イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」

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873 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/04/24(月) 01:29:50.90 ID:WB0UYTOX0
クズネツォワ「私も意外だよ……もっとも、君の考えを理解できないこともない。なにしろ私は平和主義者だからな」

提督「あー……聞き違いでしょうか?」

クズネツォワ「いや、私が「平和主義者」といったのは聞き違いではないよ……考えてもみるがいい」

提督「何をです?」

クズネツォワ「冷戦時代のことだ。もっとも、君の世代ではもう知らないか?」

提督「そうですね、私が生まれたか生まれないかのころにソ連は無くなっていましたから」

クズネツォワ「そういうことを言われると自分が年寄りになった気がするな……それはそうと、強力で圧倒的なソ連軍があったとき人はソ連を恐れ、また憎みこそすれ、刃向かおうという者はそういなかった。例えそれが誰かの犠牲によって立っているとしても、少なくとも多数の人間にとって平和な時代であったこともまた事実ではないか?」

提督「……つまり「ゆえにカルタゴは残さねばならない」ということですか」


(※ゆえにカルタゴは……古代ローマの政治家「大カトー」が北アフリカ沿岸にありローマにとって身近な脅威であったカルタゴに対し「……ゆえにカルタゴは滅ぼさねばならない」と演説をしめくくるのに対して、政敵であったスキピオ・ナシカは仮想敵がなくなると軍備がおろそかになったり緊張感がなくなることでローマが衰退するとして「……ゆえにカルタゴは残さねばならない」と演説したという)


クズネツォワ「いかにも……米ソ冷戦が終わって「悪の帝国」がなくなったとき、世界は指針を失って混迷の時代を迎えた。 一つくらい持病を持っていた方が健康に気を使うようになるのと同じで、世界には強大な敵役が必要なのだ」

提督「それがロシアだと……?」

クズネツォワ「いかにも。望むかどうかは関わりなく、ロシアというのはそういう役割を担っているのだ」ウォッカのグラスを一息に干すと、かすかに皮肉っぽい表情を浮かべた……

提督「そうですか?」

クズネツォワ「ああ。それに我が国がソ連時代から軍拡に努めてきたのは、全てアメリカからソ連を防衛するためにすぎない……実際問題として、アメリカが我が国の裏庭である東欧諸国に優れたミサイルを配備しておきながら、我が国がアメリカの裏庭であるキューバや中南米にミサイルを配備してはいけないというのは不公平というものではないか?」

提督「……納得は出来ませんが、そういう意見もあるでしょうね」

クズネツォワ「そうとも。それに当時のソ連海軍が保有していた艦艇も航空機も、全てアメリカの原潜や空母打撃群、爆撃機に対抗するためのものでしかない……」

提督「なるほど」

クズネツォワ「それにだ、たいていの軍人は戦争など欲しない。それがいかに悲惨なものかよく知っているからだ……クレムリンの政治屋どもがどう思っているかは知らないが、少なくとも私は平和であって悪いことはないと思っているよ」

提督「そうですね。私が言うのもおかしな話ですが、軍人が「本業」に精を出すようになったらおしまいですから」

クズネツォワ「そういうことだ……さ、もう一杯飲もう」表情はまるで変わらないが、どうやらご機嫌な様子のクズネツォワ……提督のと自分の、二つのグラスのギリギリまでウォッカを注いだ……

提督「……いただきます」

…どの世界でも「部外者」の同国人よりも「同業者」の外国人の方が考えを理解しやすいし付き合いやすいというのはありがちな話で、提督とクズネツォワも何だかんだとウォッカのグラスをやりとりする程度には打ち解け始めていた……

クズネツォワ「……」

提督「……どうかしましたか?」

クズネツォワ「ニェット(いいや)……だが……ふむ、なるほどな」もう一杯ウォッカを飲み干すと、なにやら納得した様子のクズネツォワ……

提督「?」

クズネツォワ「なに、こっちの話だ……いいか?」上着の内ポケットから煙草の箱を取り出すと、提督に尋ねた……

提督「ええ、どうぞ……ずいぶん気になる言い方ですね」提督は煙草が好きではないので、失礼にならない程度で少し椅子を下げた……

クズネツォワ「そうか?」

提督「ええ。特にそんな風に気を持たされたらなおのこと♪」

クズネツォワ「かもな……」

提督「はぐらかすのがお上手ですね、ユーリア♪」

…机の上の灰皿を引き寄せて煙草に火をつけ「ふーっ……」と紫煙をくゆらせるクズネツォワに対して、ちょっと小首をかしげて頬杖をつき、ウォッカでぽーっと火照った顔にいたずらっぽい微笑をうかべる提督…

クズネツォワ「……まあ、せっかくの機会だ」

提督「と、いいますと?」

クズネツォワ「なに、すぐに分かる……」そういうと吸いさしの煙草を灰皿に押しつけて消した……
874 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/05/01(月) 01:44:48.40 ID:st6aV10Z0
提督「……ユーリア?」

クズネツォワ「何を戸惑っているのだ? 君だって子供ではないのだから、ここまで来たらどういう意味かくらいは分かるだろう?」

…立ち上がると提督の手に自分の手を重ね、ぐっと上半身を屈めるようにして提督の瞳をのぞき込んだ……冷たく骨っぽい、逆らいがたい力を秘めた手が提督の手首をつかみ、椅子から立ち上がらせる……反対の腕を提督の腰に回すと、そのままベッドルームとおぼしきドアへと提督を連れて行くクズネツォワ…

提督「ユーリア……///」ふんわりしたセーターの生地越しにクズネツォワの固く引き締まった身体が感じられ、煙草の香りが混じったビターな吐息がふっと耳元に吹きつけられる……

クズネツォワ「ああ」

提督「……いいのですか?」

クズネツォワ「駄目だったらこんな真似はしない」

…ベッドルーム…

クズネツォワ「……さて、それではもっと個人的な話をする前に……カンピオーニ提督、少しよろしいか?」

提督「ええ、何でしょう?」

クズネツォワ「失礼」提督が付けているイヤリングを外すと、ナイトテーブルにあった水差しの中に放り込もうとする……

提督「あっ、何を……」

クズネツォワ「申し訳ないな。 だが、盗聴されるのは趣味ではない」

提督「えっ?」

クズネツォワ「おや、気が付かなかったか? では後でご友人に聞いてみるといい……悪いがこんな小細工に気付かない私ではない」

…イヤリングの人工真珠に爪をかけると、パカッと真珠が二つに割れ、中にボタン電池程度の小さな機械が収まっている……クズネツォワは機械に唇を近づけてそう言うと、改めてぽちゃんとイヤリングを放り込んだ…

クズネツォワ「さて……一つ始末したとはいえ、おおかたこの部屋そのものにもフィンランド側が仕掛けた盗聴器が山とあるはずだ」

提督「そうでしょうか?」

クズネツォワ「ダー(ああ)。 もっとも、探して見つかるような幼稚な場所にありはしないだろう……驚きはしないがね。 公的なレセプションに出席したロシア海軍の将官が宿泊する部屋に盗聴器の一つもないとしたら、その方が驚きだ」

提督「そういうものですか……私には縁のない世界です」

クズネツォワ「そうだろう、だから君のご友人も盗聴器を仕込む気になったのだ……自分の持ち物に盗聴器を仕掛けられていることを知らない人間なら、不自然な挙動をすることもないからな。とはいえフィンランド人にただ盗み聞きされるのも芸がない……」

…そう言うとどこからか文庫本くらいの大きさをした、テルミンと音叉のあいのこのような器具を取りだしてナイトテーブルに置き、側面のスイッチを入れた……途端に「ぶぅん……」と、遠くでクマンバチが飛んでいるような振動音が低く鳴り始める…

提督「それは?」

クズネツォワ「ノイズメーカーだよ……低周波を始めとした音波を発してガラス窓や壁に反響させ、室内の声が捉えにくくなる。これで多少は私的なおしゃべりもできるわけだ」

提督「……」

クズネツォワ「どうした? 遠慮せずに座るといい」

…重そうなコートと地味なチャコールグレイのブレザーを脱いでベッド脇の椅子にかけると、化粧っ気のない地味な黒いタートルネック姿になったクズネツォワ……将官というよりは競泳選手のような引き締まった身体と冷徹な表情を浮かべた苦みばしった顔に、可愛らしさのかけらもないモノトーンの服が良く似合う……そのままベッドに腰かけると掛け布団を軽く叩き、隣に腰かけるよううながした…

提督「ユーリア、もしかして私がどういう人間かご存じの上でやっているでしょう?」

クズネツォワ「だとしたらどうなのだ?」

提督「……こうします」

…そういうとかたわらに腰かけ、顔を向けさせてキスをした……冷たく煙ったい煙草の香りとウォッカの味が少し残っている薄い唇に提督の柔らかなみずみずしい唇が触れる…

提督「ん、ちゅ……っ♪」

クズネツォワ「……んっ」

提督「ぷは……///」

クズネツォワ「ふ、なるほどな……くくくっ♪」

提督「何がおかしいのです?」

クズネツォワ「いや。まったく面白い女性だよ、君は……」

…そういうなり提督をベッドに押し倒し、あご先に指をあてがうと上向かせると唇を押しつけた……片腕で提督の手をつかみ、上から覆い被さって身体を押さえ込むようにして長々と口づけをする…

提督「ん、んんっ……んぅ///」

クズネツォワ「ん……ふっ……んむっ……」

提督「ぷはっ……はぁ、はぁ……っ///」息切れを起こすかと思うくらい長々と続けられた口づけに、呼吸を荒くする提督……

クズネツォワ「……それで、もうおしまいか?」

提督「いいえ……これからです♪」ちゅ……っ♪
875 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/05/04(木) 01:25:30.38 ID:4vqiA8he0
クズネツォワ「んん……ちゅ…る……」

提督「ん…ふ……ちゅぅ……♪」

クズネツォワ「んむ……っ、んぅ……」

提督「はぁ、はぁ……あむっ、ちゅるっ……ん……ぅ♪」


…肺に深く吸い込んだ空気と鼻呼吸で、唇を離すこともなく長々と接吻を交わす提督……最初はクズネツォワの唇を優しくついばみ、次第にじっくりとむさぼるようなキスに変えていく……舌先を唇のすき間に滑り込ませるとクズネツォワの舌に絡みつかせ、かすかに甘いウォッカの後味と煙草の冷たく煙ったい香りが残る口中をねちっこくねぶっていく…


クズネツォワ「ん、んっ……んぅっ……」

提督「ん、はむっ……れろっ、ちゅぅ……っ♪」

クズネツォワ「……っ、はぁ」

提督「ユーリア……貴女が誘ったんですからね?」

クズネツォワ「ダー、分かっている……どうして、なかなか大したものじゃないか」

提督「ふふふっ、まだこれからです……♪」

クズネツォワ「ほう、それはそれは」

提督「むぅ……そうやって涼しい顔でいられるのも今のうちですからね?」


…クズネツォワが着ているセーターの裾から手を入れ、固く引き締まった猟犬のような脇腹をそっと愛撫し、同時に親指をかけてセーターをずりあげていく……次第にあらわになっていく引き締まった腹部にはうっすらとだが腹筋の割れ目が浮かび、それがナイトスタンドの明かりを受けて砂丘のように陰影を強めている…


提督「すごい筋肉ですね……私なんてどう頑張ってもこんな風にはなれそうもありません」

クズネツォワ「いや、簡単なものさ。毎日百回単位で腕立て伏せや腹筋をすればいいだけだ」

提督「それが出来そうにありませんから……」苦笑いをしながら揉みほぐすようにしてお腹を撫で、次第に乳房の方へと指先を進めていく……

クズネツォワ「かもな……」


…提督の手と呼応するようにクズネツォワも提督のセーターを徐々に脱がしていき、その冷たい目が提督の柔らかな曲線を帯びた身体のラインをじっくりと眺め回す…


提督「……ね、ユーリアと比べたら私なんてクジラみたいなものでしょう?」

クズネツォワ「ああ……だが、抱くにはこの方がいいな」ぎゅむっ……♪

提督「きゃあっ♪」

クズネツォワ「ふむ……柔らかいが張りと弾力もあっていい揉み心地だ」

提督「そんな淡々と言われても……あんっ♪」

クズネツォワ「なにしろ誰かとベッドを共にすることはあまりないからな……こういうのはなかなか新鮮だ」淡々と言いながら提督の豊満な胸をこね回す……

提督「もうっ、ユーリアがそうなら私も……っ♪」

クズネツォワ「私の胸では揉むほどもあるまい」

提督「それならそれで他にやりようはありますから……それに、結構ありますよ? ちゅっ♪」

…提督はクズネツォワの硬く引き締まった乳房に唇を這わせ、薄い小豆色をした先端に優しく吸い付き甘噛みした……ぎゅっと抱きしめたクズネツォワの身体は骨ばっているが筋肉質で引き締まった弾力があり、鍛えているためか提督が身動きをしたり舌で舐めあげても小揺るぎすらしない…

クズネツォワ「そうか、なにぶん比較対象が少ないものだからな……しかし君の身体は柔らかいな。肌もきめ細かくて手に吸い付くようだ」

提督「ふふっ、くすぐったいです……♪」

クズネツォワ「ああ、済まないな……ふむ」提督のスカートに手を伸ばすと少々ぎこちない手つきでずりおろし、黒タイツに包まれたヒップを撫でた……

提督「もう、ユーリアったらせっかちですね♪」

クズネツォワ「ウスカレーニエ(加速化)というやつだ」(※ウスカレーニエ…ゴルバチョフ時代の経済発展加速化プラン)

提督「……ウスカレーニエ?」

クズネツォワ「ふ、分からないならそれでいい……♪」

提督「ん……あふっ♪」

876 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/05/12(金) 01:04:02.98 ID:HJOkhMsZ0
クズネツォワ「ん…ちゅる……っ」

提督「ふぁ……あ、あっ……ん、ふっ♪」


…舌を絡めたキスを続けるうちに口中の唾液は水気が減って粘っこくなっていき、もどかしいような息継ぎをするたびに湿っぽい音を立て、朝露に濡れた蜘蛛糸のように銀色の糸を引く……クズネツォワの手がいささか強引に提督の下着を引き下ろし、むっちりした太ももから柔らかそうな下腹部があらわになる…


クズネツォワ「それでは……」ぐり……っ♪

提督「んっ……ユーリア、いきなり指を入れるなんて乱暴ですよ……」


…痛さに飛び上がるほどではなかったが、いずれも絶妙な愛技の持ち主でじっくり丁寧に気持ちを高めるのが上手だったローマやミラノの「恋人」たちや、技巧はそれほどでもないにしろ提督に対する「好き」の気持ちがこもっている愛しい艦娘たちと違って、いささか唐突かつ粗削りな手つきで指をねじ込まれ、少し涙目になる提督…


クズネツォワ「そうか、それは済まなかった……しばらくそのままにしておけばいいのか?」困惑さと意外さがない交ぜになったような表情を浮かべ、提督の花芯に挿し入れた指をどうすればいいか持て余し気味にしている……

提督「ええ、しばらくはそのままで……ところで、もしかしてカサトノヴァ少佐相手にもこんな風に?」

クズネツォワ「ああ。少なくともマリア・エカテリーナとするときはな」

提督「まったく……こんなやり方じゃあカサトノヴァ少佐が可哀想ですよ?」

クズネツォワ「考え方の相違だな。私がマリア・エカテリーナを抱くときは何も考えず思考をまとめたい時だけだ……それ以上でもそれ以下でもない。 彼女は余計な事を言わずに寝ていてくれればそれでいいし、こちらに余計な気づかいや、どうやって彼女を悦ばせるかと言ったことを考えさせるようなら欲しくない」

提督「だからってあんまりですよ、それだったら玩具でも変わりないでしょうに」

クズネツォワ「ニェット(いいや)。マリア・エカテリーナはそのへんをよくわきまえてくれているからな」

提督「もう、ユーリアったら勝手なんですから」

クズネツォワ「これでも何かと考えることが多いのでな……いいか?」

提督「ええ、少しは落ち着いてきましたから……///」

クズネツォワ「そうか、だが少し控え目にしなければいけないようだな……」ぐちゅ、にちゅ……っ♪

提督「ん、んっ……」

クズネツォワ「大丈夫か?」

提督「ええ、さっきよりは……あ、もっとゆっくり……」

クズネツォワ「なるほど……こうか?」ちゅくっ、くちゅり……♪

提督「はい、ですがまだ強すぎます……あ、あっ///」

クズネツォワ「ふむ、目の前にいる女性の事だけを考えてするのもそれはそれで新鮮だな……ここか?」くちゅくちゅ……じゅぷっ♪

提督「あ、あっ……そこ、気持ちいい…っ///」

クズネツォワ「こっちは?」

提督「ふあぁ……あふっ、はぁ……んっ♪」

クズネツォワ「ここが感じやすいようだな……んちゅっ♪」提督に覆い被さりながら豊かな乳房に吸い付いたクズネツォワ……

提督「ふあぁ、もう……あっ、あぁぁんっ♪」


…空いている手で乳房にクズネツォワの頭を押しつけると、ぎゅっと脚を締め付けてクズネツォワの身体を挟みこむ提督……まだクズネツォワの手つきはぎこちなく洗練されていない感じも残るが、身体が火照ってくるにつれて提督自身みだらな気持ちになってきて、クズネツォワらしい冷たさと煙草の香りが混じった髪の匂いを吸い込むと、秘部がとろりと濡れてきた…


クズネツォワ「ん、ぴちゃ……れろっ、ちゅ……」ぐちゅっ、ぬちゅ……っ♪

提督「あ、あ、あっ……あんっ、んふふっ♪」ときおり妙な舌遣いをされ、気持ちよさよりもくすぐったさに笑いが漏れる……

クズネツォワ「……私のやり方はおかしいか?」

提督「いえ、そうではなくてくすぐったくて……ふぁぁ、あふっ……あっ、んんぅ……っ♪」

クズネツォワ「そうか」ぐちゅぐちゅ……ずぷっ♪

提督「ふあぁ……ぁっ♪」とぽっ、とろ……っ♪

クズネツォワ「……どうだ、少しは良かったか?」

提督「そんなことを聞くのは無粋ですよ、ユーリア……それに」

クズネツォワ「それに?」

提督「……今度は私の番ですから♪」金色の瞳にとろりと甘いみだらな光を浮かべ、クズネツォワに身体を絡ませた……
877 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/05/20(土) 01:12:13.69 ID:j8KxuYom0
クズネツォワ「ん、んっ……」

提督「ユーリア、そんなに身構えないで……もっと肩の力を抜いてください」

クズネツォワ「ダー。しかし身構えているつもりはないのだがな……」

提督「そうですか? それじゃあ私がユーリアの気持ちをほぐしてあげます♪」

…提督はしっとりとした柔肌をクズネツォワの引き締まった裸身にぺたりと合わせて、綺麗に整えられた左手の中指と薬指をやんわりと彼女の花芯へと滑り込ませていく……ベッドを共にしているのにどこか隔たりを感じるクズネツォワの冷たい手に右手を絡ませて「恋人つなぎ」にすると、優しく唇を触れあわせながらしばらくそのままついばむようなキスを続け、冷たい手がほのかに温もりを帯びるまで恋人つなぎを続けた…

クズネツォワ「……こういうのは初めてだな」

提督「言わなくっていいです……いまは私のこと以外は考えて欲しくないので」ちゅ……っ♪

クズネツォワ「分かった」

提督「はい……♪」

…しばし幼い子供のように無垢な口づけを続けていたが、次第にねっとりと甘ったるいキスへと変化させていく提督……クズネツォワの固く引き締まった胸にはたわわな乳房を押しつけて弾力のある柔肌の中に埋めさせ、ゆったりと動かし始めた左手の指は優しく、しかし執拗に膣内をかき回していく…

クズネツォワ「……んっ、ふ///」

提督「んちゅっ、ちゅる……っ♪」

クズネツォワ「あ……ふ、んむ……っ///」

提督「ユーリア、こっちの方がいいですか……?」

クズネツォワ「好きにしろ。私はどっちでも構わない」

提督「あら、つれないお返事……そういうことなら、うんとさせてもらいますから♪」じゅぷ、ぐちゅっ……くちゅっ、にちゅ……っ♪

クズネツォワ「ああ……ん、んんっ///」

提督「ふふっ♪ ユーリアのここ、ずいぶん濡れてきましたね♪」ぬちゅ、ぐちゅり……じゅぷっ♪

クズネツォワ「そうだな……んん゛ん゛っ///」

提督「うふふっ、ちゃんとそうやってトロけたお顔もできるんですね……可愛いですよ♪」じゅぷっ、ぬちゅり……ぐちゅぐちゅっ♪

クズネツォワ「あ、あ゛っ……はぁぁ……ぁっ♪」

提督「んぅ、そろそろ体勢を変えますね……はひっ、あ……あふっ♪」

…粘っこい水音をさせて指を引き抜くと粘土をこねるような手つきで下腹部を愛撫し、それから身体を起こすとクズネツォワの太ももを両手で押し開くようにして開脚させ、自分の花芯とクズネツォワの花芯を重ね合わせた……すでにとろりと濡れている提督の秘部が意外なほどに熱を帯びたクズネツォワの秘所と触れあうと、しびれるような甘い感覚が背筋を伝わっていくように走り、思わず甘ったるい嬌声が漏れる…

クズネツォワ「はぁ……あぁ、んんうっ///」

提督「あっ、はぁっ、はぁ……はひっ……ふわぁぁぁ……っ♪」

クズネツォワ「あ゛っ、はぁぁっ……ん゛あ゛あ゛ぁぁ………っ♪」

…提督の甘い声と共鳴するようにクズネツォワの吼えるような声が響く……クズネツォワの競泳選手のような脚が提督の腰に絡みつき、まるで腰骨が折れそうな強さでぎゅっと締め付けてくる……お互い身体を離そうにもいやでも伝わってくる脳をとろけさせるような快感に呑まれて、身体を引き離す事もできない……提督は甘ったるい声を響かせながらも、クズネツォワの無表情の仮面がいくらかなりとも崩れて喘いでいるさまに気づいて嬉しさと同時に、普通なら敵うはずもないクズネツォワのような鍛え上げられた相手を思い通りにしている事実に、みだらでわがままな嗜虐心をくすぐられた…

提督「んふふ……っ♪」ぐちゅっ、にちゅ……っ♪

クズネツォワ「お゛っ……あ゛ぁ゛ぁぁっ♪」

提督「あっ、ユーリア……激しっ……ふわぁぁぁ……っ♪」

クズネツォワ「あぁぁっ、はぁっ……♪」

提督「ふあぁぁっ、そんなに締め付けられたら……あっ、あぁぁっ♪」

…提督は目の焦点が合わなくなり、暖かくぬめる下腹部からの止めどない熱と快感の波動に身体をのけぞらせて嬌声をあげる……一方のクズネツォワもがくがくと太ももをひくつかせ、がくりと首を上向かせて腹筋をけいれんさせている…

クズネツォワ「ああぁぁ……っ♪」

提督「あぁぁん……っ♪」

…互いに終わりが見えないまま、愛撫したり甘噛みをしたり跡の残るようなキスをしたりしつつ、秘所を重ね合わせる二人……全身はじっとりと汗ばみ、重ね合わせている身体がぺっとりと吸い付き、時にはぬるりと滑る……そのまま何時間たったのかも分からないまま、最後は崩れるようにして愛蜜まみれのベッドシーツに倒れ込んだ…

クズネツォワ「ふー……」

提督「はぁ、はぁ、はぁ……ぁ♪」

クズネツォワ「……ふふ」

提督「何かおかしいですか?」

クズネツォワ「いや、なに……まさか一回りも年下の小娘にここまでいいようにされるとは思っていなかったからな。私もまだまだということか」

提督「えーと……お褒めにあずかり恐縮です///」

クズネツォワ「ふ……まったく面白い女だよ、君は」
878 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/05/28(日) 00:53:14.75 ID:0BYdMybg0
提督「……」

クズネツォワ「ふー……何か気になることでも?」

…裸のまま起き上がるとベッドサイドの小机に置いてあった煙草の箱を引き寄せ、一本取り出して火を付けたクズネツォワ……提督が少し意外そうな表情でその様子を見ていると、視線が気になったのか問いかけてきた…

提督「いえ、そこまでのことでは……」

クズネツォワ「構わないから話してみるがいい」

提督「そうですか、本当に大したことではないのですが……ユーリアは左利きですか?」

クズネツォワ「どうしてそう思う」

提督「いえ、だって煙草をそうやって左手で持っているものですから……」

クズネツォワ「ふ……なかなか観察眼が鋭いな」そう言って親指と人差し指の間に挟んだ煙草をもうひと吸いすると、ふーっと長い息を吐いた……

提督「そうですか?」

クズネツォワ「ああ……私は職業上、右手を常に空けておくよう訓練されてきたからな。そのせいで煙草を左手で吸う癖がついてしまった……」

提督「でも、ユーリアのお仕事は海軍軍人でしょう? そこまで徹底して右手を空けておくような訓練を受けるものでしょうか?」

クズネツォワ「海軍軍人か、確かにな」

提督「……そういえば、クズネツォワ提督はどうして海軍に?」

…あまり根掘り葉掘り聞くようなことでもないらしいと気付いて、とっさに話題を転じた提督……胸元に布団を引き寄せ、枕を背中にあてがってベッドのヘッドボードを椅子の背のようにして座った…

クズネツォワ「そうだな……おそらくは私のバーブシュカ(祖母)の影響だろうな」提督に煙を吹き付けないようもうひと吸いすると、ゆっくりした口調で言った……

提督「バーブシュカ……たしかお祖母さんのことでしたね?」

クズネツォワ「ダー……私の祖母ナターシャ(ナターリアの通称)は政治将校として大祖国戦争(独ソ戦)を戦い抜いた女性でな。ブーツも汚さずに安全な後方からスローガンをわめいていた連中と違って常に兵と共に銃を取り、後に「赤いジャンヌ・ダルク」などとまつりあげられたほどの人物だったのだ」

提督「立派なお祖母様だったのですね」

クズネツォワ「少なくとも私はそう思っている……せっかくだ、祖母から聞いた話でもしてあげよう」そう言うと昔話を語るように淡々と話し始めた……



クズネツォワ「……今は昔、大祖国戦争(独ソ戦)の頃の話だ。 私の祖母は当時ではまだ珍しい高等教育を受けていたので軍で庶務であったり読み書きといった兵への教育を行っていてな。組織に献身的だったことと「大粛正」後の士官不足と言うこともあって大尉に昇格していたのだが……1941年6月22日、状況が変わった」

提督「独ソ戦の開戦、ですか」

クズネツォワ「ああ。祖母は大祖国戦争開戦の一報をラジオで聞いたそうだ……」

………

…1941年…

ソ連軍士官「同志政治将校、今の放送をお聞きになりましたか!」

ナターリア(ナターシャ)・クズネツォワ大尉「聞いた……司令部からの命令は?」

士官「はっ! 命令ですが「全部隊は直ちに鉄道駅に集結、急ぎ祖国防衛のために進発せよ!」とのことです!」

ナターシャ「よろしい、ではそのように計らえ……私も駅へ行く」

…駅…

ナターシャ「同志諸君! 邪悪なファシスト共の魔の手から我らの祖国(ロージナ)を、父を、母を、兄弟姉妹を守るのだ!」

…ぴしっとしたカーキ色の軍服にトカレフ「TT33」ピストルのホルスターを吊るし、メガホンの筒を手に声を張り上げ、客車・貨車を問わずに次々と列車に乗り込む将兵たちを激励するナターシャ……プラットホームではやはり軍服を着た軍楽隊のオーケストラが勇ましい軍歌を演奏し、その重厚なメロディと地元合唱団の声が響き渡るなか、兵たちを乗せた列車が重そうに発車していく……

ナターシャ「さあ、列車に乗り込め! 祖国は同志諸君を必要としている!」



クズネツォワ「しかし、粛正に次ぐ粛正で思考力のある有能な士官を失っていて、かつ奇襲を受けたソ連軍はドイツ軍の「電撃戦」に後退を余儀なくされた……そして数週間後、祖母はレニングラードにいた」

提督「……レニングラード、ですか」

クズネツォワ「そう……九百日も包囲されたレニングラードだ。だが私の祖母は運が良かった」

提督「と、いいますと?」

クズネツォワ「召喚命令だよ。 レニングラード防衛戦の実情が分からないモスクワのスタフカ(STAVKA…赤軍最高会議)に直接報告に行けと命令を受けたのだ……私の祖母はラドガ湖を使って包囲直前のレニングラードから脱出できた人間の一人だ」

提督「なんと、まぁ……」

クズネツォワ「その時の話は祖母からいくつか聞いたよ……いよいよレニングラードも包囲され始めた、とある曇りの日だったそうだ……」
879 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/06/10(土) 00:44:29.34 ID:BE4DfZCG0
…レニングラード…

ソ連軍士官「……同志政治将校、民間人がやって来て同志政治将校に会わせて欲しいと言っているのですが」

ナターシャ「民間人?」

…包囲されつつある市街の命運を暗示するような曇り空のレニングラードには次第に近づいて来るドイツ軍の砲声が遠雷のように響き、街には工場から続々と吐き出される対戦車砲や対戦車ライフル、果ては火炎瓶からあり合わせの即製兵器までが配備され、目抜き通りのあちこちにはバリケードが並べられている…

士官「ダー……忙しい最中だからと言ったのですが」

ナターシャ「それほどまでに私に会いたいとは、よほど重大な事なのだろう……まだ船団は出ないはずだ。 通してやれ、アントーン・イリイッチ」

士官「はっ」

…部下に連れてこられた民間人はやせていて、おびえたような態度をしている……身体にあまり合っていない茶系の背広の胸元には民間人に授与される文化系の勲章をいくつか付けていて、司令部入り口の衛兵や士官たちから門前払いをされなかったのはそのおかげらしい…

ナターシャ「さて。私に用があるそうだが、同志……」

民間人「ニコライ・シモノフです……同志政治将校」軍における恐怖政治の執行者として民間人にも知れ渡っている「政治将校」に対し帽子を脱ぎ、おずおずと手を伸ばして握手する民間人……

