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【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【2頁目】
- 553 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 00:18:10.33 ID:XTEi82qoO
- 乙
もう保留の結果待たずに行くかもしれないだけど杏たちついてきてくれるかなあ
- 554 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 19:57:28.88 ID:QoCov0zMo
-
では少しだけ
- 555 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 19:58:11.22 ID:QoCov0zMo
-
√ 2018年 8月8日目 昼:丸亀城(寄宿舎)
お昼にもなれば、流石に神託が下ったことは大社に広がり、
それについての会議も執り行われることになる
幸いにも、巫女の中でも特に秀でているのがひなたと言うこともあって
一般の巫女には伝わらないような内容も、ひなたにだけは伝わってきたりもする
そのせいで力を通して九尾に伝わり、九尾から陽乃へと筒抜けになっていたりもするのだが。
陽乃と九尾を除けば、ひなたを含めても誰も知らないのだからどうしようもないのだろうけれど。
その結果、遠征の有無は5日後まで答えの先延ばしが行われると、陽乃へと伝えられた。
陽乃「……は?」
『5日後までには答えを出すそうじゃ』
陽乃「それは聞いたわ。どうして?」
『ふむ……』
1つ、諏訪は元々時間稼ぎとして考えられていたこと
1つ、諏訪まで行くには、勇者の経験が浅すぎること
1つ、諏訪襲撃後に、四国が襲撃を受けた場合に防衛出来ない可能性があること
1つ、久遠陽乃という危険人物が国内に留まっていること
理由としてはこんなものだと九尾は並び立てて、一息つく
言われれば確かにと納得する話ではある。
即時棄却とならず、保留となったのがむしろ運が良かったとさえ言える状況だ
『主様、言わずとも承知と思うが……人間どもは見捨てるつもりじゃぞ』
陽乃「ええ、分かってるわ……」
- 556 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:09:53.24 ID:QoCov0zMo
-
大々的に神託が降りた以上、まったく聞く耳を持たないというのは
巫女はもちろん、神々に対しても非常に無礼なふるまいである
大社という組織が、それを進んで行うとは思えない
熟考したという体裁を整え、やはり状況的に送ることは出来ない。という判断になるだろう
もちろん、その逆に "ご神託なのだから遂行すべき" ということにならないとも限らない。
しかし、それでも今日明日に答えが出るはずがない
最低でも2日3日はかかるだろうし、5日後までと言うのならそれだけの時間を浪費する。
『小娘共を呼ぶのかや?』
陽乃「連絡手段がないし……」
それに、呼んだところで犠牲者を増やすだけになるかもしれない
あの二人は勇者だ
今は脆くても、いずれまともに戦えるようになる
その頃には、久遠陽のなんて化け物も討てるだけの力が備わっているかもしれない
なにより、この諏訪遠征は陽乃の我儘に様なものでしかなく、
本当に必要な行為ではないのだから。
ここで無理して死ぬのは、ただの犬死でしかない
なにより――
陽乃「私、あの二人の目の前で人を殺したのよ? そんな私が、付いてきてなんて言えるわけないじゃない」
『死して然るべき有象無象を殺めたところで、問題などあるまい』
陽乃「あなた達基準では。でしょう……私達は違うの」
- 557 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:21:14.37 ID:QoCov0zMo
-
陽乃「それに、あなたの言う有象無象にとって、死ぬべき存在は私よ」
自分を名指しして、胸元に手をあてがう
人を一人殺したのに
多くの人にそれを見られ、より一層責め立てられる側に立たされたというのに
杏と球子
陽乃の友人だと言い張る二人の勇者の目の前でそれを行ってしまったというのに
心臓の音はまるで高鳴ったりしない
緊張も恐怖もなく平穏無事、まるで些末なことを語っているかのよう
でも少しだけ、痛みを感じる
陽乃「そんな私が、あの二人と一緒にいるのを見られるわけにはいかない」
『殺せばよい』
陽乃「馬鹿言わないで」
『不服なのじゃろう?』
陽乃「望んでたことだもの」
『妾に主様の戯言が通じるとでも』
陽乃「だとしてもよ」
俯く視線の先には狐を模した影が見える
そこに、九尾がいるのだ
陽乃「私の望んでた結果であることに違いない」
『抜かしおる』
陽乃「もう、裏切られるのも……手を伸ばされるのも嫌だから」
- 558 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 20:36:17.05 ID:QoCov0zMo
-
あの二人は、本当に善良なのだろう
民衆曰く化け物である陽乃を友人とまでいうのだから。
裏に何かを秘めているのでなければ、馬鹿なだけだと思いたくなるほどに優しいのだ。
だが、その二人は人々の声を聞いた
陽乃に対して何を思い、抱き、行動しようとしたのかを知った
それに対しての陽乃の態度を目の当たりにし、果てには人を殺す瞬間までもをその目に焼き付けた
勇者が守るべき一般の人間を、陽乃は殺したのだ
杏と球子が勇者であることは、あの場の人々の誰もが知っている
その二人と陽乃が、今後行動を共にしていることを知られれば、
杏の家は多大な被害を被ることになるだろうし、もしかしたら球子の家だって被害を受けるかもしれない
今は勇敢に立ち向かい、蹴り飛ばされた勇者だと言われる程度かもしれないが
知られた後はもう、化け物の仲間に成り下がる
そうなったら取り返しはつかない
陽乃「独りが良いって、初めから言ってたことじゃない」
『よいのか?』
陽乃「いいの。これで」
『一人で往くのかや?』
陽乃「そうね……向こうで合流しなかったら。一人になる」
1、遠征に行く
2、明日の朝、出発 ※9日目朝
3、1日待つ ※9日目昼
↓2
※1 合流判定1回
※2 合流判定3回 + 大社(千景・若葉・友奈)遭遇判定
※3 合流判定4回 + 大社(千景・若葉・友奈)遭遇判定
※大社遭遇の場合、判定により戦闘
- 559 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 20:38:20.15 ID:JDCxj5WHO
- 2
- 560 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 20:41:52.64 ID:gPjknOjEO
- 2
- 561 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:07:00.31 ID:QoCov0zMo
-
陽乃「出発は明日の朝にするわ」
『見つかるやもしれぬが』
陽乃「まさか……こんな場所で待ちぼうけるつもりなんて毛頭ない」
寄宿舎は真っ先に大社が詰めかけてきてもおかしくない場所だ
昨日の今日でまだ人が来ていないこと自体奇跡だと言える
そんな場所に、いつまでもいられない
神社……は、もう無理だ
一度、あの場所が潜伏地だと晒してしまったのだから
捜索となればすぐに人が来る
瀬戸大橋の方、壁のところで待機が妥当だろう
陽乃「また野宿になるかもしれないけど……廃屋くらいはあるはずだし」
廃屋だろうと、あの神社よりはマシだ
『見つかれば厄介なことになるぞ』
陽乃「ええ」
『くふふふっそうか……ならば妾は何も言わぬ』
好きにするがいい。と、
九尾は喉を鳴らしながら笑った
- 562 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:27:19.78 ID:QoCov0zMo
-
陽乃「………」
杏と球子は陽乃が遠征に行こうとしているのは知っている
陽乃がたとえ一人であろうと
遠征に向かう意思があるということも
ただ、杏には最低でも三日後と言ってある
そのまま考えているなら、
杏たちが向こうに行くのは明後日
特に約束の場所を決めたわけでもないし、
時間だって決めてもいない
合流する可能性は限りなく低いと言っていいだろう
いや、しない方が良い
したところで、二人が以前のように協力関係にあるとは限らないのだから。
場合によっては、その場で戦いになることもある。
陽乃「っ……」
