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イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」

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943 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/08(日) 02:19:36.72 ID:Y1Qs1aVy0
…しばらくして…

百合姫提督「ふぅ……」首筋にうっすらと浮いた汗を手拭いで拭う……

父「お腹いっぱいかい?」

百合姫提督「ううん、まだもう少し入りそう」

父「ならよそってあげよう。お祖父ちゃんたちはもう寝に行っちゃったし、いま煮えているお肉は硬くならないうちに食べちゃおう」

百合姫提督「そうね」

父「よし。それじゃあ母さん、菜箸を取ってくれるかい」

母「はい……あ、少しテレビの音を上げるわね」年末特番の歌番組から、百合姫提督の母が好きな「みずいろの雨」が流れている……

父「ああ。それから深雪、せっかくだしお父さんと一杯飲もう」

百合姫提督「うん、それじゃあ……いただきます」

…冷酒の「八海山」を小ぶりなグラスに注いでもらって口に含むと、きりりとした辛みにすっきりとした水のような飲み口が濃くて甘いすき焼きの味付けと肉の脂でべたついた口中をさあっと洗い流してくれる…

百合姫提督「美味しい……」

父「そうだろう? 「八海山」は燗酒で飲むのもいいけれど、冷やでも美味しいんだ……もうちょっと飲むかい?」

百合姫提督「それじゃあ、もう半分くらい」

父「分かった……っとと、すき焼きが煮詰まってきちゃったな」ぐつぐつと煮えているすき焼きに薄割り下を足して沸き立っているのを落ち着かせる……

母「あ、ごめんなさい」

父「大丈夫だよ」

………

母「いっぱい食べた?」

百合姫提督「ええ、もうお腹いっぱい……」

父「そうか、良かった。たくさん買ったかいがあるよ……それから、このよく煮えた焼き豆腐は明日のお酒のお供にしよう」

母「それじゃあ取っておくわね」

父「ああ……さ、年越しそばまではまだ時間もあるし、片付けを手伝うよ」

百合姫提督「ううん、それは私が」

父「いいんだよ、久しぶりのわが家なんだからゆっくりして」

百合姫提督「でもお父さんとお母さんが動いているのに自分だけ座っていると落ち着かなくって……」

母「それじゃあおせちを詰めるのを手伝ってくれる? それならそう大変でもないし、その間にお皿は私が片付けておくから」

百合姫提督「ええ、分かった」

…普段はしまい込んである黒漆の重箱を広げると、それぞれに色味や順番を考えておせち料理を詰めていく……かまぼこは紅白それぞれが順番に並び、黒豆の上には色鮮やかなちょろぎ……厚手に切った伊達巻きに栗きんとん、そしてお煮しめや田作り、コハダの粟漬けといった、地味ながらないと落ち着かない名脇役たち…

母「そうそう、そんな感じ」

百合姫提督「鎮守府でもおせちは食べるし、いつの間にか覚えちゃった……こっちはいつも通りハム?」漆の重箱の隣に出してある樹脂製の小ぶりな重箱はタッパーのような樹脂の中蓋つきで、おせちの時はハムやチーズ、テリーヌのような洋風のオードブルやチャーシューといった肉類が入る……

母「ええ。あなたの好きな物を好きなだけ詰めていいわよ……もちろんつまみ食いもしていいわ♪」

百合姫提督「いい加減、子供じゃないんだけれど……」

母「まぁそう言わずに♪」

百合姫提督「もう……」苦笑いしながらも、母親が切りだしたチャーシューの端っこをつまんだ……

母「ふふ♪ お蕎麦のお出汁はもう引いてあるし、年越し蕎麦まではゆっくりしていてね」

百合姫提督「はい」

………

944 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/12(木) 01:07:34.43 ID:K/wwgU6M0
…年の瀬…

父「それじゃあそろそろお蕎麦を茹でようか。お祖父ちゃんたちは座椅子でウトウトしていたけれど、しきたりだから起こしてきたよ……葱でも刻もうか?」

母「私がやるから大丈夫よ。お義父さんたちもお腹いっぱいでしょうけれど、形だけでも食べてもらうとしましょう」

父「そうだね、僕もそんなにはいらないから」

母「そう。深雪、あなたは?」

百合姫提督「私もお腹いっぱいだから少しでいいわ。それとお箸と出汁の徳利は出しておいたから」

母「ええ、ありがとう」

…年末特番もそろそろ大詰めといった頃合いになってきたところで、年越し蕎麦の準備に取りかかる百合姫提督たち……天つゆこそ市販の濃縮つゆで済ませているが、出汁はふわりと香る鰹節と日高昆布で取ってあり、薬味の小皿には刻んだ葱と細切りにした海苔を添え、台所には井筒の型をした蕎麦用のざるも用意してある…

祖父「そろそろ年越し蕎麦の時間だそうだな、いつの間にかうつらうつらしていて気付かなかったぞ!」

祖母「私はそんなに要りませんから、ほんのおしるしだけね」

母「はい……それから熱いのと冷たいの、どちらにします?」

祖父「それならざるで頼むぞ!」

父「父さん、冷たい蕎麦をたぐってお腹が冷えないかい?」

祖父「少しだけにしておくから平気だ!それより深雪の分を先に茹でてやりなさい、こんな遅くまで起きていて小腹が空いたろう!」

百合姫提督「うん、ありがとう」

祖父「お腹が空くのはいいことだぞ!それに育ち盛りが蕎麦だけじゃ足りないだろうから、かき揚げかなにか付けてやりなさい」

百合姫提督「それならさっき色々つまんだりしたから大丈夫」

祖父「そうか?蕎麦だけでいいのか?」

百合姫提督「ええ、大丈夫……お祖母ちゃんは熱いお蕎麦、それとも冷たいお蕎麦?」

祖母「私は温かいのにしますよ」

百合姫提督「はい」

…母が蕎麦を茹でるかたわらで、天つゆを温める百合姫提督……祖父が音量を上げたテレビからは、年末番組のフィナーレを飾る司会のあいさつや華やかな歌手たちのにこやかな表情が映っている…

母「さあ、茹だったわ」もうもうと湯気を立てる蕎麦をざるでしゃくいあげると、さっと冷水で締める……

百合姫提督「それじゃあ私が……お父さんはどうする?」

父「かけ蕎麦にすると手間がかかるだろうから、冷たいのでいいよ。この部屋は暖房も効いているし」

百合姫提督「分かった。お母さんは?」

母「それじゃあ私もざる蕎麦にしようかしら。冷たいのは私が準備するから、お祖母ちゃんの分だけお願いね」

百合姫提督「はい」

…手がかじかむような冷水で締めた蕎麦のうちから祖母の分をつかみ取り、温めたつゆの中でさっと泳がせる……お湯に通して軽く温めておいた丼に蕎麦を盛ると、軽く沸かした熱いつゆをかけてさっと出す…

百合姫提督「お待ちどおさま」

祖母「はい、どうもありがとうね」

父「それじゃあ改めて……良いお年を」

百合姫提督「良いお年を」手を合わせると箸を取り上げ、ざるに形良く盛った蕎麦をすくうと「つつぅ…っ」とたぐる……出汁の利いたつゆの絡んだ冷たい蕎麦が心地よく喉を流れ、ふっと鼻腔に蕎麦の風味と鰹出汁の香ばしい香りが抜ける……

祖父「うむ、美味い!」ざるの蕎麦に軽く七味唐辛子を振って、そば猪口のつゆに半分も浸けず、小気味よくすする……

父「ああ、美味しいね」

…百合姫提督たちがそばをたぐり終えたころ、ちょうど年越しの様子を伝える番組が始まった……アナウンサーは生真面目な声で、悲喜こもごもの一年を振り返りつつ、にぎやかに……あるいはしめやかに年越しを迎えた各地の様子を除夜の鐘とともに伝えていき、時計の針が零時を回った…

アナウンサー「皆さま、明けましておめでとうございます!」

父「はい、明けましておめでとうございます」改まって一礼した……

母「明けましておめでとうございます」

百合姫提督「明けましておめでとうございます」

祖父「うむ、明けましておめでとう!」

祖母「明けましておめでとう……本年も良い年になりますように」

………
945 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/18(水) 02:08:23.74 ID:UlD+9rfd0
…元日・明け方…

百合姫提督「お天道様、本年もよろしくお願いいたします……」除夜の鐘を聞いたあとで仮眠を取った百合姫提督は、家のベランダに出て白い息を吐きながら、次第に空を黄色く染めながら昇る初日の出を拝んだ……

父「ふわぁ……早いね、初日の出は見られたかい?」

百合姫提督「うん、とっても綺麗だったわ」

父「良かったね。それと初詣に行く前にもう一度お風呂に浸かって、身体を清めて来た方が良いね」

百合姫提督「はい」

…朝…

母「……準備できた?」

百合姫提督「ええ、大丈夫」

父「そうか、それじゃあそろそろ行こうか……お祖父ちゃんたちは後で行くそうだから、僕たちだけで先に初詣を済ませてこよう。戻ったらお雑煮とおせちを食べようね」

母「そうね。それから深雪、あなたが去年のお札と破魔矢を持って行ってちょうだいね?」

…白地に金糸で縁取られた紅の扇と緑の松という縁起のいい絵柄をあしらった正月小袖に袖を通し、久しぶりの下駄で玄関に出る百合姫提督……本来なら一月の寒い時期とは言え、百合姫提督の実家は温暖な地域にあり、小春日和とでもいいたくなるような優しい日差しが柔らかく降り注いでいる……片手にはお焚き上げに持って行く神社の破魔矢とお札を持ち、手首にひもを通した巾着には財布を始め、こまごましたものが入っている…

百合姫提督「はい」

………

百合姫提督「明けましておめでとうございます」

見知らぬ人「あ、どうも……明けましておめでとうございます」

…神社への道すがら、すれ違う見知らぬ人たちとも出来るだけ「明けましておめでとう」の挨拶か会釈を交わす百合姫提督の一家……元日と言うこともあって車通りも少ない神社への道は初詣に向かう人や初詣から戻る人がちらほらと行き交い、近所の老夫婦や帰省してきたらしい若い家族連れ、友達同士でお詣りに向かう学生など、普段なら接点のない人たちが同じ目的のために歩いている…

…神社…

父「よーし、それじゃあ写真を一枚撮ろうね」

母「はいはい」

百合姫提督「ええ」

氏子のおじさん「おっ、百合野さんとこの若旦那じゃないか……や、明けましておめでとう!」

父「ああ、これはこれは……どうも、明けましておめでとうございます」

おじさん「なんだ、記念写真かい? それならおれが撮ってやるからよ、若旦那も奥さんお嬢さんと一緒に写りなよ」

父「いいですか? 忙しいでしょうにすみません……」

おじさん「いいんだよ、せっかくのお正月なんだからさ……いいかい、撮るよ? そら、笑って笑って!」

父「いや、どうもお手数をおかけしました」

おじさん「なぁに、気にするなって。それより深雪ちゃんも大きくなったねぇ。ついこの間までちっちゃい女の子だとばっかり思っていたのに……しかも今じゃあ提督さんなんだって?」神社の法被を羽織っている氏子のおじさんは早くも一杯きこしめした様子で頬が赤い……

百合姫提督「ええ、一応は……」

おじさん「謙遜するこたぁないよ!小さいころから深雪ちゃんは礼儀正しかったし、おれは「きっと偉い人になる」ってずーっと言ってたんだ!」

百合姫提督「それは、その……ありがとうございます///」

おじさん「おう!境内で甘酒とか御神酒を配ってるから、ぜひ寄って挨拶して行ってくれよ。酒屋のじいさんとか勝ちゃんとか、みんな深雪ちゃんのことを孫みたいに思っていやがるからな、顔出したら喜ぶぜ」

百合姫提督「分かりました、お詣りが済んだら挨拶していきます」

おじさん「あいよ、それじゃあいいお正月をな!」

…境内…

百合姫提督「……」

…お焚き上げをしている氏子のおじさんにお札や破魔矢のお焚き上げをお願いし、それから手水鉢で手を清めて口をすすぎ、賽銭箱にお賽銭を入れると鈴を鳴らし、手を合わせて柏手を打つ……

父「……これでよし」

母「そうね、お焚き上げも済んだし……今年のお札を買わないと」女子高生のアルバイト巫女さんが詰めている社務所で家内安全のお札と破魔矢を買うと「はい、どうもありがとう」と一礼した……

父「それじゃあ甘酒でもいただいてから帰ろうか?」

百合姫提督「うん、そうする」

………

946 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/09/28(土) 01:44:46.37 ID:xjfHx3XR0
…しばらくして…

父「それじゃああらためて、明けましておめでとう」朱漆のお屠蘇セットに金箔入りの祝い酒を用意し、めいめいの杯に順番に注ぐ……

祖父「うむ、注いでくれ!」

祖母「私は一口でいいですからね」

父「分かっているよ、母さん……さ、二人も杯を出して」

母「私もほんのお義理でね。深雪はお酒が飲めないわけじゃないんだから、好きに注いでもらいなさい」

百合姫提督「まぁ、でもこれは形のものだから……お父さんのは私が注ぐね?」

父「お、ありがとう……それじゃあ、今年も良い年でありますように」

…金箔の入った祝い酒を干すと、お雑煮の入った椀に手を付ける……すまし汁に鶏肉少々と青菜、白地に「寿」の文字が入ったなるとに角餅、三つ葉の浮いた関東風のお雑煮で、喉を湿しお腹が温まる…

父「父さん、母さん、喉に詰まらせないように気を付けて食べてよ?」

祖父「言われんでも分かってる! それからな、深雪は伊達巻きが好きだったろう。わしの分はいらないからその分取ってやりなさい!」

父「大丈夫だよ、たくさんあるんだから」

祖父「そうか? ああ、それとな……ほれ、これで好きなものでも買いなさい!」のしが付いていて「お年玉」と書かれているポチ袋を押しつけるように渡す……

百合姫提督「いい加減お年玉をもらうような年でもないんだけれど……」

父「まあまあ。父さんにしてみればいつまでたっても可愛い孫娘なんだから「ありがとう」って言ってもらっておくといいよ」

祖父「あー、あとはどこだったかな……おお、あったあった。ほれ、お前にもやるから!」百合姫提督の父にもポチ袋を握らせる……

父「父さん、僕だってもうもらう年じゃないよ?」

祖父「いいからもらいなさい。それから……と、ほれ!」百合姫提督の母にもお年玉を渡す……

母「……私までもらっちゃっていいの?」

祖母「いいのよ。いつも本当に良くしてくれて、この人も「本当にいいお嫁さんが来てくれた」ってずうっと言っているくらいなんだから」

母「いえ、そんな……///」

父「まあ、父さんはあげるのが好きだしもらっておこうよ……ありがとね、父さん」

祖父「なに、気にするな!」

祖母「それじゃあおせちをいただこうかしら?」

百合姫提督「それじゃあ私が取ってあげるから……なにがいい、お祖母ちゃん?」

祖母「そうね、それじゃあまんべんなく一口ずつ……あ、でも田作りは固くて歯ぐきに刺さるから、ほんの少しにしてもらおうかしら」

百合姫提督「はい」

…祖母におせちを取ってあげている間に、母が自分の祝い皿におせちを盛り合わせる……伊達巻、きんとん、ニシンの昆布巻き、黒豆とちょろぎ、それに紅白のかまぼこ…

百合姫提督「……いただきます」子供の頃はそこまで好きでもなかったおせち料理だが、ある程度「大人になった」という事なのか、祝い箸で口に運ぶと、意外と奥深い味付けや素材の良さに気付かされる……

百合姫提督「あ、美味しい……」

…艶々とした黒豆はしっとりと甘く煮えていて、かまぼこもグチを使ったいい品物らしく味わいや歯ごたえが段違いに良い……ふんわりした伊達巻は子供にとっては面白くないおせち料理の中にあって珍しい人気者であるが、こうして口に入れるとただ甘いだけでなく、すり身の味の深さが活かされていることに気付く…

母「それからこれも取ってあげるわね……はい♪」

百合姫提督「うん、ありがとう」酢だこや松前漬けなどの縁起物をひとわたり食べると、今度は焼豚や鴨の燻製といった献立が収まっているお重のふたをとった……

父「もう一切れ取ってあげようか」

母「こっちの鴨を食べる?」

祖父「ああ、その焼豚な、深雪にもう何枚か取ってあげなさい。わしはそっちのニシン巻きを食べるから」

祖母「松前漬けはスルメが固くってどうも……黒豆をもう少しもらうことにしましょう」

…居間の棚に設けられたスペースに敷かれている赤毛氈と、その上に鎮座している干支の置物や飾り羽子板、テレビ台の前に置かれた鏡餅が正月を彩り、少し弱々しいが新年をことほぐお日様が優しく食膳を照らす……ゆるゆると食べたいものをつつきながら日本酒や梅酒を飲んでいると、門の郵便受けでカタンと音がして、郵便局のバイクが走って行く音がした…

母「あら、年賀状が届いたみたいね」

百合姫提督「それじゃあ私が取ってくるわ」正月小袖で卓上を払ったり汚したりしないよう気を付けて椅子を引くと、年の初めにふさわしい清らかな空気を味わいつつ年賀状を取りに出た……

……

947 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/10/04(金) 02:21:42.22 ID:xUvHH0un0
百合姫提督「はい、年賀状」

父「それじゃあついでにより分けてくれるかい?」

百合姫提督「分かった……えーと、まずはお父さん宛、これはお母さんの、次が私の……」

…机の端にスペースを作ると太いゴムバンドで束ねられている年賀状の束をほどき、カードの手札を配るようにより分けていく……郵便局からのご挨拶や広告を別にして分けながら、差出人を確かめていく百合姫提督とその家族…

百合姫提督「えーと、次はお父さん宛で……高田さんという人から」

父「あー、タカちゃんか……相変わらず元気にしているみたいだなぁ」

百合姫提督「……次は高崎……下の名前が「たけお」さん?」

父「うわ、武雄さんか……最近ご無沙汰だったから出してないよ」

百合姫提督「次はお母さん、島村さんから」

母「ああ、桜さんね♪」

…積み上がっている年賀状は達筆な筆文字のもの、近況報告の写真を印刷したもの、白地の年賀状にあり合わせのペンで「明けましておめでとう」だけの気楽なものなどさまざまで、差出人の名前も普段から親しい人や近ごろは疎遠になっている人、懐かしく思う人や「どうせ送ってこない」とたかをくくって出さずにいたのに唐突に年賀状を送ってきて慌てさせる人など、こちらも十人十色といった趣がある…

百合姫提督「さてと、私には誰から届いているかしら……ちゃんとお返事を出さないといけないし……」艦娘たちを預かる鎮守府司令官の准将ともなれば、公私問わずさまざまな相手から年賀状が送られてくる……百合姫提督は食卓のテーブルから隣の和室に場所を移し、改めて年賀状を読み始めた……

百合姫提督「……えーと、由紀にはもう出してある……美保にも出した……」

…公務上の付き合いで礼を欠かすことの出来ない相手と、百合姫提督が親しくしている友人・知人たちはリストアップしてあり、届いた年賀状と見比べて確認していく……差出人は海自の知り合いをはじめ、市ヶ谷のお役人のような「エライ人」、そして懐かしい学生時代の友人たち……たいていは都合が合わずに会う機会がめっきり減ってしまったが、中には帰省のたびに顔を合わせ、旧交を温めている親友や可愛がってくれる先輩、慕ってくれる後輩もいる…

百合姫提督「ふふ、春子ったら相変わらず元気いっぱいね……悠も相変わらずのようだし……」

百合姫提督「みんな元気そうで良かった。それじゃあ今度は国際郵便を確認しないと……」

…知り合いたちの近況を読んで微笑ましい気分になっていた百合姫提督だったが、何通か交じっている国際郵便を確認することにした……外国海軍の来訪やレセプションで親しくなった海軍士官の中には、手間はかかるが趣があると手紙を送ってくれる人もいる…

百合姫提督「アメリカのミッチャー提督……わざわざ手紙を送ってくれるなんて、マメな人なのね」

…基地のPXで買ったと思われる新年おめでとうの絵はがきには「ビッグE」こと空母エンタープライズが白波を蹴立てている堂々とした姿が印刷されていて、そこに黒いマジックペンで「A HAPPY NEW YEAR!」と書いてある…

百合姫提督「効率的なミッチャー提督のことだから、てっきり電子メールで送ってくるとばかり思っていたわ……お返事は「富嶽三十六景」の絵はがきにでもしたら喜んでもらえるかしら……」

百合姫提督「それからこれは、フランスのエクレール提督ね……」

…オディロン・ルドンの名画「グラン・ブーケ」をあしらった絵はがきに、筆致も美しい花文字でフランス語の新年のあいさつがつづられている……近づけるとふっとニナリッチの名高い香水「レール・デュ・タン」が香るところも万事フランス流にこだわり、パリジェンヌを気取っているエクレール提督らしい…

百合姫提督「やっぱりエクレール提督の人柄が出ている感じがするわ……♪」

百合姫提督「それから次は……あ、フランチェスカからだわ……///」提督からの絵はがきを手に取ると、少し頬を赤らめつつ文面に目を通す……

…提督からの絵はがきは抜けるように青いイオニア海と白い砂浜を写した風景写真のもので、そこに練習を重ねたらしい「あけましておめでとうございます」のひらがながつづられている……字そのものは丁寧で柔らかい感じだが、慣れない平仮名には苦戦したようで「あけましてお『ぬ』でとうございます」と書いてあるようにも見える…

百合姫提督「フランチェスカったら平仮名を教えてあげたのに、また「め」と「ぬ」があいまいになって……♪」

百合姫提督「あ、下にも何か書いてある……」大きめに書かれた平仮名の下にはイタリア語に英語を添えた文章がつづってある……

百合姫提督「……えーと「ごくありふれたイオニア海の写真だけれど、私にとっては姫と過ごした特別な場所。今年が貴女にとって良い年でありますよう……愛を込めて。フランチェスカ」って……///」

百合姫提督「も、もう……フランチェスカったら///」

………



…さかのぼって・年の瀬のイタリアにて…

提督「……おはよう、お母さま♪」

クラウディア「ええ、おはよう……ちゅっ♪」

シルヴィア「おはよう」

提督「おはよう、シルヴィアおばさま……それにしても早いものね、もう何日もしないうちに新年が来るなんて」

クラウディア「そうね、シルヴィアが隣にいると毎日が幸せだから一年があっという間♪」

シルヴィア「私もよ、クラウディア」

クラウディア「まぁ、嬉しい♪」

提督「朝からごちそうさま……ところで年始だけれど、私はアンナに色々と付き合わされることになるかもしれないわ」

クラウディア「ふふ……いいわよ、お泊まりでもなんでもしていらっしゃい♪」

シルヴィア「そうね。フランカも子供じゃないんだから、どこまでしていいかはわきまえているでしょう」

提督「私がわきまえていてもアンナがわきまえているかは怪しいところね……」
948 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/10/19(土) 02:34:56.23 ID:XBVmBDIo0
クラウディア「まぁまぁ、ふふっ……ところでフランカ、少し頼まれ事をしてくれないかしら?」

提督「どうしたの、お母さま?」

クラウディア「ええ、ちょっとルチアーノさんのカフェに行ってコーヒー豆を買ってきてくれないかしら? 買っておいた分がそろそろおしまいになりそうなのに気付かなくって……年末年始は店もお休みでしょうし、今のうちに買っておかないと」

提督「いいわよ。どうせ暇だし、ついでにコーヒーでも飲んでくるわ」

クラウディア「そうね、それならお菓子も食べていらっしゃい♪」

提督「ええ、それじゃあ行ってきます」軽いクリーム色のセーターと履き心地の良い茶色のズボン、脱ぎ履きのしやすいスエード生地のスリッポンと気軽な格好で家を出た……

…小さな町…

提督「チャオ、ルチアーノおじさん」

カフェのマスター「フランカ!戻って来たっていうのに顔を出してくれないから、てっきりミラノ辺りの生意気なカフェにあてられてうちみたいな田舎のカフェはゴメンだってお高くとまっているのかと思ったよ!」

提督「まさか。ミラノやローマでカフェなんて入ったらあまりの値段に目が回るわ……カフェ・コレットを甘めに。それからコーヒー豆をひと袋」

マスター「はいよ。それにしてもずいぶん大人になって……ついこの間までカスティリオーネさんとこのお嬢様と手をつないでいたあのお嬢ちゃんがね……」

提督「もう、おじさんったら何年も前の事を……」提督は苦笑いしつつ、運ばれてきた甘く熱いコーヒーを口に含んだ……

提督「……相変わらず美味しいわ」

マスター「そりゃあそうさ。こんな顔馴染みだらけの小さい町で少しでもマズいコーヒーなんて出してみろ。あっという間に評判が広まって客が来なくなっちまう……ヘタな都会よりも気が抜けないよ」

提督「そのセリフも相変わらずね。おばさんは元気?」

マスター「買い物に行ったきり帰ってきやしないよ。どうせ八百屋のばあさんとくっちゃべってるんだろうさ……年の瀬だからとっとと売りだめの勘定を済ませたいっていうのに」

提督「それじゃあおばさんを見かけたらそう言っておくわ」

マスター「ああ、もし見かけたら「ロバみたいにちんたらしてるな」って伝えておいてくれ……それじゃあ、どうぞごゆっくり♪」

…年の瀬の冷たいがすっきりした風に髪をなぶらせながら甘く濃いコーヒーとカンノーリを楽しんでいると、知り合いと言うほどでもないが顔を知っている地元の女の子が近寄ってきた……その女の子は夏期休暇の時にもちらっと見かけたが、その時に比べると半年あまりでずいぶん成長しているように見える…

女の子「……チャオ、お姉さん」

提督「チャオ、クリスマスおめでとう。どうかした?」

女の子「ええ、ちょっと相談したいことがあって……ここ、座ってもいい?」

提督「どうぞ」

女の子「ありがと」

提督「良かったら一ついかが?」菓子皿のカンノーリをすすめる……

女の子「ありがと、いただくわ」

提督「……それで、私に相談事ってなにかしら?」女の子が話しやすくなるよう頬杖をつき、姿勢を下げて目線を合わせる……

女の子「うん……あのね、お姉さんがカスティリオーネのお姉さんと婚約しているって聞いたから相談したいんだけど……」

提督「けほっ……!」思わずカンノーリのかけらでむせた……

女の子「違うの? うちのお母さんがそう言ってたから……」

提督「そう、ね……婚約とまではいかないけれど、幼馴染みの仲良しではあると思うわ……それで?」

女の子「……あのね、女の人どうしで好きになるってどういうことか教えて欲しくて///」

提督「誰か気になる人がいるのね?」

女の子「うん///」

提督「なるほど……その子とは仲が良いの?」

女の子「と、思う……この間、キスされたし///」

提督「ほっぺに?」

女の子「ううん……唇だった///」

提督「そう、なるほど……」ごくりとコーヒーを飲むと、カップを置いて視線を合わせた……

提督「キスされて気持ち良かったのなら……あるいは少なくとも嫌じゃないのなら「その子のことが好き」でいいと思うわ」

女の子「……お姉さんも気持ち良かった?」

提督「そうね。少なくとも今までずっとアンナと「仲良し」でいるくらいには……ね♪」そう言うと唇に指を当て「この事は他の人には秘密よ?」と共犯者めいたウィンクを投げた……
949 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/03(日) 01:59:34.25 ID:BGHiRYGp0
…帰宅後…

