あんた自分がなにしでかしたかわかってんの⁉︎」

ミサト『アスカっ! 現状を報告して!』

アスカ「あぁん、もう、ごちゃごちゃうっさいわねぇ! 弐号機のカメラを繋いであげるから自分の目で確認したらっ⁉︎」
673 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 23:12:55.05 ID:EZgE3ZWW0
【ネルフ本部 発令所】

ネルフ職員一同「……」ドヨドヨ

シゲル「あれって、綾波レイじゃないか?」

マコト「それに、シンジくんも?」

マヤ「シンジくん……」

ミサト「レイが初号機を操ってたってわけ? ……でも、どうして」

リツコ「(焦ったわけでなかった? 企んでたのね、あの子)」

冬月「当てが外れたな」

ユイ「タブリスが協力しているのはまず間違いないでしょう。でなければ、本部内における使徒の反応の説明がつかない」

冬月「まったくの的外れというわけでもないか。……しかし、これは困った事態になったぞ」

ユイ「……」

冬月「ネルフに所属するパイロットがエヴァを私的な理由で使用したのだ。映像で確認できる限り、目撃者の数が多すぎる」

ユイ「もみ消そうにも、相手が悪すぎる。いがみ合う関係にある戦自と政府には都合の良い材料となりました」

冬月「これを機に、キミの責任問題まで発展させ国会で論じるだろうな」

ユイ「葛城一尉」

ミサト「は、はい?」

ユイ「初号機と弐号機を速やかに回収。以降はネルフに帰還させて。パイロット達も」

ミサト「サードチルドレンはいかがなされますか?」

ユイ「事情聴取しなければならない。もちろん帰還よ」

ミサト「はっ!」ビシッ

冬月「これで疑念の余地はなくなったか。やつは力を自覚し、意図的に使用して今回の事態を引き起こした」

ユイ「やはり私に対し牙を剥くようですね」

冬月「ここまで大胆な行動にでられるとは。子供相手だと思って甘く見過ぎていたか」

ユイ「ふぅ……対応が後手後手にまわっていたと認めざるをえません。一本とられました」

冬月「……」

ユイ「ですが、行動には結果がつきものです。これで勝ったなどと思わせるべきではないし、また、そうはなりません」

冬月「報復を与えるか」

ユイ「力関係と立場はなにも変わっていないのです。軽はずみに動けばどうなるか、シンジに身をもって経験させましょう」

リツコ「……」チラ

ミサト「あんた、やけに落ち着いてるわね」

リツコ「驚いてるわよ? 表にだしてないだけで」

ミサト「レイは初号機とのシンクロ率の融和性がそんなに高くないはずでしょ? どうなってるの?」

リツコ「A10神経で接続している以上、体調、気分の高まりによってシンクロ率は上下すると考えられます。一概に低い高いの基準は定められないのよ」

ミサト「つまり、今回だけってこともありうるの?」

リツコ「なくはないわね。今回、高い数値を計測して速度をマックスにまで加速できたのは、レイが強く願ったからじゃないかしら」

ミサト「シンジくんの元に向かうために?」

リツコ「でなければ、初号機を無断で使用なんてすると思う?」

ミサト「……」

リツコ「始末書と抗議文の山が待ってるわよ。仕事ができてよかったじゃない。あなた、いつも暇そうだから」

ミサト「デスクワークが増えるのはかまわないけど。……レイはどうなるの?」

リツコ「(それはシンジくんの交渉次第ってところかしらね)」

ミサト「リツコ?」

リツコ「それよりも今は、回収が最優先事項だわ。事の経緯については、自ずと明らかになるでしょう」
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 02:09:06.24 ID:aNINHIXTo
金庫?なら腕力でこじ開けたと思ったけど
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 08:58:35.46 ID:csTyPW5AO
どうでも良すぎる
台本SSはキャラの個性があまりにも崩壊してなきゃどうだっていいよ
まぁこれはガチで話作りがしっかりしてるだけに気になってしまうてのならわからんでもないが
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 09:48:17.40 ID:q7Cfo4Eao
普段しっかり話が練られているからこそ、そこだけご都合主義に感じたって所はある
綾波召喚だけでユイの責任は問われるしハッタリで乗りきって欲しかったかも
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 09:50:22.00 ID:kBqS9txMo
で、これ何時映画化するの?
678 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/05(木) 13:09:51.46 ID:QClrwTCL0
【厚木基地 研究室】

シロウ「薄汚い売国奴どもめ。国に対し背信行為を……得られた資金で好き勝手に研究しやがって。連中、特に赤木リツコに必ず目にものを見せてやる、なにがエヴァだ。欠陥品だ」ブツブツ

ケイタ「博士」

シロウ「――……ん? 失礼。外で騒いでる連中を見て嫌な記憶を思い出してしまった。なにかな?」

マナ「なんの機材ですか?」

シロウ「キミたちが座っている椅子は、ジェットアローン計画の技術を流用して作成した。これから開発基盤を作る上で最初の一歩となる試作品だ」

ムサシ「この椅子が?」

シロウ「正確にはコックピットに設置予定となる。私が立案し戦自に持ち込んだものだよ」

ケイタ「コックピットって? なにを?」

シロウ「私と戦自の共通項は“対使徒”兵器完成。つまり、ネルフにとってかわる役割を担いたいと考えている」

マナ「エヴァみたいなロボットを作るんですか?」

シロウ「そうだよ。キミたちがその栄えある候補生に選出されるかもしれないという話だ。適性の結果次第になってしまうが」

ムサシ「お、俺たちがっ⁉︎」

シロウ「二言はない。俄然やる気が湧いてきたかな?」

ムサシ「(パイロットになれれば、エリートだ。マナとケイタに不自由な暮らしをさせなくて済むかも……!)」

マナ「(ロボット……それって使徒と戦のよね。私が頑張れば、ムサシやケイタはもちろん。シンジくんの助けになれるかも)」

ケイタ「(こ、こわいけど。生身で戦地に行くよりは安全なのかな……)」

シロウ「目に力が宿ってきたな。いいぞ、やはり子供はそうでなくてはいかん」

ムサシ「さ、先ほどは失礼いたしました」

シロウ「なに、気にしていない。私達は知り合ったばかりじゃないか。お互いに知らないことだらけで誤解も生まれよう」

ケイタ「座ってればいいんですか?」

シロウ「ああ。器具をセットするからそのままでいてくれ、まずは浅利隊員から」カポッ カチャカチャ

マナ「いつ頃完成予定なんですか、その、ロボットって」

シロウ「なんとも言えないなぁ。だが、できるだけ急ぐとは約束するよ。次、ムサシくん」カポッ カチャカチャ

ムサシ「ロボットができればネルフに頼らなくても使徒を倒すことが可能でありますか?」

シロウ「もちろんだ。その為に資金を投入するのだから。最後に、霧島くん」カポッ カチャカチャ

マナ「……」

シロウ「――時にキミは、なにか重要な任務を帯びていたそうだな?」

マナ「えっ?」

シロウ「自分で言ったじゃないか。事情があった、と。なにをしていたのか聞かせてくれないか?」

マナ「守秘義務に反します」

シロウ「当てようか。ネルフからきたという訓練生に関連するんじゃないか?」

マナ「いえ、それは違います」

シロウ「嘘はよくない。キミが見せている顔色が物語っている」

ムサシ&ケイタ「……」

シロウ「お友達も興味津々のようだぞ? なぁ、誰にも言わないと約束するから教えてくれないか?」

マナ「できません。例え死んでもお答えするわけには――」

シロウ「おいおい、聞いたかね。やはり興味深い。私は“教えてくれ”としか尋ねていないのに、わざわざ自分から命を賭けるといいだした。重要な機密だと自白しているようなものだ」スタスタ

マナ「……っ⁉︎」

ケイタ「博士、それぐらいで。パイロットの適性テストには関係ないでしょうし」

シロウ「判断するのはキミじゃない、この私だ」ピッ
679 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 13:22:54.19 ID:QClrwTCL0
ケイタ「……? ――……ぎゃああああああっ⁉︎」バチバチバチッ

ムサシ&マナ「ケイタっ⁉︎」

シロウ「あぁ、またうっかり言い忘れていた。ロボットの操縦士になるには過酷な環境に耐えてもらわねばならん。なにしろ、生身の体で戦闘機よりも速い箱に搭乗することになる」

マナ「博士っ!! なにをしてるんですかっ⁉︎」

シロウ「なにを慌てている? 必要なテストだよ。どこまで痛みに耐えられるかの。椅子には電流が流れる仕組みになっている」ピッ

ケイタ「」プスプス シュー ガクン

ムサシ「ケイタっ⁉︎ おいっ!! しっかりしろ! ケイタぁ!!」ガタガタ

シロウ「ふむ。気絶したか。皮膚が少々焦げているな、やりすぎてしまったようだ。はじめてで加減を間違ってしまった」

マナ「ケイタっ!! ケイタぁっ!!」ガタガタ

シロウ「では、質問を再開しようか。キミはあそこでなにをしていたんだね?」

マナ「……っ⁉︎ 申し上げられません!」

シロウ「それは誰のためにだ? 軍かね? それとも――」ピッ

ムサシ「ケイタっ! ケイっ⁉︎ ぐあああああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「ムサシっ⁉︎」