いずれにしても、ハイリスクだ
最悪の展開でさえなければ……どうにかなるが。
陽乃「来ないで、くれると良いのだけど」
- 563 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 21:39:03.05 ID:QoCov0zMo
-
15〜24 大社
58〜67 若葉
83〜92 友奈
↓1のコンマ
※ぞろ目 千景
※それ以外は通常
- 564 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 21:41:23.59 ID:M2X/2sudO
- あ
- 565 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:00:30.83 ID:QoCov0zMo
-
外を駆ける足音が聞こえた。
まだここにいても問題が無かったころに何度も聞いた音
鍛練に努めているそれは、若葉の――
陽乃「あ……」
違う。
足音は間違いなく若葉のものだ
しかし、それはいつも聞いていた走り込みではなく
もっと、慌ただしい
その音は陽乃のいる部屋の前で途絶えると、
ドアノブが音を立てる
ドアの鍵をかけているおかげで、一度で入ってくることはなかったが、
しかし、若葉はなぜか合鍵を使って容易く侵入してきた
若葉「っ……」
陽乃「久しぶりね」
窓から逃げ出すことも考えたが、
そうしたとして、千景たちに見つかる可能性がないとは言えない
だったら、まだ話し合う余地のある若葉と対峙したほうが楽だと考えたのだ
- 566 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:10:25.06 ID:QoCov0zMo
-
若葉「ここに、いたのか」
陽乃「いると思ったから来たんでしょう?」
若葉「半信半疑だった」
昨日、なぜだか背筋が凍る思いをした寄宿舎
ドアの前にまで来て一度は開けようかと思ったが、開けられずにいたが
今日は開けるしかなかった
若葉「……指示が来たんだ。久遠陽乃を見つけろ。と」
声を絞り出して、
血が滲みそうなほど強く拳を握る
陽乃「それで?」
若葉「それで、だと……?」
陽乃「ええ。どんな話が来たかってことくらい、分かってるわ」
若葉「くっ……っ……なぜだ! なぜなんだッ!」
陽乃「………」
若葉「なにがあったんだ! どうして……人を殺したんだ」
陽乃「大社? それとも土居さん達?」
若葉「そんなことどうだって――」
陽乃「土居さん達でしょ……じゃないと、疑いから入らないのがおかしいもの」
若葉「茶化さないでくれ!」
- 567 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 22:54:12.45 ID:QoCov0zMo
-
若葉は、勇者としての装束をすでに着込んでいる
青を基調としていて、清楚さを感じさせる装束
左の腰に鞘を構え、まだ納めたままの刀の柄をゆっくり握る
若葉「頼む……怪我をさせたくない」
陽乃「良いの? 人を殺した私に手加減なんて」
若葉「迫害を受けた件は聞いた」
若葉は、大社から陽乃捜索の命令を受けた
しかも、生死を問わないというのだから相当な何かがあったのは明白
すぐに杏と球子に連絡を取って何があったのかを聞いたのだ
若葉「最悪の場合、伊予島の両親まで被害に遭いそうだったのも聞いた。だとしても……殺す必要なんて」
相手が武器になるものを持っているのも聞いている
しかし、それでも聞かずにはいられなかった
若葉「頼む……本気になりたくない」
陽乃「……馬鹿な人」
1、窓から逃げる
2、生かしておく価値がなかった。それだけよ
3、武器が有効だなんて、思われたら面倒だもの
4、だって、私は化け物だもの
5、いいわ。その装束の性能、テストしましょう
↓2
- 568 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 22:55:15.50 ID:M2X/2sudO
- 1
- 569 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 22:57:07.57 ID:9bPO1skl0
- 3
- 570 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/18(木) 23:01:10.06 ID:QoCov0zMo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
- 571 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 23:11:43.25 ID:M2X/2sudO
- 乙
若葉の装束の初登場がこんな形になるとは…
立場上見逃す訳にはいかないし辛いだろうなぁ
- 572 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 00:26:43.53 ID:RM8QrF/kO
- 乙
マジでどうなってしまうのか……
- 573 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 20:55:16.28 ID:6J3Qg0q7o
-
では少しだけ
- 574 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 20:55:48.66 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃「武器が有効だなんて、思われたら面倒だもの」
若葉「武器なんて、久遠さんには何の意味もないじゃないか」
陽乃「そうね」
若葉「私たちの……いや、神々の力を宿したものでなければ、久遠さんには傷一つつけられない。だろう?」
陽乃「そうよ。化け物らしく、私の体は丈夫だわ」
簡単にに血反吐を吐くし
昨日なんて、途中で失神したうえに今朝までまともに話すことさえできない状態だったけれど。
それはあくまで、自滅
自分よりも一回り大きい大人から暴力を振るわれたところで
今の陽乃には、痛くもかゆくもない
陽乃「でも、武器の一つが通用しなければ二つになるし、刀が駄目なら銃にもなるでしょ?」
若葉「だからって……」
陽乃「抵抗する意思がある限り終わらない。だから、その心を折る必要があった」
自分達では不可能なのだと
自分達ではただ殺されるだけなのだと
そう思わせてしまうのが武器が通用しないと思わせるうえで一番、手っ取り早い
陽乃「相手が武器を持って私が怖気づいたら、みんなが武器を手にするからそれは出来ない」
若葉「だろう、な」
陽乃「武器を持った人をただ打倒しても、武器の数や種類が変わるだけ」
若葉「………」
陽乃「だから……私言ったのよ? それを手にしたら手加減は出来ないって、殺すって」
でも、彼は退かなかった
蛮勇にも挑み、そうして陽乃が討った
陽乃「もう、笑うしかなかった」
- 575 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:03:23.81 ID:P62HRT/7O
- 陽乃さん…
- 576 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 21:03:30.39 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃「私の武器はこの拳1つ。分かるでしょう? この手で、人を1人殺したのよ」
若葉「っ……でも、殺す気はなかったんだろう? 事故だったんだろう?」
陽乃「殺せるだけの力を自覚しておきながら、手を抜かなかったんだもの。それはもう、故意だわ」
若葉は目を見開き、
嘲笑交じりに自分の右手で拳を作って見せる陽乃から足元へと視線を下げる
怒りか、悲しみか
若葉に握られる刀がその体の震えによって微かな音を立てる
それはそうだろう
他人がどう言おうと、勇者だと思っていた人が人を1人殺したのだから失望もする
陽乃「人質を持ち出されても面倒だもの。あの瞬間は殺すしかなかったのよ」
若葉「人質は、有効だからか?」
陽乃「まさか」
若葉「土居や伊予島だけでなく、あの場には伊予島の両親がいた……それを見過ごせる人じゃないはずだ」
陽乃「関係ない。赤の他人だし」
若葉「久遠さん!」
陽乃が何を思い、そうしたのか
分かっているのは本人とその身に宿している九尾くらいだろう
しかし、それがどんなものであれ、いかなる理由であれ
陽乃が人を殺したという事実に変わりはなく、それを多くの人に目撃されてしまったことも変わらない
