男「そこは重要事項だ!!」天使「い、今、確かめます!」

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155 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/15(日) 01:37:03.30 ID:l2PvtuKs0

 『彼女は不安なんだ、悟ったつもりでも拭いきれない死への恐怖に苛まれている、不安がそうさせているんだ』

 女性「ふふ…やはり、はしたない淫らな女だと、さすがにあなたも軽蔑したでしょう?」

 赤髪「いいえ…あなたが必要としてくれるなら…ぼくはその全てに応えましょう」

 赤髪「それが人間あってこその天使という生き物なのです…遠慮なく、ぼくを求めてください…」

 女性「赤髪…!」

 赤髪「泣かないで…」

 『これで、ひと時でも彼女が病を死を忘れられるのならば』

…どうしよう…礼儀として見ちゃいけないのは当然だけど…自分の意志ではやめられないみたいだし…

ごめんなさい、僕、見てしまいます…

 女性「…こんな痩せ衰えた私の体を見ても、あなたは…」

 赤髪「他ならぬあなたに求められ、あなたに触れられれば、ぼくはそれに応じることができます」

 『つまりは、求められなければ応じられない、それがぼく達の肉体』
 『汚れることを許されない肉体』
 『人間に形だけ似せ、隅々まで創造者の意図が行き渡った…言わばよく出来た人形』

 女性「ああ…富豪様の慰み者として生きていた頃は…んっ…知らなかった…」

 女性「心から愛おしいひとと結ばれるのは、こんなに…こんなにも…ああっ…赤髪、私っ…」

 『まるで死に至る病に侵されているとは思えないほど…この瑞々しさ、情熱、どこに秘めていたのだろう』
 『それともこれさえも、燃え尽きる前の一瞬の輝きなのか』
156 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/15(日) 01:38:03.64 ID:l2PvtuKs0
 赤髪「…ほら、あなたの生命は輝いている…言った通りでしょう…だから、ぼくの伴侶として、これからも…」

 女性「…私、生きているのですね…あなたがそれを、私に教えてくれる…あ、はあぁ…っ」

 『よく出来た人形は、人間との交わりに快楽を覚え、絶頂まで達する』
 『女天使であれば濡れて相手を受け入れ、孕みもしない偽の子宮は精液を吸い上げさえする』

 女性「赤髪、私…もう、これ以上は…あ、あああ!」

 赤髪「いいんです、このまま…ぼくも、もう…あなたに…あなたの中にっ…」

 『男天使であれば、勃起した性器で相手を突き上げ、粘度だけ似せた偽の精液を胎内に注ぎこむ』
 『…いずれの性別であっても、天使の体液と人間の体液が触れ合えば、ただの清浄な水に変わってしまう』
 『まるで、最初から何事もなかったかのように』

 女性「はぁっ、んん…お願い…お願い、です…もう少し、このまま…抱きしめていて…ああ…」

 赤髪「…勿論です…あなたの気の済むまで、ぼくの腕の中に、いてください…」

 『あなたはぼくを感じ、ぼくはあなたを感じ、ひとつになって上り詰めた瞬間は確かにあったのに』
 『ぼくはあなたを汚すことはできない、あなたにぼくは汚されない』
 『虚しくてつまらない生き物なのは…天使であるこのぼくだ…』



天使とは、虚しくて、つまらない生き物…

そう考えたらそうなのかもしれない、だけど…

だけど…

……
157 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/07/15(日) 01:39:35.68 ID:l2PvtuKs0
>>154はなかったことに。おやすみなさい。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/15(日) 04:30:24.42 ID:Fk3Lwsh10
おつです
こんな面白いSSを見逃していたとは…続きも楽しみにしております

…筋肉青年状態とエッチする時はいつか来るのだろうか…
159 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 00:48:07.13 ID:A5YrKQm60

天使「…あ…」パチ

男「天使っ!?」

天使「…男さん…女さんと、友さんも…」

友「天使、姪はもう心配いらないよ…ありがとう」

天使「友さん…僕は…」

友「いい、いいから…それより早く元気になってくれ、な?」ニコ

天使「…ふえっ…」グシュ

女「おでこの冷却シート替えるね?」ペリ

男「どんな気分だ?少しは楽になったか」ナデ

天使「…夢」

男「ん?」

天使「夢を、ずっと…見ていました…」

女「どんな夢なの?」ペタ

天使「…それが…今は内容まで思い出せないのですが…何だか…」

天使「…悲しい、夢だったような…」

男「なら思い出さなくていいんじゃね?そのまま忘れちゃえ」

男「元気になってもまだ気になるなら、よほど暇な時に思い出せばいいだろ?今はやめとけ」ナデナデ

天使「男さん…」

天使(髪を撫でる男さんの手…やっぱり少し恥ずかしいけど…落ち着くなあ…)
160 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 00:50:59.06 ID:A5YrKQm60

天使「そうですね…今は、考えるの…やめます…」コトン

天使「…すー…」

女「眠っちゃった」

男「まだけっこう高熱だからな…天使の体温、どう計ればいいんだろ?」

友「平熱は知ってるのか?」

男「人間とだいたい同じだと思う、俺の皮膚感覚だと」

友「」

友「…そ、そう…だよね…お前は知ってるよね」

男「うーん、体温計どこに差せば…犬や猫なら肛門だが…」

友・女「「やめとけ」」

友「自分と同じでいいだろ、同じ体型なんだし」

女「天使ちゃんおとなしく眠ってるだけだし、脇に挟んであんたが腕を押さえておけばいいでしょが」

男「それもそうか…静かに眠ってるだけだからこそ、少し試してみたくもあった…」

女「てめぇどこが賢者モードだゴラァ」

友「気持ちはわかるがおちつけ女、病人の前」

友「しかし…天使は確かに回復しつつあるようだし、男も…この分なら心労でぶっ倒れそうにもないな」

女「本当だよ!もう金輪際、男くん単独の心配はしてやらん」

友「と言うわけで、一旦俺らは帰ろうと思う…また明日来るよ」

女「え」
161 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 00:52:52.90 ID:A5YrKQm60

友「大丈夫、教頭さんの話、聞いてたろ?今の天使にはさすがの男も変なことできないだろ、な?」

女「ま、まあ…確かに…」

男「本当にお前達には助けられた、ありがとう」

男「あともう少し助けてもらうとは思うけど…今日のところは家で休んでくれ」

友「ああ、また明日な男…ほら、行くぞ女」

女「ちょ、ちょっと待って」バタバタ

女「天使ちゃん、また来るからね…!」

ガチャ…パタン

男「…」

男「女が怒るのも仕方ない」ハァ

男「姪ちゃんのことも、天使の容態も、昨日に比べたらずっと安心要素が増えて」

男「緊張感が少し緩むと同時に『天使が元気になったらエッチしてえ』という気持ちがムクムクと…」

男「確かにどこが賢者モードか」

天使「…すー…すー…」

男「…でもな、どっちも本心なんだよ」

男「お前が元気になるなら何もいらんって気持ちも、またお前とエッチしたい気持ちも」

男「なんなんだろうなあ、これって」

男「お前は俺の、俺はお前の、なんなんだろうなあ…」

……
162 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 00:54:24.85 ID:A5YrKQm60

〜天界…天使学校の教官の宿舎〜

茶髪「金ちゃん、気分は?」

金髪「あー、だいぶ良くなったわ…あんたこそどう?」

茶髪「私もよ、明日には地上に降りられると思う」

金髪「…で…黒ちゃんは…」

黒髪「…」グッタリ

茶髪「吸引した呪いを抜く処置の最中に倒れちゃってね、それから眠りっぱなし」

金髪「やっぱり、ひ弱なくせに大量に吸い取るから…この部屋に寝かせておくだけでいいの?」

茶髪「処置は済んだから、私達より1〜2日遅れで回復するって」

金髪「それならいいけど…男さんの所には教頭先生が行ってくれたみたいだね」

茶髪「ええ、警備が強化された件も含め、こちらの状況も伝えてくれるはず」

金髪「全く…『黒ちゃんの時』に上が今くらい動いてくれたら、こんな事態にもならなかったのに!」

茶髪「仕方ないわ、あの時もあの悪魔はすぐに姿を消してしまったんだもの」

金髪「あれから30年だよ、その年月かけて探索を続けていたら、とっくに見つかっていたよ…」

黒髪「…」昏々

黒髪(…ピアニストさん…)

……
163 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 00:56:44.96 ID:A5YrKQm60

〜黒髪天使の夢…〜

黒髪「お茶入りました…ピアニストさん」カチャ

ピアニスト「ああ、ありがと…ごめんね、新聞記事に没頭してて気づかなかったわ」ガサ

黒髪「気になる記事、ありました?」

ピアニスト「えへへ…もう未練なんかないはずなのにね」バサ

『資産家令嬢、音楽学校の元同級生と結婚…将来は資産家の後継者に?』

黒髪「この方は…?」

ピアニスト「私と令嬢と、結婚相手の男性…3人とも同じ音楽学校の同期でね」

ピアニスト「で…私と、この彼は当時の恋人同士で…卒業と同時に婚約もした仲なの」

黒髪「え」

ピアニスト「私と彼は音楽を仕事にしたくて音楽学校に進んだけど、彼女は…お嬢様のたしなみ…だったのかな」

ピアニスト「それは別に構わないけど、彼女は少女の頃に親が決めた婚約者に不満があったらしく」

ピアニスト「…その上、私の彼を気に入っちゃったみたい」

ピアニスト「ま、色々あって、結果的に略奪…略奪婚されちゃいました…こんなところ」

黒髪「略奪…つまり」

黒髪「大勢の手下を引き連れて襲い掛かり、ピアニストさんを武力で脅して、彼さんを拉致して奪い取った…?」

ピアニスト「いやいやいや…略奪というのは例えで…うーん、なんと言ったらいいやら…」

黒髪「え、ち、違うのですか…?」
164 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 00:58:39.24 ID:A5YrKQm60

ピアニスト「…」クス

ピアニスト「あっはは…なんかね、もう本当に、本当にどうでもいいわ…」

ピアニスト「私にはあなたがいる、当初の予定とは少し違ったけど、ピアノを弾いて生活できている」

ピアニスト「それから、もうひとつ」

黒髪「?」

ピアニスト「私の曲をあなたが歌った、あの録音テープ…送り付けた先のレコード会社の社長さんが乗り気でね」

ピアニスト「すごく小さい会社で、枚数も少ないけど、レコードにして売り出してくれるって…」

ピアニスト「今日、その手紙が来たのよ」

黒髪「ほ…本当ですか!?」

ピアニスト「ええ、これもあなたのおかげ…感謝のハグしちゃうぞ」ギュ

黒髪「いいえ、ピアニストさんがいっぱい頑張ったからです…!」ギュ

ピアニスト「…やっぱり黒はいい匂いがする…微かだけど、お爺ちゃんの田舎のオレンジ畑の、花の香りそっくり…」

ピアニスト「私、最初に出会った日は鼻風邪ひいてて気付かなかったけど…これがあなたの香りなのね…」

黒髪「…天使は自分ではこの匂いがわからないんです…ピアニストさんが知ってくれて、嬉しい」

ピアニスト「ふふ、あなたは本当に私の幸運の天使…これからも一緒にいてね」

黒髪「はい、ピアニストさんの望む限り…!」

……
165 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 01:00:27.65 ID:A5YrKQm60

黒髪「…」パチ

茶髪「黒ちゃん!」

金髪「あ、あたしの声、うるさかった?」

黒髪「…」モゾ

茶髪「まだ起き上がっちゃ駄目」

金髪「…ん?夢を見ていたって?…あのひとの…ピアニストさんの夢?」

茶髪「…呪いを受けた影響か、それとも、当時の記憶を思い起こされたせいかもね…」

茶髪「あなたの美しい声を壊した、あの時と同じ悪魔に…!」

金髪「っちょ、そんな怖い顔しなくてもいいじゃん茶ちゃん」

金髪「とても懐かしい、幸せな、いい夢だったって…」

黒髪「…」

茶髪「…やっぱりあの子が心配?」

茶髪「大丈夫、教頭先生が様子を見に行ってくださってるの、あと私か金ちゃん、どちらかが明日会いに行くわ」

金髪「黒ちゃんがあれだけ呪い吸引してくれたもの、きっとすぐ元気になるよ」

金髪「…あと、あの時は渋ってごめんね?」

黒髪「……」

茶髪「金ちゃんが駄々こねるのは子供の頃からだし、文句言いながらやることはやるから、気にしてない、って」

金髪「意外とハッキリ言う時は言うのよね、黒ちゃんて…」

……
166 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/07/16(月) 01:01:31.34 ID:A5YrKQm60
読んでくれる皆さんありがとうございます
「現在の」黒髪天使の声はめっちゃ小さくて人間には聞き取れません
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 01:06:33.24 ID:/ZRvpMRx0
おつです!
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 12:25:41.11 ID:FtR9sosJ0
おつ
169 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 18:23:24.39 ID:O1sRzDlJ0

…赤髪の天使だ

あれから外の風景はますます寒々として、女の人は日々衰弱しつつある

彼女を診たお医者達は、首を横に振るばかり…

赤髪天使の記憶によると、正体を明かした時から一緒に屋根裏部屋に住んでいるらしい

赤髪の働いたお金で住処を移ることも検討したけれど、実現しなかった

貧民街以外の、もっと小奇麗な借家の家主達は皆、重い肺病患者の入居を拒んだそうだ…

 『彼女は病気の悪化にも関わらず、ほぼ数日おきにぼくを求めた』
 『苦痛と迫る死を忘れるため…いや、むしろ、自分がまだ生きていることを実感したいがため』
 『ぼくに、自分が生きている証を刻み付けたいがため』
 『…ぼくも彼女の余命を縮めるとわかっていながら…彼女を拒みはしなかった』

 女性「はあっ…その腕で、もっときつく抱き締めて…そして、もっと…もっと私の深くへ来て…ああん…」

 赤髪「…んうっ…、ほら…これ以上はないほど、深く繋がっていますよ…わかりますね?」

 女性「あああ…嬉しい…私の奥深く、あなただけが届いてる、触れているの…!」

僕たち下級天使には、いくら年齢や経験を重ねても、人間の病気を治すまではできない

もちろん、寿命を延ばすなんてあり得ない

生まれつき『癒し』の素質に秀でた者は、修行から数年で他者を癒す能力を習得もできるけれど

せいぜい一時的に肉体の苦痛を和らげ、眠りが必要ならば一晩よく眠れるようにする程度

 『自分の能力を磨いて駆使することも、人間界に存在するあらゆる方法を試すことも許されているけれど』
 『それを 超えようとすること は許されない』

…僕たちにできることは限られている、もどかしいよね、赤髪…こんなにも、きみは彼女を助けたいのに…
170 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 18:30:06.13 ID:O1sRzDlJ0

…また数日が経った…

昼間だけど、彼女はぐっすり眠っている…お医者に眠り薬を処方してもらったのか

赤髪、どこかに出かけるの?あれ、それは…

 赤髪「相手が相手だ…一応、持って行くか」

天界の剣…そう言えば学校で教わった

僕らが受ける、地上での試練から修行に入る制度、開始した初期のうちは天使学校も試行錯誤で

護身用に、というより護符のような意味合いで、地上に降りる天使達に天界の剣を持たせていたとか

でも、ある事件が起きて、剣を持たせるのをやめた代わりに監視を強化した…これは授業ではなく上級生から聞いた

剣を自分以外には見えないようにして、背中に背負い…そんなもの持って、どこへ行くんだろう…

…彼女を部屋に残して…



町はずれの森…人の気配はない…降り立った赤髪は、誰かを待っているようだ

誰かが歩いて来る…でも…あれは、人間じゃない…

…!!

