他の閲覧方法【
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報R
更新
全部
最新50
中野五月「あいまいでぃすたんす」
Tweet
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:04:31.37 ID:k2Ps0f6K0
違和感があった。今思ったことがどうにも受け入れられないような、不思議な違和感が。この期に及んで何を……という話だが、突如聴こえた不協和音は放置しておくにはあまりにも不気味で、だからもう一度、自分の持っている感情を精査したくなる。
俺の行動の源泉となっているのは、何とか彼女たちを笑顔で卒業させてやりたいという思いだ。そのためには全員の信頼を損ねるわけにいかなくて、何度も何度も苦しい言い訳を積み重ねた。そうしないことには五姉妹の成績を維持、向上させられなかったから。
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:05:03.15 ID:k2Ps0f6K0
では、もはや全員の卒業が確定的になった今、それを引きずる必要が果たしてあるのかどうか。
当時打ち出した苦肉の策はあくまで苦肉の策であって、いつか綻ぶことは重々承知していた。だからこそ俺はその綻びが先延ばしされるように尽力したし、その過程であれこれ追加で秘密を抱えてきた。
正直な話、もうここまできたら全部投げ捨てても良いのだ。俺は不完全ながらも当初請け負っていた仕事は遂げたし、彼女たちは次へと進む権利を得た。大筋で見ればそれなりの結末。あとは報酬だけ受け取って縁を切ってしまえば、また昔のような日常に戻ることが出来る。静かで、波が立たない、気楽な日常へ。――静かで、何も起こらない、面白味の欠片もない毎日へ。
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:05:34.65 ID:k2Ps0f6K0
あいつらと知り合ってからの日々は面倒ごとの連続で、ちっとも休まる暇がなかった。直に教えていない時間にも次の授業についてのことを考えなくてはならなかったり、家族の問題に俺が顔を突っ込むことになったり。割の良いバイトだとウキウキしていられたのはほんの少しの間だけで、蓋を開けてみればとんでもない地雷がそこら中に埋まっている、事前に内容を確認していたら願い下げ確定の超ブラック業務。借金のことさえなければやめられるのにと思った回数は両手の指どころか両足の指まで含めても足らず、何度も何度ももっとよく考えた上で始めるべきだったと後悔した。
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:06:04.28 ID:k2Ps0f6K0
それなのに、なんで俺は今、こうやって家庭教師の座にしがみつこうとしているのだろうか。
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:06:31.09 ID:k2Ps0f6K0
やめられるのならやめたかったはずの仕事で、一度は自分から暇をもらったこともあった。それなのにいつの間にか復職して、あまつさえ、関係が切れることを寂しいなどと思ってしまいもして。
変わっていく己の心に追いつけないまま、気付けばこんな場所にまでやってきていた。
気持ちの整理をつけるタイミングをいつまで経っても見つけられなかった俺は、自分がどんな思いで彼女たちに接しているのかを理解できないまま、時間だけを溶かしてしまった。
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:06:59.94 ID:k2Ps0f6K0
今になって認められることはある。俺は確かに、あいつらと過ごす空間を、時間を、どこか居心地のいいものとして認識するようになっていた。自分がこれまで目的なく身に着けてきた知恵を活用して誰かの役に立てられるあの場は、もしかしたら俺が長い間心のどこかで欲していた舞台なのかもしれなかった。いつかの日のためにと蓄えた知識や経験を活かせる場所はなかなかに得難くて、だから、偶然からそれを手に出来て、幸運だったのかもしれないと思うようにもなっていた。
その感情に、偽りはあるだろうか。――ないと思う。これまでの日々は確かな記憶として、今も俺の中に蓄積されている。
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:07:31.46 ID:k2Ps0f6K0
嬉しかったのだ。俺の積み上げてきたものが無駄じゃないと証明されたみたいで。あの子に恥じない自分になれたような気がして。だから、その機会を与えてくれたあいつらには、漠然とした感謝の情を抱えていて。
徐々に俺に心を許してくれるようになったあの感覚も、俺の教えで次の目的地へと導いていくあの感動も、彼女たちなしには掴みようがなかったもので。
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:08:14.40 ID:k2Ps0f6K0
だからきっと、その過程で生まれたのだ。当初は微塵も持っていなかった、新しい感情が。
それはたぶん、自分が考えるよりもずっとずっと単純なこと。
あまりに当たり前になり過ぎて、わざわざ言葉にする必要もないと己の中で処理してしまったもの。
自身の感情を何度も何度も再編して残ったその上澄みは、実はそこら中に転がっているくらいシンプルな――
「俺は」
もやもやとして判然としない思いを、きちんと言葉の形にする。この工程を経て、初めて飲み込める気がする。
「俺は――――」
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:09:07.65 ID:k2Ps0f6K0
続けた言葉は、驚くほどにしっくりと馴染んだ。口から発した文章が耳から再度自分の中に入り込んで、ゆっくり時間をかけて体内を循環する感覚が心地よかった。なんてこともない、くだらない、どこにでもある言葉なのに、今の俺にはこれしか必要が無いようにすら思える。それくらいに、長いこと探し求めていた解答だった。
つくづく、学校の成績などなんのあてにもならないことを痛感する。こんな答えを導き出すのに時間をかけ過ぎだ。どう考えても。
そう思いながらため息まじりに蹴飛ばした小石が、小さく跳ね回りながら、とある障害物にぶつかってその勢いを完全に失った。夜中の墓地は酷く不気味で、幽霊なんか信じていなくても背筋に震えが走りそうになる。
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:09:44.07 ID:k2Ps0f6K0
いや、違うか。震えそうになっているのが事実だとして、その原因は決して幽霊なんかではない。適当な理由付けに利用される心霊現象サイドからしたらたまったものじゃないだろう。
俺はきっと、怖いんだ。今しがた答えに気付いてしまったがゆえに、これからそれにヒビを入れるかもしれないのが怖い。端的に言えば、臆病になってしまっている。
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:10:16.41 ID:k2Ps0f6K0
でも、言わないことには始まらないから。
だから一度大きく息を吸って、吐いて。
いつかと同じように、またこの言葉から幕を開こう。
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/27(水) 21:13:16.12 ID:k2Ps0f6K0
ここまで。クライマックス感が出てきたな???