そこから派生した久遠陽乃を討てという命令もまた、どうにもならない
若葉「頼む……大人しく私と一緒に来てくれ」
- 577 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 21:19:22.04 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃「そんな、今から戦います。みたいな状態で何言ってるのよ」
若葉「念のためだ」
陽乃「私が大人しく付いてきてくれるって、思ってる?」
若葉「思ってないから、お願いしてるんだ」
若葉は歯を噛みしめるように、首を振る
陽乃は自由奔放とは少し違うが、大社が関わることに置いて素直に従ってくれるとは思えない
しかし
若葉「ここで従って貰えないと、困るんだ」
陽乃「勇者の肩書に傷がつくから?」
若葉「それはもうついてる……二人が久遠さんを止められなかったからな」
陽乃「……そう。申し訳ないことをしちゃったかな」
若葉「従って貰えなければ、戦う必要がある」
陽乃「なるほど」
千景とは出会って即戦闘になると考えていた陽乃だが
若葉とも戦闘は避けられないような雰囲気だ
諏訪遠征に行くには、ここで大赦に拘束されるわけにはいかない
まず間違いなく断罪されるだろうし監禁されるだろうし
以前とは比べものにならないほどに厳重な拘束をされることになるだろう
若葉「従ってくれ」
陽乃「私を殺せたら、英雄だって称賛して貰えるのに」
若葉「そんなもの……そんなものに何の意味もない!」
陽乃「ごもっとも」
1、悪いけれど、諏訪に旅行する予定があるから……逃げるわ
2、どうしてもと言うなら、力づくでかかってきなさい
3、不意打ち
4、代わりに、諏訪遠征に行ってくれるなら考えてあげる
↓2
- 578 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:21:46.67 ID:P62HRT/7O
- 1
- 579 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 21:24:48.43 ID:a5XBiBmH0
- 1
- 580 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:05:08.40 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃「でも悪いけれど、諏訪に旅行する予定があるから……逃げるわ」
若葉「諏訪……? 諏訪って、まさか諏訪か? 白鳥のいる長野か?」
陽乃「そうよ」
若葉「っ……だめだ」
陽乃「それはそうよね」
陽乃が諏訪遠征にいけば今回の件が落ち着く……わけがない
陽乃が四国から出ようと、
そのあとに戻ってきたら意味がない
大社でしっかりと管理されなければならないし
大々的に捕らえたことを示さなければならないかもしれない
そうしなければならないくらいには、陽乃の存在の影響は大きかった
若葉「白鳥が心配なのはわかる。だが……」
陽乃「別に心配なんてしてないわよ。ただ、ここに居たって良いことないから出ていきたいだけ」
若葉「嘘は良い。助けに行こうとしているんだろう?」
陽乃「そうしたら自由にして貰えるって思ってたんだけど……まぁ、もう無理だと思うし」
- 581 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:18:41.86 ID:6J3Qg0q7o
-
最初こそ、
長野の勇者を救い出してここにまで連れてきたら戦力になるだとか、
大社からの評価も手のひら返しになるだとか
そんな打算的な考えを持っていたけれど
今となってはもう、どうあっても好転する気がしなかった
陽乃は人を殺した
その事実が揺るぐことも拭われることもない
何か善行を成したところで
あの娘は人を殺したと、化け物なのだと
そう言われてしまうだけな気がしてならない
少なくとも、勇者と組ませることはないはずだ
陽乃「だから、ほんとうに……もう、助けるだとかは考えてないから」
若葉「……っ」
陽乃は困ったように笑って、手をひらひらと振る
見逃せば、陽乃は出ていくだろう
そうして、諏訪へと向かう
居場所がないと陽乃は言った
もう、取り返しのつかないことをしてしまったのだから
それは "かもしれない" の域を超えている
- 582 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:40:05.30 ID:6J3Qg0q7o
-
陽乃は否定しているが、
陽乃が向こうの戦力に加わる恩恵は計り知れない
それこそ、
もし仮に今月中に諏訪がバーテックスに突破されることが未来的に決定していたとしても
陽乃がそこに割り込むことで、今月どころか来年以降も健在でいられる可能性が出てくるくらいには。
そもそも、一人で守っている状態から
2人で守るという形に変わるだけで、十分力強いことだろう
白鳥歌野と諏訪そして久遠陽乃
そのすべてにとって、
今ここで見逃すことこそが正しい選択のように思える
いいや、きっと正しい
壁の外は危険だ
そこで陽乃が殺されてしまう可能性はある
けれど、今ここで拘束したって、
大社に捕らわれて処刑されたり、飼い殺しにされたりするだけだ
- 583 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:50:53.99 ID:6J3Qg0q7o
-
若葉「……くそっ」
陽乃「どうする?」
若葉は考え込んで、
そうして、舌打ちをするように顔をしかめる
若葉「……この部屋を荒らしていいか?」
陽乃「どうして?」
若葉「ただ一刀、ここで久遠さんに向けさせて貰う……逃げるついでに躱してくれ」
陽乃「簡単に言っちゃって……」
若葉「何を言うかと思えば……簡単だろう。適当なところで追いかけるのは辞めるが、今日か明日中には出て行ってくれ」
若葉は軽く笑って申し訳なさそうに首を振ると
居合の一刀を放つべく、身構えていく
陽乃「手間をかけてごめんなさい」
若葉「……こうならないように手を打ちたかった……すまないッ!」
若葉は護るためにと鍛えたその最速の一刀を全力で振り抜く
その切っ先は決して陽乃に触れることのない距離
けれども、勇者としての力強い斬撃は、
壁を傷つけ、布団を切り裂き、陽乃のもとへと風を叩きつける
それに押し込まれるように、陽乃は自分から窓へとぶつかって――外へと逃げる
二階からの転落も、常人離れした体には痛みもない
若葉「待てッ!」
陽乃「なにこれ……バカみたいっ」
けれど、
こうしなければいけないのだと陽乃は笑って、若葉から逃げた
- 584 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 22:59:45.77 ID:6J3Qg0q7o
- √ 2018年 8月8日目 夕:
↓1コンマ判定
01〜10 87〜96 ぞろ目 遭遇
23〜32 千景
45〜54 大社
- 585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 23:01:57.93 ID:a5XBiBmH0
- あ
- 586 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/19(金) 23:06:59.61 ID:6J3Qg0q7o
-
ではここまでとさせて頂きます
明日もできれば少し早い時間から
- 587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 23:14:04.61 ID:P62HRT/7O
- 乙
諏訪を救ったところで犯罪者扱いのままならどうすればいいんだろう…
あと大社や千景とは別の判定の遭遇って誰が来るのか
- 588 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 02:09:57.47 ID:4ujeuV3ZO
- 乙
最近コンマすかりまくりだったから遭遇だけでもありがたいわ
- 589 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 20:59:44.21 ID:H62J04Zco
- では少しだけ
- 590 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 21:00:48.18 ID:H62J04Zco
- √ 2018年 8月8日目 夕:
陽乃「はぁ……もう……」
大橋の傍にある、道の駅
芝生広場を通って展望台の方へと登った陽乃は、ようやく一息つく
