男「村が山賊に襲われて……」

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43 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/21(木) 22:33:32.23 ID:Cwiube5zO
貴族「何だ! これはどう言うことだ! 男!!」

富豪「そうだ! 私の跡継ぎを解放しろ!!」

土地持ち「貴族殿……貴方の責任であるぞ」

ザワザワザワザワザワザワ

男「……」パチン

女暗殺者「……」ナイフナゲ

成金「」グサッ

シーン

男「おぉ、静かになっていただけて良かった……あまり、進行の邪魔をしないはようにお願い致します」

貴族「き、貴様……」

男「それでは、皆様賭けてくださいませ。 最初の脱落者は最も、賭けた人数が少なかった者とします」

土地持ち「……おい! 君達、私の娘に賭けるよな! 君達の事業に誰が融資したと思っているんだ!」

富豪「賭けてくれ! 金は払う! 一人息子なんだ、彼がいないと、我が家が潰えてしまう! 賭けてくれ! 賭けろ!!」

男「貴族は説得しなくて良いのか?」

貴族「…………貴様は、気を、違えているのか?」

男「ん? 俺は貴族の条件通りにデスゲームを開いただけだ」

貴族「あっ……あぁ……ふざけ、……あぁ……」

男「貴族、賭けてないのはお前だけだ……」

貴族「……」

男「ほら、愉しい余興だ。 笑わないと……で、誰に賭ける?」

貴族「貴族娘に……賭けるしか無いだろ」
44 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/21(木) 23:03:28.26 ID:dNMhnvX1O
貴族「そんな………貴族娘……貴族娘……」ヒッグヒッグ

男「最初の脱落者の断末魔も終わったことですし……此処でお酒に合うお料理を振る舞わせていただきましょうか」

女暗殺者「……」つ皿

男「貴族娘のローストビーフ〜カルパッチョ風ソースに和えて〜……うん、美味しそうだ」

ウェ ナンデコンナ カエリタイ、カエリタイ

男「さて、進行に戻らせていただきましょうか。 次は先程、富豪息子に賭けた方々と土地娘に賭けた方々に分かれて争っていただきます」

富豪「我々に何をさせるつもりだ!」

男「早食い競争♪」

富豪「」
土地持ち「」

男「先に完食出来た方の生き残り……よーい、どんっ!」

富豪「食べろ!」

「いや、流石にそれは……」

富豪「食べろ!!」

土地持ち「誰か、頼む……食べてくれ、食べてくれ……」

「自分で食べろよ」

土地持ち「……んぐっ、うぇっ……んっ、んぐっ……」モグモグ

男「……ところで女暗殺者」

女暗殺者「……?」

男「貴族娘のローストビーフ……貴族娘は牛だったのか?」

女暗殺者「……」ウーン

貴族娘「」ボイン

女暗殺者「……」ペターン

女暗殺者「……」コクン

男「そうか、やはり人ではないよな……人だったらこんな酷い事をして、俺が平気なわけがないもんな」
45 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/03/22(金) 00:18:32.49 ID:AacvgUaO0
今日はここまでにします。
おやすみなさい。
46 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/23(土) 06:40:44.95 ID:AGPdquvk0
富豪息子「」

男「これは、不味そうだから廃棄しておきますね」ゲシゲシ

富豪「息子……そんな……貴様は何を蹴っている?」

男「何だろう? 人ならば、殺して蹴るなんて出来ないし……これは、何だ?」ゲシゲシゲシゲシ

富豪「蹴るな! 止めんか!!」ダッ

バシュン

革命軍長「……」E.クロスボウ

富豪「なぜ、革命軍が……此処に……」バタン

男「さて、最後のゲームを始めましょう」

土地持ち「待て! 何を言っている? 私の娘は生き残った……もういいだろ?」

男「それを決めるのは俺だ」

土地持ち「貴様は人の命を何だと思っている!?」

革命軍長「あんたらが言えた事か?」

土地持ち「黙れ! 革命軍が! 貴様ら虫けらの命と我が娘の命が同等なわけがないだろう! 答えろ! 男! 私の娘の命を何だと思っている!!」

男「そもそも、お前の娘は人なのか?」

土地持ち「」

男「お前は人なのか?」E.斧
47 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/23(土) 10:15:24.79 ID:tX/qvR88O
「「「かんぱーい!!」」」

革命軍A「いやぁ、男のお陰で上手くいったな」

土地娘「やめ、もう止め……ぃ、駄目、私を誰だと……んぁっ!」パンパン

革命軍B「富裕層どもの面! あの顔だけで一生酒が美味く飲める」グビグビ

土地娘「あぁ……中に……止めて、今終わった……ばかりぃぃぃいい!!」グボッ

革命軍C「違いない!」

革命軍長「……」グビッ

男「どうした、革命軍長?」

革命軍長「……男、お前はやりすぎだ」

男「俺は手を貸しただけだ」

革命軍長「……あぁ、俺達はやり過ぎたんだ」ハァ

革命軍D「湿気た面してないで、革命軍長もこっちに来て腰振れよ!」パンパン

土地娘「あぁ、駄目、私の体は……旦那様に捧げる為に……あぁ、もう、いやぁだよぉ」ポロポロ

革命軍長「……」バシュン

土地娘「あっ……あぁ……ありがとう……」バタン

革命軍D「あぁ! まだまだ使い足りないってのによ!」

革命軍長「これでは、富裕層のクズ共と変わらない。 まだ、革命が果たされたわけじゃないんだ。 酒はほどほどにしておけよ」サッ

革命軍A「……ノリの悪いやつ」

革命軍B「だが、頭は良い」

革命軍C「つまり、頭が良くてノリの良い新しいリーダーが要れば用済みって事だな?」

革命軍A「そういうことだな、男」

男「……」

革命軍B「あんたなら、誰も文句言わずに着いていくぜ!」

革命軍C「その為にもよ……革命軍長は消さないとな」
48 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/24(日) 05:58:45.68 ID:MSJ0JpqkO
革命軍長「男、こんな小屋に呼び出して……何の用だ?」

男「クロスボウを見せてくれ」

革命軍長「悪いな、お前の前で武器を手放すほど愚かじゃない」

男「手にとって見たいわけじゃない。 俺に向けてかまえてもらっても構わない」

革命軍長「……」E.クロスボウ

男「珍しい武器だ。 何処で手にいれたんだ?」

革命軍長「本を読んで自分で作った」

男「手間がかかるな。 弓では駄目なのか?」

革命軍長「革命軍の殆どが本来戦闘とは無縁の人間だからな……弓を訓練する時間が惜しかった」

男「引き金を引くだけで人を殺せる……狙いを定める訓練だけですむ」

革命軍長「そう言うことだ」

男「革命軍長は本当に革命軍の事を真剣に考えている」

革命軍長「……」

男「射っている姿が見たい」

革命軍長「良いが……何を的にすれば良い?」

男「……」バサッ

革命軍A「……」
革命軍B「……」
革命軍C「……」
革命軍D「……」

革命軍長「……それは射てないな」

男「君を殺そうと企てていた」

革命軍長「それでも射てない」
49 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/24(日) 06:09:16.28 ID:MSJ0JpqkO
男「何で殺さない……殺したら良い」

革命軍長「人を殺すのは辛い事なんだ」

男「それはどうして?」

革命軍長「押し潰されそうになる」

男「何に?」

革命軍長「罪悪感に」

男「」

革命軍長「彼等は牢にでも閉じ込めておくよ。 革命が済んだらどうするか考える」

男「それでも、殺した、お前は殺してる、富豪も、土地娘も殺してる……ころしたじゃないか!?」

革命軍長「殺さないといけなかったからな……平気なわけじゃない」

男「そうか……良いなぁ」

革命軍長「……」

男「村が山賊に襲われて、生き残ったのは俺一人になった」ブツブツ

革命軍長「村が山賊に襲われて、生き残ったのは俺一人になった」

男「!?」

革命軍長「山賊は富裕層に飼われている事が解って、革命を起こすことを決意した」

男「……お前は俺か? 俺なのか?」

革命軍長「俺は君だ」

男「そうか……そうか……ようやく会えた」
50 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/25(月) 01:00:34.75 ID:HDcsKFHw0
男「頭が痛い」

革命軍長「久しぶりに朝まで飲んだからな」

男「酒はほどほどにしておくんじゃ無かったか?」

革命軍長「仕方無いさ。 友との別れに素面ではいれないよ」

男「こんな俺を……友と呼ぶのか」

革命軍長「あぁ」

男「俺がしてきた残虐非道な行いは昨晩の酒の肴にしたはずだが?」

革命軍長「お前は確かに残虐非道だ……だが、悪じゃない」

男「……」

革命軍長「悪はお前の……俺達の村を襲った山賊達だ」

男「そうか、その言葉で救われた」

革命軍長「……本当にそんな小舟で良いのか?」

男「この国にいるのは辛い。 狂っていたからと言ってやり過ぎた」

革命軍長「他の島に着く前に……死んでしまうんじゃないか?」

男「そうだとすれば、それが俺の罪に対する罰なのだろう」
51 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/25(月) 01:10:45.10 ID:l21ENXDaO
角驢馬「メェェエエ!」

男「友よ……角驢馬を頼んだ」

革命軍長「あぁ、群を見つけて自然に返すよ」

男「ありがとう……何から何まで世話になる」

革命軍長「やり方こそ酷かったが、お前の革命軍に対する貢献は大きい……気にするな」

男「うちの村に伝わる傷薬……後、これは魔女の小屋で手にいれた丸薬だ。 餞別として受け取ってくれ」

革命軍長「ありがとう。 ……丸薬はどう使えば良い?」

男「緊張を緩和するものらしい……重要な会議の前にでも飲んでくれ」

革命軍長「……正気に戻ったなら、お前も此処で暮らして良いんじゃ無いのか?」

男「…………さらばだ、友よ」ギコギコ

革命軍長「あぁ、さらばだ」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/25(月) 02:48:20.47 ID:lbYH+5LRo
薬…?
53 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/25(月) 12:15:02.95 ID:nsQA/wfoO
男「海だ、何処までと海だ 」ギコギコ

男「俺が正気に戻るとそこは大海原だった」ギコギコ

男「あぁ、大陸が遠ざかっていく、俺が産まれた大陸が」

男「……サンドイッチでも食べよう」

カバン「」ゴソゴソ

男「サンドイッチが動いているのか?」

カバン「」ゴソゴソ

男「サンドイッチは動かない……」パカッ

女暗殺者「……」ハムハム

男「美味しいかい?」

女暗殺者「……」コクン

男「着いて、来ちゃったんだね」

女暗殺者「……」コクン

54 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/25(月) 12:27:04.14 ID:nsQA/wfoO
男「君は人か?」

女暗殺者「……」ブンブン

男「君は木か?」

女暗殺者「……」ブンブン

男「じゃあ……君は何だ?」

『魔狼を退治したら、あの女で遊ぼうぜ』

『あんたも好き者だね……のるけどさ』

『で、でも、ギルド長に告口されたら』

『死人に口無しってな!!』

女暗殺者「……私は」

『何で、落とし穴なんかあるんだ!』

『痛い……そこに針が仕込んであったのか? 痛い、血が止まらない』

『毒!? あぁ、助けてくれ女暗殺者! 同じパーティーの仲間だろ?』
55 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/25(月) 12:32:15.84 ID:nsQA/wfoO
男『……助けないのか? 同じパーティーの仲間らしいが』

女暗殺者『……』

『誰かいるのか!? 助けてくれ!! 助けてくれ!!』

男『君達は人か?』

『当たり前でしょ? 早く……助けて……』

男『では、人かどうか試してみよう』ヨイショヨイショ

『土! おい、止めろ! 埋めるな! おい!!』

男『ふう……疲れた。何も感じないな、人じゃなかったか……。 ところで、君は人なのかな?』

女暗殺者『……私は』

女暗殺者「私は貴方の道具です」ピタリ




56 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/25(月) 12:42:50.71 ID:nsQA/wfoO
男「道具か」