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/27(水) 21:15:44.48 ID:I4AsWFXPo
乙
リアタイで見てたらフータローくんの焦燥感が伝わってよかったわ
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/27(水) 21:19:06.47 ID:wvjxY6URo
曖昧な距離感を明らかにする物語だったか
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/28(木) 05:40:10.19 ID:6ehUZN3vo
おつ
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/28(木) 05:47:12.81 ID:3TpuBLCf0
墓場でえっちはまずいですよ!
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/28(木) 14:05:00.28 ID:J12SrXVg0
墓場で夜の運動(会)はキタロウの時代から決まっているのである
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/28(木) 14:16:32.92 ID:uDXBdSs+0
朝帰りして寝床でグーグーグー
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/28(木) 14:17:34.89 ID:TELkMnTDO
いたいけな彼女を思い出した
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/30(土) 01:52:17.66 ID:ge6IBpmR0
3月が終わるまで48時間を切ってしまった
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/30(土) 07:55:02.58 ID:g0peiCjzO
その時期に墓場っつーか外でヤッたら死ぬんじゃないかなさすがに…
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:01:08.20 ID:ybCgTbmS0
「見つけた」
足にぶつかった小石を怪訝に思ってそちらの方を向いたところ、見慣れた誰かさんが顔面蒼白になって息も切れ切れのまま佇んでいた。聞こえた言葉は掠れていて、ずいぶん自分のことを探し回ったのだろうなというのが見て取れる。今会ったところで、特に話せることもないというのに。
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:01:38.59 ID:ybCgTbmS0
「探したぞ」
「お願いしていません」
「怖がりのくせにこんな時間の墓場にいるのは盲点だった」
彼は目の前の墓石を見ながら言う。私の言葉に取り合うつもりがあるかどうかも分からない。石碑のとある場所を懐かしむように指でなぞって、そのまま二の句を継ごうとする。
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:02:13.82 ID:ybCgTbmS0
「お前の姉貴たちも、まだ必死になって探してる」
「知りませんよ、そんなの」
「家に帰る気は?」
「まさか、あんな話を聞いたうえで、今まで通りの生活に戻れるとでも?」
できる限りの力で睨みつける。ちょっとした仲違いや喧嘩ならまだよかった。どちらかの譲歩によって改善の見込みがある程度の出来事なら、人生において何度か起こり得る喧噪の一部として仕方ないながらも受け入れられた。
でも、こと今回に至ってはそうじゃない。見せられているのは大いなる価値観のズレで、それはとてもじゃないけれど自分に馴染むようなものではない。
体表を爬虫類が這い廻るような気味の悪さがずっと消えてくれなくて、許されるのなら今にも叫びだしてしまいそうだった。様々な感情が自分の中で複雑怪奇に混ざり合っていく感覚が、酷く恐ろしい。
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:02:51.85 ID:ybCgTbmS0
「あなたのことを信頼していました」
「そりゃどうも」
「……でも、それはあくまで、昨日までの話です」
知らないままでいられたら、どれだけ幸福だったかと思う。そうしたらきっと今だって、彼は頼りがいのある私たちの家庭教師でいてくれたはずなのに。
しかし、裏でどんなことが起こっていたかを知った今になれば、もう。
呑気な視点で考えることは、出来なくなってしまって。
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:03:33.13 ID:ybCgTbmS0
「私には、あなたのことが分かりません」
これが、何よりも正直な感想。彼がどんな人間で、どんなことを考えて動いているかをなんとなく掴んできたつもりだったのに、一日の間でそのすべてが否定されてしまった。同時に自身の審美眼すらも信じられなくなって、何を拠り所にして歩けばいいかが分からなくなる。
私が思い描いていた彼の人物像は、実像と符合しない。ずっとこの目で見てきたものは虚像であって、本物ではない。そう思うと、世界全てを疑ってしまいそうだ。
全幅の信頼を寄せていたはずの相手が実は酷い隠し事をしていて、しかもその裏には姉妹の結託があった。仲間外れは自分だけ。どうしたって、その事実に納得できない。
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:04:09.78 ID:ybCgTbmS0
「一人にしてください。これ以上お話しすることはありませんから」
決意をもって突き放す。今は誰が近くにいてもダメだ。私に寄り添ってくれそうな人間に限って、ことごとく私の心を裏切っている。そんな中で当たり前のように呼吸することは、とてもじゃないが不可能。頼るアテはどこにもないが、なんとかしてみんなと距離をおかないことには気持ちの整理すらつけられない。お願いだから放っておいて欲しい。
でも、心の底からそう願っているのに、彼はなぜかその場から去ろうとしない。
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:04:57.42 ID:ybCgTbmS0
「早くいなくなってくださいよ……」
「残念ながらそういうわけにもいかない」
「ここにきて教師面ですか?」
言葉の端々に棘が生えている。己の中で息を潜めていた攻撃性が、生まれて初めて牙を剥いている。
