お兄ちゃん、一緒にバカになろ?

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1 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 21:07:04.46 ID:7rXyh9rYO
はじめに

本作はある同人作品とある有名漫画を原案とした「1.5次作品」です。
原案となった作品は、ストーリーがある程度進んでから開示します。

また、本作では安価やコンマは使用しません。全て地の文で進行します。

短編〜中編の予定です。暫しお付き合い下さい。
2 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 21:07:58.43 ID:7rXyh9rYO





お兄ちゃんはバカだ。








3 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 21:22:46.50 ID:7rXyh9rYO
#

「ただいまあ」

玄関からお兄ちゃんの声が聞こえてきた。私はシチューの火を止めて迎えに行く。

「お帰り、お兄ちゃん。……今日はどうしたの?」

「また……失敗しちゃった」

お兄ちゃんは涙目でしょぼくれている。身長183センチのお兄ちゃんが下を向いてる姿は、まるで熊さんみたいだ。

私は穏やかに微笑んでみせた。

「今日はどうしちゃったの?」

「おつりの計算間違えて、店長に叱られて……可愛い女の子のお客さんがいたから声かけたらビックリして怖がらせて、それで店長にまた叱られて……
本当に俺、毎日叱られてて、本当にバカだ」

「ううん、いいんだよ。お兄ちゃんはお兄ちゃん。それに、失敗しようと思って失敗しちゃったわけじゃないんでしょ?」

「うん……でもいつクビになるか……」

「大丈夫だよ!お兄ちゃん、美味しいケーキ作れるでしょ?
そんなことより今日はお兄ちゃんの大好きなビーフシチューだよ!」

「あっ、本当だ!!しずく、料理上手いもんなあ」

屈託なく笑うお兄ちゃんの手を引いて、私はその唇にチュッと口付ける。

「ありがと、お兄ちゃん。じゃあ、準備するね」

私はまたキッチンに向かう。振り返ると、お兄ちゃんはいつも通りリビングのソファーでテレビを見始めた。
見るのはEテレの幼児向け番組だ。「いい大人なんだから」と言っても、「これがいいんだ」とお兄ちゃんは言ってきかない。

私は鼻歌を歌いながら鍋をかき混ぜ、シチューを小皿に取った。……うん、美味しい。腕によりをかけただけはあったかな。

シチューはできたからサラダを準備しよう。それに、ご飯もよそわなきゃ。


ぎゅっ


火を止めて食器棚に向かおうとした私は、背後から抱き締められた。
4 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 21:55:13.26 ID:7rXyh9rYO
「……お兄ちゃん??」

お兄ちゃんは私の頭に頬擦りしている。背中に硬い何かが当たっているのも分かった。

「しずくはかわいいなあ。ほんと、かわいい」

「んもう、お兄ちゃん……もうそろそろご飯だよ?」

「うー、だってしずくを先に食べたいんだもん。いいよね?」

お兄ちゃんはまるで子犬のように目を輝かせた。断ることもできるけど、そうするとお兄ちゃんはとてもとても悲しそうな顔になるんだ。


だから、私は振り向いてちょっと背伸びする。目の前にあるのは、お兄ちゃんの唇。
そこに自分のそれを重ね合わせる。今度は触れるだけのキスじゃない。お兄ちゃんはバカだけど、それは十分分かっている。


「ちゅるっ……んっ……」

「あむっ……じゅるるっ……しずく、はやく、はやくしよ?」

「えっ……ちゅる、あむん……もう少し、キス、しよ?」

「れるっ、れるるっ……ぷはっ。でも、がまんできないよう」

お兄ちゃんは乱暴に、私の上着を脱がせにかかった。破れないように、バンザイしてあげる。
スポン、と抜けるとお兄ちゃんはブラのホックを無理矢理外そうとした。


バチン


あーあ、また壊しちゃった。まあ、毎日のことだし替えならいくらでもあるんだけど。
ぷるん、と同級生のより少しだけ大きいおっぱいが空気に触れた。

「あ、やっぱりおいしそうだ。どんなプリンやババロアよりやわらかいんだよねぇ」

「んもう。またお菓子にたとえる」

「だって、大好きなんだもん。じゃ、食べるね」


ジュルルルルッッ


「んくうっ!!?」


お兄ちゃんが乳首を一気に吸った。荒々しくて、少し痛いけど……それはすぐに甘い、甘い快感へと変わっていくんだ。


ちゅる、れるっ、れる……


「んっ……お兄、ちゃんっ……!!」

「れる、れるる……」

お兄ちゃんが激しいのは、いつも最初だけだ。エッチになると、どこまでもお兄ちゃんは優しく私を愛してくれる。
舌先で乳首を弾いたかと思うと、舌全体を使って乳輪全体を円を描くように舐める。

「ひうっ、お兄ちゃん、お兄ちゃん……!!」

「んふ。しずくのかわいいとこ、もっと見たいな」

お兄ちゃんはそっと床に私を押し倒す。そして、また甘えるように私の乳首をねぶるんだ。
お兄ちゃんが、空いた右手の爪でカリカリともう片方の乳首を掻くと、私の身体は弓なりになって震えた。


「ひううううっっ!!!」


「ちょっといっちゃった?」

「……うん、ちょっとだけ……ねえ、下も、してぇ?」

毎日のように肌を重ねてるけど、お兄ちゃんとすると飽きることがない。
バカなのに、エッチだけは本当に上手なんだ。私の感じる所を覚えてて、しかもそれをどんどん増やしていく。

お兄ちゃんは、エッチだけなら天才なのかもしれない。そうだ、初めての時から……
5 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 21:55:48.30 ID:7rXyh9rYO




……ズキン




6 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 22:08:12.61 ID:7rXyh9rYO



私の脳裏に、嫌な記憶がよぎった。



……忘れなきゃ。「あのこと」だけは、忘れなきゃいけない。
目の前にいるお兄ちゃんだけに集中しよう。


7 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 22:15:17.14 ID:7rXyh9rYO
私は大きく深呼吸した。……うん、大丈夫。大丈夫だよ、私。