提督「ということがあって……」

クラウディア「あら、そんな大事なことを私たちに話しちゃっていいものかしら?」

提督「もちろん了承を得ているわ「私のお母さまとおばさまにも話してみていいかしら?」って。なんでもベルリーニさんの娘なんだって言っていたけれど、お母さまたちは知っている?」

シルヴィア「ああ、ベルリーニのね……なるほど」

クラウディア「あぁ、あの子ね……ええ、顔は知っているわ」

提督「まるで知らない訳じゃないみたいだけれど、何かあったの? 私とアンナのことも多少知っているようだったし……いくら小さな町だからって、私との関係を知っている人間はそういないと思うのだけれど……」

シルヴィア「確かに」

提督「それじゃあどういうわけで、いままで話したこともないような女の子までが私のことを知っているの? 別に隠し立てするようなことじゃないとは言え、アンナとの付き合いがゴシップ記事みたいな扱いになるのは嫌だわ」

クラウディア「えーと、ね……そのことだけれど、多分アンナちゃんからだと思うわ」

提督「どういうこと?」

シルヴィア「ベルリーニの家はカネッリのお隣でおかみさん同士はよくおしゃべりしているけれど、そのカネッリのおかみさんがカスティリオーネ家の家政婦として雇われているからね……おおかたアンナの両親がしゃべっているのを小耳に挟んだんでしょう」

クラウディア「あるいはフランカが煮え切らないものだから、アンナちゃんが広めて回っているのかもしれないわよ?」

提督「アンナに限ってそれはないわね。色々と欠点はあるけれど、二人の思い出をよその人にしゃべって回るような事はしないわ」

シルヴィア「信頼しているのね」

提督「ええ。許嫁どうこうはさておき、一番の幼馴染みであることは揺らがないわ」

クラウディア「もう、フランカったら……そこまで信頼しているならアンナちゃんと結婚すればいいじゃない。向こうもやきもきしているし、私だって二人のためにウェディングドレスを仕立ててあげたいんだから♪」

提督「勘弁してほしいわ……アンナと一緒にいたら一日中ずっと引きずり回されて、休む暇もなくなっちゃう」苦笑いをしながら肩をすくめた……

シルヴィア「ま、帰省のたびに結婚だの縁談だのの話をするなんていうのは年寄りの田舎者がすることだし、もうやめにするわ」

提督「そうしてくれると助かるわ。あんまりその話題ばかりだと、せっかくの夕食が喉を通らなくなっちゃうもの」

クラウディア「そうね、せっかく作ったご馳走なんだもの。残さず食べてもらいたいわ?」

シルヴィア「残して年越しの時に食べたっていいじゃない」

クラウディア「年越しの時はまたご馳走を作るもの、残り物で済ませたりはしないわよ」

シルヴィア「フランカ、これは服がきつくなる心配をしておいた方が良さそうね」

提督「同感」

…夕食後…

シルヴィア「ふー、案の定だったわね……お腹がはち切れそう」

提督「同じく……」

クラウディア「いっぱい食べてくれて嬉しいわ♪ ドルチェはもう少し後にしましょうね」

シルヴィア「それがいいわ……それにしても、あと二日もしないうちに新年ね」

提督「そうね、何だかんだで今年もいい年だったわ」

クラウディア「私はシルヴィアと結婚してから毎年ずうっと良い年を過ごしているわ♪」

シルヴィア「私もよ」

提督「ふふ、このやり取りも例年通りね♪」

シルヴィア「言わなくても伝わるけれど、言った方がもっと伝わるもの」

クラウディア「そういうこと♪」

提督「ふふ、お母さまたちらしいわ♪」

シルヴィア「そうね」

クラウディア「ええ♪」テーブル越しにお互いの指を絡め合って、見つめ合う二人……

提督「私は邪魔になりそうだから、しばらくお暇させてもらうわ……ドルチェを出す時になったら教えてね?」

クラウディア「ええ、そうするわ……♪」
950 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/06(水) 01:30:36.66 ID:Y0eQgh+Q0
…大晦日…

シルヴィア「……何か手伝いましょうか?」

クラウディア「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)、座っていて? 笑顔で私の料理を「美味しい」って食べてくれればそれで十分♪」

提督「お母さまの料理が美味しくなかった事なんてないわ」

クラウディア「まぁ、嬉しい♪ フランカの分は多めにしておいてあげるわね♪」

…エプロン姿で楽しげに台所を行き来するクラウディア……庭はすっかり冬枯れの様子で、数本の常緑樹が緑を残している以外はすっかり黄色っぽい土と枯れ草ばかりだが、暖炉で踊る火も楽しげなカンピオーニ家の食卓は色とりどりの野菜を使った前菜や、一月六日の「公現祭」まで飾られているクリスマスツリーの飾りで華やかに彩られている…

シルヴィア「それじゃあその間にワインでも取ってこようかしらね」

提督「私が行きましょうか?」

シルヴィア「フランカはいいのよ。その代わりにクラウディアが手伝って欲しいって言ったらよろしくね」

提督「ええ」

…そう言い置いて立ち上がり、家の奥にある小さな貯蔵室にしまってあるワインを取りに行ったシルヴィア……普段はあまり化粧っ気がないが、今日は指の結婚指輪に加えて、クラウディアとお揃いのネックレスを首にかけている…

クラウディア「さぁ、出来たわ……シルヴィアは?」

提督「ワインを取りに行ったわ」

クラウディア「それじゃあ戻るまで待ちましょう」

シルヴィア「待たなくてもいいわ……♪」ワインの瓶を片手に後ろから忍び寄るよると、首筋にキスをした……

クラウディア「あん……っ///」

シルヴィア「それじゃあ乾杯しましょう」白地に文字だけがあしらわれた地味なラベルのワインを机に置くと、コルクを抜いて染みこんだ香りを確かめ、それからグラスに注ぐ……

クラウディア「今日のワインは?」

シルヴィア「せっかくの年越しだから、記念のワインから一本開けたわ」

提督「いいの、おばさま?」

シルヴィア「ええ。お互い百歳まで生きても良いように、新婚の時にいいワインをあれこれ買いだめしたから……もし私とクラウディアで飲みきれなかったらフランカが相続してちょうだい。その頃にはヴィンテージものになっているでしょうし、お金に換えたって良いわ」そう言って提督に見せたラベルにはクラウディアとシルヴィアが結婚した年が書かれている……

クラウディア「もう、せっかくの年の瀬なのにムードがないんだから」

シルヴィア「悪かったわ……さ、機嫌を直して乾杯しましょう」

クラウディア「ええ♪」

シルヴィア「それじゃあ、来年も良い年になりますように……愛しているわ、クラウディア」

クラウディア「私もよ……ずっと貴女が好き♪」

提督「これからも末永くお幸せに」

クラウディア「ええ、ありがとう♪」

シルヴィア「フランカもね……乾杯♪」

提督「ええ」クルミや樫の樽のような風味を持った濃い赤ワインは食前酒にするには少し風味が強いが、じっくりと味わうにふさわしい良いワインだった……

クラウディア「さ、お料理が冷めちゃうわ……よそってあげるから、どうぞ召し上がれ♪」

…クリスマスと違って年越しにそこまでの重きを置かないイタリアとはいえ、やはりカレンダーが改まるというのは祝う価値がある……クラウディアもクリスマス料理と違って、肩の凝らない……しかしカンピオーニ家の味として受け継いできた料理をぎっしりと並べている…

提督「相変わらず美味しい……それにしてもここ数日ご馳走ずくめなのに、お母さまってばよく献立が続くわね」

クラウディア「ふふっ、私だって勉強しているのよ? 我が家に代々続く秘伝のレシピだけじゃなくて、旅先で食べた美味しい料理を再現してみたり」

シルヴィア「おかげで体重が増えること増えること……」

クラウディア「あら、それじゃあ決まり切った献立にしましょうか?」

シルヴィア「それは勘弁ね……もっとも、クラウディアがいるなら固くなったパンと水だけでもいいわ」

クラウディア「もう、シルヴィアったらお上手なんだから……ひゃんっ///」

提督「この調子なら新年も相変わらずの一年になりそうね」

シルヴィア「それでいいのよ……さ、新年に乾杯」

クラウディア「ええ、乾杯♪」

提督「乾杯♪」
951 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/15(金) 01:27:19.40 ID:MKgHJg860
…新年・朝…

提督「新年おめでとう、お母さま、おばさま♪」

クラウディア「ええ、新年おめでとう♪」

シルヴィア「新年おめでとう……フランカも一杯いかが?」

提督「おばさまったら、朝からスプマンテ?」

シルヴィア「せっかくの新年だもの、いつもとは違うことをしようと思ってね」

クラウディア「シルヴィアったら朝からお風呂に入って、スプマンテを開けてごきげんなの…///」そう言って手のひらを上に向けているクラウディアの首筋には吸い付かれたような桃色の痕が残っている……

提督「いつも通りなのはお母さまとえっちしたことくらいね」

シルヴィア「まぁね……朝日を浴びながらクラウディアを抱くのは格別だったわ」

クラウディア「もう、シルヴィアったら……♪」

提督「新年早々ごちそうさま……お母さまたちがこの調子じゃあ、私も一杯もらわないとやっていられそうにないわ」グラスを出して飲み口の良いスプマンテ「モスカート・ダスティ」を注ぐ……

シルヴィア「こうやって朝日に透かすと綺麗でしょう?」

提督「そうね。明けの海原に潮風、森のざわめきに金色に抜けるような朝焼け、グラスにはひんやりしたモスカート・ダスティ……ぜいたくの極みね」

クラウディア「それから私たちのキスも付けてあげる♪」ちゅっ♪

シルヴィア「私たちの可愛いフランカに……♪」ちゅ……♪

提督「それじゃあ私からも……♪」ちゅ……っ♪

クラウディア「ふふ、ありがとう……フランカもアンナちゃんといずれこういうやり取りをするようになるのね♪」

提督「ちょっと、お母さま……!」

クラウディア「あら、でも年の瀬にアンナちゃんのお家へ出かけたときはまんざらでもなさそうだったわよ?」

提督「べ、別にそこまでじゃないわ……アンナとは幼馴染みだけれど、いつも私の事を振り回すし……///」そう言いながらも、アンナと過ごした年末を思い出して頬を赤らめた……

…数日前…

提督「……チャオ、アンナ」

アンナ「おはよう、フランカ……さ、乗って♪」銀色のマセラッティ3500GTでカンピオーニ家の門の前までやってきたアンナ……その目はサングラスで隠れているが、濃いさくらんぼ色のルージュを引いた唇は口角があがっていて、少しえくぼも出来ている……

提督「ええ」

…提督はクリーム色のメルトンのコートに、長身に映えるヴィヴィッドな色合いのローズピンクのリブ編みセーター、キャラメル色のフレアスカートに黒のストッキング、頭には少しフェミニンな要素を狙いすぎた感があるように思えたが、白ウサギのようにふわふわしたバスコ(ベレー帽)をかぶり、黒革のニーハイブーツで足元を固め、手にはハンドバッグを持っている……軽く吹いてきた「サンタ・マリア・ノヴェッラ」の甘く華やかなバラの香水は、提督の気に入っている香りで、身じろぎするたびにふっとかすかに立ちのぼる…

アンナ「フランカったら良く似合ってるわ、私のためにお洒落してくれたのね?」

提督「えぇ、まぁ……そういうアンナだってとっても綺麗よ♪」

アンナ「そりゃあせっかく許嫁と過ごせるんだもの、ぼろを着てくるわけには行かないわ……ん♪」

…そう言って両手で提督の頬を挟みこむと、身体を寄せて唇を重ねるアンナ……熱っぽいキスにふさわしいプラダの香水が鼻腔を満たし、甘いバニラとムスクの香りで頭がくらくらするような気がした…

提督「ち、ちょっと……うちの門の前でなんて、いくらなんでもせっかちすぎるわ……///」

アンナ「このくらい挨拶みたいなものよ……だいたいろくに会う機会も作らないで私の事を焦らしているのは貴女なんだから……んふっ、んぅ……っ♪」

提督「んぅぅ、ん……♪」

アンナ「ぷは……はぁ、はぁ……はぁ……っ///」自分から唇を重ねておきながら、提督にキスを返されただけで肩で息をしている……

提督「こういうのも久しぶりね……アンナ♪」

アンナ「え、ええ……言っておくけれど、今日はずうっと私のわがままに付き合ってもらうわよ?」

提督「……はたして身が持つかしら?」

アンナ「そんなことを言って、情けないわね」

提督「ふふっ♪ 私が、じゃなくて……貴女が、よ?」ちゅ……っ♪

アンナ「んっ……もう、いいから車を出すわよ/// 早くしないと一日が終わっちゃう」照れ隠しのようにアクセルを踏み込み、土ぼこりを後ろに引きながらマセラッティを加速させた……
952 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/22(金) 01:42:37.68 ID:n8ZJszdU0
提督「それで、今日はどんな風にエスコートしてくれるのかしら?」

アンナ「エスコートもなにも、うちに来てもらうだけよ。ミラノやローマならまだしも、この辺りに気の利いた店なんてないじゃない」

提督「あら、せっかくの帰省だっていうのにずいぶんな言い方ね?」

アンナ「言いたくもなるわよ。こうしてたまに戻ってみても、十年一日のごとしでなーんにも変わっちゃいないんだもの」

提督「私からすると、その変わらないのが嬉しいのだけれど……もっとも、アンナなら変わっていてもそれはそれで素敵よ♪」

アンナ「もう、相変わらず口が上手いんだから……」

提督「事実だもの」

アンナ「まったく……///」

…カスティリオーネ家…

アンナ「……さ、入って?」

提督「今日はずいぶん静かなのね?」

アンナ「前にも言ったけれど、パパとママはシチリアで冬のヴァカンス。家政婦だとか「ファミリア」の若衆たちにも年末年始のお休みを取らせているから……それに、うちからものを盗むような間抜けもいないものね」

提督「果たしてそうかしら。何物にも代えがたいこの家の宝を盗みたくて仕方のない人間が……案外近くにいるかもしれないわよ?」

アンナ「んっ……む///」

…そう言うなり田舎屋敷風の、しかし広々とした玄関ホールでアンナの唇にキスをする……一瞬だけ抵抗するように身をよじったアンナだったが、グッチのハンドバッグを手から落とすと腕を提督の背中に回して抱きしめ、ぐいと腰を寄せて熱のこもった口づけを交わした…

提督「んっ、ん……は……んぅ、んぁ……♪」

アンナ「んむっ、ちゅ……ちゅる……っ♪」

提督「ぷは……♪」

アンナ「はぁぁ……///」

提督「ねぇ、アンナ……♪」

アンナ「分かってるわよ……んちゅっ、ちゅぅぅ……っ♪」

提督「んっ、あふ……っ♪」

アンナ「んちゅ、ちゅる……はぁ、はぁ、はぁ……っ♪」

提督「んんぅ♪」

…アンナはこらえが効かなくなったかのように壁に提督を押しつけるといらだたしげにコートを脱ぎ捨て、提督の脚の間に自分の膝を割り込ませてくる……提督もそれに応えるようにストッキングとランジェリーに手をかけて膝まで下ろし、それから滑るような手つきでアンナの下着に手をかけた…

アンナ「ん、んちゅ……だめ、フランカ……キス、やめないで……♪」

提督「ええ……ちゅるっ、ちゅぅ……っ♪」口づけを続けながら少し屈んでアンナのランジェリーを引き下ろすと、アンナは片膝をあげて黒い透けるようなパンティから片脚を抜き、もう片方のくるぶしあたりにまで下がったそれを蹴り出すように放り出した…

アンナ「んっ、んんぅ……あっ、あん……あふっ♪」

提督「アンナ……ん、あっ……あぁん……っ♪」アンナの細い中指と薬指がいささかぎこちなく、かつわがままに滑り込んでくる……

アンナ「んっ、あ……もう……そういう甘い声を……出されると……たまらなくなるじゃない……っ♪」

提督「アンナこそ、そんなにトロけた表情で迫ってくるんだもの……んちゅっ♪」

アンナ「んふっ、んんっ、ん……っ♪」

提督「あむっ、ちゅる……ちゅむ……っ♪」互いの口には舌を、粘っこく熱を帯びた花芯には指を滑り込ませながら、飢えていたかのように愛をむさぼり合う……

アンナ「あっ、あ、あぁぁん……っ♪」

提督「ふあぁ……ぁっ♪」

…人気のない底冷えのする玄関に二人の甘い声がオペラのように響き、骨董品の花瓶や絵画の額に反響する…

提督「はぁ……はぁ……もう、アンナったら相変わらずせっかちなんだから♪」

アンナ「はぁ、ふぅ……いったい誰のせいだと思っているのよ。本当なら部屋でシャンパンでも開けてじっくりムードを作っていくつもりだったっていうのに、玄関でなんて……まったく、盛りのついた犬じゃあるまいし///」顔を火照らせ、息を切らしながら文句を言った……

提督「まぁまぁ、シャンパンなら今からでもまだ遅くないわ……♪」

アンナ「ふふ、まったく……いいわ、それじゃあ改めて最初からやり直しましょう?」

提督「あら、せっかくこれだけ愛し合ったのにまた最初からやり直し?」まだ色欲をたたえたままの金色の瞳を向け、どこかみだらな笑みを向ける……

アンナ「もう……っ///」
953 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/11/27(水) 02:19:17.67 ID:QahSp3Rq0
…アンナの部屋…

提督「この部屋も久しぶりだわ……ずいぶん模様替えをしたのね?」

アンナ「そりゃあそうよ、いつまでもぬいぐるみってこともないでしょ?」

提督「そう言いつつも、ちゃんとご両親からのプレゼントは捨てないでいるあたりはアンナの良いところね……このテディベア、六歳くらいの時にもらったって言ってたわよね?」

…かつて児童文学の全集や教科書が並んでいた本棚は国内や国外の法典をはじめ、さまざまな専門書が分厚い樫の板もたわみそうなほどぎっしりと詰め込まれ、部屋のあちこちに「シュタイフ」のテディベアや小さな絵画、思い出の写真などが飾ってある…

アンナ「そりゃあパパにもらったものだもの……って、今はそんなことはいいの」

…部屋の中央にあるアンティークものの丸テーブルには露のおりたシャンパンが浸かっているアイスペールが載っていて、その横には二人分の白ワイン用グラス……そしてそれを取り囲むようにカゴに収まっているバゲットや缶詰、チーズなどが並べてある…

アンナ「さ、せっかく用意したんだから飲みましょう?」

提督「そうね、いただくわ」

アンナ「ま、あんな片田舎の鎮守府でもお酒の品揃えはそれなりだったけれど……どう?」

提督「ルイ・ロデレール?」

アンナ「そうよ。モエ・エ・シャンドンやドン・ペリニョンはもてはやされすぎて俗っぽいし、せっかくフランカと会えるんですものね」そう言うと醸造年が見えるようにラベルを見せ、慣れた手つきで栓を抜く……

提督「恐れ入ったわ……それだけのヴィンテージもの、私のお給金で買ったらひと月は断食をしないといけなくなるわね」

アンナ「気にしなくていいのよ。コート・ダジュールのパーティ会場で味の分からない成金からせしめてきただけだから……フランカに飲まれるほうがシャンパンにとっても幸せなはずよ」

提督「そう、それじゃあいただくわ……乾杯♪」

アンナ「乾杯」

提督「……おいしい」

アンナ「当たり前でしょう? それからおつまみもあるわよ……キャビアで良いわよね?」答える前にカスピ海産のキャビアの瓶詰めを開ける……

提督「いたれりつくせりね」

アンナ「ま、その分は愛してもらうから♪」

提督「それじゃあずいぶん頑張らないといけない事になりそうね?」

アンナ「期待しているわよ?」

提督「ええ……♪」口の端に小さな笑みを浮かべると、脚を伸ばして向かい側に座っているアンナのふとももをくすぐりはじめた……

アンナ「ちょっと、キャビアがこぼれるじゃない……あぁもう」びくっと身体が震えたはずみに小さじが動き、クラッカーの上に載せようとしたキャビアがこぼれた……

提督「あら、もったいない」

アンナ「誰のせいよ、まったく……」そういってふとももから払い落とそうとする……

提督「……待って♪」

…四つん這いになってテーブルの下に潜るとアンナの脚の間から顔を出し、ふとももにこぼれ落ちた小さい黒真珠のようなキャビアを舐めとった…

アンナ「んっ……///」

提督「シャンパンもいただける?」

アンナ「ええ……♪」テーブルの上にあった飲みさしのグラスを傾け、白いふとももにゆっくりとこぼす……

提督「ぺろ……ちゅっ、ちゅる……っ♪」

アンナ「あっ、あ……ふぁ……あ///」

提督「ん、ちゅ……っ♪」シャンパンの雫を舐めとると、最後は唇で吸い付くようにしてキスをした……

アンナ「……ねえ、もっと飲んで///」

提督「ええ♪」

…白磁のような脚を伝って流れてくるシャンパンを舌先で受けとめ、爪に紅いペディキュアをしている形の良い足の甲を舐めあげた……凍えるかのようにぶるっと身震いするアンナの反応に気を良くして、提督は足からふくらはぎ、ふとももへと舌を這わせていく…

アンナ「はぁっ、あぁ……ん……はひっ……ん……っ///」

提督「ちゅるっ、ちゅ……れろ……っ♪」少しドライなルイ・ロデレールの味とアンナのすべすべした肌触りを舌に感じながら、次第に身を乗り出すようにして舐めあげていく……

アンナ「あ、ふぅ……んぁ……ん……ぁっ///」

提督「んちゅるっ、ちゅむ……んちゅぅ……っ♪」

アンナ「あ、あっ……もう、フランカ……焦らさないで……早くしなさいよ……っ///」脚で提督の首を締め付けるように挟みこみ、顔を秘所に押しつける……

提督「んむっ……♪」
954 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/12/05(木) 01:01:47.14 ID:UpIopirU0
アンナ「はぁ……はぁ……んっ……あっ///」

提督「んちゅ……ちゅるっ、じゅる……じゅぷ……っ♪」

アンナ「あ、あっ、あっ……あぁぁんっ♪」とろ……っ♪

提督「んふ……ちゅる、んちゅ……♪」

アンナ「はひっ、あふっ、ふあぁ……あっ、んぅぅっ///」提督が愛蜜したたる花芯を舌でまさぐるたびにひくひくと身体が跳ね、つま先立ちをするかのようにかかとが浮き上がる……

提督「……ぷは♪」

アンナ「はぁ……はぁ……続けて♪」

提督「ふふ、アンナったら欲張りね♪ それじゃあ今度は……あ痛っ!」

…ふとももの間から顔を出し、甘ったるいねっとりとした表情を浮かべてアンナを見上げながら、べとべとになったふとももを舐めあげようと頭を動かした提督……が、後頭部をテーブルにぶつけてすっとんきょうな声を上げ、ぶつけた場所を手で押さえた…

アンナ「ばか、何やってるのよ……大丈夫?」

提督「え、ええ……せっかくいい雰囲気だったのに締まらないわね♪」後頭部の痛みから目尻に涙をためつつ、苦笑いを浮かべている……

アンナ「いいわよ、フランカがなんともないなら」

提督「ええ、私は大丈夫……くすっ♪」

アンナ「ふふふっ……♪」

提督「うふふっ♪」

アンナ「あはははっ♪」

提督「ふふっ、うふふふっ♪」お互いにしげしげと顔を見合わせるとどちらからでもなしに笑いが起こり始め、しばし笑い転げた……

アンナ「あー、おかしい♪ フランカのそういうところは相変わらずね」

提督「これでもエスコートの上手な大人の女性を目指してはいるのだけれど……ね?」

アンナ「エスコートの上手な大人の女性ねぇ……ま、及第点って所かしら」

提督「あら、ずいぶんと手厳しい」

アンナ「そりゃあね。私の「許嫁」なんだもの、満点を目指してもらわなきゃ困るわ♪」

提督「だから……」

アンナ「んっ♪」

…提督がいつものように「許嫁」ではないと言いかけたところで、椅子に腰かけたままかがみ込んだアンナがキスをして唇をふさいだ…

提督「ん……♪」

アンナ「いいわ、今のところ許嫁かどうかは保留にしておいてあげる……でも、幼馴染みには変わりないわよね?」

提督「それはもう、アンナは私の大事な幼馴染みよ」

アンナ「なら幼馴染みとしてもう一回……ね?」椅子から立ち上がると提督の手を取り、ベッドに誘った……

提督「ええ……♪」

…二時間後…

アンナ「はぁ、はぁ……はぁぁ……っ♪」

提督「ふぅ……とっても可愛かったわ、アンナ♪」

アンナ「はぁ……はぁ……まったく「運動が苦手」が聞いて呆れるわよ……」だらりと力の抜けた身体をベッドに預け、額の上に腕を投げ出して喘いでいる……

提督「……きっとアンナの悦ぶ顔が見たいからだと思うわ♪」

アンナ「はぁ、もうそれでいいから……水ちょうだい」

提督「ええ……私も喉が渇いたわ」すっかり粘ついている口内を洗い流そうと冷水を飲み干し、それからアンナの分を注いで渡す……

アンナ「ごく、ごくっ……はぁ」

提督「こんな年の瀬も意外といいものね」

アンナ「そうね、悪くないクリスマスプレゼントだったわ」上半身だけ起こしてグラスを受け取り、ベッドに腰かけた提督に笑いかけた……

提督「ご満足いただけて良かったわ」

アンナ「ええ……とりあえず今のところは♪」
955 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/12/13(金) 02:09:58.21 ID:k43ZR7Nf0
提督「ふふ、それじゃあまた気が向いたら……ね♪」

アンナ「そうね。ところで……はい」ベッドから起き上がると裸身のままクローゼットに近寄り、中をかき回していたかと思うと赤いリボンのかかった包みを取りだした……

提督「なぁに?」

アンナ「もう、馬鹿ね。この時期なんだからクリスマスプレゼントに決まっているでしょうが」

提督「ふふ、ありがとう……開けてもいいかしら?」

アンナ「ええ、開けなさい。本当なら六日までは開けないものだけれど……せっかくのプレゼントだもの、目の前で喜んでほしいじゃない?」

提督「そうね、それじゃあ……」リボンをほどくと包み紙をはがした……

提督「……まぁ、メローラの革手袋」

(※メローラ…1870年にナポリで創業したネクタイ、革手袋のブランド。映画「ローマの休日」で使われるなど品質、知名度ともに名高い)

アンナ「そうよ。貴女のお母さんはファッションデザイナーだし、私から洋服をあげたって仕方ないけれど、手袋なら何組かあっても使いどころがあるでしょ? まだまだ寒い日も多いし、海の上じゃあ指先が冷えるでしょうから、軍艦にいるときにでも使って欲しいわ」