自分のそういう部分に向き合うのは苦しい。剥き身の心で人と接してはすぐさま何かが摩耗してしまう。だから、今すぐにでもここから去ってもらいたかった。周りのみんなを嫌いになりかけている今、自分さえも嫌いになってしまったらどこにも寄る辺がなくなってしまう。そうなれば落ちるだけになってしまう。それはきっと何よりも恐ろしいことだから、私のことを案じる気持ちが少しでもあるなら、ここは放置の選択をしてもらいたい。
デリカシーのない彼にだって、この程度の感情の揺らぎなら推し量ってもらえるはず。
そう思っているのに、やっぱり立ち去ってはくれなくて。
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:05:47.31 ID:ybCgTbmS0
「今更できる教師面なんか持ってねえよ。やったことに関しても、全面的に認める。言い訳するつもりもない」
「開き直り?」
「好きなように受け取ってくれ。訂正可能な立ち位置じゃなくなってるしな」
意図して目を合わせず、声の抑揚を殺す。感情的になっているということさえ、今の彼に知られたくはなかった。全てを鎖して心理的な距離を設けるのが、一番有効な精神防衛策だと思った。
熱くなったところで、怒ったところで、これまでにあったことが改まる道理はない。事実は事実として厳然と世界に存在し、どうあっても失われたりはしない。なら、そんなことに労力を割くだけ無駄だと割り切るのが尤もらしい。
皮肉なことに、彼がこれまで私に教えてきた効率化の方策が役に立っている。あらゆる出来事に対し、真っ当な姿勢で臨む必要はない。人生には、取捨選択が要る。
願わくば、この関係が簡単に切り捨てられるようなものなら良かったのに。
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:06:26.00 ID:ybCgTbmS0
「本当に弁解しないんですか。私が間違った解釈をしているかもしれませんよ」
だが残念なことに、自分の不器用さがいつまで経っても道行きの邪魔をする。彼を信じたい気持ちがどうしても消えてくれなくて、こちらに勘違いがあった可能性に期待してしまう。
そんなこと、望むだけ無駄だと分かっているのに。自分の弱さが、そうさせてしまう。
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:07:01.30 ID:ybCgTbmS0
「間違ってねえよ。たぶんだけどな。ずっと、バレたらロクなことにならないだろうなと思ってきて、実際に今そうなってる。なら、合ってる」
「そう、ですか」
関係修復への一縷の望みも絶たれた今、いよいよもって自分がどうすればいいか分からなくなる。いっそ思い切り彼の頬でも張ってやれれば良いのだろうけれど、そんなことをしても何かが解決する風には思えなかった。たまった鬱憤をそんな形で晴らした虚しさが心を余計に冷たくするだけだ。
彼は私に不義理を働いていて、私はそのことに気付きすらしなかった。結局、残るのはそれっきり。
所詮、私たちはその程度の間柄に過ぎなかったということなのかもしれない。
いい加減に低下してきた体温と底冷えしていく思考とのダブルパンチで、無意識に上半身を掻き抱いた。防寒着すら着ないで外に飛び出すなんて、なんて意識の低い受験生だろう。
すると、そこに。
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:08:10.64 ID:ybCgTbmS0
「ほら、とりあえずこれ羽織れ」
「今のあなたから施しなんて……」
「損得勘定くらいしとけ。ここで体調崩して困るのはお前だろ」
こんな中においてもいつもと同じ傍若無人っぷりを発揮しながら自分の上着を強引に押し付けてくる人がいた。ここで自棄になって全てを放り出せるなら楽でいいのだろうが、現実はそう単純な構造をしていない。立ち尽くしていても明日は来るし、それを繰り返すうちに受験に襲われる。今はそんなことを考えたくないのに、学生の性としてどうしても乗り越えられない壁がある。それを思うたびに、自分のちっぽけさに嫌気がさす。全部投げ捨てて台無しにしてしまえるような性格だったら、こんなことにはならなかっただろうか。
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:09:19.75 ID:ybCgTbmS0
そして、何より。
彼の気遣いを嬉しいと感じてしまう自分がいるのが、辛かった。
彼の匂いと体温が残るコートに触れて高鳴ってしまう心音に気付くのが、苦しかった。
浅ましいと思う。醜いとも思う。この期に及んで何を考えているのかとも。しかし、思考と感情は別々に切り離せるようなものではないから、どこかから湧き出してくる喜色を否定することは叶わなかった。嫌いになったつもりでも、それを自分に信じ込ませても、心中深くに眠る真意までもは欺けない。
きっと、未だ惹かれている。
現実を理解しても、なお。
300 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:10:00.38 ID:ybCgTbmS0
「せっかくここまで自分の意思で頑張って来たのに、それを俺みたいなどうでもいい奴の茶々でひっくり返してたら世話ねえよ」
聞いて、やはり彼は根本的にずれているのだと思った。だって、本当にどうでもいい人だったら、何一つとして歯牙にかけずにいられたはずだから。彼が私たちにとって欠かせない存在になってしまったからこそ、こんなにも心が乱れているのに。彼が私の一部になってしまったせいで、こんなにも苦しい思いをしているのに。
301 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:10:39.01 ID:ybCgTbmS0
「……話すだけ無駄なのかもしれません。私とあなたは分かり合えない。もうそれでいいでしょう?」
「初めから会話が成立するなんて期待はしてないから気にすんな。こうなるのは予定調和だ」
思わず、「はぁ?」と聞き返してしまった。あまりに傲岸な言い分に、少し苛立つ。どう考えても状況は私優位なのに、なぜそんなことを言われなくてはいけないのか。さっき感じたはずの思いやりは偽りだったのか、と。
302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:11:34.37 ID:ybCgTbmS0
「お前に会ったところで何も言えることなんかないって知ってる。言い訳も弁解も釈明も申し開きも、どれだけ重ねたって意味がない。だから、俺はようやく終わった自己分析を開示しに来たんだ」
「それは、どういう……」
「どうもこうもない。ただ、ずっとよく分からなかった自分の内面を考察してみて、その結果としてなにが分かったのかを伝えようと思った」
「それは、今関係あることなんですか……?」
「受け取り方次第だ」
この時点で、だいぶ意味が分からなくなっている。なぜ私はそんなことに付き合わされそうになっているのだろうか。まともに取り合う気力すらどう捻出すればいいか分からなくなっている、今この状況で。