あれは…あいつだ…廃工場で出会った悪魔だ…!!

駄目だよ赤髪、そいつに近付いちゃ駄目…逃げて、修行に入って2〜3年のきみでは剣があっても敵わない!!

…そうか、この夢は…僕の血流に乗った『呪い』が見せているんだ

呪いは悪魔が自分の血から作ると聞いた、血に残る記憶…きっと悪魔が赤髪に目を付け、密かに見張ってた記憶…

……
171 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 18:34:04.71 ID:O1sRzDlJ0

〜翌日、男のアパート〜

男「友と女は午後から来てくれると連絡があった」

男「姪ちゃんは昨日のうちにどこも異常なしで退院できたらしい、本当に良かった」

男「あれからまた天使は目を覚まさない、姿も省エネモードの子供天使のまま」

男「熱は初日よりは下がってるんだろうけど、38度台後半をキープしたまま」

男「もちろん脇で計ったからな?」

男「…すべすべでプニプニ柔らかい脇だった…気持ち良さそうな…」

男「…天使が半泣きで訴える、『…くすぐったい、くすぐったいよぉ、男さん…!』」

男「俺は、『へっへっへ、これが脇コキだ、ほれほれぇ!』って…」

男「……」

男「…俺って、いよいよもって最低だ…」ガックリ

金髪「はろー、男さん♪」フリフリ

男「」

金髪「んー、なんとか回復に向かってるみたいね…眠りが深いのは気になるけど、ま、寝る子は育つ」ボヨン

男「ちょちょちょ、ケバい先生、天使の枕元にしれっと陣取ってんじゃねえ、瞬間移動か!?」

金髪「しー、声でかい…恩師が生徒を見舞って何が悪いのさ」
172 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 18:42:48.40 ID:O1sRzDlJ0

金髪「それにケバいとか失礼な…あたしのこの正に黄金色に輝く髪、天界でも屈指の美しさよ?」ファサ…

男「同じ金髪でもうちの天使とはえらい違いだな、あんたのはキンキラキン…」

金髪「地上の光だと派手さが目立っちゃうかもねー」ボヨン

金髪「でね、この子の鶏のヒヨコみたいな色は生まれたての天使に多いんだけどね」

金髪「地上に降りる歳でも、大人天使になっても濃い色にならず保っているのはけっこうレアなのよね」ボヨン

男「…」

金髪「何、胸が気になる〜?」ボヨヨン

男「お、一昨日会った時は、そんなんじゃなかったと思うけど…」

金髪「あの時は念のため、3人とも服の下に鎧つけてたの…地上であれは重かったわあ」ボヨン

男「うちの天使も結構ボリュームあるけど、あんたまで行くと、ちょっと…下品…」

金髪「あっはっは、男さんマジ失礼〜単に好みの問題だってば」

男「…今日はあんた1人なのか?黒髪のおねーさんとか…」

金髪「…」

金髪「何よ、男さんやっぱりあーゆー清楚なタイプがいいの〜?」ボンヨヨヨン

男「そ、そりゃ好みで言ったら…じゃなくて、あんたホントに何しに来たんだ!?」
173 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 18:48:33.30 ID:O1sRzDlJ0

銀髪の女性?「黒髪天使はまだ寝込んでいる、茶髪天使は看病で残った」シュバッ

男「」

金髪「げ」

銀髪の女天使「初めまして、男さんとやら…私は天使学校の校長、この度はあれこれ面倒かけている」

男「また瞬間移動か…昨日のおっちゃんの更に上司か」

男(このひと女…だよな?でもガチムチ天使と同じくらい身長あるし、服装も今まで会った天使達と違う、それに…)

男(…頭の上に、光る輪っかがある…そう言えば、うちの天使や他の先生達、輪っかあったっけ…?)

校長「上級天使を見るのは初めてだろう…頭の輪が気になるか?下級天使達にもあるんだぞ?」

校長「通常、地上光の下では波長が人間の可視域の外にあるだけだ」

男「そ、そうなの?でもこの通り、頭の上には何もないんだけど」スカスカ

校長「当然だ、『光』そのもの、物質ではないからな」

金髪「…なぜ…校長先生が…」

校長「今回はお前たちのような若い教官の単独行動は危険だが、あの2人は来られない」

校長「何より、素行に何かと問題のあるお前だ、ここらで私が直々に指導しなおしてやらんとな!!」

金髪「うへえぇぇ…」

男「あんた教師らしくないと思ってたらやっぱり問題教師なのか」
174 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 19:53:20.85 ID:O1sRzDlJ0

校長「私はあの話を男さんにする、お前はこの子を看てろ」

金髪「言われなくったって…」ブツブツ

校長「そういう態度がいかんのだ!」

金髪「はいいいい!!」ビビッ

男(おっかねー…)

校長「さてと…教頭から色々聞いていると思うので、今日は進捗状況をお伝えしよう」

校長「例の悪魔の行方だが…なかなか見つからない理由が少し、わかったよ」

男「ほ、本当に!?あいつが捕まらないと心から安心できないんだ…早く見つけてくれ」

校長「そう急くな」

校長「地上で活動する下級悪魔は天使の修行のように期間が限定されているでもなく、魔界の監視も基本的に放任だが」

校長「奴は100年ほど前、魔界の宝物庫から魔術書を大量に盗み出し地上へ逃げた」

男「魔術書」

校長「書と言っても見た目は巻き物だな」

校長「1つにつき1回しか使えないが、魔族であれば自身の本来の能力を超えた魔法でも、読み上げるだけで使用できる」

男「…やばくないっすか?」
175 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 19:56:08.64 ID:O1sRzDlJ0

校長「ずさんな管理下に置いていたくらいだから、殺傷能力や物理的破壊力は殆ど無いものばかりだと言う」

校長「ただ厄介なのは…どの魔法も下級天使の力では全く無効化することができないらしくてな」

校長「正直、我々上級天使でも自分の不得意分野であれば困難だ」

校長「おそらく…隠蔽や逃走の効果がある巻き物を使うことで、天使の捜索から逃れて来たのだろう」

男「要するに、歯が立たないという残念なお知らせなんですね?」

校長「結論を急ぐな…重要なのは、この情報を魔界からもらえた点なのだ」

校長「魔界は奴を100年放置していたが、度重なる過去の事件と今回の件でようやっと腰を上げてくれ…」

校長「捕獲しだい魔界への強制送還と、今後50年間は地上世界に出さない謹慎処分を約束してくれた」

男「…そいつの寿命は?」

校長「比較的若い悪魔らしい、下級天使程度の寿命だが、少なくとも残り200年はあるとか」

男「処罰甘いよ、どんな人道国家だよ魔界…」

校長「もちろん謹慎中は厳格な更生プログラムに従わせるとのことだ」

男「なんだかなあ…」
176 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 20:29:02.85 ID:O1sRzDlJ0

金髪「ヒヨコちゃん…へへ、あんたをこのあだ名で呼ぶのも久しぶり」

天使「…」

金髪「って聞こえないか…これだけ熱があるなら、傷の痛みもまだあるよね…」

金髪「よーし、あたしの得意な、痛みを緩和する癒しを与えちゃおう」

金髪「ベッドに腰かけて、ヒヨコちゃんを抱えて…」ヨイショ

金髪「あたしの癒し、おっぱい枕〜♪」ボヨヨン

天使「…」ポッフン

金髪「茶ちゃんの手かざし、黒ちゃんのソフトハグに比べたら、ちょっと周囲の状況を見極めないとできないけど」

金髪「…あんたがちっちゃい時、ひときわ泣き虫だったあんたを3人で代わる代わる抱っこしてあやしたっけ」

金髪「寝顔は変わらないわー、ほんとあんたは同学年のどの子より幼くて…」

天使「…すやすや…」

金髪「それが今では…試練がきっかけとは言え、男さんの求めに応じ夜の生活を…」

金髪「こんな小さい体と幼い顔でねえ…それにあの女性体」

金髪「この子が女性に固定化したら確かにあんなんだったろうけど、あれがきっと男さんの好みピッタリなのよ」

金髪「理想が服着て現れて裸になった日には、そりゃあ『人間』だもの、発情せずにはいられないわあ」

天使「…ん…むにゃ…」
177 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 22:17:56.03 ID:O1sRzDlJ0

…赤髪天使と悪魔が話をしている…?

 赤髪「…本当に、彼女を助ける方法を知っているんだろうな」

 悪魔「ああ、俺が持っている魔術書の中に、使えそうな物があるんだよ」

 悪魔「…しかし…いいのかい、悪魔と取引をしたと知られたら、ただで済まねえんじゃないのかい、坊や?」

 赤髪「…天界の監視は定時に行われるだけなんだ、その合い間に手早く済ませたい」

当時は今のような、ほぼ常時監視ではなかったんだっけ…

 赤髪「外国で新しく作られた良い薬を手に入れたと…彼女にも周囲にもそう説明する」

 赤髪「とにかく…とにかく彼女を救いたいんだ」

無理だよ…この現場を見られなくても、天界をごまかし通すなんて…そんなこともわからない?

 悪魔「で、見返りは…約束を忘れるなよ?」

 赤髪「ぼくの寿命を300年だったな…でも前に言った通り、彼女の病気が治ったのを見届けてからだ」

 悪魔「わかってるって、寿命の移動も巻き物を使えば一瞬だ…へへ…気前のいい坊やだねえ」

 赤髪「…肺病が治っても、人間の寿命を考えたら…ぼくの寿命も100歳まであれば充分さ」

そもそも…この悪魔の話は本当なの?信用できるの?嘘だよ、こいつはきっときみを…

何もかも、少し考えればわかることじゃないか!



…赤髪…もうそんな判断もできなくなっているの、彼女のために、形振り構っていられなくなったの…?

 悪魔「あったあった、この巻き物だ…」ガサ
178 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 22:26:13.25 ID:O1sRzDlJ0

目を覚まして、赤髪…話に乗っては駄目だ…

 悪魔「天使の体液を万能の治療薬にする魔法…お前さんにはピッタリじゃねえか?」

 赤髪「ど、どういう効果なんだ?」

 悪魔「元々、多かれ少なかれ癒しの力を持つ天使の体液を薬にするのさ、そんなに無理な話じゃねえだろ」

 悪魔「坊やの体液であれば、なんでもいい…あのお嬢さんの体に、どんな方法でもいいからぶち込んでやりな」

 悪魔「…お手軽な方法だと…そうだな、精液を腹の奥深くに流し込んでやっても効くんだぜぇ?」

 赤髪「…!」

 悪魔「『恋人同士』なら一番自然だよな…新薬とやらは膨らし粉でも飲ませとけ、どうだ?」

この顔…ぼくを女にして『味見』したいと言った顔と同じ…天使を、おもちゃにしている時の顔だ…

 赤髪「わ、わかった…頼む、やってくれ」

駄目だ、赤髪、駄目だ…!!

 『もし嘘であれば…天界の剣で斬り捨ててやる…!!』

 悪魔「よし、契約成立…後戻りはできねえ」

悪魔が呪文を読み上げ始めた…ああ、嘘に決まっているのに…

…なんだ、景色が歪んで…?

 赤髪「き、貴様、これは…何をした!?」

 悪魔「ケケケケ…おもしれえ、天使のガキってのは本当にからかい甲斐ある生き物だぜ!!」

 悪魔「最初から、万能薬を作る巻き物も寿命を吸い取る巻き物も持ってねえよ!」

 赤髪「だ、騙したな!?殺してやる!!」シャッ
179 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 22:30:08.48 ID:O1sRzDlJ0

剣を抜いた…!

 悪魔「バーカ、そんなこた想定してらあ…この魔術書はな…!」

 悪魔「てめえを一週間後に飛ばす呪文なんだよ!あばよ!!」

赤髪…!!