「……しずく?」

「ううん、何でもないよ。ね、お兄ちゃん……ここ、触って?」

私はショーツをズボンと一緒にずり下げた。つぅ……と銀色の雫が一本、糸を引く。

「うわあっ、もうグチョグチョだ!ねえしずく、俺、もうがまんできないかも」

お兄ちゃんがカチャカチャとベルトを外そうとする。でもバカだから、簡単には外れてくれない。

「もう、そんなに焦らないの。時間はたっぷりあるし、邪魔する人もいないんだから」

私がズボン越しにお兄ちゃんのおちんちんにキスをすると、「ひぐっ」と腰が震えた。……うん、今日は耐えたね、お兄ちゃん。
ベルトを外してズボンを下ろすと、ビンッと硬い肉がお腹へと跳ねた。先端は透明な液で濡れている。ムワッと、お兄ちゃんの匂いがした。

「我慢できないの?」

「うんっ!!はやく、出したい」

「んもう、仕方ないなあ」


……くぱぁ


私は指で既にとろとろに蕩けたおまんこを拡げた。
いつもなら、お兄ちゃんを諭してシックスナインにもっていくんだけど……今日は、私も早く挿れて欲しかった。


……何で、今日に限って……「あの日」のことを思い出しちゃったんだろう。


忘れなきゃ。お兄ちゃんとのエッチで真っ白になって、忘れなきゃ。


お兄ちゃんは何も気付かず、私に覆い被さった。上と下の唇両方に、「お兄ちゃん」が触れる。
ああ、お兄ちゃんに私の動揺は悟られなかった。そのことに私は安堵する。


8 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 22:15:52.96 ID:7rXyh9rYO




お兄ちゃんがバカで、本当によかった。



9 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 22:27:21.78 ID:7rXyh9rYO
#

「んっ……」

つぷ、という音とともにお兄ちゃんのが私から引き抜かれる。膣中からどろり、と白い液が溢れる感触がした。
ちゅっ、とお兄ちゃんが私の唇に触れる。

「今日もかわいかったよ、しずく」

「うんっ、お兄ちゃんも……とても良かった。じゃあ、ご飯の支度やり直すね」

私はコンロに火を付けようとして、思い止まった。そうだ、大事なことを忘れてた。

「あ、お兄ちゃん。お薬飲まなきゃ」

「えー……あれ、苦くて嫌い」

「でも飲まなきゃ治らないんだよ?それに、飲んだらまたすっごく気持ちよくなれるよ?」

「そうだけどさ……」

お兄ちゃんが口を尖らせる。私は冷蔵庫から、黒いシロップを取り出した。
そして、蓋に一目盛りのドロリとした液体を注ぐ。この分量だけは、絶対に間違えちゃいけない。

「ね?あーんして」

「……あーん」

口にその黒い液体を注ぐと、お兄ちゃんはすぐに眉を潜めた。

「うう……にがい。というか、あまにがい」

「だって普通だとお兄ちゃん飲めないでしょ?お兄ちゃん、お子様舌だし」

「うう、そうだけどさあ……それに俺、お子様じゃないよ?えっと、今年でにじゅう……」

「25、でしょ?ささ、ズボンとパンツ履いてソファーに行って?もう少ししたら、シチューできるから」

私も近くのティッシュでベタベタの股を拭き、ショーツを引き上げた。
10 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 22:28:53.39 ID:7rXyh9rYO


そう、あの薬は忘れずに飲まさなきゃダメなんだ。それは、お兄ちゃんを治すためじゃない。



あの薬の、本当の効き目は…………


11 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/10(月) 22:30:47.62 ID:7rXyh9rYO
今日はここまで。
12 : ◆Try7rHwMFw [sage]:2020/02/11(火) 09:30:23.26 ID:nsWu7yYrO
#

「……ふう」

私は面を取ると、頭の手拭いを外し一息付いた。むわっと湯気が面から立ち上るのが見えた。

「しずくー、お疲れー」

「あ、うん。お疲れさま」

右から佳代ちゃんが声をかけてきた。いつもニコニコしていて、誰からも好かれる子だ。

「しずく、これからどうする?いつも金曜は、『プティ・アンジュ』だよね」

「うん。あそこで勉強してから帰るよ」

佳代ちゃんが手拭いで汗を拭いた。

「あそこって、しずくちゃんのお兄さんが働いてるんでしょ?私も一度行きたいなあ」

「だーめ。そもそも、佳代ちゃんちって逆方向でしょ?」

「そうだけどさあ。『プティ・アンジュ』って、『パクログ』で4点台でしょ?
スイーツ好きJKとしては行っておきたいんだよぅ」

「今日はダメ。というか、佳代ちゃんの目当てってお兄ちゃんでしょ」

佳代ちゃんが口を尖らせた。

「ちぇっ、バレてた」

「んふふ、そんなのお見通しだよ。それに、お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだもん」

「相変わらずブラコンだねぇ」

「いいの、ブラコンで」

佳代ちゃんはお兄ちゃんに一度会ったことがある。お兄ちゃんは顔はいいから、多分気に入ったんだろう。
でも、私は佳代ちゃんをあの店に連れていくつもりはない。

佳代ちゃんは誰からも好かれる。おっぱいも私より大きくて、しかもかわいい。
お兄ちゃんが佳代ちゃんを好きにならない保証なんてないのだ。


そして、もしそうなったら……


「……しずく、何ちょっと怖い顔してんの?」

心配そうに佳代ちゃんが覗きこんできた。私は「ううん、何でもない」と作り笑いする。
面を小脇に抱え、ゆっくりと立った。

「お兄ちゃんが待ってるから。先に上がるね」

「うん、またね」
13 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 10:18:30.39 ID:jCKg0GEHO
#

「プティ・アンジュ」は表参道の裏通りにある。店はいつも若い女性で賑わう、人気店だ。

お兄ちゃんはバックヤードでケーキ作りに専念しているから、お客さんと会うことはあまりない。
それでも、妹としては心配なのだ。お兄ちゃんを好きになる女の人が現れないか。
そして、お兄ちゃんが女の人に手を出さないか。

お兄ちゃんはバカだから、理性があまり働かない。少し気に入った人がいたら、すぐに声をかけちゃう。
店長さんはそのことを知ってるから、滅多にお兄ちゃんを表に出さない。それでも、やらかす時はやらかすのだ。

だから、週1で私はここに来る。お兄ちゃんの監視と、お兄ちゃんが作る絶品スイーツを味わうために。

「あ、しずくちゃん。いらっしゃい」

店長の奥さん、香苗さんが笑って出迎えた。
凄い美人だけど、お兄ちゃんはなぜか人妻には手を出さない。彼女は安心なのだ。

「はい!席、空いてます?」

「ええ、イートインの席取ってあるわ。いつものでいい?ザッハトルテとスペシャルブレンド」

「ありがとうございます。それで」

ザッハトルテはお兄ちゃん得意のケーキだ。濃厚なチョコに、絶妙の甘さのホイップが絡むのがたまらないのだ。

私の「指定席」は店の隅だ。ここからなら、店の全体がよく見える。


……あれ?