提督「ありがとう、こんなに素敵な物を……でも艦橋で使うにはもったいないわね」

アンナ「何を言ってるのよ。タンスのこやしにしてもらうためにあげたんじゃないんだから、きちんと使いなさいよ?」

提督「ええ、ありがとう……それじゃあうんと役立てさせてもらうわ」

アンナ「そうしなさい♪」

提督「本当にありがとう、アンナ♪」

アンナ「いいのよ」

提督「それじゃあ私からも……はい♪」

…空いている椅子の一つに置きっぱなしにされていたハンドバッグから、桃色をしたサテンのリボンで結ばれた小ぶりの箱を取りだした…

アンナ「……会えるかどうかも分からないって言うのに、わざわざ用意してくれてたの?」

提督「アンナだってクリスマスくらいは帰省するでしょうし、もし会えなかったらご両親に預けて渡してもらうよう頼んでおくつもりだったわ」

アンナ「ふぅん、何だかんだで貴女も会いたかったんじゃない」

提督「そりゃあ幼馴染みだもの、会いたかったには会いたかったわよ……許嫁の話を持ち出さなければね?」

アンナ「ふふふっ……砲弾が飛び交っている海に出る勇気があるくせに、私との結婚が怖いなんてね♪」

提督「砲弾なら回避運動も取れるし装甲で防げるけれど、貴女は防げないもの」

アンナ「言ってくれるわね……まぁいいわ、早速開けさせてもらうわよ」リボンをほどくと包装紙を破り、中身の箱を取り出す……

提督「できるだけアンナに似合いそうなものにしようと思ったのだけれど……どう?」

…提督がプレゼントしたのは優美な凝った作りでいながら俗っぽくないアール・ヌーヴォー・スタイルのネックレスで、細かな細工を施された金のチェーンにルネ・ラリック風のデザインがされたコウモリと三日月のトップがあしらわれ、コウモリの翼や三日月にはめ込まれたエナメルが光を受けて薄青や桃色に変化して見える…

アンナ「ピピストレッロ(コウモリ)のネックレス……フランカったらまだ覚えていたのね?」

提督「ええ。貴女の小さいころのあだ名♪」黒褐色の髪をツインテールにしていた幼いアンナの面影を重ねて笑みを浮かべた……

アンナ「過去を振り返るにはまだ早いんじゃないかしら……ねぇ、付けてくれる?」

提督「ええ」アンナの後ろに回ると、裸のままの首もとにそっとネックレスをつけた……

アンナ「……フランカ」

提督「どう?」どちらかと言えば気ままで勝気なアンナゆえに、どんな感想が飛んで来るかと少し身構える……

アンナ「すごく嬉しいわ、ありがとう♪」

提督「ふぅ、良かった……アンナのことだからてっきり何か言われるかと」

アンナ「こんな素敵な贈り物をくれたのに、どうして文句を言う必要があるのよ。とっても良いじゃない♪」姿見の前で頭を左右に動かしては、ネックレスのきらめきを眺めている……

提督「ふふっ、気に入ってもらえて安心したわ」

アンナ「ええ。でもこうなるとお礼をしないといけないわね……♪」傷を付けたりしないようネックレスを外してケースに戻すと、姿見に映る提督を眺めて挑発するような表情を浮かべた……

提督「ふふっ、それは楽しみね♪」アンナの後ろから肩越しに手を回し、左手は乳房を、右手は腰に回して身体を寄せた……

アンナ「ええ、お昼まではまだ時間があるもの……ね///」

………

956 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/12/20(金) 02:25:10.72 ID:qzGN0AlE0
…昼時…

アンナ「はぁぁ……もう起きる気力もないわよ」

提督「とっても素敵だったわ♪」

アンナ「ふっ……♪」

提督「くすくすっ……♪」ベッドの上で顔を見合わせ、どちらともなく笑い始めた……

アンナ「あーあ、まったくあきれた年末だわ。ただベッドの上で盛っていただけだなんて」

提督「そういう年末だってたまにはいいじゃない……ね?」

…口の端にえくぼを浮かべ、またしてもアンナの身体に手を伸ばそうとした提督……と、その矢先にお腹が「ぐぅ」と間抜けな音を立てた…

提督「もう、せっかく良いところなのに……///」

アンナ「でも貴女の身体は別の欲求を満たしたいようね」

提督「はいはい、大人しく言うことを聞くことにします……アンナも何か食べる?」

アンナ「そうね。考えてみたら朝も大して食べてないし」

提督「あら、でもちゃんと食べないと大きくならないわよ?」

アンナ「育ち盛りの時期はとっくに過ぎてるってば。だいたいこれ以上背を伸ばしてどうするのよ?」

提督「ううん、身長じゃなくて……ここ♪」つんととがった白い乳房をそっと撫で回す……

アンナ「あのねぇ……馬鹿な事を言ってないで、さっさと羽織るものを羽織ったら?」

提督「あら、裸じゃなくていいの?」

アンナ「おたがい裸なら暗記できるほど眺めてきたでしょ。せっかく色々用意したんだから、何か食べましょう」

…素肌にガウンを羽織り、ふわふわのスリッパをつっかけて台所に向かう二人……アンナは右手で飲みさしのルイ・ロデレール、左手で二人分のグラスを束ねて持ち、提督はアンナの左腕を胸元に挟みこみ、右手をほっそりした腰に手を回して穏やかな笑みを浮かべている…

………

…台所…

提督「ふふ♪」

アンナ「……なに、どうかしたの?」

提督「いいえ。ただ幼馴染みを眺めているだけよ♪」

アンナ「相変わらず口が減らないわね……ほら」時間が経ってぬるくなったからとアイスペールの氷をつまんでグラスに入れ、そこにシャンパンを注いだ……

提督「ありがとう」

アンナ「いいのよ……オリーヴの瓶詰めに……チーズと……パパとママが出かけるから冷蔵庫のものはおおかた片付けておいたのよね」

…まるで業務用サイズの大きな冷蔵庫を開けて、中のものを物色しているアンナ……冷蔵庫の中身をさぐるたびにシルクのガウンに包まれた形の良いヒップが揺れ、ふわりとひるがえる裾からは先ほどまでの火照りを残して赤らんだふとももがちらつく…

提督「うーん、良い眺め♪」

アンナ「だったら早く私と結婚しなさいよ、そうすれば毎朝でも見せてあげる♪」

提督「もし貴女と結婚したらガミガミやられてそんな気分じゃなくなっちゃうのが目に見えるわ」

アンナ「ずいぶんと好き勝手言ってくれるじゃない……残り物で悪いんだけど、半身のオマール海老(ロブスター)があるわ。どう?」

提督「ごちそうね♪」

アンナ「何てことないわよ……さ、これでどうにか整ったわね」

…バターでグリルしたオマール海老の冷肉とコールドチキン、軽く温めなおしたバゲット、オリーヴの瓶詰め、アンナの部屋でつまんだキャビアの残り、ほどよく熟成が進んでいるプロヴォローネ・チーズのスライスなどを並べた…

提督「それじゃあいただくわ♪」

アンナ「ええ。どのみち残しておいたってなんにもならないんだから食べちゃっていいわよ」

…南イタリア風にまとめられた調度とステンレスを多用した高級な調理家電とが混在している台所で、アンナとテーブルを挟んで早めのお昼を口に運ぶ……バターでグリルされたオマール海老は冷めていても味が濃く、歯ごたえのある身質と口中の温度で溶けてくるバターの塩味でより一層おいしい…

提督「ん、美味しい」

アンナ「フランカって、小さいころから本当に美味しそうに食べるわよね……ほら、あーんしなさい♪」

提督「あーん♪」

アンナ「……クリスマスプレゼント、嬉しかったわよ。それと良い新年を」爪楊枝に刺したオリーヴを提督に食べさせながら言った……

提督「グラツィエ、アンナもね♪」
957 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/12/28(土) 00:56:58.85 ID:NTEbvhyo0
…十二月三十日…

アンナ「……それじゃあ、あとは家族水入らずで過ごしなさいね」

提督「ええ、色々とありがとう。良いお年を」

アンナ「グラツィエ……ちゅっ♪」

…去り際に運転席から身体を乗り出して提督の頬に音高くキスをすると片手を上げ、マセラッティのエンジン音を残して走り去っていった…

提督「アンナったら、ずいぶん粋な挨拶をして行ってくれたわね……///」

シルヴィア「……ほんと、アンナちゃんも良い女になったわね」

提督「おばさま♪」

シルヴィア「お帰り、フランカ」

提督「ただいま……♪」シルヴィアの首に腕を回しぎゅっと抱きついた……

シルヴィア「……っと、昔は飛びつかれてもなんともなかったのに。フランカもずいぶんと大きくなったわね」

提督「そうね、小さくはならないと思うわ♪」

シルヴィア「それもそうね……さ、クラウディアがまたごちそうを用意しているから食べるのを手伝ってちょうだい」

提督「ええ♪」

………

…新年・昼…

クラウディア「……ふふっ、それにしてもフランカったら♪」

提督「そういうお母さまだってあんなにたくさんお手紙をもらっているんだから、おあいこよ///」家にたくさん届いたクリスマスカードやプレゼントのことでまたもやクラウディアにからかわれ、照れ隠しで反論する提督……

クラウディア「そうね、そういうことにしておきましょう……ねぇシルヴィア、もう一杯どう?」

シルヴィア「ええ、いただくわ」

クラウディア「了解♪」

…イタリアの新年はあくまでもクリスマス期間の一部であってそこまでお祝いの対象ではないが、カンピオーニ家ではごちそうを食べたりカクテルを飲んだりと仲むつまじくして過ごす…

提督「私ももう少し飲もうかしら……」

クラウディア「そうね、せっかくのお休みなんだもの……スプマンテ?それともワイン?」

提督「それじゃあ気が抜けないうちにスプマンテをもらうわ」

クラウディア「分かったわ、それじゃあ座って待っていてね……でも食べ過ぎちゃだめよ?食後にパネットーネが待っているんだから♪」

シルヴィア「ずいぶんと甘やかしているわね」

クラウディア「だって、ひさびさに娘が帰ってきたんですもの♪」

…クリスマスもご馳走だったが、新年の食卓にもクラウディアの心のこもった料理がにぎやかに並んでいる……普段はしまってあるジノリやパニョッシンの色鮮やかな皿や鉢に牛の煮こごりやじっくり煮込んだ鹿肉のシチュー、ひょうたん型をしたチーズ「カチョ・カヴァッロ」をあぶったもの…

提督「うーん……お母さまの料理を食べると幸せな気分になるわ」

クラウディア「あら、フランカったら私をおだてるのが上手になったわね」

提督「だって事実だもの♪」

シルヴィア「フランカ、あんまりクラウディアを口説かないで……私の妻なんだから」

クラウディア「まぁ、シルヴィアったら♪」

提督「……お母さまたちは明後日からのスキー旅行を取りやめた方が良さそうね」

クラウディア「あら、どうして?」

提督「そうやって二人でいちゃいちゃしていたら、せっかく積もった雪が溶けちゃうもの」

シルヴィア「言ってくれるわね♪」

クラウディア「あら、好きなだけ言わせておけばいいのよ……ちゅっ♪」

提督「もう……♪」

………

958 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/04(土) 01:19:36.58 ID:/4HXESRu0
…休暇最終日…

シルヴィア「それじゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」

クラウディア「鎮守府に戻ったら身体に気を付けるのよ? 寂しくなったらいつでも電話してちょうだいね?」

提督「ありがとうお母さま、おばさま……でも二人のスキー旅行を邪魔したくはないもの、どうにか頑張ってみるわ♪」

…クラウディアとシルヴィアの二人に「行ってきます」のキスを済ませると、土産物やクラウディアから渡された艦娘たちへのプレゼントを詰め込んで重くなったランチア・フラミニアに乗り込んだ提督……低い冬の日差しに備えてサングラスをかけ、クラウディアからもらった柔らかくて暖かいクリーム色のカシミアセーターに使い勝手に優れたカーキグリーンのベルト付きトレンチコート、運転の邪魔にならない履き心地の良いチョコレート色のスラックス、運転用に履き替えたかかとの低い靴といった出で立ちで門を出た…

シルヴィア「……フランカも成長したものね」提督のランチアを見送ると、つぶやくように言った……

クラウディア「娘が独り立ちして寂しい?」

シルヴィア「いいえ、こうして我が家の歴史が紡がれていくのかと思うと感慨深いわ」

クラウディア「ふふ、ずいぶんとおセンチね♪」

シルヴィア「らしくないかしら」

クラウディア「ううん、それもまた貴女らしいわ♪」

シルヴィア「ふ、ありがとう……さてと、それじゃあ私たちも旅行の支度をしましょうか」

クラウディア「ええ、こうして二人で出かけようとしていると新婚旅行みたいね♪」

シルヴィア「そうね……ちゅっ♪」

クラウディア「あ……んっ♪」

………

…数時間後・高速道路…

提督「ふぅ……南行きの道路があんまり混んでいなくて助かるわ」大柄なランチア・フラミニアのシートに身体を預け、オートストラーダを快調に飛ばしてきた提督……

提督「お土産もいっぱいあるし、きっと皆も喜んでくれるわね」

…イヴェコやボルボのトレーラートラックや飛ばし気味のセダンに車線を譲り、無難にフラミニアを走らせる……ラジオは交通情報を報じるチャンネルに合わせてあり、ドライブに疲れると休憩所に入ってちょっとしたコーヒーの時間をとる…

提督「……そろそろプーリア州に入るし、タラントまではあと少しね」

提督「さてと、そろそろ行くとしましょうか」今ひとつなコーヒーを飲み終えるとカフェテリアのカウンターにカップを返し、軽く肩を回しながらランチアに乗り込んだ……

………

…しばらくして・タラント近郊…

提督「……あ、見えてきたわね」

…薄曇りの空と白い波頭が所々に見える海、そしてカーブが続く地方道路の視界の端に見えてきた小ぶりな岬……鎮守府そのものは背中に背負ったような形で控える丘陵地に隠され、道路も鎮守府の敷地を避けるよう海岸線を離れて内陸へと湾曲しているために見えないが、鎮守府のある小さな三日月湾の東端を縁取るようにして突き出している岬は道路からも見える……岬のてっぺんにはフェイズド・アレイ・レーダーのサイトが建っていて、その無骨な灰色の建物がイオニア海に出現する「深海棲艦」を油断なく見張っている…

提督「何だかんだで早かったわ……もっとも、鎮守府で艦娘の皆と会えると思えばそう悪くもないわね」

提督「……それにお腹も空いてきたし///」

…鎮守府…

ライモン「お帰りなさい、提督♪ そして新年おめでとうございます」

提督「ありがとう、ライモン……今年もよろしくね♪」鎮守府の玄関先で車を停めると、出迎えてくれたライモンに暖かいキスをする……

ドリア「あら、せっかくお留守をしていたのに……私にはキスなしですか?」

提督「まさか、して欲しい娘にはみんなしてあげる♪」

チェザーレ「おいおいアンドレア、このチェザーレを差し置いてそれはないだろう」

ドリア「ふふ、せっかくの提督を人妻好きのチェザーレに盗られてはかないませんから♪」

提督「ねぇドリア、私は人妻じゃないわよ?」

ドリア「そんなことをおっしゃってもよろしいのですか? 隣にこんなに可愛らしい奥さんがいらっしゃるのに♪」ころころと笑いながらいたずらっぽく指さす……

ライモン「もう、ドリアさん……///」

提督「それもそうだったわね……とにかく、ただいま♪」

ドリア「ええ、お帰りなさいませ♪」

チェザーレ「うむ。まずは着替えて楽にするとよかろう」

提督「ええ、そうさせてもらうわ……ライモン、着替えを手伝ってくれる?」

ライモン「は、はい///」
959 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/11(土) 01:21:19.45 ID:RaiIvtHJ0
…しばらくして・食堂…

提督「ふぅ……何だかんだ言って鎮守府も悪くないわ」

デュイリオ「ふふ、そうでしょうとも……♪」

ライモン「///」頬を赤らめてぷいと横を向いた……

提督「ええ♪」

ルチア「ワンワンッ!」

提督「あらルチア、お留守番させちゃってごめんなさいね……元気だった?」

ルチア「ワフッ……!」

提督「あらそう、良かったわねぇ♪」

…提督がくつろいだ格好に着替えて食堂にやってくると、ルチアがちぎれそうなほど勢いよく尻尾を振って駆け寄ってくる……途端にそれまでの落ち着いた様子はどこへやら、提督はルチアと一緒に暖炉の前の敷物に寝転がって白い体毛をくしけずり、お腹を見せて身体をよじるルチアをわしゃわしゃと撫でさする…

ドリア「あら、提督ったら……ルチアとじゃれるのもほどほどにしないと、お洋服に毛がついてしまいますよ?」

提督「いいのよ、どのみち普段着なんだから……あぁ、はいはい♪ お土産も持ってきてあげたわよ♪」

ルチア「ワフッ、フガフガ……♪」

提督「こらこら……そんなに焦らないの♪」手に持っていた袋から取りだしたのはとがった部分を切り落としほどの良い長さにしてある鹿の角で、表面は木目のように白い部分と茶色の部分でしま模様を帯びている……

ルチア「ワフッ……」ガリガリと音立てて角をかじる……

提督「やっぱり好きなのね……さてと」ルチアと一緒に暖炉の前で寝転がっていてついたほこりを払い、立ち上がる……

提督「……改めまして、ただいま……みんな♪」

ライモン「お帰りなさい、提督」

アッテンドーロ「姉さんも提督が戻ってきてようやく落ち着いたって所よ」

ライモン「もう、ムツィオってば……///」

ディアナ「ふふ……提督がお戻りになられて、わたくしどもは本当に嬉しく思っておりますよ」

提督「ありがとう」

レモ「ねぇねぇ……感動の再会はいいけどお腹が空いたからご飯にしよう?」

ロモロ「さんせーい♪ ディアナってば朝からずーっと支度をしてたんだから、きっとすごいご馳走だと思うの!」

チェザーレ「やれやれ、まったく食い意地の張った娘どもであるな……♪」

提督「結構なことじゃない。それじゃあ手を洗ってくるから、戻って来たら食事にしましょう」

レモ「やったぁ♪」

…昼食…

提督「これはまたずいぶんと頑張ってくれたようね?」

ディアナ「せっかく提督がお戻りなのですから……お味はいかがでしょうか?」

提督「ディアナの食事が美味しくなかったことなんてないわ♪ それと持ってきたワインだけれど、良かったら全部空けちゃっていいわよ?」

…パルマハムのスライスと半熟卵が載ったビスマルク風ピッツァに、牛すね肉をトマトソースの中でほぐれるまで煮込んだラグーなど心づくしのご馳走が並ぶ……提督が故郷の街で買ってきた地場のワインを素焼きのカップで飲みながら暖炉のはぜる音を聞いていると、窓越しに聞こえる波音とあいまってくつろいだ気分になる…

マエストラーレ「ふぅ、美味しかったわ……ちょっとリベッチオ、口に付いてるわよ」

リベッチオ「じゃあ取って?」

マエストラーレ「自分でやりなさいよ。まったく甘えん坊なんだから……」

提督「ふふ、このやり取りもいつも通りね♪」

ライモン「はい♪」

ディアナ「あとは公現祭の日にプレゼントを開けて、ご馳走をいただくといたしましょうね」

提督「そうね」

アッテンドーロ「それと休暇の間はのんびりしてたんでしょうから、その分の運動もすることね」

提督「さて、なんのことかしら?」

アッテンドーロ「……なんだったら姉さんとベッドの上で「運動」すればいいじゃない」

提督「それは言われなくても♪」
960 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/13(月) 00:59:42.46 ID:NWrq9j/u0
リベッチオ「あ、それじゃあジァポーネの提督さんが送ってきたやつで遊ぼう?」

提督「姫から?……なにか送ってきてくれたの?」

マエストラーレ「ええ。化粧品や浴衣、手拭いとか日本らしいものを一杯送って来てくれた中にあって……私たちはどう使えば良いか分からなかったけれど、トレーリやカッペリーニたちから使い方を教わったの」

提督「そうなの、カッペリーニ?」

カッペリーニ「いえ、教えたというほどでは……」

トレーリ「少し詳しいだけですから」

提督「謙遜しなくたっていいわ。それじゃあ少しやってみようかしら」

リベッチオ「やった♪」

提督「くれぐれもお手柔らかに頼むわよ?」

トレーリ「それじゃあ提督にも浴衣を着てもらいましょうか、その方が雰囲気も出るでしょうから」

提督「さっき着替えたのにまた着替えるの? 仕方ないわね……」

…数分後…

提督「さ、着替えたわよ。ちょっと冬場に着るには寒いけれど……」

…百合姫提督がクリスマスプレゼントにと送ってきた箱の中には色とりどりの浴衣も何枚か入っていて、艦娘たちはかわりばんこに袖を通してはきゃあきゃあと歓声をあげていた……慣れない手つきで提督がまとったのは白地に藍色の百合をあしらった浴衣で、すっきりしたデザインながらなかなかしゃれていた…

ライモン「提督、よく似合っています」

提督「ありがと、ライモンに言われると嬉しいわ。それでその「遊び」とやらはどこでするの?」

グレカーレ「私たちは体育館か庭でしていました……始めはここでやってみたんですが、狭くてぶつかりそうになっちゃうので」

アッチアイーオ「まったくよ、すんでの所でクリスマスツリーをひっくり返しそうになったんだから」

提督「なるほどね。まぁ今日は風もないし、そう寒くもないでしょうから庭でやるとしましょうか」

アッチアイーオ「あんまりはしゃぎ過ぎて怪我したりしないでよ?」

提督「ええ、ほどほどにするわ♪」

リベッチオ「えへへっ、負けないからね?」

…鎮守府・庭…

提督「それで、その遊びっていうのは? ……みたところネットが張ってあるわけでも、地面に線が引いてあるようでもないようだけれど」

トレーリ「はい、これにはそういった準備は必要ないですから♪」

…そういってトレーリが差し出したのは木でできた角ばった板状の道具で、クリケットのバットを薄く小さくしたように見える……板には赤い木の実と緑の葉をデザインした絵が施されていて、反対側の手には小さな黒い球に赤や緑の羽根がついたものを持っている…

提督「……木のラケット?」

カッペリーニ「そのようなものですね……これは日本の「はねつき」という古くからの遊びですよ」

提督「はねつき?」

トレーリ「はい。ルールは簡単で、バトミントンのようにこの羽根を打ち合って落としたら負けというものです」

提督「この小さな玉を落とさないようにするの? 結構難しそうね」

リベッチオ「大丈夫、提督は初めてだから手加減してあげる♪」

提督「言ってくれるわね……でも、大人しくそのお言葉に甘えさせてもらうわ」慣れない浴衣ということもあり、リベッチオの言葉に甘えることにする……

ミラベロ「ふふっ、どっちが勝つか楽しみ♪」

リボティ「勝敗は見えている気がするけれど……くすくすっ♪」

提督「もう、すぐそうやって私の事を笑いものにして……見ていなさいよ?」

リベッチオ「あははっ、提督ってば大人げないんだから♪」褐色の肌に似合う赤い梅模様の浴衣を着て、足元をサンダルで固めている…

提督「だって、ああまで言われちゃうとね……いいわ、とにかく始めましょう」

リベッチオ「了解、それじゃあ最初はかるーく行くからね♪」カンッ!

提督「ええ……はいっ!」コンッ!

961 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/19(日) 00:57:47.03 ID:dPHpy/ff0
リベッチオ「そーれ……っと!」カンッ!

提督「……っ!」カンッ!

…羽根についたムクロジの実は羽子板に当たるたびに響きの良い硬質な音を立て、どこかまだ青さの薄い冬空に緩やかな曲線を描いて打ち上がる……リベッチオも着慣れない浴衣姿のため、最初の数回は軽く打ってきたが、慣れてくるにつれて速度が上がってくる……提督も左右に打ち分けられる羽根を追い回すが、次第に足元が追いつかなくなり、地面に羽根を落としてしまった…

提督「ふぅ……これ、遊びにしては意外と大変ね……いい、リベッチオ?」

リベッチオ「ちょっと待った♪」落ちた羽根を拾い上げて続けようとする提督を制止してニヤニヤしている……

提督「なぁに?」

リベッチオ「この遊びはねぇ、落っことした方に罰があるんだって♪」

提督「罰?どんな?」

リベッチオ「んふふっ、それを今からするから……こっちに来て?」

提督「お手柔らかに頼むわね?」

リベッチオ「はぁーい♪」

提督「……マジックペンなんて持ち出してどうするの?」庭の丸テーブルに詰まれているマジックペンのセットや、使い余しのルージュに気がついた……

リベッチオ「もちろん、これで落書きするんだよっ♪」

提督「え、ちょっと……!?」

ミラベロ「ぷふっ、提督ったら可愛い♪」

ドリア「あらまぁ♪」

マエストラーレ「全くもう……リベッチオ、あんまりやり過ぎちゃダメよ。いい?」

リベッチオ「分かってまーす、っと♪」

提督「……むぅ、始めからこれが狙いだったのね」

リベッチオ「正解♪ みんな動きが良くってなかなか勝てないけど提督ならそこまで運動が得意じゃないし、背が高いから落書きのしがいもあるでしょ?」

提督「好き放題言ってくれるわね……言っておくけれど、今度は負けないわよ?」

…左頬に黒い丸のイタズラ書きをされ、威厳も何もない提督……とはいえからかってくるリベッチオに負けたままではくやしいと、テニスのようなオープンスタンスで羽子板を構え、迎え撃つ体勢をとった…

リベッチオ「ふふーん、どうなるかな……せーのっ♪」

提督「えいっ!」

リベッチオ「やっ!」

提督「はいっ!」

リベッチオ「あっ……!」地面に蹴つまずいて追いつけず、羽根を落としてしまった……

提督「ふふーん、今度は私がリベッチオに落書きする番よ♪」

リベッチオ「もう……あとちょっとで追いつけたのに、サンダルが滑ったから……」

提督「この期に及んで言い訳しない……さてと、何を描こうかしら♪」楽しげな笑みを浮かべてペンを取ったが、リベッチオの褐色の肌と黒のマジックペンを見比べてから箱に戻し、代わりに白のマジックペンを取りだしてキャップを外した……

提督「リベッチオには白が似合いそうだから……えいっ♪」

マエストラーレ「くすくすっ、リベッチオってば♪」

グレカーレ「ふふ、似合ってる似合ってる……今度からずっとそのメイクにしたら?」

リベッチオ「一体どんな……あーっ! 私が遠慮して丸だけにしてあげたのに、提督ってばこんなに描いて!」

提督「らくがきの範囲までは言われなかったもの♪ それに、イタズラ子猫みたいなリベッチオによく似合っているわ♪」

リベッチオ「むむむ、言ってくれるね……」猫のヒゲを描かれた頬を膨らませるリベッチオ……

ミラベロ「ねぇリベッチオ、私たちも遊びたいんだから代わって欲しいわ♪」

リボティ「私たちも提督にらくがきがしたいし……ね♪」

リベッチオ「はいはい、それじゃあもうひと勝負済ませたらね♪」

提督「ええ、相手になってあげる」

………

962 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/01/21(火) 00:43:21.88 ID:X8jNaqOY0
…十数分後…

提督「ぜぇ……はぁ……ち、ちょっと待って……!」

リボティ「戦場に「待った」があると思う?」

提督「だからって……」

ミラベロ「しゃべっていると息を使っちゃうわよ♪」

提督「はぁ、はぁ……!」

…道場破りのように次から次へとはねつきの相手を求めてくる艦娘たち……複数人で遊べるようにと気を利かせて、多めに羽子板を入れておいてくれた百合姫提督の気づかいが今はうらめしい……提督が追いついてどうにか打ち返しても、いじわるな娘は返す羽根を左右に振ってくるので息は上がり、浴衣もすっかりはだけて汗を垂らしている…