ナターシャ「ナターリア・ニコラーエヴナ・クズネツォワ大尉だ、同志シモノフ。 それで、用件とは?」

民間人「はい、実は……」

ナターシャ「……なるほど、市内にある美術館の収蔵品を退避させると」

民間人「ええ……もちろん、開戦してからエルミタージュ美術館を始め、名のある美術品の疎開は続けておりましたが、それでも市内の美術館にはまだたくさんの貴重な品々が残っているのです……同志政治将校、どうか美術品を運び出してもらえないでしょうか?」

…ナターシャのところにやって来た民間人は市内にある美術館の館長で、そこはエルミタージュほど高名でもなければ大きくもなかったが、ナターシャ自身も何回か見学したことのある場所だった……困ったように手をこすり合わせながら、館長はナターシャに懇願した…

ナターシャ「なるほど……話は理解した。 だが、ここを出て行くラドガ湖艦隊の艦艇は軒並み避難民や負傷者で舷側すれすれまで満載だ。 運び出してくれと言われても、そう簡単にはいかない」

館長「むろんそのことは承知しています、同志たちの生命はどんな美術品よりも尊いものです……ですが、このまま人民の宝を戦災にさらしておくなど……」

ナターシャ「ああ、分かった……はしけでも伝馬船でも良いというなら、どうにか用立ててみよう。ただ、ファシスト共の爆撃を受けるかもしれないが……それでも構わないのだな、同志?」

館長「はい、このまま戦火にさらすよりは少しでも可能性のある方に賭けようと思います、同志政治将校」

ナターシャ「いいだろう。では今からラドガ湖艦隊の司令部に掛け合ってみよう、一緒に来てくれ」

…ラドガ湖艦隊司令部…

ソ連海軍士官「……送り出した輸送船の十隻のうち五隻は沈められるような状況で、美術品なんぞに構っている余裕があると思っているのかね、同志政治将校?」

ナターシャ「無論そのことは承知しています。だが美術館の品々も貴重な人民の宝であることを忘れないでいただきたい。ファシストの畜生共にむざむざ破壊されるのを見ているわけにも行きますまい……同志少佐?」政治将校という存在の恐ろしさをにじませるように、階級が上の相手に対してかすかな非難の響きを込める……

海軍士官「……だが、すでに船団の出港準備は整っている。 今から積み込むのでは間に合わない」

ナターシャ「なら次の便で構いません……構わないな? 同志シモノフ?」

館長「ええ、とにかくここから運び出すことさえ出来れば……」

ナターシャ「なら決まりだ。 次の便に載せる美術品を運び出し、埠頭まで持ってくるとしよう……積み込みはこちらで行います。それならばそちらの将兵を使うこともない……よろしいですか、同志少佐?」

海軍士官「ああ、分かった……ただし、どんな事情であれ出港に間に合わなければ置いていく。よろしいな? 同志政治将校」

ナターシャ「結構です、同志少佐。 協力に感謝します。上層部にも同志少佐の「国家の至宝を守ろうとする懸命な判断と献身的な行為」を報告しておきます……では急いで美術館に向かうとしよう、同志」

…十数分後・レニングラード防衛司令部…

士官「同志政治将校!? 先ほどの船団でレニングラードを離れられたのでは!?」

ナターシャ「そうする予定だったが事情が変わったのだ。 急ぎトラック二台と一個分隊を用意しろ」

士官「トラック二台に一個分隊ですか? ……了解、同志政治将校」困惑してすっとんきょうな声を上げたが、じろっとにらみつけられると慌てて敬礼をし、トラックを探しに駆けだしていった……

…数分後…

士官「トラック二台と一個分隊の用意完了です、同志政治将校!」

ナターシャ「結構、良くやった……それでは美術館まで行こう、同志シモノフ」

…しばらくして・市内の美術館…

ナターシャ「これで全部か? 同志?」木箱に梱包されたり筒状の入れ物に収められたりしている様々な美術品をトラックの荷台に詰め込ませると、館長に尋ねた……

館長「はい、最も貴重な物はこれだけです……出来れば全部運び出したいところですが……」

ナターシャ「それは諦めてもらうほかはあるまいな……さぁ、出発しろ!」
880 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/06/20(火) 01:41:27.83 ID:b4svyaCY0
提督「……そんな体験をなさったのですか」

クズネツォワ「ダー……途中でファシストの空襲にも遭ったそうだ」

………



…ラドガ湖…

ナターシャ「……船長、護衛との会同は?」

…ナターシャは戦傷者や難民たちが舷側すれすれまで詰め込まれたおんぼろ砲艦や小型貨物船で編成された船団の一隻に乗り込むと、彼方に霞むレニングラードを見送りながら煙草を吹かしていた……港を出てしばらくすると船員がやって来て、案内されるがままに人混みをかき分け船橋に行くと、もじゃもじゃのあごひげを生やした船長にさっそく尋ねた…

船長「さぁ、ワシには何とも……出港前に聞いた話じゃ空軍が顔を見せてくれるって話ですがね、同志」

ナターシャ「そうか」

…そうは言っても空軍も海軍航空隊も緒戦の奇襲で甚大な被害を受けている以上、まともな援護など期待できない事くらい誰にでも分かりきっていた……それでも、ポリカルポフ戦闘機の一機でもいてくれれば心強い事は確かで、ナターシャは期待するようにちらりと上空へ目をやった…

船長「へぇ。まぁ大したもてなしもできやせんが、どうか少しでも居心地良くしておくんなさい」

ナターシャ「スパシーバ。とにかく頼むぞ」

…ちっぽけな船橋から甲板を見おろすと、美術館の館長から預かった美術品が収まっている船倉ハッチには防水布がかけられ、その防水布の上にも鈴なりに人が座り込んでいる……左右を進む船舶も同じように甲板上に負傷兵や避難民たちが座り込み、何人かの兵士が少しでも気が紛れるようにと、持ち込んだアコーディオンやバラライカを弾いている……と、どこからか蜂の羽音のような単調なエンジン音が聞こえてきた……

ナターシャ「……敵機! 上空にシュトゥーカ!」

…雲間から黒いシルエットが現われ、途端に反転するようにして船団へ向けて急降下をかけてきた……

ソ連兵「敵襲!」

ソ連下士官「アゴン(撃て)、撃てっ!」

…どんな勇敢な兵士でさえも恐怖に耳を塞ぎたくなるという、ユンカースJu−87「シュトゥーカ」が急降下してくるときの甲高い音が鳴り響き、その恐怖に抗うかのようにピストルから短機関銃、重機関銃、即席の砲座に据え付けられた高角砲まで、ありとあらゆる兵器が撃ち上げられる…

船員「爆弾が来ます!」

…通り過ぎる急行列車のような音を立ててシュトゥーカが上空を通過し、同時にすさまじい轟音と水柱を噴き上げ着弾する爆弾……凍るように冷たい飛沫が軍服を濡らし、頭から水が滴る……と、横を進んでいた小型貨物船が黒煙をあげて停止し、別れを告げるような哀れな汽笛の音を響かせながらゆっくりと傾いていく…

ソ連兵B「……可哀想に」

…沈んでいく友軍を助けてやりたいのは誰も同じだが、舷側すれすれまで人と荷物を積み込んでいる船団の船に他の誰かを助ける余裕はない……それでも近くの数隻が減速して幸運な最寄りの十数人を拾い上げ、護衛の老朽掃海艇も無電で救援を要請し、もしかしたらやってくるかもしれない友軍艦艇に浮かんでいる同志たちのことを託した…

下士官「敵機!雲の切れ目から来ます!」

ナターシャ「操縦席を狙って撃て!」

…一機目の投下した爆煙が収まらないうちに二機目が急降下をはじめ、船団めがけて突っ込んでくる……これを迎え撃つ船団では銃座に装備された古めかしい、しかし頼りになる水冷のマキシム機銃が吼えたて、兵士の「モシン・ナガン」小銃やトカレフ・ピストルまで、雑多な銃器が上空のシュトゥーカを狙って弾幕を張る…

ソ連兵C「やった……やった!」

…弾幕のうちの気まぐれな数発が当たったらしくシュトゥーカのエンジンが白煙を吐き、投下した爆弾は輸送船の脇で水柱を上げただけに留まった……シュトゥーカはぐっと機首を上げると、そのまま低く垂れ込めた雲に逃げ込んだ…

船長「やれやれ……」

ナターシャ「ふぅ……どうにかなったな、船長」

………

提督「……大変な経験でしたね」

クズネツォワ「ダー……だが、祖母の経験はそこで終わらなかった」

…一本の煙草を吸い終えると最後の煙を空中に吐き出し、紫煙が空調装置に吸い込まれていく様子をじっと眺めた……煙が完全に吸い込まれるのを見届けると、話の続きを始めた…

提督「まだ他にも経験したのですか」

クズネツォワ「ああ。モスクワで戦況を報告した祖母はしばらくスタフカと前線を行ったり来たりして連絡将校じみた事をしていたそうだが、あるとき能力を買われて次の戦場で兵の督戦と前線の維持を命令されたのだ……場所は42年の冬、スターリングラードだ」

提督「スターリングラード……!」

クズネツォワ「そうだ」
881 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/07/03(月) 01:50:58.48 ID:CkD0yM610
…1942年・スターリングラード…

ナターシャ「……同志諸君、一歩も退くな!ヴォルガ河の後ろに前線はない!」

…腰ベルトのトカレフ・ピストルと柄付き手榴弾、そして肩から「バラライカ」ことPPSh41短機関銃を提げ、防寒用の長い外套を羽織って渡船場の渡り船から降りてくる将兵に声を張り上げるナターシャ……軍の政治将校ならピカピカでもおかしくない制服やブーツは泥とほこりにまみれ、顔も土ぼこりや汚れですっかり黒ずんでいる…

ナターシャ「一人でも多くファシストを撃て! 諸君の家族や故郷のために!」

…ヴォルガ河の渡船を使って次々と送り込まれる兵士たちの群れに向かって、声を張り上げ督戦するナターリア……強大なドイツ軍に対して二人に一人しか支給されない小銃や乏しい弾薬を補うのは、これだけはどうにか毎日欠かさず支給されるウォッカとボルシチ、それに生存本能に根ざした獣のようながむしゃらさだけだった…

ナターシャ「たとえ死ぬとしても、決して無駄死にはするな! 一人でも多くの敵を道連れにせよ!」

…たいていの政治将校が暖房の効いた地下壕でぬくぬくと過ごし、ビラを刷っては口先ばかりの宣伝をひねくり回している間、ナターリアは地面を這いずり埃と垢にまみれ、後方から来る弾薬や、はるばるアメリカから運ばれてくる缶詰といった物資を背嚢に詰め込み、がれきと廃墟の中に陣取る兵士たちへと配って回り、また時には兵士と一緒になって敵の攻撃を撃退したりもした…


…とある防衛拠点…

ナターシャ「……あの建物から敵を叩き出せ!敵の銃撃が収まる瞬間を待って突入する!」

下士官「了解!」

ナターシャ「いいか、私が援護してやるから心配するな。屋内に突入したらひと部屋ごとに手榴弾を放り込め……今だ!」

下士官「よし、突っ込め!」

兵士たち「「ウラー!」」

…ナターリアはドラム型弾倉のPPsh−41短機関銃「バラライカ」を、ドイツ兵の陣取るアパート二階の部屋に向けてバリバリと浴びせる……窓の下までたどり着いた兵士たちが手榴弾や梱包爆薬を投げ込むと爆煙が噴き出し、がれきやセメントの破片がバラバラと飛び散る……そのまま崩れた階段の残骸を使って屋内へと突入する兵士たち…

…数分後…

ナターシャ「……よくやったな、伍長」

下士官「ありがとうございます、同志政治将校」

ナターシャ「礼などいい……諸君も良くやった。これで隣の拠点とも連絡がつくようになるだろう」おそらく今のスターリングラードでは一番のごちそうに数えられるであろう、アメリカ製コーンビーフの缶詰を背嚢から取り出して分隊の兵士に配った……

………



クズネツォワ「そうして一進一退、拠点を奪っては取り返し……祖母はドイツ第六軍が降伏するまで市街を駆け回っては兵を励まし、敵を撃ち、重傷の兵には優しい言葉をかけてやったのだ……いまのヴォルゴグラード(スターリングラード)、ママイェフの丘にある『母なる祖国』像はロシアの大地を表す女神であると同時に、スターリングラードを始め各地で戦った女性の将兵たちや、苦しい戦時下の生活に耐え抜いた女性たちの象徴でもあると祖母は言っていたよ」

提督「あの剣を持った巨大な像のことですね……」

クズネツォワ「ダー……祖母はその後前進を続ける軍と共にベルリンまで戦い続けた。しかし祖母は厳格な人間だったのでな、よく言われるように「略奪した腕時計を両腕にびっしりはめている」ようなこともなかった。家にあったのは当時の捕虜から取り上げたルガー・ピストルくらいなものだった」

提督「すごいお話ですね……まるで歴史書の登場人物のような……」

クズネツォワ「ダー。バーブシュカは戦後もしばらくは将校として務めていたが退役して、私が子供の頃にはすっかり白髪になっていたが……それでも頭は切れるし身体も動くし、かくしゃくとしたものだったよ……その祖母に言われたのだ「泥まみれで埋め草にされる陸軍の兵隊と違って、少なくとも海軍なら乗り物がある」とな」

提督「なるほど、それで海軍に……」

クズネツォワ「ああ、子供のころから聞かされていれば自然とそう思うようになる……あと、祖母いわく「色んな経験をしたが、自慢できるのはムラヴィンスキー指揮のレニングラード交響楽団が演奏するショスタコーヴィチを生で聞けたこと」だとよく言っていたよ」

提督「確かに、それはなかなか機会があるものではないですものね……ところで」

クズネツォワ「なんだ?」

提督「あー、その……ユーリアは音楽を聞きますか?」

クズネツォワ「無論だ。音楽は時に心を駆り立て、時に心を落ち着かせる……モスクワ・ボリショイ劇場の券は年間パスで買っている」

提督「なかなかお好きなんですね」

クズネツォワ「ああ……それでフランチェスカ、君はどうだ?」

提督「私はそんなに裕福ではありませんから……数回だけミラノ・スカラ座に行った事はあります。それに音楽は好きですよ」

クズネツォワ「そうか、例えば誰の曲が好きだ?」

提督「いつもは60〜70年代のカンツォーネを流しているので、クラシックはあまり……でも、母の影響でヴィヴァルディやロッシーニ、ヴェルディ……あとはラヴェルやチャイコフスキー、ビゼーも時々聞きます。もっとも、私の場合は気分に合わせて聞いているだけですので、難しい考証や解説はできませんが……」

クズネツォワ「いや。気分に合わせて難しいことを考えずに聞く、それでいいのではないか? あくまで感性の問題だからな。演奏のテクニックで悩むのは楽士と指揮者だけで充分だろう」抑揚がない感情の薄い声だが、どうやら冗談めかしているらしい……

提督「ユーリアも冗談を言うのですね?」

クズネツォワ「ああ、私にだってユーモアのセンスくらいはある……皮肉というのは言われる側も意味を理解していないと皮肉にならんからな。作品に込めた意図が分からなければ、風刺作家をルビヤンカ監獄に放り込めないだろう?」

提督「なるほど……」実際にそういうことをしそうなクズネツォワだけに、提督も素直に笑えない……
882 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/07/11(火) 01:06:42.53 ID:0ftPuc1q0
クズネツォワ「例えば、そうだな……フランチェスカ、ちょうどこの窓から広場のクリスマスツリーが見えるが、君はサンタクロースのことを信じているか?」窓の外には控え目だが綺麗に飾りつけられた大きなモミの木がそびえていて、街灯の光を受けて静かに輝いている……

提督「サンタクロースですか?」

クズネツォワ「ダー」

提督「そうですね……うちでは子供の頃から好きなものは買ってもらえましたし、私もあんまり欲しがりな子供ではなかったそうなのでそこまでは……親もそういう存在がいることは教えてくれましたが」

クズネツォワ「そうか……実はな、サンタクロースというのはソ連の具現化だと言ったら、どうだ?」ごくかすかではあるが、笑顔のような表情を浮かべてみせるクズネツォワ……

提督「えっ?」

クズネツォワ「考えてもみたまえ……赤色というのはソヴィエトの象徴である色だろう?」

提督「ええ、そうですね」

クズネツォワ「そしてその「赤い」服を着たヒゲのおじさんが、良い子にしていれば「みんなに」「無料で」「公平に」プレゼントを配る……どうだ、誰かを思い出さないか? アメリカ資本主義の代表のような、あの有名なコーラ会社が広告のためにサンタクロースを赤色にしたというのに、その実態はまるでソ連を具現化しているようなものなのだ」

提督「……考えてもみませんでした」

クズネツォワ「ふふ、そうだろうとも」提督の乳房を軽くいじりながら皮肉な表情を浮かべた……

提督「ええ……ところでユーリアのお祖母様は軍の政治将校だったわけですが、お母様はどんな方なのですか?」

クズネツォワ「私の母か? もう辞めてしまったが、母はソ連時代には科学者だった」

提督「なるほど、科学者ですか……しかし、科学の発達というのは目覚ましいものがありますね。近頃は「iPS細胞」というもので、同性間でも子供が出来るようになるとか」

クズネツォワ「ダー。ヤポーンスキ(日本人)の学者が発明したと言うアレだな……もっとも、あれならソ連が数十年は前に開発していたよ」

提督「まぁ♪ くすくすっ、ふふふ……っ♪」

クズネツォワ「おかしいか?」

提督「ええ、だって……ふふ、うふふっ……「それは我がソヴィエトが数十年前に発明していた」はよく聞くジョークですから……ふふふふっ♪」

クズネツォワ「面白がってくれて光栄だが、同志カンピオーニ……現に私がそうなのだ」

提督「うふふふっ……えっ?」

クズネツォワ「年齢のわりに耳が遠いようだな」

提督「あ、いえ……言葉は聞き取れましたが……でも……」

クズネツォワ「にわかには信じがたいか?」

提督「え、ええ……」思いがけない話に困惑して、うまい返事ができない……

クズネツォワ「ま、仕方のない事だな……だが、君も私のミドルネームには気付いていただろう?」

提督「ええ、確かロシアの人はミドルネームに父の名がつくのでしたね……」

クズネツォワ「そうだ。それが私の場合は「両母」の片方、つまり「父親の側」にあたる母の名になっているわけだ」

提督「あー……それは養子ですとか、そういう……?」

クズネツォワ「ニェット(いいや)……私は「ソ連版iPS細胞」の実験で生まれたいわゆる「試験管ベビー」というやつなのだ」

提督「……」

クズネツォワ「どうせだからな、寝物語(ピロートーク)に話すとしよう……」

…箱から煙草を抜き出すと火をつけ、布団をかぶって上半身を起こしている提督の裸身を眺めながらゆっくりと話し始めた……フィンランドの長い長い夜はまだ明ける様子もなく、閉じた窓越しに街灯の明かりと、時折聞こえる車の音や人の声がかすかに室内へと入ってくる…

クズネツォワ「かつてソ連は『大祖国戦争』で多くの人間を徴兵したり動員したりして、そのうちの多くを失った」

提督「ええ……」

クズネツォワ「戦後になってモスクワの首脳部はこう考えた……「大祖国戦争で我々がかろうじて勝利できたのは兵隊の数が多かったからだ。つまり戦争を戦うには人口が多い国が有利だ。それに大祖国戦争で多くの人間を失ったぶん、次代の兵士や学者や労働者になる子供たちもたくさん必要だ」……とね」

提督「……」

クズネツォワ「しかし、いざ戦争ともなれば男は軒並み駆り出されることになるし、そもそも戦後すぐのソ連では男性の数がかなり減っていた……そこで首脳部は「戦場に行くことの少ない女同士で子供を作ることは出来ないか?」と考えたのだ」

提督「当時のソ連にそんな計画が……?」
883 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/07/18(火) 01:47:20.45 ID:svOXb5PM0
クズネツォワ「ダー……詳細はもはや闇の中になってしまったが、基本的にはそういった経緯でフルシチョフのころに研究が開始されたらしい。そして何十年もかかってソ連崩壊の直前、ようやく実用化の目途がついた」

提督「……ええ」

クズネツォワ「そこで研究所としては誰か被験者を探さなくてはならない……とはいえ大祖国戦争を知る世代も減り、当初の目標だった「生産性のある人口の増加」も人海戦術に頼る時代が過ぎていたことから推進する理由が失われていたし、ソ連末期ということで人材を集める資金もなかった。そこで私の「片方の」母、科学者のユーリアが当時親しくしていたバレエダンサーのマリアを口説いて被験体になってもらったのだ」

提督「実験の被験体だなんて、よく了承してもらえましたね?」

クズネツォワ「ああ……当時のソ連では同性愛は違法だったが、ユーリアとマリアはお互いに愛しあっていたからな。マリアが被験体になることで当局に同性同士での「恋愛」や「結婚」を黙認してもらったらしい……」

…1980年代・とある研究所…

研究者「主任、これを……とうとう成功しましたよ!」

ユーリア・クズネツォワ(クズネツォワの母)「ハラショー、実に見事なものだ……皆もよくやってくれた」

…胸元のネームプレートに白衣姿で、鉄縁眼鏡をかけた研究主任のユーリアの元へと集まってくる研究者や技師たち……ラットに犬、そしてとうとうサルでの実験に成功し、みんな科学者らしく冷静さを装いながらも沸き立っている…

研究者B「これで所長にもいい報告が出来ますね」

研究者C「次はいよいよ人体での治験ですか……とはいえここの研究所で被験者を募るのは……」何十年と結果を残せずにいて今ではすっかり後回しにされている研究に、人を募るための予算が回してもらえるはずもない……

ユーリア「そのことだが、治験に応じてくれそうな人間に心当たりがある。所長の許可と被験者の承諾を取るあいだ、諸君は作業を続けてくれ」

…数日後の夜・モスクワ市街…

ユーリア「……遅くなって済まなかった、マリア・ニコラーエヴナ。冷えてしまっただろう?」クレムリンのタマネギ型ドームが建物の狭間から見える橋のたもとで一人待っていたマリアに、自分の不格好な……しかしとりあえずは暖かい厚手のウールコートを羽織らせるユーリア……

マリア「いいのよ、ユーリア……一緒に歩きましょう///」

…バレエダンサーらしい華奢でほっそりとした身体に、青色の涼しげな目元と金色の髪をしたマリア……その柔らかなソプラノで教養のある話をするさまは、さながら乙女の理想像のように見える……薬品で荒れた手に、まるで技術レポートでも読み上げているかのように聞こえる素っ気ない自分の話し方と比較して、なんと対照的なのだろうとユーリアは考えた…

ユーリア「ああ……」

マリア「……それで、話って?」

ユーリア「そのことだが、とりあえず座って話そう」川を望む道端のベンチを見つけた二人……

マリア「さ、座ったわ……話してくれる?」

ユーリア「ああ、そうだな……」

マリア「……言いにくいこと?」下からのぞき込むようにして顔を近づけるマリア……

ユーリア「いや、そういうわけじゃないが……」

マリア「そう……じゃあ話してくれるまで静かに待っているわね」

ユーリア「……」

マリア「……」

ユーリア「……その、マリア」

マリア「なぁに?」

ユーリア「実は、君に頼みたい事がある……」

マリア「頼みたい事?」

ユーリア「ああ。科学の進歩のためにも、君に協力してもらえたらと思っているのだが……」詩的な言い回しや心をとろかすような表現どころか、堅苦しい言い訳しか出てこない自分のセンスに内心でげんなりしながらも切り出した……

マリア「協力というのはお注射でも打つの? それとも何かのお薬でも飲めばいいのかしら?」

ユーリア「それなのだが……手術を伴う可能性がある時間のかかる大がかりな話で、おまけに君の身体にも大きく影響することになる……そして間違いなくバレエダンサーを続けることは不可能になるだろう」

マリア「……ずいぶんと危険な実験のようね? 貴女がそんな実験を行っているのかと考えると心配になるわ」

ユーリア「いや、私は危険でも何でもないんだ……」

マリア「それじゃあ、一体どういう実験なの? それに私でなければならないって……ロケットで宇宙へ行って、そこで『白鳥の湖』のオディールでも踊るのかしら?」

ユーリア「そうじゃないが……実は、私との子供を作って欲しいんだ///」

マリア「えっ?」

ユーリア「その……私の勘違いでないとしたら、君は私に好意を持ってくれているようだし……つまり……///」

マリア「えーと、それって体外受精かなにかの実験っていうこと?」

ユーリア「似ているがそうじゃない。実は……女同士で子供を作る実験なんだ……その、私は君のことが好きだし……実験のためとはいえ、二人の子供ができたらと……///」

マリア「貴女との子供? ……嬉しい、そういうことなら喜んで協力させていただくわ♪」警官に見とがめられないよう、コートの襟を立てて唇にキスをした……

ユーリア「……ありがとう、マリア///」
884 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/07/31(月) 01:57:18.47 ID:0v3FzSsN0
………

提督「そして産まれたのが……」

クズネツォワ「ダー。この私だ……もっとも、私が生まれてすぐに「予算の削減」で実験は中止。それから十年もしないうちにソ連が崩壊して、研究所も実験のレポートも失われてしまったから、今では証明のしようもないがな」肩をすくめてみせた……

提督「そうだったのですか……それで、ご両親は?」

クズネツォワ「今でもモスクワで仲むつまじくやっているよ。マリアの方はサワークリームとマヨネーズ、それにウォッカのせいで太り気味だが……どうだ、寝る前のおとぎ話にはちょうどよかっただろう?」

提督「寝物語どころか、あまりのことにすっかり目が覚めてしまいました」

クズネツォワ「ふふ、まあそうだろうな……吸うか?」

提督「いえ」

クズネツォワ「……では私の方は勝手にやらせてもらうよ」

提督「ええ」

クズネツォワ「済まんな」

提督「……ところで」

クズネツォワ「ん?」

提督「お祖母様の薫陶を受けて軍に入ろうと思ったのは分かりました、でもどうして海軍だったのですか? お祖母様は陸軍配属の政治将校だったのでしょう?」

クズネツォワ「ああ、それもバーブシュカに吹き込まれてだ……」薄い唇に皮肉めいた苦笑いを浮かべて、煙草の煙を吐き出した……

提督「?」

クズネツォワ「さっき話したように私の祖母は大祖国戦争を戦い抜いたが、幼い頃の私をひざに乗せてよく言っていたよ『入るなら海軍に入りなさい』とな……海軍なら歩かされることも、機銃の弾幕に向かって突撃させられることもまずない。行軍に付いていけなくなって置きざりにされたあげく、パルチザンに処刑されることもない」

提督「まぁ、それはそうですが……」

クズネツォワ「それに、海軍こそは世界の覇権を決める力だ……近代以降、戦争に勝った『大国』で海軍が弱小だった国はない」

提督「それは確かですね」

クズネツォワ「ダー。 それに私の祖母は当時の陸軍元帥だの大将だのをよく知っていたからな……ヴォロシーロフにブジョンヌイといった人物たちだが、祖母いわく『馬鹿ばっかりだった』そうだ。 まぁどこにも馬鹿はいるものだが、祖母からすれば海軍は少なくとも陸軍よりマシに見えたのだろう」

提督「なるほど」

クズネツォワ「さて、おしゃべりはこのくらいでいいだろう……時間になったら起こすから、少し寝たらどうだ?」

提督「お気持ちは嬉しいですが、ユーリア……どうせあと数時間でおいとまするつもりですし、街の夜景も見ていたいですから」布団を裸身に巻きつけると、街の景色が見えるように身体を動かした……

クズネツォワ「そうか、なら好きにすればいい」

提督「……ユーリア」冷徹な色をたたえた瞳に、街のクリスマスツリーを彩る電飾や灯りが映って銀河のようにきらめいている……吸い込まれるように顔を近づけ、煙たい味のする唇にそっとキスをした……

クズネツォワ「ん……あれだけして、まだ物足りなかったか?」

提督「いいえ……でもそうやって遠くを眺めているユーリアは、唇を触れあわせておかないとどこか遠くへ行ってしまうような気がして……」

クズネツォワ「ふ、なんともロマンティックなことだな……ローマにいた頃は、そうやってミミ・ステファネッリを口説いていたのだろう?」

提督「!?」情報流出こそなかったとはいえ、ロシアの女スパイに言い寄られた数年前の事件をいきなり持ち出されてびっくりする……

クズネツォワ「驚いたようだな……なに、君と彼女のあれこれは私もよく知っている」

提督「ユーリア、もしかして……?」

クズネツォワ「いいや、その件は私じゃない。ただモスクワのファイルに君の名前があったものでな……なに、心配はいらない」

提督「どこかの情報機関のファイルに自分の名前があるのに、なにが心配いらないんです?」

クズネツォワ「簡単なことだ。君は『女たらしで軍人らしい命令遵守の意識や厳格さにも欠けるが、性格は意外と几帳面であることから有用な情報源たり得ず、かえって工作員の偽装を見抜いたために情報収集活動は失敗した。今後の工作は検挙のリスクが大きいため破棄する』とあったよ……性格診断も含めて、きわめて同感だ」

提督「もう……ちっとも嬉しくありませんよ」

クズネツォワ「そうか? ところでフランチェスカ、君はどうやって彼女の偽装を見破ったのだ?」

提督「ミミのことですか? それなら隠し味にサワークリームを入れるのが東欧風だったので……」

クズネツォワ「ふむ、なるほどな」

提督「……ところで、彼女は無事なんですか?」

クズネツォワ「無事だよ。君に化けの皮を剥がされたおかげでキャリアは棒に振ってしまったが、モスクワで文書読解をはじめとした内勤をしているそうだ」

提督「良かったです」

クズネツォワ「まさか自分のところに送り込まれた工作員の心配をする人間がいるとはな……実に面白い女だよ、君は♪」
885 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/08/08(火) 02:20:21.30 ID:0N3qegzU0
…朝…

