シンジ「その日、セカイが変わった」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

728 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 05:11:04.67 ID:7RK3hDVxO
もうシンジの一物でリツコを雌奴隷にしたら解決するやろ
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 09:09:35.12 ID:FoRL1iTro
それやっちゃうと前回の二の舞だから
730 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/04(土) 17:44:22.76 ID:s+2GFAAK0
新劇だと時折向こう見ずな行動力を見せるシンジくんですがあくまでTVシリーズや旧劇場版を参考にして
突飛な行動をさせる予定はありません

ただしそっくりそのままだと原作をなぞるだけになってしまい面白くないので、創作特有の各キャラらしからぬ行動も挟んでいると思います

当二次SSではその点にできるだけ無理がでないように気をつけて書いているつもりです
731 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/04(土) 19:16:44.19 ID:s+2GFAAK0
【厚木基地 管制塔】

オペレーター「ECTA 6-4 NEO PAN 4-0-0。応答せよ。こちら厚木基地管制塔。飛行経路上の天候状況は快晴だ」

輸送機「こちらPAN 4-0-0。確認した。気圧計は危険性がないことを示している。コースをこのまま維持する、予定どおりに到着する」

オペレーター「了解した。長旅お疲れさん。通信をアウト」

参謀官「また玩具が増えるのか。おい、そこの。窓のそばでなにをしてる」

加持「失敬。新鮮な空気を吸いたかったもので」

参謀官「お前もみない顔だな。最近のここは、やたらと人の出入りが激しくて困る」

加持「秘書官に許可はいただいておりますが……。三号機に関する渡航書類を受け取りにきました」

参謀官「二重スパイ。個人資料は読んだ」

オペレーター「す、スパイ?」

加持「衆目に晒すような真似は勘弁していただきたいのですがね」

参謀官「ふん。それで、ネルフ総司令の使いパシリで君を寄越したと」

加持「仰る通りです。よろしければ、承認の判子をいただければ」

参謀官「軍曹はどうした? まだ出頭せんのか?」

オペレーター「はい。飲み過ぎですかね」

加持「……」

参謀官「宿舎に向かい叩き起こしてこい」

オペレーター「はっ」

参謀官「時に、加持監察官」

加持「はい?」

参謀官「ネルフにはどう偽ってここにきている?」

加持「松代でライフルの試験運用が行われる予定になっています。名目はその出張です」

参謀官「兵器実験か。我らが開発した陽電子砲。やつらの研究部が改良を加えて小型化の目処がたったと聞き及んでいるが、たしか……」

シロウ「赤木リツコでしょう?」コツコツ

加持「失礼ですが、こちらは?」

シロウ「これはこれは。自己紹介が遅れて申し訳ございません。この度、戦略自衛隊兵器開発部の特別顧問に就任いたしました。……時田シロウと申します」

加持「お初にお目にかかります。光栄ですよ」

シロウ「これは異な事をおっしゃる。それは皮肉ですか?」

加持「とんでもない。あなたの輝かしい功績を考えれば礼節を欠けません」

シロウ「輝かしい……? ふむ」

加持「……」

シロウ「なるほど。あなたは賢いようだ。尻尾を掴ませまいとするように見えるのは、私の気のせいか、はたまた……」

加持「仕事柄勘ぐられるのは珍しくありませんが、どうです? 今度一杯」

シロウ「良いですね。私もこちらに着任したばかりで話し相手に困っていたところです。上等なコニャックがありますよ」
732 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/04(土) 19:48:55.14 ID:s+2GFAAK0
【第壱中学校 下駄箱】

シンジ「おはよう、トウジ、ケンスケ」

トウジ「あー……おまっシンジやないか⁉︎」

ケンスケ「なんで碇がここにいるんだぁ?」

シンジ「色々あってなくなったんだ」

トウジ「はぁ、なんやそら」

ケンスケ「てことは、霧島も?」

シンジ「マナは……戦自に残った」

ケンスケ「帰ってきてるわけじゃないのか。やっぱり見間違いなのかなぁ……?」

シンジ「……?」

トウジ「まぁ、ネルフ都合っちゅーやつやろ、いつもの。センセも振り回されてばっかやのお」

ケンスケ「これからまた元どおりなのか?」

シンジ「うん、たぶんだけど。しばらくはないと思う」

トウジ「それならまたつるめるな!」ガシッ

シンジ「わっ」

トウジ「なんやかんやわしら三人一緒のがしっくりくるわ」ワシャワシャ

シンジ「ちょっと、トウジ。犬じゃないんだから、頭撫ですぎだよ」

レイ「……」カタ

シンジ「あ。……綾波!」

レイ「……なに?」チラ

シンジ「あの、後で少し話たいんだけど。いいかな?」

レイ「ええ」

ケンスケ「ははぁ〜ん。やっぱりシンジの意中の相手は綾波なのかぁ〜?」

シンジ「ケンスケ。そんなんじゃないから」

ケンスケ「でもさぁ、霧島だって」

アスカ「……」バンッ!!

トウジ「おっ? なんや」

アスカ「朝からギャーギャーうっさいのよ、この三馬鹿!」

ケンスケ「こりゃまた、ご機嫌ナナメですな」

アスカ「ふんっ!」プイッ

ヒカリ「アスカ、おはよう」

アスカ「おはよー」

ヒカリ「あれ……? 碇くん? 戦自に入隊したはずなんじゃ……?」

アスカ「ヒカリぃ〜! 聞いてよぉ〜、シンジったら1日で逃げ帰ってきたんですってえ〜!」

トウジ「あ?」

ヒカリ「へ? そうなの?」チラ

シンジ「……」ポリポリ

アスカ「きつくてもういやだぁーって! とんだ根性なしよねぇ〜!」

トウジ「おい! ゴリラ女!」

アスカ「あぁん?」
733 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/04(土) 20:04:45.52 ID:s+2GFAAK0
トウジ「前々から思っとったが今回ばっかりははっきりと言わせてもらう!」

アスカ「最悪。ツバ飛ばすとか汚いわねぇ」

トウジ「お前男を舐めとるやろ!」ビシッ

アスカ「はぁ?」

ケンスケ「トウジ」

トウジ「だぁっとれ! こないな調子づいた女にはガツンと言ってやらなわからんのや!」

シンジ「僕はいいから」

トウジ「シンジもビシッと言ったらんかい! 甘くした結果がこれやないか!」

アスカ「舐めてるのどっち。男尊女卑」

トウジ「な、なにをぉぅ⁉︎ わしはお前限定で」

アスカ「前時代的。日本が世界からガラパコスだと言われてるのはあんたみたいなのがいるからよ」

トウジ「なんでわしが!」

アスカ「女と男に能力差なんてない。あんた達の行動があまりにガキだから言ってるだけ。言われたくなかったら言動に注意しなさいよ」

ヒカリ「あ、アスカ……」

トウジ「ぐぬぬ、この」

アスカ「ほら、言葉がでなくなりそうになったら罵倒することだけ考えてる。マウントとるのが目的なの? チンパンジー以下ね」

トウジ「ぬぬぬぬっ!」

ケンスケ「頭使うの苦手なんだからやめろって。顔真っ赤になってるぞ」

アスカ「はっ………ゴミ」

ヒカリ「(うわぁ、人を見下した目線させたらすごいな)」

トウジ「ぐ、ぐっ!」

シンジ「アスカ、言い過ぎだよ」スッ

アスカ「……なぁにぃ? 今度はシンジ様が相手になってくれるのかしらぁ? エースで無敵のシンジさまぁ〜!」クルクル

ケンスケ&ヒカリ「……?」

シンジ「そんなんじゃないってわかってるだろ」

アスカ「なによ」キッ

シンジ「僕は、エースもチームリーダーも興味は」

アスカ「命令されたら辞退すんの⁉︎」

シンジ「……」

アスカ「しないの……? へぇ、やっぱりあんただって野心持ってんじゃない」
734 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/07(火) 01:18:51.21 ID:fKwDZQ4C0
シンジ「ひとつ、ゲームをしない?」

アスカ「あんた……っ! ちょぉ〜っと運動神経よくなったからって上から見下してんじゃないでしょうねぇ⁉︎」

トウジ「どの口が言うとるんや! 見下してるのはおまえの――」

ケンスケ「……シンジの運動神経がよくなった?」

シンジ「話がこじれるから。そんなひねくれた捉え方をしないで、ただの遊びだよ」

ヒカリ「あの、碇くん。言いにくいんだけど、この状況は遊びって雰囲気じゃ」

シンジ「負けた方が勝った方の言うことをひとつ聞く」

アスカ「前々からファースト同様、あんたも変なやつだと思った時はあったけど。いや、シンジの場合はバカか。……ヒカリの言う通りよ、遊びに誘うなら状況を」

シンジ「逃げるの?」

アスカ「な、なななぁっ?」

シンジ「勝負事に対して論点をズラすなんてするはずないと思ったんだけど」

アスカ「あ、あんたバカぁっ? あたしはドイツ語じゃなく日本語を話してるつもりなんだけど!」

シンジ「やっぱり逃げてる。負けるのがこわいから乗りたくないんじゃないの」

アスカ「い、いい加減にっ……!」

シンジ「言いたいことがある、不満があるのなら勝負に勝って聞かせればいい。簡単な話じゃないか」

ケンスケ「(おぉ……)」

トウジ「(こいつシンジの言うことはある程度聞くみたいなとこあるな)」

アスカ「……いいわ。そこまで言うならやってあげる。ただし、条件はイーブンになる勝負にすること」

ヒカリ「アスカ」

アスカ「平気。そうね、例えばあたしに有利なのは学力。あんたに有利なのは運動関連。そのどちらも除外したものにしなさい」

シンジ「うん、もちろんだよ。お互いの“素の能力”が試されるゲームにする」

ケンスケ「やったことないテレビゲームにするのか?」

シンジ「ううん、それじゃコントローラーを操作してたことがあるかで有利不利があるから。キー配列だってあるし」

アスカ「あたしならそんぐらい瞬時に覚えるに決まって」

シンジ「まぁ落ち着いて。ゲームの内容は思いついてるんだ。みんなにも参加してほしい」

ケンスケ&トウジ&ヒカリ「わし(私)(僕)たちも?」
735 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 01:46:21.46 ID:fKwDZQ4C0
【第壱中学校教室 昼休み】

ケンスケ「碇、紙はくばったぞ……なにするんだ? これ」スッ

シンジ「あぁ、まだ見ちゃだめだよ」

トウジ「トランプでもない、ウノでもない……」

ヒカリ「なにかの推理ゲーム?」

シンジ「これは、人狼ゲームっていう嘘つきを暴く遊びだよ」

トウジ「どゆことや?」

シンジ「僕が書いた紙をケンスケにシャッフルをお願いして配ってもらったのはオオカミを誰が所有してるかわからなくする為だったんだ」

ヒカリ「う〜ん、それってババ抜きみたいなこと?」

シンジ「ババ抜きは最後にババを持っていたら負け。このゲームはババ=オオカミを言い当てられたら負け」

ケンスケ「つまり、オオカミの所持者は自分が知ってる状態からスタートするのか?」

シンジ「みんな見れるよ。自分の持ち札は」

トウジ「なんや、全員見れるなら誰が持っとるか一発で」

シンジ「だから、“オオカミはウソをつく”」

ヒカリ「あっ、そっかぁ。自分が持っていないって言い張るしかないもんね」

シンジ「そう。僕がこの中に紛れさせた人狼は一枚だけ。その一枚の嘘つきは誰か。それを当てるゲーム」

ケンスケ「ふ〜ん」

シンジ「本当はほかのカードにも役割があるんだけど、今回は割愛するよ。説明がめんどうだし」

アスカ「くだらない。あんたとあたしの勝負じゃないわよ、こんなの」

シンジ「一回のゲームにたいして時間はかからないんだ。こうしようよ。もし、僕かアスカに狼のカードがあった場合、言い当てられなかったら勝ちってことで」

アスカ「まだるっこしい方法ねぇ」

シンジ「とりあえず一度やってみよう。ルールを確認しながらでかまわない」

アスカ「初回は説明だったから〜なんてのはなしよね?」

シンジ「アスカはどっちがいい? 僕はテレビで見たからルールは把握してる。選んでいいよ」

アスカ「……初回から勝負」

シンジ「うん。わかった。みんなもわからないことがあったらその都度聞いて。それじゃ、持ち札を確認、あぁ、もちろんだけど、隣に見えないように」
736 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 02:08:45.47 ID:fKwDZQ4C0
シンジ「みんな、確認し終えたね? この中にオオカミがいるのは絶対だ。他のカードは村人と書いてある。これからその一人を炙り出す質疑応答の時間だよ」