 赤髪「…あ…ここは、さっきと同じ、森の中…?」

サク…

 赤髪「…ゆ…雪…?辺りは雪が積もって…周囲の木々も完全に葉が落ちて…」

 赤髪「あいつは、いない…一週間…後…?」

 赤髪「…!!」ハッ

 赤髪「戻らなくちゃ…帰らなきゃ…!!」バサッ

…こんなこと、あの悪魔にとっては単なるいたずらに過ぎないんだろう…

でも…あんなに弱っていた彼女は…あんなに赤髪だけを支えにしていた彼女は…?

 赤髪「町の中も雪が降り積もって…本当に日にちが経ってしまったんだ…」

 中年女「…赤髪さん!!どこに行ってたんだい!?」

 『アパートの住人で唯一、彼女とぼくを心配して声を掛けてくれる人だ…』

 中年女「こんな何日も…あんたの、あんたの奥さんは…!!」
 
180 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 23:21:32.98 ID:O1sRzDlJ0

そうだよ、女の人はどうなった?

 赤髪「…!!」ザッ

 中年女「奥さんはもうあの部屋に…このアパートにいないよ…」

 赤髪「ど、どうして、どこへ行ったんです!?」

 中年女「6日前…あんたが帰って来ないと、アパートの住人達に聞いて回って…」

 中年女「その足で警察に行き、事故に遭った赤い髪の青年はいないかと…あの体で…」

 中年女「部屋に戻って、それからずっとあんたか警察からの連絡を待ちながら、泣いて過ごして」

 中年女「それでも居ても立ってもいられなかったんだろう、4日前の夜…あたしが目を離した隙に」

 中年女「…あんたを探しに外に出て行っちまった…」
 
 赤髪「そ、それで…彼女は今、どこに…」

 中年女「…あの晩、初雪が降っただろう?翌朝、そこの路地で…半分、雪に埋もれて…3日前だよ…」

…あ…ああ…

 『嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ…』

 赤髪「ああああああああうわああああああああああああああわあああああああああああああああああ」

なんて…なんてこと…

今の赤髪には…アパートの住人の声も届かない…周囲の音は聞こえない、周囲の風景は見えない…



誰かが、来る…天使、だ…

……
181 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/16(月) 23:23:22.29 ID:O1sRzDlJ0

男「解決までの時間は早まったと…信用していいんですね?」

校長「うむ、ただ心配事は…派遣してもらった魔界の追手は、少しばかり手緩い奴らで…」

男「…追われている奴が一番凶悪なんじゃないの?」

校長「おお、鋭いな…奴は魔界でも異常人格との噂があってな」

校長「基本的に天使への悪質ないたずらを好む変質者であり、時として今回のような残酷な暴力も振るう」

校長「まるで天使を憎んでいるかのような…」

校長「魔界でも奴の逸話は、ちょっとしたサスペンスとして、脚色されてエンターテインメントにもなっている」

男「なんなの魔界なんなの!?」

校長「最近の魔界世論調査では、天界とは本気で和平条約を結ぶべきとの層が、初めて過半数に達したとか」

男「もういいよ…神様も随分いい加減だと思ってたが、この分じゃ魔界の長とやらもかなり適当な奴らしいな…」

校長「神と魔界の長に関わる直接的な話は、人間には詳しく話せないのだ、すまない」

男「なんでもいいけどしっかり頼むよ…俺たちゃお祈りくらいしか出来ないんだから」

校長「信じてくれるだけでもありがたい、全力を尽くす」

金髪「…男さ〜ん…」

男「どうした?天使に何かあったか!?」

金髪「あたしね、あの子を…幼年期に天使学校でやってたみたいに、胸に抱いて語りかけていただけなのに…」

女天使「…すー…すー…」

男「…は?」
182 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/07/16(月) 23:24:11.03 ID:O1sRzDlJ0
今宵はここまでです
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/17(火) 07:41:28.38 ID:ToIVGZ+R0
おつ
赤髪はどうなるかな
184 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:34:48.48 ID:3TOq2raE0

校長「…何をした?」

金髪「だから…胸に抱いて語りかけていただけ…ちっちゃい頃の話とか…」

金髪「立派なイケメン天使になって、頑張ったねとか…あと……」

校長「『あと』?」

金髪「…お…男さんとの夜の生活も頑張ってるね…とか…」

男「おい」

校長「天使の『癒し』は多少の催眠効果を持つが、お前は特にその力が強い、わかっていただろう?」

校長「まして…まだ精神も発達段階の成長途上の子、しかも意識はなく暗示にかかりやすい」

校長「その状態でのお前の卑猥な妄想は、この子に対して性的な行為と同じ影響を与えたのだぞ!」

校長「いわば精神的ワイセツ行為だ、天使学校の教師としてあるまじきにも程がある!!」

金髪「ごめんなさいいいいいいいいい」

男「え…」

校長「…男さん、試練を終えて間もない天使が幼年体に戻ったり、性別が逆転する現象は決して珍しくないが」

校長「その原因はさまざま、個人差がある…この子の場合、監視記録の分析から考えられるのは」

校長「幼年体になる理由は『安心できる状況があっての』精神の動揺によるもの」

校長「更に、幼年体になってから性的な刺激を与えられることで、女性体に変化する…と思われる」

男「せいてきなしげき」

校長「心当たりはおありだろう?」
185 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:36:31.38 ID:3TOq2raE0

男「…大あり…というかその…自分でもなんとなくそうかなとは思っていました…が…」

男「天使学校って、教師達って、そんなところまでデータ分析しなきゃならないの…」

校長「稀に人間とのトラブルの原因にもなるからな、対策を講じるためにも必要なのだ」

校長「あなたとこの子は幸い円満なようだが」

男「…もういいっす、天界は何もかもお見通し、今更取り繕う気も起りません…」

校長「気に病むな、教頭も言ってたと思うが、形はどうあれあなたがこの子を愛してくれるのは我々にも喜ばしい」

男「愛して」

校長「ところで…男さん、この家にバケツはあるかな?」

男「は?…バケツ…これでいいですか?」

校長「小さいな、もっと…10リットルくらいの容量のものが2つあれば良いが」

男「ないっすよ、一人暮らしの狭いアパートの掃除ならこんなんで充分です」

校長「…金髪天使に水を入れたバケツを両手に持たせ、しばらく立たせておこうと思ったのだが…反省を促すため」

金髪「おしおきですかあ!?」

男「昭和の小学生…ってか、の○太くんか!?」

校長「…では、石板はあるか?畳半畳を平行に三等分した大きさと厚みで、3〜4枚…あと、そうだな、角材数本」

校長「金髪天使を角材の上に正座させ、腿の上に石を積んで行くのだ」

金髪「」

男「どっちもねーよ、江戸時代の拷問かよ!!」
186 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:38:13.82 ID:3TOq2raE0

金髪「…ううう、ただの正座のみとは言え、あたしこんな姿勢慣れてない…ううう」

校長「それだけで済ませてやっているのだ、男さんに感謝しろよ」

男「…子供の姿が省エネモードなら、多少ボリュームのあるこの姿は、怪我に悪影響ないんすか?」

校長「まあ、成人女性化したということは、それだけ肉体も回復してきたという意味だ」

校長「しかし傷が完治して体力も戻るまでは、あの青年形態には戻らんだろう」

女天使「…すや…すや…」

校長「熱や痛みはあっても寝顔は穏やかだろう?容態が悪化した様子もない」

男「…」

男「…さっき『安心できる状況があっての』精神の動揺とか言いましたよね、子供に戻る原因は」

校長「ああ、必ず近くに男さんがいる時でなければ、この子は決して変化しないようだ」

校長「男さんから離れて、何が起こるかわからない人間社会での就労中、そして」

校長「精神的にも大きなダメージを受けた悪魔の襲撃時に、変化しなかったのが何よりの証拠だ」

校長「前者の場合は程よい、後者の場合は異常なまでの、共に緊張状態にあった」

校長「逆に、気の緩みと言ってしまえばそれまでだが、男さんと二人きりでいる時は安心しきっているのだろう」

男「俺と二人きりの時は、安心…」

天使「すー…すー…」

……
187 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:40:39.85 ID:3TOq2raE0

赤髪に近付いて来る天使は2人…あ…天使学校の校長先生と、教頭先生だ

校長先生の顔は全く変わらないけど…教頭先生はちょっと若いなあ…100年前なら250歳くらいか

教頭先生の服装は今と少し違って一般教官の恰好をしている、当時はまだ「教頭先生」じゃなかったんだ

校長先生は…あれ…いかつい防具を身に付けて、腰には剣まで…すごい威圧感

確かこの装備は…

 教官(のちの教頭)「…赤髪天使よ」

 赤髪「…?」

 『あれ…外に…アパートの前にいたはず…いつの間にか屋根裏部屋に…彼らの力で瞬間移動したのか』

 赤髪「…先生、それと…あなたは…その装備…そのマントの色、天界治安部隊長…」

 隊長(のちの校長)「その通りだ、初めまして…赤髪天使」

 赤髪「あなた達が来たということは、やはりバレているんですね…」

 赤髪「修行中に失格とみなされた場合は天界へ強制送還、二度と地上に降りて人間と接することは許されない」

 赤髪「さらに、故意に重罪を犯した場合は記憶を消し、別人の天使として魂を再生」

 赤髪「…魂まで完全に『汚れ』天使の資格なしとされれば、魂ごと消滅させられる」

 赤髪「ぼくは結果はともかく悪魔と契約を結んだ、魂の再生か、消滅か」
 
188 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:44:49.29 ID:3TOq2raE0

そんな…赤髪は騙されたのに、彼女を助けたい一心、それだけ…

 教官「…君は確かに悪魔と契約を結んだが、その動機と君の年齢を考慮し、処分は強制送還に決まった」

 隊長「再生が妥当とされたところを、この教官が上に懇願してくれた結果だ、感謝するが良い」

 赤髪「強制送還…」

ああやっぱり、教頭先生は昔から優しい先生なんだ…

 『天界に戻り、地上に降りることはなくても、下級天使の仕事は人間と人間の生きる地上を見守ること』
 『彼女の魂が誰かに生まれ変わったとしても、それは既に別人』
 『23年間の生涯で、何かを成して世に名を遺したわけでもない』
 『彼女には血を分けた子孫ばかりか実の親兄弟さえいない』
 『幼い彼女を慈しみ育てた孤児院でも、彼女は院を巣立った大勢いる孤児のひとりに過ぎない』
 『既に彼女の存在を最初からなかったかのように振る舞う養父母とあの富豪は言うに及ばず』
 『高級娼婦という職業の彼女を、世の多くの人々は存在を視界に入れようともしない』
 『これから400歳になるまで、ぼくは彼女を忘れていくだけの地上を見守るのか…』

 教官「…住む人がいなくなれば、この部屋をいずれ人間は片付けてしまうだろう」

 教官「身寄りのない女性だったのだろう?取っておきたい遺品があれば、君が所有して構わないと思う」

 隊長「ああ、その程度の時間は待ってやろう」

 隊長「多くは持てないぞ、厳選しろよ?」

 隊長「遺品か…人間の風習の中でも、特に奇妙なもののひとつだ」

 『奇妙…そうだよな、人が死んでしまった後、遺された、ただのモノなんかになんの意味があるのか』
 『…と、天使なら思うだろう』
 『無生物も不変ではない、人間にとって耐久性ある物質でも下級天使の寿命の間に風化してしまう物もある』
 『ましてや、長い時を生き、これからも長い時を生きる上級天使にとっては…』
189 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:47:49.52 ID:3TOq2raE0

確かに、ちょっと校長先生…いや当時は隊長さんのこの言葉は、冷たい印象はあるけれど…

 隊長「君を陥れた悪魔については、他の地上にいる天使達にも注意喚起する」

 隊長「より悪質な行為を増長させれば、更に強硬手段も検討するが…」

 赤髪「…」

 『今回のあいつの行為は、それほど悪質でもないわけか、天界にとっては』
 『結果として人間一人を苦しませ悲しませたあげく死期を早めた、それは取るに足らないと言うのか』

 隊長「結果は残念だったが、こうなった以上、君も天界に戻り易くなったのではないか?」

 隊長「地上に心残りはもうないのだからな」

 赤髪「…!!」

 『彼女の早すぎる死を、あまりに儚い一生を、侮辱された』
 『ぼくは少なくともその時、そうとしか思えなかった、思い込んでいた』

 赤髪「あんたには…あんた達には、取るに足らないガラクタなんだろ?寿命数十年の生涯も、400年の生涯も」

 隊長「ん?何を言って」

 教官「!!」

 シャッ

駄目だ、赤髪!!