シロウ「電圧は浅利隊員より低めに設定してある。かといってつらくないわけではないぞ」

マナ「ムサシっ!! ムサシぃっ!!」ガタガタ

シロウ「訓練生だろう? 関係しているのは」ピッ

ムサシ「うっ」シュー ガクン

マナ「ムサシ!! しっかりして!!」

ムサシ「こ、この野郎ぉっ!!」ガタガタ

シロウ「暴れたところで無駄無駄。その器具は人間の力では破壊できないからな。どうする? 霧島隊員。彼らの命運はキミが握っているぞ?」

マナ「こんなのが適性検査なんてっ! 人体実験じゃないですか!! 上官を呼んでください!」

シロウ「ふむ……まだ理解していないと」ピッ

ムサシ「まっ⁉︎ ぐううううああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「ムサシ⁉︎ ムサシぃっ!!」

シロウ「そろそろ喚くのにも飽きてこないか? 私はとっくに飽きてる。まるで作業だ」ピッ

ムサシ「はぁ、はぁっ」シュー

マナ「なんで? なんでそこまで知りたいんですか?」

シロウ「キミが隠そうとするのが悪いのだ。興味が湧いてしまうだろう?」スッ

マナ「わかりました、言います、言いますから」

シロウ「どうぞ」

マナ「私が受けていた任務は、碇シンジくんの身の回りの世話をすることです」

シロウ「それだけか?」

マナ「はい」

シロウ「手間をとらせないでくれないか。ウソはよくない」ピッ

ムサシ「ぐあああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「……っ! なんで、こんなひどいこと!!」
680 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 13:53:55.40 ID:QClrwTCL0
シロウ「私はね、科学が好きなんだ。人生を捧げてもいいほどに、文字通り研究だけのために生きてきた」

マナ「(どうしよう、どうしたらいいの)」

ムサシ「くっ、マナ……」

シロウ「だが、ある計画を不意にしてしまってね。みんなが私を責めた。政治的理由、責任問題。それだけ莫大な資金がかかっていたから致し方ないことだが。私はものの見事にスケープゴートにされた」

マナ「(話を引き出して時間を稼がなきゃ。でも、稼いだとしてどうしたら……考えるのよ、マナ)」

シロウ「あんまりだとは思わないかね? ひとつの失敗だけで、この国はそっぽを向いてしまうに及ばず徹底的に叩き潰す傾向にある」

マナ「博士は戦自の為に働くのではありませんか?」

シロウ「勘違いさせてしまったかな? 悪いのは国民性じゃない。ネルフなのだ。やつらさえいなければ、私は失敗する要素がなかったし、人為的被害をださずに済んだ」

マナ「エヴァがなければ使徒は倒せません。有効兵器が。かろうじて通じるのはN2のみで、それでも足止め程度の効果だけです」

シロウ「あの規格外のバケモノどもか。科学が超えるには高すぎるほどに厄介だよ」

マナ「だったら、博士だって必要性を」

シロウ「だからこそ、人類の英知を集結しなければならんのだ」

マナ「エヴァだって科学の力です!」

シロウ「その場しのぎの紛い物。あんなもの。正しい方法でやらねばその後の発展はない」

マナ「あなたは、私利私欲のために。戦自を利用するつもりですか……?」

シロウ「目的と合致していると言ってくれないか? 出資者と開発者。私と戦自の関係はイーブンだ」

マナ「研究達成のためならば、隊員は、モルモットですか?」

シロウ「私とてやりたくてやっているわけじゃないんだよ。これは早期開発にあたり、サンプルを収集するためのデータ。“不慮の事故”がおこったとしても、貢献される。安心したまえ」

マナ「そんな……っ! 上官は⁉︎ ご存知なんですかっ⁉︎」

シロウ「過酷なものになるやもしれないとは伝えてある。内容は……事後報告になるが、まぁ、問題ないだろう」

マナ「いいわけないでしょう⁉︎」

シロウ「キミは自身の価値を過大評価しているようだな。戦地で死ぬのと実験で死ぬのを比べた時、“死”という概念に違いはあるか?」

マナ「(く、狂ってる。この人)」

シロウ「答えは否。大衆が着目するのは、キミたちが志願したという動機と国のためという大義名分だ」

マナ「降ります! 私たち3名はこの任務から!」

シロウ「そうか。それは残念だ」スッ

マナ「……っ⁉︎ ま、待ってくださいっ!! なにをするつもりですか⁉︎」

シロウ「……? なにって、わかってるんじゃないか? 命令を辞退したものには罰が必要だ。戦自の規律だろう?」

ムサシ「はぁ、はぁ、な、なにをしたら、助けてくれますか……?」

シロウ「おお、まだ意識があったのか。さすが主席候補生。耐久力があるな」

ムサシ「おねがい、します……助けて、ください」

マナ「ムサシっ!!」ガタ

シロウ「ふむ、どうやらキミは物分かりも良いらしい。隣の娘に喋らせることは可能か?」

ムサシ「……マナ、頼む。ここで死ぬわけにはいかないんだ」

マナ「だめよ、ムサシ……! こんな人に屈しちゃだめ!」

ムサシ「俺一人なら我慢できる。ケイタの反応がないんだ」

マナ「……っ⁉︎」

ムサシ「俺は、俺は……! マナもケイタも守りたい! けど、今はどうすることもできない」
681 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 14:39:04.15 ID:QClrwTCL0
マナ「……」

ムサシ「安心しろ。俺がこのサイコ野郎を必ず黙らしてやる」

シロウ「それは私がいないところで発言すべきだが、聞いていないことにしてやろう。気骨がないと面白くないしな」

ムサシ「今は機会を待つべきだ。頼む……! 俺を信じてくれ……!」

マナ「で、でも……」

ムサシ「ケイタが死んじまってもいいのかよ!! なんの任務か知らないが、ケイタよりもあいつが大事なのかっ⁉︎」

マナ「……っ⁉︎」チラ

ケイタ「」

マナ「ケイタぁ……っ」

シロウ「火傷を甘く考えない方がいいぞ。手遅れになる可能性だってある」

マナ「(シンジくん、私、どうしたら……)」

ムサシ「マナっ! 頼む! ケイタを助けてやってくれ! 守秘義務を破った処罰なら俺が受けてやるから!」

シロウ「その点については心配ない。喋るつもりはないと言ったろう?」

ムサシ「こんな真似してるあんたを信用できるわけねぇよ!!」

シロウ「いやいや、約束は守る。ルールというのが私にはあるんだ」

ムサシ「ちっ、なぁっ、頼むよ、マナ……!」

マナ「……」ギュウ

シロウ「なんと薄情な娘か。友達が瀕死の状態かもしれないのに、まだ迷っているらしい」ピッ

ムサシ「ま、マナあああああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「――……わかったっ!! 喋る!! 喋りますからもうやめてぇっ!!」ポロポロ

シロウ「(やはり、心とはたやすく折れるものだ)」スッ

ムサシ「ぐっ、はぁ、はぁ」

シロウ「なんの任務に服役していた?」

マナ「うっ、うっ、ぐすっ、潜入っ、任務、です」

シロウ「ほう。それはネルフにかね?」

マナ「学校っでしだ。サードチルドレンに、近づけって」

シロウ「なぜ?」

マナ「人事に、うっ、うっ、不審な点はないかと」

シゲル「泣きながらだと声が聞き取りずらいな。もっと普通に喋れんのかね?」ピッ

ムサシ「ぐあああああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「……っ⁉︎ しゃ、しゃべりまず! 喋るからぁっ!」

ムサシ「」プシュー ガクン

シロウ「それで?」

マナ「サードチルドレンに対しての、潜入調査でした。目的は、人事異動に不審な点はないか調べること」

シロウ「ああ、そういえば親子だったかな。なにを掴んだ?」

マナ「な、なにも……」

シロウ「いい加減にしろ! そんなわけがあるか!」パァンッ

マナ「いつっ!」

シロウ「まだ頬を叩かれたいのか?」

マナ「……!」キッ
682 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 14:56:24.18 ID:QClrwTCL0
シロウ「口の端を切ったか、血が滲んでいるな。……これが最後の機会となる。本当のことを喋るんだ」スッ

マナ「……」

シロウ「隣の友達を目に焼き付けたか?」

マナ「私の正体は、すぐに、バレました」

シロウ「それは困ったな。どうやって乗り切った?」

マナ「サードチルドレンが尽力してくれたお陰です。私の命は彼に救われました」

シロウ「方法はどうした?」

マナ「詳しいことはわかりません……本当ですっ!! 僕にまかせてって言って、一夜明けると、もう大丈夫だよって言ってくれて」

シロウ「漫画の主人公みたいだな」

マナ「変わらず潜入を続けられました」

シロウ「ふん、身分が明らかになっているのに潜入もクソもあるまい。要するにネルフと結託して戦自を欺いてたのか?」

マナ「違います、そんなつもりは」

シロウ「サードチルドレン、か。中学生の子供だと聞き及んでいるが、やつは母親にそこまでの影響力を持っているのか?」

マナ「……わかりません、ただ、嫌っているっていうか」

シロウ「なんだ?」

マナ「立ち向かうみたいな意思を感じました」

シロウ「ほうほう。そいつは、またなんとも興味深い話だ。ウソじゃないだろうな?」

マナ「はい。誓ってウソじゃありません」

シロウ「ふむ……。ところで、キミは命を救われて、はいそうですかで終わったのかね?」

マナ「……はい?」

シロウ「なにか対価を要求されなかったのかと聞いている」

マナ「シンジくんがそんなことするわけないでしょう⁉︎」キッ

シロウ「どうやらとても紳士的な少年のようだ。キミはどう思った?」

マナ「どうって……いい人だなって」

シロウ「チッチッチッ。いい人なんて表現は適切じゃない。どうでもいい人なわけないだろう? 命を救う活躍をした同年代に対して思春期にありがちな恋心を抱いたのではないか?」

