ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」

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283 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/02/21(木) 00:25:02.52 ID:THTswjTm0
>>282 どうもありがとうございます、それでは少し投下していきますので…
284 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/02/21(木) 00:50:17.34 ID:THTswjTm0
…数日後・夜…

ドロシー「さて…準備にとりかかるか」

アンジェ「ええ」

…暖炉の火が静かにパチパチとはぜて部屋を心地よく暖めている中、二人は夕食時に来ていたドレスを脱いでコルセットとペチコートだけの姿になると、任務用の服に着替えはじめた…むろん部屋には鍵があるが、女中が用事や何かで不意に開けてくることもあるかもしれないと、荷物を載せた椅子を重しにして二重に備えている……床に置かれたトランクは二重底が開けられていて、防諜部やスペシャル・ブランチの人間が見たら「興味を引くような」物がいっぱいに詰まっている…ドロシーは黒いハンチング帽に黒い活動用の服、編上げの半長靴で、服のあちこちについている物を引っかけるための輪っかやベルトに次々と「七つ道具」をセットしていく…アンジェは活動用の服に黒マントを羽織り、フードで顔を隠した…

ドロシー「…まずは大事な爆弾三つ……予備の時限装置は持ったな?」真鍮製で、何やら時計のような長針と短針が付いた精妙な出来の爆弾を、腹の所に付けたポーチに入れた…

アンジェ「ええ」

ドロシー「ウェブリーが一丁…どのみち音がするから使うわけにもいかないが……」一発ずつ弾を込めると、シャキンッ…と中折れ銃身をもとに戻した…

アンジェ「…銃把で殴打するなら別よ」アンジェはウェブリー・フォスベリーに弾を込めた…二人とも銃が暴発しないように、まだ撃鉄は起こさないでいる……

ドロシー「まぁな…スティレットに首絞め用の細引き……こっちの方が使うかもな?」細いロープを自分の目の前でゆらゆらさせてから、おもむろに腰へくくり付けるドロシー…

アンジェ「そうかもしれないわね」

ドロシー「それ以前に見つからないようにしますがね…それからロープ……」肩からたすき掛けにした

アンジェ「全く、貴女はロープが好きね」アンジェは秘密道具の「Cボール」を胸元に下げた…

ドロシー「ロープなしの工作なんてあり得ないからな……地図に小型コンパス…ケイバーライト粉の『夜間発光機能』付きとはコントロールも気が利いてる」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「あとは工具が一揃いに、とっさのときの煙玉と閃光弾が一個ずつ……と、こんなもんか?」

アンジェ「そんなところでしょう…私も持つべきものは持ったわ」

ドロシー「よし……さてと、来るときに見た脇道の先。あそこに工場があるのは間違いないところだ」

アンジェ「宿の主人もそう言っていたわね」

ドロシー「ああ。施設の警備に当たっているのはロイヤル・フュージリア(ライフル歩兵)連隊…軽歩兵ってことは武器はエンフィールド小銃、将校にウェブリー・スコット・リボルバーってところだろう」

アンジェ「そうでしょうね」

ドロシー「全く、あれだけ手の込んだ偽装をしておいてすっかり筒抜けなんだから……笑えるな」

アンジェ「たいていの偽装なんてそんなものよ」

ドロシー「だな…施設へは私が忍び込むから、アンジェは侵入前と脱出時の援護を頼むぜ」

アンジェ「ええ、火器に一番詳しいのは貴女だもの。任せたわ」

ドロシー「おう……まず、施設へは小川をさかのぼっていって潜りこむ。あの手の石頭どもはそういう侵入方法なんて思いつきもしないだろうからな」

アンジェ「そうね」

ドロシー「施設に近寄ったら歩哨の目をかすめて中に入る…陸軍の規則通りに歩哨を立てているようなら、交代時間も予測がつく」

アンジェ「多分そうでしょう…変える理由がないはずよ」

ドロシー「もし違ったらその時はその時さ……施設に入ったら機関銃の生産状況を確かめつつ、一番効果のありそうな場所にこの「ベアトリスのお手製爆弾」仕掛ける」

アンジェ「ええ」

ドロシー「時限式だが、あんまり長い時間にしておいて気づかれちゃ困る。かといってすぐ起爆するようにセットしても具合が悪い…その辺の兼ね合いは私が決めることにするよ」

アンジェ「任せるわ」

ドロシー「後はとっとと逃げ出して、宿に戻ったら寝たふりでもしてればいい…だな?」

アンジェ「ええ、それでいいわ」

ドロシー「よし…ま、でっかい花火を打ち上げてやろうぜ♪」

285 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/03/02(土) 02:19:37.24 ID:Wn+65SVt0
…数十分後…

ドロシー「どうだ?」

アンジェ「さっきの小さな橋からおおよそ五百ヤード、施設への接近は充分のはずよ……準備はいいわね?」

ドロシー「ああ…となると、ここはもう施設の外周だろうし、見つかったら言い訳も聞いてもらえないだろうな」にやりと不敵な笑みを口の端に浮かべた…

アンジェ「そうでしょうね…それじゃあ私は待機しているから、何かあったら援護するわ」

ドロシー「頼んだぜ」

アンジェ「そっちもね」

ドロシー「ああ、任せておけ」


…リーリーと小さな虫たちが鳴いているせせらぎの柔らかい岸辺の土に足跡を残さないようそっと小川を渡ると、岸辺に生えた灌木の陰に身をひそめたドロシー……視線の先には夜霧に霞む二階建てレンガ造りの工場が影絵のような黒いシルエットとしてそびえ立ち、施設の外周には皿型のヘルメットを被り、リー・エンフィールド小銃の負い革を肩から斜めに回して、銃を背中に背負っている兵士の姿がぼんやりと見える…と、身をひそめているドロシーの左手数十ヤード先の暗闇で小さなホタル火がともり、そのオレンジ色の灯りが、シガレットに火をつけようとする兵士の顔を照らし出した…


ドロシー「…おっと、危うくハチ合わせする所だったな……」相手はマッチの火で目がくらんでいるとはいえ出来るだけ気づかれにくいよう藪や木陰を伝い、夜露が下りた冷たい地面を這って慎重に身体を動かし、立哨に忍び寄った……と、立哨に誰かが近づき、低い声で叱りつけているのが聞こえた…

軍曹「おい、何をやってるんだ。夜間の立哨が煙草なんて吸っちゃならんことぐらい分からんのか…!」

兵士「…すみません、ベイリー軍曹」

軍曹「いいから早く消せ。せっかく慣らした夜目がくらんでしまうだろうが…!」

兵士「はい…!」立哨は慌ててシガレットを踏み消した…

軍曹「よし、おれはまた施設を一周してくるからな……最近は共和国のスパイも大胆になっていると言うし、油断するんじゃないぞ…!」

兵士「了解……やれやれ、軍曹の取りこし苦労もいい加減にしてほしいよ。まだほとんど吸ってなかったのに…」軍曹が立ち去り、兵士がボヤきながらあさっての方を向いた瞬間、ドロシーは後ろから近寄って細引きの輪っかを立哨の首にかけ、きゅっと強く引っ張った…

兵士「…ぐっ!」見張りの兵士は喉から細引きを外そうと手を首元に伸ばし、またどうにかドロシーを振りほどこうともがいたが、体幹の位置と身体のバランスを正しく保ったドロシーは若い女性とは思えないほど頑強で、とうとう兵士の身体が崩れ落ちた…

ドロシー「どじを踏んだな、お前……」ドロシーは音を立てないよう兵士の小銃を背中から外すと、息のない立哨の身体を引きずって川岸の藪の中に隠した…

…施設の横手…

ドロシー「……よし、開いた」

…施設は何人もの職工を同時に働かせやすいように作られた典型的な縦長の工場で、天井はゆるい三角屋根で出来ている…屋根には換気や明かり取り用の天窓があり、夜でも目が慣れればそれなりに明るい……ドロシーがさっと建物の中に入り、静かに鍵をかけ直した直後、施設の外を歩き回っている歩哨が窓の外を通り過ぎて行った…

ドロシー「ひゅぅ……クライスト(おったまげた)…!」


…窓から見えない壁際に這いつくばって歩哨をやり過ごしさっと周囲を見回すと、思わず小声でつぶやいたドロシー……目の前には二列に並んだ製造ジグがずらりと並んでいて、ピカピカと青光りしているマキシム機関銃が製造工程ごとに何挺分も置かれている…吹き抜けのようになっている二階には小部品を作るための製造機械があり、片隅には荷物を上げ下げする水圧式のエレベーターがある…


ドロシー「こりゃ増加試作にしたって多すぎる……連中も機関銃の量産に本気って事だな…」目に入ったものをさっと記憶し、ついでに役立ちそうな資料を数枚くすねる……周囲は静まり返っていて、コトリとも音がしない…

ドロシー「さて…爆弾ちゃんはどこに仕掛けるか……」

…ドロシーは工場が丸ごと潰れるよう中央の梁か柱に爆弾を仕掛けようと考えていたが、残念なことに旋盤やボルト留めの機械は壁際ではなく部屋の中央寄りになっていて、通りやすいよう片づけられた壁際には、爆弾を隠せるような場所がない……

ドロシー「…参ったな、ここも壁際は片づけてやがる……ん?」製造機械が並ぶ一階の片隅に、重そうな鉄扉がある…

ドロシー「……倉庫?こんなところに?」





286 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/08(金) 02:17:49.28 ID:op0liI2Y0
ドロシー「…どうだ……開くか?」

…錠前にキーピックを差し込み、かすかな手元の感覚を頼りにひねる……と、重厚な作りの錠が「カチン…!」と小さいがはっきりした響きを立てて開いた…

ドロシー「…っ!」

ドロシー「……誰にも聞かれなかったみたいだな……やれやれ、肝が縮み上がるぜ…」ごく小さな声でつぶやくと、重い扉をぐっと押した…扉はありがたいことにしっかり油が差してあるらしく、きしむ音一つ立てない…ドロシーは施設の保守管理を任されている職員たちを祝福した…

ドロシー「……さて、ここは一体何の倉庫なんだ? …まるでアナグマの尻の穴だ、真っ暗で何も分かりゃしない……」

ドロシー「壁伝いに歩くしかないかな、こりゃ……まさか灯りをつけるわけにもいかないし…っと、そうだった♪」

…コントロールに要求しておいた七つ道具の中に「ケイバーライト・トーチ」を入れていたドロシー…ケイバーライト・トーチは金属で補強されたガラス筒で、大きさはちょうどトマト缶詰くらいの円筒形で、取り出して数回振ると、ぼんやりとホタルよりはましな青緑色の光を放ち始めた…

ドロシー「…これでよし……さて、改めてここは一体何の倉庫なのやら……」

…手探り半分、トーチの灯り半分で倉庫を物色するドロシー…どうやら倉庫には天井一杯まで高さのある棚がずらりと列になって並び、絹製の円筒状の袋や湿気防止用に亜鉛の内張りがある樽、それに液体の入ったガラス容器が所狭しと並んでいる……絹の袋に触れると、縁のほつれたところからざらざらとした粉がこぼれて手についた…

ドロシー「……おいおい、嘘だろ…」手についた粉をケイバーライト・トーチの灯りに近づけ、愕然とした…

ドロシー「…ブラッディ(くそったれ)…これ全部火薬だってか……!?」…絹の薬嚢(やくのう)や樽に詰めてある黒色火薬に、揺れないようにひと瓶ごとに柳のカゴに入れられ、さらに数個づつロープでくくられている不安定なニトログリセリンのガラス容器…他にも「ブリティッシュ.303」口径弾薬の紙箱が見渡す限り並んでいる…

ドロシー「参ったな……ま、少なくとも爆弾の設置場所で悩む必要はなくなったな…ここで一つ爆発を起こせば、施設丸ごとペルシャあたりまで吹き飛ぶこと請け合いだぜ…♪」ニヤリと笑うと懐中時計の部品を流用した時限装置をセットし、見つかりにくい薬嚢の奥の方に爆弾をねじこんだ……残り二つも手早く…かつ意外と見つかりにくい場所に隠して、さっと倉庫を出た…


ドロシー「…まったく、足音がしないようにゴム底の長靴を選んでおいたが、とんだところで役に立ったな…金属の底が付いた革靴だったら、今ごろ昇天して天使の仲間入りだ……」ケイバーライト・トーチを腰の物入れに納めると、首を軽くすくめて製造機械の間をすり抜けた…

ドロシー「……見張りは…よし、いないな」さっと壁際に屈みこむと窓の左右を確認し、カチリと単純な鍵を開けるとさっと窓の外に抜けだした…


…一見すると軽薄で何でもふざけ半分に見えるが、実際は共和国エージェントの中でも数えるほどしかいない工作の腕前を持ち、エージェント必須の素質「ツキ」にも恵まれているドロシー…そのドロシーが珍しくミスをしたのは、火薬庫で受けた衝撃が抜け切れていなかったせいか、あるいは工作が済んだ安心感でつい緩んだ警戒のせい……さらに言えば単純に「運が悪かった」せいに尽きた…


歩哨「…誰だっ!」ドロシーがそっと左右を見た窓からは、たまたま死角になっていた施設の壁…任務をサボってそこにもたれかかりぼんやりしていた歩哨が、ドロシーの黒い影を目線の端に捉えるとはっとして、たちまち鋭く誰何した…

ドロシー「…っ!」

歩哨「おい、止まれ!」キシンッ!…と、リー・エンフィールド小銃の遊底を動かす金属音が響いた

ドロシー「ちっ…!」さっとナイフを投げつけるドロシー…

歩哨「ぐぅ…っ!」バァ…ン! 

…喉を狙って投げたが外れて、胸元に突き刺さったナイフ…歩哨がその痛みに力んだ瞬間、指が引きつり小銃の引き金を引いた…

歩哨B「何だ!?」

立哨「銃声だ…警報!」たちまち警報ベルが鳴り響き、施設の灯りという灯りが一斉に点灯した…

ドロシー「くそっ、やらかした…!」灯りの届かない小川の方へと一目散に駆け出すドロシー…幸い、灯りに揺らぐ木々のシルエットをドロシーと見間違えているらしく、あちこちの見当違いな方向で銃声が響いている…

兵士「いたぞ! 西側に…」

ドロシー「っ!」バン、バンッ!

兵士「うぐっ…!」

兵士B「向こうだぞ、追え!」

ドロシー「参ったな…こんなところで「鬼ごっこ」する羽目になるとは、ね!」走りながらの牽制射撃に、後ろ手でウェブリーを数発放つと背中のホルスターに戻し、小川と森に向けて全力疾走するドロシー…

士官「装填し照準せよ! …用意、撃て!」ダダダッ、ダダダダッ!…施設の防衛用に設置されていたらしいマキシム機銃の銃声が響き渡り、雨あられと降り注ぐ銃弾が左右の藪に突き刺さってバシバシと音を立て、頭上を「ヒュッ…!」と甲高い音を立てて銃弾が飛んでいく…

ドロシー「えぇい、くそっ…機関銃まで撃ってきやがった!」

ドロシー「…何だっけ…『敵に後ろから撃たれている時は遮蔽物を移動しながらジグザグに走ること…』か……だけどマキシム相手にそんなこと言っていられるかよ!」…小川と岸辺の森があと数十ヤードの距離に近づき、教官の言葉を思い出したドロシー……が、手の届く距離に暗闇があって、つい真っ直ぐに疾走した…

士官「距離…百五十ヤード、撃てぇ!」

ドロシー「…くは…っ!」マキシム機銃の斉射が辺りを扇状に薙ぎ、途端に腰のあたりへすさまじい衝撃が走った…最後の勢いで小川に向けて飛び込んだドロシー…

士官「撃ち方やめぇ! …第二分隊、確認に向かえ!」

…小川…

ドロシー「……っ、続きは『…ジグザグに走ること……銃弾とかけっこして勝てる人間はいない』だったな……くそ、教官の言うことは聞いておくもんだ…」小川の底を這いずりながら痛みに顔をしかめ、今さらながら真理を突いている教官の教えに感心するドロシー……

ドロシー「とにかく止まっちゃダメだ…一度筋肉がゆるんだら動けなくなっちまう……」幸い川底は砂地で、身動きしても泥のように巻き上がったりしないので、追跡者に気づかれにくい…
287 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/03/09(土) 02:06:37.92 ID:bMcJPLgn0
ドロシー「…はぁ…はぁ……くは…っ」


…アンジェの待っている場所までたどり着こうと必死で川底を這って行くドロシー…意識が遠のきそうになったので、身体をせせらぎにひたしたまま顔をおとすと小川の水を一口すすりこみ、一緒に口へ入ったヤナギの枯葉をぷっと吐き出した…


ドロシー「くそ…こんなところでへたばってたまるかよ……少なくとも私がアンジェの腕の中でくたばったら、あの「冷血トカゲ女」が泣くことが出来るのかどうかが分かるってもんだからな……やっこさんの泣き顔を見るためにも、せめてランデヴー・ポイント(会合地点)まではたどり着いてやる…」その数百ヤード後方ではドロシーを探している軽歩兵たちの命令や呼び交わす声が聞こえている…

下士官「…どうだ! 見つかったか!」

兵士「おりません、軍曹!」

兵士B「……おーい、こっちに足跡があるぞ!」

士官「よし、手傷を負っているからそう遠くへは行っていないはずだ! 第一、第二分隊は散開して追跡しろ!」

ドロシー「へっ、ごあいにくさま…つまらない目くらましだったが、やっておいてよかったぜ……」


…初歩的な偽装だが、川沿いの柔らかい地面に数歩だけ足跡を付け、追跡者が見当違いの方向へと向かうようにしておいたドロシー…さらに小ぶりな足のサイズで女だと感づかれないようにオーバーシューズを履き、力を込めて足跡を付けておいた…


ドロシー「……ふぅ…はぁ…」

ドロシー「…ちくしょう、数百ヤードがこんなに遠いとは思わなかったぜ……」

アンジェ「その様子だとそうでしょうね…遅かったわね、ドロシー」川岸の灌木からそっと姿を現したアンジェ…

ドロシー「よう、アンジェ……なぁに、ちょっと川底でカエルの真似をしてたもんでね……」

アンジェ「ずいぶんと不格好なカエルね…さ、私の肩につかまりなさい」

ドロシー「悪いな……うっ!」身体を起こそうとしてうめき声を上げた…

アンジェ「…どこを撃たれたの?」

ドロシー「腰だ…下半身がしびれて仕方ないんだ……」

アンジェ「見せて」

ドロシー「ああ……どうだ?」

アンジェ「そうね…エージェントの守護天使だか何だか知らないけれど、もし貴女がそういうのを信じているならちゃんとお礼をしておいた方がいいわ」

ドロシー「…腰に鉛玉をぶち込まれたって言うのにか?」

アンジェ「ええ。これを見なさい……よかったわね、ドロシー」アンジェは背中のホルスターからへしゃげたウェブリーを抜き取って、ドロシーに見せた…銃弾の食い込んだ跡が撃鉄の脇に残っている…

アンジェ「もし数インチ上だったら、助かっても松葉杖を伴侶にすることになったでしょうね…だいぶ大きな青あざは出来ているけれど、それだけよ」

ドロシー「…それだけで充分さ…とにかく車の所まで行かなくちゃな……」

アンジェ「ええ…ほら、肩を貸してあげるから立ちなさい」


…夜になって車で出かける言いわけとして、宿の主人に「明け方に野鳥観察をするために十数マイル先まで足を伸ばすから」と言い置いて、工作用の服の上からそれらしい服を羽織って出かけた二人……そう言って乗ってきたロールス・ロイスは施設の手前にある森から一マイルほど離れた場所に隠してある…


ドロシー「…はぁ…はぁ……ちくしょう、一千ポンドじゃ割にあわないや…」アンジェにもたれかかり、痛みでひと足ごとに顔をゆがめるドロシー…

アンジェ「……いったい何の話?」

ドロシー「ああ…アンジェには話してなかったな……実は「7」に入り用な道具のことを話しに行ったとき、やっこさんに「報酬として一千ポンドよこせ」って言ったんだ……最初はしぶしぶだったが、しまいには飲んでくれたぜ…ぐっ!」

アンジェ「…何のつもりで?」

ドロシー「なぁに、引退後の「お楽しみ資金」としてね……ちなみにお前さんの分も頼んでおいたから、もしプリンセスと駆け落ちでもするんなら生活費の足しにでもしてくれ…うぐっ…」

アンジェ「…余計な事を言ってないでとっとと歩きなさい///」

ドロシー「あいよ…ったく、怪我人を手荒く扱いやがって……」

アンジェ「そんなにおしゃべりできるなら問題ないわ…ほら、車の所まで来たわよ。私がエンジンをかけるから、その組み立てライフルを抱えて助手席に座ってなさい」

ドロシー「悪い…何しろこのざまじゃあ始動用のクランクも回せないし、アクセルもクラッチも踏めないからな……」

アンジェ「ええ……とにかく私も上手く言いくるめるから、宿についたら元気なふりをしてちょうだい。「手ごたえはあったが見失った敵のエージェント」と「昨夜出かけて、片方が怪我をして戻ってきた二人連れ」…これではどんな間抜けでも「一足す一は二」だと分かってしまうもの」

ドロシー「ああ…せいぜいぴょんぴょん跳ねまわってみせるさ……」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/03/09(土) 09:16:16.82 ID:PdahTQeVO
捕まる未遂があるとTVシリーズっぽいね
...捕まってもいいのよ?
289 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/11(月) 01:54:11.26 ID:vfWpHnSA0
>>288 コメントありがとうございます。そう言えば前にも「逮捕・尋問されるのが見たい」という意見がありましたね…本当に皆さんは百合らんぼうがお好きですねぇ……機会を見つけてどこかでやってみます


…ちなみにですが、本当は「RR」などの英国車メーカーは1900年代に入ってから生まれているので、十九世紀末が舞台の「プリンセス・プリンシパル」では少し早いのですが、そこはまぁイギリスじゃなくて「アルビオン」ですし、ケイバーライトだったり空中戦艦が実用化されている世界なので自動車の誕生が早まっていてもいいかな、と……
290 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/11(月) 02:57:52.35 ID:vfWpHnSA0
ドロシー「よし、クランクを回せ…!」

アンジェ「ええ」

ドロシー「そら、動け…っ!」アンジェが始動用のクランクを回すのに合わせて、エンジンをかけるドロシー……仕上げの悪い車なら数回はやり直す必要があるが、さすがにロールス・ロイスだけあって、滑らかな音を立てて一発でかかった…

アンジェ「…かかったわね」

ドロシー「そりゃRRだからな……やれやれ、よかったぜ…」

アンジェ「それじゃあ行きましょう」

ドロシー「ああ、そうしよう…運転は任せた」

アンジェ「ええ、任せておいて」

…村へ続く道路…

ドロシー「…うっ、どう座っても痛いな……」

アンジェ「我慢しなさい。歩きじゃなかっただけ良かったでしょう?」

ドロシー「まぁな……でもなぁ、もう少し気づかいがあってくれてもいいんじゃないか?」

アンジェ「これでも気づかっている方よ…でなければ貴女に運転させているわ」

ドロシー「うへぇ…こんな怪我人に運転させるなんて鬼だな」

アンジェ「別に鬼でも悪魔でもないわ。貴女の方がこの車の運転に慣れているからよ…だいたいこの車は、私が運転するには少し重すぎる」

ドロシー「その分馬力があるからな……それに走りも滑らかだろ?」

アンジェ「ええ、ロールス・ロイスの「エンジンフードに硬貨を立ててエンジンをかけても硬貨が倒れない」って言うのを信じたくなるわ」

ドロシー「ああ、そいつは私も試したが本当に倒れなか……おっ!」


…ヘッドライトだけが照らしている暗い夜道が不意に明るくなったのでドロシーが振り向くと、施設があるあたりの森から明るい黄色と桃色の火柱が天高く立ちのぼり、続けて大きな煙の柱が盛り上がった……その数秒後、二人の耳に巨大な遠雷のような鈍い轟音と一瞬の風が吹き抜けた…


ドロシー「ひゅぅ、クライスト(ぶったまげた)…いくら火薬が数トンもあったとはいえ、あんな大爆発が起きるなんてな…!」

アンジェ「爆弾が上手く作動したようでよかったわ……少なくともまずは目標達成ね」

ドロシー「ああ。今のに比べたらガイ・フォークスなんて子供のお遊びみたいなもんだな♪」

(※ガイ・フォークス…1600年代の人。国教会を優遇しカトリックを弾圧していた当時の英王室に反発し、数十個の火薬樽で議会の開会式を行っている最中の国会議事堂を爆破しようとした)

アンジェ「そうね」

ドロシー「だな……って、くそっ…!」

アンジェ「どうしたの、ドロシー?」

ドロシー「あー…どうやら喜んでばかりじゃいられなくなった」

アンジェ「……と言うと?」

ドロシー「あの爆弾で全部の兵器が吹っ飛んでくれたわけじゃないみたいだ…追っ手が来たぞ」…二人の乗る濃緑色のロールス・ロイスを追ってくるヘッドライトの黄色い灯が二台分見える……

アンジェ「なるほど…で、相手は?」

ドロシー「後ろに近づいてきてるが……おいおい、ありゃ装甲自動車だ…!」

…深夜に疾走する怪しげなロールス・ロイスを停車させようと接近してくる四輪のトラック…が、二人の車を追跡してくるのはただの板張りトラックではなく、全面を装甲板で囲い、荷台の円筒状の銃座にはマキシム機関銃を据え付けている装甲自動車だった…

アンジェ「ふぅ…なるほど、確かにそうね」

ドロシー「…参ったな。あいつはウーズレーのトラックをベースにしてるようだが……まさか実用化されてるとは思わなかったな…!」

アンジェ「なるほど…何にせよついてきてもらっては困るわ。どうにかするしかないわね…」

ドロシー「あぁ、そうだな……ま、こうなったらでっかい打ち上げ花火のついでだ。ひとつ「王国の最新兵器」をきりきり舞いさせてやるとしようぜ♪」


291 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/13(水) 03:02:57.68 ID:h5fELake0
アンジェ「ドロシー、向こうがこっちを停めさせるにせよ、あるいはハチの巣にするにせよ…そう時間はかからなそうよ?」

ドロシー「分かってるさ……いいから飛ばせ、アンジェ!」

アンジェ「ええ。 …くっ、私じゃあこれ以上速くは走らせられないわ」ヘッドライトに浮かび上がったカーブをスライドさせてクリアするが、小柄なアンジェには大型ロールス・ロイスを高速で振り回すのは少し厳しい……唇をかみしめてハンドルを押さえ込む…

ドロシー「よーし…なら私がどうにかしてやるさ」車の荷物をがさごそと漁ると、手に乗る程度の巾着袋を取り出した…

アンジェ「それは?」

ドロシー「石壁用の釘さ。道路上にばら撒いてタイヤをパンクさせるシロモノなんだが…あのウーズレーは重そうだし、車高も高いからな……一度ふらついたら面白いことになるぜ?」

アンジェ「それでちゃんと止められるのね?」

ドロシー「ああ、太陽が東から昇るくらい確実にな……アンジェ、そのまま真っ直ぐ走らせろ!」

アンジェ「…信じたわよ」

ドロシー「任せろって…そら!」

…袋の口を開けると道路上に釘をぶちまけたドロシー……と、二人の車に迫っていた一台目の装甲自動車が釘を踏みつけ、タイヤがバーストすると同時に激しくノーズを振り、そのまま真横を向くと派手に横転した……

ドロシー「ひゅぅ…な、だから言っただろ?」

アンジェ「なるほど……で、二台目はどうするの?」

…先導する一台目が派手にひっくり返ったのを路肩にはみ出してかろうじて避け、再び道路に乗って追ってくる二台目のウーズレー…なかなか手こずらせる二人を相手に、どうやら無傷で捕まえる気が無くなったらしく、マキシム機銃を斉射しながら追ってくる……

ドロシー「ちっ、まとめて引っかかってくれたら良かったんだが……そうはいかないか!」身体をひねって身を乗り出すと、後ろに向けて立て続けにライフルを撃ちこむ…

アンジェ「…装甲自動車に向かってライフルを撃ちこんでどうするつもり?」

ドロシー「車体じゃない、やっこさんのタイヤを狙ってるんだ……アンジェ、車を振らないでくれ!」バンッ、バァ…ンッ!

アンジェ「ええ、そうするわ」

ドロシー「ああ、助かるよ……えぇい、くそっ…弾切れだ!」役に立たなくなったライフルを座席に放り込み、舌打ちする…

アンジェ「それはいただけないわね…」

ドロシー「まったく同感…おい、村まではあと数マイルって所か?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「ならとっととケリをつけないとな……そうだ、アンジェ!」

アンジェ「なに?」

ドロシー「すっかり忘れてたが、爆弾の予備があったろ!」

アンジェ「…そうだったわね。爆弾なら信管と一緒に後部座席の下に置いてあるわ」

ドロシー「よーし、なら怖いものなしだ…♪」どうにか後部座席に身体を移すと、シートの下に屈みこんだ…

アンジェ「見つかった?」

ドロシー「ちょいまち……あったぞ!」

アンジェ「投げる間合いは?」

ドロシー「時限装置はぎりぎり数秒にセットするから、奴を真横に寄せて屋根のない銃座の上から放り込む……いいか!」

アンジェ「分かったわ…それじゃあ行くわよ!」…ギアを落しつつ目一杯ブレーキを踏みこむ…一気に減速して装甲自動車と並ぶと、ハンドルを切ってウーズレーに寄せた……あまりにも近づいたのでサイドのミラーが接触して吹っ飛び、機銃手は慌てて銃架を振り向けようとするが、その前にドロシーは後部座席に立ち上がった…

ドロシー「そのまま…そのまま……よし、投げた!」

アンジェ「ドロシー、つかまって!」ギアを上げるとアクセルを踏み込み、一気に装甲自動車を引き離すアンジェ…ドロシーが後部座席に転がりこむのと同時に爆弾が炸裂し、ウーズレーは轟音とともにばらばらになった…

ドロシー「う゛っ…!」

アンジェ「…大丈夫、ドロシー?」

ドロシー「ああ…だがもう二度とこんな曲芸はやらないからな!」

アンジェ「一千ポンドでも?」

ドロシー「…こんな目に遭うって分かってたらその十倍はふっかけただろうな……あいてて…」腰の打ち身が座席に触れ、顔をしかめるドロシー…

アンジェ「とにかく宿に戻ったら薬でも塗ってあげるわよ…それまで我慢しなさい」

ドロシー「そりゃどうも……まったく、こんな冷血女を嫁さんにもらおうなんて、プリンセスもよっぽど物好き……」

アンジェ「…何か言った?」

ドロシー「うんにゃ、何も……とにかく痛み止めにたっぷりのブランデーと、それから柔らかくて暖かいベッド…今欲しいのはそれだけさ」
292 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/15(金) 12:26:00.26 ID:uTi1xhWB0
…夜明け前…

アンジェ「…さぁ、着いたわよ」


…活動用の服は脱ぎ(車に残しておいた)行くときに着ていた普通の服に着替えている二人……最後の百ヤードほどは車の音を聞きつけられないようエンジンを切って惰性で走らせ、妙な時間に戻ってきたことで村人の疑念を抱かせないようにしている……組み立て式ライフルや余った工作用の資材などは途中で川の深みに放り込み、残った活動用の服も宿の部屋で暖炉にくべて焼き捨て、残りの旅には怪しいものを何も持って行かないつもりでいる…


ドロシー「あぁ…それじゃあ静かに部屋に戻ろ……」

宿の娘「…ふわぁ…ぁ……眠いなぁ……」

ドロシー「…隠れろ、アンジェ」

アンジェ「ええ」

娘「…もう、まだ一番鶏も鳴いてないのに……せめてもうちょっとでいいから寝ていたいなぁ……」

ドロシー「宿屋の娘だな…暖炉の火起こしに朝食の準備って所か……早起きないい子だが……」

アンジェ「…こちらにとっては都合が悪い……気づかれないように部屋に入るしかなさそうよ」

ドロシー「ああ、あの子が厨房に入るのを待とう」

娘「…ぶるるっ…さむっ、とにかく早く暖炉の火をおこさなきゃ……あれ?」霧がかって冷え込む朝の空気にぶるっと身震いをして、それから持ち出した敷物のほこりをはたいた…と、そこで二人のロールス・ロイスが戻っていることに気が付いた…

娘「…あれ、この車ってあの女の人の……でも野鳥観察に出かけるから朝方までは戻らないって言ってたはずなのに…」不思議に思って車に近寄ってくる娘…二人が身を潜めている建物の角からは、もう数ヤードもない…

アンジェ「…どうやら別の案が必要になったようね、ドロシー」

ドロシー「ああ、仕方ない…アンジェ、しばらく我慢しろよ?」小声でささやくとぎゅっとアンジェを抱きしめて壁に押し付け、それから熱っぽい口づけを始めた…

アンジェ「んむっ、あむっ……はぁ、はむ……っ、ちゅっ♪」

ドロシー「んちゅっ、ちゅぅぅっ……んふっ、ちゅるっ♪」

娘「…こんな朝早くにお戻りだなんて何かあったのか…な……///」

ドロシー「んちゅるっ、ちゅぱ……ちゅぅぅっ♪」

アンジェ「ふぁぁ…はふっ、あふっ……もっと……ぉ///」

ドロシー「しーっ、気付かれたら困るんだから静かに…んちゅっ♪」

アンジェ「んんぅ…はむっ、れろっ……ちゅぷっ♪」

娘「…うわっ……///」(人気がないからって女の人同士…しかもこんなところで………ロンドンだったら当たり前なのかな///)

ドロシー「……誰?」

娘「!」慌てて息を殺し、壁の陰に身をひそめた…が、目を輝かせて食い入るように見入っている……

ドロシー「…気のせいかな?」

アンジェ「ねぇ、早くぅ……むちゅっ、れろっ…///」

ドロシー「分かったわかった…それじゃあ続きは部屋でしようか……♪」

娘「…っ///」音を立てないように足音を忍ばせて屋内に駆け戻る…

アンジェ「…んちゅっ、ぷは……行った?」

ドロシー「ああ……上手なお芝居だったぜ、一瞬本気なのかと思ったよ♪」

アンジェ「…冗談は止して」

ドロシー「はは、そうむくれるな……これであの娘の口止めは済んだな」

アンジェ「ええ、あの娘がこんなことを誰かに言えるとは思えないわ」

ドロシー「…まったく、私たちも罪作りなもんだ……きっとあの娘は今の光景を思い出しちゃベッドで悶々とすることだろうからな♪ …さ、部屋に戻ろう」

アンジェ「ええ」
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/17(日) 09:23:31.48 ID:Axi76Tb1O
ノル公に捕まったらチェンジリング作戦終了だから尋問ネタ難しい
プリンセス誘拐計画が判明、アンジェが代わりに誘拐されてそれを白鳩が尾行する任務のはずがロスト、アンジェはならず者に王室雇われの影武者と勘違いされ国家機密について尋問(百合らんぼう)されるみたいな
ところで映画はいつになるんでしょうね〜アンジェの代役問題が原因なら関根さん二役でいいような...
294 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/18(月) 01:45:00.20 ID:LWgXHgoU0
>>293 まずはコメントをありがとうございます…色々な案まで考えていただき嬉しく思います


…個人的にはノルマンディ公の部下につかまってしまうと(おっしゃる通り)身元が割られてしまいスパイとして使えなくなってしまうので、そこはノルマンディ公以外の防諜組織に捕えられるも防諜・諜報関係の組織にありそうなライバル意識や何かで(実際の防諜組織も縦割り行政で連携が悪いことが多いそうですが…)伝わらず、移送や情報の請求が行われる前に「白鳩」が助けにくる……ようなのを考えております


……ちなみに他に考えている(いた)のは「敵の敵は味方ということでアイルランドの独立派やフランスの密輸業者に接触するも『アルビオンの人間は信用できねぇ』…ということで捕まる」とか「逮捕されてどこかに連れて行かれるも、それはコントロールがしかけた『忠誠度テスト』で、王国防諜部に見えたのも全てコントロールのエージェントだった」などですね



…映画は……どうなんでしょう。正直スクリーンよりも純粋に二期の方がいいような…もし代わりの方が決まったら、ドロシーに「アンジェ、最近声変わったよな?」というメタな台詞を言わせたいですね…(笑)



295 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/19(火) 01:51:08.62 ID:C7higvN70
…宿の部屋…

ドロシー「やれやれ、朝早くで良かったな。あの娘以外は誰も起きてないらしい……悪いが「マントと短剣」式の工作で疲れたし、ひと眠りさせてもらうぜ?」(※マントと短剣…典型的スパイ活動の比喩で、とくに活劇的のような場合のことを指す)

アンジェ「ええ……脱げる?」

ドロシー「どうにか。肌着が擦れるたびにズキッと来るがね…」

アンジェ「でも、その程度で済んで良かったわね」

ドロシー「やれやれ、気楽に言ってくれるぜ……しびれるような痛みこそ収まってきたが、今度はうずいて仕方ないよ…」服を脱いでスーツケースにしまうと「ぼふっ…」と音を立てあお向けでベッドに寝転んだが、たちまち痛みが襲ってきて、あわてて寝返りを打ってうつ伏せになった…