……
190 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:50:25.93 ID:3TOq2raE0

男「…こいつは、こんな俺を信頼して、自分の全てを預けてくれているのか…」

校長「あなたは、心も開いてくれない相手でも、体を開かせるのは一向にかまわない人間なのか?」

男「う、え!?かかかかっ、カラダを開かせ、って!?」

校長「この子に対し、愛も情もなく、ただ肉欲を満たしたいだけならば、こちらもちょっと考えなければならん」

校長「…しかしその心配は無用だ、それは誰よりこの子自身がわかっている…男さんよりもな」

男「……俺もあけすけに言わせてもらいますけど、いいんですか、この天使と俺は、今後もセックスし続けても」

校長「性行為そのものを理由には、決して修行失格にはならんよ」

男「…俺の寿命が尽きるまでこいつが一緒にいたとして、天使にはその後300年以上の人生…天使生がある」

男「俺との暮らしなんてこいつの一生には短い間だし…あんたに至っては一瞬のようなものだろ?」

男「それに天使の自浄作用」

男「俺がこいつの体を精液まみれにしてやっても、少し経てば勝手にこいつの体はキレイになっちまう」

男「俺との行為なんて短期間セクハラに遭ったようなものだから、こいつの経歴に傷はつかない」

男「取るに足らないからマイナス査定にならないんでしょ、俺の影響なんか」

校長「なんだ、あなたはこの子は失格だと言って欲しいのか?我々にこの子を罰してほしいのか?」

男「そ、そうじゃないです、そうじゃないけど…」

校長「わからんな…うむ、本当に人間とはややこしい生き物だ、次にややこしいのは下級天使だが」

男「ややこしいって…神様が作ったんでしょ、地上の生物」

校長「ああ人間社会に伝わる創世神話か、それはちょっと違うぞ?」
191 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:52:57.86 ID:3TOq2raE0

男「へ」

校長「私に言わせれば、どの宗教の創世神話も、現時点での科学の学説も」

校長「どこかしら正しい部分もあるが、全てが事実と一致する話はないのだ」

金髪「…校長…人間にはその話、もっとぼかして話さないとならないのでは…」オロオロ

校長「ん?私だって相手を選んで話をしているのだぞ」

校長「この星に限って言えば、何もなかった星を、まず神は水が溜まりやすくした」

男「この星に限ってってなんなんだよ」

校長「宇宙全体…いや太陽系にまで話を広げると、さすがに男さん相手にも『語れない』のでな」

校長「で…いい感じに水が溜まったところで、頃合いを見て神は生命の素を創って水に放り込み」

校長「『どんなふうに育つか予想もつかない』生命が生きやすいよう少しだけ周囲を整えてやった」

校長「やがてあらゆる生き物達が名もなき生命から生まれ、育ち、広がり、滅び、栄え」

校長「ついにあなた達、現生人類が生まれた」

校長「いずれ知的生物が生まれるのは神と大天使達も以前から予測はしていたし」

校長「いわゆる化石人類達が猿と袂を分かった時点で作られた、新参者の我々上級天使も」

校長「ついにここまできたかと感慨深かった」

男(…いくつなんだよこのひと)

校長「で、現生人類だが…年月が経つにつれ、実に扱い辛く、神も思いもよらぬ行動を取る生き物になって行った」

校長「興味深いが…さすがに神も、従来のように好きなように育てとは言えない状況が現れた」
192 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 17:54:48.93 ID:3TOq2raE0

男「好きなように育てと言えないって…どんな状況」

校長「うーん、そこはっきり言うと人間社会が恐慌状態になりかねんのだ」

男「あんたが話し始めたんだろ」

校長「ここは、真のオーバーテクノロジーの痕跡はまだ人類に発見されていないだけ、とでも言っておくか」

男「」

校長「とにかく、それからようやく人間に似せた下級天使が創られた、というわけさ」

男「…じゃあなんであんたまで現生人類そっくりなんだよ、人間は神の似姿ってやつじゃないの?」

校長「私の…上級天使の今の姿は仮の姿だ、下級天使に見た目を合わせてある」

男「は」

校長「神と大天使は滅多に人前に現れないので、元々の姿で普段から過ごしておられる」

校長「あ、元の姿はちょっと勘弁してくれよ、何万年もこの姿でいるから今更戻るのもおっくうでな」

男「…いや…いいです、想像したくもないです…」

校長「…さっきのあなたの言葉な、人間も下級天使も短い一生だから、我々から見れば取るに足らないと…」

校長「少し前…人間には昔か、状況は違うが、ほぼ同じことを言われたよ」

校長「まだ若い、あなたよりも少し若い、修行中の下級天使にな」

男「…?」

校長「私の、あまりに不用意で、思い遣りのない言葉が原因だった…」

……
193 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 19:57:56.85 ID:3TOq2raE0

剣を向けては駄目だ、赤髪!!

 隊長「ちっ、油断した…!」

 ザシュッ

 隊長「…!?」

 赤髪「先生!!」

教頭先生!?

 教官「…」ドサ…

 隊長「な、なぜ私を庇った、鎧も着ていない君が!!」

 教官「…駄目…です…下級天使が…上級天使を、傷付けては…」ゴフ

 赤髪「…あんたもか、先生」

 赤髪「あんたも、天界の上下関係が、天界の規律が、何より大切なのか」

何を言ってるんだ、赤髪!?

 隊長「出血がひどい…くそ、やはり二人だけで来たのは間違いだったか…私には、治癒の術は使えん…」

上級天使様達は僕らより遥かに人数が少なく、持って生まれた能力から完全な分業制だと聞いた…

 隊長「そうだ、赤髪天使!止血くらいはできるだろう、教官の応急処置をしてくれ」

 隊長「そしたら君の罪状が軽くなるよう私からも取り成してやる…どうだ?」

 隊長「…死なせるわけにはいかんのだ…」ボソ
194 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 19:59:56.46 ID:3TOq2raE0

校長先生…

 赤髪「…」

 赤髪「自分の後始末は自分でつける、もうあなた達と話すことはない」バサ

 隊長「逃げても無駄だ、すぐに追手が!!」

 赤髪「教官を助けたければ早く助けを呼ぶか、天界に戻ってください」シュン…

瞬間移動…どこへ行くんだ、赤髪…



教頭先生は今もお元気だから…ここでは命を落とさなかった…

下級天使が上級天使を傷付ければ、いや、敵意を持って武器を向けただけでも重罪

校長先生…隊長さんは油断していたとは言え、防具もつけていた、何より戦闘のプロだろう

先生は…隊長さんじゃなく『赤髪を』庇ったんだ…

…赤髪の記憶…きみはどこへ…

あちこちめちゃくちゃに飛んで…あ…あの森に…

 悪魔「…よう、俺を探してんだろ?」ニヤニヤ

 赤髪「貴様だけは…貴様だけは、殺してやる」

 赤髪「天界の対応は生温い…貴様がのうのう生き永らえていると思いながらでは、残りの一生を過ごせない」

 赤髪「貴様を斬り捨てたら、すぐに天界の追手に捕らえられてもいい、消滅の罰を受けても構わない」

 『むしろ、魂も何もかも消えてしまえるのなら、ありがたいくらいだ…』

195 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 20:03:50.00 ID:3TOq2raE0

赤髪…激しい憎しみと殺意、失望…天界、いや、世界への失望で、きみの心は満たされている…

 悪魔「ケケ、やっぱりお前は天使のくせに激しい気性を内に秘めてると思ったんだよ、面白いよなあ」

 悪魔「お前ら下級天使は、人間や悪魔とも違って、髪の色を見りゃだいたい性格がわかるんだ」

 悪魔「地味な髪色の奴は真面目で、理性が強いか稀に極端な内気か、ま、面白味はないわな」

 悪魔「成長しても鶏の雛みたいな薄黄色の髪は、見たまんま幼稚で間抜けな甘ったれ」

え、僕の髪色?

 悪魔「派手な金色か燃えるような赤毛は感情が激しく、長所は情熱的とでも言うのか」

 悪魔「短所はまるで人間のように、何かのきっかけで理性のタガが外れる」

 悪魔「お前は特別荒っぽい天使のようだ、下級のくせに上級に剣を向けるとは!!ひゃはははは!!」

 赤髪「もう黙れ!!」

 ブンッ

 悪魔「おおっと危ねえ…意外とすばしっこいな」

 悪魔「どうだ、天使に捕らえられても処刑しかないなら、魔界に来ねえか?」

 悪魔「俺も出来心で宝物を盗み出してちょっと帰りづらいが、天使が手土産なら堂々と帰れる」

 悪魔「天界と違って魔界は優しいから、堕天使はいつでも大歓迎だぜ!!」

 赤髪「…くっ…」チャキ…
196 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 20:07:06.57 ID:3TOq2raE0

剣を下ろした、まさか、赤髪…!?

 悪魔「…ほー、話を聞く気になったか…素直ないい子だな」

 悪魔「どうだ、悪魔になったら…お前を排除しようとしている天使どもに仕返しもできるぜ」

 赤髪「…詳しく話せ」

 悪魔「へへへ、そう来なくちゃ…仲よくしようなあ」

悪魔が歩み寄る…赤髪…

剣は…自分以外から見えなくしているが、まだ…利き手に持ったまま…

 悪魔「…このガキ…!?」ハッ

 ズシュッ!

 悪魔「く…そ…その身のこなし、天性のものだなあ…」ゲブッ

 悪魔「…ほんと…下っ端天使にしとくには、惜しいぜ…」ズル…

 赤髪「…やった…か…?」

いや、まだ…魔導書…!?

 悪魔「たまたま盗み出した中にあった、こいつ…」ゴホッ

 悪魔「じゅ、術者が瀕死でなけりゃ使えねえ呪文…まさか本当に使う羽目になるとはな…!」

 赤髪「!!」

 悪魔「最後の手段、『融合』の術…!!」

……
197 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 21:42:00.33 ID:3TOq2raE0

男「…その天使は、あんたとおっちゃn…教頭さんの前から姿を消して、どうなったんです?」

校長「私はまず教頭…当時の教官を助けることを最優先にして、彼を連れ天界へ戻った」

校長「赤髪天使への追手はすぐに地上へ向けられた、しかし…」

男「…見失ったんですね?」

校長「つくづく無能だって顔をしないでくれ」

校長「白い翼のある男と、怪しい風体の男が争っていたのを目撃した人間がいたとも聞く」

校長「…自分を騙し恋人を間接的に殺した悪魔を倒すため、奴に向かっていったのかもしれん」

校長「そして…返り討ちに遭い、殺されたか…」

校長「通常、天使は地上で死ねば、痕跡も残さず消滅してしまうのだ」

男「…恋人の仇、か」

金髪(正座)「…かわいそう、でもロマンチック、愛に生きて愛に殉じたのね…」シクシク

校長「泣くなら黙って泣け」

校長「…後でわかったことだが、赤髪天使は天使学校時代、教官を心から信頼し敬愛していたらしい」

校長「私が不用意な言葉を発さず、教官に説得を任せていれば、赤髪天使を天界に無事送還できただろう」

校長「彼に剣を抜かせたのは私だ」

校長「あの頃の私は、下級天使や人間の感情の機微など、理解しようともしていなかった」

校長「彼らを力で捻じ伏せられる力を持つ治安部隊長の職務に、そんなものの理解は不要だと思っていたのだ」

校長「…治安を乱すものは、いつだって感情なのにな」
198 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 21:43:48.60 ID:3TOq2raE0

男「で…どうして治安部隊長から校長先生に?」

校長「あのことで、私は自分の過ちを痛感した…そして思った」

校長「真の意味で天界を、天使を守るには、感情を心を学ばなくてはならない、と」

校長「この教官に、彼の同僚に、彼等に育てられる子供天使達に、そして…人間達に、学ばねばならない、と」

校長「数年後、天使学校の校長と教頭が高齢のため揃って引退することになった」

校長「教頭には当時の教官の中から最年長の…彼が選ばれるのはわかっていた」

校長「校長は外部から招へいすることになっていたが、私はそれに手を挙げた」

校長「…いつまでかは確約できないが、当分は自分も成長しながら、校長の職務を果たさせていただくつもりだ」

男「…数百万年生きて、まだ伸びしろがあるんだ…」

校長「どんな生き物も、自分で成長するつもりがある限りは成長できるさ」

校長「…は言うものの、まだまだあなた達も下級天使達も、理解不能な行動が多くてなあ…」

校長「時と場合と相手により、有無を言わせない躾も必要だと思うので臨機応変にやって行こうと思う」

校長「なあ金髪天使?」

金髪「ひゃいいいい…」

ピンポーン

男「あ」

友の声「男ー、約束の時間には少し早いけど、昼飯差し入れついでに来たぞー」

女の声「天使ちゃん、大丈夫ー?」
199 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 21:45:55.77 ID:3TOq2raE0

友「…」

女「……」

女天使「すー…すー…」

男「…牛丼美味いなあ」モシャモシャ

友「…男から相談を受けた時、男の推測では子供天使が女性化するきっかけは…」

女「天使ちゃんが悩んでいた件、子供から女性になるタイミングって、いつも…」

友・女「「最っ低…」」

男「だから…今回は俺じゃねえって」

金髪「あたしですー、何もかもあたしが悪いんですー」シクシク

校長「その通り、彼女は教師としてあるまじき行為の罰を受けている最中なのだ」

友「」

女「…こちら様は?」

男「上級天使様、この金髪さんとか、昨日の教頭さんの上司、天使学校の校長先生」

校長「友さんか…この度は、我々の監視が至らず」

友「も、もういいですよ、天使にも、昨日の教頭先生にもさんざんお詫びしていただきましたから」

校長「そうか、度を越したお詫びは却って不快とも聞く、やめておくか」

女(…めっちゃ長身、金属みたいな銀の髪、それに頭に…まさに天使の輪っか…)

校長「お二人がお見えになったばかりで失礼だが、我々はこのへんでおいとましようか、金髪天使」
200 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 21:47:32.54 ID:3TOq2raE0

金髪「や、やった、やっと正座から解放され…」

足「ぐにょ」

金髪「…るっ!?」ドテン

男「天使も足、痺れるんだなあ」

金髪「やだあああああ、何これえええええ」ジンジンジンジン

校長「見苦しい…立って歩けないなら飛ばんか、なんのための翼か」

金髪「うぇい…」バッサ…

校長「それではいずれまた、男さん達…明日はおそらく茶髪天使と黒髪天使が来るはずだ」

校長「…男さん、あの世界創生に関わる話は、他言無用とは言わんが、相手を選びほどほどに、な?」ヒソヒソ

男「わ、わかった…」

女「…また窓から出て行った」

男「来た時は瞬間移動のくせに」

女「しかし…男くんが手を出していないのは信じるとして」

女「…なんちゅう美しさと可憐さ…見事に全部半端なく可愛いのね天使ちゃんの三形態って、ねえ友くん」

友「そ、そうだな…」

男「何緊張してんだよ友」

女「いやーこれは責められない、男ならドキドキするわ」

……
201 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 23:05:02.91 ID:3TOq2raE0

融合の術…悪魔の術

戦闘で瀕死になった術者が、最も近くにいる他者の魂や肉体と融合し、相手が狼狽えている間に

相手をまるごと術者の意識の支配下に置いてしまう、浅ましい術…

赤髪天使は、取り込まれて、消えてしまったの…?