マナ「あなたにっ……! なにがわかるっていうのよ……!」

シロウ「キミが守りたい秘密だったはずだ。そこでぐったりしてる友達と天秤にかけてまで」

マナ「……」ギュウ

シロウ「くっ、くっはっはっはっはっ! まいったな、こりゃ傑作だ。キミは友達を裏切って尚、恋心を抱く相手までをも裏切ったのか?」

マナ「し、仕方なくてっ」

シロウ「中途半端が一番よろしくない。“仕方ない”を使う時は、決まって納得するための言い訳だ」

マナ「……」ポロポロ

シロウ「あぁ、これだ。女は泣けばいいと思っている。お前が裏切ったんだぞ? 友達も! サードチルドレンもっ!!」バンッ

マナ「ち、ちがうっ、私はっ、そんなつもりじゃっ」
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 14:59:45.54 ID:g66CSPvMo
もっと早くしゃべっておけば何も掴めませんでしたで済んだのに
変にもったいつけるから勘繰られてしまった
684 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 15:43:39.94 ID:QClrwTCL0
シロウ「とんだ茶番だな。寸劇を見ていたような気分だ……あえて聞こう。今だとサードチルドレンと大切な友達。どちらを選ぶ?」

マナ「む、むりですっ、どちらかなんて」チラ

ムサシ&ケイタ「」グッタリ

シロウ「(そうだ、いいぞ。よくみろ。目の前にあるのはリアルだ。……直面している現実だ。選択の余地などない。友達を選ばなければ死んでしまう)」

マナ「ムサシと、ケイタ、です」

シロウ「サードチルドレンを目の前にしても言えるか?」

マナ「はい……」

シロウ「では、霧島隊員。貴様に任務を言い渡す」

マナ「任務……?」

シロウ「これも言い忘れていたんだが、パイロットは一人で足りていてね。浅利隊員は予備でムサシ隊員が本命なのだよ。キミは最初から頭数に入っていなかったんだ」

マナ「それって、ケイタを最初にしたのは……っ⁉︎」

シロウ「もちろん“予備”にふさわしい扱いだ」

マナ「誰かを憎むのは嫌いです。だって、そんなことしたってなんにも生まれないから。だけど、あなたは違うっ!」

シロウ「殺したいか? 私を」

マナ「友達を傷つけるなんて許せないっ!!」

シロウ「力のない者が吠えるな。負け犬の雑草如きが」

マナ「このっ……!」ガタガタ

シロウ「出世街道を突き進んでいた私に敵うわけないだろう。権力も、知恵も、人脈も足りないお前になにができる? ん〜?」

マナ「――……殺してやるわっ!!」

シロウ「いい殺意だ。大事に大事にとっておけ。そうなると……やはり、キミは任務を遂行しなければならない。機会を得るためにだ」

マナ「なにをさせるつもり」

シロウ「サードチルドレンをここに連れてこい。私の元へ」

マナ「放送聞いてなかったんですか? 機体の回収作業に入っています。パイロットは先に――」

シロウ「学校に行けば会えるだろう?」

マナ「えっ、また転校させるつもりですか?」

シロウ「バカかね、キミは。目的は潜入じゃないんだ。そんな回りくどいやり方はしなくていい。街中で会ってこい」

マナ「……」

シロウ「これは任務であって任務ではない。人質がいるということをゆめゆめ忘れるなよ」

マナ「シンジくんと会ったら、なにをするつもり?」

シロウ「行動の予測はついている。サードチルドレンに助けてもらえたらと希望的観測を抱いているな?」

マナ「……」ギュウ

シロウ「私をこれまで会ったどの大人よりも有能だと思え。出しぬこうなど見え透いた思惑などお見通しだ。つまり、友達を殺したくないな?」

マナ「は、い……」

シロウ「よろしい。拘束を解いてやろう……っと。その前にいきなり襲われでもしたら大変だ。これを見たまえ」スッ

マナ「そ、それは?チョーカー?」

シロウ「これはね、遠隔操作可能な超小型爆弾だ。火薬を使わず化学反応により誘爆を促すシロモノで、首から上を吹き飛ばす程度の威力はある。……キミたち三人への贈り物としよう」

マナ「いらないっ! そんなのっ!」ガタガタ

シロウ「スイッチはどこにあるだろうな?」

マナ「……!」

シロウ「ここだ。奥歯に仕掛けてある。力をいれてひと噛みすれば――……ボンッ!! だ。……ああ、食事の心配はしないでくれ。私はサプリと流動食しか口にしない。必要な栄養が補給できさえすればいいんだ」カシュ

マナ「そ、そんな……」

シロウ「一度裏切ったんだ。二度目は気が楽だろう? 任務、頑張ってくれたまえ」ポンッ
685 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/05(木) 18:02:15.23 ID:QClrwTCL0
【ネルフ本部 執務室】

冬月「たいそうなコトをしでかしてくれたな。揉み消せないようご丁寧に大量の目撃者まで。これではメンツが丸潰れだ!」

シンジ「……」

冬月「だんまりでは済まされんぞっ!」バンッ

ユイ「――……シンジ。よく考えついたわね」

シンジ「やめてよ。母さんに褒められる為にやってるわけじゃないんだ」

ユイ「私だって親なんだけど?」

シンジ「……」プイッ

ユイ「副司令。今回の損害は?」

冬月「死傷者はでていないから外部処理的なものだ。各方面から苦情の電話が鳴りっぱなしだよ」

ユイ「世間体が悪くなり、総司令である私の責任能力にまで追求の余波は及ぶ。これがやりたかったこと?」

シンジ「……」

ユイ「狙いは達成できたんじゃないかしら。たしかに私はネルフの代表者で、なにか不都合が起きた場合、真っ先に矢面に立たされる」

冬月「我々がなにもせずただ眺めていたらの話。“トカゲの尻尾切り”をしなかった場合だがな」

ユイ「どう思う? シンジ。想定外の不始末が起こったとして……私は保身のためになにもしない?」

シンジ「わかってるよ、メンツを潰されたことに怒ってるんじゃない。余計な手間をとらせることに怒ってるんだって」

冬月「両方だ。雑務は増えるし金も使う」

シンジ「たいしてダメージじゃないんでしょ?」

ユイ「これといって。転んで擦りむいたぐらいかしら……こういう事件が何回も続けば司令交代を通達されるでしょうけど」

冬月「無策でのこのこと出頭するほどマヌケではあるまい。貴様の到達点は“この場所”ではないだろうからな」

シンジ「はい」

ユイ「当然まだなにか隠してる。どうするつもり……?」

シンジ「綾波の身の安全を保障してください」

ユイ「たしか、戦自の……名前忘れちゃったけど、あの子と伊吹二尉。そこにレイも含めると三人目よ?」

シンジ「綾波は理由が違います」

冬月「なに?」

シンジ「彼女は必要だからです。補完計画の依り代として」

ユイ「……」

シンジ「僕は夢の出来事を覚えているんだ。そして、全てを知った。父さんの死も……!」

冬月「もしやとは思っていたが……我々に告白する理由はなんだ?」

シンジ「意思表示をしっかりとしていなかったからです。僕は、計画の片棒を担ぎたくない」

ユイ「代替え案の提示なしに認められません。あなたは中心なのよ? 守りたい人がいるのならば、協力しないと」

シンジ「人質みたいなことじゃないか……いや、いいんだ。母さんはゴールまで辿り着ければ手段なんてどうでもいいんだろうから。僕はアダムの力を使える」

冬月「どの程度までだ?」

シンジ「そうですね、長い時間は無理ですが電波妨害と肉体強化は」

冬月「アダムの性質が持つ衝動については?」

シンジ「発作みたいなものです。自分ではどうすることもできません」

ユイ「そこまで私たちに教えるにあたって、何か得はあるの?」

シンジ「さっき言ったじゃないか。はっきりとした意思表示したい、それだけだよ」

ユイ「話は終わりなら、周囲にいる親しい者たちの中から何人か殺すわよ?」

シンジ「殺せない」

冬月「えらくもったいぶるな。話をしても大丈夫だと判断しているわけかね」
686 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 18:52:55.26 ID:QClrwTCL0
シンジ「騒動を起こしたきっかけは、僕の失敗に起因しています」

