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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二十二輪目】
- 1 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/19(日) 22:23:24.48 ID:rrq2V0npo
- このスレは安価で
乃木若葉の章
鷲尾須美の章
結城友奈の章
楠芽吹の章
―勇者の章―
を遊ぶゲーム形式なスレです
やりたいこと
結婚式
安価
・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります
日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
基本的には9月14日目が最終
勇者の章に関しては、2月14日目が最終
戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
※ストーリーによってはHP0で死にます
wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】 不定期更新 ※前周はこちらに
前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1464699221/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1468417496/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【三輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1472477551/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【四輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1477053722/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【五輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1481292024/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【六輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1484833454/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【七輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1488104860/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【八輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1491918867/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【九輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1495544664/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十一輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1503148550/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十二輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1507900727/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十三輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十四輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十五輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十六輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十七輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十八輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十九輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二十輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1570364671/
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二十一輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1579428830/
- 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/19(日) 22:28:42.78 ID:nai54rAXO
- 立て乙
- 3 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/19(日) 22:40:50.28 ID:rrq2V0npo
-
天乃「そうね、友奈に会いに行こうかしら。子供、頼んで平気?」
風「任せてくれるのね」
天乃「え?」
風「んーん。ほら、千景達がいるから」
そっちに任せるのかと思った。と、
風は嬉しそうに、天乃へと目を向ける
届きそうで届かない位置にあった鈴が離れたせいか、
子供達の不満そうな抗議が可愛らしく風に投げかけられる
風「はいはーい。ほれほれ〜」
天乃「風は、子供好き?」
風「嫌いだったら、勇者部の活動で発狂してるわね」
天乃「それもそうね」
子供達に向いている風の横顔は、幸せを感じる
優しい、年上の顔
妹や、弟
まだ小さな子供に向けられる慈愛に満ちた表情は
子供が好きだと、語る
風「任せて貰えるなら、それほど嬉しいことはないわ」
天乃「……一応、風も親になるんだもの。任せられるわ」
- 4 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/19(日) 23:09:04.33 ID:rrq2V0npo
-
交際しているみんなが、星乃と月乃の親になる
だから、任せられるのは当然だ
特に、風なんかは小さい子を見るという点において非常に優れていると言ってもいい
千景たちの手を借りることなく
一人で見ていて貰っても安心できる
もちろん、一応は精霊にも手伝ってもらうつもりではあるが。
風「親かぁ……」
天乃「……私」
風「あぁ、良いのよ。もう過ぎたことだし」
天乃「風」
風「頑張って、親っぽくなっていきましょ」
風の手が、天乃の頭に触れる
まだ、中学生だ
あと数ヶ月で高校生になれるかもしれないけれど、
それでもまだ、結婚さえ許されない子供だ
風「みんなで、ね?」
天乃「……子供扱いしてるわね」
風「だってー、天乃はちっこいし」
天乃「もうっ」
風「大丈夫。子供はあたし達が見ておくから、友奈に会ってきて」
天乃に弾かれた手をもう一度天乃の頭に置いて風は微笑む
照れくさそうな顔、ちょっとだけ怒った顔、嬉しそうな顔、幸せそうな顔
夏凜が一番守りたいと言っていた笑顔
風「あたしはもう少し、可愛い顔を見てても良いけど?」
天乃「今すぐ行く」
- 5 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/19(日) 23:30:49.25 ID:rrq2V0npo
-
えーもう少しいてもいいのにぃ。と
名残惜しそうな風の声に背中を押されて、天乃は病室を出る
松葉杖を使って歩くのも慣れたもので
全盛期の速度は出せなくても、普通に歩くことは出来るようになってきている
天乃「あとは……筋力的な問題よね」
よく食て、良く寝る
そして、適度な運動
体力的に戻ってきたら、夏凜に付き合って貰って鍛錬
最初は負けるだろうが、最終的には打ち負かしたい
天乃「……はぁ」
松葉杖を半歩後ろにして、自分の左足だけで床に触れる
かかとをつけて、ゆっくりと踏み込んでいく
ふくらはぎに負荷がかかり、膝に上って……痛みが走る
天乃「っ」
まだだ
そのまま、右足を前に出して――先に左足が崩れて
松葉杖が滑って廊下に大きな音が響く
天乃「………」
この体では、友奈を連れて帰って大丈夫だなんて言えない
リハビリを頑張っているけれど、まだまだだ
若葉「無茶をするな」
天乃「あらやだ……みんなには内緒にしてね?」
若葉「精霊には伝わる。沙織には……口止めしておく」
どこからともなく現れ、手を差し伸べてくれた若葉に笑みを向けて、その手を取る。
甘えられるときは甘える
天乃「そろそろ行けると思ったのよ。ダメだったけど」
若葉「病院食で足りていないだけだ。退院したら、肉でも食べに行こう」
天乃「みんなで?」
若葉「二人でもいい。まぁ、私の場合は結局精霊の繋がりが残るが」
- 6 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/19(日) 23:38:08.96 ID:rrq2V0npo
-
では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
園子「ねぇわっしー」
東郷「どうしたの? そのっち」
園子「お嫁さん、だね」
東郷「……そうね」
東郷「でも、久遠先輩がお嫁さんよ。それは譲らないわ」
園子「ふーっ! 流石わっしー! 以心伝心だぜ〜!」
- 7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/19(日) 23:49:58.49 ID:nai54rAXO
- 乙
友奈ちゃんもそうだけど久遠さんも調子が戻るのは大分先になりそうか…
あと地味に目的がやりたいことに変化したな
- 8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/20(月) 00:25:11.18 ID:hLaWL3dlO
- 乙
ゆゆゆ一挙終わったー
久遠さん今期(3周目の5周年)ももうすぐかぁ
>>1のモチベ次第だけど次はのわゆに先行して陽乃さん見たいな
- 9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/20(月) 12:26:25.40 ID:2oV5QCsJO
- 陽乃さん編かー
くあゆシリーズの西暦時代もなかなか見応えありそう
- 10 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/20(月) 23:27:43.30 ID:GHz4ndg5o
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
その分、明日は少し早い時間から
- 11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/20(月) 23:32:49.52 ID:UN/QBDDVO
- 乙ですー
- 12 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/21(火) 20:49:40.52 ID:+4xqiPoto
-
では少しだけ
- 13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/21(火) 21:01:27.85 ID:OTfXPy8SO
- かもーん
- 14 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/21(火) 21:18:19.97 ID:+4xqiPoto
-
天乃「そう? じゃぁ、二人きり」
若葉「だが東郷達には事前に説明しておいてくれ」
天乃「ええ、任せて」
あえて東郷を前面に出してきたのは、
東郷が一番、ちょっかいを出してくる可能性が高いからだろう
友奈が入院中だし、
その期間なら、友奈のことを任せると一言いえば天乃にばかり構うことはないはずだ
元々、天乃だけでなく友奈にも入れ込んでいるのだから
あまり心配をする必要はない
天乃「東郷だって常に暴走するわけじゃないから大丈夫よ」
若葉「……だと良いが」
天乃「なにか心配なの?」
若葉「ただでさえ貴重な時間を二人きりにして貰うんだ。その分が天乃に回ってくるんじゃないかと思ってな」
- 15 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/21(火) 21:39:35.24 ID:+4xqiPoto
-
若葉が心配しているのは、
若葉と二人きりで行動……デートした結果
天乃がみんなからもデートを要求されるのではないか。という部分
特に、東郷はやや強引に引っ張ろうとするのではないかと思っているのだ
東郷のちょっかい自体は気にしていない
というのも、自分がちょっかいを出せばみんなからちょっかいを出されるし
天乃の幸せを妨害する気はないはずである
若葉「一日で数時間ずつ一人一人とデートする体力をつけたほうが良いな」
天乃「えぇ……」
若葉「私と二人きりになるというのは、そうなる可能性を作るって言うことだ」
もっとも、若葉とではなくても同じことなのだが。
落胆したように肩を落として壁に寄り掛かる天乃を見つめる若葉は、
大変だな。と、心の中で呟いて天乃の肩に触れる
若葉「先に進もう。友奈に会うのだろう?」
天乃「そうね」
- 16 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/21(火) 22:31:23.94 ID:+4xqiPoto
-
病室の扉を叩くと、待つまでもなく友奈の快活な声が戻ってくる
友奈のベッドまでの細い通路を進み、
松葉杖を壁に立てかけて来客用の椅子に座る
足の固定はまだまだ取れないようで、
友奈は窮屈そうに大丈夫です。と笑う
友奈「退院、されるんですよね?」
天乃「ええ」
友奈「星乃ちゃんと月乃ちゃんと同じ部屋で安静にしてられたらなぁ……って、思ってたんですけど」
それができれば、日中の子供の面倒は友奈が見ることが出来る
おしめを変えたりすることは残念ながらできないが、
何かがあったら呼ぶようにして、日中ずっと見ている心配を無くすことが出来る
その役割は精霊の方が優秀だけれど、
出来れば、友奈はそうしたかった
天乃「お見舞いに来るときは、連れてきてあげる」
友奈「絶対ですよ?」
天乃「もちろんよ。あの子達だって友奈に会いたいと思うわ」
- 17 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/21(火) 22:51:45.60 ID:+4xqiPoto
-
今はまだ、幼過ぎて連れ出すことは難しいけれど、
天乃が万全になって、子供達がもう少し成長する時間さえあれば
連れてくることも出来るはずだ
天乃「友奈、子供好きだものね」
友奈「えへへっ可愛いですよねっ」
天乃「ええ、とっても」
可愛いと喜ぶ友奈の笑顔
それもまた愛らしいものだと天乃は微笑む。
幼稚園での出し物や地域のイベント
友奈達勇者部は子供たちと関わることが多く
特に、友奈は子供に好かれやすかった
きっと、星乃と月乃だって友奈のことを気にいるだろう
天乃「だから、友奈はちゃんと大人しくしててね?」
友奈「任せてください」
天乃「元気が有り余ってるからって、下手に体を動かさないように」
友奈「大丈夫です。ちゃんと分ってますから」
- 18 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/21(火) 23:06:32.66 ID:+4xqiPoto
-
友奈は枕元に置いてある本を手に取ると、
天乃に見えるように振る
サイズ的に文庫本のそれは、夏凜が用意したものだ
聞いた話、
東郷はせっかくならと勇者部の掲示板にもかかわるHTMLの教本を用意していたが
夏凜によって奪い取られたらしい
友奈「本があるので、なんとか」
天乃「退屈にならない?」
友奈「少しは……動けないもどかしさはあります」
天乃「やっぱり」
友奈「でも、この我慢は悪い我慢じゃないですし、良いかなーって」
本を読むのもそんなに早くない友奈は
むしろ、読むことに集中できて捗ってるくらいですと楽しそうに笑う
嘘はない、無理もない
本当に、夏凜の持ってきた本を楽しめているということだろう
夏凜のことだ、友奈の性格を加味して用意したに違いない
1、体の方は問題ない? その……えっちなほうで
2、それならよかったわ。夏凜もいい仕事してくれるわ
3、読み終わったら、貸してくれる?
4、東郷のHTMLの本も持ってきてあげましょうか?
↓2
- 19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/21(火) 23:10:40.86 ID:VQSfP3c/O
- 4
- 20 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/21(火) 23:15:15.87 ID:VQSfP3c/O
- 2
- 21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/21(火) 23:17:14.16 ID:g0nuwDU6O
- 1
- 22 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/21(火) 23:22:51.46 ID:+4xqiPoto
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
https://w.atwiki.jp/anka_yuyuyu/pages/120.html
樹編の方が終わりましたのでサービス頁の方に載せております。
通例通り、pdfとword(docx)の2パターンで内容は同じですが、少し長いので注意してください
- 23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/21(火) 23:31:00.91 ID:KoVldP1rO
- 乙
久々のwiki更新とついに樹ちゃん編キター!
今すぐ見に行きますぞ
- 24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/21(火) 23:44:18.66 ID:ZAQG+/aQO
- 乙
いっつん編みようと思ったら24Pだから明日にする
いつも半分くらいなのにスゲーわ
- 25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/22(水) 08:08:04.58 ID:QOH+1o36O
- この大ボリュームは五郎くんの回以来かな?
樹ちゃんのテクニシャンっぷりと久遠さんのますます増したエロさ(特におっぱいの描写)が大変素晴らしかったです
そのっち編も楽しみにお待ちしております
- 26 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/22(水) 09:59:19.82 ID:cIufEm9fO
- 道具もなく即脱がしじゃなくじわじわ…キスと愛撫と母乳が交わる描写の官能感がハイレベルなエロスだった
愛撫の入れ込み具合がガチ過ぎる…
前戯だけで短編小説仕上げるのはもはや趣味じゃなくプロだと思うんだが…無料公開で良いのか?
- 27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/22(水) 12:17:15.76 ID:VDw/jraaO
- 乙
読み応えあったわ
樹も久遠さんもかわいいなあ
- 28 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/22(水) 22:40:20.25 ID:41MRdxR0o
-
遅くなりましたが少しだけ
- 29 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/22(水) 22:44:33.13 ID:hQoK3bEiO
- おk
- 30 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/22(水) 23:00:28.76 ID:41MRdxR0o
-
天乃「それならよかったわ。夏凜もいい仕事してくれたわ」
友奈「夏凜ちゃん、いっぱい本読んでるみたいで……あれじゃないこれじゃないって」
天乃「ふふっ、そっか」
友奈「久遠先輩にも持って行ったら良いのにって言ったんですけど」
天乃「……あら」
あ……っ。と、友奈の察した呟きに微笑む
大方、夏凜は考えておくとでも言ってそのままだったのだ
ちゃんと選んでくれたのか
それとも、選ぶことすらしてくれなかったのか
これは夏凜を言詰める必要がありそうだと思う天乃を、友奈は困ったように見つめる
悪戯を企む笑みを浮かべていたからだ
友奈「夏凜ちゃん、久遠先輩のことになると恥ずかしいんだと思います」
天乃「恥ずかしい?」
友奈「好きだからこそ、うまくできない……みたいなっ?」
天乃の目が向けられた途端、
適当な場所へと目を逸らした友奈は、夏凜の文庫本で口元を隠すけれど
頬から伝播した熟したような赤色は耳を染めている
- 31 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/22(水) 23:15:07.70 ID:41MRdxR0o
-
天乃「まぁ……ねぇ」
夏凜からはもう、その心を聞いている
友奈にも相談することもあるかもしれないけれど、
自分よりもみんなの方が……その悩みは口にできなかったはずだ
天乃は一人、理解していると伏せって微笑む
友奈「……敵わない。ですよ」
天乃「えっ?」
友奈「えへへ」
友奈は夏凜から言われなくとも、引きがちに動いていたことは分かっていた
常にみんなの後ろに回るように動いて
みんなから得られるもので幸せそうにする天乃を眺めて
それで自分は十分なのだと
そうしている。なんてことくらい、解っている
友奈「みんな解ってると思います」
天乃「夏凜のこと?」
友奈「夏凜ちゃんにはかなわないってことをです」
本当なら、隣に居続けることが出来たのは夏凜なのだ
天乃の優しさと、夏凜の寛容さ
そして何より、夏凜が最も天乃の幸せを願っているからこそ、自分たちは関係を深められている
本来、一歩引いているべき自分たちが、それを理解しないなど無理な話なのだ
- 32 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/22(水) 23:37:35.30 ID:41MRdxR0o
-
それに……と、友奈は天乃を見る
天乃「なぁに?」
友奈「いえ……」
きょとんっとして不思議そうに見返してくる天乃は、きっと解ってない
自分が、誰の隣でこそ一番幸せそうなのか。
天乃はみんなと一緒に居られることを望んでいる
みんなと深いつながりを持つことが出来ていることを嬉しそうに、抱きしめてくれている
けれど、やっぱり――だから、敵わない。
だからこそ、今でもちょっぴり技術を学ぶ
その典型と言えば、樹ちゃんかな……と、友奈は苦笑する
樹は夏凜よりも、恋をしていたから当然だ
友奈「夏凜ちゃんは久遠先輩を大切に思ってますが、私達もちゃんと、すっごく大切に思ってますっ」
天乃「ええ、本当……ありがとう」
天乃はそう言うと、友奈の動かせない足を一瞥する
この足の怪我だって、天乃の我儘を聞いてくれたからこそだ
それは大切に思ってくれているからこそ、愛してくれているからこそのもの。
天乃「ちょっと、その気持ちに甘えすぎちゃった気もするけどね」
- 33 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/22(水) 23:59:05.84 ID:41MRdxR0o
-
友奈「むしろ久遠先輩は甘えすぎなかったので、東郷さんのぼた餅くらい甘くなっちゃってください」
天乃「それは……ん。どうかしらねぇ」
長い入院生活のせいで、
東郷のぼた餅はまだしっかりと味わうことが出来ていない
味覚がない時期のこともあって、
退院してからも、東郷が作ってくれるとは限らない
天乃「恋しいわね。ぼた餅」
友奈「はいっ」
天乃「退院したら頼んでみるわ。すぐには難しいかもしれないけど、絶対に」
時期も時期で
復学の準備や家のことなど……
積もり積もったこともあって、なかなかぼた餅に愛情込めている余裕はないかもしれないけれど、
きっと。と、天乃は友奈に微笑む
友奈「お見舞いにぼた餅って持ってきていいんでしょうか?」
天乃「持ってきて欲しいの?」
友奈「話してたら食べたくなってきちゃいました……」
- 34 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/23(木) 00:09:20.28 ID:ItovN6Rco
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
オマケの園子編は余裕があれば書きますが、
樹編よりはだいぶボリュームが下がるかと思います。ご了承ください
- 35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/23(木) 00:20:08.82 ID:9auRwKYvO
- 乙
みんなが久遠さんとえっちなことする中、夏凜ちゃんは絆が深まり過ぎて必要ないぐらい特別な関係になっているな
あとそのっち編ものんびり気長に待ちながら楽しみにしてます
- 36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/23(木) 00:38:00.20 ID:OoPMUsVBO
- 乙
しばらく離れちゃうからしっかり話さないと
- 37 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/23(木) 22:27:16.97 ID:ItovN6Rco
-
では少しだけ
- 38 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/23(木) 22:28:35.10 ID:WRjtjAGBO
- あいよ
- 39 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/23(木) 22:38:36.24 ID:ItovN6Rco
-
天乃「友奈は食事制限されてたりするわけじゃないんでしょう?」
友奈「はい……? されてないと思います」
天乃「なら、あまり沢山じゃなければ大丈夫だと思うわよ」
天乃の場合は、入院期間の大体が食事制限があった
というよりも、天乃自身が余り何かを食べるなんて余裕を持っておらず、
お見舞いのお菓子なんて物は皆無だったのだが
友奈のように、制限されていないというのであれば
それでも多少、量は少なめにしなければならないという制約はあるけれど
お見舞いに持ってきても問題はない
特に友奈自身が望んでいることだし、それが毒になる様なものではないなら大丈夫なはずだ
天乃「東郷には私から言っておくわ」
友奈「作り過ぎちゃいますか?」
天乃「ふふっ、良く分かってるじゃない」
友奈「東郷さん、すっごく張り切って作ってくれそうだなぁって」
東郷自身、みんなに振舞えなくて思うところはあるはずで
そこに友奈の要求とくれば結果は見えているようなものだ
友奈にも、それは分かるらしい
- 40 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/23(木) 23:07:45.95 ID:ItovN6Rco
-
友奈「……でも、久遠先輩のお料理も食べたいです」
天乃「退院しないと無理ね」
友奈「じゃぁ、頑張って治さなくちゃですね」
天乃「頑張らないで、治すのよ」
リハビリを頑張るならともかく、
骨折を治すのは頑張られても困ってしまう
根性で骨をくっつける。なんていうわけにもいかないのだから
天乃「私はこの病院の看護婦さんと連絡取れるってことを覚えておきなさい」
向こうからすると、連絡なんてまっぴらごめんな問題のある患者だったかもしれない
けれど、長い入院生活と大赦繋がりということもあって
連絡は非常に取りやすいようになっている
そうでなくても、精霊や東郷達のお見舞いがある
天乃「無茶したら、一昨年に音を上げたお饅頭をお見舞いに持っていくわよ」
友奈「一昨年……?」
天乃「あの凄く辛い奴。私、久しぶりに食べたいと思ってるのよ。だから、お・す・そ・わ・け」
友奈「あっ」
何のことを言っているのか天乃の悪戯な笑みで思い出した友奈は、
思わず息を飲んで首を振ると、自分の襟首を引っ張って手で仰ぐ
友奈「あれは……もう、ごめんなさい」
- 41 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/23(木) 23:32:12.72 ID:ItovN6Rco
-
一昨年、友奈がまだ一年生の頃の話だ
仲良くなろうと歩み寄ってくる可愛い後輩に対し、
天乃は私はこれが好きなの。と、その饅頭を食べさせたのだ
実際、元々から辛い物を好み、
その時にはすでに味覚の無かった天乃にとって、それは大好物と言っても過言ではなかった
とはいえ、甘い物に慣れていた友奈には大ダメージだったし
東郷の記憶が混濁するくらいにはあってはならないものだった
友奈「あれをぺろりと食べる久遠先輩は、すっごく大人に見えました」
天乃「ふふっ、コーヒーを飲めるから……みたいな話ね」
友奈「でも――」
友奈の声が途切れる
申し訳なさそうな視線を感じた天乃は、あえて、目を向けなかった
味覚の問題、あれは天乃が誤魔化していたのだから仕方がないことだ
1、がっかりさせちゃったかしら?
2、関係ないわ。元から好きなのよ。本当よ?
3、風にも味覚おかしいんじゃないのって怒られたわねぇ。そういえば
4、あら、今は大人っぽく見えないかしら?
↓2
- 42 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/23(木) 23:33:55.03 ID:WRjtjAGBO
- 2
- 43 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/23(木) 23:37:12.20 ID:M/tv3FRl0
- 4
- 44 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/23(木) 23:54:03.25 ID:ItovN6Rco
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
友奈「あ、あの……久遠先輩ってどんな食べ物が好きなんですか?」
天乃「そうねぇ……辛い物かしら。ふふっ、おすすめがあるのだけど、食べてにいく?」
友奈「はいっ! 行きたいですっ!」
東郷「待って、待って友奈ちゃん……なんだか行ってはいけない気がするわ……」
東郷「――なんてことがあって」
園子「天さんのそういうところ子供っぽいよね〜」
- 45 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/24(金) 00:07:11.97 ID:1ik26PhiO
- 乙
やっと辛いものも満足に食べられるようになった久遠さん
あと激辛饅頭のくだりって懐かしの一作目にもあったのを思い出すなぁ…
- 46 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/24(金) 02:40:59.92 ID:FajnywfZO
- 乙
料理か
こんだけいればみんなで手料理ローテできるね!
- 47 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/24(金) 22:10:19.79 ID:6OFQ55Xoo
-
では少しだけ
- 48 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/24(金) 22:17:03.51 ID:6OFQ55Xoo
-
天乃「あら、今は大人っぽく見えないかしら?」
友奈「そんなことはっ、ない、ですけど……」
天乃「んー――もしかして、味覚がないから食べられたんじゃないかって思ってるの?」
友奈「そ、そんなことないですっ」
最初こそ視線が下がる嘘っぽい否定をした友奈だったけれど
笑み交じりの悪戯っぽい天乃の疑問には、声を張り上げる
本当にそんなことは思っていない
ただ、あの時に気付けたのではないか。
そう、思ってしまっただけで
友奈「違うんです。久遠先輩は辛いのが好きだって聞いてましたし……ただ、その時に気付けたのかもしれないって思って」
天乃「まだ知り合い程度だった貴女が気付けるわけないでしょう?」
友奈「っ……」
天乃「私だって、さすがに誰にでも分かりやすいわけないじゃない。少しは隠せる自信があるわ」
- 49 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/24(金) 22:18:34.33 ID:vBk1GXatO
- よっしゃ
- 50 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/24(金) 22:24:19.84 ID:6OFQ55Xoo
-
実際、味覚が無いことは隠し通すことが出来ていたし
今だって、みんなに隠し事をする必要がないという前提があるからこそ、曝け出している
絶対に隠さなければならないこと―基本的にありえないが―がもしあったとしたら
天乃は全身全霊を持って隠し通して見せる
それを知ってしまうことが、みんなにとって最大限の不幸で
どうにもならないほどの宿命であるならば、一人で抱えるかもしれない
天乃「……でも、今は違うでしょう? 友奈」
友奈「久遠先輩……」
俯きがちな友奈の頬に手を添えて、上を向かせる
明るい笑みに差した影を払うように横髪を払う
天乃「夏凜だけじゃなく、友奈も、みんなも。私のことをよく知っているはずよ」
友奈「………」
天乃「それとも、そう思っているのは私だけで。友奈は私のことなんて知らないのかしら?」
友奈「知ってますっ」
天乃「だったら、そんな風に考える必要があるのかどうかだって、悩むまでもないことでしょ?」
- 51 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/24(金) 22:41:21.50 ID:6OFQ55Xoo
-
友奈「……ごめんなさい」
天乃「良いのよ。あれはあれで、みんなの中で結構重い話だったものね」
それこそ、勇者部が離散しかねないほどに影響のある話だった
もちろん神樹様の勇者という話や、犬吠埼夫妻のこと
そして、天乃の味覚を含めた戦いにおける後遺症と言うもの
色々なことが交錯していたあの時期のことは簡単に忘れられることではないし、
一つでも避けられたらどれだけ良かったのだろうかと、思ってしまうのも無理はない
天乃「私はせめて風には話しておくべきだったし、何なら……そもそも東郷や風の傍から離れるべきだった」
友奈「そしたら、久遠先輩は別の学校に通ってたんですよね?」
天乃「そうなるでしょうね。でも、大赦は目の届くところに置いておきたいだろうし……そう遠くなかったと思うわ」
ただ、天乃がしていたような積極的な戦闘への介入はさせて貰えなかっただろうし
それをしようものなら監禁されていたかもしれない……十中八九無駄だが。
天乃「もしもそうだったら、私……友奈たちとここまでの関係になってなかったと思うわ」
友奈「そう、ですよね」
天乃「ええ。世間体からしたら、あってはならないものだし」
- 52 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/24(金) 23:06:28.25 ID:6OFQ55Xoo
-
友奈達との関係だって
ここまで深いつながりにまで至ったのは穢れによる影響が大きい
それさえなければ、もう少し清いお付き合いが出来ていたのでは。とは思う
それに、友奈たちと居なければ夏凜と会うことはなかったわけだし
そうしたら、以前、学校で男の子にされたような強引さに負けてしまって
異性とのお付き合いをしていたかもしれない
友奈「久遠先輩は……今の関係を後悔してるんですか?」
天乃「してるかしてないかで言えばしてるわ」
友奈「えっ」
天乃「だって、ベッドの上で主導権握られっぱなしなのよ? 悔しいじゃない」
友奈「あっそういう……」
天乃「なに?」
ほっと胸を撫で下ろした友奈は、
天乃の怪訝な問いに、いえいえなんでも。と、苦笑する
天乃を蝕む穢れを払うべく、無茶も無理も年齢制限も承知でみんなで勉強しあったのだ
その努力で磨き上げた技術がそう簡単に奪われるわけがない
ただ、確かに天乃との距離があればここまでではなかった。と、友奈は思う
友奈「でも、私は今のこの関係が凄く幸せです」
- 53 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/24(金) 23:32:56.24 ID:6OFQ55Xoo
-
もしかしたら清く正しいお付き合いが出来ていたかもしれないし、
場合によっては異性と付き合っていたかもしれない。
だが、結局天乃は友奈たちの傍に来て関わって、深いつながりを持つようになった
明るく優しい先輩、運動神経だって決して悪くはないし頭もいい先輩
時に厳しかったりもするけれど、それは思ってくれているからこそだった
羨望の眼差しに映る背中は、とても凛々しく強くて
果てしなく遠い、頂に存在しているようにも思えた
けれど、それは死ぬことを厭わない
傷だらけになっても、足を奪われようとも、
立ち上がり前進し続ける不屈ではなく、捨て身の上に成り立っていた
その足を止めることが出来たこの関係を友奈は悔やまない
言ってしまえば、大人の世界に飛び込んだだけだ
聞けば高校生でだいぶ背伸びするようになるともいうし、危うさのある異性との早すぎる関わりではないだけマシだろう
友奈「色々大変な事もありますけど……なんて言えば良いのかな。その、ぽかぽかするので」
わたわたと手を振って、友奈は困ったように笑う
上手く言葉に出来ないけれど、でも、それが幸せということなのかもしれない
1、そう、良かったわ……破廉恥で嫌になるとか言われたら腹を切るしかなかった
2、ぽかぽかね。そうね、ぽかぽかするわね
3、ありがとね。見捨てないでくれて
4、でもその分、今みたいに不自由なのが嫌になっちゃわない?
↓2
- 54 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/24(金) 23:42:11.68 ID:FajnywfZO
- 2
- 55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/24(金) 23:45:28.88 ID:vBk1GXatO
- 3
- 56 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/24(金) 23:59:28.38 ID:6OFQ55Xoo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば早い時間から
園子「私だけ天さんにしてやられたんよ〜……」
東郷「大丈夫よそのっち、久遠先輩はコツさえ掴めば簡単にやり込めるわ」
風「天乃って人一倍敏感なのよね」
樹「ゆっくりじっくりがコツですよ。焦っちゃだめです」
夏凜「幸せ?」
友奈「あはは……でも、みんな楽しそうだから良いんじゃないかな」
- 57 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/25(土) 00:10:27.48 ID:qHU7mzVVO
- 乙
友奈ちゃんも早くケガを治してイチャイチャに加われるといいなぁ
- 58 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/25(土) 07:59:39.53 ID:LqtWVPBZO
- 乙
- 59 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/25(土) 21:13:52.12 ID:2DcDDX3Ko
-
では少しだけ
- 60 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/25(土) 21:31:44.41 ID:csbyMd/KO
- きてたか
- 61 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/25(土) 22:27:39.27 ID:2DcDDX3Ko
-
天乃「ありがとね、見捨てないでくれて」
友奈「見捨てるなんて」
天乃「普通なら付き合いきれたものじゃなかったと思うわ」
自分で言うのもあれかもしれないが、
正直に言って、無謀が過ぎていたと思うし
任せるようになってからも、我儘を言っていいと言われたとしても望みすぎだったように思ってしまう
普通なら、付き合いきれないと見限られてもおかしくはなかった
けれど、勇者部のみんなはそうせずに、助けてくれた
最後まで付き合ってくれた
天乃「死にたがり、だったし」
友奈「久遠先輩はみんなのことを想ってくれてのことだったじゃないですか」
天乃「でも、見放されてもおかしくはないでしょう?」
友奈「それは……」
- 62 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/25(土) 22:43:45.26 ID:2DcDDX3Ko
-
もし、執拗に戦闘参加を強行されていたら
もう付き合いきれないです。と、見捨てていただろうか
勝手にしてくださいとそっぽを向いていただろうか
友奈は考えてみてから、首を振る
友奈「やっぱりありえないですよ。見捨てるなんて出来ません」
天乃「……貴女達はね? そういう優しい子だもの」
友奈達が見捨てる可能性なんて考えていない天乃は
友奈の優しい反論に微笑みながら、ありがとう。と、答える
けれどやはり、一般的な考えからすれば
天乃のような考えと行動は否定されるものだろう
天乃「典型的な例が、大赦だわ」
友奈「大赦は……その、あまり一般的とは言えないような気が……」
天乃「ふふっ、そんなこと言うと監禁されて再教育されちゃうわよ」
友奈「ふぇっ!?」
天乃「冗談よ」
- 63 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/25(土) 23:04:40.08 ID:2DcDDX3Ko
-
以前はともかく、今の大赦にそんな余裕などない
それに、以前か今か関係なしに
友奈達に手を出そうというのなら天乃が相手になるし
そうなってくると、最も容赦のない九尾が出てくることになるわけで……
天乃はそこまで考えて、苦笑する
天乃「もしも何かされそうになったら、すぐに助けられるように用意はしておくわ」
友奈「若葉さん達ですか?」
天乃「九尾よ」
友奈「……大丈夫でしょうか?」
天乃「大丈夫よ」
穏便にお願い。と言っておけば、
渋々ながら穏便に済ませてくれる
それでも執拗以上に来るというのであれば、死ぬ覚悟はできているはずだ
もちろん、天乃は殺させるつもりはないが
天乃「とにかくそう言うことよ。友奈……ありがとう」
友奈「いえ……お役に立てて、嬉しいです」
- 64 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/25(土) 23:44:29.43 ID:2DcDDX3Ko
-
友奈「でも、多分ですけど……久遠先輩がいなければ私達の誰かが同じことしていたと思います」
天乃「私が別の学校だったらって話の続きかしら」
友奈「いえ、それ以前の話です」
久遠家の過去の話を調べて、
生き残り続ける難しさを知って
正直な話、久遠家がここまで残ることが出来たのは奇跡と言ってもいいだろう
ゆえに、何らかの弊害で途絶えていたら天乃はここに居なかった
そうなっていた場合、自分たちはどうなっていただろうかと……友奈は少しだけ考えた
特に、神婚のことだってそう
天乃がいたから、そのすべてが天乃に向かっただけで
そうでなければ誰かが抱えることになっていた問題だ
友奈「満開のことも、神婚のことも、久遠先輩がいなかったらもっと大惨事だったと思うので……」
天乃「私の穢れ以上に危険なことってあるのかしら?」
友奈「もしかしたら、東郷さんが神樹様を攻撃していたりするかもしれないですよ」
天乃「私に向いてる分、友奈のことを大事に思っていたらありえない話でもないわね」
- 65 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 00:03:41.79 ID:SC3cfZcCo
-
天乃の穢れと違い、神樹様に直接的な危害を加えることは出来ないだろう
であれば、出来るとしたら壁の破壊だ
満開の真実を知る時期が時期であれば、間違いなくそんな暴挙に出ていただろうし、
神婚の対象が友奈であっても同様だったかもしれない
友奈は話の内容にそぐわない笑顔を浮かべると
僅かに唇を結んで、天乃を見る
友奈「なので、その……こういうのは変かもしれないですけど、ありがとうございます」
天乃「互いに助け合って支え合って……だったのね」
友奈「はいっ」
元気よく笑顔を見せる友奈は、
しかし、体の動きは最小限に止めようとしているせいか、少しぎこちなく見える
普通なら見捨てられていた。という天乃の話が
友奈からすると、あまりいい話ではなかったというのもあるだろう
天乃「……早く良くなるように、安静にしてるのよ?」
友奈「任せてください」
天乃「いつも元気な貴女に任せるのは、ちょっと不安になるんだけど……」
友奈「そんなぁ……」
天乃「冗談よ。大丈夫、私よりは無茶をしないって信じてるわ」
- 66 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 00:04:27.49 ID:SC3cfZcCo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
- 67 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 00:10:08.46 ID:w6jqv89CO
- 乙
勇者部の運命を久遠さんが変えたように、それで破滅しそうになる久遠さんの運命を勇者部が変えた
お互いの成長がお互いを救ったんだよな…
- 68 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 01:18:56.01 ID:19198FeOO
- 乙
友奈も早く治るといいなあ
- 69 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 19:17:09.88 ID:SC3cfZcCo
-
遅くなりましたが、少しずつ
- 70 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 19:25:34.12 ID:BIFAQ3UaO
- やったぜ
- 71 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 19:32:49.85 ID:SC3cfZcCo
-
友奈「久遠先輩以上の無茶なんて、そんなに出来ることじゃないですよ」
死ぬ覚悟を持ち、
死なずとも数ヶ月もの間血反吐を吐いてもがき苦しむような無茶
もはや無茶ではなく、無理というべき行為は、到底出来ることではない
生き地獄であるそれに比べれば、
神様に身を捧げる神婚という昇華はまだ救いがあると思えるほどだ
友奈「久遠先輩も、もうそういうことは絶対にしないでください」
天乃「残念……というか、私はもうできる体じゃないわ」
友奈「だからこそですっ」
出来る体かどうかなんて二の次で
みんなを護るためならば……というのが天乃なのだから
体が無理とか言うのはまるで信用できないのだ
天乃「大丈夫、大丈夫よ。お母さん、なんだもの」
天乃は思いに耽るように、静かに呟く
体が無理できないのもそうだが、
大切な仲間の力を受け止め、壮絶な思いをして産んだ二人の子供がいる
その子たちを置いて死ぬことの何が、良いことなのか
犬吠埼夫妻だって、死のうとして亡くなったわけじゃない
同列に語るべきことではないと理解しつつ、天乃は夫妻を想う
天乃「私の命も体も。もう自分だけで同行して良いものじゃないことは十分解っているつもりだから。安心して」
- 72 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 20:06:51.45 ID:SC3cfZcCo
-
友奈「すみません、解ってはいたんですけど……」
天乃「安心できないのも一理あるから気にしないで」
自分で言うのもあれだけれど、
あの友奈までもがちょっぴり疑いたくなってしまう気持ちは理解できる
それほどに、散々なことをやってきたのだ
天乃「中々会いに来てあげられなくてごめんね」
友奈「いえ、久遠先輩も大変そうですし」
天乃「……それも聞いてるの?」
友奈「そうですね、色々と……その、話に来てくれるので」
友奈の状況を考えて、さすがに直接的に及んだことを口にしてはいないだろう
しかし聡い友奈は、心から満足気な表情
弾んだ声色から、天乃かまって貰えた。ということくらいは察しが付く
友奈「みんなは気付いてるか分からないですけど、えっちの次の日とか、久遠先輩の名前を言うだけで赤くなったりしますよ」
天乃「へぇ……」
1、それは友奈もかしら?
2、あら、それは……確かめてみたくなるわね
3、焦らして悪いけれど、友奈は退院してからね?
4、みんな自分は違うって思っているんじゃないかしら
↓2
- 73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 20:09:30.99 ID:BIFAQ3UaO
- 2
- 74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 20:11:11.30 ID:GpEIxeup0
- 2
- 75 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 21:20:27.68 ID:SC3cfZcCo
-
天乃「あら、それは……確かめてみたくなるわね」
友奈「久遠先輩には難しいと思いますよ」
天乃「どうして?」
友奈「久遠先輩と直接話してるだけで……思い出しちゃうので」
友奈は照れくさそうに笑うと、
腰を支える枕をぎゅっと押しつぶす
することを考えていないという前提ならともかく
考えているときや、
した後、翌日などはさすがに羞恥心を感じずにはいられない
それも、押しの強い子に限って
やりすぎてしまった……と、ちょっとだけ罪悪感を覚えてしまうものなのだが
その分、久遠先輩は可愛かっただの、エッチだっただの考えてしまう
友奈「無理ではないと思いますけど……特別というより、いつも通りですね」
天乃「そう……」
友奈「見て、みたいですか?」
天乃「いつも見ているのなら、そういう顔でみんなと話しているのね。という感じなのだけど……」
- 76 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 21:40:43.19 ID:SC3cfZcCo
-
他のみんなとどういう風に話しているのかは、ちょっとだけ気になると、天乃は悩む
エッチのあとの様子そのまま……というわけではないだろうし
そこまで違いはないとは思うけれど、
やはり、天乃とみんなで話すときの様子は変わってくるはずだ
誇らしげだったり、楽しげだったり
天乃がその場に居たら耳を塞ぎ頭を抱えたくなるかもしれないが、興味はある
天乃「私の前とみんなの前ではやっぱり違うと思うのよ」
友奈「そう、ですね……」
恥ずかしさからくる表情と、恍惚とした表情
それはやっぱり、違う
天乃「私としたことを話すときの表情、なのよね?」
友奈「え……? はい?」
天乃「………」
友奈「そんなに真剣に悩まなくても……」
- 77 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 22:01:13.54 ID:SC3cfZcCo
-
思っていた以上に食いついて考え込む天乃は、
無意識なのか、自分の唇を指でぷにぷにと弄びながらささやかに唸る
友奈「………」
普段から、割と敵意以外に関して非常に無防備な天乃だが
今に関してはより、無防備で
友奈は引き倒したくなる情動を何とか飲み下す
それで天乃に嫌われることはないと確信している
だが、友奈自身の足が壊れてしまう
友奈「……むぅ」
考えに耽っている天乃の横顔は、とても凛々しく見える
エッチの時の可愛さとか、楽しそうな時の愛らしさとか
ふとした時の、綺麗さだとか
どれかに類するものではなく、邪魔をせず見ていたいと思うけれど
ちょっぴりもやもやしてしまう友奈は、人知れず頬を膨らませる
少し動くだけで、固定された足が動く
自分からはどうにもできないのが、もどかしかった
- 78 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 22:37:49.66 ID:SC3cfZcCo
-
天乃「ねぇ、それってもしかして私も――友奈?」
友奈「は、はいっ!」
天乃「あ……ごめんね。余計な事考えちゃって」
友奈「ぅ……」
天乃「確かに、そこまで考えることじゃないわよね」
友奈のことを放っておいて……というのはさすがに飲み込む
誰だって、自分をほっぽっていかれたら嫌だろう
そうした側が、茶化すように言うのは聊か狡い
けれど、だからと言って申し訳なさそうにされるのは嫌で、友奈の頬に手を添える
友奈「えっ、ぁっ」
天乃「ん?」
目を逸らし、顔を背けようとするから支える程度の力で自分へと目を向けさせて、微笑む
柔らかい頬はすべすべとしていて、良く手に馴染んでくれる
友奈「ふぇっ、ぁ、えっ?」
驚いているのは、内心を悟られたからではなく
触れたからだろう
1、頭を撫でる
2、キスをする
3、友奈も、嫉妬するのね
4、退院した後が、楽しみね
↓2
- 79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 22:40:58.46 ID:GpEIxeup0
- 4
- 80 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 22:44:15.33 ID:BIFAQ3UaO
- 2
- 81 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/26(日) 22:59:13.66 ID:SC3cfZcCo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
もう少しだけ友奈との時間
- 82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/26(日) 23:03:43.89 ID:BIFAQ3UaO
- 乙
友奈ちゃんはしばらくこれからのイベントに不参加なのは寂しいけど今は治すことに専念させないとな
- 83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/27(月) 02:32:04.72 ID:afIa3gAlO
- 乙
退院前に好きにしちゃっていいぞ
- 84 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/27(月) 20:47:40.45 ID:uIUAitJLo
-
では少しだけ
- 85 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/27(月) 21:03:05.83 ID:uIUAitJLo
-
天乃「友奈」
友奈「く――……」
ベッドに手をついて、身を乗り出した天乃の唇が友奈に唇に重なる
唇だけの、ささやかな接吻
天乃「っふ……」
ほんの数秒でしかない時間
けれど、友奈には果てしないもののように感じられて――空気を読んだかのように、パイプ椅子がカタンっと音を立てた
友奈「ぁっ……えっ? えっ?」
天乃「そんな驚くようなことじゃないでしょう?」
友奈「で、でも……だって……」
友奈は自分の唇に触れると、
困惑したように言葉にならない声を漏らす
今されたのはキスだ、間違いなく
するのもされるのもおかしいことではない
それでも友奈は戸惑って、呆然としてしまう
心の準備がなければ、友奈はただの少女だった
- 86 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/27(月) 21:16:12.10 ID:fmFjLuV3O
- きてたー
- 87 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/27(月) 21:37:06.22 ID:uIUAitJLo
-
友奈「ど、どうして……」
天乃「どうしてと言われると困るのだけど……そうね。したかったから、かな?」
気恥ずかしさに頬を染める友奈の一方で、天乃は余裕ありげに微笑んで見せる
友奈とはあまり話すことも顔を合わせることも出来ていない
だから、キスをする
――なんて、単純ではない
普段なら出来ることも今は出来ないせいか、
ちょっとだけ話が反れてしまったことにむっとしてしまうほど、欲求不満になっている
みんなが幸せそうに笑っている……なら、友奈はそれをどう聞いているのか
きっと笑顔で聞いているだろうし、良かったね。と、本心で言うだろう
しかし、それで友奈が満たされるのかと言えば、そんなことはないと天乃は思う
少なくとも、自分が友奈の立場であればそれくらいはしても良いんじゃないかと求めたくなる
だから、天乃はキスをした
自分がその立場なら、したかったはずだから。と
友奈「き、キスなんてみんなとしてるじゃないですか」
天乃「そうだけど、みんなはみんなで友奈は友奈よ。唇の感触が違うわ」
- 88 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/27(月) 22:02:39.27 ID:uIUAitJLo
-
はっきりと、照れくささもなく天乃は言った
友奈も解ってるでしょ? とでも問いかけるような自然体で、柔らかい笑みを浮かべる
友奈はそれに気づかずに、自分の手を見つめる
唇に触れていた、人差し指
まだそこに残っている柔らかさは、触れ慣れてしまった感触
友奈「唇の、感触……」
天乃「ええ」
無意識にも感じる呟きに天乃は短い言葉で答え、友奈を見守る
快活さを表すようにほんのりと焼けた頬の色はまだほんのりと朱色が混じり、
天乃よりも大きい……けれど、まだ小さな手がもう一度唇に触れる
今度は押し込むように、疑似的なキスを感じるように。
そうして、友奈ははっとして天乃を見る
友奈「わ、わから、無いですっ」
天乃「うん?」
友奈「解らないです……その、全然、解りませんっ」
- 89 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/27(月) 22:33:25.49 ID:uIUAitJLo
-
心の準備が出来ていなかった友奈の精一杯
足に配慮しすぎた最小限の動きは、体を天乃へと向けることは出来ていないけれど
追い求めるような友奈の表情は、天乃の瞳にしっかりと映っている
友奈「久遠先輩ほど、経験がないので……」
自分が何を言っているのか分からなくなりそうなほど煩くて、
体を熱っぽくしてしまう心を抑えるように、胸に手を当てて……友奈は息を飲む
友奈「どういうのが、久遠先輩の唇かわかりません」
天乃「……そうなの?」
友奈「っ」
天乃の手が友奈の唇に触れる
爪は奇麗に切り添えられていて、ちょっぴり柔らかいだけの硬さを感じる指先
口の端を圧して開こうとしているような指は横に逸れて、頬を支える
さっきと同じように、キスをするお膳立て
天乃「友奈は初めてした時のこと、あんまり覚えていないの?」
友奈「それはっ、覚えて……ます、けど……」
友奈の頬は紅く、熱く
手を離せば簡単にそっぽを向いてしまいそうな雰囲気で
天乃は小さく笑みをこぼすと、ごめんなさい。と、囁く
友奈「え――」
そしてもう一度、準備が出来ていない友奈の唇を奪った
- 90 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/27(月) 23:19:13.42 ID:uIUAitJLo
-
友奈「っはっ……」
今度は少しだけ長い時間重なっていた唇
キスの間の呼吸も忘れていた友奈は離れた途端に大きく息を吸い込む
悪戯好きの子供のように唇を撫でていく空気はどこかくすぐったくて……
唇の感触をより、強調させられてしまう
友奈「はふ……っ」
天乃「どう? 覚えてくれた?」
友奈「ぁっ、えっと」
天乃「別に忘れてくれてもいいのよ?」
友奈「そんなこと、出来ないです……」
天乃の手は友奈に触れたままで
まだ、吐息が重なりそうな距離
少しだけ体を動かせばキスが出来そうなその僅かな隙間も埋められない友奈は、目を伏せる
忘れられない、忘れられるわけがないし忘れたくない
たとえ、神樹様の力であっても奪わせない
天乃「そう……忘れてくれたらもう一回してあげたのに」
友奈「えっ!?」
天乃「冗談よ。忘れなくてもしてあげる」
体を交えることが出来ない分、唇を合わせて誤魔化す。
もどかしさは拭えないけれど、寂しくはないし嫌でもない
友奈「退院するまで、頑張って勉強しておきますね?」
天乃「ええ、友奈はまだ学生だものね。しっかり勉強しておきなさい」
友奈「……そうですね。みんなに負けていられないのでっ」
樹にも、東郷にも、風にも、園子にも
そして夏凜にも
後れを取らないように勉強すると、友奈は笑みを浮かべた
- 91 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/27(月) 23:20:56.40 ID:uIUAitJLo
-
√ 2月20日目 夕(病院) ※日曜日
01〜10
11〜20 夏凜
21〜30
31〜40 沙織
41〜50 東郷
51〜60
61〜70
71〜80 樹
81〜90
91〜00 風
↓1のコンマ
- 92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/27(月) 23:25:58.85 ID:fmFjLuV3O
- あ
- 93 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/27(月) 23:37:46.06 ID:uIUAitJLo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
ちょっとだけ風交流
- 94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/27(月) 23:41:42.50 ID:fmFjLuV3O
- 乙
風先輩がちょいちょい出番ある反面、最近さおりん見かけないな
- 95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/28(火) 06:06:38.08 ID:dizvg7ILO
- 乙
- 96 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/28(火) 23:41:51.61 ID:a23qOWY9o
-
すみませんが、本日はお休みとさせてください
明日はできればお昼ごろから
- 97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/28(火) 23:45:50.80 ID:Sj0r5lOjO
- 乙ですー
- 98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/29(水) 16:25:39.10 ID:AjmnCRxRO
- 今更サービスページのおまけ見たけど最高だった
ありがとうございます!
- 99 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 18:55:19.03 ID:MCF7OIhto
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/29(水) 19:19:16.24 ID:6qu3VBSfO
- あいあいさ
- 101 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 19:23:29.06 ID:MCF7OIhto
- √ 2月20日目 夕(病院) ※日曜日
天乃「あら……」
星乃「ぁぁぅ……?」
天乃「しーっ」
友奈の部屋から戻った天乃は、
自分のベッドの光景に思わず声を漏らして、目を開けた愛娘に微笑む
指を差し出してあげると、嬉しそうにつかんで握る
小さな手は、温かい
天乃「ごめんね?」
月乃「ぅぅぅ」
天乃「そう」
お昼に離れてからも風hずっと付き合ってくれていたのだろう
可愛らしい顔には、母親への不満を感じない
けれど……それは言葉がないだけかもしれない
あまり任せっきりにするのも考えものよね。と、頷く
天乃「あっちのママ、好き?」
星乃「ぁぁぃっ」
天乃「良かった」
- 102 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 20:07:51.25 ID:MCF7OIhto
-
抱きかかえて指さした先、
天乃のベッドで横になっている風を見た星乃は、明るく答えてくれる
天乃の枕を抱きしめて、横になっている風の手元には
直前まで遊んでいたであろう鈴が転がっていて
寝たというよりは、寝落ちしたのだろうと、天乃は察する
天乃「ありがとうね」
風「ん……」
星乃「ぁぅ〜」
天乃「ふふっ」
星乃と月乃の二人をベッドから抱き上げて、風の傍に寝かせる
風の身体が下手に寝返りを打たないようにと警戒しつつ、子供たちに任せてあげると、
双子は揃って、風の頬をぺちぺちと叩き
髪を触って、引っ張る
天乃「あっ」
風「っ」
星乃「ぁぁぅ〜」
月乃「ぅ〜ぅっ」
星乃が髪を引っ張って、月乃が風の鼻をぐっと指で押し込む
息苦しさか痛みか、
唸るような声を漏らしながら、風は目を開く
- 103 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 20:52:57.19 ID:MCF7OIhto
-
風「なに――」
天乃「だめよ」
風「ぇ……?」
風の上げかけた腕を掴んで抑える
寝ぼけた拍子に二人を弾き飛ばされてしまっては困る
それならベッドにあげるなという話ではあるけれど
二人が触りたがったのだから仕方がない
星乃「ぁぁぅ〜っ」
月乃「あぁぉ〜っ」
風「ん……ぁっ」
はっと気づいた風の手を離して微笑む天乃は
まだ風の顔を弄る子供たちを抱き上げて、ベッドへと戻す
流石に、まだ数ヶ月の子供たちをずっと自由にはさせておけない
ちょっぴり風の顔が引っ張られたけれど。
風「……寝てた?」
天乃「ええ」
風「ごめん……寝るつもりは」
天乃「良いわよ。みんなだっているし」
風「でも、精霊がいないのが普通だから」
- 104 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 21:13:46.48 ID:MCF7OIhto
-
天乃「そうだけど、さすがにずっと落ち着かないのは無理でしょう? この子達だって寝ていたみたいだし」
風が子供かどうかなんて関係はなく、
疲れは感じるだろうし、気を失うように眠ってしまうこともある
星乃と月乃はおとなしい子で
ベッドの端をよじ登っていくことはまだ出来ないし
子供達も天乃が戻ってくるまでは眠っていたのだ
風が少しくらい……と、休む気持ちになっても咎められることではないだろう
風が寝たときに、子供たちが寝ていたとは限らないけれど
風の手元に鈴が転がっていたということは、
風が眠った後にあやす道具が必要なかったということだろうし……
天乃「この子たちも、風のことは好きだって言ってるわ」
風「それは良かったけど」
天乃「この子たちを寝かしつけてからなんでしょ? 気にしないの」
風「まぁねぇ……ごめん、寝起きであんまり頭働いてないみたい」
天乃「起こさない方が良かったかしら」
風「逆に夜に寝れなくなるから、助かった」
- 105 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 21:58:39.69 ID:MCF7OIhto
-
天乃「夜、あまり眠れていないの?」
風「寝れてはいるんだけど……」
ベッドの上の枕を一瞥した風は、
無意識に握りしめていたことに気付いて、手放す
寝不足ではないが、
このベッドの上は特に心が落ち着く
天乃の匂いを感じる布団は、ついつい、目を閉じてしまうのだ
風「天乃の匂いって、毒ねぇ」
天乃「私の匂い……? 臭う?」
風「あーごめん、毒って言っても全く悪いにおいではないのよ……なんというか、まあ、察して?」
自分の襟を引っ張る天乃の手を抑えて、首を振る
毒と言っても、
いい意味でもないけれど悪い意味でもない
上手く言葉に出来ない特殊な意味
もちろんだが、夜での意味とも違う
- 106 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 22:29:00.29 ID:MCF7OIhto
-
天乃「家に戻ったらもっとちゃんとしたいわ」
風「今も十分ちゃんとしてるじゃない」
天乃「学生……今も一応はそうだけど、通学していた時とはまるで違うわ」
足が不自由ではあったけれど、身なりはきちんと整えられていた
室内での服だっていつまでも寝間着ではないし
髪に寝癖が残っているなんてことはないし、
今のように真っ直ぐ下ろしている状態ではなく、基本的にはシュシュを用いてのポニーテールにしていた
家族の記憶を失っていた時は知らずにそうしていたが、
その髪型にしているのは、兄がそれを好きだと言っていたからである
今はともかく、元々天乃は兄が好きな可愛らしい妹だったのだ
天乃「退院したら短くしようかしら」
風「短くって、髪?」
天乃「それ以外にあるの?」
風「んー……スカートの丈?」
天乃「馬鹿なの?」
風「冗談よ。じょーだん」
- 107 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 22:55:23.90 ID:MCF7OIhto
-
最初のころは肩の辺りを少し過ぎるかすぎないか
ミディアム程度に抑えられていたのだが、
今では肩をだいぶ過ぎてしまっている
長くなった天乃の髪に触れた風は、指先で軽く弄る
風「まぁ、確かに伸びてきてるわね」
天乃「今までに戻すか、もうちょっと短くしようかなって」
風「長くてもいいと思うけど」
天乃「この子達を抱っこしてるとき引っ張られると困るわ」
風「あぁ……さっきのはそれか」
笑ってごまかす天乃の奥、
赤ちゃん用のベッドの上で笑っている双子に手を振る
まだ寝ぼけている数分間
髪をちょっとだけ引っ張られた痛みとも言えない感覚
あれがそうなのかと天乃を見るが、笑うだけだ
風「ショート辺りまで切るつもり?」
天乃「単なる思い付きだから、深くは考えてないけど……似合う?」
手と腕で髪を隠し、短く見せる天乃は風を伺うように見つめる
普段から長い髪の天乃を見ている風としては、短い髪が似合うかどうかと言われると判断に困ってしまう
風「ただショートにするよりはボブとかにしたほうが良いんじゃない? あたしは……長い方が良いと思うけど」
- 108 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 23:04:38.49 ID:MCF7OIhto
-
天乃は短くても似合うと言えば似合う
風は長いが、樹は天乃が切ろうかと言ったショートよりも少し長いボブの辺りだ
友奈も髪の長さ的には樹よりも少し長いかどうかという程度
その辺りも踏まえて考えてみると、
ただショートにするくらいなら、ショートボブの方が合うように思う
そして、そうするくらいならボブで良いと思ってしまう
なにより、風は恋愛小説的に思考を働かせる
風「急にバッサリ落とすのってさーなんか失恋したっぽくない?」
天乃「どうして?」
風「気分転換とか、今までの自分を変えたい―とか。ほら、一気に短くするのって一新するみたいじゃない?」
天乃「言われてみれば……でも、私失恋してないわよ?」
風「それは分かってるけど、あたしは長い方が良いのっ」
ベッドの上、散りばめられた長い髪
月夜の妖艶な輝きに満ちる細い命ともいわれる無数の線は、とても綺麗だった
だから、どうしてもというなら止めないが
どうしてもというわけではないのなら、今まで位が好ましいと風は言う
天乃「そう……じゃぁ、風は今まで位の私が好きなのね」
風「……ん」
- 109 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 23:12:17.21 ID:MCF7OIhto
-
風「それで、友奈に何か言われたの?」
天乃「ううん、特に」
風「退院したいですとか言ってなかった?」
天乃「出来たらしたいって言ってたけど、無理はさせられないでしょ?」
子供達と同じ部屋で安静にすることで
出来る限り面倒を見てあげたい
友奈はそう思っていたけれど、さすがに退院させられる状態ではない
天乃「私の料理……そうそう、東郷のぼた餅が食べたいって」
風「そうねぇ、軽食としてなら持参できるかも。あとで聞いてみとく」
天乃「お願いね」
風「任せといて。東郷にも言っとくわ」
確かに久しぶりに……と風は悩むように言って、頷くと
久しく口にしていない味、思えば恋しくなるものね。と、腹部を擦った
1、それと、お料理当番どうする?
2、ねぇ、風はみんなに嫉妬したりする?
3、友奈から聞いたのだけど、エッチの後だと恥ずかしいものなのね
4、……ありがとうね。風
↓2
- 110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/29(水) 23:14:17.91 ID:6qu3VBSfO
- 3
- 111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/29(水) 23:18:12.18 ID:nDtICq2H0
- 3
- 112 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/29(水) 23:33:08.72 ID:MCF7OIhto
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/29(水) 23:51:00.84 ID:6qu3VBSfO
- 乙
久遠さんのポニテは兄貴の好みだったのね
そういや今頃実家の久遠家はどうなってるのだろうか
- 114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/30(木) 00:15:14.64 ID:tNkABF2nO
- 乙
またお料理の話もしたいな
- 115 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/30(木) 21:49:57.05 ID:4ZKZ5IPNo
-
遅くなりましたが少しだけ
- 116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/30(木) 21:57:40.26 ID:deHNGzZ/O
- かもん
- 117 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/30(木) 22:52:44.72 ID:4ZKZ5IPNo
-
天乃「友奈から聞いたのだけど、エッチの後だと恥ずかしいものなのね」
風「は……え、えっちのあと?」
余りにも唐突な話に思わず素っ頓狂な声を漏らした風に、
天乃は冷静に考え込むように首肯する
友奈の話ではエッチの後の恥じらいが可愛らしいだとか
その分、幸せそうだとも言っていたけれど。
天乃「エッチの後、みんなに話すんでしょう?」
風「そ、そんなこと言ってた……?」
天乃「言ってたけど」
言ってなくてもそのくらいは分かってたわよ。と、
天乃は少し恥ずかしそうに首を振る
みんな天乃の関係者だ
それも、肉体的な意味で
だから、それを話されても仕方がないとは思う
天乃「確かにしたと、ベッドの上では愛らしいものだけど、みんなの前でもそうだとは思わなかったわ」
- 118 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/04/30(木) 23:05:20.58 ID:4ZKZ5IPNo
-
天乃「次の日とか、私の名前だけで恥ずかしがってるって聞いたわ」
風「何に言ってんのよ友奈……」
天乃「思い出して真っ赤になっちゃうんでしょう?」
友奈には確かめてみたいと言ったけれど、
思えば、園子はとても可愛らしかったように思う
いつほんわかとしていて
例えるなら柔らかい園子も可愛いけれど
それ以上に、何とも言えない可愛らしさがあった
性欲がある
実際にあるが、からかい五割増しで言ってみただけで気絶するくらいには
あの時の園子は可愛らしかった
嬉しそうに、照れくささの見える笑顔を浮かべている天乃に
風はそういえば園子が……と、察する
風「園子が見せてた通り。結構、刻み付けられちゃうもんなのよ」
- 119 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/01(金) 00:08:12.35 ID:Q68/5gS8o
-
世界のどこかには参考にした資料のほんの一握りのように
そうではない人もいるかもしれないが
少なくとも風達は天乃に好意を抱き、愛しているからこそその行為を行う
それゆえに、身にも心にも深く染み込んでくる
まだ結婚したわけではないけれど
蜜月の付き合いは、その字に違わずとても甘いのだ
風「すぐに忘れられることでもないし、ね」
天乃「そう……」
風「逆に天乃は忘れられる? 抱いた感触、キスした感触、漂ってた匂い、合わせるたび、這わせるたび、重ねるたび聞こえた音」
天乃「………」
想いを馳せるように、身をくねらせながら、風は呟く
正直今だって忘れているわけではない
一度口にしてしまえばじんわりと感じるし
そこに天乃がいるならば、ちょっぴりつまみ食いをしてしまいたくなる
もちろん、理性があればそんなのは思うだけだけれど。
風「あたしは忘れないわよ。と言うか、あたし達は忘れられないわよ」
天乃「私だって、別に忘れてるわけじゃ……ない」
- 120 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/01(金) 00:08:50.04 ID:Q68/5gS8o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
- 121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/01(金) 00:19:21.78 ID:ObrqH8smO
- 乙
風先輩のターンも来るかな?