ミラベロ「はい、提督の負け♪」

提督「はぁ、ひぃ……なんで……休暇明け早々に……こんな……息を……切らさなきゃならないのよ……」

リボティ「くすくすっ、提督が運動不足だからじゃないかな♪」

提督「……」言い返したくてもその気力すらなく、手の甲で汗を拭いながら息を整えている……

ミラベロ「ふふっ、それじゃあお待ちかねのらくがきね♪」浴衣の裾をめくるとマジックのキャップを外し、汗ばんだ肉付きのいいふとももに何か描き始めた……

提督「あ、ちょっと……!」

リボティ「動いちゃだめだよ、提督♪」

提督「わ、分かってはいるけれど……んっ///」冷やっこいスポンジ状のペン先が肌を撫で、くすぐったさに身じろぎしそうになる……

ミラベロ「はい、書けた♪」

提督「もう、一体何を……って、もうっ///」

…提督が太腿を見おろすと、そこには回数を数えるときに使う縦線が書き込んである……本来それだけなら何と言うこともない記号だが、それが地肌に書かれているとなると意味深な想像もできなくはない…

リベッチオ「うわぁ、提督ってばえっち♪」

提督「わ、私が書いた訳じゃないでしょうが……それより、そろそろ休憩させて……」

デュイリオ「あらあら、提督は私みたいなおばあちゃんとは羽根つきなんてしたくないのですね……?」

エウジェニオ「私にも落書き……じゃなかった、はねつきをさせて頂戴よ♪」

提督「……だったらお互いですればいいじゃない」

チェザーレ「ははは、それではハドリアヌス帝のようではないか♪ 皆、提督とジァポーネの遊びがしたいのだ」

提督「どうせ私「と」じゃなくて、私「で」でしょうが……まったく」あちこちに丸やバツが描かれた道化師のような顔のまま、眉をひそめた……

エウジェニオ「まぁまぁ♪ さ、相手をしてもらうわ♪」

提督「むぅ、ずいぶんとご機嫌だこと……でも、もしかしたら私が勝つことだってあり得るかもしれないわよ?」

エウジェニオ「あら、その時は好きなようにらくがきしていいわよ……どこでも、ね♪」耳元に顔を寄せ、意味深にささやいた……

提督「もう……いくわよ///」

エウジェニオ「ええ♪」

提督「えいっ!」

エウジェニオ「はいはい♪」

提督「やあっ!」

エウジェニオ「まぁ怖い♪」

提督「この……っ!」

エウジェニオ「ふふふ、熱くなっちゃって……それ♪」勢いよくスマッシュを打ち込んでくるかと思いきや、コンッ……と軽く落としてきた……

提督「あっ……!」

エウジェニオ「提督の負けね♪ それじゃあ落書きさせてもらうとしようかしら♪」

提督「もう好きなだけ描いて……描けるところがまだ残っているなら、だけれど……」

エウジェニオ「ふふ、その可愛らしいお顔はともかく、身体にはまだまだ余白がいっぱいあるわよ……♪」さわさわと太腿を撫で上げつつ、濃いボルドー色のルージュを手に取った……

提督「ん、あっ……///」

エウジェニオ「ほぉら、書けたわ♪」提督の太腿、それもかなり際どいところにハートマーク付きのサインを書いた……

提督「も、もう……っ///」
963 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/02/02(日) 00:35:58.00 ID:OS6oHsRS0
…数十分後…

提督「はひ……ふぅ……もうだめ、降参……」

…落書きまみれで息も絶え絶えの提督が羽子板をテーブルに置き、尻もちをつくようにして庭の椅子に座り込んだ……身体は落書きと汗でひどいことになっており、浴衣もほとんどはだけてしまっているが、それを直す気力も起きないほどくたくたに疲れ切っている…

エウジェニオ「あら、だらしないのね♪」

提督「私は一人で貴女たちの相手をさせられているのよ……おかげでこんなことになっちゃったし……」

エウジェニオ「ふふ、たまにはそういう露骨にいやらしいのもそそるわ……♪」

提督「悪いけれど、もう相手にしたくないほど疲れているの……はぁ、こんなに息を切らしたのなんて士官学校以来よ……」

ライモン「……あの、提督」

提督「あら、ライモン……どうかした?」

ライモン「いえ、その……///」

提督「浴衣、似合っているわね。可愛いわ♪ 良かったら隣に座る?」

ライモン「はい、ではお言葉に甘えて……ですが、そうではなくて……///」

提督「ええ、いらっしゃい……それにしてもみんなして私の事を振り回して、おかげですっかり疲れちゃったわ。ねぇライモン、あとで一緒にお風呂に行きましょうか?」

ライモン「そうですね、ぜひ……」

提督「良く考えたら休暇に入る前からずっとだものね……本当に久しぶり♪」

ライモン「ええ、それもそうですが……その……///」

提督「……ねえ、もしかして」ライモンが遠慮がちに見せてきた羽子板に、思わず腰が引けてしまう……

ライモン「いえ、もし提督がお嫌でなければ……なのですけれど……///」

提督「ライモンよ、お前もか……ええ、分かったわ。こうなったら毒を食らわば皿まで、付き合ってあげるわ」

ライモン「すみません、わたしったらわがままで……」

提督「貴女のわがままなら可愛いものよ……ただしちょっとだけよ?」少し恥ずかしげな笑みを浮かべたライモンにはかなわないと、提督はレモネードを飲み干してよろよろと立ち上がった……

提督「……そーれっ」

ライモン「はいっ」

提督「えいっ」

ライモン「それでは……はっ!」

提督「えっ、早い……っ!?」

…はじめは軽いラリーを続けてくれたライモンに、てっきり羽根つきを牧歌的に楽しみたいだけかと思っていたが、突如として打ち込まれた切れ味鋭いサーブに手も脚も出ず、あっという間に羽根を落っことしてしまった提督…

ライモン「すみません、提督……でも、わたしの勝ちですね///」

提督「ええ。でも、まさかいきなりあんな強烈なサーブを打ち込んで来るとは思わなかったわ……」

ライモン「その点はごめんなさい、提督……」

提督「いいのよ。それでライモンは、私をキャンバスにしてどんな落書きをするのかしら?」

ライモン「そ、それは書き終わるまで秘密です……///」ガーデンテーブルの上に置いてある口紅を取ってしゃがみこむと、すでにあれこれ書かれている太腿に上書きするように何かを書き付けた……

提督「書き終わった?」

ライモン「えぇ、はい///」

提督「そう、それじゃあ引き上げるとしましょうか♪ みんなもほどほどにするのよ?」

リベッチオ「了解……くすくすっ♪」

エウジェニオ「ええ、そうするわよ♪」

デュイリオ「うふふっ、存じ上げております♪」

ライモン「///」

提督「……ねぇライモン、いったい何を書いたの?」

エウジェニオ「あら、それをライモンドに聞くのは野暮ってものよ……お風呂にでも行って確かめてくることね♪」

提督「それもそうね、それじゃあ汗と貴女たちの落書きを流してくるわ……」
964 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/02/09(日) 00:26:02.19 ID:t1g20Kr60
…大浴場…

提督「ここでお風呂に入るのも久しぶり……広いし豪華絢爛で、うちにもこんなお風呂があればいいのに」

ライモン「この大浴場、提督のお家の半分くらいはありますものね」

提督「そうね。それにしても私が運動が苦手だからってみんなして……まったくもう」全身に書かれた文字やらハートマークやらを見おろして苦笑交じりのため息をついた……

ライモン「……全身らくがきまみれですね///」

提督「本当よ、鎮守府に戻ってそうそうにこんな目に合わされる提督なんてそうはいないわ……ふふっ♪」

ライモン「どうかしましたか?」

提督「いえ、ね……みんなにこれだけ親しくしてもらえる私は果報者だと思ったの。ライモン、クレンジングオイルを取って♪」

ライモン「はい///」

…ルージュやマジックペンで書かれたらくがきをクレンジングオイルで落とす姿を後ろから眺めているライモン……提督の柔らかなクリーム色をした肌が湯気でほのかに桃色を帯び、クレンジングオイルで艶めいて見える……結い上げた髪が少しほつれて先端から雫がしたたり、甘いクレンジングオイルの香りがふっと鼻腔をくすぐる…

ライモン「……っ///」

提督「ライモン、後ろをお願いできる?」

ライモン「あ、はい///」

提督「それにしてもよくもまあこう色々と書いてくれて……まったく」鏡に映る文字を読みながら、半分あきれ半分おかしがっている提督……

ライモン「すみません、わたしも落書きしたので同じですね……」

提督「いいのよ。どうせだから読んでみるとしましょうか♪」

…クレンジングオイルで円を描くように洗い落としながら、それぞれの落書きを読んでいく提督……たいていは冗談めいたものばかりだが、中にはかなり際どいものもある…

提督「も、もう……こんなことを書いて///」

ライモン「///」

提督「まったく「奥までとろとろ」だの「艦隊のご褒美」だの……そういうことを書いた娘には今度「お返し」してあげないと///」

ライモン「そ、そうですね……///」

…提督が洗い進めて行くうちに、ライモンが書いた落書きまでやってきた……見おろしただけではよく見えなかったが、いまは鏡文字とはいえはっきり見える…

提督「これはライモンの字ね? えーと「互いに触れあった思い出を忘れないで」と……なるほど♪」

ライモン「え、えぇと……その///」

提督「ライモン」

ライモン「は、はいっ///」

提督「文字は消えても思い出は消えないのよ……それもこんな素敵な思い出は、ね♪」背中を流すのを手伝っていたライモンの手首をつかむとぐっと引き寄せ、顔を寄せた……

ライモン「提督……か、顔が近いです///」

提督「ふふっ♪ あれだけ愛し合ってきた仲なのにまだ恥ずかしがるなんて可愛い♪」

ライモン「それは言わないで下さい……///」

提督「はいはい♪ ……でもこれは洗い落とすのがもったいないわね、しばらく書いたままにしておきましょうか」

ライモン「だ、だめです///」

提督「あら残念♪ それじゃあライモンが洗ってくれる?」

ライモン「えっ?」

提督「ふふふっ、だってライモンが書いたんだもの……ほら、洗ってくれるでしょう?」腰かけの上でくるりとライモンの方に向き直ると誘惑するように両の手のひらで脚を広げ、誘うような笑みを浮かべた……

ライモン「は、はい///」クレンジングオイルを手に取り、シャワーのお湯で少しゆるめてから提督の肌に重ね合わせた……

提督「ライモンの手、気持ちいいわ……こういうのも久しぶりね♪」

ライモン「は、恥ずかしい事を言わないで下さい///」

提督「ふふ、ライモンったら耳まで真っ赤にして♪」耳たぶを甘噛みしながらライモンの手を下腹部に導いた……

………

965 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/02/19(水) 01:13:47.96 ID:Gvfjpt7x0
…数日後・公現祭(一月六日)の朝…

提督「みんな、公現祭おめでとう♪」

艦娘一同「「おめでとうございます!」」

提督「さて……今日は公現祭ということで、明日からは鎮守府も平常体勢に戻ります。みんな今日は一日楽しんでちょうだいね♪」

一同「「はい!」」

ルチア「ワンッ!」

提督「よろしい♪ 海外旅行組も今日帰ってくるはずだから、お土産にも期待するとしましょう♪」

アッチアイーオ「提督、タラントからのバスが来たわ」

提督「了解、それじゃあ出迎えにいかないと」

…鎮守府・管理棟前…

提督「公現祭の日なのにご苦労様……良かったら持って行って?」最寄りの飛行場から艦娘たちを乗せてきた運転士の下士官たちに、地元で買い込んでおいたチョコレートやアメ玉の詰め合わせ袋を渡す……

下士官「は、済みません!」

下士官B「これはわざわざお気遣いをいただいて」

下士官C「ごちそうさまです!」

提督「せっかくの公現祭ですもの、ね?」いたずらっぽくウィンクを投げた……

下士官C「少将も良い公現祭になりますよう」

提督「ええ、ありがとう。あなたたちも楽しい公現祭をね♪」提督がねぎらいの言葉をかけている間にも、大荷物を抱え、あるいは日焼けした顔に満面の笑みを浮かべた艦娘たちがぞくぞくとバスから降りてくる……

ペルラ「ただいま戻りました、提督……♪」ピンクパールのような色をしたぷるぷるの唇が提督の頬に優しく触れる……

提督「お帰りなさい、マダガスカルはどうだった? アトランティスは見つかった?」(※大戦中、中型潜「ペルラ」はマダガスカル沖でドイツの仮装巡洋艦「アトランティス」等と会合している)

ペルラ「はい、大変に面白い場所でした」

ウエビ・セベリ「ただいま戻りマシタ、提督!」

ゴンダール「アフリカのお土産もたくさんアリマス♪」エチオピアやジブチなど、AOI(旧イタリア領東アフリカ)方面に出かけていた艦娘たちは褐色や黒色の肌に香ばしいような健康的な匂いを漂わせている……

提督「まぁ、わざわざありがとう♪」

…提督がミニバスから降りてくる艦娘たちを出迎えてキスしたり抱きしめたりしていると、チンクエチェント(フィアット500)の空冷エンジンが立てる乾いた音が響いてきた……正門のゲートが開かれると真っ赤なチンクエチェントが走ってきて多少ぎこちないブレーキをかけると、提督の脇で停まるか停まらないかといううちにリットリオが運転席のドアを開け、そのまま提督の胸に飛び込んできた…

提督「……っとと」

リットリオ「提督、ただいま戻りましたっ♪」

提督「んふ……リットリオ、お帰りなさい……休暇は楽しかった?」背の高い方である提督も大柄なリットリオに抱きつかれては胸元に顔が埋まり、たっぷりと胸の谷間で呼吸をすることになった……

ヴィットリオ・ヴェネト「はい、とても楽しかったです♪」

ローマ「素晴らしかったですよ、姉様の運転はともかくですが」

リットリオ「もうっ、それは言わない約束でしょ♪」

提督「とにかく無事で何よりだわ……積もる話もあるでしょうけれど、まずはチンクエチェントを車庫に入れていらっしゃい」

リットリオ「はいっ♪」

…しばらくして・食堂…

提督「さてと、これでみんな揃ったわね♪」休暇中に怪我や病気をすることもなく、元気一杯で戻って来た艦娘たちを見てほっと一安心した提督……

リベッチオ「それじゃあクリスマスプレゼントを開けてもいいの?」

(※イタリアではクリスマスプレゼントを開けるのは公現祭の日。持ってくるのもサンタクロースではなく魔女のベファーナということになっている)

提督「ええ、許可します♪」

リベッチオ「やったぁ!」

…おやつのビスケットに飛びつく犬のようにクリスマスツリーの下に置かれている自分宛のプレゼントに押しかける駆逐艦や中型潜クラスの艦娘たちと、その様子を微笑ましく眺めている年かさの艦娘たちと提督…

チェザーレ「ははは、なんとも微笑ましい眺めであるな」

提督「チェザーレもプレゼントを取りに行ったら?」

チェザーレ「なぁに、チェザーレは後からでも構わぬ……しかし皆も嬉しそうだ」

提督「それだけでもお財布をはたいたかいがあるというものね♪」
966 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/03/02(日) 02:00:35.38 ID:gtZKY0WA0
リベッチオ「わぁ、素敵なバレッタとスカーフ! ありがとう、提督♪」

アッチアイーオ「私のはマフラーに手袋ね」

提督「リベッチオはいつも元気に走り回って髪が大変でしょうから、まとめられるようにね……アッチアイーオは哨戒の時に寒いでしょうから、少しでも暖かいように」

アラジ「あ、靴下にセーターだ♪」

提督「貴女だって出撃が多いのだから、替えのお洋服も多い方がいいでしょう?」

ペルラ「あら、このハンドバッグは……」

提督「以前、コートと合わせたいけれど値段が折り合わないって言っていたでしょう? だから私からプレゼント♪」

ペルラ「覚えていてくれたのですね……♪」小さな口にえくぼを浮かべると「ちゅっ♪」とほっぺたにキスをした……

提督「ふふっ、いまのキスだけでお釣りがくるくらいだわ♪」

…あちこちにほどいたリボンや包装紙が散らかり、きゃあきゃあと楽しげな歓声が響き渡る……ルチアもそんな気分を察してか尻尾を振りながら駆け回り、提督の足元にまとわりついてはまた走って行く…

提督「それにしても良かったわ。みんなが喜んでくれて」

チェザーレ「きっと礼代わりの夜這いが続いて、明日は腰が立たなくなるであろうな♪」

提督「ふふっ、望む所よ」

チェザーレ「ほほう、ずいぶんと余裕ではないか」

提督「ええ、もとより明日は執務なんてしないつもりでいたもの♪」ちろりと舌先を出していたずらっぽい表情をしてみせた……

………

…翌朝…

デルフィーノ「おはようございます、提督っ」

提督「あ゛ー……お゛はよ゛う、デルフィーノ……」

デルフィーノ「うわわっ!? 提督ってば声がすっかりしゃがれて、一体どうしたんですか……あっ///」

提督「お゛ほん……見ての通りよ……」

デルフィーノ「うわぁ///」

アッチアイーオ「おはよう、提督……って、休暇明け早々からずいぶんとお楽しみだったようね?」

提督「楽しかったには楽しかったけれど、それ以上にくたくた……歯を磨いてくるから、甘いミルクコーヒーを持ってきてもらえる?」

…二日酔いのように頭を抱え、数人の艦娘たちが寝息を立てている天蓋付きベッドからよろめきながら這い出てきた提督……脱ぎ散らかされた服を踏まないようステップをとるようにして歩きながら、椅子の背にかけてあったナイトガウンをひっかけて化粧室に入っていった…

アッチアイーオ「前にも似たような事があったけれど、どいつもこいつも本当に色ボケばっかりね……シーツごと引きずり出してやろうかしら」

デルフィーノ「それだとシーツが破れちゃいますよ……」

アッチアイーオ「私だってその程度のことは分かるわ。そのくらい腹が立つってことよ」

エウジェニオ「だったら意地を張らないで素直にお呼ばれしておけばよかったじゃない……♪」色白な裸身をさらけ出しながらベッドの上で起き上がり、ものうげな動作で髪をかき上げる……

アッチアイーオ「私は十把一絡げで提督とベッドに入るなんてごめんだわ」

ガリバルディ「……とっかえひっかえで愉しむのもたまには良いものだけどね?」起き上がってエウジェニオを抱き寄せると、にんまりと笑みを浮かべた……

アッチアイーオ「くだらない事を言ってないでとっとと出ていってくれない? どうせシーツもぐちゃぐちゃでしょうし、早いうちに洗濯をかけたいから」

ガリバルディ「だ、そうだ」

エウジェニオ「ふふっ、この余韻が良いのに……残念ね♪」

アッチアイーオ「ざれごとはいいから早くしてちょうだい、ここはナポリあたりの連れ込み宿じゃないのよ」

エウジェニオ「ふふふ、せっかちなんだから……それより二人とも、良かったら片付けの前に私と愛を育んでみない?」腰に手を当ててむすっとしているアッチアイーオと、その後ろで恥ずかしそうに顔を赤らめているデルフィーノに向かってしなをつくってみせた……

デルフィーノ「あう、それは……その……///」

エウジェニオ「いいのよ、どうせシーツも洗うんでしょう? ……それに、私は貴女たちのことだって抱きたいと思っているわよ?」

アッチアイーオ「……いいからさっさと出ていって!」からかうような調子で誘ってくるエウジェニオにしびれを切らし、床に落ちていた枕を投げつけた……

エウジェニオ「ふふ、悪かったわ♪」たやすく枕を受けとめると小さく肩をすくめ、優雅にベッドから降りた……

ガリバルディ「ああ、まったくだ……それとデルフィーノ、もし良かったら後で私の部屋においで♪」

デルフィーノ「あ……えぇと、はい……///」

アッチアイーオ「まったくもう……!」
967 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/03/10(月) 01:18:12.11 ID:NlCZEgO/0
…しばらくして…

提督「ふぅ、さっぱりしたわ……♪」

アッチアイーオ「朝からお風呂だなんてぜいたくなことね」

提督「そう怒らないの♪ ……気象通報と管区司令部からの通達は?」

アッチアイーオ「気象通報はここよ。天候は晴、海況凪。風は北西からで風力は二。視程は十浬以上も海面にわずかなもや」

提督「風があるならじきに晴れるわね。哨戒組からの報告は?」

アッチアイーオ「今日はフルットをはじめ中型潜八隻が哨戒にあたっていたけれど敵影はなし」

提督「了解」

アッチアイーオ「あとは鎮守府宛に届いたクリスマスプレゼントへのお礼状書きね」

提督「私の留守中にいろいろ届いたそうだものね。とりあえず何が来たのかちゃんと見てくるわ」

アッチアイーオ「ええ」

…厨房…

ディアナ「エリトレア、ニンジンを取ってきて下さいな」

エリトレア「はいっ、すぐ持ってきます!」

ディアナ「よしなに」

…朝食が終わるとすぐ昼食の仕込み、昼食が済めば夕食と、一日中おいしそうな料理の匂いとにぎやかな音の絶えたことがない厨房……ディアナとエリトレア、それに手伝いの食事当番が交代でにぎやかにやっている……提督が顔を出すと、腕まくりをして髪をまとめあげたディアナが手際よく切り盛りしている…

提督「ディアナ、いつもお疲れさま」

ディアナ「あら、提督……どうかなさいましたか?」

提督「ええ。なんでも鎮守府へのクリスマスプレゼントで調理器具をもらったとかなんとか……誰がくれたにせよ、ちゃんとお礼状を書かないといけないから」

ディアナ「さようでございましたか……いただきましたのはこちらの品で、ちょうどお伝えしようと思っていたところでございます」まだ封を切らず、きちんと並べてある……

提督「助かるわ。えーと……」大きな調理器具の箱と、几帳面なディアナがきちんと箱に添えて取っておいたメッセージカードを確かめる……

提督「マリーからル・クルーゼの大鍋……前にもらったのはオレンジ色だったけれど、今度は黄色ね」取り落としそうなほど重いほうろう加工の鉄鍋は分厚く冷めにくい頑丈なもので、冬のあいだ暖炉にでも鎮座させてシチューか何かを煮込むのにふさわしい風格を帯びている……

ディアナ「あのお方は常々フランス製の良さをふれ回っておりますから」

提督「ふふっ、その通りね……♪」

…そのころ・トゥーロン…

エクレール提督「くしゅ……んっ!」

リシュリュー「おや、お風邪ですか?」

エクレール提督「ノン、きっと誰かが噂でもしているのですわ……それよりクリスマス休暇は楽しめまして?」

リシュリュー「ウィ、充実したものでした。提督も帰省をなさったそうですが、ご実家はいかがでしたか?」

エクレール提督「……実家は相変わらずでしたわ。ここからそう遠いわけでもありませんし、特に変わったこともありませんでしたわね」

リシュリュー「おや、そういえばそうでした……提督のアクセントを聞いていると、ついプロヴァンス出身であることを忘れてしまいます」

エクレール提督「……っ、わたくしがプロヴァンス生まれかどうかは関係ないでしょう///」

リシュリュー「ええ、ごもっともで」

エクレール提督「まったく。まあ気ぜわしいこともなく、のんきなものでしたわ……」

………

…年の瀬・エクレール提督の実家…

エクレール提督「それにしても、相変わらずの田舎ですわね……」

…1950年代の発表時には「宇宙船のよう」とまで表された先進的な構造とデザインで世界の度胆を抜き、その後も長く活躍した愛車の「シトロエンDS19」を拭きながら小さくため息をついた……久々の帰省になったプロヴァンスの実家は気ぜわしいパリの空気を知っているエクレール提督からすると少しのんきすぎるくらいのどかな空気が漂っていて、磨き上げているシトロエンDSの隣にちょこんと停めてある家族の車……小さな灰色の2CV(ドゥシュヴォア)からも田舎らしさが漂ってくる…

エクレール提督「でも、きっとこの家も百年はこうして建ち続けていたのですわね……」納屋に充満している乾いたわらの香ばしい匂いに懐かしさを覚えながら、黒塗りのシトロエンに仕上げのワックスをかける……

エクレール提督の母「ほれマリー、お茶が入ったから飲みにおいで?」のんびりしたプロヴァンス訛りが母屋の方から聞こえてくる……

エクレール提督「ええ、すぐ行きますわ!」

エクレール提督「……まぁ、たまにはこのような雰囲気も悪くありませんわね」
968 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/03/20(木) 01:14:01.56 ID:wUSGFgIf0
…エクレール家・居間…

エクレール母「ほら、たんとおあがり?」

エクレール提督「ええ」

エクレール父「いや、お前が帰ってきてくれて嬉しいよ……今年は葡萄も良かったし、トリュフも結構収穫があったんだ」

エクレール提督「それは何よりですわね」

エクレール父「ああ、今年はいい年越しが過ごせるよ」

…数百年の風雪に耐えてきたエクレール家の暖かな居間でコーヒーとブリオッシュをお供にゆったりと過ごす一家……いつもは少し気取った雰囲気を漂わせているエクレール提督も、いまは少し気を抜いているように見える…

エクレール父「……それにしてもだ、まさかうちの娘が海軍士官とはな」

エクレール提督「その話は耳にたこができるほど聞きましたわ」

エクレール母「ほんにねぇ、しゃべる言葉もすっかり都会者みたいになって……」

エクレール提督「パリでプロヴァンス言葉なんて使ったら小馬鹿にされてしまいますもの」

エクレール父「やれやれ、最近の若いもんは口を開けばパリ、パリ、パリだ……あんなよそよそしい町のどこがいいんだか分からんよ」

エクレール提督「海軍省にいたのですから仕方ありませんわ」

エクレール母「まぁまぁ。父さんは口でこそこんなだけど、おまえが官報やル・モンドの記事になるたびにペタンク友達に自慢して回っているんだから」

(※ペタンク…目標になる球に向けてチーム分けされた双方が交互にボールを投げて目標に近い方が点を取る、カーリングの球技版。プロヴァンスなどで盛ん)

エクレール父「自慢してるわけじゃないさ。ただアンリやジャンの野郎が「お前の娘はどうしてる?」って言うから……」

エクレール提督「まったく……この調子では何を食べたとか、何を買ったかまでふれ回っていそうですわね」

エクレール父「そんなことはしちゃいないよ……それよりマリー、ヴォークランのせがれがそろそろ身を固めたいらしいんだが……」

エクレール提督「お断りですわ」

エクレール母「マリーや、せめて顔を見たうえで断るとかできないものかい?」

エクレール提督「これまで何度も言っているとおり、顔のよしあしなど問題ではないと言ったはずですわ」

エクレール父「とはいえ、いずれはお前もうちの葡萄畑や土地を継がなきゃならん……女だけで、ってのは難しいだろう」

エクレール提督「もしそうなったら小作人を雇いますもの」

エクレール母「だけどねぇ……女同士で結婚なんていうのは教会でも認めちゃくれないんだよ?」

エクレール提督「教会に認めてもらうために結婚するわけではありませんわ!」

エクレール母「そりゃあそうだけども……」

エクレール提督「とにかく、わたくしはわたくしの好きな人間と結婚いたします。お父様とお母様があれこれと気を使ったり、どこかの農家の息子をカタログにして持ってくる必要はありませんわ」

エクレール母「お前がそこまで言うなら無理にとは言わないよ……だけどねぇ」

エクレール父「……分かったよ、おれも付き合い上そう言っただけだからな。ヴォークランのやつには断りを入れておくさ」

エクレール提督「申し訳ありませんわ」

エクレール父「親にわびを言う事なんぞないさ。他人様にはかけられない迷惑をかけていいのが家族なんだからな」

エクレール提督「ええ、そうですわね」

エクレール父「そうとも。それより前の休暇の時にくれたセーター。ありゃあ暖かくて助かるよ……今年の冬はめっぽう寒いからな」

エクレール母「あたしに買ってきてくれた靴下も役に立っているよ」

エクレール提督「それは何よりですわ」

エクレール父「ところで今年のクリスマス休暇は公現祭までいられるのかい?」

エクレール提督「残念ながら今年は難しいですわ。先任提督にお願いをして、どうにか四日までは伸ばしてもらえたのですけれど……」

エクレール母「オー・ラ・ラ(おやまあ)……それじゃあ今年はロワイヨームを一緒に食べられないのかい」

(※ガレット・デ・ロワ…「王様のお菓子」の意。王冠の飾りをつけたパイに陶器の小さな人形を一つ入れ、切った中から「当たり」のひと切れを取ったものがその年の「王様」になるという縁起物のお菓子。プロヴァンスではオレンジの香りを効かせたブリオッシュ生地で作られ、名前も「ロワイヨーム」と異なる)