ユイ「シンジの? そこそこ立ち回れていたと思うけど」

シンジ「どこかでアクションを起こさなければいけないとずっと伺ってたんだ。僕の目的と母さんの目的が相入れない以上は」

ユイ「……そのせいでこの騒動が?」

シンジ「軍曹殿、彼に取り引きを持ちかけたんだ。……結果は急ぎすぎだった。見落としを警戒して、慎重に動くべきだったのに」

冬月「肩書きのまま疑うことをせず、ネルフの内通者である奴にまんまと情報提供を持ちかけたのか」

シンジ「内心、焦りました。報告される」

ユイ「口封じをすればもう暫くは時を稼げたでしょうけど、シンジはできないわよね」

シンジ「……隠すのが無理ならいっそバラしてしまえばいい。咄嗟に“ある計画”を思いついたんです」

冬月「欠損した部分には変わりとなる機能。つまり、補填が必要だ」

シンジ「僕はそれを探すため、力を使う賭けにでることとしました。母さんを窮地に立たせられるもの」

冬月「……? エヴァ出動とまた別件か?」

シンジ「そうですよ。騒動は基地内を混乱の渦に巻き込む状況を作るためのものでした。そして、この場所に立つための」

冬月「なに……?」

シンジ「これまで、“母さんに協力するしかなかった”。でも、これからは“僕に手出しをできない”状況になる」ゴソゴソ

ユイ「対等の関係にできる?」

シンジ「僕が探していたのは――」パサ

冬月「なんだ? 一枚の紙切れか?」

シンジ「母さんの個人ファイルだよ」

冬月「どんな極秘ファイルがでてくるかと思えば。個人情報は機密扱いだが優先度は低い」

シンジ「そうですね、最初に行った部屋であっさりと見つけられました」

冬月「ましてや、戦自が握っている情報などタカがしれている」

シンジ「どうして?」

冬月「改竄しているものをダミーとして流しているからだ」

シンジ「本当にそうですか? 言われなきゃ気がつかない?」

ユイ「……?」

シンジ「戦自が探しているものはなんですか?」

冬月「我々とゼーレの癒着だろう」

シンジ「じゃあ、父さんの旧姓、六分儀については」

ユイ「し、シンジっ⁉︎」ガタッ

シンジ「(よし、さすがの母さんも驚いてるな。でも、まだ油断しちゃだめだ)」
687 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 19:14:52.44 ID:QClrwTCL0
冬月「……なんだ? どうした?」

シンジ「改竄されたダミーだと仰いましたね。母さんの経歴について偽の情報が記載されたもの」

冬月「そう言った」

シンジ「でも、改竄しようのないものもあるんです。それは先に情報が公開されていた場合。後付けで訂正してしまうと整合性がとれず疑念を招いてしまう」

冬月「それと碇の旧姓が……そうか、六分儀の性だった頃、碇はユイくんの所へ婿養子としてはいった」

シンジ「どうしてだと思います?」

ユイ「なぜ? なぜシンジがそれを知って……?」

シンジ「答えは言わないでおくよ。もう伝わったみたいだから」

冬月「……? 待て、俺はまだ理解できていない」

シンジ「戦自が知っていて、母さんが知らないもの……気がついていないものがあったんです」

冬月「しかし、碇の旧姓がわかったところで」

シンジ「どんなに情報を改竄しようと、証明できるものがそこにある。戦自や政府に言われたくなければ、手を出さないこと。これが僕の条件です」

ユイ「……ふっ、ふっふっ。なるほど。使徒の力を使い腕力に頼るかと思えば、よく気がつけたわね」

シンジ「ずっと不思議だったんだ。父さんから母さんの話を聞いた機会はないけど」

ユイ「そう」

シンジ「本当に賭けだった」

ユイ「見事、勝ったわけね。二分の一の賭けに。……戦自の訓練はどうだった?」

シンジ「きつかったよ。一日だけだったけど」

ユイ「しばらくは戦自にいたら?」

シンジ「それでもいいけど、向こうよりこっちが心配だし」

ユイ「これからは対等の立場でやっていくんでしょう?」

シンジ「とりあえずはね。でも、抜けがないわけじゃないから」

ユイ「みるみる成長してるわね。ほんと、短い期間なのに」

シンジ「糸が張り詰めてるだけ。切れたらどうなるか……」

ユイ「切れるきっかけとしては誰かの死に直面することが望ましい? やはり殺しておくべきかしら」

シンジ「そうなったら、母さんの計画も」

ユイ「ご破算ね。……わかった」

シンジ「もう帰っていい?」

ユイ「ええ、と言いたいところだけど、部屋がないのよ。どこにする?」

シンジ「コンテナでかまわないよ」

ユイ「好きな区画のものを使いなさい」

シンジ「それじゃ」クルッ

ユイ「待って」

シンジ「……」ピタ

ユイ「シンジ、よく頑張ったわね」

シンジ「……」スタスタ





688 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 20:49:27.73 ID:qTU4ZFzPo
ゾルディック家かよ
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 21:01:02.50 ID:RI4yCkwco
へえー、調べたがユイってゼーレ関係者の娘だったのか
知らなかったわ
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 21:27:26.60 ID:t+eUZiR3O
ゾクゾクきた。つづきたのしみ!
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 23:02:39.00 ID:3k9zShi+O
極秘ファイルをあっさり見つけられたのはミスリードだったってわけね
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 09:36:40.62 ID:lb79a/P8o
オレ「「……? 待て、俺はまだ理解できていない」」
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 10:18:27.29 ID:O450V/nBO
察するに今後SS中に入れてくるんじゃないか
考えてみればゼーレとユイの協力関係に深く触れてなかったからなぁ
書類と六分儀は見事な伏線だったは
694 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 20:31:00.00 ID:DDuz9gSI0
ゾルディック家吹いた
695 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 21:01:25.76 ID:DDuz9gSI0
【数十分後 同執務室】

キール「今回の事件の当事者であるリリスの器への直接尋問を拒否したそうだな、碇ユイ博士」

ユイ「はい。その必要はありません」

ゼーレ03「では聞こう、ネルフ総司令碇ユイ」

ゼーレ05「先の事件、エヴァを使用した理由についての見当はついているのかね」

ユイ「綾波レイを呼んだのはシンジのようです。イレギュラーな事件だと、推定されます」

ゼーレ06「なぜだ?」

ユイ「過酷な訓練に音をあげてしまったようです。我が子ながら情けない限りで……お恥ずかしい話ですが」

ゼーレ04「たったそれだけの理由でエヴァを無断で出撃させたのか? 度し難い」

ユイ「ご存知の通り、綾波レイに喜怒哀楽といった感情はございません。頼まれて仕方なくといったところでしょうか」

ゼーレ06「命令違反についての認識さえなかったというのか?」

ユイ「いえ、そこまでは。赤木リツコからの報告によると、調整不足で情緒不安定なタイミングが重なっていたのが要因として考えられます」

ゼーレ02「証明するものは?」

キール「エヴァのACレコーダーは作動していなかった。確認はとれまい」

ゼーレ05「綾波、レイか。キミの亡き夫の置き土産品である模造品」

ユイ「……」

ゼーレ03「人形が精神、心に興味を持つことなど本当にありえんのだろうな? 周囲の多干渉がリンクする可能性は?」

ユイ「ないと断言できます。なぜならば、魂の概念がリリスの借り物であり、成長の余地がないからです」

ゼーレ05「目撃者が多すぎる。予測されうるは戦略自衛隊と政府が連携して行う組織的動作。……日本国内の騒動について国連から助力は期待するな」

ゼーレ03「さよう。内政干渉になってしまうことはあきらかだ」

ユイ「存じております」

キール「計画に遅延はないか?」

ユイ「はい」

キール「タブリスの動向は」

ユイ「好きに動かせています。操作可能です」

キール「よかろう……。キミに期待するのは補完計画の完遂、その一点だ」

ユイ「御意に。確実に我々は歩を進めています。残された段階は――」

キール「後わずか、と言うことか」

ゼーレ03「明日、そちらの本部に三号機が到着する。色々あって予定より遅れてしまったが」

ユイ「承知いたしました。しっかりと整備、管理をさせていただきますわ」

キール「忌むべきエヴァシリーズ。“約束の時”に備えしかるべき運用を望むぞ」

ユイ「はい、全てはゼーレの皆様方のシナリオ通りに」
696 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 21:22:54.24 ID:DDuz9gSI0
ユイ「ふぅ……老人たちの相手は気疲れしますね」

冬月「その枠には俺も含まれていやしまいな?」

ユイ「ご冗談を」

冬月「ゼーレめ。その気になれば外部から圧力をかけるぐらいできるだろうに……キミへの嫌がらせだよ。アレは」

ユイ「かまいません。むしろ深くつつかれなかっただけ好都合です」

冬月「レイに手出しをしないのは、やはり先ほどあった息子とのやりとりが原因か? 器を入れ替える作業自体に問題はなかろう」

ユイ「それもありますが、ご褒美といった感じでしょうか」

冬月「我々がゼーレを欺くのと同じように、サードチルドレンもか。騙し、騙され……人間不信になってしまうよ」

ユイ「先生はこれまで嫌というほど体現なさってきているでしょう」

冬月「だからだ。慣れてしまえば、自分を保てなくなる」

ユイ「ゆっくりと心を蝕んでいきますか」

冬月「常識人とは言い難いよ。キミも、俺もな」

ユイ「所詮、ヒトの作ったルールです。型にはめる、社会を成形するための」

冬月「人間臭さを捨てきれないことを否定したくはない」

ユイ「……」

冬月「私は最後まで看取ると決めている。理想とは程遠い、人の織り成す狂想曲の行く末を――」
697 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 22:50:54.63 ID:DDuz9gSI0
【ネルフ本部 作戦課】