- 122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/01(金) 07:56:02.35 ID:t4c6COaCO
- 乙
- 123 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/01(金) 22:56:56.33 ID:Q68/5gS8o
-
すいませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
予定としては20日目終了後に、エピローグと考えております。
- 124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/01(金) 23:10:14.27 ID:upEdz6wnO
- 乙です
三周目も遂にエピローグかー
まさかほぼ丸四年の大作になるとは…
- 125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 01:01:55.20 ID:E9RlOIbRO
- 乙
え!?もう終わるの!?
いろいろまだ久遠さん達の日常見たかったなあ
- 126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 01:17:18.58 ID:4m2ZW5QpO
- 結婚式とか見たいけどどうなるかな
- 127 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 15:22:36.03 ID:+MZz+i4to
-
では少しずつ
- 128 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 15:33:53.32 ID:+MZz+i4to
-
天乃は呟くように答えると、自分の胸に触れる
押せば沈む感触
風達の触れられた記憶と、風達のそれに触れた記憶
身体はもちろん、心にだってその記憶は強く残っている
天乃「ちゃんと覚えてるわ……でも、なにかしらね」
風「なにって?」
天乃「どんな風だったのかを口に出されるのは恥ずかしいのだけど、それをしたこと自体を恥ずかしいとは思わないのよ」
だから、風達がそういう話をしていたと言われると羞恥心に触れるものがあるけれど
天乃自身は、その行為をしたということに恥じらいを感じない
風、友奈、東郷、樹、園子、沙織、悪五郎
そして……夏凜
助力と言う点では九尾もだろうか
みんなとのことが染み込んだ体は、自分で触れるたびに想起する
あの時はこうだった。と
目を閉じ、思い出して……ふと、風を横目に見る
天乃「私、今どんな顔してる? 真っ赤に、なっちゃってるかしら」
- 129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 15:41:34.86 ID:oAcLGAQbO
- きてたー
- 130 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 16:02:28.66 ID:+MZz+i4to
-
風「どんな……って」
質素な患者衣に覆われつつも膨らみの見える胸元
ベッドに下ろされた腰、筋肉の落ちてしまった少し細身の太腿
長く伸びたさらさらと艶のある桜色の髪
妖艶に上がる唇、橙色の瞳は生気に満ちた輝きがある
それはとても幸せそうで
それはとても――
風「きれい……」
天乃「綺麗?」
風「あっ、いや……幸せそうに見えるわね……」
天乃「なに慌ててるのよ」
取り繕うような風の慌てた仕草に、天乃は思わず笑う
綺麗も可愛いも
散々言ってきたことだし、言われてきたことだ
それが本心ではなかったとは言わないけれど、
無意識にこぼれ出てしまう本心は、存外に照れくさいものなのは分かる
- 131 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 16:24:44.03 ID:+MZz+i4to
-
天乃「私が聞きたかったの赤いかどうかなんだけど」
風「へぇっ! ぁっ、あーそうだったっけ」
天乃「そんなに調子狂わせるような顔だった?」
風「どちらかと、言えば」
風は頬を掻いて頷く
天乃と同じように、束ねることを放置した長い髪が
肩から滑り落ちて、布団へと垂れる
はたから見て幸せそうだと感じられる微笑みは、
恋をしている立場からしたら、美しいものだ
風「……大人に、なった」
天乃「一応、こう見えて母親だもの」
まだ15歳ではあるけれど、
あと数ヶ月もしたら16歳になるし、二児の母だ
ただでさえ少しずつ大人になっていく時期に、大きく前進せざるを得なかった
天乃「大人っぽいのなら、それは良いことだわ」
- 132 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 16:55:50.46 ID:+MZz+i4to
-
天乃「風だって、これから大人になっていくでしょ?」
風「天乃はその先を行ってるのよ」
天乃はいつだって、みんなの先にいる
風が大人になれば、天乃はおばさん……とはならないけれど。
元々の境遇もあって、
天乃の身体は子供みたいでも、精神的には成熟している
きっと、そこに追いつくことは出来ないだろうと、風は思う
これから緩やかになっていく
天乃が無理をしなくてもいい世界で、笑っていていい世界
それでも天乃は先にいる
風「可愛いと綺麗の差って、意外にこういうところにあるのかもねぇ」
天乃「じゃぁ、私はもうかわいいって言って貰えないのね」
風「それはない」
天乃「そう?」
風「あたし的には楽しんでるときの笑顔は可愛いと思うし、幸せそうなときが綺麗だと思う」
意外な……というのはその部分だ
理屈はないし、理由もない
ただ、幸せになる難しさを知ったから、それが尊いものだと気づいたから……綺麗だと思うのかもしれない
- 133 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 17:31:24.42 ID:+MZz+i4to
-
風「……あたしはだけど」
天乃「そうねぇ、友奈は幸せそうでもまだまだ可愛いわ。園子だって」
天乃はそう言いながら、自分の子供を見る
まだ幼い赤子である星乃と月乃
言葉で幸せとも楽しいとも言えない歳ではあるけれど
嬉しそうだと感じられる笑顔は、とても愛らしい
天乃「だから、大人になって幸せだと思えた瞬間の笑顔が、綺麗だって言えるのかもしれないわ」
風「友奈達はまだ子供?」
天乃「まだ可愛いから、子供ね」
適当にでっち上げた考えで比較する二人は
何となく苦笑して、笑い声を零して
何事かと声を上げる双子に、「かわいいって話よ〜」と、難しいことを囁く
天乃「あと一年……友奈は難しいかな」
風「樹は?」
天乃「樹は、大人びてる……もしかしたら私のせいかも」
- 134 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 18:15:13.96 ID:+MZz+i4to
-
風は濁した天乃を一瞥する
樹が大人と言うのは同意だし、天乃が原因と言うのも納得の話だ
奥手と言うべきか、人見知りと言うべきか
そんな状態だった樹が、今や前面に立って動くことが出来る
それは天乃に恋をしたからだろうし、その天乃が酷く自己犠牲的な人だったから……でもあるだろう
風「歌野も一役買ってると思うけどね。ほら、歌野って樹と対照的な感じにフレンドリーだから」
天乃「歌野が拍車をかけたというべきかしら」
風「みんなのおかげね〜」
せいとは言わず、おかげと笑う風は
まだ、人付き合いの苦手だった樹を思い、今の樹を思い
その成長をより強く実感して、感慨深く笑みをこぼす口元を縛る
風「ありがと」
天乃「……それは私が言うべきことよ」
風「ん〜……いや、あたしが言うべきことでしょ」
1、風にも樹にも凄く感謝してるわ
2、そう、かしら
3、大したこと、してあげられてないと思うけど
4、……妹想い、ね
↓2
- 135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 18:29:20.62 ID:oAcLGAQbO
- 1
- 136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 18:34:41.66 ID:rvXvIPro0
- 4
- 137 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 19:04:41.14 ID:+MZz+i4to
-
天乃「……妹想い、ね」
風「当然でしょっ」
風はそう言って胸を張る
風の感謝、言うべきは自分だろうと思うし
そこまで感謝されるようなこと0が出来たという自負はない
けれど、風が言うのなら、それは素直に受け取っておくべきだろう
天乃「このままだと、樹の方が先に姉離れしちゃうんじゃない?」
風「えっ……」
天乃「樹だったら、そんな顔しないもの」
バーテックスと戦っているときよりも深い絶望に陥ったとでもいうような顔を見せ、
嘘でしょ……と、零す
そんな姉と比べて、妹の方は落ち着いているはずだと天乃は見る
風も樹も天乃と一緒に暮らす
結婚もするわけで、つまりは離れる要素が無くなるのだが
それでも自然と以前よりもべったりとはならなくなるはずだ
その分、天乃に来るけれど。
天乃「卒業して学校では会えなくなるんだから、少しくらい慣れないと」
- 138 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 19:21:08.26 ID:+MZz+i4to
-
風「そのくらいは平気よっ、全然っ」
天乃「卒業したら勇者部に入り浸ること禁止って言われても?」
風「何それそんなこと言ってたの!?」
天乃「言ってないけど……」
風は一応、受験する
結果次第では一年間みっちりと勉強する必要があるわけで
その場合、OBとはいえ勇者部に行っている場合ではないのではと思う
風もそれは分かっているはずだけれど
そんな気はさらさらないのかもしれない
天乃「大丈夫なの?」
風「なにがー?」
天乃「勉強」
風「……成せば大抵なんとかなるなる」
天乃「五箇条……今は六箇条よね。それを怠惰に使わないようにしなさい。旧部長」
風「はーいはい。オッケー」
ニコッと笑って指でOKを示す風は
そこはかとなく歌野に毒されているのでは……と、思わざるをえなかった
- 139 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 19:55:44.61 ID:+MZz+i4to
-
風「もちろん、妹想いなあたしだけど部長にしたのは贔屓じゃないわよ?」
天乃「それは聞いてる」
風「それでー? 天乃はどうするのよ」
天乃「どうするって? 何かあったかしら」
進路に関しては一年間は少なくとも子育てに集中することにしている
結婚式だってみんなが落ち着き、ちゃんと適性の年齢になるまではしない
挨拶はやはり、改めてしようと思っているけれど
天乃だけがどうするかを判断する事ではない
考える天乃に、風は「副部長のこと」と、呟く
風「副部長のことは決めなくてもいいの?」
天乃「必要かしら」
風「んー人数的には要らないかもしれないけどね……」
天乃「あってもいい?」
風「天乃の後継者的な意味で、あっても良いんじゃないって思うかな」
- 140 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 20:14:49.38 ID:+MZz+i4to
-
以前までは、勇者部は勇者に無関係な生徒を入れることは出来なかった
天乃に惹かれての入部希望はもちろん、
今までの活動に憧れて……と言うのも含めてだ
しかし、これからは断る理由はない
来るものも出るものも拒無必要がないし、その裁量は部長に一任される
今後、人が増えてくるかもしれないし
もしかしたら増えないかもしれないけれど。
それを考えれば、とりあえずは副部長を任命してもいいだろう
風「みんな、誰が指名されるんだろうって期待してるわよ?」
天乃「どうせ夏凜が指名されるって思ってるの間違いでしょ?」
すーっと目を逸らす風で察して、目を逸らす。
だれが任命されるのか、ではなく夏凜が……
というなら夏凜を指名しても特に問題はおこらないはずだ
そもそも指名しなくても問題はないけれども
1、副部長は要らないでしょ
2、任命は樹に任せるわ
3、夏凜で良いんじゃない?
4、後で話したほうが良いかしら
↓2
※4は後ほど、みんなのところへ
- 141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 20:16:53.73 ID:rvXvIPro0
- 4
- 142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 20:18:42.81 ID:oAcLGAQbO
- 4
- 143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 20:19:59.03 ID:R0zhx/NtO
- 4
- 144 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/02(土) 20:23:43.35 ID:+MZz+i4to
-
では、少し中断いたします。
22時頃に再開予定です。
- 145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 20:26:04.55 ID:oAcLGAQbO
- 一旦乙
- 146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/02(土) 23:58:49.46 ID:WwjJL1OVO
- 今日は終了?
- 147 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/03(日) 00:02:34.87 ID:ikKNgA38o
-
すみません、本日は終了とさせてください
明日はできればお昼ごろから続きをやりたいと思います。
- 148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 00:25:36.21 ID:JxCQLxBAO
- 乙です
- 149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 03:37:14.60 ID:zmlCIVKiO
- 乙
そもそも勇者部は今の1年の代が卒業の時存続できるのだろうか
- 150 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/03(日) 21:43:28.99 ID:ikKNgA38o
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 21:45:27.37 ID:HGoaotwLO
- やったぜ
- 152 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/03(日) 22:45:09.21 ID:ikKNgA38o
-
天乃「あとで話したほうが良いかしら?」
風「それが良いかもね。戻るとき一緒にいく?」
天乃「そうする」
風の誘いに乗って、頷く
友奈以外のみんながいる病室にいって、副部長の話
誰にしようか
みんなが予想しているように夏凜にするのも別に悪い話ではないと天乃は思う
別に裏をかく必要なんてないのだ
天乃「とはいっても、夏凜達が卒業した後も残るいこと前提よね……」
風「そうねぇ」
樹を除けば、みんな三年生になる
つまり、樹以外は来年には卒業するため、
それ以外の部員がせめて4人は増えてくれなければいけない
天乃「今のうちに部員募集する?」
風「天乃が募集すれば増えるでしょ、絶対」
- 153 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/03(日) 22:59:20.49 ID:ikKNgA38o
-
天乃「そうかしら?」
風「絶対」
天乃「………」
断言されると、そう思えてしまいそうなものだが
本当にそうだろうかと、天乃は眉を顰める
ほぼ関わりがなく、しかも休学していたような先輩が声をかけたところで
勇者部に入部してくれるとは思えない
天乃「同じクラスの子ならともかく、後輩は無理じゃないかしら?」
風「そう思ってるのは天乃だけよ?」
天乃「ほぼいなかったのよ?」
風「でも、少なくとも今の一年生は天乃を見てきてるでしょ」
半年程度ではあったが、
それでも天乃を見てきている
中には犬吠埼姉妹のように妹や弟もいるだろうから
姉や兄繋がりで、天乃に興味を持っている子はいるはずだ
- 154 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/03(日) 23:20:50.04 ID:ikKNgA38o
-
天乃「でも、私いなくなっちゃうから……」
風「繋がりを持てるってだけで嬉しいもんよ」
男の子なんかは特に、喜ぶのではないかと思う
以前の天乃は体に障害を抱えていたこともあって
中々に難しい存在ではあったけれど、それでも声をかけられることがあったのだ
けれど……と、考え直す
風「そういえば、子持ちだって公表したんだっけ?」
天乃「ええ……不思議よね。みんな受け入れてくれちゃうんだもの……」
風「受け入れてた……かなぁ?」
まだ中学生の身体である天乃に子供を産ませる
そんなことを大赦がさせたのだとしたら……という点で怒っていたような気がする。と、風は思い出す
風「男子は諦める……か……?」
子持ちと言うのは、さすがにリスクが高いと考えるかもしれない
親だって、子供がまだ子供時点で子持ちの相手と付き合うことを受け入れるとは思えない
愛があれば云々とかそういう次元ではない
- 155 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/03(日) 23:57:21.64 ID:ikKNgA38o
-
風「ま、勧誘はみんなに頑張って貰うってことで良いんじゃない?」
天乃「仕方がないわね……部活の勧誘は入学式のあとだしね」
今の状況で入学式が行われるとは限らないけれど
でも、きっと入ってくる一年生がいるはずだ
その新しい子達を誘うのは、残された者達の仕事
風「その仕事を、夏凜に押し付けちゃいなさい」
天乃「こらこら」
風「樹もいるから大丈夫よ」
天乃「……そうね」
本当に、今の樹ならばとても頼りになる
夏凜と二人で……いや、友奈たちも含めてみんなでやっていけば
きっとうまくいくだろう
天乃[……なんとなく、風が入り浸りたくなるのも分かるわ」
風「でしょ?」
嬉しそうに笑う風に頷いて、子供達へと目を向ける
みんなのところに行くのは、母乳をあげてからだ
- 156 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 00:06:24.96 ID:cVrmtW5ao
-
では、本日はここまでとさせていただきます
明日もできればお昼ごろから
再開時はみんなの病室
- 157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 00:12:20.52 ID:9c/klGibO
- 乙
クラスのみんなも優しかったよなぁ
後半はほとんど会えなくなった分卒業式には元気な姿を見せてやりたいな
- 158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 07:41:04.12 ID:avV76FLvO
- 乙
- 159 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 18:12:40.48 ID:cVrmtW5ao
-
では少しずつ
- 160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 18:18:29.17 ID:ag5VxHNLO
- あいよー
- 161 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 19:02:02.35 ID:cVrmtW5ao
-
夏凜「はー……そんな理由でわざわざ来たの?」
天乃「なによ、来て欲しくなかった?」
東郷「自分に会いに来てほしかっただけですよ、久遠先輩」
夏凜「はぁっ!?」
口を挟んだ東郷に向かって怒鳴るように唸って、
そんなこと言ってないでしょ! と、夏凜は声を張り上げる
向けられた東郷は平然と笑っていて
困ったように笑う樹がふと、天乃に目を向ける
樹「副部長は自分で決まり。みたいな考えだったのではないでしょうか?」
夏凜「い〜つ〜き〜?」
樹「あははっ」
ムッとする夏凜に対して、笑顔のその他
この病室の中に限っては、夏凜が弱いのだろうか?
きっと、天乃が来たからと、これ見よがしに攻撃しているだけだろう
天乃「会いに来たのに……嬉しくないの?」
夏凜「ぅ……嬉しいわよっ! 悪いっ!?」
風「真っ赤になっちゃってまぁ……少し落ち着きなさい」
- 162 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 19:34:36.57 ID:cVrmtW5ao
-
夏凜「ったく……」
天乃「まぁまぁ」
夏凜「ふんっ」
天乃はそっぽを向く夏凜の横に腰かけて、
その体に身を寄せながら、体を揺する
ムッとしてはいるけれど、振り払わないのが愛おしい
天乃よりもちょっぴり大きいだけの体は、
体幹がしっかりとしていて、男の子にも負けない作りになっている
天乃「……ふふっ」
夏凜「何笑ってんのよ」
天乃「別にぃ〜?」
天乃に身を寄せられ、まんざらでもなさそうな夏凜のそれでもそっぽを向く姿勢に、
風達は温かい目を向けて、ため息をつく
園子「それで〜? 副部長は決まってるの〜?」
- 163 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 20:03:11.07 ID:cVrmtW5ao
-
園子の間延びする声に、天乃は考える素振りを見せる
みんなは本気で―きっと本心で―夏凜が副部長になると思っているはずだ
そこであえて別の人を指名するのも、ちょっとだけやってみたくなる
夏凜も文句は言わないだろうし、みんなだってきっと
けれど、今そうであるように、天乃の支えとなってくれているのは夏凜だった
最初は、本当……酷いこともあったが
今ではれっきとした深い仲にまで至っている
天乃「そうねぇ」
小さく呟くと、視線が集まる
さっきまでの雑談のにぎやかさは瞬く間に薄れて消滅する
1、夏凜
2、友奈
3、園子
4、東郷
5、正直……副部長なんていらなくない?
↓2
- 164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 20:04:43.14 ID:xzFlupoHO
- 1
- 165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 20:06:09.02 ID:U1jqWP3X0
- 1
- 166 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 20:41:20.85 ID:cVrmtW5ao
-
天乃「夏凜、かな」
夏凜「っ」
風「はーい解散解散!」
パンパンッと風が高らかに手を叩くと
部屋を出ていく……なんていうことはないものの、
布団を引っ張り上げてベッドに横になってしまう
天乃「えっ、なに? なんで?」
東郷「どうせそんなことだろうと思っていたので」
園子「予想通り過ぎてなんもいえね〜ぜ〜」
樹「もちろん、文句があるわけではないので、大丈夫だと思いますよ」
ベッドにふて寝したようにみえる東郷達からの呆れたような声に続いて
樹の困った笑い交じりのフォローが入る
樹は横にはならずに、ニコニコと夏凜と天乃の方を見ている
唯一、副部長選に無関係な部長という立場だからだろう
樹「夏凜さん……いえ、夏凜副部長。至らない点があるかと思いますが、宜しくお願い致します」
- 167 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 21:42:00.46 ID:cVrmtW5ao
-
夏凜「順応性あるわね、樹」
樹「臨機応変、常在戦場。武士たるもの、常に堂々たれって、若葉さんが」
天乃「若葉……」
何を言ってるのか……
そもそも、若干間違っているような気がする。と、天乃は眉を顰める
若葉が間違えたのか、樹が間違えたのか
もしくは、混ざってしまったかだ
夏凜「良いわ。天乃……引き継いであげる」
天乃「良いの? 大変よ?」
夏凜「あんたに付き合う以上に大変な事はないでしょ」
天乃「じゃぁ……別れる?」
口ではそう言いながら、夏凜の腕に抱き着く
別れると言われない自信はあるけれど
でも、自分は別れたくないという、意思を示したくて
夏凜は言葉よりも息をついて、天乃の頭に触れる
夏凜「別れない……決まってるでしょ」
- 168 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 22:00:09.72 ID:cVrmtW5ao
-
夏凜「樹」
樹「はぁ……」
夏凜「私は副部長とか良く分からないけど……部長のサポートをする立場。だと思って全力でやるわ」
だから覚悟しなさい。と、夏凜は胸を張る
恋人を腕に巻きながら
その頭を撫でている姿は、威張ってもまるで威厳がない
流石の樹も間の抜けた反応を見せて、首を振る
あらかじめ決まっていることが明白だった副部長を決めるだけで、
こんなにも甘えている姿を見せられては、拍子抜けしてしまう
樹「解りました。夏凜さんを久遠先輩だと思って頼らせて頂きますねっ」
夏凜「いや、天乃――」
樹「お願いしますねっ?」
にっこりと、樹は笑う
その威圧を感じる要求に、夏凜は頬を掻いて、「はいはい」と答える
目の前で恋人が抱き着いたままなのだ
少しくらいは……嫉妬もされるだろう
- 169 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 22:24:07.80 ID:cVrmtW5ao
-
東郷「ところで、久遠先輩は卒業式には参加出来そうですか?」
天乃「本当に唐突ね……」
あと一ヶ月もない先にある卒業式
本来なら参加できない程に休学してしまっているけれど、
一応は義務教育だし、成績的には問題もない
なにより、大赦による重要なお役目と言うこともあって、卒業は可能だ
天乃「可能なら参加したいわ」
風「可能ならって……参加するでしょ?」
天乃「予定としては参加だけれど……私が出ていったら騒ぎになりそうで」
風「いーじゃない〜最後くらい華々しくいきましょ」
園子「天さんが参加してくれないと、悲しいな〜」
樹「参加してください、久遠先輩」
天乃「ん……」
夏凜「騒ぎが起こったら、何とかしてあげるから……」
- 170 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 22:50:13.34 ID:cVrmtW5ao
-
参加してではなく、
騒ぎになったら何とかしてあげると、夏凜は優しい声で言う
頭に触れていた手が抱き寄せるものへと変わる
夏凜「ちゃんと卒業して欲しい」
天乃「夏凜……」
園子「アツアツだね〜」
天乃「っ」
夏凜「私より先に色々やってんだから良いでしょ」
茶々を入れる園子達に、夏凜はむっとして言い放つ
天乃の体を抱き寄せながら、ベッドへと倒す
天乃「ふぇ……えっ?」
夏凜「どうする? 卒業式……学校の卒業しないなら……別の卒業させるけど」
天乃「べ、別……?」
1、卒業式に出るから止めて
2、……それ、ちょっと気になるわね
3、冗談よ。ちゃんと出るから
4、今、するの?
↓2
- 171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 22:54:43.15 ID:8JH18P7LO
- 2
- 172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 22:56:37.53 ID:OLfY1Xh0O
- 2
- 173 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/04(月) 23:03:03.74 ID:cVrmtW5ao
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
園子「卒業とは〜!?」
東郷「童て――」パシンッ
樹「男の子じゃないんですから……」
東郷「そういえば、久遠先輩の回復力なら膜も――」
風「はーいそこまで!」
- 174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/04(月) 23:14:47.69 ID:3fISZTp1O
- 乙
そういえば夏凜ちゃんずっとキスだけで本番はロクにしてなかったっけ
- 175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/05(火) 07:17:25.62 ID:P2zP3pPVO
- 乙
夏凜が珍しく積極的だな
- 176 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/05(火) 22:53:30.15 ID:CCumAL8Lo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 177 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/05(火) 23:03:29.97 ID:dhSAFhh6O
- かもーん
- 178 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/05(火) 23:08:21.41 ID:CCumAL8Lo
-
天乃「……それは、ちょっと気になるわね」
夏凜「は……」
天乃「ふふっいつまでもやられっぱなしなわけないじゃない」
ちょっとだけ驚いたけれど。と
天乃は笑顔の裏に焦りを押し隠して、余裕そうに見せる
無理矢理に引き倒されたのには驚いたし、
夏凜が積極的な事にもびっくりだ
けれど、負けていられない
天乃「今の私はね……園子のおかげで攻めることも出来る女なのよ」
東郷「へぇ……」
園子「えへへ……」
少し離れた場所で何か怖い声が聞こえたが、夏凜は天乃を見下ろしたまま……視線を合わせる
じっと、見つめ合う
夏凜「天乃ってみんながやってることが全てだとか勘違いしてるでしょ」
天乃「何の話?」
夏凜「セックスの話」
天乃「セッ――」
夏凜「ほら赤くなった」
- 179 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/05(火) 23:17:36.68 ID:CCumAL8Lo
-
園子を下したと天乃は言っているけれど、
園子は天乃を除いた勇者部の中でも最も弱いのだから、何の自慢にもならない
そもそも、だからと言って天乃が弱いことも変わりはない
天乃「か、夏凜……だって」
夏凜「ただの直喩でしょ。私は別に恥ずかしくないわよ」
天乃「ぅ……」
夏凜「あんたの考えてることなんてお見通しなんだから」
どうせ、からかってやろう。という魂胆だったのだろうと夏凜は苦笑する
夏凜の引き倒し、別の意味での卒業と言う言葉
それに対して強気で行けば主導権を握れる……とでも
それは甘い考えだ
夏凜「調べたんだけど、四十八手って面白い教本があって、これの1から48までをやって卒業。ってことにしようかと思ってるのよ」
天乃「ん……うん?」
夏凜「東郷の研究が完成して、天乃がもしも生やせたなら……童貞の方でもいいんだけど」
東郷「私の研究はそういう方じゃないわ」
- 180 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/05(火) 23:56:31.02 ID:CCumAL8Lo
-
夏凜「……というか、園子ともやったなら、私ともそろそろやっても良いんじゃない?」
天乃「私は、体さえ問題ないならいつでも来てくれていいんだけど」
夏凜「そ……じゃぁ次は宜しく」
天乃「ええ」
夏凜が離れるのに従って体を起こすと、
隠れたはずのみんなが天乃達の方を見ているのが目に入る
恨めしいとかではなく
どこか生暖かさを感じる視線だった
天乃「……なに?」
園子「わざわざこんなところでやらなくても〜」
東郷「違うわそのっち。夏凜ちゃんは久遠先輩は私のものだって独占欲を発揮したのよ」
夏凜「……別に良いでしょ」
樹「若葉さんを含めれば一人六つで卒業ですね」
指折り数える樹の言葉に、風の乾いた笑い声が返る
四十八手とは言うが、あれのすべてをやるのは無理だと、すでに答えは出ているのだ
風「なんていうか、こうやって宣言しないといけないくらいには……天乃の予定ってかつかつなのよ」
- 181 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/06(水) 00:02:58.88 ID:tXJXbZT7o
-
次から次へと、天乃の隣は取られてしまう
だから二人同時に相手をしよう。なんていう話にもなったりするわけで……
夏凜は二人同時相手でもいいが
園子はつまみ食いされたわけだし、自分だって可能ならそうしたいと思ったのだ
夏凜「……嫌なら、良いわよ。別に」
天乃「夏凜……」
アプローチの仕方がうまいとは、残念ながら言えない
けれど、夏凜はみんなの前で攻めてきてくれた
自分が欲しいと、近づいてきてくれた
それは、天乃にとってはとても嬉しいことで。
天乃「……嫌って言うと思う?」
夏凜「かもしれない」
天乃「言わないわよ。大丈夫」
そう言って、天乃は夏凜を引き倒した
- 182 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/06(水) 00:03:34.69 ID:tXJXbZT7o
-
では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/06(水) 00:16:03.85 ID:hBa21cHCO
- 乙
雰囲気的に夏凜ちゃんとはやらない感じと思ってたらここで来るか
あと夏凜ちゃんの口からセックスという言葉が出てくるとは…
- 184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/06(水) 01:51:59.57 ID:ItXZbBqRO
- 乙
女同士で全部できるようなもんだろうか四十八手
- 185 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/06(水) 23:45:09.41 ID:tXJXbZT7o
-
すみませんが本日はお休みとさせてください
明日はできれば通常時間から
- 186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/07(木) 06:01:16.56 ID:2go8icfTO
- 乙
- 187 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/07(木) 21:46:13.10 ID:u0LWjEa4o
-
では少しだけ
- 188 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/07(木) 21:50:53.39 ID:QuUbCZ+pO
- やったぜ
- 189 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/07(木) 22:57:11.22 ID:u0LWjEa4o
-
風「いやいやいや、ここでおっぱじめないでよ!?」
沙織「引きはがしてあげようか……」
天乃「沙織……?」
沙織「それ以外の誰かに見えたのなら、寂しいなぁ」
暫く姿を見せていなかった沙織は、
精霊らしく、どこからともなく姿を見せる
先日、子供たちの名前がまだ決まっていない頃
名前の候補の一つを出してくれた時が、まともに顔を見た最後だったと、天乃は思い出す
天乃「それ以外には見えないわ……でも、どこに居たの?」
沙織「ん〜……大赦の方だね。ほら、久遠さんを巫女にするとかいうクソ……じゃなかったクズみたいなことを言ってたから」
東郷「伊集院先輩、ほとんど一緒です」
沙織「ごめんね……猿猴の力を使うとどうしてもそうなっちゃうから」
困ったように言う沙織は、はぁ……とため息をつく
巫女の装束を身に纏っている沙織は、普段よりも猿猴の力を色濃く漂わせている
天乃「何か悪さしたりしてないわよね?」
沙織「深い話を聞くためには伊集院沙織じゃもう駄目だからね。ちょーっとごまかしを」
人差し指と親指の隙間を見せて、沙織は苦笑した
- 190 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/07(木) 23:33:01.05 ID:u0LWjEa4o
-
沙織「今回の神婚と、神々が散り散りになったことでかなり変わっていくみたいだね」
天乃を巫女としてたてようとしたが、
残念ながらそれは天乃が拒否したし、みんなも嫌がるから上手くはいかない
ならばどうするのかと忍び込んでみれば、
少しずつ、西暦時代の形に戻していくつもりらしい
とはいえ、西暦時代にあんなことが起きた以上
完全にそれと同じにするわけにもいかないので、その調整に四苦八苦しているらしい
神樹様に護られる世界から
人が人として生きていく世界へ
その移ろいは、簡単にできることではないようだ
だからこそ、天乃の力を借りたかったのかもしれない
沙織「ただ、久遠さんが巫女に仕立て上げられることは、多分もうないから大丈夫だと思うよ」
天乃「あら、意外ね」
沙織「ほら、久遠さんのお祖母ちゃん。あの人、久遠家代々の穢れを継いでた人だから神婚の時に何も影響なかったみたいで……」
- 191 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/07(木) 23:47:32.95 ID:u0LWjEa4o
-
園子「つまり、おばあ様が天さんを生贄にするな〜って号令をかけたの?」
沙織「それに近いかな……聞いた話だからあれなんだけど」
これ以上、子供たちに重荷を背負わせてどうするのか。
天乃の祖母はそう言っていたらしい
直接的に天乃に手を出すなとは言っていないが
天乃が双子を産んだことは知っている
それも含めて、新しい世界に向かうということもあって、
久遠家の柵を払拭しようと考えたのかもしれない
沙織「あの人も、色々大変だったから」
風「なんか、上から目線ね……いや、わかってはいるんだけど」
沙織の中の猿猴が強まっているのだろう
沙織はどこか不思議な感じで語って、けれど、ふっと唐突にその気配が失せる
沙織「だから、大丈夫」
天乃「そう……お祖母様は家に戻るって言ってた?」
沙織「ううん、言ってないと思う。ごめんね、直接お話しできたわけじゃないから」
天乃「大丈夫、ありがとう」
- 192 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/07(木) 23:49:11.38 ID:u0LWjEa4o
-
すみませんが、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 193 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/07(木) 23:56:31.91 ID:QuUbCZ+pO
- 乙
さおりんと猿猴すごい久しぶりに見たなぁ
そしてあのお祖母様がついにデレるとは…直接話を聞きたかったけどもう時間がないのが惜しまれるな
- 194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/08(金) 02:23:57.40 ID:IPu1S+UqO
- 乙
終わりが近いのを実感するぜ…・…
- 195 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/08(金) 23:49:45.84 ID:OBU1VO0mo
- 遅くなってしまったので、本日はお休みとさせてください
明日は、可能であればお昼ごろから
- 196 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/08(金) 23:51:19.60 ID:eLB/kchZO
- 乙ですー
- 197 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/09(土) 22:06:50.46 ID:zJVzLAyqo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 198 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/09(土) 22:10:33.02 ID:UYbir0dlO
- よしきた
- 199 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/09(土) 23:20:07.41 ID:zJVzLAyqo
-
天乃「結婚式には……どうかしら。来てくれるかな」
沙織「どうかなぁ……」
沙織は渋るように言う
天乃の祖母は、自他ともに厳しい
同性交際だって認めていないかもしれないし
同性結婚なんて、もっと反対しているかもしれない
直接的には何も言って来ないが、ちゃんと異性と付き合いすべきと思っているかもしれない
沙織「まぁ、お祖母様は若干ツンデレみたいなところもあるし。来ないかもね」
天乃「そう……よね」
夏凜「それを言ったら、うちの親だって」
東郷「東郷、鷲尾両家は全然。私が幸せなら……と、言っていますよ」
園子「とっしーに同じく〜」
樹「私も、大丈夫です。お姉ちゃんですし」
夏凜「羨ましい」
- 200 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/09(土) 23:52:55.12 ID:zJVzLAyqo
-
風「あれ? 結婚反対?」
夏凜「久遠の血が穢れてるって考えてんのよ」
春信の手を借りて、ようやく説得した。という状態である夏凜の家は
恐らくではあるが、結婚式に招待したところで来てはくれないかもしれない
だから、羨ましいとぼやく
反対されても、天乃との結婚は変わらない
仲の良かった兄は招待したら来てくれるはずだし、
全員が全員、大反対と言うわけでもない
天乃「また今度、ご挨拶に行く?」
夏凜「止めた方が良い」
子持ちであることは伝わっているだろうし、
変な難癖をつけられてしまうだけだ
夏凜としては、もうあまり関わらなくてもいいのでは。と、思っている
夏凜「どうしてもって言うなら、止めないけどね」
天乃「止めないって、夏凜にも来てもらわなきゃ困るわ」
夏凜「そりゃそうだけど」
- 201 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 00:19:28.31 ID:BBtUgUKto
-
樹「うちは……良いの?」
風「そうねぇ」
天乃「風のところにもいくわよ。もちろん」
風「家とお墓?」
天乃「両方」
犬吠埼家のご両親
今から二年……いや、もう三年前と言ってもいい
天乃達とバーテックスの戦いの被害によって亡くなった二人
天乃はまだ、しっかりとお話を出来ていない
先延ばしになってしまっていたけれど、今度こそ
天乃はそう思って、笑みを浮かべる
天乃「色々な意味で、責任は取らなきゃね」
風「それは良いんだけど……樹を妊娠させる前に、あたしを妊娠させなさいよ?」
天乃「えっ?」
風「東郷が、そういうことできるようにしてくれるらしいから」
東郷「待ってください風先輩! 一番は私では!?」
園子「そういう話じゃないんじゃないかなぁ〜?」
夏凜「園子が一番、落ち着いてるかもしれないわね」
呆れたように呟く夏凜に、
園子は困ったように笑って「いっつんが一番だよ」と、譲った
- 202 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 00:22:52.13 ID:BBtUgUKto
-
では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日は可能な限り、お昼ごろから
- 203 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/10(日) 00:36:03.27 ID:jsSwlO2gO
- 乙
今度は久遠さんと子作りしたい勇者部の皆さん
- 204 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/10(日) 03:32:51.39 ID:1x66Bw2bO
- 乙
東郷さんの肩にすべてかかっている
- 205 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 15:35:50.55 ID:BBtUgUKto
-
では、少しずつ
- 206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/10(日) 15:50:00.31 ID:Nt9AkM04O
- きてたー
- 207 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 16:23:36.42 ID:BBtUgUKto
-
天乃「待って、そういう話は出来るようになってからにしましょう。ね?」
沙織「早めに考えておかないと大変だよ? 東郷さんはかなり本気で考えてるんだからね?」
天乃「え、ええ……」
東郷が本気になったときは、
本当に、完成させてしまいそうな気もしなくもない
少なくとも、沙織は完成させると信じているらしい
東郷「それがあれば、夏凜ちゃんのご両親も黙らせられるかしら……」
夏凜「血の問題だから無理だと思うわよ。とはいえ、遠い遠い血の繋がりがあるんだけど」
ほんのわずかな力の継承が出来ている程度の繋がり
三百年経ってなお、残る程度には強い繋がりだ
沙織「三好さん家は、そうだろうねぇ」
夏凜「まぁ……おか……母親は認めてくれてるから。渋ってる父親はどうにかなるわよ」
変な話して悪かったわね。と、夏凜は笑う
以前あいさつに行ったとき、母親の方は同性かつ複数の付き合いがあることを気にしていた
その一方で、父親は久遠家として気にしていた
あれから、だいぶいろいろなことがあった
その中で、久遠家の穢れというものを忌避しても仕方がないことだろう
- 208 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 17:01:30.35 ID:BBtUgUKto
-
夏凜「天乃がまたしばらく、元気な顔見せてれば大丈夫」
樹「そうです。久遠先輩が元気に過ごしていれば、もう大丈夫だって思って貰えますよね」
なにより、神樹様がが選ぼうとした人だ
神々が選ぼうとした人が穢れ切っているわけがない
そして、長く苦しんでいた人が、
とても、元気に生きていたとしたら
穢れのことなんて、忘れて貰えるだろう
樹「そのためにも、夏凜さんが頑張らないとだめですよ?」
夏凜「なんで私だけなのよ」
園子「元々、そういうつもりだったって聞いてるんよ〜」
夏凜「聞いたって言うか……」
なれそめは、それなりに話し合っている
だから、当然園子も知っているのだ
東郷「そう……元気な赤ちゃんを作れるくらい元気に……」
風「東郷、それはもういいから」
- 209 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 17:54:12.35 ID:BBtUgUKto
-
沙織「何はともあれ、これで結城さんのことを除けば心置きなく退院できるよ」
天乃「家に大赦の人がわざわざ来ることもないのね」
沙織「そうだね。春信さんと瞳さん以外……になるけどね」
くすくすと笑う沙織は、
二人ならば別に来ても問題がないことは分かっている
それ以前に、どちらかと言えば、春信は来ない方だろう
天乃「子供達とゆっくり、出来るかしら」
風「いやぁ、育児に炊事洗濯はなかなかきついんじゃない?」
樹「お姉ちゃんも手伝ってね?」
風「それはもちろん手伝うけど――」
園子「いやいや、ふーみん先輩は今は勉強しなければいけない期間……よって、私達で頑張ろ〜」
夏凜「……変なこと言い出すんじゃないわよ?」
当たり前のことを、にやにやとして語る園子に、
夏凜は不穏なものを感じたのだろう
すかさずそう牽制するが、園子はにっこりと笑う
園子「その代わり、天さんには可愛いエプロンをつけて貰って〜ご飯にする? お風呂にする? それとも〜わ・た・し? をして貰うんよ〜」
東郷「その――」
風「いや、東郷それはない」
東郷「まだ何も言ってません!」
- 210 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 18:28:33.27 ID:BBtUgUKto
-
天乃「はいはい」
可愛いエプロンが似合うかとかどうとか
ちょっと気になることはあるけれど、
みんながそれが見たいというのなら……と、天乃は困ったように笑う
病室らしからぬ華やかな空気は、
友奈が居たらもっと賑やかだったろう
そして、これからは自分たちの家で、ずっと……
天乃「夏凜」
夏凜「なに?」
天乃「大変だろうけど、副部長宜しくね」
夏凜「あぁ……まぁ、樹が部長なら大丈夫でしょ」
確かに。と、沙織が言う
風の不満げな声に、みんなが笑う
これから部員が増えるのか
それとも、来年には部を畳んでしまうのか
それは分からないけれど――
樹「いっそ、個人運営しちゃうのも。ありですよね」
風「何でも屋でも開く? 自営業化しちゃう?」
天乃「そう言うのじゃないでしょ、勇者部は」
- 211 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 19:09:37.98 ID:BBtUgUKto
-
風もそれは分かっているのだろう
冗談だと言って、軽くウインクして見せる
園子「みんなで同じ家……かぁ」
樹「どうしたんですか?」
園子「ん〜ん〜……いつかそうなりたい。そう思っていたけど、叶うとは思ってなかったから」
天乃「そうね」
園子のしみじみとした思いを感じる
園子の瞳が、天乃へと向く
それは、天乃が一番願っていたことで
天乃が一番、叶わないだろうと思っていたこと
それを一番、園子は知っている
あの日、最後まで付き合ったからこそ、知っている
天乃「本当……そうだわ」
- 212 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 19:35:59.81 ID:BBtUgUKto
-
夏凜「友奈が退院したら、あそこ行きましょ」
天乃「あそこ?」
風「うどん!」
樹「お姉ちゃん……」
夏凜「そう、うどん」
東郷「えっ」
勇者部と言えば、うどんだ
夏凜が来てからは、天乃の体の状態もあって全然でダメだったが
それ以前も、天乃は味覚がない状態だった
夏凜「みんなで、快気祝いしましょ」
天乃「……子供達は置いて行けないわ」
園子「そこは何とかするんよ〜」
赤ちゃんを連れているのは、
もしかしたら、ちょっと目を引くことかもしれないけれど
その辺りは、ちゃんと考えていけばいい
もしもダメそうなら、家でうどんで妥協だ
天乃「なら……そうしましょ」
- 213 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 20:06:39.77 ID:BBtUgUKto
-
風「でもそっかぁ……そうよねぇ。赤ちゃんのこと、ちゃんと考えなきゃね」
夏凜「確かに、安易だった」
天乃「そうよ。ちゃんと考えて貰わないと」
申し訳なさそうな夏凜に便乗して、突っつく
夏凜はちゃんと考えてくれている
みんな、しっかりと考えてくれている
天乃「――夏凜パパ」
夏凜「はぁ!?」
驚く夏凜をよそに、天乃は笑う
誰がパパと言うわけではないけれど、
でも、だからこそ自分勝手に呼んでみたいのだ
東郷「待ってください久遠先輩、私もパパです!」
園子「それは無理があるんじゃないかな〜」
東郷「くぅっ!」
天乃「ふふっ」
1、そこ拘っちゃうの?
2、冗談よ。パパは悪五郎くんだもの
3、みんなパパね。私がママ
4、さぁ? みんなママじゃないかしら
5、そういう園子もママだからね?
↓2
- 214 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/10(日) 20:08:37.33 ID:Nt9AkM04O
- 3
- 215 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/10(日) 20:10:06.40 ID:kcmiYUQv0
- 1
- 216 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 21:38:23.53 ID:BBtUgUKto
-
天乃「そこに拘っちゃうの?」
東郷「何言ってるんですかっ!」
天乃「っ!」
同じベッドに板ならば押し倒すと言わんばかりの声が飛ぶ
ベッドに体を起こしている東郷は、手にした枕を強く握りしめて、天乃を見ていた
東郷「パパですよ。パパ……それがどんな意味を持っているか……」
知らないんですか? とでも言いたげな切れ方
言いたくても言えない
そんな純情を抱えているように東郷は俯く
天乃「そんな大事?」
夏凜「さぁ?」
沙織「パパってことは、ママと対になるってことだからね。大事なことだよ」
天乃「……そういうことね」
風「だから東郷は二人のパパの座狙ってんのよ。あの体で」
東郷「あの体は酷くないですか?」
樹「パパは私か夏凜さんですよ。これは決まってます」
園子「ここはゆーゆを推しておくんよ〜」
- 217 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 22:19:44.02 ID:BBtUgUKto
-
風「男気なら友奈よねぇ」
天乃「風は良いんだ?」
風「あたしはほら〜女子力に満ち溢れてるから」
女子力に溢れすぎているせいか、
風は残念だけどパパにはなれないらしい
確かに性格はパパ向きだが、女子力はある
東郷「くっ……友奈ちゃんには勝てないっ」
樹「友奈さんには譲るんですね……」
友奈に対しては対抗しようとした東郷に、
樹は苦笑いを浮かべて、少し考える素振りを見せる
東郷は友奈で、風も友奈で、園子も友奈で
そうなってしまうと、多数決的に友奈になってしまう……
樹「夏凜さんに一票で」
夏凜「貰っとく」
天乃「みんなパパとか言ったらダメ?」
沙織「みんなの分の子供を産む気があるなら良いんじゃない?」
天乃「それは難しいわね」
- 218 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 23:20:59.86 ID:BBtUgUKto
-
沙織「そんな即答しなくても」
天乃「無理よ、体が持たないわ」
夏凜、風、園子、樹、友奈、東郷、沙織
若葉を除いても7人分の子供など、天乃の体がまず持たないかもしれない
もちろん、探せばもっと大家族がいるだろうし、
天乃の体が本調子なら子供を産むこと自体は可能かもしれないけれど、
相手が一人ではないのが、持たない
天乃「……欲張りすぎたわ」
夏凜「でもその責任は、取って貰わないと」
天乃「わかってる」
でも子供は多分無理。と
天乃はそれでも無理と言って「ごめんなさい」と手を合わせる
誰か一人の子供を7人なら可能だが、
7人一人ずつは、やっぱりさすがに可能だとは言えなかった
- 219 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/10(日) 23:46:31.18 ID:BBtUgUKto
-
天乃「でも、どうなの実際」
夏凜「何が?」
天乃「みんなの考え」
そう言いつつ、天乃は東郷に目を向ける
天乃は東郷が女の子同士で子供を作れる技術を本気で研究しようとしていることは聞いているが、
みんなが自分たちで産む気なのか天乃に産ませたがっているのか。だ
みんなのさっきの会話的に、
自分たちが子供を産む気なのだろうか
今はまだ東郷の研究……と言うよりは計画だろうか
それがまだ成就していないため、考える必要はないことかもしれない
大体、天乃の体が持つかどうかも分からないのだから、
自分が……と思っているとは思う
1、あー……えっと、私との結婚。どう思ってるのかなって
2、子供は産みたいの? 産んで欲しいの?
3、名前。苗字……どうする?
4、本気で子供作りたいって考えてるの?
5、えっと、そう……戦い。完全に終わったって思ってる?
↓2
- 220 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/10(日) 23:56:54.81 ID:Nt9AkM04O
- 2
- 221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/10(日) 23:59:07.68 ID:GYyWxWGuO
- 2
- 222 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/11(月) 00:11:38.14 ID:xTXApZPwo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
東郷「そんなことよりこっちのベッドきませんか?」
樹「あっずるいですっ。こっちに来てください!」
園子「こっちも開いてるんよ〜」
沙織「こっちにもあるよ」
風「……あれ? この流れ……」
夏凜「デジャヴよ。デジャヴ」
- 223 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/11(月) 00:13:54.86 ID:k2/dfG4iO
- 乙
東郷さんの研究次第で今度は久遠さんがパパに…?
- 224 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/11(月) 00:23:43.97 ID:BzBHZNmKO
- 乙
久遠さんが産ませる方なら全員作れるんじゃね?
- 225 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/11(月) 00:32:02.62 ID:whRXnH4WO
- 乙
久遠さん以外処女だからまずエッチしないと
- 226 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/11(月) 21:35:23.05 ID:xTXApZPwo
-
では少しだけ
- 227 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/11(月) 21:38:28.97 ID:QTnWpafXO
- かもん
- 228 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/11(月) 22:30:29.16 ID:xTXApZPwo
-
天乃「子供は産みたいの? 産んで欲しいの?」
実際、東郷が研究しようとしているのは別に天乃やみんなが
女の子から男の子に性別転換するようなものではない
だから、どちらも産めなくなるなんてことはないし
当人さえよければ、どちらでも問題はないのだ
天乃「言っておくけど、辛いわよ?」
自慢げに言う天乃は、確かに辛そうだった
今でこそ笑って話せることだが、無事に産むこと、死産になること
それよりもずっと天乃が死ぬ可能性の方が高かったくらいだ
ただ、それは天乃だったからだ
風「天乃はかなり特例でしょ」
園子「天さんは穢れがピークに達してたし、神樹様の力も影響してかなり危ない状態だったから……」
東郷「そうね……それを考えれば、私達が久遠先輩の子供を産むべきだと思うわ」
東郷はそう言ったが、
ただ。それを考えなくていいのなら。と、続ける
東郷「やっぱり、久遠先輩に産んで欲しい」
- 229 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/11(月) 22:57:08.19 ID:xTXApZPwo
-
東郷「やっぱり、女として一度は久遠先輩の出産に立ち会いたい……というより、夏凜ちゃんだけ狡いです」
天乃「女の子なら立会される方だと思うのだけど」
樹「でも久遠先輩の体に負担はかけたくないです」
沙織「その問題はあるよね。そこ気にすると、樹ちゃんも危ない感じがするけど」
樹「これでも背は伸びてるので――というより、子供作るのはだいぶ先の話じゃないですかっ」
樹はむっとして言い返す。
樹が気にしてるのは、天乃の体が一部を除いてまだ未成熟に近い状態だからだ
しかも、今後身長が伸びることはないとほぼ確定しているような状態である今
やはり、穢れ等のことがないとしても天乃の出産は通常以上に危険が伴う
天乃はとても小さい
今では樹さえ通り過ぎた148cmのままだ
そのそんな小柄な天乃のお腹がだんだんと大きくなっていく
双子ということもあったのかもしれないけれど、
腹筋のある天乃のそれを超えて膨らんだように思う
夏凜「天乃はどうなのよ。私達が決めても良いわけ?」
天乃「みんながそうして欲しいならそれでもいいかなって思ってるわ」
- 230 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/11(月) 23:23:26.28 ID:xTXApZPwo
-
天乃だってあの感覚を忘れたわけではない
すぐ隣にいる夏凜がトラウマになるくらいに、出産までの期間は大変だった
けれど、今の身体ならそこまで重い症状にならないことは、
天乃自身、感じていることだ
だから、みんなが天乃に産んで欲しいというなら受け入れることは出来る
そして、子供を産むということ
それが全てではないにしても
だんだん胎児が成長していく感覚
その痛みと、苦しさと辛さを身をもって知ること
それは、母親になる過程でとても大事な感覚なのではないかと、天乃は思っている
頑張って、頑張って、頑張って
ようやく勝ち得たものの尊さと大切さを知っている夏凜達なら
それがどれだけ大きな意味を持っているか、きっとわかるはずだ
だからもちろん、みんなが自分たちが産むというのなら止めないし
その手伝いは可能な限りするつもりではある
天乃「でも、お願いだから全員で妊娠はちょっと……できれば、避けて?」
それだけは、かなり困ってしまう
- 231 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/11(月) 23:51:47.99 ID:xTXApZPwo
-
みんなが双子を孕むなんて言うことにはならないとは思うけれど、
そうならなくても、全員が一斉となると七つ子になる
一人でそうなるわけではないため、
体の負担があるなんてことはないけれど、
流石に、妊婦7人は天乃にも無理だ
千景が運良く残ってくれたとしても
瞳が手伝ってくれたとしても
最終的には、やはり手が回らなくなっていくことだろう
天乃「みんなが産んでくれるなら、それはそれでいいの。でも、一人一人にちゃんと寄り添いたいわ」
はっきりと、天乃は自分の望みを言う
一つあるいは二つもしかしたらそれ以上
新しく命が生まれるのだから
それに対し、母親であろうと父親であろうと
片手間で寄り添いたくはないと、天乃は言う
風「それはあるわねぇ」
東郷「久遠先輩に産んでもらいたいのもちゃんと付き合いたかったという思いがあってこそなので」
園子「なら、いっそ天さんがあと7人産んで私達が1人ずつ産むというのは……」
樹「名案では、無いですよ?」
ぴっか〜ん。と、閃いたというような満面の笑みを見せる園子に、
樹はすかさず言葉を挟む
夏凜「産んで欲しい人は天乃に産んでもらって、産みたい人は自分でしっかりと産む。それが一番なんじゃない?」
- 232 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/11(月) 23:52:15.37 ID:xTXApZPwo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 233 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/12(火) 00:08:02.50 ID:/ty3BHZDO
- 乙
久遠さんの場合は相手が妖怪の五郎くんだったから期間が短くて大変だったもんなぁ
- 234 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/12(火) 00:39:58.86 ID:Ri02TJwCO
- 乙
こういうときやっぱり久遠さんは子供っぽくない考えしてるなと思う
- 235 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/12(火) 23:44:45.14 ID:3NsyLSLHo
-
遅くなりましたが、少しだけ
安価は出せないと思います
- 236 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/12(火) 23:46:51.19 ID:mFB39T9AO
- おk
- 237 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/13(水) 00:00:29.35 ID:CcwTjGyUo
-
風「まぁねー……それが正解」
天乃「でも私が妊娠してるときは、他の子を妊娠させたりしたらダメよ?」
夏凜「なんか微妙に悪寒が走るわね。ソレ」
うん? と、不思議そうに小首をかしげる天乃を夏凜は一瞥する
天乃や夏凜達に関しては、みんな交際中なので実際は問題ないのだけれど、
恋人が妊娠中にほかの女の子を妊娠させるというのは、普通は大問題である
とはいえ、天乃が言いたいのはそう言うことではないのだが。
夏凜「ただ、それだとやっぱり一年に一人、早くても二人とかになっちゃわない?」
天乃「それは……」
東郷「仮に、今年またもう一人作るとしても、最低7歳は離れるわね」
樹「年の離れた兄弟姉妹もない話ではないと思うので、問題はないのでは?」
沙織「えっちがしにくくなるよ」
樹「!」
園子「それは子供が出来たら仕方がないんじゃないかな〜」
- 238 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/13(水) 00:13:35.02 ID:CcwTjGyUo
-
はっとする樹を横目に、園子の声が伸びる
天乃達が順調に一人ずつ産むことになったとしても、
すでに生まれている星乃と月乃を含めれば9人の子供がいることになる
歳の差があって、子供の手が借りられるようになるかもしれないとはいえ、
任せきりにするわけにはいかないし、
まさか、夜な夜な母親がエッチなことをしている……と言うのは、
子供にとっては、少々知りたくない現実だろう
天乃「待って、子供が増えたら当然だけど子供を優先して欲しいわ」
沙織「それは当たり前だよ。いや、どっちが優先とかいうより、どっちも大事が正しいかな」
園子「そうだねぇ〜天さんにも子供達にも寂しい思いとかはさせたくないな〜」
樹「私達は子供の分だけ親がいるので楽と言えば楽ですけど……子供が多い場合に増える負担も加味すべきかと」
東郷「そうね……ただ子供が欲しい。それだけで考えるのはやや早計ね」
まるでTVのチャンネルを変えてしまったかのように、会話の空気感が変わる
子供のことを話している以上、根本的に変化はないのだが、
その真面目度合いがまるで違っていた
風「それは、東郷の研究が完成するまでの議題ってことで良いんじゃないの? まさか今日明日に完成するわけじゃないんだし」
- 239 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/13(水) 00:28:50.05 ID:CcwTjGyUo
-
沙織「問題点はさておいてって話なら、あたしは久遠さんに産んで欲しいな。そしてそのあとにあたしが産むのっ」
天乃「こらこら」
沙織「うんっと頑張ってる久遠さんに寄り添い続けて、可愛い赤ちゃんが産まれてから、大きくなりつつあるお腹を撫でながら、やっちゃったって」
東郷「そのやっちゃったは、一般的に駄目な方の意味なのでは……?」
真面目に考えれば。と、東郷は付け加える
ただし、すべては研究が成功してこそだ
みんなが期待している以上、絶対に……それこそ10年以内にはどうにかしたいと思うわけだが
ことはそう簡単な話ではない
最低7歳と言うのは、あくまで星乃達を抜いての話
そうでなければ、月乃達が中学生になるころに、もう一人妊娠と言うかたちになるだろうから
そこから毎年であれど、二人が成人した後にももう一人妹か弟が出来るわけで……
夏凜「というか、自分が産みたいって人はいるわけ?」
夏凜は東郷の黙り込む内面を察してか、口を挟んだ
園子「私は産みたい……かな」
風「直情的に答えるなら、あたしも園子に同じかな。やっぱり、女として一度は恋人の子供を産みたいとか思っちゃうわ」
樹「私はどう、かな……久遠先輩を見ていてとても辛そうだったから……自分の方が。って答えになっちゃうかも」
- 240 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/13(水) 00:36:44.37 ID:CcwTjGyUo
-
申し訳なさそうに樹は言うけれど、それは仕方がないことだ
天乃のあの頃を見てきているならば、
妊娠も出産も相当重いものであると感じられる
天乃の体質が特殊で本来はもっと時間をかけるべき成長が半分ほどに凝縮されていたのだ
辛さが和らぐなんてとんでもない、負担は倍増だった
だから、みんなが言うように天乃は特例である
特例ではあるが、実際に目の当たりにした前例は、それだった
天乃「私のことは一先ず考えてくれなくていいわ。大丈夫」
だからと言って沙織のような無謀な発言は控えて欲しい所なのだが。
目を向けられたことに気付いても、沙織は微笑むだけだ
樹「それなら、産みたいですね。理由はお姉ちゃんと同じです」
天乃「夏凜は?」
夏凜「私は……私はなんていうか、自分が妊婦になるって言う場面が想像つかないのよ」
夏凜だって女の子だ
当然、体質の問題さえなければ子供は出来ることだろう
だが、夏凜は立ち会った出産を見て以降、ずっと考えていたのだ
自分ははたして、子供を産む母親となれるのだろうか。と
- 241 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/13(水) 00:37:27.65 ID:CcwTjGyUo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 242 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/13(水) 01:12:07.16 ID:nJHsYQHfO
- 乙
久遠さん家の九つ子!
- 243 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/13(水) 06:04:04.57 ID:x8pPvkVrO
- 乙
- 244 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/13(水) 22:41:45.45 ID:CcwTjGyUo
-
では遅くなりましたが、少しだけ
- 245 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/13(水) 22:48:46.61 ID:q/S6wldhO
- いえす
- 246 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/13(水) 23:01:18.60 ID:CcwTjGyUo
-
天乃が特例であることは百も承知なのだが
その立場に自分を照らし合わせることがどうしてもできない
自分が母親となることを、望んではいないのかもしれないと……感じる
夏凜「妊娠出産に耐えられる耐えられないじゃなくて、それそのものが自分には合わないっていうか……」
園子「それは、にぼっしーが今まで勇者であることに全身全霊で生きてきたからではなく?」
夏凜「それもあるかもしれない」
夏凜は薄い笑みを浮かべる
エッチなこともそうだが、
夏凜はしっかりとそれについて勉強している
もちろん、天乃の体の為に
けれど、だとしても想像が出来ない
勇者になれるかどうかなんていうこと以上に、わからない
天乃「別に無理する必要はないのよ?」
夏凜が子供は別にいらない
星乃と月乃の二人がいればそれで充分
そうなら、それでもいいと天乃は思っている
三好家は喜べないかもしれないが、
長男の春信がいるから、血が途絶えることはとりあえず無い
- 247 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/13(水) 23:39:29.90 ID:CcwTjGyUo
-
夏凜「別に無理はしてないけど」
東郷「夏凜ちゃんは、久遠先輩の出産に立ち会っちゃったからこそ、その想像が出来ないんじゃない?」
東郷は珍しく生真面目に切り込む
浮かべる表情は慈愛を感じるような、得心しているものだった
東郷「夏凜ちゃんは女の子。でも、自分よりも久遠先輩は女の子……なにより、子供を目の前で産んだ妻なのよね?」
東郷の穏やかなに語り掛ける声の後には沈黙が続く
目を向けられた夏凜は言葉がないようで、
東郷の方を一瞥すると、天乃へと目を向ける
橙色の瞳は、優しく見つめ返している
同じベッドにいる天乃は、今は穏やかだが、
あの頃はそれも一過性のものに過ぎなかった
天乃「……妻?」
見つめられているのが気恥ずかしいのか、
ちょっとだけ照れくさそうに自分を指さして、天乃は問う
夏凜「そう……そう、思ってるのかもね」
天乃は自分よりも女の子だと
天乃は、自分の妻……嫁なのだと
夏凜は東郷の言葉に頷く
- 248 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/14(木) 00:06:42.26 ID:oGdfzkqLo
-
夏凜「私にとって天乃はそういう存在で、だから私は自分がその立場になるとは考えられない」
偏見だろうか
固定観念だろうか
夏凜は、あれからそうなのだ
自分よりもか弱い存在だとは思っていないけれど
女の子で、嫁で、大切にしたいし愛したい
自分が妊娠するよりも、天乃が妊娠していることを考えてしまう
夏凜「……」
そっと胸に手を置く
高鳴りは感じない、緊張もしていないし動揺していない
これは、嘘ではない
夏凜「……だからごめん。もし、子供が欲しくなったら、天乃に産んで欲しい」
天乃は平気と言っているけれど
あんなにも辛い思いをしているのを見てきた夏凜としては、
それはあまり、頼みたくはないことだった
けれど、どうしても頭は天乃の方を考えてしまう
1、ごめんなんて、別に謝ることじゃないでしょう?