提督「送って下さってありがとうございます、ユーリア」

クズネツォワ「ああ。ではな」

提督「はい……カサトノヴァ少佐も」

カサトノヴァ「いえ。それでは」

…黒いメルセデスが走り去るのを見送ると、ホテルに入った提督……エレベーターで泊まっているフロアまで上がると、あくびをしながら部屋のドアをノックする…

フェリーチェ「はい、どなた?」

提督「ミカエラ、私よ……いま戻ったわ」

フェリーチェ「今開けるわ、ちょっと待ってて……」ドアチェーンや鍵を開ける音に続いてドアが開き、フェリーチェが顔を出した……

提督「ただいま、ミカエラ……♪」

フェリーチェ「んっ……お帰りなさい」

提督「ええ。 さ、部屋に入れてくれる?」

フェリーチェ「ええ」

…数分後…

提督「ふー……」

フェリーチェ「さっぱりした? はい、お水」

提督「ありがと」

…昨日着ていたお出かけ用の服を脱いでシャワーを浴び、メイクも落としてさっぱりした気分でベッドに腰かけると、ミネラルウォーターのグラスを受け取った…

フェリーチェ「……結局一晩中帰って来なかったわね」

提督「ええ、クズネツォワ少将が帰してくれなくて……それよりミカエラ、あのイヤリングに仕込んだ盗聴器はいったいなぁに?」威厳のないバスローブ姿ではあるが立ち上がると腰に両手を当て、フェリーチェを問いただした……

フェリーチェ「ああ、あれね……クズネツォワの個人情報を少しでも聞き出せればと思って仕込んだんだけど、やっぱり彼女は一筋縄じゃいかなかったわね」

提督「もう。 貴女は情報部だし、私も多少の事なら協力してあげたっていいとは思っていたけれど……それにしたって何も知らない私をダシにして情報収集なんて人が悪いんじゃない?」

フェリーチェ「あー、事前に教えなかったことは謝るわ。 でも「私をダシにして」に関しては、むしろ「貴女だからこそ」だったのよ」

提督「どういう意味?」

フェリーチェ「本当なら言うわけにはいかないんだけど、貴女も関係者みたいなものだから特別に教えてあげるわ……ま、かけて?」

提督「ええ」

フェリーチェ「情報部としてはね、前々から彼女に目を付けてはいたのよ……冷厳で無慈悲、システマみたいな軍用格闘技に小火器、ヘリや飛行機の操縦も出来て、ロシア語に英語、フランス語もばっちり」

提督「確かにフランス語は上手だったわ」

フェリーチェ「でしょうね……しかしクズネツォワ少将は表向きこそ「海軍少将」とはいいながらも何をしているのかはっきりしないし、あちらの部内で粛正なんかに携わっていたなんていう後ろ暗い噂もあって、こっちとしては彼女の性格や任務に関わる情報なら何でもいいから引き出したかったの」

提督「つまり狼の前に肉の塊をぶら下げてみたわけね」

フェリーチェ「ありていに言えばね。でも、危険性に関しては部内でも十分検討したし考慮されていたのよ。仮にもお互い海軍少将で、プライベートな会話をするだけ……それを盗聴しようとしたからっていちいち相手の首をへし折ったりしていたらかえって大問題になるし、あちらも貴女が「仕込み」であることは分かっていたはずよ……だからこそあのイヤリングに気付いたわけだし」

提督「むぅ……でも、そうは言っても少しくらいは信用して欲しかったわ」

フェリーチェ「それに関しては本当に謝るわ……でも貴女は素直だから、イヤリングの盗聴器を隠しおおせるような腹芸はできないし、ましてや相手はその道のプロだもの、素人芝居で取り繕ったってすぐ見抜いたに違いないの……結局のところ、知らないでいるのが一番良かったのよ」

提督「なるほどね、納得は出来ないけれど理解はしたわ……それにしても、ユーリアってそんなに危険な相手だったの?」会話を思い返してみても色々と常人と違うところはあるが、ユーモアのセンスもあれば人並みに笑うことも出来る彼女が冷酷で無慈悲な人間だとは思いにくい……

フェリーチェ「どうかしらね。危険だって確証が掴めているようならそもそも調べたりはしないし、何より貴女みたいな大事な女(ひと)を送り込むような真似なんてしないわよ」

提督「まぁ、お上手だこと」

フェリーチェ「ま、少なくともクズネツォワ少将に関して言えば「限りなく黒に近いグレイ」ってところね……海軍に所属している形をとって、GRUに籍を置いていないスパイの親玉だとにらんでいるの」

(※GRU…ゲー・エル・ウー。軍の諜報・防諜を担う情報機関。ソ連軍参謀本部情報総局)

提督「GRUって、こっちでいう「AISE」……改編前の「SISMI」みたいな組織でしょう?」

(※SISMI…「Servizio per le Informazioni e la Sicurezza Militare」の略。軍事保安庁。防諜担当のSISDEと対になる情報機関だった)

フェリーチェ「おおかた合ってるわ。まぁ、規模もやり口もAISEよりは数段格上だけれど」

886 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/08/15(火) 01:57:29.95 ID:i4/jssu/0
提督「それにしてもソ連の方がなくなってGRUが残るだなんて、当のロシア人だって思いもしなかったでしょうね」

(※GRUはソ連崩壊後も「ロシア連邦軍参謀本部情報総局」として名前を変え、ほぼ組織を残している)

フェリーチェ「どこでも組織なんていうのはそういうものよ。そしてその血脈を受け継いでいるのがクズネツォワ少将ってわけ」

提督「なるほどね……ところでさっき「後ろ暗い噂」って言っていたけれど、本当にそんな噂があるの?」

フェリーチェ「断定できるようなものは何も……もっとも、ロシアの情報機関は国内での暗殺をいうほどこっそりはやらないけれど」

提督「どうして?」

フェリーチェ「理由は簡単。バレなければそれで結構だけれど、バレたらバレたで「政府に逆らうとこういう目に遭うぞ」って脅しに使えるのよ。むしろわざとバレるようにやる場合さえあるわ」

提督「……」

フェリーチェ「それで、彼女が関わっていると思われるケースはというと……」

提督「なんだか聞かない方が良さそうな気がしてきたわ」

フェリーチェ「ご冗談、彼女とベッドを共にしてきた勇気があるんだから大丈夫よ……最初が軍内部でクーデターを画策したと思われる陸軍高級将校の不審な事故死」

提督「事故死?」

フェリーチェ「ええ。入浴中、バスタブに落ちたドライヤーで感電」

提督「それなら普通にあってもおかしくはなさそうだけれど?」

フェリーチェ「それだけならね。ただ、その高級将校はガラス玉そこのけのつるつる頭なのよ……ドライヤーで胸毛でも乾かしていたっていうのなら話は別だけれど」

提督「なるほど……」

フェリーチェ「それから兵器の横流しをしていたとある補給所長。公的な記録によると「ウォッカの飲み過ぎで吐瀉物を喉に詰まらせ」となっているんだけれど、調べたところによれば、その汚職軍人はアルコールが飲めるほうじゃなかったのよ」

提督「ロシアにもお酒が飲めない人がいるのね」フェリーチェから明かされた情報の多さに戸惑い、とんちんかんな感想を漏らす提督……

フェリーチェ「そりゃあいるわよ……他に関与が疑われているものが二、三件あるけれど確証はなし。ただいずれも軍内部の粛清に限られているわ」

提督「だからってちっとも安全になった気がしないのは私だけ?」

フェリーチェ「大丈夫よ。こういう探り合いはお互いにやっていることだから……なんなら経歴をファックスで送るように頼んだっていいくらいよ」

提督「私には縁のない世界だわ」

フェリーチェ「貴女は素直過ぎるもの……とにかくお疲れさま。刺激的な一晩だったでしょう?」

提督「刺激的すぎてくたびれちゃったわ……少し眠るけれど、支度をする時間になったら起こしてね?」

フェリーチェ「ええ……私は報告を書き上げちゃうから、その間ゆっくり寝てて」

…コンピュータを立ち上げ、カタカタと文書を打ち始めるフェリーチェ……普段は好ましく感じている、個人的にされた話やプライベートに関わることを胸の内にしまっておける提督の義理堅さを厄介に思いながらも、会話の間に忍ばせていた質問や裏を取りたい事項で分かった部分をまとめていく…

提督「すぅ……すぅ……」

フェリーチェ「ふふ、子供みたいなあどけない寝顔をしちゃって……♪」

…まだ曙光がおとずれない窓を眺めやりながら文書を叩き、出来上がった文書はロックと暗号化を行ってUSBメモリに保存し、ラップトップから外すとドッグタグ(認識票)のように首からかけた……それも懇談会に出る前には大使館で本国に送信してもらい、メモリ自体は消去してもらう…

フェリーチェ「……これでよし、と」

………



…数時間後…

フェリーチェ「フランチェスカ、そろそろお目覚めの時間よ」

提督「んんぅ……おはよう、ミカエラ♪」

フェリーチェ「ええ、おはよう……もっとも、もう「おはよう」の時間でもないけど」

提督「懇親会まであとどのくらい?」

フェリーチェ「二時間はあるわ。それだけあれば十分に支度できるでしょ」

提督「ええ。こればっかりは士官学校の教育に感謝しないと♪」

フェリーチェ「言えてるわ」
887 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/08/20(日) 01:38:24.41 ID:I2vJbfKD0
…午前中…

ニッカネン「カンピオーニ少将にフェリーチェ大尉、ご機嫌いかがですか」

提督「ええ、おかげさまで元気です」

フェリーチェ「私もです……会議が無事に終わってよかったですね」

ニッカネン「それもお二人がオブザーバーとして参加くれたおかげです。今日はもう話し合うこともありませんし、細かい手続きは事務方のほうで詰めてくれる手はずになっておりますから、お二人の行きたいところがあればご案内しますよ」

提督「それは楽しみですね……フェリーチェ大尉、貴女は?」

フェリーチェ「はっ、私は……」

クズネツォワ「おや、カンピオーニ少将にフェリーチェ大尉」

提督「あら、クズネツォワ少将」

クズネツォワ「おはよう……いや、もう「こんにちは」だな」

提督「そうですね、この時期のフィンランドは昼間が短いので分からなくなりそうですが」

クズネツォワ「イタリア人の君からすればそうかもしれないな」

提督「ええ……ところで、何か私に用がおありでしょうか?」

クズネツォワ「ダー。君は昨晩、私の部屋に忘れ物をして行っただろう。それを返しに来たのだ……ほら」そういって盗聴器入りの真珠のイヤリングを取り出し、提督の手に載せた……

ニッカネン「カンピオーニ少将? 昨夜はクズネツォワ少将の宿泊しているホテルで一晩お過ごしになったのですか……?」

提督「あー……それは、その……会議の内容について少々質問があるからと……で、夕食をご一緒したのですが遅くなってしまったので、そのまま……///」

ニッカネン「……そうですか、なるほど」頬を紅くしてしどろもどろな返事をする提督に醒めた視線を向けるニッカネン……

クズネツォワ「とにかく、これはお返しする……ああ、それとフェリーチェ大尉」

フェリーチェ「何でしょうか」

クズネツォワ「いや、聞くところによるとこのイヤリングは君からカンピオーニ少将への個人的なプレゼントだそうだな……実に素敵な品物だ」

フェリーチェ「恐縮です」

クズネツォワ「いや、なに……ところで一体どこに行けばこういったものが手に入るのか、非常に興味があるのだが」

フェリーチェ「そうですか? てっきりモスクワにもこうした品物を扱う店は数多くあると思っておりましたが」

クズネツォワ「ふむ、そうだな……とにかく、今後はこういったことがないようにした方がいいだろう」

フェリーチェ「そうですね。アクセサリーを置き忘れたり、うっかり水の中に落としたりしないよう気を付けたほうがいいでしょうね」

クズネツォワ「そうだな……では失礼する」

フェリーチェ「……ふー」

提督「ミカエラ、あれって……」

フェリーチェ「ええ、クギを刺しにきたの……さすがに正面切って顔を合わせると肝が冷えるわ」

ニッカネン「クズネツォワ少将は一筋縄で行くような人物ではないと噂に聞きます。十分ご存じのこととは思いますが……」

フェリーチェ「ええ、ありがとうございます。ですがいつかは誰かが「猫の首に鈴」をつけなければなりませんから」

提督「あれはどちらかと言えば猫と言うよりはアムールトラだけれど……」

フェリーチェ「それでも貴女からすれば「ネコ」なのは同じ……でしょ?」

提督「ノーコメント」

ニッカネン「カンピオーニ少将? まさかとは思いますが……」

提督「……クリスティーナ。制服を着ていない時の私の行動についてはしゃべらない自由もあるはずよね?」

ニッカネン「ええ、もちろん」

提督「ならそういうことで……ね?」

ニッカネン「分かりました……話を戻しますが、市街散策などいかがでしょうか」

提督「ええ、ぜひ……せっかくクリスティーナが誘ってくれたんですもの♪」後半は耳元に口を寄せて、甘い声でささやいた……

ニッカネン「……はい///」

888 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/08/28(月) 02:50:35.30 ID:J4WEynrY0
…軍事博物館…

ニッカネン「……軍人としては光栄ですが、せっかくの自由時間に訪問するのがこのようなお堅い施設で良いのですか?」

提督「ええ。ヘルシンキ旧市街も素敵だけれど、初日にある程度は回ることが出来たから……それに、色々と用意してくれているのでしょう?」

ニッカネン「それはもう……といっても、実銃の試射くらいしか出来ませんが」

提督「それだけ体験できれば充分よ♪」

フェリーチェ「何しろフランチェスカは射撃が趣味だから……普段は大きい音が嫌いなくせにね」

提督「だって、自分が撃っている間は気にならないもの♪ よいしょ……っと」

…制服を汚さないようにと用意してもらったフィンランド軍の野戦服に着替えると、博物館の館長を兼ねている予備役少佐の解説を聞きながら、戦中・戦後のフィンランド軍が使ってきた多種多様な兵器を観察して回る……冬戦争や継続戦争で改造をくり返しながら戦力として役立ててきたそれらの兵器は、提督にとってなじみ深いイタリアの兵器を始めドイツ、スウェーデン、あるいはイギリス、フランス、はたまたポーランドといったものから、ある意味では主力とも言える鹵獲品のソ連製までさまざまで、どれもよくレストアされ、きちんと管理されている…

ニッカネン「これは対戦車砲の牽引などで活躍したソ連製のT−20「コムソモーレツ」小型トラクターです」

提督「可愛らしいトラクターね。マリー……フランス海軍の友人の鎮守府にあった「ルノーUE」やイギリスの「ブレンガン・キャリア(ユニバーサル・キャリア)」、あるいはイタリアのL3「カーロ・ヴェローチェ」を思い出します」

ニッカネン「そうですね。性格としては「カーデン・ロイド」豆戦車から発展した一連のシリーズによく似ています……」と、館長が何やらニッカネンに話しかけた……

ニッカネン「カンピオーニ提督……いま館長が「せっかくですから屋外射撃場までこれに試乗していきませんか?」と申しておりますが」

提督「よろしいのですか? では、お言葉に甘えて♪」

…屋外射撃場…

提督「あいたた……お尻が痛くなっちゃったわ。それにエンジン音も結構大きかったし」

…提督たちは「コムソモーレツ」の後部にある開放型の木製シートに腰かけて屋外射撃場までやって来たが、足回りはごくあっさりした構造なので地面の起伏に合わせてガタンゴトンと派手に揺れ、エンジンの排気がもうもうと立ちこめた……よいしょと脇に降りても、まだ身体の中に振動が残っている気がする…

フェリーチェ「乗ってみたいと言ったのは貴女でしょうが」

提督「まぁね……こういうのもいい経験よね♪」

ニッカネン「あまり乗り心地がいいとは言えなかったと思いますが……大丈夫でしたか」

提督「ええ、大丈夫よ」

ニッカネン「それなら良かったです……では、こちらがカンピオーニ提督に体験していただく銃です」屋外射撃場の台の上には、現用のものからクラシカルなものまで、数種類の軍用銃が並べてある……

提督「こんなにたくさん用意して下さって、ありがとうございます」英語とつたないフィン語のちゃんぽんで、博物館の職員にお礼を言う提督……

館長「いえ、興味を持っていただいて嬉しいですよ……どうぞ一通り試してみて下さい」他のレンジには現役下士官らしい数人が入っていて、集中した様子で爽やかな森の中にある的に向けて射撃練習をしている……提督は耳当てを受け取ると館長から一通りの操作手順を聞いて、一挺を手に取った……

ニッカネン「それは「スオミ・KP31」短機関銃です。ソ連の「バラライカ」ことPPSh−41短機関銃に似ていますが、登場したのは1931年ですから、こちらの方が先ですね」

提督「なるほど……すごくずっしりしていますね」木製ストックにドラムマガジンのついたクラシックな造りの短機関銃は「ベレッタM12S」や「フランキLF57」といった短機関銃どころか、提督が士官学校で扱ったことのある「ベレッタBM59」自動小銃と比べても重く、がっちりしている……手に軍用の防寒ミトンをはめて耳当てを付けると、射撃場の的に向かって銃を構える……

館長「では、いつでもどうぞ」

提督「ええ……撃ちます」

…射撃時にボルトと連動しないよう独立している槓桿(コッキングハンドル)を引いて初弾を送り込むと、引き金を引く……途端に銃口から「バリバリッ……!」と威勢良く9×19ミリの銃弾が撃ち出され、硝煙が立ちこめる……弾倉を含めた銃の自重がたっぷり7キログラム近いこともあって跳ね上がりはほとんどなく、腕が抜けそうなほどの自重を除けば素直によく当たる…

提督「なるほど……重い分だけ跳ね上がりが少ないですね」

ニッカネン「その通りです。それに本来この銃は短機関銃というよりは、スキー部隊が奇襲の際に使う「9ミリ口径の軽機関銃」といった扱いでしたから……とのことです」

提督「そう考えると納得ですね……それから、これは「ヴァルメRk62」ですか」

ニッカネン「ええ、フィンランド軍の現用自動小銃です。操作系はAK……つまりカラシニコフ突撃銃と同じです」

提督「なるほど、海軍士官学校では東側の銃器を扱う事がないので興味深いです」

…ある程度聞きかじりの耳学問でカラシニコフの操作手順は知っていたが、実際に手に取るとフィンランド軍が信頼するその頑強さがよくわかる……その上でヴァルメ62にはフィンランドらしい実用性に優れたアレンジが加わっていて、とても頼もしい一挺に仕上がっている…

館長「どうぞ、ご自由に撃ってみて下さい」

提督「……撃ちます!」ダダッ、ダダッ、ダダッ!

ニッカネン「いかがですか」

提督「そうですね、思っていたよりはマイルドでしたが……何しろ最近撃った銃と言えばショットガンかピストルがせいぜいだったので、少し苦戦しました」弾倉を抜いて薬室の弾をはじき出すと、苦笑いを浮かべて台に置いた……

ニッカネン「少将はそうおっしゃいますが、館長は「大変お上手だ」と言っていますよ」

提督「ふふ、そう言われるとお世辞でも嬉しいですね……せっかくですから残りの銃も試させて下さい♪」すっかり乗り気になっている提督と、熱心に話を聞き感想を述べてくれる提督に嬉しくなって、あれもこれもとコレクションを持ち出してきた館長……

フェリーチェ「やれやれ、これは長くなりそうね……」

ニッカネン「でも、喜んでもらえたようで良かったです」

フェリーチェ「……まるでクリスマスプレゼントをもらった子供みたいにね」
889 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/09/11(月) 01:01:00.15 ID:vcNtmlmO0
…昼食後…

提督「はぁ……美味しい」

ニッカネン「……午前中は射撃を楽しんでもらえたようで何よりです」

提督「ええ、おかげでとても貴重な経験が出来たわ♪」ヘルシンキ市内の老舗レストランで昼食をとり、食後のコーヒーを楽しんでいる提督たち……

フェリーチェ「博物館の館長とずいぶん小火器談義に花を咲かせていたものね……」

提督「だって、なかなかフィンランドの銃を手にする機会なんてないもの……クリスティーナには苦労をかけたわ」

ニッカネン「いえ、そんな……///」

フェリーチェ「こほん……ところでニッカネン少佐」提督がニッカネンに対してテーブル越しに微笑みを向けているのをみて、横合いから声をかけた……

ニッカネン「あぁ……はい、なんでしょう」

フェリーチェ「午後のスケジュールですが、このまま旧市街の散策と言うことでよろしいでしょうか」

ニッカネン「はい、そのつもりです」

フェリーチェ「分かりました」

提督「なぁに? もしかしてまた用事?」

フェリーチェ「いいえ。済ませるべきものはすっかり済ませたわ」

提督「なら心おきなく街歩きが楽しめるわね?」

フェリーチェ「美人を見るとすぐフラフラとどこかに行ってしまう、どこかの誰かさんのお守りさえなければね」

提督「誰の事かしら?」

フェリーチェ「その大きな胸に手を当てて考えてみることね」

提督「……私の胸がどのくらい大きいか、ミカエラはよくご存じだものね♪」フェリーチェの耳元に顔を寄せ、いたずらっぽくささやいた……

フェリーチェ「まったく、相変わらずよく口が回ること……」

…数分後…

ニッカネン「あの、カンピオーニ提督。一つお願いがあるのですが……」コーヒーも飲み終わりかけたころ、ニッカネンが遠慮がちに切り出した……

提督「ええ、どうぞ?」

ニッカネン「申し訳ありません……その、硬貨を貸していただけませんか?」

提督「硬貨ですか? 少し待って下さいね……」制服のポケットに入れてある革の小銭入れを取り出すと、中をかき回した……

提督「はい、ありましたよ」五ユーロ硬貨を取り出すと、包み込むような手つきでニッカネンの手のひらに載せる……

ニッカネン「ありがとうございます」

提督「いつでもどうぞ……でも、どうして硬貨を?」

ニッカネン「えぇと……実はその、これを///」いま提督が渡したばかりの硬貨を添えて、小ぶりな長方形の包みを手渡す……

提督「あら、そんな……わざわざプレゼントを?」

ニッカネン「ええ……せっかく出会えたのですし、もらっていただけると嬉しいです///」

提督「ありがとう、クリスティーナ……開けてもいいかしら?」

ニッカネン「どうぞ、ぜひそうしてください」

提督「何かしら……まぁ♪」

…包み紙をめくってニスを塗った飾り気のない、しかし丁寧に作られた箱を開けると、中には一振りのフィンランド・ナイフが収まっていた……フィン語で「プーッコ」と呼ばれる、つばのないシンプルな片刃のナイフは峰の方に向けて刃が反っている……柄はしっかりした角製で、刃渡りはだいたい十センチあまり……握ると角製の柄が持つ表面のでこぼこが滑り止めの役目を果たしていて、刃と柄のバランスもちょうどいい…

ニッカネン「その、どうでしょうか……///」

提督「ええ、とっても嬉しい……それに、フィンランドでナイフを贈られるのはとっても名誉な事だって聞いたことがあるわ」

ニッカネン「ご存じでしたか」

提督「ええ」

ニッカネン「……その、最初は別のものにしようかとも思ったのですが……私は化粧品や服など詳しくないですし……それならいっそ実用として使えるものの方が良いかと思いまして、それで……柄は私が仕留めたトナカイの角を使っています///」

提督「そんなにしてくれて嬉しいわ、クリスティーナ……それで硬貨が必要だったのね♪」

ニッカネン「ええ、昔からあるしきたりですので」

提督「ありがとう、大事に使わせてもらうわ」
890 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/09/21(木) 01:42:40.22 ID:GpOw/6mp0
…出張最終日…

フェリーチェ「今日で帰国だけど、出張はどうだった?」

提督「そうねぇ。短かったようで長かったような、長かったようで短かったような……とにかく今は鎮守府に戻って、ベッドでゆっくりしたいわ」

フェリーチェ「ふっ……相変わらずね、そういうとこ」

提督「仕方ないじゃない、そういうふうに出来ているのよ」

フェリーチェ「買い物は済んだ? 荷物は詰めた?」

提督「ええ。鎮守府に戻ってすぐ渡したいお土産はトランクに詰め込んで、あとのものは航空便で送るわ」

フェリーチェ「ま、そうなるでしょうね……そろそろ時間よ、行きましょう」

…ヘルシンキ空港・第二ターミナル…

ニッカネン「……それでは、よい空の旅を」

提督「お見送りありがとう、クリスティーナ……クリスマスにはメッセージを送るわ♪」親しみを込めて腰に腕を回し、唇に優しくキスをした……

ニッカネン「はい、楽しみにしています……///」

フェリーチェ「カンピオーニ少将」まるで生ゴミに呼びかけるような口調で声をかける……

提督「あら、何かしら?」

フェリーチェ「そろそろチェックインの時間です」

提督「まぁ……クリスティーナ、せっかく仲良くなれたのに離ればなれになるのは辛いことだけれど、寒い冬もいつか終わって春が来るように、私たちもきっとまた逢えるときがくるわ」

ニッカネン「ええ、そうですね……」

提督「それに別れは辛いけれど、淋しくはないわ……だってクリスティーナ、私には貴女がくれたプーッコ(フィンランドナイフ)があるもの。猟で使うたびに、刃を研ぐたびにきっと貴女の事を思い出すわ」

ニッカネン「そうあってくれれば嬉しいです」

提督「ええ、もちろん。それから、今度は貴女がイタリアへいらっしゃいな……ローマの遺跡や美術館、博物館に美味しいもの……案内したいところがたくさんあるわ♪」

ニッカネン「機会が出来たら、ぜひそうします」

提督「それじゃあ、その時を楽しみにしているわね♪」もう一度ほっそりした身体を抱きしめ、唇に音立てて口づけする提督……

女性グラウンドパーサー「あの、お客様……」ブロンドの髪をしたフィンエアーのグラウンドパーサーが声のかけどころに困りつつ、フェリーチェにそっと呼びかける……

フェリーチェ「ああ、すぐに連れて行きますから……フランチェスカ」

提督「それじゃあまた会いましょうね、クリスティーナ……チャオ♪」最後に少し気取って飛びきりのウィンクと、人差し指と中指での投げキッスを送ってゲートをくぐった……

ニッカネン「……チャオ、フランチェスカ///」

…ローマ・フィウミチーノ空港…

提督「うーん……懐かしのローマ、この空気や喧騒さえも懐かしい気がするわ」

フェリーチェ「たった数日の出張でそれじゃあ困るわね……それととりあえずはここでお別れ。私は情報部に寄って成果の引き渡しと任務報告(デブリーフィング)を済ませなきゃいけないから」

提督「今から?」

フェリーチェ「ええ、そうよ」

提督「もうクリスマスも近いのに?」

フェリーチェ「情報部にはクリスマスも週末もないの」

提督「……私にはついて行けそうにないわ」そう言うと驚いたような表情をつくり、大きく肩をすくめてみせた……

フェリーチェ「ついて来いなんて言った覚えはないわよ……はいこれ、グロッタリーエ空軍基地までの搭乗許可書」

提督「グラツィエ、ミカエラ」

フェリーチェ「いいのよ……それと明後日にはタラントの管区司令部で貴女への聞き取りを行う予定だから、今のうちに想定問答でも考えておく事ね」

提督「考えただけでげんなりするわ……」

フェリーチェ「バカ言わないでよ。本当なら貴女にもこのままスーペルマリーナ(海軍総司令部)までついてきてもらって、情報部の担当者から半日はあれこれ聞かれるはずなんだから……これでもずいぶんと大甘なのよ?」

提督「それもそうよね、まさか官費で北欧旅行を楽しませてくれるはずはないし……貴女が手心を加えてくれたのよね、ありがと」

フェリーチェ「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)……これもしばらく同棲していたよしみと、私からのささやかなクリスマス・プレゼントってことで」

提督「嬉しいわ……それじゃあ、またね♪」

フェリーチェ「ええ」
891 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/09/28(木) 01:55:50.76 ID:fWeSDmOH0
…しばらくして・提督執務室…

デルフィーノ「はい、こちらタラント第六鎮守府です」

提督「チャオ、デルフィーノ♪ 私だけれど、聞こえる?」

デルフィーノ「提督っ♪ もうイタリアですか?」

…提督の留守中、交代で執務室に詰めていた艦娘たち……電話が鳴った時にいたのは現「秘書艦」の片方である中型潜「デルフィーノ」で、イルカの艦名に似つかわしい濃灰色のピッタリとしたセーターと白いスラックスのツートンで、受話器越しに聞こえる提督の甘い声を聞くと喜びのあまり腰を浮かせた…

提督「ええ、いまフィウミチーノから電話をかけてるの。順調に行けば……そうね、1600時ころにも帰れると思うわ」

デルフィーノ「わぁぁ、嬉しいですっ♪ なにか用意しておきましょうか?」

提督「そうねぇ……とりあえずはふかふかのベッドとたっぷりの夕食、それに温かいお風呂かしらね」

デルフィーノ「はい、全部用意をしているところですよ」

提督「グラツィエ、みんな気が利くわね。それじゃあ……」

デルフィーノ「?」

提督「……早く貴女の可愛い顔が見たいわ♪」

デルフィーノ「あぅ、提督……っ///」

提督「ふふっ♪ それじゃあできるだけ早く帰るようにするから……飛行機の時間が近いから、またね?」

デルフィーノ「はい……っ///」ガチャリと受話器を置くと、赤くなった頬に手を当てた……

アッチアイーオ「……電話が鳴ってたみたいだけど、提督から?」ともに秘書艦を務めている中型潜「アッチアイーオ」が、帰りに備えてベッドを整えていた提督寝室から顔を出す……

デルフィーノ「そう、提督から……///」

アッチアイーオ「それで? 思わずあなたが濡らしちゃうような口説き文句以外に何か言ってた?」

デルフィーノ「は、恥ずかしいからやめてよぉ……///」

アッチアイーオ「周知の事実を今さら隠し立てしたって無駄なのよ……いいから「なにが欲しい」とか「なにがしたい」とか、あったでしょ?」

デルフィーノ「それなら「夕食とお風呂、それにベッドの用意をしておいて」って」

アッチアイーオ「ならどれも準備万端ね……いつ頃戻るって?」

デルフィーノ「1600時には戻れると思うって」

アッチアイーオ「そ、ならみんなにもそう言っておかないと……」

…夕方…

提督「……すっかり遅くなっちゃったわね」

…グロッタリーエ空軍基地の駐車スペースに預けておいた「ランチア・フラミニア」を受け取ると、受付の下士官に「早めのクリスマスプレゼントよ」と、ヘルシンキで買ったチョコレートの大袋を渡してきた提督……と、そこまでは良かったが、道中でちょっとした渋滞に巻き込まれてしまい、抜け出して鎮守府への道を飛ばしている間にも、日がどんどん傾いていく…