しかし、彼が意味のないことを好んでする人間でないことは経験則で知っていた。なら、これからの話にもそれだけの意味が包含されると考えるべきか。……それは期待が過ぎるように思えてならないけれど。
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:12:20.76 ID:ybCgTbmS0
「不思議だったんだ。これだけの泥沼に両足どっぷり浸ってまで、自分の立場を守ろうとするのが。そうする理由はたとえば借金苦から逃れるためだったり、お前らの卒業まではなんとか面倒を見てやりたいという思いからだったり、色々挙がりはした。でも、そういうのは全部しっくりこなかった。間違ってはいないけれど正しいとも言い切れないような微妙な感触が付きまとって、長いこと悩んでいた」
相槌を打つ間もなく、彼の言葉は続々と繋がっていく。
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:12:47.85 ID:ybCgTbmS0
「お前らと出会ってからの毎日は災難続きで、どうやって逃げるか画策したこともあった。というか、いつも考えていた。俺は家庭教師をしにきただけのはずなのに休みはつぶれるわ姉妹喧嘩に巻き込まれるわで、どう考えても通常業務の領域を逸していると思うことばかりだった」
続く。
305 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:13:26.71 ID:ybCgTbmS0
「だけど、その環境の中で、少しずつやりがいのようなものを見出していったのかもしれない。いつしかお前らに教えることは苦ではなくなっていたし、それが自分の糧になっているような感覚も得るようになった。ただ知識だけを積み上げてきた俺の人生において、お前らは初めてアウトプットに付き合ってくれた。全員の成績が少しずつ向上していくのが自分のことのように嬉しくて、見える世界が大きく広がった気分になった。そして、それは今も変わっていない」
続く。
306 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:14:04.93 ID:ybCgTbmS0
「俺はたぶん、自分が教える以上に、お前たちから教わっていたんだ。下手くそな人生の改め方とか、人との接し方とか。教科書をどれだけ読み込もうが身に付かなかった知恵が、お前たちには備わっていた。知識を与える見返りとして、知恵を享受していた。それはきっと、あのまま人生を歩んでいたら身に着かないでいたことだ」
続く。
307 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:14:33.21 ID:ybCgTbmS0
「だから、素直に感謝している。出会えたことで、俺は変わった。変えてもらった。……まあ、俺が良くない方向でお前らを変えてしまったのはここでは別問題として」
続く。
308 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:15:01.83 ID:ybCgTbmS0
「じゃあ、ここで最初の疑問に立ち返ろうと思う。なぜ俺が、今の立場に縋りついているのか。俺なりの分析でようやく求めだした答えを、聞いてもらおうと思う」
続く。
309 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:15:31.18 ID:ybCgTbmS0
「俺は、きっとさ――」
310 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:16:11.50 ID:ybCgTbmS0
ここでようやく、途切れることなく続いていた彼の言葉に隙が生じた。水が流れるようにすらすらと繋がっていた台詞に切れ目が出来て、風の音以外が世界から消え去った。
何を目的としたタメかは分からなかった。これから先の言葉をより一層際立たせるための助走のようなものだったのかもしれないし、単純に、言葉が出てこなくなったからかもしれない。もしかすると、彼にとっては珍しく、言葉にするのをためらっているなんてこともあるのかも。
本当は聞いてあげる義理なんてない。耳を塞いでいても、ここからいなくなってしまってもいい。彼がしたことを考えれば私がこれからどんな暴虐を働こうがそれを咎められるいわれはないし、無視して良い。
でも、今この瞬間だけは、なんでか黙って聞き届けようという気分になっていた。そうすることが一つの義務だと言わんばかりの強制力が世界から働いているようで、不思議とフラットな気持ちでいられた。
単純に、興味がある。頭の良い彼が時間をかけて導き出した自己分析とやらがどんなものなのか。この場から立ち去るのは、それを聞いた後でも遅くない気がする。
311 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:16:51.43 ID:ybCgTbmS0
「――お前たちに、嫌われたくなかったんだ」
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:17:40.27 ID:ybCgTbmS0
ぽかん、と。
思考が一瞬で漂白されて、思ったことも考えたことも、全てがどこかへ遠ざかってしまった。
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:18:12.23 ID:ybCgTbmS0
「呆れる気持ちも、下らないと言いたくなる気持ちも分かる。でも、これが長いこと時間をかけてようやくたどり着いた結論だ。笑いたきゃ笑ってくれ」
「そ、そんな、意味が……」
「そのまんまだよ。お前らに頼られる感覚が心地よくて、出来るだけ長くその環境に身を置いておきたいと願った。慕われる自分を守るために、ここまで色々間違ってきた。それもこれも全て、嫌われたくないというその一心からの行動だったんだって気づいた」
彼は首を傾げながら困ったように笑って、
「我ながら酷い話だと思う。そうならそうで、もっと選べるやり方はあったはずなのにな。でも、俺はそういうことにはとにかく疎くて、だから誤魔化しに誤魔化しを重ねることでしか対応できなかった。泥沼に足をとられていくのが分かってもなお、信頼ってやつを手放したくなかった」
まあ、それも今となっては台無しだけどな、と続いた。
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:18:55.19 ID:ybCgTbmS0
「とにかく、これで全部だ。最後まで付き合ってくれてありがとな」
そして、ようやく、彼の姿が視界から遠のいていく。結局、やって来たことに対する謝罪も弁解もすることなく、あらゆることを自己完結させて、全部終わらせた気になって、この場から去って行く。
ねえ。
あなたは、それでいいのかもしれないけれど。
私の気持ちはどうなるんですか?