2、ええ、喜んで
3、そう……妻……妻なのね
4、どうしようかしら。夏凜にも産んで欲しいのに
↓2
- 249 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/14(木) 00:07:57.97 ID:KXQc0BBBO
- 1
- 250 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/14(木) 00:10:36.70 ID:AejR9xX7O
- 1
- 251 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/14(木) 00:19:52.61 ID:oGdfzkqLo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
園子「ま、まさかわっしーがこんな真面目に……!」
東郷「察しがつくわ。きっと、樹ちゃんだって」
東郷「久遠先輩が好きだから、恋しているから――わかる」
風「一理あるわ、東郷。流石ね」
樹「嫁だからこそ、出産は久遠先輩に……かぁ」
沙織「考えてなかったとしても、落ち込む必要はないよ」
- 252 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/14(木) 00:31:54.51 ID:AejR9xX7O
- 乙
久遠さんが横になってる時いつも旦那のように寄り添ってたよな
そう考えると確かに夏凜ちゃんが妊娠するのは想像しにくいかもね
- 253 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/14(木) 02:27:02.17 ID:LdIBWyp4O
- 乙
父性の波動に目覚めた夏凜ちゃん
- 254 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/14(木) 23:42:24.51 ID:oGdfzkqLo
- すみませんが、本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
- 255 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/15(金) 06:02:14.95 ID:WVvURqa3O
- 乙
- 256 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/15(金) 22:10:33.69 ID:BF/xNtkwo
-
遅くなりましたが少しだけ
- 257 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/15(金) 22:37:33.05 ID:7kvTCIXvO
- 来てたか
- 258 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/15(金) 23:04:27.22 ID:BF/xNtkwo
-
天乃「ごめんなんて、別に謝ることじゃないでしょう?」
夏凜もさっき言っていたことだが、
産んで欲しい人は天乃に頼んで、産みたい人は自分で産む
天乃もそれでいいと思っている
だから、別に謝ることではない
天乃「夏凜がそうして欲しいって言うなら、私はちゃんと産むわよ?」
妊娠していた経験をなぞるように、
今は膨らんでいないお腹を優しく撫でながら、天乃は微笑む
夏凜「あんた……」
天乃「?」
夏凜「いや、なんかやっぱ様になってるなって」
お腹の子に愛情を注いでいるようなその仕草は、
天乃だからこそ似合うのだろうと、夏凜は再認識する
少なくとも、自分には似合わない
夏凜「本当に産んでくれるの?」
天乃「ええ」
- 259 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/15(金) 23:28:45.44 ID:BF/xNtkwo
-
天乃が笑みを見せると、
夏凜は照れくさそうに頬を染めて、目を逸らす
結婚相手が自分の子供を産んでくれると言っている
男ならば、一部例外もあるかもしれないけれど
それはとても嬉しいことだろうし、面と向かって言われると……照れくさくなるものだろう
沙織「みっ、三好さんは……そういうこと、で、良いかなっ」
天乃「沙織?」
じわじわと広がりつつある二人だけの空気に、沙織の声が割って入る
二人きりならば邪魔もしないが、
みんながいる場では、そんなことは許さない
沙織「三好さんは久遠さんに産んでもらう。つまり、久遠さんを孕ませたいんだね?」
風「孕ませはやめない? 生々しくなっちゃう」
東郷「ですが、妊娠して貰う。よりも孕んで貰う。の方が性的だと見た覚えがあります」
樹「今は性的じゃなくていいと思います」
- 260 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 00:11:20.37 ID:/bmx/Bx7o
-
スッパリと東郷の言葉を断ち切る
孕んでもらうというのは、確かに性的かもしれないけれど
その分、どこか強引さがあって樹は好きではないのだ
エッチの時に、ちょっとした責め句として用いるのならば良いかもしれないが。
残念ながら、そのための体の部位が欠如してしまっている
沙織「あたしは、まぁ、多分子供産むと大変な事になるだろうし」
天乃「そうなの?」
沙織「産めるとは思うんだけどね」
ただ、天乃の力が流れ込むことになるため、
若干ではあるが、不安定になる可能性はある
出産に伴って猿猴の力が抜ける脱力感によって、力の消失もないとは言い切れない
沙織「だからあたしは久遠さんに産んで欲しいな」
天乃「さっきも聞いたわ。大丈夫、任せて頂戴」
沙織「……久遠さんて何でもないことをえっちにするよね」
天乃「えっ?」
- 261 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 00:13:56.35 ID:/bmx/Bx7o
-
では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日は可能であれば、お昼ごろから
- 262 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/16(土) 00:23:19.02 ID:WcYa1NmbO
- 乙
久遠さん双子ちゃんたちを産むまで散々死にかけてたとは思えないほど子作り方面で頼もしくなってるな
- 263 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/16(土) 01:05:45.41 ID:8WgKQysUO
- 乙
いろいろ楽しみが広がっていくな
- 264 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 20:15:29.01 ID:/bmx/Bx7o
-
遅くなりましたが少しだけ
- 265 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/16(土) 20:21:11.47 ID:Ekiz2D+hO
- よしきた
- 266 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 20:57:27.43 ID:/bmx/Bx7o
-
夏凜「あとは友奈だけだけど、話聞いてたりする?」
天乃「ううん、そういう話はしてなかったから……夏凜達は聞いてたりしないの?」
夏凜「友奈は……」
樹「友奈さんはそういう話してなかったと思います」
エッチな話に関しても、どこか消極的だったと樹は思う
最近の友奈は、ちょっぴり嫉妬していたのが原因なのだが。
東郷「友奈ちゃんも女の子だから、子供を産むことを考えそうだけど……」
それを実際に、産みたいです! と、はっきり言うだろうか
産んでもらうよりは産みたい女の子かもしれないけれど、
子供を産むという点において、恥じらいを感じてしまう気がするのだ
東郷「産めるなら、産みたいです。というところね」
風「東郷がそういうなら、そうかも」
園子「わっしーはゆーゆ博士だね〜」
友奈の性格的に
天乃の初めての妊娠出産の苦痛が完全に解消されたと確信できるまで、
天乃にそういったことをさせること自体、避けようとするかもしれない
肩代わりできるなら、肩代わりしたがるだろう
子供を産むことに関しては、やっぱりそういう犠牲的な考えはして欲しくないものだが。
- 267 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 21:41:15.47 ID:/bmx/Bx7o
-
天乃「友奈にもあとで聞いておこうかしら?」
沙織「もう夜になりそうな時間だし、また明日にしておいた方が良いよ」
天乃「そうね。そうするわ」
友奈は絶対安静の身だ
夏凜から借りている本があるからある程度暇を潰せているだろうし、
子供を産みたいか産んでもらいたいかについては、
今すぐ話を聞かなければいけない。なんていうものでもない
東郷「………」
夏凜「東郷、どうかした?」
東郷「大したことではないけど……」
そうは言いつつ、東郷は神妙な面持ちで俯く
何かあるのかと天乃が目を向けると、
風の苦笑が聞こえた
風「あの顔は真剣にくだらないことを考えてるわね」
園子「わっしーにとっては唐揚げのレモンくらいに重要な事なんよ〜」
- 268 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 22:10:56.32 ID:/bmx/Bx7o
-
良く分からない基準に天乃が首をかしげていると、
おもむろに東郷が顔を上げて、園子を一瞥して天乃を見る
それでようやく、天乃は風がくだらないと笑った理由が少しだけわかった
少なくとも、神妙な顔つきになるほど重い話ではないのだ
東郷「昨日はそのっちと寝たんですよね?」
天乃「そうね。堪能させて貰ったわ」
園子「つ、次は負けないんよ〜」
思い出してしまったのだろう
真っ赤な顔の園子は常日頃愛用しているサンチョに顔を埋めていて
東郷は「ですよね」と、呟く
東郷「なら、今日は出来ませんよね?」
天乃「そう、ね……」
こうして普通に話したり、出歩いたり
朝も問題なく起きることが出来ていたことを考えると大丈夫に思えるけれど
天乃の今までを考えれば、だからと言って油断すべきではない
大事を取って、性接触は隔日にしておくべきだ
- 269 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 22:49:36.12 ID:/bmx/Bx7o
-
樹「東郷先輩、出来るとしても明日のことを考えたら今日は控えたほうが良いかと」
東郷「樹ちゃん……」
最近少し厳しくない? とでも言いたそうな困った顔をした東郷だが、
樹の名前を呼ぶ程度に抑え、一息つくと笑顔を見せる
東郷だって、頭の中がそればっかりではないのだ
好奇心ではないけれど、そういったものが旺盛でのめり込みやすいというだけだ
特に、以前の天乃に必要不可欠となっていたのならば、なおさら
これがもしも友奈に必要だったとしても、東郷は全身全霊で取り組んでいただろう
今でこそ若干の下心が垣間見えるが、当時はそんなものはまるでなかった
東郷「大丈夫。解ってるわ」
優しく言う東郷は「それでですが、久遠先輩」と切り替える
東郷「今宵の相手はお決まりでしょうか?」
天乃「それは、えっちをする相手じゃないのよね?」
東郷「もちろんです」
天乃「それだったら、決まってないわ」
- 270 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 23:17:38.40 ID:/bmx/Bx7o
-
みんなとは、えっちをするだけの関係ではない
だからえっちをしないと決めた日であっても、
別に一緒に過ごすこと自体は何も問題はないのである
出来ないではなく、しない
もしも手を出してしまっても絶対にダメとはならないけれど
可能な限り理性の強い子が望ましい
その前提もあってか、風が東郷を見つめる
風「東郷は対象外……と」
東郷「風先輩?」
夏凜「今日くらい一人で良いんじゃない? 子供だっているわけだし」
樹「久遠先輩がその方が良いならそれが一番ですけど……夏凜さんは出来るなら一緒に居たいとか欲はないんですか?」
夏凜「それは」
天乃「……」
夏凜の困った視線の先、天乃もまた、夏凜を見る
1、勇者の中から選択
2、そうねぇ、別に一人でもいいのだけど……精霊もいるし
3、沙織、久しぶりにどう?
4、へぇ……そう。夏凜は一緒は好きじゃないと
↓2
※1は再安価
- 271 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/16(土) 23:19:36.55 ID:Ekiz2D+hO
- 3
- 272 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/16(土) 23:20:09.72 ID:IUx/VLiv0
- 3
- 273 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/16(土) 23:40:58.98 ID:/bmx/Bx7o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
風「ほらぁ……天乃へのアプローチが薄いから……」
夏凜「わ、分かってるわよ」
樹「まるで分かってないじゃないですか」
夏凜「うっさいっ! 天乃は久しぶりに沙織と一緒が良かっただけでしょ!」
東郷「でも、夏凜ちゃんが一緒に居たいって言ってたら結果は変わっていたと思うわ」
園子「天さんは乙女さんだからね〜好きな人に一緒に居たいって言われたら絶対に嬉しいんよ〜」
- 274 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/16(土) 23:53:06.96 ID:Ekiz2D+hO
- 乙
まぁさおりんも何故かここ最近出番が減って来てたしたまにはね
- 275 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/17(日) 07:29:06.94 ID:uhT2LHnqO
- 乙
- 276 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 16:46:33.46 ID:01iMoeTfo
-
遅くなりましたが少しずつ
- 277 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/17(日) 16:48:15.87 ID:RCcxpSIEO
- やったぜ
- 278 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 17:04:02.57 ID:01iMoeTfo
-
天乃「沙織、久しぶりにどう?」
沙織「へっ? あたし?」
天乃「他に沙織はいないでしょう?」
自分を指さして驚く沙織に苦笑した天乃は、
黙り込んでいる夏凜の方へと向き直ると、「嫌がらせではないのよ?」と、前置く
天乃「夏凜が一緒に居たいって言ってくれないとか、そういう面倒くさいことは全然ないわ」
夏凜「何も言ってないし……」
天乃「そうね。でも――」
自分に自信がないことを語っていたから
樹からの口出しに乗れなかったこと
その姿を一瞥してなお沙織を選んだことにやっぱり。と思われては困る
天乃「沙織と久しぶりに一緒に居たかったのよ」
夏凜が一緒に居たいと言っても結果は変わらなかったのかと聞かれると
少し間が出来てしまうかもしれないけれど。
天乃「わざわざ大赦に殴り込みに行ったことも、少しお話が必要だろうから」
- 279 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 17:33:37.06 ID:01iMoeTfo
-
沙織「殴り込みには行ってないよ!?」
天乃「でも、どうしても私を引っ張り出そうって言うならそれも辞さなかったでしょ」
沙織「あはは」
誤魔化す気のない笑い声を零して「ごめんなさい」と、沙織は呟く
どうしても天乃を連れ出そうというのなら、
多少なりにでも痛い目を見て貰おうという考えはあったのだ
それこそ、ただでさえ少なくなった大赦の人員を半減させるほどには。
猿猴の力が滾っているのだってそれが原因だと天乃は分かっているのだろう
東郷「大赦を壊滅させることについては必要であれば異論はありませんが、今は控えるべきかと」
風「必要でももう少し考えなさい」
樹「今は混乱してるところもあるから、何とかなる……?」
風「隠蔽を考えないで樹っ!」
焦った風の悲鳴が上がる
東郷はともかく樹は冗談だったようで
そんなことはしないよ。と、笑う
けれど、今の樹ならばそれを考えることも出来るはずだ
- 280 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 18:19:15.11 ID:01iMoeTfo
-
沙織「いくらあたしでもそこまではしないって、本当」
園子「でも〜やっちゃいそうな雰囲気だったんよ〜」
夏凜「出てきたときはかなりやばい奴だったわよ」
沙織「そんな……」
夏凜達の指摘に肩を落とす沙織だが、すぐに顔を上げると
天乃へと嬉しそうな笑顔を向ける
沙織「でも久遠さんに選ばれたのはあたしだからいいや」
天乃「ちょっ」
天乃のすぐ横
ベッドに座っている夏凜を払い除けるようにしながら、
天乃のもとへと飛び込んでいった沙織に押されて倒れこむ
天乃「沙織……っ」
沙織「どう? エッチなことしたくなった?」
天乃「なってないーっ」
グッと沙織の体を押す
けれど、天乃のまだ弱い力ではちょっとくらいしか、動かせなかった
- 281 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 18:58:57.36 ID:01iMoeTfo
-
√ 2月20日目 夜(病院) ※日曜日
01〜10
11〜20 九尾
21〜30
31〜40
41〜50 千景
51〜60
61〜70
71〜80 若葉
81〜90
91〜00 歌野
↓1のコンマ
※空白なら沙織
- 282 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/17(日) 19:23:46.50 ID:Sspwnm9NO
- あ
- 283 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 19:57:43.59 ID:01iMoeTfo
- √ 2月20日目 夜(病院) ※日曜日
沙織を連れて、病室へと戻る
まだ松葉杖を手放すことは出来ていないが
沙織の力を借りずに真っ直ぐ病室へと戻れたのは
少しずつ感覚と筋力が戻ってきているということだろう
沙織「久遠さん、だいぶ歩けるようになってきたね」
天乃「まだ、家からの登校は無理そうだけどね」
一日の力を使い切れば徒歩で登校できるかもしれないけれど、
下校する体力は残っていないかもしれない
あるいは、授業に出る余裕もなくて保健室に直行することになるかもしれない
天乃「もう少し頑張らないとダメよ。デートもできないわ」
沙織「むんっ」
グッと腕に力を込めて、沙織は自慢げに天乃を見る
何を誇りたいのかと天乃が考えていると「それなりに力はあるんだよ」と、
沙織はぺちぺちと二の腕を叩く
沙織「久遠さんをお姫様抱っこして半日歩き続けるくらいに」
天乃「それは遠慮しておきたいわ」
- 284 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 20:46:20.34 ID:01iMoeTfo
-
千景「久遠さん……と、伊集院さん。だったわね」
星乃と月乃の二人がすやすやと寝息を立てる中、
天乃と沙織が並んでベッドに入るその横に、千景が姿を見せた
沙織「あたしの名前を忘れたのかな?」
千景「そういうわけではないけれど、最近見ていなかったから」
沙織「パスは通じてたはずだよ」
天乃の精霊としての繋がり
県外にまで出て大丈夫なのかどうかはまだ分かっていないが、
少なくとも、病院から大赦までの距離であれば問題はないらしく、
千景は軽く頷く
天乃「あなた達、仲悪かったっけ?」
千景「今の伊集院さんからはあまり良くない気配がするのよ……猿猴だったかしら。その気配が普段よりも濃い」
天乃「猿猴も一応私の精霊なのだけど、駄目なの?」
千景「普段は駄目ではないわ。ただ、今日は良くないと思う」
- 285 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 21:12:54.98 ID:01iMoeTfo
-
千景は沙織へと厳しい目を向ける
その顔は敵を見るような鋭さだ
千景「久遠さん、猿猴の性的欲求は度が過ぎているわ。気を付けないと、喰われるわよ」
天乃「喰われ、る?」
性的欲求が強いことと、喰われること
それがどう結びつくのか分からない天乃は首をかしげていて
沙織は分かっているのかニヤリと笑う
沙織「あたしが久遠さんを好きな以上、この体を乗っ取られようと久遠さんにだけは手を出させないよ」
それは絶対
それには命を賭けても良いとさえ思う
沙織「同意がなければ、絶対にね」
千景「……そう」
考えながら、呟く
口だけなら何とも言える
けれど、沙織と精霊同士である千景はその心の内を感じ取れる
同意なしに手を出す以外の道がなければ死んでやる。とでもいうような意志は、
他人である千景の心にもチクチクとした痛みがあった
- 286 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 21:45:24.31 ID:01iMoeTfo
-
天乃「千景は私が襲われるんじゃないかって心配してくれたの?」
千景「ええ、そうね」
沙織「いくらあたしでもそれはないよ」
千景「あなたならありえると……いえ、疑って悪かったわ」
素直に頭を下げた千景を、
沙織は特に怒ってるわけではないと宥める
だが、沙織の制御から離れた猿猴を警戒する千景の気持ちも天乃は分かる
沙織を信じるならば、安心できるかもしれない
だが、猿猴という妖怪が危険であることには変わりない
九尾とは別のベクトルで危うく、千景も言っていたように女性を襲うし
場合によっては、人を殺めてしまう
千景「……」
天乃「千景?」
千景「伊集院さんをこれ以上疑う気はないわ。大丈夫」
- 287 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 22:06:54.82 ID:01iMoeTfo
-
沙織「思ったけど、猿猴の力を使えば久遠さんを妊娠させられるんじゃ――」
天乃「五郎くんと同じやり方なら、次は死ぬ自信があるわよ。私」
沙織「そうだよね……ごめん」
猿猴の力、その命を異性の片割れとして天乃に注ぐ
そうやって妊娠させた場合、体内のパワーバランスが著しく崩れてしまう
だからこその宣言に沙織は申し訳ないと悲しげだが
天乃は「そんな顔しないで」と、微笑む
沙織だってそれは分かっているし、
実際にやるつもりで言ったわけではないはずだ
千景「……邪魔したわね」
天乃「戻っちゃうの?」
千景「傍にはいるわ。性的なことはしないみたいだけれど……邪魔かしら」
沙織「久遠さんと星乃ちゃん月乃ちゃんのためだからね、良いと思うよ」
目を向けられた沙織は満面の笑みで答えて
星乃と月乃の名前が出たから、千景は少し目を背けた
1、沙織が良いのなら、千景も一緒に実体化していても良いんじゃない?
2、ねぇ……千景。やっぱりこのままこっちに残っている気はない?
3、いつもありがとうね。千景
4、千景も性的なことしたいの?
↓2
- 288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/17(日) 22:09:14.42 ID:VdRknImNO
- 1
- 289 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/17(日) 22:11:10.65 ID:iVUaS58P0
- 4
- 290 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/17(日) 22:16:43.24 ID:01iMoeTfo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
沙織「またそうやって誘って……」
沙織「久遠さん、そういうことできないように猿猴の力使っちゃうよ?」
天乃「誘ってって、待って私――」
千景「久遠さんに久遠さんの精霊の力が通用するわけないでしょう」
九尾「そうとは限らぬが」
千景「なっ!?」
- 291 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/17(日) 22:23:15.93 ID:VdRknImNO
- 乙
久遠さん相変わらずの誘い受けの天才っぷりだな
それにしても猿猴が性欲強いって設定あったのすっかり忘れてたわ
- 292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 01:58:51.73 ID:lxBUTdQEO
- 乙
まーた久遠さんが他所の女にちょっかいかけてる…
- 293 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/18(月) 22:04:00.98 ID:8/w5wj8Oo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 294 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 22:10:51.62 ID:XBaiCSJNO
- かもーん
- 295 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/18(月) 22:45:14.38 ID:8/w5wj8Oo
-
天乃「千景も性的なことしたいの?」
千景「何を、言っているの?」
沙織「そうだよ久遠さんっ!」
天乃「何か言いたそうな雰囲気だったから……」
だとしてもそれはないんじゃないかな。と
あからさまにムッとする沙織の傍らで、千景は眉を顰める
何か言いたそうだとして
それが性的なことをしたいという理由なのは、千景が知る限りでは勇者部くらいだ
千景「何かがあるとしても、伊集院さんはともかく私はそんなこと考えてないわ」
天乃「性的な行為についての話の後なのに?」
千景「食い下がらないで……」
広げるような話題ではない
確かに、勇者部と関わっている以上その姿を見ることになる
そんなことをした経験の話を耳にすることがある
だとしても。
千景は天乃から目を逸らすと、可愛らしい双子を見て微笑む
千景「確かに……興味がないと言えば、嘘になるわ」
- 296 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/18(月) 23:35:43.45 ID:8/w5wj8Oo
-
沙織「郡さん!?」
千景「伊集院さんがいなければ、久遠さんを襲うのも吝かではなかったのだけど」
天乃「えっ」
惜しいわね。と、千景は呟く
小さく独り言ちたそれは冷ややかで
軽く折れ曲がった唇、見ているようで見ていない薄く開いた瞼から覗く瞳からは
言いようのない雰囲気が感じられる
沙織「ま、待って! 駄目だよ!」
天乃「んにゃっ」
千景から庇うように天乃を抱きしめて、千景を見る
けれど、千景は明るく笑う
千景「冗談よ。だからと言って、久遠さんに手を出す気はないわ」
散々話を聞かされてきてしまっては
流石の千景にも好奇心と言うものは芽生えてしまうものだ
けれど、それはあくまで好奇心であって恋愛感情ではない
沙織が心配しているようなことにはならないしする気もない
沙織がいなかったとしても
別に、天乃を襲おうなどとは考えていないと
天乃を庇う沙織に声をかける
- 297 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/18(月) 23:58:57.15 ID:8/w5wj8Oo
-
千景「私は、二人を見させて貰えればそれで充分よ」
沙織「……源氏物語?」
千景「意味は分からないけど、違うとだけは言っておくわ」
性的な事への興味はある
けれど、千景としてはそれよりも気になっていることがあるし、
関わっていきたいことがある
千景「私は久遠さんの精霊だから……多少、好意はあるけれど、やっぱりそういう思いじゃない」
それよりも、守りたいという思いが先に出る
共に在りたいとは思うけれど、そんな深い関係になりたいということもない
千景「久遠さん」
天乃「は、はい……」
千景「私は、久遠さんが好きよ。でも、そういう関係は求めてない」
天乃「そうなのね……ごめんなさい」
千景「謝らなくていいわ。話の流れで聞きたくなったのも理解はある。けれど私は――」
千景は言葉を閉じて、口を結ぶ
その目は天乃ではなく子供達へと向けられている
千景「久遠さんさえよければだけど……二人の面倒を見させて貰いたいわ」
- 298 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/19(火) 00:00:20.37 ID:kQvVH9a1o
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 299 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 00:11:37.00 ID:N3OgGOCKO
- 乙
やはり千景は久遠さんたちの所に残ることにしたか
自身の過去のこともあるから双子ちゃんには特に愛情注ぎそう
- 300 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 00:37:36.45 ID:ii6P+UPQO
- 乙
もうエピローグ入るのかな?
すごく寂しい
- 301 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 08:12:06.01 ID:FAe8EKG8O
- 乙
もう少しだけ延長戦の延長戦をしてもええんやで
- 302 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/19(火) 21:17:47.46 ID:kQvVH9a1o
-
では少しだけ
- 303 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 21:22:59.48 ID:tpzaA5m6O
- おk
- 304 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/19(火) 21:29:48.61 ID:kQvVH9a1o
-
天乃「それって……こっちに残るってこと?」
千景「そういうことになるわ」
天乃「若葉達には話したの?」
千景「……むしろそれが良いんじゃないかって言われたのよ」
千景は穏やかな笑みを浮かべながらぐるりとベッドの周りを回って
子供達の小さなベッドの横に立つと、その寝顔を覗き込む
見られているなんてことには気付かないのか、
ぐっすりと眠っている二人は同じような寝顔だ
千景「私、存外に相手をすることを楽しんでいたみたい」
沙織「楽しんでるというか――」
千景「幸せそう……ね。ええ、そうだったらしいわ」
くすっと自嘲気味に笑って見せる
けれど、皮肉とも嫌味とも感じていないのだろう
困ったことにね。と、むしろ納得しているような口ぶりだった
千景「……母親じゃ、無いのに」
- 305 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/19(火) 21:55:00.99 ID:kQvVH9a1o
-
天乃「別に母親じゃなくても、おかしくないわ」
千景が他人でも
たとえ、人間ではなく精霊であったとしても
女の子であることには変わりないのだから、母性と言うものもあるだろう
それはきっと、悪五郎が生きていたとしても同じで
彼はまさしく父親ではあるけれど
もしもそうではなくても父性が刺激されていたかもしれない
天乃「純粋に、無垢に、応えてくれるでしょう? それが、可愛いのよね」
小さく開いている手のひらに向けて指を差し出してあげると、きゅっと握る
おっぱいを吸うように、ちゅうちゅうと吸ったりすることもある
こっちが笑うと、星乃と月乃の二人も笑顔を見せてくれる
言葉になりかけの、ちょっとだけ高い声で呼びかけてくる
どれも、とても愛らしい
千景「小さくて、握られてる感覚なんてまるでないのに……暖かいのよ」
天乃「……そう」
それは握られた指先なのか
それとも、それとは全然違う、胸の奥なのか
天乃はあえて問わずに、優しく呟いた
- 306 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/19(火) 22:45:56.13 ID:kQvVH9a1o
-
天乃「千景がそうしたいのなら、私は全然大丈夫よ」
久遠さんさえよければと千景は言ったが、
天乃が良くても星乃達が千景を気に入っていなければ許可は出来ない
でも、二人が千景を気に入っているのは十分に分かっている
千景が、二人のことを本当の子供のように大切に思ってくれているのも分かっている
だから、大丈夫と言うことが出来る
天乃「この子達も千景のこと好きだと思うから、きっと喜ぶと思うわ」
千景「……」
沙織「あたしか郡さんなら、郡さんを選ぶくらいには、気に入ってるはずだよ」
一緒に居る時間が短ったからだけど。と
負け惜しみのようなことを呟いた沙織だったが、
千景を認めているのは本心なのか、そのまなざしはとても優しい
沙織「一緒に居たいんだよね?」
千景「……そう思ってしまったわ」
- 307 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/19(火) 23:02:29.29 ID:kQvVH9a1o
-
千景「基本的には久遠さんがお世話をするべきだと思うけど、寝るまでの相手とか手伝うわ」
天乃「抱っこしてもいいのよ?」
千景「せがまれたらするわ」
沙織「おっぱいをあげ――」
千景「斬るわ」
どこからともなく出現した鎌の切っ先が床に接触して、金属音が鳴る
子供達が起きるほどではなかったものの、沙織は慌てて天乃を手放す
冗談でも斬られれば、そのダメージは計り知れない
沙織「冗談、冗談だよ」
千景「私が妊娠したわけじゃないのだから、出るわけないでしょう」
千景が深々とため息をつくと、大鎌が瞬く間に消え去る
ふと顔を上げた千景の視線と、天乃の視線が重なった
千景「邪魔をしてしまったわね。そういう、ことだから」
天乃「分かった。ありがとう、千景」
千景「私がしたいだけ……別にお礼を言われることじゃないわ」
天乃「それでも助かることには変わりないし、この子たちの代弁だと思って受け取っておいて頂戴」
天乃がそう言うと、
千景は軽く笑みを浮かべて「分かったわ」と、姿を隠した
- 308 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/19(火) 23:08:31.87 ID:kQvVH9a1o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
九尾「じゃが、千景も母乳を模した栄養は与えられるぞ」
千景「えっ」
沙織「あたしも!?」
九尾「半人間の娘は無理じゃ。純粋に主様の力を持った精霊でなければのう」
九尾「もっとも、それで力を与えたら千景は消えるじゃろうから、推奨は出来ぬぞ」
千景「やるわけないでしょう」
- 309 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 23:13:30.92 ID:tpzaA5m6O
- 乙
千景ママに甘えられる双子ちゃんたちが羨ましい…
- 310 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 23:31:18.78 ID:b6Lmof1FO
- 乙
ゆゆゆいとも違う千景の優しさ好き
- 311 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/20(水) 21:31:20.50 ID:6P1TkNg+o
-
では少しだけ
- 312 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/20(水) 21:44:07.06 ID:6P1TkNg+o
-
沙織「郡さんが残ってくれるの、嬉しい?」
天乃「嬉しいわ」
沙織「……恋、しちゃってる?」
天乃「ふふっ」
今の顔は恋をしているように見えるのかと、天乃は思わず笑って沙織に目を向ける
胸に手を当てると、ドキドキと脈打つ音は感じない
千景が残ってくれることは嬉しい
けれど、それは別に恋をしているからではないのだ
天乃「千景を誘っちゃったこと根に持ってるでしょ」
沙織「持ってるか持っていないかで言えば、ちょっぴり不満ですけど?」
でも別に怒ってたりはしないんだよ。と、沙織は取り繕う
天乃が誰かを誘ってしまうことなんてよくあることだし、
それを許容しているからこその今の関係だ
それが許せなかったら、自分が今こうしていることだって許されないだろう
沙織「たださ、久遠さんが凄くいい顔していたから、恋しちゃったのかな……って」
- 313 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/20(水) 21:49:45.97 ID:MG1RgfVGO
- きてたー
- 314 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/20(水) 22:21:16.75 ID:6P1TkNg+o
-
天乃「千景も言っていたけど私達は多分、互いにそういう思いはないのよ」
千景が天乃に好意があるといっていたように
天乃だって、千景のことは好きだ
好きだけれど、夏凜達のような感情があるのかと言われると……そうとは言えない
それはきっと、千景が元々は死神の魂だからだろう
九尾と同じようにずっと傍に居てくれた
彼女は、家族だ
天乃「もし私が恋をしているように見えたのだとしたら、それはただ、凄く嬉しいだけ」
沙織は天乃を見て、小さく息をつく
愁いを帯びた、天乃の表情
嬉しいという言葉とは少し釣り合いが取れていない
沙織「それは嬉しいの? それとも悲しいの?」
天乃「何を言っているのよ」
うっすらと笑みを浮かべる
悲しいわけがない
彼女が一緒に居てくれると言ってくれたのだから
天乃「悲しいわけがないわ」
- 315 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/20(水) 23:25:11.86 ID:6P1TkNg+o
-
沙織「死神……伊邪那美のこと、考えてたでしょ」
天乃「少しだけね」
沙織「そっか……」
死神は千景であって千景ではない
千景は死神であって死神ではない
だから死神の事を考えてしまうとちょっぴり寂しさを感じるし
千景のことを思うと、一緒に居てくれるというのが……嬉しく感じる
天乃の表情は相変わらずで
けれど、それが尾を引くようなものではないのだろうと、沙織は短く言葉を切る
沙織「郡さんを抱きたくなったら言ってね? 雰囲気と場所だけは用意するよ」
天乃「大丈夫よ」
沙織「でも、押せばやれそうな――」
天乃「相当、駄目な状態でもなければ大丈夫」
以前、天乃の穢れを請け負った東郷達のような状態にでも陥らない限りは
千景を性的に抱こうなどとは絶対に考えない
もっともその状況では、考える。ということ自体出来ないかもしれないが。
- 316 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/21(木) 00:09:33.16 ID:41TPbLV1o
-
沙織「それでー? あたしを抱く?」
天乃「今日は抱けない」
寄り添い、ぎゅっと抱きついてくる沙織だけれど
残念ながら、昨日は園子の相手をしていた
それはさっきも話したのだから沙織も分かっていることだろう
それでも口にしたのは
二人きりならばちょっとだけ……という思いもあってだ
もちろん、それで天乃の体調が急激に崩れるのであれば
いくら沙織と言えど、天乃と体を重ねることはしない
天乃「どうして大赦になんて潜り込んじゃったのよ……そうしなければ抱くことも出来たかもしれないのに」
沙織「久遠さんの邪魔になりそうだったから」
天乃「それは聞いたけど……」
沙織「あたしが行かなければ九尾さんが行ってたかもしれない」
そうなったらどうなると思う? そう問いかける沙織の苦笑いは
まるで答えを求めていない
沙織「九尾さんが行くとは限らない。でも、近づけば辿り着く前に喰い殺す」
それくらいはやってのけるのが九尾という精霊だ
とはいえ、沙織が潜入した段階で祖母の話が出ていたから、もう来ることはなかったのだけれど
沙織「久遠さんの大赦であっても傷つけたくない甘い意向に沿うためだよ」
天乃「甘い、ね」
沙織「甘いよ。すっごく」
- 317 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/21(木) 00:10:27.41 ID:41TPbLV1o
-
遅くなりましたが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 318 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 00:18:57.44 ID:Bcu5U3q/O
- 乙
まぁ九尾も二周目よりは丸くなってたお陰で平和的に事が進められたのは大きいよね
- 319 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 00:31:51.13 ID:kiORTy2oO
- 乙
久遠さんの為なら久遠さんが望まないこともやる九尾の信念好きだけどえぐいよね
確か前は食い殺して消息不明になってたし
- 320 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 01:59:17.92 ID:gvXvd7d6O
- 乙
スパイさおりんかわいい
- 321 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/21(木) 21:36:33.37 ID:41TPbLV1o
-
では少しだけ
- 322 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 21:38:41.28 ID:Bcu5U3q/O
- あいあいさ
- 323 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/21(木) 21:47:09.35 ID:41TPbLV1o
-
灰茶色の髪が揺れる
それと似た瞳は天乃をしっかりと見定めていて
その奥に、仄かに猿猴の気配が感じられた
沙織「少しは見限ることも必要だと思うよ」
今はもう、遅い話ではあるが
大赦が厄介ならば、その一角でも滅ぼしてしまう方が良いと沙織は言う
そんなことをしてしまったら敵と認識されるが
しかし、元々敵視されている一族だ
大赦が敵と言うのならば、敵対行動しても何ら問題はなかったはずだ
天乃「それは、私にはできないことだわ」
沙織「うん、そうだろうね」
大赦の言動に憤ることはあっても
それを理由に傷つけようとはしない
怒って、頼みごとを跳ね除けるけれど
自分の望みがその先にあるのならば、片手間に叶えてあげてしまう
沙織「久遠さんは、優しすぎるんだよ」
- 324 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/21(木) 22:26:40.59 ID:41TPbLV1o
-
天乃「もう少し厳しい私の方が好き?」
沙織「ん〜……前言撤回かな」
天乃「ふふっ、ありがとう」
沙織はもう少し厳しくするべきとは言うけれど
今の優しい天乃が、好きなのだ
怒ることもあるし、叱ることだって当然ある
相手にそれが必要だと思えば、厳しく接することだってある
天乃の優しさは、怒らないことでも厳しくないことでもない
相手の望んでいることを叶えてしまう優しさだ
それはたとえ、大赦であってもだ
沙織「良いよ。久遠さんが甘い分、あたし達が厳しくなる。これまでも、これからも」
天乃「それで沙織が傷つくなら、私――」
沙織「大丈夫」
天乃「でも」
沙織「大丈夫だよ……ごめんね。余計な話、だったね」
- 325 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/21(木) 22:43:53.46 ID:41TPbLV1o
-
沙織は一言一言をはっきりと絞り出して
天乃の小さな手を握り、微笑む
沙織「本当に大丈夫。確かに、この手を汚すことは厭わないけどまだそうしたことはないからね」
たぶん、これからはもうそんなことも必要ない。と
沙織は妙に自信あり気に口にする
戦いは終わったのだ
命の駆け引きは必要ないし
天乃の力が必要とされることももうない
築き上げてきた道徳、信仰心
それが保たれて、天乃に何らかの被害が出るようなことがなければ
沙織も、九尾も何もしなくて済む
沙織「あーでも……久遠さんをナンパしようなんていう人がいたら成敗するかも」
天乃「そんな人いるかしら」
沙織「いる。ぜーったい!」
- 326 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/21(木) 23:07:27.85 ID:41TPbLV1o
-
ベッドの上でいきり立つように体を起こすと
驚く天乃をしり目に、沙織は「絶対にいるよ」と繰り返して強調する
天乃は二児の母であることを理由にしているのかもしれないが
傍に連れていなければそんなこと関係ない
力の影響で不老不死に近い状態だという話だが
身長148センチ、以前は重めだったが筋肉も落ちた今では比較的軽めな体重
そのくせ胸は大きく、腰の緩やかな曲線、まろやかな臀部
夏場の海にでも居ようものなら、引く手数多なのは言わずもがなであろう
沙織「……だから、えっと」
天乃「?」
沙織「本当は、あたしが渡したら駄目なのかもしれないけど……」
いつまでも待つのはもどかしいから。
沙織は独り言ちるように顔を伏せて、患者衣ではない寝間着のポケットから、小さな箱を取り出す
沙織「開けてみて」
天乃「これ……」
小さな箱の中には、指輪が入っていた
三つのリングを重ね絡め合わせたような薄いピンク色の指輪
沙織「本当は人数分のが良いんだけど、さすがにそれは厚みがね……だから、三連。三好さんの、三」
1、……ありがとう
2、わざわざ、買ってくれたの?
3、そう……沙織の三ではないのね
4、婚約指輪って、思っていいのかしら
5、駄目ね……本当は私が用意するべきなのに
↓2
- 327 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 23:11:51.19 ID:Bcu5U3q/O
- 1
- 328 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 23:15:25.97 ID:knHWgwob0
- 5
- 329 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/21(木) 23:23:41.54 ID:41TPbLV1o
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
東郷「久遠先輩がナンパされてたら……撃ちますね」
樹「夏凜さん達直伝の武術でねじ伏せます」
沙織「殺すかな」
園子「ふーみん先輩……事件が、事件が起こるんよ〜」
風「天乃が止めるから大丈夫でしょ……たぶん」
- 330 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/21(木) 23:42:32.68 ID:Bcu5U3q/O
- 乙
久遠さん、子持ちだからといってモテない訳ないもんなぁ…
ちゃんと指輪を付けて見せないと地獄絵図になりそう
- 331 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/22(金) 02:04:07.15 ID:z9V7CjXfO
- 乙
もちろん薬指につけるよな!!
- 332 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/22(金) 21:20:41.63 ID:wMMUJiDdo
-
では少しだけ
- 333 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/22(金) 21:46:06.59 ID:DGj4HqShO
- きてたか
- 334 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/22(金) 22:24:34.97 ID:wMMUJiDdo
-
天乃「駄目ね……本当は私が用意するべきなのに」
沙織「そこは仕方がないよ。あたしみたいに自由に出入りできるわけじゃないんだから」
天乃「そうなんだけどね、私が貴女達を貰うんだから私がするべきだったのよ」
沙織「でも、久遠さんは嫁だから男として婚約指輪渡したいなぁ……」
天乃「男の子じゃないでしょ、貴女」
沙織の半ば本気な声に、天乃は呆れつつ答える
みんなから見て女の子……それはもうどうしようもないだろう
子供を実際に産んでいるし
みんなよりもずいぶんと弱弱しいし
抱っこするかされるかと言えば、抱っこされる方になる
それでも、娶られるのではなく、娶るのだ
婚約指輪を渡すのであれば、天乃が渡すはずだった
天乃「……でも、ありがとう」
沙織「良いよ。本当は三好さんがするべきことだったけどね」
天乃「そこは譲らないのね」
沙織「それはそうだよ」
- 335 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/22(金) 23:01:18.76 ID:wMMUJiDdo
-
沙織は一転してムッとしたた表情を見せる
それは天乃に対してというよりも
あと一歩を中々踏み出さない夏凜に対してのものなのだろう
天乃に目が向けられると、はっとして笑みを浮かべた
沙織「久遠さんだって、三好さんから結婚しようってプロポーズされたくなかった?」
天乃「考えて、無かったわ」
沙織「自分が渡すべきだって思ってたから?」
天乃「ええ」
沙織「久遠さんにとって夏凜ちゃんは女の子なんだね」
天乃「夏凜だけじゃないわ、みんなそう。みんな女の子」
どちらが男の子役かなんて言うことはあまり考えていない
もちろん、結婚式を挙げるときには一応そういうものもあるだろうし
その場合は、ウェディングドレスだろうか
それとも白無垢かもしれないし振袖かもしれない
とにかく、それを着る側が一応は女の子側となるだろう
- 336 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/22(金) 23:28:59.66 ID:wMMUJiDdo
-
天乃「どちらが男の子女の子じゃなくて、純粋に恋人として考えてたのよ」
沙織「エッチの時も?」
天乃「委ねるかどうかでしょう? そこに性別はないでしょ?」
男の子とのエッチならば、どちらが男の子か女の子か関係あるだろうけれど
どちらも女の子ならば、攻めるか受けるか
それくらいしかないのではと、天乃は首をかしげる
天乃「別に……そう、体の奥にまで、するわけじゃないし」
そう言って、お腹を撫でる
悪五郎とした最初で最後の性行為
その時に感じた下腹部への圧迫感
それは、みんなとの行為では感じることのできない感覚
沙織「しようと思えば、出来ないこともないよ」
天乃「そうなの?」
沙織「道具を使わないといけないからあたしは好きじゃないけどね」
そうは言ったものの
えっちのレパートリーを増やすためにも使うのも悪くはないと思うけど。と、
沙織はちょっぴり難しい顔をする
- 337 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/22(金) 23:49:57.34 ID:wMMUJiDdo
-
沙織「それはともかく、その指輪は必ず左手の薬指につけること」
天乃「声をかけられたら、これを見せたらいいのね?」
沙織「ううん、露骨に見せると避けるために付けてるって思われる可能性もあるから無理に見せなくていいよ」
さりげなく、相手に見えるようにしておけばいい
たとえば髪を触る仕草、笑う口元を隠す仕草
ちょっとした視点誘導に左手を使って、見せる
強調していないからこそ、信憑性が高まるのだと沙織は力説する
余りの圧力に天乃が困ってしまうほどだ
沙織「久遠さんはね、永遠の中学生なんだよ。分かる? 結婚? はぁ? ってなるような見た目なのっ」
天乃「そんなこと――」
沙織「久遠さんは当事者だからそう言うこともあるわねって思うだろうけど普通はないからね? 中学生で子持ちとか、婚約とか」
かなり大昔はそう言うのもあったらしいと文献を見た覚えはあるけれど
現代にそれは適していない
だから、天乃が左手の薬指に指輪をはめていたとしても
それを信じてくれるとは残念ながら思えない
天乃「そ、そう……そうね。ごめんなさい」
沙織「入院中は平気だけど、外に出たら今までみたいに無防備でいたら絶対にダメだよ」
- 338 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/23(土) 00:16:44.50 ID:iEqozAJ1o
-
天乃「気を付けるわ……でも、私一人なんてそうそうないと思うわよ」
赤ちゃんの二人を背負っていくとか
買い物は変わりにみんなにしてきてもらうとか
散歩するときはやっぱり赤ん坊を背負って、平日なら風とか千景と……となるだろう
沙織「そうだね」
風だって男勝りなところはあるけれど
一目見たときは普通に大人になりかけの綺麗な女の子
千景だって、影があるように見えるけれど
とても優しいし、やっぱり……綺麗な女の子だろう
ただの友人と思われて声をかけられることはあるはずだ
もっとも、その二人に限らず
天乃の傍に居るだろう誰かは、声をかけてきた相手をやんわりと拒絶するだろうから、大丈夫だろう
沙織「郡さんの方が安心かな……犬吠埼さんは、なんかちょっと対応が甘そうだから」
天乃「ふふっ、そうかしら」
1、ねぇ沙織、指輪は自分ではめちゃっていいのかしら
2、心配なら九尾を連れて行くって約束してあげようか?
3、沙織、はめてくれないの?
4、今度一緒に指輪を買いに行きましょ
↓2
- 339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 00:20:41.10 ID:kQahiaKcO
- 4
- 340 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 00:21:46.44 ID:NBJ3qdKRO
- 1
- 341 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/23(土) 00:32:10.82 ID:iEqozAJ1o
- では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば早めの時間から
園子「おっ、そこのお二人さん。この後時間あったらちょっと付き合ってよ」
園子「って誘われたら〜?」
風「用事があるって断るわね」
千景「無視するわ。相手にしたくもない」
若葉「ということだが……貴女なら、どうする?」
九尾「無論、喰い殺す」
- 342 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 00:40:19.36 ID:NCD4UAcVO
- 乙
久遠さんの年齢や容姿でえっちを経験済み(しかも相手が妖怪)とは誰も思わないだろうしな…
- 343 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 03:53:16.62 ID:ukohDCY4O
- 乙
久遠さんはエロいからな!(断言)
- 344 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/23(土) 20:26:37.30 ID:iEqozAJ1o
-
では少しだけ
- 345 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 20:27:32.50 ID:fmugcOZeO
- よっしゃ
- 346 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/23(土) 21:25:21.65 ID:iEqozAJ1o
-
天乃「ねぇ沙織、指輪は自分ではめちゃっていいのかしら」
沙織「んー……そうだね」
悩ましい声が伸びたのは、
沙織の予定では、婚約指輪を渡すのは夏凜だったからだ
痺れを切らしたとはいえ、そこまでしても良いのか。なんて
ちょっとだけ思うのだが……沙織は目を瞑ると、息を吐く
心の奥で燻るものが、大きくなるのを感じた
沙織「あたしがはめるよ」
天乃「じゃぁ、お願い」
沙織「………」
小さな箱の中にポツンっと収まっているトリニティリング
柔らかい桜色は愛情を示す
もう一度息を吐く、吸って……天乃をまっすぐ見る
沙織「久遠さん、これからもずっとそばに居させてください」
はっきりと芯のある沙織の声が病室に満ちる
驚きはなく、ただ温かみを感じて天乃は頷いて微笑む
天乃「……はい。喜んで」
- 347 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/23(土) 22:09:18.17 ID:iEqozAJ1o
-
沙織は天乃の答えに頷いて
指先で汚れてしまわないよう、指輪を優しくつまんで支えから引き抜く
沙織「手を」
天乃「ん……」
伸ばされた小さな手は、下から支える沙織の手よりも一回り以上小さい
その細い指を沙織は愛おしそうに親指でなぞって
薬指に、指輪をはめる
天乃「ぴったり……って、言えば良いのかしら」
沙織にはめて貰った指輪は、
天乃の細さにもしっかりとフィットしている
けれど、きつすぎるなんてことはなく
外そうとすれば外すことが出来るような大きさだ
天乃「――綺麗ね」
天井の光にかざしてみると、桜色のきらめきが瞬く
ダイヤなどの宝飾のないシンプルなものだが
それでも十分に綺麗な指輪だと、天乃は思った
- 348 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/23(土) 23:18:43.74 ID:iEqozAJ1o
-
沙織「……せめてフェイクでもダイヤがあったほうが良かったかな」
天乃「ううん、良いの。良いのよ、これが良い」
宝飾が施されていようがいまいが関係ない
本当は自分が渡したかったというのも関係ない
これは沙織が考えて、選んでくれた指輪だ
だから、これが良いと天乃は指輪のはめられた左手を大切に抱きしめる
天乃「ありがとう、嬉しいわ」
沙織「そこまでして貰えると、あたしも踏み出して良かったって思えるよ」
嬉しいという言葉だけでなく
幸せそうな顔を見せて貰っては、こっちまで幸せになれる
沙織「久遠さん、手を見せて」
天乃「なぁに?」
抱え込む左手を差し向けてあげると
沙織はとてもうれしそうに、うっとりとした笑みを浮かべる
今までは何もなく、ただ純白だった左手に収まった指輪
誰もが憧れて、目を惹かれて
時には疎まれるほどの人が、ずっと傍に居させてくれると誓ってくれたのだ
沙織「やった……えへへ……やったぁ……」
涙が零れる
絶対に無理だと、いつかは失うのだと覚悟までしていたから
だから、指輪の現実味を帯びた輝きに沙織は耐えられなかった
- 349 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/23(土) 23:33:02.63 ID:iEqozAJ1o
-
天乃「沙織……」
左手には、今まで感じたことのない重みがある
ずっと傍に居たい。
沙織の想いの込められたその指輪を傷つけてしまわないかと、怯えているのかもしれない
指を曲げることすら緊張するけれど、
そうっと沙織の頬に触れさせる
伝い落ちていた流れをせき止めて、指先で優しく拭う
天乃「ありがとね」
ここまで想ってくれて
ここまでずっと付き添ってくれて
こんな厄介な嫁が欲しいと、愛してくれて
天乃「私は、幸せだわ」
世界中の誰よりも、きっと
本当に良いのかと思ってしまうほどに、恵まれている
1、抱きしめる
2、キスをする
3、一生、貴女を愛し続けると誓うわ
4、ありがとう、沙織達のおかげよ
↓2
- 350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 23:36:20.34 ID:fmugcOZeO
- 1
- 351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 23:36:25.45 ID:ukohDCY4O
- 2
- 352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/23(土) 23:36:55.30 ID:q9M58/bO0
- 4
- 353 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 00:05:46.95 ID:hfx9p5Ofo
-
ではここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
樹「久遠先輩、これからも……一緒に幸せになりたいです」
風「天乃、結婚、してくれない?」
友奈「久遠先輩っ、私の……お嫁さんになってくれませんか?」
東郷「お慕いしております。久遠先輩」
園子「これからもずっと天さんと一緒に居たい、なぁ……」
夏凜「天乃。絶対に幸せにするって約束する……だから、結婚しましょ」
- 354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/24(日) 00:08:32.40 ID:yuOMLjH3O
- 乙
指輪つけてもらう→口付けで実質結婚式と言ってもいいのでは?
- 355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/24(日) 00:13:19.13 ID:OZtmJkjCO
- 乙
さおりんがここに来て正統派ヒロインに…!
夏凜ちゃんも何かアクション来たりしないかな
- 356 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 16:19:12.42 ID:hfx9p5Ofo
-
では少しずつ
- 357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/24(日) 16:34:50.06 ID:HxP5oLyGO
- かもーん
- 358 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 17:25:02.03 ID:hfx9p5Ofo
-
プロポーズをされたらどうしたらいいかなんて、天乃にはわからない
申し込まれて……受けて、抱擁する
そのくらいしか思いつかない
けれど、自分ならどうするかと考えて、沙織の頬を撫でる
天乃「沙織」
囁くように、名前を呼ぶ
今まで以上に親しみを込めて
愛情が伝わるようにと心からその名前を口にする
沙織「……んっ」
そうして――唇を重ねる
エッチな時にも必ずするキス
これが一番、気持ちを伝えやすいのだ
沙織「っふ……ん……」
天乃「んっ」
一度は軽く、二回目はもう少し長く
そして三回目は――瞳を閉ざして、それだけに浸った
- 359 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 18:35:03.77 ID:hfx9p5Ofo
-
天乃「……沙織、好きよ」
沙織「久遠さん……」
天乃「愛してる」
行動で示して、言葉を伝える
沙織はどちらかと言えば、その方が好むだろうと思って
頬を撫でてあげると、沙織は嬉しそうに口元を綻ばせて、
その手のひらを支えるように、手を重ねる
沙織「うん……あたしも愛してる」
天乃の手は、普通の人よりも冷たい
でも、今こうして触れている手はとても暖かく感じる
小さいけれど、大きな手だ
沙織「久遠さん」
天乃「なに?」
沙織「……愛してます」
何度も言えば安っぽくなってしまうかもしれない
そう思いつつも、言わずにはいられなかった
- 360 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 19:42:44.16 ID:hfx9p5Ofo
-
沙織「指輪が触れるこの感触……癖になりそう」
天乃「痛くない?」
沙織「気持ちいい」
手よりも冷たい金属の感触
硬いけれど、確かな感触だ
ちょっぴり感じるものはあるけれど、痛くなんてない
沙織「これからも、触るときは左手で触って欲しいな」
天乃「沙織が良いなら、そうするけど……」
沙織「お願い」
天乃「もう……分かったわ」
頬を擦って、横髪を手の甲で払う
指にはまっているピンク色の指輪
それを、沙織が感じられるように
天乃「でも、寝るときとかには外すからね?」
沙織「うんっ、あ……エッチの時はしててもいいよ?」
天乃「汚れちゃうでしょ」
- 361 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 20:34:38.27 ID:hfx9p5Ofo
-
沙織「箱の中に戻しちゃうの?」
天乃「それが一番いいじゃない」
沙織「それは……そうだけど」
そもそも、今はまだ装飾品を置いておくような小物入れも何もない
大切にしたい気持ちはあるけれど、ここは病室だ
指輪そのままにしておきたくはないし
だったら、買った時に入れられていた小箱に納めてしまう方が良い
確かに、買った箱そのまま使うというのは
ちょっぴり残念な感じがしてしまうけれど、今は仕方がない
それに、この箱だって当然ながら悪いものじゃない
天乃「もし、趣がないっていうなら今度買いに行きましょ」
沙織「デート!?」
天乃「そうねぇ……二人きりは、ちょっとできないかもしれないけれど」
指輪は一つではない
天乃だけでも、結婚指輪が増えれば二つになる
みんなそれぞれに指輪を用意するのなら
数は結婚指輪だけでも7つになる
若葉の分を用意するのならば、8つだ
天乃の分を含めて10になる
それぞれの箱に納めておいてもいいのかもしれないが、そこは相談になるだろう
- 362 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 21:12:57.83 ID:hfx9p5Ofo
-
天乃「沙織だったら、指輪どうしておきたい?」
沙織「あたしなら、久遠さんの指輪に重ねておきたいかな」
天乃「指輪も寄り添わせたいなんて……」
それは独占欲と言うのだろうか
沙織からしてみれば、単純な思いの強さなのかもしれないけれど
流石に、指輪を重ねられてしまうと少し困る
場合によっては傷ついてしまうかもしれないし
沙織達を思うに、指輪はお揃いか
少なくとも同色のものを要求してくるだろう
そうなったら、最悪わからなくなってしまう可能性がある
天乃「ジュエリーケースでも買う?」
沙織「それでもいい……かな」
天乃「1人一つの箱より、私と一緒の箱が良いんでしょう?」
沙織「うん」
天乃「一応、みんなに相談してからね」
- 363 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 21:33:22.02 ID:hfx9p5Ofo
-
沙織がその方が良いと言っても
みんながそれぞれ分けたいと言えば、そうなる
みんなで一つの入れ物となってしまうとなると
自室には置いておけない
それを好まない子もいるかもしれないのだ
天乃「……まぁ」
一人二人いるかどうかだけど。と、
天乃は心のうちに止める
天乃「沙織、ごめんね。指輪をそっちに置いておいてくれる?」
沙織「はーい」
沙織は指輪のおさまった小さな箱を受け取ると、
ベッドのすぐ横にある棚の上に置く
天乃「もう寝ましょう」
沙織「そう、だね」
横になって、一息
二人そろっても、手を広げなければ仰向けでいられる広さがある
明かりが制限された病室の中
さっきまでの声の余韻も無くなって、双子のすやすやとした寝息だけが聞こえる
- 364 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 21:54:04.09 ID:hfx9p5Ofo
-
沙織「ねぇ、久遠さん」
天乃「……なぁに?」
沙織「えっと……その……結婚、するでしょ?」
天乃「ええ、して欲しいわ」
掛布団の中、沙織の手を握る
婚約をしてくれたのは沙織だ
そして、受けたのは天乃だ
だから、して欲しいと言って沙織の方に顔を向ける
天乃「それで?」
沙織「だから、その……名前で呼んでもいい、かな」
沙織からの掛け声はいつも久遠さんだった
出会ってから、ずっと
だから天乃にも思い入れがある
1、良いわよ
2、寂しくなるわね、少し
3、全然いいわよ。大丈夫
4、沙織が大変そうね
↓2
- 365 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/24(日) 21:55:32.82 ID:HxP5oLyGO
- 1
- 366 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/24(日) 22:01:03.94 ID:LWc9YGUA0
- 4
- 367 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 22:52:34.17 ID:hfx9p5Ofo
-
天乃「それは沙織が大変そうね」
沙織「そうだね」
今までずっと久遠さんだった
精霊である猿猴を宿しても
久遠さんと呼ぶのは変えられなかった
天乃と呼ぶよりもずっと良く馴染んでしまっている
天乃ちゃんとも、天乃さんとも
呼びにくいというのが正直なところだ
けれど、だからこそ少しずつ変えていきたいと思う
沙織「でも、ちょっとずつ呼んでいけばまた、馴染むかなって」
天乃「そうね、きっとなれるわ」
沙織「でも馴染まなかったら、ママって呼んじゃおうかな」
天乃「ママねぇ……」
沙織「ほら奥さんの事をママとか、ママさんって呼ぶ可能性もあるでしょ?」
天乃「そんなこと言ってた気はするけど」
実際に呼ぶのかと、天乃は困ったように息をつく
- 368 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 23:31:01.98 ID:hfx9p5Ofo
-
天乃「ちょっと呼んでみたら?」
沙織「えっと、ママ……?」
天乃「そっちじゃなくて」
沙織「あ、天乃……さんっ」
いつも積極的で明るい声が、
こればかりは怖気づいて聞こえる
気恥ずかし気で、弱弱しい
伺うような瞳、ほんのり赤らんだ頬
沙織は目を潤ませると、きゅっと瞑る
沙織「天乃、天乃さん、天乃ちゃん……あまのんっ!」
天乃「誤魔化さないの」
勢いで誤魔化して
別のクラスメイトの呼び方を真似て
沙織はふっと息を吐く
沙織「……天乃さん」
天乃「なぁに?」
沙織「っ……やっぱりまだ無理っ」
- 369 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/24(日) 23:47:14.84 ID:hfx9p5Ofo
-
天乃「あっ」
沙織「……ごめん、もう少し待って」
布団の中で握っていた手も引きはがされて、
沙織は縮こまるようにして天乃に背を向ける
呼び捨てにするのはきっと無理だ
猿猴の力を借りても、
きっとそこまで辿り着くことは出来ない
けれど、名前くらいは。と、思う
沙織「ねぇ……天乃、さん」
天乃「ふふっ、なぁに?」
沙織「久遠さんは、呼び方変えないの?」
天乃「私は沙織って呼んでるから」
そこから変えるとなれば、
沙織さんか、沙織ちゃんか……パパさんだろうか
天乃「じゃぁ、伊集院さん?」
沙織「泣くよ?」
天乃「冗談よ……変える必要ないわ。沙織は沙織だもの」
少なくとも、パパさん。は、なしだ
- 370 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/25(月) 00:12:39.98 ID:KGpXu2h4o
-
沙織「そうだよねぇ……」
天乃「沙織は変えて欲しいの?」
沙織「同じ気分を味わってもらえるかと思って」
天乃「私は無理よ」
天乃はもともと、初対面から呼び捨てするような性格ではない
沙織と初めて出会ったときは伊集院さんと呼んだし、
沙織と呼んだのも仲良くなってからだ
沙織がその方が良いというのなら、
さん付けでもちゃん付けでも構わない
天乃「伊集院さんは駄目なんでしょう?」
沙織「エイプリルフールだろうと絶対に許さない」
ふりではあるのだろうけれど、
ぐすっと鼻をすするような音が聞こえた
1、沙織は沙織のままでいさせて
2、沙織さん?