ケンスケ「制限時間はあったりするんだろ?」

シンジ「5分にしておこうか。長すぎても意味はないし」

トウジ「わしはかまわへんで、村人やし、あっ」

ヒカリ「もう、言っちゃだめなんじゃない?」

シンジ「いや、言ってもかまわないよ。言わないのもありだけど。ここからは狼だけがウソをついてる。もし、トウジが狼だったら、ウソの申告をしたことになるね」

ケンスケ「なぁ〜るほど。だいたい飲み込めてきたぞ」

ヒカリ「えっ、鈴原、ウソつきなの?」

トウジ「わ、わしがウソなんかつくかぁっ! 男のすることやあらへん!」

ヒカリ「なんでどもるのよ」

シンジ「ケンスケはどう?」

ケンスケ「僕も村人と書かれてたよ。ウソをつく理由なんかないからね」

ヒカリ「私も、村人だった」

ケンスケ「てことは……」

トウジ「おいおい、いきなりかいな」

シンジ「まだ慌てる時間じゃないよ。繰り返しになるけどみんなの誰かがウソを可能性がある。そうだよね? アスカ」

アスカ「……」

ヒカリ「あ、アスカ……? まさか、アスカが」

アスカ「質問があるんだけど」

シンジ「うん?」

アスカ「最後に選ぶのは誰?」

シンジ「えっと、指名するのはってこと? それなら多数決だよ」

ケンスケ「えっ」

シンジ「全員で狼だと思う人を指差して多数決で決定される。選ばれた人が村人だった場合はオオカミの勝ち」

アスカ「ふーん。なんだ、簡単なゲームじゃない。あんたの負けよ。バカシンジ」

シンジ「どうして?」

アスカ「だって、私も村人だもの。他の連中がウソをつくとは到底思えないし」

トウジ「なんやそら、ならシンジで決まり」

シンジ「僕も持ってないよ。村人だった」

トウジ「あぁ?」

ヒカリ「えっ、ちょっと待って」

ケンスケ「委員長もトウジもにぶいなぁ。だから、今がまさにウソをついてる状態なんだろ? オオカミが」

ヒカリ「そーなんだ……。でも、それなら誰が」

アスカ「それを当てるゲーム。バカシンジに決まってるわ」

シンジ「根拠がない」

アスカ「あんたはこのゲームのルールを事前に知ってたわよね。それにさっきあんたはこう言ったじゃない。“本来なら他のカードにも役割がある”……それって自分の都合の良いようにルールを改変できるってわけでしょ」
737 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 02:27:28.23 ID:fKwDZQ4C0
トウジ「うぅ〜む、たしかにそれは」

ケンスケ「けど、シンジがオオカミって理由じゃないよな?」

シンジ「僕はただみんなが遊びやすいようにと思って。さっき言ったけど説明が手間だったんだ」

アスカ「どぉ〜かしらねぇ? オオカミを炙り出すというのが根幹にあるゲームなら、その他の役割というのがオオカミにとって不利になることだってあるんじゃない?」

ヒカリ「……?」

アスカ「それに、このカードを書いたのは? シャッフルした相田は配り終えるまでゲームの趣旨さえ理解してなかった。こいつは知ってたのよ。自分がオオカミだって」

トウジ「な、なんやとぉっ⁉︎」

アスカ「だから、余計な手間なんて言い訳をして紛れたんでしょ?」

シンジ「さすがだね、アスカ」

ヒカリ「ってことは碇くんが……!」

シンジ「はやとちりしないでよ。ウソをつくのがうまいと思ったんだ。僕はアスカがオオカミだと思う」

アスカ「……シンジ、ルールの変更をしない?」

シンジ「え?」

アスカ「これは元々あんたとあたしの勝負でしょ。ヒカリ達はなんの関係もない」

シンジ「まぁ……」ポリポリ

アスカ「だったら、他の三人には今、カードをオープンにしてもらう」

シンジ「え、えぇっ?」

アスカ「そして、他の三人が村人だった場合、あたしかあんたのどちらがオオカミか決めてもらうってのはどう?」

シンジ「そ、それじゃこのゲーム本来の楽しみ方が」

アスカ「他の役割とかなんらかの要素を削ってるんでしょ? だったらいいじゃない。それとも、自分がオオカミだから乗れない?」

シンジ「はぁ、わかったよ。乗る」

アスカ「聞こえたわよね? カード、オープン」
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 03:27:28.08 ID:3TTAEropo
ごめん、俺おっさんだからシンジに「ゲームの時間だ」とか言われるとクるものがある
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 07:25:32.09 ID:W0ydGzMmO
すでにシンジが上手いこと手のひらコロコロしている…
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 13:20:20.89 ID:qzpqxPIUO
>>738
声優ネタ?
741 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/07(火) 14:44:56.67 ID:fKwDZQ4C0
トウジ「わしは言った通り、村人や」ペラッ

ヒカリ「私も……」

ケンスケ「僕も、と言いたいところだけど――」

トウジ「あ? お前さっきまで村人やってゆうとったやないか」

ケンスケ「このゲームは決められた配役にのっとって全員参加型のテーブルトークRPGだろ。よーするに、腹の探り合いをするゲームってわけ」

シンジ「うん、正解」

ケンスケ「僕は村人だけど、あえて伏せておくよ。じゃないと見ていて面白くないから」

アスカ「あんたが村人かどうか決定すれば、あたしとシンジの一騎打ちを高みの見物できのよ?」

ケンスケ「そうじゃないんだよなぁ。見た目的にはアスカとシンジの一騎打ちに見えるけど。“腹の探り合い”から“聴衆をいかに騙すか”に変化する」

アスカ「……」

ケンスケ「だって、選ぶのは僕たちなんだぜ? 舞台で演技をしている二人の内のどちらかを」

シンジ「ケンスケは、あえて自分に可能性を残したいってこと?」

ケンスケ「ああ、そうすることでアスカもシンジも疑念を抱くんじゃないかと思ってさ。僕がオオカミである可能性……最初のルールから大きく外れないんじゃないか」

アスカ「同じことよ、あたしに迷いなんかない。シンジだと当たりをつけてるんだから」

ケンスケ「なら、伏せていてもなにも問題ないだろ?」

アスカ「……わかった。あんたと相田ってグルなの? 最初から仕込んでた?」

ケンスケ「いや?」

アスカ「小賢しい真似してくれちゃって。シンジの友達だからって」

シンジ「僕はなにも」

ケンスケ「待てよ、碇。アスカが勝手に疑ってるだけだ」

アスカ「相田も引き続き参加するってことね?」

ケンスケ「このカードを伏せておくだけ。あとは黙っておくよ。だって、僕は村人だから」

トウジ「ややこしいやっちゃなぁ。わしらには教えてくれんのか?」

ケンスケ「ゲームを楽しんでるだけ。トウジや委員長にも伏せておくよ」

ヒカリ「えっと……じゃあ、村人だって判明したのはは……現時点で私と鈴原だけ、なのね」

シンジ「僕が気になってるのは、ひとつあるんだ」

トウジ「……?」

シンジ「ケンスケは普段からゲームが好きだから。ルールを尊重した遊び心を持つのはわかる。そうだよね? トウジ」

トウジ「まぁ、こいつはなぁ」

アスカ「(シンジのやつ。まわりを巻き込むつもりね。まずはバカな鈴原からか)」

ヒカリ「そうなんだ……」

アスカ「(ヒカリはこのテの騙し合いに慣れてない。頭は悪くないけど、純粋……まわりに引っ張られる)」

シンジ「なんで、アスカってここまで必死なんだろう? 村人なら、どんと構えてればいいのに」

トウジ「言われてみれば、たしかに。んー? もしかしてお前がオオカミなんか?」

アスカ「判断力の低さに呆れるわ。シンジは今、誘導しようとしてる。友達だからクセを掴んでるのは当たり前でしょ」

ヒカリ「そっか。そうよね」

シンジ「(僕とアスカを除けば、有効票は3票。満場一致の場合、最後の1票が鍵を握る)」

アスカ「(相田が余計な茶々をいれてきたけど、獲得するべき1票の重みは変わりない)」

シンジ「(僕にとって重要なのは――)」

アスカ「(あたしにとって重要なのは――)」

シンジ&アスカ「(委員長(ヒカリ)が持つ1票……!)」
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 15:13:22.49 ID:kj3HP5m0o
この勝負でシンジが勝っちゃったらますますアスカが追い詰められそう
唯一シンジにはっきり勝ててるの頭脳だけなんだしそれで負けたらもう頼るものがない
743 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/07(火) 17:58:42.88 ID:fKwDZQ4C0
アスカ「ねぇ、時間の延長をしない?」

シンジ「えっ、また後付けで変えるの?」

アスカ「これは提案。オープンのルール改変でようやくイーブン」

シンジ「そうだね……そろそろ5分になるから承諾する」

アスカ「時間はシンジが決めていい」

シンジ「なら、昼休みが終わるまで。具体的には投票の時間を省くとして15分の延長にしよう」

アスカ「それは5分を含める?」

シンジ「うん、昼休みは45分しかないんだよ。それまでに決着をつけよう」

アスカ「(なら、あと10分。余裕ね)」

ヒカリ「な、なんか思ってた以上に真剣な雰囲気になってる?」

アスカ「……ごほん、それはそーとシンジ。なんでいきなり勝負なんて持ちかけてきたの?」

シンジ「アスカのハナをへし折るためだよ」

アスカ「聞き違いよねぇ? あんた、いまなんっつたの?」キッ

シンジ「アスカには敵わない。実際、すごいと尊敬することがたくさんあるんだ。僕ができないことを当たり前のようにやってのけるから」

アスカ「……」

シンジ「だけど、アスカは驕りがある。いつだって勝負に絶対はない。簡単に足元をすくわれることもあるんだって、一人の限界と協力する必要性を教えてやるよ」

トウジ「お、おう」

ケンスケ「ひゅ〜」

アスカ「頼もしい限りねぇ。男なら、一度吐いたセリフ、のむんじゃないわよ。負けたら罰ゲームしない?」

シンジ「いいよ」

アスカ「あんたが負けたらエヴァから降りる。二度と乗んな」

シンジ「……」

トウジ「お、おい。そらぁいくらなんでも」

アスカ「外野は黙ってて。できる? できないの?」

シンジ「うん、わかった。そのかわりアスカが負けたら僕も条件を出す」

アスカ「なに?」

シンジ「まわりを、信頼するってのはどうかな」

アスカ「はぁ?」

シンジ「僕から見た印象だけど、アスカは、その、張り詰めた時があるように感じるから」

ヒカリ「……」

アスカ「……わかった。あんたを信頼すればいいってことね」

シンジ「命令じゃないよ。自分からそう思うこと。僕は、罰ゲームなんて手段でそうしたいわけじゃないから」

ヒカリ「碇くん……」

ケンスケ「泣かせるねぇ。それに比べてアスカの血も涙もない要求って」

トウジ「シンジを勝たせた方がええんちゃうか」

アスカ「これは勝負なのよ。そんなくだらない理由で公平な審判を覆えさないでくれる?」

シンジ「アスカが正しい。僕たちはゲームをしてる。だから、みんなはあくまでどちらがオオカミかを見定めるべきだ」

アスカ「ふん、感情に訴えだしたってわけ。あんたがオオカミだから」

シンジ「本心だよ。ウソは言ってない」

アスカ「……」






744 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 18:31:10.31 ID:fKwDZQ4C0
ヒカリ「……」ソワソワ

アスカ「(ちっ、ヒカリが動揺してる。シンジがあたしのためだっていうテイできてるから……鈴原や相田はただでさえシンジ寄りだっていうのに……!)」

シンジ「僕は村人だよ。みんなはもう気がついてるんじゃない?」

トウジ「なんかあったか?」

シンジ「アスカの目的に」

ヒカリ「目的……?」

シンジ「罰ゲームにしてもそう、これまでのやりとりにしてもそう。アスカの目的は、オオカミを暴くことじゃない。僕を負かすことなんだって」

ケンスケ「そう見えるな?」

シンジ「僕が負ける条件ってなにかな」

トウジ「あー、うーん、シンジがオオカミで、ちゃうか。惣流がオオカミで、シンジを指名させた場合や! それだとオオカミの一人勝ちやもんな!」

シンジ「さすがトウジ」

トウジ「どないや! わしも捨てたもんやないやろ!」

ヒカリ「それなら、アスカが……?」

アスカ「待ってよ。あたしは最初から一貫してシンジが持つ可能性について言及してるだけ」

シンジ「おかしいよ。今もそうだけど、ケンスケだって可能性があるじゃないか。どうして僕に目星をつけたの?」

アスカ「うっ。それは……あんたと相田が最初からグルだって可能性があるから」

シンジ「僕は信じられない。アスカは僕を負かす為に計画してるんだと思う」

アスカ「(こ、こいつ……っ!)」

シンジ「ワンマンプレイなら場を支配できる。だけど、今はそうじゃないんだ。個の力は通用しない」

アスカ「待って待って。勇み足だったのは悪かったと認める」

シンジ「……どういう意味?」

アスカ「さっきあんたが言ったでしょ。驕りがあるって。その自覚は少ならからずある。だからといって、修正しないかとそうじゃないでしょ?」

シンジ「……」

アスカ「もう一度言うわ。あたしは認める。シンジの命令はこのあたしのペースを考えてない、単なる押し付け。そんなのはい・やっ!」

トウジ「こいつはほんま……」

アスカ「なんだって本音は自分のやりたいようにしたいでしょ。それで評価されたい。シンジはサイテーなことをしてるのよ。偽善者」

シンジ「(わかってるよ)」

ケンスケ「うぅ〜ん」

ヒカリ「で、でも、それがその人のためになるなら……」

アスカ「抑えつけてもいいって? こいつが今言ったのは、あたしそのものの否定なのよ? 変われっていってるのと同義。望んでないのに。てきるのに」

ヒカリ「……」

アスカ「ふぅ、ゲームから話が逸れたわね。結局、今のでますます確信を持った。こいつはみんなを騙そうとしてる。仮面を被って」
745 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 22:27:03.12 ID:fKwDZQ4C0
シンジ「(しかたない、こうなったら)」