 『自分の実力以上の呪文を使えると言っても、所詮は下級悪魔』
 『奴にとっては、完全に使いこなすには少しばかり高度な魔術書だったようだ』
 『…気が付けばぼくは、あの悪魔の体で地面に仰向けに倒れ、悪魔の目で空を見上げていた』
 『赤髪天使の肉体はどこにもなかった、痕跡さえも』
 『逃げよう』
 『天界の追手が赤髪を探しに来る…この姿とは言え、連中に ぼく を見抜かれない保証はない』
 『へえ、おかしいな…追手に捕まっても良かったんじゃなかったか?』
 『違う、悪魔はまだ 死んでいない 』
 『そうだろ悪魔、ぼくに問いかけているお前は、生きているんだろ?』
 『くくく、これはこれで楽しいかもしれんが…天使の坊や、お前はどこまでこの状況に耐えられるのかねえ』
 『狂っちまうよ、お前は、耐えられず狂っちまうよ…遠くない未来さ、断言する』
 『うるさい、黙れ、黙れ…!!』
 『ぼくの天界の剣は、なぜか消えずに、いつの間にか悪魔が背に担いでいた』
 『もちろん俺の外套の内ポケットには、ぎっしりと魔導書が』
 『これらがあれば、追手をかわせる』
 『なあ坊や、生きて生き延びて、天使どもに復讐しようぜえ?』
 『月日が経つにつれわかったが、ぼくは悪魔の気配と天使の気配を切り替えることができるらしい』
 『俺が天使にちょっかいをかけ、天界が動けば、ぼくは天使の気配を纏う』
 『こうすれば悪魔の存在は消えてしまう、ほとぼりが冷めるまでこれで凌げる』
 『そう、貴重な魔導書は節約しなくちゃ』
 『なあ…俺のは結果はどうあれただの悪戯だが、お前はどう考えても天使を憎んでいるよなあ』
 『時には人間まで利用して、修行中の若い天使に、あそこまで残酷な真似ができるんだなあ』
 『ケケケケケ、お前は悪魔以上の悪魔になっちまった、赤髪の堕天使』
 『楽しいな、楽しいなあ!!』

…赤髪…
202 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/21(土) 23:43:20.73 ID:3TOq2raE0

もうどちらの記憶が言葉になって僕に聞こえてくるのか、わからない

…あれから数十年が経った…また別の国みたいだな

年老いた人間の女の人が、「悪魔」と…

 悪魔「…ええ、私を信じてください、社長夫人」

 社長夫人「本当ね、あなたが力を貸してくれるのね…あの女…ピアニストに復讐できるのね」

 悪魔「そう、10年前に、彼女の愛する者に看取られて病死した彼女にね」

 社長夫人「彼女の愛する…そうよ、養子だかなんだか知らないけど、娘…がいたわね」

 社長夫人「晩年はその娘と二人暮らしだった、とか」

 悪魔「…娘、で通っているが…彼女は、例のあの歌…あの歌手本人、でもあるのですよ」

 社長夫人「!?馬鹿言わないで、レコードが出たのはもう30年以上も前の話じゃないの」

 社長夫人「ピアニストが亡くなった時、娘は二十歳前後だったはず」

 悪魔「あの娘は、実は人間ではないのですよ…」

 『正体は、天使』

 悪魔「…私があなたを、一瞬で若返らせたなら…歌手と私は『人間ではない』と、信じてもらえますか?」

 社長夫人「若返る…私が…?」

 悪魔「しばらく海外にでも…病気療養として身を隠し、そして…財産をつぎ込んで全身整形を受けたのだ、と」

 悪魔「世間の注目を集めたところで、あの歌を作ったのは実は自分だと、ピアニストと歌手に盗まれたのだと」

 悪魔「…これ以上の復讐はないでしょう?」
203 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/22(日) 00:25:25.55 ID:piCX+oEf0

〜天界…天使学校の教官の宿舎〜

茶髪「黒ちゃん」

黒髪「…」ハッ

茶髪「うなされていたわよ、どこか痛い?苦しい?」

黒髪「…!!」ギュッ

茶髪「…怖い夢を、見たのね」

黒髪「……」

茶髪「…30年前の…やっぱりね」

茶髪「…悪魔の口車に乗って、若返りまでさせてもらった…社長夫人、ピアニストさんと音楽学校の同期の令嬢」

茶髪「ピアニストさんとあなたの二人の大切な曲を、彼女は…盗作だと、出鱈目を世間に発表した…」

黒髪「…」

茶髪「…あの日に起きたことより、二人の大切な歌を奪われた方が、辛かった…?」

茶髪「…そうね、黒ちゃん…」ナデナデ

茶髪「大丈夫…もうそんな夢は見ないように、私が手を握っているね」

茶髪「明日の朝になれば、あなたもすっかり元気になって…そして」

茶髪「あの子と男さんを二人で励ましに行くのよ」

黒髪「…」コク…
204 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/22(日) 01:02:01.59 ID:piCX+oEf0

〜日本上空〜

校長「金髪天使、黒髪天使が声を失った日を、覚えているか?」

金髪「忘れるわけありませんよ!!」

金髪「あの社長夫人=資産家令嬢とやら、ピアニストさんから奪い父親の後釜につけた夫がいつまでも煮え切らず」

金髪「未練たらしくグズグズと、音楽で暮らしていく夢を叶えた元彼女を羨むからと、ピアニストさんを逆恨みした」

金髪「死人に口なし、本人もレコード会社の社長も亡くなってから、金に物を言わせてデマを流すとか!!」

金髪「…さすがに耐え切れず、社長夫人の元を訪れた黒ちゃんを…あの女は…」

金髪「悪魔がどこからか手に入れた…きっと昔、天使から盗んだ天界の剣を…加工した、しかも呪い付きナイフで」

金髪「…二度と歌えないよう、喉を切り裂くなんて…なんでそこまで酷いことができるのよ!?」ガシッ

校長「落ち着け落ち着け…私は社長夫人ではないぞ?」

金髪「…す、すみません」パッ

校長「監視役から連絡を受けた教頭と、先に修行を終えていた茶髪天使とお前が駆け付け、社長夫人を制圧し」

校長「教頭は、修行を終えたばかりのお前達にはこの役をさせられないと、一人で黒髪天使の呪いを吸い取った」

金髪「…実際、当時のあたしと茶ちゃんでは、1/3でも耐えられなかったと思います…」

校長「遅れて私が到着し、修行期間終了の正式な通告を待たずして天界へ戻ることを勧めたが…あの子は」

金髪「…歌をピアニストさんに取り戻すまでは、地上に残るって…頑張ったのよ、あの重傷で…」

金髪「しかも若返りの術が解け、肉体の急激な老化に苦しみもがく社長夫人に…癒しの力を与えて眠らせた」
205 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/22(日) 01:03:07.27 ID:piCX+oEf0

校長「ああ、どうあっても社長夫人の死は避けられなかったが、安らかに眠るように逝ったな」

金髪「大バカよ…天界に戻って治療すれば、せめて癒しの力を無理に使わなければ、後遺症も残らなかったのに」

金髪「…でも校長先生、なぜその話を今」

校長「我々は、あの30年前の時に、もっと毅然とした態度を取るべきだった」

校長「いや、本来なら…100年前、初めてあの悪魔が、赤髪天使を陥れた時に…」

金髪「それを今さら謝りたいんですか、あー、オトナってずるーい」

校長「…!?お、お前はそんなんだから…お前らもとっくに大人だろ、それに、さっき懲罰を受けたばかりで…!」

校長「…」

校長「…謝らんよ、謝るよりも、今度こそ本気で奴に立ち向かう…お前達と一緒に」

金髪「えっへっへ、それを聞いて安心しました、それでこそ校長先生です」

校長「ふん、子供の頃から変わらず生意気な…懲りない奴だよ、金髪天使お前は」

……

茶髪「黒ちゃん…落ち着いて眠っている…」

黒髪「…」スヤスヤ

茶髪「…あなたはあれから、本当にピアニストさんの歌を取り戻したわね、頑張ったわ…」

……
206 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/22(日) 01:06:32.49 ID:piCX+oEf0
悪魔が読んでいるのは…新聞記事…?

 【昨年、社長夫人が発表した盗作問題は、根も葉もない中傷だった】

 【間違いなくピアニストが作った曲である、その証拠が次々と…】

 【名誉挽回、往年の隠れた名曲、ファンの喜びの声…CDとして再販の噂も…】

 グシャ

 悪魔「…まあ、少しは長く楽しめた『おもちゃ』だったよ、あの社長夫人は」

 悪魔「黒髪の天使からも、声だけは社長夫人の望み通り奪ってやれた」

黒髪先生、修行中の事故で喉を痛めたとは聞いたけど…悪魔の仕業だったなんて…

そのために人間まで利用して、しかも天界が動けばあっさり見捨てて…ひどすぎる…

 悪魔「…認めない、人間と天使が手を取って何かを産み出し、その人間の死後も、それが世に残るなんて」

 悪魔「彼女と『ぼく』は…何ひとつ…残せなかったのに…」

……!!

「悪魔」じゃ、ない…

これは、赤髪天使の悪意…赤髪天使の復讐…

……
207 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/07/22(日) 01:07:46.34 ID:piCX+oEf0
ここまででげす
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/22(日) 13:41:57.35 ID:BxKA2Da6O
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/22(日) 22:18:41.07 ID:apG5dRMa0

面白いわあ
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/26(木) 06:43:28.92 ID:wf84dL1BO
おつ
211 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/28(土) 08:08:40.88 ID:Z2UXBXDw0

友「ところで…さっきの天界の天使から、何か目新しい話はあったか?」

男「ああ、例の悪魔は奴の出身地(?)の魔界でも評判が悪いらしくてな」

男「魔界から奴の情報を得たり、捕獲に協力してもらえることになったりと、協力が得られたそうだ」

友「本当か、それじゃ解決も時間の問題だな!」

男(…って期待するよね普通は)

男「あまり楽観視もしないでほしい感じだったけどな…」

(説明中)

友「…なんかゆるいなあ、天界も魔界も」

女「でも日単位で物事が進展しているなら、明日はもっと進んでるって事じゃん」

女「天使ちゃんがすっかり元気になる頃には、安心して外出できるようになってるかもよ?」

友「お前は心底楽観的だな」

男「でも、そうなっていたら一番いいな…再びこいつを奴に会わせたくない」

女「わー保護者らしい発言…いや、彼氏らしい?」

男「え、いや、そんなんじゃねーよ…」
212 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/07/28(土) 08:09:19.50 ID:Z2UXBXDw0

男「そんなんじゃ…」

友「…男?」

女「何がそんなんじゃないのよ」

天使「…うーん…うう…」

男「天使!?」

友「…うなされてるのか、でも目を覚ます様子はないな…」

女「しっかり…ねえ、また悪い夢でも見てるんじゃないの?」

男「…ちょっと抱き起こすの手伝ってくれ、女…そっとな」

女「え、よいしょ…こ…こうかな?」

男「すまん」

男「天使、俺はここにいるからな」ガバ

男「大丈夫…守ってやるって言ったろ…」ギュー

友「……///」

男「…なぜ友が赤くなる」

女(なるよ…男くん自覚がないだけでラブラブじゃないの…///)
213 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/28(土) 08:10:11.84 ID:Z2UXBXDw0

赤髪と悪魔の意識は一つの体の中で、重なったり離れたり、混じり合ったりしているかのよう…

『もう100年か…お前の魔力は凄まじく成長したな…おっと、法力だったっけか?』
『もうぼくは天使ではない…悪魔以上の悪魔なんだろ、魔力でいい』
『へへ、お前は癒したり治したりする力より、こっちの系統が相性よかったのさ』
『指を鳴らすだけで天使の翼を強制的に出したり引っ込めたりできるなんて…俺にはできない芸当だね』
『有翼の種族に翼は弱点だからな、天使いびりも捗るぜ』
『弱くて若い天使にしか使えない…尤も、地上で修行中の天使しか相手にする気はないけどね』

あれは…赤髪の能力だったのか…

『ふーん、今度の獲物はアレ?…雛鳥みたいな髪の毛だ、ピーピー泣くだろなあ』
『人間を心から信じ切って、人間から可愛がられて、幸せな天使だよ』
『お前のおもちゃには持って来いだな、ケケ、可哀相になあ』
『まあ今回は俺はそそられねーや、30年前みたいなカワイイ女の天使ならともかく…』
『しかしあれは惜しいことした…社長夫人がしくじらなきゃ、あのあと俺が…くくく』
『じゃあ、あいつが美女に化けでもしたら代わってやるよ』
『そろそろ餌を捕らえに行くのか?餌を使ってますます獲物を追い込み苦しめたいんだろ?』
『直接あの天使を捕まえることだってやれなくもねえのに、ホント悪趣味だねえ…』

…僕に目を付けた時の…『餌』とは、姪ちゃん…

悪魔 「…さてと…天使の翼…ここが骨だから…肉がついているのはこのへん、ふむ…」

姪「きゃあああ!!」

悪魔「…くくく、傑作だ…神の試練とやらは『相変わらず』いい加減だなぁ、おい」

悪魔「左側の骨が折れたか、意外と軽い音だね」

悪魔「最終的には翼も手足ももぎ取る予定だったが、『あれ』を見たら少し惜しくなった」

いや…嫌だ、嫌だ…見たくない、聞きたくない…聞かせないで、見せないで…助けて…

男「大丈夫…守ってやるって言ったろ…」
214 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/28(土) 08:11:18.94 ID:Z2UXBXDw0