提督「焦らない焦らない……せっかちは事故のもと」そう自分に言い聞かせながらも足は自然とアクセルを踏みこみ、大柄だが走りのいいランチアはカーブの多い海沿いの道をクリアしていく……

提督「…」ちらりとメーターに目をやり、少し速度を落とした提督……それでもランチアの走りを信頼して、時速80キロは充分に出している……

…夕暮れ時・鎮守府…

提督「はぁ、急いでは来たけれど一時間は遅くなっちゃったわ……」暗証番号を打ち込んで正面ゲートを開け、鎮守府の本棟にゆるゆるとランチアを進ませる……と、本棟の前に集まっている艦娘たちの姿が見えた……

艦娘たち「「お帰りなさい、提督!」」

提督「ただいま、みんな……寒いのに表で待っていてくれたの?」

リットリオ「当たり前じゃないですか♪」

カヴール「皆、提督のお帰りを首を長くして待っておりましたよ……長旅お疲れさまでした」

アッチアイーオ「それにしても、遅れるなら遅れるって連絡しなさいよ……心配したんだから///」

ルチア「ワンワンッ!」

提督「ごめんなさいね、道路で渋滞につかまっちゃって……」

ライモン「……お帰りなさい、提督。 わたし、提督が帰ってくるのを待っていました///」恥ずかしげに提督の頬へ軽いキスをしたライモン……

提督「ええ、ただいま……♪」

892 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/10/04(水) 01:52:33.01 ID:pkZtqh5L0
マエストラーレ「提督、提督っ♪」

オリアーニ「なんだか久しぶりな感じ……ね、キスして?」

ルビノ「早く提督の熱い唇をちょうだい……っ♪」

提督「もう、焦らなくたって私はいなくなったりしないわよ?」そう言いながらも、挨拶代わりにキスをして回る提督……

カラビニエーリ「こら、そんなにまとわりつかれたら提督が歩きにくいでしょうが」

提督「いいのいいの、むしろ出張から帰ってきただけなのにこんなに歓迎してくれて嬉しいくらい……カラビニエーリもいらっしゃい♪」

カラビニエーリ「そ、それじゃあお言葉に甘えて……///」

リットリオ「提督っ、私もいいですか♪」

提督「もちろん♪」

…年相応の女の子のようにきゃあきゃあと笑いさざめきながら、鎮守府のこまごました出来事や面白かった出来事を一斉に話す艦娘たち……提督は辺りに笑顔を振りまきながら相づちを打っていたが、玄関ホールまで入った所で軽く手を鳴らした…

提督「はいはい、そう一斉に話されたら何が何やら分からなくなっちゃうわ。 それに荷物も降ろしたいし、続きは夕食の後にでもゆっくりと……ね?」

カヴール「そうですね、暖炉の前でゆっくりワインでもいただきながら……ということにいたしましょう♪」

ライモン「では、荷物はわたしが……」

提督「ありがとう、ライモン」

デルフィーノ「お部屋の用意は済ませてありますよ」

提督「助かるわ。 正直、ちょっと疲れちゃったもの。お風呂をいただいてさっぱりしたら夕食にするわ……みんなはもう夕食を済ませたの?」

ドリア「いいえ。みんな「提督が帰ってくるまで待とう」と……保温容器に入れてありますから、まだ熱いままですよ」

提督「そんな、わざわざ待たなくても良かったのに……それじゃあお風呂でほこりを流してくるから、もう少しだけ待っていてちょうだいね?」

…大浴場…

提督「はぁぁ……♪」

…古代ローマ風の豪奢な浴槽に「ちゃぽん……」とつま先から脚を入れ、それから滑り込ませるようにして身体をお湯に沈めた提督……鎮守府の温泉は裏手に湧いている源泉の具合によって泉質が多少変化するが、今日はほのかな緑白色をしていて、誰かにそっと抱きしめられた時のようにじんわりと温かい…

アッチアイーオ「……提督、せっかくだから洗ってあげましょうか?」

…暖かければ暖かいほど柔らかくなり、冷えるとツンとした態度、さらに寒くなるとすっかり心がもろくなってしまうアッチアイーオ(鋼鉄)……今は結い上げた髪にタオルを巻いた姿で提督の横に腰かけ、ガンブルーを思わせる艶やかな黒い瞳をちらちらと提督の裸身に走らせている…

提督「そうねぇ、それじゃあお願いしようかしら……」

アッチアイーオ「分かったわ、それじゃあ私が流してあげる♪」

…浴槽から出てカランの前に座った提督の後ろに回るとご機嫌な様子でシャンプーを取り、提督の髪を洗い始めた……ほっそりした、しかし意外なほど力のある指が心地よく頭皮を撫で、提督の腰まである長い髪をていねいに梳いていく……お湯を含んでずっしりとした髪に甘いシャンプーの香りが絡みつき、アッチアイーオの指が滑っていくたびに心地よい刺激が伝わってくる…

アッチアイーオ「それじゃあ、流すわよ……熱くない?」

提督「いいえ、ちょうどいい具合よ……こんなに気持ち良いと眠くなってきちゃうわね」

アッチアイーオ「だからってここで寝ないでよ?」

提督「ええ、そうするわ」

アッチアイーオ「はい、おしまい……次は身体を洗ってあげる///」

提督「それじゃあ前は出来るから、背中をお願いしようかしら」タオルで頭をまとめ上げると、豊かな胸からほどよくくびれたウエスト、そしてむっちりしたヒップへと続く白く滑らかな背中があらわになる……

アッチアイーオ「え、ええ……///」何度かベッドを共にしたことがあるとはいえ、明るい大浴場でしげしげと眺めるのは少々気恥ずかしい……

提督「アッチアイーオ?」

アッチアイーオ「ううん、何でもないわ……」スポンジでもこもことせっけんを泡立てると、ふわっと花束のような甘い香りが立ちのぼった…肩甲骨から下へ向かって、柔和なラインを持った提督の背中にスポンジを走らせると、まるで愛撫しているような気分になってくる……

提督「あ…そこ、気持ちいい……んっ♪」

アッチアイーオ「そ、そう?」提督が発する甘い声にドキリとして、返事がついうわずってしまう……

提督「……ねえ、アッチアイーオ♪」

アッチアイーオ「な、なに?」

提督「なんだか億劫になっちゃったから、前もお願いできるかしら……♪」鏡越しにアッチアイーオの表情を見ると、提督の金色の瞳にいたずらっぽい…そしてどこか甘くいやらしい光を宿すと、からかうような…あるいは誘うような声を出した……

アッチアイーオ「べ、別にいいけど……?」

提督「ならお願いするわ、戻ってくるときに急いだりして結構汗ばんじゃったから……丹念にお願いね♪」

アッチアイーオ「……っ///」
893 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/10/09(月) 02:35:18.96 ID:T5P3BkAm0
…しばらくして・食堂…

アラジ「……ずいぶん遅かったね?」

アッチアイーオ「///」

提督「そうね、なにしろ髪が長いものだから♪」

…まだ余韻を残しているようなアッチアイーオが顔を赤くしてそっぽを向いたのに対して、にこやかに微笑みながらさらりと言い逃れをする提督……もちろん察しのいい一部の艦娘たちにそんなありきたりな嘘が通用するわけもないが、恥ずかしげなアッチアイーオのためについた言い訳であることを分かってほしいという含みを持たせた…

ドリア「そうですね、チェザーレも髪を乾かすとなると大騒ぎですし♪」口元を手で押さえてころころと笑いながら、髪にうるさいチェザーレを引き合いに出してからかった……

チェザーレ「む、それは致し方あるまいが……」

ディアナ「さあさあ、提督もお腹を透かしていらっしゃるのですから……まずは夕食にいたしましょう」

リベッチオ「賛成っ♪」

提督「そうね、お風呂に入ってさっぱりしたらお腹が空いてきたわ♪」

…すっかりクリスマスムードの食堂で楽しげにしている艦娘たちを眺めつつ、定位置に腰かけた提督……最初は遠慮していたが周囲にやいのやいの言われて横に座ったライモンが、グラスに白ワインを注いでくれる…

カヴール「では改めて……お帰りなさいませ、提督♪」

提督「ええ♪」

…ディアナは旅の疲れで食欲が出ないだろうと気を利かせてくれていて、テーブルには家庭的なミネストローネ、それと作り置きの野菜マリネや牛の生ハムスライスといった、さっぱり食べられるものが並んでいる…

ディアナ「いかがでございましょう?」

提督「ええ、とっても美味しいわ……♪」すっきりと飲み口のいいシチリアの白ワインをお供に、暖炉の火がかもし出す暖かな雰囲気の中で艦娘たちとゆったり食事をとる……

ライモン「もう少しいかがですか、提督?」

提督「ありがとう。ライモン、ところでワインをもう少しいかが?」

ライモン「ええ、それじゃあ半分ほど……///」

…食後…

提督「ふー、美味しかったわ……ディアナ、お皿洗いを手伝いましょうか?」

ディアナ「お帰りになったばかりの提督にそのようなお願いはいたしません……それより、あの娘たちに土産話でもしてあげて下さいませ」

提督「分かったわ。それじゃあお皿洗いは後にして、ディアナもいらっしゃいな♪」

ディアナ「まぁ……では、よしなに」

…暖炉のそばに引き寄せた椅子や暖炉の前に敷いてある大ぶりの絨毯には艦娘たちと、鎮守府の皆に可愛がられている純白の雑種犬「ルチア」が三々五々と集まり、椅子に座って火を眺めていたり、あるいは直接絨毯に座ったり寝そべったりしている……中の何人かはクリスマスシーズンということでつまみ食い自由にしてある「パンドーロ(黄金のパン)」といった伝統焼き菓子をつまんだり、果物やスパイスの入ったホットワインやキアンティを垂らしたコーヒーで暖まっている…

提督「よしよし♪」ルチアのふんわりと長い毛をブラシでくしけずりつつ、ときおり耳のあたりや尻尾の付け根をかいてあげる提督……

ルチア「ワフッ……♪」

デュイリオ「うふふっ♪ ルチアも提督がお戻りになって、安心したようですね♪」

…おっとりした妙齢のお姉さまである「カイオ・デュイリオ」は自分のペットであるカラスを肩に止まらせつつ揺り椅子に腰かけ、紅に金糸で模様をあしらった豪奢なガウン姿でちびちびとブランデーを舐めている……時折かたわらに置いてある小皿からクルミを取るとカラスに食べさせて、それから頭を撫でたり、羽根を整えてあげたりしている…

カラス「カー」丸い利口そうな目をくるくると動かし、それからデュイリオの頬にちょんと身体を寄せると頬ずりのような動きをした……

デュイリオ「まぁまぁ……それじゃあもう少しだけあげましょうね♪」

カルロ・ミラベロ「それで、提督のお眼鏡にかなうような綺麗なお姉さんはいた?」絨毯に寝そべり頬杖をついて、脚をぱたぱたと動かしている……

提督「もう、別に北欧へ遊びに行ったわけじゃないのよ?」

エウジェニオ「あら、そうなの? でも、出会いの一つや二つはあったでしょう?」

提督「それは、まあ……なかったとは言わないけれど♪」

ガリバルディ「やっぱりね……それで?」

提督「そうねぇ。例えばスウェーデンのラーセンっていう大佐なんかはとっても綺麗な人で……まるでグレタ・ガルボみたいで、惚れ惚れするような美しさだったわ♪」

エウジェニオ「そう。ところで提督が大事そうに部屋へ持って行った贈り物のナイフ……あれの送り主のフィンランド人とはずいぶん仲良くなったみたいだけれど、その話はしないの?」

提督「……どうしてあの贈り物がナイフだって分かったの」

エウジェニオ「ふふ、私の目をごまかそうとしてもそうは行かないわ♪ まず、あの箱の様子だと中身は長細いものでしょうし、かといってペンにしては大きすぎる……これといったロゴやブランド名もないから、送り主の手作りかそれに近い素朴な何か……で、今回の出張先はフィンランドでしょ」

提督「え、ええ……」

エウジェニオ「フィンランドと言えばフィンランド・ナイフ(プーッコ)が有名だし、あの飾り気のなさはスウェーデン人よりは質素倹約を重んじるフィンランド人からのプレゼントにふさわしい……ってところね。どう?」

提督「……エウジェニオにはかなわないわね」
894 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/10/21(土) 01:16:08.05 ID:+S+lF9aD0
…その晩・提督寝室…

提督「ねぇライモン、一緒に入る?」

…ワインやカクテルといったお酒、それに暖炉の火ですっかり暖まった提督がぽおっと赤みを帯びた顔に柔和な笑みを浮かべつつ、布団を持ち上げすき間を作った…

ライモン「あ、いえ……わたしは自分の部屋で休みますから///」

提督「……いいの?」

ライモン「そんな誘い方……ずるいです///」くるぶしまである純白のネグリジェをするりと脱ぐと、滑るようにベッドへ入ってきた……

提督「ふふ、いらっしゃい♪」

ライモン「提督……///」

提督「ライモン……こうやって名前を呼ぶのも久しぶりな気がするわ♪」

ライモン「わたしも……待ち遠しかったです///」

提督「嬉しい……んっ♪」

ライモン「ん……ふ///」

提督「ちゅっ……んちゅ…ちゅる……っ♪」

ライモン「ん、んぅ……ちゅぱ///」

提督「ぷは……ライモン、貴女の好きなようにしていいのよ?」

ライモン「そ、そうですか……それじゃあ///」

…提督の両肩に手を置き、ずっしりした乳房に顔を埋めるようにしてぎゅっと身体を寄せるライモン……提督の谷間にライモンの暖かい吐息が微風となって吹きつけ、しっとりしたライモンの白い肌が提督の柔肌と吸い付くように重なり合う…

提督「よしよし……♪」

ライモン「あ……っ///」

…明るい、しかしけばけばしくはないライモンの金髪をくしけずるように撫でる提督……ベッドの白いシーツには提督の長い金色がかった髪がウェディングドレスの裾のように広がり、その上で抱き合っている二人はまるでひまわり畑で寝転んでいるように見える…

提督「……来て?」

ライモン「はい……///」ちゅぷ……っ♪

提督「んっ……ふふっ♪ ちゃんと、私の気持ちいいところ……」

ライモン「忘れるわけがありません……だって、フランチェスカ……貴女が教えてくれたんですから///」

提督「そうね。それじゃあ私も、ライモンが教えてくれたところ……♪」くちゅ……っ♪

ライモン「あ、あ、あ……っ///」

提督「ふふ、可愛い声……もっと聞かせて?」ぬりゅっ、くちゅ……り♪

ライモン「ふぁぁ……あっ、ん……あぁ……んっ///」

提督「……ほら、好きにしていいのよ?」

ライモン「だったら……手を止めてください……っ///」

提督「ふふ、仕方ないじゃない。いつも可愛いライモンがそういうトロけた表情をするの……ベッドの中でしか見られない特別な顔で好きなんだもの♪」

ライモン「……も、もうっ///」顔を真っ赤にしたライモンが照れ隠しに怒ったような表情を浮かべ、提督の濡れた花芯に中指と薬指を滑り込ませた……

提督「ひゃぁん…っ♪」

ライモン「貴女は、いつもそうやって優しくて甘い言葉をかけてくれるから……だから……っ///」じゅぷっ、ぐちゅぐちゅ……っ♪

提督「あっ、あっ、あぁぁ……んっ♪」

ライモン「だから、わたしだけじゃなくてみんなが貴女の事を好きになって……ずるい女性(ひと)です……っ///」くにっ、こりっ……ちゅぷ……っ♪

提督「あぁぁぁん……っ♪」長い余韻を残しつつ、甘くねだるような声で絶頂した提督……嬌声をあげながらも片手はライモンの滑らかなほっそりした腰に回され、もう片方の手はライモンのとろりと濡れた秘所にあてがわれ、中にぬるりと滑り込んでいる指が粘っこい水音を響かせながらなめらかに動く……

ライモン「あぁぁんっ……フランチェスカ……ぁ///」

提督「ねえ、ライモン……」太ももを重ね合わせて「ぬちゅっ、くちゅっ……♪」とみだらな水音を響かせながら、耳元でささやいた……

ライモン「なんですか、フランチェスカ……?」

提督「ええ、貴女にちょっと早めの……クリスマスプレゼント♪」ぐりっ、ぷちゅ……っ♪

ライモン「あ、あぁぁぁぁ……っ♪」

提督「……うふふっ、しばらくご無沙汰だったぶん……今夜は好きなだけしていいから、ね?」
895 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/10/26(木) 01:19:06.59 ID:fR+tjxd80
…翌朝…

デルフィーノ「おはようございます、提督」

提督「おはよう、デルフィーノ。 ちょっとだけ声を落としてもらえるかしら……ね?」ベッドのふくらみを指し示して、パチリとウィンクをした……

デルフィーノ「……あ、はいっ///」

提督「ふふ、ありがと♪」デルフィーノの頬におはようのキスをするとガウンを羽織り、浴室へ行って洗面台で顔を洗い、それからきっちりと歯を磨く……北欧出張の際に現地で買った、キシリトール入りだという歯磨き粉をさっそく使ってみる……

提督「……なるほど、確かにスッキリした感じはあるかもしれないわね」

…歯みがきと洗顔を終えて部屋に戻ると、デルフィーノがせわしなく動きながら朝刊と目覚めのコーヒーを用意してくれていた…

デルフィーノ「朝のコーヒーと新聞です、提督。 お留守の時の分もとってありますから、読みたかったら後で読めますよ」

提督「グラツィエ……ん、いい香り」

デルフィーノ「今日のコーヒーはゴンダールが淹れたエチオピアです」

提督「ゴンダールだものね……美味しいわ」(※ゴンダール…当時の「イタリア領東アフリカ」(エチオピア)にある都市。世界遺産にもなった建築などで知られる)

デルフィーノ「それでは、また朝食の時に……///」

提督「ええ♪」窓を細めに開き、冷たいが清らかな冬の海風を少しだけ部屋に入れながらガウンにくるまり湯気の立つコーヒーを楽しむ提督……朝刊の「レプブリカ」を読んでいると、ライモンが目をこすりながら出てきた……

提督「おはよう、ライモン」

ライモン「おはようございます……朝のコーヒーはわたしが支度をしたかったのですが、寝過ごしてしまいました……」

提督「いいのよ……昨夜聞かせてくれた甘い声だけでお釣りがくるわ♪」コーヒーカップ片手にからかうような口調で言った……

ライモン「も、もう///」

提督「今日は何の予定もないし、荷物の整理が済んだらのんびりさせてもらうわ……それとライモンには、留守中にあった話でも聞かせてもらおうかしら」

ライモン「はい♪」

…朝食後・食堂…

提督「……それじゃあみんなに早めのクリスマスプレゼント♪」

…朝食を済ませてゆったりとした空気が流れている中、提督がトランク一杯買ってきた北欧三カ国のお土産を渡し始めた……当直や哨戒のために出撃している艦娘をのぞいた手すきの娘たちが食堂に集まり、それぞれ提督がふさわしいと思ったものや、本人が欲しがっていたものを受け取っている…

リベッチオ「提督、さっそく開けていい?」

提督「もちろん、貴女のために買ってきたのだから……喜んでもらえるとうれしいわ♪」

リベッチオ「何かなぁ……わぁ、素敵なマフラー♪」包みから出てきたのは長いふんわりしたクリーム色のマフラーで、褐色の肌と良く似合う……

提督「この間、出撃の時に首元が寒いって言っていたから……どう?」

リベッチオ「うん、うんっ♪ とっても暖かいよっ……ありがと♪」

提督「みんなにもそれぞれあるから……はい♪」いくら四姉妹とはいえ、いつも十把一絡げにしたようなお揃いばかりではつまらないだろうと、それぞれの好みに合わせて違う色や柄のマフラーを選んできた提督……

マエストラーレ「とっても嬉しいよ、提督♪」

提督「そう言ってもらえて良かったわ……でも、それならお礼のキスくらい欲しいわね♪」

マエストラーレ「ん、まかせて♪ んちゅ、ちゅる……っ♪」冗談めかした提督に対して、マエストラーレがくっつくように身体を寄せるとつま先立ちをし、提督の両頬を手で押さえると舌を滑り込ませた……夏の香りを残したような褐色の肌が近寄り、あどけなさの残る……しかし熱っぽいキスを浴びせてくる…

提督「んぅぅ……ぷは♪」

マエストラーレ「これで満足?」

提督「ええ♪ それにこれ以上したくても、ここでするわけにはいかないものね?」

リベッチオ「くすくすっ……提督がしたいならここでしたっていいよ?」ぱっちりとした目をくるくると動かしつつ斜め下から見上げるような、挑発的かつませた態度をとってみせる……

提督「ふふっ、リベッチオったら♪」

ライモン「……提督」

提督「あぁ、はいはい。 えぇと、これは……ディアナ」

ディアナ「まぁ、わたくしにもプレゼントを?」

提督「もちろん……貴女にはこれを」小ぶりな箱に入っていたのは三日月をあしらった銀のキーホルダーと、真珠をあしらった銀の髪留め……

ディアナ「あら、こんなに素敵なものを……」

提督「ほら、貴女がいつも使っているフィアット850……あれのキーには何も付いていなかったから、もし良かったらと思って」

ディアナ「とても嬉しいです、提督……♪」
896 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/10/31(火) 01:53:34.78 ID:YYE93CNN0
…しばらくして…

提督「これでみんな配り終わったかしらね」

リットリオ「こんなにいいものをもらえて私は幸せですっ♪」

バリラ「ええ、本当に……お礼に提督の事をぎゅーってしてあげます♪」旧型の潜水艦ゆえに出撃の機会は少ないが、そのぶん鎮守府の潜水隊にとってのよきお母さんでもあるバリラ級のネームシップ「バリラ」が、その母性を存分に発揮して提督を抱きしめる……

提督「あんっ……♪」たわわな胸元に顔を埋めて、ミルクのような甘い匂いを吸い込みながら甘い表情を浮かべている提督……

デュイリオ「あらあら、でしたらわたくしも……♪」むぎゅ……っ♪

ドリア「それなら私もお邪魔させてもらいましょう♪」むにゅっ♪

提督「ふふっ、そんなに胸元に押しつけられたら窒息しちゃうわ……でもきっと、世界で一番幸せな窒息ね♪」三方から囲まれるようにして抱きしめられ、ご満悦の提督……

ライモン「……はぁ」

アッテンドーロ「やれやれ、姉さんったら……確かに提督はなかなかの美人だし性格も優しいけど、私にはあの女たらしのどこがいいのかいまだに分からないわ」

ライモン「仕方ないでしょう……だって一目見てからずっと好きなんだもの///」

アッテンドーロ「それはまたずいぶんと一途なことで……」

提督「んむ、んふぅ……ぷはぁ♪」

…提督もかなり長身な方だったが、それよりもさらに頭ひとつ分は大きい、優雅でおっとりした感じのするドリアやデュイリオといった「妙齢の」ド級戦艦であるお姉さま方、そしてはつらつとして可愛らしい表情と、それに似合わぬほどの高身長でメリハリのある身体をしたリットリオ級の娘たち……そんな艦娘たちに抱きつかれて、提督はまるで新婚かなにかのように抱きついてみたり軽い口づけを交わしたりといちゃついている…

アッテンドーロ「……ふぅ、仕方ないわね」

ライモン「何が……って、きゃっ!?」アッテンドーロに突き飛ばされるようにして、提督たちの間に飛び込んだライモン……

提督「あら、ライモン……ごめんなさいね? 貴女を仲間はずれにしちゃって」

ドリア「ふふっ、ライモンドも遠慮しないで……さあ、お姉さんの胸の中にいらっしゃい♪」

デュイリオ「くすくすっ、ドリアはライモンドの「お姉さん」にしてはずいぶんと艦齢(とし)の差があるようだけれど?」

ドリア「……ふふっ、それを言ったらデュイリオだってそうでしょう?」

デュイリオ「あら、なかなかお上手だこと♪」

提督「もう、こんなに瑞々しい身体なんだからお互いそういうことは言わないの……ね?」パチリとウィンクをすると、二人のたわわな乳房を下から支えるようにして軽く揺すった……

デュイリオ「あんっ……もう提督ったら♪」

ドリア「いたずらなお手々ですね♪」

カヴール「ふふ、ライモンドも遠慮しないでいいのよ?」

ライモン「///」自分の手にカヴールの白くて柔らかい手が重ねられると、そのままずっしりとした乳房に誘導されて真っ赤になる……

提督「ふふっ、ライモンはいつでも初々しくて可愛いわ♪」

エウジェニオ「同感ね……これじゃあ提督がいたずらしたくなっちゃうのも無理ないわ」

ガリバルディ「そうね、実に可愛いわ♪」

…暖炉脇の敷物に座って、提督が「誰でも自由に取っていいように」と置いたお土産のチョコレートをつまみつつ、泡立つスプマンテを傾けていたエウジェニオとガリバルディ……艦隊一の技巧派で相手をとろかすような女たらしであるエウジェニオと、それとは対照的に革命家らしく情熱的で、燃え上がるような女たらしのガリバルディ……その二人が「コンドッティエーリ(傭兵隊長)」型軽巡の先輩、あるいは従姉とでもいえる関係にあるライモンを眺めて舌なめずりをした…

提督「うふふっ、二人もそう思う?」

エウジェニオ「ええ……とっても美味しそう♪」

ガリバルディ「焼け付くような愛の炎を起こしてみたいわ♪」

ライモン「も、もう……みんなしてわたしの事をからかうんですから///」

提督「だってライモンが可愛いんだもの♪」

ガリバルディ「言えてるわ」

エウジェニオ「ええ……ところでジュゼッペ、お一つどうぞ♪」チョコレートを一つくわえると口を近づけた……

ガリバルディ「グラツィエ……ねえエウジェニオ、少し喉が乾かない?」

エウジェニオ「そうね、ちょっと暖炉で火照っているし……♪」

ガリバルディ「だと思ったわ……んくっ♪」スプマンテを口に含むと、しなだれかかるエウジェニオに口移しで飲ませた……

エウジェニオ「ふふ、美味し……♪」

提督「まぁ、ふふっ……二人は本当に絵になるわね」

ライモン「///」
897 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/11/09(木) 01:56:42.81 ID:mtb5KQ5Y0
…翌日…

提督「さてと、昨日はゆっくり休めたのだから……今日は書類を片付けないと」

デルフィーノ「私もお手伝いしますよ、提督」

アッチアイーオ「遠慮しないで任せておきなさい」

カヴール「事務書類の処理は得意ですから、任せて下さいな♪」

ライモン「及ばずながら、わたしもお手伝いします」

提督「みんな、ありがとう……それじゃあ手早く片付けましょうか」

…提督の執務机の上「未決」の箱に積み上がっているのは出張の間にも日々溜まっていたとおぼしき書類の山……内容を読んだ上でファイルするだけのものや、提督の手を借りずとも処理できそうなものは秘書艦のデルフィーノとアッチアイーオを始め、書類仕事の得意な艦娘たちがある程度は片付けてくれていたが、それでもひとつの鎮守府に届く書類となると相当なものがある…

提督「請求書、納品書、領収書……通達に納品書、また領収書……」

カヴール「では納品書の確認は私が」

提督「ええ」

アッチアイーオ「ファイルに綴じるのは私がやるわ」

提督「お願いね」

デルフィーノ「領収書の値段があっているかどうかの計算は私がやりますねっ」

提督「助かるわ、デルフィーノは計算が得意だものね♪」

ライモン「えぇと、それじゃあわたしは……」

提督「ライモンは私の隣で、書いたものに誤りがないか確認してくれる? 重要な役目だからぜひ貴女に頼みたいわ」

ライモン「はい///」

カヴール「まぁまぁ、提督ったら公私混同ですね♪」

提督「司令官特権よ♪ ……ん、この場合はどの予算で執行すればいいのかしら?」

…納品書に書いてある品目や値段があっているかどうか、決済の日付が正しいかどうか、用途別に付いている予算から正しい要目を選んでいるかどうか……ラップトップコンピュータの画面と送られてきた書類を突き合わせながら一つひとつ確かめていく…

提督「えぇと、この場合は諸雑費からの支出で……」

…ピンクや黄色の付せんだらけになっている「支出処理マニュアル」をめくりながら、ときおりこめかみに手を当てて眉をしかめ、カタカタとキーボードに入力しながら、思い出したようにコーヒーカップに手を伸ばす……

…しばらくして…

デュイリオ「……みんなお疲れでしょう、しばらくわたくしが代わりますよ♪」

ペルラ(ペルラ級潜水艦「真珠」)「アッチアイーオ、交代しましょう」

ベリロ(ペルラ級「緑柱石」)「デルフィーノも少し休んできたらどうですか?」

デルフィーノ「え、でも私とアッチアイーオは秘書艦ですし……」

提督「いいのよ、少し休憩していらっしゃい……ライモン、貴女も」

ライモン「いえ、もう少しですから」

提督「相変わらず律儀ね……分かったわ、それじゃあその書類が終わったら三十分は休憩してくること。いいわね?」

ライモン「はい」

提督「よろしい。 えぇと、次の書類は……あー、クリスマス休暇関係ね。これだけはどうにか終わらせないと、私をふくめてみんなの休暇が取れなくなっちゃうわ……」

…提督は何本か持っている万年筆のうち、鎮守府に「栄転」することになった際に仲良しの数人がお金を出し合ってくれたプレゼントの万年筆を選んで紙面に滑らせた……軸は海のような濃い青色で、要所を締める金の部品がしゃれている万年筆は、提督の名前が筆記体で彫り込んである……見た目だけでなく書き味も極上の万年筆は持っているだけで文豪や名士の仲間入りした気分になれるので、なんとなく書類も手際よく片付けられる気がする…

提督「えーと……休暇開始予定日…期間……非常時連絡先……海外旅行をする場合は目的地……」

…海軍士官である提督、それに艦娘たちは休暇の際に海外旅行をしたい場合は軍に申請しなければならない……むろん、非友好国や危険がありそうな国への旅行は認められず、安全と思われる国であってもかなり細かいチェックをうける……艦娘たちの何人かはフランスやスペイン、あるいはアドリア海を挟んで向かい側のアルバニアといった国に旅行したいと申請していたので、まずは提督がサインを入れ、その上で管区司令部へと回す…