アスカ「……」ジトー

シンジ「ケンスケ」

ケンスケ「ん?」

シンジ「ケンスケは村人なんだよね?」

ケンスケ「ああ、そうだけど」

シンジ「アスカがケンスケと僕を疑って、天秤の比重が僕に傾いてるのは見ての通りだと思うんだけど、どう?」

ケンスケ「ん? んー」

アスカ「(だいたい読めてきたわ。シンジはどーやってか知らないけど周囲の人間を使う方法を覚えはじめてる)」

シンジ「当人なら僕と口裏合わせしてないって断言できるんじゃないの?」

ケンスケ「あぁ、それなら断言できる。僕は碇と結託してない。だってこれはゲームだからさ、談合なんかしちゃつまらないじゃないか」

トウジ「ケンスケは、せやろな」

アスカ「(……普段の行動からして、この状況はあたしに数的不利。だけど、弱点がないわけじゃない)」

シンジ「その上で、僕もオオカミじゃないんだ。ウソじゃないよ」

トウジ「シンジがそう言うなら……」

ヒカリ「一度整理させて。アスカは、碇くんがオオカミだと思ってる?」

アスカ「可能性は高いわよね」

ヒカリ「碇くんも?」

シンジ「僕もこれまでの発言を考慮したらその可能性は高いと思う」

ヒカリ「あのね、碇くん。疑問なんだけどこれって碇くんにとって有利じゃない?」

シンジ「……?」

ヒカリ「あたしは、アスカぐらいしかよくわからないし。その、普段あまり話さないから。碇くんが一番接点があると思うの」

ケンスケ「ふーん、なるほど」

シンジ「……そうだね」

ヒカリ「あっ、その、碇くんがオオカミだって言ってるわけじゃないのよ? だけど、私以外の性格を熟知してるのって碇くんぐらいじゃないかって」

アスカ「(ちゃぁ〜んす)」ニヤ

シンジ「洞木さんぐらいだもんね。ここにいる輪で僕とあまり接点がないの」
746 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 22:54:53.69 ID:fKwDZQ4C0
アスカ「姑息なやつよね。実は勝負を持ちかけた段階で自分に有利な状況を作り終えてたんじゃない?」

シンジ「……」

アスカ「(否定はなし、か。なら)……沈黙? 肯定と受け取ってもかまわないのかしらぁ〜?」

シンジ「そうじゃないよ」

アスカ「(あっさりかかってくれたわね、あんたの弱点は、経験の無さよ! この機に乗じて……!)」チラッ

ヒカリ&トウジ&ケンスケ「……」

アスカ「(オーディエンスに見せつけてやればいい! それで形勢逆転よ!)いいえ! そうよ! そうじゃないならどうして即答できなかったの⁉︎」バンッ

シンジ「……」

アスカ「無実の人間はまずやってないとはっきりと言うわ。躊躇した時点であんたに対する疑いは晴れなくなった」

シンジ「僕は……」

アスカ「言い訳なんてかっこわるぅ〜い。自分から素直に認めた方がまだ潔くていいんじゃない? 相田、シンジと結託してるなんて言って悪かったわね」

ケンスケ「いや、別に」

アスカ「これでシンジは私たちをひとつ騙してたのが決定づけられた。それは、勝負が最初からイーブンじゃなくて――」

シンジ「でも、それは僕が勝てるという条件があった場合」

アスカ「……」ピクッ

シンジ「有利=勝利にはならない。そりゃ可能性としては高まるけど、もし自分で有利な状況を作れるなら、僕はそうしないな」

ヒカリ「もっと確実に勝てるようにする?」

シンジ「うん、これまでの流れを整理すると、僕に有利な点は“ルールを事前に知っていた”“みんなとの接点が一番多く性格をある程度掴んでる”、この二点だよね?」

アスカ「ルールの改変ができたってこともね」

シンジ「そこも含めての二点だけど、僕はアスカと公平になるように変更を受け入れてるんだ」

ヒカリ「それも、そうね……」

シンジ「余裕を見せてるって受けとれるかもしれないけど。でもそれは、勝利を確信しないと僕はできない。相手は、アスカだから」

アスカ「当然! あたしはあんたなんかに……」

トウジ「つまり、シンジはそんなつもりなかったってことを言いたいんやな?」

シンジ「うん、このゲームはこうして誰かに疑いの目を向けさせるのが目的なんだ。だから、アスカの行動は正しいといえる。オオカミならね」

ケンスケ「ふぅん」

シンジ「僕は、どうしてここまで必死なのか。それだけが気になって。プライド?」

アスカ「っ⁉︎」

シンジ「プライドにさわったの? 下に見てる僕に負けるのが気に入らなくて」

アスカ「……っ!」

シンジ「支えてるものだろうから。エヴァも。だから負けたら僕に乗るなって条件を出してきたんだろ」

アスカ「(落ち着いて、こいつは今、煽ってるだけ。あたしが平静でいなきゃ)」

シンジ「――僕に負けるのが、こわいんだろ? アスカ」
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 06:02:01.98 ID:Ixj1GpkaO
急激につまんなくなってきた
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 07:16:10.25 ID:m62ahNhro
俺は楽しいよ
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 10:23:55.84 ID:rb2aenujO
俺は好きやな、この手の心理戦は読んでてゾクゾクする。
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 15:46:24.46 ID:FKmr+F0do
基本ゲームのルールって読まれないからね。
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 16:47:26.87 ID:ww9LfPvjo
最近ちょっとシンジが強すぎる
752 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/08(水) 22:55:04.44 ID:edcYsnIa0
アスカ「な、ななな、ぬぁんですってぇっ⁉︎」バンッ

シンジ「最初から僕に目星をつけてたんだ。どんなに論点をズラそうともそれは明白」チラッ

ヒカリ&トウジ&ケンスケ「……」

シンジ「全員、最初をまず思い出してみてほしい。勝負の内容を切り出したとき、アスカは僕との一騎打ちだと思ってた。それが蓋を開けてみれば全員参加型のテーブルトーク」

アスカ「……」

シンジ「想定外だったろうね。だから、アスカの目的が“僕を負かすこと”になんの不思議もないはずなんだよ。発端を考えれば」

ヒカリ「たしかに……」

シンジ「だけど、アスカはそれを必死に否定してる。それはなぜ? どうしてなんだろう、僕はずっと観察してた。答えはやっぱり、アスカがオオカミに辿り着く」

ケンスケ「いや、でも、それじゃあ」

シンジ「ケンスケが言いたいことはわかってる。場にオープンにされてるカードは洞木さんとトウジの二枚だけ。僕も村人だから、僕にとって可能性があるとすれば、ケンスケかアスカの二択になる」

ケンスケ「あ……」

シンジ「以上のことから、ケンスケは可能性が低い。選ぶとすれば――」

トウジ「惣流っちゅーわけか? ええい、もう誰かわかるよーに説明してくれ!」ボリボリ

アスカ「(まずい、このままじゃ……! 残り時間は……うそっ⁉︎)」

シンジ「残り5分を切ってるよ。時計を気にしてるようだけど?」

ヒカリ「アスカ? あの、アスカがオオカミなの……?」

アスカ「ひ、ヒカリ? そんなわけないじゃない! どうしてそんな目で見るの?」

ヒカリ「えっ、ご、ごめんね、でも、辻褄が合ってるように思えて」

シンジ「(人を操作して、誘導する。必要だからやらなくちゃいけない。たとえ、やりたくなくても必要なら……――父さんも、そう、だったのかな)」

アスカ「違うわよ!あたしはオオカミじゃない! 信じて! ヒカリ!」

ヒカリ「う、うん……」

ケンスケ「私情を挟んじゃ公平性が崩れるんじゃなかったのか? さっき自分で僕を友達だからって理由で疑っておいて」

アスカ「くっ……!」

トウジ「せやせやっ! 筋の通ったことをせなあかんぞ!」

ケンスケ「こりゃ、アスカがオオカミっぽい。な?」

シンジ「(父さんにも、こうやって、友達と遊んでる日々があったんだろうか……。必要なもの、必要じゃないと思うものを切り捨てて、いつしか、あんな風に――)」

ケンスケ「……シンジ?」

シンジ「あ、ええと、なに?」

トウジ「満場一致で惣流がオオカミで決まりそうや」

アスカ「……こんなの、こんなの……」プルプル

シンジ「……」チラ

ヒカリ「あ、アスカ……」ギュウ

シンジ「(やっぱり、満場一致でも鍵を握るのは洞木さんだ。これは僕の予想の範囲内、感情に流されてアスカを指名しないよね)」

トウジ「ちぃーとばかし時間があまったみたいやけど、投票するか?」

シンジ「まだだよ」

ケンスケ「え?」

シンジ「委員長。誰を指名するつもり?」

ヒカリ「えっ? い、碇くん? それって事前に申告するルールなの?」
753 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/08(水) 23:18:57.32 ID:edcYsnIa0
シンジ「違う。聞き方が悪かったね、正直に指名してほしいんだ」

ヒカリ「でも……ねぇ、これってゲームなんでしょ? そろそろ、やめない? なんだか可哀想よ」

ケンスケ「まぁ……」ポリポリ

ヒカリ「碇くんの勝ちでいいじゃない。相田くんと鈴原がアスカに投票して、そこに碇くんも加われば3票が集まる。多数決はそれで決まり」

トウジ「それもそうやが……」

シンジ「遊びじゃないんだ。これは」

アスカ「……」ピクッ

シンジ「そうじゃなくしたのはアスカだ。僕に負けたらエヴァを降りるという条件を突きつけた」

アスカ「……」

シンジ「自信があったんだろうね」

ヒカリ「碇くん! あんまりよ!」

シンジ「(エゴでもいい。偽善でもいい。僕はやると決めたらやなくちゃいけない。どんな結果でも受け止める……それが僕の背負った責任だから)」

ヒカリ「ねぇっ! もういいじゃないっ!」

トウジ「……」

シンジ「アスカ、逃げるの?」

アスカ「……なに?」

シンジ「完璧な負け。現実から」

アスカ「……!」ギリッ

トウジ「なるほど! そうか! そーゆうことやったんかいな!」

ケンスケ「トウジ……? なんだぁ?」

トウジ「ワシの天才的な閃きでピーンときたんや!」

ケンスケ「いやぁ〜な予感」

トウジ「つまりや! センセは惣流にこれまでの憂さ晴らしをしたいっちゅーことやろ!」どーん

シンジ「……え?」

トウジ「いやぁ、尻に敷かれとると思う時もあったが、なかなかどーして」

ケンスケ「おい、トウジ。今は黙っとこうぜ」

トウジ「あ? 違うっちゅーんかいな! 見てみい! 惣流のうつむき加減! こらぁスカッとするで!」

シンジ「……」

アスカ「もう、いい」ぼそ

ヒカリ「アスカ……? ねぇ、大丈夫?」

アスカ「あんたなんかきらい、嫌いっ、大っ嫌いっ!!」バンッ タタタッ

シンジ「逃げられないよ!」

アスカ「……っ!」ピタッ

シンジ「向き合わなくちゃいけない、自分のしたいようにしたいなら。僕はアスカはそのままでいいと思ってるんだ!」

ヒカリ「……」ゴクリ

シンジ「なにを選んで、なにを捨てるのか。アスカが決めなくちゃいけない。それだけ」

アスカ「……」タタタッ

トウジ「あ〜あ。止まったかと思えばまた走っていきおった。変な昼休みやったな」

ヒカリ「碇くん、追いかけてあげ……」

シンジ「いいんだ。アスカにだって自分と向き合う時間は必要だから」ペラッ

ケンスケ「え……っ⁉︎」ギョ

トウジ「そ、そのカードわぁっ⁉︎」

ヒカリ「碇くんが、オオカミだったの……」
754 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/08(水) 23:32:52.17 ID:edcYsnIa0
【第壱中学校 屋上】

アスカ「……はあっ、はぁっ……はぁっ」

シンジ『逃げるの? 完璧な負け。現実から』

アスカ「……っ!」ガンッ

シンジ『逃げられないよ!』

アスカ「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうっ!」ガンッ ガンッ ガンッ

シンジ『向き合わなくちゃいけない』

アスカ「えっらそーにっ!! バカシンジのくせにっ!!」ガンッ ガンッ

シンジ『アスカ……』

アスカ「あたしはエリートなのよ! なんで……なんでなんの才能もないナナヒカリに負けなくちゃいけないの……」ずる、ずるずる ヘタリ

アスカ父『アスカ。また一番だったのか? えらいね』

アスカ「私は一番が好き! 褒められるから! みんなが私をかまってくれるからっ!」

キョウコ『アスカちゃん……』

アスカ「まま……ママぁ。なんでぇ、どうしてよぉ……」ぽろ ポロポロ
755 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/09(木) 00:02:35.87 ID:BDiPzZt70
【放課後 教室】

ヒカリ「アスカ……戻ってこなかったね」

トウジ「まぁなぁ」ポリポリ

ケンスケ「シンジに負けたのがよっぽどショックだったんだろ。下に見てたのは事実だろうからな。それに、碇とはパイロット同士だし」

ヒカリ「まだ校内に残ってるんじゃないかしら」

シンジ「僕は帰るよ」トントン

ヒカリ「ねぇ、碇くん。気にならないの? 心が痛くならない?」

シンジ「(決まってるじゃないか。だけど、表には出しちゃいけない)」

トウジ「ほっとけほっとけ! 死ぬわけじゃあるまいし、おーげさなやっちゃ」

ヒカリ「そんな言い方って……!」

ケンスケ「ああいうエリート志向は打たれ弱いからな」

トウジ「このっ、わかったよーな口をっ。ケンスケのはアニメ知識やろ」グリグリ

ケンスケ「いで、いででっ、離せよ! ……ごほん、インテリとはぁ、些細なきっかけで転げおちるものだよ! きみぃ!」ビシッ

ヒカリ「ひどい……茶化すなんて……鈴原、そんな人だと思わなかった。もっと優しい人だと思ってたのに」

トウジ「ちっ、時にはお灸も必要やろが」

ヒカリ「でもっ!」

シンジ「アスカなら、大丈夫だって友達なら信じてあげないと」

ヒカリ「……」

シンジ「数日様子を見て、それでも立ち直れないようなら声をかけるでいいんじゃない?」

ヒカリ「冷たいのね、碇くん」

トウジ「甘やかすだけが友達やないぞ!」

ヒカリ「私、やっぱり、アスカ探してくる!」タタタッ

ケンスケ「女の連帯感ってやつなのかね。ああいう時々の感情だけで動くのはどーも苦手だな」

トウジ「さっすが、わかっとるのー!」

ケンスケ「ま、だから僕らはモテないんだろうけどさ」

トウジ「うっ」タジ

ケンスケ「シンジ。本当によかったのか?」

シンジ「……うん」

ケンスケ「そっか。だったら僕から何も言わない」

トウジ「はぁ」

レイ「……碇くん」

シンジ「ん? どしたの、綾波」

レイ「朝、話があるって言ってたから」

シンジ「あ、あぁ。ごめん、忘れてた」

レイ「明日でも平気?」

シンジ「これからネルフじゃないの?」

レイ「今日は三号機の納品作業に追われているから直帰していいって」

シンジ「メール見てなかったや」

ケンスケ「三号機がきたのかっ⁉︎」ガバッ

シンジ「あ、うん」

ケンスケ「くぅ〜っ! いいなぁ! どんなやつがパイロットに選ばれるんだろ! 機体を見てみたいなぁ〜っ!」

シンジ「(ミサトさん、今頃忙しいんだろうな)」

756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 03:49:23.11 ID:T1Bk5i7Xo
続きはまだか
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 04:54:53.72 ID:VDRJzr0yO
シンジがなんか無双しすぎてなんだかなぁって感じになってきた