アンジェ「…大丈夫?」

ドロシー「そりゃ多少は痛むが…あ、そこにあるブランデーを取ってくれ」

アンジェ「これ?」

ドロシー「ああ……痛み止め代わりにな。それに昨晩は小川を這いずったりしたせいで凍えたし…」とくとくっ…とグラスに注ぎ、寝そべったままぐっとあおった…

アンジェ「…あまり飲みすぎないようにね」

ドロシー「ああ、そのくらい分かって……い゛っ…!」身体をねじって視線を向けようとした瞬間、またズキリときて顔をしかめた…

アンジェ「全く…いま薬を塗ってあげるわ」白いコルセット姿のままスーツケースから薬の容器を取り出すと、ベッドまでやってきた……

ドロシー「悪いな…しかし付きっきりでマッサージしてもらえるとはね……きっとプリンセスだってしてもらったことはないだろうからな♪」

アンジェ「…」表情を変えずに、きつくドロシーの背中をつねる…

ドロシー「痛っ、そう怒るなよ…軽い冗談だって♪」

アンジェ「口の軽さは命取りよ……で、腰に塗ればいいのね?」

ドロシー「ああ、腰のくびれのすぐ左上って所だ…どうなってる?」

アンジェ「大きなアザになっているわ…待っていなさい、痛み止めを塗ってあげるから……」とろりとした軟膏を背中に垂らすと、痛くならないようにそっと塗り広げる…

ドロシー「うわ…ずいぶん冷たいな」

アンジェ「そうかもしれないわね……どう?」

ドロシー「まだ分からないが、少なくとも悪い気分じゃないね」

アンジェ「ならいいわ」…軟膏をアザのある場所に塗りながら、ついでにこわばった筋肉も軽くマッサージしてあげるアンジェ…

ドロシー「ま、そうやって軽く撫でてもらうだけだってずいぶん違うもんだし……おかげで少し痛みが引いてきた」

アンジェ「そう、結構ね…」

ドロシー「ああ……んっ///」

アンジェ「…ドロシー?」

ドロシー「悪い…ちょっとこそばゆくて変な声が出たが……気にしないで続けてくれ///」

アンジェ「そう……続けていいのね?」

ドロシー「もちろん構わな……んぁっ///」

アンジェ「…」

ドロシー「んぅ…はぁ、んぅぅ♪」

アンジェ「……ねぇ」

ドロシー「な、何だよ……別に気にするなって///」

アンジェ「ふぅ…あのね、そんな艶っぽい声を出されたら気にもなるでしょうが……いったいどうしたの?」

ドロシー「いや、それがさ……昨夜の件で血がたぎったのか、何だか身体が火照って仕方ないんだ…///」

アンジェ「はぁ…まったく人が薬を塗ってあげているって言うのに……」

ドロシー「いや、だから気にしないで薬を塗っちまって……っ!?」

アンジェ「んっ、ちゅぅっ…♪」

ドロシー「ふむぅ……んぅっ!?」

アンジェ「…そんな声をずっと聞かされたら私だってたまらないわ……付き合ってあげるわよ」
296 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/03/22(金) 10:54:07.24 ID:JE+8CbTO0
ドロシー「はむっ、んむっ……ちゅぅ…」

アンジェ「んちゅぅ……ちゅぱ、れろっ…」

ドロシー「ぷはぁ……っ///」

アンジェ「どう?」

ドロシー「……たまらないね♪」

アンジェ「…ならこれはどうかしら……あむっ、はむっ…♪」

ドロシー「んっ、くぅぅ…っ♪」

アンジェ「不摂生な暮らし方をしている割には綺麗な身体をしているわね…ちゅっ、ちゅ…ぅ♪」

ドロシー「あ、はぁぁ…っ……なにせ商売道具だからな、そりゃ多少は気もつか…あ…あっ♪」

アンジェ「ん、あむっ……れろっ…」うつ伏せのドロシーにまたがり、身体をぴたりとくっつけるとうなじから下に向かって肌を吸い、ねっとりと舌を這わせた……窓の外でかすかに白み始めた明け空が調度品のシルエットを次第にはっきりさせ始め、同時にドロシーの艶やかな肌が白っぽいミルク色に浮かび上がっている…

ドロシー「あぁぁ…んぅ///」

アンジェ「…ドロシー」

ドロシー「ふぁぁ……何だ……?」

アンジェ「……ちゅぅっ♪」身体を伸ばしてドロシーにくちづけするアンジェ……濃いブランデーの芳香と、ドロシーの甘く刺激的な香りが鼻をくすぐり、絡めた舌に風味豊かなブランデーの味が広がった…

ドロシー「んっ、んぅっ……あむっ、ちゅぷっ…ちゅる……んちゅっ♪」

アンジェ「……はぁっ」

ドロシー「ぷはっ……アンジェ」

アンジェ「何?」

ドロシー「優しいキスだな…気持ち良かったよ……」

アンジェ「……そういう口説き文句は大事な時のために取っておきなさい///」

ドロシー「なに、そう照れるな…それに私の口説き文句の辞書は大した量だからな、一つふたつくらい使ったって困りゃしないさ」

アンジェ「…結構なことね」

ドロシー「ああ……ところで続きはまだかな?」

アンジェ「ふっ…まったく、雰囲気も何もあったものじゃないわね」

ドロシー「悪いな、何しろ俗物なもんでね…♪」にやにや笑いを浮かべて派手なウィンクを投げた…

アンジェ「…でしょうね」れろぉ…♪

ドロシー「んんっ、んぁっ……あふっ♪」アンジェのしっとりした唇と舌が滑らかなドロシーのもち肌を舐めあげ、細いが意外と長くて力のある指がとろりと濡れた秘所にぬるりと這入ってくる…

アンジェ「…はぁ、あぁ…ん///」右手をドロシーのために使い、左手は自分の膣内に滑り込ませた…

ドロシー「あっ、あぁぁ…気持ち良くてとろけそうだ……んぁぁぁっ♪」くちゅくちゅっ…にちゅっ♪

アンジェ「…ええ」ぢゅぷ…っ、くちゅっ♪

ドロシー「んはぁぁ、あっ…あぁぁぁっ♪」

アンジェ「私も…そろそろ……///」ドロシーの太ももにまたがったまま秘部を擦りつけ、荒い息づかいをしている…

ドロシー「ああ……んくぅ、あ゛っ…ん゛ぅぅっ…♪」

アンジェ「はぁぁ…んっ、くぅぅ……♪」

ドロシー「いっ……くぅっ♪」じゅぷっ、ぷしゃぁ…っ♪

アンジェ「はぁ…はぁっ……んぁぁぁぁっ♪」ぬちゅっ、とろ……っ♪
297 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/25(月) 02:19:34.17 ID:T54gQ+3x0
…しばらくして…

ドロシー「……ふふ、いい具合にとろけてるじゃないか…お前さんはいつもおっかない顔ばかりしてるからな、そういう表情は新鮮でいい」

アンジェ「はぁ、あ…はぁ……私は…身体が小さいから…ふぅ……あなたに合わせると…疲れるのよ……」

ドロシー「ま、その分テクニックは私より上だからいいじゃないか……まさか三回もイかされるとは思わなかったぜ♪」

アンジェ「ふぅぅ……私だって、怪我をしているくせにあなたがこんな激しくしてくるとは思ってなかったわ」

ドロシー「はは、悪かったよ♪ …さて、朝飯の時間まではしばらくあるし少し寝よう。それから風呂を沸かしてもらって、さっぱりしたら朝食が待ってる……って言うのはどうだ?」

アンジェ「…いいわね」

ドロシー「それじゃあ…ほら」

…裸で羽根布団にもぐりこむと端を持ち上げたドロシー…アンジェもコルセットを脱ぐと横にもぐりこみ、ドロシーが背中に腕を回して抱き寄せてきても逆らわなかった……

………



…朝食時…

ドロシー「……ん、んーっ♪」

アンジェ「おはよう…よく眠れたようね」

ドロシー「ああ、おかげさまでな。本当ならもっと寝ていたかったけど……空腹で目が覚めたよ」

アンジェ「朝食はここに運ばせる?」

ドロシー「いや、食堂に行こう…なにせ「付き合いが悪く顔を合わせようとしない人」と言ったら?」

アンジェ「エージェント」

ドロシー「…じゃあ気さくにおしゃべりなんてするのは?」

アンジェ「一般人」

ドロシー「だったら朝食は…」

アンジェ「食堂で決まり……だけど、腰のアザが椅子に触れるたびにうめいていたら宿の人に怪しまれるわよ?」

ドロシー「まぁ、そこはどうにか我慢するさ…それに薬を塗ってくれたおかげで、痛みも少しおさまってきたからな」

アンジェ「ならいいわ……どうやらあの娘が起こしに来たようね」

ドロシー「だな…足音がするぜ♪」

宿屋の娘「……おはようございます、奥様。お目覚めでしょうか?」おそるおそる部屋に入って来た宿屋の娘……

ドロシー「モーニン(おはよう)…ええ、起きているわ♪」ドロシーは胸を隠すように布団を引っ張り上げ、身体を起こした…横ではアンジェが髪を拡げ、甘えるような仕草でドロシーにしなだれかかっている……

娘「あ、はい…それで、朝食はいかがいたしましょうか……お部屋まで運びましょうか///」

ドロシー「いいえ、食堂に食べに行きますから…それとお風呂の支度をお願い」

娘「お、お風呂…ですね///」

ドロシー「…ええ、そうよ♪」

娘「わ、分かりました…」

ドロシー「それじゃあお願いね……あ、ちょっとこっちに来てくれる?」

娘「は、はひっ///」顔を真っ赤にしておずおずとやって来る…

ドロシー「…どうぞ、取っておいて♪」妙に優しい手つきで娘の手を両手で包むようにしてシリング銀貨を手渡し、ねっとりとした色っぽい目つきでじっと見た…

娘「あ、ありがとうございます…っ///」

ドロシー「それではお願いね」

娘「は、はいっ…///」

アンジェ「……飛び出すようにして出て行ったわね」

ドロシー「ああ…これで他のことはすっかり記憶から吹っ飛んだだろう♪」

298 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/25(月) 03:25:15.48 ID:T54gQ+3x0
…朝食時・宿の食堂…

主人「ご令嬢がた、ゆうべは良くお休みになれましたでしょうか?」

ドロシー「ええ、おかげ様で…綺麗な空気のおかげで、彼女の身体も少し調子がいいし♪」朝から風呂に入ってあちこちねとついていた身体をさっぱりした二人は、すっきりしたデイドレスに着替えて朝食の席についている…

主人「それは何よりでございます……なにせロンドンの空気は「やくざなカラクリ」の出す煤煙ですっかり汚れておりますし、身体に良いわけがございませんよ」

ドロシー「まったくもってね…おかげでこちらに来てからは食事も美味しいよ。少々はしたないけれど…」

主人「いえいえ、朝から食事が進むなんていうのは結構な事でございますよ…メアリや、お客様の食事はまだかい?」

娘「今持って行きます…!」

ドロシー「おー…昨夜の夕食も豪勢だったけれど、朝も美味しそうだ。 …さっそくいただくとしよう♪」

…二人の目の前に置かれた朝食は、こんがりと焼いた山形食パンの厚切りに濃厚な自家製バター、厚みが2インチはありそうで、まだぷちぷちと油が跳ねている焼きたてのハムステーキに、新鮮な卵を使った半熟卵、洋ナシのスライス……それと陶器の水差しに入っている搾りたてのミルクと紅茶のティーポット…

ドロシー「んむっ、これはいい……さ、遠慮しないでお食べ♪」

アンジェ「は、はい…///」

主人「さようでございます、お身体のためにもたくさん召し上がってくださいまし」

ドロシー「そうそう、いっぱい食べて私を喜ばせてね♪」

アンジェ「///」


…そういってドロシーとアンジェがやり取りをしていると、不意にエンジンの音が聞こえてきた……二人が演技を続けながら食事をしていると、公用の黒いロールス・ロイスが宿の前に停まり、中から背広姿の男が二人降りてきた…


主人「おや…お役人だなんて、一体なんでございましょうね……」不安そうに玄関に向かった…

ドロシー「……こんなのどかな村に役人だなんて、一体何だろうね?」

アンジェ「そうですね…」内心では正体を割られたかと身構えつつも、そのまま芝居を続ける……場合によっては役人を斬り伏せることが出来るよう、ハムを切り分けているそぶりをしながらテーブルナイフを持っている…

ドロシー「ね…この辺りはノッティンガムシャーだし、ロビン・フッドでも出たのかな?」ふざけ半分に言いながら椅子を軽く引いて、飛び出せる体勢を作った…

主人「…どうぞ、こちらでございます……」平和な田舎に住んでいるだけに、何もしていないうちからすっかり不安げな宿屋の主人…

背広男(がっしり)「やぁ、案内どうも…お客さんは全員ここにいるかい?」一見すると愉快そうながっしりタイプの男は、口でこそ笑みを浮かべているが視線は鋭い…

主人「はい、さようでございます…何しろ朝食の時間でしたので……」

背広男(細め)「…余計なことはいい」…もう一人の冷たい態度の男は黒い背広にソフト帽で、感情のない灰色の目をしている

背広(がっしり)「まぁまぁ、そう突き放すような事をいうなよ……おやじさん、後でおれたちにもその美味そうな朝食を頼むよ。ハラペコなんだ」

主人「はい、それはもう…」

背広(細め)「そういうのは後にしろ……表のロールス・ロイスは誰のだ。君のか?」食堂の隅で食事をとっていた地味な男に声をかけた…

地味な男「いえ…私は旅のセールスマンで、鉄道と乗り合い馬車を乗り継いで来たんです」

背広(がっしり)「ふぅん、そうかい…おやじさん、本当かね?」

主人「ええ、それはもう……それで、あの…」

背広(がっしり)「うん?」

主人「表の車でしたら、こちらのご令嬢方のお車でございますです…」しどろもどろで敬語までおかしな具合になっている主人…

背広(がっしり)「おやおや、わざわざ教えてくれてすまんね……朝食中に失礼します、お嬢さま方♪」ドロシーたちの方にのっしのっしと歩いてくると、帽子を持ち上げて軽く一礼した…大きな身体には多少きつそうな仕立ての悪い背広のせいで、内側に忍ばせているウェブリー・スコットのシルエットが浮かび上がっている……

ドロシー「構いませんとも…もし良かったらここにお掛けなさいな?」

背広(細め)「いえ、結構……表の車はお二人のですね」

ドロシー「ええ、そうですが…何か?」
299 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/27(水) 03:06:11.24 ID:fK7UlOMJ0
背広(細め)「そうですか」ドロシーの答えを聞くと、厳しかった態度がふっと弛んだように見えた…

背広(がっしり)「…お嬢さま方は旅行ですか?」

ドロシー「ええ、そうです……私はロンドンの社交界に疲れちゃったので、身体が弱い彼女の療養もかねて自動車旅行をね♪」

背広(がっしり)「そりゃあいい、空気も新鮮ですからね…で、これからのご予定は?」

ドロシー「ええ…これからドンカスターを経由してヨークシャーまで足を延ばして数日泊まり、それから帰りは道を変えてリーズ、シェフィールド、バーミンガムを通ってロンドンへ戻るつもりです」

背広(がっしり)「なるほど、それは楽しそうですね」

ドロシー「ええ♪」


…ドロシーとアンジェは「7」とも相談して「共和国のエージェントなら、施設を破壊した後は取るものもとりあえずロンドンや港町のカンタベリーへ行き、慌てて壁の向こうへ脱出を図るはず」…と王国防諜部が考えるとにらみ、あえてその逆を突いてアルビオン中北部をのんびりと巡る予定を立てていた…


背広(細め)「……どうもこの二人は違うようだが…どうだ…?」

背広(がっしり)「……ああ。緊急電は「黒のロールス・ロイス」だがこの二人のは濃緑色…乗っているのも「細身の男二人」って事だったが、見ての通り派手に遊んでそうな貴族の若い女に、もう片方はさして年端もいかない少女だ……結びつかないね…」ドロシーたちに聞こえないように身体を近づけて、ひそひそと話す背広の二人…

背広(細め)「…ならここはもういいか……?」

背広(がっしり)「…そうだな……早く次に行こう…」


ドロシー「…」(……あの施設を大空のかなたまで吹き飛ばしてやったのが真夜中より一時間ばかり前…指揮官があの爆発に巻き込まれずにいたとして、混乱を収めて政府機関に連絡するまでざっと二時間……報告を受けた防諜部がロンドンから故障なしで車をぶっ飛ばしてきたら……まぁ、だいたいは計算が合うか…)


背広(がっしり)「…いや、朝食中に驚かせてすみませんでしたね……もう結構ですよ」

ドロシー「それは何よりですわ♪」

背広(細め)「ご協力に感謝します……行くぞ」

背広(がっしり)「おいおい、そんな急がなくたって…せめて何か食っていこうじゃないか。おれはもう空腹で動けないよ!」

背広(細め)「馬鹿言うな…それでは失敬」

ドロシー「ええ」

主人「あの…もう大丈夫ですので……?」

背広(がっしり)「ああ、大丈夫だよ…ところで、よかったらあの美味そうなハムを厚切りにして、玉ねぎか何かと一緒にサンドウィッチにしてくれないか?」

主人「あ…はい、ただいま!」

背広(細め)「…おい、何やってる!」

背広(がっしり)「何って…朝飯の算段だよ♪」

背広(細め)「まったく、お前って奴はいつも口を動かしていないと駄目なのか?」

背広(がっしり)「そう言うなよ…おれみたいな巨漢は腹が減るんだ♪」…大食いで愉快でどんくさい男の演技を続けながら、さりげなく宿の食堂をもう一度見回すがっしり男……

主人「…お待ちどうさまでございます!」

背広(がっしり)「いやいや、速かったじゃないか。あんまり遅いと相棒がガミガミ言うから助かるよ……ほら、お代だ♪」

主人「はい、ありがとうございます」

背広(細め)「…ほら、行くぞ!」

背広(がっしり)「はいよ、待たせたな…」表に停めていた公用車に乗り込むと、あっという間に走っていった…

ドロシー「…何だったんだろうねぇ?」

アンジェ「そうですね、旅路が心配です……」

ドロシー「まぁ心配はいらないよ、私がいるんだから…ね♪」プレイガールが「可愛がっている」女の子にするように、妙に馴れ馴れしく手を重ねた…

アンジェ「…は、はい///」

ドロシー「ふふっ……ロンドンに戻ったら一千ポンドが待ってるぜ…?」何か恥ずかしい事でもささやくようなふりをして、耳元に口元を寄せた…

アンジェ「……報告書もね…」恥ずかしいかのように顔をうつむかせながらまぜ返した…

ドロシー「ふふ♪」

………


300 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/03/29(金) 02:24:23.62 ID:IQX79Epy0
…一週間後・ロンドン…

ドロシー「うーん、相変わらずのくすんだ灰色の空に煙たい空気……これこそ「我がなつかしのロンドン」ってやつだな♪」

アンジェ「元気な事ね……戻ったわよ」

プリンセス「…お帰りなさい、アンジェ♪」

アンジェ「ええ、ただいま」

ベアトリス「…どうでした? 上手く行きましたか?」

ドロシー「もちろん。まぁ少しばかりひやりとした場面もあったが……そっちは何もなかったか?」

ベアトリス「ええ、言われた通り静かにしていました」

ドロシー「よーし、いい子だ♪」犬でも可愛がるようにベアトリスの頭を撫でるドロシー…

ベアトリス「も、もうっ…!」

アンジェ「……とりあえずみんなには留守中あったことを聞きたいわ…しばらくしたら部室で集まりましょう」

ちせ「うむ……何はともあれ二人が無事で何よりじゃ。ついでに着替えて茶でも一服したらどうじゃろうか?」

ドロシー「そうだな、そうさせてもらおう……ベアトリス、お茶の準備を頼むよ♪」

ベアトリス「分かってます」

プリンセス「アンジェ、貴女も長旅で疲れたでしょう…今日はゆっくり休んでね?」

アンジェ「ええ、ありがとう」

プリンセス「……えっちはまた明日にしましょうね♪」

アンジェ「…も、もう……っ///」

…部室…

ドロシー「……というわけで、無事に施設は吹き飛んだ…というわけさ♪」機密事項は適当に省き、おおよそのあらましを話したドロシーとアンジェ……かたわらにはキャンディ茶葉を淹れた紅茶のティーカップときゅうりのサンドウィッチ、それにスコーンが置いてある…

ベアトリス「それで、怪我の方は大丈夫なんですか…?」

ドロシー「ああ…おかげ様で、もう跡も残っちゃいないよ」

ベアトリス「良かったです…」

ドロシー「はは、何せ私は丈夫に出来ているからな♪」

アンジェ「……とりあえず留守中にあった事はだいたい掴めたわ。みんな、お疲れさま」

プリンセス「アンジェとドロシーさんこそ…ゆっくり疲れを癒してね?」

………

…数日後・ロンドン市内の動物園…

7「…今回の件はご苦労さま。新聞記事にはならなかったけれど、こちらの情報網が成果を確認したわ。それにしても…マキシム機関銃を量産していた?」

ドロシー「ああ…それにさっきも言ったが、ウーズレー貨物自動車に装甲板を貼りつけて旋回銃座を搭載した「装甲自動車」もテストしていたようだぜ」

7「そう…何はともあれ、この作戦が成功したおかげで王国の機関銃生産は半年は遅れるわ……その間にこちらも機関銃の配備を急ぐことになるでしょう」

ドロシー「結構なことで…ところで、約束のモノは?」

7「それならきわめて合法的なルートで、貴女が指定した銀行に振り込んであるわ……確認書類よ」アフリカからやって来たばかりのキリンを見ようとする人の群れに混じり、パラソルを差してゆったりと歩き去った…

ドロシー「そりゃどうも…って、あの古狸め……いっぱい食わせやがった…!」銀行の確認書類を見て、思わずあきれたような声を上げた…

………

…在ロンドン・アルビオン共和国大使館の一室…

L「連絡役、ご苦労だった」

7「いいえ…おかげで珍しいキリンも見物できました。それにしても「D」は今ごろ地団駄を踏んでいることでしょうね?」

L「ふむ……私は嘘はついていないし、額をごまかしてもいないが…単にこちらが崩壊したら紙切れになってしまう「共和国ポンド」の紙幣で一千ポンド分を用立てただけだ。彼女は純金で寄こせとは言わなかったし、どこのポンドで払うかも指定しなかったからな」

7「それはそうですが、彼女が寄せる我々への信頼を低下させることにはなりませんか?」

L「ふ…彼女はもとよりはこちらを「信用」などしておらんし、そもそも「組織の元締めだから」と頭から信用するようでは一流のエージェントにはなれまい……それに「一千ポンド寄こせ」と言う時点で、機会があればこちらと縁を切りたいと考えている証拠だ…だからこそ共和国が存続しなければ一文にもならない「共和国ポンド」で払ったのだ。これで「A」も「D」もこちらに残るだろう」

7「…しかし、これで幻滅した「D」が多額の報酬をちらつかされ転向する可能性はありませんか?」

L「あり得んな。彼女はそんなに愚かではない……これはな、ある意味で私と彼女たちの知恵比べでもあるのだ」少しだけニヤリとしてみせた…
301 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/04/01(月) 02:27:42.64 ID:IZ6zbuaA0
…どうもお待たせしています。次のストーリーは多少考えてあります……が、カップリングはアンジェと誰がいいでしょうか? また数日開いてしまいますので、よかったら好きなカップリングを書き込んで下さい…


……また「見たい」という意見が多いようなので、今回はアンジェがピンチに追い込まれ尋問を受けたり受けなかったりします(…が、実際にエージェントとして身元を割られることがないよう、上手く話を持って行くようにします)…ちょっと苦痛などの表現があるかも知れません


302 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 07:51:43.18 ID:bs4GA6SMO
やっぱりプリンセスかな
303 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/04/09(火) 10:48:08.83 ID:M9rLO2DT0
…case・プリンセス×アンジェ「The travel guide of London for spies」(スパイのためのロンドン旅行ガイド)…

…ロンドン・官公庁街の一室…

ノルマンディ公「……以上のように、ここ一年ほどのあいだで共和国スパイの活動が非常に活発化してきている。今度は陸軍の施設が破壊され、またしても工作員は逮捕することができなかった」

外務省情報部長「ふむ…ノルマンディ公、そのていたらくではそちらの組織が何のためにあるのか分かりませんね?」

海軍省情報部長「日頃自慢しておられるエージェントたちでも捕まられないとなると……いやはや、困ったものですなぁ」

ノルマンディ公「…お言葉を返すようだが、今回の件では連絡が陸軍省情報部にしか伝わっていなかった。我々がその情報を聞いたのは二日も経ってからだ……ハートレイ准将、なぜ二日も情報を留めておいたのかお聞きしたい」…冷たくさげすむような目で恰幅のいい陸軍省の代表を見た

陸軍省情報部長「それは……今度の破壊工作が我が方の秘密施設に対するものだったからだ。どこに共和国のスパイが潜んでいるか分からんのだから、大声でふれ回るわけにはいかんだろう!」

ノルマンディ公「ふむ…破壊工作が実行されている時点で機密が守られていないことは明白だ。今さら情報漏洩の心配など無用だろう」

陸軍省情報部長「いや、そうは思わん。施設の被害や再建までの日数を推測させないための情報統制だ」

ノルマンディ公「無駄なことだな…そんなものは建築工事に雇われる作業員や用意される建材の量から容易に推測できる。もっと詳しく知りたいと言うのならパブで大工たちにビールの二、三杯も飲ませれば、どこでどんな工事を請け負ったかも教えてくれるだろう」

陸軍省情報部長「ぐっ…」

ノルマンディ公「皆さんがスパイごっこに興じるのは結構だが……少なくとも今後は、各省庁ともに敵諜報員の情報は迅速かつ正確にこちらへと伝達してもらいたい。私からは以上だ」


…しばらくして・外務省…

外務省情報部長「…ノルマンディ公め。少し実績があるからと言って我々の事を素人(アマチュア)呼ばわりか……ミス・コート、防諜課長を呼んでくれたまえ」

秘書「はい」

防諜課長「……お呼びですか、サー・アルフレッド?」

情報部長「ああ、呼んだとも…いま君からの報告書を読んでいたのだが、どうもな……うちの防諜課は対外情報課に比べて顕著な成績を残していないように見えるのだがね」パイプに火を付け、紫煙をくゆらせている…

防諜課長「…と、おっしゃいますと?」…情報部長がやたらパイプをふかすのは機嫌が悪い時の癖だと知っているので、少し身構えた……

情報部長「いや、別に君を責めるつもりはないが……われわれ「外務省情報部」と言えば諜報・防諜に関しては他の省庁も一目置いている存在だ。職員は選り抜きの人員で構成されたエリートたちで、オックスフォードかケンブリッジを卒業した者以外は見かけないほどだからね……」

防諜課長「……ええ」

情報部長「…それがどうだ。数カ月前にはエンバンクメント(運河沿い)で要注意人物のブラックリストを奪取されたが、結局実行犯は闇の中…他にもいくつかの機密情報がこちらから盗み出されたようだが、これも手がかりはなし……どうなのだね?」

防諜課長「それはそうですが、何かこちらが動くたびにノルマンディ公配下の連中があれこれと口出しをしてきまして…」

情報部長「ふむ…そうだとしても、何か実績を残してもらいたいな。このままだと外務省情報部の沽券に関わる……それに、君だってアフリカの片隅にあるような植民地の現地事務所に飛ばされたくはないだろう?」

防諜課長「ええ」

情報部長「どうだね……こう、何か「これは」と思うような情報で、まだ防諜部の連中がつかんでいないものはないのかね?」

防諜課長「は……それが、実は一つだけ有望そうな案件を抱えておりまして…」

情報部長「ほほう…では期待しているよ?」

防諜課長「ええ、お任せを……」

304 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/09(火) 19:41:42.50 ID:9uUmDos7O
外務省ならアンジェさん割としっかり尋問されそうですね...
19世紀末の尋問ってなんだろう、水責めとか?
305 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/04/11(木) 00:40:08.78 ID:DXgjiEIo0
>>304 当時の外務省と言えば世界中に出先機関があったので諜報は強かったようですが……防諜はどうだったのでしょうね?


…先にあんまり書き込んでしまう訳には(ネタバレになってしまうので…)いきませんが、科学的な尋問手段(興奮剤・自白剤等)以外はたいていあったようですね…これらはどうも中世の異端審問(魔女裁判)や18世紀のフランス革命で磨きがかかったようですが…まぁあんまりグロテスクにならない程度に進めていきます……
306 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/04/12(金) 02:08:50.89 ID:EXXBfEpt0
…別の日・お茶の時間…

ドロシー「ようアンジェ…今回の任務は何だって?」ベアトリスたちと入れ替わるようにしてやってきたドロシーは、椅子にどっかりと腰かけるとカフェテーブルに肘をついた……

アンジェ「マナーが悪いわよ、ドロシー……今回は「産物」(プロダクト)の受け渡し。内容は陸軍省の機密資料で、インド方面における今後の戦略方針や師団の改編、それにあわせた人事についての書類のようね」

ドロシー「…インドねぇ……王国と共和国の権益争い、それに植民地を取り返そうっていうフランスの連中に、それぞれの出先機関や東インド会社……言ってみればあそこは「収拾のつかない椅子取りゲーム」みたいな状態だからな。動向の目安になる戦略方針を知ることができたら大きいってのは分かる」

アンジェ「そういうことよ…それを提供者は金と引き換えに渡すと言っている」

ドロシー「もしそれが本当だったら、まさに「値千金」ってところだが……よもやガセネタじゃないだろうな?」…けしの実が入った香ばしいパウンドケーキを頬張りながら眉をひそめた……

アンジェ「…この情報提供者とはこれまで大小合わせて十数回ほど取引があるけれども、いずれも産物の質は高かった……それに向こうがこちらを食いつかせるための撒き餌として「流してもいい」と考えるレベルではない高度な情報も含まれていたことから、コントロールは「本物」だと判断しているわ」

ドロシー「なるほど。なら喉から手が出るほどだろうな」

アンジェ「ええ、そうでしょうね…対象との接触パターンは「B」方式」

ドロシー「手紙は来たのか?」

アンジェ「ええ…手紙には金曜日の13時にレストランの「ハイバーニア」で待ち合わせとなっていたわ」

ドロシー「……と言うことは16時にコーヒーハウスの「ゴールデン・ライオン」で受け渡しか」

アンジェ「そういうことね…それといつものように支援要員を交代する」

ドロシー「了解。それじゃあ監視役をベアトリス…私が車中で待機だな?」

アンジェ「そうなるわ」

ドロシー「わかった……しかしだ、いくら重要な資料だからってわざわざお前さんほどのエージェントを使うこともないだろうにな?」

アンジェ「…と言うと?」

ドロシー「お前は私やベアトリスと違って取り替えが利かない……プリンセスと「チェンジリング」のことを考えてみろ」

アンジェ「だから?」

ドロシー「コントロールはお前さんの才能を無駄遣いしてるって言いたいのさ…トップ・エージェントを情報の受け渡しに使うなんて、サラブレッドをクズ物屋の馬車引きに使うようなもんだ」

アンジェ「言いたいことは分かったわ。でも今回の機密情報は一段と重要度が高いそうだし、それを扱えるようなエージェントがちょうど出払っているから……致し方ないわ」

ドロシー「なるほど…金の卵を取るためなら「やむを得ない」ってか?」今度はクルミと干しブドウのパウンドケーキにフォークを突き刺しながら首をかしげた…

アンジェ「ええ」

ドロシー「だとしてもなぁ……コントロールは何を考えているのやら」

アンジェ「さぁね、彼らの頭の中は推し量りがたいわ」

ドロシー「ふぅ、私たちに考えを見抜かれるほど単純じゃない…か」

アンジェ「そう言うことよ」

ドロシー「…なるほど」

アンジェ「とにかく後方支援は任せたわ…やる気はあるけれど、ベアトリスだけでは心もとない」

ドロシー「ああ、任せておけ……ま、手早くスマートにこなすとしよう♪」

アンジェ「そうね」

ドロシー「それにしても、コントロールのよこすけちな経費と人使いの荒さときたら……時々、この業界にも労働組合とか保険があればいいのに…って思わないか?」

アンジェ「……少しはね」

ドロシー「だよな…それじゃあ貧乏エージェント同士で乾杯だ」ティーカップを軽く持ち上げて、口の端にニヤリと笑みを浮かべた……
307 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/04/16(火) 10:30:22.62 ID:Hi11guKo0
…数日後…

ベアトリス「そろそろ時間でしょうか?」

ドロシー「午後二時か…まぁ、ちょうどいいだろうな」

アンジェ「…それじゃあ私も支度にかかるわ」

プリンセス「みんな、気を付けていってらっしゃいね…♪」

アンジェ「ええ」

ドロシー「どうも、プリンセス……よし、それじゃあもう一度手はずを確認しよう。ベアトリスは周辺を歩き回って王国の連中が張ってないかを確かめる…私はその間ゆっくり車を走らせるから、異常がなかったら「ゴールデン・ライオン」のはす向かいにある文房具屋の窓際に立って指定の合図だ」

ベアトリス「はい」

ドロシー「まぁ今さら言うこともないだろうが……行くまでの間も尾行されないように「保安措置」をとれよ?」

ベアトリス「分かってます。回り道をして時間をかけるんですよね?」

ドロシー「ああ、そうだ……最低一時間だからな?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「何度も言ってしつこいようだけどな……ただ歩くんじゃなくて出口の二つある店に入って裏口から出たり、急に細い角で曲がったり…とにかく追跡者が目立たずには済まなくなるようにするんだぞ?」

ベアトリス「はい、上手くやります」

ドロシー「それでいい…アンジェはランデヴーの場所までは乗合馬車だな?」

アンジェ「そうするつもりよ。私は目立たないほうがいいもの」

ドロシー「…だな」

アンジェ「ええ…それと、ちせ。悪いけれど貴女は待機」

ちせ「うむ…その間プリンセスの身辺は私がお守りしておく」

アンジェ「頼んだわよ……それじゃあ、準備はいい?」

ドロシー「完了だ…そっちは?」

アンジェ「ええ、出来ているわ……もっとも、情報の引き渡しだから得物は持って行かないけれど…」

ドロシー「ああ、その方がいい…変に銃なんて忍ばせて、余計な厄介事をしょい込むことはないからな」

アンジェ「その通りね。それじゃあ行きましょうか…ベアトリス、貴女が先行して」

ベアトリス「はい、それじゃあ行ってきます」ベアトリスは監視地点に選んだ文房具屋とぴったりはまる寄宿学校の制服姿で、とことこと歩き出した…

ドロシー「よし…じゃあ私も行ってくるかな♪」いかにも遊んでいそうな「上流階級のプレイガール風」にまとめた格好でウィンクをすると、ぜいたくなロールス・ロイス(RR)にひらりと乗り込んだ…

アンジェ「ええ、行ってらっしゃい…私はもう数十分したら出る」

ドロシー「ああ、任せた」

プリンセス「それでは気をつけ……うっ」

アンジェ「どうしたの?」

プリンセス「いえ、なんだか風が冷たくて……身震いが出てしまったの」

アンジェ「…風邪を引いては困るわ。暖かくしておきなさい」

プリンセス「そうね……そうするわ♪」

アンジェ「ええ。それじゃあ行ってくるから、後はお願い……」

………

308 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/04/21(日) 02:45:42.27 ID:rE/r2QCC0
…ロンドン市内…

ドロシー「…周囲に防諜部の車は…いないか。連中ときたら判で押したように黒のRRと決まってるもんな」…防諜部の車は目立たないようにほとんどが黒塗りで、たいていは性能がいいロールス・ロイスを使っている……そのせいで、本来は地味なはずの「黒のRR」が逆にトレードマークのようになっている…

ドロシー「……それに、どうやら監視役も見えないな」


…ドロシーは「シルバー・エンジェル」と名付けた、四人乗りの大柄な車体に特別誂えのぜいたくな内装をほどこしたRRのカスタム・カーでゆっくりと通りを流しつつ、貴族のプレイガールらしく時折通りを行く女性たちに流し目をくれる……と同時に、やたら熱心に店先のショーウィンドウを眺めていたり、半日遅れの朝刊を二人して眺めているような場違いな連中を探す…


ドロシー「うーん…それらしいのはいないな。もっとも、防諜部の連中だとしたらそんなへぼ演技をするわけないが……」

ドロシー「…なるほど、ベアトリスもそれらしいのは見かけてないのか……よし」文房具屋のショーウィンドウ越しに見える位置にベアトリスが立ち、万年筆を手に取って眺めるふりをしながらそれとなく手を上下させた……それを見てドロシーもあらかじめ決めておいた宝飾店の前にRRを停めて合図とした…

アンジェ「……安全確認は済んだようね」…ドロシーは通り一つ分ほど離れた宝飾店でウィンドウショッピングに興じながら広く周囲を警戒し、至近距離での異常はベアトリスが監視し、場合によってはアンジェに接触の中止を合図する……


………



…数分後・コーヒーハウス「ゴールデン・ライオン」…

アンジェ「…」


…対象が接触してくるまで五分間だけ待ち、もし来なければ事情があって時間に間に合わなかったと判断して、一時間後に第二の場所で再び待つという基本的な接触スタイルで待ち合わせているアンジェ……一見すると興味なさそうな顔で新聞を眺めているように見えるが、それでいてすでに店内をさっと見渡している…敵のエージェントはもちろん、情報の受け渡しをする段になって見知った顔とばったり出くわし、名乗っている名前と違う名前を呼ばれたり……などという冗談にもならないドジを踏まないよう、店内で声高に議論している紳士たちや王室のゴシップに興じているご婦人たちを確認した…と、時間ぴったりにそれらしい人物が入ってきた…


背広姿の紳士「…」

アンジェ「……あれね」安全確認が済んだ合図として、右手の側に置いてあった新聞を左手側に置き直す…


…アンジェの視線の先にいる情報提供者は灰色の背広にチョッキを着て、金鎖の懐中時計とステッキ……と、ごく普通の紳士姿をしている…胸には白いハンカチがきちんと形通りに差してあり、小脇に「ロイヤル・ロンドン・タイムズ」を挟んでいて、アンジェの合図を見ると向かいの席に腰かけた…


紳士「…」腰かけると新聞を読みながら紅茶をすする…数分の間何事もなく過ごすアンジェと情報提供者……

アンジェ「……ふぅ」読みかけの新聞をもう一度テーブルに置いて、いかにもくたびれたようにため息をついた…

紳士「……何か面白い記事は出ていましたか?」

アンジェ「いいえ…私には少し難しかったようです」

紳士「お嬢さんにはそうかもしれませんな……お勉強ですか?」

アンジェ「ええ、まぁ…そんなところです」

紳士「それは立派ですな……では、お邪魔しないように失礼するとしましょう」…そう言いながら、わざとお互いの新聞を取り違えて持って行った……

アンジェ「…ええ、お気遣いありがとうございます」…アンジェも素知らぬ顔で情報提供者のもって来たほうの新聞を手にした…店の中で確認するわけにもいかないが、たいていは真ん中のページに封筒が留めつけてあり、そこに情報が入れてある……

アンジェ「…」提供者が先に去るパターンの接触方式だったので、しばらくのあいだ紅茶をすすって待つ…

………
309 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/04/25(木) 02:09:04.72 ID:G+rdVvKh0
…高級宝飾店…

店員「こちらなどいかがでしょう? …お客様に大変お似合いかと存じます」

ドロシー「そうね、まぁ悪くはないわ……」

店員「さようでございますか…ではこちらなどはいかがでしょうか。インドで産したルビーでございますが、大きさも輝きもこの通りで…」陳列棚に収まっている金とルビーのネックレスを指し示した…中央にはめ込まれたルビーは大豆くらいの大きさがあり、それを取り巻く金もふんだんに使われている…

ドロシー「まぁ…ずいぶんと大きいのね?」

店員「はい。あなた様のように堂々としていらっしゃる方には、このくらい立派な石でなければ釣り合わないかと…舞踏会でも夕食会でも、これをお召しになれば他のご婦人方と差をつけることが出来るかと存じます……」

ドロシー「…そうねぇ」(…よく言うよ……確かに石は大きいが色がくすんでるし、おまけにネックレスの細工そのものも趣味が悪い…それに私のことを遠まわしに「骨太」だって言いやがった……おおかた植民地か何かで一山当てた平民上がりの成金くらいに思ってやがるな…)

店員「いかがでございましょう?」

ドロシー「えぇ…そうね……」(そろそろ取引も終わった頃だろうし、後は適当にあしらってここを出ればいいな……)

情報提供者「…」

ドロシー「んー……エメラルドとルビーだったら、どっちのイブニングドレスに合うかしら……」(誰か出てきたが、あれが取引相手か……妙に慌てふためいてやがるようだが……って、まずい…!)


