渋谷凛「“いま”をどんどん過去にして」

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9 : ◆TOYOUsnVr. [saga]:2018/12/04(火) 03:28:39.34 ID:4N5ngplN0



プロデューサーの車へと乗り込んで、後部座席に荷物を置く。

「やっぱ夜は冷えるな」

「ね。もう冬なんだな、って思った」

「そうだなぁ。で、何か食べたいものとかある?」

「んー。でも、ライブ終わりのこの時間だとご飯屋さん探すの大変だよね」

「まぁ、居酒屋かファミレスくらいしか開いてないだろうなぁ」

「ファミレスでいいんじゃないかな。別に私はどこでもいいし」

「そうだな。お酒頼まないのに居酒屋もアレだし」

「うん」

私がシートベルトをしたのを見計らって、プロデューサーが「じゃあ行くかー」とアクセルを踏んだ。

走り出す車と、ゆっくりと、しかし確実に遠ざかるライブ会場。

さっきまでの光景はもう過去なのだ、ということを実感させられる。

今日ために、昨日まで全力全霊で取り組んできたけれど、また別の未来のために積み上げる日々が始まるのだ。

いつも思うことだけれど、なんだかマラソンみたいだ。

なんて、ちょっとだけセンチメンタルな気持ちになっていたところ、プロデューサーが私を呼ぶ。

「そういえば、俺も明日オフにしてあるんだけど」

「あれ、プロデューサーもなんだ」

「うん」

なんとなく、プロデューサーが言い出したいことに察しがついた。

だから私はプロデューサーがそれを言うより先に、口を開く。

「一緒に観光してから帰ろっか」

「……そう言おうと思ってたとこ」

「そうなんだ。気が合うね」

一秒に満たない短い瞬間、目が合う。

どちらが先であったか、二人だけの車内は、くすくすという笑いで満ちた。

これからも、私はいろんな会場で歌うのだろう。

けど、たぶん。

その後に訪れる、こういう時間だけは変わらなさそうだ。

なんて。




おわり
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