315 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:19:44.05 ID:ybCgTbmS0
「ちょっと!」
「……呼び止めを誘ったわけじゃないから、もう無視で良いぞ」
「そうじゃないでしょう! 自分は気持ちよく言いたいことを言い切って、その後のことは丸投げですか!」
「だって、お前は赦さないだろ。なら、どれだけ時間をかけても無駄なことだ」
「あーーーーー、もうっ!」
やはり、ズレている。こういうときに効率性を度外視できないところとか、決めたら曲げないところとか、前から何一つとして変わっていない。私たちから学んだようなことを言ったくせに、結局根っこは彼のままだ。それが果たして悪しきことなのかは私の視点だけで断じることはできなかったけれど、確かに一つ、言えることがある。
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:20:12.13 ID:ybCgTbmS0
「上杉君は大馬鹿です!」
感情を見せるのが嫌だったはずなのに、そんなことはすっかり忘れたような大声を出す。ここには二人しかいなくて、距離も離れていなくて、こんな声量は要らないのに。それでも、彼に対する苛立ちや憤りが渦を巻いて、こうしなくてはやっていられない。
317 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:20:43.12 ID:ybCgTbmS0
「もっと出来ることがあったでしょう! 正直に相談するとか、早い段階で謝るとか、色々!」
「だから、嫌われたくなかったんだっての」
「一度や二度で嫌いませんよ。私が怒ってるのは、ずっと隠し事をされていたことなんです!」
「普通言えねえだろ。お前の姉妹とやることやったなんて」
「どうしようもない事情があったなら、初めに言ってくれればよかったんです。困っているって教えてくれれば、私だって、私だって……!」
「私だって?」
「……私だって、あなたの力になれたかもしれないじゃないですか」
いつも頼ってばかりだから、いずれどんな形になるかは分からないけれど恩返しがしたいという思いがあった。向こうから頼ってもらえるタイミングを待っていた。それなのに、知らないうちにこんなことが起こっているなんて。
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:21:17.93 ID:ybCgTbmS0
「信頼してくださいよ。私のことも」
「いや、だから……」
「言い訳はしないんじゃなかったのですか?」
「これはそういうのじゃなくて、えっと……」
口ごもる彼を無視して、今度はこちらから言葉を紡ぐ。どうせなら、全部吐き出してしまった方がいい。上杉君の不遜ぶりを真似るように、少しだけ気を大きくして。
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:21:47.24 ID:ybCgTbmS0
「だいたい、いつも横暴なんですよ。独善的というか、独りよがりというか。一度決めたら変えられない頑固なところ、本当にどうかと思います」
「それは」
「口ごたえは受け付けていません」
一方的に愚痴をぶつける時間なのだから邪魔しないで欲しい。ボールを打ち返してくる壁があってたまるものか。
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:22:20.51 ID:ybCgTbmS0
「私にバレていないのをいいことにひそひそひそひそと。まともな対処法の一つも考えてみてくださいよ」
気持ちが完全に理解できないわけではない。出来の悪いテストは二度と見返したくなくなるし、隠したくなる。だけど、今はそういう自分の事情は全部全部棚に上げて、たまった鬱憤をひたすら吐き出すことにした。私優位の状況なのだから文句は言わせない。こうなればもうやりたい放題だ。
321 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:22:46.90 ID:ybCgTbmS0
「なんて言うか、思いやりが足りないんです。自分のことを考えているのか私たちのことを思っているのかは知りませんけど、やり方がいつも雑! 基本的にずっと空回ってるじゃないですか! それが嫌なんですよ。思っていることがあるのなら全部はっきり伝えてください!」
常々感じていた伝達不足も、ここではっきり言っておく。察しが良くないのはこちらも同じなのだから、思っていることはきちんと言葉にしてもらわないと分からない。
思えば、すれ違ってばかりだ。出会ってから今日に至るまで、上手く行ったことの方が少ない。その成功体験の方が確かな思い出として積み上がっているから記憶が美化されているけれど、そもそも私たちは最初から相性が良くなかったのだ。強引にこじつけて綺麗な過去だったように印象操作しても、その事実は変わらない。
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:23:26.38 ID:ybCgTbmS0
「変なことはしないで、ずっと自慢の先生でいてくださいよ」
だからきっと、今のが一番の本音。素直に感謝できるような人のままでいてほしかった。私たちを教え導いてくれた恩人として。たまたま出会えた無二の友人として。それを余計な何かで穢されてしまったことが、何よりも悔しい。
こんなことさえなければ、いつまでだって恩義を抱えたままいられたのに。
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:23:57.61 ID:ybCgTbmS0
「あなたは、私たちの家庭教師でしょう……?」
言いたいことは他にもいくらだって残っていた。けれど、力を出し尽くしてしまったかのように体は重いし、声帯は震えない。どういう感情なのか自分でもさっぱり分からない涙が後から後から零れ出てくるし、膝はがくがくと安定しないしで、体中が不安定になっている。
相手がこの人でなければここまで心乱されることはなかっただろうというのが直感的に理解できるのが、まず何よりも腹立たしかった。こんな酷い人に深く依存してしまっている自分をどうしても嫌いになれなくて、そのもどかしさも相まって、溢れる涙はとめどなく敷石を濡らしていく。
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:24:24.93 ID:ybCgTbmS0
「…………悪い」
ふいに彼の手が、頭におかれた。
ようやく引き出せた謝罪のような言葉だが、それを得たところで何が満たされるわけでもない。だから涙で崩れた顔で必死に睨んで、赦す気なんて欠片もないことを訴えかける。
それについては彼も承知しているのか、諦めたような顔で二度三度と私の頭を軽く撫でつけて、ゆっくりその手を下におろした。
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:25:37.23 ID:ybCgTbmS0
「きらいです。上杉君なんて、だいっきらい……」
「だろうな」
「世界で一番、きらい……」
「知ってる」
「きらい。きらいきらいきらいきらいだいっきらい!」
「分かってるってば」
その言葉の裏に隠れたもう一つの感情が表に出てこないようにと必死に押し殺しながら、何度も何度も、子供のような悪口を繰り返していく。こうでもしていないと、自分の中でせめぎ合う思いに負けてしまいそうだったから。ふとした拍子に、こんな中で言ってもどうしようもないことを口走ってしまいそうだったから。
まさか、好きだなんて。
とてもじゃないけれど、言えるわけがないのだから。
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:26:24.90 ID:ybCgTbmS0
「もう、それでいい。そう思われて仕方ないだけのことをした。取り返しがつくなんて考えてもいない。……けど、せめて、姉妹のことだけは赦してやってくれよ。俺と違って、死ぬまでの長い付き合いなんだから」
「そういう、ところが……」
その先は言葉にならなかった。いや、言葉に出来なかった。そういう不器用な優しさに惹かれてしまったなんて、言えなかった。
327 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:27:10.33 ID:ybCgTbmS0
「ほら、帰るぞ。冷えたし疲れたろ。暖まって、休んで、元気になったら、またいくらでもなじってくれていいから。だから今は、最初に自分のことを考えてくれ」
やっぱり、自己完結だ。彼の中ではもうこの話は終わったことになってしまっている。失った信用は取り戻せないし、私からはずっと憎まれたままだということで全てを片付けてしまっている。
それが、なんでかものすごく癪に障った。
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:27:39.20 ID:ybCgTbmS0
「帰りません」
数歩先に進んでいた彼の手を、握りつぶすような勢いで引っ張り寄せる。もう、目の届かないところで後ろめたいことをさせないように、強く引っ張る。
329 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:28:07.27 ID:ybCgTbmS0
「まだ、言い足りません」
「後からいくらでも……」
「口ごたえする権利があるとでも?」
「…………」
その一言で反論を封殺し、逃れる理由づくりを始めた彼の目を、じっと見つめる。
真っ向から、向かい合う。
330 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:28:49.05 ID:ybCgTbmS0
「これは、あなたが負うべき責任です」
残るであろう禍根とか、軋轢とか、そういうことについての考えを巡らせるのはやめにした。
私は、ここで全てを終わらせる。
331 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/30(土) 19:30:25.45 ID:ybCgTbmS0
ここまで。たぶん次が最終更新です。ぜってー三月中には終わらないことから目を逸らしてカリカリ書いてきます。
332 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/30(土) 19:32:29.76 ID:LAEOZiyEo
乙
アアーーー
333 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/30(土) 19:39:26.41 ID:ZH8bVkS30
おつです!