…ドロシーが陳列棚のネックレスやブローチを退屈そうに眺めていると情報提供者があたふたと裏道に消え、それと入れ替わるように窓の外を数台のRRと、ほろを張ったマーモン・ヘリントン乗用車が飛ばしてきた…ドロシーは髪型が崩れていないかどうか確かめるようなふりをして手鏡を取り出し、光を反射させて文房具屋のベアトリスに「緊急事態」の合図を送った……が、十数秒もしないうちに車は「ゴールデン・ライオン」の前に急停車し、中から数人の男が飛び出して店内へ飛び込んでいった…


店員「鏡でしたらこちらにございますよ?」

ドロシー「ええ、ありがとう…でもやっぱりルビーと緑のドレスは合わないわね。またにするわ…♪」

店員「さようでございますか……では、またのお越しをお待ち申し上げております…」白手袋をはめた若い紳士の店員は、貴族の老嬢や気難しいオールド・ミスたちをたぶらかすような笑みをにっこりと浮かべ、出口まで見送ってきた…

ドロシー「それではまた来ますわ」(くそ……アンジェが捕まったからって、ベアトリスが慌てて飛び出さなきゃいいが…)

…文房具屋…

ベアトリス「…っ」店のショーウィンドウにきらりと反射したドロシーの合図を見るやいなや、万年筆を見比べるようなふりをして腕を上げ、アンジェに向けて合図を送った……が、それを完全にする暇もないうちに車が「ゴールデン・ライオン」に乗りつけ、どやどやとエージェントらしい男たちが店内に飛び込んで行った…

ベアトリス「…」(冷静に…冷静に…「たとえ私たちの誰かが捕まったとしても落ち着いて行動し、自分の存在を明かすようなことはしてはいけない」って、アンジェさんに教わったんですから……)

ベアトリス「……すみません、またにします」

文房具屋の主人「そうかね…では、また必要なものがあったら来なさいよ?」

ベアトリス「はい…」

…文房具屋を出ると「ゴールデン・ライオン」に視線を向けないようにして普通の足取りで歩き、その場を去るベアトリス…そっと角を曲がると裏道に入り、それからドロシーとの集合場所に向かった…

…「ゴールデン・ライオン」…

アンジェ「…」(あと二分…それだけ待って出ていけば怪しまれない……)

…紅茶の代金はすでに払ってあり、あとはタイミングよく紅茶を飲み終わるように加減しながら窓から見える文房具屋を眺めている……と、ベアトリスの小さい姿が動いて「緊急事態」を示す形で腕を上げた…

アンジェ「…」静かに紅茶を飲み終わると情報が挟んである新聞を畳み、化粧室に入るふりをして裏口から抜け出そうと席を立った…

店員「うわっ…ちょっと、何をするんです!」

背広の男「公務の執行中だ、邪魔立てするな!」裏口の方で店員ともみ合う音がしたかと思うと、どかどかと足音も荒く数人の男が駆け込んできた……アンジェは無表情で、さりげなく表側から出ようと何歩か足をすすめた…

コートの男「よし…全員動くな!」数秒もしないうちに表側にも車が停まり、似たような雰囲気の男たちが飛び込んできた……

アンジェ「…っ」(…どうやらはめられたようね)

指揮官らしい男「よし、いたぞ……確保しろ!」途端に二人の男がアンジェの腕を左右からつかみ、別の二人が3インチの「ウェブリー・スコット」を突き付けた…のこりの男たちは他に怪しい動きを見せる者がいないかと周囲をにらみつけ、ものものしく見張っている…

アンジェ「な、何ですか……!?」震え声を装っておびえたふりをする…

指揮官「とぼけるな、自分でもよく分かっているだろうが…!」

アンジェ「何の事だかわかりません……女性が選挙権を求めてはいけないんですか…っ?」

(せめて「婦人参政権論者」のふりでもすれば、ドロシーたちが越境するなり証拠を始末したりするための時間くらいは稼げる……それに野次馬がこれを見ても、何となく「捕まった活動家の女がいたっけ…」程度ですぐ忘れられてしまうはず……)

指揮官「ふん……連れて行け!」引きずられるようにして店の外に連れ出されるアンジェ…

アンジェ「…放して、放してくださいっ……!」マーモン・ヘリントンの後部座席に押し込まれそうになる寸前でひとりを振り払うと、暴れるふりをしながら小指くらいの小さなガラスのアクセサリーを車の後部に叩きつけた……

男「このっ…!」山猫のように暴れるアンジェに手こずったが、とうとう担ぎ上げるようにしてアンジェを放り込んだ…

アンジェ「…嫌っ、放して!」

指揮官「よし、出せ…!」運転手がアクセルを踏み込むと、車体がぐらりとかしぐほどの勢いで急発進した…

………
310 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/04/30(火) 01:22:36.36 ID:s2x1A2Qf0
…数十分後・倉庫街のネスト…

ベアトリス「ドロシーさん、アンジェさんが…!」

ドロシー「ああ、分かってるよ……それにしてもあの提供者のちくしょうめ、私たちの事を売りやがった…もし見つけ出したら生きながら切り刻んでミートパテか、鉛玉を山ほどぶち込んでグリュイエール・チーズ(よく漫画にでてくる黄色いチーズ)みたいに穴だらけにしてやる……」裏切り者をののしりながら「セイロン紅茶」と書かれた木箱をどかし、床下の隠しスペースから防水布の包みをいくつも取り出す…

ベアトリス「と、とにかく早くコントロールに連絡して指示を仰がないと…!」

ドロシー「……いや、そいつは駄目だ」

ベアトリス「どうしてですか!」

ドロシー「…コントロールに連絡して、なんて言われるかだいたい想像がつくからさ……」

ベアトリス「もちろんアンジェさんは貴重なエージェントなんですから、助けるようにしろって言うに決まって……」

ドロシー「…捕まったエージェントの救出を指示してくれるような情報部があったら、世界中の情報部員はみんなそこに移籍しちまうよ……もしコントロールに連絡を入れたら「状況は危険、直ちに「D」以下は脱出を図れ」と同時に、利用価値より情報漏れの危険の方が高くなるからプリンセスを抹殺せよ…と来るだろうな」

ベアトリス「そんな…!」

ドロシー「この業界なんてそんなもんさ……だからコントロールに連絡するわけにはいかない」

ベアトリス「…でも、だったらどうするんです?」

ドロシー「ああ、その事だが…ちゃんとした尋問を受ければ遅かれ早かれアンジェも「歌う」(白状する)ことになる……だけどな、冷静なアンジェの事だから「遅かれ」の方になるのはほぼ間違いない…だから、アンジェが情報を吐かされる前に居場所を突き止めてやっこさんを取り戻す」

ベアトリス「だとしても、肝心のその場所が分からないことには……」

ドロシー「ふっ……車のエンジンをかけるふりをして捕まった瞬間を見ていたんだが、あの冷血女はとことん肝が据わってるよ…連中を振りほどこうとして暴れながら、こいつを使ったのが見えたんだ」そう言ってペンダントのような小さいガラスの飾り物を見せた…

ベアトリス「…それは?」

ドロシー「ああ、これか……ヘンゼルとグレーテルの話は知ってるか?」

ベアトリス「お菓子の家の…ですか?」

ドロシー「ああ……この小さいガラス瓶はな、ヘンゼルとグレーテルが道しるべで森に撒いて行った白い石ころと同じ役割をするんだ…中にはケイバーライト鉱石の粉末を溶かし込んだ液体が入ってて、この片眼鏡(モノクル)みたいな分光器で見ると、うっすら痕跡が光って見える……っていうシロモノさ」

ベアトリス「……じゃあそれを追えば」

ドロシー「めでたくお家にたどりつける…って訳さ。とにかくアンジェが何かを吐かされたり、移送されたりするまでに向こうのネストを突き止めて、情報を拡散される前に連中から取り戻す……残された時間はあまりないから、とっとと準備をするんだ」そう言いながら包みをほどき、中の銃に弾を込めはじめた…

ベアトリス「は、はいっ…!」

ドロシー「…ちせにはもう伝書鳩を送ったから、こっちに急いでいるはずだ……それから、プリンセスは私たちとの関係がばれないように普段通り過ごしてもらう…というわけで今回は手が足りないから、お前さんにも荒事をやってもらう事になるからな……頼むぞ?」

ベアトリス「……分かりました」

ドロシー「結構…だったらそこにある銃の中から好きなのを選んで弾を込めな?」


…そう言いながら4インチ銃身の「ウェブリー・スコット」二挺、水平二連の散弾銃…それからアメリカ西部の開拓地で見られるウィンチェスター・ライフルを限界まで切り詰めた「ランダル」銃のように、リー・エンフィールド小銃を限界まで切り詰めた改造銃……それにロープやナイフ、スティレットと言った「七つ道具」を手早く身に着けていく……そして最後に、アンジェの愛用している「ウェブリー・フォスベリー」オートマティック・リボルバーを背中側のホルスターに差した…


ドロシー「ベアトリス…必要になるだろうから、そのドカンといくやつも持っていくといい」

ベアトリス「……はい」台の上に並べられた銃から3インチのウェブリー・スコットと護身用の小型リボルバーを取り上げ、弾を込める…それからナイフをひと振りと、真鍮や黄銅で出来た様々な道具を、黒い活動用の服についたあちこちの輪っかや内ポケットにセットする……

ドロシー「…」水平二連に込めた鹿撃ち用の散弾を再確認すると、パチンと銃尾を閉じた…
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/30(火) 01:31:32.57 ID:R4BcImhYO

ドキドキですね。今日はこれで終わりかな?
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/30(火) 11:33:04.80 ID:RUsYBKjLO
娼館(女性向け)に潜入任務とかどうだろう
プリンセスは顔割れてて無理かもだが
客のリクエストということでベアちせとかもできるよ!
313 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/01(水) 00:41:34.13 ID:j9HMYbwp0
>>311 >>312 の方、コメントありがとうございます……そしてこのssを見て下さっている皆さま「令和」おめでとうございます。皆さまがの日常が平穏無事でありますように…


…そうですね、貴族令嬢やご婦人がたの通うアブノーマルな「会員制社交クラブ」のようなものは考えておりましたが……せっかく頂いたアイデアですので、どこかでエッセンスとして取り入れてみたいと思います

……それといよいよアンジェの尋問に(新元号早々にこんな場面で申し訳ないです…)入りますので、よろしければお付き合い下さい
314 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/01(水) 02:15:40.82 ID:j9HMYbwp0
…同じ頃・どこか…

アンジェ「…」


…マーモン・ヘリントン乗用車に乗せられたアンジェは頭から袋をかぶせられ、その上さらに「道順を覚えきれないように」と、運転手は車を目一杯飛ばしていた……しばらく左右の席に座ったエージェントから頭を押さえつけられていると唐突に車が停まり、ドアが開く音がした…


左側のエージェント「よし、出ろ!」

アンジェ「…」転ばないように足もとをさぐりさぐりしながら降りるアンジェ…靴音が響く感じはレンガ敷きで、周囲にたちこめる匂いから湿ったレンガの土のような匂いと野菜くず、石炭の煤煙を嗅ぎ分けた……とはいえ、それだけではロンドン中の下町やスラムが当てはまる…左右のエージェントに腕をつかまれ、半分持ち上げられたような格好でどこかに連れて行かれる…

エージェント左「…階段だ、足もとに注意しな」

アンジェ「…」(九…十……)コツン、コツン…ッ、とわびしげな音をたて、階段が続く……一歩づつ歩きながら、反射的に階段の段数を頭に叩き込むアンジェ…

エージェント左「……よし、座れ」左右の男に抱え上げられ、テディベアのように椅子に座らされた

アンジェ「…」

エージェント左「…おい、そっちは掛けたか?」

右側のエージェント「待ってくれ……よし、できた」ロープで椅子の脚に縛りつけられたアンジェ…

エージェント左「よし…それじゃあ目隠しを外してやれ」

エージェント右「ああ」

アンジェ「……っ」


…目隠しの袋を外されると真っ暗闇だった視界が一気に明るくなり、アンジェは目を細めた…視界に入ってきたのは尋問官の座る椅子が三脚と小ぶりなテーブルが一つ……テーブルの上にはランプが置いてあり、視線を動かして素早く足元を確認すると椅子は板張りの床に固定されていて、身動き一つできそうにないことが見て取れた…


アンジェ「…」そのまま黙って座っていると、エリート官僚風のパリッとした身なりをした長身の男が入ってきて、二人のエージェント…アンジェを連れてきた二人…が左右に控えた。エージェントは片方が太りぎみで、もう片方はあまり背が高くない…


長身のエージェント「さてと、お若いお嬢さん(ヤング・レディ)…まずはお互いに自己紹介といこう」灰色の背広をきた長身の男は水色の目でアンジェを見た…かすかに唇を吊り上げたのは微笑みのつもりらしい……

長身「…私はスミス……本名ではないが、まぁ「ジョン・ドゥ」(名無しの権兵衛)では何かと不便だからね」椅子に腰かけて高級なパイプを取り出した…

長身「さてと……今度は君の名前をお伺いしたい」

アンジェ「マーガレット…マーガレット・ホワイトです。どうしてこんな目にあうのかわかりません……放してください!」

ふとっちょ「…ふざけるな!」そう怒鳴りつけて激しい平手打ちを頬に見舞って来た……

アンジェ「…っ!」(頬には大して重要な器官がないから、多少痛めつけても身体に影響はない…と言うことは何か情報を引き出すか、場合によっては寝返りを打たせたいということね……)ファームで教わったさまざまな事を思い出し応用しながら、相手の出方を見るアンジェ……

長身「……ミス・ホワイト。もっとも、他にも名前があるかもしれないが…君のような職業の人間なら分かっているだろう? 君が何をして、王国と女王陛下の治世に対してどんな罪を重ねたか……だがね、まだチャンスはある」そう言ってそらぞらしい笑みを浮かべ、パイプをひと吹きした…

長身「…君はまだ若い。なにか上手い事を言われたか、さもなければ金に目がくらんだか…とにかく共和国の連中にだまされたんだろうってことは分かる……もし協力してくれれば、小さくはないその「過ち」を水に流して、もう一度やり直す機会ぐらいは与えられるし、その方が君の身のためにもなると思うのだが……どうだね?」

アンジェ「……少し考えさせて下さい」(…こうした場合、いくらか協力的にして相手に「寝返りの可能性がある」と思わせることで、多少優位な立場を築ける……)

長身「もちろん…紅茶でも持って来させようか?」

アンジェ「…はい」

長身「だそうだ……廊下の奴にそう言って持ってこさせたまえ」

ちび「はい」


…紅茶が運ばれてくるとちびのエージェントがカップを支え、アンジェの唇に当てた……それを見ながら自身も紅茶をすする長身の男…ありがたいことに紅茶は熱すぎでもなければ冷めすぎでもなく、少しだけ砂糖とミルクも入っていた…


長身「…お気に召したかね?」

アンジェ「ええ、ありがとうございます…」

長身「結構…さて、いくつか君に聞きたいことがある……」

315 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/03(金) 01:55:11.57 ID:8x3RGZl00
長身「…さぁ、教えてくれたまえ。君の協力者は誰だ? いつ、どこで…そして誰にこの文書を渡すのだ?」

アンジェ「協力者なんて知りません! 私は女性でも選挙に行き、議会に立候補できるようにしたいと活動しているだけです…!」

長身「見え透いた嘘をつくのはやめたまえ……どこでスパイとしての訓練を受けた? 指導教官の名前と特徴は? 施設はどこにある? 訓練生の数は?」

アンジェ「言っている意味が分かりません! 本当に女性の政治参加のために活動していただけです、あなたのいう「スパイ」だなんて知りません!」

(…向こうがすべてを知っているなら、もっと具体的な事を聞いてくるはず……にもかかわらずこんな大雑把な質問しかできないということは、まだ確証をつかんではいないようね……ここはドロシーたちが越境するための時間稼ぎにも、しばらく「婦人参政権を求める活動家」で通さないと……)

長身「ふぅ…君がそのように非協力的だと、こちらとしてもいくらか「手荒な手段」をとらざるを得なくなるぞ……?」

アンジェ「そんなことを言っても、まったく知らないことを話すことなんてできません!」


…当然アンジェとしても、厳しい尋問にかけられて「言うべきでない」ことがらまで全て吐かされるよりも、敵方に協力するふりをして「どうでもいいこと」や「つまらない情報」を白状しながら時間を稼ぎ「金の卵」を傷つけないようにする方が正しい手段なのは分かっていた……とはいえ、最初からあっさりと屈してペラペラしゃべってしまうと尋問官に馬鹿だと思われ、悪くすると逆に怪しまれてしまう……そのほど良いさじ加減と名演技こそが、敵方に捕まった情報部員の出来る唯一の「腕の見せ所」で、味方を助ける(場合によっては)最後の「産物」(プロダクト)になる…


長身「やれやれ、困ったご婦人だな…トム」

ふとっちょ「はい」…ふとっちょのエージェントはアンジェの靴を脱がしにかかった

アンジェ「……何をするんですか、止めて下さい!」

長身「なら質問に答えたまえ…君がこの文書を届ける先は? 誰に渡せと指示されている? 指令を出しているのは誰だ?」

アンジェ「本当です、本当に知らないんです…!」

長身「…ならば仕方ない」


…長身があごをしゃくって合図をすると、ふとっちょはアンジェの脚のロープを解いて足を水平に持ち上げ、革の平たいベルトで足の裏を叩きはじめた……尋問の仕方としては一番単純で、始めの数回は大したことがないが次第にじんじんと痛みが増し、最後は柔らかい足の裏が真っ赤になって、火傷でもしたように傷むことになる…尋問としてかなり効果的な上に、もし手違いで拘束を解かれても真っ赤にはれて痛む足では逃げ出すことも難しい……と「一石二鳥」の効果がある…


アンジェ「お願いです、止めさせて……!」

長身「だったら答えるんだ…君を「運用」しているのはどこだ。共和国の情報部か、それともアイルランドの独立主義者か、フランスの「カエル」(フランス人の蔑称)どもか?」

アンジェ「ですから何度も言っているように……うぅっ!」

長身「とぼけるな! 婦人活動家が陸軍省の情報を欲しがるとでも言うのか……!?」

アンジェ「そんなの知りません…っ!」(…この尋問官、うっかり「陸軍省」ってしゃべったわ……ここは私が一本取ったわけね……)痛みに耐えながら髪を振り乱して(尋問に耐性などない普通の女性らしく)泣き叫ぶ演技をし、冷静に状況を把握し続けるアンジェ…

長身「…さあ、答えたまえ!」

アンジェ「ですから、知らないものは知りません…あぁっ!」

長身「……強情だな、ミス・ホワイト…だが、我々は交代も出来れば休むことも出来る……しかし君はそうはいかない。全てを話してもらうまで、こうした「取り調べ」が延々と続くぞ?」

アンジェ「うぅ…この……人でなし…!」

長身「何とでも言いたまえ。我々はアルビオン王国と女王陛下のためにやっているのだ」

アンジェ「うっ……王国の名を借りて…三人がかりで女一人を痛めつけるなんて、あなたたちのやっていることは女衒(ぜげん)以下だわ…!」

ふとっちょ「何を!」

アンジェ「しかもちびにふとっちょ、やせっぽち…まるでドタバタ喜劇の組み合わせよ……!」(…尋問官を怒らせれば、冷静な判断を失わせることが出来る…そして相手は、うっかり手の内をさらしてしまうことがある……)

ちび「この…言わせておけばっ!」アンジェの頬に平手打ちが飛んだ…

アンジェ「うっ…!」

長身「やめろ! …どうやらお嬢さんはもっと本格的な「取り調べ」を受けないと吐く気が起きないようだな……隣へ連れて行け!」

ふとっちょ「…はい」

ちび「……分かりました」

………
316 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/08(水) 02:17:12.30 ID:br1oWSNJ0
…別室…

ふとっちょ「…よし、いくぞ……せーの」

ちび「よいしょ…!」

アンジェ「…」またしても目隠しをされ、両腕をエージェントに抱え上げられたアンジェ…そのまま引きずられるようにして、冷たく湿った空気がよどんでいる廊下を数ヤードばかり運ばれた……

ふとっちょ「…おい、開けてくれ」

見張りの声「はい」

ふとっちょ「よし、ここに縛れ……何やってるんだ、とっととしろよ」

ちび「そうせかすなって…ほらよ」

ふとっちょ「じゃあもう外してもいいな…そら」

アンジェ「…」


…十字架の形に拘束されたうえで目隠しを外されたアンジェの目の前には、尋問官の机と椅子しかなかった先ほどの部屋と違って様々な物が置いてある……立ったまま身体を九十度に折り曲げさせて、首と両手首を一枚の板に空けた穴に拘束する「さらし台」や、X字型だったり洗濯板のような形の「拘束台」、あるいは、正座した身体に食い込むようになっている「三角木馬」が所狭しと置いてあり、中央のテーブルには金属の輝きもまがまがしい外科手術用のような道具類が並べてある……そして部屋の片隅には血を流すためらしい、水の満たしてあるバケツが二つ…どうやらこの部屋に据えてある器具の類は、対象に「情報を吐かせる」というより、相手をサディスティックに痛めつけるための道具に見える…


アンジェ「…」

ちび「で、おれたちはもういいのか?」

ふとっちょ「ああ。どうやら「あの人」はおれたちみたいなのがいると邪魔みたいだからな……退散しよう」

ちび「そうか…ま、お前さんもとっとと吐いちまった方が身のためだぜ? じゃあな」鉄のドアがガシャンと閉められ、薄暗い部屋に一人取り残されたアンジェ…

アンジェ「…」

…これまでは怯えたような演技をしつつも目や耳を働かせて、敵方の情報を収集し、味方の情報は保護してきたアンジェ…が、そのアンジェも中世の拷問室のような光景を見て、背筋に冷たいものが走った…と言っても、いまさら肉体的拷問が恐ろしいわけではない……もちろん、鍛えられたアンジェであっても苦痛には耐えられないが、問題はそこではなかった…

アンジェ「……どうやら予想は正しかったようね…」かすかに表情をゆがめ、小声でつぶやいた…

…捕えられてから最初の尋問を受けるまでの短い間に、アンジェは自分を捕えた相手が「玄人」(プロフェッショナル)ではなく「素人」(アマチュア)なのではないかと薄々イヤな予感がしていたが、どうやら部屋に揃っている拷問器具の類を見るとそれに間違いないようだった…

アンジェ「…まったく……笑えないわ」


…アンジェのような情報部員からすると、同じ捕まって尋問を受けるとなれば、ノルマンディ公率いる防諜部のような「同業者」の手にかかって「手際良く」情報を引き出すための必要限度で(…と言っても相当の苦痛を与えられることになるが)済ませてくれる尋問の方がまだマシだった…そういうプロの尋問官は「正しい情報を引き出す」ために尋問を行うので、対象者を痛めつけすぎて「魂の抜け殻」にしてしまうことはまずない……が、頭に血がのぼったアマチュアの手にかかると、たいていは息を切らした尋問者と、ボロボロになった対象者の肉体だけが残ることになる…


アンジェ「…」(どのみち、あと数時間は稼がないとならないけれど……それまで耐えきれるかどうか、限界を試すいい機会だわ…)


…拘束されたままアンジェが気持ちを整えていると、鉄扉の向こうでやり取りする声が聞こえ、ドアが開いた……入ってきたのは豊満な身体つきの綺麗な女性で、唇にはダークチェリー色の口紅を引いて、黒革のビスチェとスカート、ハイブーツを身に着け、右手からは編み込んである革の鞭を提げ、襟ぐりの部分から大きな白い胸、スカートの裾からは色っぽい綺麗なふとももをあらわにしている……横につき従っている双子のような少女二人も同じような格好をしていて、片方は盆に載ったワインとグラス、もう片方はお湯が入っているらしい洗面器やタオルを持っている……どうやらこの二人はアンジェとあまり年が離れていないように見える…


女「……初めまして、お嬢さん?」

アンジェ「…」

女「あら、だんまりとはさみしいわね。では自己紹介と参りましょう…私はレディ・ワイルドローズ……ローズで結構よ♪ この二人は「アゴニー」(苦悶)と「アンギッシュ」(苦痛)……貴女のお名前は?」甘い音楽的な声で尋ねた…

アンジェ「マーガレット……マーガレット・ホワイト」

ローズ「あら、マーガレットとは可愛らしいお名前…それに白い肌が本当にマーガレットのよう……♪」そう言って優しくアンジェの頬を触り、舌なめずりをした…

アンジェ「…っ」

ローズ「あの汚れた男たちに触られてさぞ気味悪かったでしょう……アゴニー」

アゴニー「…はい」暖かい濡れタオルで腕や顔をそっと拭いた…

ローズ「いかが、マーガレット?」

アンジェ「ええ…ありがとう」

ローズ「良かったわ……さてと、ちょっと貴女にお聞きしたいことがあるの♪」道を聞くような軽い調子で問いかける…
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 08:21:53.63 ID:ZvufjrLwO
新キャラの方々がすごく好きです
尋問というかただの拷問になるけどもアンジェさんには数時間頑張って耐えてほしい
318 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/09(木) 01:08:09.26 ID:e2D2L7gk0
>>317 まずは感想ありがとうございます…こういう「秘密のクラブなどでSっぽいもてなしをするお姉さま」キャラクターは腐敗した上流階級や貴族社会にはつきものですし、気に入っていただけて何よりです……実は「レディ・ワイルドローズ」はこの後も…


…ちなみに「ワイルドローズ」の名前は英国の国花がバラなのでそこから名付け、「アゴニー」と「アンギッシュ」は英和辞書の「痛み」の類語から引きました……アンジェは引き続き耐える予定です…
319 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/11(土) 02:57:55.84 ID:9az6zJzo0
ローズ「…さてと♪」

アンジェ「…」

ローズ「貴女が持っていた新聞に挟まっていた文書…誰に渡す予定だったの?」

アンジェ「そんなの知りません、たまたま相席になった人が持っていた物です…その人に聞いて下さい」

ローズ「あらあら……マーガレット、嘘は良くないわよ?」

…そう言ったミス・ワイルドローズの手は硝酸でくすんでもおらず(アンジェたちはそうならないよう「任務」の時、常にぴったりとした手袋をしている…)とても白くてほっそりしており、爪も短く切って綺麗に磨いてある……どう見ても銃やナイフを使い慣れているエージェントの手には見えない…

アンジェ「いいえ、嘘なんてついていません…」(やっぱりこの女はエージェントじゃないようね……でも、だとしたらどうして尋問官の真似事を…?)

ローズ「…だったらどうして新聞を取り違えられた時に呼びとめなかったの?」

アンジェ「だって……コーヒーを飲んでいて気が付かなかったし、もし気付いたとしても同じ新聞なのだから…きっと呼び止めなかったと思います」

ローズ「そう…ねぇ、マーガレット」

アンジェ「はい」

ローズ「私としてはあの「ブルドッグ」たちと違って、貴女の事を大事に思っているの……ね?」優しく甘い口調でそう言っているが、瞳にはどろりとした情欲を宿している…

アンジェ「…はい」

ローズ「だから私に……私だけに本当の事を言ってくれないかしら…誰に文書を渡す予定だったの?」

アンジェ「だからそんな文書の事は知りません…嘘じゃないんです」

ローズ「…ふぅ…困ったわね。 アゴニー、アンギッシュ」二人はうやうやしく鞭を受け取ると、代わりに手際よくテーブル上の器具を差し出した…

ローズ「ねぇ、マーガレット…」

アンジェ「…は、はい」アンジェとしてもこうしたタイプの女性は初めて対処するので、慎重に反応を見つつもそれ相応に怯えた雰囲気を演じた…

ローズ「どうしても答えてくれないと、私としても色々試してみないといけなくなるの……例えば、爪を剥がしたり…ね♪」

アンジェ「…」

ローズ「他にも、爪の間に細い串を刺したり……あと、童話の「シンデレラ」だったかしら? 悪い魔女に焼けた鉄の靴を履かせて、死ぬまで舞踏会で躍らせたのは…♪」あごの先に人差し指を当て、困ったように首をかしげた…

アンジェ「…っ」

ローズ「……ところで、何かお話してくれる気になったかしら?」

アンジェ「ですから、さっき言った通りなんです…確かに私は「婦人参政権運動」の活動はしていました……でも、スパイなんかじゃありません…!」

ローズ「そう……アゴニー」

アゴニー「…はい」鉛筆くらいの太さの棒を数本渡した…

ローズ「……綺麗な手ね♪」手首で縛られているアンジェの左手をそっとつかむと、指の間に棒を挟み始めた…

アンジェ「…お願いです、どうか……」

ローズ「文書は誰に渡す予定だったの?」

アンジェ「……ですから、本当に…」

ローズ「…そう」一気に手を締め上げる…

アンジェ「ああ゛ぁ…っ!」指の骨に激痛が伝わり、指の間に挟まれていた棒が折れた…

ローズ「ああ…ごめんなさいね、痛かったでしょう……?」

アンジェ「う……くぅ…っ」

ローズ「さぁ、お願いだから……文書は誰に渡す予定だったの?」

アンジェ「…あぁ…っ……うぅ…」

ローズ「ね、マーガレット…私には話してくれるでしょう?」

アンジェ「…本当に…本当に知らないんです……お願いですから、信じて下さい…!」

ローズ「ふぅ……困ったわねぇ…」

320 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/14(火) 02:05:26.09 ID:pVJAjLVq0
アンジェ「…本当なんです……私には…こんな痛い思いをしてまで嘘をつく理由がありません……」

ローズ「ええ、分かるわ。こんな痛い思いはもうしたくないでしょう……だから本当の事を話してちょうだい?」

アンジェ「うぅっ……どうして信じてくれないの…?」

ローズ「…いくら貴女の事を信じてあげたくても、そんな作り話では納得できないわ……さて、どうしようかしら…」

アンジェ「…そんな……!」

ローズ「……本当の事を話してもらうだけなら手足はいらないし…指を一本づつ折っても十回……足も入れれば二十回は尋ねることが出来るわ……ね、そうでしょう?」

アンジェ「ひっ…!」


…アンジェとしても遅かれ早かれ(…当然アンジェとしては「遅かれ」の方であるように努力していたが)いくらか情報を吐かされることは風邪や税金と同じで、ある程度「やむを得ない」とは思っていた…とはいえ、身体を五体満足にさせておいてくれないようなサイコパスを相手にはしたくない……相変わらず見事に怯える演技を続けてはいたが、いつもよりぐっと実感がこもってしまう…


ローズ「…ふふ、そう怯えなくたっていいわ……ちゃんと話してくれさえすればいいの…♪」そう言って足下にしゃがみこむと、そっとむき出しの足を撫でた…

アンジェ「…っ!」先ほどの革で打たれた部分を触られて、思わずうめき声を漏らした…

ローズ「あぁ、マーガレット……これ、あの連中にやられたの?」

アンジェ「…はい」

ローズ「…もう、マーガレットの柔肌になんてことを……アンギッシュ」

アンギッシュ「はい」

ローズ「かわいそうに、こんなに赤く腫れあがって…あの野蛮人たちにひどい目にあわされたわね、マーガレット……ん、ちゅっ…ちゅぅ♪」なみなみと満たされたワイングラスを受け取ると濃い色をした赤ワインをアンジェの足首から指先にかけ、それから両手でそっと足を包み込むと、爪先からワインの滴るアンジェの足を丹念に舐めまわす…

アンジェ「…///」

ローズ「大丈夫……私は貴女の味方よ…ね♪」

アンジェ「…」

ローズ「……それにしても「手つかずの」娘のお相手をするって言う話だったのに…まったく、あの連中ときたらとんでもない二枚舌ばかりね……まぁ、それも「職業病」と言う事かしら…?」首をかしげて、ひとり言をつぶやいたローズ…

アンジェ「…」(……二枚舌が職業…もしかして外務省?)

ローズ「…でも、こうなると可哀そうなマーガレットがどんなに痛めつけられたか分からないわ……アゴニー、アンギッシュ…外してあげて?」

二人「「はい」」

…左右から近寄ってくると、腕のロープをほどいた二人……とはいえ脚はまだがんじがらめに縛られており、ひりひりと焼け付くような足裏から言っても歩ける状態ではない…おまけに下着姿の丸腰で、外にどれだけの敵がいるかも分からない……アンジェとしては相手が警戒をゆるめるよう、出来るだけ協力的にふるまうことにした…

アンジェ「…っ」縛りつけられていた手首に血が通い、ひどくうずく…

ローズ「よろしい……それじゃあ、お願いね」

二人「「はい」」

アンジェ「……っ///」

…二人が両側から、丁寧な手つきで白いシュミーズとコルセットを脱がしていく……アンジェもご婦人の部屋でならそういう経験がないわけではなかったが、薄暗い地下室で自分を痛めつけてきた相手から…と言う異常な状況下では初めてだった……

ローズ「あぁ、よかったわ…身体は真っ白なままね……本当にマーガレットの花びらのよう♪」そっと脇腹に手を差しのべ、優しく愛撫する…

アンジェ「…んっ」

ローズ「……さぁ、二人とも」

二人「「はい」」…今度は脚のロープを解き、ペチコートをそっと引き下ろした……

アンジェ「…っ」

ローズ「……あぁ、白い肌がまるで新雪のようね…傷一つないわ♪」あちこちを丹念に撫で回すローズ…

アンジェ「…」

ローズ「さて……と♪」しばらく優しすぎるくらいにアンジェの身体を撫でまわしていたが、二、三歩下がってにっこりすると、アゴニーから黒革の鞭を受け取った…

321 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/05/15(水) 18:04:54.67 ID:xvwqEJpXO
えすえむのお時間である
昔のアンジェさんは鞭打ちに弱かったけど果たして
322 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/19(日) 23:52:23.44 ID:9IxaZVAW0
>>321 さぁ、果たしてどうなるやら…

それと、ここ何日か投下出来ずすみませんでした。とりあえずまた明日以降になるでしょうが、続きを書いていく予定ですので……気長にお待ちいただければと思います
323 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/23(木) 02:28:18.64 ID:1OkC8OmM0
ローズ「もう一度聞くわね、マーガレット……文書を渡す相手は?」

アンジェ「…知りませ……」

ローズ「…」途端に「ヒュッ…!」と鞭がうなり、アンジェの引き締まったふとももに打ちつけられた…

アンジェ「…っ!」

ローズ「ね、本当の事を教えてちょうだい…貴女の所属している組織はどこなの?」ヒュンッ!