その隣の席で、小さな男の子が勉強している。あれは……

私は席につくと彼に話しかけた。

「君、今日はお母さんたちと一緒じゃないんだ」

ここ1ヶ月ぐらい、毎週金曜のこの時間にいる子だ。眼鏡に蝶ネクタイ姿のこの子を、私はこっそり「コナン君」と呼んでいた。
いつもは美人のお母さんと赤ちゃんの3人で来ているんだけど……

「うん!ちょっと用事があるんだって。受験まであと1年だから、勉強してるんだ」

「コナン君」はニッと笑った。テーブルには、超難関中の過去問が積まれている。
14 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 13:28:21.40 ID:XNz6ZqAuO
「随分難しい所を狙ってるんだね」

「やるからには頑張りたいもん。……お姉ちゃん、女子学園に通ってるの?」

「……えっ!?」

「制服で分かるよ。大体都内の学校は、頭に入ってるから」

得意気に「コナン君」が言う。ちゃんと話すのは初めてだけど、ちょっと生意気かも。

適当に話を切り上げ、勉強しようとノートを取り出した私を、「コナン君」がじっと見ている。

「……どうしたの?」

「えっと、その……お姉ちゃんにお願いがあるんだけど」

「お願い?」

「うん。僕に勉強、教えてほしいんだ」

「えっ……」

「女子学園なら教えられるでしょ?もちろん、ママに相談するけどお金も出すよ」

突然の申し出に、私は困惑した。ここで勉強してるのはただのカモフラージュだけど……お金か。
そんなに生活には困っていないのだけど、少し心が揺らいだ。

「コナン君」はというと、早速スマホで誰かと話している。話し相手はお母さんだろうか。
彼はすぐに、明るい表情で電話を切った。

「是非お願いします、だって。時給1万円でどうかな?」

「い、1万円……!!?」

東大生で相場が3500円。東大医学部でも7000円がせいぜいだ。それを高校生の私に?

確かに私は学校でもトップレベルだ。模試では大体東大A判定だし、学力は人並み以上にはある。
でも、いくらなんでもこれは貰いすぎだ。この子の家がどれだけお金持ちなのかしらないけど、流石に気が引ける。

「ちょ、ちょっと……」

「えっ……ダメ?」

「コナン君」が目を潤ませた。店内の視線が集まるのを感じる。
……これはよくない。私は溜め息をついた。

「分かったわ。でもそんなに色々教えられないわよ?」

「うん、分かった!お姉ちゃんの名前は?」

「磯崎しずく。君は?」

「僕の名前は……コナン」

「え?」

「皆僕をそう呼ぶんだ。『名探偵コナン』のコナンに似てるから。パパもママもそう呼ぶよ」

私は戸惑った。何かこの子、訳ありなんじゃないか。でも、時給1万円の誘惑に、私は負けた。

「……分かった。コナン君、これからよろしくね」

「うんっ!!」
15 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 13:39:48.37 ID:XNz6ZqAuO



もし、この時彼の申し出を断っていたらどうなっていただろう。
それは誰にも分からない。でも、ただ一つ言えるのは。



彼が私とお兄ちゃんの運命を、大きく変えてしまったということだ。



16 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 13:41:28.59 ID:XNz6ZqAuO



原案:
いちはや「お兄ちゃんはバカ」
青山剛昌「名探偵コナン」



17 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 13:42:01.22 ID:XNz6ZqAuO
一時休憩します。
18 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 19:17:11.50 ID:DsuNYgouO
#

「しずく、今日お店で誰かと話してた?」

家に帰ってきたお兄ちゃんは、珍しく少し不機嫌そうだった。コナン君に嫉妬してたりするのかな。
お兄ちゃんはキッチンにいる私に手を出すことなく、リビングでただぼーっとしている。

「うん。小学生の子で、開明中を目指してるんだって。常連さんの子供みたい。
家庭教師頼まれたんだけど、お給料がすっごくいいの」

私はお味噌汁の味をみる。うん、美味しい。

「しずくと一緒の時間、少なくなるかな」

「そんなことはないよ。金曜の18時からの1時間だけ。心配しなくて大丈夫だよ、お兄ちゃん」

「……ならいいけど」

溜め息をつき、私はお風呂場の方を見た。
……今日は先にお風呂にしよう。きっと、お兄ちゃんは疲れてるんだろう。

#

「湯加減どう?お兄ちゃん」

「うん、ちょうどいいよ。しずくも入る?」

「今行くよ」

私は洗濯物籠に下着やら何やらを入れて、風呂場に入った。湯気の暖かな感触が気持ちいい。
お兄ちゃんは、肩までお湯につかってくつろいでいた。お兄ちゃんがお風呂に先に入り、私と一緒に上がる。これも日常だ。

お兄ちゃんの上に乗るようにして、私も湯船につかる。胸が、ちょうど背もたれになる形だ。
くすぐったそうに、お兄ちゃんが腰を動かした。

「ふう……温まるねぇ」

「そうだね」

後から急にぎゅっと抱きしめられた。

「……お兄ちゃん?」

「しずくは、どこにも行かないよね」

「……うん。どこにも行かないよ。ずっとお兄ちゃんと一緒」

「だよね」

そう言うと、お兄ちゃんは私のうなじに顔をうずめた。すう、と匂いを嗅いでいるのが分かる。

「……しずくの匂いだ」

「えっ、やだ。そんな汗臭かった?」

「ううん、とてもいい匂い。……ずっと嗅いでいたい」

お兄ちゃんはペロッと首筋を舐めた。「ひあっ」と私は思わず声を出す。
いつもお兄ちゃんは甘えたがるけど、今日はいつも以上だ。

「どうしたの?」

「いや……何でもない」

言葉と裏腹に、抱く腕に力が込められた。私は唇を噛む。


お兄ちゃんは、たまにこんな感じになる。
そして、お兄ちゃんを今のようにしたのは……私だ。

19 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 22:04:47.45 ID:DsuNYgouO
#

「むにゃ……しずく……」

寝言を言うお兄ちゃんの頭をそっと撫でる。腰の奥からとろりと、お兄ちゃんが射精したのが流れてきた。
子供、できないかな。ずっとそれを願ってるんだけど、危険日に何度もしてもその気配はなかった。