若葉は本当に途中から姿が見えなくなった
病み上がりな陽乃の足の速さは、
無意識にセーブしてしまっていることもあって
若葉なら追い越したうえでゴールテープを張っておくことができるくらいに遅い
それでも追い抜くどころか後ろからいなくなっていたのだから、
若葉が自分から撒かれてくれた以外にあり得ない。
陽乃「……ん」
陽乃は、自分の体調面を考慮しなければ、
死ぬまで誰かに見つかることはない
というのも、常に九尾の力を借りて姿を誤魔化しておけば、
誰一人として、それを見破ることは出来ないからだ
もっとも、それを24時間続けようものなら数日で体調を崩すだろうし
そのまま回復できずに死に至るだろう。
もちろん、そんなことは出来ない為
必然的に人気のない場所に身を顰めるしかない
そういうのもあって、
立ち入り規制が行われている瀬戸大橋付近は陽乃にとってはこれ以上ないほどに好条件だった
――の、だが。
陽乃「っ!」
展望台までの階段をすっ飛ばして飛び込んでくる人影
まだ本調子には感じられない体は鈍く、それを躱しきれずに押し倒される
その力は常人離れしたもので……
目を向ければ、見知った顔に怒りが滲んでいる
球子「杏の読み通りだな」
闖入者は勇者の一人である、土居球子だった
- 591 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 21:17:16.90 ID:H62J04Zco
-
陽乃「っ……痛い……」
球子「放したら、逃げるだろ」
陽乃「簡単に押し倒される程度の私が、逃げ切れるわけないじゃない」
球子「……だとしても、ダメだ」
球子は少し迷う素振りを見せたけれど、
首を横に振って、力を緩めない。
陽乃「見張ってたの?」
球子「まぁ、そうだな……諏訪に行くにはここを通るしかないだろ?」
陽乃「明日かもしれないし、一週間、一ヶ月もっと先かもしれないのに?」
球子「いや、あんなことがあったし……ここに居る理由が無くなったらすぐにでも行くと思った」
って、杏が言ったんだ。と、球子は困ったように言う
その読みが当たったのに、
球子は喜ぶどころか、不満気だった
球子「一人で行くつもりだったろ」
陽乃「私は別に、二人がいなくてもいいし」
球子「タマの体当たりも躱せないような状態でか?」
陽乃「色々あったのよ……仕方がないじゃない」
球子「仕方がないから死にに行くのかッ!?」
陽乃「ぃっ……痛いっ……」
押さえつける力がより強くなって、
陽乃は思わず呻いて、顔をしかめる
そろそろ、九尾が出てきてもおかしくない
- 592 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 22:16:53.84 ID:H62J04Zco
-
球子「ふざけんなッ!」
陽乃「………」
球子「勝手に消えて、勝手に死ぬつもりだったのかッ!?」
球子は本気で怒っている
陽乃のためか、杏のためか、自分自身のためか
怒りながら、悲しそうな瞳をしていた
球子「生きたいんじゃなかったのかよ……」
陽乃「死ぬつもりなんてないけど」
球子「でも死んだって良いって思ってるだろっ」
陽乃「その時はその時って思ってるだけ」
球子「っ……そうなったら、あんずはどうなる。母親だって、大社にいるんだろ?」
杏のことを出されても、陽乃は大して響かない
けれど、母親が出された瞬間に
陽乃は苦虫を噛み潰したような顔をして、球子を睨む
だが、すぐに顔を背けた
1、そんなに熱くならないでよ
2、人を殺した娘なんて、死んで貰った方が良いに決まってるわ
3、だから、なに? 大社に従ってこのまま私を捕まえるの?
4、どうだっていいじゃない。あなた達なんて赤の他人なんだから
↓2
- 593 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:18:12.93 ID:MPCf7yOn0
- 2
- 594 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:18:17.99 ID:4ujeuV3ZO
- 3
- 595 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 22:19:36.63 ID:0GZh8e3xO
- 1
- 596 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 22:51:19.96 ID:H62J04Zco
-
陽乃「だから、なに? 大社に従ってこのまま私を捕まえるの?」
球子「……知ってるのか」
陽乃「昨日は寄宿舎に戻ってたのよ」
球子「はぁ!?」
陽乃「で、さっき乃木さんに見つかって逃げてきたの」
球子「寄宿舎に戻るなんて、おま……マジかよ……」
球子はそんなバカなと呟く
灯台下暗しと言う言葉もあるが、
まさか実際にそんなことをするとは思わないだろう
唖然としながらも、力は抜けない
球子「あんずも聞いたらびっくりするだろうな」
陽乃「で……どうするの?」
両手を押さえる球子の手
腰周りを圧迫する球子のお尻
頑張れば足で球子を蹴ることができるが、
勇者としての力を行使している今、大して力の入っていない蹴りではびくともしない
陽乃「捕まえる? それとも、首を絞めて殺す?」
球子「捕まえるって言ったら?」
陽乃「乃木さんから逃げたのに、貴女に良いよ。なんて言うとでも思ってる?」
球子「そりゃそうだ」
- 597 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 23:41:24.23 ID:H62J04Zco
-
球子「行くんだろ? 諏訪」
陽乃「ええ」
球子「だったら、予定通りタマとあんずも連れてけ」
陽乃「死ぬ気?」
球子「あんずが言ったんだ」
止める方法があったはずだと
あの悲劇は止められたのだと
陽乃に対する人々の態度を目の当たりにしておきながら
それがただの人間だからと、躊躇してさえいなければ
こんなことにはならずに済んだはずなのだと。
そして――
球子「……分からなくなったんだ。あんなのを守るのが勇者の役目なのかって」
陽乃「そんなこと言って、勇者の力没収されても知らないわよ?」
球子「勝手に喧嘩売って、ダメだと分かったら勇者に投げて、それでもだめだからって勇者を野次って……原因作ったくせに、勝手だろ?」
呆れた。とでも言うかのように笑う球子は、
それでも、陽乃を手放そうとしない
球子「連れていくって約束するなら、解放する」
陽乃「断ったら?」
球子「このまま簀巻きにして連れていく」
1、良いわ。来たければ来なさい
2、なにそれ。どっちにしろじゃない
3、死んでも責任は取らないわ
4、悪いけど――使えない人を連れていく気はないの
↓2
- 598 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 23:45:44.94 ID:MPCf7yOn0
- 3
- 599 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/20(土) 23:47:22.27 ID:0GZh8e3xO
- 1
- 600 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/20(土) 23:52:55.74 ID:H62J04Zco
-
ではここまでとさせていただきます
明日はできればお昼ごろから
- 601 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:03:38.48 ID:0pXau1WgO
- 乙
タマっち先輩ほんといい人や…
最初は嫌ってたのにいつの間にやら前作までの夏凜みたいな立ち位置になってきた気がする
- 602 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:25:09.73 ID:yEi0MtLhO
- 乙
何はともあれついてきてくれるのは心強いな
- 603 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 00:46:44.32 ID:vC19mVtw0
- 乙
合流して3人で出て行くってのはもう解決として
なんとか次の日までに少しでも体調戻したいな
- 604 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:12:29.49 ID:da4fqDl/o
- では少しずつ