アンジェ「……ですから…うぅっ!」

ローズ「早く答えた方がいいわ。でないと貴女の絹のような肌が傷だらけになってしまうもの……組織のトップはだあれ?」

アンジェ「そんなの…っぐ!」

ローズ「さぁ、ひどいことにならないうちに…ね♪」先ほど見せていた形ばかりの優しい表情はすっかり消え去り、瞳を爛々と輝かせて鞭を振るっている…

アンジェ「知らないことは答えようがありま……あ゛ぁっ!」

ローズ「ふふ……組織を守ろうと言う心意気は立派だけれど、今のうちに答えた方が貴女のためよ? ふとももの皮が裂けてしまわないうちに♪」

アンジェ「でも、知らないのはどうしようも…あぁぁっ!」

ローズ「もう、マーガレットったら頑固なのね♪」

アンジェ「…ぐぅっ!」

ローズ「さぁ、教えて…そうでないとまた痛い事をすることになってしまうのよ?」甘く優しい猫撫で声はねっとりとした妖しいささやきに変わり、アンジェをいたぶりながら悦びに身体を震わせている…

アンジェ「……そんなことを言っても……っ、ぐぅっ!」


…かつてアンジェが受けた訓練でも、こうしたインモラルな趣味の持ち主を相手に動じない(…できれば気に入られる)ようにと色っぽい教官がさまざまな事を「実技で」教えてくれたが、訓練に支障が出ないよう絶妙な手加減を加えてくれていたらしい「一流の」教官に比べると、鞭の振るい方に遠慮がなく、両のふとももが焼けつくように感じる…


アンジェ「…はぁ、はぁ……」

ローズ「ふふ…マーガレットはこんなに我慢できたのね。とっても偉いわ……さ、お飲みなさい♪」そう言ってアゴニーからグラスのワインを受け取ると口に含み、アンジェの唇に重ねると口移しでワインを飲ませた…

アンジェ「…っ!」

ローズ「んむっ……んっ…♪」

アンジェ「……っ、んくっ…んっ///」目を閉じたアンジェの口の端から一筋の線になってワインがこぼれた…

ローズ「ふぅ…お味はいかが?」

アンジェ「///」

ローズ「あらあら、そんなに物欲しそうな表情をして……そんな顔をされたら我慢できなくなってしまいそう♪」…ん、ちゅっ♪

アンジェ「…ぁっ///」

ローズ「ふふ…私、貴女のことが気に入ったわ……アゴニー、アンギッシュ」

二人「「はい」」

ローズ「貴女たちも仲間外れは嫌でしょう…さ、お手伝いをしてちょうだいね♪」

二人「「承知いたしました」」

アンジェ「あ……んっ、んくっ///」

アゴニー「…んむっ、んくっ」

アンギッシュ「…んっ、んっ……こくんっ」

…代わる代わる二人からワインを口移しされたアンジェ……なにも食べていない状態で何杯も飲まされたせいで酔いが回ったのか、痛めつけられた身体が少し楽になった分、身体が火照りを覚えていた…

ローズ「ふふ、これで元気が出たでしょう……それじゃあ続きを始めましょうね、マーガレット♪」バケツの水で鞭についた鮮血を洗い落とすと、火照りで赤みを帯びて、汗で艶めいた色っぽい胸元をシルクで拭った…

アンジェ「…」
324 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/05/25(土) 11:01:02.80 ID:/l0NND9G0
…同じ頃…

ちせ「済まぬ、遅くなった…」

ドロシー「お、来たか…危うくパーティがお開きになっちまうんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたぜ。もっとも、あの「黒蜥蜴」女から話を聞き出すのは石からミルクを絞るより難しいがな……」

ちせ「うむ…それで、アンジェどのの行方がつかめたそうじゃな?」

ドロシー「まぁそんなところさ…ところでだ、一つ言っておかなきゃならないことがある……」

ちせ「なんじゃ?」

ドロシー「…今回の件なんだが……こいつはちょっとした「個人的な事情」による殴り込みで、コントロールの指令でも何でもない。どころか、この件に関われば任務を窓から放り出すのと同じになる……」

ちせ「…ふむ?」

ドロシー「当然、失敗したら……いや成功したとしても山ほど問題を巻き起こすのは間違いないし、もし途中で捕まるとかそれ以外のトラブルに巻き込まれても、お前さんのボス…堀河公もかばってはくれないだろう…」

ちせ「ふむ、それで…?」

ドロシー「もちろんお前がいてくれれば心強い…とはいえ、こいつは言ってみれば「任務の範囲を超えている」のも事実だから、一緒に来るかどうかは自分で決めてくれ。 …何しろこんなバカにつき合うって言うなら、そいつも「史上最大の大マヌケ」ってことだからな……♪」

ちせ「なるほど…」

ドロシー「……で、どうする?」

ちせ「ふぅ…幾度も命を助けてもらった朋友を捨て置くというのはあまりにも薄情というもの……助太刀いたす」…そう言って太刀を取り上げた

ドロシー「よぉし、分かった…どうやらお前さんも私たちくらい大マヌケらしい……さ、車に乗ってくれ♪」

ちせ「うむ」

ドロシー「…みんな、忘れ物はないな?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「よし…ベアトリス、最後に一つコントロール宛てに暗号電を送ってやってくれ「緊急…協力者「トガリネズミ」は巣を捨てた模様、至急関係者の脱出、潜伏を提案する…本局もただいまをもって閉鎖」とな」

ベアトリス「……はい、送りました」

ドロシー「結構…ならその通信機を使えなくするんだ」

ベアトリス「はい」…愛着を持って整備していた無線電信の装置を、少しもったないなさそうに破壊した……

ドロシー「よし。暗号書も始末したし……余った武器の類は特徴もないから、そのまま地下に放り込んでおけばいい」

ベアトリス「……それじゃあ…?」

ドロシー「ああ、出発だ…あの冷血女を助けにな♪」…濃緑色のロールス・ロイスに飛び乗ると、最新式の「自動点火型」エンジンを噴かした……

ベアトリス「はいっ…!」
325 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/28(火) 10:47:21.46 ID:U+WJNlOr0
…ロンドン市内…

ドロシー「どれどれ……よし、少し薄れてはいるがばっちりだ」


…宝石の鑑定士や時計職人が付けていそうなデザインの「モノクル型分光器」を片目にはめ、コーヒーハウス「ゴールデン・ライオン」の前から車を流した…分光器をはめたドロシーの右目には、夜のとばりが降りたロンドンの道にうすぼんやりと青緑の光の帯が残って見える…


ベアトリス「良かった…それじゃあ、後はそれをたどっていけば……!」

ドロシー「いや、喜ぶのはまだ早い……向こうがネストを突きとめられないようにうんと迂回をしていたり、途中で車を替えたりしたら追えなくなる」

ベアトリス「……でも、もし追えなくなったら…?」

ドロシー「その時はこっちとしてもどうしようもない…もし効き目のあるおまじないだの情報部員の守護聖人だのを知ってるなら、そうならないように祈っておくんだな」

ベアトリス「…」

ドロシー「もっとも、どうやらあちらさんはお急ぎのようだ……まるで尾行を撒く努力をしちゃいない」

ベアトリス「それじゃあ、無事に見つけられるんですね?」

ドロシー「たぶんな。あとは連中が手際よくアンジェを移送したり、人相を触れ回ったりしていない事を願うだけさ…」

………



…再び・どこかの地下…

アンジェ「…ああっ!」

アゴニー「さあ、どうぞお話しください…貴女の「雇用主」との連絡方法は?」ヒュンッ…!

アンジェ「ぐぅっ…!」(…さすがに身体にこたえてきたわ…まるでふとももが焼け付くよう……)

ローズ「…まぁまぁ、よく耐えること……これなら二人もたくさん愉しめるわね♪」アンジェの真っ白なふとももの肌が裂け、鮮血が滴っているのをみてご満悦のワイルドローズ…先ほどから椅子に腰かけ、しばしアゴニーとアンギッシュに任せている……

アゴニー「…さぁ、吐かないとどんどん辛くなるだけですよ……?」

ローズ「その通りね……アゴニー、そろそろアンギッシュと交代してあげて?」

アゴニー「分かりました…」

アンギッシュ「はい…んむ、ちゅっ……」鞭を手渡しつつ、互いに舌を絡めあうアゴニーとアンギッシュ…

ローズ「ご苦労様…さ、お飲みなさい♪」

アゴニー「はい…」座っているローズの前で膝をつき、濃い味わいのワインを口移しで飲ませてもらうアゴニー…

アンギッシュ「……貴女の雇用主は」

アンジェ「…だ、だから知らないわ……あぁ゛ぁ゛ぁっ!」

アンギッシュ「では、次の質問を…連絡役はどんな人物でしたか」

アンジェ「……シルクハットに灰色っぽい服…ステッキはついていたと思うけれど、よくは見なかったわ…」

アンギッシュ「…その連絡役の名前は」

アンジェ「知らないわ……嘘じゃないの…」

アンギッシュ「…どうか事実を…事実のみをお話しください」ヒュッ…!

アンジェ「ああ゛ぁぁ…っ!」

アンギッシュ「…貴女の接触役はどんな人物ですか」

アンジェ「婦人参政権の活動で会うのは……ミス・マーギット…本当にそれだけで、スパイなんて知らないの……お願い…」

…尋問官を信じさせる技法として、直接情報活動とはつながりのない人物を思い浮かべ、立場や名前だけをすり替えて細かい仕草や格好まで詳しく説明するやり方がある…大事な部分ははぐらかし、とにかく細かい部分を詳しく描写してみせると説得力が増す…アンジェも尋問に屈したふりをして、少しづつ口を開いていた…

アンギッシュ「…その方の特徴は」

アンジェ「い、今話すわ……身長は私と同じくらいで、髪は茶…年齢は三十代くらいのオールド・ミスで、たいていは緑のさえないドレス姿……」
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 18:14:09.22 ID:w78yBFnbO
アンジェさんがんばれ
....双子はもっとがんばれ
お姉様よりは尋問スキル高そうだし道具もまだまだあるぞ!
327 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/30(木) 01:03:14.08 ID:MEEqTHOC0
>>326 コメントありがとうございます…ちなみに二人は双子みたいにそっくりではありますが双子ではなく、ミス・ワイルドローズの「教育」によるものという設定です

…また数日以内に投下していきますので、お待ちください……どうやらドロシーたちの助けが来るまで、他にも色々されそうな予感がしますね…
328 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/02(日) 02:11:18.09 ID:geie0UtD0
ローズ「ようやく素直に話してくれたわね、マーガレット……ふふ、嬉しいわ…ぁ♪」綺麗な脚を組んで椅子に腰かけていたが、滑らかに立ち上がるとアンジェのそばに歩み寄ってきた…

ローズ「……でも、実際はスパイ活動をしていたのでしょう?」

アンジェ「ち、違います……そうじゃないんです…!」

ローズ「もう、マーガレットったら…本当の事を言わないとダメよ?」甘い声の底から、どろりとゆがんだ欲望がにじんでいる…

アンジェ「…本当なんです……信じて下さい、ミス・ローズ…」

ローズ「ふふふ…マーガレット、貴女はとっても可愛いけれど……嘘をつくのは良くないわ♪」そう言って卓上に置かれている道具から、外科手術に使いそうな固定具のような道具と、恐ろしく研ぎ澄まされている剃刀を取り上げた……

ローズ「さてと……せっかくお近づきになれたのだから、もっと貴女の事を知りたいわ…♪」アンジェの前で姿勢を落とし、秘部に固定具をあてがって押し広げた……

アンジェ「…っ///」

ローズ「まぁ、なんて綺麗な薄桃色……まるで処女(おとめ)のままみたい…ね♪」舐めまわすようにじっくりと眺めると、剃刀を取り上げた…

アンジェ「…」

ローズ「ふふふ…それにこの柔らかな産毛……♪」そう言って脚の間を軽く撫でると、まだワインで濡れそぼっている秘部の周りに剃刀を滑らせた…

アンジェ「///」

ローズ「くすっ……可愛らしいマーガレットには処女らしくしていてもらわないと…ね♪」しゃり…しゃりっ……

アンジェ「……んっ///」じらすような刃の滑らせかたに、思わず声が出るアンジェ…

ローズ「動いちゃだめよ……♪」

アンジェ「…ん…はぁ……///」…声を出すまいと思いつつも、散々縛りつけられたり痛めつけられたり…かと思えば口移しでたっぷりとワインを飲まされ、今度は豊満な美人に優しくデリケートな部分を剃毛されている……想定を超える異常な状況とこそばゆいような感覚のせいで体が疼き、花芯が濡れてくる……

ローズ「ふふふ……終わったわ…すっかりつるつるで、まるで赤ちゃんのようね♪」

アンジェ「…はぁ…はぁっ……///」

ローズ「…さてと……それで、貴女の雇用主は?」

アンジェ「……知りません…本当にいま話したことしか知ら……ああ゛ぁ゛ぁぁっ!」

ローズ「ふふ…もう、嘘をついちゃダメだって言ったでしょう……♪」爛々と瞳を輝かせ、研ぎ澄まされた剃刀で浅く…しかしたっぷり一インチほどふとももの柔肌を切り裂いた…

アンジェ「……うぅっ」(…あの剃刀が良く砥がれていてよかったわ……刃がぎざぎざになっているような鈍い刃物でやられたらもっとひどいことになっていたはず…)

ローズ「さぁ、答えて♪」まるで何かの当てっこをするような楽しげな口調で問い詰める…

アンジェ「…あ…うぅ……ですから、本当に……」

ローズ「…ふぅ」いつの間に持ち替えたのか、長い鞭で鋭く打ち据えた…

アンジェ「……ぐっ!」

ローズ「ね、本当の事を言うだけよ……もし教えてくれたら、ごほうびをあげる♪」アンジェの胸元にワインを注ぐと、吸いつくようにして舐めはじめた…

アンジェ「…ん///」

ローズ「大丈夫…ん、ちゅぅ……貴女に害が及ぶような事は……じゅるっ、ちゅ……ないわ……私が助けてあげる♪」

アンジェ「んっ、く…///」

ローズ「……それに……ぴちゃ…組織は貴女がいなくなっても変わらないけれど…んむっ、ちゅぅ……質問に答えないと苦しいのは貴女よ、マーガレット…ちゅるっ…助かるには……素直に答えた方がいいわ……んちゅる…っ♪」

アンジェ「…ん、あ……はぁ…っ///」谷間からへそ、秘部…それからまだ血が滴っているふとももを舌で舐めまわされ、吸われていく…

ローズ「んんぅ……美味しい…♪」…ふとももの鮮血と混じりあったブルゴーニュの濃厚な紅を舌で受け止め、ちろちろと舐め続けている……

アンジェ「んぅっ……んっ///」

ローズ「ふふっ、可愛らしい喘ぎ声……二人とも、ロープを持っていらっしゃい♪」

二人「「はい」」

ローズ「……さ、マーガレットの左脚を♪」

アンジェ「…っ///」二人の手で足首に新しくロープをかけられると、片脚だけ横向きに膝を上げるような状態で固定された…

ローズ「ふふ、いい眺め……次はあなたたちも召し上がれ?」またたっぷりとワインを注ぎ、アンジェの引き締まった乳房を舐めあげた…

アゴニー「…ん、ぴちゃ…ちゅぅ♪」

アンギッシュ「……んちゅっ、ちゅる…♪」…こちらもそれぞれ右脚と花芯に吸いつき、無表情ながら陶然とした様子で一心不乱に舌を這わせている…

アンジェ「あ…んっ……///」酔いが回っていて、そのうえ三人に全身を舐めまわされているせいか、時々が目の焦点がかすむ……
329 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/05(水) 02:41:43.96 ID:SG91uO/t0
ローズ「…さて、それじゃあ今度は……♪」口もとから滴った血とワインの混じった雫を舌先で舐めとると、卓上の小道具をあさり始めた……

アンジェ「…」

ローズ「ふふふ……せっかくマーガレットが「初めて」なのだから、わたくしが手ほどきしてあげないといけないわ…ね♪」

アンジェ「…っ」

…机からワイルドローズが取り上げたのは、樫の木でできた芯材に黒染めの柔らかな牛革をぴったりとかぶせて縫い上げた張り型(ディルド)で、それを数本持って近寄ってきた…

ローズ「マーガレット……これが何か分かる?」

アンジェ「…ええ、おおよそは…予想がつきます…///」…レジェンド(偽装経歴)として作り上げた「マーガレット・ホワイト」は、年ごろからいってそう言ったものの名前くらいは聞いたことがあるが、婦人参政権や貧困の救済など「社会改革の理想に共鳴する真面目なお嬢さん」らしく顔を赤らめてみせた……

ローズ「結構……さ、あなたたちもお取りなさい」

二人「「はい…♪」」

ローズ「…ふふ、マーガレットはこういう「お道具」を使ったことはある?」

アンジェ「……い、いいえ///」(実際は幾度かあるけれど……ここは余計なことを言わない方が利口ね…)

ローズ「くすくすっ……ようやく本当の事を言ってくれたわね♪」

アンジェ「…っ///」

ローズ「それにしても良かったわ…マーガレットの「つぼみ」がまだ手つかずで……♪」張り型を持ってにじり寄ってくると、汗ばんだアンジェの脇腹を舐めあげた…

アンジェ「…う、うぅ…っ……」嫌がるように顔をそむけ、身をよじった…

ローズ「ふふふ…大丈夫、すぐに貴女からおねだりするようになるわ……♪」すべりを良くするためか白いラードのようなものを張り型に塗りつけ、つけ過ぎた分を意味深な笑みを浮かべつつ舐めとった…

アンジェ「……お願い……止めて…止めて下さい……っ…///」

ローズ「心配いらないわ、もっと小さな娘にだって入るもの……始めは少し痛いかもしれないけれど、すぐ慣れるわ…♪」

アンジェ「…お願い、おねがいですから…どうか……」

ローズ「ふふふ……そう言って懇願されるとますますしたくなるのよ…ね♪」にちゅ、ずぶっ……♪

アンジェ「あ…あぁぁぁっ……///」

ローズ「まぁまぁ、何とも初々しい反応だこと…♪」

アンジェ「…うっ、ぐうぅ…っ///」必要以上に痛がって、顔をゆがめるアンジェ…

ローズ「……さ、動かすわよ」

アンジェ「あっ、ぐぅ…っ……ああ゛ぁ゛ぁっ…!」ずちゅっ、ぐちゅ…っ…♪

ローズ「ふふふ…その表情(かお)、とってもいいわ……♪」頬を紅潮させ、額やずっしりとした乳房からは汗が玉になって飛び散る…

アンジェ「あぁぁっ…んっ、ひい゛ぃぃ…っ……!」

ローズ「はぁぁ…素晴らしいわね……アゴニー、アンギッシュ」

二人「「はい」」

ローズ「せっかくだから、あなたたちもどうぞ……と、その前に♪」アンジェの目に黒いシルクの布で目隠しをすると、みだらな笑みを浮かべた…

アンジェ「…あっ……」

アゴニー「…そうおっしゃっていただけるのでしたら……」ぐちゅ、ずぶずぶ…っ♪

アンジェ「あ゛っ、あ゛あぁ゛ぁ…っ……///」

アンギッシュ「…なら私はこちらを……」アンジェのきゅっと引き締まったヒップを指し示した…

ローズ「ええ、いいわよ…♪」

アンギッシュ「…ありがとうございます、それでは……」ぐじゅっ、ぢゅぶ…っ♪

アンジェ「えっ…あ……ん゛ひぃ゛ぃっ…!?」張り型を押し込まれると、拘束されたまま身体をびくんとのけ反らせて絶叫した…

ローズ「ふふ…ふふふふっ♪」

アゴニー「…ふふ」

アンギッシュ「…くすくすっ♪」

………

330 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/06/06(木) 02:19:25.31 ID:2fjQzvp40
…一方・エンバンクメント(運河)沿いの裏通り…

ドロシー「…次は右か……ふぅ、アンジェを捕まえた連中が誰であれ、少なくとも「尾行を撒く」ことに関してはアマチュアに毛の生えた程度だって言うのがはっきりしたぜ…」

ベアトリス「どういうことですか?」

ドロシー「ああ……普通だったらうんと迂回をするとか車を乗り換えるとか、何でもいいが追跡者を撒く手立てをとっておくもんだ…こいつらみたいに目的地へ真っ直ぐ車を走らせたりしないでな」

ベアトリス「……でも、もしかしたら私たちをおびき寄せるつもりかもしれませんよ?」

ドロシー「…なかなか悪くない発想だが、それだったらこっちが餌に食いつくようにもっと複雑で「それらしい」経路を選ぶね……ところが連中はイタチの巣を見つけたテリアそこのけに突っ走ってる…もしファームの教官がこんなのを見たら、脳の血管が切れちまうだろうな」

ベアトリス「…それじゃあ」

ドロシー「この道で間違いない…ってことさ。それに目的地はそう遠くない…周囲を見てみな?」

ベアトリス「はい…」ベアトリスが辺りを見回すと、うっすらと夜霧のかかった運河の両脇に黒々とそびえる保税倉庫のシルエットが広がっている…

ドロシー「…見ての通り、辺りは人通りの少ない…それでいて見慣れない人物や車がいても何もおかしくない海外貿易品中心の倉庫街だ…誰かを連れ去って尋問にかけるにはもってこいだろう?」

ベアトリス「なるほど……」

ドロシー「それと…おそらくだが、連中は尋問室を地階(グランド・フロア)に作らないで地下に用意したはずだ……そいつはこっちとしても都合がいい」

ベアトリス「…どうしてですか?」

ドロシー「そいつは後で説明するさ……そろそろ目的地に到着、ってところだからな…」それらしい場所に近づいたのでロールス・ロイスのエンジンを止めて惰性で百数十ヤードばかり走らせ、薄暗い倉庫の間に停めた…

…その頃・地下室…

アンジェ「はひっ、はぁ、はぁっ……はぁぁ…っ…!」

アゴニー「…くすっ♪」じゅぶ…ぐちゅぐちゅっ♪

アンジェ「あっあっ…はひぃ、あぁぁ…んっ♪」

ローズ「まぁまぁ…マーガレットったら初めてなのにこんなに濡らして……♪」じゅぶ、じゅぶっ…ずちゅっ♪

アンジェ「はひぃ…はへぇぇ……///」とろとろっ…♪

アンギッシュ「では、私も……♪」ずぶずぶっ…ぐりっ♪

アンジェ「はぁ、はぁ…らめ……んはぁぁ…っ///」とぽっ、ぷしゃぁぁ…っ♪

アゴニー「…彼女はまた達してしまったようです、レディ・ワイルドローズ」

ローズ「そのようね…なら「お仕置き」が必要だわ」アンギッシュに向かって軽くうなずいた…

アンギッシュ「…はい♪」

アンジェ「ひっ…らめ、もうやめ……んあ゛ぁ゛ぁぁ…っ///」花芯に二本目の張り型をねじ込まれ、どこか甘ったるい悩ましげな声で絶叫するアンジェ…

アゴニー「んちゅぅ…ちゅっ、ちゅる…ぢゅぅぅ…っ♪」

アンギッシュ「ふふ…ぴちゃ、れろっ……んちゅ、ぢゅるぅ……っ…♪」二人は片脚を持ち上げられたアンジェの前にひざまづくと、乳房に吸いつく仔鹿のように、とろとろと垂れている愛液をすすりこむ…

アンジェ「らめ…そんな……あ、あぁっ…♪」目隠しをされたままあちこちを責めたてられ、ろれつも回らなくなった半開きの口もとからとろりと唾液がこぼれる……持ち上げられていない方の脚は垂れた愛蜜がつたって、つま先から床までべとべとに濡れている…

ローズ「…ふふ、最初から協力してくれればこんな事にはならなかったのよ……んちゅぅ…れろっ……♪」

アンジェ「んぅぅ…んっ、んんぅぅ…っ♪」ローズに口づけをされながらアゴニーとアンギッシュの二人に張り型を動かされて、身体をひくひくと震わせながら絶頂するアンジェ…

ローズ「ふふ…言っておくけれど、まだまだ色んな事を体験できるわ……楽しみにしていらっしゃい…ね♪」アンジェの耳たぶを甘噛みしながらささやきかけた…

アンジェ「んっ、んぅぅ…っ///」とぽ…とろとろ……っ♪

………

331 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/08(土) 01:47:59.52 ID:jFTn6DEk0
…倉庫街の一画…

ドロシー「…アンジェが捕まってる倉庫は……あれか」


…使われていない倉庫の影の暗がりからそっと様子をうかがうドロシーたち…その視線の先には、夜霧に霞んでレンガ造りの倉庫が建っている……辺りには青果店の倉庫から出たカブの葉っぱやニンジンのしっぽのような野菜くずが捨てられているゴミ捨て場があり、運河のよどんだ水の臭いや古びたレンガの土ぼこりのような臭いと交じって、いかにも倉庫街らしい雰囲気を漂わせている…


ベアトリス「……ドロシーさん、どうしてあれだって分かるんですか?」

ドロシー「簡単さ…ケイバーライト粉の痕跡はあそこの前で切れてるし、入り口に見張りがいる……こんな人気のない場所でわざわざ見張りなんて立たせておいたら逆に目立つって言うのに……馬鹿な連中だ」

見張り「…」ハンチング帽をかぶり、時々倉庫の前を行き来している…

ドロシー「…見張りは一人で程度は「並」ってところか……だが動きがぎこちない所を見ると、経験が浅いな……」

ちせ「とはいえ見張りは見張り、見つかれば騒がれるじゃろうが…どうする?」

ドロシー「もちろん片づけるさ……とりあえず奴をおびき出す」道端に落ちていた石ころを拾い上げると軽く手の上で転がして重さを確かめ、絶妙な場所に放った…夜霧のせいで音が妙に響き、それでいて少し離れるとすっかり霧に吸い込まれてしまう……

見張り「…ん?」

ドロシー「……ちせ、仕留めそこなったら頼む」スティレットを握って身構えた…

ちせ「うむ」

見張り「…?」不審そうな顔をして歩いてくると、頭を動かしてドロシーたちの隠れ場所の向かいにある暗がりを透かし見ようとする…その後ろからドロシーが音もなく忍び寄り、口をふさぐと同時にスティレットを突きたてた……

見張り「ぐ…ん゛っ……!」

ドロシー「……よし、片付いた…」スティレットの刃を相手の服の裾で拭うと、死体を引きずって隠した…

ベアトリス「それで、ここからどうするんです…?」

ドロシー「ああ、そいつをまだ説明してなかったな……見たところあの倉庫からは灯りや声が漏れてこないから、どうやら連中は尋問室を地下に作っているようだ…さっき裏側も見てきたが、そっちは運河に面したどん詰まりで道はない……つまり出口は一つきりだ」

ベアトリス「…それで?」

ドロシー「簡単さ……アンジェを助け出すと同時に、ここにいる連中を一人残らずきれいさっぱり始末する…私たちが助けに来たことを連中の「お仲間」に話されちゃたまったものじゃないからな」

ベアトリス「あの…それって……」

ドロシー「そういうことだ……アンジェの命、それと私たちの安全のためにな」

ベアトリス「……っ、分かりました…」

ドロシー「結構。それじゃあ私とベアトリスが突入するから、ちせは地下の入り口で待機……私たち以外で出てくる奴がいたら、問答無用で片っぱしから斬れ」…戦闘技術が未熟で足手まといになるリスクがあるベアトリスを連れて行くことで、「厄介事」に巻き込んでしまったちせに少しでも負担をかけないよう気を回したドロシー…

ちせ「うむ、承知した」ちせも言外の含みに気が付き、軽く一礼した…

ドロシー「よし…それじゃあベアトリス、行くぞ……あいにくと招待状はもらえなかったが、一つパーティにお邪魔させてもらおうじゃないか♪」

ベアトリス「はい…っ!」

…倉庫内…

ドロシー「…やっぱりな……あれだ」倉庫の中はガランとしていて、数台のロールス・ロイスやモーリス、マーモン・ヘリントン乗用車が停めてある……その片隅には小ぶりな階段があって、薄暗いシルエットになって地下へ続いている…

ベアトリス「…そうみたいですね」

ドロシー「ああ……まずは連中の車をおしゃかにしておくぞ。こいつを使って逃げられたら厄介だからな」

ベアトリス「はい」音が響かないようそっとボンネットを開けて、点火栓を外したりコードを切ったりした……

ドロシー「よし、こんなもんでいいだろう…ベアトリス、お前の方が小さいから前だ……私がきっちり援護してやるから、心配するな」

ベアトリス「分かりました…お任せします」

ドロシー「おう……それじゃあ行くぞ♪」そう言うと、ニヤリと不敵な笑みを口の端に浮かべた…


332 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/11(火) 02:00:30.47 ID:nV+5WRBk0
…倉庫の地下…

見張り「ふわ…ぁ……くそ、眠いな…」ハンチング帽をかぶったエージェントが目をこすり、あくびをかみ殺しつつ廊下の椅子に腰かけている…

ドロシー「…」廊下の角からちらりと確認すると、右側のウェブリー・スコットを抜いた…

見張り「…うーん……」眠気覚ましに首を回したり腕を動かしてみたりと忙しい……

ベアトリス「…ここからだと一人しか見えませんね」3インチ・ウェブリーを構えて小声で言った…

ドロシー「…よし、だったらちょっとばかり呼び鈴を鳴らしてやるとするか……スリー・トゥ・ワン…行け!」

ベアトリス「…はいっ!」バン、バンッ!

見張り「う、ぐうっ……!?」


…地下の狭い廊下で反響して、まるで装甲艦の8インチ砲のように轟く銃声……見張りが椅子ごともんどりうって数秒もしないうちに、あちこちから騒がしい物音が聞こえてきた…


王国エージェント「何だ…っ!?」

王国エージェントB「馬鹿、銃声だぞ! とっとと持ち場に……あっ!」

ドロシー「……安全確認もしないで飛び出しちゃ駄目だって教わらなかったか?」右手の廊下から駆けつけてくるエージェント二人にウェブリーを撃ち込み、身体をひねると左側のドアから飛び出してきたハンチング帽のエージェントを撃ち抜いた…

ベアトリス「……っ!」奥の方から駆けつけてきた数人に弾を撃ち込むとひとりが倒れ、残りは慌てて角に隠れた…

王国エージェントC「ボビー、ウィル…援護しろ!」コートの裾をひらめかせ、ウェブリーを撃ちながら走り込んでくる…

ドロシー「…おいおい、連中ときたらずいぶんと数が多いな……同窓会でもあったのか?」


…ドロシーは飛び出してきたエージェントの額を撃ち抜くと、目にも止まらない速さで左のウェブリーを引き抜きつつ弾切れになった右手のウェブリーと持ち替え、そのまま援護射撃をしていたエージェントを仕留めた…


ベアトリス「…く、こんなにいるなんて……聞いていませんでした…よ!?」一人を撃ち抜き、もう一人にも手傷を負わせた…

ドロシー「ああ、私もこんなにいるとは思ってなかったさ…!」持ち替えたウェブリーも撃ちきると水平二連の散弾銃を抜き放ち、廊下の角から向こう側に向けて撃ちこんだ…鹿撃ち用の散弾をもろに浴びて廊下の壁に叩きつけられる王国エージェント…

ベアトリス「…っ、弾切れです!」

ドロシー「分かってる、そこを代われ!」


…中折れ式リボルバーのウェブリー・スコットはどうしても再装填に両手を使う必要がある…ドロシーはベアトリスと交代すると、今度は限界まで切り詰めた改造リー・エンフィールド・ライフルを脇のサックから引き抜き、自動火器かと思うほどの速射で廊下の小机を倒して盾にしている二人を撃ちぬいた…


ベアトリス「っ…装填できました、代わります!」

ドロシー「よし、頼む!」代わりあうようにして壁に背中をあずけ、手際よくウェブリーの弾を込め直した…

ベアトリス「…んっ!」バン、バァン…ッ!

王国エージェントJ「…ぐっ!」

ドロシー「……どうやら片付いたようだな?」

ベアトリス「はー、はー、はーっ……ええ、どうやらそうみたいです…」

ドロシー「よし、それじゃあ後は人に手間をかけさせやがった黒蜥蜴女を探すとしよう……連中に「奪還されてなるものか」って片づけられちまわないうちにな」

ベアトリス「はい」

ドロシー「さてと、どうやらここは大文字の「H」字型みたいなつくりらしい…縦棒ごとに面した部屋があって、入り口側の二つは詰所か仮眠室か……まぁそんなような物だったから、残りは二部屋っきりだ…私なら奥の方が尋問室だと見るね」

ベアトリス「ええ、同感です」

ドロシー「まさに「意見の一致」ってやつだな…それじゃ急ごう♪」

ベアトリス「はいっ!」
333 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/06/14(金) 02:06:27.73 ID:0dT4qfmr0
…同じ頃…

ローズ「…んじゅるっ、れろぉ、ぴちゃ……ふふ、早く言った方がいいわ」

アンジェ「…ん、んんぅ…っ///」ワイルドローズはアンジェの耳の穴から爪先までくまなく舐めまわし、アゴニーとアンギッシュは蜜でねっとりと濡れたふとももにしがみつくような体勢で舌を這わせている……

ローズ「……マーガレット、貴女はよく耐えたわ…もう楽になっていいのよ♪」

アンジェ「…んっ、はぁ……はぁっ///」

ローズ「……ね、もう我慢しないで……素直になりましょう?」

アンジェ「…」くり返しくり返し同じことを言われ続けたせいで一種の暗示にかかり始め、判断力が鈍り始めているのを意識しているアンジェ…

ローズ「私が貴女のことは大事に飼ってあげる…んちゅっ、じゅるっ……きっと貴女も気に入るわ…ね?」


…縛り付けられたアンジェを責めたてながらねっとりとした甘い言葉で誘惑するワイルドローズと、まるで酔ったように身体を舐めまわすアゴニーとアンギッシュ……と、不意に重い鉄扉の向こうから聞き間違いようのない銃声が地下室に反響し、長く尾を引いて響いてきた……最初の数発が聞こえてきたかと思うと一気に激しい銃撃戦の音が始まり、数分もしないで静かになった…


アンジェ「…」

アゴニー「…っ!?」

アンギッシュ「……いったい何の音でしょう、レディ・ワイルドローズ…?」二人はアンジェを舐めまわすのを止めると、今までの無表情と気だるさの混じりあったような表情が取り払われ、怯えたように身体をすくめた…

ローズ「…心配いらないわ。 大丈夫よ、私があなたたちを守ってあげる……あなたたちは私の可愛いしもべですものね♪」

…ワイルドローズ本人も何が起こったか分からないせいか一瞬不安そうな表情を浮かべたが、すぐアゴニーとアンギッシュを抱きしめて口づけを交わすと、二人をかばうようにして扉の前に立った…それから木のかんぬきをかけ、ナイフの代わりになりそうな一番大きいメスを取り上げた…

アンジェ「…」(やっぱり素人ね。扉の正面に立つなんて……)

…一方・扉の前…

見張り「…がはっ……!」

ドロシー「さて、ここだな…」ウェブリーのシリンダーを開いて空薬莢を捨てると弾を込め直し、ドアの脇に立った…

ベアトリス「…でも、こんな鉄の扉じゃ開けようもありませんよ……」頑丈そうな鉄扉を前にすっかり落胆しているベアトリス…

ドロシー「おいおいベアトリス、その歳でボケるのはちと早いぜ? …ここに来るときにネストから「ドカンといくやつ」を持って来ただろうが♪」

ベアトリス「いえ、それはそうですが……中にアンジェさんがいるかもしれないんですよ?」

ドロシー「じゃあ他にいい方法があるなら教えてくれ…煙でも焚いていぶり出すか? それとも尋問官に開けてくれるようお願いするか?」

ベアトリス「むぅ…」

ドロシー「それに、よしんばアンジェが巻き込まれたとしてもだ……あの冷血女がけちな爆発一つでくたばるかよ♪」

ベアトリス「…でも」

ドロシー「悩んでる暇はないぜ、このふざけたドアに爆弾を仕掛けるんだ…ただしドアが完全に吹っ飛んでアンジェの奴をひき肉にしたりしないよう、錠や蝶つがいのところを中心にして…だ♪」口もとに笑みを浮かべた…

ベアトリス「あ……はいっ!」それを聞いて手際よく爆弾を仕掛けた…懐中時計そっくりな時限装置をぎりぎりの短さにセットする…

ドロシー「…いいか?」

ベアトリス「はい、仕掛けました……隠れて下さいっ!」

…ふたたび室内…

ローズ「……もう、マーガレットったら…可愛い顔をしてずいぶんな嘘つきさんね。…お仲間がいらっしゃったようじゃない?」

アンジェ「…さぁ」

ローズ「今さら隠し立てしなくてもいいのよ…もっとも、貴女のお仲間はこの分厚い鉄の扉をどうやって開けるつもりなのかしらね♪」

アンジェ「…分からないわ、ただ……」言いかけた瞬間に猛烈な爆音と衝撃が走り、壁や床からレンガの粉やほこりが一気に舞い上がってもうもうとたちこめた…

アンジェ「……かなり派手な方法だろうとは思っているわ…」爆風で耳が聞こえないなか、心の中でつぶやいた…
334 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/14(金) 03:26:09.81 ID:0dT4qfmr0
ドロシー「……よし、行くぞ!」ウェブリー片手に室内へ飛び込んだドロシーとベアトリス…室内には猛烈な煙とほこりの雲がたちこめ、置いてあったはずのランタンは吹き飛んで、すっかり真っ暗になっている……

ドロシー「…ふぅっ…こりゃ大掃除が必要だな……」ベアトリスが持っているランタンを受け取り、室内を照らした…

アンジェ「……それは貴女がやるべきでしょうね」


…少し声に張りがないが、それでもドロシーに向かっていつも通りの口調で言ったアンジェ…十字架形の拘束台に片脚を高く上げた状態で縛りつけられ、ランタンで照らされている裸身は傷だらけになっている…ふとももの皮はあちこちが裂け、そうでないところにも赤く鞭打ちの跡が残り、おまけにほこりをかぶってすっかり白っぽくなっている…


ベアトリス「アンジェさんっ!」あわてて駆け寄ると、ロープをほどこうと焦っている…

ドロシー「……よう、アンジェ」結び目に悪戦苦闘しているベアトリスにナイフを渡すと、いつもの不敵な笑みを浮かべた…

アンジェ「ええ…」

ドロシー「地下室暮らしは飽きただろ? …上に車が用意してあるぞ」

アンジェ「…結構ね……ごほっ、げほっ…!」

ドロシー「おっと、忘れてた……ここはずいぶんほこりっぽいからな、喉が乾いただろ♪」そう言ってブランデーの携帯容器を取り出し、そっと唇に当てた…

アンジェ「…んくっ、こくっ……」

ドロシー「…どうだ?」

アンジェ「ええ、ありがとう……ところで…」

ドロシー「ん?」

アンジェ「…どうして貴女たちがここに来たの」

ドロシー「そりゃお前さんに「歌われ」たら困るからさ…幸い、道しるべを残しておいてくれたこともあったしな♪」

アンジェ「あれはそういう目的でやったわけじゃない……貴女たちが脱出した後、監視チームがここを突きとめて出入りする人間を見張るなり追跡するなり、しかるべき手段を講じさせるためよ…誰が十字軍ごっこをしろと言ったの?」