いつまで、この生活が続けられるんだろう。私の胸が強く痛んだ。
お兄ちゃんも、あるいはどこかでそう感じているのかもしれない。だから、さっきのお風呂みたいに甘えてくるんだ。


私はお兄ちゃんがいなければ生きられない。もちろん、バカのお兄ちゃんも、私なしでは生きられない。離れるつもりなんてない。

だけど、私とお兄ちゃんは兄妹だ。ずっと2人でいるなんて不自然だ。


この桜新町の家を出て、遠く離れた田舎に越して男と女としてやり直せないだろうか。
お金はある。お兄ちゃんはケーキ作りだけは天才だから、お店を開けば仕事もきっとある。


でも……


私は2階にある「あれ」を思った。そう、「あれ」だけは私じゃどうしようもできない。
そして、「あれ」は私とお兄ちゃんをこの家に縛り付けている。


お兄ちゃんが2階に行かないよう、扉を何重にも施錠している。だから、お兄ちゃんが「あれ」に気付くことは多分、ない。
そもそも、そんなことお兄ちゃんはとっくの昔に忘れてしまってるのだ。バカだから。


それでも、私の心はどこか、不安に支配されてる。
それを忘れられるのは、寝ている時と……お兄ちゃんに抱かれている時だけ。


「しずく……」


お兄ちゃんがまた、寝言で私を呼ぶ。私は思わず、お兄ちゃんの頭を抱き寄せ、唇を奪った。
20 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 23:22:36.03 ID:DsuNYgouO
#

「……凄いじゃない」

「えへへ……」

コナン君が照れ笑いした。実力を見るために、ちょっとした小テストを国語と算数で出してみたんだけど……

制限時間45分の半分も経たないうちに、彼はそれを仕上げてみせた。
漢字を2問、算数の基本的な計算問題を1問、ケアレスミスで落とした以外は完璧だった。

これは、私が教えることはほとんどないんじゃないかな。
これで1万円も貰うのは、ちょっと罪悪感がある。

「これ、全部灘浦や開明とかの過去問から出したんだけど。君、小5だよね」

「うん!でも、たまたまだと思うよ?」

「たまたまじゃ記述問題とかできないと思うけど……というか、字きれいだね」

「そ、そう?ありがと」

答案は、まるで私が書いたみたいに丁寧で整理されていた。まさか、名前の通り「見た目は子供、頭脳は大人」だったりして、ね。

「でも、これ私が教えることってないわよ?これだけできるなら、余裕じゃ……」

「でも、理科と社会が苦手なんだ。2教科じゃなく、4教科受験だと正直自信がないんだよ」

本当かなと思って簡単な問題を出すと、正答率は6割ってとこだった。「暗記物はちょっと分からない」というのは本当みたいだ。

「じゃあ、来週から理科と社会中心ってことでいい?」

「うん!しずくお姉ちゃん、よろしくね!」

しずくお姉ちゃん、か。何か不思議な感じだけど、悪い気はしない。胸がちょっとだけポカポカした気分だ。


チリンチリン、と店の入口から鈴の音が響いた。
何気なくそっちを見ると。


「あ、しずく!?やっぱりいた」


そこには佳代ちゃんがニコっと笑っていたんだ。
21 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/11(火) 23:23:09.00 ID:DsuNYgouO
今日はここまで。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/02/12(水) 18:00:36.74 ID:jgRdnHMDO
やはりいちはやの作品からだったか

こりゃ、結構キツイエンドだな
23 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/12(水) 21:00:19.25 ID:JEla9brPO
「佳代ちゃん!?どうしてここに」

「いや、今日は予備校もないし。『プティ・アンジュ』、一度来たかったんだよねえ。
ってその子は?『名探偵コナン』のコナン君そっくりだけど……まさか彼氏?」

「なわけないでしょ……。家庭教師の生徒。ちょこっと話したでしょ、バイト始めるかもって」

佳代ちゃんはポン、と手を叩いた。

「ああ、言ってたね!私、南口佳代。はじめまして!」

「はじめましてお姉ちゃん!しずくお姉ちゃんの友達?」

「うん、中等部からの親友だよ!ね、しずく」

「う、うん……」

佳代ちゃんは誰にでもフレンドリーだ。それが彼女のいいところなんだけど、ちょっとウザいこともある。

困り気味の私に気付いたのか、佳代ちゃんが「あ、お仕事中だったか」と少し離れた。

「じゃあ、私はケーキ買って帰るね。またね、『コナン君』」

「うん、またね!」

佳代ちゃんはショーウィンドウとにらめっこし始めた。本当にスイーツ好きなんだな。


その時は、それだけで済んでいた。そう、その時は。

24 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/12(水) 21:30:54.61 ID:JEla9brPO
#

「牡蠣の生産量で上位3県は?」

コナン君がうーんと腕を組んだ。

「えっと……広島県と、宮城県と……どこだっけ」

「地理を考えれば分かるわ。よく考えてみて」

「えーと……牡蠣が採れるのは波が穏やかな場所だから……瀬戸内海沿いだよね。とすると、岡山県?」

「正解!本当に、飲み込み早いわね」

コナン君が「えへへ」と頭をかいた。

「お姉ちゃんの教え方が上手いからだよ。ありがと、お姉ちゃん」

「誉められるようなことは、何もしてないわ。教え始めて1ヶ月経つけど、もう今すぐに開明受かるんじゃない?」

「そんなことはないよ。まだまだ頑張らなくっちゃ!」

屈託なく笑うコナン君に、私は微笑んだ。最初は生意気な所があるなと思った彼だけど、実際に教え始めると思いの外素直でいい子だった。
それに、とても飲み込みが早い。覚えがいいというより、論理的思考能力が抜群なのだ。

「で、最近お母さん見ないけど……どうしてるの?」

「えっと……弟の新一の面倒で忙しいみたい。あと1ヶ月は、僕に構ってられないって」

「……そう」

なるほど、1万円という破格の家庭教師代は、一種の厄介払い料なのか。この子も寂しいだろうに。

……まあ、過干渉よりはいいのかな。

私は溜め息を付いた。


チリンチリン


音がした方向を見ると……また、佳代ちゃんがいた。

「あ、しずくちゃんにコナン君!!」

「佳代ちゃん!?また来たの?」

えへへ、と佳代ちゃんが笑う。

「だって、ここのケーキ美味しいんだもん。しずくちゃんのお兄ちゃん、相当のスゴ腕なんだねえ」

「あ、いや……お兄ちゃんは、ただの従業員の一人だから……」

「それでも凄いよ!あんなに美味しいケーキを作れるんだもん。
今日は弟の誕生日だからさ、ママにここで買ってこいって言われたんだ。
あ、コナン君もこんにちは!勉強頑張ってる?」