女暗殺者「……」コクン

男「林檎、剥ける?」

女暗殺者「……」コクン

男「舟、漕げる?」

女暗殺者「……」ギコギコ

男「万能だな」

女暗殺者「……」テレテレ

男「おいで、海の上は冷えるんだ……毛布が欲しい」

女暗殺者「……」ピタリ

男「暖かいな……」

男「あぁ、大陸が離れていく……女暗殺者、俺は悪じゃなかったらしい」

『この道を抜ければ、気付かれずに村の裏側まで来れる』

男「残虐非道だが、悪じゃなかったんだって」

『俺が見張りの番になったら、門の松明を消すから……それを合図にしてくれ』

男「なんかソレって……」

山賊長『……お前は何でこんな事をするんだ?』

男「愉快だな」
男『退屈なんだ』
57 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/03/25(月) 12:45:46.51 ID:nsQA/wfoO
本日は此処まで。

書く気が無くなるまで、この男の面白珍道中は続きます。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/25(月) 15:12:22.90 ID:HvVQGMp60
おつ
飽きて止めるときは一言言って欲しい
それまでは見るから
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/26(火) 00:25:20.62 ID:rznE/qQK0
乙期待
60 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/26(火) 06:18:11.79 ID:PDjCNEc3O
漁師A「おう、お前も来てたのか」

漁師B「仕事前のモーニングは大切だ」

漁師A「おいおい、海に出るつもりかい? 暫くは控えておいた方が良いだろうよ」

漁師B「あん? それはどういう事だ?」

漁師A「ほら、読みな」つ新聞

漁師B「戦争? ……あぁ、例の国か」

漁師A「嫌だねぇ……革命が終わって暫く大人しくしてるのかと思ったらよ」

漁師B「今度は他所様と殺し合いか……何でまた?」

漁師A「お前はもう少し世界情勢ってもんに興味を持たねぇといけねぇや」

漁師B「一介の漁師がそんなもんに興味を持ってどうするよ」

漁師A「馬鹿だねぇ……本当によ。 いいか? 俺らが一介の漁師だろうと海も1つ……即ち一海で有る限り、そこで仕事をする俺達は世界と繋がってるんだよ」
61 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/26(火) 06:26:23.76 ID:PDjCNEc3O
「モーニングセット、2つ」

漁師A「おっ! きたきた! 悪いね、店長……朝から騒いで」

「騒がしいのは嫌いじゃないさ」

漁師A「そうか、そうか!」

漁師B「ベーコンエッグにフレンチトースト、シンプルなサラダに深入りのコーヒー……あぁ、最近これを食べないと仕事に行く気にならねぇや」

漁師A「だから、今日は海に出るなよ?」

漁師B「俺らの国を挟んで戦争とは……迷惑なもんで」

漁師A「全くだ」

漁師B「それで、戦争の理由ってのは?」

漁師A「一介の漁師が知りたいのか?」

漁師B「良いか? 海が1つなら俺達は一海で、世界は何時も繋がって……何だっけ? さっきのかっこいい台詞?」

漁師A「馬鹿だねぇ」

漁師B「うるせぇな! 店長も笑うな!」
62 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/26(火) 06:40:13.62 ID:PDjCNEc3O
漁師A「革命が終わって、帝国側のトップが革命軍の男、革命軍長に変わったのは知ってるな?」

漁師B「おう! 漁師Aに聞いた!」

漁師A「帝国と武国が冷戦状態なのも知ってるな?」

漁師B「おう! 漁師Aに聞いた!」

漁師A「武国は帝国の富裕層を嫌っていたから、帝国の革命軍を支援していたんだ」

漁師B「おう……ん?じゃあ、トップが自分達が支援していた組織……味方になったんだから、戦争する意味はねぇじゃないか」

漁師A「それがよ、何でも平和調停を結ぶ大事な会合で、そのトップの革命軍長が武国の偉いさん達をぶち殺したらしい」

漁師B「はぁ? 何のメリットが!?」

漁師A「何のメリットもねぇよ。 気でも違えたのか、革命だ何だと言って争いが好きなだけだったのか……恩を痣で返された武国は帝国にすぐさま宣戦布告し戦争が始まった……てことよ」

漁師B「確かに俺達が漁をしている海域は危険だな……はぁ、仕事ねぇと儲けもねぇや」

漁師A「湿気た面してんじゃねぇよ。 ……食べ終わったら行くぞ」

漁師B「へ?」

漁師A「漁港市場で倉庫の整理の仕事があってよ……安い賃金だが儲けがねぇよりましだろ?」

漁師B「俺も行って良いのか?」

漁師A「おやっさんにお前の面倒見るように言われてるからな」ヤレヤレ

漁師B「ありがとよ! 持つべき物は頼れる兄貴分だ!」

漁師A「うるせぇや……店長、此処に勘定置いとくぞ」///
63 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/26(火) 06:51:32.47 ID:PDjCNEc3O
牛乳運び「……重、たい……えーと、カウンターに置いてて良いんでしたっけ?」

「……」コクン

牛乳運び「……はぁ、疲れた。 朝の配達、終了! そして、ようやく朝御飯!」

「モーニングセット?」

牛乳運び「流石店長さん! 解ってる! 愛してる!」

「……」ギロリ

牛乳運び「じ、冗談ですよ」

花屋「あら、牛乳運び……何時もより遅いんじゃない? 何時も開店前に運び終えてるって聞いてたけど」

牛乳運び「あー! 花ちゃん! ……それが、お父ちゃんが調子悪くてさ……へへ、少し出るの遅れた」

花屋「花ちゃんは止めなさい。 おじさんが……また、お見舞いに行っても良いかしら」

牛乳運び「来てくれるの!? お父ちゃん喜ぶよ……こんな美人さんに来てもらえるなんて」

花屋「そうね、喜ばせてしまうわね……私は美人だから」

牛乳運び「……相変わらずだね」

花屋「相変わらず、美人ってことね……ありがとう、知ってるわ」フフフ

64 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/26(火) 07:02:36.44 ID:PDjCNEc3O
牛乳運び「花ちゃんこそ、こんな時間に此処にいて良いの? 仕事は?」

花屋「今日はおやすみ。 明日から本気出すってやつよ」

牛乳運び「ふーん、休みの日に態々此処までモーニング食べに来たんだ」

花屋「休みの日だから態々此処までモーニング食べに来たのよ……店長さん、今日も美味しいわ」

「ありがとう」

牛乳運び「どうせ、さっきまで漁師Bさんがいたんでしょ?」

花屋「ちょっなっえっ! あわあわあわわわわ……ひゃっ、珈琲が……」バシャン

牛乳運び「解りやすいな」

「……」つタオル

花屋「ありがとう、店員さん」

「替えのコーヒーを用意しよう」

花屋「悪いわ。 溢したのはハコビンに原因があるのだから」

牛乳運び「ん? ハコビン?」ニヤニヤ

花屋「牛乳運びに原因があるのだから」

牛乳運び「モーニングセットが目当てじゃなくて、モーニングセットを食べに来てる漁師Bさんが目当てなんだよね……花ちゃん♪」

花屋「花ちゃんと呼ぶなと……えぇ、良いわ。 だったら、その宣戦布告を受けとりましょう」

牛乳運び「ん?」

花屋「貴女の好きな人は店長さんよね」

牛乳運び「ちょっ! 止め!」

花屋「モーニングセットを食べるのも、牛乳を運ぶのも店長さんに会うための……モゴモゴ」

牛乳運び「止め! 違! 花ちゃんそれは止めてよ!!」

「……」ギロリ

牛乳運び「店員さん、睨まないで!?」
65 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/26(火) 10:18:24.70 ID:fDMnMAFhO
花屋「それではそろそろ行こうかしら……この後、お見舞いにうかがっても?」

牛乳運び「うん! うちでお昼食べていく?」

花屋「あら良いの?……では、久しぶりに貴女の手料理をいただこうかしら」

牛乳運び「今日はピザ焼こうと思ってね♪」

花屋「えっ! ハコビンのピザ! やったー!!」

「……」
「……」

花屋「ゴホン……お勘定、置いとくわね」

牛乳運び「御馳走様でした!」
66 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/26(火) 10:29:03.02 ID:fDMnMAFhO
ガヤガヤ

運び屋「よぉ! 昼時は混んでるね」

「A定食か?」

運び屋「へっへーん、臨時収入があったからよ! 今日はS定食だ」

絵描き「儲け話か? 羨ましい」

運び屋「おっ! 絵描きさん……あんたに渡された絵葉書売れたよ♪ ほれ、これ報酬」

絵描き「おぉ、ありがたい! すまないね、運び屋さん」

運び屋「しかし、葉書に絵を描いて売るなんて良く思い付いたな」

絵描き「ここの店長さんの案でね。 小遣い稼ぎにやってみたんだが……上手く言ったか」

運び屋「おぉ、評判良いよ……季節に合わせて何種類か描いてくれねぇか?」

絵描き「あぁ、用意しておこう」

「儲け話とは絵葉書のことか?」つS定食

運び屋「あー、それもあるんだが……他にも色々とな」

絵描き「店長さん、良かったら何割か受け取ってくれ……提案してくれたんだ、取り分を受け取る権利はあるだろう」

「珈琲の代金としてなら、受け取ろう」

絵描き「ふふ、それは暫く通わなければいけないな」

運び屋「そうじゃなくても、通ってるくせに」

絵描き「違いない」
67 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/26(火) 10:45:51.23 ID:UWiJTZ5RO
運び屋「絵描きさんはこの街に住んで長いのか?」

絵描き「あぁ、5年ほどだろうか? 港町の景色に惚れ込んでしまってね」

運び屋「確かに良い景色だ。 海の男達は活気があって良いしな」

オイ! ホメラレタゾ! ハコビヤノニーチャン、アンガトヨ?