- 605 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:14:34.53 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「良いわ。来たければ来なさい」
球子「そう言って、夜中にこっそり出て行ったりとかするんだろ?」
陽乃「しないわよ……ここまで来たらもう、する意味もない」
諏訪遠征に行くことを伝えていた以上、
2人は陽乃が数日以上ここに姿を見せず、
四国内のどこにも見当たらないとなったらいよいよ、外へと出ていくだろう。
たとえ陽乃が本当に出ていったという確固たる証拠がなかったとしてもだ
無駄死にさせないという陽乃の目的は、
陽乃が遠征に行くという話を2人が知った時点で潰えている
陽乃「心配なら、首輪でも手錠でも足枷でも自由にどうぞ」
球子「そんなことするかっての」
陽乃「予定は明日の朝」
球子「早いな」
陽乃「私の現状を考えれば、むしろ遅いと思うけど」
球子「見つかったら何されるか分からないからな……確かに遅いかもしれない」
陽乃「ただ、言っておくけど――」
球子「分かってる。タマ達を守る気はないんだろ? 分かってる……分かったさ。もう」
- 606 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:15:44.76 ID:7D9/5LRhO
- おk
- 607 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:36:33.69 ID:da4fqDl/o
-
球子はようやく陽乃を押さえる力を抜くと、
気まずそうに顔をしかめて、首を横に振る
陽乃が守るのは無理だと言いたくなる気持ちを身をもって知った。
友達だなんだと言っておきながら、
あの場で庇うことすらできなかった
それは違う、間違っていると
そう叫ぶことさえもできなかった。
球子「そっちに比べれば軽いことかもしれないけどさ……分かったんだ。軽々しく言いたくないっていうのが」
陽乃「そう……」
球子「守ってやりたかったんだ」
陽乃「あそこで庇ってどうするのよ。貴女達まで付け狙われることになるのよ?」
球子「一緒に諏訪に逃げようって話した後にそんなこと聞くなよな」
球子は笑う
もう今更だ
それを聞かれるのも、それを言うのも
球子「でも今度こそ……何があっても、私が守ってやる」
陽乃「またそうやって、軽々しく言うのね」
球子「そんなつもりはないぞ。ほんとに、今度こそ絶対だ」
とても優しい表情を見せる球子
罪悪感と後悔が入り混じったその視線から、陽乃は顔を背けた
- 608 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 15:49:22.62 ID:da4fqDl/o
-
球子「あんずの家に行くぞ」
陽乃「馬鹿言わないで」
球子「心配すんな。許可は取ってる」
陽乃「そういう問題じゃ――」
球子「分かるだろ? もう一回、会えるなら会いたいって言われてるんだ」
陽乃の手を取って、立ち上がらせる
押さえつけるほどの力ではないが、
放すまいとしている力強さが伝わる
陽乃「正気とは思えないんだけど」
球子「あの連中よりはずっと正気だろ。どう考えても」
陽乃「あの連中なんて言わない方が良いんじゃない?」
球子「あの化け物って言ったり、役立たずって言ってくる相手でもか?」
気にしてられないだろ?
なんて、球子は茶化すように言うと、少し考えて。
球子「変装できるか?」
1、無理よ
2、まぁ、なんとか
3、だから、行かないってば
↓2
- 609 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:52:37.90 ID:7D9/5LRhO
- 2
- 610 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 15:53:46.84 ID:zTXokEB5O
- 2
- 611 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 16:53:26.61 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「まぁ、なんとか」
球子「無理なら無理って言ってくれていいからな」
陽乃「無理じゃない」
無茶とは言えてしまうかもしれないが
今の身体でも、少しの間姿かたちを誤魔化す程度なら何の問題もない
陽乃「最悪、血反吐はいても助けてくれるんでしょ?」
球子「ふざけんなっ」
陽乃「っ……痛いってば……」
球子「吐くのか? それだけぼろぼろなのか?」
強く手を握られた陽乃の小さなうめき声
本当に痛がっている
球子「あ、悪い……」
陽乃「色々あってそこまで万全じゃないのよ」
球子「……そっか」
球子は陽乃を一瞥すると
ポケットを弄って、スマホを取り出す
球子「じゃぁ、迎え呼ぶか」
陽乃「本気で言ってるの?」
球子「必要なら呼んでくれって言われてるからな。必要だろ?」
陽乃「どうなっても知らないから」
球子「分かってるよ」
- 612 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:09:57.06 ID:da4fqDl/o
-
球子はささっと連絡を取って迎えを呼ぶ
呼んだのは杏の両親だ
車で迎えに来てくれるとのことなので、時間近くになったら
立ち入りが許されているギリギリのところで合流する予定だそうだ
細やかな段取りを話す球子を横目に、
陽乃は大橋の方へと目を向ける
陽乃「……怪我は?」
球子「怪我?」
陽乃「貴女が伊予島さん庇ったから、めり込んだでしょ」
球子「あ〜……めっちゃ痛かった」
陽乃「痣でも残った?」
球子「痣は出来てないけど触ると痛いな……ちょっとだけど」
陽乃「貴女が割り込むからいけないのよ」
あんずを蹴るふりではなかった
確実に蹴り飛ばすつもりだった
でも、つま先がめり込んだ球子と違って、
足の甲の部分で蹴るというよりもすくい投げるようにするつもりだったのだ
それを球子が割り込んだばっかりに
腹部へと足がめり込む見事な一撃となったのだから、仕方がない
- 613 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:22:44.16 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「そんな調子で、明日から平気なの?」
球子「平気だよ。血反吐吐くほどじゃないし」
陽乃「そう……」
球子「………」
陽乃「なに?」
ただ独り言ちただけなのに、視線を感じた陽乃は顔を顰める
球子はそれでも陽乃を見たままで、
数回瞬きすると、なぜだか笑った
陽乃「なんなの?」
球子「心配した?」
陽乃「穴開けられたいの?」
球子「今のタマの防御力を舐めて貰っちゃ困るなっ!」
陽乃「私の本気も知らないくせに調子に乗らないで」
球子の本気も知らないけれど
あの憎悪に満ちた神の力は、おそらくだが球子たちの扱う神々の力さえも食い破って抉るに違いない
九尾の話が全て事実なら。だが。
陽乃「血の海になるんだから」
球子「ならないから安心しとけって」
陽乃「はぁ……そう思うならそれでいいわよ。別に」
誰の血で染まるか。と言うのを加味しなければ、
間違いないのは、事実だった
- 614 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 17:24:39.02 ID:da4fqDl/o
- √ 2018年 8月8日目 夜:伊予島家
01〜10 大社
21〜30 若葉・友奈
41〜50 杏
81〜90 伊予島両親
↓1のコンマ
※ぞろ目で付近の住民 奇数悪
※それ以外は通常
- 615 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 17:26:33.69 ID:cPMtSqR4O
- あ
- 616 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 18:11:35.51 ID:da4fqDl/o
- √ 2018年 8月8日目 夜:伊予島家
あんなことになるとは思わなかった。なんて言い訳のような言葉もなく
軽率なことをしてしまったと
もう少し思慮深く行動を起こすべきだったと
ただ真っ直ぐに、杏の両親は謝罪を口にした。
陽乃がいることが知られないようにと気を付けながら、
もう一度、家へとあげてくれた
陽乃「むしろ、巻き込まれた側なのに」
自業自得とは言ったが
陽乃がこの家に来ることさえなければ、そんな行動を起こすことだってなかった
初めから、ここに来さえしなければ。