精神的に追い詰められたアスカが屋上から飛び降りしてシンジを追い詰めて欲しいレベル
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 05:18:48.03 ID:da20Z2RwO
シンジもゲンドウの死とか乗り越えてる流れ見るに無双ししすぎって感じしないけどな
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 08:39:53.74 ID:qHSP6m5bo
アスカワガママだしそんなに好きじゃないけど背負ってるものが重いし
追い詰められると可哀想に感じちゃうな。まだ子供だし

あとシンジは変われっていったくせに今のままでいいとか言ってどっちやねんと
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 12:04:36.12 ID:MEX0Z0EmO
>>759
自分のしたいようにするなら変わらなきゃいけないってこと
エヴァとかなんもかんも関係ないならそのままでいいってことよ
バカすぎる
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 15:08:17.32 ID:W6MDQPyDO
使徒に心折られて壊れるよりは多少傷ついてもシンジに鼻っ柱折られて自分の心を見つめ直すきっかけになる方が何倍もマシだと思うけど
エヴァに乗らないなら年を重ねて精神面の成長を待てばいいけど、使徒はアスカの心の成長を待ってはくれないしな
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 16:30:20.83 ID:ZjnPuwRaO
シンジはアニメ版でアスカが廃人になる出来事を知らないしエースとかチームリーダーの話を聞いて改善点を突きつけてるんだろ
問題はシンジはレイとアスカのやりとりを聞いてなくて既にアスカが追いつめられはじめてるのを知らないしトラウマについても知らない
さらに追いこむマネをしてしまった
どうなることやら続きが楽しみ
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 17:29:45.28 ID:ZFG3BMqso
現時点でラスボス母ちゃんの顔したよくわからん生き物の上に
いつ誰が消されるかわからん以上腹くくったホラー映画の主人公見たくなるのはしょうがないかと
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 17:54:47.34 ID:GCCS5CQco
リツコが追い込んだこと知ってるんだからシンジがやったのは単に傷口に塩塗る行為だよ
変わらなきゃいけないことはアスカだってわかってるしみんなの前で赤っ恥かかせる必要はなかった

>>760
アスカからエヴァを取るなんてあり得ないし実質追い込んだ張本人が
今のままでいいなんておかしいってこと。わかんない?バカなの?
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 18:17:38.25 ID:olpXLoC5O
>>764
シンジはアスカからエヴァを取らなくて済むように言ってるんだよ
ニートと一緒
すこしわかってるぐらいじゃ明日から本気だす止まり
シンジはこれまでの自分がそうだったから余計に何をしなくちゃいけないのかわかるんだろ
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 19:08:18.14 ID:AKGCK+Y7o
なかよし!
767 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/09(木) 22:46:09.35 ID:BDiPzZt70
これはひどい
768 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/09(木) 22:57:09.76 ID:BDiPzZt70
とりあえず今日は書きません眠いんで
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 23:08:34.09 ID:cwaWsxCo0
ドンマイ乙
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 00:59:47.92 ID:RP9bV8HWO
どっちが正しいかのレスバトルになってるやんガキかよ
自分で書けな
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 03:23:43.07 ID:4MXjTpuTo
シンジが能力手にいれてから調子乗りすぎってことだけ分かる
自分の考えが全て正しいと思って強制させようっていうね
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 03:50:58.49 ID:W2tPtK6sO
先の展開まだわからないのに過剰に反応しすぎだろw
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 09:38:39.03 ID:N9Ulfpsjo
あのプライドの塊みたいなアスカが泣いたりしてあからさまに弱ってるのわかってるんだから
ここぞとばかりに優しくして懐柔路線で軟化させた方が良かった気はする

追い詰められたアスカが無理な特攻して廃人になってシンジも追い詰められたら面白いけど
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 10:55:11.69 ID:1cTwK8Eko
キミタチいい加減にしマサイ
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 14:31:17.89 ID:Ng8IBrptO
>>773
いい加減にしろガイジ
そう思うんなら自分で書けよ
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 16:00:02.94 ID:UkFGiINQO
>>773
すげえつまんなそう

777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 16:24:08.46 ID:ZGNfSf0bO
アスカに優しくした方がとかシンジが強すぎるとか言ってるやついるけどさ
シンジだって中学生なんだから必要だろこれは
弱点は経験のなさだって書かれてるし完璧なわけじゃない
つじつま合ってるじゃん
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 18:31:42.96 ID:nBNHhKf9o
そうね
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 23:09:58.88 ID:RP9bV8HWO
同じトリで涼宮ハルヒ書いてるの見つけたんですけどあっちはもう書かないんですか?
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 15:30:05.73 ID:MVBw2EvBO
支援
https://youtu.be/kLrSHTdVfgM

ここまで一気読みしました
原作リスペクトに溢れていてとても素晴らしいです
シンジくんが幸せになれますように
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 19:12:53.16 ID:IV99q457o
ただ現実として主人公なのにここまで不人気なキャラもいないよな公式すらシンジ排除して代わりにカヲルが入ってたりするからな
後からきたマリにすら人気抜かれるゴミなんだよな……
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 22:03:48.20 ID:bCjX0MYRo
新劇って観るべき?俺の中ではTEoEで完結してるんだけど…
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 23:28:29.94 ID:xKV7Ro82o
>>782
見れるなら見たほうが良いと思いますよ見ないことには自分が楽しめるのかどうかなど色々わかりませんからね

私は好きです特に林原さんの不安定な状態のままの歌
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 01:50:19.64 ID:wS4ymQ+1O
>>781
そら仕方ない
庵野も公式に言ってるけど「カヲルは対をなす完璧なシンジ」で本来ならカヲルこそ好かれる主人公像
けどエヴァの醍醐味はそんなナヨナヨしてるシンジに共感できるのがミソやから
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:19:54.15 ID:e0j3MkSSO
冷静に考えればカヲル君も電波入ってるというか
かなりの不思議ちゃんだからキツイけどな
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:49:36.47 ID:cz3Qzrpx0
シンジは視聴者の自己投影キャラなんだから人気出るわけないじゃん
観客はシンジを気持ち悪いと思いながら自分の過去と照らし合わせてしまう
だから人気でたんだろエヴァというコンテンツは
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 03:01:46.85 ID:D3pc/rejo
私はそれと違って熱い男の主人公がずっといなかったのが悲しかった
マジンガーやゲッターみたいな燃える男がいなくてそれがナデシコでガイに出会ってキターと思ったよそしたら…(T_T)
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 03:27:46.28 ID:qwssxgigO
ハルヒのやつて読んできたがあっちもクオリティ高くてびびった
完走がんばってくれい
789 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/13(月) 01:15:17.32 ID:+pObHRzO0
たまにどこかでガス抜きしないとモチベが保てないのでハルヒはそういう理由ではじめたものです
今の所はこちらを書いてる方が楽しいのでそのまま進めます
790 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/13(月) 01:56:59.06 ID:+pObHRzO0
【ネルフ本部 発令所】

マヤ「スキャン完了。まもなく三号機の搬入作業の項目を満了します。戦自から出向している隊員が帰投を求めてきています」

ミサト「見落としはない?」

リツコ「やけに慎重ね」

ミサト「そりゃーね。……三号機はまだ試作段階でしょ? 起動実験を行う前に引き継ぎをされたし、何が起こっても不思議じゃないわ」

リツコ「考えすぎよ。肝心のパイロットすらまだですもの」

マヤ「ネルフ技術部と戦自、連合軍のトリプルチェックがはいっていますので。その、あまり慎重になりすぎてもメンツを潰しかねない恐れが」

ミサト「それで無駄な犠牲をださないで済むのなら安いもんよ」

リツコ「体面を軽視しないほうがいいわよ。そこに命をかける人種だっているのだから」

ミサト「プロならば妥協は許されないわ。ポジティブに捉えてほしいものね」

リツコ「技術部の人間なら可能。けれど、外部から派遣されてきてる者は意識が違う」

ミサト「慎重にならざるをえないのは我々の管轄内だからです。石橋を叩いて渡る必要がある。もう一度、チェック」

マヤ「了解。発令所より通達。作業員並びに戦自隊員は――」

リツコ「ミサト。あなた、戦自がうちを良く思ってないの重々承知のはずよね」

ミサト「……」

リツコ「こき使いすぎると上にチクられるわよ」

ミサト「不満は発令する者からすれば常につきまとう問題。必要な処置であれば実行するべき。でしょ?」

リツコ「……」

ミサト「私たちはわけのわからないモノに頼っているというのを忘れたの? 惨事を回避するため……起こってしまってからでは遅いのよ」

リツコ「人は、ロジックではないわ」

ミサト「意識の違いがあるのはわかってる。だからこそ仕事でもあり、任務なの」

シゲル「戦自車両より通信。三号機の予備部品を運搬中。……どうやら途中の高速道路で事故があったようで定刻より遅れそうです」

ミサト「そうらきた。伊吹二尉、リストアップは全て問題ないんじゃなかったの?」

マヤ「す、すみません。書類上は承認の判子が押してあったもので」

ミサト「ケアレスミスは注意していれば必ず防げる。もう一度、最初から。二度手間なんていう輩がいたらクビにしてかまわない」

マコト「気合いはいってますね、葛城さん」

ミサト「ええ……そうね」

リツコ「本当にそれだけ?」

ミサト「(違うわ、怯えてる。……こわいのね、わたし)」
791 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/13(月) 02:34:11.65 ID:+pObHRzO0
【第三新東京都市 繁華街】

シンジ「(誰かにつけられてる……。母さんが監視をつけたのかな。どうしよう、このまま放っておいてもいいけど)」

カヲル「やぁ、碇シンジくん」ポン

シンジ「……? キミは……カヲルくん?」

カヲル「アダムとの融合は順調のようだね。周囲の気配を察知できるようになっているなんて」

シンジ「カヲルくんだったの?」

カヲル「まだ大雑把にしか使えていないのかい? 神経をよく研ぎ澄ましてごらん。もうひとつ、かわいいネズミがいるはずだ」

シンジ「……たしかに、意識がこっちに向いてるのがまだ」

カヲル「話かけようと迷っていたみたいだね。あんまりにもじれったいから、ボクの用件を先に済ませようと思って」

シンジ「用件?」

カヲル「そう。ボクはボクでずっとキミの起こすアクションに注視していたのさ。キミがなにをしようとして、どう行動し、どんな結果がでるのか」

シンジ「……そう、それで何の用」

カヲル「あまりボクを失望させないでくれないか」

シンジ「えっ……?」

カヲル「ヒトは殻を破る時、吹っ切れたように行動することがある。良いか悪いかは別にして迷いがなくなる」

シンジ「……」

カヲル「本当に正しいことをしていると、胸をはって言えるかい?」

シンジ「わからない。僕だってなにが正解なんて。だけど、失敗をこわがってちゃなにもできないんだ」

カヲル「お父さんに囚われだしているのでは?」

シンジ「父さん……? 父さんは、いない。死んだんだ」

カヲル「だからこそだよ。死んだ人間は、時に美化される。記憶の中では変化が起こらないから」

シンジ「やめてよ、そんなんじゃないんだ。僕は自分の意思で」

カヲル「……ウソはいけない。キミは、お父さんに認められたがっていたじゃないか」

シンジ「なんで、カヲルくんがそれを」

カヲル「本音で話してほしいんだ。キミが思うことを」

シンジ「本当に、そんなんじゃないんだ」

カヲル「父親もこうだったんじゃないか。そう考えた試しが一度もないと?」

シンジ「あるわけないじゃないか。父さんは、僕とは違う」

カヲル「碇ゲンドウはネルフのトップだった。キミは権力も経験もなにもかもが足りない」

シンジ「そうだよ、だから迷って」

カヲル「でも、キミとゲンドウには共通する項目ができてしまった」

シンジ「父さんが、僕と……?」

カヲル「“孤独”だよ。シンジくん」

シンジ「……孤独?」

カヲル「彼は組織のリーダーとして、補完計画遂行の代理人としてただひとつの目的のために生きてきた。抱えていた孤独が解消されると信じて」

シンジ「母さんのこと? でも、僕は、別に」

カヲル「キミも意識せずその道に向かって歩きだしている。アダムという人知を超えた力を手に入れたことによって」

シンジ「……」

カヲル「求めるモノはなんだい? 人類の救済?」

シンジ「そんな大それた話……」
792 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/13(月) 02:58:11.74 ID:+pObHRzO0
カヲル「これからキミを襲うのは誰であろう、キミ自身だ」

