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ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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◆b0M46H9tf98h
[sage saga]:2024/05/01(水) 01:11:30.24 ID:Zsm+3rLz0
ドロシー「それでだ……おかしなことにマティルダのやつ、訓練では相変わらずドジばかりだし覚えも悪かったんだが、何だかんだで最初の頃に比べるとずっとできるようになってきてな。むしろ訓練当初にすいすいと課題をこなしていた何人かは付いていけなくなって、結局途中でいなくなっちまったなぁ……」
ベアトリス「へぇ、そういうものなんですね?」
ドロシー「不思議なことにな」そういって肩をすくめた……
………
ホワイト「なかなかいいぞ、ではもう一本やってみようか。ミス・マロウ、相手をしてあげてくれるかな?」
長身の訓練生「ええ、ミスタ・ホワイト……よろしくね、マティルダ」
マティルダ「はい!」
…お互いに「それまでの経歴や個人の事は聞かない」という暗黙の了解があるとは言え、訓練が進むにつれて「ファーム」の訓練生同士の仲もそれなりに打ち解けてきていた……もちろん意地悪だったりイヤミな訓練生も何人か残っていたが、成績トップクラスのドロシーとアンジェがいる手前わがまま勝手に振る舞うこともできず、そうした連中は少数の取り巻きだけを連れて自然と孤立するような形になっていた……反対にマティルダは生来の「前向きながんばり屋さん」ぶりからある種のマスコットか、訓練生共通の妹のような位置に落ち着いて可愛がられていた…
ホワイト「では、任意のタイミングで」
長身「分かりました……はあっ!」
マティルダ「ひゃあ……っ!?」長身から繰り出されるみぞおちへの蹴りをクロスさせた腕でどうにか受けとめたが、勢いに押されて後ろによろめいた……
長身「ふっ!」その隙を逃さず次の一撃を叩き込む……
マティルダ「……っ!」
長身「しまった……!?」
…どんくさいマティルダが相手だからと気を抜いていた長身の訓練生は、半分転ぶようにして攻撃を回避した彼女のために大きくバランスを崩し、思わず一歩前にのめった…
マティルダ「えいっ!」
長身「……っ!」
…脚が長く腰高な訓練生が体勢を崩したところに、むしゃぶりつくようにして飛びかかるマティルダ……普通だったら軽くあしらわれてしまうようなつたない攻撃だったが、足元が乱れている所に来られてはどうしようもない……慌てて受け身を取ろうとしたが、そのまま床にもつれて倒れ込んだ…
ホワイト「そこまで。まだ改善の余地はあるが、最初の一撃をかわせたのは成長だ」
マティルダ「あい゛がとうごじあまず……♪」ひっくり返った時にぶつけたのか、鼻血を止めようと鼻を押さえつつも笑顔を浮かべた……
ホワイト「いいや、君自身の成長なんだから私に礼はいらないよ……ところでミス・マロウ、格下だと思った相手に油断するのは君の悪い癖だな。反省も兼ねて、訓練生十人を相手に勝ち抜きできるまで練習だ」そう言うと訓練生たちの中から手際よく十人を選び出す……
長身「はい……っ!」
ホワイト「さて、ミス・マティルダ。鼻血を出している所に申し訳ないが、もしかしたらコショウまみれの倉庫だとか、鼻を押さえながら格闘するような事態が生じるかもしれない……そのままもう一本やってみようか」
マティルダ「あ゛いっ」
ドロシー「へぇ……マティルダのやつ、なかなかできるようになったじゃないか」
おさげの訓練生「どんくさい所は相変わらずだけどね♪」
ドロシー「ま、お前さんだって人の事は言えないぜ……っと!」よそ見をしていたおさげのことを投げ飛ばし、一気にフォールした……
おさげ「……まいった!」
ドロシー「はんっ、この業界に「まいった」があるかよ」そう言うと補助教官のストップがかかるまで締め上げた……
………
ベアトリス「……それで、そのマティルダっていう訓練生はどうなったんですか?」
ドロシー「さぁな。私もアンジェもファームの「卒業」が早かったから知らないんだ……ま、やっこさんの成績じゃあ大した任務に付けてもらえたとは思えないが、それでも本人はそれなりに満足していると思うね」
…そのころ・ロンドン市内…
小柄な少女「……えーと「アルビオン・ロイヤル・タイムズ」をください」
中年の新聞売り「はいよ、お嬢ちゃん……いつものお使いかい?」
少女「そうなの、お父さんが新聞を読むのが好きだから……おじさんは?」
新聞売り「はは、おじさんは売る方なら得意だけど読む方はサッパリさ……今度読み方を教えておくれよ♪」
少女「うん、時間があったら教えてあげる♪」
新聞売り「楽しみにしてるよ……そういえばお嬢ちゃん、名前は?」新聞を抱えて立ち去ろうとする、ちょこまかした少女の後ろ姿に声をかけた……
少女「……マティルダ。マティルダっていうの」
新聞売り「マティルダか、良い名前だ」
マティルダ「ええ。私もお気に入りなの……それじゃあまたね♪」
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