諏訪でもそうなるのではないだろうか
陽乃が来たせいで均衡が崩れ
何か取り返しのつかないことになるのではないか
そんな不安が胸を過る
陽乃「……はぁ」
諏訪の守りが強固になることで
今度は四国が攻められるようになる可能性もある
そうなったら、いるはずなのにいない2人が欠けた3人で乗り越えなけばならない
諏訪と四国で3人ずつと考えれば、ちょうどいいかもしれないが
- 617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 18:37:59.39 ID:da4fqDl/o
-
陽乃が諏訪に行くことについては、若葉が知っている
陽乃が諏訪に行くと言って姿をくらましたのなら、
同じように姿が見えなくなった二人も諏訪にいったのではと推測してくれるかもしれない
けれど、最悪の場合
そう、万が一死人が出た事も考えて
2人にも事前に伝えておいて貰う方が良いだろうか。
伝えた相手―おそらくは若葉―に止められる可能性があるが、
それでも2人は行くと言って聞かないはずだ
陽乃「……っ」
首を振る
そんなのはまるで、信じているみたいで不愉快だ
陽乃「んっ」
血を吐きそうになったりはしないが、
まだ少し体が重い感じがする
明日の朝に出発するのだから
もう寝てしまうのも、一つの選択だろう
1、もう休む
2、九尾
3、球子・杏
4、伊予島両親
5、イベント判定
↓2
- 618 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:45:15.17 ID:OBv7ZIQPO
- 3
- 619 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 18:47:40.19 ID:Frfjoky90
- 4
- 620 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:24:09.43 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「……明日の朝には、出ていきます」
「部屋から出るのは難しいと思うけれど、ほとぼりが冷めるまでここに居てくれてもいいのよ?」
「そのほとぼりが冷めるまでどれくらいかかるか分からないだろう」
「そうは言うけれど……」
陽乃「大丈夫ですよ。私にも、やらないといけないことがあるので」
四国には居られないから向こうに行く。
本心ではそうだけれど、
正直に言っても、杏の両親はこの家を居場所だと言ってくれるだろうから、言わずにおく
2人は気にしない
けれど、陽乃を部屋に軟禁状態にしておいたからと言って安全なわけじゃない
足音1つでもバレるときはバレてしまう
お風呂の回数、お手洗いの回数
足音、漏れてくる声
そこから推測されて、押し入られたりなんだり。
伊予島家が被害に遭わないとは限らない
「……今回は、本当に申し訳ないことをしてしまったわ」
陽乃「いえ、分かっていたことなので」
「分かっていたとしても、傷口を広げるような結果になってしまったことは非常に申し訳ない」
謝って済むことではないと前置きしつつも、
2人はまた、頭を下げた
- 621 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:47:29.77 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「その……」
「あぁ、娘から話は聞いているよ」
母親の方は何を言うのかを察して顔を伏せるように目を背けてしまったが、
父親の方は穏やかな表情で頷く
「諏訪の方に行くという話だろう?」
陽乃「ええ、まぁその……」
「無理を言った。と、2人から聞かされたんだ」
陽乃がお願いしたわけでも、
無理強いしてきたわけでもなく、
寧ろついて来なくていいと言われていた事も両親は聞いている
諏訪への遠征
それが、かつての旅行のようなモノではなく
命懸けの作戦であることも聞いている
「もちろん、私達からも考え直すようには言ったよ。だけど、それでも行くと2人は言っていてね」
2人が二度と会えなくなるかもしれないのに
父親は困ったものだと言いたげに笑みを浮かべて、
すぐに、また普段の表情へと戻る
- 622 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 19:58:57.24 ID:da4fqDl/o
-
「遠征に必要な食品等は、私たちの方で用意させて貰ったよ」
陽乃「そんな」
「大事な事なんだろう?」
諏訪に行くのも、そのための準備も
しなければならないことだから、
出来る限りの支援はしてあげたいと、父親は言う
陽乃「………」
2人が諏訪遠征に行きたいと言い出したのは、
言ってしまえば陽乃が行くといったからだ
陽乃がそう言いだしさえしなければ、
球子と杏が諏訪に行くだなんて言わなかっただろう。
陽乃は別れを惜しむ母親と、
比べて普段通りな父親の両方に目を向ける
守れるだなんて約束はできない
本当に死なせるかもしれない
そうなれば、そうしたいと言い出した原因である陽乃のせいではないだろうか。
1、すみません。私のせいで
2、約束はできませんが、可能な限り無事に送り返します
3、支援だけで十分です。ありがとうございます
4、どうなっても、私は責任とれません
↓2
- 623 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 20:04:28.76 ID:Frfjoky90
- 1
- 624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 20:09:00.26 ID:OBv7ZIQPO
- 1
- 625 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 20:56:15.50 ID:da4fqDl/o
-
陽乃「すみません、私のせいで」
「いや、それを言うなら私たちのせいでもあるだろう?」
陽乃「いえ……諏訪遠征は昨日の件がなくても元々計画していたので」
その時点ですでに、2人はついてくる気だった
昨日の件があって断固とした意志になったのだとしても、
無かったとしても、2人は同じくらいに強情だったと思う。
それはやっぱり、陽乃のせいだ
陽乃「私が諏訪に行くことを教えなければ良かったんです」
「それは、ダメだと思うわ」
「2人が知らなければ君一人だった。と言うことなら、それこそ許しがたいことだと思うよ」
母親も、父親も
2人そろって厳しい表情を見せる
「娘を贔屓するわけではないが、杏一人とっても君に恩を感じているんだ。なのに、人知れず出ていくのは恐ろしい」
三年前に救われたっきりで
それ以降、顔を合わせるどころか名前も聞かない
そんな疎遠な状態であったならいざ知らず
同じ寄宿舎で生活し、顔を合わせたりしていたのなら、
やっぱり、何も言わずに姿を消して欲しくはないはずだ
「なにより、たとえ君が何も言わずに諏訪へと旅立つのだとしても、きっと誰かが気付いていただろう」
- 626 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 21:19:40.70 ID:da4fqDl/o
-
「なんと言えば良いか……」
父親は困った様子で母親を見る。
代弁してくれること期待するその視線に、
母親は小さく笑って、ため息をついた
「久遠さん……ううん、陽乃ちゃん。そんなに、全部を自分で背負おうとしなくてもいいの」
陽乃「私は、別に……」
「陽乃ちゃんは、いつも自分が責任を負う前提で考えているんじゃない?」
諏訪遠征に2人が参加すること
昨日のボランティア活動のこと
両親がちゃんと知っているのはそのくらいしかないけれど、
でも、そのたった二つだけでも強く感じる
常に、その責任を考えている。
何かがあったとき、それが自分の手に負えることなのかどうか
真っ先にそれを考えて
過去の経験からだろう……難しいと判断している
「陽乃ちゃん一人で手に負えないのは当たり前のことなの。だって、ほら、貴女の手はまだこんなに小さいんだもの」
陽乃「……」
一回りほど大きな杏の母親の手が、陽乃の手を包む
勇者とは呼ばれず、化け物だと呼ばれ
ただただ責任だけを追及され続けている目の前の少女は、ただただ、少女なのだ。
「信じられる人を見つけて、頼って、一緒に一つずつ成し遂げていけばいいの」
陽乃「っ……」
「あんなことがあった後で信用がないのは分かるけど。でも、まずは……危険な旅に同行したいって2人を信じてあげて。ね?」