提督「ふー、これで休暇の申請書類は終わったわね。あとは期日までに郵送するか直接提出すれば完了……と」

ペルラ「お疲れさまです、提督」

提督「ふふ、自分の休暇がフイにならないために頑張っただけよ♪」ペルラの真珠色をした艶やかな瞳、それに珠を転がすような美しい声で言われるとくすぐったい気分になり、照れ隠しに冗談めかした……

デュイリオ「ふふっ、いずれにせよあともう少しですから……頑張りましょう、ね?」

提督「ええ♪」
898 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/11/18(土) 02:13:59.28 ID:gqvE9Z1O0
…翌朝…

ライモン「おはようございます、提督……今日はタラントの管区司令部までお出かけだそうですね」

提督「ええ。北欧出張の時に話をした例のロシア軍将官について情報部の聞き取り調査があるの。ついでにみんなのクリスマス休暇の申請書を提出してくるわ」きちんと冬用の制服に身を包み、片手には金属のアタッシュケースをぶら下げている……

ライモン「気を付けて行ってきて下さいね?」

提督「ありがとう……どう、一緒に行く?」ランチアのキーをつまんでゆらゆらさせつつ尋ねた……

ライモン「あの、提督と一緒に行きたいのはやまやまですが、今日は午後直が入っていますから」

提督「そうだったわね……ライモンの当直時間を忘れちゃうなんてうっかりしていたわ。時差ボケかしら?」

ライモン「そんな、でも誘ってくれて嬉しかったです///」

提督「そう言ってもらえて光栄だわ……それじゃあ他の誰かを誘うことにするけれど、何か欲しいものはある? タラントで買えるものなら買ってくるわよ?」

ライモン「いいえ、大丈夫です」

提督「そう? 遠慮しないでもっとねだってくれたっていいのに……まぁいいわ、留守のあいだは鎮守府をドリアに任せるけれど、何かあったらかまわず連絡を頂戴ね?」

ライモン「はい」

提督「いい返事ね、それじゃあ行ってきます♪」

ライモン「はい、行ってらっしゃい」

…玄関…

提督「さてと、用意はいい?」

エウジェニオ「ええ」

サイント・ボン「本官の準備は出来ておりますよ」

ニコロソ・ダ・レッコ(ニコ)「いつでもいいよ、提督」

…鎮守府に配備されている一台ずつの三トン軍用トラックとベスパ、それにリットリオのフィアット500(チンクエチェント)とディアナのフィアット850だけでは「近くの町」ならともかく、全員が好きな時にタラントへ出かけるという訳にはいかないので、提督は公務でタラントへ出かけるようなときは、できるだけ艦娘たちを連れて行くようにしていた…

提督「よろしい、それじゃあ行きましょう♪」

…地方道路…

エウジェニオ「……いい風ね、少し冷たいけれど」

提督「ええ」

…提督は車内にヒーターをいれつつも、張り詰めたような冬の冷たい風を感じられるよう少しだけ窓を開けて、「ランチア・フラミニア」を走らせていく……助手席にはエウジェニオ、後部座席には大型潜の「アミラーリオ・ディ・サイント・ボン」と駆逐艦の「ニコロソ・ダ・レッコ」が座っている…

サイント・ボン「では、タラントに着きましたら本官たちは市街で買い物などしておりますので」

提督「それがいいわ。お昼になったら管区司令部の前で合流しましょう……もし聴取が長引いたりするようだったら連絡するわね」

エウジェニオ「ふふ……♪」

提督「何かおかしいかしら?」

エウジェニオ「ええ、それはもう……だってこともあろうにロシア軍の美人将官と寝たって言うんだもの、貴女の女好きも大したものね」

提督「だって……///」

エウジェニオ「なぁに?」そう言いながら提督の太ももをさりげなく撫で回しはじめた……

提督「エウジェニオ、運転中は止めてちょうだい……いくら美女と一緒でも、まだ崖下にダイブする気は無いわ」

エウジェニオ「ふ、冗談でしょう? 貴女なら目をつぶっていても、キスしながらでも運転できるでしょうに」

提督「ごあいにくさま、私はフェラーリでもなければヌヴォラーリでもないの。それにせっかくのキスを「ながら」でしたくはないもの」

エウジェニオ「ふふ、そういう真面目なところが好きなのよ……いいわ、きちんと座っていてあげる♪」

…エウジェニオは無造作に散らしたようなセミロングの髪型で、黒いレザージャケットにヴィヴィッドな色味の紅のタートルネックセーター、きゅっと引き締まったヒップから伸びる長い脚は黒の乗馬ズボンとひざ丈まである黒革のヒールつきブーツで固め、片耳にだけ付けたイヤリング……と、どう見てもビアンの格好いいお姉さんといった服装に身を固めている…

提督「グラツィエ。帰ったらごほうびをあげるわ」

エウジェニオ「期待しているわよ♪」

提督「ええ。って、そんなことを言っていたらもうここまで……相変わらずにぎやかね」タラント市街が近づくと、艦娘の「具現化」させた往時の海軍艦艇が出撃していき、漁船や沿岸航路の貨物船、それに定期航路の客船といった民間の船舶が行き交い、上空ではイオニア海を哨戒するカントZ506水偵やフィアットCR42戦闘機がエンジン音も高らかに飛んでいく…

ニコ「それに市街もすっかりクリスマスだ」

提督「そうね、みんなへのお土産にクリスマス菓子でも買って帰りましょうか」

サイント・ボン「それはよろしいですね」
899 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/11/23(木) 01:09:07.13 ID:Gz1NGPh50
…管区司令部…

提督「おはよう」

受付の下士官「おはようございます、少将……数日前もいらっしゃったのに、また呼び出しとは大変ですね」

提督「本当にね……そうそう、ちょっと早いけれどクリスマスプレゼントをどうぞ。当直のみんなに分けてあげて?」フィンランドの免税店で仕入れてきたチョコレートやキャンディが詰め合わせになった大袋を受付の伍長に渡す……

受付「わざわざありがとうございます」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)……よいクリスマスをね」

受付「は、ありがとうございます。少将も良いクリスマスを」

提督「グラツィエ♪」

…事務方…

提督「おはよう、大尉……申請書類の提出に来たのだけれど、今いいかしら?」

事務方の士官「おはようございます、カンピオーニ少将。申請書ですね、どうぞ」

提督「ありがとう。それじゃあ私と鎮守府の娘たちの分のクリスマス休暇申請書、手続きをお願いするわ」厚手の本くらいはありそうな申請書類の束をカウンターにどさりと載せる……

士官「確かに受け取りました、処理しておきます」

提督「助かるわ。それと、良かったらこれ。クリスマスも近いし……ね?」茶目っ気のある表情を浮かべつつ、またまた菓子の大袋を手渡した……

士官「は、いつもありがとうございます……」後ろでデスクを並べ、書類の処理に当たっている数人からもさりげない感謝のジェスチャーや小さな会釈が向けられる……

提督「ええ。さ、法務や内務のお堅い士官に見つかってガミガミ言われないうちに……♪」

士官「分かっております。少将も良いクリスマスを♪」

提督「ええ♪」

…会議室…

提督「さて、いよいよ次が本命ね……」別に悪さをしたわけではないが、情報部によるデブリーフィング(任務報告)とあって、ひとつ深呼吸して身構える……

案内の下士官「……カンピオーニ少将がおいでになりました」

フェリーチェ「どうぞ……あぁ、少将。よく来てくださいました」よそよそしい態度を演技しているのはフェリーチェで、すでに卓上には提督のレポートとラップトップコンピュータ、メモ帳に録音用のボイスレコーダーなどが並べられている……

提督「ええ……」

フェリーチェ「ご苦労様でした、二等兵曹。下がってよろしい」

下士官「は、失礼します」

フェリーチェ「……さてと、それじゃあ貴女の女遊びについてじっくり問いただすとしましょうか♪」

提督「もう「情報部の聞き取り調査」だなんて言うから、てっきり無表情な士官が二、三人で絞り上げてくるのかとばかり思っていたわ♪」

フェリーチェ「そうしたいのは山々だったけれどね「私が一番うまく情報を引き出せますから」って上にかけ合ったのよ……たまたま任務の都合でイオニア海管区に来る用事もあったし……ね♪」

提督「嬉しいけれど、貴女が聞き出すのだから隠し事は出来そうにないわね……」

フェリーチェ「よく分かってるわね……録音するタイミングになったらそう言うから、とりあえずはクズネツォワ少将について知っていることと分かったことをあらいざらい話してもらうわよ」

提督「ええ……」

フェリーチェ「録音開始……聴取担当者、海軍情報部、ミカエラ・フェリーチェ大尉。対象者、フランチェスカ・カンピオーニ少将……」レコーダーに音声を吹き込むと、テーブルの中央に置いた……

フェリーチェ「では少将にお尋ねします。フィンランドにおける深海棲艦対策の会議において面識を持った、ロシア連邦海軍のユーリア・クズネツォワ少将についてですが、貴官は会議の場、またそれに関連する場所においてどのような会話をなさいましたか?」

提督「はい。基本はごくありふれた会話でしたが、北欧における深海棲艦対策に関してロシア海軍がどう行動するつもりか、出来る限り聞き出そうとしました」

フェリーチェ「なるほど……それで、クズネツォワ少将から何らかの回答を引き出せましたか?」

提督「いいえ。書面によりこちら側に明示された方針以上のものはなにも」

フェリーチェ「口は固かったということですか?」

提督「ええ、相当に」

フェリーチェ「なるほど……」そこでレコーダーのスイッチを「一時停止」にいれた……

フェリーチェ「……なら、ベッドの上では?」

提督「けほっ……!」

フェリーチェ「お願いよ、フランチェスカ。私が貴女にボンドガールの真似事みたいな事までさせて知りたかったことなのよ……あの無表情な「インペラトリーツァ(女帝)」のことならなんでもいいわ、身体に刺青や傷があるとか、えっちするときの好みのやり方とか……録音はしないし、貴女から仕入れた情報だって事も上には伝えない……ミカエラ・フェリーチェとして約束するわ」
900 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/11/30(木) 01:58:49.86 ID:tFe17jz30
提督「……誰にも口外しない?」

フェリーチェ「ええ、情報源は秘匿する」

提督「そう……ミカエラ、貴女の事を信じるわ」

フェリーチェ「ありがとう、フランチェスカ」

提督「いまさらお礼なんていらないわ……それで、どんなことを聞きたいの?」

フェリーチェ「とにかくクズネツォワについて気付いたこと、あるいは彼女が話したこと……些細な事でもちょっとした癖や習慣のことでも構わないわ」

提督「そうね、それじゃあ……クズネツォワ少将だけれど、とにかく煙草をよく吸うわ」

フェリーチェ「銘柄は?」

提督「そう言われても私は吸わないし、ましてやロシアの煙草だったから銘柄までは……でも確か、箱にソリの絵が描いてあったわ」

フェリーチェ「それなら『トロイカ』ね……」

提督「それから吸うときは左手の親指と人差し指でつまむように煙草を持っていたわ。なんでも「そう教え込まれた」みたいなことを自嘲するように言っていたけれど……」

フェリーチェ「なるほど、彼女ならそうでしょうね」

提督「それから、ライターにこだわりがあるようには見えなかったわ。ホテルのブックマッチを使っていたりもしたから」

フェリーチェ「ふっ……さすがの観察眼ね、フランチェスカ。身の回りのものにこだわりがないというのはこっちの調査でも推測されていたけれど、これで改めて裏付けが取れたわ」

提督「そう、良かったわ」

フェリーチェ「ええ。 ほかに特徴的な言動は?」

提督「えぇ…と、まずは一緒に夕食を食べて……」当日の経緯を順繰りに思い出していく提督……

フェリーチェ「お酒は?」

提督「ウォッカやシャンパンを飲んではいたわ。でも顔色は全然変わらないし、口調もまるでしらふのまま」

フェリーチェ「相当に強いみたいだから無理もないわ……続けて?」

提督「それから彼女の泊まっているホテルまで車に乗せてもらって……そうそう、副官のカサトノヴァ少佐はピストルを隠していたわ」

フェリーチェ「マカロフ?」

提督「たぶん……腰のバックサイド・ホルスターに入っているのがちらっと見えただけだから断言はできないけれど」

フェリーチェ「いいえ、十分な情報よ……それで?」

提督「えぇと、それから……」

………



提督「ん……///」

クズネツォワ「……どうだ?」

提督「あっ、あふ……っ///」

クズネツォワ「柔らかくて初々しい……まるでマツユキソウのようだな」

提督「あっ、ふ……あんっ……「森は生きている」ですか」

(※マツユキソウ…待雪草。英名スノードロップ。春を告げる白い可憐な花で、ロシア文学「森は生きている」で、わがままなお姫様が真冬にも関わらずマツユキソウを見たいと言ったことから、主人公の少女が意地悪な継母にマツユキソウを探してこいと真冬の森へと追いやられる)

クズネツォワ「マルシャークを読んだことがあるのか」

提督「ええ……」

…提督がまだ余韻に浸っているなか、クズネツォワはてきぱきと着替えていく……と、スラックスのベルトにホルスターを通し、無骨さと優雅さの同居したような「トカレフTT−33」ピストルを小机から出して突っ込んだ……

提督「ユーリア、そのピストルは……」

クズネツォワ「トカレフだが」

提督「いえ、トカレフなのは分かりますが……いつも手元に?」

クズネツォワ「ダー。祖母がくれたものなのだが、他のものはともかく、これだけは手放したことがない」

提督「……大事なものなのですね」

クズネツォワ「お守りの十字架や幸運の「うさぎの脚」よりは役に立つからな」そっけない言い方の中に、少しだけ冗談めかした声が混じった……

………
901 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/07(木) 02:15:02.29 ID:v0j/RYhV0
フェリーチェ「……お祖母さんの持っていたトカレフだなんて、ああ見えてセンチメンタルなところがあるのね」

提督「ええ。もちろん部品は取り替えたりしているとは言っていたけれど」

フェリーチェ「お飾りの銃を持っているようなタイプではないものね」

提督「そう思うわ。それと二人きりになると…たいていは皮肉なブラックユーモアだったけれど…意外と冗談も言うし、少なくとも無感情なロボットみたいではなかったわ」

フェリーチェ「なるほどね……続けて?」メモすら取らずに、手を組んで話を聞いている……

提督「それから……ねぇ、本当に言わないとダメなの?」

フェリーチェ「言える範囲でいいわよ……例えば傷だとか刺青はあった?」

提督「いいえ、少なくとも見た限りでは綺麗だったわ」

フェリーチェ「ふぅん?」

提督「ミカエラも気になった? 私も「ロシアの将校」っていうと刺青を入れているようなイメージがあったから聞いてみたの」

フェリーチェ「それで?」

提督「ええ、クズネツォワ少将が言うにはね……」

………

提督「……ユーリアの肌は綺麗ですね」

クズネツォワ「そうか?」

提督「ええ……きめ細やかで、透き通るように白くて……」

…互いに身体を重ね合ったあと、クズネツォワの裸身を優しく愛撫する提督……乳液や保湿クリームといった肌の手入れとはまるで縁がないようだが、鞭のようなしなやかな筋肉を包む肌はあくまで白く、提督と交わした愛の交歓のおかげでぽーっと赤みが差している…

クズネツォワ「ふむ、そうか……」

提督「はい。 それに、刺青は入れていないのですね」

クズネツォワ「刺青?」

提督「その……勝手なイメージですが、ロシアの将校というと腕やお腹にすごい刺青を彫っているものとばかり……」

クズネツォワ「映画などに出てくる兵隊崩れのマフィアが入れているような、おどろおどろしい髑髏だのコウモリが羽を広げているようなやつか?」

提督「えぇ、まぁ……お恥ずかしながら、その程度のイメージしかなくって///」

クズネツォワ「ふ……まあ分からんでもない、空挺の連中や何かはよくドッグタグ(認識票)代わりに刺青を入れたりするし、ロシアンマフィアはハッタリのためだったり、組の構成員であることの証明で刺青を入れていたりするからな」

提督「ええ、そういうイメージです……」

クズネツォワ「まあ知らん人間からしたらそうだろう……だがな」

提督「?」

クズネツォワ「スパイにしろなんにしろ「本物」はそんなもの入れないのだ……特徴的な刺青なんていうのは、それだけで身元を割られる元だからな」

提督「なるほど……」

クズネツォワ「ああ。期待を裏切って申し訳ないがな、西側の映画や何かでみる「刺青を入れたイワンのスパイ」なんていうのは絵空事だよ」

提督「そうなのですね……では、私がユーリアの真っ白なキャンバスに絵を描くことにします♪」そう言いながら鎖骨に吸い付くようなキスをした……

………

提督「……と、そんな風に言っていたわ」

フェリーチェ「やっぱりね……おかげでいい情報がとれたわ」

提督「約束は覚えているわよね?」

フェリーチェ「当然。貴女から聞いたなんておくびにも出さないわ……あとはもう一度レコーダーを回してありきたりな質問をするから、それなりに答えてくれればいいわ。お疲れさま」

提督「どういたしまして」

…再びICレコーダーを回していくつかの質問をぶつけると、事務的な口調で「以上で聴取を終わります」と締めくくった……それからポットのコーヒーを注ぐと、しばし軍で親しい間柄にある知り合いたちの近況を話題にして話の花を咲かせた…

フェリーチェ「いけない、もうこんな時間……悪いけど、ローマに戻って報告書を上げないといけないの。それじゃあ、良いクリスマスをね?」

提督「相変わらず忙しいのね。 ミカエラもいいクリスマスを♪」

フェリーチェ「ええ、ありがと……それじゃあね」そういって提督の唇に「ちゅっ♪」と音を立てて唇を重ねた……

提督「ええ♪」
902 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/14(木) 02:12:50.55 ID:MasWu44x0
…数日後…

提督「さてと、今日の書類はこれでおしまい……と♪」

ドリア「ずいぶんとご機嫌ですね?」

提督「ええ。みんなと過ごすのも楽しいけれど、やっぱりクリスマス休暇があと数日で始まると思うとね……ドリアはクリスマス休暇が嬉しくない?」

ドリア「いいえ、私のようなおばあちゃんでもクリスマス休暇は嬉しいですよ……ですが、休暇中はこうして提督と過ごすことができないと思うと、一抹の寂しさを覚えます」

提督「あら、そんな風に思っていてくれていたなんて光栄だわ///」満面の笑みを浮かべて「ちゅっ♪」と音高く頬にキスをした……

ドリア「まあ、提督ったら♪」

提督「ふふっ、遠慮せずにうんと甘えていいのよ……さ、いらっしゃい♪」両腕を広げて小首を傾げた……

ドリア「……それなら、少しだけ///」

提督「ええ♪」

…執務机の椅子で向かい合うようにして抱き合った提督とドリア……提督は胸元にドリアの顔を埋めさせ「地中海の黒い狼」などと言われたアンドレア・ドリアをほうふつとさせる艶やかな黒髪に顔を押しつけ、深く息を吸った……花の香りのシャンプーと少し残った重油と海の匂い、それにドリア本人の頭皮からかすかに立ちのぼる、ほのかに甘いような匂いが混じり合う……

ドリア「……提督は甘くていい匂いがしますね♪」

提督「お世辞を言っても休暇は増えないわよ?」

ドリア「お世辞ではないですよ……それと、こんなに暖かくて柔らかい♪」ふにっ♪

提督「くすくすっ……もう、ドリアったら意外とおてんばなのね♪」

…口ではそう言いながらも、提督は自分の太ももにまたがるようにして座っているドリアのスカートをずり上げた……黒いストッキングに包まれたむっちりした太ももがあらわになり、提督の太ももと触れあった…

ドリア「あん……っ♪」くちゅ……っ♪

提督「ふふ、ドリアったら積極的ね……そんなにしたかった?」

ドリア「……もう、そんなことを言うのは野暮というものですよ♪」ふんわりしたカシミアのセーターをたくし上げると、黒い花柄のブラに支えられたずっしりとした乳房へと提督の手をいざなった……

提督「なら、失言のお詫びをしないと……ね♪」提督も制服の上着を脱ぐと執務机の上に放りだし、ブラウスの胸元を大きく開いた……ドリアとさして遜色がないほどたわわな自身の胸へと彼女の手を誘導し、同時に片方の手を背中に回すとブラのホックを外そうとした……

提督「ん……くっ……」

ドリア「ふふふっ、それではまるでヨガの姿勢ですね……私が外してあげます♪」象牙色の地に、淡いパステルカラーの桃色や黄色の花々が咲いている提督のブラをパチリと外すと、丁寧に執務机の上に置いた……

提督「ドリア……触って♪」

ドリア「あら、提督は触られるだけで良いのですか?」ころころと笑いながら、わざといじわるな事を言うドリア……

提督「もう……どうすればいいか分かっているくせに///」

ドリア「うふふっ、そうですね……それでは♪」もにゅ…っ♪

提督「あっ、ん……♪」お返しとばかり、ドリアの豊満な胸に指を埋めてゆったりとこね回す……

ドリア「んふふっ、くすぐったいです……ところで、こちらが少し手持ち無沙汰ですね♪」

提督「そう、ね……あぁん……っ♪」椅子から転げ落ちそうになりながら互いのランジェリーをずり下ろし、暖かな下腹部を触れあわせた……

ドリア「まぁまぁ……提督ったらこんなに熱くして、おまけにすっかりとろとろです♪」ぐちゅっ、にちゅ…♪

提督「あら、それを言うならドリアだってこんな風にいやらしい音をさせているじゃない♪」じゅぷっ、くちゅ……っ♪

ドリア「では引き分けということで……ん、あっ♪」

提督「ええ……あっ、あふっ♪」

………



ドリア「……それにしても愛を交わしている最中に見つかってしまったときは気まずかったですね♪」

提督「よく言うわ、デルフィーノが入って来てからも平気で私のことをイかせ続けたくせに♪」

ドリア「まあ。それを言うなら提督だって、ちっとも嫌がらなかったではありませんか」

提督「だって……デルフィーノに見られながらドリアに中をかき回されるの、腰が抜けるほど気持ち良かったんだもの♪」

ドリア「それは私もです、おかげですっかり下着を濡らしてしまいました♪」

提督「それじゃあクリスマス休暇が終わったら、また……ね?」

ドリア「ふふ、約束ですよ?」

提督「ええ♪」
903 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/17(日) 01:36:15.14 ID:c8l2I2/00
…鎮守府・正門…

提督「それじゃあ気を付けて行ってらっしゃい……良いクリスマスを♪」

ウエビ・セベリ「では、行ってきマス」

ゴンダール「エリトリア土産に何か珍しいものでも買ってきますネ♪」

…クリスマス休暇の申請に許可が届き、トランクやスーツケースを手に次々と休暇に入る艦娘たち……提督自身の休暇もあと数日という中で、楽しみを待ちきれない様子の艦娘たちに手を振り、頬にキスをして見送っている……深海棲艦の蠢動(しゅんどう)具合や社会情勢のこともあって、なかなか許可の下りなかったキレナイカ(リビア)やAOI組はようやく降りた許可に安堵して、提督がタラントまでの便として管区司令部に手配してもらったミニバスに乗り込んでいく…

(※AOI…当時「イタリア領東アフリカ(Africa Orientale Italiana)」と呼ばれた地域。現在のエチオピアやエリトリア)

提督「そういえばペルラもきょう発つのね」

ペルラ「はい、私はマダガスカルのあたりまで行ってきます」

…淡い真珠色の涼やかな目元をした中型潜「ペルラ(真珠)」は、すっきりしたシルエットをしたパールホワイトのトレンチコートに、淡いフラミンゴのようなピンク色が控え目にフェミニンな雰囲気を主張しているひざ丈のフレアースカート、それに提督の母親であるクラウディアが送ってくれた衣類の山から選んだ象牙色のショートブーツと白ストッキング、首元には粒選りのピンクパールのネックレスをつけている…

提督「貴女はアトランティスを探しに行くのよね♪」

ペルラ「はい」

(※ペルラ…当時インド洋を中心にマダガスカル沖などで暴れ回っていたドイツの仮装巡洋艦「アトランティス」への補給と捕虜の受け取りのため会同したことがある)

下士官「さぁさぁお嬢さん方、そろそろバスを出しますよ! パスポートにヴィザ、手荷物にお財布はちゃんとお持ちですか!」ミニバスでの送迎を請け負ってくれたのはお堅い管区司令部には珍しい陽気な下士官で、観光ガイドの物真似をして艦娘たちを笑わせている……

アシアンギ「忘れ物はないデス」

提督「それじゃあ行ってらっしゃい♪ …では、うちの娘たちをよろしくお願いするわ、三等兵曹。あなたも良いクリスマスを」

下士官「はい、お任せください」

…数日後・朝…

提督「いよいよ私も今日から休暇ね……クリスマス中はよろしくお願いするわ」いよいよ休暇初日の朝を迎え、いそいそと支度を済ませる提督……

チェザーレ「うむ、留守中はこのチェザーレに任せておけ」

提督「ええ。艦隊総旗艦の役は名将チェザーレ、貴女にこそふさわしいわ」

ドリア「あら、実際に旗艦だった私ではなく?」

デュイリオ「そうですよ、わたくしだって艦隊総旗艦だったのですから……」

提督「貴女たちも、よ……良くチェザーレを支えてあげてね?」

カヴール「いささか髪にうるさい妹ではありますけれど……ね♪」

チェザーレ「むむ、髪のことは関係あるまい」

ライモン「……提督、くれぐれもお気をつけて」

提督「ありがとう……貴女もね、ライモン」

アッテンドーロ「姉さんには私がいるから平気よ。 提督こそ、美人だからって知らないお姉さんにノコノコついて行っちゃ駄目よ?」

提督「私だって子供じゃないんだから知らない美人について行くことなんてしないわ……ついて行くのは知り合ってからよ♪」提督の冗談に艦娘たちの笑いが起きる……

ドリア「皆さん楽しそうですが、くれぐれも気を付けて行ってらっしゃいね」

提督「ええ、ドリアたちもゆっくり骨休めをしてちょうだい」

ドリア「はい、留守はお任せを」

提督「任せたわ……それにしても本当にいいの?」

ドリア「ええ、構いませんよ。夏はうんと旅行をさせていただきましたし、クリスマスはここでのんびり過ごす方が気が楽です……リットリオたちが戻ってきたら、入れ替わりで小旅行にでも行ってくることにしますから♪」

提督「それじゃあクリスマスプレゼントでも送ってあげるわ、一番欲しいものをクリスマスカードに書いて送ってちょうだい?」

ドリア「ふふふ……一番欲しいものを書いて送ったら、提督はとんぼ返りすることになってしまいます♪」

提督「あら、嬉しいお言葉……それならいっそ絨毯にくるまれて来た方がいいかしら?」

ドリア「それならジュリオが喜ぶでしょうね」

(※絨毯にくるまれて……クレオパトラ7世の伝説。秘密裏にカエサルに会うべく、クレオパトラが贈り物の絨毯に隠れて来たという)

提督「リットリオ、貴女も気を付けるのよ? 特にこの時期のオートストラーダ(高速道路)は飛ばしている車も多いから……」

リットリオ「大丈夫ですよっ、私だってちゃんと運転はできますから♪」艶のある真っ赤な「フィアット500(二代)」に妹の「ヴィットリオ・ヴェネト」「ローマ」とぎゅう詰めになって乗り込む……手を振りながら正門を出て、ぎくしゃくとしたギアチェンジをしながら走って行った……

提督「やれやれね……♪」
904 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/24(日) 02:11:39.88 ID:aRz/cVAV0
提督「ディアナにも苦労をかけるわね」

ディアナ「いいえ、年が明けたら自動車旅行にでも行くつもりですので……それにせっかくのクリスマスですから、大いに腕を振るってご馳走を作ってあげませんと」

提督「むぅ……帰省は嬉しいけれど、ディアナのご馳走を食べ損ねるのは残念だわ」

ディアナ「まぁ、お上手でございますこと♪」

提督「本当のことよ」

ルチア「クゥ…ン」

提督「ルチア、貴女もね……戻ったらうんとお散歩に付き合ってあげるわ♪」

ルチア「ワンッ!」提督の言葉を聞いて、ぱたぱたと尻尾を振った……

ディアナ「では、行ってらっしゃいまし」

提督「ええ♪」

…艦娘たちが「家族水入らずのクリスマスを邪魔しないよう」にと提督に遠慮した面もあるかもしれないが、彼女たちもそれぞれ姉妹や仲良しの娘と一緒の旅行を計画していたり、はたまた鎮守府でのんびり過ごすつもりでいて、結果として提督は一人で気軽な帰省というかたちになっていた……ランチアに乗り込むと、冬の低い日差しで目がくらまないようサングラスをかけ、鎮守府の正門を出た…

提督「♪〜ふーん、ふーふーん……」艶のある深青色のランチアはきらりと日差しを反射して、右手に冬のイオニア海を見ながら海沿いの地方道路を走っていく……

………



提督「ふぅ……オートストラーダに入ったし、これで速度も出せるわね」

…眺望は素晴らしいがカーブが多く、片側一車線しかない地方道路から片側三車線の立派なオートストラーダ(高速道路)に入った提督……道路は大都市である北部のローマやトリノを離れ、バーリを始めとする暖かなアドリア海沿いにある南部の観光地でクリスマス休暇を過ごそうとする人たちで南へ向かう車線こそ混み合っていたが、ありがたいことに提督が向かう北部への道路はあまり混雑していなかった……それでも物流を支える大きなイヴェコの長距離トラックや、追い越し車線でいらだたしげなエンジン音を残して飛ばしていくフェラーリやメルセデスがいて、提督は気を付けて運転していた…

提督「……あらまぁ」

…この時期になると、ポルストラーダ(※ポリツィア・ストラダーレ…交通警察)も速度を出すことそのものにはある程度目をつぶってくれるが、無理な追い越しをかけたり傍若無人な運転をしている車がいると、途端にサイレンを鳴らして猛禽のように飛びかかっていく……提督が運転している前でも一台のメルセデス63AMGが白と青のランボルギーニ・ガヤルドのパトカーに誘導され、路肩で違反切符をきられていた…