「うんっ!!しずくお姉ちゃん、教えるのすごい上手なんだよ!」

うんうんと佳代ちゃんが何故か自慢げに頷く。

「だよね、何せ東大に毎年30人を送り込む我が女子学園高校のトップだもん。
全国模試でも上位だし、親友ながら鼻が高いよ」

「そうなの?すごいなあ。……って、しずくお姉ちゃんのお兄ちゃんって、ここで働いてるんだったね」

「う、うん。一応、ね」

そこはあまり触れてほしくない話題だ。私とお兄ちゃんの関係は、そっとしておいてほしいのだ。

佳代ちゃんが不思議そうな顔をした。

「一応?」

「ああうん、こっちの話。じゃあコナン君、勉強に戻ろ?」

佳代ちゃんは首を捻りながらショーウィンドウに向かった。
25 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/12(水) 21:32:29.37 ID:JEla9brPO


「……お兄ちゃんのこと、知られたくないの?」


コナン君が急に、真っ直ぐな目で訊いてきた。血が一斉に引いていく。

「え、何のこと」

「いや、さっき一応って言ってたから。変だなあって」

……ビックリした。お兄ちゃんとの関係を悟られたのかと思った。
そんなはずはない。ここでお兄ちゃんが働いていることくらいは言ったかもしれないけど、それ以上のことは何も話してないんだから。

私は取り繕い笑いをした。

「あ……そういうこと。うん、急に話題が元に戻ったから、ビックリしただけ」

「ふうん」

コナン君がノートの問題を解き始めた。

その時だ。

26 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/12(水) 21:37:22.47 ID:JEla9brPO


「じゃあこれでポイントカードが一杯になりましたので、1000円引きますね」


……え?


声の主は香苗さんだ。そして話し掛けている相手は……佳代ちゃん。


……あり得ない。ポイントカードのポイントは、1000円に1ポイント。ポイントが一杯になるには、3万円は使わないといけない。
弟の誕生日ケーキを買うって言ってたから、そこで結構お金は使っただろう。
それでも、たった1ヶ月でポイントが溜まるなんて……絶対におかしい。


つまり、佳代ちゃんは……私がいない間に「プティ・アンジュ」に来ている。それも、凄い頻度で。
それが何を意味するのかを考えた時……私の心の隙間に、ドス黒いものが「また」生まれた。


27 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 00:09:31.68 ID:dhu7TMB0O
#

「ただいまあ」

「お帰り。お兄ちゃん、ちょっと聞いていい?」

お兄ちゃんはきょとんとした様子だ。

「どうしたの、しずく」

「最近、誰かと会ってない?例えば……ツインテールの、おっぱいの大きい女の子」

「……いたっけなあ。そもそも、『ついんてーる』って何?」

ダメだ。バカのお兄ちゃんに訊いても分からない。
仮にお兄ちゃんが佳代ちゃんと会っていたにしても、物覚えが極端に悪いお兄ちゃんはそのことをきっと忘れてるだろう。


でも、お兄ちゃんがバカだからこそ、危ないんだ。


お兄ちゃんは純真で素直だ。頭は足りないけど、とても優しい。
だから、好意をもし正面からぶつけられたら……それも、佳代ちゃんぐらいかわいい子だったら……きっとその想いに応えてしまう。
依存する対象が、私から別の誰かに変わる。それは本当は、「健全な」ことなんだろう。

でも、それはダメだ。


お兄ちゃんが……「バカでなくなってしまうから」。


そして、そうなった時何が起きるのか……私は恐れている。
28 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 00:21:06.11 ID:dhu7TMB0O
「……しずく?」

私は我に返った。

「ううん、何でもない。もうご飯できてるよ」

私はお兄ちゃんの手を引いた。お兄ちゃんは、絶対に放さない。私のためだけじゃない。お兄ちゃんのためにも。

#

「んう……今日のしずく、ねちっこいねぇ」

「ぴちゃ……そう?あむっ」

乳首を甘噛みすると、お兄ちゃんの腰が跳ねた。

「んぐぅっ!!?やだよしずく、俺おっぱいでないよ?」

「男の子も、ここ感じるって雑誌にあったよ?それに、お兄ちゃんもこれ、好きでしょ」

「いやっ、そ、そうだけど……ひうっ!!?し、しずく、それ感じるって!?」

グジュグジュと、先走りまみれになっていたお兄ちゃんの亀頭を掌で擦る。

「乳首を責められながらおちんちんを弄られるの、気持ちいいんだよね?へ・ん・た・い・お兄ちゃん?」

「やだぁっ!!へんたいなんて言わないで!それに、それ、すぐイッちゃうっ!!」

「んふふ、イカせてあーげない」

竿がビクビクいい始めたのを感じ、私はパッと手を離す。お兄ちゃんが絶望したように泣き顔になる。

「な、なんでぇ!?」

「だって、これは罰だから。それにお兄ちゃんが私のだって、お兄ちゃんに分からそうとしてるの」

「そ、そんなっ!?俺は、しずく以外にいないのに!?」

「うん、分かってるよ。分かってるから、おあずけ」

私はにんまりと笑った。
29 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 00:21:32.62 ID:dhu7TMB0O
中途半端ですが、今日はここまで。
30 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 10:32:04.51 ID:I5CNRGSPO
ご飯もそこそこに、私はお兄ちゃんを押し倒した。今日は、お兄ちゃんをめちゃめちゃにしてあげたい気分だったから。
腕を軽く縛って、動けないようにして……ギリギリまで寸止めする。そして最後の最後に、思い切りイカせてあげる。

お兄ちゃんを一番気持ちよくしてあげられるのは、私なんだ。暗い感情が、私を突き動かす。


つぷ……


「ひぎっ!!?しずくっ、そこは……」

「うん、知ってる。お兄ちゃん、ここでも気持ちよくなれちゃうんだよね?」

私はローションで濡らした人差し指の先端を、お兄ちゃんのお尻に挿れた。奥までは抵抗があるけど、入り口だけ弄っても十分だというのは知ってるよ。

くちゃくちゃと、上と下から水音が聞こえる。お兄ちゃんは快感に耐えかねて身体を捩らせてるけど、私はやめてあげない。
お兄ちゃんも、本気で抵抗してない。何だかんだで責められるの、大好きなんだもんね。