- 627 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:41:41.89 ID:da4fqDl/o
-
陽乃の手を包んでいた母親の手が、今度は陽乃の頬へと触れる
本当の娘のように
強い愛情を感じるその優しい手つきに、
陽乃はゆっくり、目を閉じる
「ちゃんと、帰ってきてね」
陽乃「……厄介ごとに巻き込んだ張本人ですよ」
「巻き込んだんじゃない。自分から首を突っ込んだの。何かがあったとしてもそれは、陽乃ちゃんのせいじゃない」
絶対に大丈夫と言う保証はなく、寧ろリスクの高い行いだった
それを両親から誘い、
陽乃は自分には責任が取れないと念押ししていた
なのに、
何かがあったら自分のせいだなんて考えてしまっている
「だから」
これを言ってもいいのかと、母親は少し迷う
その迷いを感じ取ったのか、
控えていた父親が、陽乃をまっすぐ見つめた
「まだ数日の付き合いだ。信頼を置くことも難しいかもしれない。それでも、キミさえよければ……ここを帰る家と思って欲しい」
陽乃「……私はお二人の子供でもないのに」
「そんなこと、気にしなくてもいい」
杏の両親はあんなことがあってもまだ、陽乃を信じてくれている
受け入れてくれている
頼って欲しいと、迎え入れてくれている
陽乃は唇を噛んで……首を振る
それでも、両親の優しさは揺らがない
「今は助け合って生きていかなければいけない時だ。キミにしかできないことがあるように、私たちにしかできないこともある」
それだけだよ。と
父親は限りなく優しい声で、言った
- 628 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:44:01.44 ID:da4fqDl/o
-
√ 2018年 8月9日目 朝:
01〜10 若葉
23〜32 千景
67〜75 大社
ぞろ目 特殊
※そのほか通常
↓1
- 629 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 22:47:23.82 ID:3kSRXyo0O
- あ
- 630 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/21(日) 22:51:06.09 ID:da4fqDl/o
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
1日のまとめは明日
9日目朝は遠征出発で固定
- 631 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/21(日) 23:02:58.94 ID:Ed7N8PzoO
- 乙
伊予島家が奇跡的に無事だったおかげでほんの少しだけ希望が見えてきたのは大きいな
そしていよいよ出発だけど遠征ってどんな感じに進めてくのか気になる
- 632 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 00:09:49.79 ID:jzgy1I5TO
- 乙
最後の最後に大社とか千景の追撃きたらヤバいなって思ってたけど何もなくてよかった
- 633 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 19:54:34.26 ID:N25V4BBPo
- では少しだけ
- 634 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 19:55:07.15 ID:N25V4BBPo
-
√ 2018年 8月9日目 朝:瀬戸大橋
まだ人々が寝静まっているであろう早朝、
点々と雲は見えるものの
幸いと言うべきか、十分に晴れていると言える空模様を眺める
大社を警戒したが、姿は見えない。
若葉達勇者もこの場所にはいないようだ。
球子「流石に、寝てるんじゃないか?」
陽乃「乃木さんは起きてるわ。上里さんも」
杏「分かるんですか?」
陽乃「私じゃなくて、九尾がね」
九尾は、陽乃を除けばもっとも強い繋がりとして上里ひなたを選んでいる。
ひなたが何か行動を起こせば伝わるし、何かひなたに伝わってきたらそれもまた九尾へと筒抜けになる
スマホを後ろから覗き見している。と言うと非常に犯罪的なものだが、
実際にそんな状態だ。
今、ひなたはもうすでに起きている。
久遠陽乃捜索の助力と言う建前で若葉と連絡を取り合える状態にある為、
若葉からそのことの報告は受けている
受けた上で、隠している。
九尾曰く、
例の神託が陽乃による何らかの介入があった可能性も考えているというのだから、手強い。
- 635 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:03:30.63 ID:N25V4BBPo
-
球子「で、予定ではどのくらいで着くんだ?」
杏「真っ直ぐ突っ切るにしても生存者を探したりしていくなら、最低でも5日くらいかな」
陽乃「人手が足りないわ。生存者がいても置いていくしかない」
球子「出来もしないこと言うなよな」
陽乃「別に、貴女がいなくたって――」
杏「ま、まぁまぁ! そこまでにしようよっ! タマっち先輩も挑発しないで」
球子「挑発って言うか、事実だろ。生存者がいたらどうするんだよ。本当に置いていけるのか?」
球子は真剣な表情で陽乃を見上げる。
生存者を置いて行かなければならない本当の理由は、陽乃が戻れないからだ。
正式な遠征であれば、生存者救助のための一時撤退だとでも言えるだろう。
だが、今回は正式ではないし陽乃は追われている身だ
そんな状態で戻るのは突っ切るよりもリスクがある。
球子「その置いていった人を、また自分が殺したって背負うんだろ?」
陽乃「見殺しにしたって意味では事実だと思うけど」
球子が言っていることはもっともだ
陽乃は偶然見つけた生存者を放置して平然としていられるほど冷徹な人格をしていない
寧ろ、それを気に病んでいくタイプだ
身体はどうとでもなったとしても、心が持たない
出来るなら、見つけた生存者は保護して助けたい。
けれど、出来ない
たとえば岡山で生存者を見つけたら、諏訪まで連れていくのか。
そんなことをしたらどれだけの時間がかかるか。
- 636 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:10:42.17 ID:N25V4BBPo
-
球子「別に、夏休みの間にたどり着くとか戻るとか考えなくていいんだから、どうしたいか考えればいいんじゃないか?」
陽乃「足手纏いを増やすのが嫌なのよ。それで死ぬのは私かもしれないんだから」
杏「……なら、行きは生存者を探さずにただ全速力で突っ切って2日。帰りに捜索はどうですか?」
陽乃「場合によっては諏訪からの連れ出しがあるんだから却下。行きも帰りも捜索しない」
球子「本気か?」
陽乃「嫌なら一人で探せばいいんじゃない?」
球子「それで大丈夫なのか? 自分は」
陽乃「………」
自分は。と、訊ねてくる球子を睨む。
いるかも分からない生存者を気にしているようで、
今気にしているのは陽乃のことかのような口ぶりだ
まるで、勇者らしくもない。
陽乃が受けている被害を目の当たりにして、迷ってしまったからだろうか。
陽乃「そもそも、勇者の力を使えば早ければ1日で到達だって可能なはずだけど」
球子「死ぬ気かよ。タマ達が平気でもそっちが辛いだろ」
杏「極力接敵を避け、適度に休憩を挟みつつ、一直線で確実に辿り着くことを目的とするならやっぱり2日くらいかかると思います」
- 637 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:24:02.41 ID:N25V4BBPo
-
球子「道中のバーテックス全部潰していく方が休憩が増えるって考えれば、最低3日、最大は……7日か?」
陽乃「そんなことしたら私、途中で力尽きると思うけど」
主に自滅で。
そんな陽乃を一瞥し、杏が小さく手を上げる
杏「では、仕方が無いので捜索は諦めて諏訪に直行。夜の休憩を挟んで2日目の到着を目標に行きましょう」
勇者としては生存者を探したい気持ちがある。
だが、自分たちの身の安全も保障しきれていない状態で
今もなお隠れ潜むことが出来ている生存者を無理矢理に連れ出すメリットが見当たらない
外の世界で隠れて生きていけているなら、
もうしばらく、それを維持して貰っておくのがベストな選択だ。
杏「久遠さんの力は強い分、負担が大きい……ですよね?」
陽乃「ええ」
球子「なら普通の白餅と戦うならタマと杏だけ。やばいのが出てきたら頼む」
陽乃「油断は――」
杏「してません。だからこその温存です」
球子「肝心な時に血反吐吐かれたら困るんだ」
球子の呟きには、一理ある。