提督「クリスマスだからって交通ルールが変わるわけじゃないし、私も気を付けないと……」

…しばらくして・休憩所…

提督「……もしもし、お母様?」

クラウディア「まぁ、可愛いフランカ……休暇は今日からだったわよね、いまどのあたり?」

提督「もう、子供じゃないんだから「可愛いフランカ」は止めてよ……いま14号線の休憩所で、もうそろそろ16号線に乗り換えるところ」

クラウディア「じゃああと四時間もしないくらいかしら?」

提督「そうね」

クラウディア「分かったわ、いっぱい美味しいものを用意しておくから楽しみにしていてね?」

提督「ありがとう……でも前にも言ったとおり、今回は夏の休暇と違って私一人だからほどほどにね」

クラウディア「ええ、残念だわ。夏の時はライモンドちゃんたちも喜んでくれたし、今回もうちに来る娘がいたらうんとご馳走を振る舞ってあげようと思っていたのに……そうそう、シルヴィアも会いたがっているわよ♪」

提督「私もよ、それでシルヴィアおばさまは?」

クラウディア「ジュリエッタの整備をしに町へ行っているわ……とにかく、気を付けて帰ってくるのよ?」

提督「ええ、そうするわ……それじゃあ、チャオ♪」携帯電話越しにキスの音を送ると休憩所の喫茶店で買い込んだコーヒーを飲み干し、肩を回して伸びをすると、あらためて車に戻った……

…オートストラーダの制限速度はいちおう130キロから150キロまでということになってはいるが、高速道路の常で真面目に守っているドライバーはほとんどいない……提督も「ランチア・フラミニア」の安定感に任せて140キロで路面を走らせているが、追い越し車線ではまるでジェット機のように飛ばしている車が次々と視界から遠ざかっていく…

………

…昼下がり…

提督「ふぅ、やっとここまできたわね」

提督「燃料もまだあるし、このまま行けば1500時には家に着きそうね……」

提督「……って、私ったら♪」つい「午後三時」のことを軍隊式に「1500時」と考えてしまい、一人で苦笑いをした……

提督「アンナじゃないけれど、このままじゃあ腕と膝を伸ばして行進しかねないわ……♪」

…小さいころからの幼馴染みで、提督の「許嫁」を自称しているアンナいわく「早く私と結婚して退役しなさい、そうじゃないとそのうちに腕と脚を伸ばして行進するようになりかねないわ」とのことで、それを思い出して思わず微笑んだ…

提督「まぁ、もしアンナも帰省しているようなら、クリスマスの間くらいはわがままに付き合ってあげても良いかもしれないわね……♪」そう独りごちた途端、腰に手を当て、提督に向かって身勝手かつわがままな……それでいて可愛らしい「お願い」をするアンナの姿が目に浮かんだ……

提督「……ふふっ♪」

………

905 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2023/12/29(金) 01:52:19.05 ID:hWfNLb6y0
…カンパーニア州・提督の地元…

提督「……やっぱり故郷はいいわね」

…街角のクリスマス装飾や家々に暖かな懐かしさを覚えながら左右に視線を向けつつ、故郷の狭い石畳の道路に合わせてゆっくりとランチアを走らせる……街の道路をのろのろと抜けると、海沿いのちょっとした丘の上に建つ提督の実家が見えてきた…

提督「ふぅ、やっと着いた……♪」

…家の門を開けるとランチアを庭の小道に進ませ、車庫に停める提督……車を降りてエンジンの冷めるチリチリいう音を聞きながら伸びをしていると、玄関を開けて母親のクラウディアが小走りでやって来た…

クラウディア「お帰りなさい、フランカ♪」そのまま提督に駆け寄ると左右の頬にキスをして、その上で暖かで柔らかい唇をたっぷりと重ねた……

提督「ぷは……ただいま、お母様♪」

クラウディア「ええ♪ さ、外は冷えるから中に入りましょう? 暖炉の火も燃えているし、暖かいコーヒーにパンドーロもあるわよ♪」

提督「ありがと、お母様」

クラウディア「いいのよ……あら、ちょうどシルヴィアも帰ってきたわ♪」

…提督の実家に向けて続くなだらかな上り坂を、艶やかな赤に塗られた「アルファロメオ・ジュリエッタ」スパイダーが走ってきた……オープンカーのジュリエッタ・スパイダーは冬なので屋根に幌を張っているが、その小粋な姿は変わらない……提督のフラミニアの隣にジュリエッタを入れると、軽やかな足取りでシルヴィアが降りてきた…

シルヴィア「ただいま……それとフランチェスカ、お帰り」

提督「ただいま、シルヴィアおばさま♪」シルヴィアに近寄ると左右の頬にキスをし、それからぎゅっと抱きしめる……

シルヴィア「ん……っと、フランカってばまた大きくなったみたいね」提督に抱き寄せられ、かるくたたらを踏んだシルヴィア……

提督「もう……高校生じゃないんだからいまさら背なんて伸びたりしないわ♪」

シルヴィア「どうかしらね……」

クラウディア「さぁさぁ、早く手を洗って……積もる話は部屋でお茶を飲みながらしましょう♪」

…居間…

提督「あぁ、やっぱりうちはいいわ♪」手洗いとうがい、それにメイク落としも済ませると、冬用のふんわりした部屋着とスリッパに着替えて居間の定位置に落ち着いた……

クラウディア「実家って言うのはそういうものなのよ……さ、クリスマスのお菓子を召し上がれ♪」

提督「ありがと、お母様♪」長らく愛用しているカップに注がれた甘いミルクコーヒーとクリスマスシーズンに食べる特別なお菓子である「パンドーロ」をつまみ、パチパチとはぜる暖炉を眺める提督……

シルヴィア「……今はこうして何でもないようなふりをしているけれどね、クラウディアと来たら一昨日くらいからフランカが帰ってくるのをずーっと待ちわびていて、今朝もフランカの部屋を掃除したり、ごちそうの支度をしたりでちっとも落ち着かなかったのよ」

クラウディア「もう、それは言わない約束でしょう///」

シルヴィア「言わなくたって分かることだもの……そうでしょ、フランカ?」

提督「ええ、でも嬉しいわ♪」

クラウディア「……もう、二人して私の事をからかって♪」

シルヴィア「からかってはいないわよ……」ちゅっ♪

クラウディア「ん、あっ……もう、フランカの前なのよ?」

提督「どうぞおかまいなく♪」

シルヴィア「理解力のある娘で良かったわ……ん、ちゅっ♪」

クラウディア「ん、あふっ……せっかく淹れたコーヒーが冷めちゃうわ」

シルヴィア「冷めたって良いわ……」

クラウディア「もう、そういうことをいうなら……ん、ちゅる……っ♪」

シルヴィア「ふふ、ようやくいつも通りのクラウディアになった……んっ、ちゅむ……んちゅ♪」

提督「私が言うのもどうかと思うけれど、お母様とおばさまは相変わらずね……倦怠期なんてあったのかしら?」

シルヴィア「無くはなかったわよ、程度が軽かっただけでね」

クラウディア「まぁ、シルヴィアってばそうやってごまかすんだから……私、あの時期はずいぶんこたえたのよ?」

シルヴィア「かもしれないわ、二日も口を利かなかったのは後にも先にもあの時くらいだったもの」

提督「……それだけ?」

クラウディア「もう「それだけ」ってことはないでしょう? 冷え込んだ関係の二人が一つ屋根の下で過ごす二日は長いものよ?」

提督「あー……まぁ、お母様たちの仲を考えるとそれだけでも記録破りだけれど……」

シルヴィア「まぁ、結局は仲直りできたんだから良しとしないと……ね」

クラウディア「ええ♪」
906 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/05(金) 02:01:34.49 ID:nyN/p2w50
提督「あんまり仲良くいちゃついていると他人は胸焼けするってよく分かったわ……私も気を付けないと」

クラウディア「ということはフランカも鎮守府でライモンちゃんたちとずいぶんいちゃいちゃしているってことね?」

提督「まぁ、ありていに言えばね」

シルヴィア「確かに気立てが良くて可愛い娘だったわね」

クラウディア「もう、シルヴィアってばすぐそうやって女の子に色目を使うんだから」

シルヴィア「別に色目は使ってないわ……それに、浮気で言えばクラウディアだって相当なものだったと思うけれどね」

クラウディア「むぅ……」

提督「お母様が浮気?」

シルヴィア「そう。もっとも、私は気にしなかったけれどね」

クラウディア「お互い、女の子と遊ぶ時はちゃんと相手にも「ただのお遊びで、本気じゃない関係でいいなら」って伝えることって決まりにしていたから、あんまりこじれたことはなかったわね」

提督「……私もそうしておくべきだったわ」

シルヴィア「ということは、フランカに熱を上げている女の子がいるわけね……となるとアンナかな?」

提督「ええ……物の道理が分からない子供の頃にした「約束」を持ち出して結婚しろ、って言われてもね……」

クラウディア「アンナちゃんは勝気だけれど良い子だもの、結婚すればいいじゃない♪」

シルヴィア「そうね。ちょっと短気な所はあるけれど決断力はあるし、若いのに国際弁護士だなんて大した娘だと思うわ」

提督「ちょっと、お母様とおばさままで……まさかアンナに丸め込まれたわけじゃないわよね?」

シルヴィア「人にどうこう言われて意見を変えるような親じゃないってことは、フランカが一番よく知っているはずよ」

提督「ええ、それはもう……でも、だとしたら余計に困るわ」

クラウディア「ふふふっ、フランカも色んな可愛い娘を連れてきたものね……もし目移りしちゃうようなら、一人くらい手伝ってあげるわ♪」

シルヴィア「一人で済むとは思えないわね」

提督「あぁ、もう……この話はおしまい。シルヴィアおばさま、あとで銃のメンテナンスを手伝って?」

シルヴィア「ええ」

提督「それから、おばさまがクリスマスのご馳走に食べられるよう鎮守府へ猟の獲物を送ってくれるって話をしたら、みんな喜んでいたわ」

シルヴィア「そう、良かった。何しろ今年は夏からずっとイノシシが多かったものだから、コムーネの駆除依頼も多くてね……私とクラウディアだけじゃとうてい食べきれないし、肉屋のアルベルトに売りにいっても良かったんだけど、それよりは鎮守府の娘たちに送ってあげた方が喜ばれるでしょうし」

提督「ええ、とっても……この秋はイノシシだけ?」

シルヴィア「でもないわ。野ガモもいくらか撃ったし、ウズラもいくらか……あと、農家のエミーリオに頼まれて、ウサギも何羽か」

クラウディア「……そういえば、あのフランスの女の子はウサギのパイ皮包みが好きだったわね」

提督「マリーのこと?」

クラウディア「ええ♪ あの娘ったら顔立ちが整っていて、いかにもフランス人らしいコケティッシュなファッションが似合っていたわよね♪ 黒のミニドレスとか、薄い藤色のプルオーヴァーなんてすごく素敵で……♪」

提督「確かに」

クラウディア「フランカもそう思うわよね。 それで、せっかくだからフェンディのミニドレスでもあげようと思ったのだけれど、あの子ったら「マダム、お気持ちは嬉しいのですけれど……わたくし、ファッションはフランスのものしか身に付けないつもりですの」って♪」

提督「あー……マリーならそういうことを言うわ」

クラウディア「そうなの、だから代わりにイヴ・サンローランのクリーム色をしたトレンチコートをあげたのだけれど……すらっとしていて良く似合っていたわ♪」

提督「でしょうね。マリーったらいっつも「体型を維持する」とかいって、ヨガだかピラティスだか……そんなようなことをしていたもの」

クラウディア「ヨガ、ね……最近ふとももやヒップが気になるし、私も始めてみようかしら?」

シルヴィア「その必要はないんじゃない」

クラウディア「あら、どうして?」

シルヴィア「第一に、そのくらいむっちりしている方が私の好みだから」

クラウディア「もう、シルヴィアったら……で、第二の理由は?」

シルヴィア「ベッドの上で一晩過ごせば、ヨガなんかよりもずっといい運動になるから……♪」そう言うと身体を抱き寄せ、甘噛みしつつ鎖骨にキスをした……

クラウディア「あんっ♪」

提督「……帰って来ない方が良かったかしら」
907 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/11(木) 01:10:01.78 ID:0BOJ4mtA0
…夜…

提督「あぁ、美味しかった……お母さまの手料理に勝るものはないわ♪」

クラウディア「ふふっ、鎮守府であれだけ美味しい料理を食べているフランカにそう言ってもらえると、私も作ったかいがあるわ♪」

シルヴィア「フランカの言うとおり、クラウディアの料理ほど美味しいものはないから仕方ないわ……基地祭でご馳走になったディアナの料理も見事なものだったけれど、やっぱり「家の味」が一番いいもの」

クラウディア「もう、二人してそんなに私の事をおだてて……パンドーロをもう一切れ切ってあげましょうか?」

シルヴィア「私はもう満腹……フランカは?」

提督「うーん、もう少し食べたい気分だけれど……太ももが気になるから明日にするわ」

クラウディア「そう? じゃあ器にはフタをしておくから、いつでも食べてね?」

提督「ありがと、お母さま……それじゃあお風呂に入ってくるわね♪」

…実家の懐かしい……しかし鎮守府の豪華な大浴場に比べるとあまりにもつつましやかな浴槽に身体を押し込むと、肌にたっぷりの湯気を吸い込ませようとするかのようにシャワーの栓をひねり、日頃「節水」の二文字に追い回されている海軍軍人にとっての罪深い楽しみである際限なしのシャワーに身体をあずけた…

提督「ふー……♪」ふかふかのバスローブと頭にタオルを巻いた格好で歯を磨き、それから洗面台で髪にドライヤーをあてる……

シルヴィア「さっぱりした?」

提督「ええ、とっても♪」

シルヴィア「それは良かったわ」少し古びてはいるが暖かそうな栗色のパジャマ姿で、ゆっくり本のページをめくっている……

クラウディア「お部屋の布団は冬物にしておいたから、暖かく眠れるわよ♪」クラウディアは身動きするたびにパールピンクとアイボリーに変化して見えるシルク生地のネグリジェ姿で、その上からライトグレイのガウンを羽織っている……

提督「それじゃあゆっくりベッドの中で寝転がることにするわ……お休みなさい♪」クラウディアとシルヴィア、双方の唇にお休みのキスをして、お返しに二人からも口づけをもらって自室へと入った……

提督「寝るのには少し早いし、読書でもするとしましょうか……」

…ベッド脇のスタンドを点けると本棚から文庫本を取り出してベッドにもぐり込み、ラジオ局の放送にチャンネルを合わせると、うるさくない程度に音をしぼった……

ラジオ「RAI(イタリア国営放送)ラジオが……時をお伝えします。続けて各地の天気ですが……」

提督「ふわぁ……」

…次第に暖まってくるふわふわの布団と、ほどよく薄暗くしてあるスタンドの明かり、それにラジオの音に混じって寝室に届く波の音……ベッドこそ少し小さいが、懐かしい居心地の良さがある自分の部屋でゆったりと本のページをめくっていると、次第にまぶたが下がってきた……提督は本にしおりを挟むと卓上に置き、スタンドの明かりを消すと、そのまま小さな寝息を立てはじめた…

………

…翌朝…

提督「うぅ……ん♪」時計を気にせずあれこれ考える必要もないままに、ベッドの中でもぞもぞと身体を動かしながら、裸身をくすぐる布団の感触を楽しんでいる……

シルヴィア「……フランカ、もう起きてる?」

提督「ええ、目は覚ましているわ……」

シルヴィア「ならいいわ。朝食が冷める前に来るようにね」

提督「はぁーい」眠気の混じったあくびとも返事ともつかないような声をあげると、名残惜しげにベッドを出て、すぐ足元に並んでいるスリッパに足を入れ、それから椅子の背に引っかけてあるガウンに袖を通した……

…しばらくして…

クラウディア「おはよう、フランカ♪」

提督「おはよう、お母さま♪」

…歯を磨いて冷たい水で顔を洗うと、すっかり眠気が覚めた提督……居間の暖炉は残っていた昨夜のおき火にシルヴィアが焚き付けを足してあり、火勢こそ強くはないが心地よく火が燃えている……テーブルにはまだ十分に温かいコーヒーのポットと温めたミルク、暖炉のそばで温めたおかげで外皮がパリパリとして、中心の白いふわふわした部分にバターが溶けて染みこんでいるパン、夏の間にクラウディアが作ったお手製のイチゴジャムと、さっぱりしたミルクのような口当たりのリコッタチーズ…

クラウディア「よく眠れたようね」

提督「ええ、一晩中ぐっすり……♪」

シルヴィア「新聞はここに置いておくから、読みたかったらどうぞ」

提督「……ありがとう、おばさま」長い脚を暖炉の心地よい熱で温めながら、目をつぶって苦くて甘いミルクコーヒーをゆっくり味わう……

シルヴィア「このジャム、甘さもちょうどいいわ」

クラウディア「そう、良かった。甘過ぎると貴女の好みじゃなくなるし、かといって砂糖が少なすぎるとカビが生えるから……フランカはどう?」

提督「そうね、私もちょうどいいと思うわ……おばさま、リコッタの鉢をこっちに回してくれる?」

シルヴィア「ええ」

クラウディア「ふふ、いいものね……家族そろって食卓を囲むのは♪」

………

908 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/14(日) 00:58:06.48 ID:atQrelcs0
…午前中…

クラウディア「そういえばフランカ、クリスマスカードは書いた?」

提督「ええ。海軍関係の知り合いにはタラントの管区司令部で軍事郵便にして投函してきたわ……軍事郵便だから相手の所属と名前さえ分かっていればどこにでも届くし、軍の知り合い以外に出す分もついでに書いて、タラント市内の郵便ポストに投函しておいたわ」

クラウディア「そう、なら大丈夫ね」

提督「ええ。お母さまは?」

クラウディア「私は親戚だとか、付き合いのあったデザイナーやモデルの知り合いくらいかしら」

提督「つまり例年通りたくさんっていうことね」

クラウディア「そうでもないわ。私は半ば引退しているようなものだから、最近はそれなりに親しい人としかクリスマスカードのやり取りはしないし……」

シルヴィア「よく言うわ……この間「書き終わったクリスマスカードを投函したい」って言うから郵便局まで車を出したけれど、たっぷり五十枚はあったでしょう」

クラウディア「そうは言うけれど、あれでも現役の頃よりは減っているのは貴女が一番よく知っているじゃない」

シルヴィア「まぁね」

クラウディア「でしょう? それからフランカのクリスマスプレゼントはそこにちゃーんと用意してあるから、当日は楽しみにしていてちょうだいね♪」

シルヴィア「私からも用意してあるからね」そういって軽く頭を動かしてみせた先、可愛らしいクリスマスツリーの下には確かに「フランカへ」とカードのついた包みが二つおいてある……

提督「いつもありがと。お母さま、おばさま」

クラウディア「どういたしまして……ところでフランカ、あなたは鎮守府の女の子たちにプレゼントを用意してあげたの?」

提督「ええ、もちろん。 おかげで冬の賞与があらかた吹き飛んだわ……」艦娘たちの喜ぶ表情を想像し、それから通帳から引き出した額のことを考えて、思わず苦笑いを浮かべる提督……

シルヴィア「フランカは良い子だね」

クラウディア「ええ、だって私たちの娘だもの♪」

提督「もう、やめてよ……///」

シルヴィア「それにしてもあれだけの娘たちにプレゼントを買ったのなら、相当な大荷物になったんじゃない?」

提督「ええ、まるで絵本の泥棒みたいに袋を担いで鎮守府へ運び込んだわ」

…さかのぼって…

提督「ただいまー……ふぅ、ふ……ぅ」

デルフィーノ「お帰りなさい、提督……って、その荷物は一体なんですか?」

提督「それもちろん、みんなへのクリスマスプレゼントよ……これでもまだ半分で、残りは車の中にあるの」

デルフィーノ「じゃあ私も手伝いますっ」

提督「いいのいいの……私がみんなに買ってきたプレゼントだもの、最後まで私が運ばないとね」

ルチア「ワンワンッ♪」帰ってきた提督を見て、じゃれつきたそうに尻尾を振って足元を駆け回っている……

提督「あぁ、ルチア。お散歩は後で連れて行ってあげるから、今は大人しくしていてちょうだいね……お座り」

ルチア「ワフッ…♪」きちんとお座りをして、床の大理石を尻尾でぱたぱたと掃いている……

…廊下…

提督「ふぅ……ひぃ……みんな、ちょっと道を空けて」

トリチェリ「すごい大荷物ですね」

エウジェニオ「まるで夜逃げでもするみたいじゃない?」

提督「言ってくれるわね……よいしょ」執務室の前にたどり着くと、大きな袋をそーっと下ろした……

エウジェニオ「……これからプレゼントにつけるカードを書くのね?」

提督「ご名答……エウジェニオ、貴女は?」

エウジェニオ「私はもう済ませちゃったわ……提督もそういう時は化粧品とか下着みたいに軽いものを選ぶほうが楽よ?」

提督「それは私も知っているけれど、みんなの好みを考えたらそうも言っていられなくて」

エウジェニオ「ふふ、一人ひとりに合わせて好きそうなものを選んでプレゼントするなんて提督らしいわね……大抵の鎮守府じゃあ出来合いになっているお菓子の詰め合わせが良いところだって聞くわよ?」

提督「そうできないのが私の指揮官としての悪いところよ……貴女たちが可愛いから、つい恋人同士みたいな気分になって甘やかしちゃう♪」

エウジェニオ「恋多き女性だものね?」

提督「それは貴女もでしょ、エウジェニオ♪」
909 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/19(金) 01:46:26.07 ID:/1S64vcq0
…しばらくして・食堂…

提督「よいしょ……うんしょ……」

エウジェニオ「ほら、提督が通るから道を空けなさい」

ニコ「ずいぶんな大荷物だねぇ」

トレント「て、手伝いましょうか?」

提督「いいのよ、もう降ろすから……ふぅ」

レモ「くすくすっ、提督ってばまるで泥棒さんみたーい♪ それで、何が入ってるのぉ?」

提督「それはもちろん……♪」

レモ「……もしかして、クリスマスプレゼントっ?」

提督「ご名答。くれぐれも当日までは開けないように♪」

…クリスマスツリーの根もとに次々とラッピングの施された箱や包みを並べ、積み上げていく提督……個々のプレゼントには表書きに艦娘それぞれの名前を書き込んだ提督からのクリスマスカードが貼りつけてあり、それらを並べている間にも噂を聞きつけ、艦娘たちが入れ替わり立ち替わりでのぞきにくる…

エリトレア「わぁ、すごいたくさんのプレゼントです」

フルット「普段からよい暮らしをさせてもらっておりますのに、さらに散財をしていただいて……感謝しております」

提督「いいのよ、お世話になっているのはむしろ私の方だもの……♪」

アブルッツィ「それにしてもまぁ大変な量ね……」

提督「まぁね……それとクリスマス休暇に入っちゃう娘には先に渡すから、当日になったら開けてちょうだいね♪ セベリ、貴女もそうだったわよね……少し気が早いけれど、はい」

ウエビ・セベリ「わ、嬉しイです」

提督「そう言ってくれると用意したかいがあるわ♪」そう言って、クリスマス休暇で鎮守府を離れる予定の艦娘たちにプレゼントを渡す……

………



シルヴィア「いいことをしたわね。彼女たちだって欲しいものが色々あるでしょうし」

提督「ええ、そう思ってさりげなく聞き出したり、遠回しに尋ねてみたり……大変だったわ」

クラウディア「そうね……ところでフランカ、あの超ミニスカートのサンタ服は着たの? けっこう可愛かったけれど」

提督「けほっ! もうお母さまったら、何を言い出すかと思ったら……そもそもどうしてあの格好の事を知っているの?」

クラウディア「だって、前にうちに泊まりに来たお友達の方が教えてくれたもの」

提督「もう、いったい誰よ……そういう余計な事を吹き込んで……///」

…転属や航海の都合で「根無し草」的な暮らしになる事の多い海軍士官の常で、温かい家庭的な雰囲気というものに憧れがある……そのせいか、お互いに機会があれば家に泊めてあげたり、食事を振る舞ってあげることも少なくない……提督の実家はガエタの近郊とは言うものの田舎にあって交通の便もひどく悪いが、それでも仲良しになった何人かは週末や短い休暇を使って泊まりに来たことがある…

クラウディア「さぁ、誰かしら♪」

提督「もう……」

シルヴィア「ふふ……そういえばフランカ、クリスマス休暇はいつまで?」

提督「えーと、クリスマスを挟んでの二週間と年始からの三日間ね……どうして?」

シルヴィア「いえ、せっかくの機会だからどこかスキーにでも行こうかと思って……モンテ・チェルヴィーノ(マッターホルン)のふもと辺りなんてどうかしら」

提督「チェルヴィニアとか?」

(※モンテ・チェルヴィーノ…マッターホルンのイタリア名で「鹿の角」の意。第二次大戦時に「白い悪魔」とも称されたイタリア山岳部隊「モンテ・チェルヴィーノ」大隊の名前の由来でもある。チェルヴィニアはそのふもとにある村で有名なリゾート地)

シルヴィア「ええ。もっともああいう有名どころは外して、もっと小さなコムーネにある静かなホテルにでも泊まって過ごすの」

提督「うーん、アイデアは素敵だけれど休暇の日数を考えると……ね」

シルヴィア「ちょっとせわしないわよね、フランカが子供の頃はあちこちよく行ったものだけれど」

提督「でも嬉しいわ、おばさまが誘ってくれて……♪」

シルヴィア「当然でしょう? 貴女は私にとって最愛の女性の娘であり、可愛い宝物だもの」ふっと口元に小さな微笑を浮かべ、さらりと言った……

提督「……おばさまにそういう風に言われるとすごくドキドキするわ///」

クラウディア「そうよね、私まで胸がときめいたわ♪」

シルヴィア「さすがに二人同時に相手をするのは勘弁して欲しいわ……どっちも可愛いけれどね」

クラウディア「ふふ、それじゃあ今夜は私♪」
910 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/22(月) 01:38:57.03 ID:ING35Mc+0
…翌日…

シルヴィア「おはよう、フランカ……少しいいかしら」

提督「なぁに、おばさま?」

…鎮守府では朝から新聞やニュース、気象通報に目を通し耳を傾けていたが、休暇に入ってからはテレビやラジオのニュースも最低限で済ませ、一日中ふにゃふにゃのセーターやナイトガウン姿で庭いじりをしてみたり、文庫本をめくっていた提督……士官学校で身体にしみついた習慣が抜けないもので寝具だけはきちんと畳んでおいたが、この日ものんびり温かいカフェラテをすすり、ほかほかしたパンを口に運んでいた……と、シルヴィアが声をかけてきた…

シルヴィア「いえ、せっかくの機会だから射撃にでも行こうかと思って……行く?」

提督「ええ、久しぶりだし……ちょっと待ってて、すぐ食べ終わるわ」残ったパンを口に放り込むとカフェラテで流し込み、食器を洗いにせかせかと台所へ歩いて行く……

シルヴィア「ゆっくりでいいわよ、私だって支度はまだなんだから」

提督「だって、せっかくの機会だもの……できるだけ長く一緒にいたいわ」

クラウディア「そうね、昨晩は私が独り占めしちゃったから……今日はフランカの番♪ お弁当、いま用意してあげるわね」

提督「グラツィエ、クラウディアお母さま……大好きよ♪」

クラウディア「はいはい♪」

…しばらくして…

提督「用意できたわ、おばさま」

シルヴィア「私もよ……ところでフランチェスカ、鎮守府ではずいぶん美味しいものを食べているみたいね」

提督「むぅぅ……これでも腹筋や腕立て伏せをしてみたり、チェザーレやバンデ・ネーレに剣術の稽古を付けてもらったりして気を付けてはいたのよ?」

…提督はクリーム色のセーターに茶色のラム革ベストと黒い牛革の手袋、鎮守府ではほとんど出番のない軍用の迷彩ズボンを着て、背中にはクラウディアの用意してくれた弁当や水筒の入っている小ぶりなリュックサックを背負っている……腰のベルトには散弾銃の弾薬ケースやこまごましたものの入った小ぶりなポーチを通し、ズボンの裾を黒革のひざ丈ブーツに突っ込んであるが、鎮守府での食生活がたたってかズボンのヒップからふとももは少しきゅうくつで、ベストの胸回りも少しきつい…

シルヴィア「ま、デスクワークが多いでしょうし仕方ないわね」

…そう言って肩をすくめたシルヴィアは着古した白いプルオーヴァーと、自分で射止めてなめした鹿革をクラウディアに縫製してもらった愛用の茶色いベスト、黒い乗馬ズボンとふくらはぎ丈の黒革ブーツ姿で、肩からは昔の山賊のように弾薬ベルトをかけ、獲物をさばくためのがっしりした「フォックスナイヴス」のナイフをブーツに突っ込んである…

提督「ええ、書類の海で泳げそうなほどよ」

シルヴィア「それじゃあせいぜい野山を歩き回って新鮮な空気を味わうとしましょう……お昼になったらクラウディアのお弁当を食べて、夕方になったら戻る」

提督「とっても健康的ね」久々に持つベネリの散弾銃を手に持ち、重さを確かめるようにして握り直す……

シルヴィア「そういうこと」フランキの散弾銃を肩にかけ、裏庭の門を開けると雑木林の間に入っていった……

…二時間後…

提督「ふぅ……」

シルヴィア「だいぶくたびれたみたいね……少し休憩にする?」

提督「そうする……まったく、身体がなまっているって実感したわ……」手頃な倒木に腰を下ろすと暴発させないよう散弾銃を置いて、肩を回し、脚を伸ばした……

シルヴィア「そうみたいね」午前中だけで茂みから飛び出してきたつがいのキジに、素早い野ウサギを一羽、それに四羽ほどの野鴨を仕留めて腰にぶら下げている……

提督「ええ……そんなに歩いたわけでもないのに、こんなに息切れするなんてね……」射撃の腕自体は衰えていないはずだったが肩で息をしていたせいか、それまでなら難なく撃ち落としていたはずの野鴨の群れに逃げられ、二羽ばかりが残念そうにぶら下がっている……