ハッ

天使「…男、さ…ん?」

男「天使…!?」

天使「…男さんだ…男さんがいる…!」ギュッ

男「…やっぱり悪い夢を見てたか…大丈夫、夢は夢だ、怖くない」

男(心臓がバクバクしてる…よほど怖い夢だったんだな…)

天使「…ご、ごめんなさい、もう大丈夫…大丈夫です、大丈夫なのに…」

男「いいんだ、落ち着くまで抱き締めててやるよ」

男「あ、お前らまだ帰るなよ」

天使「…あ」

天使「友さんと女さんも…いてくれたんですね…」

友「あ、ああ…」ドキドキ

女「はー、目を開いたらますます美人さんだわ…」

天使「あれ…僕、子供の姿だったのはなんとなく覚えているけど…?」

天使「…あのー…男さん?」

男「…お前までも俺を疑うのか…」ガッカリ

天使「え…い、いいえ、そうじゃないです…眠ってる間に何があったか、教えて欲しいんです…」

男「だから俺は何もしてねーし…」シクシク
215 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/28(土) 08:11:49.75 ID:Z2UXBXDw0

友「そうじゃない、男…色々話さなくちゃならないだろ、大事な話を」

男「あ、そうか」

男「天使、大丈夫か…?もう落ち着いたか、まずは横になれ」

男「いっぺんに話されてもキツいだろ、少しずつゆっくり話すよ」

男「まず…よく聞け、お前を女体化させたのは金髪先生だ」

天使「はい?」

女「最後でいいでしょそれ」

(説明中)

天使「…魔界が協力を…」

男「ここまで来てやっと重い腰を上げたそうだ…天界と魔界のお偉いさんが」

男「もっと早く動いてくれたら、お前も今までの被害者も無事だったのにな」

天使(黒髪天使先生…)

男「記録上の最初の被害者なんて100年も前だってさ」

男「事件以来、その天使は姿を消して未だに生死不明だとか、充分大事件じゃねーか」

天使(…赤髪)

天使(今は、赤髪の記憶の夢をしっかり覚えている、思い出せる)

天使(彼と悪魔が融合したのは、おそらく他の誰にも知られていない…)
216 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/28(土) 08:12:28.25 ID:Z2UXBXDw0

女「…大丈夫?あまり考え込まない方がいいよ…」

天使「あ」

天使「だ、大丈夫です…ごめんなさい」

男「いや、俺も一気に余計なことまでしゃべり過ぎたかもしれない…ごめんな、疲れたんだろ」

男「最後にこれだけ、金髪先生の癒し能力は催眠効果が高いらしいな」

男「眠るお前を抱っこしている最中にうっかり女バージョンを妄想したので女体化したそうだ」

男「嘘だと思うなら校長さんに聞いてみろ」

友「お前はこだわり過ぎだっての」

天使「僕、男さんを疑っていませんよ?」

天使「…金髪先生の能力についてはみんな知っていますし」

天使「浄化と、癒しと、相手が望む記憶だけ読む能力」

天使「この3つは下級天使誰もが多かれ少なかれ生まれつき持っています」

天使「修行期間に入ると、能力の成長やその他の能力の発現に、どんどん個人差が出て来るので」

天使「…金髪先生は催眠能力が出始めた頃、なかなかその自覚がなかったので色々大変だったそうです」

男「お前はまだ自分は何が得意なのかわからないのか?」

天使「ええ、子供天使のうちはあまり能力差がないのですが、僕の力もその域を出ていません…」

天使「……」
217 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/28(土) 08:13:02.04 ID:Z2UXBXDw0

天使(戦う能力の高い天使もたまに生まれる、赤髪天使はそういうタイプだったんだろうな)

天使(相手の血から直接記憶を読むのは…元々は悪魔の能力かもしれないけど、僕らと『原理』は同じはず)

天使(僕らは必ず『相手の意志』を間に置かないと読めないけど、結局は血から記憶を読んでいる)

天使(相手の意志という『容器』から無理矢理取り出した血を、強引に読むのが彼のやり方なんだ)

天使(…強引に読む力があるから、僕に強引に読ませる力もある…?)

天使(…わからないけど、僕に記憶を読まれたとは気付いていないだろうな…)

女「また難しい顔してる」

天使「…あ」

天使「ご、ごめんなさい」

女「謝ることじゃないでしょ」

男「話はこんなもんにしとこう、お前は安静にしてろ」

男「…というわけで、明日…月曜日だよな?俺は学校休むから」

友「ああ、まだまだ心配だもんな」

天使「だ、駄目です、男さんはしっかり勉学に励んでください!」

男「お前を置いて行けるかバーカ」

天使「で、でも…僕のために…」
218 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/28(土) 08:13:56.76 ID:Z2UXBXDw0

〜翌朝〜

茶髪「…そうだろうと思っていました…今日は朝から夕方まで私達がこの子を看ていますので、ご安心ください」

黒髪「…」コク

天使「先生…」モゾ

茶髪「…起き上がって大丈夫?黒ちゃん、支えてあげて」

男「あんたら、仕事は?」

茶髪「これが業務です、校長命令で派遣されたのです」

茶髪「天使学校の教員は大勢いるので、在学中の子供たちについては何も心配ありません」

茶髪「それに、平常時でも修行に入って間もない卒業生を見守るのも我々の正式な職務ですからね」

男(…このひと、金髪さんとはタイプ正反対ぽいなあ)

男(昨日の校長さんに気に入られていそう)

茶髪「…というわけで、男さんは勉学に励んでください」

男「ありがたいけど…さっき友からのメールで、午前中は休講になったから単位の心配はしなくていいと」

男「ま、せっかくだから午後の講義だけは出させてもらうわ…天使もその方が気が楽になるなら」

茶髪「ええ、ぜひそうしてください、我々もそのために来ましたから…」

男「…」
219 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/28(土) 08:15:08.10 ID:Z2UXBXDw0

男(このひと、うちの天使ほどでもないにしろそれなりに胸あるのに、微動だにしない感じ)

チラ

黒髪「?」

男(…このひとは揺れるもんがない)

茶髪「…金髪天使が」

茶髪「男さんは私たちの胸に興味があるようだから、とか話していましたけど」

男「!?」

茶髪「別に多少視線が向くくらいでは怒ったりしませんよ、人間の若い男性の本能ですからね」

茶髪「あと、地上の重力下でも『微動だにしない』のが気になりますか?」

男「っちょ、あんた思考読むのかよ…」アワアワ

茶髪「今まで出会った人間達もだいたいそうでしたから…」

茶髪「私の場合、気の持ちよう、精神力で揺らさないようにしているだけです…胸の揺らぎは精神のぶれです」

茶髪「逆に金髪天使は揺らし放題…問題行動と胸の揺れが比例しているとまで言われているのに改善しようともしない」

天使「精神のぶれ…」たゆん…

茶髪「」

茶髪「あなたはそんなこと気にしないで、体を治すことに専念しなさい…そもそもあなたの女性体は一時的な現象」

茶髪「しかもほぼプライベートな場でしか起こらないから安心していいのよ…ごめんなさいね」

男(…なんかこのひともただの真面目じゃなく、ちょっと変わってるかもなあ)

……
220 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/07/28(土) 08:19:03.82 ID:Z2UXBXDw0
過去の夢のシーンで一文字下げ忘れてた、すみません
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 09:21:30.46 ID:DQsIJNJQ0
おつおつ!
222 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/30(月) 23:12:41.07 ID:3Epa08tQ0

〜大学〜

友「…茶髪と黒髪の先生が来てくれたから、午後からは学校来るってさ」ピッ

女「それなら安心だね…天使ちゃんも男くんの学校の心配してたもんね」

友「夕方、俺らもちょっと顔出すか…また差し入れがてら」

女「いいけど…実家には行かなくていいの?もう姪ちゃんはすっかり大丈夫なの?」

友「…うん…元気は元気だ…元気ではある」

女「ではあるって何よ」

友「…茶髪の先生が来ているなら…ちょっと聞いてみたいこともあって」

女「確か姪ちゃんの怖い記憶を消してくれた先生だよね?」

女「…まさか、消えたはずの記憶が戻ったとか!?」

友「いや、悪魔のことはきれいさっぱり忘れている、でも」

友「姉貴からの電話でさ…昨日あたりから姪が…天使様に会ったの…とか言い出したって…」

女「ちょ」

女「それって天使ちゃんに会った記憶が戻ってるって意味!?いずれ悪魔のことも思い出さない!?」

友「だから…このまま放っておいて問題ないのか、なんとかしてもう一度記憶を消してもらえないか…」

女「ええいもう…緊急を要する事態じゃないの!とりあえずメールで男くんに伝えて、今から行こう!!」

友「わ、わかったから引っ張るな…お前力持ちだから腕抜ける…」イテテ

……
223 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/30(月) 23:15:01.95 ID:3Epa08tQ0

〜男のアパート〜

茶髪「…そんな…記憶が戻ることはまず考えられません」

茶髪「しかも本人が執着していた記憶でもなし…どころか、受け入れることを激しく拒否していた記憶です」

男「そんなんわかるのか」

茶髪「消去してよい記憶がどうか見極めなければ、逆に精神に悪影響を及ぼす危険もありますからね」

茶髪「…もう少し詳しくお聞かせ願えませんか、友さん?」

友「…わかった」

友「俺の姉…姪の母親に様子を聞こうと、ゆうべ俺から電話を掛けたんだが…」

……

〜電話での会話〜

友姉「…ええ、とりあえず幼稚園は明日まで休ませるつもりだけど…あの子自身は元気」

友「そうか、よかった」ホッ

友姉「今朝から、ちょっと変なこと言い出したけど…まさか連れ去り犯の記憶…なわけないわよねー?」

友「…!な、何て言ってたんだ!?」

友姉「なんか…にこにこ楽しそうに話すから絶対違うと思うけど…朝ごはんの時にね、『てんしさまにあったの』って」

友「て ん し」

友姉「『おとーさんよりせがたかくて、ふわふわのひよこさんみたいなかみで、おめめはそらいろで、かっこいいの』って」

友「」

……
224 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/07/30(月) 23:15:59.36 ID:3Epa08tQ0

男「…長身にヒヨコみたいな髪に空色の目って、うちの天使の特徴まんまじゃねーか…」

女「お姉さんはどう解釈してるの?」

友「普通に夢でしょって、幼稚園には天使の絵があちこちにあるし、それ系の本も置いてるからその影響だろう、って」

男「金髪碧眼のイケメン天使って、男性姿の天使としてはベタなイメージだからな」

茶髪「お姉様は、他には何も?」

友「…天使様は2人いるの、って」

友「『もうひとりは、あかいかみで、でもとおくにいるから、おかおとかはよくみえないの』…と」

女「それ悪魔のことじゃない?あいつ赤毛じゃなかったけどさ」

男「でも、そいつも天使だと言ってたんだろ?やっぱ夢だよ、天使の出て来る絵本でも読んだんだろ」

茶髪「……」ウーム

女「茶髪先生、考え込んじゃった…」

茶髪「…隣の部屋の黒髪天使と少し話をしてきます」

男「うちの天使にはまだ心配かけたくないんだけど」

茶髪「大丈夫…あの子は彼女の癒しでよく眠っていますし、あの子の周辺だけ強力な遮音の結界を張っていますから」

女「何か心当たりがあるのかな」

男「姪ちゃんはもう巻き込みたくないなあ…」

……
225 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/07/30(月) 23:16:56.06 ID:3Epa08tQ0
進まなくてすみません。暑いので少し休みます
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/31(火) 12:41:49.64 ID:hOTbleQ00
乙です
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/04(土) 14:28:22.44 ID:gX2LeKZx0
おつ
228 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:27:51.99 ID:VUkPfSTm0

〜数十分後〜

茶髪「…話は終わりました、皆さん、こちらへ…」

黒髪「…」

天使「…すー…すー…」

男「…よく眠ってる」

茶髪「ええ、この子は今、遮音の結界の中…私達の話は全く聞こえていません」

友「で…姪の記憶は、このまま放っておいてもいいのか?それとも…」

茶髪「天界に戻ってから色々と相談する予定ですが…とりあえず現状では様子見で問題ないでしょう」

茶髪「少なくとも、姪御さんに何らかの悪い影響があるとは考えられません」

茶髪「しかし…姪御さんの話にもっと具体性が出て来たり、何かを恐れる素振りを見せたら、すぐ知らせてください」

友「…どうやって??」

茶髪「ああ…失礼しました」

茶髪「姪御さんの周辺も…場所と人々の二重の意味で、男さんの家に次ぐ重点的な監視対象ですから…」

茶髪「友さんが私に助けを求めてくだされば、私もしくは情報を共有した他の天使が駆け付けます」

男「『茶髪さん助けてー』とか叫べばいいの?」

茶髪「これをお持ちください…私の羽根の1枚です」ヒラ

茶髪「これには呼びかけの術がかけられています」

茶髪「屋内でも構いませんので、これを頭上にかざしながら私へ呼びかけてください」

男「なんか間抜けだな」
229 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:30:14.42 ID:VUkPfSTm0

