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イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」

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894 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/10/21(土) 01:16:08.05 ID:+S+lF9aD0
…その晩・提督寝室…

提督「ねぇライモン、一緒に入る?」

…ワインやカクテルといったお酒、それに暖炉の火ですっかり暖まった提督がぽおっと赤みを帯びた顔に柔和な笑みを浮かべつつ、布団を持ち上げすき間を作った…

ライモン「あ、いえ……わたしは自分の部屋で休みますから///」

提督「……いいの?」

ライモン「そんな誘い方……ずるいです///」くるぶしまである純白のネグリジェをするりと脱ぐと、滑るようにベッドへ入ってきた……

提督「ふふ、いらっしゃい♪」

ライモン「提督……///」

提督「ライモン……こうやって名前を呼ぶのも久しぶりな気がするわ♪」

ライモン「わたしも……待ち遠しかったです///」

提督「嬉しい……んっ♪」

ライモン「ん……ふ///」

提督「ちゅっ……んちゅ…ちゅる……っ♪」

ライモン「ん、んぅ……ちゅぱ///」

提督「ぷは……ライモン、貴女の好きなようにしていいのよ?」

ライモン「そ、そうですか……それじゃあ///」

…提督の両肩に手を置き、ずっしりした乳房に顔を埋めるようにしてぎゅっと身体を寄せるライモン……提督の谷間にライモンの暖かい吐息が微風となって吹きつけ、しっとりしたライモンの白い肌が提督の柔肌と吸い付くように重なり合う…

提督「よしよし……♪」

ライモン「あ……っ///」

…明るい、しかしけばけばしくはないライモンの金髪をくしけずるように撫でる提督……ベッドの白いシーツには提督の長い金色がかった髪がウェディングドレスの裾のように広がり、その上で抱き合っている二人はまるでひまわり畑で寝転んでいるように見える…

提督「……来て?」

ライモン「はい……///」ちゅぷ……っ♪

提督「んっ……ふふっ♪ ちゃんと、私の気持ちいいところ……」

ライモン「忘れるわけがありません……だって、フランチェスカ……貴女が教えてくれたんですから///」

提督「そうね。それじゃあ私も、ライモンが教えてくれたところ……♪」くちゅ……っ♪

ライモン「あ、あ、あ……っ///」

提督「ふふ、可愛い声……もっと聞かせて?」ぬりゅっ、くちゅ……り♪

ライモン「ふぁぁ……あっ、ん……あぁ……んっ///」

提督「……ほら、好きにしていいのよ?」

ライモン「だったら……手を止めてください……っ///」

提督「ふふ、仕方ないじゃない。いつも可愛いライモンがそういうトロけた表情をするの……ベッドの中でしか見られない特別な顔で好きなんだもの♪」

ライモン「……も、もうっ///」顔を真っ赤にしたライモンが照れ隠しに怒ったような表情を浮かべ、提督の濡れた花芯に中指と薬指を滑り込ませた……

提督「ひゃぁん…っ♪」

ライモン「貴女は、いつもそうやって優しくて甘い言葉をかけてくれるから……だから……っ///」じゅぷっ、ぐちゅぐちゅ……っ♪

提督「あっ、あっ、あぁぁ……んっ♪」

ライモン「だから、わたしだけじゃなくてみんなが貴女の事を好きになって……ずるい女性(ひと)です……っ///」くにっ、こりっ……ちゅぷ……っ♪

提督「あぁぁぁん……っ♪」長い余韻を残しつつ、甘くねだるような声で絶頂した提督……嬌声をあげながらも片手はライモンの滑らかなほっそりした腰に回され、もう片方の手はライモンのとろりと濡れた秘所にあてがわれ、中にぬるりと滑り込んでいる指が粘っこい水音を響かせながらなめらかに動く……

ライモン「あぁぁんっ……フランチェスカ……ぁ///」

提督「ねえ、ライモン……」太ももを重ね合わせて「ぬちゅっ、くちゅっ……♪」とみだらな水音を響かせながら、耳元でささやいた……

ライモン「なんですか、フランチェスカ……?」

提督「ええ、貴女にちょっと早めの……クリスマスプレゼント♪」ぐりっ、ぷちゅ……っ♪

ライモン「あ、あぁぁぁぁ……っ♪」

提督「……うふふっ、しばらくご無沙汰だったぶん……今夜は好きなだけしていいから、ね?」
895 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/10/26(木) 01:19:06.59 ID:fR+tjxd80
…翌朝…

デルフィーノ「おはようございます、提督」

提督「おはよう、デルフィーノ。 ちょっとだけ声を落としてもらえるかしら……ね?」ベッドのふくらみを指し示して、パチリとウィンクをした……

デルフィーノ「……あ、はいっ///」

提督「ふふ、ありがと♪」デルフィーノの頬におはようのキスをするとガウンを羽織り、浴室へ行って洗面台で顔を洗い、それからきっちりと歯を磨く……北欧出張の際に現地で買った、キシリトール入りだという歯磨き粉をさっそく使ってみる……

提督「……なるほど、確かにスッキリした感じはあるかもしれないわね」

…歯みがきと洗顔を終えて部屋に戻ると、デルフィーノがせわしなく動きながら朝刊と目覚めのコーヒーを用意してくれていた…

デルフィーノ「朝のコーヒーと新聞です、提督。 お留守の時の分もとってありますから、読みたかったら後で読めますよ」

提督「グラツィエ……ん、いい香り」

デルフィーノ「今日のコーヒーはゴンダールが淹れたエチオピアです」

提督「ゴンダールだものね……美味しいわ」(※ゴンダール…当時の「イタリア領東アフリカ」(エチオピア)にある都市。世界遺産にもなった建築などで知られる)

デルフィーノ「それでは、また朝食の時に……///」

提督「ええ♪」窓を細めに開き、冷たいが清らかな冬の海風を少しだけ部屋に入れながらガウンにくるまり湯気の立つコーヒーを楽しむ提督……朝刊の「レプブリカ」を読んでいると、ライモンが目をこすりながら出てきた……

提督「おはよう、ライモン」

ライモン「おはようございます……朝のコーヒーはわたしが支度をしたかったのですが、寝過ごしてしまいました……」

提督「いいのよ……昨夜聞かせてくれた甘い声だけでお釣りがくるわ♪」コーヒーカップ片手にからかうような口調で言った……

ライモン「も、もう///」

提督「今日は何の予定もないし、荷物の整理が済んだらのんびりさせてもらうわ……それとライモンには、留守中にあった話でも聞かせてもらおうかしら」

ライモン「はい♪」

…朝食後・食堂…

提督「……それじゃあみんなに早めのクリスマスプレゼント♪」

…朝食を済ませてゆったりとした空気が流れている中、提督がトランク一杯買ってきた北欧三カ国のお土産を渡し始めた……当直や哨戒のために出撃している艦娘をのぞいた手すきの娘たちが食堂に集まり、それぞれ提督がふさわしいと思ったものや、本人が欲しがっていたものを受け取っている…

リベッチオ「提督、さっそく開けていい?」

提督「もちろん、貴女のために買ってきたのだから……喜んでもらえるとうれしいわ♪」

リベッチオ「何かなぁ……わぁ、素敵なマフラー♪」包みから出てきたのは長いふんわりしたクリーム色のマフラーで、褐色の肌と良く似合う……

提督「この間、出撃の時に首元が寒いって言っていたから……どう?」

リベッチオ「うん、うんっ♪ とっても暖かいよっ……ありがと♪」

提督「みんなにもそれぞれあるから……はい♪」いくら四姉妹とはいえ、いつも十把一絡げにしたようなお揃いばかりではつまらないだろうと、それぞれの好みに合わせて違う色や柄のマフラーを選んできた提督……

マエストラーレ「とっても嬉しいよ、提督♪」

提督「そう言ってもらえて良かったわ……でも、それならお礼のキスくらい欲しいわね♪」

マエストラーレ「ん、まかせて♪ んちゅ、ちゅる……っ♪」冗談めかした提督に対して、マエストラーレがくっつくように身体を寄せるとつま先立ちをし、提督の両頬を手で押さえると舌を滑り込ませた……夏の香りを残したような褐色の肌が近寄り、あどけなさの残る……しかし熱っぽいキスを浴びせてくる…

提督「んぅぅ……ぷは♪」

マエストラーレ「これで満足?」

提督「ええ♪ それにこれ以上したくても、ここでするわけにはいかないものね?」

リベッチオ「くすくすっ……提督がしたいならここでしたっていいよ?」ぱっちりとした目をくるくると動かしつつ斜め下から見上げるような、挑発的かつませた態度をとってみせる……

提督「ふふっ、リベッチオったら♪」

ライモン「……提督」

提督「あぁ、はいはい。 えぇと、これは……ディアナ」

ディアナ「まぁ、わたくしにもプレゼントを?」

提督「もちろん……貴女にはこれを」小ぶりな箱に入っていたのは三日月をあしらった銀のキーホルダーと、真珠をあしらった銀の髪留め……

ディアナ「あら、こんなに素敵なものを……」

提督「ほら、貴女がいつも使っているフィアット850……あれのキーには何も付いていなかったから、もし良かったらと思って」

ディアナ「とても嬉しいです、提督……♪」
896 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/10/31(火) 01:53:34.78 ID:YYE93CNN0
…しばらくして…

提督「これでみんな配り終わったかしらね」

リットリオ「こんなにいいものをもらえて私は幸せですっ♪」

バリラ「ええ、本当に……お礼に提督の事をぎゅーってしてあげます♪」旧型の潜水艦ゆえに出撃の機会は少ないが、そのぶん鎮守府の潜水隊にとってのよきお母さんでもあるバリラ級のネームシップ「バリラ」が、その母性を存分に発揮して提督を抱きしめる……

提督「あんっ……♪」たわわな胸元に顔を埋めて、ミルクのような甘い匂いを吸い込みながら甘い表情を浮かべている提督……

デュイリオ「あらあら、でしたらわたくしも……♪」むぎゅ……っ♪

ドリア「それなら私もお邪魔させてもらいましょう♪」むにゅっ♪

提督「ふふっ、そんなに胸元に押しつけられたら窒息しちゃうわ……でもきっと、世界で一番幸せな窒息ね♪」三方から囲まれるようにして抱きしめられ、ご満悦の提督……

ライモン「……はぁ」

アッテンドーロ「やれやれ、姉さんったら……確かに提督はなかなかの美人だし性格も優しいけど、私にはあの女たらしのどこがいいのかいまだに分からないわ」

ライモン「仕方ないでしょう……だって一目見てからずっと好きなんだもの///」

アッテンドーロ「それはまたずいぶんと一途なことで……」

提督「んむ、んふぅ……ぷはぁ♪」

…提督もかなり長身な方だったが、それよりもさらに頭ひとつ分は大きい、優雅でおっとりした感じのするドリアやデュイリオといった「妙齢の」ド級戦艦であるお姉さま方、そしてはつらつとして可愛らしい表情と、それに似合わぬほどの高身長でメリハリのある身体をしたリットリオ級の娘たち……そんな艦娘たちに抱きつかれて、提督はまるで新婚かなにかのように抱きついてみたり軽い口づけを交わしたりといちゃついている…

アッテンドーロ「……ふぅ、仕方ないわね」

ライモン「何が……って、きゃっ!?」アッテンドーロに突き飛ばされるようにして、提督たちの間に飛び込んだライモン……

提督「あら、ライモン……ごめんなさいね? 貴女を仲間はずれにしちゃって」

ドリア「ふふっ、ライモンドも遠慮しないで……さあ、お姉さんの胸の中にいらっしゃい♪」

デュイリオ「くすくすっ、ドリアはライモンドの「お姉さん」にしてはずいぶんと艦齢(とし)の差があるようだけれど?」

ドリア「……ふふっ、それを言ったらデュイリオだってそうでしょう?」

デュイリオ「あら、なかなかお上手だこと♪」

提督「もう、こんなに瑞々しい身体なんだからお互いそういうことは言わないの……ね?」パチリとウィンクをすると、二人のたわわな乳房を下から支えるようにして軽く揺すった……

デュイリオ「あんっ……もう提督ったら♪」

ドリア「いたずらなお手々ですね♪」

カヴール「ふふ、ライモンドも遠慮しないでいいのよ?」

ライモン「///」自分の手にカヴールの白くて柔らかい手が重ねられると、そのままずっしりとした乳房に誘導されて真っ赤になる……

提督「ふふっ、ライモンはいつでも初々しくて可愛いわ♪」

エウジェニオ「同感ね……これじゃあ提督がいたずらしたくなっちゃうのも無理ないわ」

ガリバルディ「そうね、実に可愛いわ♪」

…暖炉脇の敷物に座って、提督が「誰でも自由に取っていいように」と置いたお土産のチョコレートをつまみつつ、泡立つスプマンテを傾けていたエウジェニオとガリバルディ……艦隊一の技巧派で相手をとろかすような女たらしであるエウジェニオと、それとは対照的に革命家らしく情熱的で、燃え上がるような女たらしのガリバルディ……その二人が「コンドッティエーリ(傭兵隊長)」型軽巡の先輩、あるいは従姉とでもいえる関係にあるライモンを眺めて舌なめずりをした…

提督「うふふっ、二人もそう思う?」

エウジェニオ「ええ……とっても美味しそう♪」

ガリバルディ「焼け付くような愛の炎を起こしてみたいわ♪」

ライモン「も、もう……みんなしてわたしの事をからかうんですから///」

提督「だってライモンが可愛いんだもの♪」

ガリバルディ「言えてるわ」

エウジェニオ「ええ……ところでジュゼッペ、お一つどうぞ♪」チョコレートを一つくわえると口を近づけた……

ガリバルディ「グラツィエ……ねえエウジェニオ、少し喉が乾かない?」

エウジェニオ「そうね、ちょっと暖炉で火照っているし……♪」

ガリバルディ「だと思ったわ……んくっ♪」スプマンテを口に含むと、しなだれかかるエウジェニオに口移しで飲ませた……

エウジェニオ「ふふ、美味し……♪」

提督「まぁ、ふふっ……二人は本当に絵になるわね」

ライモン「///」
897 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/11/09(木) 01:56:42.81 ID:mtb5KQ5Y0
…翌日…

提督「さてと、昨日はゆっくり休めたのだから……今日は書類を片付けないと」

デルフィーノ「私もお手伝いしますよ、提督」

アッチアイーオ「遠慮しないで任せておきなさい」

カヴール「事務書類の処理は得意ですから、任せて下さいな♪」

ライモン「及ばずながら、わたしもお手伝いします」

提督「みんな、ありがとう……それじゃあ手早く片付けましょうか」

…提督の執務机の上「未決」の箱に積み上がっているのは出張の間にも日々溜まっていたとおぼしき書類の山……内容を読んだ上でファイルするだけのものや、提督の手を借りずとも処理できそうなものは秘書艦のデルフィーノとアッチアイーオを始め、書類仕事の得意な艦娘たちがある程度は片付けてくれていたが、それでもひとつの鎮守府に届く書類となると相当なものがある…

提督「請求書、納品書、領収書……通達に納品書、また領収書……」

カヴール「では納品書の確認は私が」

提督「ええ」

アッチアイーオ「ファイルに綴じるのは私がやるわ」

提督「お願いね」

デルフィーノ「領収書の値段があっているかどうかの計算は私がやりますねっ」

提督「助かるわ、デルフィーノは計算が得意だものね♪」

ライモン「えぇと、それじゃあわたしは……」

提督「ライモンは私の隣で、書いたものに誤りがないか確認してくれる? 重要な役目だからぜひ貴女に頼みたいわ」

ライモン「はい///」

カヴール「まぁまぁ、提督ったら公私混同ですね♪」

提督「司令官特権よ♪ ……ん、この場合はどの予算で執行すればいいのかしら?」

…納品書に書いてある品目や値段があっているかどうか、決済の日付が正しいかどうか、用途別に付いている予算から正しい要目を選んでいるかどうか……ラップトップコンピュータの画面と送られてきた書類を突き合わせながら一つひとつ確かめていく…

提督「えぇと、この場合は諸雑費からの支出で……」

…ピンクや黄色の付せんだらけになっている「支出処理マニュアル」をめくりながら、ときおりこめかみに手を当てて眉をしかめ、カタカタとキーボードに入力しながら、思い出したようにコーヒーカップに手を伸ばす……

…しばらくして…

デュイリオ「……みんなお疲れでしょう、しばらくわたくしが代わりますよ♪」

ペルラ(ペルラ級潜水艦「真珠」)「アッチアイーオ、交代しましょう」

ベリロ(ペルラ級「緑柱石」)「デルフィーノも少し休んできたらどうですか?」

デルフィーノ「え、でも私とアッチアイーオは秘書艦ですし……」

提督「いいのよ、少し休憩していらっしゃい……ライモン、貴女も」

ライモン「いえ、もう少しですから」

提督「相変わらず律儀ね……分かったわ、それじゃあその書類が終わったら三十分は休憩してくること。いいわね?」

ライモン「はい」

提督「よろしい。 えぇと、次の書類は……あー、クリスマス休暇関係ね。これだけはどうにか終わらせないと、私をふくめてみんなの休暇が取れなくなっちゃうわ……」

…提督は何本か持っている万年筆のうち、鎮守府に「栄転」することになった際に仲良しの数人がお金を出し合ってくれたプレゼントの万年筆を選んで紙面に滑らせた……軸は海のような濃い青色で、要所を締める金の部品がしゃれている万年筆は、提督の名前が筆記体で彫り込んである……見た目だけでなく書き味も極上の万年筆は持っているだけで文豪や名士の仲間入りした気分になれるので、なんとなく書類も手際よく片付けられる気がする…

提督「えーと……休暇開始予定日…期間……非常時連絡先……海外旅行をする場合は目的地……」

…海軍士官である提督、それに艦娘たちは休暇の際に海外旅行をしたい場合は軍に申請しなければならない……むろん、非友好国や危険がありそうな国への旅行は認められず、安全と思われる国であってもかなり細かいチェックをうける……艦娘たちの何人かはフランスやスペイン、あるいはアドリア海を挟んで向かい側のアルバニアといった国に旅行したいと申請していたので、まずは提督がサインを入れ、その上で管区司令部へと回す…

提督「ふー、これで休暇の申請書類は終わったわね。あとは期日までに郵送するか直接提出すれば完了……と」

ペルラ「お疲れさまです、提督」

提督「ふふ、自分の休暇がフイにならないために頑張っただけよ♪」ペルラの真珠色をした艶やかな瞳、それに珠を転がすような美しい声で言われるとくすぐったい気分になり、照れ隠しに冗談めかした……

デュイリオ「ふふっ、いずれにせよあともう少しですから……頑張りましょう、ね?」

提督「ええ♪」
898 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/11/18(土) 02:13:59.28 ID:gqvE9Z1O0
…翌朝…

ライモン「おはようございます、提督……今日はタラントの管区司令部までお出かけだそうですね」

提督「ええ。北欧出張の時に話をした例のロシア軍将官について情報部の聞き取り調査があるの。ついでにみんなのクリスマス休暇の申請書を提出してくるわ」きちんと冬用の制服に身を包み、片手には金属のアタッシュケースをぶら下げている……

ライモン「気を付けて行ってきて下さいね?」

提督「ありがとう……どう、一緒に行く?」ランチアのキーをつまんでゆらゆらさせつつ尋ねた……

ライモン「あの、提督と一緒に行きたいのはやまやまですが、今日は午後直が入っていますから」

提督「そうだったわね……ライモンの当直時間を忘れちゃうなんてうっかりしていたわ。時差ボケかしら?」

ライモン「そんな、でも誘ってくれて嬉しかったです///」

提督「そう言ってもらえて光栄だわ……それじゃあ他の誰かを誘うことにするけれど、何か欲しいものはある? タラントで買えるものなら買ってくるわよ?」

ライモン「いいえ、大丈夫です」

提督「そう? 遠慮しないでもっとねだってくれたっていいのに……まぁいいわ、留守のあいだは鎮守府をドリアに任せるけれど、何かあったらかまわず連絡を頂戴ね?」

ライモン「はい」

提督「いい返事ね、それじゃあ行ってきます♪」

ライモン「はい、行ってらっしゃい」

…玄関…

提督「さてと、用意はいい?」

エウジェニオ「ええ」

サイント・ボン「本官の準備は出来ておりますよ」

ニコロソ・ダ・レッコ(ニコ)「いつでもいいよ、提督」

…鎮守府に配備されている一台ずつの三トン軍用トラックとベスパ、それにリットリオのフィアット500(チンクエチェント)とディアナのフィアット850だけでは「近くの町」ならともかく、全員が好きな時にタラントへ出かけるという訳にはいかないので、提督は公務でタラントへ出かけるようなときは、できるだけ艦娘たちを連れて行くようにしていた…

提督「よろしい、それじゃあ行きましょう♪」

…地方道路…

エウジェニオ「……いい風ね、少し冷たいけれど」

提督「ええ」

…提督は車内にヒーターをいれつつも、張り詰めたような冬の冷たい風を感じられるよう少しだけ窓を開けて、「ランチア・フラミニア」を走らせていく……助手席にはエウジェニオ、後部座席には大型潜の「アミラーリオ・ディ・サイント・ボン」と駆逐艦の「ニコロソ・ダ・レッコ」が座っている…

サイント・ボン「では、タラントに着きましたら本官たちは市街で買い物などしておりますので」

提督「それがいいわ。お昼になったら管区司令部の前で合流しましょう……もし聴取が長引いたりするようだったら連絡するわね」

エウジェニオ「ふふ……♪」

提督「何かおかしいかしら?」

エウジェニオ「ええ、それはもう……だってこともあろうにロシア軍の美人将官と寝たって言うんだもの、貴女の女好きも大したものね」

提督「だって……///」

エウジェニオ「なぁに?」そう言いながら提督の太ももをさりげなく撫で回しはじめた……

提督「エウジェニオ、運転中は止めてちょうだい……いくら美女と一緒でも、まだ崖下にダイブする気は無いわ」

エウジェニオ「ふ、冗談でしょう? 貴女なら目をつぶっていても、キスしながらでも運転できるでしょうに」

提督「ごあいにくさま、私はフェラーリでもなければヌヴォラーリでもないの。それにせっかくのキスを「ながら」でしたくはないもの」

エウジェニオ「ふふ、そういう真面目なところが好きなのよ……いいわ、きちんと座っていてあげる♪」

…エウジェニオは無造作に散らしたようなセミロングの髪型で、黒いレザージャケットにヴィヴィッドな色味の紅のタートルネックセーター、きゅっと引き締まったヒップから伸びる長い脚は黒の乗馬ズボンとひざ丈まである黒革のヒールつきブーツで固め、片耳にだけ付けたイヤリング……と、どう見てもビアンの格好いいお姉さんといった服装に身を固めている…

提督「グラツィエ。帰ったらごほうびをあげるわ」

エウジェニオ「期待しているわよ♪」

提督「ええ。って、そんなことを言っていたらもうここまで……相変わらずにぎやかね」タラント市街が近づくと、艦娘の「具現化」させた往時の海軍艦艇が出撃していき、漁船や沿岸航路の貨物船、それに定期航路の客船といった民間の船舶が行き交い、上空ではイオニア海を哨戒するカントZ506水偵やフィアットCR42戦闘機がエンジン音も高らかに飛んでいく…

ニコ「それに市街もすっかりクリスマスだ」

提督「そうね、みんなへのお土産にクリスマス菓子でも買って帰りましょうか」

サイント・ボン「それはよろしいですね」
899 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/11/23(木) 01:09:07.13 ID:Gz1NGPh50
…管区司令部…

提督「おはよう」

受付の下士官「おはようございます、少将……数日前もいらっしゃったのに、また呼び出しとは大変ですね」

提督「本当にね……そうそう、ちょっと早いけれどクリスマスプレゼントをどうぞ。当直のみんなに分けてあげて?」フィンランドの免税店で仕入れてきたチョコレートやキャンディが詰め合わせになった大袋を受付の伍長に渡す……

受付「わざわざありがとうございます」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)……よいクリスマスをね」

受付「は、ありがとうございます。少将も良いクリスマスを」

提督「グラツィエ♪」

…事務方…

提督「おはよう、大尉……申請書類の提出に来たのだけれど、今いいかしら?」

事務方の士官「おはようございます、カンピオーニ少将。申請書ですね、どうぞ」

提督「ありがとう。それじゃあ私と鎮守府の娘たちの分のクリスマス休暇申請書、手続きをお願いするわ」厚手の本くらいはありそうな申請書類の束をカウンターにどさりと載せる……

士官「確かに受け取りました、処理しておきます」

提督「助かるわ。それと、良かったらこれ。クリスマスも近いし……ね?」茶目っ気のある表情を浮かべつつ、またまた菓子の大袋を手渡した……

士官「は、いつもありがとうございます……」後ろでデスクを並べ、書類の処理に当たっている数人からもさりげない感謝のジェスチャーや小さな会釈が向けられる……

提督「ええ。さ、法務や内務のお堅い士官に見つかってガミガミ言われないうちに……♪」

士官「分かっております。少将も良いクリスマスを♪」

提督「ええ♪」

…会議室…

提督「さて、いよいよ次が本命ね……」別に悪さをしたわけではないが、情報部によるデブリーフィング(任務報告)とあって、ひとつ深呼吸して身構える……

案内の下士官「……カンピオーニ少将がおいでになりました」

フェリーチェ「どうぞ……あぁ、少将。よく来てくださいました」よそよそしい態度を演技しているのはフェリーチェで、すでに卓上には提督のレポートとラップトップコンピュータ、メモ帳に録音用のボイスレコーダーなどが並べられている……

提督「ええ……」

フェリーチェ「ご苦労様でした、二等兵曹。下がってよろしい」

下士官「は、失礼します」

フェリーチェ「……さてと、それじゃあ貴女の女遊びについてじっくり問いただすとしましょうか♪」

提督「もう「情報部の聞き取り調査」だなんて言うから、てっきり無表情な士官が二、三人で絞り上げてくるのかとばかり思っていたわ♪」

フェリーチェ「そうしたいのは山々だったけれどね「私が一番うまく情報を引き出せますから」って上にかけ合ったのよ……たまたま任務の都合でイオニア海管区に来る用事もあったし……ね♪」

提督「嬉しいけれど、貴女が聞き出すのだから隠し事は出来そうにないわね……」

フェリーチェ「よく分かってるわね……録音するタイミングになったらそう言うから、とりあえずはクズネツォワ少将について知っていることと分かったことをあらいざらい話してもらうわよ」

提督「ええ……」

フェリーチェ「録音開始……聴取担当者、海軍情報部、ミカエラ・フェリーチェ大尉。対象者、フランチェスカ・カンピオーニ少将……」レコーダーに音声を吹き込むと、テーブルの中央に置いた……

フェリーチェ「では少将にお尋ねします。フィンランドにおける深海棲艦対策の会議において面識を持った、ロシア連邦海軍のユーリア・クズネツォワ少将についてですが、貴官は会議の場、またそれに関連する場所においてどのような会話をなさいましたか?」

提督「はい。基本はごくありふれた会話でしたが、北欧における深海棲艦対策に関してロシア海軍がどう行動するつもりか、出来る限り聞き出そうとしました」

フェリーチェ「なるほど……それで、クズネツォワ少将から何らかの回答を引き出せましたか?」

提督「いいえ。書面によりこちら側に明示された方針以上のものはなにも」

フェリーチェ「口は固かったということですか?」

提督「ええ、相当に」

フェリーチェ「なるほど……」そこでレコーダーのスイッチを「一時停止」にいれた……

フェリーチェ「……なら、ベッドの上では?」

提督「けほっ……!」

フェリーチェ「お願いよ、フランチェスカ。私が貴女にボンドガールの真似事みたいな事までさせて知りたかったことなのよ……あの無表情な「インペラトリーツァ(女帝)」のことならなんでもいいわ、身体に刺青や傷があるとか、えっちするときの好みのやり方とか……録音はしないし、貴女から仕入れた情報だって事も上には伝えない……ミカエラ・フェリーチェとして約束するわ」
900 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/11/30(木) 01:58:49.86 ID:tFe17jz30
提督「……誰にも口外しない?」

フェリーチェ「ええ、情報源は秘匿する」

提督「そう……ミカエラ、貴女の事を信じるわ」

フェリーチェ「ありがとう、フランチェスカ」

提督「いまさらお礼なんていらないわ……それで、どんなことを聞きたいの?」

フェリーチェ「とにかくクズネツォワについて気付いたこと、あるいは彼女が話したこと……些細な事でもちょっとした癖や習慣のことでも構わないわ」

提督「そうね、それじゃあ……クズネツォワ少将だけれど、とにかく煙草をよく吸うわ」

フェリーチェ「銘柄は?」

提督「そう言われても私は吸わないし、ましてやロシアの煙草だったから銘柄までは……でも確か、箱にソリの絵が描いてあったわ」

フェリーチェ「それなら『トロイカ』ね……」

提督「それから吸うときは左手の親指と人差し指でつまむように煙草を持っていたわ。なんでも「そう教え込まれた」みたいなことを自嘲するように言っていたけれど……」

フェリーチェ「なるほど、彼女ならそうでしょうね」

提督「それから、ライターにこだわりがあるようには見えなかったわ。ホテルのブックマッチを使っていたりもしたから」

フェリーチェ「ふっ……さすがの観察眼ね、フランチェスカ。身の回りのものにこだわりがないというのはこっちの調査でも推測されていたけれど、これで改めて裏付けが取れたわ」

提督「そう、良かったわ」

フェリーチェ「ええ。 ほかに特徴的な言動は?」

提督「えぇ…と、まずは一緒に夕食を食べて……」当日の経緯を順繰りに思い出していく提督……

フェリーチェ「お酒は?」

提督「ウォッカやシャンパンを飲んではいたわ。でも顔色は全然変わらないし、口調もまるでしらふのまま」

フェリーチェ「相当に強いみたいだから無理もないわ……続けて?」

提督「それから彼女の泊まっているホテルまで車に乗せてもらって……そうそう、副官のカサトノヴァ少佐はピストルを隠していたわ」

フェリーチェ「マカロフ?」

提督「たぶん……腰のバックサイド・ホルスターに入っているのがちらっと見えただけだから断言はできないけれど」

フェリーチェ「いいえ、十分な情報よ……それで?」

提督「えぇと、それから……」

………



提督「ん……///」

クズネツォワ「……どうだ?」

提督「あっ、あふ……っ///」

クズネツォワ「柔らかくて初々しい……まるでマツユキソウのようだな」

提督「あっ、ふ……あんっ……「森は生きている」ですか」

(※マツユキソウ…待雪草。英名スノードロップ。春を告げる白い可憐な花で、ロシア文学「森は生きている」で、わがままなお姫様が真冬にも関わらずマツユキソウを見たいと言ったことから、主人公の少女が意地悪な継母にマツユキソウを探してこいと真冬の森へと追いやられる)

クズネツォワ「マルシャークを読んだことがあるのか」

提督「ええ……」

…提督がまだ余韻に浸っているなか、クズネツォワはてきぱきと着替えていく……と、スラックスのベルトにホルスターを通し、無骨さと優雅さの同居したような「トカレフTT−33」ピストルを小机から出して突っ込んだ……

提督「ユーリア、そのピストルは……」

クズネツォワ「トカレフだが」

提督「いえ、トカレフなのは分かりますが……いつも手元に?」

クズネツォワ「ダー。祖母がくれたものなのだが、他のものはともかく、これだけは手放したことがない」

提督「……大事なものなのですね」

クズネツォワ「お守りの十字架や幸運の「うさぎの脚」よりは役に立つからな」そっけない言い方の中に、少しだけ冗談めかした声が混じった……

………
901 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/07(木) 02:15:02.29 ID:v0j/RYhV0
フェリーチェ「……お祖母さんの持っていたトカレフだなんて、ああ見えてセンチメンタルなところがあるのね」

提督「ええ。もちろん部品は取り替えたりしているとは言っていたけれど」

フェリーチェ「お飾りの銃を持っているようなタイプではないものね」

提督「そう思うわ。それと二人きりになると…たいていは皮肉なブラックユーモアだったけれど…意外と冗談も言うし、少なくとも無感情なロボットみたいではなかったわ」

フェリーチェ「なるほどね……続けて?」メモすら取らずに、手を組んで話を聞いている……

提督「それから……ねぇ、本当に言わないとダメなの?」

フェリーチェ「言える範囲でいいわよ……例えば傷だとか刺青はあった?」

提督「いいえ、少なくとも見た限りでは綺麗だったわ」

フェリーチェ「ふぅん?」

提督「ミカエラも気になった? 私も「ロシアの将校」っていうと刺青を入れているようなイメージがあったから聞いてみたの」

フェリーチェ「それで?」

提督「ええ、クズネツォワ少将が言うにはね……」

………

提督「……ユーリアの肌は綺麗ですね」

クズネツォワ「そうか?」

提督「ええ……きめ細やかで、透き通るように白くて……」

…互いに身体を重ね合ったあと、クズネツォワの裸身を優しく愛撫する提督……乳液や保湿クリームといった肌の手入れとはまるで縁がないようだが、鞭のようなしなやかな筋肉を包む肌はあくまで白く、提督と交わした愛の交歓のおかげでぽーっと赤みが差している…

クズネツォワ「ふむ、そうか……」

提督「はい。 それに、刺青は入れていないのですね」

クズネツォワ「刺青?」

提督「その……勝手なイメージですが、ロシアの将校というと腕やお腹にすごい刺青を彫っているものとばかり……」

クズネツォワ「映画などに出てくる兵隊崩れのマフィアが入れているような、おどろおどろしい髑髏だのコウモリが羽を広げているようなやつか?」

提督「えぇ、まぁ……お恥ずかしながら、その程度のイメージしかなくって///」

クズネツォワ「ふ……まあ分からんでもない、空挺の連中や何かはよくドッグタグ(認識票)代わりに刺青を入れたりするし、ロシアンマフィアはハッタリのためだったり、組の構成員であることの証明で刺青を入れていたりするからな」

提督「ええ、そういうイメージです……」

クズネツォワ「まあ知らん人間からしたらそうだろう……だがな」

提督「?」

クズネツォワ「スパイにしろなんにしろ「本物」はそんなもの入れないのだ……特徴的な刺青なんていうのは、それだけで身元を割られる元だからな」

提督「なるほど……」

クズネツォワ「ああ。期待を裏切って申し訳ないがな、西側の映画や何かでみる「刺青を入れたイワンのスパイ」なんていうのは絵空事だよ」

提督「そうなのですね……では、私がユーリアの真っ白なキャンバスに絵を描くことにします♪」そう言いながら鎖骨に吸い付くようなキスをした……

………

提督「……と、そんな風に言っていたわ」

フェリーチェ「やっぱりね……おかげでいい情報がとれたわ」

提督「約束は覚えているわよね?」

フェリーチェ「当然。貴女から聞いたなんておくびにも出さないわ……あとはもう一度レコーダーを回してありきたりな質問をするから、それなりに答えてくれればいいわ。お疲れさま」

提督「どういたしまして」

…再びICレコーダーを回していくつかの質問をぶつけると、事務的な口調で「以上で聴取を終わります」と締めくくった……それからポットのコーヒーを注ぐと、しばし軍で親しい間柄にある知り合いたちの近況を話題にして話の花を咲かせた…

フェリーチェ「いけない、もうこんな時間……悪いけど、ローマに戻って報告書を上げないといけないの。それじゃあ、良いクリスマスをね?」

提督「相変わらず忙しいのね。 ミカエラもいいクリスマスを♪」

フェリーチェ「ええ、ありがと……それじゃあね」そういって提督の唇に「ちゅっ♪」と音を立てて唇を重ねた……

提督「ええ♪」
902 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/14(木) 02:12:50.55 ID:MasWu44x0
…数日後…

提督「さてと、今日の書類はこれでおしまい……と♪」

ドリア「ずいぶんとご機嫌ですね?」

提督「ええ。みんなと過ごすのも楽しいけれど、やっぱりクリスマス休暇があと数日で始まると思うとね……ドリアはクリスマス休暇が嬉しくない?」

ドリア「いいえ、私のようなおばあちゃんでもクリスマス休暇は嬉しいですよ……ですが、休暇中はこうして提督と過ごすことができないと思うと、一抹の寂しさを覚えます」

提督「あら、そんな風に思っていてくれていたなんて光栄だわ///」満面の笑みを浮かべて「ちゅっ♪」と音高く頬にキスをした……

ドリア「まあ、提督ったら♪」

提督「ふふっ、遠慮せずにうんと甘えていいのよ……さ、いらっしゃい♪」両腕を広げて小首を傾げた……

ドリア「……それなら、少しだけ///」

提督「ええ♪」

…執務机の椅子で向かい合うようにして抱き合った提督とドリア……提督は胸元にドリアの顔を埋めさせ「地中海の黒い狼」などと言われたアンドレア・ドリアをほうふつとさせる艶やかな黒髪に顔を押しつけ、深く息を吸った……花の香りのシャンプーと少し残った重油と海の匂い、それにドリア本人の頭皮からかすかに立ちのぼる、ほのかに甘いような匂いが混じり合う……

ドリア「……提督は甘くていい匂いがしますね♪」

提督「お世辞を言っても休暇は増えないわよ?」

ドリア「お世辞ではないですよ……それと、こんなに暖かくて柔らかい♪」ふにっ♪

提督「くすくすっ……もう、ドリアったら意外とおてんばなのね♪」

…口ではそう言いながらも、提督は自分の太ももにまたがるようにして座っているドリアのスカートをずり上げた……黒いストッキングに包まれたむっちりした太ももがあらわになり、提督の太ももと触れあった…

ドリア「あん……っ♪」くちゅ……っ♪

提督「ふふ、ドリアったら積極的ね……そんなにしたかった?」

ドリア「……もう、そんなことを言うのは野暮というものですよ♪」ふんわりしたカシミアのセーターをたくし上げると、黒い花柄のブラに支えられたずっしりとした乳房へと提督の手をいざなった……

提督「なら、失言のお詫びをしないと……ね♪」提督も制服の上着を脱ぐと執務机の上に放りだし、ブラウスの胸元を大きく開いた……ドリアとさして遜色がないほどたわわな自身の胸へと彼女の手を誘導し、同時に片方の手を背中に回すとブラのホックを外そうとした……

提督「ん……くっ……」

ドリア「ふふふっ、それではまるでヨガの姿勢ですね……私が外してあげます♪」象牙色の地に、淡いパステルカラーの桃色や黄色の花々が咲いている提督のブラをパチリと外すと、丁寧に執務机の上に置いた……

提督「ドリア……触って♪」

ドリア「あら、提督は触られるだけで良いのですか?」ころころと笑いながら、わざといじわるな事を言うドリア……

提督「もう……どうすればいいか分かっているくせに///」

ドリア「うふふっ、そうですね……それでは♪」もにゅ…っ♪

提督「あっ、ん……♪」お返しとばかり、ドリアの豊満な胸に指を埋めてゆったりとこね回す……

ドリア「んふふっ、くすぐったいです……ところで、こちらが少し手持ち無沙汰ですね♪」

提督「そう、ね……あぁん……っ♪」椅子から転げ落ちそうになりながら互いのランジェリーをずり下ろし、暖かな下腹部を触れあわせた……

ドリア「まぁまぁ……提督ったらこんなに熱くして、おまけにすっかりとろとろです♪」ぐちゅっ、にちゅ…♪

提督「あら、それを言うならドリアだってこんな風にいやらしい音をさせているじゃない♪」じゅぷっ、くちゅ……っ♪

ドリア「では引き分けということで……ん、あっ♪」

提督「ええ……あっ、あふっ♪」

………



ドリア「……それにしても愛を交わしている最中に見つかってしまったときは気まずかったですね♪」

提督「よく言うわ、デルフィーノが入って来てからも平気で私のことをイかせ続けたくせに♪」

ドリア「まあ。それを言うなら提督だって、ちっとも嫌がらなかったではありませんか」

提督「だって……デルフィーノに見られながらドリアに中をかき回されるの、腰が抜けるほど気持ち良かったんだもの♪」

ドリア「それは私もです、おかげですっかり下着を濡らしてしまいました♪」

提督「それじゃあクリスマス休暇が終わったら、また……ね?」

ドリア「ふふ、約束ですよ?」

提督「ええ♪」
903 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/17(日) 01:36:15.14 ID:c8l2I2/00
…鎮守府・正門…

提督「それじゃあ気を付けて行ってらっしゃい……良いクリスマスを♪」

ウエビ・セベリ「では、行ってきマス」

ゴンダール「エリトリア土産に何か珍しいものでも買ってきますネ♪」

…クリスマス休暇の申請に許可が届き、トランクやスーツケースを手に次々と休暇に入る艦娘たち……提督自身の休暇もあと数日という中で、楽しみを待ちきれない様子の艦娘たちに手を振り、頬にキスをして見送っている……深海棲艦の蠢動(しゅんどう)具合や社会情勢のこともあって、なかなか許可の下りなかったキレナイカ(リビア)やAOI組はようやく降りた許可に安堵して、提督がタラントまでの便として管区司令部に手配してもらったミニバスに乗り込んでいく…

(※AOI…当時「イタリア領東アフリカ(Africa Orientale Italiana)」と呼ばれた地域。現在のエチオピアやエリトリア)

提督「そういえばペルラもきょう発つのね」

ペルラ「はい、私はマダガスカルのあたりまで行ってきます」

…淡い真珠色の涼やかな目元をした中型潜「ペルラ(真珠)」は、すっきりしたシルエットをしたパールホワイトのトレンチコートに、淡いフラミンゴのようなピンク色が控え目にフェミニンな雰囲気を主張しているひざ丈のフレアースカート、それに提督の母親であるクラウディアが送ってくれた衣類の山から選んだ象牙色のショートブーツと白ストッキング、首元には粒選りのピンクパールのネックレスをつけている…

提督「貴女はアトランティスを探しに行くのよね♪」

ペルラ「はい」

(※ペルラ…当時インド洋を中心にマダガスカル沖などで暴れ回っていたドイツの仮装巡洋艦「アトランティス」への補給と捕虜の受け取りのため会同したことがある)

下士官「さぁさぁお嬢さん方、そろそろバスを出しますよ! パスポートにヴィザ、手荷物にお財布はちゃんとお持ちですか!」ミニバスでの送迎を請け負ってくれたのはお堅い管区司令部には珍しい陽気な下士官で、観光ガイドの物真似をして艦娘たちを笑わせている……

アシアンギ「忘れ物はないデス」

提督「それじゃあ行ってらっしゃい♪ …では、うちの娘たちをよろしくお願いするわ、三等兵曹。あなたも良いクリスマスを」

下士官「はい、お任せください」

…数日後・朝…

提督「いよいよ私も今日から休暇ね……クリスマス中はよろしくお願いするわ」いよいよ休暇初日の朝を迎え、いそいそと支度を済ませる提督……

チェザーレ「うむ、留守中はこのチェザーレに任せておけ」

提督「ええ。艦隊総旗艦の役は名将チェザーレ、貴女にこそふさわしいわ」

ドリア「あら、実際に旗艦だった私ではなく?」

デュイリオ「そうですよ、わたくしだって艦隊総旗艦だったのですから……」

提督「貴女たちも、よ……良くチェザーレを支えてあげてね?」

カヴール「いささか髪にうるさい妹ではありますけれど……ね♪」

チェザーレ「むむ、髪のことは関係あるまい」

ライモン「……提督、くれぐれもお気をつけて」

提督「ありがとう……貴女もね、ライモン」

アッテンドーロ「姉さんには私がいるから平気よ。 提督こそ、美人だからって知らないお姉さんにノコノコついて行っちゃ駄目よ?」

提督「私だって子供じゃないんだから知らない美人について行くことなんてしないわ……ついて行くのは知り合ってからよ♪」提督の冗談に艦娘たちの笑いが起きる……

ドリア「皆さん楽しそうですが、くれぐれも気を付けて行ってらっしゃいね」

提督「ええ、ドリアたちもゆっくり骨休めをしてちょうだい」

ドリア「はい、留守はお任せを」

提督「任せたわ……それにしても本当にいいの?」

ドリア「ええ、構いませんよ。夏はうんと旅行をさせていただきましたし、クリスマスはここでのんびり過ごす方が気が楽です……リットリオたちが戻ってきたら、入れ替わりで小旅行にでも行ってくることにしますから♪」

提督「それじゃあクリスマスプレゼントでも送ってあげるわ、一番欲しいものをクリスマスカードに書いて送ってちょうだい?」

ドリア「ふふふ……一番欲しいものを書いて送ったら、提督はとんぼ返りすることになってしまいます♪」

提督「あら、嬉しいお言葉……それならいっそ絨毯にくるまれて来た方がいいかしら?」

ドリア「それならジュリオが喜ぶでしょうね」

(※絨毯にくるまれて……クレオパトラ7世の伝説。秘密裏にカエサルに会うべく、クレオパトラが贈り物の絨毯に隠れて来たという)

提督「リットリオ、貴女も気を付けるのよ? 特にこの時期のオートストラーダ(高速道路)は飛ばしている車も多いから……」

リットリオ「大丈夫ですよっ、私だってちゃんと運転はできますから♪」艶のある真っ赤な「フィアット500(二代)」に妹の「ヴィットリオ・ヴェネト」「ローマ」とぎゅう詰めになって乗り込む……手を振りながら正門を出て、ぎくしゃくとしたギアチェンジをしながら走って行った……

提督「やれやれね……♪」
904 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/24(日) 02:11:39.88 ID:aRz/cVAV0
提督「ディアナにも苦労をかけるわね」

ディアナ「いいえ、年が明けたら自動車旅行にでも行くつもりですので……それにせっかくのクリスマスですから、大いに腕を振るってご馳走を作ってあげませんと」

提督「むぅ……帰省は嬉しいけれど、ディアナのご馳走を食べ損ねるのは残念だわ」

ディアナ「まぁ、お上手でございますこと♪」

提督「本当のことよ」

ルチア「クゥ…ン」

提督「ルチア、貴女もね……戻ったらうんとお散歩に付き合ってあげるわ♪」

ルチア「ワンッ!」提督の言葉を聞いて、ぱたぱたと尻尾を振った……

ディアナ「では、行ってらっしゃいまし」

提督「ええ♪」

…艦娘たちが「家族水入らずのクリスマスを邪魔しないよう」にと提督に遠慮した面もあるかもしれないが、彼女たちもそれぞれ姉妹や仲良しの娘と一緒の旅行を計画していたり、はたまた鎮守府でのんびり過ごすつもりでいて、結果として提督は一人で気軽な帰省というかたちになっていた……ランチアに乗り込むと、冬の低い日差しで目がくらまないようサングラスをかけ、鎮守府の正門を出た…

提督「♪〜ふーん、ふーふーん……」艶のある深青色のランチアはきらりと日差しを反射して、右手に冬のイオニア海を見ながら海沿いの地方道路を走っていく……

………



提督「ふぅ……オートストラーダに入ったし、これで速度も出せるわね」

…眺望は素晴らしいがカーブが多く、片側一車線しかない地方道路から片側三車線の立派なオートストラーダ(高速道路)に入った提督……道路は大都市である北部のローマやトリノを離れ、バーリを始めとする暖かなアドリア海沿いにある南部の観光地でクリスマス休暇を過ごそうとする人たちで南へ向かう車線こそ混み合っていたが、ありがたいことに提督が向かう北部への道路はあまり混雑していなかった……それでも物流を支える大きなイヴェコの長距離トラックや、追い越し車線でいらだたしげなエンジン音を残して飛ばしていくフェラーリやメルセデスがいて、提督は気を付けて運転していた…

提督「……あらまぁ」

…この時期になると、ポルストラーダ(※ポリツィア・ストラダーレ…交通警察)も速度を出すことそのものにはある程度目をつぶってくれるが、無理な追い越しをかけたり傍若無人な運転をしている車がいると、途端にサイレンを鳴らして猛禽のように飛びかかっていく……提督が運転している前でも一台のメルセデス63AMGが白と青のランボルギーニ・ガヤルドのパトカーに誘導され、路肩で違反切符をきられていた…

提督「クリスマスだからって交通ルールが変わるわけじゃないし、私も気を付けないと……」

…しばらくして・休憩所…

提督「……もしもし、お母様?」

クラウディア「まぁ、可愛いフランカ……休暇は今日からだったわよね、いまどのあたり?」

提督「もう、子供じゃないんだから「可愛いフランカ」は止めてよ……いま14号線の休憩所で、もうそろそろ16号線に乗り換えるところ」

クラウディア「じゃああと四時間もしないくらいかしら?」

提督「そうね」

クラウディア「分かったわ、いっぱい美味しいものを用意しておくから楽しみにしていてね?」

提督「ありがとう……でも前にも言ったとおり、今回は夏の休暇と違って私一人だからほどほどにね」

クラウディア「ええ、残念だわ。夏の時はライモンドちゃんたちも喜んでくれたし、今回もうちに来る娘がいたらうんとご馳走を振る舞ってあげようと思っていたのに……そうそう、シルヴィアも会いたがっているわよ♪」

提督「私もよ、それでシルヴィアおばさまは?」

クラウディア「ジュリエッタの整備をしに町へ行っているわ……とにかく、気を付けて帰ってくるのよ?」

提督「ええ、そうするわ……それじゃあ、チャオ♪」携帯電話越しにキスの音を送ると休憩所の喫茶店で買い込んだコーヒーを飲み干し、肩を回して伸びをすると、あらためて車に戻った……

…オートストラーダの制限速度はいちおう130キロから150キロまでということになってはいるが、高速道路の常で真面目に守っているドライバーはほとんどいない……提督も「ランチア・フラミニア」の安定感に任せて140キロで路面を走らせているが、追い越し車線ではまるでジェット機のように飛ばしている車が次々と視界から遠ざかっていく…

………

…昼下がり…

提督「ふぅ、やっとここまできたわね」

提督「燃料もまだあるし、このまま行けば1500時には家に着きそうね……」

提督「……って、私ったら♪」つい「午後三時」のことを軍隊式に「1500時」と考えてしまい、一人で苦笑いをした……

提督「アンナじゃないけれど、このままじゃあ腕と膝を伸ばして行進しかねないわ……♪」

…小さいころからの幼馴染みで、提督の「許嫁」を自称しているアンナいわく「早く私と結婚して退役しなさい、そうじゃないとそのうちに腕と脚を伸ばして行進するようになりかねないわ」とのことで、それを思い出して思わず微笑んだ…

提督「まぁ、もしアンナも帰省しているようなら、クリスマスの間くらいはわがままに付き合ってあげても良いかもしれないわね……♪」そう独りごちた途端、腰に手を当て、提督に向かって身勝手かつわがままな……それでいて可愛らしい「お願い」をするアンナの姿が目に浮かんだ……

提督「……ふふっ♪」

………

905 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/29(金) 01:52:19.05 ID:hWfNLb6y0
…カンパーニア州・提督の地元…

提督「……やっぱり故郷はいいわね」

…街角のクリスマス装飾や家々に暖かな懐かしさを覚えながら左右に視線を向けつつ、故郷の狭い石畳の道路に合わせてゆっくりとランチアを走らせる……街の道路をのろのろと抜けると、海沿いのちょっとした丘の上に建つ提督の実家が見えてきた…

提督「ふぅ、やっと着いた……♪」

…家の門を開けるとランチアを庭の小道に進ませ、車庫に停める提督……車を降りてエンジンの冷めるチリチリいう音を聞きながら伸びをしていると、玄関を開けて母親のクラウディアが小走りでやって来た…

クラウディア「お帰りなさい、フランカ♪」そのまま提督に駆け寄ると左右の頬にキスをして、その上で暖かで柔らかい唇をたっぷりと重ねた……

提督「ぷは……ただいま、お母様♪」

クラウディア「ええ♪ さ、外は冷えるから中に入りましょう? 暖炉の火も燃えているし、暖かいコーヒーにパンドーロもあるわよ♪」

提督「ありがと、お母様」

クラウディア「いいのよ……あら、ちょうどシルヴィアも帰ってきたわ♪」

…提督の実家に向けて続くなだらかな上り坂を、艶やかな赤に塗られた「アルファロメオ・ジュリエッタ」スパイダーが走ってきた……オープンカーのジュリエッタ・スパイダーは冬なので屋根に幌を張っているが、その小粋な姿は変わらない……提督のフラミニアの隣にジュリエッタを入れると、軽やかな足取りでシルヴィアが降りてきた…

シルヴィア「ただいま……それとフランチェスカ、お帰り」

提督「ただいま、シルヴィアおばさま♪」シルヴィアに近寄ると左右の頬にキスをし、それからぎゅっと抱きしめる……

シルヴィア「ん……っと、フランカってばまた大きくなったみたいね」提督に抱き寄せられ、かるくたたらを踏んだシルヴィア……

提督「もう……高校生じゃないんだからいまさら背なんて伸びたりしないわ♪」

シルヴィア「どうかしらね……」

クラウディア「さぁさぁ、早く手を洗って……積もる話は部屋でお茶を飲みながらしましょう♪」

…居間…

提督「あぁ、やっぱりうちはいいわ♪」手洗いとうがい、それにメイク落としも済ませると、冬用のふんわりした部屋着とスリッパに着替えて居間の定位置に落ち着いた……

クラウディア「実家って言うのはそういうものなのよ……さ、クリスマスのお菓子を召し上がれ♪」

提督「ありがと、お母様♪」長らく愛用しているカップに注がれた甘いミルクコーヒーとクリスマスシーズンに食べる特別なお菓子である「パンドーロ」をつまみ、パチパチとはぜる暖炉を眺める提督……

シルヴィア「……今はこうして何でもないようなふりをしているけれどね、クラウディアと来たら一昨日くらいからフランカが帰ってくるのをずーっと待ちわびていて、今朝もフランカの部屋を掃除したり、ごちそうの支度をしたりでちっとも落ち着かなかったのよ」

クラウディア「もう、それは言わない約束でしょう///」

シルヴィア「言わなくたって分かることだもの……そうでしょ、フランカ?」

提督「ええ、でも嬉しいわ♪」

クラウディア「……もう、二人して私の事をからかって♪」

シルヴィア「からかってはいないわよ……」ちゅっ♪

クラウディア「ん、あっ……もう、フランカの前なのよ?」

提督「どうぞおかまいなく♪」

シルヴィア「理解力のある娘で良かったわ……ん、ちゅっ♪」

クラウディア「ん、あふっ……せっかく淹れたコーヒーが冷めちゃうわ」

シルヴィア「冷めたって良いわ……」

クラウディア「もう、そういうことをいうなら……ん、ちゅる……っ♪」

シルヴィア「ふふ、ようやくいつも通りのクラウディアになった……んっ、ちゅむ……んちゅ♪」

提督「私が言うのもどうかと思うけれど、お母様とおばさまは相変わらずね……倦怠期なんてあったのかしら?」

シルヴィア「無くはなかったわよ、程度が軽かっただけでね」

クラウディア「まぁ、シルヴィアってばそうやってごまかすんだから……私、あの時期はずいぶんこたえたのよ?」

シルヴィア「かもしれないわ、二日も口を利かなかったのは後にも先にもあの時くらいだったもの」

提督「……それだけ?」

クラウディア「もう「それだけ」ってことはないでしょう? 冷え込んだ関係の二人が一つ屋根の下で過ごす二日は長いものよ?」

提督「あー……まぁ、お母様たちの仲を考えるとそれだけでも記録破りだけれど……」

シルヴィア「まぁ、結局は仲直りできたんだから良しとしないと……ね」

クラウディア「ええ♪」
906 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/05(金) 02:01:34.49 ID:nyN/p2w50
提督「あんまり仲良くいちゃついていると他人は胸焼けするってよく分かったわ……私も気を付けないと」

クラウディア「ということはフランカも鎮守府でライモンちゃんたちとずいぶんいちゃいちゃしているってことね?」

提督「まぁ、ありていに言えばね」

シルヴィア「確かに気立てが良くて可愛い娘だったわね」

クラウディア「もう、シルヴィアってばすぐそうやって女の子に色目を使うんだから」

シルヴィア「別に色目は使ってないわ……それに、浮気で言えばクラウディアだって相当なものだったと思うけれどね」

クラウディア「むぅ……」

提督「お母様が浮気?」

シルヴィア「そう。もっとも、私は気にしなかったけれどね」

クラウディア「お互い、女の子と遊ぶ時はちゃんと相手にも「ただのお遊びで、本気じゃない関係でいいなら」って伝えることって決まりにしていたから、あんまりこじれたことはなかったわね」