どことなくズレてるフータローに感情を爆発させる五月ちゃんがもう……ありがとう……ありがとう……
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/30(土) 19:40:12.09 ID:zSJBypdso
いよいよかー
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/30(土) 19:44:38.95 ID:MumRbYIaO
次が最終だなんて.....気になりすぎる(
336 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/30(土) 19:55:49.17 ID:gsXXGE2go
最後(完結とは言っていない)
337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/30(土) 20:01:15.38 ID:fVJwzh8l0
3月の生きがい
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/30(土) 22:22:14.57 ID:7h+XUZLEO
シリーズ完結とか言われたら割とマジで凹むからやめてくれー
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/30(土) 22:33:27.25 ID:YrQ8mU240
3月は108日まであるから平気平気
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/30(土) 22:37:55.36 ID:MumRbYIaO
シリーズは完結して欲しくない.....
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/03/30(土) 22:50:45.57 ID:aPk0nrMyO
ワシの3月は108日まであるぞ
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/31(日) 01:25:42.95 ID:HyNOriXlo
今年の3月とは言ってないよな!
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/31(日) 02:15:35.41 ID:fhvJEPAR0
乙
好き&信頼できる人が不貞をはたらいていたというダブルショックかぁ
そりゃ出ていっちまうわな
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2019/03/31(日) 08:42:02.68 ID:W2E7xwn9O
やっぱり上/杉/風/太/郎にするしかないのか
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2019/04/01(月) 00:55:09.87 ID:AUHv7xhv0
R18展開がなくてもこの内容の濃さはすごいな。マジで引き込まれる
時間かかってもいいから作者は自分の満足する作品を作って欲しい
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:30:57.10 ID:YuPhG13q0
んじゃあ、約束通りに最後の更新していきます。
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:31:26.66 ID:YuPhG13q0
「ドライヤーは向こう。タオルはそこらへんにあるのを適当に。まあ、前に来たことあるから分かると思うけど」
状況が目まぐるしく変わるせいで、どんな経緯でこうなったのかが良く分からなかった。それだけ言い残して居間から離れて風呂場に向かい、思考を整理するために最初から考え直すこととする。
五月家出の一報を聞いて探しに出たところまでは良い。彼女を見つけて言いたいことを言ったのも良い。その後、五月が家に帰るのを拒むことだって、それなりに予想できた行動ではある。だから、ここまではたいした問題じゃない。
面倒なのは、その後。
頑なな五月をどうにか説得してでも雨風を凌げて暖房も効いた場所に連行するべきだという俺の考えに、おそらく間違いはなかったはず。風邪を引いたらおしまいだという姿勢は終始一貫させているつもりだったから。なので、引きずってでも彼女を姉妹の元に連れ帰そうとしたのだが、それがなかなか上手く行かなかった。
だからって、どうして俺の家に連れ帰ることになるんだよって話だけども。
毎回のことだが、もっとまともな折衷案はどこかに転がっていたに違いない。妥協点が絶対におかしい。それだというのに結局こうなっているあたり、俺はそういう星の元に産まれ落ちたのだと解釈するほかないのだろうか。そうであって堪るかという反骨心も湧かなくなっているあたり、いよいよもって本格的に世界に白旗を上げるタイミングなのかもしれない。
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:31:59.48 ID:YuPhG13q0
「つーか、親父……」
泣き腫らして目元を真っ赤にした五月を見て、ウチの父親が不要な気遣いを巡らせてしまったらしい。もう夜も良い時間だって言うのに、らいはを連れて実家に引っ込みやがった。どう考えても酷い勘違いをしているし、今は二人で間がもつわけもないから、出来ることならばここにいて欲しかったのに。二人きりで明日の朝までなんて、地獄以外のなにものでもない。これからのことを考えただけで、俺の胃は幾重にも捻じれていきそうだ。
そりゃあ、何を言われてもいいだけの覚悟はした。しかし、それがまさか自分の家で行われるなんて思うわけがないだろう。こんな状況の中でも唯一安全な場所だと信じていた自宅さえ戦地になってしまうのだとしたら、今後俺はどうやって心情のやりくりをしていけばいいのだ。
湯船に深く体を沈めて冷えを追い出しながら、まずどんな顔で出ていったものだか考える。今現在会話らしい会話が出来るとは思えないし、無言で布団を並べて眠ってしまうのがいいだろうか。しかしそれはさすがに……どうだろう。誠意のようなものが大いに欠けている気がしないでもない。ここは大仰にでも悪びれている風を装うべきなのか。
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:32:33.52 ID:YuPhG13q0
そもそも悪びれるも何も、俺は普通に申し訳ないことをしたと思っているわけで、それをわざわざ分かりやすいように態度で示すのは厭味ったらしくも思えた。こうなれば思考は堂々巡りに突入して、何が正解かを導き出せなくなってしまう。もう一度謝ってみるのも選択肢の一つではあるが、どうせ赦してはもらえないというのが両者の共通認識であるのだから、無駄なことだと一蹴されるのが関の山か。
イメージしたすべてに失敗の未来が付きまとってくる感覚があって気が滅入る。これもまた、俺に与えられた罰なのだろう。文句を言う権利なんて端からないのだから、また素直にサンドバックになるしかない。それだけで済むと思うのも甘えで、俺は今後五月から向けられるどんな感情も余さず受け止める責務がある。これはある意味当然の帰結。やって来たことが全て祟った結果がこうだ。