エクレール提督「ええ……」

エクレール父「仕方ないさ。それじゃあおっかあにとびきりでっかいのを焼いてもらって、鎮守府で軍艦の娘たちと食べることにすりゃあいい」

エクレール母「そうだね、あたしが美味しいのを焼いてあげるから基地に持ってお行き」

エクレール提督「ええ、そうすることにいたしますわ」
969 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/03/29(土) 01:21:47.39 ID:kzYhyWdq0
…夕食時…

エクレール母「ほら、もっと食べないと……そんなにやせこけて、あたしゃ心配になっちまうよ」

エクレール提督「適正体重を維持しているだけですわ」

エクレール父「そう言わずにもうちょっと食べた方が良いぞ、せっかくの手料理なんだしな」

エクレール提督「……それはそうですわね」

…プロヴァンスとはいえ寒い冬の夜、暖炉が心地よく室内を暖める中で食卓を囲むエクレール家……時間をかけてゆっくり煮込んだ野ウサギの煮物やアイオリソースをたっぷりつけた蒸し野菜など、素朴な材料にもかかわらずハーブや香草で驚くほどの味わい深さがある…

エクレール提督「たくさんいただきましたわ……ごちそうさま」

エクレール母「久しぶりの家の味だったろう?」

エクレール提督「ええ、懐かしい味でしたわ」

エクレール父「良かったな……さて、おれはアブサン(※ニガヨモギのリキュール)でも飲るとするか」独特の匂いがする煙草「ジターヌ(ジタン)」に火を付けると、小さなグラスに綺麗な黄緑色のリキュールを注いだ……

エクレール提督「お父様は相変わらずですわね」

エクレール父「こいつはプロヴァンス人の魂だからな」自慢げに鼻をうごめかし、小さいグラスをつまみ上げるようにして口元に持っていくとちびちびと舐めるようにすすった……

エクレール提督「わたくしはコニャックにしておきますわ」

エクレール父「ああ、好きな物を飲めばいいさ……おっかあ、マリーにグラスを出してやれ」

エクレール母「はいはい」

エクレール提督「お母さまは座っていて下さいまし、自分でできますから」

エクレール母「そうかい?」

エクレール提督「ええ……よかったらお母さまも少し召し上がる?」

エクレール「そうだねぇ、じゃああたしも一杯だけもらおうかしらね」

エクレール提督「分かりましたわ」

………

…数日後…

エクレール提督「それでは、わたくしは鎮守府に戻りますわ……ごきげんよう」

エクレール父「達者でな」

エクレール母「体調には気をつけるんだよ? たまには手紙をちょうだいね?」

エクレール提督「ええ、分かっておりますわ。それでは」

…普段はパリジェンヌを気取っているエクレール提督も庭先で家族に見送られて車に乗り込むとなると、古めかしい家や変わり映えのしない畑、なだらかなプロヴァンスの野山に離れがたいものを感じる……そうしたノスタルジーを振りきるように制帽をかぶり直すとDS19に乗り込み、停車時には姿勢を低くするハイドロニューマチック(油圧制御)の車高調整装置を走行状態に入れてアクセルを踏んだ…

エクレール提督「お父様もお母様も、いつの間にかシワと白髪が増えておりましたわね……」バックミラー越しに小さくなる両親の姿をちらりと眺めると、胸に感慨深いものが流れた……

エクレール提督「……家族を心配させないためにも、わたくしはしっかりしないといけませんわね」

エクレール提督「それにしてもこんなにたくさんのお土産を、まったく……」口が酸っぱくなるほど「いらない」と言っても、あれこれと持たせてくる親心に苦笑いを浮かべる……

エクレール提督「まあ、鎮守府の娘たちに分ければ良いだけのことですわね」

………



エクレール提督「……ともあれ、貴女たちが喜んでくれて何よりですわ」

リシュリュー「それはもう、コマンダン(司令官)のご実家からいただいたさまざまなものをむげに扱うようなことはいたしません」

エクレール提督「皮肉で言っておりますの?」

リシュリュー「ノン、とんでもございません……気取らないプロヴァンスの素朴なお土産、実に結構なものでございます」

エクレール提督「……素直に賛辞として受け取っておくことにいたしますわ」

リシュリュー「ウィ、それがよろしいかと」

エクレール提督「ええ……では、そろそろガレット・デ・ロワを切り分けに参りましょうか。ジャンヌたちも待ちくたびれていることでしょうし」

リシュリュー「お供いたします」
970 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/04/07(月) 01:35:19.70 ID:CgmZEvqc0
………



ディアナ「昼の献立はもう決めてしまいましたが、夕食はフランス料理になさいますか?」

提督「いいえ。マリーの実家でごちそうになったプロヴァンス料理も悪くはなかったけれど素朴すぎたし、かといってパリで食べた料理は高くて目が回りそうだったから……やっぱりイタリア料理の方が断然良いわ」

ディアナ「ふふ、カヴールには聞かせられませんね?」

提督「カヴールはフランス通だものね」

ディアナ「しかし、フランスをはじめドイツ、日本、アメリカ……ここの娘たちも色々な場所と縁がございますね」

提督「そうね……せっかくだし、私も手伝うわ」

ディアナ「よしなに」

…昼時…

提督「……良かったらもう少しどう?」

ゴリツィア「ではもう半分ほど……」

ポーラ「う〜ん、これは飲み口のいい赤ですねぇ♪」

提督「私の実家があるコムーネで地元の小さな醸造所が作っているテーブルワインだけれど……こんどのは去年のだけれど案外いいでしょう?」

ザラ「まだ少し若いですが、渋みが少なくて合わせやすい良いワインです」

提督「ね? 赤にしては軽いし、ほどよく飲めるわよね♪」

…軽めの昼食を済ませ、暖かな食堂でチーズやオリーヴの瓶詰め、サラミをつまみながらワインをちびちびすすっている……デュイリオのカラスは止まり木で鶏肉の切れ端やクラッカーの欠片をついばみ、ルチアは暖炉の前の敷物に寝そべって鹿の角をガリガリと噛んでいる…

フィウメ「これでクリスマス休暇も終わりですか」

提督「ええ……とはいえクリスマス休暇を取らないで後ろに回した組がいるわけだし、今度はその娘たちが出かけるわけね」

ボルツァーノ「また鎮守府の半分近くがいなくなってしまいますね」

提督「まぁ、一斉に休暇を取るのは無理だったし……私としてもチェザーレやディアナたちがクリスマス時を外してくれて助かったわ」

チェザーレ「……ふむ、しからば身体で礼をしていただこうか♪」後ろからぬっと姿を現し、肩に手をかける……

提督「もう、さすがに勘弁して♪」

チェザーレ「そこまで言うのならば仕方あるまい」

提督「ともかく、気兼ねすることなんてないのだから楽しんできてもらいたいわ」

ザラ「そうですね」

提督「ええ」

ルチア「……ワフッ」シルヴィアがくれた裁断した鹿の角をガリガリとかじって楽しんでいたルチアだったが満足したらしく、かじりかけの角を食堂の片隅にある定位置に片付けると、提督の足元までとことこと歩いてきて軽く吠えた……

提督「あら、ルチア……お散歩でも行く?」

ルチア「ワンッ♪」

提督「はいはい、それじゃあ支度をするわね♪」

…鎮守府・庭…

提督「うっ……まだまだ春は遠いようね」ロングコートに手袋を取ってきたが、それでも吹き付ける海風はぴりっと冷たい……自前の毛皮を着ているルチアは寒くもないらしく大はしゃぎだが、提督は思わず身体をすくめた……

アラジ「おーい、提督っ♪」

提督「ルチアと同じくらい元気一杯な娘があんなところにもいたわ……アラジ、寒くないの?」

アラジ「寒い? 動いていれば身体が暖まってくるし、寒くなんてないよ♪」イタリア潜で最も多くの出撃をこなしたアラジは活発な性格で、散歩中の提督とルチアを見かけると跳ねるような駆け足でやってきた……

提督「さすがね……とはいえ風邪をひいたりしないように注意するのよ?」

アラジ「了解。ルチア、一緒に走ろうか♪」

ルチア「ワンワンッ!」アラジが浜辺で拾った木の枝を手に駆け出すと、それに続いて走り出すルチア……敷地内の散歩ではたいていリード(つなぎひも)を付けていないので、たちまち白い毛をひるがえし全速で疾駆しはじめた……

提督「若いわねぇ……」

971 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/04/18(金) 01:19:05.32 ID:NZ5h/yaO0
デュイリオ「あらあら、提督だってまだまだお若いでしょうに♪」口元を手で押さえ、ころころと笑うデュイリオ……

提督「若いと言ってもあの元気にはかなわないわ……早く戻って温かいココアでも飲みたい気分よ」

デュイリオ「ではエリトレアにそう言っておくといたしましょう♪」

提督「ええ、お願いね」

…四季折々の花が咲いている庭も今は冬枯れのわびしさで、土作りのため夏の間に作っておいた堆肥や腐葉土が積み上げられているばかり……浜辺に打ち寄せる波は「ざあ……っ」と余韻を残しては海に戻り、また白い泡を伴って寄せてくる…

提督「ふぅ……」

ライモン「提督」

提督「あぁ、ライモン……その格好で大丈夫?寒くない?」

ライモン「はい。わたしは大丈夫ですが、提督は寒いのではないかと思って……マフラーを持ってきました」

提督「ふふ、お気遣いありがとう。ライモンも一緒に巻く?」

ライモン「いえ、そんな……///」

提督「まぁまぁ、少し短いけれど頑張れば巻けるんじゃないかしら?」柔らかなカシミアのマフラーを首もとに軽く巻くと、余った部分をライモンの首もとにかけて身体を寄せた……

ライモン「あ……///」

提督「ほら、どうにか巻けたわ。それに貴方の体温で暖かい♪」

ライモン「提督こそ……あったかいです……///」

提督「そう?」

ライモン「はい。確かに今までたくさん楽しいことや嬉しいことがありましたけれど……わたし、こうやって提督のぬくもりを知ることが出来たのが……一番嬉しいことかもしれません///」

提督「も、もう……そんなことを言われたら愛おしくてたまらなくなっちゃうじゃない///」思わず腰に手を回し、ぐっと顔を近寄せた……

ライモン「あ……///」

提督「んっ……♪」

ライモン「ん……ちゅ///」

提督「ふふ、ちょっとしょっぱい……♪」海風に当たっていたためか、甘く柔らかな唇に少しだけ塩気を感じた……

ライモン「海の味ですね」

提督「そうね……」

ルチア「ワンワンッ!」

…提督とライモンが波打ち際でお互いにささやきながらたたずんでいると、アラジを振りきったルチアが流木をくわえて全速力で駆け戻ってきた…

提督「このままいたいけれど、どうやらルチアが構ってほしいみたいね」

ライモン「名残惜しいです……」

提督「それじゃあ後で、また……ね?」

ライモン「はい」マフラーをほどくとルチアが差し出した木切れを受け取り、ブーメランのように投げた……

ルチア「ワンッ!」

アラジ「待て待てぇ!」疾駆するルチアに追いすがるべく砂浜を駆ける……

提督「本当に元気ねぇ……さてと、そろそろ戻りましょうか」

ライモン「そうですね。お散歩の続きはアラジに任せましょう」

提督「ええ、そろそろココアも出来たでしょうし♪」

アラジ「あ、そろそろ引き上げる?」

提督「私はね。もしアラジが構わなければ、あと少しだけルチアと遊んであげてくれる?」

アラジ「了解っ♪」

提督「それじゃあお願いするわ」

アラジ「はぁーい」

ライモン「では、戻りましょう」

提督「ええ、暖炉とココアが待っているものね♪」
972 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/05/01(木) 01:24:02.53 ID:YZXyTJeW0
提督「はぁ……温かい」

ライモン「そうですね」

…暖炉の脇、温もりがじんわりと伝わってくる場所に椅子を据えてココアのカップを手にしている提督たち……活発な娘たちが表ではしゃいでいるのを食堂の窓越しに眺めつつ、エリトレアが淹れてくれた甘く濃いチョコラータ(ココア)に舌鼓を打つ…

エリトレア「まだまだ寒いですからねぇ」厨房の後片付けを終えてエプロンを外したエリトレアは、くつろぎモードで銅製ポットのチョコラータを注いでいる……

提督「……それにしてもまだまだ夕暮れが短いわね」

ライモン「確かに、あっという間ですね」

…ことわざにある「秋の日は釣瓶落とし」ではないが、さっきまで少し頼りなげとはいえ穏やかな午後の日差しが残っていたというのに、あっという間に日が落ちて深青色に変わっていく海面……浜辺に打ち寄せる波の泡だけがほの白いだけで、空もヴェルヴェットのような黒一色に染まっていき、そこに小さな宝石の欠片を撒いたかのようにぽつりぽつりと星が出始める…

提督「灯台にも明りが入ったようね」鎮守府から数キロ先「小さな町」の方には小さな岬があって、そこに設けられた灯台が光の帯でさっと海面を払う……

デュイリオ「灯台が点いていると平和な気持ちになるものですね」

提督「深海棲艦のことがあるとはいえ厳密に言えば平時なわけだし、灯火管制をする必要もないものね」

…鎮守府の浜辺に「ざぁ……っ」と寄せては返す波音に耳傾け、遠くにさっと流れる灯台の光芒を見るでもなくぼーっと眺めながら、思い出したようにとろりとしたチョコラータに口をつける…

アラジ「ただいま戻りましたっ!」

提督「あぁ、お帰りなさい……ルチア、満足した?」

ルチア「ワンッ♪」

アラジ「なにしろ思い切り駆け回ったからね♪ ……全身砂まみれになっちゃったので、さっきドックの簡易シャワーで軽く流してからお風呂場で洗ってあげました」

提督「ありがとう、お疲れさま♪ エリトレアがチョコラータを淹れてくれたから、良かったらどうぞ」

アラジ「やった♪」

…ついでに自分も洗ってきたのか、まだ湿り気の残っている髪をかき上げると自分のマグカップを持ってきて暖炉の前に座り、ポットから湯気の立つチョコラータをたっぷり注いだ……ルチアは暖炉の前の敷物に長々と身体を横たえると器用に頭を回してあちこち舐め回して毛並みを整えつつ、暇な艦娘たちが遊び半分にブラシを持ち出すと喜んでブラッシングに応じている…

提督「……ふふ♪」

ライモン「提督?」

提督「いえ、ね……こうのんびりしているとあくびでも出そうな気がして。 電話でも来ないかしら?」

ライモン「いくらなんでもそう都合良くかかってくることはないと思いますが……」そう言いかけたところで、提督が持ち歩いている私用の携帯電話がぶるぶると震えだした……

提督「噂をすればなんとやら……ね」

ライモン「すごいタイミングですね……どなたからでしょうか?」

提督「えぇ…と、ジェーンからね。 はい、もしもし?」

ミッチャー提督「ハーイ、フランチェスカ♪ 元気? いまおしゃべりしても大丈夫かしら?」

提督「ええ、ちょうど話し相手が欲しかったところよ♪」

ミッチャー提督「オーケー、タイミングはばっちりだったわけね……そうそう、クリスマスプレゼントとグリーティングカードをありがと♪ うちのガールズたちも喜んでたわ」

提督「こちらこそプレゼントをたくさん送ってもらって感謝しているわ、ありがとう」

ミッチャー提督「ノ−・プロブレム。こういうのはギヴ・アンド・テイクなんだからさ……そっちはどう?」

提督「そうねぇ……鎮守府にいるとは言っても管区司令部もまだクリスマス気分が抜けきっていないみたいでのんびりしたものよ」

ミッチャー提督「そいつはうらやましい限りね……こちとらはボスが気短なおかげで休み明けもなにもあったもんじゃないわ」

提督「その調子だとあまり聞かない方が良さそうだけれど、ちゃんと休暇は取れたの?」

ミッチャー提督「そいつは心配無用よ。「31ノット・バーク」そこのけの勢いで書類を片付けて、ついでに休暇申請書を叩きつけてやったわ……ま、休暇といっても飲み歩くか女を呼んで騒ぐかのどっちかだったけど♪」

提督「くすくすっ……相変わらずね?」

ミッチャー提督「まぁね。それにアナポリス(海軍兵学校)時代の知り合いどもがイカした57年型の「シボレー・ベルエア」で乗り込んで来たもんだからさ。わいわい言いながら街に繰り出して、久しぶりの上陸みたいにはしゃぎ回ったわ♪」

提督「ふふっ、きっとにぎやかだったでしょうね♪」

ミッチャー提督「にぎやかなんてもんじゃなかったわよ。バドワイザーとテキーラの海でミズーリが浮くんじゃないかってくらいで、ストリッパーは来るし憲兵は駆けつけるし、翌日になって二日酔いの頭を抱えて起きてみれば、どっかの娼婦たちと一緒にどでかいハート型のベッドに転がり込んでるし……」

提督「複数形ってことは、何人もいたの?」

ミッチャー提督「ええ。なんでも「今日は全員相手してやるから遠慮するな」って私たちが札ビラを切ったもんだから、一人に四人くらいはついちゃったみたいなのよね。こっちは覚えちゃいないけど、あちらさんによるとそういう話だったわ」

提督「なんて言うのかしら、いかにも「らしい」クリスマスだったようね?」

ミッチャー提督「おかげさまでね♪」
973 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/05/10(土) 01:40:29.48 ID:ccWrX6qa0
提督「みんなそれなりに楽しい年末年始を過ごしていたみたいね」

ライモン「そのようですね。提督はゆっくりできましたか?」

提督「ええ、おかげさまで♪ 鋭気も養ったし、これで元気よく書類の山に……」未決書類の箱に積まれた書類をちらりと見て視線を戻した……

ライモン「提督?」

提督「いえ、もちろんやらないわけじゃないわ。いつかはどうにかしないといけない書類だもの……とはいえ、ね」また改めて書類の山に視線を向けて眉をひそめた……

ライモン「あの、少しずつでも片付けないと……」

提督「そうね。溜まれば溜まるほど片付けるのがおっくうになるもの……掃除と同じね」

ライモン「では、わたしもお手伝いします」

提督「ありがとうライモン、優しいわね……それじゃあコーヒーを淹れてきてもらおうかしら。温めたミルクたっぷり、砂糖は少なめで」

ライモン「はい♪」

提督「それから手が空いているようだったらアッチアイーオとデルフィーノも呼んできてもらえる? 秘書艦としてのお仕事があるって」

ライモン「了解」

…数分後…

デルフィーノ「ただいま参りましたっ」

アッチアイーオ「来たわよ……」

提督「あらら、アッチアイーオったらずいぶん陰気になっちゃって……」

デルフィーノ「寒いせいかすっかり気落ちしちゃっているみたいなんです」

提督「それじゃあアッチアイーオは食堂の暖炉で温まって、元気になったら来てちょうだい……デルフィーノ、それまではお願いね?」

アッチアイーオ「悪いわね……はぁ……」

デルフィーノ「はい、アッチアイーオの分まで頑張ります♪」くりっとした目をキラキラさせ、跳ねるような動きで応接テーブルの椅子に腰かけて書類を受け取る……

提督「頼もしい限りね……それじゃあ張り切ってやっつけることにしましょうか♪」セーターの袖をひじまでまくり上げ、お気に入りの万年筆を手に取った……

…しばらくして…

デルフィーノ「提督、この書類の書式なんですけれどマニュアルにはaとbがあって……」

提督「あー、それなら年度替わり前だからaの方よ」

デルフィーノ「あとこの「休暇時交通費の補助に係る申請」っていう書類を書きたいんですけれど、適応される範囲が分からなくって……」

提督「それならマニュアルの……9ページだったかしら、書き方と適応範囲が書いてあるから参考にしてもらえる? まぁおおまかなところで、EU圏内なら補助が出ると思っておけば間違っていないはずよ」

デルフィーノ「なるほど。9ページ……9……あ、ありました♪」

提督「ね? だいたいのことはマニュアルに書いてあるから、困ったらそれでどうにかなるわ。ならないこともあるけれど……」複雑で面倒な経費や手当の申請書類とふせんだらけの使い込まれた用例集、さらにはラップトップを開いて海軍の申請システムに入っているフローチャートを出して見比べている……

提督「うぅん……結局どの項目で申請すればいいのよ?」ぶつくさとこぼしていたが受話器を取り上げ、左肩と耳で挟むと番号をダイヤルした……

提督「もしもし。タラント第六のカンピオーニですが、庶務課をお願いします。書類の摘要のことで少し問い合わせたいことが……」

提督「……あら少尉、お久しぶり♪ えぇそうなの、実は艦娘の娘たちが休暇時にもらえる旅費の補助のことで……そうそう、その書類よ」

提督「それじゃあこの書式のC項に書き入れればいいのね……領収証の貼付も必要? 了解」

提督「なるほど、おかげで謎が解けたわ……どうもありがとう。できれば貴女の声を聞いていたいのだけれど、書類がたっぷり残っているものだからまたの機会にね……チャオ♪」

デルフィーノ「無事に手続きの仕方が分かったみたいですね」

提督「ええ。それにしても複雑極まりないことおびただしいわ……まったく嫌になっちゃう」正方形のふせんにメモをつけるとマニュアルのページにぺたりと貼りつけ、それから気を取り直して書類の空欄に必要項目を書き入れ、サインをし、キーボードを叩く……

ライモン「コーヒーをお持ちしました。デルフィーノも良かったらどうぞ」

デルフィーノ「わ、ありがとうございます♪」

提督「ライモンは優しいわね……アッチアイーオは?」

ライモン「そろそろ温まってくると思いますが、まだしょげているみたいで……余計だったかもしれませんが、何人かに声をかけておきました」

提督「余計だなんてとんでもないわ。今は一人でも多くの手が欲しい所よ……はい、どうぞ」

ガラテア「失礼いたします、書類のお手伝いが必要とのことで……」

ルビノ「わが愛しの提督のために馳せ参じたわ♪」

提督「ふふ、心強い限りね……それじゃあ手分けして片付けるとしましょうか♪」
974 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/05/27(火) 01:51:58.62 ID:U0Ixlxae0
提督「……仕上がった書類はひとまとめにしておいてね」

ライモン「はい、提督。 ガラテアとデルフィーノはこちらの山をお願いします」

デルフィーノ「はぁい」

ガラテア「ええ。ルビノは出来上がった分をまとめて下さる?」

ルビノ「任せて」

…温泉の熱を利用した全館暖房の少し心もとない暖気が足元に吹く中でカタカタとキーボードを叩く提督と、それぞれペンを走らせ、クリップで書類を留め、記入漏れを確かめるライモンたち……

提督「えーっと、経費申請は……あら?」だいたいは順調に進んでいるが、思い出したようにエラーではじかれたり、入力したい要目の部分がロックされて数字を打ち込めなかったりする……

提督「ふぅ……っ」時折しぶるキーボードを連打したり眉をひそめたりしながらも「未決」の山を減らしていく提督……

ライモン「提督、こちらはほとんど片付きました」

提督「あぁ、ありがとう……おかげでずいぶん助かったわ」

ルビノ「他ならぬ提督のためだもの……ねぇ、ごほうびにキスして?」

ガラテア「あら、ではわたくしにも♪」

デルフィーノ「えっと、そ……それじゃあ私も///」

提督「そうね、頑張ってくれた娘にはご褒美をあげないと……もちろんライモン、貴女もよ?」

ライモン「いえっ、わたしは提督のお役に立てればそれで充分ですから///」

提督「まぁまぁ、そう言わずに……ね?」提督は立ち上がると一つ伸びをし、それから執務机を回ってライモンたちが座っていた応接テーブルの方へやって来た……

ライモン「は、はい……///」

提督「それじゃあ、お手伝いありがとう……ちゅっ♪」

ライモン「んっ///」軽く唇を合わせる少女のようなキスだったが、唇を通して伝わってくる生真面目な恋心が愛おしい……

ガラテア「では、わたくしから提督に……あむっ……ん♪」

提督「あ……んっ……ガラテアのキスは本当に上手ね///」ピグマリオン伝説の美しい彫像、または海のニンフ(精霊)であるネレイーデの一人を名前の由来に持つガラテアは色白で、美人揃いの鎮守府にあっても抜群に顔が良く、さすがの提督でも間近に迫られると少しどぎまぎする……

ルビノ「それじゃあ今度は私から♪」微笑と慈愛で包み込むようなガラテアとは対照的に、熱情をぶつけてくるようなルビノ(ルビー)は焼けるように激しく熱いキスで提督の唇をむさぼる……

提督「ん、んっ、んむっ……ぷはぁ♪」唾液に残ったミルクコーヒーの甘い味がつぅ…っと糸を引く……

デルフィーノ「そ、それじゃあ私も……///」くりくりとした丸っこい瞳を伏し目がちにしてもじもじと身じろぎしながらも、つま先を伸ばして待ち遠しげにしているデルフィーノ……

提督「ええ♪」

デルフィーノ「……んぅ?」なかなか唇が触れないので、いぶかしげに視線を向けてくる……

提督「あら、そんなにして欲しかったの?」イルカらしく「一人遊び」を始めとしたえっちな事柄を奔放なまでに楽しんでおきながら、それにそぐわない可愛らしい童顔と恥ずかしがりようを見せるデルフィーノはついからかいたくなる……

デルフィーノ「いえっ、そういうつもりじゃないです……っ///」

提督「ふふふ、いいのよ♪ デルフィーノは欲しがりさんだものね……んちゅっ、ちゅ♪」

デルフィーノ「ふあぁ……あふぅ、んぁ///」片手を腰に回され、もう片方の手で濃い灰色の髪を撫でられながら舌を絡められると、すっかり力が抜けたように
提督の腕の中で甘い声を上げている……

提督「はい、おしまい♪」

デルフィーノ「ふわぁ……///」トロけたような表情を浮かべ、ため息とも嬌声ともつかない音を漏らしている……

提督「さ、あとは提出書類に不備があった娘たちのところを回って必要なものを集めるとしましょう」

…ライモンたちを連れて回診をする医師のように鎮守府を巡る提督……もちろん館内放送で「提出書類に不備がある」と艦娘たちを呼びつけても良いのだが、運動不足の解消と艦娘たちとのコミュニケーション、そしてなによりパソコン画面としばらく離れるためにそれぞれの部屋を訪問することにした…

提督「……コルサーロ、いる?」

コルサーロ「ああ、いるよ……どうかしたか?」ソルダティ級駆逐艦の「コルサーロ(アラビア海賊)」はハーレム(後宮)風の豪華なガウン姿でベッドに寝転がっていた……

提督「ええ、休暇の時にかかった旅費には補助が出るのだけれど……料金が分かるような領収書とか明細は取ってある?」

コルサーロ「どうだったかなぁ……忘れちまった」

提督「困ったわね。でも管区司令部に提出しないと私がやいのやいの言われちゃうから……探してみても見つからないようなそれでいいから」

コルサーロ「分かった、それじゃあちょっくら探してみるよ」

提督「お願いね」
975 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/06/08(日) 02:33:54.40 ID:0zBRxkTM0
提督「ガリレオ、クリスマス休暇の時に使った航空券や列車の切符の額が分かるものを……」