シルヴィア「まあ、こっちにいる間だけでも身体がなまらない程度に運動すればいいわ……ちょっと早いけどお昼にして、それからもう少し歩いて帰りましょう」

提督「そうね……」

…暖かな日差しを受けた森の空き地でお弁当の包みを開く提督とシルヴィア……中身はもちもちしたフォカッチャに乾燥トマトや黒オリーヴ、少し塩っぱいハムなどを挟んだサンドウィッチと、アーモンドと干しぶどうを練り込んだ味の濃いチーズ、小瓶に入ったアーティーチョークのピクルス……冬枯れた広葉樹の枝やいつでも青々としたカサマツの間を風がさわさわと吹き抜けて、硝煙と汗にまみれた肌を冷やしていく…

シルヴィア「……いい風」

提督「ええ」

シルヴィア「ねえ、フランチェスカ……」散弾銃を置くと提督の隣に座り直した……

提督「なぁに、おばさま?」

シルヴィア「……久しぶりに……する?」じっと見つめてくる瞳に、汗と硝煙と皮革の野性的な匂い、そこに爽やかな松葉の混じった香ばしいような香り……

提督「ええ……///」

シルヴィア「ん……♪」

提督「あ、んぅ……あふっ///」

シルヴィア「フランカとこうするのも久しぶりね……んむ、ちゅ……っ」

提督「ええ、だってシルヴィアおばさまは私が初めて好きになって、初めて愛することを教えてくれた女性(ひと)だもの……」

シルヴィア「……あの時は私もずいぶん悩んでからクラウディアに相談したものだけれど、まさかあんなにあっさり許すとは思わなかったわ」

提督「そうね、お母さまが心の広い人で良かったと思うわ……ん、ちゅ♪」
911 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/01/29(月) 02:28:02.91 ID:qw/aShxX0
シルヴィア「ふふ……私もクラウディアのそういう所が好きで結婚したのよ」

提督「おばさまの気持ち、分かるわ……んんっ、あぅ……ふあぁ……っ///」

…日差しの差し込む小さな森の空き地で生えている木に背中を預け、脚の間に割って入るシルヴィアの膝や、ぐっと迫ってくる顔と吐息を感じている……きゅっと引き締まった乳房がセーター越しに触れ、ベルトを緩めてズボンの中に入ってきたシルヴィアのひんやりした指が熱を帯びた提督の秘部に触れる…

提督「ん、あっ……あぁ……ん///」

シルヴィア「フランカ……愛おしい私の娘♪」

提督「シルヴィアおばさま……ぁ///」

シルヴィア「……ここ、好きだったわね」ちゅく……っ♪

提督「ええ、そう……ふぁぁ……っ♪」

…木立の間に響く野鳥の鳴き声や、地面から立ちのぼってくる枯葉と土の乾いた匂いを感じながら、下腹部のじんわりととろけるような感覚に甘い声を漏らす…

シルヴィア「良かった。忘れていないものね……」ごつごつした樹皮に提督を押しつけるようにしながら身体をくっつけるとズボンのベルトを緩め、ウエストのすき間から提督の手をいざなって自分の花芯へと導いた……

提督「シルヴィアおばさまのここ……濡れていて……温かい……♪」

シルヴィア「フランカのキスが上手だからよ」

提督「嬉しい……ん、ちゅぅ……ちゅる……っ///」

シルヴィア「フランカ……♪」

提督「あ、あっ……シルヴィアおばさま……ぁ///」とろ……っ♪

シルヴィア「ん……♪」最後に愛のこもった優しいキスを唇にすると、濡れていない方の手で短めにしている髪を軽くかき上げた……

提督「はぁ、はぁ、はぁ……ぁ///」

…木の幹に背中をあずけたまま、ずるずるとくずれ落ちそうになる提督……気だるげな心地よさと、もっとシルヴィアと愛し合いたいという甘ったるい欲望で目がかすみ、敏感になった乳房の先端やとろりと濡れた花芯に下着の布地が触れるたびに静電気のようなピリッとした刺激が伝わってくる…

シルヴィア「そろそろ日が傾いてくるし、戻りましょう」

提督「ええ、シルヴィアおばさま……///」服の乱れを直して立ち上がったが、じんわりと濡れて冷たくなり始めた下着がはり付いてくる気色の悪い肌心地と、下腹部からの甘い余韻が合わさって微妙な内股になっている……

シルヴィア「ふふ……その調子じゃあ日暮れまでにうちに戻れるかどうか分からないわね」

提督「も、もう……おばさまったら笑わないで///」

シルヴィア「悪かったわ……足元のおぼつかないフランカも可愛いわよ♪」どちらかと言えばクールなシルヴィアにしては珍しく、どこか色っぽい笑みを浮かべながら見せつけるようにして右手を開き、中指と薬指の間に引いた粘っこい糸を舐めあげた……

提督「……っ///」

………

…夕方…

提督「お母さま、いま戻ったわ」

シルヴィア「ただいま、クラウディア」

クラウディア「あら、お帰りなさい♪ 獲物はあった?」

シルヴィア「悪くはなかったわ。血抜きは済ませてあるから、羽根をむしったり皮を剥くのは後でするとしましょう」

クラウディア「ええ、お願いね……あら」シルヴィアとキスをすると、少し問いかけるような表情を浮かべた……

シルヴィア「どうかした?」

クラウディア「……フランカの味がするわ」

提督「……っ!」

シルヴィア「さすが、鋭いわね」

クラウディア「自分の結婚相手と娘の味くらい分かるわ……それで、どうだった?」笑みを浮かべ、上目遣い気味にしながらいたずらっぽく問いかけた……

シルヴィア「とっても可愛かったわ、貴女の娘だけあって……ね♪」

クラウディア「まぁ、ふふっ……♪」

提督「///」

クラウディア「あらあら、フランカったら恥ずかしがっちゃって……シルヴィアは素敵だもの、我慢なんてできないわよね?」

シルヴィア「まったく、自分の娘に惚気てどうするの」

クラウディア「いいじゃない、貴女は私の自慢の女性(ひと)だもの……さ、夕食の前にほこりを洗い流していらっしゃいね♪」
912 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/03(土) 02:28:47.52 ID:YuI7hGX20
…クリスマス数日前…

提督「お母さまたちとクリスマスを過ごすのも久しぶりね」

クラウディア「そうねぇ……フランカが海軍に入ってからはなかなか会う機会もなかったものね」

提督「これでもクリスマスに休暇が取れるよう毎年頑張ってはいたのだけれど……なかなかそうも言っていられなくて」

シルヴィア「でもフランカは毎年クリスマスカードを書いてくれていたから、クリスマス・イヴになるといつも二人で読んだものよ」

提督「私もお母さまとおばさまのカード、欠かさず読んでいたわ……それにお菓子やプレゼントも贈ってくれたわよね」

クラウディア「ええ、一緒にいられないぶん贈り物くらいはしないと♪」

提督「お母さまたちの気持ちが伝わってくるようで嬉しかったわ。お菓子なんかは士官宿舎で集まって持ち寄りのクリスマスパーティなんかしたときに、ずいぶん好評だったし」

クラウディア「そう言ってもらえると作ったかいがあるわ」

提督「何しろみんな甘いものが好きだから……」と、提督の携帯電話がぶるぶると震えだした……

シルヴィア「電話みたいね」

提督「ええ。緊急呼び出しの番号なら着信音も鳴るようにしてあるから、たぶんそこまでの用事じゃないはずだけれど……あ」

クラウディア「知り合いの女の子?」

提督「ええ、ジュリアだわ。P−3C哨戒機の飛行隊長をしている……もしもし?」

…シチリア島・カターニア…

アントネッリ中佐「やぁフランチェスカ、ご機嫌にしているかな?」

…イタリア海軍航空隊・カターニア航空基地の外、モトグッツィの大型バイクのかたわらで電話越しに提督の柔らかな声に耳を傾けているアントネッリ……黒革のライダースジャケットに筋肉質な脚線美を余すところなく引き出しているぴっちりしたレザージーンズ、オートバイ用のがっちりしたブーツで、黒に近いボルドー色のルージュを引き、冬の低い日差しで目がくらまないように濃いサングラスをかけている…

提督「ええ、おかげさまで……ジュリア、貴女は?」

アントネッリ「ご機嫌さ、ありがとう」

提督「クリスマス休暇は取れた?」

アントネッリ「ああ、今日からね……正確に言えば今からかな。今日の明け方から太陽と一緒に哨戒飛行を済ませてきたところさ。他の連中はフライトスーツを脱ぐなり街に飛び出していったよ……酒を飲んでしまえば緊急呼集がかかっても飛ばなくて済むからね」

提督「なるほどね♪ それで、何事もなかった?」

アントネッリ「ああ、深海のお化けたちもクリスマスはお休みらしい」

提督「それは良かったわ」

アントネッリ「まぁね……私の方は機付整備員たちをねぎらって、それからさっきまで基地司令がよこすしょうもない書類にサインをしていたんだが……今は晴れて自由の身さ。年内は実家かい?」

提督「ええ、その予定よ……もし良かったら泊まりに来る?」

アントネッリ「いいや、せっかくの家族水入らずの時間に割って入るほど無粋じゃないつもりだよ……年が明けたら鎮守府の方にお邪魔するさ」

提督「あら、そう? ジュリアが来てくれたらお母さまもおばさまも喜んでくれると思うけれど……」

アントネッリ「なに、その気持ちだけで嬉しいよ……可愛いフランチェスカ♪」

提督「もう、相変わらず上手なんだから♪」

アントネッリ「事実なんだから仕方ないさ」

提督「今までどれだけの相手にそう言ってきたの?」

アントネッリ「君ほどの美人には一度も」

提督「ジュリアってば……口説いた相手全員にそう言っているんでしょう?」

アントネッリ「いいや? 私が本気で口説くのはフランチェスカ、君と……それからあの青い空だけさ」

提督「まぁ、今どきメロドラマでもそんな台詞は言わないわよ?」そう言いつつも、携帯電話の耳元へささやくように話しかけるアントネッリの声に、思わずどきっとする提督……

アントネッリ「そうかもしれないね……ふふ、とにかくよいクリスマスを」

提督「ええ……ジュリア、貴女もね」

アントネッリ「ああ、ありがとう……チャオ♪」電話越しに投げキッスの音を送ると、通話を終えた……

提督「もう、ジュリアってば……ただ「良いクリスマスを」って言えばいいだけなのに///」

シルヴィア「……この調子だとこれから数日はフランカの携帯電話が鳴りっぱなしね」

提督「それだけは勘弁してほしいわ」想像して思わず苦笑いを浮かべた……
913 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/07(水) 01:39:13.15 ID:aQ++Hmij0
…12月23日…

提督「いよいよ明日からクリスマスね」

(※カトリックの国は教会暦で24日の晩からがクリスマス。クリスマス・イヴは「クリスマスの晩」であって「前夜」ということではない)

クラウディア「そうね……さぁ二人とも、一緒にツリーの飾り付けをしましょう?」

提督「はーい」

シルヴィア「ええ、いま行くわ」

…ここ何年か提督抜きの二人きりでクリスマスを過ごしてきたクラウディアとシルヴィアだったが、今年はひさびさに家族揃ってのクリスマスということで、居間のツリーはしきたりにのっとり、今日まで飾り付けを仕上げないまま立ててあった……暖炉のなごやかな火を見ながら穏やかに、しかし和気あいあいと母娘で飾りつけに興じる提督たち…

提督「……やっぱりうちで過ごすクリスマスっていいものね♪」

クラウディア「そうでしょう。それから明日はちゃんとお魚料理、明後日はアヒルや鴨のごちそうが控えているから期待していてね♪」

シルヴィア「しかもクラウディアが料理するんだもの……考えただけで涎が出るわね、フランカ?」

提督「ええ♪ あ、その飾りはこっちにちょうだい?」

…クラウディアとシルヴィアが年ごとに、また色々な記念に少しずつ買い足していった思い入れのあるオーナメントや飾り物でにぎにぎしく装飾されていくクリスマスツリー……木の葉が揺れ動くたびに青々とした針葉樹の香りがふっと鼻腔をくすぐり、金銀の玉飾りやリンゴを模した木の飾り物、雪の結晶や小さな銀の星が取り付けられてゆくうちに、ツリーが華やかさを増していく…

クラウディア「どう? お星様は傾いてない?」つま先立ちをして人の背よりも高いツリーのてっぺんに銀の星の飾りを載せると、少し下がってシルヴィアに尋ねた……

シルヴィア「大丈夫、真っ直ぐよ」

クラウディア「そう、それじゃあ完成♪」

提督「……本当に、いつ見ても綺麗ね」

クラウディア「ええ、シルヴィアほどじゃないけれど♪ ……それに、こうして祝えるのがなによりね」

提督「そうね」

シルヴィア「それじゃあ賛美歌のレコードでもかけて……二人とも、ヴィン・ブリュレーでも飲む?」

(※ヴィン・ブリュレー…温めた赤ワインに香辛料や柑橘の風味を利かせたもの。グリューワイン)

クラウディア「ええ、いただくわ♪」

提督「私も」

シルヴィア「分かった」

…暖炉の片隅に鍋を置くと赤ワインを注ぎ、砂糖の代わりに地元の農家から分けてもらった蜂蜜を垂らし、ショウガやシナモン、それにオレンジとレモンのピール(皮)を加えて軽く温める……鍋でワインがふつふつと言い始めたところで鍋を火から遠ざけると、めいめいのカップにワインを注いだ…

クラウディア「ん……美味しい♪」

シルヴィア「クラウディアは甘めが好きだから、蜂蜜を多めにしたの……フランカはどう?」

提督「ええ、ちょうどいいわ」

シルヴィア「それなら良かった……ん///」

クラウディア「ちゅっ……どう、美味しい?」

シルヴィア「ええ、とっても甘かったわ」

提督「そうね……お母さまたちがいちゃつく分、蜂蜜はもっと少なくて良かったわ」

クラウディア「もう、フランカってば自分の母親に嫉妬しちゃって……んーっ♪」

提督「ん、んぅ……っ///」

クラウディア「これで機嫌を直してくれる?」

提督「機嫌を直すもなにも……実の母親にキスされたからってどうこうしないわよ///」

クラウディア「あら、残念♪」

シルヴィア「……クラウディア」

クラウディア「なぁに?」

シルヴィア「ん……んちゅっ、ちゅぅ……ちゅる……っ、ちゅ……っ♪」

クラウディア「あっ……ふ……んぅ♪」

シルヴィア「ぷは……フランカは可愛いけれど、せっかくのキスを上書きされたくはなかったから」

クラウディア「……まぁ///」

提督「……やっぱり蜂蜜はいらなかったわ」
914 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/13(火) 01:56:19.59 ID:q0m2a0XY0
…12月24日・午前…

提督「おはよう、お母さま、おばさま……いよいよクリスマスね」

クラウディア「ええ、今夜は一緒に教会へ行きましょうね♪」

提督「こっちでクリスマスミサに参加するのも久しぶりね……」

…そう言って提督がのんきにコーヒーをすすっていると、庭の門に付いている呼び鈴が鳴っている音が聞こえてきた…

クラウディア「……きっと郵便局のペリーニさんね」

シルヴィア「さすがね……貴女の言うとおり、郵便配達のペリーニだったわ。それを取って頂戴?」椅子から立ち上がり居間の窓から庭先の門を眺めて言った……

クラウディア「ええ♪」この町の郵便配達やパトロールの巡査、消防署員といった人たちに挨拶として渡すため、クラウディアが毎年のように作っているクリスマスカード付きの菓子の小袋を一つ手渡した……

提督「ペリーニさん、まだ配達をしているのね」

クラウディア「ええ。本当ならくせっ毛のアルベルトが継ぐはずだったのだけれど、田舎は嫌だってナポリに出て行っちゃったものだから」

提督「ナポリねぇ……食べ物は美味しいけれど、地区によってはずいぶん柄の悪い人間もいる街よ?」

クラウディア「そうは言っても、都会にあこがれるものなのよ」

提督「かもね」そう言って肩をすくめた提督……と、シルヴィアが戻ってきて束ねた郵便物と小包の山を机に置いた……

シルヴィア「郵便配達の人がクリスマスカードを届けてくれたわよ……フランチェスカ、貴女宛のもずいぶんあるわ」

提督「あら、本当?」

クラウディア「せっかくだし誰から来たのか読んでみたら?」

提督「そうね、他にやることがあるわけじゃないし……えぇーと」

…士官学校で知り合い、いまではそれぞれの任地に散らばっている仲の良い同期を始め、提督と「親しい」間柄にあった女友達やまだ文通の続いている「お姉様」たち、それにフランスのトゥーロンからカードを送ってきたエクレール提督を始め、各国海軍にいる提督の知り合いや友人たち…

提督「さてと、一体誰から来ているかしら……まずはトゥーロンのマリーに、イギリスからはメアリ、アメリカからはノーフォークのジェーン……あ、姫もわざわざ横須賀からカードを送ってきてくれたのね」

クラウディア「ジェーンって言うのは、写真で見せてくれた褐色のグラマーさん?」

提督「ええ、口は悪いけれど米大西洋艦隊ではピカイチの提督ね」

シルヴィア「姫っていうのは、夏期休暇の時の日本酒をプレゼントしてくれた日本の提督さんでしょう?」

提督「ええ。横須賀の百合野准将……長い黒髪がきれいな奥ゆかしい女性よ。提督としても艦隊運用が上手だし、ぜひまた会いたいわ」

クラウディア「他にもあちこちからたくさん届いているわね……フランカは可愛いから♪」

提督「もう、照れるからよして……たいていはもう送ってあると思うけれど、カードを出していない人がいたら書いてあげないと」

シルヴィア「良かったわね、読む楽しみが出来て……それとクラウディア、フランカだけじゃなくて貴女にもずいぶん来ているのよ?」

クラウディア「あら、本当に……お義理のカードはもうお断りしているのだけれど、それでもずいぶんあるものね」

シルヴィア「デザイナーをしていたときの貴女は顔が広かったものね」

クラウディア「そうは言ってもファッション業界なんて次々と新顔が出てくるし、私みたいに引退してのんびりしている人間なんてすぐ忘れられちゃうわ」

シルヴィア「この量を見る限り、そうでもないみたいだけれどね」

クラウディア「んー……まぁ、まだ時々は私にデザインを見て欲しがる人なんかもいるし、多少はね?」

提督「お母さまってば、せっかくお呼びがかかるんだもの……もう一度デザイナーとして復帰すればいいのに」

クラウディア「いいの。こういうのは形だけ言っておくお世辞みたいなものなんだから、本気にしたらバカにされちゃうわ……それにここでシルヴィアと愛し合っている方が性に合っているもの♪」

シルヴィア「ミラノのファッションにとっては大きな損失ね」

クラウディア「貴女がいないミラノよりは、貴女のいるここがいいわ♪」

シルヴィア「嬉しいことを言ってくれるわね……でも、このまえ身に付けていたミラノの素敵なランジェリーは捨てがたいわ」

クラウディア「もう……♪」

提督「あー……私はお母さまたちのお邪魔をしないよう、部屋でクリスマスカードを読んでいることにするわ」

クラウディア「ふふ……ありがと、フランカ♪」提督が二階へと上がって行くなり、シルヴィアに抱きついた……

シルヴィア「ちょっと、クラウディアってば……ミサの時間まで半日はたっぷりあるんだから、そう焦らなくたっていいでしょうに」

クラウディア「むしろ、たった半日しかないのよ? お夕飯の支度もしないといけないし……」

シルヴィア「それじゃあ夕飯の支度をしながらすればいいわ……こんな風に♪」よく台所でするように、後ろからぎゅっと抱きしめた……

クラウディア「あんっ♪」
915 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/19(月) 02:15:52.33 ID:ExjpwAj80
…しばらくして…

クラウディア「それじゃあ晩のミサの前に食事にしましょう……さ、二人ともかけて?」

提督「ええ」

シルヴィア「座ったわよ」

クラウディア「よろしい、それじゃあ食前のお祈りを……」

…シルヴィアもクラウディアも形ばかりのカトリックであまりやかましいことは言わないが、食べ物への感謝をこめて食前の祈りをささげ、提督も二人に合わせて祈りの言葉を唱え、十字を切った…

シルヴィア「……そして素晴らしい食事を作るクラウディアにも」祈りのおまけにそう付け加えたシルヴィア

クラウディア「もう、シルヴィアったら……それじゃあ召し上がれ♪」

…イタリアではクリスマスの晩は肉食を断って魚料理を主菜におくことから、食卓には魚料理が並んでいる……前菜のマリネに続いて、クラウディアがアサリのうまみが沁みだした「スパゲッティ・アッレ・ヴォンゴレ」(ボンゴレ・ビアンコ)を取り分ける…

クラウディア「どう、フランカ?」

提督「ん……美味しいわ♪」

…どんな魔法を使っているのか、シンプルなヴォンゴレのパスタにもかかわらず、提督が作るものよりも美味しい……アサリから出た旨味のある塩気と、白ワインからくるごくかすかな爽やかな酸味……それにあとを引くニンニクの風味…

クラウディア「そう、良かったわ♪」

シルヴィア「本当に美味しいわよ……ワインも進むわ♪」

クラウディア「ミサに行くのだからあんまり飲み過ぎないのよ?」

シルヴィア「ええ、そうするわ」

クラウディア「ふふっ……それじゃあ次のお料理を取ってくるわ♪」

…軽やかな足取りで戻ってきたクラウディアが卓上に置いたのは、メインディッシュにあたる「セコンド・ピアット(第二皿)」の料理で、クリスマスの魚料理ということで、シチリアと向かい合うイタリア半島のつま先、レッジョ・ディ・カラーブリアの名物料理「ストッコ・アッラ・マルモレーゼ(マルモラ風の干し鱈)」がほかほかと湯気を立てている…

シルヴィア「いい匂いね」

クラウディア「うふふっ、今年はフランカが帰ってくるって言うから少し高いバッカラ(干し鱈)を買っておいたの」

提督「二日前から水に漬けて、半日おきにその水を替えて……お母さま、大変だったでしょう?」

クラウディア「いいのよ、久しぶりに家族みんなで過ごすクリスマスなんだもの♪」

…浅鍋でソフリット(野菜のみじん切りやハーブをラードで炒めたもの)を作ったところに皮を剥いたトマトを加えて煮詰めながら塩を振り、くし形に切ったジャガイモやオリーヴ、バッカラを加え、コトコトと煮込む…

提督「ん、はふっ……うーん、いい味♪ トマトの甘酸っぱいところにソフリットの風味とオリーヴの渋み、絶妙な塩気……私も何回か作ったことがあるけれど、やっぱりお母さまにはかなわないわ♪」お手上げとばかりに両方の手のひらを上に向けた……

クラウディア「ふふっ、私だってただ長い間台所に立っているわけじゃないのよ♪」

シルヴィア「そうみたいね……それにフランチェスカもいるから、今年のはことさらに美味しいわ」

提督「私もお母さまたちと一緒に食べることができて嬉しい……♪」

………



提督「……あぁ、美味しかったわ♪」

クラウディア「いっぱい食べた?」

提督「ええ、食べ過ぎちゃったくらい……あんまり家の料理が美味しいのも考え物ね?」そういうと、冗談めかしてお腹の肉をつまむ真似をする……

クラウディア「ふふ、貴女くらいの歳ごろは食べ過ぎるくらいでちょうどいいのよ♪」

提督「もう、お母さまったら……私だってもう子供じゃないんだから、そんなに食べさせなくったっていいの」

シルヴィア「それでもフランチェスカはまだ若いからいいわ……私なんかは気を付けないと、あっという間に樽みたいな体型になってしまいそうね」

クラウディア「あら、私は貴女が樽みたいな体型だって構わないわよ?」

シルヴィア「勘弁してちょうだい……そうならないためにも、皿を片付けて運動するとしましょう」

提督「それなら私も手伝うわ。食後のパンドーロを食べた分、カロリーを消費しないと♪」

クラウディア「まぁ、二人ともありがとう♪」

………
916 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/02/26(月) 01:30:53.98 ID:zTDZK47j0
…夜…

クラウディア「それじゃあ、ミサに行く準備はできた?」

…そういって玄関先で二人に声をかける……クリスマスミサと言ってもある程度シックな装いであれば問題ないので、クラウディアはクリーム色のベルト付きトレンチコートに、淡いレモン色のふわふわしたセーターと白のスラックス、頭にはメルトン(厚手のフェルトのような布)の白いベレー帽をかぶって、首元にアクセントとして花柄プリントが施されたスカーフを巻いている…

シルヴィア「済んでるわ」

…シルヴィアは黒いダブルのステンカラーコートにパールグレイのピッタリしたタートルネックセーター、細身の黒いスラックス……それに差し色としてワイン色のマフラーを巻き、足元をヒール付きショートブーツで固めている…

提督「私も」

…提督は北欧への出張でもお世話になった黒のラップコートと淡いあんず色のセーター、それに百合の花のように広がるシルエットが綺麗な白いスカートで、黒タイツと茶革のミドル丈のブーツを履いた…

クラウディア「鍵は私がかけるわね」二人が玄関を出ると鍵をかけ、それからシルヴィアの腕につかまって歩き出した……

シルヴィア「そうしがみつかないで、歩きにくいわ」

クラウディア「恥ずかしい?」

シルヴィア「それは別に……ただ、そこまで身体を寄せられるとね」

クラウディア「そう、残念♪」おどけた口調でそういうと少しだけ身体を離し、代わりにシルヴィアの指に自分の指を絡めた……

シルヴィア「そのくらいならいいわ」

クラウディア「フランカ、あなたには反対側を貸してあげる♪」

提督「ありがと、お母さま……それじゃあ遠慮なく♪」そういうとわざとスキップのような子供じみた動きで横に並び、黒革の手袋につつまれた細い、しかし意外と力強いシルヴィアの手をつかんだ……

シルヴィア「まさに両手に花、ね」

…街の教会…

アンナ「……フランカ!」

…家から歩いて十分あまり、クラウディアたちに続いて街の中心広場に建っている教会へと入ろうとしたとき、不意に後ろから声をかけられた提督……聞き馴染みのある声を耳にして振り向いた矢先、幼馴染みのアンナが飛び込むようにして抱きついてきた…

提督「アンナ、帰ってきていたのね?」一瞬たたらを踏みそうになったが航海で鍛えられたバランス感覚でどうにか姿勢を保ち、アンナを受けとめながらたずねた……

アンナ「そりゃあクリスマスだもの……ベルギーとルクセンブルクでそれぞれ一件ずつ税法絡みの訴訟があったんだけど、とっととけりを付けて戻ってきたの」提督の左右の頬にキスを済ませると、肩をすくめていった……

提督「相変わらずね」

アンナ「それはこっちのセリフよ。帰ってくるんだったらそう言いなさいよ……てっきりクリスマスもタラントで缶詰にされているものだとばっかり思ってたわ」

提督「さすがに海軍だってクリスマスくらいは休ませてくれるわよ」

アンナ「そう。それじゃあフランカ……明後日にでもうちにこない?」

提督「えっ、でも……」いくら幼馴染み…アンナに言わせると「許嫁」とはいえ、家族水入らずで過ごすのが当然のクリスマス前後に家への招待を受けるのは…と、遠慮する言葉が出かかった提督……

アンナ「大丈夫よ。うちは広いし、フランカとの関係だって許してくれてるのは知ってるでしょ? おまけにパパもママも明日にはシチリア旅行に出かけるから、邪魔する人なんていないのよ?」まるで提督の言わんとすることを先読みしたように言葉を続けた……

提督「それはそうかもしれないけれど……」

アンナ「ふぅ……あのね、フランカ。 私、このあいだミラノに行ってきたの」

提督「あら、素敵。スカラ座でオペラでも見てきたの?」

アンナ「もう、フランカってばとぼけちゃって……つまり、ブティックで買い物をしてきたって言ってるの……ね、どんなのを買ったか見たいでしょ?」下からのぞき込むようにして、じらすような口調で言った……

提督「……っ///」

アンナ「何を照れてるのよ、これまでだってさんざん見ているくせに……♪」

提督「いえ、だって……///」

アンナ「まったく、相変わらず初心なフリをしてくれちゃって……そういうところが可愛いのよね♪」

提督「もう、からかわないでよ……」

アンナ「からかうくらいで許してあげているんだから感謝しなさい?」

提督「……ええ、そこは感謝しているわ」

アンナ「当然でしょう? 私は度量の広い女なのよ」

提督「度量の広い人間は自分でそういうことを言わないと思うの……」

アンナ「いいから。 ねぇ、せっかくだから一緒に入りましょうよ……今度白いドレスで一緒に入るときの予行練習ね♪」

提督「……」
917 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/04(月) 03:12:52.71 ID:Il+wi9AK0
…教会…

アンナ父「おやフランチェスカちゃん、クリスマスおめでとう。こっちに帰ってくるのは久しぶりじゃないか。 うちのアンナも何かといえば君の話でね……積もる話もあるだろうし、良かったら今度うちにおいで?」

アンナ母「ええ、本当に……貴女なら大歓迎よ♪」

提督「ありがとうございます」

アンナ「もうっ! パパもママも、余計な事は言わなくてもいいの!」

…こぢんまりとした……しかし由緒ある教会には続々と町の人がやってくる……おおよそ定位置が決まっているベンチに皆が腰かけていく中で、提督はアンナの両親と言葉を交わした……仕立てのいい茶色のスーツに暗紅色をした楕円の宝石をあしらったループタイを身に付け、相変わらずのしゃがれ声で髪の毛をぺったりと後ろに撫でつけたアンナの父と、高そうなプッチの黒いドレスとストッキング、首元に大粒の真珠のネックレスと、ぽっちゃりと丸っこい指にダイアモンド付きの豪華な指輪をし、会うたびにふくよかさが増しているアンナの母……それにアンナの父が経営している『貿易会社』の一癖ありそうな若い衆が二、三人…