絵描き「もっと粗暴なものだと偏見を持っていたが、気の良い人ばかりだ」

運び屋「ここの生産物は高く売れる……今日はあまり市場は賑わってながったがね」

「帝国と武国の戦争で、沖での漁は自粛しているらしい」

運び屋「なるほどね……浅瀬だけじゃ取れるもんも限られるか」

絵描き「……店長さん、貴方は帝国の出身じゃなかったか?」

運び屋「そうなのか?」

「昔のことだ……この店と気の良い常連と彼女が入れば問題は無い」

漁師A「おっ! 惚気話とは……愛妻家だね」

漁師B「A定食2つ!」

運び屋「午前の仕事は終わったのかい?」

漁師A「あぁ、漁港主さんのお陰で何とか今日の分は儲けさせていただいたからな」

漁師B「疲れたけどな……さぁ、飯だ!」

絵描き「愛妻家……店長さんと店員さんはそういう関係だったのか?」

運び屋「確か、結婚はしてないんじゃ……まぁ、どちらにしても大事にはしてるよな」

漁師A「俺も見習わねぇとな」

漁師B「漁師Aが何れだけ見習っても、愛妻家じゃなくて恐妻家だろ?」

漁師A「うるせぇ!」ポコッ

ハッハッハッ! ガヤガヤ ウマイナ ガヤガヤ
68 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/27(水) 06:40:54.72 ID:2x/7R9h+O
初老「やぁ」

「こんにちは」つ珈琲

初老「注文しなくても、欲しいものが出てくるのは良いね」ズズ

「……」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……ふふ」

「……?」

初老「……この歳になっても楽しめる物語があるのは良いね、実に良い」

「退屈していないのなら、何より」

初老「退屈? もうすぐ愉快な事がおこるしね」

「愉快な事?」

初老「私と君の仲だ。 何れ教えてあげよう」

「それは……楽しみだ」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……おっと、もうこんな時間か」

「……夜の準備をしないと」

初老「夜は酒場か……忙しいね」

「退屈しないさ」

初老「ならば、愉快なのかな?」

「……」

初老「ふふ、ご馳走さま」チャリン
69 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/27(水) 06:54:29.38 ID:2x/7R9h+O
漁師A「かーーーっ! この一杯のために働いてるな!!」

漁港主「隣良いか?」

漁師A「おっ! これは漁港主の旦那! あぁ、一緒に飲みましょうぜ」

漁港主「噂には聞いていたが、此処は随分と賑わっているんだな」

漁師A「夜になれば街中の漁師どもが飲みに来るもんで……旦那は初めてですかい?」

漁港主「あぁ、たまには外で飲みたくてな……てきとうにツマミを頼む」

「……」コクン

漁港主「美人だな……無口だが」

漁師A「その歳で枯れてねぇのは凄いと思いますが……へへ、ここの店員さんには手を出さない方が良いですぜ?」

漁港主「何故?」

漁師A「お尻触った馬鹿が絞め落とされた事があって……ありゃあ、何らかの武芸を嗜んでる動きですわ」

漁港主「馬鹿ってどうせ、漁師Bだろ?」

漁師A「ハッハッハッ! 大正解!!」

漁港主「で、その弟分はどうした?」

漁師A「最近、夜は勉強してるらしくてね。 飲みに誘っても来ないんですわ」

漁港主「ほう、それは関心だな」

漁師A「馬鹿なりに頑張ってるらしく……俺は良いんですけどね、明日も馬鹿に仕事をやってくれませんか?」

漁港主「お前は可愛がり過ぎてると思うぞ」

漁師A「ゴロツキだった俺を更生させてくれたおやっさんの忘れ形見だ……可愛い弟分なんですよ」

漁港主「知らないみたいだから教えておいてやる。 俺は律儀な男には義を通す」

漁師A「?」

漁港主「二人分の仕事見つけといてやるよ」

漁師A「流石、旦那だ!」
70 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/28(木) 12:15:31.93 ID:g2h8uwPoO
貿易商「随分と羽振りの良いもんで」

漁港主「気に触る言い方をしてくれるな、貿易商」

貿易商「漁港主さんが港の一部でも明け渡してくれたら、自分の羽振りも良くなるんですがね」

漁港主「ここは漁師の街だ。 その伝統は守らなければならない」

貿易商「この街の発展のためには漁港を貿易港に変えた方が賢いのでは?」

漁師A「酒が不味くなる……さっさと、酔い潰れて帰りな」

貿易商「私は漁港主さんと話をしているんですが」

漁師A「へん!」

「漁師A、何の話だ?」

漁師A「こいつが、漁港を買い占めて貿易港に作り直そうとしやがってるんだ」

「漁港と貿易港、どちらもやることはできないのか?」

漁師A「海に面してる土地も限られてるからよ……どちらもっていうのは」

「なら、海に面している土地を増やすしかないな」

漁港主「!?」
貿易商「!?」

漁師A「海に面している土地を増やす?」

漁港主「……陸地を掘り、開拓すれば可能か……しかし、それにも限りがある」

貿易商「開拓した所を中心に海上に建物を建てれば……ふむ」

漁港主「なるほど、それなら出来そうだ」

貿易商「しかし、大規模な工事になる人手が……」

漁師A「戦争のせいで漁に出れない漁師達が何人がいるんだがよぉ……貿易商」

貿易商「なっ! 私は君達を見下していた……そんな私に協力すると言うのか!?」

漁師A「伝統も守れて、街も発展するっていうなら悪くねぇさ。 俺達は海の男である前にこの街の男だ! そうだろ?野郎共!!」

オー! イイゾ、漁師A ヤッテヤンヨ ヤッテヤルッテー

貿易商「……君達」

漁港主「私も出来る限りの協力をしよう」

貿易商「漁港主まで!?」

漁港主「貿易港があったら、街がより豊かになるんだろ?」ニカッ

貿易商「今までの非礼を詫びる……すまなかった。 よろしく頼む」ガシッ

漁港主「あぁ!」ガシッ
71 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/28(木) 12:27:39.47 ID:g2h8uwPoO
漁師A「へぇ、疲れた」

漁師B「漁とは別の筋肉使ってる感じだな」

漁師A「しかし、開拓も随分進んだなぁ……街の漁師達総出でやったら早い早い」

「サービスランチだ」

漁師A「サービスランチ?」

「貿易港の工事に参加している人には無料で提供している」

漁師B「おぉ! それはありがたい」

「代金は貿易商がまとめて払っている……遠慮するな」

漁師A「いけすかねぇ奴かと思ってたが、意外とそういう面倒は確りみてくれんだな」

漁師B「貿易港を作るのが悲願だったみたいだしな……美味い!」モグモグ

漁師A「明日から、建物作りだとよ……海上に上手く作れるのかねぇ」

「運び屋が幾つか設計図を貿易商に渡していた」

漁師A「運び屋が? あぁ、他の都市の手法を参考にするのか」

漁師B「ごちそうさん……漁師A、先に行ってるぜ」

漁師A「おう、俺も食べ終わったらすぐに行く!」
72 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/28(木) 12:39:24.38 ID:g2h8uwPoO
絵描き「それで、店員さんはどっちが良いと思う?」

「……」

絵描き「こっちかな?」つ絵

「……」ウーン

絵描き「こっち?」つ絵

「……」コクン

絵描き「B案に1票ね……ありがとう」

花屋「絵描きさん……店員さんをナンパなんて、店長さんに言い付けてしまおうかしら?」

絵描き「ち! 違いますよ……貿易港の看板のデザインを頼まれて」アセアセ

花屋「あらそうなの……私も見て良いかしら?」

絵描き「是非、意見をおくれ! A案とB案まで絞れたんだが」

花屋「私は……どちらも悪くないわね」ウーン

「……」つ珈琲

花屋「ありがとう……あら、店長さんは?」

絵描き「あぁ、現場に差し入れを持っていってるらしい」

花屋「なるほど、牛乳運びも現場に差し入れを持っていくって行ってたわね……そのまま、デートでもしてきたら良いのだけど」

絵描き「店長さんと店員さんは付き合ってないのか?」

「……」コクン

花屋「私はB案の方が好きかしら」

絵描き「B案に1票ね……A案、駄目かな?」

花屋「看板というより、絵画という印象が強すぎるのよ」

絵描き「むむむ」
73 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/03/30(土) 05:06:26.06 ID:VCPQGw0BO
運び屋「……」キョロキョロ

運び屋「……よいしょ」ホリホリ

運び屋「……」ウメウメ

「やぁ」

運び屋「!?」ビクッ

「こんばんは」

運び屋「こ、こんばんは……店長さん」

「何をしていた?」

運び屋「いや、えっと……何もしてない」

「……まぁ、一部始終見ていたが」

運び屋「俺じゃない! 俺が殺したんじゃない! 頼まれて……その、埋めただけだ」

「この手紙を届けてほしい」

運び屋「言わないでくれ……」

「この手紙を届けてほしい」

運び屋「……」

「この手紙を届けてほしい」

運び屋「解った……あんたには逆らわねぇよ……だから、この事は秘密な」
74 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/02(火) 07:19:08.97 ID:qupPXbrAO
漁師AB「「かんぱーい!」」

漁師B「ついに完成したな! 貿易港!」

漁師A「馬鹿、まだ外観だけだ……中身はむしろ今からよ」

漁師B「でもよ! ようやく戦争も終わって海に出れるようになったんだ! もう十分じゃ無いか?」

漁師A「乗りかかった船だ。 俺は最後まで貿易商の旦那に付き合うぜ」

漁師B「随分と仲良くなったな」

漁師A「筋を通す人は嫌いになれねぇよ……漁は漁師Bに任せた」

漁師B「あいよ、アニキの分も確りとやってくる」

漁師A「……へへ、随分と頼りになる顔になったな」

漁師B「なっ」///

漁師A「明日の打ち合わせもあるしよ、今晩も貿易港に泊まるから嫁さんに伝えといてくれ」

漁師B「最近ずっとだな……寂しがってたぜ」

漁師A「恐妻も少しはましになったらいいんだがよ」

漁師B「ははは……そう言えば、貿易港に小舟が停まってたがあれは誰のだ?」

漁師A「いんや、知らねぇ」

「俺のだ……釣りでもしようと思ってな」

漁師B「言ってくれたら、俺らの船に乗せたってたのに水臭い」

漁師A「違いない! 店長、今度乗せてやるよ!」バンバン

「ありがとう」イタイ
75 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/02(火) 12:13:09.90 ID:qupPXbrAO
初老「……随分と忙しそうだね」

「今日、宴会があるからな」

初老「あぁ、貿易港の開港は明日か……それはめでたい」

「あぁ、ようやくだ」つ珈琲

初老「ようやくだね」ペラペラ

「……」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……あぁ、店長君」

「何だ?」

初老「漁師A君に言伝てを頼めないかな?」

「かまわない」

初老「明日、全員酔いつぶれていたら台無しだ。 早めに帰るように……とね」

「解った。 伝えておく」

初老「頼んだよ」

「……」

初老「……ふぅ、ようやく読み終わった」パタリ
76 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/04(木) 12:33:30.98 ID:X4MZ5L2WO
貿易商「諸君! 本日は集まってくれてありがとう!」

パチパチパチパチ

貿易商「諸君らの勤労のお陰で無事貿易港が完成した……粗暴な漁師とバカにしていた自身を恥ずかしく思う」

漁師A「今はどう思ってるんだよ?」

貿易商「誇り高き海の男達だと理解したさ……君達は勤労で、強靭で、何より誠実な男達だ!」

ソノトオリ! ワカッテンジャネェカ!

貿易商「今日は私の奢りだ……好きなだけ、飲んで、騒いで、楽しんでいってくれ!」

漁港主「そのためには早く乾杯の音頭をとってもらわないとな」

貿易商「なら、漁港主も前へ……私は貴方と一番最初に乾杯したい」

パチパチパチパチ

漁港主「あぁ、勿論。 友よ、街の更なる発展を祝って」

貿易商「貿易港と漁港の繁栄を願って」

「「「かんぱーい!!」」」

ガヤガヤ ドンチャン ガヤガヤ ワーワー

漁師A「おーい、店長さんよ」

「何だ、酒か?」

漁師A「少し話がしたくてな」

「かまわないが」

漁師A「……あんた、もっと欲張っていいんじゃないのかい?」

「……」

漁師A「漁港と貿易港の共存案……元をただせばあんたの一言から始まったんだからよ」

「そうだったかな……覚えてない」

漁師A「まぁ、あんたがそれで良いなら良いがよ……何か得るものはあったか?」

「そうだな…強いていうなら、楽しみは得た」

漁師A(町の発展が楽しみとは)ヤレヤレ

漁師A「あんた……漢だねぇ」

「そうだ、漁師Aに言伝てがある」

漁師A「ん?」

「初老が今日は早く帰るようにって」

漁師A「そうかい、そうかい…明日、全員酔いつぶれてちゃいけねぇな」

「これ以上、恐妻家にもなりたくないだろ?」

漁師A「違いねぇ! たまには早く帰って可愛がってやるか!!」ハッハッハッ

77 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/04(木) 12:35:40.36 ID:X4MZ5L2WO
漁師A「帰る前に1つ良いか?」

「何だ?」

漁師A「名前……店長の名前を教えてくれよ」

「そう言えば、名乗ったことがなかったな。 俺の名は」

男「男……帝国にいた頃はそう呼ばれていた」
78 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/04(木) 12:44:44.90 ID:X4MZ5L2WO
漁師A(へぇ、手土産まで貰っちまった……漁師嫁、喜ぶかな?)ランラン

漁師A「幸せだな」ボソッ

漁師A(宴会の誘いを断ってでも勉強する勉強熱心な弟分、気前の良い雇い主に気の良い漁師仲間……男と言う最高の友人…ただのゴロツキだった俺には勿体無いや)ハハ

漁師A「おぅ! 帰ったぞ!」ガチャ

アンアン…イイ、モット

漁師A「おい、帰ったぞ……?」

イイ、ダシテ、ナカニ…アァン

漁師A「……おい、何してんだ?」ワナワナ

漁師B「」
漁師嫁「……へ?」アヘアヘ

漁師A「うちの嫁に何してやがんだ! 漁師B!!」

漁師B「あ、あにき、何で……今日は宴会で遅くなるって……何で」ワタワタ

漁師嫁「漁師B! 逃げな! 殺されちまうよ!」

漁師B「は、はい! 姐さん!」ダッ

漁師A「待て! ぶっ殺してやる!!」ダッ
79 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/04(木) 12:52:51.37 ID:X4MZ5L2WO
漁師B「なんで、今日は帰ってこないって、初老さんが……はぁはぁ、くそ、くそくそ!!」タッタッタッ

漁師A「待て! この野郎! 勉強するふりしてうちの嫁に手を出しやがって! 今までの恩を全部仇で返しやがったなぁ!!」ダッダッダッ

漁師B(速い……追い付かれる。 漁港から海に出て……いや、アニキの船もあるんだ、逃げきれない)

漁師B(そういえば、貿易港に店長の小舟があるって言ってたな……漁港と貿易港は離れてるからそこから海に出れば逃げ切れるか…よし!)