女「余計なこと言わない」

友「…確かに絵面は少々間抜けだが、それがあなた達を呼び出す方法ならその通りにする…ありがとう」

女「あんたら失礼」

茶髪「こういう反応は慣れていますから平気ですよ」

茶髪「ただ…紛失しないでくださいね、見る人が見れば鳥類の羽根ではないとわかって、騒ぎになりかねません」

男「そうなん?素人目にはさっぱり区別付かないけど」

茶髪「まあ不用になった時点で私が遠隔操作で術を解きますので、その瞬間に跡形もなく焼失しますから」

友「わかった、使わずに済めば一番だけど、大事に持ってるよ」

友「それにしても…こんな軸の太い羽根、引っこ抜くの痛かったんじゃないか?」

茶髪「風切羽根です…これをむしるのは数分間動けなくなる激痛なので、ちょっと無理ですね」

茶髪「しかし我々の翼も時おり換羽します…何かと便利なので、状態の良い羽根は常に数枚ほど持ち歩いています」

男「物理法則とか超越している存在のくせに妙に生身らしい面もあるし、不思議な生き物だよなあ、あんた等…」

茶髪「ふふ…私に言わせれば、人間より不思議な生き物はいませんよ」

茶髪「とにかく、今日の所は皆さん登校されてはどうですか?午後の講義とやらがあるのでしょう?」

男「それもそうだ…今からバスで行けば学食で昼飯食っても午後間に合うよな、どうする?」

友「ああ、姪のことはとりあえず今日明日どうこうって話じゃなさそうだし」

女「そうね…天使ちゃんも先生達がいれば何も心配ないし」

黒髪「…」ニコ

……
230 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:32:22.44 ID:VUkPfSTm0

茶髪「この窓から停留所が見えるのね、今、3人が乗ったバスが出たとこ」

茶髪「…黒ちゃん、結界はまだ有効?」

黒髪「…」コク

天使「すやすや…」

茶髪「…この子にも彼等にも心配かけたくないけど、現時点ではわからない部分がちょっと多すぎる」

茶髪「まず、教頭先生と校長先生にこの話をして…それから…姪御さんが」

茶髪「誰かの生まれ変わりなのか、誰の生まれ変わりなのか、出生記録管理局で調べないと」

茶髪「…仕方ないとは言え、地上生物の転生とは気まぐれとしか言えない不規則な現象」

茶髪「上級天使様達の間では、天界は人間の転生も管理すべきって議論は大昔にあったらしいけど」

茶髪「結局は、出生後の調査による記録だけを管理する役割に留まった」

茶髪「…世界中で日々生まれる人間の子供達の調査は簡単ではない」

茶髪「生後4〜5年のお子さんの調査結果が、もう出ているかどうか…」

黒髪「……」

茶髪「そうね…あなたのように、転生前の人間と親しかった天使であれば、見ただけでわかるのにね…」

……
231 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:34:20.45 ID:VUkPfSTm0

赤髪天使の記憶の夢はずっと時系列だったから…僕に呪いを送り込んだ時点までで終わったはず

でも…この夢は…誰かの記憶…?

…ああ、これは黒髪先生の記憶だ…

黒髪先生が僕を膝枕して…歌を歌ってくれているから…

今の先生の声はあまりにも微かで、人間には聞き取れない歌声だけど…優しい歌

そして、記憶の中の先生の声は本当にきれいで…素敵な歌声だなあ…

きっと、かつての先生のこの声も、癒しの能力を帯びていたのかもしれない

…黒髪先生の大切な人、ピアニストさんが作って、先生が歌って、世の中に送り出した歌

僕、この歌、目が覚めても覚えていられるかな…?

先生がピアニストさんと過ごした地上での日々は、本当に幸福だった…僕にはよくわかる…

…赤髪…

赤髪にも、あの女の人と過ごした日々の中で、幸福だった時はあっただろう…

だからこそ、それを失ったことが悲しくて、辛くて…

…だからこそ、憎む…の…?

きみはこれからも…人間と心を通わせる天使を…天使と心を通わせる人間を…?

……
232 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:36:06.50 ID:VUkPfSTm0

〜夕方〜

男「ただいま」

茶髪「おかえりなさい男さん」

黒髪「…」ニコ

天使「男さん」

男「おう、目が覚めたか…なんか今朝と比べても、ずいぶん顔色よくなったなあ」

茶髪「思った以上に翼の傷の回復が早いようです…まだ『出せる』状態ではありませんが」

男「黒髪さん、ずっとこいつを膝に抱いててくれたのか?きっとそのお陰だな」

男「あんたの癒し能力は、なんか邪念とか余分なもの入ってない気がして…信用できそうだもん」

黒髪「……」

茶髪「男さんの看病が一番の治療薬です、と言っています」

茶髪「私達の能力は言わば不快な症状への対処療法のみですからね」

男「それでも間接的にでも回復は早まるだろ…ありがとう」

天使「男さん、黒髪先生はずっと眠っている僕に歌を歌ってくれていたんですよ」

黒髪「…!」

茶髪「…」

天使「…でも、目ざめたら忘れちゃいました…覚えていたら自分でも歌ってみたかったのに」
233 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:37:57.75 ID:VUkPfSTm0

黒髪「……」

天使「…また今度…僕が元気になったら…?そうですね、早く治さないと、いつまでも先生達にも…」

男「なあ、前から思ってたけど、黒髪さんて天使同士でテレパシーでも使ってんの?」

茶髪「彼女も発声はしています、ただ、人間の可聴領域に達していないだけで…」

茶髪「我々にも、近くにいれば辛うじて聞き取れる範疇です」

茶髪「昔は私達のように話せていましたが…地上での修業中に、喉を負傷して…」

男「あ…悪ぃ、ごめん…」

黒髪「……」

茶髪「気にしていません、こちらこそ不便おかけしてごめんなさい…って」

男「いやいや、謝ることねーよ…あんた律儀だな、いいひとなのはわかるが…気恥ずかしくなるわ…」ボリボリ

黒髪「……」

茶髪「そろそろ帰りましょう…?そうね、この子の回復も順調だし、学校へ戻って今日あったことの引継ぎもしないと」

男「もう帰るの…あ、でも、長時間こいつと一緒にいてくれたもんな」

天使「今日一日、ありがとうございました…頑張って早くケガ治します」

黒髪「……」ナデナデ

茶髪「頑張らなくていから元気になることだけ考えてね」

茶髪「男さん、明日は教頭と金髪天使が来る予定です、よろしくお願いします」

男「上司とセットでないと来れないのか、金髪さん」

……
234 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:39:49.36 ID:VUkPfSTm0

〜日本上空〜

黒髪「……」

茶髪「…明日から、地上での担当地域を変えてもらう…?」

黒髪「……」

茶髪「自分と接触することで、男さんが前世を思い出すかもしれないから…って?」

茶髪「…あの子とも、男さんと一緒にいる限り、会わないつもりなの?」

茶髪「人間が自然に前世を思い出すのは『仕方ない』のよ、何がきっかけになるかなんて誰にもわからないもの」

黒髪「……」

茶髪「あの歌を歌ったのも失敗だった、って…そんな」

茶髪「他意があって歌ったのではないのでしょう、それくらいわかるわ」

茶髪「…でも黒ちゃんが切ない思いをするなら、しばらく距離を置くのもありかもね…」

黒髪「……」

茶髪「うん、それもわかってる…今の男さんとあの子を見ているのが辛いわけじゃないのよね」

茶髪「それにしても、私達が張った遮音の結界は癒しの力は通すけど、音声は通さないのに」

茶髪「あの子の耳に歌が届いていたなんて」

黒髪「……」

茶髪「それがあの子の能力かもしれない…か…」

……
235 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:42:00.68 ID:VUkPfSTm0

〜男のアパート〜

天使「午前中に女さんと友さんがお見えになっていましたね、僕はそのあと夕方まで眠ってしまいましたが…」

天使「お二人にも毎日来ていただいて、申し訳ないです…」

男「気にすんなって…そうだな、お前が元気になったら美味い料理でも作って振る舞ってやったらいいかもな」

男「女なんて大喜びすると思うぞ」

天使「それはいい考えですね」ニコ

男「…」

男(姪ちゃんの件で来たことは黙っておこう)

天使「…男さん」

男「うん?どうした?」

天使「僕が昨日まで見ていた、夢について…ですが…」

男「なんだよ、余計なことは考えるなって」

天使「…僕、『悪魔』の過去を、夢で見ていたんです…」

男「!?」

天使「夢は夢、普通はそうかもしれません、ですが…」

天使「友さんの記憶を読んだ時のこと、覚えていますか?」

男「あ、ああ…」
236 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:43:13.54 ID:VUkPfSTm0

天使「相手の血液の流れから記憶を読みますが、通常の天使の力では、相手が知って欲しい情報しか読めません」

天使「音の入った映像記録のように鮮明に伝わるので、口頭で説明してもらうよりずっと正確ではあります」

天使「…悪魔は、僕の血から、知られたくない記憶までも強引に読み取りました」

男「天使」

天使「大丈夫です…つまり、記憶を読むために血液を使うのはどちらも同じです」

天使「悪魔が僕にかけた呪いは、悪魔の血液から作られると聞きます」

天使「僕が夢と言う形で見たのは、悪魔の血液に残っていた彼の記憶…そうとしか思えません」

男「悪魔の記憶か…天使をいたぶって喜んでいるような奴の記憶なんて、碌なもんじゃねーよな」

天使「…でも、それはあの悪魔の記憶であると同時に、悪魔の記憶ではなかった…」

男「どういうことだ?」

天使「あの悪魔の体の中に、元の悪魔と、悪魔から被害を受けた天使のひとり、ふたつの魂が混在している…」

男「なっ…!?」

天使「僕が見たのは、その天使のほうの記憶です…」

……
237 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:45:41.43 ID:VUkPfSTm0

男「…なんてこった、きのう校長さんから聞いた話とも一致する…」

男「校長さんの冷淡な言葉にその赤い髪の天使がキレて…教頭さんが斬り付けられて大怪我したって話」

男「校長さんは事件を後悔して、治安部隊長から転職したって、な」

天使「校長先生…」

男「それ以来、その天使が行方不明だとも」

天使「やっぱり、彼等が融合したのは他の誰も知らないんですね…」

男「本当だとしたら大変な話じゃないか?今日来た先生達には話していないのか?」

天使「は、はい…伝えるべきかどうか今日1日ずっと迷っていましたし…」

天使「…黒髪先生は僕の前に『悪魔』に重傷を負わされた天使でもあったので、より慎重になってしまいました」

男「まさか、声を出せなくなったのは」

天使「夢で見るまで、僕もそれが悪魔の…他者の悪意による怪我だとは知りませんでした」

天使「…直接ではありませんが、悪魔が利用した人間の手で、悪魔の用意した呪い付きの武器を使って…」

天使「刺客として使われたその人間は、悪魔に見捨てられ…直後に亡くなりました」

男「くそ…何もかもひでえ話だ」

男「…でもな、正直…一連の話を俺だけが知っても何か役に立てそうな気はしないぞ?」

天使「…ごめんなさい」
238 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/05(日) 23:47:22.34 ID:VUkPfSTm0

天使「それでも…悩んだ末、男さんに最初に話すべきだと思ったのです…僕の大切な人ですから」

男「」

男「お、おま、何を、何を言ってくれちゃってるの!?///」ボボボ

天使「なぜ赤く?」キョトン

男「ってお前、何の気なしだったのかその言葉…しかし…うーむ…」

男「そうだ…明日は金髪さんと一緒に教頭さんが来るそうだ」

男「赤い髪の天使と関わったひとに相談するのがいいと思うけど、どうだろうか?」

天使「教頭先生が」

男「しかし…赤い髪の天使…ね…」

  友「『もうひとりは、あかいかみで、でもとおくにいるから、おかおとかはよくみえないの』…と」

男「…!?」

男(姪ちゃんには見えたのか?悪魔の中にいる、赤い髪の天使が…!!)

天使「ど、どうかしたのですか?」

男「ああもう、なんてこったな話だらけだよ…まさしくオーマイゴッドだよ」

男「天使…今のお前にはしんどい内容かもしれんが、聞いてくれ…実は今日、友が来た本当の理由は…」

天使「…!?」

……
239 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/08/05(日) 23:48:16.10 ID:VUkPfSTm0
ここまでです。早くエロシーン書きてえ
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 04:23:55.40 ID:QzncYapA0
おつです
エロシーンも期待してまっせ
241 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/09(木) 00:03:15.47 ID:aIKYOkgx0

〜天使学校、校長室〜

教頭「…姪御さんが、そのような話を…」

校長「0歳児に比べると格段に下がるが、それでも成人よりは幼児の天使に対する感受性は強い、しかし…」

校長「教頭、出生記録管理局に連絡を取ってくれ…無事に閲覧許可が出たら、お前達3人で管理局へ」

金髪「あたしも一緒に行っていいんですか?」

校長「…出生した国ごとや誕生日順、あるいはイニシャル順にファイリングされていればまだ良いのだが…」

校長「例えば『西暦2013年に生まれた人間』という大雑把な分類しかされていないのだ、あそこの記録ファイルは」

校長「しかも安易な情報漏洩を防ぐとか何とかで、法力で検索できないよう閲覧室に特殊な結界が張られている」

校長「手動でページを繰り肉眼で探すしかない、だから1人でも人数は多い方がいい」

茶髪「」

黒髪「…」

金髪「3人でも明日の朝までかけても終わりませんよお…たぶん」

校長「うむ、だから明日は男さんの家には私と教頭とで向かう」

金髪「えー、そんな…自分だけずーるーいー!!楽しみにしてたのにーー!!」ジタバタ

校長「またお前は…それでも教師か!!」

教頭「校長、閲覧許可がもらえましたよ」

茶髪・黒髪・金髪「「「……」」」

校長「頑張れよ」

……
242 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/09(木) 00:04:56.65 ID:aIKYOkgx0