シンジ「……」

カヲル「“行動には結果が伴う”。言うは容易いが、受け入れるのは難しいよ」

シンジ「わかってるよ、そんなこと。僕だってわかってるんだ」

カヲル「……」

シンジ「なにかするつもりなの? まさか、アスカのところに」

カヲル「いや、まだその時じゃないみたいだ。心配せずとも今は手出しをしない」

シンジ「カヲルくんって、使徒、なんだよね」

カヲル「正確には僕も、だよ。リリンはヒトだけど、使徒だから。シンジくんは存在がその理から離れつつある」

シンジ「……なんだろう、話してると落ち着く」

カヲル「それは僕とキミが魂レベルで双子の兄弟に近いからじゃないかな。見た目は違っても」

シンジ「もし、アダムが僕に移植されてなかったらまた違った印象なんだろうか」

カヲル「どうだろうね。そういう場合もあったかもしれない。今はそれすら不毛だ」

シンジ「カヲルくんの目的って一体。……そういえば、ひとつ、嘘をついてた」

カヲル「……」

シンジ「昼間にアスカとゲームをしたんだけど。僕はやらなくちゃいけないことだって思ったんだ。その時、父さんもこうだったのかなって少し、思った」

カヲル「ふふ」

シンジ「笑わないでよ。アスカは僕なんかよりよっぽど強いから。アスカは……」

カヲル「コンプレックスの塊のような人間なんだね、キミは」

シンジ「そ、そうかな」ポリポリ

カヲル「ヒトは、そんなに強くない。僕から見れば、儚く脆い花みたいな生物だ」

シンジ「だって、カヲルくんは」モゴモゴ

カヲル「イメージの固定化はしないほうがいい。キミがそう思っていても、他人の秘密……内面を全てわかり合うなんて不可能だろう?」

シンジ「そりゃ、そうだけど」

カヲル「あの子の魂も殻に閉じこもったままだからね。赤い機体と同じで」

シンジ「……? どういう」

カヲル「聞きたいことは聞けた。またね、シンジくん」スタスタ

シンジ「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ! 行っちゃうの⁉︎ カヲルくん!」
793 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/13(月) 03:26:16.28 ID:+pObHRzO0
マナ「あのっ! シンジくん!」ガシッ

シンジ「えっ……? ま、マナっ⁉︎ さっきの感覚って」

マナ「誰かと話してたみたいだけど、私も、話があって。ずっとタイミングを伺ってたの」

シンジ「迷ってるって言ってたのはやっぱり。カヲルくんは……」キョロキョロ

マナ「まだ終わってなかったの? 一人で歩きだしたからてっきり」

シンジ「……いや、いいよ。きっとまた会うことになるだろうから」

マナ「ご、ごめんね」

シンジ「それより、なんでここに? 戦自は大丈夫なの?」

マナ「そのことで、折り入って話たいことが」

シンジ「……? なにか、困りごと?」

マナ「……うん」ギュウ

シンジ「どうしたの? もしかして、僕と内通してるのがバレたとか」

マナ「うっ、ぐすっ、うっ」ポロポロ

シンジ「マナ……? 大丈夫?」

マナ「どうしたらいいのか、どうしたらいいのかわからないの!」

シンジ「なにが、あったんだよ」

マナ「お願い! もう一度私と戦自に来て!!」

シンジ「えっ? 戦自って、いや、でも」

マナ「引き合わせなきゃいけない人がいるの。そうしないと、そうしないと」

シンジ「まずは事情を聞かせてよ。近くの喫茶店にはいろう」

マナ「(ごめんなさい、シンジくん。私、わたし、今からあなたを騙さなきゃいけない)」
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 09:20:29.13 ID:MRiDkf+JO
乙乙
795 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/13(月) 17:54:39.61 ID:+pObHRzO0
【繁華街 喫茶店】

シンジ「(席についてもう30分か。ずっと黙ったままだし、僕から切り出した方がいいのかな)」チラ

マナ「……」ギュウ

シンジ「昨日は、大変だったね」

マナ「知ってるの⁉︎」

シンジ「いや、えっと。僕のために色々協力してもらったこと」

マナ「あっ、そ、そうよね。うん、いいの」

シンジ「あれから、僕はネルフに帰ったからマナがどうしてたか知らない。軍曹さんからなにか問い詰められた?」

マナ「ううん、軍曹殿は、見てない」

シンジ「(違うのか……)」

マナ「シンジくんにお願いしたいことは」

シンジ「うん?」コト

マナ「会いたいって言ってる人がいるの」

シンジ「理由を聞いてもいい?」

マナ「ムサシとケイタが。短い付き合いだったけど」

シンジ「え? 僕に?」

マナ「当たりがきつかったんじゃないかって気にしてて。シンジくんは気にするような人じゃないって言ったんだけど」

シンジ「それで、さっき泣いたの?」

マナ「うぅんと、その、け、喧嘩しちゃって。あんまり、うまくいってないのは知ってるでしょう?」

シンジ「まぁ。ムサシくんが戦自に傾倒しすぎてることだよね」

マナ「そうなの。だから、それがきっかけでぶつかっちゃって。びっくり、したよね、いきなり泣き出して。えへへ」

シンジ「(おかしいような気がする。そんな理由で取り乱すだろうか)」

マナ「でね、もしよかったらなんだけど、シンジくんに仲を取り持つ橋渡しをしてもらえたらなって」

シンジ「(なにかを隠してるのか、言えないのかもしれない。だったら……)」

マナ「だめ、かな?」

シンジ「……わかった。場所は厚木基地がいいの?」

マナ「う、うんっ! よかった、断られるんじゃないかと思ってた。まさか、こんなにすんなり了承してくれるなんて」

シンジ「僕はマナを信じてるから」

マナ「……っ!」ギュウ

シンジ「(ウソでもかまわない。ウソじゃなくてもそれでいい)」

マナ「う、うん。ありがとう」

シンジ「ただ、すぐにってわけにはいかないと思う。場所が遠いし、時間もかかるだろうし」

マナ「都合、聞いてみる! あの、ごめん」

シンジ「謝らなくていいよ。僕ももっと話してみたいと思ってたから」

マナ「きっと! きっと、ムサシもケイタも感謝するよ。そしたら、いつだって仲良くなれると思うの」

シンジ「……うん、そうだね。あまり長居するとネルフの諜報部に報告されるかもしれない。連絡手段はどうする?」

マナ「シンジくんってこのルートをよく使う?」

シンジ「ネルフに通う時は。あぁ、言ってなかったけどしばらくは本部内にあるコンテナで寝泊まりするようになったんだ」

マナ「そうなんだ。パイロットなのに、大変だね。もっと待遇よくしてくれそうだけど」

シンジ「僕から希望したんだ」

マナ「……携帯電話だと盗聴されてるかもしれないから、用がある時、近くの広場で待ってる」

シンジ「了解。登下校する時は僕も気にかけておくよ」
796 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/13(月) 22:19:12.62 ID:+pObHRzO0
【洞木宅 部屋】

ヒカリ「お茶、持ってきたよ」

アスカ「……」ピコピコ

ヒカリ「あの、そろそろテレビゲームやめない? 妹が帰ってきちゃうから、私、お話の方が」

アスカ「ヒカリ、今日、泊まってもいい?」バキューンバキューン

ヒカリ「えっ……うちは大丈夫だけど、平気なの?」

アスカ「……」ズドーン ゲームオーバー

ヒカリ「……葛城さんには連絡しようね?」コト

アスカ「ねぇ、あたしらしいってなに?」

ヒカリ「……? 突然、どうしたの」

アスカ「あたしってどんな人間?」

ヒカリ「アスカは、ハキハキしてて、元気があって。ちゃんと自分の考えをもってて」

アスカ「そっか」

ヒカリ「碇くんに負けたの、そんなにショックだった? ごめんね……なんだか、イマイチ実感がわかなくて。だって、今やってるテレビゲームみたいなものでしょう?」

アスカ「自分自身にイラついてるだけ」

ヒカリ「……」

アスカ「みんな、嘘つき。ヒカリはどうしてあたしに優しくしてくれるの」

ヒカリ「それは、友達、だから」

アスカ「いい子よね、ヒカリって。委員長だし、面倒見いいし」

ヒカリ「そ、そう?」

アスカ「(そんなんだから、都合良く扱われるのよ)」

ヒカリ「碇くんも、きっと、心配してないわけじゃないんだと思う。むしろ、心配だから――」

アスカ「シンジの話は聞きたくない」

ヒカリ「でも……ボタンのかけ違いをしてるだけなんじゃないの」

アスカ「あいつはただのガキ。それ以上でも以下でもない」

ヒカリ「そこは、変わらないんだね」

アスカ「ん」

ヒカリ「(今は、なにも言わない方がいいのかな)」

アスカ「お腹、すいた」

ヒカリ「うん、そうだよね、待ってて。もうすぐみんな揃うと思うから。そしたら夕飯にしましょ」
797 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/16(木) 04:02:04.98 ID:BfhMC4C10
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「機体がようやく届いた。三号機は弐号機同様、アダムがベース」パサ

カヲル「……」スッ

ユイ「興味ないの?」

カヲル「喪失した心。それがまた次の飢餓を産み出す。リリンはずっと同じ過ちを繰り返すんだね」

ユイ「エヴァシリーズは道具よ」

カヲル「の割には、心の空白を埋めたがっているように見えるけど」

ユイ「明日に行われるシンクロ率のテスト。実行数値を抑えるように」

カヲル「……」

ユイ「……そんなに不思議? つじつまが合わないだらけで行動することが。合理性だけではつまらないでいいじゃない」

カヲル「リリンは感情の振り幅が激しいからね……A.Tフィールドは、強い“拒絶”。誰もが持っている心の壁。シンジくんはまだ使えないようだけど」

ユイ「可視化できるほどのエネルギーを発生させるには熱量を要する」

カヲル「物理の法則に反するほどの……念じるという行為に限界があるのかな」

ユイ「ヒトは群れなくしては弱いから。組織が力だと考えているシンジではまだ気がつけていないのも仕方ない」

カヲル「融合が進めばどんなにヒトが抗おうとしても不可侵の存在になる」

ユイ「皮肉よね。ヒトの持つ特権、強みである“群れ”を制御するためには優秀な指導者が必要だなんて。結局、個に頼るのと変わらない」

カヲル「……」

ユイ「人類の歴史は、優秀な統治者の歴史でもある。世代交代をして、親から子へ引き継がれる折に、時には文明が退化することすらあった」

カヲル「……」

ユイ「古代から天文学や錬金術などで撒いてきた学問という種が突然変異をし、科学……人類には早すぎる変化、革命をもたらした」

カヲル「世の中はここ百年余りで急速に便利になった。だが、ヒトの心は、群れに必要性を見いだせなくなっていく」

ユイ「IT産業革命はとどまるところを知らず、ネットインフラは進みに進んだ。情報化社会は形を変えて心の隙間を生み出したわ」

カヲル「……」

ユイ「そうした小さな積み重ねが、大きな過ちとなり破綻しようとしている。“流れの変化に人類が追いついていない”。ヒトの限界」

カヲル「便利な道具。知恵の実を手にしたのはリリンだ」

ユイ「過ぎた力は傲慢を招く。自分のセカイの中でなんでもできると勘違いしてしまった。ヒトの犯した罪は断罪しなければならない」

カヲル「淘汰への道を捨ててまで滅びの道を選ぶというのか」

ユイ「夫が生きてたら同じことを言うでしょう。……“人類にとっての救済”よ。あなたには理解できないでしょう」

カヲル「ピースが揃わぬ内に計画を実行するおつもりですか」

ユイ「シンジが真に覚醒すれば、人類など“無”と同じよ。量産機も含めてね」
798 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/19(日) 00:04:53.36 ID:1aLi8bu90
【ネルフ本部 ラボ】

冬月「将棋には凡夫と鬼才と揶揄される打ち筋がある。一見、捨て駒と見える表に、よも言わぬ裏を持ち合わせている場合」

リツコ「……」コト

冬月「キミは凡夫なのか、はたまた鬼才なのか。それを見定めにきた」

リツコ「驚いております。まさか、静観なさっていた副司令が自らご足労いただけるとは」

冬月「早計がすぎるぞ、動くと決まったわけではない。先に言った通り、見極め、それだけのことだ」

リツコ「いいえ、山を動かしたのです。私一人の力では到底不可能だった」

冬月「フォースの少年、ゼーレが直接送りこんできたというこの内部資料。私にもちかけたのはなぜかね?」

リツコ「碇ユイ司令の行動です」

冬月「……」

リツコ「――ここまで言えばお察しいただけるでしょう。司令は私達を、ゼーレを、セカイですら欺こうとしている」

冬月「どうでも良いことだ」

リツコ「……」

冬月「もはや、亡き者となった碇ゲンドウ。その抹殺に加担した時点で俺は、いかなる結果になろうとも見届けると決めた」

リツコ「愛、ですか」

冬月「ふっ、そんな薄っぺらいものでもあるまいよ。ここに至るまで、十三年間歩んできた道のりは、決して平坦なものではなかった」

リツコ「セカンドインパクト、人類を襲った未曾有の危機」

冬月「左様。我々、真実を知る者にとっては“災害”は“自然発生”ではない。“故意”によるものだと知っている」

リツコ「……」

冬月「いわば、“回避できたかもしれない未来”に他ならない。諦めてしまったのだ。もしかしたら……他にあったはずの道を」

リツコ「自責の念をお持ちになっていたのでしょうか」

冬月「なかったと言えば嘘になる。それすら慣れてしまった。人は与えられた環境でしか生きることを許されないからな」

リツコ「……」

冬月「私は間違えてしまったのだ。とるべき方法を。愛し方を。ユイくんが生還していることを碇に告げなかった。醜い嫉妬心で」

リツコ「……」

冬月「三度の裏切りは許されん。これが私の生きる枷。……罪なのだから」

リツコ「それで満足ですか?」

冬月「ああ、どちらにせよ終わりの時は近い。人類全体を巻き込んだ審判の時になるだろう」

リツコ「もうひとつ、活路があるのだとしたら?」

冬月「なに……?」

リツコ「我々が選べるのは二択です。“再生”か“破滅”か。手を加えすぎてしまい、色が色となりたたなくなってしまった絵画をもう一度真っ白に戻すか、それとも更に手を加える」