漁師A「ぶっ殺す! ぶっ殺す! ぶっ殺す!」

漁師嫁「あらあら、更生した何だていっても結局はゴロツキなのね」フフフ

花屋「……」ブツブツ

漁師嫁「あら、花屋さん……こんな時間にお散歩かしら?」

花屋「漁師Bを誑かしやがって、ビッチ、殺してやる……殺してやる」E.鋏

漁師嫁「なっ、違うわよ! 漁師Bの方から誘って……来ないで!来ないで!…きゃぁああ!!」
80 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/04(木) 13:00:40.07 ID:X4MZ5L2WO
花屋「殺っちゃた……私、人を、殺して……」トボトボ

花屋(ハコビンなら……ハコビンなら匿ってくれる)

花屋「いや、捕まりたくないもの…ハコビン、助けて、助けて」トボトボ

花屋「牛舎……明かりが着いてる」

花屋「ハコビン……いるの? お願いがあ」

牛乳運び「……」ハァハァ
牛乳父「」

花屋「は、ハコビン」

牛乳運び「はぁはぁ……見た?」E.包丁

花屋「何で、何で、自分の父親を……ハコビン、何で」

牛乳運び「だって、店長さんが邪魔だって……お父ちゃんがいなくなったら一緒になってくれるって」

花屋「」

牛乳運び「だからさ、見ちゃったさ……花ちゃんも邪魔だなぁ」

花屋「嘘よ……こんなの嘘よ……死にたくない、止めて止めて止めて!」

牛乳運び「これで、店長さんと一緒に一緒にいられる……あはははははははははははは!!」グサッ
81 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/05(金) 12:08:58.66 ID:jfFfND1+O
漁師B「あった! あれだ! 逃げ切れる!」

漁師A「あいつ、男の船を盗みやがった! 戻ってこい! ……くそ、漁港まで船を取りに行ってたら間に合わねぇか」

ギギギギギギ

漁師A「何の音だ?」

ギギギギギギ

漁師A「男の小舟から伸びてる鎖が、貿易港の建物の柱に食い込んでやがる……おい! 漁師B止まれ! これ以上進んだら!!」アセアセ

バキッ バタンバタンバタンバタンバタンバタンバタン!!

漁師B「へ? ど、どうして貿易港が倒壊して…なんで」

ガサガサ

漁師B「ひっ! ……何だこの鞄?」

「……」ヒョコ

漁師B「店員がなんで鞄の中から!?」

女暗殺者「……」ニッコリ
82 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/05(金) 12:16:07.38 ID:jfFfND1+O
貿易商「な、何だ今の音は!?」

漁師C「大変だ! 貿易港の建物がドミノみたいに倒れやがった!!」

貿易商「なっ、何だと……」サー

漁港主「何でそんなことに」

漁師C「漁師Aと漁師Bが喧嘩したみたいでよ…クソッ、馬鹿野郎どもが」

漁港主「二人は?」

漁師C「漁師Aはうちの若いのに捕まえさせたが……漁師Bは海の上で浮いてたって…とりあえず、皆来てくれ!!」

ザワザワ ナンダッテンダ ザワザワ 漁師Aメフザケヤガッテ

男「……お代は後でかまわない」

貿易商「あぁ、貿易港の様子をみてくるよ」ヨロヨロ
83 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/05(金) 12:56:15.68 ID:jfFfND1+O
初老「……おや、宴会は?」

男「貿易港で何かあったみたいでな」

初老「……建物がドミノみたいに倒れていたね」

男「……」

初老「店長君……私がやったことは些細な事なのだよ」

男「……」

初老「漁師嫁を唆して、漁師Bと浮気をさせて……その現場に漁師Aを遭遇させる。 その程度の悪戯さ」

男「……」

初老「私の想定では漁師Aが漁師Bを殺して終わる筈だったが……どうして、事態がここまで大きくなったのだろうね」

男「……」

初老「君は何をしたんだい?」カチャ

男「それは?」

初老「銃さ……鉛を撃ち出して君の頭蓋骨ぐらいなら簡単に砕ける大人の玩具さ」

男「そうか」トンッ

初老「それは?」

男「ウィスキーだ。 男達の喧騒と女の嘆きが聞こえる夜に良く合う大人の飲み物だ」

初老「……いただこう」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/06(土) 21:16:18.59 ID:N0J++wDNo
今きた
続きがすごく気になる
85 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 02:30:35.18 ID:R5MvulLiO
初老「……確かに合うね、この惨状が酒のツマミになるとは不勉強だった」

男「惨状?」

初老「ふふ、私も君もここで出来る悪事はやり尽くしただろう。 今晩中にこの町を一緒に出ないか?……脚は用意してある」

男「すまない、俺は明日の朝までこの町にいなくてはならない」

初老「何故だ? 君が仕組んだ事がバレたらただじゃすまない……そうだろ?」

男「せっかく仕組んだんだ、最期まで見届けないとな」

初老「何ヵ月もかけて、漁をそっちのけで作った貿易港が一晩で全壊し、外は乱闘騒ぎだ……死人まで出ている」

男「そうだな」

初老「これより先の悲劇があると」

男「悲劇?」

初老「解った……私も明日の朝までこの町にいよう。 今日は失礼するよ」チャリン

男「おやすみ、初老」

ガチャッ

女暗殺者「……」

男「おかえり……なぁ、独り言を聞いてくれないか?」

女暗殺者「……」コクン

男「初老が惨状やら、悲劇やらって言ってたんたが」

女暗殺者「……」

男「今日は何か悪いことがあったのかな?」ウーン
86 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 02:45:48.62 ID:R5MvulLiO
貿易商「…………」ボロボロ

漁港主「朝か」

貿易商「最悪の朝だ……最悪の朝だ! これだから、この町の漁師なんて! 漁師なんて!」バシッバシッ

漁師A「」

漁港主「死体を蹴るな……酷い騒ぎだったな。 まだ、事の全体像が掴めん」

貿易商「あぁ」ガクッ

漁港主「死者は牛乳父に花屋、漁師A、漁師B、漁師嫁……後、倒壊した時に貿易港には誰かいたのか?」

貿易商「若い衆が何人もいた……建物の下は死体だらけだろう」

漁港主「……酷い有り様だな」

貿易商「全財産を注ぎ込んで作った貿易港が……私も首をくくるしかないか」

漁港主「今日、最初の船が来るんだったな」

貿易商「あぁ、貿易港が無いなら引き返してもらうしか……うぅ、無駄になった航海費の請求が」ガクガク

漁港主「……漁港の一画を使ってくれ」

貿易商「良いのか?」

漁港主「私が漁師達を御しきれなかったのが責任だ……最悪の状況だが、これ以上悪くなることも無い」

貿易商「これ以上悪くなることも無いか……良しやってやる! まずは最初の船と良い取引をして少しでも儲けを出そう!」

漁港主「あぁ、私も最後まで手伝う。 2人でこの港町を建て直そう」

貿易商「と、そんな話をしていたら我々の希望の船が見えてきたな」

漁港主「あぁ、大きな船だ。 大砲まで積んである」

貿易商「!?」

漁港主「なぁ、貿易商……貿易船とは帆にドクロのマークを描いているものなのか?」タラリ

貿易商「か、かか、海賊船……だと」
87 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 14:54:32.64 ID:R5MvulLiO
初老「」アゼン

男「……女暗殺者、ケチャップで口が汚れた」

女暗殺者「……」フキフキ

初老「な、何だこれ?」

男「新しいモーニングセットだ。 レタスとベーコン、チーズにケチャップで味付けしたサンドイッチだが……美味しくなかったか?」

初老「そんなことは聞いていない! 何故、町が海賊に襲われている!? これも君がしたことなのかい?」

男「貿易港を開こうとして商品をため込んだ港町。 それが一晩で倒壊し、町を守る海の男たちもいない」

初老「彼等にとっては狙い目ではある……あるが……」

運び屋「初老の旦那、お迎えに……ひっ! 店長さん!?」

男「運び屋の男に処理させていたのは初老か……儲け話、納得した」

初老「そういう君は運び屋を使って港町が昨晩こうなることを海賊に伝えていたんだね……人でなしが」

男「人でなし? ん? 俺は人では無いのか?」ブツブツ

女暗殺者「……」つ丸薬

男「……ん、すまない。 正気に戻った」

初老(正気に戻った? 私には狂っている男を更に狂わせて正気に見せているように見えるがね)

初老「私は別の町に行こうと思うのだが、君も宛がないならついてくるかい?」

男「あぁ、助かる」

初老「それではいこうか」

男「その前に」ンンン

初老(咳払い?)
88 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 14:57:33.05 ID:R5MvulLiO
男「町が海賊に襲われて、生き残ったのはほぼ俺一人になった」キリッ

初老「タイトルコール!?」

女暗殺者「始まるよ♪」キュピーン

初老「可愛いな!?」

運び屋(何で、3人ともこんな惨劇を目の前にしてふざけてられるんだ)ガタガタ
89 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 19:33:14.44 ID:R5MvulLiO
男「女暗殺者……掃除は終わったか?」

女暗殺者「……」コクン

男「お皿は棚にしまったな?」

女暗殺者「……」コクン

男「ほっぺに美味しそうなソースがついてるが……摘まみ食いも終わったのか?」フフフ

女暗殺者「///」コクン

男「顔を洗っておいで」

カランカランカラン

初老「やぁ、男君」

男「久しぶりだな、初老」

初老「新しい店は順調かい?」

男「良い物件を紹介してもらったお陰でね」

初老「そうか、そうか……角驢馬ブレンドというのは?」

男「月替わりのオススメブレンドだ。 今月は武国の湖近くで取れた豆を主体として使っている」

初老「武国の前は酸っぱいからねぇ……」

男「フルーティーとも言えるが。 濃厚な甘味と一緒に味わうと化ける」

初老「例えば?」

男「お勧めはスィートポテトか……武国のあんこを使った饅頭もある」

初老「スィートポテトか饅頭か……では、武国の戦勝祝いに饅頭としよう」

男「解った」
90 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 19:47:23.21 ID:R5MvulLiO
初老「帝国の革命軍長の公開処刑は酷い有り様だったようだね」