白餅……おそらく、白くて丸い体を持つバーテックスのことだろう。
あれの次、進化体とされているモノが出てきた時に陽乃がもう戦えませんは言えない。
球子「なんか、車とかで移動できたらいいのになぁ」
杏「免許は仕方ないにしても鍵もガソリンも何もないだろうし、無理だよ」
道だってきっと、荒れ果てている
陽乃「車……あ……道中を2人に任せられるなら……」
球子「ん?」
移動は陽乃……九尾に任せてしまえばいい。
以前、乗せて諏訪まで行くことができると言っていたし、
その際は戦闘の懸念があると言う話だったはず。
それを球子と杏……遠・中距離専門の2人に委ねてしまえば、
移動しながらでも十分に対応できるのではないだろうか。
陽乃「足は、九尾がいるわ」
- 638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 20:38:59.16 ID:N25V4BBPo
-
九尾の足なら、人間どころか勇者にだって負けない速さで駆け抜けていくことが可能なはず。
そのうえで、敵との遭遇したとしても立ち止まらずに遠・中距離の攻撃で対応していくことができるなら、
2日も掛からず、1日どころか半日で踏破することだって可能かもしれない。
もちろん、道中で対応しきれない数のバーテックスに囲まれたりしたら大変な事になるが、
その時は止まって対応したらいい。
その頻度と、疲労度合いによっては2日かけたって何の問題もない。
杏「九尾さんを呼んでる間、久遠さんは大丈夫なんですか?」
陽乃「戦うよりは軽いわ」
球子「そもそも乗せてくれるのか?」
陽乃「どうかしら……貴女はお腹の中にいて貰うことになるかも」
球子「へぇ〜狐にもお腹に袋あるのかー」
陽乃「ええ。胃袋がある」
球子「待てっ、死ぬだろそれッ!」
吠える球子をしり目に、
陽乃はふっと息を吐いて胸元を押さえる。
死にかけた一昨日の夜
約2日経って、胸やけのような感覚もない
この状態なら、九尾を呼んでおくくらいは問題が無いはずだが。
杏「体調に不安があるなら、時間をかけてでもいいので普通に行きましょう」
1、九尾を呼ぶ
2、呼ばない
↓2
- 639 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 20:42:08.39 ID:6WmpSPfM0
- 1
- 640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 20:43:26.32 ID:sKN+TC3HO
- 1
- 641 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 21:45:36.55 ID:N25V4BBPo
-
陽乃「九尾、お願いできる?」
『小娘を喰ってよいのか?』
陽乃「ダメ」
陽乃の足元から影が伸びる
球子の影と陽乃の影が繋がって、
球子の足元の影が狐の口のように開いて――
球子「ぬわぁぁぁぁっ!?」
不意を突いて実体化する影は瞬く間に大きな狐の形を作り出し、
球子の体を飲み込んだかと思えば、
牙のような歯で球子の服を咥えこんでいる
球子「なっ、なん……やめろぉっ!」
九尾「お主は胃の中に収めよ。と言うのが我が主の命じゃ」
球子「やめろっ死ぬっ! 死ぬからっ!」
止めてくれと叫ぶ球子をよそに、
陽乃は九尾の身体を見上げる
四つ足の状態で標準的な建物一階の天井に接しそうな大きさの九尾
子供三人なんて、簡単に乗せられそうだ
陽乃「伊予島さん、馬に乗ったことはある?」
杏「ない、ですけど……」
ちらりと、球子を見上げる杏
ずり擦りと服が脱げ始める球子の叫びを聞き届けて
杏「まずは、タマっち先輩を降ろしてあげてください」
- 642 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:33:12.51 ID:N25V4BBPo
-
陽乃「それで九尾、頼めるかしら」
九尾「ふむ……よかろう」
陽乃「この二人も乗せて平気?」
九尾「主様が望むならば致し方あるまい」
そう言って九尾は屈んでくれたけれど
それでもかなり高い位置にある
球子「毛を毟ってやるからなっ」
九尾「喰い殺すぞ小娘」
陽乃「投げ飛ばすわよ」
球子「なんだよ……なんだよぉっ!」
杏「私が後ろから持ち上げてあげるから……」
球子「そういう問題じゃなぁいっ!」
喚き散らす球子をよそに、
一足先に九尾の背中へと上がった陽乃は、自分の胸に触れる
力を使っている感覚はあるが、
まだ大丈夫そうだ
杏「ほらっ、タマっち先輩! 急ごうよ」
球子「ぐぬぬ……もう少し優しくしてくれたって良いじゃないかっ」
陽乃「そうしてあげる理由がないもの」
2人が九尾の背中に上った野を確認した陽乃はそう言って、九尾の首筋を撫でる
陽乃「お願い。私を諏訪に連れて行って」
九尾「振り落とされるでないぞ」
九尾は言うや否や、駆け出す
自転車なんて比にならないほどの早さで駆け出す勢いに、3人は九尾の体に縋る
かなりの距離があるはずの瀬戸大橋は、あっという間に過ぎていく
- 643 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:42:59.98 ID:N25V4BBPo
-
11〜20 バーテックス
41〜50 バーテックス
81〜90 バーテックス
↓1のコンマ
※ぞろ目 人
※バーテックスの場合は再判定
- 644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:44:46.17 ID:yWy3eSjVO
- あ
- 645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:46:50.33 ID:8O6NXwWcO
- きたか…
頼むぞ杏タマコンビ
- 646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:54:29.86 ID:N25V4BBPo
-
↓1コンマ
01〜99
※コンマ=バーテックスの数
- 647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:56:28.07 ID:6WmpSPfM0
- あ
- 648 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/22(月) 22:58:13.99 ID:N25V4BBPo
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから
バーテックス7体
- 649 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:59:14.36 ID:8O6NXwWcO
- 乙
よかったよかった
肩慣らし程度だな
- 650 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 23:09:45.30 ID:yWy3eSjVO
- 乙
この数ならパパッと片付けて先に進めそうだな
あとなんとなく陽乃さんが心を開き始めてきた感じがして嬉しい
- 651 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:27:50.49 ID:zO5DXF6Lo
- では少しずつ
- 652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/02/23(火) 15:28:33.58 ID:zO5DXF6Lo
-
陽乃「ん……」
全力で走る九尾
その背中に跨る娘3人
狐の体は、馬のようになだらかな背中をしていない。
走るときも、
後ろ足が前に出る際に背中の部分が盛り上がったりもして、
少なくとも人を背中に乗せるような構造をしていないし、乗り心地は最悪だ。
球子「ぬわぁぁぁぁああああああっ!?」
杏「痛っ……っあっ!?」
陽乃「下手に喋ると舌を噛むわよ」
振り落とされかねない勢いに叫ぶ球子
身体が浮いたかと思えば、股座を九尾の背中に直撃する杏
そんな2人の前で平然としつつ、
降りた後が怖いと自分の擦れ具合を気にする陽乃
九尾「主様っ!」
陽乃「どうしたの?」
九尾「異形共の気配がある。数は少ないが――真っ直ぐ向かってきておる」
球子「てってき……敵かっ!?」
杏「うっ……うぷっ……」
陽乃「バーテックスだけど、対応できるの?」
球子「タマにまかせタマ……うぉぁっあ゛っ!?」
不安しかない。
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