ミサト「……」ヒク ヒク

マヤ「よいしょっと」ドサッ

ミサト「まだあんの……?」

マヤ「あとダンボール三つ分ほど。国土交通省、農林水産省から東部電力などの民間企業と」

ミサト「わぁ〜かった! わかった!」

マヤ「た、大変ですね。今回は事前に申請されていなかった出撃でしたので」

ミサト「ったく! これだからお役所仕事やってる連中なんか嫌いなのよ! ちょぉっと違うだけで融通なんかききやしないんだから!」

マヤ「向こうも、仕事、ですから」

ミサト「だいたいねぇ! 使徒が絡んだ出撃じゃないからって……はぁ、マヤちゃんに愚痴っても仕方ないわよねぇ」

マヤ「いえ、私なら大丈夫です」

ミサト「そうもいかないのよ。上司が部下に甘えるなんて体面がね、この場合上官が下級の官職にだけどぉ」

マヤ「よかったら、手伝いましょうか?」

ミサト「いいの? 自分の仕事は?」

マヤ「先輩は自分でやった方が能率が上がるからって」

ミサト「あちゃ〜閉め出されちゃったか」

マヤ「……」

ミサト「あぁ、リツコだし! 落ち込まないで平気よ」ポンッ

マヤ「気にしてませんよ」

ミサト「そう? それはそれでなんだか肩透かしね。直属の上司から……はは〜ん。慣れた?」

マヤ「そう、ですね」

ミサト「……? ま、いっか。手が空いてるようなら手伝い頼める?」

マヤ「私から申し出たことですし、なんなりと」

ミサト「たっすかるぅ〜! リツコに話して私の部下にしちゃおっかなぁ〜」

マヤ「もう、軽口を叩いてないでとりかかりましょう」

ミサト「はいはいっ、口ぶりがリツコに似てきたんだから。やっぱり弟子は師匠に似るもんね」

マヤ「そうでしょうか」

ミサト「一緒に過ごす時間が長くなるのはもちろんだけど。お手本とするべき相手でしょ?」

マヤ「……」

ミサト「嫌な面も見えてくるもんだけどね。親と同じで」

マヤ「(たまに鋭いのよね、この人)」

ミサト「えーっと、まずはぁ〜っと」カサ

マヤ「あの、本部内に現れた使徒の行方は」

ミサト「それがぜぇ〜んぜん」

マヤ「技術部から多数の死傷者が出たって聞きました」ペラ

ミサト「そうね。でも、覚悟はしてたはずだから」

マヤ「そんな簡単に割り切れますか?」

ミサト「そうするしかないのよ。ここにいる以上は……いいえ、使徒という災厄が訪れるこの時代にはね」

マヤ「……」

ミサト「人間死ぬときゃ死ぬんだから! どーんと構えましょ!」
698 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 23:19:56.94 ID:DDuz9gSI0
【ネルフ本部 女子ロッカー室】

アスカ「どーゆーつもりっ⁉︎ なんであそこに行ったの⁉︎」バンッ

レイ「……」

アスカ「エヴァの無断使用は重罪よ! パイロットだからって許されるわけない!」

レイ「なぜ、あなたに責められなければいけないの」

アスカ「おかしいからよ! 普通の行動じゃない!」

レイ「質問の答えになってないわ」

アスカ「いい? 人形のあんたにもわかるように教えてあげる! 出撃してる間に使徒が本部内で出現してた!」

レイ「……」

アスカ「反応はすぐに消えたらしいけど、唯一の対抗手段である私たちの出番だったでしょ!」

レイ「私たちじゃないわ、エヴァの」

アスカ「どっちでも一緒! パイロットがいなきゃ動かないじゃない!」

レイ「……」

アスカ「私は、有事の際に不在でしたなんてお粗末な結果になりたくないのよ……! 役立たずなんてごめんだわ!」

レイ「……」

アスカ「今度このあたしの足を引っ張ったら、あんたのことパイロットだと認めない」

レイ「そう」

アスカ「シンジに会いに行ったの?」

レイ「……」シュルシュル パサッ

アスカ「シカトはやめなさいよ。あたしだって、シンジから話を少し聞いて――」

レイ「あなたに言う必要はないわ」カチャ

アスカ「……っ⁉︎ いい加減にしろ、この人形っ!!」

レイ「私は、人形じゃない」

アスカ「人形よ! あんたなんか!」

レイ「なぜ、そんなこと言うの」

アスカ「見るからにそのまんまじゃない! 無表情、無感情! 悲しい、楽しい、なんでもいい! 表現方法が他になんかないの⁉︎」

レイ「……」

アスカ「あぁ〜イライラする! 会話のキャッチボールがままならないなんてもんじゃない、あんたのその纏ってる空気がムカムカする」

レイ「……」スッ

アスカ「……? なによ……? うつむいてどうかした」

レイ(少女)「私もあなたが嫌い」

アスカ「えっ」

レイ(少女)「本当は寂しくて寂しくてたまらないだけのくせに。強がり。あまのじゃく。わがまま」

アスカ「ふぁ、ファースト……?」
699 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 23:48:35.71 ID:DDuz9gSI0
レイ(少女)「背伸びをしているのだって大人達に自分を褒めてもらいたいから」

アスカ「……!」

レイ(少女)「――存在を認めさせたいから。見てもらいたいから。承認欲求」

アスカ「なに言ってるの、よ」

レイ(少女)「脆く、弱い人間。縋っているプライドと虚構を頼りにギリギリの自分を取り繕っている。あの人が言ってたわ」

アスカ「あの人……? 誰?」

レイ(少女)「加持特別監査官」

アスカ「加持さんがっ⁉︎」

レイ(少女)「色々聞いたわ。あなたのこと。……なにも知らない子供だって。背伸びをしている子供。いけすかないガキ」

アスカ「嘘よ! 加持さんがそんなこと言うわけないっ!」

レイ(少女)「本当よ? 話をしてくれた。仕事じゃなければ面倒を見ない、見たくない。うんざりしてるって」

アスカ「デタラメよ、そんなの!」ズリ ズリ

レイ(少女)「どうして後ずさるの? こわいの?」

アスカ「えっ?」

レイ(少女)「自分がいらなくなるのがこわいんでしょう? こわくてたまらないんでしょう?」

アスカ「ち、違うわ、あんたが、不気味で」

レイ(少女)「褒めてもらいたいのも結局はそう。やっとできた自分の居場所を守りたいから。母親と父親がくれなかった、その代わり」

アスカ「なっ⁉︎ な、なんでママのことを⁉︎」

レイ(少女)「全部教えてくれたのよ。加持さんが。あなたはいらないって言ってた。これからは碇くんがいればいいって。用済みなのよ、あなた」

アスカ「そんなわけ」

レイ(少女)「なんで私が知ってるの? 碇くんでさえ知らないのに」

アスカ「そ、それは……」

レイ(少女)「認められない、認めたくない。現実は残酷」

アスカ「加持さんに確認する……! 嘘だったら、どこで知ったか洗いざらい喋ってもらうからね。覚えときなさいよ」タンッ タタタッ

レイ(少女)「ええ」

レイ「もういいの?」

レイ(少女)「ネルフにいないから捕まらない」

レイ「……」

レイ(少女)「赤木ナオコと同じ手段で。少しずつ壊していく。あの女の支えているものが崩壊して死にたくなるように」
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 01:03:29.21 ID:3OCczf/5o
こわい
701 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/08(日) 15:03:30.32 ID:gha0/1FZ0
【ネルフ本部 中央作戦司令室前】

アスカ「はぁっはぁっ、んっ、くっ」

リツコ「あら、アスカじゃない。そんなに息を乱して」

アスカ「ぜぇ、ぜぇ。か、加持さんの居場所知らない?」

リツコ「彼なら今、出張に出てるはずだけど」

アスカ「それなら……ねぇ、あたしの個人データって第三者が閲覧できる?」

リツコ「当たり前の話だけど権限を持つものに限られる」

アスカ「ファーストは?」

リツコ「レイ? あの子の持っている解除権限はあなたやシンジくんと同じ範囲までだからできない」

アスカ「……」

リツコ「なにかあったの?」

アスカ「いい、なんでもない」

リツコ「加持くんに依存しすぎるのはおやめなさいな」

アスカ「確認したいことがあったの」

リツコ「あなた、いつもそういって加持くんを探してはまとわりついてるじゃない」

アスカ「違うの! 本当に――」

リツコ「今回の出撃データ。後半の伸びはよかったけれど、レイにシンクロ率が負けてたのよ」

アスカ「……っ!」

リツコ「ふぅ、こんなんじゃエースなんてとてもじゃないけど任せられない。男にうつつをぬかしてる場合?」

アスカ「なんで、なんで、ファーストの名前を出すの」

リツコ「なんでって……競争相手でもあり比較対象だからよ。危機感を持ってるの? なぜ最初から本気でやらないの?」

アスカ「やってるわよっ!!」

リツコ「他パイロットと比べられると対抗意識をむき出しているけど、優越感に浸っているんではなくて?」

アスカ「あ、あたしのどこが」

リツコ「あなたは、自信がありすぎる。土台にこれまでの努力があるのは結構だけど、レイやシンジくんが自分より劣っていると見下している節があると思わない?」

アスカ「それのなにが悪いのよ⁉︎?