男「公開処刑……記事を読んだが、あれは公開拷問だろ」

初老「四股を馬に引っ張らせてもぎ取り、簡単には死なないように工夫した長さの縄で宙ぶらりんか……良い香りだ」

男「待たせたな。 饅頭もすぐに出す」つ饅頭

初老「……おぉ、フルーティーだ。 嫌な酸味が無い!」

男「淹れた後に表面の泡を取れば、油っぽい酸味が減る……わざとその雑味を楽しむのも良いが」つ饅頭

初老「なるほど、この食べ合わせは良いね……武国の菓子も侮れない」

男「……」

初老「……ところで、感想は無いのかな? 君の母国が滅びたことにさ」

男「特には何も感じなかった。 初老は何か感想があるのか?」

初老「そうだね、残念に思う」

男「というと?」

初老「私が破滅させられる国が1つ減った」

男「玩具を無くした子供のようだ」

初老「童心を忘れない……若作りの秘訣さ」
91 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/04/07(日) 19:54:57.62 ID:R5MvulLiO
誤字だらけですみません。

武国の前→武国の豆
【最初の】つ饅頭→珈琲

です。

書き溜めなく、その場その場で思い付いた事を書いているので場面が急に変わったり誤字が今後も多くなると思います。
どんな形であろうと、物語が終わるまでは書く事だけは約束いたしますので、気に入っていただけた方はお付き合いいただければ幸いです。
92 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 20:01:53.31 ID:R5MvulLiO
男「初老は国を滅ぼしたいのか?」

初老「私の思惑通りに人々が破滅するところが見たい……と言った方が正確かな」

男「港町では悪いことをした」

初老「いや、あれはあれで楽しかったよ……寝取られたような感覚でもあるが」クス

男「……」

初老「最近は何かしてないのかい?」

男「店の方が忙しいからな……退屈はしていない」

初老「ならば、愉快なのかな?」

男「……さてね」

初老「明後日の夜、此処を貸し切らせてもらっても良いかな?」

男「かまわないが……何をするんだ?」

初老「いや、ちょっとした会合だよ」
93 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 20:13:20.42 ID:R5MvulLiO
作家「店主殿、ウィスキーをいただけるかね?」

男「あぁ」つウィスキー

作家「ありがとう」

娼婦「初老先生ったらまだ来ないのかしら」

大男「呼び出した本人が一番おそいってのは気に入らねぇな」

作家「これも演出なのでしょうな! 黒幕はデザートが出された後に登場するぐらいで丁度良い……と言ったところですかな」

大男「わけが解らねぇ……おい! 店主、何でも良いから肉寄越せ! 肉!!」バンッ

男「……焼き加減は?」

大男「生で良い」ガルルル

娼婦「野性的ね……良いわ」ウットリ

薬師「そうか? 僕は乱暴な男は好かないな」

大男「俺もお前みたいなチンチクリンな女なんか好みじゃねぇよ!」

薬師「それは何より」

大男「女だから殴られねぇとか思うなよ?」グググ

男「……黒幕は食後の珈琲に入れる角砂糖のようなモノか」フッ

大男「あん?」

初老「皆、待たせたね……それでは、会合を始めようか」
94 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 20:34:56.28 ID:R5MvulLiO
初老「悪党諸君、忙しくあるべき夜の時間を奪って 申し訳無いが今宵は人に害することを娯楽とするもの同士、親睦を深めていってほしい」

パチパチパチパチ

初老「後何人か声をかけているんだがね……本日はこれだけのようだ」

作家「それは残念! 無念! また来週のお楽しみといたしまして……自己紹介などいかがですかな? 私、皆様方がどれ程の人間のクズ……悪党なのか気になりますゆえ」

大男「あん? 誰がクズだ!」バンッ

作家「い、いやだなぁ……褒めているというのに」

初老「私の口から一人一人紹介しようか……まずは作家君からだね」

初老「作家……悲劇を喜劇的に喜劇を悲劇的に書く奇才の小説家。 リアリティーのある人の破滅の過程を描く、自殺観測人……いや、自殺の火付け人かな」フフッ

作家「たまたま、私が取材した方々が何名か自殺しただけだというのに……酷いですな」ハッハッハッ

大男「まどろっこしいヤツだ」

初老「君からしたらそうだろうね」

初老「大男……殴り殺し、原初の殺人鬼と恐れられる男。 素手で人を殺める事に快楽を感じる殺人衝動、キリングハイの持ち主」

大男「人と殴り殺すのとセックスは変わらねぇからな」ニタァ

薬師「変態だぁ……」

大男「あん? 殴り犯すぞ」ギロッ

薬師「ひっ」

娼婦「殴られるのは嫌だけど、犯すだけなら相手になるわよ?」

初老「娼婦、殺しに快楽をおぼえるのではなく、快楽で殺す夜の蝶。 腹上死から、痴情のもつれまでお手のモノの希代の悪女」

娼婦「先生、そんな言い方酷いわね。 私は快楽を説いてるだけだというのに」ヨヨヨ
95 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 20:48:59.30 ID:V5+UMle4O
初老「さて、最後は薬師だね。 私と一番思想が近いわけだが」

薬師「そうですね」

初老「薬師……自身の調合した薬が人体にどのような影響を与えるか、その研究にしか興味の無い女。 彼女を説明するなら、この前の連続変死事件が解りやすいかな」

作家「ほう……人体が急に内側からは爆ぜたというあの」

薬師「あぁ、あれは僕の作品さ」ドヤッ

作家「それは是非!是非!是非! 目の前で見てみたい! 描写したい……そうですな、集団自殺しようとする方々に渡したいですな!!」

大男「それの何がおもしれぇんだよ」

男「一人目の凄惨な死を見ても、同じ薬で自殺をしようとするか否か……なるほど」

作家「えぇ、まさしく……閉じ込めて、最後の1人には自殺を止める選択肢を提示すれば」

男「薬の飲ませ合い……殺し合いに発展すると、良く思い付くな」

作家「店主殿も中々の理解力で……私達、趣味が合いそうですな」ガシッ

男「あぁ」ガシッ
96 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 21:03:38.28 ID:V5+UMle4O
大男「最後の一人……あいつは?」

男「……」

初老「彼は会合の場を提供してくれているだけだからね……どうだい、君も参加するかい?」

男「残念ながら、人を殺した事など無くてね。 見ているだけで十分だ」

大男「つまらねぇヤツ」

初老(人を人として認識してないんだよね……積極的に参加はしてくれないか)ザンネン

初老「それでは、紹介はほどほどに……後はお酒でも飲みながら悪事を自慢し合うもよし、提案し合うもよし……仲良く楽しんでいってくれたまえ」

作家「薬師殿! 薬師殿! 先程の薬の話なのですが!!」キラキラ

薬師「提供するのはかまわないが、無料ではな」

男「作家は何人か死にたがっている人を知っているのだろ? それを試験体として薬師に紹介するのはどうだ?」

薬師「それは良いね。 試してみたい薬があるんだ」チビチビ

作家「ふむん、悪くありませんな。 私もその観測にお付き合いしても?」

薬師「ククク、かまわないよ……君も来るかい?」

男「店が暇ならな」つ水

薬師(ぼ、僕が酒が苦手なのに気付いてくれたのか)ドキッ

初老(作家と薬師を彼に会わせたのは正解だったか)

娼婦「ふふふ、私が男性を誘い出して、貴方が因縁をつけて殺すというのはいかが?」

大男「まどろっこしいが」

娼婦「あら、全裸で土下座する相手を踏み殺す……中々の悦だと思うのだけど」サワサワ

大男「……へぇ、それは確かに気持ち良さそうだ」

初老(あの二人も予想通りだね……さて、どれだけの事が起こるか楽しみだ)
97 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:14:27.02 ID:V5+UMle4O
男「この水晶で小屋の様子を見ることが出来る」

作家「おぉ! 中々レアなアイテムですな! 何処で?」

男「帝国にいる時分にとある貴族から頂戴した」

作家「ほほぅ、その話も気になりますが」

薬師「今は小屋の中の様子だね」

作家「外から鍵をかけられた小屋の中に男女が7名。 全員自殺願望がある。 死体の処理を条件に此方の指示に従って自殺して貰えるようにしましたぞ」

男「順番に薬を飲んで自殺か……例の内側から爆ぜる薬か?」

薬師「あぁ、ちゃんと用意したよ」クククッ

作家「それは、楽しみですな……おっ、一人目が薬を飲みました」

バクハツシタ ナンダコノクスリハ コンナシニカタナンテ

作家「おぉ! おぉ! 良い! 良いぞ! 臓物まで木端微塵になり、他の参加者は肉片まみれ……願望を目の前で見て再燃する生への渇望! しかし、小屋から出られるのは一人だけという絶望! 良いですぞ!!」カキカキ

男「……彼等はどうやって集めた?」

作家「自殺したい者の情報は常に集めておりましたが、少なかったので何人かは私の文書を読ませました」

薬師「読ませた?」

作家「えぇ、私の取るに足らない特技なのですが、死にたくなる文を綴るのが得意でして」フフン

薬師「それは凄いな」ゾクッ

男「なるほど、作り物の自殺願望と本物の自殺願望の違いか……一人、薬を手に取ったぞ」

薬師「あぁ、あの薬は」

作家「どうかなさいました?」

薬師「クククッ、爆ぜる薬以外にも新作を混ぜておいたのさ」

作家「ほほう! それは楽しみですな!!」
98 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:23:13.98 ID:V5+UMle4O
「わ、私は死にに来たんだ……あんな死に方でもかまわない」ゴクン

「あっ、あぁ…うがぁあああああ!!」メキメキゴリゴリメキメキ

ナンダ! エグイ! カラダガデカクナッテ… ヒィ!

怪物「ワタシハ……シネテ、ナイ……」ヨロヨロ

参加者A「此方にくるな」ブンブン

怪物「ナイフ、ササレバ、シネル……」ヨロヨロ

参加者A「く、来るなって」ダッ

怪物「ニゲルナ、コロシテ……コロシテクレ」ツカミ

参加者A「止めろ……離せ! 離せ!……あぁぁあああ!!」ボキボキボキ

怪物「アレ……シンダ?」ポイッ

参加者A「」ドサッ

キャーー ヤダヨ、カエリタイ イキタイ、シニタクナイ

怪物「マテ、 ニゲルナ、ワタシヲコロセ……ワタシヲコロセヨォオオオ!!」ダッ

99 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:30:27.29 ID:V5+UMle4O
作家「何と! 何と! な・ん・と!! 飲んだものを異形に変える薬! 死にたい者を逆に死ににくい姿に変えて、生きたいと思い返したモノ達が虐殺されていく……あぁ、何と尊い、何と素晴らしい光景なのでしょう! 私、筆が止まりませんぞ!!」カキカキ

薬師「言語能力は残っているな。 怪物に成り立てだから、人の名残があるだけか? ククク、もう少し観測が必要だね」

作家「おぉ! 最後の一人が殺されました! 残されたのは怪物一人! 否、一匹!! ……ところで、薬師殿」

薬師「なんだい?」

作家「あの怪物は殺せるのですかな?」

薬師「ククク、銃でも貫けない皮膚、毒を打ち消す代謝を持たせたからね……簡単には死なないさ」

作家「それって……我々も危ないのでは?」

薬師「…………………ごめん、考えてなかった」タラリ

作家「薬師殿!?」

薬師「に、逃げようか……って、男がいないぞ」

作家「薬師殿、水晶を!男殿が小屋の中に!?」
100 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:38:23.33 ID:V5+UMle4O
怪物「…ミンナ、シンダ……ワタシハ、ナカマハズレ」