提督「……私もそうしておくべきだったわ」

シルヴィア「ということは、フランカに熱を上げている女の子がいるわけね……となるとアンナかな?」

提督「ええ……物の道理が分からない子供の頃にした「約束」を持ち出して結婚しろ、って言われてもね……」

クラウディア「アンナちゃんは勝気だけれど良い子だもの、結婚すればいいじゃない♪」

シルヴィア「そうね。ちょっと短気な所はあるけれど決断力はあるし、若いのに国際弁護士だなんて大した娘だと思うわ」

提督「ちょっと、お母様とおばさままで……まさかアンナに丸め込まれたわけじゃないわよね?」

シルヴィア「人にどうこう言われて意見を変えるような親じゃないってことは、フランカが一番よく知っているはずよ」

提督「ええ、それはもう……でも、だとしたら余計に困るわ」

クラウディア「ふふふっ、フランカも色んな可愛い娘を連れてきたものね……もし目移りしちゃうようなら、一人くらい手伝ってあげるわ♪」

シルヴィア「一人で済むとは思えないわね」

提督「あぁ、もう……この話はおしまい。シルヴィアおばさま、あとで銃のメンテナンスを手伝って?」

シルヴィア「ええ」

提督「それから、おばさまがクリスマスのご馳走に食べられるよう鎮守府へ猟の獲物を送ってくれるって話をしたら、みんな喜んでいたわ」

シルヴィア「そう、良かった。何しろ今年は夏からずっとイノシシが多かったものだから、コムーネの駆除依頼も多くてね……私とクラウディアだけじゃとうてい食べきれないし、肉屋のアルベルトに売りにいっても良かったんだけど、それよりは鎮守府の娘たちに送ってあげた方が喜ばれるでしょうし」

提督「ええ、とっても……この秋はイノシシだけ?」

シルヴィア「でもないわ。野ガモもいくらか撃ったし、ウズラもいくらか……あと、農家のエミーリオに頼まれて、ウサギも何羽か」

クラウディア「……そういえば、あのフランスの女の子はウサギのパイ皮包みが好きだったわね」

提督「マリーのこと?」

クラウディア「ええ♪ あの娘ったら顔立ちが整っていて、いかにもフランス人らしいコケティッシュなファッションが似合っていたわよね♪ 黒のミニドレスとか、薄い藤色のプルオーヴァーなんてすごく素敵で……♪」

提督「確かに」

クラウディア「フランカもそう思うわよね。 それで、せっかくだからフェンディのミニドレスでもあげようと思ったのだけれど、あの子ったら「マダム、お気持ちは嬉しいのですけれど……わたくし、ファッションはフランスのものしか身に付けないつもりですの」って♪」

提督「あー……マリーならそういうことを言うわ」

クラウディア「そうなの、だから代わりにイヴ・サンローランのクリーム色をしたトレンチコートをあげたのだけれど……すらっとしていて良く似合っていたわ♪」

提督「でしょうね。マリーったらいっつも「体型を維持する」とかいって、ヨガだかピラティスだか……そんなようなことをしていたもの」

クラウディア「ヨガ、ね……最近ふとももやヒップが気になるし、私も始めてみようかしら?」

シルヴィア「その必要はないんじゃない」

クラウディア「あら、どうして?」

シルヴィア「第一に、そのくらいむっちりしている方が私の好みだから」

クラウディア「もう、シルヴィアったら……で、第二の理由は?」

シルヴィア「ベッドの上で一晩過ごせば、ヨガなんかよりもずっといい運動になるから……♪」そう言うと身体を抱き寄せ、甘噛みしつつ鎖骨にキスをした……

クラウディア「あんっ♪」

提督「……帰って来ない方が良かったかしら」
907 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/11(木) 01:10:01.78 ID:0BOJ4mtA0
…夜…

提督「あぁ、美味しかった……お母さまの手料理に勝るものはないわ♪」

クラウディア「ふふっ、鎮守府であれだけ美味しい料理を食べているフランカにそう言ってもらえると、私も作ったかいがあるわ♪」

シルヴィア「フランカの言うとおり、クラウディアの料理ほど美味しいものはないから仕方ないわ……基地祭でご馳走になったディアナの料理も見事なものだったけれど、やっぱり「家の味」が一番いいもの」

クラウディア「もう、二人してそんなに私の事をおだてて……パンドーロをもう一切れ切ってあげましょうか?」

シルヴィア「私はもう満腹……フランカは?」

提督「うーん、もう少し食べたい気分だけれど……太ももが気になるから明日にするわ」

クラウディア「そう? じゃあ器にはフタをしておくから、いつでも食べてね?」

提督「ありがと、お母さま……それじゃあお風呂に入ってくるわね♪」

…実家の懐かしい……しかし鎮守府の豪華な大浴場に比べるとあまりにもつつましやかな浴槽に身体を押し込むと、肌にたっぷりの湯気を吸い込ませようとするかのようにシャワーの栓をひねり、日頃「節水」の二文字に追い回されている海軍軍人にとっての罪深い楽しみである際限なしのシャワーに身体をあずけた…

提督「ふー……♪」ふかふかのバスローブと頭にタオルを巻いた格好で歯を磨き、それから洗面台で髪にドライヤーをあてる……

シルヴィア「さっぱりした?」

提督「ええ、とっても♪」

シルヴィア「それは良かったわ」少し古びてはいるが暖かそうな栗色のパジャマ姿で、ゆっくり本のページをめくっている……

クラウディア「お部屋の布団は冬物にしておいたから、暖かく眠れるわよ♪」クラウディアは身動きするたびにパールピンクとアイボリーに変化して見えるシルク生地のネグリジェ姿で、その上からライトグレイのガウンを羽織っている……

提督「それじゃあゆっくりベッドの中で寝転がることにするわ……お休みなさい♪」クラウディアとシルヴィア、双方の唇にお休みのキスをして、お返しに二人からも口づけをもらって自室へと入った……

提督「寝るのには少し早いし、読書でもするとしましょうか……」

…ベッド脇のスタンドを点けると本棚から文庫本を取り出してベッドにもぐり込み、ラジオ局の放送にチャンネルを合わせると、うるさくない程度に音をしぼった……

ラジオ「RAI(イタリア国営放送)ラジオが……時をお伝えします。続けて各地の天気ですが……」

提督「ふわぁ……」

…次第に暖まってくるふわふわの布団と、ほどよく薄暗くしてあるスタンドの明かり、それにラジオの音に混じって寝室に届く波の音……ベッドこそ少し小さいが、懐かしい居心地の良さがある自分の部屋でゆったりと本のページをめくっていると、次第にまぶたが下がってきた……提督は本にしおりを挟むと卓上に置き、スタンドの明かりを消すと、そのまま小さな寝息を立てはじめた…

………

…翌朝…

提督「うぅ……ん♪」時計を気にせずあれこれ考える必要もないままに、ベッドの中でもぞもぞと身体を動かしながら、裸身をくすぐる布団の感触を楽しんでいる……

シルヴィア「……フランカ、もう起きてる?」

提督「ええ、目は覚ましているわ……」

シルヴィア「ならいいわ。朝食が冷める前に来るようにね」

提督「はぁーい」眠気の混じったあくびとも返事ともつかないような声をあげると、名残惜しげにベッドを出て、すぐ足元に並んでいるスリッパに足を入れ、それから椅子の背に引っかけてあるガウンに袖を通した……

…しばらくして…

クラウディア「おはよう、フランカ♪」

提督「おはよう、お母さま♪」

…歯を磨いて冷たい水で顔を洗うと、すっかり眠気が覚めた提督……居間の暖炉は残っていた昨夜のおき火にシルヴィアが焚き付けを足してあり、火勢こそ強くはないが心地よく火が燃えている……テーブルにはまだ十分に温かいコーヒーのポットと温めたミルク、暖炉のそばで温めたおかげで外皮がパリパリとして、中心の白いふわふわした部分にバターが溶けて染みこんでいるパン、夏の間にクラウディアが作ったお手製のイチゴジャムと、さっぱりしたミルクのような口当たりのリコッタチーズ…

クラウディア「よく眠れたようね」

提督「ええ、一晩中ぐっすり……♪」

シルヴィア「新聞はここに置いておくから、読みたかったらどうぞ」

提督「……ありがとう、おばさま」長い脚を暖炉の心地よい熱で温めながら、目をつぶって苦くて甘いミルクコーヒーをゆっくり味わう……

シルヴィア「このジャム、甘さもちょうどいいわ」

クラウディア「そう、良かった。甘過ぎると貴女の好みじゃなくなるし、かといって砂糖が少なすぎるとカビが生えるから……フランカはどう?」

提督「そうね、私もちょうどいいと思うわ……おばさま、リコッタの鉢をこっちに回してくれる?」

シルヴィア「ええ」

クラウディア「ふふ、いいものね……家族そろって食卓を囲むのは♪」

………

908 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/14(日) 00:58:06.48 ID:atQrelcs0
…午前中…

クラウディア「そういえばフランカ、クリスマスカードは書いた?」

提督「ええ。海軍関係の知り合いにはタラントの管区司令部で軍事郵便にして投函してきたわ……軍事郵便だから相手の所属と名前さえ分かっていればどこにでも届くし、軍の知り合い以外に出す分もついでに書いて、タラント市内の郵便ポストに投函しておいたわ」

クラウディア「そう、なら大丈夫ね」

提督「ええ。お母さまは?」

クラウディア「私は親戚だとか、付き合いのあったデザイナーやモデルの知り合いくらいかしら」

提督「つまり例年通りたくさんっていうことね」

クラウディア「そうでもないわ。私は半ば引退しているようなものだから、最近はそれなりに親しい人としかクリスマスカードのやり取りはしないし……」

シルヴィア「よく言うわ……この間「書き終わったクリスマスカードを投函したい」って言うから郵便局まで車を出したけれど、たっぷり五十枚はあったでしょう」

クラウディア「そうは言うけれど、あれでも現役の頃よりは減っているのは貴女が一番よく知っているじゃない」

シルヴィア「まぁね」

クラウディア「でしょう? それからフランカのクリスマスプレゼントはそこにちゃーんと用意してあるから、当日は楽しみにしていてちょうだいね♪」

シルヴィア「私からも用意してあるからね」そういって軽く頭を動かしてみせた先、可愛らしいクリスマスツリーの下には確かに「フランカへ」とカードのついた包みが二つおいてある……

提督「いつもありがと。お母さま、おばさま」

クラウディア「どういたしまして……ところでフランカ、あなたは鎮守府の女の子たちにプレゼントを用意してあげたの?」

提督「ええ、もちろん。 おかげで冬の賞与があらかた吹き飛んだわ……」艦娘たちの喜ぶ表情を想像し、それから通帳から引き出した額のことを考えて、思わず苦笑いを浮かべる提督……

シルヴィア「フランカは良い子だね」

クラウディア「ええ、だって私たちの娘だもの♪」

提督「もう、やめてよ……///」

シルヴィア「それにしてもあれだけの娘たちにプレゼントを買ったのなら、相当な大荷物になったんじゃない?」

提督「ええ、まるで絵本の泥棒みたいに袋を担いで鎮守府へ運び込んだわ」

…さかのぼって…

提督「ただいまー……ふぅ、ふ……ぅ」

デルフィーノ「お帰りなさい、提督……って、その荷物は一体なんですか?」

提督「それもちろん、みんなへのクリスマスプレゼントよ……これでもまだ半分で、残りは車の中にあるの」

デルフィーノ「じゃあ私も手伝いますっ」

提督「いいのいいの……私がみんなに買ってきたプレゼントだもの、最後まで私が運ばないとね」

ルチア「ワンワンッ♪」帰ってきた提督を見て、じゃれつきたそうに尻尾を振って足元を駆け回っている……

提督「あぁ、ルチア。お散歩は後で連れて行ってあげるから、今は大人しくしていてちょうだいね……お座り」

ルチア「ワフッ…♪」きちんとお座りをして、床の大理石を尻尾でぱたぱたと掃いている……

…廊下…

提督「ふぅ……ひぃ……みんな、ちょっと道を空けて」

トリチェリ「すごい大荷物ですね」

エウジェニオ「まるで夜逃げでもするみたいじゃない?」

提督「言ってくれるわね……よいしょ」執務室の前にたどり着くと、大きな袋をそーっと下ろした……

エウジェニオ「……これからプレゼントにつけるカードを書くのね?」

提督「ご名答……エウジェニオ、貴女は?」

エウジェニオ「私はもう済ませちゃったわ……提督もそういう時は化粧品とか下着みたいに軽いものを選ぶほうが楽よ?」

提督「それは私も知っているけれど、みんなの好みを考えたらそうも言っていられなくて」

エウジェニオ「ふふ、一人ひとりに合わせて好きそうなものを選んでプレゼントするなんて提督らしいわね……大抵の鎮守府じゃあ出来合いになっているお菓子の詰め合わせが良いところだって聞くわよ?」

提督「そうできないのが私の指揮官としての悪いところよ……貴女たちが可愛いから、つい恋人同士みたいな気分になって甘やかしちゃう♪」

エウジェニオ「恋多き女性だものね?」

提督「それは貴女もでしょ、エウジェニオ♪」
909 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/19(金) 01:46:26.07 ID:/1S64vcq0
…しばらくして・食堂…

提督「よいしょ……うんしょ……」

エウジェニオ「ほら、提督が通るから道を空けなさい」

ニコ「ずいぶんな大荷物だねぇ」

トレント「て、手伝いましょうか?」

提督「いいのよ、もう降ろすから……ふぅ」

レモ「くすくすっ、提督ってばまるで泥棒さんみたーい♪ それで、何が入ってるのぉ?」

提督「それはもちろん……♪」

レモ「……もしかして、クリスマスプレゼントっ?」

提督「ご名答。くれぐれも当日までは開けないように♪」

…クリスマスツリーの根もとに次々とラッピングの施された箱や包みを並べ、積み上げていく提督……個々のプレゼントには表書きに艦娘それぞれの名前を書き込んだ提督からのクリスマスカードが貼りつけてあり、それらを並べている間にも噂を聞きつけ、艦娘たちが入れ替わり立ち替わりでのぞきにくる…

エリトレア「わぁ、すごいたくさんのプレゼントです」

フルット「普段からよい暮らしをさせてもらっておりますのに、さらに散財をしていただいて……感謝しております」

提督「いいのよ、お世話になっているのはむしろ私の方だもの……♪」

アブルッツィ「それにしてもまぁ大変な量ね……」

提督「まぁね……それとクリスマス休暇に入っちゃう娘には先に渡すから、当日になったら開けてちょうだいね♪ セベリ、貴女もそうだったわよね……少し気が早いけれど、はい」

ウエビ・セベリ「わ、嬉しイです」

提督「そう言ってくれると用意したかいがあるわ♪」そう言って、クリスマス休暇で鎮守府を離れる予定の艦娘たちにプレゼントを渡す……

………



シルヴィア「いいことをしたわね。彼女たちだって欲しいものが色々あるでしょうし」

提督「ええ、そう思ってさりげなく聞き出したり、遠回しに尋ねてみたり……大変だったわ」

クラウディア「そうね……ところでフランカ、あの超ミニスカートのサンタ服は着たの? けっこう可愛かったけれど」

提督「けほっ! もうお母さまったら、何を言い出すかと思ったら……そもそもどうしてあの格好の事を知っているの?」

クラウディア「だって、前にうちに泊まりに来たお友達の方が教えてくれたもの」

提督「もう、いったい誰よ……そういう余計な事を吹き込んで……///」

…転属や航海の都合で「根無し草」的な暮らしになる事の多い海軍士官の常で、温かい家庭的な雰囲気というものに憧れがある……そのせいか、お互いに機会があれば家に泊めてあげたり、食事を振る舞ってあげることも少なくない……提督の実家はガエタの近郊とは言うものの田舎にあって交通の便もひどく悪いが、それでも仲良しになった何人かは週末や短い休暇を使って泊まりに来たことがある…

クラウディア「さぁ、誰かしら♪」

提督「もう……」

シルヴィア「ふふ……そういえばフランカ、クリスマス休暇はいつまで?」

提督「えーと、クリスマスを挟んでの二週間と年始からの三日間ね……どうして?」

シルヴィア「いえ、せっかくの機会だからどこかスキーにでも行こうかと思って……モンテ・チェルヴィーノ(マッターホルン)のふもと辺りなんてどうかしら」

提督「チェルヴィニアとか?」

(※モンテ・チェルヴィーノ…マッターホルンのイタリア名で「鹿の角」の意。第二次大戦時に「白い悪魔」とも称されたイタリア山岳部隊「モンテ・チェルヴィーノ」大隊の名前の由来でもある。チェルヴィニアはそのふもとにある村で有名なリゾート地)

シルヴィア「ええ。もっともああいう有名どころは外して、もっと小さなコムーネにある静かなホテルにでも泊まって過ごすの」

提督「うーん、アイデアは素敵だけれど休暇の日数を考えると……ね」

シルヴィア「ちょっとせわしないわよね、フランカが子供の頃はあちこちよく行ったものだけれど」

提督「でも嬉しいわ、おばさまが誘ってくれて……♪」

シルヴィア「当然でしょう? 貴女は私にとって最愛の女性の娘であり、可愛い宝物だもの」ふっと口元に小さな微笑を浮かべ、さらりと言った……

提督「……おばさまにそういう風に言われるとすごくドキドキするわ///」

クラウディア「そうよね、私まで胸がときめいたわ♪」

シルヴィア「さすがに二人同時に相手をするのは勘弁して欲しいわ……どっちも可愛いけれどね」

クラウディア「ふふ、それじゃあ今夜は私♪」
910 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/22(月) 01:38:57.03 ID:ING35Mc+0
…翌日…

シルヴィア「おはよう、フランカ……少しいいかしら」

提督「なぁに、おばさま?」

…鎮守府では朝から新聞やニュース、気象通報に目を通し耳を傾けていたが、休暇に入ってからはテレビやラジオのニュースも最低限で済ませ、一日中ふにゃふにゃのセーターやナイトガウン姿で庭いじりをしてみたり、文庫本をめくっていた提督……士官学校で身体にしみついた習慣が抜けないもので寝具だけはきちんと畳んでおいたが、この日ものんびり温かいカフェラテをすすり、ほかほかしたパンを口に運んでいた……と、シルヴィアが声をかけてきた…

シルヴィア「いえ、せっかくの機会だから射撃にでも行こうかと思って……行く?」

提督「ええ、久しぶりだし……ちょっと待ってて、すぐ食べ終わるわ」残ったパンを口に放り込むとカフェラテで流し込み、食器を洗いにせかせかと台所へ歩いて行く……

シルヴィア「ゆっくりでいいわよ、私だって支度はまだなんだから」

提督「だって、せっかくの機会だもの……できるだけ長く一緒にいたいわ」

クラウディア「そうね、昨晩は私が独り占めしちゃったから……今日はフランカの番♪ お弁当、いま用意してあげるわね」

提督「グラツィエ、クラウディアお母さま……大好きよ♪」

クラウディア「はいはい♪」

…しばらくして…

提督「用意できたわ、おばさま」

シルヴィア「私もよ……ところでフランチェスカ、鎮守府ではずいぶん美味しいものを食べているみたいね」

提督「むぅぅ……これでも腹筋や腕立て伏せをしてみたり、チェザーレやバンデ・ネーレに剣術の稽古を付けてもらったりして気を付けてはいたのよ?」

…提督はクリーム色のセーターに茶色のラム革ベストと黒い牛革の手袋、鎮守府ではほとんど出番のない軍用の迷彩ズボンを着て、背中にはクラウディアの用意してくれた弁当や水筒の入っている小ぶりなリュックサックを背負っている……腰のベルトには散弾銃の弾薬ケースやこまごましたものの入った小ぶりなポーチを通し、ズボンの裾を黒革のひざ丈ブーツに突っ込んであるが、鎮守府での食生活がたたってかズボンのヒップからふとももは少しきゅうくつで、ベストの胸回りも少しきつい…

シルヴィア「ま、デスクワークが多いでしょうし仕方ないわね」

…そう言って肩をすくめたシルヴィアは着古した白いプルオーヴァーと、自分で射止めてなめした鹿革をクラウディアに縫製してもらった愛用の茶色いベスト、黒い乗馬ズボンとふくらはぎ丈の黒革ブーツ姿で、肩からは昔の山賊のように弾薬ベルトをかけ、獲物をさばくためのがっしりした「フォックスナイヴス」のナイフをブーツに突っ込んである…

提督「ええ、書類の海で泳げそうなほどよ」

シルヴィア「それじゃあせいぜい野山を歩き回って新鮮な空気を味わうとしましょう……お昼になったらクラウディアのお弁当を食べて、夕方になったら戻る」

提督「とっても健康的ね」久々に持つベネリの散弾銃を手に持ち、重さを確かめるようにして握り直す……

シルヴィア「そういうこと」フランキの散弾銃を肩にかけ、裏庭の門を開けると雑木林の間に入っていった……

…二時間後…

提督「ふぅ……」

シルヴィア「だいぶくたびれたみたいね……少し休憩にする?」

提督「そうする……まったく、身体がなまっているって実感したわ……」手頃な倒木に腰を下ろすと暴発させないよう散弾銃を置いて、肩を回し、脚を伸ばした……

シルヴィア「そうみたいね」午前中だけで茂みから飛び出してきたつがいのキジに、素早い野ウサギを一羽、それに四羽ほどの野鴨を仕留めて腰にぶら下げている……

提督「ええ……そんなに歩いたわけでもないのに、こんなに息切れするなんてね……」射撃の腕自体は衰えていないはずだったが肩で息をしていたせいか、それまでなら難なく撃ち落としていたはずの野鴨の群れに逃げられ、二羽ばかりが残念そうにぶら下がっている……

シルヴィア「まあ、こっちにいる間だけでも身体がなまらない程度に運動すればいいわ……ちょっと早いけどお昼にして、それからもう少し歩いて帰りましょう」

提督「そうね……」

…暖かな日差しを受けた森の空き地でお弁当の包みを開く提督とシルヴィア……中身はもちもちしたフォカッチャに乾燥トマトや黒オリーヴ、少し塩っぱいハムなどを挟んだサンドウィッチと、アーモンドと干しぶどうを練り込んだ味の濃いチーズ、小瓶に入ったアーティーチョークのピクルス……冬枯れた広葉樹の枝やいつでも青々としたカサマツの間を風がさわさわと吹き抜けて、硝煙と汗にまみれた肌を冷やしていく…

シルヴィア「……いい風」

提督「ええ」

シルヴィア「ねえ、フランチェスカ……」散弾銃を置くと提督の隣に座り直した……

提督「なぁに、おばさま?」

シルヴィア「……久しぶりに……する?」じっと見つめてくる瞳に、汗と硝煙と皮革の野性的な匂い、そこに爽やかな松葉の混じった香ばしいような香り……

提督「ええ……///」

シルヴィア「ん……♪」

提督「あ、んぅ……あふっ///」

シルヴィア「フランカとこうするのも久しぶりね……んむ、ちゅ……っ」

提督「ええ、だってシルヴィアおばさまは私が初めて好きになって、初めて愛することを教えてくれた女性(ひと)だもの……」

シルヴィア「……あの時は私もずいぶん悩んでからクラウディアに相談したものだけれど、まさかあんなにあっさり許すとは思わなかったわ」

提督「そうね、お母さまが心の広い人で良かったと思うわ……ん、ちゅ♪」
911 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/29(月) 02:28:02.91 ID:qw/aShxX0
シルヴィア「ふふ……私もクラウディアのそういう所が好きで結婚したのよ」

提督「おばさまの気持ち、分かるわ……んんっ、あぅ……ふあぁ……っ///」

…日差しの差し込む小さな森の空き地で生えている木に背中を預け、脚の間に割って入るシルヴィアの膝や、ぐっと迫ってくる顔と吐息を感じている……きゅっと引き締まった乳房がセーター越しに触れ、ベルトを緩めてズボンの中に入ってきたシルヴィアのひんやりした指が熱を帯びた提督の秘部に触れる…

提督「ん、あっ……あぁ……ん///」

シルヴィア「フランカ……愛おしい私の娘♪」

提督「シルヴィアおばさま……ぁ///」

シルヴィア「……ここ、好きだったわね」ちゅく……っ♪

提督「ええ、そう……ふぁぁ……っ♪」

…木立の間に響く野鳥の鳴き声や、地面から立ちのぼってくる枯葉と土の乾いた匂いを感じながら、下腹部のじんわりととろけるような感覚に甘い声を漏らす…

シルヴィア「良かった。忘れていないものね……」ごつごつした樹皮に提督を押しつけるようにしながら身体をくっつけるとズボンのベルトを緩め、ウエストのすき間から提督の手をいざなって自分の花芯へと導いた……

提督「シルヴィアおばさまのここ……濡れていて……温かい……♪」

シルヴィア「フランカのキスが上手だからよ」

提督「嬉しい……ん、ちゅぅ……ちゅる……っ///」

シルヴィア「フランカ……♪」

提督「あ、あっ……シルヴィアおばさま……ぁ///」とろ……っ♪

シルヴィア「ん……♪」最後に愛のこもった優しいキスを唇にすると、濡れていない方の手で短めにしている髪を軽くかき上げた……

提督「はぁ、はぁ、はぁ……ぁ///」

…木の幹に背中をあずけたまま、ずるずるとくずれ落ちそうになる提督……気だるげな心地よさと、もっとシルヴィアと愛し合いたいという甘ったるい欲望で目がかすみ、敏感になった乳房の先端やとろりと濡れた花芯に下着の布地が触れるたびに静電気のようなピリッとした刺激が伝わってくる…

シルヴィア「そろそろ日が傾いてくるし、戻りましょう」

提督「ええ、シルヴィアおばさま……///」服の乱れを直して立ち上がったが、じんわりと濡れて冷たくなり始めた下着がはり付いてくる気色の悪い肌心地と、下腹部からの甘い余韻が合わさって微妙な内股になっている……

シルヴィア「ふふ……その調子じゃあ日暮れまでにうちに戻れるかどうか分からないわね」

提督「も、もう……おばさまったら笑わないで///」

シルヴィア「悪かったわ……足元のおぼつかないフランカも可愛いわよ♪」どちらかと言えばクールなシルヴィアにしては珍しく、どこか色っぽい笑みを浮かべながら見せつけるようにして右手を開き、中指と薬指の間に引いた粘っこい糸を舐めあげた……

提督「……っ///」

………

…夕方…

提督「お母さま、いま戻ったわ」

シルヴィア「ただいま、クラウディア」

クラウディア「あら、お帰りなさい♪ 獲物はあった?」

シルヴィア「悪くはなかったわ。血抜きは済ませてあるから、羽根をむしったり皮を剥くのは後でするとしましょう」

クラウディア「ええ、お願いね……あら」シルヴィアとキスをすると、少し問いかけるような表情を浮かべた……

シルヴィア「どうかした?」

クラウディア「……フランカの味がするわ」

提督「……っ!」

シルヴィア「さすが、鋭いわね」

クラウディア「自分の結婚相手と娘の味くらい分かるわ……それで、どうだった?」笑みを浮かべ、上目遣い気味にしながらいたずらっぽく問いかけた……

シルヴィア「とっても可愛かったわ、貴女の娘だけあって……ね♪」

クラウディア「まぁ、ふふっ……♪」

提督「///」

クラウディア「あらあら、フランカったら恥ずかしがっちゃって……シルヴィアは素敵だもの、我慢なんてできないわよね?」

シルヴィア「まったく、自分の娘に惚気てどうするの」

クラウディア「いいじゃない、貴女は私の自慢の女性(ひと)だもの……さ、夕食の前にほこりを洗い流していらっしゃいね♪」
912 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/03(土) 02:28:47.52 ID:YuI7hGX20
…クリスマス数日前…

提督「お母さまたちとクリスマスを過ごすのも久しぶりね」

クラウディア「そうねぇ……フランカが海軍に入ってからはなかなか会う機会もなかったものね」

提督「これでもクリスマスに休暇が取れるよう毎年頑張ってはいたのだけれど……なかなかそうも言っていられなくて」

シルヴィア「でもフランカは毎年クリスマスカードを書いてくれていたから、クリスマス・イヴになるといつも二人で読んだものよ」

提督「私もお母さまとおばさまのカード、欠かさず読んでいたわ……それにお菓子やプレゼントも贈ってくれたわよね」

クラウディア「ええ、一緒にいられないぶん贈り物くらいはしないと♪」

提督「お母さまたちの気持ちが伝わってくるようで嬉しかったわ。お菓子なんかは士官宿舎で集まって持ち寄りのクリスマスパーティなんかしたときに、ずいぶん好評だったし」

クラウディア「そう言ってもらえると作ったかいがあるわ」

提督「何しろみんな甘いものが好きだから……」と、提督の携帯電話がぶるぶると震えだした……

シルヴィア「電話みたいね」

提督「ええ。緊急呼び出しの番号なら着信音も鳴るようにしてあるから、たぶんそこまでの用事じゃないはずだけれど……あ」

クラウディア「知り合いの女の子?」

提督「ええ、ジュリアだわ。P−3C哨戒機の飛行隊長をしている……もしもし?」

…シチリア島・カターニア…

アントネッリ中佐「やぁフランチェスカ、ご機嫌にしているかな?」

…イタリア海軍航空隊・カターニア航空基地の外、モトグッツィの大型バイクのかたわらで電話越しに提督の柔らかな声に耳を傾けているアントネッリ……黒革のライダースジャケットに筋肉質な脚線美を余すところなく引き出しているぴっちりしたレザージーンズ、オートバイ用のがっちりしたブーツで、黒に近いボルドー色のルージュを引き、冬の低い日差しで目がくらまないように濃いサングラスをかけている…

提督「ええ、おかげさまで……ジュリア、貴女は?」

アントネッリ「ご機嫌さ、ありがとう」

提督「クリスマス休暇は取れた?」

アントネッリ「ああ、今日からね……正確に言えば今からかな。今日の明け方から太陽と一緒に哨戒飛行を済ませてきたところさ。他の連中はフライトスーツを脱ぐなり街に飛び出していったよ……酒を飲んでしまえば緊急呼集がかかっても飛ばなくて済むからね」

提督「なるほどね♪ それで、何事もなかった?」

アントネッリ「ああ、深海のお化けたちもクリスマスはお休みらしい」

提督「それは良かったわ」

アントネッリ「まぁね……私の方は機付整備員たちをねぎらって、それからさっきまで基地司令がよこすしょうもない書類にサインをしていたんだが……今は晴れて自由の身さ。年内は実家かい?」

提督「ええ、その予定よ……もし良かったら泊まりに来る?」

アントネッリ「いいや、せっかくの家族水入らずの時間に割って入るほど無粋じゃないつもりだよ……年が明けたら鎮守府の方にお邪魔するさ」

提督「あら、そう? ジュリアが来てくれたらお母さまもおばさまも喜んでくれると思うけれど……」

アントネッリ「なに、その気持ちだけで嬉しいよ……可愛いフランチェスカ♪」

提督「もう、相変わらず上手なんだから♪」

アントネッリ「事実なんだから仕方ないさ」

提督「今までどれだけの相手にそう言ってきたの?」

アントネッリ「君ほどの美人には一度も」

提督「ジュリアってば……口説いた相手全員にそう言っているんでしょう?」

アントネッリ「いいや? 私が本気で口説くのはフランチェスカ、君と……それからあの青い空だけさ」

提督「まぁ、今どきメロドラマでもそんな台詞は言わないわよ?」そう言いつつも、携帯電話の耳元へささやくように話しかけるアントネッリの声に、思わずどきっとする提督……

アントネッリ「そうかもしれないね……ふふ、とにかくよいクリスマスを」

提督「ええ……ジュリア、貴女もね」

アントネッリ「ああ、ありがとう……チャオ♪」電話越しに投げキッスの音を送ると、通話を終えた……

提督「もう、ジュリアってば……ただ「良いクリスマスを」って言えばいいだけなのに///」

シルヴィア「……この調子だとこれから数日はフランカの携帯電話が鳴りっぱなしね」

提督「それだけは勘弁してほしいわ」想像して思わず苦笑いを浮かべた……
913 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/07(水) 01:39:13.15 ID:aQ++Hmij0
…12月23日…

提督「いよいよ明日からクリスマスね」

(※カトリックの国は教会暦で24日の晩からがクリスマス。クリスマス・イヴは「クリスマスの晩」であって「前夜」ということではない)

クラウディア「そうね……さぁ二人とも、一緒にツリーの飾り付けをしましょう?」

提督「はーい」

シルヴィア「ええ、いま行くわ」

…ここ何年か提督抜きの二人きりでクリスマスを過ごしてきたクラウディアとシルヴィアだったが、今年はひさびさに家族揃ってのクリスマスということで、居間のツリーはしきたりにのっとり、今日まで飾り付けを仕上げないまま立ててあった……暖炉のなごやかな火を見ながら穏やかに、しかし和気あいあいと母娘で飾りつけに興じる提督たち…

提督「……やっぱりうちで過ごすクリスマスっていいものね♪」

クラウディア「そうでしょう。それから明日はちゃんとお魚料理、明後日はアヒルや鴨のごちそうが控えているから期待していてね♪」

シルヴィア「しかもクラウディアが料理するんだもの……考えただけで涎が出るわね、フランカ?」

提督「ええ♪ あ、その飾りはこっちにちょうだい?」

…クラウディアとシルヴィアが年ごとに、また色々な記念に少しずつ買い足していった思い入れのあるオーナメントや飾り物でにぎにぎしく装飾されていくクリスマスツリー……木の葉が揺れ動くたびに青々とした針葉樹の香りがふっと鼻腔をくすぐり、金銀の玉飾りやリンゴを模した木の飾り物、雪の結晶や小さな銀の星が取り付けられてゆくうちに、ツリーが華やかさを増していく…

クラウディア「どう? お星様は傾いてない?」つま先立ちをして人の背よりも高いツリーのてっぺんに銀の星の飾りを載せると、少し下がってシルヴィアに尋ねた……

シルヴィア「大丈夫、真っ直ぐよ」

クラウディア「そう、それじゃあ完成♪」

提督「……本当に、いつ見ても綺麗ね」

クラウディア「ええ、シルヴィアほどじゃないけれど♪ ……それに、こうして祝えるのがなによりね」

提督「そうね」

シルヴィア「それじゃあ賛美歌のレコードでもかけて……二人とも、ヴィン・ブリュレーでも飲む?」

(※ヴィン・ブリュレー…温めた赤ワインに香辛料や柑橘の風味を利かせたもの。グリューワイン)

クラウディア「ええ、いただくわ♪」

提督「私も」

シルヴィア「分かった」

…暖炉の片隅に鍋を置くと赤ワインを注ぎ、砂糖の代わりに地元の農家から分けてもらった蜂蜜を垂らし、ショウガやシナモン、それにオレンジとレモンのピール(皮)を加えて軽く温める……鍋でワインがふつふつと言い始めたところで鍋を火から遠ざけると、めいめいのカップにワインを注いだ…

クラウディア「ん……美味しい♪」

シルヴィア「クラウディアは甘めが好きだから、蜂蜜を多めにしたの……フランカはどう?」

提督「ええ、ちょうどいいわ」

シルヴィア「それなら良かった……ん///」

クラウディア「ちゅっ……どう、美味しい?」

シルヴィア「ええ、とっても甘かったわ」

提督「そうね……お母さまたちがいちゃつく分、蜂蜜はもっと少なくて良かったわ」

クラウディア「もう、フランカってば自分の母親に嫉妬しちゃって……んーっ♪」

提督「ん、んぅ……っ///」

クラウディア「これで機嫌を直してくれる?」

提督「機嫌を直すもなにも……実の母親にキスされたからってどうこうしないわよ///」

クラウディア「あら、残念♪」

シルヴィア「……クラウディア」

クラウディア「なぁに?」

シルヴィア「ん……んちゅっ、ちゅぅ……ちゅる……っ、ちゅ……っ♪」

クラウディア「あっ……ふ……んぅ♪」

シルヴィア「ぷは……フランカは可愛いけれど、せっかくのキスを上書きされたくはなかったから」

クラウディア「……まぁ///」

提督「……やっぱり蜂蜜はいらなかったわ」
914 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/13(火) 01:56:19.59 ID:q0m2a0XY0
…12月24日・午前…

提督「おはよう、お母さま、おばさま……いよいよクリスマスね」

クラウディア「ええ、今夜は一緒に教会へ行きましょうね♪」

提督「こっちでクリスマスミサに参加するのも久しぶりね……」

…そう言って提督がのんきにコーヒーをすすっていると、庭の門に付いている呼び鈴が鳴っている音が聞こえてきた…

クラウディア「……きっと郵便局のペリーニさんね」

シルヴィア「さすがね……貴女の言うとおり、郵便配達のペリーニだったわ。それを取って頂戴?」椅子から立ち上がり居間の窓から庭先の門を眺めて言った……

クラウディア「ええ♪」この町の郵便配達やパトロールの巡査、消防署員といった人たちに挨拶として渡すため、クラウディアが毎年のように作っているクリスマスカード付きの菓子の小袋を一つ手渡した……

提督「ペリーニさん、まだ配達をしているのね」

クラウディア「ええ。本当ならくせっ毛のアルベルトが継ぐはずだったのだけれど、田舎は嫌だってナポリに出て行っちゃったものだから」

提督「ナポリねぇ……食べ物は美味しいけれど、地区によってはずいぶん柄の悪い人間もいる街よ?」

クラウディア「そうは言っても、都会にあこがれるものなのよ」

提督「かもね」そう言って肩をすくめた提督……と、シルヴィアが戻ってきて束ねた郵便物と小包の山を机に置いた……

シルヴィア「郵便配達の人がクリスマスカードを届けてくれたわよ……フランチェスカ、貴女宛のもずいぶんあるわ」

提督「あら、本当?」

クラウディア「せっかくだし誰から来たのか読んでみたら?」

提督「そうね、他にやることがあるわけじゃないし……えぇーと」

…士官学校で知り合い、いまではそれぞれの任地に散らばっている仲の良い同期を始め、提督と「親しい」間柄にあった女友達やまだ文通の続いている「お姉様」たち、それにフランスのトゥーロンからカードを送ってきたエクレール提督を始め、各国海軍にいる提督の知り合いや友人たち…

提督「さてと、一体誰から来ているかしら……まずはトゥーロンのマリーに、イギリスからはメアリ、アメリカからはノーフォークのジェーン……あ、姫もわざわざ横須賀からカードを送ってきてくれたのね」

クラウディア「ジェーンって言うのは、写真で見せてくれた褐色のグラマーさん?」

提督「ええ、口は悪いけれど米大西洋艦隊ではピカイチの提督ね」

シルヴィア「姫っていうのは、夏期休暇の時の日本酒をプレゼントしてくれた日本の提督さんでしょう?」

提督「ええ。横須賀の百合野准将……長い黒髪がきれいな奥ゆかしい女性よ。提督としても艦隊運用が上手だし、ぜひまた会いたいわ」

クラウディア「他にもあちこちからたくさん届いているわね……フランカは可愛いから♪」

提督「もう、照れるからよして……たいていはもう送ってあると思うけれど、カードを出していない人がいたら書いてあげないと」

シルヴィア「良かったわね、読む楽しみが出来て……それとクラウディア、フランカだけじゃなくて貴女にもずいぶん来ているのよ?」

クラウディア「あら、本当に……お義理のカードはもうお断りしているのだけれど、それでもずいぶんあるものね」

シルヴィア「デザイナーをしていたときの貴女は顔が広かったものね」

クラウディア「そうは言ってもファッション業界なんて次々と新顔が出てくるし、私みたいに引退してのんびりしている人間なんてすぐ忘れられちゃうわ」

シルヴィア「この量を見る限り、そうでもないみたいだけれどね」

クラウディア「んー……まぁ、まだ時々は私にデザインを見て欲しがる人なんかもいるし、多少はね?」

提督「お母さまってば、せっかくお呼びがかかるんだもの……もう一度デザイナーとして復帰すればいいのに」

クラウディア「いいの。こういうのは形だけ言っておくお世辞みたいなものなんだから、本気にしたらバカにされちゃうわ……それにここでシルヴィアと愛し合っている方が性に合っているもの♪」

シルヴィア「ミラノのファッションにとっては大きな損失ね」

クラウディア「貴女がいないミラノよりは、貴女のいるここがいいわ♪」

シルヴィア「嬉しいことを言ってくれるわね……でも、このまえ身に付けていたミラノの素敵なランジェリーは捨てがたいわ」

クラウディア「もう……♪」

提督「あー……私はお母さまたちのお邪魔をしないよう、部屋でクリスマスカードを読んでいることにするわ」

クラウディア「ふふ……ありがと、フランカ♪」提督が二階へと上がって行くなり、シルヴィアに抱きついた……

シルヴィア「ちょっと、クラウディアってば……ミサの時間まで半日はたっぷりあるんだから、そう焦らなくたっていいでしょうに」

クラウディア「むしろ、たった半日しかないのよ? お夕飯の支度もしないといけないし……」

シルヴィア「それじゃあ夕飯の支度をしながらすればいいわ……こんな風に♪」よく台所でするように、後ろからぎゅっと抱きしめた……

クラウディア「あんっ♪」
915 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/19(月) 02:15:52.33 ID:ExjpwAj80
…しばらくして…

クラウディア「それじゃあ晩のミサの前に食事にしましょう……さ、二人ともかけて?」

提督「ええ」

シルヴィア「座ったわよ」

クラウディア「よろしい、それじゃあ食前のお祈りを……」

…シルヴィアもクラウディアも形ばかりのカトリックであまりやかましいことは言わないが、食べ物への感謝をこめて食前の祈りをささげ、提督も二人に合わせて祈りの言葉を唱え、十字を切った…

シルヴィア「……そして素晴らしい食事を作るクラウディアにも」祈りのおまけにそう付け加えたシルヴィア

クラウディア「もう、シルヴィアったら……それじゃあ召し上がれ♪」

…イタリアではクリスマスの晩は肉食を断って魚料理を主菜におくことから、食卓には魚料理が並んでいる……前菜のマリネに続いて、クラウディアがアサリのうまみが沁みだした「スパゲッティ・アッレ・ヴォンゴレ」(ボンゴレ・ビアンコ)を取り分ける…

クラウディア「どう、フランカ?」

提督「ん……美味しいわ♪」

…どんな魔法を使っているのか、シンプルなヴォンゴレのパスタにもかかわらず、提督が作るものよりも美味しい……アサリから出た旨味のある塩気と、白ワインからくるごくかすかな爽やかな酸味……それにあとを引くニンニクの風味…

クラウディア「そう、良かったわ♪」

シルヴィア「本当に美味しいわよ……ワインも進むわ♪」

クラウディア「ミサに行くのだからあんまり飲み過ぎないのよ?」

シルヴィア「ええ、そうするわ」

クラウディア「ふふっ……それじゃあ次のお料理を取ってくるわ♪」

…軽やかな足取りで戻ってきたクラウディアが卓上に置いたのは、メインディッシュにあたる「セコンド・ピアット(第二皿)」の料理で、クリスマスの魚料理ということで、シチリアと向かい合うイタリア半島のつま先、レッジョ・ディ・カラーブリアの名物料理「ストッコ・アッラ・マルモレーゼ(マルモラ風の干し鱈)」がほかほかと湯気を立てている…

シルヴィア「いい匂いね」

クラウディア「うふふっ、今年はフランカが帰ってくるって言うから少し高いバッカラ(干し鱈)を買っておいたの」

提督「二日前から水に漬けて、半日おきにその水を替えて……お母さま、大変だったでしょう?」

クラウディア「いいのよ、久しぶりに家族みんなで過ごすクリスマスなんだもの♪」

…浅鍋でソフリット(野菜のみじん切りやハーブをラードで炒めたもの)を作ったところに皮を剥いたトマトを加えて煮詰めながら塩を振り、くし形に切ったジャガイモやオリーヴ、バッカラを加え、コトコトと煮込む…

提督「ん、はふっ……うーん、いい味♪ トマトの甘酸っぱいところにソフリットの風味とオリーヴの渋み、絶妙な塩気……私も何回か作ったことがあるけれど、やっぱりお母さまにはかなわないわ♪」お手上げとばかりに両方の手のひらを上に向けた……

クラウディア「ふふっ、私だってただ長い間台所に立っているわけじゃないのよ♪」

シルヴィア「そうみたいね……それにフランチェスカもいるから、今年のはことさらに美味しいわ」

提督「私もお母さまたちと一緒に食べることができて嬉しい……♪」

………



提督「……あぁ、美味しかったわ♪」

クラウディア「いっぱい食べた?」

提督「ええ、食べ過ぎちゃったくらい……あんまり家の料理が美味しいのも考え物ね?」そういうと、冗談めかしてお腹の肉をつまむ真似をする……

クラウディア「ふふ、貴女くらいの歳ごろは食べ過ぎるくらいでちょうどいいのよ♪」

提督「もう、お母さまったら……私だってもう子供じゃないんだから、そんなに食べさせなくったっていいの」

シルヴィア「それでもフランチェスカはまだ若いからいいわ……私なんかは気を付けないと、あっという間に樽みたいな体型になってしまいそうね」

クラウディア「あら、私は貴女が樽みたいな体型だって構わないわよ?」

シルヴィア「勘弁してちょうだい……そうならないためにも、皿を片付けて運動するとしましょう」

提督「それなら私も手伝うわ。食後のパンドーロを食べた分、カロリーを消費しないと♪」

クラウディア「まぁ、二人ともありがとう♪」

………
916 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/26(月) 01:30:53.98 ID:zTDZK47j0
…夜…

クラウディア「それじゃあ、ミサに行く準備はできた?」

…そういって玄関先で二人に声をかける……クリスマスミサと言ってもある程度シックな装いであれば問題ないので、クラウディアはクリーム色のベルト付きトレンチコートに、淡いレモン色のふわふわしたセーターと白のスラックス、頭にはメルトン(厚手のフェルトのような布)の白いベレー帽をかぶって、首元にアクセントとして花柄プリントが施されたスカーフを巻いている…

シルヴィア「済んでるわ」

…シルヴィアは黒いダブルのステンカラーコートにパールグレイのピッタリしたタートルネックセーター、細身の黒いスラックス……それに差し色としてワイン色のマフラーを巻き、足元をヒール付きショートブーツで固めている…

提督「私も」

…提督は北欧への出張でもお世話になった黒のラップコートと淡いあんず色のセーター、それに百合の花のように広がるシルエットが綺麗な白いスカートで、黒タイツと茶革のミドル丈のブーツを履いた…

クラウディア「鍵は私がかけるわね」二人が玄関を出ると鍵をかけ、それからシルヴィアの腕につかまって歩き出した……

シルヴィア「そうしがみつかないで、歩きにくいわ」

クラウディア「恥ずかしい?」

シルヴィア「それは別に……ただ、そこまで身体を寄せられるとね」

クラウディア「そう、残念♪」おどけた口調でそういうと少しだけ身体を離し、代わりにシルヴィアの指に自分の指を絡めた……

シルヴィア「そのくらいならいいわ」

クラウディア「フランカ、あなたには反対側を貸してあげる♪」

提督「ありがと、お母さま……それじゃあ遠慮なく♪」そういうとわざとスキップのような子供じみた動きで横に並び、黒革の手袋につつまれた細い、しかし意外と力強いシルヴィアの手をつかんだ……

シルヴィア「まさに両手に花、ね」

…街の教会…

アンナ「……フランカ!」

…家から歩いて十分あまり、クラウディアたちに続いて街の中心広場に建っている教会へと入ろうとしたとき、不意に後ろから声をかけられた提督……聞き馴染みのある声を耳にして振り向いた矢先、幼馴染みのアンナが飛び込むようにして抱きついてきた…

提督「アンナ、帰ってきていたのね?」一瞬たたらを踏みそうになったが航海で鍛えられたバランス感覚でどうにか姿勢を保ち、アンナを受けとめながらたずねた……

アンナ「そりゃあクリスマスだもの……ベルギーとルクセンブルクでそれぞれ一件ずつ税法絡みの訴訟があったんだけど、とっととけりを付けて戻ってきたの」提督の左右の頬にキスを済ませると、肩をすくめていった……

提督「相変わらずね」

アンナ「それはこっちのセリフよ。帰ってくるんだったらそう言いなさいよ……てっきりクリスマスもタラントで缶詰にされているものだとばっかり思ってたわ」

提督「さすがに海軍だってクリスマスくらいは休ませてくれるわよ」

アンナ「そう。それじゃあフランカ……明後日にでもうちにこない?」

提督「えっ、でも……」いくら幼馴染み…アンナに言わせると「許嫁」とはいえ、家族水入らずで過ごすのが当然のクリスマス前後に家への招待を受けるのは…と、遠慮する言葉が出かかった提督……

アンナ「大丈夫よ。うちは広いし、フランカとの関係だって許してくれてるのは知ってるでしょ? おまけにパパもママも明日にはシチリア旅行に出かけるから、邪魔する人なんていないのよ?」まるで提督の言わんとすることを先読みしたように言葉を続けた……

提督「それはそうかもしれないけれど……」

アンナ「ふぅ……あのね、フランカ。 私、このあいだミラノに行ってきたの」

提督「あら、素敵。スカラ座でオペラでも見てきたの?」

アンナ「もう、フランカってばとぼけちゃって……つまり、ブティックで買い物をしてきたって言ってるの……ね、どんなのを買ったか見たいでしょ?」下からのぞき込むようにして、じらすような口調で言った……

提督「……っ///」

アンナ「何を照れてるのよ、これまでだってさんざん見ているくせに……♪」

提督「いえ、だって……///」

アンナ「まったく、相変わらず初心なフリをしてくれちゃって……そういうところが可愛いのよね♪」

提督「もう、からかわないでよ……」

アンナ「からかうくらいで許してあげているんだから感謝しなさい?」

提督「……ええ、そこは感謝しているわ」

アンナ「当然でしょう? 私は度量の広い女なのよ」

提督「度量の広い人間は自分でそういうことを言わないと思うの……」

アンナ「いいから。 ねぇ、せっかくだから一緒に入りましょうよ……今度白いドレスで一緒に入るときの予行練習ね♪」

提督「……」
917 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/04(月) 03:12:52.71 ID:Il+wi9AK0
…教会…

アンナ父「おやフランチェスカちゃん、クリスマスおめでとう。こっちに帰ってくるのは久しぶりじゃないか。 うちのアンナも何かといえば君の話でね……積もる話もあるだろうし、良かったら今度うちにおいで?」

アンナ母「ええ、本当に……貴女なら大歓迎よ♪」

提督「ありがとうございます」

アンナ「もうっ! パパもママも、余計な事は言わなくてもいいの!」

…こぢんまりとした……しかし由緒ある教会には続々と町の人がやってくる……おおよそ定位置が決まっているベンチに皆が腰かけていく中で、提督はアンナの両親と言葉を交わした……仕立てのいい茶色のスーツに暗紅色をした楕円の宝石をあしらったループタイを身に付け、相変わらずのしゃがれ声で髪の毛をぺったりと後ろに撫でつけたアンナの父と、高そうなプッチの黒いドレスとストッキング、首元に大粒の真珠のネックレスと、ぽっちゃりと丸っこい指にダイアモンド付きの豪華な指輪をし、会うたびにふくよかさが増しているアンナの母……それにアンナの父が経営している『貿易会社』の一癖ありそうな若い衆が二、三人…

アンナ父「何が「余計な事」なものだね、アンナ」

アンナ母「そうよ、フランチェスカちゃんは本当に良い子なんだから」

提督「これは、ご丁寧にどうも……そろそろ席に着かないといけませんので……」

アンナ父「それもそうだ、あんまりおしゃべりをしていては神父様に叱り飛ばされてしまうな」

アンナ「……まったく。とにかく貴女のことなら大歓迎だから、必ず来なさいよね♪」軽く手を振ると、両親と一緒に定位置のベンチに腰かけた……

提督「え、ええ……」

…ミサ…

神父「天にまします我らの主よ……」

…提督が子供の頃からずっと町の教会でミサを執り行っている神父がクリスマスミサのお祈りを続け、式次第に合わせて祈りの言葉を唱えたり十字を切ったりする会衆…

神父「……アーメン」

………



…ミサの後…

クラウディア「ふぅ……教会って底冷えするわね、足先が冷たくなっちゃったわ」

シルヴィア「神父は寒くないんでしょうよ。帰ったらまた暖炉の火をおこして、それからグラッパを垂らした熱いコーヒーでも飲みましょう」

提督「賛成」

クラウディア「それに、お菓子も好きなだけ食べていいわよ」

提督「まぁすごい、まるでクリスマスみたい♪」冗談めかしてわざと驚いてみせる……

クラウディア「そのクリスマスよ」

シルヴィア「ふふ……♪」

…教会前の広場では飾り立てられたツリーを見ながら気の合う仲間同士でおしゃべりに興じる人たちや、久々に顔を合わせて口づけを交わす恋人たち、あるいはお菓子をもらってご機嫌な子供たちなどが笑いさんざめき、小さな町にもにぎわいが戻ってきたような感がある…

アンナ「フランカ♪」

提督「あら、アンナ……お父様たちとはもういいの?」

アンナ「ええ、どうせうちに帰ったらずーっと「誰がどうした」とか「どこどこの娘が結婚した」だのって噂話を聞かされるんだから……それよりも貴女と一緒にいられる時間を有効活用しないと……ね♪」提督よりも小柄なアンナだが、腰に手を回すと勢いよく身体を抱き寄せた……

提督「もう///」

クラウディア「まぁ、ふふっ……アンナちゃんってば♪」

シルヴィア「相変わらずみたいね」

アンナ「あ、これはお義母さまにおばさま……お久しぶりです」

クラウディア「ええ、久しぶりね♪」

シルヴィア「そういえばこの間「お土産に」ってくれたワイン、とても良かったわ」

アンナ「お気になさらず。お義母さまとおばさまは私の母も同じですから♪」

提督「なんだか着実に外堀を埋められている気がする……」

シルヴィア「……それで、こっちにはいつ頃まで?」

アンナ「年明けの三日にはスイスへ飛ばなければいけないので、二日までです」

クラウディア「それじゃあ、良かったらフランカとも過ごしてあげて?」

アンナ「ええ、もちろんです♪」

提督「……」
918 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/12(火) 02:14:36.28 ID:zmg+/zf40
…12月25日…

提督「ふ〜ふふ〜ん〜…♪」

クラウディア「あら、フランカったらご機嫌ね♪」

提督「そりゃあクリスマスだもの……お母さまとおばさまもそうでしょう?」

クラウディア「そうね。もっとも、シルヴィアがいるならいつだって嬉しいけれど♪」

シルヴィア「はいはい……」

…クリスマスの朝はひんやりと寒かったが、日が昇るにつれて次第に明るい光が降り注ぎ、庭から望めるティレニア海の波もきらきらと輝いている……提督たちは暖炉の前で温かいコーヒーをゆっくり飲み、クラウディアがかけたクリスマスソングのCDを聞きつつ、届いたクリスマスカードのメッセージを読んでいる…

クラウディア「あら、もうこんな時間……そろそろローストの準備に取りかからないと」

提督「なら私も手伝うわ」

クラウディア「ありがとう、フランカ。でもクリスマスなんだから座っていていいのよ……今日は私が腕によりをかけて作るから、美味しく食べてくれればそれで十分♪」そう言って座っている提督の前髪をかきあげて額にキスすると、エプロンをつけて台所に入っていった……

提督「……お母さまったら張り切っちゃって。あの調子じゃあ一個分隊でも食べきれないくらい作っちゃいそうね」

シルヴィア「久しぶりにフランカと過ごせるクリスマスだもの、クラウディアだって嬉しいのよ」

提督「そうね、私だっておばさまたちと過ごせて嬉しいわ」

シルヴィア「ありがとう……ところで、クリスマスカードについていたプレゼントはどうだった?」

提督「ええ、それならいろんな物が届いたわ。香水や日持ちのするお菓子、それから小さなアクセサリーや小物とか……」

………



提督「さてと、誰から何が届いたのかしら……♪」淡い桃色のバスローブ姿で脚をぶらぶらさせながら、クリスマスカードの差出人を見ては文面を読み、それから小包や箱を開けていく……