リツコ「学歴やテストの結果が社会に出て通用するとは限らない。アスカが培ってきたモノは、“これぐらいは最低できます”という指標程度でしかないとわかってるの?」

アスカ「……」

リツコ「優越感に浸ってないで。あなた達はチームなのよ。一歩引いて物事を見極められるように、違う方面の努力も惜しまないで」

アスカ「――うるさい、うるさいうるさいっ! もぉ! あたしは今そんなお説教をされる為に走ってたんじゃないのっ!」

リツコ「反省点を振り返る気すらないの?」

アスカ「細かいことはほっといてよ! エヴァに乗って結果を出せばいいんでしょ⁉︎」

リツコ「伴ってないから言っているのよ。私が好きで言うとでも? 命令という形でなければできないのならはっきりと言います」

アスカ「……」ギュウ

リツコ「改善を要求します。でなければ、司令と協議してパイロットから降ろす案も含めて視野にいれる」

アスカ「……っ⁉︎」

リツコ「すぐにとは言わないわ。よく、考えて行動しなさい」
702 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 18:19:52.84 ID:qxXH+gib0
ちょい雑になってきてるんでレスしなおし
703 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 18:42:55.42 ID:qxXH+gib0
【ネルフ本部 中央作戦司令室前】

アスカ「はぁっはぁっ、んっ、くっ」

リツコ「あら、アスカじゃない。ちょうどよかった。フィードバックの検証結果を」

アスカ「ぜぇ、ぜぇ。か、加持さんの居場所知らない?」

リツコ「彼なら出張で松代のはずだけど」

アスカ「それなら……ねぇ、あたしの個人データって第三者が閲覧できる?」

リツコ「権限を持つものに限られる」

アスカ「ファーストは?」

リツコ「レイ? あの子の持っている解除権限はあなたやシンジくんと同じよ」

アスカ「……」

リツコ「なにかあったの?」

アスカ「いい、なんでもない」

リツコ「加持くんに依存しすぎるのはおやめなさいな」

アスカ「確認したいことがあったの」

リツコ「いつもそういって加持くんを探してはまとわりついてるじゃない」

アスカ「違うの! 本当に――」

リツコ「今回の出撃データ。最後の伸びはよかったけれど、レイにシンクロ率が負けてたのよ」

アスカ「……っ!」

リツコ「こんなんじゃエースなんてとてもじゃないけど任せられない。男にうつつをぬかしてる場合?」

アスカ「なんで……なんで、ファーストの名前を出すの」

リツコ「なぜって……比較対象だからよ。危機感を持ってるの? なぜ最初から本気でやらないの?」

アスカ「やってるわよっ!!」

リツコ「他パイロットと比べられると対抗意識をむき出しているけど、優越感に浸っているのではなくて?」

アスカ「あ、あたしのどこが」

リツコ「いつも言っているでしょう。あなたは、自信がありすぎると。土台にこれまでの努力があるのは結構だけど、レイやシンジくんが自分より劣っていると見下している節があると自覚しているはずよね?」

アスカ「それのなにが悪いっていうの⁉︎」

リツコ「学歴やテストの結果が社会に出て通用するとは限らない。アスカが培ってきたモノは、“これぐらいは最低できます”という指標程度でしかないとわかってるの?」

アスカ「……」

リツコ「足りない部分を見つけて優越感に浸ってないで、チームで補い合う必要がある。一歩引いて物事を見極められるように、違う方面の努力も惜しまないで」

アスカ「――うるさい、うるさいうるさいっ! もぉ、そんなお説教をされてる場合じゃないの! そのために走ってたんじゃないのよっ!」トンッ

リツコ「あ、こら。待ちなさい」パシッ

アスカ「まだ続ける気ぃ?」

リツコ「反省点を振り返る気すらないの」

アスカ「細かいことはほっといて! エヴァに乗って結果を出せばいいんでしょ⁉︎」

リツコ「伴ってないから……はぁ、私が好きで言っているとでも? 命令されるのがお望みならはっきりと伝えます」

アスカ「……」ギュウ

リツコ「改善を要求するわ。でなければ、司令と協議してパイロットからの降格案を含めて視野にいれる」

アスカ「……っ⁉︎」

リツコ「すぐにとは言わない。よく、考えて行動しなさい」
704 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 18:43:54.93 ID:qxXH+gib0
あらら、日本語がおかしい部分があるので再度レスしなおし
705 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 18:45:18.53 ID:qxXH+gib0
【ネルフ本部 中央作戦司令室前】

アスカ「はぁっはぁっ、んっ、くっ」

リツコ「あら、アスカじゃない。ちょうどよかった。フィードバックの検証結果を」

アスカ「ぜぇ、ぜぇ。か、加持さんの居場所知らない?」

リツコ「彼なら出張で松代のはずだけど」

アスカ「それなら……ねぇ、あたしの個人データって第三者が閲覧できる?」

リツコ「権限を持つものに限られる」

アスカ「ファーストは?」

リツコ「レイ? あの子の持っている解除権限はあなたやシンジくんと同じよ」

アスカ「……」

リツコ「なにかあったの?」

アスカ「いい、なんでもない」

リツコ「加持くんに依存しすぎるのはおやめなさいな」

アスカ「確認したいことがあったの」

リツコ「いつもそういって加持くんを探してはまとわりついてるじゃない」

アスカ「違うの! 本当に――」

リツコ「今回の出撃データ。最後の伸びはよかったけれど、レイにシンクロ率が負けてたのよ」

アスカ「……っ!」

リツコ「こんなんじゃエースなんてとてもじゃないけど任せられない。男にうつつをぬかしてる場合?」

アスカ「なんで……なんで、ファーストの名前を出すの」

リツコ「なぜって……比較対象だからよ。危機感を持ってるの? なぜ最初から本気でやらないの?」

アスカ「やってるわよっ!!」

リツコ「他パイロットと比べられると対抗意識をむき出しているけど、優越感に浸っているのではなくて?」

アスカ「あ、あたしのどこが」

リツコ「いつも言っているでしょう。あなたは、自信がありすぎると。土台にこれまでの努力があるのは結構だけど、レイやシンジくんが自分より劣っていると見下した節の自覚があるはずよね?」

アスカ「それのなにが悪いっていうの⁉︎」

リツコ「学歴やテストの結果が社会に出て通用するとは限らない。アスカが培ってきたモノは、“これぐらいは最低できます”という指標程度でしかないとわかってるの?」

アスカ「……」

リツコ「足りない部分を見つけて優越感に浸ってないで、チームで補い合う必要がある。一歩引いて物事を見極められるように、違う方面の努力も惜しまないで」

アスカ「――うるさい、うるさいうるさいっ! もぉ、そんなお説教をされてる場合じゃないの! そのために走ってたんじゃないのよっ!」トンッ

リツコ「あ、こら。待ちなさい」パシッ

アスカ「まだ続ける気ぃ?」

リツコ「反省点を振り返る気すらないの」

アスカ「細かいことはほっといて! エヴァに乗って結果を出せばいいんでしょ⁉︎」

リツコ「伴ってないから……はぁ、私が好きで言っているとでも? 命令されるのがお望みならはっきりと伝えます」

アスカ「……」ギュウ

リツコ「改善を要求するわ。でなければ、司令と協議してパイロットからの降格案を含めて視野にいれる」

アスカ「……っ⁉︎」

リツコ「すぐにとは言わない。よく、考えて行動しなさい」
706 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 19:13:35.02 ID:qxXH+gib0
【ネルフ本部 コンテナ】

シゲル「シンジくーん。いるかぁ?」ガチャ

シンジ「青葉さん……」

シゲル「今度はコンテナか。遊牧民みたいな生活してていいねぇ、これ、寝袋な」

シンジ「ありがとうございます」

シゲル「しっかしまぁ、こんな不自由なとこに泊まらなくても。職員の仮眠室だったらすぐ先に」

シンジ「いいんです、僕はここで」

シゲル「……そうか。よっと」ドサッ

シンジ「あの、さっき通路で話てるの聞こえたんですけど。初号機が出撃するときに死傷者がでたって」

シゲル「あぁ、そうみたいだな」

シンジ「何人ぐらい……?」

シゲル「そんなこと知ってどうしたいんだ? 自分のせいだって謝りにいくのか?」

シンジ「いえ、知っておきたくて」

シゲル「はぁん? なんでも二十数人死んだって話だぜ?」

シンジ「そ、そんなに」

シゲル「人間死ぬときゃ死ぬんだし、あいつらは運がなかっただけさ。使徒のせいだしな」

シンジ「……」

シゲル「初号機が出撃しなきゃ無駄な犠牲は少なく済んだかもしれないけどよぉ、俺たちは砦として従事してるんだ」

シンジ「……」

シゲル「戦自の訓練に音をあげたからって誰も責めやしないさ」

シンジ「えっ?」

シゲル「シンジくんがレイを呼んだんだろ? 迎えに来てくれって……ぷっ、だからと言ってエヴァを使うのはありえないんじゃね?」

シンジ「(そういうシナリオにしたのか)」

シゲル「今度からは無理な時は無理ってはっきり言えよ?」

シンジ「そう、ですよね。そうします、すいません」

シゲル「俺は別になにか被害受けてるわけじゃねーし、これが仕事。気楽にやれや」ポンッ

シンジ「はい」

シゲル「寝袋かぁ、またバイクで日本一周でもしてぇなぁ。それじゃあ、俺は」

アスカ「――シンジっ!!」バァンッ

シゲル「うっ⁉︎」ゴチーンッ

シンジ「あっ」

シゲル「」ドサッ

アスカ「あれ……? な、なんでここに?」

シンジ「……扉はそっと開けようよ」
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 03:07:44.36 ID:VT506d6fo
訓練に音を上げて、エヴァ呼んでその場(下?)にいた技術者を踏み潰したって。
味方からも刺されるんじゃね?少なくとも整備人員は総入れ替えしないとボイコットが起きそう
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 08:16:11.84 ID:PlsEXHUUo
一週間くらい耐えたならまだしも1日だしな…
相当恨まれると思うわ
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 10:46:51.26 ID:JNDP47g8O
心配になるぐらい読解力がないな
エヴァが踏み潰したんじゃなく使徒の仕業みたいなこと書いてるだろ
710 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/10(火) 12:25:23.82 ID:DKW/YuiX0
ここは少し補足いれておきます

初号機は誰かを踏み潰したり殺したりはしていません
発進の際、カヲルが職員を邪魔にならないよう殺害してまわっていたのです
なぜ足止めではなく[ピーーー]必要があったのかというと自分が使徒だというのを隠すためです
目撃者を生かすという選択肢はありません