男「随分と暴れたみたいだな」

怪物「オマエラノセイデ……シネルトイッタノニ……ダマシタ! ダマシタナ!!」グググッ

男「君は人か?」

怪物「……ドウイウイミダ?」ピタッ

男「君は人か?」

怪物「ヒト……ダッタガ……ヒトデハナイ」

男「見た目は随分と変わったな」

怪物「オマエラノセイダロ!!」バンッ

男「中身はどうだ? 君は生き残ったのだから、死か生か選べるわけだが」トポトポ

怪物「シニタイニキマッテ……ドウシテ、ワインヲグラス二!?」

男「いや、真っ赤な小屋の中を見てたら飲みたくなってな」ゴクッ

怪物「ナンダ! オマエハ……オマエハ!!」グググッ

男「どうして、死にたい?」

怪物「……」ピタッ

男「床に落ちていたんだが……これはお前のか?」つ絵

怪物「アァ」
101 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:47:43.87 ID:V5+UMle4O
男「パパへ……か。 娘が似顔絵を描いてくれたのか? 昔の君には似ていたのだろうな」

怪物「ダマレ」

男「死のうとしていた男がどうしてこんな絵を持ってきた」

怪物「ダマレ!」

男「死のうとしているのと、娘に何の関係がある?」

怪物「アァァアァアアァア!!」

男「……犯されて、殺されたか?」

怪物「ダマレ! ダマレ! ダマレ!!」

男「非力な父親では守ってやれなかったか」

怪物「ダマレェエエエエエェェエエエ!」

男「ならば、今ならばどうだ?」

怪物「…………ナニ?」

男「その姿ならば泣き寝入りする必要も無いんじゃないか?」

怪物「コロセル……アイツラヲ……アイツラヲ…ミナゴロシ……アァ、アァ!!」

男「さて、君は死か生か選べるわけだが……どうする?」つワイン
102 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 10:25:48.54 ID:G9WsWlXKO
男「戻った」

作家「」アングリ
薬師「」アゼン

男「作家、あの怪物の娘と娘を襲ったヤツらを調べられるか?」

作家「あ、あぁ、出来るとも!」

男「薬師、怪物の薬の応用で見た目を変える薬とかは作れないだろうか?」

薬師「へ? 任意の見た目に変える薬……出来るだろうか?」ムムム

男「出来れば用意してほしい」

薬師「解った、研究してみるよ」

作家「準備している間、あの怪物はどうするので?」

男「俺が飼育しておく」

薬師「し、飼育……」
103 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 10:32:23.26 ID:G9WsWlXKO
薬師「……男、いるかい?」ゲッソリ

男「薬師か……珈琲で良いかな?」

薬師「砂糖多めで頼む」つ薬

男「それは?」

薬師「君に頼まれていたモノさ……変装薬とでも名付けようか」

男「なるほど」

薬師「10分ほど他人の姿に変身できる……変身する対象の髪の毛と一緒に飲むことで指定できる」

男「髪の毛か……問題ない。 用意出来るだろう」

薬師「はぁ、疲れた」

男「ありがとう、薬師」ナデナデ

薬師「///」

作家「んん、お邪魔でしたかな?」ニヤニヤ

薬師「さ、作家! 何時から」アセアセ

男「作家も珈琲で良いか?」

作家「えぇ、ご馳走になります」
104 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 10:39:19.47 ID:G9WsWlXKO
作家「此方の3名が怪物の娘を犯し、殺した犯人でございます」

男「そうか、ありがとう」

薬師「どうやって捕まえる? 睡眠薬でも盛るかい?」

作家「文書を読む嗜みが無い相手では、私は何とも出来ませんな」ムムム

男「女暗殺者……彼等を捕まえて来てくれ」

女暗殺者「……」コクン

作家「ほほぅ、ただの店員さんではなかったのですな! 私、気になります!!」

男「3人程度なら楽勝だ」

女暗殺者「……」フンス

薬師「すごいじゃないか」

女暗殺者「……」ギロリ

薬師「何で、僕を睨む!?」

作家「久しぶりに恋愛小説なども綴りたくなりますなぁ」
105 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 10:48:29.34 ID:G9WsWlXKO
暴漢A「くそ! ほどけ! ほどけ!!」
暴漢B「俺達が何をしたって言うんだ……」
暴漢C「此処、どこだよ! 何なんだよ!!」

作家「あっさりですな」

女暗殺者「……」ドヤッ

男「さて、ご対面だな」

ギィ ドスンドスン

怪物「……」

暴漢s「「「ヒィイ!!」」」

怪物「コイツラダ……マチガイナイ…コイツラガ、コイツラガ!コイツラガァアアア!!」ブンブン

暴漢A「何だ、この化け物は!?」
暴漢B「くるんじゃねぇ……止めてくれよ」
暴漢C「」ジョロロロ

男「怪物、待て」

怪物「……オトコサン?」

男「最後の仕上げがある」

怪物「?」

男「この薬を飲め」

暴漢A「へ? 何だ……それは?」

男「この薬を飲め」グイグイ

暴漢A「止めろ! 無理矢理……むご、んぐっ」ゴックン



106 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 12:03:19.18 ID:G9WsWlXKO
暴漢A「あぁ……アァァア!!」シュー

暴漢B「暴漢Aから煙が……何を飲ませやがった!?」

怪物娘A「へ? 何だ……胸がある?」

暴漢B「この女って」
暴漢C「俺達が襲った……」

怪物「ムスメ! ムスメェエエエ!!」

男「お前達も飲め」

怪物娘A「何だよ……これ」
怪物娘B「この怪物、この姿を見て娘って言ってたぞ」
怪物娘C「父親か……父親なのか……」ガクガク

怪物「オトコ、ドウシテ、ヒドイ、コノスガタジャ……コロセナイ……アァ、アァアアア!!」ジタバタ

男「殺せない? 好きにしたら良い。 選択肢は常に君にある……そら、生か死かだ」

怪物「オトコォオオオオ!!」
107 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/04/08(月) 20:53:14.16 ID:pc+1h9BrO
本日はここまでです。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/08(月) 21:25:17.13 ID:cJhw7THCo

薬師かわいい
109 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 08:55:44.79 ID:K8RUp0NOO
男「タイムアップ……今日はここまでにしよう」

暴漢A「も、元の姿に戻った」スゥ

怪物「コロス! コロスゥ!!」

男「駄目だ」

怪物「コォロォサァセェロォォオオオオ!!」


男「君の選択だろ?」

怪物「アァアアァアアァアアァア!!」ジタバタ

薬師(えげつないな……)ウワァ
作家「はぁはぁ」カキカキ

男「明日もチャンスをあげよう……次は納得がいく選択をしろ」

暴漢A「あ、明日も……」ガタガタ
暴漢B「嘘だ……夢だ……」ビクビク
暴漢C「帰りたい……帰りたい……」

男「薬師」コショコショ

薬師「ち、近いな/// 何だい?」

男「明日は薬を4個用意してくれ」
110 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:17:00.22 ID:K8RUp0NOO
男「やぁ」

怪物「オトコォ! コロサセロォ! ハヤクコォロォサセロォォオオオオ!!」

男「元気だな。 良いだろう」

ガチャ

怪物娘A「んーんー!」E.サルグツワ
怪物娘B「んーんー!」E.サルグツワ
怪物娘C「んーんー!」E.サルグツワ

怪物娘D「んーんー!」E.サルグツワ

怪物「」

男「どうした?」

怪物「ボウカンハ……サンニンダッタ」

男「そうだな」

怪物「アト、ヒトリハ……ダレダ?」

男「さぁな」

怪物「コロソウトシタノニ……コロソウトキメタノニ……アァアアァア!!」

男「好きにしたら良い。 選択肢は常に君にある……そう、生か死かだ」

怪物「ヒトデナシガァァアアァ!!」

男「そういえば、この小屋には鏡が無かったな」スマナイ
111 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:27:40.17 ID:K8RUp0NOO
作家「……」カキカキ

薬師「それでな、特殊な光を当てることで分子の構造を変えて薬の特性を変えれないか試していてだね」

男「そうか」

薬師「と、こんな専門的な話をしても解らないか……すまない」シュン

男「薬師が楽しいなら幾らでも聞こう」

薬師「なっ/// そういうところだぞ! 君は本当に!!」ドキドキ

作家「……」ピタッ

男「書き終えたか?」

作家「えぇ、間違いなく私の最高傑作ですな」フゥ

男「珈琲を淹れよう……何か食べるか?」

作家「サンドイッチなどあれば」

男「女暗殺者……作ってくれ」

女暗殺者「……」コクン

薬師「あっ、僕も食べたい」

女暗殺者「……チッ」

薬師「舌打ちされた!?」

112 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:40:57.07 ID:K8RUp0NOO
作家「男殿……書き終えて思ったのですが」

男「俺も怪物娘Rまで用意して思ったんだが」

作家「厭きましたな」
男「厭きたな」

薬師「それは酷すぎないかい!?」

作家「だって、最近の怪物殿ってば叫ぶだけなんですもの……知能下がってません?」

薬師「あの姿になって随分経つからね」

男「ならば、そろそろ我慢の限界か……作家、最後は君も楽しめるだろう」

作家「ほほぅ、まだ何かあると……では、見届けるとしましょう」
113 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:48:20.69 ID:K8RUp0NOO
怪物「……」

怪物娘E(今日は大人しいな)

怪物「……」グルルルル

怪物娘D(唸り声?……いや、今の音は……)アセッ

怪物「ハラ……ヘッタ……」グルルルル

怪物娘達「」

怪物「……」ガシッ

怪物娘K(止めろ! 嘘だろ!? 実の娘の見た目何だろ!?)ジタバタ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

……
114 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:59:42.34 ID:K8RUp0NOO
怪物「……」

男「……」

怪物「マンゾクカ?」

男「あぁ、君の人生はワインによく合う」

怪物「ナントデモ、イエ…カタキハコロセタ」

男「あぁ、その事についてなんだが……謝らなければいけないな」

怪物「……?」

暴漢A「へへ」
暴漢B「どうも」
暴漢C「……ひひ、ひひひ」

怪物「」

男「少し手違いがあってな……彼等を混ぜるのを忘れていた」スマナイ
女暗殺者「……」テヘ

怪物「オマエハ、センタクシハ……オレニ、アルト……」ガタガタ

男「あぁ、選択肢は常にある……君の生か、君の死かだ」

怪物「」

男「ところで、教えて欲しいんだが」

男「自分の娘を食べてまで……生を選んだ気分はどうだ?」
115 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 14:00:31.47 ID:K8RUp0NOO
作家「おぉ! おおぉおおおおおお!!」

怪物「」

薬師「自ら心臓を抉り出して、握りつぶして……」ウェ

男「自殺願望をようやく叶えられたか」フフ

作家「何と醜く美しいのでしょうか! これだ! これが、これこそが絶望であり、失望であり、願望の向こう側なのでしょうな!! 」ヨロヨロ

男「何処に行く?」

作家「書き直しに行くに決まっているでしょう! あぁ! あの程度で最高傑作などとは恥ずかしい! まだ、まだまだ、底も天井も程遠い!! 更なる作品を! 更なる執筆を……生きてて、良かった」ウットリ

薬師「変わっているな」

男「人のこと言えるのか?」

薬師「……」

男「完成したんだろ?」

薬師「ククク、お見通しか……あぁ、時間制限の無い変装薬が出来た。 試してみたいんだが」

男「3人余った……好きに使え」

暴漢達「へ?」

116 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/10(水) 07:13:06.77 ID:UKZ3RYcLO
初老「良い豆でも仕入れたのかな?」