提督「まずは……エレオノーラからね♪」

…北アドリア海管区の「ヴェネツィア第三鎮守府」でコルヴェットや駆潜艇といった小艦艇を中心とした戦隊を編制し、掃海や船団護衛、対潜掃討を行っているシモネッタ大佐……提督とは士官学校の同期で、優秀な成績とたおやかで優しい立ち居振る舞いのおかげでそうは見えないが、実際は重度のロリコンをこじらせていて、鎮守府では艦娘たちが慕ってくれるのをいいことにただれた生活を送っている…

提督「えーと、なになに……「フランカ、クリスマスおめでとう♪ 私はヴェネツィアでうちの娘たちと楽しく過ごしています。また機会があったら遊びに行きます……それからプレゼントですが、貴女に似合うと思うので、良かったらぜひ使って?」相変わらず小さい娘たちといちゃいちゃしているのね……そろそろ憲兵に逮捕されるんじゃないかしら……」眉をひそめてから、プレゼントの包みを開けた……

提督「あら、新色の口紅……さすがエレオノーラね、色の趣味がいいわ♪」ラメの入った明るいイタリアンレッドの口紅は、これからやってくる春にふさわしい……

提督「それじゃあお次は……と」

提督「あ、これはルクレツィアのね」

…シモネッタ提督と同じく士官学校の同期で、今でも仲の良いカサルディ中佐……小柄でカラッとした気持ちの良い性格をしていて、エーゲ海でMAS(機動駆潜艇)やMS(魚雷艇)の艦娘たちを率いて暴れ回っている…

提督「さてと……「フランカ、クリスマスおめでとう! 私はがさつだし何を贈ればいいか分からなかったから、とりあえずフランカの好きそうな物にしてみたわ。それじゃあね、チャオ!」ふふっ、相変わらずね♪」

提督「それで、ルクレツィアは何を贈ってくれたのかしら……と」

提督「あら……ルクレツィアってば、なかなかいいセンスよ?」出てきたのはクレタ文明のモザイク画風に描かれたイルカや魚をあしらったスカーフで、クリーム色の地に青やオレンジの柄が映える……

提督「こういうしゃれたスカーフは私よりもシルヴィアおばさまみたいな格好いいタイプの人に似合いそうだけれど……でも嬉しいわ♪」

提督「それからナタリアのプレゼントは、と……」

…クリスマスカードに書かれた近況やあいさつを読んでは知り合いや(少なくない)恋人たちとのあれこれを思い出し、それからさまざまなプレゼントを開けては楽しんだ…

………

シルヴィア「そう、良かったわね」

提督「ええ。もっともまだいくつも残っているし、お休みの間にちょっとずつ開けていくつもり……そう思って今もいくつか持ってきたの」

シルヴィア「それじゃあ開けてみたら?」

提督「そうするわ、あんまり変な物は入っていないでしょうし……って///」そう言いながらローマの海軍司令部で知り合いだったお姉様からの小包を開けると、黒の透けるようなベビードールが出てきた……

シルヴィア「……確かにただの下着であって「変なもの」ではなかったわね」

提督「その、えぇーと……」

シルヴィア「大丈夫よ。フランカだっていい大人なんだからそういうものを着たっていい」

提督「あー……まぁ、そうね」

シルヴィア「ええ、たまにはそういう遊び心があってもいいと思うわ……今度クラウディアにもそういうものを着てもらおうかしら」

提督「おばさま?」

シルヴィア「いいえ、なんでもないわ」
919 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/19(火) 02:24:38.84 ID:qpJUg7410
…お昼時…

クラウディア「さぁさぁ二人とも座って? スプマンテのボトルは用意した?」

シルヴィア「ええ」

提督「準備出来ているわ、お母さま」

クラウディア「よろしい、それじゃあ……乾杯♪」

…エプロンを外してクラウディアが席に着くと、シルヴィアがスプマンテのコルクを布で押さえつつ「ポンッ!」と控え目な音をさせて栓を抜いた……シューッと軽やかな音を立ててフルートグラスに注がれると、三人で軽くグラスを合わせて喉を湿した…

クラウディア「フランカ、いっぱい食べるのよ?」

提督「ぜい肉にならない程度でね」

シルヴィア「今日くらいはそのことは考えなくても良いんじゃないかしら」

提督「それもそうなのだけれど、美味しいものを前にするたびにその言い訳を使っている気がして……」

クラウディア「そう、それじゃあこのガチョウはいらない?」

提督「いいえ、ぜひ食べたいわ」

クラウディア「まぁ、ふふっ……♪」

シルヴィア「クラウディアの料理を前に我慢なんて出来ない相談だもの……私が切りましょうか?」

クラウディア「ええ、お願い♪」

…ローズマリーやオレガノ、ニンニク、粒の黒コショウと粗塩を擦り込み、中にみじん切りの野菜を詰め込んでじっくりとローストしたガチョウ……シルヴィアが大ぶりのナイフで手際よく切り分け、美味しい脚の部分を提督とクラウディアに取り分ける…

クラウディア「もう、だめよ? 脚は貴女とフランカで食べるのよ」

シルヴィア「そういうわけにはいかないわね。切り分けているのは私なんだから言うことを聞いてもらわないと……それに他の部位も肉厚で美味しそうじゃない」

提督「それならお母さまとおばさまが脚を取ればいいわ。ごちそうは他にも色々あるんだし、私は胸肉だって好きよ?」

クラウディア「もう、仕方ないわね……それじゃあシルヴィア、半分こしましょう?」

シルヴィア「それなら文句ないわ。これを料理した貴女がこの美味しそうな部分を食べられないなんて、そんな不公平があったらいけないもの」

クラウディア「ふふ、相変わらず優しいのね……♪」

提督「それなら私からもお母さまたちに分けてあげるわ」

クラウディア「いいのよ。いくつになってもフランカは私たちの娘なのだから、遠慮せずにいっぱい食べなさい……それにどうしても腿が食べたければ、もう一羽むこうに焼いたのがあるんだから♪」いたずらっぽい笑みを浮かべると、軽くウィンクをした……

シルヴィア「なんだ、それならそうと言えばいいのに……」

提督「ふふっ、本当にね♪」

………

…同じ頃・鎮守府…

ドリア「それではクリスマスの晩餐をいただくことにしましょう……主の恵みと料理を手伝ってくれたみんな、そしてこんなに立派な猟鳥を贈ってくれた提督と提督のお母様方に……乾杯♪」

一同「「乾杯」」

…しゅわしゅわときめ細やかな泡を立て、燭台の灯りや暖炉の炎に照り映える金色の「フランチャコルタ」や鮮やかな紅の「ランブルスコ」、さっぱりとした白ワイン、あるいは深いルビー色に輝く赤ワインのグラスを掲げ、乾杯する一同……それが済むと食欲旺盛な駆逐艦や潜水艦の娘たちは早速ディアナたちに料理を取り分けてもらう…

リベッチオ「ふー、ふー…はふっ、あちち……っ!」

カヴール「あらあら、よく冷ましてから食べないと舌を火傷しますよ?」

…アンティパスト(前菜)のガランティーヌ(タンや肉のゼリー寄せ)やサラミの盛り合わせに続くプリモ・ピアット(第一皿…一つ目のメインディッシュ)は温かいコンソメスープにラヴィオリを浮かせたもので、ラヴィオリの中にはトリコローリに合わせてそれぞれホウレンソウ、リコッタチーズ、トマトペーストなどを詰め込んである…

レモ「それじゃあこっちも食べるね♪」

スメラルド「オンディーナ、私にも取り分けてもらえますか?」

オンディーナ「ええ、どうぞ」

…コース料理の花形(プリマ・ドンナ)であるセコンド・ピアット(第二皿)は提督の実家からシルヴィアが送ってきた鴨やアヒル、ガチョウ、それにたっぷり脂が乗った鶏を始め、濃い赤身が食べたい娘たちには赤ワインソースの鹿肉、野趣あふれる肉が食べたい娘たちにはドングリを食べてほどよく脂が乗ったイノシシ肉のあばら肉が香草を効かせたローストで饗されている…

ディアナ「遠慮せずいっぱい召し上がれ?」

…まだ表面がぷちぷちと音を立て、きつね色の皮目がパリッと焼けている鶏やガチョウ……かかっているソースも肉に合わせて爽やかなオレンジソースやドライトマトで作った甘酸っぱいトマトソース、瓶に詰めて保存してあった濃緑色のペスト・ジェノヴェーゼ(バジルペースト)と、いく種類も取りそろえてあり、めいめいが好きな味や肉を選べるようにしてある…

コルサーロ「こいつは美味い……最高だよ♪」

カラビニエーレ「……相変わらずお行儀が悪いんだから、まったく」肩をすくめて……ただ、いつものようなお説教はせず口のまわりについた鳥の油をぬぐってあげる……

チェザーレ「ははは、元気で何よりだ♪」
920 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/26(火) 02:14:43.64 ID:p10Q7sa80
チェザーレ「……それにしても済まぬな、ディアナ」

ディアナ「と、申しますと?」

チェザーレ「この立派な正餐のことだ」長テーブルの上に並んでいる皿の数々を指し示した……

ディアナ「いいえ、わたくしも皆に喜んで頂きたかったので」

チェザーレ「さようか。提督に代わって礼を言うぞ」

ドリア「……チェザーレ、ディアナ、もう一杯いかがですか?」

ディアナ「ええ、ではもう少しだけ」

チェザーレ「もらおう、リットリオたちはおらぬのだからな……その分を開けても文句は言うまい」

ポーラ「そうですよぉ、クリスマス休暇を先に取っちゃった娘たちや提督の分まで開けちゃいましょ〜う♪」

ザラ「もう、相変わらずなんだから……フランチャコルタ?」

ポーラ「そうですよぉ……以前、提督に見せたら「私の月給の三分の一くらいする……」って言ってましたねぇ〜♪」

…暖炉の火とアルコールで赤みを帯びた頬を火照らせ、ころころと笑いながら値の張るスプマンテを遠慮なく開けるポーラ……しゅわしゅわと軽い音をさせながらグラスに液体が注がれ、注ぎ分けたグラスを持ち上げて乾杯する…

リベッチオ「ねぇねぇディアナぁ……お酒もいいけど、そろそろケーキを切らない?」ディアナのかたわらにやって来て、おねだりをするようにしながら軽く袖口を引っ張った……

マエストラーレ「まったくもう、リベッチオってばせっかちなんだから。ディアナだってお酒は飲みたいし、まだ食事も済んでいないのよ? もう少し我慢しなさい」

リベッチオ「えー?」

ディアナ「ふふ……リベッチオ、もう少しだけ待って下さいましね? そうしたらケーキを出しますから」

リベッチオ「ホント?」

ディアナ「ええ、本当です」

リベッチオ「やったぁ♪ ね、そろそろケーキだって♪」

マエストラーレ「はいはい……♪」

…普段から駆逐艦「マエストラーレ」級の長姉として奔放な妹の手本となるべく、また準同型の「オリアーニ」級の先輩としてもお姉ちゃんらしく振る舞っているマエストラーレだが、嬉しさが顔に出るのは隠しきれない…

アルフレド・オリアーニ「ふふ……マエストラーレったら、こんな時くらいは子供みたいに振る舞ったっていいのに」

マエストラーレ「な、何言ってるのよ……///」

カルロ・ミラベロ「くすくすっ、私たちからしたらみんなお子ちゃまみたいなものなのにね?」

アウグスト・リボティ「ね♪」駆逐艦では艦隊最高齢の小さな「ミラベロ」級駆逐艦、幼い外見に似合わないおませなミラベロとリボティがくすくすと笑った……

ディアナ「ふぅ……さて、それではそろそろケーキを持って参りましょうね」上品に口のまわりを拭うと立ち上がり、厨房へと入っていった……

ピエトロ・ミッカ「それでは私も手伝いましょう」大型潜水艦のミッカを始め、敷設や輸送に縁があった何人かが手伝おうとついていく……

ディアナ「まぁ、それではよしなに♪」

…待つほどでもないうち、ディアナたちがケーキの載った大皿や盆を捧げて戻ってくると、たちまち大食堂に娘たちの黄色い歓声が沸き上がる……同時に誰かが「きよしこの夜」のレコードをかけ、どこからともなく合唱が始まった…

ディアナ「さ、お待たせしてしまいましたね……食べたいものを切り分けますから、どうぞお皿を回して下さいな」

…ディアナが愛車の「フィアット・アバルト850」を飛ばして、鎮守府のお馴染みになっている近くの町のケーキ屋さんで買ってきた大きなスポンジケーキを始め、ディアナやドリアが腕によりをかけて作った、イタリアのクリスマス菓子として定番のパンドーロやパネットーネ、あるいは上から白い粉砂糖をふるったチョコレートケーキや、砂糖漬けの果物もカラフルなタルトと、目移りしそうなほど並べられた…

グラウコ「うーん、どれも美味しそうで決められそうにないです……」

オタリア「本当ですね……迷ってしまいます」

カヴール「ふふ、それじゃあ私が取ってあげましょう♪ ……それにしてもディアナ、ずいぶんたくさん焼いたのですね?」

ディアナ「ええ。何しろクリスマス休暇に入った娘が多かったものですから、注文しておいた卵が余ってしまって……傷ませてしまうまえに使い切ってしまおうと思いまして」

リベッチオ「それでこんなにケーキが食べられるならゴキゲンだよ♪ ね、お姉ちゃん?」皿にケーキを盛り合わせにしてもらうと、脚をぶらぶらさせながらケーキをぱくついている……

マエストラーレ「だからってあんまり食べ過ぎないの」

シロッコ「ふふ、今日くらいはいいじゃないか」

トリチェリ「……はい、先生もどうぞ? あーん♪」

ガリレオ・ガリレイ「うぷっ……もう、鼻の頭にまでクリームを食べさせることはないでしょ♪」

…艦娘たちはそれぞれケーキを食べたり、お酒のグラスをかたむけたり、クリスマスソングを歌ったりしている……暖炉の前に敷かれた絨毯の上ではルチアが骨をかじりながら寝そべり、何人かがブラシで毛並みをくしけずったり撫でたりしながら遊んでやっている…

ドリア「いいクリスマスですね、デュイリオ」

デュイリオ「あら、まだまだクリスマスは長いのよ……アンドレア♪」
921 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/31(日) 02:21:54.49 ID:pRbdUNY+0
…食後…

カヴール「さて、食卓は片付きましたね?」

ガリバルディ「ええ、大丈夫よ」

レモ「今度はなぁに?」

ドリア「あちこちからクリスマスカードが届いておりますから、せっかくですし読み上げようかと」

ガリバルディ「いいわね、どうせ時間もあることだし」

デルフィーノ「そうですね。それにしてもそれぞれ個性があって面白いです♪」デルフィーノは鎮守府に届けられたメッセージカードの山をより分けながらしきりにうなずいている……

カヴール「それでは読みましょうか……♪」おっとりとした貴婦人のような様子で暖炉の前の椅子に腰かけると「鎮守府宛」になっているクリスマスカードの中から、企業の広告や管区司令部からのカードを除いた何枚か手に取った……

エウジェニオ「誰から?」

カヴール「最初は……あら、イギリスのグレイ提督ですね」

…提督の実家とは別に、鎮守府にも送られてきた提督たちからのクリスマスカード……これにもそれぞれの性格や色が出ていて、イギリスの貴族令嬢であるグレイ提督は上品なハロッズ(百貨店)のカードに綺麗な筆記体で「Merry Christmas」とつづってあるのに対し、アメリカのミッチャー提督はコミック風のサンタクロースが描かれたカードに大きな文字で「Merry X‘mas」と、いかにもアメリカらしい書き方をしている…

ガラテア「それで、レディ・グレイは何とおっしゃっています?」美しいガラテアが、カヴールの後ろから乳白色の美しい腕を首元に優しく回す……

カヴール「ええ、今読みますね……「タラント第六鎮守府の皆様、メリークリスマス。このカードを書いている間、あの明るいイオニア海の海原を思い出しました。どうか七つの海が平和でありますよう、そして貴女方が良いクリスマスを過ごせますように」……だそうです」

ネレイーデ「ふふ、あの人は相変わらずですね……♪」

ドリア「それでは次は私が読みましょうか……「メリークリスマス、ガールズ。ノーフォークは北風が寒くって最悪で、サンディエゴやマイアミ、あるいはそっちのナポリみたいな港が恋しいわ。ステイツからプレゼントを贈ったから、喜んでもらえたら嬉しいわ」だそうですよ」

セッテンブリーニ「ミッチャー提督も相変わらずね、プレゼントはきっとダサいセーターと野球帽、七面鳥のローストにチューインガムで間違いないわ」

ドリア「まぁ、ふふっ……♪」

カヴール「それから次のカードは……エクレール提督ですね。フランス語ですから、私が読みましょう」

ダルド(駆逐艦フレッチア級)「ヴァイス提督からのカードは私が読めるわ」

アントニオ・ピガフェッタ(駆逐艦ナヴィガトリ級)「ドイツ語なら私も読めるけどね……途中で代わろう」

ルイージ・トレーリ(大型潜マルコーニ級)「では、百合姫提督のカードは私が読みますね」

…フランスのエクレール提督は香水つきのカードに長々とメッセージを書き、ドイツのヴァイス提督は堅苦しいまでにきちんとした内容を罫線でも引いてあるかのような具合で真っ直ぐに書きつづり、百合姫提督は和紙を使ったはがき大のカードに丸みを帯びた丁寧な筆文字でメッセージを書き留めている…

カヴール「あらまぁ、くすくすっ……♪」

チェザーレ「なにかおかしい事でも書いてあったのか?」

カヴール「ええ、ふふっ♪ エクレール提督ったらエスカルゴの前菜から始まるクリスマスの正餐ですとか、お国自慢を長々と書き連ねてあるものですから……♪」

エウジェニオ「エスカルゴってカタツムリのことでしょ……それがごちそうの前菜なの? カエルやカタツムリを食べるフランス人には困ったものね」

カヴール「まぁまぁ、あれもバター焼きにすれば案外良いものですよ?」

ダルド「そろそろいい? それじゃあこっちも読むわよ……「クリスマス、そして新年おめでとう。レープクーヒェン(ドイツのクリスマスに欠かせないショウガクッキー)を送ったので、ぜひご賞味いただきたい」だそうよ」

ピガフェッタ「レープクーヒェンか……地味な菓子だが嫌いじゃないよ」

トレーリ「それでは次は百合野提督のカードですね、読みますよ……「タラント第六鎮守府の皆様、メリークリスマス。クリスマスカードを送る風習がないものですから、何を書けばいいかずいぶん悩みました。ともあれタラント第六のみんなが良いクリスマスと新年を過ごせるよう、心から願っております。またいつか訪問できる機会を楽しみにしています」とのことです」

カヴール「ふふ、いかにも日本人らしい奥ゆかしい文面ですね」

チェザーレ「むしろ彼女の人柄であろうな……それぞれプレゼントも付いてきたようであるから、少々早いが開けてしまおうか」

(※イタリアではプレゼントを開けるのはイエス・キリストが生まれたとされる1月6日の公現祭(こうげんさい)の日。プレゼントは東方の三賢人の誘いを断り、結果キリストの誕生に立ち会えなかったことを後悔し続けているとされる魔女「ベファーナ」が持ってくるとされている)

フルミーネ「やった♪」

カヴール「まぁ、少し早い気もしますが……クリスマスですからね、提督方の贈り物に限ってはいいということにしましょう♪」

…チェザーレやカヴールたち、留守を預かる「大人組」の許しを得て、クリスマスのメッセージカードに添えて送られてきた包みを喜び勇んで開ける駆逐艦や潜水艦の艦娘たち……娘たちによって人柄がでるのか開け方もさまざまで、待ちきれない様子で嬉しそうに包み紙を破る娘から、ある程度落ち着いてリボンをほどく娘までさまざまだった…

フレッチア「すんすん……匂いからするとショウガクッキーね」

ピガフェッタ「レープクーヒェン、ドイツのクリスマス菓子では定番のやつさ」

コマンダンテ・カッペリーニ「百合野提督の贈り物は……化粧品と手拭いですね」

…日頃から潮風に吹かれ波飛沫を受けている艦娘たちにと、日本メーカーの乳液や保湿クリームといった化粧品の詰め合わせと、銀座の中心地、歌舞伎座のそばにある老舗で売っている、色も柄もさまざまな手拭いがたくさん入っている……かさばらずにお洒落なものをという、百合姫提督らしい気づかいが見て取れる…

トレーリ「柄のいくつか「鎌○ぬ(構わぬ)」と言葉遊びになっていたり「後ろに下がることがない」蜻蛉(とんぼ)の柄みたいに、戦場での縁起を担いでいたりするんですよ」

デュイリオ「まぁまぁ、それは素敵ですね♪」
922 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/04/08(月) 00:19:59.79 ID:XZ5d4hH20
…しばらくして・中型潜「スクアーロ」級の部屋…

スクアーロ「ふぅ、たっぷりのご馳走に上等な酒……最高だったな」

トリケーコ「そんな風にすぐ横になると消化に悪いですよ?」

スクアーロ「今日はクリスマスなんだ、そう言うなよ」

デルフィーノ「スクアーロはクリスマスでなくたってそうじゃないですか」

スクアーロ「お、言ったな? そういう生意気を言うと……こうだぞ♪」ベッドから飛び起きるとデルフィーノの肩口を甘噛みし、ついでに脇腹をくすぐる……

デルフィーノ「ひゃあぁ、やめて下さい……っ///」ばたばたと暴れ回るデルフィーノ……

ナルヴァーロ「ほら、じゃれ合うのもほどほどにしなさい……私たちはバンディエラの部屋に遊びに行ってくるわ♪」そう言ってナルヴァーロ(イッカク)とトリケーコ(セイウチ)は出ていった……

デルフィーノ「はぁ、はぁ、はぁ……///」

スクアーロ「どうだ、姉に逆らうとどうなるか分かったか?」スクアーロ(サメ)の名にふさわしい、白くギラギラした犬歯をのぞかせてにんまりと笑ってみせる……

デルフィーノ「もう、分かりましたよぉ……」

スクアーロ「よーし、ならいい……しかしジァポーネの提督もマメだねぇ」

…鎮守府の艦娘全員に行き渡るほどの化粧品や、和紙の包み紙さえお洒落な和風の小物が詰め込まれた百合姫提督の贈り物……スクアーロは早速包み紙を開けて、中に入っていた「資生堂」の乳液をしげしげと眺めた…

デルフィーノ「そうですねぇ」

スクアーロ「ああ……ところでデルフィーノ」

デルフィーノ「なんです?」

スクアーロ「せっかくだしちょっと塗ってくれるか、肌がガサガサなんだ」

デルフィーノ「はい、いいですよ」

スクアーロ「悪いな」

…スクアーロは自分なりに「海のギャング」らしくということでクリスマスパーティの正餐に着ていた、グレイで黒リボンの付いているボルサリーノ(ソフト帽)と、サメの背中のような濃い灰色のスーツとジレ(ベスト)、パールグレイのネクタイとワイシャツを次々に脱いでいく……着る物をすっかりハンガーに掛けてしまうとベッドにうつ伏せになり、デルフィーノに乳液の瓶を渡した…

スクアーロ「どうだ?」

デルフィーノ「たしかにずいぶん荒れてます。もしかして食生活とかが乱れているんじゃないですか?」

スクアーロ「みんな同じものを食っているのにそんな訳があるか……まぁいい、塗ってくれ」

デルフィーノ「もう、人遣いが荒いんですから……」よいしょとスクアーロの背中にまたがって甘い香りの乳液をとろりと背中に垂らすと、すんなりした手で塗り込んでいく……

スクアーロ「お、なかなか気持ちいいな……♪」

デルフィーノ「それなら良かったです。せっかくだからこっちもやってあげますね?」スクアーロのサメ肌へ馴染ませるように肩甲骨、背中、脇腹、腰の辺りへと器用な手つきで滑らせていく……

スクアーロ「あぁ、いいな……うん、上手じゃないか……♪」

デルフィーノ「あの……スクアーロ///」スクアーロにまたがり、その白い裸身を見ながら揉みほぐすように乳液を塗り込んでいるうちに、ごちそうとお酒で火照った身体が甘くうずき始める……

スクアーロ「ん?」

デルフィーノ「……そのぉ、ついでだから脚もマッサージしましょうか///」

スクアーロ「どういう風の吹き回しか知らないが、せっかくそう言ってくれたんだ……ぜひやってくれ」

デルフィーノ「はぁい……♪」スクアーロのきゅっと張りつめたようなヒップからしなやかな太ももに手を這わす……

スクアーロ「おい、それじゃあ手つきが違うだろう……この万年発情期が♪」

デルフィーノ「だ、だってぇ///」

スクアーロ「ったく、仕方のない妹だな……ほら♪」ごろりと寝返りを打つと自分の手にも乳液を取り、デルフィーノのフリル付きワンピースの下へ手を入れ、片手でくびれた腰から太ももの付け根、もう片方の手で形の良い乳房を愛撫する……

デルフィーノ「はぁ、あぁんっ……はひゅっ、はひっ♪」数分もしないうちに可愛らしいくりくりした瞳は焦点を失い、半開きの小さな口から甘えたような吐息が漏れる……我慢しきれないと言うように片手はとろりと濡れた秘部へ伸び、もう片方の手はワンピースの裾をたくし上げている……

スクアーロ「ふふ、可愛い表情で喘ぐじゃないか……♪」

デルフィーノ「らって、らって……ぇ♪」ろれつも回らないままに嬌声を上げ、くちゅくちゅと指を動かしながらふとももに蜜を垂らし、スクアーロの上でひくひくと跳ねる……

スクアーロ「ここなんかも好きだったろ?」ちゅぷ……っ♪

デルフィーノ「ふわぁぁぁ、そこ……そこれす……ぅ///」

スクアーロ「ふふ、今日は午後いっぱいしてやるからな……覚悟しておけよ?」

デルフィーノ「はぁ……い♪」
923 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/04/27(土) 00:49:53.25 ID:Vpqh/dsf0
…一方・提督の実家にて…

提督「ふわ……ぁ」

…午後の日だまりを浴びながら猫のように伸びをすると、ベッドに寝転がり文庫本をめくり始めた……と、ベッド脇のテーブルにある携帯電話が震えだし、提督は本を閉じるとせかせかと携帯に手を伸ばした…

提督「……もしもし?」

ミッチャー提督「ハーイ、フランチェスカ。いま大丈夫?」

提督「あら、ジェーン♪ ええ、大丈夫よ。貴女の声が聞けて嬉しいわ♪」

…電話口の向こうから聞こえてきたキレの良いアメリカ英語の主は、かつて提督と付き合いがあったアメリカ大西洋艦隊のジェーン・ミッチャー提督……グラマーで褐色の肌、黄色の1971年型「バラクーダ」を乗り回し、コルトM1911「ガバメント」のカスタムピストルで射撃にいそしみ、アメリカ人らしいスタンドプレーと多彩な悪口、それにタフさと知性を兼ね備えた実力派の提督で、穏和な提督とは正反対に近い勇猛果敢なタイプだが、映画という共通の趣味もあってか意外なほど仲が良い…

ミッチャー提督「そいつはこっちも同じよ……ところで一つ貴女に言いたいことがあるんだけど」

提督「……ええ、どうぞ?」思い詰めたような声の響きに思わず姿勢を正し、何を言われても驚かないように身構えた……

ミッチャー提督「それじゃあ言わせてもらうわ……メリークリスマス♪」

提督「もう、ジェーンったら……真剣な口調で言うから何かあったのかと思ったじゃない」身構えていたぶん拍子抜けで、笑い出しながらベッドの上にひっくり返った……

ミッチャー提督「あははっ、ソーリィ♪ なにせこっちはターキーを食ってクリスマスポンチを飲んで、すっかりご機嫌だからね、ちょっと驚かせてみようかと思ってさ……今はガールズたちにクリスマス映画を見せてるとこ」確かに電話口ごしに映画のものらしい音声や曲が聞こえてくる……

提督「いいわね。それで、映画は何を流しているの?」

ミッチャー提督「心暖まるクリスマス映画の定番よ「ホワイト・クリスマス」に……」

提督「ビング・クロスビーの? 曲も名曲で、映画自体も素敵よね」

ミッチャー提督「でしょう? あとは1947年版の「三十四丁目の奇蹟」と「素晴らしき哉、人生!」、それから「スクルージ」ね」

提督「スクルージだけはイギリス映画ね?」

ミッチャー提督「そ、ハリウッドにも「クリスマス・キャロル」を映画にした作品はいっぱいあるけど、私の中じゃこれが一番イメージにピッタリだから。1935年の映画だけど、時代がかった感じが逆に文学作品っぽくていいわ」

提督「そうねぇ。それにどの映画もみんな心暖まる映画で、クリスマスにふさわしいと思うわ」

ミッチャー提督「でしょ? なにしろ任務に次ぐ任務じゃあ気持ちがすさんでくるし、うちのガールズにもクリスマスくらいは幸せな気持ちでにこにこ笑っていてもらいたいからね。テーブルにはキャンディとチョコレート、デコレーションケーキにローストターキー、頭にはパーティ帽……ヤドリギの下ならキス御免で、ベッドに吊るした靴下の中やツリーの前にはリボンのかかったプレゼント……これならハッピーな気分になれるってものよ」

提督「いい考えね♪」

ミッチャー提督「サンクス、そっちは何してるの?」

提督「今は実家でベッドに転がって読書中……海軍士官になるまでは考えもしなかったけれど、何も考えずにベッドでごろごろできるのって最高の娯楽ね」

ミッチャー提督「しかもクリスマスのごちそうとワインを腹いっぱい詰め込んでから、でしょ? たしかに最高だけど、ずっとそんなことをしていたら、また太ももにぜい肉が付くわよ?」電話越しにクスクスと笑っているのが聞こえる……

提督「ええ、でもクリスマス休暇の間はそれも考えないことにしているの♪」

ミッチャー提督「スラックスがキツくなっても知らないわよ?」

提督「その時はスカートにするわ……それでジェーン、貴女自身のご予定は?」冗談めかしてたずねる提督……

ミッチャー提督「ごあいにくさま、フランチェスカと違ってサッパリよ」

提督「あら、意外……ジェーンなら一人で「ダイナ・ショア・ウィークエンド」を開催出来るほどだと思っていたわ」

(※ダイナ・ショア・ウィークエンド…往年の名女性歌手ダイナ・ショアがゴルフ・コンペを開いた際、クラブハウスに女性たちが集まったことに由来するという全米最大のビアン・イベント。カリフォルニア州パームスプリングスで開催される)

ミッチャー提督「そうだねぇ……私だってアレサ・フランクリンみたいに歌って、フレッド・アステアのように華麗に踊れて、おまけにハンフリー・ボガードみたいに気の利いた台詞が言えれば良かったんだけど、残念ながらそうはいかないもんでさ♪」

提督「ふふ……それを言ったら私だってオードリー・ヘップバーンみたいな顔が欲しかったわ♪」

ミッチャー提督「お互いないものねだりってわけね……でもフランチェスカは綺麗だと思うわよ。脚はまるでシルヴァーナ・マンガーノかジェーン・フォンダかってところだし、胸だって全盛期のころのジーナ・ロロブリジーダみたいで……それでいて顔は柔和で優しげ。パーフェクトじゃない」

提督「あら、ずいぶん褒めてくれるのね……おだてても何も出ないわよ?」

ミッチャー提督「そいつは残念」

提督「くすくすっ……相変わらずみたいね♪」

ミッチャー提督「まぁ、ノット・バッド(悪くはない)ってところよ。どいつもこいつも責任逃れしようとのらくらしているし、何をするにも申請書類をレーニア山くらい積み上げないと許可されないけど」

提督「ふふっ、お役所仕事はどこも同じね」

ミッチャー提督「そういうこと……ともかく、クリスマスカードとプレゼントをありがとね。うちのガールズも喜んでたわよ」

提督「それなら良かったわ。それから貴女のカードもこっちに届いたわ……またこっちにくる機会があったら教えてね? うんと歓迎するわ♪」

ミッチャー提督「サンクス、いいクリスマスをね♪」

提督「ジェーン、貴女もね」
924 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/05/06(月) 01:48:13.72 ID:LBiF/fyO0
…一方・クリスマスのトゥーロン第七鎮守府…

リシュリュー「提督、午後の郵便でまたクリスマスカードが届いておりますよ」

エクレール提督「メルスィ、リシュリュー。ちなみに誰からかしら?」

リシュリュー「読み上げて差し上げましょうか?」

エクレール提督「ウィ、お願い」姿見の前で顔を左右に向けてみたり制服の裾を伸ばしてみたりと、艦娘たちを前に行うクリスマスのあいさつに備えて身支度に余念がない……

ジャンヌ・ダルク「モン・コマンダン(私の司令官)、ぜひ私にもお手伝いさせてください」

エクレール提督「そうね、それではリシュリューと半分ずつ分け合って読み上げてもらおうかしら……構わないわね?」

リシュリュー「無論ですとも……ではこちらの束を」枢機卿のような緋色の生地をした厚手の衣をまとい、丁寧だが表情の読めないリシュリュー……

ジャンヌ・ダルク「ええ、お任せを!」裾に金百合の縫い取りが施された白い清楚なワンピースとふわっとした上着を羽織っている……

エクレール提督「ではリシュリュー、貴女の束からお願いするわ」

リシュリュー「では僭越ながらわたくしめが……まずはパリの海軍省から」

エクレール提督「形式的なものね、後で構いません」

リシュリュー「さようで……地中海艦隊司令部」

エクレール提督「それも後で結構ですわ」

リシュリュー「イギリス地中海艦隊のメアリ・グレイ少将」

エクレール提督「わざわざクリスマスカードを送ってくるだなんて、おおかた皮肉でも書き連ねてきたのでしょうね」

リシュリュー「でしょうな……ドイツ連邦海軍のヴァイス中佐」

エクレール提督「そう」

ジャンヌ・ダルク「では続けて私が……マリアンヌ・サヴォワ少佐」

エクレール提督「ああ、マリアンヌね。パリで一緒だったわ」

ジャンヌ・ダルク「ジュヌヴィエーヴ・フォルバン少佐」

エクレール提督「彼女ならカサブランカですわね。ジャンヌ、続けてもらえる?」

ジャンヌ・ダルク「はい、次は……イタリア海軍、フランチェスカ・カンピオーニ少将」

エクレール提督「フランチェスカから!? ……まぁ、わたくしからもカードを送ったのですし当然ですわね///」

ジャンヌ・ダルク「そうですね」

リシュリュー「おほん……他のカードは後回しにしてもよろしいような物ばかりかと存じますし、司令官も食堂でのあいさつの前にいささか公務が残っておりましょう……私どもは失礼させていただきますゆえ、何かご用の向きがございましたらまた……」

エクレール提督「え、ええ……そうですわね。つまらない書類仕事が少しだけ残っておりますし、二人はそれまで食堂でくつろいでいて構いませんわ」

ジャンヌ・ダルク「あの、モン・コマンダン? よろしければ私もお手伝いを……」

リシュリュー「……ジャンヌ」小さいが含みのある声でたしなめる……

ジャンヌ・ダルク「あっ……いえ、なんでもありません。失礼します///」

エクレール提督「え、ええ……///」

…二人が下がると提督からのクリスマスカードをしげしげと眺め、それから丹念に文を読んだ……提督の柔らかな筆跡で書かれている筆記体のフランス語を読み、二つほどあった小さな文法の誤りを見つけると眉をひそめ肩をすくめたが、読み終えると頬を赤らめてもう一度読み返した…

エクレール提督「それにしてもフランチェスカときたら……本当にこういう事を恥ずかしげもなく書くのですから///」

…提督からのクリスマスカードには「クリスマスおめでとう」の下に添えて「クリスマスには会えないので、私からの愛をプレゼントに込めて送ります……可愛いマリーへ。フランチェスカ」とあり、ほのかに甘い香りのする香水が吹き付けてある…

エクレール提督「……まったく、もう///」時間をかけて「シェルブールの雨傘」のカトリーヌ・ドヌーヴ風にセットした髪を指先でいじりつつ、口元に笑みを浮かべるとカードを読み直し、それからカードにキスをすると引き出しの大事な場所にしまい込んだ……

エクレール提督「さて……わたくしも食堂へ行くとしましょう」

エクレール提督「フランチェスカ、貴女も良いクリスマスを……♪」一人でつぶやくように言うと、足取りも軽く執務室を出て行った……

………

925 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/05/13(月) 01:49:52.02 ID:1BynDEZv0
…同じ頃・ジブラルタル…

クィーン・エリザベス「メリークリスマス、マイ・レディ」

グレイ提督「メリークリスマス」

…地中海の出入口である要衝ジブラルタルの鎮守府もクリスマスの時期ばかりはお祭りムードが漂っていて、蓄音機にはクリスマス音楽や「遥かなるティペラリー(ティペラリー・ソング)」といった愛唱歌がかかっている…

グレイ提督「ふふ、それにしてもみな楽しげで……」

クィーン・エリザベス「ええ、にぎやかで何よりでございますね」

…食堂のテーブルにはクリスマス・プディングと一緒に大きなパンチボウルが鎮座していて、駆逐艦を始めまだまだ「遊びたい盛り」の艦娘たちがやって来てはラム酒いりのポンチをレードル(おたま)でカップに注いでは、にぎやかに飲んだりはしゃいだりしている……一方、クィーン・エリザベスを始めとする年かさの娘たちはある程度落ち着いていて、グレイ提督のそばでゆっくりとウィスキーやブランデーをかたむけている…

エメラルド「提督、よろしければお代わりでも?」

グレイ提督「そうですわね……ではグレンフィディックをストレートで」

エメラルド「はい」

ヌビアン(トライバル級駆逐艦・二代)「提督、プレゼントを開けてもいいデスカ?」

グレイ提督「ええ。貴女たちへのプレゼントなのですから、好きな時に開けて構いませんよ」

ヌビアン「じゃあさっそく……わ、手袋デス」プレゼントの包み紙を待ちきれないというように破くと、中からしっとりした手ざわりの手袋が出てきた……

…ヌビア人(いまのスーダンや南部エジプトにいたナイル川流域の原住民)を艦名に持つ「ヌビアン」は黒褐色の肌に金のネックレスが良く似合っていて、グレイ提督がロンドンのホワイトホール(海軍省)に寄った際に「ハロッズ」で注文しておいた暖かな青灰色の手袋をはめて喜んでいる…

グレイ提督「地中海とはいえ冬は寒いし、貴女はことのほか寒がりですものね」

ヌビアン「アリガトウ、マイ・レディ♪」

グレイ提督「いいえ、構いませんわ」椅子に腰かけ、いつも通りの表情でちびりちびりとウィスキーを傾けているが、その口元には小さな笑みが浮かんでいる……

ジャヴェリン(J級駆逐艦「投げ槍」)「私のはハンカチだ…!」

グレイ提督「前に使っていたのはずいぶんとすり切れていたでしょう? 良かったらお使いなさいな」

ジャヴェリン「はい、大切にします♪」

…普段は落ち着いた雰囲気で、エリザベス女王陛下とネルソン提督の肖像画が見おろしている食堂も、今日ばかりは紙テープやリボンでにぎにぎしく飾りつけられ、演壇の周囲ではクリスマス恒例のくじ引きが行われている…

ジャーヴィス(J級駆逐艦・嚮導型)「やった、当たったぁ!」

ジャッカル(J級駆逐艦)「まーたジャーヴィーが一等を持って行っちゃったのか……私はいっつも残飯あさりだよ」

クィーン・エリザベス「相変わらずジャーヴィスは幸運の持ち主でございますね」

グレイ提督「さすがは「ラッキー・ジャーヴィス」ですわね」

(※ジャーヴィスは地中海を中心に活動し被害も多かったが、不思議と戦死者の出ない幸運艦「ラッキー・ジャーヴィス」として有名だった)

エメラルド「同感です……ところで提督」

グレイ提督「ええ、何かしら?」

エメラルド「イタリアのカンピオーニ提督にもプレゼントを贈っていらっしゃったようですが」

グレイ提督「ええ。彼女には「フォートナム&メイソン」のダージリン、セカンド・フラッシュ(二番茶)を一箱……トワイニングも普段の紅茶としては充分だけれど、たまには本物を味わってみるべきですものね」

エメラルド「なるほど」

グレイ提督「タラントからはクリスマスに合わせて素敵なイタリア食品とワインの詰め合わせを贈ってもらったことですし、そのくらいのお返しはしておかないと失礼と言うものですから」

クィーン・エリザベス「それに、個人的なプレゼントも届いていたようでございますね」

グレイ提督「ええ、リチャード・ジノリの素敵なティーカップを……色も鮮やかで、午後のお茶の時間が楽しみになりますわね」

エメラルド「ああ、あのアンズ柄の」

グレイ提督「いつものウェッジウッドも良いものだけれど、違う茶器を使うのも目先が変わって楽しいというものですわ」

クィーン・エリザベス「さようでございますね」

グレイ提督「ええ……なにはともあれ良いクリスマスですわね。誰も欠けることがなく、にぎやかで……ふふ♪」

エメラルド「まったくです」

グレイ提督「エメラルド、貴女も好きな飲み物を取っていらっしゃいな。今宵ばかりは多少酔ってもとがめ立てしたりはしませんよ?」

エメラルド「いえ、充分いただきましたから……今は提督のお側にいたいです///」

グレイ提督「まぁ……ふふっ♪」
926 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/05/18(土) 02:05:06.58 ID:1pEXzytZ0
…一方・横須賀…

百合姫提督「それじゃあ皆、メリークリスマス♪」

一同「「メリークリスマス」」

…横須賀の鎮守府では百合姫提督が艦娘たちにごちそうを食べさせるためのいい口実として形ばかりのクリスマスパーティーを開いていた……食堂のテーブルには艦隊の胃袋を支えて来た給糧艦「間宮」「伊良湖」を始め、動きが危なっかしいことで何かと話題になる給油艦の「剣埼(初代)」や大型給油艦の「速吸」、給炭艦「襟裳」といった面々が当番の艦娘たちと奮闘して作り上げたご馳走が並び、正装の百合姫提督を上座に全員がずらりと並び、グラスを持ち上げて乾杯した…

大淀「提督、お注ぎしますね」

百合姫提督「ありがとう、大淀」

妙高「提督、よろしければこの「フーカデンビーフ」をお取りしましょう」ゆで卵を埋め込んだミートローフ「フーカデンビーフ」を切り分けてくれる……

百合姫提督「それじゃあ一切れいただきます」

四阪「提督、こっちも美味しいアルヨ!」海防艦「四阪」は大戦を生き抜き中華民国の賠償艦、その後投降して中共に渡り「恵安」として長く艦籍にあった功労艦であり、今は綺麗なチャイナドレスとウェーブのかかった髪で「李香蘭」風にしている……

百合姫提督「ええ、ありがとう。四阪はもう取った?」

四阪「はい、もうたくさんとったアル!」

百合姫提督「それならいいわ。みんなもお腹を壊さない程度にいっぱい食べてね?」

…百合姫提督は普段から艦娘たちが暮らしやすいようにと心を砕き、特に食べ物に関しては窮屈なことがないよう、たびたび鎮守府の食卓料に自分のポケットマネーをつぎ込んでいた……そのおかげもあって、いつもやつれているように見える「第一号(丙型)」「第二号(丁型)」といった海防艦の娘たちも以前よりはずっと血色が良い…

足柄「提督。せっかくだし一杯注がせて?」

…フーカデンビーフにローストチキン、それに艦娘たちにとってはなじみ深い料理であるコロッケや、士官食堂でしかお目にかかれないあこがれの献立でもあるチキンライスを包み込むタイプのオムライスといった洋食に合わせて、テーブルには清酒だけではなく紅白それぞれのワインも並んでいる……洋行帰りのハイカラが自慢の足柄だけに、ボトルを手に百合姫提督にもワインを勧めた…

百合姫提督「ありがとう」

足柄「どういたしまして。代わりに私のをお願いしていい?」

百合姫提督「ええ、手酌はお行儀が良くないものね……はい、どうぞ」

足柄「ありがとう。ところで……」

百合姫提督「なぁに?」

足柄「今年の忘年会だけど、手はずはもう決まってる?」

百合姫提督「あぁ、そのこと……一応いつもの料亭に席は取っておいたのだけれど……」

足柄「どうかしたの?」

百合姫提督「いえ。もっと気さくな飲み屋さんとかの方が良かったかしら、って……ちなみに足柄は何が食べたい? 天ぷらとか?」

足柄「そうねぇ……やっぱり年末と言えばすき焼きじゃない?」

百合姫提督「すき焼きね、それならお願いできるわ」

足柄「そんなに心配しなくたって大丈夫よ。どうせ飲んだくれてきたら味なんか分からないんだし、水雷戦隊の駆逐や軽巡だのは味より量なんだから」

百合姫提督「もう、そんな身も蓋もない……♪」思わず苦笑いを浮かべる百合姫提督……

足柄「事実は事実よ。現にほら、あの様子を見てご覧なさいな」

初雪「わぁ、美味しいです♪」

白雪「本当に……もぐもぐ……それに量もたくさんあって……」

雷「間宮さん、とっても美味しいです!」

間宮「そう言ってもらえると私も頑張ったかいがあります」

百合姫提督「ふふ、良かった……あの娘たちがお腹いっぱい食べている姿を見ると嬉しくなるわ」

足柄「ふ、まったく面倒見が良いというか世話好きというか……」

百合姫提督「いつも頑張っているんだもの。私だって普段から「提督」だなんて言っている以上、そのくらいはしてあげないと……ね?」

妙高「とはいえそれが実行できる提督は少ないですし、本当に提督には感謝してもしきれません」

赤城「その通りです……良かったら私からも一献///」群馬の地酒「赤城山」の一升瓶を持ってかたわらにやって来た……

百合姫提督「あら、赤城……だいぶ回っているようだけれど平気?」

赤城「平気です、後はお風呂に入って寝てしまえばいいですから……ひっく♪」

百合姫提督「くれぐれもお風呂で溺れないようにね?」

赤城「はい……ひゃっく♪」
927 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/05/24(金) 01:39:49.31 ID:N02BX3Bt0
百合姫提督「もう、赤城ったらそんな足元がおぼつかないほど飲んで……立てる?」

赤城「立てますよ、子供じゃないんですから……っとと」

百合姫提督「大丈夫?」倒れそうになる大柄な赤城を懸命に抱きとめる……

赤城「ええ……すん、すんっ」

百合姫提督「ごめんなさい、もしかして汗臭かった? ……温かい部屋で食べたり飲んだりしたものだからちょっと汗ばんでいるし」

赤城「いえ、そうではなく……いつもの香水とは匂いが違いますね」

百合姫提督「あ……そ、そうね///」

足柄「そういえば今日のは甘っぽい花の香りよね……ねぇ、もしかして」

百合姫提督「///」

足柄「ふぅん、なるほどね♪」

…普段はグリーンティー(緑茶)や柚子のような、どちらかというと中性的でさっぱりした和風のパルファム(香水)を使うことの多い百合姫提督……だが、頬を赤らめた百合姫提督のうなじから立ちのぼるのはフローラルブーケ系の甘く華やかな香りで、それを指摘されると恥ずかしげに小さくうつむいた…

龍田「提督もなかなか捨てておけないわねぇ?」

百合姫提督「も、もう……これはフランチェスカからのクリスマスプレゼントだったから、少し付けてみただけで……///」

足柄「まぁそういうことにしておいてあげるわよ……そうよね、間宮?」

間宮「ええ♪ 提督が一生懸命読んでおられたタラントの提督さんからのお手紙に「クリスマスの時は私も同じ香水を付けるから、香りだけでも一緒にいましょう?」と書いてあったなんて、たとえ風の噂で耳にしたとしても言うわけにはいきませんから♪」

百合姫提督「ま、間宮っ///」

間宮「あ、いけません……ついうっかり♪」帝国海軍の給糧艦であり、また強力な通信設備と傍受機能を持っていた「間宮」は艦隊の金棒引きとして、鎮守府の噂という噂を知り尽くしている……

妙高「はぁ、お熱いお熱い……♪」わざとらしく手で顔を扇いでみせる……

金剛「……それでいえば、長門だってそういうのはたくさんあるでしょう?」

長門「まぁ、少しは……♪」

…戦前にはその特徴的な煙突のシルエットから広く国民に知れ渡り、ある種のアイドルとして名高かった戦艦「長門」……その性質を受け継いでいるのか、長身の古風な美人でさながら「帝劇のスタア」といった容姿の長門には、鎮守府祭や広報活動で知ったという人たちからたびたびファンレターが届いたり、上陸休暇中にツーショットやサインをせがまれたりする…

利根「へぇ、あれが少しだってぇのかい! この間の入湯上陸で一緒に陸に上がったけど、まるで「煙管の雨が降る」ってぇやつだったじゃあねぇか!」

(※煙管の雨が降る…江戸時代、花魁が好みの相手にひと吸いしたあとの煙管を渡すことに由来。要は吸い口ごしの間接キスをねだるというしゃれたアプローチで、それが複数の相手から行われることから。歌舞伎「助六」でお馴染みのモテ表現)

長門「あの時はたまたまよ、たまたま」

足柄「モテる女はたいていそういうことをいうのよ……ね、提督♪」

百合姫提督「私は別にモテるとかそういうのは……///」

龍田「そうねぇ、でもタラントでは向こうの提督さんとずいぶん仲良くしていたわよねぇ?」

百合姫提督「いえ……だって、それは……えーと、そういえば忘年会のことだけれど……///」

羽黒「あらまぁ、艦隊運動の時のキレの良さはどこへやら……さぁさ、提督の苦しい話題の転換に敬意を表して聞いてあげるとしましょうよ」

百合姫提督「もう、みんなしてそうやって……///」

足柄「いつも通り「マウンテン」か「チェリー」か……それとも「マミー(ミイラ)」あたり?」

(※帝国海軍士官の間ではスラングとして単語を英語にもじり「パイン」(料亭『小松』)や「グッド」(料亭『吉川』)などの言い換えが流行っていた)

百合姫提督「えぇと、今年は「山科」と「小桜」は別の鎮守府が押さえているそうなので、27日に「木乃伊」で行うことになりました」

初雪「……それにしても「木乃伊」って変な店名ですよね」

百合姫提督「ええ、なんでも店のご主人がそれらしい店名にしようと思って「木乃伊(きのい)」としたら、後で「ミイラ」って読み方があったことを知ったそうよ」

足柄「ずいぶん変な店名だと思ってたけれど、そんな理由だったのね……ま、あそこは手ごろな割に料理もお酒もいいし」

百合姫提督「ええ、それに店のご主人も何かと良くしてくれるから……」

足柄「それじゃあそういうわけで……それじゃあ時間も遅いし、一旦おつもりにしましょうか」

百合姫提督「そうね。それじゃあ一度お開きにして……まだ飲み足りない娘はもう少し飲んでも良いけれど、明日に響くことがないように」

仁淀「後は私が管理しておきます」

百合姫提督「お願いね。私はお風呂をいただいてから休みますから、何かあったら構わずに連絡してください」

………

928 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/05/30(木) 02:51:57.04 ID:aSUSxV0q0
…翌日…

足柄「……なぁに、また飲み会なの? 忘年会の季節とはいえ、このところ三日にあげず飲み会ね」

百合姫提督「ええ。今日は横鎮の提督を始め横空(横須賀航空隊)の司令官とかみんなが集まる忘年会だし、私だけ欠席するわけにも行かないから……」

足柄「まぁいいけど、飲み過ぎないようにしなさいよ? 帰りは無理して歩こうとしないで、ちゃんとタクシーを拾うのよ?」

百合姫提督「そうするわ」

梅「良ければわらわが付いて行こうか?」

百合姫提督「お気遣いありがとう、でも大丈夫よ……場所と時間、それに電話番号はここに書いておいたから、何かあったら連絡してちょうだいね?」はぎ取り式のメモ帳に書き付けて手渡す…

大淀「では、お気を付けて」

百合姫提督「ええ、行ってきます」

…横須賀市内・料亭「美月(みつき)」…

百合姫提督「遅くなりました」

横鎮先任提督「おお、百合野くん……なに、全然遅くないよ。どこでも好きな場所にかけてくれ」

横鎮後任提督「百合野准将、どうぞ上座に」

…横須賀第一鎮守府を預かる中年の先任提督に始まり、末席の年若い佐官クラスまでさまざまな男女十人前後が座敷に集っている……百合姫提督の後からも何人かやって来ては席についた…

先任提督「さてと、百合野君はビールでいいかな?」

百合姫提督「ええ、はい」

先任提督「じゃあ注いであげよう……みんな飲み物は行き届いたね?」生ビールと(下戸の提督は)烏龍茶のグラスが行き渡ったか確認する……

百合姫提督「ええ、大丈夫です」

先任提督「よろしい……それじゃあ今年もご苦労様、乾杯」

一同「「乾杯」」

先任提督「さぁさぁ、遠慮しないでつついてくれ……田中君、お造りや天ぷらも遠慮しないでいいんだぞ?」

若手提督「は、ありがとうございます」

先任提督「百合野君。きみも遠慮しないで、食べたいものがあったらドンドン頼んでくれよ?」

百合姫提督「ええ、いただきます」

…お造りの鯛にわさびを乗せ、ちょんとつつくように小皿の醤油を付けて口に運ぶ……薄いがもっちりした鯛の食感と濃い口醤油の深みのある味わい……それにチューブのではない「本物の」わさびならではつんとした、しかし爽やかな香気が鼻を抜ける…

短髪の女性提督「良かったらいくつかお取りしましょうか?」

百合姫提督「ええ、ありがとう」

…お造りの他にも懐紙を敷いた粋なカゴに、からりと揚がった春菊、レンコン、さつまいものような冬野菜、それに車エビ、太刀魚などの天ぷらが盛り合わせてある……手元には塩だけでなく温かい天つゆの小鉢も置いてあり、それぞれ好きな方で食べられるようになっている…

短髪「はい、どうぞ……ところでこの間は燃料を融通して下さってありがとうございました」

百合姫提督「いいえ、うちの方の割り当て分にまだ余裕があっただけだから」

先任提督「いやいや、あの時は本当に助かったよ。本当なら「横一」である僕の方から佐藤君の鎮守府に融通してあげないといけない所だったんだけどもね、あいにくジャワ島方面までうちの娘たちを動かしている最中だったもんだから……とかく戦艦ってのは燃料を食うしねぇ」

百合姫提督「そうですね」

先任提督「燃料廠にそういって追加を出してもらうとなったら恐ろしく面倒な手続きが必要になるし、最終的には艦隊司令部のお歴々も市ヶ谷に出向いて説明しなきゃいけなくなる所だったから……いやぁ、あれには本当に感謝だよ」

百合姫提督「そんなに感謝されるとかえって気恥ずかしいです……」

短髪「いえ、おかげで大規模対潜掃討も無事に済みましたから……私になにかお返しできる機会があったら何なりとおっしゃって下さい///」

百合姫提督「ええ、ありがとう……///」お酒も回って紅潮した頬をした女性提督から熱い視線を向けられ、はにかんだように答えた……

先任提督「とにかく君が横須賀にいてくれてありがたいよ。さすが井ノ上校長の愛弟子だね♪」

百合姫提督「もう、またそれですか。その話は誰かが広めたまったくの作り話なんですよ……本当に広まって欲しくない話ばかり勝手に広まるんですから///」

短髪「でも、その事なら私も聞いたことがあります。江田島では井ノ上成美(いのうえ・なるみ)校長の愛弟子だったとか……」

百合姫提督「だからそれは誰かが言いふらした噂で……」

後任提督「そうそう、僕も聞いた覚えがあるよ。「横二」の百合野提督は井ノ上校長の愛弟子で「智」の百合野って呼ばれているって」
929 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/06/06(木) 02:25:09.04 ID:uXsLn0Fo0
百合姫提督「ですから……私は山本五十六元帥の遠戚でもありませんし、江田島で特別扱いされたこともありません。漕艇訓練では皆さんと同じように手にマメを作りましたし、チェスト(衣服箱)の中身をひっくり返された事だってあります」