提督「ニコ、貴女がクリスマス休暇で使った旅費には補助が出るから領収書を……」

提督「あらバンデ・ネーレ、ちょうどいい所に。休暇の時に使った交通手段の領収書を……」

………

…しばらくして…

提督「リベッチオ、少しいいかしら?」

リベッチオ「うわ、領収書お化けが出たぁ!」噂が広まっているのか、寝転がって本を読んでいたリベッチオがすっとんきょうな声を出した……

提督「もう、いきなり失礼ね」

リベッチオ「それじゃあ別の用事?」

提督「いいえ。特に貴女は領収書も明細もまるっきり提出していないから、このままだと管区司令部に補助の申請が出せないわよ?」

リベッチオ「ほらやっぱり……それに領収書なんてもらってないもん」

提督「もう、休暇の交通費には補助が出るからもらっておくようにって言ったでしょう……」肩をすくめ手のひらを上に向ける提督……

リベッチオ「だってぇ……」

提督「仕方ないわね……それじゃあリベッチオ、スーツケースは?」

リベッチオ「スーツケース?」

提督「ええ、ちょっと出してくれる?」

リベッチオ「いいけど……んしょ」クローゼットの下段に仲良く収まっている姉妹お揃いのスーツケースから自分のを引っ張り出した……

リベッチオ「よいしょっと……それで、スーツケースがどうかしたの?」

提督「ええ、もし運が良ければ……やっぱり♪ これがあれば大丈夫なはずよ♪」提督が指さしたのはスーツケースの持ち手に付けられた空港の手荷物タグ……

リベッチオ「それでいいの?」

提督「ええ。これなら行き先や日付も分かるし……持って行っても構わないかしら?」

リベッチオ「いいよ? 別に荷物タグなんていらないし」

提督「了解、これでどうにかなりそうね」

…夕食後…

提督「ふぅ……これで揃えられる範囲のものは揃えたわね」スキャンした領収証や旅費の証明になりそうなチケットの半券やタグの画像をデータとして添付し、申請を終えるとシステムを閉じた……

ライモン「お疲れさまでした、提督」

提督「いいえ。それに皆が大変な思いをしてもらっているお給金だもの、せっかく補助や還付があるならもらっておかないと……ね?」

ライモン「ありがとうございます」

提督「ノン・ファ・ニェンテ(いいのよ)……それより浮いたお金で何かお買い物でもするといいわ」

ライモン「ふふっ、そうですね♪」

提督「それにしても疲れたわ……お風呂にでも入るとしましょうか」

ライモン「分かりました、それでは着替えを……」

提督「別に貴族じゃないのだから、そこまでしてくれなくたっていいわ……それよりライモン、一緒に入る?」

ライモン「えっ……その、構いませんか///」

提督「構うも構わないも、私から誘っているのよ? ライモンさえ良ければぜひご一緒したいわ」

ライモン「わ、分かりました……それじゃあ着替えを取ってきます///」

提督「ええ、それじゃあ大浴場の前で♪」

…まとめていた髪をほどいて頭を振ると、パイル地のバスローブとメイク落としなどが入った浴用品のポーチを小脇に抱えてゆったりと歩き出した……そして海軍士官ならではの職業病で、窓辺によるとついつい海の様子や天候を確かめてしまう……海面は少し荒いが月が冴え渡り、白い波頭が明るく浮き上がるように見えている…

提督「少し荒れ気味ね……深夜哨戒の娘たちは船体ががぶってくたびれるでしょうし、少しお腹に溜まるような夜食の方が良いかもしれないわね」

提督「風は北から北東に回ったけれど、明日になったら少しは落ち着くかしら……」

提督「っと、いけないいけない……あれこれ考えていたらお風呂に行くのを忘れそうになっちゃったわ」

………

976 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/06/17(火) 00:48:43.95 ID:/aOb8Ef40
…大浴場…

提督「あー……肩のこわばりがほぐれていくわ……」

ライモン「あれだけの書類でしたからね」

提督「それでもみんなのためになると思えばどうってことないわ……とまでは言わないけれど、まぁ頑張れるわ」

ライモン「わたしたちも気苦労なく暮すことができるのも提督のおかげですね」

提督「私の方こそこんなに良い暮らしをさせてもらっているんだもの。肩に「二つ星」を付けている分だけ役に立たないと……いつもこんなことを言っている気がするわ」失笑する提督……

ライモン「ふふ♪」

提督「ふふふっ♪」

声「……あらぁ、こんな時間に誰かいるの?」立ちこめる湯気の向こうからシルエットが近づき、広い大浴場に声が反響する……

バリラ「……あら提督、それにライモンドも……もしかしてお邪魔だったかしら?」

ライモン「あっ、いえ……そんなことはありませんよ///」

提督「バリラ、貴女もお風呂?」

…大型潜「バリラ」級のネームシップであるバリラ……水中で1800トン近い大柄な船体から戦前は長距離航海の記録を残すなどしたが、戦時中は老艦ゆえにさしたる活躍もないまま解役されて浮き燃料タンクとして過ごし、鎮守府で艦娘の姿となった今も多少の哨戒を除いては出撃することも少なく、そのぶん鎮守府の潜水艦組からは「良きお母さん」として慕われている…

バリラ「そうなの。今日は当直もあったし、寝る前に汗を流しておこうと思って♪」肉付きのいいたわわな身体にタオルをあて、母性愛あふれる笑みを浮かべている……

提督「お疲れさま」

バリラ「提督もお疲れさま……あ、せっかくだから抱っこしてあげる♪」つま先から静かに浴槽に入ってきたバリラだったが目を細めると、おいでおいでというように両腕を広げて迎え入れるような姿勢を取った……

提督「そんな、子供じゃないんだから……///」

バリラ「あらあら、私からみたら提督なんて赤ちゃんみたいなものよ? ほぉら、マンマのところにいらっしゃい♪」

ライモン「バリラ、さすがに提督を赤ちゃん呼ばわりは……」

バリラ「あら、ライモンドだって私からしたら妹みたいなものよ……さ、遠慮しないの♪」

提督「分かったわ……そこまで言うなら甘えさせていただくとしましょう♪」

バリラ「聞き分けの良い子でお母さん嬉しいわ♪」

ライモン「あの、本当にわたしもですか……?」

バリラ「あらぁ、お母さんの抱っこは嫌?」

ライモン「別に嫌だというわけではありませんが……」

バリラ「じゃあいらっしゃい♪ 良かったらおっぱいも吸う?」下から手を当て、ゆさゆさと乳房を揺すぶってみせた……

ライモン「じ、冗談はやめて下さいっ///」

バリラ「まぁ、照れちゃって♪ 提督は良い子だからお母さんのおっぱいをちゅうちゅうするわよね♪」

提督「あら、本当にいいの?」甘やかすような表情を浮かべて冗談めかしてくるバリラと、それに乗っていたずらっぽい笑みを浮べた提督……

バリラ「ええ……さぁいらっしゃい、大きな赤ちゃん♪」

提督「ふふっ、はぁい♪」

…身長こそそこまで大きくはないが、その分ふくよかなバリラの身体に抱きついてずっしりした乳房に吸い付いた……弾力のある先端を含んだ口元から下は温かい湯に浸かり、鼻から上は水面から出ている……バリラは提督の腰に手を回してぐっと引き寄せると「よしよし♪」と頭を撫でる…

バリラ「ほぉら、ライモンドも♪」尻込みするライモンにしびれを切らし、ぐっと腕を引いて右の胸を含ませた……

ライモン「んむっ///」

バリラ「はぁい、良い子ねぇ♪ よしよし♪」むっちりした肉付きのいい肌が湯気と汗でしっとりと湿り気を帯び、横並びに「授乳」させられている提督とライモンの肌とバリラの肌がぺたりと触れあって熱を帯びる……

提督「あむっ、ちゅぅ……ちゅっ♪」

バリラ「あらあら、そんなにお母さんのおっぱいが欲しかった?」

提督「ちゅぱっ……ええ♪」息継ぎのために顔を上げると返事と一緒にウィンクを投げた……

バリラ「素直でよろしい♪ ライモンドも遠慮しないでもっとちゅぱちゅぱしていいのよ?」

ライモン「いえ、わたしは……///」

バリラ「まぁまぁ、照れちゃって可愛い♪」

提督「ね、ライモンったらいつでも初心で可愛いのよ♪」

ライモン「///」
977 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/06/23(月) 01:27:06.44 ID:pVaFL7kl0
…しばらくして…

バリラ「……とく、提督」

提督「う……ぅん」

ライモン「あ、気がつきましたね」

提督「ライモン……私……」

バリラ「ふふっ。提督ったらお母さんがあんまり「いい子いい子」していたらのぼせちゃったのよ」

提督「そういえばふっと頭から血の気が抜けて……」

ライモン「まったくもう、心配したんですよ? ……もう大丈夫そうですか?」

提督「ええ、おかげさまで……柔らかい枕と素敵な眺めのおかげですっかりいい気分よ♪」

…更衣室の縁台に寝かされ、バリラのむっちりしたふとももに頭をあずけた状態の提督をライモンが心配そうにのぞき込んでいる……ライモンはバスタオル一枚を巻いただけで、その形の良い胸がタオルからはみ出している…

ライモン「もう、わたしがこれだけ心配しているのに……///」

提督「ありがとう、ライモン……バリラ、貴女も」

バリラ「いいのよ♪ それよりお水でも飲んで」氷の浮いたレモン水のグラスを差し出した……

提督「ありがとう、いただくわ……っと」

バリラ「だめよ、一気に起き上がろうとしちゃ……このところ書類仕事も忙しかったみたいだし、ちょっと疲れていたんじゃない? さ、お母さんが支えてあげる♪」ずっしりとした乳房の谷間に頭を預けさせ、後ろから抱きかかえる形で支えた……

提督「こんなに座り心地のいい椅子はローマでもなかったわ♪ ……二人とも、重ね重ねありがとう」冷たいレモン水ですっかり調子を取り戻した提督……

バリラ「ふふ、して欲しくなったらまたいつでもお母さんが甘やかしてあげる……今度はのぼせないようベッドにしましょうね♪」

ライモン「提督、必要ならわたしもいつだってお側にいますから……///」

提督「ええ、嬉しいわ♪」

…数日後・提督居室…

提督「……これでよし、と」

アッチアイーオ「あら、朝から迷彩服なんて着てずいぶん大仰じゃない。一体どうしたのよ?」

提督「ええ、休暇も明けたし定例の小火器の作動テストをしないと……武器庫の小火器を運ぶから、手空きの娘たちに手伝ってくれるよう頼んでみてくれる?」提督は長い髪を結い上げ、イタリア軍独特の茶系と緑を基調としたデジタル迷彩の上下と黒の軍用ブーツで固め、射撃用の耳栓を首から下げている……

アッチアイーオ「分かったわ」

…数十分後・屋外射撃場…

アッチアイーオ「ここに置くわよ」

提督「ええ」

ジェンマ「持ってきたぞ、提督……」

提督「ありがとう、助かるわ」

…鎮守府と体育館の間をつなぐ屋外の小道から少しはずれた場所に広がる屋外射撃練習場……寒々しい冬の森を背景に、コンクリートブロックや塀で「コの字」型に囲まれた射撃場は優秀なイタリア陸軍工兵隊が築いたもので、レーンの数こそ少ないがきちんと作られている……そのレーンの前には鎮守府配備の小火器が一揃い運び出され並べられている…

アッチアイーオ「それにしても藪から棒ね」

提督「そうね。銃の手入れそのものは時々やっているけれど一年を通して規定の弾数を撃たないと管区司令部に言われるし、ちょうどいい機会だから……射撃、始めるわよ!」

…耳栓を付けるとベレッタM12S短機関銃を取り上げてストックを広げ、肩付けすると弾倉を込める……周囲に大声で伝えるとボルトを引き、的に向けて狙いを定めた…

提督「……っ」ダダダッ、ダダダッ!

ジェンマ「ふっ。流石は提督、なかなかの腕前だ……普段はこういう銃は使わないんだが、私もやってみよう」ダダッ!ダダダダッ!

アッテンドーロ「どうせ消費しなきゃいけないんだもの、気前よく撃とうじゃない」ダダダダダッ!

…退屈しのぎやスポーツの代わり、あるいはちょっとした憂さ晴らしも兼ねて手伝いに来た艦娘たち……生身の人間である提督よりもずっと頑丈な艦娘はMG3軽機関銃だろうと腰だめで軽々と取り回せる…

アミラーリオ・ディ・サイント・ボン「たまにはこういうのも爽快で良いものですな」バララララ……ッ!

アミラーリオ・カーニ「同感です」バララララ……ンッ!

提督「腰だめでその集弾ぶりはすごいわね……とってもじゃないけれどかなわないわ」

提督「……どうやら私にはピストルくらいがちょうどいいみたいね」レーンを離れると苦笑いを浮かべ、ケースに入っているベレッタ・ピストルを取りだした……
978 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/07/09(水) 00:47:47.15 ID:Dhh8javE0
提督「……射撃は集中するからいい気分転換になるわね」少ししびれた手と肩をほぐしながら、撃ちきった小火器をケースに戻していく……

サイント・ボン「まったくですな」

カーニ「本官もそう思いますよ」

提督「撃ち終わったら銃は保管庫まで持って行って、そこでメンテナンスをしましょう……あ、空薬莢はある程度でいいから集めておいてね」

…射撃台の周囲へ敷き詰めたように散らばっている金色の空薬莢……そのままにしておくと金属の成分が地面に溶け出して環境に悪いのと、管区司令部からの通達で(そこまで厳密にではないが)ある程度は空薬莢の回収を要求されるので、ホウキとちりとりでかき集めてはリサイクル用のゴミ箱にざらざらと流し込んでいく……提督も耳当てを外し、回収を手伝いながら艦娘たちと言葉を交わす…

提督「ジェンマ、射撃はどうだった?」

ジェンマ「ま、相変わらずさ」

…黒と銀のテンガロンハットをかぶり、さすらいのガンファイター風に決めているジェンマは「ふっ……」と銃口から立ちのぼる煙を吹き払うと空になった弾倉を抜き、ベレッタ短機関銃を軽く撫でた…

提督「さすがね」

アッテンドーロ「提督、銃は武器庫に戻しておくわよ?」

提督「ええ。撃った銃は分かるようにひとまとめにしておいてちょうだいね」

アッテンドーロ「そうするわ……もっとも、匂いを嗅げばすぐ分かるけど」

提督「まぁね」

…しばらくして・小火器保管庫…

提督「……ふう」

…武器庫に備え付けてある椅子に腰かけ、台に乗せてある銃を掃除する提督……ボロ布にガンオイル、試験管洗いのような形状をした掃除用のブラシなど「七つ道具」を手元に広げ、ときどきスタンドの明かりにかざしながら(安全な)薬室側から銃身をのぞき込んでは、またゴシゴシと火薬の燃焼カスを掃除する…

アッテンドーロ「フルオートでバリバリ撃つのはすっきりしていいけど、こういうちまちました作業はおっくうね……姉さんなら嬉々としてやりそうだけど」

提督「そう言わないの。銃の手入れは大事よ?」

アッテンドーロ「分かってるわよ。だからこうしてきちんとやっているんじゃない」

提督「頼りにしているわ♪」

バンデ・ネーレ「ボクもコンドッティエーリ(傭兵隊長)の一人だからね、武器はおろそかにできないよ」

カラビニエーレ「そうね。管理はきちんとしないといけないし」

アオスタ「その通りよ。それなのにエウジェニオったら『手が汚れるから遠慮するわ』なんて言うんだから……」

提督「ふふっ……普段はそう言っているけれど、エウジェニオはこのあいだ手伝ってくれたのよ」

アオスタ「本当ですか?」

提督「ええ……なんでも『美人の困りごとは助けてあげないといけないわよね♪』って」

アオスタ「そうですか。わが妹ながら少し見直しました」戦後賠償でソ連へ渡った委員長気質のアオスタと、ギリシャへ渡った口説き上手で女好きなエウジェニオ……姉妹でまるきり性格は違うが、どちらも頼れる軽巡で提督の信頼もあつい……

提督「ふふっ、エウジェニオもそれを聞いたら喜ぶわ」

アオスタ「いえ、直接言うのは少し気恥ずかしいというか……どうせ色仕掛けでからかわれるのがオチですから///」

アッテンドーロ「ふっ、アオスタはエウジェニオをうちの姉さんと交換した方がいいんじゃないかしら」

アオスタ「できるものならそうしたいです。ライモンドは良い娘ですし」

アッテンドーロ「姉さんを褒めてくれてありがと……ちょっとおどおどしちゃいるけど、あんないい姉さんはそうはいないわ」

提督「みんないい姉妹を持って良かったわね。私も姉妹だけはいないからちょっぴりうらやましいわ」

アッテンドーロ「だったら年の離れた妹にしてあげましょうか?」

提督「気にしないで、冗談なんだから」

バンデ・ネーレ「とはいえ、もしも提督に姉や妹がいたら朝から晩までベッドで交わってばかりだろうね」

アッテンドーロ「言えてるわ♪」

提督「もう、失礼ね……ベッド以外でもするわ♪」

アオスタ「し、姉妹でそんなことする話なんて……///」

バンデ・ネーレ「ふふ、エウジェニオに甘い声をあげさせられているのを思い出したのかい?」

アオスタ「余計なお世話です///」

バンデ・ネーレ「おっと、それは悪かったね……それじゃあ残りの整備を終わらせるとしようか」
979 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/07/17(木) 02:27:51.95 ID:NSTzDsPM0
バンデ・ネーレ「ようやく終わったね」

提督「貴女たちが手伝ってくれたおかげで思っていたよりずっと早く終わったわ……グラツィエ・モルト(とってもありがとう)」

アッテンドーロ「ノン・ファ・ニェンテ(いいってことよ)」

アオスタ「すべきことをしただけですから」

バンデ・ネーレ「そうだよ、ボクたちのためでもあるしね……それよりシャワーでも浴びてさっぱりしようよ。硝煙のせいか肌がムズムズというかちくちくするし」

アッテンドーロ「言えてるわ」

提督「そうね、それじゃあお風呂にでも行きましょうか」

…大浴場…

バンデ・ネーレ「こんなにぜいたくな大浴場があると日に何度でも入りたくなるね」

アオスタ「メイクをし直さないといけないからそこまでは入れないけれど……気持ちは分かるわ」

アッテンドーロ「私なんてせいぜい乳液を塗っただけで過ごしちゃうけれどね」

アオスタ「ムツィオ、貴女は身だしなみにもう少し気を使ったらどうなの?」

アッテンドーロ「別に汚れた服を着続けているわけじゃあるまいし、そう噛みつかないでよ……そうでしょ、提督?」

提督「そうね、見苦しくない程度に整えていてくれればそれで構わないわ。私だって人のことを言えた義理じゃないし……」提督自身も職務時間を過ぎると制服を脱ぎ、ゆったりした私服姿で過ごしている事が多いので苦笑いしながら肯定した……

アオスタ「やれやれですね」

提督「まぁまぁ……当直や出撃の時にしっかりしていてくれればそれでいいわ」

…着任直後は裸で入浴することに少し抵抗感があったが、今ではすっかり慣れっこになった提督はためらうこともなく黒の下着を脱ぐと脱衣カゴに放り込み、大浴場の扉を開けた…

提督「すんすん……どうやら落ちてくれたみたいね」別に硝煙の匂いは嫌いではなかったが、のんびりした気分の時に嗅いでいたいほど好きというわけでもないので石けんでよく洗い、改めて腕を鼻先に寄せて残り香がないかどうか嗅いでみる……

アッテンドーロ「それにしても提督は射撃が上手よね。略綬にこそ射撃記章はないけれど、いい線いってると思うわ」

提督「射撃そのものはともかく飛んだり走ったりがダメだったから……教官にもしょっちゅう「もったいない」って言われたわ」

アッテンドーロ「教官って言うと、基地祭の時に来た……メッセ兵曹長って言ったわよね」

提督「ええ。口は悪いし当然のようにびしばしやられたけれど、たとえ落ちこぼれても見捨てずに付き合ってくれる立派な教官だったわ……ふふっ♪」

バンデ・ネーレ「何かおかしいことでもあったかい?」

提督「いえ、ね……あの人のおかげで私たちは海軍士官学校なのか海兵連隊なのか分からないような訓練をいくどもやらされたけれど、その中の一つを思い出したものだから」

アオスタ「笑っておられるということはいい思い出なのですか?」

提督「まぁ、今となってはね……せっかくだし話してあげるわ」

…士官学校時代…

メッセ教官「……さて候補生諸君、いよいよこの士官学校で過ごす日々も残りわずかとなってきたわけだ……入って来たばかりの頃は『また面倒なヒヨッコどもが来た』と心底うんざりしていたが、少しは面倒のかからないヒヨッコになってくれたようで、教官としてはまことに喜ばしい」短髪に迷彩服姿の兵曹長がニヤリと笑うと、整列している訓練生たちからお義理の笑い声がまばらに聞こえた……

メッセ教官「これまで私を始め教官たちはさまざまな事をお前たちに教えてきた。恐らくその半分は卒業する際に放り投げる軍帽と一緒に忘れ去られてしまう運命にあるだろうが、そうだとしたら二倍教え込むだけのことだ」

メッセ教官「とはいえ、必要なことがらを二倍教えるというのはこちらにとっても手間がかかる。したがって我々教官としては候補生諸君が貴重な教訓を忘れないようにするためにはどうすればいいか日々考えている。人間、失敗した時に得られた教訓のほうが長く覚えていられるということで、我々は君たちに腕立てをやらせてみたり便所掃除をさせてみたりしてきたわけだ」

メッセ教官「ま、その心配ももうしなくて済みそうだ。すでに知っていることと思うが、君たちはあと一ヶ月もしないうちに荷物をまとめ、家族に晴れ姿を見せることになる……だがその前に、私からの卒業祝いとしてちょっとした小旅行をプレゼントしようと思う♪」何やら悪だくみをしているような満面の笑みを浮かべ、候補生たちがざわめいた……

メッセ教官「候補生諸君! 君たちには明日から三日間に渡って無人島でのサバイバル訓練を行ってもらう! 武運つたなく艦(フネ)を捨てねばならなくなった、あるいは波にでもさらわれて無人島に漂着した場合、救援が到着するまでの数日間を生き残る必要がある」ざわめき出す候補生たち……

メッセ教官「とはいえここは特殊部隊ではないから、君たちを素っ裸で放り出すような事はしない。救命艇に搭載されているであろう基本的な道具一式と、一日分の携行糧食、さらに途中でギブアップしたい場合、あるいは重傷を負ったりした場合に備えて班ごとに無線機も持たせる至れり尽くせりのサービスぶりだ」

メッセ教官「……というわけで候補生諸君、無人島生活を楽しんでくれ!」

…翌日・無人島…

カサルディ提督「まさか、本当に無人島へ連れてこられるとはね……」

シモネッタ提督「せっかくなんだから日焼け止めも持ってくればよかったわね?」雑木の生えた小島の浜辺にいながら、ヴェネツィアの一流ホテルにいるのと変わらないような余裕を見せるシモネッタ提督……

提督「とりあえず荷物を改めてみるとしましょうか」

ベルガミーニ提督「そうだね、それがいいかも」

…それぞれ班ごとにゴムボートに乗せられ、バラバラな地点で海浜に降ろされた候補生たち……各班は四人一組で、浜辺には弾薬なしのフランキ短機関銃が一挺、テントなしのサバイバルキット一揃い、非常時に備えて渡された無線機と信号用ピストルなどが置かれている…

提督「……幸いお天気もいいし、危険な動物もいるわけじゃないから少しは安心ね」

カサルディ提督「食料が一日分なのはちょい厳しめだけど、水源もあるって話だし、まずはそこを確保していこうよ……どうかな、エレオノーラ?」

シモネッタ提督「そうね。まずは水と野営地の確保に努めることにしましょう……体調の異変があったらすぐ報告してね」
980 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/07/26(土) 00:37:01.58 ID:nOYTn/o20
…一日目…

シモネッタ提督「荷物は背負った?」

提督「ええ」

カサルディ提督「ばっちりよ。カルラは?」

ベルガミーニ提督「ええ、大丈夫」

シモネッタ提督「それじゃあ出発♪」

…白っぽい岩がちの地面に松やオリーヴ、それに名も知らない背の低い木がぼさぼさと生えているだけの島を歩き始めた提督たち……カサルディ提督は手ごろな枝をナイフで叩き斬って即席の杖を作りみんなに渡し、提督はシモネッタ提督と水源のありそうな場所を探して目を配る…

シモネッタ提督「んー……ルクレツィア、どう思う?」

カサルディ提督「私は登山家じゃないし、水源かどこかなんて分からないわよ……エレオノーラこそどうなの?」

シモネッタ提督「残念ながら街育ちだからこういうのはさっぱり……カルラとフランチェスカは?」

ベルガミーニ提督「ごめんね、私も全然……」

提督「うーん、私は子供の頃におばさまから多少教わったけれど……とりあえずこのまま海岸沿いを歩いて川を探して、見つけたら上流に向けて歩けば良いんじゃないかしら?」

シモネッタ提督「それが一番良さそうね」

…二時間後…

ベルガミーニ提督「はぁ……ふぅ……」

シモネッタ提督「だいぶくたびれて来たわね……小休止しましょうか」

提督「ふぅ……賛成」

カサルディ提督「じゃあその間にあの岡を少し登ってみるわ、何か見えるかもしれないし」

シモネッタ提督「お願いね」

カサルディ提督「任せといて♪」疲れも見せず、軽やかな足取りで獣道を上っていった……

提督「元気ねぇ……」

…数分後…

カサルディ提督「……おーい!」岡の中腹で手を振りながら呼びかけるカサルディ提督……

シモネッタ提督「ルクレツィア、どうしたの?」

カサルディ提督「早くおいでよ!小川があった!」

ベルガミーニ提督「やった……!」

提督「……どうやら水筒の残りを心配しながらちびちび飲む必要はなくなりそうね?」

シモネッタ提督「そうみたいね……さ、行きましょう♪」

…岡のふもと…

提督「あら素敵」

カサルディ提督「ね、まるで誂えたみたいじゃない?」

…丘のふもとを縫うようにして海に注いでいる綺麗な小川がカーブを描いて松の木陰をさらさらと流れている……川岸には小さな岸辺があり、どこかで鳴いているのどかな鳥の声が響いている…

シモネッタ提督「澄んだ小川だけれど、まずは水質を調べないとね」第二次大戦のアフリカ戦線で赤痢に苦労した戦訓から、イタリア軍の携行糧食には必ず同封されている水質検査薬を取り出し、水を汲んで試薬を入れた……

ベルガミーニ提督「どう?」

シモネッタ提督「ええ、大丈夫よ♪ とはいえ生水を飲み過ぎるとお腹を壊すかもしれないからほどほどにね?」

カサルディ提督「了解……ところでさ、せっかくだから水浴びでもしない? 砂がちくちくしてやりきれないんだよね」小川の水を手ですくって軽く飲むと言った……

提督「そうねぇ、お互いの裸くらい見なれてはいるけれど……」

シモネッタ提督「いいんじゃないかしら♪ ただし見張りを付けて交代でね……最初は私が立つわ」

カサルディ提督「いやっほう♪」川岸にブーツと迷彩服を脱ぎ捨てると、ばしゃばしゃと水を跳ね上げながら勢いよく小川に駆け込んでいった……

ベルガミーニ提督「きゃっ!?」

提督「もう、相変わらず行動が早いんだから……私も行くわ♪」

シモネッタ提督「ふぅ、これが無垢な幼女だったら最高だったのだけれど……ないものねだりは良くないわね♪」川辺の白い砂に腰を下ろし、軽く頬杖をついた……
981 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/08/04(月) 00:54:02.41 ID:X/qKHrH10
提督「……はぁ、生き返るわ♪」

