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イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」
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993 :
◆b0M46H9tf98h
[sage saga]:2026/02/11(水) 01:53:58.70 ID:8wV//Rp20
…数週間後・士官学校の卒業式…
提督「……おたがい、どうにか卒業できたわね?」
カサルディ提督「そうね。それにしてもフランカの礼装姿、よく似合ってるよ……私は色黒のちびだからサッパリだけど」
提督「そんなことないわ。むしろルクレツィアは身体が引き締まっているから背筋が伸びていて凜々しく見えるわ……でも裾にほこりがついているわ」
カサルディ提督「えぇ? ちょっとはたいてくれる?」
提督「はいはい♪」
シモネッタ提督「みんな、支度はできた?」
提督「ええ、大丈夫よ……カルラ?」
ベルガミーニ提督「ちょ、ちょっと待って……礼装のシワが取れなくて……」ツキのないベルガミーニ提督はまたしてもトラブルに見舞われて慌てふためいている……
シモネッタ提督「もう、仕方がないわね……貸して? その間に軍帽やスカートを整えておいて?」シワ一つ、ちり一つない純白の礼装のままベルガミーニ提督の上着をさっと取り上げると駆け出すでもなくどこかへ歩いて行った……
カサルディ提督「相変わらずそつがないよね、ヴェネツィア人らしいというかさ」
提督「分かるわ……うーん、それにしてもお互い惚れ惚れするような姿ね」純白と濃紺に金線をあしらった晴れの礼装姿に、今までの苦労が報われたような気がする……
カサルディ提督「だよね……それにしてもフランカの成績、すごかったね」
…スポーツと数学が苦手な分、得意な戦史や天性の冴えが光った図上演習ではほぼ負けなしだった提督……とはいえ上位十人に食い込む成績は大したもので、さしものメッセ教官が最終成績を見て「良くやったな、カンピオーニ候補生」と肩をどついたほどだった…
提督「そのぶん運動面は下から数えた方が早いくらいなんだから、差し引きで言えばプラスマイナスゼロっていうところね……それにひきかえルクレツィアはスポーツ優秀賞だものね」
…提督はもちろん候補生誰でもが音を上げる短艇の漕艇訓練をはじめ、各種の陸上競技でも一位を総なめにしたカサルディ提督……礼装には早くも小さいが輝かしい略綬が付いている…
カサルディ提督「メッセ教官にも「お前なら一流の体育教官になれる」って言われたけどね……でも海は捨てがたいし、海上勤務を希望したよ。フランカは?」
提督「私は指揮官・幕僚コースを志願したわ。確かに一度はフリゲートや駆逐艦、あるいは「艦娘」たちを指揮してみたいけれど……どちらかといえば私は艦長っていう柄じゃないから、幕僚として支える側に立ちたいわね」
カサルディ提督「そうかな、フランカなら並の艦長よりずっといいと思うけどね……カルラは?」
ベルガミーニ提督「私も海上勤務を志願したの」
カサルディ提督「そっか、それじゃあもし同じ艦になったらよろしくね」
ベルガミーニ提督「迷惑をかけちゃうかもしれないけれどね……」
シモネッタ提督「貴女はきちんとしているんだから冷静にやれば大丈夫よ、カルラ。はい、上着」するりと戻ってきてピシッとアイロンを効かせた上着を手渡した……
カサルディ提督「早かったね……それにしてもどこでアイロンをかけてきたの?」
シモネッタ提督「ふふ、ちょっとしたつてがあって……それで、何の話をしていたの?」
提督「希望コースの話よ、エレオノーラは?」
シモネッタ提督「私は対潜・掃海コースよ。希望通りだわ」
カサルディ提督「へぇ、意外……指揮官・幕僚じゃないんだ」
…なんでもそつなくこなし、見事に首席として記念リボンと金時計を受け取るシモネッタ提督から聞かされた意外な進路に、掌を上に向けて驚いてみせたカサルディ提督……もちろん資源の輸出入や海上交通路の保護のためには欠かせない重要な役割で、根気強くなければならないと同時に多くの知識が求められるプロフェッショナルな分野とはいえ、どちらかといえば地味な分野に進むことに驚いてみせた…
シモネッタ提督「ええ。何しろ例の「深海棲艦」騒ぎで対潜戦や掃海の需要は高まっているし、艦娘たちを指揮する「提督」もたくさん必要とされているもの」
カサルディ提督「そりゃそうだけどさ……もっと戦艦とか巡洋戦隊みたいに華やかなところを選ぶと思ったから……」そこまで言いかけたところで「まさか」と声を詰まらせた……
提督「ねぇ、もしかして……」
シモネッタ提督「なにかしら?」
提督「エレオノーラが対潜・掃海コース希望なのって……小さい艦娘の子がたくさんいるからだったりする?」
シモネッタ提督「さて、何の事かしら♪」とぼけてみせたが端正な顔に満面の笑みを浮かべている……
カサルディ提督「うーわ……頼むから査問会にかけられて同期に恥をかかせるようなことはしないでよね」
シモネッタ提督「あら、私がそんな人間に見える?」
提督「見えないから困るのよね……って、そろそろ行かないと!」
カサルディ提督「……ま、何はともあれ卒業おめでとう♪」
提督「そうね♪」
シモネッタ提督「ええ、それじゃあ行きましょうか♪」