アンナ父「何が「余計な事」なものだね、アンナ」

アンナ母「そうよ、フランチェスカちゃんは本当に良い子なんだから」

提督「これは、ご丁寧にどうも……そろそろ席に着かないといけませんので……」

アンナ父「それもそうだ、あんまりおしゃべりをしていては神父様に叱り飛ばされてしまうな」

アンナ「……まったく。とにかく貴女のことなら大歓迎だから、必ず来なさいよね♪」軽く手を振ると、両親と一緒に定位置のベンチに腰かけた……

提督「え、ええ……」

…ミサ…

神父「天にまします我らの主よ……」

…提督が子供の頃からずっと町の教会でミサを執り行っている神父がクリスマスミサのお祈りを続け、式次第に合わせて祈りの言葉を唱えたり十字を切ったりする会衆…

神父「……アーメン」

………



…ミサの後…

クラウディア「ふぅ……教会って底冷えするわね、足先が冷たくなっちゃったわ」

シルヴィア「神父は寒くないんでしょうよ。帰ったらまた暖炉の火をおこして、それからグラッパを垂らした熱いコーヒーでも飲みましょう」

提督「賛成」

クラウディア「それに、お菓子も好きなだけ食べていいわよ」

提督「まぁすごい、まるでクリスマスみたい♪」冗談めかしてわざと驚いてみせる……

クラウディア「そのクリスマスよ」

シルヴィア「ふふ……♪」

…教会前の広場では飾り立てられたツリーを見ながら気の合う仲間同士でおしゃべりに興じる人たちや、久々に顔を合わせて口づけを交わす恋人たち、あるいはお菓子をもらってご機嫌な子供たちなどが笑いさんざめき、小さな町にもにぎわいが戻ってきたような感がある…

アンナ「フランカ♪」

提督「あら、アンナ……お父様たちとはもういいの?」

アンナ「ええ、どうせうちに帰ったらずーっと「誰がどうした」とか「どこどこの娘が結婚した」だのって噂話を聞かされるんだから……それよりも貴女と一緒にいられる時間を有効活用しないと……ね♪」提督よりも小柄なアンナだが、腰に手を回すと勢いよく身体を抱き寄せた……

提督「もう///」

クラウディア「まぁ、ふふっ……アンナちゃんってば♪」

シルヴィア「相変わらずみたいね」

アンナ「あ、これはお義母さまにおばさま……お久しぶりです」

クラウディア「ええ、久しぶりね♪」

シルヴィア「そういえばこの間「お土産に」ってくれたワイン、とても良かったわ」

アンナ「お気になさらず。お義母さまとおばさまは私の母も同じですから♪」

提督「なんだか着実に外堀を埋められている気がする……」

シルヴィア「……それで、こっちにはいつ頃まで?」

アンナ「年明けの三日にはスイスへ飛ばなければいけないので、二日までです」

クラウディア「それじゃあ、良かったらフランカとも過ごしてあげて?」

アンナ「ええ、もちろんです♪」

提督「……」
918 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/12(火) 02:14:36.28 ID:zmg+/zf40
…12月25日…

提督「ふ〜ふふ〜ん〜…♪」

クラウディア「あら、フランカったらご機嫌ね♪」

提督「そりゃあクリスマスだもの……お母さまとおばさまもそうでしょう?」

クラウディア「そうね。もっとも、シルヴィアがいるならいつだって嬉しいけれど♪」

シルヴィア「はいはい……」

…クリスマスの朝はひんやりと寒かったが、日が昇るにつれて次第に明るい光が降り注ぎ、庭から望めるティレニア海の波もきらきらと輝いている……提督たちは暖炉の前で温かいコーヒーをゆっくり飲み、クラウディアがかけたクリスマスソングのCDを聞きつつ、届いたクリスマスカードのメッセージを読んでいる…

クラウディア「あら、もうこんな時間……そろそろローストの準備に取りかからないと」

提督「なら私も手伝うわ」

クラウディア「ありがとう、フランカ。でもクリスマスなんだから座っていていいのよ……今日は私が腕によりをかけて作るから、美味しく食べてくれればそれで十分♪」そう言って座っている提督の前髪をかきあげて額にキスすると、エプロンをつけて台所に入っていった……

提督「……お母さまったら張り切っちゃって。あの調子じゃあ一個分隊でも食べきれないくらい作っちゃいそうね」

シルヴィア「久しぶりにフランカと過ごせるクリスマスだもの、クラウディアだって嬉しいのよ」

提督「そうね、私だっておばさまたちと過ごせて嬉しいわ」

シルヴィア「ありがとう……ところで、クリスマスカードについていたプレゼントはどうだった?」

提督「ええ、それならいろんな物が届いたわ。香水や日持ちのするお菓子、それから小さなアクセサリーや小物とか……」

………



提督「さてと、誰から何が届いたのかしら……♪」淡い桃色のバスローブ姿で脚をぶらぶらさせながら、クリスマスカードの差出人を見ては文面を読み、それから小包や箱を開けていく……

提督「まずは……エレオノーラからね♪」

…北アドリア海管区の「ヴェネツィア第三鎮守府」でコルヴェットや駆潜艇といった小艦艇を中心とした戦隊を編制し、掃海や船団護衛、対潜掃討を行っているシモネッタ大佐……提督とは士官学校の同期で、優秀な成績とたおやかで優しい立ち居振る舞いのおかげでそうは見えないが、実際は重度のロリコンをこじらせていて、鎮守府では艦娘たちが慕ってくれるのをいいことにただれた生活を送っている…

提督「えーと、なになに……「フランカ、クリスマスおめでとう♪ 私はヴェネツィアでうちの娘たちと楽しく過ごしています。また機会があったら遊びに行きます……それからプレゼントですが、貴女に似合うと思うので、良かったらぜひ使って?」相変わらず小さい娘たちといちゃいちゃしているのね……そろそろ憲兵に逮捕されるんじゃないかしら……」眉をひそめてから、プレゼントの包みを開けた……

提督「あら、新色の口紅……さすがエレオノーラね、色の趣味がいいわ♪」ラメの入った明るいイタリアンレッドの口紅は、これからやってくる春にふさわしい……

提督「それじゃあお次は……と」

提督「あ、これはルクレツィアのね」

…シモネッタ提督と同じく士官学校の同期で、今でも仲の良いカサルディ中佐……小柄でカラッとした気持ちの良い性格をしていて、エーゲ海でMAS(機動駆潜艇)やMS(魚雷艇)の艦娘たちを率いて暴れ回っている…

提督「さてと……「フランカ、クリスマスおめでとう! 私はがさつだし何を贈ればいいか分からなかったから、とりあえずフランカの好きそうな物にしてみたわ。それじゃあね、チャオ!」ふふっ、相変わらずね♪」

提督「それで、ルクレツィアは何を贈ってくれたのかしら……と」

提督「あら……ルクレツィアってば、なかなかいいセンスよ?」出てきたのはクレタ文明のモザイク画風に描かれたイルカや魚をあしらったスカーフで、クリーム色の地に青やオレンジの柄が映える……

提督「こういうしゃれたスカーフは私よりもシルヴィアおばさまみたいな格好いいタイプの人に似合いそうだけれど……でも嬉しいわ♪」

提督「それからナタリアのプレゼントは、と……」

…クリスマスカードに書かれた近況やあいさつを読んでは知り合いや(少なくない)恋人たちとのあれこれを思い出し、それからさまざまなプレゼントを開けては楽しんだ…

………

シルヴィア「そう、良かったわね」

提督「ええ。もっともまだいくつも残っているし、お休みの間にちょっとずつ開けていくつもり……そう思って今もいくつか持ってきたの」

シルヴィア「それじゃあ開けてみたら?」

提督「そうするわ、あんまり変な物は入っていないでしょうし……って///」そう言いながらローマの海軍司令部で知り合いだったお姉様からの小包を開けると、黒の透けるようなベビードールが出てきた……

シルヴィア「……確かにただの下着であって「変なもの」ではなかったわね」

提督「その、えぇーと……」

シルヴィア「大丈夫よ。フランカだっていい大人なんだからそういうものを着たっていい」

提督「あー……まぁ、そうね」

シルヴィア「ええ、たまにはそういう遊び心があってもいいと思うわ……今度クラウディアにもそういうものを着てもらおうかしら」

提督「おばさま?」

シルヴィア「いいえ、なんでもないわ」
919 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/19(火) 02:24:38.84 ID:qpJUg7410
…お昼時…

クラウディア「さぁさぁ二人とも座って? スプマンテのボトルは用意した?」

シルヴィア「ええ」

提督「準備出来ているわ、お母さま」

クラウディア「よろしい、それじゃあ……乾杯♪」

…エプロンを外してクラウディアが席に着くと、シルヴィアがスプマンテのコルクを布で押さえつつ「ポンッ!」と控え目な音をさせて栓を抜いた……シューッと軽やかな音を立ててフルートグラスに注がれると、三人で軽くグラスを合わせて喉を湿した…

クラウディア「フランカ、いっぱい食べるのよ?」

提督「ぜい肉にならない程度でね」

シルヴィア「今日くらいはそのことは考えなくても良いんじゃないかしら」

提督「それもそうなのだけれど、美味しいものを前にするたびにその言い訳を使っている気がして……」

クラウディア「そう、それじゃあこのガチョウはいらない?」

提督「いいえ、ぜひ食べたいわ」

クラウディア「まぁ、ふふっ……♪」

シルヴィア「クラウディアの料理を前に我慢なんて出来ない相談だもの……私が切りましょうか?」

クラウディア「ええ、お願い♪」

…ローズマリーやオレガノ、ニンニク、粒の黒コショウと粗塩を擦り込み、中にみじん切りの野菜を詰め込んでじっくりとローストしたガチョウ……シルヴィアが大ぶりのナイフで手際よく切り分け、美味しい脚の部分を提督とクラウディアに取り分ける…

クラウディア「もう、だめよ? 脚は貴女とフランカで食べるのよ」

シルヴィア「そういうわけにはいかないわね。切り分けているのは私なんだから言うことを聞いてもらわないと……それに他の部位も肉厚で美味しそうじゃない」

提督「それならお母さまとおばさまが脚を取ればいいわ。ごちそうは他にも色々あるんだし、私は胸肉だって好きよ?」

クラウディア「もう、仕方ないわね……それじゃあシルヴィア、半分こしましょう?」

シルヴィア「それなら文句ないわ。これを料理した貴女がこの美味しそうな部分を食べられないなんて、そんな不公平があったらいけないもの」

クラウディア「ふふ、相変わらず優しいのね……♪」

提督「それなら私からもお母さまたちに分けてあげるわ」

クラウディア「いいのよ。いくつになってもフランカは私たちの娘なのだから、遠慮せずにいっぱい食べなさい……それにどうしても腿が食べたければ、もう一羽むこうに焼いたのがあるんだから♪」いたずらっぽい笑みを浮かべると、軽くウィンクをした……

シルヴィア「なんだ、それならそうと言えばいいのに……」

提督「ふふっ、本当にね♪」

………

…同じ頃・鎮守府…

ドリア「それではクリスマスの晩餐をいただくことにしましょう……主の恵みと料理を手伝ってくれたみんな、そしてこんなに立派な猟鳥を贈ってくれた提督と提督のお母様方に……乾杯♪」

一同「「乾杯」」

…しゅわしゅわときめ細やかな泡を立て、燭台の灯りや暖炉の炎に照り映える金色の「フランチャコルタ」や鮮やかな紅の「ランブルスコ」、さっぱりとした白ワイン、あるいは深いルビー色に輝く赤ワインのグラスを掲げ、乾杯する一同……それが済むと食欲旺盛な駆逐艦や潜水艦の娘たちは早速ディアナたちに料理を取り分けてもらう…

リベッチオ「ふー、ふー…はふっ、あちち……っ!」

カヴール「あらあら、よく冷ましてから食べないと舌を火傷しますよ?」

…アンティパスト(前菜)のガランティーヌ(タンや肉のゼリー寄せ)やサラミの盛り合わせに続くプリモ・ピアット(第一皿…一つ目のメインディッシュ)は温かいコンソメスープにラヴィオリを浮かせたもので、ラヴィオリの中にはトリコローリに合わせてそれぞれホウレンソウ、リコッタチーズ、トマトペーストなどを詰め込んである…

レモ「それじゃあこっちも食べるね♪」

スメラルド「オンディーナ、私にも取り分けてもらえますか?」

オンディーナ「ええ、どうぞ」

…コース料理の花形(プリマ・ドンナ)であるセコンド・ピアット(第二皿)は提督の実家からシルヴィアが送ってきた鴨やアヒル、ガチョウ、それにたっぷり脂が乗った鶏を始め、濃い赤身が食べたい娘たちには赤ワインソースの鹿肉、野趣あふれる肉が食べたい娘たちにはドングリを食べてほどよく脂が乗ったイノシシ肉のあばら肉が香草を効かせたローストで饗されている…

ディアナ「遠慮せずいっぱい召し上がれ?」

…まだ表面がぷちぷちと音を立て、きつね色の皮目がパリッと焼けている鶏やガチョウ……かかっているソースも肉に合わせて爽やかなオレンジソースやドライトマトで作った甘酸っぱいトマトソース、瓶に詰めて保存してあった濃緑色のペスト・ジェノヴェーゼ(バジルペースト)と、いく種類も取りそろえてあり、めいめいが好きな味や肉を選べるようにしてある…

コルサーロ「こいつは美味い……最高だよ♪」

カラビニエーレ「……相変わらずお行儀が悪いんだから、まったく」肩をすくめて……ただ、いつものようなお説教はせず口のまわりについた鳥の油をぬぐってあげる……

チェザーレ「ははは、元気で何よりだ♪」
920 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/26(火) 02:14:43.64 ID:p10Q7sa80
チェザーレ「……それにしても済まぬな、ディアナ」

ディアナ「と、申しますと?」

チェザーレ「この立派な正餐のことだ」長テーブルの上に並んでいる皿の数々を指し示した……

ディアナ「いいえ、わたくしも皆に喜んで頂きたかったので」

チェザーレ「さようか。提督に代わって礼を言うぞ」

ドリア「……チェザーレ、ディアナ、もう一杯いかがですか?」

ディアナ「ええ、ではもう少しだけ」

チェザーレ「もらおう、リットリオたちはおらぬのだからな……その分を開けても文句は言うまい」

ポーラ「そうですよぉ、クリスマス休暇を先に取っちゃった娘たちや提督の分まで開けちゃいましょ〜う♪」

ザラ「もう、相変わらずなんだから……フランチャコルタ?」

ポーラ「そうですよぉ……以前、提督に見せたら「私の月給の三分の一くらいする……」って言ってましたねぇ〜♪」

…暖炉の火とアルコールで赤みを帯びた頬を火照らせ、ころころと笑いながら値の張るスプマンテを遠慮なく開けるポーラ……しゅわしゅわと軽い音をさせながらグラスに液体が注がれ、注ぎ分けたグラスを持ち上げて乾杯する…

リベッチオ「ねぇねぇディアナぁ……お酒もいいけど、そろそろケーキを切らない?」ディアナのかたわらにやって来て、おねだりをするようにしながら軽く袖口を引っ張った……

マエストラーレ「まったくもう、リベッチオってばせっかちなんだから。ディアナだってお酒は飲みたいし、まだ食事も済んでいないのよ? もう少し我慢しなさい」

リベッチオ「えー?」

ディアナ「ふふ……リベッチオ、もう少しだけ待って下さいましね? そうしたらケーキを出しますから」

リベッチオ「ホント?」

ディアナ「ええ、本当です」

リベッチオ「やったぁ♪ ね、そろそろケーキだって♪」

マエストラーレ「はいはい……♪」

…普段から駆逐艦「マエストラーレ」級の長姉として奔放な妹の手本となるべく、また準同型の「オリアーニ」級の先輩としてもお姉ちゃんらしく振る舞っているマエストラーレだが、嬉しさが顔に出るのは隠しきれない…

アルフレド・オリアーニ「ふふ……マエストラーレったら、こんな時くらいは子供みたいに振る舞ったっていいのに」

マエストラーレ「な、何言ってるのよ……///」

カルロ・ミラベロ「くすくすっ、私たちからしたらみんなお子ちゃまみたいなものなのにね?」

アウグスト・リボティ「ね♪」駆逐艦では艦隊最高齢の小さな「ミラベロ」級駆逐艦、幼い外見に似合わないおませなミラベロとリボティがくすくすと笑った……

ディアナ「ふぅ……さて、それではそろそろケーキを持って参りましょうね」上品に口のまわりを拭うと立ち上がり、厨房へと入っていった……

ピエトロ・ミッカ「それでは私も手伝いましょう」大型潜水艦のミッカを始め、敷設や輸送に縁があった何人かが手伝おうとついていく……

ディアナ「まぁ、それではよしなに♪」

…待つほどでもないうち、ディアナたちがケーキの載った大皿や盆を捧げて戻ってくると、たちまち大食堂に娘たちの黄色い歓声が沸き上がる……同時に誰かが「きよしこの夜」のレコードをかけ、どこからともなく合唱が始まった…

ディアナ「さ、お待たせしてしまいましたね……食べたいものを切り分けますから、どうぞお皿を回して下さいな」

…ディアナが愛車の「フィアット・アバルト850」を飛ばして、鎮守府のお馴染みになっている近くの町のケーキ屋さんで買ってきた大きなスポンジケーキを始め、ディアナやドリアが腕によりをかけて作った、イタリアのクリスマス菓子として定番のパンドーロやパネットーネ、あるいは上から白い粉砂糖をふるったチョコレートケーキや、砂糖漬けの果物もカラフルなタルトと、目移りしそうなほど並べられた…

グラウコ「うーん、どれも美味しそうで決められそうにないです……」

オタリア「本当ですね……迷ってしまいます」

カヴール「ふふ、それじゃあ私が取ってあげましょう♪ ……それにしてもディアナ、ずいぶんたくさん焼いたのですね?」

ディアナ「ええ。何しろクリスマス休暇に入った娘が多かったものですから、注文しておいた卵が余ってしまって……傷ませてしまうまえに使い切ってしまおうと思いまして」

リベッチオ「それでこんなにケーキが食べられるならゴキゲンだよ♪ ね、お姉ちゃん?」皿にケーキを盛り合わせにしてもらうと、脚をぶらぶらさせながらケーキをぱくついている……

マエストラーレ「だからってあんまり食べ過ぎないの」

シロッコ「ふふ、今日くらいはいいじゃないか」

トリチェリ「……はい、先生もどうぞ? あーん♪」

ガリレオ・ガリレイ「うぷっ……もう、鼻の頭にまでクリームを食べさせることはないでしょ♪」

…艦娘たちはそれぞれケーキを食べたり、お酒のグラスをかたむけたり、クリスマスソングを歌ったりしている……暖炉の前に敷かれた絨毯の上ではルチアが骨をかじりながら寝そべり、何人かがブラシで毛並みをくしけずったり撫でたりしながら遊んでやっている…

ドリア「いいクリスマスですね、デュイリオ」

デュイリオ「あら、まだまだクリスマスは長いのよ……アンドレア♪」
921 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/03/31(日) 02:21:54.49 ID:pRbdUNY+0
…食後…

カヴール「さて、食卓は片付きましたね?」

ガリバルディ「ええ、大丈夫よ」

レモ「今度はなぁに?」

ドリア「あちこちからクリスマスカードが届いておりますから、せっかくですし読み上げようかと」

ガリバルディ「いいわね、どうせ時間もあることだし」

デルフィーノ「そうですね。それにしてもそれぞれ個性があって面白いです♪」デルフィーノは鎮守府に届けられたメッセージカードの山をより分けながらしきりにうなずいている……

カヴール「それでは読みましょうか……♪」おっとりとした貴婦人のような様子で暖炉の前の椅子に腰かけると「鎮守府宛」になっているクリスマスカードの中から、企業の広告や管区司令部からのカードを除いた何枚か手に取った……

エウジェニオ「誰から?」

カヴール「最初は……あら、イギリスのグレイ提督ですね」

…提督の実家とは別に、鎮守府にも送られてきた提督たちからのクリスマスカード……これにもそれぞれの性格や色が出ていて、イギリスの貴族令嬢であるグレイ提督は上品なハロッズ(百貨店)のカードに綺麗な筆記体で「Merry Christmas」とつづってあるのに対し、アメリカのミッチャー提督はコミック風のサンタクロースが描かれたカードに大きな文字で「Merry X‘mas」と、いかにもアメリカらしい書き方をしている…

ガラテア「それで、レディ・グレイは何とおっしゃっています?」美しいガラテアが、カヴールの後ろから乳白色の美しい腕を首元に優しく回す……

カヴール「ええ、今読みますね……「タラント第六鎮守府の皆様、メリークリスマス。このカードを書いている間、あの明るいイオニア海の海原を思い出しました。どうか七つの海が平和でありますよう、そして貴女方が良いクリスマスを過ごせますように」……だそうです」

ネレイーデ「ふふ、あの人は相変わらずですね……♪」

ドリア「それでは次は私が読みましょうか……「メリークリスマス、ガールズ。ノーフォークは北風が寒くって最悪で、サンディエゴやマイアミ、あるいはそっちのナポリみたいな港が恋しいわ。ステイツからプレゼントを贈ったから、喜んでもらえたら嬉しいわ」だそうですよ」

セッテンブリーニ「ミッチャー提督も相変わらずね、プレゼントはきっとダサいセーターと野球帽、七面鳥のローストにチューインガムで間違いないわ」

ドリア「まぁ、ふふっ……♪」

カヴール「それから次のカードは……エクレール提督ですね。フランス語ですから、私が読みましょう」

ダルド(駆逐艦フレッチア級)「ヴァイス提督からのカードは私が読めるわ」

アントニオ・ピガフェッタ(駆逐艦ナヴィガトリ級)「ドイツ語なら私も読めるけどね……途中で代わろう」

ルイージ・トレーリ(大型潜マルコーニ級)「では、百合姫提督のカードは私が読みますね」

…フランスのエクレール提督は香水つきのカードに長々とメッセージを書き、ドイツのヴァイス提督は堅苦しいまでにきちんとした内容を罫線でも引いてあるかのような具合で真っ直ぐに書きつづり、百合姫提督は和紙を使ったはがき大のカードに丸みを帯びた丁寧な筆文字でメッセージを書き留めている…

カヴール「あらまぁ、くすくすっ……♪」

チェザーレ「なにかおかしい事でも書いてあったのか?」

カヴール「ええ、ふふっ♪ エクレール提督ったらエスカルゴの前菜から始まるクリスマスの正餐ですとか、お国自慢を長々と書き連ねてあるものですから……♪」

エウジェニオ「エスカルゴってカタツムリのことでしょ……それがごちそうの前菜なの? カエルやカタツムリを食べるフランス人には困ったものね」

カヴール「まぁまぁ、あれもバター焼きにすれば案外良いものですよ?」

ダルド「そろそろいい? それじゃあこっちも読むわよ……「クリスマス、そして新年おめでとう。レープクーヒェン(ドイツのクリスマスに欠かせないショウガクッキー)を送ったので、ぜひご賞味いただきたい」だそうよ」

ピガフェッタ「レープクーヒェンか……地味な菓子だが嫌いじゃないよ」

トレーリ「それでは次は百合野提督のカードですね、読みますよ……「タラント第六鎮守府の皆様、メリークリスマス。クリスマスカードを送る風習がないものですから、何を書けばいいかずいぶん悩みました。ともあれタラント第六のみんなが良いクリスマスと新年を過ごせるよう、心から願っております。またいつか訪問できる機会を楽しみにしています」とのことです」

カヴール「ふふ、いかにも日本人らしい奥ゆかしい文面ですね」

チェザーレ「むしろ彼女の人柄であろうな……それぞれプレゼントも付いてきたようであるから、少々早いが開けてしまおうか」

(※イタリアではプレゼントを開けるのはイエス・キリストが生まれたとされる1月6日の公現祭(こうげんさい)の日。プレゼントは東方の三賢人の誘いを断り、結果キリストの誕生に立ち会えなかったことを後悔し続けているとされる魔女「ベファーナ」が持ってくるとされている)

フルミーネ「やった♪」

カヴール「まぁ、少し早い気もしますが……クリスマスですからね、提督方の贈り物に限ってはいいということにしましょう♪」

…チェザーレやカヴールたち、留守を預かる「大人組」の許しを得て、クリスマスのメッセージカードに添えて送られてきた包みを喜び勇んで開ける駆逐艦や潜水艦の艦娘たち……娘たちによって人柄がでるのか開け方もさまざまで、待ちきれない様子で嬉しそうに包み紙を破る娘から、ある程度落ち着いてリボンをほどく娘までさまざまだった…

フレッチア「すんすん……匂いからするとショウガクッキーね」

ピガフェッタ「レープクーヒェン、ドイツのクリスマス菓子では定番のやつさ」

コマンダンテ・カッペリーニ「百合野提督の贈り物は……化粧品と手拭いですね」

…日頃から潮風に吹かれ波飛沫を受けている艦娘たちにと、日本メーカーの乳液や保湿クリームといった化粧品の詰め合わせと、銀座の中心地、歌舞伎座のそばにある老舗で売っている、色も柄もさまざまな手拭いがたくさん入っている……かさばらずにお洒落なものをという、百合姫提督らしい気づかいが見て取れる…

トレーリ「柄のいくつか「鎌○ぬ(構わぬ)」と言葉遊びになっていたり「後ろに下がることがない」蜻蛉(とんぼ)の柄みたいに、戦場での縁起を担いでいたりするんですよ」

デュイリオ「まぁまぁ、それは素敵ですね♪」
922 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/04/08(月) 00:19:59.79 ID:XZ5d4hH20
…しばらくして・中型潜「スクアーロ」級の部屋…

スクアーロ「ふぅ、たっぷりのご馳走に上等な酒……最高だったな」

トリケーコ「そんな風にすぐ横になると消化に悪いですよ?」

スクアーロ「今日はクリスマスなんだ、そう言うなよ」

デルフィーノ「スクアーロはクリスマスでなくたってそうじゃないですか」

スクアーロ「お、言ったな? そういう生意気を言うと……こうだぞ♪」ベッドから飛び起きるとデルフィーノの肩口を甘噛みし、ついでに脇腹をくすぐる……

デルフィーノ「ひゃあぁ、やめて下さい……っ///」ばたばたと暴れ回るデルフィーノ……

ナルヴァーロ「ほら、じゃれ合うのもほどほどにしなさい……私たちはバンディエラの部屋に遊びに行ってくるわ♪」そう言ってナルヴァーロ(イッカク)とトリケーコ(セイウチ)は出ていった……

デルフィーノ「はぁ、はぁ、はぁ……///」

スクアーロ「どうだ、姉に逆らうとどうなるか分かったか?」スクアーロ(サメ)の名にふさわしい、白くギラギラした犬歯をのぞかせてにんまりと笑ってみせる……

デルフィーノ「もう、分かりましたよぉ……」

スクアーロ「よーし、ならいい……しかしジァポーネの提督もマメだねぇ」

…鎮守府の艦娘全員に行き渡るほどの化粧品や、和紙の包み紙さえお洒落な和風の小物が詰め込まれた百合姫提督の贈り物……スクアーロは早速包み紙を開けて、中に入っていた「資生堂」の乳液をしげしげと眺めた…

デルフィーノ「そうですねぇ」

スクアーロ「ああ……ところでデルフィーノ」

デルフィーノ「なんです?」

スクアーロ「せっかくだしちょっと塗ってくれるか、肌がガサガサなんだ」

デルフィーノ「はい、いいですよ」

スクアーロ「悪いな」

…スクアーロは自分なりに「海のギャング」らしくということでクリスマスパーティの正餐に着ていた、グレイで黒リボンの付いているボルサリーノ(ソフト帽)と、サメの背中のような濃い灰色のスーツとジレ(ベスト)、パールグレイのネクタイとワイシャツを次々に脱いでいく……着る物をすっかりハンガーに掛けてしまうとベッドにうつ伏せになり、デルフィーノに乳液の瓶を渡した…

スクアーロ「どうだ?」

デルフィーノ「たしかにずいぶん荒れてます。もしかして食生活とかが乱れているんじゃないですか?」

スクアーロ「みんな同じものを食っているのにそんな訳があるか……まぁいい、塗ってくれ」

デルフィーノ「もう、人遣いが荒いんですから……」よいしょとスクアーロの背中にまたがって甘い香りの乳液をとろりと背中に垂らすと、すんなりした手で塗り込んでいく……

スクアーロ「お、なかなか気持ちいいな……♪」

デルフィーノ「それなら良かったです。せっかくだからこっちもやってあげますね?」スクアーロのサメ肌へ馴染ませるように肩甲骨、背中、脇腹、腰の辺りへと器用な手つきで滑らせていく……

スクアーロ「あぁ、いいな……うん、上手じゃないか……♪」

デルフィーノ「あの……スクアーロ///」スクアーロにまたがり、その白い裸身を見ながら揉みほぐすように乳液を塗り込んでいるうちに、ごちそうとお酒で火照った身体が甘くうずき始める……

スクアーロ「ん?」

デルフィーノ「……そのぉ、ついでだから脚もマッサージしましょうか///」

スクアーロ「どういう風の吹き回しか知らないが、せっかくそう言ってくれたんだ……ぜひやってくれ」

デルフィーノ「はぁい……♪」スクアーロのきゅっと張りつめたようなヒップからしなやかな太ももに手を這わす……

スクアーロ「おい、それじゃあ手つきが違うだろう……この万年発情期が♪」

デルフィーノ「だ、だってぇ///」

スクアーロ「ったく、仕方のない妹だな……ほら♪」ごろりと寝返りを打つと自分の手にも乳液を取り、デルフィーノのフリル付きワンピースの下へ手を入れ、片手でくびれた腰から太ももの付け根、もう片方の手で形の良い乳房を愛撫する……

デルフィーノ「はぁ、あぁんっ……はひゅっ、はひっ♪」数分もしないうちに可愛らしいくりくりした瞳は焦点を失い、半開きの小さな口から甘えたような吐息が漏れる……我慢しきれないと言うように片手はとろりと濡れた秘部へ伸び、もう片方の手はワンピースの裾をたくし上げている……

スクアーロ「ふふ、可愛い表情で喘ぐじゃないか……♪」

デルフィーノ「らって、らって……ぇ♪」ろれつも回らないままに嬌声を上げ、くちゅくちゅと指を動かしながらふとももに蜜を垂らし、スクアーロの上でひくひくと跳ねる……

スクアーロ「ここなんかも好きだったろ?」ちゅぷ……っ♪

デルフィーノ「ふわぁぁぁ、そこ……そこれす……ぅ///」

スクアーロ「ふふ、今日は午後いっぱいしてやるからな……覚悟しておけよ?」

デルフィーノ「はぁ……い♪」
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