冬月「無理だな」

リツコ「でも、まだ手は残されています。もう一枚、画用紙を用意すればいいのです」

冬月「……」

リツコ「シンジくんを主軸として新たな補完を発動する。そうなれば、なにも碇ユイ博士やゼーレの既定路線に乗る必要はなくなります」
799 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/19(日) 00:27:34.70 ID:1aLi8bu90
冬月「問おう。キミと碇が不倫関係にあるのを私が知らなかったと思うかね?」

リツコ「いえ」

冬月「碇がもつ孤独、空虚、悲しみ。その隙間を埋めようと女の温もりを求めキミに、面影を求めレイに逃げた」

リツコ「……」

冬月「キミは碇に利用されていることを知ってなお、ありもしない希望に縋っていた。女の喜びを甘受していた」

リツコ「おっしゃる通りです」

冬月「ユイくんの生存で音を立てて破綻した。キミは碇に牙を剥いた。裏切られたと自分勝手な思い違いだが、俺と根は一緒の嫉妬。憎悪の炎に身を焦がした」

リツコ「……」

冬月「キミも碇抹殺に関与している一角なのだよ。それが済めば、次はユイくんへの復讐かね?」

リツコ「ふ、ふふ」

冬月「……」

リツコ「失礼。あまりにも思い違いをされているので笑いがこみ上げてまいりました」

冬月「そうは思えんがな」

リツコ「私が望むべきはたったひとつ。それは、あるべき姿に還すことです」

冬月「くだらない御託はよせ。そんな崇高な理想を掲げる理由があるまい」

リツコ「いいえ、これもひとつの愛し方だと考えていただきたい」

冬月「……」

リツコ「私は碇ゲンドウを愛していました。傾倒していると言ってもいい。復讐にかられ幾度でも殺したいと願うほどに」

冬月「……」

リツコ「虚しい、と、考える暇がなかったのです。ですが、ゲンドウが死に、ユイ博士の元に着いても私の心は満たされませんでした。もう終わったはずなのに」

冬月「……」

リツコ「ユイ博士に復讐しようかと一時は考えましたが、頭によぎったのはそれよりも母さんでした」

冬月「母とは、赤木ナオコのことかね?」

リツコ「はい。母さんはある夢を託してMAGIを設計しました。女であることを死ぬまで辞めなかった母さん……私にはなにも残っていない。であるならば、亡き母の夢を叶えよう」

冬月「……その夢とは?」

リツコ「科学者にありがちな、理論だけの、荒唐無稽な産物です」
800 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/19(日) 22:57:48.47 ID:1aLi8bu90
【深夜 ネルフ本部 コンテナ内】

シンジ「んうぅ、喉が、乾いた」ムク

ゲンドウ「シンジ。久しぶりだな」

シンジ「誰……?」

ゲンドウ「俺だ。お前の父親だったモノだ」

シンジ「と、父さんっ⁉︎ な、ななっ、なんでっ⁉︎ ど、どうして……?」

ゲンドウ「何を迷っている、シンジ」

シンジ「迷って……? そ、そんなことより、生きてたのっ⁉︎ そんな、たしかに綾波からは」

ゲンドウ「お前が為すべきことはなんだ」

シンジ「(……違う、この父さんは……)」

ゲンドウ「答えろ、シンジ」

シンジ「僕が作り出した、幻なんだね」スッ

ゲンドウ「コタえロ、シンジ」

シンジ「父さんも……孤独を抱えながら生きていたの?」

ゲンドウ「……」

シンジ「母さんがいなくて寂しかったんだね」

ゲンドウ「俺に縛られずお前の生き方を選べ。俺のように不器用にはなるな」

シンジ「たとえ、幻覚か夢でも父さんが僕にそんな言葉をかけてくれるなんて」

ゲンドウ「お前の意思は何人にも侵害されることのない、自分だけのものだ。それが自由なのだ」

シンジ「……」

ゲンドウ「間違っていてもいい。犯した過ちから目を背けさえしなければ」

シンジ「父さん……」

ゲンドウ「シンジ、逃げてはいかん。逃げるのは、全てを諦めたときだ」

シンジ「うん」

ゲンドウ「お前のやるべきことはなんだ⁉︎ 答えろっ!」

シンジ「僕の、やるべき、こと……」

ゲンドウ「受け取れ」スッ

シンジ「なに、これ」

ゲンドウ「USBメモリだ。中身は見ればわかる」

シンジ「は、ははっ。きっと、これは夢かなにかなのに、こんなもの渡されてもどうしろって」

ゲンドウ「お前は一人ではない。それを今一度よく思い返してみろ」

シンジ「……わかったよ、ありがとう。夢でも会えて嬉しかった」

ゲンドウ「ああ」

シンジ「父さんっ!! 13年前のあの日、父さんが僕の前から消えたのは、なにか別に理由があったのっ⁉︎」

ゲンドウ「……」スゥー

シンジ「待って! まだ消えないで! ねぇっ、答えてよっ!! 夢なら、僕に都合の良い答えを言ってよ……! ……うっぐすっ……」ポロポロ

801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 03:26:07.04 ID:fUyd7immo
ゲンドウのシンジヘの感情って未だに整理できてないんだよなあ。
10年以上経ってんのに
802 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/20(月) 08:14:27.50 ID:mYoi0VB/0
13年前ではなく3年前のミス
803 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/20(月) 08:16:10.57 ID:mYoi0VB/0
ちょいレス投稿しなおしときます
804 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/20(月) 08:18:05.62 ID:mYoi0VB/0
【深夜 ネルフ本部 コンテナ内】

シンジ「んうぅ、喉が、乾いた」ムク

ゲンドウ「シンジ。久しぶりだな」

シンジ「誰……?」

ゲンドウ「俺だ。お前の父親だったモノだ」

シンジ「と、父さんっ⁉︎ な、ななっ、なんでっ⁉︎ ど、どうして……?」

ゲンドウ「何を迷っている、シンジ」

シンジ「迷って……? そ、そんなことより、生きてたのっ⁉︎ そんな、たしかに綾波からは」

ゲンドウ「お前が為すべきことはなんだ」

シンジ「(……違う、この父さんは……)」

ゲンドウ「答えろ、シンジ」

シンジ「僕が作り出した、幻なんだね」スッ

ゲンドウ「コタえロ、シンジ」

シンジ「父さんも……孤独を抱えながら生きていたの?」

ゲンドウ「……」

シンジ「母さんがいなくて寂しかったんだね」

ゲンドウ「俺に縛られずお前の生き方を選べ。俺のように不器用にはなるな」

シンジ「たとえ、幻覚か夢でも父さんが僕にそんな言葉をかけてくれるなんて」

ゲンドウ「お前の意思は何人にも侵害されることのない、自分だけのものだ。それが自由なのだ」

シンジ「……」

ゲンドウ「間違っていてもいい。犯した過ちから目を背けさえしなければ」

シンジ「父さん……」

ゲンドウ「シンジ、逃げてはいかん。逃げるのは、全てを諦めたときだ」

シンジ「うん」

ゲンドウ「お前のやるべきことはなんだ⁉︎ 答えろっ!」

シンジ「僕の、やるべき、こと……」

ゲンドウ「受け取れ」スッ

シンジ「なに、これ」

ゲンドウ「USBメモリだ。中身は見ればわかる」

シンジ「は、ははっ。きっと、これは夢かなにかなのに、こんなもの渡されてもどうしろって」

ゲンドウ「お前は一人ではない。それを今一度よく思い返してみろ」

シンジ「……わかったよ、ありがとう。夢でも会えて嬉しかった」

ゲンドウ「ああ」

シンジ「父さんっ!! 三年前、父さんが僕の前からいなくなったのは、なにか他に理由があったのっ⁉︎」

ゲンドウ「……」スゥー

シンジ「待って! まだ消えないで! ねぇっ、答えてよっ!! 夢なら、僕に都合の良い答えを言ってよぉ……っ! ……うっうっ……」ポロポロ
805 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/20(月) 08:59:06.18 ID:mYoi0VB/0
【洞木宅 ヒカリ部屋】

アスカ「ねぇ、寝た……?」

ヒカリ「……」スヤァ

アスカ「はぁ、寝ちゃったか。ごめんね、ヒカリ。優しさにつけこんで。イヤな女よね、あたしって」

ヒカリ「ん、アスカ……?」

アスカ「なんだ、起きてたの……?」

ヒカリ「んん、寝てたけどなんだか話しかけられてる気がして。ねれないの?」

アスカ「……ちょっとだけ」

ヒカリ「そっか。それじゃお話する?」

アスカ「いいわよ、寝てたんでしょ」

ヒカリ「いいの。えへへ、友達同士で、こうして夜中にお話するのって楽しいよね」

アスカ「ノリが修学旅行のそれと同じね」

ヒカリ「なかなかお泊まりする機会がないんだもの」

アスカ「これからあたしが話しをすることはただのひとり言」

ヒカリ「ん……?」

アスカ「いままで、ほしいものはすべて手に入ってきたし、困ったことなんかなかった。同年代のオトコなんて、みんなあたしが右と言えば右に歩いた」

ヒカリ「すごいね」

アスカ「自慢じゃなくてトーゼンでしょ。あたしはかわいいもの。見た目的な話ね、それは理解してる」

ヒカリ「う、うん」

アスカ「だけどさぁ、同年代って……なんていうか、自分のことで手一杯なのよ。精神年齢が低くてまわりが見えてないっていうか」

ヒカリ「子供っぽいところあるよね」

アスカ「そういうのって指摘されても直せるってわけにもいかないのよねぇ。経験がものをいうっていうか、言ってわかる部分とは違う」

ヒカリ「私は、少年みたいな人、いいかな、なんて」

アスカ「まじで言ってんの?」

ヒカリ「え、えっと……。独り言してたんじゃなかったの?」
806 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/20(月) 09:00:58.60 ID:mYoi0VB/0
アスカ「……あたしは、大人の人がいい。あたしの言うことを笑って受け流してくれる人、真面目にならない人」

ヒカリ「……」

アスカ「こわいのよ。自分がキズつくのが、嫌なの」

ヒカリ「だから、適度な距離を保ってくれる人……?」

アスカ「ガキ相手にしてちゃ、あたしのワガママに振り回されちゃうでしょ。なんでも本気にしちゃうしさ。……自分の素直な気持ちは、他人のせいにできない」

ヒカリ「アスカ……」

アスカ「あたしだけのものだから。エヴァに乗ってる時は解放を求めてるの。でも……本当は、ちっとも楽しくない。プレッシャーばかり感じる」

ヒカリ「私、エヴァのことはわからないけど、碇くんや綾波さんをもっと頼ったら?」

アスカ「ファーストは論外。あんなのに頼るぐらいならいっそ……シンジは……」

ヒカリ「ねぇ、アスカ」

アスカ「なに?」

ヒカリ「アスカが体育館倉庫前で暴漢に襲われて、碇くんにキスしたこと覚えてる? ほら、保健室で」

アスカ「あぁ……」

ヒカリ「あぁって、そんな程度なんだ……」

アスカ「で? それがなに?」

ヒカリ「あのね、アスカと碇くんって喧嘩しないわけじゃないけど、うまく付き合えるんじゃないかなって」

アスカ「……」

ヒカリ「やっぱり、その、私じゃわからないことも多いし。パイロット同士なら……もっと助け合えると思うの」

アスカ「……」ゴロン

ヒカリ「碇くん、アスカのこと、心配なんだよ」

アスカ「気に入らない」

ヒカリ「どうして? 誰かが誰かを心配するのって相手を想ってなくちゃ」

アスカ「いつも弱い犬みたいな目をしてたやつが、あたしを心配するなんて」

ヒカリ「……」

アスカ「あいつがどういうつもりなのか、あたしに、本気で踏みこむつもりか確かめる」

ヒカリ「え? 踏みこむって?」

アスカ「……眠くなってきちゃった。そろそろ寝よ」

ヒカリ「え? えっ?」

アスカ「独り言よ。おやすみ、ヒカリ」
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 23:15:04.30 ID:u4jWflIBo
C
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 04:25:53.40 ID:nvFT2UcNo
大体どの媒体でもシンジに覚悟を問う段階って墜ちる寸前だよな
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 05:04:45.09 ID:PV2FPMf80
最終的なヒロイン誰になるんだろうなこれ
マヤちゃんは影薄くなっててマナとアスカが最近出番多いね
810 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/25(土) 22:15:01.50 ID:1C4FbM22O
【第三新東京都市 ビジネスホテル】