横空司令「まぁまぁ、そうムキにならなくても……それより鍋が来たようですよ」

先任提督「おっ、来たか♪」

後任提督「やっぱり冬は鍋物に限りますね」

若手提督「なに鍋が来るか楽しみです♪」

先任提督「ふふん、今回はアンコウ鍋だぞ……あれは深海魚だから「深海棲艦」を食ってやろうってわけでね♪ さ、遠慮しないで手を出してくれ……司令、そちらにもひとつ」

横空司令「や、これはどうも」

短髪「百合野准将、よそいましょうか?」

百合姫提督「そうですね、せっかくですから……ふー、ふー……」

…ぷるぷると柔らかな皮とほろりとした身、それにクリームのように濃厚な肝が上品な醤油味の汁に溶け込み、旬のみずみずしい白菜や桜に切ったにんじん、豆腐やシイタケなどにも沁みわたっている…

百合姫提督「ふあ…はふっ……おいひい……」

先任提督「うーん、美味い……日本酒と一緒に食うアンコウ鍋は最高だね」

横空司令「アンコウなんて霞ヶ浦空にいたとき以来ですよ……あー、沁みる」

百合姫提督「……よそってあげましょうか?」下手に座っている若手提督の呑水(とんすい)が空になっているのを見て、とりわけ用の菜箸に手を伸ばす……

若手提督「いや、百合野准将によそっていただくだなんてめっそうもない……///」

先任提督「田中君、そう遠慮するな。君だって横鎮の一員なんだからね」

短髪「そうそう。それにあんまり遠慮するのも考え物よ?」

若手提督「は、それでは……///」

先任提督「ははは、そんな緊張しなくても大丈夫だよ♪ 海幕の偉いさんと飯を食っているわけじゃないんだ、酒の方だって気楽に飲って(やって)くれ……そうは言っても付き合い酒だからやりにくいだろうが、私はもうちょっとしたら引き上げるから」

若手提督「あ、いえ……別にそういう意味では……」

先任提督「分かってる分かってる。たんに私が年で、あんまり深酒をすると明日に響くから引き上げるだけさ……そういう点では米内さんは大変な人だよ」

百合姫提督「米内さんというと……海幕の米内・政子(よねうち・まさこ)大将ですか」

先任提督「そう、その米内さんだ。まぁあの人の飲むことといったら、まるでうわばみ(大蛇)か酒呑童子だよ。それでいて顔色ひとつ変えやしないんだから……飲み比べをしかけた若い連中がへべれけになってひっくり返っている中で、平然と飲みつづけていたって言うからね」

百合姫提督「噂には聞いたことがありますが、お酒の席ではご一緒したことがありませんので」

先任提督「周囲は何やかやと言うけれど、器のでっかい立派な人だよ……ただ、性格は井ノ上さんと正反対だな」

百合姫提督「井ノ上校長はストイックな方ですからね」

短髪「ええ。でも課業終わりの静まりかえった海辺でそっとヴァイオリンを弾いている井ノ上校長は素敵でした……」

先任提督「何しろあの人は数学や語学だけじゃなくて楽器も得意だからね、あれでみんなやられるんだ。もっとも、井ノ上さん自身は堅い人だからちっとも浮いた話はないそうだが……ま、米内さんが明るくて豪華な牡丹の花だとすると、井ノ上さんはつつましやかな一人静(ひとりしずか)ってところだね」

百合姫提督「分かります」

先任提督「……ところで百合野君、君の方はどうなんだ?」

百合姫提督「え、私ですか?」

先任提督「ああ。君だって女性士官のファンが一杯いるじゃないか」

百合姫提督「いえ、別にそういうつもりではありませんから……///」

短髪「でも百合野准将の食事会といえば有名ですし、佐鎮の早蕨少佐や館山分遣駆逐隊の市川中佐、それから松本中佐みたいに女性だけしかメンバーに入れないって聞いたことがありますが」

百合姫提督「あ、あれはお互いに仲良しの同期で「連絡を絶やさないようにしよう」ってお茶や食事の機会を設けているだけで……///」

短髪「そうなんですか? 私てっきり……」

百合姫提督「私だって一応は提督です……そんな公私混同はしません」

先任提督「うむ、実にいいことだ。それでいうと提督の中には艦娘たちと安易に「仲良く」なりすぎる者もいるが、私としてはどうかと思うね」

短髪「ごほっ……!」

百合姫提督「……そうですね、肝に銘じておきます」自分から積極的にアプローチしたわけではないとはいえ、思い当たる節は多々あるだけに気まずい……

先任提督「アンコウだけに……かな? ははは♪」

短髪「あは、は……」

百合姫提督「……」
930 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/06/17(月) 03:09:45.41 ID:9+gEnvwy0
…忘年会当日・朝…

足柄「……おはよう、提督」

百合姫提督「ええ、おはよう」

龍田「あらぁ、少し顔色が青いわねぇ……今日はうちの忘年会だけれど、昨日の今日で大丈夫?」

百合姫提督「ええ、昨夜はお酒の量も控え目にしておいたし、解散した後にちゃんと肝臓ドリンクも飲んでおいたから……でもちょっとだけ頭が重い感じ」少し眉をひそめ、こめかみにほっそりした手を当てた……

間宮「酔い覚ましにしじみのおみおつけを用意しておきましたが、よろしければ召し上がりますか?」

百合姫提督「ええ、いただきます……気づかってくれてありがとう、間宮」

間宮「いえ、たまたま市場で安く仕入れてきたものですから」そう言いつつもさりげなく気づかってくれる間宮の心遣いが温かい……

百合姫提督「それではいただきます」

…もう年末ということもあって、少し早いが実質仕事納めの状態になっている鎮守府……そのため、どうしても欠かせない当直や当番を除く全員が揃っていて、百合姫提督のあいさつのが済むとにぎやかな、しかしどこかゆったりした雰囲気の食事が始まった…

青葉「今夜は忘年会ですね、楽しみです♪」

百合姫提督「そういってもらえると方々に予約の電話をかけたかいがあるわ」

…朝食は麦の混じっていない「銀飯」と生卵、脂がのった鮭の塩焼きに、間宮たち給糧艦の娘たちが漬け樽いっぱいに用意し、ほどよく漬かって酸味が出始めている白菜の塩漬け、そして赤味噌を利かせたしじみの味噌汁……長机のあちこちにはほうじ茶のやかんが置かれ、食後のおやつとしてカゴに盛られた温州みかんが積まれている…

鵜来「ずずっ……あー、沁みる……」

百合姫提督「そうね……ふぅ」温かい味噌汁をすすると、脈打つような鈍い頭痛が治まるような気がする……

足柄「朝食が済んだらお風呂に浸かってきたら? そうすればすっきりするんじゃないかしら」

百合姫提督「いえ、軽くとはいえお化粧もしちゃったし、それにさすがに朝からお風呂だなんて贅沢すぎるから……」

足柄「いいじゃない。だいたいタラントのカンピオーニ提督のところなんて、温泉を引いた古代ローマの宮殿みたいな大浴場がいつでも入り放題だったじゃない。アレに比べればうちの浴場なんてささやかなものよ」

百合姫提督「さすがにあれと比較するのは……」カララの大理石や御影石をふんだんにあしらい、ランの花や観葉植物の植え込みまであるタラント第六鎮守府の豪華な大浴場を引き合いに出され、思わず苦笑いする百合姫提督……

龍田「確かにすごい大浴場だったわねぇ、お湯は少しぬるめだったけれど」

足柄「とにかく、今夜の忘年会までに気分を一新しておいてくれればいいのよ」

百合姫提督「頑張ります」

間宮「それではおみおつけのお代わりを召し上がっていただくということで……よそいましょうか?」

百合姫提督「ええ、それじゃあもう一杯……」

………



…夕方・横須賀市街の料亭「木乃伊」…

百合姫提督「ちゃんと全員いるかしら」

大淀「はい、全員います」

百合姫提督「なら良かったわ。さすがにこれだけいると、私も把握出来ないことがあるから……」

…陽が落ちるのも早い冬の夕暮れ、ぽつぽつと明かりが灯り始めた横須賀の街……その喧騒から少し外れた一角にある料亭「木乃伊(きのい)」……百合姫提督と「横須賀第二」鎮守府の艦娘たちにとってはお馴染みの料亭で、店先には小ぎれいに整えられた竹藪や石灯籠のある前庭があって、小粋な入口の小さな行灯に「料亭・木乃伊」とある…

仲居さん「いらっしゃいませ、お席はこちらに用意してあります」

長門「提督、では私と一緒に♪」

比叡「いえ、ここはお召し艦である私と……どうぞお手を♪」

金剛「あらぁ、年長者を差し置いて何をしているのかしら。提督は私と一緒に行くわよねぇ♪」

足柄「はいはいはい、いつものお店なんだから案内なんていらないでしょ……さ、行きましょう?」

百合姫提督「あ、ありがとう……」

足柄「いいのよ、いちいちこの調子じゃあ埒があかないわ」

電「……それにしてもここに来るのは夏にやった暑気払いの宴会以来ですね……っとと」

百合姫提督「あいた……っ!」

電「あいたぁ……済みません、提督。お怪我はなかったですか?」

百合姫提督「ええ、大丈夫……」

足柄「はぁ……提督と電ときたら、本当によくぶつかるんだから。今日は隣同士で座らないことね」
931 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/06/24(月) 01:02:09.53 ID:+db1eW/Q0
…大部屋…

大淀「えー……それでは提督、乾杯の音頭をお願いします」

百合姫提督「はい」

…襖を開けて一続きにした畳敷きの大部屋で、床柱を背にした百合姫提督が立ち上がると左から右へと視線を動かしていく……勢揃いしている指揮下の娘たちは屈託のない表情で、それぞれビールグラスや熱燗のお猪口を手にしていて、せっかちな何人かは料理やお酒が待ちきれない様子でいる…

百合姫提督「えー、本当だったらなにか立派な演説をするべきなのかもしれないけれど、私がしなくてもきっと市ヶ谷のエライ人が年末の挨拶で私の分までしてくれるでしょうし……」そう言うとあちこちからくすくす笑いが漏れる……

百合姫提督「……とりあえず私から言いたいことがあるとすれば「みんな今年もよく頑張ってくれました」ということです」

百合姫提督「特に今年は夏の間「交換プログラム」で私が欧州に長期派遣されていた中で留守を預かってよくやってくれて……おかげで無事にプログラムも終え、こうしてみんなと一緒にいることができます。本当に感謝しています」

百合姫提督「……それでは、本年もお疲れさまでした。乾杯」

一同「「乾杯!」」

…席に着くとビールを数口すすって、それから「いただきます」をして箸をとる……卓の中央にはすき焼き鍋、そしてその隣には綺麗に盛り付けられた牛肉と野菜の皿が鎮座していて、その周囲を取り囲むように箸休めの小鉢や一品料理が並んでいる…

足柄「さ、まずは一献」

百合姫提督「ありがとう」

足柄「ところで年末年始はどうするの?」

百合姫提督「三が日は実家に帰って、あとは香取神社か鹿島神宮に参詣しようかと思っているわ」

(※香取神社・鹿島神宮…どちらも武を司る神として知られる)

足柄「いいわね……そろそろ煮えたみたいだし、取ってあげるわ」きれいにサシの入った霜降りの牛肉がほどよく煮えた頃合いを見計らい、菜箸で器によそった……

百合姫提督「ありがとう」

足柄「いいのよ。それに早くしないとあいつらに全部食べられちゃうし……」ちらりと視界を右の方に向けた……

青葉「……うーん、美味しい♪」

夕凪「これは私の分ですからね?」

天龍「分かってるよ、そんなけちくさい真似なんてしないって」

衣笠「そうそう、夕凪の分まで盗らないから」

青葉「きっと信用されていないんですね」

加古「あはははっ♪」

衣笠「もう、全然おかしくないし……!」

足柄「……ほらご覧なさい。あいつらさっきからバクバク口に放り込んでるわよ」

百合姫提督「大丈夫、足りなくなったら追加で頼めばいいから。そう思ってカードも入れてきたし」

足柄「提督も向こう見ずね……冬の賞与が全部消し飛ぶわよ?」

百合姫提督「いいの、せっかくの忘年会だもの……それより足柄も食べないと、お肉が煮えすぎて固くなっちゃうわ」

足柄「おっと、それもそうね」溶き卵に浸けて柔らかい牛肉を口に運ぶ……

足柄「はふ、ふぁ……良い肉ね、これ……」

百合姫提督「ね、さすがに銘柄牛だけあって……葱もそろそろ頃合いだけれど、食べる?」

足柄「ええ、もらうわ……熱っ! この葱のやつ「鉄砲」だったわ」

(※鉄砲…煮えた葱の外側が柔らかく、中がまだしっかりしている状態。噛むと中の部分が飛び出してくる事から。さらに煮えて箸で掴むとたわむようになると「への字」と呼ばれる)

百合姫提督「大丈夫?」

足柄「平気よ、葱鉄砲の一つや二つ……あー、美味しい♪」

百合姫提督「それじゃあ私はちょっとみんなとお話してくるから」

足柄「ええ、でも見計らってちゃんと食べなきゃだめよ?」

百合姫提督「そうするわ♪」

932 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/07/01(月) 01:08:56.29 ID:AHZDqK3E0
百合姫提督「……どう、おいしい?」

鵜来「はい、まるで舌の上でとろけるようで……♪」

第一号海防艦「本当に美味しいです」

百合姫提督「良かった、お腹いっぱい食べてね」

第一号「ありがとうございます」

新南(鵜来型)「……ところで提督の対潜法は面白いですね」

百合姫提督「そう?」

新南「はい、これまではあんなにしつこく反復して攻撃したことなんてなかったので」

三宅(御蔵型)「そうですね、一回の対潜戦で爆雷を四十発も五十発も投射するなんてしたことありませんでした」

百合姫提督「ああ、そのことね……私も対潜学校に行ったわけじゃないけれど、大戦時の帝国海軍は基本的に爆雷の投射数と攻撃回数が少なかったから、多くの米潜が逃げ切ってしまったという記録があって、その資料を反映して私なりに対潜戦のやり方を研究してみたの」

…海防艦たちの側へやってきて終始和やかな笑みを浮かべていた百合姫提督だったが、対潜戦の話になると気付かぬうちに背筋を伸ばして真面目な表情になる……ビールと日本酒の入っている桜色の頬が熱心な説明でさらに赤みを増し、近くにあった空の小鉢や箸を借りて話しているうちに、近くの海防艦や掃海艇、駆潜艇の娘たちも集まりだす…

松輪(択捉型)「それにしても提督の対潜法は独特です。例の「十文字花射法」ですか、数字の8を縦横に重ねたように航行しながら爆雷を投射したり、探信儀や聴音機みたいな水測兵器を多用したり……」

百合姫提督「うーん、あの戦法はあくまでもひとつのやり方にすぎないけれど、あの形なら僚艦が旋回、探知している間も中心に来た一隻が必ず爆雷を投射できるから、それだけ切れ目のない攻撃ができるの。私は対潜戦の心構えを「カメのように忍耐強く、マムシのように執念深く」だと思っているから……」

日振(日振型)「見張投射ばっかりだった当時に比べると全然違いますね、覚えるまでは苦労しました」

百合姫提督「そうかもしれないわ。でも、潜望鏡や雷跡を見かけたら急回頭して突っ込んでいく……この戦術は知られすぎているし、むしろ敵潜の返り討ちに遭うことの方が多かったから、基本的にやらないことにしているの」

第六十七号海防艦(「第一号(丙)」型海防艦)「なるほど」

百合姫提督「あら、いけないいけない……堅い話はこのくらいにして、忘年会なんだからもっとくつろいで? お肉の追加も頼みましょうか?」

竹生(鵜来型)「はい♪」

百合姫提督「ふふ、了解……仲居さんがきたらお願いしておくわ♪」

第三号海防艦(第一号型)「やったぁ♪」

第八号海防艦(「第二号(丁)型」海防艦)「あ、それじゃあこっちも」

第二十一号駆潜艇(「第十三号」型駆潜艇)「提督、私たちもおかわり欲しいです!」

百合姫提督「はいはい♪」

足柄「……まったく「士官とはオレもオレもと言う人種なり」ってやつね」

高雄「同感ですね。それとついでにこちらにも」

足柄「……」

百合姫提督「すみません、それじゃあこっちとむこう……それからあの娘たちにもお肉の追加を。それからお銚子のお代わりと……鵜来は焼酎の方がいいかしら?」

鵜来「はい、薩摩白波のお湯割りで」

百合姫提督「ではそれでお願いします」

仲居さん「はい♪」

…しばらくして…

明石「そーれ、捕まえたぁ……っと♪」

初雪「もう、放して下さいっ!」

吹雪「ひゃあっ、明石ってば! どこを触っているんですかっ……///」

明石「そりゃあ船体に異常がないか隅から隅まで調べないと……お、このバルジはちょうど手のひらに収まる大きさで♪」

百合姫提督「明石、いい加減に放してあげなさい?」

明石「むむ、提督が検査修理を認めないなら仕方ないですね。ほら、放してあげますよー……っと」

間宮「……それでですね、長門ったら普段は帝劇の女優さんのように見えますけれど長州訛りが抜けないものですから、この間もうっかり「であります」だなんて陸さんみたいな話し方を……♪」

長門「間宮、どこからその話を……!」

間宮「ふふっ、どこからでしょうねぇ……♪」

百合姫提督「くすくす……っ♪」

………

933 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/07/08(月) 01:40:17.33 ID:s6lOcY020
…さらにしばらくして…

青葉「ほぉら、撮りますよぉ? もっと近づいて、笑って笑って♪」

百合姫提督「はいはい♪」

龍田「青葉はすぐ写真を撮りたがるのよねぇ」

青葉「いいじゃありませんか、いつも上手に撮れているんですから」

利根「おう、確かに毎回いい具合に写ってらぁな……ひっく、どうだもう一杯♪」

天龍「いただきます!」

木曾「私も!」

利根「おっ、さすがに水雷戦隊は威勢がいいや! 気に入った、さぁ飲め飲め!」

…そう言って注いだのは利根川の流れる房総の名酒「仁勇(じんゆう)」で、威勢のいいべらんめえ口調な利根とは似合わないすっきりとした飲み口のいい酒で、勧められた百合姫提督もついついペース良くお猪口を空けてしまっていた…

木曾「はー、美味いっ!」

利根「おう、遠慮せずもう一杯やれ♪ 利根の川風ぇ〜、たもとに入れて……月に棹差す高瀬舟……っと♪」

(※利根の川風…江戸時代にブームになった中国古典「水滸伝」を日本に置き換えて大流行した、読本「天保水滸伝」の台詞。浪曲などでもお馴染み)

百合姫提督「ねぇ、足柄……もう少し、側に寄ってもいいかしら///」

足柄「そ、そりゃあ別に構わないけど……///」

矢風(標的艦)「あーっ、提督と足柄ってば二人でいちゃいちゃしてるぅ♪ 初々しくって可愛いんだ♪」

足柄「あのね、そういうのを余計なお世話って言うの……よ!」二人を茶化してくる矢風に、力加減をした上でポカリと一つ拳固を食らわせる足柄……

矢風「あいたぁ!」

摂津(標的艦)「んもう、矢風はすぐそないなちょっかいを出して……」

矢風「ふぅーん、摂津ってばそういう事を言うんだ……それじゃあ今度、赤城や加賀の練習相手をお願いしちゃおうかなぁ?」

摂津「それはあかんって、うちじゃあ反応がトロい言うてすーぐ好き放題されてまうし……///」

加賀「別に矢風でもそんなにすばしっこくはないですけれど……ね♪」後ろから忍び寄ると、矢風の小さい身体をつかまえて脇腹や足裏をくすぐった……

矢風「ひゃあっ!? あひゃひゃ、くすぐった……あはははっ♪」逃れようと身をよじらせ、脚をばたばたさせる矢風……

百合姫提督「あらまぁ、矢風ったらすぐ捕捉されちゃって……これじゃあ練習にならないわね、加賀?」

加賀「はい、ちっとも苦労しないですね……うりうり♪」

矢風「ひゃあぁっ、そこはダメだってぇ///」

…無礼講の宴席でお酒が回って陽気かつ親しげになると同時に、かなり騒がしくなってきた艦娘たち……肩を組んで戦前・戦後の歌謡曲を歌う娘もいれば旺盛な食欲のおもむくままに飲みかつ食べる娘もいて、中にはすっかり酩酊している娘やうつらうつらしている娘もいる…

百合姫提督「ん……ふわぁ……」

足柄「あら、提督はそろそろおねむかしら?」

百合姫提督「あぁいえ、大丈夫。 お部屋は暖かいしお腹もいっぱいで、少しあくびがでちゃっただけ……」そう言っている間にもあくびがこみ上げ、手の甲で口元を隠した……

足柄「大丈夫じゃなさそうね……飲みたい連中には二次会にでも行ってもらうとして、一旦おつもりにしましょうよ」

百合姫提督「そうね、みんなひとわたり食べたり飲んだりしたみたいだし……そうしてもいい頃合いかしら」

料亭の女将さん「……失礼いたします」

足柄「ほら、ちょうど良いところに女将さんも来たわよ」

百合姫提督「これは女将さん、お忙しいでしょうにわざわざすみません……それに大人数で騒がしくしてしまって……」

女将「いえいえ。こちらこそ鎮守府さんには折々の宴席をうちで設けていただいておりますのに、すっかり挨拶が遅れてしまって」料亭の女将さんはほっそり気味のしっとりした美人さんで、所作も丁寧で着物の襟もきちんと抜けていて、身ごなしの一つ一つが小粋な雰囲気をかもし出している……

百合姫提督「とんでもないです……少し早いかもしれませんが、また来年もよろしくお願いします」

女将「これはご丁寧にありがとう存じます……こちらこそ、今後ともぜひご贔屓に♪」

百合姫提督「騒がしい娘たちですしなにかとご迷惑かと思いますが、もし構わなければまた新年会でも……それと」そろそろおつもりにしますというように小さくうなずいた……

女将「はい、そのように……それではどうか、良いお年を」畳に揃えた指先をつけて丁寧に一礼すると、ふっと大人の色香が漂うような視線を向けた……

百合姫提督「よいお年を///」

………

934 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/07/13(土) 01:47:55.33 ID:inAHo1iA0
…夜・横須賀市街…

足柄「うぅ、寒っ……流石に夜風がこたえるわね。提督は寒くない?」

百合姫提督「大丈夫よ、ありがとう♪」

…夜風に吹かれながら歩く百合姫提督たち……どちらかと言えば小柄な百合姫提督は足柄に身体を寄せると、お酒で赤らんだ頬をそっと肩に乗せてにっこりする…

足柄「ならいいけど……帰りにコンビニでも寄っていきましょうか///」

百合姫提督「ええ、せっかくだから甘い物でも買っていきましょう」

利根「それじゃああたしらはここで……せっかく陸に上がったんだから、もう一軒行ってくらぁ♪」

足柄「いいけど飲み過ぎて警察のお世話になったりするんじゃないわよ?」

天龍「任しとけ!」

足柄「……やれやれ、あの暴れ川連中ときたら。よその鎮守府の娘と喧嘩とかしなきゃいいけど」

百合姫提督「そうねぇ、でも年末くらいは羽を伸ばして好きなようにして欲しいし……」

足柄「警察署のトラ箱に入ったり、内務の連中から監察を食らわない程度にならね……コンビニならこっちのほうが早道だったわよね」

百合姫提督「ええ」

…古くからの軍港の街である横須賀、その中でも特ににぎやかな繁華街は「海軍さん」のころから変わらない「鎮守府さん」相手のさまざまな商売で繁盛していて、ネオン輝く夜の街角はしばしの楽しみを求めて財布と欲望をふくらませている艦娘や鎮守府関係者たちを誘蛾灯のように誘っている……そんな繁華街を抜け、近道しようと角を曲がった百合姫提督と足柄だったが、通りの建物はいずれも玄関先に「ご休憩○○時間〜円から」といった値段表を載せ、洋館風の装飾がどこか後ろめたい雰囲気をしたピンクや紫の明かりで彩られている…

足柄「っ、そういえばこのあたりはそういう通りだったわね///」

百合姫提督「言われてみれば……」

足柄「べ……別に私はそういうつもりじゃないわよ///」

百合姫提督「ええ、分かっているから……///」

…立ち並ぶホテルにはときおり連れだって入っていく人たちと、そこに混じってちらほらと艦娘たちの姿も見える……今しも百合姫提督たちの目の前で、冬空の下で寒くないのか心配になるような短いスカートの女性を連れた艦娘がするりと建物へと入っていこうとする…

艦娘「……あれ、もしかして横二の百合野提督ですか?」ホテルへ入ろうとした女性連れの艦娘が百合姫提督に気付き、驚いたような声をあげた……

百合姫提督「っ!」

艦娘「やっぱり! 私、横須賀第三の明石です♪ トラックの時はうちの駆逐艦を曳航して連れてきてもらったのに、お礼もまともにしないで済みませんでした♪」

百合姫提督「いえいえ、お互い持ちつ持たれつですから……」

明石(横三)「とんでもない。「横二」さんにはもうお世話になりっぱなしで♪」

足柄「……こんなところでする話じゃないでしょうが」小声で文句を言う足柄……

明石(横三)「それにしても百合野提督とこんな所で出会うなんて珍しいですねぇ♪ ……そうそう、もし使うならここと向こうのホテルはいい感じですよ♪」

百合姫提督「え、ええ……お気遣いありがとう///」

足柄「ねぇ、お連れのお姉さんが寒そうだし早く入ってあげたら?」

明石(横三)「いけないいけない、すっかり忘れてた……もっとも、今は寒くてもすぐ溶接作業そこのけに暑くなるんですけど♪ ……とにかく良いお年を♪」

百合姫提督「……良いお年を」

足柄「はいはい……ったく、べろんべろんに酔ってたわね……」

百合姫提督「そうね……」

足柄「……ねぇ、提督」

百合姫提督「ん?」

足柄「あー、その……ちょっと歩き疲れちゃったんだけど、どこかで脚を伸ばせないかしら///」

百合姫提督「そう、ね……私も酔いが回ってきたみたいで、ちょっとふらふらするし……どこかホテルでも探しましょうか///」

足柄「わ、分かったわ……どこにする?」

百合姫提督「そうね、それじゃあ向こうのホテルに……///」

………

935 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/07/20(土) 01:20:03.31 ID:GWtTM44s0
…ラブホテル…

足柄「……最近のこういうホテルって受付がいないのよね」

百合姫提督「そうね、パネルを押せば良いようになっているから……このお部屋でいい?」

足柄「ええ……いいけど、提督もこういうの案外手慣れているのね」

百合姫提督「そうね、同期の集まりとかで終電を逃したときに入ったりしたこともあったから……///」

足柄「まぁいいわ、とにかく部屋に入りましょうよ」

…客室…

足柄「……あら、意外ときれいじゃない」

百合姫提督「そうね、ちょっとしたホテルよりもずっと豪華な感じ」

足柄「ね? ベッドも大きいし、調度だってしゃれてるわ」小粋なショートブーツを脱ぐとベッドに座り、お酒のせいか少しむくんでいるふくらはぎをさすった……

百合姫提督「ええ……ところで足柄///」

足柄「なに?」

百合姫提督「……その、ちょっと汗を流してこようと思うのだけれど///」

足柄「あ、あぁ……まぁずいぶん飲んで身体も火照っただろうし、良いんじゃないかしら///」

百合姫提督「え、ええ……じゃあ、お先に良いかしら///」

足柄「べ、別にいいわよ?」

百合姫提督「そう、それじゃあお先に……///」

…浴室…

百合姫提督「ふぅ……」

…やたら大きくて飾り立てられた浴室の中、流れるシャワーに身を任せる百合姫提督……乾かすのが大変なので艶やかな長い黒髪はまとめ上げ、お湯がかからないよう気を付けながら背中や胸元を湯に打たせる…

百合姫提督「良く考えたら、今まで足柄とホテルに来ることなんてあまりなかったかもしれないわ……」

百合姫提督「……どうしよう、なんだか恥ずかしくなってきちゃったわ///」自分の身体を見おろし、それから湯気に曇る大きな楕円型の鏡を手のひらで拭うと、ほのかに赤面した自分の顔がじっと見つめかえしている……

百合姫提督「ううん……私から誘ったようなものなんだから、しっかり足柄をリードしてあげなくちゃ」

…寝室…

百合姫提督「で、出たわよ……?」

足柄「そう、じゃあ私もちょっと汗を流してくるわ」

百合姫提督「……明かりをいじってみたりした方がいいのかしら」手持ち無沙汰を紛らわすためにいくつもあるスイッチを押して何がどうなるか試していると、不意に室内用プラネタリウムが点灯して、天井に天の川が投影されはじめた……

百合姫提督「これはこれで綺麗かもしれないわ……」

足柄「出たわよ……って、何これ?」

百合姫提督「それが、電灯をいじっているうちにプラネタリウムのスイッチを入れちゃったみたいなの」

足柄「何やってるのよ……でもまぁ、これはこれでなかなか綺麗じゃない? シャワーを浴びてさっぱりもしたし……///」バスローブ姿の足柄が大きな円形のベッドにひざから乗り、ベッドの上でちょこんと正座している百合姫提督ににじり寄るように近づいてきた……

百合姫提督「足柄……///」

足柄「提督……いえ、今だけは下の名前で呼ばせてもらうわよ。……深雪///」

百合姫提督「あ……///」唇に触れると思った足柄のキスが首筋に走り、足柄の黒髪から漂う甘い椿油の香りが鼻腔をくすぐる……

足柄「外泊届、出してあるわよね?」

百合姫提督「ええ、もしかしたら遅くなるかもしれないと思って……///」

足柄「じゃあ心配することは何もないわね……ん、んっ///」

百合姫提督「あ、足柄……っ///」しなやかでなめらか、それでいで頼もしい足柄の肩にぎゅっと腕を回し、その肌の熱を感じている……

足柄「……深雪、言っておくけど……もう我慢出来ないわよ」バスローブの帯を解いて、小ぶりで形のよい百合姫提督の乳房に指を走らせた……

百合姫提督「ええ……♪」

………

936 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/07/29(月) 01:55:10.65 ID:Ujps+46Q0
…翌朝…

百合姫提督「……うぅん、もうこんな時間」

足柄「すぅ、すぅ……」百合姫提督の上になかば覆い被さるようにして寝息を立てている足柄……羽織っていたバスローブはベッドの下に投げ出され、黒漆のように艶やかな髪は白いシーツの上に流れている……

百合姫提督「ねぇ足柄、起きて?」

足柄「う、うぅん……」

百合姫提督「足柄ってば、そろそろ起きないと」

…ゆさゆさと身体を揺さぶるたびにしっとりと昨夜の汗を残した肌が触れ、形の良い足柄の乳房が柔らかく弾む……百合姫提督に揺り起こされて、嫌々ながらも足柄が目を開けると、引かれたカーテンの向こうはまだ曙光も差していないらしくうすぼんやりと暗く、ベッドに備え付けられているデジタル時計は0600時をまわったあたりを示している…

足柄「ん……そんなの延長すればいいじゃない」

百合姫提督「そうも言っていられないでしょう、鎮守府にも戻らないといけないし……」

足柄「大淀あたりにそう言っておけば執務くらい代わりにやってくれるわよ……それよりもう一回♪」

…目が覚めるにつれ、あらためて自分の下で横たわっている百合姫提督への愛欲を感じ始めた足柄……ぐっと百合姫提督をベッドに押しつけると、吸い付くような肌に舌を這わせつつ花芯の方へと二本の指を滑らせる…

百合姫提督「だ、だめよ……いくらなんでも仕事納めの日に私がいないわけにはいかないもの///」恥ずかしげに顔をそむけ「名残惜しそうに」といってもいいくらいの弱々しさで足柄を押しのけようとする……

足柄「もう、仕方ないわね……」昨夜の火照りを残した艶っぽい表情を浮かべ、髪をかき上げながらしぶしぶ身体を起こす……

百合姫提督「ありがとう、足柄……それとチェックアウトの前にシャワーを浴びないと……」なかば乾いた唾液や愛蜜でべたべたになった身体をどうにかしようと、ベッドから脚をおろしてスリッパをつっかけた……

足柄「だったら私も一緒に入るわ。一人で浴びたら水がもったないし、時間もそんなにないんでしょう?」

百合姫提督「……それもそうね」

…浴室…

百合姫提督「ひゃあっ、あんっ……だめぇ……っ♪」

足柄「何がダメなのよ、そんな甘ったるい声を出しておきながら♪」

百合姫提督「だって……もう一回している時間なんてないもの……あふっ、んん……っ///」

足柄「あぁもう、深雪ってばそんな風に身をよじってくれちゃって……もう、最っ……高♪」シャワーの湯気に包まれ、腕の中でもがく百合姫提督をつかまえてしなやかな肌の感触を楽しむ足柄……

百合姫提督「足柄、お願いだから……このままだと本当に遅れちゃう……///」

足柄「……だったらすぐイカせてあげるわよ♪」後ろから抱きとめるようにして腕を伸ばすと、百合姫提督の秘部にするりと右手の中指と薬指を滑り込ませる……

百合姫提督「あ、あっ、あぁぁぁ……っ♪」

…しばらくして…

百合姫提督「もう、早くしないと朝礼に間に合わないわ……足柄があんなふうに「もう一戦」「もう一戦」って止めないから///」

足柄「仕方ないじゃない、深雪があんまりにも可愛いんだもの」

百合姫提督「……そんなの言い訳にならないわ///」恥ずかしげにうつむいた……

足柄「あぁ、もう……! そういう所がたまらないって言ってるの♪」

百合姫提督「こうなったらタクシーをつかまえましょう///」朝帰りをする人たちを乗せようと流しているタクシーに手を振った……

タクシー運転手「おはようございます、どちらまでやりましょう?」

百合姫提督「横須賀第二鎮守府の正門までお願いします」

運転手「ああ、横二さんですか……昨夜も何人か「横二」の女の子が乗りましたけど、同じような年格好の女の子じゃあ考えられないような所で乗ったり降りたりするもんですから、乗せる側としてはちょっとビックリしますよ」朝まだきの空いている道路を走らせながら、苦笑いする運転手……

百合姫提督「ええ、そうですね……」

…しばらくして・鎮守府…

百合姫提督「おはようございます」

一同「「おはようございます」」

百合姫提督「えー、本日で年内の業務は終了となり、明日からは年末年始のお休みとなります。旅行や外出は楽しみでしょうが、くれぐれも体調には気をつけてください……」

…艦娘たちはいずれも神妙な表情で朝礼を聞いていたが何人かはずいぶんと甘い一晩を過ごしていたらしく、寝不足がうかがえる目をしていたり、甘ったるい白粉の残り香を漂わせている…

百合姫提督「……それでは、良いお年を♪」

一同「「良いお年を!」」

………

937 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/08/03(土) 02:56:27.41 ID:hMQ0KcoD0
…その日の午後…

足柄「それじゃあ気を付けて帰るのよ」

百合姫提督「ありがとう。足柄たちは旅行だそうね?」

足柄「ええ、姉さんたちと那智勝浦に行こうって予約しておいたの。値段は割高だけど、仕方ないわ」

百合姫提督「そうねぇ、年末年始はどうしても混み合うものね……それじゃあ楽しんできてね?」

妙高「ええ、もちろん♪」

羽黒「はい!」

那智「もちろんです」

足柄「そうするわ」

熊野「私と鈴谷も妙高たちと一緒に行くんですよ」

百合姫提督「那智と言えば熊野権現さまだものね……最上は東北に行くそうだから、お互いにお土産を買ってきてあげたら良いかもしれないわね」

熊野「そうですね。それにしても姉様ときたら、飛び出しかねないくらい張り切っていました……」最上型でも「最上」「三隈」と改修が施された「鈴谷」「熊野」は姉妹ながら、少しぎくしゃくすることもあったりする……

百合姫提督「……お互い仲良くね?」

熊野「それはもちろんです、それに提督は分け隔てのない人ですから」

百合姫提督「そう言ってくれて嬉しいわ、ありがとう」

…濃緑色のマツダ・ロードスターに帰省のためのこまごました荷物を積みながら、休暇に出かける艦娘たちとあいさつを交わす百合姫提督……温泉旅行や名だたる神社への初詣など、年末年始の休暇を有効活用するべく喜びいさんで出かけていく艦娘たち…

百合姫提督「ふぅ……これでよし」

松「……準備が出来たようですね」

竹「気を付けて行ってらっしゃいまし」

梅「よい年の瀬をな。それからこれはわれら姉妹からの手土産じゃ♪」車のダッシュボードに置けるような小さな松飾りを手渡した……

百合姫提督「まぁ、ありがとう……いつ作ったの?」

竹「非直の時間や夜の自由時間を使って作りました、どうぞ良いお年を」

百合姫提督「三人とも、ありがとう♪」

…帰省の道すがら…

百合姫提督「……それにしても、うちの鎮守府は本当に良い娘たちばかりね」

百合姫提督「どの娘もよく馴染んでくれているし、お互いによく助け合って……年始のお休みが明けて鎮守府に戻る時は、お土産でも持って行ってあげようかしら」

百合姫提督「時には横着をしたり困った娘もいるけれど、それだって可愛い程度だし……」

…普段過ごしている鎮守府で運転するものといえば業務車の「日産・AD」バン程度で、帰省を除くとなかなか運転する事のないロードスターの軽やかなレスポンスに新鮮な驚きを覚えつつ、年末の混み合った高速を走らせていく…

百合姫提督「それにしても実家に帰るのも久しぶりね。もしおせちの準備や買い出しが済んでいないようなら手伝わないと……」

………



…関東・百合姫提督の実家…

百合姫提督「……ただいま♪」

百合姫提督の母「まぁ、お帰りなさい♪ あなた、深雪が帰ってきましたよ」

百合姫提督の父「お帰り。お休みが取れて良かったね……道路はずいぶん混んでただろう」

百合姫提督「ただいま。そうね、年末だからかせわしない運転の人も多くて、ちょっと疲れちゃった」

…玄関先に飾ってある門松や松飾り、それに物心ついた頃から見なれている干支の置物を見て、あらためて実家に戻ってきた気分になってきた百合姫提督……すでに大掃除は済んでいるらしく、フローリングの床は艶が出ていて、家全体がこざっぱりした雰囲気を漂わせている…

父「だろうね」

母「手を洗ったら着替えてゆっくりしなさいね。それが済んだらお父さんたちにも顔を合わせてあげなさい、きっと喜ぶわ」

百合姫提督「ええ、そうする」

………

938 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/08/11(日) 01:17:15.02 ID:navodhGB0
…しばらくして・和室…

母「深雪、お茶を淹れるけれど飲む?」

百合姫提督「うん、ちょうど欲しかったところ」

…和室の掘りこたつに下半身を入れ、背もたれ付きの座椅子でのんびりとくつろいでいる百合姫提督……帰省の途上で着ていたコートやセーター、スラックスは脱ぎ、白地に紅白の椿をあしらった浴衣というスタイルでゆったりと庭を眺めている……こたつの上にはカゴに載せたお煎餅やおかき、味の良い宇和島のミカンがいくつか入っている…

母「よいしょ……はい、どうぞ」

百合姫提督「ありがとう……お父さんは?」

母「お友達とお酒を飲みに行ったわ。もっとも「年の瀬だからあんまり遅くならないようにする」って言っていたわ」

百合姫提督「そうね、それがいいわ」

…視線の先にある庭先の鳥のエサ台には古釘が打ち込んであり、そこに突き刺した痛みかけのリンゴをヒヨドリがついばみ、しゃもじや炊飯釜についていた米粒やパンくずを載せた皿にはスズメやムクドリがむらがっている……時折いらだったヒヨドリが灰色の羽を震わせ、ヒーヒーと甲高い鳴き声をあげてスズメを追い散らし、またリンゴをついばむ…

百合姫提督「あぁ、こうやっていると年末っていう気分になるわ」

母「良かったわ。ずうっと忙しかったものね」

百合姫提督「そうね、今年は盛りだくさんだったから……でもおかげでイタリアにも行けたし、そういう面では楽しかったわ。ところで年末年始の支度は?」

母「もうだいたいは済んでいるわ。大掃除もしたし、あとは買いだしくらいかしらね」

百合姫提督「だったら車を出すから、明日にでも一緒に行かない?」

母「この時期のデパートは混むわよ?」

百合姫提督「早めに行って帰ってくればきっと大丈夫、お買い物のメモはある?」

母「ええ。とは言っても毎年同じだからそんなに悩まないけれど……ちょっと待っててね」台所から長いリストが書き込まれたメモ用紙を持ってくる……

母「足りないものや思いついたものがあったら言ってね……紅白かまぼこ、栗きんとん、かずのこ、伊達巻、田作り、コハダの粟漬け、黒豆、ちょろぎ……」

百合姫提督「お煮しめはいつも通り?」

母「ええ、うちで作るから大丈夫。おもちも知り合いから分けてもらうから……海老、くわいの煮しめ……あと、あなたが帰ってきたからサラミとか洋風のオードブルでも買い足しておきましょうね」

百合姫提督「そうね、毎年何だかんだでつまんでいるし」

母「……と、リストはこんな感じ」

百合姫提督「うん、全部あると思うわ」そう言っていると、お風呂が沸いたことを知らせるメロディと音声が鳴った……

母「お風呂が沸いたみたいだし、入って来たら?」

百合姫提督「それじゃあ先に入らせていただきます」

母「ゆったり浸かっていらっしゃいね」

百合姫提督「はーい♪」

…脱衣所で帯を解き、大人しめな下着を洗濯ネットに入れてから洗濯機に投入する……クリーム色の内装でまとめられた浴室は午後の日差しを受けて照明を点ける必要もないほど明るく、ふたを取ってかけ湯をすると、広い湯船に足先からゆっくりと浸かった…

百合姫提督「はぁ……ぁ♪」ちゃぷん……と胸まで浸ると身体をじんわりと暖かい湯が包み、思わず満足げなため息が出る……

百合姫提督「あぁ……♪」

…そこそこの大きさがあり丁寧に掃除しているとは言え、年季が入っていてどこか潮っ気も感じる鎮守府のお風呂と違い、入れ替えたばかりのさら湯に満たされたピカピカの浴槽で時間も気にせずお湯に浸かっていられる贅沢は帰省している間しか味わえない……艶やかな黒髪ときめ細やかな白い肌を丁寧に洗い流すと、湯船に入り直して心ゆくまで入浴を楽しんだ…

………



百合姫提督「お風呂上がりました」

母「どう?家のお風呂は気持ち良かったでしょう」

百合姫提督「ええ、とっても」火照った身体を冷ますべく、冷蔵庫の冷たいほうじ茶で喉をうるおす……

母「もう少ししたらお父さんも帰ってくるって」

百合姫提督「まだ1800時にもなっていないのに……もしかして昼のお酒だから効いたのかしら」

母「かもね……今日は冷えるから温かいけんちん汁と、それから豚の角煮。昨日から煮込んでおいたからすごく柔らかいわよ。良かったら先に食べる?」

百合姫提督「ううん、お父さんが帰ってくるまで待つわ」

母「そう、分かった」

百合姫提督「今日はお父さんがお出かけだから、明日はお父さんに留守番をしてもらって……買い出しの帰りにどこかでご飯でも食べよう?」

母「ふふ、そうね♪」
939 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/08/18(日) 01:41:19.33 ID:5/cfhJWp0
…翌日…

百合姫提督「それじゃあ行ってきます」

母「留守をお願いしますね」

父「ああ、気を付けていっておいで」

百合姫提督「はい」

…百貨店…

百合姫提督「わ……すごい混雑」

母「だから言ったでしょう? 買い物だけなら私一人でもできるし、なにも一緒に来なくても良かったのに……」

百合姫提督「買い物はお母さんだけで出来たとしても、荷物持ちがいれば楽だろうから」

母「それはそうね、大いに期待しているわ」

…実家から車を走らせ小一時間、県下の中核都市にある百貨店の入館待ちの行列に並ぶ百合姫提督と母……店頭には門松や年末年始の営業日を知らせるポスター、福袋商戦の広告でにぎにぎしく飾り立てられ、寒空の下で百貨店の開館を待つ人たちで人いきれがしそうなほどになっている…

店員「お待たせいたしました、開館でございます! どうぞ列の順番にお進みください!」

百合姫提督「良かった、オープンしたみたい」

母「年末年始はデパ地下だけ開店が早いのよ……そろそろ順番ね」

百合姫提督「お買い物のリストはあるし、お母さんが疲れちゃう前に済ませようね」

母「そうね」

…デパ地下…

百合姫提督「えーと、黒豆……黒豆……」金箔が入っていたりいなかったり、はたまたたくさん入っているのや少量サイズなど種類もさまざまなおせち関連の食品……母親に買い物カートを預け、人混みをすり抜けつつリストに並んだ商品を手に取っていく……

母「あった?」

百合姫提督「うん、あんまり大きくないパックでいいでしょ?」

母「そうね、そこまで黒豆ばっかり食べるわけじゃないから……あと、伊達巻きは少し高い方にしましょうか」

百合姫提督「分かった」

…館内の買い物客の数が増えるに従って混雑が増し、それと同時に空気もむっと淀んでいる感じがする……特に太平洋の爽やかな潮風に慣れきっている百合姫提督にとって人いきれの館内はこたえるものがあり、外套のボタンを外してラベンダー色をした薄手のセーターとスラックスの動きやすい姿で歩き回っている…

母「……次は肉類ね。ハムとか鴨のローストとか、いくつかあれば困らないものね。あとおつまみにチーズやサラミも」

百合姫提督「じゃあ向こうのお店ね」輸入食品や瓶詰めなどを扱っているお店に立ち寄り、クラッカーに合わせるレバーパテやコショウをまぶした鴨のロースト、カマンベールチーズ、それに夏のイタリア訪問を思い起こさせるサラミやオリーヴの瓶詰めなどをカゴに入れる……

母「こんなところね……それじゃあお会計をしましょう」

百合姫提督「私が出そうか?」

母「いいのいいの、お祖父ちゃんが「深雪が食べたいだろうから色々買ってやれ」ってお金を出してくれたから」

百合姫提督「もう……育ち盛りの中学生や高校生じゃないんだから……」思わず苦笑いを浮かべる百合姫提督……

………

…中華料理店…

百合姫提督「買いだしお疲れさまでした」

母「ええ、お疲れさま♪」

…烏龍茶のグラスを軽く合わせて、年末年始の「食料調達」で流した汗をねぎらう二人……店頭の年季の入った額に彫り込まれた筆文字にも貫禄のある中華料理店は全国レベルとは言わないまでも県下では有名な老舗で、年の瀬らしい慌ただしさの中にあっても落ち着いた雰囲気をかもしだしている…

店員「お待たせいたしました」上品な白い器に盛られた名物の上海焼きそばと、蒸籠に入って湯気を立てている大ぶりな焼売が卓に並ぶ……

百合姫提督「相変わらず美味しそう……いただきます」

母「いただきます」もう一つの名物であるタンメンを丁寧にすする……途中で注文したものを分け合ったりしつつ、ゆっくり昼食を楽しむ……

百合姫提督「……ふふ」

母「どうかした?」デザートの杏仁豆腐をすくいながら首を傾げた……

百合姫提督「ううん。ただ、こうしているといつも通りの年末みたいな気分だから、なんだかホッとしちゃって……」

母「良かったわね。年末年始はうんとのんびりしなさいよ」

百合姫提督「ええ♪」
940 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/08/27(火) 01:39:38.33 ID:OwjY5jBW0
…翌日…

百合姫提督「……良い気持ち」

母「横須賀では本当に忙しかったみたいね。少しやせたように見えるわ」

百合姫提督「そんなことはないと思うけれど……昨日お風呂の後で体重計に乗ったけれど、ほとんど変わっていなかったから」

母「そう? でも顔が細くなった気がするし、お祖父ちゃんから「もっと食べなさい」って言われるわね」

百合姫提督「もう言われたわ。相変わらず……」

母「ふふ「天ぷらかウナギか、それともすき焼きがいいか」……って?」

百合姫提督「ええ」

…母親と差し向かいでこたつに入り、浴衣にどてらのくつろぎ姿でぼーっとしている百合姫提督……テーブルの天板代わりになっているこたつ板には読みさしの文庫本がしおりを挟んで置いてあり、手の届く位置にはテレビのリモコンや読み終えた新聞、頂き物のクッキーが並べてある……と、居間の壁を飾る数枚の額縁の中に、目新しいものがあることに気がついた…

百合姫提督「あそこにあんな額縁あったかしら……」

母「ああ、あれね♪ 夏の時にあなたがイタリアから絵はがきを送ってくれたでしょう? 素敵だったから飾ってあるの」

…夏の「戦術交換プログラム」でイタリア海軍の公報施設を訪れた際にPX(酒保)で見かけた絵はがきを買い求め、実家に宛てて投函しておいた百合姫提督……絵はがきには紺碧の海に白いを広げ帆走する練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」の美しい姿が収められていて、百合姫提督が子供の頃にとった賞状や記念写真、それに風景画の間で明るい地中海の息吹を感じさせる…

百合姫提督「気に入ってくれて良かったわ。練習航海中で実物を見られなかったのは残念だったけれど」

母「まぁ、そのうちに見る機会も出来るわよ」

百合姫提督「そうね」

母「ええ。さぁ、そろそろお煮しめの準備に取りかからないと……!」

百合姫提督「私も手伝うわ」

母「いいのよ、私がやるから座ってなさい♪」

百合姫提督「でもお父さんはお祖父ちゃんのところで大掃除、お母さんはおせちの準備をしているのに私だけ座っているのも……」

母「分かったわ、それならちょっとだけ手伝ってもらおうかしら」

百合姫提督「ええ」

…台所…

母「深雪、お醤油を取ってくれる?」

百合姫提督「はい」

母「ん……このくらいかしら」

百合姫提督「ええ、もうちょっとみりんをいれても良いかもしれないけれど……」

母「じゃあそうしましょうか」

…母娘水入らずで台所に立ち、お煮しめの味付けを決めている二人……百合姫提督は浴衣のままだが袖口が邪魔にならないようたすき掛けにして、小皿で味を見ている…

母「それにしてもますます手際が良くなったわね」

百合姫提督「鎮守府にいると間宮とか伊良湖みたいな料理上手が多いし、手伝うことも結構あって……」

母「結構なことじゃない♪」

百合姫提督「ええ。何しろぬか漬けの漬け方からフランス料理までみっちり仕込まれたから」

母「それじゃあそのうちに作ってもらおうかしら」

百合姫提督「そうね、三が日が過ぎておせちに飽きたらその時にでも」

母「期待しているわね……いけないいけない、もう少し火を落とさないと……」落とし蓋をした雪平鍋ではコトコトと音を立ててお煮しめが煮えている……

百合姫提督「わ、美味しそう」

母「もう……あなたくらいの年頃なら、お煮しめなんかよりもまだまだすき焼きでしょうに♪」

百合姫提督「そうかもしれないけれど、すき焼きは鎮守府でもやったから……まだお肉の脂が残っているような気がするもの」

母「まぁまぁ。同じすき焼きでも、うちで年越し番組を見ながら食べるすき焼きは格別よ?」

百合姫提督「ええ。毎年の恒例行事だし、楽しみにしているわ」

………

941 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/01(日) 01:37:42.11 ID:AcSYKBjk0
…大晦日…

百合姫提督「白菜は切っておいたわ」

母「ありがとう」

父「食器も並べておいたよ」

母「ありがとう、家事の出来る家族がいると楽が出来て助かるわ」

父「威張って「できる」って言うほどじゃないけどね。それじゃあ父さんたちを呼んでくるよ」

母「お願いするわ」

…普段は敷地内の二軒の家でそれぞれ別に暮している百合姫提督の一家と父親の両親……とはいえ年末年始のすき焼きやおせちを別に用意するのも大変と、この時ばかりは一緒のテーブルを囲んでいる…

百合姫提督「……いい匂い」

母「そうでしょう、あなたが帰ってくるっていうからお父さんも奮発していいお肉を買っていたもの……ほら」

…すき焼き鍋で軽く煮た立たせている割り下が甘塩っぱい匂いを漂わせ、バットや皿にはみずみずしい白菜や人参、しらたきに焼き豆腐、それに斜め切りにした長ねぎが盛り上げてある……百合姫提督の母が包みを開けると、サシの入った牛肉がきちんと折り重ねて入っている…

百合姫提督「こんなにたくさん買ってきたの?」

母「いいのよ、余っても明日以降に食べればいいもの」

父「……いま伝えてきたよ。もう来るってさ」

母「それじゃあそろそろ始める?」

父「そうだね、じゃあカセットコンロを持って行くよ」

…食卓の中央に堂々と鎮座するすき焼き鍋……カセットコンロの青い火が軽く揺らめくたびに鍋からいい香りの湯気が立ちのぼる……と、そこに祖父と祖母が入って来た…

祖父「おお、いい匂いだな!」

祖母「本当にね……いつもご苦労さま。本当なら私たちは別で済ませてしまえばいいのに、わざわざ呼んでくれて」

母「いいえ、せっかくの年末ですから」

祖母「そう言ってくれるからいつも甘えちゃって、申し訳ないわねぇ」

母「まあまあ、それよりどうぞ座ってください……さ、深雪も座って」

祖父「それから乾杯するんだから何か飲みなさい。ジュースがいいか、それともサイダーか!」

百合姫提督「うん、ありがとう……それじゃあジュースにします」いつまでたっても子供扱いの祖父に苦笑いをしながら、リンゴジュースを注いでもらう……

父「みんな準備はいいね? それじゃあ今年もお疲れさま、乾杯♪」

百合姫提督「はい、乾杯」

…百合野家の慣例でテレビは昭和歌謡や演歌の年末特番にチャンネルが合わせてあり、百合姫提督は知らない昭和世代の……しかし今どきのポップスよりもずっとよく知っている名曲の数々が流れている……時折お気に入りの曲が流れると少し視線を向けて一緒に口ずさんでみたり耳を傾けたりしながら、すき焼きに箸を付ける…

祖父「ほら、もっと食べなさい!」

百合姫提督「ありがとう、でもよそったのがまだ残っているから」

祖父「そうか? とにかくしっかり食べるんだぞ!」

百合姫提督「はい」

…家族水入らずの気楽な食卓で柔らかい牛肉に舌鼓を打ちながらも、カセットコンロの熱と暖房で少し暑いくらいの室内に火照りを覚えた百合姫提督……祖父母が寒くない程度に後ろの窓を開けると、すうっと外の寒気が入り込んでくる……冷たいが爽やかな冬の空気が首筋をくすぐると、少しほっとした…

百合姫提督「ふう……」

母「お肉がもう一切れ煮えたけれど、食べる? 白菜もそろそろ食べ頃だけれど」

百合姫提督「ありがとう、それじゃあいただきます」

父「いい肉だろう? 本当はもっとずっと高いんだけれど、少し色が悪いのと、形に不揃いな部分があるからって割安にしてもらったんだ」

百合姫提督「味は全然変わらないのに」

父「でもご贈答用にはならないからね……おかげでいいお肉が食べられるわけだ」

母「そうね」

百合姫提督「ええ……でもいいお肉じゃなくても、うちで食べるすき焼きが一番美味しい」

母「良かったわ♪」

父「父さんたちはそんなに食べないし、遠慮しないで好きなだけ食べていいからね」

………
942 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/01(日) 02:02:28.73 ID:AcSYKBjk0
…百合姫提督の年越し風景ですが日本の円満な家族団らんを書きたくなったもので、カンピオーニ家の年末年始に戻るまでもう少し続ける予定です…



…ところで今月はイタリアから軽空母「カヴール」と護衛のフリゲート「アルピーニ」が来航したかと思うと、入れ替わるように世界一周航海中の「アメリゴ・ヴェスプッチ」が日本を訪問するなどイタリア海軍が話題を賑わせていましたね。
幸い予約が取れたので「ヴェスプッチ」の乗船体験をさせていただきましたが、好天に映える磨き上げられた木部とニスの香り、つたない英語やイタリア語で話しかけてもにこやかに応じてくれる、白と紺の制服も凜々しい士官さんや士官候補生の方々や、警備に立ついかついながらも愛想のいい「サン・マルコ」海兵旅団の海兵さんと、とてもいい体験が出来ました。