3、沙織ちゃん?
4、どう呼んで欲しいの?
↓2
- 371 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/25(月) 00:14:16.77 ID:WdhtUL+LO
- 1
- 372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/25(月) 00:15:14.88 ID:/2Ntw0NlO
- 1
- 373 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/25(月) 00:18:57.17 ID:KGpXu2h4o
-
少し遅くなりましたが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/25(月) 00:23:10.91 ID:/2Ntw0NlO
- 乙
久々にメイン回がまわってきたせいか乙女モード全開のさおりん可愛い
- 375 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/25(月) 02:15:23.50 ID:o7KXU+j6O
- 乙
本当にかわいいな
- 376 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/25(月) 20:42:23.18 ID:KGpXu2h4o
-
では少しだけ
- 377 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/25(月) 20:44:08.33 ID:lh3JFO0AO
- あいあいさ
- 378 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/25(月) 21:24:59.29 ID:KGpXu2h4o
-
天乃「沙織は沙織のままでいさせて」
沙織「それが一番いいよね」
天乃「……ええ」
もう一度、布団の中の沙織の手に触れる
今度は一方的にではなく
沙織からも、緩やかに握り返される
いつかは、沙織と呼ばずに沙織さんと呼ぶことになるかもしれないけれど
今しばらくは、沙織のままが良い
それが一番年相応に、身近な感じがする
天乃「沙織」
沙織「なに? 久遠さん」
天乃「やっぱり、こうよね」
沙織「んー?」
天乃「私が沙織で、沙織が久遠さん」
どちらかが呼べば、そのように呼ぶ
呼び捨てと、敬称の距離感
どちらも、まったく変わらない
- 379 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/25(月) 22:16:32.39 ID:KGpXu2h4o
-
天乃「……このままで、いいのかもね」
沙織「そう、だねぇ……」
天乃「……」
思えば友奈も、久遠先輩と呼ぶことに思い入れがあるようだった
結婚するのなら、姓を変えることになる
ただ、どうしてもというのならば
別姓のままでいることも可能かもしれない
沙織も、友奈も
いつかは久遠を名乗るからと、覚悟を決めてくれているから
このまま久遠になって貰うのでも十分かもしれない
天乃「でも、やっぱり久遠沙織が良い?」
沙織「そうだねぇ」
さっきと同じ言葉
けれど、声がはっきりとしている
嬉しさを噛みしめている表情が見えた
沙織「その方が、繋がりが深く感じられるかな」
- 380 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/25(月) 22:52:13.84 ID:KGpXu2h4o
-
伊集院という姓が嫌いなわけではない
けれど、ずっと想ってきた久遠と言う姓を名乗ることの方が、上回る
指輪の感触もそうだけれど、
自分が久遠の一人になった実感が、わくからだ
沙織「久遠沙織って……凄く、深く感じる」
天乃「……そうね」
ただ姓が変わるだけ
たったそれだけのことが、とても特別
結ばれるはずがないと思っていたからこそ
その深みはより強く感じられるのだろう
沙織「だから、結城さんも久遠先輩を変えようとしてる」
天乃「知ってたのね」
沙織「知ってるよ……みんな、ちょっとだけ練習してるしね」
天乃「練習?」
沙織「書いたり、自称したり」
久遠の漢字を書き、その名で自分を呼ぶ
相手に向けて、自分に向けて
ちょっと慣れないなぁ……と、笑ったりしていた
- 381 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/25(月) 22:53:00.94 ID:KGpXu2h4o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/25(月) 23:01:27.12 ID:lh3JFO0AO
- 乙
姓や呼び方にもこだわりを感じるな
- 383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/26(火) 03:42:18.64 ID:QRdbuTv+O
- 乙
大家族だから一気に久遠姓が増えるね!
- 384 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/26(火) 23:06:21.14 ID:gVnWbaEto
-
すみませんが、本日はお休みとさせていただきます。
明日は可能であれば少し早い時間から
- 385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/26(火) 23:19:56.29 ID:BzL8HrmdO
- 乙ですー
- 386 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/27(水) 20:13:00.94 ID:NQYY0M76o
-
では少しだけ
- 387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/27(水) 20:15:17.45 ID:wNIKnbgfO
- よっしゃ
- 388 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/27(水) 20:32:33.45 ID:NQYY0M76o
-
みんなは、久遠の姓へと変わることに特別な感情を抱いている
そこには恋慕ゆえの喜びがあれば、敬慕ゆえの畏れ多さもある
だからちょっと照れくさいとか、呼び慣れていないとか
色々言ったりはするけれど、
結局のところ、そんな悩ましささえも愛おしいのだ
沙織「だからやっぱり、そのままって言うのは無しかなーって思うよ」
例に則って、
天乃がそのままが良いというのであれば、
みんなはそれを受け入れてくれるだろうけれど
みんなが何らかの理由で別姓を望むというのは考えられない
沙織「でも思えばさ、あたしたちみんなが久遠さんになるわけだよね?」
天乃「そうね」
沙織「そうなると、郡さん達も呼び方変えないといけなくなるよね」
天乃「そこは任せて良いんじゃない?」
- 389 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/27(水) 20:55:36.58 ID:NQYY0M76o
-
天乃「あだ名として扱うのなら、沙織を伊集院さんって呼んでもいいわけだし」
沙織「えー……反応してあげない」
天乃「私じゃないわよ?」
沙織「それでも、なんか……う〜ん……」
我儘かな。と、
沙織は考え込みながら呟いて、息を吐く
悩みを吐き捨てたのか、確かに。と、答えた
沙織「呼ぶのを強制するのは、おめでたくないよね」
天乃「最初からいきなりこう呼べって言うのも違うわよね……少しずつ変えていって貰えばいいのよ」
それは千景たちに関わらず
名前を変えることになるみんなも同じことだ
だから、まだ名前の変わらない今の内から練習をしているわけで。
それに、そのいい例……と言っていいのかは分からないが
東郷のことをわっしーと呼び続ける園子のようなものだ
大事な場面では正して貰って、そうでなければ今まで通りでもいいのかもしれない
もちろん、みんながそれでいいのならと言う前提だけれど
沙織は少し嫌がっていたものの、考えてみれば。と切り替えた
少なくとも、大反対されるようなことではないかもしれない
- 390 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/27(水) 21:19:12.18 ID:NQYY0M76o
-
沙織「時間はまだまだたくさんあるから……ゆっくり考えればいいや」
天乃「結婚だって今年、来年。そんな近くにするわけじゃないものね」
沙織「あたしは近くていいけど」
天乃「ダメよ」
沙織は半分精霊だが、学校がある
天乃達と同じ三年生で受験もあるし、もしも合格できたのなら高校生だ
沙織曰く、別に学校なんてもういいよ。とのことだが、
伊集院家のことを考えれば、中卒で働く。と言うのは許されがたいことだろう
大赦の巫女として頑張ったことを加味すれば……と思わなくもないが
天乃のような理由があるのならばともかく、それも無しには難しいのだ
天乃「勉強、してなかったでしょ」
沙織「今から頑張っても、あたしにはどうしようもないからね」
天乃「もう……私達の関係が悪いって言われたらどうするつもりなのよ」
沙織「大赦のことを持ち出す」
即答すると、沙織は事実だもん。と
拗ねたように言って、天乃の方に寝返りを打つ
天乃が横を向けば、目がはっきりと合う
沙織「でもできる限りは頑張るよ。犬吠埼さんと一緒にね」
天乃「ええ、無理はしないようにね」
沙織「……無理しないと勉強のべの字も触れないかなぁ」
- 391 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/27(水) 21:54:45.53 ID:NQYY0M76o
-
単なる冗談
それを口にして、沙織はふにゃりと笑う
握り合う手と手を布団の中から引っ張り出して
天乃の小さな手を、両手で覆う
沙織「久遠さんが何でもしてくれるなら、頑張れるかも」
天乃「それでだめだったら、一年間私と離れ離れになるけど良い?」
沙織「ダメに決まってるよね?」
あえて疑問形をぶつけて
天乃の困った顔を一瞥すると「冗談だよ」と零し、目を瞑る
天乃が何かをしてくれなくても、大丈夫だ
同じ家に住み
会いたい時に会うことが出来て、触れられる
その生活の維持のためならば頑張り切れる
そこに結果が伴うかは分からないけれど
やれるだけやる。それだけだ
沙織「全部これから……これからだよ。久遠さん」
天乃「ええ」
沙織「全部……」
少しずつ、声が小さくなっていく
目を瞑ったのが思っていた以上に眠気を誘ったのだろう
一足先にまどろみへと落ちていく沙織の手を優しく握る
天乃「おやすみなさい、沙織」
囁いて目を閉じ、天乃も後を追う
星乃と月乃の寝息に交じって、沙織の呼吸を感じる
それはとても、心地の良い静けさだった
- 392 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/27(水) 22:03:25.24 ID:NQYY0M76o
-
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流有(昨夜、お姉様、子供、父母)
・ 犬吠埼風:交流有(子供、父母)
・ 犬吠埼樹:交流有(子供、父母)
・ 結城友奈:交流有(嫉妬、唇の感触)
・ 東郷美森:交流有(子供、父母)
・ 三好夏凜:交流有(子供、父母、別の卒業、謝らないで)
・ 乃木若葉:交流無()
・ 土居球子:交流無()
・ 白鳥歌野:交流無()
・ 藤森水都:交流無()
・ 郡千景:交流有(性的な事、残留)
・ 伊集院沙織:交流有(子供、父母、一緒、名前、指輪)
・ 九尾:交流無()
2月20日目 終了時点
乃木園子との絆 120(かなり高い)
犬吠埼風との絆 144(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 128(かなり高い)
結城友奈との絆 158(かなり高い)
東郷美森との絆 157(かなり高い)
三好夏凜との絆 170(最高値)
乃木若葉との絆 118(かなり高い)
土居球子との絆 65(中々良い)
白鳥歌野との絆 63(中々良い)
藤森水都との絆 56(中々良い)
郡千景との絆 70(中々良い)
沙織との絆 161(かなり高い)
九尾との絆 85(高い)
- 393 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/27(水) 22:19:35.50 ID:NQYY0M76o
-
受験結果判定
奇数:合格
偶数:不合格
ぞろ目:合格
↓1 コンマ判定 風
↓2 コンマ判定 沙織
- 394 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/27(水) 22:23:54.48 ID:wNIKnbgfO
- あ
- 395 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/27(水) 22:25:08.72 ID:L95SD01D0
- ほい
- 396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/27(水) 22:27:21.17 ID:wNIKnbgfO
- 二人揃ってやってもうた…
- 397 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/27(水) 22:32:44.27 ID:NQYY0M76o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
予定としては、以降エピローグとなります。
ルートはまさかの二人揃って不合格なので
天乃が進学の場合、樹以外の学年が揃う形になります。
- 398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/27(水) 22:41:23.12 ID:wNIKnbgfO
- 乙
まぁ次は久遠さんもいるしモチベーションは断然上がるだろうな
それにしてもとうとうエピローグ来ちゃったかー
最後に夏凜ちゃんとのイベントあるかなと思ったけどそうでもなくて意外
- 399 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/27(水) 22:48:02.32 ID:sgDODvlpO
- 乙
もう一年で樹とも同じだな
最後に夏凜じゃないのは一応全員ルートだし沙織選んだからかな
でもエピローグは夏凜とがメインになりそう
- 400 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/28(木) 01:12:19.55 ID:QVYPy0odO
- 乙
ま、まあちょうど学年そろってよかったんじゃない?
- 401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/28(木) 12:35:09.78 ID:S+yVm3GKO
- 夏凜は久遠さんとは別の意味の卒業をしなくちゃだね
- 402 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/28(木) 21:41:23.23 ID:s04AFfG0o
-
では少しだけ
- 403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/28(木) 22:00:09.83 ID:4NvOjz32O
- きてたー
- 404 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/28(木) 22:22:39.24 ID:s04AFfG0o
-
√ 3月14日目 朝 (自宅)
天乃「……ん」
天乃は自室のベッドの上で体を伸ばすと、
強く握り拳を作って、自分の血からを確かめる。
退院してから、約三週間
リハビリを続けてきた天乃は、松葉杖を使わずに歩くことも出来るようになり、
全盛期ほどではないけれど、普通の女の子よりもちょっぴり上な程度には筋力も戻ってきている
これなら、耐えきることも出来るだろう
天乃「………」
いよいよだ。と、天乃は壁に掛けてある讃州中学の制服へと目を向ける
今日は、天乃達三年生の卒業式だ
昨年の中ごろから欠席の多かった天乃だが、
義務教育と言うのもあって、卒業が許されている
一応、卒業試験的なものとして期末テストを受けさせて貰ったが、
平均より下回るようなことはなかったので、天乃自身は卒業することに不満はない
- 405 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/28(木) 23:06:41.77 ID:s04AFfG0o
-
天乃「今日は千景お姉ちゃんが見ててくれるからね〜」
星乃「あ〜ぅ〜」
天乃「ふふっ」
手足をばたつかせる愛らしい我が子の要求に応えて
天乃は星乃の小さな手に、指先を当ててあげる
星乃と月乃は、よくよく面倒を見ててくれる千景のことが大好きなようで
夜泣きしたりはしないけれど、
千景に抱っこされている時が特に嬉しそうなのだ
天乃「大丈夫そうね……」
母親である以上
自分よりも好かれているとは考えたくないものだが、
千景に関しては、そう認めざるを得ないかもしれない。とでさえ、思う
母親ではないが、母親のような優しい笑み
笑顔に対する嬉しそうな表情
星乃と月乃に関わらず、子供に好かれそうなのだ
- 406 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/28(木) 23:31:26.75 ID:s04AFfG0o
-
天乃「ま〜ま」
月乃「ぁ〜ぁ〜」
天乃「ん〜……ぅん? どうぞ」
子供達の相手をしてあげていると、
扉が叩かれて……風と沙織が部屋に入ってきた
沙織「準備手伝おうか?」
天乃「大丈夫よ」
沙織「えぇ〜……じゃぁ、手伝わせて?」
天乃「大丈夫」
風「………」
沙織は緊張も感じられないいつもの雰囲気で天乃に近づく
その一方で風は浮かない表情のまま、入り口で立ち止まっていた
二人も三年生で今日卒業だが
風が気まずいのは卒業だからではない
天乃よりは学校に通えていたものの、
勉強に集中できたのはすべてが終わってからの一月にも満たない期間
一般入試と言うこともあって、結果発表はまださきの話だが
試験の自己採点をした結果、かなり厳しいのが分かってしまっているからだ
- 407 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/28(木) 23:41:34.15 ID:s04AFfG0o
-
天乃「……大丈夫?」
風「大丈夫……とは、言えないかも」
天乃「そうよね……」
天乃はそもそも、一年間子育てに集中する前提だったため、
受験自体していないが、沙織と風はしっかりと受験した
風達が受験したことはみんな知っているため、
卒業式で出会うみんなは風達の結果を祈ってくれることだろう
あるいは、同じ高校になるかもしれない子は、楽しそうに嬉しそうに声をかけてくれるはずだ
それに対し、自信満々に合格してるとは言えないし
卒業式と言う大切な日に落ちました。などと言えるわけもなく……
風「あーもうっ! なんであんたはそんな平気なのよ」
沙織「だって、留年したら久遠さんと平日も一緒に居られるわけで……悩むまでもないというか」
風「そのブレのない所は憧れて良いものか……」
沙織「あたしは声かけられたら、落ちたけど久遠さんと一緒に居られる時間が増えるから別に良いって開き直るよ?」
風「はぁ……」
天乃「沙織は特殊な例よ。参考にならないわ」
そうだね。と、間の抜けた声で笑顔を見せる沙織
風はため息をついて、天乃を見る
風「同級生が先輩になって、友奈達と同級生になるのか……」
天乃「次もダメなら樹と同級生ね」
風「次は受かるわよ! 次はッ!」
- 408 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/28(木) 23:43:43.05 ID:s04AFfG0o
-
では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/28(木) 23:53:14.24 ID:4NvOjz32O
- 乙
この一年間はさおりん歓喜の一緒に子育てコースだな
- 410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/29(金) 06:02:46.26 ID:yV2kE3peO
- 乙
- 411 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/29(金) 21:45:49.89 ID:iUhUDpUOo
-
では少しだけ
- 412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/29(金) 22:12:43.13 ID:ktbnvgaWO
- おっしゃ
- 413 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/29(金) 22:28:29.34 ID:iUhUDpUOo
-
風の大きな声にびっくりしたのか、きゃっきゃとした明るい声が途絶える
めったなことでは、二人は泣かないし夜泣きすらしない
そんな二人の瞳が潤み始めたのを見て、沙織が星乃を抱き上げ
天乃が月乃を抱き上げる
沙織「お〜よしよし〜」
天乃「こわくないこわくないよ〜」
出来るだけ柔らかく声をかける
軽く左右に体を揺らしながら、
叩くとは言えないほどの力で背中にリズムを伝えてあげる
天乃「いいこね〜」
月乃「ぁぅ……ぅぅ〜……」
天乃「ママがいるからね〜」
母親に抱かれているからか
月乃は少しずつ落ち着きを取り戻していくのだが、
星乃「うぅ……ぁぅ……あぁぅ〜っ!」
沙織「なんでーっ!?」
まだ不慣れなのだろう、沙織に抱かれている星乃は不満を爆発させて、泣き出してしまった
- 414 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/29(金) 23:34:07.08 ID:iUhUDpUOo
-
天乃「抱き方は、ちゃんとしてるんだけど……」
沙織の抱き方は天乃とほとんど一緒だ
胸の大きさの分差違はあるけれど、抱かれている感触に違いはあまりないはずなのだ
そもそも、星乃と月乃が好んで抱かれる千景は言葉は悪いが大きくはない
大から小まで網羅し、好んでいるにもかかわらずダメなのは、赤ちゃんの感覚のせいだろうか
風「あた――」
千景「私が抱くわ」
天乃「千景」
千景「……久遠さんは月乃をお願い」
初めからそこに居たかのように沙織の隣に忽然と姿を見せた千景は、
手を伸ばしてくる月乃の手のひらを指先でつついてあげると、
沙織から星乃を受け取り声をかけず、適度に体を揺らす
長い髪が揺れて、横紙の一部が星乃の頬をなぞる
ぐずっている星乃の背中を撫でて、宥めていく
千景「……ん」
ほんの少し、千景があやしてあげるだけで
星乃はすぐに泣き止んだ
- 415 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/30(土) 00:10:04.61 ID:cDEzO6Ypo
-
千景「……この子はあまり声をかけない方が良いわ」
沙織「そう、なんだ」
千景「久遠さんはともかく、基本的に嫌がるのよ」
普段は全くそんなことはないのだが
ぐずっているときは声をかけられるのは不服なようで
余計に泣き出してしまうのだと千景は言う
逆に月乃は声をかけてあげるとだんだんと落ち着く
双子で、育ち方も同じ
けれど好みは分かれているようだ
天乃「九尾は、担ってる力の違いも関係あるんじゃないかって言ってたけど……」
風「あー……沙織は穢れ側だから嫌なの?」
沙織「だとしたら郡さんも嫌われるよね?」
千景「そのはずだけど」
千景の視線の先、星乃は千景を嫌う素振りは一切見せず
それどころか、
千景の髪を触ることにご執心のようだった
沙織「髪……伸ばそうかな」
天乃「十分長いでしょ」
- 416 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/30(土) 00:34:49.84 ID:cDEzO6Ypo
-
樹が抱っこしても大人しくはなるし髪の長さも関係はない
その話を聞いた友奈は、楽しそうに「東郷さんもダメだと思いますよ」と言っていたが、
実際に、落ち着きはするものの、どちらかと言えば好ましくないような反応をしていたので
友奈はその理由を察しているようだったし
夏凜も、「樹はセーフなんだ」と、少し不思議がってはいたものの
概ね納得は出来ているようだった
もちろん、友奈と夏凜が察している時点で
天乃もそれとなく分かってはいるのだが。
天乃「もう少し気長に付き合ってあげて」
沙織「うぅ……」
沙織に関しては猿猴の影響が強いだろうから、仕方がない
天乃「風、沙織。二人は準備できてる? 樹も平気そう?」
風「平気よ。樹はもう……部長なんだから」
天乃「そうね……千景、二人のこと任せるわね」
千景「問題ないわ」
天乃「じゃぁ、着替えるから風と沙織は出て行って」
沙織「え〜……」
天乃「そういう反応するから出て行って欲しいの。じっと見られても困るのよ」
肉体関係があるとしても
恥ずかしいものは、恥ずかしいのだ
- 417 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/30(土) 00:35:37.83 ID:cDEzO6Ypo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/30(土) 00:39:30.65 ID:Tg+y2gemO
- 乙
千景が久遠さん以上に双子ちゃんたちのことを熟知してるな
- 419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/30(土) 02:49:49.22 ID:bfwvy4VSO
- 乙
保母さん千景
- 420 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/30(土) 22:40:32.37 ID:cDEzO6Ypo
-
では少しだけ
- 421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/30(土) 22:43:29.53 ID:Xdp0dJ+IO
- いえす
- 422 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/30(土) 23:04:11.90 ID:cDEzO6Ypo
-
星乃達に母乳を上げ、着替えも済ませた天乃は
終え子供達を千景に任せてから部屋を出て、リビングに向かう
もうすでに準備を終えた東郷達も朝食の準備を終えているようだった
東郷「久遠先輩、おはようございます」
天乃「おはよう。私が最後なのね」
樹「園子さんはまた寝ちゃってますけど」
テレビの置かれているテレビ台の前、
三人掛けが二つ、五人が座れるソファ一つが並ぶそこには、
友奈以外の勇者部がもう揃っている
園子「ん〜……」
園子だけは、制服を着ているにもかかわらず、眠っているが。
友奈はまだ退院は出来ていない
今月末には、リハビリで歩いても大丈夫だろうという話なので
退院は早くてもそれが出来るようになってからとなっている
それでも、卒業式だけは……という熱い懇願の結果、
車椅子を積むことのできる瞳の車で送って貰えることになっている
- 423 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 00:01:05.25 ID:OQAyl8xyo
-
夏凜「天乃は……大丈夫なのよね?」
天乃「私が、なに?」
夏凜「卒業式耐えられるのかって話」
体力的に戻ってきているのは分かっているが、
それでも夏凜は心配しているのだ
天乃のクラスメイトがいる
風もいるし沙織もいるのでバックアップの体制は十分なのは分かっているのだが……それでも
天乃「大丈夫よ。ずっと立ってるわけじゃないし」
夏凜「そこが問題なのよ」
風「夏凜さー」
呆れが混じる声が間延びする
風はジトっとした目を夏凜に向けると、
あえて間を置いてから、ふっと息を吐いた
風「過保護過ぎない?」
夏凜「……天乃が弱いのがいけないのよ」
- 424 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 00:43:44.17 ID:OQAyl8xyo
-
樹「体力的にも筋力的にも人並には戻ってきてますし、そろそろ大丈夫だと思いますよ」
東郷「気持ちは分かるけれど」
もう去年の話になってしまっているが、
夏凜が付き添い続けた天乃は悲惨なものだった
そのトラウマを思えば、
夏凜が過保護なのは中々に諫められるものではないだろう
天乃は食事の手を止めると、隣に座る夏凜に体を寄せる
天乃「大丈夫よ、鍛錬に付き合いきれないのはそうだけど、付き合えるほどには戻ってるから」
夏凜「天乃の大丈夫が大赦の次に信用できないわ」
天乃「えっ」
風「気持ちは分かる」
東郷「表情で察するしかないですね」
園子「天さんは無理して洋菓子てまいが、大丈夫っていうからねぇ〜」
天乃「最近は……ううん、妊娠してからはちゃんと正直だったじゃないっ」
- 425 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 01:23:09.34 ID:OQAyl8xyo
-
ムッとする天乃の一方で
みんなは楽しそうに、あるいは嬉しそうに笑う
今の天乃はもちろんそんなことはない
確かに、疑り深くなってしまうことはあるけれど
少しでも駄目そうならちゃんと声をかけてくれるようになっているので
たとえ、天乃が大丈夫。と言っていても信じることは可能だ
そもそも、本当に疑うことなんて基本的にはない
沙織「久遠さん、一応立たなくても良いって許可は出てるんだよね?」
天乃「ええ、去年まで車椅子だし、公欠……病欠だったから」
天乃が卒業式に出ると知ったクラスメイトからの要求と
それ以前に、担任が無理をさせるわけにはいかないからと配慮してくれた結果
天乃は校歌などでの起立はしなくてもいいと言われている
入退場、証書授与についても免除できるとされたが
そこは、やらせてほしい。としたが
天乃「入退場も授与もさせて貰うんだから、極力頑張るつもりよ」
風「リハでは大丈夫だったから大丈夫だとは思うけど、無理だったら必ず声をかけなさいよ?」
天乃「解ってるわ……心配しないで」
- 426 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 01:29:18.21 ID:OQAyl8xyo
-
では遅くなりましたが、ここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
- 427 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/31(日) 06:21:51.91 ID:iHWX3670O
- 乙
過保護の夏凜ちゃんかわいい
- 428 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/31(日) 07:28:03.49 ID:+Y+2xpySO
- 乙
- 429 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 16:49:00.65 ID:OQAyl8xyo
-
では少しずつ
- 430 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/31(日) 17:25:07.21 ID:KcpgSaHVO
- 来てたか
- 431 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 18:26:15.26 ID:OQAyl8xyo
-
風「終わった後はどうする? すぐに帰る?」
天乃「母親としては、真っ先に帰りたいのだけど……」
まだ幼過ぎる子供達の為に
母乳を上げるという母親としての役割もある
真っ直ぐ帰りたいというのが母親としての考えだが、
讃州中学のいち学生として通うことが出来るのはこれが最後になる
クラスメイトとしてみんなと会うのも、最後だ
風と沙織に関しては浪人と言うのもあり、
来年にはクラスメイトとしてまた高校に通うことになるかもしれないけれど。
天乃「みんな放してくれるかしら」
沙織「子供が待ってるって言えば絶対に」
夏凜「知ってるんでしょ?」
天乃「ええ」
担任はもちろんクラスメイトには話しているし、
恐らくだが、在校生にも天乃に子供がいることは伝わっていることだろう
最後の最後で、卒業記念
天乃を少しは引っ張りまわしたいと思う人もいるだろうが、
子供のことを話せば遠慮してくれるだろう
- 432 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 19:07:53.80 ID:OQAyl8xyo
-
東郷「夏凜ちゃんが母乳が出れば解決するのに」
夏凜「何が解決すんのよ……」
風「天乃の代わりに母乳をあげる?」
夏凜「私の子供の分が無くなるから無理」
天乃「……飲んだくせに」
夏凜「そうだけどっ!」
夏凜にも子供がいて
その子供に問題なく与える分があって、それでもなお余るのであれば考えることも可能ではあるが
それはなかなか、難しい話だ
天乃がみんなに与えたのだって、特別な理由があってこそだ
夏凜「そもそも、私が妊娠するための相手が必要なんだけど?」
樹「お兄さ――」
夏凜「兄貴はない! 業が深いわ!」
天乃「私のお兄ちゃんじゃないの?」
夏凜「あ……あー……まぁ、でも無いわ。あり得ない」
- 433 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 19:37:31.19 ID:OQAyl8xyo
-
天乃「そうよね……私も嫌よ」
実の兄とは言え、夏凜を抱かせるのは考えたくもない話だ
命にかかわることならば、致し方なく頼むことも考える
そうではないなら、考える余地もない
園子「搾っていけばいいんじゃないかな〜?」
東郷「!」
天乃「名案! みたいな良い顔しないの」
園子の案に振り向いた東郷に首を振る
搾れば出るかもしれないが
あげるまでの時間が不透明だ
風「ならいっそ、千景に連れてきてもらえば良いんじゃない?」
東郷「首は据わっているんでしたっけ?」
夏凜「先週の検診ではそう判断されてたけど、大丈夫なの?」
天乃「二人一緒にだっこは少し不安だわ」
前と後ろに一人ずつ
そうすればいいだけなのだが、
後ろの子の顔が見れないのが不安になる
それは、千景も言っていたことだ
- 434 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 20:14:32.03 ID:OQAyl8xyo
-
沙織「瞳さんの車にベビーシート積んでなかった?」
夏凜「嬉々として積んでる」
しっかりと二人分のベビーシートが積んである車は
車椅子も積むことのできるかなり大きめのものだ
友奈を連れてきてもらった後
千景たちを迎えに行ってもらうという算段だ
そうして、母乳は――
天乃「待って、さすがに私にも羞恥心はあるわ」
夏凜「車の中で授乳が必要になる可能性もあるけど」
天乃「それは非常時でしょ」
特に問題がない時にそれは出来ない
瞳の車に人の目を遮るものがあるなら……とは思うけれど。
風「じゃぁ、少しくらいは残るってことでいい?」
遊びに行くとかは付き合えないが
多少、話をしたりなんだり……その程度ならば。
樹「一旦家に帰ってからと言う手もありますけど、久遠先輩次第ですね」
天乃「そうねぇ……みんながそれでお良いなら、そうするのが一番かしら」
いっそ家に招く
それも考えられるが、行きたいと答える人数を考えると、それは無理な話だった
- 435 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 21:36:27.72 ID:OQAyl8xyo
-
若葉「行くのか?」
天乃「貴女は来ないの?」
若葉「私はもう転校したよ」
天乃「見には来る?」
若葉「転校したのにか?」
そんなバカな話はないだろう。と、
若葉は笑って首を振る
若葉の転入はあくまで偽りだ
天乃がほぼ完全に通学不可となった時点で通う意味はなく
それ以降は在籍すらしていない状態になっている
九尾の力を再度借りれば、違和感なく忍び込むことも出来るが、
それは、したくなかった
球子「タマは行くぞ。中には入れないけどな」
歌野「土居さん、ステイよ」
球子「なぁーっ」
行くと天乃に近づいた多摩湖の襟首を歌野が捕まえる
歌野「邪魔はしない。そういう約束でしょう?」
- 436 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/05/31(日) 22:39:03.36 ID:OQAyl8xyo
-
天乃「そんな約束したの?」
水都「一応、過去の人ですから……あまり干渉するのは止めとこうって話したんです」
若葉「主な理由は、私たちがいずれここを出ていくから。だが」
天乃「あぁ……そう。だったわね」
今は天乃達のことも考えて残ってくれているが、
天乃の精霊として現代にいる西暦組の中で残ってくれるのは千景だけだ
若葉達は四国の外に出て行ってしまう
だから、あまり知り合いは増やすべきではない。と言う判断だろう
天乃「来年でも、再来年でもいいのに」
球子「それもそうなんだけどなー」
水都「何があるかわからないので、あまり余裕はないと思うんです」
若葉「万が一、もあり得るからな」
天乃「そうね」
バーテックスはいないとは思うが、星屑がいるという最悪の可能性が一つ
もう一つは、一瞬で世界が書き換えられたということ
外の世界には自然が広がっていることを踏まえたうえで――生存者がいる可能性
天乃「やっぱり、引き留めるわけにはいかないわ」
- 437 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 00:05:32.48 ID:CwcuPhaco
-
若葉「ああ、すまない」
天乃「ううん、千景を許してくれただけありがたいわ」
若葉「いいさ。千景が望んでいるなら止める理由がない」
そう言った若葉はとてもうれしそうな顔をする
かつて千景と戦い、千景の過酷さを知っているからこそ
千景が星乃と月乃に愛情を注いでいる姿は、喜ばしいのだろう
球子「ほんと、幸せそうで何よりだな」
若葉「本当にな」
天乃「……千景に聞かれないようにね」
自分のことで嬉しそうにしている二人など
照れ隠しで斬られてしまうかもしれないからと冗談めかして
そんなことはないと若葉は苦笑する
風「天乃、そろそろ行くわよ」
天乃「ん……」
玄関から入ってきた風の手招きに頷いて、若葉に目を向ける
天乃「じゃぁ、行ってきます」
若葉「気をつけて。子供達は千景が見ているが、私達も見ておく」
水都「必要なら呼んでくださいね。千景さんと一緒に二人を連れて行きますから」
天乃「ありがとう。その時は宜しくね」
見送ってくれる西暦時代を生きた英霊たちに手を振って、
風と沙織と共に学校へと向かう
夏凜達は残念ながら先に行く必要があったため、三人だけで最後の通学路を歩いた
- 438 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 00:07:35.27 ID:CwcuPhaco
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
14日目 予定
卒業式参加:クラスメイト交流
部室交流
- 439 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 00:11:08.48 ID:1SuLXnSKO
- 乙
クラスメイトのみんな久々の出番か
後半ほとんど交流できなかったのが惜しまれるな
- 440 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 00:33:41.29 ID:scEoZq/WO
- 乙
後半非日常だったからな
- 441 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 21:58:15.25 ID:CwcuPhaco
-
では少しだけ
- 442 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 21:59:10.92 ID:yGI9ae3CO
- よしきた
- 443 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 21:59:12.10 ID:CwcuPhaco
- √ 3月14日目 朝 (学校)
「わはーっ! あっっまっの〜んっ!」
天乃「きゃぁっ!?」
教室に着くや否や、
天乃の身体へと真正面から突っ込んできたクラスメイトを抱きとめて、ぐるりと回る
天乃をあまのんと呼ぶ女生徒は、
天乃の胸に顔を埋めたまますりすりと頬ずりして、不気味な笑い声を零す
「これが、母乳のにおい……」
「こーらっ!」
「ひゅぐっ」
そんな女生徒の首根っこを乱暴につかんで引き剥がした
快活そうな困り顔は、メガネのずり落ちた友人を一瞥すると、ため息が零れる
「久遠さんを困らせるな負担をかけるな邪魔をするな」
「ふぇぇ」
天乃「あはは……リハでも会ったじゃない」
「でもこれが最後なんだよ。これが……もー進学するって去年は話してたのにぃ」
天乃「してないしてない」
去年から一貫して、天乃は進路については未定続きだった
勇者としてのお役目に関わりがある以上、安易には決められなかったし
特に、去年の天乃には自分がどうしたいかなんてことは全く考えられなかったのだ
進学するなんて、一言も言っていない
- 444 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 22:17:35.55 ID:CwcuPhaco
-
沙織「久遠さんが進学できない理由、分かってるよね?」
「それは分かってるよー……だから私のママになっ――いだっ痛い痛い痛いっ!」
頭をわしづかみにされ、
苦痛に呻く友人をその手の力のみでねじ伏せようとするクラスメイトは
ギブアップだと手を叩かれてもなお力を込めたのだろう
ごめんなさい。という叫び声のような謝罪が教室に響いた
「久遠さんを困らせないの」
「だってさぁ」
「久遠さんが大抵のこと許してくれるからって調子乗らないの」
「むぅ」
あからさまに不服なふくれっ面
しかし、それも天乃へと目を向ければすぐに崩壊して、照れくさそうな笑顔に変わる
「ごめんねあまのん。スキンシップだと思って諦め――ぎゃぅっ」
風「まぁまぁ、節度は保ってくれるでしょ」
「ダメよ犬吠埼さん。この人、許すとつけあがるから」
この人はやめて。と
悲し気に抗議した女生徒は天乃へと笑みを浮かべる
「まぁでも、良かった。あまのんが無事に卒業出来て」
天乃「本当にね」
「色々大変だとは思うけど、あまのんとりんりん達なら大丈夫だよ。きっと」
- 445 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 22:34:30.82 ID:CwcuPhaco
-
夏凜達が勇者として挑んだ最後の戦い
そこでほんの一時だけ、生きるすべての人が垣間見ることのできた世界の真実
それは夢だと言われている。幻だとされている
しかしながら、不真面目に明るいクラスメイトはそれを真実だと認めている
そうでなければ、見てきた天乃の三年間の過酷さが不自然だ
「………」
それは踏み込み切れない領域
だから、大丈夫だよ。と言う言葉に集約する
「一年間は子育て集中なんだっけ?」
天乃「ええ」
「遊びに行ってもいい?」
「あんた――」
沙織「久遠さんに変なことしないなら大丈夫なんじゃないかな」
風「天乃は無防備でも、家では結構ガードがきついからね」
「大丈夫大丈夫、さすがに変なことはしないよ」
「心配だから行くときは私も行くからね?」
天乃「ふふっ、事前に連絡頂戴ね?」
家に住んでいるのが天乃だけならいざ知らず……と言えるが、
みんなが住む家である以上、いきなり来られては困るので、念のためだ
- 446 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 22:56:45.19 ID:CwcuPhaco
-
「おーなに? 久遠の家?」
「男子禁制だからダメ」
「はぁ!?」
タイミングよく教室に入ってきた天乃の隣の席の男子生徒だったが、
天乃が答える間もなくクラスメイトに払われて、渋々と席に着く
天乃としては、夏凜達が良いのなら別に良いとは思う
しかし、ちらっと見てみた風と沙織の目を見れば、駄目なのは明白だった
沙織「久遠さんの家は駄目。部屋も駄目。ぜったい駄目」
風「というか、天乃の家はある意味女子寮みたいな感じだから、男子禁制なのはほんとよ」
「それは逆に興味湧くんだが……」
沙織「んー……死ぬ覚悟が必要だと思う」
「マジ?」
「あまのん以外からの殺意は高そうだよね」
天乃が招いたのだから……と
致し方なく家にあげて貰える可能性はある
しかし、常に見張られている挙句、天乃に手を出そうものなら首が刎ねられるかもしれないと、沙織は思う
風もその考えには同意見で、夏凜達が実際に手を下すことはまずないだろうが、
その帰り道、喰い殺されない保証がない
- 447 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 23:08:25.53 ID:CwcuPhaco
-
「えーなになに?」
「あー久遠さん!」
「久遠さ〜ん!」
今日卒業する三年生が増えるにつれて賑やかさは増していき、
天乃の周りにもどんどん人が増えて騒がしくなっていく
長い欠席期間
会いたかったと喜ぶ人の喧騒も広がり、
そうこうしているうちに担任もやってきて、一気に霧散する
風と沙織も自席へと散って
残った天乃は急な静けさに思わず苦笑する
「どうした?」
天乃「何でもないわ。ただ、なんとなく」
「そうか……」
天乃は、ようやく戻ってこれたことを実感する
ちょっぴり固い学校の椅子
ひんやりとしていた机が体温で温まっていく感覚
空っぽの机の中、渇いた音のする金属感
前にも左隣にも同じ制服を着るクラスメイトがいて
前には黒板や教卓があって……
学生なのだと、日常の中にいるのだと……実感させてくれる
- 448 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 23:18:19.74 ID:CwcuPhaco
-
「………」
天乃「どうかした?」
隣からの視線を感じて声をかけると、
男子生徒ははっとしてそっぽを向き、頭を抱えるようにして机に伏せる
彼が久しく見なかった女子生徒
けれど、それが天乃であることを彼は知っている
照れくさいのかな。と、天乃は感じ取って前を向く
「席替え、一応あったんだよ」
天乃「……そうね」
風や沙織の席の位置が変わっているし、
隣の男子生徒だって変わっている
半年近く欠席していればそれも当たり前で
唯一、車椅子だった天乃だけが、
出入り口が近く、後ろに誰もいない右側最後尾で固定されている
「だからちょっとだけ……期待してた」
残念そうな男子生徒の声に、
天乃はやっぱり、と察して目を瞑る
天乃「ごめんなさいね」
「いや、話は聞いてたし左手のそれってさ。そう言うことなんだろ?」
- 449 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 23:27:23.12 ID:CwcuPhaco
-
男子生徒が言う【それ】は沙織からもらった婚約指輪だ
薄いピンク色のトリニティリング
ちゃんとつけてね。と言われてつけておいた指輪は
しっかりと、効力を発揮しているらしい
天乃「そうよ」
「そっか……」
男子生徒はそう言うと、天乃の方に顔を向ける
心の無しか悔やんでいるようには感じるが、
それでも、笑みを浮かべていた
「おめでとう……って、言っていいのか?」
天乃「うん、ありがとう」
天乃の年齢で出産と婚約
それが喜ばしいものなのかどうか悩んでの言葉に
天乃は迷わずに答える
確かに特異なことだけれど、天乃にとっては幸福なことだ
それは間違いなく、祝福されたい
「ならよかった」
天乃「ありがと、嬉しいわ」
「っ――ぉ、おう……別に」
奇異の目で見られることも覚悟しているし、
軽蔑されることも覚悟している
だからこそ、純粋に祝ってくれる彼の言葉に天乃は心からの笑みを浮かべてしまうのだった
- 450 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/01(月) 23:34:15.32 ID:CwcuPhaco
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 451 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 23:44:48.32 ID:yGI9ae3CO
- 乙
久遠さんの自宅はクラスメイトには色んな意味で刺激が強そう…
あとさおりん以外の指輪もどんなものになってるか気になる
- 452 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/02(火) 01:00:06.81 ID:DjBO38RRO
- 乙
久遠さんも指輪みんなに送らなきゃ
- 453 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/02(火) 21:49:56.44 ID:MErjWTl3o
-
では少しだけ
- 454 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/02(火) 21:53:20.99 ID:IoomyXM5O
- あいよー
- 455 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/02(火) 21:57:04.91 ID:MErjWTl3o
-
卒業式の最中に天乃が体調不良で倒れるような緊急事態もなく
式は滞りなく終了を迎えた
授与の際に壇上へあがることも出来たのは、
天乃としても十分な頑張りだったと、自席に戻ってきてから大きく安堵する
「おつかれーあまのん」
天乃「うん……」
風「気分悪い?」
天乃「大丈夫」
机に伏せると、風の心配そうな声がかけられて顔を上げる
起立と着席
時折大した間を持たずに行われるそれを繰り返したことへの疲労は確かにあるけれど、
その程度で体調を崩すほどに落ちぶれてはいない。と、天乃は自負する
もちろん、疲れてはいるが。
天乃「これで、もうここに通うことはなくなるのよね……」
沙織「そうだねぇ〜……」
「あれ? 犬吠埼さんは勇者部参加するんじゃなかった?」
風「あー……まぁ、余裕があったらね」
- 456 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/02(火) 22:29:35.36 ID:MErjWTl3o
-
高校受験が失敗した。とははっきり言えずに風は答えを濁す。
その点、やはり沙織は堂々とした表情を見せる
あまりにも誇らしげなその表情は、
志望する高校の受験に勝ったかのように錯覚するが……受験には敗北している。
しかし、沙織としては望ましい結果だからこその満足感だ
「久遠さんは難しいよねぇ」
天乃「ええ、残念だけど」
沙織「色んな部活にヘルプしてたから、顔は広いよね」
風「天乃は相談も受けてたしね」
「そうそう、特に久遠さんは人気あるから」
天乃「無駄に尾鰭をつけてくれるからよ……私、そんな大したことしてないのに」
「いやぁ……どうだろ」
悩める男女の相談に乗る立場だったし、
優しすぎず、厳しすぎず。
けれど寄り添ってくれる相談相手と言うのは、とても心地いいものだっただろう
ともすれば、天乃に相談した生徒から噂が広がり人気になる。
多少、誇張があったかもしれないけれど大体間違ってもいなかっただろうから。
- 457 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/02(火) 23:17:10.47 ID:MErjWTl3o
-
「そういえば、久遠さんその左手、婚約指輪だよね?」
天乃「え? ええ」
さっと攫うように左手を取られ、
思わず声が詰まってしまった天乃を気にせずに、女子生徒は天乃の左手薬指に収まる指輪をまじまじと見つめる
その声が聞こえたのか、クラスメイトが続々と天乃の周囲に集まって、
天乃の小さな左手に視線が集中していく
「婚約指輪だーっ」
「ピンク? 桜? 綺麗な色だね〜」
「だれだれ〜誰からもらったの〜?」
天乃「これは、沙織からよ」
指輪には触れず、それを覆うように撫でながら天乃は答える
思いのほか弾んだ声になっていることに天乃は気付いているのかいないのか
幸せを感じる笑顔に、集まるクラスメイトもみんな、嬉しそうに微笑む
「そっかさおぽんかぁ。可愛いセンスしてるよ」
沙織「えへ〜」
「風ちゃんは?」
風「あたしは……まだ」
「久遠さん、沙織達に指輪は買わないの? 結婚指輪だけ?」
- 458 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/02(火) 23:40:26.08 ID:MErjWTl3o
-
沙織と風の左手を一瞥したクラスメイトの一人が、
天乃へと疑問を投げかける
この少女自身、完璧な理解はないし婚約指輪は女性としては相手から貰うものである。と言う認識だ
しかしながら、少し気になったのだ
「婚約記念のお返しっていうのがあるみたいだし、あげないのかなーって」
天乃「それは考えていたのだけど、まだ準備できてなくて」
「えーっ! 今日の帰り? 帰りに行っちゃう?」
天乃「えっと……」
風「そうねぇ、近々って感じね」
困った天乃の代わりに、風が答える
男性用の婚約指輪は珍しいものであるという話がある
けれど、天乃達に関しては全員が少女の為、指輪の用意が可能だ
もちろん、男性であれオーダーメイドならば可能だが。
- 459 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/03(水) 00:02:54.03 ID:4ZE+yW9bo
-
「あまのんもセンス発揮しないとだよ〜?」
天乃「わ、分かってるわ」
「もしかして自信ない?」
天乃「そんなことは……」
7人分だ
ちょっとだけ悩んでしまうというか
絶対に満足して貰えてしまうと分かってはいるけれど、不安にはなる
そうこう考えているうちに、一ヶ月
風も言っていた事だが、近々揃えたいと天乃も思っている
「まーもし不安なら相談乗るよ〜? 調査もしといてあげる〜」
天乃「一緒に買いに行けなかったら、お願いするかな」
「は〜い」
合法的なデートのつもりなのか、
喜んで〜という女生徒の声が複数重なる
風はあきれ顔だが、沙織は不満気だ
「そうそう。ところで終礼済んだらすぐ帰っちゃう?」
天乃「ん?」
「時間あったらさ、すこーし、付き合って貰いたいんだよね〜」
- 460 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/03(水) 00:04:52.62 ID:4ZE+yW9bo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 461 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/03(水) 00:08:30.37 ID:mDd9J0i5O
- 乙
クラスメイトたちと最後のお出かけか
- 462 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/03(水) 01:48:17.32 ID:jw04Lyx4O
- 乙
久遠さんの貯金にダイレクトアタック
- 463 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/03(水) 21:41:40.71 ID:4ZE+yW9bo
-
では少しだけ
- 464 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/03(水) 21:46:00.16 ID:4ZE+yW9bo
-
風「終礼の後か……どうする?」
「あー無理ならいいよ?」
天乃「無理ではないわ」
風と沙織の反応でダメかと思ったクラスメイトに、首を振る
子供達を想ってのことだけれど、
一目散に帰宅したいというのはあくまで天乃の都合だ
それに、瞳達に頼めば連れてきてもらえる手はずになっている
天乃「ただ、子供たちのお昼もあるから……時間がかかるなら難しいの」
「時間はそんなにかからないよ。やりたいこと自体は30分もかからないかな」
天乃「それなら、大丈夫」
「じゃぁ終礼終わったらね」
天乃「ええ」
天乃の答えに満足したクラスメイトの一人が、
端末を持ち出して、どこかへと連絡を入れる
お店の予約か何かをしてくれているのだろうか。
そうだったら、少し申し訳ないな……と考えて、首を振る
抱くべきは、そうじゃない。
- 465 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/03(水) 21:53:17.40 ID:mDd9J0i5O
- きてたか
- 466 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/03(水) 22:00:45.01 ID:4ZE+yW9bo
-
「どう?」
「準備しとくってー」
天乃「何か大がかりなことしてる?」
「ん〜そんな大がかりじゃない……? いや、大がかりかも」
沙織「なにするの?」
「それはお楽しみなのだ」
ふふんっと胸を張って出し渋る女生徒以外のクラスメイトも
知ってはいるが、言うつもりはないという態度で
沙織と風は知らされていないのだろう、本心からの驚きが感じられる
沙織「久遠さんを困らせたりしないよね?」
「大丈夫、絶対に困らせない」
普段、お茶らけた声色のクラスメイトの真剣な声が返る
思っていた以上の反応に戸惑う沙織は半歩後退りして、
真面目な面持ちのクラスメイトは眼鏡の位置を人差し指で正すと、にっこりと笑った
「さおぽんの気持ちもわかるけどさー私達だって、あまのんのこと愛してるんだよ?」
沙織「あっ愛……?」
「愛したって良いでしょ? 別に、それが必ずしも性的とは限らないんだし」
沙織「む〜っ」
風「それはそうでしょ、仕方がない」
文句言いたげな沙織の頭をぽんっと叩いて、風は宥める
- 467 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/03(水) 22:42:37.78 ID:4ZE+yW9bo
-
天乃は人気がある。それは事実だ
だから、好きな人も愛している人もいるだろう
クラスメイトは性的とは限らないというけれど、
性的な意味で好きな人もいないとは限らない
現に、沙織たちがそうだ
「あんまり言うとさっちんが怒るよ」
「だってさ〜……」
天乃「?」
クラスメイトの女生徒の一人は渋るように沙織を一瞥すると
唇をきゅっと結んで天乃を見る
伺うようなその視線は、少し、見覚えがあった
「久遠さんさ、指の数くらいの付き合いする余裕ある?」
沙織「はぁっ!?」
「ちょっ、何言ってんの!?」
- 468 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/03(水) 23:51:42.96 ID:4ZE+yW9bo
-
指の数くらいの付き合い
クラスメイトのその言葉を誤魔化す意味はないだろう
勘違いはもうできない
本当はからかっているのなら、恥ずかしい話だが。
天乃の経験上、これは様子見だ
答え次第では「冗談だよ」と返答する確認
天乃は相手を押し倒しそうな沙織と、
それを抑え込む風を横目にクラスメイトを見る
じっと見ると、ほんのりと頬が染まる
天乃「ごめんなさい、流石にそこまでの包容力は私にはないわ」
「そっかぁ……だぁよねぇ」
残念そうに、でも、冗談かのように
クラスメイトは困ったように笑う
本心はどうだったのか……天乃は見抜くことを止めて、
騒がしい恋人の手を掴む
天乃「落ち着きなさい、間違っても手を出したら駄目よ」
沙織「解ってる」
「ごめんね伊集院さん、流石に婚約指輪してる人を奪う気はないよ」
沙織「これだから、婚約指輪は外せないんだよ……もぅ」
「まぁ? こ・ん・や・くだから、破棄し――」
「ストーップ! いい加減にしろ」
風「ったく……次は沙織のこと止めないからね」
懲りないクラスメイトへの制止と罵倒と呆れの騒がしさは
担任の登場で、一気に消え去っていった
- 469 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/04(木) 00:00:12.56 ID:s9x03NWao
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 470 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 00:06:01.46 ID:KVJ2TdcrO
- 乙
久遠さんと再会できたのが余程嬉しかったのかかなり興奮気味なクラスメイトちゃん
- 471 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 01:33:08.16 ID:EfjgqjaHO
- 乙
久遠さんnモテるなあ
- 472 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/04(木) 22:52:37.26 ID:s9x03NWao
- すみませんが、本日はお休みとさせていただきます。
明日はできれば通常時間から
- 473 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 22:53:21.48 ID:NHOugVAhO
- 乙ですー
- 474 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/05(金) 22:46:41.66 ID:TAYW+Ed0o
-
遅くなりましたが少しだけ
- 475 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/05(金) 22:48:39.84 ID:r9CQ8D0OO
- やったぜ
- 476 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/05(金) 23:54:58.09 ID:TAYW+Ed0o
-
「さて今日でみんなは中学生を卒業する……」
含みの感じられる言葉尻
クラス全体を見ていた担任の男性は視線を天乃へと向けると、
穏やかに笑みを浮かべて、またクラスみんなを見渡す
「卒業生は何度か見送ったが、正直このクラスほど、問題児ばっかりだったのは初めてだ」
「えーっ!」
笑い声と、隣席とのささやきが広がっていく
担任の男性はそれを止めようとはせず
それどころか乗っかって笑うと「冗談じゃないぞ」と、皮肉ぶる
実際、天乃の件で暴動にまで発展させたクラスは問題児どころではなかったはずだ
担任にとっても、学校にとっても
大赦にとっても
神樹様が失われ、大赦の力も失われていくことだろう
そうなれば、天乃が今までのように嫌な目に遭うことも無くなるはずだが
それ以外の事でも、やろうと思えばやれてしまうのがこのクラスだ
だからあえて、彼は釘をさす
「高校生になってもその気持ちは忘れないように。ただし、やりすぎないように」
- 477 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/06(土) 00:48:39.78 ID:/80q2/JQo
-
「はーい」
「わかってまーす!」
不揃いな了承の声がいたるところから上がる
茶化しているようにも取れる声色ではあるものの
クラスメイト達は本心で言っているのだろう
クラスの中で一番、子供っぽい性格の女生徒が「大丈夫です」と、宣誓する
「大丈夫です、先生。あまのんが戻って来たんだもん。幸せそうなんだもん……大丈夫だよ」