なので青葉シゲルは使徒のせいだと言っています
シンジが初号機を呼んだことにより、使徒の対処に遅れが生じ、結果としてろくに迎撃できない状態で取り逃がしていますが
使徒の反応を感知できた時点ですでに多数の職員殺害後で、しかもすぐに反応をロストしています
したがって事前に防ぐことも、対応の遅れを責めることもできないというわけです

※重要
ただし、これらは職員が抱いている一連の出来事への感想であり、シンジが責任を感じていないというわけじゃありません


おわり
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 12:35:34.37 ID:8U289tGjO
これまでの流れを読みゃわかる
バカの相手はせんでいい
712 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/10(火) 14:56:35.26 ID:DKW/YuiX0
ちょと書くモチベがダウンしてるので次回レスまでしばらく時間おきます
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 15:09:05.74 ID:oTF4wfa9O
把握。再開楽しみにしてるやで。
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 19:38:34.95 ID:L87mp+0Vo
待ってる
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/30(月) 22:42:26.63 ID:D2RrSDpb0
そろそろ三週間か…
716 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/02(木) 17:58:56.04 ID:e1rMDpjd0
【厚木基地】

加持「言っておくが、陣頭指揮にあたっていたのは葛城じゃなく碇ユイ司令だ」

軍曹「だろうな。お前はいつもそう言い訳を」

加持「言い訳じゃなく……事実だ。時田シロウはどうやって政府に取り入った」

軍曹「国の為と言っちゃいるが、ありゃ私怨だよ。こじらせただけ。ネルフと戦自は近々なにかあるぞ」

加持「わかっている。俺の知人も二人消された。潜入中だった」

軍曹「俺もその件は聞いた。上層部の動きが慌ただしい。奴が発案したトライデント級が出来上がる前に、行動するつもりかもしれん」

加持「だが、こういう時だからこそ俺たちが必要とされる」

軍曹「火事が起こらなければ消防は商売あがったりだしな」

加持「……」カチ シュボ

軍曹「サードチルドレンは、なにを隠している?」

加持「知ってるか。好奇心は猫をも殺すということわざを」

軍曹「からかうのはやめろ。この特別任務に就く際に要件は満たしてる。お前とは対等だ」

加持「これは失礼。軍曹殿。なにか気になることでも?」

軍曹「あいつは――……なにか重要な秘密を握っている。取り引きを持ちかけてきた時の目つきが自信に満ち溢れていた。根拠のないモノじゃない」

加持「取り繕ってるだけかもしれないじゃないか」

軍曹「よせ。さっきから言ってるだろう、俺だってこの道のプロだ」

加持「具体的なところをお聞かせ願いたいね」

軍曹「推測の域をでないが、上層部にやつは抵抗しようとしてるんじゃないのか」

加持「……」フゥー

軍曹「動機はこの際どうでもいい。だが……気がついた。司令が知られてはまずいなにかに」

加持「なにか、とは?」

軍曹「そこがわからない、肝心なところで下手をこいてしまってね。ほら、これだよ」カシャ

加持「カフスか」

軍曹「外すのを忘れていた。まさか、お前のを見ていたとは。警戒心の強いガキだ」

加持「ふっ、侮ったお前が悪い」

軍曹「そうかもな」

加持「これからどうする? サードチルドレンにお前の顔は割れてしまっているだろ」

軍曹「とんずらさせてもらうよ。適当な理由をつけて。命はなによりも大事だ」

加持「てことは、ここでお別れか」

軍曹「短い付き合いだったな」

加持「俺たちにとっちゃ日常茶飯事の光景さ」

軍曹「ああ」

加持「ひとつ聞きたい。この後は、どうする?」

軍曹「……? いや、だから」

加持「お前は秘密の片鱗を除いてしまったんだ」スッ カチャ

軍曹「……け、拳銃っ⁉︎ そ、そんなっ! ま、まてっ!」ギョ

加持「警戒心を持つべきはお前だったようだ。プロなら、与えられた仕事をきちんと最後までやり遂げるんだな」パァンッ
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 18:18:21.76 ID:+8G9/Nr0O
ktkr
718 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 18:25:24.12 ID:e1rMDpjd0
【再び コンテナ内】

アスカ「……」ジトー

シゲル「」ピク ピク

シンジ「あの……?」

アスカ「あんたに聞きたいことがあんのよ」

シンジ「(青葉さんこのままでいいのかなぁ)」

アスカ「……」

シンジ「なに? どしたの?」

アスカ「ファースト……あいつって、加持さんと、ううんと、あんたってファーストとのことどう思う?」

シンジ「へ……?」

アスカ「なんかないのぉ? 気味が悪いとか、変なやつだなとか」

シンジ「えっと……綾波は、綾波だけど」

アスカ「だからぁっ! そうじゃなくって! あんたはさぁ、あいつとはあたし以前に知り合ってるんだし! なにか情報ないの⁉︎」

シンジ「情報。情報、ねぇ」

アスカ「……」イライラ

シンジ「あぁ、そういえば」

アスカ「なに?」

シンジ「窓拭きが上手――」

アスカ「ふんっ!!」スパーンッ

シンジ「いったぁ! なにするんだよ、いきなり頭はたいて!」

アスカ「あんたねぇ、どうしてそう察しが悪いのよ! あたしが改めて聞くってなったらなにか理由があるってもんでしょ!」

シンジ「はぁ」

アスカ「聞きたいのはそんなどーでもいいことじゃないのぉ! 来歴とかさぁ!」

シンジ「そんなの知ってどうするのさ」

アスカ「“彼を知り己を知れば百戦殆うからず”!! 敵についても味方についても情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはないじゃない!」

シンジ「綾波が敵みたいな」

アスカ「少なくとも味方ではないことはたしかね。このあたしにとっては!」

シンジ「ええ? なにかあったの?」

アスカ「それは……」

シンジ「……?」

アスカ「なんであんたにそんなこと話さなくちゃいけないのよ!」

シンジ「言いたくないなら別に」

アスカ「聞きもしないわけ!」

シンジ「どっちなんだよ、もう……」

アスカ「あいつが加持さんと話してるとこ、見たことある?」

シンジ「加持さん……うぅーん、ないと思うけど」

アスカ「……」ギュウ

シンジ「アスカ……? 本当に、なにがあったの?」






719 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 18:43:36.93 ID:e1rMDpjd0
アスカ「――……やっぱり、いい」

シンジ「え?」

アスカ「こんなの、あたしらしくない。バカシンジに頼ろうとするなんてどーかしてる」クルッ

シンジ「ま、待って!」パシッ

アスカ「離してよ」

シンジ「ためこまない方がいいよ。解決策は提示できない、かもしれないけど、誰かに話てラクになれるかもしれない」

アスカ「そう、すっかりチームリーダーのつもり?」

シンジ「……?」

アスカ「あたしは、あんたにだって負けられないのよ。弱味を見せたくない」

シンジ「なんの話をしてるのか、わけが」

アスカ「知らないからなんてことは責任の放棄よ(違う、そうじゃない)」

シンジ「……」

アスカ「あんたも一緒だわ。人に踏み込む勇気なんてないくせに……!(違うの、私が言いたいのはこうじゃない)」

シンジ「アスカ……?」

アスカ「ヒーロー気取り? エース? 自分がちやほやされたいだけでしょ! みんな、みんな自分のため!(違う、それは、私)」ツゥー

シンジ「涙、泣いてるの?」

アスカ「……っ⁉︎」ゴシゴシ

シンジ「あ、あのっ!」

アスカ「ほっといて。一人になりたい」パシッ

シンジ「……」

アスカ「もう行く。また、あした」
720 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 19:27:31.93 ID:e1rMDpjd0
【ネルフ本部 第三通路】

リツコ「あら。シンジくん、ちょうどよかった。これからコンテナに伺おうと思っていたのよ」

シンジ「あの、綾波を見ませんでした?」

リツコ「あの子なら先程帰宅させたけど。心配してるのね」

シンジ「……」

リツコ「大丈夫よ。司令からはあなたの要求に応える形でなにも通達が降りてきてない」

シンジ「いえ、そうじゃなくて、アスカが……」

リツコ「……あぁ、そっちだったの。大方予想はついた。チームリーダーとエースの件ね」

シンジ「まさか、また僕の知らないところで」

リツコ「報告する義務はありません。指揮系統での立場でいうとシンジくんと私はこれまでと何ら変化はかいのよ」

シンジ「詳しく教えてください」

リツコ「ええ。いずれあなたにもわかることだし……私もあなたに聞きたいことがあったしね。ついてきて」

シンジ「どこにいくんですか」

リツコ「ここじゃ他の職員の目につく。安全な、私の研究室に」
721 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 19:42:52.73 ID:e1rMDpjd0
【ネルフ本部 ラボ】