いつまでも体をふやかしているわけにはいかないから、どうにかこうにか重い腰を持ち上げた。明日には五月を家に返す算段をつける必要もあるし、やることは基本目白押しなのだ。
適当に体を拭いて、浴室から出る。この段階でせめて第一声くらいは決めておけば良かったと思ってしまう自分の無計画さが憎い。
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:33:24.24 ID:YuPhG13q0
「……どうも」
「…………どうも」
身支度をそれなりに整えたらしい五月は俺が着古したよれよれのジャージを身にまといながら、大分色あせてしまったちゃぶ台に教科書を広げていた。あいつは完全な手ぶらだったから、たぶんあれは俺の持ち物だろう。そのあたりに転がっていたものを拝借したんだと思う。勉強熱心なのを咎める必要もないので、距離をとって腰を下ろした。それにしてもどうもってなんだどうもって。
じろじろ見るのもどうだろうと思って、なんとなく視線をあちこちに彷徨わせる。だけどここは慣れ親しんだ自分の家で、目新しいものなんかどこにもない。だから必然的に目が向かうのは、いつもと異なる様相を呈している五月まわりになってしまって。
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:33:58.18 ID:YuPhG13q0
「ちょっと」
「悪い分かってる席外す」
居たたまれないことこの上なく、いっそしばらく出ていこうと決断。そっちのほうが双方の精神衛生にも優しいはず。風呂上がりに出歩くには少し厳しい季節だが、この空間と比べればチベットの高地だろうがロシアのはるか北だろうが大波荒れ狂うベーリング海だろうが天国だ。なんならいっそこのままカニ漁師にでもなってこようか。
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:34:33.25 ID:YuPhG13q0
「私、お風呂上がりの人を冬の外に追い出すような人間だって思われてるんですか……?」
「じゃあ他に何をしろと」
五月は呆れかえったような目をして、次に、呆れを一周させたような顔で苦い笑みをこぼしながら、
「勉強、教えてくださいよ」
なんて、一言だけ告げるのだった。
それはどうにも懐かしい響きで、だから俺はその感覚に一瞬だけ面食らいながら、どう答えたものかと、少しだけ頭を悩ませて。
「…………」
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:35:09.38 ID:YuPhG13q0
ああ、なんだ。
こうやって始めれば良かったんだ、きっと。
どこから間違ったかとか、何がいけなかったのかとか、そういうことを延々考え続けていたけれど、結局はここだ。一番最初から、俺は悪手を打っていた。そこからバタフライ効果のように波及していった影響が、今の俺たちを形成したんだ。
本当なら、あそこからやり直せるのが一番だったんだろうけど。
もちろん、そんな願いが叶うほどこの世界は優しく出来ていないから。
だから俺は、目の前にいる女の子の憐みに甘えて、安っぽい焼き直しをするみたいに。
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:35:51.95 ID:YuPhG13q0
「おう、任せろ」
それだけ告げて、五月の傍につける。この場にはもう、自分のアイデンティティだった満点の答案用紙もなければ、立ち位置を保証してくれるテストの順位表もない。俺をどんな人間だか確定させる証明書は、どこにもない。
でも、それでいいと思った。身分が関わらない実力勝負ということはつまり、これまで俺がどれだけ真面目に教師をやってきたかの真価を問われるということ。信用を掴むに必要なのは、自信と地力。
彼女と同じ視点で、ずらずらと並んだ問題文を読んでいく。もちろんのこと教科書は端から端まで理解しているので、困るようなことはない。
「どこからでもいいぞ」
こうして、多分最初で最後になる我が家を会場にした特別授業が開講した。一人の生徒に対し、一人の教師が必死になって指導する。
……まあ、これは、なんていうか。
世間一般に周知される、家庭教師のようだと思った。
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:36:42.06 ID:YuPhG13q0
瞼が少々重たくなってきたので時計を確認すると、もう日付が変わっていくらか経っていた。昨日は色々あって普段と比べても疲労度合いが段違いだから、このあたりでお開きにしてはどうかと進言する。
「じゃあ、そうしましょうか」
意外に素直に受け入れてもらえたのでほっと胸を撫でおろした。自分を犠牲に俺ごと徹夜で、なんて言い出したら大変だったから。五月の性格を考慮すると、そうなる確率が完全にゼロとも言い切れなかったし。
そうなればあとは眠るだけだと、押し入れにあるらいはの布団を引っ張り出した。なんとなく、客に使わせるなら親父よりこっちのほうがいいような気がしたから。そうしてから、俺の布団を極力離してセッティングし、二つの布団の間をちゃぶ台で仕切った。貧弱なバリケードだが、ないよりはマシだ。俺の行いを知っている以上、五月も落ち着いて眠れないだろうし。
それにしても、なんだろう。言い足りないことがあるからと言ってここまで来た割には、俺への愚痴や文句の類はまったく耳にしなかったような。もはやそんなことに拘泥する必要性が皆無だ、というところまで見下げられたということか。
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:37:26.40 ID:YuPhG13q0
今さら関係の修復だとかなんだとか生っちょろいことを言うつもりはなかったけれど、さすがにそれは堪えそうだ。まともに取り合うに値しない人間判定は厳しい。
でも、今は取りあえず眠ろう。五月を確保した旨は他の奴らに伝えたし、後はどうにかして連中に引き渡すだけだ。どうやって説得するかをこの眠たい頭で考えるのはまったく建設的じゃない。
消すぞ、と前置いてから消灯し、くたびれた布団の中に体を埋めた。おかしな動悸がずっとしているけれど、なんだかんだで疲れているせいか、この環境でもしばらくすれば眠れそうだ。
とにかく、明朝。困ったことは、起きた後の俺に丸投げしよう。
そう思いながらゆっくり瞼を閉じて…………行く最中に、謎の足音が聞こえた。
その足音の主は俺の頭付近で動きをぴたりと止めると、あろうことかそのまま俺の布団に潜り込んでくる。
普段なら寝ぼけたらいはの仕業だろうと片付けられるこの現象は、しかし彼女のいない今この状況においては決して成り立つはずもなく。
だからつまり、今俺の背中にぴったり付けている奴の正体は、考えるまでもなく自ずと明らかに――
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:38:17.44 ID:YuPhG13q0