マナ「――というわけで、サードチルドレンの了承を得られました」

シロウ「随分とあっさりだな。怪しむ、警戒すらなかった……?」

マナ「シンジくんは、その、とても素直っていうか」

シロウ「いい、いい。子供のなまっちょろい分析など聞くだけ時間の無駄だ」

マナ「そんな言い方……」

シロウ「ふむ。本当に、下心があるわけではないのか?」

マナ「失礼です」

シロウ「キミは容姿がいいじゃないか。同学年からしてみれば、だが。アイドルの卵といって差し支えない」

マナ「……」

シロウ「そんなメスに、14歳のオスが頼られていい気がしないわけがあるまい? 保護欲が働いているのかもしれんな」

マナ「なにが言いたいんですか」

シロウ「“かよわい女性を傷つけてはならない”という倫理観なのか、という話だよ」

マナ「素敵なことだと思います」

シロウ「ナイト気取りがか? ふん、鼻で笑ってしまう。独りよがりの行動パターンだ」

マナ「……」

シロウ「碇シンジという少年。本当に漫画の主人公なのか……はたまた年相応の“男”なのか。試してみたくなった」

マナ「無駄ですよ」

シロウ「キミに彼のなにがわかる? その絶対的な自信は虚構ではないか?」

マナ「虚構……私が自分で作りあげたイメージってことですよね? 違います。シンジくんは、そんなんじゃ」

シロウ「……いずれにせよ、私の目で確かめる」

マナ「会えばきっとわかります」

シロウ「ネルフに気がつかれてもかまないから都合をつかせろ」

マナ「えっ? ネルフからマークされますよ?」

シロウ「奴らの情報網を甘く見すぎだ。とっくに気がつかれてるよ。私が戦自にいることは」

マナ「了解。いつと伝えましょうか?」

シロウ「こちらから迎えに行くとしよう」
811 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/25(土) 22:35:19.08 ID:1C4FbM22O
【翌日 第壱中学校】

トウジ「ふぁ〜ぁ。おはよーさん」

シンジ「おはよう」パカッ パサ

トウジ「センセ、下駄箱からなにか落ち……て、それわぁっ⁉︎」

シンジ「手紙……?」ヒョイ

トウジ「ま、まさかラヴレターってやつじゃ⁉︎ なんでや! なんでこいつばっかりにおいしいロマンスが転がりこんでくんねんっ!」

ケンスケ「気持ちはわかる……そういうものなんだよ。この世界は理不尽のかたまりさ」

シンジ「あ、ケンスケ。おはよ」

トウジ「シンジっ! 中身をはよあけて確認せんかい!」

シンジ「えっ、トウジも見るの?」

トウジ「……あぁ〜、うぅ〜ん、みたいところやが、そんなんは男のすることやないな」

シンジ「(たぶん、カヲルくんじゃないかな)」ペラ

トウジ「どうや⁉︎ どんなんが書いてあんねや⁉︎ 甘酸っぱい文字が散りばめられとるんか⁉︎」

シンジ「……」

ケンスケ「あちらから歩いてくるのが見えますのはアスカじゃないか? こりゃ朝っぱらから修羅場かぁ」

トウジ「げっ! ほんまや! シンジ! はよ手紙隠せ」

シンジ「トウジ、ケンスケ。悪いんだけど、ちょっと用事ができた。先生に伝えておいてもらえないかな」

ケンスケ&トウジ「は?」

シンジ「それじゃ」タタタッ

ケンスケ「お、おいっ!」

トウジ「……くぅ〜〜っ! うらやましい! うらやましすぎる青春!」

アスカ「ちょっと、そこのバカ二人。もう一人のバカは? 走ってどっかいったみたいだけど」

ケンスケ「あ、あぁ、えっと」

トウジ「残念やったのー。一足遅かったよーで」

アスカ「もうすぐHRはじまるってのに。どこほっつき歩きに行ったの?」

トウジ「ほっとけ。お前には関係――」

アスカ「あたし、昨日からずっと機嫌が悪いのよ。素直にゲロった方がいいわよ」グイッ

トウジ「〜〜ッ! こ、この、暴力女め! お前にシンジの恋路の邪魔はさせへんぞ!」

ケンスケ「あっ!」

アスカ「……恋路?」

ケンスケ「はぁ……」

トウジ「し、しまったぁ……!」

アスカ「どういうわけ?」ギリギリ

トウジ「く、首がっ、えり締められると首があかんて」
812 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/01(金) 13:25:39.48 ID:aCOv88FMO
【第壱中学校 校舎前】

黒服「碇シンジだな」

シンジ「(黒いスーツ? ネルフ……?)」

黒服「ここから五十メートル歩き、十字路を右に曲がったところに貨物車が停まっている。鍵は空いてる。そのまま乗れ」

シンジ「随分、まわりくどいやり方をするんですね。また母さんの差し金ですか」

黒服「質問は受け付けない」

シンジ「そうですか、だったら帰らせてもらいます」クル

黒服「少女の身柄を確保している」

シンジ「……」ピタ

黒服「同行はあくまで任意だ。しかし、帰ればその少女の安全は保証しない」

シンジ「誰かわからない相手の為に残ると思いますか」

黒服「興味ない。伝えるように命令をくだされているだけだ。帰った場合の処置も」

シンジ「(選択肢は残されてる、試されてるみたいなこの感じ……やっぱり、母さんなのか? いや、でも、母さんとは話がついてるはずだし)」

黒服「今すぐに結論をだせ」

シンジ「ついていった場合は、僕の安全はどうなります?」

黒服「質問は受け付けないと言ったはずだ」

シンジ「(ということは、不確定な材料のまま選ばせるつもりなのか。人質がウソという可能性もある)」

黒服「……」

シンジ「(後悔だけはしたくない。もし、ウソだとしてもアダムの力がある僕なら、簡単に抜け出せるはず……考えるよりまず行動しなくちゃ)」

黒服「行かないのか? なら、そう報告する」スッ

シンジ「待ってください。……行きます」
813 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/01(金) 14:07:48.51 ID:IDBUiKQy0
【第壱中学校付近 車内】

シンジ「マナ……?」

マナ「し、シンジくん……」

シンジ「この手紙は、マナがいれたの? “校舎前に来て欲しい”だけ書かれてたからてっきり……」

マナ「ご、ごめんね。朝早くから、それに、突然になっちゃって」

シンジ「まずいよ。いきなりは」

シロウ「ようこそ、サードチルドレン。声だけで失礼するよ。そちらの姿はモニター越しによく確認できる。私の名前は時田シロウだ」

シンジ「(時田シロウ? 誰だ……?」

シロウ「聞いたことがないという表情を浮かべているな。無理もない。実際に会うのはお互いにこれがはじめてになる」

シンジ「あなたが、僕に会いたいと?」

シロウ「できれば直に会いたかったのだかね。なにしろ私は用心深い。顔が割れることじゃないぞ、そこにいたらネルフの働きアリに殺されかねんからな」

シンジ「(母さんじゃない。戦自か)」

シロウ「さて、碇シンジくん。私はキミに興味がある。なにに対してのコンタクトか、予想はついているかな?」

シンジ「戦自の人たちが興味を持つといったら母さんの情報を僕から聞き出したい」

シロウ「違う。エヴァという玩具を私的理由で持ち出したキミがのうのうと普段通りの生活をおくっている。なぜだ?」

シンジ「……」

シロウ「キミはどれほどの影響力を総司令たる母に持っている? 例えば、“ほしい”といえばなんでも与えられるほどの――」

黒服「お話中、失礼します」ガチャ

シロウ「チッ。なんだ」

黒服「校舎前でもう一名確保しました」

シロウ「そんな命令はしていない」

黒服「申し訳ありません。やり過ごそうと思ったのですが、どこの所属かしつこかったもので。ネルフ関係者のようです」

シロウ「なに……?」

黒服「訓練経験者の動きをしていました。今は布を口に詰め騒がれない対策していますが、いかがいたしますか?」

シロウ「仕方ない。そいつも乗せろ」

シンジ「(嫌な予感がする)」

黒服「開けるぞ」コンコン ガチャ

アスカ「んーっ! んー!」ジタバタ

シンジ「(や、やっぱり……)」

マナ「あ、アスカぁっ⁉︎」ギョ

黒服「いてっ、この、蹴るな! 大人しくしてろ」ドサッ

アスカ「んっ⁉︎ んんっ⁉︎ ふんふ! ふーっ!」

シロウ「そいつは……どこかで見覚えが。そうだ。たしか……セカンドチルドレンではないか? 霧島隊員?」

マナ「は、はい……。どうして、アスカが……」

シロウ「キミが呼んだのかね? 碇シンジくん」

シンジ「違いますよ」

シロウ「ふん……。面白い。霧島隊員。隣に座らせてやれ」

アスカ「んっ!」ギロッ

マナ「アスカ、なんで来ちゃったの。……ごめんね、ちょっと抱えるよ」

アスカ「んー! んーんー!」クイクイ

マナ「布をとってほしいの? あの、時田博士……」

シロウ「そのままだ。サードチルドレンと違い気が強そうだからな。余計な手間と時間は省きたい」
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 14:38:04.35 ID:AargV2fOO
アスカwww
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 15:03:23.95 ID:vFaSH14So
盛り上がってまいった
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 22:49:53.35 ID:/5KUEloro
パイロットが子供ってのは業界では知れ渡ってるよな確か。
自殺でもしたいのかシロウさん
817 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/02(土) 17:10:03.37 ID:RT4oISfi0
シンジ「(目的は、あくまで僕か。母さんへの影響力。エヴァの私的利用について猜疑心を持ってる。でも、それだと好都合だ)」チラ

アスカ「んふーっ」モゾモゾ

シンジ「(アスカには悪いけど……変に喋るよりはこのままの方がいい。僕に注目を集められる)」

シロウ「……なにを考えている?」

シンジ「え?」

シロウ「セカンドチルドレンを見てなにやら思索していたな?」

シンジ「あぁ、なんでここにいるんだろうって」

シロウ「ふむ。それは私も気になるところではあるが……キミが呼んだのが本当だとしたら教室を出て追いかけてきたか。まぁ、どうでもいい。それよりも――」

シンジ「(よし)」

シロウ「先ほどの質問の答えをいただけるかな?」

シンジ「母さんが僕を特別扱いしてるんじゃないかって質問ですか」

シロウ「そうだな、似たようなものだ」

シンジ「答えるのを拒否したら?」

シロウ「霧島隊員を殺す」

アスカ「むぅ……っ⁉︎」ギョ

マナ「……っ⁉︎ どういうことですか⁉︎」

シロウ「なにを驚いてる。私がどういう人間かの片鱗はムサシ隊員達に行った所業で見えているだろう。同じだよ、キミも」

マナ「連れてくるだけだって言ったじゃないっ!」ギュウ

シンジ「(そうか、マナはこの人に命令されて仕方なく)」

シロウ「彼女の首にあるチョーカーが確認できるだろう? それは、小型爆弾だ。遠隔操作ももちろん可能なシロモノだよ」

シンジ「じゃあ、僕が答えなかったら」

シロウ「即座に起爆する。彼女の役目はキミを呼び出すことにあったのでね。今後使えなくもないが、他でことたりる」

シンジ「(用済みの駒は切り捨て。また、またなのか。どいつもこいつも……みんな、みんな、なんで人の命を軽く扱うんだよ)」

マナ「し、シンジくん……」チラッ

シンジ「心配しないで、僕はマナを見捨てたりはしない」

シロウ「……」

シンジ「僕からの質問は?」

シロウ「質問に質問で返すのは無礼だ。終わってから聞こうか」

シンジ「選べる環境にないのに無礼だなんて。よくそんなこと言えますね」

シロウ「選べなくしているのはキミ自身だ。私は“見捨てる”という選択肢を与えているよ。簡単だ。彼女が死ぬという現実を認めればいいのだから」

シンジ「僕がそうしないとタカをくくってるんじゃないんですか」

シロウ「いいや? 私はキミとはじめての面識になるのだよ。そこも含めてどういう人間か知り合っているところだ。……くっくっ、お互いにね」

シンジ「……ふぅ、わかりました。僕はマナの死を認められない。そういう人間です。だから、答えます」

シロウ「よく考えての答えかね? キミはネルフにとって、母親にとって不利な発言をするかもしれない。それとも、不利になりえないのが真実なのかな?」

シンジ「その通り、簡単ですよ。母さんにとって僕は特別扱いされてる」

シロウ「エヴァの無断使用においても?」

シンジ「場所が場所だから理解を示してくれたんです。ネルフを目の上のタンコブと捉える戦自相手だから」

シロウ「たった1日だ。根をあげるにははやすぎるんじゃないか?」

シンジ「(やっぱり、こんな理由じゃだめか)」

シロウ「どうした? 本当にそれだけか?」
818 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/02(土) 17:37:52.71 ID:RT4oISfi0
シンジ「それだけ、と言ったら信じてもらえますか?」

シロウ「……」

シンジ「僕にはまだ余裕がある。マナの命を人質にとられてるとはいえ、“僕自身が”切羽詰まっているんけじゃない。そんな状況で話したことを信じられるんですか」

シロウ「ふむ」

シンジ「あなたは自分のことを“用心深い”。そうおっしゃいましたね。それは、安全なモニター越しから眺めているのを考えるとたしかにそうなんだと思います」

シロウ「続けろ」

シンジ「確証を得たいと考えるはずだ。それか、僕を拷問にでもかけて追い詰めてから吐かせますか。“信じられる”と、そう思えるまで」

シロウ「なるほど。さすがは碇夫妻のご子息だ。親のDNAはしっかりと受け継いでるようじゃないか」

シンジ「あなたは、臆病なんですね」

シロウ「なに……?」

シンジ「そうじゃないですか。そんな影に隠れてこそこそと。そんなのは臆病者のすることです」

シロウ「無謀と勇敢は違う。ノコノコと敵地に赴き調べるのは専門外なんでね。私の本職は科学者だ」

シンジ「でも、そんな“守られている環境にいる”あなただからこそ、残虐になる。ためらいなくマナを殺すでしょう。気まぐれでも、もしかしたらあるのかもしれない」

シロウ「……」

シンジ「だからこそ、僕はこれだけは言う必要があります。マナを殺したら、僕があなたを殺す」

マナ「……!」ギュウ

アスカ「……」モゾモゾ

シロウ「く、くっくっ、はは、あーっはっはっはっ! こりゃいい! なんだこの茶番は! まさに漫画の主人公じゃないか!」

マナ「いい加減にしてよっ!!」バンッ

シロウ「うく、くっくっくっ」

マナ「どこがおかしいの⁉︎ どこに人を笑う資格があるって言うのっ⁉︎ 私たちに起こっていることは“リアル”なのよ! 同じ状況になった時に、そんな選択できないくせに!!」