会場の「東京国際クルーズターミナル」には海軍関係者を始め、外交関係の方やイタリアメディアも来ていて大変に盛り上がっていましたし、やはりこうした交流は国際親善に大いに役立つのだと実感した次第です。



一方、海上自衛隊は不祥事問題での大量処分で抵抗できる状態にないところへ持ってきて降って湧いたような組織改編の話が出てきましたが、どうか荒波に揉まれても良き伝統は残していって欲しいものですね……
943 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/08(日) 02:19:36.72 ID:Y1Qs1aVy0
…しばらくして…

百合姫提督「ふぅ……」首筋にうっすらと浮いた汗を手拭いで拭う……

父「お腹いっぱいかい?」

百合姫提督「ううん、まだもう少し入りそう」

父「ならよそってあげよう。お祖父ちゃんたちはもう寝に行っちゃったし、いま煮えているお肉は硬くならないうちに食べちゃおう」

百合姫提督「そうね」

父「よし。それじゃあ母さん、菜箸を取ってくれるかい」

母「はい……あ、少しテレビの音を上げるわね」年末特番の歌番組から、百合姫提督の母が好きな「みずいろの雨」が流れている……

父「ああ。それから深雪、せっかくだしお父さんと一杯飲もう」

百合姫提督「うん、それじゃあ……いただきます」

…冷酒の「八海山」を小ぶりなグラスに注いでもらって口に含むと、きりりとした辛みにすっきりとした水のような飲み口が濃くて甘いすき焼きの味付けと肉の脂でべたついた口中をさあっと洗い流してくれる…

百合姫提督「美味しい……」

父「そうだろう? 「八海山」は燗酒で飲むのもいいけれど、冷やでも美味しいんだ……もうちょっと飲むかい?」

百合姫提督「それじゃあ、もう半分くらい」

父「分かった……っとと、すき焼きが煮詰まってきちゃったな」ぐつぐつと煮えているすき焼きに薄割り下を足して沸き立っているのを落ち着かせる……

母「あ、ごめんなさい」

父「大丈夫だよ」

………

母「いっぱい食べた?」

百合姫提督「ええ、もうお腹いっぱい……」

父「そうか、良かった。たくさん買ったかいがあるよ……それから、このよく煮えた焼き豆腐は明日のお酒のお供にしよう」

母「それじゃあ取っておくわね」

父「ああ……さ、年越しそばまではまだ時間もあるし、片付けを手伝うよ」

百合姫提督「ううん、それは私が」

父「いいんだよ、久しぶりのわが家なんだからゆっくりして」

百合姫提督「でもお父さんとお母さんが動いているのに自分だけ座っていると落ち着かなくって……」

母「それじゃあおせちを詰めるのを手伝ってくれる? それならそう大変でもないし、その間にお皿は私が片付けておくから」

百合姫提督「ええ、分かった」

…普段はしまい込んである黒漆の重箱を広げると、それぞれに色味や順番を考えておせち料理を詰めていく……かまぼこは紅白それぞれが順番に並び、黒豆の上には色鮮やかなちょろぎ……厚手に切った伊達巻きに栗きんとん、そしてお煮しめや田作り、コハダの粟漬けといった、地味ながらないと落ち着かない名脇役たち…

母「そうそう、そんな感じ」

百合姫提督「鎮守府でもおせちは食べるし、いつの間にか覚えちゃった……こっちはいつも通りハム?」漆の重箱の隣に出してある樹脂製の小ぶりな重箱はタッパーのような樹脂の中蓋つきで、おせちの時はハムやチーズ、テリーヌのような洋風のオードブルやチャーシューといった肉類が入る……

母「ええ。あなたの好きな物を好きなだけ詰めていいわよ……もちろんつまみ食いもしていいわ♪」

百合姫提督「いい加減、子供じゃないんだけれど……」

母「まぁそう言わずに♪」

百合姫提督「もう……」苦笑いしながらも、母親が切りだしたチャーシューの端っこをつまんだ……

母「ふふ♪ お蕎麦のお出汁はもう引いてあるし、年越し蕎麦まではゆっくりしていてね」

百合姫提督「はい」

………

944 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/12(木) 01:07:34.43 ID:K/wwgU6M0
…年の瀬…

父「それじゃあそろそろお蕎麦を茹でようか。お祖父ちゃんたちは座椅子でウトウトしていたけれど、しきたりだから起こしてきたよ……葱でも刻もうか?」

母「私がやるから大丈夫よ。お義父さんたちもお腹いっぱいでしょうけれど、形だけでも食べてもらうとしましょう」

父「そうだね、僕もそんなにはいらないから」

母「そう。深雪、あなたは?」

百合姫提督「私もお腹いっぱいだから少しでいいわ。それとお箸と出汁の徳利は出しておいたから」

母「ええ、ありがとう」

…年末特番もそろそろ大詰めといった頃合いになってきたところで、年越し蕎麦の準備に取りかかる百合姫提督たち……天つゆこそ市販の濃縮つゆで済ませているが、出汁はふわりと香る鰹節と日高昆布で取ってあり、薬味の小皿には刻んだ葱と細切りにした海苔を添え、台所には井筒の型をした蕎麦用のざるも用意してある…

祖父「そろそろ年越し蕎麦の時間だそうだな、いつの間にかうつらうつらしていて気付かなかったぞ!」

祖母「私はそんなに要りませんから、ほんのおしるしだけね」

母「はい……それから熱いのと冷たいの、どちらにします?」

祖父「それならざるで頼むぞ!」

父「父さん、冷たい蕎麦をたぐってお腹が冷えないかい?」

祖父「少しだけにしておくから平気だ!それより深雪の分を先に茹でてやりなさい、こんな遅くまで起きていて小腹が空いたろう!」

百合姫提督「うん、ありがとう」

祖父「お腹が空くのはいいことだぞ!それに育ち盛りが蕎麦だけじゃ足りないだろうから、かき揚げかなにか付けてやりなさい」

百合姫提督「それならさっき色々つまんだりしたから大丈夫」

祖父「そうか?蕎麦だけでいいのか?」

百合姫提督「ええ、大丈夫……お祖母ちゃんは熱いお蕎麦、それとも冷たいお蕎麦?」

祖母「私は温かいのにしますよ」

百合姫提督「はい」

…母が蕎麦を茹でるかたわらで、天つゆを温める百合姫提督……祖父が音量を上げたテレビからは、年末番組のフィナーレを飾る司会のあいさつや華やかな歌手たちのにこやかな表情が映っている…

母「さあ、茹だったわ」もうもうと湯気を立てる蕎麦をざるでしゃくいあげると、さっと冷水で締める……

百合姫提督「それじゃあ私が……お父さんはどうする?」

父「かけ蕎麦にすると手間がかかるだろうから、冷たいのでいいよ。この部屋は暖房も効いているし」

百合姫提督「分かった。お母さんは?」

母「それじゃあ私もざる蕎麦にしようかしら。冷たいのは私が準備するから、お祖母ちゃんの分だけお願いね」

百合姫提督「はい」

…手がかじかむような冷水で締めた蕎麦のうちから祖母の分をつかみ取り、温めたつゆの中でさっと泳がせる……お湯に通して軽く温めておいた丼に蕎麦を盛ると、軽く沸かした熱いつゆをかけてさっと出す…

百合姫提督「お待ちどおさま」

祖母「はい、どうもありがとうね」

父「それじゃあ改めて……良いお年を」

百合姫提督「良いお年を」手を合わせると箸を取り上げ、ざるに形良く盛った蕎麦をすくうと「つつぅ…っ」とたぐる……出汁の利いたつゆの絡んだ冷たい蕎麦が心地よく喉を流れ、ふっと鼻腔に蕎麦の風味と鰹出汁の香ばしい香りが抜ける……

祖父「うむ、美味い!」ざるの蕎麦に軽く七味唐辛子を振って、そば猪口のつゆに半分も浸けず、小気味よくすする……

父「ああ、美味しいね」

…百合姫提督たちがそばをたぐり終えたころ、ちょうど年越しの様子を伝える番組が始まった……アナウンサーは生真面目な声で、悲喜こもごもの一年を振り返りつつ、にぎやかに……あるいはしめやかに年越しを迎えた各地の様子を除夜の鐘とともに伝えていき、時計の針が零時を回った…

アナウンサー「皆さま、明けましておめでとうございます!」

父「はい、明けましておめでとうございます」改まって一礼した……

母「明けましておめでとうございます」

百合姫提督「明けましておめでとうございます」

祖父「うむ、明けましておめでとう!」

祖母「明けましておめでとう……本年も良い年になりますように」

………
945 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/18(水) 02:08:23.74 ID:UlD+9rfd0
…元日・明け方…

百合姫提督「お天道様、本年もよろしくお願いいたします……」除夜の鐘を聞いたあとで仮眠を取った百合姫提督は、家のベランダに出て白い息を吐きながら、次第に空を黄色く染めながら昇る初日の出を拝んだ……

父「ふわぁ……早いね、初日の出は見られたかい?」

百合姫提督「うん、とっても綺麗だったわ」

父「良かったね。それと初詣に行く前にもう一度お風呂に浸かって、身体を清めて来た方が良いね」

百合姫提督「はい」

…朝…

母「……準備できた?」

百合姫提督「ええ、大丈夫」

父「そうか、それじゃあそろそろ行こうか……お祖父ちゃんたちは後で行くそうだから、僕たちだけで先に初詣を済ませてこよう。戻ったらお雑煮とおせちを食べようね」

母「そうね。それから深雪、あなたが去年のお札と破魔矢を持って行ってちょうだいね?」

…白地に金糸で縁取られた紅の扇と緑の松という縁起のいい絵柄をあしらった正月小袖に袖を通し、久しぶりの下駄で玄関に出る百合姫提督……本来なら一月の寒い時期とは言え、百合姫提督の実家は温暖な地域にあり、小春日和とでもいいたくなるような優しい日差しが柔らかく降り注いでいる……片手にはお焚き上げに持って行く神社の破魔矢とお札を持ち、手首にひもを通した巾着には財布を始め、こまごましたものが入っている…

百合姫提督「はい」

………

百合姫提督「明けましておめでとうございます」

見知らぬ人「あ、どうも……明けましておめでとうございます」

…神社への道すがら、すれ違う見知らぬ人たちとも出来るだけ「明けましておめでとう」の挨拶か会釈を交わす百合姫提督の一家……元日と言うこともあって車通りも少ない神社への道は初詣に向かう人や初詣から戻る人がちらほらと行き交い、近所の老夫婦や帰省してきたらしい若い家族連れ、友達同士でお詣りに向かう学生など、普段なら接点のない人たちが同じ目的のために歩いている…

…神社…

父「よーし、それじゃあ写真を一枚撮ろうね」

母「はいはい」

百合姫提督「ええ」

氏子のおじさん「おっ、百合野さんとこの若旦那じゃないか……や、明けましておめでとう!」

父「ああ、これはこれは……どうも、明けましておめでとうございます」

おじさん「なんだ、記念写真かい? それならおれが撮ってやるからよ、若旦那も奥さんお嬢さんと一緒に写りなよ」

父「いいですか? 忙しいでしょうにすみません……」

おじさん「いいんだよ、せっかくのお正月なんだからさ……いいかい、撮るよ? そら、笑って笑って!」

父「いや、どうもお手数をおかけしました」

おじさん「なぁに、気にするなって。それより深雪ちゃんも大きくなったねぇ。ついこの間までちっちゃい女の子だとばっかり思っていたのに……しかも今じゃあ提督さんなんだって?」神社の法被を羽織っている氏子のおじさんは早くも一杯きこしめした様子で頬が赤い……

百合姫提督「ええ、一応は……」

おじさん「謙遜するこたぁないよ!小さいころから深雪ちゃんは礼儀正しかったし、おれは「きっと偉い人になる」ってずーっと言ってたんだ!」

百合姫提督「それは、その……ありがとうございます///」

おじさん「おう!境内で甘酒とか御神酒を配ってるから、ぜひ寄って挨拶して行ってくれよ。酒屋のじいさんとか勝ちゃんとか、みんな深雪ちゃんのことを孫みたいに思っていやがるからな、顔出したら喜ぶぜ」

百合姫提督「分かりました、お詣りが済んだら挨拶していきます」

おじさん「あいよ、それじゃあいいお正月をな!」

…境内…

百合姫提督「……」

…お焚き上げをしている氏子のおじさんにお札や破魔矢のお焚き上げをお願いし、それから手水鉢で手を清めて口をすすぎ、賽銭箱にお賽銭を入れると鈴を鳴らし、手を合わせて柏手を打つ……

父「……これでよし」

母「そうね、お焚き上げも済んだし……今年のお札を買わないと」女子高生のアルバイト巫女さんが詰めている社務所で家内安全のお札と破魔矢を買うと「はい、どうもありがとう」と一礼した……

父「それじゃあ甘酒でもいただいてから帰ろうか?」

百合姫提督「うん、そうする」

………

946 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/28(土) 01:44:46.37 ID:xjfHx3XR0
…しばらくして…

父「それじゃああらためて、明けましておめでとう」朱漆のお屠蘇セットに金箔入りの祝い酒を用意し、めいめいの杯に順番に注ぐ……

祖父「うむ、注いでくれ!」

祖母「私は一口でいいですからね」

父「分かっているよ、母さん……さ、二人も杯を出して」

母「私もほんのお義理でね。深雪はお酒が飲めないわけじゃないんだから、好きに注いでもらいなさい」

百合姫提督「まぁ、でもこれは形のものだから……お父さんのは私が注ぐね?」

父「お、ありがとう……それじゃあ、今年も良い年でありますように」

…金箔の入った祝い酒を干すと、お雑煮の入った椀に手を付ける……すまし汁に鶏肉少々と青菜、白地に「寿」の文字が入ったなるとに角餅、三つ葉の浮いた関東風のお雑煮で、喉を湿しお腹が温まる…

父「父さん、母さん、喉に詰まらせないように気を付けて食べてよ?」

祖父「言われんでも分かってる! それからな、深雪は伊達巻きが好きだったろう。わしの分はいらないからその分取ってやりなさい!」

父「大丈夫だよ、たくさんあるんだから」

祖父「そうか? ああ、それとな……ほれ、これで好きなものでも買いなさい!」のしが付いていて「お年玉」と書かれているポチ袋を押しつけるように渡す……

百合姫提督「いい加減お年玉をもらうような年でもないんだけれど……」

父「まあまあ。父さんにしてみればいつまでたっても可愛い孫娘なんだから「ありがとう」って言ってもらっておくといいよ」

祖父「あー、あとはどこだったかな……おお、あったあった。ほれ、お前にもやるから!」百合姫提督の父にもポチ袋を握らせる……

父「父さん、僕だってもうもらう年じゃないよ?」

祖父「いいからもらいなさい。それから……と、ほれ!」百合姫提督の母にもお年玉を渡す……

母「……私までもらっちゃっていいの?」

祖母「いいのよ。いつも本当に良くしてくれて、この人も「本当にいいお嫁さんが来てくれた」ってずうっと言っているくらいなんだから」

母「いえ、そんな……///」

父「まあ、父さんはあげるのが好きだしもらっておこうよ……ありがとね、父さん」

祖父「なに、気にするな!」

祖母「それじゃあおせちをいただこうかしら?」

百合姫提督「それじゃあ私が取ってあげるから……なにがいい、お祖母ちゃん?」

祖母「そうね、それじゃあまんべんなく一口ずつ……あ、でも田作りは固くて歯ぐきに刺さるから、ほんの少しにしてもらおうかしら」

百合姫提督「はい」

…祖母におせちを取ってあげている間に、母が自分の祝い皿におせちを盛り合わせる……伊達巻、きんとん、ニシンの昆布巻き、黒豆とちょろぎ、それに紅白のかまぼこ…

百合姫提督「……いただきます」子供の頃はそこまで好きでもなかったおせち料理だが、ある程度「大人になった」という事なのか、祝い箸で口に運ぶと、意外と奥深い味付けや素材の良さに気付かされる……

百合姫提督「あ、美味しい……」

…艶々とした黒豆はしっとりと甘く煮えていて、かまぼこもグチを使ったいい品物らしく味わいや歯ごたえが段違いに良い……ふんわりした伊達巻は子供にとっては面白くないおせち料理の中にあって珍しい人気者であるが、こうして口に入れるとただ甘いだけでなく、すり身の味の深さが活かされていることに気付く…

母「それからこれも取ってあげるわね……はい♪」

百合姫提督「うん、ありがとう」酢だこや松前漬けなどの縁起物をひとわたり食べると、今度は焼豚や鴨の燻製といった献立が収まっているお重のふたをとった……

父「もう一切れ取ってあげようか」

母「こっちの鴨を食べる?」

祖父「ああ、その焼豚な、深雪にもう何枚か取ってあげなさい。わしはそっちのニシン巻きを食べるから」

祖母「松前漬けはスルメが固くってどうも……黒豆をもう少しもらうことにしましょう」

…居間の棚に設けられたスペースに敷かれている赤毛氈と、その上に鎮座している干支の置物や飾り羽子板、テレビ台の前に置かれた鏡餅が正月を彩り、少し弱々しいが新年をことほぐお日様が優しく食膳を照らす……ゆるゆると食べたいものをつつきながら日本酒や梅酒を飲んでいると、門の郵便受けでカタンと音がして、郵便局のバイクが走って行く音がした…

母「あら、年賀状が届いたみたいね」

百合姫提督「それじゃあ私が取ってくるわ」正月小袖で卓上を払ったり汚したりしないよう気を付けて椅子を引くと、年の初めにふさわしい清らかな空気を味わいつつ年賀状を取りに出た……

……

947 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/10/04(金) 02:21:42.22 ID:xUvHH0un0
百合姫提督「はい、年賀状」

父「それじゃあついでにより分けてくれるかい?」

百合姫提督「分かった……えーと、まずはお父さん宛、これはお母さんの、次が私の……」

…机の端にスペースを作ると太いゴムバンドで束ねられている年賀状の束をほどき、カードの手札を配るようにより分けていく……郵便局からのご挨拶や広告を別にして分けながら、差出人を確かめていく百合姫提督とその家族…

百合姫提督「えーと、次はお父さん宛で……高田さんという人から」

父「あー、タカちゃんか……相変わらず元気にしているみたいだなぁ」

百合姫提督「……次は高崎……下の名前が「たけお」さん?」

父「うわ、武雄さんか……最近ご無沙汰だったから出してないよ」

百合姫提督「次はお母さん、島村さんから」

母「ああ、桜さんね♪」

…積み上がっている年賀状は達筆な筆文字のもの、近況報告の写真を印刷したもの、白地の年賀状にあり合わせのペンで「明けましておめでとう」だけの気楽なものなどさまざまで、差出人の名前も普段から親しい人や近ごろは疎遠になっている人、懐かしく思う人や「どうせ送ってこない」とたかをくくって出さずにいたのに唐突に年賀状を送ってきて慌てさせる人など、こちらも十人十色といった趣がある…

百合姫提督「さてと、私には誰から届いているかしら……ちゃんとお返事を出さないといけないし……」艦娘たちを預かる鎮守府司令官の准将ともなれば、公私問わずさまざまな相手から年賀状が送られてくる……百合姫提督は食卓のテーブルから隣の和室に場所を移し、改めて年賀状を読み始めた……

百合姫提督「……えーと、由紀にはもう出してある……美保にも出した……」

…公務上の付き合いで礼を欠かすことの出来ない相手と、百合姫提督が親しくしている友人・知人たちはリストアップしてあり、届いた年賀状と見比べて確認していく……差出人は海自の知り合いをはじめ、市ヶ谷のお役人のような「エライ人」、そして懐かしい学生時代の友人たち……たいていは都合が合わずに会う機会がめっきり減ってしまったが、中には帰省のたびに顔を合わせ、旧交を温めている親友や可愛がってくれる先輩、慕ってくれる後輩もいる…

百合姫提督「ふふ、春子ったら相変わらず元気いっぱいね……悠も相変わらずのようだし……」

百合姫提督「みんな元気そうで良かった。それじゃあ今度は国際郵便を確認しないと……」

…知り合いたちの近況を読んで微笑ましい気分になっていた百合姫提督だったが、何通か交じっている国際郵便を確認することにした……外国海軍の来訪やレセプションで親しくなった海軍士官の中には、手間はかかるが趣があると手紙を送ってくれる人もいる…

百合姫提督「アメリカのミッチャー提督……わざわざ手紙を送ってくれるなんて、マメな人なのね」

…基地のPXで買ったと思われる新年おめでとうの絵はがきには「ビッグE」こと空母エンタープライズが白波を蹴立てている堂々とした姿が印刷されていて、そこに黒いマジックペンで「A HAPPY NEW YEAR!」と書いてある…

百合姫提督「効率的なミッチャー提督のことだから、てっきり電子メールで送ってくるとばかり思っていたわ……お返事は「富嶽三十六景」の絵はがきにでもしたら喜んでもらえるかしら……」

百合姫提督「それからこれは、フランスのエクレール提督ね……」

…オディロン・ルドンの名画「グラン・ブーケ」をあしらった絵はがきに、筆致も美しい花文字でフランス語の新年のあいさつがつづられている……近づけるとふっとニナリッチの名高い香水「レール・デュ・タン」が香るところも万事フランス流にこだわり、パリジェンヌを気取っているエクレール提督らしい…

百合姫提督「やっぱりエクレール提督の人柄が出ている感じがするわ……♪」

百合姫提督「それから次は……あ、フランチェスカからだわ……///」提督からの絵はがきを手に取ると、少し頬を赤らめつつ文面に目を通す……

…提督からの絵はがきは抜けるように青いイオニア海と白い砂浜を写した風景写真のもので、そこに練習を重ねたらしい「あけましておめでとうございます」のひらがながつづられている……字そのものは丁寧で柔らかい感じだが、慣れない平仮名には苦戦したようで「あけましてお『ぬ』でとうございます」と書いてあるようにも見える…

百合姫提督「フランチェスカったら平仮名を教えてあげたのに、また「め」と「ぬ」があいまいになって……♪」

百合姫提督「あ、下にも何か書いてある……」大きめに書かれた平仮名の下にはイタリア語に英語を添えた文章がつづってある……

百合姫提督「……えーと「ごくありふれたイオニア海の写真だけれど、私にとっては姫と過ごした特別な場所。今年が貴女にとって良い年でありますよう……愛を込めて。フランチェスカ」って……///」

百合姫提督「も、もう……フランチェスカったら///」

………



…さかのぼって・年の瀬のイタリアにて…

提督「……おはよう、お母さま♪」

クラウディア「ええ、おはよう……ちゅっ♪」

シルヴィア「おはよう」

提督「おはよう、シルヴィアおばさま……それにしても早いものね、もう何日もしないうちに新年が来るなんて」

クラウディア「そうね、シルヴィアが隣にいると毎日が幸せだから一年があっという間♪」

シルヴィア「私もよ、クラウディア」

クラウディア「まぁ、嬉しい♪」

提督「朝からごちそうさま……ところで年始だけれど、私はアンナに色々と付き合わされることになるかもしれないわ」

クラウディア「ふふ……いいわよ、お泊まりでもなんでもしていらっしゃい♪」

シルヴィア「そうね。フランカも子供じゃないんだから、どこまでしていいかはわきまえているでしょう」

提督「私がわきまえていてもアンナがわきまえているかは怪しいところね……」
948 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/10/19(土) 02:34:56.23 ID:XBVmBDIo0
クラウディア「まぁまぁ、ふふっ……ところでフランカ、少し頼まれ事をしてくれないかしら?」

提督「どうしたの、お母さま?」

クラウディア「ええ、ちょっとルチアーノさんのカフェに行ってコーヒー豆を買ってきてくれないかしら? 買っておいた分がそろそろおしまいになりそうなのに気付かなくって……年末年始は店もお休みでしょうし、今のうちに買っておかないと」

提督「いいわよ。どうせ暇だし、ついでにコーヒーでも飲んでくるわ」

クラウディア「そうね、それならお菓子も食べていらっしゃい♪」

提督「ええ、それじゃあ行ってきます」軽いクリーム色のセーターと履き心地の良い茶色のズボン、脱ぎ履きのしやすいスエード生地のスリッポンと気軽な格好で家を出た……

…小さな町…

提督「チャオ、ルチアーノおじさん」

カフェのマスター「フランカ!戻って来たっていうのに顔を出してくれないから、てっきりミラノ辺りの生意気なカフェにあてられてうちみたいな田舎のカフェはゴメンだってお高くとまっているのかと思ったよ!」

提督「まさか。ミラノやローマでカフェなんて入ったらあまりの値段に目が回るわ……カフェ・コレットを甘めに。それからコーヒー豆をひと袋」

マスター「はいよ。それにしてもずいぶん大人になって……ついこの間までカスティリオーネさんとこのお嬢様と手をつないでいたあのお嬢ちゃんがね……」

提督「もう、おじさんったら何年も前の事を……」提督は苦笑いしつつ、運ばれてきた甘く熱いコーヒーを口に含んだ……

提督「……相変わらず美味しいわ」

マスター「そりゃあそうさ。こんな顔馴染みだらけの小さい町で少しでもマズいコーヒーなんて出してみろ。あっという間に評判が広まって客が来なくなっちまう……ヘタな都会よりも気が抜けないよ」

提督「そのセリフも相変わらずね。おばさんは元気?」

マスター「買い物に行ったきり帰ってきやしないよ。どうせ八百屋のばあさんとくっちゃべってるんだろうさ……年の瀬だからとっとと売りだめの勘定を済ませたいっていうのに」

提督「それじゃあおばさんを見かけたらそう言っておくわ」

マスター「ああ、もし見かけたら「ロバみたいにちんたらしてるな」って伝えておいてくれ……それじゃあ、どうぞごゆっくり♪」

…年の瀬の冷たいがすっきりした風に髪をなぶらせながら甘く濃いコーヒーとカンノーリを楽しんでいると、知り合いと言うほどでもないが顔を知っている地元の女の子が近寄ってきた……その女の子は夏期休暇の時にもちらっと見かけたが、その時に比べると半年あまりでずいぶん成長しているように見える…

女の子「……チャオ、お姉さん」

提督「チャオ、クリスマスおめでとう。どうかした?」

女の子「ええ、ちょっと相談したいことがあって……ここ、座ってもいい?」

提督「どうぞ」

女の子「ありがと」

提督「良かったら一ついかが?」菓子皿のカンノーリをすすめる……

女の子「ありがと、いただくわ」

提督「……それで、私に相談事ってなにかしら?」女の子が話しやすくなるよう頬杖をつき、姿勢を下げて目線を合わせる……

女の子「うん……あのね、お姉さんがカスティリオーネのお姉さんと婚約しているって聞いたから相談したいんだけど……」

提督「けほっ……!」思わずカンノーリのかけらでむせた……

女の子「違うの? うちのお母さんがそう言ってたから……」

提督「そう、ね……婚約とまではいかないけれど、幼馴染みの仲良しではあると思うわ……それで?」

女の子「……あのね、女の人どうしで好きになるってどういうことか教えて欲しくて///」

提督「誰か気になる人がいるのね?」

女の子「うん///」

提督「なるほど……その子とは仲が良いの?」

女の子「と、思う……この間、キスされたし///」

提督「ほっぺに?」

女の子「ううん……唇だった///」

提督「そう、なるほど……」ごくりとコーヒーを飲むと、カップを置いて視線を合わせた……

提督「キスされて気持ち良かったのなら……あるいは少なくとも嫌じゃないのなら「その子のことが好き」でいいと思うわ」

女の子「……お姉さんも気持ち良かった?」

提督「そうね。少なくとも今までずっとアンナと「仲良し」でいるくらいには……ね♪」そう言うと唇に指を当て「この事は他の人には秘密よ?」と共犯者めいたウィンクを投げた……
949 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/03(日) 01:59:34.25 ID:BGHiRYGp0
…帰宅後…

提督「ということがあって……」

クラウディア「あら、そんな大事なことを私たちに話しちゃっていいものかしら?」

提督「もちろん了承を得ているわ「私のお母さまとおばさまにも話してみていいかしら?」って。なんでもベルリーニさんの娘なんだって言っていたけれど、お母さまたちは知っている?」

シルヴィア「ああ、ベルリーニのね……なるほど」

クラウディア「あぁ、あの子ね……ええ、顔は知っているわ」

提督「まるで知らない訳じゃないみたいだけれど、何かあったの? 私とアンナのことも多少知っているようだったし……いくら小さな町だからって、私との関係を知っている人間はそういないと思うのだけれど……」

シルヴィア「確かに」

提督「それじゃあどういうわけで、いままで話したこともないような女の子までが私のことを知っているの? 別に隠し立てするようなことじゃないとは言え、アンナとの付き合いがゴシップ記事みたいな扱いになるのは嫌だわ」

クラウディア「えーと、ね……そのことだけれど、多分アンナちゃんからだと思うわ」

提督「どういうこと?」

シルヴィア「ベルリーニの家はカネッリのお隣でおかみさん同士はよくおしゃべりしているけれど、そのカネッリのおかみさんがカスティリオーネ家の家政婦として雇われているからね……おおかたアンナの両親がしゃべっているのを小耳に挟んだんでしょう」

クラウディア「あるいはフランカが煮え切らないものだから、アンナちゃんが広めて回っているのかもしれないわよ?」

提督「アンナに限ってそれはないわね。色々と欠点はあるけれど、二人の思い出をよその人にしゃべって回るような事はしないわ」

シルヴィア「信頼しているのね」

提督「ええ。許嫁どうこうはさておき、一番の幼馴染みであることは揺らがないわ」

クラウディア「もう、フランカったら……そこまで信頼しているならアンナちゃんと結婚すればいいじゃない。向こうもやきもきしているし、私だって二人のためにウェディングドレスを仕立ててあげたいんだから♪」

提督「勘弁してほしいわ……アンナと一緒にいたら一日中ずっと引きずり回されて、休む暇もなくなっちゃう」苦笑いをしながら肩をすくめた……

シルヴィア「ま、帰省のたびに結婚だの縁談だのの話をするなんていうのは年寄りの田舎者がすることだし、もうやめにするわ」

提督「そうしてくれると助かるわ。あんまりその話題ばかりだと、せっかくの夕食が喉を通らなくなっちゃうもの」

クラウディア「そうね、せっかく作ったご馳走なんだもの。残さず食べてもらいたいわ?」

シルヴィア「残して年越しの時に食べたっていいじゃない」

クラウディア「年越しの時はまたご馳走を作るもの、残り物で済ませたりはしないわよ」

シルヴィア「フランカ、これは服がきつくなる心配をしておいた方が良さそうね」

提督「同感」

…夕食後…

シルヴィア「ふー、案の定だったわね……お腹がはち切れそう」

提督「同じく……」

クラウディア「いっぱい食べてくれて嬉しいわ♪ ドルチェはもう少し後にしましょうね」

シルヴィア「それがいいわ……それにしても、あと二日もしないうちに新年ね」

提督「そうね、何だかんだで今年もいい年だったわ」

クラウディア「私はシルヴィアと結婚してから毎年ずうっと良い年を過ごしているわ♪」

シルヴィア「私もよ」

提督「ふふ、このやり取りも例年通りね♪」

シルヴィア「言わなくても伝わるけれど、言った方がもっと伝わるもの」

クラウディア「そういうこと♪」

提督「ふふ、お母さまたちらしいわ♪」

シルヴィア「そうね」

クラウディア「ええ♪」テーブル越しにお互いの指を絡め合って、見つめ合う二人……

提督「私は邪魔になりそうだから、しばらくお暇させてもらうわ……ドルチェを出す時になったら教えてね?」

クラウディア「ええ、そうするわ……♪」
950 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/06(水) 01:30:36.66 ID:Y0eQgh+Q0
…大晦日…

シルヴィア「……何か手伝いましょうか?」

クラウディア「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)、座っていて? 笑顔で私の料理を「美味しい」って食べてくれればそれで十分♪」

提督「お母さまの料理が美味しくなかった事なんてないわ」

クラウディア「まぁ、嬉しい♪ フランカの分は多めにしておいてあげるわね♪」

…エプロン姿で楽しげに台所を行き来するクラウディア……庭はすっかり冬枯れの様子で、数本の常緑樹が緑を残している以外はすっかり黄色っぽい土と枯れ草ばかりだが、暖炉で踊る火も楽しげなカンピオーニ家の食卓は色とりどりの野菜を使った前菜や、一月六日の「公現祭」まで飾られているクリスマスツリーの飾りで華やかに彩られている…

シルヴィア「それじゃあその間にワインでも取ってこようかしらね」

提督「私が行きましょうか?」

シルヴィア「フランカはいいのよ。その代わりにクラウディアが手伝って欲しいって言ったらよろしくね」

提督「ええ」

…そう言い置いて立ち上がり、家の奥にある小さな貯蔵室にしまってあるワインを取りに行ったシルヴィア……普段はあまり化粧っ気がないが、今日は指の結婚指輪に加えて、クラウディアとお揃いのネックレスを首にかけている…

クラウディア「さぁ、出来たわ……シルヴィアは?」

提督「ワインを取りに行ったわ」

クラウディア「それじゃあ戻るまで待ちましょう」

シルヴィア「待たなくてもいいわ……♪」ワインの瓶を片手に後ろから忍び寄るよると、首筋にキスをした……

クラウディア「あん……っ///」

シルヴィア「それじゃあ乾杯しましょう」白地に文字だけがあしらわれた地味なラベルのワインを机に置くと、コルクを抜いて染みこんだ香りを確かめ、それからグラスに注ぐ……

クラウディア「今日のワインは?」

シルヴィア「せっかくの年越しだから、記念のワインから一本開けたわ」

提督「いいの、おばさま?」

シルヴィア「ええ。お互い百歳まで生きても良いように、新婚の時にいいワインをあれこれ買いだめしたから……もし私とクラウディアで飲みきれなかったらフランカが相続してちょうだい。その頃にはヴィンテージものになっているでしょうし、お金に換えたって良いわ」そう言って提督に見せたラベルにはクラウディアとシルヴィアが結婚した年が書かれている……

クラウディア「もう、せっかくの年の瀬なのにムードがないんだから」

シルヴィア「悪かったわ……さ、機嫌を直して乾杯しましょう」

クラウディア「ええ♪」

シルヴィア「それじゃあ、来年も良い年になりますように……愛しているわ、クラウディア」

クラウディア「私もよ……ずっと貴女が好き♪」

提督「これからも末永くお幸せに」

クラウディア「ええ、ありがとう♪」

シルヴィア「フランカもね……乾杯♪」

提督「ええ」クルミや樫の樽のような風味を持った濃い赤ワインは食前酒にするには少し風味が強いが、じっくりと味わうにふさわしい良いワインだった……

クラウディア「さ、お料理が冷めちゃうわ……よそってあげるから、どうぞ召し上がれ♪」

…クリスマスと違って年越しにそこまでの重きを置かないイタリアとはいえ、やはりカレンダーが改まるというのは祝う価値がある……クラウディアもクリスマス料理と違って、肩の凝らない……しかしカンピオーニ家の味として受け継いできた料理をぎっしりと並べている…

提督「相変わらず美味しい……それにしてもここ数日ご馳走ずくめなのに、お母さまってばよく献立が続くわね」

クラウディア「ふふっ、私だって勉強しているのよ? 我が家に代々続く秘伝のレシピだけじゃなくて、旅先で食べた美味しい料理を再現してみたり」

シルヴィア「おかげで体重が増えること増えること……」

クラウディア「あら、それじゃあ決まり切った献立にしましょうか?」

シルヴィア「それは勘弁ね……もっとも、クラウディアがいるなら固くなったパンと水だけでもいいわ」

クラウディア「もう、シルヴィアったらお上手なんだから……ひゃんっ///」

提督「この調子なら新年も相変わらずの一年になりそうね」

シルヴィア「それでいいのよ……さ、新年に乾杯」

クラウディア「ええ、乾杯♪」

提督「乾杯♪」
951 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/15(金) 01:27:19.40 ID:MKgHJg860
…新年・朝…

提督「新年おめでとう、お母さま、おばさま♪」

クラウディア「ええ、新年おめでとう♪」

シルヴィア「新年おめでとう……フランカも一杯いかが?」

提督「おばさまったら、朝からスプマンテ?」

シルヴィア「せっかくの新年だもの、いつもとは違うことをしようと思ってね」

クラウディア「シルヴィアったら朝からお風呂に入って、スプマンテを開けてごきげんなの…///」そう言って手のひらを上に向けているクラウディアの首筋には吸い付かれたような桃色の痕が残っている……

提督「いつも通りなのはお母さまとえっちしたことくらいね」

シルヴィア「まぁね……朝日を浴びながらクラウディアを抱くのは格別だったわ」

クラウディア「もう、シルヴィアったら……♪」

提督「新年早々ごちそうさま……お母さまたちがこの調子じゃあ、私も一杯もらわないとやっていられそうにないわ」グラスを出して飲み口の良いスプマンテ「モスカート・ダスティ」を注ぐ……

シルヴィア「こうやって朝日に透かすと綺麗でしょう?」

提督「そうね。明けの海原に潮風、森のざわめきに金色に抜けるような朝焼け、グラスにはひんやりしたモスカート・ダスティ……ぜいたくの極みね」

クラウディア「それから私たちのキスも付けてあげる♪」ちゅっ♪

シルヴィア「私たちの可愛いフランカに……♪」ちゅ……♪

提督「それじゃあ私からも……♪」ちゅ……っ♪

クラウディア「ふふ、ありがとう……フランカもアンナちゃんといずれこういうやり取りをするようになるのね♪」

提督「ちょっと、お母さま……!」

クラウディア「あら、でも年の瀬にアンナちゃんのお家へ出かけたときはまんざらでもなさそうだったわよ?」

提督「べ、別にそこまでじゃないわ……アンナとは幼馴染みだけれど、いつも私の事を振り回すし……///」そう言いながらも、アンナと過ごした年末を思い出して頬を赤らめた……

…数日前…

提督「……チャオ、アンナ」

アンナ「おはよう、フランカ……さ、乗って♪」銀色のマセラッティ3500GTでカンピオーニ家の門の前までやってきたアンナ……その目はサングラスで隠れているが、濃いさくらんぼ色のルージュを引いた唇は口角があがっていて、少しえくぼも出来ている……

提督「ええ」

…提督はクリーム色のメルトンのコートに、長身に映えるヴィヴィッドな色合いのローズピンクのリブ編みセーター、キャラメル色のフレアスカートに黒のストッキング、頭には少しフェミニンな要素を狙いすぎた感があるように思えたが、白ウサギのようにふわふわしたバスコ(ベレー帽)をかぶり、黒革のニーハイブーツで足元を固め、手にはハンドバッグを持っている……軽く吹いてきた「サンタ・マリア・ノヴェッラ」の甘く華やかなバラの香水は、提督の気に入っている香りで、身じろぎするたびにふっとかすかに立ちのぼる…

アンナ「フランカったら良く似合ってるわ、私のためにお洒落してくれたのね?」

提督「えぇ、まぁ……そういうアンナだってとっても綺麗よ♪」

アンナ「そりゃあせっかく許嫁と過ごせるんだもの、ぼろを着てくるわけには行かないわ……ん♪」

…そう言って両手で提督の頬を挟みこむと、身体を寄せて唇を重ねるアンナ……熱っぽいキスにふさわしいプラダの香水が鼻腔を満たし、甘いバニラとムスクの香りで頭がくらくらするような気がした…

提督「ち、ちょっと……うちの門の前でなんて、いくらなんでもせっかちすぎるわ……///」

アンナ「このくらい挨拶みたいなものよ……だいたいろくに会う機会も作らないで私の事を焦らしているのは貴女なんだから……んふっ、んぅ……っ♪」

提督「んぅぅ、ん……♪」

アンナ「ぷは……はぁ、はぁ……はぁ……っ///」自分から唇を重ねておきながら、提督にキスを返されただけで肩で息をしている……

提督「こういうのも久しぶりね……アンナ♪」

アンナ「え、ええ……言っておくけれど、今日はずうっと私のわがままに付き合ってもらうわよ?」

提督「……はたして身が持つかしら?」

アンナ「そんなことを言って、情けないわね」

提督「ふふっ♪ 私が、じゃなくて……貴女が、よ?」ちゅ……っ♪

アンナ「んっ……もう、いいから車を出すわよ/// 早くしないと一日が終わっちゃう」照れ隠しのようにアクセルを踏み込み、土ぼこりを後ろに引きながらマセラッティを加速させた……
952 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/22(金) 01:42:37.68 ID:n8ZJszdU0
提督「それで、今日はどんな風にエスコートしてくれるのかしら?」

アンナ「エスコートもなにも、うちに来てもらうだけよ。ミラノやローマならまだしも、この辺りに気の利いた店なんてないじゃない」

提督「あら、せっかくの帰省だっていうのにずいぶんな言い方ね?」

アンナ「言いたくもなるわよ。こうしてたまに戻ってみても、十年一日のごとしでなーんにも変わっちゃいないんだもの」

提督「私からすると、その変わらないのが嬉しいのだけれど……もっとも、アンナなら変わっていてもそれはそれで素敵よ♪」

アンナ「もう、相変わらず口が上手いんだから……」

提督「事実だもの」

アンナ「まったく……///」

…カスティリオーネ家…

アンナ「……さ、入って?」

提督「今日はずいぶん静かなのね?」

アンナ「前にも言ったけれど、パパとママはシチリアで冬のヴァカンス。家政婦だとか「ファミリア」の若衆たちにも年末年始のお休みを取らせているから……それに、うちからものを盗むような間抜けもいないものね」

提督「果たしてそうかしら。何物にも代えがたいこの家の宝を盗みたくて仕方のない人間が……案外近くにいるかもしれないわよ?」

アンナ「んっ……む///」

…そう言うなり田舎屋敷風の、しかし広々とした玄関ホールでアンナの唇にキスをする……一瞬だけ抵抗するように身をよじったアンナだったが、グッチのハンドバッグを手から落とすと腕を提督の背中に回して抱きしめ、ぐいと腰を寄せて熱のこもった口づけを交わした…

提督「んっ、ん……は……んぅ、んぁ……♪」

アンナ「んむっ、ちゅ……ちゅる……っ♪」

提督「ぷは……♪」

アンナ「はぁぁ……///」

提督「ねぇ、アンナ……♪」

アンナ「分かってるわよ……んちゅっ、ちゅぅぅ……っ♪」

提督「んっ、あふ……っ♪」

アンナ「んちゅ、ちゅる……はぁ、はぁ、はぁ……っ♪」

提督「んんぅ♪」

…アンナはこらえが効かなくなったかのように壁に提督を押しつけるといらだたしげにコートを脱ぎ捨て、提督の脚の間に自分の膝を割り込ませてくる……提督もそれに応えるようにストッキングとランジェリーに手をかけて膝まで下ろし、それから滑るような手つきでアンナの下着に手をかけた…

アンナ「ん、んちゅ……だめ、フランカ……キス、やめないで……♪」

提督「ええ……ちゅるっ、ちゅぅ……っ♪」口づけを続けながら少し屈んでアンナのランジェリーを引き下ろすと、アンナは片膝をあげて黒い透けるようなパンティから片脚を抜き、もう片方のくるぶしあたりにまで下がったそれを蹴り出すように放り出した…

アンナ「んっ、んんぅ……あっ、あん……あふっ♪」

提督「アンナ……ん、あっ……あぁん……っ♪」アンナの細い中指と薬指がいささかぎこちなく、かつわがままに滑り込んでくる……

アンナ「んっ、あ……もう……そういう甘い声を……出されると……たまらなくなるじゃない……っ♪」

提督「アンナこそ、そんなにトロけた表情で迫ってくるんだもの……んちゅっ♪」

アンナ「んふっ、んんっ、ん……っ♪」

提督「あむっ、ちゅる……ちゅむ……っ♪」互いの口には舌を、粘っこく熱を帯びた花芯には指を滑り込ませながら、飢えていたかのように愛をむさぼり合う……

アンナ「あっ、あ、あぁぁん……っ♪」

提督「ふあぁ……ぁっ♪」

…人気のない底冷えのする玄関に二人の甘い声がオペラのように響き、骨董品の花瓶や絵画の額に反響する…

提督「はぁ……はぁ……もう、アンナったら相変わらずせっかちなんだから♪」

アンナ「はぁ、ふぅ……いったい誰のせいだと思っているのよ。本当なら部屋でシャンパンでも開けてじっくりムードを作っていくつもりだったっていうのに、玄関でなんて……まったく、盛りのついた犬じゃあるまいし///」顔を火照らせ、息を切らしながら文句を言った……

提督「まぁまぁ、シャンパンなら今からでもまだ遅くないわ……♪」

アンナ「ふふ、まったく……いいわ、それじゃあ改めて最初からやり直しましょう?」

提督「あら、せっかくこれだけ愛し合ったのにまた最初からやり直し?」まだ色欲をたたえたままの金色の瞳を向け、どこかみだらな笑みを向ける……

アンナ「もう……っ///」
953 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/27(水) 02:19:17.67 ID:QahSp3Rq0
…アンナの部屋…

提督「この部屋も久しぶりだわ……ずいぶん模様替えをしたのね?」

アンナ「そりゃあそうよ、いつまでもぬいぐるみってこともないでしょ?」

提督「そう言いつつも、ちゃんとご両親からのプレゼントは捨てないでいるあたりはアンナの良いところね……このテディベア、六歳くらいの時にもらったって言ってたわよね?」

…かつて児童文学の全集や教科書が並んでいた本棚は国内や国外の法典をはじめ、さまざまな専門書が分厚い樫の板もたわみそうなほどぎっしりと詰め込まれ、部屋のあちこちに「シュタイフ」のテディベアや小さな絵画、思い出の写真などが飾ってある…

アンナ「そりゃあパパにもらったものだもの……って、今はそんなことはいいの」

…部屋の中央にあるアンティークものの丸テーブルには露のおりたシャンパンが浸かっているアイスペールが載っていて、その横には二人分の白ワイン用グラス……そしてそれを取り囲むようにカゴに収まっているバゲットや缶詰、チーズなどが並べてある…

アンナ「さ、せっかく用意したんだから飲みましょう?」

提督「そうね、いただくわ」

アンナ「ま、あんな片田舎の鎮守府でもお酒の品揃えはそれなりだったけれど……どう?」

提督「ルイ・ロデレール?」

アンナ「そうよ。モエ・エ・シャンドンやドン・ペリニョンはもてはやされすぎて俗っぽいし、せっかくフランカと会えるんですものね」そう言うと醸造年が見えるようにラベルを見せ、慣れた手つきで栓を抜く……

提督「恐れ入ったわ……それだけのヴィンテージもの、私のお給金で買ったらひと月は断食をしないといけなくなるわね」

アンナ「気にしなくていいのよ。コート・ダジュールのパーティ会場で味の分からない成金からせしめてきただけだから……フランカに飲まれるほうがシャンパンにとっても幸せなはずよ」

提督「そう、それじゃあいただくわ……乾杯♪」

アンナ「乾杯」

提督「……おいしい」

アンナ「当たり前でしょう? それからおつまみもあるわよ……キャビアで良いわよね?」答える前にカスピ海産のキャビアの瓶詰めを開ける……

提督「いたれりつくせりね」

アンナ「ま、その分は愛してもらうから♪」

提督「それじゃあずいぶん頑張らないといけない事になりそうね?」

アンナ「期待しているわよ?」

提督「ええ……♪」口の端に小さな笑みを浮かべると、脚を伸ばして向かい側に座っているアンナのふとももをくすぐりはじめた……

アンナ「ちょっと、キャビアがこぼれるじゃない……あぁもう」びくっと身体が震えたはずみに小さじが動き、クラッカーの上に載せようとしたキャビアがこぼれた……

提督「あら、もったいない」

アンナ「誰のせいよ、まったく……」そういってふとももから払い落とそうとする……

提督「……待って♪」

…四つん這いになってテーブルの下に潜るとアンナの脚の間から顔を出し、ふとももにこぼれ落ちた小さい黒真珠のようなキャビアを舐めとった…

アンナ「んっ……///」

提督「シャンパンもいただける?」

アンナ「ええ……♪」テーブルの上にあった飲みさしのグラスを傾け、白いふとももにゆっくりとこぼす……

提督「ぺろ……ちゅっ、ちゅる……っ♪」

アンナ「あっ、あ……ふぁ……あ///」

提督「ん、ちゅ……っ♪」シャンパンの雫を舐めとると、最後は唇で吸い付くようにしてキスをした……

アンナ「……ねえ、もっと飲んで///」

提督「ええ♪」

…白磁のような脚を伝って流れてくるシャンパンを舌先で受けとめ、爪に紅いペディキュアをしている形の良い足の甲を舐めあげた……凍えるかのようにぶるっと身震いするアンナの反応に気を良くして、提督は足からふくらはぎ、ふとももへと舌を這わせていく…

アンナ「はぁっ、あぁ……ん……はひっ……ん……っ///」

提督「ちゅるっ、ちゅ……れろ……っ♪」少しドライなルイ・ロデレールの味とアンナのすべすべした肌触りを舌に感じながら、次第に身を乗り出すようにして舐めあげていく……

アンナ「あ、ふぅ……んぁ……ん……ぁっ///」

提督「んちゅるっ、ちゅむ……んちゅぅ……っ♪」

アンナ「あ、あっ……もう、フランカ……焦らさないで……早くしなさいよ……っ///」脚で提督の首を締め付けるように挟みこみ、顔を秘所に押しつける……

提督「んむっ……♪」
954 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/12/05(木) 01:01:47.14 ID:UpIopirU0
アンナ「はぁ……はぁ……んっ……あっ///」

提督「んちゅ……ちゅるっ、じゅる……じゅぷ……っ♪」

アンナ「あ、あっ、あっ……あぁぁんっ♪」とろ……っ♪

提督「んふ……ちゅる、んちゅ……♪」

アンナ「はひっ、あふっ、ふあぁ……あっ、んぅぅっ///」提督が愛蜜したたる花芯を舌でまさぐるたびにひくひくと身体が跳ね、つま先立ちをするかのようにかかとが浮き上がる……

提督「……ぷは♪」

アンナ「はぁ……はぁ……続けて♪」

提督「ふふ、アンナったら欲張りね♪ それじゃあ今度は……あ痛っ!」

…ふとももの間から顔を出し、甘ったるいねっとりとした表情を浮かべてアンナを見上げながら、べとべとになったふとももを舐めあげようと頭を動かした提督……が、後頭部をテーブルにぶつけてすっとんきょうな声を上げ、ぶつけた場所を手で押さえた…

アンナ「ばか、何やってるのよ……大丈夫?」

提督「え、ええ……せっかくいい雰囲気だったのに締まらないわね♪」後頭部の痛みから目尻に涙をためつつ、苦笑いを浮かべている……

アンナ「いいわよ、フランカがなんともないなら」

提督「ええ、私は大丈夫……くすっ♪」

アンナ「ふふふっ……♪」

提督「うふふっ♪」

アンナ「あはははっ♪」

提督「ふふっ、うふふふっ♪」お互いにしげしげと顔を見合わせるとどちらからでもなしに笑いが起こり始め、しばし笑い転げた……

アンナ「あー、おかしい♪ フランカのそういうところは相変わらずね」

提督「これでもエスコートの上手な大人の女性を目指してはいるのだけれど……ね?」

アンナ「エスコートの上手な大人の女性ねぇ……ま、及第点って所かしら」

提督「あら、ずいぶんと手厳しい」

アンナ「そりゃあね。私の「許嫁」なんだもの、満点を目指してもらわなきゃ困るわ♪」

提督「だから……」

アンナ「んっ♪」

…提督がいつものように「許嫁」ではないと言いかけたところで、椅子に腰かけたままかがみ込んだアンナがキスをして唇をふさいだ…

提督「ん……♪」

アンナ「いいわ、今のところ許嫁かどうかは保留にしておいてあげる……でも、幼馴染みには変わりないわよね?」

提督「それはもう、アンナは私の大事な幼馴染みよ」

アンナ「なら幼馴染みとしてもう一回……ね?」椅子から立ち上がると提督の手を取り、ベッドに誘った……

提督「ええ……♪」

…二時間後…

アンナ「はぁ、はぁ……はぁぁ……っ♪」

提督「ふぅ……とっても可愛かったわ、アンナ♪」

アンナ「はぁ……はぁ……まったく「運動が苦手」が聞いて呆れるわよ……」だらりと力の抜けた身体をベッドに預け、額の上に腕を投げ出して喘いでいる……

提督「……きっとアンナの悦ぶ顔が見たいからだと思うわ♪」

アンナ「はぁ、もうそれでいいから……水ちょうだい」

提督「ええ……私も喉が渇いたわ」すっかり粘ついている口内を洗い流そうと冷水を飲み干し、それからアンナの分を注いで渡す……

アンナ「ごく、ごくっ……はぁ」

提督「こんな年の瀬も意外といいものね」

アンナ「そうね、悪くないクリスマスプレゼントだったわ」上半身だけ起こしてグラスを受け取り、ベッドに腰かけた提督に笑いかけた……

提督「ご満足いただけて良かったわ」

アンナ「ええ……とりあえず今のところは♪」
955 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/12/13(金) 02:09:58.21 ID:k43ZR7Nf0
提督「ふふ、それじゃあまた気が向いたら……ね♪」

アンナ「そうね。ところで……はい」ベッドから起き上がると裸身のままクローゼットに近寄り、中をかき回していたかと思うと赤いリボンのかかった包みを取りだした……

提督「なぁに?」

アンナ「もう、馬鹿ね。この時期なんだからクリスマスプレゼントに決まっているでしょうが」

提督「ふふ、ありがとう……開けてもいいかしら?」

アンナ「ええ、開けなさい。本当なら六日までは開けないものだけれど……せっかくのプレゼントだもの、目の前で喜んでほしいじゃない?」

提督「そうね、それじゃあ……」リボンをほどくと包み紙をはがした……

提督「……まぁ、メローラの革手袋」

(※メローラ…1870年にナポリで創業したネクタイ、革手袋のブランド。映画「ローマの休日」で使われるなど品質、知名度ともに名高い)

アンナ「そうよ。貴女のお母さんはファッションデザイナーだし、私から洋服をあげたって仕方ないけれど、手袋なら何組かあっても使いどころがあるでしょ? まだまだ寒い日も多いし、海の上じゃあ指先が冷えるでしょうから、軍艦にいるときにでも使って欲しいわ」

提督「ありがとう、こんなに素敵な物を……でも艦橋で使うにはもったいないわね」

アンナ「何を言ってるのよ。タンスのこやしにしてもらうためにあげたんじゃないんだから、きちんと使いなさいよ?」

提督「ええ、ありがとう……それじゃあうんと役立てさせてもらうわ」

アンナ「そうしなさい♪」

提督「本当にありがとう、アンナ♪」

アンナ「いいのよ」

提督「それじゃあ私からも……はい♪」

…空いている椅子の一つに置きっぱなしにされていたハンドバッグから、桃色をしたサテンのリボンで結ばれた小ぶりの箱を取りだした…

アンナ「……会えるかどうかも分からないって言うのに、わざわざ用意してくれてたの?」

提督「アンナだってクリスマスくらいは帰省するでしょうし、もし会えなかったらご両親に預けて渡してもらうよう頼んでおくつもりだったわ」

アンナ「ふぅん、何だかんだで貴女も会いたかったんじゃない」

提督「そりゃあ幼馴染みだもの、会いたかったには会いたかったわよ……許嫁の話を持ち出さなければね?」

アンナ「ふふふっ……砲弾が飛び交っている海に出る勇気があるくせに、私との結婚が怖いなんてね♪」

提督「砲弾なら回避運動も取れるし装甲で防げるけれど、貴女は防げないもの」

アンナ「言ってくれるわね……まぁいいわ、早速開けさせてもらうわよ」リボンをほどくと包装紙を破り、中身の箱を取り出す……

提督「できるだけアンナに似合いそうなものにしようと思ったのだけれど……どう?」

…提督がプレゼントしたのは優美な凝った作りでいながら俗っぽくないアール・ヌーヴォー・スタイルのネックレスで、細かな細工を施された金のチェーンにルネ・ラリック風のデザインがされたコウモリと三日月のトップがあしらわれ、コウモリの翼や三日月にはめ込まれたエナメルが光を受けて薄青や桃色に変化して見える…