「……そうだな。戻ってきてくれてよかった。3人とも」
天乃と風と沙織
一番長く外していた天乃を含め、
数ヶ月はまともに通えていなかった二人も対象に、担任は目を向ける
廊下に居ても聞こえたクラスの笑い声
病院で見たような状況ではないのは、明らかだった
「改めて……卒業おめでとう」
今まで閉ざされていた世界も露わになり、
これまで以上に大変な事もあるかもしれないが、
みんなら大丈夫だろうと、男性教師は困ったように笑った
- 478 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/06(土) 02:07:43.54 ID:/80q2/JQo
-
「久遠さん久遠さん」
天乃「なに?」
「先生にお別れのキスでもしてあげたら?」
沙織「!?」
天乃の手前に座る女子生徒の言葉には、
天乃以上に、沙織が驚いて机が僅かに蹴り上がる
その鈍痛などなかったかのように、沙織の首がぐるっと動いて女生徒に向かう
沙織「絶対ダメだよ!?」
「でも――」
「待て待て! 久遠さんに限らずそれは許されない。冗談にもならない」
食い下がろうとする女子生徒に対し、担任の声が飛ぶ
男子生徒が悪ふざけで頬にキス―想像したくもないが―それならばまだ、許されないこともない
だが、女子生徒にそれをさせてしまうと、とてもではないが許されない
それが天乃であれば、なおのこと
「最後の最後まで、冗談にならないことは止めてくれ」
天乃「ん……そう。残念ね」
風「天乃〜っ!?」
担任の心からの願いに天乃が笑うと沙織でも担任でもなく、風の声が響く
最後の最後まで騒がしくて、涙ながらの卒業にもならない
けれど、担任の男性教師は収まりのつかなくなりつつある今の騒がしさにこそ、幸福を感じてしまう
クラスメイト……天乃の欠けていた時期を思えばむしろ穏やかだ
「みんながこれからも健康を一番に、前へ前へと進んでいけるよう願ってるよ」
男性教師は笑い交じりに、少し投げやりにそう言って、手を叩く
静まり返ることさえなく、男子と女子の入り混じった返事が返ってくる
とても締まりのない終わり
でもそれが、彼が受け持ったクラスだった
- 479 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/06(土) 02:10:05.91 ID:/80q2/JQo
- 遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 480 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 03:41:38.03 ID:KpJS27JTO
- 乙
久遠さんもいよいよ卒業かあ
- 481 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 04:06:23.18 ID:/I4EGW2vO
- 乙
- 482 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 12:52:06.67 ID:37EjSOxS0
- クオンサン タンジョウビ オメデト
- 483 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/06(土) 21:17:14.32 ID:/80q2/JQo
-
では少しだけ
- 484 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/06(土) 21:54:03.71 ID:/80q2/JQo
-
「あまのん! 立てる?」
天乃「っ」
机を弾き飛ばす勢いで突っ込んできたクラスメイトは、
ごつんっと額を打ちながらも、平然と天乃を見上げる
赤くなった額はちょっぴり痛そうだが、どうとも思っていないようだった
天乃「大丈夫、なの?」
「へーきへーき、あまのんは? 疲れてない?」
天乃「ええ、大丈夫よ」
「ん……」
天乃は女子生徒のずり落ちた眼鏡を直してあげると、
痛そうな額を一瞥して、頬を撫でる
女生徒はキスを待つかのように目を閉じたが、流石にキスをする気はない
天乃「危ないことしないでね」
「ごめんなさーい」
天乃「次やったら怒るからね」
むにゅっと頬を抓ると、
女生徒は痛みを訴えず、嬉しそうに笑った
- 485 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/06(土) 22:12:03.18 ID:/rCiJtZxO
- 遅れたけど久遠さん誕生日おめー
- 486 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/06(土) 23:09:22.91 ID:/80q2/JQo
-
沙織「そ、れ、で?」
「ぐぇっ」
沙織はクラスメイトの襟首をつかんで引っ張ると
自分の体を天乃との間に入り込ませて、じっと睨む
敵意を感じさせる雰囲気を漂わせる沙織だが、
それに気づいているのは天乃と風、
それと睨まれている女生徒くらいなのか、
沙織の妨害は【らしい】という一言で片づけられてしまう
沙織「久遠さんをどこに連れて行きたいのかな?」
「あー……そうそう。すぐ近くだよ」
沙織ににらまれている女子生徒とは別の女の子が、思い出したように答える
「久遠さん、立てる?」
天乃「大丈夫だってば、そこまでひ弱じゃないわ」
「ならよかった。伊集院さんと犬吠埼さんも大丈夫かな?」
風「あたし達も?」
「そっ、みんな」
- 487 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/06(土) 23:31:51.01 ID:/80q2/JQo
-
軽快に答えた女子生徒は、
座り込んでいるクラスメイトを引き立たせると、
天乃の肩に触れようとして――沙織の背中を突く
「久遠さんを支えてあげてね」
沙織「任せて」
沙織はにこやかに答える
天乃の方へと振り向くと、手を差し出す
天乃「別にいいのに」
沙織「駄目だよ。久遠さん、疲れてはいるでしょ」
天乃は沙織の仕方がないなぁ。と言いたげな笑みから目を逸らす
無理をしているわけではない
しかし、立ったり座ったり、歩いたり
徒歩登校してきたことも相極まって、疲労感は残る
沙織の手を取って、天乃は苦笑を浮かべた
天乃「少しだけね」
沙織「えへへ……それで、どこに行くの?」
「体育館だよ。特別に借りてるんだよね〜」
- 488 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/06(土) 23:59:27.81 ID:/80q2/JQo
-
天乃「体育館?」
ついさっきまで卒業式で使っていたはずの場所
だとしたら、終礼前にクラスメイトが連絡していたのはその辺りのことだろう
卒業式のための装飾、椅子などの片づけを誰かに手伝わせて早回しに行わせ
天乃達に見せるための何かを準備させたのかもしれない
天乃「大がかりじゃない……」
「そんなことないよ。一ヶ月くらいでゆっくりやったから」
平然と言う女子生徒の周りで、クラスメイトはうんうんと頷く
もはや一年近く休学していたと言える天乃を見てきた彼女たちとしては
たった一ヶ月程度……と言うものなのだ
天乃に言わせれば一ヶ月も。なのだけれど。
天乃「それが大規模じゃなかったら何が大規模なのかしらね」
沙織「もう準備は出来てるの?」
「大丈夫だよ」
「あまのん、さっちん、さき坊。いこっか」
風「さ、さき坊……?」
風の戸惑う声にクラスメイトの女子生徒は笑みを見せただけで
もう一度、「いこっか」と、沙織と風の背中を押した
- 489 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/07(日) 00:06:57.02 ID:D8cvzZBno
-
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
沙織「久遠さんの誕生日って、大体祝えないよね」
風「いっつも厳しい時期だからね」
樹「久遠先輩が無茶さえしなければ……と言うところですね」
園子「ん〜……無理かも〜」
友奈「久遠先輩、今年はちゃんと、お祝いさせてくださいね?」
天乃「ええ、もう……無理はしないわ」
夏凜「約束しなさいよ。天乃」
- 490 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/07(日) 00:16:19.69 ID:UTfqNc4cO
- 乙
久遠さんの誕生日はだいたい物語のターニングポイントだからね
家族が壊滅したり記憶喪失になったり凶暴な猿猴が誕生したり…
- 491 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/07(日) 01:33:33.39 ID:opX4KcDoO
- 乙
そうか誕生日だったのか知らなかったわ
- 492 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/07(日) 21:53:44.83 ID:D8cvzZBno
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 493 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/07(日) 21:59:58.08 ID:Dt1ICVa7O
- かもーん
- 494 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/07(日) 22:46:55.71 ID:D8cvzZBno
-
友奈「久遠先輩!」
天乃「あら……」
体育館への通用口へと差し掛かると、昨日ぶりの快活な声が届く
普段は入院していて、学校を休んでいる友奈だ
今日は卒業式で、せっかくだからと一時外出の許可を取った友奈は
天乃が以前使っていた車椅子をそのまま譲り受けて、使っている
そのすぐそばには東郷と夏凜がいて、園子と樹が天乃へと駆け寄ってきた
園子「天さん卒おめ〜」
樹「ご卒業、おめでとうございます」
天乃「ありがとう」
緩やかな喜びと、しっかりとした祝福に天乃は微笑む
天乃「みんなも呼ばれたの?」
樹「勇者部一同ご招待って呼ばれました」
風は「勇者部?」と呟くと、思考を巡らせるように顎の方に手をあてがう
風と沙織も含めてという時点でそれとなく想像はできるけれど
それだけならまだ卒業生のみ……という解釈もできる
しかし、樹達もとなれば、流石に察してしまう
風「もしかして、例の件?」
- 495 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/07(日) 23:45:26.00 ID:D8cvzZBno
-
「まぁまぁ、ほらっ、もうすぐだから」
女子生徒は答えを渋って天乃の背中を押す
押す気力の感じられない弱い力ではあったものの
天乃が半歩踏み出せば、もっともっとと押し込んでいく
天乃「あんまり押さないで、躓いちゃう」
「ごめんっ」
背中への圧力が消える
一般的な女子生徒のさらに弱いものでも天乃の体は動かされてしまう
元々小さいのが原因だろう
背中を押していた女子生徒も決して高身長ではないものの
天乃よりは10cmも高い
沙織「久遠さんはか弱いんだから、強引なことすると……怒っちゃうよ?」
「う、うんっ」
声こそ優しいが、怒りを感じるような笑顔を見せる沙織に女子生徒は身震いする
温厚なはずの沙織だが、ここ最近は天乃関連になると非常に恐ろしく感じる時がある
普通の子は分からないが、猿猴の影響だ
天乃「こーらっ、あんまり悪さをするようなら、私も考えることになるわよ」
沙織「あっ……あははっ」
精霊の力を天乃が引き取る
そうすれば猿猴という精霊は消滅し、その分の力が天乃に加わる
体調を崩すことになるだろうが、悪さをするならばそれも考えなければならない
- 496 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/07(日) 23:58:24.43 ID:D8cvzZBno
-
沙織「気を付ける……ごめんね」
「えっ、あっ、うん……?」
唐突に謝られた女子生徒は戸惑うが、
沙織は困ったように笑って胸を撫で下ろすと、深呼吸をする
ひしひしと感じられた敵意のようなものは霧散して、
いつもの穏和な空気に戻った
「ねぇ、沙織」
沙織「うん?」
「沙織、だよね?」
沙織は目を見開いて、ふと笑う
園子に似た間延びした声を漏らし、はっとする。
悪いことというと語弊が生じるけれど、悪戯を思いついた顔だ
沙織「伊集院かって言われたら違うけど、沙織だよ?」
風「久遠はまだ先の話でしょ」
風は呆れ混じりにぺしっと頭を叩き、沙織を置いて天乃の手を引く
遅れるように動いた天乃にさらに遅れて、沙織が「待って」と続いた
- 497 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/08(月) 00:28:00.03 ID:6BVP1Mf8o
-
「どぞー」
クラスメイトが体育館の扉を開く
天乃「えっ」
夏凜「……すごいわね」
ついさっきも見たはずの世界は、まったく違ったものになっていた
壁際の垂れ幕は紅白ではなく、勇者部に対する寄せ書きに満ちていて、
白いはずの幕は、おそらく全校生徒の字によって、色とりどりに染まっている
多くの椅子が並んでいた床には6人分の椅子があって、
周囲には讃州中学の他の学年、ほかのクラスの生徒が集まっている
流石に全校生徒ではないが、かなりの人数だ
「勇者部〜っ!」
大人数のやや不揃いな声が響く
元部長の風も見たことはない光景に、口を押える
風「なに……これ」
「勇者部の送迎会というか……ほらっ、今までは大赦のせいで縛りがあってお礼も何もできなかったから。ありがとうって」
「世界を広げてくれたのも、私達がこうして生きていけてるのも……みんな勇者部のみんなが頑張ってくれたから。なんだよね?」
- 498 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/08(月) 00:30:45.94 ID:6BVP1Mf8o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 499 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/08(月) 01:32:20.53 ID:rWY24UCQO
- 乙
こうして労ってもらうとよかったなあと思うよね
- 500 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/08(月) 06:06:35.04 ID:S+o/YiNEO
- 乙
クラスメイト達による送迎会か…なかなか新鮮だな
- 501 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/08(月) 23:42:16.66 ID:6BVP1Mf8o
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
予定
クラスメイト交流:勇者部へのお礼
部室交流:勇者部交流
- 502 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/08(月) 23:52:39.14 ID:SHYdWM3cO
- 乙ですー
- 503 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/09(火) 22:01:57.99 ID:HmIwFiVzo
-
では少しだけ
- 504 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/09(火) 22:08:13.10 ID:ofxoiCI40
- よしきた
- 505 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/09(火) 22:14:43.08 ID:HmIwFiVzo
-
クラスメイトの女子生徒は、どこか悲し気に笑う
勇者部が頑張ってくれていたことを知ったのは、本当に最近だ
天乃がボロボロになっていく、休学が増えていく
さらには子供が出来たなんていう話まで……
そんな事態になってからだった
「勇者部のみなさん、本当に、ありがとうございました」
天乃「えっと……」
「生徒会長です。元、ですけどね」
天乃の戸惑いが自分が誰なのかわからなかったからだろうと察した女子生徒は微笑む
天乃と同じ三年生ではあるが、クラスは別だ
長い休学もあったし、大して表立った活動もしていない元生徒会長としては
知られていないのも無理はないだろうと理解している
「流石に全校生徒は難しいので、勇者部の方々と親しい方以外の代表とさせていただきました」
元生徒会長は穏やかに述べると、もう一度「ありがとうございました」と、頭を下げる
それにつられるようにほかの生徒達も礼をする
ありがとうという言葉を重ねないのは、不揃いになってしまうからだろう
- 506 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/09(火) 22:54:34.72 ID:HmIwFiVzo
-
風「まさか、お礼を言われるとは思わなかった……」
「感謝されるべきだと思います。そもそも、お役目などという不透明な一言で片づけるべきではありません」
元生徒会長は断言する
大赦の【お役目】という部分だけが強調されたように聞こえたのは気のせいではないだろう
自分たちが気付かなかったことを悔いているのもそうだが、
大赦や大人たちがたったそれだけの言葉ではぐらかしていたことが気に入らないのだ
天乃はそんな生徒会長から周囲の生徒達へと視線を動かし、
体育館の周囲の壁に下ろされている垂れ幕を見る
どれもこれもびっしりと埋まっていて、それが合わせて6枚ほど……だろうか
ひとクラスが書くような量ではない
天乃「大赦に知られたら大変な事になるのに」
感嘆から思わず漏れたような独り言だったが
すぐ傍に居たクラスメイトは笑いながら、天乃の肩の辺りに顔を出し、答えた
「それはそうだけど、書かずにはいられないよね」
「本当は、入院中にお渡ししたかったのですが」
天乃「今でも十分、気持ちが伝わるわ。ありがとう」
この後頂いて良いのでしょう? と言うと、
元生徒会長は少し驚くそぶりを見せて「ぜひに」と、微笑んだ
- 507 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/10(水) 00:00:56.77 ID:UVydkH0Do
-
東郷「本当にすごいわ」
天乃の級友が外してくれた垂れ幕を受け取った東郷は屈んで、友奈に見えやすいように体を傾ける
友奈はありがとう。とやや申し訳なさそうに言いつつ、垂れ幕を見る
友奈「本当だね……凄い」
天乃の入院に対するものが多く感じられるのは発端がそれだったからだろう
別の垂れ幕を見てみれば、勇者部のことに言及するものも増え始めている
当然ではあるけれど、すべて手書きだ
文字が大きかったり小さかったり、一部だけ色を変えていたりと
書く人書く人の想いが染み込んでいる
友奈は嬉しそうに「凄いね」と繰り返し、続きそうになった口を閉じた
どうするべきか、と迷ったのだ
樹「お姉ちゃん、元部長が良いんじゃないかな」
風「ん? あー……」
勇者部と称されるのは8人だ
全員そろって「ありがとうございます」と言うのは何だか違う
かといって、個人個人でバラバラに言うのはどうだろうか。
元生徒会長が出てきてくれたのだから、勇者部も代表にするのが良いのではと樹は考えたのだ
天乃「風、貴女に任せるわ。元部長さん」
それを後押しするように笑う天乃を、風はやっぱりか。と言いたげに一瞥した
- 508 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/10(水) 00:02:09.10 ID:UVydkH0Do
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 509 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 00:12:12.26 ID:60Z9ctRiO
- 乙
クラスメイトのみんなも本当にいい人たちだなぁ…
- 510 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 06:07:41.27 ID:fNeWl4GCO
- 乙ー
- 511 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/10(水) 22:55:31.73 ID:UVydkH0Do
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 512 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 23:05:12.16 ID:QAx/CZsa0
- あいよ
- 513 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/11(木) 00:14:56.45 ID:96vUrKbso
-
天乃が代表として……というのも間違いではないが、
勇者部としての当時の代表は風だ
天乃は天乃で、すでにお礼を口にしてしまっているし、
ならば、勇者部は自分が言うべきかと風は少し悩んで、頷く
風「会長……それに、みんなも。本当にありがとう。感謝されるとは思ってなかった。けど……」
風は言葉を切ると、笑みを浮かべる
風「凄く、凄く……嬉しい」
感謝されたいと思ってやっていたわけではない
勇者部が戦い続けたのは、守るためだ
世界を、自分たちを、そして天乃を
天乃を犠牲にしなければ守れないのであれば、滅んでしまってもいいとさえ思ったりもしてしまったことだってある
けれど、だから【嬉しい】と感じる
風「守れてよかった、諦めなくてよかった……ごめん、ごめんなさい」
「さき坊?」
「犬吠埼さん?」
クラスメイトが、生徒会長が風の謝罪に戸惑う
僅かでも切り捨てようと考えたなんてことは、一般生徒に分かるはずがない
口を閉じていた夏凜は、風を留めようとしたが、園子が止める
- 514 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/11(木) 00:42:26.91 ID:96vUrKbso
-
夏凜「園子――」
園子「大丈夫」
園子の声に柔らかさはない
手を握る園子の手には少しだけ力が籠っていて
夏凜は園子を見ると、その視線の先に目を向ける
風の言葉に驚く級友達と、元会長
みんなは風のことを見て……そして、元会長が一歩踏み出す
「……勇者様、私達の謝罪も受け取っていただけますか?」
風「え?」
「不公平ではありませんか。私達は感謝しかしていないのに、一方的にごめんなさいなど……」
元会長は、本当に困りました。と言いたげに眉を顰める
風の謝罪の理由は、風自身が語っている
想像に容易いとは口が裂けても言えることではない
「勇者様といえど、級友であり後輩であり……同年代。そこに課せられた重責を思えば、世界を諦めるのも無理はありません」
元会長は「少なくとも、私でしたら早々に心折れていたことかと思います」と、苦笑する
なぜ、自分がこんなことをしなければいけないのか
なぜ周りがのうのうと生きている中で、自分達だけが。と
「むしろ、のうのうと生きてきた側が申し訳ないと言うべきだと思っています」
- 515 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/11(木) 00:59:08.09 ID:96vUrKbso
-
風「そんなことない」
元会長は、いいえ、あります。と断言する
「犬吠埼さんが悔いているように、私達にも背負わせてしまったという後悔がある」
もし、風が一時であれ世界を見捨てようと考えたことを悔いているのであれば、
ただ背負わせてしまったことを、自分たちは謝罪するべきだ
世界中も、誤魔化し続けてきた大赦も、みんな
「ですが、勇者部のみなさんは世界を救ってくれた」
これは結果論でしかありませんが。と前置きする
「ですからどうか、謝罪よりも胸を張って頂きたいです。そうでなければ、有り余る感謝を述べることも出来ませんから」
元会長は言葉を選びに選んで、そう述べる
風の謝罪したくなる気持ちも察することは出来るからか、瞳は少しばかり揺らいで見える
それでも笑みは絶やすことなく、声色は明るい
そんな元会長を見て、天乃が口を開く
天乃「……そうね。あまり自分を卑下しすぎると周りが困ってしまうものよ」
完全な経験談
しかも、困らせた側なのだから、苦笑いを浮かべてしまう
天乃「風、貴女は諦めなくてよかったと言ったじゃない。それが全てだわ」
- 516 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/11(木) 00:59:42.59 ID:96vUrKbso
-
では遅くなりましたが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 517 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/11(木) 03:04:30.95 ID:GZdQDJw6O
- 乙
風ちゃん感極まっちゃう
- 518 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/11(木) 06:12:01.26 ID:r+O91vOkO
- 乙
風先輩もずっと苦労してたからなぁ
- 519 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/11(木) 22:15:12.32 ID:96vUrKbso
-
では少しだけ
- 520 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/11(木) 22:30:52.93 ID:Y0+hWVL/O
- きてたー
- 521 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/11(木) 23:40:44.72 ID:96vUrKbso
-
天乃の言葉には、元会長が同意する
それが全てだ
本当はもっといろいろあるのは分かり切っていることだけれど
だからどうしたと、切り捨てる
失敗をなかったことにしてしまうのは、悪いことではある
しかし、過剰にそれを意識してしまっては意味がなくなってしまう
風「今を喜べなくなったら意味も無いか」
「犬吠埼さん」
風「ううん、ありがと……そうね。そうだった。こういう時に、ごめんなさいは無しって話だったわ」
風は天乃を一瞥して、懐かしむように笑う
風「会長も、みんなも。本当にありがとう。心から、諦めなくてよかったと思えた」
そして、諦めなければ幸せは手に出来るのだと
そう、自信がついた
もちろん、慢心は出来ないけれど。
風「だから、謝罪は受け取れない。せっかくの幸せな気持ちが台無しになるからね」
- 522 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/12(金) 00:43:51.43 ID:2yy0TBVvo
-
「そうですか……」
言葉だけは悔し気だが、表情は極めて明るい
風が諦めかけたことを悔いたことは取り消すことは出来ていないが
悔いに悔いが重ならないのであれば、十分だろう
「ところで、乃木園子さん。東郷美森さん」
園子「わたし……たち?」
東郷「何でしょう?」
下級生全員ならばともかく、二人だけに声がかけられたことに疑問符が浮かぶ
東郷の問いに元会長は「苦労しました」と、微笑む
答えにならないのは承知の上だろう、続けて口を開いた
「生徒会長として、他校とのパイプは持っておくものですね」
東郷「失礼ですが、なんの――」
それには元会長は答えなかった
いや、答える前に別の女子生徒が踏み出したのだ
讃州中学の制服ではない……他校の生徒
「乃木さんと、鷲尾さん……だよね?」
東郷「!」
かつて同じ小学校、同じクラス
そこで学んでいた級友
お役目が命にかかわることであると、知っていた一握りの子供達だ
- 523 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/12(金) 01:07:31.50 ID:2yy0TBVvo
-
東郷を得芦尾さんと呼んだ少女の隣
もう一人の女の子は、友達の方に触れて首を振る
「駄目だよ……東郷美森ちゃんでしょ?」
「だって……」
彼女は鷲尾さんだった
少なくとも自分が知っている級友は、鷲尾須美と言う名前だったのだ
いなくなってしまったはずの勇者様
勇者部としての活動を知って、目にした彼女は違う名前で、成長もしていて
他人の空似だと言い聞かせてきた園子達の元級友達は、
讃州中学の元生徒会長の申し出を受けて、会いに来た
「そう、なんだよね?」
東郷だと訂正された少女は、二人を伺うように見る
園子は園子らしいままだ
東郷も……面影はある。
だからきっと間違いはない
頭ではそれが分かっている。けれどどうしても聞きたかった
園子はその意思を酌んでか口を閉じ、東郷に委ねる
東郷「……そう。そうです」
頷いて、答える
誤魔化す理由はない
東郷「みんなと一緒に神樹館に通っていた……鷲尾須美です」
- 524 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/12(金) 01:08:15.51 ID:2yy0TBVvo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 525 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/12(金) 06:06:24.67 ID:yFABtujBO
- 乙
まさか神樹館での知り合いも出てくるとは…
- 526 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/12(金) 08:00:55.97 ID:2foTzSkSO
- 乙
- 527 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/12(金) 19:09:27.87 ID:xrJnKz9zO
- 元生徒会長が久遠さんに劣らないくらいに大人びて感じられるなもうちょっとくらい子供っぽくて良いんじゃないかな
- 528 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/13(土) 00:31:29.61 ID:UnSKi0mbo
-
遅くなってしまいましたが、少しだけ
- 529 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/13(土) 00:37:30.75 ID:UnSKi0mbo
-
東郷の尻すぼみしていくような声に元級友の少女は薄く口を開いて、閉じる
市内にまで手を伸ばした勇者部の活動を覗き見て、
足こそ不自由ではあっても、元気な姿を見せてくれていた東郷に何度話しかけようとしたか
偶然にも出会ってしまったとき、なんて声をかけようか
どれだけそれを考えてきたことか
それなのに――
「信じてたよ。みんな」
何も言えない少女の傍らで、友人の少女は笑みを浮かべていた
「鷲尾さんも乃木さんもきっと無事だって……3人が良く話してた。良く会ってた久遠さんって人のことも」
天乃「……」
天乃は自分へと向けられた視線に、頷く
少女の語った3人は、乃木園子、鷲尾須美
そして……三ノ輪銀のことだろう
忘れていない、覚えている
惜しくも失われてしまった一人
けれど、3人であることには変わりがないとその強い瞳は物語る
- 530 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/13(土) 00:47:14.34 ID:UnSKi0mbo
-
少女は隣の友人を一瞥すると、小さく息を吐く
もう一度東郷達に向けられた瞳は喜びが感じられる輝きが見て取れた
「本当に良かった、助けてくれてありがとう」
東郷「……っ」
園子「わっしー……」
東郷は風の気持ちが分かってしまう気がして言葉が出なかった
諦めてしまった過去の罪悪感に、純粋な感謝はあまりにも重くて
そんなことないと、見捨ててしまおうと考えたこともあるのだと
自分の中に残り続ける罪を、告白してしまいたい
そうしなければ、ありがとうと言う言葉は受け取る資格がないと思えてくるからだ
でも、それは相応しくないと天乃が首を振った
しかし……東郷は下唇を噛んだ
その胸中を知る由もなく、黙ってしまった少女が駆け出す
周りの生徒が避ける道をただひたすら真っ直ぐに
「乃木さんっ鷲尾さんっ!」
東郷「っ!」
園子「わぁっ!?」
そうして、東郷と園子の体を不器用に抱きしめた
「ありがと……ありがとう……生きててくれてっ!」
- 531 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/13(土) 01:00:05.55 ID:UnSKi0mbo
-
銀のようにお葬式はなかった
ただ、二人には二度と会うことが出来ないという話があって
彼女たちが勇者であるということには厳しい箝口令が敷かれて
鷲尾さんが生きているかもしれない。そんな噂を耳にしても、直接確認することは出来なかった
でもこれでようやく確信できる
守ってくれていた、頑張ってくれていた二人はちゃんと……銀の分も生きてくれていると
「良かった、本当に良かったよ……っ」
東郷「……」
ぽつりぽつりと、滴り落ちる少女の正直な感情を東郷の胸はしっかりと受け止める
ここまで言われて、口を閉ざすのか
何も言えないほどの罪悪感に押しつぶされてしまうのか
いや、ここまで想われていたからこそ自分の中にある罪は
友奈「東郷さん」
すぐ隣にいる友奈の優しい声が今の名前を呼ぶ
優しい表情、温もりの感じられる瞳
友奈は「でも、諦めなかったんだよ」と、笑う
東郷「友奈ちゃん……」
諦めかけた
そうして見捨てようとも考えてしまった
けれど、樹のおかげで結果的には諦めないで戦い抜いた
だからいいのだと笑みを見せてくれる友奈に頷いて、抱きしめる元級友の背中を擦る
東郷「ありがとう心配してくれて。応援してくれて……覚えていてくれて、ありがとう」
- 532 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/13(土) 01:26:51.73 ID:UnSKi0mbo
-
自分は殆ど覚えていないまま戦ってきた
満開の代償とはいえ忘却し、この世界事葬っても良いかもしれないとさえ考えた
その間、ずっと覚えていてくれたのだ
鷲尾と名乗っていた東郷のことも
園子のことも
喪ってしまった銀のことも、ずっと
園子「ミノさんのこともちゃんと覚えていてくれて、嬉しいな〜……」
「当たり前だよ、忘れたりしない」
何があろうと、何年経とうと、何十年後だろうと
ずっとずっと、覚えている
あの頃の神樹館の勇者は三人だった
今は、讃州中学所属となってもっと増えているけれど
「久遠さん……久遠先輩も、ずっとずっと、守ってくれてありがとうございました」
天乃「私こそ、守られてばっかりだったわ」
見知らぬ後輩の、誉め言葉に天乃は笑顔で答える
天乃「これからも仲良くしてあげてね。もう、大赦の箝口令なんて無視して良いんだから」
天乃の大赦への嫌味なお願いに、元級友たちは元気よく、嬉しそうに二つ返事で答えてくれた
- 533 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/13(土) 01:33:00.93 ID:UnSKi0mbo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 534 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/13(土) 06:57:21.64 ID:xjgl6+/jO
- 乙
神樹館のみんなも会えなくなって辛かっただろうな…
- 535 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/13(土) 22:51:51.80 ID:UnSKi0mbo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 536 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/13(土) 22:56:23.09 ID:8QrLrn7SO
- よっしゃ
- 537 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/13(土) 23:52:37.16 ID:UnSKi0mbo
-
東郷と園子が一度は断たれた仲を深めるのを見送った天乃は
それを見守っていた元生徒会長へと声をかけた
天乃「ありがとね」
「久遠さん……いえ、こちらこそ」
天乃「他校のパイプだけではどうにもならなかったでしょうに」
「そこは、みなさんの人徳ですね」
園子や東郷……そのほかのみんなも
想い、考えてくれる人がいて
その人たちが嘘めいた話に頷いて協力をしてくれたからこそ、実現させられたことだ
「私個人では、乃木さんが転入でも編入でもないなど気付くことは出来ませんでしたから」
それを知ってこその過去の話
園子が通っていた小学校から、クラス、その友人
繋がりを手繰り寄せられたのは、生徒会長だったからではないと少女は思う
天乃「それでも、主導してくれたのは貴女なんでしょう?」
「はい」
天乃「ありがとうね」
「……慣れたもののはずなのにこそばゆいものですね」
- 538 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 01:02:48.71 ID:NaDSaHYAo
-
天乃の再三の感謝に照れ笑いを浮かべた元生徒会長は
東郷達から目を離し、天乃へと移す
「喜んでいただけたなら幸いです」
天乃「嬉しいわ。凄く、言葉では表しつくせないほどよ」
以前は禁忌とさえ言えた勇者に関わり続け
それを支えようとさえしてくれて……今ここにまで来てくれている
普通は出来ないことだし
やろうと思ってもやらないことだ
それを彼女たちはやり遂げてくれた
天乃「お礼をされたくてやったわけじゃない。でも、やり遂げられてよかったと心から思える」
「私達もです。お礼をされたくてこの集まりが出来たわけではありません。でも、これが出来てよかったと心から思います」
お礼がしたくて集まった
その結果、お礼を言われることになったけれど、それはやっぱり結果論
でも嬉しいし、出来てよかったと思える
喜びの重なりは、どこまで続いても幸せを産み続ける
沙織「生きててよかった。だね」
- 539 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 01:36:10.76 ID:NaDSaHYAo
-
天乃と元生徒会長
二人の会話の中に入り込んだ沙織は、天乃の両肩に手を置いて、少しだけ引く
天乃「ちょっ」
「お噂はかねがね」
沙織を見た元会長は嬉しそうに言って、首を振る
沙織は何か言いたげにじっと見たが口は開かなかった
「久遠さん、伊集院さんどうかこれからもお元気で」
天乃「ええ、貴女も」
もちろん、みんなもだ
讃州中学を卒業したことで、みんなはこの世界でバラバラに分かれていく
今はまだ狭い世界だからそこまで散らばることもないだろうけれど
天乃も沙織もそして風も
高校に進まなかった者達は今しばらく同じ学校に通うことはない
「もし必要なら、お勉強も――」
沙織「それは大丈夫です」
「そう、ですか?」
沙織「大丈夫」
沙織のちょっとつんとした物言いにも、元生徒会長は笑顔で頷く
沙織がなぜそんな態度なのかも分かっているからだろう
「本当に、伊集院さんは久遠さんのことが好きなんですね」
沙織「当たり前だよっ、あたしの心120%の愛があるんだもん」
- 540 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 01:38:11.41 ID:NaDSaHYAo
-
では遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
- 541 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 04:49:57.25 ID:1tL0L3kzO
- 乙
さおりんかわいいなあ
- 542 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 07:19:19.06 ID:LTi87NwLO
- 乙
さすが元祖久遠さんガチ勢のさおりん
- 543 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 18:08:08.49 ID:NaDSaHYAo
-
遅くなりましたが、少しずつ
- 544 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 19:24:22.23 ID:NaDSaHYAo
-
「それは、羨ましい限りですね」
天乃「ええ」
「さて……そろそろお約束した時間ですね」
連れてきてからもう、十数分は経過している
みんなはこのまま一夜明かすことも厭わないかもしれないけれど
勇者部、特に天乃はそうもいっていられない立場の人だ
「久遠さん、ご卒業おめでとうございます…正直に言えば、ご一緒叶わないとも思っていました」
天乃「特例中の特例だもの。貴女の想像が正しいわ」
「はい。想像通りでした」
元生徒会長は笑顔で想像通りだと語った
叶わないとは思ったが、叶う事だけを考えていたからだ
もし叶わなければ……卒業式は中止になっていたかもしれない
天乃「……そっか。大事にならなくてよかった」
風「ほんとにありがとね……らしくもなく、泣かされるわ」
「それは喜ばしい限りですね。犬吠埼さんも、三年間、お疲れ様でした」
- 545 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 20:09:57.11 ID:NaDSaHYAo
-
風「でも楽しかった」
勇者を集めるために始まった勇者部
後ろめたい気持ちを抱えながらの期間もあったけれど、
辛くとも苦しくとも楽しい時間だったと、風は笑い零す
夏凜「在校生としては、ここまでされると逆に恥ずかしくなるけど」
友奈「でも、嬉しいよ」
東郷「称賛は恥じずに胸を張りましょう、夏凜ちゃん」
まだ残る、今年から三年生になる夏凜達
同じく一年あがって二年生になり、部長を任されている樹はそうですね。と答えた
樹「守り抜けたこと、誇りに思わなきゃです」
「樹さん。これからの勇者部の皆さんのご健勝お祈りしています」
樹「はい……任せてください」
元生徒会長の差出た手を、受け取る
勇者部の新しい部長として、樹は風達が積み上げたものを壊すわけにはいかない
それに勝れなくとも、並び立つものではありたいと思う
樹「これからも、勇者部は勇者部として、人に寄り添う部活であり続けます」
- 546 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 20:40:47.89 ID:uSLD42teO
- 樹ちゃん格好いい…
- 547 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 21:08:49.19 ID:NaDSaHYAo
-
園子「いっつん部長の仰せのままに」
樹「部長はつけなくてもいいですよ」
いつも通りで良いですよと樹は笑う
部長はまだ、荷が勝ちすぎる
もう少し頑張ってからだ
「勇者部ー……ふぁいとーっ!」
「樹ちゃーんっ頑張れ〜っ」
卒業してしまう三年生、次の卒業を控える二年生、共に進む一年生
その応援を耳にして、樹は照れ笑いを浮かべる
姉がみんなと共に作り上げたものは、それほどのものなのだ
樹「ありがとうございます」
一礼する樹への声援は続く
卒業式で歌った校歌よりも盛大にそれは響いて
代表として立つ元生徒会長は、手を振る
「また会えることを楽しみにしています」
何十人もの見送り
やっぱり卒業式とは違うそれは、ちょっぴり気恥ずかしいものだった
- 548 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 22:18:45.32 ID:NaDSaHYAo
-
樹「部室、行きませんか?」
天乃「初めからそのつもりよ。友奈は大丈夫?」
友奈「全然大丈夫です」
友奈の外出許可は一応、日暮れまでは可能となっている
流石に丸一日や、翌朝までという許可は貰えなかった
夏凜「二人は?」
天乃「瞳に頼んでる。千景も一緒だから大丈夫よ」
星乃と月乃は今、千景と一緒に瞳の車の中だという連絡があった
起きてはいるが、空腹は訴えていないとのことで
もうしばらくは時間がある
どうせなら部室を紹介しても良いかもしれない
覚えてくれるかは分からないけれど。
風「しっかし……あんなこと企んでるなんて」
園子「予想外だったんよ〜……また、会えるなんて」
沙織「ずっと、久遠さん……勇者部のこと考えてくれてたんだよね」
- 549 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 22:58:37.47 ID:NaDSaHYAo
-
学校中の生徒達が、勇者部のことを考えてくれたからこその喜び
それは天乃の人としての人気があってこそかもしれないが
そもそも、勇者部というものがあったからこそ天乃は人との繋がりをより多く持つことになった
やはり、勇者部の存在はとても大きい
背負うものの大きさを、樹は再度自覚する
天乃「神樹館時代のお友達とは、連絡先交換したの?」
東郷「はい。また……今度はクラスみんなで集まろうって話になったので」
園子「ミノさんに会いに行こうってなんたんよ〜」
天乃「銀のところね……英霊碑のところも?」
夏凜「流石にそっちは難しいんじゃないの?」
大赦の力が弱まったとはいえ
まだ色々と縛りは残っていることだろう
特に、そういうところに触れさせて貰えるかどうか
園子「なんとかできるようにして欲しいなぁ〜」
夏凜「なんで私に上目遣いすんのよ」
シッシッと手で払う夏凜にもっと詰め寄って歩く園子は
もう一度「お願いなんよ〜」と悪戯っぽくすり寄る
天乃「こういう時、夏凜は私のよって手を引くべきなのかしら?」
風「それはそれで面白そうだからやってみても良いんじゃない?」
風の唆す一言には、夏凜が「やらなくていい」と声を張り上げた
- 550 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/14(日) 23:01:03.00 ID:NaDSaHYAo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 551 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 23:03:35.53 ID:uSLD42teO
- 乙
むしろそのっちは夏凜ちゃんの手を引く方を期待してそう
- 552 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/15(月) 04:50:32.56 ID:dCVIh65cO
- 乙
勇者部はこれで1年入らなきゃ来年いきなり廃部の危機に
- 553 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/15(月) 23:04:26.39 ID:9GqYhoino
-
では少しだけ
- 554 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/15(月) 23:05:12.95 ID:7ziu/bsRO
- かもん
- 555 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/15(月) 23:14:15.64 ID:9GqYhoino
-
沙織「あたしはやって欲しいなぁ」
夏凜「それは沙織だからでしょ」
東郷「そのっちだからあれだけど、男性に言い寄られていたら助けて欲しいとは思いますね」
園子に相も変わらずする寄られている夏凜は否定的だが、
沙織と東郷はそうして欲しいようで、以外と話は続く
友奈「私は……う〜ん……」
悩ましそうな友奈の心中を察してか
東郷が「友奈ちゃんもあり得ると思う」と誘う
友奈は天乃と似て自分が……と思うけれど
天乃だって自分はあり得ないと枠外に考えておきながら人気は根強い
本人に悟らせないように秘めているだけで人気はあると東郷は力説する
友奈「そうかなぁ」
風「そうなんじゃない? 特に親しみやすさで言えば、天乃よりも上だと思うわよ?」
友奈「そ、それほどはっ」
天乃「大丈夫、自信を持って」
友奈は可愛らしさもあるし、馴染み易さもある
異性を勘違いさせてしまいそうな距離感もある
人気はあるはずだと天乃は自信を持つよう言ったのだが、沙織は「え〜」っと不満げに声を漏らす
沙織「そこは何でもいいけど私を一番に想ってね。とか言わなきゃ」
天乃「そういうものなの?」
夏凜「そこで私を見て解決できるって本気で思ってる?」
- 556 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/15(月) 23:58:35.99 ID:9GqYhoino
-
天乃「読者家の夏凜ちゃんなら知ってると思って」
夏凜「馬鹿にした読書家止めてくれない?」
天乃「馬鹿にはしてないわよ。信じてるもの」
夏凜は事実読書家だ
最近は少々偏りのある小説……新書等に手を出していて
瞳と暮らすようになってから始まっているその趣味は継続している
情動的なものに対しての答えはまだ、見いだせていないのかもしれないけれど
欲しい答えをくれそうな気がする。だから、頼る
夏凜「……それ、応えられなくても恨んだりすんじゃないわよ?」
天乃「それならそれで、一緒に答えを探すだけだわ」
夏凜が信頼に応えられないのなら
共に答えを探せば良い。恨むもわけもない
天乃は「ね?」と、夏凜の手を取る
意図はない、ただ、呼吸をするかのように自然と
不意に繋がった手、引かれる体に夏凜は目を見開く
くっついていた園子のささやかな温もりが剥がれる
夏凜「ん……努力は、する……」
全身に注がれる視線に居心地が悪くて、
夏凜の声は弱く目は背けられたが、
動きの止まった夏凜の朱に染まった頬はだんだんと色を取り戻していく
夏凜「するわよ、必要ならね」
- 557 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/16(火) 00:50:48.18 ID:E2KDgAGao
-
樹「久遠先輩の為なら必要だと思いますけど」
樹は夏凜のことを見上げて笑みを浮かべる
夏凜の心の動きはこの約一年で色々と分かるようになった
いや、元々わかりやすかったのかもしれない
夏凜の目が向けられたのを感じて、やっぱり笑うのだ
樹「わたしも、久遠先輩にはそうして貰いたいなって思います」
東郷「私の受け入れ態勢は万全ですよ!」
風「あんたはわいせつ物だからダメ」
東郷「風先輩!?」
どうせ性的なことをするんだろう。と
いわれもない……とは言えないかもしれない決めつけを受けた東郷の悲鳴が廊下に響く
最近は全くそんなことがない東郷としては否定も大きくなる
もっとも、無いかと言えばあるのだけれど。
天乃「優柔不断で悪いわね」
樹「あっ……」
手を取られ、はっとした樹に天乃は微笑む
夏凜と樹、二人の手を引く天乃はみんなの一歩先を歩く
もう自分よりも小さくなった大きい背中に、樹は首を振る
樹「そんなことはないですよ」
樹は以前も夏凜に発破をかけようとしたことがあって
今もまたそれに似たようなことをしようとしてしまったのだと察したからだ
夏凜には夏凜のペースがある
東郷の横やりも、それをからかうような風の発言もそれが分かってのものだろう
天乃「はーい、さっさと部室に行きましょ。新部長と新副部長には抱負を語って貰うから考えておいてね?」
樹「えぇっ!?」
夏凜「聞いてないんだけど!?」
天乃「さっきの体育館の話で、聞きたくなっちゃった」
お願いね? と、子供染みた表情で言われては拒否もできない
そんな急に……とぼやく夏凜の声を聞きながら、
樹は体育館での勢いをまた持ち出せるだろうかと、少し、迷った
- 558 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/16(火) 00:51:16.27 ID:E2KDgAGao
-
では遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 559 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/16(火) 06:06:13.82 ID:nHBgB4iGO
- 乙
素直な夏凜ちゃんかわいい
- 560 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/16(火) 17:11:28.77 ID:6L+GQQ2d0
- ここに来て公式の方で女子同士で子供作れるっぽい話来て笑った
やったね久遠さん!そういう問題もクリアされたよ!
- 561 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/16(火) 19:49:04.66 ID:iicW2TE/O
- 公式でやっていいのか…でもこれで久遠さんも許される!やった!
- 562 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/16(火) 23:41:19.40 ID:E2KDgAGao
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
- 563 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/16(火) 23:46:17.08 ID:f/0JYizNO
- 乙です
- 564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/17(水) 00:06:38.15 ID:9NJVH57YO
- 乙
これで久遠さんたちの子作りも捗るな
- 565 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/17(水) 22:49:15.42 ID:ziWguJEco
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 566 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/17(水) 22:51:18.66 ID:XAlY5Z/+O
- やったぜ
- 567 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2020/06/17(水) 23:37:44.56 ID:SfvAFQWZ0
- 成し遂げたぜ
- 568 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/18(木) 00:46:07.97 ID:ZP2V2qteo
-
勇者部の部室となっている家庭科準備室
その扉の鍵を、風はゆっくり差し込んで開く
風「これも、今日が最後か」
讃州中学の制服を着るのも、部室の鍵を開けるのも
三年間何度もしてきたことが終わるというのは
ほんの些細な事であっても、少し寂しくなる
風「これからは……別に樹を選任ってわけでもないのよね」
天乃「部長はもっとたくさんの仕事があるものね」
部員が増えてからは、一番先に行けそうな人が鍵を借りるようにしていた
こっそり……複製もあるが。
部室に入った天乃は、変わりのない部室の様子を懐かしむ
天乃「……なんだか、懐かしいわ」
沙織「実際に久しぶりだからね。昨日のリハーサルのあとは帰っちゃったから」
- 569 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/18(木) 01:07:28.12 ID:ZP2V2qteo
-
東郷「勇者部自体もほとんど活動休止状態だったので、何も変わってないんです」
夏凜「友奈は重傷だったし、私達も活動できるほどの余裕はなかったんだから仕方がないでしょ」
友奈ほどではない。
けれど、夏凜達だって入院が必要だったし、
学校に戻ってからでも勇者部の活動よりも……という状態だった
天乃が退院してからは少しずつ活動を始めようかと言うところではあったが、
入院していたことや、
広がった世界のこともあってか、依頼はほぼ出てきていない
ここ最近では、ボランティア支援を行ったくらいだろうか
風「天乃に会いたいって相談もあったわよ」
おもむろに切り出した風がパソコンを弄って「メールじゃなかったっけ」と呟く
答えたのは、樹だった
樹「直接、だったかな。メールもあったと思うけど、勇者部じゃなくて」
園子「あれは相談と言うより、お願いだったんよ〜」
樹がみせた端末に届いた友達からのメールには、
久遠先輩に会えないか。というお願いが来ている
天乃「断ったのね」
樹「まだ久遠先輩が本調子じゃない時期だったので」
- 570 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/18(木) 01:32:28.59 ID:ZP2V2qteo
-
天乃に一声かければ二つ返事で許可が下りる
しかしまだリハビリも必要で
慣れない育児にも向きわなければならなかった天乃には余裕があるとは言えなかった
だから、今はまだ難しいと直接でも連絡でも答えてきた
黙っていたことを申し訳ないと思ったのか、
渋い顔をする樹達を見て、天乃は「そういえば」と考える
天乃「昨日の騒ぎはそのせいだったのかしら」
天乃が登校してきたという話が瞬く間に出回って
一目見よう、一声かけようと結構な騒ぎになった
夏凜達が困らせることになると一言牽制しただけで8割ほど落ち着きを取り戻したものの
朝は靴だけだった下駄箱が、帰りには気持ちが溢れ出るほどになっていたのは卒業式に劣らない思い出だ
沙織「それもあったと思うよ。うん、間違いなく」
友奈「そんなことがあったんですね」
東郷「久遠先輩、その……恋文は読まれたんですか?」
天乃「無事でよかったですとかお元気そうで〜とか。子供のことが一番多かったわね」
恋愛感情をしたためたというよりは
親愛の情ゆえに募った安堵によるものだった
天乃「東郷が思っているようなものはなかったわよ」
ラブレターではない。
そう否定した天乃を見た夏凜の口からは、「天乃……」と若干の怒りを含んだ声が漏れる
夏凜「卒業式なんだから早く寝ろって言わなかったっけ?」
天乃「ちょ、ちょっとだけよ! ちょっとだけ! そう、一時間くらい……それだけっ」
夏凜「それがダメだって言ってんのよ!」
伺うような天乃の視線を、夏凜は一蹴した
- 571 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/18(木) 01:33:30.48 ID:ZP2V2qteo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 572 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/18(木) 02:05:26.89 ID:NPeuEmTUO
- 乙
本当に恋文なかったのかな〜
- 573 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/18(木) 05:13:20.61 ID:LjUz4VxCO
- 乙
事あるごとに入退院繰り返してたからなぁ
- 574 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/18(木) 22:16:28.58 ID:ZP2V2qteo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 575 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/18(木) 22:29:41.73 ID:he2IoL/FO
- きてたー
- 576 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/18(木) 23:12:07.82 ID:ZP2V2qteo
-
天乃「もしも今日の放課後のお時間下さいとかあったら大変じゃない」
風「子持ちの女に持ち掛けるとか、あっちゃダメでしょ」
天乃が普通に病弱なだけの女子中学生であったなら、
ラブレターが送られていたとしても別に悪いことではないだろう
天乃が妊娠を公にしていなかったなら、
それもまた、許されていたことかもしれない
しかし、天乃はすでに公言している
天乃を思う人ならば、誰にでも伝わってしまうようなその話は
知らなかった。とは中々に言えることではないだろう
沙織「女……女の子じゃなくて、女か……」
意味ありげにしみじみと沙織は独り言ちる
学生と言う肩書があってこそ子供か
己の子を持つまでは子供か
伴侶と共に寄り添うまでは子供か
明確には年齢かもしれないが、沙織はそんな判別はどうでもいいかと投げ捨てた
沙織「なんか、女の子じゃなくて女って言うの、ちょっと感じ変わるね」
- 577 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/19(金) 00:01:08.06 ID:KwAEdvXAo
-
園子「俺の女だ! とか〜?」
東郷「俺の女の子よりは、語感は良いですね」
風「いやそういう意味で言ったんじゃないんだけど……」
思わぬところから延びていく道筋を断つように風は呟く
無意識にも女の子ではなく女と呼んだことに思うところはあるのだが
自分の心がどう考えているのかそれとなく感じられて、緩い笑みを浮かべる
夏凜「最後の部室でのやりとりが天乃が女の子か女かなんてのは……花が枯れそうね」
天乃「もちろん、部長副部長の引継ぎと抱負は語って貰うわよ?」
夏凜「本気で言ってんの?」
友奈「せっかくだもんね。卒業式みたいで良いと思う」
送辞と答辞、在校生と卒業生
それを考えれば、新部長副部長だけと言うのはどうだろうか
樹「久遠先輩とお姉ちゃんも、何かお話してくれませんか?」
天乃「私達……?」
風「話すことねぇ」
- 578 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/19(金) 00:42:27.59 ID:KwAEdvXAo
-
沙織「三年間のお気持ちとか、部長を担う上での先人の知恵とか」
天乃「部長はともかく私は特に何もやってなかったからね」
車いす生活の長かった天乃は、
副部長と言う役職を与えられてはいたものの、
これと言って特別なことは何もしてこなかった
副部長はそれこそ、肩書でしかなかった
それはきっと、風が部長の責務を強く持ち続けてくれていたからだろう
天乃「風のおかげよねぇ……私すっごく楽だったわ」
風「部長は嫌だとか言って逃げるから……」
夏凜「つまり、私も楽ってことで良い?」
副部長にされるのが不服なのか、夏凜はそうつぶやいて
その隣にいた樹は「何言ってるんですか」と、苦笑する
樹「お姉ちゃんに久遠先輩が抜けちゃうんですよ? 大変にはなりますが、楽になるなんてありえません」
東郷「樹ちゃんが今までにないほど優しい笑顔を浮かべてるわ……」
友奈「単純に人手が減っちゃうもんね」
園子「人手と言えば〜……そう、募集。部員募集も考えなきゃだね〜」
- 579 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/19(金) 00:50:11.33 ID:KwAEdvXAo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 580 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 04:05:02.17 ID:Reu1u7YBO
- 乙
勇者部に入って久遠さんと握手!