ベアトリス「そんな、いくら何でもそんな言い方って……!」

ドロシー「…まぁ待て」

ベアトリス「でも…!」

ドロシー「いいから……ま、それじゃあ少し考えてみようぜ。お前さんが「価値を失う」とこっちも巻き添えを食うし、同時にお前さんの思っている「とある女性」も手札としての価値が下がる…違うか?」

アンジェ「いいえ」

ドロシー「私たちの脱出だって上手くいくとは限らないし、監視チームの立ち上げだって時間がかかる……それまでにここがもぬけの殻になるのは目に見えてる」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「…だとしたらお前さんの残した産物(プロダクト)には価値がないってことになる。だったら価値のある方を取り戻すのが利益になる…どうだ?」

アンジェ「だとしても…」

ドロシー「その辺の保安措置は大丈夫さ……局を閉鎖するときに「トガリネズミ」の事は連絡したし、問題になりそうな機材は全部始末しておいた」

アンジェ「……でも…」

ドロシー「それにだ……お前さんが鉄格子の向こうだの天国だのに行っちまったら、あのレディを悲しませることになる…だろ?」

アンジェ「……っ、それとこれとは関係ないでしょう///」

ドロシー「大ありさ…もしもそうなったら今まで築いてきたこっちの信頼やカバーは無駄になるし、ひいては協力が得られなくなるかもしれない……分かったらおしゃべりはやめて、さっさとこんなところからはおさらばしようぜ♪」

アンジェ「ええ……どうやらそれが今までで一番まともな判断ね…」

ドロシー「そりゃどうも…それと、ほら」ウェブリー・フォスベリーと着るものを差し出した…

アンジェ「…助かるわ」

ドロシー「ああ…ところでこの連中は?」ドアが吹き飛んだ時の爆風で伸びているワイルドローズたち三人をあごをしゃくった…

アンジェ「連中が尋問官の代わりに準備した怪しい趣味の女性よ……息はあるようだし、睡眠薬を打って連れて行く」

ドロシー「…途中で怪しまれないか?」

アンジェ「そのあたりの手はずは考えてある……任せてちょうだい」

ドロシー「やれやれ、そこらじゅう引っぱたかれて生傷だらけにされてるって言うのにか? まったく、ついていけないぜ…♪」

………

335 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/16(日) 01:26:13.12 ID:Th4KJ3Jx0
アンジェ「逆ね…あれこれ考えを巡らしていれば必要以上に怯えたりしないで済む」

ドロシー「なるほど……なにはともあれ早くここを出よう。いつ連中の仲間が来るか分かったもんじゃないしな」

アンジェ「そうね……うっ…く!」地面に足をついた瞬間、焼け付くような痛みが押し寄せてきた…

ドロシー「…足の裏もやられたのか?」

アンジェ「ええ、革ベルトでね……う゛っ!」

ドロシー「……その足じゃ歩くのは厳しいだろ…ほら、おぶってやるよ♪」

アンジェ「馬鹿言わないで。それじゃあこの三人はどうする気?」

ドロシー「どのみち三人をいっぺんに運ぶのは無理だ…往復すりゃいいさ」

アンジェ「…それだと時間がかかるわ」

ドロシー「そればっかりは仕方ないさ…ベアトリス」

ベアトリス「はい」

ドロシー「戻ってくるまで見張っててくれ。私はその間にこの愛想の悪いやつを運んでくる」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「よし…ほら、行くぞ♪」アンジェを背負って地下室から運び出した…

…地下室への階段…

ドロシー「…よいしょ……」一段一段確かめるように階段を上る…

アンジェ「……上にはちせが?」

ドロシー「ああ」

アンジェ「なるほど、彼女まで巻き込んだというわけね…」

ドロシー「私はちゃんと「一緒に来るならでっかい問題に巻き込まれる」とは伝えたからな…あとは本人の自由意思ってやつさ♪」

アンジェ「なるほど……形は整えたわけね?」

ドロシー「そういうこと……ほら、噂をすれば♪」

ちせ「……おお、ドロシーどの…アンジェどのは無事か?」

ドロシー「ああ、さっきから私の背中にしがみついてぶつくさ皮肉を言ってるよ……とりあえず腕や脚は付いてるし、聞いている限りじゃ毒舌も無事らしい」

アンジェ「別に「ぶつくさ」なんて言ってないわ…正確な判断が出来ていないわね」

ドロシー「この通りさ……ちなみにまだ回収したいものがあるからベアトリスを下に残してある。 とにかくこの皮肉屋を車に運んでくるから、引き続きここを頼む」

ちせ「うむ、承知した……無事で何よりじゃ」

アンジェ「……ありがとう」

ちせ「なに、構わぬよ」

ドロシー「よっこらしょ……とにかく身体を休めて、もし連中のお仲間が来るようだったらちせに向けて合図のランタンを振ってくれ」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「それじゃあ私は戻るが…手早く済ませてくる♪」

アンジェ「頼んだわよ」

ドロシー「ああ…♪」
336 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/19(水) 01:51:35.25 ID:ynqAWnBW0
…数分後…

ドロシー「…よし、これで運び終わったな……やれやれ、とんだ大仕事だったぜ♪」自分は一番大柄なワイルドローズを背負い、ベアトリスとちせにはそれぞれアゴニーとアンギッシュを運ばせたドロシー……地面にワイルドローズを下ろすと、額の汗を拭う真似をして冗談めかした…

アンジェ「お疲れさま」

ドロシー「おう…で、どうやってこいつらを怪しまれないで連れて行くつもりだ?」

アンジェ「そのことだけれど……ロープはある?」

ドロシー「もちろん。この世界の必需品だろ」

アンジェ「ならこの二人を互い違いにして縛り上げて」

ドロシー「あいよ」まるでサーディンを缶詰めにするようにアゴニーとアンギッシュを互い違いに寝かせると、ロープできっちりと縛り上げた…

アンジェ「結構…ならその二人は後ろのトランクへ詰めて?」

ドロシー「了解だ……ベアトリス、手伝え」

ベアトリス「はい」車の後部についている四角いトランクを開けると、ローストビーフの肉そこのけにぐるぐる巻きになっている二人を押し込んだ…

ドロシー「よし…で、この女は?」

アンジェ「それも考えてあるわ……ドロシー、さっきの気付けをちょうだい」

ドロシー「……ああ、なるほどな♪」

アンジェ「そういう事よ」睡眠薬ですっかり意識を失っているワイルドローズの顔や胸元にたっぷりとブランデーを振りかけた…たちまち酒屋の店先のように強い匂いがたちこめる……

ベアトリス「えーと……つまり?」

ドロシー「はは、簡単さ…私たちはゴキゲンなパーティ帰りの貴族様で、このレディは少しばかりグラスが多かった……って設定さ♪」睡眠薬ですっかり意識を失っているワイルドローズを後部座席に座らせた…

ベアトリス「あ、あぁ…なるほど!」

アンジェ「そういう事よ……それならもし警官に停められても言い逃れができる」

ベアトリス「でも…この格好だと貴族になんて見えないと思うんですが……」自分の黒マントを広げてみるベアトリス…

ドロシー「なぁに、そこは冴えた頭とよく回る舌、それに王立劇場並みの演技力でどうにかするさ……えらそうな口調で横柄な態度、貴族くらいしか買えない自動車に怪しげな格好……となればどう見たって上流階級の密かなお楽しみ…つまり貴族のご婦人方がこっそり楽しい乱痴気パーティからのお帰り、って設定さ♪」

アンジェ「その通りよ…もちろんスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)の警官も馬鹿じゃないから、わざわざ貴族の車を停めさせて不興を買ったりするような真似はしないとは思うけれど……」

ドロシー「…説得力のある設定を作っておけば慌てないで済むからな」

ちせ「なるほど…しかし、日本人の私はどう見ても貴族には見えぬが……そこはどうすればよいのじゃ?」

アンジェ「そうね、貴女は私たちが買って「お持ち帰り」の上で愉しませてもらう予定の東洋人を演じてもらう。だから何もしゃべらなくていいし、適度に縮こまっていればいい」

ドロシー「だな…ちなみにベアトリス、お前さんもちせと似たような境遇だ…私やこの女が今夜たっぷりともてあそぶ予定の「可愛い小間使い」って所だ♪」

ベアトリス「わ、わかりました…///」

ドロシー「よし、じゃあ車を出すぞ♪」

アンジェ「ええ…テムズ川沿いのネスト「ツバメの巣」に向かってちょうだい」

ドロシー「あそこか……到着するまでしばらくかかるし、寝たきゃ寝てもいいぜ?」

アンジェ「気持ちはありがたいけれど、戻るまでは起きているわ」

ドロシー「分かった…ブランデーの残りも飲んじまっていいからな?」

アンジェ「大丈夫よ…」

ドロシー「ああ、分かった」

………

337 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/21(金) 01:38:55.37 ID:R6QkteRl0
…ロンドン市内…

ドロシー「それにしても……そこの女にしろあの施設にいた奴らにしろ、今回は妙に素人くさい連中だったな…」

アンジェ「ええ…私も尋問の間出来るだけ耳をそばだてていたけれど、どうやらあのエージェントたちは外務省の情報部みたいね」

ドロシー「外務省情報部? …あいつらは貿易品の相場みたいな情報や外地での諜報活動なら強いが……国内の防諜もやってるのか?」

アンジェ「…だからじゃないかしら」

ドロシー「得点稼ぎに共和国の情報部員をあげて、他の省庁にいいところを見せようとしたっていうのか?」

アンジェ「ええ。そう考えたらあの場当たり的でせわしない様子もつじつまが合う……特に最近の防諜活動は防諜部の一強状態にあるし、エリート官僚が多くて気位(プライド)の高い外務省からしたら新参者に負けているのはしゃくにさわるはず…要は誰かが早急に成果を求めたのでしょうね」

ドロシー「なるほどな……」

…相づちを打ちながら夜霧がかかっているロンドンの道を迷うこともなく走らせていたが、一本の細い通りに入ると不意に車を停めた…

ドロシー「よし……アンジェ、ここで降りろ」

アンジェ「…どういうつもり?」

ドロシー「もしかしたら気づいてないかもしれないが、お前さんは夕方からさっきまで尋問されてたんだ……残りの後片付けは私とちせでやっておくから、ベアトリスを連れて寮に戻れ」…アルビオンらしい皮肉を利かせてはいるが顔をアンジェの方に向け、真剣な口調で言った……

アンジェ「だめよ」

ドロシー「馬鹿言うな。身体中傷だらけでまともに歩けもしないだろ…手伝いにならねえよ」

アンジェ「だとしても…」

ドロシー「あそこについた時、どうやっておけばいいのかは私にも分かってる……今は戻って傷の手当てをしろ」

アンジェ「…でも」

ドロシー「口答えするな。別に「お涙ちょうだい」の三文芝居にあるような安っぽい同情で言っているわけじゃない…お前の能力が落ちているのは「白鳩」の活動にとっても不利になるからだ」

アンジェ「……わかったわ」

ドロシー「よろしい。ベアトリス、お前さんは怪我の手当だとか看病だとか…そういうきめ細かい気遣いが得意だからな、よく診てやってくれ」

ベアトリス「はい、任せて下さい…!」

ドロシー「結構…どっかの誰かさんもこのくらい聞き分けがいいと助かるんだが……」

アンジェ「…余計なお世話よ」

ドロシー「へっ、だったら最初から人の言うことを聞くんだな♪」

アンジェ「そうね、これからはそうする……年寄りにくどくど言われるのは閉口だもの」

ドロシー「ああ…ちせ、悪いがもうちょっと付き合ってくれ」

ちせ「うむ」


…霧の中に走って行ったドロシーのカスタム・カーを見送ると、寮へ戻る道を歩きはじめた二人……いつも通りのポーカーフェイスを崩さないアンジェだが、さすがに脚が痛むらしく一歩づつ慎重に歩いている…


ベアトリス「…大丈夫ですか?」

アンジェ「ええ…」

ベアトリス「必要なら肩を貸しますよ…?」

アンジェ「必要ないわ……第一そんなことをしていたら目立つ」

ベアトリス「でも、誰もいませんし…」

アンジェ「……だからと言って誰も見ていないとは限らないわ。もしかしたら家の窓から外を見ている人間がいるかもしれない」

ベアトリス「それはそうですが……とにかく寮に戻ったら、ゆっくり休んで下さいね?」

アンジェ「ええ…それと、ベアトリス」

ベアトリス「はい、何ですか?」

アンジェ「…今日はドロシーと一緒に突入役を担ったようね…いくらドロシーにあの射撃の腕があっても、一人だけではまかないきれない部分もあるし、貴女の援護なくしては成り立たなかったはずよ……よくやったわ」

ベアトリス「…ありがとうございます///」

アンジェ「お礼は必要ない……貴女の実力を評価しているだけよ」

ベアトリス「…はい♪」
338 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/23(日) 01:50:44.87 ID:uBOwlgYt0
…寄宿舎・裏庭…

アンジェ「…うっ……」

ベアトリス「大丈夫ですか? …ほら、手を貸しますから……」寄宿舎の外周を取り巻くように植えてある鉄柵と生垣…身体の痛みをこらえて隙間を通り抜けようとするアンジェと、それを手伝うベアトリス……

アンジェ「……まさか貴女に手を引いてもらうことになるとは…私もそろそろ引退を考えた方がいいようね」植え込みで光がさえぎられているのでよく見えないが、かすかに笑みのようなものを浮かべているらしい…

ベアトリス「もうっ、可愛くないですね……さ、早く「部室」で手当てをしましょう?」

…部室…

アンジェ「…ふぅ、どうやら五体満足で戻ってこられたようね」ようやく少しだけ警戒を緩めたアンジェ…心なしか肩を落とし、一気に疲れたように見える…

ベアトリス「そうですね…とにかく室内に入って下さい、手当をしなくちゃいけませんから」

アンジェ「それもそうだけれど、今夜中に暗号文の起草をしておかないと…特にこれだけの事があった以上は……」

ベアトリス「ダメです…! 特に今夜は姫様が公的行事として観劇をなさっていて、お帰りが夜の十一時と遅いんですから…私以外にアンジェさんの手当てを出来る人はいないんですよ?」

アンジェ「…分かったわ……」

ベアトリス「ならいいです……って、姫様!?」扉を開けると心配げに座っていたプリンセスが視界に入り、周囲に聞こえないような小声ながらも驚きの声を上げたベアトリス……と、プリンセスは立ち上がって二人に駆け寄った…

プリンセス「…あぁ、二人とも……無事だったのね…!」

アンジェ「……おかげさまで、こうして生きているわ」

ベアトリス「私も傷一つありません……でも、どうして姫様が? 観劇の後は宮殿に戻って…それからお召し替えをなさって……どう頑張ってもここに戻るのは深夜になってしまうはずですが…」

プリンセス「ええ、その通りよ…ほら」

…そう言った矢先に、窓の外から深夜零時を知らせる「ビッグ・ベン」の鐘がかすかに聞こえてきた……

ベアトリス「えっ、もうそんな時間ですか……?」

プリンセス「ええ…なかなか戻ってこないから心配したのよ?」

アンジェ「そのようね……」少しよろめいて椅子に座りこんだ…

プリンセス「アンジェ…!」

アンジェ「大丈夫よ……向こうの連中とちょっとした「見解の相違」があって、いくらか「意見の転換」を求められただけだから」冷めた口調で皮肉なユーモアを披露してみせるアンジェ…

プリンセス「いいから見せて……あぁ、何てこと…あちこち傷だらけじゃない… ベアト、あなたも大変疲れているところで悪いけれど、すぐに私の部屋から金縁の箱に入っているお薬を持ってきて?」

ベアトリス「いえ、私は平気です……それよりすぐに持ってきますね」

プリンセス「ええ…」


…普段は一国の王女らしく鷹揚(おうよう)でおっとりしているように見えるが、実際は何かと手際のいいプリンセス……すでに暖炉の脇ではポットのお湯が沸いていて、テーブルの上にはそこそこの大きさの金だらいとタオル数本、一通りの薬が入っている薬箱と気付けのブランデーが並んでいる…


プリンセス「さ、脱いで…傷を見せなさい?」

アンジェ「……ベアトリスが戻るまで待った方がいいわ」

プリンセス「口答えしないの「シャーロット」……私は血を見たくらいで失神したりしません…っ!」

アンジェ「…分かった、なら好きにするといいわ……」しゅるっ…と黒いマントを床に落とすと、続けてブラックグリーンの上着と揃いのコルセット、それから黒に近いダークブラウンのスカートを脱ぎ捨てた……シルクのペチコート姿で椅子にもたれているアンジェはいつもより蒼白で、床に散らかる血の付いたコルセットやストッキングも痛々しい…

プリンセス「…ひどい」

アンジェ「そうでもないわ……爪も無事なら歯もへし折られなかったし、両目も見える」

プリンセス「そんなこと言ったって、ふとももの皮が裂けて……いま消毒と止血をしてあげるわね」現場でドロシーたちに巻いてもらったありあわせの「包帯」をそっとはがすと、たらいにお湯を注いでタオルを絞った…

アンジェ「ええ…」痛みをこらえながら傷の周りを拭いてもらい、それから消毒薬をそそぎかけてもらった…いつも表情を隠しているアンジェではあるが、薬が沁みるときの強烈な痛みに顔をしかめた……

プリンセス「アンジェ…痛むでしょうけれど、我慢してね」

アンジェ「ふ、今さら傷の一つや二つで泣いたりしないわ……」

ベアトリス「…姫様、持ってきました」

プリンセス「ありがとう…それじゃあベアト、あなたもこれを塗るのを手伝って?」プリンセスが鍵のかかった金縁の小箱を開けると、こぎれいな薬瓶が並んでいる…と、中に入っている広口瓶を取り出して蓋を開け、白い液状でうす甘い匂いのする薬を手に取った……

339 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/06/27(木) 01:56:54.79 ID:ZTtOiJCr0
………



プリンセス「…どう、アンジェ?」

アンジェ「少し沁みるけれど……焼けるような痛みは感じなくなってきたわ」

プリンセス「良かった……このお薬はベーカー街(貴族・富裕層向けの医者が多い通り)でも有名な名医が販売しているお薬なの」

アンジェ「…それは意外ね、あの通りは暇な貴族相手のやぶ医者しかないと思っていたわ」

プリンセス「もう、アンジェったら……って、ベアト?」

ベアトリス「…すぅ…すぅ……んぁっ、姫様?」アンジェのふとももに丁寧に薬を塗っているベアトリス…が、小さな身体で八面六臂の大活躍をしたのですっかり疲れてしまい、指先に軟膏をつけたままうつらうつらしている…

プリンセス「…ベアト」

ベアトリス「は、はいっ」

プリンセス「今日は大変だったでしょう…アンジェの治療は私に任せて、あなたは先にお休みなさいな」

ベアトリス「いえっ、ですが…!」

アンジェ「……いいから休みなさい。このまま寝ぼけた状態で変なところに軟膏を塗られたり、薬の瓶を割られたりされたら困る……それに今日は務めを果たしたのだから、もう充分よ」

ベアトリス「……でも」

プリンセス「…ベアト、命令しなくちゃダメかしら?」

ベアトリス「いえ……分かりました。 それでは済みませんが、先に休ませていただきます…///」

プリンセス「ええ♪」

アンジェ「よく睡眠をとることね…お休み」

プリンセス「……ふふ、けなげなベアト♪」

アンジェ「彼女の美徳の一つね…ただ残念なことにこの世界では「結果」が全てだから、いくら懸命にやっても成果に結びつかない限り評価はしてもらえない……生真面目な彼女からすると、そこが一番つらい所かもしれない」

プリンセス「そうね……ところで痛みはどう?」

アンジェ「おかげ様でずいぶん痛くなくなったわ…」

プリンセス「よかったわ。このお薬は傷跡も消してくれるから、数週間もすれば肌も綺麗に戻るはずよ」あらかたの傷に薬を塗り終えると瓶をしまって箱を閉じた…

アンジェ「助かるわ…なにせこの身体だって「道具」の一つだから、傷だらけでは困る」

プリンセス「ええ……ところでその尋問官の人は男の人だった? それとも女の人?」

アンジェ「あんなのは尋問官でもなんでもない…ただ人をいたぶって悦んでいる背徳的なサディストにすぎないわ」

プリンセス「そうかもしれないわね……それで、どっちだったの?」

アンジェ「女よ…それが?」

プリンセス「…いえ、その女(ひと)がうらやましいと思って……」

アンジェ「……どういう意味?」

プリンセス「だって……私のシャーロットに跡を残すなんて…私でさえそんなのしたことがないのに……」

アンジェ「あなたも私を鞭打ちにしたいの?」

プリンセス「そうじゃないわ。でも…」

アンジェ「でも…?」

プリンセス「そうね、例えば……はむっ、ちゅぅ…っ///」生傷だらけのアンジェをそっと撫でていたわりながら、ふとももの傷のない場所に吸いつくようなキスをした…

アンジェ「…どういうつもり///」

プリンセス「こうやって私の「シャーロット」に跡をつけたくて……ちゅぅぅ…っ♪」

アンジェ「それじゃあ、せめて見えないところにするようにして……ん、ちゅぅ…」
340 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/30(日) 02:09:09.36 ID:64Y7Qy730
プリンセス「…あぁ…はぁ……あむっ、かぷ……っ…♪」

アンジェ「んくぅ……甘噛み…は……止め……んぁ…っ……///」

プリンセス「…いや……あむっ…」

アンジェ「はぁ…んっ/// …なにも貴女が嫉妬するような事じゃ…ない……でしょう…んぁぁ///」

プリンセス「だって……妬けちゃうんですもの…」ランプの灯を小さく落とした薄暗い部屋で耳たぶを甘噛みしながら、ささやきかける…

アンジェ「あっあっあっ…そんなこと…で、んぅぅ……そのつど嫉妬していたら……んっ…到底この世界では務まらな……んんっ…///」

プリンセス「……シャーロットのいじわる」そう言うとふとももの間に顔を沈めて、舌を這わせた……

アンジェ「だ、だめ……そこは…んぅっ///」

プリンセス「でも……ぴちゃ…んちゅるっ、ちゅぅ……私がしたいの…♪」

アンジェ「止めて…今日はまだお風呂にも入っていないし…んっ、くうっ…ぁっ///」

プリンセス「大丈夫よ……私は貴女と一緒ならこの手を血に染めたってかまわないし、どこだって舐められるわ…ぴちゃ……ちゅぅっ♪」

アンジェ「……ばか///」

プリンセス「ふふ……あむっ、ちゅ……れろっ、くちゅ…っ♪」

アンジェ「あっ、はぁ…んぅぅ…っ///」ふとももを内股に閉じて頬を紅く染め、恥ずかしげに顔をそむけている…

プリンセス「んむっ、れろっ……シャーロットのここ…まるでピンクパールみたい……かぷっ♪」ふっくらしていてとろりとぬめっている花芯の「核」の部分を優しく甘噛みした…

アンジェ「あっあっ……あぁんっ///」いつもは冷ややかなアンジェの瞳が焦点を失い虚ろになると椅子に腰かけたまま身体をひくつかせ、つま先も床から離れてがくがくと震えた…

プリンセス「んふっ、ちゅぅっ……んちゅる、じゅるぅぅ…っ♪」

アンジェ「んぁぁ…っ、あぁ……はひっ、んぅぅっ…!」とぽ、とろっ……ぷしゃぁ…ぁっ♪

プリンセス「…あんっ、んふっ♪ シャーロットの温かい蜜がかかっちゃったわ……んちゅっ、れろ…ぢゅるぅ…っ♪」

アンジェ「はひっ、あぁ…ん/// ……これで……んんっ…満足……したでしょう?」

プリンセス「ええ、少しは……でも、シャーロットにはもっともっと気持ち良くなって欲しいわ♪」

アンジェ「待って、プリンセ……」

プリンセス「…かぷっ♪」

アンジェ「あっあっ、あぁぁん…っ!」


…誰かに聞こえては困るので、声を漏らすまいと必死に喘ぎ声を抑えるアンジェ……しっかりした作りの椅子がきしむほど「びくんっ…!」と身体が跳ね、しゃがみこんでいるプリンセスの顔や胸元にとろとろと愛蜜をぶちまけてしまう…


プリンセス「きゃあっ…もう、シャーロットったら♪」ちゅくちゅくっ、ちゅぱ…れろっ♪

アンジェ「はあぁっ、んぁぁ……はぁ…///」

プリンセス「……ふふ、私だけのシャーロットに…私のしるし♪」かぷっ…♪

アンジェ「…はひっ、ひぅ……はぁ…んくぅぅ……♪」必死にこらえようとしているが、アンジェの感じやすい部分をを知り尽くしたプリンセスの愛がこもった絶妙な責めに、すっかりトロけた表情になっている……声も甘えたような舌っ足らずな調子で、口の端からよだれをひとすじ垂らしている…

プリンセス「あぁ、もうシャーロットってば……可愛くってどうにかなってしまいそう…んちゅっ、ちゅぅっ…んじゅるっ、じゅぷっ♪」

アンジェ「はひゅっ、ひぅっ…あっ、んはぁ…あぁぁぁっ♪ ん、んんっ…あふっ、んあっ……ひくっ、ひくぅぅ…っ♪」ぷしゃぁ…ぁっ♪

プリンセス「……ん、ちゅっ……じゅぷっ…もう少ししたら……んちゅっ…お部屋まで連れて行ってあげ……じゅるぅ…るわね♪」

アンジェ「はー、はー、はーっ…そうしてもらえると……んくっ…助かるわ……///」ぐったりと椅子に崩れ落ちているアンジェ…きゅっと引き締まった脚にはねっとりした愛液の流れがひとすじ出来ていて、つま先にまで届いている……

プリンセス「ええ…ちゅっ♪」身体を伸ばすと、すっかり荒れてしまっているアンジェの唇にむさぼりつくようなキスをした…

………

341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/06/30(日) 17:37:07.28 ID:lpdnnLuPO
姫様頑張れ
このまま姫様が尋問に入ってもいいのよ
342 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/04(木) 01:10:22.65 ID:wneiBd9V0
>>341 お待たせしていてすみません。これを見ている皆さんが大雨の被害を受けていなければいいのですが……


とりあえずもう少し情事を続けて、それが済んだら「ワイルドローズ」「アゴニー」「アンギッシュ」を共和国側に運び出します……いつぞやは青果卸の馬車を使ってバラ積みのジャガイモに隠して移送しましたが、今度もなかなか上手い手段を思いつくことが出来たと思っております
343 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/05(金) 01:22:46.30 ID:sekq/QCG0
…数十分後…

アンジェ「はー…はー…はぁ……っ///」

プリンセス「んちゅぅ…ちゅっ、にちゅっ……くちゅ…♪」

アンジェ「あ、あっ……はひっ、んんぅっ…!」

プリンセス「ふふ…可愛い私のシャーロット……♪」一見すると目を細め、愛おしげにアンジェを見つているように見えるプリンセス…が、口もとでは少し意地悪な含み笑いをしていて、瞳もみだらな光を帯びている…

アンジェ「んっ…あ……///」

プリンセス「いいのよ…ここにいるのは私とあなただけなんだもの……ね?」ほっそりした指でくちゅくちゅと秘部をまさぐりながら、アンジェに身体を寄せると耳元へささやきかけた…

アンジェ「…ん、くぅ…んっ///」


…腰から下がまるでぬるま湯に浸っているかのように暖かく、じんわりとしびれるような快感にかすれたような喘ぎ声を上げているアンジェ……とはいえ、ただイかされっぱなしでは数々の「寝技」を体得している情報部員として立つ瀬がないと、必死に声をかみ殺している…


プリンセス「……もう、シャーロットったらどうして我慢しちゃうの…?」耳元に息を吹きかけ、空いている右手でアンジェの胸元をなぞりながらささやいた…

アンジェ「この時間に……ん、あっ…大声を出すわけには…いかないでしょ……う…///」

プリンセス「……そうだとしてもくやしいわ♪」そう言って「こりっ…♪」と乳房の先端を甘噛みするプリンセス…

アンジェ「あんっ…///」

プリンセス「ふふ、ここは硬くなっているわ…やっぱり「身体は正直」っていうのは本当なのね♪」

アンジェ「…刺激を受けると硬くなるのは身体の反応として当然のものよ…別におかしくないわ」

プリンセス「ふふっ、そうやって強がりを言って……こうなったらシャーロットが素直になるまで頑張るから♪」

アンジェ「…あっ……///」

プリンセス「ふふ、こうするとシャーロットが良く見えるわ…♪」柔らかなスリッパを脱いで長椅子の上に乗ると、アンジェにまたがった…ほのかなランプの灯りだけが白い肌を照らし、ぼんやりとした陰影のもたらす身体の線がアンジェをより柔らかく見せる…

プリンセス「…あむぅ…ちゅぅぅっ、んちゅ……♪」

アンジェ「んっ、んっ……あぁ、んんぅっ…///」

プリンセス「はむっ…あむっ、ちゅっ……ちゅるっ…」

アンジェ「はぁ…んむっ、ちゅ……ちゅっ…///」

プリンセス「むちゅ、ちゅるっ……ちゅっ♪」

アンジェ「……あっ」絡まっていた舌が解かれ唇が離れると、思わず小さな声をあげた……

プリンセス「ねぇ、シャーロット…」

アンジェ「……なぁに?」

プリンセス「ふふっ……なんでもない…わ♪」くちゅくちゅっ…ちゅぷっ♪

アンジェ「あっ、あぁ゛ぁぁんっ///」

プリンセス「くすくすっ、シャーロットったらこんな簡単な手に引っかかって……だめじゃない♪」じゅぶ…っ、にちゅっ♪

アンジェ「あっ、あ゛っ……あぁ…っ…」

プリンセス「ふふふっ…♪」ちゅくっ、ぬちゅ…っ♪

アンジェ「はぁ…はぁ……あっ、あぁぁ…んっ///」がくがくっ…ぷしゃぁぁ…っ♪

プリンセス「はぁぁ…んぁ、あぁ……っ♪」そのまま覆いかぶさるようにすると、熱っぽい身体を重ね合った…汗と愛蜜、傷薬の軟膏でねっとりした身体ごしにお互いの鼓動が聞こえてくる……

アンジェ「…プリンセス……私のプリンセス…っ///」ぐちゅっ、にちゅっ…♪

プリンセス「……シャーロット♪」じゅぷっ…ぐちゅっ♪

アンジェ「あっ、あぁぁ……んあぁぁ…っ///」

プリンセス「はぁぁ……あぁぁんっ♪」お互いに相手を抱きしめあいながら悩ましげな声を上げて果てた……

………

344 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/08(月) 11:17:25.38 ID:x9o9AgWU0
…翌日…

アンジェ「…おはよう、ドロシー……」

ドロシー「おう、おはよう……大丈夫か?」ティーカップを置くと眉をひそめた…

アンジェ「……何が?」

ドロシー「いや…きのうの今日だから無理もないが、目は充血してるし声はかすれてる……よっぽど尋問がこたえたみたいだな、むしろ昨夜よりくたびれて見えるぜ」

アンジェ「まぁ…そうね……」

ドロシー「あー……そういう事か…」アンジェにしては歯切れの悪い生返事に、勘のいいドロシーはピンときた…

アンジェ「…まだ何も言ってないわ」

ドロシー「なぁに、だいたい見当はついたよ……しかし、あのお姫様も可愛い顔してなかなか「お盛ん」のようで♪」にやにやしながらわざとらしいウィンクを投げた…

アンジェ「…」

ドロシー「……どのみち今夜までは用事もないし、無理しないで寝てたらどうだ?」

アンジェ「…そう言うわけにもいかないわ……」

ドロシー「いいから…その徹夜明けみたいな顔じゃあ人目を引いちまうよ」

アンジェ「……分かったわ、それじゃあ……一時間後に起こしてちょうだい」

ドロシー「ああ」

…その日の夕方…

アンジェ「…それじゃあ段取りの説明に入るわ」

ドロシー「おう…昼間に比べてずいぶんましな顔になったな♪」

アンジェ「そんなことはどうでもいいから、ちゃんと話を聞きなさい…」

ドロシー「やれやれ、元気になるとすぐこれだ……ちっとは人間らしい暖かみを持てよ」

アンジェ「……黒蜥蜴星人だから分からないわ」

ドロシー「これだもんな…♪」そう言って肩をすくめると苦笑いを浮かべた…

アンジェ「…話を続けていいかしら?」

ベアトリス「はい、お願いします」

アンジェ「結構……今夜やるべきことは「ワイルドローズ」たち三人を越境させるための準備よ。これから、昨夜ドロシーとちせがあの三人を運びこんだ倉庫に向かい「梱包」を済ませる」

ベアトリス「……梱包、ですか?」

ドロシー「ああ…今までも色んな手を使って来たが、今度のは私たちがまだ使ったことのないやつだ」

アンジェ「そうね……それと今日は私とドロシー、ベアトリスで行く」

プリンセス「分かったわ」

ちせ「うむ、承知した」

ドロシー「…別に「企業秘密」を見せたくないとか、そういうわけじゃないんだぜ……ただ、やっぱり東洋系は目立つからな」

ちせ「分かっておる」

ドロシー「…ならいいんだ」

プリンセス「ええ。私もよく分かっているわ…♪」アンジェに向かって小さく笑みを浮かべた…

アンジェ「結構……移動開始はたそがれどきの午後五時から十分づつ間を空けて、ドロシー、ベアトリス、私の順番で行う」

ベアトリス「分かりました」

アンジェ「到着したら入り口の扉についているくぐり戸から入るように……以上」

………

345 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/11(木) 02:19:44.03 ID:tdWN6SPo0
…しばらくして・倉庫街…

アンジェ「…全員いるわね」人目を引かずにするりと中に入ってきたアンジェ…

ドロシー「ああ、尾行もなさそうだ」

ベアトリス「まずは一安心ですね……」


…三人が集まっているのは港の一角にある倉庫の一つで、すでに従業員たちは勤めを終えて家路についているのであたりはすっかり静まり返っている…とある貿易会社の持ち物であるこの倉庫の管理人は共和国の中級エージェントだが、普段はいたって真面目に勤めていて、その一方で貿易品の情報を提供したり、物の越境を手助けしている……とはいうものの決して才能があるほうではないので、共和国情報部も難しいことは頼まず、本人も余計な事を聞かずに言われたことをこなす関係をたもっている…


ドロシー「そうだな」

ベアトリス「…ところでドロシーさん、さっき言っていた「梱包」って……」

ドロシー「ああ、もちろん教えるよ……と、その前に簡単な質問に答えてもらおうかな♪」

ベアトリス「…どうぞ?」

ドロシー「よし、じゃあ問題だ…小麦十ポンドと鉄十ポンド、重いのはどっちだ?」ニヤニヤしながら言った…

ベアトリス「え……十ポンドと十ポンドなら重さは同じだと思います…が?」ドロシーが何かの「引っかけ問題」を出しているのではないかと、しばらく顔を眺めてから答えた…

ドロシー「ははーん、引っかからなかったな…その通りさ♪ …これが例えば「一立方フィート」の小麦と鉄だったら重いのは鉄だがな……要は重さがそれらしければ、モノはなんだっていいのさ」

ベアトリス「…どういうことですか?」

アンジェ「つまり、一度同じ重さのものに「梱包」してしまえば中身を確認されずに通関できる可能性が高い……と言うことよ」

ドロシー「そういうこと…税関の連中だって毎日朝から晩まで数百、数千っていう船の積み荷を確認してるんだ。とてもじゃないが全部の荷物を調べられるわけじゃない」

アンジェ「…したがって検査を受けるのは船籍や航路、経歴の怪しい船に限られる」

ドロシー「そういうこと……この会社は知らず知らずのうちに協力してくれているわけだが、ここの会社は王国にベッタリの出入り業者で実績も綺麗…つまり、あちらからしたら「わざわざ調べることもない」ってなもんなのさ♪」

ベアトリス「じゃあ調べられる可能性が低い…っていうことですね?」

アンジェ「そういう事よ。 …さぁ、そろそろ取りかかりましょう」

ベアトリス「はい…それで、具体的にはどうすれば?」

ドロシー「……あれさ♪」指差した先には大きな樽がいくつか並んでいる…

ベアトリス「あれは…樽、ですね……」

ドロシー「ああ」

ベアトリス「あそこにあの三人を詰め込むんですか?」

アンジェ「いいえ…樽には「ワイルドローズ」だけよ。あとの二人は別のものに「梱包」する」…そう言うと床板の継ぎ目を特定のやり方で動かし、地下の小さな隠し部屋を開けた……中には目隠しに耳栓、猿ぐつわをされたうえできっちり縛り上げられたローズたち三人が転がっている…

ドロシー「ま、そういう事さ…ベアトリス、その樽を転がしてきてくれ」

ベアトリス「は、はいっ」

…ベアトリスが(音が響かないようボロ布を敷いた上で)樽を転がしてくる間にドロシーとアンジェはローズを引きずりあげ、腕に注射を打った……と、数分もしないうちに意識を失ってぐにゃぐにゃになる…

ドロシー「…よし、出来たぜ」まぶたをまくり上げて意識がないことを確認すると、ローズを樽に押し込んだ…

アンジェ「結構……それじゃああとは「隙間」を埋めるだけね」そう言うと中蓋のような板をローズの上に乗せ、その上に樽詰めの終わっていないチェダーチーズの固まりを次々と詰め込んだ……よく見ると樽の横腹には「高級チェダー…容量・150ポンド」などと焼印が入っている…