アンナ「ピピストレッロ(コウモリ)のネックレス……フランカったらまだ覚えていたのね?」

提督「ええ。貴女の小さいころのあだ名♪」黒褐色の髪をツインテールにしていた幼いアンナの面影を重ねて笑みを浮かべた……

アンナ「過去を振り返るにはまだ早いんじゃないかしら……ねぇ、付けてくれる?」

提督「ええ」アンナの後ろに回ると、裸のままの首もとにそっとネックレスをつけた……

アンナ「……フランカ」

提督「どう?」どちらかと言えば気ままで勝気なアンナゆえに、どんな感想が飛んで来るかと少し身構える……

アンナ「すごく嬉しいわ、ありがとう♪」

提督「ふぅ、良かった……アンナのことだからてっきり何か言われるかと」

アンナ「こんな素敵な贈り物をくれたのに、どうして文句を言う必要があるのよ。とっても良いじゃない♪」姿見の前で頭を左右に動かしては、ネックレスのきらめきを眺めている……

提督「ふふっ、気に入ってもらえて安心したわ」

アンナ「ええ。でもこうなるとお礼をしないといけないわね……♪」傷を付けたりしないようネックレスを外してケースに戻すと、姿見に映る提督を眺めて挑発するような表情を浮かべた……

提督「ふふっ、それは楽しみね♪」アンナの後ろから肩越しに手を回し、左手は乳房を、右手は腰に回して身体を寄せた……

アンナ「ええ、お昼まではまだ時間があるもの……ね///」

………

956 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/12/20(金) 02:25:10.72 ID:qzGN0AlE0
…昼時…

アンナ「はぁぁ……もう起きる気力もないわよ」

提督「とっても素敵だったわ♪」

アンナ「ふっ……♪」

提督「くすくすっ……♪」ベッドの上で顔を見合わせ、どちらともなく笑い始めた……

アンナ「あーあ、まったくあきれた年末だわ。ただベッドの上で盛っていただけだなんて」

提督「そういう年末だってたまにはいいじゃない……ね?」

…口の端にえくぼを浮かべ、またしてもアンナの身体に手を伸ばそうとした提督……と、その矢先にお腹が「ぐぅ」と間抜けな音を立てた…

提督「もう、せっかく良いところなのに……///」

アンナ「でも貴女の身体は別の欲求を満たしたいようね」

提督「はいはい、大人しく言うことを聞くことにします……アンナも何か食べる?」

アンナ「そうね。考えてみたら朝も大して食べてないし」

提督「あら、でもちゃんと食べないと大きくならないわよ?」

アンナ「育ち盛りの時期はとっくに過ぎてるってば。だいたいこれ以上背を伸ばしてどうするのよ?」

提督「ううん、身長じゃなくて……ここ♪」つんととがった白い乳房をそっと撫で回す……

アンナ「あのねぇ……馬鹿な事を言ってないで、さっさと羽織るものを羽織ったら?」

提督「あら、裸じゃなくていいの?」

アンナ「おたがい裸なら暗記できるほど眺めてきたでしょ。せっかく色々用意したんだから、何か食べましょう」

…素肌にガウンを羽織り、ふわふわのスリッパをつっかけて台所に向かう二人……アンナは右手で飲みさしのルイ・ロデレール、左手で二人分のグラスを束ねて持ち、提督はアンナの左腕を胸元に挟みこみ、右手をほっそりした腰に手を回して穏やかな笑みを浮かべている…

………

…台所…

提督「ふふ♪」

アンナ「……なに、どうかしたの?」

提督「いいえ。ただ幼馴染みを眺めているだけよ♪」

アンナ「相変わらず口が減らないわね……ほら」時間が経ってぬるくなったからとアイスペールの氷をつまんでグラスに入れ、そこにシャンパンを注いだ……

提督「ありがとう」

アンナ「いいのよ……オリーヴの瓶詰めに……チーズと……パパとママが出かけるから冷蔵庫のものはおおかた片付けておいたのよね」

…まるで業務用サイズの大きな冷蔵庫を開けて、中のものを物色しているアンナ……冷蔵庫の中身をさぐるたびにシルクのガウンに包まれた形の良いヒップが揺れ、ふわりとひるがえる裾からは先ほどまでの火照りを残して赤らんだふとももがちらつく…

提督「うーん、良い眺め♪」

アンナ「だったら早く私と結婚しなさいよ、そうすれば毎朝でも見せてあげる♪」

提督「もし貴女と結婚したらガミガミやられてそんな気分じゃなくなっちゃうのが目に見えるわ」

アンナ「ずいぶんと好き勝手言ってくれるじゃない……残り物で悪いんだけど、半身のオマール海老(ロブスター)があるわ。どう?」

提督「ごちそうね♪」

アンナ「何てことないわよ……さ、これでどうにか整ったわね」

…バターでグリルしたオマール海老の冷肉とコールドチキン、軽く温めなおしたバゲット、オリーヴの瓶詰め、アンナの部屋でつまんだキャビアの残り、ほどよく熟成が進んでいるプロヴォローネ・チーズのスライスなどを並べた…

提督「それじゃあいただくわ♪」

アンナ「ええ。どのみち残しておいたってなんにもならないんだから食べちゃっていいわよ」

…南イタリア風にまとめられた調度とステンレスを多用した高級な調理家電とが混在している台所で、アンナとテーブルを挟んで早めのお昼を口に運ぶ……バターでグリルされたオマール海老は冷めていても味が濃く、歯ごたえのある身質と口中の温度で溶けてくるバターの塩味でより一層おいしい…

提督「ん、美味しい」

アンナ「フランカって、小さいころから本当に美味しそうに食べるわよね……ほら、あーんしなさい♪」

提督「あーん♪」

アンナ「……クリスマスプレゼント、嬉しかったわよ。それと良い新年を」爪楊枝に刺したオリーヴを提督に食べさせながら言った……

提督「グラツィエ、アンナもね♪」
957 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/12/28(土) 00:56:58.85 ID:NTEbvhyo0
…十二月三十日…

アンナ「……それじゃあ、あとは家族水入らずで過ごしなさいね」

提督「ええ、色々とありがとう。良いお年を」

アンナ「グラツィエ……ちゅっ♪」

…去り際に運転席から身体を乗り出して提督の頬に音高くキスをすると片手を上げ、マセラッティのエンジン音を残して走り去っていった…

提督「アンナったら、ずいぶん粋な挨拶をして行ってくれたわね……///」

シルヴィア「……ほんと、アンナちゃんも良い女になったわね」

提督「おばさま♪」

シルヴィア「お帰り、フランカ」

提督「ただいま……♪」シルヴィアの首に腕を回しぎゅっと抱きついた……

シルヴィア「……っと、昔は飛びつかれてもなんともなかったのに。フランカもずいぶんと大きくなったわね」

提督「そうね、小さくはならないと思うわ♪」

シルヴィア「それもそうね……さ、クラウディアがまたごちそうを用意しているから食べるのを手伝ってちょうだい」

提督「ええ♪」

………

…新年・昼…

クラウディア「……ふふっ、それにしてもフランカったら♪」

提督「そういうお母さまだってあんなにたくさんお手紙をもらっているんだから、おあいこよ///」家にたくさん届いたクリスマスカードやプレゼントのことでまたもやクラウディアにからかわれ、照れ隠しで反論する提督……

クラウディア「そうね、そういうことにしておきましょう……ねぇシルヴィア、もう一杯どう?」

シルヴィア「ええ、いただくわ」

クラウディア「了解♪」

…イタリアの新年はあくまでもクリスマス期間の一部であってそこまでお祝いの対象ではないが、カンピオーニ家ではごちそうを食べたりカクテルを飲んだりと仲むつまじくして過ごす…

提督「私ももう少し飲もうかしら……」

クラウディア「そうね、せっかくのお休みなんだもの……スプマンテ?それともワイン?」

提督「それじゃあ気が抜けないうちにスプマンテをもらうわ」

クラウディア「分かったわ、それじゃあ座って待っていてね……でも食べ過ぎちゃだめよ?食後にパネットーネが待っているんだから♪」

シルヴィア「ずいぶんと甘やかしているわね」

クラウディア「だって、ひさびさに娘が帰ってきたんですもの♪」

…クリスマスもご馳走だったが、新年の食卓にもクラウディアの心のこもった料理がにぎやかに並んでいる……普段はしまってあるジノリやパニョッシンの色鮮やかな皿や鉢に牛の煮こごりやじっくり煮込んだ鹿肉のシチュー、ひょうたん型をしたチーズ「カチョ・カヴァッロ」をあぶったもの…

提督「うーん……お母さまの料理を食べると幸せな気分になるわ」

クラウディア「あら、フランカったら私をおだてるのが上手になったわね」

提督「だって事実だもの♪」

シルヴィア「フランカ、あんまりクラウディアを口説かないで……私の妻なんだから」

クラウディア「まぁ、シルヴィアったら♪」

提督「……お母さまたちは明後日からのスキー旅行を取りやめた方が良さそうね」

クラウディア「あら、どうして?」

提督「そうやって二人でいちゃいちゃしていたら、せっかく積もった雪が溶けちゃうもの」

シルヴィア「言ってくれるわね♪」

クラウディア「あら、好きなだけ言わせておけばいいのよ……ちゅっ♪」

提督「もう……♪」

………

958 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/04(土) 01:19:36.58 ID:/4HXESRu0
…休暇最終日…

シルヴィア「それじゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」

クラウディア「鎮守府に戻ったら身体に気を付けるのよ? 寂しくなったらいつでも電話してちょうだいね?」

提督「ありがとうお母さま、おばさま……でも二人のスキー旅行を邪魔したくはないもの、どうにか頑張ってみるわ♪」

…クラウディアとシルヴィアの二人に「行ってきます」のキスを済ませると、土産物やクラウディアから渡された艦娘たちへのプレゼントを詰め込んで重くなったランチア・フラミニアに乗り込んだ提督……低い冬の日差しに備えてサングラスをかけ、クラウディアからもらった柔らかくて暖かいクリーム色のカシミアセーターに使い勝手に優れたカーキグリーンのベルト付きトレンチコート、運転の邪魔にならない履き心地の良いチョコレート色のスラックス、運転用に履き替えたかかとの低い靴といった出で立ちで門を出た…

シルヴィア「……フランカも成長したものね」提督のランチアを見送ると、つぶやくように言った……

クラウディア「娘が独り立ちして寂しい?」

シルヴィア「いいえ、こうして我が家の歴史が紡がれていくのかと思うと感慨深いわ」

クラウディア「ふふ、ずいぶんとおセンチね♪」

シルヴィア「らしくないかしら」

クラウディア「ううん、それもまた貴女らしいわ♪」

シルヴィア「ふ、ありがとう……さてと、それじゃあ私たちも旅行の支度をしましょうか」

クラウディア「ええ、こうして二人で出かけようとしていると新婚旅行みたいね♪」

シルヴィア「そうね……ちゅっ♪」

クラウディア「あ……んっ♪」

………

…数時間後・高速道路…

提督「ふぅ……南行きの道路があんまり混んでいなくて助かるわ」大柄なランチア・フラミニアのシートに身体を預け、オートストラーダを快調に飛ばしてきた提督……

提督「お土産もいっぱいあるし、きっと皆も喜んでくれるわね」

…イヴェコやボルボのトレーラートラックや飛ばし気味のセダンに車線を譲り、無難にフラミニアを走らせる……ラジオは交通情報を報じるチャンネルに合わせてあり、ドライブに疲れると休憩所に入ってちょっとしたコーヒーの時間をとる…

提督「……そろそろプーリア州に入るし、タラントまではあと少しね」

提督「さてと、そろそろ行くとしましょうか」今ひとつなコーヒーを飲み終えるとカフェテリアのカウンターにカップを返し、軽く肩を回しながらランチアに乗り込んだ……

………

…しばらくして・タラント近郊…

提督「……あ、見えてきたわね」

…薄曇りの空と白い波頭が所々に見える海、そしてカーブが続く地方道路の視界の端に見えてきた小ぶりな岬……鎮守府そのものは背中に背負ったような形で控える丘陵地に隠され、道路も鎮守府の敷地を避けるよう海岸線を離れて内陸へと湾曲しているために見えないが、鎮守府のある小さな三日月湾の東端を縁取るようにして突き出している岬は道路からも見える……岬のてっぺんにはフェイズド・アレイ・レーダーのサイトが建っていて、その無骨な灰色の建物がイオニア海に出現する「深海棲艦」を油断なく見張っている…

提督「何だかんだで早かったわ……もっとも、鎮守府で艦娘の皆と会えると思えばそう悪くもないわね」

提督「……それにお腹も空いてきたし///」

…鎮守府…

ライモン「お帰りなさい、提督♪ そして新年おめでとうございます」

提督「ありがとう、ライモン……今年もよろしくね♪」鎮守府の玄関先で車を停めると、出迎えてくれたライモンに暖かいキスをする……

ドリア「あら、せっかくお留守をしていたのに……私にはキスなしですか?」

提督「まさか、して欲しい娘にはみんなしてあげる♪」

チェザーレ「おいおいアンドレア、このチェザーレを差し置いてそれはないだろう」

ドリア「ふふ、せっかくの提督を人妻好きのチェザーレに盗られてはかないませんから♪」

提督「ねぇドリア、私は人妻じゃないわよ?」

ドリア「そんなことをおっしゃってもよろしいのですか? 隣にこんなに可愛らしい奥さんがいらっしゃるのに♪」ころころと笑いながらいたずらっぽく指さす……

ライモン「もう、ドリアさん……///」

提督「それもそうだったわね……とにかく、ただいま♪」

ドリア「ええ、お帰りなさいませ♪」

チェザーレ「うむ。まずは着替えて楽にするとよかろう」

提督「ええ、そうさせてもらうわ……ライモン、着替えを手伝ってくれる?」

ライモン「は、はい///」
959 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/11(土) 01:21:19.45 ID:RaiIvtHJ0
…しばらくして・食堂…

提督「ふぅ……何だかんだ言って鎮守府も悪くないわ」

デュイリオ「ふふ、そうでしょうとも……♪」

ライモン「///」頬を赤らめてぷいと横を向いた……

提督「ええ♪」

ルチア「ワンワンッ!」

提督「あらルチア、お留守番させちゃってごめんなさいね……元気だった?」

ルチア「ワフッ……!」

提督「あらそう、良かったわねぇ♪」

…提督がくつろいだ格好に着替えて食堂にやってくると、ルチアがちぎれそうなほど勢いよく尻尾を振って駆け寄ってくる……途端にそれまでの落ち着いた様子はどこへやら、提督はルチアと一緒に暖炉の前の敷物に寝転がって白い体毛をくしけずり、お腹を見せて身体をよじるルチアをわしゃわしゃと撫でさする…

ドリア「あら、提督ったら……ルチアとじゃれるのもほどほどにしないと、お洋服に毛がついてしまいますよ?」

提督「いいのよ、どのみち普段着なんだから……あぁ、はいはい♪ お土産も持ってきてあげたわよ♪」

ルチア「ワフッ、フガフガ……♪」

提督「こらこら……そんなに焦らないの♪」手に持っていた袋から取りだしたのはとがった部分を切り落としほどの良い長さにしてある鹿の角で、表面は木目のように白い部分と茶色の部分でしま模様を帯びている……

ルチア「ワフッ……」ガリガリと音立てて角をかじる……

提督「やっぱり好きなのね……さてと」ルチアと一緒に暖炉の前で寝転がっていてついたほこりを払い、立ち上がる……

提督「……改めまして、ただいま……みんな♪」

ライモン「お帰りなさい、提督」

アッテンドーロ「姉さんも提督が戻ってきてようやく落ち着いたって所よ」

ライモン「もう、ムツィオってば……///」

ディアナ「ふふ……提督がお戻りになられて、わたくしどもは本当に嬉しく思っておりますよ」

提督「ありがとう」

レモ「ねぇねぇ……感動の再会はいいけどお腹が空いたからご飯にしよう?」

ロモロ「さんせーい♪ ディアナってば朝からずーっと支度をしてたんだから、きっとすごいご馳走だと思うの!」

チェザーレ「やれやれ、まったく食い意地の張った娘どもであるな……♪」

提督「結構なことじゃない。それじゃあ手を洗ってくるから、戻って来たら食事にしましょう」

レモ「やったぁ♪」

…昼食…

提督「これはまたずいぶんと頑張ってくれたようね?」

ディアナ「せっかく提督がお戻りなのですから……お味はいかがでしょうか?」

提督「ディアナの食事が美味しくなかったことなんてないわ♪ それと持ってきたワインだけれど、良かったら全部空けちゃっていいわよ?」

…パルマハムのスライスと半熟卵が載ったビスマルク風ピッツァに、牛すね肉をトマトソースの中でほぐれるまで煮込んだラグーなど心づくしのご馳走が並ぶ……提督が故郷の街で買ってきた地場のワインを素焼きのカップで飲みながら暖炉のはぜる音を聞いていると、窓越しに聞こえる波音とあいまってくつろいだ気分になる…

マエストラーレ「ふぅ、美味しかったわ……ちょっとリベッチオ、口に付いてるわよ」

リベッチオ「じゃあ取って?」

マエストラーレ「自分でやりなさいよ。まったく甘えん坊なんだから……」

提督「ふふ、このやり取りもいつも通りね♪」

ライモン「はい♪」

ディアナ「あとは公現祭の日にプレゼントを開けて、ご馳走をいただくといたしましょうね」

提督「そうね」

アッテンドーロ「それと休暇の間はのんびりしてたんでしょうから、その分の運動もすることね」

提督「さて、なんのことかしら?」

アッテンドーロ「……なんだったら姉さんとベッドの上で「運動」すればいいじゃない」

提督「それは言われなくても♪」
960 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/13(月) 00:59:42.46 ID:NWrq9j/u0
リベッチオ「あ、それじゃあジァポーネの提督さんが送ってきたやつで遊ぼう?」

提督「姫から?……なにか送ってきてくれたの?」

マエストラーレ「ええ。化粧品や浴衣、手拭いとか日本らしいものを一杯送って来てくれた中にあって……私たちはどう使えば良いか分からなかったけれど、トレーリやカッペリーニたちから使い方を教わったの」

提督「そうなの、カッペリーニ?」

カッペリーニ「いえ、教えたというほどでは……」

トレーリ「少し詳しいだけですから」

提督「謙遜しなくたっていいわ。それじゃあ少しやってみようかしら」

リベッチオ「やった♪」

提督「くれぐれもお手柔らかに頼むわよ?」

トレーリ「それじゃあ提督にも浴衣を着てもらいましょうか、その方が雰囲気も出るでしょうから」

提督「さっき着替えたのにまた着替えるの? 仕方ないわね……」

…数分後…

提督「さ、着替えたわよ。ちょっと冬場に着るには寒いけれど……」

…百合姫提督がクリスマスプレゼントにと送ってきた箱の中には色とりどりの浴衣も何枚か入っていて、艦娘たちはかわりばんこに袖を通してはきゃあきゃあと歓声をあげていた……慣れない手つきで提督がまとったのは白地に藍色の百合をあしらった浴衣で、すっきりしたデザインながらなかなかしゃれていた…

ライモン「提督、よく似合っています」

提督「ありがと、ライモンに言われると嬉しいわ。それでその「遊び」とやらはどこでするの?」

グレカーレ「私たちは体育館か庭でしていました……始めはここでやってみたんですが、狭くてぶつかりそうになっちゃうので」

アッチアイーオ「まったくよ、すんでの所でクリスマスツリーをひっくり返しそうになったんだから」

提督「なるほどね。まぁ今日は風もないし、そう寒くもないでしょうから庭でやるとしましょうか」

アッチアイーオ「あんまりはしゃぎ過ぎて怪我したりしないでよ?」

提督「ええ、ほどほどにするわ♪」

リベッチオ「えへへっ、負けないからね?」

…鎮守府・庭…

提督「それで、その遊びっていうのは? ……みたところネットが張ってあるわけでも、地面に線が引いてあるようでもないようだけれど」

トレーリ「はい、これにはそういった準備は必要ないですから♪」

…そういってトレーリが差し出したのは木でできた角ばった板状の道具で、クリケットのバットを薄く小さくしたように見える……板には赤い木の実と緑の葉をデザインした絵が施されていて、反対側の手には小さな黒い球に赤や緑の羽根がついたものを持っている…

提督「……木のラケット?」

カッペリーニ「そのようなものですね……これは日本の「はねつき」という古くからの遊びですよ」

提督「はねつき?」

トレーリ「はい。ルールは簡単で、バトミントンのようにこの羽根を打ち合って落としたら負けというものです」

提督「この小さな玉を落とさないようにするの? 結構難しそうね」

リベッチオ「大丈夫、提督は初めてだから手加減してあげる♪」

提督「言ってくれるわね……でも、大人しくそのお言葉に甘えさせてもらうわ」慣れない浴衣ということもあり、リベッチオの言葉に甘えることにする……

ミラベロ「ふふっ、どっちが勝つか楽しみ♪」

リボティ「勝敗は見えている気がするけれど……くすくすっ♪」

提督「もう、すぐそうやって私の事を笑いものにして……見ていなさいよ?」

リベッチオ「あははっ、提督ってば大人げないんだから♪」褐色の肌に似合う赤い梅模様の浴衣を着て、足元をサンダルで固めている…

提督「だって、ああまで言われちゃうとね……いいわ、とにかく始めましょう」

リベッチオ「了解、それじゃあ最初はかるーく行くからね♪」カンッ!

提督「ええ……はいっ!」コンッ!

961 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/19(日) 00:57:47.03 ID:dPHpy/ff0
リベッチオ「そーれ……っと!」カンッ!

提督「……っ!」カンッ!

…羽根についたムクロジの実は羽子板に当たるたびに響きの良い硬質な音を立て、どこかまだ青さの薄い冬空に緩やかな曲線を描いて打ち上がる……リベッチオも着慣れない浴衣姿のため、最初の数回は軽く打ってきたが、慣れてくるにつれて速度が上がってくる……提督も左右に打ち分けられる羽根を追い回すが、次第に足元が追いつかなくなり、地面に羽根を落としてしまった…

提督「ふぅ……これ、遊びにしては意外と大変ね……いい、リベッチオ?」

リベッチオ「ちょっと待った♪」落ちた羽根を拾い上げて続けようとする提督を制止してニヤニヤしている……

提督「なぁに?」

リベッチオ「この遊びはねぇ、落っことした方に罰があるんだって♪」

提督「罰?どんな?」

リベッチオ「んふふっ、それを今からするから……こっちに来て?」

提督「お手柔らかに頼むわね?」

リベッチオ「はぁーい♪」

提督「……マジックペンなんて持ち出してどうするの?」庭の丸テーブルに詰まれているマジックペンのセットや、使い余しのルージュに気がついた……

リベッチオ「もちろん、これで落書きするんだよっ♪」

提督「え、ちょっと……!?」

ミラベロ「ぷふっ、提督ったら可愛い♪」

ドリア「あらまぁ♪」

マエストラーレ「全くもう……リベッチオ、あんまりやり過ぎちゃダメよ。いい?」

リベッチオ「分かってまーす、っと♪」

提督「……むぅ、始めからこれが狙いだったのね」

リベッチオ「正解♪ みんな動きが良くってなかなか勝てないけど提督ならそこまで運動が得意じゃないし、背が高いから落書きのしがいもあるでしょ?」

提督「好き放題言ってくれるわね……言っておくけれど、今度は負けないわよ?」

…左頬に黒い丸のイタズラ書きをされ、威厳も何もない提督……とはいえからかってくるリベッチオに負けたままではくやしいと、テニスのようなオープンスタンスで羽子板を構え、迎え撃つ体勢をとった…

リベッチオ「ふふーん、どうなるかな……せーのっ♪」

提督「えいっ!」

リベッチオ「やっ!」

提督「はいっ!」

リベッチオ「あっ……!」地面に蹴つまずいて追いつけず、羽根を落としてしまった……

提督「ふふーん、今度は私がリベッチオに落書きする番よ♪」

リベッチオ「もう……あとちょっとで追いつけたのに、サンダルが滑ったから……」

提督「この期に及んで言い訳しない……さてと、何を描こうかしら♪」楽しげな笑みを浮かべてペンを取ったが、リベッチオの褐色の肌と黒のマジックペンを見比べてから箱に戻し、代わりに白のマジックペンを取りだしてキャップを外した……

提督「リベッチオには白が似合いそうだから……えいっ♪」

マエストラーレ「くすくすっ、リベッチオってば♪」

グレカーレ「ふふ、似合ってる似合ってる……今度からずっとそのメイクにしたら?」

リベッチオ「一体どんな……あーっ! 私が遠慮して丸だけにしてあげたのに、提督ってばこんなに描いて!」

提督「らくがきの範囲までは言われなかったもの♪ それに、イタズラ子猫みたいなリベッチオによく似合っているわ♪」

リベッチオ「むむむ、言ってくれるね……」猫のヒゲを描かれた頬を膨らませるリベッチオ……

ミラベロ「ねぇリベッチオ、私たちも遊びたいんだから代わって欲しいわ♪」

リボティ「私たちも提督にらくがきがしたいし……ね♪」

リベッチオ「はいはい、それじゃあもうひと勝負済ませたらね♪」

提督「ええ、相手になってあげる」

………

962 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/21(火) 00:43:21.88 ID:X8jNaqOY0
…十数分後…

提督「ぜぇ……はぁ……ち、ちょっと待って……!」

リボティ「戦場に「待った」があると思う?」

提督「だからって……」

ミラベロ「しゃべっていると息を使っちゃうわよ♪」

提督「はぁ、はぁ……!」

…道場破りのように次から次へとはねつきの相手を求めてくる艦娘たち……複数人で遊べるようにと気を利かせて、多めに羽子板を入れておいてくれた百合姫提督の気づかいが今はうらめしい……提督が追いついてどうにか打ち返しても、いじわるな娘は返す羽根を左右に振ってくるので息は上がり、浴衣もすっかりはだけて汗を垂らしている…

ミラベロ「はい、提督の負け♪」

提督「はぁ、ひぃ……なんで……休暇明け早々に……こんな……息を……切らさなきゃならないのよ……」

リボティ「くすくすっ、提督が運動不足だからじゃないかな♪」

提督「……」言い返したくてもその気力すらなく、手の甲で汗を拭いながら息を整えている……

ミラベロ「ふふっ、それじゃあお待ちかねのらくがきね♪」浴衣の裾をめくるとマジックのキャップを外し、汗ばんだ肉付きのいいふとももに何か描き始めた……

提督「あ、ちょっと……!」

リボティ「動いちゃだめだよ、提督♪」

提督「わ、分かってはいるけれど……んっ///」冷やっこいスポンジ状のペン先が肌を撫で、くすぐったさに身じろぎしそうになる……

ミラベロ「はい、書けた♪」

提督「もう、一体何を……って、もうっ///」

…提督が太腿を見おろすと、そこには回数を数えるときに使う縦線が書き込んである……本来それだけなら何と言うこともない記号だが、それが地肌に書かれているとなると意味深な想像もできなくはない…

リベッチオ「うわぁ、提督ってばえっち♪」

提督「わ、私が書いた訳じゃないでしょうが……それより、そろそろ休憩させて……」

デュイリオ「あらあら、提督は私みたいなおばあちゃんとは羽根つきなんてしたくないのですね……?」

エウジェニオ「私にも落書き……じゃなかった、はねつきをさせて頂戴よ♪」

提督「……だったらお互いですればいいじゃない」

チェザーレ「ははは、それではハドリアヌス帝のようではないか♪ 皆、提督とジァポーネの遊びがしたいのだ」

提督「どうせ私「と」じゃなくて、私「で」でしょうが……まったく」あちこちに丸やバツが描かれた道化師のような顔のまま、眉をひそめた……

エウジェニオ「まぁまぁ♪ さ、相手をしてもらうわ♪」

提督「むぅ、ずいぶんとご機嫌だこと……でも、もしかしたら私が勝つことだってあり得るかもしれないわよ?」

エウジェニオ「あら、その時は好きなようにらくがきしていいわよ……どこでも、ね♪」耳元に顔を寄せ、意味深にささやいた……

提督「もう……いくわよ///」

エウジェニオ「ええ♪」

提督「えいっ!」

エウジェニオ「はいはい♪」

提督「やあっ!」

エウジェニオ「まぁ怖い♪」

提督「この……っ!」

エウジェニオ「ふふふ、熱くなっちゃって……それ♪」勢いよくスマッシュを打ち込んでくるかと思いきや、コンッ……と軽く落としてきた……

提督「あっ……!」

エウジェニオ「提督の負けね♪ それじゃあ落書きさせてもらうとしようかしら♪」

提督「もう好きなだけ描いて……描けるところがまだ残っているなら、だけれど……」

エウジェニオ「ふふ、その可愛らしいお顔はともかく、身体にはまだまだ余白がいっぱいあるわよ……♪」さわさわと太腿を撫で上げつつ、濃いボルドー色のルージュを手に取った……

提督「ん、あっ……///」

エウジェニオ「ほぉら、書けたわ♪」提督の太腿、それもかなり際どいところにハートマーク付きのサインを書いた……

提督「も、もう……っ///」
963 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/02/02(日) 00:35:58.00 ID:OS6oHsRS0
…数十分後…

提督「はひ……ふぅ……もうだめ、降参……」

…落書きまみれで息も絶え絶えの提督が羽子板をテーブルに置き、尻もちをつくようにして庭の椅子に座り込んだ……身体は落書きと汗でひどいことになっており、浴衣もほとんどはだけてしまっているが、それを直す気力も起きないほどくたくたに疲れ切っている…

エウジェニオ「あら、だらしないのね♪」

提督「私は一人で貴女たちの相手をさせられているのよ……おかげでこんなことになっちゃったし……」

エウジェニオ「ふふ、たまにはそういう露骨にいやらしいのもそそるわ……♪」

提督「悪いけれど、もう相手にしたくないほど疲れているの……はぁ、こんなに息を切らしたのなんて士官学校以来よ……」

ライモン「……あの、提督」

提督「あら、ライモン……どうかした?」

ライモン「いえ、その……///」

提督「浴衣、似合っているわね。可愛いわ♪ 良かったら隣に座る?」

ライモン「はい、ではお言葉に甘えて……ですが、そうではなくて……///」

提督「ええ、いらっしゃい……それにしてもみんなして私の事を振り回して、おかげですっかり疲れちゃったわ。ねぇライモン、あとで一緒にお風呂に行きましょうか?」

ライモン「そうですね、ぜひ……」

提督「良く考えたら休暇に入る前からずっとだものね……本当に久しぶり♪」

ライモン「ええ、それもそうですが……その……///」

提督「……ねえ、もしかして」ライモンが遠慮がちに見せてきた羽子板に、思わず腰が引けてしまう……

ライモン「いえ、もし提督がお嫌でなければ……なのですけれど……///」

提督「ライモンよ、お前もか……ええ、分かったわ。こうなったら毒を食らわば皿まで、付き合ってあげるわ」

ライモン「すみません、わたしったらわがままで……」

提督「貴女のわがままなら可愛いものよ……ただしちょっとだけよ?」少し恥ずかしげな笑みを浮かべたライモンにはかなわないと、提督はレモネードを飲み干してよろよろと立ち上がった……

提督「……そーれっ」

ライモン「はいっ」

提督「えいっ」

ライモン「それでは……はっ!」

提督「えっ、早い……っ!?」

…はじめは軽いラリーを続けてくれたライモンに、てっきり羽根つきを牧歌的に楽しみたいだけかと思っていたが、突如として打ち込まれた切れ味鋭いサーブに手も脚も出ず、あっという間に羽根を落っことしてしまった提督…

ライモン「すみません、提督……でも、わたしの勝ちですね///」

提督「ええ。でも、まさかいきなりあんな強烈なサーブを打ち込んで来るとは思わなかったわ……」

ライモン「その点はごめんなさい、提督……」

提督「いいのよ。それでライモンは、私をキャンバスにしてどんな落書きをするのかしら?」

ライモン「そ、それは書き終わるまで秘密です……///」ガーデンテーブルの上に置いてある口紅を取ってしゃがみこむと、すでにあれこれ書かれている太腿に上書きするように何かを書き付けた……

提督「書き終わった?」

ライモン「えぇ、はい///」

提督「そう、それじゃあ引き上げるとしましょうか♪ みんなもほどほどにするのよ?」

リベッチオ「了解……くすくすっ♪」

エウジェニオ「ええ、そうするわよ♪」

デュイリオ「うふふっ、存じ上げております♪」

ライモン「///」

提督「……ねぇライモン、いったい何を書いたの?」

エウジェニオ「あら、それをライモンドに聞くのは野暮ってものよ……お風呂にでも行って確かめてくることね♪」

提督「それもそうね、それじゃあ汗と貴女たちの落書きを流してくるわ……」
964 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/02/09(日) 00:26:02.19 ID:t1g20Kr60
…大浴場…

提督「ここでお風呂に入るのも久しぶり……広いし豪華絢爛で、うちにもこんなお風呂があればいいのに」

ライモン「この大浴場、提督のお家の半分くらいはありますものね」

提督「そうね。それにしても私が運動が苦手だからってみんなして……まったくもう」全身に書かれた文字やらハートマークやらを見おろして苦笑交じりのため息をついた……

ライモン「……全身らくがきまみれですね///」

提督「本当よ、鎮守府に戻ってそうそうにこんな目に合わされる提督なんてそうはいないわ……ふふっ♪」

ライモン「どうかしましたか?」

提督「いえ、ね……みんなにこれだけ親しくしてもらえる私は果報者だと思ったの。ライモン、クレンジングオイルを取って♪」

ライモン「はい///」

…ルージュやマジックペンで書かれたらくがきをクレンジングオイルで落とす姿を後ろから眺めているライモン……提督の柔らかなクリーム色をした肌が湯気でほのかに桃色を帯び、クレンジングオイルで艶めいて見える……結い上げた髪が少しほつれて先端から雫がしたたり、甘いクレンジングオイルの香りがふっと鼻腔をくすぐる…

ライモン「……っ///」

提督「ライモン、後ろをお願いできる?」

ライモン「あ、はい///」

提督「それにしてもよくもまあこう色々と書いてくれて……まったく」鏡に映る文字を読みながら、半分あきれ半分おかしがっている提督……

ライモン「すみません、わたしも落書きしたので同じですね……」

提督「いいのよ。どうせだから読んでみるとしましょうか♪」

…クレンジングオイルで円を描くように洗い落としながら、それぞれの落書きを読んでいく提督……たいていは冗談めいたものばかりだが、中にはかなり際どいものもある…

提督「も、もう……こんなことを書いて///」

ライモン「///」

提督「まったく「奥までとろとろ」だの「艦隊のご褒美」だの……そういうことを書いた娘には今度「お返し」してあげないと///」

ライモン「そ、そうですね……///」

…提督が洗い進めて行くうちに、ライモンが書いた落書きまでやってきた……見おろしただけではよく見えなかったが、いまは鏡文字とはいえはっきり見える…

提督「これはライモンの字ね? えーと「互いに触れあった思い出を忘れないで」と……なるほど♪」

ライモン「え、えぇと……その///」

提督「ライモン」

ライモン「は、はいっ///」

提督「文字は消えても思い出は消えないのよ……それもこんな素敵な思い出は、ね♪」背中を流すのを手伝っていたライモンの手首をつかむとぐっと引き寄せ、顔を寄せた……

ライモン「提督……か、顔が近いです///」

提督「ふふっ♪ あれだけ愛し合ってきた仲なのにまだ恥ずかしがるなんて可愛い♪」

ライモン「それは言わないで下さい……///」

提督「はいはい♪ ……でもこれは洗い落とすのがもったいないわね、しばらく書いたままにしておきましょうか」

ライモン「だ、だめです///」

提督「あら残念♪ それじゃあライモンが洗ってくれる?」

ライモン「えっ?」

提督「ふふふっ、だってライモンが書いたんだもの……ほら、洗ってくれるでしょう?」腰かけの上でくるりとライモンの方に向き直ると誘惑するように両の手のひらで脚を広げ、誘うような笑みを浮かべた……

ライモン「は、はい///」クレンジングオイルを手に取り、シャワーのお湯で少しゆるめてから提督の肌に重ね合わせた……

提督「ライモンの手、気持ちいいわ……こういうのも久しぶりね♪」

ライモン「は、恥ずかしい事を言わないで下さい///」

提督「ふふ、ライモンったら耳まで真っ赤にして♪」耳たぶを甘噛みしながらライモンの手を下腹部に導いた……

………

965 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/02/19(水) 01:13:47.96 ID:Gvfjpt7x0
…数日後・公現祭(一月六日)の朝…

提督「みんな、公現祭おめでとう♪」

艦娘一同「「おめでとうございます!」」

提督「さて……今日は公現祭ということで、明日からは鎮守府も平常体勢に戻ります。みんな今日は一日楽しんでちょうだいね♪」

一同「「はい!」」

ルチア「ワンッ!」

提督「よろしい♪ 海外旅行組も今日帰ってくるはずだから、お土産にも期待するとしましょう♪」

アッチアイーオ「提督、タラントからのバスが来たわ」

提督「了解、それじゃあ出迎えにいかないと」

…鎮守府・管理棟前…

提督「公現祭の日なのにご苦労様……良かったら持って行って?」最寄りの飛行場から艦娘たちを乗せてきた運転士の下士官たちに、地元で買い込んでおいたチョコレートやアメ玉の詰め合わせ袋を渡す……

下士官「は、済みません!」

下士官B「これはわざわざお気遣いをいただいて」

下士官C「ごちそうさまです!」

提督「せっかくの公現祭ですもの、ね?」いたずらっぽくウィンクを投げた……

下士官C「少将も良い公現祭になりますよう」

提督「ええ、ありがとう。あなたたちも楽しい公現祭をね♪」提督がねぎらいの言葉をかけている間にも、大荷物を抱え、あるいは日焼けした顔に満面の笑みを浮かべた艦娘たちがぞくぞくとバスから降りてくる……

ペルラ「ただいま戻りました、提督……♪」ピンクパールのような色をしたぷるぷるの唇が提督の頬に優しく触れる……

提督「お帰りなさい、マダガスカルはどうだった? アトランティスは見つかった?」(※大戦中、中型潜「ペルラ」はマダガスカル沖でドイツの仮装巡洋艦「アトランティス」等と会合している)

ペルラ「はい、大変に面白い場所でした」

ウエビ・セベリ「ただいま戻りマシタ、提督!」

ゴンダール「アフリカのお土産もたくさんアリマス♪」エチオピアやジブチなど、AOI(旧イタリア領東アフリカ)方面に出かけていた艦娘たちは褐色や黒色の肌に香ばしいような健康的な匂いを漂わせている……

提督「まぁ、わざわざありがとう♪」

…提督がミニバスから降りてくる艦娘たちを出迎えてキスしたり抱きしめたりしていると、チンクエチェント(フィアット500)の空冷エンジンが立てる乾いた音が響いてきた……正門のゲートが開かれると真っ赤なチンクエチェントが走ってきて多少ぎこちないブレーキをかけると、提督の脇で停まるか停まらないかといううちにリットリオが運転席のドアを開け、そのまま提督の胸に飛び込んできた…

提督「……っとと」

リットリオ「提督、ただいま戻りましたっ♪」

提督「んふ……リットリオ、お帰りなさい……休暇は楽しかった?」背の高い方である提督も大柄なリットリオに抱きつかれては胸元に顔が埋まり、たっぷりと胸の谷間で呼吸をすることになった……

ヴィットリオ・ヴェネト「はい、とても楽しかったです♪」

ローマ「素晴らしかったですよ、姉様の運転はともかくですが」

リットリオ「もうっ、それは言わない約束でしょ♪」

提督「とにかく無事で何よりだわ……積もる話もあるでしょうけれど、まずはチンクエチェントを車庫に入れていらっしゃい」

リットリオ「はいっ♪」

…しばらくして・食堂…

提督「さてと、これでみんな揃ったわね♪」休暇中に怪我や病気をすることもなく、元気一杯で戻って来た艦娘たちを見てほっと一安心した提督……

リベッチオ「それじゃあクリスマスプレゼントを開けてもいいの?」

(※イタリアではクリスマスプレゼントを開けるのは公現祭の日。持ってくるのもサンタクロースではなく魔女のベファーナということになっている)

提督「ええ、許可します♪」

リベッチオ「やったぁ!」

…おやつのビスケットに飛びつく犬のようにクリスマスツリーの下に置かれている自分宛のプレゼントに押しかける駆逐艦や中型潜クラスの艦娘たちと、その様子を微笑ましく眺めている年かさの艦娘たちと提督…

チェザーレ「ははは、なんとも微笑ましい眺めであるな」

提督「チェザーレもプレゼントを取りに行ったら?」

チェザーレ「なぁに、チェザーレは後からでも構わぬ……しかし皆も嬉しそうだ」

提督「それだけでもお財布をはたいたかいがあるというものね♪」
966 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/03/02(日) 02:00:35.38 ID:gtZKY0WA0
リベッチオ「わぁ、素敵なバレッタとスカーフ! ありがとう、提督♪」

アッチアイーオ「私のはマフラーに手袋ね」

提督「リベッチオはいつも元気に走り回って髪が大変でしょうから、まとめられるようにね……アッチアイーオは哨戒の時に寒いでしょうから、少しでも暖かいように」

アラジ「あ、靴下にセーターだ♪」

提督「貴女だって出撃が多いのだから、替えのお洋服も多い方がいいでしょう?」

ペルラ「あら、このハンドバッグは……」

提督「以前、コートと合わせたいけれど値段が折り合わないって言っていたでしょう? だから私からプレゼント♪」

ペルラ「覚えていてくれたのですね……♪」小さな口にえくぼを浮かべると「ちゅっ♪」とほっぺたにキスをした……

提督「ふふっ、いまのキスだけでお釣りがくるくらいだわ♪」

…あちこちにほどいたリボンや包装紙が散らかり、きゃあきゃあと楽しげな歓声が響き渡る……ルチアもそんな気分を察してか尻尾を振りながら駆け回り、提督の足元にまとわりついてはまた走って行く…

提督「それにしても良かったわ。みんなが喜んでくれて」

チェザーレ「きっと礼代わりの夜這いが続いて、明日は腰が立たなくなるであろうな♪」

提督「ふふっ、望む所よ」

チェザーレ「ほほう、ずいぶんと余裕ではないか」

提督「ええ、もとより明日は執務なんてしないつもりでいたもの♪」ちろりと舌先を出していたずらっぽい表情をしてみせた……

………

…翌朝…

デルフィーノ「おはようございます、提督っ」

提督「あ゛ー……お゛はよ゛う、デルフィーノ……」

デルフィーノ「うわわっ!? 提督ってば声がすっかりしゃがれて、一体どうしたんですか……あっ///」

提督「お゛ほん……見ての通りよ……」

デルフィーノ「うわぁ///」

アッチアイーオ「おはよう、提督……って、休暇明け早々からずいぶんとお楽しみだったようね?」

提督「楽しかったには楽しかったけれど、それ以上にくたくた……歯を磨いてくるから、甘いミルクコーヒーを持ってきてもらえる?」

…二日酔いのように頭を抱え、数人の艦娘たちが寝息を立てている天蓋付きベッドからよろめきながら這い出てきた提督……脱ぎ散らかされた服を踏まないようステップをとるようにして歩きながら、椅子の背にかけてあったナイトガウンをひっかけて化粧室に入っていった…

アッチアイーオ「前にも似たような事があったけれど、どいつもこいつも本当に色ボケばっかりね……シーツごと引きずり出してやろうかしら」

デルフィーノ「それだとシーツが破れちゃいますよ……」

アッチアイーオ「私だってその程度のことは分かるわ。そのくらい腹が立つってことよ」

エウジェニオ「だったら意地を張らないで素直にお呼ばれしておけばよかったじゃない……♪」色白な裸身をさらけ出しながらベッドの上で起き上がり、ものうげな動作で髪をかき上げる……

アッチアイーオ「私は十把一絡げで提督とベッドに入るなんてごめんだわ」

ガリバルディ「……とっかえひっかえで愉しむのもたまには良いものだけどね?」起き上がってエウジェニオを抱き寄せると、にんまりと笑みを浮かべた……

アッチアイーオ「くだらない事を言ってないでとっとと出ていってくれない? どうせシーツもぐちゃぐちゃでしょうし、早いうちに洗濯をかけたいから」

ガリバルディ「だ、そうだ」

エウジェニオ「ふふっ、この余韻が良いのに……残念ね♪」

アッチアイーオ「ざれごとはいいから早くしてちょうだい、ここはナポリあたりの連れ込み宿じゃないのよ」

エウジェニオ「ふふふ、せっかちなんだから……それより二人とも、良かったら片付けの前に私と愛を育んでみない?」腰に手を当ててむすっとしているアッチアイーオと、その後ろで恥ずかしそうに顔を赤らめているデルフィーノに向かってしなをつくってみせた……

デルフィーノ「あう、それは……その……///」

エウジェニオ「いいのよ、どうせシーツも洗うんでしょう? ……それに、私は貴女たちのことだって抱きたいと思っているわよ?」

アッチアイーオ「……いいからさっさと出ていって!」からかうような調子で誘ってくるエウジェニオにしびれを切らし、床に落ちていた枕を投げつけた……

エウジェニオ「ふふ、悪かったわ♪」たやすく枕を受けとめると小さく肩をすくめ、優雅にベッドから降りた……

ガリバルディ「ああ、まったくだ……それとデルフィーノ、もし良かったら後で私の部屋においで♪」

デルフィーノ「あ……えぇと、はい……///」

アッチアイーオ「まったくもう……!」
967 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/03/10(月) 01:18:12.11 ID:NlCZEgO/0
…しばらくして…

提督「ふぅ、さっぱりしたわ……♪」

アッチアイーオ「朝からお風呂だなんてぜいたくなことね」

提督「そう怒らないの♪ ……気象通報と管区司令部からの通達は?」

アッチアイーオ「気象通報はここよ。天候は晴、海況凪。風は北西からで風力は二。視程は十浬以上も海面にわずかなもや」

提督「風があるならじきに晴れるわね。哨戒組からの報告は?」

アッチアイーオ「今日はフルットをはじめ中型潜八隻が哨戒にあたっていたけれど敵影はなし」

提督「了解」

アッチアイーオ「あとは鎮守府宛に届いたクリスマスプレゼントへのお礼状書きね」

提督「私の留守中にいろいろ届いたそうだものね。とりあえず何が来たのかちゃんと見てくるわ」

アッチアイーオ「ええ」

…厨房…

ディアナ「エリトレア、ニンジンを取ってきて下さいな」

エリトレア「はいっ、すぐ持ってきます!」

ディアナ「よしなに」

…朝食が終わるとすぐ昼食の仕込み、昼食が済めば夕食と、一日中おいしそうな料理の匂いとにぎやかな音の絶えたことがない厨房……ディアナとエリトレア、それに手伝いの食事当番が交代でにぎやかにやっている……提督が顔を出すと、腕まくりをして髪をまとめあげたディアナが手際よく切り盛りしている…

提督「ディアナ、いつもお疲れさま」

ディアナ「あら、提督……どうかなさいましたか?」

提督「ええ。なんでも鎮守府へのクリスマスプレゼントで調理器具をもらったとかなんとか……誰がくれたにせよ、ちゃんとお礼状を書かないといけないから」

ディアナ「さようでございましたか……いただきましたのはこちらの品で、ちょうどお伝えしようと思っていたところでございます」まだ封を切らず、きちんと並べてある……

提督「助かるわ。えーと……」大きな調理器具の箱と、几帳面なディアナがきちんと箱に添えて取っておいたメッセージカードを確かめる……

提督「マリーからル・クルーゼの大鍋……前にもらったのはオレンジ色だったけれど、今度は黄色ね」取り落としそうなほど重いほうろう加工の鉄鍋は分厚く冷めにくい頑丈なもので、冬のあいだ暖炉にでも鎮座させてシチューか何かを煮込むのにふさわしい風格を帯びている……

ディアナ「あのお方は常々フランス製の良さをふれ回っておりますから」

提督「ふふっ、その通りね……♪」

…そのころ・トゥーロン…

エクレール提督「くしゅ……んっ!」

リシュリュー「おや、お風邪ですか?」

エクレール提督「ノン、きっと誰かが噂でもしているのですわ……それよりクリスマス休暇は楽しめまして?」

リシュリュー「ウィ、充実したものでした。提督も帰省をなさったそうですが、ご実家はいかがでしたか?」

エクレール提督「……実家は相変わらずでしたわ。ここからそう遠いわけでもありませんし、特に変わったこともありませんでしたわね」

リシュリュー「おや、そういえばそうでした……提督のアクセントを聞いていると、ついプロヴァンス出身であることを忘れてしまいます」

エクレール提督「……っ、わたくしがプロヴァンス生まれかどうかは関係ないでしょう///」

リシュリュー「ええ、ごもっともで」

エクレール提督「まったく。まあ気ぜわしいこともなく、のんきなものでしたわ……」

………

…年の瀬・エクレール提督の実家…

エクレール提督「それにしても、相変わらずの田舎ですわね……」

…1950年代の発表時には「宇宙船のよう」とまで表された先進的な構造とデザインで世界の度胆を抜き、その後も長く活躍した愛車の「シトロエンDS19」を拭きながら小さくため息をついた……久々の帰省になったプロヴァンスの実家は気ぜわしいパリの空気を知っているエクレール提督からすると少しのんきすぎるくらいのどかな空気が漂っていて、磨き上げているシトロエンDSの隣にちょこんと停めてある家族の車……小さな灰色の2CV(ドゥシュヴォア)からも田舎らしさが漂ってくる…

エクレール提督「でも、きっとこの家も百年はこうして建ち続けていたのですわね……」納屋に充満している乾いたわらの香ばしい匂いに懐かしさを覚えながら、黒塗りのシトロエンに仕上げのワックスをかける……

エクレール提督の母「ほれマリー、お茶が入ったから飲みにおいで?」のんびりしたプロヴァンス訛りが母屋の方から聞こえてくる……

エクレール提督「ええ、すぐ行きますわ!」

エクレール提督「……まぁ、たまにはこのような雰囲気も悪くありませんわね」
968 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/03/20(木) 01:14:01.56 ID:wUSGFgIf0
…エクレール家・居間…

エクレール母「ほら、たんとおあがり?」

エクレール提督「ええ」

エクレール父「いや、お前が帰ってきてくれて嬉しいよ……今年は葡萄も良かったし、トリュフも結構収穫があったんだ」

エクレール提督「それは何よりですわね」

エクレール父「ああ、今年はいい年越しが過ごせるよ」

…数百年の風雪に耐えてきたエクレール家の暖かな居間でコーヒーとブリオッシュをお供にゆったりと過ごす一家……いつもは少し気取った雰囲気を漂わせているエクレール提督も、いまは少し気を抜いているように見える…

エクレール父「……それにしてもだ、まさかうちの娘が海軍士官とはな」

エクレール提督「その話は耳にたこができるほど聞きましたわ」

エクレール母「ほんにねぇ、しゃべる言葉もすっかり都会者みたいになって……」

エクレール提督「パリでプロヴァンス言葉なんて使ったら小馬鹿にされてしまいますもの」

エクレール父「やれやれ、最近の若いもんは口を開けばパリ、パリ、パリだ……あんなよそよそしい町のどこがいいんだか分からんよ」

エクレール提督「海軍省にいたのですから仕方ありませんわ」

エクレール母「まぁまぁ。父さんは口でこそこんなだけど、おまえが官報やル・モンドの記事になるたびにペタンク友達に自慢して回っているんだから」

(※ペタンク…目標になる球に向けてチーム分けされた双方が交互にボールを投げて目標に近い方が点を取る、カーリングの球技版。プロヴァンスなどで盛ん)

エクレール父「自慢してるわけじゃないさ。ただアンリやジャンの野郎が「お前の娘はどうしてる?」って言うから……」

エクレール提督「まったく……この調子では何を食べたとか、何を買ったかまでふれ回っていそうですわね」

エクレール父「そんなことはしちゃいないよ……それよりマリー、ヴォークランのせがれがそろそろ身を固めたいらしいんだが……」

エクレール提督「お断りですわ」

エクレール母「マリーや、せめて顔を見たうえで断るとかできないものかい?」

エクレール提督「これまで何度も言っているとおり、顔のよしあしなど問題ではないと言ったはずですわ」

エクレール父「とはいえ、いずれはお前もうちの葡萄畑や土地を継がなきゃならん……女だけで、ってのは難しいだろう」

エクレール提督「もしそうなったら小作人を雇いますもの」

エクレール母「だけどねぇ……女同士で結婚なんていうのは教会でも認めちゃくれないんだよ?」

エクレール提督「教会に認めてもらうために結婚するわけではありませんわ!」

エクレール母「そりゃあそうだけども……」

エクレール提督「とにかく、わたくしはわたくしの好きな人間と結婚いたします。お父様とお母様があれこれと気を使ったり、どこかの農家の息子をカタログにして持ってくる必要はありませんわ」

エクレール母「お前がそこまで言うなら無理にとは言わないよ……だけどねぇ」

エクレール父「……分かったよ、おれも付き合い上そう言っただけだからな。ヴォークランのやつには断りを入れておくさ」

エクレール提督「申し訳ありませんわ」

エクレール父「親にわびを言う事なんぞないさ。他人様にはかけられない迷惑をかけていいのが家族なんだからな」

エクレール提督「ええ、そうですわね」

エクレール父「そうとも。それより前の休暇の時にくれたセーター。ありゃあ暖かくて助かるよ……今年の冬はめっぽう寒いからな」

エクレール母「あたしに買ってきてくれた靴下も役に立っているよ」

エクレール提督「それは何よりですわ」

エクレール父「ところで今年のクリスマス休暇は公現祭までいられるのかい?」

エクレール提督「残念ながら今年は難しいですわ。先任提督にお願いをして、どうにか四日までは伸ばしてもらえたのですけれど……」

エクレール母「オー・ラ・ラ(おやまあ)……それじゃあ今年はロワイヨームを一緒に食べられないのかい」

(※ガレット・デ・ロワ…「王様のお菓子」の意。王冠の飾りをつけたパイに陶器の小さな人形を一つ入れ、切った中から「当たり」のひと切れを取ったものがその年の「王様」になるという縁起物のお菓子。プロヴァンスではオレンジの香りを効かせたブリオッシュ生地で作られ、名前も「ロワイヨーム」と異なる)

エクレール提督「ええ……」

エクレール父「仕方ないさ。それじゃあおっかあにとびきりでっかいのを焼いてもらって、鎮守府で軍艦の娘たちと食べることにすりゃあいい」

エクレール母「そうだね、あたしが美味しいのを焼いてあげるから基地に持ってお行き」

エクレール提督「ええ、そうすることにいたしますわ」
969 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/03/29(土) 01:21:47.39 ID:kzYhyWdq0
…夕食時…

エクレール母「ほら、もっと食べないと……そんなにやせこけて、あたしゃ心配になっちまうよ」

エクレール提督「適正体重を維持しているだけですわ」

エクレール父「そう言わずにもうちょっと食べた方が良いぞ、せっかくの手料理なんだしな」

エクレール提督「……それはそうですわね」

…プロヴァンスとはいえ寒い冬の夜、暖炉が心地よく室内を暖める中で食卓を囲むエクレール家……時間をかけてゆっくり煮込んだ野ウサギの煮物やアイオリソースをたっぷりつけた蒸し野菜など、素朴な材料にもかかわらずハーブや香草で驚くほどの味わい深さがある…

エクレール提督「たくさんいただきましたわ……ごちそうさま」

エクレール母「久しぶりの家の味だったろう?」

エクレール提督「ええ、懐かしい味でしたわ」

エクレール父「良かったな……さて、おれはアブサン(※ニガヨモギのリキュール)でも飲るとするか」独特の匂いがする煙草「ジターヌ(ジタン)」に火を付けると、小さなグラスに綺麗な黄緑色のリキュールを注いだ……