男「香りで解るとは……淹れがいがある」

初老「ふふ、君の顔付きで解ったのさ。 退屈してないようだね」

男「お陰さまで……美人三姉妹が高値で売れた」

初老「私にも教えて欲しいな……どんな悪戯をしてきたのか」

男「作家の本を読めば解る」

初老「違いない」ペラペラ

男「彼の新作か?」

初老「2作品同時出版とは筆がよほど走ったらしい」

男「そうか……ん?」

本≪恋する処方箋≫

男「……」

初老「……」ペラペラ

男「……」

初老「……」ペラペラ

男「初老も相変わらず悪戯が好きなんだな」

初老「おっと、そう返すか。 照れている顔でも見たかったが」フフッ

男「次の会合は?」

初老「明後日……かまわないかな?」

男「あぁ、貸し切りにしておくよ」
117 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/10(水) 07:21:46.85 ID:UKZ3RYcLO
薬師「///」ゲシゲシ

作家「痛い、痛い……怒らないでくださいよ、薬師殿」

ワイワイガヤガヤ

大男「随分、人が増えたな……何処から見つけてきやがんだか」

男「さぁな……大男」つ生肉

大男「解ってきたじゃねぇか」

娼婦「あら、何を餌付けされてるのかしら?」

大男「あん? 餌付け何てされてねぇよ」

理容師「他の派閥と馴れ合うのはいただけない……そうだろ?」

大男「派閥なんざ……興味がねぇよ」

娼婦「そう……それで、良いのね?」

大男「……」

娼婦「……」ニコッ

大男「チッ……へいへい、解りましたよ。 女王様」
118 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/10(水) 19:16:00.67 ID:UKZ3RYcLO
男「娼婦はウィスキーで良いか?」

娼婦「ワイン」

男「赤?」

娼婦「白」

男「……」
娼婦「……」ニコッ

男「俺は会合の場所を提供しているだけだ、派閥どころか参加者じゃない」

娼婦「薬師と作家を連れて何かしているようだけど」

男「娼婦に迷惑はかけていない」

娼婦「それはどうかしらね」

洋裁師「娼婦の姐さん、こっちで飲みましょう!」

理容師「そんな男のこと姐さんが気にする価値が無い……そうだろ?」

娼婦「えぇ、すぐに行くわ」
119 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/10(水) 19:38:45.34 ID:UKZ3RYcLO
作家「ふむん、新参者が増えていくなか、自分の派閥に初期の会員全員を取り込みたいと言ったところなのでしょうな」

男「道化師を中心とした派閥、守銭奴を中心にした派閥があるんだったか?」

作家「えぇ、悦で人を殺める娼婦の派閥、金儲けで人を殺める守銭奴、技を試したくて人を殺める道化師……まさしく、三者三様でございますな」

薬師「娼婦と道化師の派閥は似たような思想なんじゃないか? 人を殺して楽しんでるんだろ?」

作家「大いに違いますとも……言うならば、そう!」

男「堕落と研鑽」

作家「男殿! 台詞を取らないでくだされ!!」イジワル!

男「君達も何処かの派閥に入った方が良いんじゃないか?」

作家「私は……ふふ、男殿と馬鹿やってるのが好きでありますからな」

薬師「僕もだね」

作家「薬師殿が好きなのは男殿では?」

薬師「///」ゲシゲシ

作家「止めて! 蹴らないで!」
120 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/11(木) 10:04:39.91 ID:30hteuTbO
薬師「それにしても初老さんからすれば良い迷惑だろうね?」

作家「と言いますと?」

薬師「派閥争いに決まってるじゃないか」

男「迷惑どころか、仕組んだのは初老だろう」

薬師「へ? そうなのか?」

作家「でしょうな。 こと人間関係の構築において初老殿が失敗をすることもないでしょうし」

薬師「それでも……何のために?」

作家「競わせるため……悪事を加速させるため、ですかな」

男「だとしたら、良い頃合いだろう」

薬師「?」

作家「えぇ、燻った火種に点火するには……そろそろでしょうな」

121 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/13(土) 06:39:50.32 ID:DF7zEDdcO
初老「皆、待たせてしまったね」

娼婦「……いえ、何時も通り美味しいお酒をいただいてましたので、お気にせず」

初老「それなら、良かった」

守銭奴「美味しいお酒? 随分と娼婦ちゃんったら店長君に突っ掛かってたように見えたけどね」

娼婦「あら、同じ初期からの会員として、楽しくお話してただけなのだけど」

守銭奴「良くないなぁ! 新参者に対してそうも排他的なのは!!」

娼婦「新参者に排他的なわけじゃないわ……金に細かい男性が好みじゃないだけよ」

守銭奴「……」

道化師「自分の思い通りになる男性以外は好みじゃない……だよね?」

娼婦「……」

初老「派閥争いの噂は本当だったか……これは良くないな」

作家(白々しいですな)
122 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/04/17(水) 00:56:51.57 ID:HsXjSOBmO
リアルが忙しくて続き遅れそうです。
読んでくださってる方がいれば、すみません。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 11:01:56.44 ID:PhWi7JOhO
いるよ。待ってる。
124 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/17(水) 21:25:04.06 ID:CJK/9qr0O
初老「愛すべき悪党同士で殺し合いをするのは、私が望むところじゃないんだよね」

娼婦「……解っているわ」
道化師「勿論とも」
守銭奴「それで?」

初老「ふふ、だから、そうだね……殺し合いじゃなくて競い相手もしてもらおうかな?」

娼婦「競い合い?」

初老「そうだとも。 次の会合にそれぞれ、この国で最も善人と呼ぶに相応しい人物の生首を持ってきておくれ」

ザワザワザワザワザワ

理容師「ぜ、善人の生首? それってあの男を殺せって言ってるようなものじゃないか……そうだろ!?」

初老「……」バンッ

理容師「」バタン

初老「意見がある者は手を上げて発言してくれたまえ……撃つ相手を間違えたら、流石に申し訳ない気持ちになる」

……………。

男「初老」ハーイ

初老「なんだい?」ジャキン

男「店が汚れた……後で、清掃代を要求する」

初老「君はぶれないね……本当に」フフフ

道化師「もっとも善人と呼ぶに相応しい人物の生首を持ってきた派閥の勝ちって事でいいんだよね?」

初老「あぁ、勝った派閥には活動資金と他の派閥への命令権を与えよう」

娼婦「ふふ、それは」
守銭奴「譲れないなぁ」
125 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/17(水) 21:38:26.23 ID:CJK/9qr0O
男「……ふぅ」

作家「片付けは終わりましたかな?」

男「あぁ、参加者が増えたせいで会合の片付けも一苦労だ」

作家「ふむん、それは大変ですな」

男「その分の代金ももらっている」

作家「それで……善人狩りには参加なさるので?」

男「善人と呼ぶに相応しい人物の生首か……何で皆ざわめいたんだ?」

作家「聖教祖様が聖騎士を最も清き肉体と善なる魂を持ち得た男として、勲章を与えましたゆえ」

男「なるほど、暗に聖騎士の首を持って来いと言っていたわけか」

作家「作用でございます! 聖騎士と言えば、我が国最強の騎士、聖国の守護者とまで称えられる御仁……正面からは勿論、暗殺さへも難しいでしょうな」

男「国の破滅への一歩と言うことか……初老は若作りに余念がない」フッ

作家「ですな♪」

126 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/17(水) 21:48:21.83 ID:CJK/9qr0O
作家(結局、男殿は参加されない様子。 私はいかがいたしましょうか)フラフラ

守銭奴「やぁやぁ! 作家先生! 千鳥足でご機嫌だねぇ!!」

作家「おぉ、守銭奴殿ではありませんか……私に何かご用で?」

守銭奴「なに、見かけたかやよぉ一緒に飲みなおさねぇかと思ってねぇ」

作家「男殿の店でしこたま飲んでまいりましたので遠慮させていただこう」

守銭奴「まぁ、待てって……先生」ガシッ

殺し屋「……」

作家「おやおや、悪党同士で殺し合いは……望まれていないと言ってましたが?」

守銭奴「殺し合いはしねぇさ……少し金儲けの話をしねぇかってよ」
127 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/17(水) 21:59:57.92 ID:CJK/9qr0O
薬師(くそ、作家のせいで男の顔がまともに見れなくなっちゃったじゃないか)///

道化師「薬師さん……だよね?」

薬師「むっ、道化師か……奇遇だね」

道化師「奇遇? いやいや、君を待ってたんだよ……オイラ達の派閥に入って貰えないかってね」

薬師「……どうして僕を誘うんだい?」

道化師「君は俺達に似てるからね、向上心がある……自身を高める事に悦を覚える質だよね?」

薬師「まぁ、もっとすごい薬を作りたいって欲はあるよ」

道化師「僕ももっと凄い技を身につけたい……もっと、優れた殺し方をしたいって欲に従って生きているんだ」

薬師「……」

道化師「君は我等の派閥にいるのが、自然だと思うんだよね」

薬師「男の傍にいるよりも?」

道化師「あんな男に良いように使われるなんて勿体無いよ〜」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 08:25:10.88 ID:k4Vv2elvo

角驢馬は元気かな
129 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/19(金) 02:43:52.90 ID:UiqKQVqxO
薬師「……」ムムム

道化師(後一押しだね……)フフ

道化師「何を悩むことがあるんだい?」

薬師「いや、君の誘いをどう断ろうかとね」

道化師「!?」

薬師「作家のようにスラスラと言葉は出ないが、男の傍から離れる気は無い」

道化師「彼と恋人とかそういうのにはなれないと思うんだよね。 都合の良い道具として使われ続ける気かい?」

薬師「!?」

道化師(よし、今度こそ)

薬師「道具だよ! そうだ、的を得た表現だ! 僕は彼の道具でいたいんだよ!」スッキリ

道化師「……」イラッ

薬師「ありがとう、道化師……スッキリしたよ」

道化師「道具で良いと?」

薬師「道具が良いのさ」
130 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/19(金) 02:57:47.20 ID:UiqKQVqxO
道化師「ならば! えぇ! 道具にしてあげるとも! しかし、利用者は俺様達だ!!」

獣使い「へへへへ」
曲芸師「やっと出番か」
手品師「♪」

道化師「まずは持ち運びに不便なその手足と耳障りな事しか吐かないその舌をとって、使い心地を良くしてやるよ!!」

薬師「や、止めろ! 同じ組織のメンバーで潰し合いなんて」

道化師「ウヒハハハハ! 潰すは潰すでも、雌の穴と薬の知識を使い潰してやる!!」

獣使い「道化師さん、きれてるなぁ」

曲芸師「最初に使わして欲しいものだが……貧乳って良いよね?」

女暗殺者「……」コクコク

曲芸師「あれ? 手品師h」バタッ

獣使い「お前何時からそこn」バタッ

道化師「どうした、何で誰も……」

獣使い「」
曲芸師「」
手品師「」

女暗殺者「……」ドモ

道化師「なっ!?」
131 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/19(金) 20:18:13.65 ID:UiqKQVqxO
道化師「お前は、男の店の店員! そんな、我が派閥の幹部を倒すなんて……」タラッ

薬師「ど、どうして、女暗殺者が?」

女暗殺者「……道具?」

薬師「へ?」

女暗殺者「貴女も男の道具?」

薬師「あぁ、そうありたいと思っているよ」

女暗殺者「仲間〜♪」ギュー

薬師「うわぁ! 急にくっつくな!?」

女暗殺者「……」スリスリ

薬師「無言で頬ずりも止めてくれ!」///

道化師「偶然、運良く、獣使い達を殺せただけで、調子に乗りやがって……良いでしょう! 余が相手を……」パタッ

薬師「おぉ、ようやく効いたか」

道化師「なっ、何を何時?……盛られた?」ピクピク

薬師「麻痺作用のある無臭の気体を最近開発してね。 勿論、僕は解毒剤を予め飲んでるわけさ」ククク

女暗殺者「……」パチパチ

薬師「あれ? 何で女暗殺者には効いてないの!?」ビックリ
132 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/19(金) 20:32:23.56 ID:UiqKQVqxO
薬師「どうしてだろう? 代謝が特殊なのかな? 毒物に耐性があるとか?」ムムム