ドロシー「さ、ベアトリスも手伝えよ…♪」

ベアトリス「…チーズですか」感心したようにポカンとしている…

ドロシー「ああ…鼻づまりの税関職員だってチェダーの臭いなら数マイル先からだって嗅ぎ分けられるからな」

アンジェ「小麦や豆、あるいはワインみたいな液体だと息が出来なくなってしまうし、こうやって上げ底にしても揺れ動き方が変わってくるから気付かれる……だから固体の方がいいのよ」

ベアトリス「なるほど…」

ドロシー「そういうこと…よし、いい具合だな♪」最後に底板をはめ込み、布をかぶせた木槌で「とんとん…っ」と打ちこむと三人がかりで転がして、樽の列に並べた…

アンジェ「そうね……ベアトリス、後の二人は私とドロシーで片づけるから、貴女は先に戻りなさい」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「しばらくはチーズ臭いだろうから、ネズミにかじられないようにな…♪」

346 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/12(金) 12:34:58.43 ID:Tw+Beh9U0
アンジェ「…さて、後はこの二人ね」

ドロシー「ああ。とっとと片づけちまおう……それにしてもだ」

アンジェ「なに?」

ドロシー「…あの「ワイルドローズ」とやらだけなら情報を絞り出すために運び出すって言うのも分かるが、なにも三人とも連れ出す必要はなかったんじゃないか?」

アンジェ「ああ…そういう事ね」

ドロシー「お前さんが「仲間外れを作っちゃかわいそうだ」なんて思ったはずもないし、何か理由があるんだろうが……三人も越境させるとなるとぐっと見つかる危険性が高まるからな……」

アンジェ「理由ならあるわ…」

ドロシー「ほう?」

アンジェ「……あの三人が寝返ったと思わせる」

ドロシー「あー、なるほど……あちらからすれば「あれだけのエージェントが見張っている施設から内通者の協力もなしに逃げ出せるわけがない」と考えるか」

アンジェ「その通り…あの女はエージェントでもなければ信用されているようでもなかったし、それが「しもべ」の娘たちと揃っていなくなれば……」

ドロシー「裏切ったのは誰かなんて、すぐに見当がつく…か」

アンジェ「ええ」

ドロシー「なるほどな…」

アンジェ「ただ、この目くらましも長くは持たない…特に王国防諜部が事の次第を知ったら真っ先に越境の阻止に動きはじめるでしょうから……明日がぎりぎりのところね」

ドロシー「だな…あとは「濃霧で船が出港できない」なんてことがないのを祈るばかりだぜ」

アンジェ「ええ……さっきの睡眠薬も二日くらいしか効果が続かないものね」

ドロシー「ああ。よし「梱包」は済んだぜ」

アンジェ「結構、なら先に戻ってちょうだい……私が最後に出る」

ドロシー「あいよ、それじゃあ後でな」

………

…翌朝・港…

荷役労働者「……よーし、お次は…ふうっ!」風にのって吹き付けてきたチーズの臭いに顔をしかめた…

労働者B「チェダーチーズだよな…樽ごしでも分かるぜ!」

監督「こら、おしゃべりなんかしてないでとっととロープを引っ張れ!」

労働者「分かりやした…そら!」

労働者B「よいしょっ…こらしょ!」

…船上…

税関吏「機帆船「トワイライト・スター」号、と……船長、ここで積み込む貨物はこれだけですな?」(※機帆船…蒸気機関と帆の両方がある船)

船長「ええ。船荷証券によると「チェダーチーズ」となっております……あとは乗客が十人ほど」

税関吏「結構……ふぅ、それにしてもものすごい匂いだ…」鼻にしわを寄せて樽に近づき、焼印を調べて書類に書き込んだ…

荷運び人「士官さん……お客さんのシー・チェスト(衣服箱)ですが、どこに入れやすか?」

…税関吏が樽や箱の焼印を調べている間に渡し舟から上がってきた数人の荷運び人が、貴族らしい婦人の荷物であるがっちりした作りのシー・チェストを担いで上がってきた…四つばかりあるシー・チェストは荷物がどっさり入っているらしくずっしりと重そうで、小柄な人なら入れそうな大きさがある…

三等航海士「お…甲板長、案内してやってくれ!」

甲板長「へい……おい、こっちのデッキだぜ!」

婦人「ちょっと、大事に扱ってちょうだいましね!」文句の多そうな中年のレディがキイキイ声で言った…

三等航海士「分かっておりますよ、レディ…おい、大事に扱うようにするんだぞ!」

税関吏「……船荷証券にもおかしなところはないようですな。結構です」許可証にサインを入れると船を降りていった…

船長「よし、どうやら引き潮の間に出られそうだな……帆を上げさせたまえ!」

航海長「はい、船長!」

………

347 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/14(日) 02:50:13.66 ID:t13PkXn50
…数日後・お茶の時間…

ドロシー「…というわけで例の「ワイルドローズ」とやらはチーズ樽に詰め込んで、後の二人はシー・チェストで運び出した…ってわけだ。なにせとっておきのドレスが痛まないように樟脳(しょうのう…クスノキから作る防虫剤)が山ほど入れてあるようなシロモノだ。税関吏だろうが何だろうが、もし開けようとしたりしてみろ。小うるさいオールドミスにどれくらいガミガミやられるか分かったものじゃない……奴らだってそんな面倒は起こしたくないさ」

ちせ「シー・チェスト? …聞きなれない単語じゃ」

アンジェ「船旅の時、手荷物とは別に船倉へ入れておく衣装箱のことよ」

ちせ「なるほど…で、上手くいったのじゃろうか」

ドロシー「それについてはアンジェが教えてくれるさ…だろ?」

アンジェ「ええ……実は先ほど「コントロール」からワイルドローズの件で暗号電が届いた」

プリンセス「あら、そうなの?」

アンジェ「…ええ」

ベアトリス「それで、どうだったんですか?」

アンジェ「コントロールいわく「チェダーはシャンパンと合わないが、受け取った花はどれも開いて見頃を迎えた」だそうよ」

ちせ「むむむ…まるで判じ物(なぞなぞ)じゃな?」

ドロシー「なぁに、分かれば簡単さ。 「シャンパン」っていうのは祝杯を上げた……つまり「積荷」は無事届いたってことの言いかえで、開花うんぬんっていうのはあの三人が「歌った」(白状した)ってことだ」

アンジェ「そう言うことよ」

ちせ「なるほど……うちはどうもまだ欧州の風習が分かっていないものゆえ…」

ドロシー「なぁに、そのうち覚えるさ…♪」

プリンセス「わたくしも色々と教えてあげますから…ね?」

ちせ「それはありがたい」

ドロシー「よかったな……さて、と」軽くスカートをはたくと立ち上がった…

ベアトリス「あれ、どうしたんですか?」

ドロシー「なぁに、ちょっとした野暮用でね…少し出かけてくる」

ベアトリス「そうですか…」

ドロシー「ああ…それじゃあまた後でな」

アンジェ「…ええ」

………



…その晩・運河沿い…

紳士「…」コツコツと靴底とステッキの音を響かせながら、霧がかった夜道を歩いている紳士風の男……その男はよく見るとアンジェが罠にかけられた時の、あの「情報提供者」で、相変わらず身なりは悪くないがどこか落ち着かない様子をしている…辺りは夜霧が立ちこめ、服も湿っぽければパイプにもなかなか火が付かない…

紳士「…ふぅ」パイプから紫煙を吐きだしつつ歩いているが、尾行を恐れているのかわびしげな通りを選んで歩き、時折後ろを振り返ったり急に角を曲がったりする……と、女性のシルエットが前から近づいてきた…

女性「……あの、申し訳ありません」大きな帽子をかぶった若い女性は男に近寄ってくると、ぎりぎり聞こえる程度のか細い声で話しかけてきた…

紳士「何か?」

女性「ええ。実は乗合馬車の停留所がどこにあるのか分からなくなってしまって……場所をお教え下さらないでしょうか?」

紳士「ああ、それならそこの角を曲がって通りを二つ行けば…」そう言いかけた瞬間に女性がハンドバッグから何かを取り出し、次の瞬間には「パン、パンッ!」と銃声が鳴った

紳士「…ぐぅっ!」ステッキを取り落とし、胸元をかきむしった…

女性「…」さらに心臓に向けてもう一発撃つと、仰向けに倒れた男の額に銃口を向けてとどめを撃ち込んだ…それからまだ硝煙が立ちのぼっている小型リボルバーを身に着けていたシルクの長手袋にくるんで運河に捨てると、替えの長手袋に指を通しつつゆっくりと歩き始めた…

ドロシー「……前にベアトリスに言ったっけ「…あの裏切り者を見つけたら、ミートパテみたいに切り刻んでやるかグリュイエール・チーズみたいに穴だらけにしてやる」って……どうやらグリュイエール・チーズの方だったな…」皮肉な笑みを口元に浮かべると、何でもないような様子で角を曲がって行った…

………



348 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/15(月) 02:06:58.83 ID:u45qa8Jk0
…後日・アルビオン共和国「文化振興局」の一室…

L「……ふーむ」パイプをくわえ、王国の日刊紙の一つ「ロイヤル・ロンドン・タイムズ」を手早く読み通していく…続けて紙をめくると、社会面に「身元不明の中年男性、ロンドン市内で射殺さる…追いはぎによるものか、それとも怨恨か?」の見出しが躍っている…

7「…失礼します。エージェント「A」から「ライリーおじさま」宛てに手紙が届きました」

L「うむ、続けたまえ」

7「はい…内容ですが「…週末を別邸で過ごしてロンドンのお屋敷に戻ってみると、ネズミが出てとっても怖かったです。危うく失神するかと思いましたが、すぐ『ミスタ・ダーウェント』にお願いして退治してもらいました…おじさまの言う通り、ネズミは暖かくて食べ物のあるところが好きなようですね。またお手紙差し上げます……」必要な部分は以上です」

L「ふむ。こちらがあの「変節者」の情報を送ってから何日も経っていないが……とはいえ、時間が経てば経つほど警戒が厳重になって手が出せなくなるだろうから、手早く片づけようという「プリンシパル」の判断は悪くない。 …それと今回はエージェント「D」が始末をつけたようだな」そう言って「7」に新聞を渡した…

7「……なるほど、そのようですね」社会面の記事を読むと新聞を返した…

L「エージェント「A」が手を下さなかったということは、まだ万全の状態ではないのだろう…一か月ばかりは「活動的な」任務から外した方がいいかもしれんな」

7「分かりました、そのように取り計らいます」

L「うむ…それと例の「バラ」は上手くこちらの庭に移植出来たようだな?」

7「はい。もとよりあちらの土に馴染んでいたわけでもありませんでしたから……担当の報告によりますと、戦略・外交的な情報に関してはほぼゼロですが、貴族や高級官僚の夫人、あるいはその令嬢の「趣味嗜好」に関してはなかなか面白い話を聞き出すことが出来ています」

L「…結構。引き続き上手く手綱を操って情報を吐かせろ」

7「はい」

………

…同じ頃・ロンドン「アルビオン王国外務省」内の一室…

外務省情報部長「……残念だよ、こういう結果になって」しきりにパイプを吹かしつつ、朝刊の「身元不明の男性射殺さる」の記事を広げている…

防諜課長「…」

情報部長「私は君が「大丈夫」だと言うから信用して、うちの諜報課からもエージェントを割いて十分な支援態勢を作った……そして見事に「敵情報部員」らしい人物を確保した…ここまでは良かった」

防諜課長「…はい」

情報部長「……ところがだ、その日のうちに敵方に「一時保管場所」の位置を割られると襲撃を受け、こちらが派遣していたエージェント十数名は全滅。肝心の敵情報部員も奪還されたうえ、その大まかな姿かたちでさえも「移送後に報告する」予定だったので謎のまま……おまけに、せっかくこちらへ転向させたあの男もこうだ…」そう言って新聞をひらひらさせた…

防諜課長「…」

情報部長「その上、こともあろうに敵方と内通していたのは尋問官として起用していた「例の女性」だというじゃないか……どうなのだね?」

防諜課長「確かにそうです……ですが、私としてはこの作戦はもっと入念に準備を行い実行するべきであるものと思っており…」

情報部長「だが、最終的な実行の機会に関しては君に一任したはずだ……それに「お任せを」と言ったのは君だぞ?」

防諜課長「ですが…」

情報部長「……すまんが、これ以上君の弁明を聞くつもりにはなれんのだ…それと、これを」外務省公式の封筒を渡した…

防諜課長「……辞令、ですか」

情報部長「そうだ…今まで尽くしてきた君への、せめてもの手向け(たむけ)だよ」

防諜課長「…」

………

…数日後…

アンジェ「それじゃあ、始めましょうか」

ドロシー「ああ……まずは「異動…農務省綿花担当課長、ジャック・ライスフィールド氏は農務省インド方面課長に異動となった」だと」

アンジェ「…続けて」

…アンジェたちは「情報収集」の一つとして常に多くの新聞や政府公報を読み、官僚や高級軍人の異動や昇進、解任が出るたびに確認していた……一番手軽で安全な情報収集手段ではあるが、王国の戦略や外交方針を見極め、接近すべき(あるいは気を付けるべき)人物を見極めるという点では案外多くのヒントが得られる…

ドロシー「次は「異動…外務省課長、ハーレイ・ウィンフレッド氏は『英領セイシェル』現地担当事務所長に異動となった」…なぁ、アンジェ」

アンジェ「ええ、そうね……」

ドロシー「…外務省課長なのに課の名前が書いてない……ってことは、どうやらこの男が今回「仕掛けて」きた、外務省の防諜担当だったんだな」

アンジェ「そう考えてもいいでしょうね…」

ドロシー「しかし……どこの誰かさんなのかは知らないが、インド洋にある島に飛ばされるとはね…外務省のお偉いさんは、よっぽどノルマンディ公の鼻を明かしたかったようだな」

アンジェ「……世の中、そう上手くはいかないわ」そう言ってちょっとだけ微笑んで見せた…

………

349 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/15(月) 02:13:34.32 ID:u45qa8Jk0
…というわけで長々と続きましたが、これで今回のエピソードは完了です。次は以前のリクエストも踏まえつつ「貴族女性たちの秘密クラブ」的な場所を舞台に、百合場面が多そうなのを投下しようと思っています…
350 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/18(木) 00:25:08.46 ID:dg9AnL430
…新しいの投下するのは明日以降となりそうですが、今回のエピソードの「答え合わせ」で説明が足りなかったところがあるので、少し補足を…


……アルビオン王国外務省に転向していた情報提供者が「撒き餌」で済ませることの出来ない価値ある情報を共和国側に売っていた理由ですが、これは外務省が軍部や他省庁の情報を共和国に売り渡すことで、二重スパイである情報提供者の価値を高めると同時に、他の省庁の「失点」を非難したり、情報漏れを「発見」することで外務省情報部の地位を高めようとしたものです…

351 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/21(日) 02:26:03.29 ID:6RlMSMY90
…case・ドロシー×アンジェ「The secret and temptation」(秘密と誘惑)…


…とある日の午後…

アンジェ「…紅茶をごちそうさま、美味しかったわ」

ベアトリス「それは良かったです」

ドロシー「やっぱりダージリンっていうのは香りがいいや…おかわりが欲しいところだな」

ベアトリス「よかったら注ぎましょうか?」

ドロシー「いや、いい。 そろそろ出かける支度をしなくちゃならないからな」

ベアトリス「あれ、今週もお出かけですか?」

ドロシー「ああ」

ベアトリス「…と、言うことはアンジェさんも?」

アンジェ「ええ、そうよ」

ベアトリス「そうですか。お二人とも週の半分はお出かけで…大変ですね?」

ドロシー「なに、仕方ないさ…なにせ職業上「それらしい」生活をしておかないといけないからな」

ベアトリス「それはそうですね……ちなみにいつもはどこに出かけているんですか?」

ドロシー「あー…」ちらりとアンジェに視線を向けた…

アンジェ「そうね、もう隠し立てすることもないでしょう……たいていは「ザ・ニンフ・アンド・ペタルス」(妖精と花びら)よ」

ベアトリス「けほっ…!」

プリンセス「……まぁ♪」

ちせ「はて、聞いたことのない店じゃな…」

ベアトリス「えぇと…それは、その……名前だけは聞いたことがあります///」

ドロシー「だろうな。…まぁ平たく言えば貴族か、それに準ずるような高い社交的地位…あるいはそういう人物から推薦された女性だけしか入れない「高級社交クラブ」ってところさ……パリのサロンみたいな気だるい快楽に洗練された悪徳、粋な遊び……おおよそ「世の中のお楽しみ」は全部揃ってる、って場所だ」

ベアトリス「……あの、そんな場所にどうして…///」

アンジェ「簡単よ…そう言った場所で漏れ聞こえてくる貴族夫人や令嬢たちのおしゃべりには多くの有益な情報が含まれているから」

ドロシー「そういうこと……別に経費でシャンパンをがぶ飲みしているわけじゃないさ♪」

ベアトリス「な、なるほど……それにしても…」

ドロシー「なんだ、一緒に行きたいのか?」

ベアトリス「ば、馬鹿言わないで下さいっ…///」

ドロシー「冗談だよ…それに申し訳ないが、お前さんのその立ち居振る舞いじゃあ無理だ。プリンセスのおつきとしては優秀だが、召し使いらしい動きが染み付いちまってる」

ベアトリス「私はそれでいいです…っ!」

ドロシー「ああ、人にはそれぞれ似合う役回りっていうのがあるからな……」

アンジェ「そういうこと……それで言うとドロシーの「カバー」(偽装)は派手で人付き合いがよく、国家機密や外交政策よりも「どこの令嬢がお相手を求めていそうか」を知りたがるようなタイプ……つまり、およそ世間の人が秘密情報部員について持っている「いつも後ろ暗いような影をもっていて、妙に付き合いの悪い人物」のイメージとはほど遠い…」

ドロシー「ま、いわゆる「プレイガール・スパイ」ってやつさ…♪」

ベアトリス「……なるほど」

ドロシー「…反対にアンジェは地味で目立だないから、相手が気にしないでいる内緒話をさりげなく聞いている……ってタイプだ」

ベアトリス「なるほど…」

アンジェ「とにかく、そろそろ出かけるわ……戻りは明日の明け方頃になるから、留守は任せたわ」

ベアトリス「はい」

プリンセス「それじゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」

アンジェ「ええ」

………


352 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/25(木) 03:13:21.23 ID:WKftfRly0
ドロシー「……さて、着替えは済んだことだし…行くか」

アンジェ「ええ」


…寄宿舎を歩いて出て、ネストのひとつで着替えた二人……ドロシーはワインレッドの生地に、よく見ないと分からない所が小粋な金糸の百合模様の刺繍と、黒レースの縁取りがある豪華なドレスに金のネックレス、それに黒シルクの長手袋をはめて髪を結いあげ、頭にはドレスと揃えた金とルビーの飾り物をあしらっている……一方のアンジェは地味ながら洗練された、夜明け前の海のようなブルーグレイの地にピュアホワイトのすそ飾りを施したドレスと、視線が隠れるよう斜めにかぶった白い羽根とレース、それに小粒ながら上質な真珠をあしらった大きなつば付きの帽子、白いシルクの長手袋を身に着けている…その上でドロシーは艶やかな黒い長マント、アンジェはクリーム色のコートを羽織っている…


運転手「……お待たせいたしました」

ドロシー「ええ…それでは、参りましょう♪」いつもなら自分で車を運転するドロシーではあるが、さすがに豪奢なドレス姿では難しい…そこで、こうした場合は連絡役を通して以来の手紙を送るなど「安全措置」を講じてから、運転手つきの車を雇うことにしていた……指定した場所にきゃしゃな雰囲気のルノー製乗用車が来ると、アンジェと一緒に乗り込んだ…

ドロシー「ふふ、楽しみですわね♪」

アンジェ「…ええ」

ドロシー「今日のルーシー嬢はどんなお召し物で来るのかしら?」

アンジェ「そうですね…」

ドロシー「……というわけで、レディ・ハートフォードは今日も扇でパタパタする事でしょうね!」ころころと甘い笑い声を上げながら、流行のファッションや貴族のゴシップについてしゃべり続け、いかにも愉快そうにしているドロシー…

アンジェ「ええ、サー・ベケットのお嬢さまもいらっしゃるとか…」

ドロシー「なら、ますます楽しみが増えますわね……後ろの黒いロールス・ロイスは尾行じゃないようだな…」上品に口元をおさえて笑うようなそぶりをしながら、アンジェに耳打ちした…

アンジェ「…そうね……」運転手は前の屋根のないオープンな座席で、後ろの二人は屋根つきのコンパートメント(個室)になっているスタイルの乗用車ではあるが、それでも運転手に見聞きされることを警戒して柔らかな表情を作り、話す時はお互い内緒話をしているかのように口元を覆うか、扇で隠すかしている…

ドロシー「そろそろ到着だな…」


…高級社交クラブ「ザ・ニンフ・アンド・ペタルス」の前…

運転手「…どうぞ」

ドロシー「ええ」さっと運転席から降りると手際よくドアを開けた運転手…ドロシーは貴族らしくさりげない態度で一クラウン銀貨を渡した…

運転手「ありがとうございます…」二人が降りるまで車のドアをおさえておき、チップを受け取ると帽子のつばに手をあてて走り去っていった…

ドロシー「……さ、行きましょう♪」アンジェの細い腰に手を回し、いかにも「貴族のプレイガール」らしく愉快な…そしてちょっとずうずうしく好色な感じの表情を浮かべている……

…店内…

妙齢のご婦人「…あらまぁ、お久しぶりですわね♪」

ドロシー「ええ、まったく。すっかりごぶさたにしてしまったわ……♪」入口で受付嬢に羽織りものを預け、チップをはずむと店内に入った二人…と、すぐに数人のご婦人たちが近寄ってきた…

若い婦人「おひさしゅうございます…マイ・レディ///」

ドロシー「ふふ、久しぶり……ちゃんと「いい子」にしてた?」

若い婦人「はい、それはもう…」

ドロシー「よろしい…なら、後でね♪」

若い婦人「はい…///」

おしゃれな婦人「あらあら、あの娘は少し気になっているのだけれど……今日も貴女に盗られちゃったわね♪」そういいつつ、首筋に手を回してくる…

ドロシー「…よかったら後で回してあげるわ、レディ・メイナー♪」

………



353 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/27(土) 13:06:16.25 ID:1+ZFT9aC0
…また今夜あたりに投下しますが、中部地方の方は台風のほう大丈夫でしょうか…増水した川や強い風で足元を取られたりしないよう気を付けて下さい

それと誤字が…「依頼の手紙」としたかったのですが、「以来」になっていました。ごめんなさい……

354 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/28(日) 02:21:08.21 ID:ID6tZvoJ0
ドロシー「それにしてもここは相変わらずのようで…」そういって室内を見渡したドロシー…


…ロンドンの閑静な一等地に静かに建っている「ザ・ニンフ・アンド・ペタルス」は例の「革命騒ぎ」で共和派に共鳴し壁の向こうに行ってしまった、とある貴族の屋敷を空き家として買い取ったもので、ヴィクトリア朝風の立派な邸宅は改装されて、床には毛足の長いえんじ色の絨毯が敷かれ、天井には新しく天井画が施されてシャンデリアが下がり、あちこちに幼児くらいはありそうな大きな花の花瓶や「着替えをしている裸の令嬢にガウンをかけようとしている女官」など、女性同士の意味深な関係を匂わせる絵が飾ってある……広間の中央には緑のラシャを張ったカードテーブルがいくつかあり、ポーカーやブリッジの賭け事に興じるご婦人たちが見える……そして(職業上偽名が必要な)ドロシーたちだけでなく、ここにいるレディたちの多くが普段とは別の人間として(お互いに顔を知っていたとしても)ここだけの「通り名」を使っていた…


ドロシー「…じゃあ、後で」

アンジェ「ええ…」そのまま足音も立てずにそっと離れて行った…と、何か話したい様子の若い女性がドロシーに近づいてきた…

若い令嬢「……お久しぶりですわ、レディ・エインズリー♪」

ドロシー「ごきげんよう、レディ・ローズマリー…美術展はいかがでした?」

令嬢「ええ。ターナーの絵が素晴らしかったわ」

ドロシー「そうですか…それならぜひ行かないと」

令嬢「その方がよろしいわ、目の保養になりますもの」

ドロシー「……目の保養というだけならここでも結構できますけれど…ね♪」そう言うとチャーミングな笑顔を向けるドロシー

令嬢「まぁ♪」シルクの扇で口元をおさえ、くすくす笑った…

ドロシー「それでは、失礼…♪」

…広間の片隅…

妙齢の淑女「…それでね、サー・ウィンフレッドの奥方があのリパブリカン(共和派)たちについて言っていたことなのですけれど……」

ドロシー「……おや、サー・ウィンフレッドの奥方がどうしました?」

淑女「あら、レディ・エインズリー」

ドロシー「会話のお邪魔をしてごめんなさい…レディ・ウィンフレッドと言えば、このあいだ王室主催の晩餐会でお見かけしましたよ?」

淑女「ああ、そうでしょうね……あの方は西インド諸島で砂糖事業を手掛けているご主人のおかげで「ご立派」になられた方ですもの、まだ晩餐会が珍しいのですわ」口調こそ柔らかいが軽蔑したような表情を見れば、金で爵位を買うような「成り上がり貴族」をどう思っているかよく分かる…

ご婦人たち「まぁ…ふふっ♪」会話に加わっていた数人がくすくすと笑い声をあげた

淑女「……それで、せっかく貴族夫人の席に座れたものですからそれを手放したくなくて、だからあの方は共和派に手厳しいのですわ…もっとも、わたくしもあの秩序のない人たちは好きではありませんが…」

ドロシー「それはそうでしょう…連中の巻き起こした混乱のせいで苦労した人は多いんですから」ドロシーは革命騒ぎで家族がバラバラになり、一時は身寄りもなく貧民街をさまよって苦労した……というレジェンド(偽の経歴)を作ってあったので、さも感慨深そうにうなずいた…

淑女「ああ、そうでしたわね……わたくしとしたことが…」

ドロシー「いいえ、お気になさらず…また面白いお話を聞かせて下さいね?」

淑女「ええ、もちろんですわ」

…しばらくして…

ドロシー「……おや、あんな所に手ごろな連中が揃ってるじゃないか…」


…ドロシーの目についたのはぜいたくな…しかしいくらか趣味の悪いドレスをまとった中年のご婦人たち三人で、カードテーブルの方を見てはしきりに近くのレディたちに目線を合わせ、ブリッジに誘おうとしているが、どうも色よい返事はもらえていないらしい……もっとも、そのご婦人方はいずれも毎回持ってきた財布をすっからかんにしているような下手なカードの使い手で、おまけにそれを補うような粋な会話もできない俗物ときているので無理もなかった……が、彼女たちは自分の見聞きしたことをぺらぺらとよくしゃべるので、ドロシーからするとたいへん都合が良かった…


ドロシー「さてと…それじゃあちょっとばかり行ってくるかな……♪」

ふとっちょのご婦人「……こういう時、あと一人というのはなかなか集まらないものですわね?」

白髪交じりのご婦人「全くですわね…」

おしゃべりなご婦人「ええ、本当に……いつだったかしら、コートニー伯のお屋敷でカードをやろうとした時も…」

ドロシー「ちょっと失礼…どなたか私とテーブルを付き合ってくれませんか? …どういうわけか、今日はなかなか集まらなくて」

おしゃべり婦人「まぁ、レディ・エインズリー! わたくしたちも、ちょうどカードをしたかった所なのですよ!」

ドロシー「おや、それはよかった。それじゃあ早速ですが参りましょう…♪」

………
355 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/30(火) 01:21:18.26 ID:uKe941/i0
…投下前に少し訂正を…

…トランプゲームの名前を「ブリッジ」で書いたのですが、十九世紀ですとまだまだブリッジの原型である「ホイスト」のほうがいいみたいです……ホイストの名前はC・S・フォレスターの小説「ホーンブロワー艦長」シリーズで出てくるので知っていましたが、英仏戦争が舞台の話なので十九世紀にはすたれていただろうと思っていたら、ブリテン島では今でも知的なカードゲームとして根強い人気があるようです……なにかと勉強不足でした…


……ちなみにルールは「二人ペアで行い、計算や駆け引きが多く頭を使う」ことくらいしか知らないので、「フィネッス」や「ラバー」といった用語を使っていても描写は適当です(…ごめんなさい)
356 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/30(火) 02:39:04.70 ID:uKe941/i0
ドロシー「…さて、それじゃあ私はレディ・ホイットレーとですね」

ふとっちょの婦人「よろしくお願いしますよ、レディ・エインズリー」

おしゃべりの婦人「わたくしたちも負けられませんわね、レディ・アシュクロフト?」

白髪交じりの婦人「ええ、そうですわね」



ドロシー「…」(ったく、いきなり役の札を出すやつがあるかよ…まったく駆け引きもへったくれもありゃしない……)

…案の定そろいもそろって下手なカード使いの三人だが、ホイストのルールは二人で一組なので、どうにか相方の尻拭いをしつつ点数を稼ぐドロシー…かといってあまり勝ち続けると不審に思われたり、機嫌を損ねて情報を引き出せなくなってしまうので、時々わざと(…しかも印象に残りやすいよう点数が大きい時を選んで)勝負に負けてやり、相手の組を勝っているような気分にさせてやる…

ふとっちょ婦人「…スペードの六」

おしゃべり婦人「あら、でしたらスペードの九を…♪」

ドロシー「…」(やれやれ、敵も味方も同じくらいド素人なんだから…頭が痛いぜ)

ふとっちょ婦人「ジャックのペアがあります…この回はわたくしたちの勝ちですわね」

ドロシー「さすがはレディ・ホイットレー…まるでカードの女神さまですね♪」おだてつつ、親番が回って来たのでカードをシャッフルする…


…情報部員として読心術に長け、またさまざまな場面で話を聞き出す必要もあるので「たしなみ」としてカードも上手いドロシーとアンジェだが、沈着冷静、ありとあらゆる要素を計算しつくして勝負に出るアンジェと違って、どちらかと言えば場の空気や天性のカンの冴え(…もちろん一流の情報部員らしく、アンジェもそうした能力は高いが)に従ってカードを切るタイプのドロシー…無論必要ならアンジェに負けないほど確率の判断や計算も素早いが、あくまでも「スタイルの違い」であって、二人とも甲乙つけがたい腕前を持っている……そんなドロシーからすると相手のカードは見えているも同然で、あとは自分の相方が「何をしでかすか」予想できれば、容易に勝つことが出来る…


ふとっちょ婦人「ふふ…これでもわたくし、カードには自信がありますの……しめて十ポンドですわ♪」賭け事としてしかゲームを楽しめない性質らしい三人だけに、勝ったご婦人はほくほく顔で、負けた方は渋々とポンド札を差し出した…

ドロシー「おや、そんなに? ならシャンパンでも頼みましょう…もちろんお二人にも、ね♪」

おしゃべり婦人「……相手はなかなか手ごわいですよ、レディ・アシュクロフト」

白髪交じり婦人「まだまだこれからですわ…そうでしょう、レディ・コールドウェル?」

おしゃべり婦人「ええ、三回勝負のうちまだ二回ありますわ!」

ドロシー「おやおや……どうぞお手柔らかに…」

おしゃべり婦人「無論ですわ…ですがお金が懸かっていると、普段よりさらにやる気になりますわね♪」

ドロシー「…ふふ、同感ですわ♪」(…何しろこっちは、コントロールのよこすケチな活動費でやりくりしなきゃいけないからな……この商売ときたら何かと現金(げんなま)が要ることだし、ほどほどに稼がせてもらおうじゃないか……)


…店のお仕着せである黒一色のドレス姿をした、目も覚めるような美しいレディたち…ドロシーはそうした「レディ」の一人に目線を合わせて軽く合図を送り、人数分のシャンパンを頼んだ……暖かく空気のよどんでいる部屋の中にいるせいで喉が渇いているご婦人方は、飲み口の軽い(…それでいて度数の高い)シャンパンのグラスを次々とあおり、試合の回数を数えるごとに頬が赤らみ、舌もゆるくなってきた…


ふとっちょ婦人「…それで、わたくしの夫が申すには「東インド会社が新事業を立ち上げるから、間違いなく株が値上がりするだろう…お前も買っておいたらどうだね?」と、こう言うんですの♪」

おしゃべり婦人「まぁまぁ……そう言えばわたくしもインド方面艦隊に「ドーセットシャー」とかいう新型艦が派遣されると小耳に挟んだことがありますわ」

白髪交じり婦人「……あら、違いますわよ…派遣されるのは「ドーセットシャー」ではなくて「シュロップシャー」ですわ。シュロップシャーにはうちの人が持っている工場がありますから、その名前はよく覚えておりますの」

おしゃべり婦人「あら、ごめんなさい……ところでレディ・エインズリーは何か耳寄りなお話をお持ちかしら?」

ドロシー「うーん、そうですねぇ…あぁ、そうそう。今度の晩餐会でプリンセスが着るドレスは淡い桃色だとか…」

おしゃべり婦人「まぁ、そうなんですの!」

ドロシー「風の噂ですけれどね……おや、グラスが空ですよ?」さりげなく視線を向けただけで、店のレディが替えのグラスを持ってきてくれる…

おしゃべり婦人「あら、すみませんわね♪」

ドロシー「いいんですよ、楽しいひと時を過ごすには素敵なご婦人といいお酒がないといけませんから…ね?」

ふとっちょ婦人「ふふふっ、お上手ですこと」

ドロシー「いえいえ、ホントのことですよ…♪」チャーミングな笑みを浮かべてウィンクして見せた…

白髪交じり婦人「ふふ、あなたのお話はいつだって好きですけれどねぇ…そろそろおしまいにいたしましょう」

ドロシー「おや、そうですか……もっと続けたいのはやまやまですが、そうおっしゃるなら…」(確かにそろそろ潮時だな…今の状態で清算すれば、それほどでもないように見えてかなり稼いだことになるし、これ以上やると向こうは負けが込んで腹を立てちまう……)

おしゃべり婦人「それにしても楽しかったですわ…またご一緒しましょうね?」

ドロシー「こちらこそ…♪」

………

357 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/07(水) 01:21:25.74 ID:dd5kOySh0
ドロシー「……それで、ご存じの通りジョンソン夫人はひどく発音が悪いときているものだから「スープ」(soup)が「ソープ」(soap…石けん)に聞こえて仕方がなくって……で、味の感想を聞くものですからこう言ってあげたんですよ…「ええ、口の中がすっきりしました」ってね♪」

若い婦人「まぁ♪」

金髪の婦人「ふふふっ…♪」

ドロシー「ふふ…それじゃあ失礼」

…シャンパングラスを片手にあちこち回っておしゃべりに加わると、気の利いたユーモアやジョークで相手を笑わせつつ、色々な情報を聞いて頭の中に収めていくドロシー…

若い婦人「……また面白いお話を聞かせて下さいましね?」

ドロシー「もちろんですとも。 …さて、と……そろそろあっちの方にも取りかかるかな…」


…化粧室に入るとおしろいを直し、それからポーチの隠しポケットに入っている、カットグラスの小瓶に入った共和国情報部特製の香水(オー・ド・パルファム)を軽く手首と胸元に吹き付けた……その香りは「フローラル・ブーケ」タイプ(さまざまな花の香りが入っているもの)の有名なフランス香水そっくりに似せてあり、バラやジャスミンに百合、そして咲き誇るアンズの花のような甘い匂いが体温で気化して立ちのぼり、ふわりと鼻孔をくすぐった…


ドロシー「…よし。これで少しはやりやすくもなる、ってもんだ……♪」


…この特製の香水はもちろん香りもいいが、「コントロール」がわざわざ予算を使ってまでただの香水を用意するはずもない……そのさまざまな花のエッセンスの中には以前「王立植物園」から手に入れた貴重な百合の成分が含まれていて、その匂いを吸い込むと、日頃「同性には興味がない」と思っているレディたちでさえ相手の魅力に心がぐらつき、柔らかそうな唇や滑らかな頬をみては今まで感じたことのないどきどきするような気持ちをおぼえ、自分は本当に「その気がない」のか改めて疑うことになる……ましてその相手が女性に惹かれやすいようなら、その立ちのぼる甘い香りだけですっかり魅了され、とろとろの骨抜きになってしまう…


ドロシー「よし…後は例のお嬢さんを見つけるだけだな……」軽く自分の頬をはたき、鏡に向かってウィンクしてみせた…


…サロン…

若い令嬢「…まぁ、レディ・エインズリー」

ドロシー「おや…お久しぶり、レディ・フェアウェル」


…はしたなく見えないぎりぎりの勢いで近寄ってきた若い令嬢の手の甲に、腰をかがめて丁重なキスをするドロシー……すると彼女は頬を赤らめて目線をそらし、ぎこちなく挨拶を返した……令嬢がまとっているクリーム色の地に山吹色の花模様が施された優雅なドレスと、首元を飾る立派なエメラルドの首飾りは豪華で、ふわりと肩にかかるロール髪は、滑らかな卵形をした顔の輪郭を上手く引き立てている…


フェアウェル嬢「ええ、本当にお久しぶりですわ。わたくし…この二週間というもの、ずっと貴女に会いたくてたまりませんでしたのに……///」恥ずかしげにちょっと口ごもり、言ってからまた頬を赤らめた…

ドロシー「それはそれは…どうも悪い事をしてしまいましたね……」

フェアウェル嬢「知りません……どうせ「ホワイトフェザー」や「ザ・シークレット・ウィスパー」にでもいらっしゃっていたのでしょう?」わざと怒ったふりをして、他の有名な「女性向け」社交クラブの名前を言った…

ドロシー「まさか…ここに来れば貴女がいるのに、わざわざ他の社交クラブに行くとでも?」

フェアウェル嬢「もう……貴女ときたらいつもそうやって上手に言い逃れをなさるのですから…意地悪なお方///」

ドロシー「なぁに…私のような浮気な蝶々は綺麗な花を見つけると、ついひらひらと近寄ってみてしまうもんでね……でも、結局は一番好きな花に戻って来るものなのさ♪」そういうと、いかにもプレイガールらしい派手なウィンクをしてみせた…