エクレール提督「お父様は相変わらずですわね」

エクレール父「こいつはプロヴァンス人の魂だからな」自慢げに鼻をうごめかし、小さいグラスをつまみ上げるようにして口元に持っていくとちびちびと舐めるようにすすった……

エクレール提督「わたくしはコニャックにしておきますわ」

エクレール父「ああ、好きな物を飲めばいいさ……おっかあ、マリーにグラスを出してやれ」

エクレール母「はいはい」

エクレール提督「お母さまは座っていて下さいまし、自分でできますから」

エクレール母「そうかい?」

エクレール提督「ええ……よかったらお母さまも少し召し上がる?」

エクレール「そうだねぇ、じゃああたしも一杯だけもらおうかしらね」

エクレール提督「分かりましたわ」

………

…数日後…

エクレール提督「それでは、わたくしは鎮守府に戻りますわ……ごきげんよう」

エクレール父「達者でな」

エクレール母「体調には気をつけるんだよ? たまには手紙をちょうだいね?」

エクレール提督「ええ、分かっておりますわ。それでは」

…普段はパリジェンヌを気取っているエクレール提督も庭先で家族に見送られて車に乗り込むとなると、古めかしい家や変わり映えのしない畑、なだらかなプロヴァンスの野山に離れがたいものを感じる……そうしたノスタルジーを振りきるように制帽をかぶり直すとDS19に乗り込み、停車時には姿勢を低くするハイドロニューマチック(油圧制御)の車高調整装置を走行状態に入れてアクセルを踏んだ…

エクレール提督「お父様もお母様も、いつの間にかシワと白髪が増えておりましたわね……」バックミラー越しに小さくなる両親の姿をちらりと眺めると、胸に感慨深いものが流れた……

エクレール提督「……家族を心配させないためにも、わたくしはしっかりしないといけませんわね」

エクレール提督「それにしてもこんなにたくさんのお土産を、まったく……」口が酸っぱくなるほど「いらない」と言っても、あれこれと持たせてくる親心に苦笑いを浮かべる……

エクレール提督「まあ、鎮守府の娘たちに分ければ良いだけのことですわね」

………



エクレール提督「……ともあれ、貴女たちが喜んでくれて何よりですわ」

リシュリュー「それはもう、コマンダン(司令官)のご実家からいただいたさまざまなものをむげに扱うようなことはいたしません」

エクレール提督「皮肉で言っておりますの?」

リシュリュー「ノン、とんでもございません……気取らないプロヴァンスの素朴なお土産、実に結構なものでございます」

エクレール提督「……素直に賛辞として受け取っておくことにいたしますわ」

リシュリュー「ウィ、それがよろしいかと」

エクレール提督「ええ……では、そろそろガレット・デ・ロワを切り分けに参りましょうか。ジャンヌたちも待ちくたびれていることでしょうし」

リシュリュー「お供いたします」
970 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/04/07(月) 01:35:19.70 ID:CgmZEvqc0
………



ディアナ「昼の献立はもう決めてしまいましたが、夕食はフランス料理になさいますか?」

提督「いいえ。マリーの実家でごちそうになったプロヴァンス料理も悪くはなかったけれど素朴すぎたし、かといってパリで食べた料理は高くて目が回りそうだったから……やっぱりイタリア料理の方が断然良いわ」

ディアナ「ふふ、カヴールには聞かせられませんね?」

提督「カヴールはフランス通だものね」

ディアナ「しかし、フランスをはじめドイツ、日本、アメリカ……ここの娘たちも色々な場所と縁がございますね」

提督「そうね……せっかくだし、私も手伝うわ」

ディアナ「よしなに」

…昼時…

提督「……良かったらもう少しどう?」

ゴリツィア「ではもう半分ほど……」

ポーラ「う〜ん、これは飲み口のいい赤ですねぇ♪」

提督「私の実家があるコムーネで地元の小さな醸造所が作っているテーブルワインだけれど……こんどのは去年のだけれど案外いいでしょう?」

ザラ「まだ少し若いですが、渋みが少なくて合わせやすい良いワインです」

提督「ね? 赤にしては軽いし、ほどよく飲めるわよね♪」

…軽めの昼食を済ませ、暖かな食堂でチーズやオリーヴの瓶詰め、サラミをつまみながらワインをちびちびすすっている……デュイリオのカラスは止まり木で鶏肉の切れ端やクラッカーの欠片をついばみ、ルチアは暖炉の前の敷物に寝そべって鹿の角をガリガリと噛んでいる…

フィウメ「これでクリスマス休暇も終わりですか」

提督「ええ……とはいえクリスマス休暇を取らないで後ろに回した組がいるわけだし、今度はその娘たちが出かけるわけね」

ボルツァーノ「また鎮守府の半分近くがいなくなってしまいますね」

提督「まぁ、一斉に休暇を取るのは無理だったし……私としてもチェザーレやディアナたちがクリスマス時を外してくれて助かったわ」

チェザーレ「……ふむ、しからば身体で礼をしていただこうか♪」後ろからぬっと姿を現し、肩に手をかける……

提督「もう、さすがに勘弁して♪」

チェザーレ「そこまで言うのならば仕方あるまい」

提督「ともかく、気兼ねすることなんてないのだから楽しんできてもらいたいわ」

ザラ「そうですね」

提督「ええ」

ルチア「……ワフッ」シルヴィアがくれた裁断した鹿の角をガリガリとかじって楽しんでいたルチアだったが満足したらしく、かじりかけの角を食堂の片隅にある定位置に片付けると、提督の足元までとことこと歩いてきて軽く吠えた……

提督「あら、ルチア……お散歩でも行く?」

ルチア「ワンッ♪」

提督「はいはい、それじゃあ支度をするわね♪」

…鎮守府・庭…

提督「うっ……まだまだ春は遠いようね」ロングコートに手袋を取ってきたが、それでも吹き付ける海風はぴりっと冷たい……自前の毛皮を着ているルチアは寒くもないらしく大はしゃぎだが、提督は思わず身体をすくめた……

アラジ「おーい、提督っ♪」

提督「ルチアと同じくらい元気一杯な娘があんなところにもいたわ……アラジ、寒くないの?」

アラジ「寒い? 動いていれば身体が暖まってくるし、寒くなんてないよ♪」イタリア潜で最も多くの出撃をこなしたアラジは活発な性格で、散歩中の提督とルチアを見かけると跳ねるような駆け足でやってきた……

提督「さすがね……とはいえ風邪をひいたりしないように注意するのよ?」

アラジ「了解。ルチア、一緒に走ろうか♪」

ルチア「ワンワンッ!」アラジが浜辺で拾った木の枝を手に駆け出すと、それに続いて走り出すルチア……敷地内の散歩ではたいていリード(つなぎひも)を付けていないので、たちまち白い毛をひるがえし全速で疾駆しはじめた……

提督「若いわねぇ……」

971 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/04/18(金) 01:19:05.32 ID:NZ5h/yaO0
デュイリオ「あらあら、提督だってまだまだお若いでしょうに♪」口元を手で押さえ、ころころと笑うデュイリオ……

提督「若いと言ってもあの元気にはかなわないわ……早く戻って温かいココアでも飲みたい気分よ」

デュイリオ「ではエリトレアにそう言っておくといたしましょう♪」

提督「ええ、お願いね」

…四季折々の花が咲いている庭も今は冬枯れのわびしさで、土作りのため夏の間に作っておいた堆肥や腐葉土が積み上げられているばかり……浜辺に打ち寄せる波は「ざあ……っ」と余韻を残しては海に戻り、また白い泡を伴って寄せてくる…

提督「ふぅ……」

ライモン「提督」

提督「あぁ、ライモン……その格好で大丈夫?寒くない?」

ライモン「はい。わたしは大丈夫ですが、提督は寒いのではないかと思って……マフラーを持ってきました」

提督「ふふ、お気遣いありがとう。ライモンも一緒に巻く?」

ライモン「いえ、そんな……///」

提督「まぁまぁ、少し短いけれど頑張れば巻けるんじゃないかしら?」柔らかなカシミアのマフラーを首もとに軽く巻くと、余った部分をライモンの首もとにかけて身体を寄せた……

ライモン「あ……///」

提督「ほら、どうにか巻けたわ。それに貴方の体温で暖かい♪」

ライモン「提督こそ……あったかいです……///」

提督「そう?」

ライモン「はい。確かに今までたくさん楽しいことや嬉しいことがありましたけれど……わたし、こうやって提督のぬくもりを知ることが出来たのが……一番嬉しいことかもしれません///」

提督「も、もう……そんなことを言われたら愛おしくてたまらなくなっちゃうじゃない///」思わず腰に手を回し、ぐっと顔を近寄せた……

ライモン「あ……///」

提督「んっ……♪」

ライモン「ん……ちゅ///」

提督「ふふ、ちょっとしょっぱい……♪」海風に当たっていたためか、甘く柔らかな唇に少しだけ塩気を感じた……

ライモン「海の味ですね」

提督「そうね……」

ルチア「ワンワンッ!」

…提督とライモンが波打ち際でお互いにささやきながらたたずんでいると、アラジを振りきったルチアが流木をくわえて全速力で駆け戻ってきた…

提督「このままいたいけれど、どうやらルチアが構ってほしいみたいね」

ライモン「名残惜しいです……」

提督「それじゃあ後で、また……ね?」

ライモン「はい」マフラーをほどくとルチアが差し出した木切れを受け取り、ブーメランのように投げた……

ルチア「ワンッ!」

アラジ「待て待てぇ!」疾駆するルチアに追いすがるべく砂浜を駆ける……

提督「本当に元気ねぇ……さてと、そろそろ戻りましょうか」

ライモン「そうですね。お散歩の続きはアラジに任せましょう」

提督「ええ、そろそろココアも出来たでしょうし♪」

アラジ「あ、そろそろ引き上げる?」

提督「私はね。もしアラジが構わなければ、あと少しだけルチアと遊んであげてくれる?」

アラジ「了解っ♪」

提督「それじゃあお願いするわ」

アラジ「はぁーい」

ライモン「では、戻りましょう」

提督「ええ、暖炉とココアが待っているものね♪」
972 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/05/01(木) 01:24:02.53 ID:YZXyTJeW0
提督「はぁ……温かい」

ライモン「そうですね」

…暖炉の脇、温もりがじんわりと伝わってくる場所に椅子を据えてココアのカップを手にしている提督たち……活発な娘たちが表ではしゃいでいるのを食堂の窓越しに眺めつつ、エリトレアが淹れてくれた甘く濃いチョコラータ(ココア)に舌鼓を打つ…

エリトレア「まだまだ寒いですからねぇ」厨房の後片付けを終えてエプロンを外したエリトレアは、くつろぎモードで銅製ポットのチョコラータを注いでいる……

提督「……それにしてもまだまだ夕暮れが短いわね」

ライモン「確かに、あっという間ですね」

…ことわざにある「秋の日は釣瓶落とし」ではないが、さっきまで少し頼りなげとはいえ穏やかな午後の日差しが残っていたというのに、あっという間に日が落ちて深青色に変わっていく海面……浜辺に打ち寄せる波の泡だけがほの白いだけで、空もヴェルヴェットのような黒一色に染まっていき、そこに小さな宝石の欠片を撒いたかのようにぽつりぽつりと星が出始める…

提督「灯台にも明りが入ったようね」鎮守府から数キロ先「小さな町」の方には小さな岬があって、そこに設けられた灯台が光の帯でさっと海面を払う……

デュイリオ「灯台が点いていると平和な気持ちになるものですね」

提督「深海棲艦のことがあるとはいえ厳密に言えば平時なわけだし、灯火管制をする必要もないものね」

…鎮守府の浜辺に「ざぁ……っ」と寄せては返す波音に耳傾け、遠くにさっと流れる灯台の光芒を見るでもなくぼーっと眺めながら、思い出したようにとろりとしたチョコラータに口をつける…

アラジ「ただいま戻りましたっ!」

提督「あぁ、お帰りなさい……ルチア、満足した?」

ルチア「ワンッ♪」

アラジ「なにしろ思い切り駆け回ったからね♪ ……全身砂まみれになっちゃったので、さっきドックの簡易シャワーで軽く流してからお風呂場で洗ってあげました」

提督「ありがとう、お疲れさま♪ エリトレアがチョコラータを淹れてくれたから、良かったらどうぞ」

アラジ「やった♪」

…ついでに自分も洗ってきたのか、まだ湿り気の残っている髪をかき上げると自分のマグカップを持ってきて暖炉の前に座り、ポットから湯気の立つチョコラータをたっぷり注いだ……ルチアは暖炉の前の敷物に長々と身体を横たえると器用に頭を回してあちこち舐め回して毛並みを整えつつ、暇な艦娘たちが遊び半分にブラシを持ち出すと喜んでブラッシングに応じている…

提督「……ふふ♪」

ライモン「提督?」

提督「いえ、ね……こうのんびりしているとあくびでも出そうな気がして。 電話でも来ないかしら?」

ライモン「いくらなんでもそう都合良くかかってくることはないと思いますが……」そう言いかけたところで、提督が持ち歩いている私用の携帯電話がぶるぶると震えだした……

提督「噂をすればなんとやら……ね」

ライモン「すごいタイミングですね……どなたからでしょうか?」

提督「えぇ…と、ジェーンからね。 はい、もしもし?」

ミッチャー提督「ハーイ、フランチェスカ♪ 元気? いまおしゃべりしても大丈夫かしら?」

提督「ええ、ちょうど話し相手が欲しかったところよ♪」

ミッチャー提督「オーケー、タイミングはばっちりだったわけね……そうそう、クリスマスプレゼントとグリーティングカードをありがと♪ うちのガールズたちも喜んでたわ」

提督「こちらこそプレゼントをたくさん送ってもらって感謝しているわ、ありがとう」

ミッチャー提督「ノ−・プロブレム。こういうのはギヴ・アンド・テイクなんだからさ……そっちはどう?」

提督「そうねぇ……鎮守府にいるとは言っても管区司令部もまだクリスマス気分が抜けきっていないみたいでのんびりしたものよ」

ミッチャー提督「そいつはうらやましい限りね……こちとらはボスが気短なおかげで休み明けもなにもあったもんじゃないわ」

提督「その調子だとあまり聞かない方が良さそうだけれど、ちゃんと休暇は取れたの?」

ミッチャー提督「そいつは心配無用よ。「31ノット・バーク」そこのけの勢いで書類を片付けて、ついでに休暇申請書を叩きつけてやったわ……ま、休暇といっても飲み歩くか女を呼んで騒ぐかのどっちかだったけど♪」

提督「くすくすっ……相変わらずね?」

ミッチャー提督「まぁね。それにアナポリス(海軍兵学校)時代の知り合いどもがイカした57年型の「シボレー・ベルエア」で乗り込んで来たもんだからさ。わいわい言いながら街に繰り出して、久しぶりの上陸みたいにはしゃぎ回ったわ♪」

提督「ふふっ、きっとにぎやかだったでしょうね♪」

ミッチャー提督「にぎやかなんてもんじゃなかったわよ。バドワイザーとテキーラの海でミズーリが浮くんじゃないかってくらいで、ストリッパーは来るし憲兵は駆けつけるし、翌日になって二日酔いの頭を抱えて起きてみれば、どっかの娼婦たちと一緒にどでかいハート型のベッドに転がり込んでるし……」

提督「複数形ってことは、何人もいたの?」

ミッチャー提督「ええ。なんでも「今日は全員相手してやるから遠慮するな」って私たちが札ビラを切ったもんだから、一人に四人くらいはついちゃったみたいなのよね。こっちは覚えちゃいないけど、あちらさんによるとそういう話だったわ」

提督「なんて言うのかしら、いかにも「らしい」クリスマスだったようね?」

ミッチャー提督「おかげさまでね♪」
973 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/05/10(土) 01:40:29.48 ID:ccWrX6qa0
提督「みんなそれなりに楽しい年末年始を過ごしていたみたいね」

ライモン「そのようですね。提督はゆっくりできましたか?」

提督「ええ、おかげさまで♪ 鋭気も養ったし、これで元気よく書類の山に……」未決書類の箱に積まれた書類をちらりと見て視線を戻した……

ライモン「提督?」

提督「いえ、もちろんやらないわけじゃないわ。いつかはどうにかしないといけない書類だもの……とはいえ、ね」また改めて書類の山に視線を向けて眉をひそめた……

ライモン「あの、少しずつでも片付けないと……」

提督「そうね。溜まれば溜まるほど片付けるのがおっくうになるもの……掃除と同じね」

ライモン「では、わたしもお手伝いします」

提督「ありがとうライモン、優しいわね……それじゃあコーヒーを淹れてきてもらおうかしら。温めたミルクたっぷり、砂糖は少なめで」

ライモン「はい♪」

提督「それから手が空いているようだったらアッチアイーオとデルフィーノも呼んできてもらえる? 秘書艦としてのお仕事があるって」

ライモン「了解」

…数分後…

デルフィーノ「ただいま参りましたっ」

アッチアイーオ「来たわよ……」

提督「あらら、アッチアイーオったらずいぶん陰気になっちゃって……」

デルフィーノ「寒いせいかすっかり気落ちしちゃっているみたいなんです」

提督「それじゃあアッチアイーオは食堂の暖炉で温まって、元気になったら来てちょうだい……デルフィーノ、それまではお願いね?」

アッチアイーオ「悪いわね……はぁ……」

デルフィーノ「はい、アッチアイーオの分まで頑張ります♪」くりっとした目をキラキラさせ、跳ねるような動きで応接テーブルの椅子に腰かけて書類を受け取る……

提督「頼もしい限りね……それじゃあ張り切ってやっつけることにしましょうか♪」セーターの袖をひじまでまくり上げ、お気に入りの万年筆を手に取った……

…しばらくして…

デルフィーノ「提督、この書類の書式なんですけれどマニュアルにはaとbがあって……」

提督「あー、それなら年度替わり前だからaの方よ」

デルフィーノ「あとこの「休暇時交通費の補助に係る申請」っていう書類を書きたいんですけれど、適応される範囲が分からなくって……」

提督「それならマニュアルの……9ページだったかしら、書き方と適応範囲が書いてあるから参考にしてもらえる? まぁおおまかなところで、EU圏内なら補助が出ると思っておけば間違っていないはずよ」

デルフィーノ「なるほど。9ページ……9……あ、ありました♪」

提督「ね? だいたいのことはマニュアルに書いてあるから、困ったらそれでどうにかなるわ。ならないこともあるけれど……」複雑で面倒な経費や手当の申請書類とふせんだらけの使い込まれた用例集、さらにはラップトップを開いて海軍の申請システムに入っているフローチャートを出して見比べている……

提督「うぅん……結局どの項目で申請すればいいのよ?」ぶつくさとこぼしていたが受話器を取り上げ、左肩と耳で挟むと番号をダイヤルした……

提督「もしもし。タラント第六のカンピオーニですが、庶務課をお願いします。書類の摘要のことで少し問い合わせたいことが……」

提督「……あら少尉、お久しぶり♪ えぇそうなの、実は艦娘の娘たちが休暇時にもらえる旅費の補助のことで……そうそう、その書類よ」

提督「それじゃあこの書式のC項に書き入れればいいのね……領収証の貼付も必要? 了解」

提督「なるほど、おかげで謎が解けたわ……どうもありがとう。できれば貴女の声を聞いていたいのだけれど、書類がたっぷり残っているものだからまたの機会にね……チャオ♪」

デルフィーノ「無事に手続きの仕方が分かったみたいですね」

提督「ええ。それにしても複雑極まりないことおびただしいわ……まったく嫌になっちゃう」正方形のふせんにメモをつけるとマニュアルのページにぺたりと貼りつけ、それから気を取り直して書類の空欄に必要項目を書き入れ、サインをし、キーボードを叩く……

ライモン「コーヒーをお持ちしました。デルフィーノも良かったらどうぞ」

デルフィーノ「わ、ありがとうございます♪」

提督「ライモンは優しいわね……アッチアイーオは?」

ライモン「そろそろ温まってくると思いますが、まだしょげているみたいで……余計だったかもしれませんが、何人かに声をかけておきました」

提督「余計だなんてとんでもないわ。今は一人でも多くの手が欲しい所よ……はい、どうぞ」

ガラテア「失礼いたします、書類のお手伝いが必要とのことで……」

ルビノ「わが愛しの提督のために馳せ参じたわ♪」

提督「ふふ、心強い限りね……それじゃあ手分けして片付けるとしましょうか♪」
974 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/05/27(火) 01:51:58.62 ID:U0Ixlxae0
提督「……仕上がった書類はひとまとめにしておいてね」

ライモン「はい、提督。 ガラテアとデルフィーノはこちらの山をお願いします」

デルフィーノ「はぁい」

ガラテア「ええ。ルビノは出来上がった分をまとめて下さる?」

ルビノ「任せて」

…温泉の熱を利用した全館暖房の少し心もとない暖気が足元に吹く中でカタカタとキーボードを叩く提督と、それぞれペンを走らせ、クリップで書類を留め、記入漏れを確かめるライモンたち……

提督「えーっと、経費申請は……あら?」だいたいは順調に進んでいるが、思い出したようにエラーではじかれたり、入力したい要目の部分がロックされて数字を打ち込めなかったりする……

提督「ふぅ……っ」時折しぶるキーボードを連打したり眉をひそめたりしながらも「未決」の山を減らしていく提督……

ライモン「提督、こちらはほとんど片付きました」

提督「あぁ、ありがとう……おかげでずいぶん助かったわ」

ルビノ「他ならぬ提督のためだもの……ねぇ、ごほうびにキスして?」

ガラテア「あら、ではわたくしにも♪」

デルフィーノ「えっと、そ……それじゃあ私も///」

提督「そうね、頑張ってくれた娘にはご褒美をあげないと……もちろんライモン、貴女もよ?」

ライモン「いえっ、わたしは提督のお役に立てればそれで充分ですから///」

提督「まぁまぁ、そう言わずに……ね?」提督は立ち上がると一つ伸びをし、それから執務机を回ってライモンたちが座っていた応接テーブルの方へやって来た……

ライモン「は、はい……///」

提督「それじゃあ、お手伝いありがとう……ちゅっ♪」

ライモン「んっ///」軽く唇を合わせる少女のようなキスだったが、唇を通して伝わってくる生真面目な恋心が愛おしい……

ガラテア「では、わたくしから提督に……あむっ……ん♪」

提督「あ……んっ……ガラテアのキスは本当に上手ね///」ピグマリオン伝説の美しい彫像、または海のニンフ(精霊)であるネレイーデの一人を名前の由来に持つガラテアは色白で、美人揃いの鎮守府にあっても抜群に顔が良く、さすがの提督でも間近に迫られると少しどぎまぎする……

ルビノ「それじゃあ今度は私から♪」微笑と慈愛で包み込むようなガラテアとは対照的に、熱情をぶつけてくるようなルビノ(ルビー)は焼けるように激しく熱いキスで提督の唇をむさぼる……

提督「ん、んっ、んむっ……ぷはぁ♪」唾液に残ったミルクコーヒーの甘い味がつぅ…っと糸を引く……

デルフィーノ「そ、それじゃあ私も……///」くりくりとした丸っこい瞳を伏し目がちにしてもじもじと身じろぎしながらも、つま先を伸ばして待ち遠しげにしているデルフィーノ……

提督「ええ♪」

デルフィーノ「……んぅ?」なかなか唇が触れないので、いぶかしげに視線を向けてくる……

提督「あら、そんなにして欲しかったの?」イルカらしく「一人遊び」を始めとしたえっちな事柄を奔放なまでに楽しんでおきながら、それにそぐわない可愛らしい童顔と恥ずかしがりようを見せるデルフィーノはついからかいたくなる……

デルフィーノ「いえっ、そういうつもりじゃないです……っ///」

提督「ふふふ、いいのよ♪ デルフィーノは欲しがりさんだものね……んちゅっ、ちゅ♪」

デルフィーノ「ふあぁ……あふぅ、んぁ///」片手を腰に回され、もう片方の手で濃い灰色の髪を撫でられながら舌を絡められると、すっかり力が抜けたように
提督の腕の中で甘い声を上げている……

提督「はい、おしまい♪」

デルフィーノ「ふわぁ……///」トロけたような表情を浮かべ、ため息とも嬌声ともつかない音を漏らしている……

提督「さ、あとは提出書類に不備があった娘たちのところを回って必要なものを集めるとしましょう」

…ライモンたちを連れて回診をする医師のように鎮守府を巡る提督……もちろん館内放送で「提出書類に不備がある」と艦娘たちを呼びつけても良いのだが、運動不足の解消と艦娘たちとのコミュニケーション、そしてなによりパソコン画面としばらく離れるためにそれぞれの部屋を訪問することにした…

提督「……コルサーロ、いる?」

コルサーロ「ああ、いるよ……どうかしたか?」ソルダティ級駆逐艦の「コルサーロ(アラビア海賊)」はハーレム(後宮)風の豪華なガウン姿でベッドに寝転がっていた……

提督「ええ、休暇の時にかかった旅費には補助が出るのだけれど……料金が分かるような領収書とか明細は取ってある?」

コルサーロ「どうだったかなぁ……忘れちまった」

提督「困ったわね。でも管区司令部に提出しないと私がやいのやいの言われちゃうから……探してみても見つからないようなそれでいいから」

コルサーロ「分かった、それじゃあちょっくら探してみるよ」

提督「お願いね」
975 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/06/08(日) 02:33:54.40 ID:0zBRxkTM0
提督「ガリレオ、クリスマス休暇の時に使った航空券や列車の切符の額が分かるものを……」

提督「ニコ、貴女がクリスマス休暇で使った旅費には補助が出るから領収書を……」

提督「あらバンデ・ネーレ、ちょうどいい所に。休暇の時に使った交通手段の領収書を……」

………

…しばらくして…

提督「リベッチオ、少しいいかしら?」

リベッチオ「うわ、領収書お化けが出たぁ!」噂が広まっているのか、寝転がって本を読んでいたリベッチオがすっとんきょうな声を出した……

提督「もう、いきなり失礼ね」

リベッチオ「それじゃあ別の用事?」

提督「いいえ。特に貴女は領収書も明細もまるっきり提出していないから、このままだと管区司令部に補助の申請が出せないわよ?」

リベッチオ「ほらやっぱり……それに領収書なんてもらってないもん」

提督「もう、休暇の交通費には補助が出るからもらっておくようにって言ったでしょう……」肩をすくめ手のひらを上に向ける提督……

リベッチオ「だってぇ……」

提督「仕方ないわね……それじゃあリベッチオ、スーツケースは?」

リベッチオ「スーツケース?」

提督「ええ、ちょっと出してくれる?」

リベッチオ「いいけど……んしょ」クローゼットの下段に仲良く収まっている姉妹お揃いのスーツケースから自分のを引っ張り出した……

リベッチオ「よいしょっと……それで、スーツケースがどうかしたの?」

提督「ええ、もし運が良ければ……やっぱり♪ これがあれば大丈夫なはずよ♪」提督が指さしたのはスーツケースの持ち手に付けられた空港の手荷物タグ……

リベッチオ「それでいいの?」

提督「ええ。これなら行き先や日付も分かるし……持って行っても構わないかしら?」

リベッチオ「いいよ? 別に荷物タグなんていらないし」

提督「了解、これでどうにかなりそうね」

…夕食後…

提督「ふぅ……これで揃えられる範囲のものは揃えたわね」スキャンした領収証や旅費の証明になりそうなチケットの半券やタグの画像をデータとして添付し、申請を終えるとシステムを閉じた……

ライモン「お疲れさまでした、提督」

提督「いいえ。それに皆が大変な思いをしてもらっているお給金だもの、せっかく補助や還付があるならもらっておかないと……ね?」

ライモン「ありがとうございます」

提督「ノン・ファ・ニェンテ(いいのよ)……それより浮いたお金で何かお買い物でもするといいわ」

ライモン「ふふっ、そうですね♪」

提督「それにしても疲れたわ……お風呂にでも入るとしましょうか」

ライモン「分かりました、それでは着替えを……」

提督「別に貴族じゃないのだから、そこまでしてくれなくたっていいわ……それよりライモン、一緒に入る?」

ライモン「えっ……その、構いませんか///」

提督「構うも構わないも、私から誘っているのよ? ライモンさえ良ければぜひご一緒したいわ」

ライモン「わ、分かりました……それじゃあ着替えを取ってきます///」

提督「ええ、それじゃあ大浴場の前で♪」

…まとめていた髪をほどいて頭を振ると、パイル地のバスローブとメイク落としなどが入った浴用品のポーチを小脇に抱えてゆったりと歩き出した……そして海軍士官ならではの職業病で、窓辺によるとついつい海の様子や天候を確かめてしまう……海面は少し荒いが月が冴え渡り、白い波頭が明るく浮き上がるように見えている…

提督「少し荒れ気味ね……深夜哨戒の娘たちは船体ががぶってくたびれるでしょうし、少しお腹に溜まるような夜食の方が良いかもしれないわね」

提督「風は北から北東に回ったけれど、明日になったら少しは落ち着くかしら……」

提督「っと、いけないいけない……あれこれ考えていたらお風呂に行くのを忘れそうになっちゃったわ」

………

976 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/06/17(火) 00:48:43.95 ID:/aOb8Ef40
…大浴場…

提督「あー……肩のこわばりがほぐれていくわ……」

ライモン「あれだけの書類でしたからね」

提督「それでもみんなのためになると思えばどうってことないわ……とまでは言わないけれど、まぁ頑張れるわ」

ライモン「わたしたちも気苦労なく暮すことができるのも提督のおかげですね」

提督「私の方こそこんなに良い暮らしをさせてもらっているんだもの。肩に「二つ星」を付けている分だけ役に立たないと……いつもこんなことを言っている気がするわ」失笑する提督……

ライモン「ふふ♪」

提督「ふふふっ♪」

声「……あらぁ、こんな時間に誰かいるの?」立ちこめる湯気の向こうからシルエットが近づき、広い大浴場に声が反響する……

バリラ「……あら提督、それにライモンドも……もしかしてお邪魔だったかしら?」

ライモン「あっ、いえ……そんなことはありませんよ///」

提督「バリラ、貴女もお風呂?」

…大型潜「バリラ」級のネームシップであるバリラ……水中で1800トン近い大柄な船体から戦前は長距離航海の記録を残すなどしたが、戦時中は老艦ゆえにさしたる活躍もないまま解役されて浮き燃料タンクとして過ごし、鎮守府で艦娘の姿となった今も多少の哨戒を除いては出撃することも少なく、そのぶん鎮守府の潜水艦組からは「良きお母さん」として慕われている…

バリラ「そうなの。今日は当直もあったし、寝る前に汗を流しておこうと思って♪」肉付きのいいたわわな身体にタオルをあて、母性愛あふれる笑みを浮かべている……

提督「お疲れさま」

バリラ「提督もお疲れさま……あ、せっかくだから抱っこしてあげる♪」つま先から静かに浴槽に入ってきたバリラだったが目を細めると、おいでおいでというように両腕を広げて迎え入れるような姿勢を取った……

提督「そんな、子供じゃないんだから……///」

バリラ「あらあら、私からみたら提督なんて赤ちゃんみたいなものよ? ほぉら、マンマのところにいらっしゃい♪」

ライモン「バリラ、さすがに提督を赤ちゃん呼ばわりは……」

バリラ「あら、ライモンドだって私からしたら妹みたいなものよ……さ、遠慮しないの♪」

提督「分かったわ……そこまで言うなら甘えさせていただくとしましょう♪」

バリラ「聞き分けの良い子でお母さん嬉しいわ♪」

ライモン「あの、本当にわたしもですか……?」

バリラ「あらぁ、お母さんの抱っこは嫌?」

ライモン「別に嫌だというわけではありませんが……」

バリラ「じゃあいらっしゃい♪ 良かったらおっぱいも吸う?」下から手を当て、ゆさゆさと乳房を揺すぶってみせた……

ライモン「じ、冗談はやめて下さいっ///」

バリラ「まぁ、照れちゃって♪ 提督は良い子だからお母さんのおっぱいをちゅうちゅうするわよね♪」

提督「あら、本当にいいの?」甘やかすような表情を浮かべて冗談めかしてくるバリラと、それに乗っていたずらっぽい笑みを浮べた提督……

バリラ「ええ……さぁいらっしゃい、大きな赤ちゃん♪」

提督「ふふっ、はぁい♪」

…身長こそそこまで大きくはないが、その分ふくよかなバリラの身体に抱きついてずっしりした乳房に吸い付いた……弾力のある先端を含んだ口元から下は温かい湯に浸かり、鼻から上は水面から出ている……バリラは提督の腰に手を回してぐっと引き寄せると「よしよし♪」と頭を撫でる…

バリラ「ほぉら、ライモンドも♪」尻込みするライモンにしびれを切らし、ぐっと腕を引いて右の胸を含ませた……

ライモン「んむっ///」

バリラ「はぁい、良い子ねぇ♪ よしよし♪」むっちりした肉付きのいい肌が湯気と汗でしっとりと湿り気を帯び、横並びに「授乳」させられている提督とライモンの肌とバリラの肌がぺたりと触れあって熱を帯びる……

提督「あむっ、ちゅぅ……ちゅっ♪」

バリラ「あらあら、そんなにお母さんのおっぱいが欲しかった?」

提督「ちゅぱっ……ええ♪」息継ぎのために顔を上げると返事と一緒にウィンクを投げた……

バリラ「素直でよろしい♪ ライモンドも遠慮しないでもっとちゅぱちゅぱしていいのよ?」

ライモン「いえ、わたしは……///」

バリラ「まぁまぁ、照れちゃって可愛い♪」

提督「ね、ライモンったらいつでも初心で可愛いのよ♪」

ライモン「///」
977 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/06/23(月) 01:27:06.44 ID:pVaFL7kl0
…しばらくして…

バリラ「……とく、提督」

提督「う……ぅん」

ライモン「あ、気がつきましたね」

提督「ライモン……私……」

バリラ「ふふっ。提督ったらお母さんがあんまり「いい子いい子」していたらのぼせちゃったのよ」

提督「そういえばふっと頭から血の気が抜けて……」

ライモン「まったくもう、心配したんですよ? ……もう大丈夫そうですか?」

提督「ええ、おかげさまで……柔らかい枕と素敵な眺めのおかげですっかりいい気分よ♪」

…更衣室の縁台に寝かされ、バリラのむっちりしたふとももに頭をあずけた状態の提督をライモンが心配そうにのぞき込んでいる……ライモンはバスタオル一枚を巻いただけで、その形の良い胸がタオルからはみ出している…

ライモン「もう、わたしがこれだけ心配しているのに……///」

提督「ありがとう、ライモン……バリラ、貴女も」

バリラ「いいのよ♪ それよりお水でも飲んで」氷の浮いたレモン水のグラスを差し出した……

提督「ありがとう、いただくわ……っと」

バリラ「だめよ、一気に起き上がろうとしちゃ……このところ書類仕事も忙しかったみたいだし、ちょっと疲れていたんじゃない? さ、お母さんが支えてあげる♪」ずっしりとした乳房の谷間に頭を預けさせ、後ろから抱きかかえる形で支えた……

提督「こんなに座り心地のいい椅子はローマでもなかったわ♪ ……二人とも、重ね重ねありがとう」冷たいレモン水ですっかり調子を取り戻した提督……

バリラ「ふふ、して欲しくなったらまたいつでもお母さんが甘やかしてあげる……今度はのぼせないようベッドにしましょうね♪」

ライモン「提督、必要ならわたしもいつだってお側にいますから……///」

提督「ええ、嬉しいわ♪」

…数日後・提督居室…

提督「……これでよし、と」

アッチアイーオ「あら、朝から迷彩服なんて着てずいぶん大仰じゃない。一体どうしたのよ?」

提督「ええ、休暇も明けたし定例の小火器の作動テストをしないと……武器庫の小火器を運ぶから、手空きの娘たちに手伝ってくれるよう頼んでみてくれる?」提督は長い髪を結い上げ、イタリア軍独特の茶系と緑を基調としたデジタル迷彩の上下と黒の軍用ブーツで固め、射撃用の耳栓を首から下げている……

アッチアイーオ「分かったわ」

…数十分後・屋外射撃場…

アッチアイーオ「ここに置くわよ」

提督「ええ」

ジェンマ「持ってきたぞ、提督……」

提督「ありがとう、助かるわ」

…鎮守府と体育館の間をつなぐ屋外の小道から少しはずれた場所に広がる屋外射撃練習場……寒々しい冬の森を背景に、コンクリートブロックや塀で「コの字」型に囲まれた射撃場は優秀なイタリア陸軍工兵隊が築いたもので、レーンの数こそ少ないがきちんと作られている……そのレーンの前には鎮守府配備の小火器が一揃い運び出され並べられている…

アッチアイーオ「それにしても藪から棒ね」

提督「そうね。銃の手入れそのものは時々やっているけれど一年を通して規定の弾数を撃たないと管区司令部に言われるし、ちょうどいい機会だから……射撃、始めるわよ!」

…耳栓を付けるとベレッタM12S短機関銃を取り上げてストックを広げ、肩付けすると弾倉を込める……周囲に大声で伝えるとボルトを引き、的に向けて狙いを定めた…

提督「……っ」ダダダッ、ダダダッ!

ジェンマ「ふっ。流石は提督、なかなかの腕前だ……普段はこういう銃は使わないんだが、私もやってみよう」ダダッ!ダダダダッ!

アッテンドーロ「どうせ消費しなきゃいけないんだもの、気前よく撃とうじゃない」ダダダダダッ!

…退屈しのぎやスポーツの代わり、あるいはちょっとした憂さ晴らしも兼ねて手伝いに来た艦娘たち……生身の人間である提督よりもずっと頑丈な艦娘はMG3軽機関銃だろうと腰だめで軽々と取り回せる…

アミラーリオ・ディ・サイント・ボン「たまにはこういうのも爽快で良いものですな」バララララ……ッ!

アミラーリオ・カーニ「同感です」バララララ……ンッ!

提督「腰だめでその集弾ぶりはすごいわね……とってもじゃないけれどかなわないわ」

提督「……どうやら私にはピストルくらいがちょうどいいみたいね」レーンを離れると苦笑いを浮かべ、ケースに入っているベレッタ・ピストルを取りだした……
978 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/07/09(水) 00:47:47.15 ID:Dhh8javE0
提督「……射撃は集中するからいい気分転換になるわね」少ししびれた手と肩をほぐしながら、撃ちきった小火器をケースに戻していく……

サイント・ボン「まったくですな」

カーニ「本官もそう思いますよ」

提督「撃ち終わったら銃は保管庫まで持って行って、そこでメンテナンスをしましょう……あ、空薬莢はある程度でいいから集めておいてね」

…射撃台の周囲へ敷き詰めたように散らばっている金色の空薬莢……そのままにしておくと金属の成分が地面に溶け出して環境に悪いのと、管区司令部からの通達で(そこまで厳密にではないが)ある程度は空薬莢の回収を要求されるので、ホウキとちりとりでかき集めてはリサイクル用のゴミ箱にざらざらと流し込んでいく……提督も耳当てを外し、回収を手伝いながら艦娘たちと言葉を交わす…

提督「ジェンマ、射撃はどうだった?」

ジェンマ「ま、相変わらずさ」

…黒と銀のテンガロンハットをかぶり、さすらいのガンファイター風に決めているジェンマは「ふっ……」と銃口から立ちのぼる煙を吹き払うと空になった弾倉を抜き、ベレッタ短機関銃を軽く撫でた…

提督「さすがね」

アッテンドーロ「提督、銃は武器庫に戻しておくわよ?」

提督「ええ。撃った銃は分かるようにひとまとめにしておいてちょうだいね」

アッテンドーロ「そうするわ……もっとも、匂いを嗅げばすぐ分かるけど」

提督「まぁね」

…しばらくして・小火器保管庫…

提督「……ふう」

…武器庫に備え付けてある椅子に腰かけ、台に乗せてある銃を掃除する提督……ボロ布にガンオイル、試験管洗いのような形状をした掃除用のブラシなど「七つ道具」を手元に広げ、ときどきスタンドの明かりにかざしながら(安全な)薬室側から銃身をのぞき込んでは、またゴシゴシと火薬の燃焼カスを掃除する…

アッテンドーロ「フルオートでバリバリ撃つのはすっきりしていいけど、こういうちまちました作業はおっくうね……姉さんなら嬉々としてやりそうだけど」

提督「そう言わないの。銃の手入れは大事よ?」

アッテンドーロ「分かってるわよ。だからこうしてきちんとやっているんじゃない」

提督「頼りにしているわ♪」

バンデ・ネーレ「ボクもコンドッティエーリ(傭兵隊長)の一人だからね、武器はおろそかにできないよ」

カラビニエーレ「そうね。管理はきちんとしないといけないし」

アオスタ「その通りよ。それなのにエウジェニオったら『手が汚れるから遠慮するわ』なんて言うんだから……」

提督「ふふっ……普段はそう言っているけれど、エウジェニオはこのあいだ手伝ってくれたのよ」

アオスタ「本当ですか?」

提督「ええ……なんでも『美人の困りごとは助けてあげないといけないわよね♪』って」

アオスタ「そうですか。わが妹ながら少し見直しました」戦後賠償でソ連へ渡った委員長気質のアオスタと、ギリシャへ渡った口説き上手で女好きなエウジェニオ……姉妹でまるきり性格は違うが、どちらも頼れる軽巡で提督の信頼もあつい……

提督「ふふっ、エウジェニオもそれを聞いたら喜ぶわ」

アオスタ「いえ、直接言うのは少し気恥ずかしいというか……どうせ色仕掛けでからかわれるのがオチですから///」

アッテンドーロ「ふっ、アオスタはエウジェニオをうちの姉さんと交換した方がいいんじゃないかしら」

アオスタ「できるものならそうしたいです。ライモンドは良い娘ですし」

アッテンドーロ「姉さんを褒めてくれてありがと……ちょっとおどおどしちゃいるけど、あんないい姉さんはそうはいないわ」

提督「みんないい姉妹を持って良かったわね。私も姉妹だけはいないからちょっぴりうらやましいわ」

アッテンドーロ「だったら年の離れた妹にしてあげましょうか?」

提督「気にしないで、冗談なんだから」

バンデ・ネーレ「とはいえ、もしも提督に姉や妹がいたら朝から晩までベッドで交わってばかりだろうね」

アッテンドーロ「言えてるわ♪」

提督「もう、失礼ね……ベッド以外でもするわ♪」

アオスタ「し、姉妹でそんなことする話なんて……///」

バンデ・ネーレ「ふふ、エウジェニオに甘い声をあげさせられているのを思い出したのかい?」

アオスタ「余計なお世話です///」

バンデ・ネーレ「おっと、それは悪かったね……それじゃあ残りの整備を終わらせるとしようか」
979 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/07/17(木) 02:27:51.95 ID:NSTzDsPM0
バンデ・ネーレ「ようやく終わったね」

提督「貴女たちが手伝ってくれたおかげで思っていたよりずっと早く終わったわ……グラツィエ・モルト(とってもありがとう)」

アッテンドーロ「ノン・ファ・ニェンテ(いいってことよ)」

アオスタ「すべきことをしただけですから」

バンデ・ネーレ「そうだよ、ボクたちのためでもあるしね……それよりシャワーでも浴びてさっぱりしようよ。硝煙のせいか肌がムズムズというかちくちくするし」

アッテンドーロ「言えてるわ」

提督「そうね、それじゃあお風呂にでも行きましょうか」

…大浴場…

バンデ・ネーレ「こんなにぜいたくな大浴場があると日に何度でも入りたくなるね」

アオスタ「メイクをし直さないといけないからそこまでは入れないけれど……気持ちは分かるわ」

アッテンドーロ「私なんてせいぜい乳液を塗っただけで過ごしちゃうけれどね」

アオスタ「ムツィオ、貴女は身だしなみにもう少し気を使ったらどうなの?」

アッテンドーロ「別に汚れた服を着続けているわけじゃあるまいし、そう噛みつかないでよ……そうでしょ、提督?」

提督「そうね、見苦しくない程度に整えていてくれればそれで構わないわ。私だって人のことを言えた義理じゃないし……」提督自身も職務時間を過ぎると制服を脱ぎ、ゆったりした私服姿で過ごしている事が多いので苦笑いしながら肯定した……

アオスタ「やれやれですね」

提督「まぁまぁ……当直や出撃の時にしっかりしていてくれればそれでいいわ」

…着任直後は裸で入浴することに少し抵抗感があったが、今ではすっかり慣れっこになった提督はためらうこともなく黒の下着を脱ぐと脱衣カゴに放り込み、大浴場の扉を開けた…

提督「すんすん……どうやら落ちてくれたみたいね」別に硝煙の匂いは嫌いではなかったが、のんびりした気分の時に嗅いでいたいほど好きというわけでもないので石けんでよく洗い、改めて腕を鼻先に寄せて残り香がないかどうか嗅いでみる……

アッテンドーロ「それにしても提督は射撃が上手よね。略綬にこそ射撃記章はないけれど、いい線いってると思うわ」

提督「射撃そのものはともかく飛んだり走ったりがダメだったから……教官にもしょっちゅう「もったいない」って言われたわ」

アッテンドーロ「教官って言うと、基地祭の時に来た……メッセ兵曹長って言ったわよね」

提督「ええ。口は悪いし当然のようにびしばしやられたけれど、たとえ落ちこぼれても見捨てずに付き合ってくれる立派な教官だったわ……ふふっ♪」

バンデ・ネーレ「何かおかしいことでもあったかい?」

提督「いえ、ね……あの人のおかげで私たちは海軍士官学校なのか海兵連隊なのか分からないような訓練をいくどもやらされたけれど、その中の一つを思い出したものだから」

アオスタ「笑っておられるということはいい思い出なのですか?」

提督「まぁ、今となってはね……せっかくだし話してあげるわ」

…士官学校時代…

メッセ教官「……さて候補生諸君、いよいよこの士官学校で過ごす日々も残りわずかとなってきたわけだ……入って来たばかりの頃は『また面倒なヒヨッコどもが来た』と心底うんざりしていたが、少しは面倒のかからないヒヨッコになってくれたようで、教官としてはまことに喜ばしい」短髪に迷彩服姿の兵曹長がニヤリと笑うと、整列している訓練生たちからお義理の笑い声がまばらに聞こえた……

メッセ教官「これまで私を始め教官たちはさまざまな事をお前たちに教えてきた。恐らくその半分は卒業する際に放り投げる軍帽と一緒に忘れ去られてしまう運命にあるだろうが、そうだとしたら二倍教え込むだけのことだ」

メッセ教官「とはいえ、必要なことがらを二倍教えるというのはこちらにとっても手間がかかる。したがって我々教官としては候補生諸君が貴重な教訓を忘れないようにするためにはどうすればいいか日々考えている。人間、失敗した時に得られた教訓のほうが長く覚えていられるということで、我々は君たちに腕立てをやらせてみたり便所掃除をさせてみたりしてきたわけだ」

メッセ教官「ま、その心配ももうしなくて済みそうだ。すでに知っていることと思うが、君たちはあと一ヶ月もしないうちに荷物をまとめ、家族に晴れ姿を見せることになる……だがその前に、私からの卒業祝いとしてちょっとした小旅行をプレゼントしようと思う♪」何やら悪だくみをしているような満面の笑みを浮かべ、候補生たちがざわめいた……

メッセ教官「候補生諸君! 君たちには明日から三日間に渡って無人島でのサバイバル訓練を行ってもらう! 武運つたなく艦(フネ)を捨てねばならなくなった、あるいは波にでもさらわれて無人島に漂着した場合、救援が到着するまでの数日間を生き残る必要がある」ざわめき出す候補生たち……

メッセ教官「とはいえここは特殊部隊ではないから、君たちを素っ裸で放り出すような事はしない。救命艇に搭載されているであろう基本的な道具一式と、一日分の携行糧食、さらに途中でギブアップしたい場合、あるいは重傷を負ったりした場合に備えて班ごとに無線機も持たせる至れり尽くせりのサービスぶりだ」

メッセ教官「……というわけで候補生諸君、無人島生活を楽しんでくれ!」

…翌日・無人島…

カサルディ提督「まさか、本当に無人島へ連れてこられるとはね……」

シモネッタ提督「せっかくなんだから日焼け止めも持ってくればよかったわね?」雑木の生えた小島の浜辺にいながら、ヴェネツィアの一流ホテルにいるのと変わらないような余裕を見せるシモネッタ提督……

提督「とりあえず荷物を改めてみるとしましょうか」

ベルガミーニ提督「そうだね、それがいいかも」

…それぞれ班ごとにゴムボートに乗せられ、バラバラな地点で海浜に降ろされた候補生たち……各班は四人一組で、浜辺には弾薬なしのフランキ短機関銃が一挺、テントなしのサバイバルキット一揃い、非常時に備えて渡された無線機と信号用ピストルなどが置かれている…

提督「……幸いお天気もいいし、危険な動物もいるわけじゃないから少しは安心ね」

カサルディ提督「食料が一日分なのはちょい厳しめだけど、水源もあるって話だし、まずはそこを確保していこうよ……どうかな、エレオノーラ?」

シモネッタ提督「そうね。まずは水と野営地の確保に努めることにしましょう……体調の異変があったらすぐ報告してね」
980 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/07/26(土) 00:37:01.58 ID:nOYTn/o20
…一日目…

シモネッタ提督「荷物は背負った?」

提督「ええ」

カサルディ提督「ばっちりよ。カルラは?」

ベルガミーニ提督「ええ、大丈夫」

シモネッタ提督「それじゃあ出発♪」

…白っぽい岩がちの地面に松やオリーヴ、それに名も知らない背の低い木がぼさぼさと生えているだけの島を歩き始めた提督たち……カサルディ提督は手ごろな枝をナイフで叩き斬って即席の杖を作りみんなに渡し、提督はシモネッタ提督と水源のありそうな場所を探して目を配る…

シモネッタ提督「んー……ルクレツィア、どう思う?」

カサルディ提督「私は登山家じゃないし、水源かどこかなんて分からないわよ……エレオノーラこそどうなの?」

シモネッタ提督「残念ながら街育ちだからこういうのはさっぱり……カルラとフランチェスカは?」

ベルガミーニ提督「ごめんね、私も全然……」

提督「うーん、私は子供の頃におばさまから多少教わったけれど……とりあえずこのまま海岸沿いを歩いて川を探して、見つけたら上流に向けて歩けば良いんじゃないかしら?」

シモネッタ提督「それが一番良さそうね」

…二時間後…

ベルガミーニ提督「はぁ……ふぅ……」

シモネッタ提督「だいぶくたびれて来たわね……小休止しましょうか」

提督「ふぅ……賛成」

カサルディ提督「じゃあその間にあの岡を少し登ってみるわ、何か見えるかもしれないし」

シモネッタ提督「お願いね」

カサルディ提督「任せといて♪」疲れも見せず、軽やかな足取りで獣道を上っていった……

提督「元気ねぇ……」

…数分後…

カサルディ提督「……おーい!」岡の中腹で手を振りながら呼びかけるカサルディ提督……

シモネッタ提督「ルクレツィア、どうしたの?」

カサルディ提督「早くおいでよ!小川があった!」

ベルガミーニ提督「やった……!」

提督「……どうやら水筒の残りを心配しながらちびちび飲む必要はなくなりそうね?」

シモネッタ提督「そうみたいね……さ、行きましょう♪」

…岡のふもと…

提督「あら素敵」

カサルディ提督「ね、まるで誂えたみたいじゃない?」

…丘のふもとを縫うようにして海に注いでいる綺麗な小川がカーブを描いて松の木陰をさらさらと流れている……川岸には小さな岸辺があり、どこかで鳴いているのどかな鳥の声が響いている…

シモネッタ提督「澄んだ小川だけれど、まずは水質を調べないとね」第二次大戦のアフリカ戦線で赤痢に苦労した戦訓から、イタリア軍の携行糧食には必ず同封されている水質検査薬を取り出し、水を汲んで試薬を入れた……

ベルガミーニ提督「どう?」

シモネッタ提督「ええ、大丈夫よ♪ とはいえ生水を飲み過ぎるとお腹を壊すかもしれないからほどほどにね?」

カサルディ提督「了解……ところでさ、せっかくだから水浴びでもしない? 砂がちくちくしてやりきれないんだよね」小川の水を手ですくって軽く飲むと言った……

提督「そうねぇ、お互いの裸くらい見なれてはいるけれど……」

シモネッタ提督「いいんじゃないかしら♪ ただし見張りを付けて交代でね……最初は私が立つわ」

カサルディ提督「いやっほう♪」川岸にブーツと迷彩服を脱ぎ捨てると、ばしゃばしゃと水を跳ね上げながら勢いよく小川に駆け込んでいった……

ベルガミーニ提督「きゃっ!?」

提督「もう、相変わらず行動が早いんだから……私も行くわ♪」

シモネッタ提督「ふぅ、これが無垢な幼女だったら最高だったのだけれど……ないものねだりは良くないわね♪」川辺の白い砂に腰を下ろし、軽く頬杖をついた……
981 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/08/04(月) 00:54:02.41 ID:X/qKHrH10
提督「……はぁ、生き返るわ♪」

カサルディ提督「同感。冷たくていい気持ち」

ベルガミーニ提督「野外で裸になるのはちょっと恥ずかしいけど……///」

カサルディ提督「流れはそこで曲がっているから海からは隠れてるし大丈夫だって♪ そらっ♪」

ベルガミーニ提督「わぷっ……!」

提督「ほどほどにしておきなさいよ?」

ベルガミーニ提督「分かってるって……フランチェスカ、もう上がっちゃうの?」

提督「ええ。エレオノーラと代わってあげないと……さ、交代に来たわ」

シモネッタ提督「あら、もっと涼んでいたっていいのに」

提督「そういうわけにもいかないでしょう? さ、荷物は見ていてあげるから」

シモネッタ提督「そう、ならお言葉に甘えて泳いでくるわ」野戦服を脱ぐ仕草すら上品で優雅なシモネッタ提督……屋外での運動や漕艇訓練が続いていたにも関わらず肌はきれいなミルク色で、頭をゆすって髪をなびかせるとしずしずと小川に入っていく……

提督「……まるでヴィーナスね」

シモネッタ提督「お褒めにあずかり光栄だけれど、ご褒美はないわよ?」

提督「それは残念」

…しばらくして…

カサルディ提督「いやぁ、さっぱりした♪」

ベルガミーニ提督「涼しくなったよね」

シモネッタ提督「とりあえず今日はここで野宿すると言うことでよさそうね?」

提督「賛成。この岸辺なら水に浸かる心配もなさそうだもの」

ベルガミーニ提督「そんなことまで分かるの?」

カサルディ提督「そりゃあ分かるよ。いま私たちが座っている岸辺は打ち上げられた流木や小枝よりも高い位置にある……つまり以前の増水でも水が浸かなかっってことよ」

ベルガミーニ提督「なるほどね……」感心したようにうなずいていたが、お腹が「ぐぅ」と鳴いて恥ずかしげに頬を染めた……

シモネッタ提督「次は野営地の設営と食料の確保としましょうか……私とカルラでテントを張るから、フランチェスカ、エレオノーラは食料の確保をお願いするわ」班長として、人柄はいいのだがどこかツキに恵まれないベルガミーニ提督を手元に置いてリスクを請け負い、提督たちを送り出した……

提督「了解」

カサルディ提督「任せておいて」

…海辺…

カサルディ提督「さーてと……お、いるいる」

提督「魚?」

カサルディ提督「魚もだし、海老やら蟹やらもいるわ……ここはひとつ本業だったってところを見せないと♪」迷彩服を脱ぐと濃紺色の下着姿になり、手ごろな流木を拾ってナイフで加工しはじめた……

提督「それじゃあ私は貝でも集めることにするわ」

カサルディ提督「上等。ただ、貝殻のふちは鋭いから気を付けてよ?」手際よく頃合いの銛を作ると軍用ナイフは腰にくくりつけ「ちょっと行ってくるね」とじゃぶじゃぶと海に入っていった……

提督「さてと、それじゃあその間に……あら、ずいぶんいること」

…潮だまりや岩場には牡蠣や黒紫色をしたムール貝のような見慣れた貝類が貼り付いている……ナイフを取り出すと岩場とのすき間にねじ込み、テコの要領でこじる……カサルディ提督は泳ぎが達者だが、流されたり怪我をしたりして助けを求める事があるかもしれないと小まめに様子を見ながら貝類を集める…