「しずくっ!何か、来ちゃうっ!!」

「うんうん、バカになっちゃうんだよね?今よりもっと、もっとバカになっちゃうんだよね?」

「やだよぅ!俺、バカになりたくないよ!!いやだいやだいやだ……!!」

ブンブンとお兄ちゃんが女の子みたいに首を横に振る。……かわいいなあ。

お尻の穴がひくついてきた。あ、そろそろかな。

「いやだっ、真っ白いやだっ!!蕩けちゃうの、いやだ!!」

「うん、真っ白になるんだよね?女の子みたいに、イッちゃお?」


カリッ


「うわああああっっっっ!!!!」


乳首を甘噛みすると、お兄ちゃんのおちんちんからどろりと精液が溢れてきた。
勢いよく「射精す」んじゃなく、弱々しく「漏れる」ような感じ。それが数十秒も続くんだ。


ビクンッ、ビクンッ


お兄ちゃんは全身を震わせている。あ、「メスイキ」したね。
それを見て、私の奥から「ジュン」と音がした。腰の深い所が、甘く疼いているのが分かる。

こうなるとお兄ちゃんはしばらく動かない。そして、我に戻ったらおかえしとばかり、私をメチャクチャに犯すんだ。
その荒々しさが、とっても楽しみなんだ。乱暴に奥に叩き付けられるのも、すごくいい。


でも、その前にやることがある。


ぐったりとメスイキの余韻に浸っているお兄ちゃんを尻目に、私はベッドそばに放り投げられたお兄ちゃんのリュックを漁る。
これぐらいしても、お兄ちゃんは気が付かない。そもそもバカだから、気が付いてもその意味は分からないだろう。


カサリ


手に何かが触れた。……嫌な予感とともに、その紙を引き上げる。それは、かわいらしい封筒だった。


そして、その手紙の筆跡は……


31 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 11:18:52.73 ID:I5CNRGSPO
#

「佳代ちゃん、週末私の家に来ない?」

面を脱いで手拭いで顔を拭いていた彼女の顔が、パアッと輝く。

「えっ、本当!?」

「うん。お兄ちゃんもいるよ。土曜はお店が臨時休業だから、佳代ちゃんのためにケーキ作るって」

「え、嘘っ、やだっ……まさか……」

「どうしたの?そんなに嬉しいの?」

「う、ううんっ。な、何でもない……」

佳代ちゃんは真っ赤になって俯いた。あの手紙、お兄ちゃんが読んだと思ってるんだ。
もちろん、あれは破り捨ててとうに焼却場の中だ。お兄ちゃんが佳代ちゃんの想いに応えることもない。


ごめんね、佳代ちゃん。今のは全部嘘。
そして、佳代ちゃんとも……もうお別れなんだね。


私の胸に悲しみとも喜びとも付かないものが溢れてきて、視界が少し滲んだ。
32 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 13:50:15.64 ID:I5CNRGSPO
#

「しずくお姉ちゃん、どうしたの?」

「あ、うん。何でもない」

コナン君が、不思議そうに訊いてきた。明日のことで頭がいっぱいになっていたらしい。

「……変なの。今日はちょこちょこ漢字間違ってるし」

「ごめんね。授業続けようか」

チリン、という鈴の音がすると、また佳代ちゃんが現れた。ニコリと笑って手を振っている。

「こんばんは、しずくちゃん、コナン君」

「あ、佳代お姉ちゃん!!今日はいつも以上にご機嫌だね」

「うんっ!明日、しずくちゃんの家に行くんだ」

……そのことは言わないでほしいのだけど。いかに相手が子供とはいえ、万が一がある。

「ええっ、いいなあ。僕も行っていい?」

「え……だーめ。呼ばれてるのは私だけだもん。ね?しずくちゃん」

「あ、うん。そうだね」

そう、邪魔者は要らない。お兄ちゃんすら、明日は要らない。

ふと見ると、コナン君が涙目になっている。

「そんな……お姉ちゃんも、僕のこと邪魔者扱いするんだ」

「えっ……そんなつもりはなかったんだけど、ごめんね?ねえ、しずくちゃん。コナン君も呼んじゃ、ダメかな」

「ちょっとそれは……」

もう一度彼を見ると、決壊寸前だ。店内の視線もこっちに向いている。

「しずくちゃん、彼も連れていったらどう?お母さん、忙しいらしいし」

香苗さんまで参戦してきた。これは……断りきれない。

「分かりました。……じゃあ、コナン君。明日13時に、桜新町の駅前。大丈夫?」

「あ、うんっ!!ありがとう、しずくお姉ちゃん!!」

全く厄介なことになった。でも、きっと大丈夫だ。
33 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 13:50:56.76 ID:I5CNRGSPO


コーヒーに規定量の、「あの薬」を混ぜるだけ。
それを飲んだ佳代ちゃんはやがて眠り、目覚めた時には「バカ」になってる。そして、1週間もすれば……


呼吸を忘れてしまうくらい、「バカ」になるのだ。

34 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 13:55:35.60 ID:I5CNRGSPO
大丈夫。コナン君はきっと何も気付かない。いくら賢くても、私がそんなことをしようとしてるなんて、まず思いもしない。

彼も「バカ」にしてしまおうかと一瞬思ったが、やめた。貴重な薬だ。そんなにいっぺんには使えない。


この用途で「あの薬」──「痴呆薬」を使うのはこれで3回目、か。


次に手に入るのは、いつか分からない。お兄ちゃんを「バカ」であり続けさせるためにも、できるだけ残したかったのだ。

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/02/13(木) 15:04:43.85 ID:VZxPUlp0o
作戦の説明はフラグ
36 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 19:18:30.08 ID:EMELD1FFO
#

「あ、しずくちゃんだ!!」

佳代ちゃんがぶんぶんと手を振る。その横にはコナン君が大きな紙袋を持って立っていた。

「早いわね。少し時間があると思ってたんだけど」

「えへへ。でも、コナン君の方が先に着いてたよ」

照れ臭そうに、彼が頭をかく。

「えっと、こういうの初めてだから……あと、ママからいつものお礼だって」

ぐい、と紙袋を渡された。中には高級ホテルのローストビーフやスープのレトルトがある。

「しずくお姉ちゃんのお兄ちゃんって、お菓子屋さんでしょ?だから、こっちの方がいいんじゃないかって」

「あ、ありがとう。すごく助かるな」

これは本音だ。お兄ちゃんは家に帰るとすぐにしたがるから、あまり凝ったものを作れないのだ。
どうしてもシチューやカレー、煮物みたいに作りおきできるものばかりになってしまう。