フェアウェル嬢「あら、そう…でしたらわたくし、今度から虫取り網を用意することにいたしますわ」

ドロシー「ふふっ、貴女に捕まったら金の籠で飼ってもらえそうだ……それともピンで刺されて標本になるのかな?」

フェアウェル嬢「もう…っ///」

ドロシー「まぁまぁ、そう怒らないで……さ、一緒にシャンパンでも飲もう♪」そういうとさりげなく腕を絡めた…

フェアウェル嬢「///」

ドロシー「どうした…シャンパンは嫌いじゃないだろう?」絡めた腕を胸元に近づけると、令嬢の二の腕がふくよかなドロシーの乳房に軽く触れた…

フェアウェル嬢「い、いいえ…///」

ドロシー「なら決まりだ♪」黒ドレスを着た店のレディから金色にきらめくシャンパンを二杯受け取り、片方のグラスを渡した…

フェアウェル嬢「…それでは、少しだけ///」

ドロシー「ええ…それじゃあ、乾杯♪」

フェアウェル嬢「……はい///」
358 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/08/11(日) 02:54:35.97 ID:j2m7g0bC0
…しばらくして…

ドロシー「んっ、こくっ……ぷは♪」

フェアウェル嬢「こくっ…こくんっ……///」

ドロシー「いつもながらここはいい酒を出すね…なにせ「ヴーヴ・クリコ」のヴィンテージだものな」

フェアウェル嬢「そ、そうですね///」

ドロシー「ああ……さ、せっかくだしもう一杯♪」

フェアウェル嬢「あ、いえ…その、わたくし……少し量を過ごしてしまいましたわ///」

ドロシー「おやおや、悪かったね…口当たりがいいもんだからつい……それじゃあ上に行って、少し休もうか?」

フェアウェル嬢「え、ええ…///」

ドロシー「分かった……気にしないで楽にするといい♪」そういうと手際よくシャンパングラスを受け取り、店のレディにちらりと目線を向けた…

店のお姉さま(レディ)「…ご用でいらっしゃいますか」

ドロシー「ああ…済まないけど「上の部屋」を……」

レディ「…承知いたしました」

…二階の部屋…

レディ「……どうぞ、お入りくださいませ」


…店のレディが案内してくれたのは階段を上った「ファースト・フロア」(※一階…英国では地上一階を「グランド・フロア」(地階)と呼び、階段を上らないといけない、いわゆる二階から「一階、二階…」とカウントする)の奥にある個室のひとつで、贅をつくした豪華な装飾がほどこされた立派な部屋だった…室内の中央には背の低いテーブルと肘掛け椅子のセットがあり、テーブルの真ん中には果物を盛った銀製のボウルと、やはり銀で出来たアイスバケットの氷水に浸かって、きりりと冷えたシャンパンがひと瓶鎮座している…他には少し離れたところにある長椅子(ソファー)と、天蓋つきの立派なベッドがそれぞれ一つすえてあり、天井画にはピンク色を基調にした華やかなロココ調で、女神とニンフ(妖精)や少女たちのみだらな行為を甘い筆遣いで描いている…


ドロシー「ああ……さ、ここならうるさ型のオールドミスたちもいないから、長椅子に腰かけてくつろぐといいよ…」

フェアウェル嬢「はい、いつもご親切にありがとうございます……でもわたくしったら、貴女様の前ではいつもこうしてご迷惑ばかり…///」桜色に頬を染め、しなだれかかるような姿勢で長椅子(ソファ)に座った…

ドロシー「なぁに、お気になさらず…私もレディ・フェアウェルと一緒だとついつい心おきなくグラスを重ねてしまうし……おあいこさ♪」そう言って顔を近づけ、茶目っ気たっぷりのウィンクを投げた……と同時に、胸元から立ちのぼる香水の成分をたっぷりと吸い込ませる…

フェアウェル嬢「……もう、からかわないでくださいまし///」

ドロシー「ははは…♪」

フェアウェル嬢「ふふふっ……ですが、それにしましても…」

ドロシー「ん?」

フェアウェル嬢「……わたくし…貴女様をお見かけするたびに、その…///」

ドロシー「…寒気がするとか?」わざと冗談めかしたドロシー…

フェアウェル嬢「もうっ、そんなわけありませんわ…っ///」

ドロシー「それじゃあ何かな…?」

フェアウェル嬢「それは……つまり…ですから……」

ドロシー「……言わなくっていい。私も同じ気持ちだから…♪」フェアウェル嬢の指に自分の指を絡め、そっと唇を重ねた…

フェアウェル嬢「……ぁ///」

ドロシー「…答えはこれであってるかな?」

フェアウェル嬢「はい…っ///」

ドロシー「そうか、なら改めて……♪」ちゅっ、ちゅうっ…♪

フェアウェル嬢「あふっ、んっ…あんっ♪」

ドロシー「……ふふふ、それにしてもそんな風に誘ってくるなんてな…可愛いじゃないか♪」

フェアウェル嬢「…んんっ、あふんっ…おっしゃらないで下さい……だって…わたくし、貴女様を見ているだけで身体が火照って……あんっ///」

ドロシー「……嬉しい事を言ってくれるね……それじゃあご褒美をあげないと」…んちゅっ、ちゅむ…っ♪

フェアウェル嬢「はぁ…あぁんっ♪ あむっ…ちゅぅっ♪」

………

359 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/12(月) 12:00:25.50 ID:nLScIvPe0
フェアウェル嬢「…んぁぁ…はぁ、はぁ……はぁ…っ///」

ドロシー「あむっ、ちゅぅ……ちゅるっ、んちゅ…っ…」半開きになったフェアウェル嬢の口内にぬるりと舌を滑り込ませると、絡みつくようなねちっこい動きで丹念に口中をなぞった…

フェアウェル嬢「んぅ…ぷはっ、少し待って下さ……んんっ!?」

ドロシー「ちゅっ、ちゅむっ……ちゅぅっ、ちゅるぅっ…れろっ、ちゅぷ……っ♪」

フェアウェル嬢「んんぅ…ちゅっ、れろっ……はむっ…ちゅぅっ///」

ドロシー「ん、ちゅっ…」

フェアウェル嬢「…ぁ///」ドロシーの舌が口の中から引きぬかれ、お互いの舌先を繋いだ一筋の唾液が名残惜しそうに「つぅ…っ」と糸を引くと、肘を曲げた状態の腕を脇に投げだし、長椅子にあおむけになっているフェアウェル嬢が小さく残念そうな声をあげた…

ドロシー「……ふふ、そんな物欲しげな声をだして…そんなに待ち遠しかったのかな?」

フェアウェル嬢「……だって…わたくし…///」

ドロシー「分かった、それじゃあ今夜は一晩中放してやらないからな…♪ それから朝を告げるヒバリも雄鶏も、みんなナイチンゲール(小夜鳴き鳥)ってことにさせてもらおう♪」そう言ってもう一度覆いかぶさった…

フェアウェル嬢「…あんっ♪」

…十数分後…

ドロシー「あむっ…ちゅぅ……それにしてもこのドレスがうっとうしいな…」

…しゃれたドレスは見た目はいいが、たっぷりと贅沢な生地を使っているためずっしりしていて滑りにくく、胴やバスル(スカート部分のふくらみ)には形を保つ「骨」が入っているせいで身体を動かしにくい……おまけに後ろの編み上げひもやボタンやホックで留めつける作りなので、一人では満足に脱ぎ着することもできない…

フェアウェル嬢「…わたくしも…そう思いましたわ……///」

ドロシー「それじゃあ……お互いに…な?」

フェアウェル嬢「はい///」


…長手袋一つしていないだけで恥ずかしいという社交界に馴染んでいるフェアウェル嬢だけに、ドロシーの着ているドレスの背中のひもをほどくと、すっかり真っ赤になり、それでいてドロシーの白い柔肌を熱っぽい瞳で凝視しているのが分かる…


ドロシー「……そんなにまじまじと見られると照れるね」

フェアウェル嬢「っ…ど、どうしてお分かりになりますの///」

ドロシー「なぁに、手が止まっていたからさ……お嬢様のお気に召すなら、好きなだけ見てくれてかまいませんとも♪」

フェアウェル嬢「///」恥ずかしげに軽くうつむきながらドレスのひもやらリボンやらをほどいた…

ドロシー「……さて、と♪」しゅる…っ、と衣擦れの音をさせながらドレスを振り落とし、それからフェアウェル嬢の後ろに立った…

フェアウェル嬢「その……お願いしますわ…///」

ドロシー「ああ……私に身を任せてくれればいい♪」そう言って背中のホックや編みひもを外し始めたドロシー…指先をすべらせ、流れるような手つきで次々と結び目を解いていく…

フェアウェル嬢「…貴女様は…こう言うことに慣れていらっしゃいますのね……んっ///」背中を愛撫するような動きに「ぴくん…っ」と身震いした…

ドロシー「……ふふ、どうかな…♪」後ろから胸を押し付け、耳元に軽く息を吹きかけた…

フェアウェル嬢「あっ…ん///」

ドロシー「…いい匂いがする……甘くて、それでいて爽やかだ…」そうささやきながらうなじにキスをした…

フェアウェル嬢「…今日は…バラの香水をつけておりますの……あ、あっ///」すっかりとろけたような声をあげ、今にも身体の力を失いそうになっている…

ドロシー「…さ、終わったよ」

フェアウェル嬢「…え、ええ///」

ドロシー「……それじゃあ…と♪」腰に手をかけてベッドに倒れ込んだ…

フェアウェル嬢「きゃあっ♪」

360 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/15(木) 02:37:03.42 ID:TiyjaU500
フェアウェル嬢「はぁ…あぁ、ん……ちゅぅっ、あむっ…///」

ドロシー「ちゅっ…ちゅるっ、れろっ……ぬりゅっ、ちゅむ…っ♪」

フェアウェル嬢「はぁ、はぁ…はぁぁ…っ///」

ドロシー「ふふ、そんなに気持ちいいか?」

フェアウェル嬢「……はひっ、とっても……きもひいい…れす…わ……ぁ…///」

ドロシー「みたいだな……そんなにトロけた顔をされたんじゃあ、どんな堅物だって我慢できない…ぞっ♪」

フェアウェル嬢「あぁ…んっ♪」

ドロシー「んちゅっ、ぬちゅ…ちゅるっ、ちゅ……っ♪」

フェアウェル嬢「はぁぁ…ん、あむっ…ちゅぅ……ちゅぱ…っ///」

ドロシー「…んむっ、ちゅぅ…っ♪」


…ドロシーはいったん唇を離すと、室内の灯りに反射して赤ワイン色に輝く瞳でじっとながめた……口元にはプレイガールらしい手慣れたような笑みを浮かべ、髪を解くと髪飾りをナイトテーブルに置いた……それからさっと頭をひと振りすると髪の房が胸元にかかり、色合いのコントラストがずっしりとしたふくよかな乳房をより一層引き立たせた…そのままフェアウェル嬢にまたがったまま、コルセットとペチコートだけのあられもない姿でベッドに仰向けになっている彼女をじっくりと眺めまわした…



フェアウェル嬢「……んはぁ…お願いですわ……もっと…続きを……してくださいまし…///」

ドロシー「ふふ、悪い悪い……あまりにも綺麗なものだから…♪」白いコルセットのひもに手をかけると、「しゅるり…」と結び目をほどいていく……

フェアウェル嬢「///」

ドロシー「そう恥ずかしがることはないさ…今度は君が私の事を脱がす番なんだから…ね♪」

フェアウェル嬢「……はい///」

ドロシー「ふふ、それにとっても綺麗じゃないか……もう、場所もわきまえずにむしゃぶりつきたいくらいだよ…♪」

フェアウェル嬢「だ、ダメです……わたくし、ここにはお忍びで来ているんですから///」

ドロシー「ここにくるレディたちは多かれ少なかれそうさ…大手を振ってここに来るのは私くらいなもんだ♪」

フェアウェル嬢「…わたくしだって、できればそうしたいですわ……そうすれば貴女さまに……もっと情を交わしていただけますもの…///」

ドロシー「ふふ、嬉しい事を言ってくれるね……でも止めておきな?」

フェアウェル嬢「……どうしてでございますの……わたくし、貴女さまとこうして…その……閨(ねや)を共にした事を思い出しては…身体がうずいてしまうのです…わ///」

ドロシー「ふふっ、それだから余計にさ……気持ちは嬉しいが「女同士のまぐわい」ってやつは、一度はまると私みたいに抜け出せなくなるんだ……それに…」

フェアウェル嬢「…それに?」

ドロシー「……私と違って綺麗でいて欲しいんだ」

フェアウェル嬢「まぁ…///」

ドロシー「ふふ…なんてな。本当はひとり占めしたいから他の「お姉さま方」に近づけたくないのさ♪」

フェアウェル嬢「きゃあ…っ///」

ドロシー「ふふふ……この胸も手ごろな大きさだし…」

フェアウェル嬢「あんっ…♪」

ドロシー「肌もすべすべで良い匂いだ……♪」

フェアウェル嬢「はひっ、ひゃあん…っ♪」すっかり香水が効いて、甘い嬌声をあげながらドロシーに愛撫されている…

ドロシー「そーら、今度はここかな…?」優しく乳房の先端をつまんだ…

フェアウェル嬢「あっ、くぅ…ん……あぁんっ///」

361 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/17(土) 10:25:30.20 ID:tbG0NctI0
ドロシー「んっ、ちゅむ……ちゅぅ…♪」白いレースで花模様があしらわれているコルセットを脱がすと、小ぶりながら形のいい乳房にしゃぶりついた…

フェアウェル嬢「はぁっ、あん…っ♪」

ドロシー「ちゅっ、ちゅぅぅ…っ……れろっ♪」

フェアウェル嬢「あぁんっ…あひっ♪」

ドロシー「……ふふ、可愛いな……この豊かな髪も…きれいな瞳も……白くて柔らかい肌も…全部♪」

フェアウェル嬢「そ…それでしたらドロシー様の方が……見ているだけでくらくらするような瞳に柔らかい唇…張りのあるお胸に引き締まった身体……それに…甘くていい匂いがします…わ…///」

ドロシー「嬉しいことを言ってくれるね……バーバラ…♪」そう言ってペチコートの下に手を滑り込ませた…

フェアウェル嬢「…ぁ///」

ドロシー「おやおや…もうすっかりとろっとろじゃないか……」

フェアウェル嬢「だ、だって…わたくし……///」

ドロシー「…別にとがめてるわけじゃないさ…むしろ嬉しいよ」

フェアウェル嬢「///」

ドロシー「…さ、それじゃあ行くぞ…っ♪」くちゅっ…♪

フェアウェル嬢「あぁぁんっ♪」

ドロシー「ふっ……いつものおしとやかな姿もいいが、そうやって甘い声をあげて乱れている姿はもっといいな…♪」

フェアウェル嬢「はぁぁんっ、あぁ…んっ……だって、ドロシー様が……あんまりにも…ふあぁぁぁ…っ///」

ドロシー「はははっ…私みたいな悪い女に捕まっちまったのが運の尽きだったなぁ♪」ちゅぷっ、くちゅくちゅっ…♪

フェアウェル嬢「はぁぁ…んっ、あぁぁ……っ♪」

ドロシー「…」(あー…ちくしょうめ、香水だから効果はこっちにもあるんだよな……さっきから身体がうずいて仕方ないぜ…)

フェアウェル嬢「……ドロシー様?」

ドロシー「……ああ、悪い…少し見とれちまってね…♪」

フェアウェル嬢「…っ///」

ドロシー「そう照れるなよ……本当の事なんだから…な♪」ぐちゅっ、じゅぶ…っ♪

フェアウェル嬢「あっ、あぁんっ…そんなの、卑怯で……あぁぁぁっ♪」

ドロシー「おや「恋と戦争は手段を選ばない」ってことわざを聞いたことはないか?」

フェアウェル嬢「そ、それとこれとは話が違い……ふぁぁぁっ、はぁぁ…んぅっ///」

ドロシー「…違わないさ♪」

フェアウェル嬢「ふあぁぁ…っ///」人差し指に加えて中指を滑り込まされると腰を浮かせ、とろりと蜜を噴き出しながら嬌声をあげた…

ドロシー「ふふ……でもこれだけじゃあいつもと変わりないし…色々試してみたいよな?」

フェアウェル嬢「///」顔を真っ赤にしながらも、期待で瞳を輝かせている…

ドロシー「ふふふ、分かった分かった……お、ちょうどいいのがあるじゃないか♪」


…ベッドから起き上がると、テーブルのセンターピースとして置かれている果物の鉢に目を向けた……銀製のボウルには傷一つないリンゴや洋ナシ、それから植民地から飛行船で空輸され、遅い蒸気船しかなかった頃には見ることも出来なかった珍しい南洋の果物…黄色いバナナや南洋の夕日を想像させるオレンジ色のマンゴー…が綺麗に積まれている…


フェアウェル嬢「あの、ドロシー様…?」

ドロシー「うーん、どれにするかな……お、そうだ♪」ベッドの上で力が抜けているフェアウェル嬢を抱き起すと、手早くシルクのハンカチで目隠しをした…

フェアウェル嬢「な、なにをするおつもりですの…?」口ではそう言いながら、期待しているような甘い声をあげている…

ドロシー「なぁに……お嬢様におかれましてはお好きな果物をお選びいただこうと思って…ね♪」後ろから抱きついて腰に手を回し、テーブルの方へ誘導した…

フェアウェル嬢「…そんなことをおっしゃられても、わたくしには見えませんわ///」

ドロシー「……だから面白いんじゃないか…♪」耳元に息を吹きかけつつささやいた…

フェアウェル嬢「…っ///」ぞくぞくっ…♪

362 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/23(金) 03:48:35.16 ID:QQVl2gQb0
ドロシー「さーて、どれにしようかな…っと♪」フェアウェル嬢のほっそりした手に自分の手を重ね、テーブルの上の果物鉢に誘導するドロシー…

フェアウェル嬢「…んっ///」耳元でいたずらっぽくささやかれつつ、背中にずっしりと張りのある胸が押し付けられると、すっかり甘えたような吐息をもらしたフェアウェル嬢……貴族令嬢としての慎みもどこへやら、ドロシーにどんなことをされるのか、恥ずかしいながらも興味津々で頬を赤らめている…

ドロシー「……おやおや、バーバラはこれがいいのかな?」

フェアウェル嬢「あっ…いえ、これは……何でしょう///」目隠しをされたままおずおずとフルーツボウルに手を伸ばすと、アンズに指先が触れた…

ドロシー「さぁ、何だろうな……当ててみな?」

フェアウェル嬢「えぇ…と、多分……」

ドロシー「ふふっ…残念でした、時間切れ♪」綺麗な黄色に色づいているアンズを手に取ると、ねっとりと濡れた割れ目に半分ばかり押し込んだ…

フェアウェル嬢「あっ、あぁぁんっ///」ちゅぷ…じゅぷっ♪

ドロシー「はははっ、まるでアンズの蜂蜜漬けだ……せっかくだし、味見させてもらおうかな♪」そう言って足元にしゃがみ込むと、秘部に舌を這わせた…

フェアウェル嬢「あっあっあっ…そんな、いけませんわ……んぁぁ、あひぃっ…はあぁんっ♪」

ドロシー「おや、おかしいなぁ…蜜が減らないぞ? …ん、じゅるっ…じゅるぅぅっ♪」

フェアウェル嬢「はひっ、あふっ……ふあぁぁ、あんっ……///」

ドロシー「んじゅるっ、じゅるっ…おいおいバーバラ、こんなに蜜をこぼして……ふとももまで垂れてるじゃないか♪」

フェアウェル嬢「だって…ドロシー様がこんな……恥ずかしい事をなさるんですもの…ぉ///」

ドロシー「ふふふっ、こんなのまだまだ序の口さ♪」

フェアウェル嬢「…まぁ///」

ドロシー「ふふーん……それじゃあお次は、と……あむっ…ん、ちゅぱ……♪」押し込んでいたアンズをくわえて花芯から引き抜いて口に入れ、飴玉をしゃぶるように舐め回すと、半分だけ口から出してフェアウェル嬢の唇に近づけた

フェアウェル嬢「ん……はむっ、ちゅぅ…///」

ドロシー「んむっ、はむっ……ちゅるっ♪」二人で舌を絡め、しゃぶるようにしながらアンズを食べ進め、種と皮だけになった所でドロシーが机の上に吐き捨てた…

フェアウェル嬢「ドロシーさまぁ……次の果物を…早く……味わわせて下さいませ…///」

ドロシー「はは、次の果物…ね♪」ニヤニヤしながら目隠しを外した…

フェアウェル嬢「あ…あっ///」

ドロシー「…ふふふっ、珍しい東洋の果物だって色々あるんだからな……シナから運ばれて来たライチに、女王陛下もお好きだっていうマレーのマンゴスチン……あとはバナナと…この赤いもじゃもじゃしたやつはランブータンとかいうやつだな…さぁ、どれがいい?」

フェアウェル嬢「……で、では…せっかくですから一通り試してみたいです…わ///」

ドロシー「ふふ、欲張りなお嬢様だ……ま、お任せあれ♪」つぷっ…くちゅっ♪

フェアウェル嬢「あひぃっ、ふぁぁんっ…あぁぁんっ♪」

ドロシー「…やれやれ、貴族の令嬢ともあろうものが鏡の前ではしたなく脚を開いて、すっかりとろとろにして……可愛いな♪」

フェアウェル嬢「あぁぁんっ、その言い方はずるいですわ……ぁ///」

…事後…

フェアウェル嬢「…そういって、サー・バーミンガムは席を立たれたと言うことですわ……あんっ///」

ドロシー「……なるほどねぇ」

…愛液やら汗やらでべとつく身体をくっ付けあい、ベッドの上で絡み合っている二人……ドロシーは胸に舌を這わせ、指で膣内をかき回しながら、フェアウェル嬢の父親が娘に話したことや政財界の重鎮たちの話をうまくしゃべらせている…

フェアウェル嬢「……そうなんですの、ですから今後はより一層…」

ドロシー「そんな事より、もっと楽しい話をしようか……んっ、ちゅぅぅっ♪」(よし…もう必要な部分は聞けたし、あんまり「プレイガール」が政治や外交に興味を持ってるように思われちゃおかしいもんな…後はいちゃいちゃしながら明け方まで過ごせばいいや……)

フェアウェル嬢「あんっ、あっ…♪」

ドロシー「ちゅっ、ちゅむ…っ♪」(……さて、アンジェの方はどうだろうな?)

………

363 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/08/25(日) 01:51:58.61 ID:GIN+lXAE0
…しばらく前・店に着いてからのアンジェ…

ドロシー「じゃあ、後で…」

アンジェ「…ええ」


…ドロシーと分かれると、さりげなく店内を歩き回っておしゃべりの内容に聞き耳を立てる……店内は(会話を盗み聞きされるのを防ぐ意味もあって)室内楽団が控えめに軽い音楽を奏でている…が、同時に幾人もの声を聞き分けられるアンジェは、その中から有用そうな会話に耳をそばだてた…


ロール髪の婦人「……ですから、フェアファックス次官は交代ということになりそうですわね…」

灰色ドレスの婦人「ええ、わたくしもそう聞きましたわ…代わりにサー・アーノルドが任官されるとか……」

アンジェ「…」(…フェアファックス次官は内務省官僚の筆頭……交代するとなると、内務省管轄の防諜組織でも人事の改編があるかもしれないわね)

太った中年婦人「……そういえば共和国のスパイが…」

やせた婦人「ええ、噂で聞きましたよ…」

アンジェ「…」突然耳に入って来た声から気になる単語が飛び出してきた……そしらぬ顔でシャンパンをすすっているが、神経をそちらに集中させる…

太った婦人「…なんでも「ザ・エンジェル・ハート」のレディだった女性だとか…で、お付きの娘二人を連れて「壁越え」をしたんだそうよ……」

やせた婦人「そうらしいわね……これまではお店でご婦人方を悦ばせていたんだけれど、同時にいくつも情報を聞きだしていたんですって」

太った婦人「怖いわよねぇ…」

やせた婦人「ええ、まったく……そういう謀反人はロンドン塔に幽閉するか、絞首刑にしちゃえばいいのよ」

太った婦人「そうよね」

アンジェ「…」表情一つ変えることなく「すぅ…っ」と、その場を離れた…

…カードテーブル…

長い金髪の婦人「…あら♪ こんばんは、レディ・リリーフィールド……よろしければご一緒しませんか?」

アンジェ「え、ええ…///」


…お互いに本名を名乗ることなどしないこうした「社交クラブ」の中ということもあって、まるで安食堂の日替わりメニューのようにころころと呼び名を変えているアンジェとドロシー……アンジェはこの数カ月余りの間「アン・リリーフィールド」という名前を使っていた…


金髪「はい、決まりですわね♪」…濃い赤紫と深いバラ色の豪華なドレスに、目を細めつつ浮かべる優しい笑顔…が、アンジェに声をかけてきたこの女性はロンドン社交界でも名うてのカードの使い手でありプレイガールで、あちこちの令嬢や奥方を「食べ散らかしている」と、悪い噂が絶えない……

茶色の髪をした令嬢「あら、よかったらわたくしも交ぜて下さいな?」

金髪「ええ、どうぞ♪」

派手な格好の婦人「あらあら、わたくしをおいて抜け駆けなんていけませんわね……♪」

金髪「ふふっ…レディ・エッジムア、私が貴女をお邪魔扱いすることなんてありませんよ♪」

派手な婦人「まぁまぁ、そう言っていただけると嬉しいわ」

アンジェ「…わ、私が社交界の華である皆さんとご一緒できるなんて……嬉しいです///」

金髪「あら、アンったらお上手……シャンパンをごちそうしてあげるわね♪」にこにこしながらさりげなくアンジェの手を撫でた…

アンジェ「///」

金髪「ふふふ、そう固くならなくてもいいのよ…お互い楽しく過ごしましょうね♪」

………

364 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/08/31(土) 01:27:19.13 ID:k+8HuvAu0
…しばらくして…

金髪「ふふ……フォーカードです♪」

派手な婦人「むぅ……わたくしの手もなかなか良かったのですが、また負けてしまいました…お強いですわね」

金髪「ふふっ、ほんのまぐれですわ…♪」

茶髪「わたくしもたまには、その「まぐれ」に当たってみたいものですわ……すっかり負け続きですもの」

アンジェ「…ええ、まったく」

派手「本当にねぇ…」

金髪「あら、でも今までで一番大きな勝ちはレディ・エッジムアのストレート・フラッシュですわ」

派手「そういわれるとくすぐったいわね♪」

アンジェ「きれいにそろっていましたものね……」

…まるで玄人の賭博師(ギャンブラー)はだしの腕前でポンド札を巻き上げている相手に、優れた記憶力と素早い計算、そして氷のような冷静さで対抗しているアンジェ…カードを始めた時に比べると、手持ちのポンドはそう増えてはいないが減ってもいない…

金髪「あら、それを言ったら貴女のカードさばきもなかなかよ?」

アンジェ「そ、そんなこと…///」

金髪「いいのよ、照れなくっても……ね♪」そう言いながら、さりげなく手を伸ばした…

アンジェ「…あっ///」

金髪「あ、ごめんなさい…わたくしったら、グラスと取り違えてしまったわ♪」

アンジェ「///」

茶髪「まぁまぁ…ところで、そろそろ何か頼みませんか?」

派手「そうねぇ……レディ・スタンモアの言う通り、ちょっとした軽食でも…?」

金髪「ふふ、それではそろそろカードはお開きにします?」

茶髪「いいえ、わたくしはまだまだ続けたいですわ!」

金髪「…まるでサンドウィッチ伯爵ですわね♪」(※サンドウィッチ伯爵…大のカード好きで軽食を取る時間すら惜しみ、カードをしながら片手で食べられる具を挟んだパンを用意させたことから「サンドウィッチ」というようになったという)

茶髪「べ…別にそういう訳ではありませんが///」

金髪「ふふふっ、こういう遊びはほどほどにしておきませんと…ね、レディ・リリーフィールド♪」

アンジェ「ええ、そうですね…」

茶髪「お二人がそうおっしゃるのなら、わたくしもたってとは申しません……では、清算を」点数表を計算して、ポンド札を取り出した…

金髪「……あらまぁ、やっぱりレディ・エッジムアはお強いですわね…今度手ほどきしてもらいたいですわ」

派手「あら嫌だ、それではなんだかわたくしがカード使いみたいですわ♪」そう言いながらも、まんざらでもないらしい派手な婦人…

アンジェ「…」一見すると地味な勝ち方が多いのでそうとは気づかないが、金髪のレディはさりげなくテーブルの中で一番多く稼いでいる……アンジェも差し引きするとそこそこの勝ちで、札入れのポンドがいくらか増えた…

金髪「それでは、また次回を楽しみにしておりますわ……ところで、レディ・リリーフィールド」

アンジェ「ええ」

金髪「よかったらわたくしとシャンパンを付き合って下さらない?」

アンジェ「…は、はい///」

金髪「あぁ、よかった……それでは参りましょう♪」アンジェの手を取ると店のレディに合図の目線を送り、緋色の絨毯が敷いてある階段を上って個室に招き入れた…

………

365 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/02(月) 02:46:16.69 ID:DJFiGFH+0
…個室…

レディ「…どうぞ、こちらにございます……」

金髪「ええ…さぁ、おかけになって?」

アンジェ「は、はい///」

金髪「そう固くならずに……今はわたくしと二人だけなんだもの、ね♪」チャーミングな笑顔を浮かべ、優しく椅子に座らせた…

アンジェ「///」

金髪「そうそう、そうやって楽にして…あ、ちょうどシャンパンが来たわ♪」

レディ「…失礼いたします」店のレディがシャンパンの入った銀のアイスバケットを持ってきて栓を開けた…

金髪「あとは私がやるからいいわ……ご苦労様」すっ…とポンド札を握らせて下がらせた

レディ「…失礼いたします」

金髪「ええ……ふぅ、これでようやく静かになったわね」

アンジェ「そうですね…///」

金髪「ふふ、そんなにかしこまらなくても……さ、召し上がれ♪」手際よく二つのグラスに「クリュッグ」を注ぐとシャンデリアの灯りにかざすようにして、夏の木漏れ日のような透き通った金色にきらめく水色(すいしょく)を楽しみ、それから芝居がかった手つきで片方のグラスを渡した…

アンジェ「ええ…こくっ……///」

金髪「ふふ…っ♪」立ったままで軽く一杯飲み干すと、おかわりを注いだ…

アンジェ「あの…レディ・ウェルキン……」

金髪「もう、そんな堅苦しい呼び方は止して…二人きりなんだもの、アリスでいいわ♪」

アンジェ「それでは……その…アリス///」

アリス「なぁに、アン?」

アンジェ「えぇと…いえ、その……どうしてお掛けにならないのかと思って…///」

アリス「ふふ、どうしてかしら…ね♪」白絹の長手袋をはめた手でアンジェの頬を撫でた…

アンジェ「///」

アリス「でも、せっかくそうおっしゃってくれたのだから…わたくしも座るとしましょう♪」立派なソファーが二脚あるにもかかわらずわざわざアンジェの隣に座ると、そっと身体をもたれかからせた…

アンジェ「ど、どうぞ…///」…白くて柔らかそうな乳房のふくらみは襟ぐりからのぞいているのを見なくとも、そっと腕に押し付けられたドレス越しでも分かる……それに胸の谷間に香水を吹きつけたのか、甘いメロンのような香りが鼻をくすぐる…

アリス「ふふっ、せっかくだから何かおしゃべりでもしましょうか…♪」

アンジェ「え、ええ…///」

アリス「それじゃあ、この間のレディ・マーカスの舞踏会であった話でも……」

アンジェ「…はい///」

アリス「……それでね、ウェストミンスター寺院の大僧正ときたらそんなことを言うのよ…ふふっ♪」

アンジェ「そうだったのですか……とても立派なお方に見えますけれど…」(社交界や政財界の大立者たちが抱える弱点やスキャンダル……このまま「開拓」できれば、なかなか使える情報源になりそうね)

アリス「くすくすっ、アンったら素直な性格なのね。 …それとも、私を喜ばせてくれるために演技をしてくれているのかしら?」

アンジェ「…っ、そげなこと……おらは演技なんて上手じゃねえだで…っ///」

アリス「くすっ…まぁまぁ♪」

アンジェ「……っ、今のは…その…っ///」

アリス「ええ、貴女の「お国言葉」は聞かなかったことにしてあげるわ……その代わりに、もう一杯わたくしの杯を受けてくれること♪」

アンジェ「わ、分かりました…///」

アリス「よろしい…♪」…シャンパンのせいでいくらか上気した肌は赤味を帯びて艶めいている…優しそうだった瞳は今や獲物を目の前にした肉食獣のようにらんらんと輝き、アンジェは視線が合うたびに電撃を受けたように感じていた……その間もアリスはアンジェをくつろがせようと面白おかしくあちこちの舞踏会やパーティの話をしているが、さりげなくアンジェの綺麗な肌をじっくりと眺めている…

アンジェ「……あの、アリス///」(そろそろ頃合いね…)

アリス「どうかした?」

アンジェ「いえ……少し飲み過ぎてしまったみたいで…頭がぼーっとして……///」

アリス「あら、本当に…ちょっと失礼?」アンジェのあごに手を当てて顔を向けさせると、自分の顔を近寄せてじっくりと眺めまわす…長いまつげに色つやのいい頬、それに柔らかそうな唇が今にも触れそうになる……

アンジェ「…ぁ///」
366 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/04(水) 01:01:18.84 ID:Agb+OARL0
アリス「……んっ」

アンジェ「……ん、ちゅっ…///」

アリス「くすっ…♪」小さく笑うとアンジェの手を取った…

アンジェ「…ア、アリス……///」

アリス「…はい、何かしら♪」

アンジェ「いえ……あの…」

アリス「…アンは真面目なのね」

アンジェ「///」

アリス「ふふっ…大丈夫、全部わたくしに任せておけばいいわ♪」

アンジェ「…っ///」

アリス「はむっ……ちゅぅっ♪」

アンジェ「ふぁぁ…あぁ、んっ///」

アリス「あら、シャンパンがまだ残っているわね……こくっ、こくんっ……」瓶に残っていたシャンパンをグラスに空けると、一気に口に含んだ…

アンジェ「そ、そんな風に飲んだらお身体に……んんっ!?」

アリス「んむっ、んくっ…んっ♪」

アンジェ「んぅぅ、んぅっ…///」唇を押し付けられたかと思うと舌で口をこじ開けられ、両手で頬を押さえつけられたままシャンパンを口移しされる…

アリス「ふぅ……お味はいかが?」

アンジェ「もう…っ///」とても演技とは思えないほど上手な涙目で上目使いをし、すぐ恥ずかしそうにそっぽを向いた…

アリス「……アン」

アンジェ「…な、なんですか?」

アリス「ごめんなさい、抑えておこうと思っていたのだけれど……ちょっと我慢できそうにないの♪」長手袋をするりと脱ぎ、ソファーに押し倒した…

アンジェ「あぁん…っ!」

アリス「…ふふ、ドレスっていいわね……こうして…一枚づつ……脱がしていく愉しみが…あるもの…ね」

アンジェ「あ、あ……///」

アリス「…それにしても、アンの肌は白くてすべすべで……それにいい匂いよ…まるで花束みたい♪」…アンジェの持っている「香水」は甘くとろけそうなドロシーのものとは違い、アンジェ自身の雰囲気に合わせて爽やかですっきりした香りに仕立ててある……

アンジェ「う、嬉しいです…///」

アリス「あぁ、やっとリボンがほどけたわ……ん、とっても綺麗ね…」

アンジェ「あ、あんまり見ないでください…///」

アリス「ふふ……こんなに美しい物を「見るな」だなんて、なんと残酷なこと♪」そう言いながら流れるような手つきで次々とリボンやボタンを外し、優しく身体を愛撫する……

アンジェ「ふわぁぁ……あっ、あ…///」

アリス「ふふ、そんなあられもない声をあげて……誘っていらっしゃるのかしら?」

アンジェ「そ、そんなつもりでは……」

アリス「ふふふっ…でも、わたくしはそんな気持ちになったわ♪」

アンジェ「きゃあっ…///」

アリス「くすくすっ……さぁ、つかまえた♪」アンジェの左右の手首を重ねて、ドレスのどこかを留めていた黒いリボンで結び合わせた…

アンジェ「あぁ、アリス…なにをなさるのです///」

アリス「貴女がいけないのよ……そうしてわたくしを誘惑するから♪」ヒールを脱ぐと脚を持ち上げ、優しくアンジェの胸元にあてがって押し倒した…

アンジェ「あん…っ♪」

アリス「ふふふっ……今夜は礼儀作法の先生からは教わらない事をいっぱい教えて差し上げるわね♪」

アンジェ「は、はい…///」
367 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/08(日) 01:46:19.45 ID:Y4rcIFzt0
………



…数十分後…

アンジェ「…んはぁ…はぁ、はぁ……///」

アリス「ちゅぅっ、ちゅっ、ちゅむ……っ♪」

アンジェ「ぷは…ぁ……はぁ、はぁ、はーっ……///」

アリス「ふふ、初々しくて可愛いわ…私の妹にしたいくらい」

アンジェ「はぁ…はぁ……ん…///」あまりやり過ぎない程度に物欲しげな顔をしてみせる…

アリス「あら、まだ物足りないの?」

アンジェ「……いえ…そういうつもりでは…///」

アリス「ふふふっ、いいのよ……ここはそういう場所なんですもの♪」ソファーの上でアンジェにまたがり、見せつけるようにコルセットを脱ぎ捨てる……形のいい胸が柔らかく弾むと、蝋燭の灯りに火照った肌が艶やかに照り映えた…