…数分後…

カサルディ提督「よっ、貝は採れた?」

提督「ええ。どうやって運ぶか思案中よ……そっちは?」

カサルディ提督「おかげさまで、面目丸つぶれににはならなくて済みそうよ♪」そう言ってかざしてみせたのは立派なサイズのカサゴとメバルで、陽に焼けた顔に満面の笑みを浮かべている……

提督「ふふっ、大漁ね♪」

カサルディ提督「でしょ? カサゴのやつは棘があるから、鱗を落すついでに処理してくるわ」

提督「それじゃあ私はこの牡蠣をどう運ぶか考えることにするわね」

カサルディ提督「あぁ、そっか……じゃあさ」上に着ていたシャツを脱ぎ捨てると袖と裾を結び、風呂敷包みのようなものをこしらえた……

カサルディ提督「魚臭いのは慣れっこだし使っていいよ。その代わりおっぱいの一つも揉ませてよね?」上半身裸の所に袖まくりした迷彩服だけ羽織り、派手なウィンクを投げた……

提督「ええ、お魚の分だけ存分に触らせてあげる♪」
982 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/08/22(金) 01:46:31.43 ID:olL4oV+10
…数分後…

提督「ただいま」

シモネッタ提督「ええ、お帰りなさい……釣果はあった?」

カサルディ提督「見ての通りよ♪」エラに指を引っかけて魚を見せつける……

ベルガミーニ提督「大漁ね」

カサルディ提督「この辺の魚は獲りやすくっていいわ……なんか手伝おうか?」

シモネッタ提督「ありがとう、でも大丈夫よ。火を起こしている間は休憩していていいわ」

カサルディ提督「了解」

…提督とカサルディが魚を獲りに行っている間に残る二人は川岸の岩がえぐれた部分に防水布で「屋根」をつけて、その前に乾いた流木や枝を集めて焚き火の用意をととのえていた…

提督「こっちは牡蠣とムール貝ね……よいしょ」ガラガラと地面に貝を下ろす……

カサルディ提督「ついでにシャツをすすいでくれる?」

提督「もちろん」澄んだ小川で海藻や蠣殻の欠片、ヌメヌメした磯臭い何かがへばりついたシャツを洗い流した……

提督「石けんはないけれど、まぁまぁ取れたわね……あとは乾かしておけば大丈夫よ」

カサルディ提督「ありがとね」

シモネッタ提督「大丈夫? こすれてヒリヒリしない?」

カサルディ提督「私の乳首は丈夫だから大丈夫よ……それよりお腹が減ったし、夕食にしようよ」

シモネッタ提督「そうね。料理にも時間がかかるでしょうから今から取りかかりましょう」

提督「じゃあ手伝うわ、これでもおばさまに一通りは教わったんだから♪」

シモネッタ提督「期待しているわ」

…ありがたいことにサバイバルキットの防水マッチは取り上げられていなかったので、細かな小枝やむしってきた枯れ草を焚きつけにして火をおこす……周囲が明るいので最初は分かりづらかったが、ぱちぱちと威勢の良い音を立てて火が燃え始めた…

シモネッタ提督「さてと、この魚と貝はどう調理しようかしら?」

カサルディ提督「あー……私は釣る方は得意だけど料理の方はあんまりだからなぁ……カルラ?」

ベルガミーニ提督「私も料理は苦手じゃないけれどそこまでは……」

シモネッタ提督「ですって、フランチェスカ」

提督「ええ、料理は得意な方だから任せておいて? お母さまほどじゃないけれどね♪」

シモネッタ提督「期待しているわ。私もある程度ならできるから手伝うわね?」

提督「助かるわ。とりあえず、せっかく携行糧食があるのだからこれをベースにしていきましょうか……」

…教官たちの「行き届いた配慮」のおかげで三日間のサバイバル訓練に対して一班四人、一日分の糧食だけが用意してある……提督はそのうちの一人前一食だけを開け、飯盒(ガメラータ)をセットした…

カサルディ提督「それで料理長、今夜は何を出してくれるの?」

提督「そうね……このトマトのスープをベースに魚を煮込んでアクアパッツァ風、それに焼き牡蠣としましょうか」

シモネッタ提督「あら素敵。それに白ワインでもあればパレルモあたりのリストランテになるわね……誰を口説くつもりなのかしら♪」

提督「ごあいにくさま。さっき約束したから今夜はルクレツィアと過ごすわ」

シモネッタ提督「ふふっ、そう……それじゃあ何を手伝おうかしら?」

提督「そうねぇ……あ、じゃあ火をお願い」周囲を見わたすと不意にこんもりした茂みに目を留め、立ち上がると近寄っていった……

提督「……やっぱり♪」

ベルガミーニ提督「やっぱり……って、なにが?」

提督「この草、よく見たら野生のセージね♪ ほら、少しかじってみると分かるわ」

ベルガミーニ提督「へぇ、どれどれ……うわ!」小枝についた葉っぱを思い切りよくかんでみて、口一杯に広がった強い風味に顔をしかめると小川で口をゆすぎだした……

提督「もう、そんなに勢いよく噛むから……」

…苦笑いしながら飯盒にトマトソースと切ったカサゴ、風味付けと臭い消しのセージを入れて火にかける……牡蠣とムール貝は殻ごと火のそばに置いて口が開くまで待つ…

カサルディ提督「……いい匂いがしてきたね」

983 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/09/03(水) 00:48:36.67 ID:0YJ7uFpX0
シモネッタ提督「初日の夜だからクラッカーも開けましょう」

提督「大盤振る舞いね♪」

シモネッタ提督「その代わり明日からは倹約していくことになるから覚悟するように」

カサルディ提督「ま、魚や貝でよければ私が獲ってくるしどうにかなるでしょ」

提督「頼もしいわね……どれどれ」さじでスープをすくい、軽く舐めてみる……

シモネッタ提督「お味はいかが?」

提督「ちょうどいいわ。かさ増ししたから味が薄くなるかと思ったけれど、魚介から塩味がでているから良い具合よ」

シモネッタ提督「では夕食としましょうか」十字を切って食前の祈りを唱え、提督たちが唱和した……

カサルディ提督「アーメン……っと。さ、牡蠣も焼けたよ♪ 取ってあげる」焚き火のぐるりを囲んだ石の上で良い具合に焼けた牡蠣を軍用手袋でつかむと、手際よく飯盒のふたに乗せてくれる……

提督「グラツィエ……ふぁ、はふ♪」小ぶりで味の濃い牡蠣は塩がなくても十分に美味しく、つるりと吸うと口中を火傷しそうなほど熱い……

シモネッタ提督「アクアパッツァもいい味よ、フランチェスカ」

提督「はふ、ふぉれはよかったわ……」熱い牡蠣を相手にはふはふ言いながら「それは良かったわ」と軽くうなずいた……

カサルディ提督「ほんと、良い味♪」

ベルガミーニ提督「ね、美味しい……熱っ!」すすり終わった牡蠣の殻を飯盒からどけようとして指でつまみ、火傷しそうになって慌てて放した……

シモネッタ提督「気を付けなさい、カルラ? 焼き牡蠣のせいで演習中断なんてさまにならないわよ?」

ベルガミーニ提督「ええ」よほど熱かったのか眉をしかめて、火傷しかけた指をくわえている……

提督「牡蠣じゃなくてアクアパッツァの方にするといいわ……貸して?」飯盒にカサゴとメバルの切り身とスープを入れた……

………

…食後…

カサルディ提督「はぁ、満腹……フランカを奥さんにできる女は果報者だね」

ベルガミーニ提督「ね、とっても美味しかった」

提督「気に入ってもらえて良かったわ♪」スープの一滴も余さず空になった飯盒を見て笑みを浮かべた……

シモネッタ提督「満腹で動きたくないのは分かるけれど、飯盒ちゃんとゆすいでくるように」

カサルディ提督「もうちょっとしたらね。まだ動きたくないし……ふぅ」川岸の砂地に脚を伸ばし、片手でふくれたお腹をさすっている……

提督「ねぇ、ルクレツィア……♪」

カサルディ提督「んー?」

提督「そろそろ定時連絡の時間だけれど、それが終わったら……ね?」甘い笑みを浮かべてウィンクを投げた……

カサルディ提督「そっか、そういえばそうだった……じゃあ余計なことは済ませておかないとね♪」パッと立ち上がると飯盒をゆすぎ、携行糧食に付いている歯みがきセットでいそいそと歯をみがいた……

提督「エレオノーラ、何かまだするべきことはある?」

シモネッタ提督「いいえ、定時連絡さえ済んだらあとは自由時間よ……邪魔はしないわ♪」

提督「了解♪ それじゃあ向こうの岩陰にいるから、何かあったら声をかけてね」

シモネッタ提督「ええ」

…夜…

カサルディ提督「……んちゅっ、ちゅぅ……ん♪」

提督「あんっ……あっ、あっ、んぅ……っ♪」

…各班に渡された野営セットにはそれぞれ「趣向をこらして」欠けている物品があり、提督の班にはテントが入っていなかったが、暖かい時期と言うこともあって防水布や寝袋でどうにかなる……提督とカサルディは「おやすみ」を言ってからあとの二人から見えない岩陰に行くと、唇を合わせて身体を絡め合った…

カサルディ提督「はぁ、相変わらず大きくて張りがあって最高だね♪」

提督「ふふっ、ルクレツィアったらおっぱいばっかりなんだから……♪」乳房にしゃぶりつき揉みしだくカサルディを抱きしめ、引き締まったヒップに手を這わす……

カサルディ提督「だって……あ、それ……いいよ、いい……っ♪」薄暗い中で口を開けて喘ぐカサルディの白い歯がほんのり浮かび上がり、川のせせらぎに交じって二人の秘所が合わさる粘っこい水音が響く……

提督「それにしても……こんなにはしゃいで、明日は起きられるかしら?」

カサルディ提督「フランカってば、寝坊が心配ならこのまま徹夜すればいいでしょ♪」

提督「ふふっ、言ったわね? それじゃあ今夜は寝かさないから♪」

カサルディ提督「望むところよ♪」
984 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/09/27(土) 02:12:43.98 ID:3YjCumvT0
…サバイバル訓練二日目・朝…

提督「……くしゅっ!」

カサルディ提督「んぁ……おはよう」

提督「おはよう、ルクレツィア……って、身体が冷えちゃったわ……」

カサルディ提督「あのあと砂地で寝ちゃったもんね……夜露も降りたみたいだし」

提督「ええ。宵のうちは地面が暖かかったものだから、うっかりしていたわ」

カサルディ提督「ま、運動でもすればすぐに暖かくなるって♪」

シモネッタ提督「……そうね。まずは体操でもして、それから朝食にしましょう」

提督「おはよう、エレオノーラ」

シモネッタ提督「おはよう、フランカ。今日も快晴で良かったわね」

カサルディ提督「言えてる……カルラは?」

シモネッタ提督「さっき起こしたからもう来るでしょう……ほら」

ベルガミーニ提督「おはよう」

カサルディ提督「おはよう、カルラ。それじゃあひとつ体操でもしようか」

シモネッタ提督「そうね、それじゃあ音頭はルクレツィアに任せるわ」

カサルディ提督「了解♪」

…しばらくして…

ベルガミーニ提督「ふぅ……」

提督「朝からいい運動になったわね」川で顔を洗って髪をくしけずり、携行糧食に付属している(少し使い勝手の悪い)使い捨て歯ブラシで歯を磨いた……

ベルガミーニ提督「ね、朝からあれこれやらされてお腹が減っちゃったわ」

提督「同感♪」

…朝食…

シモネッタ提督「さて……あんまり携行糧食に手を付けるのも考えものだけれど、朝食は軽いメニューで済むからどうにかなるでしょう」

提督「あんまりルクレツィアに潜ってもらってばかりでもいけないものね」

カサルディ提督「私は平気だけど、この時間だとちょっと水が冷たいかな……それより服が生乾きなのがうっとうしいね」

シモネッタ提督「そうね。できるだけ乾いた服を着て、濡れた衣類は干しておくように……はい、コーヒー」

カサルディ提督「グラツィエ……あー、温まる」

…朝食はクラッカーにコーヒー、ジャムなどのごく軽い献立になっているイタリア軍の携行糧食……持ち手つきの飯盒のフタでインスタントコーヒーを淹れるシモネッタ、クラッカーを取り出しイチゴジャムを塗る提督…

シモネッタ提督「さてと、今日のスケジュールを伝達するわね。フランカはカルラと薪集め。私とルクレツィアは海で魚介類の採収にあたるわ……昨日に続いてで悪いけれど、魚を獲ることに関してはルクレツィア、貴女が一番だから」

カサルディ提督「気にしなくていいって。なにしろ本業みたいなもんだからさ♪」

シモネッタ提督「助かるわ」

無線機「……指導班よりシモネッタ班へ定時連絡。状況を報告せよ」定期連絡を求めるメッセ兵曹長の声が無線機から響く……

シモネッタ提督「こちらシモネッタ班、総員異常なし」

無線機「了解。それでは本日の課題を指示する、よく聞いておけ」

シモネッタ提督「シモネッタ了解。課題の内容をどうぞ」

無線機「よろしい。本日の課題だが、君たちには「救助を要請する」ため何らかの目印を作成してもらう。目印はのろしでもいいし流木の「SOS」でも構わん。ただし洋上のこちらから見える大きさでなければだめだ。合格したかどうかは定時連絡に合わせて伝達する……理解したか?」

シモネッタ提督「理解しました」

無線機「よろしい、それでは上手くやれ。以上だ」

カサルディ提督「……二日目ものんびりバカンスってわけにはいかないみたいだね」

シモネッタ提督「そのようね。計画変更、全員で薪を集めて大きなのろしを上げることにしましょう」

提督「了解」
985 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/10/09(木) 01:55:15.58 ID:B90Orw0b0
シモネッタ提督「それじゃあ薪を集めるとして、雑木林に落ちている枝を集めるのと海岸で流木を集めるのと……どっちが良いかしら」

提督「そうね……乾いた薪だと煙が立たないから、むしろ生乾きの流木を集める方が良いんじゃないかしら」

ベルガミーニ提督「それに海岸でのろしを上げるのに丘から焚き付けを運ぶのは効率が悪いと思うわ」

シモネッタ提督「確かに二人の言う通りね。それじゃあ海岸で流木を集める案で行きましょう」

カサルディ提督「了解。ま、どっちにしろ集める手間は同じだし」

…海岸…

提督「……それにしても綺麗な海ね」

シモネッタ提督「あら、いきなりなぁに?」

カサルディ提督「フランカはがさつな私なんかと違って詩人だからね」

提督「茶化さないでよ///」

ベルガミーニ提督「でも、確かに綺麗な海……」

…集めた流木を小脇に抱えながらふと視線を上げると、透き通るような海が視線に飛び込んでくる……朝日に照らされ遠くまで青い海原は白い砂の浜辺に波を送っては打ち砕ける波音と引き波の泡立つような音を永遠にくり返す…

提督「……こんな綺麗な海なのに艦娘たちは毎日のように深海棲艦と戦っていて、いつか私たちもその指揮を執る日が来るかもしれないのね」

カサルディ提督「そういうことになるね。でもさ、どこかで戦いがあってどこかで平和な一日があって、どこかで人が生まれて、あるいは亡くなって……世界なんてそういうものなんじゃない?」

シモネッタ提督「あら、フランカが詩人ならルクレツィアは哲学者ね」

カサルディ提督「からかわないでよ……ほら、うちは漁師の家だからさ。魚が獲れる時もあれば獲れない時もあって、そのせいか「なるようにしかならない」って考えになるんだよね」

シモネッタ提督「宿命論?」

カサルディ提督「とはでは言わないけど……ま「当たって砕けろ」式かな。だから私は提督だの司令官だのには向いてないよ。舵輪も自分で握っていたいし」

ベルガミーニ提督「じゃあ駆逐艦の艦長とか?」

カサルディ提督「そうそう、そういうのがいい。司令部にこもって海図とにらめっこなんて向きじゃないし……フランカはどう?」

提督「そうねぇ……それはまあ、私だって一度くらいは提督になって号令一下、艦隊が動く想像したことがないと言えば嘘になるけど……」

シモネッタ提督「おかしくないわ。海軍士官候補生の夢だもの」

提督「でも私はこうやって気の合う仲間と一緒に過ごして、お休みの時には美術館にでも行って……なんて暮らし方の方が似合っているわ」

カサルディ提督「ずいぶんと枯れてるねぇ、それじゃおばあちゃんみたいだよ」

提督「あら、そのおばあちゃんと昨晩「イイコト」をしたのは誰だったかしら?」

カサルディ提督「うわ、これは一本取られたな……カルラはどんな士官になりたい?」

ベルガミーニ提督「うーん、私も一度くらいは艦隊司令官をやってみたいけど……私は運が悪いから」

シモネッタ提督「だったらそのぶん準備すればいいのよ。運が悪いって言ったって何でも運で決まるわけじゃないもの、自信を持ちなさいな?」

カサルディ提督「へぇ……ロリコンにしては良いこというね」

シモネッタ提督「むしろロリコンだからこそ、よ。可愛い女の子を導くには完璧な「お姉ちゃん」でなければいけないもの」

提督「あー……それで、エレオノーラはどんな士官になりたい?」

シモネッタ提督「それはもう、ゆくゆくは可愛らしい幼女たちを集めた鎮守府に赴任したいけれど……でもきっとダメね」

提督「どうして?」

カサルディ提督「その前に憲兵に捕まるからでしょ」

シモネッタ提督「馬鹿言わないで。愛すべき女の子たちを深海棲艦との戦火の海に送り込むなんて出来そうにないからよ」

提督「確かに……金属の塊とは訳が違うものね……」

シモネッタ提督「そういうこと。でもいずれは折り合いをつけて頑張ってみるつもり……それより薪は集まった?」

カサルディ提督「見ての通りひと山は集まったよ」

シモネッタ提督「これだけあればのろしの一つも起こせそうね。後ろはどう?」

ベルガミーニ提督「後ろ?」

シモネッタ提督「沖から見るのだから、背景が黄色っぽい地面より雑木林の緑の方が見やすいはずでしょう」

提督「それなら丁度いい位置じゃないかしら、後ろの斜面は林よ」

シモネッタ提督「それじゃあのろしを上げて課題を攻略するとしましょうか」
986 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/10/18(土) 01:52:44.86 ID:N9wuO3HK0
カサルディ提督「それじゃあつけるよ?」

シモネッタ提督「ええ、お願い」

…マッチを擦って集めた枯れ草や松葉に火をつけ、それから小枝に火を移していく……ぱちぱちと次第に勢いよく火が舌を伸ばし始め、テントのような三角形に積み上げた流木に燃え移りはじめた…

提督「無事についたわね」

シモネッタ提督「でも本題はこれからよ? 教官から見えるような煙が上がってくれると良いのだけれど……」

ベルガミーニ提督「流木、もっと集めてきた方がいいかな?」

シモネッタ提督「ぜひお願いするわ、あって困るものじゃないし……ルクレツィア、カルラと一緒に流木集めをお願い」

カサルディ提督「了解」

…まだ湿っている流木に火が付くと、ときおり大きな音を立ててはぜたりしながら白い煙をもくもくと噴き上げ始めた……風下にいると目がヒリヒリしていがらっぽいので、慌てて風上に場所を移す提督たち…

提督「まるでエトナ山ね」

シモネッタ提督「言い得て妙ね。これなら十分見えるんじゃないかしら」

提督「だといいわね……見えたかどうかは教官が教えてくれるのよね?」

シモネッタ提督「ええ、定時連絡の時にね」

提督「あと一時間くらい?」

シモネッタ提督「そのくらいよ……どうやら少なくともひとつは同じ考えの班があったようね」指さした先の稜線の向こう、うっすらと立ちのぼる白煙が見える……

提督「あと、もっと単純な考えを実行した班もあるみたいよ?」提督が視線を向けた島の頂上近く、まばらな林の間にぽっかり広がっている斜面の草原で一生懸命に防水布を振り回している小さな姿が見える……

シモネッタ提督「ふふっ、あんなに布を振り回して……闘牛士にでもなるつもりなのかしらね?」

提督「かもね♪」

カサルディ提督「ふぅ……ただいま」

提督「お帰りなさい。これはまたすごい量ね」

カサルディ提督「あっちの班ののろしが見えたからね、負けちゃいられないでしょ?」

ベルガミーニ提督「はぁ、はぁ……だからっていっぺんに運ばなくても……」

シモネッタ提督「まあまあ。それにこれだけあればお昼に豪華な浜焼きも出来るわ。またエレオノーラにお願いすることになっちゃうけれど……」

カサルディ提督「いいよ。味付けはともかく、獲る方は任せておいて?」

提督「じゃあお母さま秘伝の味付けを披露しなくちゃ♪」

…昼・定時連絡の時間…

無線機「……指導班よりシモネッタ班、定時連絡。状況はどうだ」

シモネッタ提督「こちらシモネッタ、異常なし」

無線機「了解。それから課題については海岸に上がるのろしの煙を確認した。合格だ、よくやったな」

シモネッタ提督「ありがとうございます」

無線機「では周辺に飛び火したりしないようきちんと消しておけ、通信終わり」

提督「……やったわね♪」

カサルディ提督「そりゃそうよ。なにしろこっちには同期トップのエレオノーラと、おばさんからサバイバルを教わったフランカがいるんだから」

シモネッタ提督「ルクレツィアったら褒めすぎよ……さ、お腹も空いたことでしょうしお昼にしましょう」

…提督たちは携行糧食の一食分を開けてクラッカーを均等に分け、それからカサルディ提督が軍用ナイフをくくりつけたお手製の「銛」で射止めたシマダイのような魚を小枝を削り出した串に刺し、提督が携行糧食についている貴重な塩とコショウ、それに野生のオレガノを擦り込むとのろしの残り火でこんがりとあぶった…

カサルディ提督「うーん、絶品……たったこれだけの調味料でここまで美味しくできるなんて、やっぱりフランカは天才だね」

提督「私なんてお母さまと比べたらまだまだだわ」

シモネッタ提督「これでまだまだだとしたら、あなたのお母さまの手料理をぜひご馳走になりたいわ」

提督「それじゃあ卒業祝いにうちに来る?」

ベルガミーニ提督「賛成♪ あ、でも大勢で押しかけて迷惑じゃない?」

提督「そうね……もちろん事前に話をしておかないといけないけれど、お客様が三人ならどうにかなると思うわ」

カサルディ提督「ははっ、これで卒業の楽しみが増えたね♪」
987 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/11/07(金) 02:09:35.21 ID:kpNw0g3l0
…二日目・宵…

ベルガミーニ提督「……すん、すん」

提督「カルラ、どうかしたの?」

ベルガミーニ提督「あぁ、フランカ……いえ、流石に二日目ともなると自分の体が臭っているんじゃないかって気になって……」

提督「分かるわ。支給されたサバイバルセットに石けんの一つも入れておいて欲しかったわね」

…とりあえず小川で水浴びをしタオルで身体をこすっているとはいえ、動き回って汗ばむ事も多いなかで石けんなしは少し厳しい……提督も迷彩服の袖を近づけ鼻をひくつかせてみた…

提督「体臭って自分じゃあ分からないって言うけれど本当みたいね……どう、カルラ? 臭う?」

ベルガミーニ提督「ううん、ちょっぴり汗の臭いはするけれど大丈夫」

カサルディ提督「二人ともどうしたの?」

ベルガミーニ提督「あぁ、ルクレツィア……いえ、この二日というもの身体を洗っていないから体臭が気になって……」

カサルディ提督「なるほど、そういうこと。 私に言わせれば二人はいい匂いで何てことないよ……むしろ私よ」

提督「別に大丈夫だけれど……」

カサルディ提督「優しいねえ、そう言ってくれるのはフランカだけだわ」

ベルガミーニ提督「いや、フランカの言うとおりで臭くはないけど?」

カサルディ提督「磯で魚と格闘して、シャツを袋代わりに貝を運んで汗をだくだくかいている女が臭くないわけないでしょうが……いいの、これも宿命みたいなもんよ」

提督「うーん、ルクレツィアの場合は「臭い」っていうよりちょっと日焼けした肌の香ばしい匂いに似ているかも」

ベルガミーニ提督「あぁ、それだわ! というより、なんか犬の毛皮に顔を埋めたときみたいな♪」

カサルディ提督「……それってケモノ臭いってことじゃない」

ベルガミーニ提督「っ!? いや、そういう意味じゃなくて……温かくて私は嫌いじゃない匂いだから……」

カサルディ提督「取って付けたような気休めをありがとね」

ベルガミーニ提督「いえ、だから……!」慌てふためいて言葉につまるベルガミーニ提督……

提督「ルクレツィア、からかうのはそのくらいにしてあげたら? カルラってばすっかり慌てているじゃない」

カサルディ提督「あははっ、それもそうね。大丈夫よカルラ、別に悪口じゃないって分かってるわ」

ベルガミーニ提督「そ、そう……?」

カサルディ提督「とはいえ犬臭いってのは考え物ね……ねぇフランカ、何かいい手はある?」

提督「そうねぇ……」

シモネッタ提督「三人とも何をおしゃべりしているの? 仲間はずれなんて寂しいわ♪」

提督「あぁ、エレオノーラ。いえ、実はね……」かくかくしかじかと事情を説明する……

シモネッタ提督「なるほどね、それで悩んでいたわけ」

カサルディ提督「そうよ。それにしてもエレオノーラ、このシケた島で二日も過ごしているのにどうやったらそんな良い香りをさせていられるのよ」

ベルガミーニ提督「それ、私も聞きたい。ここには石けんもないのに」

…歯磨き粉は虫歯予防のために用意されているが「三日くらい垢を落とさなくても死ぬことはない」という教官たちのありがたいお言葉によって石けんはない……にも関わらずどこか甘く爽やかな香りを漂わせているシモネッタ提督…

シモネッタ提督「あぁ、そのこと……聞きたい?」

提督「ぜひとも」

シモネッタ提督「よろしい、では教えて進ぜよう♪」おどけて白ひげをたくわえた賢者のような口調を真似ると「ついてきて」と三人を草藪の方へと案内した……

カサルディ提督「ここがどうかしたの?」

シモネッタ提督「うふふ……フランカ、貴女なら分かるんじゃないかしら?」

提督「えぇ? ……あ、これってもしかして野生のミント?」夕闇の中で枝葉に触れると途端に爽やかな香りをさせた草藪は、提督が実家の庭で母親のクラウディアから教わったミントの近縁種だった……

シモネッタ提督「ご名答。それで、柔らかい若枝を束ねてこすると……ね、少しは良い香りになるでしょう?」

ベルガミーニ提督「うわぁ、頭良い……ねぇエレオノーラ、良かったら私にも使わせてくれる?」

シモネッタ提督「私の使いさしを借りなくたって、そこにある材料で作れば良いじゃない♪ べつに私の藪じゃないもの」

ベルガミーニ提督「そっか、それもそうね」
988 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/11/29(土) 01:16:14.13 ID:qA6qMkqJ0
提督「うん、出来たわ♪」うまいこと若枝を折り曲げて楕円型の束をつくり、それを手近なツタで縛ってタワシ状のものをこしらえた……

ベルガミーニ提督「もう暗いし水浴びをするなら早くしないと……夜になったら小川の水も冷たくなるし」

カサルディ提督「そうだね、急ごう」

シモネッタ提督「あんまり暗いとあぶないから、私が照らしておいてあげるわ」焚き火から火の付いた長めの枝を取り出し、たいまつ代わりに掲げると提督たちについてきた……

…夜の帳が降りた小川は川岸の白い砂だけがほんのり明るく、水面そのものは提督たちが動いてできる波紋だけがたいまつの灯に照らされて判別できる程度で、あとは一筋の黒いリボンにすぎない……宵闇で視界が狭められた代わりに耳が研ぎ澄まされ、川のせせらぎや打ち返す海の波音が昼間よりも大きく響く…

カサルディ提督「うわ、ちょっと冷たくなってきてる……あんまり長居してると風邪をひきそうね」

ベルガミーニ提督「まさか? ルクレツィアなら真冬の北極海に飛び込んだってへっちゃらでしょ?」

カサルディ提督「失礼ねぇ、私だって一応人の子なんだから風邪くらいひくわよ……でしょ、フランカ?」

提督「そうよ、さすがにルクレツィアだって真冬の北極海は無理よ。せいぜいノルウェー沖くらいね♪」

カサルディ提督「もう、どいつもこいつも……せっかく魚だのなんだの獲って来てあげたって言うのにさ」

提督「ふふ、悪かったわ。代わりに背中を流してあげるから」

カサルディ提督「はいはい」

シモネッタ提督「はしゃぐのはいいけれど、早く上がらないと本当に身体が冷えるわよ?」

提督「それもそうね……分かった、すぐ上がるわ」

…まだ緑色をした野生ミントの若枝で身体を擦ると、途端に爽やかなミントの香りがふっと立ちのぼる……同時に少し固くなった茶色の枝は垢すりとしてほどよい硬さで、柔らかいだけのスポンジよりもいいような気がしてくる……士官学校生活の短い入浴時間のおかげですっかり染みついた手際の良さで手早く身体を流すと、じゃぶじゃぶと川岸に上がった…

シモネッタ提督「さ、凍える前に火にあたって?」

提督「ありがとう」裸の尻に砂がつかないよう迷彩服の上着を広げて敷布代わりにすると火の前に腰かけ、両手をかざして焚き火を眺めた……

カサルディ提督「よいしょ……っと」

ベルガミーニ提督「うー、最低……頭が濡れちゃったわ……」

提督「どうしたの?」

ベルガミーニ提督「川から上がるときに足を取られて転んじゃって……もう」いくら短くしているとはいえ、髪が濡れるとなかなか乾かないのでぶつぶつとこぼしている……

カサルディ提督「やれやれ、カルラってばドジなんだから」肩をすくめてからかい半分に言った……

シモネッタ提督「そのくらいで良かったわね……はい、どうぞ」たいまつで提督たちを照らしている間に温めていたらしい携行糧食のミネストローネをそれぞれの飯盒に注いだ……

提督「あら、ありがとう。道理で良い香りがすると思ったわ」

カサルディ提督「まさかこいつをありがたがって食うことになるとは思わなかったわ……ふー、温かい」

ベルガミーニ提督「そうね。でも明日で訓練は完了だし、今度の休みはうんと美味しいものでも食べに行こう?」

提督「賛成♪」

シモネッタ提督「いいわね」

カサルディ提督「ま、それよりまずは明日の訓練をやっつけないとね。教官たちのことだから最終日にはとっておきのろくでもない課題を用意しているに違いないし」

ベルガミーニ提督「うわ、ありそう……」

…深夜…

提督「うぅん……」

提督「はぁ、まだこんな時間……」疲れていたにもかかわらず目が覚めてしまった提督……腕時計をのぞくと夜明けにはまだしばらくある……

提督「ふぅ」薄い寝袋に身体を預けたまま頭の後ろで手を組んで枕代わりにして、天を行く星々を眺めた……

シモネッタ提督「……寝つけないの?」

提督「エレオノーラ……ええ、なんだか目が冴えちゃって。貴女はちゃんと寝た?」

シモネッタ提督「ええ。今は深夜直をね……隣、座ってもいいかしら?」

提督「もちろん」

シモネッタ提督「……それしても、貴女と一緒で良かったわ」

提督「私は幼女じゃないけれど平気?」

シモネッタ提督「ふふっ、それとこれとは別よ……一人の友人として。フランチェスカ、貴女に出会えて良かったと思っているわ」

提督「そうね、それで言ったら私も……エレオノーラ、貴女には感謝しているわ」

シモネッタ提督「そう言ってくれて嬉しいわ」ふっと小さく微笑むと提督の頬に軽くキスをした……
989 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/12/18(木) 00:52:39.51 ID:SDHyguTc0
…三日目・朝…

提督「今日でいよいよ最終日ね」

カサルディ提督「ま、案外悪くなかったよね。放送や時鐘に追い回されることもないしさ」

ベルガミーニ提督「どうかな、教官たちのことだからまだ何か隠しているのかもしれないし……」

シモネッタ提督「そうなったとしてもどうにか切り抜けましょう、せっかくここまで来たんだから……でしょう?」

提督「そうね」

カサルディ提督「言えてる。それじゃあまずは一つ、朝飯を獲ってくるとしますか♪」

…寝ていてこわばった身体をほぐすための体操を全員で済ませると、一つのびをしてからお手製の銛と、漂着ゴミの漁網からでっち上げた網袋を手に渚に向かうカサルディ提督…

提督「じゃあ私は薪を集めてくるわ」

ベルガミーニ提督「じゃあ私はルクレツィアに付いていくわ」

シモネッタ提督「あら、私だけなんにもなし?」

カサルディ提督「お留守番と無線機をよろしくね♪」

…朝食後…

提督「ふぅ……エレオノーラは料理も上手ね」

シモネッタ提督「そう? 料理上手のフランチェスカに言われると悪い気はしないわね」

ベルガミーニ提督「美味しかったけど、これで糧食の残りは一人分のビスケットだけ……教官の気まぐれで「もう一日追加」とか言われたら困るかも」

提督「メッセ教官ならやりかねないわね?」

カサルディ提督「ま、その時は私が獲ってくる海鮮でしのぐってことで……」お腹を満たし、たわいないことをしゃべっていると無線機が鳴り始めた……

無線機「指導班よりシモネッタ班、定時連絡。現状を知らせ。どうぞ」

シモネッタ提督「シモネッタ班より指導班。異常なし、どうぞ」

無線機「指導班了解。それでは今日の課題を伝える、地図を用意しろ……いいか?」

シモネッタ提督「用意できました、どうぞ」提督が広げた地図を手元に置いた……

無線機「よろしい、それでは島の地図にある北側の湾を確認しろ。地図上のA6区にある」

シモネッタ提督「確認しました」

無線機「よし。それでは本日1400時までに当該地へと移動しろ。手段は問わない。不測の事態の発生、または到着が間に合わないよう進出状況ならその時点で報告しろ。理解できたか?」

シモネッタ提督「理解しました」

無線機「よろしい……この二日というもの砂浜でのんびりしていてなまっただろう。しっかり運動することだ。湾に到着したらこちらで収容、その時点で合格とする。遅刻するなよ?」

シモネッタ提督「了解」

無線機「では収容ポイントで待っている。環境のためゴミはきちんと持ち帰り、怪我しないように。以上、通信終わり」

シモネッタ提督「……だそうよ」

ベルガミーニ提督「今から1400時までに島の北側……?」

カサルディ提督「ホントやってくれるよ、メッセ教官は……♪」思わず小さく笑い出した……

提督「いつも予想以上よね……ふふっ♪」

シモネッタ提督「ふふふっ♪」

ベルガミーニ提督「あはははっ♪」

一同「あはははははっ♪」

提督「あー、ひぃ……ふぅ……ともかく、まずは荷物をまとめなくっちゃ……」笑いのあまり目尻に溜まった涙を拭うと防水布を畳みはじめた……

カサルディ提督「火は消してあるし……と」

シモネッタ提督「糧食のゴミはまとめて袋に……」支給されたセットの中に入っていたゴミ袋に糧食の空きパッケージや包み紙をまとめる……

ベルガミーニ提督「これで忘れ物はなさそうね」

シモネッタ提督「よろしい。それじゃあ島の北側への行き方を考えましょう」

提督「そうね、よく考えて決めないと」キャンプとも言えない仮の野営地を手際よく畳むと、川べりの砂浜に地図を広げて頭を寄せ合った……
990 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/12/29(月) 02:06:13.78 ID:aQlvJ2x40
ベルガミーニ提督「筏を作ったら? 波打ち際には打ち上げられた流木なんかがたくさんあるし、漁業用の浮きだとかをくくりつければ浮力の足しにもなるんじゃない?なにより海軍らしいし♪」

カサルディ提督「私はあんまり賛成できないな。浜辺は割と穏やかだけど岩場の向こうはけっこう波が立っているし、なにより筏を作る時間が足りそうにない」

提督「そうね。筏なら歩かなくて済むし島を縦断する必要もないけれど、色々と制約が多そうだものね……エレオノーラ、班長として判断してほしいわ」

シモネッタ提督「ええ、分かったわ……カルラの「筏」案も悪くはないけれど、時間的な制約と航行の不安があるのでやめておきましょう。残念ながら愚直に歩くしかないわ」

カサルディ提督「やれやれだね……で、ルートは?」

シモネッタ提督「そのことだけれど、みんな地図を見て? ……ご覧の通り私たちは島の南側。回収地点は北側の湾。単純に考えれば真っ直ぐ歩くのが一番早いということになるわ」

提督「けれど地形を考えたらそうはならない」

シモネッタ提督「ええ、フランチェスカの言うとおり……島の真ん中はけわしい岡になっていて、小さいけれど崖や斜面があったり岩場になっていたりして通るのに苦労しそうな地形をしている」

カサルディ提督「距離はあるけど海沿いを進めば迷子にもならないし、地図を見る限りでは海に突き出した崖や岩場みたいな障害があるようにも見えない」

シモネッタ提督「その通り。あるいは賭けになるけれど、ここを突破するか……」

…地図に書かれている岡の西よりの部分にはマフィンの表面のような割れ目が記載されていて、そのギザキザのルートをたどっていけば近道をした上で北側の湾に出られそうに見える…

カサルディ提督「その方がかなり早そうにみえるけど……どうだろ」

ベルガミーニ提督「結構な冒険になりそうよね」

シモネッタ提督「私個人としては時間の余裕があるならこの道を使いたくはないわね。短縮して得られる時間がそこまで多いとも思えないし、誰かが捻挫したり骨折したりしたら話にならない」

提督「時間厳守とはいえ怪我をしたら演習中止になってしまうものね」

カサルディ提督「確かに……それじゃあともかくそこまで行ってみて、その上で改めて決めることにしない?」

ベルガミーニ提督「賛成」

シモネッタ提督「それが一番よさそうね。それじゃあルクレツィア、先導をお願い。私は地図を持ってその次に入る。カルラはその次で、フランチェスカは最後尾から周囲に気を配って」

カサルディ提督「了解、斬り込み役がちびの私なら後ろからでも前が見えるもんね♪」

提督「しんがりは任されたわ」

シモネッタ提督「お願いね? 時計は合わせてあるから、時間配分は私が指示するわ。キツくなったり、体調に異変を感じたらすぐ報告すること……それじゃあ、進発!」

…最初は海風の吹く浜辺を気軽に歩いていた提督たちだったが、陽が高くなるにつれてじわじわと体力が蝕まれはじめた……さくさくと心地よい音を立てる砂浜は足がめり込み意外と歩度が進まず、かといって浜辺を離れると低木の絡みあった藪や転がっている岩がルートを邪魔して迅速に進ませてくれない……小柄だが体力自慢のベルガミーニ提督が軍用ナイフをなた代わりに藪を切り開き、シルヴィアおばさまから野山の歩き方を教わっていた提督はシモネッタ提督たちと相談しつつ道を選んでいく…

………

…一時間後・谷間の入口…

シモネッタ提督「……谷が見えたわ。ここで休憩しましょう」

ベルガミーニ提督「賛成……もうくたくた」

提督「同感ね……」

カサルディ提督「私もちょっとくたびれたわ。枝を払っていたからナイフを握っていた手が痛いし」ナイフを鞘に戻すとしかめ面で手を握ったり開いたりした……

シモネッタ提督「みんな、ちょっといいかしら?」水筒の水を口に含み喉をうるおすと、シモネッタ提督が差し出すように地図を広げた……

シモネッタ提督「……見ての通り、私たちはここまで来たわ。とはいえやはり島の外周を大回りしていては時間的に厳しい」

カサルディ提督「だったら谷間を抜けるしかないでしょ」

ベルガミーニ提督「でも怪我をしたり谷間を抜けるのに時間がかかってたどり着けないようじゃあ本末転倒よね……形だけとはいえ「サバイバル訓練」なんだから、多少時刻に遅れたとしても無事であるべきなんじゃない?」

シモネッタ提督「私もそこが悩みどころなの。時間のためにリスクを負うべきか、安全策で行くか……」

カサルディ提督「どうかな。もしこれが任務だったとして、例えば戦隊との会同時刻にたどり着かないじゃ話にならないでしょ」

シモネッタ提督「フランチェスカはどう思う?」

提督「そうね……私もカルラの言うように「無事であるべき」だとは思うけれど、ここは谷間を行く案に賛成」

シモネッタ提督「あら、理由は?」

提督「ルクレツィアの言った「会同時刻に間に合わないと話にならない」って言葉が引っかかったの。これが艦隊ならとにかく合流を急いで、艦隊そのものが間に合いそうになかったら速い艦を分離して先行させる。もちろん艦隊の分散で各個撃破の危険は高まるかもしれないけれど、増援が来れば味方は立て直せるし相手は驚くかもしれない……それに、たとえ一隻でもゼロよりはましじゃない?」

シモネッタ提督「ふっ、それはそうね……いいわ、それじゃあ残り五分だけ休憩したら谷間を進むことにします」

カサルディ提督「了解」

ベルガミーニ提督「どっちにしても早くゴールしたいわ……」

提督「もうちょっとだから頑張りましょう、カルラ?」
991 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2026/01/14(水) 00:52:29.36 ID:whVusIlC0
…しばらくして・谷間…

カサルディ提督「うーん、今のところはわりといいペースじゃない?」

シモネッタ提督「ええ、今のところはね……カルラ、フランチェスカ、大丈夫?」

ベルガミーニ提督「ええ、どうにか」

提督「まず生きてはいるわ」

シモネッタ提督「その調子よ、頑張って?」

…小柄な身体のどこにそんな力が隠れているのか、疲れた様子も見せずに軍用ナイフでもつれた茂みの枝を切り払いつつ進んでいくカサルディ提督……シモネッタ提督も多少汚れてはいるが相変わらず優雅なままで、提督としんがりを代わって後ろから全体を見通しつつ、へこたれがちなベルガミーニ提督を支え応援しながら進む…

カサルディ提督「……ったく、藪が深くって切り払うのもおっくうね。ナイフじゃなくてマチェットがあればいいのに」

提督「こんなに繁っているのは予想外だったわね……また代わりましょうか?」時々カサルディ提督と先頭を代わってはナイフを振るう提督…シルヴィアおばさまとの猟や散策が大いに役立ち、二人で並進するように道を切り開いていく……

カサルディ提督「ありがとう。私がへばったらお願いするわ」

シモネッタ提督「みんな、このペースならどうにか刻限に間に合いそうよ」

ベルガミーニ提督「ありがたい限りだわ……」

…提督たちが進む谷間は岩がゴロゴロしていて、その隙間から灌木や草が生い茂って足元がかなり不安定になっている……カサルディ提督は足元を確かめつつ、ぐらつく岩や支えにするには根の浅い灌木があるとよく通る声で注意する…

………

…またしばらくして…

カサルディ提督「くそっ、冗談でしょ?」

提督「これは……エレオノーラ!」

シモネッタ提督「ええ、見えてるわ……これは予想外ね」

ベルガミーニ提督「あぁもう、信じられない……」

…提督たちの目の前には渡された大まかな地図には載っていない程度の……しかし登るには苦労しそうなちょっとしたガレ場が立ちはだかっている…

カサルディ提督「どうする?」

シモネッタ提督「……残りの距離は半分もないし、今から戻って迂回していたら到底間に合わない。どうにかして登って突破しましょう」

ベルガミーニ提督「はぁぁ……」

提督「高さはそこまでじゃないけれど、進むとなると大変そう……ロープがいるわね」肩にかけていたロープを下ろすと結び目をほどき始めた……

カサルディ提督「そうらしいね。エレオノーラ、私がよじ登ってロープを引っかけるから下の方は任せるわ……だてに漁師の娘じゃないってことを見せなくちゃね♪」

シモネッタ提督「ええ、下はきっちり支えておくから安心して? 上のとっかかりにロープを引っかけるのは身軽な貴女でなくては出来そうにないものね」

提督「女の子を引っかける方だったら私たちでもどうにかなるけれどね♪」

カサルディ提督「あははっ♪ それじゃあやってあげるから待っててよ、もしも落っこちたときにはその柔らかいおっぱいで受けとめてよね?」

提督「了解♪」

…ロープの端を野戦服のベルトに通すと、ガレ場の岩や斜めに生えた木を確かめながらよじ登っていく……ふもとではシモネッタ提督が余計なたわみが出ないようロープを繰り出し、提督とベルガミーニ提督がそれぞれ防水布の端を持って広げ、あって欲しくない落下に備える…

カサルディ提督「ふっ、はぁ……ふぅ……大丈夫、着いたよ!」ロープを結び終えるとガレ場の頂上から手を振った……

提督「ふぅぅ……」

…ロープを掴みながら提督たちはガレ場を越え、ほんの五メートルばかりの頂上に着くとエヴェレスト登頂に成功したように抱き合って喜び合った…

シモネッタ提督「これもルクレツィアのおかげね……さ、あとは真っ直ぐ進むだけよ」

カサルディ提督「よっしゃ、それじゃあ私たちが一番乗りして教官の鼻を明かしてやろうよ♪」

提督「賛成♪」

ベルガミーニ提督「了解、私も頑張るわ」

シモネッタ提督「そうね、勢い込むのはいいけれどペースを崩さないように行きましょう……最後まできっちりね」

カサルディ提督「まかしといて♪」

………

992 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2026/01/26(月) 02:06:42.70 ID:TsjkeRW/0
…数十分後・北の浜辺…

シモネッタ提督「ふぅ、着いたわね」

カサルディ提督「他の班はほとんど来ていないし、もしかしてかなりいい方じゃない?」

提督「はぁぁ……やったわね」

ベルガミーニ提督「……助かったわ、もうくたくた」

…浜辺には引き上げてあるゴムボートと、その脇で待っている教官たち……中でもメッセ教官は他の教官たちや補助教官たちより一歩前に立ち、腕を組んで口の端に笑みを浮かべている…

メッセ教官「おう、到着したな。それじゃあ報告に来てくれ」

シモネッタ提督「はっ。士官候補生ベルガミーニ、カンピオーニ、カサルディ、シモネッタ以上四名、無事到着いたしました!」

メッセ教官「よろしい! なかなか早かったな、良くやった。班長、どんな経路を通ってきた?」

シモネッタ提督「はい。宿営していた場所から島の山地にある谷間を抜けて来ました」

メッセ教官「岩や樹木のような障害物で通れなかったり、誰かが脚をくじいたりというリスクは考えなかったのか?」地図を指さして尋ねた……

シモネッタ提督「そのことは班員とも相談しましたが、時間に間に合わせるためにはやむを得ない危険と判断しました」

メッセ教官「ふむ。ではカンピオーニ候補生、もし仮に誰かが怪我をした場合どうすべきだと思う?」

提督「負傷者には付き添いを付け、無事な班員を集合地点に先行させます」

メッセ教官「それでは戦力の分散に繋がらないか? どうだ」

提督「それは確かですが、増援が見込まれただけでも敵側にとっては脅威を覚えさせることができるので分離・先行させることに意義があると考えます」

メッセ教官「なるほど。ではベルガミーニ候補生、第二次大戦中の海戦において自軍が劣勢でありながら「敵に脅威を感じさせた」ことで勝利した具体例を挙げてみろ」

ベルガミーニ提督「え、えぇと……ラプラタ沖海戦における英巡洋戦隊です」

メッセ教官「その通りだ。英軍は重巡「エクゼター」と軽巡「エイジャックス」「アキリーズ」の三隻でありながら優勢であるかのように振る舞い、ポケット戦艦「アドミラル・シュペー」を疑心暗鬼に陥らせ自沈させることに成功したな……結構だ。これだけ身体を使った後でもきちんと答えられるなら、きっと砲弾が飛んできても大丈夫だろう!」

…メッセ教官は提督たちに「解散してよろしい、少し息を整えろ」と言うと暖かくそれぞれの肩を抱き、ニヤリと笑うと次の班を出迎えに行った…

カサルディ提督「はー……まさかこんなタイミングで戦史の問題を喰らわせてくるとは思わなかったよ。私じゃ答えに詰まったかもしれないし、みんながいてくれて助かったよ」

提督「舌だけでどうにかなる問題ならいつでもどうぞ……ちょっと座らせてもらうわね」柔らかい砂浜に腰を下ろしてくたびれきった脚を投げだし、三々五々にやってきた他の候補生たちと軽く声を交わす……

シモネッタ提督「ふぅ、これでやっと私も班長じゃなくてただの候補生に戻れるわね」

提督「でも貴女が班長で助かったわ。ありがとう、エレオノーラ」

シモネッタ提督「ノン・ファ・ニェンテ(いいのよ)、私も班員が貴女たちで良かったわ……そろそろ全員着いたみたいね」

…元気よくまとまって駆けてくる班、疲れた脚を引きずって疲労困憊の様子の班、川にでも落ちたのか濡れネズミでやってくる班……さまざまな様子の班が砂浜にたどり着いて到着の報告を済ませると医官が候補生たちの体調を確かめて報告し、メッセ教官が他の教官や助教たちに一つうなずくと集合の号令をかけた…

メッセ教官「よし、これで全員揃ったようだな。まずは島での数日間、怪我人も出さずバカをしでかす奴もなく、無事に過ごしてくれて何よりだ。ご苦労だった」

メッセ教官「以上をもって主だった訓練項目はほぼ完了だ。諸君はこのあと士官学校に戻ってこの前の学科試験の成績と合わせた総合成績を受け取り、卒業と訓練航海に備えることになる……私も教官としてお前たちを見送ることができそうで良かったよ」そこまで言うとニンマリとあくどい笑みを浮かべた……

メッセ教官「……とは言うもののまだ訓練は終わっちゃいない。暖かな島で号令もなくのんきに過ごして、羽を伸ばし大いにたるんだ生活を送ったことだろうが、そんな状態で卒業されては困る。そこでだ……」

メッセ教官「……今から出迎えのゴムボートが来ている場所まで諸君にはランニングをしてもらう!」途端に悲鳴ともため息ともつかない声が響いた……

メッセ教官「さあ、元気を出してしっかり走れ! 士官候補生として一人も落伍することなくきっちり終わろうじゃないか!」

ベルガミーニ提督「うえぇ……」

提督「おおかたそんなことだろうと思ったわ……」

カサルディ提督「ま、こうなったら最後までやりきろうよ!」

シモネッタ提督「そうね、おたがい卒業まであと少しだもの……ね?」元気づけるようにひとつウィンクをし、脚を取られる砂浜をものともせず軽やかな足取りで走り出した……

提督「やれやれね……」

メッセ教官「さぁ、しっかり運動したあとの飯はうまいぞ! そら、しっかり走れ!」走りながら前後左右に位置を変え、叱咤激励しながら自分でも走っている……

提督「ひぃ、ふぅ……あとちょっと……」

メッセ教官「頑張れ、もうちょっとだ! そら、迎えの船が見えてきたぞ!」沖合に停泊している練習艦と、砂浜に引き上げられているゴムボートが見えた……

提督「もう少し……あと少し……!」

………

993 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2026/02/11(水) 01:53:58.70 ID:8wV//Rp20
…数週間後・士官学校の卒業式…

提督「……おたがい、どうにか卒業できたわね?」

カサルディ提督「そうね。それにしてもフランカの礼装姿、よく似合ってるよ……私は色黒のちびだからサッパリだけど」

提督「そんなことないわ。むしろルクレツィアは身体が引き締まっているから背筋が伸びていて凜々しく見えるわ……でも裾にほこりがついているわ」

カサルディ提督「えぇ? ちょっとはたいてくれる?」

提督「はいはい♪」

シモネッタ提督「みんな、支度はできた?」

提督「ええ、大丈夫よ……カルラ?」

ベルガミーニ提督「ちょ、ちょっと待って……礼装のシワが取れなくて……」ツキのないベルガミーニ提督はまたしてもトラブルに見舞われて慌てふためいている……

シモネッタ提督「もう、仕方がないわね……貸して? その間に軍帽やスカートを整えておいて?」シワ一つ、ちり一つない純白の礼装のままベルガミーニ提督の上着をさっと取り上げると駆け出すでもなくどこかへ歩いて行った……

カサルディ提督「相変わらずそつがないよね、ヴェネツィア人らしいというかさ」

提督「分かるわ……うーん、それにしてもお互い惚れ惚れするような姿ね」純白と濃紺に金線をあしらった晴れの礼装姿に、今までの苦労が報われたような気がする……

カサルディ提督「だよね……それにしてもフランカの成績、すごかったね」

…スポーツと数学が苦手な分、得意な戦史や天性の冴えが光った図上演習ではほぼ負けなしだった提督……とはいえ上位十人に食い込む成績は大したもので、さしものメッセ教官が最終成績を見て「良くやったな、カンピオーニ候補生」と肩をどついたほどだった…

提督「そのぶん運動面は下から数えた方が早いくらいなんだから、差し引きで言えばプラスマイナスゼロっていうところね……それにひきかえルクレツィアはスポーツ優秀賞だものね」

…提督はもちろん候補生誰でもが音を上げる短艇の漕艇訓練をはじめ、各種の陸上競技でも一位を総なめにしたカサルディ提督……礼装には早くも小さいが輝かしい略綬が付いている…

カサルディ提督「メッセ教官にも「お前なら一流の体育教官になれる」って言われたけどね……でも海は捨てがたいし、海上勤務を希望したよ。フランカは?」

提督「私は指揮官・幕僚コースを志願したわ。確かに一度はフリゲートや駆逐艦、あるいは「艦娘」たちを指揮してみたいけれど……どちらかといえば私は艦長っていう柄じゃないから、幕僚として支える側に立ちたいわね」

カサルディ提督「そうかな、フランカなら並の艦長よりずっといいと思うけどね……カルラは?」

ベルガミーニ提督「私も海上勤務を志願したの」

カサルディ提督「そっか、それじゃあもし同じ艦になったらよろしくね」

ベルガミーニ提督「迷惑をかけちゃうかもしれないけれどね……」

シモネッタ提督「貴女はきちんとしているんだから冷静にやれば大丈夫よ、カルラ。はい、上着」するりと戻ってきてピシッとアイロンを効かせた上着を手渡した……

カサルディ提督「早かったね……それにしてもどこでアイロンをかけてきたの?」

シモネッタ提督「ふふ、ちょっとしたつてがあって……それで、何の話をしていたの?」

提督「希望コースの話よ、エレオノーラは?」

シモネッタ提督「私は対潜・掃海コースよ。希望通りだわ」

カサルディ提督「へぇ、意外……指揮官・幕僚じゃないんだ」

…なんでもそつなくこなし、見事に首席として記念リボンと金時計を受け取るシモネッタ提督から聞かされた意外な進路に、掌を上に向けて驚いてみせたカサルディ提督……もちろん資源の輸出入や海上交通路の保護のためには欠かせない重要な役割で、根気強くなければならないと同時に多くの知識が求められるプロフェッショナルな分野とはいえ、どちらかといえば地味な分野に進むことに驚いてみせた…

シモネッタ提督「ええ。何しろ例の「深海棲艦」騒ぎで対潜戦や掃海の需要は高まっているし、艦娘たちを指揮する「提督」もたくさん必要とされているもの」

カサルディ提督「そりゃそうだけどさ……もっと戦艦とか巡洋戦隊みたいに華やかなところを選ぶと思ったから……」そこまで言いかけたところで「まさか」と声を詰まらせた……

提督「ねぇ、もしかして……」

シモネッタ提督「なにかしら?」

提督「エレオノーラが対潜・掃海コース希望なのって……小さい艦娘の子がたくさんいるからだったりする?」

シモネッタ提督「さて、何の事かしら♪」とぼけてみせたが端正な顔に満面の笑みを浮かべている……

カサルディ提督「うーわ……頼むから査問会にかけられて同期に恥をかかせるようなことはしないでよね」

シモネッタ提督「あら、私がそんな人間に見える?」

提督「見えないから困るのよね……って、そろそろ行かないと!」

カサルディ提督「……ま、何はともあれ卒業おめでとう♪」

提督「そうね♪」

シモネッタ提督「ええ、それじゃあ行きましょうか♪」

ベルガミーニ提督「わ、ちょっと待って……!」礼装のボタンを留めながら慌てて追いかける……

………
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