女暗殺者「……」エッヘン

道化師「おい! 何処を見ている! まだ、話は終わってない! 終わってないぞ!!」ピクピク

薬師「うるさいなぁ。 君に構ってる場合じゃないんだ……女暗殺者、幾つか薬を試させて貰っても良いかな?」ワクワク

女暗殺者「……」コクリ

道化師「こっちを向け! あたいと薬師は同類だ! 自分を高める欲に囚われた同類だろ? なぁ、頼むよ! 同類のよしみで助けてくれよぉ!!」

女暗殺者「……」ドヤァ

薬師「えぇ! この薬を飲んでも平気なの!? 本当に君の身体はどうなっているんだい?」

道化師「無ぅ視ぃすぅるぅなぁぁぁあ!!」

薬師「……予想外の出来事が起こった時に運や偶然といった言葉を吐いた時点で僕と君は同類じゃないよ」

道化師「何!?」

薬師「トライ アンド エラー、トライ アンド エラーさ」

薬師「君の中に向上心は無い……君を駆り立てているのはただのちんけなナルシズムさ」つ薬

道化師「その薬は何だ…止めろ! 飲ませないでくれ!!」

薬師「やはり、僕の調合は間違ってないか」

道化師「」

薬師「どうして、君には効かないんだろうね?」ワクワク

女暗殺者「……」ニコッ

133 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/20(土) 14:48:24.04 ID:vjmHX0JlO
男「……この時間に来るとは珍しいな」

作家「えぇ、まぁ……近くで用があったもので」

男「そうか」

作家「おや? 店員殿は?」

男「薬師と買い物に行った。 ……ペアルックコーデにはまっているらしい」

作家「何時からそんな仲良しに。 店員殿はむしろ薬師殿を嫌っていたように思いますが?」

男「女暗殺者は薬師を同類と認め、薬師は女暗殺者を被験体として認めた」

作家「相思相愛ですな」

男「あぁ」

作家「……ふむん、つまり店員さんがいない今、男殿を守ってくれる者はいないと」カチャ

男「それはなんだ?」

作家「銃でございます。……鉛の弾を撃ち出して男殿の頭蓋骨ぐらいなら簡単に砕く大人の玩具ですな」

男「そうか」トンッ

作家「そちらは?」

男「ハニーミルク、ただただ甘い子供の飲み物さ」

作家「男殿と初老殿の出会いを再現したかったのに……意地悪!」プンプン

男「幼稚なだけの遊びに付き合うほど暇じゃない」

守銭奴「なら、大人なビジネスの話ならば付き合ってくれるのかなぁ?」ガチャ

男「……ご注文は?」

守銭奴「ハニーミルク! ……あー、角砂糖を4つほどいれておくれぇ」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 18:51:37.04 ID:rZOQ3Ej4O
面白い
続きが楽しみ
135 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/25(木) 01:41:47.59 ID:EjlvQkkOO
守銭奴「如何かなぁ? 店長君……いや、親愛を込めて男君と呼ぼうかぁ」

男「……」ペラペラ

守銭奴「本当にあれがぁ交渉材料になるのかい?」コソコソ

作家「えぇ、興味は引くかと」コソコソ

守銭奴「トマトとベーコンの良い仕入れ先ねぇ……それで味方につけれるならやすいが」

男「……アボカドの良い仕入れ先も知らないか? 最近、高騰したんだ」

守銭奴「お安いご用だ……欲しい食材をメモに書いて渡しておくれぇ」

男「助かる」

作家「嬉しそうでしょ?」
守銭奴「嬉しそうだなぁ……普通の喫茶店の店長みたいだぁ」

作家(普通であり、常識的でもある……それが男殿の真に恐ろしいところでもありますが)フフッ
136 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/25(木) 10:36:42.01 ID:IC6zmmSiO
男「それで、ただで取り次いでくれるわけじゃないんだろ?」

守銭奴「あぁ、幾つか条件がある」

男「……」

守銭奴「1つ、作家先生の我が派閥への参入」

男「それは俺に許可をとる必要は無い」

守銭奴「作家先生が男君に許可を取って貰わない限り入ってくれないっでねぇ」

男「解った。 作家が嫌でなければ、俺が口を出すことはない」

守銭奴「2つ、善人……いや、抽象的な発言は止めようか。 聖騎士への関与の禁止。 彼を殺すのも助けるのも……世間話すら止めてくれぇ」

男「あぁ、解った」

守銭奴「3つ、我が派閥への関与……次の会合までの期限付きだが、聖騎士と同様に世間話であっても止めておくれぇ」

男「問題ない」

作家「少しは迷っていただきたかったな」ショボーン
137 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/25(木) 12:23:45.19 ID:tg/o/vOFO
男「角砂糖は4つ……だろ?」

守銭奴「4つ、次の会合の翌日、貸し切らせてほしい」

男「祝勝会は大事だな」

守銭奴「おぉ、話が早くて助かる」

男「……此方からも1つ頼みがある」

守銭奴「ん? 何だぁ?」

男「この木の実を取り扱っている店も紹介して欲しい」つ木の実

守銭奴「見たこと無いなぁ……」

男「親友の好物なんだが……帝国を出てから見かけなくて」

守銭奴「帝国固有の種か? ……出来る限りは探してみよう」

男「ありがとう」

作家「男殿の親友? 私、気になります!!」

男「……」

作家「男殿?」

男「……」

守銭奴「次の会合まで作家とはぁ口聞かないってぇ」

作家「えぇ! もう始めているのですか!?」イジワル!
138 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/25(木) 18:21:30.53 ID:iBZRpYG8O
道化派A「くそっ! 道化師がやられるなんて!」

道化派B「し、しし、しかも、一緒にいった幹部連中も全滅か」

道化派C「男どもに仇討ちをしねぇとよ!」

道化派A「いや、だがよ……手を先に出したのはうちだ、その上これ以上男達に危害を加えようものなら」

娼婦「初老先生は貴方達を潰しにかかるでしょうね」フフッ

道化派達「娼婦!?」

娼婦「驚いたわ、道化師が殺されるなんて……好敵手として寂しい限りだわ」

道化派A(嘘だ)

娼婦「でもね、男への仇討ちなんて、道化師は望んでいないのでは無いのかしら?」

道化派A(嘘だってのに)

娼婦「それよりも、日々鍛え上げたその技で聖騎士の首をとる方が……道化師も喜んでくれるんじゃなくて?」

道化派A(嘘だって解っているのに……)

道化派B「そうだ、娼婦の言う通りだ」

道化派C「鍛え上げた技を男ごときに使うなんて勿体無い……聖騎士へと向けるべきだな」

娼婦「勇ましいわね……素敵だわ」

道化派A(嘘だって解ってる。 良いように使われるだけだって頭の中で理解もしてる……それなのに、それなのに)ワナワナ

娼婦「ほら、貴方も良いところ魅・せ・て♪」
139 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/26(金) 12:14:21.91 ID:DvykarTrO
不良神父「……」スパー

村人「あの、神父様」

不良神父「へいへい、何ですかい?」

村人「えっと、煙草……吸われるのですね」

不良神父「そりゃね、慈愛の女神様が我々から娯楽を奪うほどの器量なしとは思えませんで」

村人「そ、そうですか……あの、一人で大丈夫なのですか?」

不良神父「えーっと、洞窟に掬う禁術使いの退治でしたっけね……おじさん、治癒魔術しか使えないからなぁ」ポリポリ

村人「えぇ! そんな!? 異教徒狩りのスペシャリストが来てくれるって聞いてたのに!?」

不良神父「安心しな……俺はあくまで付き添いだよ……さて、集合時間まで……5、……4」

ウォォォオオオオオ!!

不良神父「……3、……2」

ウォォォオオオオオ!!

不良神父「……1」

聖騎士「到着!! ……不良神父殿、遅刻ではありませんな?」

不良神父「ギリギリな……早めに来いって言ったろ?」

聖騎士「す、すみません。 お年寄りが道に迷っていて……後、村の子供が迷子に……それから、新郎が拐われる事件が」アタフタ

不良神父「大事の前の小事だ……捨て置け」

聖騎士「大事の前に小事も果たせぬようならば、大事も果たせぬ……でありましょう!」キリッ

不良神父「はぁ、まぁ良いけどよ……ん?拐われたのは新郎なのか? 新婦じゃなくて?」

聖騎士「えぇ、拐われたのは新郎でありました!」

不良神父「面白そうな事件じゃねぇか……酒の肴にするからよ、後で聞かせやがれ」ゲラゲラ

村人「あの……えっと、禁術使いを退治して欲しいんですが……」
140 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/26(金) 12:31:44.13 ID:Y+AxG5RHO
聖騎士「えぇ! お任せよ! 私、聖騎士めが何とかいたしましょう!!」

不良神父「……洞窟で禁術使いに会ったらどうする?」

聖騎士「真っ当に生きて頂けぬか誠心誠意説得いたします!!」キリッ

不良神父「馬鹿野郎、問答無用で斬り殺せ」スパー

聖騎士「何と!?」

不良神父「話し合いなんて、必要ねぇ……禁術使いは殺す。 これが聖教の決まりだ」

聖騎士「しかし……でありますな」

不良神父「はぁ、こういう仕事は狂信者の方が向いてるか……まぁ、今後も汚れ仕事をアイツに押し付けるってんなら無理はしなくていいぜ?」ニヤニヤ

聖騎士「うぐっ、それを言われると……解りました。 我が一太刀は健やかな女神の子らの為に」

不良神父「それで、良いんだよ……行くぞ」

聖騎士「むっ、不良神父殿も一緒に洞窟に入ってくださるのですか!?」

不良神父「嬉しそうにしてんじゃねぇよ。 たまには教え子の勤労を見守るのも悪くねぇ」

聖騎士「不良神父殿……」キラキラ

不良神父(聖騎士の近くにいる方が安全だろうしな)チラッ

村人「……?」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/29(月) 12:15:57.30 ID:rrvZCRmYo
親友って角驢馬?
角驢馬のことは大事な思い出なのか
142 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/29(月) 15:35:46.63 ID:3rwTyaLyO
村人→洋裁師「……怪しまれた?」フム

娼婦「洋裁師、首尾はどうかしら?」

洋裁師「姐さんの指示通り、聖騎士を洞窟に閉じ込める事は出来ましたが……道化師派閥の残党じゃ勝てませんよ?」

娼婦「あら、そうなの?」

洋裁師「えぇ、私の見立を信じていただけるなら」

娼婦「貴方の見立てが外れた事なんて無いじゃない」

娼婦「それで?」

洋裁師「はい?」

娼婦「それで、大男なら聖騎士に勝てるのかしら?」

洋裁師「………同士討ち……いや、ギリギリ競り勝てる……そんなところですね」ウーム

娼婦「そう、解ったわ。 行きましょう、洋裁師」

洋裁師「行くって何処に?」

娼婦「善人狩りに決まってるじゃない」

洋裁師「いえ、だから、善人は洞窟の中に……」

娼婦「あら、聖騎士以外にも善人と呼ぶに相応しい人はいるんじゃなくて」フフッ

洋裁師「!?」

洋裁師(姐さんは聖騎士を殺す事を既に諦めていたのか)

洋裁師(自分達の派閥で殺すことが出来ないなら、他の派閥も殺し難いようにしたい)

洋裁師(道化師派閥の残党をけしかけたのは、聖騎士が命を狙われていることを伝えて警戒心を煽るため)タラッ

娼婦「さて、楽に勝たせてもらいましょう」フフフ
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