〜男のアパート〜

天使「姪ちゃんが…僕のことを忘れていない上に、赤髪天使の存在を感じ取っている…?」

男「かもしれない、だけどな」

天使「…どうしよう…このことで、また姪ちゃんを巻き込んでしまったら…」

男「茶髪先生はおそらく姪ちゃんに悪影響はないと言ってたし、天界で相談するとも言ってた」

男「校長さんや教頭さんも、赤い髪と言うキーワードにピンと来たら何か対策立ててくれるだろうさ」

男「大丈夫…」

天使「……」

男「天使…すまなかった、お前ひとりに姪ちゃんを守らせて、悪魔に立ち向かわせて…」

天使「え」

男「記憶を消したからって、姪ちゃんは確かに恐ろしい思いをしたんだ…それをお前だけに背負わせてしまった」

天使「でも、でも…あの時は一刻も早く助けに行かなくてはならなかった…」

天使「僕が一人で先行して廃工場に乗り込む、あの時は他に選択肢がありませんでした、だから」

男「ああ、姪ちゃんの誘拐もお前が怪我をしたのも、すでに起きてしまった事実だよ…なかったことにはできない」

男「でもこれからは…何かが起きても姪ちゃんを守るのはお前ひとりじゃない」

男「俺も、友も、女も、お前の先生達もいるんだぞ?」

天使「男さん」
243 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/09(木) 00:06:09.89 ID:aIKYOkgx0

男「もう、姪ちゃんに恐ろしい思いはさせない、お前にもあんな傷は負わせない…絶対だ」ギュッ

天使「あ…」

天使(男さんの腕、男さんの胸…服越しに伝わる男さんの鼓動…)

天使(すごく、あたたかい…)ギュウ…

男「天使…」

…ぷに…

男(…この感触は…おっぱい…女体化天使とお互い正面向いてがっつりハグしているから当然だけど…)

男(微かだが甘く爽やかな天使の体臭…禁欲中?の俺には嗅いだだけで勃起しそうな芳香…)

男(た、耐えろ俺…かなり元気になったとは言え)

男(天使はまだ死にかけたほどの傷が治りきっていないんだ…我慢我慢、おあずけ、ハウス)

男「…だから、明日のためにもう寝ろ天使」スッ

男「ほら横になれ、布団ちゃんとかけて、と…眠るまでここにいてやるから、安心しな?」

天使「は、はい…」

天使(しがみついたりして、迷惑だったかな…)

男(天使が眠ったら、こっそりトイレで抜いてこよう…)

……
244 : ◆cTYQK/.TbSW. [sage]:2018/08/09(木) 00:06:55.02 ID:aIKYOkgx0
男の抜きシーンは省略
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/10(金) 09:43:07.79 ID:Za7oxm6h0
来てたか乙
246 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:26:00.82 ID:+75plVjZ0

〜翌朝…男のアパート〜

校長「おはよう、男さん」

男「…ども」

教頭「だいぶ元気になって来たようだね、よかった」

天使「教頭先生…」ニコ

男「今日は金髪さんが来るんじゃなかった?」

校長「彼女はちょっと急ぎの業務で手が離せなくなってな」

男「…そっすか」

男(またなんかやらかして、謹慎でもくらってんだろ…金髪さんのことだから…)

〜天界…出生記録管理局(閲覧室)〜

金髪「…とか、今ごろ絶対に思ってるわよ男さんは!!」

茶髪「まあまあ…確証がない話は無駄に不安にさせるから男さん達にはまだ話せないのよ」

茶髪「それより真面目に見てるの?そっちのテーブルに山と積み上げた分がまだ残っているのよ…」ハァ

黒髪「……」黙々

〜男のアパート〜

男「でもあんた達2人が来たなら話が早いかな…」

天使「…」

……
247 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:27:18.89 ID:+75plVjZ0

校長「融合の術…だと…」

教頭「悪魔の中に赤髪天使…あの子の魂が混在している…そんな…」

男「単なる夢、という可能性は?」

校長「可能性がないわけではない…ただ…」

教頭「…気配を切り替えられるのなら、悪魔が見つからない理由も腑に落ちます…」

校長「我々は『悪魔』だけを捜していたのだ、それ故に天使の気配を纏った者が捜査網にかかるはずもない」

校長「…加えて…この子の能力…」

天使「?」

校長「一昨日、君に近付いた時に違和感を覚えた…在学中の君とは何かが違うと」

校長「何人も試練を終えた生徒達を知っているが、単に試練を超えて大人天使になっただけの違いとは別物だ」

校長「昨日は茶髪天使と黒髪天使から、それを感じ取ったと思われる報告を受けた」

校長「そして今日、確信したよ…今の君は『読み取りの能力』に秀でている」

天使「読み取りの…」

男「…能力って、なんすか?」

教頭「この子が友さんの記憶を読んだのは、男さんも目の前で見ているのでしょう?」

男「うん」

教頭「基本的な能力とは言え、この子の年齢ではまだまだ力は弱く」
248 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:30:42.97 ID:+75plVjZ0

教頭「友さんに姪御さんを助けたい強い想いがあり、救出に力を貸したいこの子が集中し、ようやく読み取れました」

教頭「ですが、それから数日の間にこの子の力は明らかに成長しています」

男「記憶を読み取る能力が…成長?」

校長「『記憶だけ』ではない、厳密に言えば、他者が外へ発信するものを読み取る能力全般が強くなっている」

校長「ことばとして発されるもの…独り言だろうと歌であろうと詩吟であろうと」

校長「更にことばに出さなくとも他者へ伝えたい想い…例え発した本人が無自覚であっても」

天使「他者へ伝えたい想い…」

校長「ただ、そのへんを歩いている人間からも読み取れるわけではなく」

校長「この子の体に直接触れ、そしてこの子自身が睡眠状態である、この2つの条件がそろって初めて発揮される」

校長「昨日は君の安静を保つため、あの2人は君の周辺だけ強力な遮音の結界を張っていた」

教頭「にも関わらず、黒髪天使の歌は眠っている君に聞こえていた…そうだろう?」

天使「では…あれは僕の『耳』で聞いたのではないのですね…」

教頭「そう、身体機能としての聴力を使えない状態で、読み取りの能力が発揮されたのだ」

男「そんな何日かで…能力が成長するって、よくあるの?」

校長「この子には潜在的に備わっていた力だったのだろう、年齢や経験とともに徐々に成長するのが本来だが」

校長「今回は外的要因によって強制的に覚醒させられた」

天使「外的要因…」
249 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:32:09.75 ID:+75plVjZ0

教頭「君はもう推測できているだろう?」

天使「…あの『悪魔』の血が呪いとして僕の中に入って来たから…記憶を強引に読む能力を持つ悪魔の…」

校長「そう、あの悪魔に限らず血の呪いを受けた天使は過去にもいたが、全員が君のようになったわけではない」

校長「君の元々持っていた能力、あの『悪魔』個人の能力、もしかしてその他の要因も合わさったのかもしれん」

天使「……」ギュ

男(天使…唇を噛みしめて…)

校長「…悪魔の能力を部分的にでも引き継いでしまった、そう思うか…?」

校長「案ずるな、悪魔の能力そのものは呪いと共に完全に浄化される…君らの浄化能力は半端ではないぞ?」

校長「君の能力が引っぱり出され成長したきっかけに過ぎないのだ」

校長「…まあ、それでも…気分の良いものではないだろうが…」

天使「…ごめんなさい、大丈夫です…」

天使「僕の能力と、悪魔であり赤髪天使でもある『彼』の能力、でも…本当にそれだけでしょうか」

天使「校長先生の仰る、もしかしたらの他の要因…」

天使「僕が彼の記憶を覗き見た本当の意味は…そこにあるのかもしれません…」

教頭「……」

男「…なあ、校長さんと教頭さん…悪魔は魔界へ送り返すのはわかったが、赤髪天使は…どうする?」

教頭「赤髪…」

男「あんた、赤髪天使に殺されかけたよな?」
250 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:33:35.83 ID:+75plVjZ0

教頭「…あのことは、わたしが迂闊だったためです」

教頭「手当に一刻を争う傷など負わなければ、悪魔の所に向かわせたりせず彼を天界に連れ帰れたはずです」

校長「あれは…失敗したのは私のほうだ」

天使「教頭先生は…今も、彼を…救いたいのですか…?」

教頭「君…」

天使「僕は…彼が怖い、恐ろしい…昔、人間を利用して黒髪先生にしたことも許せない…ですが、それでも」

天使「彼が救われるのと、これから誰も傷つけられなくなるのが一緒であれば」

天使「それが一番いい道だと思います…」

男「…」

教頭「わたしは…あれから…」

教頭「…天界に戻り傷が癒えるまでさほど日はかからなくとも、すぐには地上への再訪は叶いませんでした」

校長「治安部隊の事情聴取だの過失として処理するための手続きだの…忙しかったからな」

教頭「あなたも一緒になって動いてくれたおかげで、1週間はかかるところを3日で済みましたが」

教頭「地上へ降りる許可が出るとすぐ、わたしは人間に変装してあの貧民街に向かいました」

男(翼引っ込めて違和感ない服を着るだけだよな、変装)

教頭「赤髪と女性が住んでいた部屋は既にアパートの家主が片付けてしまっていましたが…」

教頭「幸い、女性の遺品を預っている人がいて…わたしが赤髪の関係者と名乗ると…どうか彼に、と」

教頭「…我々を…わたしを憎んでいてもいい、それでもわたしは、あの子に…彼女の遺品を受け取ってほしい…」
251 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:35:05.48 ID:+75plVjZ0

男「あんた立派だな」

天使(赤髪、きみは見捨てられていないよ…)

校長「まだ融合していると決まったわけではない、本人と対峙してみなくては…しかし」

校長「私も同じだ…救えるものなら…私が追い込んだ彼を救えるのなら」

校長「可能であれば悪魔と分離して、天界で罪を償わせ、赤髪として立ち直らせたい」

校長「可能であれば、な」

男「あんたも、責任を感じているんだな」

男「…俺は、人間だから…そんなに優しい生き物じゃないと思う」

男「誘拐した姪ちゃんでこいつをおびき出し、嬲って楽しんだ…それだけで少なくとも半殺しにしたいほど憎い」

男「悪魔じゃなく赤髪天使のほうの意志でそれをやったのなら、余計に許せない」

天使「…」

男「だけど、魔界には魔界の、天界には天界のルールがある…俺にはどう罰してくれとか言う資格もない」

男「ただ、もう二度と奴を危険な存在のまま逃がさないで欲しいんだ」

男「こいつや姪ちゃん、俺や友たちが、奴の件では一切心配なく過ごせるようにしてくれ」

男「俺からの勝手なお願いは、それだけだ」

天使「男さん…」

校長「約束する、必ず…二度と彼に罪を犯させない」

……
252 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:37:05.97 ID:+75plVjZ0

〜同日、夕方〜

男「ただいま…」

教頭「男さんおかえりなさい」

天使「おかえりなさい」

男「起きてたのか」

校長「おかえり男さん…この子はさっき目を覚ましたところだ」

校長「皮膚の自浄作用も回復しているようだな、まだ他の法力は使えないが」

教頭「明日あたり、茶髪天使に翼の回復具合を診てもらおうね」

天使「翼を…」

男「…」

教頭「大丈夫、まだ外には出せないから、体の中に納まっている状態で診てくれるよ」

校長「彼女は心身の医療系の能力に長けているから心配いらんよ、男さん」

校長「では我々はおいとましようか…またな男さん」

教頭「またね、天使」

天使「はい、ありがとうございました」

男「留守番ありがとな…今日は瞬間移動か」

男「なあ天使、翼はまだ痛むのか?」

天使「い、いいえ、もう痛みは…でも…」
253 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:39:18.08 ID:+75plVjZ0

天使「…本当に元通りに治るのかなって、それが…少し…」

男「あのケガじゃ不安なのも無理ないけど、順調に回復してるってみんな言ってるだろ」

男「それに、教頭さんに聞いたがお前らにとって」

男「地上生物の栄養に当たる物はその…なんだ、他者からのあi…思い遣りとか心配とか、そんなんだってな?」

男「先生達も女も友も俺も、めっちゃ心配して元気になれって思ってんだぜ」

男「それで効き目がないわけねーよ」

天使「そ、そうでした…そうですよね…ごめんなさい」

天使「僕にはこんなに心配してくれるひとがいる…天界にも、地上にも」

天使「僕には皆さんがいてくれる…」

天使「でも赤髪は誰にも助けてもらえなかった…今も、先生達が責任を感じていることさえ知らないで」

男「…だからあの2人が、今度こそそいつを救いたいって言ったんだろ?」

男「教頭さんは見かけによらず漢気あるし、校長さんも見た目ほど冷酷じゃないらしいし」

男「お前も重要な情報提供という仕事を果たしたんだ、後は…あのひと達にまかせておこうぜ?」

天使「…はい」

男「ところで、皮膚の自浄作用は戻って来たらしいな」

天使「無意識なのでよくわかりませんが、そうみたいですね…自分の意志で使用する法力はまだ無理だけど」

天使「…体を拭いてもらって助かりました、でももう大丈夫です」

男「あ、うん…とにかくよかった、お前も汗で気持ち悪い想いしなくて済むよな」
254 : ◆cTYQK/.TbSW. [saga]:2018/08/15(水) 01:41:03.39 ID:+75plVjZ0

男(…俺の賢者モードもそろそろ限界だったから丁度良かったかも)

男(そう、耐えに耐えた…お湯で絞ったタオル越しに触れる天使のおっぱい…)

男(………………やばい)

男「お、俺!シャワー、シャワー浴びてくるわ!」ドドド

天使「は、はい?」

〜数分後〜

腰にタオル巻いただけの男「なあ…天使」

天使「シャワー早いですね…どうしたのですか?」

男「きれいに、きれいに洗って来たんだ…ほんのりボディソープの香りしかしないはずなんだ」

天使「は、はあ…それで…?」

男「しゃぶってくれ」

天使「…はい?」

男「お前の身体に(たぶん)負担はかけない、お前は着衣のままでいい、しゃぶってくれ!!」

タオル「ばさっ」

天使「」

男「どうだ…ギンギンのゴッチゴチだろ…?これを、フェラチオで鎮めて欲しい…お願い…します…」
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