アンジェ「…っ///」

アリス「…ねぇ、遠慮しないでご覧になって……?」

アンジェ「……は、はい///」

アリス「ふふ…いい娘ね……♪」アンジェの手に自分の手を重ねると乳房に誘導し、粘土でもこねるかのように揉ませた……

アンジェ「アリス…柔らかいです……///」

アリス「ふふ…っ、そして貴女の指は意外と力強いのね♪」

アンジェ「そ、そんなこと…///」


…そう言われて恥ずかしげに目を伏せてみせたアンジェだったが、内心ではアリスの(プレイガールらしい)鋭い観察力を苦々しく思っていた……日頃「一流情報部員」として物腰や雰囲気をうまく作ることができても、肉体的な面ではどうしてもごまかしきれない部分というものがある……特に細いが力強い指や引き締まった身体は、いくら肌をすべすべにしようと乳液やクリームを塗ってみても「か弱い女学生」らしくない…


アリス「……あら、わたくしとしたことが…ごめんなさいね♪」アンジェを不愉快な気持ちにさせたと思ったか、手際よく謝った…

アンジェ「いいえ…私も自分の身体、やせっぽちで骨ばっているからあんまり好きじゃなくて……」

アリス「まぁまぁ……でも、わたくしはアンのほっそりした身体…好きよ?」

アンジェ「あ…///」鎖骨にキスをされると、アリスの髪の香りが鼻腔をくすぐった…

アリス「……わたくし…ん、ちゅぅ……アンが…ちゅっ……自分のこと…もっと好きに……んちゅっ…なれるように……してあげる…わ♪」

アンジェ「はぁぁ…んっ、あっ……あぁぁん…っ///」鎖骨から小ぶりな乳房、平たく引き締まったお腹、そして柔らかい下腹部へと唇が進んでいく……

アリス「んちゅっ…ちゅぅ……」

アンジェ「はぁぁ…んっ……そこは…んっ、だめ……っ///」

アリス「……だめじゃないわ」ちゅく…っ♪

アンジェ「あっ、あぁぁ……っ///」

アリス「まぁ、ふふ……舌先を入れただけでそんなに喘いで…夜は長いけれど、大丈夫かしら?」くすくす笑いをしながらふとももを押し広げ、ねっとりとした妖しげな視線を向けた…

アンジェ「そ、その……お手柔らか…に…?」

アリス「うふふふっ、面白いお返事だこと……ええ、よく分かりましたわ♪」…そういうとテーブルに置かれている五本がけの燭台を手に取った……立派な銀製の燭台は片手で持つには重く、揺れるたびに火がゆらめいて、陰影がアリスの表情をゆがませた…

アンジェ「……ア、アリス…?」

アリス「んふふっ、大丈夫だから……わたくしに身体を預けて…ね♪」とろ…っ♪

アンジェ「あっ、あぁ゛ぁ……っ///」アリスが燭台を傾けると、胸元に溶けた蝋が垂れる…

アリス「くすくすっ…大丈夫よ、跡になるほど熱くはないもの……熱いのはその瞬間だけ…行きずりの恋と同じね♪」

アンジェ「…アリス///」

アリス「あぁ…そんな表情をされると優しく出来なくなってしまいそう……♪」ぽたぽた…っ♪

アンジェ「あ゛ぁ゛ぁっ…あ……っ///」

アリス「本当はね「よく熱した火かき棒」なんていうのもあるのだけれど…それじゃあ貴女の綺麗な身体に跡が残ってしまうものね♪」

アンジェ「…っ」

アリス「ふふふ…っ♪」
368 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/09(月) 00:49:07.76 ID:VTsgeRKU0
アンジェ「…あぁっ、うぅ゛…っ///」

アリス「まぁまぁ、そんなに身体をひくつかせて……もっとしてあげましょう♪」ぽたぽたと溶けた蝋を垂らし、それが固まると爪の先で愛撫しながら剥がしていく…

アンジェ「い゛っ、あぁ゛ぁ゛ぁっ…!」

アリス「あぁぁ…とても可愛らしいわ…♪」ぺろりと指を舐めあげると妖艶な笑みを浮かべ、アンジェの濡れた秘部にゆっくりと指を沈めていった…

アンジェ「あっ、あぁぁ…っ///」ちゅぷ…くちゅ……っ♪

アリス「はぁぁ……アンのあそこ、暖かくて指をきゅうっと締め付けて…おまけにとろりと濡れていて……♪」

アンジェ「…い、言わないで……///」

アリス「…あら、今のはわたくしの正直な感想なのだけれど……言ってはいけないかしら?」

アンジェ「だ、だって……///」

アリス「ふふ、言いたいことやしたい事を抱え込まないのが美の秘訣よ……貴女も悩み事があるようなら吐きだしてみたら?」

アンジェ「…」(この女…向こうの回し者ではないにしろ、同じくらい危険ね……こういう場面でうっかりした事をいうと、あっという間に鉄格子の向こうに入ることになる……用心しないと…)

アリス「いえ、ね…だってアンったら時々、何か「感情を消している」ような目をするものだから……よかったら話を聞くわよ?」

アンジェ「ええ、ありがとう…でも、大丈夫」

アリス「そう?」

アンジェ「はい…でも、そのお気持ち……嬉しいです///」

アリス「ふふっ、わたくしもアンが笑ってくれて良かったわ……でもね」

アンジェ「?」

アリス「わたくしは欲張りだから、可愛い貴女のいろんな表情が見てみたいの……例えば…♪」ふっ…と燭台の蝋燭を一本だけ吹き消すと台から外し、まだ熱を持った灯心の部分を花芯に押し当てた……火傷の跡が残るほどではないにしろ、敏感な部分なので焼け付くような感覚を覚える…

アンジェ「あぁ゛ぁ゛ぁ…っ!」

アリス「あぁぁ…いいわね♪」

アンジェ「はひぃ…ひぐぅ……っ///」

アリス「んー……それじゃあ次は…♪」また一本吹き消すと、今度は胸の谷間に押し当てた…

アンジェ「あぁぁっ…いぃ゛っ///」

アリス「あぁ、なんて可愛らしいのかしら……すれっからした称号ばかりの小娘たちや、ぎらぎらした中年の婦人たちなんてもううんざり…貴女みたいなみずみずしい初心な娘がいいわ♪」

アンジェ「はぁ、はぁ……はぁ…っ」

アリス「さ、お次は…と♪」ぐいっと手首のリボンを引っ張ってアンジェを絨毯の上で四つん這いにさせ、蝋燭を吹き消すと腰の窪みの所に押し当てた…

アンジェ「あぁ゛ぁ゛ぁっ…!」口から唾液をしたたらせ、蜜でふとももをぐちゃぐちゃに濡らしているアンジェ…

アリス「…舐めて♪」全て外して吹き消してしまった燭台をテーブルに戻すと、そのままテーブルに腰を下ろし脚を伸ばした…

アンジェ「ふぁい……ん、ぴちゃ…れろっ…///」

アリス「あぁ、ふふっ…くすぐったいわ……うふふっ♪」

アンジェ「んちゅ…ちゅるっ……///」

アリス「ふふ、上手だったわ……さぁ、ごほうびを上げるから仰向けになって?」

アンジェ「…はい///」

アリス「くすくすっ…素直でよろしい♪」つぷっ…くちゅっ♪

アンジェ「あっ、あぁぁ…ん///」

アリス「ん…んぅぅ♪」小川の岸辺に座っているように脚をぶらぶらさせつつ爪先でアンジェの花芯をかき回し、自分の秘所に指を差し入れた…

アンジェ「あぁ、んぅっ…ふあぁぁ…っ///」ちゅくっ、くちゅ…♪

アリス「んくぅっ、んぅぅ…んんぅぅっ♪」くちゅっ、にちゅっ…とろっ♪

アンジェ「……はぁ、はぁ……っ///」

アリス「ふぅ……さ、それじゃあそろそろベッドに行きましょうね♪」

アンジェ「…はい///」

………

369 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/12(木) 16:38:28.40 ID:tXDhR8q50
…予定では今日明日にでも続きを投下する予定ですが、週末からの台風はもの凄かったですね…

…特に千葉県の方はまだ停電や断水が続いているそうですから、一日でも早く復旧することを祈っております……もし被災地の方とかでこのssで見てくださっている(見られる状態にある)方がいらっしゃいましたら、読み物として少しでも気を紛らわすことができたらと思います…
370 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/13(金) 11:47:01.63 ID:8lUdJ9g60
………



…数時間後…

アリス「あっ、あぁ…んっ♪」くちゅくちゅっ、にちゅ…っ♪

アンジェ「はぁっ、はぁ……んっ、くぅ…っ///」ちゅぷ、くちゅ…♪

アリス「あっ、あっ、あっ…あぁぁんっ♪」豪華なベッドの上でアンジェを押さえ込むように組み敷いて、指を開くとこぼれた蜜がとろりと糸を引いた…

アンジェ「ふぁぁぁっ、あぁっ…んぁぁぁっ///」

アリス「ふふ、そんな風に甘い喘ぎ声をさせながら身体をのけぞらせて……アンは悪い娘ね♪」

アンジェ「…はぁ……はぁ…んはぁ…っ」演技や冗談ではなく、本当に息切れしかかっているアンジェ…自分が責め手に回れば技量と経験を活かしてすぐ相手をイかせられるが、押し倒されて一方的にやられている状態では小柄な身体が災いして体力が続かない……

アリス「……どう、満足してもらえたかしら?」

アンジェ「…はぁ……はぁ……」

アリス「くすくすっ…その様子なら大丈夫そうね♪」

アンジェ「はぁ……ふぅ…っ」

アリス「それでは後はおしゃべりでもしましょうか…」アンジェの横に身体を寄せると、髪をかき上げて額にキスをした…

アンジェ「…は、はい///」



アリス「……それでね、第一海軍卿(海軍長官)は「空中戦艦をさらに数十隻整備する必要がある…そしてインドや極東にも展開できるように、整備施設を建造する予算が必要だ」って言って大騒ぎ…陸軍のパーシバル元帥とお互いに譲らずで、大変だったみたいね♪」

アンジェ「将軍さんたちも大変なんですね…」

アリス「ええ、おかげでしばらくはふてくされて大変だったって「親しいお方」から聞いたわ…ちょうどこんな風に、ね♪」

アンジェ「なるほど……ふわぁ…」(つまりこの女は第一海軍卿の夫人とも寝ている、と……うまく引き出せれば一級の情報源になりそうね…)

アリス「あらあら、わたくしとしたことがつまらないお話をしてしまったわね…それに貴女も眠くていらっしゃるでしょうし♪」

アンジェ「そ、そんなことありませんよ…とっても面白いで……ふあ…ぁ///」

アリス「ふふ、いいのよ……夜明けまではまだ少しあるから、軽くお休みなさいな?」

アンジェ「いえ、もっとお話したいで……ふぁ…///」

アリス「くすっ…気持ちは嬉しいけれど、無理はしないでいいのよ……また今度、ご一緒すればよろしいんですもの♪」

アンジェ「えっ…その、私…こんな田舎娘ですけれど……また、会って下さいますか?」

アリス「ええ…わたくし、貴女が好きよ♪」

アンジェ「…っ///」恥ずかしいのを隠すように寝返りを打ち、背中を向けた…

アリス「ふふっ、お休みなさい…♪」ふわりと羽根布団をかけ「ぽんぽん…っ」と優しく叩いた…

アンジェ「…すぅ、すぅ……」

アリス「……それにね、貴女はどこか「わたくしの欲しいとあるお方」に似ているのよ…」

アンジェ「……すぅ…すぅ…」

アリス「……欲しても手に入らない、愛しの君…だからせめて貴女の事を「わたくしだけのプリンセス」にさせてちょうだい…ね♪」

………

371 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/16(月) 02:38:29.79 ID:aCAlg2IM0
…夜明け前…

ドロシー「今宵も楽しかったですわ、レディ・バーバラ……また二人で愉しもうな♪」耳元に唇を寄せ、艶めかしい声でささやいた…

フェアウェル嬢「…はい///」

ドロシー「ふふ、いい娘だ…では、ごきげんよう♪」芝居がかった動きで手の甲にキスをした…

フェアウェル嬢「……ふわぁ…ぁ///」

ドロシー「おっと…」へなへなと崩れ落ちたフェアウェル嬢を抱きかかえると、店のレディに目くばせした…

店のレディ「…よろしければ、こちらのご婦人には今しばらくサロンでお休みいただいて……」

ドロシー「ええ……手間をとらせて悪いわね。取っておいて?」チップをはずみつつ、さりげない手つきでレディの腰に手を回す……酔いが回っているような上気した顔と艶やかな胸元に、普段は何を頼まれてもポーカーフェイスな店の「お姉さま」も少し頬を赤らめた…

お姉さま「……ありがとうございます///」

ドロシー「ふふ、いいのよ…それじゃあ、彼女が起きたら渡しておいて♪」さらさらと(いつもと違うペンと意識的に変えた字体で筆跡見本を残さないようにしつつ)ペンを走らせ、情熱的な言葉を並べた手紙を書き上げると、香水をひと吹きして店のレディに託した…

お姉さまB「…お車が参りました」

ドロシー「ああ、ありがとう…♪」待っている車の列から手際よくドロシーたちの乗って来た一台を回してくれたレディにもチップを渡し、アンジェを待った…

アンジェ「…その、それでは……また…///」すっかり腰が抜けたような様子で顔を赤らめ、アリスにもたれかかるようにしてふらふらとやって来た…

アリス「ええ、またね…♪」アンジェの肩に丁寧すぎるほど優しくコートを羽織らせるアリス……前のボタンを留めるようなふりをしながら、さりげなく後ろから抱きしめた…

アンジェ「……はい///」

ドロシー「さ、行きましょうか…」アンジェを先に乗せてやるドロシー…運転手がドアを閉め、霧深いロンドンの夜道を走り出した…

………

…しばらくして・部室…

アンジェ「…それで、どうだった?」聞きだした情報を暗号文に起こしつつ、ドロシーに聞いた…頬はまだ火照っているが、顔はいつもの無表情に戻っている…

ドロシー「相変わらずバーバラはなかなかの情報源さ。政財界のお偉いさんたちが「こう言った」とか「どう考えている」とか、父親が良くしゃべっているみたいだな…そっちは?」

アンジェ「そうね、あのアリスとかいう女はなかなか勘が鋭いから気をつける必要があるけれど、王国上層部の夫人や令嬢たちの不品行についてよく知っているようね…かなり有意義な話が聞けたわ」

ドロシー「まぁ、勘が鋭いっていうのは確かだろう……私もだけど、ああいうプレイガールは「恋人たち」のちょっとした変化に気づけないようじゃダメだからな」

アンジェ「そのようね…」

ドロシー「色事師になるには観察力がないとな…ま、私たちの世界と同じさ♪」

アンジェ「結構なことね…さ、終わったわ」

ドロシー「そりゃ良かっ……あぁ、くそっ…」

アンジェ「…どうかしたの?」

ドロシー「いや、実は…さっきから例の「香水」の影響で身体が火照って仕方ないんだ……色々「悪いこと」を教えているとはいえ、バーバラはまだまだ初心な乙女みたいなもんだから、私を満足させちゃくれないしさ…」

アンジェ「…それで?」

ドロシー「お前さん、車で私にもたれかかってきただろ…あんなとろけたような顔で身体を寄せてきやがるから、襲いかかりそうになったんだ…ぞ」

アンジェ「……冗談のつもり?」

ドロシー「…いや、正直な話…もう……んっ…我慢……できそうに…ない///」どろりとした欲情で瞳をぎらつかせ、じりじりとアンジェを追い詰める

アンジェ「………」

ドロシー「アンジェ…っ♪」

アンジェ「ぐっ…ドロシー、悪ふざけはよしなさ……んぅっ!?」格闘術でドロシーをねじ伏せようとしたが、床に押し倒され唇が重なったかと思うと、一気に舌が滑り込んできた…

ドロシー「むちゅっ、ちゅるっ、ちゅむ……ちゅぷっ、ちゅくぅっ…ちゅるぅぅっ♪」

アンジェ「んぅぅぅっ、んっ、んぅぅ…!」

ドロシー「はむっ、じゅるっ、ぢゅぅぅっ…あぁっ、んっ……じゅるっ、ぬるっ…ちゅぷっ♪」

アンジェ「んんっ、んぅ…ぷはぁっ! ちょっと、いい加減に……んんぅっ///」

ドロシー「んちゅるっ、ちゅるぅっ…♪」

アンジェ「んぅぅぅ…っ♪」頭が焼き切れそうなほど上手で熱っぽいドロシーのキスに身体がとろけて、下腹部がじんわりと甘くうずいてくる…
372 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/19(木) 02:46:03.17 ID:fAUgggXz0
ドロシー「はぁ、はぁ…こうなったのも全部アンジェが悪いんだからな……ちゅるっ、んちゅぅっ♪」

アンジェ「馬鹿言わな……んむっ、んんぅぅっ///」

ドロシー「ちゅうぅぅっ、じゅるぅ…っ、んむっ…♪」

アンジェ「ん、んぅぅっ……んふぅっ///」

ドロシー「んちゅっ、ちゅる…ぅ♪」

アンジェ「…ちゅるぅ……んっ♪」そんなつもりはさらさらない…はずが、ドロシーの熱い舌が絡みつくたびに思ってもいないほど甘い声が漏れる…

ドロシー「あぁ…相変わらず真っ白な肌だな……んちゅっ、ちゅぅ♪」

アンジェ「ちょっと、どこにキスして…あんっ///」


…よく情報収集のためにレディたちをたらしこみ、寝室や化粧室でドレスを脱がせている「プレイガール・スパイ」のドロシーだけあって、うまく茹ったゆで卵を剥くようにするりとボディスやペチコートを脱がしていく……白い肌があらわになると、首筋から鎖骨、胸元、脇腹…と、ついばむようなキスをした…

ドロシー「はは、何だかんだ言いながらそんな声を出すあたり…アンジェ、お前もすっかり乗り気なんじゃないか♪」

アンジェ「……冗談は止してちょうだい、見当違いもいいとこ……んぅっ///」

ドロシー「へぇ…「見当違い」にしちゃずいぶん甘い声だぞ?」

アンジェ「あっ、んあぁっ///」

ドロシー「…黒蜥蜴星出身の腕利き情報部員のくせに嘘が下手だな……ちゅうっ♪」

アンジェ「あ、あっ…///」

ドロシー「おいおい…そんな喘ぎ声を聞かせるなよ、ますます我慢ができなくなる……んちゅるっ♪」

アンジェ「…そもそも我慢するつもりなんてないくせによく……ふわぁぁ、あっ、あふっ///」

ドロシー「ちゅぅっ、れろっ、むちゅ……♪」

アンジェ「ちょっと待って、それ以上は本当に……あっ、あぁんっ///」

ドロシー「んじゅるっ、じゅるっ……ぴちゃ♪」

アンジェ「あっあっ、あぁぁぁ…っ♪」

ドロシー「じゅるっ、くちゅ……アンジェはここが弱いんだっけな…♪」…くちゅくちゅっ、じゅるぅ…っ♪

アンジェ「あぁぁ…んっ///」

ドロシー「じゅるっ、じゅぅぅ…♪」

アンジェ「……ドロシー…」

ドロシー「んー?」

アンジェ「弱点を知っているのは私も同じよ……んむっ♪」互い違いに寝転んだ状態で、ドロシーの秘部に舌を滑り込ませた…

ドロシー「あ、ああぁぁ…っ♪」

アンジェ「ちゅるっ、れろっ、ぴちゃ……んっ、ふ…」

ドロシー「はぁぁぁっ、あぁっ…アンジェっ、そこ……んじゅるっ、じゅるっ♪」

アンジェ「あぁっ、んぅっ……ドロシー…///」

ドロシー「アンジェ……んじゅっ、じゅるぅ♪」

アンジェ「ひう゛っ、ひぐぅぅ…っ♪」がくがくと腰をひくつかせ、とろりと蜜を噴きだした…

ドロシー「…あぁぁぁっ、んぅっ…アンジェ、私も…いく……ぅっ♪」

………

373 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/22(日) 02:40:11.71 ID:kWk5+x/M0
ドロシー「…今夜は色々と付き合わせて悪かったな……」床に散らかったボディスやペチコート、ストッキングを拾い集めつつ言った……

アンジェ「かまわないわ…そんな風に欲情したまま部屋に戻って、見境なしに同級生を襲われても困る」

ドロシー「誰がそんなことするか…」

アンジェ「そう? …まぁ、それに私も…火照りが……抜けなかった……から…///」

ドロシー「んー、よく聞き取れなかったな?」

アンジェ「……気にしなくていい」

ドロシー「はは♪ ま、冗談はさておき…本当にありがとな」明け方の薄灰色がぼんやりとしたシルエットを作りだす中、ドロシーの手がアンジェの白い頬に触れた……

アンジェ「…だから、気にしなくていいって言っているでしょう……///」

ドロシー「そう言うな……何しろファームを同時に卒業した「同期生」の中でまだ活動しているのは私と…アンジェ、お前だけなんだから……な」ちゅっ…♪

アンジェ「ん、ふ……はぁ…っ///」

ドロシー「…慎重なのからおっちょこちょい、手際のいいやつ悪いやつ……あそこにはいろんなのがいたが、たいていは正体がバレて引退させられるか、鉄格子の向こうか…さもなきゃ天国の階段を登っちまったしな……もっとも、情報部員が天国に行けるのかどうかは知らないが…」

アンジェ「…ええ」

ドロシー「だから、アンジェが側にいてくれる…それだけで私がどんなに心強く思っているか……はむっ、ちゅっ…」

アンジェ「あっ、あふ…っ…」

ドロシー「ちゅ、ちゅぅっ……だからな、もしお前が……んむっ…あのプリンセスのために……もう一組、ハジキを使える腕が必要になるような事があったら…その時は…好きなだけ……私を頼ってくれていいから…な……ちゅるっ…」

アンジェ「……ドロシー///」

ドロシー「んちゅっ……さ、そろそろ戻らないと起床時間になっちまう…」

アンジェ「…そうね…ドロシー、貴女が先に出て」

ドロシー「ああ……何も忘れ物はないか?」

アンジェ「子供扱いしないでちょうだい…ないわ」

ドロシー「よし…それじゃあお先に♪」

アンジェ「ええ…」

アンジェ「……私も同じよ、ドロシー…///」ドロシーが出ていくと、アンジェはキスされた唇を指でなぞった…


………



374 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/22(日) 02:46:39.22 ID:kWk5+x/M0
…というわけで、ずいぶん途中が長くなって「ドロシー×アンジェ」の部分が短い竜頭蛇尾な感じになってしまいましたが、無事にこのエピソードを終えることができました……


……次回は途中までちょっとシリアスな展開でストーリーを運んで、その分やらしい部分はアンジェ、ドロシーの二人がかりでベアトリスをめちゃくちゃにする予定です…
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 04:15:14.90 ID:nott/FasO
今回もお疲れ様でした
外伝的な感じで007的な単独任務みたいなのも見てみたいです
お約束だけどラブシーンやら拷問シーンやら雑多に入った派手なエンタメもいいなと
まあ白鳩は厳しいので委員長とかで...
376 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/23(月) 00:29:36.28 ID:upIrgpLO0
…まずは丁寧な感想と意見をありがとうございます…確かに「単独潜入&破壊工作」はスパイ・アクションの定番ですし、どこかでスマートかつクールな感じで書きたいものです……


…とりあえず次のストーリーはある程度考えているので、そのつぎ辺りに「世界で一番有名なスパイ」(情報部員としてそれはどうなのかという点はさておき…)こと「007」や「0011/ナポレオン・ソロ」(近ごろ原題の「コードネーム・U・N・C・L・E」をタイトルにリメイクされましたね)のようなものを目指してストーリーを練ってみます……時間はかかるかもしれませんが、待っていて下さいね


……そして各タイトルを伏せ字にしませんでしたが、大丈夫でしょうか…夜中に玄関ドアをノックされたりとか……スパイ物の見すぎですね(苦笑)

377 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/28(土) 11:50:20.37 ID:TUk1vHt20
…case・アンジェ×ドロシー×ベアトリス「The Pigeon and iron」(鳩と鋼)…


…ロンドン・アルビオン共和国大使館の一室…

7「…L、情報収集に当たっていたエージェントからの報告です」

L「うむ…それと、中身には目を通したか?」

7「はい……」

L「どうやら「プリンシパル」を動かす必要がありそうだな…手はずを整えてくれ」

7「分かりました」

…数日後・リージェント公園…

ドロシー「…よっこらしょ、と……定期連絡以外の呼び出しとは珍しいな。何があった?」

L「うむ。急に呼び出したのは他でもない…実は「ちょっとした問題」を解決せねばならなくなってな」

ドロシー「……と、いうと?」

L「…君も噂くらいなら耳にしたことがあるだろうが…この数カ月余りの間に、王国防諜部が他国のエージェントを次々と「静かに」させている、という情報を耳にしたことは?」

ドロシー「ああ…それとなく、だが」

L「結構、ならば話が早い……消されているのは、主にケイバーライト鉱の精錬に関する技術情報を入手しようとしたエージェントたちだ」

ドロシー「そりゃあまた…そいつは王国の連中が血眼になって流出を阻止しようとするシロモノじゃないか……しかし、それだけではあんたが直接「状況説明」に来る理由にはならないね」

L「いかにも」

ドロシー「それじゃあ、一体どういう風の吹き回しで?」

L「…実は、その「始末」のされ方がいくぶん異常なのでな……マクニールを知っているか?」

ドロシー「直接話したことはないが、顔だけなら…アイリッシュ系で背は低いが横幅のある、ごつい炭鉱夫みたいなやつだ」

L「ああ、そうだ」

ドロシー「……やっこさんがどうかしたのか」

L「うむ…およそ一週間前の報告を最後に連絡が途絶え、情報提供者に網を張らせていたところ、数日前モルグで見つかった……首の骨を折られてな」

ドロシー「…なに?」

L「言った通りだ…彼は鉱山労働者という触れ込みで潜入を図っていたので、表向きは鉱山内での「転落事故」と言うことになっているが……へし折られていたそうだ」

ドロシー「……武器は持っていたのか?」

L「ああ…護身用に.320口径の「トランター・リボルバー」を隠し持っていたが……発射された形跡はなかったということだ」

ドロシー「…続けてくれ」

L「他に我が方でやられたのは二人…ジェレミーとエマだ。ジェレミーの方は面識がないだろうが、エマは「ファーム」で同じ時期に入ったから覚えているだろう」

ドロシー「ああ……卒業したのは私たちより後だったらしいな」

L「うむ、何しろ君や「A」ほどではなかったからな…ちなみにジェレミーは研究助手としてケイバーライトの研究施設に潜りこみ、エマは精錬工場に女工として潜入していたのだが……ジェレミーは消息不明で、エマの方は全身に骨折があったが、これも表向きは「機械に巻き込まれた」と言うことになっている」

ドロシー「…」

L「さらに…だ。エージェントを消されたのは我々だけではない」

ドロシー「…さっきそう言っていたな」
378 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/29(日) 02:00:18.35 ID:6zB3Eqyp0
L「うむ……もっとも、聞いてみたところで教えてもらえるような事柄ではないから、あくまでこちらの情報収集で知り得た限りだが…情報部員だけでも、少なくとも十数名が始末されている」

ドロシー「……多いな」

L「ああ…まずはフランスの女性エージェントに、ベルギー王国の軍情報部エージェント……ベルギーのエージェントは7.5ミリの「M1878・ナガン」リボルバーを持っていたが、これも発射の形跡はなく、胸骨がたたき折られていた…とのことだ」

ドロシー「……それから?」

L「イタリア王国にドイツ、それからオーストリア・ハンガリー帝国の情報部員…オーストリアのエージェントはガッサー・リボルバーを持っていて、一発だけ発射した形跡があったらしいが……命中弾は与えられなかったようだな」

ドロシー「…」

L「そして最後に、合衆国のエージェントが一人…」

ドロシー「……新大陸のエージェントか…きっとカバーはカウボーイの見世物だな」

L「その男は「掘削機械の商談に来た」事業主ということで、護身用に.32ショートの「スミス&ウェッソン・No.2」リボルバーも持っていたが……発見された時には横に転がっていて、銃身がねじ曲げられていたそうだ」

ドロシー「…何だって?」

L「聞こえなかったか?」

ドロシー「いや…で、私たちは何をすればいい?」

L「うむ……このままエージェントの損失が続くと、我が方の情報活動に影響が出る。君たちにはエージェントを「消して」いる相手に関して情報を集め、可能ならばこれを始末してもらう」

ドロシー「おいおい、冗談だろ…相手は素手で背骨をへし折ったり、ピストルをねじ曲げるようなやつなんだぞ? きっとそいつは筋骨隆々のハーキュリーズ(※ヘラクレス…ギリシャ神話に出てくる英雄)に違いない……まともに相手なんて出来るシロモノじゃないね」

L「ならばヒドラの毒でも盛ることだ…とにかく、どんな犠牲を払っても構わん。活動に必要な資金や機材も全て揃えさせる」

ドロシー「…だったらまずは象撃ち用のライフルかな……とにかく情報を集めてみる」

………



…部室…

ドロシー「…よし、全員揃っているようだな」

アンジェ「ええ…」

プリンセス「ドロシーさんが集合をかけるなんて珍しいですわね?」

ドロシー「ああ、今回はちょいとばかり重い話なんでな……そう思って聞いてくれ」

ちせ「…ほう?」

ドロシー「実はな、新しい任務が入って来た……」そう切り出して、おおよその事情を説明するドロシー

アンジェ「…」

ちせ「…」

プリンセス「…」

ベアトリス「…」

ドロシー「……とまぁ、だいたいはそんなところだ…確かに学生の私らはこれから冬休みに入るし、行動の制約になる条件が減少するのは事実だ」

アンジェ「なるほど…」

ちせ「ふむ…それだけの間諜を手にかけた相手となると、一筋縄では行くまいな…」

プリンセス「……そうね」

ベアトリス「どうして皆さんそんなに落ち着いているんですか…そんな怪物みたいな相手に勝てるわけないじゃないですか!?」

ドロシー「まぁ落ち着けよ、ベアトリス…別に私はLの奴に「必ず始末しろ」と言われたわけじゃない。「可能ならば始末しろ」って言われただけなんだからな」

ベアトリス「そんな事言ったって…!」

ドロシー「いいから聞け……まず、今まで送り込まれた連中はそんな奴がいることすら知らないでいたが、私たちはそういう「フランケンシュタインの化け物」みたいなやつがいることを知っている…だから対策をとることもできる」

ベアトリス「でも……!」

ドロシー「…それに、分かっている限りで始末されたエージェントは全員「ソロ」だ。私たちみたいなチームじゃない」

アンジェ「そうね…それにもし相手が怪力の持ち主なら、その間合いに入らなければいいだけのことよ」

ドロシー「そう言うことさ……ライフルでも持ち出して、そいつが間抜け面をさらしているところを鴨撃ちにしてやればいい」

アンジェ「いずれにせよ、まずは情報収集ね」

ドロシー「そう言うこと…♪」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/29(日) 03:53:29.22 ID:S4j2Kb83O
排除任務とは新しい
今回も期待しております
380 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/30(月) 00:37:46.82 ID:mX6Y8wpl0
…まずはコメントありがとうございます…そして、ついに……「劇場版プリンセス・プリンシパル 〜クラウン・ハンドラー〜」の公開が明らかになりましたね。封切りは2020年4月とのことですので、公式等で情報収集に努めましょう…!
381 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/02(水) 00:43:37.28 ID:mwjTT0PS0
…せっかくですので、続きを投下する前に小道具の解説を一つ……


ヒドラ(ヒュドラ、ハイドラとも)…ギリシャ神話に出てくる、ヘラクレスに退治された毒蛇の怪物。

その毒はヘラクレスの持つ矢に塗られていたが、ある時川を渡ろうとしたヘラクレスとその家族が困っている時、一頭のケンタウロスが妻の「デアネラ」を乗せて川を渡した…が、ヘラクレスが息子を背負って川を渡っている間にケンタウロスはデアネラを犯そうとしてヘラクレスの毒矢で射殺され、その死に際に「この血は媚薬になるから、彼の愛情が減った時に衣服をこの血に浸して渡すと良い」とデアネラをだました……後に本当に浮気をしたヘラクレスに対し、嫉妬に狂ったデアネラが「愛を取り戻そうと」その服を贈ったところ残っていたヒドラの毒が回り、激痛に耐えかねたヘラクレスは自ら薪の山に身を横たえて火をつけ、デアネラ自身も後悔して自殺した

………

トランター・リボルバー…ウィリアム・トランター社の一連のリボルバー。十九世紀末には護身用のポケット・ピストルから大型のものまで生産していたが、その後ウェブリー・スコットに敗れた

………

ナガン・リボルバー…ベルギー人で兄エミールと弟レオンのナガン兄弟が開発した軍用ピストル。なかなか性能が良く、輸出やライセンス生産の許可もゆるかったことから帝政ロシアやノルウェー、スウェーデン、ギリシャ、ルクセンブルグ、アルゼンチンなど多くの国に採用され、それぞれの軍用弾薬の口径に合わせて大小さまざまなモデルが製造された…特に帝政ロシアは大量に採用して長らく使い続け、アドバイザーとして「モシン・ナガン」として有名になる歩兵用ライフルの開発協力も依頼している

………

ガッサー・リボルバー…レオポルド・ガッサーが開発した当時のオーストリア・ハンガリー帝国軍用リボルバー。1903年には社名をラスト&ガッサーと改名し、その後は「ラスト&ガッサー・リボルバー」と言われる。当初は大口径リボルバーが多かったが、後に将校用として小口径モデルが生産された

………

スミス&ウェッソン・No.2リボルバー…安価で反動が小さく威力もそこそこと、手ごろで扱いやすい「.32ショート・リムファイアー」弾薬を使った中折れ式の護身用ピストル。

これまでの「コルト・シングルアクション・アーミー」(ピースメーカー)のように給弾口から一発づつ排莢、装填しなければならない「ソリッド・フレーム式」のリボルバーと違い再装填が早く、口径違いの「No.1」などと一緒に当時大ヒットして、S&Wを一気に大メーカーへと押し上げた

………


382 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/04(金) 01:32:03.37 ID:ve/WS8kd0
…冬休み・初日…

女生徒「…それでは、また休み明けにお会いしましょう」

女生徒B「ええ…この冬はエクセターにあるわたくしの別宅に招待いたしますから……ぜひいらしてね?」

女生徒「まぁ、ありがとう♪」

ドロシー「…まーちに待った冬休みぃ…と……これでやっと活動にとりかかれるってもんだな、アンジェ?」

アンジェ「そうね……ドロシー、貴女にお客様よ…」

ドロシー「ええ?」

サラ「…あの……ドロシー様///」

ドロシー「あぁ、サラか…どうした?」

サラ「あ、いえ……もし、よろしければ…冬休みの間のどこかで…私の家に……おいでいただければと……お手紙を差し上げるつもりでおりますから…その…///」真っ赤になってうつむき、消え入りそうな声でつぶやいた…

ドロシー「ありがとう……サラが招待してくれて嬉しいよ♪」あごに親指をあてがい「くいっ…」と顔を上げさせると、魅力的な笑みを浮かべた…

サラ「///」

ドロシー「はは、そう照れるなって…それじゃあ、いい冬休みを♪」

サラ「ひ、ひゃい…それでは……///」

アンジェ「……相変わらずね」

ドロシー「ああ…それに例の「工場」が吹き飛んだ件で、陸軍省技術顧問のサー・ウィリアム・ティンドル…例のサラの父親の友人だな…が『生産を急ぎ過ぎで安全管理がなっていない』って警告していたのが本当になったっていうんで、サー・ウィリアムの株はうなぎのぼりさ……おかげでよりいい情報をおしゃべりしてくれるようになってな…こちとらからすれば万々歳さ」(※本スレ264…「The Machinegun and spicy spies」参照)

アンジェ「そのようね…引き続き彼女とは良好な関係を構築しておきましょう」

ドロシー「もちろんさ……お、ベアトリス♪」

ベアトリス「ドロシーさん、アンジェさん……しばらくの間ですが、顔を合わせる機会が減ってしまいますね…」

ドロシー「なぁに、そうしょぼくれるなよ…いつでも押しかけてやるさ♪」

ベアトリス「もう…っ」

プリンセス「…あら、ドロシーさん……それに…アンジェ///」

アンジェ「…プリンセス」

ドロシー「やぁ、プリンセス。しばらくは王宮の方で忙しくなるな」

プリンセス「ええ…」

ドロシー「お姫様って言うのも楽じゃないな……ところで、こっちは冬休みを使って「調査」を行う予定だが…プリンセスはあまり動かないようにしてくれ……王族の動向ともなると防諜部やら何やらが目を光らせているからな…」

プリンセス「…分かりました」

ドロシー「あと、ベアトリスを借りることがあるかもしれない……その時はよろしく頼む」

プリンセス「ええ」

ちせ「…おや、すでにお揃いであったか」

ドロシー「おうよ……ちせ、お前さんも冬休みの間にそっちのボスからの命令で動くこともあるだろう…もしこっちでお前さんと腰の人斬り刀が必要な「デート」が入ったら、出来るだけ事前に声をかけるようにするから…よろしくな♪」

ちせ「…かたじけない」

ドロシー「なぁに、そっちも忙しいだろうからな…私の「住所」は覚えているよな?」

ちせ「無論じゃ」

ドロシー「結構……ま、しばらくはアンジェと一緒にロンドン観光…って言うことでぶらぶらしているから、必要があったら手紙をくれ」

ちせ「承知」

ドロシー「…さ、それじゃあ行こうか……ごきげんよう、プリンセス♪」それまではアンジェたちにしか聞こえないようにしゃべっていたが、最後だけわざと人に聞こえるよう挨拶をした…

プリンセス「ええ、ごきげんよう…行きましょう、ベアト♪」

ベアトリス「はい、姫様」

………

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