ベルガミーニ提督「わ、ちょっと待って……!」礼装のボタンを留めながら慌てて追いかける……
………
994 :
◆b0M46H9tf98h
[sage saga]:2026/03/07(土) 01:40:51.25 ID:MC0SEOQj0
アッテンドーロ「ふぅん、それじゃあ提督もなかなかだったのね」
提督「運動はさっぱりだったけれど戦史や図上演習はいい方だったわ」
バンデ・ネーレ「確かに提督は歴史に詳しいね」
提督「海戦に限らず、戦闘なんてたいていは昔と変わらないわ……使う道具の破壊力がより大きく精巧になっただけでね」
アッテンドーロ「言えてるわ。大戦が終わってから数十年も経ったって言うのに、あんまり利口になっちゃいないわね」
アオスタ「ですが生活水準は良い方向へ進歩しましたね。寒いときには暖かく、暑い時には涼しく過ごせるなんて素晴らしいですから」
提督「そうね、チェザーレも「チェザーレがいた頃はシャーベットなどなかなか食べられなかったものだ」って感心しながらおかわりしていたもの」
バンデ・ネーレ「はは、なんともチェザーレらしいね♪ ……しかしそんなことを言っていたら冷たいものを食べたい口になってきたよ。提督、お風呂から上がってひとつジェラートでも食べないかい?」
提督「そうね。冷たい氷菓で火照りを冷ますのも良いかもしれないわ♪」
…食堂…
提督「それで、何がいい?」
…お風呂を出てさっぱりとした気持ちでゆったりした私服に着替え、厨房の冷蔵庫に片手をかけながら尋ねる提督……アオスタたちはバーカウンターの席に腰かけ、思い思いの姿勢でくつろいでいる…
アオスタ「私はあるもので良いです、賞味期限の近いものから先に食べてしまうべきですし」眼鏡をかけ直しながら生真面目な返事のアオスタ……
バンデ・ネーレ「ボクはミルクがいいかな」ルネサンスの傭兵隊長「黒備えのジョバンニ」を名を持つバンデ・ネーレは黒いヴェルヴェット風のゆったりしたチュニックでカウンターに両肱をつき、手にあごをのせてスツール(腰かけ)から脚をぶらぶらさせている……
アッテンドーロ「さっぱりしたのがいいわ、レモンとかライムとか……ま、提督に任せるわ」傭兵隊長でミラノ・スフォルツァ家の先祖「ムツィオ・アッテンドーロ」は大戦時にナポリの巡洋艦戦隊にいたことから、べらんめえでこざっぱりしたナポリっ子じみた部分がある……
提督「了解、それじゃあ見てみましょうね……どれどれ……」
…業務用の大きな冷凍冷蔵庫を開けると、市販品から(いちいち買っていてはとうてい鎮守府の予算が追いつかないので)ディアナお手製のものまで数種類のジェラートが入れ物に収まって冷気を立ちのぼらせている…
提督「えー、あるのはミルク、イチゴ、チョコレート、レモン……それにピスタチオね。アオスタはピスタチオでいい?」
アオスタ「ええ、大丈夫です」
提督「それじゃあ私はイチゴにするわ」
ニコ(ニコロソ・ダ・レッコ)「おや、ボクもちょうどジェラートが欲しい所だったんだ」
アッテンドーロ「これは武器整備をやった「ご褒美」なんだから手伝ってない娘にはなし。あっちに行ってなさい」
提督「まぁまぁ、どうせそろそろ食べちゃわないといけないし……ニコ、どれにする?」
ニコ「それじゃあチョコレートにしようかな」
提督「ふふっ、それじゃあ座って待っていてちょうだいね」アイスクリーム用のガラス器を取りだし、アイスクリームディッシャー(アイスを球形にすくう器具)で入れ物からすくい取っては盛り付ける……
提督「……はい、お待ちどおさま♪」
…薄桃色をしたイチゴのジェラートをスプーンでしゃくって口に入れると、まだ湯気の残る身体にひんやりとした冷たさと甘酸っぱい風味が心地よい……頬の内側を刺激するような天然のイチゴの酸味に、思わずきゅっと唇をすぼめた提督…
バンデ・ネーレ「どうしたんだい? 冷たかった?」
提督「いいえ、ちょっと酸っぱくて……初恋の味みたいなものね♪」冗談めかして軽く肩をすくめた……
アッテンドーロ「へぇ、提督のことだから「ヌテラ(チョコレートスプレッド)」そこのけにベタ甘一直線だと思ってたわ」
提督「まさか。私だって失恋もしたし片想いだってしたことくらいあるわ」
ニコ「そうなんだ、ちょっと意外だね」
提督「意外ってことはないでしょうに。私だって人並みの女だもの、別に毎回いい返事がもらえたわけじゃないわよ」
バンデ・ネーレ「ちなみに命中率で言うと?」
提督「そうねぇ……成功七割、保留二割、失敗一割といった感じかしら」
アッテンドーロ「……あきれた命中率ね」
バンデ・ネーレ「レーダー射撃も真っ青だよ」
提督「私だって見境なしに声をかけていたわけじゃないもの。それに私みたいな同性愛者は知り合い同士で「その娘がこっち側かどうか」を教えてくれたりするものだから……いわば事前の索敵情報が入っているわけ」
提督「それに恋人は「数」じゃないもの。一人ひとりそれぞれにいい思い出や楽しかった経験があるわ……まさにこの甘酸っぱいイチゴのジェラートみたいにね♪」
アッテンドーロ「うまいこと言ってくれるじゃない……それじゃあその思い出がどんな味なのか、ちょっと味見させてもらうわよ♪」横からスプーンを伸ばしてしゃくい取った……
提督「もう……♪」
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