- 581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 06:48:19.98 ID:VNjLWdWdO
- 乙
久遠さんこの一年間の内に凄い速度で大人の女になっていったよね
- 582 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/19(金) 22:13:16.22 ID:KwAEdvXAo
-
では少しだけ
- 583 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 22:21:13.92 ID:VNjLWdWdO
- よしきた
- 584 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/19(金) 23:09:26.21 ID:KwAEdvXAo
-
樹「そうですね、それも考えないといけません」
天乃「今年、新入部員が入らないと来年は樹一人になっちゃうわよね」
樹「受験に差し支えがない程度になら、友達も手伝ってくれるとは思いますけど……」
樹は来年になれば三年生になる
必然的に友達も三年生である以上、風や天乃のように全日協力なんて言うのは簡単ではないだろう
部活動の助っ人だって、
友奈や夏凜といった運動部に向いている部員が一人ではなかったからこそ、
上手く回していくことが出来た
以前のように依頼が重なった場合には、いずれかを断る必要も出てくるかもしれない
樹は少し魔を置いて口を開いた
樹「最悪の場合、今年いっぱいで終わりにする。ということも一つの手だと考えてます」
友奈「勇者部を廃部にしちゃうの?」
樹「勇者部の活動はボランティアです。言ってしまえば、誰にでもできることなんじゃないかって私は思ってます」
樹はそこで言葉を切る
以前は弱弱しかった自分でさえ乗り越えられた道筋だ
勇者の戦いを除けば、勇者部としての活動はごく普通の女子中学生にも簡単だと言える
要は、みんなの為になることを勇んで行う心があるかどうかだからだ
樹「誰かに言われたからとかじゃなくて、自分でやりたいと思った人がやるべきことだと思うから……」
今年の入部希望者がいなくて、来年には自分一人となってしまったら、
そこで、幕を下ろしてしまうべきかもしれないと樹は考える
もちろん、勇者部の存続を断念するだけで活動自体は卒業まで続けるつもりではあるが。
- 585 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/19(金) 23:39:59.83 ID:KwAEdvXAo
-
風「まぁねぇ……強引に勧誘するような部活じゃないのは確かだわ」
東郷「自主性を重んじるものですから、賛同してくれる人がいなければ続けられないのは当然ですが……」
園子「だからと言って無くなっちゃうのは寂しいんよ」
無くなってしまうのは寂しいし悲しくもある
しかし、東郷や樹が言っていることは事実だ
自主性に委ねた結果消滅するのだとしたら、それはなんとも……
天乃はふと息を吐いたが、そこから言葉へとつなぐ前に夏凜の声が聞こえた
夏凜「元生徒会長にあんなこと言ってたのに、そこはいいわけ?」
樹「……あれは」
夏凜「勇者部は勇者部として人に寄り添う部活であり続ける」
夏凜は樹が言っていたことを繰り返す
あの手前、夏凜は手厚い言葉の数々を受けて恥ずかしいと照れくさそうにしていた
だから新部長として一足先に想いを語る樹を阻めなかった。
なんて、そんなわけがないだろう
夏凜「私は、良いと思ったわ」
自分にはらしくないけど。そんな内心の透ける困り眉が見えた
- 586 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/20(土) 00:38:11.25 ID:IWs/NOyEo
-
夏凜「だからってわけじゃないけど、今年一杯でやめる可能性なんて無意味なこと話す必要はないんじゃない?」
樹「夏凜さんは、新入生の中で入部してくれる人がいるって思いますか?」
樹の問いはもっともだ
これから讃州中学に通うことになる一年生
部員を募集するのは基本的にそこからだからだ
だが、夏凜は顔を顰めるとため息をつく
瞬きの後に見えたその瞳は、鋭いものだった
夏凜「新入生がこない。だから終わり……だったら、私は副部長なんて御免だわ」
沙織「三好さ――」
天乃が任命したからだろう
何を言うのかと夏凜に言おうとした沙織を、天乃は掴んで制する
これは部長と副部長の話合い
これからの勇者部の在り方を決めるものだ
風を横目に見ると、とても穏やかに見守っているが分かる
友奈は対立するような空気を感じてか、「あのね!」と声を上げた
友奈「えっと、まだ入部希望者がいないとは限らないよっ! 勇者部は色んな部活のお手伝いできるからすっごく楽しいし……」
東郷「でも、それを知ってるのは入部してるから。実際にやらないと分からないことを語られたって難しいと思うの」
特にいろんなことに手を出しているような部活は、
忙しくてプライベートが無くなってしまうのではないかと思われてしまうこともある
そうなったら、中々に手は出せないものだ
- 587 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/20(土) 00:38:37.37 ID:IWs/NOyEo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から
- 588 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/20(土) 00:48:12.68 ID:WRAs0SFkO
- 乙
廃部になったら寂しいし新入生来て欲しいな
- 589 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/20(土) 21:53:58.08 ID:IWs/NOyEo
-
では少しだけ
- 590 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/20(土) 21:55:54.61 ID:GfMvp2040
- やったー
- 591 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/20(土) 22:11:29.70 ID:xs0xhb3kO
- おk
- 592 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/20(土) 23:40:49.93 ID:IWs/NOyEo
-
友奈「それはそうだけど……」
園子「にぼっしーは新入生だけじゃなくて、在校生にも入部したいと思わせられるような部活にしたいって思ってるんじゃないかな」
東郷「在校生にも?」
言っていることに訂正する部分があるのか、
夏凜は園子の口出しに頷いて、東郷に目を向けた
夏凜「今でも、募集したら絶対に人は集まってくれるわよ」
今年から三年生、二年生の在校生の中からだ
勇者部に助力したいという申し出はきっとある
だが、それは勇者の栄光があり、
風や天乃といった先んじた存在があったからこそで
憧れた人がいた部活
だから自分もそこに協力をしたい。だろう
夏凜「それを、私達の力で続けていきたい」
風がいたから、天乃がいたから
勇者という存在がいたからではなく、勇者部の活動に共感したから。と言う理由でだ
正直に言えば理想論でしかないけれど
勇者部の活動と言うのは、そういうものだ
夏凜「新入生が入ってくれなかった。だからもう終わり。そんな気持ちで続けるもんじゃないでしょ」
- 593 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 00:45:14.93 ID:A4JoE/Z5o
-
樹「それは当然です」
樹だって存続出来ないからと言って、
もう終わりだなんて惰性で続けるつもりは毛頭ない
ちゃんと最後までやり抜くつもりではある
終わるために活動は先細りしていくことだろう
でも、それは致し方ないことだ
樹「ちゃんとやっていくつもりです……でも、新入生が入らなかったら、結局三年生だけになっちゃうんです」
夏凜達が卒業した後、
樹の同級生が入ってくれたとしても、その代限りになってしまう
樹達が三年生の時の二年生は、入ってくれなかった新入生だ
そうなってしまったら、望みは非常に薄い
樹「勇者部はいつまでも人に寄り添う部活でありたい、でも、誰かに強制するような部活であってはいけないと思います」
運動系の部活動のように
強く勧誘するような部活ではなく、あくまで自主的に
その結果、新入生に入部してくれる子がいなかったのなら
それはそれで、仕方がないと思うしかない
樹「出来る限りのことを尽くして、それでも勇者部が存続できないなら仕方がないと思います」
- 594 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 03:00:58.05 ID:A4JoE/Z5o
-
勇者部は賞を貰うような部活ではない
目に見える成果が得られるわけでもない
普通の部活とは違う
樹「残念、だけど」
残念そうに零す樹を見ていた友奈は、
あのね。と、手を挙げる
友奈「勧誘しなくても入部希望して貰えるような活動をしようってこと、かな?」
園子「そういうことになると思う」
友奈「それって今まで通りで良いのかな……」
他の部活動の応援を行ったり
町の清掃活動を行ったり、ボランティアを行ったり
幼稚園などで演劇会や朗読会を行ったり
そんな、今までの活動で良いのだろうかと、友奈は首をかしげる
東郷「こうしなきゃって、焦る必要はないんじゃない?」
今まで通りで在校生、新入生に訴えかけるような活動と言えるのか
それははっきりとは言えないけれど。
少なくともこうしなければならないという強迫観念に囚われた活動ではだめだというのははっきりしている
夏凜「私はそもそも、今までとは違う活動をしようだなんて一言も言ってないけど」
天乃「……回りくどいのよ」
ぼそっと呟いた天乃の声は、
夏凜の耳にしっかりと届いていた
- 595 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 03:01:42.85 ID:A4JoE/Z5o
-
遅くなってしまいましたが、ここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 596 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/21(日) 07:44:20.82 ID:tdvcELNXO
- 乙
- 597 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/21(日) 15:30:50.29 ID:UbBl0vvHO
- マダカナー
- 598 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 16:56:23.56 ID:A4JoE/Z5o
-
遅くなりましたが、少しずつ
- 599 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/21(日) 18:09:15.07 ID:W0cy0R2vO
- お、来てた
- 600 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 18:28:40.26 ID:A4JoE/Z5o
-
天乃「もっと、自分たちに自信を持つべきだわ」
夏凜「天乃がそれを言うか」
天乃「でも、みんなが言ってくれたことじゃない」
勇者部の活動は、一つ一つは地味な手助けかもしれない
勇者としてのお役目に比べたら、ちっぽけと言える
でも、そうして広がっていった繋がりは裏切らない
その結果を、ついさっきも見たはずだ
天乃「今まで通り、勇者部は勇者部らしく活動したらいいの」
風「新入部員がいなくても、変わらずにね」
樹「でも、もしもこのままお姉ちゃん達がいなくなっただけだったらどうするの?」
風「そこに自信を持ったらいいのよ。今までしてきたことに」
それは風を筆頭に
先代……と呼ぶにはまだ早いかもしれないが、
最初の勇者部が作り上げたものの結果だ
それを礎に、また新しい勇者部として積み上げていけばいいと、風は言う
風「今まではああたし達のおかげだって樹は考えてるけど、その達には樹。貴女も含まれてるんだから」
- 601 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 18:51:26.80 ID:A4JoE/Z5o
-
風「樹は、後輩に何が残してあげられるかを考えていけばいいのよ」
勇者部を残せた方が良いのは、それはそうかもしれない
けれどあくまで【みんなのためになることを勇んで行う部活】であり続けて欲しいのだ
勇者部の存続を最優先にしては、その根本が崩れてしまう
風「樹は、天乃の背中を追いたいってあたしに言ったでしょ?」
樹「うん……」
風「今度は、樹が追って貰えるような立派な部長になるのよ」
天乃のようになるのは状況も考えて不可能だとは思う
しかし、憧れの先輩にはきっとなれると風は信じている
一年前はまだ弱弱しく見えた樹は、一人で歩んでいけるほどに強くなった
それは大人と言うものに憧れる子供たちにとっては理想だ
背は低くて、一見したら子供である天乃がそうであったように
誰よりも優しく、けれど厳しく
弱くもあるけれど、とても強い
後輩を導くことが出来る先輩を目指してみればいい
風「背中で語りなさい、樹」
- 602 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 19:11:21.64 ID:A4JoE/Z5o
-
樹の肩を軽く叩いて、抱き寄せる
小さな体は弱く感じられるが、内側に抱いている志はとても強い
その強さを認めているからこそ
風は樹を部長に任命し、東郷達はそれを支持した
夏凜「天乃の卑屈……じゃなかった、謙虚なところまで真似なくていいのよ」
天乃「卑屈って」
友奈「樹ちゃんなら大丈夫、きっと、ついてきてくれる人がいるよっ」
東郷「最初は風先輩と久遠先輩に憧れた入部だとしても、そこから樹部長についてきてよかったって言って貰えるように」
まずは自分に自信を持つこと。と、東郷は微笑む
樹は自信さえあれば、成し遂げられる強い子だ
身を持ってそれを知っている東郷は、そこにこそ厚い信頼を置いている
自分の姉と憧れの先輩
二人の抜けた穴を自分に埋められるかどうか不安になる気持ちは理解できる
けれど、そこでやってみよう。と、踏み出すことさえできれば大丈夫なはずだ
園子「今年一年は、にぼっしーがいる。私達も微力ながら助ける。それで、いっつんらしい勇者部を作り上げよう」
- 603 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 20:33:02.89 ID:A4JoE/Z5o
-
樹「私らしい勇者部……」
天乃「そのために、副部長をこき使いなさい」
夏凜「こき使われてはやらないわよ」
ふんっと素っ気なくして見せた夏凜だが、
ちゃんと助けてくれるのはみんな分かっている
夏凜「でも、助けてあげるわ」
夏凜はそう言うと、何を思ってか軽く鼻で笑う
夏凜「私は、そうね……部長を初代の部長より立派にしてみせる」
今でも、劣る部分もあるかもしれないけれど、立派だ
けれどそれ以上に
一年後、三年生になった樹が
誰からも慕われるような、勇者部部長になれるようにすると、夏凜は語る
夏凜「それが私の抱負。そのための支えになってあげる」
背中を叩かれて、
風の抱擁から離れた樹は驚いた様子もなく、前を向く
樹「それなら、私はお姉ちゃんよりも凄くて、久遠先輩よりもかっこいい部長になってみせます」
- 604 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 21:15:38.37 ID:A4JoE/Z5o
-
それを目指して、一年間を生きていく
勇者部としての活動を続けて、少しずつ近づいていきたい
近づいても近づいても離れていく理想に
天乃「私はもう、追い抜かれてると思うけど」
樹「久遠先輩はずっと先です」
天乃はもう大人になってしまったから
まだまだ先になってしまったと樹は思っている
天乃が自分をどう見ているかは分からないが
憧れは尽きることはない
それは風にも言えることだ
樹「お姉ちゃん、それでいい?」
風「任せる」
沙織「樹ちゃんなら大丈夫だろうけど、間違えそうになったら正すのが副部長だよ」
夏凜「解ってるわよ」
- 605 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 22:17:26.35 ID:A4JoE/Z5o
-
友奈「なんだか、これで終わりって言うのは少し寂しいですね」
部室には八人もいる
しかし明日になれば五人になってしまう
夏凜がまだいない時期にまで戻ることになるだけだ
寂しいのは人数が減ったからではなく
賑やかな二人がいなくなってしまうからだ
風は友奈に劣らず明るい人で活気があった
天乃は夏凜をからかうし、それに乗っかるものだから
中々に賑やかだった
それが、無くなる
東郷「活動を始める風先輩の一声が、しばらく耳に残りそうです」
風「録音する?」
夏凜「要らない」
風の茶化しを一蹴する
別に声が聴けなくなるわけじゃない
それどころか、学校にいない時は常に一緒に居る状態なのだ
あえない寂しさなんてものは全くない
友奈が【少し】と言ったのだってだからこそだ
- 606 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 22:45:36.19 ID:A4JoE/Z5o
-
声が途切れて、間を置く
一歩引いた樹は風と天乃をその視界に納める
樹「久遠先輩、お姉ちゃん。お疲れ様でした」
友奈「短い間でしたけど、勇者部でご一緒出来てとてもうれしかったです」
東郷「これからのことは任せてください」
天乃「……ええ」
風「なになに急に」
家に帰ればまた一緒
だとしても、これで勇者部としてはお別れになってしまうから
だから、ちゃんと部員としての感謝をする
風の明るい声にはちょっぴり、空気が揺らぐ
園子「わたしも……今までできなかった分、頑張るんよ」
夏凜「風、天乃」
名前を呼んで差し出した夏凜の手には、勇者部という刺繍が入ったお守りが二つある
少し不格好に傾いているように見えるのは、それが手作りだからだろう
夏凜「引退で祝うのも変な話だけど、まぁ……これから大変だと思うから」
- 607 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 22:59:39.53 ID:A4JoE/Z5o
-
天乃「作ったの? 夏凜が?」
友奈「みんなで頑張ったんです」
東郷「素人にしては、上手くできていると思うので、大目に見てくださいね」
照れくさそうに頬を染める東郷は夏凜の手から二人に渡ったお守りを見ると、
見ていられないとばかりに目を背ける
隣の友奈も「上手くできてると思うよ」と東郷に声をかけているのを見る限りでは
最終的な縫い付けは東郷が担ったように思える
素人にしては……と自信なさげだけれど
十分しっかりできていると天乃は思う
天乃「ありがと……」
風は大事に手のひらに置く天乃を一瞥すると
自分の分を優しく手に取って嬉しそうに笑みを浮かべる
風「ほんと、いつ作ってたのよ」
友奈「学校でこっそり作ってました」
園子「ふーみん先輩、受験勉強するって真っ先に帰ってくれたから〜」
- 608 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 23:16:24.91 ID:A4JoE/Z5o
-
風「でも、友奈は?」
友奈「私はデザインを考えたんです……それと、中に入れるもの」
友奈は学校に行くことが出来なかったため、
そのくらいしかすることが出来なかった
東郷「中には友奈ちゃんが作ってくれた押し花が入ってます」
本当はもう少し手伝いがしたかったという友奈は
でも手伝わなかったから上手くできたのかもしれないと、苦笑して
そんなことないと東郷は友奈を否定する
そんな二人をしり目に夏凜は天乃へと近づく
夏凜「頑張りなさいよ、天乃」
天乃「どうしよう……私、お礼とか……」
夏凜「元気でいてくれれば、それでいい」
天乃の小さな体を抱きしめる
抱きしめることさえ怖かったあの頃に比べればずいぶんと戻ってきてくれた華奢な体を、少しだけ強く
夏凜「ありがと」
そこで言葉を切った夏凜は、少し躊躇ったように口を閉じる
あんたと呼んでいたし、天乃と呼んでいた
だから、でも、今日くらいはと……意を決する
夏凜「今日までありがと、先輩」
- 609 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/21(日) 23:41:32.32 ID:A4JoE/Z5o
-
天乃「貴女に先輩って呼ばれるなんて」
夏凜「これが最後」
もう呼ばないからねと天乃を離した夏凜が下がると、
東郷は部室に置かれていたカメラを持ち出して、部員名簿にもなっている黒板の方を向く
東郷「写真、撮りませんか?」
風「良いわねぇ」
樹「それなら黒板にちょっとだけっ」
一足先に小さな黒板に向かった樹は、
もう枠に収まらなくなってしまった部員名の左側に、
天乃先輩、風先輩、沙織先輩……あえて下の名前で書いて、
卒業おめでとうございます。と、付け加える
沙織「あたしも?」
東郷「伊集院先輩も、です」
正式に入部届を出してはいないけれど、れっきとした部員だと東郷は頷いて
卒業おめでとうございます。の下に樹と夏凜の部長副部長就任を祝うメッセージを書く
園子「わたしも〜」
のりに乗った園子のおかげで斜め下にはサンチョの可愛らしい絵が追加され、
ならこれもと風の「勇者部は永久に不滅」という言葉が大きく書かれた
風「勇者部はこれからも続いていく。たとえ、樹が卒業してもね」
樹「そうできるように、頑張る」
- 610 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/22(月) 00:00:38.93 ID:HkLya9B/o
-
東郷「……久遠先輩」
セットしたカメラを確認していた東郷は天乃を呼ぶ
もう一度ファインダーを覗いて、今度は友奈を見る
東郷「友奈ちゃんのこと抱っこしちゃってください」
友奈「ぇっ!?」
東郷「人数が多いから、納めたいの」
友奈「でもっ、えっ……」
天乃「少しだけよ。負担はかけないから」
足首に負担をかけないために、お姫様抱っこで友奈を迎え入れる
ちゃんと支えているからと天乃は言うが、
そういう問題じゃないと友奈は顔を真っ赤にする
リハビリ程度の運動しかできていない身だ
天乃の体にとって重荷名のではと不安だが、天乃は大丈夫よ。と微笑む
夏凜「ほんとに平気? 落とされたら困るんだけど」
天乃「女の子を抱くくらいはできるわよ。歩くわけじゃないから大丈夫」
東郷「それでは、押しますっ」
風「もっとそっち寄って、そっち」
東郷が撮影ボタンを押すと、電子音が流れ始める
東郷が駆け寄って、風が樹を抱きよせ沙織へと身を寄せる
その分、夏凜と天乃も密着して
園子「わっしーこっちこっち〜」
天乃の隣に東郷を挟んで、園子がぎゅっと抱きしめる
天乃「ちょっ」
風「勇者部はーっ!」
風の声が上がると「ふめつーっ!」と、全員の明るい声が部室に重なって
小さなシャッター音はその中に消えていく
天乃の「みんなが押すから」という文句は笑い声に呑まれる
やや強引におさまった一枚は、記念すべき一枚となった
- 611 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/22(月) 00:03:33.46 ID:HkLya9B/o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 612 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/22(月) 00:12:18.37 ID:CHF3MxK4O
- 乙
久遠さんたちついに卒業か…本当に終わりが近づいて来てて寂しくなるな
まだフライング気味かも知れないけど作者さんが大丈夫ならくあゆシリーズはこれからも続いて欲しい
- 613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/22(月) 01:28:36.03 ID:DZWVKsM1O
- 乙
友奈ちゃん役得だな
- 614 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/22(月) 20:45:33.58 ID:HkLya9B/o
-
では少しだけ
- 615 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/22(月) 21:33:03.31 ID:MuUvWvwRO
- きてたか
- 616 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/22(月) 22:14:32.75 ID:HkLya9B/o
-
√ 3月14日目 昼 (自宅)
友奈が退院できていたなら、かめやに向かうところなのだが
仮退院ともいえる外出許可な状況ではだめだという友奈に従って家での昼食となった
天乃「私は中華が良いんだけど」
風「辛さを三割減するなら許可する」
夏凜「三割でもダメでしょ……特に麻婆系は絶対に食べさせられない」
キッチンの方から聞こえてくる声に、
リビングで待機する夏凜の呆れた声が零れる
同じく待機している友奈は「そんなに?」と、不思議そうに首を傾げた
夏凜「普通のを作ろうとすれば作れるんだけど……」
友奈「それも辛いの?」
東郷「料理本通りに作ると、刺激が足りないって」
友奈「刺激……そうだよね」
味覚がなかった時期
その間に唯一味覚に近い刺激を得られたとすれば、辛味だ
普通煮えられるものでは不足するのだろうと、友奈は察する
友奈「夏凜ちゃんは、それでも食べてるんだよね?」
- 617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/22(月) 22:35:43.91 ID:HkLya9B/o
-
夏凜「は? なんで?」
友奈「えっ違うの?」
きょとんとした表情を見せる友奈から、
背中しか見えないキッチンの方に目を向けた夏凜は、目を伏せる
見透かされた。
そんな恥じらいの感じられる頬には、裏は感じない
察したのは、夏凜が「三割でもダメ」と断言出来ていたからだ
沙織「夏凜ちゃんはちゃんと食べてるんだよね」
園子「食べ過ぎなければ云々って、力説してたんよ〜」
夏凜「……別に嘘は言ってないし」
天乃は優しい人だ
周りが嫌だと言えば、天乃は絶対にその料理を作らない
だから、無理のない範囲でその好みに付き合っている
夏凜はそれを認めないけれど。
夏凜「なんにしても友奈には食べさせられない。無理」
樹「お医者さんにバレちゃったら怒られますからね」
- 618 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/22(月) 23:21:49.98 ID:HkLya9B/o
-
友奈「それで……」
以前天乃の手料理のお見舞いがないのを聞いたときに、
渋面で無理だった。と言っていた理由がようやく分かって、友奈は思わず笑う
辛すぎる料理なんてお見舞いに持ってきたら
次の日には出禁になってしまうかもしれない
絶対安静の体に悶えるほどの辛味を与えるなど、酷い話だ
友奈「退院したら、作って貰えるかな?」
千景「一緒に作ったら良いんじゃない?」
精霊らしくなく普通にリビングの扉を開けて入ってきた
千景は、前後に背負った赤ん坊を軽く揺らす
一見したら千景が母親に思えるような姿だ
さっきまで天乃に抱かれていたのとまったく変わらずに大人しいのは
それだけ好かれている証拠だろう
千景「彼女も喜ぶと思うわ」
沙織「星乃ちゃん達寝てるねぇ」
千景「ええ、さっき母乳をあげていたから」
- 619 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/22(月) 23:56:40.19 ID:HkLya9B/o
-
千景「もうすぐ全員そろうのね」
友奈「その代わりに、若葉さん達が出かけちゃうんですよね?」
千景「一年も経たない内に帰ってくるはずよ」
勇者に劣ることのない力を持っている若葉達は
歌野と水都の目的地である諏訪には徒歩でも一週間かからないで辿り着くことが出来る
そのあと、
西暦時代に反応があったと言われる北方と南西の島に向かう予定らしい
北方から南西に向かうために一度戻ることになっている。
今も人が生きているとは思えないが、念のためだ
天乃「みんなー、運んで頂戴」
樹「はーいっ!」
千景「……」
キッチンへとみんなが駆けていく
それはまるで母親に呼ばれた子供のようで
走ったら危ないと困ったように言う天乃と目が合う
千景「母親ね。久遠さんは」
友奈「そうですね……早く、帰ってきたいです」
車椅子のひじ掛けを撫でる
天乃が使っていた車椅子
これを使わなくなるのは寂しいけれど、でも、また隣で歩きたいと、友奈は思った
- 620 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/23(火) 00:05:01.67 ID:hTPCIEY/o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 621 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/23(火) 00:15:51.69 ID:IWIEzZ20O
- 乙
若葉は1年の単身赴任か…
- 622 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/23(火) 00:16:14.68 ID:0Z6NQVx0O
- 乙
友奈ちゃんもケガが早く治るといいなぁ
- 623 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/23(火) 20:57:34.47 ID:hTPCIEY/o
-
では少しだけ
- 624 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/23(火) 21:12:46.09 ID:hTPCIEY/o
-
友奈の外出許可の申請が通った時間を考えると、
夕食を一緒に取るにはかなり早い時間にしなければいけないことと
夏凜のツッコミと、風の手伝いもあって
お医者様から怒られるような料理が一品も出なかった昼食は、ちょっぴり豪華だった
食べ終えた後には、一応だがケーキもあった
東郷「手作りも考えたけど、同棲しているから諦めたわ」
天乃「言ってくれれば知らない振りしたのに」
沙織「サプライズでやりたかったって意味じゃないかな」
夏凜「分かってて言ってるから気にしなくていいわよ、多分」
沙織の補足に補足を加えた夏凜に、天乃は笑顔で頷く
ケーキはあくまで卒業祝いで用意されたものだ
東郷が洋菓子を手作りしてくれるという点でも特別感が強いものだけれど
残念ながら、それは果たされなかった
もうしばらくしたら訪れるもう一個のお祝いサプライズは進行中だ
- 625 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/23(火) 21:42:37.95 ID:hTPCIEY/o
-
天乃「友奈、帰っちゃうんでしょう?」
友奈「外泊許可は貰えなかったので……」
風「治ってる途中の今下手したら一生左足がダメになる可能性もあるって話だからね」
勇者だったおかげで、また歩けるようになれる程度で済んだ
ただの女の子になってしまった今は、
ちょっとの無理でもダメになってしまうことがある
園子「ゆーゆもあともう少しの辛抱なんよ〜」
樹「そうですね。友奈さん、待ってます」
友奈「えへへっ……ありがと〜」
友奈はちょっぴり恥ずかしそうに笑うと
でもね。と、小さく口を開いた
友奈「みんなが毎日お見舞いに来てくれるから、全然大丈夫だよ」
風「ほんと、部屋は空けてるから。焦らないでゆっくりね?」
友奈「はいっ」
- 626 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/23(火) 22:02:12.77 ID:hTPCIEY/o
-
東郷「退院したら久遠先輩がまたお姫様抱っこしてくれるって」
友奈「う、嬉しいけど……恥ずかしいよ」
写真を撮るときにもされたけれどあの密着感は、とても心に悪い
友奈の熱くなってしまう体温に対して
元から少しひんやりしている天乃の体はとても明確に感じられる
ドキドキと高鳴る音が聞こえてしま和無いかと気が気じゃなかった
夜を共にした関係であっても、
それを悟られてしまったら向けられた笑みを見ることが出来なくなってしまいそうで。
天乃「どうしてお姫様抱っこ限定なのよ」
夏凜「筋トレになるから?」
園子「にぼっしーのそういうところ、ちょっとないかな〜」
夏凜「ちょ……冗談よ」
ふんっと園子の視線から顔を背けさせて、照れ笑いから余裕のなくなった友奈を見る
友奈はどちらかと言えば、抱っこされるよりもする側とみられることが多い
男勝りではないのに、快活さに引き立たされる女の子っぽくもどこか異性めいた感覚
そんな友奈だからこそ、天乃ととは女の子であって欲しい。
男女で分けられるのなら男子側に振られる感覚を知ってる夏凜としては、そう思っている。
簡単に言えば――そうされている友奈が可愛いのだ
- 627 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/23(火) 22:33:02.29 ID:hTPCIEY/o
-
天乃「お姫様抱っこじゃなくても、なんだってしてあげるから」
友奈の後ろからそっと抱きしめた天乃は耳元でそうっと囁いて、頬にキスをする
友奈「っ」
天乃「だからちゃんと完璧に治すこと」
友奈「は……ひゃいっ」
赤くなった友奈は唇の触れたところに手を添える
ほんのちょっぴり天乃の潤いが感じられるのは、さっきまで飲み物を口にしていたからだろう
抱きしめられるなんて思ってなかった
キスされるなんて思ってなかった
準備不足な心はもう一杯一杯で
ぼうっとしてしまった友奈を、東郷達は優しく見守る
東郷が撮影の時にお姫様抱っこを要求したのは、
友奈が普段はお見舞いの時しか触れ合えない分の寂しさを感じているのではと思ったからだ
あまり口にはしないし、友奈自身だってそこまで大きく思ってはいないであろう部分
けれど、天乃は知ってか知らずか友奈への対応はとても柔らかくて
そんな気持ちなど簡単に満たしてくれるだろうと、感じた
そしてやっぱり。
東郷「久遠先輩、後ろから抱きしめての頬への接吻は私もされたいです」
そうなってくるとちょっぴり妬けてくる
- 628 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/23(火) 22:38:49.84 ID:hTPCIEY/o
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 629 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/23(火) 22:47:04.15 ID:ZWriiTZgO
- 乙
久遠さんもお姫様抱っこされてばかりなくらい弱ってた頃より大分体力が戻ってきたんだなぁ
- 630 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/24(水) 01:26:20.36 ID:QNXVyn3l0
- 乙
- 631 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/24(水) 23:57:19.45 ID:ZRoS8JHWo
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます。
明日はできれば通常時間から
- 632 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/24(水) 23:58:54.77 ID:pyCg01bYO
- 乙ですー
- 633 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/25(木) 23:26:57.26 ID:bys6yqMso
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/25(木) 23:27:15.45 ID:/7OIXSfTO
- やったぜ
- 635 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/26(金) 00:36:22.26 ID:IJP2PJgCo
-
天乃「東郷がそれだけで満足してくれるとは思えないのだけど」
東郷「時と場合によりますね」
風「時と場合ねぇ?」
風は訝しげに言う
東郷は確かに、場合によってはそもそも過度な接触を避ける節度のそれなりにある子だ
けれど、それと同じくらいに場合によっては触れてくる
風の考えを察しているであろう東郷は「時と場合です」と繰り返す
東郷「特に、夜は駄目です……それは、みんな同じだと思いますが」
樹「それは確かにそうですよね。夜、ベッドの上でそうされたら、良いのかなって思っちゃいます」
園子「押し倒すんよ〜」
きっと天さんは受け入れてくれるからね〜と、
にこやかに言ってくれる園子にはみんなが同意していて
そんなことないとは、言わせて貰えないだろう
天乃「押し倒されると困るから抵抗するけど、良いの?」
夏凜「どうせ貧弱じゃない、あんた」
- 636 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/26(金) 01:09:32.88 ID:IJP2PJgCo
-
天乃「酷い言い草ね」
でも事実だ
多少なりに力を取り戻した天乃だけれど、
やっぱりまだまだみんなには勝てない
せいぜい、怪我を庇う必要のある友奈くらいだ
今はまだ樹にすら負ける
と言うより、勇者になる必要が無くなっても鍛えることを止めない樹がいけないのだ
戦うのを目的としていないその努力は天乃を抱くためだけの積み重ね
暫くはずっと、天乃はみんなに力負けするだろう
だから、と天乃は夏凜を見上げる
天乃「だったら、優しくしてよね」
園子がやるように、夏凜に身を寄せる
天乃の方が背が低い分夏凜の体が傾いて、驚いた声がくすぐったく感じる
園子の感極まった声が聞こえた
風や樹のちょっぴり弾む楽しんでいる声がする
けれど、天乃はその瞳に夏凜だけを映して
天乃「優しくしてくれなきゃ……嫌よ」
夏凜の腕を抱いた
- 637 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/26(金) 01:41:46.30 ID:IJP2PJgCo
-
夏凜「や、優しくする……けど……」
天乃の体温、体の柔らかさ
抱き着く天乃の見上げる瞳には夏凜も強くは出られなくなってしまった
止める気のない園子達の一方で
星乃達を抱いている千景だけが、眉を顰めた
千景「せめて、子供が見ていないところでやってくれないかしら」
夏凜「他に言うことない?」
千景「お邪魔しました。とでも言えば良い?」
夏凜に対して素っ気なく答えた千景はその声とは裏腹に苦笑を零した
子供を連れて避難するのは別に構わないけれど
今はまだ昼だし、場所はリビング
そもそも、天乃にはそんな気はないはずだ
夏凜が酷いことを言うから、ムッとして攻めてみているだけで。
千景「引きはがせばいいんじゃないかしら」
夏凜「それはそうだけど……」
夏凜の視線が天乃に落ちる
天乃の視線はそれとぶつかって――ふっと微笑む
天乃「引きはがさないだけ嬉しいけれど、抱きしめてくれたらもっと嬉しかったわ」
なんて、天乃は日々培う駆け引きの一端を、垣間見せてみた
- 638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/26(金) 01:43:27.71 ID:IJP2PJgCo
-
では遅くなりましたが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 639 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/26(金) 06:05:33.08 ID:+JJ29YrSO
- 乙
久遠さんの夜は色々な意味で忙しくなりそうだな
- 640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/26(金) 11:42:44.52 ID:PJ/6fcaBO
- 乙
久遠さんがその気になれば毎日だってあり得るぞ
- 641 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/27(土) 21:27:33.69 ID:nxyfOrueo
-
昨日は出来ませんでしたが、少しだけ
- 642 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/27(土) 21:37:58.63 ID:AzIYyJgFO
- よっしゃ
- 643 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/27(土) 22:30:54.01 ID:nxyfOrueo
-
天乃の追撃に困り果てた夏凜だったが、
千景の視線があったからか、はっとして首を振ると
天乃の体をちょっとだけ離した。
夏凜「それはこの状況じゃ無理……悪いけど」
天乃「ばーか」
夏凜「状況考えてよ、お願いだから」
これがもし、
天乃がどこかに旅立つ見送りであるのだとしたら
夏凜も抱きしめることは出来る
もしかしたら、その一歩踏み込んだ先のことだってできるかもしれない
でも、そうじゃない今は難しい。
なにより、それをした後の天乃が大変になる
- 644 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/27(土) 23:19:41.54 ID:nxyfOrueo
-
天乃「ふふっ、ごめんなさい」
冗談よ。と、天乃は言う。
夏凜は二人きりの時は、それなりに相手をしてくれる。
今だって、ちゃんと
だからこれだけでも十分だと、天乃は夏凜の体を抱きしめてから、離れる。
友奈「退院したら、私が真っ先に抱きしめますね」
東郷「友奈ちゃん、私は?」
友奈「えへへっ、東郷さんもっ」
友奈は車椅子のまま、東郷の腰に腕を回す
今までの友奈のスキンシップに比べてとても頼りない距離感に
東郷は寂しそうに笑みを浮かべて「ありがとう」と、友奈の頭を撫でる
東郷「私と久遠先輩を一緒に抱きしめてもいいわ」
風「あんた……ブレないわね……」
- 645 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/28(日) 00:14:15.77 ID:Kl6LqDIno
-
友奈を病院へと送るために、瞳の車に乗せたあと
一緒に行くと言った天乃だけれど、友奈との
子供達と一緒に居てあげるべきだという友奈の言葉に折れて、
代わりに東郷が一緒に病院へと向かった
園子「天さんは、わっしーに夜這いされる準備もしておいた方が良いんよ〜」
天乃「そこは友奈が犠牲になってくれるわ。きっと」
少しくらいは、東郷の気持ちを発散させてくれるだろう
友奈の体を思えば、完全にとはいかないのが惜しいけれど。
天乃「今日は、夏凜が付き合ってくれる日なのよ」
樹「特別な日ですから、仕方がないですね」
特別な日だからこそ、
全員で天乃を囲いたいところだけれど
そんなことをしたら天乃が干からびるので、それは出来ない
風「夏凜、ちゃんとしなさいよ?」
夏凜「言われなくても分かってるわよ」
- 646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/28(日) 00:33:36.47 ID:Kl6LqDIno
-
天乃「ねぇ、ところでほかのみんなはどうしたの?」
千景「乃木さん達のことなら、出かけているわ」
風「あれ、どこ行くって?」
千景「橋の向こうまで」
もうすぐ帰ってくる予定だと千景は前置きして、
感度を確かめに行ったのだと言う
天乃の精霊として生きている若葉達は、天乃との精霊的な繋がりを持っている。
それが、どれほどまで維持できるのか。
千景「県外でも問題なかったわ」
樹「それって、つまり今も千景さんは話が出来てるってことですか?」
千景「ええ。一応」
沙織「あたしは半霊だから無理なのかな」
半分人間で半分が精霊
そんな状態の沙織は、流石に宿している力が他と比べて弱いのだろう。
残念そうに、首を振った。
- 647 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/28(日) 00:35:04.69 ID:Kl6LqDIno
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 01:21:23.27 ID:UI+QQWCTO
- 乙
千景が残ってくれているおかげである程度安心だな
- 649 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 07:06:05.51 ID:rod1SkNRO
- 乙
さおりんはまだ猿猴と一体化したままなのね
- 650 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/28(日) 23:18:54.02 ID:Kl6LqDIno
-
遅くなりましたが少しだけ
- 651 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 23:24:11.42 ID:WhTgu2ZzO
- かもん
- 652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/28(日) 23:57:33.30 ID:Kl6LqDIno
-
樹「久遠先輩とのつながりがあるだけうらやましいです……」
沙織「それを言われると困っちゃうな」
精霊の繋がりは、千景たち完全な精霊であれば少なくとも県外まで通じる
半霊である沙織でさえ、隣の市まで離れても全く問題ないほど通じていて、
知ろうと思えば、天乃の居場所を知ることも出来る。
もちろん、天乃は逆に精霊の居場所を感じ取れるけれど。
プライベートを考えて、めったにしないが。
天乃「樹達とも、繋ごうと思えば繋がれるかもしれないわ」
樹「本当ですか?」
天乃「私に力は残ってるし、それをうつせば……少しだけね」
沙織達のように定着は出来ない
数秒か数分か、そのくらいだろう
千景「当然、ハイリスクよ。やらないべきだわ」
- 653 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 00:19:38.65 ID:qOJYjyeHo
-
風「当たり前でしょ。出来てもやらない」
天乃の体が落ち着いているのは、
子供に母乳を通して力の供給を行う以上のことをしていないからだ。
せっかく苦難を乗り越えて安定しているのに、
ちょっとつなげてみたいからと余計なことをして
体内に宿り続ける力のバランスが崩れたらどうなるか分かったものではない。
子供が成長しきったら、
天乃の体に宿る力は非常に微弱なものとなって、
もう、何があったって調子が崩れることはないとみているけれど。
東郷「でも、時々……その、そういうことをしてますけど、大丈夫ですか?」
夏凜「その程度じゃ問題ないくらいにまでは来てんのよ。だから、それ以上のこと」
例えばそう、純粋に血を分けるとか――だろうか。
それなら確実に久遠に染まるだろうから
- 654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 00:45:12.13 ID:qOJYjyeHo
-
園子「……子供が大きくなったら、私達のこと、説明しないとだね〜」
天乃「そうね……それ、結構重要な問題だわ」
今から少しずつ考えておいた方が良いかもしれない
どうして、天乃の周りには女の子しかいないのか
同棲していて、逆に父親がいない理由。
風「いっそ、包み隠さずぶっちゃけてもいいと思うけど」
天乃「私の子供だからって、暴れないとは限らないから」
もう、すでに千景や夏凜のことを気に入っているし、
親類縁者として認識して、特に波乱もなく終わってくれる可能性も……ある。
天乃「子供を育てるって、大変ね」
夏凜「そりゃそうでしょ」
簡単なはずがないと言った夏凜は、
でも、ちゃんと助けるから。と、天乃に笑みを見せる
素直な気持ちを打ち明けたせいか、ちょっぴり頬が染まっているのが愛らしい
それを見てか、園子はとてもうれしそうで。
園子「夕飯はにぼっしーの秘密サプリ飯でけって〜いっ」
夏凜「はぁ!?」
東郷「精力増強を図るのねそのっち……流石だわ」
樹「それ、私達にも影響出ませんか……?」
- 655 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 00:46:20.35 ID:qOJYjyeHo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から
- 656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/29(月) 06:11:58.92 ID:OX+BKYbkO
- 乙
五郎くんのことについても話しとかないとだな
- 657 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 21:22:03.75 ID:qOJYjyeHo
-
では少しだけ
- 658 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/29(月) 21:26:06.32 ID:ihyx1VMUO
- よしきた
- 659 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 21:50:03.22 ID:qOJYjyeHo
-
天乃「普通のお夕飯が良いわ」
風「まぁ、食べるなら……の、話しだけどね」
風は困ったように言うと、お腹を撫でる。
食べられる余裕はあるけれど、夕飯のことを考えるほどではない。
甘い物もあって、今は十分満たされていた。
天乃「時間も考えるべきかしら……」
夏凜「私達はともかく、天乃は極力抜くのは考えない方が良いんじゃない?」
樹「そうですね……軽食でも口にしてください」
産後間もないというほどではないにしても、
まだ母乳を上げる期間である天乃は、しっかりと食事はしたほうが良いと、樹は言う。
天乃の場合、
太るだのなんだの気にしなくていいというのは、
こういう時にアドバンテージかもしれない。
もっとも、理由が理由の為に天乃はそれをよく思っていないけれど。
- 660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 22:07:05.31 ID:qOJYjyeHo
-
天乃「それは良いのだけど、あまり遅いとなんだかちょっとね」
天乃が良いと言っても、みんなは同じ時間に夕食を取ってくれる
それはそれでみんなに迷惑が掛かってしまうので、あまりにも遅い時間はさけたい
なら――と、天乃は閃いたように笑みを浮かべる
天乃「いつもより1時間だけ遅くしましょ。それでいいかしら」
園子「軽食くらいは全然問題ないんよ〜」
夏凜「ならその辺りで軽く作る……ってことで」
夕食の予定も決めたところで、天乃が一息つくと
東郷がすぐに「久遠先輩」と、心配そうに声をかけた
東郷「お休みになったほうが良いと思います」
風「そうそう、卒業式、送迎会出てお昼だって作らせちゃったし」
天乃「お昼は良いのよ。まだ余力はあったから」
- 661 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 22:22:13.42 ID:qOJYjyeHo
-
樹「本当、ありがとうございました」
天乃「どういたしまして」
もう何度か言われたけれど、
改めてお礼をしてくれる樹に微笑んで、すぐ傍にいる夏凜の腕に体を寄せる
今度は冗談でも悪戯でもない
それをちゃんと分ってか、夏凜は天乃の背中に手を回した
天乃「さっきは抱いてくれなかったのに」
夏凜「疲れたんでしょ……だったら恥ずかしいとかどうとか、どうでもいいわよ」
頬が赤くなることさえない夏凜は真剣な目をしていて、
風達も茶化したりはしない。
千景「私はこの子達を連れて行くから――」
風「じゃぁあたしがベッドやりに行くわ」
樹「園子さん達は大丈夫だとは思いますけど、夏凜さん達をお願いします」
あっという間に指示が通っていくのを聞きながら、
天乃は困ったように、目を閉じる
天乃「そんな大げさにしなくていいのに」
- 662 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 22:34:12.38 ID:qOJYjyeHo
-
そうは言いつつ、天乃は少しずつ夏凜に頼る力を大きくしていく
以前のようにふっと意識が途絶えることはなくなったし、
強い眠気に襲われているなんて言うこともないけれど、
だんだんと、立っていられる力が無くなっていくのだ
夏凜「ゆっくり腰を下ろして」
天乃「……?」
言われるがままに、縋りついたまま腰を下げていくと、
夏凜の身体も一緒に下がって行って、膝裏の細く力強い感触を感じる
それが、所謂お姫様抱っこの兆候だと察した天乃は、
夏凜の腕から、胸の方に頭をスライドさせる
天乃「落としたら、承知しないんだから」
夏凜「信じなさいよ」
天乃「ん……」
ぐっつと力が加わって体が持ちあがると
一瞬の浮遊感の後には、優しく強く体が支えられる
天乃「いっつも、これだけしてくれたら……良いのに」
夏凜「たまにやるから特別――って、思っておいてくれると助かる」
夏凜はそう言って苦笑いを浮かべると、
園子達に控えて貰いながら、天乃を部屋へと運び込んだ
- 663 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/29(月) 22:38:49.02 ID:qOJYjyeHo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
早ければ明日には3月14日目終了予定
- 664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/29(月) 23:12:44.37 ID:ihyx1VMUO
- 乙
安定の夏凜ちゃんの旦那さん感よ
あまにぼのイチャイチャシーンがあるなら是非見届けたいなぁ
- 665 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/30(火) 01:44:49.05 ID:oxoFho72O
- 乙
久遠さんにご飯を一杯あげようキャンペーン開幕
- 666 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/06/30(火) 23:41:14.61 ID:sHt87klKo
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
- 667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/06/30(火) 23:45:12.40 ID:y35xKQu7O
- 乙ですー
- 668 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/01(水) 23:01:12.69 ID:2LiqMr/1o
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/01(水) 23:02:12.59 ID:peZJyfxQO
- やったぜ
- 670 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 00:44:47.12 ID:EbfTYSpoo
- √ 3月14日目 夕 (自宅)
夏凜によってベッドへと運ばれた天乃は、そのまま数時間眠ることになった。
今日は卒業式があったこと、送迎会に参加したこと
そして、普段通りに母乳を子供たちに与えたこと
最も大きな理由は力の源ともいる母乳を与えていることだが、
それを除いても、体力の落ちた天乃としては頑張りすぎたのだ
天乃「……悪いわね」
夏凜「気にしなくていい」
天乃「みんなは?」
夏凜「さぁ? 家の中には居ると思うわよ」
天乃が眠った後、
起こしてはいけないからと、みんなは部屋を出て行った。
出かけるような音はなかったし、そういう声かけもなかった。と、夏凜は言う
- 671 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 01:14:34.49 ID:EbfTYSpoo
-
天乃「なんでそういう……」
部屋を一歩出ればすぐにでも分かりそうなことを曖昧に答える夏凜を見上げる
二人……子供の天乃達なら三人は横になれそうな広いベッドの端に腰かけている夏凜は、
目を瞑ってはいるものの、起きている。
きっと、天乃が眠る前から――起きるまで。
天乃「ずっといてくれたのね」
夏凜「すぐに起きるって分かってたからよ」
天乃「そうじゃなかったら、一緒に寝ててくれた?」
夏凜「……少しは考えたけど」
はっきりとは言わない夏凜は、
きっとそのつもりだったのだろうと、天乃は勝手に考える。
ベッドの上の手に触れてみたけれど、驚いた様子はなく、困ったような吐息が聞こえた
- 672 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 01:41:43.22 ID:EbfTYSpoo
-
夏凜「なに? 言っておくけど……今日はさすがにしないからね?」
天乃「私、そんなに欲求不満な生活してると思う?」
夏凜「言葉の綾だから」
天乃は暇があれば―もちろん、日中は控えている―そういう付き合いがある。
と言うより、していかなければみんなが欲求不満になってしまう。
夏凜もそれが分かっているからか、
やっぱり、休ませることを優先してくれる。
その気持ちは嬉しいけれど、たまには――そんなこと関係ない。とか。
なんて、天乃は最近……ちょっとだけ思うこともある。
もちろん、それをされたら体調を崩す可能性が高いので
夏凜がそれをすることは今しばらく、絶対にないけれど。
天乃「御夕飯は?」
夏凜「誰も呼びに来てないし、まだだと思うけど――軽食で良いなら用意するけど」
天乃「インスタントだったら泣くわよ」
夏凜「簡単なものだけど、ちゃんと作るから」
そう言った夏凜に、頷く。
リビングに行くと天乃は言ったけれど、
部屋に持ってくるから大人しくしてて。と、夏凜に拒否されてしまった
- 673 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 01:42:45.95 ID:EbfTYSpoo
-
では短いですがここまでとさせていただきます。
明日はできれば少し早い時間から
- 674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/02(木) 03:22:24.30 ID:YatafSqUO
- 乙
みんなで同棲したら料理も当番制かな?
- 675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/02(木) 06:06:42.11 ID:e8+lGz65O
- 乙
元気になったとはいえまだまだデリケートな体の久遠さん
- 676 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 22:01:57.57 ID:EbfTYSpoo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 677 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 22:13:58.04 ID:EbfTYSpoo
-
少ししてから戻ってきた夏凜はお盆を持っていて、
そこはかとなく海のにおいが感じられるそれには多分、
夏凜の代名詞が関わっているのだろうと、天乃は一人納得する。
天乃「煮干しのにおいがするわ」
夏凜「少し使ったから……身は除いたわよ。細かくしようとも思ったけど」
噛むのも億劫でしょ。と、
気遣う夏凜が作ってきたのは、どうやらおかゆらしい。
水分たっぷりのつやつやとしたご飯がお椀の中で湯気を揺らしている。
天乃「みんなは?」
夏凜「まだいいって。あんたは食べておいた方が良いでしょ?」
天乃「それはそうなんだけど……」
夏凜「みんなと食べたかった?」
天乃「そんな我儘は言わないわ」
- 678 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/02(木) 22:15:07.48 ID:JRvVYsKJO
- 来てたか
- 679 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 22:29:47.94 ID:EbfTYSpoo
-
思っていないとは言わないけれど、
流石に、みんなが食欲のない時間帯に一緒に食べたいだなんて言えない。
本当は眠る予定はなかったし、
もう少しあとを予定していたが、力を消費した分を補うためには早い方が良くて。
ちょっぴり寂しいという気配でも漏れていたのか、
夏凜は仕方がない。とでも言いたげに眉を顰めて見せた。
夏凜「私は付き合うから、それで我慢しなさいよ」
天乃「ちょっとドキドキするからそう言うの、今は禁止」
弱った女の子はなんとやら……と言うか、
少しぼんやりとも仕掛けない今の状態には、
はっきりと感じられるものはより強調して感じられるものなのだろう
気絶するようなそぶりを見せた天乃だが、
夏凜はスプーンひとすくい分を手であおいで冷ましてから天乃の方に向ける。
夏凜「馬鹿なこと言ってないで少しでも食べなさい」
- 680 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 22:47:34.49 ID:EbfTYSpoo
-
夏凜が差し出したスプーンへと目を向けた天乃は、
それにゆっくりと口を近づけて、熱が多少なりと冷めているのを確認してから少しずつ口に含む。
じんわりと広がるぬくもり、
潮気と言うべきか、塩分の感じる汁とふやけたご飯が喉を通って芯に沁みる
意志に関係なく、夏凜の手でスプーンが引き抜かれていくのを見送って、冗談っぽく呟く。
天乃「サプリが溶けきってない」
夏凜「入ってないから」
次。と、遠慮なく差し向けられたそれを同じように口に含み、
飲み込んでから、ほぅ……と、息を吐いた。
天乃「ありがとう、美味しい」
夏凜「ん」
特に言葉はなかったものの、
夏凜の閉じた唇の奥で震えたそれは「気にしないで良いから」と言うものなのだろうと、天乃は察する。
ちょっぴり照れてくれたのも、なんだか可愛らしく思えた。
- 681 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 23:04:40.08 ID:EbfTYSpoo
-
夏凜「頑張らせすぎて……悪かったわね」
天乃「良いのよ。好きでやったことだもの」
卒業式で、入退場など可能な限り普通に行動させて貰ったのも、
そのあとの送迎会に参加していたのも、
友奈の為に料理をしていたのも。
誰かが悪いという話ではなく、天乃がやりたくてやったことなのだ
申し訳ない。と、そう項垂れられても、天乃は許すとは言えない。
天乃「今までは母乳をあげる程度だったから……今はこのくらいが限界なんだって知れてよかったわ」
リハビリをちょっぴり頑張っていたころにも似たようなことがあった。
だから、リハビリは慎重に慎重を重ねる必要があったし、全盛期がとても遠のいた状態にある。
夏凜「子供が成長してる証だって九尾が言ってたわ」
天乃「そう、なの?」
夏凜「無意識ではあるらしいんだけど、自分に適した力をよりしっかりと取り入れようとするから余分に持っていかれてるって話だった」
九尾を信じるなら――の話ではあるけれど、これに関しては別に疑う必要もない
夏凜「この後、あげられそう?」
天乃「頑張ってみるから……もっと食べさせて」
- 682 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/02(木) 23:07:32.41 ID:EbfTYSpoo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 683 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/02(木) 23:17:44.76 ID:JRvVYsKJO
- 乙
夫婦で力を合わせて双子ちゃんたちを育ててる感があるな
- 684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 14:07:07.93 ID:jD6CWEkJO
- 乙
子供の次は夏凜にもあげようか
- 685 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/04(土) 00:00:29.00 ID:03jiA34Go
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば早めの時間から。
- 686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/04(土) 00:15:06.83 ID:nMRcfaMuO
- 乙
- 687 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/04(土) 21:25:37.60 ID:03jiA34Go
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 688 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/04(土) 22:13:22.40 ID:03jiA34Go
-
天乃「病弱な奥さんって、どう?」
夏凜「何急に、自分の状況が嫌にでもなった?」
天乃「そういうわけじゃ、無いけど」
いままでがそうだったし、
病弱だからみんなに見捨てられるだなんて思ってはいないけれど、
夏凜があまりにも甲斐甲斐しく世話をしてくれるから、聞きたくなってしまう。
天乃「貴女が、優しいんだもの」
夏凜「……馬鹿なこと言うようなら、怒るけど」
天乃はまだ話していない。
けれど、夏凜はその口が何を言おうとしているのか、察したらしい。
天乃の口にスプーンを運ぶ手を止め、器に放る
まだ、ぺちゃりと音がする。
夏凜「私は別に、病弱なあんたが好きなわけじゃない。だから大事にするわけじゃない。だから、優しくしてるわけでもない」
- 689 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/04(土) 22:13:33.66 ID:hCe6tKMW0
- きてたー
- 690 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/04(土) 22:40:13.26 ID:03jiA34Go
-
あえて並べ立ててから、ゆっくりと口を開く。
天乃が本当にそう思っているかなんて聞くつもりはない
思っていようがいまいが、
天乃が病弱である自分はどうかと聞いてきた。それだけだから。
夏凜「そりゃ、弱ってると……いつも以上に優しくしちゃうわよ」
突っ撥ねるような冗談が出来るのも
天乃が元気であるからこそのもの。
そうでなければ、少しでも距離を近づけたくなってしまう。
夏凜「でも、だからってそう思われるのは困る」
天乃「だって」
夏凜「もう少し優しくするから……たぶん」
そう努力するから。と、夏凜は照れくさそうに言う
夏凜がツンとすることがあるのは、
頼り慣れていなかったころがそのまま残り続けているからだろうか。
けれど、だからこそ人のそういったところには敏感でもある。
- 691 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 00:07:35.70 ID:FKg4XMyTo
-
天乃「でも私……夏凜の照れ屋なところも好きよ」
夏凜「はっ!?」
天乃「ふふっ」
ツンとしたところを、天乃は照れ屋と言う
それがあってこその夏凜だと思うから
別に、自分が病弱の方が良いとは思っていない。
優しい夏凜は好きだけれど、
ちょっぴり行けずな夏凜も好きではある。
でも、優しくされたいとも思ってしまう
自分ってちょっぴり面倒な女の子だよね。と、思うくらいには面倒だ
天乃「夏凜は今のままが良い」
夏凜「そう?」
天乃「ちょっと意地悪だったりするけど、でも、して欲しい時にして欲しいことをしてくれるもの」
夏凜「抱きしめて欲しい時に抱きしめないのに?」
天乃「恥ずかしがってる貴女を見られる方が良いって思ってるってことよ」
- 692 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 00:38:18.72 ID:FKg4XMyTo
-
天乃はそう言って笑う。
夏凜の愛らしい姿を見られるのも
自分の体に触れてくれるのも
どちらも、天乃が望んでいることだ
両方してくれたら嬉しいとは思うけれど。
天乃「それに、抱いてって言ったら。抱いてくれるでしょう?」
夏凜「それは……まぁ……」
みんなの前では。なんて恥じらうこともあるけれど、
お願い。と言えば、限度はあるけれど一応聞いてくれないことはない
それでいい、それで十分だ。
天乃は、そう思う。
天乃「ところで、面倒くさい女の子は――好きかしら?」
夏凜「そう言う奇特なやつしか、あんたの傍になんて来ないわよ」
天乃「もうっ……否定してくれると思ったのに」
思ってないくせに。
そう困りつつも笑う夏凜を、天乃は嬉しそうに見つめていた
- 693 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 00:39:52.86 ID:FKg4XMyTo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/05(日) 02:36:49.77 ID:oNOIKxScO
- 乙
めんどくさい女の子大好きサークル勇者部
- 695 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/05(日) 07:05:46.70 ID:T+axfsq0O
- 乙
いつでも抱かれる気満々な久遠さん
- 696 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 19:01:34.36 ID:FKg4XMyTo
-
遅くなりましたが、少しずつ
- 697 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/05(日) 19:09:55.56 ID:vQtxb0lNO
- かもーん
- 698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 21:23:12.01 ID:FKg4XMyTo
-
食事を食べ終えた天乃は少し時間を置いてから、
授乳を行おうと、千景を呼んで子供達を連れてきて貰った。
天乃「あんまり、見ないでよね」
夏凜「今更でしょ」
天乃「それはそうだけど」
授乳の手伝いなんて、夏凜だけじゃなくみんなが経験しているし、
そもそも、天乃の裸体も何度も見てきている。
だから、正直に言ってしまうと、
天乃もそこまで恥ずかしさはなくなってきていた。
とはいえ――割り切るわけにもいかなくて。
天乃「夏凜にもいつか授乳させてみたいわ」
夏凜「はいはい。子供が出来たらね」
軽くあしらう夏凜の物言いにちょっぴりむっとした天乃だが、
絶対に子供作らせてあげるんだから――東郷が。と、
他人任せに、笑みを見せる
- 699 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 22:25:55.75 ID:FKg4XMyTo
-
夏凜「気を失うまで吸われないように気をつけなさいよ?」
天乃「大丈夫。そのために、夏凜にも一緒に居て貰うんだから」
夏凜「止めるのは天乃がするんだからね?」
天乃「ええ」
星乃と月乃
双子の女の子である二人は、だんだんと成長していっているのを感じる
髪が生えてきているし
言葉だって、少しずつしっかりとし始めている
ママ、パパ
それはもう、ちゃんと言ってると分かるほどで
なぜかパパと呼ばれることに、千景が少し困り顔で笑っていることもある
夏凜「妊娠期間みたいに、育つのも早かったりすると思う?」
天乃「どうかしらね……」
病院では、
妊娠から出産までの早さは異常だという話だったが、
産まれてからの成長に関しては、あまり大差がないという話だった
- 700 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 23:15:15.72 ID:FKg4XMyTo
-
天乃「夏凜は……背、伸びた?」
夏凜「量ってないから分からないけど」
天乃「体重増えた?」
夏凜「……筋肉はついた」
ぷいっと顔を背ける夏凜は、
自分のふくらはぎの部分を軽く抓る
御\脱衣所のところに体重計が置いてあるから、
みんながみんな、気になれば量ることが出来る
つい最近量った時に体重が増えていたけれど
日々積み重ねている鍛錬の結果であると、信じている
実際、食べ過ぎたりはしていないから大丈夫なはずだ
夏凜「天乃は……そういう変化もないの?」
天乃「体重、変わってないのよ。脂肪は落ちていると思うのだけど……」
夏凜「筋肉が点いた分体重が落ちてるんじゃないの?」
天乃「ん〜……だと、思うんだけどね」
- 701 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/05(日) 23:31:29.52 ID:omGMtsFI0
- 山科花菜
- 702 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 23:45:42.76 ID:FKg4XMyTo
-
天乃は力の関係で今現時点より、容姿は止まってしまう。ということは伝えられている。
なので、身長が148cmなのはもう諦めているけれど、
衰えた筋力のままではいられないので、日々少しずつ運動するようにしている。
その結果、筋肉はつくし脂肪は落ちる
しかし、体重に変動がないことから
固定されているのは天乃の成長が元から止まっていた時期なのかもしれない。と、推測している。
九尾は、理想の形に戻るだけだと言っているけれど。
天乃「理想……あと、10cmくらい背が高くなりたいわ」
夏凜「戻るわけじゃないから」
天乃が元々10cm背が高かったのなら、戻れるだろう
でも残念ながら、違う。
天乃「夏凜達も成長止まってくれたらいいのに」
夏凜「私は、あんたに成長して欲しい」
天乃「おばさんになっちゃうのに?」
夏凜「一緒におばさんになりたいのよ。当たり前のように、普通に……老いていきたい」
若い方が良いと思う気持ちはある
けれど、年老いていくのが普通で、日常で
だから、一緒に老けていきたいって思う。と、夏凜は母乳を飲む子供たちを優しく見つめた
- 703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/05(日) 23:52:18.77 ID:FKg4XMyTo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 704 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/05(日) 23:56:47.20 ID:vQtxb0lNO
- 乙
寿命こそあるけど久遠さんだけ老けないままなのもなぁ…
それはそれで後々辛いことになりそう
- 705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/06(月) 00:44:43.98 ID:iw3EPAhwO
- 乙
一応精霊組とか月星ちゃんがいるにはいるけどな
- 706 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/06(月) 21:55:22.49 ID:uJ5MVyUko
-
では少しだけ
- 707 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/06(月) 22:12:28.99 ID:Duw+NlMjO
- 来てたか
- 708 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/06(月) 22:26:34.12 ID:uJ5MVyUko
-
夏凜「子供も同じ可能性は高いし、精霊は確定してるけど……」
天乃と同じように、ある一定の容姿から変わることがない人たち。
精霊は沙織を除いてすでに亡くなっている存在のため、変わらない。
子供達にも天乃と同様の力が流れることになるため、ある一定の年齢から変わらない可能性はないとも言い切れない。
もちろん、
神樹様の種をとりこんだ天乃とは状態が違うため、
子供達は問題なく成長するとみているけれど。
天乃「置いていっちゃうんじゃないかって?」
夏凜「……それが一番、悩むことかもね」
天乃は永遠の15歳だ
その一方で、夏凜達はしっかりと歳を取っていくことになる
天乃の血を取り込んだことで、多少長生きで多少若々しいかもしれないが、
やっぱり――おいていくことになるだろう
天乃「普通の夫婦だって、どちらかに先立たれるものだわ」
- 709 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/06(月) 23:07:09.13 ID:uJ5MVyUko
-
夏凜「でも、付き合ってく相手だけがドンドン大人になっていくって嫌じゃない?」
天乃「綺麗になっていく貴女達を見られるってことでしょう?」
明確に言葉にするのなら、少女から女性になる。と、言うのだろうか。
それを見られるのは喜ばしいことだと思う。
天乃「そう考えると、貴女達の成長は止まられると困るわね」
夏凜「そう……でも、私の意見は変わらないわよ」
天乃「変えてとは、思ってないもの」
容姿年齢的に歳を重ねていくことが出来ないということは、
逆に考えれば、天乃はそれを見せてはあげられないということになる。
天乃は胸に感じる子供たちの温もりに微笑みながら、夏凜へと目を向けた
けれど、その瞳を悲し気に揺らして開こうとした口を閉じる
視線は子供へと戻って
天乃「長生きしてね」
夏凜「長生きするつもりよ。少なくとも、100歳は目指してる」
天乃「夏凜の健康志向ならあと10年は頑張って欲しいわ。110歳。どう?」
夏凜「これからの技術革新を想定して――120にしとく」
- 710 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/06(月) 23:24:13.23 ID:uJ5MVyUko
-
夏凜は冗談めかしてそう言うと、
いやいやいや……と、首を振った。
夏凜「そこまでよぼよぼなおばさんのまま生きていくのはきついかも」
天乃「若返りの血、飲ませてあげるから」
夏凜「老体に劇薬はちょっと」
今ならまだしも、
年老いた体に、天乃の力は毒にしかならない気がすると、夏凜は断る。
なら若いうちに頂いてしまえばいいのではとなるけれど、
過去の影響を考えれば、するわけにもいかない
天乃もそれが分かっているから「残念ね」と、苦笑する
天乃「ならせめて、全身全霊で若作りしておいてね」
夏凜「出来る限りやっておくわよ」
天乃「夏凜と一緒に居るだけで、娘さんだとか、お孫さんだなんて言われたくないわ」
夏凜「努力はする」
きっと無理だと、夏凜も天乃も思っているけれど、
あえて、それは口にしなかった。
- 711 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/06(月) 23:44:12.55 ID:uJ5MVyUko
-
天乃「せめて、孫の顔は見てよね」
夏凜「それは……子供達が結婚するかどうかによって変わるでしょ」
星乃と月乃に限っては、
天乃の血を色濃く継いでいる子供たちだ
天乃のように、異性に恋をするとは限らないし、
そもそも、恋愛と言う方向に流れるとは限らない。
一生独り身を貫いてしまうかもしれない
夏凜「天乃って、子供の交際許せるの?」
天乃「私以上に許されない恋なんてしないだろうし」
夏凜「それもそうか……」
納得。と、
夏凜の頷きを見た天乃は小さく笑う
ぐっぐっぐっ……と、
ちょっぴり痛みを感じそうな子供達の口の感触
それも大切なものだと、天乃はしっかりと受け止めた。
- 712 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/06(月) 23:45:16.70 ID:uJ5MVyUko
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
3月14日目 はあと(夜)
- 713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/06(月) 23:51:19.53 ID:Duw+NlMjO
- 乙
遠い将来のこと語り合った後に二人っきりの夜…
これは期待せざる負えない
- 714 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/07(火) 02:12:20.57 ID:Vf/HMjbfO
- 乙
一周目で5年で逝って友奈置いていったこと考えると年取らないとは言え相手の天寿まっとうするの見送れる久遠さんは幸せだなあと思う
- 715 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/07(火) 23:13:17.12 ID:n+0rJG6ho
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
- 716 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/07(火) 23:32:33.02 ID:aiUqjjKXO
- 乙ですー
- 717 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/08(水) 23:20:37.05 ID:w21mBv6ho
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 718 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/08(水) 23:28:38.25 ID:vDS3Kxq0O
- やったぜ
- 719 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/09(木) 00:56:20.84 ID:QRGyabBoo
- √ 3月14日目 夜 (自宅)
子供達も寝つき、みんなも寝静まりつつある時間
子供達の眠り小さなベッドの隣、大きなベッドの上で二人は並んで横になっていた。
天乃がいて夏凜がいて
それでもまだまだ余裕があるけれど、二人の距離は近く、両端を余らせる。
天乃「大変な一日だったわね」
夏凜「他人事のように言ってんじゃないわよ」
天乃「私の意識的には、大変な事はしてないもの」
卒業式と送迎会
それと愛情込めたお料理数品と、育児
普通に考えれば、天乃ならば大変な事なんかじゃなかった
けれど、今は大変な事なのだ
夏凜「寝なさいよ」
天乃「変に寝ちゃったから、まだ眠くないの」
- 720 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/09(木) 01:20:54.11 ID:QRGyabBoo
-
天乃「ねぇ……夏凜」
夏凜「ん?」
天乃「私の制服――使ってもいいわよ」
夏凜「身長的に無理」
天乃「胸の分行けそうな気がするけど」
夏凜「……へぇ?」
夏凜は顔を顰めながら、普段は出さない悪さを感じさせる声を漏らす。
天乃を除いた勇者部の中では後ろから二番目の身長ではあるが、
それでも天乃よりは数センチ高い。
しかし、天乃が来ている制服は、
言葉そのままに、身の丈に合っていない胸部の分大きめになっている。
風や沙織は難しいが、夏凜なら着れるかもしれないというのは間違っていないのだけれど、
それはそれであまり認めたくはないのだろう
夏凜は天乃の額を指でつく
夏凜「すぐに着れなくなる予定だから、今のうちに言ってなさい」
- 721 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/09(木) 01:33:24.45 ID:QRGyabBoo
-
天乃「背が伸びるの? それとも――」
夏凜「どっちもって言えたらいいんだけど」
天乃「揉まれたら大きくなるって、園子が言ってたけど」
夏凜「嘘に決まってるでしょ」
そんなこと信じてんじゃないわよ。と、
夏凜は苦笑いを浮かべて、園子の植え付けた冗談を一蹴する。
そもそも、身長じゃなくて胸の大きさを諦めていると取られたこと自体、不服だった。
小学校から今までの成長分と
あと数ヶ月もせずにほんのわずかな期間だけ同い年になることを考えると、億劫ではあるけれど。
夏凜「もしそうなら、天乃はもう少し大きくなるけど、良いの?」
天乃「これ以上は、ちょっと」
母乳をあげなくなったら落ち着くとは言われているが、
そんな気は全くしない状況に天乃は振り払って
天乃「夏凜は胸が大きい女の子の方が好き?」
夏凜「さぁ? 胸の大きさで選んでないから」
- 722 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/09(木) 01:40:55.36 ID:QRGyabBoo
-
笑いながら答えた夏凜を、天乃はじっと見つめて――少しだけ体を寄せる
体の不自由さが解消されて一番うれしかったのは
自分から近づくのが楽になったことかもしれないと、天乃は思う。
夏凜はさらに体が密着することを気にすることなく、
枕の位置を調整して受け入れる
天乃「大きい方が好きなら、一年間バストアップ頑張ろうと思ったのに」
夏凜「そんなこと頑張ってどうすんのよ……意味ある?」
天乃「え〜……」
そう言うこと言うの? なんて、
ちょっぴり不満をあらわにした天乃は「分かってないわね」と
そこはかとなく自慢げな表情を見せた
天乃「少しでも相手が好きな女の子になりたいって思うものなのよ」
夏凜「ん……胸よりその自慢げな顔の方が好きだけど」
本心をありのままに伝えて、夏凜は天乃のわずかに赤らんだ頬に触れた。
- 723 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/09(木) 01:41:31.98 ID:QRGyabBoo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/09(木) 06:13:01.76 ID:4ME9EO97O
- 乙
そういえば久遠さんはずっと制服着られる身長のままなんだよな
…ゴクリ
- 725 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/09(木) 22:32:57.86 ID:QRGyabBoo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 726 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/09(木) 22:48:56.22 ID:RMtkQyB/O
- きてたー
- 727 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/09(木) 22:59:06.73 ID:QRGyabBoo
-
夏凜「1年後も10年後も50年後も、現役で着こなせるんだから、残しておきなさいよ」
天乃「25歳で中学校の制服着てる奥さんって、どうなのよ」
夏凜「若くて可愛い自慢の奥さん?」
天乃「止めてよ、照れるわ」
夏凜の容赦ない答えに、天乃は笑いながら手を振り払って天井を仰ぐ
半分冗談で言ったと解っていても
琴線に触れてしまったのだから、恥じらいも仕方がない。
夏凜「高校に通えば、それも着こなせるのよ」
天乃「永遠の女子中学生と永遠の女子高校生?」
夏凜「100年後もね」
天乃「やだ……年齢制限引っかかりそう」
一見ではまず間違いなく、未成年だと思われてしまうだろうと、天乃はため息をつく
同じ地域に住み続けていれば、
行きつけのお店なら、分かってくれるかもしれないけれど。
天乃「常連のお店で、天乃さんの娘さん? とか言われるようになったら泣いちゃうかもしれない」
夏凜「悪乗りするだけでしょ、あんたの場合」
- 728 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/09(木) 23:44:14.80 ID:QRGyabBoo
-
天乃の本来の性格なら――と、夏凜は考えて苦笑いを浮かべる
泣くよりも「そうなんですよ。母に似ちゃって」なんて言う
星乃と月乃の二人が小学生くらいにまで育っていたら
何言ってるのおかーさん。なんて、困った顔で言うのだ。
夏凜「あまり、子供困らせないようにしなさいよ?」
天乃「当たり前でしょ。困らせるなんて」
夏凜「無自覚で困らせるんだけど」
天乃「無自覚は――どうしようもないわね」
夏凜への嫌味のように言って、小さく笑う。
冗談だと訂正して気を付けるからと、取り繕う。
天乃「ねぇ、もう一つ、聞きたいことがあるんだけど」
夏凜「そのあと寝てくれるなら」
天乃「約束はできないかな」
まだ眠くない。
だから眠れるかどうかわからないと答えたけれど、
夏凜はそれでも「それで?」と、促した
- 729 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/10(金) 00:04:25.85 ID:GyFkd812o
-
天乃「夏凜は子供と一緒と、私だけ。どっちとお出かけがしたい?」
夏凜「あー……そういう」
別に重苦しい話ではない。
寝る前の、ほんの僅かな大したことのない話
でもその軽さの割には答えに困らせる質問だ
天乃がどちらを望んでいるのか
寂しがりやなところを考えれば、二人きりの方が良いかもしれない
でも、子供を愛している母親として考えれば、子供も一緒の方が良い。
母親として考えるか、女の子として考えるか。
天乃「難しく考えなくていいのよ? ただ、夏凜がどっちがいいのかなってだけなんだから」
天乃が純粋な母親で、
夏凜以外のそういった交際相手や、千景のように乳母めいたことを好んで行ってくれる人がいないのであれば、
難しく考える必要もあるかもしれないけれど。
天乃「みんな、言えば手伝ってくれるから」
夏凜「その分、みんなも言ってくるけどね」
- 730 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/10(金) 00:18:29.97 ID:GyFkd812o
-
千景は顔に出さないかもしれないが、喜んで引き受けてくれる
そうしたら、夏凜と二人っきりで出かけることも容易だろう
もちろん、夏凜が言うようにみんながそれを求めてくるだろうけれど――でも。
天乃が子供も一緒で良いかと言えば二人きりにはならない。
夏凜「色んな負担を考えなくていい。ってことで良いなら、二人」
夏凜はそう言うと、
天乃がそれに口を開くよりも早く「だけど」と、続けた
夏凜「家族としては、子供も一緒が良い」
子供も一緒だと、デートとしては窮屈になってしまうかもしれない。
特に、まだ一人で出歩くことも出来ないような赤ちゃんならなおのこと。
それでも夏凜は子供一緒が良いと言う
夏凜「だからどちらかと言えば――子供も一緒」
天乃「良いの? 好きなことの一つもできないかもしれないのよ?」
夏凜「良いわよ別に、それでみんなが幸せなら」
夏凜としても、幸せそうな天乃と星乃と月乃
三人の傍に居られるのなら、それで十分だと、思っている。
- 731 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/10(金) 00:19:03.55 ID:GyFkd812o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 732 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/10(金) 00:25:50.89 ID:VsbkKaT4O
- 乙
久遠さんと子供たちの幸せを第一に考えることは一貫してブレない夏凜ちゃん
- 733 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/10(金) 08:04:38.55 ID:lhMDg7aNO
- 乙
- 734 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/11(土) 21:46:51.66 ID:WCnQIiBZo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 21:48:31.97 ID:6geNI4JUO
- やったぜ
- 736 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/11(土) 22:51:11.34 ID:WCnQIiBZo
-
天乃「夏凜も、それで幸せになれる?」
夏凜「私がなんであんたと付き合うって決めたか忘れたわけ?」
天乃「忘れては、無いけど」
夏凜「なら、それで答えは十分でしょ」
夏凜は照れくささの隠れている笑みを浮かべる
笑顔にしてやりたいと思った
幸せにしてあげたいと思った。
鍛錬ばかりの自分が――なんて、思ったこともあるけれど
でも、だからと諦める気は無く
あれはこれはと知識をつけ、頑張りに頑張って今に至っている
夏凜「正直、あんたがこうして生きてるだけで充分だって思ってる」
天乃「貴女の幸せもうちょっと要求しても良いんじゃない?」
夏凜「これでも充分、高望みだったんだけど……分からないとは言わせないわよ」
- 737 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/11(土) 23:24:32.12 ID:WCnQIiBZo
-
天乃「身に染みてるわ」
いつ死んでもおかしくない状態が長く、
それに最も寄り添おうとしてくれていた夏凜だ
生きててくれること
それを高望みと言うのも無理はない
天乃「卒業できたのも、みんなのおかげだわ……ありがとね」
夏凜「次は合格させてやりたいけど」
天乃「そこは私の頑張り次第ね」
夏凜「子育ての手伝いは出来る限りしてあげる」
そういった夏凜は、
それと……と、切り出す。
夏凜「出来たら、勉強も」
天乃「殆ど学校に行ってなかったけれど、あれでも勉強はしてたのよ?」
夏凜「後半部分は完全に出遅れてるでしょ」
天乃「そうねぇ……」
- 738 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 00:10:14.89 ID:s82IXrzHo
-
退院してから、
子供達の相手と家事、みんなとの触れ合い
それらの合間に少しずつ勉強をしているから、
遅れてはいるけれど、十分に問題無い程度には戻れてきている
だから――というのは、ちょっとつまらない
天乃「じゃぁ、三年生になってから夏凜がやるテストを私も家でやって、負けたら教えて貰うわ」
夏凜「現役と勝負しようってわけ?」
天乃「ええ、そうよ。私が勝ったら勉強教えてあげちゃうわ」
ふふんっと誇らしげに言って、先輩だもの。と笑う
そう言われてしまうと、
別にテストで負けても良いんじゃないかなんて、夏凜は悩んでしまう自分に悩む
正直、天乃に勉強を教わるのも幸せを感じられそうだからだ
夏凜「わざと負けたら怒る?」
天乃「教える厳しさが二段階くらい上がるわね」
夏凜「……なるほど」
ならちゃんとやるわ。と、夏凜は目を瞑った
- 739 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 00:40:53.98 ID:s82IXrzHo
-
夏凜「もう寝ましょ」
天乃「もうちょっと……」
夏凜「ダメ」
もう少し夜更かししたいという要求は断って、
夏凜は天乃の目を手で覆う
天乃がまだ起きていたいとしても、
それで起きていたら、天乃の体がダメになっていってしまう
夏凜「悪いけど――優しいだけじゃないのよ。私は」
天乃「夫って、そういうものなのかしら」
夫というか、伴侶というか。
本来異性であるべきその立場の人は、
妻に甘いのか、優しいのか、厳しいのか。
知識には、亭主関白なんて言葉もあるのだが、
本当にそうなのかなんてわかりっこない
- 740 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 00:50:41.03 ID:s82IXrzHo
-
夏凜「さぁ? 実際に夫ってわけでもないから」
天乃が母親だから、父親という役どころになっているだけで
夏凜だって女の子なのだから、妻の方が正しい
夏凜「なんにしても、良い親だって思って貰えるように努力するだけだわ」
天乃「そうね、そうよね」
父親だろうと母親だろうと関係はない
子供達にとっての良き両親になれればそれでいい
それが夫なら夫で良いのだろう。
天乃「……私も、頑張らなきゃ」
夏凜「あんたはもう少し頑張らなくて良いから」
天乃「頑張りすぎてもダメだなんて、親って難しいのね」
夏凜「そこは関係ないから」
天乃はいつも頑張りすぎる
だから頑張らないようにと求めた夏凜は、
ほら、さっさと寝なさい。と――キスをする。
夏凜「おやすみ」
天乃「おやすみ? おやすみって……もぅ……」
目を瞑ってだんまりな夏凜にむっとしながら
せめて責任はとってねと、天乃は夏凜を抱きしめた
- 741 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 00:51:18.54 ID:s82IXrzHo
-
ではここまでとさせていただきます
明日はできれば早い時間から
- 742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 00:59:08.79 ID:zKP17ujTO
- 乙
久遠さんと夏凜ちゃんのきわめて健全な夜でした
- 743 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 02:14:43.34 ID:f6X6Aj6cO
- 乙
毎晩交代で添い寝する久遠さんファミリー
- 744 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 21:34:47.23 ID:s82IXrzHo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 21:55:55.55 ID:RCO5wPD+O
- きてたー
- 746 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 23:15:04.90 ID:s82IXrzHo
-
√ 神世紀309年 6月
戦いが終わってから、早くも8年
子供達が7歳になり、樹が20歳になったのが去年
本当は、その12月中に結婚式を予定していたものの、
千景が西暦の時代にはジューンブライドというものがあった。という言葉がきっかけで、
6月に結婚式を執り行うことが決まったのだ。
神樹様の他の神を取り除かれてきた神世紀には馴染みの薄いものではあったものの、
6月は天乃の誕生日と言うこともあって、満場一致だった。
そうして――天乃は自分に割り当てられた控室で、
落ち着かない胸元に手を添えながら……ため息をつく
天乃「……はぁ」
胸元に触れた手に感じる刺繍を辿って、指を下ろす。
一人部屋に控えている天乃が身に着けているのは、白無垢だ
鶴や熨斗、秋草などの吉祥を感じられる意匠を施された白無垢
表はやや立体的に織りなされた刺繍と、艶やかで高級感のある、白銀めいた輝きもある白
一つ一つの所作に合わせて、裏地に宛がわれた鮮やかな紅色がちらりと顔を覗かせる。
残念ながら、代々の白無垢は身長的に合わないため、初物となってしまっているが、
それはそれで、悪いものでもない。
- 747 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 23:26:41.50 ID:s82IXrzHo
-
ならどうして縁起でもなくため息をついたのかと言えば――控室で独りぼっちだからだ。
子供達は千景が連れて別の控室に行ってしまっているし、両親や兄姉は人前式の準備中だ。
そこまで大変な容易なんて必要はなかったはずなのだが、
そこは、流石の兄姉と言ったところか、ほかの一般人より豪勢でなければならないという自分勝手な理由で全力だった。
こんなことなら自分のところでやらなければよかった……なんて思うけれど、
結婚の内容も内容だから、仕方がないと言えるかもしれない。
天乃「だからって――」
一人にしなくてもいいじゃない。と、
文句を言いかけた唇を、扉を叩く音が止めた。
歌野「久遠さん、入って良いかしら」
天乃「ええ、歓迎するわっ」
思わず上ずった感じの声だったけれど、
歌野と水都、若葉に球子
千景を除いた西暦の面々は気にすることなく控室に入ってきた
- 748 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 23:40:49.27 ID:s82IXrzHo
-
歌野「わぁぉ……ビューティフォー!」
球子「凄く似合ってるぞ」
水都「うん……綺麗です」
感嘆を漏らしてくれる三人に、
天乃は照れくさそうに「お世辞でも嬉しいわ」と、笑みを浮かべる
着付けをしてくれた人も、最初は居てくれた千景たちも
みんな凄く似合っていると言ってくれたけれど、
鏡を見てみれば――そう、天乃は見た目的には子供だからだ
しかし
若葉「謙遜は要らない。十分似合っている」
若葉はその言葉を払う。
天乃の交際の相手の一人となっていた若葉だが、
結婚にまでは至っていない。
だからだろう。
あえて、笑みを浮かべながら口を開く
若葉「惜しいことをした……今から衣装を借りれば紛れ込めるだろうか?」
天乃「だめよ。もう、だーめ」
- 749 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 23:48:20.65 ID:s82IXrzHo
-
にこやかに拒絶された若葉は、
しかし、嬉しそうに「そうか」と答える。
大丈夫と言われたら逆に困ってしまう
あくまで、自分はもうその対象ではないのだから。
天乃「他のみんなには?」
球子「見てきたぞ。みんなも良かった」
水都「凄くお似合いでした。一人一人刺繍も裏の色もその白さも全然違ってて……」
白と言っても色々あって個性的だった。と、水都は絶賛する。
歌野「なにより……そう、やっぱり東郷さんは格別だったわ」
しみじみと言う歌野だが、
その手はなぜか、自分の胸元に丸みを帯びた形を作り出す。
水都「うたのん……」
歌野「じょ、ジョーク! ジョークよ!」
若葉「夏凜も……いや、そこは自分の目で見て貰おうか」
天乃「想像くらいつくわよ……どうせ、私なんかより似合ってるんだから」
ムッとする天乃だが、別に怒っているわけではないのは――みんな分かっていた。
- 750 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/12(日) 23:50:32.94 ID:s82IXrzHo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 23:57:52.39 ID:g8pBfmk9O
- 乙
一気に月日が流れてついに結婚式か…
そして久遠さんも二十歳以上生きてやっと幸せを掴み取ったんだなぁ
- 752 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/13(月) 02:30:07.29 ID:0LBQl+32O
- 乙
若葉は辞退なのか
まあ精霊と結婚ってのも周りの説明がややこしいが
- 753 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/13(月) 12:25:12.54 ID:Q0BUFIPFO
- 一応ハーレムルートだけど久遠さんと最も関わっているはずの夏凜が一番えっちシーン少なめなのは意外だったな
- 754 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/13(月) 23:32:12.68 ID:40NgMVB2o
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば少し早めの時間から。
- 755 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/13(月) 23:32:45.55 ID:J7U5rpTCO
- 乙ですー
- 756 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/14(火) 23:19:13.57 ID:heF5hG8ro
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/14(火) 23:20:35.51 ID:EBik1DlpO
- よしきた
- 758 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/15(水) 00:38:18.53 ID:DjK9D1lFo
-
歌野「久遠さんも十分似合っていると思うけど」
若葉「確かに身長こそ及ばないが、そればかりではないだろう?」
天乃「及ばない部分が?」
若葉「全く……」
そのつもりで言ったわけではないことくらい分かっているだろうと言いたげな若葉の困り顔に、
天乃は嬉しそうに笑って見せて「ごめんなさい」と呟く
慰めではなく、純粋に褒めてくれているのは分かっている
水都「それはそうと、お色直しするんですね」
天乃「みんながしたいっていうから」
白無垢から、洋式の衣装であるウエディングドレスに替えるのは、
天乃も分かっていたことだが
そこからさらに、男性側の衣装にも替えるというのは困ってしまう
みんなはせっかくだからという話で、
列席者にもなる千景は面白そうだと他人事
かつての級友や、兄姉はぜひ見たいと大賛成
披露宴とは少し違うが、似たようなものを取り入れたいという声に応えた結果だ
- 759 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/15(水) 01:14:01.49 ID:DjK9D1lFo
-
球子「天乃に着せたいんだろ?」
天乃「そう言われたけど」
散々、妻だ嫁だと言われてきたのに、
男性側になって欲しいとh、ちょっぴりおかしくは無いかと思う。
夏凜達も着るのよね。と、
断りそうな条件を出したけれど、もちろん着るとの即答だった。
天乃「新郎のタキシードなんて……」
水都「紋付袴も着るんですよね?」
歌野「一目見せて貰ったけど……スペシャルなものだったわ」
天乃「あっちは一応、久遠家の――って言っても、私が着るものじゃないわ」
白無垢だろうと紋付き袴だろうと、300年の中で揃えたものがある。
小物こそ、利用可能ではあるが、
着用するもの自体は、天乃の身長には合わない。
それは男性側女性側どちらの衣装であってもだ。
母親も同じ目に遭ったのだから、これは母が悪いと言えると言われた
- 760 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/15(水) 05:59:29.29 ID:hQqzzRn9O
- とりあえず乙
- 761 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/15(水) 23:01:07.36 ID:7a8We13gO
- 今日は休載?