カサルディ提督「同感。冷たくていい気持ち」

ベルガミーニ提督「野外で裸になるのはちょっと恥ずかしいけど……///」

カサルディ提督「流れはそこで曲がっているから海からは隠れてるし大丈夫だって♪ そらっ♪」

ベルガミーニ提督「わぷっ……!」

提督「ほどほどにしておきなさいよ?」

ベルガミーニ提督「分かってるって……フランチェスカ、もう上がっちゃうの?」

提督「ええ。エレオノーラと代わってあげないと……さ、交代に来たわ」

シモネッタ提督「あら、もっと涼んでいたっていいのに」

提督「そういうわけにもいかないでしょう? さ、荷物は見ていてあげるから」

シモネッタ提督「そう、ならお言葉に甘えて泳いでくるわ」野戦服を脱ぐ仕草すら上品で優雅なシモネッタ提督……屋外での運動や漕艇訓練が続いていたにも関わらず肌はきれいなミルク色で、頭をゆすって髪をなびかせるとしずしずと小川に入っていく……

提督「……まるでヴィーナスね」

シモネッタ提督「お褒めにあずかり光栄だけれど、ご褒美はないわよ?」

提督「それは残念」

…しばらくして…

カサルディ提督「いやぁ、さっぱりした♪」

ベルガミーニ提督「涼しくなったよね」

シモネッタ提督「とりあえず今日はここで野宿すると言うことでよさそうね?」

提督「賛成。この岸辺なら水に浸かる心配もなさそうだもの」

ベルガミーニ提督「そんなことまで分かるの?」

カサルディ提督「そりゃあ分かるよ。いま私たちが座っている岸辺は打ち上げられた流木や小枝よりも高い位置にある……つまり以前の増水でも水が浸かなかっってことよ」

ベルガミーニ提督「なるほどね……」感心したようにうなずいていたが、お腹が「ぐぅ」と鳴いて恥ずかしげに頬を染めた……

シモネッタ提督「次は野営地の設営と食料の確保としましょうか……私とカルラでテントを張るから、フランチェスカ、エレオノーラは食料の確保をお願いするわ」班長として、人柄はいいのだがどこかツキに恵まれないベルガミーニ提督を手元に置いてリスクを請け負い、提督たちを送り出した……

提督「了解」

カサルディ提督「任せておいて」

…海辺…

カサルディ提督「さーてと……お、いるいる」

提督「魚?」

カサルディ提督「魚もだし、海老やら蟹やらもいるわ……ここはひとつ本業だったってところを見せないと♪」迷彩服を脱ぐと濃紺色の下着姿になり、手ごろな流木を拾ってナイフで加工しはじめた……

提督「それじゃあ私は貝でも集めることにするわ」

カサルディ提督「上等。ただ、貝殻のふちは鋭いから気を付けてよ?」手際よく頃合いの銛を作ると軍用ナイフは腰にくくりつけ「ちょっと行ってくるね」とじゃぶじゃぶと海に入っていった……

提督「さてと、それじゃあその間に……あら、ずいぶんいること」

…潮だまりや岩場には牡蠣や黒紫色をしたムール貝のような見慣れた貝類が貼り付いている……ナイフを取り出すと岩場とのすき間にねじ込み、テコの要領でこじる……カサルディ提督は泳ぎが達者だが、流されたり怪我をしたりして助けを求める事があるかもしれないと小まめに様子を見ながら貝類を集める…

…数分後…

カサルディ提督「よっ、貝は採れた?」

提督「ええ。どうやって運ぶか思案中よ……そっちは?」

カサルディ提督「おかげさまで、面目丸つぶれににはならなくて済みそうよ♪」そう言ってかざしてみせたのは立派なサイズのカサゴとメバルで、陽に焼けた顔に満面の笑みを浮かべている……

提督「ふふっ、大漁ね♪」

カサルディ提督「でしょ? カサゴのやつは棘があるから、鱗を落すついでに処理してくるわ」

提督「それじゃあ私はこの牡蠣をどう運ぶか考えることにするわね」

カサルディ提督「あぁ、そっか……じゃあさ」上に着ていたシャツを脱ぎ捨てると袖と裾を結び、風呂敷包みのようなものをこしらえた……

カサルディ提督「魚臭いのは慣れっこだし使っていいよ。その代わりおっぱいの一つも揉ませてよね?」上半身裸の所に袖まくりした迷彩服だけ羽織り、派手なウィンクを投げた……

提督「ええ、お魚の分だけ存分に触らせてあげる♪」
982 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/08/22(金) 01:46:31.43 ID:olL4oV+10
…数分後…

提督「ただいま」

シモネッタ提督「ええ、お帰りなさい……釣果はあった?」

カサルディ提督「見ての通りよ♪」エラに指を引っかけて魚を見せつける……

ベルガミーニ提督「大漁ね」

カサルディ提督「この辺の魚は獲りやすくっていいわ……なんか手伝おうか?」

シモネッタ提督「ありがとう、でも大丈夫よ。火を起こしている間は休憩していていいわ」

カサルディ提督「了解」

…提督とカサルディが魚を獲りに行っている間に残る二人は川岸の岩がえぐれた部分に防水布で「屋根」をつけて、その前に乾いた流木や枝を集めて焚き火の用意をととのえていた…

提督「こっちは牡蠣とムール貝ね……よいしょ」ガラガラと地面に貝を下ろす……

カサルディ提督「ついでにシャツをすすいでくれる?」

提督「もちろん」澄んだ小川で海藻や蠣殻の欠片、ヌメヌメした磯臭い何かがへばりついたシャツを洗い流した……

提督「石けんはないけれど、まぁまぁ取れたわね……あとは乾かしておけば大丈夫よ」

カサルディ提督「ありがとね」

シモネッタ提督「大丈夫? こすれてヒリヒリしない?」

カサルディ提督「私の乳首は丈夫だから大丈夫よ……それよりお腹が減ったし、夕食にしようよ」

シモネッタ提督「そうね。料理にも時間がかかるでしょうから今から取りかかりましょう」

提督「じゃあ手伝うわ、これでもおばさまに一通りは教わったんだから♪」

シモネッタ提督「期待しているわ」

…ありがたいことにサバイバルキットの防水マッチは取り上げられていなかったので、細かな小枝やむしってきた枯れ草を焚きつけにして火をおこす……周囲が明るいので最初は分かりづらかったが、ぱちぱちと威勢の良い音を立てて火が燃え始めた…

シモネッタ提督「さてと、この魚と貝はどう調理しようかしら?」

カサルディ提督「あー……私は釣る方は得意だけど料理の方はあんまりだからなぁ……カルラ?」

ベルガミーニ提督「私も料理は苦手じゃないけれどそこまでは……」

シモネッタ提督「ですって、フランチェスカ」

提督「ええ、料理は得意な方だから任せておいて? お母さまほどじゃないけれどね♪」

シモネッタ提督「期待しているわ。私もある程度ならできるから手伝うわね?」

提督「助かるわ。とりあえず、せっかく携行糧食があるのだからこれをベースにしていきましょうか……」

…教官たちの「行き届いた配慮」のおかげで三日間のサバイバル訓練に対して一班四人、一日分の糧食だけが用意してある……提督はそのうちの一人前一食だけを開け、飯盒(ガメラータ)をセットした…

カサルディ提督「それで料理長、今夜は何を出してくれるの?」

提督「そうね……このトマトのスープをベースに魚を煮込んでアクアパッツァ風、それに焼き牡蠣としましょうか」

シモネッタ提督「あら素敵。それに白ワインでもあればパレルモあたりのリストランテになるわね……誰を口説くつもりなのかしら♪」

提督「ごあいにくさま。さっき約束したから今夜はルクレツィアと過ごすわ」

シモネッタ提督「ふふっ、そう……それじゃあ何を手伝おうかしら?」

提督「そうねぇ……あ、じゃあ火をお願い」周囲を見わたすと不意にこんもりした茂みに目を留め、立ち上がると近寄っていった……

提督「……やっぱり♪」

ベルガミーニ提督「やっぱり……って、なにが?」

提督「この草、よく見たら野生のセージね♪ ほら、少しかじってみると分かるわ」

ベルガミーニ提督「へぇ、どれどれ……うわ!」小枝についた葉っぱを思い切りよくかんでみて、口一杯に広がった強い風味に顔をしかめると小川で口をゆすぎだした……

提督「もう、そんなに勢いよく噛むから……」

…苦笑いしながら飯盒にトマトソースと切ったカサゴ、風味付けと臭い消しのセージを入れて火にかける……牡蠣とムール貝は殻ごと火のそばに置いて口が開くまで待つ…

カサルディ提督「……いい匂いがしてきたね」

983 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/09/03(水) 00:48:36.67 ID:0YJ7uFpX0
シモネッタ提督「初日の夜だからクラッカーも開けましょう」

提督「大盤振る舞いね♪」

シモネッタ提督「その代わり明日からは倹約していくことになるから覚悟するように」

カサルディ提督「ま、魚や貝でよければ私が獲ってくるしどうにかなるでしょ」

提督「頼もしいわね……どれどれ」さじでスープをすくい、軽く舐めてみる……

シモネッタ提督「お味はいかが?」

提督「ちょうどいいわ。かさ増ししたから味が薄くなるかと思ったけれど、魚介から塩味がでているから良い具合よ」

シモネッタ提督「では夕食としましょうか」十字を切って食前の祈りを唱え、提督たちが唱和した……

カサルディ提督「アーメン……っと。さ、牡蠣も焼けたよ♪ 取ってあげる」焚き火のぐるりを囲んだ石の上で良い具合に焼けた牡蠣を軍用手袋でつかむと、手際よく飯盒のふたに乗せてくれる……

提督「グラツィエ……ふぁ、はふ♪」小ぶりで味の濃い牡蠣は塩がなくても十分に美味しく、つるりと吸うと口中を火傷しそうなほど熱い……

シモネッタ提督「アクアパッツァもいい味よ、フランチェスカ」

提督「はふ、ふぉれはよかったわ……」熱い牡蠣を相手にはふはふ言いながら「それは良かったわ」と軽くうなずいた……

カサルディ提督「ほんと、良い味♪」

ベルガミーニ提督「ね、美味しい……熱っ!」すすり終わった牡蠣の殻を飯盒からどけようとして指でつまみ、火傷しそうになって慌てて放した……

シモネッタ提督「気を付けなさい、カルラ? 焼き牡蠣のせいで演習中断なんてさまにならないわよ?」

ベルガミーニ提督「ええ」よほど熱かったのか眉をしかめて、火傷しかけた指をくわえている……

提督「牡蠣じゃなくてアクアパッツァの方にするといいわ……貸して?」飯盒にカサゴとメバルの切り身とスープを入れた……

………

…食後…

カサルディ提督「はぁ、満腹……フランカを奥さんにできる女は果報者だね」

ベルガミーニ提督「ね、とっても美味しかった」

提督「気に入ってもらえて良かったわ♪」スープの一滴も余さず空になった飯盒を見て笑みを浮かべた……

シモネッタ提督「満腹で動きたくないのは分かるけれど、飯盒ちゃんとゆすいでくるように」

カサルディ提督「もうちょっとしたらね。まだ動きたくないし……ふぅ」川岸の砂地に脚を伸ばし、片手でふくれたお腹をさすっている……

提督「ねぇ、ルクレツィア……♪」

カサルディ提督「んー?」

提督「そろそろ定時連絡の時間だけれど、それが終わったら……ね?」甘い笑みを浮かべてウィンクを投げた……

カサルディ提督「そっか、そういえばそうだった……じゃあ余計なことは済ませておかないとね♪」パッと立ち上がると飯盒をゆすぎ、携行糧食に付いている歯みがきセットでいそいそと歯をみがいた……

提督「エレオノーラ、何かまだするべきことはある?」

シモネッタ提督「いいえ、定時連絡さえ済んだらあとは自由時間よ……邪魔はしないわ♪」

提督「了解♪ それじゃあ向こうの岩陰にいるから、何かあったら声をかけてね」

シモネッタ提督「ええ」

…夜…

カサルディ提督「……んちゅっ、ちゅぅ……ん♪」

提督「あんっ……あっ、あっ、んぅ……っ♪」

…各班に渡された野営セットにはそれぞれ「趣向をこらして」欠けている物品があり、提督の班にはテントが入っていなかったが、暖かい時期と言うこともあって防水布や寝袋でどうにかなる……提督とカサルディは「おやすみ」を言ってからあとの二人から見えない岩陰に行くと、唇を合わせて身体を絡め合った…

カサルディ提督「はぁ、相変わらず大きくて張りがあって最高だね♪」

提督「ふふっ、ルクレツィアったらおっぱいばっかりなんだから……♪」乳房にしゃぶりつき揉みしだくカサルディを抱きしめ、引き締まったヒップに手を這わす……

カサルディ提督「だって……あ、それ……いいよ、いい……っ♪」薄暗い中で口を開けて喘ぐカサルディの白い歯がほんのり浮かび上がり、川のせせらぎに交じって二人の秘所が合わさる粘っこい水音が響く……

提督「それにしても……こんなにはしゃいで、明日は起きられるかしら?」

カサルディ提督「フランカってば、寝坊が心配ならこのまま徹夜すればいいでしょ♪」

提督「ふふっ、言ったわね? それじゃあ今夜は寝かさないから♪」

カサルディ提督「望むところよ♪」
984 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/09/27(土) 02:12:43.98 ID:3YjCumvT0
…サバイバル訓練二日目・朝…

提督「……くしゅっ!」

カサルディ提督「んぁ……おはよう」

提督「おはよう、ルクレツィア……って、身体が冷えちゃったわ……」

カサルディ提督「あのあと砂地で寝ちゃったもんね……夜露も降りたみたいだし」

提督「ええ。宵のうちは地面が暖かかったものだから、うっかりしていたわ」

カサルディ提督「ま、運動でもすればすぐに暖かくなるって♪」

シモネッタ提督「……そうね。まずは体操でもして、それから朝食にしましょう」

提督「おはよう、エレオノーラ」

シモネッタ提督「おはよう、フランカ。今日も快晴で良かったわね」

カサルディ提督「言えてる……カルラは?」

シモネッタ提督「さっき起こしたからもう来るでしょう……ほら」

ベルガミーニ提督「おはよう」

カサルディ提督「おはよう、カルラ。それじゃあひとつ体操でもしようか」

シモネッタ提督「そうね、それじゃあ音頭はルクレツィアに任せるわ」

カサルディ提督「了解♪」

…しばらくして…

ベルガミーニ提督「ふぅ……」

提督「朝からいい運動になったわね」川で顔を洗って髪をくしけずり、携行糧食に付属している(少し使い勝手の悪い)使い捨て歯ブラシで歯を磨いた……

ベルガミーニ提督「ね、朝からあれこれやらされてお腹が減っちゃったわ」

提督「同感♪」

…朝食…

シモネッタ提督「さて……あんまり携行糧食に手を付けるのも考えものだけれど、朝食は軽いメニューで済むからどうにかなるでしょう」

提督「あんまりルクレツィアに潜ってもらってばかりでもいけないものね」

カサルディ提督「私は平気だけど、この時間だとちょっと水が冷たいかな……それより服が生乾きなのがうっとうしいね」

シモネッタ提督「そうね。できるだけ乾いた服を着て、濡れた衣類は干しておくように……はい、コーヒー」

カサルディ提督「グラツィエ……あー、温まる」

…朝食はクラッカーにコーヒー、ジャムなどのごく軽い献立になっているイタリア軍の携行糧食……持ち手つきの飯盒のフタでインスタントコーヒーを淹れるシモネッタ、クラッカーを取り出しイチゴジャムを塗る提督…

シモネッタ提督「さてと、今日のスケジュールを伝達するわね。フランカはカルラと薪集め。私とルクレツィアは海で魚介類の採収にあたるわ……昨日に続いてで悪いけれど、魚を獲ることに関してはルクレツィア、貴女が一番だから」

カサルディ提督「気にしなくていいって。なにしろ本業みたいなもんだからさ♪」

シモネッタ提督「助かるわ」

無線機「……指導班よりシモネッタ班へ定時連絡。状況を報告せよ」定期連絡を求めるメッセ兵曹長の声が無線機から響く……

シモネッタ提督「こちらシモネッタ班、総員異常なし」

無線機「了解。それでは本日の課題を指示する、よく聞いておけ」

シモネッタ提督「シモネッタ了解。課題の内容をどうぞ」

無線機「よろしい。本日の課題だが、君たちには「救助を要請する」ため何らかの目印を作成してもらう。目印はのろしでもいいし流木の「SOS」でも構わん。ただし洋上のこちらから見える大きさでなければだめだ。合格したかどうかは定時連絡に合わせて伝達する……理解したか?」

シモネッタ提督「理解しました」

無線機「よろしい、それでは上手くやれ。以上だ」

カサルディ提督「……二日目ものんびりバカンスってわけにはいかないみたいだね」

シモネッタ提督「そのようね。計画変更、全員で薪を集めて大きなのろしを上げることにしましょう」

提督「了解」
985 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/10/09(木) 01:55:15.58 ID:B90Orw0b0
シモネッタ提督「それじゃあ薪を集めるとして、雑木林に落ちている枝を集めるのと海岸で流木を集めるのと……どっちが良いかしら」

提督「そうね……乾いた薪だと煙が立たないから、むしろ生乾きの流木を集める方が良いんじゃないかしら」

ベルガミーニ提督「それに海岸でのろしを上げるのに丘から焚き付けを運ぶのは効率が悪いと思うわ」

シモネッタ提督「確かに二人の言う通りね。それじゃあ海岸で流木を集める案で行きましょう」

カサルディ提督「了解。ま、どっちにしろ集める手間は同じだし」

…海岸…

提督「……それにしても綺麗な海ね」

シモネッタ提督「あら、いきなりなぁに?」

カサルディ提督「フランカはがさつな私なんかと違って詩人だからね」

提督「茶化さないでよ///」

ベルガミーニ提督「でも、確かに綺麗な海……」

…集めた流木を小脇に抱えながらふと視線を上げると、透き通るような海が視線に飛び込んでくる……朝日に照らされ遠くまで青い海原は白い砂の浜辺に波を送っては打ち砕ける波音と引き波の泡立つような音を永遠にくり返す…

提督「……こんな綺麗な海なのに艦娘たちは毎日のように深海棲艦と戦っていて、いつか私たちもその指揮を執る日が来るかもしれないのね」

カサルディ提督「そういうことになるね。でもさ、どこかで戦いがあってどこかで平和な一日があって、どこかで人が生まれて、あるいは亡くなって……世界なんてそういうものなんじゃない?」

シモネッタ提督「あら、フランカが詩人ならルクレツィアは哲学者ね」

カサルディ提督「からかわないでよ……ほら、うちは漁師の家だからさ。魚が獲れる時もあれば獲れない時もあって、そのせいか「なるようにしかならない」って考えになるんだよね」

シモネッタ提督「宿命論?」

カサルディ提督「とはでは言わないけど……ま「当たって砕けろ」式かな。だから私は提督だの司令官だのには向いてないよ。舵輪も自分で握っていたいし」

ベルガミーニ提督「じゃあ駆逐艦の艦長とか?」

カサルディ提督「そうそう、そういうのがいい。司令部にこもって海図とにらめっこなんて向きじゃないし……フランカはどう?」

提督「そうねぇ……それはまあ、私だって一度くらいは提督になって号令一下、艦隊が動く想像したことがないと言えば嘘になるけど……」

シモネッタ提督「おかしくないわ。海軍士官候補生の夢だもの」

提督「でも私はこうやって気の合う仲間と一緒に過ごして、お休みの時には美術館にでも行って……なんて暮らし方の方が似合っているわ」

カサルディ提督「ずいぶんと枯れてるねぇ、それじゃおばあちゃんみたいだよ」

提督「あら、そのおばあちゃんと昨晩「イイコト」をしたのは誰だったかしら?」

カサルディ提督「うわ、これは一本取られたな……カルラはどんな士官になりたい?」

ベルガミーニ提督「うーん、私も一度くらいは艦隊司令官をやってみたいけど……私は運が悪いから」

シモネッタ提督「だったらそのぶん準備すればいいのよ。運が悪いって言ったって何でも運で決まるわけじゃないもの、自信を持ちなさいな?」

カサルディ提督「へぇ……ロリコンにしては良いこというね」

シモネッタ提督「むしろロリコンだからこそ、よ。可愛い女の子を導くには完璧な「お姉ちゃん」でなければいけないもの」

提督「あー……それで、エレオノーラはどんな士官になりたい?」

シモネッタ提督「それはもう、ゆくゆくは可愛らしい幼女たちを集めた鎮守府に赴任したいけれど……でもきっとダメね」

提督「どうして?」

カサルディ提督「その前に憲兵に捕まるからでしょ」

シモネッタ提督「馬鹿言わないで。愛すべき女の子たちを深海棲艦との戦火の海に送り込むなんて出来そうにないからよ」

提督「確かに……金属の塊とは訳が違うものね……」

シモネッタ提督「そういうこと。でもいずれは折り合いをつけて頑張ってみるつもり……それより薪は集まった?」

カサルディ提督「見ての通りひと山は集まったよ」

シモネッタ提督「これだけあればのろしの一つも起こせそうね。後ろはどう?」

ベルガミーニ提督「後ろ?」

シモネッタ提督「沖から見るのだから、背景が黄色っぽい地面より雑木林の緑の方が見やすいはずでしょう」

提督「それなら丁度いい位置じゃないかしら、後ろの斜面は林よ」

シモネッタ提督「それじゃあのろしを上げて課題を攻略するとしましょうか」
986 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/10/18(土) 01:52:44.86 ID:N9wuO3HK0
カサルディ提督「それじゃあつけるよ?」

シモネッタ提督「ええ、お願い」

…マッチを擦って集めた枯れ草や松葉に火をつけ、それから小枝に火を移していく……ぱちぱちと次第に勢いよく火が舌を伸ばし始め、テントのような三角形に積み上げた流木に燃え移りはじめた…

提督「無事についたわね」

シモネッタ提督「でも本題はこれからよ? 教官から見えるような煙が上がってくれると良いのだけれど……」

ベルガミーニ提督「流木、もっと集めてきた方がいいかな?」

シモネッタ提督「ぜひお願いするわ、あって困るものじゃないし……ルクレツィア、カルラと一緒に流木集めをお願い」

カサルディ提督「了解」

…まだ湿っている流木に火が付くと、ときおり大きな音を立ててはぜたりしながら白い煙をもくもくと噴き上げ始めた……風下にいると目がヒリヒリしていがらっぽいので、慌てて風上に場所を移す提督たち…

提督「まるでエトナ山ね」

シモネッタ提督「言い得て妙ね。これなら十分見えるんじゃないかしら」

提督「だといいわね……見えたかどうかは教官が教えてくれるのよね?」

シモネッタ提督「ええ、定時連絡の時にね」

提督「あと一時間くらい?」

シモネッタ提督「そのくらいよ……どうやら少なくともひとつは同じ考えの班があったようね」指さした先の稜線の向こう、うっすらと立ちのぼる白煙が見える……

提督「あと、もっと単純な考えを実行した班もあるみたいよ?」提督が視線を向けた島の頂上近く、まばらな林の間にぽっかり広がっている斜面の草原で一生懸命に防水布を振り回している小さな姿が見える……

シモネッタ提督「ふふっ、あんなに布を振り回して……闘牛士にでもなるつもりなのかしらね?」

提督「かもね♪」

カサルディ提督「ふぅ……ただいま」

提督「お帰りなさい。これはまたすごい量ね」

カサルディ提督「あっちの班ののろしが見えたからね、負けちゃいられないでしょ?」

ベルガミーニ提督「はぁ、はぁ……だからっていっぺんに運ばなくても……」

シモネッタ提督「まあまあ。それにこれだけあればお昼に豪華な浜焼きも出来るわ。またエレオノーラにお願いすることになっちゃうけれど……」

カサルディ提督「いいよ。味付けはともかく、獲る方は任せておいて?」

提督「じゃあお母さま秘伝の味付けを披露しなくちゃ♪」

…昼・定時連絡の時間…

無線機「……指導班よりシモネッタ班、定時連絡。状況はどうだ」

シモネッタ提督「こちらシモネッタ、異常なし」

無線機「了解。それから課題については海岸に上がるのろしの煙を確認した。合格だ、よくやったな」

シモネッタ提督「ありがとうございます」

無線機「では周辺に飛び火したりしないようきちんと消しておけ、通信終わり」

提督「……やったわね♪」

カサルディ提督「そりゃそうよ。なにしろこっちには同期トップのエレオノーラと、おばさんからサバイバルを教わったフランカがいるんだから」

シモネッタ提督「ルクレツィアったら褒めすぎよ……さ、お腹も空いたことでしょうしお昼にしましょう」

…提督たちは携行糧食の一食分を開けてクラッカーを均等に分け、それからカサルディ提督が軍用ナイフをくくりつけたお手製の「銛」で射止めたシマダイのような魚を小枝を削り出した串に刺し、提督が携行糧食についている貴重な塩とコショウ、それに野生のオレガノを擦り込むとのろしの残り火でこんがりとあぶった…

カサルディ提督「うーん、絶品……たったこれだけの調味料でここまで美味しくできるなんて、やっぱりフランカは天才だね」

提督「私なんてお母さまと比べたらまだまだだわ」

シモネッタ提督「これでまだまだだとしたら、あなたのお母さまの手料理をぜひご馳走になりたいわ」

提督「それじゃあ卒業祝いにうちに来る?」

ベルガミーニ提督「賛成♪ あ、でも大勢で押しかけて迷惑じゃない?」

提督「そうね……もちろん事前に話をしておかないといけないけれど、お客様が三人ならどうにかなると思うわ」

カサルディ提督「ははっ、これで卒業の楽しみが増えたね♪」
987 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/11/07(金) 02:09:35.21 ID:kpNw0g3l0
…二日目・宵…

ベルガミーニ提督「……すん、すん」

提督「カルラ、どうかしたの?」

ベルガミーニ提督「あぁ、フランカ……いえ、流石に二日目ともなると自分の体が臭っているんじゃないかって気になって……」

提督「分かるわ。支給されたサバイバルセットに石けんの一つも入れておいて欲しかったわね」

…とりあえず小川で水浴びをしタオルで身体をこすっているとはいえ、動き回って汗ばむ事も多いなかで石けんなしは少し厳しい……提督も迷彩服の袖を近づけ鼻をひくつかせてみた…