「じゃ、行こ?しずくちゃんの家、中1の時以来だなあ」

家は駅から徒歩5分の所にある。自慢じゃないけど、家は結構広い。

「家にお姉ちゃんのパパやママもいるの?」

コナン君の台詞に、私たちは固まった。佳代ちゃんが苦笑いしながら口を開く。

「あのね、しずくちゃんのお父さんとお母さんは……いなくなっちゃったの」

「え?」

「……どう説明すればいいかな、しずくちゃん」

「私に聞かれても分からないよ。私が知ってるのは、1年前に旅行に行ったきりってだけ……それ以来、お兄ちゃんと2人暮らしなんだ」

「……そうなんだ。1年前?」

「あ、うん。そう」

コナン君は「そっかあ……ごめんなさい」というとしょんぼりしてしまった。

それでいい。これについて、私から話すことは何もない。

やがて、白い壁と赤い屋根の家が見えてきた。あれが、私とお兄ちゃんの家だ。
37 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 19:50:34.54 ID:EMELD1FFO
#

「おっきな家だねえ」

リビングに通されると、コナン君が感嘆した。佳代ちゃんは落ち着かない様子だ。

「えっと、しずくちゃんのお兄ちゃんは」

「ちょっと用事があるって。買い出しに行ってるよ」

もちろん嘘だ。お店が臨時休業なのは本当だけど、それは研修のため。お兄ちゃんは夜まで帰ってこない。

私はキッチンに向かい、ネスプレッソをセットした。

「佳代ちゃん、コーヒーはミルクいる?」

「うん、それとお砂糖もたっぷりね」

「コナン君は?あ、コーヒー飲めないか」

いつも家庭教師の時はオレンジジュースだ。だからきっとそうするだろうと思ってたんだけど……

「僕はブラックで」

「……コーヒー飲めたんだ」

「えへへ。いつも朝はコーヒーなんだ。パパとママに付き合ってたらこうなっちゃった」

意外だな。まあ、それはどうでもいい。
冷蔵庫にしまってある「痴呆薬」を取り出して、佳代ちゃんのコーヒーに入れればそれでおしまいだ。


ヴィィィィィィ……


マシンが低く響く。佳代ちゃんのコーヒーにミルクと砂糖を入れると、私は冷蔵庫の扉に手をかけた。


その時だ。


「あれ、しずくお姉ちゃん、何してるの?」


思わず身体がビクッと震えた。え、何でこの子キッチンに……

「え、ええ。ミルクを出そうとしてたの」

「あれれー、おかしいなあ。もうミルク入ってるよ?」

……しまった。常温でも保存が利く、小分けしたミルクを私は使っていた。確かに、冷蔵庫から改めてミルクを出すのはおかしい。

私は苦笑いした。

「追加分のミルクを出そうとしてたの。ほら、足りないかもしれないから」

「そっかあ!じゃあ、僕お手伝いするね!」

コナン君は、佳代ちゃんのと自分のコーヒーカップを持ってリビングに去ってしまった。

……人の家のキッチンに勝手に入るなんて、どういう教育を受けてるんだろう。

しかし、これでは仕切り直しだ。佳代ちゃんがもう一杯、コーヒーを飲むところを狙うしかない。
38 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/13(木) 22:38:15.42 ID:PRg7Il4dO
「はい、どうぞ」

私は「プティ・アンジュ」の焼き菓子とショコラをテーブルに置いた。2人が目を輝かせる。

「うわあ、美味しそう!このマカロン、なかなか食べれないんだよねぇ」

佳代ちゃんが幸せそうにマカロンを頬張る。

さすがに、お菓子に薬は仕込めない。あれは味が独特だから、コーヒーにでも入れないと誤魔化せないんだ。

コナン君は、トリュフチョコを口にすると満足そうに頷いた。

「これ、美味しいねぇ。コーヒーの苦味とよく合ってる」

子供らしくない感想だな。どうもこの子は、子供っぽい時と妙に大人びた時がある。
ネグレクト気味の家庭環境がそうさせてるのだろうか。

コナン君がキョロキョロと辺りを見回した。

「しずくお姉ちゃんの部屋って、リビングの隣なんだ」

襖の隙間が、少し空いている。そこから、私のベッドと机が見えた。……閉め忘れてたか。

「う、うん。それがどうかした?」

「いや、珍しいなって。普通、子供部屋って2階だから」

……本当に妙な所に気が付く子だ。

「……そうね。2階は、お父さんとお母さんがいなくなった状態で残してるの。いつ戻ってもいいように」

「……ふうん」

気の無さそうな声で彼が言う。これ以上の追及はないみたいだ。そのことに、少しだけ安堵する。

佳代ちゃんがコーヒーカップを置いて息をついた。

「しずくちゃんのお父さんとお母さんって、しっかりしてたもんね……。きれいなままにしておきたい気持ち、ちょっと分かるな」

「そうなんだ。……じゃあお兄ちゃんはどこで寝てるの?」


……ドクン


心臓が掴まれる思いがした。この子、きっと無自覚なんだろうけど……異常に鋭い。

気まずい沈黙が流れる。それを佳代ちゃんの苦笑いが破った。

「しずくちゃんの部屋なんじゃないかな。しずくちゃんとお兄ちゃん、仲すっごくいいし。ね?」

「ああ、うんっ。そうなの。お兄ちゃんが布団で、私がベッド。
勉強してる時は、お兄ちゃんはリビングにいるよ」

「そうなんだ!兄妹で仲いいの、いいなあ。僕も新一と仲良くできるかな……」

「きっとできるよ。コナン君、優しくて素直だから」

えへへ、とコナン君が照れ笑いした。彼は納得してくれたみたいだ。

問題は、佳代ちゃんだ。私とお兄ちゃんとの関係に気付いたなら……
私は彼女のコーヒーカップを見る。私の願いと裏腹に、それはまだ半分も減っていなかった。
39 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/14(金) 01:35:41.92 ID:sBflQ0MNO
#