多忙なのかここ最近遅めだけど
- 762 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/16(木) 22:20:50.09 ID:Tzm1eEaEo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 763 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/16(木) 22:44:01.10 ID:Tzm1eEaEo
-
天乃「もう少し、身長伸びて欲しかった」
歌野「今でも十分素敵だと思うけど」
天乃「ありがと」
みんなも褒めてくれるので、別に嫌なわけではないし、
ちょっとくらいの自信は持っているつもりではある
母親の身長の低さが遺伝していると言われると、それが子供達にまで遺っていないか心配になってしまう。
二人が身長の高い低いを気にする子かどうかはまだわからないが――それ以前に。
天乃「最近ね、姉妹で買い物? お姉ちゃん偉いね。って言われることがあって」
若葉「あぁ……」
察する若葉の漏らした声には、天乃も思わず苦笑する。
星乃と月乃ももう7歳。
一人で好き勝手に駆け回れるほどの年齢である二人と一緒に買い物に行くこともある天乃は、
それはもう、少し歳の離れた長女扱いされてしまう
千景が一緒に居ると、千景の方が大人に思われてしまうほどだ
- 764 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/16(木) 23:57:18.31 ID:Tzm1eEaEo
-
天乃「はい。ママが買ってきてくれって――なんて」
時々嘯いてみると、どこに何がるか分かるのかとか
頑張ってねとか、お菓子を貰えてしまったりとか
色々あるのよ。と、天乃は不満そうに呟く
それを夏凜に言うと「二人が困惑するから止めろ」と、
ややご立腹だったと天乃は苦笑する
若葉「それは……そうだろう。子供にお姉ちゃん。って呼ばれたいのか?」
天乃「ねぇねぇって呼ばれてるけどね」
最初は「ねぇ、ねぇ」と呼びかけられているかとも思ったけれど、
誰かにお姉さんだのお姉ちゃんだの言われているからか
そう誤解されたときだけ「ねぇねぇ」ときゃっきゃと笑うのだ
天乃「ママよ。ママって言っても私がお姉ちゃんだとお菓子が貰えるって思ってるみたいで」
歌野「それは困ったわね。大丈夫なの?」
天乃「普段はママって呼んでくれるんだけどね」
- 765 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/17(金) 00:09:03.18 ID:aBi9wCRUo
-
球子「強く言わないとダメなんじゃなかったか?」
水都「そうですね……」
呟くように言った水都は、
でもきっと、夏凜や千景が注意する分強くは叱っていないのだろうと、感じる。
特に、千景はそういった部分が強く伝わってくるのだ
水都「厳格なパパと温厚なママだね」
天乃「厳格っていうほど厳しくないし、私だって怒ることはあるのよ」
ちゃんと聞いてくれるし、
そのあとには直してくれようと努力は感じられるから
天乃のことをなめているわけでもない
ただ、姉が母を勝ってしまうようならより強く正す必要があるだろう
- 766 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/17(金) 00:22:15.73 ID:aBi9wCRUo
-
歌野「子育ても大変ね」
天乃「みんなだって、頑張ってるじゃない」
球子「精霊は疲れ知らずだからな」
7年前、各地を巡った若葉達は生存者こそ叶わなかったものの、
国の現地調査への協力や、復興支援などに助力している。
その結果、現在では慈善事業としての活動に精を出しており、
次第に広がっていった世界の人々の知る大きな存在にまで至っていた。
特に歌野と水都の農業に対する熱意と知識は、復興に大きく貢献したと称賛さえされたほどだ
若葉「それにしても――」
若葉は感慨深そうに言葉を切る。
歌野達と談笑していた天乃は、その視線に顔を上げて首を傾げた
天乃「若葉?」
若葉「7年……長かったなと、思ったんだ」
ずっと願ってきたこと
ずっと想ってきたこと
だから、若葉は言いたそうに言いにくそうに困った顔で
若葉「――結婚、おめでとう」
そう、祝福するのだった
- 767 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/17(金) 00:23:45.64 ID:aBi9wCRUo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
少々忙しいので落ちたりすると思いますが、可能な限り進めていく予定です
- 768 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/17(金) 00:39:08.10 ID:nGZINHRBO
- 乙
そして了解です
今は色々大変な時期だろうしなぁ…
- 769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/17(金) 02:37:50.28 ID:TcAO+hSyO
- 乙
おねロリ天国と化した久遠家か……
- 770 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/18(土) 23:57:05.63 ID:uiq36sr4o
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます。
明日は可能であればお昼ごろから
- 771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/19(日) 00:03:10.34 ID:NDjufGDlO
- いつも乙です
昼に期待
- 772 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 17:00:47.34 ID:jvWS7fjLo
-
遅くなりましたが、少しずつ
- 773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/19(日) 17:19:05.01 ID:YcUam1G/O
- きてたか
- 774 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 17:53:38.63 ID:jvWS7fjLo
-
天乃「ありがとう。でも、何回も言わせちゃったわよね」
若葉「何度言われても、安くなるものでもないだろう」
水都「可愛いも綺麗もかっこいいも、その数だけ積み重なるって思えば全然ですし」
水都は物は考えようなんです。と明るく言って、歌野へと振る
振られた歌野は少し戸惑いがちに笑う
歌野「そうね」
歌野達も、精霊ゆえに歳を重ねることはない
7年間もの間、容姿に一切の変化もないとなれば、
周囲からかけられる言葉も積み重ねが高くなる
だから、そういう風に考えるようにしているのだろう
ネガティブよりは、ポジティブであるべきだ
球子「タマもそろそろ結婚を考えなきゃなぁ……」
天乃「あら、良い人でも居るの?」
歌野「久遠さんのウェディングの話が出てから隙あれば言ってるだけよ。ジョークよ。ジョーク」
天乃「相手がいるなら良いのよ? 私は……ちゃんとしてるなら止めたりしないから」
- 775 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 18:09:30.92 ID:jvWS7fjLo
-
若葉「そうは言っても、説明が出来ないだろう」
かつての時代ならともかく、
身分証も何も提示できない精霊では、身元が怪しすぎる
歌野達は慈善事業での活躍も著しいから
良い子達であるのは証明され切っているけれど。
水都「うたのんなんて、農家の人から嫁に来ないかって声かけられてるんですよ」
歌野「それを言ったらみーちゃんだって!」
私だけを言わないでと言わんばかりに頬を染めた歌野は声を上げる
積極的に手伝いをする歌野の一方で、水都はサポートに回ることが多い
歌野にはもちろん、農家の人に水分補給や休憩を促したりなど給仕的な役割にいる。
それがとても優しいものだから、
異性としては、尽くしてくれる水都こそ嫁に来て欲しいと思うものだろう
なによりサポートだけでなく、一応農業の知識もあってその手伝いまでできるのが強い
人気自体は、歌野よりも上ではないかと若葉達が噂をするくらいには。
球子「……どうせ人気ないさ。タマは」
若葉「子供からの人気の方があるからな」
- 776 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 18:19:05.73 ID:jvWS7fjLo
-
ふんっと鼻を鳴らして拗ねる球子に、
若葉は苦笑いしながらフォローを入れる。
力仕事に関わっていることもあるが、
どちらかと言えば、わんぱくな子供たちに付き合ってあげることの方が多いので
必然的に人気はそっちに傾く。
歌野「タマねぇちゃん」
若葉「タマ姉」
球子「馬鹿にしてるなっ!?」
水都「してないですよ。私からしたら、球子さんは凄いです」
少なくとも、自分には付き合いきれないと言った水都は、
適材適所ですよ。と、言う。
いつもの他愛もないやり取りなように感じて、天乃は嬉しそうに笑う
いつでもどこでも、4人は仲良くやれているようだ
若葉「ん――来客だ」
天乃「うん?」
若葉の敵を警戒するような瞬時の切り替えに静まった控室に、入っても大丈夫かと言う確認の声が響く
天乃「どうぞ、大丈夫ですよ」
- 777 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 18:37:09.39 ID:jvWS7fjLo
-
聞こえた声から察した相手は、やはりみんなの両親だった
夏凜達が一緒に居ないのは、みんなが一斉に来ると控室が大変な事になるからだろう。
これなら、もう少し広い部屋にするべきだったと、今更ながらに思う
結婚を祝う言葉に、天乃は丁寧に応えつつも、
少しだけ照れくさそうにする。
挨拶もしているから、何度か祝われたことだし、委ねられたものではあるけれど
やっぱり相手方の両親からの祝いとなると少し緊張もする。
「やんちゃな子だから、何かあったら相談してね」
天乃「今は大分落ち着いてますよ」
「そうかしら……」
「友奈ちゃんはまだ落ち着いている方だわ。うちの子なんて――」
友奈よりも沙織の方が落ち着きがないという沙織の両親の言葉には、天乃も否定は難しかった。
友奈は快活さがあってこそのものだけれど、沙織は別だ
本当に大丈夫なのかと、少し心配そうな親もしかし嬉しそうにしている。
同性同士という問題こそあれど、それ以外に関しては順風満帆だからだろう。
- 778 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 18:58:01.27 ID:jvWS7fjLo
-
子供に関しては、みんなが産むなら在学中は控えようとした結果、
沙織や東郷、夏凜の子供がいるくらいだ。
夏凜と天乃の子が3歳、沙織が2歳、東郷が1歳
約1年につき一人ずつと言うかなり険しいペースではあったけれど、星乃と月乃の経験を思えば、
とても楽なものだったと、天乃は今も思う。
本来なら、東郷のその手の研究が実ってからだったのだけれど、
在学中、すでにそういった技術は確立されているという瞳や春信の情報の結果だ
東郷は進路を奪われたとちょっぴり悩まし気だったが、
結局は樹と共に医療の道へと進むことに決めた
天乃のことそして、友奈のこと
大切な人が傷つき苦しみ、そして自分も不自由さを味わったからこその答えだろう。
天乃「……寝ちゃってる」
「抱っこする?」
天乃「起こしたら可哀想だから――」
東郷の子供を抱く鷲尾家の言葉に、首を振る。
ずっと抱かせておくのも悪いとは思ったのか、若葉が声をかけたが、
二人は大丈夫だと、笑みを浮かべる
子供に恵まれなかったからこそ、抱くことが出来ているのが嬉しいのだと感じた
- 779 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 20:15:40.26 ID:jvWS7fjLo
-
新郎新婦―みんな新婦だが―揃うことのある控室だが、
夏凜達の衣装も衣装と言うこともあって、みんなはそれぞれの控室で待機するとのことだった。
天乃の試着に関わったのは千景たちだし、
天乃がどのような姿になっているかも知らない夏凜達は
みんな、式場にまで楽しみはとっておきたいらしい
そうして、各々の親や友人
普通の結婚式に比べるととても限られた人数での式が始まる時間が近づく
天乃「司会、宜しくお願いします」
瞳「どうしてそんな他人みたいな礼儀なんです……?」
人前式のため、神父などはおらず、
司会をだれにするかという話になったときに上がってきたのが、瞳だった。
素人ではあるけれど、瞳ならやってくれるという夏凜の推しの結果だ。
義姉……あるいは義母ともいえるような関係の瞳に感謝の気持ちがあるからだろう
天乃「多少ミスがあっても賑やかしになるだけだから、緊張しないでね」
瞳「それは……してくれって意味ですよね?」
瞳の緊張が感じられる硬い表情に、天乃は笑みを返す
天乃「大丈夫よ。気楽にお願いね」
瞳「……ええ。受けた以上はしっかりとやらせて貰います」
瞳はそう言いつつ、胸を押さえながら大きく息を吐いた
- 780 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 20:20:04.70 ID:jvWS7fjLo
-
では少し中断いたします
再開は21時半ごろからを予定しています。
- 781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/19(日) 20:44:42.57 ID:Cw8lYm8PO
- 一旦乙
しれっと久遠さんが双子ちゃん以外に子作りしてる件
- 782 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/19(日) 22:56:49.88 ID:jvWS7fjLo
-
人前式の入場は、父親が新婦を連れてくる……などという流れが決まっているわけではなく
そこからもすでに個人に委ねられている
とりわけ、天乃の結婚相手は7人と多く
一人ずつ親が連れてきたら時間がかかってしまう
だから、あえて披露宴のように新郎新婦揃っての入場を行うことになっている
それでも人数は多くて、ちょっぴり行列のようにも感じられるけれど。
星乃「ママたちは〜?」
千景「もうすぐよ」
月乃「きた〜?」
千景「あと少し」
二人の間でしゃがんだ千景は、
もうちょっと、と、人差し指と親指を使って見せる
そんな、お姉さん染みた千景を、若葉は嬉しそうに一瞥する
若葉「手慣れてるじゃないか」
千景「かれこれ、7年の付き合いだから」
- 783 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/20(月) 00:08:32.89 ID:f/20Qn6So
-
まだ〜? もうきた〜?と
千景の両足にそれぞれしがみ付く双子を優しく見守る千景は
若葉を見て、困った顔をする
もちろん、二人に困らされているわけではない。
千景「乃木さんも少し遊んであげたほうが良いわ」
若葉「努力はしているさ……分かるだろう?」
二人は千景がいれば当然千景に行くし、球子がいれば球子の方に向かう
歌野と水都にもそうだ
若葉以外がいれば、そっちに行ってしまう
千景は以前、二人に聞いたのだけれど
単純に……なんか怖い。らしい
怒った姿を見せたことはないけれど、
鍛錬の気迫が、そう感じさせたのだろう
若葉「うらやましい限りだ」
千景「乃木さんにそう言われるなんて、冥利に尽きるとはこのことね」
若葉「まったく……勝ち筋が見えないな」
子供達に向けて見せた困り顔に、ぷいっとそっぽを向かれたのと同時に、
司会である瞳が、新婦入場のかけ言葉を会場に響かせた
- 784 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/20(月) 00:12:48.92 ID:f/20Qn6So
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 785 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/20(月) 00:18:35.32 ID:iNZ/XnWaO
- 乙
保母さん千景が子供たちと一緒にいてすごく幸せそうだなぁ
- 786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/20(月) 03:02:28.20 ID:6v0niH9dO
- 乙
まさかもう3人も子供出来てたとは
大所帯で楽しそう
- 787 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/21(火) 20:56:05.09 ID:iqN94J/3o
-
遅くなりましたが少しだけ
- 788 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/21(火) 21:02:54.24 ID:6K5npdvuO
- かもん
- 789 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/21(火) 22:16:06.34 ID:iqN94J/3o
-
式場として利用している神社の重厚な扉が開いて
天乃と夏凜を筆頭に、
友奈と東郷、風と樹、園子と沙織が続いて入っていく
8人もの並びは、いずれも白無垢で
天乃が綿帽子を着用することが決まっていたからか
天乃だけが綿帽子を被り、それ以外のみんなが角隠しを被っている。
一人一人違う装飾の白無垢はどれも美しいけれど、
紋付き袴を纏う新郎がいないのが、少しばかり異質さを感じさせる
けれど
それを分かっていた参列者からはそれに対する言葉はなくて
子供達の、あれがママ、あれがパパあれが――と、いう楽しそうな声が式場の厳かさを揺らがせる
千景「二人とも、しーっ」
星乃「しーちゃん?」
月乃「しーちゃんはあっちだよ?」
千景「おくち、ぎゅーっ」
- 790 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/21(火) 23:01:57.00 ID:iqN94J/3o
-
自分の唇を人差し指と親指で抓む千景の仕草を、
二人も真似して、声が鎮まる。
千景「ママたちのこと、見ててあげてね」
そういう千景も二人の間で、天乃達の方に目を向ける
いつもは可愛らしさが勝るばかりで、
大人びた美しさなどどこかに置いてきてしまったかのような彼女たちは、
大層――美しく感じられた。
天乃達が向かい合うようにしながら座ると、瞳の進行で先に進む。
結婚の誓約
天乃「………」
天乃はみんなに、みんなは天乃に。
本来なら、時間を考えてそうまとめるべきだったのかもしれないが、
天乃は一人一人に声をかける
- 791 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/22(水) 00:22:38.43 ID:X85fjaqAo
-
天乃「手短に言わないとね」
天乃はそう言って立ち上がると、
ゆっくりと、静かな足取りで目の前の夏凜の方に近づく
そうして夏凜の前でもう一度座る
夏凜達にそれぞれ言いたいとしたのは天乃の我儘だ
だから、出来る限り時間をかけないようにとする
天乃「これからも、私は夏凜の大好きな笑顔を見せられる健康な体でいます」
夏凜「これからも、私はその笑顔を曇らせないよう、怪我をしないように気を付けます」
天乃「これからも、ちゃんと自分の想いを口にします」
夏凜「これからも、ちゃんと天乃に優しく厳しくします」
たった二言ずつ
本当はもっと尽くしがたい言葉がある
けれど、そのすべてを語る時間はないからほんの一部分だけで済ませる
夏凜の二言目に天乃はちょっぴり顔を顰めたけれど
幸いにもそれは衆目に晒されることがないまま、天乃は次の相手の前へと向かった
- 792 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/22(水) 00:23:05.55 ID:X85fjaqAo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 793 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/22(水) 00:56:31.96 ID:o+kANRrLO
- 乙
誓いのキスとかどうすんだろこれ
- 794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/22(水) 06:02:28.19 ID:B4r4Fj8fO
- 乙
- 795 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/22(水) 23:11:18.57 ID:X85fjaqAo
- すみませんが、本日はお休みとさせていただきます。
明日は可能であれば少し早い時間から
- 796 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/22(水) 23:14:46.46 ID:NppSen2EO
- 乙ですー
- 797 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/24(金) 22:32:00.12 ID:9rPg8K4do
-
昨日もできなかったので、
遅くなりましたが、少しだけ。
- 798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/25(土) 00:17:12.04 ID:eWpxxjBuO
- 絶不調?
- 799 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/25(土) 00:45:58.07 ID:g0u925Geo
-
天乃「これからも、楽しく笑い合える家庭を築いていきます」
友奈「は、はいっ」
天乃「……ふふっ」
あっ……と、声を漏らした友奈に天乃は優しく微笑む。
ちょっとした失敗くらい、別に悪いことではない。
友奈としては罪悪感も生じるだろうが、
天乃からしてみれば、とても愛らしくて
天乃「大丈夫よ、友奈の気持ちを話してくれればいいの」
友奈「えっと……これからも、楽しく過ごせるように頑張ります」
天乃「これからも、可愛い友奈に負けないように美容に気を付けます」
それは私の台詞じゃないですかと友奈は困った顔だけれど、
今は可愛い友奈も、もう少ししたらもっと大人びて綺麗になっていくだろう
だから、頑張るのは自分だと、天乃は思っていた
- 800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/25(土) 07:30:50.99 ID:koDHYtVQO
- 乙です
- 801 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/25(土) 23:52:53.40 ID:g0u925Geo
-
すみませんが本日もお休みとさせていただきます。
明日は可能であれば、お昼ごろから
- 802 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/25(土) 23:56:12.56 ID:cFfeJj4uO
- あらら残念
いつも連絡乙です
- 803 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/26(日) 16:53:41.64 ID:KBBflI34o
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 804 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/26(日) 17:10:19.64 ID:KBBflI34o
-
友奈との短い誓約を終えた天乃は
その対面にいる東郷の方へと体の向きを変える
友奈も夏凜も風達もみんな綺麗だけれど
やはり一際目を引くのは東郷だった
なんて言おうかと考えては居たけれど、
つい、それを呑みこんでしまいたくなるような美しさ。
けれど、しっかりと口を開く
天乃「これからも、美森の和に対抗して和洋折衷で邁進します」
東郷「ふふっ……もう」
東郷は想像していたように、驚いて、笑って
そうして口元に手を当てる
東郷「これからも、天乃さんが和に染まってくれるよう、尽くします」
東郷はきっと、あえてそう言ったのだろう
どうですか? と問いかけるような表情を見せた
- 805 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/26(日) 17:22:17.67 ID:0wUyBH21O
- きてたか
- 806 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/26(日) 18:46:05.89 ID:KBBflI34o
-
天乃「これからも、切磋琢磨してみんなが好きな料理をもっと上手にします」
東郷「その料理をみんなで食べられるように、規則正しい生活を続けます」
朝はしっかりと起きて
お昼は難しいことだけれど、休日はなるべく
そして、夕飯は絶対に。
在学中だって当然ながらみんなと過ごしてきた
だから、たとえ仕事についたとしても
規則正しい生活を続けたいと東郷は考えている。
それはもちろんみんなもだろう。
朝に弱い樹と友奈も
最近ではしっかりと起きられているから大丈夫だ
天乃は東郷に目配せをして、また隣へと移った
- 807 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/26(日) 20:32:17.69 ID:KBBflI34o
-
風「今度はあたしか、天乃も大変ね」
天乃「それを選んだのは私だもの」
みんなには少し迷惑かもしれないけれど、
全員で参列者の人に誓う方式もあるが、
天乃はあくまで、みんなに誓うことを決めた
二人きりなら参列者で良かったかもしれない。
でも、これだけの大人数だから
天乃「風、これからも年長者らしく、母親らしくいられるように頑張ります」
風「子供達がまねしないよう、間食でうどんを食べるのは控えます」
天乃「……何それ知らないんだけど」
風「こっそり食べてたのよ。ちょっとだけ」
もちろん、今は以前ほどではない
けれど、学生時代には夕食前の放課後などに食べていた。
それをもう二度としないと、風は誓う
- 808 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/26(日) 21:42:02.69 ID:KBBflI34o
-
天乃「風やみんなが健康でいられるように、体調管理できるいい奥さんを目指します」
風「年長者として、一番の稼ぎ頭を目指します」
風はそういうけれど、
残念ながら、高校の入学時点で東郷達と並んでいる
その分の努力はしてきたつもりだが、
やはり、風の目指している道だと少し年収は落ちる
それでも、頑張り次第だろうか
天乃「無理しないように、私が気を付けないとね」
天乃は小さくそう言って、風を見る。
散々無理するなと言ってきたし、
もう成人もしているのだから、無理は良くない
そう思って――すぐ後ろ、樹の方へと振り向いた
- 809 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/26(日) 22:40:42.66 ID:KBBflI34o
-
風にも劣らない綺麗な白無垢を、樹は着ている
8年も前は子供だった樹は、
もうすでにしっかりとした大人になっていて
徐々に徐々に身長も伸びて天乃よりも大きくなって
白無垢がとても、似合う女性になった
入場前に並んで、一目見て
綺麗になったわね。と、声をかけたのを思い出して。
天乃「いつまでも、樹の理想の人でいられるように日々努力します」
樹「子供達の理想になれるように、まずはもっと料理を頑張ります」
天乃「樹が仕事で疲れて帰って来た時、癒してあげられる癒し系奥さんを目指します」
樹「子育てや家事の負担を少しでも減らせるように、頑張ります」
樹は子育てはもうできるようになっている
料理も十分美味しいものを作れるようになっている
見た目だって、申し分ない
でももっと上を目指したいと、樹は言う
それは、主婦として頑張っている天乃が、やっぱり理想だからだ
- 810 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/26(日) 22:59:13.79 ID:KBBflI34o
-
樹は天乃を見つめて、少しばかり照れくさそうに赤らむ。
短い誓約で、
みんながいないところでは何度も話していることではあるけれど
それでも、照れてしまう。
そんな可愛らしい樹を抱きしめたいと思う天乃だが、
今はそうすることも出来なくて、
ちょっぴり残念そうに、園子の方を向く
抱きしめるのは式のあと、今は誓約をする時間だ
準備は良いかと頷くと、園子も軽く頷くのが見えた。
もう一度樹に目を向けて、
また後でねと、微笑んで園子の方へと向かう
- 811 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/26(日) 23:15:19.99 ID:KBBflI34o
-
では短いですが、ここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から
安価はないので、出来る時間に細々やるか書き溜めてから出すのも検討します
- 812 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/26(日) 23:23:49.36 ID:0wUyBH21O
- 乙
ラストの大事な場面だからかいつもより時間かけてる感じか
しっかりと見届けるぞ
- 813 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/26(日) 23:29:58.60 ID:GSAwbiyc0
- 乙
7年だからなあ
いろんな思い出がありそう
- 814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/27(月) 01:26:49.39 ID:vXAc43eWO
- 乙
もうみんな苗字は久遠なのかな
- 815 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/28(火) 22:23:34.11 ID:XbDd+7Kjo
-
すみませんが本日もお休みとさせていただきます。
明日は可能であれば少し早い時間から
- 816 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/28(火) 22:30:15.16 ID:0G28FcQwO
- 乙ですー
- 817 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/29(水) 22:49:22.02 ID:nYgInAf7o
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 818 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/29(水) 22:50:53.31 ID:BPqHmM5xO
- やったぜ
- 819 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/30(木) 00:29:54.49 ID:NZWk9onoo
-
園子は普段のふんわりとした雰囲気を隠し、
気品あるお嬢様然とした居住まいで、天乃と向かい合う
薄く紅を塗られた唇が小さく動く
けれど、それは声にはならない
天乃「園子の陽気さをこれからも受け入れられる寛容な妻になります」
園子「これからは、可能な限りお淑やかになれるよう頑張りますっ」
語感が弾んで聞こえる辺り、
お淑やかになるのはまだ難しいのではないかと思うけれど、
可能な限り……という条件は満たしているかもしれないと
天乃は心の中で、笑みを浮かべる
天乃「これからも、気まぐれな園子の心を満足させられるように、楽しい家庭を築いていきます」
園子「可愛い子供たちがすくすく元気に育つことが出来るように、高収入を目指しますっ」
お淑やかはどこかへ旅に出たらしく
園子は風と似て、しかしより欲を感じる誓約を口にした
- 820 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/30(木) 00:39:29.22 ID:NZWk9onoo
-
天乃「……もぅ」
園子「ぇへへ」
周りには聞こえない、小さな呟き
天乃のやや呆れた困り顔が見えたからか、
園子の微かな笑い声が聞こえる
癖で顔の方に手が伸びかけたのか、ピクリと、手が動いた
天乃「……ふふっ」
園子がいれば、何にも緊張しなくて済むかもしれない。
そう思って……つい笑ってしまう。
本当に、みんな個性的で、可愛らしくて……愛おしい
天乃はより深まる思いを胸に、園子から沙織へと体の向きを変えた
- 821 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/30(木) 00:55:42.86 ID:NZWk9onoo
-
沙織は天乃が結婚を決めたみんなの中で、最も付き合いの長い子だ
神世紀298年……気付けばもう10年も前になる
そこで一緒に活動することになった園子達だが、
それよりも前に関わりを持っていたのが
巫女の家系として大赦に名を連ねていた伊集院家の息女、伊集院沙織
同じ学校の生徒として長年連れ添って、恋をされて、恋をした
天乃「………」
沙織「………」
背の高い沙織の少し見下ろすような視線を、天乃は見上げる。
目が合う
沙織の口元が綻んで、
天乃も同じように……緩やかに笑みを浮かべる
園子よりも控えめだが、明るい沙織
けれどその控えめさが――大人に感じさせる雰囲気を作っていた
- 822 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/30(木) 00:58:35.38 ID:NZWk9onoo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 823 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/30(木) 04:11:19.44 ID:RzlZr+/yO
- 乙
さおりんもようやく報われたんだなぁ
- 824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/30(木) 08:00:45.21 ID:2uOa3vedO
- 乙
そういえば何人か子作りしてたけどどちらが孕んだり孕ませたりしてたんだろうか
- 825 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/30(木) 08:23:03.69 ID:ZwKpSOnwO
- 乙
夏凜→産んでほしい
沙織→産んでほしい
東郷→産んでほしい
今子供いる3人がこれだったような気がするから多分3年連続久遠さんじゃないかな
相手に産んでもらうってのはこれからじゃない多分
- 826 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/07/31(金) 23:32:21.08 ID:GP3qIULwo
- すみませんが本日もお休みとさせていただきます
明日はできれば早い時間から
- 827 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/31(金) 23:35:57.60 ID:YIsMtajnO
- 乙ですー
明日に期待
- 828 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/02(日) 00:50:25.79 ID:AT+66eUfo
-
すみませんが、所用で休載となってしまいましたので
明日(日曜日)は可能な限り進める予定になります。
- 829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/02(日) 06:58:55.15 ID:6FwFrhUSO
- おつ
- 830 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/02(日) 22:00:31.41 ID:AT+66eUfo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 831 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/02(日) 22:12:30.30 ID:kltezrpcO
- よしきた
- 832 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/02(日) 23:51:02.11 ID:AT+66eUfo
-
沙織は学生時代、とてもよく尽くしてくれた。
それは巫女としてだけでなく、
天乃の友人としてもずっと傍に居てくれて
それは今も変わっていない。
天乃「これからも、沙織が尽くしてくれた分、しっかりと寄り添っていきたいと思います」
沙織「これからも、天乃さんが幸せでいられるように、試行錯誤したいと思います」
天乃「一度くらい、喧嘩して。もっと仲良くなりたいです」
沙織「天乃さんの支えになれるように、いつも思いやりの心を忘れずにいようと思います」
沙織と二人で、誓約を口にする。
沙織とはずっと仲が良い
それは付き合うようになってからもずっと。
だから、一度くらいは……と思っていったのだが、
沙織は少し困ったような顔をして
沙織「喧嘩は……口げんかが良いかな」
それでも、乗り気に考えてくれた
- 833 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/03(月) 00:27:15.43 ID:sd9UXdaio
-
沙織が天乃を思いやっての、ちょっぴり厳しい言葉はあったけれど、
そういうものではない喧嘩はしたことがない。
だから、そこはしっかり考えようね。と、
きっとまた喧嘩にならないことを言って、沙織は微笑む。
天乃「………」
そういうことじゃないんだけど。と、言いたい。
そう思いつつ、また後でねと目配せをすると、
察してくれたのだろう
沙織は軽く頷いて、笑みを浮かべた
沙織の喧嘩計画
監修には誰が当たるのだろうか……なんて、
斜め上なことを考えながら、天乃が下がると、
みんなが、参列者の方へと向き直って、天乃も体を向ける
- 834 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/03(月) 00:51:37.11 ID:sd9UXdaio
-
「本日、私達は皆様に見守られて……結婚式を挙げられることを嬉しく思います」
「未熟な私たちですが 末永く見守っていただけますと幸いです」
天乃達みんなで、自分たちの親族、友人
全員に、誓約の締めの句として選んだ言葉を述べる。
そうして、少しの間をおいて
司会の瞳が、次へと進ませる。
誓約のあとは、指輪の交換だ。
夏凜「……大丈夫?」
天乃「ん……大丈夫よ」
夏凜はまだ、天乃の体を心配し続けているが、
まるで問題はないと、笑顔で頷いて立ち上がる
それに続くように夏凜が立ち上がると、
星乃と月乃……みんなの子供二人が、指輪の置かれた専用のものを持って二人に近づいた
月乃「ママもパパもきれいだね」
星乃「パパじゃないよ。パマだよ」
夏凜「パマって……」
えへへ〜っと、
指輪を運ぶ緊張感のまるでない双子の笑顔に
天乃と夏凜は主わず笑みを浮かべる
- 835 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/03(月) 00:52:26.84 ID:sd9UXdaio
-
短いですが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば少しずつ
- 836 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/03(月) 02:58:06.15 ID:FWQojLxjO
- 乙
よかった…テンリングスのマンダリンみたいになる久遠さんはいないんだ
- 837 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/03(月) 06:58:20.71 ID:I/lf8PTrO
- 乙
妖怪の五郎くんとの子供でもある双子ちゃんだけどそれを感じさせない無邪気さがあってかわいいなぁ
あとここにきて公式が三期やるみたいだな
くあゆシリーズはどうなるんだろうか
- 838 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/04(火) 00:03:35.03 ID:0pt9pQSXo
- すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
- 839 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/04(火) 08:14:04.31 ID:NxghgknJO
- 乙
- 840 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/04(火) 23:17:00.23 ID:0pt9pQSXo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/04(火) 23:20:32.72 ID:babJk0X1O
- よっしゃ
- 842 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/04(火) 23:54:18.27 ID:0pt9pQSXo
-
星乃は天乃が渡す指輪、月乃は夏凜が渡す指輪
それを乗せたリングピローをそれぞれ持っており、
星乃は指輪を落とさないように天乃の方へと、手を伸ばした。
星乃「ママ、一個だけ選んでね」
天乃「ふふっじゃぁ、これにしようかしら」
予め夏凜の為にと選んでいた指輪は
約0.3カラットのダイヤをはめ込んだシンプルな装丁のものだ
本当は、誕生石にしよう。と言う話もあったのだが、
それでは被ったりもしてしまうため、やはり奇をてらわずにダイヤにしよう。となった
立て爪ではなくはめ込みなのは、夏凜がつけたまま動き回るのを想定してのためである
天乃「でも、先はパパと月乃ちゃんだから、もう少し待っててね」
星乃「うん」
夏凜が月乃から受け取ったのか、
じっと横で立っている星乃と月乃に向け、千景が避けるようにと手を動かしてるのが見えて
天乃は顔を逸らして、小さく咳払いをする。
星乃「ぁっ」
星乃が先に気付いて、月乃の手を引く。
そして、二人が少しだけ下がって出来た距離を……夏凜が詰める
- 843 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/05(水) 00:10:16.58 ID:kiC1L/d5o
-
夏凜「なんかグダグダなんだけど……」
天乃「そういうものでしょ、私達は」
夏凜は少し困った反応をしているけれど、
天乃はやっぱり、そういうものだと笑みを浮かべる。
真面目な時もあるけれど、
どうしても少し緩い、賑やかな雰囲気になってしまう。そんな集まり。
そこに、天乃の子供二人が加わったのだから、
生真面目さを保てというのが無理な話で。
夏凜「人前式で良かった」
天乃「でしょ?」
夏凜「まったく……」
距離はとったものの、
天乃が交換する分の指輪もあるため、近くにいる二人を一瞥して苦笑した夏凜は
ふと息を吐いて、きりっとする
夏凜「やるわよ」
- 844 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/05(水) 00:23:42.66 ID:kiC1L/d5o
-
そういった夏凜の差し出した左手に、天乃は自分の左手を乗せる
学生時代、元々大きく見えた夏凜の手は、
成人を過ぎて……もう一回りも大きくなってしまったような錯覚を覚えてしまう。
ずっと変わらない小さな手と、変わってきた大きな手
天乃は良く見ているその優しくも力強い手を、握る
夏凜「ちょっ……」
天乃「あっ……ふふっ、ごめんなさい。立派になっちゃったなって思って」
夏凜「天乃も立派よ。小さくても、しっかり子供を抱いてきたんだから」
夏凜はそういうと
天乃の左手を握り返して……少しだけ引く
手のひらに乗った薬指に、右手で持っていた結婚指輪をはめる。
爪で支えられた0.35カラットのダイヤと、それを囲うようにして連なる7つの小さなダイヤ
ダイヤに向かって緩やかな曲線を描くリングが控えめなアクセントになっている結婚指輪
みんなで一つずつと言う計画もあったが、
やはり頓挫して、一つに収まったそれは、とてもきれいな輝きを放つ
一つ一つが光を受けて、違った輝きを見せるのが、個性のようで。
夏凜「やっぱり……良く似合う」
夏凜は嬉しそうに、笑みを浮かべた
- 845 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/05(水) 00:27:07.08 ID:kiC1L/d5o
-
では途中ですがここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から
- 846 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/05(水) 06:53:26.39 ID:Nq9jAy0AO
- 乙
大人になった夏凜と中学生の姿の久遠さんの指輪交換か…
- 847 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/05(水) 22:48:02.10 ID:kiC1L/d5o
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 848 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/05(水) 22:52:09.30 ID:ndhb2cxIO
- かもん
- 849 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/05(水) 23:22:26.08 ID:kiC1L/d5o
-
天乃「ありがと……」
天乃は夏凜のささやかな本心に小さく笑みを浮かべると、
指輪のはめられた左手を優しく撫でて――星乃へと目を向ける
手招きすると、明るい笑みを浮かべた星乃が
ほんの数歩分の距離を跳ぶように近づく
星乃「はい、ママっ」
今度こそ自分の番だと、
自慢げに鼻を鳴らしながらピローを差し出してくる星乃に微笑んで
天乃は夏凜の分の指輪を手に取る。
天乃「サイズ、ずれちゃってなければいいけど」
夏凜「大丈夫よ。もう、子供じゃないんだから」
天乃「あら……大学生でも子供は子供だわ」
さっきは手に取ってくれた手を、逆に手に取る。
天乃の手よりも大きくて立派な手
その薬指に向けて指輪を近づけていくと、
少しきつめではあるけれど、しっかりと指輪が納まった
- 850 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 00:08:58.28 ID:yd5AFUUVo
-
夏凜「……ん、ほらぴったり」
夏凜はそう言って、左手を傾けて天井の光を浴びさせる。
はめ込まれたダイヤの輝きは少しばかり鈍いけれど……しっかりと輝いている。
良く動く夏凜のための、少しきつめの指輪
少しでも大きくなってしまったら嵌められなくなってしまうかもしれないその絶妙さは、
夏凜自身が望んだことだった。
天乃が変わらないから、自分も変わらない。
指輪を嵌める、この手だけはずっと……と、夏凜が真面目に言っていたのを思い出す。
天乃「似合ってる」
夏凜「当然でしょ、そのための指なんだから」
夏凜は左手を大事そうに少し下がって
次に行きなさい。と、先に行くことを促す。
天乃がする指輪は1つだけれど、天乃が渡す指輪は7つ
夏凜に渡したからあと6つ
友奈、東郷、風、樹、園子、沙織
星乃の持つピローの上で輝く指輪を一瞥して、
天乃は星乃と並んで友奈の方に歩み寄った
- 851 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 00:35:03.46 ID:yd5AFUUVo
-
天乃「次は友奈ね。簡易で悪いけれど……」
友奈「いえ、仕方がないです」
友奈も、指輪交換をしたいと思っていたけれど、
天乃の小さな指に七つの指輪は無理がある
全ての指にそれぞれ嵌めるというのならまだ余裕もあるのだが、
それでは少し、不格好になってしまう。
だから、一つの指輪に自分たちの分の宝石を添えて、
代表たる夏凜に交換を委ねた。
それでも、天乃はせめて自分の分は渡したいとせがんだのだ
天乃「友奈、手を」
友奈も大学生になって立派になったものの、
中学三年生だったころの沙織にも満たないので、どちらかと言えば小さい方にあたる
けれど、天乃よりも少しばかり大きな手は、
下から支える天乃の手からはみ出てしまう
- 852 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 00:51:44.75 ID:yd5AFUUVo
-
友奈「あはは……ちょっとあれですね」
天乃「いいじゃない、立派な手だわ」
ほんの少し、大きな手
細くて、日焼けを感じる少し色づいている指
夏凜と似てしっかりしている
天乃「これからも、私の手を覆って貰いたいわ」
友奈「っ……は、はいっ」
天乃「ふふっ、緊張しちゃって」
見つめ合うことも、手を握ることも
もうずいぶんと成れたというのに、友奈は可愛らしい反応を見せてくれる。
それは中学、高校でも変わらなくて、
そして、大人になっても変わらないのだろう。
天乃「……うん、可愛い」
友奈の左手薬指に指輪をはめる。
桜を思わせる少し濃いめのピンクダイヤモンドが、鮮やかに輝いていた
- 853 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 00:52:10.85 ID:yd5AFUUVo
- では短いですがここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から
- 854 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/06(木) 01:25:42.86 ID:sQlapL6qO
- 乙
かわいい(かわいい)
- 855 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 20:41:38.24 ID:yd5AFUUVo
-
では少しだけ
- 856 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/06(木) 21:03:49.35 ID:v79nWNkuO
- やったぜ
- 857 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 21:23:59.76 ID:yd5AFUUVo
-
友奈「……大事に、します」
自分の左手を見つめながら、少し涙ぐんだ声で呟く友奈
右手の指で覆おうとして
汚れてしまうのを気にしてか……そのまま手を引く
友奈「大事にしますね」
天乃「そうして貰えると嬉しい」
友奈の頬に触れたくて、頭を撫でたいと思ってしまう。
友奈はもう天乃よりも立派に大人だけれど、
やっぱり、愛らしい気持ちが大きくて。
けれど今はちょっぴり我慢。と後退りする
あとで……家に帰ってから
それでいいかなと、天乃は東郷の方に振り返った
- 858 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 21:46:21.39 ID:yd5AFUUVo
-
東郷「……お願いします」
天乃「あら、素直ね」
東郷「ずっと、寂しかったので」
東郷はそう言ったものの
同級生に男子がいる高校時代から、左手薬指には常に指輪をつけていた。
車椅子という、他人から見ればデメリットになるものが無くなった東郷は、
中学時代こそ、天乃との付き合いが広まっていたこともあって無事だったが、
高校生になってからは声をかけられることが増えてしまったからだ。
それは大学生になってからも同様で――むしろ酷くなっていたりもして。
ずっとつけていた婚約指輪は、
少しばかり歪んだり、傷ついたりしてしまっていたから。
外すしかない日が多かった。
東郷「これで、ようやく……相手がいるとはっきり言うことが出来ます」
天乃「貴女、綺麗すぎるのよ」
東郷「ふふっ、もっと言ってください」
- 859 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 22:12:54.28 ID:yd5AFUUVo
-
東郷は、とても嬉しそうな照れ笑いを浮かべて、
白無垢にも劣らない白くきれいな手を口元に近づける。
無意識的にそれを目で追ってしまった天乃は、
見上げるその視界に薄く塗られた紅が見えて……
中学生のときよりも、より一層綺麗になってくれた東郷の顔が、さらに美しく見えた。
東郷「でも、天乃さんも綺麗です。なのに、まだまだ、可愛いですよ」
天乃「可愛いなんて……もう」
星乃「ママは可愛いよ?」
天乃「あら……ふふっ」
隣に並んでいる星乃の思わぬ追撃に、天乃は笑う。
子供にまで言われてしまったら、否定は出来ない。
軽く深呼吸をして、東郷の手を取る
天乃「東郷……ううん、美森。ね」
東郷「はい……」
高校生の時から指輪が嵌まっていた期間の方が長い薬指
少しだけ細いその薬指に、天乃は指輪を嵌めた。
- 860 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 22:36:51.72 ID:yd5AFUUVo
-
スカイブルーの色合いによって
爽やかさを感じさせる輝きを放つブルーダイヤモンド。
東郷の白さには少し派手になってしまうかなと天乃は思ったけれど、
東郷はむしろ、その方が明確で嬉しそうに顔をほころばせる。
綺麗な大人
女の子と言うよりは女性と言うべき微笑み
東郷「綺麗……綺麗ですね。本当に」
天乃「貴女には敵わないわ」
東郷「そんなことありません」
東郷は、傷つけまいと左手を大事そうに抱えるようにして、
ありがとうございます。と、零す。
無色のダイヤモンドよりも主張の強いそのダイヤは、
自分にはもう、愛おしく、愛してくれる相手がいるのだと見せつけるように輝いている。
東郷「けれど、普段からつけておくのはなんだか勿体なく感じてしまいますね」
困ったように言う東郷は下がって、風と樹への道を開く。
天乃「良いのよ。つけて貰うためにあるんだから」
天乃はすぐには進まず、東郷へと一言投げてから、風の方に向かう。
東郷の「……そうですね」と、愛おしさを感じる声が背中に寄り添うのを感じた。
- 861 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 23:02:44.77 ID:yd5AFUUVo
-
風「さっきの今でまた対面って言うのも、なんだか照れくさくなるわね」
天乃「二人きりの結婚式だったら、ずっと隣か対面してたわよ?」
天乃達がしている結婚式は、
人が多いから、特例でこんなにも離れてしまっているだけで
天乃が笑うと、風も笑みを浮かべて、首を振る
ついさっきも見た、風の顔
大人になった風は綺麗だけれど
学生時代のお転婆さが感じられて、少しだけ子供っぽさが混じって感じる
天乃「風の手も、立派よね」
風「そう? ちょっと雑務で荒いけど……」
天乃「ううん、綺麗になってるわ」
風の左手を受け取った天乃は、手の甲を優しく撫でる
中学生の時、家事炊事に邁進していた風の手は、
普通の女の子に比べれば、少し荒れて感じるものだったけれど、
天乃達みんなで分担していて、
大人になるにつれてケアに気を遣うようになったおかげで
普通の女の子よりも、すべすべとして、瑞々しく若さの感じられる手になっていた
- 862 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 23:19:28.77 ID:yd5AFUUVo
-
天乃「自分の肌に自信を持っていいと思うわ」
風「天乃に言われると、嫌味にしか聞こえないんだけど」
天乃「ごめんなさいね。若すぎて」
婚約をした15歳から、7年
年齢的には22歳になっている天乃だが、
他のみんなと違って、天乃の容姿年齢は15歳のままだ
だから、とても若い。
当然ながら成人しているなんて思われない。
お店で、成人したからお酒でも買ってみる? と、冗談で手に取ったときに
店員に注意されてしまうくらいには。
天乃「こんな若奥様じゃ、憎たらしいかしら?」
風「さぁ? おばさんになってから、考えるわよ」
そう言って苦笑する風の手を握る。
天乃「ふふっ、一緒におばさんになっていきましょ」
動かないでね。と、優しく
星乃の持つリングピローから風の分の指輪を受け取って、薬指に嵌めた
- 863 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/06(木) 23:23:02.55 ID:yd5AFUUVo
-
では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みをいただくことになるかと思いますが、可能であれば少し遅い時間から
- 864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/06(木) 23:45:29.90 ID:v79nWNkuO
- 乙
久遠さん見た目は15歳でも精神年齢は中学の時点で大人みたいだったからなぁ
やっと実年齢だけ相応っぽくなってきた感じか
- 865 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/07(金) 01:34:18.01 ID:Dz8fp2TDO
- 乙
みんなそれぞれどんな進路進んでるのかも気になるな
- 866 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/07(金) 06:46:47.95 ID:EAwIIxSVO
- 現在久遠さん22歳で夏凜との子供が3歳
中学卒業の一年後に高校進学で夏凜たちと同学年…
…あれ?夏凜、高3でうっかりフライングで久遠さんとヤっちゃってる?