提督「体臭って自分じゃあ分からないって言うけれど本当みたいね……どう、カルラ? 臭う?」

ベルガミーニ提督「ううん、ちょっぴり汗の臭いはするけれど大丈夫」

カサルディ提督「二人ともどうしたの?」

ベルガミーニ提督「あぁ、ルクレツィア……いえ、この二日というもの身体を洗っていないから体臭が気になって……」

カサルディ提督「なるほど、そういうこと。 私に言わせれば二人はいい匂いで何てことないよ……むしろ私よ」

提督「別に大丈夫だけれど……」

カサルディ提督「優しいねえ、そう言ってくれるのはフランカだけだわ」

ベルガミーニ提督「いや、フランカの言うとおりで臭くはないけど?」

カサルディ提督「磯で魚と格闘して、シャツを袋代わりに貝を運んで汗をだくだくかいている女が臭くないわけないでしょうが……いいの、これも宿命みたいなもんよ」

提督「うーん、ルクレツィアの場合は「臭い」っていうよりちょっと日焼けした肌の香ばしい匂いに似ているかも」

ベルガミーニ提督「あぁ、それだわ! というより、なんか犬の毛皮に顔を埋めたときみたいな♪」

カサルディ提督「……それってケモノ臭いってことじゃない」

ベルガミーニ提督「っ!? いや、そういう意味じゃなくて……温かくて私は嫌いじゃない匂いだから……」

カサルディ提督「取って付けたような気休めをありがとね」

ベルガミーニ提督「いえ、だから……!」慌てふためいて言葉につまるベルガミーニ提督……

提督「ルクレツィア、からかうのはそのくらいにしてあげたら? カルラってばすっかり慌てているじゃない」

カサルディ提督「あははっ、それもそうね。大丈夫よカルラ、別に悪口じゃないって分かってるわ」

ベルガミーニ提督「そ、そう……?」

カサルディ提督「とはいえ犬臭いってのは考え物ね……ねぇフランカ、何かいい手はある?」

提督「そうねぇ……」

シモネッタ提督「三人とも何をおしゃべりしているの? 仲間はずれなんて寂しいわ♪」

提督「あぁ、エレオノーラ。いえ、実はね……」かくかくしかじかと事情を説明する……

シモネッタ提督「なるほどね、それで悩んでいたわけ」

カサルディ提督「そうよ。それにしてもエレオノーラ、このシケた島で二日も過ごしているのにどうやったらそんな良い香りをさせていられるのよ」

ベルガミーニ提督「それ、私も聞きたい。ここには石けんもないのに」

…歯磨き粉は虫歯予防のために用意されているが「三日くらい垢を落とさなくても死ぬことはない」という教官たちのありがたいお言葉によって石けんはない……にも関わらずどこか甘く爽やかな香りを漂わせているシモネッタ提督…

シモネッタ提督「あぁ、そのこと……聞きたい?」

提督「ぜひとも」

シモネッタ提督「よろしい、では教えて進ぜよう♪」おどけて白ひげをたくわえた賢者のような口調を真似ると「ついてきて」と三人を草藪の方へと案内した……

カサルディ提督「ここがどうかしたの?」

シモネッタ提督「うふふ……フランカ、貴女なら分かるんじゃないかしら?」

提督「えぇ? ……あ、これってもしかして野生のミント?」夕闇の中で枝葉に触れると途端に爽やかな香りをさせた草藪は、提督が実家の庭で母親のクラウディアから教わったミントの近縁種だった……

シモネッタ提督「ご名答。それで、柔らかい若枝を束ねてこすると……ね、少しは良い香りになるでしょう?」

ベルガミーニ提督「うわぁ、頭良い……ねぇエレオノーラ、良かったら私にも使わせてくれる?」

シモネッタ提督「私の使いさしを借りなくたって、そこにある材料で作れば良いじゃない♪ べつに私の藪じゃないもの」

ベルガミーニ提督「そっか、それもそうね」
988 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/11/29(土) 01:16:14.13 ID:qA6qMkqJ0
提督「うん、出来たわ♪」うまいこと若枝を折り曲げて楕円型の束をつくり、それを手近なツタで縛ってタワシ状のものをこしらえた……

ベルガミーニ提督「もう暗いし水浴びをするなら早くしないと……夜になったら小川の水も冷たくなるし」

カサルディ提督「そうだね、急ごう」

シモネッタ提督「あんまり暗いとあぶないから、私が照らしておいてあげるわ」焚き火から火の付いた長めの枝を取り出し、たいまつ代わりに掲げると提督たちについてきた……

…夜の帳が降りた小川は川岸の白い砂だけがほんのり明るく、水面そのものは提督たちが動いてできる波紋だけがたいまつの灯に照らされて判別できる程度で、あとは一筋の黒いリボンにすぎない……宵闇で視界が狭められた代わりに耳が研ぎ澄まされ、川のせせらぎや打ち返す海の波音が昼間よりも大きく響く…

カサルディ提督「うわ、ちょっと冷たくなってきてる……あんまり長居してると風邪をひきそうね」

ベルガミーニ提督「まさか? ルクレツィアなら真冬の北極海に飛び込んだってへっちゃらでしょ?」

カサルディ提督「失礼ねぇ、私だって一応人の子なんだから風邪くらいひくわよ……でしょ、フランカ?」

提督「そうよ、さすがにルクレツィアだって真冬の北極海は無理よ。せいぜいノルウェー沖くらいね♪」

カサルディ提督「もう、どいつもこいつも……せっかく魚だのなんだの獲って来てあげたって言うのにさ」

提督「ふふ、悪かったわ。代わりに背中を流してあげるから」

カサルディ提督「はいはい」

シモネッタ提督「はしゃぐのはいいけれど、早く上がらないと本当に身体が冷えるわよ?」

提督「それもそうね……分かった、すぐ上がるわ」

…まだ緑色をした野生ミントの若枝で身体を擦ると、途端に爽やかなミントの香りがふっと立ちのぼる……同時に少し固くなった茶色の枝は垢すりとしてほどよい硬さで、柔らかいだけのスポンジよりもいいような気がしてくる……士官学校生活の短い入浴時間のおかげですっかり染みついた手際の良さで手早く身体を流すと、じゃぶじゃぶと川岸に上がった…

シモネッタ提督「さ、凍える前に火にあたって?」

提督「ありがとう」裸の尻に砂がつかないよう迷彩服の上着を広げて敷布代わりにすると火の前に腰かけ、両手をかざして焚き火を眺めた……

カサルディ提督「よいしょ……っと」

ベルガミーニ提督「うー、最低……頭が濡れちゃったわ……」

提督「どうしたの?」

ベルガミーニ提督「川から上がるときに足を取られて転んじゃって……もう」いくら短くしているとはいえ、髪が濡れるとなかなか乾かないのでぶつぶつとこぼしている……

カサルディ提督「やれやれ、カルラってばドジなんだから」肩をすくめてからかい半分に言った……

シモネッタ提督「そのくらいで良かったわね……はい、どうぞ」たいまつで提督たちを照らしている間に温めていたらしい携行糧食のミネストローネをそれぞれの飯盒に注いだ……

提督「あら、ありがとう。道理で良い香りがすると思ったわ」

カサルディ提督「まさかこいつをありがたがって食うことになるとは思わなかったわ……ふー、温かい」

ベルガミーニ提督「そうね。でも明日で訓練は完了だし、今度の休みはうんと美味しいものでも食べに行こう?」

提督「賛成♪」

シモネッタ提督「いいわね」

カサルディ提督「ま、それよりまずは明日の訓練をやっつけないとね。教官たちのことだから最終日にはとっておきのろくでもない課題を用意しているに違いないし」

ベルガミーニ提督「うわ、ありそう……」

…深夜…

提督「うぅん……」

提督「はぁ、まだこんな時間……」疲れていたにもかかわらず目が覚めてしまった提督……腕時計をのぞくと夜明けにはまだしばらくある……

提督「ふぅ」薄い寝袋に身体を預けたまま頭の後ろで手を組んで枕代わりにして、天を行く星々を眺めた……

シモネッタ提督「……寝つけないの?」

提督「エレオノーラ……ええ、なんだか目が冴えちゃって。貴女はちゃんと寝た?」

シモネッタ提督「ええ。今は深夜直をね……隣、座ってもいいかしら?」

提督「もちろん」

シモネッタ提督「……それしても、貴女と一緒で良かったわ」

提督「私は幼女じゃないけれど平気?」

シモネッタ提督「ふふっ、それとこれとは別よ……一人の友人として。フランチェスカ、貴女に出会えて良かったと思っているわ」

提督「そうね、それで言ったら私も……エレオノーラ、貴女には感謝しているわ」

シモネッタ提督「そう言ってくれて嬉しいわ」ふっと小さく微笑むと提督の頬に軽くキスをした……
989 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/12/18(木) 00:52:39.51 ID:SDHyguTc0
…三日目・朝…

提督「今日でいよいよ最終日ね」

カサルディ提督「ま、案外悪くなかったよね。放送や時鐘に追い回されることもないしさ」

ベルガミーニ提督「どうかな、教官たちのことだからまだ何か隠しているのかもしれないし……」

シモネッタ提督「そうなったとしてもどうにか切り抜けましょう、せっかくここまで来たんだから……でしょう?」

提督「そうね」

カサルディ提督「言えてる。それじゃあまずは一つ、朝飯を獲ってくるとしますか♪」

…寝ていてこわばった身体をほぐすための体操を全員で済ませると、一つのびをしてからお手製の銛と、漂着ゴミの漁網からでっち上げた網袋を手に渚に向かうカサルディ提督…

提督「じゃあ私は薪を集めてくるわ」

ベルガミーニ提督「じゃあ私はルクレツィアに付いていくわ」

シモネッタ提督「あら、私だけなんにもなし?」

カサルディ提督「お留守番と無線機をよろしくね♪」

…朝食後…

提督「ふぅ……エレオノーラは料理も上手ね」

シモネッタ提督「そう? 料理上手のフランチェスカに言われると悪い気はしないわね」

ベルガミーニ提督「美味しかったけど、これで糧食の残りは一人分のビスケットだけ……教官の気まぐれで「もう一日追加」とか言われたら困るかも」

提督「メッセ教官ならやりかねないわね?」

カサルディ提督「ま、その時は私が獲ってくる海鮮でしのぐってことで……」お腹を満たし、たわいないことをしゃべっていると無線機が鳴り始めた……

無線機「指導班よりシモネッタ班、定時連絡。現状を知らせ。どうぞ」

シモネッタ提督「シモネッタ班より指導班。異常なし、どうぞ」

無線機「指導班了解。それでは今日の課題を伝える、地図を用意しろ……いいか?」

シモネッタ提督「用意できました、どうぞ」提督が広げた地図を手元に置いた……

無線機「よろしい、それでは島の地図にある北側の湾を確認しろ。地図上のA6区にある」

シモネッタ提督「確認しました」

無線機「よし。それでは本日1400時までに当該地へと移動しろ。手段は問わない。不測の事態の発生、または到着が間に合わないよう進出状況ならその時点で報告しろ。理解できたか?」

シモネッタ提督「理解しました」

無線機「よろしい……この二日というもの砂浜でのんびりしていてなまっただろう。しっかり運動することだ。湾に到着したらこちらで収容、その時点で合格とする。遅刻するなよ?」

シモネッタ提督「了解」

無線機「では収容ポイントで待っている。環境のためゴミはきちんと持ち帰り、怪我しないように。以上、通信終わり」

シモネッタ提督「……だそうよ」

ベルガミーニ提督「今から1400時までに島の北側……?」

カサルディ提督「ホントやってくれるよ、メッセ教官は……♪」思わず小さく笑い出した……

提督「いつも予想以上よね……ふふっ♪」

シモネッタ提督「ふふふっ♪」

ベルガミーニ提督「あはははっ♪」

一同「あはははははっ♪」

提督「あー、ひぃ……ふぅ……ともかく、まずは荷物をまとめなくっちゃ……」笑いのあまり目尻に溜まった涙を拭うと防水布を畳みはじめた……

カサルディ提督「火は消してあるし……と」

シモネッタ提督「糧食のゴミはまとめて袋に……」支給されたセットの中に入っていたゴミ袋に糧食の空きパッケージや包み紙をまとめる……

ベルガミーニ提督「これで忘れ物はなさそうね」

シモネッタ提督「よろしい。それじゃあ島の北側への行き方を考えましょう」

提督「そうね、よく考えて決めないと」キャンプとも言えない仮の野営地を手際よく畳むと、川べりの砂浜に地図を広げて頭を寄せ合った……
990 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2025/12/29(月) 02:06:13.78 ID:aQlvJ2x40
ベルガミーニ提督「筏を作ったら? 波打ち際には打ち上げられた流木なんかがたくさんあるし、漁業用の浮きだとかをくくりつければ浮力の足しにもなるんじゃない?なにより海軍らしいし♪」

カサルディ提督「私はあんまり賛成できないな。浜辺は割と穏やかだけど岩場の向こうはけっこう波が立っているし、なにより筏を作る時間が足りそうにない」

提督「そうね。筏なら歩かなくて済むし島を縦断する必要もないけれど、色々と制約が多そうだものね……エレオノーラ、班長として判断してほしいわ」

シモネッタ提督「ええ、分かったわ……カルラの「筏」案も悪くはないけれど、時間的な制約と航行の不安があるのでやめておきましょう。残念ながら愚直に歩くしかないわ」

カサルディ提督「やれやれだね……で、ルートは?」

シモネッタ提督「そのことだけれど、みんな地図を見て? ……ご覧の通り私たちは島の南側。回収地点は北側の湾。単純に考えれば真っ直ぐ歩くのが一番早いということになるわ」

提督「けれど地形を考えたらそうはならない」

シモネッタ提督「ええ、フランチェスカの言うとおり……島の真ん中はけわしい岡になっていて、小さいけれど崖や斜面があったり岩場になっていたりして通るのに苦労しそうな地形をしている」

カサルディ提督「距離はあるけど海沿いを進めば迷子にもならないし、地図を見る限りでは海に突き出した崖や岩場みたいな障害があるようにも見えない」

シモネッタ提督「その通り。あるいは賭けになるけれど、ここを突破するか……」

…地図に書かれている岡の西よりの部分にはマフィンの表面のような割れ目が記載されていて、そのギザキザのルートをたどっていけば近道をした上で北側の湾に出られそうに見える…

カサルディ提督「その方がかなり早そうにみえるけど……どうだろ」

ベルガミーニ提督「結構な冒険になりそうよね」

シモネッタ提督「私個人としては時間の余裕があるならこの道を使いたくはないわね。短縮して得られる時間がそこまで多いとも思えないし、誰かが捻挫したり骨折したりしたら話にならない」

提督「時間厳守とはいえ怪我をしたら演習中止になってしまうものね」

カサルディ提督「確かに……それじゃあともかくそこまで行ってみて、その上で改めて決めることにしない?」

ベルガミーニ提督「賛成」

シモネッタ提督「それが一番よさそうね。それじゃあルクレツィア、先導をお願い。私は地図を持ってその次に入る。カルラはその次で、フランチェスカは最後尾から周囲に気を配って」

カサルディ提督「了解、斬り込み役がちびの私なら後ろからでも前が見えるもんね♪」

提督「しんがりは任されたわ」

シモネッタ提督「お願いね? 時計は合わせてあるから、時間配分は私が指示するわ。キツくなったり、体調に異変を感じたらすぐ報告すること……それじゃあ、進発!」

…最初は海風の吹く浜辺を気軽に歩いていた提督たちだったが、陽が高くなるにつれてじわじわと体力が蝕まれはじめた……さくさくと心地よい音を立てる砂浜は足がめり込み意外と歩度が進まず、かといって浜辺を離れると低木の絡みあった藪や転がっている岩がルートを邪魔して迅速に進ませてくれない……小柄だが体力自慢のベルガミーニ提督が軍用ナイフをなた代わりに藪を切り開き、シルヴィアおばさまから野山の歩き方を教わっていた提督はシモネッタ提督たちと相談しつつ道を選んでいく…

………

…一時間後・谷間の入口…

シモネッタ提督「……谷が見えたわ。ここで休憩しましょう」

ベルガミーニ提督「賛成……もうくたくた」

提督「同感ね……」

カサルディ提督「私もちょっとくたびれたわ。枝を払っていたからナイフを握っていた手が痛いし」ナイフを鞘に戻すとしかめ面で手を握ったり開いたりした……

シモネッタ提督「みんな、ちょっといいかしら?」水筒の水を口に含み喉をうるおすと、シモネッタ提督が差し出すように地図を広げた……

シモネッタ提督「……見ての通り、私たちはここまで来たわ。とはいえやはり島の外周を大回りしていては時間的に厳しい」

カサルディ提督「だったら谷間を抜けるしかないでしょ」

ベルガミーニ提督「でも怪我をしたり谷間を抜けるのに時間がかかってたどり着けないようじゃあ本末転倒よね……形だけとはいえ「サバイバル訓練」なんだから、多少時刻に遅れたとしても無事であるべきなんじゃない?」

シモネッタ提督「私もそこが悩みどころなの。時間のためにリスクを負うべきか、安全策で行くか……」

カサルディ提督「どうかな。もしこれが任務だったとして、例えば戦隊との会同時刻にたどり着かないじゃ話にならないでしょ」

シモネッタ提督「フランチェスカはどう思う?」

提督「そうね……私もカルラの言うように「無事であるべき」だとは思うけれど、ここは谷間を行く案に賛成」

シモネッタ提督「あら、理由は?」

提督「ルクレツィアの言った「会同時刻に間に合わないと話にならない」って言葉が引っかかったの。これが艦隊ならとにかく合流を急いで、艦隊そのものが間に合いそうになかったら速い艦を分離して先行させる。もちろん艦隊の分散で各個撃破の危険は高まるかもしれないけれど、増援が来れば味方は立て直せるし相手は驚くかもしれない……それに、たとえ一隻でもゼロよりはましじゃない?」

シモネッタ提督「ふっ、それはそうね……いいわ、それじゃあ残り五分だけ休憩したら谷間を進むことにします」

カサルディ提督「了解」

ベルガミーニ提督「どっちにしても早くゴールしたいわ……」

提督「もうちょっとだから頑張りましょう、カルラ?」
991 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2026/01/14(水) 00:52:29.36 ID:whVusIlC0
…しばらくして・谷間…

カサルディ提督「うーん、今のところはわりといいペースじゃない?」

シモネッタ提督「ええ、今のところはね……カルラ、フランチェスカ、大丈夫?」

ベルガミーニ提督「ええ、どうにか」

提督「まず生きてはいるわ」

シモネッタ提督「その調子よ、頑張って?」

…小柄な身体のどこにそんな力が隠れているのか、疲れた様子も見せずに軍用ナイフでもつれた茂みの枝を切り払いつつ進んでいくカサルディ提督……シモネッタ提督も多少汚れてはいるが相変わらず優雅なままで、提督としんがりを代わって後ろから全体を見通しつつ、へこたれがちなベルガミーニ提督を支え応援しながら進む…

カサルディ提督「……ったく、藪が深くって切り払うのもおっくうね。ナイフじゃなくてマチェットがあればいいのに」

提督「こんなに繁っているのは予想外だったわね……また代わりましょうか?」時々カサルディ提督と先頭を代わってはナイフを振るう提督…シルヴィアおばさまとの猟や散策が大いに役立ち、二人で並進するように道を切り開いていく……

カサルディ提督「ありがとう。私がへばったらお願いするわ」

シモネッタ提督「みんな、このペースならどうにか刻限に間に合いそうよ」

ベルガミーニ提督「ありがたい限りだわ……」

…提督たちが進む谷間は岩がゴロゴロしていて、その隙間から灌木や草が生い茂って足元がかなり不安定になっている……カサルディ提督は足元を確かめつつ、ぐらつく岩や支えにするには根の浅い灌木があるとよく通る声で注意する…

………

…またしばらくして…

カサルディ提督「くそっ、冗談でしょ?」

提督「これは……エレオノーラ!」

シモネッタ提督「ええ、見えてるわ……これは予想外ね」

ベルガミーニ提督「あぁもう、信じられない……」

…提督たちの目の前には渡された大まかな地図には載っていない程度の……しかし登るには苦労しそうなちょっとしたガレ場が立ちはだかっている…

カサルディ提督「どうする?」

シモネッタ提督「……残りの距離は半分もないし、今から戻って迂回していたら到底間に合わない。どうにかして登って突破しましょう」

ベルガミーニ提督「はぁぁ……」

提督「高さはそこまでじゃないけれど、進むとなると大変そう……ロープがいるわね」肩にかけていたロープを下ろすと結び目をほどき始めた……

カサルディ提督「そうらしいね。エレオノーラ、私がよじ登ってロープを引っかけるから下の方は任せるわ……だてに漁師の娘じゃないってことを見せなくちゃね♪」

シモネッタ提督「ええ、下はきっちり支えておくから安心して? 上のとっかかりにロープを引っかけるのは身軽な貴女でなくては出来そうにないものね」

提督「女の子を引っかける方だったら私たちでもどうにかなるけれどね♪」

カサルディ提督「あははっ♪ それじゃあやってあげるから待っててよ、もしも落っこちたときにはその柔らかいおっぱいで受けとめてよね?」

提督「了解♪」

…ロープの端を野戦服のベルトに通すと、ガレ場の岩や斜めに生えた木を確かめながらよじ登っていく……ふもとではシモネッタ提督が余計なたわみが出ないようロープを繰り出し、提督とベルガミーニ提督がそれぞれ防水布の端を持って広げ、あって欲しくない落下に備える…

カサルディ提督「ふっ、はぁ……ふぅ……大丈夫、着いたよ!」ロープを結び終えるとガレ場の頂上から手を振った……

提督「ふぅぅ……」

…ロープを掴みながら提督たちはガレ場を越え、ほんの五メートルばかりの頂上に着くとエヴェレスト登頂に成功したように抱き合って喜び合った…

シモネッタ提督「これもルクレツィアのおかげね……さ、あとは真っ直ぐ進むだけよ」

カサルディ提督「よっしゃ、それじゃあ私たちが一番乗りして教官の鼻を明かしてやろうよ♪」

提督「賛成♪」

ベルガミーニ提督「了解、私も頑張るわ」

シモネッタ提督「そうね、勢い込むのはいいけれどペースを崩さないように行きましょう……最後まできっちりね」

カサルディ提督「まかしといて♪」

………

992 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2026/01/26(月) 02:06:42.70 ID:TsjkeRW/0
…数十分後・北の浜辺…

シモネッタ提督「ふぅ、着いたわね」

カサルディ提督「他の班はほとんど来ていないし、もしかしてかなりいい方じゃない?」

提督「はぁぁ……やったわね」

ベルガミーニ提督「……助かったわ、もうくたくた」

…浜辺には引き上げてあるゴムボートと、その脇で待っている教官たち……中でもメッセ教官は他の教官たちや補助教官たちより一歩前に立ち、腕を組んで口の端に笑みを浮かべている…

メッセ教官「おう、到着したな。それじゃあ報告に来てくれ」

シモネッタ提督「はっ。士官候補生ベルガミーニ、カンピオーニ、カサルディ、シモネッタ以上四名、無事到着いたしました!」

メッセ教官「よろしい! なかなか早かったな、良くやった。班長、どんな経路を通ってきた?」

シモネッタ提督「はい。宿営していた場所から島の山地にある谷間を抜けて来ました」

メッセ教官「岩や樹木のような障害物で通れなかったり、誰かが脚をくじいたりというリスクは考えなかったのか?」地図を指さして尋ねた……

シモネッタ提督「そのことは班員とも相談しましたが、時間に間に合わせるためにはやむを得ない危険と判断しました」

メッセ教官「ふむ。ではカンピオーニ候補生、もし仮に誰かが怪我をした場合どうすべきだと思う?」

提督「負傷者には付き添いを付け、無事な班員を集合地点に先行させます」

メッセ教官「それでは戦力の分散に繋がらないか? どうだ」

提督「それは確かですが、増援が見込まれただけでも敵側にとっては脅威を覚えさせることができるので分離・先行させることに意義があると考えます」

メッセ教官「なるほど。ではベルガミーニ候補生、第二次大戦中の海戦において自軍が劣勢でありながら「敵に脅威を感じさせた」ことで勝利した具体例を挙げてみろ」

ベルガミーニ提督「え、えぇと……ラプラタ沖海戦における英巡洋戦隊です」

メッセ教官「その通りだ。英軍は重巡「エクゼター」と軽巡「エイジャックス」「アキリーズ」の三隻でありながら優勢であるかのように振る舞い、ポケット戦艦「アドミラル・シュペー」を疑心暗鬼に陥らせ自沈させることに成功したな……結構だ。これだけ身体を使った後でもきちんと答えられるなら、きっと砲弾が飛んできても大丈夫だろう!」

…メッセ教官は提督たちに「解散してよろしい、少し息を整えろ」と言うと暖かくそれぞれの肩を抱き、ニヤリと笑うと次の班を出迎えに行った…

カサルディ提督「はー……まさかこんなタイミングで戦史の問題を喰らわせてくるとは思わなかったよ。私じゃ答えに詰まったかもしれないし、みんながいてくれて助かったよ」

提督「舌だけでどうにかなる問題ならいつでもどうぞ……ちょっと座らせてもらうわね」柔らかい砂浜に腰を下ろしてくたびれきった脚を投げだし、三々五々にやってきた他の候補生たちと軽く声を交わす……

シモネッタ提督「ふぅ、これでやっと私も班長じゃなくてただの候補生に戻れるわね」

提督「でも貴女が班長で助かったわ。ありがとう、エレオノーラ」

シモネッタ提督「ノン・ファ・ニェンテ(いいのよ)、私も班員が貴女たちで良かったわ……そろそろ全員着いたみたいね」

…元気よくまとまって駆けてくる班、疲れた脚を引きずって疲労困憊の様子の班、川にでも落ちたのか濡れネズミでやってくる班……さまざまな様子の班が砂浜にたどり着いて到着の報告を済ませると医官が候補生たちの体調を確かめて報告し、メッセ教官が他の教官や助教たちに一つうなずくと集合の号令をかけた…

メッセ教官「よし、これで全員揃ったようだな。まずは島での数日間、怪我人も出さずバカをしでかす奴もなく、無事に過ごしてくれて何よりだ。ご苦労だった」

メッセ教官「以上をもって主だった訓練項目はほぼ完了だ。諸君はこのあと士官学校に戻ってこの前の学科試験の成績と合わせた総合成績を受け取り、卒業と訓練航海に備えることになる……私も教官としてお前たちを見送ることができそうで良かったよ」そこまで言うとニンマリとあくどい笑みを浮かべた……

メッセ教官「……とは言うもののまだ訓練は終わっちゃいない。暖かな島で号令もなくのんきに過ごして、羽を伸ばし大いにたるんだ生活を送ったことだろうが、そんな状態で卒業されては困る。そこでだ……」

メッセ教官「……今から出迎えのゴムボートが来ている場所まで諸君にはランニングをしてもらう!」途端に悲鳴ともため息ともつかない声が響いた……

メッセ教官「さあ、元気を出してしっかり走れ! 士官候補生として一人も落伍することなくきっちり終わろうじゃないか!」

ベルガミーニ提督「うえぇ……」

提督「おおかたそんなことだろうと思ったわ……」

カサルディ提督「ま、こうなったら最後までやりきろうよ!」

シモネッタ提督「そうね、おたがい卒業まであと少しだもの……ね?」元気づけるようにひとつウィンクをし、脚を取られる砂浜をものともせず軽やかな足取りで走り出した……

提督「やれやれね……」

メッセ教官「さぁ、しっかり運動したあとの飯はうまいぞ! そら、しっかり走れ!」走りながら前後左右に位置を変え、叱咤激励しながら自分でも走っている……

提督「ひぃ、ふぅ……あとちょっと……」

メッセ教官「頑張れ、もうちょっとだ! そら、迎えの船が見えてきたぞ!」沖合に停泊している練習艦と、砂浜に引き上げられているゴムボートが見えた……

提督「もう少し……あと少し……!」

………

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