「しずくちゃんのお兄ちゃん、遅いねえ……」

佳代ちゃんが心配そうに呟いた。1時間ほど他愛のない話をしてたけど、引っ張るのにも限界がある。

「うん、そうだね……ちょっと連絡してみるね」

私はスマホを弄るふりをした。2人は向かい側だから、私が何をやっているかは見えない。

「……少し別の用事があるって。30分ほどしたら帰ってくるみたい」

「そっかあ……じゃあ、もう少しだね」

佳代ちゃんがコーヒーカップを煽った。やっと飲みきったみたいだ。

「コーヒー、おかわりいる?」

「うん!お願い」

私は空になったカップを持って、ネスプレッソを操作する。……今度は大丈夫だ。やり遂げてみせ……


「手伝おうか?」


「……え」


心配そうな顔のコナン君が、またキッチンにいた。

「お姉ちゃん、調子悪いんじゃない?前から思ってたけど」

「え……そんなことないわ。気のせいだからあっちに」

「ケアレスミス。最近多いよね?で、さっきの襖。お姉ちゃんらしくない」

ふざけないで!と叫びたい衝動を、私はすんでの所でこらえた。


……確かに、ちょっと変だ。普段なら、私は絶対にあんなヘマはしない。


私の顔から血が一斉に引いていくのが分かった。どうして、そんな。今まではそんなこと、全くなかったのに。
40 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/14(金) 01:45:52.63 ID:sBflQ0MNO


……心当たりは、ある。


あの「痴呆薬」には、幾つか効果がある。人をバカにする効果だけじゃない。適量を使えば毒薬にもなる。


それを使って、私は今まで3人殺した。


それとは別に、「痴呆薬」にはもう一つの用途がある。それは……媚薬。
ごく少量を舐めれば、快感が跳ね上がるのだ。そして、その程度なら無害だと、「アレ」には書いてあった。

しかし、本当に無害だったのだろうか?まさか……!?

その可能性を考えた時、私は酷い貧血に襲われ……


ガタンッッッ!!!


その場に倒れ込んでしまった。
41 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/14(金) 01:46:19.13 ID:sBflQ0MNO
今日はここまで。
42 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/14(金) 09:47:55.29 ID:dezdEdQvO
#

「しずくちゃんっ!!しずくちゃんっ!!」

目を開けると、泣き顔の佳代ちゃんがいた。コナン君も心配そうに見下ろしている。

「……ここは」

「しずくちゃんの部屋。コナン君がここまで運んでくれたの」

「……そう」

頭が酷く混乱している。まさか、私にも「痴呆薬」の効果が?

それを思うと、目に涙が一気に溢れた。

そんなはずはないという想いと、自分はこれからどうなってしまうのだろうという想い。
そして、お兄ちゃんへの罪の意識。……それらがない交ぜになって、胸が詰まった。

「う、ううっ……」

「ど、どうしたのっ!?辛いなら、救急車を……」

「要らないっ!!!帰ってよっっっ!!!」

とにかく、一人にして欲しかった。お兄ちゃんが帰るまで、とにかくただひたすら泣きたかった。

「しずくちゃん……!!」

「佳代お姉ちゃん、帰ろう?きっと、しずくお姉ちゃん良くなるよ」

コナン君に手を引かれ、佳代ちゃんは泣きながら部屋を出ていった。


嘘だ。こんなの絶対に嘘だ。そもそも、少し漢字を間違えてたり、襖少し閉め忘れていただけじゃない。
誰にでもあることだ。きっと、ただ私は疲れていただけなんだ。
「痴呆薬」を少し舐めていたこととの因果関係だって、ただの考えすぎに違いない。きっとそうだ。


だけど、そんな私の楽観的な推測が正しいという保証もない。自分が健康であると証明するため、病院を受診する?
健康ならいい。でも、もし万が一異常が見付かったなら……その可能性に、私は心底怯えた。

43 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/14(金) 09:54:22.22 ID:dezdEdQvO


そして……何よりも。


あの時のコナン君の目。私に異常があるのを、何故か確信していたようだった。
彼は確かに小学5年生にしては賢い。それでも、なぜあの時キッチンにいたんだろう?


まるで、私が何をやろうとしていて、冷蔵庫の中に何があって、それが私すら気付かない変調を及ぼしているのを、全て知っているような……


……あの子は、間違いなくただの小学生じゃない。絶望の中、私は何故かそう確信した。
44 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/14(金) 20:21:08.84 ID:VEAIvzGwO
#

「……しずく?」

お兄ちゃんが帰ってきたのは、夜の11時過ぎだった。こんなに遅いなんて、珍しい。

私は涙を拭いて立ち上がる。……大丈夫だ。頭はすっきりしている。
お兄ちゃんの前では、しっかりもので穏やかで、そしてエッチな妹を演じないと。

私は急いで部屋の電気を付ける。

「お、お兄ちゃん。おかえり。遅かったね」

「うん。……ちょっとね。しずくこそ、どうしたの?さっきまで、電気ついてなかったけど」

「ごめん。……ちょっと昼寝してたら、夜になっちゃった」

ハハハ、とお兄ちゃんが笑った。服は少し汚れている。

「まったく、しずくもバカだなあ。ご飯はもう食べたの?」

「ううん、まだ。でもすぐできるよ」

早速コナン君のお土産が役に立ちそうだ。まさか、ここまで見越していたなんてことは……ないよね。

#

その夜、私はいつも通りにお兄ちゃんに抱かれた。いつも以上に思い切り甘えて。
お兄ちゃんは不思議がってたけど、どこか嬉しそうだった。
45 : ◆Try7rHwMFw [saga]:2020/02/14(金) 21:06:43.60 ID:VEAIvzGwO
#

「しずくちゃん!身体、大丈夫なの?」

朝の教室で、私は佳代ちゃんに微笑んだ。

「うん。ただの寝不足だったみたい。ごめんね、週末は」

「ううん、いいの。しずくちゃんが元気ならそれで。コナン君も心配そうだったよ?今度会うのは、金曜日だよね」

「あ……うん。そうだね」

次彼と会う時、どんな顔をすればいいだろう?何も知らないふりか、それとも疑問を素直にぶつけるべきか。

とにかく、彼はただの小学生じゃない気がした。
本当に「名探偵コナン」がいるわけがないし、ただの取り越し苦労だとは思いたいけど……あまりに鋭すぎる。

頭の調子は、日曜はそんなに問題なかった。ずっとお兄ちゃんとイチャイチャしてただけで、頭を使うようなことはほとんどしてなかったけど。
少なくとも、学校の課題を問題なく済ませることができるぐらいには、頭は回った。きっと大丈夫だ。

#

その日もお兄ちゃんの帰りは遅かった。

その次の日も、その次も。


そして、金曜日がやって来た。


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