- 867 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/08(土) 22:13:45.07 ID:CrzzA1xSo
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 868 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/08(土) 22:25:30.35 ID:6O7roVgrO
- おk
- 869 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/08(土) 22:54:48.10 ID:CrzzA1xSo
-
はめ込みではない分、夏凜のものよりも少し大きめに見えるダイヤは
カナリーイエローとも呼ばれた純度の高い鮮やかな色をしていて、
風の指に収まってなお、煌々と美しく輝いている。
自分の結婚指輪がここまで鮮やかなものだと思っていなかった風は、
思わず、それに見とれて――
風「こんな……あたし……」
天乃「大丈夫よ。風はこれからもっと綺麗になっていく。自信を持って」
似合わないと思っただろうと、天乃は笑みを浮かべながらそれを否定する。
今はまだ若い
結婚指輪のダイヤの輝きがまぶしく見えることだってあるだろう
けれど、風はそれにも負けないほどの女性になると、天乃は言う。
天乃「私の選んだ貴女が……宝石なんかに負けるわけないじゃない」
風「そう……ね。そう……つい、綺麗だったから」
風は困ったように言ったものの、
噛みしめるように唇を縛ってから、ふっと笑って
風「ありがとう。大切にする」
左手を覆うようにして、風はそう言った。
- 870 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/08(土) 23:23:48.26 ID:CrzzA1xSo
-
天乃「今の風は、まだ可愛いわね」
風「っ……も、ば、ばか……」
出来るなら、キスの一つでもしてあげたいと思うけれど
今はそれが出来ないからと、笑顔を見せる天乃
からかっているわけではなく、本当にかわいいと思ったのだ
もう成人しているし、どちらかと言えば大人と言ってもいい
けれど、嵌めたばかりの結婚指輪を愛おしそうに守り見つめる姿は、
宝物を手にしたばかりの子供のようで
気恥ずかしさを御しきれていないのも、ちょっぴり相まって
天乃「おばさんになって綺麗になっても、時々は可愛い貴女でいてね」
追い打ちをかけた天乃の傍らで、
緩衝材のような「ねっ!」という子供真っ盛りな愛らしい声が駆け出す。
風はようやく、はっとして
風「天乃もね」
そう言うだけで、引き下がるのだった
- 871 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/09(日) 00:08:17.32 ID:c82YdT6ko
-
樹「お姉ちゃん、可愛かったですね」
天乃「ふふっ、でしょう?」
風の対面に居た、その妹である樹
天乃達の声が聞こえる距離に居たからか、
天乃と向かい合って早々に嬉しそうに笑う。
普段より白さの映える風が、
その頬を、唇に塗られた紅にも届きそうな朱色に染めていくのが僅かに見えたからだ
普段は二年分、大人びて見える姉の可愛らしさ
なら自分は二年分、大人っぽく頑張ろうと樹は奮起する
樹「……お願いします」
左手を差し出す。
小さいけれど、天乃よりは大きい
前は同じくらいで、握り合って丁度良かったはずの手
天乃の少し小さな手が支えるように受けとると、ほんのりと冷たさを感じる
- 872 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/09(日) 00:37:47.07 ID:c82YdT6ko
-
天乃「落ち着いているわね」
樹「お姉ちゃん……姉が可愛らしかったので」
お姉ちゃんと言うのを控えて、
少しばかり背伸びした【姉】という言葉を使うところを、
可愛らしいと天乃は思ってしまうのだけれど。
天乃「立派ね、何度触れられても……私よりも」
樹「でも、私よりもずっと……立派な手をしていると思います」
天乃の手は小さい
不老不死に似た影響のせいかおかげか、
その手は中学生の時とまるで変わりない
けれど、それが行ってきた8年もの母親としての経験
見た目に刻まれていなくても、それは立派な母親の手だ。と、樹は柔らかい笑みを浮かべる
成人したばかり……けれど、大人っぽさを感じさせる笑み。
天乃はそんな樹の成長が嬉しくて
いつか、隣にいる我が子にも追い抜かれていくのだろうと思うと、少し寂しい気持ちにもなってしまうのだが
それ以上に、樹や子供たち
みんながこれからどういう風に成長していくのだろうかと、夢に見る
- 873 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/09(日) 00:38:29.62 ID:c82YdT6ko
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 874 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/09(日) 00:52:34.47 ID:ok+SBPvVO
- 乙
久遠さんは最初に妊娠した頃から母性が溢れてたよな…
- 875 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/09(日) 02:43:52.43 ID:+5mWuEgu0
- 乙
姉妹揃って可愛らしいな
- 876 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/09(日) 20:32:29.77 ID:c82YdT6ko
-
遅くなりましたが、少しだけ
- 877 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/09(日) 20:34:59.43 ID:HLEx/qg5O
- いえす
- 878 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/09(日) 21:51:09.83 ID:c82YdT6ko
-
天乃「樹が立派な子であることには変わりないわ」
婚約していた中で、
たった二年だけれど、一番年下な樹
天乃のことを一番に考えて、その手助けをするための将来を選んで
けれど、天乃の体が治っても夢を目指すべき意味を失わずにいて。
同じように辛い思いをする人がいるかもしれない
そんな人たちの助けになりたいと頑張っている姿は、そんな二年間の差なんて感じさせない
天乃「ありがとう、樹」
好きになってくれて
尽くし続けてくれて
目標として、ずっと追い続けると誓ってくれて
天乃「……貴女が背中を目指し続けてくれていたから、私は立派な妻になれたと思う」
天乃はそう言うと、
樹の左手の薬指に、指輪を嵌めて
天乃「でもそろそろ、私の隣を歩いて……引っ張って行って欲しいわ。樹」
樹の将来を見据えて、優しく微笑んだ
- 879 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/09(日) 22:41:45.20 ID:c82YdT6ko
-
樹にとって、天乃のその一言はプロポーズのようなものだった。
一度プロポーズされているし、してもいるけれど
何度されても――それこそ、こんな場面でされてしまうと
どうしても胸に温かみを覚えてしまうもので
樹は思わず頬を赤くして、けれど、天乃と繋がったままの左手で天乃の手を包む
樹「……その時は、この手で」
天乃「ん……」
デートするときは並んでいる
普段から、別に背中を見ているわけではないから、そういう意味ではないと解っている。
けれど、これが一番分かりやすいと思ったのだろう。
天乃「ええ」
樹「えへへ…・・なんだか、うまくいかないです」
天乃「良いのよ。可愛いままで」
樹「っ」
天乃「背伸びして頑張らなくても、いつかはそうなれるんだから。今は可愛い樹で良いのよ」
- 880 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/09(日) 23:35:20.36 ID:c82YdT6ko
-
樹「うぅ……」
天乃「ふふっ、貴女もやっぱり可愛いわね」
風と同じように、だんだんと赤くなっていく樹はとても愛くるしい
みんなが見ているということもあって、
樹は大げさな反応こそ見せないけれど
その羞恥を感じる控えめな所作は姉妹らしい
樹「もぅ……酷いです」
天乃「ごめんなさいね、ふふっ」
楽しそうに笑う天乃がとても幸せそうに見える
特別怒る気なんてなかった樹も嬉しく感じて――
星乃「えへへっ」
樹「ふふっ」
天乃の隣でニコニコとしている星乃に触発されるように、
樹も笑顔を浮かべて、天乃を見る
樹「大事にします。この指輪も、天乃さんも」
天乃「ええ、お願いします」
- 881 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 00:02:24.15 ID:+COzPGGWo
-
穏やかな声のトーンで答えた天乃が顔を上げると、
ちょっぴり背の高い樹を見上げる形になる。
背が低くても、大人の女性を彷彿とさせる天乃はやはり、母親で
樹はやっぱりまだ敵わないなぁ。と、
幸せを抱きしめるように味わうように……柔和な笑みを見せる
樹「はいっ」
下がる樹を横目に見送る
まだまだ可愛らしい笑みを見せてくれるけれど
だからこそ、時折見せる大人びた笑顔が映える
今はまだその絶妙なバランスを保っていてね。と、
もう一度心の中で思って、園子と沙織の方へと向かう
- 882 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 00:03:56.87 ID:+COzPGGWo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日はできればもう少し早い時間から
- 883 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/10(月) 00:12:18.25 ID:UaGOQuY8O
- 乙
樹ちゃん大人になっても可愛いなぁ
- 884 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 18:18:52.03 ID:+COzPGGWo
-
では少しずつ
- 885 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 19:15:01.70 ID:+COzPGGWo
-
園子「大変だねぇ」
天乃「そうでもないわ」
ここまで、5人の女の子に結婚指輪を渡してきた。
本来なら一度で済むそれを五回行って、
自分を含めてあと二回行う天乃は大変だろうと思ったのだけれど、
天乃としては、一つ一つが大事なことだから大変だとは思っていない。
慣れない白無垢で歩き回るのは、大変だけれど。
天乃「……大きくなっちゃって」
園子「えへへ〜」
園子と初めて出会ったのは、園子が小学生だったころ
その時から、若干身長で負けていたのだが
中学生になって大きく越されてしまった上に、
今は……さらに超えられてしまっている
そんな園子を見上げる天乃が静かに手を差し出すと
園子は嬉しそうに笑みを浮かべながら、自分の左手をその手のひらに乗せた
- 886 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/10(月) 19:52:48.09 ID:FvVwfyZiO
- 来てたか
- 887 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 20:38:50.53 ID:+COzPGGWo
-
天乃「園子って、手は小さいのよねぇ」
園子「天さんよりは、大きいけどね」
天乃「ふふっ、それは仕方がないわ」
約20センチ近く身長差のある天乃と園子の手の大きさが同じだったとしたら、
園子の手が異様に小さいか、天乃の手が異様に大きいかだ
けれど、身長の近い東郷よりは小さく感じられる。
もう二十歳は過ぎているけれど、
これから大きくなっていくのだろうかと思うと、ちょっぴり寂しくなる。
もちろん、大きい手が嫌いなわけではない。
そもそもの話、自分が異様に小さいため
園子が小学生の頃、出会った時から園子と同じくらいの大きさだったと、天乃は覚えている
天乃「良く、手を握っていたわよね」
園子「うん……そうだった」
- 888 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 21:28:55.34 ID:+COzPGGWo
-
園子は懐かしむように頷いて、天乃の小さな手を握る
最初は同じくらいで握り合うのが精いっぱいだった。
讃州中学に通えるようになってからは、もう、園子の方が大きくて
天乃の握ってくれる力の弱さが少しばかり悲しくなって
けれど、握り支えることが出来るようになったことが嬉しかった。
高校生にもなると天乃の力もしっかりと戻ってきていて、
小さい手のどこかにある力強さに身を委ねて甘えたくなってしまった。
園子「結婚指輪が左手なのが、少し残念」
天乃「どうして?」
園子「指輪を嵌めた手とで握り合えないから」
天乃「ダメよ、傷ついちゃうもの」
結婚指輪にも送った相手の想いが込められている
それを嵌めた手と手を繋いでみたいと、園子はちょっぴり思ったりもした
もちろん、傷ついてしまいかねないというのは分かっているので、
思う程度なのだけれど。
園子「私、天さんの手……好き」
- 889 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 21:53:58.77 ID:+COzPGGWo
-
天乃自身も好きだし、
それだけに行為を抱いているわけではないけれど、
小学生のころから、
一緒に行きましょう。と、引いてくれたから好きなのだ
ついついよそ見をして、
立ち止まってしまっても付き合ってくれて
もしかしたら、寄り道しないためのものだったのかもしれないけれど、
二歳年上なのに小さくて、ひんやりとしているその手が好きだった。
園子「……ずっと、好き」
天乃「私も園子の手、好きよ」
子供らしくて、綺麗な手だった。
寄り道をするたびに、ちょっぴり汚れていたりして、
お転婆さを感じさせてくれた可愛らしい手。
天乃「大きくなっても、可愛いままね」
- 890 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 22:31:53.85 ID:+COzPGGWo
-
東郷の手よりもちょっぴり日焼けしていて
けれど、より快活な友奈達よりも色白に感じる綺麗さを感じる肌
成人した時にマニキュアを塗ってみようと挑戦したものの、
なんだか変な感じがする。と、その一回で塗られることのなくなった爪
天乃「この手に指輪を嵌められるの……嬉しいわ」
園子「この手を取ってくれたのが、天さんで嬉しい」
園子はとても嬉しそうで、隣にいる星乃も「えへ〜」っと笑う
小さい我が子と、大人になった恋人
二人の笑顔がよく似ていて、
天乃はちょっとだけ困ったものだと思いながら、園子の指に指輪を嵌める
本当は夏凜に送りたかった赤いダイヤモンド
それと同じくらいに稀少価値が高いと言われた純正のパープルダイヤの結婚指輪
園子の可愛らしく綺麗な指に、その指輪は程よく収まっていて、
紫色の輝きが、園子の魅力をより高めてくれる
- 891 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 23:11:53.07 ID:+COzPGGWo
-
園子「いい色だねぇ」
天乃「でしょう? 特別な色だと思ったの」
夏凜は、よくよく動いて傷つけやすいから
あまり貴重なのは控えて欲しいとお願いされた結果、シンプルに無色だけれど
友奈達に関しては基本的に、
結婚指輪はそれぞれのイメージカラーのダイヤモンドを使っている
園子はその指輪を嵌めた手を掲げずに光を当てて、
その輝きを確認してから、静かに手を下ろす。
園子「ただ、普段は勿体なくてつけられないかな」
天乃「別に気にしなくていいのよ?」
園子「大事な時にだけつけるようにする」
一緒に出掛ける時、
何か大切な行事に参加するとき、
相手がいると、周囲に示さなければならない時。
けれど、海にはつけていけないかな……と、あと1、2ヶ月後の予定を想って
残念そうに笑う
- 892 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 23:54:33.82 ID:+COzPGGWo
-
園子「天さんとのデートの時は、必ずつけるよ」
天乃「ありがと」
園子は可愛らしい笑顔を見せてくれる
友奈達のように、照れくささは感じられない。
それでも可愛らしいのは変わらなくて
恥じらいがない分、整った顔立ちが作り出す笑みは美しいとさえ言えるかもしれない。
けれど、見え隠れする無邪気さが、その笑顔の愛らしさを増してしまっている
それが薄れるまでは、きっと……園子は可愛いままだ
天乃「まだまだ、そんな貴女を見ていられそうで嬉しいわ」
園子「ん〜?」
心の中に隠したこと
それが何なのか分からない園子のきょとんとした表情がまた、愛らしくて
しかし、これ以上は時間もかけられない。
星乃を一瞥した天乃は、園子にあとでね。と、笑みを向けて、
その対面、沙織の方へと体を向けた
- 893 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/10(月) 23:59:47.94 ID:+COzPGGWo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/11(火) 00:10:52.92 ID:U1hKdqaxO
- 乙
久遠さんに唯一責められてたそのっちも立派になったなぁ
- 895 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/11(火) 04:33:10.84 ID:kp4WkEP+O
- 乙
沙織でラストか
- 896 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/11(火) 20:42:28.80 ID:uyaQdSPGo
-
では、少しだけ
- 897 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/11(火) 20:54:02.33 ID:WhcI64r3O
- かもーん
- 898 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/11(火) 22:18:01.59 ID:uyaQdSPGo
-
沙織「あたしがメインディッシュかぁ」
天乃「嬉しい?」
沙織「見劣りしてないかな?」
沙織は心配そうに言って見せたものの、
内心の嬉しさは隠しきれていない。
天乃「何言ってるのよ、もう」
沙織「あたし、可愛い?」
天乃「綺麗よ、貴女は」
天乃や風と同じ年齢の沙織は、
友奈達と比べて子供っぽさが抜けていて、
どちらかと言えば、綺麗なお姉さん。と、星乃達が言う程だ
沙織はまだ可愛いと言われたいらしいけれど
その願いに反して、沙織はもう大人の女性になりつつあった
- 899 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/11(火) 22:57:21.27 ID:uyaQdSPGo
-
天乃「でも、そうやって可愛い? って窺うところはまだ子供かもしれないわね」
沙織「そうかな」
嬉しそうに笑う沙織を一瞥した天乃は、最後の一つの指輪を手に取る
沙織の要望で用意したパンプキンダイヤモンドともいわれる、
天乃の瞳の色にも似た、オレンジ色のダイヤモンドを使われた指輪
天乃「私の色が良いなんて」
沙織「だって、あたし……天乃さんの色に染まっちゃってるから」
天乃「ふふっ、それもそうね」
沙織が大人になっても、
結局、猿猴はその体に宿したままとなっている。
彼が表に出てくるのは、沙織か天乃が危険な目に遭った時くらいで
それ以外は沙織が表に出ているから問題はないし、
沙織がそれを望んでいるから問題はないのだけれど。
それは、言ってみれば天乃の色に染まっていると言えるだろう
- 900 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/11(火) 23:26:42.03 ID:uyaQdSPGo
-
天乃「……沙織、手を」
沙織「ん」
天乃が左手を差し出すと、
沙織はその上に自分の左手を置く
やはり、天乃よりも一回りほど大きいその手は
天乃の手を、完全に覆ってしまえるほど。
沙織「小さいね」
天乃「ええ」
沙織「いつまでたっても……可愛いまま」
沙織は愛おしそうに言うと、
天乃の左手の薬指に指輪を嵌める素振りを見せる
沙織「可愛いのに、綺麗なのが――嬉しい」
天乃「え?」
沙織「お嫁さんだからね、自分よりも綺麗でかわいいのは嬉しいよ」
- 901 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/12(水) 00:24:22.60 ID:WsiPkEoio
-
沙織は本当に嬉しそうな声色で、
慈愛に満ちた瞳で、天乃を見据える
大人になった沙織の、綺麗な表情
天乃はそれをまっすぐ見上げて、少しだけ困ったように笑みを浮かべる
綺麗と言われるのも、かわいいと言われるのも悪い気はしない
だけれど、沙織の身長は天乃の婚約者の中でも比較的高く
押しの強さを覚えている体はドキリとしてしまって……天乃は軽く深呼吸をする
天乃「ありがと」
沙織「ううん、ありがとうはあたしだよ」
沙織の薬指に指輪を嵌める。
沙織はそれを静かに受け入れて
天乃の手が離れてもまだ、支えられたままであるかのようにその場に漂わせる
沙織「正直、あの頃は諦めてたから……だから、ありがとう」
指にはめられた結婚指輪
天乃の色に輝くダイヤモンドはとても美しくて
それはまるで天乃の瞳のようだと、沙織は右手で大事そうに覆った
- 902 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/12(水) 00:24:54.79 ID:WsiPkEoio
-
では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 903 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/12(水) 03:11:27.08 ID:hcI55ip5O
- 乙
沙織も歳とるんだな
- 904 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/12(水) 06:11:29.93 ID:uwIYaOinO
- 乙
沙織も成長しないって設定だったような
あれ半霊だから成長するんだっけか
- 905 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/12(水) 09:26:13.18 ID:dANqu/3CO
- すまん>>708で沙織以外の精霊は変わらないってあるから沙織は成長するんだな
- 906 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/12(水) 21:55:49.83 ID:WsiPkEoio
-
すみませんが本日は所用のためお休みとさせていただきます。
明日はできれば早めの時間から
- 907 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/12(水) 22:03:44.84 ID:d3VaUt6JO
- 乙ですー
- 908 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/13(木) 21:30:41.47 ID:L+mnrdnNo
-
では少しだけ
- 909 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/13(木) 21:43:01.00 ID:G19V2+viO
- あいよ
- 910 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/13(木) 22:39:52.71 ID:L+mnrdnNo
-
沙織「大切にする……指輪も、天乃さんも」
天乃「ええ、お願いね」
沙織「絶対に、最後まで責任を取るよ」
沙織は半霊ゆえに長生きすることになる
天乃や千景たち純精霊と違って、歳はとるし変わっていってしまうけれど
それでも、沙織は夏凜達に比べれば長生きすることになるだろう
子供がいて、精霊がいる
天乃は生涯孤独になることはありえないけれど、
可能な限り一緒にいたいと思っている。
伴侶として当然の考えかもしれないが。
沙織「あたしの中のこの力がなくなるまではね」
天乃「今の私なら、その力を返してもらうこともできるのよ?」
沙織「出来るだろうけど、長期間体調崩すだろうし……あたしはこのままが良いな」
- 911 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/13(木) 23:20:20.20 ID:L+mnrdnNo
-
以前に比べ、天乃の体調面に大きな影響はないだろうと九尾は言っていたけれど
たとえ天乃に力を戻しても、
絶対に安全が保障されているのだとしても、
沙織は天乃に力を戻す気はない
人間じゃなければ出来ないこともあるけれど、
半霊でなければ出来ないことがある。
ならば、少しでもできることが多い半霊を選ぶ。
たとえ、その出来ることのほとんどが必要のない世界であったとしても
沙織「必要な時に、必要なことが出来ないなんて嫌だからね」
天乃「そうよね、沙織は」
沙織「ふふふっ、愛してます」
天乃「……私も愛しているわ」
沙織は、どこか物足りなさそうな顔をしているけれど
これ以上は、今は難しい
- 912 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/14(金) 00:23:39.14 ID:U9GmDntKo
-
誓約の代わりにキスをすると言う選択もあったが、
言葉を交わす方が良いとの話でそうなった。
7回の接吻と誓約、指輪交換
それをするのは時間がかかるため、
みんなの前での接吻は削ってしまっている
やっぱり、全部終わってからが少し大変になるかな……と、
天乃は思わず笑って。
天乃「ありがとう、ずっと……傍に居てくれて」
沙織「……うん。連れて行ってくれて、ありがとう」
流石に沙織は余裕を一切失わずに
天乃のお礼に笑顔で答える
いつだって置いていかれてもおかしくなかった
けれど、天乃はずっと連れて行ってくれた
少しだけ強引に袖を引っ張ったこともあるけれど……。
それでも置いていかずにいてくれた
だから、ありがとう。と、沙織は言う
天乃「ついてきてくれたのは貴女だわ。ありがとね」
それでも天乃は上乗せして、沙織に背を向ける。
隣の星乃からの「もどるの〜?」という問いに、頷く
天乃「うん、千景ママのところで待っててね」
星乃「は〜い」
二人がママと呼ぶから千景ママ
千景は違うというけれど、そうなってしまったから仕方がないと思いながら、
天乃は自分のいるべき場所へと足を進めた
- 913 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/14(金) 00:28:11.28 ID:U9GmDntKo
-
では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から
- 914 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/14(金) 03:37:28.58 ID:AEl9EubcO
- 乙
みんなそれぞれ思いがあっていいなあ
- 915 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/14(金) 22:12:52.30 ID:U9GmDntKo
-
では少しだけ
- 916 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/14(金) 22:32:31.26 ID:ZX6iSBwZO
- きてたか
- 917 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/14(金) 23:12:38.84 ID:U9GmDntKo
-
瞳「では、ここに結婚証明書を用意しております」
天乃が定位置に戻ったのを確認した司会の瞳は、
近くに控えておいた手製の結婚証明書を参列者に見えるように提示する。
本来の結婚証明書ではそもそも7人もの名前が納まらない。
証明書でさえ―ここで提示するものに限るが―自由にできるのが、
天乃達にとってはとてもありがたいものだった。
瞳「新婦のみなさんには、こちらに拇印を押していただきます」
証明書には、すでに天乃たち全員の名前が書かれている。
印鑑を押せとばかりに名前の隣に書かれたちょっぴり歪な丸は、星乃と月乃が書いたものだ
そこに、拇印を押すことになっている。
瞳「お願いします」
証明書を置くのに程よいテーブルの上に瞳が紙を置く
その周囲に、天乃を中心にしてみんなが集まっていく
- 918 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/14(金) 23:36:50.46 ID:U9GmDntKo
-
夏凜「やっぱりちょっと曲がってるわね」
東郷「小さいのもあるわ」
子供の書いた丸の差にちょっぴり笑みを浮かべる
星乃と月乃
二人が好きな相手ほど丁寧で、嫌いな人ほど適当……なわけではなく
星乃が上から下へ、月乃が下から上へ
天乃で1つ、夏凜達で7つの計8つ
1人4個の丸を書いていった結果、崩れてしまっただけの話。
文句はないし、怒ることもない。
失敗しちゃった。と、残念そうにしているのを何度も見た
ノート一杯に丸を無数に書いているのを見た。
だから、小さな不器用さはただただ微笑ましいものだ
- 919 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/15(土) 00:17:41.88 ID:LEZSiT08o
-
天乃「みんな、手を出して」
天乃がそう声をかけると、夏凜達が揃って左手を出す。
拇印を押すなら右手という話を聞いたが、
そんな決まりなど、天乃達には関係ない。
きめ細かい羊毛を用いた柔らかい筆を赤く染め上げ、
まずは一番近い友奈の親指に走らせる
友奈「んっ……」
園子「ゆーゆ、エッチな声はダメだよんっ!」
くすぐったさに呻いた友奈に声をかけた園子の指にこっそり筆を流してあげると、
ビクンっと震えた園子の顰めた視線が刺さるけれど
どっちも可愛い。なんて、思わずにやけてしまいそうになる。
天乃「次はだれにしようかしら」
夏凜「遊んでると奪うわよ?」
天乃「ふふふっ、ごめんなさい」
夏凜に睨まれては仕方がない。と、
天乃は遊ぶのを諦めて、筆を強く握った
- 920 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/15(土) 00:20:57.35 ID:LEZSiT08o
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から
- 921 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/15(土) 02:21:30.48 ID:BaCvKJrLO
- 乙
本当にほほえましくてなにより
みんなかわいいな
- 922 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/15(土) 22:00:42.53 ID:LEZSiT08o
-
では少しだけ
- 923 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/15(土) 22:15:35.49 ID:wne8jb/pO
- よっしゃ
- 924 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/15(土) 23:01:02.71 ID:LEZSiT08o
-
どきどきすると言う風
ちゃんと押さないと。と、確認する樹
筆もありですねと、真剣な表情の東郷
緊張するね。と、笑う沙織
塗ってあげる。と、筆を受け取る夏凜
そして、左手を差し出した天乃
一人ずつ親指に塗って、
天乃は夏凜へと右手を出す
天乃「筆、貸して」
夏凜「友奈に悪戯するんでしょ。ダメ」
天乃「分かったようなこと言っちゃって」
筆を戻した夏凜に苦笑する。
最初に塗った友奈の親指はまだてかてかと潤いを感じさせている
けれど、もう一度――と、思ったのだけれど。
天乃「友奈、親指の、まだ大丈夫そう?」
友奈「はい、まだ大丈夫そうです」
天乃「なら良いわ。渇く前に押しちゃいましょ」
- 925 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 00:05:11.84 ID:2qUqKY6Xo
-
自分の名前の隣、
子供達の描いた丸の中に、それぞれ親指を押し付けていく
ぐっと押し込むと少しだけ紙に皺が寄る
樹が先に離して、園子が離す
東郷が続いて、友奈が続く
沙織がゆっくりと手を引いて、夏凜が指を上げる
天乃「……これで、完成ね」
みんなが離したのを確認してから、天乃も離す
結婚証明書には8つの赤い指紋がついている
分かりやすくそれぞれの名前の横にあるそれは
大小さまざまで、風が一番大きく見えて
やっぱり、天乃が一番小さい
ちょっぴり薄いものや傾いているものがあったりもして
少し個性が出ているようにも感じる
- 926 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 01:06:55.14 ID:2qUqKY6Xo
-
天乃「ふふっ、なんかいいわね」
沙織「綺麗に押せなかったのが悔い残るかも」
風「まぁ、良いんじゃない?」
それはそれで味が出るじゃないと風は嬉しそうに言って、
自分の押した部分を一瞥する
もちろん、そこまでの差はないが、
天乃と比べると一回り大きく見えてしまいそうな指紋
少しダイエットすべきかな。なんて思ったのを察してか
樹は「大丈夫じゃないかな」と、笑う
樹「お姉ちゃんは別に太ってないよ」
風「もう……樹ってば」
東郷「手が大きい方が、より優しく包めますよ」
困り顔の風に東郷の囁きが続く
何を大きく包めるのか
手ではないような気がしたけれど、
天乃はあえて何も言わずに、指を拭ってから一歩下がって瞳に目を向けた
- 927 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 01:21:23.71 ID:2qUqKY6Xo
-
天乃が下がったからか
夏凜達も同じように下がって瞳が列席者に見えるようにする。
瞳「ありがとうございました。確かに、確認いたしました」
瞳は改めて確認するように証明書を見てから、
天乃に笑みを浮かべ、夏凜に嬉しそうな表情を見せて
そうして、証明書を列席者に見えるように掲げてから、小さく息をつく
大事な言葉
だから、噛んでしまったりしないように
瞳「ここに誓いが成されました。皆さま、結婚の承認を頂けるのでしたら、盛大な拍手をお願いいたします」
讃州中学時代の友人
天乃や夏凜達の両親や、兄弟
決して多くはないかもしれないが、少なくもない人たち。
最初は認めてくれなかった人もいる
けれど、今はもう、そんなことはない。
- 928 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 02:19:22.79 ID:2qUqKY6Xo
-
星乃「ママーっ」
月乃「はくしゅーっ」
我先に……と言う意図もないのだろう
元気よく声を上げた二人の大きな拍手が響く
それに続くように周りのみんなが手を叩いて、
少しずつ、大きくなっていく
子供たちの元気の良さ
それに負けじと張り合う球子に若葉達は困った顔を浮かべて、天乃達の方に目を向ける
若葉「祝福だ」
歌野「そうね。ようやく」
祝福の中心、天乃達はとても幸せそうに見える
今はもう、誰にも反対されない
駄目だと言われることもない
千景「……お疲れ様、久遠さん」
もう何度も口にしてきたけれど、もう一度
千景は小さく口にして、ひと際大きく手を叩く
星乃と月乃の振り返った笑顔に、千景は微笑んだ
- 929 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 02:23:03.90 ID:2qUqKY6Xo
-
遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 930 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/16(日) 04:30:55.13 ID:mjqS3L5gO
- 乙
とうとう結婚完了かあ
ここまでの道のり考えると感慨深いな
- 931 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/16(日) 07:23:42.49 ID:bmY6oAVyO
- 乙
久遠さんやっと幸せを勝ち取ったんだなぁ…
- 932 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 18:47:47.48 ID:2qUqKY6Xo
-
では少しだけ
- 933 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 19:27:38.40 ID:2qUqKY6Xo
-
瞳「皆さまありがとうございます。ご承認を得て、ここに結婚が成立致しました」
瞳は心からの祝福を持って、告げる
数年前からいつか行うと決めていたことだし、
育ての親――あるいは、義姉として
夏凜の傍に居た瞳にも、込み上げるものはあるけれど
嬉しくとも泣いてしまうわけにはいかないのだと、息を飲んで
瞳「……ご結婚、おめでとうございますっ」
噛みしめるように祝福を口にする。
夏凜を見ると、流石と言うべきか夏凜は気付いて軽く礼をする
瞳は「夏凜ちゃん……」と、小さく呟いて
瞳「これをもちまして、挙式は無事に相調いました。めでたく結ばれました彼女たちに今一度盛大な拍手をお願いいたします」
司会である瞳の言葉に応えるように、祝福が広がっていく
星乃と月乃の嬉しそうな声
二人を宥める千景の困った声
それも聞こえているのだろう、
天乃の小さな笑い声が聞こえる
瞳「末永い幸せを願い、祈って……人前結婚式を閉式とさせていただきます」
- 934 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 20:07:56.89 ID:2qUqKY6Xo
-
司会進行という大切な役目……それも、あと一言で終える
嬉しいような寂しいような
そんな少しばかり複雑な気持ちを抱きながら、瞳はそれを口にする
瞳「それでは、これより新婦の退場でございます。皆さまの大きな祝福でお送りください。新婦の……退場です」
瞳のその言葉に、やっぱり大きな拍手が続いて
天乃を先にして、夏凜達が続いていく
天乃達が参列者の前を通ると、
親や友人
そして、千景たち天乃の精霊
みんなの手から花が舞い上がって
高く高く、風に巻き上げられたかのように
一枚一枚、降りていく
細やかなフラワーシャワー
その中を、天乃達はゆっくりと進んで――退場していった
- 935 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 20:56:55.45 ID:2qUqKY6Xo
-
控室へと戻ってきた天乃は、
最初に座っていた椅子に座って、大きく息を吐く
疲れはあるし、緊張もした。
7年も前からずっと望んできた結婚式がようやくひと段落ついたのだ
少しくらいは落ち着いてもいいだろうと、天乃は綿帽子を外す
天乃「はぁ……あっつい……」
時期を考えての白無垢の装いにはなっている
それでも、普通に生活するよりは熱を持ってしまう
特に、今の時期は。
少しだけ着崩して、張り付くような肌着をわずかに浮かせて空気を含ませる
天乃「結婚、結婚ね……ふふっ」
今までは結婚ではなく婚約だった。
それでも一日中必ず誰かが傍に居て、
休みの日はみんなが一緒に居て
そんな生活だった
そこから大きく変わる様なものはないかもしれない
だけど、自分たちだけでなく
親や友人、兄弟姉妹からの祝福を得られた結婚は、
やはり、心持が変わってくる
天乃「結婚、しちゃった」
指輪を嵌めた左手の薬指
その手を天井に掲げて透かしてみれば……宝石が優しい輝きを見せてくれた
- 936 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/16(日) 22:54:38.42 ID:2qUqKY6Xo
-
天乃「さて……」
結婚式は終わった
お色直しをして、披露宴
白無垢が和式としたら、
洋式の装いであるウェディングドレス
そして、なぜかタキシードに紋付袴
計3回の色直しになる
どこの大富豪の披露宴なのかと頭を抱えそうになるけれど、
みんなの希望なのだ、やってあげるべきだろう
扉を叩く音が聞こえて、入室を許可する
お色直しの為に入ってきた数人の係
着替えるウェディングドレスが持ち込まれてきて
その袋の膨らみに、天乃は思わず苦笑する
どれだけ大きいのかは試着の段階で分かっていることなのだけれど
天乃「申し訳ないけれど、宜しくお願いします」
「大丈夫ですよ。お疲れではありませんか?」
天乃「平気です……せっかく、用意したんだもの」
「白無垢もお似合いだから、少し勿体ない気もしますが……出来るだけ早く、綺麗に仕上げて見せますね」
- 937 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/17(月) 00:16:34.96 ID:aqPhPDzso
-
ウェディングドレスは、オレンジ色を織り交ぜた薄めのカラードレス
白無垢が純白だっただけに、
ウェディングドレスは色があったほうが良いという話になったのだ
タキシードは黒色だし、
紋付袴はそれなりに色がある
天乃「んっ……」
「きついですか?」
天乃「いえ、大丈夫」
白無垢でもそれなりに腹部への圧迫感があるのだが、
天乃の場合、最も苦しいのは胸になる
身長からして、天乃が着るものは言わば子供向けのサイズになってくる
そうなると、子供におさまらない胸囲を持っている天乃には辛いものになってしまう
とはいえ、私服のように全体的にサイズの大きい服にするわけにはいかないので
胸のサイズをやや無理矢理に調整する必要がある
それが……痛い
天乃「むーっ」
「ふふふっ、久遠さんほんと特別な魅力のあるお体していますね」
天乃「ありがとう。でも、私の伴侶が怒るからダメよ」
そういうつもりはないと分かっているけれど、
天乃は茶化すように、そう言った
- 938 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/17(月) 00:19:14.49 ID:aqPhPDzso
- ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 939 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/17(月) 00:35:24.48 ID:dr0QteT8O
- 乙
披露宴は何するんだろうか
そして久遠さんの胸は最後まで目立つなぁ
- 940 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/17(月) 22:24:59.93 ID:aqPhPDzso
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
- 941 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/17(月) 22:34:07.66 ID:lalbhwPLO
- 乙です
- 942 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/18(火) 23:47:23.08 ID:oU0euq7Co
-
遅くなりましたが少しだけ
- 943 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/19(水) 01:02:59.59 ID:5UuP8/OYo
-
披露宴と言っても、
よくあるプログラムに則ったものではない。
普通の結婚式や披露宴では、
どちらかに偏った関わりしかない人もいるが、
今回に限っては、参加者はみんな天乃達をよく知る人物しかいない
婚約から約8年
家族ぐるみの付き合いも多かったし、
讃州中学時代の付き合いも途切れることはなかった
そんな身近な人しか呼ばなかったからだ
その点で言えば、披露宴はもうすでに終わっていると言えるだろう
だから、やるのはお祝い
披露するのは、式では見せなかった衣装
ケーキ入刀は当然のように――やるけれど。
天乃「ウェディングドレスって、軽いのね」
千景「軽くはないでしょう? 白無垢に比べたら軽いけれど、数キロあるわ」
天乃「その白無垢を着てたから言ったのよ。相変わらず熱いけどね」
- 944 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/19(水) 01:46:32.46 ID:5UuP8/OYo
-
千景「辛かったら声をかけなさい」
天乃「ありがとう。でも、すぐにタキシードに着替えることになるから」
千景「ケーキ入刀はタキシードで行うの?」
天乃「ううん、そのためのウェディングドレスよ」
入場は通常通り行い、
食事が始まってから少し待って、ケーキ入刀
少し待つのはみんなが食事を楽しむためだが、
撮影会になるのは――まず間違いない
天乃はウエディングドレスだが、夏凜はタキシードだ
他に、友奈や風、沙織もタキシードを着る予定で、
東郷や園子、樹は天乃と同じようにウェディングドレス
大きなケーキではなく、少し大きめのケーキを7つ
天乃「太らないのが幸いだわ」
千景「7回食べさせあうのは……大変ね」
きっと、星乃達もしたがるから9回になるだろうけれど。
と、今は傍に居ない二人のことを考えて、千景は苦笑する
- 945 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/19(水) 02:01:15.84 ID:5UuP8/OYo
-
千景「それより、エスコートは私で良かったの?」
天乃「若葉なら真っ先に園子に取られちゃったわ」
ご先祖さまと、子孫
正確には違うかもしれないが、
300年の時を経たその関係があるのに、駄目とは言えなかった
夏凜は瞳で、樹が歌野
風は球子がエスコートすることになっている
そして、友奈は東郷たっての希望で東郷と一緒
千景「三好さん……夏凜さんと一緒でも良かったでしょうに」
天乃「それはお色直しの後にするのよ。ふふっ、お色直しが多い時の利点よね」
そこに利点があるなんて天乃達くらいだろうと千景は思ったけれど
嬉しそうな天乃の笑みに小言は言えなくて、笑うだけに留めて
天乃「さぁ、そろそろ時間よ。千景」
天乃は手を差し出す
綺麗なドレスに身を包んだ花嫁の手を受け取るのは
本当に自分で良いのかと少し躊躇って――その手を取る
千景「私もタキシードを着たほうが良いかしら」
天乃「着ても良かったのよ? きっと似合ったわ」
天乃の遠慮のない褒め言葉に、千景は「伊予島さんを喜ばせる気はないわ」と、首を振った
- 946 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/19(水) 02:01:45.93 ID:5UuP8/OYo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 947 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/19(水) 06:08:13.55 ID:N1Rv5/ZPO
- 乙
披露宴もじっくり描写していくのもいいね
- 948 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/19(水) 23:02:50.35 ID:5UuP8/OYo
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から
- 949 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/19(水) 23:04:20.34 ID:a5o45ieKO
- 乙ですー
- 950 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/20(木) 19:32:53.17 ID:P8Hp4tOpo
-
では少しだけ
- 951 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/20(木) 20:50:49.04 ID:P8Hp4tOpo
-
天乃達が式場そして利用したのは、天乃の実家の神社だ
大赦の上層に祖母がいたり、大規模ではないがお祭りを行っていたりと
地域に愛されていると言っていいこの神社には、
披露宴の会場として利用できる建物も併設されている
その大広間と言える扉の前まで来た天乃は、
すでにタキシード組が待っているのが見えて、笑みを浮かべる
天乃「やだ……みんな似合ってるじゃない」
風「天乃も似合ってるわよ。流石ね、やっぱり」
友奈「素敵ですよ。白無垢も似合ってましたけど……ウェディングドレスは格別ですね」
天乃「ありがと、友奈も格好いいわね」
友奈「ふふっ、ありがとうございますっ」
タキシードを着ている友奈は、
白無垢を着ているときよりも大人びて感じさせる雰囲気で
落ち着いているからか、照れていてもまだ余裕は感じられた
- 952 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/20(木) 21:19:41.71 ID:P8Hp4tOpo
-
沙織「白無垢の時よりも可愛くみえるね」
天乃「そうかしら? 綺麗じゃなぁい?」
クルッと回って見せようとしたものの、
流石にウェディングドレスでは出来なくて、両手を広げるだけに止める
沙織は「綺麗だよ」と言ったが、
夏凜は天乃を見て慈しみを感じる笑みを浮かべた
夏凜「正直言っていい?」
天乃「うん」
夏凜「星乃達が試着させて貰ってはしゃいでたのを思い出した」
風「あっ」
天乃「あってなによ……あって、もう……」
どういう意味か分かってはいるのだが、
ちょっぴりむくれてやろうかと思った天乃の隣で、
千景は「そうね」と同意する
千景「厳かさが減った分可愛らしいと思うわ」
- 953 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/20(木) 22:00:42.24 ID:P8Hp4tOpo
-
結婚式でどちらにするかと言えば、ウェディングドレスと言うのが、
千景の時代の基本だったように思うと、千景は懐かしみつつ考える。
当然、あの頃の自分が考える必要もないことだったので
本当にそれに傾いていたのかは定かではないのだが、
知る限りで言えば基本的に教会式で、ウェディングドレスだった。
だから、稀にしか目にしない白無垢は、神前式というイメージも先行して厳かさを感じる
ウェディングドレスも煌びやかで美しいとは思うものの、
天乃の容姿も相極まって、明るくて可愛らしいものに見えてしまう。
瞳「そうですね。久遠さん、お綺麗で可愛らしいですよ」
歌野「キュートだわ。凄く」
天乃「綺麗って言って貰いたいのに、もう」
かわいいと言われるのも嬉しいけれど、
綺麗と言われたいお年頃なのだ
樹「お待たせしました」
東郷「友奈ちゃんっ、天乃さんっ」
園子「待った〜?」
遅れてきた三人が綺麗としか言えないのならば、なおのこと。
- 954 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/20(木) 22:35:25.25 ID:P8Hp4tOpo
-
予定の時間よりも少し早く全員そろって
定刻通りに会場入りを行う
結婚式では司会だった瞳が夏凜のエスコートを行うため、
披露宴では司会を九尾が務めることになっている
もちろん、妖狐の姿ではなく人としての姿で。
金色の髪に赤い瞳。
天乃よりは控えめだが、モデル歳て通用する容姿な彼女は
やはり、加齢を感じさせない。
そんな目を引く九尾の司会に続くように、天乃達は入場を開始する
明るい音楽が流れる中で、
ウェディングドレスとタキシード
4人ずつの入場をして、横並びの長いテーブルに向かう
さっそくと言わんばかりに親や友人の端末やカメラでの撮影が始まった
- 955 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/20(木) 23:03:26.92 ID:P8Hp4tOpo
-
「夏凜ちゃ〜ん、天乃さんのことお姫様抱っこして〜」
夏凜「はっ?」
「やってやって〜」
本来の披露宴ならばしないかもしれない。
けれど、今までお世話になった親族や友人
みんなへの感謝も含めたこの披露宴は、自由だ
夏凜「大丈夫?」
天乃「その大丈夫は何の話なのかしら?」
夏凜「少なくとも体重以外の話」
子供を妊娠しているときは別だが
天乃は基本的に体重の変化がない
全盛期ほどの身体つきに戻すことは出来るが、それ以上にはなれないからだ。
天乃「じゃぁ、どうぞ。私を抱いてくださいな」
夏凜「ったく……酔ってる?」
天乃「お酒は飲めないわ」
夏凜は「そうだけど」と、周りの視線から逃れるように目を背けて
両手を広げる天乃に一歩近づく
肩に手をあてがうと、天乃も少しだけ腰を落として、
膝の裏側からもう一方の腕を近づけて、スカートを押し込んで膝裏を押さえる
夏凜「行くわよ」
天乃の背中側、真っ先に体重がかかる右足を軸にして天乃の体を横倒しにして
足を一気に持ち上げて天乃の体をぐっと持ち上げる
周りの楽しそうな声と、鳴りやまない撮影の音に
天乃と夏凜は困ったように顔を見合わせた
- 956 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/20(木) 23:13:51.96 ID:P8Hp4tOpo
-
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
ウェディングドレス→タキシード→紋付袴
それぞれで夏凜達との交流
それで終わりの予定になります。
- 957 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/20(木) 23:26:51.37 ID:N48w0qmsO
- 乙
久遠さん今までで一番幸せそう…
三周目は長いことやってただけに終わりは寂しくなるな
- 958 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/21(金) 00:15:10.48 ID:QChSJX+xO
- 乙
もうすぐ終わりか…
148cmで23歳で経産婦とかいうおに盛り設定
- 959 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/21(金) 01:29:28.10 ID:HkzY2pY1O
- 乙
終わるのも寂しいが幸せそうでよかった
- 960 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/22(土) 00:24:04.46 ID:PVefUbmyo
-
すみませんが本日は所用のためお休みとなります
明日は可能であれば通常時間から
- 961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/22(土) 06:55:01.01 ID:YtQKraLlO
- 乙
- 962 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/22(土) 21:45:51.21 ID:PVefUbmyo
- 遅くなりましたが、少しだけ
- 963 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/22(土) 22:07:30.51 ID:eONnDxzzO
- よしきた
- 964 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/22(土) 22:26:53.20 ID:PVefUbmyo
-
夏凜「もう降ろすわよ」
「え〜っ」
夏凜「え〜じゃないの。ケーキも来るんだから」
天乃「ゆっくり降ろしてね」
夏凜「任せなさい」
お姫様抱っこをするのはこれが初めてではない。
抱き上げるのも降ろすのも手慣れたものだ
天乃「友奈達も大変ね」
天乃と夏凜がさせられていたように、
友奈は東郷を
風は樹を
そして沙織は園子をお姫様抱っこさせられていて、
夏凜はそれを横目に天乃を降ろして、ドレスの皺を少しだけ伸ばす
夏凜「身体平気?」
天乃「ええ、流石の抱かれ心地だったわ」
夏凜「そ。ならよかった」
- 965 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/22(土) 23:08:59.15 ID:PVefUbmyo
-
天乃「重くなかったでしょ?」
夏凜「軽くて驚いたくらい」
天乃「いつも抱いてくれてるくせに」
重くなった天乃のことも、
軽くなった天乃のことも
夏凜は変わらず抱いてくれているから、驚くなんてありえない。
ただ、ウェディングドレスを含んでも軽いという点には、
やっぱり、思うところはあるだろうか
天乃「もう少し、重い女が良いかしら?」
夏凜「精神的に重いのは勘弁して頂戴」
天乃「ふふふっ」
言葉の意図を読んだうえで断った夏凜に天乃は笑みを浮かべて、
あなた次第だわ。と、委ねておく。
もちろん、天乃はそんな気なんて毛頭ないけれど。
- 966 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 00:56:26.60 ID:CbdfwSRUo
-
天乃「ケーキ入刀、楽しみね」
夏凜「でっかいの突っ込むかじゃないでしょうね……」
天乃「ふふっ、それは気分次第だわ」
夏凜「私も出来るってこと、忘れないでよ?」
ニヤリと笑う夏凜だけれど、
天乃はドレスで夏凜はタキシード
どっちが無茶をさせられるかと言えば、
間違いなく夏凜の方である
いや、
衣装がどうであろうと関係ないかもしれない
夏凜「まぁ、天乃が私の後に6回あるって考えると軽めにするべきよね」
天乃「あら、ありがと」
夏凜「だから私にも優しくしてくれると嬉しいんだけど」
天乃「そうねぇ……私の気持ちくらいの大きさにしてあげる」
夏凜「あぁもう。好きにしていいわよ」
困ったように頬を染めた夏凜に、
天乃は柔らかく微笑んだ
- 967 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 00:57:08.92 ID:CbdfwSRUo
-
遅くなりましたがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから
- 968 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/23(日) 01:20:08.70 ID:AoEkOgMYO
- 乙
エロォい!!
- 969 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/23(日) 06:51:33.12 ID:CaNctS8CO
- 乙
夏凜から別の意味のケーキ入刀なんて台詞が出てくるとは…
その場面是非見てみたいですハイ
- 970 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 17:10:06.97 ID:CbdfwSRUo
-
遅くなりましたが、少しずつ
- 971 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/23(日) 18:02:51.87 ID:YmXCWl2lO
- きてたか
- 972 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 18:16:34.11 ID:CbdfwSRUo
-
天乃達のもとに運ばれてきたウェディングケーキ
四角い、開かれた本の形をしているケーキ
天乃はせっかくなら煮干しの形も面白いんじゃない? と言ったけれど
夏凜に一蹴され、本の形に落ち着いた
縁を囲むクリームとフルーツ
中央は薄いクッキーの板
チョコレートで文字を書かれており、二人分の名前が書けるようになっている
実際目にしてみれば、とても可愛らしい形だ
天乃「あら、私達の名前が書けるのね」
夏凜「そう言うことも出来るっていうから、選んだのよ」
天乃「夏凜ったら、ロマンチックな子なんだから」
夏凜「なによ。ダメ?」
天乃「ううん、可愛いわ」
- 973 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 18:40:49.49 ID:CbdfwSRUo
-
天乃よりもロマンチックな考え方をする夏凜は、
それがなくともだけれど、天乃にとって可愛い人だ
もちろん、可愛いだけでなく
格好いい時も綺麗な時もあるけれど。
天乃「名前どっちに書きたい?」
夏凜「ん?」
天乃「チョコレートよチョコレート。私、字には自信があるわ」
夏凜「楽しんでるじゃないの……」
天乃「ふふっ、実は子供達の為にキャラ弁の勉強してるのよ」
夏凜「それは知ってる」
雑誌を買っていることも
それを参考に実際に作っていることも
夏凜「手作りケーキでお祝いだってしたわけだし――って、ちょっと!」
天乃「遅いから書いちゃった」
夏凜「自由なんだからっ」
上下に並んでいる名前を書く空欄
上に自分の名前を書いた天乃は、笑顔でチョコレートのペンを差し出す
- 974 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 20:13:42.54 ID:CbdfwSRUo
-
天乃「上の方が良かった?」
夏凜「それはどっちでもいいけど」
天乃「私の上に重ねて書いても良いのよ?」
夏凜「何言ってんのよ」
まぁそうよね。と、天乃は笑いながら身を引いて、
ペンを握る夏凜の手をじっと見つめる
夏凜も料理をするにはするが、
デコレーションとして文字を書いたことは一度もない。
自作のケーキだって、
その辺りは東郷か風そして天乃の役割だ
天乃「ふーってしていい?」
夏凜「やったらケーキの5割を突っ込んでやるからね」
ちょっぴり緊張で震える手
一本一本の線が綺麗に書かれている天乃に比べると
少し、歪んでいたり乱れてしまっている夏凜の字は下手に見えてしまう
けれど、それも思い出になる
- 975 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 21:17:22.42 ID:CbdfwSRUo
-
天乃「今度一緒にデコレーションの練習する?」
夏凜「……少し教えて」
天乃「はーい」
夏凜の赤らんだ頬に苦笑しながら、
天乃はケーキの横に置かれたケーキナイフを手に取る
右手で持ち、夏凜の方に持ち手を差し出すと、
夏凜は左手で天乃の手を包むようにナイフを掴む
九尾「こほんっ」
九尾のようやくか、と言いたげな咳払いがマイクから聞こえて
ケーキ入刀……と、声がかかる
夏凜「良い?」
天乃「大丈夫よ」
二人で揃って、ケーキにナイフを入れていく
中央で割れているクッキー生地の間、
そこを通してホイップクリームとスポンジ、
中に隠れたイチゴを断って、ナイフを引く
- 976 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 22:21:16.28 ID:CbdfwSRUo
-
乱れることなくきれいにカットできたケーキを一瞥して、
傍らに置いてあった、大きな煮干しの形をしたものを手に取る
夏凜「諦めなかったのね」
天乃「もちろんよ」
煮干し型のケーキは諦めたけれど、
ならばスプーンの代用は煮干しっぽいもので
そう企んだ天乃の用意した煮干しっぽいバターナイフ
縁はスプーンのように丸まっている安心仕様
「でっかくいこ〜っ!」
「やっちゃえあまの〜ん」
夏凜「他人事だと思って……」
天乃「私の気持ち、どのくらいがお好みかしら?」
- 977 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 23:16:43.20 ID:CbdfwSRUo
-
さっき、夏凜は好きにして良いと言ったけれど
ならば、どのくらいの気持ちが良いのかと、天乃は聞いてみる
ケーキの量で気持ちが量れるわけではない
天乃としては、このケーキ一つでは物足りないほどだ
天乃「みんなは夏凜の顔がケーキで汚れるのを期待してるみたいだけど」
夏凜「じゃぁ……すくいあげられるだけ、全部」
天乃「このにぼスプーンはすっごいのよ」
夏凜「スプーンなの? それ」
クッキーの薄い生地をパキっと割って、
ケーキの上から煮干しの頭を差し入れる
尻尾の部分を摘まんで、頭がお皿に触れるまで押し込む
すくいあげた煮干し型のナイフの上には
スライスされたイチゴを含むクリームを間に挟んだ二段のスポンジ
上部にはクリームとイチゴやベリーなどのフルーツが乗せられていて
一口で食べることを難しくするクッキーが乗っている。
天乃「はい、あ〜んっ」
夏凜「ぐ……」
にこやかな笑み
危なげなくケーキを差し出してくる小さな手
それはいいけれど、みんなに見られているというのが恥ずかしくて、
夏凜は思わず躊躇ってしまう
- 978 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/23(日) 23:22:47.47 ID:CbdfwSRUo
-
では短いですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から
- 979 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/23(日) 23:33:25.35 ID:YmXCWl2lO
- 乙
なんというあまにぼによる甘甘展開だ…
- 980 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/23(日) 23:48:35.09 ID:1fd9BX43O
- 乙
久遠さんが幸せそうでなにより
新婚みたいないちゃつき具合だけど7年同棲してるのよねこの子達
- 981 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/24(月) 20:29:23.85 ID:3ehgIUwho
-
では少しだけ
- 982 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/24(月) 20:37:52.00 ID:6Dmq4xDIO
- かもーん
- 983 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/24(月) 21:57:09.12 ID:3ehgIUwho
-
天乃「ほら、零れちゃうから」
夏凜「っ……」
二人きり
あるいは、友奈達なら見られても仕方がないから簡単にできる
けれど、それ以外の人たちから注目されているというのが
夏凜の羞恥心を強く揺さぶる
天乃は平気なのだろうかと、目を向けるが
天乃はまったく気にしていないといった様子で
煮干しの上から落ちてしまいそうなケーキのことを気にしている
天乃「あ〜んっ」
夏凜「っ……あぁもうっ」
逃げられない
そもそも逃げられることではない
ならばもう勢いだと、夏凜は大きく口を開けて、
天乃の差し出しているケーキへと突っ込んでいく
- 984 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/24(月) 22:41:31.82 ID:3ehgIUwho
-
両頬、顎の部分
さらには鼻にまでべっとりとクリームをつけて
夏凜は咥えこんだ煮干しを唇で挟んで――にゅるりと抜き出す
夏凜「っ」
口の中一杯のケーキ
話すことなんて当然できなくて、頬をもふもふと動かしている
動画を取っている人
連写で撮影している人
色んな音が入り混じって賑やかになっていく
夏凜はそれが恥ずかしいようで顔を背けようとしたが
天乃はそれを許さない
天乃「ダメよ、夏凜」
夏凜「ん……」
天乃「背けちゃダメ」
- 985 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/24(月) 23:10:39.77 ID:3ehgIUwho
-
本来の披露宴でして良いことなのか分からないけれど、
これはそんな格式ばったものではない
なにより、みんなが少し面白いものを期待している
せっかくの披露宴だ
長年待ち続けたようやくの結婚式を終えて、
正しく誓い合った仲になった
だから――と、天乃は夏凜の両手首を掴んで、下に引く
天乃「屈んで」
夏凜「………」
本当なら、布巾で拭ってげるべき
でも、それだけじゃ物足りない
あとが大変になるとは思う。
でもそれでもいい
少し頑張れば届くほどの高さにまで屈んだ夏凜の頬にキスをする
- 986 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/24(月) 23:21:33.10 ID:3ehgIUwho
-
クリームの盛り付けられた、甘い頬
自分の口元が汚れるのも厭わずに天乃は口づけをして
ぺろりと、クリームを舐めとる
夏凜は分かっていただろうけれど、ビクンっと震えて
ざわめき立つ周囲からは、端末を取りこぼしたような音さえも聞こえてくる中で
天乃はほんの少し上げていたかかとを下げる
天乃「ふふっ、甘いわね」
夏凜「っ……」
天乃「美味しい」
嬉しそうにそう言った天乃は
用意されていた布巾を手に取って夏凜の口元と頬、鼻先を拭ってから
本当は拭いて欲しいけど。と、呟きつつも自分の口元を拭う
天乃「ちゃんと食べてからじゃないと、喋ったらだめよ?」
夏凜「ん……」
顔の赤い夏凜は何も言えずに顔を背けてしまったけれど
天乃は止めずに、撮影するみんなに向けて「夏凜は可愛いでしょ?」と、笑顔を見せた
- 987 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/24(月) 23:23:27.84 ID:3ehgIUwho
- では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 988 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/24(月) 23:28:41.78 ID:6Dmq4xDIO
- 乙
このシチュエーション、そのっちが物凄くハッスルして見てそう
- 989 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/25(火) 21:27:14.18 ID:5BanpIeGo
-
では少しだけ
- 990 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/25(火) 21:29:25.49 ID:D6GV/BN7O
- よっしゃ
- 991 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/25(火) 21:47:30.81 ID:5BanpIeGo
-
夏凜の愛らしさを堪能した天乃は、すぐ隣に並んでいた友奈へと近づく
夏凜とのやり取りを見ていたからだろう
顔の赤い友奈は自分の唇に指をあてて、少しだけ後退りする
キスをされること自体は嫌ではない
むしろされたいと思う
けれど、夏凜の反応を見てしまっては……気後れしてしまう
天乃「あら、友奈もして欲しいの?」
友奈「ふぇ……ぇ……ぁ、そのっ」
天乃「タキシードが似合う、可愛い女の子ね」
友奈「っ」
離れかけた友奈は踏みとどまったものの
天乃はそのまま近づいて、友奈の手を取る
お嫁さんの尻に敷かれる旦那を思わせるような流れだが
そんなことよりも――と、見ている人たちは動画を撮っていた
なにせ、普段は生き生きとした明るさで男顔負けな友奈がたじたじなのだから、貴重だ
- 992 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/25(火) 22:21:59.41 ID:5BanpIeGo
-
天乃「かわいい女の子には、無理はさせられないわね」
友奈とのケーキは、
パイ生地を土台にしたもので
ストロベリーやパイン、キウイなどの果汁を使ったクリームと
普通の生クリームを用いてデコレーションし、
花をモチーフにカットされた果物をあしらったものだ
スポンジのような柔らかさがない分、
夏凜と同程度では友奈の口に入ることさえないだろう
天乃「私の手を握るのと、私に握られるの……どっちがいい?」
友奈「えっ」
天乃「ケーキ、切らなきゃ」
手を引いて友奈を近づかせると
天乃はケーキの横に置かれていたナイフに右手で触れる
天乃「今は、その時間だもの」
友奈「そ、それは分かってますけど……その、ち、近いですっ」
天乃「大丈夫よ、キスはしないから。ね?」
- 993 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/25(火) 23:42:30.64 ID:5BanpIeGo
-
右手でナイフを握って、
左手は友奈の腰に――なんて考えもしたけれど
友奈の精神が限界に来るだろうからと、天乃は断念する
天乃「どうする? 私の好きにさせてくれるのかしら?」
友奈「わ、私の手を握ってください」
天乃「はい」
ナイフから天乃が手を離し、友奈が手に取る
その手を天乃は包むようにして握ってあげると
友奈はピクリと体を跳ねさせて、天乃を見つめた
天乃「なぁに?」
友奈「擦ったりしないでくださいね?」
天乃「言われるとしたくなっちゃうのに」
困っちゃうわ。と、
わざとらしい天乃に友奈は困ったように眉を曲げて笑う
友奈「困っちゃうのは私です」
- 994 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/26(水) 00:21:11.92 ID:mougWsVSo
-
天乃「その方が可愛いかしら?」
友奈「可愛くないですっ」
かわいいのに。と、
天乃は心の中で思いながら、
友奈の導くような手の動きに従ってナイフをケーキへと下ろす。
夏凜のケーキよりも大きめで形のあるフルーツが多く
それを避けると花の形になっている可愛らしいフルーツを切らなければいけなくて
クリームを押しつぶして形が崩れてしまうのを諦め、ナイフを通していく
友奈「どうしたら――」
天乃「少し力を抜いて、私に合わせて」
パイ生地が崩れてしまわないかと心配する友奈に、天乃は優しく囁く
ここまで上部にたっぷり盛りつけられている状態は初めてだが、
パイ生地は押し切ってしまうのが基本だ
そう入れた力に、友奈の力が加わって思ったよりも簡単に下まで切ることが来た
- 995 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/26(水) 00:21:56.54 ID:mougWsVSo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から
- 996 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 02:25:59.26 ID:JmXWiggBO
- 乙
友奈かわええ
- 997 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/26(水) 22:04:41.39 ID:mougWsVSo
-
すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
次スレは明日
- 998 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/27(木) 06:04:01.29 ID:U0gJ4IT/O
- 乙
- 999 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2020/08/28(金) 00:01:11.53 ID:+4O5/Y95o
-
遅くなりましたが、次スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二十三輪目】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1598540418/
- 1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/28(金) 00:02:26.12 ID:5Sey9oWYO
- 了解ッス
- 1001 :1001 :Over 1000 Thread
- __|_____|___!__}
___ |_ } }
,. :'´:::::::::::::: ̄`ヽイィ_ ̄「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「 ̄ ̄ ̄!
、ゝ-'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::´r┴―――――‐┼―┬ー'
__、_>':::::::::::::::::::ト、l:、: :: ::. :.. ..: .:. ::::{_______l____{
`ヽ:_..::::::::::::::::::::::: .:|-''´}:.:.:..:l::;i::、l、::::::::( | ̄| ̄「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ l
,>:::::::::::::: ::: .: .::.| /:;:::::;ハ{ム_‐トハヘ::ゝ| | | |
'⌒ァ::::::::..::. :::.::::;lヘ‐ ´ヘハi´'´jハY 「|「 ̄ ̄ ̄ ̄ 「 ̄ ̄ ̄ ̄「 ̄
 ̄7;.ィ::{::::l::l::ljレr=、ヽ,rヘ ゞ-' _,j !|______l____j__ / ̄ ̄ ̄ ̄
∠ハ:::ヽハl:{' {!´};リ } 、 ` ̄´ !::::| |. | | | 今度は貴方のお話、読ませてくださいね
'イ::`:::lヘハヽ.__´/ ヽ_ j___!________|___!__j .ノヘ.____
{;.イ/::!:::::::lヘ く_,) ,ィ:| r、 /)! {
' !::::|:::::::|`^ヽ .___ /,ノrー――― ノ } ///)一'
/::::::!::::::::!:::::::::_r' ー--、fr、| / '-' / ' /ノ
イ:::::::!:::::: :ヽ'´:.{ ト.ゝく!___ / ´/l
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- 男「俺と付き合ってくれ!!」幼馴染「お断りします!」 @ 2020/08/27(木) 23:28:03.08 ID:LAANjzG20
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乃々「なぜが凛さんと机の下にいるんですけど…」 @ 2020/08/27(木) 22:10:31.98 ID:vN/BYrR00
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可憐「プロデューサーさん、すごく匂う……」 @ 2020/08/26(水) 23:56:26.95 ID:dppcF+LZ0
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桃華「ありすさんからPちゃまの匂いがしますわ!」 @ 2020/08/26(水) 23:43:24.74 ID:3dypgh/w0
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【モバマス】P「美優さんが俺の母校の制服着てきた」 @ 2020/08/26(水) 20:57:34.46 ID:Ifi9psbd0
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