シロウ「ふぅー……黙れ。殺すぞ」

マナ「やれるもんならやってみなさいよっ!!」

シンジ「えっ、ちょ、マナ」

マナ「シンジくん、私のためにこんなやつの言うこと聞く必要ない!」

シロウ「ムサシ隊員達のことを忘れてたのか?」

マナ「……っ!」ギリッ

シロウ「わかったら黙っていなさい。お前はまだ生かしておいてやる」

シンジ「(ムサシくん達も人質にとられてるのか)」

シロウ「さてさて、碇シンジくん。驚いたよ。なかなかに頭がキレるじゃないか、そして、勇敢だ。私と違ってね」

シンジ「……」

シロウ「キミが言ったことも的外れじゃない。私は、自身で確証をもてるまで相手を追い込む。当然だな、真実、つまり、本当のことではないと意味なんかない。嘘だったと気がついてまた尋問するようでは二度手間だ」

シンジ「……」

シロウ「そんなのは時間の無駄だよ。では、どうするか? こうする」

シンジ「……?」

シロウ「彼女のチョーカーを見たまえ」

シンジ「……っ! なんだ?」
819 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/02(土) 18:45:45.91 ID:RT4oISfi0
シロウ「キミがウソの証言をすることを織り込み済みでないとでも?」

マナ「えっ?」ピピッ カシュ

シロウ「そのチョーカーには機能が二つついていてね。一つは科学反応による爆破。もうひとつは――」

マナ「うっ、かはっ」

シロウ「物理的な締め付けだよ。原始的方法だが、精密機器に組みこむとなるとこれぐらいしかできなくてね」

シンジ「マナっ!!」ガバッ

マナ「うっ、ごほっ!」

シンジ「……くっ!」

シロウ「キミに特別な感情を抱いているのを知っていたか。踏まえて、もがき、苦しむサマを見ているがいい。なに、どうせ他人事だ」

シンジ「(ここで僕がウソをついても、きっと信じてもらえない。だから出し渋らなきゃ、待たなきゃ。僕が追い詰められてると思わせるまで)」ギリッ

マナ「し、んじくん……だ、いじょ、うぶ」ニコ

シロウ「(この状況で気遣って笑うか、いいぞ。相手を思いやっての行動が、圧迫感を強くする)」

アスカ「ぷはっ! ちょっとシンジっ!!」ガバッ

シンジ「アスカ、布とれたの? 小言なら後で」

アスカ「聞きなさいっつーの! この状況もう詰んでんのよ!」

シンジ「詰んでるって?」

アスカ「そのチョーカー! 電子制御なんでしょ!」

シンジ「そうみたいだけど……?」

アスカ「あんたバカァ? ここまで言われてまだわからないの⁉︎ アレがあんでしょーが!」

シンジ「……っ! そ、そうか! さすがアスカ!」

シロウ「なにを言ってる?」

マナ「うっ」ギリギリ

シンジ「マナ、じっとしてて」キーンッ

シロウ「な……だ。――……こ……は」ザ、ザザー

アスカ「はっ、こいつは電波を妨害できんのよ! って、聞こえてないだろうけど。ねぇ、シンジ、そのチョーカー外せないの?」

シンジ「ど、どうしたらいいかわからないんだ。方法が」

アスカ「あんたって機器に干渉できるんでしょ? だったら遠隔操作されてるそれだって」

シンジ「とにかく、やってみる!」キーンッ

マナ「うっ」ピピッ カシャン

シンジ「と、とれた。こんなあっさりうまくいくなんて」

アスカ「考えればすぐわかることじゃないの。あんたのもつその特性……なんか人間に使うかは疑問符がでてくるけど。それを使ってたり、とっくに打開できてたのにさぁ」

マナ「けほっ、けほっ」

アスカ「さて、人質に意味がなくなったらこんな場所に用はないわ。逃げる……ちっ、外から鍵閉められてる。シンジ」

シンジ「……?」

アスカ「ふんっ!」パコーン

シンジ「いたぁっ! な、なんで叩くんだよ!」

アスカ「キョトンとしてるあんたが悪いっの、よっ! とんでもない腕力使ってさっさとドア開けちゃって!」

シンジ「あ……! そ、そうか! っと!」バコンッ

マナ「う、うそ? け、蹴っただけでドアが。ふ、吹っ飛んだ」ポカーン

アスカ「あいかわらず、インチキね。……そいつ、どうすんの?」

シンジ「マナ、一緒に行こう」

マナ「で、でも! ムサシとケイタが!」

シンジ「僕がなんとかする! 僕を信じて!」
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 21:01:17.41 ID:reOQIuUho
続けたまえ
821 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/02(土) 22:16:02.55 ID:RT4oISfi0
【第三新東京都市 公園】

アスカ「そんで、どうすんの? 安請け合いしちゃってさ」キィ キィ

シンジ「ブランコ立ち漕ぎしてたら危ないよ」

アスカ「こんぐらい平気よ。今ごろ、あの音声のやつが血なまこになってマナを探してるわよ」

マナ「……」キィ キィ

アスカ「ま、要するに使いパシリの挙句、捨て駒にされたっていうだけの話でしょっと」トンッ

シンジ「……」

アスカ「あたしは同情なんかしない。人に使われたくないんだったら、それ相応の意識を持ってなくちゃ。自業自得な面もある」

マナ「……なにがわかるっていうの……」

アスカ「個人的な事情なんか知らないわよ。ただ、使う者と使われる者。その二者択一において、使われる側にいる。わかるのはそこ」

マナ「アスカだって! パイロットなんて言ってるけどネルフの犬じゃない!」

アスカ「あたしは自分の才能と努力でこの場所を勝ち取ったのよ! だから、あんたみたいに捨て駒みたいな扱いをされない! 代えがきかないから!」

マナ「……っ」

アスカ「歩兵部隊? そんな有象無象の隊員が一人死んでもまた補填されるだけでしょ? いい? あんた達はね、“個”が優遇されない、“集団”としてはじめて機能する。死ぬのが前提なのよ」

シンジ「アスカ、もうそのへんで」

アスカ「こいつわかってないんじゃないの。それが現実だってこと」

マナ「わかってる! ……わかってるもん! でも、どうしようもなくて……這い上がれない人だっているんだよ……」

アスカ「ふん」

シンジ「マナ、大丈夫だから」スッ

マナ「うっ、うっ」ポロポロ

アスカ「ナイトのシンジ様? これからどうするおつもりぃ?」

シンジ「マナはネルフで保護してもらう」

アスカ「簡単に言うけど、総司令が許すと思うの? あんた、弱みを握られるってわかってないのぉ?」

シンジ「……」

アスカ「戦自がネルフに変わるだけよ。人質の意味が」

シンジ「ミサト、さんはどうかな?」

アスカ「ぶっ、み、ミサトぉっ? ちょっと、あんた、気でもくるった?」

シンジ「相談ぐらいなら。ミサトさんがだめなら、どっちみち、母さんに頼むしかない……いや、もう一人いた」

アスカ「あ、あたしはいやよっ!」

シンジ「……」スッ ピピピッ

アスカ「どこにかけてんだか」



822 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 03:42:05.22 ID:7ssU+dLYo
リッチャンハウスが難民キャンプに
823 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/04(月) 14:43:28.42 ID:KFKkr6wu0
【第三新東京市 工業マンション地帯】

シンジ「よかった。まだ、学校に行ってなかったんだね」

レイ「午前中は検査があったから。一度、帰宅したところ」シュルシュル パサッ

シンジ「実は、お願いがあるんだ」

マナ「……」

レイ「聞いてる」

シンジ「……よかったら、なんだけど。しばらくマナを預かってくれないかな」

レイ「なぜ?」

シンジ「最悪、母さんに預けるとまた道具として扱われそうで。マヤさんか、消去法でリツコさんに頼もうかと考えたけど、それもできれば避けたい」

レイ「……」ガララ

マナ「あ、あの。こんにちは。学校では、あまり話す機会なかったけど――」

レイ「そこ、どいて」

マナ「え?」

レイ「靴下」

マナ「あっ! ご、ごめんなさい。ベッドに置いてあったのね」

シンジ「だめ、かな?」

レイ「いつまで?」

シンジ「僕はこれから厚木基地に向かう。マナが姿を絡ませた以上、真っ先に疑われるのは僕、ひいてはネルフになってしまう。戦自、ネルフの双方からマナを探すような事態は避けたい」

レイ「隠しとおせる?」

シンジ「綾波が、申告しなければ。幸い、この部屋には誰も来ない。マナも悪いんだけど、外出はできないよ」

マナ「私は、それぐらい平気」

レイ「そう。碇くん」

シンジ「ん?」

レイ「基地に行ってなにするの?」

シンジ「……ムサシくんと浅利くんをなんとかしなきゃいけないんだ。拘束されてるんだよね?」

マナ「たぶん、会ってないけど。ねぇ、やっぱり私も一緒に行こうか? 基地施設にも詳しいし」

シンジ「大丈夫だよ。僕ひとりなら、なんとかなると思う」
824 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/04(月) 15:08:22.20 ID:KFKkr6wu0
アスカ「はぁ……なるわけないでしょ」

シンジ「アスカ? 外で待ってるって言ってたのにって、玄関先でなにしてるの?」

アスカ「ドアを開けてたから声が聞こえただけ。あたしはこの部屋には上がらない」

レイ「あなたもいたのね」

アスカ「いちゃ悪い⁉︎ 誰が好きこのんであんたの部屋になんかくるもんですか! あたしはシンジに用があんのよ!」

シンジ「ちょ、ちょっと、揉めるのはよそうよ」

アスカ「あのさぁ、マナの友達? か知らないせど連れだしてどーするつもり?」

シンジ「どうって……」

アスカ「脱走兵扱いになんじゃないのってこと。ずっとレッテルはついてまわるし、戦自から追っかけられる」

シンジ「……」

マナ「……」ギュウ

シンジ「でも、助けなくちゃ」

アスカ「責任、とる気でいんでしょーね? ガキのあんたにできんの? 中途半端に手を差し伸べるのは、なにより残酷ってもんよ」ジトー

シンジ「やるよ……最後まで諦めない」

アスカ「……」

シンジ「まずは安全な場所まで、身柄を確保する。そこから交渉のテーブルにつくにはどうするか、打開策を考える」

アスカ「行き当たりばったりね。もうちょいマシなプラン用意すべきよ」

シンジ「結果良ければ全て良し、だろ? アスカ」

アスカ「……ふん、言うようになったじゃない。以前にあたしが言ったの覚えてる?」

シンジ「覚えてるよ、全部……綾波?」

レイ「……」スッ

アスカ「……? なによ?」

レイ「あなた、やっぱり不快だわ」

アスカ「……! 人形のくせしちゃって、あたしのなにが気に入らないっていうのよ!」キッ

レイ「私は人形じゃない。私はここにいる」

アスカ「ははーん、さては……ヤキモチ? 加持さんから言われたっていうのも嘘なんでしょ?」

シンジ「加持さんって……?」
825 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/04(月) 15:19:35.88 ID:KFKkr6wu0
アスカ「ファースト、シンジのこと好きなの?」

マナ「えっ……?」

レイ「好き? よく、わからない」

アスカ「そんなんじゃ生きてるって実感できてるかどうかすら疑わしいわねぇ」

レイ「……碇くんは絆だから」

アスカ「シンジが? なんの?」

レイ「ヒトとの絆。偽りの身体、偽りの魂。無に還りたかった私に生を与えてくれ、理想のセカイを実現するヒト」

アスカ「はぁ?」

レイ「あなたにはわからないわ。可能性に秘めた道が」

アスカ「わかりたくもないわ。なんで無理してわかり合わなくちゃいけないのよ」

レイ「……脆いだけのくせに」

アスカ「なんか言った?」

レイ「碇くんは知らないのね。あなたの過去」

アスカ「それ以上、喋ったら――」

レイ「母親が自殺した現場を目撃したこと」

シンジ「え……?」

アスカ「……っ!」ダダダッ ブンッ バチンッ

レイ「……」

マナ「あ、綾波さん。アスカ……」

アスカ「あんた……! 人には土足で踏み込まれたくない部分があるって、なんでわからないのよっ!!」

レイ「どうでもいいもの」

アスカ「わかってるってことね! あっそっ!」ブンッ

シンジ「待って!」パシッ

アスカ「シンジ、ちっ、離して、離せってばぁ! もう百発ぐらいビンタしないあたしの気がおさまんないでしょ!」ジタバタ

シンジ「綾波……。今のは、綾波が悪い」

レイ「……」

シンジ「アスカ、僕も聞かなかったことにする。忘れるって約束するよ。だから……」

アスカ「だから? だからなに? かわりに気が晴れるまでサンドバッグになんの? お優しいナイト様ぁ〜!」

シンジ「それは……」

アスカ「どいて……! 引っ込んでなさいよ! しゃしゃりでてくんな!」
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:04:08.11 ID:5vnc7rcMO
アスカも綾波にたいして土足処かボロクソにいってる自分に対してはなにも思わないのか
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:17:55.46 ID:sZ6t3yxDo
まさか相手がクローンだとは夢にも思わないだろうしなぁ…
アスカもそのこと知ってたら流石に人形呼ばわりはしないと思うし
1189.69 KB Speed:0.3   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)