「何してんのお前……」
「口ごたえする権利があるとでも?」
「さすがに今はあるんじゃねえかな」
「言ったでしょう、言い足りないって」
「だったら電気つけて普通に」
「顔の見える場所では言えないこともあります」
だからって、こんな場所で言えることもまあまあ限られてるんじゃないかと思うのは俺だけか。
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:39:01.29 ID:YuPhG13q0
「そのレベルの罵倒?」
「それとはまた、少し違って」
「だったらなんだ。どうせ反論は出来ないんだし、聞くだけ聞くけど」
諦め半分になっている気もするが、彼女の言うとおり、俺に拒否権などない。聞けと言われれば聞く以外の選択肢はない。
彼女が自分の腹の中にどれだけのものを溜めているかは知らないが、その原因を作ったのが俺である以上、聞き遂げないわけにはいかない。
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:39:35.44 ID:YuPhG13q0
「その投げやりな感じ、すごくイラっときます」
「眠気には勝てねえよ……」
ここ最近の不眠傾向と相まって、俺の体は自分が思う以上に参っている。布団に入れば眠るようにプリセットされている。だから、こんなおかしな状況になっても、睡魔はきちんと襲ってくるのだ。
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:40:28.27 ID:YuPhG13q0
「あのときのものすごく申し訳なさそうな態度は嘘だったのですか?」
「そうはならんだろ……」
「それなら、もっと相応しい態度があると思いません?」
「たとえば?」
「それを探すのはあなたの仕事です」
「前も言ったろ。俺は察しが悪いって」
「みんなと邪な関係を結んだら私がどんなことを思うかは察せませんでした?」
「…………」
「ほら、分かっているのに分かっていないフリをしていた人が、察しの悪さなんかに逃げないでくださいよ」
痛すぎるところを突かれる。俺にとってのそれは弁慶でいう向う脛なので、狙われたらただただ悶絶するしかない。
もちろんのこと、五月がどんな反応をするかの察しはついていたし、だからこそあれこれ策を講じて隠した。そんな俺が、下手な言い訳に自身の鈍感さを使うのは筋が通らない。
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:40:59.11 ID:YuPhG13q0
「……信頼を裏切る形になったのは悪かったと思ってるよ」
「じゃあ、どうして続けたんです?」
「それは、その、一つ隠したらもう一つ隠さなくちゃいけなくなって、その後は雪だるま式に」
「……そうでもして続けたいくらい、あなたにとって良いこともあったのでは?」
「その質問、素直に答えるとどうなる?」
「怒ります」
「じゃあ、嘘をつくと?」
「もちろん怒ります」
「なら、正直に言った方が身のためだと」
「ええ」
「…………そりゃあ、俺だって男だし」
「最ッ低」
「こうなるよな。知ってたよ」
だけど言わなかったら言わなかったで、それはここにいない彼女たちの信頼を裏切るようでどうしようもない。義理立てしなくてはならない方面が多すぎるがゆえにこうなったというのが簡潔なまとめになるのだろうか。
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:41:28.64 ID:YuPhG13q0
「よくもまあそんな口で嫌われたくなかったなんて言えましたね」
「ギリこんな口になる前の出来事だったろ」
「同じことですよ。私にとっては」
「違うと思う……いてて、分かったよそうだよ認めるよ」
口ごたえしたのでつねられた。力関係が分かりやすくていい。俺はイエスマンにならざるをえないってわけだ。
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:42:03.58 ID:YuPhG13q0
「……そんなに」
「ん?」
「そんなに、良かったんですか?」
「…………」
「私の信用を裏切るなんて酷い選択をしても良いかなって思えるくらい、良かったんですか?」
「いや、考えがそこに直通してたわけじゃ……」
再びつねられる。弁解の意図がなかろうと、今は五月に逆らえないらしい。
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:42:42.22 ID:YuPhG13q0
「でも、結果的にはそういうことじゃないですか」
「……そうだな。そうだよ」
「…………あなたは、本当に酷い人です」
自覚はあるので問題ない。杜撰な管理を重ね続けた結果、こうして五月を盛大に傷つけてしまっている。そこに関してはもう疑いようもなく、否定のしようもない。
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:43:32.39 ID:YuPhG13q0
「この一日で、あなたのことがものすごく嫌いになりました」
「それくらい嫌われるだけの残りしろがあったことの方が驚きなんだけど」
「殺意が湧きました」
「……あの、さすがに命だけは」
みっともない命乞いだ。下手を打てば殺されかねない状況に置かれているのだと今更気づく。痴情のもつれでの刃傷沙汰は良く聞く話だ。まさか、俺がその当事者になりかけているなんて思いたくはないが。
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/05(金) 20:44:16.96 ID:YuPhG13q0
「……ですが、あなたの教師としての手腕は否定できません。それは先ほど再確認してしまいました」
「残念ながら、そっちの手は抜けなかったもんで」
「不愉快です。すごく。この上なく」
「…………」
「もし、私にあなたなしでも自分の未来をどうこうできるだけの見通しがあれば、今すぐにでも三下り半を叩きつけられたのに」
「……お前の受験が終わったらさっさと消えるから」
他の四人をどうにかコントロールしていた約束を大きく破る形になるが、彼女たちも共犯だ。五月の意に沿う形を作るためには、それを破棄するくらいでないと。
幸か不幸か、俺がどんな道を選ぼうと、それが彼女たちの将来とバッティングすることはない。なら、ここからゆっくりフェードアウトして、今後の人生で中野姉妹に関わらないようにしたほうがいい。それが、ちょうどいい。
そんな形で、期せずして俺の将来設計が完成しかけた瞬間に。
240.18 KB
Speed:0.1
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報R
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
スポンサードリンク
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2026/05/10 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)