シンジ「僕達は、チームですか?」

リツコ「つまるところ、競争意識の表面化よ。エヴァはそれぞれ個として強力な力を持つ兵器だけど、戦術的運用を考慮すれば協調性が必要になります」

シンジ「だけど、これまでだってアスカは協力してきました」

リツコ「協力とはいわないわ。従っているというの」

シンジ「それのなにが違うんですか。母さんやリツコさんが好きな結果重視ですよ」

リツコ「完璧ではない。パイロットたち自らが積極的な姿勢を見せるようにするためのテコ入れ」

シンジ「アスカは、エヴァに乗ることにプライドをかけてます」

リツコ「理解してる。だからこそ、あの子は殻を破らなければならない」

シンジ「……」

リツコ「シンジくんにも言えることだけど……あなたの最近の行動を見る限り、余計なことを言う必要はなさそうだから」

シンジ「いい加減にしてくださいよ!!」

リツコ「……」

シンジ「人権をなんだと思ってるんですかっ!! 僕だけじゃなくアスカまで自分達の都合の良い駒として動かすつもりですか!!」

リツコ「当たり前よ」コト

シンジ「……っ!」ギリッ

リツコ「人情なんて生易しいものでは生き残っていけないのよ。合理主義、いらないものは容赦なく切り捨てる。私たちはその渦の中に身を投じているのですもの」

シンジ「……」

リツコ「必要ないと思うものを大なり小なり切り捨てて、取捨選択をしているはず。シンジくんは立派な偽善者ね」

シンジ「そうですよ。僕は」

リツコ「開き直るのが子供だと言ってるのがわからないの……! あなただって綱渡りしているでしょう」

シンジ「……」
722 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 20:15:56.70 ID:e1rMDpjd0
リツコ「交渉の材料は?」

シンジ「……言いたくありません」

リツコ「忙しいから余計な時間をとりたくない。司令をうなずかせるに足る提示をした」

シンジ「……」

リツコ「問題は、その“中身”よ。それがわからない」

シンジ「リツコさんはどうしたいんですか。母さんを脅したいんですか」

リツコ「そんなことをすればたちまち私は消されてしまうでしょう。私が今すべきことは、じっと身を潜めて待つ。敵だと認識されることではない」

シンジ「……?」

リツコ「ただし、あなたの味方でもない。伝えるべきはそれだけ」

シンジ「(なんだ? 母さんとなにかあるのか……?)」

リツコ「ヒントは差し出した。次はあなたの番よ」

シンジ「僕はリツコさんと取り引きすると一言もいってません」

リツコ「つれないわね。自分だけ女の秘密を知るつもり?」

シンジ「……」

リツコ「慎重になるのもわからないでもないわ。シンジくんがエヴァ以外ではじめて有利になったであろう情報。ベラベラと喋ってしまっては価値が暴落する」

シンジ「……」

リツコ「けれど、あなたは今も選択しているのよ。私という駒を使うのか、それともこのまま放っておくのか。言っている意味が、おわかり?」

シンジ「協力するかもしれないということですか」

リツコ「状況次第ではね。確約はできない」

シンジ「コーヒー、もらってもいいですか」

リツコ「ええ、インスタントだけど」
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 21:49:04.51 ID:Df9fmtuyO
メリットが全くねえな
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 22:01:34.38 ID:amq/g5vco
言ったタイミングが最悪だったのとアスカのメンタル弱すぎるだけで
リツコが言ったこと自体は間違ってないと思う。自信家ですぐ周りとぶつかるのは問題だし
725 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/03(金) 01:05:54.88 ID:Q20Wp4R70
シンジ「お互いの手の内を曝け出す、得られるモノはリツコさん、ですか」

リツコ「全てなんて傲慢なお願いをしているわけじゃない。形としてぼんやりと、どれほどのモノかを知りたいだけ。どうぞ」スッ

シンジ「……」

リツコ「証明は、レイを保護し手出しをさせなかった。それだけで重要度を計り知れなくもないといったところかしらね」

シンジ「僕が察することができるなんてたかがしれてますよ。情報の提供をしてほしいと遠回しに言ってるのと同じじゃないですか」

リツコ「機転は利く。このやりとりはあなたがどこまで成長しているのか、その確認でもある」

シンジ「……」

リツコ「心理学の観点から見極めているといえばわかりやすい?」

シンジ「テストを兼ねてるんですね」

リツコ「あまりにも期間が短すぎて、見定めきれないから。中学生として扱うべきか、それとも、対等の相手として見るか……私としても半信半疑なの」

シンジ「わかるような気がします」

リツコ「そう?」ギシ

シンジ「だって、年齢差を考えれば仕方のないことですから。ただ、僕は、子供のままじゃいられないだけで」

リツコ「まわりが許さないし、また、過酷な環境での成長を余儀なくしている。かわいそうね」

シンジ「心にもないことを言わないでください」

リツコ「あなたが冷静でいるのは上っ面だけ? それとも……ホンモノなの?」

シンジ「どうだろう」

リツコ「抗おうとしている流れ。それはユイ司令だけではない、背後にあるゼーレ……ひいては世界そのものを敵にまわす。シンジくんが仕切れる?」

シンジ「……」

リツコ「アスカ、レイ、ミサト、身近な存在が、いつ、誰が死んでもおかしくない状況になろうとしている。そうなったら、守るという行動理念は崩れる。最初から無理なものに挑戦しようとしているのよ、今のあなたは」
726 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/03(金) 01:37:44.89 ID:Q20Wp4R70
シンジ「無理だとは思ってません。やれるだけやってみよう、そう思ってます」

リツコ「巨大な資本に蹂躙された後に、同じセリフを吐ける? “よく頑張った”なんて誰も褒めてくれないわよ」

シンジ「僕は父さんや母さんとは違う。徹底した合理主義者になれないんです」

リツコ「……」

シンジ「個の主張という意味じゃありませんよ。……それが僕なんだ」

リツコ「若さは言い訳にならない。求められているものが違うのならば臨機応変に合わせるべきではなくて?」

シンジ「できないこと無理にをやろうとしていても、できない。またイチからのスタートになります。スポンジのように吸収する天才肌じゃないんです、僕は」

リツコ「……」

シンジ「――ただ、巻き込まれただけの凡人」

リツコ「(自己評価は適正。おごりはない、か)」

シンジ「言っている意味はわかります。必要とされている要素も。だけど、それを実現しようと考えると、残された時間がたりないし、経験値もない」

リツコ「……」

シンジ「だったら、僕はルール無用の殴りあいをしたらどうだろうって」

リツコ「なんですって……?」

シンジ「正攻法じゃ無理。さっき、最初から無理な挑戦をしようとしている、そう言いましたよね」

リツコ「……」

シンジ「でも、それは型にハメてるからだと思うんです」

リツコ「計画があると?」

シンジ「いえ、なにかするのは僕じゃありません。まわりです」

リツコ「あなた、いったい……」

シンジ「流れに一石を投じれば、水は濁るんですよ。小石では一瞬だけで、すぐにまた戻ってしまう。でも、そうじゃない、大きな石だったら……?」

リツコ「流れは、止まる」

シンジ「行き着く先が決まった流れているものに抗おうとするから、大変なんです。外部から圧力を加えるか、変化を待てばいい」

リツコ「その準備があるというの……?」

シンジ「綱渡りしてる、その指摘自体は間違っていません」

リツコ「……」

シンジ「リツコさんの目的と、母さんの目的が相反するものであり、僕の目的と近いものならば、協力はできるかもしれない」

リツコ「それで?」

シンジ「取り引きはこれだけで済むんですよ。お互いに有益になるのは、なにも対価交換のみじゃない、と思います」

リツコ「……」

シンジ「話は終わりです。僕からなにかを差し出す必要はない。もちろん、リツコさんからも。コーヒー、ごちそうさまでした」

リツコ「口ぐらいつけたら?」
727 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/03(金) 19:42:33.35 ID:Q20Wp4R70
【翌日 第壱中学校 校門前】

ケンスケ「ふぁ〜ぁ……」

トウジ「おはよーさん」ポン

ケンスケ「ああ、おはよ」

トウジ「朝っぱらからクマ作って。まぁ〜た徹夜でカメラいじりか?」

ケンスケ「違うよ」

トウジ「あん?」

ケンスケ「理由を聞いたな? ならば教えよう! これだよ! これこれ!」バッ

トウジ「なんや? かま、コレ?」ピラ

ケンスケ「そう! 今や様々なメディアで取り上げれている大人気コンテンツ!」

トウジ「ちびっこ向けか?」

ケンスケ「はぁ、これだから。いいか? 最近はこういった擬人化が常識になってきてるんだよ!」

トウジ「擬人、化? なんやリュックみたいなの背負ってるだけやないか」

ケンスケ「ノンノン! これはバックパック! このゲームは実在の艦隊がもし女の子だったらっていう設定なのさ!」

トウジ「……」

ケンスケ「僕の趣味とピッタリなゲームがこの世で流行ることがあるなんて! あぁ……生きててよかった……!」ポロリ

トウジ「なぁ、ケンスケ」

ケンスケ「ん?」

トウジ「お前なぁ、もちっと趣味を変えたらどうや? パーっと外で遊んだり」

ケンスケ「時間の浪費先は僕の勝手だろ!」

トウジ「わしはお前と友達でいられる自信がなくなってきた」

ケンスケ「またはじまったよ、いいか、だいたい……あれ?」

マナ「……」ジー

トウジ「こんな女が実在するわけないやろ。どこがええんやこんなん」

ケンスケ「霧島……?」

トウジ「霧島みたいな戦艦女が……あ? 霧島?」

運転手「ばっきゃろー! あぶねぇだろ!」ププーッ

トウジ「うわぁっ⁉︎」

ケンスケ「わぁっ⁉︎」

トウジ「うひー、あぶな……。パンフレット見ながら歩くもんやないな。おい、ケンスケ、信号変わったんならいうてくれや」

ケンスケ「……」キョロキョロ

トウジ「……?」

ケンスケ「(いない。たしかに、霧島が向かいの歩道にいたと思うんだけど)」

トウジ「誰か探しとるんか?」

ケンスケ「い、いや。なんでも」
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